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特表2024-533807イナボグリフロジンを含む薬学組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】イナボグリフロジンを含む薬学組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/351 20060101AFI20240905BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20240905BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20240905BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20240905BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20240905BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
A61K31/351
A61K9/16
A61K47/38
A61K47/32
A61K9/20
A61P3/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519708
(86)(22)【出願日】2022-09-29
(85)【翻訳文提出日】2024-03-29
(86)【国際出願番号】 KR2022014640
(87)【国際公開番号】W WO2023055116
(87)【国際公開日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】10-2021-0130239
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513074792
【氏名又は名称】デーウン ファーマシューティカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ソンイ・ハ
(72)【発明者】
【氏名】ギョンウォン・キム
(72)【発明者】
【氏名】グワンヨン・キム
(72)【発明者】
【氏名】サングン・チョ
(72)【発明者】
【氏名】オン・ファン
(72)【発明者】
【氏名】ミンヒュン・パク
(72)【発明者】
【氏名】ソヨ・イ
(72)【発明者】
【氏名】ヒウォン・イ
(72)【発明者】
【氏名】スンビン・ユン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA31
4C076AA36
4C076BB01
4C076CC21
4C076EE16
4C076EE31A
4C076EE32
4C076FF04
4C076FF05
4C076FF33
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA07
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA35
4C086MA41
4C086MA52
4C086NA02
4C086NA05
4C086NA11
4C086ZC35
(57)【要約】
本発明は、ナトリウム-ブドウ糖共輸送体2(sodium-glucose cotransporter 2)の選択的抑制剤であるイナボグリフロジンを含む薬学組成物に関する。本発明による化学式1の化合物を含む薬学組成物は、低用量の薬物を含むにも関わらず、含有量均一性、製剤均一性、溶出プロファイルなどが全部優れた製剤を具現することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分として化学式1の化合物またはその薬学的に許容される塩、賦形剤、崩解剤、および結合剤を含み、上記化学式1の化合物の平均粒度が15um以下である、薬学組成物。
【化1】
【請求項2】
化学式1の化合物は、全体薬学組成物100重量部に対して1重量部未満で含まれる、請求項1に記載の薬学組成物。
【請求項3】
前記薬学組成物内有効成分含有量は、0.1~0.5mgである、請求項1に記載の薬学組成物。
【請求項4】
前記賦形剤は、全体薬学組成物100重量部に対して80~95重量部で含まれる、請求項1に記載の薬学組成物。
【請求項5】
前記崩解剤は、全体薬学組成物100重量部に対して2~8重量部で含まれる、請求項1に記載の薬学組成物。
【請求項6】
