(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-18
(54)【発明の名称】マルチモード低電圧電子顕微鏡
(51)【国際特許分類】
H01J 37/244 20060101AFI20240910BHJP
H01J 37/28 20060101ALI20240910BHJP
H01J 37/141 20060101ALI20240910BHJP
H01J 37/26 20060101ALI20240910BHJP
H01J 37/09 20060101ALI20240910BHJP
H01J 37/18 20060101ALI20240910BHJP
G01N 23/04 20180101ALI20240910BHJP
G01N 23/20058 20180101ALI20240910BHJP
G01N 23/2252 20180101ALI20240910BHJP
【FI】
H01J37/244
H01J37/28 C
H01J37/141 A
H01J37/26
H01J37/09 Z
H01J37/18
G01N23/04 330
G01N23/20058
G01N23/2252
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023581014
(86)(22)【出願日】2022-06-29
(85)【翻訳文提出日】2024-03-04
(86)【国際出願番号】 CZ2022050061
(87)【国際公開番号】W WO2024002399
(87)【国際公開日】2024-01-04
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524003002
【氏名又は名称】デロング インストゥルメンツ エー.エス.
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】ベジダク トーマス
(72)【発明者】
【氏名】コウファロヴァ エヴァ
(72)【発明者】
【氏名】ステパン ペトル
【テーマコード(参考)】
2G001
5C101
【Fターム(参考)】
2G001AA03
2G001AA09
2G001BA05
2G001BA11
2G001BA18
2G001CA01
2G001CA03
2G001DA06
2G001DA09
2G001EA03
5C101AA03
5C101AA04
5C101AA05
5C101AA13
5C101AA14
5C101AA16
5C101AA22
5C101AA23
5C101BB03
5C101BB04
5C101BB07
5C101BB08
5C101BB11
5C101CC04
5C101EE04
5C101EE14
5C101EE17
5C101EE59
5C101FF03
5C101FF57
5C101GG05
5C101GG09
(57)【要約】
本発明は、3~50kVの加速電圧範囲で作動し、一次電子ビーム(12)の方向に基づいて以下の順序で、一次電子ビーム(12)を発生させるための電子ビーム源(1)と、第一の静磁集光レンズ手段(3)と、第二の静磁集光レンズ手段(4)と、集光レンズ絞り(5)と、サンプルホルダ(6)と、静磁対物レンズ手段(7)と、対物レンズ絞り(8)と、第一の静電投影レンズ手段(9)と、検出スクリーン(11)、並びに透過電子の信号を検出するように構成されたSTEM検出器(23)、透過信号の信号を検出するように構成されたTEM検出器、及び/又は回折電子の信号を検出するように構成されたED検出器から選択される少なくとも1つの検出器を備える端部検出システム(18)とを備える、マルチモード低電圧電子顕微鏡に関する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3~50kVの加速電圧範囲で作動し、一次電子ビーム(12)の方向に基づいて以下の順序で、
前記一次電子ビーム(12)を発生させるための電子ビーム源(1)と、
第一の静磁集光レンズ手段(3)と、
第二の静磁集光レンズ手段(4)と、
集光レンズ絞り(5)と、
サンプルホルダ(6)と、
静磁対物レンズ手段(7)と、
対物レンズ絞り(8)と、
第一の静電投影レンズ手段(9)と、
検出スクリーン(11)、並びに透過電子の信号を検出するように構成されたSTEM検出器(23)、透過信号の信号を検出するように構成されたTEM検出器、及び/又は回折電子の信号を検出するように構成されたED検出器から選択される少なくとも1つの検出器を備える端部検出システム(18)と
を備える、マルチモード低電圧電子顕微鏡であって、
前記第二の静磁集光レンズ手段(4)及び前記静磁対物レンズ手段(7)がともに、第一の対物レンズ磁極片(13)及び第二の対物レンズ磁極片(14)を備え、それらの間に前記サンプルホルダ(6)が配置され、
エネルギー分散型X線放射の信号を検出するように構成されたEDS検出器(15)が、前記第一の対物レンズ磁極片(13)と前記第二の対物レンズ磁極片(14)との間に配置され、前記サンプルホルダ(6)に対して本質的に同一平面で、横方向にあることと、
前記EDS検出器(15)が、前記第二の対物レンズ磁極片(14)に取り付けられたコリメータ(16)を備えること
を特徴とする、マルチモード低電圧電子顕微鏡。
【請求項2】
後方散乱電子の信号を検出するように構成されたSEM検出器(17)が、前記第一の対物レンズ磁極片(13)と前記サンプルホルダ(6)との間に配置される、請求項1に記載のマルチモード低電圧電子顕微鏡。
【請求項3】
