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特表2024-533908フランジ付き軸受の結合潤滑と動力学特性パラメータを計算する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-13
(54)【発明の名称】フランジ付き軸受の結合潤滑と動力学特性パラメータを計算する方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 13/04 20190101AFI20240906BHJP
【FI】
G01M13/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024501818
(86)(22)【出願日】2023-02-28
(85)【翻訳文提出日】2024-01-12
(86)【国際出願番号】 CN2023078759
(87)【国際公開番号】W WO2023236593
(87)【国際公開日】2023-12-14
(31)【優先権主張番号】202211684221.6
(32)【優先日】2022-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520409578
【氏名又は名称】哈爾濱工程大学
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】趙濱
(72)【発明者】
【氏名】施佳皓
(72)【発明者】
【氏名】盧熙群
(72)【発明者】
【氏名】李玩幽
(72)【発明者】
【氏名】徐含章
(72)【発明者】
【氏名】馬旋
(72)【発明者】
【氏名】史修江
(72)【発明者】
【氏名】率志君
(72)【発明者】
【氏名】郭宜斌
(72)【発明者】
【氏名】王東華
(72)【発明者】
【氏名】李宏亮
(72)【発明者】
【氏名】董烈▲イ▼
【テーマコード(参考)】
2G024
【Fターム(参考)】
2G024AC02
2G024BA19
2G024CA04
2G024CA11
2G024DA09
2G024FA06
(57)【要約】
本発明はフランジ付き軸受の結合潤滑と動力学特性パラメータを計算する方法を開示し、ディーゼルエンジンシミュレーションの技術分野に関する。本発明は主に、フランジ付き軸受の径方向スラスト熱弾性流体結合潤滑モジュール、フランジ付き軸受の動力学特性パラメータの計算モジュール、及びフランジ付き軸受の相対位置のフィードバックモジュールの3つのモジュールを含む。軸方向の一体運動による径方向潤滑及び軸方向動圧効果とスラスト潤滑可変隙間効果の連動法則、径方向の一体運動による径方向潤滑可変隙間効果とスラスト潤滑可変領域効果の連動法則を考慮するだけでなく、フランジ付き軸受の共通境界における潤滑油膜の流量、圧力及び熱対流を考慮し、最終的にフランジ付き軸受の径方向及びスラスト過渡潤滑結合分析方法を形成する。これに基づき、結合効果でのフランジ付き軸受の径方向/軸方向潤滑油膜の剛性、減衰特性をさらに考慮し、フランジ付き軸受の動力学及び摩擦学の正確なシミュレーションを実現し、それによってフランジ付き軸受の潤滑不良の問題を解決する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フランジ付き軸受の結合潤滑と動力学特性パラメータを計算する方法であって、
フランジ付き軸受の構造パラメータ及び運転モードを取得するステップS1と、
時間tを設定するステップS2と、
フランジ付き軸受の径方向スラスト熱弾性流体結合潤滑モジュールを利用して、油膜支持力を計算して得るステップS3と、
S3の完了後、フランジ付き軸受の動力学特性パラメータの計算モジュールを利用して、剛性減衰を計算するステップS4と、
S4の完了後、フランジ付き軸受の相対位置のフィードバックモジュールを利用して、内燃機関の計算サイクルが完了したか否かを判断し、完了した場合、フランジ付き軸受の作動特性パラメータ結果を出力して保存し、完了していない場合、S6に進むステップS5と、
対応する時刻の荷重に基づいてフランジ付き軸受の径方向及び軸方向変位を計算し、スラスト部分の計算領域及びネットワークを更新し、各軸受の次の時刻の相対位置をフランジ付き軸受の径方向スラスト熱弾性流体結合潤滑モジュール及びフランジ付き軸受の動力学特性パラメータの計算モジュールの入力パラメータとして計算を継続するステップS6と、を含む、
ことを特徴とする、フランジ付き軸受の結合潤滑と動力学特性パラメータを計算する方法。
【請求項2】
S3の具体的な内容は以下のとおりであり、
入力されたフランジ付き軸受の構造パラメータ及び運転モードに基づいて、径方向部分及びスラスト部分の油膜厚さを計算し、
油膜厚さを得た上で、軸方向速度を考慮した平均レイノルズ方程式を導入して、平均レイノルズ方程式を解き、有限差分法を利用して、径方向部分及びスラスト部分の油膜圧力分布をそれぞれ計算して得て、圧力収束判断を満たすまでループ反復し、圧力の境界はレイノルズ境界条件を用い、
有限差分法を利用して、径方向部分及びスラスト部分の三次元エネルギー方程式、ブッシュの熱伝導方程式をそれぞれ解き、境界条件は、径方向部分及びスラスト部分の給油側温度が所定の給油温度であること、ブッシュの外部がいずれも環境との対流熱交換条件であること、径方向部分の油排出側、スラスト部分の内径領域の熱量が熱流量連続性条件によって計算されること、及び毎回のループ反復で更新し、温度が収束条件を満たすまでループすることを含み、
変形行列法を利用し、算出された油膜圧力に基づいて径方向部分及びスラスト部分の各ノードの熱変形を計算し、熱変形量を油膜厚さに代入し、熱変形が収束を満たすまで前の油膜圧力の計算を繰り返し、
現在の圧力に基づき、弾性変形行列を利用して、径方向部分及びスラスト部分の各ノードの弾性変形を計算し、油膜厚さの方程式に代入し、前の油膜圧力の計算を繰り返し、このときに、径方向部分のスラスト側端面に近い圧力及びスラスト部分の内径箇所での油膜圧力が流量及び圧力連続性条件を満たすという境界条件を増加させ、弾性変形が収束を満たすまでループ計算し、油膜圧力を積分計算して油膜支持力を得る、
ことを特徴とする、請求項1に記載のフランジ付き軸受の結合潤滑と動力学特性パラメータを計算する方法。
【請求項3】
径方向部分の油膜厚さの方程式は以下のとおりであり、




