(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-18
(54)【発明の名称】エポキシド活性化基材及びそれから作られる疎水性相互作用クロマトグラフィー膜
(51)【国際特許分類】
B01J 20/285 20060101AFI20240910BHJP
C08L 1/00 20060101ALI20240910BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20240910BHJP
B01J 20/281 20060101ALI20240910BHJP
B01J 20/28 20060101ALI20240910BHJP
B01J 20/26 20060101ALI20240910BHJP
C08J 7/12 20060101ALN20240910BHJP
【FI】
B01J20/285 T
C08L1/00
C08L101/00
B01J20/22 D
B01J20/28 Z
B01J20/26 H
B01J20/281 G
B01J20/281 X
C08J7/12 A CEP
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024500108
(86)(22)【出願日】2022-07-11
(85)【翻訳文提出日】2024-01-12
(86)【国際出願番号】 US2022036711
(87)【国際公開番号】W WO2023287718
(87)【国際公開日】2023-01-19
(32)【優先日】2021-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591163214
【氏名又は名称】ドナルドソン カンパニー,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チョウ, ジンシャン
(72)【発明者】
【氏名】テンプルズ, グラハム
(72)【発明者】
【氏名】グオ, ビン
【テーマコード(参考)】
4F073
4G066
4J002
【Fターム(参考)】
4F073AA08
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4G066AB13D
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4J002AB011
4J002AB012
4J002BB022
4J002BB112
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4J002CM042
4J002CN032
(57)【要約】
活性化膜及び活性化膜から形成され得るような誘導体化膜が開示される。疎水性相互作用分離方法を用いてプラスミドDNAを精製する用途のために使用され得るような誘導体化膜を取り込むHICシステムも開示される。誘導体化膜は、高いプラスミドDNA結合容量及び短い保持時間を呈し得る。活性化膜を形成する方法及びその膜を更に誘導体化する方法も記載される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質セルロース膜と、前記多孔質セルロース膜の表面に結合された複数の疎水性リガンドとを含む疎水性相互作用クロマトグラフィー分離媒体。
【請求項2】
前記多孔質セルロース膜は、キャスト膜、ヒドロゲル膜又はエレクトロスピニングされたナノファイバー膜などのファイバー膜を含む、請求項1に記載の疎水性相互作用クロマトグラフィー分離媒体。
【請求項3】
前記多孔質セルロース膜は、セルロース、再生セルロース又はセルロース誘導体を含む、請求項1又は2に記載の疎水性相互作用クロマトグラフィー分離媒体。
【請求項4】
前記多孔質セルロース膜は、約0.1m
2/mL~約30m
2/mL、約0.1m
2/mL~約25m
2/mL、約0.1m
2/mL~約20m
2/mL、約0.1m
2/mL~約15m
2/mL、約0.1m
2/mL~約10m
2/mL、約0.5m
2/mL~約30m
2/mL、約0.5m
2/mL~約25m
2/mL、約0.5m
2/mL~約20m
2/mL、約0.5m
2/mL~約15m
2/mL、約0.5m
2/mL~約10m
2/mL、約0.5m
2/mL~約5m
2/mL、約1m
2/mL~約30m
2/mL、約1m
2/mL~約25m
2/mL、約1m
2/mL~約20m
2/mL、約1m
2/mL~約15m
2/mL、約1m
2/mL~約10m
2/mL、約1m
2/mL~約5m
2/mL、約5m
2/mL~約30m
2/mL、約5m
2/mL~約25m
2/mL、約5m
2/mL~約20m
2/mL、約5m
2/mL~約15m
2/mL又は約5m
2/mL~約10m
2/mLの比表面積を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の疎水性相互作用クロマトグラフィー分離媒体。
【請求項5】
前記多孔質セルロース膜は、約0.1マイクロメートル~約10マイクロメートル、約0.1マイクロメートル~約0.2マイクロメートル、約0.1マイクロメートル~約0.45マイクロメートル、約0.1マイクロメートル~約10マイクロメートル、約0.1マイクロメートル~約2マイクロメートル、約0.2マイクロメートル~約0.45マイクロメートル、約0.2マイクロメートル~約1マイクロメートル、約0.2マイクロメートル~約2マイクロメートル、約0.2マイクロメートル~約10マイクロメートル、約0.45マイクロメートル~約1マイクロメートル、約0.45マイクロメートル~約2マイクロメートル、約0.45マイクロメートル~約10マイクロメートル、約1マイクロメートル~約2マイクロメートル又は約1マイクロメートル~約5マイクロメートルの細孔径を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の疎水性相互作用クロマトグラフィー分離媒体。
【請求項6】
一緒に積層された複数の膜を含み、前記積層は、前記多孔質セルロース膜を含み、前記積層は、70マイクロメートル~10,000マイクロメートル、例えば約10,000マイクロメートル以上、約7,500マイクロメートル以上、約5,000マイクロメートル以上、約2,500マイクロメートル以上、約1,000マイクロメートル以上、約900マイクロメートル以上、約800マイクロメートル以上、約700マイクロメートル以上、約600マイクロメートル以上、約500マイクロメートル以上、約400マイクロメートル以上、約300マイクロメートル以上、約200マイクロメートル以上、約100マイクロメートル以上、約70マイクロメートル以上、例えば約70マイクロメートル~約100マイクロメートル、約70マイクロメートル~約200マイクロメートル、約70マイクロメートル~約300マイクロメートル、約70マイクロメートル~約400マイクロメートル、約70マイクロメートル~約500マイクロメートル、約70マイクロメートル~約750マイクロメートル、約70マイクロメートル~約1,000マイクロメートル、約70マイクロメートル~約2,000マイクロメートル、約70マイクロメートル~約3,000マイクロメートル、約70マイクロメートル~約4,000マイクロメートル、約70マイクロメートル~約5,000マイクロメートル、約250マイクロメートル~約300マイクロメートル、約250マイクロメートル~約400マイクロメートル、約250マイクロメートル~約500マイクロメートル、約250マイクロメートル~約750マイクロメートル、約250マイクロメートル~約1,000マイクロメートル、約250マイクロメートル~約2,000マイクロメートル、約250マイクロメートル~約3,000マイクロメートル、約250マイクロメートル~約4,000マイクロメートル、約250マイクロメートル~約5,000マイクロメートル、約500マイクロメートル~約1,000マイクロメートル、約500マイクロメートル~約2,000マイクロメートル、約500マイクロメートル~約3,000マイクロメートル、約500マイクロメートル~約4,000マイクロメートル又は約500マイクロメートル~約5,000マイクロメートルの厚さを有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の疎水性相互作用クロマトグラフィー分離媒体。
【請求項7】
前記疎水性リガンドは、2つ以上の炭素を有する脂肪族鎖、ベンジル含有基、フェニル含有基、フェノール含有基、ピリジン含有基、ボロン酸基、分岐ポリマー、硫黄含有親硫黄性基又はこれらの任意の組み合わせを含み、前記複数の疎水性リガンドの各々は、前記多孔質セルロース膜の前記表面に連結基を介して結合され、前記連結基は、エポキシの反応産物及びエポキシ反応性官能基、例えばアミン又はチオエーテル部分を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の疎水性相互作用クロマトグラフィー分離媒体。
【請求項8】
120秒の保持時間において且つ2.5Mの硫酸アンモニウム緩衝液濃度を利用して、約1mg/mLより大きい、例えば約1mg/mL~約10mg/mL、約1mg/mL~約20mg/mL、約1mg/mL~約25mg/mL、約1mg/mL~約30mg/mL、約2mg/mL~約5mg/mL、約2mg/mL~約10mg/mL、約2mg/mL~約15mg/mL、約2mg/mL~約20mg/mL、約2mg/mL~約25mg/mL、約2mg/mL~約30mg/mL、約3mg/mL~約5mg/mL、約3mg/mL~約10mg/mL、約3mg/mL~約15mg/mL、約3mg/mL~約20mg/mL、約3mg/mL~約25mg/mL、約3mg/mL~約30mg/mL、約4mg/mL~約5mg/mL、約4mg/mL~約10mg/mL、約4mg/mL~約15mg/mL、約4mg/mL~約20mg/mL、約4mg/mL~約25mg/mL、約4mg/mL~約30mg/mL、約5mg/mL~約10mg/mL、約5mg/mL~約15mg/mL、約5mg/mL~約20mg/mL、約5mg/mL~約25mg/mL又は約5mg/mL~約30mg/mLのポリヌクレオチド動的結合容量を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の疎水性相互作用クロマトグラフィー分離媒体。
【請求項9】
前記多孔質セルロース膜は、自己支持型膜であるか、又は前記媒体は、前記多孔質セルロース膜と裏当て材料とを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の疎水性相互作用クロマトグラフィー分離媒体。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の疎水性相互作用クロマトグラフィー分離媒体を含む分離カラムであって、シリンジフィルタカラム、スピンカラム、カセット又は渦巻き型膜カラムを含む分離カラム。
【請求項11】
活性化基材を形成する方法であって、基材を活性化溶液と接触させることを含み、前記活性化溶液は、活性化剤と、塩基と、有機溶媒とを含み、前記活性化剤は、前記基材の表面と反応して前記表面上に連結基を形成するように構成された反応性官能基を含み、前記活性化剤は、エポキシ基を更に含み、前記連結基は、前記エポキシ基を含む、方法。
【請求項12】
前記基材は、フィルム、多孔質膜、モノリス、ナノファイバーマット又は樹脂を含み、前記基材は、セルロース、再生セルロース、セルロース誘導体、ナイロン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリエーテルイミド、ポリプロピレン、ポリエチレン又はポリエーテルテレフタレートを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記活性薬剤は、エピクロロヒドリン、ジグリシジルエーテル又はこれらの任意の組み合わせを含む、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
請求項11~13のいずれか一項に記載の方法によって形成された前記活性化基材を誘導体化する方法であって、前記活性化基材を誘導体化溶液と接触させることを含み、前記誘導体化溶液は、誘導体化剤、塩基を含み、且つ任意選択で有機溶媒を含み、前記誘導体化剤は、エポキシ反応性官能基と疎水性部分とを含み、前記疎水性部分は、疎水性リガンドを含む、方法。
【請求項15】
