(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】走査プローブ顕微鏡の為の運動ステージのディザ能動的平衡化
(51)【国際特許分類】
G01Q 10/04 20100101AFI20240905BHJP
G01Q 70/04 20100101ALI20240905BHJP
【FI】
G01Q10/04 101
G01Q70/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024519630
(86)(22)【出願日】2022-09-30
(85)【翻訳文提出日】2024-05-29
(86)【国際出願番号】 NL2022050547
(87)【国際公開番号】W WO2023055236
(87)【国際公開日】2023-04-06
(32)【優先日】2021-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523299750
【氏名又は名称】ニアフィールド インスツルメンツ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【氏名又は名称】村上 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100160738
【氏名又は名称】加藤 由加里
(74)【代理人】
【識別番号】100166718
【氏名又は名称】石渡 保敬
(72)【発明者】
【氏名】エテファー,マスード ヘマシアン
(72)【発明者】
【氏名】サデギアン マルナニ,ハメド
(57)【要約】
本開示は、走査プローブ顕微鏡システムにおいて使用する為のz位置運動ステージ、走査プローブ顕微鏡システム、及び前記運動ステージを動作させる方法に関する。前記運動ステージ(1)は、スキャナ本体(10)、及び駆動ディザ(30)に関連付けられたプローブ(50)のカンチレバー(51)を振動運動(31)で駆動する為の前記駆動ディザ(30)を備えている。前記ステージは、前記運動ステージ(1)の中立中心(N)を横切る前記駆動ディザ(30)と反対側の位置で前記スキャナ本体に作用する少なくとも第1の力平衡化手段(60)を更に備えており、ここで、前記力平衡化手段(60)は、前記駆動ディザと調和して振動するように構成された少なくとも第1の平衡ディザ(61)を備えている。
【選択図】
図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走査プローブ顕微鏡システムにおいて使用する為のz位置運動ステージであって、
スキャナ本体;及び、
前記スキャナ本体の第1の端子端面に沿って、前記スキャナ本体の第1の端に近い位置で設けられた駆動ディザであって、該駆動ディザに関連付けられたプローブのカンチレバーを振動運動で駆動する為の第1の振動を与えるように構成された前記駆動ディザ
を備えており、
ここで、前記ステージは、前記運動ステージの静止中心又は中立中心を横切る前記駆動ディザと反対側の位置で前記スキャナ本体に作用する少なくとも第1の力平衡化手段を更に備えており、前記運動ステージの前記静止中心又は中立中心は、前記スキャナ本体の長手方向軸に沿った中立曲げ平面(N)であり、及び、ここで、前記力平衡化手段が、前記駆動ディザと調和して振動するように構成された少なくとも第1の平衡ディザを備えている、
前記z位置運動ステージ。
【請求項2】
使用時に、前記第1の端子端面に沿った方向に誘起される正味の合力が前記駆動ディザによって誘起される正味の合力を少なくとも部分的に打ち消すように、前記第1の力平衡化手段が前記駆動ディザに相対的に配置される、請求項1に記載の運動ステージ。
【請求項3】
前記第1の力平衡化手段が、前記スキャナ本体の前記第1の端子端面に沿って、該スキャナ本体の第2の端に近い位置に設けられている、請求項1又は2に記載の運動ステージ。
【請求項4】
前記第1の力平衡化手段が、前記駆動ディザによって誘起された前記正味の合力を少なくとも部分的に共同で打ち消すような配置で分散された複数の分離された平衡ディザを備えている、請求項1~3のいずれか1項に記載の運動ステージ。
【請求項5】
前記第1の力平衡化手段が、前記静止中心又は中立中心を横切って前記駆動ディザに対して鏡面対称に配向されている、請求項1~4のいずれか1項に記載の運動ステージ。
【請求項6】
前記第1の端子端面と反対側の前記スキャナ本体の第2の端子端面に沿って配置された第2の力平衡化手段を更に備えており、ここで、前記第2の力平衡化手段は、前記駆動ディザと調和して振動するように構成された1以上の第2の平衡ディザを備えている、請求項1~5のいずれか1項に記載の運動ステージ。
【請求項7】
前記第2の力平衡化手段が、前記駆動ディザ及び前記力平衡化手段と反対側の前記第2の端子端面に沿った位置に分散された少なくとも2つの第2の平衡ディザを備えている、請求項6に記載の運動ステージ。
【請求項8】
前記スキャナ本体が、前記第1の端子端面を画定する第1の端部材と前記第2の端子端面を画定する第2の端部材とを備えており、ここで、前記第1の端部材及び前記第2の端部材が、前記走査プローブ顕微鏡システムのメトロ枠に可逆的に接続可能であるところの中央部材の両端にわたって配置されており、ここで、前記中央部材は前記第1の端子端面を横断する方向、好ましくは直交する方向、における並進を提供するように、前記第1の端部材及び前記第2の端部材に作用するラージストロークアクチュエータを備えており、それによって、前記第1の端部材及び前記第2の端部材の各々は1以上のばね部材によって前記中央部材に取り付けられる、請求項1~7のいずれか1項に記載の運動ステージ。
【請求項9】
前記第1の力平衡化手段及び/又は第2の力平衡化手段が、平衡化荷重を保持する為のマウントを備えている、請求項1~8のいずれか1項に記載の運動ステージ。
【請求項10】
走査プローブ顕微鏡システムであって、請求項1~8のいずれか1項に記載のz位置運動ステージと、前記z位置運動ステージを前記走査プローブ顕微鏡システムのメトロ枠に可逆的に関連付ける為のマウントとを備えている、前記走査プローブ顕微鏡システム。
【請求項11】
使用時に、プローブされるべき基体の表面に沿って関心のある領域と反対側に前記運動ステージを配置するように、好ましくは前記マウントを介して、前記z位置運動ステージに作用するところの粗並進手段を備えている、請求項10に記載の走査プローブ顕微鏡システム。
【請求項12】
前記スキャナ本体の曲げ共振及び前記スキャナ本体の長手方向共振のうちの1以上を検出する為の検出器を備えている、請求項10又は11に記載の走査プローブ顕微鏡システム。
【請求項13】
請求項10~11のいずれか1項に記載の走査プローブ顕微鏡システムを動作させる又は請求項1~9のいずれか1項に記載のz位置運動ステージを動作させる方法であって、
プローブを前記z位置運動ステージに関連付けること、
前記プローブのカンチレバーのターゲット共振モードに関連付けられたターゲット駆動周波数で前記駆動ディザを駆動すること、及び、
少なくとも、前記駆動ディザが前記スキャナ本体の共振モードに関連付けられた周波数で駆動されるときに、前記第1の力平衡手段を動作させること
を含む、前記方法。
【請求項14】
少なくとも、前記駆動ディザが前記スキャナ本体の共振モードに関連付けられた周波数で駆動されるときに、前記第2の力平衡化手段を動作させること