【数1】
スラスト部分の油膜厚さの方程式は以下のとおりであり、
【数2】
径方向部分のレイノルズ方程式は以下のとおりであり、
【数3】
スラスト部分のレイノルズ方程式は以下のとおりであり、
【数4】
ことを特徴とする、請求項2に記載のフランジ付き軸受の結合潤滑と動力学特性パラメータを計算する方法。
【請求項4】
熱流量連続性条件は以下のとおりであり、

【数5】
変形行列法による熱変形、弾性変形の計算は以下のように表され、
【数6】
流量及び圧力連続性条件は以下のとおりであり、














【数7】
ことを特徴とする、請求項2に記載のフランジ付き軸受の結合潤滑と動力学特性パラメータを計算する方法。
【請求項5】
S4では、油膜支持力を計算して得た後、結合効果作用の下での外乱レイノルズ方程式を導出し、解いて外乱径方向力及び軸方向力を計算して得て、結合剛性減衰行列に基づいて各部分の剛性減衰を計算することを特徴とする、請求項1に記載のフランジ付き軸受の結合潤滑と動力学特性パラメータを計算する方法。
【請求項6】
結合外乱力の計算に使用される外乱レイノルズ方程式は以下のとおりであり、





















【数8】












前記外乱方程式に従って外乱圧力を計算して得た後、外乱圧力を積分し、さらに各部分の結合油膜剛性及び減衰値を特定し、具体的な式は以下のとおりであり、
【数9】
ことを特徴とする、請求項5に記載のフランジ付き軸受の結合潤滑と動力学特性パラメータを計算する方法。
【請求項7】
S6では、三次元運動方程式を利用してクランク軸のジャーナル/スラストショルダとブッシュとの次の時刻の相対位置を計算し、次の時刻の複合ブッシュの熱弾性流体の動圧潤滑特性を分析し、さらにその潤滑特性パラメータをリアルタイムに更新し、
径方向及び軸方向変位を解き、さらに次の時刻の径方向及び軸方向位置を計算する三次元運動方程式は以下のとおりであり、
【数10】
ことを特徴とする、請求項1に記載のフランジ付き軸受の結合潤滑と動力学特性パラメータを計算する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジンシミュレーションの技術分野に関し、フランジ付き軸受の結合潤滑と動力学特性パラメータを計算する方法に属する。
【背景技術】
【0002】
クランク軸-軸受システムはディーゼルエンジンの重要な部分として、その潤滑性能がディーゼルエンジンの信頼性及び耐用年数に直接影響を与えている。フランジ付き軸受は、一般的にクランク軸の末端に位置し、クランク軸を径方向に支持して軸方向に跳ね上がることを防止する重要な部材であるが、油膜隙間が非常に小さい状況が発生しやすく、潤滑作業条件が比較的に悪く、常に高温アブレーション現象を伴い、さらにディーゼルエンジンの耐用年数を短くしてしまう。
【0003】
現在、中国国内のフランジ付き軸受に関する研究には一定の基礎があるが、フランジ付き軸受をスラスト軸受に簡素化して研究することが多く、実際のアブレーション発生位置は、フランジ付きブッシュのスラスト面に加えて、径方向部分のスラスト側に近いブッシュ面もあり、個別の径方向又はスラスト軸受の簡素化分析ではこの現象を解釈することができない。そして、クランク軸の運転に伴い、軸受の動力学特性も変化し、さらにフランジ付き軸受の安定性に影響を与える。
【0004】
