(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-13
(54)【発明の名称】共振器、フィルタ、電子機器、及び共振器の製造方法
(51)【国際特許分類】
H03H 9/17 20060101AFI20240906BHJP
H03H 9/02 20060101ALI20240906BHJP
H03H 3/02 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
H03H9/17 F
H03H9/02 Z
H03H3/02 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023527734
(86)(22)【出願日】2022-10-09
(85)【翻訳文提出日】2023-05-09
(86)【国際出願番号】 CN2022124066
(87)【国際公開番号】W WO2024040696
(87)【国際公開日】2024-02-29
(31)【優先権主張番号】202211024843.6
(32)【優先日】2022-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520296211
【氏名又は名称】見聞録(浙江)半導体有限公司
【氏名又は名称原語表記】JWL (ZHEJIANG) SEMICONDUCTOR CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】BUILDING 3, NO.55, DACHUANWAN ROAD, LONGXI SUB-DISTRICT, HUZHOU, ZHEJIANG 313000, CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100161746
【氏名又は名称】地代 信幸
(72)【発明者】
【氏名】リ リンピン
【テーマコード(参考)】
5J108
【Fターム(参考)】
5J108AA07
5J108BB08
5J108EE03
5J108EE07
5J108KK02
5J108KK03
5J108MM11
(57)【要約】
本案によって提供される共振器は、基板と、底部電極と、圧電層と、頂部電極とを含み、底部電極は基板と圧電層との間に位置し、圧電層は底部電極と頂部電極との間に位置し、底部電極と基板との間に多層のキャビティが設置されており、基板に近い方向から基板から離れる方向において、各層のキャビティの幅が徐々に減少し、後続に多層のキャビティ上に成長された底部電極及び圧電層は、各層のキャビティの接合箇所で形貌変化が減少することにより、形貌変化が大きいことに起因する大きな応力変化を小さくする。同時に、緩やかな形貌変化により、底部電極及び圧電層の成長品質が向上し、成長欠陥を小さくし、デバイスのQ値を向上させる。また、解放チャンネルの高さが、基板に最も近い層のキャビティの高さであるため、その高さが相対的に低減し、基板に最も近い層のキャビティ上を覆う圧電層は形貌変化が減少し、応力急変も減少する。本案はさらに、フィルタ、電子機器、及び共振器の製造方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
共振器であって、基板と、底部電極と、圧電層と、頂部電極とを含み、前記底部電極は前記基板と前記圧電層との間に位置し、前記圧電層は前記底部電極と前記頂部電極との間に位置し、前記底部電極と前記基板との間に多層のキャビティが設置されており、多層の前記キャビティの幅が、前記基板から離れる方向において徐々に減少する、
ことを特徴とする共振器。
【請求項2】
多層の前記キャビティは、基板に近い第1キャビティと、底部電極に近い第2キャビティとを含み、前記第1キャビティは第2キャビティを囲む、
ことを特徴とする請求項1に記載の共振器。
【請求項3】
前記第1キャビティの形状は第2キャビティの形状と異なる、
ことを特徴とする請求項2に記載の共振器。
【請求項4】
前記第1キャビティの一部の領域は、基板に平行な方向に沿って外へ突出して解放チャンネルを形成することにより、第1キャビティの形状を第2キャビティの形状と異ならせる、
ことを特徴とする請求項3に記載の共振器。
【請求項5】
前記第1キャビティは複数のコーナを含み、少なくとも1つの前記コーナは、基板に平行な方向に沿って外へ突出して解放チャンネルを形成する、
ことを特徴とする請求項4に記載の共振器。
【請求項6】
キャビティ内の犠牲層を解放するために、前記解放チャンネルの上方の圧電層に、外界と前記解放チャンネルとを連通するための解放孔が設置されている、
