(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-18
(54)【発明の名称】軽度認知障害を診断するための方法とキット
(51)【国際特許分類】
G01N 33/68 20060101AFI20240910BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20240910BHJP
C12Q 1/00 20060101ALI20240910BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20240910BHJP
C07K 14/46 20060101ALN20240910BHJP
C07K 7/08 20060101ALN20240910BHJP
C07K 16/24 20060101ALN20240910BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20240910BHJP
【FI】
G01N33/68 ZNA
G01N33/53 D
G01N33/53 Y
C12Q1/00 C
G01N33/50 K
C07K14/46
C07K7/08
C07K16/24
C07K16/28
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024502464
(86)(22)【出願日】2022-07-15
(85)【翻訳文提出日】2024-01-15
(86)【国際出願番号】 US2022073799
(87)【国際公開番号】W WO2023288318
(87)【国際公開日】2023-01-19
(32)【優先日】2021-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524019542
【氏名又は名称】亞東紀念醫院
【氏名又は名称原語表記】FAR EASTERN MEMORIAL HOSPITAL
【住所又は居所原語表記】No.21,Section 2,Nanya S.Road,Banqiao District,New Taipei City,Taiwan
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】邱彦霖
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
4H045
【Fターム(参考)】
2G045AA25
2G045CA18
2G045CA20
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2G045CA26
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4H045EA50
(57)【要約】
アミロイドβペプチドまたはその断片で対象から得られた生体サンプル中のT細胞を刺激すること、およびアミロイドβペプチドまたはその断片に対するT細胞応答の大きさを評価することを含む、軽度認知障害(MCI)に罹患するかまたはそのリスクを有する対象を診断するための方法が提供される。また、この方法を利用してMCIを診断するためのキットも提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミロイドβペプチドまたはその断片で、対象から得られた生体サンプル中のT細胞を刺激すること、および
アミロイドβペプチドまたはその断片に対するT細胞応答の大きさを評価すること
を含む、
軽度認知障害(MCI)に罹患するかまたはそのリスクを有する対象を診断するための方法。
【請求項2】
前記評価は、刺激されたT細胞からのバイオマーカーのレベルを測定することを含み、前記バイオマーカーは、CD107a、IFNγ、IL-2、TNFαおよびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記評価は、刺激されたT細胞からのCD107a、IFNγ、IL-2およびTNFαのうちの少なくとも2つのレベルを測定することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記評価は、バイオマーカーの測定されたレベルを参照レベルと比較することをさらに含み、参照レベルと比較してバイオマーカーのレベルが高いことは、対象がMCIに罹患しているかまたはそのリスクを有する可能性が高いことを示す、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記バイオマーカーは、CD4+T細胞から発現される、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記生体サンプルは、組織サンプルまたは流体生体サンプルである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記生体サンプルは、前記対象の血液、血漿、血清、尿、喀痰、唾液、脳脊髄液、汗、便抽出物、涙、腹膜液または脳から得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記T細胞は、生体サンプル由来の末梢血単核球(PBMC)に存