(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】ヒト肝細胞培養培地およびin vitro培養ヒト肝細胞の馴化培地ならびにその使用
(51)【国際特許分類】
C12P 1/00 20060101AFI20240905BHJP
C12N 1/00 20060101ALI20240905BHJP
C12N 5/071 20100101ALI20240905BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
C12P1/00
C12N1/00 A
C12N5/071
C12Q1/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519257
(86)(22)【出願日】2022-09-30
(85)【翻訳文提出日】2024-05-27
(86)【国際出願番号】 US2022077330
(87)【国際公開番号】W WO2023056408
(87)【国際公開日】2023-04-06
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】592048844
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ サザン カリフォルニア
(71)【出願人】
【識別番号】503449018
【氏名又は名称】株式会社フェニックスバイオ
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 剛
(72)【発明者】
【氏名】石田 雄二
(72)【発明者】
【氏名】菅原 豪
(72)【発明者】
【氏名】立野(向谷) 知世
(72)【発明者】
【氏名】山崎 ちひろ
【テーマコード(参考)】
4B063
4B064
4B065
【Fターム(参考)】
4B063QA05
4B063QQ08
4B064CA10
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4B064DA20
4B065AA93X
4B065BB11
4B065CA60
(57)【要約】
HH培養培地および方法が、DMSOを補充した培地の使用によって細胞単離手順および凍結融解サイクルに関連する傷害またはストレスからの回復を可能にするために提供される、すなわち、フェーズ1(回復フェーズ)。さらに、HH培養培地および方法が、DMSO、DMSO2またはTMSOを補充した培地の使用によりヒト肝臓と同程度のレベルで培養されたHHの肝機能の支持を可能にするように提供される、すなわち、フェーズ2(維持適用フェーズ)。これらHHは、肝臓生物学、疾患薬物代謝および薬物動態のin vitro研究に適している。さらに、フェーズ2の間のHHの培養上清、すなわちヒト肝細胞の馴化培養培地(CMHH)が提供され、それはiHep成熟を容易にし、肝細胞の細胞運命維持を支持する。採取されるべき培地中でヒト化肝臓キメラ動物に由来するヒト肝細胞および/または初代ヒト肝細胞を培養するステップを含む、CMHHを調製する方法も提供される。
【選択図】
図19
【特許請求の範囲】
【請求項1】
培養ヒト肝細胞(HH)から馴化培地を調製するための方法であって、
培養培地を生成するために培地中でHHを培養するステップと、
前記HHと少なくとも1時間インキュベートした前記培養培地を、前記馴化培地として採取するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記HHが、初代ヒト肝細胞(PHH)、ヒト化肝臓を持つキメラ動物から得られる肝細胞、またはその組合せを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ヒト化肝臓を持つ前記キメラ動物から得られる前記肝細胞が、ヒト化肝臓キメラマウス由来ヒト肝細胞(HLCM-HH)であり、前記HLCM-HHが、PHHまたは事前に単離されたHLCM-HHを脾臓内に注射したマウスから得られる肝臓から得られる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記HLCM-HHが得られる前に、前記マウスが、少なくとも10%の置き換え指数を有する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記培地が、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルスルホン(DMSO2)もしくはテトラメチレンスルホキシド(TMSO)を補充した肝細胞クローン性増殖培地(dHCGM、d2HCGMまたはtHCGM)であり、前記HCGMが、標準的な細胞培養基礎培地、L-プロリン、インスリン、デキサメタゾン、EGFおよびL-アスコルビン酸2-リン酸塩(Asc-2P)を含む、またはそれらから本質的になる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記培地が、DMSO、DMSO2もしくはTMSOを補充した肝細胞維持培地(dHMM、d2HMM、tHMM)であり、前記HMMが、標準的な細胞培養基礎培地、L-プロリン、インスリン、デキサメタゾンおよびL-アスコルビン酸2リン酸塩(Asc-2P)を含む、またはそれらから本質的になる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記標準的な細胞培養基礎培地が、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)、最小必須培地(MEM)、RPMI-1640、イスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM)またはウィリアムE培地を含む群から選択される、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記標準的な細胞培養基礎培地が、HEPES、ペニシリン-ストレプトマイシンおよび血清を補充されている、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記標準的な細胞培養基礎培地がDMEMであり、前記DMEMがDMEM-10であり、前記DMEM-10が、DMEM、HEPES、ペニシリン-ストレプトマイシンおよび血清を含む、またはそれらから本質的になる、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記血清が、ウシ胎仔血清(FBS)またはヒト血清である、請求項8または9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
dHCGM、d2HCGMまたはtHCGMが、前記標準的な細胞培養基礎培地中の15μg/mL L-プロリン、0.25μg/mLインスリン、50nMデキサメタゾン、5ng/mL EGF、0.1mM Asc-2P、それぞれ281.6mM、140.8mMまたは70.4mM DMSO、DMSO2、またはTMSO、20mM HEPES、100IU/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシン、および10%血清を含むまたはそれらから本質的になる、請求項5に記載の方法。
【請求項12】
dHCGM、d2HCGM、tHCGMが、前記標準的な細胞培養基礎培地中の5~25μg/mL L-プロリン、0.1~0.5μg/mLインスリン、10~100nMデキサメタゾン、1~10ng/mL EGF、0.01~1mM Asc-2P、50~300mM DMSO、DMSO2またはTMSO、10~50mM HEPES、10~300IU/mLペニシリン、10~300μg/mLストレプトマイシン、および2~20%血清を含むまたはそれらから本質的になる、請求項5に記載の方法。
【請求項13】
dHMM、d2HMM、tHMMが、前記標準的な細胞培養基礎培地中の15μg/mL L-プロリン、0.25μg/mLインスリン、50nMデキサメタゾン、0.1mM Asc-2P、それぞれ281.6mM、140.8mMもしくは70.4mM DMSO、DMSO2もしくはTMSO、20mM HEPES、100IU/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシン、および10%血清を含むまたはそれらから本質的になる、請求項6に記載の方法。
【請求項14】
dHMM、d2HMM、tHMMが、前記標準的な細胞培養基礎培地中の5~25μg/mL L-プロリン、0.1~0.5μg/mLインスリン、10~100nMデキサメタゾン、0.01~1mM Asc-2P、50~300mM DMSO、DMSO2、TMSO、10~50mM HEPES、10~300IU/mLペニシリン、10~300μg/mLストレプトマイシン、および2~20%血清を含むまたはそれらから本質的になる、請求項6に記載の方法。
【請求項15】
培地が、新たな容積で24~120時間毎に置き換えられる、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記PHH、ヒト化肝臓を持つ前記キメラ動物から得られる前記肝細胞、または前記組合せが、細胞密度0.5×10
5個/cm
2~5×10
5個/cm
2で培養される、請求項2に記載の方法。
【請求項17】
前記HHが、HepG2細胞、Huh7細胞またはマウス肝細胞を含まない、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記HHが、ヒト化肝臓を持つキメラ動物から得られる肝細胞を含み、前記方法が、前記培養ステップの前にヒト化肝臓を持つ前記キメラ動物から得られる前記肝細胞を得るステップであって、ヒト化肝臓を持つ前記キメラ動物から得られる前記肝細胞を得るステップが、PHHまたはヒト化肝臓キメラ動物から得られる事前に単離された肝細胞を動物の脾臓内に注射した前記動物の肝臓から得られる肝細胞を単離するステップを含み、それによりヒト化肝臓を持つ前記キメラ動物から得られる前記肝細胞を得るステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記キメラ動物から得られる前記肝細胞が、前記キメラ動物の前記肝臓のコラゲナーゼ潅流によって単離され、前記キメラ動物が、前記HHが単離される前に少なくとも10%の置き換え指数を有する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
請求項1~19のいずれか一項に記載の方法によって調製された培養ヒト肝細胞(CMHH)由来馴化培地。
【請求項21】
CMHHが、肝細胞クローン性増殖培地または肝細胞維持培地を含み、前記培地が、初代ヒト肝細胞(PHH)、ヒト化肝臓を持つキメラ動物から得られる肝細胞またはその組合せを少なくとも1時間培養するために使用される、CMHH。
【請求項22】
前記CMHHが、ヒト肝細胞によって分泌される1つもしくは複数の体液因子および肝細胞クローン性増殖培地または肝細胞維持培地を含む、請求項21に記載のCMHH。
【請求項23】
前記肝細胞クローン性増殖培地が、L-プロリン、インスリン、デキサメタゾン、EGF、Asc-2P、HEPES、ペニシリン、ストレプトマイシン、血清およびDMSO、DMSO2またはTMSOを補充した標準的な細胞培養基礎培地を含む、請求項20~22のいずれか一項に記載のCMHH。
【請求項24】
前記肝細胞維持培地が、L-プロリン、インスリン、デキサメタゾン、Asc-2P、HEPES、ペニシリン、ストレプトマイシン、血清およびDMSO、DMSO2またはTMSOを補充した標準的な細胞培養基礎培地を含む、請求項20~22のいずれか一項に記載のCMHH。
【請求項25】
請求項20~24のいずれか一項に記載CMHHと細胞外マトリックスを含む組合せ。
【請求項26】
請求項20~24のいずれか一項に記載のCMHHとフォルスコリン、SB431542、DAPT、IWP2およびLDN193189の5種類の化学物質を含む組合せ。
【請求項27】
新たに単離された最終分化したHH、PHH、ヒト化肝臓を持つキメラ動物から得られる肝細胞、または他の種の動物由来の初代肝細胞を培養するのに使用するための、請求項20~24のいずれか一項に記載のCMHH。
【請求項28】
冷凍保存された最終分化したHH、PHH、ヒト化肝臓を持つキメラ動物から得られる肝細胞、または他の種の動物由来の初代肝細胞を培養するのに使用するための、請求項20~24のいずれか一項に記載のCMHH。
【請求項29】
肝二分化能前駆細胞(iHep)および/もしくは化学的に誘導される肝臓プロジェニタを、それぞれ最終分化した肝細胞、HeparRG(商標)などの肝細胞腫細胞、または成熟肝細胞へと分化させるのに使用するための、請求項20~24のいずれか一項に記載のCMHH。
【請求項30】
非実質細胞と共培養するのに使用するための、請求項20~24のいずれか一項に記載のCMHH。
【請求項31】
低温保存においてHHを懸濁するのに使用するための、請求項20~24のいずれか一項に記載のCMHH。
【請求項32】
単離および/または保存後の回復ならびに肝機能の確立のためにHHを培養する方法であって、
第1のフェーズにおいて第1の細胞培養培地である量のHHを第1の期間培養するステップと、
前記量のHHから前記第1の細胞培養培地を除去し、続いて第2のフェーズにおいて第2の細胞培養培地を用いて前記量のHHを第2の期間培養するステップと
を含み、
前記第1の細胞培養培地が、DMSOを補充した細胞培養培地を含み、前記第2の細胞培養培地が、DMSO、DMSO2またはTMSOを補充した細胞培養培地を含む、方法。
【請求項33】
単離および/または保存後の回復ならびに肝機能の確立のためにHHを培養する方法であって、
第1のフェーズにおいて第1の細胞培養培地である量のHHを第1の期間培養するステップと、
前記量のHHから前記第1の細胞培養培地を除去し、続いて第2のフェーズにおいて第2の細胞培養培地を用いて前記量のHHを第2の期間培養するステップと
を含み、
前記第1の細胞培養培地が、ジメチルスルホキシド(DMSO)を補充した細胞培養培地を含み、前記第2の細胞培養培地が、DMSO2またはTMSOを補充した細胞培養培地を含み、
前記第2の細胞培養培地が、DMSOを含まない、方法。
【請求項34】
前記第1の期間が、少なくとも4日間および最長2ヵ月であり、前記第1のフェーズにおいて培養された前記量のHHが、細胞極性、胆細管によって特徴付けられる細胞間構造および/または健康な個体の成熟肝細胞もしくは肝臓組織の肝機能を呈する対照HHと同等の遺伝子発現レベルを確立する、請求項32または33に記載の方法。
【請求項35】
前記第1の期間が、約7日間であり、前記第1の(回復)フェーズの細胞培養培地が、3または4日間毎に任意選択で新たにされる、請求項32または33に記載の方法。
【請求項36】
前記第2のフェーズにおいて培養される前記量のHHが、それだけには限らないが、アルコール脱水素酵素(ADH)、アルデヒドデヒドロゲナーゼ(ALDH)、シトクロムP450ファミリー3サブファミリーAメンバー4(CYP3A4)およびシトクロムP450ファミリー2サブファミリーEメンバー1(CYP2E1)などの肝細胞代謝遺伝子の生理的レベルの発現を有し;または前記第2のフェーズにおいて培養される前記量のHHが、アルコール、非生体物質、ビタミンAもしくはその組合せを代謝する、請求項32または33に記載の方法。
【請求項37】
前記第1の細胞培養培地が、DMSOを補充した肝細胞培養培地またはCMHHであり、前記肝細胞培養培地またはCMHHが、DMSO、標準的な細胞培養基礎培地、ならびにL-プロリン、インスリン、デキサメタゾン、EGF、Asc-2P、HEPES、ペニシリン-ストレプトマイシン、ヒト血清および/またはFBSのうちの1つもしくは複数を含む、請求項32~36の方法。
【請求項38】
前記第2の細胞培養培地が、DMSO、DMSO2もしくはTMSOを補充した肝細胞培養培地またはDMSO、DMSO2、もしくはTMSO、標準的な細胞培養基礎培地、ならびにL-プロリン、インスリン、デキサメタゾン、EGF、Asc-2P、HEPES、ペニシリン-ストレプトマイシン、ヒト血清および/もしくは熱不活化FBSのうちの1つもしくは複数を含むCMHHである、請求項32~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記第1または第2の細胞培養培地が、最終濃度約2%容積/容積または281.6mMのDMSOを含有する、請求項32~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記第2の細胞培養培地が、終濃度約140.8mMで前記DMSO2を含有する、請求項32~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記第2の細胞培養培地が、最濃度約70mMでTMSOを含有する、請求項32~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記第1の細胞培養培地が、標準的な細胞培養基礎培地中の2(容積/容積)%または286.1mM DMSO、15μg/mL L-プロリン、0.25μg/mLインスリン、50nMデキサメタゾン、5ng/mL EGF、0.1mM Asc-2P、20mM HEPES、100IU/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシンおよび10%血清を含み;
前記第2の細胞培養培地が、標準的な細胞培養基礎培地中のそれぞれ281.6mM、140.8mMもしくは70.4mM DMSO、DMSO2もしくはTMSO、15μg/mL L-プロリン、0.25μg/mLインスリン、50nMデキサメタゾン、5ng/mL EGF、0.1mM Asc-2P、20mM HEPES、100IU/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシンおよび10%血清を含む、請求項32~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記第1の細胞培養培地が、標準的な細胞培養基礎培地中の2(容積/容積)%または286.1mM DMSO、15μg/mL L-プロリン、0.25μg/mLインスリン、50nMデキサメタゾン、0.1mM Asc-2P、20mM HEPES、100IU/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシンおよび10%血清を含み;
前記第2の細胞培養培地が、標準的な細胞培養基礎培地中のそれぞれ281.6mM、140.8mMもしくは70.4mM DMSO、DMSO2もしくはTMSO、15μg/mL L-プロリン、0.25μg/mLインスリン、50nMデキサメタゾン、0.1mM Asc-2P、20mM HEPES、100IU/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシンおよび10%血清を含む、請求項32~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記第1の細胞培養培地が、標準的な細胞培養培地中の0.5%~5%(容積/容積)DMSO、5~25μg/mL L-プロリン、0.1~0.5μg/mLインスリン、10~100nMデキサメタゾン、0~10ng/mL EGF、0.01~1mM Asc-2P、10~50mM HEPES、10~300IU/mLペニシリン、10~300μg/mLストレプトマイシンおよび2~20%血清を含み;
前記第2の細胞培養培地が、標準的な細胞培養基礎培地中の50~300mM DMSO、DMSO2またはTMSO、5~25μg/mL L-プロリン、0.1~0.5μg/mLインスリン、10~100nMデキサメタゾン、0~10ng/mL EGF、0.01~1mM Asc-2P、10~50mM HEPES、10~300IU/mLペニシリン、10~300μg/mLストレプトマイシンおよび2~20%血清を含む、請求項32~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
HHによるアルコール代謝の促進における候補薬剤の成績またはHHに対する候補薬剤の毒性をアッセイするのに使用するための方法であって、前記第2の細胞培養培地中で、前記第2のフェーズにおいて培養された前記量のHHを前記候補薬剤と接触させるステップと、前記候補薬剤との接触前に前記量のHHによるアルコールの代謝または前記候補薬剤の排出の第1のレベルを測定するステップと、前記候補薬剤の存在下または接触後に、前記量のHHによる前記アルコールの代謝または前記候補薬剤の排出の第2のレベルを測定するステップとを含む、請求項32~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
DMSO2またはTMSOを補充した細胞培養培地を含み、前記細胞培養培地がDMSOを含まない、HHの肝機能を確立し、維持するためのHH培養培地。
【請求項47】
前記DMSO2またはTMSOが、標準的な細胞培養基礎培地中でそれぞれ約140.8mMまたは70.4mMの濃度に到達するように補充され、前記基礎培地が、L-プロリン、インスリン、デキサメタゾン、EGF、Asc-2P、HEPES、ペニシリン-ストレプトマイシン、ヒト血清および/または熱不活化FBSのうち1つもしくは複数をさらに含む、請求項46に記載のHH培養培地。
【請求項48】
