(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-18
(54)【発明の名称】無秩序なネットワークを有する架橋ポリマーを含む電解質
(51)【国際特許分類】
H01B 1/06 20060101AFI20240910BHJP
H01M 10/0565 20100101ALI20240910BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20240910BHJP
H01M 4/485 20100101ALI20240910BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20240910BHJP
H01M 4/48 20100101ALI20240910BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20240910BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20240910BHJP
H01G 11/56 20130101ALI20240910BHJP
H01G 9/028 20060101ALI20240910BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20240910BHJP
C08K 3/10 20180101ALI20240910BHJP
C08F 2/44 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
H01B1/06 A
H01M10/0565
H01M4/587
H01M4/485
H01M4/38 Z
H01M4/48
H01M4/36 A
H01M10/052
H01G11/56
H01G9/028 G
C08L101/00
C08K3/10
C08F2/44 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024505569
(86)(22)【出願日】2022-05-05
(85)【翻訳文提出日】2024-03-27
(86)【国際出願番号】 US2022027849
(87)【国際公開番号】W WO2023014416
(87)【国際公開日】2023-02-09
(32)【優先日】2021-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519387623
【氏名又は名称】ファクトリアル インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100224775
【氏名又は名称】南 毅
(72)【発明者】
【氏名】ドゥ,ジア
(72)【発明者】
【氏名】ロン,ドン
(72)【発明者】
【氏名】ホアン,イーチン
【テーマコード(参考)】
4J002
4J011
5E078
5G301
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
4J002AA001
4J002BB201
4J002BG021
4J002BL021
4J002DD036
4J002DF036
4J002DG036
4J002DG046
4J002DH006
4J002DH036
4J002DK006
4J002FD116
4J002GQ00
4J002GQ02
4J011PA10
4J011PA45
4J011PB40
4J011PC02
4J011PC08
5E078AA11
5E078AB01
5E078DA12
5E078DA19
5G301CA30
5G301CD01
5G301CE01
5H029AJ05
5H029AJ12
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL11
5H029AL12
5H029AM16
5H029HJ02
5H029HJ10
5H029HJ20
5H050AA15
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB12
5H050DA03
5H050GA28
5H050HA02
5H050HA10
5H050HA17
(57)【要約】
ポリマー固体電解質は、1つ以上の架橋剤から合成された不均一又は無秩序なポリマーネットワークを有する架橋ポリマー又はコポリマーを含み、少なくとも1つの架橋剤は3つ以上の重合性又は架橋性末端を有する。別の実施形態では、架橋ポリマー又はコポリマーは、トポロジー欠陥のあるポリマーネットワークを有する。一実施形態では、架橋ポリマーは過剰に架橋されていない。架橋ポリマー又はコポリマーを電解質として用いた電気化学デバイスは、改善された電気化学性能及び安全性能を示す。ある特定の実施形態では、架橋剤は、a)トリアクリレート及びテトラアクリレート;b)変性トリアクリレート及びテトラアクリレート;c)シラン及びシロキサン;並びに、d)トリアジナン-トリオンを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー固体電解質であって、
a)電解質塩、及び
b)1つ以上の架橋剤を含む組成物の架橋反応から得られた不均一又は無秩序なポリマーネットワークを有する架橋ポリマーであって、少なくとも1つの架橋剤が3つ以上の重合性又は架橋性末端を有する、架橋ポリマー
を含む、ポリマー固体電解質。
【請求項2】
前記架橋ポリマーが過剰に架橋されていない、請求項1に記載の電解質。
【請求項3】
前記架橋ポリマーが、
a.前記1つ以上の架橋剤を0.1質量%以上30質量%以下の濃度で含む組成物、又は
b.3つ以上の重合性又は架橋性末端を有する前記架橋剤を0.1質量%以上20質量%以下の濃度で含む組成物
から得られる、請求項2に記載の電解質。
【請求項4】
前記架橋ポリマーが、
a.前記1つ以上の架橋剤を0.1質量%以上及び20質量%以下の濃度で含む組成物、又は
b.3つ以上の重合性又は架橋性末端を有する前記架橋剤を0.1質量%以上10質量%以下の濃度で含む組成物
から得られる、請求項2に記載の電解質。
【請求項5】
前記1つ以上の架橋剤のうちの少なくとも1つが、前記電解質中のイオン輸送を促進する電子供与基を有する、請求項1に記載の電解質。
【請求項6】
前記電子供与基がアミドである、請求項5に記載の電解質。
【請求項7】
前記架橋ポリマーがポリ(エチレンオキシド)鎖を含まない、請求項1に記載の電解質。
【請求項8】
前記電解質が、線形架橋剤から合成されたものと比較して、より不均一又は無秩序なネットワークに起因して、改善された容量保持を示す、請求項1に記載の電解質。
【請求項9】
3つ以上の重合性又は架橋性末端を有する前記架橋剤が、次からなる群より選択される式を有する、請求項1に記載の電解質:
【化1】
[式中、R
4及びR
5は、次からなる群より独立して選択される:
【化2】
ここで、R
1、R
2、R
3、及びR
6は、各々独立して、水素、メチル、エチル、フェニル、メチルフェニル、ベンジル、アクリル、エポキシエチル、イソシアネート、環状カーボネート、ラクトン、ラクタム、及びビニルからなる群より選択され、nは0から50,000の間の整数であり、*は接続点を示す]。
【請求項10】
3つ以上の重合性又は架橋性末端を有する前記架橋剤が、次からなる群より選択される式を有する、請求項9に記載の電解質:
【化3】
【請求項11】
3つ以上の重合性又は架橋性末端を有する前記架橋剤が次式を有する、請求項1に記載の電解質:
【化4】
[式中、Xは、C、Si、N、P、B、又は環式環であり、R1、R2、及びR3は独立しており、直接又はスペーサ鎖若しくは基を介してXに共有結合している重合性又は架橋性末端である]。
【請求項12】
前記3つ以上の架橋性末端が、C
2-20アルケニル、C
2-20アルキニル、エポキシ、アミノ、ヒドロキシル、カルボン酸、又はそれらの任意の置換形態からなる群より独立して選択される、請求項1に記載の電解質。
【請求項13】
3つ以上の重合性又は架橋性末端を有する前記架橋剤が、トリアクリレート、テトラアクリレート、変性トリアクリレート、変性テトラアクリレート、シラン、シロキサン又はトリアジナン-トリオンである、請求項1に記載の電解質。
【請求項14】
3つ以上の重合性又は架橋性末端を有する前記架橋剤が、次からなる群より選択されるシラン又はシロキサンである、請求項1に記載の電解質:
【化5】
[式中、R
7は、独立して、次からなる群より選択される:
【化6】
ここで、R
1、R
2及びR
3は、各々独立して、水素、メチル、エチル、フェニル、メチルフェニル、ベンジル、アクリル、エポキシエチル、イソシアネート、環状カーボネート、ラクトン、ラクタム、及びビニルからなる群より選択され、qは0から50,000の間の整数であり、
式中、R
8は、独立して、次からなる群より選択される:
【化7】
*は接続点を示す]。
【請求項15】
3つ以上の重合性又は架橋性末端を有する前記架橋剤が次式を有する、請求項1に記載の電解質:
【化8】
[式中、R
7は、独立して、次からなる群より選択される:
【化9】
ここで、R
1、R
2及びR
3は、各々独立して、水素、メチル、エチル、フェニル、メチルフェニル、ベンジル、アクリル、エポキシエチル、イソシアネート、環状カーボネート、ラクトン、ラクタム、及びビニルからなる群より選択され、qは0から50,000の間の整数であり、*は接続点を示す]。
【請求項16】
前記電解質塩が、過塩素酸リチウム(LiClO
4)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF
6)、ホウフッ化リチウム(LiBF
4)、六フッ化ヒ素リチウム(LiAsF
6)、トリフルオロメタスルホン酸リチウム(LiCF
3SO
3)、ビストリフルオロエチルスルホニルイミドリチウム(LiN(CF
3SO
2)
2)、リチウムビス(オキサラト)ボラ-ト(LiBOB)、リチウムオキサリルジフルオロボレート(LiBF
2C
2O
4)、硝酸リチウム(LiNO
3)、フルオロアルキルリン酸リチウム(LiPF
3(CF
2CF
3)
3)、リチウムビスパーフルオロエチルスルホニルイミド(LiBETI)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、リチウムトリフルオロメタンスルホンイミド(LiTFSI)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiDFOB)、過塩素酸リチウム(LiClO
4)、LiC(CF
3SO
2)
3、LiF、LiCl、LiBr、LiI、Li
2SO
4、LiNO
3、Li
3PO
4、Li
2CO
3、LiOH、酢酸リチウム、トリフルオロメチル酢酸リチウム、及びシュウ酸リチウムからなる群より選択されるリチウム塩を含む、請求項1に記載の電解質。
【請求項17】
前記1つ以上の架橋剤が、開始剤の存在下、UV光下、又は高温で架橋される、請求項1に記載の電解質。
【請求項18】
請求項1に記載の電解質を含む、電気化学デバイス。
【請求項19】
前記電気化学デバイスが、いかなる破裂も引き起こすことなく、20mΩの外部抵抗による短絡試験に合格する、請求項18に記載の電気化学デバイス。
【請求項20】
前記電気化学デバイスが、いかなる破裂も引き起こすことなく、5mΩの外部抵抗による短絡試験に合格する、請求項18に記載の電気化学デバイス。
【請求項21】
前記電気化学デバイスがアノードを含まないか、又はアノードを含む、請求項18に記載の電気化学デバイス。
【請求項22】
前記アノードが、炭素アノード、Liアノード、Siアノード、合金アノード、Li
4Ti
5O
12であるか、又は変換アノード材料で作られており、前記炭素アノードが、グラファイト、ソフトカーボン、ハードカーボン、又はそれらの組合せを含み、前記Liアノードが、Li金属箔、Cu、Ni、又はステンレス鋼上のLi金属を含み、前記Siアノードが、Si、Si/炭素複合材料、SiO
x(0≦x<2)、SiO
x(0≦x<2)/炭素複合材料、又はそれらの組合せを含み、前記合金アノードが、Sn、SnO
2、Sb、Al、Mg、Bi、In、As、Zn、Ga、B、又はそれらの組合せを含み、前記変換アノード材料がM
aX
bを含み、Mが、Mn、Fe、Co、Ni、又はCuであり、Xが、O、S、Se、F、N、又はPであり、a及びbが、それぞれ、1から4である、請求項21に記載の電気化学デバイス。
【請求項23】
前記電気化学デバイスが、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物、チタン酸リチウム、金属リチウム、リチウム金属酸化物、リチウムマンガン酸化物、リチウムコバルト酸化物、及びリチウム鉄リン酸塩からなる群より選択される電気活性材料を含むカソードを備えている、請求項18に記載の電気化学デバイス。
【請求項24】
ポリマー固体電解質であって、
a)電解質塩、及び
b)1つ以上の架橋剤から合成されたトポロジー欠陥を有する架橋ポリマーであって、少なくとも1つの架橋剤が3つ以上の重合性又は架橋性末端を有する、架橋ポリマー
を含む、ポリマー固体電解質。
【請求項25】
前記架橋ポリマーが過剰に架橋されていない、請求項24に記載の電解質。
【請求項26】
前記架橋ポリマーが、
a)前記1つ以上の架橋剤を0.1質量%以上30質量%以下の濃度で含む組成物、又は
b)3つ以上の重合性又は架橋性末端を有する前記架橋剤を0.1質量%以上20質量%以下の濃度で含む組成物