前記結合剤は、全体薬学組成物100重量部に対して3~10重量部で含まれる、請求項1に記載の薬学組成物。
【請求項7】
前記薬学組成物は、5分後溶出率が有効成分の総含有量の50%以上である、請求項1に記載の薬学組成物。
【請求項8】
前記薬学組成物は、15分後溶出率が有効成分の総含有量の80%以上である、請求項1に記載の薬学組成物。
【請求項9】
前記薬学組成物は、30分後溶出率が有効成分の総含有量の85%以上である、請求項1に記載の薬学組成物。
【請求項10】
化学式1の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む前混合顆粒および後混合部が混合した顆粒物を含む薬学組成物。
【化2】
【請求項11】
前記前混合顆粒は、化学式1の化合物またはその薬学的に許容される塩、賦形剤、結合剤および滑沢剤を含む、請求項10に記載の薬学組成物。
【請求項12】
前記後混合部は、賦形剤、崩解剤および滑沢剤を含む、請求項10に記載の薬学組成物。
【請求項13】
前記前混合顆粒および後混合部は、それぞれ賦形剤を含む、請求項10に記載の薬学組成物。
【請求項14】
前記前混合顆粒および後混合部は、それぞれ賦形剤として微結晶セルロースを含む、請求項13に記載の薬学組成物。
【請求項15】
前記前混合顆粒内微結晶セルロースの粒度は、130um以下である、請求項14に記載の薬学組成物。
【請求項16】
前記前混合顆粒内微結晶セルロースの体積密度は、0.26~0.33である、請求項14に記載の薬学組成物。
【請求項17】
前記後混合部内微結晶セルロースの粒度は、130um以上である、請求項14に記載の薬学組成物。
【請求項18】
前記後混合部内賦形剤の体積密度は、0.28~0.37である、請求項14に記載の薬学組成物。
【請求項19】
前記前混合顆粒内賦形剤および後混合部内賦形剤の重量比は、4:1~1:1である、請求項13に記載の薬学組成物。
【請求項20】
前記結合剤は、ヒドロキシプロピルセルロース、ポビドン、コポビドンおよびヒプロメロースから成る群から選択される1つ以上である、請求項11に記載の薬学組成物。
【請求項21】
前記結合剤は、ヒドロキシプロピルセルロースであり、重量平均分子量が200,000未満である、請求項20に記載の薬学組成物。
【請求項22】
前記顆粒物のCarr’s indexは、21~25である、請求項10に記載の薬学組成物。
【請求項23】
前記顆粒物は、乾式顆粒物である、請求項10に記載の薬学組成物。
【請求項24】
前記薬学組成物は、錠剤の剤形を有する、請求項10に記載の薬学組成物。
【請求項25】
前記薬学組成物は、化学式1の化合物を0.3mgの用量で含む、請求項10に記載の薬学組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナトリウム-ブドウ糖共輸送体2(sodium-glucose cotransporter 2)の選択的抑制剤であるイナボグリフロジンを含む薬学組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
SGLT2(Sodium-glucose cotransporter 2)抑制剤は、新しい種類の抗高血糖剤である。SGLT-2抑制剤は、近位ネフロンでブドウ糖再吸収を減少させて、インスリンと関係のないメカニズムを通じてブドウ糖の排泄を増加させ、2型糖尿病の治療に対するSGLT2抑制剤の安全性と効能が多くの研究で確認された。
【0003】
特に、米国公開特許第2015/0152075号公報は、SGLT2に対する抑制活性を示すジフェニルメタン残基を有する化合物として下記化学式1のイナボグリフロジン(enavogliflozin)を開示しており、前記文献は、イナボグリフロジンがヒトSGLT2活性に対する抑制効果に優れていて、糖尿病の治療に効果的であることを開示している。
【0004】
【化1】
化合物名:(2S,3R,4R,5S,6R)-2-(7-chloro-6-(4-cyclopropylbenzyl)-2,3-dihydrobenzofuran-4-yl)-6-(hydroxymethyl)tetrahydro-2H-pyran-3,4,5-triol
【0005】
イナボグリフロジンは、現在臨床第3相進行中の薬物であり、臨床第2相試験の結果、イナボグリフロジン0.1mg、0.3mg、0.5mgの投薬群において全部偽薬と比べて統計的に有意な血糖減少効果を確認したことがある。
【0006】