前記TEM検出器及び前記ED検出器が、カメラを備える複合TEM/ED検出器(22)として構築される、請求項1又は2に記載のマルチモード低電圧電子顕微鏡。
【請求項4】
前記STEM検出器(23)が、光電子増倍管を備える、請求項1~3のいずれか一項に記載のマルチモード低電圧電子顕微鏡。
【請求項5】
前記STEM検出器(23)及び/又は前記TEM検出器(22)が、明視野検出モード及び暗視野検出モードにおいて透過電子を検出するように構成される、請求項1~4のいずれか一項に記載のマルチモード低電圧電子顕微鏡。
【請求項6】
傾斜鏡(21)が、前記検出スクリーン(11)と前記STEM、TEM及びED検出器(22、23)との間で前記端部検出システム(18)に配置されることで、前記傾斜鏡(21)によって、前記検出スクリーン(11)によって生成された光信号(20)が、第一の位置における前記TEM及び/又はED検出器(22)並びに第二の位置における前記STEM検出器(23)を通過するようになる、請求項1~5のいずれか一項に記載のマルチモード低電圧電子顕微鏡。
【請求項7】
前記サンプルホルダ(6)の位置が、垂直方向に調整可能である、請求項1~6のいずれか一項に記載のマルチモード低電圧電子顕微鏡。
【請求項8】
前記電子ビーム源(1)と前記第一の静磁集光レンズ手段(3)との間に配置された静電集光レンズ手段(2)を備える、請求項1~7のいずれか一項に記載のマルチモード低電圧電子顕微鏡。
【請求項9】
前記第一の静電投影レンズ手段(9)と、前記端部検出システム(18)との間に配置された第二の静電投影レンズ手段(10)を備える、請求項1~8のいずれか一項に記載のマルチモード低電圧電子顕微鏡。
【請求項10】
前記端部検出システム(18)が、前記検出スクリーン(11)と少なくとも1つの検出器(22、23)との間、又は前記検出スクリーン(11)と傾斜鏡(21)との間に配置された光対物レンズ(19)を備える、請求項1~9のいずれか一項に記載のマルチモード低電圧電子顕微鏡。
【請求項11】
前記マルチモード低電圧電子顕微鏡が、統合された制御電子機器及び高電圧電源(29)及び冷却手段をさらに備え、前記電子顕微鏡の残りの部分が、前記制御電子機器及び高電圧電源(29)及び前記冷却手段から磁気シールド(24)によって電磁的にシールドされ、及び/又は前記制御電子機器及び高電圧電源(29)及び前記冷却手段から熱シールド(33)によって熱的にシールドされ、及び/又は前記制御電子機器及び高電圧電源(29)及び前記冷却手段から冷却手段ダンパ(25)及び/又はカラムダンパ(26)及び/又はカメラダンパ(28)によって振動的にシールドされる、請求項1~10のいずれか一項に記載のマルチモード低電圧電子顕微鏡。
【請求項12】
X線シールドによって少なくとも部分的にシールドされる、請求項1~11のいずれか一項に記載のマルチモード低電圧電子顕微鏡。
【請求項13】
前記マルチモード低電圧電子顕微鏡が、真空を生成するように構成され、少なくとも1つの回復ベーキング要素(36)と一体的に結合されたイオンポンプ(34)を備え、前記回復ベーキング要素(36)がベーキングユニット(35)に接続されている、請求項1~12のいずれか一項に記載のマルチモード低電圧電子顕微鏡。
【請求項14】
電子顕微鏡と、前記電子顕微鏡においてエネルギー分散型X線放射の信号を検出するためのEDS検出器(15)との構成であって、前記電子顕微鏡が対物レンズ磁極片(14)を備え、前記EDS検出器(15)が、前記対物レンズ磁極片(14)に取り付けられたコリメータ(16)を備えることを特徴とする、構成。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンプルのEDS分析、並びにSTEM、TEM、ED及びSEM分析のうちの少なくとも1つを可能にするマルチモード低電圧電子顕微鏡に関する。本発明はさらに、電子顕微鏡と、電子顕微鏡においてエネルギー分散型X線放射の信号を検出するためのEDS検出器との構成に関する。
【背景技術】
【0002】
本開示の目的のために、以下の略語をここで説明する。SEM(走査型電子顕微鏡)、STEM(走査型透過電子顕微鏡)、TEM(透過型電子顕微鏡)、ED(電子回折)、EDX(エネルギー分散型X線分光法)と等価であるEDS、sCMOS(科学的相補型金属酸化膜半導体)、AES(原子発光分光法)、EELS(電子エネルギー損失分光法)、BSE(後方散乱電子)、EM(電磁気)、ES(静電)、MS(静磁)。
【0003】
従来のTEM設計は、スペース及び条件に対する要求の増加、高いエネルギー消費及び支持媒体、主に冷却水の消費に関連している。その設置は複雑で、多くの場合、設置工事を必要とする。多くの場合、磁極片と一緒に使用される電磁コイルなどの電磁部品は、従来、焦点を合わせ、拡大するために透過型電子顕微鏡において使用されており、スペースを要求する外部冷却システムを必要とする。したがって、その運用は特別な研究室に限定されており、環境への大きな負荷となっている。
【0004】
低電圧電子顕微鏡におけるより低い電子エネルギー(例えば、30kV未満)は、多くの場合、サンプルの損傷を回避し、顕微鏡の堅牢性を高め、装置全体の小型化を可能にし、振動に対するその感度を低下させることが知られている。同様に、電子顕微鏡の静磁光学及び静電光学が熱損失をまったく発生させないため、従来使用されていた電磁光学とは対照的に、冷却を回避し、さらなる小型化を可能にする。しかしながら、さらなる小型化の傾向は、良好な検出効率に必要な位置に検出器及び光学系を一緒に配置することなどの他の設計の態様によって妨げられている。