前記疎水性リガンドは、2つ以上の炭素を有する脂肪族鎖、ベンジル含有基、フェニル含有基、フェノール含有基、ピリジン含有基、ボロン酸基、分岐ポリマー、硫黄含有親硫黄性基又はこれらの任意の組み合わせを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記誘導体化剤は、チオフェノール、2-ブタンチオール、フルフリルチオール、6-メルカプトプリン、2-メルカプトピリジン、2-メルカプト-ベンゾチアゾール、プロパンチオール、シクロペンタンチオール、o-メルカプト安息香酸、ジチオスレイトール、1,2-エタンジチオール、3,6-ジオキサ-1,8-オクタンジチオール、1,4-ベンゼンジメタンチオール、1,3-ベンゼンジメタンチオ、1,2-ベンゼンジメタンチオ、4,4’-ビス(メルカプトメチル)ビフェニル、2,4-ジクロロベンジルメルカプタン、4-メトキシベンジルメルカプタン、トリフェニルメタンチオール、2,4-ジメトキシチオフェノール又はこれらの任意の組み合わせを含む、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
前記有機溶媒は、プロトン性有機溶媒若しくは非プロトン性有機溶媒又はこれらの組み合わせを含み、例えば、前記有機溶媒は、アルコール、ニトロメタン又はこれらの任意の組み合わせを含む、請求項11~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記塩基は、アルカンアミン(例えば、メチルアミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン)、ピリジン、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ヒスチジン、グアニジン、ホスファゼン塩基、N,N-ジメチルベンジルアミン、3-ジメチルアミノプロピルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、N,N-ジメチレンジアミン、ジエチルアミン、ナトリウムアミド、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム又は重炭酸カリウムを含む、請求項11~17のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、出願日が2021年7月12日の「Epoxide-Activated Surface Preparation and Novel Hydrophobic Interaction Chromatography Membrane Adsorber for Polynucleotide Purification」という名称の米国仮特許出願第63/203,196号明細書の出願の利益を主張するものである、出願日が2022年5月12日の「Epoxide-Activated Substrates and Hydrophobic Interaction Chromatography Made Therefrom for Polynucleotide Purification」という名称の米国特許出願公開第17/742,956号明細書に対する出願の優先権を主張するものであり、これらの出願の両方は、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される。
【0002】
連邦政府の研究に関する記載
本発明は、国立衛生研究所(National Institutes of Health)から交付された助成金番号第GM125429号に基づく連邦政府の支援を受けて行われた。連邦政府は、本発明に一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
遺伝子及び細胞療法産業は、様々な深刻な疾患の治療にその効果が見込めるため、実生産工程に急速にシフトしている。プラスミドDNA(pDNA)は、遺伝子及び細胞療法で広く使用されるウイルスベクター、タンパク質及びmRNAの生産において重要な要素である。高い能力、高い品質のpDNA生産が、急激且つ喫緊に必要となっている。pDNAは、SARS-CoV-2パンデミックに対処する多くの製品の重要な要素であるため、最近のパンデミック関連の需要により、この生産課題は、一層深刻さを増している。例えば、10億回分のmRNAワクチンを生産するには、世界のpDNA生産能力の半分以上を要することになる。
【0004】
pDNAの製造規模を拡大することは、簡単ではないため、pDNA生産は、この産業の障害になっている。現在、認定委託先製造業者は、需要の急増に供給を追いつかせようと、長い順番待ちのリスト及び相当量の受注残を抱えている。他の多くの生物製剤生産スキームと同様に、pDNA生産には何段階もの工程及び単位操作が関わる。従来、下流精製は、高価で時間がかかり、規模の調整が困難とされている。数十年にわたり、樹脂ベースのクロマトグラフィーカラムが生物製剤精製のゴールドスタンダードとなって用いられている。樹脂カラムは、十分に性能を発揮するには長い保持時間を必要とすることが公知である。その上、pDNAのサイズが大きいため、pDNAが結合するには、樹脂の接触可能な表面積が小さい。総じて、これらの要因が相まって、pDNA精製の生産性は、極めて低くなる。
【0005】
pDNAの純度は、後続のバイオプロセスにとって重要である。RNA、ゲノムDNA、宿主細胞タンパク質等からの分離が必要である以外に、ある種のpDNAアイソフォームも望ましくない。pDNAには、通常、5つのアイソフォーム:スーパーコイル(sc)pDNA、開環状(oc)pDNA、弛緩型環状pDNA、線状pDNA及びスーパーコイル変性pDNAがある。樹脂ベースの疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)カラムは、所望のsc pDNAを他のアイソフォームと区別するのに決定的に重要な工程として使用されることが多い。
【0006】
膜吸着体は、樹脂カラムと比較して短いカラム保持時間で十分に性能を発揮するため、生物製剤の迅速な分離をもたらすことが公知である。しかしながら、現在、pDNA精製に有効な市販のHIC膜吸着体は、知られておらず、pDNA精製のための高性能のHIC膜吸着体についての文献報告もない。
【0007】
Sartorius AGは、フェニル基をHICリガンドとするHIC膜製品を生産しているが、これは、pDNA精製のために設計されたものではなかった。研究によれば、このHIC膜製品は、180秒の保持時間でのpDNA結合容量が極めて低い(3,000塩基対(3kbp)のpDNAについて0.1mg/mL未満)ことが指摘されている。その結合容量は、流量が高くなれば(例えば、36秒の保持時間)、更に低くなるであろう(3kbp pDNAについて0.04mg/mL未満)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように、短い保持時間でpDNAに対して高い結合容量を備えるHIC膜カラムが依然として必要とされている。この必要を満たすことで、下流のpDNA及び他のポリヌクレオチドの精製生産性が増加するであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施形態によれば、セルロース基材、例えば多孔質再生セルロース基材と、セルロース基材の表面に結合された疎水性リガンドとを含むHIC分離媒体が開示される。
【0010】
一実施形態において、エポキシ活性化基材を形成する方法が開示される。例えば、方法は、基材、例えば多孔質膜基材を活性化溶液と接触させることを含み得る。活性化溶液は、活性化剤と、塩基と、有機溶媒とを含む。活性化剤は、基材の表面と反応して基材の表面上に連結基を形成する反応性官能基を含む。活性化剤は、活性化後に連結剤にエポキシ官能基が含まれるように活性化中にインタクトなまま残ることのできるエポキシ官能基も含む。
【0011】
エポキシ官能基を含む連結基を表面に含む、活性化基材を更に誘導体化する方法も開示される。この方法は、活性化基材を誘導体化溶液と接触させることを含み得る。誘導体化溶液は、誘導体化剤と、塩基と、任意選択で有機溶媒とを含む。誘導体化剤は、連結基のエポキシ官能基と反応する官能基を含む。誘導体化剤は、疎水性リガンドを含む疎水性部分も含む。反応後、疎水性リガンドは、反応した連結基を介して基材表面に結合する。
【0012】
本主題の完全且つ実施可能な開示は、当業者にとってのその最良の態様を含めて、以下に説明する添付の図への参照を含む本明細書の残りの部分に更に詳細に示される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】異なる活性化時間で形成した活性化膜から開発した2-メルカプトピリジン(MCP)誘導体化膜の動的結合容量10%(DBC
10%)値を比較する。
【
図2】異なる活性化方式で形成した活性化膜から開発したMCP誘導体化膜のDBC
10%値を比較する。
【
図3】アルカリ前処理が誘導体化膜に及ぼす効果を比較する。
【
図4】異なるアルカリ前処理及びリンス工程を用いて形成したMCP誘導体化膜のDBC
10%値を提示する。
【
図5】本明細書に開示されるとおりのHIC膜を使用した分離のローディング、洗浄及び溶出段階を図解するFPLCクロマトグラムである。
【
図6】ローディング緩衝液のpH調整を通して膜の結合容量を改善し得ることを示すグラフである。
【
図7】異なるサイズのプラスミドに対する、本明細書に記載されるとおりのHIC媒体の動的結合容量を提示する。
【
図8】異なる流量に対する、本明細書に記載されるとおりのHIC媒体の動的結合容量を提示する。
【
図9】異なる硫酸アンモニウム濃度に対する、本明細書に記載されるとおりのHIC媒体の動的結合容量を提示する。
【
図10】樹脂タイプのHIC媒体のクロマトグラフィー結果を、本明細書に記載されるとおりのHIC膜媒体と比較する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
ここで、開示される主題の様々な実施形態を詳細に参照することになり、その1つ以上の例を以下に記載する。各実施形態は、主題の限定ではなく、その説明として提供される。実際、本開示において主題の範囲又は趣旨から逸脱することなく、様々な改良形態及び変形形態がなされ得ることが当業者に明らかであろう。例えば、一実施形態の一部として例示又は記載される特徴を別の実施形態で用いて、更に別の実施形態をもたらし得る。
【0015】
特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての科学技術用語は、本明細書に開示される主題が属する技術分野の当業者が一般に理解するのと同じ意味を有する。本明細書に開示される主題の実施又は試験では、本明細書に記載されるものと同様の又は均等な任意の方法、装置及び材料を使用し得るが、本明細書では、代表的な方法、装置及び材料を記載する。
【0016】
具体的な記述がない限り、本明細書で使用される用語及び語句並びにその変化形は、限定に対立するものとしてのオープンエンド形式であると解釈されるべきである。同様に、接続詞「及び」で結び付けられた一群の項目は、それらの項目のあらゆるものがその一群に存在する必要があるものとして読まれるべきではなく、むしろ、特に明示的に述べられない限り、「及び/又は」と読まれるべきである。同様に、接続詞「又は」で結び付けられた一群の項目は、その一群間での相互排他性を要求していると読まれるべきではなく、むしろ、特に明示的に述べられない限り、「及び/又は」と読まれるべきである。
【0017】
更に、本開示の項目、要素又は成分について単数形で記載又は特許請求され得るが、単数形に限定すると明示的に述べられない限り、複数形がその範囲内にあることが企図される。一部の例における「1つ以上」、「少なくとも」、「限定されないが」又は他の同様の語句など、広義化を伴う単語及び語句の存在は、かかる広義化を伴う語句が存在しない可能性のある例で狭義の場合が意図されるか又は必要であることを意味すると読まれてはならない。
【0018】
本開示は、概して、一実施形態では、疎水性相互作用分離方法を用いたpDNAの精製に使用するために更に誘導体化することのできる活性化膜に関する。活性化膜を形成する方法及び活性化膜の更なる誘導体化方法も記載される。実施形態において、本明細書に記載されるとおりの誘導体化膜は、短い保持時間で高いpDNA結合容量を呈することができる。
【0019】
本開示の1つ目的は、高密度のエポキシベースの化学を含んで、それにより活性化膜を形成するように基材を修飾する方法を提供することである。
