(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-13
(54)【発明の名称】スイッチング電源の制御方法、回路及びスイッチング電源
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20240906BHJP
【FI】
H02M3/28 H
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023574311
(86)(22)【出願日】2022-08-30
(85)【翻訳文提出日】2023-11-30
(86)【国際出願番号】 CN2022115751
(87)【国際公開番号】W WO2024044944
(87)【国際公開日】2024-03-07
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523389615
【氏名又は名称】ビーシーディー シャンハイ マイクロ―エレクトロニクス カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100137969
【氏名又は名称】岡部 憲昭
(74)【代理人】
【識別番号】100104824
【氏名又は名称】穐場 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100121463
【氏名又は名称】矢口 哲也
(72)【発明者】
【氏名】イン, ツェン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,フェン
(72)【発明者】
【氏名】ジャオ,アンドン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ボー
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA02
5H730AA14
5H730AS01
5H730BB43
5H730BB57
5H730DD02
5H730FD01
5H730FD11
5H730FD25
5H730VV01
(57)【要約】
スイッチング電源の制御方法、回路及びスイッチング電源であって、スイッチング電源の技術分野に関する。該手法では、スイッチング電源の共振周期信号をリアルタイムに検出し、共振周期信号に遅延時間を重畳することで、制御信号に、共振周期信号及び遅延信号に基づいて、共振波形の目標バレー付近の所定の範囲内でスイッチング電源の一次側パワースイッチングトランジスタの導通を制御させており、そのうち、遅延時間は第1パラメータ及び第2パラメータと関連しており、第1パラメータは一定範囲内で時間に伴って変化する設定値であり、第2パラメータはスイッチング電源の共振周期に関連する関数である。本願では、スイッチング電源の共振周期信号をリアルタイムに検出できるとともに、スイッチング電源の共振周期信号及び遅延時間に基づいてスイッチング電源の一次側パワースイッチングトランジスタを目標バレー付近の所定の範囲内で確実に導通させて、制御の精度を高めていることがわかる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング電源の制御方法において、
スイッチング電源の共振周期信号をリアルタイムに検出することと、
前記共振周期信号に遅延時間を重畳することで、制御信号に、前記共振周期信号及び前記遅延信号に基づいて、共振波形の目標バレー付近の所定の範囲内で前記スイッチング電源の一次側パワースイッチングトランジスタの導通を制御させることと、を含み、
前記遅延時間は第1パラメータ及び第2パラメータと関連しており、前記第1パラメータは一定範囲内で時間に伴って変化する設定値であり、前記第2パラメータは前記スイッチング電源の共振周期に関連する関数であることを特徴とする、
スイッチング電源の制御方法。
【請求項2】
前記所定の範囲は、前記第1パラメータに関連する周期的変化関数と関連しており、
前記共振周期信号に遅延時間を重畳することで、制御信号に、前記共振周期信号及び前記遅延信号に基づいて、共振波形の目標バレー付近の所定の範囲内で前記スイッチング電源の一次側パワースイッチングトランジスタの導通を制御させることが、
前記第1パラメータに関連する周期的変換関数の関数値がゼロである場合に、前記第2パラメータを調整して、前記共振周期信号及び前記遅延信号に基づいて、前記制御信号を前記共振波形における目標バレーの中心または左側または右側の基準位置に対応させることと、
前記基準位置に前記第1パラメータの周期的変化関数の関数値を重畳して、前記制御信号に、前記目標バレーの所定の範囲内で前記スイッチング電源の一次側パワースイッチングトランジスタの導通を制御させることと、を含むことを特徴とする、
請求項1に記載のスイッチング電源の制御方法。
【請求項3】
前記第2パラメータを調整することが、
前記共振波形の共振周期を取得することと、
前記共振周期に基づいて第2パラメータを自己適応調整することで、前記制御信号に前記目標バレーにおいて前記一次側パワースイッチングトランジスタの導通を制御させることと、を含むことを特徴とする、
請求項2に記載のスイッチング電源の制御方法。
【請求項4】
前記共振波形の共振周期を取得することが、
前記共振波形中の若干の連続バレーまたは連続ピークまたは連続ゼロクロッシング点の間の時間の和を取得することと、
前記時間の和と前記バレーまたは前記ピークまたは前記ゼロクロッシング点の個数に基づいて前記共振周期を計算することと、を含むことを特徴とする、
請求項3に記載のスイッチング電源の制御方法。
【請求項5】
前記第2パラメータを調整することが、
所定の時間間隔で前記スイッチング電源の動作パラメータを取得することと、
前記動作パラメータ及び事前設定動作パラメータ-第2パラメータのマッピング関係に基づいて前記第2パラメータを確定することと、を含むことを特徴とする、
請求項2に記載のスイッチング電源の制御方法。
【請求項6】
所定の時間間隔で前記スイッチング電源の動作パラメータを取得した後、さらに、
前記動作パラメータに変化が生じたか否かを判断することと、
変化が生じた場合は、前記動作パラメータ及び事前設定動作パラメータ-第2パラメータのマッピング関係に基づいて前記第2パラメータを確定するステップに進むことと、を含むことを特徴とする、
請求項5に記載のスイッチング電源の制御方法。
【請求項7】
前記動作パラメータに変化が生じたか否かを判断することが、
前記動作パラメータのレベルに変化が生じたか否かを判断することと、
前記レベルに変化が生じている場合、前記動作パラメータに変化が生じたと判定することと、を含むことを特徴とする、