【0005】
さらに、電子顕微鏡では、そのような分析に必要な時間及び設備を削減しながら、所与のサンプルの潜在的な分析結果を活用するために、同時に又は少なくとも同じ顕微鏡内で複数の分析モードが可能な電子顕微鏡を提供するという別の傾向が見られる。
【0006】
さらに、光学系を顕微鏡の付随電子機器から絶縁すること、及び分析に対するその悪影響も、電子顕微鏡の小型化において問題を引き起こしている。
【0007】
10~25kVの加速電圧範囲で作動し、STEM、TEM及びEDサンプル分析を可能にするマルチモード低電圧電子顕微鏡は、LVEM25(DELONG製)として知られている。25kVの加速電圧がTEM分析に使用され、10~15kVの加速電圧がSTEM分析に使用されるため、サンプルへの十分なビーム透過、良好なイメージング特性、より高いコントラスト、並びに染色及び非染色サンプルの両方を分析する可能性が確保される。これは、静磁集光レンズ、静磁対物レンズ、及び静電投影レンズを備え、これらのレンズを冷却する必要性を取り除き、小型の顕微鏡をもたらす。各静磁レンズ、すなわち、静磁集光レンズ及び静磁対物レンズは、静磁レンズの磁界を発生させるために少なくとも1つの永久磁石及び少なくとも1つの磁極片を備える。各静電レンズ、すなわち、静電投影レンズは、静電レンズの電界を発生させるために電源電圧又は接地電位に接続された少なくとも1つの成形電極を備える。電子ビーム源は、高輝度及び高コントラストの空間コヒーレンスを提供する25kVのショットキー型電界放出ガンである。サンプルステージは、ジョイスティックにより制御される圧電アクチュエータによって正確に移動させることができる。ダイヤフラムポンプとターボ分子ポンプの組み合わせにより、長期メンテナンスフリーの動作を保証し、イオンゲッタポンプにより振動のない環境が提供される。TEMモードは、sCMOSカメラを検出器として使用する。LVEM25顕微鏡の欠点は、検出モードの不在又は検出モードの追加である。
【0008】
5kVの加速電圧で作動し、SEM、STEM、TEM及びEDサンプル分析を可能にする同様のマルチモード低電圧電子顕微鏡は、LVEM5(DELONG製)として知られている。LVEM5顕微鏡は、電子ビーム源が5kVのショットキー型電界放出ガンであり、SEM、STEM及びTEM分析に5kVの加速電圧を提供する点で、上述のLVEM25顕微鏡とは異なる。TEMモードは、検出器としてsCMOSカメラを使用し、SEMモードは後方散乱電子用の検出器を使用する。LVEM5顕微鏡の欠点は、検出モードの不在又は検出モードの追加である。
【0009】
別のマルチモード電子顕微鏡が特許文献1に開示されており、SEM、STEM、EDX、AES、EELS、オージェ分光分析及び定量/定性元素分析モードが可能である。これは、SEM及びSTEMモードで40kV未満(例えば、30kV又は5kV)の加速電圧で作動し、高いコントラスト及び電子ビームの安定性を確保し、電荷蓄積及びサンプルの損傷を回避する。この文献はまた、比較例で使用した透過型電子顕微鏡も開示している。特許文献1に開示されている顕微鏡の欠点は、検出モードの不在又は検出モードの追加である。さらに、EDX検出の実施形態は、構造上の特徴に関して十分に開示されていない。
【0010】
コリメータを含むEDX検出器は、従来、顕微鏡チャンバに備え付けられており、これは、サンプルから生じる所望の信号を可能な限り多く、同時に、サンプルから生じない寄生信号を可能な限り少なく検出するようにコリメータを方向付けるために、非常に高い精度を必要とする。顕微鏡チャンバの小型化の傾向において、又はSEM検出器などの別の検出器が近くに存在する場合、精度の態様の重要性が増す。
【0011】
さらに関連するマルチモード電子顕微鏡は、特許文献2(SEM、STEM及びTEMモード、加速電圧は記載されていない)及び特許文献3(SEM、STEM及びTEMモード、加速電圧は100~120kVであり、50kVまで下げることができる)に開示されている。
【0012】
上記から分かるように、50kV未満の加速電圧範囲で作動する公知のマルチモード電子顕微鏡は、STEM、TEM及びEDモード、又はSEM、STEM及びEDXモードのいずれかである特定のモードでのみサンプルの分析を可能にする。先行技術に基づいて、より多くの分析モードを組み合わせ、本質的に(ほぼ又は実際に)同時にこれらのモードでサンプルの分析を提供する、50kV未満の加速電圧範囲で作動するマルチモード電子顕微鏡を提供する必要がある。さらに、サンプルから生じる所望の信号を可能な限り多く、同時に、サンプルから生じない寄生信号を可能な限り少なく検出するように、EDS検出器及び電子顕微鏡の構成を提供する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特許第2722889号公報
【特許文献2】米国特許第6573502号明細書
