IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 共信醫藥科技股分有限公司の特許一覧

<>
  • 特表-肥満細胞腫瘍を治療するための方法 図1
  • 特表-肥満細胞腫瘍を治療するための方法 図2A
  • 特表-肥満細胞腫瘍を治療するための方法 図2B
  • 特表-肥満細胞腫瘍を治療するための方法 図2C
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】肥満細胞腫瘍を治療するための方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/18 20060101AFI20240905BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240905BHJP
   A61K 31/445 20060101ALI20240905BHJP
   A61K 31/40 20060101ALI20240905BHJP
   A61K 31/397 20060101ALI20240905BHJP
   A61K 31/495 20060101ALI20240905BHJP
   A61K 31/337 20060101ALI20240905BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240905BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20240905BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20240905BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20240905BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240905BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20240905BHJP
   A61K 9/28 20060101ALI20240905BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20240905BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20240905BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20240905BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20240905BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20240905BHJP
   A61K 9/72 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
A61K31/18
A61P35/00
A61K31/445
A61K31/40
A61K31/397
A61K31/495
A61K31/337
A61K47/10
A61K47/12
A61K47/20
A61K47/34
A61K9/08
A61K9/14
A61K9/28
A61K9/70
A61K9/48
A61K9/16
A61K9/06
A61K9/107
A61K9/72
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519389
(86)(22)【出願日】2022-09-29
(85)【翻訳文提出日】2024-03-28
(86)【国際出願番号】 US2022045244
(87)【国際公開番号】W WO2023055944
(87)【国際公開日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】17/489,353
(32)【優先日】2021-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519226241
【氏名又は名称】共信醫藥科技股分有限公司
【氏名又は名称原語表記】GONGWIN BIOPHARM CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】3F.,No.80,Sec.1 Jianguo N.Road,Zhongshan District Taipei City 10491 Taiwan
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】楊 銓慶
(72)【発明者】
【氏名】林 懋元
(72)【発明者】
【氏名】鄭 淑穎
(72)【発明者】
【氏名】馮 翌榛
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076AA12
4C076AA17
4C076AA29
4C076AA31
4C076AA36
4C076AA53
4C076AA71
4C076AA93
4C076BB01
4C076BB11
4C076BB13
4C076BB15
4C076BB16
4C076BB21
4C076BB24
4C076BB25
4C076CC27
4C076DD37
4C076DD38
4C076DD42
4C076DD55
4C076EE23
4C076EE49
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA02
4C086BC02
4C086BC07
4C086BC21
4C086BC50
4C086CB22
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA13
4C086MA17
4C086MA22
4C086MA28
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA41