請求項6に記載のスイッチング電源の制御方法。
【請求項8】
前記動作パラメータが、前記スイッチング電源の一次側入力電圧、二次側出力電圧及び負荷値のうちの1種または数種の組合わせを含むことを特徴とする、請求項5に記載のスイッチング電源の制御方法。
【請求項9】
前記動作パラメータが前記スイッチング電源の一次側入力電圧及び二次側出力電圧を含む場合、
前記スイッチング電源の動作パラメータを取得することが、
前記一次側パワースイッチングトランジスタが導通した時に、補助巻線の電圧、前記補助巻線の巻数及び一次側巻線の巻数に基づいて前記一次側入力電圧を計算することと、
前記二次側スイッチングトランジスタが導通した時に、前記補助巻線の電圧、前記補助巻線の巻数及び二次側巻線の巻数に基づいて前記二次側出力電圧を計算することと、を含み、
前記補助巻線と前記一次側巻線が共通ベースであることを特徴とする、
請求項8に記載のスイッチング電源の制御方法。
【請求項10】
前記動作パラメータが負荷値を含む場合、
前記スイッチング電源の動作パラメータを取得することが、
前記スイッチング電源内の前記一次側パワースイッチングトランジスタのスイッチング周波数を取得することと、
前記スイッチング周波数に基づいて前記負荷値を確定することと、を含み、
前記負荷値が前記スイッチング周波数と正相関することを特徴とする、
請求項8に記載のスイッチング電源の制御方法。
【請求項11】
前記共振周期信号に遅延時間を重畳することで、制御信号に、前記共振周期信号及び前記遅延信号に基づいて、共振波形の目標バレー付近の所定の範囲内で前記スイッチング電源の一次側パワースイッチングトランジスタの導通を制御させることが、
前記スイッチング電源の負荷値に基づいて前記目標バレーを確定した後、前記目標バレーの1つ前のバレーの1つ前のゼロクロッシング点を検出することと、
前記1つ前のゼロクロッシング点に対応する制御信号を前記遅延時間だけ遅らせた時刻を導通時刻とすることで、前記制御信号に、前記導通時刻において前記一次側パワースイッチングトランジスタの導通を制御させることと、を含むことを特徴とする、
請求項1~10のいずれかに記載のスイッチング電源の制御方法。
【請求項12】
スイッチング電源の制御回路において、
前記スイッチング電源の共振周期信号をリアルタイムに検出するための検出ユニットと、
前記共振周期信号に遅延時間を重畳することで、制御信号に、前記共振周期信号及び前記遅延信号に基づいて、共振波形の目標バレー付近の所定の範囲内で前記スイッチング電源の一次側パワースイッチングトランジスタの導通を制御させるための制御ユニットと、を含み、
前記遅延時間は第1パラメータ及び第2パラメータと関連しており、前記第1パラメータは一定範囲内で時間に伴って変化する設定値であり、前記第2パラメータは前記スイッチング電源の共振周期に関連する関数であることを特徴とする、
スイッチング電源の制御回路。
【請求項13】
前記制御ユニットが、
前記第1パラメータに関連する周期的変換関数の関数値がゼロである場合に、前記第2パラメータを調整して、前記共振周期信号及び前記遅延信号に基づいて、前記制御信号を前記共振波形における目標バレーの中心または左側または右側の基準位置に対応させるための共振バレー対応回路と、
前記基準位置に前記第1パラメータの周期的変化関数の関数値を重畳して、前記制御信号に、前記目標バレーの所定の範囲内で前記スイッチング電源の一次側パワースイッチングトランジスタの導通を制御させるためのジッタ周波数回路と、を含むことを特徴とする、
請求項12に記載のスイッチング電源の制御回路。
【請求項14】
スイッチング電源において、請求項12または13に記載のスイッチング電源の制御回路を含むことを特徴とする、スイッチング電源。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング電源の技術分野、特にスイッチング電源の制御方法、回路及びスイッチング電源に関する。
【背景技術】
【0002】
フライバックスイッチング電源システムでは、一次側パワースイッチングトランジスタが遮断されると、二次ダイオードが導通し、変圧器に貯蔵されているエネルギーが二次側に移動し始める。エネルギー伝達が終了すると、二次ダイオードがオフになり、この時、変圧器内の励磁インダクタンスと一次側パワースイッチングトランジスタの寄生容量に減衰の共振が生じ、該共振は次の一次側パワースイッチングトランジスタが導通するまで維持される。
【0003】
一次側パワースイッチングトランジスタの損耗を減らすために、既存の技術では、通常、バレーロックアウトのQR(quasi resonant、擬似共振)モードによって、一次側パワースイッチングトランジスタの導通を制御している。具体的には、一次側パワースイッチングトランジスタの共振波形のいずれかのバレー部分の導通を制御することで(一次側パワースイッチングトランジスタがMOSトランジスタの場合、この時のMOS(metal-oxide-semiconductor、金属酸化物半導体電界効果トランジスタ)のVdsはかなり大きい)、一次側パワースイッチングトランジスタの損耗を減らし、システムの効率を向上させることができる。しかし、システムの運行過程で、毎回、共振波形の中の同じバレーを選択して一次側パワースイッチングトランジスタを導通させると、システムのスイッチング周波数が不変に保たれ、この時、システムのEMI(Electromagnetic Interference、電磁干渉)性能が悪くなる。
【0004】
システムのEMI性能をさらに改善するために、QRモードにおいて負の半周期の共振周期のジッタ周波数を重畳する。具体的には、一次側パワースイッチングトランジスタが、選定されたバレーの所在する負の半周期上のいずれかの時刻に導通するよう制御する。例えば、選定されたバレーが2つ目のバレーである場合、一次側パワースイッチングトランジスタをそれぞれ2つ目のバレーの左側で、かつ負の半周期範囲内の任意の時刻に導通するよう制御し、または2つ目のバレーの右側で、かつ負の半周期範囲内の任意の時刻に導通するよう制御することができる。その具体的な実現方式とは、共振波形中の2つ目のバレーの前のゼロ点を検出した場合、所定の時間だけ遅延させて一次側パワースイッチングトランジスタの導通を制御することで(この所定の時間は変化値であり、かつ共振周期の1/2を上回らないことで、一次側パワースイッチングトランジスタの導通する時刻が2つ目のバレーの所在する負の半周期内にあることを保証している)、システムのスイッチング周波数が変化するようにし、それによりシステムのEMI性能を改善するというものである。
【0005】