ことを特徴とする請求項4に記載の共振器。
【請求項7】
前記コーナは弧形または角度形をなす、
ことを特徴とする請求項5に記載の共振器。
【請求項8】
多層の前記キャビティの側面は傾斜状、弧形、または階段状をなす、
ことを特徴とする請求項1に記載の共振器。
【請求項9】
多層の前記キャビティの側面は傾斜状をなして傾斜角度が同じである、
ことを特徴とする請求項8に記載の共振器。
【請求項10】
前記底部電極に近いキャビティのエッジが、前記基板に近いキャビティのエッジに対して内に1μm~10μm収縮する、
ことを特徴とする請求項1に記載の共振器。
【請求項11】
前記基板に近いキャビティの高さが、前記底部電極に近いキャビティの高さよりも大きい、
ことを特徴とする請求項1に記載の共振器。
【請求項12】
請求項1~11のいずれかの1項に記載の共振器を含む、
ことを特徴とするフィルタ。
【請求項13】
請求項1~11のいずれかの1項に記載の共振器を含む、
ことを特徴とする電子機器。
【請求項14】
共振器の製造方法であって、
基板を提供するステップと、
前記基板上に底部電極を形成するステップと、
前記底部電極上に圧電層を形成するステップと、
前記圧電層上に頂部電極を形成するステップと、
を含む製造方法において、
前記基板と前記底部電極との間に多層のキャビティを形成し、多層の前記キャビティの幅が、前記基板から離れる方向において徐々に減少する、
ことを特徴とする製造方法。
【請求項15】
多層の前記キャビティの形成方法は、まず前記基板と前記底部電極との間に多層の犠牲層を形成し、前記頂部電極を形成した後、多層の前記犠牲層を除去するステップを含む、
ことを特徴とする請求項14に記載の製造方法。
【請求項16】
前記基板に最も近い犠牲層の材料は、残りの層の犠牲層の材料と同じまたは異なる、
ことを特徴とする請求項15に記載の製造方法。
【請求項17】
前記犠牲層は、リンドープ材料を含む、
ことを特徴とする請求項16に記載の製造方法。
【請求項18】
前記基板に最も近い犠牲層のリンの含有量が、残りの犠牲層のリンの含有量よりも高く、前記基板に最も近い犠牲層の解放速度が、残りの犠牲層の解放速度よりも高い、
ことを特徴とする請求項17に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2022年8月25日にて中国特許庁に提出され、出願番号が202211024843.6であり、発明の名称が「共振器、フィルタ、電子機器、及び共振器の製造方法」である国内出願の優先権を主張し、その全ての内容が本出願に援用される。
【背景技術】
【0002】
電磁スペクトルがますます混雑していること、無線通信機器のバンド、機能が増え続けること、及び無線通信の電磁スペクトルが500MHzから5GHz以上に高周波数に拡大していくことにつれて、性能が高く、コストが低く、消費電力が低く、体積が小さい無線周波数フロントエンドモジュールに対する人々の要求は日々高まっている。フィルタは無線周波数フロントエンドモジュールの1つとして、信号の発信及び受信の改善機能を有し、無線周波数フロントエンドモジュールで重要な役割を果たしている。
【0003】
トポロジーネットワーク構造で複数の共振器によって接続されてなるフィルタは、体積が小さく、集積能力が強く、高周波で依然として高いクオリティファクタを有し、電力負荷能力が強い等の特徴点を有するため、無線周波数フロントエンドモジュールの高水準を満たす。よって、高性能共振器の製造は、現在の人気研究の1つになっている。
【0004】
共振器の基本構造は、頂部電極、底部電極、及び頂部、底部電極間に挟まれた圧電層である。頂部電極の上面が空気と接触することにより、音波は頂部電極と空気との境界箇所で全反射してエネルギー漏れを抑制し、また、底部電極の下方に音波反射構造を設置することにより、エネルギーは基板に漏れることなく、共振器内に蓄えられる。頂部電極と、圧電層と、底部電極と、音波反射構造との重畳領域は共振器の有効領域を形成する。
【0005】
共振器は音波反射構造によって、エアギャップ型共振器(FBAR、film bulk acoustic resonator)と、固体実装型共振器(SMR、solidly mounted resonator)とに分けられる。FBARの音波反射構造はキャビティであり、SMRはブラッグミラーである。エアギャップ型共振器のキャビティは位置によって、基板内に嵌入された地下型キャビティと、基板表面に位置する地上型キャビティとを含む。
【0006】
図1、
