(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】MIMO干渉キャンセル
(51)【国際特許分類】
H04B 1/525 20150101AFI20240905BHJP
【FI】
H04B1/525
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519656
(86)(22)【出願日】2022-09-29
(85)【翻訳文提出日】2024-05-27
(86)【国際出願番号】 EP2022077156
(87)【国際公開番号】W WO2023052528
(87)【国際公開日】2023-04-06
(32)【優先日】2021-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524119417
【氏名又は名称】フォアフロント・アールエフ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Forefront RF Ltd
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100135703
【氏名又は名称】岡部 英隆
(72)【発明者】
【氏名】ローリン,レオ
(72)【発明者】
【氏名】ヘイン,ジョン エル
【テーマコード(参考)】
5K011
【Fターム(参考)】
5K011DA02
5K011DA12
5K011DA24
5K011DA27
5K011KA05
(57)【要約】
複数入力複数出力(MIMO)アンテナ構成は、第1送信信号および第2送信信号を受信し、第1送信と第2送信信号の合計を出力し、第1送信信号と第2送信信号の差分を出力するように接続された送信ハイブリッド回路と、出力合計を受信するように接続された第1アンテナと、出力差分を受信するように接続された第2アンテナと、第1アンテナと第2アンテナから信号を受信し、第1アンテナと第2アンテナからの信号の合計を出力し、第1アンテナ信号と第2アンテナ信号の差分を出力するように接続された受信ハイブリッド回路と、第1送信信号を受信するように接続され、第1送信パスによる干渉を補償するように構成された第1キャンセル回路と、第2送信信号を受信するように接続され、第2送信パスによる干渉を補償するように構成された第2キャンセル回路と、を備え、受信ハイブリッド回路の合計出力と第1キャンセル回路の出力は、結合されて第1受信信号を生成し、受信ハイブリッド回路の差分出力と第2キャンセル回路の出力は、結合されて第2受信信号を生成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数入力複数出力(MIMO)アンテナ構成であって、
第1送信信号および第2送信信号を受信し、前記第1送信信号と前記第2送信信号の合計を出力し、前記第1送信信号と前記第2送信信号の差分を出力するように接続された送信ハイブリッド回路と、
前記出力合計を受信するように接続された第1アンテナと、
前記出力差分を受信するように接続された第2アンテナと、
前記第1アンテナと前記第2アンテナから信号を受信し、前記第1アンテナと前記第2アンテナからの前記信号の合計を出力し、前記第1アンテナと前記第2アンテナからの前記信号の差分を出力するように接続された受信ハイブリッド回路と、
前記第1送信信号を受信するように接続され、前記第1送信パスによる干渉を補償するように構成された第1キャンセル回路と、
前記第2送信信号を受信するように接続され、前記第2送信パスによる干渉を補償するように構成された第2キャンセル回路と、
を備え、
前記受信ハイブリッド回路の前記合計出力および前記第1キャンセル回路の出力は、第1受信信号を生成するように結合され、
前記受信ハイブリッド回路の前記差分出力および前記第2キャンセル回路の出力は、第2受信信号を生成するように結合される、
MIMOアンテナ構成。
【請求項2】
前記第1キャンセラ回路と前記第2キャンセラ回路のそれぞれは、位相反転回路を含み、前記第1結合器および前記第2結合器は、前記受信回路のそれぞれの出力を前記キャンセラ回路の反転出力と結合する、請求項1に記載のMIMOアンテナ構成。
【請求項3】
前記第1キャンセラ回路と前記第2キャンセラ回路のそれぞれは、それぞれの前記第1アンテナと前記第2アンテナのインピーダンスと整合するサブキャンセラ回路を含む、請求項1または請求項2に記載のMIMO構成。
【請求項4】
前記送信ハイブリッド回路の前記合計出力と前記第1アンテナとの間に接続された第1送信フィルタと、
前記送信ハイブリッド回路の前記差分出力と前記第2アンテナとの間に接続された第2送信フィルタと、
前記第1アンテナと前記受信ハイブリッド回路との間に接続された第1受信フィルタと、
前記第2アンテナと前記受信ハイブリッド回路との間に接続された第2受信フィルタと、
をさらに備える、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のMIMOアンテナ構成。
【請求項5】
前記送信ハイブリッド回路は、
前記送信ハイブリッド回路の前記合計出力をフィルタリングする第1送信フィルタと、
前記送信ハイブリッド回路の前記差分出力をフィルタリングする第2送信フィルタと、
を含み、
前記受信ハイブリッド回路は、
前記第1アンテナ信号をフィルタリングする第1受信フィルタと、
前記第2アンテナ信号をフィルタリングする第2受信フィルタと、
を含む、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のMIMOアンテナ構成。
【請求項6】
前記第1送信フィルタおよび前記第2送信フィルタ並びに前記第1受信フィルタおよび前記第2受信フィルタは、可変フィルタである、請求項4または請求項5に記載のMIMOアンテナ構成。
【請求項7】
前記第1キャンセル回路は、
前記第1送信信号を受信するように接続された第1キャンセル受信フィルタと、
前記第1キャンセル受信フィルタからの信号を受信するように接続された第1キャンセル送信フィルタと、
を含み、
前記第2キャンセル回路は、
前記第1送信信号を受信するように接続された第2キャンセル受信フィルタと、
前記第2キャンセル受信フィルタからの信号を受信するように接続された前記第2キャンセル送信フィルタと、
を含む、請求項4から請求項6のいずれか一項に記載のMIMOアンテナ構成。
【請求項8】
前記第1キャンセル回路は、180°位相シフト回路を備え、前記第2キャンセル回路は、180°位相シフト回路を含む、請求項7に記載のMIMOアンテナ構成。
【請求項9】
前記第1キャンセル送信フィルタおよび前記第2キャンセル送信フィルタ並びに前記第1キャンセル受信フィルタ及び前記第2キャンセル受信フィルタは、可変フィルタである、請求項7または請求項8に記載のMIMOアンテナ構成。
【請求項10】
