(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-18
(54)【発明の名称】組織インプラントの調製のための微細構造化足場
(51)【国際特許分類】
C12M 3/00 20060101AFI20240910BHJP
C12N 5/071 20100101ALI20240910BHJP
【FI】
C12M3/00 A
C12N5/071
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024503897
(86)(22)【出願日】2022-07-21
(85)【翻訳文提出日】2024-02-28
(86)【国際出願番号】 EP2022070523
(87)【国際公開番号】W WO2023001975
(87)【国際公開日】2023-01-26
(32)【優先日】2021-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524026241
【氏名又は名称】サントル デチュード デ セリュール スーシュ (セーウーセーエス)
【氏名又は名称原語表記】CENTRE D’ETUDE DES CELLULES SOUCHES (CECS)
(71)【出願人】
【識別番号】522245226
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ デヴリー‐ヴァル‐デソンヌ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE D’EVRY-VAL-D’ESSONNE
(71)【出願人】
【識別番号】595040744
【氏名又は名称】サントル・ナショナル・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・シャンティフィク
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE
(71)【出願人】
【識別番号】520179305
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ パリ-サクレー
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE PARIS-SACLAY
(74)【代理人】
【識別番号】100080447
【氏名又は名称】太田 恵一
(72)【発明者】
【氏名】モンヴィル,クリステル
(72)【発明者】
【氏名】エラルド,エリーズ
(72)【発明者】
【氏名】ベン ムバレク,カリム
(72)【発明者】
【氏名】アムーダ,フレデリック
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA08
4B029AA21
4B029BB11
4B029CC02
4B029CC10
4B029CC11
4B029GB09
4B065AA93X
4B065BC41
4B065BC50
4B065CA44
(57)【要約】
本発明は、生体適合性膜タイプの細胞培養用支持体に相当する微細構造化足場の調製に関する。本発明はまた、微細構造化足場と細胞とりわけ光受容体とを含む組成物にも関する。本発明は特に、網膜色素上皮および神経網膜の疾患の治療のための移植可能な移植片の調製に適用される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細構造化膜を含むかまたはそれから成る足場であって、微細構造化膜が、前記膜を第1の表面(1)および第2の表面(2)で貫通する円錐状の微細孔を含み、
- 膜の頂端表面(1)は、膜の基底表面(2)の微細孔の直径の少なくとも3倍、好ましくは少なくとも4倍である直径を持つ微細孔を有し、および
- 円錐状の微細孔は、二脚型、三脚型または四脚型である
ことを特徴とする足場。
【請求項2】
- 膜の頂端表面(1)は、15μm~25μm、好ましくは18μm~22μmの直径(d1)を持つ微細孔を有し、
- 膜の基底表面(2)は、4μm~8μm、好ましくは5μm~6μmの直径(d2)を持つ微細孔を有する
ことを特徴とする、請求項1に記載の足場。
【請求項3】
微細構造化膜の厚さが、80μm~120μmであることを特徴とする、請求項1または2に記載の足場。
【請求項4】
微細孔が、縁から縁まで20μm~40μmの距離によって間隔をあけられることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一つに記載の足場。
【請求項5】
微細構造化膜が、生体適合性かつ任意に生分解性であるポリマーで作られることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一つに記載の足場。
【請求項6】
ポリマーが、PDMSまたはPLGAであることを特徴とする、請求項5に記載の足場。
【請求項7】