図2に示すように、地上型キャビティについて、キャビティの側面が傾斜状であるため、キャビティの高さを保証する前提で、エッチングプロセスの制限により、該傾斜側面の角度が大きいので、その後に傾斜側辺上に成長された底部電極及び圧電層の膜層は大きな形貌変化が発生し、これにより、大きな応力急変を生じ、大きなクラック及び欠陥を容易に生じる。
【0007】
また、キャビティを製作する場合、まず犠牲層を形成し、さらに犠牲層の上方にエッチング方法で少なくとも圧電層を貫通して解放孔を形成する必要があり、腐食性薬液が解放孔を介して犠牲層と接触することで犠牲層を除去することにより、キャビティを形成する。解放孔は共振器の内部に設置されると、有効領域の面積を損失することになる。従って、解放孔を共振器の周辺に設置することが、有効領域の面積を保証できるが、解放孔を形成するために、キャビティの一部の領域を外へ突出させる必要があり、キャビティの突出部分(例えば、
図1における解放チャンネルの位置、及び
図2におけるB位置)は、その上に覆われた圧電層に応力急変を生じさせ、有効領域近傍の圧電性能及びキャビティ構造の信頼性に影響を与え、キャビティは急変箇所で機械的破壊という問題が容易に発生する。
【0008】
従って、地上型キャビティを有するデバイスにおいて、如何に圧電層の応力変化を低減させるかは、当業者が早急に解決しなければならない課題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、圧電層の応力変化を効果的に低減させることができる電子機器、フィルタ、共振器及び共振器の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記技術的課題を解決するために、本発明は、基板と、底部電極と、圧電層と、頂部電極とを含み、前記底部電極は前記基板と前記圧電層との間に位置し、前記圧電層は前記底部電極と前記頂部電極との間に位置する共振器であって、前記底部電極と前記基板との間に多層のキャビティが設置されており、多層の前記キャビティの幅は、前記基板から離れる方向において徐々に減少する、共振器を提供する。
【0011】
または、上記共振器において、多層の前記キャビティは、基板に近い第1キャビティと、底部電極に近い第2キャビティとを含み、前記第1キャビティは第2キャビティを囲む。
【0012】
または、上記共振器において、前記第1キャビティの形状は第2キャビティの形状と異なる。
【0013】
または、上記共振器において、前記第1キャビティの一部の領域は、基板に平行な方向に沿って外へ突出して解放チャンネルを形成することにより、第1キャビティの形状を第2キャビティの形状と異ならせる。
【0014】
または、上記共振器において、前記第1キャビティは複数のコーナを含み、少なくとも1つの前記コーナは、基板に平行な方向に沿って外へ突出して解放チャンネルを形成する。
【0015】
または、上記共振器において、キャビティ内の犠牲層を解放するために、前記解放チャンネルの上方の圧電層に、外界と前記解放チャンネルとを連通するための解放孔が設置されている。
【0016】
または、上記共振器において、前記コーナは弧形または角度形をなす。
【0017】
または、上記共振器において、多層の前記キャビティの側面が傾斜状、弧形、または階段状をなす。
【0018】
または、上記共振器において、多層の前記キャビティの側面が傾斜状をなして傾斜角度が同じである。
【0019】
または、上記共振器において、前記底部電極に近いキャビティのエッジが、前記基板に近いキャビティのエッジに対して内に1μm~10μm収縮する。
【0020】
または、上記共振器において、前記基板に近いキャビティの高さが、前記底部電極に近いキャビティの高さよりも大きい。
【0021】
本発明はさらに、上記に記載の共振器を含むフィルタを提供する。
【0022】
本発明はさらに、上記に記載の共振器を含む電子機器を提供する。
【0023】
本発明はさらに、
共振器の製造方法であって、
基板を提供するステップと、
前記基板上に底部電極を形成するステップと、
前記底部電極上に圧電層を形成するステップと、
前記圧電層上に頂部電極を形成するステップと、
を含む製造方法において、
前記基板と前記底部電極との間に多層のキャビティを形成し、多層の前記キャビティの幅は、前記基板から離れる方向において徐々に減少する、
製造方法を提供する。
【0024】
または、上記製造方法において、多層の前記キャビティの形成方法は、まず前記基板と前記底部電極との間に多層の犠牲層を形成し、前記頂部電極を形成した後、多層の前記犠牲層を除去するステップを含む。
【0025】
または、上記製造方法において、前記基板に最も近い犠牲層の材料は、残りの層の犠牲層の材料と同じまたは異なる。
【0026】
または、上記製造方法において、前記犠牲層は、リンドープ材料を含む。
