(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-12
(54)【発明の名称】通信システムにおける方法、送信機及び受信機
(51)【国際特許分類】
H04L 27/01 20060101AFI20240905BHJP
H04B 17/309 20150101ALI20240905BHJP
【FI】
H04L27/01
H04B17/309
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024540074
(86)(22)【出願日】2022-06-08
(85)【翻訳文提出日】2024-03-12
(86)【国際出願番号】 JP2022023872
(87)【国際公開番号】W WO2023119692
(87)【国際公開日】2023-06-29
(32)【優先日】2021-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503163527
【氏名又は名称】ミツビシ・エレクトリック・アールアンドディー・センター・ヨーロッパ・ビーヴィ
【氏名又は名称原語表記】MITSUBISHI ELECTRIC R&D CENTRE EUROPE B.V.
【住所又は居所原語表記】Capronilaan 46, 1119 NS Schiphol Rijk, The Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】コルレ、ヴァンサン
(72)【発明者】
【氏名】カステラン、ダミアン
(57)【要約】
高電力増幅器を備え、第1の線形フィルタと、非線形関数と、第2の線形フィルタとの連続体としてモデル化される通信チャネルを通じて通信する送信機及び受信機を備える通信システムにおける方法が開示されている。本方法は、送信機による受信機への第1のパイロットシーケンスの送信に対応する第1の受信されたシーケンスを取得することと、第1のパイロットシーケンス及び第1の受信されたシーケンスに応じてrを推定することであって、rは、第1の線形フィルタ及び第2の線形フィルタの畳み込みに等しいことと、推定された
【数1】
に応じて第1の線形フィルタの複数の候補を求めることと、送信機による受信機への第2のパイロットシーケンスの送信に対応する第2の受信されたシーケンスを取得することと、非線形関数を求め、複数の候補の中で第2のパイロットシーケンス及び第2の受信されたシーケンスに応じて第1の線形フィルタの1つの候補を選択することとを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高電力増幅器を備える通信チャネルを通じて通信する送信機及び受信機を備える通信システムにおける方法であって、前記通信チャネルは、サイズL
1の第1の線形フィルタと、非線形関数と、サイズL
2の第2の線形フィルタとの連続体としてモデル化され、L
1及びL
2は正の整数であり、前記方法は、
a)前記送信機から前記受信機への第1のパイロットシーケンスx
1の送信に対応する第1の受信されたシーケンスw
1を取得することであって、前記第1のパイロットシーケンスは、前記第1のパイロットシーケンスを入力として用いて得られる前記第1の線形フィルタの出力が、前記高電力増幅器の飽和レベルに対して低いピーク振幅、又は低い周波数を伴う高いピーク振幅を有するものであることと、
b)前記第1のパイロットシーケンスx
1及び前記第1の受信されたシーケンスw
1に応じてrを推定することであって、rは、前記第1の線形フィルタ及び前記第2の線形フィルタの畳み込みに等しいことと、
c)推定された
【数1】
に応じて前記第1の線形フィルタの複数の候補を求めることと、
d)前記送信機から前記受信機への第2のパイロットシーケンスx
2の送信に対応する第2の受信されたシーケンスw
2を取得することであって、前記第2のパイロットシーケンスは、前記第2のパイロットシーケンスを入力として用いて得られる前記第1の線形フィルタの出力が、前記高電力増幅器の飽和レベルに対して高いピーク振幅を有するものであることと、
e)前記非線形関数を求め、前記複数の候補の中で前記第2のパイロットシーケンスx
2及び前記第2の受信されたシーケンスw
2に応じて前記第1の線形フィルタの1つの候補を選択することであって、前記第2の線形フィルタは、選択された第1の線形フィルタの前記1つの候補から一意に求められることと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記通信システムは衛星通信システムであり、前記高電力増幅器は衛星トランスポンダ内にある、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1のパイロットシーケンスは、前記第1のパイロットシーケンスのコードブックに属し、前記方法は、ステップb)の後に、誤差
【数2】
を閾値と比較し、
【数3】
が前記閾値を上回る場合には前記コードブックの次の第1のパイロットシーケンスとともにステップa)に戻り、そうでない場合にはステップc)へと進むことを更に含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1のパイロットシーケンスx
1及び前記第1の受信されたシーケンスw
1に応じてrを推定することは、最小二乗法を使用して
【数4】
によって
【数5】
を求めることを含み、ここで、x
1
Hはx
1の共役転置を示す、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記推定された
【数6】
に応じて前記第1の線形フィルタの複数の候補を求めることは、
【数7】
をz領域に変換してR(z)にすることと、
R(z)の根を求めることと、
R(z)を複数の積H(z)G(z)に因数分解することであって、各H(z)は、R(z)の根の中のL
1個のR(z)の根を組み合わせたものであり、各H(z)は、前記第1の線形フィルタの1つの候補に対応することと、
を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記非線形関数c()は、以下のように定義され、
【数8】
Kは正の整数であり、
前記非線形関数を求め、前記複数の候補の中で前記第2のパイロットシーケンス及び前記第2の受信されたシーケンスに応じて前記第1の線形フィルタの1つの候補を選択することは、
前記第1の線形フィルタの前記候補h
iのそれぞれについて、
対応する第2の線形フィルタg
iをH(z)及びh
iから計算し、*が畳み込み演算子であるとして、u
i=x
2*h
iを計算することと、
φ(u
i)=[u
i,u
i
2,...,u
i
K]であるとして、最小二乗法を使用して以下のようにg’
iを求めることと、
【数9】
g’
i及びg
iからγ
iを求めることであって、範囲[1;K]内の各整数jについて、
【数10】
であることと、
h
i及びγ
iから、w
2,i=c
i(x
1*h
i)*g
iによってw
2,iを計算することと、
最小の
【数11】
をもたらすペア(h
i,γ
i)を選択することと、
を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の方法に従って、前記第1の線形フィルタと、前記非線形関数と、前記第2の線形フィルタとを求めることと、
前記第1の線形フィルタと、前記非線形関数と、前記第2の線形フィルタとからプリディストーション関数を適合させることと、