前記第1送信フィルタは、前記第1キャンセル送信フィルタと一致し、前記第2送信フィルタは、前記第2キャンセル送信フィルタと一致し、前記第1受信フィルタは、前記第1キャンセル受信フィルタと一致し、前記第2受信フィルタは、前記第2キャンセル受信フィルタと一致する、請求項7から請求項9のいずれか一項に記載のMIMOアンテナ構成。
【請求項11】
各キャンセル回路は、それぞれのキャンセル送信フィルタとキャンセル受信フィルタとの間に接続されたサブキャンセラを含む、請求項7から請求項10のいずれか一項に記載のMIMOアンテナ構成。
【請求項12】
各サブキャンセラ回路は、可変インピーダンスネットワークである、請求項11に記載のMIMOアンテナ構成。
【請求項13】
前記サブキャンセラ回路は、それぞれの前記第1アンテナまたは前記第2アンテナのインピーダンスと整合するように調整可能である、請求項11または請求項12に記載のMIMOアンテナ構成。
【請求項14】
各サブキャンセラ回路は、それぞれの送信パスからのそれぞれの受信パスにおける干渉を補償するように調整可能である、請求項11から請求項13のいずれか一項に記載に記載のMIMOアンテナ構成。
【請求項15】
前記第1アンテナ、前記送信ハイブリッド回路の前記合計出力、および前記受信ハイブリッド回路への入力を接続する第1サーキュレータと、
前記第2アンテナ、前記送信ハイブリッド回路の前記差分出力、および前記受信ハイブリッド回路への入力を接続する第2サーキュレータと、
をさらに備える、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のMIMOアンテナ構成。
【請求項16】
前記第1送信信号を提供する第1電力増幅器と、
前記第2送信信号を提供する第2電力増幅器と、
をさらに備える、請求項1から請求項15のいずれか一項に記載のMIMOアンテナ構成。
【請求項17】
前記第1受信信号を受信する第1低ノイズ増幅器と、
前記第2受信信号を受信する第2低ノイズ増幅器と、
をさらに備える、請求項1から請求項16のいずれか一項に記載のMIMOアンテナ構成。
【請求項18】
複数入力複数出力(MIMO)アンテナ構成において送信および受信する方法であって、
第1送信信号および第2送信信号を受信することと、
前記第1送信信号と前記第2送信信号の合計を第1アンテナに出力することと、
前記第1送信信号と前記第2送信信号の差分を第2アンテナに出力することと、
第1受信パスと第2受信パスにおいて前記第1アンテナと前記第2アンテナから第1信号と第2信号を受信することと、
前記第1アンテナと前記第2アンテナから受信した前記信号の合計を出力することと、
前記第1アンテナ信号と前記第2アンテナ信号から受信した前記信号の差分を出力することと、
前記第1送信信号による前記第1受信パスにおける干渉を決定することと、
前記第2送信信号による前記第2受信パスにおける干渉を決定することと、
第1受信信号を生成するために、前記第1アンテナと前記第2アンテナから受信した前記信号の前記合計出力と、前記第1送信信号による前記第1受信パスにおける決定された干渉の逆元を結合することと、
第2受信信号を生成するために、前記第1アンテナと前記第2アンテナから受信した前記信号の前記差分出力と、前記第2送信信号による前記第2受信パスにおける決定された干渉の逆元を結合することと、
を含む、方法。
【請求項19】
それぞれの前記第1送信信号と前記第2送信信号による前記第1受信パスと前記第2受信パスにおける干渉を決定することは、それぞれの前記第1アンテナと前記第2アンテナのインピーダンスとそれぞれ整合することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
第1フィルタリングステップにおいて前記第1アンテナの前に前記合計出力をフィルタリングすることと、第2フィルタリングステップにおいて前記第2アンテナの前に前記差分出力をフィルタリングすることと、第2フィルタリングステップにおいて前記第1アンテナから受信した前記信号をフィルタリングすることと、第4フィルタリングステップにおいて前記第2アンテナから受信した前記信号をフィルタリングすることと、をさらに含む、請求項15または請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記第1送信信号による前記第1受信パスにおける干渉を決定することは、前記第1フィルタリングステップと前記第3フィルタリングステップと同等のフィルタリングステップを前記第1送信信号に適用することを含み、前記第2送信信号による前記第2受信パスにおける干渉を決定することは、前記第2フィルタリングステップと前記第4フィルタリングステップと同等のフィルタリングステップを前記第2送信信号に適用することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記第1送信信号による前記第1受信パスにおける、および前記第2送信信号による前記第2受信パスにおける前記決定された干渉のそれぞれに対して、または前記受信パスにおける前記信号のそれぞれに対して、180°位相シフト回路をさらに備える、請求項15から請求項18のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数入力複数出力(MIMO)アンテナ構成における受信パスと送信パスとの間の干渉を抑制する方法および装置に関する。本発明は、特に、モバイル技術などの無線周波数(RF)技術におけるMIMOの実装に関するが、これに限定されるものではない。
【背景技術】
【0002】
無線通信機器の特徴として、複数のアンテナを使用して同時に無線信号を送信および受信する機能があり、これは複数入力-複数出力(Multiple-Input, Multiple-Output:MIMO)と呼ばれる。MIMOは、複数の送信アンテナと受信アンテナを使用してマルチパス伝播を活用し、無線リンクの容量を増やす方法である。
【0003】
MIMO構成で無線信号を同時に送信および受信すると、各送信機から送信される比較的高出力の信号が各受信機に結合され、受信することが望ましい比較的低出力の信号を不明瞭にする干渉信号が発生する可能性があるという問題が生じる。したがって、複数のアンテナでの送信がある場合でも正常に受信できるようにするために、通常、1つ以上の受信機でまたはその前に干渉を抑制するMIMO構成が必要である。
【0004】
図1を参照すると、第1および第2送信信号T
x1およびT
x2を送信し、第1および第2アンテナ10
1および10
2をそれぞれ使用して第1および第2受信信号R
x1およびR
x2を受信するための2つのアンテナを含む例示的なMIMO構成が示されている。第1サーキュレータ12
1は、第1アンテナ10
1に接続され、第1送信信号T
x1を受信し、第1受信信号R
x1を出力する。第2サーキュレータ12
2は、第2アンテナ10