標準的な細胞培養基礎培地中の140.8mM DMSO2、15μg/mL L-プロリン、0.25μg/mLインスリン、50nMデキサメタゾン、5ng/mL EGF、0.1mM Asc-2P、20mM HEPES、100IU/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシンおよび10%血清を含む、請求項46または47に記載のHH培養培地。
【請求項49】
標準的な細胞培養基礎培地中の70.4mM TMSO、15μg/mL L-プロリン、0.25μg/mLインスリン、50nMデキサメタゾン、5ng/mL EGF、0.1mM Asc-2P、20mM HEPES、100IU/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシンおよび10%血清を含む、請求項46または47に記載のHH培養培地。
【請求項50】
標準的な細胞培養基礎培地中の50~200mM DMSO2またはTMSO、5~25μg/mL L-プロリン、0.1~0.5μg/mLインスリン、10~100nMデキサメタゾン、1~10ng/mL EGF、0.01~1mM Asc-2P、10~50mM HEPES、10~300IU/mLペニシリン、10~300μg/mLストレプトマイシンおよび2~20%血清を含む、請求項46~49のいずれか一項に記載のHH培養培地。
【請求項51】
第1の細胞培養培地を保存する第1の容器であって、前記第1の細胞培養培地がDMSOを補充されている第1の容器;ならびに
第2の細胞培養培地を保存する第2の容器であって、前記第2の細胞培養培地がDMSO、DMSO2および/またはTMSOを補充されている第2の容器
を含む、HHを培養するためのキット。
【請求項52】
第1の細胞培養培地を保存する第1の容器であって、前記第1の細胞培養培地がDMSOを補充されている第1の容器;ならびに
第2の細胞培養培地を保存する第2の容器であって、前記第2の細胞培養培地がDMSO2および/もしくはTMSOを補充され、DMSOを補充されていない第2の容器
を含む、ヒト肝細胞を培養するためのキット。
【請求項53】
HHに対する薬剤の毒性または薬剤の薬物代謝および薬物動態(DMPK)をアッセイする方法であって、
DMSO2を補充され、DMSOを補充されていない培地中である量のHHを培養するステップと;
薬剤を、DMSO2を補充した培地中で培養された前記量のHHと接触させるステップと;
前記薬剤の存在下もしくは前記薬剤との接触後に前記量のHHに対する毒性のレベルを測定するステップ、または前記薬剤の存在下もしくは前記薬剤との接触後に前記量のHHによる前記薬剤の代謝もしくは排出のレベルを測定するステップと
を含む方法。
【請求項54】
前記薬剤が、エタノール、メタノール、エチレングリコール、イソプロパノールまたはその混合物を含むアルコール化合物である、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記接触および前記測定するステップが、密封装置中で実行される、請求項53または54に記載の方法。
【請求項56】
前記毒性のレベルが、それだけに限らないが、前記量のHH中のシトクロムP450(CYP)酵素など、非生体物質代謝酵素の発現または機能を定量化することによって測定される、請求項53~55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記毒性のレベルが、前記量のHH中のアセトアルデヒドなど、アルコールの毒性代謝産物、またはグルタチオンの還元、細胞死経路の活性化状態を定量化することによって測定される、請求項53~55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
アルコールまたはビタミンAの代謝を促進するための候補薬剤をアッセイする方法であって、
DMSO2を補充され、DMSOを補充されていない培地中である量のHHを培養するステップと;
候補薬剤の存在下で、DMSO2を補充した培地中で培養された前記量のHHをアルコールまたはビタミンAと接触させるステップと;
候補薬剤の存在下もしくは薬剤との接触後に前記量のHHによるアルコールまたはビタミンAの代謝のレベルを測定するステップと
を含む方法。
【請求項59】
使用される前記培地が、請求項20~24のいずれかのHH由来馴化培地である、請求項32~58のいずれかの方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年9月30日に出願の米国特許出願公開第63/250,529号明細書および2021年9月30日に出願の米国特許出願公開第63/250,541号明細書の、35U.S.C.§119(e)下の利益を主張し、それぞれの内容をその全体において参照により本明細書に組み込む。
【0002】
本発明は、細胞培養培地およびその使用に関する。
【背景技術】
【0003】
in vitro培養した非癌性の最終分化したヒト肝細胞(HH)は、肝臓生物学および様々な肝臓疾患の研究のための主要なin vitro実験プラットフォームである。HHは、新たに開発された臨床化合物の薬物毒性を査定することを含むがこれに限定されない、薬物代謝および薬物動態(DMPK)の前臨床評価のための基本的なツールでもある。研究使用のためのHHの世界的な市場サイズは、5千万ドルと見積もられ、着実に成長すると推定されている。
【0004】
しかしながら、現在までのところ、HHの有用性は、研究者の要求を満たすレベルにまだ達していない。細胞品質の急速な低下をもたらす冷温虚血、コラゲナーゼ潅流を伴う単離手順、および凍結融解貯蔵プロセスを含めた細胞獲得プロセスに起因する細胞に対する傷害およびストレスを考えると、この不足は主に、in vitroにおけるHHの洗練された培養または維持方法が無いためである。結果として、肝臓細胞生物学、様々な肝臓疾患およびDMPKの研究においてin vitro培養されたHHの成績/機能は望ましくない。
【0005】
さらに、in vitroでの成熟HHの長期の細胞運命維持を支持する決定的な技術が無いことが、肝臓の分子/細胞生物学の理解を妨げている。加えて、iHepと呼ばれる、幹細胞またはiPS細胞由来HHの完全な成熟を支持する決定的な技術は存在しない。in vitroでの成熟HHの長期の細胞運命維持およびiHepの完全な成熟を改善することは、肝細胞移植療法の確立を成功させることになろう。
【0006】
現在のところ、肝臓移植(LT)は、慢性ウイルス肝炎(HBVおよびHCV)、アルコール性肝臓疾患(ALD)、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)ならびに肝臓の多数の遺伝的疾患などの様々な型の慢性肝臓疾患に起因する非代償性肝硬変および肝臓がんのような末期肝臓疾患に対する唯一の療法である。しかしながら、LTは侵襲性手順であり、全国的な臓器不足が、その有用性を大いに限定している。加えて、LTレシピエントは、日和見感染症および悪性新生物の発症を含めた著しい病的状態に関連する免疫抑制療法を一生受ける必要がある。
【0007】
肝細胞移植技術は、将来、LT療法を置き換えることが期待されている;しかしながら、克服すべき技術的ハードルは多く残っている。最も重要な技術的障壁のうちの1つは、iHepの完全な成熟を可能にする決定的な方法がないことである。現在利用可能なiHepの成熟の程度は、初代ヒト肝細胞(PHH)のそれと比較してなおはるかに劣っている。実際に、iHepが、未成熟肝細胞と胆管細胞様細胞の両方からなるどちらかといえば不均一な細胞集団であることは、iHepの成熟程度が、肝二分化能前駆細胞の段階であることを示す。肝細胞の成熟程度は、「肝細胞マーカー遺伝子」の発現存在量、および内在性のマウス肝細胞において毒性遺伝子を発現する免疫不全マウス[ヒト化肝臓キメラマウス(HLCM)の作製に使用されるマウス系統]の肝臓における増加能力によって評価されうる。したがって、現在利用可能なiHepは、HLCM宿主マウスの肝臓内で増加することができない。したがって、iHepを含む肝臓前駆細胞の最終的な成熟プロセスを可能にする技術の満たされていない必要性は著しいままである。
【発明の概要】
【0008】
本明細書における刊行物の全ては、各個々の刊行物または特許出願が、あたかも参照により組み込まれるために特におよび個別に示されたかのように、同程度に参照により組み込まれる。以下の説明は、本発明を理解する上で有用になりうる情報を含む。本明細書に提供される情報のいずれかが、先行技術であるもしくは現在請求される発明に関連していること、または具体的もしくは暗黙のうちに参照される刊行物のいずれかが先行技術であることを承認するものではない。
【0009】
典型的な実施形態が、参照図に例示される。本明細書に開示される実施形態および図が、限定的なものではなく例示的なものと見なされることを意図する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】肝細胞培養培地の比較を示す図である:新たに単離されたHHが、HH回復培地(dHCGM:対照)または市販の肝細胞培養培地と7日間培養された。次いで、HHは:(左)MRP2(矢印)を検出するための免疫蛍光顕微鏡分析(バーは25μmを示す)、(右上)指示した肝細胞マーカー遺伝子を検出するための免疫ブロット分析、または(右下)培養上清中のヒトアルブミンの定量化に供された。グラフバーは、平均±SDを表す;***は、一元配置分散分析によるp<0.001を示す。
【
図2A-B】培養されたHHおよび正常ヒト組織中のADH活性、ならびにADH活性のDMSO阻害の比較を示す図である:(A)HHまたはヒト肝臓の細胞/組織ホモジェネートが、340nmでの吸光度検出により、ADH活性の代用であるNADH産生速度の測定に供された。肝細胞腫細胞(Huh7およびHepG2)が、陰性対照として使用された。(B)HHの相対的ADH活性が、(A)に記述されるのと同じ方法を使用して有機化合物の非存在下(NT)、およびDMSOまたはDMSO
2の存在下で評価された。グラフバーは、平均±SDを表す;*、**および***は、一元配置分散分析によるp<0.05およびp<0.01およびp<0.001を示す;n.s.(有意でない);n.d.(検出されなかった)。
【
図3】DMPK酵素のDMSO阻害を示す図である:新たに単離されたHHは、DMSO含有培地(回復培地)と7日間培養された。次いで、細胞は、P450-Glo(商標)Assay(Promega)を使用して有機化合物(DMSOまたはDMSO2)の存在下でCYP3A4(左)およびCYP2A9(中央)活性の評価に使用された。CYP2E1活性の評価(右)は、Vivid(商標) CYP2E1 Blue Screening Kit(Thermo Fisher)を使用して評価された。グラフバーは、平均±SDを表す;*、**および***は、一元配置分散分析によるp<0.05およびp<0.01およびp<0.001を示す;n.s.(有意でない);n.d.(検出されなかった)。
【
図4】酢酸塩の産生に対するエタノール代謝のDMSO阻害を示す図である:新たに単離されたHHは、HH回復培地と7日間培養された。次いで、HHは、10mMエタノールの非存在(0mM)または存在下でDMSOもしくはDMSO2含有維持/適用培地のいずれかと24時間培養された。エタノール処理の経過の間中密封装置が、適用された。エタノール処理終了時に、細胞培養培地が採取され、続いてAcetate Colorimetric Assay Kit(Biovision)を使用して酢酸塩濃度が測定された。グラフバーは、平均±SDを表す;***は、一元配置分散分析によるp<0.001を示す。n.d.(検出されなかった)。酢酸塩産生速度をヒト肝臓の細胞数によって標準化して、各所与の条件でのHHのEtOH代謝能力を健康なヒト肝臓と比較評価した(右)。
【
図5A-C】DMSOの中止が、肝細胞の細胞運命消失を促進することを示す図である:新たに単離されたHHは、HH回復培地と7日間培養され、続いて指示した濃度のDMSOを含有する培地とさらに4日間インキュベートされた。次いで、HHは、(A)MRP2(矢印)を検出するための免疫蛍光分析、(B)免疫ブロットおよび(C)指示される肝細胞マーカー分子を検出するためのqPCR分析に供された。バーは、25μmを示す。
【
図6A-C】HHの細胞運命回復におけるDMSOの役割を示す図である:新たに単離されたHHが、指示した濃度のDMSOを含有する培地と7日間培養された。次いで、HHは、指示した時点で(A)MRP2(矢印)を検出するための免疫蛍光分析、(B)免疫ブロットおよび(C)指示される肝細胞マーカー分子を検出するためのqPCR分析に供された。
【
図7】肝細胞マーカー遺伝子の発現の維持における有機化合物の重要性を示す図である:新たに単離されたHHは、HH回復培地と7日間、続いて指示した有機化合物を含有する維持/適用培地とさらに7日間培養された。次いで、全細胞溶解物が、指示した分子を検出するために免疫ブロット分析に供された。NT;非処理。
【
図8】ヒト肝細胞の形態学的維持における有機化合物の重要性を示す図である:新たに単離されたHHは、HH回復培地と7目間培養され、続いて指示した有機化合物を含有する維持/適用培地とさらに7日間インキュベートされた。次いで、HHは、MRP2(矢印)、F-アクチン、DAPIを検出するための免疫蛍光分析に供された。バーは、25μmを示す。
【
図9】CYP遺伝子の誘導性に対するDMSOの影響を示す図である。新たに単離されたHHは、HH回復培地(dHCGM)と7日間、続いて指示した濃度のCYP3A4誘導物質(リファンピシンおよびカルバマゼピン)(左)およびCYP2E1誘導物質(エタノールおよびイソニアジド)(右)の存在下でDMSOまたはDMSO2を含有する維持/適用培地とさらに7日間培養された。次いで、トータルRNAおよび細胞溶解物が、指示した分子の誘導性を決定するために免疫ブロット分析(左)およびqPCR分析(右)に供された。グラフバーは、平均±SDを表す;*、**および***は、一元配置分散分析によるp<0.05およびp<0.01およびp<0.001を示す。
【
図10】アルコール代謝酵素のTMSO阻害を示す図である:HHの細胞ホモジェネートが、有機化合物(DMSO、DMSO
2またはTMSO)の存在下で340nmにおける吸光度の検出により、ADH活性の代用であるNADH産生速度の測定に供された。CYP2E1活性の評価(右)は、Vivid(商標) CYP2E1 Blue Screening Kit(Thermo Fisher)を使用して評価された。グラフバーは、平均±SDを表す;***は、一元配置分散分析によるp<0.001を示す。n.s.(有意でない);n.d.(検出されなかった)。
【
図11】HHのエタノール処理に対する密封装置の適用を示す図である:厳重なシリコーン封印装置をHH培養ディッシュに適用して、培養培地からのエタノールの蒸発損失を最小限にした。左の画像は、標準的な細胞培養ディッシュのセットアップの代表例であり、右の画像は、密封装置の適用に関して同じ細胞培養ディッシュを実証するものである(上:蓋なし、および下:蓋あり)。
【
図12】CMHH調製の概要を示す図である。懸濁培地(例えば、DMEM10)中のヒト肝細胞(例えば、PHHおよびHLCM-HH)が、付着細胞密度>0.5×10
5個細胞/cm
2に達するように最適化された播種細胞数で、I型コラーゲンでコーティングされた細胞培養ディッシュ上に平板培養される。播種24時間後に、平板培養培地(例えば、DMEM10)が、肝細胞培養培地(DMSO含有dHCGM)と置き換えられることになり、肝細胞培養培地は、2~4日毎に最長7日間置き換えられて、回復期培養が完了することになる。次いで、維持/適用期の間、上で示した通り、細胞は、培地交換および細胞培養上清(CMHH)の採集を48時間毎に繰り返し受ける。回復されたCMHHは、使用されるまで-20℃もしくは-80℃で冷凍または凍結されることになる。
【
図13】HHの細胞構造に対するCMHHの生物学的効果を示す図である。新たに単離されたHLCM-HH(ロット:JFC)が、I型コラーゲンでコートされたウェルに1.05×10
5個細胞/cm
2で平板培養された。平板培養培地(DMEM10)が、細胞播種の30~60分後に新しいdHCGM(FM)(左)またはCMHH(右)と置き換えられ、続いて7日目まで24時間毎に培地交換された(FMまたはCMHHのいずれか)。次いで、細胞は、光学顕微鏡分析に供された。矢印は、多角形-立方体様の外観を呈する肝細胞間に形成された胆細管を示し、それは最終分化したヒト肝細胞の特徴である。
【
図14】胆汁分泌機構の機能的評価を示す図である。新たに単離されたHLCM-HH(ロット:JFC)が、
図13に記載の通りFMまたはCMHHと培養された。播種後7日目に、細胞は、ハンクス平衡塩類溶液(HBS)で洗浄され、MRP2特異的蛍光基質である1.25nMカルボキシDCFDA[5(6)-カルボキシ-2’,7’-ジクロロフルオレセイン(CDFDA)]を含有するHBSと37℃で10分間インキュベートされ、続いてHBSSで洗浄され(3回)、HBSSと37℃で10分間インキュベートされた。次いで、細胞は、CDFDAで満たされた胆細管(矢印)を検出するために蛍光顕微鏡分析に供された。
【
図15-1】
図15Aは、HHの細胞運命に対するCMHHの生物学的影響を示す図である。新たに単離されたHLCM-HH(ロット:JFC)は、
図13に記載の通り新たなdHCGM(FM)またはCMHH(CM)と培養された。播種後7日目に、トータルRNAが、Quick RNA micro prep(ZymoReserach)を使用して抽出され、続いてcDNA superMix Kit(Quanta Bio)を用いて合成された。cDNAは、指示される遺伝子の相対定量のためにリアルタイムqPCRに次いで供された。バーは、新たに単離されたHLCM-HHに対する相対的発現レベルの平均±SDを表す;*、**および***は、対応のないt-検定によるp<0.01、p<0.001およびp<0.0001を示す。
【
図15-2】
図15Bは、HHの細胞運命に対するDMSOおよびDMSO2含有CMHHの生物学的影響を示す図である。新たに単離されたHLCM-HHが、DMSOもしくはDMSO2のいずれかを含有する新たなdHCGMまたはCMと7日間培養された。その後、トータルRNAが、Quick RNA micro prep(ZymoReserach)を使用して抽出され、続いてcDNA superMix Kit(Quanta Bio)を用いて合成された。cDNAは、指示される遺伝子の相対定量のためにリアルタイムqPCRに次いで供された。バーは、新たに単離されたHLCM-HHに対する相対的発現レベルの平均±SDを表す;統計的分析は、テューキーの多重比較検定を用いて実行された、*P<0.0001。
【
図16】HBV感染症のHH感受性に対するCMHHの効果を示す図である。新たに単離されたHLCM-HH(ロット:JFC)は、
図13に記載の通りdHCGM(FM)またはCMHH(CM)と培養された。FMまたはCMのいずれかと7日間インキュベートされたHLCM-HHは、これまでの研究において確立された方法(PMID:25791527)を用いて5Geq/細胞でB型肝炎ウイルス(HBV)(遺伝子型A)を次いで接種された。HBV感染細胞は、2日間毎に培地交換しながらFMまたはCMとさらに14日間培養され、続いて抗HBsAg抗体およびalexa488標識抗マウス抗体を使用してHBV表面抗原(HBsAg)を検出するために免疫蛍光顕微鏡分析された。矢印は、CM処理HLCM-HHにおけるHBVの活動性感染を示した。
【
図17】HBV感染症に対する抗ウイルス療法の効果を示す図である。新たに単離されたHLCM-HH(ロット:JFC)は、
図13に記載の通りdHCGM(FM)またはCMHH(CM)と培養された。FMまたはCMのいずれかと7日間インキュベートされたHLCM-HHは、これまでの研究において記述される方法(PMID:25791527)を用いて5Geq/細胞でB型肝炎ウイルス(HBV)(遺伝子型A)を次いで接種された。HBV感染細胞は、エンテカビル(ETV)(250nM)の有り無しで2日間毎に培地交換しながらFMまたはCMとさらに14日間培養された。終点において、培養上清は、QIAamp MinElute Virus Spin Kit(Qiagen)を使用するウイルスDNA抽出、続いてHBVゲノムの定量化のためにTaqManプローブに基づく1ステップRT-qPCR分析に供された。バーは、平均±SDを表す;***は、一元配置分散分析およびテューキーの多重比較検定によるp<0.0001を示す。
【
図18】HHの非生体物質代謝経路に対するCMHHの影響を示す図である。新たに単離されたHLCM-HH(ロット:JFC)は、
図13に記載の通りdHCGM(FM)またはCMHH(CM)と培養された。FMまたはCMのいずれかと7日間インキュベートされたHLCM-HHは、P450-Glo assay(Promega)を使用して指示されるCYP酵素の評価に次いで供された。バーは、新たに単離されたHLCM-HHに対する相対的発現レベルの平均±SDを表す;**および***は、対応のないt-検定によるp<0.001およびp<0.0001を示す。
【
図19】様々な細胞型から得られるCMの生物学的機能を示す図である。CMは、
図13に記述される計画でHLCM-HH、HepG2、HuH7、293細胞、およびマウス初代肝細胞で増やされ、次いでそれはHLCM-HHの培養に7日間適用され、続いて光学顕微鏡分析された。矢印は、多角形-立方体様の外観を呈する肝細胞間に生じた胆細管を示し、これは、最終分化したヒト肝細胞の特徴である。
【