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記アミロイドβペプチドは、配列番号1または配列番号12で表されるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記アミロイドβペプチドの断片は、配列番号1または配列番号12で表されるアミノ酸配列の少なくとも9個の連続するアミノ酸を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記アミロイドβペプチドの断片は、配列番号2~11のいずれかで表されるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記刺激は、T細胞をアミロイドβペプチドまたはその断片とともに少なくとも3時間インキュベートすることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記対象は、哺乳動物である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記哺乳動物は、ヒト、イヌ、ネコ、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマ、サル、げっ歯動物、ネズミ、ウサギおよびモルモットからなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
アミロイドβペプチド、その断片もしくは凝集体関連治療の応答、副作用またはそれらの組み合わせをモニタリングするために使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
アミロイドβペプチド、その断片もしくは凝集体関連治療の有効性を予測するために使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
アミロイドβペプチド、その断片もしくは凝集体関連治療の治療決定を導くために使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記凝集体関連治療は、モノクローナル抗体療法である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記副作用は、脱力感、頭痛、発熱、悪寒、吐き気、嘔吐、下痢、発疹、低血圧およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、脳アミロイド血管症、炎症性脳アミロイド血管症および脳アミロイドーマからなる群から選択される少なくとも1つのアミロイド関連疾患をモニタリングするために使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
アミロイドβペプチドまたはその断片によって誘導されるT細胞応答を評価するために使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
アミロイドβペプチドまたはその断片、および
CD107a、IFNγ、IL-2およびTNFαからなる群から選択される少なくとも1つのバイオマーカーに特異的な少なくとも1つの試薬
を含む、
軽度認知障害(MCI)に罹患するかまたはそのリスクを有する対象を診断するためのキット。
【請求項23】
前記少なくとも1つの試薬は、抗原抗体相互作用に基づいて、その対応するバイオマーカーに特異的に結合する抗体である、請求項22に記載のキット。
【請求項24】
前記アミロイドβペプチドは、配列番号1または配列番号12で表されるアミノ酸配列を含む、請求項22に記載のキット。
【請求項25】
前記アミロイドβペプチドの断片は、配列番号1または配列番号12で表されるアミノ酸配列の少なくとも10個の連続するアミノ酸を含む、請求項22に記載のキット。
【請求項26】
前記アミロイドβペプチドの断片は、配列番号2~11のいずれかで表されるアミノ酸配列を含む、請求項22に記載のキット。
【請求項27】
請求項1に記載の方法に従って使用するための説明書をさらに含む、請求項22に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、軽度認知障害(MCI)に罹患する対象を同定するための診断アッセイに関し、特に、アミロイド特異的T細胞応答を評価することによって、MCIに罹患するかまたはそのリスクを有する対象を診断するための方法およびキットに関する。
【背景技術】
【0002】
神経変性疾患は、ニューロンの機能が徐々に低下するときに発生する。ニューロン機能が時間の経過とともに低下するため、会話、バランス、運動などに関連する活動などの調整機能に軽度の問題が発生し始めることがある。変性疾患は、神経細胞の一部が機能を失い、最終的に死滅するまでは明らかではない。神経変性疾患の状態と障害は多様であり、不均一である。神経変性疾患の種類に応じて、そのような状態や障害は生命の脅威となり、深刻な生活に影響を与える可能性がある。神経変性疾患の例には、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、フリードライヒ運動失調、ハンチントン病、レビー小体病、および脊髄性筋萎縮症が含まれる。
【0003】
アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)および多発性硬化症(MS)を含むいくつかの神経変性疾患は、アミロイドファミリーに関連する。アルツハイマー病(AD)を例として挙げると、ADは、脳内のβ-アミロイドタンパク質(amyloid β)の蓄積を特徴とする。認知症患者の数は、人口高齢化に伴い、2005年の約2,600万人から2040年の8,000万人を超えるまでに世界的に急増しており、前例のない規模の公衆衛生上の課題を引き起こしている[1]。
【0004】
遺伝的リスクがあるコホートと臨床的に正常な高齢者の両方から得られた証拠は、認知症の最も一般的な形態であるアルツハイマー病(AD)の根底にある病理が、病気の発症の数年前に始まる可能性が高いことを示唆している[2]。軽度認知障害(MCI)は、個体が軽度の認知症状を示す可能性があるものの、一般にコミュニティでは事実上正常に機能し続ける、亜臨床障害の中間状態として認識されるようになった[3~5]。現在のデータでは、MCI患者は認知症に進行するリスクが高く、転換率は年間約10%~15%であることを示している[3、5]。したがって、認知機能の障害の存在をできるだけ早く認識することが重要な課題となっている。
【0005】
細胞外アミロイドβ(Aβ)斑の蓄積に加えて、アルツハイマー病患者の死後の脳で見られる他の神経病理学的特徴としては、全身性皮質萎縮、神経細胞およびシナプスの喪失、過剰リン酸化タウからなる細胞内神経原線維変化(NFT)などがある[6]。ニューロイメージングは、信頼できるアルツハイマー病バイオマーカーを開発する貴重な機会を提供し、生きた脳における神経病理学的特徴を直接的または間接的に視覚化できるようになる。これは、アミロイド斑をインビボで定量するためのアミロイド標識陽電子放出断層撮影(PET)トレーサーの使用において示されており、それは死後のAD脳におけるアミロイド負荷のインビトロ測定と強い相関がある[7]。
【0006】
MCI患者の約50%~70%は、AD患者や正常対照と比較して、中間レベルの有意な皮質アミロイドPET貯留を示した[8、9]。MCI患者におけるこの高いアミロイドβ負荷は、エピソード記憶能力の低下とより良い相関があることがわかる[10,11]。さらに、疾患進行に対するAβ沈着の影響を評価する縦断的研究では、ベースラインでのアミロイドPET滞留が高いMCI患者は、Aβ負荷が低い患者よりもADへの進行率が高く、感度は83.3%~100%の範囲であり、特異性は41.1%~100%であることが判明した[12]。ADの前症候期におけるAβ病理の検出は、認知および/または神経変性に対するAβ沈着の潜在的な影響を評価するのに役立つことができ、また、脳からのAβの低減または除去を目的とする治療での利益を得る可能性が最も高い可能性がある個体を同定することができる。
【0007】
しかしながら、日常的な診断目的のための神経イメージングモダリティの実用性は、感度および特異性が不充分であり、また高価で労働集約的であるので、制限される。したがって、認知症が臨床的に発現されていない段階およびそのような臨床的発現の初期段階において、認知症を効率的に評価する追加試験および方法に対するニーズが満たされていないことは依然としてある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記を考慮して、本開示は、ADのようなアミロイド関連神経変性疾患の前駆症状、すなわち、アミロイド関連神経変性疾患の開始を示す可能性のある初期症状を検出できるバイオマーカーを含む診断ツールを提供する。本開示の少なくとも1つの実施形態において、軽度認知障害(MCI)に罹患するかまたはそのリスクを有する対象を診断するための方法が提供される。本開示の方法は、アミロイドβペプチドまたはその断片(fragment)で、対象から得られた生体サンプル(biological sample)中のT細胞を刺激すること、およびアミロイドβペプチドまたはその断片に対するT細胞応答の大きさを評価することを含む。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の少なくとも1つの実施形態において、本明細書に記載の方法に使用されるためのアミロイドβペプチドまたはその断片は、完全長アミロイドタンパク質(Aβ1-42)に由来してもよく、前記の完全長アミロイドタンパク質(Aβ1-42)は、アミノ酸配列DAEFRHDSGYEVHHQKLVFFAEDVGSNKGAIIGLMVGGVVIA(配列番号12)の少なくとも一部を含むか、それらのみからなるか、または実質的にそれらからなる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法に使用されるためのアミロイドβペプチドは、アミロイドβタンパク質の完全長A21Gフランドル型変異体に由来してもよく、前記のアミロイドβタンパク質の完全長A21Gフランドル型変異体は、アミノ酸配列DAEFRHDSGYEVHHQKLVFFGEDVGSNKGAIIGLMVGGVVIA(配列番号1)の少なくとも一部を含む、それらのみからなるか、または実質的にそれらからなる。それにもかかわらず、本明細書に記載の方法に使用されるためのアミロイドβペプチドまたはその断片は、当技術分野で知られている任意の完全長野生型アミロイドβタンパク質変異体に由来してもよいことに留意されたい。