を含む、プリディストーション方法。
【請求項8】
送信前にプリディストーション関数を適用することによって信号をプリディストーションすることを含み、前記プリディストーション関数は、請求項7に記載のプリディストーション方法に従って適合される、送信方法。
【請求項9】
受信機を備える通信システムにおける送信機であって、前記送信機及び前記受信機は、高電力増幅器を備える通信チャネルを通じて通信し、前記通信チャネルは、サイズL
1の第1の線形フィルタと、非線形関数と、サイズL
2の第2の線形フィルタとの連続体としてモデル化され、L
1及びL
2は正の整数であり、前記送信機は、
a)前記送信機から前記受信機への第1のパイロットシーケンスの送信に対応する第1の受信されたシーケンスを取得することであって、前記第1のパイロットシーケンスは、前記第1のパイロットシーケンスを入力として用いて得られる前記第1の線形フィルタの出力が、前記高電力増幅器の飽和レベルに対して低いピーク振幅、又は低い周波数を伴う高いピーク振幅を有するものであることと、
b)前記第1のパイロットシーケンス及び前記第1の受信されたシーケンスに応じてrを推定することであって、rは、前記第1の線形フィルタ及び前記第2の線形フィルタの畳み込みに等しいことと、
c)推定された
【数12】
に応じて前記第1の線形フィルタの複数の候補を求めることと、
d)前記送信機から前記受信機への第2のパイロットシーケンスの送信に対応する第2の受信されたシーケンスを取得することであって、前記第2のパイロットシーケンスは、前記第2のパイロットシーケンスを入力として用いて得られる前記第1の線形フィルタの出力が、前記高電力増幅器の飽和レベルに対して高いピーク振幅を有するものであることと、
e)前記非線形関数を求め、前記複数の候補の中で前記第2のパイロットシーケンス及び前記第2の受信されたシーケンスに応じて前記第1の線形フィルタの1つの候補を選択することであって、前記第2の線形フィルタは、選択された第1の線形フィルタの前記1つの候補から一意に求められることと、
を行うように構成される、送信機。
【請求項10】
送信機を備える通信システムにおける受信機であって、前記送信機及び前記受信機は、高電力増幅器を備える通信チャネルを通じて通信し、前記通信チャネルは、サイズL
1の第1の線形フィルタと、非線形関数と、サイズL
2の第2の線形フィルタとの連続体としてモデル化され、L
1及びL
2は正の整数であり、前記受信機は、
a)前記送信機から前記受信機への第1のパイロットシーケンスの送信に対応する第1の受信されたシーケンスを取得することであって、前記第1のパイロットシーケンスは、前記第1のパイロットシーケンスを入力として用いて得られる前記第1の線形フィルタの出力が、前記高電力増幅器の飽和レベルに対して低いピーク振幅、又は低い周波数を伴う高いピーク振幅を有するものであることと、
b)前記第1のパイロットシーケンス及び前記第1の受信されたシーケンスに応じてrを推定することであって、rは、前記第1の線形フィルタ及び前記第2の線形フィルタの畳み込みに等しいことと、
c)推定された
【数13】
に応じて前記第1の線形フィルタの複数の候補を求めることと、
d)前記送信機から前記受信機への第2のパイロットシーケンスの送信に対応する第2の受信されたシーケンスを取得することであって、前記第2のパイロットシーケンスは、前記第2のパイロットシーケンスを入力として用いて得られる前記第1の線形フィルタの出力が、前記高電力増幅器の飽和レベルに対して高いピーク振幅を有するものであることと、
e)前記非線形関数を求め、前記複数の候補の中で前記第2のパイロットシーケンス及び前記第2の受信されたシーケンスに応じて前記第1の線形フィルタの1つの候補を選択することであって、前記第2の線形フィルタは、選択された前記第1の線形フィルタの前記1つの候補から一意に求められることと、
を行うように構成される、受信機。
【請求項11】
プログラマブルデバイスにロードすることができるプログラムコード命令を含むコンピュータプログラム製品であって、前記プログラムコード命令は、前記プログラムコード命令が前記プログラマブルデバイスによって実行されると、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法を実施させる、コンピュータプログラム製品。
【請求項12】
プログラムコード命令を含むコンピュータプログラムを記憶するストレージ媒体であって、前記プログラムコード命令は、前記プログラムコード命令が前記ストレージ媒体から読み出され、プログラマブルデバイスによって実行されると、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法を実施させる、ストレージ媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態のうちの少なくとも1つは、包括的には、通信システムにおける方法に関する。この通信システムは、通信チャネルを通じて通信する送信機及び受信機を備える。通信チャネルは、第1の線形フィルタと、非線形関数と、第2の線形フィルタとの連続体としてモデル化される。本方法は、第1の線形フィルタと、非線形関数と、第2の線形フィルタとを求めるためのものである。本実施形態のうちの少なくとも1つは、本方法を実施するように構成されるデバイス、例えば、送信機又は受信機にも関する。
【背景技術】
【0002】
通信システムでは、送信機は、通信チャネルを介して受信機に結合される。送信機は、通常、入力データをシンボルに符号化するように構成される符号化器を備える。これらのシンボルは、その後、通信チャネルを介して受信機に送信される。受信機は、受信されたシンボルを出力データに復号するように構成される復号器を備える。衛星通信の場合には、通信チャネルは、衛星トランスポンダを備える。
図1は、送信機10、例えばTV局等の基地局と、衛星トランスポンダ12と、受信機14、例えばTV受信機とを備える衛星通信システム1を示している。送信機10は、信号(アップリンク通信)を衛星トランスポンダ12に送信するように構成され、衛星トランスポンダ12は、次に、増幅後の信号(ダウンリンク通信)を受信機14に送信する。信号を増幅するために、衛星トランスポンダは、HPAとしても知られている高電力増幅器を備える。このような増幅器は、効率性を理由とする場合にはよくあることであるが、特に飽和状態の近くで駆動されるときには非線形性が発生する。スペクトル拡散又は再成長及び帯域内歪みは、衛星通信システムの全体性能を劣化させる非線形歪みの影響の例である。
【0003】
HPAによって導入される非線形性に起因するこれらの影響を補償するために、よく知られている手法には、送信機10によって送信される信号のプリディストーションがある。すなわち、
図2に示すように、送信機10は、信号xを直接送信するのではなく、信号xにプリディストーション関数f’()を適用し、信号w=f(x’)が受信機14によって受信されるように信号x’を送信する。ここで、wは、信号xに非常に類似している。プリディストーション関数f’()を適用する目的は、出力x’が、非線形システムによって処理されたときに、非線形歪みのない所望の応答を近似するように、入力xを変更することである。プリディストーション関数f’()を定義するには、非線形チャネル18をモデル化する必要がある。例えば、N. Alibertの論文「Iterative predistortion algorithms adapted to the increasing throughput of satellite Communications」のセクション3.2.3に開示されているように、直接学習アーキテクチャ(DLA)が、チャネルの事前識別に基づいてプリディストーションを適合させる。DLAでは、プリディストーション関数f’()を適合させるために、チャネルの事前識別が使用される。
