(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-18
(54)【発明の名称】VMAT2阻害剤の持続放出性送達のためのポリマーデポ組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20240910BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240910BHJP
A61P 25/14 20060101ALI20240910BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240910BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20240910BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20240910BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20240910BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20240910BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20240910BHJP
A61K 31/4375 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P43/00 111
A61P25/14
A61P25/00
A61K47/34
A61K47/22
A61K47/20
A61K47/10
A61K47/14
A61K31/4375
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024503489
(86)(22)【出願日】2022-08-16
(85)【翻訳文提出日】2024-01-18
(86)【国際出願番号】 US2022040425
(87)【国際公開番号】W WO2023023026
(87)【国際公開日】2023-02-23
(32)【優先日】2021-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】517132647
【氏名又は名称】フォースィー ファーマシューティカルズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110766
【氏名又は名称】佐川 慎悟
(74)【代理人】
【識別番号】100165515
【氏名又は名称】太田 清子
(74)【代理人】
【識別番号】100169340
【氏名又は名称】川野 陽輔
(74)【代理人】
【識別番号】100195682
【氏名又は名称】江部 陽子
(74)【代理人】
【識別番号】100206623
【氏名又は名称】大窪 智行
(72)【発明者】
【氏名】リィ ユィホア
(72)【発明者】
【氏名】ジャン シーファン
(72)【発明者】
【氏名】ホアン ウェンイエン
(72)【発明者】
【氏名】ホアン チワティン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076BB11
4C076CC01
4C076DD37
4C076DD45
4C076DD55
4C076DD60
4C076EE24
4C076FF31
4C084AA17
4C084MA66
4C084NA12
4C084ZA02
4C084ZC42
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB09
4C086GA16
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA66
4C086NA13
4C086ZA02
(57)【要約】
本出願は、遅発性ジスキネジア(TD)、ハンチントン病(HD)舞踏運動、振戦、ジストニア、舞踏運動、チック、ミオクローヌス、常同症、レストレスレッグス症候群、及び異常な不随意運動を伴う様々な他の障害を含むがこれらに限定されない、多動性運動障害の治療のための、小胞性モノアミン輸送体2型(VMAT2)阻害剤、その重水素化誘導体、その薬学的に許容される塩、その活性代謝産物、又はそのプロドラッグの持続放出性送達組成物に関する。組成物を作製又は使用する方法も開示される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
注射可能なポリマーデポ組成物であって、a)VMAT2阻害剤、その重水素化誘導体、その薬学的に許容される塩、その活性代謝産物、又はそのプロドラッグと、b)ホモポリマーポリラクチド又はポリ乳酸(PLA)、コポリマーポリ(乳酸-co-グリコール酸)又はポリ(ラクチド-co-グリコリド)(PLGA)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される生分解性ポリマーであって、前記PLGAが、50:50~99:1(両端を含む)のラクチド:グリコリド(又は乳酸:グリコール酸)のモノマー比を有する、生分解性ポリマーと、c)N-メチル-2-ピロリドン、2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される薬学的に許容される有機溶媒と、を含む、注射可能なポリマーデポ組成物。
【請求項2】
前記VMAT2阻害剤が、(+)-TBZである、請求項1に記載の注射可能なポリマーデポ組成物。
【請求項3】
前記VMAT2阻害剤が、(+)-(α)-DHTBZである、請求項1に記載の注射可能なポリマーデポ組成物。
【請求項4】
前記薬学的に許容される有機溶媒が、N-メチル-2-ピロリドンである、請求項1に記載の注射可能なポリマーデポ組成物。
【請求項5】
前記VMAT2阻害剤の量が、前記ポリマーデポ組成物中で5~70重量%の範囲である、請求項1に記載の注射可能なポリマーデポ組成物。
【請求項6】
10重量%~90重量%の前記生分解性ポリマーを含む、請求項1に記載の注射可能なポリマーデポ組成物。
【請求項7】
前記生分解性ポリマーが、約100:0、95:5、90:10、85:15、80:20、75:25、70:30、65:35、60:40、55:45、又は50:50の乳酸対グリコール酸のモノマー比を有する、請求項1に記載の注射可能なポリマーデポ組成物。
【請求項8】
前記生分解性ポリマーが、エステル末端官能基、カルボン酸末端官能基、ヒドロキシル基、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される基を含む、請求項1に記載の注射可能なポリマーデポ組成物。
【請求項9】
前記生分解性ポリマーが、5,000~120,000の平均重量分子量(Mw)を有する、請求項1に記載の注射可能なポリマーデポ組成物。
【請求項10】
前記生分解性ポリマー及び前記薬学的に許容される有機溶媒の総量に基づいて、10重量%~90重量%の前記薬学的に許容される有機溶媒を含む、請求項1に記載の注射可能なポリマーデポ組成物。
【請求項11】
安定化剤、抗酸化剤、緩衝剤、放出改質剤、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される添加剤を更に含む、請求項1に記載の注射可能なポリマーデポ組成物。
【請求項12】
前記VMAT2阻害剤が、約2μm~約300μmの範囲のD(50)を特徴とする粒径分布を有する、請求項1に記載の注射可能なポリマーデポ組成物。
【請求項13】
前記VAMT2阻害剤が、前記組成物中に均一に分散され、かつ皮下又は筋肉内注射のためにシリンジに充填される、請求項1に記載の注射可能なポリマーデポ組成物。
【請求項14】
請求項1に記載の注射可能なポリマーデポ組成物を作製する方法であって、前記VAMT2阻害剤、その前記重水素化誘導体、前記塩、前記活性代謝産物、又は前記プロドラッグをシリンジAに予め充填することと、前記生分解性ポリマー及び前記薬学的に許容される有機溶媒を均質に混合して均質な混合物を形成し、前記均質な混合物をシリンジBに予め充填することと、前記シリンジA及びB内の成分を完全に混合して前記ポリマーデポ組成物を形成することと、を含む、方法。
【請求項15】
多動性運動障害を治療する方法であって、その治療を必要とする患者に、注射を介して、請求項1に記載の組成物を投与することと、前記患者に投与する際に、インサイチュ持続放出性インプラント/デポを形成することと、前記VMAT2阻害剤、その前記重水素化誘導体、その前記薬学的に許容される塩、その前記活性代謝産物、又はその前記プロドラッグを、少なくとも1週間、前記患者に徐々に放出することと、を含む、方法。
【請求項16】
前記投与後、前記VMAT2阻害剤、その前記重水素化誘導体、その前記薬学的に許容される塩、その前記活性代謝産物、又はその前記プロドラッグの持続放出を、1~10の血漿レベルピーク/トラフ(P/T)比で提供することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記インサイチュ持続放出性インプラント/デポからの、前記VMAT2阻害剤、その前記重水素化誘導体、その前記薬学的に許容される塩、その前記活性代謝産物、又はその前記プロドラッグの放出が、前記投与の24時間後に装填された全VMAT2阻害剤の30%以下である、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記多動性運動障害が、遅発性ジスキネジア(TD)、ハンチントン病(HD)に関連する舞踏運動、振戦、ジストニア、チック、ミオクローヌス、常同症、レストレスレッグス症候群、及び異常な不随意運動を伴う様々な他の障害からなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年8月16日に出願された米国仮特許出願第63233659号の利益を主張し、その開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本出願は、可逆的ヒト小胞性モノアミン輸送体2型(VMAT2)阻害剤の持続放出性送達系として安定かつ有効である生分解性ポリマーデポ組成物を提供する。本出願の組成物は、a)VMAT2阻害剤であって、(3R,11bR)-テトラベナジン[(+)-TBZ,(3R,11bR)-1,3,4,6,7,11b-ヘキサヒドロ-9,10-ジメトキシ-3-(2-メチルプロピル)-2H-ベンゾ[a]キノリジン-2-オン],(2R,3R,11bR)-ジヒドロテトラベナジン[(+)-(α)-DHTBZ,(2R,3R,11bR)-3-イソブチル-9,10-ジメトキシ-1,3,4,6,7,11b-ヘキサヒドロ-2H-ピリド[2,1-a]イソキノリン-2-オール)],(2S,3R,11bR)-ジヒドロテトラベナジン[(+)-(β)-DHTBZ,(2S,3R,11bR)-3-イソブチル-9,10-ジメトキシ-1,3,4,6,7,11b-ヘキサヒドロ-2H-ピリド[2,1-a]イソキノリン-2-オール)]を含むがこれらに限定されない、VMAT2阻害剤、その重水素化誘導体、その薬学的に許容される塩、その活性代謝産物、又はそのプロドラッグ、b)1つ以上の生分解性、生体適合性、ポリマー担体、c)1つ以上の薬学的に許容され、生体適合性の溶媒、及びd)薬物送達の最適化を達成することを可能にする1つ以上の任意の薬学的に許容される賦形剤を含む。本出願はまた、そのような組成物の製造方法、並びにそのような組成物を遅発性ジスキネジアなどの多動性疾患及び障害の治療を必要とするヒト又は温血動物に投与することによる、その治療における使用を提供する。
【背景技術】
【0003】
遅発性ジスキネジア(TD)は、前述の不随意運動を誘発する他の障害、例えば、パーキンソン病又はチック障害に関連しない、不随意の反復的な身体運動をもたらす多動性運動障害である。代わりに、TDは、抗精神病薬(神経弛緩薬又はドーパミン受容体拮抗薬としても知られている)などのドーパミン遮断薬の長期使用によって最も一般的に引き起こされる神経障害である。第1の世代の神経弛緩薬(典型的な神経弛緩薬、例えば、ハロペリドール及びクロルプロマジン)は、TDを引き起こす可能性が非常に高い;一方、新しい神経弛緩薬(非定型の神経弛緩薬、例えば、アリピプラゾール及びパリペリドン)は、一方で、同じことを行うことができるが、より少ない程度である。
【0004】
従来技術では、神経弛緩薬への継続的な曝露は、ドーパミン受容体のアップレギュレーション/超感受性を引き起こし、それによって多動性運動障害を誘発する可能性があることが示唆されている。小胞性モノアミン輸送体2型(VMAT2)は、ドーパミンなどのモノアミンをシナプス前からシナプス小胞に輸送する膜タンパク質である。多くの多動性運動障害、すなわち、TD、トゥレット症候群、及びハンチントン病は、VMAT2阻害剤によってシナプス前ドーパミンを枯渇させることによって減少させることができる。シス-rac-1,3,4,6,7,11b-ヘキサヒドロ-9,10-ジメトキシ-3-(2-メチルプロピル)-2H-ベンゾ[a]キノリジン-2-オンとして知られるテトラベナジン(TBZ、商品名XENAZINE(登録商標))は、ヒトVMAT2 Ki~100nM、XENAZINE(登録商標)医薬品承認パッケージ、NDA021894の強力で可逆的な阻害剤である。しかし、TBZはラセミ体混合物として経口投与される一方で、(主に肝臓でカルボニルレダクターゼによって)速やかに4つの立体異性体代謝産物に代謝される:R、R、R-DHTBZ((+)-α)、S、R、R-DHTBZ((+)-β)、S、S、S-DHTBZ((-)-α)、及びR、S、S-DHTBZ((-)-β)(DHTBZ、ジヒドロテトラベナジン、9,10-ジメトキシ-3-(2-メチルプロピル)-2,3,4,6,7,11b-ヘキサヒドロ-1H-ベンゾ[a]キノリジン-2-オール)(Skor H.et el.,Drugs R D.2017 Sep;17(3):449-459)。しかし、各代謝産物はラットVMAT2に対して様々な親和性を示す:Kiは、R、R、R-DHTBZ((+)-α)、S、R、R-DHTBZ((+)-β)、S、S、S-DHTBZ((-)-α)、及びR、S、S-DHTBZ((-)-β)にそれぞれ対応する4.2、9.7、250、及び690nMである(Grigoriadis et al.,Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics June 2017,361(3)454-461)。加えて、S,S,S-DHTBZ((-)-α)及びR,S,S-DHTBZ((-)-β)は、ドーパミンD2及びセロトニン5-HT7受容体に対して高いオフターゲット結合親和性(それぞれ、((-)-α)及び((-)-β)に対して180/71nM及び53/5.9nM)を有し、TBZ投与の重篤な副作用(すなわち、不眠症、振戦、剛性筋肉、バランスの問題など)をもたらす。)(Harriott et al.,Progress in Medicinal Chemistry Volume 57,2018,Pages 87-111)。更に、TBZのCYP2D6媒介代謝が可変であるため、TBZの維持用量は、個体によって異なるため、TBZを服用している対象についても、CYP2D6誘導剤又は阻害剤を避けるべきである。更に重要であり、潜在的に不便なのは、患者間の代謝変動により、従来利用可能なTBZ薬の用量滴定が避けられないことである。更に、鎮静、うつ病、アカシシア及びパーキンソニズムなどのTBZに関連する副作用、並びに治療的変動性は、その応用可能性を阻害している。
【0005】
2017年、TDの治療薬として2つの新薬が承認された。バルベナジン(VBZ)(INGREZZA(登録商標)、Neurocrine Biosciences,Inc.、1日1回40mg又は80mgのカプセル)及びデュテトラベナジン(AUSTEDO(登録商標)、Teva、6mg、9mg、又は12mgの錠剤、1日2回)である。TBZとは異なり、デュテトラベナジン及びVBZは、より良好な忍容性のためにより少ない投与頻度を可能にする薬物動態学的利点を有する。VBZ、L-バリン、(2R、3R、11bR)-1、3、4、6、7、11b-ヘキサヒドロ-9,10-ジメトキシ-3-(2-メチルプロピル)-2H-ベンゾ[α]キノリジン-2-イルエステルは、アミノ酸L-バリンを有する(+)-(α)-DHTBZのエステルである。(-)-(α)-DHTBZ及び(-)-(β)-DHTBZなどの立体異性体代謝産物を誘導する他の副作用の存在なしに(+)-(α)-DHTBZを単独で導入することにより、VBZはTBZよりもはるかに忍容性があり、安全であると考えられる。一方、AUSTEDO(登録商標)の場合、TBZの重水素化誘導体は、投与頻度の低減に有益なデュテトラベナジンの半減期を増加させる。
【0006】