微細構造化膜に細胞、とりわけ光受容体、光受容体前駆体または網膜前駆体が播種されることを特徴とし、ただし足場の前記細胞の実現のために用いられるヒト多能性幹細胞が、ヒト胚の破壊を必要とせず、またヒトの発育過程を誘導する能力を持たない、請求項1から6のいずれか一つに記載の足場。
【請求項8】
移植可能な移植片を作製するための、請求項1から7のいずれか一つに記載の足場の使用。
【請求項9】
移植可能な移植片が、
- 請求項1から6のいずれか一つに記載の微細構造化足場の中に播種された光受容体または光受容体前駆体または網膜前駆体の上層、
- 生物学的支持体またはポリマー支持体の上で培養された網膜色素上皮細胞の下層
を含むかまたはそれらから成ることを特徴とする、請求項8に記載の足場の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体適合性膜タイプの細胞培養用支持体に相当する微細構造化足場の調製に関する。本発明はまた、微細構造化足場と細胞、とりわけ光受容体とを含む組成物にも関しており、該組成物は網膜色素上皮細胞を伴う場合と伴わない場合がある。本発明は特に、網膜色素上皮および神経網膜の疾患の治療のための移植可能な移植片の調製に適用される。
【背景技術】
【0002】
網膜は、眼球の後面を覆う感覚層であり、水晶体によって形成された画像を受け取り、この画像を神経インパルスに変換するものであり、神経インパルスは、視神経を通して脳に伝達される。網膜は、網膜色素上皮と重要な相互作用をする神経組織であり、網膜色素上皮はその生存および正常な機能に必要である。網膜の中心部である黄斑には、さまざまな色および視覚的細部を知覚できる光受容体が豊富である。黄斑は、顔認識や読み取りに極めて重要である。
【0003】
多くの疾患が、網膜色素上皮または神経網膜を侵して、失明につながり得る視覚障害を引き起こす可能性がある。これらの疾患には、遺伝性または加齢性の黄斑変性、黄斑ジストロフィー、および網膜色素変性が含まれる。網膜上皮または神経網膜はまた、外傷または感染症により損傷することもある。最近の研究では、網膜色素上皮細胞または網膜細胞を網膜下腔の中に移植することにより網膜病変を遅らせ、止め、または更には修復することができ、このことがこれらの疾患に起因する視覚能力の低下を阻止し、または神経網膜細胞を移植する場合にはこれらの疾患を改善できることが示されているようである。
【0004】
網膜を保存する試みとして、さまざまな形態の移植または移植技術が提案されてきた。より最近では、多能性幹細胞の分化によって得られた網膜色素上皮細胞の培養物を移植することによって、有望な結果が得られており、細胞は生体適合性膜上で培養されたものである。
【0005】
進行した網膜疾患の場合、網膜色素上皮からの細胞移植だけでは十分ではない。光受容体もまた置き換える必要がある。光受容体は、高感受性の光色素を含む頂端部の外節と基底部の軸索終末とを備えた、高度に極性化し特殊化した細胞タイプである。
【0006】
網膜色素上皮細胞の有無にかかわらず、極性化受容体の移植は、組織化された構造を持つ多層移植片を提供する必要があるため、重要な課題を有する。
【0007】
3次元支持体微細加工技術は、これらの問題を解決する可能性を持っている。
【0008】
光受容体細胞培養用の足場システムの製造は、すでに提案されている。
【0009】
例えば、国際公開第2017/164992号は、光受容体の垂直方向の成長を可能にする微細孔を含む支持部材を含む微細構造化足場システムを記載している。
【0010】
微細構造化足場の微細孔は、「cell guide channel(細胞ガイドチャネル)」と呼ばれる少なくとも1つの円筒状部分に接続された「curvilinear cell receiver(曲線を成す細胞レシーバ)」と呼ばれる球状または円錐状の部分で作られている。
【0011】
支持体構成要素の微細孔の密度は、光受容体と網膜上皮細胞との間の可能な接続数を決定するため、非常に重要なパラメータである。国際公開第2017/164992号の場合、2つの隣接した微細孔間の距離は、0.1~5μm(縁から縁まで)または中心から中心まで16μmである。この足場は、多数の細胞間接続に貢献する。しかし、細孔の深さは、光受容体の最適な成熟に貢献するものではない。このタイプの細胞には、100μm前後の深さ(成熟したヒトの光受容体の大きさに相当)が望まれる。しかしながら、100μm前後の厚さおよび国際公開第2017/164992号に示されているものと同じような細孔の周期性を有する微細構造化膜の作製は、現時点での製造プロセスに適合しないであろう。周期がパターンの高さ(50μm対100~120μm)よりも短いため、膜を型から取り外すときに(当該発明の)パターンがマスター型から引き裂かれる危険性がある。しかしながら、このタイプの足場の作製は、製造の物理的制約が大きいため、特に型から取り外す際に微細構造化膜が裂ける危険性があり、問題となることがある。
【0012】
また、先行技術では、円筒形状の微細孔を含む、細胞、特に光受容体を培養するための多数の微細構造化足場が記載されていることも指摘できる。このタイプの足場に成熟または未成熟の光受容体を播種すると、細胞の一部が微細孔の底に落ちるという問題がある。
