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特表2024-533811ビタミンCの共融混合物を含む化粧料組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】ビタミンCの共融混合物を含む化粧料組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/67 20060101AFI20240905BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20240905BHJP
   A61Q 19/02 20060101ALI20240905BHJP
   A61Q 19/08 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
A61K8/67
A61K8/44
A61Q19/02
A61Q19/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519738
(86)(22)【出願日】2022-09-28
(85)【翻訳文提出日】2024-03-29
(86)【国際出願番号】 KR2022014560
(87)【国際公開番号】W WO2023055074
(87)【国際公開日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】10-2021-0129132
(32)【優先日】2021-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0100392
(32)【優先日】2022-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514112488
【氏名又は名称】エルジー・エイチアンドエイチ・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ジ・ウン・ソン
(72)【発明者】
【氏名】スン・ヒョン・ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ヒョン・ミン・ファン
(72)【発明者】
【氏名】ムン・ジュ・シン
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB032
4C083AB052
4C083AB352
4C083AC102
4C083AC122
4C083AC422
4C083AC532
4C083AC642
4C083AC711
4C083AC712
4C083AD042
4C083AD352
4C083AD641
4C083AD642
4C083BB51
4C083CC02
4C083DD27
4C083EE01
4C083EE13
4C083EE16
(57)【要約】
本発明は、ビタミンC及びベタインを含有する共融混合物(eutectic mixture)を含む化粧料組成物及びその製造方法に関するもので、ビタミンCを共融混合物の形態で含むことによって、多様な種類の溶媒に対して高い溶解度を示し、酸化安定性に優れ、皮膚透過度が高い化粧料組成物を提供することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビタミンC及びベタインを含有する共融混合物(eutectic mixture)を含むことを特徴とする、化粧料組成物。
【請求項2】
ビタミンCとベタインは、共融混合物内に1:0.1~1:10のモル比で含まれることを特徴とする、請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項3】
前記ビタミンCは、共融混合物の全体100重量部を基準として6重量部~94重量部で含まれることを特徴とする、請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項4】
前記共融混合物は、化粧料組成物の全体100重量部を基準として0.00001~80重量部で含まれることを特徴とする、請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項5】
前記共融混合物は、精製水を追加で含むことを特徴とする、請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項6】
前記化粧料組成物は、水系溶媒、非水系溶媒又はこれらの混合物を追加で含むことを特徴とする、請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項7】
前記化粧料組成物は、皮膚美白、皮膚のトーン又は色素沈着改善用であることを特徴とする、請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項8】
前記化粧料組成物は、皮膚のシワ又は弾力改善用であることを特徴とする、請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項9】
ビタミンCとベタインを混合して共融混合物(eutectic mixture)を製造する段階;及び前記共融混合物を添加して化粧料組成物を製造する段階を含むことを特徴とする、化粧料組成物の製造方法。
【請求項10】