INGREZZA(登録商標)及びAUSTEDO(登録商標)の成功は、経口剤形におけるTD処置を改善するが、両方の製品は依然として1日1回の投薬を必要とし、これは、患者のアドヒアランスの観点からは理想的ではない。コンプライアンスの低下は、依然として慢性疾患の治療における最も重要な課題である。例えば、統合失調症は、しばしば、認知機能障害、動機づけの欠如、うつ病、及び士気低下と関連している。抗精神病薬の導入は1950年代にさかのぼることができるが、経口剤形への不十分なアドヒアランスは常に重要な問題であった。再発は統合失調症患者の継続的なリスクであり、そのような疾患に関連する主要な公衆衛生上の問題の1つである。長時間作用型注射剤(LAI)の使用は、頻繁な投与の負担を軽減し、不十分/部分的なアドヒアランスを回避するのに役立つ。細菌感染症、疼痛管理、前立腺癌、糖尿病、及びATRIGEL(登録商標)、SABER(登録商標)、及びFluidCrystal(登録商標)などの様々な製剤技術を採用した特定の統合失調症の治療のために市場にはすでに多くのLAI医薬品が投入されているが、多動性運動障害に対する成功を収めるLAI医薬品はまだ開発されていない。抗精神病薬を服用している患者は、LAI抗精神病薬の恩恵を受けているが、不随意運動を発症すると、毎日錠剤(INGREZZA(登録商標)又はAUSTEDO(登録商標))を服用する必要がある。これは確かに患者のアドヒアランスの観点からは依然として面倒である。したがって、投与頻度が大幅に減少し、患者のコンプライアンスが改善された、不随意運動障害の治療のための安定した、より安全なLAI薬の医学的ニーズは確実に満たされていない。
【発明の概要】
【0007】
本出願は、a)VMAT2阻害剤であって、テトラベナジン(TBZ)、(3R,11bR)-テトラベナジン[(+)-TBZ,(3R,11bR)-1,3,4,6,7,11b-ヘキサヒドロ-9,10-ジメトキシ-3-(2-メチルプロピル)-2H-ベンゾ[a]キノリジン-2-オン],(2R,3R,11bR)-ジヒドロテトラベナジン[(+)-(α)-DHTBZ,(2R,3R,11bR)-3-イソブチル-9,10-ジメトキシ-1,3,4,6,7,11b-ヘキサヒドロ-2H-ピリド[2,1-a]イソキノリン-2-オール)],(2S,3R,11bR)-ジヒドロテトラベナジン[(+)-(β)-DHTBZ,(2S,3R,11bR)-3-イソブチル-9,10-ジメトキシ-1,3,4,6,7,11b-ヘキサヒドロ-2H-ピリド[2,1-a]イソキノリン-2-オール)]を含むがこれらに限定されない、VMAT2阻害剤、その重水素化誘導体、その薬学的に許容される塩、その活性代謝産物、又はそのプロドラッグ、b)1つ以上の生分解性、生体適合性、ポリマー担体、c)1つ以上の薬学的に許容され、生体適合性の溶媒、及びd)意図された使用のために最適な薬物送達を達成することを可能にする1つ以上の任意の薬学的に許容される賦形剤を含む、ポリマーデポート組成物を提供する。
【0008】
本出願は、(+)-TBZ、(+)-(α)-DHTBZ、(+)-(β)-DHTBZ、その重水素化誘導体、その薬学的に許容される塩、その活性代謝産物、又はそのプロドラッグの長時間作用型注射剤送達系であって、高いVMAT2受容体結合親和性(10nM未満)を有するが、ドーパミン、セロトニン、及びアドレナリン受容体(1000nM超)などの低いオフターゲット結合を有するものに関する。
【0009】
適切には、本出願は、(+)-TBZ、(+)-(α)-DHTBZ、(+)-(β)-DHTBZ、その重水素化誘導体、その薬学的に許容されるその塩、その活性代謝産物、又はそのプロドラッグの長期の制御された放出を可能にする、インサイチュ形成デポとして有効である安定した生分解性組成物を提供する。本ポリマーデポ組成物は、粘性流体、溶液、ゲル、エマルジョン、懸濁液、又は皮下若しくは筋肉内注射のために容易に予め充填されたシリンジに保存される半固体分散液であり得る。ポリマーデポ組成物は、安定化され、2つの分離されたシリンジに保存され得、すなわち、一方のシリンジが活性薬学的成分を含有し、他方のシリンジが送達ビヒクルを含有することもできる。2つのシリンジを適切に混合した後、最終混合物は、皮下又は筋肉内注射のための粘性流体、溶液、ゲル、エマルジョン、懸濁液、又は半固体分散液であり得る。
【0010】
具体的には、本出願は、注射部位で生体対象への投与時に、持続放出性インプラント/デポを形成することができる。好ましくは、本発明の組成物は、治療レベルを超える(+)-TBZ、(+)-(α)-DHTBZ、(+)-(β)-DHTBZ及び活性代謝産物の長期血漿濃度を、好ましくは1~2週間、より好ましくは2~4週間、及び最も好ましくは1~3ヶ月間、血漿濃度の最小変動及び狭いピーク/トラフ(P/T)比で維持するのに適しており、潜在的なオフターゲット効果(TBZ及びDHTBZの(-)立体異性体に起因する)を制限することができ、最終的に、市場で現在入手可能な医薬品の満たされていない医学的ニーズを解決するための改善された安全性プロファイルを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】(+)-TBZポリマーデポ組成物(a)及び(+)-(α)-DHTBZポリマーデポ組成物(b)の持続放出を示す。表2に記載されているように、小(S)及び大(L)の粒子D(50)値は、それぞれ10~35μm及び100~130μmであった。
【
図2】(+)-TBZポリマーデポ組成物(a)及び(+)-(α)-DHTBZポリマーデポ組成物(b)の持続放出に対するポリマー/NMP比の効果を示す。小(S)及び大(L)の粒子D(50)値は、それぞれ10~35μm及び100~130μmであった。
【
図3】(+)-(α)-DHTBZポリマーデポ組成物の持続放出に対する疎水性溶媒添加剤の効果を示す。大(L)の粒子D(50)値は100-130μmであった。
【
図4-1】(+)-TBZポリマーデポ組成物(a及びb)並びに(+)-(α)-DHTBZポリマーデポ組成物(c)の持続放出に対する薬物負荷%の効果を示す。小(S)、中(M)、及び大(L)の粒子D(50)値は、それぞれ10~35μm、50~80μm、及び100~130μmであった。
【
図4-2】(+)-TBZポリマーデポ組成物(a及びb)並びに(+)-(α)-DHTBZポリマーデポ組成物(c)の持続放出に対する薬物負荷%の効果を示す。小(S)、中(M)、及び大(L)の粒子D(50)値は、それぞれ10~35μm、50~80μm、及び100~130μmであった。
【
図5-1】API粒径がa.及びb.(+)-TBZポリマーデポ組成物(a及びb)並びに(+)-(α)-DHTBZポリマーデポ組成物(c)の持続放出に及ぼす効果を示す。小(S)、中(M)、及び大(L)の粒子D(50)値は、それぞれ10~35μm、50~80μm、及び100~130μmであった。
【
図5-2】API粒径がa.及びb.(+)-TBZポリマーデポ組成物(a及びb)並びに(+)-(α)-DHTBZポリマーデポ組成物(c)の持続放出に及ぼす効果を示す。小(S)、中(M)、及び大(L)の粒子D(50)値は、それぞれ10~35μm、50~80μm、及び100~130μmであった。
【
図6】(+)-(α)-DHTBZポリマーデポ組成物の持続放出に対するガンマ線照射(a)及び0.22μm濾過(b)の効果を示す。小(S)及び大(L)の粒子D(50)値は、それぞれ10~35μm及び100~130μmであった。
【
図7】動物PK試験及びPKシミュレーション:ラットへのSC投与後の注射可能な(+)-TBZポリマーデポ組成物からの(+)-TBZ及び(+)-(α)-DHTBZの放出、並びにラットへの強制経口投与後のTBZ又はVBZ水性懸濁液からの(+)-(α)-DHTBZの放出を示す。小(S)及び大(L)の粒子D(50)値は、それぞれ10~35μm及び100~130μmであった。
【
図8】動物PK試験:ラットへのSC投与後の注射可能な(+)-TBZポリマーデポ組成物からの(+)-TBZ及び(+)-(α)-DHTBZの放出、並びにラットへの強制経口投与後のTBZ又はVBZ水性懸濁液からの(+)-(α)-DHTBZの放出を示す。培体(M)の粒子D(50)値は、50~80μmであった。
【
図9】動物PK試験:ラットへのSC投与後の注射可能な(+)-TBZ-PLGA88-12ポリマーデポ組成物からの(+)-TBZ及び(+)-(α)-DHTBZの放出、並びにラットへ強制経口投与後のTBZ又はVBZ水性懸濁液からの(+)-TBZ及び(+)-(α)-DHTBZの放出。大(L)の粒子D(50)値は100-130μmであった。
【
図10】動物PK試験及びPKシミュレーション:ラットへのSC投与後の注射可能な(+)-(α)-DHTBZポリマーデポ組成物からの(+)-(α)-DHTBZの放出、並びにラットへの強制経口投与後のTBZ又はVBZ水性懸濁液からの(+)-TBZ及び(+)-(α)-DHTBZの放出を示す。小(S)及び大(L)の粒子D(50)値は、それぞれ10~35μm及び100~130μmであった。
【
図11】動物PK試験及びPKシミュレーション:ラットへのSC投与後の注射可能な(+)-(α)DHTBZポリマーデポ組成物からの(+)-(α)-DHTBZの放出、及びラットへの強制経口投与後のTBZ又はVBZ水性懸濁液からの(+)-TBZ及び(+)-(α)-DHTBZの放出を示す。小(S)及び大(L)の粒子D(50)値は、それぞれ10~35μm及び100~130μmであった。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書及び添付の請求項で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」及び同様の指示は、別様に本明細書に示唆されるか、又は文脈に明確に矛盾しない限り、単数形及び複数形の両方を網羅するように解釈されるべきであることに留意されたい。
【0013】
本明細書で使用される場合、本出願の文脈において、本明細書で開示される全ての数字は、「約」又は「およそ」という言葉が使用されるかどうかにかかわらず、近似値である。各数値は、別途示されない限り、数値の±10%の範囲を意味する。例えば、「約100mL」又は「100mL」は、90~110mLの間の任意の値を含む。
【0014】
本明細書で使用される場合、数値又は一連の数値の前にある「約」又は「およそ」という用語は、別途示されない限り、数値の±10%を意味する。例えば、「およそ100mg」は、90~110mgを意味する。
【0015】
別途示されない限り、一連の要素の前にある「少なくとも」という用語は、一連の全ての要素を指すと理解されるべきである。当業者は、本明細書に記載される本出願の特定の実施形態の多くの等価物を、ルーチン実験を使用するだけで認識するか、又は確認することができるであろう。そのような等価物は、本出願によって包含されることが意図される。
【0016】
本明細書及びそれに続く特許請求の範囲全体を通して、文脈が別途必要とする場合を除き、用語「comprise」、並びに「comprises」及び「comprising」などの変形は、記載された整数又はステップ、又は整数若しくはステップのグループを含むことを意味するが、任意の他の整数又はステップ、又は整数若しくはステップのグループを除外することを意味しないと理解される。本明細書で使用される場合、「含む(comprising)」という用語は、「含有する(containing)」又は「含む(including)」という用語で置換することができ、又は本明細書で使用する場合、「有する(having)」という用語で置換する場合もある。
【0017】
本明細書で使用される場合、「からなる」は、特許請求の範囲の要素に指定されていない任意の要素、ステップ、又は成分を除外する。本明細書で使用される場合、「から本質的になる」は、特許請求の範囲の基本的及び新規の特徴に重大な影響を及ぼさない材料又はステップを排除しない。「含む(comprising)」、「含有する(containing)」、「含む(including)」、及び「有する(having)」という前述の用語のいずれかは、本出願の態様又は実施形態の文脈で本明細書で使用されるときはいつでも、本開示の範囲を変化させるために「からなる(consisting of)」又は「本質的にからなる(consisting essentially of)」という用語で置換することができる。
【0018】
本明細書で使用される場合、複数の列挙される要素間の結合用語「及び/又は」は、個々の選択肢及び組み合わせられた選択肢の両方を包含するものとして理解される。例えば、2つの要素が「及び/又は」によって結合されている場合、第1のオプションは、第2の要素なしで第1の要素の適用可能性を指す。第2のオプションは、第1の要素なしの第2の要素の適用可能性を指す。第3のオプションは、第1及び第2の要素を一緒に適用することを指す。これらのオプションのいずれか1つは、意味の範囲内にあると理解され、したがって、本明細書で使用される場合、用語「及び/又は」の要件を満たす。オプションのうちの2つ以上の同時適用性はまた、その意味の範囲内であると理解され、したがって、「及び/又は」という用語の要件を満たす。
【0019】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、本発明の方法が実施される任意の個体又は患者を指す。一般に、対象はヒトであるが、当業者によって理解されるように、対象は動物であり得る。「対象」及び「患者」という用語は、互換的に使用される。いくつかの実施形態では、対象は哺乳類である。いくつかの実施形態では、対象はヒトである。いくつかの実施形態では、対象は、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、サル、又は実験動物などの動物である。
【0020】
本出願は、制御された持続的な方法で薬学的に活性な成分を送達するためのデポ又はインプラントのインサイチュ形成に好適な、ポリマー、生分解性、生体適合性の長時間作用型注射可能な薬物送達系に関する。本出願の好ましいポリマーデポ組成物は、a)VMAT2阻害剤であって、(3R,11bR)-テトラベナジン[(+)-TBZ,(3R,11bR)-1,3,4,6,7,11b-ヘキサヒドロ-9,10-ジメトキシ-3-(2-メチルプロピル)-2H-ベンゾ[a]キノリジン-2-オン],(2R,3R,11bR)-ジヒドロテトラベナジン[(+)-(α)-DHTBZ,(2R,3R,11bR)-3-イソブチル-9,10-ジメトキシ-1,3,4,6,7,11b-ヘキサヒドロ-2H-ピリド[2,1-a]イソキノリン-2-オール)],(2S,3R,11bR)-ジヒドロテトラベナジン[(+)-(β)-DHTBZ,(2S,3R,11bR)-3-イソブチル-9,10-ジメトキシ-1,3,4,6,7,11b-ヘキサヒドロ-2H-ピリド[2,1-a]イソキノリン-2-オール)]を含むがこれらに限定されない、VMAT2阻害剤、その重水素化誘導体、その薬学的に許容される塩、その活性代謝産物、又はそのプロドラッグ、b)1つ以上の生分解性、生体適合性、ポリマー、c)1つ以上の薬学的に許容され、生体適合性の溶媒、及びd)薬物送達の最適化を達成することを可能にする1つ以上の任意の薬学的に許容される賦形剤の組み合わせである。
【0021】
本明細書で使用される場合、TBZの用語は、テトラベナジン、(±)-TBZ、又は1,3,4,6,7,11b-ヘキサヒドロ-9,10-ジメトキシ-3-(2-メトキシプロピル)-2H-ベンゾ(a)キノリン-2-オンとして定義される。これは、小胞性モノアミン輸送体2型(VMAT-2)の可逆的な阻害剤である。
【0022】
本明細書で使用される場合、(+)-TBZの用語は、(+)-テトラベナジン、(3R,11bR)-TBZ、又は(3R,11bR)-テトラベナジンとして定義される。
【0023】
本明細書で使用される場合、(-)-TBZの用語は、(-)-テトラベナジン、(3R,11bS)-TBZ、又は(3R,11bS)-テトラベナジンとして定義される。
【0024】
本明細書で使用される場合、VBZの用語は、バルベナジン又はL-バリン、(2R,3R,11bR)-1,3,4,6,7,11b-ヘキサヒドロ-9,10-ジメトキシ-3-(2-メチルプロピル)-2H-ベンゾ[a]キノリジン-2-イルエステルとして定義される。
【0025】
本明細書で使用される場合、(±)-d6-TBZの用語は、デュテトラベナジン、又はラセミデュテトラベナジンとして定義される。デュテトラベナジンは、ヘキサヒドロジメトキシベンゾキノリジン誘導体であり、以下の化学名を有する:(RR、SS)-1、3、4、6、7、11b-ヘキサヒドロ-9、10-ジ(メトキシ-d3)-3-(2-メチルプロピル)-2H-ベンゾ[a]キノリジン-2-オン。デュテトラベナジンは、RR-デュテトラベナジン((+)-d6-TBZ)及びSS-デュテトラベナジン((-)-d6-TBZ)を含有するラセミ混合物である。
【0026】
本明細書で使用される場合、(+)-d6-TBZの用語は、RR-デュテトラベナジンとして定義され、(-)-d6-TBZの用語は、SS-デュテトラベナジンとして定義される。
【0027】