2に接続され、第2送信信号T
x2を受信し、第2受信信号R
x2を出力する。
【0005】
この例のMIMO構成では、サーキュレータを介した送信パスから受信パスへの干渉の4つのパスがある。第1送信信号Tx1パスから第1受信信号Rx1パスへの矢印1711で示されるパス、第1送信信号Tx1パスから第2受信信号Rx2パスへの矢印1712で示されるパス、第2送信信号Tx2パスから第2受信信号Rx2パスへの矢印1722で示されるパス、第2送信信号Tx2パスから第1受信信号Rx1パスへの矢印1721で示されるパスである。
【0006】
この干渉を最小限に抑えるために、キャンセラが提供され得る。第1サーキュレータ121および第2サーキュレータ122のそれぞれの出力は、それぞれ結合器141および142に接続され、結合器141および142のそれぞれは、さらに2つのキャンセラの出力を受信する。
【0007】
キャンセラ1611は第1送信信号パスTx1と第1結合器141との間に接続され、キャンセラ1612は第1送信信号パスTx1と第2結合器142との間に接続され、キャンセラ1622は第2送信信号パスTx2と第2結合器142との間に接続され、キャンセラ1621は第2送信信号パスTx2と第1結合器141との間に接続されている。
【0008】
したがって、各干渉パスを補償するためのキャンセラが提供される。一般に、干渉パスの数は、送信チャネルの数と受信チャネルの数の積である。したがって、一般的に必要なキャンセラ回路の数は、送信機の数と受信機の数の積に等しくなる。したがって、nステージMIMOに必要なキャンセラの数はn2になる。
【0009】
本発明の目的は、MIMO構成における受信パスと送信パスとの間の干渉を抑制するための改良された技術を提供することにある。
【発明の概要】
【0010】
複数入力複数出力(MIMO)アンテナ構成が提供され、当該構成は、第1送信信号および第2送信信号を受信し、第1送信信号と第2送信信号の合計を出力し、第1送信信号と第2送信信号の差分を出力するように接続された送信ハイブリッド回路と、出力合計を受信するように接続された第1アンテナと、出力差分を受信するように接続された第2アンテナと、第1アンテナと第2アンテナから信号を受信し、第1アンテナと第2アンテナからの信号の合計を出力し、第1アンテナ信号と第2アンテナ信号の差分を出力するように接続された受信ハイブリッド回路と、第1送信信号を受信するように接続され、第1送信パスによる干渉を補償するように構成された第1キャンセル回路と、第2送信信号を受信するように接続され、第2送信パスによる干渉を補償するように構成された第2キャンセル回路と、を備え、受信ハイブリッド回路の合計出力と第1キャンセル回路の出力が結合されて第1受信信号を生成し、受信ハイブリッド回路の差分出力と第2キャンセル回路の出力が結合されて第2受信信号を生成する。
【0011】
第1キャンセラは、第1送信パスから生じる(第1送信パスに起因する)第1受信パスにおける干渉をキャンセルできる。第2キャンセラは、第2送信パスから生じる(第2送信パスに起因する)第2受信パスの干渉をキャンセルできる。これは、それぞれのキャンセラの伝達関数が、第1送信パスまたは第2送信パスから第1受信パスまたは第2受信パスへの伝達関数の逆元である場合に実現され得る。送信パスは、送信ハイブリッド回路への入力であってもよく、受信パスは受信ハイブリッド回路の出力であってもよい。
【0012】
各キャンセラは、2つのアンテナ間の信号の相互結合によって生じる(相互結合に起因する)自己干渉結合成分を補償できる。
【0013】
各キャンセルパスの伝達関数は、アンテナの相互結合についての補償を含む、自己干渉パスの逆伝達関数を有し得る。各キャンセラの調整可能な回路で補償が提供され得る。
【0014】
第1キャンセラ回路と第2キャンセラ回路のそれぞれは、位相反転器を含んでもよく、第1結合器と第2結合器は、受信ハイブリッド回路のそれぞれの出力をキャンセラ回路の反転出力と結合する。
【0015】
第1キャンセラ回路と第2キャンセラ回路のそれぞれは、それぞれの第1アンテナと第2アンテナのインピーダンスとそれぞれ整合するためのサブキャンセラ回路を含んでもよい。
【0016】
MIMOアンテナ構成は、送信ハイブリッド回路の合計出力と第1アンテナとの間に接続された第1送信フィルタと、送信ハイブリッド回路の差分出力と第2アンテナとの間に接続された第2送信フィルタと、第1アンテナと受信ハイブリッド回路との間に接続された第1受信フィルタと、第2アンテナと受信ハイブリッド回路との間に接続された第2受信フィルタと、をさらに備えてもよい。
【0017】
送信ハイブリッド回路は、送信ハイブリッド回路の合計出力をフィルタリングするための第1送信フィルタと、送信ハイブリッド回路の差分出力をフィルタリングするための第2送信フィルタとを含んでもよく、受信ハイブリッド回路は、第1アンテナ信号をフィルタリングするための第1受信フィルタと、第2アンテナ信号をフィルタリングするための第2受信フィルタとを含んでもよい。
【0018】
第1送信フィルタおよび第2送信フィルタ、並びに第1受信フィルタおよび第2受信フィルタは、可変フィルタであってもよい。
【0019】
第1キャンセル回路は、第1送信信号を受信するように接続された第1キャンセル受信フィルタと、第1キャンセル受信フィルタから信号を受信するように接続された第1キャンセル送信フィルタとを含んでもよい。
【0020】
第2キャンセル回路は、第1送信信号を受信するように接続された第2キャンセル受信フィルタと、第2キャンセル受信フィルタから信号を受信するように接続された第2キャンセル送信フィルタとを含んでもよい。
【0021】
第1キャンセル回路は、180°位相シフト回路を備えてもよい。第2キャンセル回路は、180°位相シフト回路を含んでもよい。
【0022】
第1キャンセル送信フィルタおよび第2キャンセル送信フィルタ、並びに第1キャンセル受信フィルタおよび第2キャンセル受信フィルタは、可変フィルタであってもよい。
【0023】
第1送信フィルタは第1キャンセル送信フィルタと一致し、第2送信フィルタは第2キャンセル送信フィルタと一致し、第1受信フィルタは第1キャンセル受信フィルタと一致し、第2受信フィルタは第2キャンセル受信フィルタと一致してもよい。
【0024】
各キャンセル回路は、それぞれのキャンセル送信フィルタとキャンセル受信フィルタの間に接続されたサブキャンセラを含んでもよい。各サブキャンセラ回路は、可変インピーダンス回路であってもよい。サブキャンセラ回路は、それぞれの第1アンテナまたは第2アンテナのインピーダンスと整合するように調整可能であってもよい。各サブキャンセラ回路は、それぞれの送信パスにおける干渉を補償するように調整可能であってもよい。
【0025】
MIMOアンテナ構成は、第1アンテナ、送信ハイブリッド回路の合計出力、および受信ハイブリッド回路への入力を接続する第1サーキュレータと、第2アンテナ、送信ハイブリッド回路の差分出力、および受信ハイブリッド回路への入力を接続する第2サーキュレータとをさらに備えてもよい。