から得られる、請求項26に記載の電解質。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、その内容全体がここに参照することによって本願に援用される、2022年1月31日に出願された米国仮特許出願第63/304,932号及び2021年8月6日に出願された米国特許出願第17/395,477号の利益及び/又は優先権を主張する。本出願全体を通じて、さまざまな参考文献又は刊行物が引用される。本発明が属する技術水準をより完全に説明するために、これらの参考文献又は刊行物の開示はその全体がここに参照することによって本願に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、バッテリー、キャパシタ、センサ、コンデンサ、エレクトロクロミック素子、光電変換素子などの電気化学デバイスに適したさまざまなポリマー固体電解質材料に関する。
【背景技術】
【0003】
バッテリー技術は過去50年間で大きく変化した。電気エネルギー貯蔵の分野が成長を続け、広く応用されるにつれて、リチウムイオン電池(LIB)の性能に対する要求はますます高まっている。サイクル寿命は数千サイクルから100万サイクルにまで近づき、エネルギー密度は500Wh/kgに近づくまで進歩し、高性能電池のコストは徐々に下がっており、1Whあたり100ドルに近づいている。このような高い需要により、現在のLIBシステム、すなわち、液体炭酸塩電解質中のグラファイトアノードと組み合わせたリチウム金属酸化物カソードの性能限界は差し迫っており、その性能を向上させるためには、ほんのわずかな改善しか加えられない。しかしながら、LIBのエネルギー密度が高くなるにつれて、所与の空間に増加したエネルギーが充填されたLIBが故障すると、より深刻な安全上の懸念が生じるであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リチウムイオン電池(LIB)のエネルギー密度の上昇とスケールの拡大に伴い、LIBの安全性に関する懸念に対する解決策を見つけることがより重要になる。LIBに存在する安全性の問題は、炭酸塩/エーテルなどの混合可燃性溶媒の使用によって発生する可能性があり、これは、過充電、ショート、過熱などの場合に、LIBの発火、燃焼、又はさらには爆発などの重大な事故につながる可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、概して、さまざまなポリマー固体電解質材料に関する。本開示の主題は、場合によっては、相互に関連する製品、特定の問題に対する代替解決策、及び/又は1つ以上のシステム及び/又は物品の複数の異なる使用を包含する。
【0006】
一態様では、本発明は、概して、1つ以上の架橋剤(あるいはクロスリンカー)から合成された不均一又は無秩序なポリマーネットワークを有する架橋ポリマー又はコポリマーを含むポリマー固体電解質を対象とし、該少なくとも1つの架橋剤(あるいはクロスリンカー)は3つ以上の重合性又は架橋性末端を有する。
【0007】
別の態様では、本発明は、概して、上述のポリマー固体電解質を含む電気化学デバイスを対象とする。
【0008】
さらに別の態様では、本発明は、概して、その製造方法を対象とする。一連の実施形態では、該方法は、1つ以上の架橋剤を混合してスラリーを形成するステップ、及びUV硬化又は熱硬化によってスラリーを硬化するステップを含み、ここで、少なくとも1つの架橋剤は3つ以上の重合性又は架橋性末端を有する。場合によっては、3つ以上の末端を有する架橋剤は、a)トリアクリレート及びテトラアクリレート;b)変性トリアクリレート及びテトラアクリレート;c)シラン及びシロキサン;並びに、d)トリアジナン-トリオンを含む。場合によっては、スラリーは溶媒を用いて形成される。
【0009】
別の態様では、本発明は、本明細書に記載される1つ以上の実施形態、例えばポリマー固体電解質材料を製造又は使用する方法を包含する。
【0010】
本発明の非限定的な実施形態を、添付の図面を参照して例として説明するが、これらの図面は概略的なものであり、一定の縮尺で描くことを意図したものではない。図面では、図示されている同一又はほぼ同一の各構成要素は、通常、単一の数字で表されている。明確にするために、すべての図においてすべての構成要素がラベル付けされているわけではなく、また、当業者が本発明を理解することができるように図示が必要ではない場合には、本発明の各実施形態のすべての構成要素は示されていない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示のある特定の実施形態の容量保持試験曲線を示すグラフ
【
図2】本開示のある特定の実施形態の容量保持試験曲線を示すグラフ
【
図3】本開示のある特定の実施形態の容量保持試験曲線を示すグラフ
【
図4】本開示のある特定の実施形態の容量保持試験曲線を示すグラフ
【
図5】本開示のある特定の実施形態の電気化学的安定性試験曲線を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、概して、さまざまな電気化学デバイスに適したさまざまなポリマー固体電解質に関する。ある特定の態様は、ポリマー、可塑剤、及び電解質塩を含む。場合によっては、電解質は、1つ以上の架橋剤から合成された架橋ポリマー又はコポリマーを含んでいてもよく、少なくとも1つの架橋剤は3つ以上の重合性又は架橋性末端を有する。
【0013】
ある特定の実施形態では、3つ以上の重合性又は架橋性末端を有する架橋剤は次式を有する:
【0014】
【0015】
式中、Xは、C、Si、N、P、B、又は環状であり、
R1、R2、及びR3は、直接又はスペーサ鎖若しくは基を介してXに共有結合している重合性又は架橋性末端である。R1、R2、R3及びそれらのスペーサ鎖又は基は、互いに同じであっても異なっていてもよい。
【0016】
ある特定の実施形態では、3つ以上の重合性又は架橋性末端(R1、R2、R3及びR4)は、独立して、C2-20アルケニル、C2-20アルキニル、エポキシ、アミノ、ヒドロキシル、カルボン酸、又はそれらの任意の置換形態からなる群より選択される。
【0017】
ある特定の実施形態では、3つ以上の重合性又は架橋性末端を有する架橋剤は、トリアクリレート、テトラアクリレート、変性トリアクリレート、変性テトラアクリレート、シラン、シロキサン又はトリアジナン-トリオン(トリアジン-トリオン)である。
【0018】
ある特定の実施形態では、3つ以上の末端を有する架橋剤は、次からなる群より選択される式を有する:
【0019】
【0020】
式中、R4及びR5は、次からなる群より独立して選択される:
【0021】
【0022】
ここで、R1、R2、R3、R6は、各々独立して、水素、メチル、エチル、フェニル、メチルフェニル、ベンジル、アクリル、エポキシエチル、イソシアネート、環状カーボネート、ラクトン、ラクタム、及びビニルからなる群より選択され、nは0から50,000の間の整数であり、*は接続点を示す。
【0023】
ある特定の実施形態では、架橋剤は次式を有する:
【0024】
【0025】
ある特定の実施形態では、変性トリアクリレート及びテトラアクリレートには、-CN、-SO2H、-CO2H、-CO2-、F、Cl、Br、又はIなどの置換基を有するトリアクリレート及びテトラアクリレートが含まれる。
【0026】
ある特定の実施形態では、3つ以上の末端を有する架橋剤はシラン又はシロキサンである。
【0027】
一実施形態では、架橋剤又はスペーサ鎖若しくは基のうちの1つ以上は、限定はしないが、-O-、-NRc-、-S-、-C(=O)-、-C(=O)O-、-C(=O)NRc-、-C(=O)S-、-OC(=O)O-、-NRcC(=O)O-、-NRcC(=O)NRc-、-S(=O)-、-S(=O)2-、-OS(=O)2-、-OS(=O)2O-、-NRcS(=O)2-、-NRcS(=O)2NRc-、-OS(=O)2NRc-、C1-6アルキレニル、C2-6アルケニレニル、C2-6アルキニレニル、C6-14アリーレニル、5から14員のヘテロアリーレニル、C3-10カルボシクレニル、又は3から10員の複素環を含む構造を含み、ここで、アルキレニル、アルケニレニル、アルキニレニル、アリーレニル、ヘテロアリーレニル、カルボシクレニル、又は複素環は、任意選択的に、ハロゲン、-CN、-NO2、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、C1-6ヒドロキシアルキル、C1-6アミノアルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C6-14アリール、5から14員のヘテロアリール、C3-10カルボシクリル、3から10員のヘテロシクリル、-SRb、-S(=O)Ra、-S(=O)2Ra、-S(=O)2ORb、-S(=O)2NRcRd、-NRcRd、-NRcS(=O)2Ra、-NRcS(=O)2Ra、-NRcS(=O)2ORb、-NRcS(=O)2NRcRd、-NRbC(=O)NRcRd、-NRbC(=O)Ra、-NRbC(=O)ORb、-ORb、-OS(=O)2Ra、-OS(=O)2ORb、-OS(=O)2NRcRd、-OC(=O)Ra、-OC(=O)ORb、-OC(=O)NRcRd、-C(=O)Ra、-C(=O)ORb、又は-C(=O)NRcRdで置換されており;式中、Ra、Rb、Rc、及びRdは、独立してC1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、C1-6ヒドロキシアルキル、C1-6アミノアルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-10カルボシクリル、3から10員のヘテロシクリル、C6-14アリール、又は5から14員のヘテロアリールであり、ここで、アルキル、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、アルケニル、アルキニル、カルボシクリル、ヘテロシクリル、アリール、及びヘテロアリールは、任意選択的に、1つ以上のオキソ、ハロゲン、-CN、-OH、-OMe、-NH2、-C(=O)Me、-C(=O)OH、-C(=O)OMe、C1-6アルキル、又はC1-6ハロアルキルで置換されている。
【0028】
一実施形態では、Rc及びRdは、ヘテロ原子(N、O、S、Pなど)と一緒になって、3から10員のヘテロシクリルを形成し、ここで、ヘテロシクリルは、1つ以上のオキソ、ハロゲン、-CN、-OH、-OMe、-NH2、-C(=O)Me、-C(=O)OH、-C(=O)OMe、C1-6アルキル、又はC1-6ハロアルキルで任意選択的に置換されている。
【0029】
ある特定の実施形態では、架橋剤又はスペーサ鎖若しくは基のうちの1つは、-XC(=O)CR3=C(R4)2の構造を含み、ここで、Xは、独立してO又はNReであり、Reは、独立してH又はC1-6アルキルであり、各R3及びR4は、独立してH又はC1-6アルキルである。
【0030】
ある特定の実施形態では、架橋剤のうちの1つは、限定はしないが、次を含む1つ以上の官能基を含む:
【0031】
【0032】
ある特定の実施形態では、1つ以上の官能基を有する架橋剤は、限定はしないが、次を含む:
【0033】
【0034】
一実施形態では、1つ以上の官能基を有する架橋剤は、開環重合のためのモノマーであり、次式:
【0035】
【0036】
及び、それらの任意の置換形態を有し、ここで、xは1から1000の範囲の整数である。
【0037】
一実施形態では、開環重合のためのモノマーは、次を含む:
【0038】
【0039】
一実施形態では、開環重合のためのモノマーは、非置換又は置換のオキシラン環、オキセタン環、フラン環、アジリジン環、およびアゼチジン環を含む。
【0040】
加えて、ある特定の実施形態は、ポリマー固体電解質、電池、又はそれを含む他の電気化学デバイスとともに使用するための組成物、並びにその製造方法を対象とする。場合によっては、UV架橋又は熱架橋によるビニル及び/又はアリル官能基の組み込みは、とりわけ架橋剤が、該架橋剤の化学構造の少なくとも3つの方向にビニル及びアリルなどの重合性又は架橋性末端を有する場合(すなわち、架橋剤が3つの架橋性末端を有する場合)に、さまざまな電気化学的性能を向上させるために使用することができ、電気化学的性能は、より明らかに改善されうる。ある特定の実施形態では、幾つかのポリマー固体電解質を使用して、より安全で長寿命のリチウム電池を実現することができる。電解質は、より優れたイオン伝導度を示すことができる。これらの特性は、充電/放電速度の性能に利益をもたらすことができる。加えて、ポリマー材料の分解電位の向上により、固体電解質の安定性が高まり、寿命が長くなった及び/又は電圧が高くなったリチウム電池を得ることができる。
【0041】
一態様では、本開示は、概して、本明細書に開示されるポリマー固体電解質材料を含む電池などの電気化学セルを対象とする。ある特定の実施形態では、電池は、リチウムイオン固体電池などのLIBである。電気化学セルは、アノード、カソード、及び/又はセパレータを含みうる。これらの多くは市販されている。一実施形態では、ポリマー固体電解質材料は、単独で、及び/又は他の電解質材料と組み合わせて、電気化学セルの電解質として使用することができる。
【0042】
例えば、一態様は、概して、電気化学デバイス内、例えばLIBなどの電池内で使用することができるある特定のポリマーを含む固体電解質を対象とする。このような電気化学デバイスは、典型的には、各々がアノード、カソード、及び電解質を含む1つ以上のセルを備える。液体電解質と比較して、固体ポリマー電解質は軽量であり、良好な接着性及び加工特性を提供することができる。これにより、電池及び他の電気化学デバイスがより安全になりうる。場合によっては、ポリマー電解質は、例えば電子の輸送を可能にすることなく、イオンの輸送を可能にすることができる。ポリマー電解質は、ポリマーと電解質塩とを含むことができる。電解質塩は、例えば、リチウム塩、又は本明細書で論じられるような他の塩であってもよい。