前記共融混合物を製造する段階は、精製水を追加で添加する段階を含むことを特徴とする、請求項9に記載の化粧料組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビタミンCの共融混合物を含む化粧料組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトの皮膚色を決定するメラニンは、皮膚基底層に存在するメラニン形成細胞(Melanocyte)で作られて周辺の角質細胞に伝達されて皮膚色を示す。特に、メラニンが過剰生産される場合、色素沈着が起きてシミとクスミを形成することが知られている。代表的な皮膚美白成分として知られているビタミンCは、メラニンの生成を抑制して色素沈着を減少させるだけでなく、外部環境により誘発される活性酸素(reactive oxygen species)を還元させて老化を抑制し、コラーゲン合成を助けてシワ改善及び弾力向上にも役に立つ。
【0003】
このようなビタミンCは、水に比較的多量に溶解され得るが、速い酸化作用により分解しやすく、非水系溶媒では酸化安定性を向上させ得るが、溶解度が極めて低いという問題点がある。また、ビタミンCは、親水性で皮膚の最外郭障壁である角質層の透過が難しいので、十分な生体活性を誘導するためには多量のビタミンCが要求された。このため、医薬及び化粧品分野では主に水系基盤のビタミンC製剤を非常に短い流通期限で提供しており、酸化分解を遅延させるために低温保管する場合、ビタミンCの析出により品質問題が発生することがあり、使用者の不便をもたらすという問題点があった。
【0004】
したがって、ビタミンCの溶解度と不安定性を改善するための多くの努力と研究が行われてきた。具体的な例として、特許文献1と2では、炭素原子3個を有したグリコール(glycol)類の溶媒と析出防止剤を導入して製剤中の水の量を減らすことで、ビタミンCの酸化を遅延させ、低温での析出防止をはかった。また、特許文献3では、ビタミンCのパウダーをシリコーン系オイルに分散して安定性を向上させる方法が検討された。これら特許では、ビタミンCの安定性は一部向上されたが、溶媒選択性が制限的であり、皮膚吸収度も改善されず、一定以上の高含量では析出が現われる問題があった。また、シリコーン系オイルに分散したビタミンCは、溶液状態ではない微細粒子形態で分散されていると見られ、この形態では経皮伝達が難しく、刺激を誘発することがある。
【0005】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】JP WO2019-131892 A1
【特許文献2】JP WO2019-189742 A1
【特許文献3】US10912729B2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、ビタミンCとベタインを共融混合物の形態で製造するとき、多様な水系及び非水系溶媒に対する溶解度が顕著に増加し、低温でも析出されず安定的に維持され、ビタミンCの皮膚透過率が向上することを確認して、本発明を完成した。
【0008】
したがって、本発明の目的は、ビタミンC及びベタインを共融混合物の形態で化粧料組成物内に含むことによって、多様な溶媒条件で高い溶解度を示し、酸化安定性に優れ、皮膚透過度に優れた化粧料組成物及び医薬外品組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための手段として、
【0010】
本発明は、ビタミンC及びベタインを含有する共融混合物(eutectic mixture)を含む化粧料組成物を提供する。
【0011】
また、本発明は、ビタミンC及びベタインを混合して共融混合物(eutectic mixture)を製造する段階;及び前記共融混合物を添加して化粧料組成物を製造する段階を含む化粧料組成物の製造方法を提供する。
【0012】
本発明は、ビタミンC及びベタインを含有する共融混合物(eutectic mixture)を含む医薬外品組成物を提供する。
【0013】
また、本発明は、ビタミンC及びベタインを混合して共融混合物(eutectic mixture)を製造する段階;及び前記共融混合物を添加して医薬外品組成物を製造する段階を含む医薬外品組成物の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、ビタミンC及びベタインを共融混合物の形態で含むことによって、多様な水系及び非水系溶媒に対する溶解度を顕著に向上させ、酸化安定性に優れていると共にビタミンCを多量に含有した化粧料組成物及び医薬外品組成物を提供することができる。また、低温でもビタミンCの析出なしに安定的であり、高い皮膚透過率を示し得、ひいては皮膚美白、皮膚のトーン均一度、シワ及び弾力が改善された組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、実験例1によってアスコルビン酸:ベタインの様々なモル比でのアスコルビン酸、及びベタインで構成された共融混合物の形成有無を確認した結果である。
図2図2は、実験例2によってビタミンC、ビタミンCとベタインの単純混合物、ビタミンCとベタインの共融混合物が非水系溶媒を多量に含む組成で析出されず安定定であるか否かを比較した結果である。
図3図3は、実験例5によってビタミンC(ascorbic acid)、ベタイン(betaine)、ビタミンCとベタインの単純混合物及びビタミンCとベタインの共融混合物の赤外線スペクトラム分析結果を示した図である。
図4図4の(A)は、実験例5によってビタミンCのH NMR分析結果を示した図であり、図4の(B)は、ベタインのH NMR分析結果を示した図である。
図5図5は、実験例5によってビタミンCとベタインで形成された共融混合物のH NMR分析結果を示した図である。
図6図6は、実験例6によってビタミンCの共融混合物の皮膚明るさ及び皮膚均一度の改善率グラフを示した図である。
