(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-18
(54)【発明の名称】異なる照射条件下で、少なくとも1つの着色コーティング層でコーティングされた物体の外観を予測する方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
G06T 19/00 20110101AFI20240910BHJP
G06F 3/04815 20220101ALI20240910BHJP
G06T 15/50 20110101ALI20240910BHJP
【FI】
G06T19/00 A
G06F3/04815
G06T15/50 600
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024505576
(86)(22)【出願日】2022-07-21
(85)【翻訳文提出日】2024-03-29
(86)【国際出願番号】 EP2022070490
(87)【国際公開番号】W WO2023006572
(87)【国際公開日】2023-02-02
(32)【優先日】2021-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】390008981
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーティングス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings GmbH
【住所又は居所原語表記】Glasuritstrasse 1, D-48165 Muenster,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】ヴェグナー,イェンス
(72)【発明者】
【氏名】トロスト,フロリナ
(72)【発明者】
【氏名】グートヤール,マルク
(72)【発明者】
【氏名】フィンケンツェラー,ミヒャエラ
(72)【発明者】
【氏名】ランファー,ベンヤミン
(72)【発明者】
【氏名】プフルク,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】シュタインハウザー,ユリウス
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンッケルマン,マッティアス
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルカー,アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】マウレル,ヘンリク
(72)【発明者】
【氏名】キール,ヘルゲ
【テーマコード(参考)】
5B050
5E555
【Fターム(参考)】
5B050AA10
5B050BA09
5B050BA13
5B050CA07
5B050EA09
5B050EA27
5B050FA02
5B050FA08
5E555AA27
5E555AA63
5E555BA01
5E555BB01
5E555BC04
5E555BD01
5E555CA12
5E555CA42
5E555CA44
5E555CA45
5E555CB12
5E555DB18
5E555DB54
5E555DB55
5E555DC10
5E555DC32
5E555DC35
5E555DC36
5E555FA00
(57)【要約】
本発明に記載される態様は、一般に、異なる照射条件下で少なくとも1つの着色コーティング層でコーティングされる物体の外観を予測するための方法及びシステムに関する。より具体的には、本明細書に記載される態様は、ユーザによって選択された照射条件下でコーティングされた物体の外観を予測し、コーティングされた物体の予測された外観を表示することによって、ディスプレイ装置を使用してコーティングされた物体の外観を表示することに関する。
【選択図】
図2a
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの着色コーティング層でコーティングされている物体の外観を予測し、予測された外観を表示装置に表示するためのコンピュータ実装方法であって、前記方法は、
(i) 通信インターフェースを介して、着色コーティング層のデジタル表現をコンピュータプロセッサに提供するステップと;
(ii)
- 複数の照射条件を含むグラフィカルユーザインターフェースを前記ディスプレイ装置に表示することと;
- 表示された前記複数の照射条件から照射条件を選択したことを示すユーザ入力を前記コンピュータプロセッサで検出することと;
- 前記検出されたユーザ入力に応答して、前記通信インターフェースを介して前記コンピュータプロセッサを用いて、前記検出されたユーザ入力に関連付けられた照射条件のデジタル表現を取得することと;
によって照射条件のデジタル表現を提供するステップと;
(iii) 任意に、前記通信インターフェースを介して前記コンピュータプロセッサに、過去の照射条件から導出されたモデル、及び/又は過去の環境条件から導出された少なくとも1つのモデルを提供するステップと;
(iv) 前記提供された着色コーティング層のデジタル表現、前記提供された照射条件のデジタル表現、及び任意に前記提供されたモデルに基づいて、前記コンピュータプロセッサで前記着色コーティング層の色データを生成するステップと;