【0043】
本発明のある特定の実施形態は、概して、比較的高いイオン伝導度及び電気的特性、例えば分解電位を有する固体電解質を対象とする。場合によっては、例えば、ポリマーは、架橋剤又は架橋ポリマー中に少なくとも3つの架橋性末端が3つの方向に追加され、ポリ(エチレンオキシド)ポリマー鎖が存在しない(すなわち、ポリ(エチレンオキシド)ポリマー鎖が存在しない)ことに起因して、改善された特性を示すことができる。
【0044】
幾つかの実施形態では、重合性及び架橋性末端(あるいは基)としては、限定はしないが、C2-20アルケニル、C2-20アルキニル、エポキシ、アミノ、ヒドロキシル、カルボン酸、又はそれらの任意の置換形態が挙げられる。ある特定の実施形態では、それらはビニル及び/又はアリルである。
【0045】
加えて、一連の実施形態では、末端、又はビニル及び/又はアリルなどの基は、互いに架橋されていてもよい。例えば、このような官能基は、開始剤の存在下、高温(例えば、20℃から100℃の間)でUV光を使用するか、又は本明細書に記載される方法を含む他の方法を使用して架橋することができる。場合によっては、3つの架橋性末端を組み込むと、無組織又は無秩序なネットワークが生じ、その結果、比較的高いイオン伝導度、分解電圧などの電気化学的性能などが改善される。
【0046】
架橋密度は概して、ポリマーネットワークにおける単位体積あたりの架橋の数として定義される。ある特定の実施形態では、架橋密度は、架橋前又は架橋後のポリマー又はマトリクス中の単位体積あたりの架橋性末端又は架橋の数によって測定される。ある特定の実施形態では、架橋密度は、架橋前又は架橋後のポリマー又はマトリクス中の少なくとも3つの方向に少なくとも3つの末端を有する架橋剤からの架橋性末端又は架橋の数によって測定される。ある特定の実施形態では、架橋密度は、架橋されたポリマー又はマトリクス中の単位体積あたりの4つの末端を有する架橋剤からの4つの方向への架橋の数によって測定される。ある特定の実施形態では、架橋密度は、架橋前又は架橋後のポリマー又はマトリクス中の少なくとも4つの方向に少なくとも4つの末端を有する架橋剤からの架橋性末端又は架橋の数によって測定される。ある特定の実施形態では、架橋密度は、架橋前又は架橋後の系内の架橋剤の重量又はモル百分率によって間接的に測定される。ある特定の実施形態では、架橋密度は、架橋前又は架橋後の系内の少なくとも3つの末端を有する架橋剤の重量又はモル百分率によって間接的に測定される。ある特定の実施形態では、架橋密度は、架橋前又は架橋後の系内の少なくとも4つの末端を有する架橋剤の重量又はモル百分率によって間接的に測定される。一実施形態では、ポリマー固体電解質は、該ポリマー固体電解質の総重量の0.1%から30質量%の間の質量パーセントを有する架橋剤に対応する架橋密度を有する。
【0047】
場合によっては、本明細書に記載されるようなポリマー固体電解質は、他の固体電解質と比較して、驚くほど高いイオン伝導度などのある特定の有益な特性を提供することができる。例えば、ポリマー固体電解質は、少なくとも0.01mS/cm、少なくとも0.05mS/cm、少なくとも0.10mS/cm、少なくとも0.15mS/cm、少なくとも0.20mS/cm、少なくとも0.25mS/cm、少なくとも0.30mS/cm、少なくとも0.35mS/cm、少なくとも0.40mS/cm、少なくとも0.45mS/cm、少なくとも0.50mS/cm、少なくとも0.55mS/cm、少なくとも0.60mS/cm、少なくとも0.65mS/cm、少なくとも0.70mS/cm、少なくとも0.75mS/cm、少なくとも0.80mS/cm、少なくとも0.91mS/cm、少なくとも0.97mS/cm、少なくとも1mS/cm、少なくとも1.04mS/cm、少なくとも1.05mS/cm、少なくとも1.23mS/cm、少なくとも1.26mS/cm、少なくとも1.31mS/cm、少なくとも1.33mS/cm、少なくとも1.52mS/cm、少なくとも1.80mS/cm、又は少なくとも2.0mS/cmのイオン伝導度を示しうる。一実施形態では、例えば、ポリマー固体電解質は、室温で、0.01mS/cmから10mS/cmの間のイオン伝導度を有する。
【0048】
場合によっては、架橋剤は、少なくとも3つの架橋性末端を有しており、線形架橋剤の2つの末端からではなく3つ以上の末端から架橋することができる。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、架橋ポリマーネットワークがイオン輸送を可能にし、促進する、独自の3D架橋構造を備えているため、イオン伝導性が向上する。一実施形態では、このような独自の3D架橋構造は、不均一又は無秩序な架橋構造を有するポリマーネットワークであり、架橋点とポリマー鎖がイオンの移動経路としてトンネル及びチャネルを形成する。一実施形態では、不均一な架橋構造のトンネル及びチャネルは、輸送中のイオンの流体力学的サイズと一致する空間構成を有している。別の実施形態では、独自の3D架橋構造は、ループ、ダングリングチェーン、2つの架橋点間の複数の接続、及び鎖の絡み合いなどのトポロジー欠陥を有するポリマーネットワークである。一実施形態では、トポロジー欠陥は、イオンの移動経路としてトンネル及びチャネルを形成する。一実施形態では、架橋ポリマーネットワークのトポロジー欠陥は、イオンの流体力学的サイズと一致する。
【0049】
一実施形態では、このような不均一又は無秩序な架橋構造の不均一性は、少なくとも3つの末端を有する架橋剤の重量又はモル百分率を勘案して、又はそれらと相関して測定される。一実施形態では、不均一性は、これらの末端の空間的寄与を示す係数を考慮して、少なくとも3つの末端を有する架橋剤の重量又はモル百分率を勘案して、又はそれらと相関して測定される。例えば、不均一性はk*Aとして計算することができ、ここで、Aは重量又はモル百分率であり、kは係数である。一実施形態では、3つ及び4つの末端を有する架橋剤では、kは、それぞれ、3及び4の値を有する。一実施形態では、トポロジー欠陥の濃度は、少なくとも3つの末端を有する架橋剤の重量又はモル百分率を勘案して、又はそれらと相関して測定される。
【0050】
一実施形態では、架橋ポリマーネットワークは、ポリ(エチレンオキシド)ポリマー鎖を含まない。一実施形態では、複数の架橋剤を使用することにより、架橋剤の量を最小限に抑えつつ、ポリマー固体電解質の高いイオン伝導度を維持することができる。
【0051】
一実施形態では、本発明は、ポリマー固体電解質の3D架橋構造を測定する方法も開示する。一実施形態では、該方法は、
1)3D架橋構造に埋め込まれた電解質塩を含むポリマー固体電解質を容器に入れるステップであって、該容器が電解質塩を抽出するための溶媒を含む、ステップ、
2)3D架橋構造を崩壊させずに維持しつつ、ポリマー固体電解質から電解質塩を抽出するステップであって、その結果、電解質塩を含まない物品が得られる、ステップ、
3)3D架橋構造を崩壊させずに維持しつつ、物品から溶媒を除去し、乾燥物品を得る、ステップ、及び
4)乾燥物品のBETなどの比表面積及び細孔径分布を窒素吸着法により測定し、比表面積及び細孔径分布を備えた3D架橋構造を得るステップ
を含む。
【0052】
一実施形態では、抽出用の容器は、折り畳まれていない3D架橋構造を維持する温度に保たれる。一実施形態では、温度は、示差走査熱量測定(DSC)、動的機械分析、又は他の同等の技法によって測定することができる架橋ポリマーのガラス転移温度より少なくとも20℃低い。一実施形態では、溶媒は、電解質塩を溶解できるが、3D架橋ポリマーの形態に影響を与えないように、事前に選択される。
【0053】
一実施形態では、本発明は、電解質塩と、1つ以上の架橋剤から合成された架橋ポリマーネットワークとを含むポリマー固体電解質を提供し、少なくとも1つの架橋剤は3つ以上の重合性又は架橋性末端を有する。
【0054】
一実施形態では、本発明は、電解質塩と、1つ以上の架橋剤から合成された不均一又は無秩序なポリマーネットワークを有する架橋ポリマーとを含むポリマー固体電解質を提供し、少なくとも1つの架橋剤は3つ以上の重合性又は架橋性末端を有する。
【0055】
一実施形態では、本発明は、電解質塩と、1つ以上の架橋剤から合成されたトポロジー欠陥を有する架橋ポリマーとを含むポリマー固体電解質を提供し、少なくとも1つの架橋剤は3つ以上の重合性又は架橋性末端を有する。
【0056】
一実施形態では、3つ以上の重合性又は架橋性末端を有する架橋剤は、電解質中で0.1質量%以上20質量%以下の濃度を有する。一実施形態では、1つ以上の架橋剤は、電解質中で0.1質量%以上30質量%以下の濃度を有する。一実施形態では、ポリマー固体電解質中の架橋ポリマーは過剰に架橋されない。一実施形態では、架橋ポリマーは、架橋剤を0.1質量%以上30質量%以下の濃度で含む組成物から得られる。一実施形態では、架橋ポリマーは、3つ以上の重合性又は架橋性末端を有する架橋剤を0.1質量%以上20質量%以下の濃度で含む組成物から得られる。
【0057】
一実施形態では、1つ以上の架橋剤のうちの少なくとも1つは、電解質中のイオン輸送を促進する電子供与基を有する。
【0058】
一実施形態では、電子供与基はアミドである。
【0059】
一実施形態では、3つ以上の重合性又は架橋性末端を有する架橋剤は、次からなる群より選択される式を有する:
【0060】
【0061】
[式中、R4及びR5は、次からなる群より独立して選択される:
【0062】
【0063】
ここで、R1、R2、R3、及びR6は、各々独立して、水素、メチル、エチル、フェニル、メチルフェニル、ベンジル、アクリル、エポキシエチル、イソシアネート、環状カーボネート、ラクトン、ラクタム、及びビニルからなる群より選択され、ここで、nは0から50,000の間の整数であり、*は接続点を示す]。
【0064】
一実施形態では、電解質は、線形架橋剤から合成されたものと比較して、より不均一又は無秩序なネットワークに起因して、改善された容量保持を示す。
【0065】
一実施形態では、3つ以上の重合性又は架橋性末端を有する架橋剤は、次式を有する:
【0066】
【0067】
[式中、Xは、C、Si、N、P、B、又は環式環であり、各独立したR1、R2、及びR2は、直接又はスペーサ鎖若しくは基を介してXに結合している重合性又は架橋性末端である]。
【0068】
一実施形態では、3つ以上の架橋性末端には、C2-20アルケニル、C2-20アルキニル、エポキシ、アミノ、ヒドロキシル、カルボン酸、又はそれらの任意の置換形態が含まれる。
【0069】
一実施形態では、3つ以上の重合性又は架橋性末端を有する架橋剤は、トリアクリレート、テトラアクリレート、変性トリアクリレート、変性テトラアクリレート、シラン、シロキサン、又はトリアジナン-トリオンである。
【0070】
一実施形態では、架橋ポリマーはポリ(エチレンオキシド)ポリマー鎖を含まない。
【0071】
一実施形態では、3つ以上の重合性又は架橋性末端を有する架橋剤は、次からなる群より選択されるシラン又はシロキサンである:
【0072】
【0073】
[式中、R7は、独立して、次からなる群より選択され:
【0074】
【0075】
ここで、R1、R2及びR3は、各々独立して、水素、メチル、エチル、フェニル、メチルフェニル、ベンジル、アクリル、エポキシエチル、イソシアネート、環状カーボネート、ラクトン、ラクタム、及びビニルからなる群より選択され、ここで、qは0から50,000の間の整数であり、
式中、R8は、独立して、次からなる群より選択され:
【0076】
【0077】
ここで、*は接続点を示す]。
【0078】
一実施形態では、3つ以上の重合性又は架橋性末端を有する架橋剤は、次式を有する:
【0079】
【0080】
[式中、R7は、独立して、次からなる群より選択される:
【0081】
【0082】
ここで、R1、R2及びR3は、各々独立して、水素、メチル、エチル、フェニル、メチルフェニル、ベンジル、アクリル、エポキシエチル、イソシアネート、環状カーボネート、ラクトン、ラクタム、及びビニルからなる群より選択され、qは0から50,000の間の整数であり、*は接続点を示す]。
【0083】
一実施形態では、電解質塩として、過塩素酸リチウム(LiClO4)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、ホウフッ化リチウム(LiBF4)、六フッ化ヒ素リチウム(LiAsF6)、トリフルオロメタスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、ビス-トリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム(LiN(CF3SO2)2)、リチウムビス(オキサラト)ボラ-ト(LiBOB)、リチウムオキサリルジフルオロボレート(LiBF2C2O4)、硝酸リチウム(LiNO3)、フルオロアルキルリン酸リチウム(LiPF3(CF2CF3)3)、リチウムビスパーフルオロエチルスルホニルイミド(LiBETI)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、リチウムトリフルオロメタンスルホンイミド(LiTFSI)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiDFOB)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、LiC(CF3SO2)3、LiF、LiCl、LiBr、LiI、Li2SO4、LiNO3、Li3PO4、Li2CO3、LiOH、酢酸リチウム、トリフルオロメチル酢酸リチウム、及びシュウ酸リチウムからなる群より選択されるリチウム塩が挙げられる。
