IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ブンゲ・ローデルス・クロックラーン・ベー・フェーの特許一覧

特表2024-533853エマルション及びリン脂質組成物の使用
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】エマルション及びリン脂質組成物の使用
(51)【国際特許分類】
   A23D 7/01 20060101AFI20240905BHJP
   A23C 9/00 20060101ALI20240905BHJP
【FI】
A23D7/01
A23C9/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024521161
(86)(22)【出願日】2022-10-07
(85)【翻訳文提出日】2024-04-08
(86)【国際出願番号】 EP2022077895
(87)【国際公開番号】W WO2023057609
(87)【国際公開日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】21201666.1
(32)【優先日】2021-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520372869
【氏名又は名称】ブンゲ・ローデルス・クロックラーン・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】バスティアーン・イェルン・フィクトル・フェルキュイル
(72)【発明者】
【氏名】アラン・ルイス・ケリー
(72)【発明者】
【氏名】パトリツィア・イレナ・ザクリス-ワリワンダー
【テーマコード(参考)】
4B026
【Fターム(参考)】
4B026DC06
4B026DG20
4B026DK05
4B026DL03
4B026DL08
4B026DP01
4B026DP03
4B026DX04
(57)【要約】
本発明は、OPOトリグリセリドを含有するエマルションにおける乳化剤としての植物由来のリン脂質組成物の使用に関し、リン脂質組成物は、組成物中の極性脂質の総量に基づいて、最大0.70のホスファチジルエタノールアミン(PE)対ホスファチジルイノシトール(PI)の重量比を有する。本発明は、安定化したエマルション、並びに安定化したエマルションを含有する乳児用調製粉乳及び幼児用調製粉乳にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
OPOトリグリセリドを含有するエマルションにおける、乳化剤としての植物由来のリン脂質組成物の使用であって、前記リン脂質組成物は、前記組成物中の極性脂質の総量に基づいて、最大0.70のホスファチジルエタノールアミン(PE)対ホスファチジルイノシトール(PI)の重量比を有する、使用。
【請求項2】
OPOトリグリセリドと植物由来のリン脂質組成物とを含む、エマルションであって、前記リン脂質組成物は、前記組成物中の極性脂質の総量に基づいて、最大0.70のホスファチジルエタノールアミン(PE)対ホスファチジルイノシトール(PI)の重量比を有する、エマルション。
【請求項3】
前記植物由来のリン脂質組成物は、前記組成物中の極性脂質の総量に基づいて、最大0.60、好ましくは0.10~0.55、より好ましくは0.20~0.50のホスファチジルエタノールアミン(PE)対ホスファチジルイノシトール(PI)の重量比を有する、請求項1に記載の使用又は請求項2に記載のエマルション。
【請求項4】
前記植物由来のリン脂質組成物は、前記組成物中の極性脂質の総量に基づいて、10重量%~50重量%、好ましくは20重量%~45重量%、より好ましくは25重量%~40重量%のホスファチジルコリン(PC)含有量を有する、請求項1もしくは請求項3に記載の使用、又は請求項2もしくは請求項3に記載のエマルション。
【請求項5】
前記植物由来のリン脂質組成物は、前記組成物中の極性脂質の総量に基づいて、最大30重量%、好ましくは5重量%~25重量%、より好ましくは10重量%~18重量%のホスファチジルエタノールアミン(PE)含有量を有する、請求項1、3及び4のいずれか一項に記載の使用、又は請求項2~4のいずれか一項に記載のエマルション。
【請求項6】
前記植物由来のリン脂質組成物は、前記組成物中の極性脂質の総量に基づいて、最大10重量%、好ましくは最大5重量%、より好ましくは最大3重量%のホスファチジルセリン(PS)含有量を有する、請求項1及び3~5のいずれか一項に記載の使用、又は請求項2~5のいずれか一項に記載のエマルション。
【請求項7】
前記植物由来のリン脂質組成物は、前記組成物中の極性脂質の総量に基づいて、10重量%~50重量%、好ましくは20重量%~40重量%、より好ましくは26重量%~35重量%のホスファチジルイノシトール(PI)含有量を有する、請求項1及び3~6のいずれか一項に記載の使用、又は請求項2~6のいずれか一項に記載のエマルション。
【請求項8】
前記植物由来のリン脂質組成物は、前記組成物中の極性脂質の総量に基づいて、最大15重量%、好ましくは最大12重量%、より好ましくは8重量%~11重量%のホスファチジン酸(PA)含有量を有する、請求項1及び3~7のいずれか一項に記載の使用、又は請求項2~7のいずれか一項に記載のエマルション。
【請求項9】
前記植物由来のリン脂質組成物は、前記組成物中の極性脂質の総量に基づいて、最大3重量%、好ましくは最大2重量%、より好ましくは最大1重量%のスフィンゴミエリン(SM)含有量を有する、請求項1及び3~8のいずれか一項に記載の使用、又は請求項2~8のいずれか一項に記載のエマルション。
【請求項10】
前記植物由来のリン脂質組成物は、ヒマワリ由来のレシチンである、請求項1及び3~9のいずれか一項に記載の使用、又は請求項2~9のいずれか一項に記載のエマルション。