【0026】
MIMOアンテナ構成は、第1送信信号を提供する第1電力増幅器と、第2送信信号を提供する第2電力増幅器とをさらに備えてもよい。
【0027】
MIMOアンテナ構成は、第1受信信号を受信する第1低ノイズ増幅器と、第2受信信号を受信する第2低ノイズ増幅器とをさらに備えてもよい。
【0028】
複数入力複数出力(MIMO)アンテナ構成で送信および受信する方法が提供され、この方法は、第1送信信号および第2送信信号を受信することと、第1送信信号と第2送信信号の合計を第1アンテナに出力することと、第1送信信号と第2送信信号の差分を第2アンテナに出力することと、第1受信パスと第2受信パスにおいて第1アンテナと第2アンテナから第1信号と第2信号を受信することと、第1アンテナと第2アンテナから受信した信号の合計を出力することと、第1アンテナ信号と第2アンテナ信号から受信した信号の差分を出力することと、第1送信信号による第1受信パスにおける干渉を決定することと、第2送信信号による第2受信パスにおける干渉を決定することと、第1受信信号を生成するために、第1アンテナと第2アンテナから受信した信号の合計出力と、第1送信信号による第1受信パスにおける決定された干渉の逆元を結合することと、第2受信信号を生成するために、第1アンテナと第2アンテナから受信した信号の差分出力と、第2送信信号による第2受信パスにおける決定された干渉の逆元とを結合することと、を含む。
【0029】
それぞれの第1送信信号と第2送信信号による第1受信パスと第2受信パスにおける干渉を決定することは、それぞれの第1アンテナと第2アンテナのインピーダンスとそれぞれ整合することを含んでもよい。
【0030】
方法は、第1フィルタリングステップにおいて第1アンテナの前に合計出力をフィルタリングすることと、第2フィルタリングステップにおいて第2アンテナの前に差分出力をフィルタリングすることと、第2フィルタリングステップにおいて第1アンテナから受信した信号をフィルタリングすることと、第4フィルタリングステップにおいて第2アンテナから受信した信号をフィルタリングすることと、をさらに含んでもよい。
【0031】
第1送信信号による第1受信パスにおける干渉を決定することは、第1フィルタリングステップおよび第3フィルタリングステップと同等のフィルタリングステップを第1送信信号に適用することを含んでもよく、第2送信信号による第2受信パスにおける干渉を判定することは、第2フィルタリングステップおよび第4フィルタリングステップと同等のフィルタリングステップを第2送信信号に適用することを含んでもよい。
【0032】
方法は、第1送信信号による第1受信パスにおける、および第2送信信号による第2受信パスにおける決定された干渉のそれぞれに対して、または受信パスにおける信号のそれぞれに対して、180°位相シフト回路をさらに備えてもよい。
【0033】
回路、または回路の任意の部分を提供する方法が提供され得る。
【0034】
回路の任意の部分を制御する方法が提供されてもよい。
【0035】
プロセッサ上で実行されると、方法の任意の部分を実行するコンピュータプログラムが提供されてもよい。
【0036】
このようなコードを格納するコンピュータプログラム製品が提供されてもよい。コンピュータプログラム製品は非一時的な製品であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
以下、本発明を添付図面を参照して説明する。
【0038】
【
図1】
図1は、送信側と受信側との間の干渉をキャンセルするための回路を含む2アンテナMIMO構成の従来の例示的な実装を示す。
【
図2】
図2は、2アンテナMIMO構成の例示的な実装を示す。
【
図3】
図3は、
図3の例示的な実装によって対処される干渉の存在を説明するために、
図2の実装を概略的に示す。
【
図4】
図4は、送信側と受信側との間の干渉をキャンセルするための回路を含む改良された2アンテナMIMO構成の例示的な実装を示す。
【
図5】
図5は、送信側と受信側との間の干渉をキャンセルするための回路を含む改良された2アンテナMIMO構成の代替的な例示的な実装を示す。
【
図6】
図6は、送信側と受信側との間の干渉をキャンセルするための回路の実施例を含む、改良された2アンテナMIMO構成の代替的な例示的な実施例を示す。
【
図7】
図7は、送信側と受信側との間の干渉をキャンセルするための回路の実施例を含む、改良された2アンテナMIMO構成の代替的な例示的な実施例を示す。
【
図8】
図8は、
図7の構成で使用できる例示的なフィルタ/ハイブリッドネットワークを示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、実施例および実施形態を参照して本発明を説明する。
【0040】
2つのアンテナを有する2ステージMIMO構成の例を示す。一般的に、説明する技術は、n個のアンテナを持つnステージMIMO構成に適用できる。
【0041】
記載された装置の例示的な、しかし限定されない実装は、携帯電話などのモバイルRFデバイスなどのRFデバイスのフロントエンドにある。
【0042】
図2を参照すると、第1アンテナ10
1と第2アンテナ10
2を含むMIMO構成が示されている。第1アンテナ10
1および第2アンテナ10
2は、それぞれ送信パスを介して各アンテナへ信号を送信し、受信パスを介して各アンテナから信号を受信する。
【0043】
図2のMIMO構成は、送信側において、第1送信パスにおける第1電力増幅器20
1と、第2送信パスにおける第2電力増幅器20
2をさらに含み、それぞれが、送信されるそれぞれの信号を受信し、180°送信ハイブリッド回路22の入力にそれぞれの送信信号Tx1およびTx2を生成するように接続されている。したがって、送信パス上の各送信信号は、単一の180°ハイブリッド回路への入力として提供される。
【0044】
180°送信ハイブリッド回路は、合計出力23と差分出力25を有する。合計出力23は、第1送信フィルタ241の入力に接続され、第1送信フィルタ241は、第1アンテナ101に接続される出力を有する。差分出力25は、第2送信フィルタ242の入力に接続され、第2送信フィルタ242は、第2アンテナ102に接続される出力を有する。
【0045】
ハイブリッド回路22の合計出力23における信号は、2つの送信パスから受信された2つの信号の合計である。ハイブリッド回路22の差分出力25における信号は、2つの送信パスから受信された2つの信号の差である。
【0046】
図2のMIMO構成は、受信側に第1受信フィルタ26
1と第2受信フィルタ26
2をさらに含み、それぞれ第1アンテナ10
1と第2アンテナ10
2からの信号を受信するようにそれぞれ接続されている。各受信フィルタ26
1および26