【0013】
光受容体は、外節(光受容体の伸展)を持つ極性化され配向された細胞であり、基底レベルでは網膜色素上皮細胞と、また頂端レベルでは生体内組織のシナプスとの接触を形成する。適切な培地と適切なシグナル伝達の手掛かりがなければ、生体外で再構成される組織内の光受容体の正しい配向を達成することは難しいかもしれない。これを克服するために、未成熟な光受容体を中に播種することができる微細孔を持つ特別に設計された微細構造化ポリマー足場を通して適切な成熟が導かれ、一方でその配向はそのような足場の微細構造によって課せられる。微細構造化足場は、光受容体の成熟を期待される配向に導く手掛かりを提供する網膜色素上皮の上の微細孔内に横方向の物理的制約を課すことによって、光受容体の成熟を導く。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、製造上の制約のため取り扱いがより容易で、かつ、微細孔内の光受容体の成熟および組織化を最適化できる、細胞培養用の新しい足場を調製する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の目的のうちの一つはしたがって、足場の製造上の問題を制限すると同時に、生体内の網膜組織に出来るだけ近い細胞組織化を提案するために、微細孔の密度が最適化されている、細胞培養用とりわけ光受容体細胞培養用の微細構造化膜タイプの足場を提案することである。
【0017】
第一の態様において、本発明はしたがって、複数の円錐状の貫通微細孔を備えた微細構造化膜を含むか、またはそれから成る足場に関する。
【0018】
本発明の別の態様は、とりわけ光受容体用の、細胞培養支持体として使用される微細構造化足場に関する。
【0019】
第二の態様において、本発明は、微細構造化足場および細胞、とりわけ光受容体を含む組成物に関する。
【0020】
本発明の別の態様は、微細構造化足場および細胞、とりわけ光受容体を含む組成物を調製するためのプロセスに関する。
【0021】
第三の態様において、本発明は、微細構造化足場、細胞とりわけ光受容体と、支持体の上で培養された網膜色素上皮細胞とを含む、移植可能な移植片に関する。
【0022】
本発明の別の態様は、微細構造化足場と、細胞とりわけ光受容体と、支持体上で培養された網膜色素上皮細胞とを含む移植可能な移植片を調製するための方法に関する。
【0023】
本発明の別の態様は、特にフォトリソグラフィによって、微細構造化足場を調製するためのプロセスに関する。
【0024】
用語「足場」は、細胞、とりわけ光受容体の培養に有用な微細構造化膜タイプの生体適合性支持体を指すために本明細書で使用される。
【0025】
本発明による足場は、円錐状の貫通微細孔を含む微細構造化膜である。円錐形状の微細孔は、膜の高さ全体にわたって先細であるか、または膜の頂端部分に位置する微細孔の第1の部分(高さh1)にわたって部分的に先細であり、膜の基底部分に位置する微細孔の第2の部分(高さh2)が、少なくとも2つ、好ましくは3つまたは4つの先細のまたは実質的に先細のチャネルで形成されるかのいずれかである。これらのチャネルは、円筒形または実質的に円筒形ではないことが好ましい。
【0026】
[細胞培養足場の構造]
本発明の趣旨において、足場は、円錐状の貫通微細孔を有する微細構造化膜を含むか、またはそれから成る。微細孔の直径および分布は、膜の配向性によって異なる。膜の頂端表面(1)は、上向きの表面に相当する。膜の基底表面(2)は、下向きの膜表面、すなわち、本発明の特定実施形態では、網膜色素上皮細胞層と接触している膜表面であって、膜の頂端表面上の微細孔よりも小さい直径の微細孔を含む膜表面に相当する。
【0027】
本発明の一特定態様において、
- 膜の頂端表面(1)は、膜の基底表面(2)の微細孔の直径(d2)よりも少なくとも3倍、好ましくは少なくとも4倍大きい直径(d1)を持つ微細孔を有する。
【0028】
本発明の一特定態様において、足場は、微細構造化膜を含むかまたはそれから成り、微細構造化膜は、前記膜を第1の表面(1)および第2の表面(2)で貫通する円錐状の微細孔を含み、以下を特徴とする:
- 膜の頂端表面(1)は、膜の基底表面(2)の微細孔の直径(d2)よりも少なくとも3倍、好ましくは少なくとも4倍大きい直径(d1)を持つ微細孔を有する。
【0029】
本発明の別の特定態様において、円錐状の微細孔は、高さ(h1)の第1の部分(頂端部分)と、膜の基底表面(2)に数個の微細孔を形成する数個のチャネルを有する高さ(h2)の第2の部分(基底部分)とを有する。
【0030】
微細孔の高さ(h1)は、だいたい、微細孔の全高の4分の1から2分の1である。好ましくは、微細孔の高さ(h1)は、だいたい、微細孔の全高の3分の1である。
【0031】
微細孔の高さ(h1)は、20μm~60μm、好ましくは30μm~50μm、より好ましくは30μm~40μm、すなわち30、31、32、33、34、35、36、37、38、39または40μmである。