【0010】
本開示の少なくとも1つの実施形態において、本明細書に記載の方法に使用されるためのアミロイドβペプチドの断片は、配列番号1または配列番号12で表される全長配列に由来してもよい。いくつかの実施形態において、アミロイドβペプチドの断片は、配列番号1または配列番号12のアミノ酸配列の少なくとも10個(例えば、10~30個、12~25個、および15~20個)の連続するアミノ酸を含む。いくつかの実施形態において、アミロイドβペプチドの断片は、アミノ酸配列DAEFRHDSGYEVHHQ(Aβ1-15、配列番号2)、FRHDSGYEVHHQKLV(Aβ4-18、配列番号3)、DSGYEVHHQKLVFFG(Aβ7-21、配列番号4)、YEVHHQKLVFFGEDV(Aβ10-24、配列番号5)、HHQKLVFFGEDVGSN(Aβ13-27、配列番号6)、KLVFFGEDVGSNKGA(Aβ16-30、配列番号7)、FFGEDVGSNKGAIIG(Aβ19-33、配列番号8)、EDVGSNKGAIIGLMV(Aβ22-36、配列番号9)、GSNKGAIIGLMVGGV(Aβ25-39、配列番号10)、および/またはKGAIIGLMVGGVVIA(Aβ28-42、配列番号11)を含むか、それらのみからなるか、または実質的にそれらからなる。
【0011】
本開示の少なくとも1つの実施形態において、本明細書に記載の方法における刺激は、T細胞をアミロイドペプチドプールと一定期間インキュベートすることを含む。いくつかの実施形態において、アミロイドペプチドプールは、配列番号2~11からなる群から選択される少なくとも2つ(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、および10個)の断片を含む。いくつかの実施形態において、この期間は、少なくとも3時間、例えば、4、5、6、7、8、9、10、11および12時間であってもよい。
【0012】
本開示の少なくとも1つの実施形態において、本明細書に記載の方法における評価は、刺激されたT細胞からのT細胞応答バイオマーカーのレベルを測定することを含み、ここで、バイオマーカーは、CD107a、IFNγ、IL-2、TNFαおよびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つである。いくつかの実施形態において、前記評価は、バイオマーカーの測定されたレベルを参照レベル(reference level)と比較することをさらに含み、参照レベルと比較してバイオマーカーのレベルが高いことは、対象がMCIに罹患しているかまたはそのリスクを有する可能性が高いことを示す。いくつかの実施形態において、前記評価は、刺激されたCD4+T細胞からのCD107a、IFNγ、IL-2、およびTNFαのうちの少なくとも2つのレベルを測定することを含む。
【0013】
本開示の少なくとも1つの実施形態において、MCIに罹患するかまたはそのリスクを有する対象を診断するためのキットも提供される。本開示のキットは、上記のアミロイドβペプチドまたはその断片、および少なくとも1つのT細胞応答バイオマーカーに特異的な少なくとも1つの試薬を含む。いくつかの実施形態において、T細胞応答バイオマーカーは、CD107a、IFNγ、IL-2およびTNFαからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、前記キットは、上記の方法に従って使用するための説明書をさらに含む。
【0014】
本開示では、アミロイド特異的T細胞応答の大きさを評価することにより、本明細書に記載の方法およびキットを使用して、MCIを発症するリスクを有する対象を効率的に同定することができる。本明細書で提供されるそのような同定方法は、アミロイド関連神経変性疾患が臨床的に発現していない段階またはそのような臨床発現の初期段階においての発症の予測に有用であり得る。このような疾患は、例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、多発性硬化症(MS)、脳アミロイド血管症、炎症性脳アミロイド血管症、または脳アミロイドーマであり得る。いくつかの実施形態において、本明細書で提供される同定は、アミロイドβペプチド、その断片もしくは凝集体関連治療の応答、副作用またはそれらの組み合わせをモニタリングすること、アミロイドβペプチド、その断片もしくは凝集体関連治療の有効性を予測すること、および/またはアミロイドβペプチド、その断片もしくは凝集体関連治療、例えば、モノクローナル抗体療法の治療上の決定を導くことに利用されてもよい。いくつかの実施形態において、前記副作用は、脱力感、頭痛、発熱、悪寒、吐き気、嘔吐、下痢、発疹、低血圧およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0015】
いくつかの実施形態において、本方法は、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、脳アミロイド血管症、炎症性脳アミロイド血管症および脳アミロイドーマからなる群から選択される少なくとも1つのアミロイド関連疾患をモニタリングするために使用することができる。いくつかの実施形態において、この方法は、アミロイドβペプチドまたはその断片によって誘導されるT細胞応答を評価するために使用することができる。
