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特表2024-533792洋上風力タービンへのブレードの設置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】洋上風力タービンへのブレードの設置
(51)【国際特許分類】
   F03D 13/25 20160101AFI20240905BHJP
【FI】
F03D13/25
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519573
(86)(22)【出願日】2022-09-26
(85)【翻訳文提出日】2024-04-30
(86)【国際出願番号】 NL2022050539
(87)【国際公開番号】W WO2023055231
(87)【国際公開日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】2029292
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521121776
【氏名又は名称】グストエムエスシー ベー.フェー.
【氏名又は名称原語表記】GustoMSC B.V.
【住所又は居所原語表記】Karel Doormanweg 35 3115 JD Schiedam The Netherlands
(71)【出願人】
【識別番号】519075579
【氏名又は名称】ナショナル オイルウェル ヴァーコ ノルウェー アーエス
(74)【代理人】
【識別番号】100126572
【弁理士】
【氏名又は名称】村越 智史
(72)【発明者】
【氏名】ホイダル, オドヴァル
(72)【発明者】
【氏名】バリャクタロビッチ, ボロ
(72)【発明者】
【氏名】ストランド, トール ラース ルドビック
(72)【発明者】
【氏名】ボーン, カート
(72)【発明者】
【氏名】ハーヴィン, エリック
【テーマコード(参考)】
3H178
【Fターム(参考)】
3H178AA03
3H178AA24
3H178BB77
3H178CC02
3H178CC23
3H178CC25
3H178DD67X
3H178DD70Z
(57)【要約】
洋上風力タービンのナセルに風力タービンブレードを設置する方法であって、風力タービンブレードを搭載した船舶またはバージ船と、ブレード受け取りカートを含むブレード設置ユニットとを用意する工程と、洋上風力タービンにおいて、ブレード設置ユニットのブームを風力タービンの風力タービンタワーに向けて移動させる工程と、タワー把持装置ユニットを、タワーに係合するまで、作動させる工程と、ブレードをブレード受け取りカートに挿入する工程であって、ブレードはカートにおいて略水平状態である、工程と、ブレード受け取りカートを上方へ、ブレード設置ユニットのブームの上端に向けて移動させる工程と、ブレードが略垂直状態になるまでブレードを回転させる工程と、ナセルと連結させるべく、ナセルにブレードが係合するまで、ブレードをカートに対して移動させる工程とを備える方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
洋上風力タービンのナセルに風力タービンブレードを設置する方法であって、
多数の風力タービンブレードを搭載した船舶またはバージ船と、ブレード受け取りカートを含むブレード設置ユニットとを用意する工程と、
前記洋上風力タービンにおいて、特に前記船舶に対して、前記ブレード設置ユニットのブームを前記風力タービンの風力タービンタワーに向けて移動させる工程と、
タワー把持装置ユニットを、前記タワーに係合するまで、作動させる工程と、
ブレードを前記ブレード受け取りカートに挿入する工程であって、前記ブレードは前記ブームの上端から離れた位置にあり、前記ブレードは前記カートにおいて略水平状態である、工程と、
前記ブレード受け取りカートを上方へ、前記ブレード設置ユニットの前記ブームの前記上端に向けて移動させる工程と、
前記ブレードが略垂直状態になるまで前記ブレードを回転させる工程と、
前記ナセルと連結させるべく、前記ナセルに前記ブレードが係合するまで、前記ブレードを前記カートに対して移動させる工程と
を備える方法。
【請求項2】