【0004】
これまで、非線形チャネル18は、
図3に示すようなWiener-Hammersteinモデルを使用してモデル化されている。Wiener-Hammersteinモデルは、衛星トランスポンダの説明と一致するので、衛星トランスポンダに直接適用される。Wiener-Hammersteinモデルは、3つの要素、すなわち、長さL
1の第1の線形フィルタhと、非線形関数c()と、長さL
2の第2の線形フィルタgとを備える。Wiener-Hammersteinモデルの表現として一般に使用されるのは、Volterraモデルである。Volterraモデルは、3つの要素h、c及びgのそれぞれを個別に表現するのではなく、3つの要素を適用した結果を直接表現している。このモデルは、行列演算w(n)=Q・Φ
n(x)として記述することができる。ここで、Qは、カーネルベクトルであり、Φ
n()は、入力ベクトルxの非線形結合を計算する演算子である。一方では、Volterraモデルを使用することは、最小二乗アルゴリズムを使用してベクトルQをQ=(Φ
n(x)
HΦ
n(x))
(-1)Φ
n(x)
Hwと推定することができるので、便利である。他方では、この解決法は、非常に多くの係数を生成するという欠点を有する。例えば、c(・)が次数Kの多項式によってモデル化される場合、ベクトルQの長さは、L
2*(L
1)
Kよりも長くなる。そのような多数の係数を有することは、推定ステージ及び推論ステージの両方で問題である。すなわち、係数の推定を考えた場合、行列Φ
n(x)
HΦ
n(x)を反転させることに高い複雑さを誘発し、長いトレーニングシーケンスxを必要とする。推論ステージ(例えば、プリディストーション)の場合には、送信機は、プリディストーションされる各シーケンスにこのモデルを使用することになり、したがって、このことは高い計算複雑さを伴う。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、Volterraモデルに基づく方法よりも複雑でない非線形チャネルを推定する方法を見つけることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施の形態のうちの少なくとも1つは、包括的には、例えば、衛星トランスポンダ内の高電力増幅器を備える通信チャネルを通じて通信する送信機及び受信機を備える通信システムにおける方法に関する。通信チャネルは、サイズL
1の第1の線形フィルタと、非線形関数と、サイズL
2の第2の線形フィルタとの連続体としてモデル化され、L
1及びL
2は正の整数である。本方法は、
a)送信機から受信機への第1のパイロットシーケンスx
1の送信に対応する第1の受信されたシーケンスw
1を取得することであって、第1のパイロットシーケンスは、第1のパイロットシーケンスを入力として用いて得られる第1の線形フィルタの出力が、高電力増幅器の飽和レベルに対して低いピーク振幅、又は低い周波数を伴う高いピーク振幅を有するものであることと、
b)第1のパイロットシーケンス及び第1の受信されたシーケンスに応じてrを推定することであって、rは、第1の線形フィルタ及び第2の線形フィルタの畳み込みに等しいことと、
c)推定された
【数1】
に応じて第1の線形フィルタの複数の候補を求めることと、
d)送信機から受信機への第2のパイロットシーケンスx
2の送信に対応する第2の受信されたシーケンスw
2を取得することであって、第2のパイロットシーケンスは、第2のパイロットシーケンスを入力として用いて得られる第1の線形フィルタの出力が、高電力増幅器の飽和レベルに対して高いピーク振幅を有するものであることと、
e)非線形関数を求め、複数の候補の中で第2のパイロットシーケンス及び第2の受信されたシーケンスに応じて第1の線形フィルタの1つの候補を選択することであって、第2の線形フィルタは、選択された第1の線形フィルタの1つの候補から一意に求められることと、
を含む。
【0007】
有利なことに、本方法により、Volterraモデルよりも少ない数の係数を用いて非線形チャネルを推定及びシミュレーションすることが可能になる。その結果、送信機側におけるプリディストーションの複雑さを低減することができる。
【0008】
特定の実施の形態において、第1のパイロットシーケンスは、第1のパイロットシーケンスのコードブックに属し、本方法は、ステップb)の後に、誤差
【数2】
を閾値と比較し、
【数3】
が閾値を上回る場合にはコードブックの次の第1のパイロットシーケンスとともにステップa)に戻り、そうでない場合にはステップc)へと進むことを更に含む。
【0009】
特定の実施の形態において、第1のパイロットシーケンスx
1及び第1の受信されたシーケンスw
1に応じてrを推定することは、最小二乗法を使用して
【数4】
によって
【数5】
を求めることを含み、ここで、x
1
Hはx
1の共役転置を示す。
【0010】
特定の実施の形態において、推定された
【数6】
に応じて第1の線形フィルタの複数の候補を求めることは、
【数7】
をz領域に変換してR(z)にすることと、
R(z)の根を求めることと、
R(z)を複数の積H(z)G(z)に因数分解することであって、各H(z)は、R(z)の根の中のL
1個のR(z)の根を組み合わせたものであり、各H(z)は、第1の線形フィルタの1つの候補に対応することと、
を含む。
【0011】
特定の実施の形態において、非線形関数c()は、以下のように定義される。
【数8】
ここで、Kは正の整数である。非線形関数を求め、複数の候補の中で第2のパイロットシーケンス及び第2の受信されたシーケンスに応じて第1の線形フィルタの1つの候補を選択することは、
第1の線形フィルタの各候補h
iについて、
対応する第2の線形フィルタg
iをH(z)及びh
iから計算し、*が畳み込み演算子であるとして、u
i=x
2*h
iを計算することと、
φ(u
i)=[u
i,u
i
2,...,u
i
K]であるとして、最小二乗法を使用して以下のようにg’
iを求めることと、
【数9】
g’
i及びg
iからγ
iを求めることであって、範囲[1;K]内の各整数jについて、
【数10】
であることと、
h
i及びγ
iから、w
2,i=c
i(x
1*h
i)*g
iによってw
2,iを計算することと、
最小の
【数11】
をもたらすペア(h
i,γ
i)を選択することと、
を含む。
【0012】
本実施の形態のうちの少なくとも1つは、包括的には、
上記の実施の形態に記載の方法に従って、第1の線形フィルタと、非線形関数と、第2の線形フィルタとを求めることと、
第1の線形フィルタと、非線形関数と、第2の線形フィルタとからプリディストーション関数を適合させることと、
を含む、プリディストーション方法に関する。
【0013】
本実施の形態のうちの少なくとも1つは、包括的には、送信前にプリディストーション関数を適用することによって信号をプリディストーションすることを含み、プリディストーション関数が、プリディストーション方法に従って適合される、送信方法に関する。
【0014】