【請求項11】
前記エマルションは、前記エマルションの総重量に基づいて、0.10重量%~1.00重量%、好ましくは0.15重量%~0.80重量%、より好ましくは0.20重量%~0.70重量%の前記植物由来のリン脂質組成物を含む、請求項1及び3~10のいずれか一項に記載の使用、又は請求項2~10のいずれか一項に記載のエマルション。
【請求項12】
前記エマルションは、前記エマルションの総重量に基づいて、最大40重量%、好ましくは1重量%~25重量%、より好ましくは3重量%~15重量%の油を含む、請求項1及び3~11のいずれか一項に記載の使用、又は請求項2~11のいずれか一項に記載のエマルション。
【請求項13】
前記エマルションは、前記エマルションの総重量に基づいて、30重量%~95重量%、好ましくは40重量%~90重量%、より好ましくは50重量%~88重量%の水を含む、請求項1及び3~12のいずれか一項に記載の使用、又は請求項2~12のいずれか一項に記載のエマルション。
【請求項14】
前記エマルションに使用される前記油は、
前記トリグリセリドの総重量に基づいて、10重量%~70重量%、好ましくは15重量%~65重量%、より好ましくは18重量%~50重量%の炭素数52を有するトリグリセリド、
アシル基として存在する脂肪酸の総重量に基づいて、5重量%~50重量%、好ましくは10重量%~42重量%、より好ましくは15重量%~40重量%のパルミチン酸アシル基を含み、
前記トリグリセリド中にアシル基として存在するパルミチン酸の総重量に基づいて、前記パルミチン酸アシル基の少なくとも40重量%、好ましくは少なくとも42%、より好ましくは少なくとも45%が前記トリグリセリドのSn2位置に存在する、請求項1及び3~13のいずれか一項に記載の使用、又は請求項2~13のいずれか一項に記載のエマルション。
【請求項15】
前記エマルションは、2:1~7:1、好ましくは3:1~6.5:1、より好ましくは3.5:1~6:1のタンパク質対植物由来のリン脂質組成物の重量比を有する、請求項1及び3~13のいずれか一項に記載の使用、又は請求項2~13のいずれか一項に記載のエマルション。
【請求項16】
請求項2~15のいずれか一項に記載のエマルションを含む乳児用調製粉乳又は幼児用調製粉乳。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、OPOトリグリセリドを含有するエマルションにおける乳化剤としての植物由来のリン脂質組成物の使用に関する。本発明は、エマルション、並びに安定化したエマルションを含有する乳児用調製粉乳及び幼児用調製粉乳にも関する。
【背景技術】
【0002】
油と脂は食品の重要な成分であり、食品業界で広く使用される。ヒト乳脂肪に含まれる主要な脂肪酸を同量含有する脂肪組成物は、植物由来の油及び脂肪に由来する可能性がある。ただし、ヒト乳脂肪と植物油又は脂肪由来の脂肪組成物の間には、組成に大きな違いが残っている。
【0003】
ある特定のトリグリセリドは栄養的に重要である。例えば、トリグリセリド1,3-ジオレオイル-2-パルミトイルグリセロール(OPO)は、ヒト乳脂肪の重要な成分であることが知られている。これらのトリグリセリドは、特に組成物中で栄養バランスが取れている場合、食事に重要な影響を与えると考えられている。ヒト乳脂肪の化学的及び/又は物理的特性によく一致するこれらのトリグリセリドを得るには、グリセリド位置(1,3-又は2-)上の脂肪酸残基の分布を制御する必要がある。
【0004】
乳児用調製粉乳は、脂質、タンパク質、炭水化物、水、及び追加の微量成分で構成される。これらの成分は、疎水性又は親水性が著しく異なる。これらは、強い疎水性(脂質)、両親媒性(タンパク質)から親水性(水、炭水化物)、及び上記全て(微量成分)まで多岐にわたる。これらの成分の相分離を回避するために、成分は通常、乳製品製造所及び乳児用調製粉乳産業で使用される標準的な機器であるホモジナイザーを使用して乳化される。
【0005】
ヒト母乳によく似た安定した乳児用調製粉乳エマルションは、最終的に乳児の発育に利益をもたらす栄養素の最適な生物学的利用能を提供するために非常に重要である。
【0006】
CN112385845Aは、乳脂肪リン脂質と植物リン脂質の組み合わせを使用することによる、乳児用調製粉乳用のOPOトリグリセリドが豊富な構造化エマルションを開示する。
【0007】
CN112205475Aも同様に、大豆レシチン及び牛乳スフィンゴミエリンを使用することによる乳児用調製粉乳用のOPOトリグリセリドを含まない植物油の構造化エマルションを開示する。
【0008】
ただし、OPOトリグリセリドを含有するエマルションの安定性を改善するために単純な植物由来のリン脂質組成物を使用することについては開示されない。また、そのような安定化したエマルション、あるいはその安定化したエマルションを含有する乳児用調製粉乳及び幼児用調製粉乳についても開示されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】CN112385845A
【特許文献2】CN112205475A
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Detloff T、Sobisch T、Lerche D(2013)Instability index.Dispersion Letters Technical T4 1-4,ISBN:978-3-944261-29-4
【非特許文献2】Becker,C.C.et al.(1993)Lipids,28,147-149
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