4C086MA43
4C086MA52
4C086MA56
4C086MA58
4C086MA59
4C086MA65
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZC61
4C206AA01
4C206AA02
4C206JA13
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA33
4C206MA37
4C206MA42
4C206MA48
4C206MA52
4C206MA55
4C206MA57
4C206MA61
4C206MA63
4C206MA72
4C206MA76
4C206MA78
4C206MA79
4C206MA85
4C206MA86
4C206NA05
4C206NA14
4C206ZB26
(57)【要約】
ベンゼンスルホンアミド誘導体および薬学的に許容される担体を含む、肥満細胞腫瘍を治療するための医薬組成物が提供される。また、当該医薬組成物を使用することにより、治療を必要とする対象における肥満細胞腫瘍を治療するための方法も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療有効量の医薬組成物を治療を必要とする対象に投与することを含む、対象における肥満細胞腫瘍を治療するための方法であって、
当該医薬組成物は、ベンゼンスルホンアミド誘導体およびその薬学的に許容される担体を含み、
当該ベンゼンスルホンアミド誘導体は下記式(I):
【化1】
(式中、R~Rは、H、C~Cの直鎖状または分岐状のアルキル基、C~Cの直鎖状または分岐状のアルコキシ基、C~Cのシクロアルキル基、C~Cのシクロヘテロアルキル基、アミノ基、およびハロ基からなる群から独立して選択され、またはRとRが互いに結合して環を形成し、および
~Rにおけるアルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロヘテロアルキル基および環は、独立して非置換であるか、または1つ以上の置換基で置換されている)
で表され、またはその薬学的に許容される塩である、方法。
【請求項2】
前記置換基は、フェニル基、ハロ基、オキソ基、エーテル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、スルホ基及びスルホンアミド基からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ベンゼンスルホンアミド誘導体は、パラトルエンスルホンアミド、オルトトルエンスルホンアミド、メタトルエンスルホンアミド、N-エチル-オルトトルエンスルホンアミド、N-エチル-パラトルエンスルホンアミド、N-シクロヘキシル-パラトルエンスルホンアミド、
【化2】
【化3】
【化4】
およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ベンゼンスルホンアミド誘導体は、パラトルエンスルホンアミド、オルトトルエンスルホンアミドまたはメタトルエンスルホンアミドである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記薬学的に許容される担体は、充填剤、結合剤、防腐剤、崩壊剤、滑沢剤、懸濁化剤、湿潤剤、生体適合性溶媒、浸透促進剤、界面活性剤、増粘剤、酸、香味剤、錯化剤、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記薬学的に許容される担体は、アルキレングリコール、セバシン酸、ジメチルスルホキシド、エタノール、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記アルキレングリコールは、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ベンゼンスルホンアミド誘導体は、前記医薬組成物の1重量%~50重量%の量で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ベンゼンスルホンアミド誘導体は、前記医薬組成物の20重量%~40重量%の量で存在する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記医薬組成物は、1重量%~50重量%のポリエチレングリコール400、1重量%~10重量%の1,2-プロピレングリコール、1重量%~10重量%のセバシン酸、1~20重量%の2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、0~20重量%のジメチルスルホキシド、および0~20重量%のエタノールの少なくとも1つをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記投与は、前記対象における肥満細胞腫瘍の除去を引き起こす、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記肥満細胞腫瘍は、イヌ肥満細胞腫瘍、ネコ肥満細胞腫瘍、ウマ肥満細胞腫瘍、ウシ肥満細胞腫瘍、またはヒツジ肥満細胞腫瘍である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記肥満細胞腫瘍は、皮膚肥満細胞腫瘍または内臓肥満細胞腫瘍である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記対象は、げっ歯類、マウス、サル、モルモット、イヌ、ネコ、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマ、ウサギ、およびヒトである、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記医薬組成物におけるベンゼンスルホンアミド誘導体は、約33mg/日~約10,000mg/日の治療有効量で対象に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