を更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ターゲット駆動周波数が、前記スキャナ本体の曲げ共振モード及び前記スキャナ本体の長手方向共振モードのうちの1以上に関連付けられた範囲内にあるかを決定することを更に含む、請求項13又は14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、走査プローブ顕微鏡システム(scanning probe microscopy system)において使用する為の運動ステージ(motion stage)に関し、特には、スキャナ本体とプローブのカンチレバー(cantilever)を振動運動(oscillating motion)で駆動する為のディザ(dither)とを有するz位置運動ステージ(z-position motion stage)に関する。
【0002】
本開示は更に、運動ステージ、特には、スキャナ本体とプローブのカンチレバーを振動運動で駆動する為のディザとを有する運動ステージ、を備えている走査プローブ顕微鏡システムに関する。
【0003】
本開示は更に、走査プローブ顕微鏡システム又は位置運動ステージを動作させる方法に向けられており、特には、スキャナ本体とプローブのカンチレバーを振動運動で駆動する為のディザとを有するシステム又は運動ステージに向けられている。
【背景技術】
【0004】
走査プローブ顕微鏡(SPM:Scanning probe microscopy)は、連続的又は周期的に、すなわち、間欠的に、プローブされるべき表面と接して維持されるところのプローブチップによって表面を走査することに基づく、広範なクラスの顕微鏡方法に関する。該方法は、試料の表面の特徴、例えば、トレンチ(trenches)、ディンプル(dimples)、エッジ(edges)及び粗さ(roughness)等、並びに表面下の特徴の検出及びマッピングを、高精度且つ高分解能で可能にする。該高分解能はナノメートルサイズの構造の検出を可能にし、その結果、この高分解能は例えば、半導体素子の製造におけるツールとして非常に普及してきている。しかしながら、SPMは多くの他の用途、例えば、軟組織(soft tissue)又は生物学的試料(biological samples)の画像化及び分析においても同様に使用される。
【0005】
走査プローブ顕微鏡システムは典型的には、プローブされるべき基体と、運動ステージに関連付けられたプローブチップ、例えば、カンチレバーの作業端(working end)でのプローブのチップ、との間の相対移動(xyz)を提供する為に、走査ヘッド(scan head)又は運動ステージ(motion stage)を備えている。一般的に、該運動ステージは1以上のプローブチップを可逆的に保持する為の手段、例えばホルダ、を備えており、典型的には、該プローブチップは、該プローブチップのカンチレバーの端部に又はその付近に配置されたプローブチップを含む。該カンチレバーは典型的には、表面との相互作用の為の既知の振幅を有する周期的な振動運動(periodic,oscillating,motion)を該カンチレバーに提供するように、例えばホルダを介して、該プローブチップに作用するアクチュエータ(一般的にディザ(dither)と呼ばれる)によって駆動される。
【0006】
プローブチップ、例えば駆動プローブチップ(driven probe tip)、と、プローブされるべき基体の表面との間に、相対運動、例えば走査運動、を提供する為に、該運動ステージは典型的には、1以上の精密並進手段又はアクチュエータ、典型的には圧電駆動アクチュエータ(piezo driven actuators)、を備えている。プローブチップ、例えば、駆動プローブチップと、プローブされるべき基体の表面との間の分離距離を低減する為に、該運動ステージは典型的には、粗い並進手段及び精密な並進手段を備えている。該粗いストロークアクチュエータは一般的に、ラージストロークアクチュエータ(large stroke actuator)又はラージストロークのz位置決めアクチュエータ(large stroke z-positioning actuator)と呼ばれる。その比較的高い質量の故に、ラージストロークアクチュエーション(large stroke actuations)は、走査ヘッド内に不均衡(imbalances)又は寄生振動(parasitic oscillations)を引き起こす可能性がある。ラージストロークアクチュエーション(large stroke actuation)への不均衡を緩和する為に、米国特許第US6,590,208号明細書は、検出器からの信号に応答して、両方が延在するか又は後退するかのいずれかである、対向する端部(opposing ends)での第1のアクチュエータ及び第2のアクチュエータを備えている平衡化された運動量プローブホルダ(balanced momentum probe holder)を開示する。国際公開公報第WO2019/070120号パンフレットはSPMシステムにおいて使用する為のz位置運動ステージに関し、z位置運動ステージは、該試料トポロジーに追従する為のz方向における正確な動きを可能にし且つ高固有剛性を提供するように概念的共通長手方向軸(notional common longitudinal axis)の周りで形状回転対称であるところのアクチュエータを有する支持要素を備えている。バランスアクチュエータ(balance actuator)、第2の同一の運動アクチュエータ(motion actuator)をまた備えている実施態様において、該支持要素はまた、長手方向軸に垂直な平面に対して対称である。この追加の対称性は、該支持要素をz方向にバランスさせ、使用時のその動的挙動を改善することが報告されている。
【0007】
背景技術として、米国特許第US6,323,483号明細書は、高帯域幅の反発性マイクロアクチュエータを記載する。特には、米国特許第US6,323,483号明細書は、そのZ位置決めアクチュエータの帯域幅の増大に関する。
【0008】
運動ステージ上に又は運動ステージに沿って駆動ディザ(driving dither)を設けることの潜在的な不利点は、動作の間に、該運動ステージそれ自体が一般的に、駆動ディザによって課される正味の合力をまた経験することであり、それは、状況に応じて、走査プローブ顕微鏡動作の間に不正確さを引き起こす可能性がある顕著な変位を引き起こしうる。この変位は、該駆動ディザが該スキャナの共振モード又は固有周波数と一致又は重複する周波数で動作する場合に、走査プローブ顕微鏡の性能にとって特に有害でありうる。該スキャナの顕著な変位(displacement)又は共振(resonance)を回避又は軽減する為に、該スキャナは、所与の周波数範囲内の特定の方向に沿った共振を低減するような寸法及び/又は形状でありうる。この目的の為に、既知のスキャナ、例えば米国特許第US5,574,278号明細書によって開示されているような既知のスキャナ、は典型的には、比較的堅い本体又はケーシングを有するように設計される。代替的に又はそれに加えて、既知のステージの駆動ディザによって誘起されるステージレベルでの横方向変位又は共振は、プローブホルダの配置によって及び/又は該ステージの長手方向対称軸で若しくはその付近でディザを駆動することによって低減されることができる。上記の設計基準は、該スキャナ本体の設計又はフォームファクタ、及びそれに対応する走査プローブ顕微鏡システムを厳しく制限する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本開示の目的は上記の欠点の1つ以上を軽減し、及び精度を向上させて動作させることができるところの運動ステージ及び/又は走査プローブ顕微鏡検査システムを提供することである。