【0027】
または、上記製造方法において、前記基板に最も近い犠牲層のリンの含有量が、残りの犠牲層のリンの含有量よりも高く、前記基板に最も近い犠牲層の解放速度が、残りの犠牲層の解放速度よりも高い。
【0028】
本発明は共振器を提供し、その有益な効果が以下のことにある。
1、基板から頂部電極への方向において、多層のキャビティの幅が徐々に減少し、圧電層は多層のキャビティ上を覆うことにより、有効領域のエッジの圧電層の形貌を緩やかに変化させ、圧電層の形貌急変を減少し、応力急変を減少し、圧電層の圧電性能を向上させる。
2、解放チャンネルの高さが低減するため、解放チャンネルの上方を覆う圧電層は解放チャンネルのエッジでの形貌急変が減少することにより、応力急変を減少する。同時に、デバイス構造の機械安定性を向上させる。
【0029】
本発明はさらに、上記共振器を適用するフィルタ、電子機器、及び製造方法を提供し、フィルタ、電子機器、及び製造方法は同様に上記有益な効果を有し、ここでは贅言しない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
本発明の実施例または従来技術における技術案をより明らかに説明するために、以下は実施例または従来技術の説明にとって必要な図面を簡単に紹介し、明らかに、以下の記載における図面は本発明の実施例であり、当業者にとって、進歩性に値する労働をしない前提で、提供された図面に応じて他の図面を取得し得る。
【
図1】背景技術の実施例によって提供されるエアギャップ型共振器の平面図である。
【
図3】本発明の実施例によって提供される共振器の平面図である。
【
図5】本発明の実施例によって提供される共振器の製造方法の構造模式図である。
【
図6】本発明の実施例によって提供される共振器の製造方法の構造模式図である。
【
図7】本発明の実施例によって提供される共振器の製造方法の構造模式図である。
【
図8】本発明の実施例によって提供される共振器の製造方法の構造模式図である。
【
図9】本発明の実施例によって提供される共振器の製造方法の構造模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本開示の実施例を、以下で詳細に説明する。前記実施例の例示は、図面に示し、図面において、同一または類似の符号は、同一または類似の素子あるいは同一または類似の機能を有する素子を示す。図面を参照して説明する実施例は、例示的ものであり、単に本発明を解釈するように意図されており、本発明を制限するものと理解されるべきではない。
【0032】
本発明の説明において、方位の説明に関しては、例えば、上、下、前、後、左、右などが指示する方位又は位置関係は図面に基づいて示す方位又は位置関係であり、単に本発明の説明及び説明の簡略化の便宜上のものであり、言及された装置又は素子が特定の方位を有し、特定の方位で構成及び操作されなければならないことを示したり暗示したりすることを意図するものではなく、従って、本発明を制限するものと理解されるべきではない。
【0033】
本発明の説明において、複数の意味は2つ以上であり、第1、第2と記載されると、技術的特徴を区分することを目的とし、相対的な重要性を示したり暗示したりすること、または示す技術的特徴の数量を示唆すること、または示す技術的特徴の前後関係を示唆することと理解されるべきではない。
【0034】
本発明の説明において、別途明確な限定がない限り、設置、実装、接続等の用語は広義に解されるべきであり、当業者であれば、技術案の具体的な内容を結合して本発明における上記用語の具体的な意味を合理的に特定することができる。
【0035】
本発明の核心は、圧電層の応力変化を効果的に低減させることができる電子機器、フィルタ、共振器及び共振器の製造方法を提供することである。
【0036】
当業者によりよく本発明によって提供される技術案を理解させるために、以下は図面と具体的な実施例を結合して、本発明を詳しく説明する。
【0037】
背景技術の
図1、
図2に示す通常の共振器を参照し、キャビティの高さhが一定である場合、キャビティの側面の傾斜度sがキャビティの幅wと負の相関があり、即ち、傾斜度が小さいほど、圧電層の形貌変化が小さくなり、応力急変も小さくなるが、キャビティが広いほど、共振器のサイズも大きくなり、これは、共振器の小型化に不利である。幅wが一定である場合、傾斜度sが高さhと正の相関があり、即ち、傾斜度が小さいほど、圧電層の形貌変化が小さくなり、応力急変も小さくなるが、キャビティの高さが小さいほど、共振器が共振する場合、共振薄膜と基板とが接着することが発生するリスクがある。
【0038】