2は、それぞれのアンテナ10
1および10
2から受信した信号を180°受信ハイブリッド回路28に提供するように接続されている。したがって、アンテナで受信された各信号は、単一の180°受信ハイブリッド回路への入力として提供される。
【0047】
180°受信ハイブリッド回路28は、合計出力29と差分出力31を有する。合計出力29は、信号Rx1を第1低ノイズ増幅器301の入力に供給する。差分出力31は、信号Rx2を第2低ノイズ増幅器302の入力に供給する。
【0048】
ハイブリッド回路28の合計出力29における信号は、2つのアンテナから受信された2つの信号の合計である。ハイブリッド回路28の差分出力31における信号は、2つのアンテナから受信した2つの信号の差である。
【0049】
低ノイズ増幅器はそれぞれ、それぞれの受信パスに信号を提供する。
【0050】
通常、両方の送信フィルタは同じ(送信)周波数に調整され、両方の2つの送信信号(Tx1とTx2)は同じ周波数である。通常、両方の受信フィルタは同じ(受信)周波数に調整され、両方の受信信号(Rx1とRx2)は同じ周波数で受信される。アンテナ101および102は、送信帯域と受信帯域の両方をカバーする動作帯域幅を備える。
【0051】
電力増幅器および低ノイズ増幅器は、干渉をキャンセルするためのMIMO構成の実装に必須ではないが、現在の一般的なMIMO実装には含まれている。
【0052】
ハイブリッド回路22および28の実装には、ハイブリッドトランスまたはラットレースカプラなど、和信号と差信号を生成するための任意の既知の回路を使用できる。ハイブリッド回路22および28によって適用される位相シフトは、実装に依存する。例えば、
-ある実装では、合計はTx1(90°)+Tx2(90°)であってもよく、差はTx1(90°)+Tx2(270°)であってもよい。
-ある実装では、合計はTx1(0°)+Tx2(0°)であってもよく、差はTx1(0°)+Tx2(180°)であってもよい。
【0053】
実際には、伝送線路の長さなどにより、任意の位相が追加されることがある。合計と差の関係が維持されるように2つの部分の間が等しければ、これはスキームに影響しない。
【0054】
図2のMIMO構成では、
図1の従来の実装のキャンセラ回路要件を必要とせずに、上記の干渉のキャンセルが実現される。
【0055】
図2の構成例で発生する干渉については、
図3を参照して以下に説明する。
図3の要素が
図2の要素に対応する場合、同様の参照符号が使用される。
【0056】
図3を参照すると、第1送信フィルタ24
1と第2送信フィルタ24
2はそれぞれAとCで示され、第1受信フィルタ26
1と第2受信フィルタ26
2はそれぞれBとDで示される。A、B、C、Dの表記は、それぞれのフィルタのフィルタ伝達関数を示す。
【0057】
表記Xで示されるブロック21は、2つのセットの送信/受信フィルタの間の相互結合チャネルを表す。これは、2つのアンテナ10
1とアンテナ10
2との間の相互結合の効果をモデル化する。
図4では、説明を簡単にするために2つのアンテナ10
1と10
2は示されておらず、また、以下の例では、アンテナによって受信される信号は考慮されていない(受信機に到達する送信信号成分のキャンセルを示すことを目的としている)。したがって、ブロック21は、第1送信フィルタ24
1と第1受信フィルタ26
1の接続点と、第2送信フィルタ24
2と第2受信フィルタ26
2の接続点との間に接続されるように示される。
【0058】
送信ハイブリッド回路22の合計出力23におけるパスの信号は次のようになる。
【数1】
【0059】
送信ハイブリッド回路22の差分出力25におけるパスの信号は次のようになる。
【数2】
【0060】
以下の分析では、フィルタ241、242、261、262による減衰を使用して、干渉パスの測定を示す。ただし、一般的には、実装に応じて必要に応じて分析では回路を考慮し得る。減衰に基づく評価ではフィルタが受動回路に制限されるが、一般的な制限は適用されず、これは例を提供するための実装に固有のものである。フィルタはパッシブ回路および/またはアクティブ回路であってもよい。
【0061】
第1送信フィルタ24
1による減衰A、並びにフィルタ24
2による減衰C、およびクロスアンテナ接続によるXにより、第1送信フィルタ24
1の出力におけるパスの信号は次のようになる。
【数3】
【0062】
第2送信フィルタ24
2による減衰C、並びにフィルタ24
1による減衰A、およびクロスアンテナ接続によるXにより、第2送信フィルタ24
2の出力におけるパスの信号は次のようになる。
【数4】
【0063】
第1受信フィルタ26
1による減衰Bにより、第1受信フィルタ26
1の出力におけるパスの信号は次のようになる。
【数5】
【0064】
第2受信フィルタ26
2による減衰Dにより、第2受信フィルタ26
2の出力におけるパスの信号は次のようになる。
【数6】
【0065】
受信ハイブリッド回路28に出入りする信号を考慮すると、第1受信信号Rx1と第2受信信号Rx2の式は次のように導出できる。
【0066】
第1受信信号について、R
x1は次のように表される。
【数7】
【数8】
【0067】
フィルタチューニングを使用することにより、AはCに等しく設定され、BはDに等しく設定されるため、AB=AD=CB=CDとなる。したがって、BAとDCの減算は互いに打ち消し合い、DAXとBCXの減算は互いに打ち消し合い、T
x2の項は消去される。したがって次のようになる。
【数9】
そしてAB=CD=CB=ADなので、この式はさらに単純化されて次のようになる。
【数10】
【数11】
したがって、T
x1入力からR
x1出力への伝達関数は、式(1)で表される。
【数12】
【0068】
図2の構成例では、第1受信パスR
x1の干渉は、送信パスT
x1からの信号のみに依存し、送信パスT
x2からの信号には依存しないことがわかる。第1受信パスにおける干渉が第1送信パスにおける信号のみに依存するのは、ハイブリッド回路によるものである。ハイブリッド回路の使用により、第2送信パスT
x2からの干渉がキャンセルされる。
【0069】
したがって、キャンセラは、第1送信パスTx1と第1受信パスRx1の間にのみ実装され、第1送信パスからの干渉のみを補償できる。このキャンセラは、送信信号Tx1によって生じる第1受信パスにおける干渉をキャンセルするように設定されており、これにより、第1受信パスにおける干渉が低減または除去される。これは、キャンセラの伝達関数が式(1)の逆位相値である場合に実現され得る。
【0070】
第2受信信号について、R
x2は次のように表される。
【数13】
【数14】
【0071】
フィルタチューニングを使用することにより、AはCに等しく設定され、BはDに等しく設定されるため、AB=AD=CB=CDとなる。したがって、BAとDCの減算は互いに打ち消し合い、DAXとBCXの減算は互いに打ち消し合い、T