【0010】
別の又は更なる目的は、その形状及び/又は寸法決めに関してより緩和された条件を可能にするところの運動ステージ及び/又は走査プローブ顕微鏡検査システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の観点は、z位置運動ステージ、特には、走査プローブ顕微鏡システムにおいて使用する為のz位置運動ステージ、であって、該z位置運動ステージが、スキャナ本体;及び駆動ディザを備えている上記のz位置運動ステージに関する。該駆動ディザは、該駆動ディザに関連付けられたプローブのカンチレバーを振動運動で駆動する為の第1の振動を与えるように構成されている。該駆動ディザは、該スキャナ本体の第1の端子端面(terminal end face)に沿って、該スキャナ本体の第1の端(edge)に近い位置で設けられることができる。該ステージは、該運動ステージの静止中心又は中立中心を横切る該駆動ディザと反対側の位置で該スキャナ本体に作用する少なくとも1つの力平衡化手段を更に備えている。該スキャナ本体の該静止中心又は中立中心が、該スキャナ本体10の長手方向軸に沿った中立曲げ平面を云う。該力平衡化手段は、該駆動ディザと調和して振動するように構成された少なくとも1つの平衡ディザ(balance dither)を備えている。
【0012】
本明細書に別段の指定がない限り、該平衡化手段は一般的に、第1の平衡化手段として言及され、運動ステージの静止中心又は中立中心を横切る駆動ディザの反対側の位置で、有利には、該駆動ディザが該z位置運動ステージの共振モードと重複又は一致するところの周波数で動作するときでさえも、該スキャナ本体上への該駆動ディザの合力と反対側の方向に該スキャナ本体上に作用する合力を生成することができる。
【0013】
該z位置運動ステージの幾何学的形状及び/又は該ターゲット共振モード(targeted resonance mode)に依存して、該z位置運動ステージの静止中心又は中立中心は、該z位置運動ステージの質量中心であると考えられうる。代替的には又は追加的に、該z位置運動ステージの静止中心又は中立中心は、該z位置運動ステージが静止基準点、典型的には該走査プローブ顕微鏡システムのメトロ枠、に接続される(固定される)点、軸及び/又は平面によって画定されうる。
【0014】
平衡ディザは好ましくは、該駆動ディザと調和して動作する。該駆動ディザと調和して該平衡ディザを動作させることにより、有効な対向力が最大にされ及び/又は該z位置運動ステージの望ましくない共振が低減される。
【0015】
好ましい実施態様において、該z位置運動ステージが検査されないときに、プローブされるべき基体に相対的な横方向走査方向(xy)に沿った方向における該スキャナ本体の望ましくない回転誤差及び/又は変位を引き起こしうるところの、該スキャナ本体の点頭(nodding)又は曲げ(bending)共振(resonance)に少なくとも部分的に対抗するように配置された第1の力平衡化手段を用いて構成される。
【0016】
他の実施態様又は更なる好ましい実施態様において、該第1の力平衡化手段は、該スキャナ本体の伸張(stretching)又はブリージング共振(breathing resonance)(該スキャナ本体の長手方向に沿った該本体の膨張又は圧縮)に少なくとも部分的に対抗するように配置される。該スキャナ本体の長手方向に沿って、概して、粗い並進運動(z)の方向に沿って共振を緩和し、例えば、プローブされるべき表面を横切るプローブ間の初期分離距離を低減し、動作の間の精度を向上させる。
【0017】
好ましい実施態様において、該第1の力平衡化手段が、該スキャナ本体の第1の端子端面に沿って、該運動ステージの静止中心又は中立中心を横切る該駆動ディザと反対側の位置に設けられる。従って、該第1の力平衡手段は使用時に、駆動ディザによってスキャナ本体上に加えられる合力を少なくとも部分的に打ち消すように配置されると理解されることができる。該スキャナ本体上への正味の合力を打ち消すか又は少なくとも低減することにより該スキャナ本体の点頭(nodding)又は屈曲(bending)共振を軽減し、該スキャナ本体はスキャニング動作の間に外乱として現れうる、該面に沿った該スキャナの望ましくない横方向(lateral)及び/又は縦方向(vertical)及び/又は回転方向(rotational)の寄生変位(parasitic displacement)を軽減する。
【0018】
該スキャナ本体の第1の端子端面に沿った対向する位置(opposing positions)で該駆動ディザ及び該平衡化手段を配置することにより、有利には、該スキャナ本体の不要な共振を依然として軽減しながら、該スキャナ本体の中心から外れた位置又は端付近においてでさえもプローブを保持する為の駆動ディザ及び/又は手段を配置することが可能になる。該スキャナ本体の第1の端子端面の中心から外れた位置に又は端付近においてでさえもプローブを保持する為の駆動ディザ及び/又は手段を配置することにより、光路の為の十分なスペースを提供することを含むが、これに限定されない多くの理由のために好都合である可能性がある。
【0019】
他の実施態様又は更なる好ましい実施態様において、該力平衡化手段は、該スキャナ本体の、第1の端子端面と反対側の第2の端子端面に沿って配置される。従って、該力平衡化手段は使用時に、該第1の端子端面と該第2の端子端面との間の該スキャナ本体の長手方向に沿った方向に該駆動ディザによって誘起される合力を該平衡化手段によって誘起された結果として生じる合力が少なくとも部分的に打ち消すように、該駆動ディザに相対的に配置されるべきであると考えることができる。このように、該実施態様は、例えば、第1の端子端面と第2の端子端面との間の該スキャナ本体の長手方向軸に沿った方向において、該スキャナ本体の伸張又はブリージング共振に少なくとも部分的に対抗することが見出された。
【0020】
有利には、幾つかの好ましい実施態様において、該z位置運動ステージが任意の原則的な幾何学的方向(xyz)に沿って該ステージの共振モードを少なくとも部分的に打ち消すように及び/又は多数の基本的な方向に沿った成分を有する共振を少なくとも部分的に打ち消すように配置された複数の力平衡化手段を用いて構成されることができる。
【0021】
特定の好ましい実施態様において、該運動ステージは第1の力平衡化手段及び第2の力平衡化手段を備えており、該第1の力平衡化手段及び該第2の力平衡化手段は夫々、該スキャナ本体の該第1の端子端面に沿って、及び該運動ステージの静止中心又は中立中心(N)を横切る該駆動ディザと反対側の位置で該スキャナ本体の該該第2の端子端面に沿って設けられている。従って、該実施態様は該スキャナ本体の複数の共振モードによる変位、例えば、曲げ及び伸長共振、又は更には複数の基本的な方向に沿った成分を有する複雑な共振に少なくとも部分的に対抗するように構成されていると理解されうる。
【0022】
該第1の力平衡化手段及び第2の力平衡化手段は夫々、該駆動ディザと調和して振動するように構成された1以上の平衡ディザを備えている。
【0023】