OPOトリグリセリドなどのヒト乳脂肪を模倣するトリグリセリドを含有するエマルションの安定性を改善し、エマルションがよりヒト母乳によく似るようにし、それによって栄養素の最適な生物学的利用能を提供するための、適切かつ単純なリン脂質組成物の必要性が依然として存在する。また、製造プロセス全体にわたって所望の安定性を有するエマルションも必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、OPOトリグリセリドを含有するエマルションにおける乳化剤としての植物由来のリン脂質組成物の使用が提供され、リン脂質組成物は、組成物中の極性脂質の総量に基づいて、最大0.70のホスファチジルエタノールアミン(PE)対ホスファチジルイノシトール(PI)の重量比を有する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
OPOトリグリセリドと植物由来のリン脂質組成物とを含む、エマルションが提供され、リン脂質組成物は、組成物中の極性脂質の総量に基づいて、最大0.70のホスファチジルエタノールアミン(PE)対ホスファチジルイノシトール(PI)の重量比を有する。
【0014】
OPOトリグリセリドを含有するエマルションの安定性を向上させる方法も提供され、該方法は、植物由来のリン脂質組成物をエマルションに加えるステップを含み、リン脂質組成物は、組成物中の極性脂質の総量に基づいて、最大0.70のホスファチジルエタノールアミン(PE)対ホスファチジルイノシトール(PI)の重量比を有する。
【0015】
驚くべきことに、ホスファチジルエタノールアミン(PE)とホスファチジルイノシトール(PI)を必要な重量比で含む単純な植物由来のリン脂質組成物を使用することにより、エマルションは、特に望ましい脂肪球構造の結果として、製造プロセス中及び製造プロセス後の安定性が向上すると考えられる。このような安定したエマルションは、乳児用調製粉乳又は幼児用調製粉乳に特に適している。本発明によるエマルションは、特に、好ましくは、乳児用調製粉乳又は幼児用調製粉乳の製造中に噴霧乾燥する前に使用される。
【0016】
「植物由来のリン脂質組成物」という用語は、任意の植物源に由来するリン脂質組成物を指す。植物由来のリン脂質組成物は、例えば、ヒマワリ、大豆、菜種由来のレシチンなどを含む。典型的には、植物由来のリン脂質組成物は、少なくとも30重量%の極性脂質、好ましくは少なくとも40重量%の極性脂質、より好ましくは少なくとも50重量%の極性脂質を含み得る。
【0017】
「乳化剤」という用語は、エマルションの相分離傾向を減少させることによってエマルションの安定性を改善する成分を指す。理論に束縛されることを望むものではないが、本発明で使用される乳化剤は、エマルション中で衝突する液滴の合一の可能性を減らすエネルギー障壁を提供するために、液滴表面をコーティングする機能性組成物として作用すると考えられる。エマルションに乳化剤を加えると、不安定性指数が低下する可能性がある。
【0018】
不安定性指数は、特定の分離時間での清澄度を最大清澄度で割ることによって定量化される。清澄度は、沈降又はクリーミング/浮選による相分離による透過率の増加(粒子濃度の減少)を定量化する。不安定性指数は、0から1までの無次元の数値である。「ゼロ」は粒子濃度の変化がない(非常に安定)ことを意味し、「1」は分散液が完全に相分離する(非常に不安定)ことを意味する。不安定性指数に関する詳細な説明は、Detloff T、Sobisch T、Lerche D(2013)Instability index.Dispersion Letters Technical T4 1-4,ISBN:978-3-944261-29-4などの文献に記載される。
【0019】
植物由来のリン脂質組成物における「極性脂質」又は「極性脂質成分」という用語は、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジン酸(PA)、スフィンゴミエリン(SM)などの双極子モーメントを有するリン脂質成分を指す。これらの成分は、当技術分野で知られているように、NMR分光法によって測定され得る。
【0020】
本発明による植物由来のリン脂質組成物は、組成物中の極性脂質の総量に基づいて、最大0.70、好ましくは最大0.60、より好ましくは0.10~0.55、更により好ましくは0.20~0.50のホスファチジルエタノールアミン(PE)対ホスファチジルイノシトール(PI)の重量比を有する。
【0021】
本発明による植物由来のリン脂質組成物は、組成物中の極性脂質の総量に基づいて、好ましくは10重量%~50重量%、より好ましくは20重量%~45重量%、更により好ましくは25重量%~40重量%のホスファチジルコリン(PC)含有量を有する。
【0022】
本発明による植物由来のリン脂質組成物は、組成物中の極性脂質の総量に基づいて、好ましくは最大30重量%、より好ましくは5重量%~25重量%、更により好ましくは10重量%~18重量%のホスファチジルエタノールアミン(PE)含有量を有する。
【0023】
本発明による植物由来のリン脂質組成物は、組成物中の極性脂質の総量に基づいて、好ましくは最大10重量%、より好ましくは最大5重量%、更により好ましくは最大3重量%のホスファチジルセリン(PS)含有量を有する。
【0024】
本発明による植物由来のリン脂質組成物は、組成物中の極性脂質の総量に基づいて、好ましくは10重量%~50重量%、より好ましくは20重量%~40重量%、更により好ましくは26重量%~35重量%のホスファチジルイノシトール(PI)含有量を有する。
【0025】
本発明による植物由来のリン脂質組成物は、組成物中の極性脂質の総量に基づいて、好ましくは最大15重量%、より好ましくは最大12重量%、更により好ましくは8重量%~11重量%のホスファチジン酸(PA)含有量を有する。