(v) 前記コンピュータプロセッサから受信した前記生成された色データを前記ディスプレイ装置に表示するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記着色コーティング層のデジタル表現が、色空間データ、光沢データ、外観データ、テクスチャ特性、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1つの着色コーティング層でコーティングされている物体の外観を予測し、予測された外観をディスプレイ装置に表示する方法であって、前記方法は、以下のステップ:
(i) 通信インターフェースを介して、着色コーティング層のデジタル表現をコンピュータプロセッサに提供するステップであって、前記着色コーティング層のデジタル表現は、以下のステップ:
- カメラベースの測定装置を使用して、前記着色コーティング層の初期BTFを決定するステップと;
- 分光光度計を用いて、予め与えられた数、すなわち限られた数の異なる測定形状について、前記着色コーティング層のスペクトル反射率データをキャプチャするステップと;
- 最適化BTFを得るために、以下の式(1)の前記初期BTFを、
【数1】
ここで、
x:サンプル/物体の表面座標
【数2】
:サンプルのベースコートでの照射と観察/視野方向
【数3】
:照射と観察方向に依存するカラーテーブル
a:アルベド又は拡散反射率
【数4】
:マイクロファセットサーフェスの光沢を表現する双方向反射率分布関数(BRDF)に対応する、k番目のCook-Torranceローブ
S
k:k番目のCook-Torranceローブの重み付け
a
k:k番目のCook-Torranceローブのベックマン分布のパラメータ
F
0,k:k番目のCook-Torranceローブのフレネル反射率
【数5】
:照射及び観察方向に依存する空間テクスチャ画像のテーブル
であり、
項
【数6】
と項
【数7】
とにセグメント化し、さらに、第1の項(F1)を、照射及び観察方向
【数8】
に依存するカラーテーブルに対応する第1サブ項と、強度関数
【数9】
に対応する第2サブ項とに分割し、
前記第2サブ項のパラメータを一定に保ちながら前記第1サブ項のパラメータを、第1最適化ステップで最適化し、及び、前記第1サブ項のパラメータを一定に保ちながら前記第2サブ項のパラメータを、第2最適化ステップで最適化することによって、前記キャプチャされたスペクトル反射率データと前記初期BTFの色差を最小化することによって前記初期BTFを前記キャプチャされたスペクトル反射率データに適合させるステップと;
によって得られる最適化された双方向テクスチャ関数(BTF)を含む、ステップと;
(ii)
- 複数の照射条件を含むユーザインターフェースをディスプレイ装置に表示することと;
- 表示された前記複数の照射条件から照射条件を選択したことを示すユーザ入力を前記コンピュータプロセッサで検出することと;
- 前記検出されたユーザ入力に応答して、前記通信インターフェースを介して前記コンピュータプロセッサを用いて、前記検出されたユーザ入力に関連付けられた照射条件のデジタル表現を取得することと;
によって照射条件のデジタル表現を提供するステップと;
(iii) 任意に、前記通信インターフェースを介して前記コンピュータプロセッサに、過去の照射条件から導出されたモデル、及び/又は過去の環境条件から導出された少なくとも1つのモデルを提供するステップと;
(iv) 前記提供された着色コーティング層のデジタル表現、前記提供された照射条件のデジタル表現、及び任意に前記提供されたモデルに基づいて、前記コンピュータプロセッサで前記着色コーティング層の色データを生成するステップと;
(v) 前記コンピュータプロセッサから受信した前記生成された色データを前記ディスプレイ装置に表示するステップと、
を含む、方法。
【請求項4】
前記着色コーティング層のデジタル表現を提供することが、前記ディスプレイ装置のスクリーン上に既存のカラーライブラリを表示することと、前記表示された既存のライブラリから色を選択することと、前記選択された色に基づいて前記着色コーティング層のデジタル表現を得ることと、前記得られた着色コーティング層のデジタル表現を前記通信インターフェースを介して前記コンピュータプロセッサに提供することと、を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記照射条件のデジタル表現を取得することが、
- 前記通信インターフェースを介して、日付、時間、位置、特に地理的位置、及び任意で空のヘイズの程度を示すデータを取得すること、及び/又は
- 前記通信インターフェースを介して、前記ディスプレイ装置の少なくとも1つの照射センサから取得されたデータ、前記ディスプレイ装置の少なくとも1つの向きセンサから取得されたデータ、及び任意で少なくとも1つの視点センサから取得されたデータを取得すること、及び/又は
- 前記通信インターフェースを介して少なくとも1つのハイダイナミックレンジ(HDR)環境マップを取得すること、