【0032】
微細孔の高さ(h2)は、40μm~80μm、好ましくは50μm~70μm、より好ましくは55μm~65μm、すなわち55、56、57、58、59、60、61、62、63、64または65μmである。
【0033】
本発明によると、円錐状の微細孔が2つのチャネルを有するとき、微細孔は二脚と呼ばれ、円錐状の微細孔が3つのチャネルを有するとき、微細孔は三脚と呼ばれ、また円錐状の微細孔が4つのチャネルを有するとき、微細孔は四脚と呼ばれる。
【0034】
本発明の一特定態様において、円錐状の微細孔は、二脚型、三脚型または四脚型である。
【0035】
本発明によると、円錐状の微細孔は、膜の頂端表面(1)で、15μm~25μm、好ましくは18μm~22μmの直径(d1)を有する。
【0036】
膜の頂端表面(1)での微細孔の直径(d1)は、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24または25μmの値を有する。
【0037】
本発明によると、円錐形状の微細孔は、膜の基底表面(2)で、4μm~8μm、好ましくは5μm~6μmの直径(d2)を有する。
【0038】
膜の基底表面(2)での微細孔の直径(d2)は、4、5、6、7または8μmである。
【0039】
本発明によると、微細構造化膜は、二脚型、三脚型または四脚型の円錐状の微細孔を複数有しており、微細孔は、以下によって特徴づけられる:
- 15μm~25μm、好ましくは18μm~22μmである、膜の頂端表面(1)における直径(d1)、
- 2~6μm、好ましくは3~5μm減少した直径(d1)に相当する値を有する直径(d1’)、
- 4μm~8μm、好ましくは5μm~6μmである、膜の基底表面(2)における直径(d2)、
- 20μm~60μmである高さh1、
- 40μm~80μmである高さh2であって、高さは、微細構造化膜の全高(h1+h2)が80μm~120μmであると理解される。
【0040】
本発明によると、二脚、三脚または四脚の円錐状の微細孔の直径(d1’)は、微細孔の直径であって、微細孔の円錐部が数個の好ましくは円錐状のチャネルを有する領域、における直径に相当する。
【0041】
本発明によると、円錐状の二脚、三脚または四脚の微細孔の直径(d1’)は、9μm~23μm、好ましくは16μm~20μmである。
【0042】
本発明の一特定態様において、足場は、微細構造化膜を含むかまたはそれから成り、微細構造化膜は、前記膜を第1の表面(1)および第2の表面(2)で貫通する円錐状の微細孔を含み、以下を特徴とする:
- 膜の頂端表面(1)は、15μm~25μm、好ましくは18μm~22μmの直径(d1)を持つ微細孔を有し、
- 膜の基底表面(2)は、4μm~8μm、好ましくは5μm~6μmの直径(d2)を持つ微細孔を有する。
【0043】
本発明の一特定態様において、微細構造化膜の厚さは、80μm~120μm、好ましくは90μm~110μm、さらにより好ましくは95μm~105μm、またはさらにより好ましくは100μm前後である。
【0044】
本発明の一特定態様において、微細孔は、縁から縁まで20μm~40μm、好ましくは30、31、32、33、34、35、36、37、38、39または40μmの距離によって間隔をあけられる。
【0045】
光受容体と網膜色素上皮細胞との接触数を増やすために、微細構造化膜の基底面の微細孔数が、2倍、3倍、4倍またはそれ以上に増やされる。この技術的戦略は、国際公開第2017/164992号の場合のように微細孔の密度を増加させる必要なく、細胞相互作用の数を改善する。
【0046】
微細構造化膜の製造の物理的制約により、本発明の微細構造化膜の微細孔の密度は、膜の頂端面上の2つの隣接する微細孔間の距離が少なくとも20μm、好ましくは少なくとも25μm、さらにより好ましくは少なくとも30μm、またさらにより好ましくは少なくとも35μmとなるようなものである。
【0047】
本発明の一特定態様において、足場は、微細構造化膜から成り、微細構造化膜は、前記膜を第1の表面(1)および第2の表面(2)で貫通する円錐状の微細孔を含み、以下を特徴とする:
- 膜の頂端表面(1)は、18μm~22μm、好ましくは20μmの直径(d1)を持つ微細孔を有し、
- 膜の基底表面(2)は、4μm~8μm、好ましくは5μmの直径(d2)を持つ微細孔を有し、
- 微細孔は、縁から縁まで20μm~40μm、好ましくは35μmの距離によって間隔をあけられており、
- 微細構造化膜の厚さは、80μm~120μm、好ましくは100μmである。
【0048】
本発明による足場は、生体適合性、柔軟性かつ/または伸長性のポリマーで作られる微細構造化膜を含むか、またはそれから成り、また特に適している特定実施形態において、ポリマーは生分解性である。
【0049】
