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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】ステント弁送達システム
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/24 20060101AFI20240905BHJP
【FI】
A61F2/24
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519430
(86)(22)【出願日】2022-09-28
(85)【翻訳文提出日】2024-04-25
(86)【国際出願番号】 US2022045006
(87)【国際公開番号】W WO2023055779
(87)【国際公開日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】63/249,689
(32)【優先日】2021-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506192652
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】オコナー、ティム
(72)【発明者】
【氏名】シャンリー、ショーン
(72)【発明者】
【氏名】ラードナー、ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ローナン、デクラン
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA27
4C097BB10
4C097CC16
4C097DD01
4C097DD09
4C097MM09
4C097SB02
(57)【要約】
ステント弁を送達するための送達システムは、遠位先端を含む内側シャフトと、内側シャフト上に圧着されたステント弁と、ステント弁の少なくとも下側部分を覆って配置される遠位シースと、ステント弁の少なくとも上側部分を覆って配置される近位シースとを含んでもよい。遠位シースは、遠位シースの短い側部及び長い側部を規定する傾斜した近位縁部を有する近位自由端を有する。近位シースは、遠位シースから独立して作動可能であり、ステント弁の上側部分を解放するように近位に移動可能である。遠位シースは、ステント弁の下側部分を解放するために遠位方向に移動可能である。傾斜した近位縁部は、ステント弁の下側部分の第1の側部を、反対側の第2の側部より先に解放する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステント弁を送達するように構成された送達システムであって、
前記送達システムは、
遠位先端を含む内側シャフトと、
前記内側シャフト上に圧着され、上側部分、下側部分、及び弁を含む前記ステント弁と、
前記ステント弁の少なくとも前記下側部分を覆って配置された遠位シースであって、前記遠位先端に連結された遠位端と、前記遠位シースの短い側部及び長い側部を規定する傾斜した近位縁部を有する近位自由端とを有する前記遠位シースと、
前記ステント弁の少なくとも前記上側部分を覆って配置された近位シースと、を含み、
前記近位シースは、前記遠位シースから独立して作動可能であり、前記ステント弁の前記上側部分を解放するために近位方向に移動可能であり、
前記遠位シースは、前記ステント弁の前記下側部分を解放するために遠位方向に移動可能であり、前記傾斜した近位縁部は、前記ステント弁の前記下側部分の第1の側部を反対側の第2の側部より先に解放する、送達システム。
【請求項2】
前記遠位シース上の前記傾斜した近位縁部は、前記遠位シースの横軸に対して10度~70度の角度で傾斜する、請求項1に記載の送達システム。
【請求項3】
前記傾斜した近位縁部は、10度~20度の角度を有する、請求項2に記載の送達システム。
【請求項4】
前記遠位シースの前記長い側部の位置を示すマーカをさらに含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の送達システム。
【請求項5】
前記マーカは、前記長い側部に沿った前記遠位シース上の放射線不透過性マーカである、請求項4に記載の送達システム。
【請求項6】
前記マーカは、前記ステント弁の前記下側部分上の放射線不透過性マーカである、請求項4に記載の送達システム。
【請求項7】
前記ステント弁の前記下側部分は、複数の下側クラウンを含み、前記長い側部は、残りの下側クラウンが解放されている間、前記下側クラウンのうちの1~5個を覆うように構成される近位延長部を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の送達システム。
【請求項8】
前記近位シースは、前記傾斜した遠位縁部を有する遠位自由端を有し、前記近位シースが近位方向に移動されるとき、前記傾斜した遠位縁部は、前記ステント弁の前記上側部分の第1の側部を反対の第2の側部より先に解放する、請求項1~7のいずれか1項に記載の送達システム。
【請求項9】
前記ステント弁の前記上側部分は、複数のアーチ及び複数の上側クラウンを含み、前記近位シースの遠位端は、前記複数のアーチ及び前記複数の上側クラウンを覆って延在する、請求項1~8のいずれか1項に記載の送達システム。
【請求項10】
前記遠位シースは、ポリマーシースと、補強コイルとを含み、前記補強コイルは、前記遠位シースの前記遠位端から前記傾斜した近位縁部に隣接する位置まで延在する、請求項1~9のいずれか1項に記載の送達システム。
【請求項11】
前記遠位シースは、前記補強コイルの近位に配置されたブレイズ(braid)を含む、請求項10に記載の送達システム。
【請求項12】
ステント弁を送達するように構成された送達システムであって、
遠位先端を含む内側シャフトと、
前記内側シャフト上に圧着され、複数の上側クラウン、複数の下側クラウン、及び弁を含むステント弁と、
前記下側クラウンを覆って配置され、前記下側クラウンを拘束する遠位シースであって、前記遠位先端に連結された遠位端と、前記遠位シースの横軸に対して5度~70度の角度が付けられている傾斜した近位縁部を有する近位自由端とを有する前記遠位シースと、
前記ステント弁の前記上側クラウンを覆って配置された近位シースと、を含み、
前記近位シースが、前記遠位シースから独立して作動可能であり、前記ステント弁の前記上側クラウンを解放するために近位方向に移動可能であり、
前記遠位シースは、前記ステント弁の前記下側クラウンを解放するために遠位方向に移動可能であり、前記傾斜した近位縁部は、前記下側クラウンを前記ステント弁の第1の側部から第2の側部に漸増的に解放する、送達システム。
【請求項13】