【0020】
本開示の更なる目的は、続いて膜の表面に高密度のリガンド、詳細な一実施形態では高密度の疎水性リガンドが取り込まれるように活性化膜を誘導体化する方法を提供することである。
【0021】
本開示の更なる目的は、pDNA及び限定されないが、メッセンジャーRNA(mRNA)、転移RNA(tRNA)、リボソームRNA(rRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、ローリングサークル増幅から生じる核酸産物、マイクロRNA(miRNA)、核内低分子RNA(snRNA)、Piwi相互作用RNA(piRNA)、二本鎖RNA(dsRNA)、ゲノムDNA、一本鎖DNA(ssDNA)、二本鎖DNA(dsDNA)、A-DNA、B-DNA、C-DNA、Z-DNA、DNAコンカテマー、アプタマー等など、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオシド及びオリゴヌクレオシドを含めた他のポリ核酸の迅速且つ効率的な精製のためのHIC膜及びHIC膜を形成する方法を提供することである。
【0022】
用語「ポリヌクレオチド」及び「オリゴヌクレオチド」は、本明細書で使用されるとき、一本鎖又は二本鎖のいずれの形態であれ、少なくとも2つのヌクレオチド(例えば、デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチド)を持つポリマーを指し、DNA及びRNAが含まれる。「ヌクレオチド」は、糖、塩基及び連結基を含む。一部の実施形態において、糖は、デオキシリボース又は天然リボース(例えば、それぞれDNA及びRNA)であり得る。一部の実施形態において、連結基は、リン酸基であり得る。ヌクレオチドは、連結基によって一体に連結されて、ポリヌクレオチド及びオリゴヌクレオチドを形成する。共有結合的に結合した連結基のポリマーは、骨格と称し得る。「ヌクレオシド」は、ヌクレオシドがリン酸基を含まないことを除き、他の点ではヌクレオチドと同様である。「塩基」又は「核酸塩基」には、プリン及びピリミジンが含まれ、これらには更に、天然化合物のアデニン、チミン、グアニン、シトシン、ウラシル、イノシン及び天然類似体並びに限定されないが、アミン類、アルコール類、チオール類、カルボン酸塩類及びハロゲン化アルキル類など、限定されないが、新しい反応基を置く修飾が挙げられる、プリン及びピリミジンの合成誘導体が含まれる。核酸塩基は、修飾又は類似体核酸塩基、修飾又は類似体糖及び/又は修飾又は類似体連結基を含む。修飾核酸塩基、修飾糖及び/又は修飾連結基は、合成のもの、天然に存在するもの及び/又は天然に存在しないものであり得る、且つ参照核酸と同様の結合特性を有する非標準的な/化学的に修飾されている核酸塩基、糖及び/又は連結基であり得る。かかる類似体及び/又は修飾塩基、糖及び/又は連結基の例としては、限定なしに、ホスホロチオエート類、ホスホルアミデート類、メチルホスホネート類、キラルメチルホスホネート類、2’-O-メチルリボヌクレオチド及びペプチド核酸(PNA)が挙げられる。
【0023】
デオキシリボオリゴヌクレオチドは、5-炭素デオキシリボース糖がその糖の5’及び3’炭素のリン酸に共有結合的につなぎ合わされたものからなり、交互に並んだ非分岐鎖ポリマーを形成する。DNAは、例えば、アンチセンス分子、pDNA、プレ縮合DNA、PCR産物、ベクター、発現カセット、キメラ配列、染色体DNA又はこれらの基の誘導体及び組み合わせの形態であり得る。リボオリゴヌクレオチドは、同様の反復構造であって、5-炭糖がリボースであるものからなる。従って、用語「ポリヌクレオチド」及び「オリゴヌクレオチド」は、天然に存在する塩基、糖及び糖間(骨格)連結基からなるヌクレオチド又はヌクレオシド単量体のポリマー又はオリゴマーを指すことができる。
【0024】
用語「ポリヌクレオチド」及び「オリゴヌクレオチド」には、天然に存在しない単量体又はその一部分を含む、同様に機能するポリマー又はオリゴマーも含まれ得る。かかる修飾又は置換オリゴヌクレオチドは、未変性の形態と比べると、例えば細胞取り込みの亢進、免疫原性の低下及びヌクレアーゼの存在下における安定性の増加などの特性が理由で好ましいと言うことができる。用語「ポリヌクレオチド」及び「オリゴヌクレオチド」には、本明細書に記載されるものなど、骨格修飾との組み合わせでデオキシヌクレオチド及びリボヌクレオチドの両方の組み合わせ又はその変異体を含むポリマー又はオリゴマーも含まれ得ることが理解されなければならない。
【0025】
本明細書に記載される材料によって精製し得るとおりのポリヌクレオチド及びオリゴヌクレオチドには、1つ又は複数の非標準ヌクレオチド、1つ又は複数の非天然ヌクレオチド、1つ又は複数のヌクレオチド類似体及び/又は修飾ヌクレオチドを含む1つ以上のヌクレオチド変異体が含まれ得る。修飾ヌクレオチドの例としては、限定されないが、ジアミノプリン、5-フルオロウラシル、5-ブロモウラシル、5-クロロウラシル、5-ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4-アセチルシトシン、5-(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン、5-カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、β-D-ガラクトシルキューオシン、イノシン、N6-イソペンテニルアデニン、1-メチルグアニン、1-メチルイノシン、2,2-ジメチルグアニン、2-メチルアデニン、2-メチルグアニン、3-メチルシトシン、5-メチルシトシン、N6-アデニン、7-メチルグアニン、5-メチルアミノメチルウラシル、5-メトキシアミノメチル-2-チオウラシル、β-D-マンノシルキューオシン、5’-メトキシカルボキシメチルウラシル、5-メトキシウラシル、2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデニン、ウラシル-5-オキシ酢酸(v)、ワイブトキソシン、プソイドウラシル、キューオシン、2-チオシトシン、5-メチル-2-チオウラシル、2-チオウラシル、4-チオウラシル、5-メチルウラシル、ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、5-メチル-2-チオウラシル、3-(3-アミノ-3-N-2-カルボキシプロピル)ウラシル、(acp3)w、2,6-ジアミノプリンなどが挙げられる。ある場合には、ヌクレオチドは、三リン酸部分への修飾を含めて、そのリン酸部分に修飾を含み得る。かかる修飾の非限定的な例としては、一層長い長さのリン酸鎖(例えば、4、5、6、7、8、9、10個又はそれを超えるリン酸部分を有するリン酸鎖)及びチオール部分(例えば、α-チオ三リン酸及びβ-チオ三リン酸)による修飾が挙げられる。
【0026】
ポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドは、塩基部分(例えば、相補ヌクレオチドとの水素結合を形成するのに典型的に利用可能な1つ以上の原子及び/又は相補ヌクレオチドとの水素結合を形成する能力が典型的にはない1つ以上の原子)、糖部分又は連結基(例えば、骨格)で修飾され得る。骨格修飾としては、限定されないが、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレネート、ホスホロジセレノエート、ホスホロアニロチオエート、ホスホルアニラデート、ホスホルアミデート及びホスホロジアミデート連結を挙げることができる。ホスホロチオエート連結はリン酸骨格にある非架橋酸素の硫黄原子を置換し、オリゴヌクレオチドのヌクレアーゼ分解を遅らせる。ホスホロジアミデート連結(N3’→P5’)は、ヌクレアーゼによる認識及び分解を防ぐ。骨格修飾としては、骨格構造中のリンに代わるペプチド結合(例えば、ペプチド核酸中のペプチド結合により連結したN-(2-アミノエチル)-グリシン単位)又はカルバメート、アミド類並びに線状及び環状炭化水素基を含む連結基も挙げることができる。修飾骨格のあるオリゴヌクレオチドについては、Micklefield,Curr.Med.Chem.,8(10):1157-79,2001及びLyer et al.,Curr.Opin.Mol.Ther.,1(3):344-358,1999にレビューされている。本明細書に記載される核酸分子は、天然に存在するヌクレオチドに存在するとおりのリボース若しくはデオキシリボースを含む糖部分又は修飾糖部分若しくは糖類似体を含有し得る。修飾糖部分としては、限定されないが、2’-O-メチル、2’-O-メトキシエチル、2’-O-アミノエチル、2’-フルオロ、N3’→P5’ホスホルアミデート、2’ジメチルアミノオキシエトキシ、2’2’ジメチルアミノエトキシエトキシ、2’-グアニジニウム、2’-O-グアニジニウムエチル、カルバメート修飾糖及び二環式修飾糖が挙げられる。2’-O-メチル又は2’-O-メトキシエチル修飾は、オリゴヌクレオチドにおけるA型又はRNA様コンホメーションを促進し、RNAに対する結合親和性を増加させ、且つヌクレアーゼ耐性の亢進を呈する。修飾糖部分は、追加的な架橋結合(例えば、ロックド核酸におけるリボースの2’-O原子と4’-C原子とをつなぎ合わせるメチレン架橋)又はモルホリン環などの糖類似体(例えば、ホスホロジアミデートモルホリノにあるようなもの)を有することも含み得る。
【0027】
特に指示されない限り、特定の核酸配列には、その保存的に修飾された変異体(例えば、縮重コドン置換)、アレル、オルソログ、SNP及び相補配列並びに明示的に指示されている配列も暗示的に包含される。具体的には、縮重コドン置換は、1つ以上の選択された(又は全ての)コドンの3番目の位置が混合塩基及び/又はデオキシイノシン残基で置換されている配列を生成することにより実現し得る(Batzer et al.,Nucleic Acid Res.,19:5081(1991);Ohtsuka et al.,J.Biol.Chem.,260:2605-2608(1985);Rossolini et al.,Mol.Cell.Probes,8:91-98(1994))。
【0028】
本開示の方法は、単離されているか、又は実質的に精製されているヌクレオチド、ヌクレオシド、核酸分子及びそうした分子を含有する組成物の分離及び/又は精製を包含する。本明細書で使用されるとき、「単離されている」又は「実質的に精製されている」DNA分子又はRNA分子とは、その天然環境から離れて存在しているDNA分子又はRNA分子である。単離されているDNA分子又はRNA分子は、精製された形態で存在し得るか、又は例えばトランスジェニック宿主細胞など、非天然環境に存在し得る。例えば、「単離されている」又は「精製されている」核酸分子又はその生物学的に活性な一部分は、組換え技術によって産生したときには他の細胞材料若しくは培養培地を実質的に含まないか、又は化学的に合成されたときには化学的前駆体若しくは他の化学物質を実質的に含まない。一実施形態において、「単離されている」核酸は、核酸の由来である元の生物のゲノムDNA中において天然で核酸に隣接している配列(即ち核酸の5’末端及び3’末端に位置する配列)を含まない。
【0029】
一実施形態において、本明細書に開示されるとおりの膜は、数十塩基対からの範囲のサイズのポリ核酸、例えば約20~約25塩基長から数十万塩基、例えば約200,000塩基まで又は一部の実施形態では更に長いmiRNAの精製において有用であり得る。例えば、膜は、約20塩基~約250塩基、例えば約50塩基~約200,000塩基など、例えば約50塩基~約150,000塩基など、例えば約50塩基~約200,000塩基など、例えば約100塩基~約200,000塩基など、例えば約100塩基~約100,000塩基など、例えば約100塩基~約50,000塩基など、例えば約200塩基~約200,000塩基など、例えば約200塩基~約150,000塩基など、例えば約200塩基~約100,000塩基など、例えば約200塩基~約50,000塩基など、例えば約200塩基~約25,000塩基など、例えば約200塩基~約20,000塩基など、例えば約200塩基~約15,000塩基など、例えば約1,000塩基~約50,000塩基など、例えば約5,000塩基~約150,000塩基など、例えば約10,000塩基~約150,000塩基など、例えば約15,000塩基~約150,000塩基など、例えば約15,000塩基~約200,000塩基など、例えば約20,000塩基~約100,000塩基など、例えば約20,000塩基~約200,000塩基など、例えば約20,000塩基~約150,000塩基など、例えば約30,000塩基~約150,000塩基のなどポリ核酸を精製することにおいて有用であり得る。