【特許文献3】米国特許第6875984号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、本発明の目的は、3~50kVの加速電圧範囲で作動し、EDSモードを、STEM、TEM、ED及び任意選択でSEMモードのうちの少なくとも1つと組み合わせたマルチモード電子顕微鏡を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第一の態様において、上述の目的は、独立請求項1及び従属請求項2~13に記載のマルチモード低電圧電子顕微鏡によって達成される。電子顕微鏡は、3~50kV、例えば、5kV、10kV、15kV、20kV、25kV又は30kVの加速電圧範囲で作動し、一次電子ビームの方向に基づいて以下の順序で、一次電子ビームを発生させるための電子ビーム源と、第一の静磁集光レンズ手段と、第二の静磁集光レンズ手段と、集光レンズ絞りと、サンプルホルダと、静磁対物レンズ手段と、対物レンズ絞りと、第一の静電投影レンズ手段と、端部検出システムとを備える。第二の静磁集光レンズ手段及び静磁対物レンズ手段はともに、第一の対物レンズ磁極片及び第二の対物レンズ磁極片を備え、それぞれの第一の対物レンズ磁極片と第二の対物レンズ磁極片との間にサンプルホルダが配置される。
【0016】
端部検出システムは、検出スクリーン(一般に、TEM用途では蛍光スクリーン、又はSEM用途ではシンチレータスクリーンとして示される)と、透過電子の信号を検出するように構成されたSTEM検出器、透過電子の信号を検出するように構成されたTEM検出器、及び/又は回折電子の信号を検出するように構成されたED検出器から選択される少なくとも1つの検出器とを備える。
【0017】
本発明の基礎となる概念は、エネルギー分散型X線放射の信号(EDS信号)を検出するように構成されたEDS検出器が、第一の対物レンズ磁極片と第二の対物レンズ磁極片との間に配置され、サンプルホルダに対して本質的に同一平面で、横方向であるということである。EDS検出器は、第二の対物レンズ磁極片に取り付けられたコリメータを備える。「取り付けられた」とは、本明細書では機械的な取り付けであることが理解される。コリメータを顕微鏡チャンバにさらに備え付けられたEDS検出器に備え付ける代わりに、コリメータを第二の対物レンズ磁極片に備え付ける利点は、EDS検出に必要な全ての構造要素を提供する、より容易で、より柔軟で、さらにより正確な方法であることである。重要なことに、このような利点により、液浸対物レンズ全体の小型化が可能になり、ひいては電子顕微鏡全体の小型化が可能になる。本発明によるコリメータを有するEDS検出器は、小型化液浸対物レンズアセンブリにおけるサンプルから発生する十分にノイズのないEDS信号を提供するのに十分に堅牢である。
【0018】
一般に、コリメータは、顕微鏡チャンバに備え付けられたEDS検出器に取り付けられ、サンプルから直接発生していないEDS信号の検出器への入射を制限するのに役立つ。コリメータは通常、管状の形状であり、すなわち、少なくとも2つ(通常は2つ)の開放端を備えた筐体で、通常、ジルコニウム、金又は純粋なグラファイトなどの、スペクトル線を分析において容易に差し引くことができる単一元素材料から作製される。
【0019】
第一及び第二の静磁集光レンズ手段は、端部検出システムにおける光信号の特性を変化させるように機能し、先行技術から一般に知られているように、各静磁集光レンズ手段は、静磁集光レンズの磁界を発生させるために、少なくとも1つの永久磁石と、少なくとも1つの磁極片とを備える。同様に、先行技術から知られているように、静磁対物レンズ手段は、静磁対物レンズの磁界を発生させるために、少なくとも1つの永久磁石と、少なくとも1つの磁極片とを備える。永久磁石のアセンブリとともに第一及び第二の対物レンズ磁極片は、液浸対物レンズにおいて強力な磁界を発生させる。液浸対物レンズの磁界は2つの部分を有し、サンプルの前方部分は第二の静磁集光レンズとして機能し、サンプルの後方部分は静磁対物レンズとして機能する。集光レンズ絞りは、異なる直径の複数の集光レンズ絞りを含む集光レンズマルチ絞りシートとして具現化することができる。同様に、対物レンズ絞りは、異なる直径の複数の対物レンズ絞りを含む対物レンズマルチ絞りシートとして具体化することができる。第一の静電投影レンズ手段は、像及び検出スクリーン上のその投影を拡大するように機能し、先行技術から一般に知られているように、第一の静電投影レンズ手段は、静電投影レンズの電界を発生させるために、電源電圧又は接地電位に接続された少なくとも1つの成形電極を備える。
【0020】
一例として、加速電圧は、TEMモードでは25kV、STEM/SEMモードでは10又は15kV、EDSモードでは10、15又は25kVであり得る。異なる検出モードは、一次電子ビームの異なる処理及びパラメータによって達成される。
【0021】
好ましくは、マルチモード低電圧電子顕微鏡は、後方散乱電子(BSE)の信号を検出するように構成され、第一の対物レンズ磁極片とサンプルホルダとの間に配置されたSEM検出器を備える。
【0022】
好ましくは、TEM検出器及びED検出器は、カメラを備える複合TEM/ED検出器として構築され、これらのモード間で切り替えるためには、回折信号が検出される後側焦点面を、静電投影レンズ手段によって再び焦点を合わせる必要がある。好ましくは、STEM検出器は光電子増倍管を備える。
【0023】
好ましくは、STEM検出器及び/又はTEM検出器は、明視野検出モード及び暗視野検出モードにおいて透過電子を検出するように構成される。TEMモードの場合、明視野検出モード及び暗視野検出モードは、ビームの傾斜及びその後の適切な回折ビームの選択によって切り替えられる。STEMモードの場合、明視野検出モード及び暗視野検出モードは、検出器の絞りの位置を変化させることによって切り替えられる。
【0024】
好ましくは、マルチモード低電圧電子顕微鏡は、検出スクリーンと、STEM、TEM及びED検出器との間で端部検出システムに配置された傾斜鏡を備えることで、傾斜鏡により、検出スクリーンによって生成された光信号が、第一の位置におけるTEM及び/又はED検出器並びに第二の位置におけるSTEM検出器を通過するようになる。その結果、モードを変更するときに検出器を高い要求で移動させる必要はもはやない。