x1の項は消去される。したがって次のようになる。
【数15】
そしてAB=CD=CB=ADなので、この式はさらに単純化されて次のようになる。
【数16】
【数17】
したがって、T
x2入力からR
x2出力への伝達関数は、式(2)で表される。
【数18】
【0072】
図2の構成例では、第2受信パスR
x2の干渉は、第2送信パスT
x2からの信号のみに依存し、第1送信パスT
x1からの信号には依存しないことがわかる。ハイブリッド送信回路の使用により、第1送信パスT
x1からの干渉がキャンセルされる。
【0073】
したがって、第2キャンセラは、第2送信パスTx2と第2受信パスRx2の間にのみ実装され、第2送信パスからの干渉のみを補償できる。この第2キャンセラは、送信信号Tx2によって生じる第2受信パスにおける干渉をキャンセルするように設定されており、これにより、第2受信パスにおける干渉が低減または除去される。これは、第2キャンセラの伝達関数が式(2)の逆位相値である場合に実現され得る。
【0074】
送信ハイブリッド回路22の動作により、アンテナ10
1および10
2で送信される信号は両方とも送信信号T
x1およびT
x2の両方に依存することになるが、信号T
x1およびT
x2を適切に制御することにより、アンテナ10
1および10
2から送信される信号を独立して制御することが可能なままである。例えば、信号YとZがそれぞれアンテナ10
1と10
2で送信される場合、次のように設定することで実現され得る。
【数19】
【数20】
【0075】
この場合、送信ハイブリッド回路22の合計出力23でのパスにおける信号は次のように表される。
【数21】
【0076】
同様に、
【数22】
【数23】
と設定すると、送信ハイブリッド回路22の差分出力25でのパスにおける信号は次のように表される。
【数24】
【0077】
したがって、送信ハイブリッド回路22で加算および減算演算が実装されているにもかかわらず、アンテナから送信される信号は、特定のMIMO送信に必要な場合、依然として独立して制御され得る。いくつかの実施形態では、これにより、アンテナ101および102のいずれか一方を送信に使用し、他方のアンテナは送信しないようにすることが可能になる。したがって、いくつかの実施形態では、単一アンテナモードおよびMIMO動作モードの両方で動作できるMIMO構成も提供され得る。上記の例と同様に、必要に応じて、受信信号Rx1とRx2の和と差を処理することによって、各アンテナ101と102で受信された信号が復元され得る。
【0078】
図4は、アンテナ送信パスとアンテナ受信パスとの間の干渉をキャンセルするキャンセラ回路を組み込んだ、
図2によるMIMO構成の実装を示す。
図4の要素が
図2の要素に対応する場合、同様の参照符号が使用される。
【0079】
図4のMIMO構成では、
図3を参照して説明した干渉の判定に従って干渉をキャンセルするキャンセラ回路が導入されている。
【0080】
図4を
図2と比較すると、第1キャンセラ回路38
1および第2キャンセラ回路38
2が追加され、第1結合器40
1および第2結合器40
2が追加されている。
【0081】
第1キャンセラ回路381は、電力増幅器201の送信信号Tx1出力と接続された入力を有する。第1結合器401は、180°受信ハイブリッド回路28の合計出力29を受信するように接続され、合計出力29をキャンセラ回路381の出力と結合して、低ノイズ増幅器301への入力に受信信号Rx1を提供する。
【0082】
第2キャンセラ回路382は、電力増幅器202の出力での送信信号Tx2と接続された入力を有する。第2結合器402は、180°受信ハイブリッド回路28の差分出力31を接続するために追加され、差分出力31をキャンセラ回路382の出力と結合して、低ノイズ増幅器302への入力に受信信号Rx2を提供する。
【0083】
図4の構成を
図1の構成と比較すると、MIMO構成では各アンテナに1つのキャンセラ回路が必要であり、必要なキャンセラ回路の数がアンテナの数の2乗である
図1の構成とは異なり、必要なキャンセラ回路の数がアンテナの数にマップされることがわかる。
【0084】
一般に、各キャンセラ回路381および382は、それぞれのパスおよびハイブリッド回路28の出力に干渉の逆元を挿入する。キャンセラ381は、式(1)の逆元を実装し、キャンセラ382は式(2)の逆元を実装する。
【0085】
いくつかの実施形態では、キャンセラ回路381および382は、調整可能および/または固定された回路構成要素(例えば、抵抗、コンデンサ、インダクタ、変圧器、伝送線路、その他の部品など)を備えたパッシブ回路ネットワークであってもよく、受信ハイブリッド28の出力29および31のそれぞれにおける自己干渉信号の逆位相コピーであるキャンセル信号が、対象の周波数帯域(例えば、送信および/または受信周波数帯域)にわたって生成されるように、ネットワークの周波数応答(すなわち伝達関数)を調整できる。それぞれのキャンセラ381および382内の調整可能な構成要素により、それぞれの受信パスにおけるそれぞれの送信パスからの干渉がそれぞれの結合器401および402でキャンセルされるように、キャンセラの伝達関数は調節および/または調整され得る。
【0086】
さらなる回路(具体的には180°ハイブリッド回路22および28)も必要であるが、必要な全体的な回路は、
図1のような構成で必要な回路よりも少ない。
【0087】
図5は、
図4の干渉キャンセル技術によるMIMO構成の代替的な実装を示す。
図5の要素が
図4の要素に対応する場合、同様の参照符号が使用される。
【0088】
図5に示すように、第1送信フィルタ24
1および第2送信フィルタ24
2、並びに第1受信フィルタ26
1および第2受信フィルタ26
2が、第1サーキュレータ50
1および第2サーキュレータ50
2に置き換えられている。
【0089】
第1サーキュレータ501はアンテナ101と接続され、180°送信ハイブリッド回路22の合計出力を受信し、180°受信ハイブリッド回路28に入力を提供する。
【0090】
第2サーキュレータ502はアンテナ102と接続され、180°送信ハイブリッド回路22の差分出力を受信し、180°受信ハイブリッド回路28に入力を提供する。
【0091】
図5のキャンセラ回路38
1および38
2は、
図4を参照して説明したのと同じ手段を介して同じ機能を実行できる。
【0092】
図2に示すように、送信フィルタは同じ送信周波数に調整され、受信フィルタは同じ受信周波数に調整される。
図5の構成では、サーキュレータが送信フィルタと受信フィルタに置き換えられており、各サーキュレータは同じ周波数で同時に送信と受信に使用され得る。
【0093】
図6を参照すると、
図4のキャンセラの実装例が示されている。
図6の要素が
図4の要素に対応する場合、同様の参照符号が使用される。
【0094】