しかし、広い範囲の入力、多段電圧出力のフライバックスイッチング電源システムについては、入力/出力電圧及び負荷が異なる状況では、対応する共振周期が異なるため、上記の方式を使用して一次側パワースイッチングトランジスタを制御する場合には、一次側パワースイッチングトランジスタが共振波形の正の半周期に導通する可能性があり、つまり、既存技術の方式では、一次側パワースイッチングトランジスタを選定されたバレーの負の半周期のいずれかの時刻において精確に導通させることができないので、精度が悪くなるのである。
【発明の概要】
【0006】
本願の目的は、スイッチング電源の制御方法、回路及びスイッチング電源を提供することにより、スイッチング電源の共振周期信号をリアルタイムに検出できるとともに、スイッチング電源の共振周期信号及び遅延時間に基づいてスイッチング電源の一次側パワースイッチングトランジスタを目標バレー付近の所定の範囲内で確実に導通させるよう制御して、制御の精度を高めることにある。
【0007】
上記の技術的課題を解決するために本願で提供するスイッチング電源の制御方法は、
前記スイッチング電源の共振周期信号をリアルタイムに検出することと、
前記共振周期信号に遅延時間を重畳することで、制御信号に、前記共振周期信号及び前記遅延信号に基づいて、共振波形の目標バレー付近の所定の範囲内で前記スイッチング電源の一次側パワースイッチングトランジスタの導通を制御させることと、を含み、
そのうち、前記遅延時間は第1パラメータ及び第2パラメータと関連しており、前記第1パラメータは一定範囲内で時間に伴って変化する設定値であり、前記第2パラメータは前記スイッチング電源の共振周期に関連する関数である。
【0008】
好適には、前記所定の範囲は、前記第1パラメータに関連する周期的変化関数に関連しており、
前記共振周期信号に遅延時間を重畳することで、制御信号に、前記共振周期信号及び前記遅延信号に基づいて、共振波形の目標バレー付近の所定の範囲内で前記スイッチング電源の一次側パワースイッチングトランジスタの導通を制御させることは、
前記第1パラメータに関連する周期的変換関数の関数値がゼロである場合に、前記第2パラメータを調整して、前記共振周期信号及び前記遅延信号に基づいて、前記制御信号を前記共振波形における目標バレーの中心または左側または右側の基準位置に対応させることと、
前記基準位置に前記第1パラメータの周期的変化関数の関数値を重畳して、前記制御信号に、前記目標バレーの所定の範囲内で前記スイッチング電源の一次側パワースイッチングトランジスタの導通を制御させることと、を含む。
【0009】
好適には、前記第2パラメータを調整することは、
前記共振波形の共振周期を取得することと、
前記共振周期に基づいて第2パラメータを自己適応調整することで、前記制御信号に前記目標バレーにおいて前記一次側パワースイッチングトランジスタの導通を制御させることと、を含む。
【0010】
好適には、前記共振波形の共振周期を取得することは、
前記共振波形中の若干の連続バレーまたは連続ピークまたは連続ゼロクロッシング点の間の時間の和を取得することと、
前記時間の和と前記バレーまたは前記ピークまたは前記ゼロクロッシング点の個数に基づいて前記共振周期を計算することと、を含む。
【0011】
好適には、前記第2パラメータを調整することは、
所定の時間間隔で前記スイッチング電源の動作パラメータを取得することと、
前記動作パラメータ及び事前設定動作パラメータ-第2パラメータのマッピング関係に基づいて前記第2パラメータを確定することと、を含む。
【0012】
好適には、所定の時間間隔で前記スイッチング電源の動作パラメータを取得した後、さらに、
前記動作パラメータに変化が生じたか否かを判断することと、
変化が生じた場合は、前記動作パラメータ及び事前設定動作パラメータ-第2パラメータのマッピング関係に基づいて前記第2パラメータを確定するステップに進むことと、を含む。
【0013】
好適には、前記動作パラメータに変化が生じたか否かを判断することは、
前記動作パラメータのレベルに変化が生じたか否かを判断することと、
前記レベルに変化が生じている場合、前記動作パラメータに変化が生じたと判定することと、を含む。
【0014】
好適には、前記動作パラメータは、前記スイッチング電源の一次側入力電圧、二次側出力電圧、負荷値のうちの1種または数種の組合わせを含む。
【0015】
好適には、前記動作パラメータが前記スイッチング電源の一次側入力電圧及び二次側出力電圧を含む場合、
前記スイッチング電源の動作パラメータを取得することは、
前記一次側パワースイッチングトランジスタが導通した時に、補助巻線の電圧と、前記補助巻線の巻数と、一次側巻線の巻数に基づいて前記一次側入力電圧を計算することと、
前記二次側スイッチングトランジスタが導通した時に、前記補助巻線の電圧、前記補助巻線の巻数及び二次側巻線の巻数に基づいて前記二次側出力電圧を計算することと、を含み、
そのうち、前記補助巻線と前記一次側巻線は共通ベースである。
【0016】
好適には、前記動作パラメータが負荷値を含む場合、
前記スイッチング電源の動作パラメータを取得することは、
前記スイッチング電源内の前記一次側パワースイッチングトランジスタのスイッチング周波数を取得することと、
前記スイッチング周波数に基づいて前記負荷値を確定することと、を含み、
そのうち、前記負荷値は前記スイッチング周波数と正相関する。
【0017】
好適には、前記共振周期信号に遅延時間を重畳することで、制御信号に、前記共振周期信号及び前記遅延信号に基づいて、共振波形の目標バレー付近の所定の範囲内で前記スイッチング電源の一次側パワースイッチングトランジスタの導通を制御させることは、
前記スイッチング電源の負荷値に基づいて前記目標バレーを確定した後、前記目標バレーの1つ前のバレーの1つ前のゼロクロッシング点を検出することと、
前記1つ前のゼロクロッシング点に対応する制御信号を前記遅延時間だけ遅らせた時刻を導通時刻とし、前記制御信号に、前記導通時刻において前記一次側パワースイッチングトランジスタの導通を制御させることと、を含む。
【0018】
上記の技術的課題を解決するために本願で提供しているスイッチング電源の制御回路は、
前記スイッチング電源の共振周期信号をリアルタイムに検出するための検出ユニットと、
前記共振周期信号に遅延時間を重畳することで、制御信号に、前記共振周期信号及び前記遅延信号に基づいて、共振波形の目標バレー付近の所定の範囲内で前記スイッチング電源の一次側パワースイッチングトランジスタの導通を制御させるための制御ユニットと、を含み、
そのうち、前記遅延時間は第1パラメータ及び第2パラメータと関連しており、前記第1パラメータは一定範囲内で時間に伴って変化する設定値であり、前記第2パラメータは前記スイッチング電源の共振周期に関連する関数である。