【0084】
一実施形態では、1つ以上の架橋剤は、開始剤の存在下、UV光下、又は高温で架橋される。
【0085】
一実施形態では、本発明は、本明細書に記載される電解質を含む電気化学デバイスを開示する。
【0086】
一実施形態では、電気化学デバイスは、いかなる破裂も引き起こすことなく、20mΩの外部抵抗による短絡試験に合格する。
【0087】
一実施形態では、電気化学デバイスは、いかなる破裂も引き起こすことなく、5mΩの外部抵抗による短絡試験に合格する。
【0088】
一実施形態では、電気化学デバイスはアノードを含まないか、又はアノードを含む。
【0089】
一実施形態では、アノードは、炭素アノード、Liアノード、Siアノード、合金アノード、Li4Ti5O12であるか、又は変換アノード材料で作られており、ここで、炭素アノードは、グラファイト、ソフトカーボン、ハードカーボン、又はそれらの組合せを含み、Liアノードは、Li金属箔、Cu、Ni、又はステンレス鋼上のLi金属を含み、Siアノードは、Si、Si/炭素複合材料、SiOx(0≦x<2)、SiOx(0≦x<2)/炭素複合材料、又はそれらの組合せを含み、合金アノードは、Sn、SnO2、Sb、Al、Mg、Bi、In、As、Zn、Ga、B、又はそれらの組合せを含み、変換アノード材料はMaXbを含み、Mは、Mn、Fe、Co、Ni、又はCuであり、Xは、O、S、Se、F、N、又はPであり、a及びbはそれぞれ、1から4である。
【0090】
一実施形態では、電気化学デバイスは、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物、チタン酸リチウム、金属リチウム、リチウム金属酸化物、リチウムマンガン酸化物、リチウムコバルト酸化物、及びリチウム鉄リン酸塩を含む電気活性材料を含むカソードを含む。
【0091】
以下で説明するように、実施例1、8-4、8-8、及び8-9は単一の架橋剤系であり、それらのそれぞれのイオン伝導度は、PETAとUDMAの両方が、DA700と比較して改善されたイオン伝導度を有していることを示している。改善されたイオン伝導度は、テトラアクリレートの官能性に起因するものと考えられ、DA700では2つの末端を有する線形架橋剤による架橋が可能であるのに対し、4つの末端すべてからの架橋を可能にする。その結果、配合物に用いられるPETAの架橋剤の量が減り、DA700配合物よりも速いリチウムイオン輸送が可能となる。実施例8-8及び8-9では、UDMA中の電子供与基、すなわちアミドは、リチウムイオン輸送を促進することができる。
【0092】
実施例8-5、8-6、及び8-7は二重架橋剤系であり、単一架橋剤系である実施例8-4と比較してわずかに改善されたイオン伝導度を示す。実施例8-5、8-6、及び8-7の第2の架橋剤はアリル/ビニル末端化シランであり、これは、架橋することができ、シリコン-アノード電池システムにおいて添加剤として使用することができる可能性がある。電解質系に第2の架橋剤を添加すると、PETA架橋ネットワークが破壊され、より不均一又は無秩序な架橋ネットワーク、又はより多くのトポロジー欠陥を有するポリマーネットワークが生じ、イオンが電解質内でより自由に移動できるため、イオン輸送が促進される可能性があろう。架橋剤の添加量が少ないため、観察されたように、イオン輸送特性の乱れも少ない。
【0093】
幾つかの実施形態では、本明細書に記載されるようなポリマー固体電解質は、比較的高い分解電圧を提供することができる。比較的高い分解電圧を有するポリマー固体電解質は、例えば、より高い電圧が必要とされる用途において特に有用でありうる。場合によっては、ポリマー固体電解質の分解電圧は、少なくとも0.1V、少なくとも0.2V、少なくとも0.3V、少なくとも0.4V、少なくとも0.5V、少なくとも0.6V、少なくとも0.7V、少なくとも0.8V、少なくとも0.9V、少なくとも1V、少なくとも1.5V、少なくとも2V、少なくとも2.5V、少なくとも3V、少なくとも3.5V、少なくとも3.8V、少なくとも4V、少なくとも4.3V、少なくとも4.5V、少なくとも4.8V、少なくとも5V、少なくとも5.3V、少なくとも5.5V、又は少なくとも6Vでありうる。分解電圧は、サイクリックボルタンメトリーなどの当業者に知られている標準的な技法を使用して試験することができる。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、ポリ(エチレンオキシド)鎖を有しない架橋剤は容易に酸化されない。このような架橋剤から得られるポリマー固体電解質は分解に耐えることができ、比較的高い分解電圧を有することができる。
【0094】
幾つかの実施形態では、ポリマー固体電解質は、加工性を改善するため、及び/又はイオン伝導度及び機械的強度を制御するための添加剤を含むことができる。例えば、添加剤は、ポリマー、小分子(すなわち、1kDa未満の分子量を有する)、ニトリル、オリゴエーテル、環状カーボネート、イオン液体などでありうる。オリゴエーテルの例としては、ジエチルエーテル、2-エトキシエタノール、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、1,1-ジエトキシエタン、1,1-ジプロポキシエタン、1,2-ジプロポキシエタン、ジエチレングリコール、2-(2-エトキシエトキシ)エタノール、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリ(エチレングリコール)モノメチルエーテル、トリ(エチレングリコール)モノエチルエーテル、トリ(エチレングリコール)モノブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、テトラエチレングリコール、テトラ(エチレングリコール)モノメチルエーテル、テトラ(エチレングリコール)モノエチルエーテル、テトラ(エチレングリコール)モノブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジブチルエーテルなどが挙げられる。潜在的に適切な添加剤の非限定的な例としては、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、プロピレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、スクシノニトリル、グルタロニトリル、ヘキソニトリル、マロノニトリル、ジメチルスルホキシド、プロプ-1-エン-1,3-スルトン、スルホラン、エチルビニルスルホン、テトラメチレンスルホン、ビニルスルホン、メチルビニルスルホン、フェニルビニルスルホン、N-プロピル-N-メチルピロリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、ポリ(エチレンオキシド)などが挙げられる。場合によっては、添加剤は溶媒として作用しうる。他の場合には、添加剤が可塑剤として作用しうる。
【0095】
幾つかの実施形態では、添加剤は、電解質の総重量に基づいて、少なくとも1質量%、少なくとも2質量%、少なくとも3質量%、少なくとも4質量%、少なくとも5質量%、少なくとも6質量%、少なくとも7質量%、少なくとも8質量%、少なくとも9質量%、少なくとも10質量%、少なくとも11質量%、少なくとも12質量%、少なくとも20質量%、少なくとも25質量%、少なくとも30質量%、少なくとも35質量%、少なくとも40質量%、少なくとも45質量%、少なくとも50質量%、少なくとも55質量%、少なくとも60質量%、少なくとも65質量%、少なくとも70質量%、少なくとも75質量%、少なくとも80質量%、又は少なくとも85質量%の質量パーセントで存在することができる。
【0096】
電解質塩はリチウム塩を含みうる。リチウム塩の具体的な非限定的な例としては、過塩素酸リチウム(LiCIO4)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、ホウフッ化リチウム(LiBF4)、六フッ化ヒ素リチウム(LiAsF6)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、ビス-トリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム(LiN(CF3SO2)2)、リチウムビス(オキサラト)ボラ-ト(LiBOB)、リチウムオキサリルジフルオロボレート(LiBF2C2O4)、硝酸リチウム(LiNO3)、フルオロアルキルリン酸リチウム(LiPF3(CF2CF3)3)、リチウムビスパーフルオロエチルスルホニルイミド(LiBETI)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、リチウムトリフルオロメタンスルホンイミド(LiTFSI)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiDFOB)、LiC(CF3SO2)3、LiF、LiCl、LiBr、LiI、Li2SO4、LiNO3、Li3PO4、Li2CO3、LiOH、酢酸リチウム、トリフルオロメチル酢酸リチウム、シュウ酸リチウム、及びそれらの組合せが挙げられる。
【0097】
幾つかの実施形態では、電解質塩は、少なくとも0.5M、少なくとも1M、少なくとも1.5M、少なくとも2M、少なくとも2.5M、少なくとも3M、少なくとも3.5M、少なくとも4M、少なくとも4.5M、少なくとも5M、少なくとも5.5M、少なくとも6M、少なくとも6.5M、少なくとも7M、少なくとも7.5M、少なくとも8M、少なくとも8.5M、少なくとも9M、少なくとも9.5M、少なくとも10M、及び/又は0.5M以下、1M以下、1.5M以下、2M以下、2.5M以下、3M以下、3.5M以下、4M以下、4.5M以下、5M以下、5.5M以下、6M以下、6.5M以下、7M以下、7.5M以下、8M以下、8.5M以下、9M以下、9.5M以下、10M以下のモル分率を有する。
【0098】
幾つかの実施形態では、開始剤が存在していてもよい。開始剤の具体的な非限定的な例としては、Irgacure開始剤、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)、過酸化ベンゾイル、クメンヒドロペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ter-ブチルヒドロペルオキシド、ジ-tert-ブチルペルオキシド、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、過硫酸アンモニウム、アニソイン、アントラキノン、ベンゾフェノン、ベンゾインメチルエーテル、2-イソプロピルチオキサントン、9,10-フェナントレンキノン、3’-ヒドロキシアセトフェノン、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトレカルボン酸二無水物、2-ベンゾイル安息香酸、(±)-カンファーキノン、2-エチルアントラキノン、2-メチルベンゾフェノン、4-ヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、ベンゾインイソブチルエーテル、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン、4-ベンゾイル4’-メチルジフェニルスルフィド、フェロセン、ジベンゾスベレノン、ベンゾインエチルエーテル、ベンジル、ベンゾイルギ酸メチル、4-ベンゾイル安息香酸などが挙げられる。場合によっては、開始剤は、ポリマー固体電解質の総重量に基づいて、0.01質量%から5質量%の間の重量分率(質量パーセント)、又は架橋を開始するのに適した他のモル分率を有する。本発明は、過剰架橋を回避するため、及び/又はポリマーネットワークの不均一性を保持するためには、開始剤の重量分率がある特定の閾値以下であることが好ましいことを発見した。一実施形態では、重量分率は、5.0質量%以下、4.0質量%以下、3.0質量%以下、2.0質量%以下、又は1.0質量%以下である。一実施形態では、重量分率は、1.0%以下、0.8質量%以下、0.6質量%以下、0.4質量%以下、0.2質量%以下、0.1質量%以下、又は0.05質量%以下である。
【0099】
場合によっては、ポリマー、添加剤、及び電解質塩はそれぞれ、電解質材料内に任意の適切な濃度で存在しうる。加えて、これらのうちの1つ又は複数が存在していてもよく、例えば、複数のポリマー、及び/又は複数の可塑剤、及び/又は複数の電解質塩が存在していてもよい。
【0100】
一連の実施形態では、(一又は複数の)架橋剤は、電解質の総重量に基づいて、少なくとも0.01質量%、少なくとも0.02質量%、少なくとも0.027質量%、少なくとも0.03質量%、少なくとも0.05質量%、少なくとも0.1質量%、少なくとも0.11質量%、少なくとも0.12質量%、少なくとも0.13質量%、少なくとも0.15質量%、少なくとも0.2質量%、少なくとも0.3質量%、少なくとも0.5質量%、少なくとも1.0質量%、少なくとも1.5質量%、少なくとも2.0質量%、少なくとも2.5質量%、少なくとも3質量%、少なくとも3.5質量%、少なくとも4質量%、少なくとも4.5質量%、少なくとも5.0質量%、少なくとも6.0質量%、少なくとも7.0質量%、少なくとも8.0質量%、少なくとも9.0質量%、少なくとも10質量%、少なくとも11質量%、少なくとも12質量%、少なくとも13質量%、少なくとも14質量%、少なくとも15質量%、少なくとも30質量%、少なくとも40質量%、少なくとも50質量%、及び/又は0.01質量%以下、0.02質量%以下、0.027質量%以下、0.03質量%以下、0.05質量%以下、0.1質量%以下、0.11質量%以下、0.12質量%以下、0.13質量%以下、0.15質量%以下、0.2質量%以下、0.3質量%以下、0.5質量%以下、1.0質量%以下、1.5質量%以下、2.0質量%以下、2.5質量%以下、3質量%以下、3.5質量%以下、4質量%以下、4.5質量%以下、5.0質量%以下、6.0質量%以下、8.0質量%以下、9.0質量%以下、10質量%以下、12質量%以下、15質量%以下、20質量%以下、30質量%以下、40質量%以下、50質量%以下の質量パーセントで存在することができる。