本明細書で使用される場合、(+)-(α)-DHTBZの用語は、テトラベナジンの代謝産物の1つである[+]-α-ジヒドロテトラベナジンとして定義される。
【0028】
本明細書で使用される場合、(+)-(β)-DHTBZの用語は、テトラベナジンの代謝産物の1つである[+]-β-ジヒドロテトラベナジンとして定義される。
【0029】
本明細書で使用される場合、(-)-(α)-DHTBZの用語は、テトラベナジンの代謝産物の1つである[-]-α-ジヒドロテトラベナジンとして定義される。
【0030】
本明細書で使用される場合、(-)-(β)-DHTBZの用語は、テトラベナジンの代謝産物の1つである[-]-β-ジヒドロテトラベナジンとして定義される。
【0031】
本明細書で使用される場合、(+)-d6-(α)-DHTBZの用語は、デュテトラベナジンの代謝産物の1つである(+)-d6-α-ジヒドロテトラベナジンとして定義される。
【0032】
本明細書で使用される場合、(-)-d6-(α)-DHTBZの用語は、デュテトラベナジンの代謝産物の1つである(-)-d6-α-ジヒドロテトラベナジンとして定義される。
【0033】
本明細書で使用される場合、(+)-d6-(β)-DHTBZの用語は、デュテトラベナジンの代謝産物の1つである(+)-d6-β-ジヒドロテトラベナジンとして定義される。
【0034】
本明細書で使用される場合、(-)-d6-(β)-DHTBZの用語は、デュテトラベナジンの代謝産物の1つである(-)-d6-β-ジヒドロテトラベナジンとして定義される。
【0035】
本ポリマーデポ組成物は、粘性流体、溶液、ゲル、エマルジョン、懸濁液、又は半固体分散液であり得、これは予め充填されたシリンジに保存され、皮下若しくは筋肉内注射の準備ができている。
【0036】
ポリマーデポ組成物は、安定化され、2つの分離されたシリンジに充填されることもできる。一方のシリンジ(A)では、(+)-TBZ、(+)-(α)-DHTBZ、(+)-(β)-DHTBZ、その重水素化誘導体、その薬学的に許容される塩、その活性代謝産物、又はそのプロドラッグの乾燥粉末が予め充填され、他方のシリンジ(B)は、1つ以上の生分解性、生体適合性ポリマー、生体適合性有機溶媒、及び薬学的賦形剤を含む送達ビヒクルで充填される。注射の前に、シリンジA及びBは、コネクタを介して接続され、その後、2つのシリンジプランジャーを十分な回数前後に押すことによって成分を完全に混合する。好ましくは、シリンジA及びBは、互いに直接接続され、切断されることが容易であり得る雄-雌ルアーロックシリンジである。より好ましくは、シリンジA及びBは、Eビーム、X線、及びガンマ線照射を含むが、これらに限定されない、末端滅菌に好適なポリマーシリンジである。注射用の最終混合物は、粘性液体、溶液、ゲル、エマルジョン、懸濁液、又は半固体分散液であり得、これは安定であり、好ましくは約30分以内、より好ましくは約1~2時間以内で注射の準備ができている。
【0037】
ポリマーデポ組成物は、当該シリンジ又はそのデバイスを介して、生体対象に皮下、筋肉内、腹腔内、又は皮内に投与し、注射部位でデポ又はインプラントをインサイチュに形成することができる。ポリマー貯蔵所組成物が水性媒体又は体液と接触するとすぐに、生体適合性有機溶媒がポリマー貯蔵所組成物から消失し、生分解性、生体適合性、ポリマー担体を残してデポを形成するか、又はTBZ、(+)-TBZ、(+)-(α)-DHTBZ、(+)-(β)-DHTBZ、その重水素化誘導体、その薬学的に許容される塩、その活性代謝産物、又はそのプロドラッグを含むが、これらに限定されない薬学的に活性な成分を封入する固体マトリックスを沈殿させて形成する。
【0038】
本明細書で使用される場合、「VMAT2」という用語は、小胞性モノアミン輸送2型の略語である。VMAT2阻害剤は、神経末端におけるドーパミンなどの神経活性ペプチドの枯渇を引き起こす薬剤であり、神経変性疾患(ハンチントン病など)に起因する舞踏運動、又は神経弛緩薬(遅発性ジスキネジア、TD)に起因するジスキネジアを治療するために使用される。2022年の時点で、米国ではジスキネジア症候群の管理のために3つのVMAT2阻害剤医薬品が入手可能になっており、各々が多少異なる範囲の承認された適応症を有する:テトラベナジン(XENAZINE(登録商標)及びジェネリック医薬品、2008)、デュテトラベナジン(AUSTEDO(登録商標)、2017)及びバルベナジン(INGREZZA(登録商標)、2017)。VMAT2阻害剤は、治療中の血清酵素上昇に関連付けられておらず、臨床的に明らかな肝損傷の事例に関連付けられていないが、一般的な臨床使用は限られている。
【0039】
本明細書で使用される場合、VMAT2阻害剤としては、テトラベナジン(TBZ)、ジヒドロテトラベナジン(DHTBZ),デュテトラベナジン(d6-TBZ)、及び重水素化ジヒドロテトラベナジン(d6-DHTBZ)、(3R,11bR)-テトラベナジン[(+)-TBZ,(3R,11bR)-1,3,4,6,7,11b-ヘキサヒドロ-9,10-ジメトキシ-3-(2-メチルプロピル)-2H-ベンゾ[a]キノリジン-2-オン]、(2R,3R,11bR)-ジヒドロテトラベナジン[(+)-(α)-DHTBZ、(2R,3R,11bR)-3-イソブチル-9,10-ジメトキシ-1,3,4,6,7,11b-ヘキサヒドロ-2H-ピリド[2,1-a]イソキノリン-2-オール)]、(2S,3R,11bR)-ジヒドロテトラベナジン[(+)-(β)-DHTBZ,(2S,3R,11bR)-3-イソブチル-9,10-ジメトキシ-1,3,4,6,7,11b-ヘキサヒドロ-2H-ピリド[2,1-a]イソキノリン-2-オール)]、その重水素化誘導体、その薬学的に許容される塩、その活性代謝産物、又はそのプロドラッグが挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
ヘキサヒドロジメトキシベンゾキノリジン誘導体であるテトラベナジンは、主に、VMAT2に選択的に結合することによって、シナプス前ニューロンの粒状小胞へのモノアミン取り込みの可逆的高親和性阻害剤として作用する[Kenney C,Jankovic J.Tetrabenazine in the treatment of hyperkinetic movement disorders.Exp Rev Neurother.2006;6(1):7-17]。テトラベナジン(TBZ)及びその活性代謝産物ジヒドロテトラベナジン(DHTBZ)の両方が、VMAT2の強力な阻害剤である。
【0041】
テトラベナジンは、2-ケト基のファーストパス代謝低減によって迅速かつ広範囲に代謝され、(2R,3R,11bR)-DHTBZ、(2S,3S,11bS)-DHTBZ、(2S,3R,11bR)-DHTBZ、及び(2R,3S,11bS)-DHTBZを含むジヒドロテトラベナジン(DHTBZ)の4つの異性体を生成する。4つのTBZ代謝産物は、インビボで主要な薬理学的に活性な物質である可能性が高い。TBZ及びその活性代謝産物の主な薬理作用は、ヒトVMAT2を阻害することにより、中枢神経系内のモノアミン(例えば、ドーパミン、セロトニン、ノルエピネフリン)の水準を減少させることである[D.Scherman,B.Gasnier,P.Jaudon,J.P.Henry,Mol.Pharmacol.33(1988)72-77;A.Pletscher,A.Brossi,K.F.Gey,Int.Rev.Neurobiol.4(1962)275-306;A.P.Vartak,J.R.Nickell,J.Chagkutip,L.P.Dwoskin,P.A.Crooks,J.Med.Chem.52(2009)7878-7882]。この輸送体は主に脳で発現しており、モノアミンを細胞質からシナプス小胞に移行させ、シナプス放出前にそこで貯蔵され、代謝から保護される。複数のエビデンスは、VMAT2へのTBZ代謝産物の結合が立体特異的であることを示す[M.Kilbourn,L.Lee,T.V.Borght,D.M.Jewett,K.Frey,Eur.J.Pharmacol.278(1995)249e252;M.R.Kilbourn,L.C.Lee,M.J.Heeg,D.M.Jewett,Chirality 9(1997)59e62;M.R.Kilbourn,L.C.Lee,D.M.Jewett,R.A.Koeppe,K.A.Frey,J.Cereb.Blood Flow Metab.15(1995)S650]。テトラベナジンのエナンチオマー及びジヒドロテトラベナジンの8つの立体異性体全てを合成し、VMAT2阻害剤として評価した[Zhangyu Yao,Xueying Wei,Xiaoming Wu,Jonathan L.Katz,Theresa Kopajtic,Nigel H.Greig、及びHongbin Sun,European Journal of Medicinal Chemistry 46(2011)1841-1848]。TBZエナンチオマー及び8つのDHTBZ異性体のうち、(+)-TBZ、(+)-(α)-DHTBZ及び(+)-(β)-DHTBZは、それぞれ4.47、3.96、及び13.4nMの比較的高いラットVMAT2結合親和性を示した。
【0042】
本明細書で使用される場合、VMAT2阻害剤は、(3R,11bR)-テトラベナジン、又は(3R,11bR)-1,3,4,6,7,11b-ヘキサヒドロ-9,10-ジメトキシ-3-(2-メチルプロピル)-2H-ベンゾ[a]キノリジン-2-オン、又は(+)-TBZである。
【0043】
本明細書で使用される場合、VMAT2阻害剤は、(2R,3R,11bR)-9,10-ジメトキシ-3-(2-メチルプロピル)-2,3,4,6,7,11b-ヘキサヒドロ-1H-ベンゾ[a]キノリジン-2-オール、又は(2R,3R,11bR)-ジヒドロテトラベナジン、又は(+)-α-3-イソブチル-9,10-ジメトキシ-1,3,4,6,7,11b-ヘキサヒドロ-2H-ピリド[2,1-a]イソキノリン-2-オール、又は(+)-α-ジヒドロテトラベナジン、又は(+)-(α)-HTBZ、又は(+)-(α)-DTBZ、又は(+)-(α)-(α)-DHTBZと称される。これらの略語は、本明細書では互換的に使用される。「(+)-α-DHTBZ」は、テトラベナジンの活性代謝産物の1つである。
【0044】
本明細書で使用される場合、VMAT2阻害剤は、(2S,3R,11bR)-1,3,4,6,7,11b-ヘキサヒドロ-9,10-ジメトキシ-3-(2-メチルプロピル)-2H-ベンゾ[a]キノリジン-2-オール、又は(2S,3R,11bR)-ジヒドロテトラベナジン、又は(+)-(β)-3-イソブチル-9,10-ジメトキシ-1,3,4,6,7,11b-ヘキサヒドロ-2H-ピリド[2,1-a]イソキノリン-2-オール、又は(+)-ベータ-ジヒドロテトラベナジン、又は(+)-(β)-HTBZ、又は(+)-(β)-DTBZ、又は(+)-(β)-DHTBZである。これらの略語は、本明細書では互換的に使用される。「(+)-(β)-DHTBZ」は、テトラベナジンの活性代謝産物の1つである。
【0045】
本明細書で使用される場合、デュテトラベナジンは、6個の水素原子が重水素原子に置き換えられたテトラベナジンの同位体異性体である。重水素の組み込みは、薬物代謝の速度を遅らせ、薬物の半減期を延長し、より少ない頻度の投与を可能にする[Coppen EM,Roos RA,“Current Pharmacological Approaches to Reduce Chorea in Huntington’s Disease”.Drugs.77(2017):29-46]。デュテトラベナジンは、肝臓によって、重水素化α-ジヒドロテトラベナジン(α-DHTBZ)及び重水素化β-ジヒドロテトラベナジン(β-DHTBZ)を含む活性代謝産物に広範囲に代謝される。
【0046】
好ましいVMAT2阻害剤は、低いオフターゲット結合親和性を有する。より好ましくは、VMAT2阻害剤は、(+)-TBZ、(+)-(α)-DHTBZ、(+)-(β)-DHTBZ、その重水素化誘導体、その薬学的に許容される塩、その活性代謝産物、又はそのプロドラッグである。重水素化誘導体としては、重水素化TBZ、重水素化(+)-TBZ、重水素化(+)-(α)-DHTBZ、重水素化(+)-(β)-DHTBZなどが挙げられる。
【0047】
好ましい実施形態では、VMAT2阻害剤は、(+)-TBZである。(+)-TBZは、他の立体異性体(-)-TBZが除去されるラセミTBZから光学的に精製される。ラセミTBZは、インビボで、その4つの還元型(+)-(α)-DHTBZ、(-)-(α)-DHTBZ、(+)-(β)-DHTBZ、及び(-)-(β)-DHTBZに迅速に代謝され得る。その中で、(-)-(α)-DHTBZと(-)-(β)-DHTBZは、ドーパミンD2sとセロトニン5-HT受容体との高い変化性結合による重篤な副作用の原因となる可能性が高い。この特定の実施形態では、光学的に純粋な(+)-TBZを唯一の薬学的に活性な成分として使用することは、オフターゲット結合から生じる重篤な副作用のリスクを著しく低下させ、これは非常に好ましく、より安全な医薬品を提供する。
【0048】
別の好ましい実施形態では、VMAT2阻害剤は、(+)-(α)-DHTBZ又は(+)-(β)-DHTBZである。(+)-(α)-DHTBZ及び(+)-(β)-DHTBZの両方は、(+)-TBZの還元形態である。(+)-(α)-DHTBZ及び(+)-(β)-DHTBZは、インビボで(+)-TBZから主に肝臓でカルボニルレダクターゼによって生成することができ、又は、当業者によっても容易に合成することができる。親化合物の代わりに、単一の活性代謝産物は、VMAT2阻害剤を投与されている間に追加の合併症を引き起こす可能性のある患者間の最小限の代謝変動を更に保証することができる(特にCYP 2D6多型を有する患者の場合)。
【0049】
本出願のポリマーデポ組成物は、(+)-TBZ、(+)-(α)-DHTBZ、(+)-(β)-DHTBZ、その重水素化誘導体、その薬学的に許容される塩、その活性代謝産物、又はそのプロドラッグを含むVMAT2阻害剤と、1つ以上の薬学的に許容される生体適合性溶媒に溶解された固体の生分解性の生体適合性ポリマーの溶液とを組み合わせることによって製造される。ポリマーデポ組成物は、シリンジ及び針によって、治療を必要とする患者に投与され得る。生分解性ポリマーが体液に少なくとも実質的に不溶であることを条件に、任意の好適な生分解性ポリマーを用いることができる。
【0050】
本出願は、粘性デポビヒクルへのVMAT2阻害剤の組み込みが、インビボでの低い初期バースト放出、最小のラグタイム、及びほぼゼロオーダー放出を有する製剤を生成するという発見に部分的に基づいている。デポ製剤の場合、この放出プロファイルは、当技術分野のエビデンスは、薬物及びマイクロカプセル化のためのコーティングなどの特別なステップが取られない限り、低バースト、ほぼゼロオーダー放出を達成することは事実上不可能であるということであるため、驚くべきことである。
【0051】
本出願の実施形態によるポリマーデポ組成物は、注射剤として調製することができる。投与経路には、皮下、筋肉内、心筋内、外膜内、腫瘍内、又は脳内が含まれ得る。複数回又は繰り返しの注射は、治療効果を維持するために対象に、又は任意の理由で薬物の更なる投与を必要とする対象に投与され得る。ポリマーデポ組成物は、対象への注射後に移植された持続放出性薬物送達系として機能する。そのような制御された放出は、1週間、1週間超、1ヶ月、又は1ヶ月超の期間にわたってあり得る。好ましくは、制御された放出は、少なくとも1週間の期間にわたって、より好ましくは少なくとも1ヶ月の期間にわたってである。
【0052】
本出願の特定の実施形態では、粘性デポビヒクルは、生体適合性ポリマー、すなわち、対象の組織に刺激又は壊死を引き起こさないポリマーを含む。本出願の生体適合性ポリマーは、生体浸食性であってもよく、すなわち、徐々に分解、溶解、加水分解及び/又はインサイチュで浸食してもよい。生体浸食性ポリマーの例としては、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリカプロラクトン、ポリ無水物、ポリアミン、ポリウレタン、ポリエステルアミド、ポリオルトエステル、ポリジオキサノン、ポリアセタール、ポリケタール、ポリカーボネート、ポリオルトカーボネート、ポリホスファゼン、ポリ(リンゴ酸)、ポリ(アミノ酸)、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリヒドロキシセルロース、多糖類、キチン、キトサン、及びこれらのコポリマー、ターポリマー、並びに混合物が挙げられるが、これらに限定されない。ポリマーは、薬学的に許容される溶媒中に溶解され、典型的には、約5~80重量%、好ましくは約20~70重量%、より好ましくは約30~65重量%の範囲の量で溶液中に存在する。
【0053】