圧電層の形貌変化が大きい場合、応力急変が大きくなり、膜層の応力分布の不均一を生じることになり、これにより、エネルギーの損失、または膜の膨らみ等の課題を引き起こし、さらにデバイスの性能を大きく低減させ、ひいてはデバイスを損害させ、特に2.5GHz以上の高周波バンドのデバイスについて、膜層の応力分布の不均一により、共振器の性能を低減させ、歩留まりが低く、または信頼性に問題が現れる。
【0039】
よって、有効領域のエッジの圧電層の応力急変を減少するために、キャビティの高さh、幅wを一定に保証する場合、傾斜度sを減少することは、応力急変を減少する形態の1つである。
【0040】
上記分析に基づいて、
図3~
図9に示すように、
図3は、本発明の実施例によって提供される共振器の平面図であり、
図4は、
図3のA-A方向での断面図であり、
図5~9は、本発明の実施例によって提供される共振器の製造方法の構造模式図である。
【0041】
本発明の実施例によって提供される共振器は、基板100と、底部電極300と、圧電層400と、頂部電極500とを含む。底部電極300は基板100と圧電層400との間に位置し、圧電層400は底部電極300と頂部電極500との間に位置する。
【0042】
特に、底部電極300と基板100との間に多層のキャビティが設置されており、多層のキャビティの幅が、基板100から離れる方向において徐々に減少する。底部電極300は多層のキャビティの上面を覆って基板100上まで延在し、基板100の上方で囲んでキャビティを形成し、底部電極300の側面がキャビティの一部分となる。圧電層400は多層のキャビティ及び底部電極300を覆って両端が基板100上まで延在し、基板100に平行な方向において、圧電層400の厚さが基本的に変化しない。頂部電極500は圧電層400上に位置し、少なくとも1つの先端がキャビティのエッジ内側にあり、例えば、頂部電極500、圧電層400及び底部電極300の3つが重畳して余分な寄生振動を生じることを回避するように、頂部電極500の外部に接続しない非接続端がキャビティのエッジ内側にある。
【0043】
本発明は地上型キャビティを多層のキャビティとして設置し、そして、基板100に近い方向から基板100から離れる方向において、各層のキャビティの幅が徐々に減少し、後続に多層のキャビティ上に成長された底部電極300及び圧電層400は、各層のキャビティの接合箇所で形貌変化が減少し、例えば、有効領域のエッジ、即ち、C位置で、圧電層400は、1回の大きな形貌変化から、複数回の小さな形貌変化に転換し、底部電極300及び圧電層400は、多層のキャビティのエッジで形貌が緩やかに変化し、これにより、形貌変化が大きいことに起因する大きな応力変化を減少する。同時に、緩やかな形貌変化により、底部電極300及び圧電層400の成長品質が向上し、成長欠陥を減少し、デバイスのQ値を向上させる。
【0044】
また、基板100に最も近い層のキャビティの一部の領域は、外へ突出して解放チャンネル420を形成し、それに、解放チャンネル420の上方の圧電層400内に解放孔410を設置し、解放溶液は解放孔及び解放チャンネルを介してキャビティ内に入り、犠牲層600は解放溶液と接触し反応することで、キャビティ内の犠牲層600を解放してキャビティを形成する。この場合、解放チャンネル420の高さが、基板100に最も近い層のキャビティの高さであり、全体的な多層のキャビティの高さに対して、解放チャンネル420の高さが低減し、これにより、基板100に最も近い層のキャビティ上を覆う圧電層400は形貌変化が減少し、応力急変も減少する。同時に、共振領域の有効面積の最大化を保証でき、同時に、解放チャンネル420のレイアウトの柔軟性を向上させ、共振器の接続時の設計レイアウトを便利にさせる。
【0045】
具体的な実施例では、
図3、
図4に示すように、多層のキャビティは少なくとも、基板100に近い第1キャビティ210と、底部電極300に近い第2キャビティ220とを含み、第1キャビティ210は第2キャビティ220を囲む。第1キャビティ210は基板100に平行な方向に沿って外へ突出して1つ以上の解放チャンネル420を形成するため、第1キャビティ210の形状は突出部分のため、他の層のキャビティの形状と異なる。
【0046】
少なくとも1層のキャビティ(即ち、基板100に最も近い層のキャビティ)の形状は他の層の形状と異なり、他の層の形状は、同じまたは異なるように設置できると理解できる。
【0047】