適切なポリマーは、シリコンゴム(例えばポリジメチルシロキサン(PDMS))、ポリウレタンゴム、スチレンブタジエンゴムおよびアクリロニトリルブタジエンゴムといった合成ゴム、エラストマーの天然ゴム(例えば、熱可塑性ポリウレタン樹脂、熱可塑性コポリエステル、熱可塑性ポリアミド)、エポキシ樹脂(例えばSU-8)、ポリイミド、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル(例えばポリ乳酸-グリコール酸共重合体(PLGA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ(グリセロールセバケート)(PGS))、多糖類(例えばキトサン)、パリレン、およびそれらの組み合わせを含むが、それらに限定にされるものではない。
【0050】
有利には、これらのポリマーは、「プラスチックタイプ」であり、このことにより、足場の取り扱いがより容易になる。
【0051】
一特定態様において、ポリマーは、PDMSまたはPLGAである。
【0052】
本発明の別の態様は、微細構造化足場および細胞、とりわけ光受容体を含む組成物に関する。
【0053】
本発明の一特定実施形態において、播種される細胞は、とりわけ光受容体、光受容体前駆体または網膜前駆体である。
【0054】
本発明の一特定実施形態において、足場は、微細構造化膜に細胞、とりわけ光受容体、光受容体前駆体または網膜前駆体が播種されることを特徴とする。
【0055】
損傷組織を治療するための細胞療法に有用な本組成物は、以下を含む:
- 先に記述されたような微細構造化膜、および
- 1つの微細孔につき少なくとも1つの光受容体、光受容体前駆体または網膜前駆体。
【0056】
微細構造化膜の微細孔は、微細孔の内壁に、少なくとも1つの光受容体(または光受容体前駆体または網膜前駆体)が粘着することを可能にするように構成される。
【0057】
微細構造化膜の微細孔は、光受容体前駆体または網膜前駆体が、光受容体に分化することおよび/または成熟することを可能にするように構成される。
【0058】
微細構造化足場は、さまざまな生物学的産物または小分子を添加することにより、宿主網膜における成熟、生着、分化、細胞接着および/または細胞集積を促進するために使用することができる。これらの生物学的産物は、ニューロトロフィン(例えばCNTF、BDNF、NT-3、NT-4、NGF、GDNF、IGF1)またはサイトカイン(例えばIL-13、IL-11、IL-10、IL-6、IL-4、IL-1ra、TGF-beta)または小分子またはコートタンパク質(例えばコラーゲン、ラミニン、ビトロネクチン、フィブロネクチン)であり得る。これらの生物学的産物はまた、多能性幹細胞、間葉系幹細胞、胚または胎児由来の分化細胞または前駆細胞、成体由来の分化細胞(初代細胞)または細胞株などのさまざまな細胞タイプ由来であり得るエクソソーム、マイクロベシクル、アポトーシス小体を含む細胞外小胞でもあり得る。
【0059】
これらの生物学的産物は、細胞培養中かつ/または宿主網膜への移植後に徐々に放出される。生物学的産物の段階的な放出の制御は、ポリマーの分解(生分解性の場合)によって、またはポリマーの濃度/密度またはポリマーマトリクスのサイズまたは生物学的産物の初期濃度によって誘導することができる。非分解性ポリマーの具体的な場合において、ポリマーが作製するネットワークが生物学的産物を包み込み、生物学的産物を徐々に放出することを可能にする。ネットワークが密であればあるほど、放出は遅くなる。
【0060】
光受容体または光受容体前駆体または網膜前駆体(微細構造化足場内で光受容体にさらに分化できる)は、解離および細胞カウント後に微細構造化足場に播種することができる。これらの細胞は、10000細胞/cm2~1000000/cm2の濃度で播種することができる。これらの細胞は、ヒト多能性幹細胞(ヒト人工多能性幹細胞またはヒト胚性幹細胞)から分化させることができる。微細構造化足場に播種される細胞集団は、純粋であってもよいし、未成熟および/または成熟網膜細胞(例えば双極細胞、神経節細胞、アマクリン細胞)の混合集団を含んでいてもよい。
【0061】
本発明の別の実施形態において、微細孔1つあたりの細胞とりわけ光受容体の数は、1~20個またはそれ以上、好ましくは5~15個、さらにより好ましくは7~12個、またはおおよそ10個、すなわち微細構造化膜の微細孔1つあたり7、8、9、10、11または12個の細胞である。
【0062】
本発明の一特定実施形態において、微細構造化膜の微細孔は、軟質ポリマー(例えばヒアルロン酸)で、または栄養素や成長因子を含む培養基で満たされる。
【0063】
本発明の別の態様は、移植可能な移植片に関しており、該移植片は、微細構造化足場の中に播種された光受容体または光受容体前駆体または網膜前駆体の上層と、生物学的支持体またはポリマー支持体の上で培養された網膜色素上皮細胞の下層とを含むか、またはそれらから成る。
【0064】
本発明の別の態様は、医薬組成物としての移植可能な移植片の使用に関しており、前記移植片は、微細構造化足場の中に播種された光受容体または光受容体前駆体または網膜前駆体の上層と、生物学的支持体またはポリマー支持体の上で培養された網膜色素上皮細胞の下層とを含むか、またはそれらから成る。