【0026】
本発明による植物由来のリン脂質組成物は、組成物中の極性脂質の総量に基づいて、好ましくは最大3重量%、より好ましくは最大2重量%、更により好ましくは最大1重量%、最も好ましくは0%~0.5重量%のスフィンゴミエリン(SM)含有量を有する。
【0027】
好ましい実施形態では、本発明による植物由来のリン脂質組成物は、組成物中の極性脂質の総量に基づいて、最大0.60のホスファチジルエタノールアミン(PE)対ホスファチジルイノシトール(PI)の重量比、10重量%~50重量%のホスファチジルコリン(PC)含有量、最大30重量%のホスファチジルエタノールアミン(PE)含有量、最大10重量%のホスファチジルセリン(PS)含有量、10重量%~50重量%のホスファチジルイノシトール(PI)含有量、最大15重量%のホスファチジン酸(PA)含有量、及び最大3重量%のスフィンゴミエリン(SM)含有量を有する。
【0028】
より好ましい実施形態では、本発明による植物由来のリン脂質組成物は、組成物中の極性脂質の総量に基づいて、0.10~0.55のホスファチジルエタノールアミン(PE)対ホスファチジルイノシトール(PI)の重量比、20重量%~45重量%のホスファチジルコリン(PC)含有量、5重量%~25重量%のホスファチジルエタノールアミン(PE)含有量、最大5重量%のホスファチジルセリン(PS)含有量、20重量%~40重量%のホスファチジルイノシトール(PI)含有量、最大12重量%のホスファチジン酸(PA)含有量、及び最大2重量%のスフィンゴミエリン(SM)含有量を有する。
【0029】
更に好ましい実施形態では、本発明による植物由来のリン脂質組成物は、組成物中の極性脂質の総量に基づいて、0.20~0.50のホスファチジルエタノールアミン(PE)対ホスファチジルイノシトール(PI)の重量比、25重量%~40重量%のホスファチジルコリン(PC)含有量、10重量%~18重量%のホスファチジルエタノールアミン(PE)含有量、最大3重量%のホスファチジルセリン(PS)含有量、26重量%~35重量%のホスファチジルイノシトール(PI)含有量、8重量%~11重量%のホスファチジン酸(PA)含有量、及び最大1重量%のスフィンゴミエリン(SM)含有量を有する。
【0030】
本発明による植物由来のリン脂質組成物は、好ましくはレシチンであり、より好ましくはヒマワリ由来のレシチンである。
【0031】
好ましくは、OPOトリグリセリドを含有するエマルション中の乳化剤として植物由来のレシチンの使用が提供され、レシチンは、レシチン中の極性脂質の総量に基づいて、最大0.70のホスファチジルエタノールアミン(PE)とホスファチジルイノシトール(PI)の重量比を有する。
【0032】
好ましくは、OPOトリグリセリド及び植物由来のレシチンを含むエマルションも提供され、レシチンは、レシチン中の極性脂質の総量に基づいて、最大0.70のホスファチジルエタノールアミン(PE)対ホスファチジルイノシトール(PI)の重量比を有する。
【0033】
好ましくは、OPOトリグリセリドを含有するエマルションの安定性を向上させる方法も提供され、該方法は、植物由来のレシチンをエマルションに加えるステップを含み、レシチンは、レシチン中の極性脂質の総量に基づいて、最大0.70のホスファチジルイノシトール(PI)対ホスファチジルエタノールアミン(PE)の重量比を有する。
【0034】
好ましいエマルション、使用及び方法では、レシチンは、レシチンは中の極性脂質の総量に基づいて、最大0.60のホスファチジルエタノールアミン(PE)対ホスファチジルイノシトール(PI)の重量比、10重量%~50重量%のホスファチジルコリン(PC)含有量、最大30重量%のホスファチジルエタノールアミン(PE)含有量、最大10重量%のホスファチジルセリン(PS)含有量、10重量%~50重量%のホスファチジルイノシトール(PI)含有量、最大15重量%のホスファチジン酸(PA)含有量、及び最大3重量%のスフィンゴミエリン(SM)含有量を有する。
【0035】
より好ましいエマルション、使用及び方法では、レシチンは、レシチン中の極性脂質の総量に基づいて、0.10~0.55のホスファチジルエタノールアミン(PE)対ホスファチジルイノシトール(PI)の重量比、20重量%~45重量%のホスファチジルコリン(PC)含有量、5重量%~25重量%のホスファチジルエタノールアミン(PE)含有量、最大5重量%のホスファチジルセリン(PS)含有量、20重量%~40重量%のホスファチジルイノシトール(PI)含有量、最大12重量%のホスファチジン酸(PA)含有量、及び最大2重量%のスフィンゴミエリン(SM)含有量を有する。
【0036】
更に好ましいエマルション、使用及び方法では、レシチンは、レシチン中の極性脂質の総量に基づいて、0.20~0.50のホスファチジルエタノールアミン(PE)対ホスファチジルイノシトール(PI)の重量比、25重量%~40重量%のホスファチジルコリン(PC)含有量、10重量%~18重量%のホスファチジルエタノールアミン(PE)含有量、最大3重量%のホスファチジルセリン(PS)含有量、26重量%~35重量%のホスファチジルイノシトール(PI)含有量、8重量%~11重量%のホスファチジン酸(PA)含有量、及び最大1重量%のスフィンゴミエリン(SM)含有量を有する。
【0037】
本発明によるエマルションは、エマルションの総重量に基づいて、好ましくは0.10重量%~1.00重量%、より好ましくは0.15重量%~0.80重量%、更により好ましくは0.20重量%~0.70重量%の植物由来のリン脂質組成物を含む。
【0038】
本発明によるエマルションは、エマルションの総重量に基づいて、好ましくは最大40重量%、より好ましくは1重量%~25重量%、更により好ましくは3重量%~15重量%の油を含む。
【0039】