【0030】
有利には、開示されるHIC媒体は、ポリヌクレオチドサイズとは無関係に同様の結合容量を呈し得る。例えば、同一の条件において、本明細書に記載されるとおりの精製カラムは、サイズが10倍以上又は一部の実施形態では100倍以上異なるポリヌクレオチドについて、結合容量(即ち破過時に単位膜床体積(mL)当たりに保持されるポリヌクレオチド(mg))の約20%以下、約10%以下又は一部の実施形態では約5%以下の差を呈し得る。例えば、サイズが103塩基対程度から106塩基対程度にまで及ぶ範囲のポリヌクレオチドが、約20%以下、約10%以下又は一部の実施形態では約5%以下の結合容量の差を呈し得る。
【0031】
活性化基材を形成するため、基材を活性化溶液と接触させることができる。少なくとも1つのエポキシ含有活性化剤、1つ以上の塩基及び1つ以上の有機溶媒を含む活性化溶液である。
【0032】
基材は、非多孔質フィルム、多孔質膜、ナノファイバーマット、モノリス(単一の多孔質三次元構造体)、樹脂(個別の粒子、例えばチップ又はビーズの形態の固体高分子相)等の形態であり得る。本明細書において利用されるとき、用語「膜」は、概して、多孔質構造を有する比較的薄いシート材料を指す。基材は、限定なしに、ゲル紡糸、凍結乾燥、キャスティング、成形、エレクトロスピニング、機械加工、湿式紡糸、乾式紡糸、縮充、噴霧、相分離、鋳型支援会合、圧延、圧縮又はこれらの任意の組み合わせを含めた、当技術分野において概して公知のとおりの形成技術に従い形成することができる。
【0033】
薄い基材、例えば膜又はナノファイバーマットは、一実施形態では、約30マイクロメートル~約2500マイクロメートルの厚さを有する。例えば、薄い基材は、約500マイクロメートルより厚い、約250マイクロメートルより厚い、約100マイクロメートルより厚い、約80マイクロメートルより厚い、約50マイクロメートルより厚い又は約30マイクロメートルより厚い、例えば約30マイクロメートル~約500マイクロメートル、約50マイクロメートル~約500マイクロメートル、約80マイクロメートル~約500マイクロメートル、約100マイクロメートル~約500マイクロメートル、約250マイクロメートル~約500マイクロメートル、約30マイクロメートル~約250マイクロメートル、約50マイクロメートル~約250マイクロメートル、約80マイクロメートル~約250マイクロメートル、約100マイクロメートル~約2500マイクロメートル、約30マイクロメートル~約100マイクロメートル、約50マイクロメートル~約100マイクロメートル又は約80マイクロメートル~約100マイクロメートルの厚さを有し得る。
【0034】
本明細書で使用されるとき、特に指示がない限り、試料厚さは、自動厚さ試験器で測定される。例示的厚さ試験は、一定の圧力で保持したときの2枚の試験装置プレート間の間隔を測定する。厚さを測定するための例示的圧力は、1.5PSIである。膜試料厚さのための1つの有用な機器は、49-56 Micrometer(Messmer Buechel、Veenendaal、オランダ)である。
【0035】
一部の実施形態において基材は、支持付きの膜であり得る多孔質膜基材、例えば多孔質膜基材よりも高い多孔度を呈する支持フレーム又は裏当て材料、例えば基材と同じ又は異なる材料で形成され得る織布又は不織布の裏当て材料に隣接する(例えば、接着されているか又は取り付けられている)多孔質膜を含むラミネートであり得る。
【0036】
不織布の裏当て材料(例えば、裏当てウェブ)は、メルトブロー法、湿式積層、熔融紡糸、溶液紡糸、空気積層又はエレクトロスピニングにより作成することができる。不織布ウェブは、加えて、カレンダ加工、エンボス加工、ニードルパンチ又は水流交絡法など、後加工工程で処理され得る。不織布裏当て材料は、生体分子に対して低い結合親和性を示す構造用樹脂も含有し得る。かかる樹脂は、典型的には裏当て材料の強度を増加させるために使用される。裏当て材料は、繊維径及び繊維材料の混合物を含有し得る。裏当て材料を作るために使用される繊維としては、ガラス、ポリプロピレン、ポリアミド類、ポリエステル類、セルロース系材料など、及びこれらの組み合わせを挙げることができる。繊維は、0.1μm以上、1μm以上、2μm以上又は3μm以上の平均繊維径を有し得る。繊維は、100μm以下、50μm以下、25μm以下、10μm以下又は8μm以下の平均繊維径を有し得る。平均繊維径は、0.1μm~50μm又は1μm~25μmの範囲であり得る。キャピラリーフローポロメーターにより測定した平均細孔径は、1μm以上、2μm以上又は3μm以上であり得る。平均細孔径は、100μm以下、50μm以下、25μm以下、10μm以下又は8μm以下であり得る。好適な不織布基材の平均細孔径は、0.1μm~50μm、1μm~10μm又は3μm~8μmの範囲であり得る。織布基材の平均細孔径は、不織布基材よりやや大きくてもよく、1μm~100μmの範囲であり得る。繊維状基材の基本重量は、1gsm(グラム毎平方メートル)以上、10gsm以上又は20gsm以上であり得る。繊維状基材の基本重量は、200gsm以下又は80gsm以下であり得る。繊維状基材の基本重量は、1gsm~200gsm又は20gsm~80gsmの範囲であり得る。
【0037】
一部の実施形態において、多孔質膜基材は、自己支持型膜、即ち裏当て材料を必要としないものであり得る。当然のことながら、本来自己支持型である膜が、必要であれば支持体によって保持され得る。本明細書に記載されるとおりの多孔質膜基材は、限定されないが、多孔質ヒドロゲル膜並びに繊維状の膜、例えばエレクトロスピニング加工されたナノファイバーなど、ナノファイバーで形成される多孔質膜を含めて、キャスティング、コーティング又は成形により調製される膜を包含する。
【0038】
基材は、比較的大きい表面積を有し得る。表面積は、窒素を吸着質として使用したBET(ブルナウアー、エメット及びテラー)測定評価法により決定することができる。例として、基材、例えば多孔質基材は、約0.1m2/mL~約30m2/mL、例えば約0.1m2/mL~約25m2/mL、約0.1m2/mL~約20m2/mL、約0.1m2/mL~約15m2/mL、約0.1m2/mL~約10m2/mL、約0.5m2/mL~約30m2/mL、約0.5m2/mL~約25m2/mL、約0.5m2/mL~約20m2/mL、約0.5m2/mL~約15m2/mL、約0.5m2/mL~約10m2/mL、約0.5m2/mL~約5m2/mL、約1m2/mL~約30m2/mL、約1m2/mL~約25m2/mL、約1m2/mL~約20m2/mL、約1m2/mL~約15m2/mL、約1m2/mL~約10m2/mL、約1m2/mL~約5m2/mL、約5m2/mL~約30m2/mL、約5m2/mL~約25m2/mL、約5m2/mL~約20m2/mL、約5m2/mL~約15m2/mL又は約5m2/mL~約10m2/mLなどの比表面積を有し得る。
【0039】
一部の実施形態において、多孔質基材は、マクロ多孔質基材、例えばマクロ多孔質膜基材であり得る。一般に、マクロ多孔質基材は、約1m2/mL以上、例えば約1m2/mL~約30m2/mL、約1m2/mL~約25m2/mL、約1m2/mL~約20m2/mL、約1m2/mL~約15m2/mL、約1m2/mL~約10m2/mL、約1m2/mL~約5m2/mL、約5m2/mL~約30m2/mL、約5m2/mL~約25m2/mL、約5m2/mL~約20m2/mL、約5m2/mL~約15m2/mL又は約5m2/mL~約10m2/mLなどの比表面積を含み得る。一実施形態において、マクロ多孔質膜基材は、細孔がミクロンサイズであるため高圧にならず高い体積流量を呈することができ、低い非特異的なタンパク質吸着を呈することができ、且つ反応部位として使用することのできる表面官能基が高密度を呈することができる。
【0040】
基材が多孔質である実施形態において、多孔質基材は、概して、約0.1マイクロメートル~約10マイクロメートルの細孔径を有し得る。例えば、多孔質基材、例えば多孔質膜基材は、約0.1マイクロメートル~約10マイクロメートル、約0.1マイクロメートル~約0.2マイクロメートル、約0.1マイクロメートル~約0.45マイクロメートル、約0.1マイクロメートル~約1マイクロメートル、約0.1マイクロメートル~約2マイクロメートル、約0.2マイクロメートル~約0.45マイクロメートル、約0.2マイクロメートル~約1マイクロメートル、約0.2マイクロメートル~約2マイクロメートル、約0.2マイクロメートル~約10マイクロメートル、約0.45マイクロメートル~約1マイクロメートル、約0.45マイクロメートル~約2マイクロメートル、約0.45マイクロメートル~約10マイクロメートル、約1マイクロメートル~約2マイクロメートル又は約1マイクロメートル~約5マイクロメートルの細孔径を呈し得る。
【0041】
本明細書で使用されるとき、特に指示がない限り、細孔径は、キャピラリーフローポロメトリーを用いて決定される。キャピラリーフローポロメトリーは連続圧力スキャンモードを用いて実施され得る。加える圧力の使用し得る例示的範囲は、0.115バール~3.5バール(15kPa~350kPa)である。例えばPorofil(商標)濡れ溶液(Quantachrome Instruments、Anton Paar、Boynton Beach、FL)を含めて、16.4ダイン/cmの表面張力を有する濡れ液を使用することが有用であり得る。試料は、最初に乾式で低圧から高圧まで変化させて試験され、次に湿式で再び低圧から高圧まで変化させて試験され得る。この試験は、典型的には周囲温度条件(例えば、20℃~25℃)で実施される。乾き曲線及び濡れ曲線の両方とも、圧力のスキャン範囲にわたって200個のデータ点が収集され得る。関係P=4τ cosθ γlv/D(式中、γlvは、濡れ液の表面張力であり、θは、多孔質材料に対する濡れ液の接触角であり、及びτは、屈曲度係数として公知の経験的補正係数である)により記述される脱濡れ圧力(P)と細孔径(D)との間の関係。典型的には、0.715の補正係数又は形状係数が適用される。平均細孔径は、少なくとも3回の測定の平均値から計算され得る。バブルポイント測定時の最も大きい細孔径の個々の測定値が検出され得、濡れ試料にかかる圧力を、濡れ液が排除され、空気流が測定される点まで昇圧させることにより気泡の測定が決定される。空気流が初めに測定されるときの圧力が、最初の最も大きい細孔が脱濡れして空気が流れることが可能になる点を指し示している。平均流動細孔径の個々の測定値は、濡れ曲線と「半乾き」曲線とが交わる圧力を決定することにより計算し得る。半乾き曲線は、直径の関数としての乾いた試料を通る空気流量を数学的に2で除すことにより入手される。細孔径分布を決定するための1つの有用な機器は、Porolux 500(Aptco Technologies NV、Nazareth、ベルギー)である。
【0042】
一実施形態において基材は、セルロース、セルロース誘導体、再生セルロース、ナイロン又は他の親水性材料など、親水性材料で形成され得る。本明細書において利用されるとき、再生セルロースという用語は、天然セルロースを可溶性セルロース誘導体に変換し、続いて例えばビスコース若しくはリオセル方法によるか、又はセルロースをイオン性液体中にあるその溶液から紡糸することにより作られる繊維又はフィルムが形成されるように再生させることによって製造されるクラスの材料を指す。
【0043】
本明細書において包含されるセルロース誘導体としては、限定なしに、1つ以上のセルロースエーテル類、1つ以上のセルロースエステル類又はこれらの任意の組み合わせを挙げることができる。例として且つ限定なしに、セルロース誘導体としては、アルキルセルロース(例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、エチルメチルセルロース)、ヒドロキシアルキルセルロース(例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース)、カルボキシアルキルセルロース(例えば、カルボキシメチルセルロース)、有機エステルセルロース(例えば、酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース)、無機酸セルロース(例えば、ニトロセルロース、硫酸セルロース)又はこれらの任意の組み合わせを挙げることができる。一実施形態において、光学活性材料としては、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)などのアルキルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース又はこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0044】