図20】HLCM-HHに対するCMの効果を示す図である。指示した細胞型で増やされたCMと7日間培養されたHLCM-HHが、指示した遺伝子を評価するためにRT-qPCR分析に供された。バーは、新たに単離されたHLCM-HH(CYP2C9、2D6 ALDH2およびOATP1B1)、または新たなdHCGM(FM)と培養されたHLCM-HH(TGFB1、TGFB2、Cyr61、CTGFおよびCK19)における発現レベル対する相対的発現レベルを表す。統計的分析は、テューキーの多重比較検定を用いて実行された、対CMHH、*P<0.01、**P<0.001、***P<0.0001。
【
図21】HHの細胞運命マーカーに対する様々な細胞型で増やされたCMの効果を示す図である。異なる2つのドナー(JFCおよびBD195)から得られたHLCM-HHまたは異なる3つのドナー(SMC、JIYおよびTAK)由来の市販の冷凍保存された初代ヒト肝細胞を用いて増やされたCMHHが、
図13に記述される計画で新たに単離されたHLCM-HHの7日間の培養に使用された。細胞の形態学的構成が、光学顕微鏡によってその後評価された。矢印は、多角形-立方体様の外観を呈するヒト肝細胞間に形成された胆細管を示し、それは最終分化したヒト肝細胞の特徴である。
【
図22】複数のドナー由来のHHで増やされたCMの生物学的効果を示す図である。
図13に記載の通り、新たに単離されたHLCM-HHが、新たなdHCGM(FM)、HLCM-HH(異なる2名のドナー)または初代ヒト肝細胞(異なる3名のドナー)で増やされたCMHHのいずれかと7日間培養され、続いて指示した遺伝子を検出するためにRT-qPCR分析された。相対的発現存在量は、新たに単離されたHLCM-HH中の発現存在量を用いる標準化によって決定された。統計的分析は、テューキーの多重比較検定を用いて実行された、*P<0.01、**P<0.001、***P<0.0001。
【
図23】CM、5Cnおよびマトリゲル(登録商標)処理の生物学的効果の比較を示す図である。新たに単離されたHLCM-HH(ロット:JFC)が、
図13に記載の通り平板培養され、dHCGM(FM)またはCMHH(CM)と培養された。別法として、細胞は、これまでの報告(PMID:31023926、16469405)に記述されている濃度の5Cまたはマトリゲル(登録商標)を補充した新たなdHCGMで培養された。矢印は、多角形-立方体様の外観を呈するヒト肝細胞間に形成された胆細管を示し、それは最終分化したヒト肝細胞の特徴である。
【
図24】CM、5Cnおよびマトリゲル(登録商標)処理の生物学的効果の比較を示す図である。
図23に記載の通り、新たに単離されたHLCM-HH(ロット:JFC)が平板培養され、新たなdHCGM、CMHH、5Cまたはマトリゲル(登録商標)を補充された新たなdHCGMと培養され、続いて指示した遺伝子の相対定量のためにRT-qPCR分析された。統計的分析は、テューキーの多重比較検定を用いて実行された、*P<0.01、**P<0.001、***P<0.0001。
【
図25】CMHHの生物学的効果に対するサイズ排除カラム濾過の影響を示す図である。新たに単離されたHLCM-HHが、CMHHまたは漸増するカットオフサイズの排除カラムによって濾過されたCMHHのいずれかと7日間培養され、続いて指示した遺伝子を検出するためにRT-qPCR分析された。相対的存在量は、新たに単離されたHLCM-HH中の対応する遺伝子の発現存在量を用いて標準化することによって決定された。統計的分析は、テューキーの多重検定を用いて実行された、*P<0.01、**P<0.001、***P<0.0001。
【
図26】CMHHの構成分析を示す図である。
図13に記述される計画で、マトリゲル(登録商標)を補充されたdHCGMが、Image JソフトウェアおよびELISAをそれぞれ使用する免疫ブロットシグナルの測定による指定された体液因子の相対または絶対定量に使用された。相対的存在量の評価は、指示された細胞型、またはCMHHと等しい総タンパク質量を含有するマトリゲル(登録商標)を補充されたdHCGMで増やされた等容積のCMを使用して実施された。バーは、CMHHに対する相対的タンパク質レベルを表す。
【
図27】冷凍保存した初代ヒト肝細胞の形態構造に対するCMHHの生物学的効果を示す図である。市販の初代ヒト肝細胞(ロット:GNA、BioIVT)が、
図13に記述される計画で、市販の肝細胞培養培地(INVITROGRO HI Medium、BioIVT)、新たなdHCGMまたはCMHHのいずれかで7日間培養された。細胞の形態学的構成が、光学顕微鏡によってその後評価された。矢印は、多角形-立方体様の外観を呈するヒト肝細胞間に形成された胆細管を示し、それは最終分化したヒト肝細胞の特徴である。
【
図28】冷凍保存した初代ヒト肝細胞の胆汁分泌機構に対するCMHHの効果を示す図である。市販の初代ヒト肝細胞(ロット:GNA、BioIVT)が、
図13に記述される計画で、市販の肝細胞培養培地(INVITROGRO HI Medium、BioIVT)、新たなdHCGMまたはCMHHのいずれかで7日間培養された。播種後7日目に、細胞は、ハンクス平衡塩類溶液(HBS)で洗浄され、MRP2特異的蛍光基質である1.25nMカルボキシDCFDA[5(6)-カルボキシ-2’,7’-ジクロロフルオレセイン(CDFDA)]を含有するHBSと37℃で10分間インキュベートされ、続いてHBSSで洗浄され(3回)、HBSSと37℃で10分間インキュベートされた。次いで、細胞は、CDFDAで満たされた胆細管(矢印)を検出するために蛍光顕微鏡分析に供された。
【
図29】冷凍保存した初代ヒト肝細胞の細胞運命回復および細胞運命維持に対するCMHHの効果を示す図である。市販の初代ヒト肝細胞(ロット:GNA、BioIVT)が、
図13に記述される計画で、市販の肝細胞培養培地(INVITROGRO HI Medium、BioIVT)、新たなdHCGM(FM)またはCMHH(CM)のいずれかで7日間培養された。播種7日後に、トータルRNAが、指示した遺伝子を検出するためのRT-qPCR分析用に抽出された。相対的発現存在量は、新たに単離されたHLCM-HH中の発現存在量を用いる標準化によって決定された。統計的分析は、テューキーの多重比較検定を用いて実行された、対CMHH、*、**および***は、p<0.01、p<0.001およびp<0.0001を示す。
【
図30】イヌ、マウス、ラットの初代肝細胞の形態構造に対するCMHHの効果を示す図である。市販の冷凍保存されたイヌ、ラットおよびマウス初代肝細胞(BioIVT)が、
図13に記述される計画で、市販の肝細胞培養培地(INVITROGRO HI Medium、BioIVT)、新たなdHCGM(FM)、またはCMHHのいずれかで7日間培養された。細胞の形態学的構成が、光学顕微鏡によってその後評価された。矢印は、多角形-立方体様の外観を呈するヒト肝細胞間に形成された胆細管を示し、それは最終分化した肝細胞の特徴である。
【
図31】iHepの形態構造に対するCMHHの効果を示す図である。市販の冷凍保存されたiHep(iCell肝細胞2.0、FujiFilm)が、解凍され、製造業者によって提供されるiHep培養培地(iCell Plating Medium)を用いて製造業者のプロトコールにしたがって5日間培養され、続いて製造業者によって提供される培地(iCell Maintenance Medium)、新たなdHCGM(FM)またはCMHHのいずれかで2日毎に培地交換しながら6日間維持された。細胞の形態学的構成が、光学顕微鏡によってその後評価された。矢印は、多角形-立方体様の外観を呈するヒト肝細胞間に形成された胆細管を示し、それは最終分化したヒト肝細胞の特徴である。
【
図32】iHepに対するCMHHの効果を示す図である。市販の冷凍保存されたiHep(iCell肝細胞2.0、FujiFilm)が、解凍され、
図31に記載の通り培養され、続いて単一細胞RNA配列決定分析された。3次元散布図における距離は、指示された培地で培養されたiHep間の多様性を表す。新たに単離されたHLCM-HHは、最終分化したヒト肝細胞の代表例として分析に含められた。
【
図33】iHep遺伝子発現に対するCMHHの効果を示す図である。市販の冷凍保存されたiHep(iCell肝細胞2.0、FujiFilm)が、解凍され、
図31に記載の通り培養され、続いて単一細胞RNA配列決定分析された。円グラフは、指示された遺伝子で相対的発現がある細胞の割合を表す。新たに単離されたHLCM-HHは、最終分化したヒト肝細胞の代表例として分析に含められた。
【
図34】CLiPに対するCMHHの効果を示す図である。HLCM-HHから得られたCLiP細胞が、前述(PMID:31393263)の通り確立された。一巡目の継代後、CLiP細胞は、
図13に記述される計画で新たなdHCGM(FM)またはCMHHで7日間培養された。指示された遺伝子の発現存在量は、RT-qPCR分析によってその後決定された。相対的発現存在量は、新たに単離されたHLCM-HH中の対応する遺伝子の発現存在量を用いる標準化によって決定された。対応のある検定、*、**および***は、p<0.05、p<0.01、p<0.001を示す。
【
図35】in vivoでのHH増加に対するCMHH前処理の影響を示す図である。CMHH処理ヒト肝細胞の生着および増加。新たに単離されたHLCM-HHが、新たなdHCGM(対照)またはCMHHのいずれかで14日間培養され、続いて3週齢のcDNA-uPA/SCIDマウスの脾臓にin vivo移植された(2.5×10
5個細胞/動物)。次いで、血液中のヒトアルブミンレベルの連続測定が、以前に記載されている方法(PMID:17761892)を用いて移植後の指示された日に実行された。
【
図36】冷凍保存されたHLCM-HHの形態構造に対するCMHHの効果を示す図である。冷凍保存されたHLCM-HHが、解凍され、新たなdHCGM(FM)またはCMHHのいずれかで2日毎に培地交換しながら7日間培養された。細胞の形態学的構成が、光学顕微鏡によってその後評価された。矢印は、多角形-立方体様の外観を呈するヒト肝細胞間に形成された胆細管を示し、それは最終分化した初代肝細胞の特徴である。
【
図37】冷凍保存したHLCM-HHの回復および運命維持に対するCMHHの効果を示す図である。冷凍保存されたHLCM-HHが、解凍され、新たなdHCGM(FM)またはCMHHのいずれかで2日毎に培地交換しながら7日間培養された。播種7日後に、トータルRNAが、指示した遺伝子を検出するためのRT-qPCR分析用に抽出された。相対的発現存在量は、新たに単離されたHLCM-HH中の発現存在量を用いる標準化によって決定された。統計分析は、スチューデントのt検定、対CMHHで実行され、*、**および***は、p<0.01、p<0.001およびp<0.0001を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書に引用される参照文献の全ては、完全に説明されているかのように、その全体を参照により組み込む。別段の規定がない限り、本明細書に使用される技術および科学的用語は、本発明が属する当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有するものとする。Singleton et al., Dictionary of Microbiology and Molecular Biology 3rd ed., Revised, J. Wiley & Sons (New York, NY 2006);March, Advanced Organic Chemistry Reactions, Mechanisms and Structure 7th ed., J. Wiley & Sons (New York, NY 2013);およびSambrook and Russel, Molecular Cloning: A Laboratory Manual 4th ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press (Cold Spring Harbor, NY 2012)は、本出願において使用される多くの用語の一般的な指針を当業者に提供する。抗体を調製する方法に関する参照文献については、D. Lane, Antibodies: A Laboratory Manual 2nd ed. (Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor NY, 2013);Kohler and Milstein, (1976) Eur. J. Immunol. 6: 511;Queen et al.米国特許第5585089号明細書;およびRiechmann et al., Nature 332: 323 (1988);米国特許第4946778号明細書;Bird, Science 242:423-42 (1988);Huston et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883 (1988);Ward et al., Nature 334:544-54 (1989);Tomlinson I. and Holliger P. (2000) Methods Enzymol, 326, 461-479;Holliger P. (2005) Nat. Biotechnol. Sep;23(9):1126-36を参照のこと。
【0012】
当業者は、本明細書に記載されるものと類似または同等の多くの方法および材料を認識することになり、それは、本発明の実施において使用されうる。実際に、本発明は、記述される方法および材料に決して限定されるものではない。本発明のために、いくつかの用語が、以下に定義される。
【0013】
本出願者の発見は、肝細胞移植療法の確立に向けた再生/幹細胞生物学分野に使用されうる。さらに、本発明は、一般に、肝臓生物学および病態生理学の基礎研究に対して相当な程度の利益も提供する。
【0014】
本出願者は、最終分化したHHの培養培地(以後ヒト肝細胞の馴化培地;CMHH)が、再生医療および幹細胞生物学に使用するための優位性、例えば、iHepの細胞最終成熟および完全に成熟したiHepの細胞運命維持を容易にするための優位性を協調して提供する多くの体液因子(例えば、肝細胞によって合成されるECMおよび血漿タンパク質)を含有することを発見した。加えて、CMHHは、肝臓細胞生物学研究への支持を提供し、例えば、in vitro培養されたHH、他の種(例えば、イヌ、マウスラットおよびサル)由来初代肝細胞、ヒト化肝臓キメラ動物から得られる肝細胞ならびに肝臓の非実質細胞(NPC)の細胞運命維持、機能および寿命を支持する。
【0015】
様々な実施形態において、CMHHは、高品質のHHで増やされる。本明細書では、用語「高品質」とは、高い多様性および培養可能性をもつ細胞のことを指す。本明細書では、「培養可能性」とは、培養ディッシュに付着する能力がある生細胞のパーセンテージのことを指す。生細胞は、トリパンブルー染色などの技術によって決定されうる。細胞品質は、細胞が低集密度で平板培養される場合に損なわれ;したがって、生存率と培養可能性の決定は、両方とも重要である。一部の実施形態において、本明細書に開示される方法によって培養される肝細胞は、少なくとも95%、90%、80%、70%、60%、および50%の培養可能性を有する。加えて、a)器官調達中の温/冷虚血傷害、b)細胞単離手順および凍結解凍プロセスによる細胞損傷に起因する細胞障害/ストレスからの高品質なHHの回復を促進することは重要である。一部の実施形態において、肝細胞機能をよりよく研究するために肝細胞の生物学的プロセスを最適化することは重要である。
【0016】
本出願の一部の態様において、本発明者らは、HH培養培地ならびに1)細胞単離手順および凍結融解サイクルに関連する細胞障害またはストレスからの迅速で強力な回復、すなわち、フェーズ1(回復期)、および2)ヒト肝臓と同程度のレベルの機能を呈し、そのため様々な実験適用、すなわち、フェーズ2(適用期)に適しているin vitroで培養されたHHを可能にする方法について記載する。
【0017】
一部の実施形態において、第1のHH培養培地は、フェーズ1回復のために提供される。一部の実施形態において、表1および表3に示すように、この第1の培地は、DMSOを補充した肝細胞クローン性増殖培地(dHCGM)である。一部の実施形態において、dHCGMは、標準的な細胞培養基礎培地、L-プロリン、インスリン、デキサメタゾン、EGFおよびL-アスコルビン酸2-リン酸塩(Asc-2P)を含む、またはそれらから本質的になる。特に望ましくは、標準的な細胞培養基礎培地は、HEPES、ペニシリン-ストレプトマイシンおよび血清を補充される。一部の実施形態において、血清は、ウシ胎仔血清(FBS)またはヒト血清である。好ましい実施形態において、標準的な細胞培養基礎培地は、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)-10である。
【0018】
標準的な細胞培養基礎培地は、当業技術者に周知である。標準的な細胞培養基礎培地の例には、それだけには限らないがDMEM、DMEM-10、最小必須培地(MEM)、RPMI-1640、イスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM)またはウィリアムE培地がある。
【0019】
一部の実施形態において、表2および表3に示すように、第1のHH培養培地は、DMSOを補充した肝細胞維持培地(dHMM)である。一部の実施形態において、dHMMは、DMSO、標準的な細胞培養基礎培地、L-プロリン、インスリン、デキサメタゾンおよびL-アスコルビン酸2-リン酸塩(Asc-2P)を含む、またはそれらから本質的になる。特に望ましくは、標準的な細胞培養基礎培地は、HEPES、ペニシリン-ストレプトマイシンおよび血清を補充される。一部の実施形態において、血清は、ウシ胎仔血清(FBS)またはヒト血清である。好ましい実施形態において、標準的な細胞培養基礎培地は、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)-10である。
【0020】
HH培養の第1期に使用される培地は、細胞単離および保存プロセスに関連するストレスからのHHの回復を支持する。一部の実施形態において、HHは、少なくとも0.5×105個細胞/cm2、好ましくは>1.2×105個細胞/cm2で平板培養され、それは細胞播種直後に集密度>25%に相当し、第1のHH培養培地、例えば、dHCGMまたはdHMM中で維持され、様々な単離手順および凍結融解貯蔵プロセスに起因する傷害/ストレスから回復することになり;この回復フェーズは、4~7日間かかりうる。
【0021】
一部の実施形態において、第1のHH培養培地、例えば、dHCGMまたはdHMMは、HHの細胞運命維持のために使用される。一部の実施形態において、第1のHH培養培地、例えば、dHCGMまたはdHMMは、DMSOのオフターゲット効果によって混乱しない適用ために使用される。
【0022】
一部の実施形態において、第2のHH培養培地は、フェーズ2適用のために提供される。一部の実施形態において、第2のHH培養培地は、HHの肝機能の確立および維持のために提供される。一部の実施形態において、適用培地は、DMSOを含有せず、CYP3A4およびCYP2E1の生理的レベルの発現を可能にする。一部の実施形態において、DMSOを補充するのではなく、第2の培地は、DMSO2を補充した細胞培養培地またはTMSOを補充した細胞培養培地を含む。
【0023】
本方法の一部の態様において、第2のフェーズにおいて培養される上記量のHHは、CYP3A4の生理的レベルの発現およびCYP2E1の生理的レベルの発現を有し;または第2のフェーズにおいて培養される上記量のHHは、アルコール、非生体物質、ビタミンAもしくはその組合せを代謝する。
【0024】
本方法の一部の態様において、HHによるアルコール代謝の促進、HHによる非生体物質代謝の促進における候補薬剤の成績、またはHHに対する候補薬剤の毒性のアッセイに使用するために、本方法は、第2の細胞培養培地中で、第2のフェーズにおいて培養された上記量のHHを候補薬剤と接触させるステップと、候補薬剤との接触前に上記量のHHによるアルコールの代謝または候補薬剤の排出の第1のレベルを測定するステップと、候補薬剤の存在下または接触後に、上記量のHHによるアルコールの代謝または候補薬剤の排出の第2のレベルを測定するステップとを含む。
【0025】
一部の実施形態において、第2のHH培養培地は、表4および表6に示されるように、DMSOを補充した培地ではなくDMSO2を補充した肝細胞クローン性増殖培地(d2HCGM)である。一部の実施形態において、第2のHH培養培地は、DMSOを補充した培地ではなく、テトラメチレンスルホキシド(TMSO)を補充した肝細胞クローン性増殖培地(tHCGM)である。
【0026】
一部の実施形態において、第2のHH培養培地、例えば、d2HCGMは、DMSO2、標準的な細胞培養基礎培地、L-プロリン、インスリン、デキサメタゾン、EGFおよびAsc-2Pを含む、またはそれらから本質的になる。特に望ましくは、標準的な細胞培養基礎培地は、HEPES、ペニシリン-ストレプトマイシンおよび血清を補充される。一部の実施形態において、血清は、ウシ胎仔血清(FBS)またはヒト血清である。好ましい実施形態において、標準的な細胞培養基礎培地は、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)-10である。
【0027】