一実施形態において、生体適合性ポリマーは、ポリラクチドである。ポリラクチドポリマーは、乳酸に基づくポリマーである。本明細書で使用される場合、「乳酸」という用語は、異性体L-乳酸、D-乳酸、DL-乳酸、L-ラクチド、D-ラクチド、及びDL-ラクチドを含む。ポリラクチド、別名ポリ(乳酸)又はポリ乳酸(略称PLA)は、水(H2O)を除去することによって乳酸C(CH3)(OH)HCOOHの縮合によって正式に得られる、骨格式(C3H4O2)n又は[-C(CH3)HC(=O)O-]nを有する熱可塑性ポリエステルである。塩基性反復単位の環状二量体であるラクチド[-C(CH3)HC(=O)O-]2の開環重合によっても調製することができる。ポリラクチドは、不斉α-炭素を含有し、これはそれぞれ、典型的には、古典的な立体化学的用語でD又はL形態として記述され、R及びS形態として記述されることもある。ポリマーPLAのエナンチオマー形態は、ポリD-乳酸(PDLA)及びポリL-乳酸(PLLA)である。本明細書で使用される場合、「ポリラクチド」という用語は、ポリ(L-乳酸)、ポリ(D-乳酸)、ポリ(DL-乳酸)、ポリ(L-ラクチド)、ポリ(D-ラクチド)、及びポリ(DL-ラクチド)を含む。
【0054】
本出願の別の実施形態では、生体適合性ポリマーは、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)、乳酸及びグリコール酸に基づくコポリマーである。PLGA又はPLGは、一般に、ポリ(D、L-ラクチド-co-グリコリド)又はポリ(D、L-乳酸-co-グリコール酸)の頭字語であり、D-及びL-乳酸形態は等しい比率である。本明細書で使用される場合、「グリコール酸」という用語は、グリコリドを含む。PLGAは、グリコール酸及び乳酸の環状二量体(1,4-ジオキサン-2,5-ジオン)という2つの異なるモノマーの開環共重合によって合成される。ポリマーは、ランダム又はブロックコポリマーのいずれかとして合成され、それによって追加のポリマー特性を付与することができる。このポリマーの調製に使用される一般的な触媒には、スズ(II)2-エチルヘキサノエート、スズ(II)アルコキシド、又はアルミニウムイソプロポキシドが含まれる。重合中、(グリコール又は乳酸の)連続したモノマー単位は、エステル結合によってPLGAにおいて一緒に連結され、したがって、生成物として直鎖脂肪族ポリエステルをもたらす[Astete,C.E.&Sabliov,C.M.(2006)。重合中、(グリコール又は乳酸の)連続したモノマー単位は、エステル結合によってPLGAにおいて一緒に連結され、したがって、生成物として直鎖脂肪族ポリエステルをもたらす[Astete,C.E.&Sabliov,C.M.(2006).“Synthesis and characterization of PLGA nanoparticles”.Journal of Biomaterials Science,Polymer Edition.17(3):247-289]。
【0055】
PLGAは、その構成モノマーである乳酸(LA)とグリコール酸(GA)との間の異なる比率で調製することができる直鎖状コポリマーである。重合に使用されるラクチド対グリコリドの比率に応じて、異なる形態のPLGAを得ることができ、これらは通常、使用されるモノマーの比率に関して特定される(すなわち、PLGA75:25は、75%の乳酸及び25%のグリコール酸からなるコポリマーを特定する)。PLGAの結晶化度は、ブロック構造及びモル比に応じて、完全に非晶質から完全に結晶性まで変化する。PLGAは、典型的には、40~60℃の範囲のガラス転移温度を示す。PLGAは、組成に応じて、幅広い溶媒によって溶解することができる。
【0056】
本明細書で使用されるポリ(D,L-ラクチド-co-グリコリド)及びポリ(D,L-ラクチド)は、Evonik及びAshlandなどの様々なサプライヤーから購入することができる。様々なポリマーの命名は、2007年にLakeshore BiomaterialsのJohn Middletonによってプレゼンテーションスライド29に最初に公開された(参照「Tailoring of Poly(lactide-co-glycolide) to Control Properties」:https://mafiadoc.com/tailoring-of-polylactide-co-glycolide-to-control-_59c989c41723dde2802d6956.html)。2018年、Evonikは以下に示すように、「Resomer(登録商標)Select naming(Resomer(登録商標)Select命名」を含む「RESOMER(登録商標)製品パンフレット」を発行した。
【表1】
【表2】
【0057】
PLGA又はPLAは、水の存在下でそのエステル結合を加水分解することによって分解する。PLGAの分解に必要な時間は、PLGAにおけるモノマーの比率に関連することが示されており、グリコリド単位の含有量が高いほど、主にラクチド材料であるPLAと比較して分解に必要な時間が短くなる。加えて、(遊離カルボン酸とは対照的に)エステルで末端がキャップされたポリマーは、より長い分解半減期を示す[Samadi,N.;Abbadessa,A.;Di Stefano,A.;van Nostrum,C.F.;Vermonden,T.;Rahimian,S.;Teunissen,E.A.;van Steenbergen,M.J.;Amidi,M.&Hennink,W.E.(2013).“The effect of lauryl capping group on protein release and degradation of poly(D,L-lactic-co-glycolic acid)particles”.Journal of Controlled Release.172(2):436-443]。分解におけるこの柔軟性は、移植片、縫合糸、インプラント、補綴デバイス、外科用シーラントフィルム、マイクロ及びナノ粒子などの多くの医療機器の製造に便利である[Pavot,V;Berthet,M;Resseguier,J;Legaz,S;Handke,N;Gilbert,SC;Paul,S;Verrier,B(December 2014).“Poly(lactic acid)and poly(lactic-co-glycolic acid)particles as versatile carrier platforms for vaccine delivery”.Nanomedicine(Lond.).9(17):2703-18]。
【0058】
本出願の特定の実施形態では、PLGAポリマーは、約100:0~50:50、好ましくは約85:15(75:25~95:5)、約75:25(65:35~85:15)、約65:35(55:45~75:25)、及び約50:50(40:60~60:40)の乳酸対グリコール酸モノマー比を有し得る。PLGAポリマーは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定されるように、約1,000~約120,000、好ましくは約5,000~約40,000の範囲の重量平均分子量(Mw)を有する。更に好ましくは、PLGAポリマーを、エタノール又はドデカノールなどのモノアルコールで合成して、1つのエステル末端官能基及び1つのヒドロキシル末端基を有するPLGAポリマーを得る。PLGAポリマーは、プロピレン-1,3-ジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,10-デカンジオールなどのジオールと合成して、ポリマーの各末端に1つのヒドロキシル基を有するPLGAポリマーを得ることもできる。PLGAポリマーは、1つ又は2つのカルボキシル末端基を有するようにすることもできる。好ましくは、PLGAポリマーは、水性媒体又は体液中に実質的に不溶性であるが、生体適合性有機溶媒中に容易に溶解又は混和して、溶液又は粘性流体を形成する。
【0059】
更に別の実施形態では、所望の生分解性、生体適合性、ポリマー担体は、限定されないが、ポリ乳酸-co-グリコール酸(PLGA)及びポリ乳酸(PLA)である。PLGA及びPLAの両方は、水に不溶であるが、生体適合性溶媒又は溶媒の組み合わせにおいて一定の溶解性を有する。そのような生体適合性溶媒又はそれらの組み合わせに溶解すると、粘性送達ビヒクルを形成することができる。送達ビヒクルは、その後、本出願のポリマーデポ組成物を形成するために、薬学的に活性な成分とともに製剤化することができる。ポリマーデポ組成物が水性媒体又は体液と接触するとすぐに、生体適合性有機溶媒がポリマーデポ組成物から消失し、生体分解性、生体適合性ポリマーを残してゲルデポを形成するか、(+)-TBZ、(+)-(α)-DHTBZ、(+)-(β)-DHTBZなどのVMAT2阻害剤、その重水素化誘導体、その薬学的に許容される塩、その活性代謝産物、又はそのプロドラッグを封入する固体マトリックスを沈殿させて形成し、その後、少なくとも1週間、より好ましくは少なくとも1ヶ月間、制御された持続的な方法で放出される。
【0060】
一実施形態では、PLGAポリマーは、Evonik Industriesによって供給される。Resomerポリマーの例のいくつかを以下の表に示す。
【表3】
【0061】
本出願における薬学的に許容される生体適合性溶媒は、水溶性、混和性から分散性であるか、又は少なくとも水に部分的に溶解性を示す。本明細書で使用される場合、「可溶性」及び「混和性」という用語は、互換的に使用されることを意味する。生分解性の疎水性ポリマーと組み合わせると、溶媒は当該ポリマーを容易に溶媒和することができ、所望の粘度を有する送達ビヒクルをもたらす。送達ビヒクルは、制御された持続的な薬物送達を達成するに、本出願のポリマーデポ組成物を形成するために、薬学的に活性な成分とともに更に製剤化することができる。薬学的に許容される生体適合性の溶媒の例としては、エタノール(EtOH)、1-メチル-2-ピロリドン又はN-メチル-2-ピロリドン(NMP)、安息香酸ベンジル(BB)、ベンジルアルコール(BA)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラグリコール(又はグリコフロール)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、トリアセチン(TA)、低分子量ポリエチレングリコール(すなわち、PEG300及びPEG400)、ポリエチレングリコールエステル、酢酸メチル、酢酸エチル、オレイン酸エチル、グリセロール、カプリル酸及び/又はカプリン酸のエステル、及びグリセロール若しくはアルキレングリコール、並びにその組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0062】
1つの好ましい実施形態において、薬学的に許容される生体適合性溶媒は、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)である。
【0063】
本出願によれば、ポリマーデポ組成物は、送達ビヒクルを形成するために、1つの生分解性、生体適合性ポリマー及び1つの薬学的に許容される溶媒を含む。好ましくは、生分解性、生体適合性ポリマーは、実質的に水不溶性であり、注射後に水不溶性デポ又はインプラントを沈殿又は形成する。好ましい実施形態では、本明細書に定義されるPLGAを使用して、(+)-TBZ、(+)-(α)-DHTBZ、(+)-(β)-DHTBZなどのVMAT2阻害剤、その重水素化誘導体、その薬学的に許容される塩、その活性代謝産物、又はそのプロドラッグの放出を延長する。一実施形態では、45/55w/w比でRG502/NMPのポリマー溶液中に懸濁した30%(+)-TBZを含むポリマーデポ組成物は、インビトロで3週間にわたって(+)-TBZの約40%の累積放出を示したが、35/65w/w比でRG503/NMPのポリマー溶液中に懸濁した30%(+)-TBZを含むポリマーデポ組成物は、インビトロで3週間にわたって(+)-TBZのわずか20%超の累積放出を示した。更に、PLAを使用してPLGAを置き換えることによって、放出期間を更に延長することができる。別の実施形態では、60/40w/w比でPLA/NMPのポリマー溶液中に懸濁した30%(+)-TBZを含むポリマーデポ組成物は、インビトロで3週間にわたって20%未満の蓄積薬物放出を示した。
【0064】
本出願によれば、(+)-(α)-DHTBZの制御された持続された送達も達成され得る。一実施形態では、RG502/NMPのポリマー溶液中に65/35w/w比で懸濁した30%(+)-(α)-DHTBZを含むポリマーデポ組成物は、3週間にわたる約70%の累積放出を伴う持続的な方法で薬物放出を示した。別の実施形態において、45/55w/w比でRG503/NMPのポリマー溶液中に懸濁した30%(+)-(α)-DHTBZを含むポリマーデポ組成物は、インビトロで3週間にわたって40%未満の蓄積放出を示した。これら全ての実施形態では、ポリマーデポ組成物は、生体対象への投与時に、注射部位にデポ/インプラントを形成することができる。本発明の組成物は、治療レベル以上の(+)-TBZ、(+)-(α)-DHTBZ及び(+)-(β)-DHTBZの血漿濃度を、好ましくは1~2週間、より好ましくは2~4週間、最も好ましくは1~3ヶ月間、血漿濃度の最小変動及び狭いピーク/トラフ(P/T)比で維持するのに適している。
【0065】
本出願によれば、VMAT2阻害剤の持続放出性プロファイルは調節可能である。VMAT2阻害剤の放出プロファイルに影響を与える因子としては、生分解性ポリマーの種類、生分解性ポリマーの末端官能基(エステル末端処理された、若しくはカルボン酸末端処理された、若しくはヒドロキシル末端処理された)、ポリマーの分子量(Mw)及びMw分布、生体適合性溶媒の種類、又はこれらの組み合わせ、生分解性ポリマーと生体適合性溶媒との比率、VMAT2阻害剤の種類((+)-TBZ又は(+)-DHTBZ)、薬物負荷、並びにVMAT2阻害剤の粒径が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、約50:50の比率でのDL-ラクチド/グリコリドコポリマー、酸末端との約50:50の比率でのDL-ラクチド/グリコリドコポリマー(PLGA)、約75:25の比率でのDL-ラクチド/グリコリドコポリマー、酸末端との約75:25の比率でのDL-ラクチド/グリコリドコポリマー、約88:12の比率でのDL-ラクチド/グリコリドコポリマー、及びポリ(DL-ラクチド)(PLA)を含むがこれらに限定されない様々な種類の生分解性ポリマーを選択して、NMPにおけるポリマー溶液ビヒクルを作製した。持続放出性組成物は、生分解性ポリマーと生体適合性溶媒との比、有益な薬学的許容される賦形剤の種類、VMAT2阻害剤の種類、薬物負荷、並びにVMAT2阻害剤の粒径を含むがこれらに限定されない、製剤パラメータを制御することによって得られた。
【0066】
生体適合性溶媒に対するポリマーの比率は、インサイチュ形成デポ薬物送達系の放出プロファイルに影響を与える重要な要因の1つであり得る。しかしながら、VMAT2阻害剤の最初のバースト放出とポリマー/溶媒比との間の相関は、単純ではないことが見出された。一実施形態では、(+)-(α)-DHTBZは、ポリマー含有量が増加するにつれて、PLGA/NMPインサイチュ形成デポからの初期放出が減少したことを示した。(+)-(α)-DHTBZの薬物負荷が30%に固定されている場合、RG502/NMPの比率を65/35から30/70w/wに変更すると、それぞれ約4%及び約18%の初期薬物放出がもたらされ、RG503/NMPの比率を50/50から45/55w/wに変更すると、それぞれ約5%及び約8%の初期薬物放出がもたらされた。驚くべきことに、別の実施形態において、インサイチュ形成薬物送達系におけるポリマー対生体適合性溶媒比は、(+)-TBZの初期放出に影響を示さなかった。薬物負荷が20%に固定されている場合、RG502/NMPの比率を45/55から35/65w/wに変更すると、同じレベルの初期薬物放出が約10%になった。加えて、薬物負荷は30%に固定されているが、RG503/NMPの比率を35/65、25/75、及び15/85w/wから変更すると、同じレベルの初期薬物放出が約4%になった。これらの結果は、一般に、ポリマー対生体適合性溶媒比の低下は、ポリマー溶液の粘度の低下に起因してより高い初期破裂をもたらすため、予想外である。
【0067】