本実施の形態のうちの少なくとも1つは、包括的には、受信機を備える通信システムにおける送信機であって、送信機及び受信機は、例えば、衛星トランスポンダ内の高電力増幅器を備える通信チャネルを通じて通信する、送信機に関する。通信チャネルは、サイズL
1の第1の線形フィルタと、非線形関数と、サイズL
2の第2の線形フィルタとの連続体としてモデル化され、L
1及びL
2は正の整数である。送信機は、
a)送信機から受信機への第1のパイロットシーケンスx
1の送信に対応する第1の受信されたシーケンスw
1を取得することであって、第1のパイロットシーケンスは、第1のパイロットシーケンスを入力として用いて得られる第1の線形フィルタの出力が、高電力増幅器の飽和レベルに対して低いピーク振幅、又は低い周波数を伴う高いピーク振幅を有するものであることと、
b)第1のパイロットシーケンスx
1及び第1の受信されたシーケンスw
1に応じてrを推定することであって、rは、第1の線形フィルタ及び第2の線形フィルタの畳み込みに等しいことと、
c)推定された
【数12】
に応じて第1の線形フィルタの複数の候補を求めることと、
d)送信機から受信機への第2のパイロットシーケンスx
2の送信に対応する第2の受信されたシーケンスw
2を取得することであって、第2のパイロットシーケンスは、第2のパイロットシーケンスを入力として用いて得られる第1の線形フィルタの出力が、高電力増幅器の飽和レベルに対して高いピーク振幅を有するものであることと、
e)非線形関数を求め、複数の候補の中で第2のパイロットシーケンスx
2及び第2の受信されたシーケンスw
2に応じて第1の線形フィルタの1つの候補を選択することであって、第2の線形フィルタは、選択された第1の線形フィルタの1つの候補から一意に求められることと、
を行うように構成される。
【0015】
本実施の形態のうちの少なくとも1つは、包括的には、送信機を備える通信システムにおける受信機であって、送信機及び受信機は、例えば、衛星トランスポンダ内の高電力増幅器を備える通信チャネルを通じて通信する、受信機に関する。通信チャネルは、サイズL
1の第1の線形フィルタと、非線形関数と、サイズL
2の第2の線形フィルタとの連続体としてモデル化され、L
1及びL
2は正の整数である。受信機は、
a)送信機から受信機への第1のパイロットシーケンスx
1の送信に対応する第1の受信されたシーケンスw
1を取得することであって、第1のパイロットシーケンスは、第1のパイロットシーケンスを入力として用いて得られる第1の線形フィルタの出力が、高電力増幅器の飽和レベルに対して低いピーク振幅、又は低い周波数を伴う高いピーク振幅を有するものであることと、
b)第1のパイロットシーケンスx
1及び第1の受信されたシーケンスw
1に応じてrを推定することであって、rは、第1の線形フィルタ及び第2の線形フィルタの畳み込みに等しいことと、
c)推定された
【数13】
に応じて第1の線形フィルタの複数の候補を求めることと、
d)送信機から受信機への第2のパイロットシーケンスx
2の送信に対応する第2の受信されたシーケンスw
2を取得することであって、第2のパイロットシーケンスは、第2のパイロットシーケンスを入力として用いて得られる第1の線形フィルタの出力が、高電力増幅器の飽和レベルに対して高いピーク振幅を有するものであることと、
e)非線形関数を求め、複数の候補の中で第2のパイロットシーケンスx
2及び第2の受信されたシーケンスw
2に応じて第1の線形フィルタの1つの候補を選択することであって、第2の線形フィルタは、選択された第1の線形フィルタの1つの候補から一意に求められることと、
を行うように構成される。
【0016】
本実施の形態のうちの少なくとも1つは、包括的には、プログラマブルデバイスにロードすることができるプログラムコード命令を含むコンピュータプログラム製品であって、プログラムコード命令は、プログラムコード命令がプログラマブルデバイスによって実行されると、前の実施の形態のいずれか1つに記載の方法を実施させる、コンピュータプログラム製品に関する。
【0017】
本実施の形態のうちの少なくとも1つは、包括的には、プログラムコード命令を含むコンピュータプログラムを記憶するストレージ媒体であって、プログラムコード命令は、プログラムコード命令がストレージ媒体から読み出され、プログラマブルデバイスによって実行されると、前の実施の形態のいずれか1つに記載の方法を実施させる、ストレージ媒体に関する。
【0018】
本発明の特徴は、実施の形態の少なくとも1つの例の以下の説明を読むことによってより明らかになる。この説明は、添付図面に関して作成されたものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図2】信号プリディストーションの原理を示す図である。
【
図3】Wiener-Hammersteinモデルによってモデル化された非線形チャネルを示す図である。
【
図4A】特定の実施形態によるWiener-Hammersteinモデルの線形フィルタ及び非線形関数を推定する方法を示す図である。
【
図4B】別の特定の実施形態によるWiener-Hammersteinモデルの線形フィルタ及び非線形関数を推定する方法を示す図である。
【
図5】特定の実施形態による
図4A又は
図4Bの方法のステップを詳述するフローチャートである。
【
図6】特定の実施形態による
図4A又は
図4Bの方法の別のステップを詳述するフローチャートである。
【
図7】特定の実施形態による送信機のハードウェアアーキテクチャの一例を概略的に示す図である。
【
図8】特定の実施形態による受信機のハードウェアアーキテクチャの一例を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本実施形態は、
図1に示す衛星通信システム1等の通信システムにおいて実施することができる。衛星通信システムに関して開示される以下の実施形態は、送信機及び受信機が、高電力増幅器を備える通信チャネルを通じて通信する他のタイプの通信システムにも適用することができる。通信チャネルは、第1の線形フィルタと、非線形関数と、第2の線形フィルタとの連続体としてモデル化される。或いは、第1の線形フィルタと、非線形関数と、第2の線形フィルタとの連続体は、通信チャネル全体をモデル化せず、メモリを有する高電力増幅器のみをモデル化する。
【0021】
図3の表記に従うと、Nが正の整数であって、長さNの入力シーケンスをx=[x(1)...x(n)...x(N)]とし、長さL
1の第1の線形フィルタhの出力における信号をu=[u(1)...u(n)...u(N)]とし、非線形関数c(・)の出力における信号をy=[y(1)...y(n)...y(N)]とし、完全チャネルの出力でもある長さL
2の第2の線形フィルタgの出力における信号をw=[w(1)...w(n)...w(N)]とする。第1の線形フィルタhの出力は、以下の式で表されるu(n)である。
【数14】
【0022】
非線形関数は、以下の式のように次数Kの多項式としてモデル化することができる。
【数15】
【0023】
また、振幅|u(n)|が十分に小さいとき、すなわち|u(n)|<μであるときに、この関数が線形であると仮定すると、c(u(n))は、以下の式のように書き換えることができる。
【数16】
【0024】