一部の実施形態において、第2のHH培養培地、例えば、tHCGMは、TMSO、標準的な細胞培養基礎培地、L-プロリン、インスリン、デキサメタゾン、EGFおよびAsc-2Pを含む、またはそれらから本質的になる。特に望ましくは、標準的な細胞培養基礎培地は、HEPES、ペニシリン-ストレプトマイシンおよび血清を補充される。一部の実施形態において、血清は、ウシ胎仔血清(FBS)またはヒト血清である。好ましい実施形態において、標準的な細胞培養基礎培地は、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)-10である。
【0028】
様々な実施形態において、第2のHH培養培地は、表5および表6に示されるように、DMSOを補充した培地ではなく、DMSO2を補充した肝細胞維持培地(d2HMM)である。一部の実施形態において、第2のHH培養培地は、DMSOを補充した培地ではなくTMSOを補充した肝細胞維持培地(tHMM)である。
【0029】
一部の実施形態において、第2のHH培養培地、例えば、d2HMMは、DMSO2、標準的な細胞培養基礎培地、L-プロリン、インスリン、デキサメタゾン、およびAsc-2Pを含む、またはそれらから本質的になる。特に望ましくは、標準的な細胞培養基礎培地は、HEPES、ペニシリン-ストレプトマイシンおよび血清を補充される。一部の実施形態において、血清は、ウシ胎仔血清(FBS)またはヒト血清である。好ましい実施形態において、標準的な細胞培養基礎培地は、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)-10である。
【0030】
一部の実施形態において、第2のHH培養培地、例えば、tHMMは、TMSO、標準的な細胞培養基礎培地、L-プロリン、インスリン、デキサメタゾン、およびAsc-2Pを含む、またはそれらから本質的になる。特に望ましくは、標準的な細胞培養基礎培地は、HEPES、ペニシリン-ストレプトマイシンおよび血清を補充される。一部の実施形態において、血清は、ウシ胎仔血清(FBS)またはヒト血清である。好ましい実施形態において、標準的な細胞培養基礎培地は、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)-10である。
【0031】
本方法の一部の態様において、第2のHH培養培地は、終濃度約140.8mMでDMSO2を含有する。
【0032】
本方法の一部の態様において、HH培養培地、例えば、dHCGM、d2HCGMまたはtHCGMは、標準的な細胞培養基礎培地中にそれぞれ濃度少なくとも約70mM、35mMおよび35mMのある量のDMSO、DMSO2またはTMSOを補充され、標準的な細胞培養基礎培地は、L-プロリン、インスリン、デキサメタゾン、EGF、Asc-2P、HEPES、ペニシリン-ストレプトマイシンおよび血清のうちの1つまたは複数をさらに含む。一部の実施形態において、血清は、FBSまたはヒト血清である。好ましい態様において、標準的な細胞培養基礎培地は、DMEM-10である。
【0033】
本方法の一部の態様において、HH培養培地、例えば、dHCGM、d2HCGMまたはtHCGMは、標準的な細胞培養基礎培地中でそれぞれ約281.6mM、140.8mMおよび70.4mMの濃度に到達するようにある量のDMSO、DMSO2またはTMSOを補充され、標準的な細胞培養基礎培地は、L-プロリン、インスリン、デキサメタゾン、EGF、Asc-2P、HEPES、ペニシリン-ストレプトマイシンおよび血清のうちの1つまたは複数をさらに含む。一部の実施形態において、血清は、FBSまたはヒト血清である。好ましい態様において、標準的な細胞培養基礎培地は、DMEM-10である。
【0034】
本方法の一部の態様において、HH培養培地、例えば、dHCGMは、標準的な細胞培養基礎培地中で約2(容積/容積)%の濃度に到達するようにある量のDMSOを補充され、標準的な細胞培養基礎培地は、L-プロリン、インスリン、デキサメタゾン、EGF、Asc-2P、HEPES、ペニシリン-ストレプトマイシンおよび血清のうちの1つまたは複数をさらに含む。一部の実施形態において、血清は、FBSまたはヒト血清である。好ましい態様において、標準的な細胞培養基礎培地は、DMEM-10である。
【0035】
本方法の一部の態様において、HH培養培地、例えば、dHMM、d2HMMまたはtHMMは、標準的な細胞培養基礎培地中でそれぞれ約281.6mM、140.8mMおよび70.4mMの濃度に到達するようにある量のDMSO、DMSO2またはTMSOを補充され、標準的な細胞培養基礎培地は、L-プロリン、インスリン、デキサメタゾン、Asc-2P、HEPES、ペニシリン-ストレプトマイシンおよび血清のうちの1つまたは複数をさらに含む。一部の実施形態において、血清は、FBSまたはヒト血清である。好ましい態様において、標準的な細胞培養基礎培地は、DMEM-10である。
【0036】
本方法の一部の態様において、HH培養培地、例えば、dHMMは、標準的な細胞培養基礎培地中で約2(容積/容積)%の濃度に到達するようにある量のDMSOを補充され、標準的な細胞培養基礎培地は、L-プロリン、インスリン、デキサメタゾン、Asc-2P、HEPES、ペニシリン-ストレプトマイシンおよび血清のうちの1つまたは複数をさらに含む。一部の実施形態において、血清は、FBSまたはヒト血清である。好ましい態様において、標準的な細胞培養基礎培地は、DMEM-10である。
【0037】
単離および/または保存後の回復ならびに肝機能の確立のためにHHを培養する方法が提供され、本方法は、第1のフェーズにおいて第1の細胞培養培地である量のHHを第1の期間培養するステップと、上記量のHHから第1の細胞培養培地を除去し、続いて第2のフェーズにおいて第2の細胞培養培地を用いて上記量のHHを第2の期間培養するステップとを含み、第1の細胞培養培地は、DMSOを補充した細胞培養培地を含み、第2の細胞培養培地は、DMSO2を補充した細胞培養培地またはTMSOを補充した細胞培養培地を含み、第2の細胞培養培地は、DMSOを含まない。
【0038】
本方法の別の態様において、第1の細胞培養培地と第2の細胞培養培地は、両方とも、DMSOを含有し、例えば、dHCGMまたはdHMMである。
【0039】
本方法の一部の態様において、第1の細胞培養培地は、2%(容積/容積)でDMSOおよび標準的な細胞培養基礎培地を含み、培地は、15μg/mL L-プロリン、0.25μg/mLインスリン、50nMデキサメタゾン、5ng/mL EGF、0.1mM Asc-2P、20mM HEPES、100IU/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシンおよび10%熱不活化FBSまたはヒト血清のうち1つもしくは複数を含み;第2の細胞培養培地は、DMSO2またはTMSOをそれぞれ140.8mMまたは70.4mMおよび標準的な細胞培養基礎培地を含み、培地は、15μg/mL L-プロリン、0.25μg/mLインスリン、50nMデキサメタゾン、5ng/mL EGF、0.1mM Asc-2P、20mM HEPES、100IU/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシンおよび10%熱不活化FBSまたはヒト血清のうち1つもしくは複数を含み;好ましい態様において、標準的な細胞培養基礎培地は、DMEM-10である。
【0040】
本方法の一部の態様において、第1の細胞培養培地は、2%(容積/容積)でDMSOおよび標準的な細胞培養基礎培地を含み、培地は、15μg/mL L-プロリン、0.25μg/mLインスリン、50nMデキサメタゾン、0.1mM Asc-2P、20mM HEPES、100IU/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシンおよび10%熱不活化FBSまたはヒト血清を含み;第2の細胞培養培地は、DMSO、DMSO2またはTMSOをそれぞれ281.6mM、140.8mMまたは70.4mMおよび標準的な細胞培養基礎培地を含み、培地は、15μg/mL L-プロリン、0.25μg/mLインスリン、50nMデキサメタゾン、5ng/mL EGF、0.1mM Asc-2P、20mM HEPES、100IU/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシンおよび10%熱不活化FBSまたはヒト血清を含む。好ましい態様において、標準的な細胞培養基礎培地は、DMEM-10である。
【0041】
本方法の一部の態様において、第1の細胞培養培地は、2%(容積/容積)でDMSOおよび標準的な細胞培養基礎培地を含み、培地は、15μg/mL L-プロリン、0.25μg/mLインスリン、50nMデキサメタゾン、5ng/mL EGF、0.1mM Asc-2P、20mM HEPES、100IU/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシンおよび10%熱不活化FBSまたはヒト血清を含む。第2の細胞培養培地は、DMSO、DMSO2またはTMSOをそれぞれ281.6mM、140.8mMまたは70.4mMおよび標準的な細胞培養基礎培地を含み、培地は、15μg/mL L-プロリン、0.25μg/mLインスリン、50nMデキサメタゾン、0.1mM Asc-2P、20mM HEPES、100IU/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシンおよび10%熱不活化FBSまたはヒト血清を含み;好ましい態様において、標準的な細胞培養基礎培地は、DMEM-10である。
【0042】
本方法の一部の態様において、第1の細胞培養培地は、2%(容積/容積)でDMSOおよび標準的な細胞培養基礎培地を含み、培地は、15μg/mL L-プロリン、0.25μg/mLインスリン、50nMデキサメタゾン、0.1mM Asc-2P、20mM HEPES、100IU/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシンおよび10%熱不活化FBSまたはヒト血清を含み;第2の細胞培養培地は、DMSO、DMSO2またはTMSOをそれぞれ281.6mM、140.8mMまたは70.4mMおよび標準的な細胞培養基礎培地を含み、培地は、15μg/mL L-プロリン、0.25μg/mLインスリン、50nMデキサメタゾン、5ng/mL EGF、0.1mM Asc-2P、20mM HEPES、100IU/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシンおよび10%熱不活化FBSまたはヒト血清を含む。好ましい態様において、標準的な細胞培養基礎培地は、DMEM-10である。
【0043】
本方法の一部の態様において、第1の細胞培養培地は、0.5%~5%(容積/容積)DMSO、標準的な細胞培養基礎培地、5~25μg/mL L-プロリン、0.1~0.5μg/mLインスリン、10~100nMデキサメタゾン、0~10ng/mL EGF、0.01~1mM Asc-2P、10~50mM HEPES、10~300IU/mLペニシリン、10~300μg/mLストレプトマイシンおよび2~20%熱不活化FBSまたはヒト血清を含み;第2の細胞培養培地は、35~281.6mM DMSO、DMSO2またはTMSO、標準的な細胞培養基礎培地、5~25μg/mL L-プロリン、0.1~0.5μg/mLインスリン、10~100nMデキサメタゾン、0~10ng/mL EGF、0.01~1mM Asc-2P、10~50mM HEPES、10~300IU/mLペニシリン、10~300μg/mLストレプトマイシンおよび2~20%熱不活化FBSまたはヒト血清を含み;好ましい態様において、標準的な細胞培養基礎培地は、DMEM-10である。
【0044】
本方法の一部の態様において、HHは第1の培地中で一定期間培養され、例えば、回復フェーズは、少なくとも4日間および最長2ヵ月であり、第1のフェーズにおいて培養された上記量のHHは、細胞極性、胆細管によって特徴付けられる細胞間構造および/または肝機能を呈する対照HHと同等の遺伝子発現レベルを確立する。
【0045】
本方法の一部の態様において、第1の期間、例えば、回復フェーズは、約7日間であり、第1の細胞培養培地は、3または4日間毎に任意選択で新たにされる。
【0046】
一部の実施形態において、キットが提供され、キットは、第1のHH培養培地、例えば、dHCGMもしくはdHMM、および第2のHH培養培地、例えば、d2HCGM、tHCGM、d2HMMもしくはtHMMを含有し、その培地は、単離または保存から解凍で得られたHHの培養、その後の実験アッセイに順次使用されうる。
【0047】
ヒト肝細胞を培養するためのキットも提供され、キットは、第1の細胞培養培地を保存する第1の容器であって、前記第1の細胞培養培地がDMSOを補充されている、例えば、dHCGMまたはdHMMである第1の容器;ならびに第2の細胞培養培地を保存する第2の容器であって、前記第2の細胞培養培地がDMSO2および/もしくはTMSOを補充され、DMSOを補充されていない、例えばd2HCGM、d2HMM、tHCGMまたはtHMMである第2の容器を含む。
【0048】
ヒト肝細胞(HH)に対する薬剤の毒性または薬剤の薬物代謝および薬物動態(DMPK)をアッセイする方法がさらに提供され、その方法は、DMSO2もしくはTMSOを補充され、DMSOを補充されていない培地中である量のHHを培養するステップと;薬剤をDMSO2もしくはTMSOを補充した培地中で培養された上記量のHHと接触させるステップと;薬剤の存在下もしくは薬剤との接触後に上記量のHHに対する毒性のレベルを測定するステップ、または薬剤の存在下もしくは薬剤との接触後に上記量のHHによる薬剤の代謝もしくは排出のレベルを測定するステップとを含む。
【0049】
アッセイ方法の一部の態様において、薬剤は、エタノール、メタノール、エチレングリコール、イソプロパノールまたはその混合物を含むアルコール化合物である。
【0050】
アッセイ方法の一部の態様において、接触および測定するステップは、密封装置中で実行される。
【0051】
アッセイ方法の一部の態様において、毒性のレベルは、それだけに限らないが、上記量のHH中のシトクロムP450(CYP)酵素など、非生体物質代謝酵素の発現または機能を定量化することによって測定される。
【0052】
アッセイ方法の一部の態様において、毒性のレベルは、上記量のHH中のアセトアルデヒドなど、アルコールの毒性代謝産物、またはグルタチオンの還元、細胞死経路の活性化状態を定量化することによって測定される。
【0053】
方法は、アルコールまたはビタミンAの代謝を促進するための候補薬剤をアッセイするステップをさらに提供し、本方法は、DMSO2もしくはTMSOを補充され、DMSOを補充されていない培地中である量のHHを培養するステップと;候補薬剤の存在下で、DMSO2もしくはTMSOを補充した培地中で培養された上記量のHHをアルコールまたはビタミンAと接触させるステップと;候補薬剤の存在下もしくは薬剤との接触後に上記量のHHによるアルコールまたはビタミンAの代謝のレベルを測定するステップとを含む。
【0054】
回復フェーズ(フェーズ1)からの培地、例えば、dHCGMもしくはdHMM中でHHを最初に培養し、および/または適用フェーズ(フェーズ2)からの培地、例えば、d2HCGM、tHCGM、d2HMMもしくはtHMM中でHHを培養することは、高品質のHHを支持する。
【0055】
したがって、本発明の態様は:培養培地を生成するために培地中でHHを培養するステップと、高品質のHHと少なくとも1時間インキュベートした培養培地を、馴化培地として採取するステップとを含む、CMHHを調製する方法を提供する。
【0056】
特定の実施形態において、HHは、ヒト化肝臓キメラマウス由来ヒト肝細胞(HLCM-HH)、初代ヒト肝細胞(PHH)、ヒト化肝臓を持つキメラ動物、例えば、ラット、マウス、ヒツジ、ブタもしくはサルから得られる肝細胞、またはその組合せを含む。一部の実施形態において、HHは、PHHである。一部の実施形態において、HHは、HLCM-HHである。一部の実施形態において、HHは、ヒト化肝臓を持つマウス以外のキメラ動物から得られる。
【0057】
特定の実施形態において、HLCM-HHは、PHHまたは事前に単離されたHLCM-HHを脾臓内に注射したマウスから得られる肝臓から得られる。一部の実施形態において、HHは、PHHまたはヒト化肝臓キメラ動物から事前に単離されたHHを脾臓内に注射した別の動物(例えば、ラット、マウス、ヒツジ、ブタ、サル、等)から得られる肝臓から得られる。
【0058】
一部の実施形態において、マウスは、HLCM-HHが得られる前に少なくとも10%のヒト肝細胞置き換え指数[組織学検査またはHH由来因子(例えば、ヒトアルブミンおよびヒトアルファ1アンチトリプシン)の血中濃度によって示される]を有し;またはヒト化肝臓を持つキメラ動物は、HHが単離または得られる前に少なくとも10%のヒト肝細胞置き換え指数を有する。
【0059】
さらなる実施形態において、HLCM-HH、PHH、ヒト化肝臓を持つ別のキメラ動物から得られる肝細胞、または任意の2つの組合せもしくは3つ全てが、0.5×105個/cm2~5×105個/cm2の細胞密度で培養される。
【0060】
さらなる実施形態において、HHは、HepG2細胞、Huh7細胞およびマウス肝細胞のいずれも含まない。別の実施形態において、HHはHLCM-HHを含み、HHに加えて若干のマウス肝細胞およびマウス非実質細胞を含みうる。
【0061】
さらなる実施形態において、HHは、HLCM-HHを含み、本方法は、培養ステップ前にHLCM-HHを得るステップをさらに含み、HLCM-HHを得るステップは、PHHまたは事前に単離されたHLCM-HHをマウスの脾臓内に注射したマウスの肝臓から得られる肝細胞を単離するステップと、それによってHLCM-HHを得るステップとを含む。
【0062】
さらなる実施形態において、マウスの肝臓から得られるHHは、マウスの肝臓のコラゲナーゼ潅流によって単離され、マウスは、HHが単離される前に少なくとも10%のヒト肝細胞置き換え指数を有する。
【0063】
本発明のさらなる態様は、HHによって分泌される1つもしくは複数の体液因子および肝細胞クローン性増殖培地または肝細胞維持培地を含むCMHHを提供する。
【0064】
さらなる実施形態において、CMHHを調製するために使用される培地は、dHCGM、d2HCGMまたはtHCGMである。一部の実施形態において、dHCGMは、DMSO、標準的な細胞培養基礎培地、L-プロリン、インスリン、デキサメタゾン、EGFおよびAsc-2Pを含む、またはそれらから本質的になる。特に望ましくは、標準的な細胞培養基礎培地は、HEPES、ペニシリン-ストレプトマイシンおよび血清を補充される。一部の実施形態において、d2HCGMは、DMSO2、標準的な細胞培養基礎培地、L-プロリン、インスリン、デキサメタゾン、EGFおよびAsc-2Pを含む、またはそれらから本質的になる。特に望ましくは、標準的な細胞培養基礎培地は、HEPES、ペニシリン-ストレプトマイシンおよび血清を補充される。一部の実施形態において、tHCGMは、TMSO、標準的な細胞培養基礎培地、L-プロリン、インスリン、デキサメタゾン、EGFおよびAsc-2Pを含むまたはそれらから本質的になる。特に望ましくは、標準的な細胞培養基礎培地は、HEPES、ペニシリン-ストレプトマイシンおよび血清を補充される。好ましい実施形態において、標準的な細胞培養基礎培地は、DMEM-10である。一部の実施形態において、血清は、FBSまたはヒト血清である。
【0065】
一部の実施形態において、CMHHを調製するために使用される培地は、dHMM、d2HMMまたはtHMMである。一部の実施形態において、dHMMは、DMSO、標準的な細胞培養基礎培地、L-プロリン、インスリン、デキサメタゾンおよびAsc-2Pを含む、またはそれらから本質的になる。一部の実施形態において、d2HMMは、DMSO2、標準的な細胞培養基礎培地、L-プロリン、インスリン、デキサメタゾンおよびAsc-2Pを含む、またはそれらから本質的になる。一部の実施形態において、tHMMは、TMSO、標準的な細胞培養基礎培地、L-プロリン、インスリン、デキサメタゾンおよびAsc-2Pを含む、またはそれらから本質的になる。好ましい実施形態において、標準的な細胞培養基礎培地は、HEPES、ペニシリン-ストレプトマイシンおよび血清を補充される。特に望ましくは、標準的な細胞培養基礎培地は、DMEM-10である。一部の実施形態において、血清は、FBSまたはヒト血清である。
【0066】
さらなる実施形態において、CMHHを調製するために使用される培地は、以下の成分からなりL-プロリンは、5~25μg/mLであり、インスリンは、0.1~0.5μg/mLであり、デキサメタゾンは、10~100nMであり、EGFは、0~10ng/mLであり、Asc-2Pは、0.01~1mMであり、DMSO、DMSO2またはTMSOは、35~300mMであり、HEPESは、10~50mMであり、ペニシリンは、10~300IU/mLであり、ストレプトマイシンは、10~300μg/mLであり、血清は、2~20%の熱不活化FBSもしくはヒト血清である。好ましくは、L-プロリンは、15μg/mLであり、インスリンは、0.25μg/mLであり、デキサメタゾンは、50nMであり、EGFは、dHCGM、d2HCGMもしくはtHCGM中に5ng/mLまたはdHMM、d2HMMもしくはtHMM中に0ng/mLであり、Asc-2Pは、0.1mMであり、DMSO、DMSO2もしくはTMSOは、それぞれ281.6mM、140.8mMもしくは70.4mMであり、HEPESは、20mMであり、ペニシリンは、100IU/mLであり、ストレプトマイシンは、100μg/mLであり、血清、例えば、FBSもしくはヒト血清は、10%である。