生体適合性溶媒又は生体適合性溶媒の組み合わせは、長時間作用型の持続的な薬物送達に大きな影響を及ぼし得る。Wang et al.は、インサイチュ形成系に基づく親水性溶媒誘導PLGAで構成される持続放出系を開発した。彼らは、生体適合性溶媒の効果を含む、薬物放出に影響を与える因子を調査した。初回放出は3.7-8.0倍低減され、親水性NMPが90%安息香酸ベンジル(BB)及び10%共溶媒(ベンジルアルコール、トリアセチン、又はNMP)からなる疎水性共溶媒に置き換えられたため、血漿レベルは4日から10~15日に有意に延長された(Wang et al.,RSC Adv.,2017,7,5349-5361)。全く逆の方法で、NMPをBBの少量に置き換えると、実際には同様の初期放出が行われ、その後より速く蓄積放出が行われたことがわかった。一実施形態では、40%(+)-(α)-DHTBZをRG502/BB/NMP(65/5/30)と混合して、デポ組成物を形成し、インビトロ放出について試験した。結果は、ポリマー溶液中のNMPのわずか5%(w/w)がBBで置換されたとき(14日間の放出が約50%から約70%に増加した)、実質的により速い放出を示した。別の実施形態では、50%(+)-(α)-DHTBZを、50/5/45w/w比でRG503H/BB/NMPと混合して、ポリマーデポ組成物を形成し、インビトロ放出について試験した。結果はまた、ポリマー溶液ビヒクル中のNMPの5%(w/w)をBBに置き換えた後の加速放出を実証した(14日間の放出は、約20%から約30%に増加する)。加えて、治療薬として(+)-TBZを使用した場合にも同様の傾向が見られた。一実施形態では、50%(+)-TBZを、RG503/NMPからなるポリマー溶液ビヒクルと45/55w/w比で混合して、ポリマーデポ組成物を形成し、インビトロ放出について試験した。初期放出は同じであったが、結果は、ポリマー溶液中のNMPの5%(w/w)のみがBBによって置換されたときの全体的な放出がより速いことを示した(21日間の放出は約20%から約30%に増加した)。これらの発見は、関連分野における先行技術が明らかにしたものには予想外であった。更に、本出願中の明細書で示したそのような方法は、初期放出に影響を与えることなく、VMAT2阻害剤の全体的な放出プロファイルを制御する上での利点を提供し、これは、持続放出性のインサイチュ形成デポ薬物送達系を開発するときにほとんどの時間を達成することが非常に困難である。
【0068】
特定の実施形態では、注射量を合理的な範囲内に維持することが重要であるため、長時間作用型の持続送達系では、あまり強力でない薬物には、薬物負荷(DL%)が高いことが望ましい。ただし、DL%は、放出プロファイルを変更することもできる。より高い薬物負荷は、通常、ATRIGEL(登録商標)又はその関連する薬物送達系におけるバースト放出の増加を伴う。Geng及び彼のチームは、イベルメクチンの持続放出のためのPLAマトリックスデポに基づいたインサイチュ形成ゲルを開発した。彼らは、イベルメクチンの放出速度がそのDL%と正の相関があることを見出した。累積放出は、イベルメクチン負荷がそれぞれ1%から2%、及び1%から4%に増加するにつれて、2.4~2.9及び3.1~3.7倍増加した(Geng et al.,International Journal of Biological Macromolecules Vol.85,April 2016,271-276)。先行技術は、DL%と薬物放出との間のそのような単純な正の相関を示唆しているように思われるが、一実施形態では、(+)-TBZ及び(+)-(α)-DHTBZ放出に対するDL%の効果がはるかに複雑であることが予想外にわかった。例えば、様々なDL%で35/65w/w比でRG503/NMPで構成されるポリマー溶液ビヒクルに懸濁した(+)-TBZで構成される製剤では、累積放出はDL%を段階的に上昇させるとともに増加したが、初期放出は、20、30、及び50%での薬物負荷について約3%でほぼ同一であった。しかしながら、同じ製剤組成物であっても、5%で薬物負荷が低下した場合、より大きなAPI粒子であっても、有意に高い初期バースト放出(10%超)が見出された。別の実施形態では、初期放出は、50/50w/w比でRG752H/NMPで構成されるポリマー溶液ビヒクルに懸濁した(+)-TBZで構成される製剤において、50、60、及び70%の薬物充填に対して、約3~5%でほぼ同一であった。一方、(+)-(α)-DHTBZの場合、DL%は放出プロファイルに更に異なる影響を与える。例えば、初期バースト放出は変化するDL%では変化しなかったが、50/50w/w比でRG503/NMPで構成されるポリマー溶液ビヒクルにおいてDL%が増加した場合、全体の放出速度は15%から25%に加速された。一方、放出プロファイルは、30%及び40%の薬物負荷の両方で同一のポリマービヒクルで構成される製剤についてほぼ同一であった。更に例外的なのは、DL%を変化させると、(+)-(α)-DHTBZと組み合わせた、カルボン酸末端処理されたRG503Hとは完全に反対に作用した。(+)-(α)-DHTBZの放出は、RG503H製剤におけるDL%の増加とともに実際に遅くなった。これらの知見は、VMAT2阻害剤の放出プロファイルに対する薬物負荷の効果は、他で開示されている他の関連する先行技術の製剤を単純に模倣又は再現することによって管理することができないことを再度強調した。
【0069】
VMAT2阻害剤のための持続放出性のインサイチュ形成デポ送達系を開発するために、当業者は、所望の放出プロファイルを達成するために、他の従来技術に開示されている既知の情報に単純に頼ることができないことは明らかである。
【0070】
一般的に言って、粒径は、懸濁液製剤中の放出プロファイルを変更することができる(Drug Des.Devel.Ther.2013;7:1027-1033.)。溶解速度は、懸濁液製剤中の粒子の表面積と正の相関がある。薬物の粒径の減少に伴い比表面積は増加するが、薬物の溶解速度も増加する。溶解速度の実質的な差は、特に溶解の初期期間中、粒径及び相対表面積の変動に応じて存在し得る。本出願では、我々は、VMAT2阻害剤の所望の放出プロファイルの調整に関する効果的なアプローチとしてAPI粒径を調整した。驚くべきことに、薬物放出に対するAPI粒径の影響ははるかに複雑であり、ある種類のVMAT2阻害剤から別の種類のVMAT2阻害剤に単純に適用することはできなかった。一実施形態では、小(+)-TBZ粒子(D50~50μm)は、50%の薬物負荷を有する60/40w/w比でRG502/NMP、及び30%の薬物負荷を有する35/65w/w比でRG503/NMPからなる製剤からの大(+)-TBZ粒子(D50、~100μm)と比較して、より高い初期放出及びより速い蓄積放出を示した。一方、通常のエステル末端処理されたポリマーをカルボン酸末端処理されたポリマーに置き換えると、(+)-TBZ粒径の放出への効果は消失した(35/65w/w比でRG503H/NMPで構成されるポリマー溶液ビヒクルにおける30%の薬物負荷)。別の実施形態では、より小さい(+)-TBZ粒子は、DL%が60又は70%であっても、55/45w/w比でRG752H/NMPから構成されるポリマー溶液からのインビトロ放出に限定的な効果をもたらした。したがって、我々がカルボン酸末端処理されたPLGAポリマーから発見した結果は、独特であった。カルボン酸末端処理されたPLGAポリマーは、通常のエステル末端処理されたPLGAポリマーと比較して、そのポリマー分解が速いため、1ヶ月の送達のためにいくつかの承認された医薬品(すなわち、PERSERIS(登録商標)、PLGH8020)で利用されている。放出プロファイル上のAPI粒径の変動を排除することにおけるカルボン酸末端処理されたPLGAポリマーの利点を利用することは新規であり、他の従来技術では開示されていない。更に、バッチ間API粒径の変動は、製品開発の観点からハードルであり得るため、本出願に開示されたものは、再現可能な放出プロファイルを有する一貫性のある医薬品を製造する上で大きなメリットとなり得る。
【0071】
本出願によれば、我々はまた、生分解性のポリマービヒクル及びVMAT2阻害剤で構成される持続放出性製剤のための末端滅菌プロセスを可能にした。ガンマ線照射は、注射用医薬品及び医療機器のための最も広く採用されている末端滅菌プロセスの1つである。しかしながら、ポリマー分子量(Mw)などのポリマー特性は、ガンマ線への曝露後に実質的に変化することができるが、ポリマーMwの変化は薬物放出プロファイルを有意に変化させることができることは周知である。Shapourgan及び同僚は、PLGAベースのインサイチュ形成系からのロイプロリドアセテートの放出プロファイルに対するガンマ線照射の効果を調査した。8kGyでのガンマ線照射後、PLGAのガラス転移温度(Tg)が43.4℃から38.1℃に低下したことが観察された。PLGA Mwもまた、ガンマ線照射後に多かれ少なかれ18%減少した。更に、ガンマ線照射後のPLGAマトリックスは、非照射PLGAマトリックスよりも高い多孔性を示した。これらの影響はともに、非照射PLGAマトリックスと比較して、インサイチュ形成デポにおけるガンマ線照射PLGAからのロイプロリドアセテートのより速い放出をもたらした(Shapourgan et al.,Curr Drug Deliv.2017;14(8):1170-1177)。一実施形態において、ガンマ滅菌(25~40kGy)を、いくつかの粘性(+)-(α)-DHTBZポリマー懸濁液について調査した。予想外に、40%の薬物負荷で50/50w/w比でRG503/NMPで構成されるポリマー溶液ビヒクルに懸濁した(+)-(α)-DHTBZ、及び50%の薬物負荷で50/50w/w比でRG503H/NMPで構成されるポリマー溶液ビヒクルに懸濁した(+)-(α)-DHTBZから構成される照射後製剤からは、加速放出が見出されたが、ガンマ線照射プロセス後、40%の薬物負荷で60/40w/w比でRG502H/NMPで構成されるポリマー溶液ビヒクルに懸濁した(+)-(α)-DHTBZの放出プロファイルはほとんど変化しなかった。
【0072】
更に、0.22μmフィルターを介した濾過などの代替アプローチは、低粘度、ポリマーベース、インサイチュ形成デポ薬物送達系のための末端滅菌のための別のオプションであり得る。しかしながら、持続的な方法で長期放出を提供するために、PLGA又はPLAベースの製剤は、一般に、粘性溶液又は懸濁液であり、これは、濾過を非常に困難にする。一実施形態では、40/60w/w比でRG502/NMPから作製した(+)-(α)-DHTBZポリマーデポ製剤を、23%の薬物負荷で調製した。0.22μmのディスクフィルターを介したそのようなビヒクルの濾過は、容易かつ単純であった。濾過されたポリマー溶液ビヒクル及び非濾過ポリマー溶液ビヒクルから作製された製剤のインビトロ放出プロファイルは同一であり、これは、粘度の低いポリマー溶液ビヒクルで構成されるこれらの製剤の末端滅菌プロセスとして0.22μmの濾過を使用することの実現可能性を実証した。本出願において、我々は、0.22μmの濾過又は25~40kGyのガンマ線照射のいずれかが、提案されたVMAT2阻害剤ポリマー懸濁液の任意の末端滅菌プロセスであり得ることを実証した。
【0073】
本出願は、そのようなポリマーデポ組成物を調製し、使用する方法を更に提供する。一実施形態では、(+)-TBZ、(+)-(α)-DHTBZ、(+)-(β)-DHTBZ、その重水素化誘導体、その薬学的に許容される塩、その活性代謝産物、又はそのプロドラッグ、1つ以上の生体適合性有機溶媒、及び1つ以上の薬学的に許容されるポリマー、水不溶性担体を含む、そのような組成物の調製方法が提供される。好ましくは、薬学的に許容される重合体の水不溶性担体を最初に溶解するか、又は生体適合性有機溶媒と混合して送達ビヒクルを形成し、続いて、送達ビヒクル中に(+)-TBZ、(+)-(α)-DHTBZ、(+)-(β)-DHTBZ、その重水素化誘導体、その薬学的に許容される塩、その活性代謝産物、又はそのプロドラッグを溶解又は懸濁する。本発明のポリマーデポ組成物は、予め充填されたシリンジ中に注入する準備ができた粘性流体、半固体、又は均一な懸濁液であり得る。好ましい組成物は、注射前に十分に混合した後の均質、粘性流体、半固体、又は均一な懸濁液であってもよい。そのような組成物は、調製プロセスの前及びその間に生理化学的に安定である。好ましくは、そのような組成物は、生体対象への製造、滅菌、保管、及びその後の投与中に安定である。ポリマーデポ組成物は、好ましくは、シリンジ又はその類似のデバイスを介して、生体対象に皮下、筋肉内、腹腔内、又は皮内に投与され、インサイチュ形成デポ又はインプラントを形成する。好ましくは、本出願のポリマーデポ組成物は、24時間以内にインビボで30%以下、より好ましくは24時間以内に20%以下、最も好ましくは24時間以内に10%以下の初期放出を有する。所望の成分では、ポリマーデポ組成物は、治療レベルを超える医薬活性成分を、好ましくは1~2週間、より好ましくは2~4週間、最も好ましくは1~3ヶ月、血漿濃度の最小変動及び狭いP/T比(好ましくは1~10、より好ましくは1~4、更により好ましくは1~2)で持続的に送達することができ、これは確実に潜在的な副作用を制限して、患者の安全性プロファイルを改善するのに役立つことができる。ポリマーデポ組成物は、生体対象内で生体適合性であり、分解し、薬物送達が行われた後に身体に吸収され得る。
【実施例】
【0074】
以下の実施例は、本出願の組成物及び方法を示す。以下の実施例は、限定として考慮されるべきではなく、単に効果的な持続放出性の注射可能ポリマーデポ組成物を作製する方法を当業者に教示すべきものである。
【0075】
HPLC分析方法
以下のHPLC法を通じて較正曲線を得て、未知のAPI含有量を有する試料中の(+)-TBZ及び/又は(+)-DHTBZの濃度を定量した。
材料
試薬
-ミルQ水、18.0MΩ-cm以上の抵抗率、又は同等品
-酢酸アンモニウム、ACSグレード又は同等品
-水酸化ナトリウム、ACSグレード又は同等品
-メタノール(MeOH)、HPLCグレード
-イソプロピルアルコール(IPA)、HPLCグレード
-N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、HPLCグレード
参照標準
(+)-定義された効力を有するTBZ API
機器及びパラメータ
HPLC
Shimadzu HPLCシステム:
バイナリポンプ:モデルLC-20AT
脱気装置:モデルDGU-20A3R
オートサンプラー:モデルSIL-30A HT
カラムオーブン:Enshine,Super CO-150(Shimadzu製ではない)
検出器:モデルSPD-20A
パラメータ
カラムXBridge C18 Column,5μm 4.6x150mm
移動相A:10mMの酢酸アンモニウム、pH6.8±0.1、
B:MeOH
アイソクラティックモード:A/B=30/70
流量:1mL/分
カラム温度:40℃
注射量:2μL
検出:214nm
実行時間:8分
試料調製
移動相A
約0.77gの酢酸アンモニウムを1000mLの水に溶かし、0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液でpHを6.8±0.1に調整する。使用前に0.22μmのPTFE膜フィルターで濾過し、脱気する。
試料溶媒:
イソプロピルアルコール
標準溶液
20±1mgの(+)-TBZ参照標準を20mLの容量フラスコに正確に量り、10mLの試料溶媒を加えて溶解させ、試料溶媒で体積に希釈し、よく混合する。この溶液を試料溶媒で希釈して、2、5、10、50、100、200、及び500μg/mLの標準溶液を得る。
試料溶媒
(+)-TBZ API試料(0.1mg/mL TBZ)の場合:
10mLの容量フラスコに10mgのAPI試料を正確に量り、5mLの試料溶媒を添加して溶解させ、試料溶媒で体積に希釈し、よく混合する。上記溶液1mLを10mLの容量フラスコにピペットし、試料溶媒で体積に希釈し、よく混ぜ合わせる。
(+)-TBZ医薬品試料(0.1mg/mL TBZ)の場合:
20mLの容量フラスコに、40mgの医薬品(PLGA又はPLA含有製剤、薬物負荷が50%、w/wであると仮定)試料を正確に量り、15mLのNMPを添加して溶解させ、NMPで体積に希釈し、よく混合する。上記で調製した試料溶液1mLを採取し、10mL容量フラスコに添加し、5mLのIPAを添加して希釈し、IPAで体積に希釈し、よく混合する。溶液をボルテックスし、12000rpmで3分間遠心分離して沈殿物を凝集させる。次いで、上清を0.22μmのPTFEフィルターを通して濾過し(最初の2mLを捨てる)、注射のためにHPLCバイアルに移す。
【0076】
GPC分析方法
本出願における製剤開発におけるポリマー選択のための1つの重要なパラメータとして、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC、サイズ排除クロマトグラフィー、SECとも呼ばれる)を介してポリマーMWを分析した。
材料
試薬
-テトラヒドロフラン(THF)、安定化、HPLCグレード。
-N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、医薬品グレード又はACS試薬。
GPC標準
-GPC較正キット:Pskitr1L ReadyCal-Kit(ポリスチレン)、Mp:266~66,000DaをPSS-Polymer Standards Service USA.Inc.から購入する。RedyCal-Kitの公式文書からの分子量情報、PSS-pskitr1lを以下の表1に列挙する。標準の各バイアルは、異なるMpを有する4つのポリスチレン標準を含有する。