図7図7は、実験例6によってビタミンCの共融混合物のシワ及び弾力の改善率グラフを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を詳しく説明する。
【0017】
本発明は、多様な変更を加えることができ、様々な形態を有することができるところ、特定の実施例を例示して下記で詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の開示形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれるすべての変更、均等物乃至代替物を含むものと理解されなければならない。
【0018】
本発明は、ビタミンC及びベタインを含有する共融混合物(eutectic mixture)を含む化粧料組成物を提供する。
【0019】
本発明のように、ビタミンCとベタインが共融混合物を成すとき、水素結合によりそれぞれの融点に比べて一層低くなった融点を有することができる。本発明者らは、このような共融混合物が水系溶媒だけでなく多様な非水系溶媒あるいは水系/非水系混合溶媒で顕著に高い溶解度を有し、多様な環境でも安定的な組成物の形態を維持することができ、皮膚浸透性が良いため多量のビタミンCが皮膚を透過できるように利用され得ることを確認した。
【0020】
本発明において、「ビタミンC(vitamin C)」は、L-アスコルビン酸(l-ascorbic acid)又はアスコルビン酸(ascorbic acid)とも呼ばれ、下のような化学構造を有する。
【0021】
【化1】
【0022】
本発明において、ビタミンCと共融混合物を形成する「ベタイン(betaine、trimethylglycine)」は、砂糖大根から抽出したアミノ酸誘導体として保湿、鎮静及び消炎効果があり、下のような化学構造を有する。
【0023】
【化2】
【0024】
本発明において共融混合物は、ビタミンC及びベタインから製造され得、好ましくは、ビタミンC、ベタイン及び精製水から製造され得る。
【0025】
本発明において、共融混合物を形成するビタミンC及びベタインのモル比は、1:0.1~1:10であってもよいが、これに制限されない。具体的に、ビタミンC及びベタインのモル比は、1:0.1~1:9、1:0.1~1:8、1:0.1~1:7、1:0.1~1:6、1:0.2~1:10,1:0.2~1:9、1:0.2~1:8、1:0.2~1:7、1:0.2~1:6、1:0.25~1:10、1:0.25~1:9、1:0.25~1:8、1:0.25~1:7、1:0.25~1:6、1:0.3~1:10、1:0.3~1:9、1:0.3~1:8、1:0.3~1:7又は1:0.3~1:6であってもよく、好ましくは、ビタミンC及びベタインのモル比は、1:0.3~1:6であってもよい。ビタミンC及びベタインのモル比が前記範囲を脱する場合、共融混合物を製造しにくい場合があり得る。
【0026】
本発明において、ビタミンCとベタインの共融混合物を製造するとき、該当成分の作用基の種類や個数、該当成分の電荷などを考慮して、溶解度及び安定性に優れた共融混合物を製造することに最も適合する割合を導出することができる。
【0027】
本発明で、共融混合物内のビタミンCの含量は、共融混合物の全体100重量部を基準として、6重量部以上、10重量部以上、11重量部以上、13重量部以上、18重量部以上、19重量部以上又は23重量部以上であってもよく、94重量部以下、86重量部以下、81重量部以下、79重量部以下、76重量部以下、74重量部以下、70重量部以下、68重量部以下、64重量部以下、47重量部以下、43重量部以下又は40重量部以下であってもよい。
【0028】
より具体的に、13~94重量部、13~86重量部、13~79量部、23~94重量部、23~86重量部、23~79量部、11~81重量部、11~74重量部、11~68重量部、19~81重量部、19~74重量部、19~68重量部、10~76重量部、10~70重量部、10~64重量部、18~76重量部、18~70重量部、18~64重量部、6~47重量部、6~43重量部、6~40重量部、11~47重量部、11~43重量部又は11~40重量部であってもよい。
【0029】
本発明で、共融混合物内のベタインの含量は、共融混合物の全体100重量部を基準として、3重量部以上、5重量部以上、6重量部以上、7重量部以上、10重量部以上、11重量部以上、12重量部以上、14重量部以上、17重量部以上、18重量部以上又は21重量部以上であってもよく、87重量部以下、77重量部以下、75重量部以下、71重量部以下、67重量部以下、63重量部以下、44重量部以下又は39重量部以下であってもよい。
【0030】
より具体的に、6~77重量部、6~87重量部、14~77重量部、14~87重量部、21~77重量部、21~87重量部、5~67重量部、5~75重量部、12~67重量部、12~75重量部、18~67重量部、18~75重量部、5~63重量部、5~71重量部、11~63重量部、11~71重量部、17~63重量部、17~71重量部、3~44重量部、3~39重量部、7~44重量部、7~39重量部、10~44重量部又は10~39重量部であってもよい。
【0031】
本発明による共融混合物は、精製水を追加的に含むことができる。精製水によりビタミンC及びベタインの共融混合物の融点を減少させ得、組成物内のビタミンCを安定的に維持し得、多様な環境変化でもビタミンCの析出なしに均一で且つ安定的に性状を維持することができる。
【0032】
本発明で、共融混合物内の精製水の含量は、共融混合物の全体100重量部を基準として、0.00001重量部~50重量部、0.00001~40重量部、0.01~30重量部又は1~20重量部であってもよいが、これに制限されない。精製水の含量が前記範囲を超過する場合、共融混合物内のビタミンCの酸化安定性が落ちることがある。