【0019】
好適には、前記制御ユニットは、
前記第1パラメータに関連する周期的変換関数の関数値がゼロである場合に、前記第2パラメータを調整して、前記共振周期信号及び前記遅延信号に基づいて、前記制御信号を前記共振波形における目標バレーの中心または左側または右側の基準位置に対応させるための共振バレー対応回路と、
前記基準位置に前記第1パラメータの周期的変化関数の関数値を重畳して、前記制御信号に、前記目標バレーの所定の範囲内で前記スイッチング電源の一次側パワースイッチングトランジスタの導通を制御させるためのジッタ周波数回路と、を含む。
【0020】
上記の技術的課題を解決するために、本願ではさらに、上記のスイッチング電源の制御回路を含むスイッチング電源を提供している。
【0021】
本願はスイッチング電源の制御方法を提供しており、スイッチング電源の技術分野に関する。該手法では、スイッチング電源の共振周期信号をリアルタイムに検出し、共振周期信号に遅延時間を重畳することで、制御信号に、共振周期信号及び遅延信号に基づいて、共振波形の目標バレー付近の所定の範囲内でスイッチング電源の一次側パワースイッチングトランジスタの導通を制御させており、そのうち、遅延時間は第1パラメータ及び第2パラメータと関連しており、しかも第1パラメータは一定範囲内で時間に伴って変化する設定値であり、第2パラメータはスイッチング電源の共振周期に関連する関数である。本願では、スイッチング電源の共振周期信号をリアルタイムに検出できるとともに、スイッチング電源の共振周期信号及び遅延時間に基づいてスイッチング電源の一次側パワースイッチングトランジスタを目標バレー付近の所定の範囲内で確実に導通させるよう制御して、制御の精度を高めていることがわかる。
【0022】
本願はさらに、スイッチング電源の制御回路及びスイッチング電源を提供しており、上で述べているスイッチング電源の制御方法と同様の有益な効果を有している。
【0023】
本発明の実施例中の技術手法をより明確に説明するために、以下では、従来技術及び実施例において使用する必要のある図面について簡単に紹介しているが、以下の記述における図面は本発明のいくつかの実施例にすぎず、当業者であれば、創造的な労働を行わないという前提において、これらの図面に基づいて他の図面を得ることができることは自明である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1a】従来技術における第1の波形の概略図である。
【
図1b】従来技術における第2の波形の概略図である。
【
図2】本願で提供するスイッチング電源の制御方法のフローチャートである。
【
図3】本願で提供するスイッチング電源の部分構成概略図である。
【
図5】本願で提供するスイッチング電源の制御回路図である。
【
図6a】本願で提供するスイッチング電源の動作波形概略図である。
【
図6b】本願で提供する共振周期信号を生成する回路図である。
【
図6d】本願で提供する第1パラメータに関連する周期関数の波形概略図である。
【
図6e】本願で提供する第1の一次側パワースイッチングトランジスタが目標バレーの左側で導通する場合の波形概略図である。
【
図6f】本願で提供する第1の一次側パワースイッチングトランジスタが目標バレーで導通する場合の波形概略図である。
【
図6g】本願で提供する第1の一次側パワースイッチングトランジスタが目標バレーの右側で導通する場合の波形概略図である。
【
図7a】本願で提供するスイッチング電源のもう1つの動作波形概略図である。
【
図7b】本願で提供するもう1つの制御信号の回路図である。
【
図7c】本願で提供する第2パラメータに関連する関数の概略図である。
【
図7d】本願で提供する第2の一次側パワースイッチングトランジスタが目標バレーの左側で導通する場合の波形概略図である。
【
図7e】本願で提供する第2の一次側パワースイッチングトランジスタが目標バレーで導通する場合の波形概略図である。
【
図7f】本願で提供する第2の一次側パワースイッチングトランジスタが目標バレーの右側で導通する場合の波形概略図である。
【
図8】本願で提供するスイッチング電源の制御回路の構成ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本願の核心は、スイッチング電源の制御方法、回路及びスイッチング電源を提供することにより、スイッチング電源の共振周期信号をリアルタイムに検出できるとともに、スイッチング電源の共振周期信号及び遅延時間に基づいてスイッチング電源の一次側パワースイッチングトランジスタを目標バレー付近の所定の範囲内で確実に導通させるよう制御して、制御の精度を高めることにある。
【0026】
本願の実施例の目的、技術手法及び長所をより明確にするために、以下では本願の実施例における図面と結び付けて、本願の実施例における技術手法を明確に、完全に記述しているが、記述されている実施例は本願の一部の実施例であって、すべての実施例ではないことは明らかである。本願の実施例を基に、当業者が創造的な労働を行わないことを前提に獲得するその他のすべての実施例は、本願の保護範囲に属する。
【0027】
図1a及び
図1bを参照すると、
図1aは従来技術における第1の波形の概略図であり、
図1bは従来技術における第2の波形の概略図である。
図1a及び
図1bでは、左側は一次側パワースイッチングトランジスタの導通時間、中間の比較的高い部分は二次側スイッチングトランジスタの導通時間、右側の減衰した正弦波形は二次側スイッチングトランジスタが遮断された後に生成される共振波形であり、そのうち、
図1a及び
図1bでは、いずれも一次側パワースイッチングトランジスタが3つ目のバレーの負の半周期で導通するよう制御しているが、従来技術における制御方式を使用した実験結果では、
図1a中の一次側パワースイッチングトランジスタは3つ目のバレーの左側寄りの点の負の半周期位置で導通し、
図1b中の一次側パワースイッチングトランジスタは3つ目のバレーの左側に近接し、さらには2つ目のピークの位置で導通しており、負の半周期での導通を満たしていない。
【0028】
図2を参照すると、
図2は本願で提供するスイッチング電源の制御方法のフローチャートであり、該方法は、
スイッチング電源の共振周期信号をリアルタイムに検出するS11であって、
具体的には、ここでの共振周期信号とはスイッチング電源の共振信号を表徴するものであり、具体的には、共振波形のゼロクロッシング点の状況(例えば共振波形が正の半周期にある時、共振周期信号は高レベルであり、共振波形が負の半周期にある時、共振周期信号は低レベルである)を表徴することができるが、具体的には以下の第1実施例及び第2実施例中のTdemを参照することができる、S11と、