記医薬組成物におけるベンゼンスルホンアミド誘導体は、約165mg/日~約3,300mg/日の治療有効量で対象に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記医薬組成物におけるベンゼンスルホンアミド誘導体は、約330mg/日~約1,650mg/日の治療有効量で対象に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記医薬組成物におけるベンゼンスルホンアミド誘導体は、治療期間または治療サイクル中に約33mg~約26,400mgの治療有効量で対象に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記医薬組成物は、腫瘍内、静脈内、皮下、皮内、経口、くも膜下腔内、腹腔内、鼻腔内、筋肉内、胸膜内、局所的に、または噴霧を通じて対象に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記医薬組成物は、注射製剤、乾燥粉末、錠剤、経口液剤、フレーク剤、フィルム剤、ロゼンジ剤、カプセル剤、顆粒剤、丸剤、ゲル剤、ローション剤、軟膏剤、乳化剤、ペースト剤、クリーム剤、点眼剤、軟膏からなる群から選択される形態である、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、肥満細胞腫瘍を治療するためのベンゼンスルホンアミド誘導体を含む医薬組成物、特に、その医薬組成物を使用することによる肥満細胞腫瘍に罹患している対象の治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
肥満細胞は、1879年にPaul Ehrlichによって発見された(Theranostics.10:10743-10768,2020)。骨髄CD34前駆細胞から発生する肥満細胞は、免疫系および神経免疫系で役割を果たす。肥満細胞は、活性化されると炎症因子を放出し、免疫細胞を動員する。肥満細胞は結合組織の一般的な細胞タイプの1つであり、皮膚、肺粘膜、消化管、口腔、結膜、鼻腔などの血管や神経の周囲のほとんどの組織に存在する(Journal of Allergy and Clinical Immunology.125(2,Supplement2):S73-S80,2010)。
【0003】
肥満細胞腫瘍とは、肥満細胞から構成される円形の細胞腫瘍であり、腫瘍に似た肥満細胞の集合体や結節を指す場合もある。肥満細胞腫瘍は、ヒトおよび多くの動物種において生じ得、通常、皮膚において、例えば、体幹もしくは手首における単発性疾患において、または時には肺において見出され得る。
【0004】
肥満細胞腫瘍は犬と猫によく見られ、臨床皮膚腫瘍症例の犬では16%~21%、猫では約20%を占める。肥満細胞腫瘍は、皮膚組織由来の肥満細胞で構成されており、このうち、50%が体や会陰部の皮膚や皮下組織、40%が手足、10%が頭頸部に発生しており、複数の皮膚のしこりが同時に現れることもある。臨床的には、単一または複数の腫瘍病変が外観上で見られる。さらに、腫瘍細胞は脾臓、肝臓、肺、腸などの体内の組織に侵入する可能性がある。臨床的には、肥満細胞腫瘍は中年および高齢者に多く見られる(British Veterinary Journal.142:1-19,1986)。
【0005】
肥満細胞腫瘍には通常、多数の腫瘍細胞集団が存在する。腫瘍細胞は、多くの小さな赤紫色の顆粒が存在する適度な量の細胞質を含む。Patnaik分類(Patnaik grading)によると、肥満細胞腫瘍は、以下の3つの等級に分類することができる:(1)腫瘍細胞は、有糸分裂期なしに良好に分化している;(2)腫瘍細胞は中間分化しており、核は大きく、わずかな多形性および少量の有糸分裂期を有する;(3)腫瘍細胞の分化が乏しく、細胞の大きさが異なり、大型で明白な核小体が見られることがあり、細胞質顆粒が少なく、有糸分裂が激しい。細胞分化のグレードと腫瘍細胞の細胞生物学的挙動によると、非定型硬化性肥満細胞増殖の第3グレードは、腫瘍細胞が皮下組織に浸潤し、腫瘍内で腫瘍細胞のサイズがさまざまであり、大きな細胞核と明らかな核小体があり、多形性であり、不完全に分化してることを含む。細胞分化のグレードおよび腫瘍細胞の細胞生物学的挙動に従って、非定型硬化性肥満細胞増殖の第3のグレードは、以下を含む:腫瘍細胞は皮下組織に浸潤し、腫瘍細胞のサイズは様々であり、大きな細胞核および明らかな核小体を有し、多形性であり、不完全に分化していることが腫瘍において見出されてもよい。細胞質顆粒の数は比較的少なく、特殊な色素(例えば、ギムザ、トルイジンブルー、およびアストラルブルー)でのみ染色できる。腫瘍化肥満細胞は、通常、少量の顆粒しか含まず、通常、アニソーサイトーシス、アニソーカリーサイトーシス、核ポロモーシス、および核対細胞質比の増加などの悪性指標を示す。細胞学的には、明らかな悪性相を呈する無顆粒性肥満細胞の場合は悪性とみなすことができる。
【0006】
肥満細胞腫の治療では、単一の独立した病変の場合には、大規模な外科的切除(腫瘍の縁から3cm以上)が行われ、手術部位や周囲のリンパ節の状態は、手術後3ヶ月毎に定期的に測定される。完全に切除できない場合または外科的に切除できない場合には、トリアムシノロンの腫瘍内注射が考慮されるが、治療効果にはばらつきがある。複数の病変がある場合には、プレドニゾロンを2mg/kg/日で2週間、1mg/kg/日で2週間、1mg/kgを隔日(48時間に1回)で投与する治療が考慮されるが、一時的に腫瘍が縮小したり、臨床症状が軽減したりする可能性がある。転移性症例または消化性潰瘍を合併した臨床症例の場合には、消化管に対する高ヒスタミン血症の影響を遅らせるために次の薬剤を使用できる:(1)ジフェンヒドラミンなどのH1ブロッカー;(2)シメチジン、ファモチジン、ラニチジンなどのH2ブロッカー;(3)オメプラゾールなどのプロトンポンプブロッカー。臨床的な消化性潰瘍の場合には、スクラルファートやミソプロストールなどの粘膜保護剤が潰瘍の制御に役立つ可能性がある。さらに、ロムスチン(CCNU)、ビンブラスチン、ビンクリスチンなどの化学療法薬もこれらの症例に有効である可能性がある。