従って、フランジ付き軸受の結合潤滑と動力学特性パラメータを計算する方法を提案し、フランジ付き軸受の径方向スラスト熱弾性流体潤滑と動力学特性を総合的に考慮したシミュレーションモデルを確立し、フランジ付き軸受の径方向スラスト部分の圧力結合と熱結合の関係を確立することにより、アブレーションが発生する潤滑メカニズムをより正確に説明し、過渡過程におけるフランジ付き軸受の潤滑と動力学法則を明らかにし、フランジ付き軸受のアブレーション故障及び不安定性分析に理論的サポートを提供し、従来技術に存在している困難を解決することは、当業者が解決すべき問題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これに鑑みて、本発明は、フランジ付き軸受の結合潤滑と動力学特性パラメータを計算する方法を提供し、フランジ付き軸受の径方向スラスト熱弾性流体潤滑と動力学特性を総合的に考慮したシミュレーションモデル、フランジ付き軸受の径方向スラスト部分の圧力結合と熱結合の関係を確立することにより、アブレーションが発生する潤滑メカニズムをより正確に説明し、過渡過程におけるフランジ付き軸受の潤滑と動力学法則を明らかにし、フランジ付き軸受のアブレーション故障及び不安定性分析に理論的サポートを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を実現するために、本発明は以下の技術的解決手段を用いる。
【0007】
フランジ付き軸受の結合潤滑と動力学特性パラメータを計算する方法であって、
フランジ付き軸受の構造パラメータ及び運転モードを取得するステップS1と、
時間tを設定するステップS2と、
フランジ付き軸受の径方向スラスト熱弾性流体結合潤滑モジュールを利用して、油膜支持力を計算して得るステップS3と、
S3の完了後、フランジ付き軸受の動力学特性パラメータの計算モジュールを利用して、剛性減衰を計算するステップS4と、
S4の完了後、フランジ付き軸受の相対位置のフィードバックモジュールを利用して、内燃機関の計算サイクルが完了したか否かを判断し、完了した場合、フランジ付き軸受の作動特性パラメータ結果を出力して保存し、完了していない場合、S6に進むステップS5と、
対応する時刻の荷重に基づいてフランジ付き軸受の径方向及び軸方向変位を計算し、スラスト部分の計算領域及びネットワークを更新し、各軸受の次の時刻の相対位置をフランジ付き軸受の径方向スラスト熱弾性流体結合潤滑モジュール及びフランジ付き軸受の動力学特性パラメータの計算モジュールの入力パラメータとして計算を継続するステップS6と、を含む。
【0008】
上記方法において、選択可能に、S3の具体的な内容は以下のとおりであり、
入力されたフランジ付き軸受の構造パラメータ及び運転モードに基づいて、径方向部分及びスラスト部分の油膜厚さを計算し、
油膜厚さを得た上で、軸方向速度を考慮した平均レイノルズ方程式を導入して、平均レイノルズ方程式を解き、有限差分法を利用して、径方向部分及びスラスト部分の油膜圧力分布をそれぞれ計算して得て、圧力収束判断を満たすまでループ反復し、圧力の境界はレイノルズ境界条件を用い、
有限差分法を利用して、径方向部分及びスラスト部分の三次元エネルギー方程式、ブッシュの熱伝導方程式をそれぞれ解き、境界条件は、径方向部分及びスラスト部分の給油側温度が所定の給油温度であること、ブッシュの外部がいずれも環境との対流熱交換条件であること、径方向部分の油排出側、スラスト部分の内径領域の熱量が熱流量連続性条件によって計算されること、及び毎回のループ反復で更新し、温度が収束条件を満たすまでループすることを含み、
変形行列法を利用し、算出された油膜圧力に基づいて径方向部分及びスラスト部分の各ノードの熱変形を計算し、熱変形量を油膜厚さに代入し、熱変形が収束を満たすまで前の油膜圧力の計算を繰り返し、
現在の圧力に基づき、弾性変形行列を利用して、径方向部分及びスラスト部分の各ノードの弾性変形を計算し、油膜厚さの方程式に代入し、前の油膜圧力の計算を繰り返し、このときに、径方向部分のスラスト側端面に近い圧力及びスラスト部分の内径箇所での油膜圧力が流量及び圧力連続性条件を満たすという境界条件を増加させ、弾性変形が収束を満たすまでループ計算し、油膜圧力を積分計算して油膜支持力を得る。
【0009】
上記方法において、選択可能に、径方向部分の油膜厚さの方程式は以下のとおりである。
【0010】
【数1】
【0011】
スラスト部分の油膜厚さの方程式は以下のとおりである。