共振周期信号に遅延時間を重畳することで、制御信号に、共振周期信号及び遅延信号に基づいて、共振波形の目標バレー付近の所定の範囲内でスイッチング電源の一次側パワースイッチングトランジスタの導通を制御させるS12と、を含み、
そのうち、遅延時間は第1パラメータ及び第2パラメータと関連しており、第1パラメータは一定範囲内で時間に伴って変化する設定値であり、第2パラメータはスイッチング電源の共振周期に関連する関数である。
【0029】
上記で共振周期信号を検出した後、その中のいずれかの共振周期の後に遅延時間を重畳することで、共振周期信号部分で生じる制御信号に、遅延時間の後、一次側パワースイッチングトランジスタが共振波形の目標バレー付近の所定の範囲内で導通するよう制御させる。
【0030】
具体的には、システムのEMI性能を向上させるために、本願の一次側パワースイッチングトランジスタは、隣り合う2つの周期において、目標バレーの所在する負の半周期の異なる位置で導通する。そのうち、目標バレーの所定の範囲は目標バレーが所在する負の半周期を超えず、即ち、ここでの目標バレーの所定範囲内での導通とは、一次側パワースイッチングトランジスタを異なる周期でその目標バレーの所定の範囲内で振動、導通させるよう制御することを指し、隣り合う2回の導通の位置は異なる。
【0031】
上記の遅延時間は第1パラメータ及び第2パラメータと関連しており、しかも第1パラメータは時間に伴って変化する設定であり、第2パラメータは共振周期に関連する関数なので、本願の制御方式では、共振周期に基づいて遅延時間を確定することで、一次側パワースイッチングトランジスタの導通時間を確定し、それにより一次側パワースイッチングトランジスタの導通の確実性を高めることができる。
【0032】
好適な実施例として、所定の範囲は第1パラメータに関連する周期的変化関数に関連しており、
共振周期信号に遅延時間を重畳することで、制御信号に、共振周期信号及び遅延信号に基づいて、共振波形の目標バレー付近の所定の範囲内でスイッチング電源の一次側パワースイッチングトランジスタの導通を制御させることは、
第1パラメータに関連する周期的変換関数の関数値がゼロである場合に、第2パラメータを調整して、前記共振周期信号及び前記遅延信号に基づいて、制御信号を共振波形における目標バレーの中心または左側または右側の基準位置に対応させることと、
基準位置に第1パラメータの周期的変化関数の関数値を重畳して、制御信号に、目標バレーの所定の範囲内でスイッチング電源の一次側パワースイッチングトランジスタの導通を制御させることと、を含む。
【0033】
具体的には、上記第1パラメータに対応する周期的変化関数が所定の範囲に関連している場合、具体的には、周期的変化関数が遅延時間のうちの1つのジッタ周波数量である場合(具体的な実施例では、第1パラメータは
図6dのmであり、第1パラメータに関連する周期的変化関数は
図6dのIj(m)である)、第1パラメータの作用は、一次側パワースイッチングトランジスタの目標バレー付近の範囲内での導通を保証して、それを目標バレーの1つの位置に固定させないということである。
【0034】
この時、第1パラメータに対応する周期的変化関数の関数値がゼロであれば(即ち、
図6d中の対応するIj(m)がゼロであれば、この時のmは1または2*2
x-2または2
xとなる)、遅延時間に重畳されるジッタ周波数量がゼロであることを意味しており、即ち、この時、一次側パワースイッチングトランジスタは目標バレー部分または目標バレーの左側または右側のいずれかの基準位置において正確に導通するのである。そのため、もしこの時に一次側パワースイッチングトランジスタが基準位置で正確に導通しなければ、それは第2パラメータが不正確であることを意味する。つまり、第1パラメータに対応する周期的変化関数の関数値がゼロである場合に、第2パラメータを調整することを選択することで、ジッタ周波数量を重畳した後、一次側パワースイッチングトランジスタが目標バレー付近の所定の範囲内のいずれかの時刻で正確に導通することを保証しているのである。
【0035】
上記において、制御信号を目標バレー付近のいずれかの基準位置と位置合わせした後、さらに基準位置を基に第1パラメータに関連する1つの周期変化の関数を重畳し、制御信号を基準位置付近で周期的に移動させることにより、この制御信号に基づいて一次側パワースイッチングトランジスタの導通を制御すると、一次側スイッチングトランジスタが基準位置付近で振動し、導通する。具体的な実施例では、基準位置は目標バレーの中心部である。
【0036】
好適な実施例として、第2パラメータを調整することは、
共振波形の共振周期を取得することと、
共振周期に基づいて第2パラメータを自己適応調整することで、制御信号に、目標バレーにおいて一次側パワースイッチングトランジスタの導通を制御させることと、を含む。
【0037】
具体的には、第2パラメータは共振周期に関連する関数なので(具体的には、下記の実施例を参照して、第2パラメータをkとすることができる)、本願で第2パラメータを調整する1つの手段は、共振波形に基づいて第2パラメータを自己適応調整することであり、その目的は、第1パラメータに対応する周期的変化関数の関数値がゼロである場合に、制御信号を目標バレーの中心または左側または右側の基準位置において正確に導通させるよう制御できればよい。
【0038】
好適な実施例として、共振波形の共振周期を取得することは、
共振波形中の若干の連続バレーまたは連続ピーク、または連続ゼロクロッシング点の間の時間の和を求めることと、
時間の和及びバレーまたはピークまたはゼロクロッシング点の個数に基づいて共振周期を計算することと、を含む。
【0039】
本実施例の目的は、共振周期を取得する具体的な実現方式を通して、具体的には、共振波形中の若干の連続するピークとバレーとの間の時間の和、または若干の連続するバレーとバレーとの間の時間の和、または若干の連続するゼロクロッシング点の間の時間の和、及び対応するピークの数、またはバレーの数、またはゼロクロッシング点の数に基づいて、共振周期を計算することにある。
【0040】
例えば、連続するN個のゼロクロッシング点の時間の和がt1であれば、共振周期T=2t1/Nである(各周期中には2つのゼロクロッシング点があり、それぞれ正の半周期から負の半周期までにある1つのゼロクロッシング点と、負の半周期から正の半周期までにある1つのゼロクロッシング点である)。例えば、連続するn個のバレーの時間の和がt2であれば、共振周期T=t2/nとなる。ピークの計算式はバレーと同じなので、本願では改めて述べない。
【0041】