【0016】
本発明は、添付図面を参照しながら以下の実施形態の説明を読むことにより、さらに完全に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1Aおよび1Bは、アミロイドβペプチドプール特異的T細胞応答(
図1A)または全長アミロイドβ特異的T細胞応答(
図1B)の代表的なフローサイトメトリープロットを示す。SSC-A:側方散乱エリア。FSC-A:前方散乱エリア。L/D:生存/死亡。IFNg:インターフェロン-γ(IFNγ)。TNFa:腫瘍壊死因子α (TNFα)。
【
図2】
図2A~2Fおよび
図3A~3Fは、アミロイドβペプチドプール応答(
図2A~2F)またはアミロイドβ全長ペプチド応答(
図3A~3F)についてのT細胞応答バイオマーカーの動作特性曲線(ROC)分析の結果を示す。
【
図3】
図2A~2Fおよび
図3A~3Fは、アミロイドβペプチドプール応答(
図2A~2F)またはアミロイドβ全長ペプチド応答(
図3A~3F)についてのT細胞応答バイオマーカーの動作特性曲線(ROC)分析の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下の実施例は、本開示を例示するために使用される。当業者であれば、本開示の明細書に基づいて、本開示の他の利点を理解することができる。本開示は、さまざまな例で説明したように実行または適用することもできる。本開示を実施するために、さまざまな態様および用途に対する本開示の範囲を逸脱することなく、以下の実施例を修正および/または変更することが可能である。
【0019】
本開示で使用される場合、単数形「1つ(a)」、「1つ(an)」、および「前記、上記(the)」は、明示的かつ明確に1つの指示対象に限定されない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。「または」という用語は、文脈で明確に別段の指示がない限り、「および/または」という用語と同じ意味で使用される。例えば、リスト内の項目を区切る場合、「または」あるいは「および/または」は、包括的であると解釈され、すなわち、要素の数またはリストのうちの少なくとも1つを含むが、1つ以上のものを含むということを意味し、さらに、リストにない追加の項目も任意に含む。「…の1つのみ」や「正確に1つの…(exactly one of)」あるいは特許請求の範囲で使用される「…からなる」などの明確に反対の意味を示す用語のみが、要素の数またはリストのうちの正確に1つの要素を含むことを指す。
【0020】
本明細書で使用される場合、「実質的に」という用語は、前記特徴の少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%以上を指す。例えば、本明細書で使用される「実質的に…からなる」という用語は、参照配列のアミノ酸の少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%以上からなるペプチドを示すことがある。
【0021】
本明細書で使用される場合、「含む」という用語は、組成物、方法、およびそのそれぞれの構成要素に関して使用され、これらは本開示に含まれるが、不特定の要素が含まれることも許容される。例えば、要素または作用のリストを含む組成物、混合物、プロセスまたは方法は、必ずしもそれらの要素または動作のみに限定されるわけではなく、明示的に列挙されていない、あるいはそのような組成物、混合物、プロセスまたは方法に固有の他の要素または動作を含む場合がある。
【0022】
本明細書で使用される場合、「少なくとも1つ」および「1つ以上」という語句は同じ意味を有し、1つ、2つ、3つまたはそれ以上を含んでもよい。例えば、1つ以上の要素のリストに関する「少なくとも1つ」という語句は、要素のリスト内の任意の1つ以上の要素から選択される少なくとも1つの要素を意味すると理解されるべきであるが、要素のリスト内にリストされているすべての要素の少なくとも1つを必ず含む必要はなく、要素のリスト内の要素の組み合わせを除外する必要もない。この定義は、「少なくとも1つ」という語句が指す要素のリスト内で特定された要素以外の要素が、特定された要素に関連するか否かには関係なく、任意に存在することも許可する。したがって、非限定的な例として、「AおよびBの少なくとも1つ」(または同等に『AまたはBの少なくとも1つ』、あるいは同等に『Aおよび/またはBの少なくとも1つ』)は、一つの実施形態においては、「少なくとも1つの(任意に複数の)Aを含むが、Bは存在しない(および任意にB以外の要素を含む)」ということを示し;別の実施形態においては、「少なくとも1つの(任意に複数の)Bを含むが、Aは存在しない(および任意にA以外の要素を含む)」ということを示し;さらに別の実施形態においては、「少なくとも1つの(任意に複数の)Aと、少なくとも1つの(任意に複数の)Bとを含む(および任意に他の要素を含む)」ということを指すことができる。