前記ブレード設置ユニットの前記ブームは、前記風力タービンタワーに対して位置合わせする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ブームの位置合わせは、前記ブレード設置ユニットを前記船舶の甲板に移動可能に取り付けるためのスキッドを使用して、前記甲板に対して前記ブームを移動させることを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記スキッドはXYスキッドであり、前記甲板に対して前記甲板を横断するような縦方向の移動および横方向の移動を可能とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ブレード設置ユニットの前記ブームはカンチレバーに設けられ、前記カンチレバーは前記船舶の甲板に対して移動可能であり、伸長状態では前記甲板を越えたところまで到達する、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記ブレードが、前記船舶またはバージ船に搭載されたマニピュレータ、特にクレーンによって、前記ブレード受け取りカートのブレード受け取り部に搬入される、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記ブームのブーム土台部分に対してブーム伸長可能部分を外側に移動させることにより、前記ブレード設置ユニットの前記ブームを伸長させることを備える、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記タワー把持装置ユニットは、前記ブームが伸長すると前記風力タービンタワーと係合するように前記ブームに対して折り畳まれた状態から開く、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ブームのブーム角度を調整する工程を備える、請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記船舶またはバージ船はジャッキアップ船であり、前記ブレード設置ユニットが前記風力タービンと係合している間、前記ジャッキアップ船が上昇位置にある、請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記ブレードは前記ナセルに結合されている、請求項1から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
請求項1から11のいずれかに記載の方法に使用するブレード設置ユニットであって、前記ブームと、前記ブレード受け取りカートとを備え、好ましくは前記タワー把持装置ユニットを備える、ブレード設置ユニット。
【請求項13】
請求項12に記載のブレード設置ユニットを備える、好ましくはジャッキアップ船である、船舶またはバージ船。
【請求項14】
請求項1から11のいずれかに記載の方法において前記ブレードを前記ブレード受け取りカートに挿入するためのデッキクレーンのようなマニピュレータをさらに備える、請求項13に記載の船舶またはバージ船。
【請求項15】
請求項13または14に記載の船舶またはバージ船と、特に前記船舶またはバージ船の甲板上で保管状態にある多数の風力タービンブレードとの組合せであって、請求項1から11のいずれかに記載の方法において洋上風力タービンのナセルに前記ブレードを設置するための、組み合わせ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洋上風力タービンに対するブレードの設置、メンテナンス、および/または撤去のための方法およびツールに関する。
【背景技術】
【0002】
洋上風力タービンの場合、タービンを稼働させる洋上でブレードを設置する必要があるのが一般的である。これは、タービンおよびブレードが大型で、タービンを完全に組み立てた状態で洋上へ、例えば、陸上の組立現場から輸送するのは現実的でないためである。公知のブレード洋上設置方法では基本的に、ロープで吊っているブレードをクレーンで設置位置へと持ち上げる。設置位置は一般的に、ブレード端部が、タービンのタワーの頂部でナセルと、例えば、係合、篏合および結合する位置である。
【0003】
この公知の方法では、風力タービン用のブレードは、クレーンロープに吊り下げられたスプレッダーバーとも呼ばれるリフティングヨークを使ってほぼ水平に吊り上げられる。ここでいう「水平」とは、横たわった状態のことであり、水平線と正確に一致している位置関係を意味するものではないと理解されたい。同様に、「垂直」とは直立している状態を意味するものと理解されたい。