入力信号の振幅があまり大きくないとき、すなわち閾値μよりも小さいときに、ほとんどの増幅器HPAは線形増幅特性を示すので、上記仮定は有効である。値μは、使用するHPAに依存する。一例として、「入力バックオフ」(IBO)は、多くの場合に、増幅器の飽和レベルとμとの間の差とみなされる。いくつかの場合には、小さな振幅を伴う特性は準線形にすぎない場合があり、この場合、c(u(n))=γ(1)u(n)+εであり、これは、残留する非線形性の影響が雑音項εとして扱われることを意味する。
【0025】
振幅|u(n)|が十分に小さいとき、例えば、|u(n)|<μであるとき、信号は低いピーク振幅を有すると言われる。
【0026】
第2の線形フィルタgの出力は、
【数17】
である。
【0027】
最後に、システムの出力は、
【数18】
である。ここで、e(n)は雑音、すなわち白色雑音である。以下では、雑音e(n)は無視される。すなわち、
【数19】
である。
【0028】
図4Aは、特定の実施形態によるWiener-Hammersteinモデルのフィルタ、すなわちh及びgと、非線形関数c()とを推定する方法のフローチャートを示している。
【0029】
ステップS40において、送信機10は、第1のパイロットシーケンスx1を送信し、受信機14は、第1のシーケンスw1を受信する。長さNの第1のパイロットシーケンスx1は、u=x1*hが低いピーク振幅を有するように、すなわち、uが値μよりも低いピーク振幅を有するか又は少なくともuが低周波数を伴うμを超えるように選ばれる。低いピーク振幅の第1のパイロットシーケンスを使用することによって、増幅器の非線形部分を少なくとも部分的に回避することが可能になる。1つの実施形態では、x1は、hの関連スペクトルを識別するために広帯域である。
【0030】
第1のパイロットシーケンスx
1は、例えば、実信号の場合には、
【数20】
又は複素信号の場合には、
【数21】
等のK個のシヌソイドの和として選ぶことができる。ここで、p
kは、インデックスkのシヌソイドに関連付けられた電力であり、θ
kは、位相であり、Tは、周期信号x
1の周期である。
【0031】
位相θkは、ピーク振幅が最小にされるように選ばれる。実信号の場合に、位相θkを求めることは、例えば、IEEE Trans. Inf. Theo., Vol 16, No 1, Jan 1970に掲載されているSchroeder著の「Synthesis of low-peak-factor signals and binary sequences with low autocorrelation」の文献に開示されているように行うことができる。この文献は、所与の電力スペクトルを有する周期信号の位相角を、そのピークツーピーク振幅を最小にするように調整する方法の問題を検討している。このようにして、一般に低いピーク係数を与える位相角の式が導出される。複素信号の場合に、位相θkを求めることは、vol. 18, no. 4, pp. 531 - 532, Jul. 1972に掲載されているChu著の「Polyphase codes with good periodic correlation properties」の文献に開示されているように行うことができる。フィルタhが線形位相を有する場合には、uのピーク振幅は、x1のピーク振幅と同じである。
【0032】
別の実施形態では、第1のパイロットシーケンスx1は、例えば、疑似白色ランダムパイロットシーケンスとして選ぶことができる。
【0033】
以下では、rは、フィルタh及びgの畳み込み積、すなわちr=h*gと定義される。線形フィルタrの推定値を所与の精度で取得するために、例えば、Aug. 1978に掲載されているRabiner他著の「FIR System Modeling and Identification in the Presence of Noise and with Band-Limited Inputs」の文献に開示されているようにシーケンスx
1の長さNを求めることができる。この文献では、推定値の品質が、以下のQメジャーを介して評価される。
【数22】
ここで、
【数23】
であり、
【数24】
は、推定されたフィルタの係数である。
【0034】
最小二乗法を用いると、Qメジャーは、以下のように近似することができる。
【数25】
SNRの単位はdBである。その結果、N=(L
1+L
2-1)*10
-(Q+SNR)/10となる。SNRは、信号x
1の平均電力と信号e(n)の平均電力との間の比である。Qは、ユーザによって固定される。チャネル推定の品質は、Qの値に依存する。
【0035】
ステップS42において、線形フィルタr=h*gが、最小二乗法を使用してx
1及びw
1に応じて推定される。より正確には、フィルタrのインパルス応答は、最小二乗法を使用して、以下のように推定される。
【数26】
ここで、x
1
Hは、x
1の共役転置、すなわち
【数27】
を示す。x
1が実数である場合には、x
1
Hは、単にx
1の転置である。
【0036】
推定されたフィルタ
【数28】
が得られると、ステップS44において、hのNb個の候補h
iが計算される。ここで、Nbは正の整数である。候補の最大数Nb
maxは、二項係数
【数29】
によって与えられる。z領域では、R(z)=H(z)G(z)である。したがって、多項式R(z)の根は、H(z)又はG(z)のいずれかに由来する。その結果として、H(z)は、R(z)のL
1+L
2個の根の中のL
1個の根の組み合わせのうちの1つから得られる。
【0037】
このステップは、
図5に詳述されている。ステップS440において、
【数30】
は、z変換を適用することによってR(z)に変換される。すなわち、
【数31】
となる。R(z)の根は、ステップS442において求められる。ステップS444において、R(z)は、積H(z)G(z)に因数分解される。H(z)G(z)への複数の因数分解が可能であり、各H(z)は、R(z)のL
1+L
2個の根の中のR(z)のL
1個の根から得られる。このようにして得られた各H(z)は、第1の線形フィルタの1つの候補に対応する。
【0038】
一例として、根z1及びz2を考えると、H(z)=(z-z1)(z-z2)=z2-(z1+z2)*z+z1*z2となる。この場合に、候補フィルタhiの係数は、[1;z1+z2;z1*z2]である。各候補hiには、一意のgiが対応する。R(z)=(z-z1)(z-z2)(z-z3)(z-z4)である場合には、H(z)が(z-z1)(z-z2)に等しいと設定されると、G(z)=(z-z3)(z-z4)となる。したがって、フィルタgiの係数は、[1;z3+z4;z3*z4]である。
【0039】
特定の実施形態では、候補の数を削減するために、すなわちNb<Nbmaxとするために、フィルタhに関するアプリオリ情報が考慮される。例えば、以下の情報を使用することができる。
・推定されたフィルタhがローパスフィルタであるのか又はハイパスフィルタであるのか;及び
・フィルタの複素根の対称性。
【0040】
推定されたフィルタhがローパスフィルタ又はハイパスフィルタであることが分かっている場合には、根はいくつかの値を取ることができない。これによって、Rのいくつかの根が直接排除され、その結果、いくつかの候補hiが排除される。
【0041】
いくつかの対称性が存在する場合には、いくつかの根はグループ分けされ、したがって、H(z)又はG(z)のいずれかに属する。
【0042】
また、Volterra手法において行われるように、フィルタサイズL1及びL2は、それらの真の値(すなわち、推定されるフィルタの値)よりも短いものを選んで、必要に応じて複雑さを削減することができる。
【0043】