前記傾斜した近位縁部は、10度~20度の角度を有する、請求項12に記載の送達システム。
【請求項14】
前記遠位シースの前記傾斜した近位縁部は、前記遠位シースの長い側部及び対向する短い側部を規定し、前記送達システムはさらに、前記遠位シースの前記長い側部の位置を示すマーカを備える、請求項12又は13に記載の送達システム。
【請求項15】
ステント弁を送達する方法であって、
患者の大動脈及び大動脈弁を通してステント弁送達システムの遠位先端を挿入するステップであって、その送達システムは、
前記遠位先端を含む内側シャフトと、
前記内側シャフト上に圧着され、上側部分、下側部分、及び弁を含む、ステント弁と、
前記ステント弁の少なくとも前記下側部分を覆って配置される遠位シースであって、前記遠位先端に連結された遠位端と、短い側部及び長い側部を規定する傾斜した近位縁部を有する近位自由端とを有し、前記長い側部上に放射線不透過性マーカを含む、遠位シースと、
前記ステント弁の少なくとも前記上側部分を覆って配置される近位シースと、を含む、ステップと、
前記大動脈の外側曲線に沿って前記放射線不透過性マーカを整列させるステップと、
前記近位シースを近位方向に移動させることにより、前記ステント弁の前記上側部分を解放するステップと、
前記遠位シースを遠位方向に移動させることにより、前記ステント弁の前記下側部分を解放するステップであって、前記傾斜した近位縁部は、前記大動脈の内側曲線上に位置付けられる前記ステント弁の前記下側部分の第1の側部を反対の第2の側部より先に解放するステップと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、医療デバイスに関し、より具体的には、置換心臓弁のための送達システム、並びにそのような医療デバイス及びシステムを使用するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、心臓弁を置換するために利用される医療デバイスを含む、医療用途のための多種多様な医療デバイスが開発されている。心臓機能は、心臓弁が適切に機能していない場合に著しく損なわれ得る。心臓弁が適切に閉じることができない場合、心腔内の血液が逆流するか、又は弁を通って逆に漏れる可能性がある。
【0003】
弁逆流は、大動脈弁等の異常な弁を置換又は修復することによって治療され得る。外科的弁置換は、異常な弁を治療するための1つの方法であるが、これは、胸腔への侵襲的な外科的開口、並びに患者の心臓の停止及び心肺バイパスを必要とする。経カテーテル大動脈弁移植術(TAVI)又は経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)などの低侵襲治療方法は、一般に、動脈通路又は他の解剖学的経路を通して心臓に送達されて、異常な弁を移植可能な人工心臓弁と置換する送達カテーテルの使用を伴う。
【0004】
場合によっては、人工心臓弁の塞栓が生じるが、これは多くの場合、展開中の拡張時又は拡張直後の人工弁の移動に起因する。人工心臓弁を移植するための既知の送達システム及び方法の各々は、特定の利点及び欠点を有する。代替的な送達システム、並びに医療デバイスを製造及び使用するための代替的な方法を提供することが常に必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、医療用デバイスのための設計、材料、製造方法、及び使用の代替物を提供する。ステント弁を送達するように構成された例示的な送達システムは、遠位先端を含む内側シャフトと、内側シャフト上に圧着され、上側部分、下側部分、及び弁を含むステント弁と、ステント弁の少なくとも前記下側部分を覆って配置された遠位シースであって、遠位先端に連結された遠位端と、遠位シースの短い側部及び長い側部を規定する傾斜した近位縁部を有する近位自由端と、を有する遠位シースと、ステント弁の少なくとも上側部分を覆って配置された近位シースであって、遠位シースから独立して作動可能であり、ステント弁の上側部分を解放するために近位方向に移動可能である近位シースと、を備え、遠位シースは、ステント弁の下側部分を解放するために遠位方向に移動可能であり、傾斜した近位縁部は、ステント弁の下側部分の第1の側部を反対側の第2の側部より先に解放する。
【0006】
上記実施形態の代わりに、又はそれに加えて、遠位シース上の傾斜した近位縁部は、遠位シースの横軸に対して10度~70度の角度で傾斜する。
上記実施形態のいずれかの代わりに、又はそれに加えて、傾斜した近位縁部は、10度~20度の角度を有する。
【0007】
上記実施形態のいずれかの代わりに、又はそれに加えて、送達システムは、遠位シースの長い側部の位置を示すマーカをさらに備える。
上記実施形態のいずれかの代わりに、又はそれに加えて、マーカは、長い側部に沿った遠位シース上の放射線不透過性マーカである。
【0008】
上記実施形態のいずれかの代わりに、又はそれに加えて、マーカは、ステント弁の下側部分上の放射線不透過性マーカである。
上記実施形態のいずれかの代わりに、又はそれに加えて、ステント弁の下側部分は、複数の下側クラウンを含み、長い側部は、残りの下側クラウンが解放されている間、下側クラウンのうちの1~5個を覆うように構成された近位延長部を含む。
【0009】
上記実施形態のいずれかの代わりに、又はそれに加えて、近位シースは、傾斜した遠位縁部を有する遠位自由端を有し、近位シースが近位方向に移動されるとき、傾斜した遠位縁部は、ステント弁の上側部分の第1の側部を反対の第2の側部より先に解放する。
【0010】
上記実施形態のいずれかの代わりに、又はそれに加えて、ステント弁の上側部分は、複数のアーチ及び複数の上側クラウンを含み、近位シースの遠位端は、複数のアーチ及び複数の上側クラウンを覆って延在する。
【0011】
上記実施形態のいずれかの代わりに、又はそれに加えて、遠位シースは、ポリマーシース及び補強コイルを含み、補強コイルは、遠位シースの遠位端から傾斜した近位縁部に隣接する位置まで延在する。
【0012】
上記実施形態のいずれかの代わりに、又はそれに加えて、遠位シースは、補強コイルの近位に配置されたブレイズ(braid)を含む。
ステント弁を送達するように構成された例示的な送達システムは、遠位先端を含む内側シャフトと、内側シャフト上に圧着され、複数の上側クラウン、複数の下側クラウン、及び弁を含むステント弁と、下側クラウンを覆って配置され、下側クラウンを拘束する遠位シースであって、遠位先端に連結された遠位端と、遠位シースの横軸に対して5度~70度の角度が付けられている傾斜した近位縁部を有する近位自由端とを有する遠位シースと、ステント弁の上側クラウンを覆って配置された近位シースであって、遠位シースから独立して作動可能であり、ステント弁の上側クラウンを解放するために近位方向に移動可能である近位シースと、を備え、遠位シースは、ステント弁の下側クラウンを解放するために遠位方向に移動可能であり、傾斜した近位縁部は、下側クラウンをステント弁の第1の側部から第2の側部に漸増的に解放する。