【0004】
公知の方法では、ヨークでブレードを持ち上げ、高所用クレーンで嵌合位置まで旋回させる。ブレード/ヨークロープ吊り下げ方式は天候に非常に左右されやすく、特に風および/または波などの天候条件によって、既存の設置方法では操作が困難になってしまう。高度が上がると風が強くなるため、公知の方法では、さらに天候からの影響を強く受けるようになる。また、洋上風力タービンの高さは増加する傾向にある。
【0005】
このため、必要な高さに対応可能な船舶は限られる。この問題は、特に将来的には、計画中の洋上ウィンドファームの設置を完了できるかどうかを左右する重要な点になるだろう。風力タービンの高さが増加し、ブレードの長さ及び重量が増加すれば、船が対応可能かどうかが重要になってくる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このため、洋上風力タービンに対するブレードの設置、メンテナンス、および/または撤去の分野で改善が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、洋上風力タービンのナセルへの風力タービンブレードの設置を、特に、比較的大型の風力タービンにおいて、および/または、比較的悪天候の場合に、より容易に行うことを目的としている。上記の背景技術のセクションで特定したような公知の設置方法が抱える1または複数の課題を少なくとも部分的に軽減することを目的とする。少なくとも公知の方法に変わるブレード設置方法を提供することを目的とする。
【0008】
そのために、本発明の一態様は、洋上風力タービンのナセルに風力タービンブレードを設置するための方法を提供する。当該方法は以下の工程を含む。
多数の風力タービンブレードを搭載した船舶またはバージ船と、ブレード受け取りカートを含むブレード設置ユニットとを用意する工程
設置現場、すなわち洋上風力タービンにおいて、特に船舶に対して、ブレード設置ユニットのブームを風力タービンのタワーに向けて移動させる工程
好ましくはブレード設置ユニットのブームの伸長可能部分の上端において、タワー把持装置ユニットをタワーに係合するまで作動させる工程
ブレードをブレード受け取りカートに挿入する工程であって、ブレードはブームの下端に、または、少なくともブームの上端から離れた位置にあり、ブレードはカートにおいて略水平状態である、工程
ブレード受け取りカートを上方へ、例えば、ブレード設置ユニットのブームの上端に向けて移動させる工程
例えば、ブレード受け取りカートの移動中および/または移動後に、ブレードが略垂直状態になるまでブレードを回転させる工程
ナセルと連結させるべくナセルにブレードが係合するまで、ブレードをカートに対して、特に上方に移動させる工程
【0009】
その後、ブレードは、特に設置方法の最終段階でナセルに結合させるとしてよい。複数のブレードを同じナセルに設置するために、ブレードを扱うステップを繰り返して行うとしてよく、ブレードを設置した後にブレード受け取りカートがブームに沿って下降し、次のブレードを受け取る。タワーにおいてブレード設置作業が完了した後、タワー把持装置ユニットを離し、ブレード受け取りカートおよびブームを例えば初期位置に戻し、例えば別のブレード設置のために別のタワーに向けて船舶がタワーを離れることができるようにするとしてよい。
【0010】
一の有益な実施形態では、ブレード設置ユニットのブームは風力タービンタワーと位置合わせされている。このような位置合わせは、ブームをタワーに向け移動させる、特にブームを上下逆にしてタワーに向けて移動させる前に行うのが好ましい。また、このような位置合わせは、ブームを伸長する前に行うことが好ましい。そのために、ブレード設置ユニットおよび/またはブレード設置ユニットのブームを、船舶の甲板に対して移動可能に取り付けるとしてよい。例えば、ブレード設置ユニットをXYスキッドに取り付けることで、甲板に対して甲板を横断するような縦方向の移動および横方向の移動を可能にすることができる。これに代えて、ブレード設置ユニットをYスキッドに取り付け、甲板に対して甲板を横断するような横方向の移動を可能にするとしてもよい。これに代えて、および/または、これに加えて、このようなスキッドは、甲板に対して角度を持つような移動を実現するとしてもよい。船舶またはバージ船の甲板上で甲板に対する移動が可能となることで、特に船舶またはバージ船自体を高精度に位置決めしなくとも、ブームの位置と、タワーの位置との位置合わせが改善され得る。別の実施形態では、ブレード設置ユニットおよび/またはブレード設置ユニットのブームは、カンチレバー上に設けられてもよい。このカンチレバーは、例えば上述したXYスキッドによって船舶の甲板に対して移動可能であり、伸長状態では甲板を越えたところまで到達し得る。これに代えて、または、これに加えて、ブームとカンチレバーとの間にスキッドを設けてもよい。位置合わせとは別に、スキッドおよび/またはカンチレバーを使用して、例えば、位置合わせの途中で、または、位置合わせの完了後に、ブームをタワーに向けて移動させることが可能である。