しかしながら、親水性材料の使用は、必須ではなく、基材は、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリエーテルイミド、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエーテルテレフタレート等など、当業者に公知の他の材料又は材料の任意の組み合わせで形成され得ることが理解されるべきである。
【0045】
活性化基材を形成するため、基材、例えば多孔質膜基材を活性化溶液と接触させることができる。一実施形態において、基材は、基材を活性化溶液に浸漬することにより接触させることができる。活性化溶液は、少なくとも1つの塩基及び少なくとも1つの有機溶媒に加えて活性化剤を含み得る。浸漬時、活性化剤の反応性官能基と基材の表面との間で相互作用が起こると、活性化リンカー基が表面上に形成され得、各リンカー基は、少なくとも1つの反応性エポキシ基を含む。相互作用には、共有結合、イオン結合、水素結合等又はこれらの任意の組み合わせが含まれ得る。
【0046】
活性化剤は、多官能性薬剤、例えば二官能性、三官能性等であり得、薬剤の少なくとも1つの官能基は、基材の表面と反応するように構成され、及び少なくとも1つの官能基は、活性化工程中に反応しないであろうエポキシ、即ち活性化工程後も活性なままであろうエポキシ基である。そのため、活性化剤と基材との間で相互作用が起こると、活性化基材の表面にエポキシ含有連結基があることになり得る。
【0047】
活性化剤としては、限定なしに、エピクロロヒドリン、ジグリシジルエーテル、トリグリシジルエーテル、テトラグリシジルエーテル又はこれらの任意の組み合わせを挙げることができる。
【0048】
実施形態において、溶媒中の活性化剤の濃度は、溶液の約0.1%(V/V)~約60%(V/V)、例えば溶液の約2%(V/V)~約40%(V/V)又は溶液の約5%(V/V)~約30%(V/V)などの範囲であり得る。
【0049】
活性化溶液の有機溶媒成分は、限定されないが、単一の有機溶媒、水性/有機溶媒混合物又は有機溶媒の混合物から選択することができる。水を含む活性化溶液を考えるとき、水は、概して活性化溶液の体積基準で約50%(V/V)以下、例えば約40%(V/V)以下、約30%(V/V)以下、約20%以下、約10%(V/V)以下又は一部の実施形態では約5%(V/V)以下の量で存在することになる。
【0050】
一実施形態において、有機溶媒成分としては、プロトン性溶媒が含まれ得る。いかなる特定の理論にも縛られることを望むものではないが、活性化溶液中に1つ以上のプロトン性溶媒が含まれると、SN1反応を促進することができると理解される。プロトン性溶媒は、限定されないが、アルコール(例えば、エタノール、メタノール、プロパノール(1-プロパノール、2-プロパノール)、ブタノール(n-ブタノール)等)、ニトロメタン又はこれらの任意の組み合わせを含む群から選択することができる。一実施形態において、プロトン性溶媒としては、アルコール(例えば、エタノール)と水の組み合わせを挙げることができる。
【0051】
一実施形態において、有機溶媒としては、非プロトン性溶媒が含まれ得る。いかなる特定の理論にも縛られることを望むものではないが、活性化溶液中に1つ以上の非プロトン性溶媒が含まれると、SN2反応を促進することができると理解される。非プロトン性溶媒は、限定されないが、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル及びN-メチルピロリジノン等を含む群から選択することができる。
【0052】
活性化溶液中の1つ以上の有機溶媒の濃度は、一部の実施形態では活性化溶液の約1%(V/V)~約99%(V/V)、例えば活性化溶液の約10%(V/V)~約95%(V/V)又は一部の実施形態では活性化溶液の約5%(V/V)~約30%(V/V)などの範囲であり得る。
【0053】
活性化溶液は、塩基も含み得る。一部の実施形態において、塩基は弱塩基であり得る。本明細書において利用されるとき、用語「弱塩基」は、概して、水中で完全には解離しない塩基を指す。活性化溶液の弱塩基としては、限定なしに、アルカンアミン(例えば、メチルアミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン等)、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、ピリジン、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ヒスチジン、グアニジン、ホスファゼン塩基、N,N-ジメチルベンジルアミン、3-ジメチルアミノプロピルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、N,N-ジメチレンジアミン、ジエチルアミン又はこれらの任意の組み合わせを挙げることができる。活性化溶液中の塩基成分には、任意選択で強塩基が利用され得る。強塩基としては、限定なしに、ナトリウムアミド、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リチウムビス(トリメチルシリル)アミド、リチウムtert-ブトキシド又はこれらの任意の組み合わせを挙げることができる。
【0054】
一実施形態において、弱塩基は活性化溶液中に、活性化溶液の約0.1%(V/V)~約50%(V/V)、例えば活性化溶液の約1%(V/V)~約30%(V/V)又は一部の実施形態では活性化溶液の約3%(V/V)~約20%(V/V)などの範囲の濃度で存在し得る。一部の実施形態において、活性化溶液の有機溶媒成分中における弱塩基の濃度は、一部の実施形態では約0.01M~約5M、例えば約0.5M~約4M又は約0.1M~約1Mなどの範囲であり得る。
【0055】
利用されるとき、強塩基は、活性化溶液中で、活性化溶液の約0.01%(V/V)~約10%(V/V)、例えば活性化溶液の約0.01%(V/V)~約5%(V/V)又は一部の実施形態では活性化溶液の約0.01%(V/V)~約3%(V/V)などの範囲の濃度であり得る。一部の実施形態において、活性化溶液の有機溶媒成分中における強塩基の濃度は、一部の実施形態では約0.01M~約0.5M、例えば約0.01M~約0.2M又は約0.02M~約0.1Mなどの範囲であり得る。
【0056】
基材の活性化を行うため、基材をある期間にわたって活性化溶液と接触させる(例えば、その中に浸漬する)ことができる。任意選択で、接触前に/接触している間に活性化溶液が冷却又は加熱され得る。例えば、活性化工程は、活性化溶液を約0℃~約100℃の範囲の温度、例えば約10℃~約90℃、約20℃~約90℃、約20℃~約80℃、約20℃~約70℃、約20約60、約30℃~約90℃、約30℃~約80℃、約30℃~約70℃、約30℃~約60℃、約30℃~約50℃の範囲の温度又は一部の実施形態では約40℃の温度に保ちながら行うことができる。一部の実施形態において、活性化工程は、暗所、例えば可視光線がほとんど又は全くない暗室で行うことができる。
【0057】
活性化工程の時間は様々であり得る。一部の実施形態において活性化工程のための接触時間は、1分~72時間の範囲である。一部の実施形態において活性化工程のための接触時間は、0.5時間~48時間の範囲である。一部の実施形態において活性化工程のための接触時間は、10分~12時間の範囲である。一部の実施形態において活性化工程のための接触時間は、1時間~24時間の範囲である。一部の実施形態において活性化工程のための接触時間は、0.5時間~16時間の範囲である。一部の実施形態において活性化工程のための接触時間は、0.5時間~4時間の範囲である。一部の実施形態において活性化工程のための接触時間は、20分~2時間の範囲である。一部の実施形態において活性化工程のための接触時間は、4時間~16時間の範囲である。
【0058】
一実施形態において、基材は、活性化溶液との接触前に前処理に供することができる。例えば、基材をアルカリ性溶液と接触させることにより前処理し得る。含まれるとき、かかる前処理には、少なくとも1つの塩基及び少なくとも1つのプロトン性溶媒を含むアルカリ性溶液と基材を接触させることが含まれ得る。塩基としては、限定なしに、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、トリス塩基等又はこれらの任意の組み合わせを挙げることができる。プロトン性溶媒としては、限定なしに、アルコール(例えば、エタノール、メタノール、プロパノール(1-プロパノール、2-プロパノール)、ブタノール(n-ブタノール)等)、ニトロメタン、水又はこれらの任意の組み合わせを挙げることができる。
【0059】
含まれるとき、アルカリ前処理工程は、概して、約0℃~約80℃の範囲の温度、例えば約10℃~約70℃の範囲の温度、約25℃又は一部の実施形態では室温で行うことができる。アルカリ前処理のための接触時間は様々であり得る。一部の実施形態においてアルカリ前処理時間のための接触時間は、1分~72時間の範囲である。一部の実施形態においてアルカリ前処理時間のための接触時間は、0.5時間~48時間の範囲である。一部の実施形態においてアルカリ前処理時間のための接触時間は、10分~12時間の範囲である。一部の実施形態においてアルカリ前処理時間のための接触時間は、1時間~24時間の範囲である。一部の実施形態においてアルカリ前処理時間のための接触時間は、0.5時間~16時間の範囲である。一部の実施形態においてアルカリ前処理時間のための接触時間は、0.5時間~4時間の範囲である。一部の実施形態においてアルカリ前処理時間のための接触時間は、20分~2時間の範囲である。一部の実施形態においてアルカリ前処理時間のための接触時間は、4時間~16時間の範囲である。既述のとおり、活性化基材又は誘導体化基材の形成においてアルカリ前処理は必須ではない。
【0060】
活性化基材の形成後、それを更にエポキシ含有連結基で誘導体化することができる。有利には、活性化基材(例えば、活性化膜基材)は、活性化後の乾燥が不要であり得る。しかしながら、他の実施形態において、活性化膜は、更なる誘導体化前に乾燥させることができる。乾燥プロセスは特に限定されず、強制空気乾燥又は単純空気乾燥を挙げることができる。一般に、乾燥温度は、活性化基材に損傷を与えないことが確実となるような温度、例えば室温前後、例えば約20℃~約40℃又は一部の実施形態では約25℃~約30℃などであり得る。乾燥後、乾燥した活性化基材は、使用時まで反応性官能基を維持することができる。例えば、乾燥した活性化膜は、ある期間(例えば、保管条件に応じて数日間~1ヵ月間又は更に長く)保管及び/又は輸送することができ、その時間が経った後にも、表面に、例えば更なる誘導体化のための所望の反応性官能基を維持していることができる。
【0061】
活性化基材を更に誘導体化するため、基材を誘導体化溶液に接触させる(例えば、浸漬する)ことができる。誘導体化溶液は、有機溶媒、塩基及び誘導体化剤を含み得る。一実施形態において、誘導体化剤は、誘導体化剤が活性化基材の連結剤の反応性官能基と反応したとき、基材の表面に疎水性リガンドを提供することのできる疎水性部分を含み得る。
【0062】
溶液の誘導体化剤は、活性化基材のエポキシ及び少なくとも1つの疎水性部分との反応のために構成されたエポキシ反応性官能基を含み得る。疎水性部分は、連結剤を介して基材表面に結合された疎水性リガンドとして基材表面に残ったままであり得る。例えば、エポキシ反応性官能基としては、限定なしに、第一級又は第二級アミン、チオエーテル、エポキシド、カルボン酸、有機ハロゲン化合物等又はこれらの任意の組み合わせを挙げることができる。
【0063】