【0012】
【数2】
【0013】
径方向部分のレイノルズ方程式は以下のとおりである。
【0014】
【数3】
【0015】
スラスト部分のレイノルズ方程式は以下のとおりである。
【0016】
【数4】
【0017】
上記方法において、選択可能に、熱流量連続性条件は以下のとおりである。





【0018】
【数5】
【0019】
変形行列法による熱変形、弾性変形の計算は以下のように表される。
【0020】
【数6】
【0021】
流量及び圧力連続性条件は以下のとおりである。








【0022】
【数7】
【0023】
上記方法において、選択可能に、S4では、油膜支持力を計算して得た後、結合効果作用の下での外乱レイノルズ方程式を導出し、解いて外乱径方向力及び軸方向力を計算して得て、結合剛性減衰行列に基づいて各部分の剛性減衰を計算する。
【0024】
上記方法において、選択可能に、結合外乱力の計算に使用される外乱レイノルズ方程式は以下のとおりである。




















【0025】
【数8】











【0026】
前記外乱方程式に従って外乱圧力を計算して得た後、外乱圧力を積分し、さらに各部分の結合油膜剛性及び減衰値を特定し、具体的な式は以下のとおりである。
【0027】
【数9】
【0028】
上記方法において、選択可能に、S6では、三次元運動方程式を利用してクランク軸のジャーナル/スラストショルダとブッシュとの次の時刻の相対位置を計算し、次の時刻の複合ブッシュの熱弾性流体の動圧潤滑特性を分析し、さらにその潤滑特性パラメータをリアルタイムに更新し、
径方向及び軸方向変位を解き、さらに次の時刻の径方向及び軸方向位置を計算する三次元運動方程式は以下のとおりである。
【0029】
【数10】
【0030】
上記技術的解決手段から分かるように、従来技術に比べて、本発明の開示はフランジ付き軸受の結合潤滑と動力学特性パラメータを計算する方法を提供し、従来技術に比べて以下の有益な効果を有する。
【0031】
1、フランジ付きブッシュの径方向部分とスラスト部分の潤滑結合効果を十分に考慮し、径方向部分とスラスト部分の潤滑状況を組み合わせ、圧力及び温度分布がより実情に合致する。
【0032】
2、軸方向速度とスラスト部分の時間変化計算領域を考慮し、径方向スラスト一体運動の下で各時刻のフランジ付き軸受の状態をより正確に反映することができ、それにより、実際の時間変化荷重下でのフランジ付き軸受の潤滑性能をより正確にシミュレーションする。
【0033】
3、フランジ付き軸受の結合効果による動力学性能に対する影響を考慮することにより、剛性減衰結果が実際の運転状況により適合し、フランジ付き軸受の安定性分析がより正確になる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
本発明の実施例又は従来技術の技術的解決手段をより明確に説明するために、以下、実施例又は従来技術の説明で使用される必要がある図面を簡単に説明し、明らかなように、以下に説明される図面は本発明の実施例に過ぎず、当業者であれば、創造的な労働を必要とせずに、提供された図面に基づいて他の図面を取得することもできる。
【0035】
図1図1は本発明に係るフランジ付き軸受の結合潤滑と動力学特性パラメータを計算する方法のフローチャートである。
図2図2は本発明に係るフランジ付き軸受の径方向スラスト熱弾性流体結合潤滑及び動力学モデルによる計算のフローチャートである。
図3図3は本発明に係るフランジ付き軸受の径方向スラスト熱弾性流体結合潤滑及び動力学の具体的な計算方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施例の図面を参照しながら、本発明の実施例の技術的解決手段を明確、かつ完全に説明し、明らかなように、説明される実施例は本発明の一部の実施例に過ぎず、全部の実施例ではない。本発明の実施例に基づき、当業者が創造的な労働を必要とせずに取得した全ての他の実施例は、いずれも本発明の保護範囲に属する。
【0037】