スイッチング電源制御の精度と確実性を保証するために、本願では、その時点で検出された最新の共振周期に基づいて第2パラメータを調整できるよう、一定時間間隔でスイッチング電源の共振周期を検出し、スイッチング電源の共振周期を随時更新している。
【0042】
好適な実施例として、第2パラメータを調整することは、
所定の時間間隔でスイッチング電源の動作パラメータを取得することと、
動作パラメータ及び事前設定動作パラメータ-第2パラメータのマッピング関係に基づいて第2パラメータを確定することと、を含む。
【0043】
本実施例の目的は、第2パラメータを調整するもう1つの実現方式を提供することにあり、具体的には、本願では事前設定動作パラメータ-第2パラメータのマッピング関係を事前に設定しており、スイッチング電源の動作パラメータを確定した後、スイッチング電源の動作パラメータに基づいて事前設定動作パラメータ-遅延時間のマッピング関係を検索し、動作パラメータに対応する第2パラメータを確定することができる。その後、この第2パラメータに基づいて遅延時間を調整することにより、第1パラメータに対応する周期的変化関数の関数値がゼロである場合に、制御信号に一次側パワースイッチングトランジスタが目標バレーで確実に導通するように制御させるのである。
【0044】
好適な実施例として、所定の時間間隔でスイッチング電源の動作パラメータを取得した後、さらに、
動作パラメータに変化が生じたか否かを判断することと、
変化が生じた場合、動作パラメータ及び事前設定動作パラメータ-第2パラメータのマッピング関係に基づいて第2パラメータを確定するステップに進むことと、を含む。
【0045】
具体的には、この実施例では、第2パラメータの変化を引き起こす原因は、通常、スイッチング電源の動作パラメータに変化が生じることにある。よって、本願では、スイッチング電源の動作パラメータについても検出を行い、かつそれに変化が生じた場合には、第2パラメータを確定するステップに進むことができる。動作パラメータを検出する隣り合う2回の時間間隔が十分に小さい場合は、スイッチング電源の動作パラメータをリアルタイムに監視することに相当する。
【0046】
好適な実施例として、動作パラメータに変化が生じたか否かを判断することは、
動作パラメータのレベルに変化が生じたか否かを判断することと、
レベルに変化が生じている場合、動作パラメータに変化が生じたと判定することと、を含む。
【0047】
具体的には、動作パラメータの変化が極めて小さい時に第2パラメータに対する確定をトリガすることを防止するために、第2パラメータを頻繁に確定する必要があり、そのプロセッサの消費電力はかなり大きい。
【0048】
そのため、本願では、動作パラメータを異なるレベルに分けており、この場合、動作パラメータに変化が生じたか否かを判断する具体的な実現方式は、動作パラメータのレベルに変化が生じたか否かを判断し、かつ変化が生じた場合に、動作パラメータに変化が生じたと判定するというものであり、この時に初めて第2パラメータを確定するステップがトリガされるので、第2パラメータを確定するステップが頻繁にトリガされることを防止し、プロセッサの消費電力をある程度減少させることができる。
【0049】
好適な実施例として、動作パラメータは、スイッチング電源の一次側入力電圧と、二次側出力電圧と、負荷値のうちの1種または数種の組合わせを含む。
【0050】
本実施例の目的は、動作パラメータの具体的な実現方式を限定することにあり、具体的には、動作パラメータは、スイッチング電源の一次側入力電圧、二次側出力電圧、負荷値などであってよいが、これらに限らない。
【0051】
そのうち、一次側入力電圧の範囲は90VAc~265VAc、出力電圧の範囲は3.3V~21Vであってよいが、これらに限定されず、上記の動作パラメータをレベル分けする場合は、一次側入力電圧、二次側出力電圧及び負荷値の範囲を、実際の需要に基づいて若干のポジション(レベル)に分けることができ、具体的にどのように分けるかについては、本願では特に限定していない。
【0052】
好適な実施例として、動作パラメータがスイッチング電源の一次側入力電圧及び二次側出力電圧を含む場合、
スイッチング電源の動作パラメータを取得することは、
一次側パワースイッチングトランジスタが導通した時に、補助巻線の電圧、補助巻線の巻数及び一次側巻線の巻数に基づいて一次側入力電圧を計算することと、
二次側スイッチングトランジスタが導通した時に、補助巻線の電圧、補助巻線の巻数及び二次側巻線の巻数に基づいて二次側出力電圧を計算することと、を含み、
そのうち、補助巻線と一次側巻線は共通ベースである。
【0053】
本実施例の目的は、一次側入力電圧と二次側出力電圧を計算する具体的な実現方式を限定することにあり、具体的には、一次側入力電圧を計算する具体的な方式は、一次側パワースイッチングトランジスタが導通した時に、補助巻線の電圧、補助巻線の巻数及び一次側巻線の巻数に基づいて一次側入力電圧を計算するというものであってよい。具体的には
図3を参照することができ、
図3は本願で提供するスイッチング電源の部分構成概略図である。一次側入力電圧は、補助巻線端を流れるプルアップ抵抗R
DEMを検出することにより導き出され、具体的には、
【0054】
【0055】
であり、そのうち、Vinは一次側入力電圧、IDEMAGはプルアップ抵抗上の電流、RDEMは補助巻線と接続されたプルアップ抵抗、Npは一次側巻線の巻数、Naは補助巻線の巻数である。
【0056】
二次側出力電圧を計算する具体的な方式は、二次側スイッチングトランジスタが導通した時に、補助巻線の電圧、補助巻線の巻数及び二次側巻線の巻数に基づいて二次側出力電圧を計算するというものであってよい。具体的には
図4を参照することができ、
図4は本願で提供する波形概略図である。そのうち、二次側出力電圧は、TonsとToff期間のV
DEM電圧を検出することにより得られる。そのうち、Tonsは二次側スイッチングトランジスタが導通する時間帯、Toffは二次側スイッチングトランジスタは遮断されているが、次の周期の一次側パワースイッチングトランジスタはまだ導通していない時間帯(即ち共振の発生する時間帯)であり、
図4のGate/Tonpは一次側パワースイッチングトランジスタが導通する時間帯である。このとき、
【0057】
【0058】
であり、そのうち、Voは二次側出力電圧、Vauxは二次側スイッチングトランジスタが導通した時の補助巻線上の電圧、Naは補助巻線の巻数、Nsは二次側巻線の巻数である。
【0059】
好適な実施例として、動作パラメータが負荷値を含む場合、
スイッチング電源の動作パラメータを取得することは、
スイッチング電源内の一次側パワースイッチングトランジスタのスイッチング周波数を取得することと、
スイッチング周波数に基づいて負荷値を確定することと、を含み、