【0033】
本発明による共融混合物が含有された化粧料組成物は、皮膚に塗布するとき、皮膚刺激のような不快感を改善させるためにpH3.0~7.0の値を有するように調節できる。
【0034】
pHをこのような範囲に調節するために、化粧料組成物は、水酸化カリウムやトロメタミンなどのpH調節剤を追加的に含むことができる。
【0035】
本発明において、前記共融混合物は、高含量で化粧料組成物に添加され得、常温及び冷蔵保管時にも安定的に溶解されてビタミンCの効能を維持させ得るので、製品の品質維持が可能であった。
【0036】
本発明のビタミンCの共融混合物を含む化粧料組成物でビタミンCは、化粧料組成物の全体100重量部を基準として、0.00001重量部以上、0.01重量部以上、1重量部以上、5重量部以上、8重量部以上、10重量部以上、12重量部以上、15重量部以上、18重量部以上、20重量部以上で含まれ得、65重量部以下、60重量部以下、55重量部以下、52重量部以下、50重量部以下、48重量部以下、45重量部以下、40重量部以下、35重量部以下、33重量部以下で含まれ得るが、これに制限されない。
【0037】
具体的に、ビタミンCは、化粧料組成物の全体100重量部を基準として、0.00001~65重量部、1~60重量部、5~55重量部、5~50重量部、10~45重量部、10~40重量部、15~40重量部、20~40重量部、20~35重量部の量で含まれ得る。
【0038】
本発明による化粧料組成物は、前記共融混合物を化粧料組成物の全体100重量部を基準として、0.00001~80重量部、例えば、0.001~75重量部、0.1~70重量部、又は0.5~60重量部、又は0.1~50重量部で含むことができるが、これに制限されない。前記共融混合物の含量は、化粧料組成物の剤型によって適切に調節され得る。
【0039】
本発明の化粧料組成物は、共融混合物以外に溶媒を追加で含むことができる。ここで、前記溶媒は、水系溶媒、非水系溶媒又はこれらの混合物であってもよい。
【0040】
本発明で「非水系溶媒」は、水以外の溶媒を含む溶媒を意味し得る。水以外の溶媒としては、多価アルコール、特に、エチレングリコール(ethylene glycol)、1,2-プロパンジオール(プロピレングリコール、propylene glycol)1,3-プロパンジオール(1,3-propanediol)、1,3-ブチレングリコール(1,3-butylene glycol)、ペンチレングリコール(pentylene glycol)、へキシレングリコール(hexylene glycol)、グリセリン(glycerin)、ジグリセリン(diglycerin)、ジプロピレングリコール(dipropylene glycol)及びこれらの混合物からなる群より選択される1種以上であってもよく、より具体的に、プロパンジオール、ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン及びこれら混合物からなる群より選択される1種以上であってもよい。
【0041】
本発明で、溶媒は、種類に関係なく、全体組成物の重量に対して最大90重量%まで含まれ得る。
【0042】
具体的に、本発明で溶媒は、全体組成物の重量に対して10重量%以上、15重量%以上、25重量%以上、30重量%以上、35重量%以上又は40重量%以上で含まれ得、90重量%以下、80重量%以下、70重量%以下、65重量%以下、60重量%以下又は55重量%以下で含まれ得る。より具体的に、溶媒は、全体組成物の重量に対して30~70重量%、35~70重量%、35~65重量%、40~65重量%、35~60重量%、40~60重量%、35~55重量%又は40~55重量%で含まれ得るが、これに制限されない。
【0043】
本発明の化粧料組成物が非水系溶媒を含む場合、非水系溶媒内に含まれた水以外の溶媒は、全体組成物の重量に対して10重量%以上、15重量%以上、25重量%以上、30重量%以上又は40重量%以上で含まれ得、80重量%以下、70重量%以下又は60重量%以下で含まれ得る。
【0044】
本発明で、組成物内に溶媒として水を用いる場合、水は全体組成物の重量に対して1重量%以上、10重量%以上、15重量%以上、20重量%以上又は25重量%以上で含まれ得、80重量%以下、70重量%以下、60重量%以下又は55重量%以下で含まれ得る。
【0045】
ビタミンCは、水に比較的多量に溶解され得るが、速い酸化作用により分解されやすいという問題があり、したがって、酸化安定性を向上させるために非水系溶媒を用いるか又はビタミンCを低温保管したが、非水系溶媒を使用するとき、溶解度が減少し、低温保管するとき、ビタミンCの析出が発生する恐れがあった。それによって、本発明のように、ビタミンCをベタインと共に共融混合物の形態で含む場合、酸化安定性を向上させ、常温及び低温での析出を防止し得、ひいては皮膚角質層の透過が難しいビタミンCの皮膚透過度を向上させ得る。
【0046】
本発明で「酸化安定性」は、i)ビタミンCが光、熱、水又は組成内の他の成分による分解を防止することであって、具体的には、水又は熱による分解を防止することを意味する。特に、本発明で、酸化的に安定した場合は、30~60℃で4週間保管したとき、ビタミンCの濃度が初期濃度に比べて、例えば、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、87%以上、88%以上、89%以上又は90%以上維持されることを意味し得る。より具体的に、本発明で酸化的に安定した場合は、40~50℃で4週間保管したとき、初期濃度に比べて85%以上、86%以上、87%以上、88%以上、89%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上維持されることを意味し得る。