図6に示すキャンセラの実装は、上記したような式(1)および式(2)の要件の実装に基づいている。
【0095】
図6の実装例では、第1結合器40
1および第2結合器40
2は、それぞれの結合器40
1および40
2への/からの間の3つの信号の接続点70
1および70
2として単純に実装されている。
【0096】
第1送信フィルタ241および第2送信フィルタ242と、第1受信フィルタ261および第2受信フィルタ262は、好ましくは、調整可能なフィルタとして実装される。これらは、任意の実装で調整可能なフィルタとして実装され得る。
【0097】
キャンセラ381は、第1電力増幅器201の出力と接続された入力を有する第1キャンセラ受信フィルタ601と、第1キャンセラ受信フィルタ601の出力と接続された入力を有する第1キャンセラ送信フィルタ621と、第1キャンセラ受信フィルタ621の出力と結合器接続点701の間に接続された180°位相シフタ641と、第1キャンセラ受信フィルタ601と第1キャンセラ送信フィルタ621の間に接続されたサブキャンセラ回路661と、を備える。
【0098】
キャンセラ382は、第2電力増幅器202の出力と接続された入力を有する第2キャンセラ受信フィルタ602と、第2キャンセラ受信フィルタ602の出力と接続された入力を有する第2キャンセラ送信フィルタ622と、第2キャンセラ受信フィルタ621の出力と結合器接続点702の間に接続された180°位相シフタ642と、第2キャンセラ受信フィルタ602と第2キャンセラ送信フィルタ622の間に接続されたサブキャンセラ回路662とを備える。
【0099】
いくつかの実施形態では、サブキャンセラ回路661および662は、調整可能なおよび/または固定された回路構成要素を備えたパッシブネットワークであってもよく、対象の周波数帯域(送信周波数帯域および/または受信周波数帯域など)にわたって、受信ハイブリッド28の出力29および31それぞれで自己干渉信号の逆位相コピーであるキャンセル信号がキャンセラ出力で生成されるように、キャンセラ381および382内に含まれる調整可能なフィルタとともに、キャンセラ381および382の周波数応答が調整され得るようにするために、ネットワークの周波数応答を調整できる。キャンセラ381および382は、好ましくは、アンテナ101と102の間の信号の相互結合によって生じる自己干渉結合成分(上記の式では表記Xで示される)を補償する。
【0100】
いくつかの実施形態では、送信フィルタ241、242、621、および622は、同一設計の回路であってもよく、同一の中心周波数および伝達関数を有するように調整されてもよく、受信フィルタ261、262、601、および602は、同一設計の回路であってもよく、同一の中心周波数および伝達関数を有するように調整されてもよい。このような実施形態では、電力増幅器201の出力と接続点701との間のキャンセル回路381の総合伝達関数は、電力増幅器201の出力と接続点701との間のハイブリッド回路22、フィルタ241、アンテナ101、フィルタ261、およびハイブリッド29を含む回路の総合伝達関数と比較して、大きさが等しく、位相が逆であってもよい。
【0101】
フィルタ62
1と24
1が表記Aで示される同一の伝達関数を有し、フィルタ60
1と26
1が表記Bで示される同一の伝達関数を有し(
図3で使用された表記と同じ表記を使用)、180°位相シフトによる信号反転を考慮すると、キャンセラ38
1の総合伝達関数は-BLAと表記され得、ここで、表記Lはサブキャンセラ回路66
1の伝達関数を示す。サブキャンセラ回路66
1がL=(1+X)となるように調整されている場合、キャンセラ38
1の伝達関数は_-BA(1+X)となり、これは式(1)の逆元であり、これにより接続点70
1でキャンセルが行われる。
【0102】
同様に、フィルタ622と242が表記Aで示される同一の伝達関数を有し、フィルタ602と262が表記Bで示される同一の伝達関数を有し、180°位相シフトによる信号反転を考慮すると、キャンセラ382の総合伝達関数は-BPAと表記され得、表記Pはサブキャンセラ回路662の伝達関数を示す。サブキャンセラ回路662がP=(1-X)となるように調整されている場合、キャンセラ382の伝達関数は_-BA(1-X)となり、これは式(2)の逆元であり、これにより接続点702でキャンセルが行われる。
【0103】
他の実施形態では、フィルタ622および242は異なる設計および/または伝達関数を有し、フィルタ602および262は異なる設計および/または伝達関数を有してもよい。さらに、いくつかの実施形態では、製造上の欠陥により、ハイブリッド接合部22および28によってさらなる損失および/または位相シフトが適用される場合がある。しかし、このような実施形態では、キャンセラ381および382を構成するフィルタおよび/またはサブキャンセラを調整して、キャンセラ381および382の伝達関数が、それぞれTx1とRx1の間、およびTx2とRx2の間の自己干渉結合チャネルの逆になるようにすることで、自己干渉のキャンセルを実現できる。
【0104】
送信フィルタと受信フィルタの順序は、好ましくは、キャンセラパス内で入れ替えられる。これは線形システムなので、総合伝達関数は同じである。フィルタは、好ましくは、キャンセラが送信ポートと受信ポートに負荷をかけないように、入れ替えられる。例えば、電力増幅器201および202の出力を考慮すると、回路のこの時点では、送信周波数の電力の大部分がハイブリッド回路に送信され(そしてアンテナから送信される)、最小限の送信電力がキャンセル回路に送信されることが望ましい(送信機のエネルギ効率のため)。この例の設計では、受信フィルタが(受信フィルタのストップバンド内である)送信周波数で最小限のエネルギのみを通過させるため、これが発生する。同様に、受信ハイブリッド28の出力は低ノイズ増幅器およびキャンセラと接続され、ここでは、受信周波数のすべてのエネルギがキャンセラ出力ではなく低ノイズ増幅器に送信されることが望ましい。これは、受信周波数で最小限のエネルギを通過させる送信フィルタをここに配置することで実現される。
【0105】
この例では、フィルタ621、622、241、および242の伝達関数が同一の伝達関数を有し、フィルタ601、602、261、および262が同一の伝達関数を有し、サブキャンセラネットワーク661および662がアンテナの相互結合を補償するように調整されていると想定している。他の実施形態では、フィルタ601、602はフィルタ261、および262とは異なる伝達関数を示してもよく、フィルタ621、622はフィルタ241、および242とは異なる伝達関数を示してもよく、サブキャンセラ回路621、622も、それぞれの信号接合部701および702で自己干渉信号をキャンセルするために必要な異なる伝達関数を提供するように調整されてもよい。一般的に、望ましい要件は、キャンセルパスが、必要に応じてアンテナの相互結合の補償を含む、自己干渉パスと比較して逆伝達関数を有することである。このような補償は、それぞれのキャンセラ381および382を備える任意の調整可能な回路で発生し得る。