【0065】
本発明の別の態様は、損傷組織を治療するための細胞療法に有用な組成物に関しており、該組成物は:
- 記述されたような微細構造化膜、
- 少なくとも1つの光受容体(または光受容体前駆体または網膜前駆体)であって、微細孔は、少なくとも1つの光受容体(または光受容体前駆体または網膜前駆体)が微細孔の内壁に粘着することを可能にするように構成され、および
- 網膜色素上皮細胞の単層、を含み、
前記少なくとも1つの光受容体は、物理的に、または生物学的因子の分泌を介した遠隔連絡によって、膜の第1の表面(1)と接触して位置する、また前記網膜色素上皮細胞の単層の上に載っている膜の第2の表面(2)にある、単数または複数の種類の細胞と、相互作用することができる。
【0066】
まず網膜色素上皮細胞が、薄い足場の頂点上で機能性上皮を形成するために培養されることができ、この薄い足場は、伸縮可能でかつ生分解性であり得る柔軟性ポリマー(PDMS、PLLA/PLGA、パリレン、ポリエステル、ポリイミド、ポリエーテルウレタン、PETメンブレン、PHA:PHB-HV、ePTFE、PCL、ポリブチレン、PEGDMA、PTMC)で作られることもできるし、または生物学的基質(コラーゲンゲル、ゼラチンゲル、フィブリンゲル、ヒト羊膜、ブルッフ膜、絹フィブロイン、バクテリアセルロース、または生分解性か否かを問わず生体適合性のある合成材料でできた膜)であることもできる。網膜色素上皮が生体外で再構成されると、その表面に微細構造化足場が置かれる。
【0067】
一実施形態によると、膜上に配置される細胞は、多能性幹細胞、多能性成体幹細胞由来であるかまたは初代培養物もしくは細胞株由来であるか、または移植領域の細胞型に対応するか、または単層上皮細胞、もしくは光受容体、神経節細胞、双極細胞、アマクリン細胞、網膜色素上皮細胞や内皮細胞といったさまざまな亜型の細胞である。本発明の実施のために用いられるヒト多能性幹細胞は、ヒト胚の破壊を必要とせず、またヒトの発育過程を誘導する能力を持たない。
【0068】
一例において、培養中の細胞は、ヒト多能性幹細胞から得た網膜色素上皮細胞を剥ぎ取られた羊膜上に並べ、それから4週間培養したものである。
【0069】
本発明は、網膜色素上皮細胞インプラント以外のインプラントに適用されることができる。本発明は、単独でまたは組み合わされて使用されるさまざまな亜型の網膜細胞(例えば、網膜の場合:光受容体、神経節細胞、双極細胞、アマクリン細胞、網膜色素上皮細胞、内皮細胞)の移植に適用されることができる。これらの細胞は、単層または多層で組み合わされ、人工網膜を再構成することができる。それらはまた、角膜細胞またはあらゆる他のタイプの上皮細胞であってもよい。より一般的には、本発明は、生物学的膜または合成膜上の単層におけるあらゆるタイプの上皮または細胞培養物に適用されることができる。
【0070】
本発明の一特定形態によると、本発明による微細構造化膜またはインプラントは、80~120μmの高さ、2mm~10mmの長さおよび幅、好ましくは120μmの高さ、5mmの長さおよび幅を有する。
【0071】
本発明の一特定形態によると、微細構造化膜は、250~1000の細孔数/mm2を有する。
【0072】
例えば、本発明による微細構造化膜は、400個の細孔/mm2すなわち25mm2について104の細孔を50μmの周期で、または625個の細孔/mm2を25mm2について40μmの周期で有する。
【0073】
本発明の一特定形態によると、三脚を備える微細構造化膜は、基底表面に、3600個の細孔/mm2すなわち25mm2について9×104個を50μmの周期で、または、5625個の細孔/mm2すなわち25mm2について140625個を40μmの周期で有する。
【0074】
以下、本発明の非限定例を次のような添付の図面に関連して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【
図1】改変された網膜組織を示しており、該組織は、(a)微細構造化ポリマー膜の中に播種された光受容体の上層、(b)微細構造化ポリマー膜、(c)生物学的支持体またはポリマー支持体の上で培養された網膜色素上皮細胞の下層、(d)生物学的支持体またはポリマー支持体から成る4つの構成要素で構成されている。
【
図2】2光子リソグラフィによる本発明の微細構造化膜の調製時の主なステップ(a~c)を説明している。足場の面(1)および面(2)は、それぞれ頂端面および基底面に相当する。
【
図3】(走査型電子顕微鏡(SEM)画像)は、2光子リソグラフィによって得られた、円錐形状の足場を作るために使用されるマスターモールドの円錐形状の構造を示している。
【
図4】2光子リソグラフィによって得られた三脚型円錐形状のマスターモールド(4B)上でポリマーを成型/脱型した後に得られた微細構造化膜(面2)(4A)を示している。
【
図5】円錐状の微細孔、円錐状/三脚微細孔、および六角形の円錐状の微細孔の図を示している。
【