【0013】
上記実施形態の代わりに、又はそれに加えて、傾斜した近位縁部は、10度~20度の角度を有する。
上記実施形態のいずれかの代わりに、又はそれに加えて、遠位シースの傾斜した近位縁部は、遠位シースの長い側部及び対向する短い側部を規定し、送達システムは、遠位シースの長い側部の位置を示すマーカを更に備える。
【0014】
上記実施形態のいずれかの代わりに、又はそれに加えて、マーカは、長い側部に沿った遠位シース上の放射線不透過性マーカである。
上記実施形態のいずれかの代わりに、又はそれに加えて、マーカは、遠位シースの長い側部の下に位置付けられる下側クラウンのうちの1つの上の放射線不透過性マーカである。
【0015】
上記実施形態のいずれかの代わりに、又はそれに加えて、長い側部は、残りの下側クラウンが解放されている間、下側クラウンのうちの1~5個を覆うように構成された近位延長部を含む。
【0016】
ステント弁を送達する例示的な方法は、患者の大動脈及び大動脈弁を通してステント弁送達システムの遠位先端を挿入するステップであって、その送達システムは、遠位先端を含む内側シャフトと、内側シャフト上に圧着され、上側部分、下側部分、及び弁を含むステント弁と、ステント弁の少なくとも下側部分を覆って配置される遠位シースであって、遠位先端に連結された遠位端と、短い側部及び長い側部を規定する傾斜した近位縁部を有する近位自由端と、を有し、長い側部上に放射線不透過性マーカを含む遠位シースと、ステント弁の少なくとも上側部分を覆って配置される近位シースと、を含む、ステップを含む。本方法は、大動脈の外側曲線に沿って放射線不透過性マーカを整列させるステップと、近位シースを近位方向に移動させることにより、ステント弁の上側部分を解放するステップと、遠位シースを遠位方向に移動させることにより、ステント弁の下側部分を解放するステップであって、傾斜した近位縁部は、大動脈の内側曲線上に位置付けられるステント弁の下側部分の第1の側部を反対の第2の側部より先に解放するステップと、を含む。
【0017】
上記実施形態の代わりに、又はそれに加えて、遠位シースを移動させるステップは、ステント弁の下側部分の第1の側部が解放される一方で、ステント弁の下側部分の第2の側部が遠位シースによって拘束されたままである第1の位置まで遠位シースが遠位方向に移動される第1の段階と、ステント弁の下側部分の全体が遠位シースから解放されるまで遠位シースがさらに遠位方向に移動される第2の段階と、を含む。
【0018】
上記実施形態のいずれかの代わりに、又はそれに加えて、第1の段階の後、ステント弁の下側部分の第1の側部は、患者の解剖学的構造の望ましい部分に係合することができ、次に、第2の段階は、ステント弁を完全に解放するように行われる。
【0019】
いくつかの実施形態、態様及び/又は例の上記概要は、本開示の各実施形態又は全ての実施を記載することを意図しない。以下の図面及び詳細な説明は、これらの実施形態をより具体的に例示する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本開示は、添付の図面に関連して様々な実施形態の以下の詳細な説明を考慮することによって、より十分に理解され得る。
図1】先行技術の置換心臓ステント弁を示す。
図2】大動脈弓及び大動脈弁内に配置された先行技術の送達システムを示す。
図3】心臓ステント弁の非対称展開を示す蛍光透視画像である。
図4】近位シースがステント弁から後退させられた、例示的な送達システムを示す。
図5】4分の1回転した図4の送達システムの遠位シースを示す。
図6】遠位シースが部分的に後退した、図4の送達システムを示す。
図7】遠位シースが完全に後退した、図4の送達システムを示す。
図8】ポリマーシースの一部分が除去された、図4の遠位シースを示す。
図9】別の例示的な遠位シースを示す。
図10】送達システムに配置された別の例示的な近位シースを示す。
図11】大動脈弓及び大動脈弁内に配置された図4の送達システムを示す。
図12】近位シースがステント弁から引き抜かれた、図11の送達システムを示す。
図13】遠位シースが部分的に引き抜かれた、図12の送達システムを示す。
図14】遠位シースがさらに引き抜かれた、図13の送達システムを示す。
図15】遠位シースがステント弁から完全に引き抜かれた状態の図14の送達システムを示す。
【0021】
本開示の態様は、様々な変更及び代替形態を受け入れることができるが、それらの詳細は、例として図面に示されており、詳細に記載される。しかし、その意図は、本開示の態様を記載される特定の実施形態に限定することではないことを理解されたい。対照的に、その意図は本開示の技術的思想及び範囲に収まる全ての変更、均等物及び代替物を対象とするものである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
異なる定義が本明細書の特許請求の範囲又は他の部分において与えられない限り、以下に定義される用語はこれらの定義が適用されるものとする。
明確に示されているか否かに関わらず、全ての数値は本明細書において用語「約」によって修飾されると想定される。数値の文脈において、用語「約」は、一般に、当業者が列挙された値と同等である(例えば、同じ機能又は結果を有する)と考える数の範囲を示す。多くの場合、用語「約」は、最も近い有効数字に丸められた数を含み得る。用語「約」の他の使用(例えば、数値以外の文脈において)は、別段の指示がない限り、本明細書の文脈から理解され、本明細書の文脈と一致するように、それらの通常の慣習的な定義を有すると想定され得る。
【0023】
端点による数値範囲の列挙は、端点を含むその範囲内の全ての数を含む(例えば、1から5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、及び5を含む)。様々な構成要素、特徴及び/又は仕様に関するいくつかの好適な寸法、範囲及び/又は値が開示されているが、本開示によって刺激された当業者は、要望の寸法、範囲及び/又は値が明示的に開示されたものから逸脱し得ることを理解するであろう。
【0024】