本発明によるエマルションは、エマルションの総重量に基づいて、好ましくは30重量%~95重量%、より好ましくは40重量%~90重量%、更により好ましくは50重量%~88重量%の水を含む。
【0040】
好ましい実施形態では、OPOトリグリセリドを含有するエマルションにおける乳化剤としての植物由来の組成物又はレシチンの使用が提供され、組成物又はレシチンは、組成物又はレシチン中の極性脂質の総量に基づいて、最大0.60のホスファチジルエタノールアミン(PE)対ホスファチジルイノシトール(PI)の重量比、10重量%~50重量%のホスファチジルコリン(PC)含有量、最大30重量%のホスファチジルエタノールアミン(PE)含有量、最大10重量%のホスファチジルセリン(PS)含有量、10重量%~50重量%のホスファチジルイノシトール(PI)含有量、最大15重量%のホスファチジン酸(PA)含有量、及び最大3重量%のスフィンゴミエリン(SM)含有量を有し、エマルションは、エマルションの総重量に基づいて、0.10重量%~1.00重量%の植物由来の組成物又はレシチン、最大40重量%の油、及び30重量%~95重量%の水を含む。
【0041】
別の好ましい実施形態では、OPOトリグリセリド及び植物由来の組成物又はレシチンを含むエマルションが提供され、組成物又はレシチンは、組成物又はレシチン中の極性脂質の総量に基づいて、最大0.60のホスファチジルエタノールアミン(PE)対ホスファチジルイノシトール(PI)の重量比、10重量%~50重量%のホスファチジルコリン(PC)含有量、最大30重量%のホスファチジルエタノールアミン(PE)含有量、最大10重量%のホスファチジルセリン(PS)含有量、10重量%~50重量%のホスファチジルイノシトール(PI)含有量、最大15重量%のホスファチジン酸(PA)含量、及び最大3重量%のスフィンゴミエリン(SM)含有量を有し、エマルションは、エマルションの総重量に基づいて、0.10重量%~1.00重量%の植物由来の組成物又はレシチン、最大40重量%の油、及び30重量%~95重量%の水を含む。
【0042】
別の好ましい実施形態では、OPOトリグリセリドを含有するエマルションの安定性を向上させる方法が提供され、該方法は、植物由来のリン脂質組成物又はレシチンをエマルションに加えるステップを含み、組成物又はレシチンは、組成物又はレシチン中の極性脂質の総量に基づいて、最大0.60のホスファチジルエタノールアミン(PE)対ホスファチジルイノシトール(PI)の重量比、10重量%~50重量%のホスファチジルコリン(PC)含有量、最大30重量%のホスファチジルエタノールアミン(PE)含有量、最大10重量%のホスファチジルセリン(PS)含有量、10重量%~50重量%のホスファチジルイノシトール(PI)含有量、最大15重量%のホスファチジン酸(PA)含有量、及び最大3重量%のスフィンゴミエリン(SM)含有量を有し、エマルションは、エマルションの総重量に基づいて、0.10重量%~1.00重量%の植物由来の組成物又はレシチン、細田40重量%の油、及び30重量%~95重量%の水を含む。
【0043】
より好ましいエマルション、使用、又は方法では、組成物又はレシチンは、組成物又はレシチン中の極性脂質の総量に基づいて、0.10~0.55のホスファチジルエタノールアミン(PE)対ホスファチジルイノシトール(PI)の重量比、20重量%~45重量%のホスファチジルコリン(PC)含有量、5重量%~25重量%のホスファチジルエタノールアミン(PE)含有量、最大5重量%のホスファチジルセリン(PS)含有量、20重量%~40重量%のホスファチジルイノシトール(PI)含有量、最大12重量%のホスファチジン酸(PA)含有量、及び最大2重量%のスフィンゴミエリン(SM)含有量を有し、エマルションは、エマルションの総重量に基づいて、0.15重量%~0.80重量%の植物由来の組成物又はレシチン、1重量%~25重量%の油、及び40重量%~90重量%の水を含む。
【0044】
更により好ましいエマルション、使用、又は方法では、組成物又はレシチンは、組成物又はレシチン中の極性脂質の総量に基づいて、0.20~0.50のホスファチジルエタノールアミン(PE)対ホスファチジルイノシトール(PI)の重量比、25重量%~40重量%のホスファチジルコリン(PC)含有量、10重量%~18重量%のホスファチジルエタノールアミン(PE)含有量、最大3重量%のホスファチジルセリン(PS)含有量、26重量%~35重量%のホスファチジルイノシトール(PI)含有量、8重量%~11重量%のホスファチジン酸(PA)含量、及び最大1重量%のスフィンゴミエリン(SM)含有量を有し、エマルションは、エマルションの総重量に基づいて、0.20重量%~0.70重量%の植物由来の組成物又はレシチン、3重量%~15重量%の油、及び50重量%~88重量%の水を含む。
【0045】
好ましくは、本発明によるエマルションに使用される油は、トリグリセリドの総重量に基づいて、10重量%~70重量%の炭素数52を有するトリグリセリド、及びアシル基として存在する脂肪酸の総重量に基づいて、5重量%~50重量%のパルミチン酸アシル基を含み、トリグリセリド中にアシル基として存在するパルミチン酸の総重量に基づいて、少なくとも40重量%のパルミチン酸アシル基がトリグリセリドのSn2位置に存在する。
【0046】
より好ましくは、本発明によるエマルションに使用される油は、トリグリセリドの総重量に基づいて、15重量%~65重量%の炭素数52を有するトリグリセリド、及びアシル基として存在する脂肪酸の総重量に基づいて、10重量%~42重量%のパルミチン酸アシル基を含み、トリグリセリド中にアシル基として存在するパルミチン酸の総重量に基づいて、少なくとも42重量%のパルミチン酸アシル基がトリグリセリドのSn2位置に存在する。
【0047】