【0025】
好ましくは、サンプルホルダは、垂直方向に調整可能である。
【0026】
好ましくは、マルチモード低電圧電子顕微鏡は、電子ビーム源と第一の静電集光レンズ手段との間に配置された静電集光レンズ手段を備える。静電集光レンズ手段は調整可能であり、先行技術から一般に知られているように、静電集光レンズ手段は、静電集光レンズの電界を発生させるために電源電圧又は接地電位に接続された少なくとも1つの成形電極を備える。
【0027】
好ましくは、マルチモード低電圧電子顕微鏡は、第一の静電投影レンズ手段と端部検出システムとの間に配置された第二の静電投影レンズ手段を備える。第二の静電投影レンズ手段は、倍率の範囲を増加させることを可能にし、先行技術から一般に知られているように、第二の静電投影レンズ手段は、静電投影レンズの電界を発生させるために電源電圧又は接地電位に接続された少なくとも1つの成形電極を備える。
【0028】
好ましくは、端部検出システムは、検出スクリーンと少なくとも1つの検出器との間、又は傾斜鏡が存在する場合、検出スクリーンと傾斜鏡との間に配置された光対物レンズを備える。光対物レンズにより、望ましくない振動及び付随する電子機器との電磁干渉に対する感度の低下が保証される。さらに、光対物レンズにより、透過電子の信号がSTEM及び/又はTEM検出器に到達することが保証される。
【0029】
好ましくは、マルチモード低電圧電子顕微鏡は、統合された制御電子機器及び高電圧電源並びに1つ又は複数のファンなどの冷却手段を備える。電子顕微鏡の残りの部分(すなわち、以前の段落で指定された特徴を備えたカラム)は、制御電子機器及び高電圧電源及び冷却手段から磁気シールドによって電磁的にシールドされ、及び/又は制御電子機器及び高電圧電源及び冷却手段から熱シールドによって熱的にシールドされ、及び/又は制御電子機器及び高電圧電源及び冷却手段から冷却手段ダンパ及び/又はカラムダンパ及び/又はカメラダンパによって振動的にシールドされる。顕微鏡は好ましくは、とりわけカメラダンパを備えるX線シールドによって少なくとも部分的にシールドされる。特に、EDS検出器を備える顕微鏡カラムは、オペレータをX線放射から保護するためにX線シールドによってシールドされる。
【0030】
さらに、電子顕微鏡の残りの部分(すなわちカラム)への熱伝達を防止するために、制御電子機器及び高電圧電源及び冷却手段のゾーン電力制御を提供することができる。電子機器からの熱を伝導する熱シールド及びゾーン熱制御のシステムにより、カラム及び電子機器を単一の構造に接続できるため、より多くのスペースを節約できる。
【0031】
好ましくは、マルチモード低電圧電子顕微鏡は、真空を生成するように構成され、自動真空回復(例えば、輸送又は真空破壊後)のためにベーキングユニットに接続された少なくとも1つの回復ベーキング要素と一体的に結合されたイオンポンプを備える。ベーキングユニットは、イオンポンプと一体的に配置された少なくとも1つの回復ベーキング要素によってイオンポンプの加熱を制御し、電力を供給し、これにより、顕微鏡を数時間容易に稼働させることができる。イオンポンプの加熱により、それぞれの内面から吸着分子(通常は空気中の湿気からの水)が放出され、その後、これらの分子がイオンポンプによって排出される。顕微鏡の一部のみが加熱されるため、ベーキングユニットはソフトベーキング機能を指す。イオンポンプと一体的に配置された回復ベーキング要素は、正確に定義された電力で低い安全電圧で作動するため、温度センサの調節は必要なく、システムは単純で堅牢である。
【0032】
本発明の第二の態様では、上述の目的は、独立請求項14による、電子顕微鏡と、電子顕微鏡においてエネルギー分散型X線放射の信号を検出するためのEDS検出器との構成によって達成される。電子顕微鏡は一般に対物レンズ磁極片を備え、EDS検出器は対物レンズ磁極片に取り付けられたコリメータを備える。このような備え付けの利点は上述されており、EDS検出モードを提供することを目的とし、一般的な対物レンズ磁極片を備える他の電子顕微鏡にも当てはまる。一例として、コリメータは、本発明によるマルチモード低電圧電子顕微鏡のように、一次電子ビームの方向に基づいてサンプルホルダの後方の対物レンズ磁極片に取り付けることができる。別の例として、コリメータは、一般に対物レンズ磁極片の後方に配置されたサンプルホルダを有する走査型電子顕微鏡などにおいて、一次電子ビームの方向に基づいてサンプルホルダの前方の対物レンズ磁極片に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明によるマルチモード低電圧電子顕微鏡(1B)又は同様に先行技術のLVEM25顕微鏡によるマルチモード低電圧電子顕微鏡(1B)と比較した先行技術のTEM(1A)の光学図を示す。
【
図2】本発明によるマルチモード低電圧電子顕微鏡の種々の検出器の詳細な構成を示す。
【
図3a】同じサンプルから取得した窒化ガリウム薄層の電子顕微鏡画像を1フレームで示す。
図3aは、低倍率のTEMモードでのサンプルの概観を示す。
【
図3b】同じサンプルから取得した窒化ガリウム薄層の電子顕微鏡画像を1フレームで示す。
図3bは、低倍率のTEMモードでの関心点の特定を示す。
【
図3c】同じサンプルから取得した窒化ガリウム薄層の電子顕微鏡画像を1フレームで示す。
図3cは、TEM明視野モードでのサンプル分析を示す。
【
図3d】同じサンプルから取得した窒化ガリウム薄層の電子顕微鏡画像を1フレームで示す。