本明細書及び添付の特許請求の範囲に用いられるとき、単数形「一つの(a)」、「一つの(an)」及び「その」は、内容が明確に他のことを指示しない限り、複数の指示対象を含む。本明細書及び添付の特許請求の範囲に用いられるとき、用語「又は」は、内容が明確に他のことを指示しない限り、「及び/又は」を含む意味として一般に用いられる。理解を容易にするために、本開示の特定の特徴は、開示された実施形態(複数可)内でそれらの特徴が複数又は繰り返され得るとしても、単数形で記載され得ることに留意されたい。特徴の各事例は、反対のことが明示的に述べられていない限り、単数の開示(複数可)を含み、及び/又はそれによって包含され得る。簡潔及び明確にするために、本開示の全ての要素が必ずしも各図面に示されているわけではなく、又は以下で詳細に議論されているわけではない。しかし、以下の議論は、反対のことが明示的に述べられていない限り、2つ以上の構成要素のいずれか及び/又は全てに等しく適用され得ることが理解されるであろう。さらに、明確にするために、いくつかの要素又は特徴の全ての事例が各図面に示されているわけではない。
【0025】
「近位」、「遠位」、「前進」、「後退」、及びそれらの変形等の相対的な用語は、一般に、デバイスのユーザ/オペレータ/マニピュレータに対する様々な要素の位置決め、方向、及び/又は動作に関して考慮されてもよく、「近位」及び「後退」は、ユーザにより近い又はユーザに向かうことを示し又は指し、「遠位」及び「前進」は、ユーザからより遠い又はユーザから離れることを示す又は指す。場合によっては、用語「近位」及び「遠位」は、本開示の理解を容易にするために任意に割り当てられてもよく、そのような場合は、当業者には容易に明らかになるであろう。「上流」、「下流」、「流入」、及び「流出」等の他の相対的な用語は、体管腔、血管等のルーメン(lumen)内、又はデバイス内の流体流れの方向を示す。
【0026】
用語「範囲」は、問題の範囲又は寸法が、「最小」によって先行されるか、または「最小」として識別されない限り、記載されるか又は識別された寸法の最大測定値を意味すると理解されてもよく、「最小」は記載されるか又は識別された寸法の最小測定値を意味すると理解されてもよい。例えば、「外側範囲」は最大外側寸法を意味すると理解されてもよく、「半径方向範囲」は最大半径方向寸法を意味すると理解されてもよく、「長手方向範囲」は最大長手方向寸法を意味すると理解されてもよい、などである。「範囲」の各例は異なっていてもよく(例えば、軸方向、長手方向、横方向、半径方向、円周方向等)、個々の用法の文脈から当業者には明らかであろう。一般に、「範囲」は、意図された用途に従って測定された可能な限り最大の寸法と考えられてもよく、一方、「最小範囲」は、意図された用途に従って測定された可能な限り最小の寸法と考えられてもよい。場合によっては、「範囲」は、一般に、平面及び/又は断面内で直交して測定されてもよいが、特定の文脈から明らかであるように、限定されないが、角度的に、半径方向に、円周方向に(例えば、弧に沿って)等、異なって測定されてもよい。
【0027】
用語「モノリシック(monolithic)」及び「単一(unitary)」は、一般に、単一の構造又は基本単位/要素から作製されるか、又はそれからなる、1つ以上の要素を指すものとする。モノリシック及び/又は単一要素は、複数の別個の要素を共に組み立てるか、又は他の方法で接合することによって作製される構造及び/又は特徴を除外するものとする。
【0028】
本明細書における「ある実施形態」、「いくつかの実施形態」、「他の実施形態」等への言及は、記載される実施形態が特定の特徴、構造、又は特性を含み得るが、全ての実施形態が必ずしも特定の特徴、構造、又は特性を含まなくてもよいことを示すことに留意されたい。さらに、そのような語句は、必ずしも同じ実施形態を示すわけではない。さらに、特定の特徴、構造、又は特性が実施形態に関連して記載される場合、明示的に記載されているか否かにかかわらず、明確に反対のことが述べられていない限り、他の実施形態に関連して特定の特徴、構造、又は特性に影響を及ぼすことは、当業者の知識の範囲内であろう。すなわち、以下で記載される様々な個々の要素は、たとえ特定の組合せで明示的に示されていなくても、当業者によって理解されるように、他の追加の実施形態を形成するために、又は記載される実施形態を補完及び/又は補強するために、互いに組合せ可能又は配置可能であると考えられる。
【0029】
明確にするために、特定の識別数字命名法(例えば、第1、第2、第3、第4等)が説明及び/又は特許請求の範囲の全体にわたって使用され、様々な記載された及び/又は請求された特徴を命名及び/又は区別することがある。数字命名法は限定を意図するものではなく、単なる例示であることを理解されたい。いくつかの実施形態では、簡潔さ及び明確さのために、以前に使用された数字命名法の変更及びそれからの逸脱が行われ得る。すなわち、「第1の」要素として識別された特徴は、後に「第2の」要素、「第3の」要素等と示されてもよく、又は完全に省略されてもよく、及び/又は異なる特徴が「第1の」要素と示されてもよい。各例における意味及び/又は名称は、当業者には明らかであろう。
【0030】
以下の説明は、必ずしも縮尺通りではない図面を参照して読まれるべきであり、異なる図面における同様の要素には同じ番号が付されている。詳細な説明及び図面は、本開示を限定するのではなく、例示することを意図している。当業者は、記載及び/又は示される様々な要素が、本開示の範囲から逸脱することなく、様々な組合せ及び構成で配置され得ることを認識するであろう。詳細な説明及び図面は、本開示の例示的な実施形態を示す。しかし、明確さ及び理解の容易さのために、全ての特徴及び/又は要素が各図面に示されない場合があるが、特徴及び/又は要素は、別段の指示がない限り、関係なく存在すると理解され得る。
【0031】
図1は、先行技術の大動脈置換ステント弁100を示す。ステント弁100のステント構成要素は、複数の支持アーチ101及び複数の上側固定クラウン(upper anchoring crown)104を有する上側部分と、左心室と大動脈との間の血流を調節する置換弁102を支持する下側ステント部分103とを含む。アーチ101は、近位(P)又は上流端を規定し、下側ステント部分103は、遠位(D)又は下流端を規定する。下側ステント部分103はまた、複数の下側クラウン105を含む。アーチ101及び下側ステント部分103は、自己拡張可能であり、弁102のための天然の大動脈弁輪内での固定構造として作用する。
【0032】
いくつかの場合において、ステント弁100の塞栓が、展開後に生じることがあり、展開中における拡張中又は拡張直後のステント弁100の移動に関連し得る。人工ステント弁を送達するための従来の送達システムは、遠位シースがステント弁の遠位端から移動されると、ステント弁の解放の最終段階を変更したり又は影響を及ぼしたりすることができない。周囲の解剖学的構造に接触するためのステント弁のその後の拡張は、非常に迅速に、かつオペレータの制御なしに行われる。
【0033】
図2は、経大腿アクセス方法における従来のステント-弁送達システム50を示す。送達システム50は、大腿動脈及び血管系を通り、大動脈弓5を横断し、大動脈弁7を通して挿入される。送達システム50は、近位シース40と、ステント弁100を拘束する直線状近位縁部62を有する遠位シース60とを含んでもよい。近位シース40が後退されてアーチ101を解放した後、遠位シース60は、下側ステント部分103から離れて遠位方向に移動され、ステント弁が大動脈弁7に対して拡張することを可能にする。