【0101】
ある特定の実施形態では、電解質の総重量に基づいた(一又は複数の)架橋剤の重量比は、過剰な架橋を防ぐためには、30質量%以下、20質量%以下、10質量%以下、8%以下、6%以下、5%以下、4%以下、又は3%以下である。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、過剰に架橋されたポリマーを含む電解質は、おそらくは、硬いポリマーネットワークとその中でのイオン輸送の制限に起因して、不十分な加工性及びイオン伝導度を示す。本発明はまた、(一又は複数の)架橋剤の重量比が、おそらく過剰架橋構造に起因する、ある特定の閾値重量パーセント又は比率を超えると、ポリマー固体電解質の膜がより硬くなることも発見した。代わりに、このような過剰な架橋と剛直な構造により、電気化学的性能、とりわけサイクル性能が著しく低下した。ある特定の実施形態では、過剰架橋に関連する(一又は複数の)架橋剤の閾値重量比は、分子量、架橋性末端の数、電解質の密度などに依存する可能性があり、必要に応じてさらなる調整に供されることがある。
【0102】
ある特定の実施形態では、電解質の総重量に基づいた少なくとも3つの末端を有する架橋剤の重量比は、20質量%以下、10質量%以下、8%以下、6%以下、5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、又は1.5%以下である。ある特定の実施形態では、過剰架橋に関連する少なくとも3つの末端を有する架橋剤の閾値重量比は、その分子量、架橋性末端の数、電解質の密度などに依存する可能性があり、必要に応じてさらなる調整に供されることがある。
【0103】
ある特定の実施形態では、電解質の総重量に基づいた(一又は複数の)架橋剤の重量比は、2%以上、1%以上、0.8%以上、0.5%以上、又は0.1%以上でありうる。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、(一又は複数の)架橋剤の最小量は、電解質を液体ではなく固体の状態に保ち、加工性と安定性を確保するためのものである。
【0104】
2つの架橋剤から合成された架橋ポリマーに関しては、これら2つの架橋剤の重量比は、本発明の幾つかの実施形態によれば、10:1から1:1の範囲である。幾つかの実施形態では、2つの架橋剤のモル比は、10:1から1:1の範囲である。
【0105】
ある特定の実施形態では、架橋剤の電解質塩に対する重量比は、約50:1から約10:1である。ある特定の実施形態では、架橋剤の電解質塩に対する重量比は、約10:1から約1:1である。
【0106】
ある特定の実施形態では、一又は複数の架橋剤は、約2kDa以下、約1.9kDa以下、約1.8kDa以下、約1.7kDa以下、約1.6kDa以下、約1.5kDa以下、約1.4kDa以下、約1.3kDa以下、約1.2kDa以下、約1.1kDa以下、約1.0kDa以下、約0.9kDa以下、約0.8kDa以下、約0.7kDa以下、又は約0.6kDa以下の分子量を有する。
【0107】
上記の範囲及び間隔の1つ以上の組合せも可能である。例えば、架橋剤(複数の架橋剤を含む)は、1質量%から50質量%の間の重量分率(すなわち、架橋剤の総量は50質量%を超えない)を有し、電解質塩(複数の電解質塩を含む)は、1.0Mから4Mの間のモル分率を有する。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、架橋剤の濃度が低すぎると、固体電解質が比較的柔らかくなることがあり、取り扱いが難しくなる可能性がある;しかしながら、架橋剤の濃度が高すぎると、固体電解質が非常に強靭になり、取り扱い中に破損しやすくなり、良好な接着性が得られなくなる可能性がある。
【0108】
本発明のある特定の態様は、概して、本明細書で論じられるポリマー固体電解質のいずれかを製造するためのシステム及び方法を対象とする。例えば、一連の実施形態では、ポリマーは、さまざまな架橋剤を一緒に反応させることによって生成することができる。
【0109】
一連の実施形態では、架橋剤を溶媒及び電解質塩と混合してスラリーを形成し、これを硬化させて固体電解質を形成することができる。加えて、場合によっては、複数の架橋剤がスラリー中に存在する場合があり、それらは連続的、同時になどでスラリーに添加することができる。架橋剤はそれぞれ独立して、本明細書に記載される架橋剤、及び/又は他の適切な架橋剤でありうる。
【0110】
幾つかの実施形態では、スラリーを硬化させて固体状の膜のなどの膜を形成することができる。幾つかの実施形態では、膜は、100nmから500μmの間の厚さを有する。例えば、混合物は、硬化、例えば、UV光、熱成形、高温への曝露などを使用して硬化することによって膜へと形成することができる。例えば、硬化は、少なくとも3分間、少なくとも5分間、少なくとも10分間、少なくとも15分間などのUV光への曝露を使用して、及び/又は少なくとも20℃、少なくとも30℃、少なくとも40℃、少なくとも50℃、少なくとも60℃、少なくとも70℃、少なくとも80℃、少なくとも90℃、少なくとも100℃、少なくとも110℃、少なくとも120℃、少なくとも130℃、少なくとも140℃、少なくとも150℃などの温度への曝露によって、誘導することができる。一例として、スラリーを表面上及び/又は型内にコーティング又は配置し、UV光に曝露して硬化させることができる。
【0111】
場合によっては、硬化プロセス中に、架橋剤の少なくとも一部は、例えば本明細書で論じられるように架橋させることもでき、これにより、場合によっては、さまざまな電気化学的性能を向上させることができる。例えば、UV光への曝露により、架橋プロセスを促進させることができる。
【0112】
本開示は、概して、上述のさまざまなポリマー固体電解質材料を備えたデバイスに関する。該デバイスは、電池、LIB、又はリチウムイオン固体電池でありうる。電池は、携帯用途、輸送用途、定置型エネルギー貯蔵用途などの用途向けに構成することができる。イオン伝導電池の非限定的な例にはリチウムイオン伝導電池などが含まれる。該デバイスは、1つ以上のリチウムイオン電気化学セルを備えた電池であってもよい。
【0113】
さまざまな例では、電池は、本開示の電解質、アノード、及び電気活性材料を有するカソードを含む。
【0114】
さまざまな例では、アノードには、炭素アノード、Liアノード、Siアノード、合金アノード、及び/又は変換アノード材料が含まれる。炭素アノードには、グラファイト、ソフトカーボン、ハードカーボン、又はそれらの組合せが含まれる。Liアノードには、Li金属箔、Cu上(又は、ステンレス鋼、Niなどの他の集電体上)のLi金属が含まれる。Siアノードには、Si、Si/炭素複合材料アノード、SiOx(0≦x<2)、SiOx((0≦x<2)/炭素複合材料アノードが含まれる。合金アノードには、Sn、SnO2、Sb、Al、Mg、Bi、In、As、Zn、Ga、Bが含まれる。さまざまな例では、電池にはアノードがない(集電体のみを含む)。
【0115】
変換アノード材料はMaXbを含み、Mは、Mn、Fe、Co、Ni、Cuであり、Xは、O、S、Se、F、N、Pなどである。加えて、a及びbは、それぞれ、1から4である。
【0116】
さまざまな例では、他の可能なアノード材料には、Li4Ti5O12が含まれる。
【0117】
さまざまな例では、電気活性材料は、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物、チタン酸リチウム、金属リチウム、リチウム金属酸化物、リチウムマンガン酸化物、リチウムコバルト酸化物、及びリチウム鉄リン酸塩を含む。
【0118】
加えて、幾つかの実施形態では、電気化学デバイスは、25℃で0.5Cの放電電流率を使用して87サイクル後に90.7%から100%の容量保持率を有するか、又は25℃で0.5Cの放電電流率を使用して73サイクル後に少なくとも99.2%の容量保持率を有する。
【0119】
さらには、幾つかの実施形態では、電気化学デバイスは、25℃で0.5Cの放電電流率を使用した場合に、少なくとも41%、少なくとも46%、少なくとも51%、少なくとも56%、少なくとも62%、少なくとも67%、少なくとも72%、少なくとも77%、少なくとも82%、少なくとも87%、少なくとも90.7%、少なくとも92%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも99.2%、少なくとも99.3%、少なくとも99.5%などの容量保持率を有する。
【0120】
加えて、幾つかの実施形態では、電気化学デバイスは、少なくとも130℃、少なくとも140℃、少なくとも150℃、少なくとも160℃、少なくとも170℃、少なくとも180℃、少なくとも190℃、少なくとも200℃、少なくとも210℃、少なくとも220℃、少なくとも230℃、少なくとも240℃、又は少なくとも250℃の発熱反応を有する。
【0121】
加えて、本開示は、概して、物品(本明細書に開示されるポリマー固体電解質など)の製造方法に関する。該方法は、1つ以上の架橋剤を混合してスラリーを形成するステップ、及びUV硬化又は熱硬化によってスラリーを硬化して固体電解質を形成するステップを含み、少なくとも1つの架橋剤は3つ以上の重合性又は架橋性末端を有する。
【0122】
さらに、幾つかの実施形態では、該方法は、スラリーを硬化する前にスラリーを型に加えるステップと、スラリーを硬化する前に表面にスラリーをコーティングするステップとをさらに含む。幾つかの実施形態では、1つの架橋剤のみが添加される。幾つかの実施形態では、複数の架橋剤が同時に又は連続的に添加される。幾つかの代替的な実施形態では、その後、スラリーを硬化する前に、追加の架橋剤(第2及び/又は第3の架橋剤など)をスラリーに添加することができる。幾つかの実施形態では、その後に添加される架橋剤は、最初に添加される架橋剤と同じであっても異なっていてもよい。複数の架橋剤が用いられる場合、第2の架橋剤は、線形ポリマー、分岐ポリマー、又は架橋ポリマーを生成することができるモノマーでありうる。
【0123】
幾つかの実施形態では、スラリーは、UV光下、又は50℃から90℃の間の高温で硬化させることができる。幾つかの実施形態では、スラリーは、Irgacure開始剤、AIBN、及び上述の任意の他の開始剤を含むがこれらに限定されない開始剤を含む。幾つかの実施形態では、スラリーは、本明細書に開示される可塑剤などの添加剤を含む。幾つかの実施形態では、スラリーは電解質塩を含む。
【0124】
幾つかの実施形態では、該方法は、スラリーを硬化する前に、スラリーを型に移すステップ、又はスラリーを表面にコーティングするステップをさらに含む。
【0125】
幾つかの架橋剤、電解質塩、添加剤、及び国際公開第2020/096632号、並びに米国特許出願公開第2020/0144665号及び同第2020/0144667号の各明細書に記載される他の材料が、その全体がここに参照することによって本明細書に組み込まれる。
【0126】
以下の実施例は、本発明のある特定の実施形態を説明することを意図しているが、本発明の全範囲を例示するものではない。
【0127】
サイクル性能:カソード、アノード、セパレータ、及び電解質を備えたコイン型電池を、さまざまな電流率を用いて、Newareテスターを使用して室温でさまざまな電圧範囲で放電及び充電した。サイクル寿命は、電池が元の容量(容量保持)の80%に達するまでのサイクル数によって決まる。
【0128】
電気化学インピーダンス分光法(EIS)及びイオン伝導度:EISは、ACインピーダンスアナライザ(Interface 1010E Potentiostate、Gamry社製)によってイオン伝導性セルで実施した。1MHzから1Hzの周波数が試験に適用された。イオン伝導性セルは、ステンレス鋼のボタン電池底部、厚さとリング幅が既知のシリコーンリングワッシャー、ガスケット/Oリング、スペーサ、スプリング、及びボタン電池上部で構成されている。電解質はシリコーンリングワッシャーのリング内に配置されており、測定によるバルク抵抗は電解質のバルク抵抗を表す。
【0129】
NMC811:リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(下記実施例のLiNi0.8Mn0.1Co0.1O2)
NCA:リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(下記実施例のLiNi0.8Co0.15Al0.05O2)
SiOx:一酸化ケイ素(下記実施例における0≦x<2、x=1)
【実施例】
【0130】
実施例1
架橋剤1(2,2,3,3-テトラフルオロブタン-1,4-ジアクリレート、実施例1-1では3質量%、実施例1-2では5質量%)、3.5MのLiFSI、添加剤、及び開始剤としての0.1質量%のAIBNを室温で機械的に撹拌することによって混合することにより、固体状態のポリマー電解質を得た。