【0047】
本発明で「低温析出」は、溶解されていた成分が低温で1週間保管時に析出されることを意味し得、ここで、低温は、10℃以下、8℃以下、6℃以下、4℃以下、2℃以下、0℃以下であってもよく、具体的に、5℃以下、4℃以下、3℃以下であってもよい。
【0048】
また、本発明は、前記共融混合物を含む皮膚美白、皮膚のトーン改善又は色素沈着改善用化粧料組成物を提供することができる。
【0049】
また、本発明は、前記共融混合物を含む皮膚のシワ又は弾力改善用化粧料組成物を提供することができる。
【0050】
他の様態として、本発明は、ビタミンC及びベタインを含有する共融混合物を含む化粧料組成物を皮膚に塗布又は投与する段階を含む皮膚の美白方法、皮膚のトーン改善方法又は色素沈着改善方法を提供する。
【0051】
他の様態として、本発明は、ビタミンC及びベタインを含有する共融混合物を含む化粧料組成物を皮膚に塗布又は投与する段階を含む皮膚のシワ改善方法又は皮膚の弾力改善方法を提供する。
【0052】
他の様態として、本発明は、皮膚美白、皮膚のトーン改善又は色素沈着改善用化粧料組成物の製造のためのビタミンC及びベタインを含有する共融混合物の用途を提供する。
【0053】
他の様態として、本発明は、皮膚のシワ又は皮膚の弾力改善用化粧料組成物の製造のためのビタミンC及びベタインを含有する共融混合物の用途を提供する。ここで、「皮膚美白」、「皮膚のトーン改善」及び「色素沈着改善」は、全てメラニン色素の沈着を防止、シミやくすみなどの生成を抑制又は皮膚のトーンを明るくするようにするなどの全ての作用を意味する。
【0054】
また、「皮膚のシワ改善」は皮膚にシワが生成されることを抑制するか生成されたシワを緩和させることを意味し、「皮膚の弾力改善」は、皮膚がたるむか垂れる程度を緩和させることを意味する。
【0055】
本発明のように、ビタミンCを共融混合物の形態で含む場合、ビタミンCの酸化安定性及び皮膚透過度以外にも、皮膚美白、皮膚のシワ又は弾力改善のように化粧学的に有効な効果を改善することができる。
【0056】
本発明の化粧料組成物は、通常の化粧品に使用可能な全ての種類の成分、例えば、グリセリン、ブチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキサンジオール、メチルグルセス-20、ジグリセリン、エチルヘキシルグリセリンのような保湿剤;メトキシケイ皮酸エチルヘキシル、エチルヘキシルサリチラート、エチルヘキシルトリアゾン、オクトクリレン、ビス-エチルヘキシルオキシフェノルメトキシフェニルトリアジンのような紫外線遮断剤;トリエタノールアミンのようなpH調節剤;カルボマー、キサンタンガム、アクリレート/C10-30アルキルアクリレートクロスポリマー、ヒアルロン酸のような漸増剤;フェノキシエタノール、メチルパラベン、プロピルパラベンのような防腐剤;BHT、エチルアスコビルエテル、アスコルビン酸のような酸化防止剤;βグルカンのような皮膚コンディショニング剤;セテアリルグルコシド、ソルビタンステアレートのような界面活性剤;香料又は色素を追加で含むことができ、その成分に制限はない。
【0057】
本発明による化粧料組成物は、当業界において通常的に製造されるいかなる剤型でも製造され得る。例えば、前記化粧料組成物は、柔軟化粧水又は栄養化粧水などのような化粧水、スプレータイプの化粧水、フェイショルローション、ボディローションなどのような乳液、栄養クリーム、水分クリーム、アイクリームなどのようなクリーム、ステッキ、エッセンス、化粧軟膏、スプレー、ゲル、パック、サンスクリーン、メーキャップベース、液体タイプ又はスプレータイプなどのファウンデーション、パウダー、クレンジングローション、クレンジングオイルのようなメーキャップ除去剤、クレンジングフォーム、石鹸、ボディウォッシュなどのような洗浄剤などの剤型を有することができるが、これに制限されるものではない。
【0058】
一具体例で、前記化粧料組成物の剤型は、バーム(balm)、油中水型(W/O)、水中型(O/W)、可溶化剤型又はオイル剤型であってもよい。
【0059】
また、本発明は、前記化粧料組成物の製造方法を提供する。
【0060】
具体的に、ビタミンC及びベタインを混合して共融混合物を製造する段階;及び前記共融混合物を含む化粧料組成物を製造する段階を含む。
【0061】
前記共融混合物を製造する段階は、精製水を追加で添加する段階を含むことができる。
【0062】
前記製造方法において、ビタミンC、ベタイン及び精製水、共融混合物及び化粧料組成物は、上述した内容をそのまま適用することができる。
【0063】
また、前記共融混合物を製造する段階は、ビタミンC及びベタインを混合する段階;及び混合物を100~5000rpm及び45~95℃の温度条件で撹拌する段階;を含むことができる。
【0064】
ここで、前記撹拌する段階は、共融混合物を成す成分が均質となるまで撹拌する段階であってもよい。より好ましくは、共融混合物が均質となったことを確認した後、0.5~2分間さらに撹拌する段階であってもよい。
【0065】
また、共融混合物が均質となったことを確認するための方法としては、
i)各成分の溶解度以上に溶解された過溶融溶液である共融混合物を黒色背景の前に置いて光を照射して確認したとき、沈殿物なしに透明な混合物が形成されるかを確認する方法、及び
ii)共融混合物の形成時に各成分の融点より低い温度で単一融点を形成するので、DSC(Differential scanning calorimetry)器機を利用して融点を確認する方法を利用することができる。