更により好ましくは、本発明によるエマルションに使用される油は、トリグリセリドの総重量に基づいて、18重量%~50重量%の炭素数52を有するトリグリセリド、及びアシル基として存在する脂肪酸の総重量に基づいて、15重量%~40重量%のパルミチン酸アシル基を含み、トリグリセリド中にアシル基として存在するパルミチン酸の総重量に基づいて、少なくとも45重量%のパルミチン酸アシル基がトリグリセリドのSn2位置に存在する。
【0048】
「油」という用語は、グリセリド油脂及び脂肪酸アシル基を含む油を指す「油脂」と同義に使用され、特定の融点を意味するものではない。
【0049】
「脂肪酸」という用語は、8~24個の炭素原子を有する直鎖の飽和又は不飽和(一価不飽和及び多価不飽和を含む)カルボン酸を指す。x個の炭素原子とy個の二重結合を有する脂肪酸は、Cx:yと表され得る。例えば、パルミチン酸はC16:0と表記され得、オレイン酸はC18:1と表記され得る。脂肪酸プロファイルは、ISO 12966-2及びISO 12966-4に従ってガスクロマトグラフィーを使用する脂肪酸メチルエステル分析(FAME)によって決定され得る。従って、本明細書で言及される組成物中の脂肪酸のパーセンテージ(例えば、パルミチン酸(C16:0)、ステアリン酸(C18:0)、オレイン酸(C18:1)など)は、トリグリセリド、ジグリセリド、及びモノグリセリドなどのアシル基と遊離脂肪酸の両方を含み、C8~C24脂肪酸残基の総重量に基づく。
【0050】
「トリグリセリド」という用語は、グリセロール分子に共有結合した3つの脂肪酸鎖からなるグリセリドを指す。本発明の組成物は、主にトリグリセリドを含む油を含有し、例えば少なくとも85重量%の油がトリグリセリド、好ましくは少なくとも90重量%の油がトリグリセリドである。
【0051】
炭素数は、トリグリセリドの炭素原子の数である(標準的な慣例のように、グリセロールの炭素原子は除く)。炭素数レベルは、ジグリセリドを除去するための前処理を伴うGC(AOCS Ce5-86)によって決定され得る。
【0052】
Sn2 C16は、トリグリセリドの2位置に存在するC16:0のパーセンテージを指す。トリグリセリド中の脂肪酸の分布は、Becker,C.C.et al.(1993)Lipids,28,147-149に従ってグリニャール試薬による化学分解後に決定され得る。2位置のC16:0残基のパーセンテージは、(a)GC-FAME(ISO 12966-2及びISO 12966-4)による脂肪の総C16:0含有量、及び(b)グリニャール試薬による化学分解後の2-モノグリセリド中のGC-FAME(ISO 12966-2及びISO 12966-4)による2位置のC16:0含有量を見出すことによって決定される。従って、C16:0のSn-2は((b)x100)/((a)x3)となる。
【0053】
本発明によるエマルションに使用される油は、トリグリセリドの総重量に基づいて、好ましくは少なくとも5重量%、より好ましくは少なくとも7重量%のOPOトリグリセリドを含む。
【0054】
本発明によるエマルションに使用される油は、好ましくは植物由来であり、好ましくは動物由来の油又は脂肪を含まない。
【0055】
本発明によるエマルションは、好ましくは、タンパク質、炭水化物、粉乳、ミネラル及びビタミンから選択される1つ以上の成分を更に含む。
【0056】
タンパク質源は、好ましくは、乳清、カゼイン及びそれらの混合物などの牛乳タンパク質、大豆タンパク質、ジャガイモタンパク質、エンドウ豆タンパク質又はヒマワリタンパク質から選択される。乳清タンパク質が使用される場合、タンパク質源は、好ましくは、酸性乳清もしくはスイートホエー、分離乳清タンパク質、又はそれらの混合物に基づいている。より好ましくは、分離乳清タンパク質が使用される。
【0057】
好ましいエマルション、使用又は方法では、エマルションは、2:1~7:1、好ましくは3:1~6.5:1、より好ましくは3.5:1~6:1のタンパク質対植物由来のリン脂質組成物の重量比を有する。タンパク質対植物由来のリン脂質組成物の好ましい重量比は、エマルションを更に安定にするために特に望ましい。
【0058】
炭水化物源は、好ましくは消化可能な炭水化物であり、より好ましくはラクトース、グルコース、スクロース、フルクトース、ガラクトース、マルトース、デンプン及びマルトデキストリンから選択される。ラクトースは有利なことに血糖指数が低いため、ラクトースを使用することがより好ましい。
【0059】
本発明によるエマルションは、好ましくは、フルクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖及び/又はガラクツロン酸オリゴ糖、より好ましくはフルクトオリゴ糖及び/又はガラクトオリゴ糖、更により好ましくはガラクトオリゴ糖、最も好ましくはトランスガラクトオリゴ糖を更に含む。好ましい実施形態では、本発明によるエマルションは、ガラクトオリゴ糖とフラクトオリゴ糖、より好ましくはトランスガラクトオリゴ糖とフラクトオリゴ糖の混合物を含む。
【0060】
好ましい実施形態では、乳児用調製粉乳又は幼児用調製粉乳における本発明による使用が提供される。本発明のエマルションを含む乳児用調製粉乳又は幼児用調製粉乳も提供される。「乳児用調製粉乳」又は「幼児用調製粉乳」という用語は、幼児及び/又は乳児に栄養を与えるための食事用の食品を指す。幼児用調製粉乳は、乳児用調製補完食品又は移行用ミルクとも呼ばれ、特に生後6か月から3歳の幼児に好ましい。
【0061】
本明細書における明らかに以前に出版された文書のリスト又は考察は、必ずしもその文書が最先端技術の一部であるか、あるいは共通の一般知識であることを認めるものとして解釈されるべきではない。
【0062】
本発明の所与の態様、実施形態、特徴、又はパラメータに関する優先事項及びオプションは、文脈が特に示さない限り、本発明の他の全ての態様、実施形態、特徴及びパラメータに関するあらゆる優先事項及びオプションと組み合わせて開示されたものとみなされるべきである。