好ましい実施態様において、該第2の力平衡化手段は、該駆動ディザ及び該第1の力平衡化手段と反対側の該第2の端子端面に沿った位置に分散された少なくとも2つの第2の平衡ディザを備えている。少なくとも2つの第2のバランスを設けることにより、有利には例えば、該駆動ディザ及び該第1の力平衡化手段による力に起因する、潜在的な伸長共振を緩和することが更に可能である。代替的に又は追加的に、少なくとも2つの第2の平衡ディザを設けることにより、該スキャナ本体の底部に沿って、例えば該スキャナ本体の該第2の端子端面に沿った方向に、潜在的な点頭(nodding)又は屈曲(bending)共振を緩和することが可能である。
【0024】
特に好ましい実施態様において、該スキャナ本体は、該第1の端子端面を画定する第1の端部材と、該第2の端子端面を画定する第2の端部材とを備えている。該第1の端部材及び該第2の端部材は、中央部材の両端にわたって配置され、それによって、該第1の端部材及び該第2の端部材の各々は1以上のばね部材、例えばばねブレード、によって該中央部材に取り付けられている。該中央部材は有利には、該第1の端子端面を横断する方向に、好ましくは直交する方向に、並進運動を提供するように、該第1の端部材及び該第2の端部材に作用するところのラージストロークアクチュエータを備えている。少なくともロングストロークアクチュエータの動作の間に安定した基準点を該z位置運動ステージに提供する為に、該スキャナ本体は、該走査プローブ顕微鏡システムのメトロ枠に、好ましくは中央部材を介して、例えば該中央部材に沿って設けられたマウントによって、可逆的に接続可能である。該1以上のばね部材は有利には、該スキャナ本体に並進運動の為のコンプライアンス(compliance)を提供する。本開示に従う第1の平衡化手段及び/又は第2の平衡化手段を設けることにより該z位置運動ステージの望ましくない共振モードを軽減する際に特に効果的であり、それは比較的剛性の高いスキャナ本体を有するステージと比較して、典型的な商業的に入手可能なプローブチップのカンチレバーを作動させることに関連する周波数範囲において、特に共振しやすい可能性がある、例えば曲げモードである可能性がある、ことが理解されるであろう。
【0025】
本開示の他の又は更なる観点は、走査プローブ顕微鏡システム、特には、本開示に対するz位置運動ステージを備えている走査プローブ顕微鏡システムであって、好ましくは、該z位置運動ステージを走査プローブ顕微鏡システムのメトロ枠に可逆的に関連付ける為のマウントをさらに備えているところの上記走査プローブ顕微鏡システム、に関する。
【0026】
本開示のなお更なる観点又は他の観点は、本開示に従う走査プローブ顕微鏡検査システムを動作させる方法に、又は本発明に従う位置運動ステージを動作させる方法に関する。該方法は少なくとも、プローブを該z位置運動ステージに関連付けること;及び、駆動ディザを駆動すること、典型的には該プローブのカンチレバーのターゲット共振モードに関連付けられたターゲット駆動周波数で駆動ディザを駆動すること;及び、少なくとも該駆動ディザが該スキャナ本体の共振モードに関連付けられた周波数で駆動されている間に、該駆動ディザと調和して該第1の力平衡化手段を動作させることを含む。本明細書において開示されるように、該駆動ディザ及び該第1の力平衡化手段を調和的に駆動することにより、有利には、該スキャナ本体の共振モードからの望ましくない並進に起因する寄生運動(parasitic motion)を軽減し、例えば、関心のある基体の領域をプロービングする(probing)間の寄生運動を軽減する。
【0027】
本開示の装置、システム及び方法のこれら及び他の特徴、観点及び利点は、以下の説明、添付の特許請求の範囲、及び添付の図面からよりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1A】
図1Aは、動作の間のスキャナの例示的な共振の段階を図示する。
【
図1B】
図1Bは、スキャナの1つの実施態様の上面図を図示する。
【
図1C】
図1Cは、駆動周波数(driving frequency)の関数として、カンチレバー及びスキャナ本体の変位を示す。
【
図2A】
図2Aは、力平衡化手段を有するスキャナの実施態様の部分側面図を提供する。
【
図2B】
図2Bは、力平衡化手段を有するスキャナの実施態様の部分側面図を提供する。
【
図2C】
図2Cは、力平衡化手段を有するスキャナの実施態様の部分側面図を提供する。
【
図3A】
図3Aは、力平衡化手段を有するスキャナの他の実施態様又は更なる実施態様の概略上面図を提供する。
【
図3B】
図3Bは、力平衡化手段を有するスキャナの他の実施態様又は更なる実施態様の概略上面図を提供する。
【
図3C】
図3Cは、力平衡化手段を有するスキャナの他の実施態様又は更なる実施態様の概略上面図を提供する。
【
図3D】
図3Dは、z位置運動ステージの更に他の実施態様又は更なる実施態様を備えている走査プローブ顕微鏡検査システムの実施態様の概略側面図を提供する。
【
図4A】
図4Aは、z位置運動ステージの更に他の実施態様又は更なる実施態様を備えている走査プローブ顕微鏡検査システムの実施態様の概略側面図を提供する。
【
図4B】
図4Bは、z位置運動ステージのなお更なる実施態様又は他の実施態様の概略側面図を提供する。
【
図4C】
図4Cは、z位置運動ステージのなお更なる実施態様又は他の実施態様の概略側面図を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0029】
特定の実施形態を説明する為に使用される用語は、本発明を限定することを意図するものでない。本明細書において使用される場合、単数形「1つ」(a)、「1つ」(an)、及び「該」(the)は、文脈上明らかにそうでないことが示されない限り、複数形をも含むことが意図される。語「及び/又は」は、関連付けられた列挙された項目の1以上の任意の組み合わせ及び全ての組み合わせを含む。語「含む」(comprises)及び語「含んでいる」(comprising)は、記載された特徴の存在を特定するが、1以上の他の特徴の存在又は追加を排除するものでないことが理解されるであろう。方法の特定の工程が他の工程に後続するものとして言及される場合、別段の指定がされていない限り、該他の工程に直接続いてもよく、又は特定の工程を実施する前に1以上の中間工程を実施してもよいことが更に理解されるであろう。同様に、構造体間又は構成要素間の接続が記載されている場合、特に指定がされていない限り、この接続は直接的に確立されてもよく、又は中間的な構造体若しくは構成要素を通じて確立されてもよいことが理解されるであろう。
【0030】
本明細書において使用される場合に、語「ディザ」(dither)は典型的には、プローブチップのカンチレバーの共振モードを励起するように、周波数範囲で、例えば5kHz~500kHz又は10kHz~1MHzを包含するがこれに限定されない周波数範囲、で、振動運動をプローブチップに提供するように構成された1つのアクチュエータ、典型的には、1つの圧電アクチュエータ又は複数の圧電アクチュエータの1つのスタックを包含する1つのアクチュエータ、として理解されることができる。対照的に、ラージストロークアクチュエータは、制御パラメータ、例えば共振振幅、に依存して、基体に相対的に、プローブ、例えば該ディザによって保持され且つ励起されたプローブ、を配置するように、比較的大きく且つより遅い変位を提供するように構成されている。