【0011】
ブレードは、例えば、船舶またはバージ船に搭載可能な、比較的簡素な構造で軽量な小型クレーンによって、ブレード受け取りカートのブレード受け取り部に搬入することができる。このクレーンは、甲板に搭載するとしてもよいし、または、ジャッキアップ船などの脚の上または周囲に搭載するとしてもよい。これに代えて、または、これに加えて、クレーン以外の1またはその他の種類のマニピュレータを使用することも可能であると考えられたい。
【0012】
一実施形態において、当該方法は、好ましくはタワー把持装置ユニットを作動させる前に、ブームのうちブーム土台部分に対してブーム伸長可能部分を外側に移動させることによってブレード設置ユニットのブームを伸長させることを含む。このようにブームを伸長させた結果、ブームの下端に対してブームの上端がより高くなり、当該下端は船舶の甲板と同等の高さにあるものと理解されたい。このため、ブレード受け取りカートは、ブームの上端に向けて、例えばブームの上端まで移動すると、続いてブーム伸長可能部分の上端に向かって、例えばブーム伸長可能部分の上端まで移動するとしてよい。
【0013】
したがって、ブレード設置ユニットのブームは伸長可能ブームであってもよく、好ましくはトラス状ブームである。ブームには、ブーム土台部分およびブーム伸長可能部分には、カート運搬用のレールを設けることができる。カートは、これに代えて、ブームの一部分の直線状部分を、ローラーまたはフック等の別の方法を採用して移動させるとしてもよい。
【0014】
当該方法はさらに、特にブームが伸長位置にあるとき、すなわちブーム伸長可能部分がブーム土台部分に対して外側に移動すると、ブーム角度を調整することを含むとしてよい。ブームの角度は、例えば、任意で設けるXYスキッドあるいはYスキッドあるいはアングルスキッド上でブームを移動させることによって、または、任意で設けるカンチレバーの位置を調整することによって、および/または、タワー把持装置ユニットの位置を調整することによって、および/または、任意で設けるブーム伸長可能部分を伸縮させることによって、調整が可能である。例えば、風力タービンのタワーにかかる水平荷重を軽減するためにブーム角度を垂直に近づけるとしてもよい。また、ブーム角度を垂直に近づけることは、ブレード位置を垂直に近づける上で有益であるとしてよい。これに代えて、および/または、これに加えて、ブームの角度を調整することで、ブレードをナセルと嵌合する位置により近づけることが可能としてよい。
【0015】
カートに対してブレード受け取り部を回転させることにより、より正確にはカートのうちブームと係合する一部、例えば基部に対して、ブレードを水平位置から垂直位置まで回転させることにより、ナセル挿入開口部、特にブレードを受け取る予定のナセルの下面に位置合わせできる位置にブレードを持ってくることができる。カート、特にブレード受け取り部は、ナセルのうちブレード挿入開口などの受け取り仲介部との位置合わせをより正確に行うべく、水平方向および/または垂直方向および/または角度方向にさらに調整可能である。このような位置合わせ構造により、ブレードとナセル挿入開口とを位置合わせし易くなるので、ブレードとナセルとの篏合を最適化することにつながるとしてよい。
【0016】
そして、ブレードを上方に移動させ、ナセルのブレード挿入開口に挿入し、ナセルと結合させるとしてよい。例えば、カートは、ナセルに係合するまでさらに上方にブレードを移動させるための搬送機構を有するとしてよい。カートは、ブレード受け取り部、特にソフトだがしっかりとした保持力を発揮する可撓性ブレード受け取り部を有するとしてよく、あらゆる位置でブレードを保持することができる。
【0017】