【0131】
ポリマー固体電解質は、アノードとしてSiOx、カソードとしてNCMを備えた2032ボタン電池内でアセンブリし、該アセンブリした電池を60℃で1から2時間熱硬化した。サイクリング試験はNewareサイクリングテスターを使用して実施した。すべての電池を、同じ充電速度と放電速度を使用して試験した。充放電電圧ウィンドウは2.8Vから4.2Vであった。電池は、第1のサイクルから第3のサイクルまで0.1Cの電流率でサイクルさせ、次に電池を第4のサイクルから第6のサイクルまで0.2Cの電流率でサイクルさせ、次に電池を第7のサイクルから第9のサイクルまで0.33Cの電流率でサイクルさせ、次に、電池をフルセルで0.5Cの電流率でサイクルさせた。
【0132】
図1は、さまざまな量の架橋剤1の容量保持を示している。200サイクルにおいて、実施例1-1(3質量%の架橋剤1を含む)は元の容量の82.5%を保持する一方、実施例1-2(5質量%の架橋剤1を含む)は元の容量の68.3%を保持する。実施例1-2は、ポリマー電解質におけるリチウムイオン伝導が限られていることを示した。イオン輸送におけるこの制限の結果、実施例1-1(3質量%の架橋剤1を含む)と比較して、より急速な容量の低下が生じた。最適な量の架橋剤1を用いると、電池の性能はより優れた容量保持とより長いサイクル寿命を維持することができる。
【0133】
実施例2
実施例2では、架橋剤2a(2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロヘキサン-1,6-ジイルジアクリレート)及び架橋剤2b(2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロヘキサン-1,6-ジイルビス(2-メチルアクリレート))をそれぞれ利用する。
【0134】
単一の架橋剤(実施例2-1では5質量%の架橋剤2a、実施例2-2では10質量%の架橋剤2a、実施例2-3では5質量%の架橋剤2b、実施例2-4では10質量%の架橋剤2b)、3.5Mのリチウム塩(ビス(フルオロスルホニル)イミド、LiFSI)、添加剤、及び開始剤としての0.1質量%のAIBNを液体状態で室温において機械的に撹拌して混合することにより、固体状態のポリマー電解質を得て、アセンブリされた電池を60℃で1から2時間熱硬化させた。実施例2-1、2-2、2-3、及び2-4はすべて十分に架橋されていた。
【0135】
実施例3
実施例3では、架橋剤3(テトラアリルシラン、TAS)、架橋剤4(ジアリルジメチルシラン)、架橋剤5(2,4,6,8-テトラメチル-2,4,6,8-テトラビニルシクロテトラシロキサン)、架橋剤6(アリルトリエトキシシラン)、架橋剤7(ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート(Mn 700))、及び架橋剤8(ペンタエリスリトールテトラアクリレート)を利用する。
【0136】
2つの架橋剤(実施例3-1については2質量%の架橋剤3及び5質量%の架橋剤7、実施例3-2については2質量%の架橋剤5及び5質量%の架橋剤7、実施例3-3については2質量%の架橋剤4及び5質量%の架橋剤7、実施例3-4については2質量%の架橋剤6及び5質量%の架橋剤7、実施例3-5については2質量%の架橋剤3及び2質量%の架橋剤8、実施例3-6については2質量%の架橋剤5及び2質量%の架橋剤8)、3.5MのLiFSI、添加剤、及び開始剤として0.1質量%のAIBNを液体状態で室温において機械的に撹拌して混合することによって、固体状態のポリマー電解質を得て、アセンブリされた電池を60℃で1から2時間熱硬化させた。実施例3-1、3-2、3-3、3-4、3-5、及び3-6はすべて十分に架橋されていた。
【0137】
【0138】
実施例4
実施例4-1
1.5質量%の架橋剤8(ペンタエリスリトールテトラアクリレート、PETA)、電解質塩として3.5MのLiFSI、0.1質量%のAIBN、及び添加剤を液体状態で室温において機械的に撹拌して混合することによって、固体状態のポリマー電解質を得た。
【0139】
実施例4-2
1.5質量%の架橋剤8(ペンタエリスリトールテトラアクリレート、PETA)及び2質量%の架橋剤9(テトラアリルシラン、TAS)、開始剤としての0.1質量%のAIBN、電解質塩としての3.5MのLiFSI、及び添加剤を液体状態で室温において機械的に撹拌して混合することによって、固体のポリマー電解質を得た。
【0140】
上記の液体で粘稠な混合物をポリエチレンテレフタレート(PET)基板上に塗布してコーティングを形成し、その後、60℃で1から2時間硬化させた。
【0141】
ポリマー固体電解質は、アノードとしてSiOx、カソードとしてNCA815を備えた2032ボタン電池内でアセンブリし、該アセンブリした電池を60℃で1から2時間熱硬化した。サイクリング試験はNewareサイクリングテスターを使用して実施した。すべての電池を、同じ充電速度と放電速度を使用して試験した。充放電電圧ウィンドウは2.8Vから4.2Vであった。電池は、第1のサイクルから第3のサイクルまで0.1Cの電流率でサイクルさせ、次に電池を第4のサイクルから第6のサイクルまで0.2Cの電流率でサイクルさせ、次に電池を第7のサイクルから第9のサイクルまで0.33Cの電流率でサイクルさせ、次に、電池をフルセルで0.5Cの電流率でサイクルさせた。
【0142】
図2は、二重架橋剤系(実施例4-2;PETA及びTAS)と比較した単一の架橋剤系(実施例4-1;PETAのみ)の容量保持を示している。二重架橋剤系は、単一の架橋剤系と比較して容量保持率のわずかな改善を示し、180サイクル後も(単一の架橋剤系の75.6%と比較して)82.9%を保持している。この改善は、追加された架橋剤(架橋剤9)が第1の架橋剤(架橋剤8)の架橋ネットワークを破壊し、ポリマーネットワークをより無秩序にしたことに起因すると考えられる。無秩序なポリマーネットワークは、規則的なポリマーネットワークよりもイオン輸送を促進する。少量の第2の架橋剤(架橋剤9)のみが系に添加されるため、得られる配合物の容量保持率にわずかな改善が観察される。
【0143】
実施例5
実施例5-1
3質量%の架橋剤(トリス[2-(アクリロイルオキシ)エチル]イソシアヌレート、TAEI)、開始剤としての1質量%のAIBN、3.5MのLiFSI、及び添加剤を液体状態で室温において機械的に撹拌して混合することによって、固体状態のポリマー電解質を得た。
【0144】
【0145】
実施例5-2
5質量%の架橋剤(ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート、Mn=700、DA700)、3.5MのLiFSI、0.1質量%のAIBN、及び添加剤を液体状態で室温において機械的に撹拌して混合することによって、固体状態のポリマー電解質を得た。
【0146】
ポリマー固体電解質は、アノードとしてGr、カソードとしてNCM811、及びセパレータとしてNPoreを備えた2032ボタン電池内でアセンブリし、該アセンブリした電池を60℃で1から2時間熱硬化した。サイクリング試験はNewareサイクリングテスターを使用して実施した。すべての電池を、同じ充電速度と放電速度を使用して試験した。充放電電圧ウィンドウは2.8Vから4.2Vであった。電池は、第1のサイクルから第3のサイクルまで0.1Cの電流率でサイクルさせ、次に電池を第4のサイクルから第6のサイクルまで0.2Cの電流率でサイクルさせ、次に電池を第7のサイクルから第9のサイクルまで0.33Cの電流率でサイクルさせ、次に、電池をフルセルで0.5Cの電流率でサイクルさせた。
【0147】
実施例5-2のデータは2.5mAh/cm2のNCM(条件はそれほど厳しくない)で試験し、実施例5-1のデータは3.0mAh/cm2のNCM(より厳しい条件)で試験した。試験条件は同一ではなかったが、この差は、実施例5-1の架橋剤が実施例5-2の架橋剤よりも優れた性能を示すことを裏付けている。
【0148】
図3は、実施例5-1及び5-2の容量保持を示している。250サイクルにおいて、実施例5-2は元の容量の94.3%を保持するが、一方、実施例5-1は依然として、100%を超える容量保持を示す。2つの実験は、わずかに異なる電極負荷(より低い負荷かつそれほど厳しい条件ではない実施例5-2(2.5mAh/cm
2のカソード負荷及び2.8のアノード負荷)と、より高い負荷かつより過酷な条件での実施例5-1(3.0mAh/cm
2のカソード負荷及び3.3mAh/cm
2のアノード負荷))で実施したが、この傾向は、実施例5-1が実施例5-2よりもより過酷な条件下でも優れた容量保持率を示すことにより、優れた安定性を示すことを示している点で一貫している。実施例5-1の優れた容量保持率は、おそらく2倍である。一方、実施例5-1の架橋剤は、実施例5-2の架橋剤が2つの架橋性末端を有するのに対し、3つの架橋性末端を有する。したがって、実施例5-1の架橋剤は、実施例5-2の架橋剤よりも効率よくポリマーネットワークを形成することができる。他方では、実施例5-1の架橋剤はイミド官能基を含有しており、これは高電圧で安定であり、ポリマーネットワークにおけるイオン輸送も促進する可能性がある。これらすべての特性が、実施例5-1の優れたサイクル安定性に寄与する。
【0149】
実施例6
架橋剤(実施例6-1では2質量%のUDMA、実施例6-2では5質量%のUDMA)、開始剤としての0.1質量%のAIBN、3.5MのLiFSI、及び添加剤を液体状態で室温において機械的に撹拌して混合することによって、固体状態のポリマー電解質を得た。
【0150】
【0151】
ポリマー固体電解質は、アノードとしてLi箔、カソードとしてNCM、及びセパレータとして変性Senioを備えた2032ボタン電池内でアセンブリし、該アセンブリした電池を60℃で1から2時間熱硬化した。サイクリング試験はNewareサイクリングテスターを使用して実施した。充放電電圧ウィンドウは2.8Vから4.2Vであった。第1のサイクルでは電池を0.05Cの電流率でサイクルさせ、次に、第2のサイクルから第3のサイクルまで電池を0.2Cの電流率でサイクルさせ、次に、0.5Cの電流率で連続電流(CC)で電池を充電し、次の500サイクルの間、1Cの電流率で連続電流(CC)で放電した。
【0152】
図4は、配合物中の異なる量の架橋剤UDMAの容量保持曲線を示している。
図4に示されるように、実施例6-1は50サイクル後も92%の容量保持率を維持したが、実施例6-2では、28回目のサイクルで容量が80%に達した。これは、実施例6-2は実施例6-1よりも多くの架橋剤を含んでいるため、ポリマー電解質ネットワークにおけるリチウムイオン輸送を制限する可能性が高く、より急速な容量低下を引き起こすことを示している。実施例6-1では架橋剤の量が少ないが、動力学的制限が緩和されるため、リチウムイオンの移動は架橋ポリマーネットワークの密度によって制限されない。加えて、この例の架橋剤中のN-R/N-Hは、PEO鎖よりもリチウムイオンの輸送を促進することができる。
【0153】
実施例7
架橋剤(1.5質量%のPETA)、4MのLiFSI、開始剤としての0.1質量%のAIBN、及び添加剤を液体状態で室温において機械的に撹拌して混合することによって、固体状態のポリマー電解質を得た。アセンブリされた電池を60℃で1から2時間熱硬化させた。
【0154】
ポリマー固体電解質は、アノードとしてLi箔、カソードとしてステンレス鋼スペーサを備えた2032ボタン電池内にアセンブリした。
【0155】
サイクリックボルタンメトリー:CR2032ボタン電池(低電圧範囲の場合はステンレス鋼スペーサ、又は高電圧範囲の場合はAlクラッド)をCVサイクルに使用した。ステンレス鋼スペーサをカソードとして用い、低電圧範囲ではリチウム箔を用い、高電圧範囲ではAlクラッドケースをカソードとして直接使用した。電解質及びセパレータをカソードとアノードの間に追加した。Gamry 1010Bポテンショスタットを使用し、電圧範囲を図のように定義し、0.1mV/秒で2サイクルスキャンした。
【0156】
図5は、電気化学的安定性を2~6Vの間で試験し、サイクル1の4.7Vでの小さい不動態化プロセスを除き、他の重要な電気化学プロセス又は酸化還元プロセスは観察されず、サイクル2では最小限の電流のみが観察されたことを示しており、酸化により電極上に不動態化層が形成されたことが示唆される。このような不動態層の形成は、電極の保護と高電圧での電池の性能にとって有益である。調べた電圧範囲内で、
図5のポリマー電解質配合物は最高で6Vまでの電気化学的安定性を示す。
【0157】
幾つかの実施形態では、4つの末端を有する架橋剤は、次のように合成することができる:
【0158】
【0159】
幾つかの実施形態では、4つの末端を有する架橋剤は、次のように合成することができる:
【0160】
【0161】
実施例8
単一の架橋剤又は二重架橋剤、3.5MのLiFSI、開始剤としての0.1質量%のAIBN、及び添加剤を、液体状態で室温において機械的に撹拌することにより以下に記載される比率で混合することによって、固体のポリマー電解質を得た。
【0162】
上記混合物を、以下に説明するイオン伝導性セルに適用した。アセンブリされた電池を60℃で1から2時間熱硬化させた。膜のEIS及びイオン伝導度を、次のように電池において測定した。
【0163】