【0031】
本明細書において使用される場合に、語「調和して」(in harmony)動作することは、本質的に関連する周波数で動作することを包含すると理解されることができる。本明細書から明らかであるように、位相差(phase difference)は、該スキャナの剛性(rigidity)又はコンプライアンス(compliance)、該スキャナ本体の静止中心又は中立中心に相対的な該平衡化手段及び該駆動ディザを配置すること、及び/又は緩和されるべきスキャナのターゲット共振モードを包含するが、これらに限定されない多くの観点に依存することができる。例えば、剛性スキャナ挙動(rigid scanner behavior)を仮定すると、該駆動ディザによって該スキャナ本体上に加えられる合力を少なくとも部分的に補償することによって、該z位置運動ステージの潜在的な屈曲(bending)又は点頭(nodding)振動(oscillation)を緩和するように、該第1の力平衡化手段は好ましくは該駆動ディザと本質的に同位相で駆動されることが理解されるであろう。同様に、駆動ディザと反対側の剛性スキャナ本体にわたって、例えば、第1の面と反対の該スキャナ本体の第2の端子端面に沿って、配置される力平衡化手段は好ましくは、該駆動ディザによって該スキャナ本体上に加えられる長手方向の合力を少なくとも部分的に補償することによって、該z位置運動ステージの潜在的な伸張又はブリージング振動(a potential stretching or breathing oscillation)を緩和するように動作されることが理解されるであろう。該スキャナが、非線形挙動、例えばダンパ(dampeners)(ピストン(pistons))、を有する要素を含む場合に、位相シフトが適切に調整されることができることが理解されるであろう。例えば、特定のスキャナ設計の為の、所与の状況における平衡化手段の駆動状態は、例えば、寄生運動(parasitic motion)を測定することによって実験的にチェックされ、それに応じて調整されることができる。
【0032】
調和動作は有利には、該駆動ディザ及び1以上の力平衡化手段を駆動する為に、コントローラ、例えば単一のコントローラ又は周波数発生器、を使用することによって提供されることができる。任意的に、該駆動ディザ及び1以上の力平衡化手段は、調和して動作するように構成された個々の制御手段によって制御されることができる。
【0033】
語「スキャナ本体の静止中心又は中立中心」(stationary or neutral center of the scanner body)は、所与の共振モードについての、点、軸、又は平衡面、若しくは変位中心をさえ云うことが意図される。例えば、自立した本体のブリージングモード又は伸張共振モードの場合に、該中立中心又は静止中心は一般的に、その質量中心を通過する。従って、該スキャナ本体の該静止中心又は中立中心は、スキャナ本体10の長手方向軸に沿った中立曲げ平面を云うことができる。静止基準枠、例えば、該走査プローブ顕微鏡システムのメトロ枠、に接続される本体の場合に、該静止中心又は中立中心は一般的に、該接続によって画定される。
【0034】
更に、状況に応じて、該ディザによって加えられる力による該スキャナ本体の望ましくない変位又は共振は、多かれ少なかれ顕著でありうることが理解されるであろう。例えば、潜在的な変位は該静止中心又は中立中心に相対的に該駆動ディザによって該スキャナ本体上に加えられる合力のモーメントが増大することにつれてより顕著になり得、例えば、潜在的な逆変位は、増大する駆動力及び/又は該スキャナ本体に相対的に該駆動ディザのより中心から外れた若しくは非対称の配置と共に増大しうる。代替的に又は追加的に、変位は、該駆動ディザの駆動周波数と該スキャナの特定の共振モードの固有周波数との間の一致又は重複が減少することにつれて、あまり目立たなくなりうる。
【0035】
本発明は、本発明の実施態様が示されている添付の図面を参照して、本明細書の以下でより完全に記載される。図面において、システム、成分、層及び領域の絶対的且つ相対的なサイズは、明確にする為に誇張されている場合がある。実施態様は、場合によっては理想化された本発明の実施態様及び中間構造の概略図及び/又は断面図を参照して説明されている場合がある。本明細書及び図面において、同様の番号は、全体を通じて同様の要素を云う。相対的な語並びにその派生語は、そのときに記載されているような、又は議論中の図面に示されているような配向を云うと解釈されるべきである。これらの相対的な語は明細書の便宜上のものであり、特に明記されていない限り、該システムが特定の方向に構築されること又は操作されることを必要としない。
【0036】
図1A及び
図1Bは、走査プローブ顕微鏡システム100において使用する為のz位置運動ステージ1の共振モードに関する様々な観点を示す。
図1Aは、動作の間の様々なステージA-1、A-2及びA-3でのz位置運動ステージ1の例示的な概略側面図を提供する。ステージA-1において、該スキャナは静止している。該スキャナは、該スキャナ本体10の第1の端子端面21に取り付けられた駆動ディザ30を備えている。図示されているように、駆動ディザ30は、該端子端面の第1の端22の近くに偏心して取り付けられている。プローブチップを有するカンチレバー51を備えているプローブ50チップは、例えばマウント(明確にする為に図示されず)を介して、駆動ディザ30に関連付けられている。該運動ステージは一般的に、ラージストロークのz運動アクチュエータをまた備えている。該ラージストロークのz運動アクチュエータは、z方向に沿って該ディザとそれに関連付けられたプローブとの相対運動を提供するように構成される。明確にするために、該スキャナの平衡化に関する観点は、
図1A及び
図1Bから省略されている。これらの観点及び該ラージストロークのz運動アクチュエータに関する観点は、
図2、
図3及び
図4に関してより詳細に説明されている。
【0037】
該駆動ディザを作動させると、変形によって表されるように、振動運動31がもたらされ、それにより、A-2において示されているように、対応する共振周波数でカンチレバーが共振されうる。
【0038】
該カンチレバーを駆動することに加えて、駆動ディザ30は、スキャナ本体10上に正味の合力、振動力(oscillatory force)を加える。
【0039】
A-3において示されているように、この力は次に、スキャナ本体10の長手方向軸に沿った中立面Nを横切る、双方向矢印によって示されているような該スキャナ本体の屈曲(bending)又は点頭(nodding)共振を励起することができる。寄生運動(parasitic motion)の原理を簡単に説明する為に、該スキャナの実施態様は、スキャナ本体10の第1の端子端面21と反対側の下部面(bottom end)に沿って静止基準に固定されることに留意されたい。寄生運動を緩和する原理はそのような構成に限定されず、異なる位置で、例えば、中央位置又は側部で、固定された基準を有するところのスキャナに一般的に適用されることができることが理解されるであろう。
【0040】
該ディザによって加えられる力はz変位アクチュエータ、例えば、ラージストークのz運動アクチュエータ、によって生成される力とは異なる。これは既に、z運動アクチュエータが一般的に、z方向に沿った振動運動を提供するように動作するものでない為であり、並びに、既に、例えば、ランディング動作の間に、z方向に沿った制御パラメータに応じて比較的大きな変位を提供するという目的に関連付けられたそれらの比較的に高い質量(慣性)の故にカンチレバープローブの共振モードを励起する為には又は走査動作の間に、基板表面のzトポロジーを追従することを可能にする為には一般的に不適切でさえあるからである。