多層のキャビティは規則な多角形であってもよいし、不規則な多角形であってもよく、本実施例は具体的に限定しない。1つの形態では、第1キャビティ210は複数のコーナを有し、少なくとも1つのコーナは、基板100に平行な方向に沿って外へ突出して解放チャンネル420を形成する。第1キャビティ210以外の他の層のキャビティも複数のコーナを有する。応力急変を減少するために、コーナは、弧形または角度形、例えば、直角形に設計される。
【0048】
なお、解放チャンネル420は第2キャビティ220のコーナに設置されてもよいし、当然に第2キャビティ220のコーナに対応しない位置に設置されてもよく、本実施例は具体的に限定せず、解放チャンネル420の数は少なくとも1つであり、犠牲層600の解放を速めにさせるために、複数の解放チャンネル420を設置してもよい。
【0049】
多層のキャビティの側面は傾斜状、弧形、または階段状をなす。多層のキャビティの傾斜角度が同じであってもよいし、異なってもよい。実際の応力状況に応じて適応的に選択することができる。多層のキャビティの高さの設置は、任意の比例であってもよい。好ましい状況では、優れた応力変化を実現するために、底部電極300に近いキャビティのエッジが、基板100に近いキャビティのエッジに対して内に1μm~10μm収縮する。犠牲層600の解放を便利にさせるように、基板100に近いキャビティの高さが、底部電極300に近いキャビティの高さよりも大きい。
【0050】
従来技術は通常、キャビティの外周近傍に、例えば、犠牲層600の斜面上の側面上に解放孔410を設置するように選択し、解放孔410が有効領域に近いと、有効領域の応力分布を破壊し、有効領域の圧電性の変化範囲を大きくなり、デバイスの歩留まりに影響を与える。また、側面に解放孔410を加工することは、プロセスに対する要求が高く、プロセスコストをアップする。一方、本発明で設計した解放孔410は、斜面上ではなく、第1キャビティ210と第2キャビティ220との間のプラットフォームの上方に解放孔を設置するものであり、加工を便利にさせ、プロセスに対する要求が高くない。
【0051】
以下、2層のキャビティを例示として説明する。第2キャビティ220は略五角形であり、第1キャビティ210は第2キャビティ220の周辺にあり、それに、第2キャビティ220に対応する5つのコーナ箇所でそれぞれに外へ突出して5つの解放チャンネル420を形成し、解放チャンネル420の上方に解放孔410が設置される。
【0052】
第1キャビティ210は第2キャビティ220よりも約1μm~10μm広く、好ましくは、3μmである。有効領域のエッジでの圧電層400の応力急変を減少するように、第1キャビティ210の高さh1が第2キャビティ220の高さh2よりも大きく、他の実施例では、h1はh2以下であってもよく、本実施例はさらに限定しない。
【0053】
解放チャンネル420の幅w1(
図3に示すように)が15μm以上であり、解放孔410の直径が約20μm以内であり、好ましくは、10μmである。
【0054】
2層のキャビティのエッジの傾斜角度は同じであってもよいし、例えば、ともに30°または45°であり、異なってもよく、例えば、上方のキャビティが15°、下方のキャビティが30°であり、或いは、実際の適用に応じて設置される他の任意の数値である。
【0055】
なお、本発明はさらに、上記の共振器を含むフィルタを提供する。本発明はさらに、上記の共振器を含む電子機器を提供する。
【0056】
なお、本発明の核心は上記共振器にあり、本実施例によって提供されるフィルタ及び電子機器の他の構造について、関連する従来技術を参照可能であり、ここでは贅言しない。
【0057】
図5~
図9を参照し、本発明はさらに、共振器の製造方法を提供し、上記のような共振器を適用し、製造方法は、ステップ1~ステップ5を含み、
ステップ1、
図5に示すように、基板100を提供し、基板100の上面に犠牲層600を覆い、エッチングすることによりパターニングされた犠牲層600について、犠牲層600は少なくとも2層であり、基板100に近い層の犠牲層600の一部分が外へ突出し、
ステップ2、
図6に示すように、パターニングされた犠牲層600及び基板100の表面に底部電極300を形成し、底部電極300の一部分が突出部分の上方に位置し、非突出部分の位置で、底部電極300は犠牲層600の表面を覆って基板100上まで延在し、
ステップ3、
図7に示すように、底部電極300の表面に圧電層400を形成し、圧電層400は犠牲層600及び底部電極300を覆って基板100上まで延在し、
ステップ4、
図8に示すように、圧電層400の表面に頂部電極500を成長させ、頂部電極500をエッチングすることにより、頂部電極500の非接続先端を、キャビティを形成する犠牲層600のエッジ内側に位置させ、
ステップ5、