ステップS45において、送信機10は、第2のパイロットシーケンスx2を送信し、受信機14は、第2のシーケンスw2を受信する。第2のパイロットシーケンスx2は、そのピーク振幅がx1のピーク振幅よりも高くなるように定義される。より正確には、x2は、u=x2*hが高いピーク振幅を有するように、すなわち、uがμよりも大きなピーク振幅を有するように、又は、少なくとも、uが高い周波数を伴うμを超えるように定義される。
【0044】
ステップS46において、非線形性c(・)が求められ、ステップS42において計算されたNb個の候補の集合の中で、x
2及びw
2に応じて1つの候補h
iが選択される。その結果、一意のg
iが各候補h
iに対応するので、1つのg
iも求められる。このステップは、
図6で詳述される。
【0045】
ステップS42~S46は、送信機10又は受信機14において実施することができる。
【0046】
1つの実施形態では、x1、x2、w1及びw2を知っている受信機14が、ステップS42~S46を実施して、h、c及びgを推定する。その後、受信機14は、信頼できる戻りチャネル又は適用可能な場合にはプリディストーション関数を表す係数を使用して、推定されたh、c及びgを送信機10に送信することができる。上記係数は、推定されたh、c及びgに応じて取得される。送信機10は、その後、推定されたh、c及びgに応じて、考慮対象のプリディストーション関数f’()の適合、又はプリディストーション関数の選択を担当する。後者の場合、コードブック内の各プリディストーション関数は、例えば、ルックアップテーブルによって定義される。
【0047】
一変形形態では、プリディストーション関数のコードブックが使用される場合、受信機14は、推定されたh、c、gに応じてコードブックにおける適切なプリディストーション関数を選択することができ、その後、選択されたプリディストーション関数を識別するインデックスを送信機10に送信する。
【0048】
別の変形形態では、受信機14は、h、c及びgを推定し、その後、その重みが推定されたh、c及びgに応じて適合されている等化関数を適用する。この等化関数は、送信機側において適用されたプリディストーションに取って代わるものである。
【0049】
別の実施形態では、受信機14は、信頼できる戻りチャネルを使用してw1及びw2を送信機10に返信する。この場合に、x1、x2、w1及びw2を知っている送信機10は、ステップS42~S46を実施して、h、c及びgを推定し、その後、推定されたh、c及びgからプリディストーション関数f’()を適合させるか、又は、推定されたh、c及びgに応じてプリディストーション関数のコードブックにおけるプリディストーション関数を選択する。送信機10は、その後、送信される各信号にプリディストーション関数f’()を適用することができる。
【0050】
全ての実施形態において、関連のある信号のあらゆる送信の前にh、c及びgを最終的に推定することができる。一変形形態では、h、c及びgは、定期的に再推定することができる。h、c及びgが推定されるごとに、プリディストーション関数は適合されるか、又は、新たなプリディストーション関数が選択される。一実施形態では、シーケンスx1及びx2は、規格において一意に定義することができる。
【0051】
図4Bによって示される一変形形態では、複数のシーケンスx
1は、例えばコードブックとして規格に定義することができる一方、シーケンスx
2は、最終的に固定される。コードブック(h、c、gの推定用)における1つのシーケンスx
1の選択は、受信機14から送信機10への戻りパスを使用して行うことができる。コードブックにおけるパイロットシーケンスは、例えば、アプリオリに定義された送信順序に配列される。
図4Aのステップと同一の
図4Bのステップは、同じ参照符号を用いて識別される。
【0052】
ステップS40~S42は、コードブックの第1のシーケンスx1を用いて適用される。
【0053】
S42の後、受信機14は、ステップS43において、誤差
【数32】
を閾値μと比較する。誤差
【数33】
が閾値を上回る場合には、受信機14は、対応するw
1を取得するために、送信機10にコードブックの次のシーケンスx
1を選択するように要求するとともに、その後、このシーケンスx
1を送信するように要求するか、又は、自身でコードブックにおいて次のシーケンスx
1を選択し、送信機10にこの選択されたパイロットシーケンスx
1を送信するように要求する。
【0054】
ステップS40~S42は、このように、その誤差
【数34】
が閾値を下回るシーケンスx
1がコードブックにおいて選択されるまで繰り返される。この後者のパイロットシーケンスx
1は、その後、h、c及びgを推定するためにx
2とともに使用される。
【0055】
別の変形形態では、受信機14は、誤差
【数35】
を送信機10に返信する。送信機10は、その後、コードブックにおいて次のパイロットシーケンスx
1を選択し、選択されたパイロットシーケンスx
1を受信機14に送信して対応するw
1を得る。ステップS40~S42は、このように、その誤差
【数36】
が閾値を下回るシーケンスx
1がコードブックにおいて選択されるまで繰り返される。この後者のパイロットシーケンスx
1は、その後、h、c及びgを推定するためにx
2とともに使用される。
【0056】
図6は、特定の実施形態による
図4A又は
図4BのステップS46を詳述するフローチャートを示している。
【0057】
ステップS460において、インデックスiが最初に第1の値i0、例えばi0=0に初期化される。
【0058】
ステップS462において、対応する一意のgiがhiから計算される。G(z)=R(z)/Z(hi)である。一例として、R(z)=(z-z1)(z-z2)(z-z3)(z-z4)である場合には、H(z)が(z-z1)(z-z2)に等しいと設定されると、G(z)=(z-z3)(z-z4)となる。したがって、フィルタgiの係数は、[1;z3+z4;z3*z4]である。また、ui=x2*hiも計算される。
【0059】
Hammersteinモデルでは、w
2は、以下のようにu
iから得られる。
【数37】
【0060】
したがって、ステップS464において、Hammersteinモデルの係数g'
i、すなわちc*gが、最小二乗法を介して、以下のように(u
i,w
2)から求められる。
【数38】
ここで、φ(u
i)=[u
i,u
i
2,...,u
i
K]である。
【0061】
ステップS466において、係数γ
i(k)は、その後、以下のように推定値を平均することによってg’
i及びg
iから計算される。
【数39】
【0062】
ステップS468において、対応するw2,iが、推定されたモデル(hi,γi)を用いてw2,i=ci(x1*hi)*giとして計算される。ここで、ciは、式(1)によってγiから定義される。
【0063】
ステップS470において、(i-i0)がNb-1と比較され、(i-i0)<Nb-1である場合には、iは、S472において1だけ増分され、本方法は、S462において続行される。そうでない場合には、本方法は、S474において続行される。
【0064】
ステップS474において、最小の
【数40】
をもたらすペア(h
i,γ
i)が選択される。ステップS474の後、h、g及びcは、このようにして完全に定義される。より正確には、hは、ステップS474において選択されたh
iであり、gは、選択されたh
iに対応するg
iであり、c()は、ステップS466において計算されたγ
iと、式(1)とから定義される。