本願では、「含む」、「包含」という用語又はそれらの任意の他の変形は、非排他的な包含をカバーすることを意図し、それにより一連の要素を含む過程、方法、物品又は機器はそれらの要素を含むだけでなく、明確にリストされていない他の要素を含み、又はこのような過程、方法、物品又は機器に固有の要素をさらに含む。これ以上の制限がない場合、「1つの…を含む」という文で限定された要素については、前記要素を含む過程、方法、物品又は機器に他の同じ要素がさらに存在することを排除しない。
【0038】
図1に示すように、本発明はフランジ付き軸受の結合潤滑と動力学特性パラメータを計算する方法を開示し、
フランジ付き軸受の構造パラメータ及び運転モードを取得するステップS1と、
時間tを設定するステップS2と、
フランジ付き軸受の径方向スラスト熱弾性流体結合潤滑モジュールを利用して、油膜支持力を計算して得るステップS3と、
S3の完了後、フランジ付き軸受の動力学特性パラメータの計算モジュールを利用して、剛性減衰を計算するステップS4と、
S4の完了後、フランジ付き軸受の相対位置のフィードバックモジュールを利用して、内燃機関の計算サイクルが完了したか否かを判断し、完了した場合、フランジ付き軸受の作動特性パラメータ結果を出力して保存し、完了していない場合、S6に進むステップS5と、
対応する時刻の荷重に基づいてフランジ付き軸受の径方向及び軸方向変位を計算し、スラスト部分の計算領域及びネットワークを更新し、各軸受の次の時刻の相対位置をフランジ付き軸受の径方向スラスト熱弾性流体結合潤滑モジュール及びフランジ付き軸受の動力学特性パラメータの計算モジュールの入力パラメータとして計算を継続するステップS6と、を含む。
【0039】
図2に示すように、さらに、グローバルパラメータをフランジ付き軸受の径方向スラスト熱弾性流体結合潤滑モジュールに入力し、入力された径方向部分の偏心率及び偏心角の大きさに基づいて、径方向軸受の油膜厚さを算出し、スラスト部分の初期に仮定した平均油膜隙間及びスラストブッシュの傾斜角に基づいて、スラスト部分の油膜厚さを算出し、
油膜厚さに基づいて、レイノルズ境界条件を用い、有限差分法で径方向部分及びスラスト部分のレイノルズ方程式をそれぞれ解き、ループ計算では超緩和反復を用いて計算速度を向上させ、油膜圧力が収束条件を満たすまで出力し、
次に各部分の温度場を解き、有限差分法を利用して径方向部分及びスラスト部分の油膜領域の三次元エネルギー方程式、ブッシュ領域の熱伝導方程式をそれぞれ解き、境界条件は、径方向部分及びスラスト部分の給油側温度が所定の給油温度であること、ブッシュの外部が環境との対流熱交換条件とみなされ、内部が油膜との対流熱交換条件とみなされること、及び径方向部分の油排出側、スラスト部分の内径領域の熱量が熱流量連続性条件によって計算されることを含む。ループ計算では超緩和反復を用いて計算速度を向上させ、温度が収束条件を満たすまで出力する。
【0040】
その後、得られた温度場を利用し、変形行列法によって各ノードの熱変形量を算出し、油膜厚さの方程式に代入し、熱変形量が収束条件を満たすまで上記圧力及び温度の計算を繰り返し、現在の温度に基づいて弾性変形計算を行い、現在の圧力場に基づき、変形行列法によって各ノードの弾性変形量を算出し、油膜厚さの方程式に代入し、上記圧力場の計算を繰り返し、圧力場の計算に、径方向部分のスラスト側端面の油膜圧力及びスラスト部分の内径箇所での油膜圧力が流量及び圧力連続性条件を満たすという境界条件を増加させ、弾性変形量が収束条件を満たすまでループ計算し、このとき、初期の所定位置でのあちこち探す軸受の各部分の圧力分布を得て、
油膜圧力分布に基づいて油膜支持力を積分計算し、微小外乱法を利用して平衡位置の剛性減衰を計算する。
【0041】
さらに、径方向部分の油膜厚さの方程式は以下のとおりである。
【0042】
【数11】
【0043】
スラスト部分の油膜厚さの方程式は以下のとおりである。
【0044】
【数12】
【0045】
径方向部分のレイノルズ方程式は以下のとおりである。
【0046】
【数13】
【0047】
スラスト部分のレイノルズ方程式は以下のとおりである。
【0048】
【数14】
【0049】
さらに、熱流量連続性条件は以下のとおりである。