図9に示すように、犠牲層600の突出部分の上方に、圧電層400を犠牲層600までエッチングして解放孔410を形成し、犠牲層600を解放し、突出部分が解放チャンネル420を形成し、それに、底部電極300と基板100との間に多層のキャビティを形成し、この場合、多層のキャビティの幅が、基板100から離れる方向において徐々に減少する。
【0058】
上記製造方法を基礎とし、基板100に最も近い犠牲層600の材料は、残りの層の犠牲層600の材料と同じまたは異なる。犠牲層600は少なくとも、リンドープ材料を含む。犠牲層600の材料はさらに、Ge、Sb、Ti、Al、Cu等の金属、リンケイ酸ガラス(PSG)、またはポリマーを含んでもよく、好ましくは、リンをドープしたSiO2(PSG)である。他の状況では、犠牲層600はSi、Poly(ポリシリコン)、または他の媒体材料、或いは、金属材料と媒体材料との組み合わせであってもよい。媒体または金属は、CVD、PVD、蒸着等のプロセスによって実現できる。
【0059】
さらには、基板100に最も近い犠牲層600の解放速度が、底部電極300に近いものの解放速度よりも高く、例えば、通常のTi、Al等の金属は基板に近い犠牲層600上に設置され、フッ化水素酸に素早く溶解して解放効果を達成することができ、或いは、基板100に最も近い犠牲層600のリンの含有量が、残りの犠牲層600のリンの含有量よりも高く、これにより、基板100に最も近い犠牲層600の解放速度が、残りの犠牲層600の解放速度よりも高く、この場合、底部電極300に近い犠牲層600の解放速度を緩やかにさせ、応力を減少させることができる。
【0060】
具体的な実施例では、基板100の材料は、シリコン(Si)、サファイア(sapphire)、ポリシリコン(poly)、シリカ(SiO2)、ヒ化ガリウム(GaAs)、スピネル(spinel)、ガラス、またはセラミックス材料であってもよく、好ましくは、シリコン(Si)である。底部電極300の材料は、金(Au)、モリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)、アルミニウム(Al)、プラチナ(Pt)、チタン(Ti)、タングステン(W)、パラジウム(Pd)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)等であってもよく、好ましくは、モリブデン(Mo)である。圧電層400の材料は、酸化亜鉛(ZnO)、硫化亜鉛(ZnS)、窒化アルミニウム(AlN)、硫化カドミウム(CdS)、チタン酸鉛[PT](PbTiO3)、チタン酸ジルコン酸鉛[PZT](Pb(Zr、Ti)O3)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、またはチタン酸ジルコン酸鉛ランタン系の他のメンバーによって作成されてもよく、好ましくは、窒化アルミニウム(AlN)である。頂部電極500の材料は、底部電極300の材料と同じまたは異なってもよく、金(Au)、モリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)、アルミニウム(Al)、プラチナ(Pt)、チタン(Ti)、タングステン(W)、パラジウム(Pd)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)等であってもよく、好ましくは、頂部電極500と底部電極300とは材料が同じであり、ともにモリブデン(Mo)である。
【0061】
本明細書の各々の実施例は、累進的な方式で説明している。各実施例は、他の実施例と異なる点に重点を置いて説明している。種々の実施例の同じ、あるいは類似部分は、相互に参照すればよい。
【0062】
本明細書において、具体的な例を利用して本発明の原理及び実施形態を記載し、以上の実施例に対する説明は、ただ本発明の方法及びその核心思想に対する理解のために用いられる。当業者にとって、本発明の原理から離脱しない前提で、本発明に対して若干の改良及び修飾を行ってもよく、これらの改良及び修飾も本発明の請求項の保護範囲に該当する。
【符号の説明】
【0063】
S100 ・・・基板;
S200 ・・・キャビティ;
S300 ・・・底部電極;
S400 ・・・圧電層;
S410 ・・・解放孔;
S420 ・・・解放チャンネル;
S500 ・・・頂部電極;
100 ・・・基板;
210 ・・・第1キャビティ;
220 ・・・第2キャビティ;
300 ・・・底部電極;
400 ・・・圧電層;
410 ・・・解放孔;
420 ・・・解放チャンネル;
500 ・・・頂部電極;
600 ・・・犠牲層;
B ・・・圧電層の形貌;
C ・・・圧電層の有効領域のエッジ。
【国際調査報告】