【0007】
イヌ肥満細胞腫瘍の臨床予後は大きく異なり、予後の指標は組織学的グレードである。グレードI(分化良好)は予後良好(転移率<10%)を意味し、グレードIII(分化不良)は通常数ヶ月以内に再発または転移が発生することを意味する(転移率は55%~96%)。好銀性核小体染色組織化領域(AgNOR)やKi-67などの細胞増殖マーカーの増加は、予後不良を示す。腫瘍の位置も予後の指標となる。鼠径部、会陰、爪下、鼻口部、口腔、鼻腔などに発生する肥満細胞腫瘍は転移率が高いである。また、多様性は予後の参考指標としても使用できる。例えば、よく分化した良性腫瘍はボクサー(Boxer)においてより一般的であるが、悪性腫瘍は中国のシャーペイ(Chinese Shar Pei)においてより一般的である。
【0008】
現在、肥満細胞腫瘍の治療には、腫瘍を外科的に切除するほか、薬物療法も存在する。しかし、犬に対する薬の治療効果はまだ証明されていない。したがって、重篤な健康上の脅威を有するペットの犬および猫における肥満細胞腫瘍の高い発生率を考慮すると、現在の技術的限界を突破し、患者、医師および獣医の需要を満たすことができる肥満細胞腫瘍の治療のための医薬組成物を開発する必要性は満たされていない。
【発明の概要】
【0009】
上記を考慮して、本開示は、肥満細胞腫瘍を効果的かつ安全に治療できる医薬組成物を提供する。肥満細胞腫瘍の治療または追加治療として本開示で提供される医薬組成物を用いると、介入療法が処理できない場合に主要な組織および器官の切断または除去を防止することができ、患者または動物患者の生活の質を向上させることができる。
【0010】
本開示の少なくとも1つの実施形態では、肥満細胞腫瘍を治療するための医薬組成物が提供される。前記医薬組成物は、ベンゼンスルホンアミド誘導体およびその薬学的に許容される担体を含む。
【0011】
本開示の少なくとも1つの実施形態では、前記ベンゼンスルホンアミド誘導体は、下記式(I):
【化1】
で表され、またはその薬学的に許容される塩であり、
式中、R~Rは、H、C~Cの直鎖状または分岐状のアルキル基、C~Cの直鎖状または分岐状のアルコキシ基、C~Cのシクロアルキル基、C~Cのシクロヘテロアルキル基、アミノ基、およびハロ基からなる群から独立して選択され、またはRとRが互いに結合して環を形成する。
【0012】
本開示の少なくとも1つの実施形態では、R~Rにおけるアルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロヘテロアルキル基および環は、独立して非置換であるか、または1つ以上の置換基で置換されている。本開示のいくつかの実施形態では、前記置換基は、フェニル基、ハロ基、オキソ基、エーテル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、スルホ基及びスルホンアミド基からなる群から選択される。
【0013】
本開示の少なくとも1つの実施形態では、前記ベンゼンスルホンアミド誘導体は、パラトルエンスルホンアミド、オルトトルエンスルホンアミド、メタトルエンスルホンアミド、N-エチル-オルトトルエンスルホンアミド、N-エチル-パラトルエンスルホンアミド、N-シクロヘキシル-パラトルエンスルホンアミド、
【化2】
【化3】
【化4】
およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つである。本開示のいくつかの実施形態では、前記ベンゼンスルホンアミド誘導体は、パラ-トルエンスルホンアミド、オルト-トルエンスルホンアミドまたはメタ-トルエンスルホンアミドである。
【0014】
本開示の少なくとも1つの実施形態では、前記ベンゼンスルホンアミド誘導体は、前記医薬組成物の1重量%~50重量%の量で存在する。本開示のいくつかの実施形態では、前記医薬組成物は、1重量%~50重量%のポリエチレングリコール400、1重量%~10重量%の1,2-プロピレングリコール、1重量%~10重量%のセバシン酸、1~20重量%の2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、0~20重量%のジメチルスルホキシド、および0~20重量%のエタノールの少なくとも1つをさらに含む。
【0015】
また、本開示は、治療有効量の前記医薬組成物を治療を必要とする対象に投与することを含む、対象における肥満細胞腫瘍を治療するための方法も提供される。本開示の少なくとも1つの実施形態において、前記投与は、前記対象における肥満細胞腫瘍の除去を引き起こす。
【0016】
本開示の少なくとも1つの実施形態において、前記肥満細胞腫瘍は、イヌ肥満細胞腫瘍、ネコ肥満細胞腫瘍、ウマ肥満細胞腫瘍、ウシ肥満細胞腫瘍、またはヒツジ肥満細胞腫瘍である。
【0017】
本開示の少なくとも1つの実施形態において、前記対象は、げっ歯類、マウス、サル、モルモット、イヌ、ネコ、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマ、ウサギ、およびヒトである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本発明は、添付図面を参照しながら以下の実施形態の説明を読むことにより、より完全に理解することができる。
【0019】
図1図1は、GWMC101薬剤で治療されたイヌ(症例番号D01-S06-E06)の病変における肥満細胞腫瘍の体積変化を示す。ここで、GWMC101薬剤中のPTSの用量は100mg/kg/イヌである。PTS:パラトルエンスルホンアミド。
【0020】
図2A図2A~2Cは、GWMC101薬の投与前、すなわち1日目(図2A)、6回目の投与後、すなわち25日目(図2B)、および6回目の投与後の33日目、すなわち53日目(図2C)のイヌ(症例番号D01-S06-E06)の病変における肥満細胞腫瘍の代表的な臨床写真を示す。