そのうち、負荷値はスイッチング周波数と正相関する。
【0060】
本実施例の目的は、負荷値を確定する具体的な実現方式を限定することにあり、具体的には、スイッチング電源中の一次側パワースイッチングトランジスタのスイッチング周波数に基づいてその時点のスイッチング電源の負荷値を確定している。そのうち、一次側パワースイッチングトランジスタのスイッチング周波数は負荷値と正相関を呈し、具体的には、一次側パワースイッチングトランジスタのスイッチング周期は一次側パワースイッチングトランジスタの導通時間+二次側スイッチングトランジスタの導通時間+共振時間(具体的には共振の発生開始から、確定された目標バレーで一次側パワースイッチングトランジスタが導通するまでの間の時間帯)であり、現在のところ、スイッチング電源の負荷が比較的軽い場合は、共振波形中の後ろ寄りのバレーが選択されており、この時、対応するスイッチング周期は比較的大きく、スイッチング周波数は比較的小さい。スイッチング電源の負荷が比較的重い場合は、共振波形中の前寄りのバレーが選択されており、この時、対応するスイッチング周期は比較的小さく、スイッチング周波数は比較的大きい。このため、スイッチング電源が持つ負荷値を確定する必要がある場合には、その時点の一次側パワースイッチングトランジスタのスイッチング周波数に基づいて確定すればよい。
【0061】
もちろん、上記は本実施例が提供する1つの実現方式にすぎないので、検出装置によって負荷値を直接検出するなども可能であり、本願では限定していない。
【0062】
好適な実施例として、共振周期信号に遅延時間を重畳することで、制御信号に、共振周期信号及び遅延信号に基づいて、共振波形の目標バレー付近の所定の範囲内でスイッチング電源の一次側パワースイッチングトランジスタの導通を制御させることは、
スイッチング電源の負荷値に基づいて目標バレーを確定した後、目標バレーの1つ前のバレーの1つ前のゼロクロッシング点を検出することと、
1つ前のゼロクロッシング点に対応する制御信号を遅延時間だけ遅らせた時刻を導通時刻とすることで、制御信号に、導通時刻において一次側パワースイッチングトランジスタの導通を制御させることと、を含む。
【0063】
具体的には、本願における導通時刻の確定は若干のステップに分けることができ、まず共振波形のゼロクロッシング点を検出することで、目標バレーの位置を確定する。具体的に導通時刻を確定する方法とは、目標バレーの前の1つのバレーを確定した後、確定した該バレーの前の1つのゼロクロッシング点時刻を検出し、そのゼロクロッシング点時刻に基づいて遅延時間の時刻、即ち導通時刻を遅らせるというものであり、該導通時刻は目標バレー付近の任意の時刻である。本願中の方式を通して、目標バレーを精確に確定することができ、また、スイッチング電源中の一次側パワースイッチングトランジスタの導通周波数を絶えず調整することで、一次側パワースイッチングトランジスタの周波数が不変を保つことを回避して、スイッチング電源のEMI性能を高めることができる。
【0064】
本願の設計目標は、一次側パワースイッチが目標バレーの負の半周期で導通するよう制御することであり、これに対して、本願ではここに2つの実施例を提供している。第1の実施例として
図5、
図6a~
図6gを参照すると、
図5は本願で提供するスイッチング電源の制御回路図であり、
図6aは本願で提供するスイッチング電源の動作波形概略図であり、
図6bは本願で提供する共振周期信号を生成する回路図であり、
図6cは本願で提供する制御信号の回路図であり、
図6dは本願で提供する第1パラメータに関連する周期関数の波形概略図である。以下では第1実施例を説明している。
【0065】
そのうち、
図6aのTdemは、
図6bのDEMAGを0Vと比較した結果であり、即ち、Tdemは共振波形のゼロクロッシング点を表徴する信号であり、この実施例では、Tdemを上述の共振周期信号としている。
図6a中のVdsは、一次側パワースイッチングトランジスタ上の共振波形である。
【0066】
図6cにおいて、x-bits jitter counterの入力CLKは1つのオシレータ出力であってもよいし、SW信号であってもよく、x-bits jitter counterはCLKをカウントし、カウント結果mを1~2
xの範囲で出力する。x-bits jitter counterはループカウントすることができ、m=2
xの場合、次のCLK後はm=1(mは上記の第1パラメータ)となる。
図6cのD to Iの実現により、
図6dに示すように、mを出力電流Ij(m)に変換することができ、そのうち、Ij(m)の範囲は、2
x-2*Istep~-(2
x-2-1)*Istepである(ここでのIj(m)は上記の第1パラメータに関連する周期関数である)。
【0067】
Valley Lockoutモジュールは、スイッチング電源の負荷(具体的な位置は
図5のCOMP電圧)に基づいてn番目のValleyの導通を選択する(つまり、バレーロックアウトは負荷によって決定される)。
【0068】
Current Tableモジュールは、DEMAGにより一次側入力電圧、二次側出力電圧を検出するとともに、一次側入力電圧、二次側出力電圧及び目標Valley(n)に基づいて、事前設定出力電流It(k)を選択して、m=1またはm=2*2x-2の時に、Tpulse(制御信号)をバレーに対応させる。一次側入力電圧、二次側出力電圧、及びシステムの負荷値が変化しなければ、k(第2パラメータ)は変化しない。
【0069】
n-1番目のTdemn-1の立上りエッジの後、遅延td(m,k)を経て、n番目のTpulsen(Tpulsen=Tdemn-1+td(m,k))が生成される。そのうち、td(m,k)の具体的な実現方式は、td(m,k)=C*Vref/[Ij(m)+It(k)]であってよい。
【0070】
n番目のTpulsenの立上りエッジにおいて、一次側パワースイッチングトランジスタが導通する。
【0071】
m=1またはm=2*2x-2であれば、Tpulsenは目標バレーのある負の半周期の基準位置での導通に対応しており、具体的な基準位置は目標バレーであってよく、しかもIj(m)は周期的に変化するので、一次側パワースイッチングトランジスタの負の半周期領域における振動、導通を実現することができる。
【0072】
図6eは、本願で提供する第1の一次側パワースイッチングトランジスタが目標バレーの左側で導通する場合の波形概略図である。この時、m=2
x-2、Ij(m)は正の値であり、Tpulseは基準位置(目標バレー)の左側にある。
【0073】
図6fは、本願で提供する第1の一次側パワースイッチングトランジスタが目標バレーで導通する場合の波形概略図である。この時、m=1または2*2