誘導体化剤の疎水性部分は、疎水性リガンドを含み得る。活性化基材上に取り込まれ得るとおりの疎水性リガンドの例としては、限定なしに、2つ以上の炭素を有する脂肪族鎖(例えば、ブチル、ペンチル、ヘキシル、セプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル)、ベンジル含有基、フェニル含有基、フェノール含有基、ピリジン含有基、ボロン酸基、分岐ポリマー(例えば、ポリプロピレングリコール)、硫黄含有親硫黄性基(例えば、プロパンチオール、2-ブタンチオール、3,6-ジオキサ-1,8-オクタンジチオール、オクタンチオール、ベンジルメルカプタン、2-メルカプトピリジン、チオフェノール、1,2-エタンジチオール、1,4-ベンゼンジメタンチオール、2-フェニルエタンチオール)等、並びにこれらの任意の組み合わせを挙げることができる。
【0064】
誘導体化剤の成分であり得、且つ誘導体化剤を連結剤のエポキシと反応させることによって基材に取り付け得るとおりの疎水性リガンドは、疎水性相互作用リガンドについて疎水性効果;芳香族含有リガンドについて固定化された芳香族化合物と核酸塩基の芳香環との間のπ-πスタッキング又はチオエーテルを含有するリガンドについて電子供与/電荷移動又はこれらの組み合わせに従うリガンドから選択することができる。
【0065】
一実施形態において、誘導体化剤の疎水性リガンドは、ポリヌクレオチド、例えばプラスミドに対して親和性を呈し得る。しかしながら、誘導体化剤の疎水性部分は、上記に例示した疎水性リガンドに限定されず、本明細書に記載されるとおりの活性化基材上に別のリガンドを取り込むことができる。
【0066】
誘導体化剤の例としては、限定されないが、チオフェノール、2-ブタンチオール、フルフリルチオール、6-メルカプトプリン、2-メルカプトピリジン、4-メルカプトピリジン、2-メルカプト-ベンゾチアゾール、プロパンチオール、シクロペンタンチオール、o-メルカプト安息香酸、ジチオスレイトール、1,2-エタンジチオール、3,6-ジオキサ-1,8-オクタンジチオール、1,4-ベンゼンジメタンチオール、1,3-ベンゼンジメタンチオ、1,2-ベンゼンジメタンチオ、4,4’-ビス(メルカプトメチル)ビフェニル、2,4-ジクロロベンジルメルカプタン、4-メトキシベンジルメルカプタン、トリフェニルメタンチオール、2,4-ジメトキシチオフェノール又はこれらの任意の組み合わせを挙げることができる。
【0067】
一実施形態において、誘導体化溶液中の誘導体化剤の濃度は、誘導体化溶液の約0.01%(W/V)~約5%(W/V)、例えば誘導体化溶液の約0.03%(W/V)~約3%(W/V)又は一部の実施形態では誘導体化溶液の約0.05%(W/V)~約1%(W/V)などの範囲であり得る。
【0068】
誘導体化溶液の塩基は、活性化溶液の塩基と同じであるか又は異なり得る。一部の実施形態において、塩基は、弱塩基であり得る。誘導体化溶液の弱塩基としては、限定なしに、アルカンアミン(例えば、メチルアミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン等)、ピリジン、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ヒスチジン、グアニジン、ホスファゼン塩基、N,N-ジメチルベンジルアミン、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、3-ジメチルアミノプロピルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、N,N-ジメチレンジアミン、ジエチルアミン又はこれらの任意の組み合わせを挙げることができる。誘導体化溶液中の塩基成分には、任意選択で強塩基が利用され得る。強塩基としては、限定なしに、ナトリウムアミド、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リチウムビス(トリメチルシリル)アミド、リチウムtert-ブトキシド又はこれらの任意の組み合わせを挙げることができる。
【0069】
一実施形態において、誘導体化溶液中の塩基の濃度は、誘導体化溶液の約0.01%(V/V)~誘導体化溶液の約99%(V/V)、例えば誘導体化溶液の約0.1%(V/V)~誘導体化溶液の約50%(V/V)又は一部の実施形態では誘導体化溶液の約0.5%(V/V)~誘導体化溶液の約30%(V/V)などの範囲であり得る。
【0070】
誘導体化溶液の有機溶媒成分は、活性化溶液の有機溶媒成分と同じであるか又は異なり得る。例えば、誘導体化溶液の有機溶媒としては、プロトン性有機溶媒、非プロトン性有機溶媒、水性/有機溶媒混合物又はこれらの組み合わせを挙げることができる。誘導体化溶液中に利用し得るとおりの溶媒の例としては、限定なしに、アルコール(例えば、エタノール、メタノール、プロパノール(1-プロパノール、2-プロパノール)、ブタノール(n-ブタノール)等)、ニトロメタン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリジノン又はこれらの任意の組み合わせを挙げることができる。
【0071】
誘導体化溶液の有機溶媒成分の濃度は、誘導体化の約0%(V/V)~誘導体化溶液の約99%(V/V)、例えば誘導体化溶液の約10%(V/V)~誘導体化溶液の約90%(V/V)又は一部の実施形態では誘導体化溶液の約20%(V/V)~誘導体化溶液の約85%(V/V)などの範囲であり得る。
【0072】
活性化基材の誘導体化を行うため、基材をある期間にわたって誘導体化溶液と接触させる(例えば、その中に浸漬する)ことができる。任意選択で、接触前に/接触している間に誘導体化溶液が冷却又は加熱され得る。例えば、誘導体化工程は、約0℃~約80℃の範囲の温度、例えば約20℃~約60℃の範囲の温度又は一部の実施形態では約30℃などの誘導体化溶液で行うことができる。
【0073】
誘導体化工程のための接触時間は様々であり得る。一部の実施形態において誘導体化工程のための接触時間は、1分~72時間の範囲である。一部の実施形態において誘導体化工程のための接触時間は、0.5時間~48時間の範囲である。一部の実施形態において誘導体化工程のための接触時間は、10分~12時間の範囲である。一部の実施形態において誘導体化工程のための接触時間は、1時間~24時間の範囲である。一部の実施形態において誘導体化工程のための接触時間は、0.5時間~16時間の範囲である。一部の実施形態において誘導体化工程のための接触時間は、0.5時間~4時間の範囲である。一部の実施形態において誘導体化工程のための接触時間は、20分~2時間の範囲である。一部の実施形態において誘導体化工程のための接触時間は、4時間~16時間の範囲である。
【0074】
一部の実施形態において、誘導体化基材は、使用前に乾燥させることができる。他の実施形態において、誘導体化基材は、誘導体化の直後に使用され得る。乾燥プロセスが取り入れられるとき、それは特に限定されず、強制空気乾燥又は単純空気乾燥を挙げることができる。一般に、乾燥温度は、誘導体化基材に損傷を与えないことが確実となるような温度、例えば室温前後、例えば約20℃~約40℃又は一部の実施形態では約25℃~約30℃などであり得る。乾燥後、乾燥した誘導体化基材は、使用時まで疎水性リガンドを維持することができる。例えば、乾燥した活性化膜は、ある期間(例えば、保管条件に応じて数日間~数ヵ月間又は更には数年間)保管及び/又は輸送することができ、その時間が経った後にも、HICプロトコルにおける使用のための所望の疎水性リガンドを維持していることができる。
【0075】
一実施形態において誘導体化基材は、使用に向けて更に加工することができる。例えば、誘導体化基材は、HICプロトコルでの使用に向けた誘導体化した分離媒体が形成されるように加工され得る(例えば、成形される、積層される、組み合わされる、保持される等)。一実施形態において、誘導体化した分離媒体は、HICプロトコルでの使用に向けた分離媒体が形成されるように、必要に応じて積層及び/又は成形することのできる1つ以上の誘導体化膜、例えば複数の誘導体化膜で形成され得る。
【0076】
例として、複数の誘導体化膜基材を積層して、所与の適用向けに容量が増加した多層構成体を形成することができる。一実施形態において、誘導体化膜の積層構成体は、約70マイクロメートル~約10,000マイクロメートル、例えば約10,000マイクロメートル以上、約7,500マイクロメートル以上、約5,000マイクロメートル以上、約2,500マイクロメートル以上、約1,000マイクロメートル以上、約900マイクロメートル以上、約800マイクロメートル以上、約700マイクロメートル以上、約600マイクロメートル以上、約500マイクロメートル以上、約400マイクロメートル以上、約300マイクロメートル以上、約200マイクロメートル以上、約100マイクロメートル以上、約70マイクロメートル以上、例えば約70マイクロメートル~約100マイクロメートル、約70マイクロメートル~約200マイクロメートル、約70マイクロメートル~約300マイクロメートル、約70マイクロメートル~約400マイクロメートル、約70マイクロメートル~約500マイクロメートル、約70マイクロメートル~約750マイクロメートル、約70マイクロメートル~約1,000マイクロメートル、約70マイクロメートル~約2,000マイクロメートル、約70マイクロメートル~約3,000マイクロメートル、約70マイクロメートル~約4,000マイクロメートル、約70マイクロメートル~約5,000マイクロメートル、約250マイクロメートル~約300マイクロメートル、約250マイクロメートル~約400マイクロメートル、約250マイクロメートル~約500マイクロメートル、約250マイクロメートル~約750マイクロメートル、約250マイクロメートル~約1,000マイクロメートル、約250マイクロメートル~約2,000マイクロメートル、約250マイクロメートル~約3,000マイクロメートル、約250マイクロメートル~約4,000マイクロメートル、約250マイクロメートル~約5,000マイクロメートル、約500マイクロメートル~約1,000マイクロメートル、約500マイクロメートル~約2,000マイクロメートル、約500マイクロメートル~約3,000マイクロメートル、約500マイクロメートル~約4,000マイクロメートル又は約500マイクロメートル~約5,000マイクロメートルの厚さを有し得る。
【0077】
本明細書に開示される分離媒体の流量は、例えば、約0.5カラム容量(CV)/分~約1000CV/分、約1CV/分~約1000CV/分、約2CV/分~約1000CV/分、約3CV/分~約1000CV/分、約4CV/分~約1000CV/分、約5CV/分~約1000CV/分、約6CV/分~約1000CV/分、約0.5CV/分~約500CV/分、約1CV/分~500CV/分、約2CV/分~約500CV/分、約3CV/分~約500CV/分、約4CV/分~約500CV/分、約5CV/分~約500CV/分、約6CV/分~約500CV/分、約0.5CV/分~約100CV/分、約1CV/分~約100CV/分、約2CV/分~約100CV/分、約3CV/分~約100CV/分、約4CV/分~約100CV/分、約5CV/分~約100CV/分、約6CV/分~約100CV/分、約0.5CV/分~約50CV/分、約1CV/分~約50CV/分、約2CV/分~約50CV/分、約3CV/分~約50CV/分、約4CV/分~約50CV/分、約5CV/分~約50CV/分又は約6CV/分~約50CV/分であり得る。
【0078】
本明細書において利用されるとき、用語「カラム容量」は、標準実施法に従うカラム内の膜床の容積を指す。従って、誘導体化膜基材の積層体で形成される床容量を考えるとき、カラム容量は、膜積層体の全容積、即ち積層体厚さ×積層体のフットプリント面積として決定することができる。
【0079】
一実施形態において、分離媒体は、pDNA及び限定なしに、pDNA(sc pDNA、oc pDNA、弛緩型環状pDNA、線状pDNA及びスーパーコイル変性pDNAを含む)、mRNA、tRNA、rRNA、miRNA、siRNA、ローリングサークル増幅から生じる核酸産物、snRNA、piRNA、dsRNA、ゲノムDNA、ssDNA、dsDNA、A-DNA、B-DNA、C-DNA、Z-DNA、アプタマー等を含めた他のポリヌクレオチドの精製に利用することができる。
【0080】
本明細書に記載されるとおりの分離媒体を取り込む分離システムには、当技術分野において公知のとおりの分離カラムが含まれ得る。例として、本明細書に包含される分離カラムとしては、限定なしに、シリンジフィルタカラム、スピンカラム、カセット、マルチウェルプレート及び渦巻き型膜カラム等を挙げることができる。
【0081】
開示される材料を使用する分離プロトコルは、標準方法で実行することができる。一実施形態において、本明細書に記載されるとおりの誘導体化されたHIC膜を取り込む分離カラムは、当技術分野において概して公知のとおりの溶出方法を用いて結合・溶出モードで動作し得る。