【0034】
場合によっては、特に大動脈弓の湾曲がきつい患者では、遠位シース60が下側ステント部分103から離れて遠位方向に移動される場合に、大動脈弓のきつい湾曲は、送達システム50の遠位領域全体を解剖学的構造に一致するように湾曲させ得る。遠位シース60の外側曲線及び直線状近位縁部により、図3の矢印11に示すように、外側曲線に沿った下側クラウン105のうちのいくつかを、ステントの反対側の下側クラウンより先に解放させ得る。送達システムの外側曲線上の下側クラウン105のこの早期非対称解放により、ステントが完全に拡張するときにステントを「ジャンプ」又はシフトさせ、大動脈弁7に対する望ましくない展開場所及び/又は位置をもたらし得る。従来の送達システムを使用して遠位シース60を後退させ、下側クラウン105を解放することにより、ステント弁の位置を修正する機会なしに、ステント弁の迅速な拡張及び配置がもたらされる。
【0035】
遠位シース260の戦略的成形を伴う送達システム250により、ステント弁100の下側部分の解放及びステント弁拡張中の移動のためのより良好な制御を提供してもよい。図4を参照する。送達システム250は、遠位先端215に連結された内側シャフト210と、内側シャフト210を覆って配置された中間シャフト212とを含むことができる。ステントホルダ(図示無し)は、中間シャフト212に連結してもよい。内側シャフト210は、ガイドワイヤルーメンを規定してもよい。ステント弁100は、遠位先端215の近位で中間シャフト212上に圧着されてもよい。遠位シース260は、遠位先端215に連結された遠位端262と、遠位シース260の短い側部261及び長い側部263を規定する傾斜した近位縁部266を有する近位自由端264とを有することができる。遠位シース260は、少なくとも下側ステント部分103を覆って配置されてもよい。
【0036】
傾斜した近位縁部266は、遠位シースの横軸に対して10度~70度の角度で傾斜していてもよい。他の実施形態では、角度は10度~20度であってもよい。10度などのより浅い角度により、解剖学的構造の角度に応じて、下側クラウン105の同時解放を達成することができる。遠位解放の型式は、特定の近位縁部角度で調整されてもよい。いくつかの実施形態では、遠位シース260が、20度以上の角度を利用して、ステント弁100の下側ステント部分103の少なくとも第1の部分又は側部を拘束することが望ましい場合がある。他の実施形態では、10度などのより浅い角度を利用して、下側ステント部分103全体を対称的に又は同時に解放することが望ましい場合がある。
【0037】
遠位シース260の長い側部263の位置を示すマーカを使用することにより、ユーザがステント弁の望ましい展開のために送達システム250を位置決めるのに役立ち得る。図5に示すように、マーカは、遠位シース260の長い側部263に沿って部分的に又は完全に延在する線267であり得る。線267は、線267の近位端が、傾斜した近位縁部266の近位先端265にあるように、長い側部263上で中央に置かれてもよい。他の実施形態では、マーカは、長い側部263を示すドット268又は他の形状のマーカであってもよい。マーカは、一般に、蛍光透視法で可視であるように放射線不透過性であってもよいが、展開中に使用される望ましいタイプの撮像に従って、他のマーカが使用されてもよい。遠位シース260上のマーカの代わりに、又は加えて、放射線不透過性ドット又は線等のマーカが、下側クラウン105のうちの1つの上等の下側ステント部分103上に設けられてもよい。
【0038】
近位シース240は、ステント弁100の少なくとも上側部分を覆って配置され得る。いくつかの実施形態では、近位シース240は、アーチ101及び上側固定クラウン104を覆って配置されてもよい。近位シース240及び遠位シース260は、遠位シース260の傾斜した近位縁部266の近位先端265において接触し得る。他の実施形態では、遠位シース260の近位先端265と近位シース240の遠位縁部244との間に間隙が存在してもよい。図4に示すように、近位シース240は、遠位シース260から独立して作動可能であってもよく、アーチ101及び上側固定クラウン104を含むステント弁の上側部分を解放するように、内側シャフト210及び中間シャフト212に対して近位に移動可能であってもよい。近位シース240を近位に引くと、アーチ101及び上側固定クラウン104は、少なくとも部分的に拡張することができるが、下側ステント部分103は、遠位シース260によって拘束されたままであり、ステント弁が天然の弁内に固定されるのを防止する。
【0039】
遠位シース260は、ステント弁の下側ステント部分103を徐々に及び漸増的に解放するように遠位方向に移動可能であってもよく、傾斜した近位縁部266は、下側ステント部分103の第1の側部上で下側クラウン105を反対側の第2の側部より先に解放する。図6に示すように、遠位シース260の短い側部261が、下側クラウン105を解放する一方、長い側部263が、下側ステント部分103の反対側の下側クラウン105を覆って拘束する。一部分の下側クラウン105のみが解放された場合、下側ステント部分103のセクションは拡張し得るが、この部分的な拡張は、望ましい位置を達成するために、天然の弁内のステント弁の移動及び位置決めを可能にし得る。図7に示すように、ステント弁100が望ましい位置に配置されると、遠位シース260は、遠位方向に完全に引き抜かれてもよく、長い側部263が下側クラウン105の最後の部分を露出させることを可能にし、このとき、下側ステント部分103が、完全に拡張する。
【0040】
いくつかの実施形態では、遠位シース260は、補強コイル269が埋め込まれたポリマーシースを含むことができる。図8は、補強コイル269を露出させるためにポリマーシースの外側部分が除去された遠位シース260を示す。補強コイル269は、その遠位端から、傾斜した近位縁部266に隣接する位置まで延在してもよい。他の実施形態では、遠位シース260は、補強コイル269の近位に配置されたブレイズ280を含むことができる。ブレイズ280は、補強コイル269から傾斜した近位縁部266の近位先端265まで延在してもよい。あるいは、補強コイルの代わりに、遠位シース260は、近位シースの全体に沿って延在するブレイズを含んでもよい。
【0041】