これは、同系薬物と比べて100分の1用量の非常に低い用量で、優れた尿糖分泌(尿中に排出されるブドウ糖)効能を示したと評価される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国公開特許第2015/0152075号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Pharmaceutical dosage forms:volume 2,2nd edition,Ed.:H.A.Lieberman,L.Lachman,J.B.Schwartz(Chapter 3:SIZE REDUCTION)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
イナボグリフロジンは、上述したように、非常に低い用量でも優れた血糖減少効果を発揮することが分かり、少ない含有量の有効成分を含む薬学組成物を製造する際に発生する溶出プロファイル、含有量均一性、製剤均一性などの問題を解決しなければならないことが把握された。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、イナボグリフロジンの製剤化のための様々な研究の結果、薬学組成物の組成を次のように構成するとき、イナボグリフロジン含有製剤の溶出プロファイル、含有量均一性、製剤均一性などの問題を解決することができることを確認した。
【0011】
具体的には、本発明は、有効成分として化学式1の化合物またはその薬学的に許容される塩、賦形剤、崩解剤、および結合剤を含み、上記化学式1の化合物の平均粒度が15um以下である薬学組成物を提供する。
【0012】
【化2】
【0013】
イナボグリフロジンは、糖尿治療剤に用いられる薬物の特性上、即時放出型で製剤化されることが好ましい。ところで、下記実施例によれば、イナボグリフロジンの平均粒度によって薬物の溶出プロファイルが大きく変化することが確認された。
【0014】
本発明の具体例において、イナボグリフロジンの平均粒度は、15um以下、好ましくは、10um以下でありうる。
【0015】
イナボグリフロジンの平均粒度が15umを超過する場合、5分溶出率がイナボグリフロジンの総含有量の40%未満と非常に低く、30分溶出率も80%未満であり、最終溶出率が不適合であることが把握された。
【0016】
薬物粒度の微粉化が必要な場合、Zミル(Z-mill)、ハンマーミル(hammer mill)、ボールミル(ball mill)、フルイドエネルギーミル(fluid energy mill)など、粒子を微粉化しうる通常のミルを用いて粉砕することができる。また、ふるい(sieve)を用いて行われるふるい分けまたは気流分粒(air current classification)などの分粒法(size classification method)を用いて薬物の粒度を細分化することができる。所望の粒度の調節方法については、当業界によく知られている。例えば、下記文献参照:[Pharmaceutical dosage forms:volume 2,2nd edition,Ed.:H.A.Lieberman,L.Lachman,J.B.Schwartz(Chapter 3:SIZE REDUCTION)]。
【0017】
本明細書において薬物の粒度は、D(X)=Y(ここで、XおよびYは、正の数である)のような粒度分布(particle size distribution)を基準として表現される。D(X)=Yは、製剤内の任意の薬物の粒子直径を測定して得られる薬物の粒度分布を累積曲線によって示すとき、粒度の小さい順に累積してX%(%は、数、体積または重量を基準として計算される)となる地点の粒子直径がYであることを意味する。例えば、D(10)は、薬物の粒度を小さい順に累積して10%となる地点の粒子の直径を、D(50)は、薬物の粒度を小さい順に累積して50%となる地点の粒子の直径を、D(90)は、薬物の粒度を小さい順に累積して90%になる地点の粒子の直径を表現する。
【0018】
粒度分布D(X)が数、体積、または重量のいずれに基づいて全体累積粒子中のパーセントを示すかは、粒度分布を測定するために用いる方法に依存する。粒度分布を測定する方法とこれと関連した%の類型は、当業界によく公知となっている。例えば、よく知られたレーザー回折法によって粒度分布を測定する場合、D(X)中、X値は、体積平均によって計算されたパーセントを示す。特定の方法によって得られた粒度分布の測定結果は、通常の実験によって経験に基づいて他の技術から得たものと相関関係にありえることを当業者はよく知っている。例えば、レーザー回折法は、粒子の体積に感応して体積平均粒度を提供するが、これは、密度が一定の場合、重量平均粒度に相当する。