【0063】
以下の非限定的な実施例は本発明を例示説明するものであり、決してその範囲を限定しない。実施例及び本明細書全体では、特に明記されない限り、全てのパーセンテージ、部及び比は重量によるものである。
【0064】
番号付けした本発明の実施形態
1.OPOトリグリセリドを含有するエマルションの安定性を向上させる方法であって、植物由来のリン脂質組成物をエマルションに加えるステップを含み、リン脂質組成物は、組成物中の極性脂質の総量に基づいて、最大0.70のホスファチジルエタノールアミン(PE)対ホスファチジルイノシトール(PI)の重量比を有する、方法。
【0065】
2.植物由来のリン脂質組成物は、組成物中の極性脂質の総量に基づいて、最大0.60、好ましくは0.10~0.55、より好ましくは0.20~0.50のホスファチジルエタノールアミン(PE)対ホスファチジルイノシトール(PI)の重量比を有する、番号付き実施形態1による方法。
【0066】
3.植物由来のリン脂質組成物は、組成物中の極性脂質の総量に基づいて、10重量%~50重量%、好ましくは20重量%~45重量%、より好ましくは25重量%~40重量%のホスファチジルコリン(PC)含有量を有する、番号付き実施形態1又は2による方法。
【0067】
4.植物由来のリン脂質組成物は、組成物中の極性脂質の総量に基づいて、最大30重量%、好ましくは5重量%~25重量%、より好ましくは10重量%~18重量%のホスファチジルエタノールアミン(PE)含有量を有する、先行の番号付き実施形態のいずれか一項による方法。
【0068】
5.植物由来のリン脂質組成物は、組成物中の極性脂質の総量に基づいて、最大10重量%、好ましくは最大5重量%、より好ましくは最大3重量%のホスファチジルセリン(PS)含有量を有する、先行の番号付き実施形態のいずれか一項による方法。
【0069】
6.植物由来のリン脂質組成物は、組成物中の極性脂質の総量に基づいて、10重量%~50重量%、好ましくは20重量%~40重量%、より好ましくは26重量%~35重量%のホスファチジルイノシトール(PI)含有量を有する、先行の番号付き実施形態のいずれか一項による方法。
【0070】
7.植物由来のリン脂質組成物は、組成物中の極性脂質の総量に基づいて、最大15重量%、好ましくは最大12重量%、より好ましくは8重量%~11重量%のホスファチジン酸(PA)含有量を有する、先行の番号付き実施形態のいずれか一項による方法。
【0071】
8.植物由来のリン脂質組成物は、組成物中の極性脂質の総量に基づいて、最大3重量%、好ましくは最大2重量%、より好ましくは最大1重量%のスフィンゴミエリン(SM)含有量を有する、先行の番号付き実施形態のいずれか一項による方法。
【0072】
9.植物由来のリン脂質組成物は、ヒマワリ由来のレシチンである、先行の番号付き実施形態のいずれか一項による方法。
【0073】
10.エマルションは、前記エマルションの総重量に基づいて、0.10重量%~1.00重量%、好ましくは0.15重量%~0.80重量%、より好ましくは0.20重量%~0.70重量%の前記植物由来のリン脂質組成物を含む、先行の番号付き実施形態のいずれか一項による方法。
【0074】
11.エマルションは、エマルションの総重量に基づいて、最大40重量%、好ましくは1重量%~25重量%、より好ましくは3重量%~15重量%の油を含む、先行の番号付き実施形態のいずれか一項による方法。
【0075】
12.エマルションは、前記エマルションの総重量に基づいて、30重量%~90重量%、好ましくは40重量%~80重量%、より好ましくは50重量%~75重量%の水を含む、先行の番号付き実施形態のいずれか一項による方法。
【0076】
13.エマルションに使用される油は、
トリグリセリドの総重量に基づいて、10重量%~70重量%、好ましくは15重量%~65重量%、より好ましくは18重量%~50重量%の炭素数52を有するトリグリセリド、
アシル基として存在する脂肪酸の総重量に基づいて、5重量%~50重量%、好ましくは10重量%~42重量%、より好ましくは15重量%~40重量%のパルミチン酸アシル基を含み、
トリグリセリド中にアシル基として存在するパルミチン酸の総重量に基づいて、パルミチン酸アシル基の少なくとも40重量%、好ましくは少なくとも42%、より好ましくは少なくとも45%が前記トリグリセリドのSn2位置に存在する、先行の番号付き実施形態のいずれか一項による方法。
【0077】
14.エマルションは、分離乳清タンパク質などのタンパク質、ラクトースなどの炭水化物、粉乳、ミネラル及びビタミンから選択される1つ以上の成分を更に含む、先行の番号付き実施形態のいずれか一項による方法。
【0078】
15.エマルションは、2:1~7:1、好ましくは3:1~6.5:1、より好ましくは3.5:1~6:1のタンパク質対植物由来のリン脂質組成物の重量比を有する、先行の番号付き実施形態のいずれか一項による方法。
【0079】
16.エマルションは、乳児用調製粉乳又は幼児用調製粉乳に使用される、先行の番号付き実施形態のいずれか一項による方法。
【実施例
【0080】
実施例1-Betapol(登録商標)45の組成物
Bunge Loders Croklaan B.V.から入手したBetapol(登録商標)45を、試験対象のエマルション中のOPO脂肪組成物として使用した。Betapol(登録商標)45は、トリグリセリドの総重量に基づいて少なくとも7重量%のOPOトリグリセリドを含む。分析結果が、表1に示される。
【0081】
【表1-1】
【表1-2】
【0082】
Cx:yは、x個の炭素原子とy個の二重結合を有する脂肪酸を指し、レベルは、GC-FAME(ISO 12966-2及びISO 12966-4)によって決定され、Tは、トランス脂肪酸、Cはシス脂肪酸を表し、