いくつかの実施形態では、遠位シース360の長い側部363は、下側クラウン105のうちの一部分を覆うとともに、残りの全ての下側クラウンが解放されるように構成された近位延長部369を含むことができる。図9に示すように、近位延長部369は、遠位シース360の長い側部363の近位先端365を規定する丸い突起であってもよい。近位延長部369は、遠位シース360の短い側部361上の最下点の正反対にあってもよい。近位延長部369は、1~5個の下側クラウン105を覆いかつ保持するようにサイズを調整されてもよい。遠位シース360の先端部分を戦略的に成形することによって、下側ステント部分103が拡張され、解剖学的構造に対して並置されるまで、ステント弁が依然として送達システムに固定されたままであるように、最終解放を遅延させることができ、解放中の弁移動のリスクを低減させる。
【0042】
図10は、傾斜した遠位縁部444を有する遠位自由端を有する近位シース440の実施形態を図示する。近位シース440が近位方向に移動されると、傾斜した遠位縁部444は、ステント弁100の上側部分の第1の側部を反対の第2の側部より先に解放する。図示される実施形態では、傾斜した遠位縁部444は、傾斜した近位縁部266とは反対方向に傾斜する。近位シース440の長い側部463が大動脈の外側曲線に沿うように送達システムが挿入された状態で、傾斜した遠位縁部444は、傾斜した遠位縁部444の角度及び解剖学的構造の湾曲に応じて、内側曲線(左冠動脈側)に沿ったアーチ101のうちの1つが、残りのアーチより先に解放されることを可能にしてもよく、又は全てのアーチが同時に解放されてもよい。代わりに、傾斜した遠位縁部444は、遠位シース260の傾斜した近位縁部266と同じ方向に傾斜していてもよい。この向きにより、外側曲線に沿ったアーチを最初に解放することができる。近位シースの遠位端の戦略的成形により、アーチ101の解放の良好な制御を可能にし、これは、自己拡張式ステント弁100の最終配置を改良し得る。
【0043】
上述の実施形態のいずれかに従った送達システムは、置換ステント弁を送達する方法において使用されてもよい。いくつかの実施形態では、ステント弁は、大動脈弁を置換するために使用されてもよい。大腿動脈及び血管系を通り、大動脈弓5を横断し、大動脈弁7を通って以前に配置されたガイドワイヤ290にわたって送達システム250が追跡され得る、経大腿動脈アプローチが使用されてもよい。送達システム250は、図11に示すように、遠位先端215が大動脈弁7を通って左心室8の中へ延在するまで、ガイドワイヤ290上を前進させられてもよい。遠位シース260の長い側部263に沿って配置された放射線不透過性マーカは、長い側部263が大動脈の外側曲線3と整列するように、遠位シャフトを方向付けるために使用されてもよい。送達システムが、大動脈弁7に隣接するステント弁100とともに位置決めされた状態で、近位シース240は、近位に後退されてもよい。遠位シース260は、ステントの下側部分を拘束状態に保つように所定位置に留まる。図11に示すように、近位シース240が近位に移動すると、ステント弁100の一部が、遠位シース260の傾斜した近位縁部266とともに露出する。
【0044】
図12に示すように、近位シース240は、ステント弁から完全に後退させられ、アーチ101及び上側固定クラウン104を解放してもよい。遠位シース260は、下側ステント部分103を覆ったままであり、それが拡張するのを防止する。この時点で、ステント弁100の位置を大動脈弁7に対して調整することができる。図13に示すように、展開の第1の段階では、遠位シース260は、次に、傾斜した近位縁部266が、大動脈の内側曲線に対応する遠位シース260の短い側部261から、下側クラウン105を漸増的に解放する第1の位置まで下側ステント部分103から遠位方向に移動されてもよい。外側曲線側の下側クラウン105は、遠位シース260の長い側部によって拘束されたままである。図14に示すように、遠位シース260がさらに遠位方向に移動されると、内側曲線上の解放された下側クラウン105は、解剖学的構造の望ましい部分に係合することにより、適切な最終配置のためにステント弁を位置決めすることができる。内側曲線上の下側クラウン105を解放することにより、図3に関して上述した外側曲線上の下側クラウンの解放と同じ問題は発生しないが、それは、内側曲線が下側ステント部分103の一部の圧縮を維持し、遠位シース260上の傾斜した近位縁部266が、外側曲線上の下側クラウン105の展開に対する追加の制御を提供するからである。図15に示すように、展開の第2の段階では、遠位シース260のさらなる遠位移動により、下側クラウン105の全てを解放し、ステント弁は、完全に拡張し、アーチ101及び上側固定クラウン104は、血管壁に係合し、下側ステント部分103は、大動脈弁7内に着座する。
【0045】
他の実施形態では、特に、傾斜した近位縁部266に対する角度がより浅い場合、例えば、10度である場合、傾斜した近位縁部266の遠位移動が、全ての下側クラウン105を同時に解放することにより、ステント-弁展開は、単一段階で起こり得る。この実施形態は、傾斜した近位縁部266の浅い角度が、大動脈の解剖学的曲線に追従するように湾曲されると、下側ステント部分103全体を同時に解放するため、ステント弁の対称的遠位解放を達成し得る。この実施形態では、展開は、図12に示される構成から図15に示される構成に移行する。
【0046】
送達システム250(及び/又は本明細書に開示される他のシステム又は構成要素)の種々の構成要素並びに本明細書に開示されるその種々の要素のために使用され得る材料は、医療デバイスと一般的に関連付けられるものを含んでもよい。簡略化のために、以下の議論は、送達システム250(及び本明細書に開示される変形例、システム、又は構成要素)について言及する。しかし、これは、本明細書に説明されるデバイス及び方法を限定することを意図するものではなく、議論は、本明細書に開示される他の要素、部材、構成要素、又はデバイスに適用されてもよい。
【0047】