図3dは、1つの回折極大におけるTEM暗視野モードでのサンプル分析を示す。
【
図3e】同じサンプルから取得した窒化ガリウム薄層の電子顕微鏡画像を1フレームで示す。
図3eは、別の回折極大におけるTEM暗視野モードでのサンプル分析を示す。
【
図3f】同じサンプルから取得した窒化ガリウム薄層の電子顕微鏡画像を1フレームで示す。
図3fは、TEM暗視野モードに対応する電子回折(ED)を示す。
【
図3g】同じサンプルから取得した窒化ガリウム薄層の電子顕微鏡画像を1フレームで示す。
図3gは、STEMモードでのサンプル分析を示す。
【
図3h】同じサンプルから取得した窒化ガリウム薄層の電子顕微鏡画像を1フレームで示す。
図3hは、SEM(BSE)モードでのサンプル分析を示す。
【
図3i】同じサンプルから取得した窒化ガリウム薄層の電子顕微鏡画像を1フレームで示す。
図3iは、EDSによるサンプル内のガリウムマッピングを示す。
【
図3j】同じサンプルから取得した窒化ガリウム薄層の電子顕微鏡画像を1フレームで示す。
図3jは、EDSによるサンプル内の窒素マッピングを示す。
【
図3k】同じサンプルから取得した窒化ガリウム薄層の電子顕微鏡画像を1フレームで示す。
図3kは、EDSによるサンプル内のケイ素マッピングを示す。
【
図3l】同じサンプルから取得した窒化ガリウム薄層の電子顕微鏡画像を1フレームで示す。
図3lは、EDSによる元素サンプル分析のグラフ表示を示す。
【
図4】本発明によるマルチモード低電圧電子顕微鏡の統合設計の特徴を示す。
【
図5】本発明による電子顕微鏡の一例を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
従来の透過型電子顕微鏡の光学図を
図1Aに示す。明確さの目的のために、この図は実際の顕微鏡と比較して上下逆に示される。TEMは、一次電子ビームの方向(下から上)に基づいて以下の順序で、一次電子ビームを発生させるための電子ビーム源101、電磁集光レンズ手段102、サンプルを保持するためのサンプルホルダ106、電磁対物レンズ手段107、対物レンズ絞り108、中間レンズ手段109のアセンブリ、電磁投影レンズ手段110、及び検出スクリーン111を備える。各電磁要素は望ましくない熱を生成し、冷却を必要とし、これは、多くの場合、空間的な要求が困難である。
【0035】
本発明による電子顕微鏡及びLVEM25(DELONG製)と称される先行技術の電子顕微鏡の光学図を
図1Bに示す。電子顕微鏡は、一次電子ビーム12の方向(下から上、ビーム12は
図2にも示さる)に基づいて以下の順序で、一次電子ビーム12を発生させるための電子ビーム源1、静電集光レンズ手段2、第一の静磁集光レンズ手段3、第二の静磁集光レンズ手段4、集光レンズ絞り5、サンプルを保持するためのサンプルホルダ6、静磁対物レンズ手段7、対物レンズ絞り8、第一の静電投影レンズ手段9、第二の静電投影レンズ手段10、及び検出スクリーン11を備える。静電及び静磁要素は望ましくない熱を生成しないため、冷却する必要がなく、これにより顕微鏡の小型化を有利にもたらし得る。
【0036】
本発明による電子顕微鏡の種々の検出器の詳細な構成を
図2に示す。第二の静磁集光レンズ手段4及び静磁対物レンズ手段7はともに、第一の対物レンズ磁極片13(下部)及び第二の対物レンズ磁極片14(上部)を備える。サンプルホルダ6は、対物レンズ磁極片13、14の間に配置され、これらの対物レンズ磁極片13、14は、永久磁石のアセンブリとともに液浸対物レンズ内に強力な2つの部分の磁界を生成する。サンプルホルダ6の前方の部分は第二の静磁集光レンズとして機能し、サンプルホルダ6の後方の部分は静磁対物レンズとして機能する。
【0037】
エネルギー分散型X線放射の信号を検出するように構成されたEDS検出器15は、第一の対物レンズ磁極片13と第二の対物レンズ磁極片14との間に配置される。EDS検出器15は、サンプルホルダ6に対して本質的に同一平面で、横方向(すなわち、サンプルホルダ6の側部)に配置される。EDS検出器15自体は顕微鏡チャンバに取り付けられ、第二の対物レンズ磁極片14に取り付けられた管状コリメータ16を備える。さらに、後方散乱電子の信号を検出するように構成されたSEM検出器17が、第一の対物レンズ磁極片13とサンプルホルダ6との間に配置される。
【0038】
光信号20を生成するための検出スクリーン11は、光対物レンズ19、傾斜鏡21、光電子増倍管を備え、透過電子の信号を検出するように構成されたSTEM検出器23、並びにカメラ(sCMOSタイプなど)を備え、透過電子及び回折電子の信号を検出するように構成された複合TEM/ED検出器22とともに端部検出システム18に含まれる。傾斜鏡21は、光対物レンズ19と、STEM、TEM及びED検出器22、23との間に配置され、それによって、検出スクリーン11によって生成され、光対物レンズ19によって修正された光信号20が、第一の位置のTEM/ED検出器22及び第二の位置のSTEM検出器23を通ることが可能になる。
【0039】
窒化ガリウム薄層サンプルの分析からの結果を
図3a~3kに示す。
図3a及び3bは、25kVの低倍率下でのTEMモードにおけるサンプルの概観及び詳細なサンプルの概観を示す。
図3cは、25kVのTEM明視野モードでのサンプル部分を示す。
図3d及び3eは、25kVのTEM暗視野モードでの2つの異なる回折極大におけるサンプル部分を示す。
図3fは、
図3d及び3eのTEM暗視野モードに対応する、25kVでのサンプルの電子回折パターンを示す。