実施例8では、架橋剤3(テトラアリルシラン)、架橋剤10(SiO2 380)、架橋剤11(SiO2 711)、架橋剤12(SiO2 7200)、架橋剤7(ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート(Mn 700))、架橋剤8(ペンタエリスリトールテトラアクリレート)、架橋剤5(2,4,6,8-テトラメチル-2,4,6,8-テトラビニルシクロテトラシロキサン)、架橋剤13(ジアリルジメチルシラン)、及び架橋剤14(ジメタクリル酸ジウレタン)を利用する。ヒュームドシリカ(SiO2)は、Aerosilという商品名で商業供給元であるEvoniks社から得られる。
【0164】
【0165】
実施例8-4、8-8、及び8-9は単一の架橋剤系であり、それらのそれぞれのイオン伝導度は、架橋剤8と架橋剤14の両方が架橋剤7と比較して改善されたイオン伝導度を有していることを示している。架橋剤8によるイオン伝導度の向上は、テトラアクリレート官能性に起因するものと考えられ、線形架橋剤7の2つの末端ではなく4つの末端すべてから架橋することができるため、規則性の低いポリマーネットワークが生じる。加えて、実施例8-1、8-2、及び8-3の架橋剤7と比較して、実施例8-4、8-5、8-6、及び8-7では比較的低い濃度の架橋剤8が用いられており、その結果、架橋密度が比較的低くなり、架橋剤7の配合物よりも速いリチウムイオン輸送が可能になる。さらには、実施例8-8及び8-9を他の実施例と比較すると、架橋剤14は電子供与基、すなわちアミドを有しており、電子供与基がリチウムイオン輸送を容易にし、促進するため、対応する電解質は非常に高いイオン伝導度を示す。
【0166】
実施例8-5、8-6、及び8-7は二重架橋剤系であり、単一の架橋剤系である実施例8-4と比較してわずかに改善されたイオン伝導度を示す。実施例8-5、8-6、及び8-7に加えられた第2の架橋剤はアリル/ビニル末端化シランであり、これは、架橋することができ、シリコン-アノード電池システムにおいて添加剤として使用することができる可能性がある。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、電解質系に第2の架橋剤を追加すると、架橋剤8の架橋ネットワークが破壊され、架橋ネットワークがより無秩序になると、イオンが電解質中でより自由に移動することができるため、イオン輸送が改善される可能性があろう。架橋剤の添加量が少ないため、観察されたように、イオン輸送特性の乱れも少ない。
【0167】
実施例9
エチレンカーボネート及びジメチルカーボネート(体積比1:1)中、1MのLiPF6を混合して、ベース溶液として使用した。
【0168】
2質量%のトリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)(2つの官能基を有する架橋剤)、2質量%のトリス[2-(アクリロイルオキシ)エチル]イソシアヌレート(TAEI)(3つの官能基を有する架橋剤)、及び1質量%のAIBNをベース溶液に添加した。30分間の撹拌後、LiPF6、TEGDMA、TAEI、及びAIBNの均一な透明溶液が形成される。
【0169】
上記溶液5mlをパウチセルに注入した。
【0170】
溶液が均一に分散した後、例えば室温で48時間放置した後に、セルを65℃のオーブンに2時間入れて、架橋剤を重合又は架橋させて架橋コポリマー(あるいは、ポリマー複合材料)にし、それによってポリマー複合材料を含む固体ポリマー電解質を形成した。
【0171】
実施例10
エチレンカーボネート及びジメチルカーボネート(体積比1:1)中、1MのLiPF6を混合して、ベース溶液として使用した。
【0172】
2質量%のトリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDMA)(2つの官能基を有する架橋剤)、2質量%のジ(トリメチロールプロパン)テトラアクリレート(Di-TMPTA)(4つの官能基を有する架橋剤)、及び1質量%のAIBNをベース溶液に添加した。30分間の撹拌後、LiPF6、TEGDMA、Di-TMPTA、及びAIBNの均一な透明溶液が形成される。
【0173】
上記溶液5mlをパウチセルに注入した。
【0174】
溶液が均一に分散した後、例えば室温で48時間放置した後に、セルを65℃のオーブンに2時間入れて、架橋剤を重合又は架橋させて架橋コポリマー(あるいは、ポリマー複合材料)にし、それによってポリマー複合材料を含む固体ポリマー電解質を形成した。
【0175】
実施例11
外部短絡試験は、発火又は破裂を引き起こす可能性のある不適切な電池の使用をシミュレートするために、外部から電池を短絡させることで構成される。完全に充電された電池のプラス端子とマイナス端子が外部抵抗に接続されている。リアルタイムの電池電圧と電流をマルチメータで監視する。セル本体の温度はK型熱電対を備えた温度計で監視する。
【0176】
外部短絡試験#1
周囲温度は17℃であり、外部抵抗は0.02オームである。本明細書の外部抵抗は、標準要件(UN38.3では0.1オーム、UL1642では0.08オーム)よりも4倍小さくなる。その結果、電池は標準の外部短絡試験プロトコルよりも極端な酷使条件下にさらされる。
【0177】
単一ポリマー対照電池は、試験中に電池本体温度が300℃を超え、熱暴走により電池が破裂したことを示した。抵抗が増加したため、ポリマー複合電池は対照と比較して放電容量が5%減少したことを示している。抵抗の増加により、安全性能が大幅に改善された:最大電流と最高温度はすべての群の中で最も低い。
【0178】
【0179】
*:単一ポリマーを含む電解質対照は、1.5質量%のPETA、4MのLiFSI、開始剤としての0.1質量%のAIBN、及び可塑剤を液体状態で室温において機械的に撹拌して混合することによって調製した。混合物をパウチセルに注入し、48時間待った。次に、パウチセルを65℃のオーブンに2時間放置し、熱架橋を可能にした。
【0180】
外部短絡試験#2
周囲温度は18℃であり、外部抵抗は0.005オームである。本明細書の外部抵抗は、標準要件(UN38.3では0.1オーム、UL1642では0.08オーム)よりも16倍小さくなる。その結果、電池は標準の外部短絡試験プロトコルよりも極端な酷使条件下にある。
【0181】
0.005オームの外部抵抗で、単一ポリマーの対照電池は120Aの最大電流を示し、これは、0.02オームの条件よりも50%高い。当然のことながら、電池も熱暴走によって破裂した。ポリマー複合電池は、最大電流と最高温度がそれぞれ対照電池の64%及び33%という優れた安全機能を再び実証した。
【0182】
【0183】
実施例の概要
要約すると、少なくとも3つの架橋性末端を備えたポリマーネットワークを電解質に組み込むと、さまざまな電気化学的性能と安全性が大幅に改善される。これらのポリマー固体電解質は、安全で長寿命のリチウム二次電池を実現することができる。加えて、ポリマー鎖にポリ(エチレンオキシド)基が欠如しているため、分解電位がより高く、より安定した材料を得ることができる。これらの特性は、LIBの充電/放電速度性能に利益をもたらすことができる。分解電位の改善により安定性も向上し、より長寿命のリチウム電池及び/又はより高電圧のリチウム電池を提供することができる。ある特定の実施形態では、幾つかの例におけるポリマー固体電解質は、有機溶媒を使用しない。したがって、リチウムイオン電池、並びに他の用途に安全な性能を確実に提供することができる。
【0184】
本明細書では本発明の幾つかの実施形態を説明し図示してきたが、当業者は、機能を実行するため、及び/又は結果及び/又は本明細書に記載される1つ以上の利点を得るためのさまざまな他の手段及び/又は構造を容易に想像するであろう。このような変形及び/又は修正のそれぞれは、本発明の範囲内であるとみなされる。より一般的には、当業者は、本明細書に記載されるすべてのパラメータ、寸法、材料、及び構成が例示的であることを意味し、実際のパラメータ、寸法、材料、及び/又は構成が、本発明の教示が使用される一又は複数の特定の用途に依存することを容易に理解するであろう。当業者は、本明細書に記載される本発明の特定の実施形態と同等のものを多く認識し、又は通常の実験のみを使用して確認することができる。したがって、前述の実施形態は単なる例として提示されており、添付の特許請求の範囲及びその等価物の範囲内で、本発明は、具体的に記載及び特許請求される以外の方法で実施することができるものと理解されたい。本発明は、本明細書に記載される個々の特徴、システム、物品、材料、キット、及び/又は方法のそれぞれを対象とする。加えて、このような特徴、システム、物品、材料、キット、及び/又は方法の2つ以上の組合せは、このような特徴、システム、物品、材料、キット、及び/又は方法が相互に矛盾しない場合には、本発明の範囲内に含まれる。
【0185】
本明細書及び参照により組み込まれる文献に相反する開示及び/又は一貫性のない開示が含まれる場合には、本明細書が優先するものとする。参照により組み込まれる2つ以上の文献に、相反する開示及び/又は一貫性のない開示が含まれる場合には、発効日の遅い文献が優先される。
【0186】
本明細書で規定され、用いられるすべての定義は、辞書の定義、参照により組み込まれる文献内の定義、及び/又は定義された用語の通常の意味を制御するものと理解されるべきである。本明細書及び特許請求の範囲において用いられる不定冠詞「a」及び「an」は、明確に反対の指示がない限り、「少なくとも1つ」を意味するものと理解されるべきである。
【0187】
本明細書及び特許請求の範囲において、ここで用いられる「及び/又は」という用語は、そのように結合された要素、すなわち、ある場合には結合的に存在し、他の場合には分離的に存在する要素の「いずれか又は両方」を意味すると理解されるべきである。「及び/又は」を伴って列挙されている複数の要素は、同じように、すなわち、そのように結合された要素の「1つ以上」と解釈される必要がある。「及び/又は」節によって具体的に識別される要素以外の他の要素が、具体的に識別される要素に関連するかどうかにかかわらず、任意選択的に存在していてもよい。したがって、非限定的な例として、「A及び/又はB」への言及は、「含む」などのオープンエンドの言語と組み合わせて使用する場合には、一実施形態では、Aのみ(任意選択的にB以外の要素を含む)を指すことができ;別の実施形態では、Bのみ(任意選択的に、A以外の要素を含む)を指すことができ;さらに別の実施形態では、A及びBの両方(任意選択的に、他の要素を含む)を指すことができる;等々。
【0188】
本明細書及び特許請求の範囲で用いられる場合、「又は」は、上で定義したように、「及び/又は」と同じ意味を有すると理解されるべきである。例えば、リスト内の項目を区切る場合、「又は」又は「及び/又は」は、包括的(すなわち、少なくとも1つを含む)であると解釈されるだけでなく、多数の要素又は要素のリスト、及び、任意選択的に、追加のリストされていない項目のうちの複数を含むものと解釈される。「~のうちの1つのみ」若しくは「~のうちの正確に1つ」、又は、特許請求の範囲で用いられる場合の「からなる」など、そうでないことが明確に示されている用語のみが、多数の要素又は要素のリストのうちの正確に1つの要素を含むことを指す。一般に、本明細書で用いられる「又は」という用語は、「どちらか」、「1つ」、「1つのみ」、又は「ちょうど1つ」など、排他的な用語が先行する場合にのみ、排他的な選択肢(すなわち「一方又は他方であって、両方ではない」)を示すと解釈される。
【0189】
本明細書及び特許請求の範囲で用いられる場合、1つ以上の要素のリストに関連する「少なくとも1つ」という句は、要素のリスト内のいずれか1つ以上の要素から選択される少なくとも1つの要素を意味するが、必ずしも要素のリスト内に具体的に列挙されたすべての要素のうちの少なくとも1つを含むわけではなく、要素のリスト内の要素の任意の組合せを除外するものではないものと理解されたい。この定義は、「少なくとも1つ」という句が指す要素のリスト内で具体的に特定された要素以外の要素が、具体的に特定された要素に関連するかどうかに関係なく、任意選択的に存在することができることも可能にする。したがって、非限定的な例として、「A及びBのうちの少なくとも1つ」(又は、同等に、「A又はBのうちの少なくとも1つ」、又は、同等に「A及び/又はBのうちの少なくとも1つ」)は、一実施形態では、少なくとも1つ、任意選択的に1より多くのAを含み、Bは存在しない(かつ、任意選択的にB以外の要素を含む)ことを指し;別の実施形態では、少なくとも1つ、任意選択的に1より多くのBを含み、Aは存在しない(かつ、任意選択的にA以外の要素を含む)ことを指し;さらに別の実施形態では、少なくとも1つ、任意選択的に1より多くのAを含み、少なくとも1つ、任意選択的に1より多くのBを含み(かつ、任意選択的に他の要素を含む);などを指す。
【0190】
「約」という単語が数値に関して本明細書で用いられる場合、本発明のさらに別の実施形態には、「約」という単語の存在によって修飾されないその数値が含まれるものと理解されたい。
【0191】
反対のことが明確に示されていない限り、本明細書で特許請求される、複数のステップ又は作用を含む任意の方法において、その方法のステップ又は作用の順序は、その方法のステップ又は作用が列挙される順序に必ずしも限定されないことも理解されるべきである。
【0192】
特許請求の範囲、並びに上記の明細書において、「含む(comprising,including)」、「担持する(carrying)」、「有する」、「含む(containing)」、「包含する」、「保持する」、「~で構成される」などのすべての移行句などは、オープンエンド、すなわち、含むがそれらに限定されないことを意味するものと理解されるべきである。「~からなる」及び「本質的に~からなる」という移行句のみが、それぞれ、クローズド又はセミクローズドの移行句であるものとする。
【手続補正書】