【0067】
さらなる実施形態において、CMHHを調製するために使用される培地は、新たな容積と1~120時間毎に置き換えられる。
【0068】
本発明のさらなる態様は、本発明の方法によって調製されるCMHHを提供する。
【0069】
一部の実施形態において、CMHHは、dHCGMまたはdHMMを含み、dHCGMまたはdHMMを使用して、HLCM-HH、PHHまたはその組合せを少なくとも1時間培養した。
【0070】
さらなる実施形態において、HLCM-HH、PHHまたはその組合せを少なくとも1時間培養するために使用されるdHCGMは、L-プロリン、インスリン、デキサメタゾン、EGF、Asc-2P、DMSOを補充された標準的な細胞培養基礎培地を含む。特に望ましくは、標準的な細胞培養基礎培地は、HEPES、ペニシリン-ストレプトマイシンおよび血清を補充される。一部の実施形態において、血清は、FBSまたはヒト血清である。好ましい実施形態において、標準的な細胞培養基礎培地は、DMEM-10である。
【0071】
さらなる実施形態において、HLCM-HH、PHHまたはその組合せを少なくとも1時間培養するために使用されるdHMMは、L-プロリン、インスリン、デキサメタゾン、Asc-2P、DMSOを補充された標準的な細胞培養基礎培地を含む。特に望ましくは、標準的な細胞培養基礎培地は、HEPES、ペニシリン-ストレプトマイシンおよび血清を補充される。一部の実施形態において、血清は、FBSまたはヒト血清である。好ましい実施形態において、標準的な細胞培養基礎培地は、DMEM-10である。
【0072】
一部の実施形態において、CMHHは、d2HCGMまたはd2HMMを含み、d2HCGMまたはd2HMMを使用して、HLCM-HH、PHHまたはその組合せを少なくとも1時間培養した。
【0073】
さらなる実施形態において、HLCM-HH、PHHまたはその組合せを少なくとも1時間培養するために使用されるd2HCGMは、L-プロリン、インスリン、デキサメタゾン、EGF、Asc-2P、DMSO2を補充された標準的な細胞培養基礎培地を含む。特に望ましくは、標準的な細胞培養基礎培地は、HEPES、ペニシリン-ストレプトマイシンおよび血清を補充される。一部の実施形態において、血清は、FBSまたはヒト血清である。好ましい実施形態において、標準的な細胞培養基礎培地は、DMEM-10である。
【0074】
さらなる実施形態において、HLCM-HH、PHHまたはその組合せを少なくとも1時間培養するために使用されるd2HMMは、L-プロリン、インスリン、デキサメタゾン、Asc-2P、DMSO2を補充された標準的な細胞培養基礎培地を含む。特に望ましくは、標準的な細胞培養基礎培地は、HEPES、ペニシリン-ストレプトマイシンおよび血清を補充される。一部の実施形態において、血清は、FBSまたはヒト血清である。好ましい実施形態において、標準的な細胞培養基礎培地は、DMEM-10である。
【0075】
一部の実施形態において、CMHHは、tHCGMまたはtHMMを含み、tHCGMまたはtHMMを使用して、HLCM-HH、PHHまたはその組合せを少なくとも1時間培養した。
【0076】
さらなる実施形態において、HLCM-HH、PHHまたはその組合せを少なくとも1時間培養するために使用されるtHCGMは、L-プロリン、インスリン、デキサメタゾン、EGF、Asc-2P、TMSOを補充された標準的な細胞培養基礎培地を含む。特に望ましくは、標準的な細胞培養基礎培地は、HEPES、ペニシリン-ストレプトマイシンおよび血清を補充される。一部の実施形態において、血清は、FBSまたはヒト血清である。好ましい実施形態において、標準的な細胞培養基礎培地は、DMEM-10である。
【0077】
さらなる実施形態において、HLCM-HH、PHHまたはその組合せを少なくとも1時間培養するために使用されるtHMMは、L-プロリン、インスリン、デキサメタゾン、Asc-2P、TMSOを補充された標準的な細胞培養基礎培地を含む。特に望ましくは、標準的な細胞培養基礎培地は、HEPES、ペニシリン-ストレプトマイシンおよび血清を補充される。一部の実施形態において、血清は、FBSまたはヒト血清である。好ましい実施形態において、標準的な細胞培養基礎培地は、DMEM-10である。
【0078】
本発明のさらなる態様は、CMHHおよび細胞外マトリックスを含む組合せを提供する。一部の態様において、細胞外マトリックスは、マトリゲル(登録商標)、エンジェルブレスホームスワーン(EHS)マウス肉腫細胞によって分泌されるゼラチン状タンパク質混合物またはフィブロネクチン、コラーゲン、ビトロネクチンおよびラミニンなどがあるがこれに限定されない個々の細胞外マトリックスを含む。
【0079】
本発明のさらなる態様は、本発明のCMHHとフォルスコリン、SB431542、DAPT、IWP2およびLDN193189の5種類の化学物質とを含む組合せを提供する。
【0080】
様々な実施形態において、CMHHは、肝臓細胞生物学研究のために使用される。肝臓細胞生物学の研究における現在の主要な制約は、最終分化したHHの安定なin vitro培養系が存在しないことである。例えば、冷凍保存されたPHHは、ほとんどの医薬産業が、前臨床研究段階で薬物安全性スクリーニングならびに薬物代謝および薬物動態(DMPK)研究に利用する主力ツールである。
【0081】
本発明の態様は、最終分化したPHH、HLCM-HH、ヒト化肝臓を持つ別のキメラ動物(例えば、ラット、ヒツジ、ブタ、サル)から得られる肝細胞、別の種、例えば、イヌ、マウス、ラットおよびサル由来初代肝細胞、ならびに/または、冷凍保存された、PHH、HLCM-HH、ヒト化肝臓を持つ別のキメラ動物(例えば、ラット、ヒツジ、ブタ、サル)から得られる肝細胞、別の種、例えば、イヌ、マウス、ラットおよびサル由来初代肝細胞を培養するために使用するCMHHを提供する。
【0082】
一部の実施形態において、CMHHの生物学的効果は、肝星細胞(HSC)、肝臓類洞内皮細胞(LSEC)、および肝マクロファージ(クップファー細胞)などの肝臓の非実質細胞(NPC)の機能を支持する。
【0083】
本発明のさらなる態様は、最終分化したHH、HLCM-HH、ヒト化肝臓を持つ別のキメラ動物(例えば、ラット、ヒツジ、ブタ、サル)から得られる肝細胞、ならびにPHH、および/または別の種、例えば、イヌ、マウス、ラットおよびサル由来初代肝細胞を培養するために使用するCMHHを提供する。一部の実施形態において、提供されるCMHHは、最終分化したin vitro培養されたHH、HLCM-HH、ヒト化肝臓を持つ別のキメラ動物(例えば、ラット、ヒツジ、ブタ、サル)から得られる肝細胞、ならびにPHH、および/または別の種、例えばイヌ、マウス、ラットおよびサル由来初代肝細胞の脱分化を防止する。
【0084】
本発明のさらなる態様は、HH、HLCM-HH、ヒト化肝臓を持つ別のキメラ動物(例えば、ラット、ヒツジ、ブタ、サル)から得られる肝細胞、ならびにPHH、および/または別の種、例えば、イヌ、マウス、ラットおよびサル由来初代肝細胞の分化形質転換を妨げるために使用するCMHHを提供する。
【0085】
本発明のさらなる態様は、冷凍保存されたHH、HLCM-HH、ヒト化肝臓を持つ別のキメラ動物(例えば、ラット、ヒツジ、ブタ、サル)から得られる肝細胞、ならびにPHH、および/または別の種、例えば、イヌ、マウス、ラットおよびサル由来初代肝細胞の回復を促進するために使用するCMHHを提供する。
【0086】
本発明のさらなる態様は、細胞入手プロセスに関連するストレス/傷害からの、新たに単離されたHH、HLCM-HH、ヒト化肝臓を持つ別のキメラ動物(例えば、ラット、ヒツジ、ブタ、サル)から得られる肝細胞、ならびにPHH、および/または別の種、例えば、イヌ、マウス、ラットおよびサル由来初代肝細胞の回復を促進するために使用するCMHHを提供する。
【0087】
本発明のさらなる態様は、低温保存に関連する細胞性ストレスからHH、HLCM-HH、ヒト化肝臓を持つ別のキメラ動物(例えば、ラット、ヒツジ、ブタ、サル)から得られる肝細胞、ならびにPHH、および/または別の種、例えば、イヌ、マウス、ラットおよびサル由来初代肝細胞を保護するために使用するCMHHを提供し、解凍に対する細胞の回復をさらに支持しうる。
【0088】
本発明のさらなる態様は、NPC機能および形態構造の維持ならびに機能を支持するのに使用するためのCMHHを提供する。一部の実施形態において、CMHHは、NPCと共培養するのに使用するため、および/または低温保存においてヒト肝細胞を懸濁するのに使用するために提供される。
【0089】
本発明のさらなる態様は、スフェロイド、オルガノイドまたは3次元培養の形式で、ならびに器官-チップ形式を開発するために、HH、HLCM-HH、ヒト化肝臓を持つ別のキメラ動物(例えば、ラット、ヒツジ、ブタ、サル)から得られる肝細胞、およびPHH、および/もしくは別の種、例えば、イヌ、マウス、ラットおよびサル由来初代肝細胞の機能および寿命を支持/増強させるのに使用するためのCMHHを提供する。
【0090】
本発明のさらなる態様は、HLCMを作製するために、HH、HLCM-HH、ヒト化肝臓から別のキメラ動物(例えば、ラット、ヒツジ、ブタ、サル)から得られる肝細胞、ならびにPHH、および/または別の種、例えば、イヌ、マウス、ラットおよびサル由来初代肝細胞の有用性を増強させるのに使用するためのCMHHを提供する。
【0091】
本発明のさらなる態様は、HH、HLCM-HH、ヒト化肝臓を持つ別のキメラ動物(例えば、ラット、ヒツジ、ブタ、サル)から得られる肝細胞、ならびにPHH、および/または別の種(例えば、イヌ、マウス、ラットおよびサル)由来初代肝細胞の細胞運命維持を支持するのに使用するためのCMHHを提供し;それにより、CMHHは、DMPK、薬物スクリーニング、感染疾患および代謝疾患など、様々な型の肝臓細胞生物学研究用としてこれら細胞の有用性を大いに増強させる。
【0092】
様々な実施形態において、CMHHは、PHHおよびHLCM-HHならびにヒト化肝臓を持つ別のキメラ動物から得られるHHの細胞運命維持に使用され;それにより、CMHHは、DMPK、薬物スクリーニング、感染疾患および代謝疾患など、様々な型の肝臓細胞生物学研究用としてこれら細胞の有用性を大いに増強させる。
【0093】
方法は、HHに対する薬剤の毒性または薬剤のDMPKをアッセイするためにさらに提供され、本方法は、DMSO2もしくはTMSOを補充され、DMSOを補充されていないCMHH中である量のHHを培養するステップと;薬剤をDMSO2もしくはTMSOを補充したCMHH中で培養された上記量のHHと接触させるステップと;薬剤の存在下もしくは薬剤との接触後に上記量のHHに対する毒性のレベルを測定するステップ、または薬剤の存在下もしくは薬剤との接触後に上記量のHHによる薬剤の代謝もしくは排出のレベルを測定するステップとを含む。
【0094】
アッセイ方法の一部の態様において、薬剤は、エタノール、メタノール、エチレングリコール、イソプロパノールまたはその混合物を含むアルコール化合物である。
【0095】
アッセイ方法の一部の態様において、接触および測定するステップは、密封装置中で実行される。
【0096】
アッセイ方法の一部の態様において、毒性のレベルは、それだけに限らないが、上記量のHH中のシトクロムP450(CYP)酵素など、非生体物質代謝酵素の発現または機能を定量化することによって測定される。
【0097】
アッセイ方法の一部の態様において、毒性のレベルは、上記量のHH中のアセトアルデヒドなど、アルコールの毒性代謝産物、またはグルタチオンの還元、細胞死経路の活性化状態を定量化することによって測定される。
【0098】
方法は、アルコールまたはビタミンAの代謝を促進するための候補薬剤をアッセイするステップをさらに提供し、本方法は、DMSO2もしくはTMSOを補充され、DMSOを補充されていないCMHH中である量のHHを培養するステップと;候補薬剤の存在下で、DMSO2もしくはTMSOを補充したCMHH中で培養された上記量のHHをアルコールまたはビタミンAと接触させるステップと;候補薬剤の存在下もしくは薬剤との接触後に上記量のHHによるアルコールまたはビタミンAの代謝のレベルを測定するステップとを含む。
【0099】
様々な実施形態において、CMHHは、再生医療および幹細胞生物学に使用される。CMHHは、最終分化したヒト肝細胞への、iHep成熟の最終段階を可能にする必須因子でありうる。一部の実施形態において、CMHHは、肝細胞移植療法の調製に使用され、例えば、iPS細胞から得られる成熟ヒト肝細胞(LTの代用品になりうる)の大量生産に使用される。
【0100】
本発明のさらなる態様は、最終分化した肝細胞へのiHep(幹細胞由来肝二分化能前駆細胞)のさらなる成熟を容易にするのに使用するためのCMHHを提供する。
【0101】
本発明のさらなる態様は、胆管細胞または他の細胞型へのiHep(幹細胞由来肝二分化能前駆細胞)の分化を防止するのに使用するためのCMHHを提供する。
【0102】
本発明のさらなる態様は、成熟肝細胞への化学的に誘導される肝臓プロジェニタ(CLip)の再分化を促進するのに使用するためのCMHHを提供する。
【0103】
本発明のさらなる態様は、肝細胞腫細胞(例えば、HepaRG細胞、HepG2およびHuh7細胞)の肝機能を増強させるのに使用するためのCMHHを提供する。
【0104】
一部の実施形態において、CMHHは、HepaRGの肝機能を増強させるために使用される。
【0105】
本発明のさらなる態様は、HLCM宿主マウスの肝臓におけるCMHH処理iHepおよびCLiPの拡大/繁殖を可能にするのに使用するためのCMHHを提供する。一部の実施形態において、本発明は、HLCM宿主マウスの肝臓におけるCMHH処理PHH、ならびに/または別の種、例えば、イヌ、マウス、ラットおよびサル由来初代肝細胞の拡大/繁殖を可能にするのに使用するためのCMHHを提供する。
【0106】
本発明のさらなる態様は、肝細胞移植療法の結果である慢性肝臓疾患/肝臓線維症の退行を促進するのに使用するためのCMHHを提供する。
【0107】
本発明のさらなる態様は、肝臓がんに対するアジュバント療法に使用するためのCMHHを提供する。
【0108】
本発明のさらなる態様は、iHep、CliPおよびHepaRGの分化および細胞運命維持を支持するために使用するCMHHを提供し、CMHHは、成熟した肝細胞の特徴を損なわずにこれら細胞の安定な長期培養を可能にし、したがって、CMHHは、DMPK、薬物スクリーニング、感染疾患および代謝疾患など、様々な型の肝臓細胞生物学研究用としてこれら細胞の有用性を大いに増強させる。
【0109】
本発明のさらなる態様は、化学的に誘導される肝臓プロジェニタ(CLip)細胞を分化させるのに使用するためのCMHHを提供する。
【0110】
一部の実施形態において、CMHHは、成熟肝細胞へのCLiPの再分化を促進するために使用される。
【0111】
様々な実施形態において、CHMMを使用して、HH、他の種、例えば、イヌ、マウス、ラットおよびサル由来PHH、ヒト化肝臓キメラマウス(HLCM)から得られる肝細胞、またはヒト化肝臓を持つ別のキメラ動物(例えば、ラット、ヒツジ、ブタまたはサルから得られる肝細胞)から得られる肝細胞を含むことができる肝細胞を培養ならびに維持する。
【0112】
一部の実施形態において、CMHHは、任意の型の肝臓疾患を患う患者への肝細胞移植(CMHHによってさらに分化されたiHepなど)のために使用される。
【0113】
本発明の様々な実施形態は、本発明の説明において上述されている。これら説明は、上記実施形態について直接記載しているが、当業技術者は、本明細書に図示および記載される特定の実施形態に対する修飾ならびに/または変形を考え得ると理解される。この説明の範囲に含まれる任意のそのような修飾または変形は、同様にその説明の範囲に含まれることが意図される。特に示されない限り、明細書および特許請求の範囲内の単語および熟語が、適用可能な技術において通常の知識を有する者にとって通常および習慣の意味を付与されることが、本発明者らの意図である。
【0114】
本出願の出願時に出願者に公知である本発明の様々な実施形態の前述の説明が提示され、例示および説明のためであることを意図するものである。本明細書は、網羅的であることも、本発明を、開示される正確な形態に限定することも意図せず、上記の教示に照らして、多くの修飾および変形が可能である。記述される実施形態は、本発明の原則およびその実用的な適用を説明し、他の当業者が、企図される特定の使用に適するように様々な実施形態において様々な修飾とともに本発明を利用できるようにするのに役立つ。したがって、本発明は、本発明を実施するために開示される特定の実施形態に限定されることを意図するものではない。
【0115】
本発明の特定の実施形態について示され、記述されてきたが、本明細書の教示に基づいて、変更および修飾が、本発明およびそのより広い態様を逸脱することなく行われてもよく、したがって、添付の特許請求の範囲が、本発明の真の精神および範囲内にあるそのような変更および修飾の全てをその範囲に包含すべきであることは当業技術者に明らかになろう。一般に、本明細書で使用される用語が、「開かれた」用語を一般に意味するものである(例えば、用語「含む(including)」は、「を含むが、これに限定されない」と解釈されるべきであり、用語「有する(having)」は、「少なくとも有する」と解釈されるべきであり、用語「含む(includes)」は、「を含むが、これに限定されない」と解釈されるべきである、等)ことは、当業者に理解されよう。
【0116】
本明細書では用語「含む(comprising)」または「含む(comprises)」は、組成物、方法、およびそのそれぞれの成分を参照して使用され、それらは、実施形態に有用であるが、有用か否かにかかわらず、不特定の要素の内包を受け入れる。一般に、本明細書で使用される用語が、「開かれた」用語を一般に意味するものである(例えば、用語「含む(including)」は、「を含むが、これに限定されない」と解釈されるべきであり、用語「有する(having)」は、「少なくとも有する」と解釈されるべきであり、用語「含む(includes)」は、「を含むが、これに限定されない」と解釈されるべきである、等)ことは、当業者に理解されよう。含む(including)、含有する(containing)、または有する(having)などの用語の同義語である無制限の用語「含む(comprising)」は、本発明について記載および請求するために本明細書において使用されるが、あるいは本発明、またはその実施形態は、「からなる(consisting of)」または「本質的になる(consisting essentially of)」などの代わりの用語を使用して記述されてもよい。
【0117】
単数用語「a」、「an」および「the」は、文脈が明らかに示さない限り、複数の指示対象を含む。同様に、単語「または(or)」は、文脈上別途明らかな指示がない限り「および(and)」を含むことを意図する。本明細書に記載される方法および材料と類似または同等のものが、本開示の実施または試験に使用されうるが、適切な方法および材料については後述する。略語「e.g.」は、ラテン語「exempli gratia」に由来し、非限定的な例を示すために本明細書において使用される。したがって、略語「e.g.」は、用語「for example」と同義である。
【0118】
本明細書に開示される本発明の選択的な要素または実施形態の群分けは、限定と解釈されるべきでない。各群メンバーは、個別にまたは群の他のメンバーと、もしくは本明細書に見られる他の要素との任意の組合せで参照および請求されうる。群の1つまたは複数のメンバーは、利便性および/もしくは特許性の理由で群に含められ、またはそこから削除されうる。そのような内包または削除のいずれかが生じる場合、本明細書は、修飾された群を含有すると本明細書において見なされ、したがって、添付の特許請求の範囲に使用される全てのマーカッシュ群の説明文を満たす。
【0119】