一実施形態では、任意で設けるブーム土台部分は、ブーム土台部分から伸長可能でタワーを支持するタワー支柱を有するとしてよい。これに代えて、および/または、これに加えて、例えばブームの上端にあるタワー把持装置ユニットは、タワーに連結することが可能で、ブーム伸長可能部分がブームの土台部分に対して外側に伸長すると、タワーに沿って上方に移動することができる。タワー把持装置ユニットは、例えばブームの上端に折り畳み可能に連結されているとしてよく、ブームを伸長させている間は、タワー把持装置ユニットがブームに向かって内向きに折り畳まれるとしてもよい。ブームが伸長位置に到達すると、タワー把持装置ユニットは折り畳んだ状態から広げられて風力タービンのタワーと係合するとしてよい。本明細書の記載では、「折り畳む」および「折り畳み可能」とは、ブームに対して可能なさまざまな移動、つまり、上方への移動および回転、例えば並進伸長等のうちの1つ以上を意味し得るものと理解されたい。これに代えて、タワー把持装置は、タワーの把持は別にして、ブームに対して実質的に固定されており、すなわち、調節不可能であるとしてよい。タワー把持装置ユニットは、ブームがタワーにむけて傾いても問題ないよう十分な支持力を実現するべく、風力タービンのタワーと接触が可能になるようさまざまな実施形態があるとしてよい。
【0018】
船舶またはバージ船は、動的位置決めを使用する船舶、ジャッキアップ船、または、自走式あるいは曳航式のバージ船など、洋上施設で使用される任意の種類の船舶であってよい。
【0019】
ブレード設置ユニットは、船舶またはバージ船に固定された伸縮構造であって、風力タービンのタワーの頂部に向かって伸長可能な伸縮構造であってもよい。
【0020】
ブレード設置ユニットは、伸縮ブームと、ブレード受け取りカートまたはブレード受け取り台車と、タワーガイドまたはタワー把持装置ユニットとを有するとしてよい。
【0021】
ブームの上端は、使用中、タワーのうち上部、および/または別の部分に接続されるとしてよく、タワーと同期して、少なくともタワーのうちブームの上端が接続されている一部分と同期して移動することができる。つまり、ブレードのうちナセルと嵌合するように構成されている面、つまり、ブレードの篏合面と、ナセルまたはハブのうちブレード嵌合面と嵌合するように構成されている境界面、つまり、ハブ境界面との間で相対的に生じる運動が大幅に軽減される。ブームはシュートとも呼ばれる。
【0022】
このため、ブレード設置ユニットは、大型クレーンを必要とせず、船舶で利用可能なクレーン等のマニピュレータを利用することで、妥当なサイズの船舶からブレードを設置できるツールであってよい。
【0023】
ブレードは、風力タービンのナセルに嵌合させる前に略垂直に立てることが好ましい。その結果、ブレードの把持高さが低くなるので、風および波の作用によって引き起こされる運動が軽減される。
【0024】
ブレードは、シュートトロリーとも呼ばれるカートにできるだけ低い位置で投入され、ガイド付きのシュートトロリー(カート)によってブレード設置ユニットのブームに沿って上方に持ち上げるとしてよい。これに代えて、ブレードをカートに、具体的には、カートのブレード受け取り部に供給するのは、カートの位置がブームに沿って上方の位置まで到達した後であってもよい。船舶では、ブレードは格納位置において格納および海上に固定されることが好ましい。ブレードは、格納位置または海上固定位置からカートのブレード受け取り部にブレードを搬送することによって、船舶上のブレード格納位置から、クレーン等のマニピュレータによって、搬入位置、すなわちブレードをカートに挿入する位置に搬送することができる。ブレードは、このように搬送している過程において、クレーン構造に吊り下げられているヨークによって、または別の種類のマニピュレータによって、最初から最後まで誘導されるとしてよい。
【0025】
このため、ブレード設置ユニットは、位置決めに関して柔軟な対応が可能で、船舶またはバージ船において船尾/前方、または左舷/右舷に設置することが可能である。当該ユニットは、大きさによっては既存の船舶に後付けすることも可能であり、ブレードおよびその他のメンテナンスサービスに関して費用対効果の高いソリューションとしての利用も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
以下で本発明をさらに詳しく説明する。図面には例を図示しているがこれらに限定されるものではなく、実施可能な変形例も合わせて説明する。図面は模式図であり、単に例示に過ぎない。
図1】ブレード設置ユニットと、ナセルを有する風力タービンタワーと、風力タービンブレードとを備える船舶を示し、具体的にはブレード設置方法の段階を示す斜視図である。