トランスは、トランス脂肪酸を指し、
Cxxは、xx個の炭素原子を有するトリグリセリドを指し(標準的な慣例として、グリセロールからの炭素原子は除く)、最終的にジグリセリドを除去するための前処理を伴うGCによってレベルが決定され(AOCS Ce5-86)(Betapol 45に与えられた値は典型的な値である)、
SAFA、MUFA、PUFAはそれぞれ飽和、一価不飽和、多価不飽和脂肪酸を指す。
【0083】
Sn2C16は、試験サンプル中のC16:0のパーセンテージと比較した、2-モノグリセリド中に存在するC16:0のパーセンテージを指す。トリグリセリド中の脂肪酸の分布は、Becker,C.C.et al.(1993)Lipids,28,147-149に従ったグリニャール試薬による化学分解後に決定される。2位置のC16:0残基のパーセンテージは、(a)GC-FAME(ISO 12966-2及びISO 12966-4)による脂肪の総C16:0含有量、及び(b)グリニャール試薬による化学分解後の2-モノグリセリド中のGC-FAME(ISO 12966-2及びISO 12966-4)による2位置のC16:0含有量を見出すことにより決定された。従って、C16:0のSn-2は((b)x100)/((a)x3)となり、また、
ヨウ素価(IVFAME)は、AOCS Cd 1c-85に従って計算された。
【0084】
実施例2-レシチンサンプルの組成物
2種類の市販レシチンを、Bunge Limitedから入手し、エマルションの調製に使用した。1種類のレシチンはヒマワリに由来し、もう1種類のレシチンは大豆に由来した。これら2つのレシチンサンプル中の極性脂質の組成が表2に示され、パーセンテージはレシチン中の極性脂質の総量に基づいている。
【0085】
【表2】
【0086】
実施例3-エマルションの調製
エマルションは、以下の手順に従って調製された。
1.蒸留水を50℃に予熱する。
2.シルバーソンミキサーを4000rpmで5分間使用することにより、脱脂粉乳及び分離乳清タンパク質を水と混合し、次に、ラクトースを加えて更に5分間混合し、水相を得る。
3.全ての粉末が溶解するまで、溶液を55℃で10分間インキュベートする。
4.油(Betapol(登録商標)45)を溶けるまで55℃に加熱する。
5.レシチンを油に溶解して油相を得る。
6.シルバーソンミキサーを6000rpmで最大1分間使用して水相を油相と混合することによって乳化し、得られた小球サイズは6~10μmである。
7.2MのNaOH溶液を使用してpHを6.8に調整する。
8.エマルションを80℃で10分間保持することにより、熱処理シミュレーションUHTを適用する。
9.それぞれ50barと10barの2段階均質化を使用して均質化する。
10.エマルションを氷浴中で4℃に冷却する。
【0087】
3つのエマルションを手順に従って調製し、1つはヒマワリ油由来のレシチンを含み、1つは比較例として大豆由来のレシチンを含み、1つは参照例としてレシチンを含まなかった。これらのエマルションの調製は、表3に示される配合方法に従って行われた。
【0088】
【表3】
【0089】
実施例4-エマルションの粒度分布分析
粒度分析は、レーザー回折計(Mastersizer 3000、Malvern Instruments)を使用して実施した。粒度の測定値は、全粒子の10%、50%、90%が検出されるサイズを示すD10、D50、D90と、サンプル体積の大部分を構成する粒度を反映する体積モーメント平均(De Brouckere平均直径)D[4,3]を使用して報告された。結果が表4に示される。
【0090】
【表4】
【0091】
エマルションAに含まれる全ての粒子の90%が3.75μmより小さく、エマルションAの体積モーメント平均D[4,3]も最小であることがわかる。粒直分布の結果を考慮すると、エマルションB及びエマルションCと比較して、エマルションAは改善されたエマルション安定性を有すると考えられる。
【0092】
実施例5-不安定性指数の分析
エマルションの安定性を更に評価するために、これら3つのエマルションの不安定性指数を測定した。この安定性試験はLUMiFuge(登録商標)によって実施され、不安定性指数はSEPView(登録商標)ソフトウェアを使用して計算された。
【0093】
不安定性指数は、特定の分離時間での清澄度を最大清澄度で割ることによって定量化される。清澄度は、沈降又はクリーミング/浮選による相分離による透過率の増加(粒子濃度の減少)を定量化する。不安定性指数は、0から1までの無次元の数値である。「ゼロ」は粒子濃度の変化がない(非常に安定)ことを意味し、「1」は分散液が完全に相分離する(非常に不安定)ことを意味する。不安定性指数に関する詳細な説明は、Detloff T、Sobisch T、Lerche D(2013)Instability index.Dispersion Letters Technical T4 1-4,ISBN:978-3-944261-29-4などの文献に記載される。
【0094】
各エマルションについて、UHTをシミュレートする熱処理前(従って、実施例3のステップ8の前)、UHTをシミュレートする熱処理後(従って、実施例3のステップ8の後)、及びプロセスの完了後(従って、実施例3のステップ10の後)の3つのサンプルを、不安定性指数を測定するために採取した。不安定性指数の結果が表5に示される。
【0095】
【表5】
【0096】
エマルションAは、乳化プロセス全体を通じて最も低い不安定性指数を示し、エマルションB及びエマルションCと比較して、最終エマルション製品だけでなく加工中の安定性も向上していることがわかる。このようなエマルションは、乳児用調製粉乳又は幼児用調製粉乳に使用するのに適している。
【国際調査報告】