【0066】
前記化粧料組成物を製造する段階は、化粧料剤型を製造するための成分と混合する段階を含むことができる。前記成分は、化粧料剤型に通常添加される成分であれば、制限されない。
【0067】
また、本発明は、ビタミンC及びベタインを含有する共融混合物(eutecticmixture)を含む医薬外品組成物を提供する。
【0068】
本発明による医薬外品組成物において、ビタミンC、ベタイン、共融混合物、これらの含量などは、全て化粧料組成物で記述した内容をそのまま適用することができる。
【0069】
また、本発明は、前記共融混合物を含む皮膚美白、皮膚のトーン改善又は色素沈着改善用医薬外品組成物を提供することができる。
【0070】
また、本発明は、前記共融混合物を含む皮膚のシワ又は弾力改善用医薬外品組成物を提供することができる。
【0071】
他の様態として、本発明は、ビタミンC及びベタインを含有する共融混合物を含む医薬外品組成物を皮膚に塗布又は投与する段階を含む皮膚の美白方法、皮膚のトーン改善方法又は色素沈着改善方法を提供する。
【0072】
他の様態として、本発明は、ビタミンC及びベタインを含有する共融混合物を含む医薬外品組成物を皮膚に塗布又は投与する段階を含む皮膚のシワ改善方法又は皮膚の弾力改善方法を提供する。
【0073】
他の様態として、本発明は、皮膚美白、皮膚のトーン改善又は色素沈着改善用医薬外品組成物の製造のためのビタミンC及びベタインを含有する共融混合物の用途を提供する。
【0074】
他の様態として、本発明は、皮膚のシワ又は皮膚の弾力改善用医薬外品組成物の製造のためのビタミンC及びベタインを含有する共融混合物の用途を提供する。
【0075】
また、本発明は、前記医薬外品組成物の製造方法を提供する。
【0076】
具体的に、ビタミンC及びベタインを混合して共融混合物を製造する段階;及び前記共融混合物を含む医薬外品組成物を製造する段階を含む。
【0077】
前記医薬外品組成物の製造方法において、ビタミンC、ベタイン及び精製水、共融混合物及び医薬外品組成物は、上述した内容をそのまま適用することができる。
【0078】
本発明による化粧料組成物及び医薬外品組成物に含まれる前記言及された成分それぞれは、好ましくは、各国の政府により規定された「化粧品使用許可」と係わる規定に明示された最大使用量を超過しない範囲内で本発明の化粧料組成物及び医薬外品組成物に含まれ得る。
【0079】
以下、本発明を下記実験例により詳しく説明する、ただし、下記実験例は、本発明を例示するものに過ぎず、本発明の内容が下記実験例によって制限されるものではない。また、これら実験例は、本発明に対する理解を助けることを目的とするものに過ぎないので、どのような意味でも本発明の範囲がこれらによって制限されるものではない。
【0080】
<実施例>
【0081】
実験例1.ビタミンCを含む共融混合物の常温及び低温安定性の確認
【0082】
共融混合物を構成する成分としてアスコルビン酸とベタインを表1及び2のモル割合によって準備し、精製水は、共融混合物の総重量に対して精製水の含量が14wt%となるように添加した。表1及び2による成分を80℃で500rpmで5分間撹拌して液体状態の共融混合物の形成が確認されると、加温を止めて自然冷却した。
【0083】
共融混合物の安定性を評価するために、製造された共融混合物を常温及び低温(4℃)でそれぞれ1週間保管して析出が発生せず安定的に共融混合物の形態が維持されるかを確認した。アスコルビン酸とベタインのモル比とこれらの安定性を比較した結果は、下記表1及び表2と図1に示した。
【0084】
<共融混合物の安定性評価基準>
X:析出なし
O:析出発生
【0085】
【表1】
【0086】
【表2】
【0087】
前記表1及び2に示したように、アスコルビン酸とベタインの共融混合物は、常温で1週間保管しても析出なしに安定的であり、図4で、1週間保管しても析出されないので、低温でも安定的であることを確認することができる。
【0088】
実験例2.ビタミンCの共融混合物を含む組成物の安定性評価
【0089】
下記表3のような組成及び含量で実施例及び比較例の組成物を製造した。
【0090】
まず、実施例の組成物は、前記実験例1によって製造例2の共融混合物を形成した後、表3の残りの成分を全て投入して追加で5分間撹拌した後に自然冷却して製造した。比較例の組成物は、下記表3の成分を全て投入して5分間撹拌した後に自然冷却して製造した。
【0091】
組成物の安定性は、前記実験例1と同一の方式で評価した。具体的に、製造された実施例及び比較例の組成物を4℃で1週間保管するとき、析出が発生するか否かを確認した。
【0092】
【表3】
【0093】
表3に示したように、アスコルビン酸のみ含む比較例1やアスコルビン酸及びベタインを共融混合物の形態ではなく単純に混合させた比較例2は、全て低温で析出されてビタミンCが安定的に溶解されなかった。
【0094】
しかし、ビタミンCとベタインを共融混合物の形態で含む実施例1~4は、全て低温で析出なしに安定的に溶解されたことを確認することができる。
【0095】
特に、従来には、溶媒としてポリオールを多量に含む組成物で、ビタミンCは、低い溶解度を有するので、低温で保管時に析出される問題があったが、ビタミンCを共融混合物の形態で含む場合、実施例1~4から確認できるように、ポリオール(プロパンジオール、ブチレングリコール、ジプロピレングリコール又はグリセリン)を含む組成物でも低温で析出されず安定的に溶解された。
【0096】
実験例3.皮膚透過効果の確認
【0097】