図6】微細構造化膜におけるいくつかの微細孔の共焦点蛍光顕微鏡画像を示しており、リカバリンを発現し網膜色素上皮細胞の上に立つ光受容体の垂直成長を示している(PR=光受容体、RPE:網膜色素上皮)。
【0076】
[基本の足場を調製するための方法]
本発明による足場は、マスターモールドを形成することによって調製されることができる。
【0077】
例えば、基本の足場を調製するために、微細孔(=マイクロピラー)のネガを含むマスターモールドは、2光子リソグラフィ、プラズマエッチングまたは当業者に既知の任意の他の技術を利用して調製される。
【0078】
より典型的には、微細構造化膜は、マスターモールド上に成型されて、次に型から取り外され、そして最後に等方性プラズマエッチングを利用して孔があけられる。
【0079】
本発明の微細構造化膜は、成形可能なポリマー(例えばPDMS)を使って製造され、マイクロピラーが樹脂で構造化されたシリコンマスターモールドから成型されるものであり、あとでその中にPDMSまたは他のポリマー(足場用)が流し込まれる。
【0080】
本明細書内では、フォトリソグラフィ、成型およびプラズマエッチングを利用する足場の調製として説明するが、当業者に知られている任意のポリマー足場調製手段を、本発明から逸脱することなく用いることができることを理解されたい。
【0081】
他の適切な方法としては、例えば、3Dプリンターを使用する直接印刷やマイクロインジェクション成形機を使用する成形が挙げられる。
【0082】
支持体構成要素を調製するために、当業者に既知の任意のプロセスを使用して極薄ポリマーフィルムが準備される。
【0083】
支持体構成要素として使用するためのポリマーの例としては、上にリストされたものが挙げられる。
【0084】
有利には、本発明の足場は、細胞培養、移植、細胞発育モデル化および薬物スクリーニングのために使用されることができる。
【0085】
[3Dリソグラフィ]
レーザーリソグラフィでは、2光子ステレオリソグラフィ(TPS)が利用される。集束レーザービームが、フォトポリマーの体積を点ごとに走査し、所望の3Dオブジェクトを形成する。超短パルス(通常は数百フェムト秒)および光波の強い閉じ込めにより二光子吸収現象が引き起こされ、この現象は光重合開始剤を励起状態に導く。この励起状態から反応種を生成し、従来の重合反応を開始することができる。
【0086】
微細構造化足場を作製する一般的な方法は、硬質ポリマーのレプリカを成型するためのマスター(SU8-Si)を作製するためシリコンウェハー上に特徴を分布させるためにネガティブトーンフォトレジスト例えばSU8を用いたソフトリソグラフィである。
【0087】
図2は、本発明の微細構造化膜の形成における主な段階を説明している。
【0088】
ステップa)は、シリコン基板の準備、前記基板上への遠心コーティングによる樹脂の堆積、およびコーティングされた基板の熱処理に関している。
【0089】
ステップb)は、2光子レーザーリソグラフィに関している。樹脂は、2つの集束レーザーからの放射に曝された領域において重合する。
【0090】
ステップc)は、樹脂の現像後に得られるシリコン基板上の円錐形状のパターンの形成に関している。未露光領域は、現像液に可溶である。マスターモールドは、CO2ベースの超臨界乾燥装置を使用して乾燥される。
【0091】
マスターモールドは、高さがおおよそ100μmの円錐状(および/または多脚)のパターンで得られる。次に、脱型を確実にするための特別な処理がマスターモールドに施される。
【0092】
次に、ポリマーを、マスターモールド上に遠心力でコーティングする。脱気ステップで、全ての気泡を取り除く。次に、水溶性犠牲層でコーティングされた柔軟性フィルムをポリマー上に堆積する。フィルムに力を加えて、ポリマーの残厚を減らす。ポリマーを硬化させるために、焼きなましが行われる。脱型は、マスターモールドパターンによって成型されたPDMS膜と一緒に柔軟性フィルムを剥がすことによって達成される。
【0093】
膜は、犠牲層を溶解することによって柔軟性フィルムから剥がれる。
【0094】
プラズマエッチングが、ポリマーの残厚を取り除き、膜に貫通開口部を作製するために行われる。
【0095】
図3は、2光子リソグラフィによって得られた、先細のマイクロピラーに微細構造化された樹脂を備えたシリコンマスターモールドの一例を示している。高さ100μmのマイクロピラーは、縁から縁まで35μmの間隔を置いて配置されている。画像は、走査型電子顕微鏡を用いて撮影された。
【0096】
図4は、高さ100μmで縁から縁まで35μmの間隔を置いて配置されたマイクロピラーに微細構造化された樹脂でコーティングされたシリコンマスターモールド(B)から作られた、PDMS製の円錐状の三脚足場の基底面(2)の例(A)を示している。マスターモールドは、2光子リソグラフィ技術を用いて得られた。
【0097】
本発明によるプロセスは、生体細胞の培養に特に適した微細構造化成型体を作製するために使用される。プロセスは、まず、複数の微細孔を有する塑性変形可能な多孔質膜を調製するステップに関する。微細孔は、好ましくは微細孔として作られ、フィルムの至る所に規則的に分布される。微細孔は、フィルムの片方からもう片方まで連続的であるように形作られ、透過性を持つ。