【表4】
機器及びパラメータ
GPCシステム
-Shimadzu Nexera HPLCシステムは、以下で構成されている:脱気装置、モデルDGU-20A 5R、バイナリポンプ、モデルLC-30AD、RI検出器、モデルRID-10A、オートサンプラー、モデルSIL-30AC、カラムオーブン、モデルCTO-20AC
-ソフトウェア:LabSolutions
GPCカラム
-2本のAgilent ResiPore(#1113-6300)300×7.5mm、3μm粒径の直列カラム。
GPC条件
-移動相/試料緩衝剤:THF(安定化)。
-流量:1mL/分。
-カラム温度:40℃。
-注射量:50μL。
-実行時間:30分。
-反射指数検出器:
-極性:ポジティブ
-温度:40℃
-応答:1.5秒
-検体濃度:THF中2mg(ポリマー)/mL。
試料調製
標準調製
PSS-pskitr1l ReadyCal-Kitの公式説明書に従って、分子量標準(ポリスチレン)を調製する。各バイアルに1mLのTHFを添加して、標準溶液(Mp266~66000ダルトンを覆う3つの個々の標準バイアル)を各標準について2.25mg/mLの濃度で作製する。全ての標準は2時間にわたって溶解される。
注意:ポリスチレン標準及び較正曲線は、毎回新しく調製されなければならない。
試料調製
純粋なPLGA又はPLA試料については、1.5mLのEppendorfチューブ中で10mgの試料を量る。1mLのTHFを添加し、2時間(室温)にわたって軌道シェーカーを介してポリマーを溶解させる。溶解したポリマー/THF試料を14000rpmで2分間遠心分離し、希釈のために100μLの上清を採取して、GPC分析のための最終2mg/mLの試料(100μLの上清+400μLのTHF)を作製する。
製剤試料については、1.5mLのEppendorfチューブ中で十分な量の製剤(10mgのポリマーに相当する)を量る。例えば、50/50のPLGA対NMP比を有する50%薬物負荷製剤の場合、40mgの製剤を量らなければならない。溶解した製剤/THF試料を14000rpmで2分間遠心分離し、希釈のために100μLの上清を採取して、GPC分析のための最終2mg/mLの試料(100μLの上清+400μLのTHF)を作製する。
【0077】
注射用懸濁液からの(+)-TBZ及び(+)-(α)-DHTBZのインビトロ放出
(+)-TBZ及び(+)-(α)-DHTBZ懸濁製剤について、インビトロ放出をシンク条件下で行った。放出培体の体積は、製剤のデポサイズ及び薬物負荷(%)に従って調節することができる。一実施形態では、35mgの30%の薬物負荷製剤を、37℃で、0.2%(v/v)のTween80を含む400mLのpH7.4リン酸緩衝液生理食塩水に注入した。溶媒消散後、インサイチュ形成インプラントは、放出媒体中に形成される。所定の時間点で、HPLC分析のために0.5mLの放出培体を取り出し、放出培体中の薬物濃度を計算した。放出された薬物の蓄積量を所定の時点で計算して、蓄積放出プロファイルを得た。
【0078】
ジェットミルによる(+)-TBZ及び(+)-(α)-DHTBZ粒子のサイズ低減
最大5gの生の(+)-TBZ又は(+)-(α)-DHTBZ粉末を量り、60秒当たり約1gの速度でジェットミル(Micromacinazione,Switzerland)に供給した。供給圧力及び研削圧力は、収集される所望の粒径に応じて調整可能であった。ミル後、(+)-TBZ又は(+)-(α)-DHTBZ粒子を回収し、密封し、所望の保管条件で保存した。狭い粒径分布を有する大きなAPI粒子(すなわち、100μmを超えるD(50)を有する粒子)を取得するために、ジェットミルされたAPI粉末を、分散剤として0.5%w/wのTween80水溶液を使用して25μmフィルターを通して更に濾過し、続いてオーブン乾燥することもできる。次いで、Malvern Mastersizer 3000(Malvern Analytical Ltd,United Kingdom)によって粒径を測定した。
【0079】
(+)-TBZ及び(+)-(α)-DHTBZ粒子の粒径分析
分散媒体として脱イオン水を使用して、Malvern Mastersizer 3000を使用して、ジェットミルされたAPI粒子の粒径及び粒径分布を分析した。粒径分布を測定し、記録した。表2は、以下の実施例で使用される医薬活性成分のD(50)における3つの主要な粒径範囲を分類した。この粒径分類されたシステムは、更に説明されない場合、本出願を通して採用されるであろう。
【表5】
【0080】
ポリマー分子量測定
各製剤からの約5~10mgの試料を1.5mLの遠心管に添加し、0.8μLのTHFに完全に溶解した。溶液を、プレートシェーカーとともに設置されたボルテックスシェーカーを使用して、完全に溶解するまでボルテックスした。次いで、各試料を12,000rpmで2分間遠心分離した。上清を回収し、GPCによって分析して、ポリマーの重量平均分子量(Mw)及び多分散指数(PDI)を決定した。ポリマーのMw及びPDIは、266~66,000DaのMp範囲を有するポリスチレン標準(Pskitr1L ReadyCal-Kit)と比較することによって得た。表3は、本出願で試験されているいくつかのPLGA及びPLAポリマーのMw情報をまとめた。更に、ガンマ線照射(25~40kGy)後のポリマーMw変化も測定し、表3に列挙した。
【表6】
【0081】
(+)-TBZ及び(+)-(α)-DHTBZポリマーデポ組成物の調製
(+)-TBZ及び(+)-(α)-DHTBZ懸濁液は、所望の粒径を有するAPI粒子の計量量を好適なルアーロック雄シリンジに充填することによって調製した。均質なポリマー溶液ビヒクルを、適切な混合デバイス、すなわちプラネタリミキサーを使用して、量った量のポリマー及び生体適合性の溶媒を混合することによって調製した。調製したら、量った量のポリマー溶液ビヒクルを、好適な雌のルアーロックシリンジに充填した。注射前に、雄及び雌のシリンジを一緒に接続し、続いて2つのプランジャーを介して最大100回前後に混合して、均一な、乳白色又はわずかに黄色がかった懸濁液を得た。より好ましくは、混合は75回であり、更により好ましくは、混合は50回であった。注射用の最終混合物は、粘性液体、ゲル、エマルジョン、懸濁液、又は半固体分散液であり得、これは安定であり、好ましくは30分間注射の準備ができており、より好ましくは安定であり、沈降及び凝集なしで1~2時間以内に注射の準備ができている。懸濁液の準備ができたら、雌のシリンジを取り外し、所望のルアーロック針を注射用の雄のシリンジにねじ込んだ。好ましくは、注射用針は、16ゲージの針、より好ましくは18ゲージ又は19ゲージの針、最も好ましくは20ゲージ以下のサイズの針であった。
【0082】
実施例1.製剤の均一性
製剤の均一性は、あらゆる種類の注射用剤形を開発する上で重要である。それは、毎回一貫した投与を可能にする、医薬品中のAPIの均質な分布を保証する。予め充填された注射可能な剤形の場合、バッチ間のばらつきを最小限に抑えて一貫したDL%を得ることも重要である。一実施形態では、(+)-TBZポリマー懸濁液を、プラネタリミキサー(MAZERUSTAR KKシリーズPlanetary Mixer,Kurabo Industries Ltd.,Osaka,Japan)によって調製し、次いで、注射の準備ができていた予め充填されたシリンジとして、1mLのポリプロピレン(PP)シリンジ(Terumo、Japan)に手動で充填した。製剤の均一性は、正確に同じ組成物を有する3つの独立して調製されたバッチからの製剤のDL%を調べることによって決定された。DL%は、予め充填されたシリンジ内の無作為に選択された部分で所定量の製剤をサンプリングすることによって測定した。表4は、3つの異なるRESOMER製剤からのDL%結果をまとめた。異なるバッチにわたって2%未満のSTDで、それは、良好な製剤均一性及び最小限の調製バリエーションを強く示し、これらは一緒に、予め充填された(+)-TBZポリマー製剤を開発するための有望な可能性をもたらす。
【表7】
【0083】
別の実施形態では、デュアルシリンジ混合の製剤の均一性も実証された。量った量の(+)-TBZを好適な雄のルアーロックPPシリンジ(例えば、Qosina,USAの1.2mL雄PPシリンジ)に充填し、一方、既知量のポリマー溶液ビヒクルを好適な雌のルアーロックPPシリンジ(例えば、Qosina,USAの1.2mL雌PPシリンジ)に充填した。次いで、2つのシリンジを接続し、100サイクル前後に混合して、注射の準備ができた最終的な懸濁液製剤を得た。均一性は、最終懸濁液を含有する混合シリンジの上部、中部、及び底部のDL%を測定することによって決定した。加えて、懸濁液製剤の物理的安定性もまた、デュアルシリンジ混合後2時間後にシリンジの上部、中部、及び底部のDL%を測定することによって調査した。表5は、デュアルシリンジ混合直後及び混合後2時間後のDL%分析をまとめたものである。混合後の初期及び2時間の両方で、シリンジの全長(上部、中央、及び底部)にわたって最小限のDL%の差が示され、API粒径にかかわらず、混合後2時間以内に沈降しないデュアルシリンジによる均一な混合及び良好な物理的安定性を示した。
【表8】
【0084】
更に別の実施形態では、(+)-(α)-DHTBZ懸濁液製剤のデュアルシリンジ混合後の均一性も実証された。量った量の(+)-(α)-DHTBZを好適な雄のルアーロックPPシリンジ(例えば、Qosina,USAの1.2mL雄のPPシリンジ)に充填し、一方、既知量のポリマー溶液ビヒクルを好適な雌のルアーロックPPシリンジ(例えば、Qosina,USAの1.2mL雌のPPシリンジ)に充填した。次いで、2つのシリンジを接続し、100回前後に混合して、注射の準備ができた最終的な懸濁液製剤を得た。均一性は、シリンジの上部及び底部の製剤DL%、並びに19G針(Terumo、Japan)を介して注射部分を測定することによって決定した。表6は、デュアルシリンジ混合直後のDL%分析をまとめたものである。DL%の結果は、シリンジ(上部及び底部)、並びに19G針を介した注射部分にわたって最小限の差を示し、デュアルシリンジによる均一な混合及び良好な製剤注射性を示した。加えて、(+)-(α)-DHTBZ粒径は、デュアルシリンジ混合後の製剤の均一性には影響しなかった。デュアルシリンジ混合後、小さいか大きいかにかかわらず、良好な製剤の均一性を達成した(+)-(α)-DHTBZ粒子を製剤中で試験した(表6)。
【表9】
【0085】
実施例2.(+)-TBZ及び(+)-(α)-DHTBZのポリマー製剤からの持続放出
一実施形態において、小さい(+)-TBZ粒子(D(50):10~35μm)を有する30%の薬物負荷で、45/55w/w比でRG502及びNMPで構成される製剤は、約12.5%の初期バーストでの持続放出、続いて1週間及び3週間での約30%及び45%のインビトロ放出をそれぞれ示した(
図1a)。別の実施形態では、我々は、RG503及びNMPの様々な組み合わせを使用することによって、VMAT2阻害剤のバースト放出を抑制する方法を可能にした。小さな(+)-TBZ粒子を用いた同じ30%の薬物負荷で、35/65w/w比でRG503及びNMPで構成される製剤は、インビトロ放出が遅く、最初の24時間で5%未満のバースト放出であり、3週間後には約20%しか放出しないことが示された(
図1a)。更に別の実施形態では、我々は、3週間の放出が依然として30%未満であったが、薬物負荷が50%まで上昇したときに、初期バーストが依然として4%未満に維持され得ることを実証した[35/65w/w比で50%(+)-TBZ(S)-RG503/NMPで構成される製剤、
図4a]。別の実施例では、我々は、35/65w/w比でRG503/NMPからなる製剤について、放出プロファイルが20~30%の間の薬物負荷で同じであることを実証した(
図1a)。これはまた、PLGAインサイチュ形成デポ薬物送達系における10%の薬物負荷の増加が、一般的に、より高い初期バースト及びより速い全体的な放出をもたらすため、予想外であった。このように、放出プロファイルを変更することなく薬物負荷を増加させることを可能にすることは、注射量を減少させた製剤を開発するのに有益である。
【0086】
一方、PLAは、ポリ(グリコール酸)(PGA)と比較して、より疎水性の乳酸単位で構成されるポリマーであり、これは分解に長い時間を必要とし、通常、長期持続放出性注射剤(一般的に4~6ヶ月)に使用される(Blasi et al.,Journal of Pharmaceutical Investigation,2019(49)pg.337-346)。PLGAポリマーについても同様である。一般的に言えば、より高いラクチド含有量(より疎水性)を有するPLGAポリマーは、分解により長い時間を要するであろう。したがって、更にいくつかの他の実施形態では、PLA、又はNMPを有するPLGA88/12で構成されるポリマー溶液ビヒクルを採用して、(+)-TBZ懸濁液を調製した。PLA及びPLGA(RG502)を同等の分子量(約15000Da)と比較すると、より長持ちするPLAは、実際にインビトロ放出プロファイルが遅いことを示した(
図1a)。30%の薬物負荷でのPLGA88-12/NMP60/40製剤は、わずか約15%の3週間の放出で、更に遅いインビトロ放出を示した。したがって、本出願では、我々は、初期バーストが低い又はなしで(+)-TBZの送達のための様々な持続時間を実証した調節可能なポリマーベースの送達系を可能にした。
【0087】
本出願では、生分解性のポリマービヒクルで構成される製剤からの(+)-(α)-DHTBZの持続送達も可能にした。一実施例(
図1b)では、60/40w/w比で40%(+)-(α)-DHTBZ(L)-RG502H/NMPからなる製剤は、3週間の期間にわたって、5%未満の初期バースト放出及び約80%の蓄積放出を伴う持続的な方法での薬物放出を実証した。一方、初期バースト放出が低いが薬物負荷が高いポリマーデポ組成物において、活性医薬成分(API)として(+)-(α)-DHTBZを用いた調整可能な放出プロファイルを実証した。一実施例では、50/50w/w比で50%(+)-(α)-DHTBZ(L)-RG503H/NMPで構成される製剤は、インビトロで4週間にわたって約40%の蓄積放出しか示さなかった(
図1b)。
【0088】
実施例3.(+)-TBZ及び(+)-(α)-DHTBZの放出に対するポリマー/溶媒比の効果
製剤に使用されるポリマーの含有量(%)が薬物放出に顕著な影響を及ぼすことはよく認識されている。一般的に言えば、ポリマーの含有量(%)が高いほど、薬物放出が遅くなる。ポリマー溶液は、ポリマーの含有量(%)が増加するにつれてより粘性になり、これにより、より低いバースト及びより遅い薬物放出がもたらされる。加えて、ポリマーの含有量が高いほど、APIがデポマトリックスから拡散するのにかかる時間が長くなり、薬物放出も遅くなる。ポリマー製剤からの(+)-TBZ及び(+)-(α)-DHTBZのインビトロ放出は、ポリマーと溶媒の比率を調節することによって調整することができることが本明細書で示される。放出時にポリマー/溶媒比を変えることが放出にどのような影響を与えるかを理解することは、その後の製剤開発のための微調整だけでなく、生産変動の許容性を特定する上でも非常に重要であり得る。VMAT2阻害剤の長時間作用型の、持続的な送達のための候補を探索するために、好ましくは1ヶ月間、より好ましくは2ヶ月間、RG503/NMP及びRG502/NMP製剤を更に調査した。
図2aは、(+)-TBZのインビトロ放出に対するポリマー/NMP比の効果を示す。予想外に、ポリマー/NMP比は、RG503/NMP(30%の薬物負荷)及びRG502/NMP(20%の薬物負荷)製剤について、それぞれ5%未満及び約10%未満の放出で、(+)-TBZの初期バースト放出に限定的な効果を与えるか又は全く効果を与えない(
図2a)。これは、より低いポリマー濃度(%)は、一般に、PLGAのインサイチュ形成デポ剤形においてより高い初期バーストをもたらすため、非常に独特であった。この場合、30%の薬物負荷でのRG503/NMP製剤について、ポリマー%が35%、又は25%、又は15%であっても、初期バーストは見出されなかった。しかしながら、30%の薬物負荷では、ポリマー溶液ビヒクルにおいて、RG503%が35%w/wから15%w/wに減少したとき、より速い全体的な放出が観察された(
図2a)。同じ傾向は、45/55及び35/65w/wポリマー/NMP比を有するRG502を使用して、小さいAPI粒子を用いて20%の薬物負荷で製剤においても観察された。特に、ポリマー/NMP比の影響は、最初の数日間は有意ではなく、これにより、制御された薬物送達のための好適なインビボピーク/トラフ(P/T)を決定するための鍵と典型的にみなされる初期バースト放出を変更することなく、全体的な薬物放出を調整することができる。なお、30%の薬物負荷では、35/65及び25/75w/w比でのRG503/NMPの放出プロファイルは、かなり類似していることに留意されたい。この特定の知見は、より広いポリマー/NMP範囲が所望の放出プロファイルに受け入れられ得るため、製造プロセス及び下流の製品開発に値する場合がある。