共融混合物の皮膚透過向上効果を確認するために、ビタミンCを共融混合物の形態で含む実施例の組成物と単純混合物の形態で含む比較例の組成物を製造した。
【0098】
ここで、単純混合物と共融混合物内のビタミンCの含量を同一に設定するために、共融混合物内のビタミンCの濃度を計算して適切な含量の共融混合物を添加した。共融混合物としては、実験例1で製造した製造例3の共融混合物を用い、これを下記表4の組成による成分と混合して常温(25度)で500rpmで5分間撹拌して製造した。
【0099】
製造された実施例の組成物及び比較例の組成物に対して下記のような方法で皮膚透過度を確認した。
【0100】
<皮膚透過度の測定>
【0101】
Receptorが2.5mLのphosphate-buffered saline(PBS、pH7.4、Gibco)で満たされたフランツセルに角質、表皮及び一部の真皮で構成されたブタ皮膚(面積:2.5c×2.5cm、厚さ:1mm、APURES Co.、Ltd.)を装着した。組成物をそれぞれ100μLずつ準備し、均一な面積のブタ皮膚に塗布した後、37℃の温度と50%湿度条件で8時間の間放置した。その後、吸収されない溶液を除去し、皮膚及びreceptorへのビタミンC透過量を分析した。まず、角質層に吸収されたビタミンCの量を定量するために、角質採取用ストリッピングテープ(D-squame、CuDerm)をブタ皮膚の表面に付け、D-squame pressure applicator(CuDerm)で10秒間押してから剥がして1.5mLチューブに入れ、この過程を同じ皮膚部位に2回さらに繰り返し行った。各チューブに1mLのPBS溶液を入れて採取された角質に吸収されたビタミンCを溶出した。残ったブタ皮膚(表皮及び真皮一部)は、細かく割ってPBS溶液(1mL)に入れた後、組織破砕機で均質化して皮膚内に吸収されたビタミンCを溶出した。角質、表皮、真皮及びReceptorに透過したビタミンCの量を測定するために、Megazyme社のAscorbic Acid Assay Kit(K-ASCO)を利用した。これは、l-ascorbic acidがMTT(3-(4,5-dimethylthiazolyl-2)-2,5-diphenyltetrazolium bromide)を還元させてMTT-formazanが形成されながら578nm波長での吸光度がl-ascorbic acidの量に定量的に比例して増加する原理を利用する。したがって、ビタミンCの皮膚透過量は、角質、表皮、真皮及びreceptorで測定されたビタミンC量を全て合わせて計算された。
【0102】
【表4】
【0103】
表4に示したように、同一のビタミンCの含量で、共融混合物の形態でビタミンCを含む実施例5~7がビタミンCを単純混合させた比較例3及び4に比べてビタミンCが皮膚内に遥かに多くの量で伝達されたことを確認することができる。
【0104】
一方、前記実施例5~7及び比較例3及び4の組成物と同一の方式で、下記表5の組成によって実施例8及び比較例5及び6の組成物を製造し、それの皮膚透過度を確認した。
【0105】
ここで、共融混合物としては、実験例1で製造した製造例2の共融混合物を用い、これをグリセリンに添加及び常温撹拌して実施例8の組成物を製造した。比較例5及び6の組成物は、下記表5の組成による成分をグリセリンに投入して常温(25度)で500rpmで5分間撹拌して製造した。
【0106】
【表5】
【0107】
表5に示したように、製造例2の共融混合物を含む実施例8がビタミンCを単純混合させた比較例5及び6に比べてビタミンCが皮膚内に遥かに多くの量で伝達されたことを確認することができる。
【0108】
したがって、ビタミンCをベタインと単純に共に使用するだけではは(比較例5)、共融混合物として製造して含むものと同一の効果を得ることができず、共融混合物の形態で含むことで高い皮膚透過量を示すことが分かる。
【0109】
実験例4.ビタミンCの力価維持評価
【0110】
下記表6の組成でビタミンCの共融混合物又は単純ビタミンCを高濃度で含む化粧料組成物を製造した。具体的に、実験例1で製造した製造例3の共融混合物を下記表6の組成による成分と混合して実施例9の組成物を製造した。比較例の組成物の場合、単純ビタミンCの形態で、水を含まずに製造して非水系組成物で製造した。製造された実施例と比較例の組成物に対して高温でのビタミンCの安定性を比較した。
【0111】
【表6】
【0112】
ビタミンCを共融混合物の形態で含む化粧料組成物でビタミンCの高温安定性を確認するために、前記実施例9及び比較例7の組成物を40℃と50℃で4週間保管した後、ビタミンCの力価を確認し、その結果を表7に示した。
【0113】
【表7】
【0114】
前記表7に示したように、ビタミンCを共融混合物の形態で含む実施例9の組成物は、ビタミンCが容易に酸化する環境である水を多量に含む組成にもかかわらず、非水系組成物である比較例7に比べてビタミンCが分解されず組成物内でより安定的に維持されたことを確認することができた。
【0115】
実験例5.ビタミンC-ベタイン共融混合物の構造の確認
【0116】
本実験では、表1の製造例2の共融混合物に対する具体的な構造を確認するために、赤外線スペクトラム分析及びNMR分析を実施した。
【0117】
1)赤外線スペクトラム分析