【0050】
【数15】
【0051】
変形行列法による熱変形、弾性変形の計算は以下のように表される。
【0052】
【数16】
【0053】
流量及び圧力連続性条件は以下のとおりである。








【0054】
【数17】
【0055】
また、グローバルパラメータには、軸受幅、ジャーナル外径(対応する軸部と一致する)、半径隙間、初期偏心率、初期偏心角、ブッシュ粗さ、ブッシュ弾性率、ブッシュポアソン比、ブッシュ熱伝導係数などの軸受パラメータ(1)、潤滑媒体密度、潤滑媒体粘度、給油温度、環境温度、回転速度、荷重などの他のパラメータ(3)、及び、軸受メッシュの分割数、軸受の油膜圧力収束精度などの計算方法パラメータ(4)が含まれる。
【0056】
さらに、S4では、油膜支持力を計算して得た後、結合効果作用の下での外乱レイノルズ方程式を導出し、解いて外乱径方向力及び軸方向力を計算して得て、結合剛性減衰行列に基づいて各部分の剛性減衰を計算する。具体的には、外乱レイノルズ方程式を確立し、軸方向、水平方向及び垂直方向という3つの方向の外乱力を含む該安定した状況での外乱圧力を解いて得る。外乱圧力を積分して、各方向の主剛性減衰及び交差剛性減衰を得る。
【0057】
さらに、結合外乱力の計算に使用される外乱レイノルズ方程式は以下のとおりである。














【0058】
【数18】
【0059】
前記外乱方程式に従って外乱圧力を計算して得た後、外乱圧力を積分し、さらに各部分の結合油膜剛性及び減衰値を特定し、具体的な式は以下のとおりである。