本明細書において別段の規定がない限り、本出願に関して使用される科学および技術的用語は、本開示が属する当業者によって一般に理解される意味を有するものとする。本発明が、本明細書に記述される特定の方法論、プロトコール、および試薬、等に限定されるものではなく、それ自体変動しうることは理解されるべきである。本明細書に使用される専門用語は、特定の実施形態を記述するためだけのものであり、特許請求の範囲によってのみ定義される本発明の範囲を限定することを意図するものではない。免疫学および分子生物学における一般的な用語の定義は、The Merck Manual of Diagnosis and Therapy, 19th Edition, published by Merck Sharp & Dohme Corp., 2011 (ISBN 978-0-911910-19-3);Robert S. Porter et al. (eds.), The Encyclopedia of Molecular Cell Biology and Molecular Medicine, published by Blackwell Science Ltd., 1999-2012 (ISBN 9783527600908);およびRobert A. Meyers (ed.), Molecular Biology and Biotechnology: a Comprehensive Desk Reference, published by VCH Publishers, Inc., 1995 (ISBN 1-56081-569-8);Immunology by Werner Luttmann, published by Elsevier, 2006;Janeway's Immunobiology, Kenneth Murphy, Allan Mowat, Casey Weaver (eds.), Taylor & Francis Limited, 2014 (ISBN 0815345305, 9780815345305);Lewin's Genes XI, published by Jones & Bartlett Publishers, 2014 (ISBN- 1449659055);Michael Richard Green and Joseph Sambrook, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 4th ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., USA (2012) (ISBN 1936113414);Davis et al., Basic Methods in Molecular Biology, Elsevier Science Publishing, Inc., New York, USA (2012) (ISBN 044460149X);Laboratory Methods in Enzymology: DNA, Jon Lorsch (ed.) Elsevier, 2013 (ISBN 0124199542);Current Protocols in Molecular Biology (CPMB), Frederick M. Ausubel (ed.), John Wiley and Sons, 2014 (ISBN 047150338X, 9780471503385), Current Protocols in Protein Science (CPPS), John E. Coligan (ed.), John Wiley and Sons, Inc., 2005;ならびにCurrent Protocols in Immunology (CPI) (John E. Coligan, ADA M Kruisbeek, David H Margulies, Ethan M Shevach, Warren Strobe, (eds.) John Wiley and Sons, Inc., 2003 (ISBN 0471142735, 9780471142737)に見ることができ、その内容は、その全体が参照により全て本明細書に組み込まれる。
【0120】
当業者は、使用する化学療法薬を容易に特定することができる(例えば、Physicians' Cancer Chemotherapy Drug Manual 2014, Edward Chu, Vincent T. DeVita Jr., Jones & Bartlett Learning;Principles of Cancer Therapy, Chapter 85 in Harrison's Principles of Internal Medicine, 18th edition;Therapeutic Targeting of Cancer Cells: Era of Molecularly Targeted Agents and Cancer Pharmacology, Chs. 28-29 in Abeloff's Clinical Oncology, 2013 Elsevier;およびFischer D S (ed): The Cancer Chemotherapy Handbook, 4th ed. St. Louis, Mosby-Year Book, 2003を参照のこと)。
【0121】
本態様のいずれかの一部の実施形態において、本明細書に記述される開示は、人間をクローニングするプロセス、人間の生殖細胞の遺伝的同一性を修飾するプロセス、ヒト胚の産業もしくは商業的使用、またはヒトもしくは動物にいかなる実質的な医学的利益もなしに苦痛をもたらす可能性がある動物の遺伝的同一性を修飾するプロセス、またそのようなプロセスの結果得られる動物には関係しない。
【0122】
他の用語は、本発明の様々な態様の説明において本明細書で定義される。
【0123】
本出願の全体を通じて引用される;文献参照、発行済み特許、公開特許出願および同時係属の特許出願を含めた特許および他の刊行物の全ては;例えば、本明細書に記述される技術に関連して使用される可能性があるそのような刊行物中に記述される方法論を記述および開示する目的で参照により本明細書に明示的に組み込まれる。これら刊行物は、本出願の出願日前の開示だけ提供される。この点において、本発明者らが、先行発明または他のあらゆる理由のためにそのような開示に先だつ権利を持たないという承認と解釈されるべきでない。これら書類の日付に関する記載または内容に関する表示の全ては、出願者に利用可能な情報に基づくものであり、これら書類の日付または内容の正当性に関するいかなる承認も構成しない。
【0124】
本開示の実施形態の説明は、網羅的であること、または開示される正確な形態に本開示を限定することを意図するものではない。一方で本開示の特定の実施形態、および例は、例示目的で本明細書に記載されており、関連技術の当業者が認識することになるように、様々な同等の修飾が本開示の範囲内で可能になる。例えば、方法ステップまたは機能は、所与の順序で存在するが、別の実施形態は、機能を異なる順序で実行してもよく、機能は、実質的に同時に実行されてもよい。本明細書に提供される本開示の教示は、必要に応じて他の手順または方法に適用されうる。本明細書に記述される様々な実施形態は、さらなる実施形態を提供するために組み合わせることができる。本開示の態様を、上の参照ならびに出願の組成物、機能および概念を利用するために必要に応じて修飾して、本開示のなおさらなる実施形態を得ることができる。さらに、生物学的機能的等価性を考慮することにより、生物または化学的作用の種類もしくは量に影響を及ぼすことなくタンパク質構造になんらかの変更が、行われうる。これらおよび他の変更は、詳細な説明の観点から本開示に行われうる。そのような修飾の全ては、添付の特許請求の範囲の範囲に含まれることを意図する。
【0125】
前述の実施形態のいずれかの特定の要素は、他の実施形態における要素と組み合わせるまたは置換することができる。さらに、本開示の特定の実施形態に関連する優位性が、これら実施形態に記述されてきたが、他の実施形態が、そのような優位性を呈してもよく、全ての実施形態が、本開示の範囲に含まれるためにそのような優位性を呈する必要は必ずしもない。
【0126】
本明細書に記述される技術の一部の実施形態は、以下の付番されたパラグラフのいずれかによって定義されうる:
1.培養ヒト肝細胞から馴化培地を調製するための方法であって、
培養培地を生成するために培地中でヒト肝細胞を培養するステップと、
ヒト肝細胞と少なくとも1時間インキュベートした培養培地を、馴化培地として採取するステップと
を含む方法。
2.ヒト肝細胞が、初代ヒト肝細胞(PHH)、ヒト化肝臓を持つキメラ動物から得られる肝細胞、またはその組合せを含む、パラグラフ1の方法。
3.ヒト化肝臓を持つキメラ動物から得られる肝細胞が、ヒト化肝臓キメラマウス由来ヒト肝細胞(HLCM-HH)であり、HLCM-HHが、PHHまたは事前に単離されたHLCM-HHを脾臓内に注射したマウスから得られる肝臓から得られる、パラグラフ2の方法。
4.HLCM-HHが得られる前に、マウスが、少なくとも10%の置き換え指数を有する、パラグラフ3の方法。
5.培地が、DMSOまたはDMSO2を補充した肝細胞クローン性増殖培地(dHCGM)であり、dHCGMが、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)、L-プロリン、インスリン、デキサメタゾン、EGFおよびL-アスコルビン酸2-リン酸塩(Asc-2P)を含む、またはそれらから本質的になる、パラグラフ1の方法。
6.DMEMが、DMEM-10であり、DMEM-10が、DMEM、HEPES、ペニシリン-ストレプトマイシンおよびウシ胎仔血清(FBS)を含む、またはそれらから本質的になる、パラグラフ5の方法。
7.L-プロリンが、dHCGM中に15μg/mLであり、インスリンが、dHCGM中に0.25μg/mLであり、デキサメタゾンが、dHCGM中に50nMであり、EGFが、dHCGM中に5ng/mLであり、Asc-2Pが、dHCGM中に0.1mMであり、DMSOまたはDMSO2が、dHCGM中に2%であり、HEPESが、dHCGM中に20mMであり、ペニシリンが、dHCGM中に100IU/mLであり、ストレプトマイシンが、dHCGM中に100μg/mLであり、FBSが、dHCGM中の10%熱不活化FBSである、パラグラフ5の方法。
8.L-プロリンがdHCGM中に5~25μg/mLであり、インスリンが、dHCGM中に0.1~0.5μg/mLであり、デキサメタゾンが、dHCGM中に10~100nMであり、EGFが、dHCGM中に1~10ng/mLであり、Asc-2Pが、dHCGM中に0.01~1mMであり、DMSOまたはDMSO2が、dHCGM中に0.5%~5%であり、HEPESが、dHCGM中に10~50mMであり、ペニシリンが、dHCGM中に10~300IU/mLであり、ストレプトマイシンが、dHCGM中に10~300μg/mLであり、FBSが、dHCGM中の2~20%熱不活化FBSである、パラグラフ5の方法。
9.培地が、新たな容積で24~120時間毎に置き換えられる、パラグラフ1~8のいずれか1つの方法。
10.PHH、ヒト化肝臓を持つキメラ動物から得られる肝細胞、または組合せが、細胞密度0.5×105個/cm2~5×105個/cm2で培養される、パラグラフ2の方法。
11.ヒト肝細胞が、HepG2細胞、Huh7細胞またはマウス肝細胞を含まない、パラグラフ1~3のいずれかの方法。
12.ヒト肝細胞が、ヒト化肝臓を持つキメラ動物から得られる肝細胞を含み、本方法が、培養ステップの前にヒト化肝臓を持つキメラ動物から得られる肝細胞を得るステップであって、ヒト化肝臓を持つキメラ動物から得られる肝細胞を得るステップが、PHHまたはヒト化肝臓キメラ動物から得られる事前に単離された肝細胞を動物の脾臓内に注射した動物の肝臓から得られる肝細胞を単離するステップを含み、それによりヒト化肝臓を持つキメラ動物から得られる肝細胞を得るステップをさらに含む、パラグラフ1の方法。
13.キメラ動物から得られる肝細胞が、キメラ動物の肝臓のコラゲナーゼ潅流によって単離され、キメラ動物が、肝細胞が単離される前に少なくとも10%の置き換え指数を有する、パラグラフ12の方法。
14.パラグラフ1~13のいずれか1つに記載の方法によって調製された培養ヒト肝細胞(CMHH)由来馴化培地。
15.肝細胞クローン性増殖培地を含み、肝細胞クローン性増殖培地が、初代ヒト肝細胞(PHH)、ヒト化肝臓を持つキメラ動物から得られる肝細胞またはその組合せを少なくとも1時間培養するために使用された、培養ヒト肝細胞(CMHH)由来の馴化培地。
16.ヒト肝細胞によって分泌される1つまたは複数の体液因子および肝細胞クローン性増殖培地を含む、培養ヒト肝細胞由来馴化培地(CMHH)。
17.肝細胞クローン性増殖培地が、L-プロリン、インスリン、デキサメタゾン、EGF、L-アスコルビン酸2-リン酸塩(Asc-2P)およびジメチルスルホキシド(DMSO)またはジメチルスルホン(DMSO2)を補充したダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)を含む、パラグラフ15またはパラグラフ16のCMHH由来馴化培地。
18.パラグラフ14~17のいずれか1つのCMHH由来馴化培地と細胞外マトリックスを含む組合せ。
19.パラグラフ14~17のいずれか1つのCMHH由来馴化培地とフォルスコリン、SB431542、DAPT、IWP2およびLDN193189の5種類の化学物質を含む組合せ。
20.最終分化したヒト肝細胞、ヒト化肝臓を持つキメラ動物から得られる肝細胞および/または冷凍保存された初代ヒト肝細胞を培養するのに使用するための培養ヒト肝細胞(CMHH)由来馴化培地。
21.肝二分化能前駆細胞(iHep)および/もしくは化学的に誘導される肝臓プロジェニタを、それぞれ最終分化した肝細胞または成熟肝細胞へと分化させるのに使用するための培養ヒト肝細胞(CMHH)由来馴化培地。
22.非実質細胞と共培養するのに使用するための、および/または低温保存においてヒト肝細胞を懸濁するのに使用するための、培養ヒト肝細胞(CMHH)由来馴化培地。
23.単離および/または保存後の回復ならびに肝機能の確立のためにヒト肝細胞(HH)を培養する方法であって、
第1のフェーズにおいて第1の細胞培養培地である量のHHを第1の期間培養するステップと、
上記量のHHから第1の細胞培養培地を除去し、続いて第2のフェーズにおいて第2の細胞培養培地を用いて上記量のHHを第2の期間培養するステップと
を含み、
第1の細胞培養培地が、ジメチルスルホキシド(DMSO)を補充した細胞培養培地を含み、第2の細胞培養培地は、ジメチルスルホン(DMSO2)を補充した細胞培養培地またはテトラメチレンスルホキシド(TMSO)を補充した細胞培養培地を含み、
第2の細胞培養培地が、DMSOを含まない、方法。
24.第1の期間が、少なくとも4日間および最長2ヵ月であり、第1のフェーズにおいて培養された上記量のHHが、細胞極性、胆細管によって特徴付けられる細胞間構造および/または肝機能を呈する対照HHと同等の遺伝子発現レベルを確立する、パラグラフ23の方法。
25.第1の期間が、約7日間であり、第1の細胞培養培地が、3または4日間毎に任意選択で新たにされる、パラグラフ24の方法。
26.第2のフェーズにおいて培養される上記量のHHが、シトクロムP450ファミリー3サブファミリーAメンバー4(CYP3A4)およびシトクロムP450ファミリー2サブファミリーEメンバー1(CYP2E1)の生理的レベルの発現を有し;または第2のフェーズにおいて培養される上記量のHHが、アルコール、非生体物質、ビタミンAもしくはその組合せを代謝する、パラグラフ23の方法。
27.第1の細胞培養培地が、DMSOを補充した肝細胞培養培地であり、肝細胞培養培地が、DMSO、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)、ならびにL-プロリン、インスリン、デキサメタゾン、上皮細胞増殖因子(EGF)、L-アスコルビン酸2リン酸塩(Asc-2P)、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)、ペニシリン-ストレプトマイシンおよび熱不活化ウシ胎仔血清(FBS)のうちの1つまたは複数を含む、パラグラフ23~25のいずれか1つの方法。
28.第2の細胞培養培地が、DMSO2を補充した肝細胞培養培地であり、肝細胞培養培地が、DMSO2、DMEM、ならびにL-プロリン、インスリン、デキサメタゾン、EGF、Asc-2P、HEPES、ペニシリン-ストレプトマイシンおよび熱不活化FBSのうちの1つまたは複数を含む、パラグラフ23またはパラグラフ26の方法。
29.第2の細胞培養培地が、終濃度約140mMでDMSO2を含有する、パラグラフ23の方法。
30.第1の細胞培養培地が、2(容積/容積)% DMSO、DMEM、15μg/mL L-プロリン、0.25μg/mLインスリン、50nMデキサメタゾン、5ng/mL EGF、0.1mM Asc-2P、20mM HEPES、100IU/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシンおよび10%熱不活化FBSを含み;
第2の細胞培養培地が、140mM DMSO2、DMEM、15μg/mL L-プロリン、0.25μg/mLインスリン、50nMデキサメタゾン、5ng/mL EGF、0.1mM Asc-2P、20mM HEPES、100IU/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシンおよび10%熱不活化FBSを含む、パラグラフ23の方法。
31.第1の細胞培養培地が、0.5%~5%(容積/容積)DMSO、DMEM、5~25μg/mL L-プロリン、0.1~0.5μg/mLインスリン、10~100nMデキサメタゾン、1~10ng/mL EGF、0.01~1mM Asc-2P、10~50mM HEPES、10~300IU/mLペニシリン、10~300μg/mLストレプトマイシンおよび2~20%熱不活化FBSを含み;
第2の細胞培養培地が、100~180mM DMSO2、DMEM、5~25μg/mL L-プロリン、0.1~0.5μg/mLインスリン、10~100nMデキサメタゾン、1~10ng/mL EGF、0.01~1mM Asc-2P、10~50mM HEPES、10~300IU/mLペニシリン、10~300μg/mLストレプトマイシンおよび2~20%熱不活化FBSを含む、パラグラフ23の方法。
32.HHによるアルコール代謝の促進における候補薬剤の成績またはHHに対する候補薬剤の毒性をアッセイするのに使用するための方法であって、第2の細胞培養培地中で、第2のフェーズにおいて培養された上記量のHHを候補薬剤と接触させるステップと、候補薬剤との接触前に上記量のHHによるアルコールの代謝または候補薬剤の排出の第1のレベルを測定するステップと、候補薬剤の存在下または接触後に、上記量のHHによるアルコールの代謝または候補薬剤の排出の第2のレベルを測定するステップとを含む、パラグラフ23の方法。
33.ジメチルスルホン(DMSO2)を補充した細胞培養培地またはテトラメチレンスルホキシド(TMSO)を補充した細胞培養培地を含み、ジメチルスルホキシド(DMSO)を含まない、ヒト肝細胞(HH)の肝機能を確立し維持するためのヒト肝細胞培養培地。
34.DMSO2が、DMEM中に濃度約140mMまたは約2(容積/容積)%に達するように補充され、DMEMが、L-プロリン、インスリン、デキサメタゾン、EGF、Asc-2P、HEPES、ペニシリン-ストレプトマイシンおよび熱不活化FBSのうち1つまたは複数をさらに含む、パラグラフ33のヒト肝細胞培養培地。
35.DMEM中の140mM DMSO2、15μg/mL L-プロリン、0.25μg/mLインスリン、50nMデキサメタゾン、5ng/mL EGF、0.1mM Asc-2P、20mM HEPES、100IU/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシンおよび10%熱不活化FBSを含む、パラグラフ34のヒト肝細胞培養培地。
36.DMEM中の100~180mM DMSO2、5~25μg/mL L-プロリン、0.1~0.5μg/mLインスリン、10~100nMデキサメタゾン、1~10ng/mL EGF、0.01~1mM Asc-2P、10~50mM HEPES、10~300IU/mLペニシリン、10~300μg/mLストレプトマイシンおよび2~20%熱不活化FBSを含む、パラグラフ34のヒト肝細胞培養培地。
37.第1の細胞培養培地を保存する第1の容器であって、前記第1の細胞培養培地がDMSOを補充されている第1の容器;ならびに
第2の細胞培養培地を保存する第2の容器であって、前記第2の細胞培養培地がDMSO2および/もしくはTMSOを補充され、DMSOを補充されていない第2の容器
を含む、ヒト肝細胞を培養するためのキット。
38.ヒト肝細胞(HH)に対する薬剤の毒性または薬剤の薬物代謝および薬物動態(DMPK)をアッセイする方法であって、
DMSO2を補充され、DMSOを補充されていない培地中である量のHHを培養するステップと;
薬剤を、DMSO2を補充した培地中で培養された上記量のHHと接触させるステップと;
薬剤の存在下もしくは薬剤との接触後に上記量のHHに対する毒性のレベルを測定するステップ、または薬剤の存在下もしくは薬剤との接触後に上記量のHHによる薬剤の代謝もしくは排出のレベルを測定するステップと
を含む方法。
39.薬剤が、エタノール、メタノール、エチレングリコール、イソプロパノールまたはその混合物を含むアルコール化合物である、パラグラフ38の方法。
40.接触および測定するステップが、密封装置中で実行される、パラグラフ39の方法。
41.毒性のレベルが、上記量のHH中のアルコール脱水素酵素(ADH)の発現または機能を定量化することによって測定される、パラグラフ38の方法。
42.アルコールまたはビタミンAの代謝を促進するための候補薬剤をアッセイする方法であって、
DMSO2を補充され、DMSOを補充されていない培地中である量のHHを培養するステップと;
候補薬剤の存在下で、DMSO2を補充した培地中で培養された上記量のHHをアルコールまたはビタミンAと接触させるステップと;
候補薬剤の存在下もしくは薬剤との接触後に上記量のHHによるアルコールまたはビタミンAの代謝のレベルを測定するステップと
を含む方法。
【0127】
本明細書に記述される技術の一部の実施形態は、以下の付番されたパラグラフのいずれかによって定義されうる:
1.培養ヒト肝細胞(HH)から馴化培地を調製するための方法であって、
培養培地を生成するために培地中でHHを培養するステップと、
HHと少なくとも1時間インキュベートした培養培地を、馴化培地として採取するステップと
を含む方法。
2.HHが、初代ヒト肝細胞(PHH)、ヒト化肝臓を持つキメラ動物から得られる肝細胞、またはその組合せを含む、パラグラフ1の方法。
3.ヒト化肝臓を持つキメラ動物から得られる肝細胞が、ヒト化肝臓キメラマウス由来ヒト肝細胞(HLCM-HH)であり、HLCM-HHが、PHHまたは事前に単離されたHLCM-HHを脾臓内に注射したマウスから得られる肝臓から得られる、パラグラフ2の方法。