【0019】
本発明において薬物粒子の粒度分布の測定は、Mie理論に基づくレーザー回折・散乱法に基づいて市販の装置を用いて行うことができる。例えば、Malvern Instruments社のMastersizerレーザー回折装置などの市販の装置を用いて測定する。この装置は、ヘリウム-ネオンレーザービームおよび青色発光ダイオードを粒子に照射すると、散乱が起こり、ディテクターに光散乱パターンが現れ、この光散乱パターンをMie理論により解析することによって粒子直径分布を求めることである。測定法は、乾式および湿式法のうちいずれでも可能である。
【0020】
参考として、本発明の実施例では、レーザー回折法による体積平均粒度によって薬物の粒度を測定した。
【0021】
本発明の具体例において、上記化学式1の化合物は、全体薬学組成物100重量部に対して1重量部未満で含まれ得る。
【0022】
臨床試験過程で把握されたイナボグリフロジンの適正1日1回投薬用量は、0.1mg~0.5mgであり、前記薬学組成物が単位投与剤形で製剤化される場合、薬学組成物内有効成分の含有量は、0.1~0.5mgでありうる。
【0023】
本発明による薬学組成物は、有効成分である化学式1の化合物の他に薬学的に許容される添加剤を含む。
【0024】
本発明の薬学組成物は、添加剤として賦形剤、崩解剤、および結合剤などを含む。
【0025】
賦形剤の例としては、ラクトース(水和物を含む)、デキストリン、マンニトール、ソルビトール、デンプン、微結晶セルロース[例えば、セルフィアTM(CelphereTM)]、ケイ化微結晶セルロース[silicified microcrystalline cellulose、例えば、プロソルブTM(ProsolvTM)]、リン酸カルシウム水和物、無水リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、糖類、またはこれらの混合物を含む。本発明の具体例において、好ましい賦形剤は、微結晶セルロースである。
【0026】
崩解剤の例としては、クロスポビドン、クロスカルメロースナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを含む。本発明の具体例において、好ましい賦形剤は、クロスカルメロースナトリウムである。
【0027】
結合剤の例としては、ポリビニルピロリドン、ポビドン、ゼラチン、デンプン、スクロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルアルキルセルロース(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、およびこれらの混合物を含む。本発明の具体例において、好ましい結合剤は、ヒドロキシプロピルセルロースである。
【0028】
その他添加剤の例として、滑沢剤、着色剤などが含まれる。
【0029】
前記滑沢剤は、ステアリン酸、ステアリン酸塩(例えば、ステアリン酸マグネシウム)、軽質無水ケイ酸、タルク、コーンスターチ、カルナウバワックス、ケイ酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、硬化油、白ろう、酸化チタン、微結晶セルロース、マクロゴール4000および6000、ミリスチン酸イソプロピル、リン酸水素カルシウムおよびこれらの混合物を含む。
【0030】
本発明の具体例において、前記賦形剤は、全体薬学組成物100重量部に対して80~95重量部で含まれ得る。
【0031】
本発明の具体例において、前記崩解剤は、全体薬学組成物100重量部に対して2~8重量部で含まれ得る。崩解剤が全体薬学組成物100重量部に対して2重量部未満の場合、初期崩壊力が低く、溶出率が遅延することがあり、これは、体内Cmaxに影響を及ぼすことができる。また、全体薬学組成物100重量部に対して8重量部を超過する場合、後混合部の崩解剤の量が多くなるので、顆粒の全体的な流れ性が低下することがある。
【0032】
本発明の具体例において、前記結合剤は、全体薬学組成物100重量部に対して3~10重量部で含まれ得る。結合剤が全体薬学組成物100重量部に対して3重量部未満の場合、適合した乾式顆粒の形成および維持が難しいことがあり、これは、主成分の均質な分散性維持と微粉の発生による顆粒の流れ性などに影響を及ぼすことができる。また、全体薬学組成物100重量部に対して10重量部を超過する場合、強い結合力を有する顆粒物が形成され、これは、溶出時に初期に崩解した顆粒粒子の溶解度に影響を及ぼし、これは、体内Cmaxにも影響を及ぼすことができる。