【0082】
開示されるHIC分離媒体を使用する分離は、ポリヌクレオチドを高い流量で迅速且つ効率的に精製することができる。例えば、本明細書に開示されるとおりの分離媒体を利用するポリヌクレオチド精製方法は、約80%以上の純度を有する目標とする材料の80%より高い回収率を提供することができる。例えば、分離媒体(例えば、単一の誘導体化膜又は一緒に積層された複数の誘導体化膜)は、120秒未満の保持時間で分離媒体1ミリリットル当たり1mgより大きいポリヌクレオチド(例えば、pDNA)の動的結合容量を有し得る。
【0083】
開示されるとおりの分離システムは、高いプロセス生産性を呈し得る。カラムのプロセス生産性は、以下の式を用いて定義することができる。分母において、V
totは、ローディング、リンス、溶出及び再生工程を含めて、プロセス全体でカラムを通過する溶液の全容積である。BVは、HIC媒体床容積であり、及びτは、保持時間である。ローディング容積は、HIC媒体の動的結合容量に比例する。このように、プロセス生産性は、結合容量の増加及び保持時間の減少に伴い増加する。
【数1】
【0084】
動的結合容量とは、概して、流出液中における破過時の分離媒体に結合したポリヌクレオチドの濃度(膜床の単位体積当たりに結合したミリグラム数)を指す。実施形態において、開示される分離システムは、120秒の保持時間において且つ2.5Mの硫酸アンモニウム緩衝液濃度を利用して、媒体1mL当たり約1~約5mg、例えば約1mg/mL~約10mg/mL、約1mg/mL~約20mg/mL、約1mg/mL~約25mg/mL、約1mg/mL~約30mg/mL、約2mg/mL~約5mg/mL、約2mg/mL~約10mg/mL、約2mg/mL~約15mg/mL、約2mg/mL~約20mg/mL、約2mg/mL~約25mg/mL、約2mg/mL~約30mg/mL、約3mg/mL~約5mg/mL、約3mg/mL~約10mg/mL、約3mg/mL~約15mg/mL、約3mg/mL~約20mg/mL、約3mg/mL~約25mg/mL、約3mg/mL~約30mg/mL、約4mg/mL~約5mg/mL、約4mg/mL~約10mg/mL、約4mg/mL~約15mg/mL、約4mg/mL~約20mg/mL、約4mg/mL~約25mg/mL、約4mg/mL~約30mg/mL、約5mg/mL~約10mg/mL、約5mg/mL~約15mg/mL、約5mg/mL~約20mg/mL、約5mg/mL~約25mg/mL又は約5mg/mL~約30mg/mLのポリヌクレオチドの動的結合容量を提供することができる。先述のとおり、開示される分離媒体は、目標ポリヌクレオチドサイズとは無関係に、実質的に同様の動的結合容量を呈し得る。そのため、ある分離システムの動的結合容量は、同じシステムが大型又は小型のいずれのポリヌクレオチドであっても、異なるポリヌクレオチドを精製するときと実質的に同様であり得る。互いに実質的に同様である動的結合容量とは、場合により同一の動的結合容量を呈することを含めて、互いから約10%以下の範囲内、例えば約9%以下、約8%以下、約7%以下、約6%以下、約5%以下、約4%以下又は約3%以下の範囲内などであり得る。
【0085】
公知の市販のHICカラム製品は、180秒の保持時間で動作し、3kbpのpDNAについて、動的結合容量は、0.1mg/mL未満である。同じ産物収率を実現する同じ動的結合容量の2つの媒体について、ローディング生産性の比は、保持時間の逆比によって推定することができる。このように、一実施形態において、約2秒以下の保持時間で4mg/mLの動的結合容量を有する本開示に記載されるとおりの誘導体化膜を含む分離媒体と比較して、本明細書における記載される分離媒体のローディング生産性は、プラスミド精製について現在公知の市販のHICカラム製品の3600倍(=(4/0.1)×(180s/2s))であり得る。本発明によって実現するとおりのかかる生産性に近付くような現在利用可能な公知のカラム製品はない。
【0086】
以下は、本開示に係る製品及び方法の例示的態様のリストである。
【0087】
態様1によれば、多孔質セルロース膜と、多孔質セルロース膜の表面に結合された複数の疎水性リガンドとを含むHIC分離媒体が開示される。
【0088】
態様2は、多孔質セルロース膜がキャスト膜、ヒドロゲル膜又はエレクトロスピニングされたナノファイバー膜などのファイバー膜を含む、態様1に記載のHIC分離膜である。
【0089】
態様3は、多孔質セルロース膜が再生セルロース又はセルロース誘導体を含む、態様1又は2に記載のHIC分離膜である。
【0090】
態様4は、多孔質セルロース膜が、窒素を吸着質として使用したBET測定法により決定したとき、約0.1m2/mL~約30m2/mL、約0.1m2/mL~約25m2/mL、約0.1m2/mL~約20m2/mL、約0.1m2/mL~約15m2/mL、約0.1m2/mL~約10m2/mL、約0.5m2/mL~約30m2/mL、約0.5m2/mL~約25m2/mL、約0.5m2/mL~約20m2/mL、約0.5m2/mL~約15m2/mL、約0.5m2/mL~約10m2/mL、約0.5m2/mL~約5m2/mL、約1m2/mL~約30m2/mL、約1m2/mL~約25m2/mL、約1m2/mL~約20m2/mL、約1m2/mL~約15m2/mL、約1m2/mL~約10m2/mL、約1m2/mL~約5m2/mL、約5m2/mL~約30m2/mL、約5m2/mL~約25m2/mL、約5m2/mL~約20m2/mL、約5m2/mL~約15m2/mL又は約5m2/mL~約10m2/mLの比表面積を含む、態様1~3のいずれか1つに記載のHIC分離膜である。
【0091】
態様5は、多孔質セルロース膜が約0.1マイクロメートル~約10マイクロメートル、約0.1マイクロメートル~約0.2マイクロメートル、約0.1マイクロメートル~約0.45マイクロメートル、約0.1マイクロメートル~約10マイクロメートル、約0.1マイクロメートル~約2マイクロメートル、約0.2マイクロメートル~約0.45マイクロメートル、約0.2マイクロメートル~約1マイクロメートル、約0.2マイクロメートル~約2マイクロメートル、約0.2マイクロメートル~約10マイクロメートル、約0.45マイクロメートル~約1マイクロメートル、約0.45マイクロメートル~約2マイクロメートル、約0.45マイクロメートル~約10マイクロメートル、約1マイクロメートル~約2マイクロメートル又は約1マイクロメートル~約5マイクロメートルの細孔径を含む、態様1~4のいずれか1つに記載のHIC分離膜である。
【0092】
態様6は、一緒に積層された複数の膜を含み、積層が多孔質セルロース膜を含む、態様1~5のいずれか1つに記載のHIC分離膜である。例えば、積層は、70マイクロメートル~10,000マイクロメートル、例えば約10,000マイクロメートル以上、約7,500マイクロメートル以上、約5,000マイクロメートル以上、約2,500マイクロメートル以上、約1,000マイクロメートル以上、約900マイクロメートル以上、約800マイクロメートル以上、約700マイクロメートル以上、約600マイクロメートル以上、約500マイクロメートル以上、約400マイクロメートル以上、約300マイクロメートル以上、約200マイクロメートル以上、約100マイクロメートル以上、約70マイクロメートル以上、例えば約70マイクロメートル~約100マイクロメートル、約70マイクロメートル~約200マイクロメートル、約70マイクロメートル~約300マイクロメートル、約70マイクロメートル~約400マイクロメートル、約70マイクロメートル~約500マイクロメートル、約70マイクロメートル~約750マイクロメートル、約70マイクロメートル~約1,000マイクロメートル、約70マイクロメートル~約2,000マイクロメートル、約70マイクロメートル~約3,000マイクロメートル、約70マイクロメートル~約4,000マイクロメートル、約70マイクロメートル~約5,000マイクロメートル、約250マイクロメートル~約300マイクロメートル、約250マイクロメートル~約400マイクロメートル、約250マイクロメートル~約500マイクロメートル、約250マイクロメートル~約750マイクロメートル、約250マイクロメートル~約1,000マイクロメートル、約250マイクロメートル~約2,000マイクロメートル、約250マイクロメートル~約3,000マイクロメートル、約250マイクロメートル~約4,000マイクロメートル、約250マイクロメートル~約5,000マイクロメートル、約500マイクロメートル~約1,000マイクロメートル、約500マイクロメートル~約2,000マイクロメートル、約500マイクロメートル~約3,000マイクロメートル、約500マイクロメートル~約4,000マイクロメートル又は約500マイクロメートル~約5,000マイクロメートルの厚さを有し得る。
【0093】
態様7は、疎水性リガンドが、2つ以上の炭素を有する脂肪族鎖、ベンジル含有基、フェニル含有基、フェノール含有基、ピリジン含有基、ボロン酸基、分岐ポリマー、硫黄含有親硫黄性基又はこれらの任意の組み合わせを含む、態様1~6のいずれか1つに記載のHIC分離膜である。その上、複数の疎水性リガンドの各々は、多孔質セルロース膜の表面に連結基を介して結合され得、連結基は、エポキシの反応産物及びエポキシ反応性官能基、例えばアミン又はチオエーテル部分を含む。
【0094】
態様8は、120秒の保持時間において且つ2.5Mの硫酸アンモニウム緩衝液濃度を利用して、約1mg/mLより大きい、例えば約1mg/mL~約10mg/mL、約1mg/mL~約20mg/mL、約1mg/mL~約25mg/mL、約1mg/mL~約30mg/mL、約2mg/mL~約5mg/mL、約2mg/mL~約10mg/mL、約2mg/mL~約15mg/mL、約2mg/mL~約20mg/mL、約2mg/mL~約25mg/mL、約2mg/mL~約30mg/mL、約3mg/mL~約5mg/mL、約3mg/mL~約10mg/mL、約3mg/mL~約15mg/mL、約3mg/mL~約20mg/mL、約3mg/mL~約25mg/mL、約3mg/mL~約30mg/mL、約4mg/mL~約5mg/mL、約4mg/mL~約10mg/mL、約4mg/mL~約15mg/mL、約4mg/mL~約20mg/mL、約4mg/mL~約25mg/mL、約4mg/mL~約30mg/mL、約5mg/mL~約10mg/mL、約5mg/mL~約15mg/mL、約5mg/mL~約20mg/mL、約5mg/mL~約25mg/mL又は約5mg/mL~約30mg/mLのポリヌクレオチド動的結合容量を有する、態様1~7のいずれか1つに記載のHIC分離膜である。
【0095】
態様9は、多孔質セルロース膜が自己支持型膜であるか、又は媒体が多孔質セルロース膜と裏当て材料とを含む、態様1~8のいずれか1つに記載のHIC分離膜である。
【0096】
態様10は、態様1~9のいずれか1つに記載の疎水性相互作用クロマトグラフィー分離媒体を含む分離カラムである。例えば、分離カラムは、シリンジフィルタカラム、スピンカラム、カセット又は渦巻き型膜カラムを含む。
【0097】
態様11は、活性化基材を形成する方法であって、基材を活性化溶液と接触させることを含む方法である。活性化溶液は、活性化剤と、塩基と、有機溶媒とを含む。活性化剤は、基材の表面と反応して表面上に連結基を形成するように構成された反応性官能基を含み、活性化剤は、エポキシ基を更に含み、連結基は、エポキシ基を含む。
【0098】
態様12は、基材がフィルム、多孔質膜、モノリス、ナノファイバーマット又は樹脂を含み、基材がセルロース、再生セルロース、セルロース誘導体、ナイロン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリエーテルイミド、ポリプロピレン、ポリエチレン又はポリエーテルテレフタレートを含む、態様11に記載の方法である。
【0099】
態様13は、活性薬剤がエピクロロヒドリン、ジグリシジルエーテル又はこれらの任意の組み合わせを含む、態様11又は12に記載の方法である。
【0100】
態様14は、態様11、12又は13のいずれか1つに記載の方法によって形成された活性化基材を誘導体化する方法であって、活性化基材を誘導体化溶液と接触させることを含み、誘導体化溶液が誘導体化剤、塩基を含み、且つ任意選択で有機溶媒を含み、誘導体化剤がエポキシ反応性官能基と疎水性部分とを含み、疎水性部分が疎水性リガンドを含む、方法である。
【0101】