4.HLCM-HHが得られる前に、マウスが、少なくとも10%の置き換え指数を有する、パラグラフ3の方法。
5.培地が、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルスルホン(DMSO2)もしくはテトラメチレンスルホキシド(TMSO)を補充した肝細胞クローン性増殖培地(dHCGM、d2HCGMまたはtHCGM)であり、HCGMが、標準的な細胞培養基礎培地、L-プロリン、インスリン、デキサメタゾン、EGFおよびL-アスコルビン酸2-リン酸塩(Asc-2P)を含む、またはそれらから本質的になる、パラグラフ1の方法。
6.培地が、DMSO、DMSO2もしくはTMSOを補充した肝細胞維持培地(dHMM、d2HMM、tHMM)であり、HMMが、標準的な細胞培養基礎培地、L-プロリン、インスリン、デキサメタゾンおよびL-アスコルビン酸2リン酸塩(Asc-2P)を含む、またはそれらから本質的になる、パラグラフ1の方法。
7.標準的な細胞培養基礎培地が、DMEM、MEM、RPMI-1640、IMDMまたはウィリアムE培地を含む群から選択される、パラグラフ5または6のいずれかの方法。
8.標準的な細胞培養基礎培地が、HEPES、ペニシリン-ストレプトマイシンおよび血清を補充されている、パラグラフ7の方法。
9.標準的な細胞培養基礎培地がDMEMであり、DMEMがDMEM-10であり、DMEM-10が、DMEM、HEPES、ペニシリン-ストレプトマイシンおよび血清を含む、またはそれらから本質的になる、パラグラフ7の方法。
10.血清が、ウシ胎仔血清(FBS)またはヒト血清である、パラグラフ8または9のいずれかの方法。
11.dHCGM、d2HCGMまたはtHCGMが、標準的な細胞培養基礎培地中の15μg/mL L-プロリン、0.25μg/mLインスリン、50nMデキサメタゾン、5ng/mL EGF、0.1mM Asc-2P、それぞれ281.6mM、140.8mMまたは70.4mM DMSO、DMSO2、またはTMSO、20mM HEPES、100IU/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシン、および10%血清を含むまたはそれらから本質的になる、パラグラフ5の方法。
12.dHCGM、d2HCGM、tHCGMが、標準的な細胞培養基礎培地中の5~25μg/mL L-プロリン、0.1~0.5μg/mLインスリン、10~100nMデキサメタゾン、1~10ng/mL EGF、0.01~1mM Asc-2P、50~300mM DMSO、DMSO2またはTMSO、10~50mM HEPES、10~300IU/mLペニシリン、10~300μg/mLストレプトマイシン、および2~20%血清を含むまたはそれらから本質的になる、パラグラフ5の方法。
13.dHMM、d2HMM、tHMMが、標準的な細胞培養基礎培地中の15μg/mL L-プロリン、0.25μg/mLインスリン、50nMデキサメタゾン、0.1mM Asc-2P、それぞれ281.6mM、140.8mMもしくは70.4mM DMSO、DMSO2もしくはTMSO、20mM HEPES、100IU/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシン、および10%血清を含むまたはそれらから本質的になる、パラグラフ6の方法。
14.dHMM、d2HMM、tHMMが、標準的な細胞培養基礎培地中の5~25μg/mL L-プロリン、0.1~0.5μg/mLインスリン、10~100nMデキサメタゾン、0.01~1mM Asc-2P、50~300mM DMSO、DMSO2、TMSO、10~50mM HEPES、10~300IU/mLペニシリン、10~300μg/mLストレプトマイシン、および2~20%血清を含むまたはそれらから本質的になる、パラグラフ6の方法。
15.培地が、新たな容積で24~120時間毎に置き換えられる、パラグラフ1~14のいずれか1つの方法。
16.PHH、ヒト化肝臓を持つキメラ動物から得られる肝細胞、または組合せが、細胞密度0.5×105個/cm2~5×105個/cm2で培養される、パラグラフ2の方法。
17.HHが、HepG2細胞、Huh7細胞またはマウス肝細胞を含まない、パラグラフ1~3のいずれかの方法。
18.HHが、ヒト化肝臓を持つキメラ動物から得られる肝細胞を含み、本方法が、培養ステップの前にヒト化肝臓を持つキメラ動物から得られる肝細胞を得るステップであって、ヒト化肝臓を持つキメラ動物から得られる肝細胞を得るステップが、PHHまたはヒト化肝臓キメラ動物から得られる事前に単離された肝細胞を動物の脾臓内に注射した動物の肝臓から得られる肝細胞を単離するステップを含み、それによりヒト化肝臓を持つキメラ動物から得られる肝細胞を得るステップをさらに含む、パラグラフ1の方法。
19.キメラ動物から得られる肝細胞が、キメラ動物の肝臓のコラゲナーゼ潅流によって単離され、キメラ動物が、HHが単離される前に少なくとも10%の置き換え指数を有する、パラグラフ18の方法。
20.パラグラフ1~19のいずれか1つに記載の方法によって調製された培養ヒト肝細胞(CMHH)由来馴化培地。
21.CMHHが、肝細胞クローン性増殖培地または肝細胞維持培地を含み、培地が、初代ヒト肝細胞(PHH)、ヒト化肝臓を持つキメラ動物から得られる肝細胞またはその組合せを少なくとも1時間培養するために使用された、CMHH。
22.CMHHが、ヒト肝細胞によって分泌される1つもしくは複数の体液因子および肝細胞クローン性増殖培地または肝細胞維持培地を含む、パラグラフ21のCMHH。
23.肝細胞クローン性増殖培地が、L-プロリン、インスリン、デキサメタゾン、EGF、Asc-2P、HEPES、ペニシリン、ストレプトマイシン、血清およびDMSO、DMSO2またはTMSOを補充した標準的な細胞培養基礎培地を含む、パラグラフ20~22のいずれかのCMHH。
24.肝細胞維持培地が、L-プロリン、インスリン、デキサメタゾン、Asc-2P、HEPES、ペニシリン、ストレプトマイシン、血清およびDMSO、DMSO2またはTMSOを補充した標準的な細胞培養基礎培地を含む、パラグラフ20~22のいずれかのCMHH。
25.パラグラフ20~24のいずれか1つのCMHHと細胞外マトリックスを含む組合せ。
26.パラグラフ20~24のいずれか1つのCMHHとフォルスコリン、SB431542、DAPT、IWP2およびLDN193189の5種類の化学物質を含む組合せ。
27.新たに単離された最終分化したHH、PHH、ヒト化肝臓を持つキメラ動物から得られる肝細胞、または他の種の動物由来の初代肝細胞を培養するのに使用するための、パラグラフ20~24のいずれか1つのCMHH。
28.冷凍保存された最終分化したHH、PHH、ヒト化肝臓を持つキメラ動物から得られる肝細胞、または他の種の動物由来の初代肝細胞を培養するのに使用するための、パラグラフ20~24のいずれかのCMHH。
29.肝二分化能前駆細胞(iHep)および/もしくは化学的に誘導される肝臓プロジェニタを、それぞれ最終分化した肝細胞、HeparRG(商標)などの肝細胞腫細胞、または成熟肝細胞へと分化させるのに使用するための、パラグラフ20~24のいずれかのCMHH。
30.非実質細胞と共培養するのに使用するための、パラグラフ20~24のいずれかのCMHH。
31.低温保存においてHHを懸濁するのに使用するための、パラグラフ20~24のいずれかのCMHH。
32.単離および/または保存後の回復ならびに肝機能の確立のためにHHを培養する方法であって、
第1のフェーズにおいて第1の細胞培養培地である量のHHを第1の期間培養するステップと、
上記量のHHから第1の細胞培養培地を除去し、続いて2フェーズにおいて第2の細胞培養培地を用いて上記量のHHを第2の期間培養するステップと
を含み、
第1の細胞培養培地が、DMSOを補充した細胞培養培地を含み、第2の細胞培養培地が、DMSO、DMSO2またはTMSOを補充した細胞培養培地を含む、方法。
33.単離および/または保存後の回復ならびに肝機能の確立のためにHHを培養する方法であって、
第1のフェーズにおいて第1の細胞培養培地である量のHHを第1の期間培養するステップと、
上記量のHHから第1の細胞培養培地を除去し、続いて第2のフェーズにおいて第2の細胞培養培地を用いて上記量のHHを第2の期間培養するステップと
を含み、
第1の細胞培養培地は、ジメチルスルホキシド(DMSO)を補充した細胞培養培地を含み、第2の細胞培養培地は、DMSO2またはTMSOを補充した細胞培養培地を含み、
第2の細胞培養培地が、DMSOを含まない、方法。
34.第1の期間が、少なくとも4日間および最長2ヵ月であり、第1のフェーズにおいて培養された上記量のHHが、細胞極性、胆細管によって特徴付けられる細胞間構造および/または健康な個体の成熟肝細胞もしくは肝臓組織の肝機能を呈する対照HHと同等の遺伝子発現レベルを確立する、パラグラフ32または33の方法。
35.第1の期間が、約7日間であり、第1の(回復)フェーズの細胞培養培地が、3または4日間毎に任意選択で新たにされる、パラグラフ32または33の方法。
36.第2のフェーズにおいて培養される上記量のHHが、それだけには限らないが、アルコール脱水素酵素(ADH)、アルデヒドデヒドロゲナーゼ(ALDH)、シトクロムP450ファミリー3サブファミリーAメンバー4(CYP3A4)およびシトクロムP450ファミリー2サブファミリーEメンバー1(CYP2E1)などの肝細胞代謝遺伝子の生理的レベルの発現を有し;または第2のフェーズにおいて培養される上記量のHHが、アルコール、非生体物質、ビタミンAもしくはその組合せを代謝する、パラグラフ32または33の方法。
37.第1の細胞培養培地が、DMSOを補充した肝細胞培養培地またはCMHHであり、肝細胞培養培地またはCMHHが、DMSO、標準的な細胞培養基礎培地、ならびにL-プロリン、インスリン、デキサメタゾン、EGF、Asc-2P、HEPES、ペニシリン-ストレプトマイシン、ヒト血清および/またはFBSのうちの1つもしくは複数を含む、パラグラフ32~36のいずれか1つの方法。
38.第2の細胞培養培地が、DMSO、DMSO2もしくはTMSOを補充した肝細胞培養培地またはDMSO、DMSO2、もしくはTMSO、標準的な細胞培養基礎培地、ならびにL-プロリン、インスリン、デキサメタゾン、EGF、Asc-2P、HEPES、ペニシリン-ストレプトマイシン、ヒト血清および/もしくは熱不活化FBSのうちの1つもしくは複数を含むCMHHである、パラグラフ32~36のいずれかの方法。
39.第1または第2の細胞培養培地が、最終濃度約2%容積/容積または281.6mMのDMSOを含有する、パラグラフ32~38のいずれかの方法。
40.第2の細胞培養培地が、終濃度約140.8mMでDMSO2を含有する、パラグラフ32~38のいずれかの方法。
41.第2の細胞培養培地が、最濃度約70mMでTMSOを含有する、パラグラフ32~38のいずれか一項に記載の方法。
42.第1の細胞培養培地が、標準的な細胞培養基礎培地中の2(容積/容積)%または286.1mM DMSO、15μg/mL L-プロリン、0.25μg/mLインスリン、50nMデキサメタゾン、5ng/mL EGF、0.1mM Asc-2P、20mM HEPES、100IU/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシンおよび10%血清を含み;
第2の細胞培養培地が、標準的な細胞培養基礎培地中の、それぞれ281.6mM、140.8mMもしくは70.4mM DMSO、DMSO2もしくはTMSO、15μg/mL L-プロリン、0.25μg/mLインスリン、50nMデキサメタゾン、5ng/mL EGF、0.1mM Asc-2P、20mM HEPES、100IU/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシンおよび10%血清を含む、パラグラフ32~41のいずれかの方法。
43.第1の細胞培養培地が、標準的な細胞培養基礎培地中の2(容積/容積)%または286.1mM DMSO、15μg/mL L-プロリン、0.25μg/mLインスリン、50nMデキサメタゾン、0.1mM Asc-2P、20mM HEPES、100IU/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシンおよび10%血清を含み;
第2の細胞培養培地が、標準的な細胞培養基礎培地中のそれぞれ281.6mM、140.8mMもしくは70.4mM DMSO、DMSO2もしくはTMSO、15μg/mL L-プロリン、0.25μg/mLインスリン、50nMデキサメタゾン、0.1mM Asc-2P、20mM HEPES、100IU/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシンおよび10%血清を含む、パラグラフ32~41のいずれかの方法。
44.第1の細胞培養培地が、標準的な細胞培養培地中の0.5%~5%(容積/容積)DMSO(5~25μg/mL L-プロリン、0.1~0.5μg/mLインスリン、10~100nMデキサメタゾン、0~10ng/mL EGF、0.01~1mM Asc-2P、10~50mM HEPES、10~300IU/mLペニシリン、10~300μg/mLストレプトマイシンおよび2~20%血清を含み;
第2の細胞培養培地が、標準的な細胞培養基礎培地中の50~300mM DMSO、DMSO2またはTMSO、5~25μg/mL L-プロリン、0.1~0.5μg/mLインスリン、10~100nMデキサメタゾン、0~10ng/mL EGF、0.01~1mM Asc-2P、10~50mM HEPES、10~300IU/mLペニシリン、10~300μg/mLストレプトマイシンおよび2~20%血清を含む、パラグラフ32~41のいずれかの方法。
45.HHによるアルコール代謝の促進における候補薬剤の成績またはHHに対する候補薬剤の毒性をアッセイするのに使用するための方法であって、第2の細胞培養培地中で、第2のフェーズにおいて培養された上記量のHHを候補薬剤と接触させるステップと、候補薬剤との接触前に上記量のHHによるアルコールの代謝または候補薬剤の排出の第1のレベルを測定するステップと、候補薬剤の存在下または接触後に、上記量のHHによるアルコールの代謝または候補薬剤の排出の第2のレベルを測定するステップとを含む、パラグラフ32~44のいずれかの方法。
46.DMSO2またはTMSOを補充した細胞培養培地を含み、細胞培養培地がDMSOを含まない、HHの肝機能を確立し、維持するためのHH培養培地。
47.DMSO2またはTMSOが、標準的な細胞培養基礎培地中でそれぞれ約140.8mMまたは70.4mMの濃度に到達するように補充され、基礎培地が、L-プロリン、インスリン、デキサメタゾン、EGF、Asc-2P、HEPES、ペニシリン-ストレプトマイシン、ヒト血清および/または熱不活化FBSのうち1つもしくは複数をさらに含む、パラグラフ46のHH培養培地。
48.標準的な細胞培養基礎培地中の140.8mM DMSO2、15μg/mL L-プロリン、0.25μg/mLインスリン、50nMデキサメタゾン、5ng/mL EGF、0.1mM Asc-2P、20mM HEPES、100IU/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシンおよび10%血清を含む、パラグラフ46または47のHH培養培地。
49.標準的な細胞培養基礎培地中の70.4mM TMSO、15μg/mL L-プロリン、0.25μg/mLインスリン、50nMデキサメタゾン、5ng/mL EGF、0.1mM Asc-2P、20mM HEPES、100IU/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシンおよび10%血清を含む、パラグラフ46または47のHH培養培地。
50.標準的な細胞培養基礎培地中の50~200mM DMSO2またはTMSO、5~25μg/mL L-プロリン、0.1~0.5μg/mLインスリン、10~100nMデキサメタゾン、1~10ng/mL EGF、0.01~1mM Asc-2P、10~50mM HEPES、10~300IU/mLペニシリン、10~300μg/mLストレプトマイシンおよび2~20%血清を含む、パラグラフ46~49のいずれかのHH培養培地。
51.第1の細胞培養培地を保存する第1の容器であって、前記第1の細胞培養培地がDMSOを補充されている第1の容器;ならびに
第2の細胞培養培地を保存する第2の容器であって、前記第2の細胞培養培地がDMSO、DMSO2および/またはTMSOを補充されている第2の容器
を含む、HHを培養するためのキット。
52.第1の細胞培養培地を保存する第1の容器であって、前記第1の細胞培養培地がDMSOを補充されている第1の容器;ならびに
第2の細胞培養培地を保存する第2の容器であって、前記第2の細胞培養培地がDMSO2および/もしくはTMSOを補充され、DMSOを補充されていない第2の容器
を含む、ヒト肝細胞を培養するためのキット。
53.HHに対する薬剤の毒性または薬剤の薬物代謝および薬物動態(DMPK)をアッセイする方法であって、
DMSO2を補充され、DMSOを補充されていない培地中である量のHHを培養するステップと;
薬剤を、DMSO2を補充した培地中で培養された上記量のHHと接触させるステップと;
薬剤の存在下もしくは薬剤との接触後に上記量のHHに対する毒性のレベルを測定するステップ、または薬剤の存在下もしくは薬剤との接触後に上記量のHHによる薬剤の代謝もしくは排出のレベルを測定するステップと
を含む方法。
54.薬剤が、エタノール、メタノール、エチレングリコール、イソプロパノールまたはその混合物を含むアルコール化合物である、パラグラフ53の方法。
55.接触および測定するステップが、密封装置中で実行される、パラグラフ53または54の方法。
56.毒性のレベルが、それだけに限らないが、上記量のHH中のシトクロムP450(CYP)酵素など、非生体物質代謝酵素の発現または機能を定量化することによって測定される、パラグラフ53~55のいずれかの方法。
57.毒性のレベルが、上記量のHH中のアセトアルデヒドなど、アルコールの毒性代謝産物、またはグルタチオンの還元、細胞死経路の活性化状態を定量化することによって測定される、パラグラフ53~55のいずれかの方法。
58.アルコールまたはビタミンAの代謝を促進するための候補薬剤をアッセイする方法であって、
DMSO2を補充され、DMSOを補充されていない培地中である量のHHを培養するステップと;
候補薬剤の存在下で、DMSO2を補充した培地中で培養された上記量のHHをアルコールまたはビタミンAと接触させるステップと;および
候補薬剤の存在下もしくは薬剤との接触後に上記量のHHによるアルコールまたはビタミンAの代謝のレベルを測定するステップと
を含む方法。
59.使用される培地が、パラグラフ20~24のいずれかのHH由来馴化培地である、パラグラフ32~58のいずれかの方法。
【実施例】
【0128】
以下の例は、請求される本発明をよりよく例示するために提供されるものであり、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきでない。特定の材料について言及される範囲において、これは単に例示目的であり、本発明を限定することを意図しない。当業者であれば、発明の能力を行使することなく、本発明の範囲から逸脱することなく同等の手段または反応物を開発しうる。
【0129】
[実施例1]
HHの2ステップ培養方法の組成物およびレジメン。
維持肝細胞の細胞運命および肝機能は、2ステップ培養方法を必要とし、フェーズ1が、細胞単離手順および凍結-解凍プロセスの間に起こる細胞障害からの回復を促進する期間であることを発見した。このフェーズは、in vitro培養を少なくとも4日間、好ましくは7日間必要とする。フェーズ1の間に、「HH回復培地」(表1および表3)を使用する方法を用いて、HHは、細胞極性および胆細管などがあるがこれに限定されない細胞間構造を復旧した。形態学的回復に加えて、フェーズ1により、HHが遺伝子転写およびタンパク質発現レベルで肝細胞の特徴を取り戻すことも可能になった。フェーズ1培養培地の堅牢性を、HHの公的に利用可能な他の培養培地と厳しく比較し、本方法が、これら条件[HCM(商標)肝細胞培養培地bulletkitもしくはHMM(商標)肝細胞基本培地、両方ともLONZA製、またはTAKARA製CELLARTIS(登録商標)POWER(商標)初代肝細胞培地などの市販の肝細胞培養培地]より実質的に優れていることを見出した(
図1)。フェーズ1の培養条件が、in vitro培養されたHHの細胞運命維持を2ヵ月まで可能にすることも見出した。しかしながら、フェーズI培養条件が、アルコール代謝および薬物代謝などがあるがこれに限定されない肝細胞の代謝機能を実質的に妨げることを発見した(
図2および
図3)。この注釈は、回復および細胞運命維持を可能にする培養条件が、実験的ツールとしてのHHの汎用性を損なうことを示す。
【0130】
【0131】
【0132】
【0133】
フェーズ1培養条件がHHの基本的な代謝機能を妨げる機序を探索して、培養培地に含有されるDMSOが原因であることを同定した(
図2、
図3および
図4)。重要なことに、培養培地のDMSOの中止は、肝細胞機能および形態構造の急速な悪化をもたらすので、実現不可能であることを発見した(
図5)。フェーズ1中にDMSOなしでHHを培養することが、細胞単離/保存手順に起因する細胞傷害およびストレスからの回復を促進しないであろうことも明らかにした(