【0033】
本発明による薬学組成物は、即時放出型製剤に該当する。
【0034】
本発明の一具体例において、前記薬学組成物は、5分後溶出率が有効成分の総含有量の50%以上、好ましくは、60%以上でありうる。
【0035】
本発明の一具体例において、前記薬学組成物は、15分後溶出率が有効成分の総含有量の80%以上、好ましくは、80%以上でありうる。
【0036】
本発明の一具体例において、前記薬学組成物は、30分後溶出率が有効成分の総含有量の85%以上、好ましくは、90%以上でありうる。
【0037】
薬学組成物内有効成分の溶出率は、薬物投薬時に最高血中濃度(Cmax)と血中濃度-時間曲線下面積(AUC)に影響を及ぼすので、逆に言うと、適正なCmaxとAUCを具現するために、薬学組成物の溶出率を調整することは重要である。イナボグリフロジンは、1~2時間のTmaxを有するので、上記での薬物吸収率が重要であると判断される。前記溶出率は、大韓薬局方溶出試験第2法(パドル法)により溶出液1.2の条件下で測定されたものである。具体的な条件は、下記実験例を参考にすることができる。
【0038】
本発明は、また、化学式1の化合物またはその薬学的に許容される塩を含む前混合顆粒および後混合部が混合した顆粒物を含む薬学組成物を提供する。
【0039】
【化3】
【0040】
本発明者らは、化学式1の化合物の製剤化研究過程で、顆粒物を製造してこれを錠剤などで剤形化することが、薬物の含有量均一性、製剤均一性の観点から有利であることを確認した。
【0041】
前記薬学組成物において前記顆粒物は、前混合顆粒と後混合部を混合して製造される。
【0042】
前記前混合顆粒は、化学式1の化合物またはその薬学的に許容される塩、賦形剤、結合剤および滑沢剤を含んでもよい。
【0043】
また、前記後混合部は、賦形剤、崩解剤および滑沢剤を含んでもよい。
【0044】
賦形剤、結合剤、崩解剤、滑沢剤などに関する説明は、前述した内容と同一なので、重複記載を避けるために省略する。
【0045】
本発明の具体例において、前記前混合顆粒および後混合部は、それぞれ、賦形剤を含んでもよい。より具体的には、前記前混合顆粒および後混合部は、それぞれ賦形剤として微結晶セルロースを含んでもよい。
【0046】
下記実施例によれば、前記前混合顆粒および後混合部に含まれる微結晶セルロースは、その粒度および体積密度によって薬物の含有量均一性に影響を及ぼすことが把握された。
【0047】
本発明の具体例において、前記前混合顆粒内微結晶セルロースの粒度は、130um以下、好ましくは、60~130umでありうる。前記前混合顆粒内微結晶セルロースの体積密度は、0.26~0.33でありうる。前混合顆粒内微結晶セルロースの粒度および体積密度が上記のような条件であるとき、含有量均一性の偏差(SD)が低い製剤を確保することができる。前混合顆粒内微結晶セルロースの粒度が130um以下である場合には、前混合部顆粒の含有量均一性と最終顆粒の含有量均一性、製剤均一性が全部良好なレベルを示し、最終顆粒の物性を示すCarr’s index値も、良好であり、製剤の流れ性にも優れていることが確認された。他方で、前混合顆粒内微結晶セルロースの粒度が130umを超過する場合、前混合部顆粒の含有量均一性および最終顆粒の含有量均一性の全部偏差が大きくなって適しておらず、製剤均一性も良くないことが分かった。
【0048】
なお、前記後混合部内微結晶セルロースの粒度は、130um以上、好ましくは、130~250umでありうる。前記後混合部内賦形剤の体積密度は、0.28~0.37でありうる。後混合部内微結晶セルロースの粒度は、130um未満の場合、最終顆粒の物性を示すCarr’s index値が適切でなく、顆粒の流れ性が弱くなることを確認することができた。
【0049】
前混合顆粒内微結晶セルロースと後混合部内微結晶セルロースを相対的に比較してみれば、前混合顆粒内含まれる微結晶セルロースの粒度が小さいことが好ましいのに対し、後混合部の微結晶セルロースの粒度は、前混合顆粒内に含まれる微結晶セルロースの粒度に比べて相対的に大きいことが好ましいことが分かった。
【0050】
下記実施例によれば、前混合顆粒内微結晶セルロースと後混合部内微結晶セルロースの粒度だけでなく、前混合顆粒内賦形剤および後混合部内賦形剤の重量比も、薬物の含有量均一性に影響を及ぼすことが確認された。
【0051】
本発明の具体例において、前記前混合顆粒内賦形剤および後混合部内賦形剤の重量比は、4:1~1:1でありうる。後混合部の微結晶セルロースの割合が高くなるほど顆粒の流れ性に優れているのに対し、含有量偏差が高くなり、前記適正範囲の重量比を合わせることが好ましいことが把握された。