図2B図2A~2Cは、GWMC101薬の投与前、すなわち1日目(図2A)、6回目の投与後、すなわち25日目(図2B)、および6回目の投与後の33日目、すなわち53日目(図2C)のイヌ(症例番号D01-S06-E06)の病変における肥満細胞腫瘍の代表的な臨床写真を示す。
図2C図2A~2Cは、GWMC101薬の投与前、すなわち1日目(図2A)、6回目の投与後、すなわち25日目(図2B)、および6回目の投与後の33日目、すなわち53日目(図2C)のイヌ(症例番号D01-S06-E06)の病変における肥満細胞腫瘍の代表的な臨床写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下の実施例は、本開示を例示するために使用される。当業者であれば、本開示の明細書に基づいて、本開示の他の利点を理解することができる。本開示は、さまざまな例で説明したように実行または適用することもできる。本開示を実施するために、さまざまな態様および用途に対する本開示の範囲を逸脱することなく、以下の実施例を修正および/または変更することが可能である。
【0022】
本開示で使用される場合、単数形「1つ(a)」、「1つ(an)」、および「当該(the)」は、明示的かつ明確に1つの指示対象に限定されない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。「または」という用語は、文脈で明確に別段の指示がない限り、「および/または」という用語と同じ意味で使用される。
【0023】
本明細書で使用される場合、「含むこと(comprising)」または「含む(comprises)」という用語は、組成物、方法、およびそのそれぞれの構成要素に関して使用され、これらは本開示に含まれるが、不特定の要素が含まれることも許容される。
【0024】
本明細書で使用される場合、「少なくとも1つ」および「1つ以上」という語句は同じ意味を有し、1つ、2つ、3つまたはそれ以上を含むことができる。
【0025】
本開示全体を通じて、序数(例えば、第1、第2、第3など)は、要素(すなわち、本出願における任意の名詞)の形容詞として使用されてもよい。序数の使用は、要素の順序を示唆または作成するものではなく、用語「前(before)」、「後(after)」、「単一(single)」および他のそのような用語の使用などによって明示的に示されない限り、任意の要素を単一の要素のみに限定するものでもない。むしろ、序数は要素を区別するために使用される。一例として、第1の要素は第2の要素とは異なり、第1の要素は複数の要素を包含し、要素の順序において第2の要素の後(または前)になる場合がある。
【0026】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、一般に、所定の値または範囲の10%、5%、1%、または0.5%以内を意味する。あるいは、「約」という用語は、当業者が考慮した場合に、平均値の許容可能な標準誤差内を意味する。別途で明示的な指定のない限り、本明細書に開示される材料の量、期間の長さ、温度、動作条件、量の比などの数値範囲、量、数値およびパーセンテージのすべては、すべての場合において「約」という用語によって修飾されるものとして理解されるべきである。
【0027】
本明細書で使用される場合、「治療する(treat)」、「治療すること(treating)」または「治療(treatment)」という用語は、疾患に関連する症状、障害、または状態を部分的または完全に予防、改善、軽減および/または管理することを包含する。本明細書で使用される「治療する」、「治療すること」または「治療」という用語は、疾患に関連する症状、障害、または状態を有する対象への1つまたは複数の治療薬または手術の適用あるいは投与して、疾患に関連する1つ以上の症状、障害、または状態を部分的または完全に軽減、改善、緩和、発症の遅延、進行の抑制、重症度の軽減、および/または発生率の低下させる目的とすることを指す。治療は、疾患に関連する症状、障害、および/または状態を発症するリスクを低減する目的で、そのような症状、障害、および/または状態の初期兆候のみを示す対象に施されてもよい。
【0028】
本明細書で使用される場合、「対象」、「個体」および「患者」という用語は交換可能であり、動物、例えば哺乳動物を指す。例えば、「対象」という用語は、一方の性別が特に示されない限り、男性と女性の両方の性別を指す場合がある。
【0029】
本明細書で使用される場合、「置換された」という用語は、化学構造または部分を説明するために使用される場合、その1つまたは複数の水素原子が1つまたは複数の置換基で置換されている、その構造または部分の誘導体を指す。別途で指示がない限り、「置換された」構造または部分は、その構造または部分の1つまたは複数の置換可能な位置に置換基を有し、任意の所与の構造または部分の2つ以上の位置が置換される場合、その置換基は各位置で同じか異なるかのいずれかである。
【0030】
本開示は、治療有効量のベンゼンスルホンアミド誘導体およびその薬学的に許容される担体を含む、治療を必要とする対象の肥満細胞腫瘍を治療するための医薬組成物に関する。また、本開示は、治療有効量の本開示の医薬組成物を治療を必要とする対象に投与することを含む、対象における肥満細胞腫瘍を治療するための方法に関する。
【0031】
本開示の少なくとも1つの実施形態では、前記ベンゼンスルホンアミド誘導体は、下記式(I):
【化5】
で表され、またはその薬学的に許容される塩であり、
式中、R~Rは、H、C~Cの直鎖状または分岐状のアルキル基、C~Cの直鎖状または分岐状のアルコキシ基、C~Cのシクロアルキル基、C~Cのシクロヘテロアルキル基、アミノ基、およびハロ基からなる群から独立して選択され、またはRとRが互いに結合して環を形成する。
【0032】
式中、R~Rにおけるアルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロヘテロアルキル基および環は、独立して非置換であるか、または1つ以上の置換基で置換されている。
【0033】