【0089】
一方、ポリマー/溶媒比の調整によって影響を受けるこの特徴的な放出プロファイルを別のVMAT2阻害剤で再現できるかどうかを調べるために、非常に類似した化学構造を共有する(+)-TBZの単なる還元形態である(+)-(α)-DHTBZを用いて同じ放出研究を行った(
図2b)。(+)-(α)-DHTBZ PLGAポリマー懸濁液の場合、初期バーストがポリマー/溶媒比の影響をほとんど受けなかった(+)-TBZとは異なり、ポリマーの含有量(%)の低下は、全体的なより速い放出だけでなく、RG502/NMP及びRG503/NMPポリマー溶液ビヒクルの両方の場合において、より高い初期バースト(30%の薬物負荷)をもたらした。そのような小さな構造的差異では、これらの2つのVMAT2阻害剤は、製剤中のそれらの相対的なポリマー%に対応して、依然として有意に異なるパターンの放出プロファイルを示した。当業者が単に先行技術に従うことによって放出特性を予測することは明らかにかなり困難である。更に、より高いバースト放出を示した低含有量のポリマー(%)で構成される製剤は、治療範囲内のVMAT2阻害剤を保証するために、初期段階で血漿(+)-(α)-DHTBZレベルを引き上げるためのレジメンにおける「ブースト」用量として利用することができる。
【0090】
実施例4.インビトロ放出に対する疎水性溶媒の効果
生分解性/生体適合性、高い薬物負荷、より良い患者のコンプライアンス、及び低減された投与頻度の利点のために、インサイチュ形成デポ薬物送達系は、非経口用途のための一般的なアプローチとなっている。しかしながら、典型的には、親水性溶媒の体液への迅速な消散によって引き起こされる初期バーストの問題に起因して、長期間の送達系においてゼロオーダー放出プロファイルを達成することは非常に困難である。初期バーストを回避するための1つの潜在的なアプローチは、PLGAポリマー溶液ビヒクルに疎水性溶媒を導入して、薬物放出を延長するために溶媒拡散を遅くすることである。BB、BA、及びトリアセチンは、ATRIGEL(登録商標)薬物送達系などにおける薬物放出を制御するようにNMPで調整された、一般的に入手可能な生体適合性の疎水性溶媒のいくつかである。驚くべきことに、BBは、当業者が予想するのとは逆の方法で(+)-(α)-DHTBZの放出を変更することができることがわかった(
図3)。一実施形態では、65/5/30の比で40%(+)-(α)-DHTBZ(L)-RG502/BB/NMPからなる製剤は、ポリマー溶液ビヒクル中のNMPのわずか5%(w/w)がBBで置換されたとき(14日間の放出が約50%から約70%に増加した)、実質的により速い放出を示した。別の実施形態では、50/5/45の比で50%(+)-(α)-DHTBZ(L)-RG503H/BB/NMPからなる製剤は、ポリマー溶液ビヒクル中の5%(w/w)のNMPをBBに置き換えた後の加速放出も示した(14日間の放出は、約20%から約30%に増加する)。また、BBのこの小さな部分によるNMPの置き換えは、より速い蓄積放出にしかつながらなかったが、実際には初期放出には影響しなかったこともわかった。これは、通常、BBを導入すると、ポリマー溶液の粘度が増加し、初期破裂を低減するのに役立つため、予想外でもあった。これらの発見は、関連分野における先行技術が明らかにしたものと比べて例外的であった。更に、本明細書で使用されるそのような方法は、初期放出に影響を与えることなく、VMAT2阻害剤の全体的な放出プロファイルを制御する上での利点を提供し、これは、生体対象における低血漿P/T比を維持するのを潜在的に助けることができる。これは、持続放出性のインサイチュ形成デポ薬物送達系を開発する場合に達成することが非常に困難である。
【0091】
実施例5インビトロ放出に対する薬物負荷の効果
インサイチュ形成、注射可能な持続放出性デポ/インプラント製剤中の薬物負荷(DL%)は、投与量及び治療効果がどのくらい持続し得るかを決定するという点で非常に重要である。典型的には、注射量が少ないほど、患者のコンプライアンスは良好である。なぜなら、必要な注射時間が短縮されるほど、患者の苦痛は軽減されるからである。35/65w/w比で30%(+)-TBZ(S)-RG503/NMPで構成される製剤は、インビトロ放出が遅く持続することを実証したため、我々は、この同一のポリマー溶液ビヒクルからの薬物放出プロファイルに対するDL%効果を更に探索した。(+)-TBZの調整した放出プロファイルは、RG503/NMPで構成されるビヒクル中のDL%を35/65の比率で調節することによって得られる。一実施形態では、DL%を50%に増加させると、(+)-TBZの放出が、同じビヒクルで構成されるが、30%の薬物負荷で構成される製剤と比較して有意に速くなった(
図4a)。予想外に、初期バーストは、20%から50%に増加したDL%の影響を受けず、その後の放出速度のみの影響を受けた。これは、特定の状況下で、大きな血漿レベルの変動(より小さい血漿レベルのP/T比)を回避するために、高い初期バーストを伴わないより速い全体的な放出プロファイルが好ましいという事実に起因して、長期持続放出性のインサイチュ形成デポ/インプラント製剤を開発するための有益な調整アプローチを提供するであろう。
【0092】
DL%が他の生分解性ポリマーに同様の方法で放出に影響を与えるかどうかを理解するために、我々は、様々なDL%を有する35/65w/w比で(+)-TBZ(L)-RG503H/NMPからなる製剤を更に調査し、同一の傾向を見出した。初期バーストは同じままであったが、DLを50%に増加させると、30%の薬物負荷よりも速いインビトロ放出プロファイルが得られた(
図4a)。そのような傾向は、小さい又は大きいAPI粒子が試験されたかどうかにかかわらず、真であり続けた。これらの結果は、上昇した初期バーストを効果的に回避しながら、放出プロファイルを調整するためのツールとしてDL%を使用するアプローチを更に強化する。
【0093】
より驚くべきことに、別の実施形態では、初期放出及び全体的な放出プロファイルの両方が、50/50w/w比で(+)-TBZ(M)-RG752H/NMPで構成される製剤において、DL%を50%から60%及び70%に増加させることによって著しく影響されないことを実証した(
図4b)。これは、DL%が50%から60%又は70%に上昇している間に低い初期バースト及び同様の放出プロファイルを維持しながら、投与量を減少させた持続放出性VMAT2阻害剤のインサイチュ形成デポの開発を可能にする、異なる方法で製剤設計に利益をもたらすであろう。
【0094】
別の実施形態では、(+)-(α)-DHTBZの放出プロファイルに対するDL%効果を、ポリマー溶液又は懸濁液製剤中で調査した。(+)-TBZから発見されたものと同様に、DL%は、初期バーストでの(+)-(α)-DHTBZ放出及び全体的な放出速度に異なる影響を与えた。初期バースト放出は、DL%を変化させることでわずかに変化したが、50/50w/w比でRG503/NMPで構成されるビヒクルにおいて、(+)-(α)-DHTBZ負荷が30%から45%に増加した場合、全体的な放出速度はより速かった。しかしながら、放出プロファイルが、30%及び40%の薬物負荷で例外的にほぼ同一であったことは独特であった(
図4c)。これは、様々な用量強度の持続放出性医薬品を開発することが一般的であり、用量強度が増加した製剤の初期バーストを増加させることなく、良好な用量比例性を達成することができるため、非常に有利であった。更に予想外なのは、DL%を変化させると、カルボン酸末端処理されたRG503H及び(+)-(α)-DHTBZとは完全に反対に作用した。(+)-(α)-DHTBZの放出は、RG503H製剤におけるDL%の増加とともに実際に遅かった(
図4c)。そのような知見は、VMAT2阻害剤の放出プロファイルに対する薬物負荷の効果は、他で開示されている他の関連する先行技術の製剤を単純に模倣又は再現することによって再現することができないことを再度強調した。
【0095】
実施例6(+)-TBZ及び(+)-(α)-DHTBZ粒径がポリマー製剤からの放出に及ぼす効果
典型的には、粒径は、懸濁液製剤中の放出プロファイルを変更する(Drug Des.Devel.Ther.2013;7:1027-1033.)。溶解速度は、懸濁液製剤中の粒子の表面積と正の相関がある。API粒子の粒径の減少に伴い比表面積が増加するが、薬物の溶解速度も増加する。溶解速度の実質的な差は、特に溶解試験の初期期間中、粒径及び相対表面積の変動に応じて存在し得る。
図5aは、異なる粒径を有する(+)-TBZを使用した、RESOMER/NMPポリマー溶液製剤における(+)-TBZ放出の調整を示した。35/65w/w比でRG503/NMP、及び60/40w/w比でRG502/NMPで構成される両方のポリマー溶液ビヒクルについて、大きなAPI粒子(D(50):100~130μm)は、DL%が30%又は50%であったにもかかわらず、実際には小粒子よりもインビトロ放出が遅いことを示した。
【0096】
しかし、予期せぬことに、(+)-TBZ放出に対するそのような粒径効果は、特定の種類のポリマー溶液ビヒクルとの組み合わせでのみ特異的であり得ることがわかった。
図5aに示されるように、懸濁液製剤からの薬物放出は、(+)-TBZ粒子からなり、RG503H/NMP溶液は、API粒子サイズによって予期せぬ影響を受けなかった。同様に、(+)-TBZの粒径は、DL%が60%又は70%であったにもかかわらず、55/45w/w比でRG752H/NMPからなるポリマー溶液ビヒクルからの放出に対する限定的な効果を示した(
図5b)。これは、PERSERIS(登録商標)(同じカルボン酸末端官能基であるPLGH8020を有するPLGAポリマーに懸濁したリスペリドンで構成される市販の製品)が、API粒径の減少とともに放出速度の増加の傾向があることを明らかにしたため、更に驚くべきことであった(PERSERIS(登録商標)FDA製品品質レビュー)。本出願におけるそのような独特の知見は、ポリマー製剤からの(+)-TBZの持続放出が、関連する従来技術に開示されている製剤を単純に模倣することによって容易に達成されないことを示唆した。
【0097】
別のアプローチでは、APIとして(+)-(α)-DHTBZで構成されるポリマー溶液ベースの懸濁液もまた、TDの治療のためのVMAT2阻害剤の長期持続放出について調査されていた。一実施形態では、50/50w/w比でのRG503/NMP及び40%の薬物負荷での小(+)-(α)-DHTBZ粒子で構成される製剤は、大(+)-(α)-DHTBZ粒子であるが、正確に同一のポリマー溶液ビヒクル(
図5c)で構成される製剤と比較して、インビトロ放出が全体的により速いことを実証した。そのような傾向は、様々な溶媒比(すなわち、
図5cの50/50及び45/55)でRG503/NMPで構成されるポリマー溶液の間で真であり続けた。RG503H(酸末端処理されたRG503)からの放出に対する(+)-TBZの粒径効果の欠如と同様に、(+)-(α)-DHTBZの粒径もまた、同じカルボン酸末端処理されたポリマー溶液ビヒクルからの放出速度への影響を示さなかったことに留意する価値がある。異なるポリマー溶液ビヒクルにおける薬物放出にAPI粒径がどのように影響し得るかについて、矛盾があることは明らかである。API粒径は、ポリマー溶液ベースの製剤のいくつかで薬物放出プロファイルに対するその効果を実証したが、放出プロファイルは、明らかに、特定の種類のポリマー溶液ビヒクル、例えば、RG503H又はRG752Hでは、API粒径の変動には影響されなかった。再度、本出願におけるそのような独特の知見は、ポリマー製剤からのVMAT2阻害剤の持続放出は、他で開示されている他の関連する先行技術の製剤を単純に模倣又は再現することによって達成することができないことを示唆した。
【0098】
実施例7.インビトロ(+)-(α)-DHTBZ放出に対する末端滅菌の効果
ガンマ線照射は、注射可能な製品並びに医療機器のための効果的な末端滅菌方法であり、通常、周囲条件下で実施することができ、高エネルギー貫通能力を有する(一般的に包装の変更は必要ない)。しかし、持続放出性、生分解性、ポリマー溶液ビヒクル系配合物の場合、ガンマ線照射は、そのような滅菌プロセス中にポリマー分解が起こり得るという事実のために大きなハードルであり得るか、又はポリマー安定性は、ガンマ線照射後に脆弱であり得る。更に、ポリマーMwは、水性媒体と接触すると異なるビヒクル粘度、様々な分解速度、及び固化速度をもたらす可能性があり、これは確かに製剤の放出プロファイルに劇的な影響を与えることが一般に認識されている。一般に、より高いMwポリマーは、一般的に、より低いMwポリマーよりも速く固化し、したがって、減少した初期バーストをもたらすと考えられている(Eliaz et al.,Journal of Biomedical Materials Research,50(3),2000)。加えて、50/50のラクチド対グリコリド比を有するPLGAポリマー/NMPで構成される製剤について、より小さいMwのPLGAポリマー(RG 502H)から作製したものは、より大きいMwのポリマー、RG 504Hから作製したものと比較して、より高い多孔性及びより大きな孔を有するインプラントを形成し、したがって、増加した初期バーストを示した(Asaneh et al.,Journal of Pharmaceutical Sciences,98(1),2009)。一方、初期放出もまた、ビヒクル粘度の影響を受ける可能性があり、例えば、より小さいMwを有するポリマーで構成される製剤は、より大きいMwを有するポリマーで構成される製剤よりも粘性が低く、逆に、より速い溶媒消散を引き起こし、より高い初期バーストをもたらすであろう。より複雑な方法では、Mwの差は、ポリマーが分解し、したがって薬物放出速度を変化させるのに必要な時間も決定する異なるポリマー鎖の長さを示す。全体として、ポリマーMwは、持続的な薬物放出に有意な影響を及ぼすことが認識されている。したがって、ポリマーMwを変化させる可能性のある原因は、薬物放出結果を変更すると予想される。したがって、一実施形態において、我々は、RG 503Hポリマーに対するガンマ滅菌の影響を評価した。ポリマーを最初に約35kGyでガンマ線照射した後、(+)-TBZ-RG503H/NMP製剤にした。驚くべきことに、35kGyでのガンマ線照射後、ポリマーMwが30,692から22,275(MW、表3)にほぼ30%低下したが、30%(+)-TBZ(S)-RG503H/NMP(35/65w/w比)で構成される製剤のインビトロ放出プロファイルに28日までの変化は見られなかった(
図6a)。この一貫した放出プロファイルは、Mwの変化とは無関係であり、予想外に、ガンマ線照射がそのような製剤の潜在的な末端滅菌方法であり得ることが現れた。一方、別の実施形態では、いくつかの粘性(+)-(α)-DHTBZポリマー懸濁液に対して、ガンマ滅菌(25~30kGy)を行った。予想外に、50/50w/w比で40%(+)-(α)-DHTBZ(L)-RG503/NMPで構成され、50/50w/w比で50%(+)-(α)-DHTBZ(L)-RG503H/NMPで構成される照射後製剤からは、加速放出が見出されたが、ガンマ線照射後、60/40w/w比で40%(+)-(α)-DHTBZ(L)-RG502H/NMPで構成される製剤の放出プロファイルはほとんど変化しなかった(
図6a)。
【0099】
あるいは、ポリマーに有害でない代替の滅菌アプローチも非常に求められている。例えば、0.22μmフィルターによる濾過は、末端滅菌のための別のオプションとなり得る。それにもかかわらず、持続的な方法で長期放出を提供するために、PLGA又はPLAベースの製剤は、一般に、粘性溶液又は懸濁液として入ってきて、これにより濾過が非常に問題となる。一実施形態では、40/60w/w比でRG502/NMPから作製した(+)-(α)-DHTBZポリマー懸濁液を、23%の薬物負荷で調製した。0.22μmのディスクフィルターを介したそのようなビヒクルの濾過は、容易かつ簡単であった。濾過されたポリマー溶液ビヒクル及び非濾過ポリマー溶液ビヒクルから作製された製剤のインビトロ放出プロファイルは同一であり(
図6b)、これは、粘度のより低いポリマー溶液ベースの製剤の末端滅菌プロセスとして0.22μmの濾過を使用することの実現可能性を実証した。
【0100】
本出願において、我々は、0.22μmの濾過又はガンマ線照射のいずれかが、TD治療のためのVMAT2阻害剤を含有する提案されたポリマーデポ組成物の末端滅菌プロセスとして適用され得ることを実証した。
【0101】
実施例8.ラットにおける皮下投与(+)-TBZ-RG503/NMP35/65懸濁液のPK