【0023】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、一般に、所定の値または範囲の10%、5%、1%、または0.5%以内を意味する。あるいは、「約」という用語は、当業者が考慮した場合に、平均値の許容可能な標準誤差内を意味する。他に明示的に指定しない限り、本明細書に開示される材料の量、期間の長さ、温度、動作条件、量の比などの数値範囲、量、数値およびパーセンテージはいずれも、すべての場合において「約」という用語によって修飾されるものとして理解されるべきである。
【0024】
本明細書で使用される場合、「対象」、「個体」および「患者」という用語は交換可能であり、動物、例えば、哺乳動物を指す場合がある。例えば、「対象」という用語は、一方の性別が特に示されない限り、男性と女性の両方の性別を指す場合がある。さらに、「患者」という用語は、疾患または症状の疑いがあるかまたは罹患している「対象」を指してもよい。いくつかの実施形態において、本開示の方法で試験される対象は、ヒト、家庭動物(例えば、イヌ、ネコなど)、農場動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマなど)または実験動物(例えば、サル、げっ歯動物(すなわち、齧歯動物、rodent)、ネズミ、ウサギ、モルモットなど)であってもよい。
【0025】
本明細書で使用される場合、「生体サンプル」という用語は、以下のものを含む任意のサンプルを指す:組織サンプル(組織切片や組織の針生検など);細胞サンプル(例えば、細胞学的塗抹標本(Pap(パップ)や血液塗抹標本など)、または顕微解剖によって得られた細胞のサンプル);あるいは細胞画分、断片または細胞小器官(細胞を溶解して遠心分離などによってその成分を分離することで得られるものなど)。生体サンプルの他の例としては、脳組織、全血、血清、血漿、尿、喀痰、唾液、脳脊髄液、汗、便抽出物、滑液、涙、腹膜液、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0026】
本明細書で使用される場合、「診断する(diagnosing)」、「診断の(diagnostic)」および「診断(diagnosis)」という用語は、対象が所与の疾患または状態に罹患しているか否かについての確率(「尤度」)を当業者が推定および/または決定し得る方法を指す。このような診断が「確定している」ということは、診断が100%正確であることを意味するものではない。多くのバイオマーカーは複数の状態を示す。熟練した臨床医は、情報が不足している状態でバイオマーカーの結果を使用するのではなく、診断に到達するために検査結果を他の臨床指標とともに使用する。したがって、所定の診断閾値の一方側で測定されたバイオマーカーレベルは、所定の診断閾値の他方側で測定されたレベルと比較して、対象における疾患の発生の可能性がより高いことを示し得る。
【0027】
本明細書で使用される場合、疾患の「進展(development)」または「進行(progression)」という用語は、疾患の初期症状および/またはその後の進行を指す。疾患の進展は、当技術分野で周知の標準的な臨床技術を使用して検出可能であり、評価することができる。ただし、進展とは、検出できない可能性のある進行も指す。「進展」という用語には、疾患、状態、または障害の発生、再発、および発症が含まれる。本明細書で使用される場合、標的疾患、状態、または障害の「発症(onset)」または「発生(occurrence)」という用語には、その最初の発症および/または再発が含まれる。
【0028】
少なくとも1つの実施形態において、本開示は、アミロイドβペプチドまたはその断片で、対象から得られた生体サンプル中のT細胞を刺激すること、およびアミロイドβペプチドまたはその断片に対するT細胞応答の大きさを評価することを含む、軽度認知障害(MCI)に罹患するかまたはそのリスクを有する対象を診断するための方法に関する。
【0029】
本開示の少なくとも1つの実施形態において、前記評価は、CD4+T細胞などの刺激されたT細胞からのT細胞応答バイオマーカーのレベルを測定することを含む。いくつかの実施形態において、前記評価は、バイオマーカーの測定されたレベルを参照レベルと比較することをさらに含み、参照レベルと比較してバイオマーカーのレベルが高いことは、対象がMCIに罹患しているかまたはそのリスクを有する可能性が高いことを示す。
【0030】
本明細書で使用される場合、「参照レベル」は、絶対値、相対値、値の範囲、代表的平均値(average value)、中央値、平均値(mean value)、統計値、カットオフ値または識別値、あるいは特定のコントロールもしくはベースライン値と比較した値であってもよい。参照レベルは、個体のサンプル値に基づいてもよく、前記個体のサンプル値は、例えば、試験される個体以外の対象、または健康な状態にあると同定された個体もしくはMCIと診断されていない個体である「正常な」個体からのサンプルから得られる値である。
【0031】
本開示の少なくとも1つの実施形態において、アミロイドβペプチドまたはその断片で刺激されるT細胞は、対象の末梢血単核球(PBMC)に存在してもよい。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法は、対象の生体サンプル(流体生体サンプルまたは組織サンプルなど)を提供すること、および生体サンプルからPBMCを単離することをさらに含んでもよい。
【0032】