【0041】
図1Bは、走査プローブ顕微鏡システムにおいて使用する為のz位置運動ステージ1の上面図を図示する。
図1Aにおいて図示されている運動ステージと同様に、該スキャナは該スキャナ本体の第1の端22の近くの位置で該スキャナ本体の第1の端子端面21に沿って設けられた駆動ディザ30を備えている。カンチレバーを備えているプローブ50は、マウント40、例えばクランプ又は真空吸引マウント、を介して駆動ディザ30に関連付けられている。本発明の目的に従うと、該運動ステージは、該スキャナ本体の共振に対抗する手段60を備えている。第1の力平衡化手段60として言及される上記の手段は、第1の端子端面21に沿って、第1の端22と反対側の第2の端23付近の位置に設けられている。平衡化手段60は、第1の平衡ディザ61を備えている。該第1の平衡ディザは、該駆動ディザと調和して振動するように構成されている。図示されているように、該第1の力平衡化手段は該運動ステージの中立中心Nを横切って駆動ディザ30と反対側の位置で該スキャナ本体上に作用し、この場合において、スキャナ本体10の長手方向軸に沿った中立曲げ平面である(
図1AのA-3をまた参照)。幾つかの実施態様において、力平衡化手段60が単一の第1の平衡ディザ61又は複数の平衡ディザのスタックを備えている。幾つかの実施態様において例えば、
図2Bにおいて示されているように、力平衡化手段60は1以上の平衡ディザとホルダ又はマウントとの組み合わせ体を備えていることができる。
【0042】
本明細書において開示されているスキャナ共振を緩和する概念は、図示されているような幾何学形状又は矩形断面を有するスキャナに限定されるものでないことが理解されるであろう。該概念は、任意の形状及び/又は断面を有するスキャナに、例えば丸みを帯びた断面を有する細長い管状スキャナに、等しく適用されることができる。
【0043】
図1Cは、駆動ディザ30が駆動される周波数の関数として、スキャナ本体10の第1の端子端面21に沿った位置における該スキャナの変位を示す。上のプロット(40と記されている)は、駆動周波数の関数として、該駆動ディザに関連付けられたカンチレバーの周波数応答を示す。周波数におけるピーク(f1と記されている)は、該カンチレバーの共振モードに対応する。下側のプロット(TP3と記されている)は、
図1Bにおいて位置(TP3と記されている)における該スキャナの第1の端子端面21に沿って、光干渉法によって測定された周波数応答Gを示す。記録の間、第1の力平衡化手段60は非アクティブであった。多数のピークの存在から観察されることができるように、該z位置運動ステージは、多数の周波数又は固有周波数で励起されることができる。ピーク(f1と記されている)は、該ステージの点頭(nodding)又は屈曲(bending)モードに対応することが分かった。第1の力平衡化手段60を作動させることに応じて、曲げ共振が効果的に抑制されることが分かった。TP1及びTP2の位置での測定は、同等の結果を示した。f2及びf3での共振がまた同様に抑制されることができた。f4及びf5での共振は、走査動作の間のノイズ低減の文脈内では少なくともあまり重要ではないと考えられる。なぜならば、これらの周波数での衝撃が少なくとも1桁(10倍)小さいことが分かったからである(縦軸に沿った対数目盛に留意されたい)。
【0044】
ここで、
図2を参照して、様々な他の又は更なる観点が説明されるであろう。
図2Aは
図1Bに示されている実施態様の部分断面側面図を提供し、及び
図2B及び
図2Cは、更なる又は追加の特徴を含む実施態様を示す。
【0045】
1つの実施態様において、例えば
図2Aにおいて示されているように、z位置運動ステージ1は少なくともスキャナ本体10と、該スキャナ本体の第1の端子端面に沿って、該スキャナ本体の第1の端に近い位置で設けられた駆動ディザ30とを備えている。駆動ディザ30は、該駆動ディザに関連付けられたプローブ(
図2Cを参照)のカンチレバーを振動運動で駆動する為の第1の振動31を与えるように構成される。該ステージは、運動ステージ1の静止中心又は中立中心Nを横切る駆動ディザ30と反対側の位置でスキャナ本体に作用する少なくとも第1の力平衡化手段60を更に備えている。力平衡化手段60は、該駆動ディザと調和して振動するように構成された少なくとも第1の平衡ディザ61を備えている。少なくとも部分的には、駆動ディザ30の中心から外れた位置に起因して、スキャナ本体10は駆動ディザ30の動作の間に、該スキャナ上にモーメントを与えるところの合力F30を受ける。上記の力は、第1の端子端面21に沿った方向における横方向成分F30-1と、スキャナ本体10の長手方向に沿った方向における縦方向成分とを含むことが理解されうる。本明細書において開示されているように、駆動ディザ30及び平衡化手段によってスキャナ本体10上に加えられる正味の合力及び対応するモーメントが効果的に低減されることができ、従って、駆動ディザ30の駆動周波数が該スキャナの共振モードと一致するときでさえ、z位置運動ステージ1を安定化させることができることが分かった。
【0046】
バランス手段によって加えられる合力の大きさ、及び逆に、動作の間にスキャナ本体10上に加えられる正味の合力の大きさは、1以上の第1の平衡ディザの駆動振幅を制御することによって有利に制御されることができる。該振幅を制御することにより、該平衡化手段によって該スキャナ本体上に加えられる力を調整する効果的な方法が提供されることが分かった。従って、該第1の力平衡化手段は、例えば、該カンチレバーの駆動振幅が表面プロービング動作(surface probing operation)の間に、又は後続の動作の間に変化されるときでさえ、広い範囲にわたって該駆動ディザの合力を打ち消す為に使用されることができる。
【0047】
幾つかの実施態様において、該z位置運動ステージは、該平衡ディザ(balance dither)を駆動する為のコントローラ、好ましくは駆動ディザ(driving dither)及び任意の平衡化ディザ(balancing dither)を駆動する為の単一のコントローラ、を備えている。代替的には、該ディザが、別個のコントローラ又は走査プローブ顕微鏡検査システム100のコントローラによって制御されてもよい。
【0048】
好ましい実施態様において、例えば
図2Bにおいて示されているように、該第1の力平衡化手段60は、駆動ディザ30の静静止中心又は中立中心までの距離に一致する距離d2で、該静止中心又は中立中心Nから配置される。好ましくは、該駆動ディザ及び第1の力平衡化手段60が静止中心又は中立中心Nからほぼ等距離に配置される。
【0049】
他の実施態様又は更なる好ましい実施態様において、例えば
図2B及び
図2Cにおいて示されているように、該第1の力平衡化手段が、該z位置運動ステージの該静止中心又は中立中心を横切って、該駆動ディザ又はプローブマウントに対して鏡面対称に配向される。好ましくは、第1の平衡ディザ61が駆動ディザ30の取り付け角度α1に一致する角度α2の下に、例えば、図示されているように対応するマウント35及び65によって、設けられている。
【0050】