一実施例では、35/65w/wポリマー比で(+)-TBZ-RG503/NMPで構成される製剤のPK試験を、Sprague Dawley(SD)ラットで行った。本出願の前の実施例で実証されているように、これらの製剤を高い初期バーストなしで持続的なインビトロ放出のために選択した。(+)-TBZを含有するポリマー溶液又は懸濁液製剤を、前述のように調製した。一実施形態では、35/65w/w比で30%(+)-TBZ(L)-RG503/NMP、及び35/65w/w比で20%(+)-TBZ(S)-RG503/NMPで構成される製剤を、60mg/kgの用量レベルでSDラット(N=3)に皮下投与したが、それ以外は、10mg/kgの用量レベルでTBZ又はVBZ溶液を、参照として強制経口投与(N=3)を介して投与した。(+)-TBZを含有する製剤を投与した動物を、1日目に投与し、その後、投与後2、6、12、24時間及び4、7、14、21、28、35、42、49、56日に採血した。TBZ又はVBZ懸濁液を経口投与した動物については、投与後2、6、12、24、及び48時間に採血を行った。各動物について、血漿(+)-(α)-DHTBZ及び(+)-TBZの両方の濃度を、LC-MSを介して測定した。PK結果は、血漿(+)-(α)-DHTBZ及び(+)-TBZレベルの合計によって評価した。更に、2つの(+)-TBZ-RESOMER懸濁液の毎月の繰り返し投与、並びにTBZ又はVBZの毎日の繰り返し投与のPKシミュレーションを得て、
図7として提示した。
図7の下部の大図は、両方の(+)-TBZ-ポリマー懸濁液が、小さいP/T比で、1ヶ月間、VMAT2阻害剤((+)-(α)-DHTBZ及び(+)-TBZ)の持続放出を首尾よくもたらすことができたことを実証した。加えて、PK研究を通して、ポリマー製剤から放出されるVMAT2阻害剤の血漿レベルは、10~200ng/mLのウィンドウの間にあり、これは、VBZの経口剤形によって与えられる血漿レベルの範囲である。より重要なことに、本出願は、他の市販の医薬品と比較して、有意に少ない血漿レベルの変動でVMAT2阻害剤の持続放出を提供することができるポリマーデポ組成物を可能にした。XENAZINE(登録商標)(TBZ、(+)及び(-)-TBZのラセミ体混合物)は、TDの治療のために1日3回投与するように設計されており、Ingrezza(VBZ)は1日1回投与するように処方されている。TBZの1日3回の繰り返し投与及びVBZの1日1回の繰り返し投与のPKシミュレーションを、35/65w/w比で30%(+)-TBZ(L)-RG503/NMP及び35/65w/w比で20%(+)-TBZ(S)-RG503/NMPで構成される製剤の毎月の繰り返し投与のPKシミュレーションと並べて比較した(
図7の上部、小さい図)。TBZ又はVBZの毎日の送達[VBZ群の場合、血漿レベルは、(+)-(α)-DHTBZとしてのみ実証された]が、VMAT2阻害剤の明らかに大きな血漿変動を示したが、両方の(+)-TBZ-ポリマーデポ組成物は、VMAT2阻害剤の実質的に小さいP/T比を可能にした。本出願に提示される製剤は、はるかに低い投薬頻度を必要とする持続放出性薬として使用される大きな可能性を疑いなく提示したが、効果的な治療範囲内でVMAT2阻害剤を連続的に送達することができ、XENAZINE(登録商標)の現在利用可能な治療に伴う副作用を大幅に減少させるであろう。
【0102】
実施例9.ラットにおける皮下投与(+)-TBZ-RG752H/NMP65/35及び(+)-TBZ-RG503/NMPポリマーデポ組成物のPK
VMAT2阻害剤の1ヶ月間の送達のためにRG503で構成されるポリマー溶液ビヒクルを使用することの実現可能性を実証した後、我々は、2つのアプローチによって投薬期間を延長することについて更に探索した:1.RG503を他のPLGAポリマーに置き換えるが、ラクチド対グリコリド比が高い;及び2.同じRG503ポリマーを使用しているが、NMPに対するポリマーの比が高くなっている。更に、大きな注射量を避けるために、我々はまた、より高いDL%(>40%)を有する製剤を調査して、同じ低P/T比、ポリマー溶液製剤を介したVMAT2阻害剤の持続的な送達を達成した。一実施形態では、65/35w/w比で50%(+)-TBZ(M)-RG752H/NMP、55/45w/w比で50%(+)-TBZ(M)-RG503/NMP、及び45/55w/w比で50%(+)-TBZ(M)-RG503/NMPで構成される製剤を、前述と同じ方法で調製した。50mg/kgの用量レベルでインサイチュ形成インプラントをSDラット(N=3)に皮下投与し、続いて、投与後2、6、12、24時間及び4、7、14、21、28、35、42、49、56、及び60日で血液採取を行った。参照として、10mg/kgの用量レベルのTBZ及びVBZ懸濁液を、強制経口投与を介してSDラットに与え、続いて2、6、12、24及び48時間で採血した(N=3)。PK結果を二軸チャートとして
図8に示す。実線軸は、経口投与されたTBZ又はVBZ[VBZ群の場合、(+)-(α)-DHTBZとしてのみ実証された血漿レベル]懸濁液を投与された動物の血漿(+)-TBZ及び(+)-(α)-DHTBZレベルに経時的に対応する。これに対し斜線軸は、注射されたポリマー溶液製剤を皮下投与された動物の血漿(+)-TBZ及び(+)-(α)-DHTBZレベルに経時的に対応する。奨励することに、TBZ又はVBZ懸濁液を経口で投与された動物では大きな血漿レベルの変動が観察されたが、65/35w/w比で50%(+)-TBZ(M)-RG752H/NMP、55/45w/w比で50%(+)-TBZ(M)-RG503/NMP、及び45/55w/w比で50%(+)-TBZ(M)-RG503/NMPで構成される製剤を投与された動物では、有意に少ないVMAT2阻害剤の血漿レベルの変動が観察された。本出願で実証したことは、VMAT2の血漿レベルを維持し、所望の範囲に保持することができることを条件として、そのような小さい血漿P/T比を有するそのような長期の皮下送達剤形には、用量滴定が不要であり得るため、TD治療のための貴重な利点であった。更に、50%(+)-TBZ(M)-RG503/NMP(55/45w/w比)及び50%(+)-TBZ(M)-RG503/NMP(45/55w/w比)で構成される2つの製剤の持続時間は、ラットの(+)-TBZ及び(+)-(α)-DHTBZ血漿レベル(これは、経口経路を介してVBZで投与されたラットの治療ウィンドウ内であった)を少なくとも1ヶ月半にわたって維持することができた。更に奨励することに、65/35w/w比で50%(+)-TBZ(M)-RG752H/NMPで構成される製剤は、更に長い持続時間を首尾よく可能にした。(+)-TBZ及び(+)-(α)-DHTBZのラット血漿レベルは、60日間のPK試験で合わせて10ng/mLを超えており、P/T比は2未満であった(
図8)。最後に、DL%を50%w/wに上昇させると、30%以下のDL%と比較して、注射量を有意に減少させることができる。それにもかかわらず、そのような知見は、本出願では、初期バースト放出なしで高薬物負荷ポリマー製剤を可能にしたため、独特であった。注射量の少ない長期的な持続放出性製剤は、間違いなく患者のコンプライアンスを向上させるであろう。
【0103】
実施例10.ラットにおける皮下投与(+)-TBZ-PLGA88-12/NMP製剤のPK
PLAは、PGAと比較して分解に時間がそのような小さな乳酸単位で構成されたポリマーである。VMAT2阻害剤の1ヶ月間の送達のために、50/50の比率でPLGAで構成されるポリマー溶液ビヒクルを使用することの実現可能性を実証した後、我々は、PLGA50/50を、より高いラクチド対グリコリド比を有する他のPLGAポリマーに置き換えることによって、送達期間を延長することを更に探求した。一実施形態では、40%(+)-TBZ(L)からなる製剤を、前述と同じ方法で調製したが、ポリマー溶液ビヒクルとして60/40w/w比でPLGA88-12/NMPを使用した。60mg/kgの用量レベルのインサイチュ形成インプラントをSDラット(N=3)に皮下投与し、その後、投与後2、6、12、24時間及び4、7、14、21、28、35、42、49、56日に採血した。参照として、10mg/kgの用量レベルのTBZ及びVBZ懸濁液を、強制経口投与を介してSDラットに与え、続いて2、6、12、24及び48時間で採血した(N=3)。PK結果を二軸チャートとして
図9に示す。実線軸は、経口投与されたTBZ又はVBZ[VBZ群の場合、(+)-(α)-DHTBZとしてのみ実証された血漿レベル]懸濁液を投与された動物の血漿(+)-TBZ及び(+)-(α)-DHTBZレベルに経時的に対応する。これに対し斜線軸は、注射された40%(+)-TBZ-PLGA88-12/NMP60/40懸濁液を皮下投与された動物の血漿(+)-TBZ及び(+)-(α)-DHTBZレベルに経時的に対応する。驚くべきことに、TBZ又はVBZ懸濁液を経口投与された動物では大きな血漿レベルの変動が観察されたが、40%(+)-TBZ(L)-PLGA88-12/NMP60/40懸濁液を投与された動物では、有意に少ないVMAT2阻害剤の血漿レベルの変動が見出された。これは、VMAT2の血漿レベルを維持し、所望の範囲に保持することができることを条件に、低血漿P/T比を有するそのような長期の皮下送達剤形には、用量滴定が不要であり得るため、TD治療にとってかなりの利点である。更に、40%(+)-TBZ(L)-PLGA88-12/NMP60/40懸濁液の持続時間は、少なくとも2ヶ月間、(+)-TBZ及び(+)-α-DHTBZを放出することができた。
【0104】
実施例11.ラットにおける皮下投与のPK(+)-(α)-DHTBZ-PLGA50-50/NMP製剤
インビボ動物試験は、60/40w/w比で40%(+)-(α)-DHTBZ(L)-RG502H/NMP、50/50w/w比で50%(+)-(α)-DHTBZ(L)-RG503H/NMP、及び50/50w/w比で50%(+)-(α)-DHTBZ(S)-RG503/NMPからなる製剤を使用して、SDラットを用いて実施した。本出願の前の実施例で実証されているように、全ての懸濁液を、高い初期バーストなしで持続的なインビトロ放出のために選択した。(+)-(α)-DHTBZポリマーデポ組成物を前述のように調製した。一実施形態において、60/40w/w比で40%(+)-(α)-DHTBZ(L)-RG502H/NMP、50/50w/w比で50%(+)-(α)-DHTBZ(L)-RG503H/NMP、及び50/50w/w比で50%(+)-(α)-DHTBZ(S)-RG503H/NMPで構成される製剤を、50mg/kgの用量レベルでSDラット(N=3)に皮下投与したが、それ以外は、10mg/kgの用量レベルでTBZ又はVBZ懸濁液を、参照として強制経口投与(N=3)を介して投与した。(+)-(α)-DHTBZ-ポリマー懸濁液を投与した動物に1日目に投与し、その後、投与後2、6、12、24時間及び4、7、14、21、28、35、42、49、56日に採血した。TBZ又はVBZ懸濁液を経口投与した動物については、投与後2、6、12、24、及び48時間に採血を行った。各動物について、血漿(+)-(α)-DHTBZ濃度をLC-MSを介して測定し、35日間のPKプロファイルを評価した。更に、(+)-(α)-DHTBZ-RESOMER懸濁液の隔週反復投与、並びにTBZ又はVBZの毎日の反復投与のPKシミュレーションを取得し、
図10として提示した。
図10の下部の大きな図は、全ての(+)-(α)-DHTBZポリマー懸濁液が、低P/T比で、2週間にわたってVMAT2阻害剤の持続放出を首尾よくもたらすことができたことを実証した。加えて、PK研究を通して、ポリマー製剤から放出されるVMAT2阻害剤の血漿レベルは、10~200ng/mLのウィンドウの間にあり、これは、VBZの経口剤形によって与えられる血漿レベルの範囲内である。より重要なことに、本出願は、他の市販の医薬品と比較して、有意に少ない血漿レベルの変動でVMAT2阻害剤の持続放出を提供することができるポリマーデポ組成物を可能にした。XENAZINE(登録商標)(TBZ、(+)及び(-)-TBZのラセミ体混合物)は、遅発性ジスキネジア(TD)の治療のために1日3回投与するように設計されており、Ingrezza(VBZ)は1日1回投与するように処方されている。TBZの1日3回の反復投与及びVBZの1日1回の反復投与のPKシミュレーションを、60/40w/w比で40%(+)-(α)-DHTBZ(L)-RG502H/NMP、50/50w/w比で50%(+)-(α)-DHTBZ(L)-RG503H/NMP、及び50/50w/w比で50%(+)-(α)-DHTBZ(S)-RG503H/NMPで構成される製剤の隔週の繰り返し投与のPKシミュレーションと並べて比較した(
図10の上部、小さい図)。TBZ又はVBZの毎日の送達は、VMAT2阻害剤の大きな血漿変動を示したが、全ての(+)-(α)-DHTBZ-ポリマー溶液製剤は、VMAT2阻害剤の実質的に小さいP/T比を可能にした。特に、インビトロ試験で見出されたものと一致して、(+)-(α)-DHTBZ粒径は実際にインビトロラットPKプロファイルに効果を示さなかった。この知見は、API粒径範囲を狭い範囲に設定する必要がないかもしれないという点で有利であり、これは製品開発の観点から有益であろう。全体として、本出願に提示される(+)-(α)-DHTBZ製剤は、はるかに低い投薬頻度を必要とする持続放出性薬として使用される大きな可能性を疑いなくもたらしたが、効果的な治療範囲内でVMAT2阻害剤を継続的に送達することができ、XENAZINE(登録商標)の現在利用可能な治療に伴う副作用を大幅に低減する。
【0105】
実施例12.ラットにおける皮下投与(+)-(α)-DHTBZ-PLGA5050/NMP製剤のPK
インビボ動物試験は、40%(+)-(α)-DHTBZ(L)-RG 503/NMP(50/50w/w比)、40%(+)-(α)-DHTBZ(S)-RG 503/NMP(50/50w/w比)、40%(+)-(α)-DHTBZ(L)-RG 502H/NMP(60/40w/w比)、50%(+)-(α)-DHTBZ(L)-RG 503H/NMP(50/50w/w比)、及び50%(+)-(α)-DHTBZ(S)-RG 503H/NMP(50/50w/w比)で構成される製剤を使用して、SDラットを用いて実施した。本出願の前の実施例で実証されているように、全ての懸濁液を、高い初期バーストなしで持続的なインビトロ放出のために選択した。(+)-(α)-DHTBZポリマーデポ組成物を前述のように調製した。上記の5つの製剤全てを50mg/kgの用量レベルでSDラット(N=3)に皮下投与し、それ以外は、10mg/kgの用量レベルでTBZ又はVBZ懸濁液を、参照として強制経口投与(N=3)を介して投与した。(+)-(α)-DHTBZ-ポリマー懸濁液を投与した動物に1日目に投与し、その後、投与後2、6、12、24時間及び4、7、14、21、28、35、42、49、56日に採血した。TBZ又はVBZ懸濁液を経口投与した動物については、投与後2、6、12、24、及び48時間に採血を行った。各動物について、血漿(+)-(α)-DHTBZ濃度をLC-MSを介して測定し、35日間のPKプロファイルを評価した。更に、(+)-(α)-DHTBZ-RESOMER懸濁液の隔週反復投与、並びにTBZ又はVBZの毎日の反復投与のPKシミュレーションを取得し、
図11として提示した。
図11の下部の大きな図は、全ての(+)-(α)-DHTBZポリマー懸濁液が、低P/T比であるが、2週間にわたってVMAT2阻害剤の持続放出を首尾よくもたらすことができたことを実証した。加えて、PK試験を通して、ポリマー製剤から放出されるVMAT2阻害剤の血漿レベルは、10~200ng/mLのウィンドウの間にあり、これは、VBZの経口剤形によって与えられる血漿レベルの範囲内である。更に重要なことに、本出願は、他の市販の医薬品と比較して、有意に少ない血漿レベルの変動でVMAT2阻害剤の持続放出を提供することができるポリマーデポ組成物を再び可能にした。TBZの1日3回の反復投与及びVBZの1日1回の反復投与のPKシミュレーションを、50/50w/w比で40%(+)-(α)-DHTBZ(L)-RG 503/NMP、50/50w/w比で40%(+)-(α)-DHTBZ(S)-RG 503/NMP、60/40w/w比で40%(+)-(α)-DHTBZ(L)-RG 502H/NMP、50/50w/w比で50%(+)-(α)-DHTBZ(L)-RG 503H/NMP、及び50/50w/w比で50%(+)-(α)-DHTBZ(S)-RG 503H/NMPで構成される製剤の隔週の繰り返し投与のPKシミュレーションと並べて比較した(
図11の上部、小さい図)。TBZ又はVBZの毎日の送達は、VMAT2阻害剤の大きな血漿変動を示したが、全ての(+)-(α)-DHTBZ-ポリマー溶液製剤は、VMAT2阻害剤の有意に減少したP/T比を可能にした。注目すべきことに、本出願に提示される(+)-(α)-DHTBZ製剤は、はるかに低い投薬頻度を必要とする持続放出性薬として使用される大きな可能性を疑いなく提示したが、効果的な治療範囲内でVMAT2阻害剤を連続的に送達することができ、XENAZINE(登録商標)の現在利用可能な治療に伴う副作用を大幅に減少させるであろう。
【国際調査報告】