いくつかの実施形態では、送達システム250(及び本明細書に開示されるその変形例、システム、又は構成要素)は、金属、金属合金、セラミック、ジルコニア、ポリマー(そのいくつかの例が以下に開示される)、金属-ポリマー複合材、それらの組み合わせなど、又は他の好適な材料から作製されてもよい。適切な金属及び合金のいくつかの例は、444V、444L、及び314LVステンレススチール等のステンレススチール;軟鋼;線形弾性及び/又は超弾性ニチノールなどのニッケル-チタン合金;コバルトクロム合金、チタン及びその合金、アルミナ、ダイヤモンドライクコーティング(DLC)又は窒化チタンコーティングを施した金属、ニッケル-クロム-モリブデン合金などの他のニッケル合金(例えば、INCONEL(登録商標)625などのUNS:N06625、HASTELLOY(登録商標)C-22(登録商標)等のUNS:N06022、HASTELLOY(登録商標)C276(登録商標)などのUNS:N10276、及び他のHASTELLOY(登録商標)合金など)、ニッケル-銅合金(例えば、MONEL(登録商標)400、NICKELVAC(登録商標)400、及びNICORROS(登録商標)400などのUNS:N04400)、ニッケル-コバルト-クロム-モリブデン合金(例えば、MP35-N(登録商標)等のUNS:R44035など)、ニッケル-モリブデン合金(例えば、HASTELLOY(登録商標)ALLOY B2(登録商標)等のUNS:N10665)、他のニッケル-クロム合金、他のニッケル-モリブデン合金、他のニッケル-コバルト合金、他のニッケル-鉄合金、他のニッケル-銅合金、及び他のニッケル-タングステン又はタングステン合金等;コバルト-クロム合金;コバルト-クロム-モリブデン合金(例えば、ELGILOY(登録商標)、及びPHYNOX(登録商標)等のUNS:R44003);白金強化ステンレススチール;チタン;白金;パラジウム;金;及びこれらの組み合わせ等;又は任意の他の適切な材料を含む。
【0048】
本明細書で言及されるように、市販のニッケル-チタン又はニチノール合金のファミリー内には、「線形弾性」又は「非超弾性」と称されるカテゴリーがあり、これは、従来の形状記憶及び超弾性の種類と化学的に類似し得るが、別個の有用な機械的特性を示し得る。線形弾性及び/又は非超弾性ニチノールは、線形弾性及び/又は非超弾性ニチノールが、その応力/歪み曲線において、超弾性ニチノールが示すような実質的な「超弾性プラトー」又は「フラグ領域」を示さないという点で、超弾性ニチノールと区別され得る。代わりに、線形弾性及び/又は非超弾性ニチノールでは、回復可能な歪みが増加するにつれて、応力は、塑性変形が始まるまで、実質的に線形である、又はいくつかは線形であるが、必ずしも全体的に線形ではない関係において、又は少なくとも超弾性ニチノールで見られ得る超弾性プラトー及び/又はフラグ領域よりも線形である関係において増加し続ける。従って、本開示の目的のために、線形弾性及び/又は非超弾性ニチノールはまた、「実質的に」線形弾性及び/又は非超弾性ニチノールと称されてもよい。
【0049】
場合によっては、線形弾性及び/又は非超弾性ニチノールはまた、線形弾性及び/又は非超弾性ニチノールが、実質的に弾性のままでありながら(例えば、塑性変形前に)、最大約2から5%の歪みを受け入れることができるが、一方、超弾性ニチノールは、塑性変形前に最大約8%の歪みを受け入れることができるという点で、超弾性ニチノールと区別され得る。これらの材料は両方とも、塑性変形前に約0.2から0.44パーセントの歪みのみを受け入れ得るステンレス鋼(その組成に基づいて区別することもできる)等の他の線形弾性材料と区別することができる。
【0050】
いくつかの実施形態では、線形弾性及び/又は非超弾性ニッケル-チタン合金は、広い温度範囲にわたって示差走査熱量測定(DSC)及び動的金属熱分析(DMTA)分析によって検出可能なマルテンサイト/オーステナイト相変化を示さない合金である。例えば、いくつかの実施形態では、線形弾性及び/又は非超弾性ニッケル-チタン合金において、摂氏約-60度(℃)から約120℃の範囲で、DSC及びDMTA分析によって検出可能なマルテンサイト/オーステナイト相変化がなくてもよい。従って、そのような材料の機械的屈曲特性は、一般に、この非常に広い温度範囲にわたる温度の影響に対して不活性であり得る。いくつかの実施形態では、周囲温度又は室温での線形弾性及び/又は非超弾性ニッケル-チタン合金の機械的屈曲特性は、例えば、それらが超弾性プラトー及び/又はフラグ領域を示さないという点で、体温での機械的特性と実質的に同じである。例えば、広い温度範囲にわたって、線形弾性及び/又は非超弾性ニッケル-チタン合金は、その線形弾性及び/又は非超弾性特徴及び/又は特性を維持する。
【0051】
いくつかの実施形態では、線形弾性及び/又は非超弾性ニッケル-チタン合金は、約50から約60重量パーセントの範囲のニッケルであってもよく、残りは実質的にチタンである。いくつかの実施形態では、組成物は、約54から約57重量パーセントの範囲のニッケルを含む。好適なニッケル-チタン合金の一例は、日本国神奈川県の古河テクノマテリアル社から市販されているFHP-NT合金である。他の適切な材料は、ULTANIUM(商標)(Neo-Metricsから入手可能)及びGUM METAL(商標)(トヨタから入手可能)を含んでもよい。いくつかの他の実施形態では、望ましい特性を達成するために、超弾性合金、例えば、超弾性ニチノールが使用されてもよい。
【0052】
少なくともいくつかの実施形態では、送達システム250(及び本明細書に開示されるその変形例、システム、又は構成要素)の一部又は全部はまた、放射線不透過性材料でドープされ得るか、放射線不透過性材料製であり得るか、又はそうでなければ放射線不透過性材料を含んでもよい。放射線不透過性材料は、医療処置中に蛍光透視スクリーン又は別の撮像技術で比較的明るい画像を生成することができる材料であると理解される。この比較的明るい画像は、ユーザが送達システム250(及び本明細書に開示されるその変形例、システム、又は構成要素)の位置を決定する際に役立つ。放射線不透過性材料のいくつかの例は、限定されないが、金、白金、パラジウム、タンタル、タングステン合金、放射線不透過性フィラーが充填されたポリマー材料等を含み得る。加えて、他の放射線不透過性マーカバンドもまた、送達システム250(及び本明細書に開示されるその変形例、システム、又は構成要素)の設計に組み込まれ、同一の結果を達成してもよい。
【0053】
いくつかの実施形態では、送達システム250(及び本明細書に開示されるその変形例、システム、又は構成要素)の複数の部分は、ポリマー又は他の好適な材料から作製され得るか、又はそれを含んでもよい。好適なポリマーのいくつかの例は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、ポリオキシメチレン(POM、例えば、DuPontから入手可能なDELRIN(登録商標))、ポリエーテルブロックエステル、ポリウレタン(例えば、Polyurethane 85A)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエーテルエステル(例えば、DSM Engineering Plasticsから入手可能なARNITEL(登録商標))、エーテル又はエステル系コポリマー(例えば、ブチレン/ポリ(アルキレンエーテル)フタレート及び/又はDuPontから入手可能なHYTREL(登録商標)等の他のポリエステルエラストマー)、ポリアミド(例えば、Bayerから入手可能なDURETHAN(登録商標)又はElf