該第1の力平衡化手段、特には第1の平衡ディザ61、を、該z位置運動ステージの該静止中心又は中立中心を横切る該駆動ディザに対して鏡面対称に配向することにより、横方向と縦方向との両方で該スキャナ本体に加えられる合力を少なくとも部分的に打ち消すことが分かった。
【0051】
幾つかの実施態様において、例えば
図2Cにおいて示されているように、力平衡化手段60は、平衡化荷重(balancing load)を保持する為のマウント62を備えている。マウント62は、ユーザが平衡化ディザによって変位された質量を調整することを可能にする。質量を調整することにより、該第1の力平衡化手段によって該スキャナ本体上に加えられる誘起された力(induced force)を調整する為の追加の手段又は代替の手段として特に有益でありうる。例えば、該マウントは、使用されるべきプローブチップ50の質量に対応する質量を保持するように構成されることができる。従って、所与のプローブチップが異なる質量を有するチップと交換された後であってさえも、該z位置運動ステージ1システムを都合よく平衡化させることを可能にする。
【0052】
図3A~
図3Cは、力平衡化手段60を有するスキャナの他の実施態様又は更なる実施態様の概略上面図を提供する。幾つかの好ましい実施態様において、
図3Aにおいて示されているように、該スキャナは該スキャナ本体の第1の端子端面21に沿ってある位置で配置された単一の力平衡化手段60を備えていてもよい。本明細書において記載されているように、単一の力平衡化手段及び駆動ディザ30は該静止中心又は中立中心Nに対してほぼ等距離に、又は鏡面対称に配置されることができる。有利には、第1の力平衡化手段60によってスキャナ本体10上に加えられる力F60が駆動ディザ30によって力F30に一致するように、駆動振幅及び/又は第1の力平衡化手段によって変位される質量を調整することを含む幾つかの方法で制御されることができる。
【0053】
他の実施態様又は更なる実施態様において、第1の力平衡化手段60が該駆動ディザによって誘起される正味の合力F30を少なくとも部分的に共に打ち消すような配置で分配された複数の分離された平衡ディザを備えている。1つの実施態様において、例えば、
図3Bにおいて示されるように、第1の力平衡化手段60は、合力F60a及びF60bを夫々生成する第1の平衡化ディザ及び第2の平衡化ディザを備えており、それらは合計されて、該駆動ディザによって合力F30を少なくとも部分的に打ち消す合力F60を形成する。第1の力平衡化手段60は原則として、任意の数の平衡化ディザ、例えば、3個、5個又は「n」個のディザ、を備えて、結果物である関連する平衡化力F60nを生成することができることが理解されるであろう。有利には、複数の平衡化ディザを設けることにより、複数の方向に沿った該z位置運動ステージの平衡化を改善することができ、複雑な共振、例えば該スキャナ本体の長手方向軸の周りの潜在的なねじれ共振(twisting resonance)、の緩和を可能にする。加えて、複数の分離された平衡化ディザを備えている実施態様は、単一の平衡化ディザを使用する実施態様と比較して、比較的小さいディザを使用する緩和曲げ振動(mitigation bending oscillation)と類似効果を提供し、それにより、該z位置運動ステージの端子端面に沿って、例えばエッジ23付近に、スペース利益(space benefit)を提供することができる。
【0054】
幾つかの実施態様において、例えば
図3Dにおいて示されているように、スキャナ本体10は、中央部材13並びに、中央部材13の両端にわたって配置されるところの、第1の端部材11及び第2の端部材12を備えている。図示されているように、第1の端子端面21は、例えば
図2Aに関連して記載されているように、第1の端部材11によって画定される。第1の端部材と反対側の第2の端部材は、スキャナ本体10の第2の端子端面25を定義する。該第1の端部材11及び該第2の端部材12は、1以上のばね部材15、例えばブレードばね、によって中央部材13に取り付けられる。中央部材13は好ましくは、走査プローブ顕微鏡検査システム100のメトロ枠90に可逆的に接続可能である。走査プローブ顕微鏡検査システム100に関する更なる観点は後に提供されている。中央部材13は一般的に、該第1の端部材11及び該第2の端部材12に作用して、第1の端子端面21に対して横断する方向、好ましくは直交する方向、への並進を提供する、少なくとも1つのラージストロークアクチュエータ14を備えている。駆動ディザとz位置決めアクチュエータとを単一ステージと組み合わせることにより、z位置運動ステージは、1以上の運動ステージと1以上の走査プローブ顕微鏡システムとの互換性を包含する幾つかの理由のために有利でありうる。
【0055】
ばね部材15を介した可撓性接続は有利には、スキャナ本体10に、ラージストロークアクチュエータ14による変位に適応する為の適切なコンプライアンス(compliance)を提供する。同時に、可撓性接続を有する構造はスキャナ本体10内の共振モード及び周波数、例えば、第1の端部材11の屈曲(bending)又は点頭(nodding)共振、に影響を及ぼすと理解されることができる。そのような潜在的な共振を軽減する為に、スキャナ本体10には、本明細書において記載されているような平衡化手段60が備えられている。
【0056】
他の実施態様又は更なる好ましい実施態様において、例えば
図4A及び
図4Bにおいて示されているように、該運動ステージは、第1の端子端面21と反対側のスキャナ本体10の第2の端子端面25に沿って配置された少なくとも第2の力平衡化手段70を備えている。少なくとも1つの第2の力平衡化手段70を設けることにより、スキャナ本体10の対向する端子端面(opposing end faces)の間の軸方向に沿ったスキャナ本体10の共振、例えば、伸張又はブリージングモード、を緩和することが判った。第1の力平衡化手段60と同様に、第2の力平衡化手段70は、該駆動ディザ及び該第1の力平衡化手段60が設けられている場合にはそれらと調和して振動するように構成された1以上の第2の平衡ディザ71を備えている。
【0057】
1つの実施態様において、
図4Aにおいて示されているように、該z位置運動ステージは、スキャナ本体10の第1の端子端面21に沿って、例えば、
図3Dにおいて示されているように第1の終端部材11の端子端面21に沿って、設けられた駆動ディザ30及び第1の力平衡化手段60と、スキャナ本体10の第2の端子端面25に沿って、例えば、第2の端部材12に沿って、配置された単一の第2の力平衡化手段70とを備えている。第2の力平衡化手段70は使用中に、有利には、第2の力平衡化手段70によって誘起される合力F70が第1の端子端面21と第2の端子端面25との間の長手方向において該プローブ及び/又は第1の力平衡化手段F60によって誘起される正味の合力F30を少なくとも部分的に打ち消すように、合力を生成することができる。
【0058】
幾つかの実施態様において、
図4Bにおいて示されているように、該第2の平衡手段は第2の端子端面25に沿った位置に分散された少なくとも2つの第2の平衡ディザ71及び72を備えている。各々の位置は好ましくは駆動ディザ30及び力平衡化手段60と反対側に位置し、例えば、第2の端子端面25の対向する端部(opposing edges)26及び27の近くにある。少なくとも2つの第2の平衡ディザ71及び72を設けることにより、第2の端部材12における共振モードを有利に緩和することができ、及び/又は横方向と縦方向との両方においてスキャナ本体10全体における共振モードを緩和することができる。