図6)。
【0134】
DMSOの代用品(すなわち、DMSOを置き換える)を捜索し、その代用品は、肝細胞の代謝機能に抑制的でない一方で、最終分化したHHの細胞運命を維持する能力があることになる。試験した多数の有機化合物の中から(表3;
図7および
図8)、DMSOの望ましい代用品として、DMSOの酸化型であるDMSO2を同定した。DMSO2を含有するが、DMSOを含有しない培地によるフェーズ2培養(7日間、およびその後)は、HHが、ヒト肝臓と同程度のレベルでアルコールを代謝することを可能にし(
図2および
図4)、フェーズ2培養培地(DMSO2含有)が、アルコール性肝臓疾患のin vitro研究のためのプラットフォームとして機能する可能性を示した。
【0135】
したがって、HHが、フェーズ2(例えば、DMPKおよび様々な肝臓疾患の研究)で肝細胞の基本的な機能を呈することができる培養条件を確立し、その条件はフェーズ1の間(0日~7日間)に完全に回復したHHの細胞運命を損なわない。表4および表6を参照のこと。
【0136】
【0137】
【0138】
【0139】
加えて、フェーズ1培養培地(DMSO含有)で培養されたHHは、CYP3A4およびCYP2E1の発現を超生理学的レベルまで促進し、DMSOを含有する培地と培養されたHHが、これら酵素の代謝機能を強く妨げることを見出した(
図6および9)。これら酵素は、薬物代謝、さらに薬物毒性の研究における中心的なプレーヤであるので、DMSO含有培地は、DMPKの研究ツールとしてのin vitro培養されたHHの汎用性を無効にする。対照的に、DMSO
2含有培地で培養されたHHは、非生体物質の代謝においてDMSOで培養されたHHより大いに優れた能力を示した(
図3)。したがって、DMSO
2含有培地により、研究者は、DMPKの研究にin vitro培養されたHHを適用することができる。これら結果は、DMSO
2を含む細胞培養培地が、商業化にとって大きな潜在性を有することを全体的に示した。
【0140】
全体として、HHの回復(フェーズ1)に適した培養条件は、最終分化したHHの特徴を取り戻し、維持するのに役立つが、HHの多くの酵素活性に対するDMSOの強力な抑制効果のため、研究ツールとしてのHHの汎用性を限定する。影響を受ける代謝経路には、それだけには限らないが、アルコール代謝経路および非生体物質代謝経路があり、それによりアルコール性肝臓疾患(ALD)およびDMPKの研究におけるHHの有用性がそれぞれ阻止される(
図2、
図3、
図4および
図9)。
【0141】
【0142】
[実施例2]
ALDの研究に対するDMSO2含有培地の使用。
DMSOを含むフェーズ1培地は、2つの主要なアルコール代謝経路、すなわち、ADH経路およびCYP2E1経路を有意に妨げる。研究者が、慢性肝臓疾患(CLD)の最も有意な原因であり、有効な治療的介入がないALD(米国におけるCLDのほぼ50%が、ALDによる)の研究に、回復されたHHを利用できる方法(培養条件)は存在しなかった。したがって、ALDの研究に適した培養条件の確立は、巨大な商業化の潜在性を持つ技術的進歩である。
【0143】
DMSO代用品の探索において、多数の有機化合物をスクリーニングした。化学物質のリスト(表7)は、分子サイズ、細胞培養培地に対する可溶性、標準的な温度における安定性(融解および沸騰温度)、取り扱い可能性(重大な化学的危険性の懸念がない)および費用などがあるがこれに限定されない、DMSOと共有する特徴に基づいて選択される。これら化学物質は、DMSOの代用として細胞培養培地に添加され、回復されたHHに直接毒性を引き起こさない最も高い濃度について最初にアッセイされた。可能な限り高い濃度で、回復されたHH(7日齢)を、3~4日間毎の頻度で培地を新しくしながら7および14日間さらに培養した。14日および21日目に、細胞を、機能的な評価に加えて形態学的および細胞運命評価に供した(
図7および
図8)。
【0144】
試験したそれらの中で、TMSOおよびDMSO2だけが、DMSO含有培地と同程度のレベルで形態構造およびマーカー遺伝子発現を維持する能力がある2つの条件である(
図7および
図8)。追跡実験から、TMSO含有培地が、DMSO含有培地とアルコール代謝経路に対して等しく抑制的であることが明らかになり(
図10)、一方DMSO2含有培地は、HHが、ヒト肝臓の能力に似たレベルでエタノールを消費することを可能にする(
図4)。
【0145】
研究は、密封装置を用いてHHにin vitroアルコール処理を実行することが重要であることも発見した(
図11)。エタノールの揮発性は高いため、エタノールは、肝細胞が代謝する速度より非常に高い速度で急速に蒸発する。その結果、DMSO2含有培地で培養されたエタノール処理HHは、密封装置が適用される場合にのみALDに顕著な表現型である脂肪滴(LD)の蓄積を生ずる。ALDの研究に対する密封装置の使用は、技術的革新の別の態様である。
【0146】
HHを培養するためにDMSOをDMSO2に代える(すなわち、DMSOをDMSO2に置き換える)ことにより、細胞が完全回復を達成したら(DMSO含有培地で少なくともおよそ4日間、好ましくは7日間)、HHはアルコール(エタノール)を代謝することが可能になる(
図2、
図3および
図4)。DMSO
2含有培地により、HHは、メタノール、エチレングリコールおよびイソプロパノールなど、ヒト毒物学と関連性が高い他の型のアルコールの代謝ならびに毒性を試験することが可能になる。DMSO2含有培地により、HHはビタミンA(これらも、ADHによって代謝される)を代謝することが可能になり、したがって、HHは、ビタミンA生物学の研究に使用されることが可能になる。密封装置の適用は、ALDの研究(または高揮発性化学物質を用いるあらゆる代謝研究)の既定の実験条件になることになる(
図12)。
【0147】
[実施例3]
薬物毒性およびDMPKの研究におけるDMSO2含有培地の使用。
DMPK研究は、薬物開発のプロセスにおける決定的なマイルストーンとして役立つので、in vitro培養されたHHの最高の適用の1つである。FDAおよび他の国の監督機関は、臨床研究前に新たに開発された化合物の前臨床スクリーニングのためのHHの利用を命じている。したがって、HHは、前臨床研究スクリーニングツールとしてのその役割を満たすために、ヒト肝臓と同程度のレベルで完全に機能する薬物代謝経路を有するように義務付けられている。DMSO含有培地とDMSO2含有培地で培養されたHH間の類似性および差異を調査する研究において、結果から、DMSO含有培地が、非生体物質の取り込み、代謝および排出に関係する遺伝子を上方調節することが全体的に明らかになった(
図1、
図6および
図9)。例えば、研究は、50%を超える医薬の代謝に関与する最も重要な薬物代謝酵素であるCYP3A4の著しい上方調節を示した。加えて、研究は、DMSOがCYP3A4の代謝活性を強力に妨げることを見出し、薬物代謝酵素の超生理学的誘導が、阻害の程度を反映している可能性があることを示した(
図3および
図9)。そのような相互変化が、CYP2E1においても見られ(
図3および
図9)、DMSO含有培地を用いる条件が、DMPKの研究に適していないことをさらに示した。
【0148】
したがって、研究は、DMSO2含有培地で培養された細胞が、生理的レベルでのCYP3A4およびCYP2E1の発現存在量を呈することを実証し、DMSO2で培養されたHHが、薬物代謝経路の点で生理的関連性を維持することを示した(
図3および
図9)。さらに、これら酵素の非生体物質代謝活性に対するDMSO2の影響は、DMSO含有培地より実質的に少ない(
図3および9)。
【0149】
研究は、DMOS2で培養された細胞が、薬物-薬物相互作用および薬物代謝酵素誘導の研究に適していることも明らかにした。例えば、古典的な抗発作(てんかん)薬の1つであるカルバマゼピンは、CYP3A4を誘導することが公知であり、さらに、CYP3A4によって代謝される。観察によると、DMSOではなくDMSO2で培養されたHHは、7日間のカルバマゼピン処理の間に用量依存的様式でCYP3A4誘導を再現した。類似の結果は、リファンピシンで示される。加えて、DMSO2含有培地でなくDMSO含有培地で維持されたHHが、超生理学的発現レベルのCYP2E1発現、および誘導物質(エタノールおよびイソニアジド)によるCYP2E1誘導の欠如を示すことを観察した(
図9)。
【0150】
総合すれば、本発見は、DMSO2含有培地が、DMPKの研究用としてのin vitro培養されたHHの汎用性を大いに拡大することを示す。DMSO含有培地でなくDMSO2含有培地は、非生体物質代謝のin vitro研究の改善されたプラットフォームに役立つ。DMSO2含有培地の培養条件により、DMSO系培地の感度を超えてはるかに高い感度での生体異物代謝酵素誘導の検出が可能になる。DMSO2含有培地の培養条件は、長期培養にわたって生じる薬物毒性の検出のための実験的プラットフォームとして役立つ。DMSO2含有培地培養条件は、薬物-薬物相互作用(多薬投与)に起因する毒性を検出するための改善された実験条件を提供する。
【0151】
[実施例4]
in vitro培養ヒト肝細胞の馴化培地の生産およびその固有の生物学的効果
CMHHの発見は、HLCMの生産における本技術により可能になった。手短に言えば、1匹のHLCMを生産するには、およそ105個のPHHおよび/またはHLCM-HHが必要であり、それは宿主マウス(uPA-SCID系統など)の脾臓に注射される。これは、毒性導入遺伝子(uPA)の過剰発現がある内在性マウス肝細胞が、移植されたヒト肝細胞との競合の結果増殖しない宿主マウスの肝臓においてPHHの強力な増加をもたらす。(PHH移植後に、内在性マウス肝細胞は減少し;一方、PHH移植のない宿主マウスにおいて、マウス肝細胞は増殖することができ、減少しない)。PHH移植後の8週間後、宿主マウスの肝臓は、95%までヒト肝細胞によって置き換えられることになる。結果として、1匹のHLCMの肝臓から、2~3×108個のヒト肝細胞が得られ、それによりHLCM-HHの大量生産が可能になる。したがって、本技術は、HLCM-HHの大量生産に使用されることになるHLCM-HHの安定な供給を提供する。加えて、CMHHの生産においてPHHに勝るHLCM-HHの優位性は、生存率および培養可能性である(Sugahara G. et al., Semin Liver Dis. 2020 May;40(2):189-212)。したがって、HLCM-HHの使用は、PHHの使用に勝る経済的優位性を有する。
【0152】
材料および方法:HLCMは、肝臓中のヒト肝細胞の増加の程度、すなわち、置き換え指数(R.I.)の品質評価に供される。血清/血中ヒトアルブミンレベルは、R.I.とよく一致することが示された。10mg/mLより高い血中アルブミンレベルを持つHLCMは、高R.I.(>70%)と見なされる。高R.I.を持つHLCMは、コラゲナーゼ潅流に基づく方法によるヒト肝細胞の単離に優先的に供される。細胞品質(収率および生存率)の評価を受けて、HLCM由来ヒト肝細胞(HLCM-HH)は、細胞密度0.5~5×10
5個細胞/cm
2(または一部の実現例では、2.1~4.2×10
5個細胞/cm
2)で、コラーゲン[他の型の細胞外基質(ECM)を含む/含まない]でコーティングされている細胞培養フラスコ/ディッシュ上に平板培養される。同様に、PHHまたはHepaRG細胞は、コラーゲンコートされた細胞培養フラスコ/ディッシュ上へ平板培養される。[HEPARG(商標)細胞株は、初代ヒト肝細胞の特徴を多く保持している不死化肝細胞株である。HEPARG(商標)細胞は、最終分化しており、簡便な冷凍保存形式で提供される。]これら細胞は、DMSOまたはDMSO2(またはその類似物もしくは等価物)を補充されたHCGM(すなわち、dHCGM、d2HCGM、dHMMまたはd2HMM)培地(表8~表10)(DMSO2を含有するdHCGMなどがあるがこれに限定されない)で6ヵ月間(例えば、少なくとも21日間、少なくとも4、5、6、7、8週間、または約2、3、4、5もしくは6ヵ月間)培養される。細胞播種4日後(好ましくは7日後)、培養培地は、24~48時間毎に置き換えられ、細胞とインキュベートされた培地は採取され、ヒト肝細胞馴化培地(CMHH)として保存される(
図12)。CMHHの生物学的効果は、以下の節で述べる通り固有かつ強力である。
【0153】
【0154】
【0155】
【0156】
CMHHの生物学的効果は、HLCM-HHを使用して評価され、その効果は、CMHHとインキュベートされたHHの細胞構造が、多角形-立方体様細胞形態構造の再建および細胞間の緊密な接触の間の胆細管の形成によって証明される、健康な個体の肝臓組織中で最終分化したヒト肝細胞の細胞構造をよく再現していることを実証する(
図13)。加えて、胆汁分泌機構に関係するトランスポータの1つであるMRP2の蛍光基質を使用して、CMHH処理HHにおいて生じた胆細管の機能を確認した(
図14)。さらに、CMHHで処理されたHHは、肝細胞マーカー遺伝子の有意な上方調節、胆管細胞/肝前駆細胞マーカー遺伝子の下方調節、およびHHの細胞運命を損なうことが公知の経路であるTGF-β/Yapシグナル伝達の阻害を明らかにした(
図15)。さらに、予想した通り、新しいdHCGMではなく、CMHHで培養されたHHが、肝臓指向性ウイルス性病原体の1つであるB型肝炎ウイルス(HBV)に対する罹患性およびHBVに対する抗ウイルス薬に対する応答(
図16および
図17)、ならびに非生体物質代謝経路の機能の増強(
図18)を示したことは;CMHHで処理されたHHが、真正の最終分化したヒト肝細胞の細胞運命を呈することをさらに示した。最後に、DMSO2含有肝細胞培養培地(dHCGM)で増やされたCMHHが、DMSO含有培地で調製されたものと比較して同レベルの生物学的効果を保有することを見出した(
図15)。
【0157】
in vitro培養された従来通りの肝細胞腫細胞株(HepG2、Huh7細胞)、ならびに293細胞およびマウス初代肝細胞から得た馴化培地も試験し、その全てが、CMHHに見られた生物学的効果を欠いている(
図19および
図20)。対照的に、HLCM-HH(異なる2名のドナー)またはPHH(異なる3名のドナー)で増やされたCMは全て、成熟した単核または二核細胞の多角形-立方体様の外観を含めた成熟し、最終分化したヒト肝細胞に特有の外見を維持する能力があり、緊密な細胞-細胞接触をよく確立し、胆細管形成を促進する(
図21)。加えて、HLCM-HH(2名の異なるドナー)またはPHH(3名の異なるドナー)で増やされたCMHHは全て、「肝細胞マーカー」遺伝子(CYP2C9、CYP2D6、OATP1B1およびALDH2)の上方調節/維持、および脱分化/分化形質転換遺伝子(TGFβ1、TGFβ2、Cyr61、CTGFおよびCK19)の抑制を支持する能力があった(
図22)。
【0158】
マトリゲル(登録商標)および5種類の化学物質の組合せ(すなわち、5C)など、in vitro培養された肝細胞の成熟および機能を増強させるために提案された方法論がいくつか存在した(Xiang C., Science. 2019 Apr 26;364(6438):399-402)。比較すると、本産物(CMHH)は、成熟HHの特徴である外見の維持に対して実質的により強力な効果を呈した(
図23)。さらに、本遺伝子発現分析により、CMHHの効果が、マトリゲル(登録商標)または5C[5種類の化学物質:フォルスコリン(FSK;アデニル酸シクラーゼ活性化因子)、SB431542(SB43;TGF-β阻害剤)、DAPT(Notch阻害剤)、IWP2(Wnt阻害剤)、およびLDN193189(BMP阻害剤)]の効果と大きく異なることが明らかになった(
図24)。本分析により、特にHHの脱分化/分化形質転換の防止においてマトリゲル(登録商標)および5Cの生物学的効果が、CMHHと異なっており、弱いことが明らかになった。
【0159】
CMHH中に存在する体液因子も分析した。最初に、サイズ排除カラムによって濾過したCMの分析は、HHの細胞運命および機能的維持に関与するCMHHの鍵となる生物活性組成物が、HHから分泌されるタンパク質分子によって大部分が媒介されることを示す(
図25)。CMHH中に含有されるタンパク質分子の評価は、マトリゲル(登録商標)との明確な対比である、LAMC2、FGA、SERPINA3およびTGM2の高い存在量を明らかにする(
図26)。加えて、CMHHは、A2MG、A1AT、アルブミンなどがあるがこれに限定されない肝細胞に固有の分泌タンパク質を含有し、そのほとんどは、肝細胞保護特性を備える。
【0160】
総合すれば、細胞外基質とHHに固有の分泌タンパク質との組合せから構成されるCMHH中のヘパトカインは、in vitro培養ヒト肝細胞に特殊化した生物学的機能を呈する。
【0161】
[実施例5]
初代肝細胞の回復および維持に対するCMHHの適用
in vitroでの初代ヒト肝細胞(PHH)の回復および維持に対するCMHHの生物学的効果を試験した。一般に、初代肝細胞における生存率、培養可能性および寿命は、ロット間およびドナー間で実質的に異なり;そのため、最適な細胞密度での細胞播種はほとんど達成されず、結果として本来の特性が消失する。したがって、PHHは、汎用性が限られた、すぐに使用期限が切れる研究ツールと認められた。冷凍保存されたヒト肝細胞の回復および細胞運命維持に対するCMHHの生物学的効果を試験した。この目的のために、冷凍保存されたHLCM-HHを解凍し、CMHHまたは新しいdHCGMのいずれかと7日間培養し、その後光学顕微鏡によって細胞構造を、蛍光顕微鏡的分析によって胆汁分泌機構を、および肝細胞マーカー遺伝子の発現存在量を評価した(
図27、
図28および
図29)。凍結-解凍プロセスに関連するストレスおよび傷害からのヒト肝細胞の強力な回復を観察し;CMHHとのインキュベーションは、最終分化したヒト肝細胞の特徴である適切な設計上の構造の再建、機能、およびマーカー遺伝子の発現存在量を支持し、それは、新しいdHCGMおよび製造業者によって供給される培養培地との明確な対比である。
【0162】
in vitroでのマウス、ラットおよびイヌの初代肝細胞の回復および維持に対するCMHHの生物学的効果を試験した。これら種の初代肝細胞の生存率、培養可能性および寿命は、HLCM-HHより実質的に低く;そのため、最適な細胞密度での細胞播種はほとんど達成されず、結果として本来の特性が消失する。PHHと類似して、マウス、ラットおよびイヌ初代肝細胞とCMHHとのインキュベーションは、初代肝細胞の形態学的外見および機能の特徴の維持における強力な生物学的効果を実証する(
図30)。
【0163】
CMHHの強力な効果は、HHの細胞運命および機能の維持のためだけではない可能性があり、幹細胞由来肝細胞様細胞、すなわち、iHep(誘導性肝細胞様細胞)のさらなる分化に必要な環境を提供している可能性がある。その結果、形態学的構成に対するCMHHの効果を試験した。PHHおよびHLCM-HHに対する効果と類似して、CMHH処理は、多角形-立方体様の外観を呈するヒト肝細胞様細胞間の胆細管の形成を促進する(
図31)。単一細胞RNA配列決定手法によりiHepの特徴に対するCMHHの効果を評価した(
図32および
図33)。古典的次元縮小手法である主成分分析(PCA)は、CMHHで処理されたHLCM-HHとiHep間の次元が、iHep培養培地で処理されたものよりはるかに低いことを実証する。
【0164】
CMHHが、Clip細胞の再分化を促進するかどうかも試験する。Clip細胞とCMHHとのインキュベーションが、新しいdHCGMで培養された細胞と比較して肝細胞マーカー遺伝子の有意な上方調節を促進する(
図34)ことは、CMHHが、細胞運命維持特性だけでなく肝細胞誘導性分化特性も有することも示す。
【0165】
ヒト肝細胞の細胞運命維持に対するCMHHの好ましい効果および堅牢性を確認するために、in vivo研究を行った。CMHHまたはdHCGM(対照培地)のいずれかと培養されたヒト肝細胞は、ヒト化肝臓キメラマウスの宿主マウス内に移植され、生着および増加能力の程度が監視された。CMHH処理とdHCGM処理両方のヒト肝細胞から、移植後2日目に血中ヒトアルブミンレベルにより、同程度の生着が明らかになる(
図35)。しかしながら、後の時点、移植後14日目および21日目に、CMHH処理HHは、血中ヒトアルブミンレベルに基づいてdHCGM処理HHより強力な増加能力を呈する。HLCM宿主マウスの肝臓内で増殖する潜在性は、初代肝細胞の品質の代用となるので、このin vivo研究の結果は、CMHHの生物学的効果に対する証拠のさらなる積み重ねを与える。
【0166】
最後に、冷凍保存されたHLCM-HHの回復および運命維持に対するCMHHの有用性を試験した。この目的のために、冷凍保存されたHLCM-HHは、解凍され、上の節に示される最適化条件で播種され、CMHHまたは新しいdHCGMの存在下で培養された。予想通りに、CMHH処理は、形態構造、および最終分化した肝細胞と同程度のレベルで肝細胞マーカー遺伝子の発現存在量を大いに改善した(
図36および
図37)。
【0167】
要約すると、本研究は、CMHHが、初代肝細胞の回復および維持を強力に支持する培養補助剤となることを示す。これら効果は、新たに単離されたか冷凍保存されていたかにかかわらず、初代ヒト肝細胞だけでなく、HLCM-HH、マウス、ラットおよびイヌの初代肝細胞にも固有でない。加えて、CMHHが、未成熟肝細胞(例えば、iHep、CLiP)のさらなる成熟を促進することは、肝臓移植の代わりとなる幹細胞由来肝細胞移植療法の今後の開発に寄与する可能性が高いことになる。
【図】
【図】
【図】
【国際調査報告】