【0052】
なお、本発明による薬学組成物において前記結合剤は、ヒドロキシプロピルセルロース、ポビドン、コポビドンおよびヒプロメロースから成る群から選択される1つ以上でありうる。
【0053】
本発明の一具体例において、前記結合剤は、ヒドロキシプロピルセルロースであり、重量平均分子量が200,000未満でありうる。重量平均分子量が200,000以上のヒドロキシプロピルセルロースを用いる場合、5分溶出率と30分溶出率が全部低く、生体利用率の観点から好ましくない。
【0054】
なお、製剤化において流れ性の尺度に用いられるCarr’s indexと関連して、前記顆粒物のCarr’s indexは、21~25であることが好ましい。
【0055】
これに制限されるものではないが、本発明の薬学組成物において前記顆粒物は、乾式顆粒物でありうる。他の具体例において、前記顆粒物は、湿式顆粒物でありうる。
【0056】
本発明において、前記薬学組成物は、錠剤、カプセル剤などのような経口投与のための剤形を有していてもよい。本発明の一具体例において、前記薬学組成物は、錠剤の剤形を有するものであってもよい。
【0057】
好ましい具体例において、前記薬学組成物は、化学式1の化合物を0.3mgの用量で含んでもよい。
【0058】
本発明による薬学組成物は、1日1回経口投与することができるが、これに限定されるものではない。
【発明の効果】
【0059】
本発明による化学式1の化合物を含む薬学組成物は、低用量の薬物を含むにも関わらず、含有量均一性、製剤均一性、溶出プロファイルなどが全部優れた製剤を具現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図1図1は、実施例1、実施例2、実施例3、比較例1および比較例2で製造された錠剤の溶出率評価結果を示す(溶出液:pH1.2)。
図2図2は、実施例1、実施例2、実施例3、比較例1および比較例2で製造された錠剤の溶出率評価結果を示す(溶出液:pH4.0)。
図3図3は、実施例1、実施例2、実施例3、比較例1および比較例2で製造された錠剤の溶出率評価結果を示す(溶出液:pH6.8)。
図4図4は、実施例1、実施例2、実施例3、比較例1および比較例2で製造された錠剤の溶出率評価結果を示す(溶出液:DW)。
図5図5は、実施例1、実施例8および比較例6で製造された錠剤の溶出率評価結果を示す(溶出液:pH1.2)。
【発明を実施するための形態】
【0061】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示するが、下記実施例は、ただ本発明を例示するものであり、本発明の範囲が下記実施例に限定されるものではない。
【0062】
イナボグリフロジンの粒度による錠剤の製造
通常の方法によって様々な粒度のイナボグリフロジンを製造し、製造された原料薬物の粒度は、次のように測定した。
【0063】
粒度試験(機器:Malvern社のMastersizer 3000)
1)試験液
0.05%(v/v)Lecithin in Hexane溶液
2)検液の調製
この薬を約10.0mg取って20mLビーカーに入れた後、試験液を15mL入れる。30秒間超音波処理して完全に分散させた後、検液として用いる。
3)分析方法
検液をobscuration levelが5%~10%になるように入れた後、obscuration levelが安定化されたことを確認した後、次の条件によって測定する。
[操作条件]
Range:0.02~2000μm
Particle RI:1.59
Absorption:0.01
Dispersant RI:1.380
Obscuration Range:5~10%
Stirrer/Pump speed:3000RPM
Ultrasonic sound:off
Measurement cycle:5
【0064】
下記段階により様々な粒度のイナボグリフロジンを乾式顆粒化工程を通じて即時放出型製剤を製造した。
段階1:イナボグリフロジン0.3g、微結晶セルロース(PH-102)50.0g、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC-L)4.0g、軽質無水ケイ酸1.0g、ステアリン酸マグネシウム0.5gを混合した。
段階2:段階1の混合物を、乾式顆粒装置を用いて板状の圧縮物を製造し、コーミルを用いて粉砕して、乾式顆粒物を製造した。