図3gは、15kVのSTEM明視野モードでのサンプル部分を示す。
図3hは、15kVでのSEMモードのサンプル部分を示す。
図3i、3j及び3kは、原子マッピングを伴う15kVでのEDSモードのサンプル部分を示す(
図3iはガリウム、
図3jは窒素、
図3kはケイ素)。
図3lは、15kVのEDSモードでの元素サンプル分析のグラフ表示を示し、特徴的なKα遷移を示す(ピークは左から右へ:約0.4keVの窒素についての典型的なピーク領域、約1.1keVのガリウムについての優勢なピーク、約1.7keVのケイ素についての優勢なピーク、約9.2keVのガリウムについての優勢なピーク)。
【0040】
統合設計の特徴を含む電子顕微鏡の全体図を
図4に示す。顕微鏡の底部は、制御電子機器及び高電圧電源29を備え、これは熱を発生し、冷却手段ダンパ25に配置されるファンなどの冷却手段で冷却する必要がある。中央に配置された顕微鏡カラムは、磁気シールド24、熱シールド33及びカラムダンパ26によって、制御電子機器及び高電圧電源29から電磁的、熱的及び振動的にシールドされなければならない。上部に配置され、ケーブルクランプ31で固定されたケーブル30を介して制御電子機器29に接続されたカメラも、カメラダンパ28で保護される。全体として、顕微鏡全体は、外部音響カバー27及び耐振動固定ブロック32を有する。また、例えば、輸送又は真空破壊後、自動真空回復のための回復ベーキング要素36及びベーキングユニット35を備えたイオンポンプ34も存在する。
【0041】
電子顕微鏡の例を、関連する電子機器とともに
図5に概略的に示す。電子顕微鏡の電子的に制御されるコンポーネントのみが示されており、すなわち、電子的に制御されていない永久磁石は示されていない。電子的に制御されるコンポーネントには、電子光学コンポーネント、すなわち、コンディショニング(COND)に接続されたガンチャンバ、2つのイオンポンプ(IP-A、IP-B)、及びサンプルステージ、絞りステージ、投影部、八極子、2つのレンズを備え、真空計に接続された顕微鏡チャンバ、EDS検出器、イオンポンプ(IP-C)並びにターボ分子ポンプ(TMP)が含まれる。また、電子的に制御されるコンポーネントには、光学コンポーネント、すなわち、光対物レンズ、STEM検出器、カメラ(複合TEM/ED検出器)も含まれる。ガンチャンバは、ガン高電圧電源ユニットによって電力を供給され、制御される。イオンポンプは、イオンポンプ電源ユニットによって電力を供給され、制御され、さらにハードウェアセキュリティユニットに接続された自動真空回復のためのベーキングユニット(「ソフトベーキング」と表示される)によってさらに制御される。サンプルステージ及び光対物レンズは、サンプルステージ及び光対物レンズの複合制御ユニットによって電力が供給され、制御される。絞りステージは、絞りステージ制御ユニットによって電力を供給され、制御される。レンズは、高電圧電源ユニットによって電力を供給され、制御される。八極子は、八極子及び走査制御ユニット、並びにSTEM及び走査制御ユニットによって電力を供給され、制御される。EDS検出器は、EDS制御ユニットによって電力を供給され、制御され、次にEDS制御ユニットは、STEM及び走査制御ユニットも制御する。STEM検出器は、高電圧電源ユニットによって電力を供給され、STEM及び走査制御ユニットによって制御される。上述のユニットの全ては、さらに、一般的な電源ユニット並びに一般的な通信及び制御システムに接続される。カメラもまた、一般的な電源ユニットによって電力を供給される。ターボ分子ポンプ及び真空計は、一般的な電源ユニットによって電力を供給され、一般的な通信及び制御システムによって制御される。カメラ、EDS制御ユニット、STEM及び走査制御ユニット、並びに一般的な通信及び制御システムは、コンピュータにデジタル的に接続される。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、サンプル損傷のリスクを伴うことなく、多くのサンプルの詳細な画像及び詳細な分析を取得するために使用することができる。この機器の典型的な用途は、生命科学と材料科学との間の境界線、例えば、ナノ材料を伴う組織切片(診断、治療又は研究目的、及び工業検査又は施設検査のため)からのサンプルの分析であり、TEMモードは高速構造解析をユーザに提供し、STEMは構造の詳細についてのより深い洞察を提供し、SEMは基本的な表面解析を提供し、EDSは化学組成に関する情報を提供し、EDは結晶構造に関する追加情報を提供する。
【符号の説明】
【0043】
1 電子ビーム源
2 静電集光レンズ手段
3 第一の静磁集光レンズ手段
4 第二の静磁集光レンズ手段
5 集光レンズ絞り
6 サンプルホルダ
7 静磁対物レンズ手段
8 対物レンズ絞り
9 第一の静電投影レンズ手段
10 第二の静電投影レンズ手段
11 検出スクリーン
12 一次電子ビーム
13 第一の対物レンズ磁極片
14 第二の対物レンズ磁極片
15 EDS検出器
16 コリメータ
17 SEM検出器
18 端部検出システム
19 光対物レンズ
20 光信号
21 傾斜鏡
22 TEM/ED検出器
23 STEM検出器
24 磁気シールド
25 冷却手段ダンパ
26 カラムダンパ
27 音響カバー
28 カメラダンパ
29 制御電子機器及び高電圧電源
30 ケーブル
31 ケーブルクランプ
32 耐振動固定ブロック
33 熱シールド
34 イオンポンプ
35 ベーキングユニット
36 回復ベーキング要素
101 電子ビーム源
102 電磁集光レンズ手段