態様15は、疎水性リガンドが、2つ以上の炭素を有する脂肪族鎖、ベンジル含有基、フェニル含有基、フェノール含有基、ピリジン含有基、ボロン酸基、分岐ポリマー、硫黄含有親硫黄性基又はこれらの任意の組み合わせを含む、態様14に記載の方法である。
【0102】
態様16は、誘導体化剤がチオフェノール、2-ブタンチオール、フルフリルチオール、6-メルカプトプリン、2-メルカプトピリジン、2-メルカプト-ベンゾチアゾール、プロパンチオール、シクロペンタンチオール、o-メルカプト安息香酸、ジチオスレイトール、1,2-エタンジチオール、3,6-ジオキサ-1,8-オクタンジチオール、1,4-ベンゼンジメタンチオール、1,3-ベンゼンジメタンチオ、1,2-ベンゼンジメタンチオ、4,4’-ビス(メルカプトメチル)ビフェニル、2,4-ジクロロベンジルメルカプタン、4-メトキシベンジルメルカプタン、トリフェニルメタンチオール、2,4-ジメトキシチオフェノール又はこれらの任意の組み合わせを含む、態様14又は15に記載の方法である。
【0103】
態様17は、有機溶媒がプロトン性有機溶媒若しくは非プロトン性有機溶媒又はこれらの組み合わせを含み、例えば、有機溶媒がアルコール、ニトロメタン又はこれらの任意の組み合わせを含む、態様11~16のいずれか1つに記載の方法である。
【0104】
態様18は、塩基がアルカンアミン(例えば、メチルアミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン)、ピリジン、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ヒスチジン、グアニジン、ホスファゼン塩基、N,N-ジメチルベンジルアミン、3-ジメチルアミノプロピルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、N,N-ジメチレンジアミン、ジエチルアミン、ナトリウムアミド、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム又は重炭酸カリウムを含む、態様11~17のいずれか1つに記載の方法である。
【0105】
本開示は、以下に提供する例を参照してよりよく理解され得る。
【実施例】
【0106】
試験方法
本実施例のクロマトグラフィーカラムを形成するため、2層の24mm円形HIC膜ディスクを膜ハウジング(膜容積=0.055mL)に充填して、DBC10%値を測定した。
【0107】
高速タンパク質液体クロマトグラフィーシステム(AEKTA(商標)pure 25、Cytiva)を使用してクロマトグラフィー試験を行った。4つのサイズのプラスミドを例えば試験した。プラスミド1)pRP[Exp]-CMV>EGFP、3657bp 2)pRP[Exp]-Alb>hCas9、8956bp及び3)pLV[Exp]-EGFP:T2A:Bsd-Alb>dCas9/VPR、16129bpは、Qiagen(登録商標)Megaキット(カタログ番号12281)を使用して精製する。pALD-HELP、11584bpは、販売業者から購入した。プラスミドストックを6~13μg/mLの濃度に希釈した。40mM 1×TE(トリス-HCl)中の様々な濃度の硫酸アンモニウムをローディング緩衝液として使用した。
【0108】
流出液中における破過時に保持されたプラスミド濃度(膜床の単位体積当たりに結合したプラスミドのミリグラム数)として動的結合容量を決定した。10%破過時の動的結合容量(DBC10%)とは、膜床からの流出液中のプラスミド濃度が供給液の10%に達したときの膜床の単位体積当たりに結合した質量に相当する。
【0109】
実施例1
活性化:1μmの名目細孔径の10×60cm再生セルロース膜シートを、9.2%(v/v)エピクロロヒドリン(EPI)、5.4%(v/v)トリエチルアミン(TEA)及び85.4%(v/v)エタノール(EtOH)を含有する溶液にそれを浸すことにより活性化した。この反応は、暗所下室温において120rpmで振盪しながら一晩実施した。20~24時間後、膜をEtOHで5分間リンスし、続いて5分間のアセトンリンスを2回行った。その後、膜シートを室温で乾燥させた。
【0110】
MCP取り込み:活性化膜を、80.7%(v/v)メタノール、8.6%(v/v)脱イオン化(DI)水、9.6%(v/v)5M水酸化ナトリウム(NaOH)及び1.1%(v/v)TEAを含有する溶液中に溶解させた82mM MCPで処理した。この反応は、暗所下室温において100rpmで振盪しながら一晩実施した。20~24時間後、膜をエタノールで5分間リンスし、続いて5分間のアセトンリンスを2回行った。その後、膜シートを室温で乾燥させた。
【0111】
実施例2
活性化:3つの反応時間を適用したことを除いては、3つのエピクロロヒドリン活性化膜(膜1、膜2及び膜3)を実施例1の記載と同じようにして調製した:膜1について1時間の反応時間、膜2について3時間の反応時間及び膜3について一晩(20~24時間)の反応時間。120rpmの振盪機上及び暗所下室温において反応を実施した。反応後、実施例1の記載と同じ手順に従い膜をリンスし、乾燥させた。
【0112】
MCP取り込み:乾燥させた活性化膜を、実施例1にあるのと同じようにして誘導体化した。
【0113】
図1は、DBC
10%の点で見て、反応時間が長くなることに伴いHIC膜結合容量が増加したことを示す。同じ活性化溶液及び同じ取り込み処理について、20~24時間の反応時間は、1時間の反応からもたらされたものと比べて59%の結合容量の増加をもたらした。
【0114】
実施例3
活性化:2つのエピクロロヒドリン活性化膜(膜4及び膜5)を3時間の活性化時間で実施例1の膜2と同じようにして調製した。しかしながら、配合に2つの変更を加えた:1)膜4は、16.8%v/vの2倍のEPI濃度の活性化溶液に浸した。2)膜5は、EtOHを同じ量の2-プロパノール(IPA)に置き換えた活性化溶液に浸した。
【0115】
MCP取り込み:乾燥させた活性化膜を、実施例1にあるのと同じようにして誘導体化した。
【0116】
図2に示されるとおり、EPI濃度が2倍になったことにより、膜2と比較したとき膜4について結合容量が25%増加した。また、EtOHをIPAに置き換えても、膜5と膜2との間で結合容量に変化はほとんど又は全く起こらなかったが、これは、状況によっては前記膜を作るのにIPAを使用してEtOHを置き換えることができることを指し示している。
【0117】
実施例4
アルカリ処理:反応の前日に100%エタノール中0.3M NaOHを調製し、撹拌プレート上に一晩置いておいた。反応直前に、47mm 0.22μm再生セルロース膜フィルタを使用して溶液を清澄化した。
【0118】
4つの再生セルロース膜ストリップ及び2つのアルカリ処理を使用した:
セットI)膜A及びBは80rpmの振盪機上室温において30分間、100%エタノールに溶解した0.3M NaOHに浸し、次に移し替えて80rpmの振盪機上及び室温においてDI中0.1M NaOHに更に30分間浸した。
セットII)膜C及びDは80rpmの振盪機上及び室温において30分間、100%エタノールに溶解した0.3M NaOHに浸した。
【0119】
膜A及びCを200mMトリスpH7で5分間、続いてDI水で5分間リンスし、次に5分間のアセトンリンスを2回行った。その後、これらの膜を適切な強制空気条件下に室温で乾燥させた。一方で、膜B及びDを200mMトリスpH7で5分間、DI水で5分間、続いてエタノールで5分間リンスした。その後、膜B及びDを活性化溶液に移し替えた。
【0120】
活性化:膜を、実施例1にあるのと同じようにして活性化させた。
【0121】
MCP取り込み:乾燥させた活性化膜を、実施例1にあるのと同じようにしてカップリングした。
【0122】
図3に示されるとおり、アルカリ処理により、膜の構造的完全性が改善した。
図4は、異なるアルカリ前処理を用いて調製した膜の結合容量を比較する。
図4では、EtOH中0.3M NaOHによって処理した膜が、水中0.1M NaOHによって同じように処理した膜と同様の結合容量を有した。
【0123】
実施例5
アルカリ処理:このプロセスの前日に、100%エタノール(EtOH)中0.3M NaOHを調製し、撹拌プレートに一晩置いておいた。反応直前に、47mm 0.22μm酢酸セルロース(CA)膜フィルタを使用して溶液を清澄化した。
【0124】
3つの膜ストリップ及び2つのアルカリ処理を使用した:
セットI)膜C及びFは80rpmの振盪機上及び室温において30分間、100%EtOHに溶解した0.3M NaOHに浸した。
セットII)膜G及び膜Hは80rpmの振盪機上及び室温において30分間、DIに溶解した0.1M NaOHに浸した。
【0125】
アルカリ処理後、膜C及び膜Gは200mMトリスpH7で5分間リンスし、続いてDIで5分間リンスし、次に2回のアセトンリンスを行った。膜C及び膜Gは、その後活性化前に強制空気条件下に室温で乾燥させた。
【0126】
アルカリ処理後、膜F及びHは200mMトリスpH7で5分間リンスし、続いてDIで5分間リンスし、次にEtOHで5分間リンスした。膜F及びHは、活性化前に乾燥させなかった。
【0127】
活性化:膜C及び膜GはEtOH及びアセトンでリンスし、次に実施例1にあるとおりの取り込み溶液に移し替えた。
【0128】
膜F及びHはEtOHで5分間リンスし、続いてDIで各リンス5分間ずつ2回リンスし、次に実施例1にあるとおりの取り込み溶液に直接移し替えた。
【0129】
MCP取り込み:膜を、実施例1にあるのと同じようにして誘導体化した。
【0130】
図4は、乾燥工程なしに調製した膜(F及びH)が、乾燥工程ありで調製した膜(C及びG)よりも高い結合容量を有したことを示す。アルカリ処理について、100%エタノール中0.3M NaOHによって処理した膜(F)は、DIに溶解した0.1M NaOHによって処理した膜(H)よりも僅かに高い結合容量を有した。
【0131】
実施例6
実施例2からの膜3を媒体として充填したカラムを使用して、クロマトグラフィー試験を行った。プラスミドサイズは3657bpであった。40mMトリス-HCl、pH8中の3M硫酸アンモニウムをローディング緩衝液として使用した。
図5は、得られたクロマトグラムが、分離のローディング、洗浄及び溶出段階を例証していることを示す。溶出ピークは、全ての試験間で同様であった。UV
260吸光度値及び緩衝液容積は、膜毎に異なる。UV
260吸光度値及び緩衝液容積は、膜毎に異なった。
【0132】
クロマトグラフィー試験を再び同じ条件下で、但しローディング緩衝液をpH8からpH5に下げて実行した。
図6は結合容量の結果を示し、ローディング緩衝液のpHを低下させたときに結合容量の30%の増加が観察されることを例証している。
【0133】
実施例7
クロマトグラフィー試験を実施例2の膜3を充填したカラムを媒体として使用して様々な条件下で行うことにより、これらの材料を更に調べた。
【0134】
初めに、3kbp、8kbp及び16kbpを含む異なるサイズのプラスミドでの使用について媒体を調べた。全てのランについて、ローディング緩衝液は、7.5のpH及び2mL/分の流量(36.4CV/分)で2.5M硫酸アンモニウム及び1×TE緩衝液を利用した。動的結合容量(DBC)の結果は、以下の表1及び
図7に提供する。
【0135】
【0136】
指摘されるとおり、媒体の動的結合容量は、本質的にプラスミドサイズと無関係であった。
【0137】
流量の変化についての動的結合容量に対する効果について媒体を調べた。8kbpのプラスミドを利用した。ローディング緩衝液は、2.5M硫酸アンモニウム及びpH7.5の1×TE緩衝液であった。結果は以下の表2及び
図8に提供する。
【0138】
【0139】
異なる硫酸アンモニウム濃度についても、動的結合容量に対する効果を調べた。8kbpプラスミドを利用し、全てのランについて流量を2mL/分に設定した。結果は以下の表3及び
図9に提供する。
【0140】
【0141】
膜3クロマトグラフィーカラムを市販のプレパック樹脂カラム(Cytiva HiScreen(商標)PlasmidSelect、4.7mL)と比較した。ローディング緩衝液は3M硫酸アンモニウム及びpH7.5の1×TEであった。プラスミドは11kbpであった。結果を以下の表4及び
図10に示す。
【0142】
【0143】
開示される主題の特定の実施形態を具体的な用語を用いて説明したが、かかる説明は、例示目的に過ぎず、主題の趣旨又は範囲から逸脱することなく、変更形態及び変形形態がなされ得ることが理解されるべきである。
【国際調査報告】