Atochemから入手可能なCRISTAMID(登録商標))、エラストマーポリアミド、ブロックポリアミド/エーテル、ポリエーテルブロックアミド(PEBA、例えば、PEBAX(登録商標)の商品名で入手可能)、エチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)、シリコーン、ポリエチレン(PE)、Marlex(登録商標)高密度ポリエチレン、Marlex(登録商標)低密度ポリエチレン、線形低密度ポリエチレン(例えば、REXELL(登録商標))、ポリエステル、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリパラフェニレンテレフタルアミド(例えば、KEVLAR(登録商標))、ポリスルフォン、ナイロン、ナイロン-12(例えば、EMS American Grilonから入手可能なGRILAMID(登録商標))、ペルフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PFA)、エチレンビニルアルコール、ポリオレフィン、ポリスチレン、エポキシ、ポリ塩化ビニリデン(PVdC)、ポリ(スチレン-b-イソブチレン-b-スチレン)(例えば、SIBS及び/又はSIBS 50A)、ポリカーボネート、アイオノマー、ポリウレタンシリコーンコポリマー(例えば、AorTech BiomaterialsからのElast-Eon(登録商標)又はAdvanSource BiomaterialsからのChronoSil(登録商標))、生体適合性ポリマー、他の適切な材料、又はその混合物、組み合わせ、コポリマー、及びポリマー/金属複合材料等を含み得る。いくつかの実施形態では、シースは、液晶ポリマー(LCP)と混合されてもよい。例えば、混合物は最大約6%までのLCPを含有することができる。
【0054】
本開示が、多くの態様において例示的なものにすぎないことは理解されるべきである。本開示の範囲を逸脱することなく、詳細に、特に形状、大きさ、及び工程の配置に関して変更され得る。これは、適切な範囲で、他の実施形態に使用されている一つの例示的な実施形態の特徴のいずれかの使用を含み得る。本開示の範囲は、当然ながら、添付の特許請求の範囲が表現される言語で定義される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
【手続補正書】
【提出日】2024-04-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステント弁を送達するように構成された送達システムであって、
前記送達システムは、
遠位先端を含む内側シャフトと、
前記内側シャフト上に圧着され、上側部分、下側部分、及び弁を含む前記ステント弁と、
前記ステント弁の少なくとも前記下側部分を覆って配置された遠位シースであって、前記遠位先端に連結された遠位端と、前記遠位シースの短い側部及び長い側部を規定する傾斜した近位縁部を有する近位自由端とを有する前記遠位シースと、
前記ステント弁の少なくとも前記上側部分を覆って配置された近位シースと、を含み、
前記近位シースは、前記遠位シースから独立して作動可能であり、前記ステント弁の前記上側部分を解放するために近位方向に移動可能であり、
前記遠位シースは、前記ステント弁の前記下側部分を解放するために遠位方向に移動可能であり、前記傾斜した近位縁部は、前記ステント弁の前記下側部分の第1の側部を反対側の第2の側部より先に解放する、送達システム。
【請求項2】
前記遠位シース上の前記傾斜した近位縁部は、前記遠位シースの横軸に対して10度~70度の角度で傾斜する、請求項1に記載の送達システム。
【請求項3】
前記傾斜した近位縁部は、10度~20度の角度を有する、請求項2に記載の送達システム。
【請求項4】
前記遠位シースの前記長い側部の位置を示すマーカをさらに含む、請求項1に記載の送達システム。
【請求項5】
前記マーカは、前記長い側部に沿った前記遠位シース上の放射線不透過性マーカである、請求項4に記載の送達システム。
【請求項6】
前記マーカは、前記ステント弁の前記下側部分上の放射線不透過性マーカである、請求項4に記載の送達システム。
【請求項7】
前記ステント弁の前記下側部分は、複数の下側クラウンを含み、前記長い側部は、残りの下側クラウンが解放されている間、前記下側クラウンのうちの1~5個を覆うように構成される近位延長部を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の送達システム。
【請求項8】
前記近位シースは、前記傾斜した遠位縁部を有する遠位自由端を有し、前記近位シースが近位方向に移動されるとき、前記傾斜した遠位縁部は、前記ステント弁の前記上側部分の第1の側部を反対の第2の側部より先に解放する、請求項1~のいずれか1項に記載の送達システム。
【請求項9】
前記ステント弁の前記上側部分は、複数のアーチ及び複数の上側クラウンを含み、前記近位シースの遠位端は、前記複数のアーチ及び前記複数の上側クラウンを覆って延在する、請求項1~のいずれか1項に記載の送達システム。
【請求項10】
前記遠位シースは、ポリマーシースと、補強コイルとを含み、前記補強コイルは、前記遠位シースの前記遠位端から前記傾斜した近位縁部に隣接する位置まで延在する、請求項1~のいずれか1項に記載の送達システム。
【請求項11】
前記遠位シースは、前記補強コイルの近位に配置されたブレイズ(braid)を含む、請求項10に記載の送達システム。
【請求項12】
ステント弁を送達するように構成された送達システムであって、
遠位先端を含む内側シャフトと、
前記内側シャフト上に圧着され、複数の上側クラウン、複数の下側クラウン、及び弁を含むステント弁と、
前記下側クラウンを覆って配置され、前記下側クラウンを拘束する遠位シースであって、前記遠位先端に連結された遠位端と、前記遠位シースの横軸に対して5度~70度の角度が付けられている傾斜した近位縁部を有する近位自由端とを有する前記遠位シースと、
前記ステント弁の前記上側クラウンを覆って配置された近位シースと、を含み、
前記近位シースが、前記遠位シースから独立して作動可能であり、前記ステント弁の前記上側クラウンを解放するために近位方向に移動可能であり、
前記遠位シースは、前記ステント弁の前記下側クラウンを解放するために遠位方向に移動可能であり、前記傾斜した近位縁部は、前記下側クラウンを前記ステント弁の第1の側部から第2の側部に漸増的に解放する、送達システム。
【請求項13】
前記傾斜した近位縁部は、10度~20度の角度を有する、請求項12に記載の送達システム。
【請求項14】
前記遠位シースの前記傾斜した近位縁部は、前記遠位シースの長い側部及び対向する短い側部を規定し、前記送達システムはさらに、前記遠位シースの前記長い側部の位置を示すマーカを備える、請求項12又は13に記載の送達システム
【国際調査報告】