本開示の少なくとも1つの実施形態において、本明細書に記載の方法は、MCIの診断のための追加アッセイを実施することをさらに含み、それによって診断精度を高めることができる。MCIを診断するための追加アッセイは、当技術分野において周知であり得る。例えば、MCIの診断に使用される臨床基準は、以下のものを含む:(1)情報提供者によって裏付けられた記憶の苦情、(2)年齢や教育から予想される以上の客観的な記憶障害、(3)正常な一般的な認知機能、(4)日常生活の無傷活動、および(5)対象が認知症の基準を満たしていないこと。
【0033】
また、少なくとも1つの実施形態において、本開示は、MCIに罹患するかまたはそのリスクを有する対象を診断するためのキットに関する。本明細書で使用される場合、「キット」という用語には、対象からの生体サンプルを検出、同定および/または分析するための少なくとも1つの試薬、およびキットの使用方法に関する使用者に説明を提供する凡例が含まれるが、これらに限定されない。本明細書で提供されるキットは、バイアル、ボトル、ジャー、柔軟な包装などを含む適切な包装であってもよいが、これらに限定されない。また、この分野で制限なく適用可能であるとよく知られている医療機器と組み合わせて使用するためのパッケージも考慮されている。
【0034】
本開示の少なくとも1つの実施形態において、前記キットは、アミロイドβペプチドまたはその断片と、少なくとも1つのT細胞応答バイオマーカー(例えば、分化抗原群107a(Cluster of Differentiation 107a、すなわち、CD107a)、インターフェロン-γ(IFNγ)、インターロイキン2(IL-2)および腫瘍壊死因子-α(TNFα))に特異的な少なくとも1つの試薬とを含む。いくつかの実施形態において、前記試薬は、抗原抗体相互作用に基づいてその対応するバイオマーカーに特異的に結合する抗体、例えば、抗CD107a抗体、抗IL-2抗体、抗TNFα抗体、抗IFNγ抗体であってもよい。
【0035】
少なくとも1つの実施形態において、本開示のキットは、本明細書に記載の方法のいずれかに従って使用するための説明書を含み得る。付属の説明書には、T細胞をアミロイドβペプチドまたはその断片とインキュベートする説明を含み得る。前記キットは、T細胞応答バイオマーカーのレベルを測定することによってアミロイド特異的T細胞応答の大きさを評価することについての説明をさらに含んでもよい。いくつかの実施形態において、キットに含まれる試薬は、T細胞応答バイオマーカーのレベルを測定するために検出可能である。検出可能な試薬で標識されたバイオマーカーは、フローサイトメトリー、磁気活性化細胞選別(MACS)および酵素結合免疫スポット(ELISPOT)アッセイを含むが、これらに限定されないアッセイを使用して定量することができる。
【0036】
本明細書で使用される場合、標的に「特異的に結合する」という語句は、他の生物製剤の異種集団の存在下での分子の存在を決定する結合反応を指す。したがって、指定されたイムノアッセイ条件下では、特定の分子は特定の標的に優先的に結合し、サンプル中に存在する他の生物製剤には大量的に結合しない。
【0037】
本開示を説明するために多くの例が使用されてきた。以下の例は、本開示の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例】
【0038】
実施例1:サンプル処理とPBMC分離
【0039】
この研究では、採血のために亞東記念病院(Far Eastern Memorial Hospital、すなわち、FEMH)からヒト対象を募集した。この研究は、FEMHの施設内倫理委員会(症例番号:FEMH 105147-F)によって承認され、全ての参加者からインフォームドコンセントの書面が取得された。研究参加者に関する詳細情報を以下の表1に示す。
【0040】
【表1】
SD:標準偏差。BMI:ボディマス指数。GDS:高齢者うつ尺度。MMSE:ミニメンタルステート検査。APOE4:アポリポタンパク質E4。
【0041】
採血当日、製造業者(GE Healthcare)のプロトコールに従って、Ficoll-Paque PLUS勾配遠心分離によって末梢血単核球(PBMC)を分離し、その後の実験に使用した。
【0042】
実施例2:T細胞の刺激、およびアミロイドに対するT細胞応答の定量化
【0043】
重複ペプチドのタンパク質スパンニング混合物の使用は、Tリンパ球の免疫刺激および診断用途に効果的であった。この開示では、全長アミロイドβタンパク質(Aβ1-42)に由来する重複する15量体ペプチドが作成され、T細胞刺激に使用された。PBMC刺激の陽性対照としては、サイトメガロウイルス(CMV)pp65タンパク質ペプチドプール(JPT Peptide Technologies、ドイツ)および化学ホルボールミリスチン酸酢酸塩(PMA)/イオノマイシンを使用した。
【0044】