106 サンプルホルダ
107 電磁対物レンズ手段
108 対物レンズ絞り
109 中間レンズ手段
110 電磁投影レンズ手段
111 検出スクリーン
【手続補正書】
【提出日】2024-03-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3~50kVの加速電圧範囲で作動し、一次電子ビーム(12)の方向に基づいて以下の順序で、
前記一次電子ビーム(12)を発生させるための電子ビーム源(1)と、
第一の静磁集光レンズ手段(3)と、
第二の静磁集光レンズ手段(4)と、
集光レンズ絞り(5)と、
サンプルホルダ(6)と、
静磁対物レンズ手段(7)と、
対物レンズ絞り(8)と、
第一の静電投影レンズ手段(9)と、
検出スクリーン(11)、並びに透過電子の信号を検出するように構成されたSTEM検出器(23)、透過信号の信号を検出するように構成されたTEM検出器、及び/又は回折電子の信号を検出するように構成されたED検出器から選択される少なくとも1つの検出器を備える端部検出システム(18)と
を備える、マルチモード低電圧電子顕微鏡であって、
前記第二の静磁集光レンズ手段(4)及び前記静磁対物レンズ手段(7)がともに、第一の対物レンズ磁極片(13)及び第二の対物レンズ磁極片(14)を備え、それらの間に前記サンプルホルダ(6)が配置され、
エネルギー分散型X線放射の信号を検出するように構成されたEDS検出器(15)が、前記第一の対物レンズ磁極片(13)と前記第二の対物レンズ磁極片(14)との間に配置され、前記サンプルホルダ(6)に対して本質的に同一平面で、横方向にあることと、
前記EDS検出器(15)が、前記第二の対物レンズ磁極片(14)に取り付けられたコリメータ(16)を備えること
を特徴とする、マルチモード低電圧電子顕微鏡。
【請求項2】
後方散乱電子の信号を検出するように構成されたSEM検出器(17)が、前記第一の対物レンズ磁極片(13)と前記サンプルホルダ(6)との間に配置される、請求項1に記載のマルチモード低電圧電子顕微鏡。
【請求項3】
前記TEM検出器及び前記ED検出器が、カメラを備える複合TEM/ED検出器(22)として構築される、請求項1又は2に記載のマルチモード低電圧電子顕微鏡。
【請求項4】
前記STEM検出器(23)が、光電子増倍管を備える、請求項1
又は2に記載のマルチモード低電圧電子顕微鏡。
【請求項5】
前記STEM検出器(23)及び/又は前記TEM検出器(22)が、明視野検出モード及び暗視野検出モードにおいて透過電子を検出するように構成される、請求項1
又は2に記載のマルチモード低電圧電子顕微鏡。
【請求項6】
傾斜鏡(21)が、前記検出スクリーン(11)と前記STEM、TEM及びED検出器(22、23)との間で前記端部検出システム(18)に配置されることで、前記傾斜鏡(21)によって、前記検出スクリーン(11)によって生成された光信号(20)が、第一の位置における前記TEM及び/又はED検出器(22)並びに第二の位置における前記STEM検出器(23)を通過するようになる、請求項1
又は2に記載のマルチモード低電圧電子顕微鏡。
【請求項7】
前記サンプルホルダ(6)の位置が、垂直方向に調整可能である、請求項1
又は2に記載のマルチモード低電圧電子顕微鏡。
【請求項8】
前記電子ビーム源(1)と前記第一の静磁集光レンズ手段(3)との間に配置された静電集光レンズ手段(2)を備える、請求項1
又は2に記載のマルチモード低電圧電子顕微鏡。
【請求項9】
前記第一の静電投影レンズ手段(9)と、前記端部検出システム(18)との間に配置された第二の静電投影レンズ手段(10)を備える、請求項1
又は2に記載のマルチモード低電圧電子顕微鏡。
【請求項10】
前記端部検出システム(18)が、前記検出スクリーン(11)と少なくとも1つの検出器(22、23)との間、又は前記検出スクリーン(11)と傾斜鏡(21)との間に配置された光対物レンズ(19)を備える、請求項1
又は2に記載のマルチモード低電圧電子顕微鏡。
【請求項11】
前記マルチモード低電圧電子顕微鏡が、統合された制御電子機器及び高電圧電源(29)及び冷却手段をさらに備え、前記電子顕微鏡の残りの部分が、前記制御電子機器及び高電圧電源(29)及び前記冷却手段から磁気シールド(24)によって電磁的にシールドされ、及び/又は前記制御電子機器及び高電圧電源(29)及び前記冷却手段から熱シールド(33)によって熱的にシールドされ、及び/又は前記制御電子機器及び高電圧電源(29)及び前記冷却手段から冷却手段ダンパ(25)及び/又はカラムダンパ(26)及び/又はカメラダンパ(28)によって振動的にシールドされる、請求項1
又は2に記載のマルチモード低電圧電子顕微鏡。
【請求項12】
X線シールドによって少なくとも部分的にシールドされる、請求項1
又は2に記載のマルチモード低電圧電子顕微鏡。
【請求項13】
前記マルチモード低電圧電子顕微鏡が、真空を生成するように構成され、少なくとも1つの回復ベーキング要素(36)と一体的に結合されたイオンポンプ(34)を備え、前記回復ベーキング要素(36)がベーキングユニット(35)に接続されている、請求項1
又は2に記載のマルチモード低電圧電子顕微鏡。
【請求項14】
電子顕微鏡と、前記電子顕微鏡においてエネルギー分散型X線放射の信号を検出するためのEDS検出器(15)との構成であって、前記電子顕微鏡が対物レンズ磁極片(14)を備え、前記EDS検出器(15)が、前記対物レンズ磁極片(14)に取り付けられたコリメータ(16)を備えることを特徴とする、構成。
【国際調査報告】