【提出日】2024-04-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0192
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0192】
特許請求の範囲、並びに上記の明細書において、「含む(comprising,including)」、「担持する(carrying)」、「有する」、「含む(containing)」、「包含する」、「保持する」、「~で構成される」などのすべての移行句などは、オープンエンド、すなわち、含むがそれらに限定されないことを意味するものと理解されるべきである。「~からなる」及び「本質的に~からなる」という移行句のみが、それぞれ、クローズド又はセミクローズドの移行句であるものとする。
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
実施形態1
ポリマー固体電解質であって、
a)電解質塩、及び
b)1つ以上の架橋剤を含む組成物の架橋反応から得られた不均一又は無秩序なポリマーネットワークを有する架橋ポリマーであって、少なくとも1つの架橋剤が3つ以上の重合性又は架橋性末端を有する、架橋ポリマー
を含む、ポリマー固体電解質。
実施形態2
前記架橋ポリマーが過剰に架橋されていない、実施形態1に記載の電解質。
実施形態3
前記架橋ポリマーが、
a.前記1つ以上の架橋剤を0.1質量%以上30質量%以下の濃度で含む組成物、又は
b.3つ以上の重合性又は架橋性末端を有する前記架橋剤を0.1質量%以上20質量%以下の濃度で含む組成物
から得られる、実施形態2に記載の電解質。
実施形態4
前記架橋ポリマーが、
a.前記1つ以上の架橋剤を0.1質量%以上及び20質量%以下の濃度で含む組成物、又は
b.3つ以上の重合性又は架橋性末端を有する前記架橋剤を0.1質量%以上10質量%以下の濃度で含む組成物
から得られる、実施形態2に記載の電解質。
実施形態5
前記1つ以上の架橋剤のうちの少なくとも1つが、前記電解質中のイオン輸送を促進する電子供与基を有する、実施形態1に記載の電解質。
実施形態6
前記電子供与基がアミドである、実施形態5に記載の電解質。
実施形態7
前記架橋ポリマーがポリ(エチレンオキシド)鎖を含まない、実施形態1に記載の電解質。
実施形態8
前記電解質が、線形架橋剤から合成されたものと比較して、より不均一又は無秩序なネットワークに起因して、改善された容量保持を示す、実施形態1に記載の電解質。
実施形態9
3つ以上の重合性又は架橋性末端を有する前記架橋剤が、次からなる群より選択される式を有する、実施形態1に記載の電解質:
【化22】
[式中、R
4
及びR
5
は、次からなる群より独立して選択される:
【化23】
ここで、R
1
、R
2
、R
3
、及びR
6
は、各々独立して、水素、メチル、エチル、フェニル、メチルフェニル、ベンジル、アクリル、エポキシエチル、イソシアネート、環状カーボネート、ラクトン、ラクタム、及びビニルからなる群より選択され、nは0から50,000の間の整数であり、*は接続点を示す]。
実施形態10
3つ以上の重合性又は架橋性末端を有する前記架橋剤が、次からなる群より選択される式を有する、実施形態9に記載の電解質:
【化24】
実施形態11
3つ以上の重合性又は架橋性末端を有する前記架橋剤が次式を有する、実施形態1に記載の電解質:
【化25】
[式中、Xは、C、Si、N、P、B、又は環式環であり、R1、R2、及びR3は独立しており、直接又はスペーサ鎖若しくは基を介してXに共有結合している重合性又は架橋性末端である]。
実施形態12
前記3つ以上の架橋性末端が、C
2-20
アルケニル、C
2-20
アルキニル、エポキシ、アミノ、ヒドロキシル、カルボン酸、又はそれらの任意の置換形態からなる群より独立して選択される、実施形態1に記載の電解質。
実施形態13
3つ以上の重合性又は架橋性末端を有する前記架橋剤が、トリアクリレート、テトラアクリレート、変性トリアクリレート、変性テトラアクリレート、シラン、シロキサン又はトリアジナン-トリオンである、実施形態1に記載の電解質。
実施形態14
3つ以上の重合性又は架橋性末端を有する前記架橋剤が、次からなる群より選択されるシラン又はシロキサンである、実施形態1に記載の電解質:
【化26】
[式中、R
7
は、独立して、次からなる群より選択される:
【化27】
ここで、R
1
、R
2
及びR
3
は、各々独立して、水素、メチル、エチル、フェニル、メチルフェニル、ベンジル、アクリル、エポキシエチル、イソシアネート、環状カーボネート、ラクトン、ラクタム、及びビニルからなる群より選択され、qは0から50,000の間の整数であり、
式中、R
8
は、独立して、次からなる群より選択される:
【化28】
*は接続点を示す]。
実施形態15
3つ以上の重合性又は架橋性末端を有する前記架橋剤が次式を有する、実施形態1に記載の電解質:
【化29】
[式中、R
7
は、独立して、次からなる群より選択される:
【化30】
ここで、R
1
、R
2
及びR
3
は、各々独立して、水素、メチル、エチル、フェニル、メチルフェニル、ベンジル、アクリル、エポキシエチル、イソシアネート、環状カーボネート、ラクトン、ラクタム、及びビニルからなる群より選択され、qは0から50,000の間の整数であり、*は接続点を示す]。
実施形態16
前記電解質塩が、過塩素酸リチウム(LiClO
4
)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF
6
)、ホウフッ化リチウム(LiBF
4
)、六フッ化ヒ素リチウム(LiAsF
6
)、トリフルオロメタスルホン酸リチウム(LiCF
3
SO
3
)、ビストリフルオロエチルスルホニルイミドリチウム(LiN(CF
3
SO
2
)
2
)、リチウムビス(オキサラト)ボラ-ト(LiBOB)、リチウムオキサリルジフルオロボレート(LiBF
2
C
2
O
4
)、硝酸リチウム(LiNO
3
)、フルオロアルキルリン酸リチウム(LiPF
3
(CF
2
CF
3
)
3
)、リチウムビスパーフルオロエチルスルホニルイミド(LiBETI)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、リチウムトリフルオロメタンスルホンイミド(LiTFSI)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiDFOB)、過塩素酸リチウム(LiClO
4
)、LiC(CF
3
SO
2
)
3
、LiF、LiCl、LiBr、LiI、Li
2
SO
4
、LiNO
3
、Li
3
PO
4
、Li
2
CO
3
、LiOH、酢酸リチウム、トリフルオロメチル酢酸リチウム、及びシュウ酸リチウムからなる群より選択されるリチウム塩を含む、実施形態1に記載の電解質。
実施形態17
前記1つ以上の架橋剤が、開始剤の存在下、UV光下、又は高温で架橋される、実施形態1に記載の電解質。
実施形態18
実施形態1に記載の電解質を含む、電気化学デバイス。
実施形態19
前記電気化学デバイスが、いかなる破裂も引き起こすことなく、20mΩの外部抵抗による短絡試験に合格する、実施形態18に記載の電気化学デバイス。
実施形態20
前記電気化学デバイスが、いかなる破裂も引き起こすことなく、5mΩの外部抵抗による短絡試験に合格する、実施形態18に記載の電気化学デバイス。
実施形態21
前記電気化学デバイスがアノードを含まないか、又はアノードを含む、実施形態18に記載の電気化学デバイス。
実施形態22
前記アノードが、炭素アノード、Liアノード、Siアノード、合金アノード、Li
4
Ti
5
O
12
であるか、又は変換アノード材料で作られており、前記炭素アノードが、グラファイト、ソフトカーボン、ハードカーボン、又はそれらの組合せを含み、前記Liアノードが、Li金属箔、Cu、Ni、又はステンレス鋼上のLi金属を含み、前記Siアノードが、Si、Si/炭素複合材料、SiO
x
(0≦x<2)、SiO
x
(0≦x<2)/炭素複合材料、又はそれらの組合せを含み、前記合金アノードが、Sn、SnO
2
、Sb、Al、Mg、Bi、In、As、Zn、Ga、B、又はそれらの組合せを含み、前記変換アノード材料がM
a
X
b
を含み、Mが、Mn、Fe、Co、Ni、又はCuであり、Xが、O、S、Se、F、N、又はPであり、a及びbが、それぞれ、1から4である、実施形態21に記載の電気化学デバイス。
実施形態23
前記電気化学デバイスが、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物、チタン酸リチウム、金属リチウム、リチウム金属酸化物、リチウムマンガン酸化物、リチウムコバルト酸化物、及びリチウム鉄リン酸塩からなる群より選択される電気活性材料を含むカソードを備えている、実施形態18に記載の電気化学デバイス。
実施形態24
ポリマー固体電解質であって、
a)電解質塩、及び
b)1つ以上の架橋剤から合成されたトポロジー欠陥を有する架橋ポリマーであって、少なくとも1つの架橋剤が3つ以上の重合性又は架橋性末端を有する、架橋ポリマー
を含む、ポリマー固体電解質。
実施形態25
前記架橋ポリマーが過剰に架橋されていない、実施形態24に記載の電解質。
実施形態26
前記架橋ポリマーが、
a)前記1つ以上の架橋剤を0.1質量%以上30質量%以下の濃度で含む組成物、又は
b)3つ以上の重合性又は架橋性末端を有する前記架橋剤を0.1質量%以上20質量%以下の濃度で含む組成物
から得られる、実施形態25に記載の電解質。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー固体電解質であって、
a)電解質塩、及び
b)1つ以上の架橋剤を含む組成物の架橋反応から得られた不均一又は無秩序なポリマーネットワークを有する架橋ポリマーであって、少なくとも1つの架橋剤が3つ以上の重合性又は架橋性末端を有する、架橋ポリマー
を含む、ポリマー固体電解質。
【請求項2】
前記架橋ポリマーが過剰に架橋されていない、請求項1に記載の電解質。
【請求項3】
前記架橋ポリマーが、
a.前記1つ以上の架橋剤を0.1質量%以上30質量%以下の濃度で含む組成物、又は
b.3つ以上の重合性又は架橋性末端を有する前記架橋剤を0.1質量%以上20質量%以下の濃度で含む組成物
から得られる、請求項2に記載の電解質。
【請求項4】
前記1つ以上の架橋剤のうちの少なくとも1つが、前記電解質中のイオン輸送を促進する電子供与基を有する、請求項1に記載の電解質。
【請求項5】
3つ以上の重合性又は架橋性末端を有する前記架橋剤が、次からなる群より選択される式を有する、請求項1に記載の電解質:
【化1】
[式中、R
4及びR
5は、次からなる群より独立して選択される:
【化2】
ここで、R
1、R
2、R
3、及びR
6は、各々独立して、水素、メチル、エチル、フェニル、メチルフェニル、ベンジル、アクリル、エポキシエチル、イソシアネート、環状カーボネート、ラクトン、ラクタム、及びビニルからなる群より選択され、nは0から50,000の間の整数であり、*は接続点を示す]。
【請求項6】
3つ以上の重合性又は架橋性末端を有する前記架橋剤が、次からなる群より選択される式を有する、
請求項5に記載の電解質:
【化3】
【請求項7】
3つ以上の重合性又は架橋性末端を有する前記架橋剤が、次からなる群より選択されるシラン又はシロキサンである、請求項1に記載の電解質:
【化4】
[式中、R
7は、独立して、次からなる群より選択される:
【化5】
ここで、R
1、R
2及びR
3は、各々独立して、水素、メチル、エチル、フェニル、メチルフェニル、ベンジル、アクリル、エポキシエチル、イソシアネート、環状カーボネート、ラクトン、ラクタム、及びビニルからなる群より選択され、qは0から50,000の間の整数であり、
式中、R
8は、独立して、次からなる群より選択される:
【化6】
*は接続点を示す]。
【請求項8】
3つ以上の重合性又は架橋性末端を有する前記架橋剤が次式を有する、請求項1に記載の電解質:
【化7】
[式中、R
7は、独立して、次からなる群より選択される:
【化8】
ここで、R
1、R
2及びR
3は、各々独立して、水素、メチル、エチル、フェニル、メチルフェニル、ベンジル、アクリル、エポキシエチル、イソシアネート、環状カーボネート、ラクトン、ラクタム、及びビニルからなる群より選択され、qは0から50,000の間の整数であり、*は接続点を示す]。
【請求項9】
請求項1に記載の電解質を含む、電気化学デバイス。
【請求項10】
前記電気化学デバイスが、いかなる破裂も引き起こすことなく、20mΩの外部抵抗による短絡試験に合格する、
請求項9に記載の電気化学デバイス。
【請求項11】
前記電気化学デバイスがアノードを含まないか、又はアノードを含む、
請求項9に記載の電気化学デバイス。
【請求項12】
前記アノードが、炭素アノード、Liアノード、Siアノード、合金アノード、Li
4Ti
5O
12であるか、又は変換アノード材料で作られており、前記炭素アノードが、グラファイト、ソフトカーボン、ハードカーボン、又はそれらの組合せを含み、前記Liアノードが、Li金属箔、Cu、Ni、又はステンレス鋼上のLi金属を含み、前記Siアノードが、Si、Si/炭素複合材料、SiO
x(0≦x<2)、SiO
x(0≦x<2)/炭素複合材料、又はそれらの組合せを含み、前記合金アノードが、Sn、SnO
2、Sb、Al、Mg、Bi、In、As、Zn、Ga、B、又はそれらの組合せを含み、前記変換アノード材料がM
aX
bを含み、Mが、Mn、Fe、Co、Ni、又はCuであり、Xが、O、S、Se、F、N、又はPであり、a及びbが、それぞれ、1から4である、
請求項11に記載の電気化学デバイス。
【国際調査報告】