【0065】
図7に、特定の実施形態による、送信機10のハードウェアアーキテクチャの一例を概略的に示す。
【0066】
送信機10は、通信バス110によって接続された、プロセッサ又はCPU(Central Processing Unitの頭字語)101と、ランダムアクセスメモリRAM102と、リードオンリーメモリROM103と、ハードディスク又はストレージ媒体リーダ、例えばSD(Secure Digitalの頭字語)カードリーダ等のストレージユニット104と、送信機10がデータを送受信することを可能にする通信インタフェースCOM105の少なくとも1つの集合とを備える。
【0067】
プロセッサ101は、ROM103から、外部メモリ(SDカード等)から、ストレージ媒体(HDD等)から、又は通信ネットワークからRAM102内にロードされた命令を実行することが可能である。送信機10の電源が入れられると、プロセッサ101は、RAM102からの命令を読み出し、これらを実行することが可能である。これらの命令は、プロセッサ101に、
図4A~
図6に関して記載した方法を実施させるコンピュータプログラムを形成する。
【0068】
図4A~
図6に関して記載した方法は、プログラマブル機械、例えば、DSP(Digital Signal Processorの頭字語)、マイクロコントローラ又はGPU(Graphics Processing Unitの頭字語)による命令のセットの実行によってソフトウェアの形態で実施することもできるし、機械又は専用の構成要素(チップ又はチップセット)、例えば、FPGA(Field-Programmable Gate Arrayの頭字語)若しくはASIC(Application-Specific Integrated Circuitの頭字語)によってハードウェアの形態で実施することもできる。概して、送信機10は、
図4A~
図6に関して記載した方法を実施するように適合及び構成された電子回路類を含む。
【0069】
図8に、特定の実施形態による、受信機14のハードウェアアーキテクチャの一例を概略的に示す。
【0070】
受信機14は、通信バス210によって接続された、プロセッサ又はCPU(Central Processing Unitの頭字語)201と、ランダムアクセスメモリRAM202と、リードオンリーメモリROM203と、ハードディスク又はストレージ媒体リーダ、例えばSD(Secure Digitalの頭字語)カードリーダ等のストレージユニット204と、受信機14がデータを送受信することを可能にする通信インタフェースCOM205の少なくとも1つの集合とを備える。
【0071】
プロセッサ201は、ROM203から、外部メモリ(SDカード等)から、ストレージ媒体(HDD等)から、又は通信ネットワークからRAM202内にロードされた命令を実行することが可能である。受信機14の電源が入れられると、プロセッサ201は、RAM202からの命令を読み出し、これらを実行することが可能である。これらの命令は、プロセッサ201に、
図4A~
図6に関して記載した方法を実施させるコンピュータプログラムを形成する。
【0072】
図4A~
図6に関して記載した方法は、プログラマブル機械、例えば、DSP(Digital Signal Processor(デジタル信号プロセッサ)の頭字語)、マイクロコントローラ又はGPU(Graphics Processing Unitの頭字語)による命令のセットの実行によってソフトウェアの形態で実施することもできるし、機械又は専用の構成要素(チップ又はチップセット)、例えば、FPGA(Field-Programmable Gate Arrayの頭字語)若しくはASIC(Application-Specific Integrated Circuitの頭字語)によってハードウェアの形態で実施することもできる。概して、受信機14は、
図4A~
図6に関して記載した方法を実施するように適合及び構成された電子回路類を含む。
【手続補正書】
【提出日】2024-03-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高電力増幅器を備える通信チャネルを通じて通信する送信機及び受信機を備える通信システムにおける方法であって、前記通信チャネルは、サイズL
1の第1の線形フィルタと、非線形関数と、サイズL
2の第2の線形フィルタとの連続体としてモデル化され、L
1及びL
2は正の整数であり、前記方法は、
a)前記送信機から前記受信機への第1のパイロットシーケンスx
1の送信に対応する第1の受信されたシーケンスw
1を取得することであって、前記第1のパイロットシーケンスは、前記第1のパイロットシーケンスを入力として用いて得られる前記第1の線形フィルタの出力が、前記高電力増幅器の飽和レベルに対して低いピーク振幅、又は低い周波数を伴う高いピーク振幅を有するものであることと、
b)前記第1のパイロットシーケンスx
1及び前記第1の受信されたシーケンスw
1に応じてrを推定することであって、rは、前記第1の線形フィルタ及び前記第2の線形フィルタの畳み込みに等しいことと、
c)推定された
【数1】
に応じて前記第1の線形フィルタの複数の候補を求めることと、
d)前記送信機から前記受信機への第2のパイロットシーケンスx
2の送信に対応する第2の受信されたシーケンスw
2を取得することであって、前記第2のパイロットシーケンスは、前記第2のパイロットシーケンスを入力として用いて得られる前記第1の線形フィルタの出力が、前記高電力増幅器の飽和レベルに対して高いピーク振幅を有するものであることと、
e)前記非線形関数を求め、前記複数の候補の中で前記第2のパイロットシーケンスx
2及び前記第2の受信されたシーケンスw
2に応じて前記第1の線形フィルタの1つの候補を選択することであって、前記第2の線形フィルタは、選択された第1の線形フィルタの前記1つの候補から一意に求められることと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記通信システムは衛星通信システムであり、前記高電力増幅器は衛星トランスポンダ内にある、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1のパイロットシーケンスは、前記第1のパイロットシーケンスのコードブックに属し、前記方法は、ステップb)の後に、誤差
【数2】
を閾値と比較し、
【数3】
が前記閾値を上回る場合には前記コードブックの次の第1のパイロットシーケンスとともにステップa)に戻り、そうでない場合にはステップc)へと進むことを更に含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1のパイロットシーケンスx
1及び前記第1の受信されたシーケンスw
1に応じてrを推定することは、最小二乗法を使用して
【数4】
によって
【数5】
を求めることを含み、ここで、x
1
Hはx
1の共役転置を示す、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記推定された
【数6】
に応じて前記第1の線形フィルタの複数の候補を求めることは、
【数7】
をz領域に変換してR(z)にすることと、
R(z)の根を求めることと、
R(z)を複数の積H(z)G(z)に因数分解することであって、各H(z)は、R(z)の根の中のL
1個のR(z)の根を組み合わせたものであり、各H(z)は、前記第1の線形フィルタの1つの候補に対応することと、