本開示の少なくとも1つの実施形態では、前記ベンゼンスルホンアミド誘導体は、パラトルエンスルホンアミド(p-TSA)、オルトトルエンスルホンアミド、メタトルエンスルホンアミド、N-エチル-オルトトルエンスルホンアミド、N-エチル-パラトルエンスルホンアミド、N-シクロヘキシル-パラトルエンスルホンアミド、
【化6】
【化7】
【化8】
であってもよいが、これらに限定されない。
【0034】
本開示の少なくとも1つの実施形態では、前記ベンゼンスルホンアミド誘導体は、パラ-トルエンスルホンアミド、オルト-トルエンスルホンアミドまたはメタ-トルエンスルホンアミドの少なくとも1つである。前記ベンゼンスルホンアミド誘導体のモノマーは白色の結晶である。いくつかの実施形態では、前記医薬組成物は、2つ以上の異なるベンゼンスルホンアミド誘導体の任意の比率の組み合わせを含む。
【0035】
本開示の少なくとも1つの実施形態では、本開示の医薬組成物が含有する前記薬学的に許容される担体は、充填剤、結合剤、防腐剤、崩壊剤、滑沢剤、懸濁化剤、湿潤剤、生体適合性溶媒、浸透促進剤、界面活性剤、増粘剤、酸、香味剤、錯化剤、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つである。
【0036】
本開示の少なくとも1つの実施形態では、前記結合剤の例としては、ペースト、ソルビトール、グアーガム、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体、カルボマー(Carbopolsとして市販されている)およびそれらの任意の組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0037】
本開示の少なくとも1つの実施形態では、前記防腐剤の例としては、安息香酸ナトリウム、メチルパラベン、プロピルパラベン、クレゾール、およびそれらの任意の組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0038】
本開示の少なくとも一実施形態では、前記滑沢剤の例としては、ステアリン酸金属塩(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ナトリウム)、ステアリン酸、タルク、ポリエチレングリコール、可溶性塩(例えば、塩化ナトリウムと安息香酸ナトリウム)、およびそれらの任意の組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0039】
本開示の少なくとも1つの実施形態では、前記湿潤剤の例としては、グリセリン、ソルビトール、ポリプロピレングリコール、およびそれらの任意の組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0040】
本開示の少なくとも1つの実施形態では、前記香味料の例としては、ペパーミント油、メントール、レモン油、オレンジ油、シナモン油、およびそれらの任意の組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0041】
本開示の少なくとも1つの実施形態では、前記薬学的に許容される担体は、アルキレングリコール、セバシン酸、ジメチルスルホキシド(DMSO)、エタノール、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つであってもよい。いくつかの実施形態では、前記アルキレングリコールの例としては、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、およびそれらの任意の組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0042】
本開示の少なくとも1つの実施形態では、前記ベンゼンスルホンアミド誘導体は、1重量%~50重量%のポリエチレングリコール400、1重量%~10重量%の1,2-プロピレングリコール、1重量%~10重量%のセバシン酸、1~20重量%の2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、0~20重量%のジメチルスルホキシド、および0~20重量%のエタノールのうちの少なくとも1つから選択される。
【0043】
本開示の少なくとも1つの実施形態では、前記ベンゼンスルホンアミド誘導体は、医薬組成物の1重量%~50重量%、例えば、1重量%、2重量%、5重量%、10重量%、15重量%、20%重量%、25重量%、30重量%、33重量%、35重量%、40重量%、45重量%および50重量%の量で存在する。いくつかの実施形態では、前記医薬組成物におけるベンゼンスルホンアミド誘導体の量は、組成物の1重量%、5重量%、10重量%、15重量%、20重量%、および25重量%から選択される下限と、組成物の50重量%、45重量%、40重量%、および 35重量%から選択される上限を有する。いくつかの実施形態では、前記ベンゼンスルホンアミド誘導体は、組成物の20重量%~40重量%の量で存在する。
【0044】
本開示の少なくとも1つの実施形態では、本明細書で提供される医薬組成物(GWMC101)は、1重量%~50重量%のパラトルエンスルホンアミド、1重量%~50重量%のPEG400、1重量%~10重量%の1,2-プロピレングリコール、1重量%~5重量%のセバシン酸、0~15重量%のパラトルエンスルホン酸、1~20重量%の2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、0~10重量%のジメチルスルホキシド、および0~20重量%のエタノールを含む。
【0045】
本開示の少なくとも1つの実施形態では、上記の医薬組成物を調製する方法も提供される。当該方法は、各薬学的に許容される担体を所定の比率で添加および混合して、第1の混合物を得る工程、第1の混合物を撹拌しながら40℃~130℃に加熱して、透明な油性液体を形成する工程、ベンゼンスルホンアミド誘導体を完全に溶解するまで攪拌しながら徐々に添加し、第2の混合物を得る工程、第2の混合物を濾過および冷却して、油性液体の形態の本開示の医薬組成物(GWMC101)を得る工程、を含む。