段階3:段階2の前混合顆粒に後混合部としての微結晶セルロース(Vivapur12)15.7g、クロスキャメルロスナトリウム3.0g、ステアリン酸マグネシウム0.5gを入れて混合した。
段階4:段階3の混合顆粒物を総重量75.0mgとなるように圧縮成形して、錠剤を製造した。
【0065】
【表1】
【0066】
実験例1:イナボグリフロジンの粒度による錠剤の溶出試験
実施例1、実施例2、実施例3、比較例1および比較例2で製造された錠剤に対して粒度による溶出率の差異を確認するために、下記方法および条件により溶出試験を行った。
1)溶出方法:大韓薬局方の溶出第2法(パドル法)
2)溶出液:pH1.2/pH4.0/pH6.8/DW
3)溶出液量:500mL
4)溶出装置温度:37.5℃±0.5℃
5)パドル速度:50rpm
6)分析方法:HPLC法
-検出器:紫外部吸光光度計(測定波長:225nm)
-カラム:C18 5um/4.6x150mmカラム
-移動相:リン酸水素緩衝液+アセトニトリル
【0067】
その結果、4液の全部において、原料の平均粒度(Dmean)が10μm以下を用いた実施例1~3の溶出率が類似の様相を示した。イナボグリフロジンは、Tmaxが1時間内外の成分であるから、胃液内での溶出が生体利用率に大きな影響を及ぼすことが予想される。したがって、特にpH1.2での溶出率が重要であると判断し、即時放出型で製剤化することが好ましいイナボグリフロジンの特性上、実施例1~3の溶出率が適合していると判断した。具体的には、実施例2および3の全般的な溶出率が実施例1と類似しており、類似性因子値においても50%以上の同等性を示した。
【0068】
原料平均粒度が19μm以上の比較例1および比較例2の錠剤は、実施例1と比べて溶出率が低下する現象が観察され、類似性因子値も、50%未満であって、有意差を示した。したがって、イナボグリフロジンの原料の平均粒度(Dmean)を15um以下、好ましくは、実施例1~3と同様に、イナボグリフロジンの原料の平均粒度を10um以下とすることは、製品の均等な品質および体内有効性を確保することができると判断される。溶出率評価結果は、下記表2および図1~4に詳細に示した。
【0069】
【表2】
【0070】
前混合顆粒内賦形剤の粒度分布による顆粒物の製造
イナボグリフロジンの製剤化において含有量均一性および製剤均一性を確保するために、前混合顆粒および後混合部を混合した顆粒物を製造することとし、まず、前混合顆粒に最も適切な賦形剤粒度を探索した。
【0071】
上記で製造した実施例1において、前混合顆粒に用いられる微結晶セルロースの粒度と体積密度が異なるものを用いた(表4を参考)という点を除いては、前記実施例1と同様の方法で実施例4および比較例3の錠剤を製造した。
【0072】
実施例1、実施例4および比較例3の組成は、下記表3のとおりである。
【0073】
【表3】
【0074】
【表4】
【0075】
実験例2:前混合顆粒および最終顆粒の含有量均一性の評価
前記実施例1、実施例4、比較例3で製造した錠剤に対して、前混合顆粒および最終顆粒の含有量均一性を評価した結果を下記表5に示した。この際、含有量均一性の評価は、下記のような方法で行われた。
【0076】
1)含有量試験方法:測定しようとする顆粒1.5gを取って100mL用量フラスコに入れ、抽出液を50mL加えて20分間超音波抽出して完全に分散させる。その後、30分間撹拌しながら、常温に十分に冷却させ、抽出液を加えて、標線を合わせる。この液を適当量取って3000rpmで10分間遠心分離し、上澄み液を0.45μmのRCメンブレンフィルターでろ過して、最初2mLは捨てて、ろ液を検液とする。
2)抽出液:リン酸二水素カリウム1.36gを精密に秤量し、水1000mLを入れて溶かした後、リン酸でpH3.0に調節した液
3)温度条件:35℃±0.5℃維持
4)分析方法:HPLC法
-検出器:紫外部吸光光度計(測定波長:225nm)
-カラム:C18 5um/4.6x150mmカラム
-移動相:リン酸水素緩衝液+アセトニトリル
【0077】
前記方法により実施例1、実施例4および比較例3の前混合顆粒の含有量均一性および最終顆粒の含有量均一性の試験結果を表5に詳しく整理した。
【0078】
主成分イナボグリフロジンの錠剤内含有率が0.5%未満で非常に少量分布し、平均粒度サイズも小さいので、前混合顆粒部に用いられる微結晶セルロースの平均粒子サイズが主成分の顆粒および錠剤内含有量均一性に及ぼす影響が大きいと予想される。
【0079】