図2】ブレード設置ユニットと、ナセルを有する風力タービンタワーと、風力タービンブレードとを備える船舶を示し、具体的にはブレード設置方法の段階を示す斜視図である。
図3】ブレード設置ユニットと、ナセルを有する風力タービンタワーと、風力タービンブレードとを備える船舶を示し、具体的にはブレード設置方法の段階を示す斜視図である。
図4】ブレード設置ユニットと、ナセルを有する風力タービンタワーと、風力タービンブレードとを備える船舶を示し、具体的にはブレード設置方法の段階を示す斜視図である。
図5】ブレード設置ユニットと、ナセルを有する風力タービンタワーと、風力タービンブレードとを備える船舶を示し、具体的にはブレード設置方法の段階を示す斜視図である。
図6】ブレード設置ユニットと、ナセルを有する風力タービンタワーと、風力タービンブレードとを備える船舶を示し、具体的にはブレード設置方法の段階を示す斜視図である。
図7】ブレード設置ユニットと、ナセルを有する風力タービンタワーと、風力タービンブレードとを備える船舶を示し、具体的にはブレード設置方法の段階を示す斜視図である。
図8】ブレード設置ユニットと、ナセルを有する風力タービンタワーと、風力タービンブレードとを備える船舶を示し、具体的にはブレード設置方法の段階を示す斜視図である。
図9】ブレード設置ユニットと、ナセルを有する風力タービンタワーと、風力タービンブレードとを備える船舶を示し、具体的にはブレード設置方法の段階を示す斜視図である。
図10】ブレード設置ユニットと、ナセルを有する風力タービンタワーと、風力タービンブレードとを備える船舶を示し、具体的にはブレード設置方法の段階を示す斜視図である。
図11】ブレード設置ユニットと、ナセルを有する風力タービンタワーと、風力タービンブレードとを備える船舶を示し、具体的にはブレード設置方法の段階を示す斜視図である。
図12】ブレード設置ユニットと、ナセルを有する風力タービンタワーと、風力タービンブレードとを備える船舶を示し、具体的にはブレード設置方法の段階を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、船舶1(ここではジャッキアップ船)を示している。ブレード設置ユニット2は、搬送位置(通過位置とも呼ばれる)にある。これは、船舶が航行中のブレード設置ユニットの位置を表している。ブレード設置ユニットは、前方、後方、隅、中央、船尾などに設けることができる。図12を参照しつつ本明細書で説明しているが、甲板3のさまざまな位置に設けることが可能であり、甲板の構成によって決まるとしてよい。船舶は、風力タービンタワー4およびナセル5が既に設置されている場所に到着する。
【0028】
図2は、ジャッキアップ船の上昇位置にあるブレード設置ユニットを示す別の斜視図である。ブレード設置ユニット2は、伸縮可能なブームであるブーム6と、ブーム上を移動可能なカート7とを備える。このカートにはブレード受け取り部8がある。ブレード受け取り部8に、利用可能なデッキクレーン10によって風力タービンのブレード9を挿入するとしてよい。ブームの上端には、風力タービンタワー把持装置11(本明細書ではタワー把持装置ユニットとも呼ぶ)が設けられており、ここでは折り畳まれた状態で示す。これに代えて、または、これに加えて、このようなタワー把持装置をブームのうち別の場所に配置してもよい。
【0029】
図3では、ブーム6が風力タービンタワー4に向けられている。タワー支柱12は、折り畳まれた状態からタワーと係合するまで開き、タワーに対してブームを最初に支持する部材となる。タワー支柱は、任意で設けられる部材であり、天候に応じて設けるとしてもよいし、および/または、利用されるとしてよい。
【0030】
図4は、ブーム伸長可能部分6bをブーム土台部分6aに対して外側に伸長させることにより、ブーム6が伸長位置にある状態を示している。ブームは、伸長位置において、風力タービンの上端に向かって伸び、具体的には格納位置に比べて上端に向かって伸びる。しかし、風力タービンのタワーの高さを考慮すると、ブームはタワーの上端に届かないことが多い。
【0031】
図5は、ここではブームの上端に設けられたタワー把持装置11が、折り畳まれた状態から係合位置に向けて開いている様子を示している。タワー把持装置は、係合位置でタワー4に係合し、タワーを把持してブーム6を強固に支持する。有益な実施形態では、タワー把持装置は、タワーと係合させる前に、まずタワーの動きと同期させるとしてよい。