【0046】
GWMC101製剤の注射製剤の調製方法は、例えば、アジュバントおよび/または溶媒を添加して混合物を等張に調整することによって行うことができる。また、当該方法における濾過工程は、例えば微多孔性フィルターを用いて行うことができる。
【0047】
本開示の少なくとも1つの実施形態では、前記医薬組成物は、経腸投与、舌下投与、皮下投与、直腸投与、および非経口投与(例えば、皮下注射、筋肉内注射、静脈内注射、腫瘍内注射、腹腔内注射、動脈内注射およびくも膜下注射)などの投与経路に適した形態に製剤化されてもよい。本開示のいくつかの実施形態では、前記医薬組成物は、注射製剤、乾燥粉末、錠剤、経口液剤、フレーク剤、フィルム剤、ロゼンジ剤、カプセル剤、顆粒剤、丸剤、ゲル剤、ローション剤、軟膏剤、乳化剤、ペースト剤、クリーム剤、点眼剤、軟膏からなる群から選択される形態であってもよい。
【0048】
本開示の少なくとも1つの実施形態では、前記医薬組成物は、腫瘍内、静脈内、皮下、皮内、経口、くも膜下腔内、腹腔内、鼻腔内、筋肉内、胸膜内、局所的に、または噴霧を通じて対象に投与されてもよい。
【0049】
本開示の少なくとも1つの実施形態では、前記医薬組成物は、肥満細胞腫瘍の除去を誘発することによって肥満細胞腫瘍を治療するために使用されてもよい。例えば、肥満細胞腫瘍の除去を誘発するための本開示のGWMC101調製物は、注射製剤の形態であり、腫瘍内注射によって対象に投与されてもよい。肥満細胞腫瘍の除のための腫瘍内注射用量は、0.1mL/注射~10mL/注射(パラ-トルエンスルホンアミドまたは他のベンゼンスルホンアミド誘導体の約33mg~3,300mg)であってもよい。
【0050】
本明細書で使用する場合、「治療有効量」という語句は、治療される対象に所望の治療効果(例えば、肥満細胞腫瘍の除去の誘発)を付与するのに必要な活性成分(例えば、ベンゼンスルホンアミド誘導体)の量を指す。有効用量は、当業者によって認識されるように、投与経路、賦形剤の使用、他の治療処置との併用の可能性、および治療される状態に応じて変化する。
【0051】
本開示の少なくとも1つの実施形態では、対象に投与されるベンゼンスルホンアミド誘導体は、約33mg/日~約10,000mg/日、例えば33mg/日~6,600mg/日、165mg/日~3,300mg/日、495mg/日~3,300mg/日、660mg/日~1,650mg/日、および 330mg/日~1,650mg/日の治療有効量である。
【0052】
本開示の少なくとも1つの実施形態では、治療期間または治療サイクル中、対象に投与されるベンゼンスルホンアミド誘導体の治療有効量は、約33mg~約26,400mg、例えば132mg~3,300mg、300mg~7,000mg、および3,300mgから26,400mgの範囲であってもよい。本明細書で使用する場合、「治療サイクル」という用語は、定期的なスケジュールで繰り返される治療期間とそれに続く治療のない休止期間を指す。
【0053】
本開示の少なくとも1つの実施形態では、前記医薬組成物は、1日あたり1~4回、1週間あたり1~4回、または1か月あたり1~4回、対象に投与されてもよい。本開示の少なくとも1つの実施形態では、前記医薬組成物は、1~4週間または1~4ヶ月の治療期間あるいは治療サイクルにわたって対象に投与されてもよい。いくつかの実施形態では、前記医薬組成物は、2週間の治療期間にわたって週に2~3回対象に投与されてもよい。いくつかの実施形態では、前記医薬組成物は、最初の治療期間に4回以上対象に投与される。
【0054】
本開示の少なくとも1つの実施形態では、本開示の方法によって治療される対象は、げっ歯類、マウス、サル、モルモット、イヌ、ネコ、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマ、ウサギ、およびヒトからなる群から選択されてもよい。いくつかの実施形態では、前記対象はイヌ、ネコ、またはヒトである。
【0055】
本開示の少なくとも1つの実施形態では、本開示の医薬組成物は、イヌ肥満細胞腫瘍、ネコ肥満細胞腫瘍、ウマ肥満細胞腫瘍、ウシ肥満細胞腫瘍、またはヒツジ肥満細胞腫瘍などの肥満細胞腫瘍を治療するために使用される。いくつかの実施形態では、前記肥満細胞腫瘍は、皮膚肥満細胞腫瘍、例えば、皮膚、耳、または胸部に生じるもの;または、内臓肥満細胞腫瘍、例えば肺、肝臓、盲腸、リンパ液、腎臓、腹膜、乳房小葉、脾臓もしくは骨格筋に生じるものであってもよい。
【0056】
また、本開示は、肥満細胞腫瘍を治療するための薬剤の製造における医薬組成物の使用を提供し、ここで、前記医薬組成物は、本開示のベンゼンスルホンアミド誘導体およびその薬学的に許容される担体を含む。
【0057】
以下の実施形態は、本開示の有効性をさらに実証するものであるが、本開示の範囲を限定するために使用されるべきではない。
【実施例
【0058】
肥満細胞腫瘍の除去に対する本開示の医薬組成物の有効性は、以下の臨床試験によって臨床的に評価された。
【0059】
肥満細胞腫瘍の治療に関する臨床試験は、2020年1月から2020年12月まで台湾の登録動物病院で実施された。対象動物は肥満細胞腫瘍と診断されたイヌであり、包含基準および除外基準ならびに手順は以下の通りである。
【0060】
包含基準:
(A)対象動物は1歳(を含む)を超えていた。
(B)対象動物が細胞学または組織病理学により肥満細胞腫瘍を有すると診断された。
(C)対象動物は獣医師により肥満細胞腫瘍切除には適さないと評価された。
(D)対象動物には、直径1cmを超える測定可能な病変が少なくとも1つあった。
(E)対象動物は獣医師により余命が3か月を超えると評価された。
(F)飼い主は検査手順を理解して遵守することができ、インフォームドコンセントフォームに署名する意思があった。
【0061】
除外基準:
(A)対象動物は試験に参加する前4週間以内に全身化学療法を受けていた。
(B)対象動物は試験に参加する前4週間以内に放射線療法を受けていた。
(C)対象動物は治験に参加する前4週間以内に大手術を受けていた(例えば、開胸手術は許可されなかったが、生検などの非侵襲的手術は許可された)。