を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記非線形関数c()は、以下のように定義され、
【数8】
Kは正の整数であり、
前記非線形関数を求め、前記複数の候補の中で前記第2のパイロットシーケンス及び前記第2の受信されたシーケンスに応じて前記第1の線形フィルタの1つの候補を選択することは、
前記第1の線形フィルタの前記候補h
iのそれぞれについて、
対応する第2の線形フィルタg
iをH(z)及びh
iから計算し、*が畳み込み演算子であるとして、u
i=x
2*h
iを計算することと、
φ(u
i)=[u
i,u
i
2,...,u
i
K]であるとして、最小二乗法を使用して以下のようにg’
iを求めることと、
【数9】
g’
i及びg
iからγ
iを求めることであって、範囲[1;K]内の各整数jについて、
【数10】
であることと、
h
i及びγ
iから、w
2,i=c
i(x
1*h
i)*g
iによってw
2,iを計算することと、
最小の
【数11】
をもたらすペア(h
i,γ
i)を選択することと、
を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
請求項1~3のいずれか1項に記載の方法に従って、前記第1の線形フィルタと、前記非線形関数と、前記第2の線形フィルタとを求めることと、
前記第1の線形フィルタと、前記非線形関数と、前記第2の線形フィルタとからプリディストーション関数を適合させることと、
を含む、プリディストーション方法。
【請求項8】
送信前にプリディストーション関数を適用することによって信号をプリディストーションすることを含み、前記プリディストーション関数は、請求項7に記載のプリディストーション方法に従って適合される、送信方法。
【請求項9】
受信機を備える通信システムにおける送信機であって、前記送信機及び前記受信機は、高電力増幅器を備える通信チャネルを通じて通信し、前記通信チャネルは、サイズL
1の第1の線形フィルタと、非線形関数と、サイズL
2の第2の線形フィルタとの連続体としてモデル化され、L
1及びL
2は正の整数であり、前記送信機は、
a)前記送信機から前記受信機への第1のパイロットシーケンスの送信に対応する第1の受信されたシーケンスを取得することであって、前記第1のパイロットシーケンスは、前記第1のパイロットシーケンスを入力として用いて得られる前記第1の線形フィルタの出力が、前記高電力増幅器の飽和レベルに対して低いピーク振幅、又は低い周波数を伴う高いピーク振幅を有するものであることと、
b)前記第1のパイロットシーケンス及び前記第1の受信されたシーケンスに応じてrを推定することであって、rは、前記第1の線形フィルタ及び前記第2の線形フィルタの畳み込みに等しいことと、
c)推定された
【数12】
に応じて前記第1の線形フィルタの複数の候補を求めることと、
d)前記送信機から前記受信機への第2のパイロットシーケンスの送信に対応する第2の受信されたシーケンスを取得することであって、前記第2のパイロットシーケンスは、前記第2のパイロットシーケンスを入力として用いて得られる前記第1の線形フィルタの出力が、前記高電力増幅器の飽和レベルに対して高いピーク振幅を有するものであることと、
e)前記非線形関数を求め、前記複数の候補の中で前記第2のパイロットシーケンス及び前記第2の受信されたシーケンスに応じて前記第1の線形フィルタの1つの候補を選択することであって、前記第2の線形フィルタは、選択された第1の線形フィルタの前記1つの候補から一意に求められることと、
を行うように構成される、送信機。
【請求項10】
送信機を備える通信システムにおける受信機であって、前記送信機及び前記受信機は、高電力増幅器を備える通信チャネルを通じて通信し、前記通信チャネルは、サイズL
1の第1の線形フィルタと、非線形関数と、サイズL
2の第2の線形フィルタとの連続体としてモデル化され、L
1及びL
2は正の整数であり、前記受信機は、
a)前記送信機から前記受信機への第1のパイロットシーケンスの送信に対応する第1の受信されたシーケンスを取得することであって、前記第1のパイロットシーケンスは、前記第1のパイロットシーケンスを入力として用いて得られる前記第1の線形フィルタの出力が、前記高電力増幅器の飽和レベルに対して低いピーク振幅、又は低い周波数を伴う高いピーク振幅を有するものであることと、
b)前記第1のパイロットシーケンス及び前記第1の受信されたシーケンスに応じてrを推定することであって、rは、前記第1の線形フィルタ及び前記第2の線形フィルタの畳み込みに等しいことと、
c)推定された
【数13】
に応じて前記第1の線形フィルタの複数の候補を求めることと、
d)前記送信機から前記受信機への第2のパイロットシーケンスの送信に対応する第2の受信されたシーケンスを取得することであって、前記第2のパイロットシーケンスは、前記第2のパイロットシーケンスを入力として用いて得られる前記第1の線形フィルタの出力が、前記高電力増幅器の飽和レベルに対して高いピーク振幅を有するものであることと、
e)前記非線形関数を求め、前記複数の候補の中で前記第2のパイロットシーケンス及び前記第2の受信されたシーケンスに応じて前記第1の線形フィルタの1つの候補を選択することであって、前記第2の線形フィルタは、選択された前記第1の線形フィルタの前記1つの候補から一意に求められることと、
を行うように構成される、受信機。
【請求項11】
プログラマブルデバイスにロードすることができるプログラムコード命令を含むコンピュータプログラム製品であって、前記プログラムコード命令は、前記プログラムコード命令が前記プログラマブルデバイスによって実行されると、請求項1~
3のいずれか1項に記載の方法を実施させる、コンピュータプログラム製品。
【請求項12】
プログラマブルデバイスにロードすることができるプログラムコード命令を含むコンピュータプログラム製品であって、前記プログラムコード命令は、前記プログラムコード命令が前記プログラマブルデバイスによって実行されると、請求項7に記載のプリディストーション方法を実施させる、コンピュータプログラム製品。
【請求項13】
プログラマブルデバイスにロードすることができるプログラムコード命令を含むコンピュータプログラム製品であって、前記プログラムコード命令は、前記プログラムコード命令が前記プログラマブルデバイスによって実行されると、請求項8に記載の送信方法を実施させる、コンピュータプログラム製品。
【請求項14】
プログラムコード命令を含むコンピュータプログラムを記憶するストレージ媒体であって、前記プログラムコード命令は、前記プログラムコード命令が前記ストレージ媒体から読み出され、プログラマブルデバイスによって実行されると、請求項1~
3のいずれか1項に記載の方法を実施させる、ストレージ媒体。
【請求項15】
プログラムコード命令を含むコンピュータプログラムを記憶するストレージ媒体であって、前記プログラムコード命令は、前記プログラムコード命令が前記ストレージ媒体から読み出され、プログラマブルデバイスによって実行されると、請求項7に記載のプリディストーション方法を実施させる、ストレージ媒体。
【請求項16】
プログラムコード命令を含むコンピュータプログラムを記憶するストレージ媒体であって、前記プログラムコード命令は、前記プログラムコード命令が前記ストレージ媒体から読み出され、プログラマブルデバイスによって実行されると、請求項8に記載の送信方法を実施させる、ストレージ媒体。
【国際調査報告】