【0032】
図6は、例えば従来の風力タービンブレード用の吊り下げ部および吊り下げ方法に基づき、利用可能なデッキクレーン10によって、カート7のブレード受け取り部にブレード9を搬入する様子を示している。ブレードは、ほぼ水平状態でカートに搬入される。
【0033】
図7は、ブレード9がカート7のブレード受け取り部に搬入されると、クレーン10が退避する様子を示す。カートは、ブーム6に沿って上方に移動し始めるとしてよい。
【0034】
図8は、ブレード9がブレード受け取り部において水平状態にあり、カート7がブーム6に沿って上方に移動している様子を示す。
【0035】
図9は、ブレード9がほぼ水平状態のまま、カート7がブームの延長部分6bに沿ってさらに上方に移動している状態を示している。尚、カート7は、アダプタ部13、ここではフレームベースのアダプタ部13に載置された状態で移動する。アダプタ部13は、ブーム伸縮可能部分6bに沿って移動可能であり、ブーム土台部分6aからカート7が上方に移動するとカート7が挿入されるように構成されている。ブーム伸長可能部分6bに沿ってカート7およびアダプタ部6は共に移動することができる。アダプタ部6は、ブーム伸長可能部分6bとカート7との間の仲介役として機能するとしてよい。カート7の寸法はブーム土台部分6aの寸法に合わせて設定されており、土台部分6aはブーム伸長可能部分6bよりも幾分幅広に設定されている。これにより、伸長可能部分6bが土台部分6aの内部で移動可能となる。別の方法も可能である。例えば、カート7が、例えば車輪を複数セット対応して有することによって、ブームのうち幅が異なる複数の部分に沿って移動するように構成されているとしてもよい。
【0036】
図10は、ブレード9がブレード受け取り部においてほぼ水平状態にあり、カート7がアダプタ部13と共にブーム6の上端に達した状態を示している。
【0037】
図11では、カート、具体的には、ブレード受け取り部8が上向き状態であり、垂直位置Vまで回転している。このため、ブレード9は、垂直方向を向いており、ナセル5のブレード受け取り境界面と嵌合可能となっている。このブレード受け取り界面は、下方からブレードを係合させ易くなるよう、実質的に下向きになっている。これに代えて、ブレード受け取り部8は、ブームに沿って上方に移動する間から、ほぼ垂直状態になるよう回転してもよい。その場合、ブレード受け取り部8が回転するのは、カートが上方へ移動するのと同時に行うとしてよい。ブームの上端、より正確にはブレード9のうちこの時点で上方に向いている端部で、ブレードをボルトでナセル5に固定することができる。ブレードがナセルに固定されると、ブレード受け取り部8が開いて退避し、ブレードを離す。ブレード受け取り部は、ブレードが離れると、回転して水平状態に戻り、カート7は下降位置に移動するとしてよい。その後、ナセル5を回転させるとしてよい。ブレードの取り付けは、3枚のブレードがナセル5に固定されるまで繰り返すとしてよい。船舶1は、ジャッキアップ船の場合、浮遊状態になり(図12の右側を参照)、あらかじめ設置されている次の風力タービンタワーまで航行してブレードを設置するとしてよい。
【0038】
図12は、垂直状態のブレード9がナセル5と係合するよう上方に押し上げられている様子を示している。図12では、この例では、ブレード受け取りカートで最初に受け取った際にはブレード9の水平状態と平行な向きで船舶の甲板上にブレード9が保管されており、デッキクレーン10によってブレードの向きを変える必要がないことがわかる。これとは対照的に、図1~11の例では、ブレードを甲板3上の保管状態Sからカート7上の受取状態Rに移動させる際に、ブレード9を垂直軸を中心に約90度旋回させるためにデッキクレーン10を操作する必要がある(図7参照)。
【0039】
本明細書では例および図に基づき本発明をさらに説明したが、これらは特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲を限定するものではない。当業者であれば本開示を参照することで理解されるように、多くの点で変形、組み合わせおよび追加が可能である。このような変形例は全て、特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲に含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【国際調査報告】