【0060】
【数19】
【0061】
さらに、内燃機関の作動サイクルが完了したか否かを判断し、計算が完了していない場合、対応する時刻の荷重に基づいてフランジ付き軸受の径方向及び軸方向変位を計算し、計算領域を更新し、スラスト部分とスラストショルダとの間の潤滑領域が変化し、過渡相対変位に基づいてメッシュ数及び境界メッシュ番号を変更する必要があり、さらに計算領域の区間を変更する。変位長さと単位メッシュ数が割り切れないときに、更新された計算領域のメッシュ数を切り上げて、単位メッシュのサイズを変更する必要がある。各軸受の次の時刻の相対位置を軸受潤滑性能及び動力学パラメータ計算モジュールの入力パラメータとして計算を継続し、内燃機関の作動サイクルが完了した場合、フランジ付き軸受のサイクル内の作動特性結果を保存する。
【0062】
さらに、S6では、三次元運動方程式を利用してクランク軸のジャーナル/スラストショルダとブッシュとの次の時刻の相対位置を計算し、次の時刻の複合ブッシュの熱弾性流体の動圧潤滑特性を分析し、さらにその潤滑特性パラメータをリアルタイムに更新し、
次の時刻の潤滑計算を行う過程では、径方向部分については、ジャーナルの径方向位置の変化は潤滑偏心率に直接影響を与え、さらにジャーナルと径方向部分との間の幾何学的隙間を変化させ、油膜厚さに影響を与え、同時に、レイノルズ方程式における軸方向速度を変化させる。スラスト部分については、軸方向位置の変化はそれとスラストショルダとの間の幾何学的隙間に直接影響を与え、さらに膜厚方程式に影響を与え、同時に、スラスト部分とスラストショルダとの間の潤滑領域が変化し、過渡相対変位に基づいてメッシュ数及び境界メッシュ番号を変更する必要があり、さらに計算領域の区間を変更する。変位長さと単位メッシュ数が割り切れないときに、更新された計算領域のメッシュ数を切り上げて、単位メッシュのサイズを変更する必要がある。
【0063】
径方向及び軸方向変位を解き、さらに次の時刻の径方向及び軸方向位置を計算する三次元運動方程式は以下のとおりである。
【0064】
【数20】
【0065】
さらに、径方向スラスト熱弾性流体結合潤滑モジュール及びフランジ付き軸受結合動力学計算モジュールでは、グローバルパラメータを前記径方向スラスト熱弾性流体結合潤滑モジュールに入力し、軸受の初期位置に基づいて径方向部分及びスラスト部分の初期位置での幾何学的油膜厚さをそれぞれ計算し、その後、対応するレイノルズ方程式をそれぞれ利用して対応する部分の該位置での油膜圧力を計算し、
得られた圧力に基づき、各部分のエネルギー方程式を利用してフランジ付きブッシュの表面温度を解き、収束を満たすと、個別の径方向部分及び個別のスラスト部分のブッシュ表面温度を得て、熱連続性条件に基づいて径方向部分及びスラスト部分のブッシュ表面温度を補正し、熱結合効果を考慮した各部分のブッシュ表面温度を得て、すなわち熱流量連続性条件に基づいて2つの部分の温度を補正し、さらに結合効果を総合的に考慮したフランジ付き軸受の各部分のブッシュ表面温度を得て、
安定したブッシュ表面温度に基づいて、ノードの熱変形を更新し、流量連続性条件及び圧力連続性条件によって各部分の油膜圧力を更新し、収束条件を満たす場合、所定の位置での、流量結合効果を考慮したフランジ付き軸受の各部分の油膜圧力分布を出力し、すなわち熱流量結合効果を考慮したブッシュ表面温度に基づいてブッシュの熱変形を更新し、次に流量連続性条件によって圧力分布を補正し、流量、圧力結合効果を考慮した各部分の油膜圧力を得て、
各部分の圧力に基づいてフランジ付き軸受の軸方向及び径方向支持力を計算し、荷重に基づいて軸受の位置を変更し、支持力が荷重要件を満たすまで上記操作を繰り返し、該時刻での軸受の安定潤滑状態を得て、
流量、熱及び圧力結合効果を総合的に考慮した油膜圧力を得た上で、さらに外乱レイノルズ方程式を利用して、該安定した状況での外乱圧力を解いて得て、剛性減衰を積分計算し、すなわち外乱レイノルズ方程式を利用して結合軸方向外乱力及び結合径方向外乱力を解き、剛性減衰定義式に従って外乱圧力を積分し、各部分の結合剛性減衰を計算し、フランジ付き軸受の安定性を示す。
【0066】
該時刻の潤滑及び動力学特性の計算が完了した上で、三次元運動方程式を利用してフランジ付き軸受の次の時刻の相対位置を計算するとともに、変位量に基づいて各時刻の潤滑計算領域を更新し、さらに計算メッシュ数を変更し、上記計算を繰り返し、
内燃機関の作動サイクルが完了したか否かを判断し、計算が完了していない場合、フランジ付き軸受の次の時刻の相対位置を入力パラメータとして計算を継続し、内燃機関の作動サイクルが完了した場合、フランジ付き軸受の前記サイクル内の作動特性結果を出力して保存する。
【0067】
本明細書の各実施例はいずれも進歩的な方式で説明され、各実施例間の同じ又は類似の部分は互いに参照すればよく、各実施例の説明の焦点はいずれも他の実施例との相違点である。ハードウェア及びソフトウェアの互換性を明確に説明するために、上記説明では各例の構成及びステップが機能に応じて一般的に説明されている。これらの機能がハードウェアで実行されるか、ソフトウェアで実行されるかは、技術的解決手段の特定の応用及び設計制約条件により決まる。当業者は、各特定の応用に対して異なる方法で説明された機能を実現することができるが、このような実現は本発明の範囲を超えるものであるとみなされるべきではない。
【0068】
開示された実施例についての上記説明によって、当業者は本発明を実現又は使用することができる。これらの実施例に対する様々な修正は当業者にとって明らかであり、本明細書で定義された一般的な原理は、本発明の精神又は範囲を逸脱することなく、他の実施例で実現することができる。従って、本発明は、本明細書に示されるこれらの実施例に制限されるものではなく、本明細書に開示される原理及び新規な特徴と一致する最も広い範囲に合致するものである。
図1
図2
図3
【国際調査報告】