【0098】
図5は、微細構造化足場を作るために使用される微細孔パターンのさまざまな例を示している。これらの例において、パターンは単純な円錐状、円錐状/三脚型、または各面に6角形の基部をもつ円錐状であり得る。
【実施例】
【0099】
[実施例1]
[足場の調製]
本発明による足場の製造プロセスは、[100]オリエンテーションで厚さ280ミクロンの2インチシリコンウェハーからマスターモールドを作製することから始まった。ウェハーは、まず溶剤で洗浄された後、毎分3000回転(rpm)の遠心コーティングによってSU8タイプの感光性樹脂が堆積された。コーティング後、樹脂に含まれる溶剤の蒸発を可能にするために180℃の熱処理が行われた。
【0100】
3D2光子リソグラフィは、あらかじめ装置にダウンロードしたSTLファイルに基づいて実行された。このファイルには、50μmの周期で5mm×5mmの領域にわたるすべての三脚パターンが含まれている。樹脂をコーティングした基板に25mm2の書き込みを行った後、樹脂を溶剤で現像し、次にイソプロパノールでリンスした。CO2を使用する45分間の「臨界支持体」乾燥プロセスにより、高さ120ミクロンのSU8円錐/三脚パターンはシリコン基板に永久的に固定され、組立品全体はマスターモールドを形成した。
【0101】
トリメチルクロロシランをベースとした5分間の粘着防止処理が、気相でモールドに施された。
【0102】
ポリマーの液体状態のPDMSを、その白金触媒と13:1の比率で混合し、次に脱気して、900rpmで60秒間の遠心コーティングによってマスターモールド上に堆積した。100nmの水溶性PVAの犠牲層でコーティングした20μmの柔軟性ポリカーボネートフィルムを、PDMS上に堆積した。190Paの圧力を加えて、ポリマーの残厚を減少させた。80℃で30分焼きなましをして、ポリマーを硬化させた。フィルムおよび膜は手で剥がされ、高さ100ミクロンの三脚を持つ微細構造化膜は、マスターモールドから分離された。
【0103】
膜と柔軟性フィルムとの間の分離は、犠牲層を溶解することによって達成された。各面に貫通孔を得るための微細構造化膜の残厚のエッチングは、O2とCF4との混合ガスおよび25Wの電力を用いたRIEタイプのフレームにおいて行われた。エッチング時間は残厚によって決まり、典型的には6~7分である。
【0104】
[実施例2]
[
図6に示されるような光受容体およびRPE層で構成される組織を得るための方法]
この例では、光受容体と網膜色素上皮細胞とで構成される組織を以下の手順にしたがって作製した。
【0105】
まず、ヒト胚性幹細胞を網膜前駆細胞(VSX2およびPAX6遺伝子の発現によって特徴づけられる)に3週間かけて分化した。次に、他のヒト胚性幹細胞を3か月間かけて網膜色素上皮細胞に分化した。これらはその後、液体窒素のタンク内でアンプルバンクの中に凍結された。
【0106】
次いで、網膜色素上皮細胞を解凍して多孔質プラスチック製培地上で4週間再培養して上皮を形成した。培地は、週に2回交換した。
【0107】
(実施例1に従って作られた)円錐状の微細孔を備える足場を、70%のエタノール浴、続いて生理食塩水浴により滅菌した。足場を、カルシウムおよびマグネシウムを含む生理食塩水で1/100に希釈した市販のL7マトリックス溶液(Lonza)でコーティングし、次いで37℃および5%の二酸化炭素で1時間インキュベートした。
【0108】
インキュベーション後、マトリックス溶液を取り除いた。その後、足場を網膜色素上皮の上に配置した。次いで、3週間培養した胚性幹細胞由来の網膜前駆体をTryple溶液で解離させ、計数し、500000細胞/cm2の密度で足場に播種した。培地は、3か月間、週に3回交換された。
【0109】
3か月の培養期間の終わりに、組織を4%のパラホルムアルデヒド溶液中に15分間固定した。その後、組織をリンスし、0.1%のトリトンX100を含む生理食塩水中で透過した。組織を、5%の動物血清を含む同じ溶液中で30分間インキュベートし、次いで(成熟した光受容体によって発現される)リカバリンタンパク質に対する一次抗体に一晩曝露した。翌日、組織を生理食塩水中でリンスした後、蛍光分子と結合した、一次抗体に対する二次抗体に1時間曝露した。その後、組織をリンスし、DAPIで染色し(細胞核のDNAに印をつけるため)、顕微鏡スライド上に載せた。共焦点蛍光顕微鏡を使って組織を画像化した。
【0110】
図6は、左側に、組織の厚さの切断面の再構成を示しており、ここで、網膜色素上皮細胞の核が下方部分に見え、それらの真上に光受容体の伸長部があり、リカバリンの標識で識別されている。右側の画像は、組織の3D再構成であり、微細孔のそれぞれにおいてリカバリン信号が視覚化されている。スケールは、μmである。リカバリン信号は、光受容体用マーカーであり、網膜色素上皮細胞の上の微細孔中の細胞の垂直な極性化を示している。
【国際調査報告】