前混合顆粒部に用いられる微結晶セルロースの平均粒子サイズを異ならさて、含有量均一性を確認した結果、実施例1~4において全部適合していると判断した。微結晶セルロースの平均粒子サイズが180um以上の比較例3は、実施例1と比べて、顆粒および錠剤内イナボグリフロジンの含有量が顕著に不均一になることを確認した。したがって、前混合顆粒部に用いられる微結晶セルロースの平均粒子サイズ(D50)を130um以下、体積密度0.28~0.33以下(実施例1)とする場合、均等な品質を有する錠剤の製造が可能であると判断される。
【0080】
【表5】
【0081】
後混合部賦形剤の粒度分布による顆粒物の製造
前混合顆粒内賦形剤の粒度探索に続けて後混合部に最も適切な賦形剤粒度を探索した。
【0082】
前記実施例1において、後混合部に用いられる微結晶セルロースの粒度分布を下記表6のように異ならせて用いたことを除いては、前記実施例1と同様の方法で比較例4および実施例5の錠剤を製造した。
【0083】
【表6】
【0084】
実験例3:最終顆粒の含有量均一性の評価
比較例4および実施例5で製造した錠剤に対して、最終顆粒の含有量均一性を評価した結果を下記表7に示した。この際、含有量均一性の評価は、前記実験例2と同様の方法で含有量を評価した。
【0085】
前記方法による、比較例4および実施例5の後混合部顆粒の含有量均一性および最終顆粒の含有量均一性の試験の結果は、最終顆粒における含有量と製剤均一性(錠剤間の含有量均一性)が全部優れた結果を示した。しかしながら、比較例4のように、微結晶セルロース平均粒度が小さいほど顆粒の流れ性が弱くなることが確認され、これは、表7に詳しく整理した。
【0086】
【表7】
【0087】
前混合顆粒および後混合部内賦形剤の割合による顆粒物の製造
前混合顆粒および後混合部が混合した顆粒物を製造するに際して、前混合部および後混合部に最も適切な希釈剤割合を探索した。
【0088】
前記実施例1において、前混合顆粒および後混合部に用いられる微結晶セルロースの使用割合を下記表8のように異ならせて用いたことを除いては、前記実施例1と同様の方法で錠剤を製造した。
【0089】
【表8】
【0090】
実験例4:最終顆粒の流れ性および含有量均一性の評価
実施例6、実施例7および比較例5で製造した錠剤に対して、最終顆粒の流れ性および含有量均一性を評価した結果を下記表9に示した。この際、含有量均一性の評価は、前記実験例2と同様の方法で含有量を評価した。
【0091】
前記方法により実施例6、実施例7および比較例5の最終顆粒の流れ性を評価した結果、後混合部の微結晶セルロース割合が高くなるほど顆粒の流れ性が良好になることを確認することができた。含有量均一性の場合、後混合部の微結晶セルロース割合が高くなるほど含有量偏差(SD)も高くなることが分かった。これは、表9に詳しく整理した。
【0092】
【表9】
【0093】
ヒドロキシプロピルセルロースの重量平均分子量による錠剤の製造
下記表10に記載されたように、結合剤を様々な重量平均分子量のヒドロキシプロピルセルロースを用いることを除いて、前記実施例1に記載された方法と同じ方法で錠剤を製造した。
【0094】
【表10】
【0095】
実験例5:溶出試験
結合剤としてのヒドロキシプロピルセルロースの重量平均分子量による溶出率を比較するために溶出試験を評価した。溶出試験は、イナボグリフロジンの最大吸収濃度時間(Tmax)とpHによる溶解度を考慮してpH1.2を溶出液として下記のような条件で溶出試験を行った。
1)溶出方法:大韓薬局方の溶出第2法(パドル法)
2)溶出液:pH1.2
3)溶出液量:500mL
4)溶出装置の温度:37.5℃±0.5℃
5)パドル速度:50rpm
6)分析方法:HPLC法
-検出器:紫外部吸光光度計(測定波長:225nm)
-カラム:C18 5um/4.6x150mmカラム
-移動相:リン酸水素緩衝液+アセトニトリル
【0096】
その結果、結合剤であるヒドロキシプロピルセルロースの重量平均分子量が700,000と最も大きい比較例6の場合、初期溶出率が30%未満と溶出率が遅延し、30分溶出率も、85%を超えなかった。イナボグリフロジンは、Tmaxが1時間内外の成分であるから、胃液内での溶出が生体利用率に大きい影響を及ぼすと予想される。したがって、pH1.2での溶出率が重要であると判断されており、比較例6のように200,000以上の高い重量平均分子量を有するヒドロキシプロピルセルロースを用いることは、初期溶出率に及ぼす影響が大きいので、生体利用率の観点から、好ましくないと判断される。各溶出率の評価結果は、下記表11と図5に詳しく示した。
【0097】
【表11】
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】