【0059】
本開示に従うz位置運動ステージは、走査プローブ顕微鏡システム、例えば
図3Dにおいて示されている走査プローブ顕微鏡システム、において有利に使用されることができることが理解されるであろう。
【0060】
1つの実施態様において、走査プローブ顕微鏡システム100は、z位置運動ステージ1、好ましくは本明細書において開示されているz位置運動ステージ1、より好ましくは
図3Dに関連して記載されているz位置運動ステージ、を備えている。典型的には、該z位置運動ステージが、該z位置運動ステージを該走査プローブ顕微鏡システム100に、例えば走査プローブ顕微鏡システム100のメトロ枠90に、可逆的に関連付ける為のマウント80を備えている。代替的には、z位置運動ステージ1が、走査プローブ顕微鏡検査システム100の一体部分であってもよい。
【0061】
好ましくは、該走査プローブ顕微鏡システムは使用時に、プローブされるべき基体の表面に沿って関心のある領域と反対側に運動ステージ1を配置するように、好ましくはマウントを介して、該z位置運動ステージ1に作用するところの粗並進手段81を備えている。代替的に又は追加的に、該走査プローブ顕微鏡システム100は、プローブされるべき試料及び/又はプローブされる1以上の基体を保持する為のホルダ若しくは試料ステージのみに作用するところの粗並進手段を備えていることができる。
【0062】
幾つかの実施態様において、走査プローブ顕微鏡システム100は、例えば、スキャナ本体の面、例えば該スキャナ本体の第1の端子端面、の横方向及び/又は縦方向の変位を検出することによって、該スキャナ本体の曲げ、伸張及び/又は他の共振のうちの1以上を検出する為の検出器、例えば、光学位置検出器(例えば、干渉計システム)又は歪みゲージシステム(strain gauge system)、を備えている。
【0063】
本開示のなお更なる観点又は他の観点は、本明細書において開示されているz位置運動又は走査プローブ顕微鏡検査システム100の使用方法又は動作させる方法に関する。該方法は少なくとも駆動ディザが駆動されている間に、特には、該駆動ディザが該スキャナ本体の共振モードに関連付けられた周波数で駆動されている間に、該駆動ディザと調和する第1の力平衡化手段及び/又は更なる力平衡化手段を動作させること203を含む。該平衡化手段のカウンターを駆動することにより、該駆動ディザによって該スキャナ本体上に加えられる合力に作用し、従って、該スキャナの潜在的な応答を緩和する。幾つかの実施態様において、該駆動ディザが該スキャナ本体の固有周波数と重ならない周波数で動作されている間、該平衡化手段はスイッチが切られている。しかしながら、このことは前提条件ではないことが理解されるであろう。該1以上の平衡化手段は、該スキャナ本体の固有周波数と重ならない周波数で駆動ディザが動作されるときでさえ、該駆動ディザと調和して動作されることができる。
【0064】
1つの実施態様において、
図4Cにおいて示されているように、該方法は、プローブを該z位置運動ステージに関連付けること201を更に含む。別の実施態様又は更なる実施態様において、該方法が、ディザを駆動すること202、典型的には、該プローブのカンチレバーのターゲット共振モードに関連付けられたターゲット駆動周波数でディザを駆動すること;及び、少なくとも該駆動ディザが該スキャナ本体の共振モードに関連付けられた周波数で駆動されている間に、該第1の力平衡化手段を該駆動ディザと調和して動作させること203を含む。本明細書において開示されているように、該駆動ディザ並びに該第1の力平衡化手段及び該更なる力平衡化手段を調和的に駆動することにより有利には、該スキャナ本体の共振モードからの望ましくない並進に起因して、例えば関心のある基体の領域をプロービングする間に、雑音及び寄生力(parasitic force)を軽減する。
【0065】
幾つかの実施態様において、該方法は、該駆動ディザを掃引範囲(sweeping range)にわたって掃引して、該カンチレバーのターゲット共振周波数範囲と、該駆動ディザの対応するターゲット動作振動周波数(oscillation frequency)とを検出することを含む。代替的には、ターゲット共振周波数が他の既知の手段、例えば熱、を用いて決定されてもよい。他の実施態様又は更なる実施態様において、本方法が、該駆動ディザを掃引して、例えば光学干渉分光法を使用して、該掃引範囲内の該スキャナ本体の共振モードを検出することを含む。有利には、該力平衡化手段の動作がレバント駆動範囲(levant driving range)における共振モードの発生を条件とすることができる。好ましい実施態様において、本方法は、該カンチレバー及び該スキャナ本体の検出された共振周波数を比較すること、及び該ターゲット共振範囲が該スキャナ本体の検出されたモードと重複するときに、該第1の力平衡化手段及び該第2の力平衡化手段のうちの1以上を駆動することとを含む。代替的には、該力平衡化手段の動作がターゲット駆動周波数と該スキャナ本体の所定の共振モードとの重複を条件とすることができる。好ましい実施態様において、本方法は、該ターゲット駆動周波数が該スキャナ本体の1以上の曲げ共振モードに及び該スキャナ本体の長手方向共振モードに関連付けられた範囲内にあるかを判定することを更に含む。有利には、該第1の力平衡化手段及び/又は該更なる力平衡化手段を動作させることは駆動周波数が範囲内にある場合にのみ動作させることができる。このことは、該平衡化手段の動作を、該駆動ディザによって誘起される正味の合力の影響が最も顕著である状態に制限する。
【0066】
明瞭さ及び簡潔な記載の為に、特徴が同じ又は別個の実施態様の一部として本明細書において記載されているが、本発明の範囲は記載されている特徴の全て又は幾つかの組み合わせを有する実施態様を含みうることが理解されるであろう。もちろん、上記の実施態様又はプロセスのいずれか1つは、1以上他の実施態様又はプロセスと組み合わせて、設計及び利点を見出し且つ一致させることにおいてなお更なる改善を提供することができることを理解されたい。
【0067】
添付の特許請求の範囲の解釈において、語「含む」(comprising)は所与の特許請求の範囲において列挙されたもの以外の他の要素又は行為の存在を排除しないことが理解されるべきである;要素に先行する語「1つ」(“a”又は“an”)は複数のそのような要素の存在を排除しない、特許請求の範囲における任意の参照符号はそれらの範囲を限定しない;幾つかの「手段」が同じ又は異なる1以上のアイテム又は実装された構造若しくは機能によって表されうる。開示された装置又はその部分のいずれも、特に明記されない限り、一緒に組み合わされうるか、又は更なる部分へと分けられる。1つのクレームが別のクレームを言及する場合、このことは、それらの個々の特徴の組み合わせによって達成される相乗的利点を示しうる。しかし、或る手段が相互に異なるクレームにおいて記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせがまた有利に使用されることができないことを示すものではい。従って、本実施態様は、複数の請求項の全ての動作する組み合わせを含み得、ここで、各請求項が文脈によって明確に除外されない限り、原則として、任意の先行する請求項を言及することができる。
【国際調査報告】