アスコルビン酸-ベタイン共融混合物の形成及び相互作用は、赤外線分光法(infrared spectroscopy)を測定して確認できる。共融混合物の形成は、水素結合に依存することが知られており、赤外線分光法で結合長さの変化と水素結合に該当する振動で水素結合を説明することができる。共融混合物との比較のために、共融混合物と同一の組成の単純混合物(physical mixture)も一緒に測定した。単純混合物は、表1のアスコルビン酸-ベタイン共融混合物(モル比2:1)と同一の組成の物質を常温(25度)で500rpmで5分間撹拌して十分に均一に混ざったことを確認して製造した。また、参照データとしてアスコルビン酸-ベタイン水溶液それぞれの赤外線スペクトラムを測定して比較した。まず、図3の(A)の赤外線スペクトラムでアスコルビン酸の特徴的なC=C及びC=Oの伸縮振動に該当するバンドがそれぞれ1679cm-1と1758cm-1で確認された。一方、ベタインの赤外線スペクトラムでは、1621cm-1と1399cm-1でそれぞれカルボン酸基(COO-)とC-Nの伸縮振動に該当する特徴的なバンドが観察された。図3の(A)と(B)では、1000-2000cm-1と2000-4000cm-1の波数領域で測定した共融混合物及び単純混合物の赤外線スペクトラムを示す。単純混合物と共融混合物のスペクトラムは、アスコルビン酸とベタインが重なっている形態であるが、単純混合物に比べて共融混合物ではいくつかの振動バンドの移動が確認された。図3の(A)から分かるように、ベタインのCOO-振動バンドが1623cm-1(単純混合物)から1603cm-1にred shiftした。このようなred shift現象は、分子内の結合長さが増加したことであって、アスコルビン酸とベタインの間の物理的結合が形成されたことを意味する。それだけでなく、図3の(B)で、単純混合物で現われるアスコルビン酸の鋭い(sharp)O-H伸縮振動ピーク(3212、3311、3406、3523cm-1)がピーク幅が非常に広くなった一つのバンド(3260-3356cm-1)で現われた。このように、バンドが広くなり、また共融混合物が形成されるとき、純粋なアスコルビン酸とベタインの間に多くの水素結合が形成されたことを示す。
【0118】
2)NMR分析

アスコルビン酸とベタインの間の相互作用を追加で検証するために、アスコルビン酸、ベタイン及びアスコルビン酸-ベタイン共融混合物のH核磁気共鳴分光分析(nuclear magnetic resonance spectroscopy、NMR)を行った。
【0119】
図4に示したように、共融混合物を形成したときにもアスコルビン酸及びベタインに該当するchemical shiftが相変らず存在し、これは共融混合物が形成されるとき、化学的反応が関与せず、物理的な相互作用のみ適用されることを示唆する。したがって、共融混合物を構成する物質の間に形成された水素結合によりアスコルビン酸とベタインに存在するprotonの電子密度が変化し、その結果、chemical shiftの移動が現われた。
【0120】
特に、アスコルビン酸のラクトン(lactone)リング構造で4Cに連結されたproton peak(4.958-4.955ppm)の場合、upfield shiftが現われ、図5に示したように、
【0121】
アスコルビン酸の割合が増加するに従ってより大きいshiftが観察された(アスコルビン酸:ベタインのモル比は、それぞれ図5の(A)は、1:1、(B)は、1.5:1、及び(C)は、2:1であり、アスコルビン酸:ベタイン=1:1モル比では、4.894-4.890ppm、1.5:1では、4.857-4.854ppm、2:1では、4.812-4.808ppmに移動した)。このようなupfield shiftは、分子間の相互作用によりproton周辺の電子密度が増加したことを示し、アスコルビン酸とベタインの間の水素結合の形成を立証できる。
【0122】
実験例6.皮膚美白、皮膚のトーン均一度、シワ及び弾力改善効果の評価
【0123】
20~30代の女性被験者10人に、前記実験例1で製造した製造例2の共融混合物を含むアンプル(ビタミンC 23%)を毎晩1回ずつ顔の全面皮膚に4週間塗布するようにした後、4週間皮膚明るさ、皮膚のトーン均一度、皮膚のシワ及び弾力程度を測定して皮膚改善効果を確認した。アンプルの組成及び含量は、下記表8の通りである。
【0124】
【表8】
【0125】
全ての測定は、恒温恒湿環境で20分間被験者の皮膚適応を通じて同一の皮膚条件を達成した後に行った。
【0126】
皮膚の明るさは、Chroma meter CR-400器機を利用して顔面の同一部位の明るさであるL値をアンプル使用前(0週)とアンプル使用2週及び4週後にそれぞれ測定した。
【0127】
皮膚のトーン均一度及びシワは、Antera 3D(登録商標)CS(Miravex)器機を利用した。皮膚のトーン均一度は、同一の頬部位で皮膚の均一度(uniformity)値をアンプル使用2週及び4週後に測定し、皮膚のトーン均一度の改善率は、アンプルの使用前の均一度値を基準として使用後の均一度が増加した程度を計算した値である。
【0128】
シワ改善率は、ほうれい線部位のAntera 3D測定値(indentation index)の0週次値に対する2週及び4週のシワ(indentation indexの減少度で計算した値である。皮膚弾力は、Cutometer(登録商標)MPA580(Courage and Kazama Electronic GmbH)器機を利用して実験が始まる前と、アンプル使用2週及び4週後の同一の頬部位で皮膚の弾力度(R5,net elasticity)を測定した。皮膚の弾力改善率は、アンプルの使用前のR5値に対するアンプル使用後のR5値の増加程度を計算した値である。前記測定結果をそれぞれ図6及び7に示した。
【0129】
図6及び7に示したように、ビタミンCの共融混合物を皮膚に塗布する場合、皮膚美白、皮膚のトーン均一度、皮膚のシワ及び弾力において改善された効果を示すことが分かる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】