【0106】
これは実装例であることに注意されたい。
図5に示すような構成では、送信フィルタと受信フィルタは存在しない。一般的に、キャンセラ回路は、受信パス内のアンテナから受信した各信号と組み合わせて、対応する送信パスからの干渉をキャンセルするために提供される。
【0107】
図7の例示の構成では、キャンセラ38
1および38
2はそれぞれ180°位相シフト回路64
1および64
2を含むものとして示されている。この位相シフト回路は、図に示すようにそれぞれのキャンセラ回路の一部として考えられてもよいし、またはキャンセラ回路とは別であるが、キャンセルパス内に配置された回路として提供されてもよい。代替的には、この180°位相シフトは、受信パス、例えばハイブリッド回路28の合計出力または差分出力に提供されてもよい。代替的に、この180°位相シフトは、システム内の他の場所で提供され得る。当業者であれば、それぞれのキャンセル信号がそれぞれの受信パス内のそれぞれの干渉信号と逆位相で結合されることだけが必要であること、およびこれを実現するために位相シフトを提供できる回路内の位置が多数存在することを認識するだろう。
【0108】
図7を参照すると、
図6のMIMOの実装例が示されている。
図7の要素が
図6の要素に対応する場合、同様の参照符号が使用される。
【0109】
図7の実装例では、180°送信ハイブリッド回路22は、180°送信ハイブリッド回路72に置き換えられ、180°受信ハイブリッド回路28は、180°受信ハイブリッド回路78に置き換えられている。
【0110】
図7の実装例において、
図6の第1送信フィルタ24
1および第2送信フィルタ24
2は、個別のフィルタとして提供されておらず、180°送信ハイブリッド回路72は統合フィルタおよびハイブリッドネットワークであり、
図6の第1送信フィルタ24
1および第2送信フィルタ24
2の機能が180°送信ハイブリッド回路72に統合されている。統合送信フィルタは、好ましくは調整可能である。
【0111】
図7の実装例において、
図6の第1受信フィルタ24
1および第2受信フィルタ24
2は、個別のフィルタとして提供されておらず、180°受信ハイブリッド回路72は統合フィルタおよびハイブリッドネットワークであり、
図6の第1送信フィルタ26
1および第2送信フィルタ26
2の機能が180°受信ハイブリッド回路78に統合されている。統合受信フィルタは、好ましくは調整可能である。
【0112】
第1アンテナ101は、180°ハイブリッド回路72の合計出力と、180°ハイブリッド回路78の入力とに接続される。第2アンテナ102は、180°ハイブリッド回路72の差分出力と、180°ハイブリッド回路78の入力とに接続される。
【0113】
図7には、サブキャンセラ回路66
1および66
2の実装例も示されている。これらの実装例は、ハイブリッド回路72および78の実装に限定されない。この例では、サブキャンセラ回路66
1および66
2は、それぞれ可変インピーダンス回路67
1および67
2として実装され、キャンセラ受信フィルタとキャンセラ送信フィルタとの間に接続された1つのノードと、グラウンドに接続された1つのノードとを有する。このような可変インピーダンス回路は、1つまたは複数の固定されたおよび/または調整可能な回路要素のネットワークを備えてもよい。いくつかの実施形態では、フィルタ62
1、62
2、24
1、および24
2が同一の伝達関数を有し、フィルタ60
1、60
2、26
1、および26
2が同一の伝達関数を有し、アンテナ間に相互結合がない場合、インピーダンス回路67
1および67
2を、それぞれアンテナ10
1および10
2と同じインピーダンスを提供するように調整することが好ましい場合がある。アンテナ10
1と10
2の間で信号の相互結合がある場合、アンテナ間の相互結合をキャンセルするために、調整可能なインピーダンス回路67
1と67
2のインピーダンスをさらに調整することが好ましい場合がある。一般に、可変インピーダンス回路67
1および67
2は、対象の周波数帯域(送信および/または受信周波数帯域など)においてそれぞれの信号接合部70
1および70
2で提供されるキャンセルのレベルを高めるように調整され得る。
【0114】
図8を参照すると、
図7に示すような統合フィルタおよびハイブリッドネットワークの実装例が示されている。
【0115】
この例では、統合フィルタおよびハイブリッドネットワークは、4ポートネットワークであり、2つの入力ポート821および824と、2つの出力ポート822および823を有する。フィルタ802は、ポート821とポート822の間に接続され、フィルタ802はポート822とポート823の間に接続され、フィルタ803は、ポート823とポート824の間に接続され、フィルタ804および180°位相シフタは、ポート821とポート824の間に直列に接続されている。フィルタ801、802、803、および/または804は調整可能であってもよい。
【0116】
このネットワークでは、ポート821に入る信号は、フィルタリングされて0°位相シフトでポート822と結合され、フィルタリングされて180°位相シフトでポート824と結合される。ポート823に入る信号は、フィルタリングされて0°位相シフトでポート824および822と結合される。したがって、ポート824から出る信号は、フィルタリングが適用されたポート823に入った信号とポート821に入った信号の差となり、ポート822から出る信号は、フィルタリングが適用されたポート821に入った信号とポート823に入った信号の和となる。
【0117】
統合された調整可能なフィルタ/ハイブリッドネットワーク72または78のいずれかは、
図8の構成に従って実装できる。他の実装が使用されてもよい。回路または装置として、さまざまな例および実施形態が示された。本発明は回路や装置に限定されない。本発明は、方法またはプロセスによって具体化され得る。方法またはプロセスは、少なくとも部分的に、コンピュータ処理技術を利用して実装され得る。上記の例に示したプロセッサなどのプロセッサ上で実行されると、少なくとも部分的に任意の方法またはプロセスを実行できるコンピュータプログラムコードが提供され得る。このようなコンピュータプログラムコードが格納されたコンピュータプログラム製品が提供され得る。
【0118】
本発明を説明するために、さまざまな例および実施形態が示されている。例および実施形態の態様は組み合わせることもできる。
【0119】
本発明は、様々な実施形態および実装を参照して説明されてきた。本発明は、いかなる実施例の詳細にも限定されない。本発明によって与えられる保護の範囲は、添付の特許請求の範囲によって定められる。
【国際調査報告】