JPT Peptide Technologiesの全長アミロイドβタンパク質(Aβ1-42)のアミノ酸配列は、DAEFRHDSGYEVHHQKLVFFGEDVGSNKGAIIGLMVGGVVIA(配列番号1)であった。全長アミロイドβタンパク質(Aβ1-42)の連続する3アミノ酸シフトを持つ15量体のアミノ酸長に基づいて作成された10個の配列で構成されるペプチドプールには、DAEFRHDSGYEVHHQ(Aβ1-15、配列番号2)、FRHDSGYEVHHQKLV(Aβ4-18、配列番号3)、DSGYEVHHQKLVFFG(Aβ7-21、配列番号4)、YEVHHQKLVFFGEDV(Aβ10-24、配列番号5)、HHQKLVFFGEDVGSN(Aβ13-27、配列番号6)、KLVFFGEDVGSNKGA(Aβ16-30、配列番号7)、FFGEDVGSNKGAIIG(Aβ19-33、配列番号8)、EDVGSNKGAIIGLMV(Aβ22-36、配列番号9)、GSNKGAIIGLMVGGV(Aβ25-39、配列番号10)およびKGAIIGLMVGGVVIA(Aβ28-42、配列番号11)を含んだ。
【0045】
全長アミロイドβタンパク質、アミロイドペプチドプールおよび対照CMVペプチドプールを、抗CD28/CD49d、抗CD107a、GolgiStop(モネンシン含有、BD Biosciences)およびGolgiPlug(ブレフェルジンA含有、BD Biosciences)の同時刺激とともにPBMC細胞刺激(ペプチドあたり1mg/mL)に37℃で6時間使用した。続いて、Cytofix/Cytoperm緩衝液(BD Biosciences)で固定した前に、細胞を抗CD3、抗CD8、抗CD4および生存/死亡の細胞生存率アッセイキット(Invitrogen)で20分間染色した。細胞を固定し、洗浄し、抗CD40L、抗IL-2、抗TNFαおよび抗IFNγで染色した。結果は、亞東記念病院コアラボのマルチカラーフローサイトメーター(Beckman Coulter Cytoflex)を使用して取得した。フローサイトメトリーの結果は、FlowJo(Tree Star)を使用して分析した。
【0046】
生存するCD3+細胞をゲーティングした後、CD4+およびCD8+細胞を、各刺激に対する応答におけるサイトカイン発現について別々に分析した。各エフェクター関数のゲートに基づく組み合わせゲート戦略を、FlowJo Booleanゲートプラットフォームを使用して共発現パターンについてさらに分析することで、組み合わせ関数発現パターンの統計を導き出した。各刺激に対するT細胞のそれぞれの単一機能と全体的な機能応答が導出され、比較された。アミロイドタンパク質に応答したT細胞サイトカイン産生の代表的な画像を
図1Aおよび
図1Bに示す。アミロイドペプチドプールに応答したT細胞サイトカイン産生の代表的な画像を
図1Aに示す。アミロイド全長ペプチドに応答したT細胞サイトカイン産生の代表的な画像を
図1Bに示す。
【0047】
MCIと正常を区別するための感度と特異性について、アミロイドβペプチドプールおよびアミロイドβ全長ペプチドに対するPBMC CD4+T細胞反応の大きさをテストした。正しく分類された参加者、感度、特異度は、MCIと正常の場合のLiuの方法から最も高い指数を生成するカットオフを使用して計算された。総応答は、少なくとも1つの測定されたバイオマーカー(すなわち、CD40L、CD107a、IFNγ、IL-2、またはTNFα)によるアミロイドβペプチドプールおよびアミロイドβ全長ペプチド刺激に対して応答した総CD4+T細胞のうちのT細胞の割合として列挙された。
【0048】
受信者動作特性曲線(ROC)を使用して、バイオマーカーの識別性能を調べた。曲線下面積(AUC)のための信頼区間(CI)は、ノンパラメトリック法を使用して2,000個のブートストラップサンプルに基づいて計算された。アミロイドプールおよびアミロイド全長ペプチド応答のカットオフは、各ROC分析においてMCIと年齢に一致する正常者を区別するために、感度と特異性の最高積で確立された(Liuの方法)。ROC分析の結果を以下の表2および表3、ならびに
図2A~
図2F、
図3A~
図3Fに示す。
【0049】
【0050】
【0051】
上記から、アミロイドβ全長ペプチドおよびアミロイドβペプチドプールに対するCD4+T細胞応答を、高齢者MCIと正常高齢者を区別するために使用できることがわかる。本明細書で提供される方法は、PBMCの刺激および多色フローサイトメトリーによる刺激されたT細胞におけるサイトカインエフェクター応答の測定に基づくため、増殖アッセイと比較した場合に標準化がより容易である。アミロイドペプチドに対する血液T細胞の反応はまれな現象であるため(CD4+細胞中のT細胞の割合は0.1%未満)、本明細書で提供されるマルチマーカー法は測定値の絶対値を0.1%以上に増加させ、MCIと正常を区別する持続的な能力を示す。したがって、本開示の方法は、MCIを進展するリスクのある高齢者を分類するために利用することができ、アミロイド関連神経変性疾患の発症の予測力を調査するために使用することができる。
【0052】
以上、本開示の実施形態のうちのいくつかを詳細に説明したが、当業者であれば、本開示の教示および利点から実質的に逸脱することなく、示された実施形態に対して様々な修正および変更を行うことが可能である。そのような修正および変更は、添付の特許請求の範囲に記載される本開示の範囲内に包含される。
【0053】
本明細書で引用および議論するすべての参考文献および刊行物は、その全体が参照により本明細書に組み込まれ、各参考文献または刊行物が個別に参照により組み込まれるのと同じ程度に組み込まれる。
【0054】
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【配列表】
【国際調査報告】