x-2、Ij(m)はゼロであり、Tpulseは基準位置(目標バレー)にある。
【0074】
図6gは、本願で提供する第1の一次側パワースイッチングトランジスタが目標バレーの右側で導通する場合の波形概略図である。この時、m=3*2
x-2、Ij(m)は負の値であり、Tpulseは基準位置(目標バレー)の右側にある。
【0075】
第2の実施例として
図7a~
図7fを参照すると、
図7aは本願で提供するスイッチング電源のもう1つの動作波形の概略図であり、
図7bは本願で提供するもう1つの制御信号の回路図であり、
図7cは本願で提供する第2パラメータに関連する関数の概略図であり、以下では第2実施例について説明している。
【0076】
本実施例では、DLL(Delay-Locked Loop、遅延ロックループ)原理を採用し、Tpulsen(立上りエッジ)と基準信号の順序関係を比較し、td(m,k)を動的に調節して、mが何らかの固定値(mに対応する関数の関数値がゼロ)である時に、Tpulsenをバレーに対応させている。
【0077】
Tdemをサンプリングし、Tdemに基づいてTmid(Tdem立下りエッジ+0.75*tdem)を生成すると、
図7aに示すように、Tmidの立下りエッジが共振波形のバレーに対応する。
【0078】
m=1または2*2x-2の時、Tpulseの立上りエッジとTmidの立下りエッジの位置関係を比較し、SW周期に伴い、kの範囲を1~2y(yはカウンタの値)に調整する。
【0079】
Tmid立下りエッジがTpulse立上りエッジより先の場合は、kn=kn-1+1であり、
Tmid立下りエッジがTpulse立上りエッジより後の場合はkn=kn-1-1であり、
m≠1及びm≠2*2x-2の場合はkn=kn-1である。
【0080】
図7bのD to Iモジュールは、
図7cに示すように、kを出力電流It(k)に変換する。It(k)の範囲はIini~Iini+(2
y-1)*Ituneである。
【0081】
最終的には、若干の周期を経てtd(m,k)を動的に調節し、m=1またはm=2*2x-2の時(即ち、第1パラメータmに関連する周期関数の関数値Ij(m)がゼロの時)、Tpulseの立上りエッジがバレーに位置し、かつモード変更時の共振周期の変化に動的に追随する。
【0082】
m=1またはm=2*2x-2の場合(第1パラメータに対応する周期関数の関数値がゼロ)、Tpulsenは目標バレーのある負の半周期の基準位置での導通に対応し、具体的な基準位置は目標バレーであってよく、しかもIj(m)は周期的に変化するので、一次側パワースイッチングトランジスタの目標バレーの負の半周期領域における導通を実現することができる。
【0083】
図7dは、本願で提供する第2の一次側パワースイッチングトランジスタが目標バレーの左側で導通する場合の波形概略図である。この時、m=2
x-2、Ij(m)は正の値であり、Tpulseは基準位置(目標バレー)の左側にある。
【0084】
図7eは、本願で提供する第2の一次側パワースイッチングトランジスタが目標バレーで導通する場合の波形概略図である。この時、m=1または2*2
x-2、Ij(m)はゼロであり、Tpulseは基準位置(目標バレー)にある。
【0085】
図7fは、本願で提供する第2の一次側パワースイッチングトランジスタが目標バレーの右側で導通する場合の波形概略図である。この時、m=3*2
x-2、Ij(m)は負の値であり、Tpulseは基準位置(目標バレー)の右側にある。
【0086】
上記の技術的課題を解決するために、本願はさらにスイッチング電源の制御回路を提供しており、
図8を参照すると、
図8は本願で提供するスイッチング電源の制御回路の構成ブロック図であり、該回路は、
スイッチング電源の共振周期信号をリアルタイムに検出するための検出ユニット81と、
共振周期信号に遅延時間を重畳することで、制御信号に、共振周期信号及び遅延信号に基づいて、共振波形の目標バレー付近の所定の範囲内でスイッチング電源の一次側パワースイッチングトランジスタの導通を制御させるための制御ユニット82と、を含み、
そのうち、遅延時間は第1パラメータ及び第2パラメータと関連しており、第1パラメータは一定範囲内で時間に伴って変化する設定値であり、第2パラメータはスイッチング電源の共振周期に関連する関数である。
【0087】
好適な実施例として、制御ユニットは、
第1パラメータに関連する周期的変換関数の関数値がゼロである場合、第2パラメータを調整して、共振周期信号及び遅延信号に基づいて、制御信号を共振波形における目標バレーの中心または左側または右側の基準位置に対応させるための共振バレー対応回路と、
基準位置に第1パラメータの周期的変化関数の関数値を重畳して、制御信号に目標バレーの所定の範囲内でスイッチング電源の一次側パワースイッチングトランジスタの導通を制御させるためのジッタ周波数回路と、を含む。
【0088】
スイッチング電源の制御回路の説明については、上記の実施例を参照すればよいので、本願では繰り返し述べないものとする。
【0089】
上記の技術的課題を解決するために、本願ではさらに、上記のスイッチング電源の制御回路を含むスイッチング電源を提供している。スイッチング電源の説明については、上記の実施例を参照すればよいので、本願では繰り返し述べないものとする。
【0090】
さらに説明しておかなければならないが、本明細書では、第1、第2などの関係性の用語は、1つの実体または操作を別の実体または操作と区別するためにのみ用いられており、必ずしもこれらの実体または操作の間に何らかの実質的な関係または順序が存在することを要求したり、暗示したりするものではない。また、用語の「包む」、「包含する」またはその他の何らかの変形は、非排他的な包含をカバーしているので、一連の要素を含むプロセス、方法、物品または設備にそれらの要素が含まれるだけでなく、明確に列挙されていない他の要素が含まれたり、またはその種のプロセス、方法、物品または設備に固有の要素が含まれたりすることもある。より多くの限定がない限り、語句の「1つの・・・を含む」によって限定される要素は、前記の要素を含むプロセス、方法、物品または設備の中に、さらに別の同一要素が存在することを排除するものではない。
【0091】
公開されている実施例の上記の説明は、当業者が本願を実現または使用できるようにするものである。これらの実施例に対する様々な修正は、当業者にとって自明のものであり、本文中で定義されている一般原理は、本願の主旨または範囲から逸脱しない状況において、他の実施例でも実現することができる。よって、本願は、本文に示されるこれらの実施例に限定されるものではなく、本文で公開されている原理及び新しい特徴と一致する最も広い範囲に適合するものとする。
【国際調査報告】