(D)対象動物は本治験に参加する前4週間以内に他の薬物、生物学的製剤、医療材料、または他の抗腫瘍治療(例えば、免疫調節剤や放射線療法)を受けていた、またはこの治験期間中に受ける予定だった。
(E)対象動物は本試験に参加する前に、以下の異常な血液検査結果を示した:a.ヘモグロビン、b.絶対好中球数(ANC)、c.アルブミン、d.総ビリルビン、e.アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)およびアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、およびf.国際腎関心協会(IRIS)による慢性腎臓病(CKD)。
(F)対象動物は他の重篤な疾患を患っており、獣医師により本治験への参加が制限されていると評価された。
(G)対象動物は、本開示の医薬組成物に含まれる成分に対してアレルギーを有するか、または有すると疑われる。
(H)病変が主要血管によって閉塞されており、獣医師の判断により腫瘍内注射を行うことが困難である。
(I)対象動物は妊娠していた。
(J)対象動物は獣医師によってこの試験に参加するには不適当な条件を備えていると評価されていた。
【0062】
治療方法
【0063】
試験動物にGWMC101を腫瘍内注射(各注射当たり約33mg~約3300mgのパラトルエンスルホンアミド)により投与し、各腫瘍内注射は多点(2~6点)注射で行った。
【0064】
各投与前に電子ノギス測定を行った。腫瘍体積は、修正楕円体計算=1/2×長さ×幅×深さ(cm)を使用して決定された(Monga et al.,Intratumoral therapy of cisplatin/epinephrine injectable gel for palliation in patients with obstructive esophageal cancer.American Journal of Clinical Oncology.23(4):386-392(2000);Celikoglu et al.,Techniques for intratumoural chemotherapy of lung cancer by bronchoscopic drug delivery.Cancer Therapy.6:545-552,(2008))。なお、最初の投与前と最後の訪問時にコンピューター断層撮影(CT)スキャンを実行した。
【0065】
応答の評価基準
【0066】
完全寛解(CR)は、測定可能または評価可能な病変が完全に消失し、4週間を超えて新たな病変が現れないことを意味する。部分寛解(PR)とは、測定可能または評価可能な病変が30%以上縮小し、4週間を超えて新たな病変が現れないことを意味する。安定病変(SD)とは、測定可能または評価可能な病変が30%以下縮小するか、20%以下拡大することを意味する。疾患進行(PD)とは、測定可能または評価可能な病変が20%以上拡大するか、他の病変が悪化して新たな病変が出現することを意味する。
【0067】
安全性評価
【0068】
治験期間中に安全性評価を実施する場合、治験の関連研究者は、プロトコルにおける有害事象の定義と取りまとめに責任を負う(関連する評価方法は「Veterinary Cooperative Oncology Group-Common Terminology Criteria for Adverse Events」(VCOG-CTCAE)を参照した)。
【0069】
症例番号D01-S06-E06
【0070】
症例番号D01-S06-E06は、12歳のオスのオールド・イングリッシュ・シープドッグである。投与前、当該イヌの心機能は正常であり、イヌの右前足の肘に腫瘍が観察され、病理検査にて異型性硬化症肥満細胞腫瘍と診断された。血液検査の生化学的プロファイルは、当該イヌが正常な肝臓および腎臓機能を有することを示した。
【0071】
標的病変には6回の腫瘍内注射により投与した(各用量は0.5mL~1.1mL、平均0.8mL)。腫瘍体積は、投与前(1日目)は15.71立方センチメートル(cm)であったが、6回目の投与後(25日目)は1.28cmであった。治療期間中に電子ノギスで測定したデータの統計結果によると、腫瘍のサイズと体積は時間の経過とともに大幅に減少した。標的病変の寛解率は獣医師によって完全寛解(CR)と評価され、標的腫瘍のサイズは92%減少した。これらの結果は図1および図2A~2Cにも示されており、本開示のGWMC101が肥満細胞腫瘍の腫瘍体積を92%減少させることができることを示している。さらに、6回目の治療後33日目(53日目)の最終訪問までに、原発腫瘍部位が腫瘍の兆候を示さず治癒していることが見出された。
【0072】
有害な影響
【0073】
吐き気、嘔吐、炎症などの一般的な副作用は観察されなかった。さらに、以下の表1に示すように、治療中および治療後、肝臓および腎臓の機能は安定しており、正常であった。
【0074】
【表1】

SV:スクリーニング訪問
T1~T6:1回目から6回目の治療投与
CV:結論訪問
GPT:グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ
BUN:血中尿素窒素
*GPTの基準範囲は3U/L~100U/Lである。
**BUNの基準範囲は4.5U/L~30.5mg/dLである。
【0075】
結論
【0076】
本開示で提供される医薬組成物は、肥満細胞腫瘍の除去を促進することによって肥満細胞腫瘍を効果的に治療することができ、それによって対象の生活の質および臨床症状を改善することができる。さらに、臨床試験では副作用の有意な増加は観察されていない。
【0077】
本開示の実施形態のいくつかを上で詳細に説明したが、当業者であれば、本開示の教示から実質的に逸脱することなく、示された実施形態にさまざまな修正および変更を加えることが可能である。このような修正および変更は、添付の特許請求の範囲に記載される本開示の範囲に包含される。
図1
図2A
図2B
図2C
【国際調査報告】