を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記通信インターフェースを介して日付及び/又は時間及び/又は空のヘイズの程度を示すデータを取得することが、日付又は時間又はヘイズに対応する少なくとも1つのレギュレータを含む少なくとも1つの調整ツールを表示することと、インタラクション要素を介して、前記少なくとも1つの調整ツールを操作することを示すユーザ入力を検出すること、特に、前記インタラクション要素を介して少なくとも1つの調整ツールの少なくとも1つのレギュレータの動きを検出することによってユーザ入力を検出することと、検出されたユーザ入力に応答して、日付又は時間又はヘイズを決定することと、を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ディスプレイ装置の少なくとも1つの照射センサから取得されたデータは、ルクスレベル、スペクトル成分、照射方向、前記ディスプレイ装置を取り囲む環境の少なくとも1つの写真、特に少なくとも1つのハイダイナミックレンジ(HDR)又はローダイナミックレンジ(LDR)の写真、又はそれらの組み合わせなど、前記ディスプレイ装置を取り囲む前記照射条件に関するデータを含む、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記過去の照射条件から導出されたモデルは、昼間の空の物理ベースの分析モデルである、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記過去の環境条件から導出された少なくとも1つのモデルは、前記ディスプレイ装置の照射センサ及び/又は向きセンサ及び/又は視点センサから取得されたデータと、前記ディスプレイ装置を取り囲む周囲光条件との間の関係を提供する、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記コンピュータプロセッサで色データを生成するステップは、仮想物体の物体データを提供することと、任意で少なくとも1つのさらなるコーティング層のさらなる色データを提供することと、前記提供された着色コーティング層のデジタル表現と任意のさらなる色データとを前記提供された仮想物体上にマッピングすることと、、前記提供された照射条件のデジタル表現と任意の前記提供されたモデルを使用して前記マッピングの結果をレンダリングすることとを含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
ステップ(iv)は、前記着色コーティング層の色データを生成する前に、前記提供された照射条件のデジタル表現と、前記提供された過去の環境条件から導出された少なくとも1つのモデルとから、前記ディスプレイ装置を取り囲む周囲照射条件を前記コンピュータプロセッサで計算することをさらに含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記コンピュータプロセッサから受信した前記色データを前記ディスプレイ装置のスクリーンに表示するステップは、前記生成された色データ、特に各レンダリングされた点を前記ディスプレイ装置の前記スクリーンにマッピングすることを含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
少なくとも1つの着色コーティング層でコーティングされている物体の外観を予測するためのシステムであって、前記システムは:
- 任意で、過去の照射条件から導出されたモデル及び/又は過去の環境条件から導出された少なくとも1つのモデルをコンピュータプロセッサに提供するための通信インターフェースと;
- 着色コーティング層のデジタル表現と照射条件のデジタル表現を前記コンピュータプロセッサに提供するための少なくとも1つの通信インターフェースと;
- スクリーンを備えるディスプレイ装置と;
- ユーザ入力を検出するためのインタラクション要素と;
- 任意で、少なくとも1つの照射センサ、及び/又は、前記ディスプレイ装置の向きを感知するように適合された少なくとも1つの向きセンサ、及び/又は前記ディスプレイ装置を保持するユーザの視点を感知するように適合された少なくとも1つの視点センサと;
- 前記通信インターフェース、前記ディスプレイ装置、及び前記任意の少なくとも1つの照射センサ及び/又は向きセンサ及び/又は視点センサと通信するプロセッサであって、前記プロセッサは:
・通信インターフェースを介して、前記着色コーティング層のデジタル表現を受信し;
・複数の照射条件を含むユーザインターフェースプレゼンテーションを生成し、表示された複数の照射条件から照射条件を選択したことを示すユーザ入力を検出し、前記検出されたユーザ入力に応答して、前記検出されたユーザ入力に関連付けられた照射条件のデジタル表現を取得し;
・任意で、前記受信された照射条件のデジタル表現と受信されたモデルから、前記ディスプレイ装置を取り囲む周囲照射条件を計算し;
・前記受信した着色コーティング層のデジタル表現と、前記受信した照射条件のデジタル表現又はディスプレイ装置を取り囲む計算された周囲照射条件に基づいて、前記着色コーティング層の色データを生成する、
ようにプログラムされている、プロセッサと、
を備え、
前記ディスプレイ装置が、前記生成されたユーザインターフェースプレゼンテーション及び前記生成された着色コーティング層の色データを前記プロセッサから受信し、前記生成されたユーザインターフェースプレゼンテーション及び色データを表示し、
前記着色コーティング層のデジタル表現は、以下のステップ:
- カメラベースの測定装置を使用して、前記着色コーティング層の初期BTFを決定するステップと;
- 分光光度計を用いて、予め与えられた数、すなわち限られた数の異なる測定形状について、前記着色コーティング層のスペクトル反射率データをキャプチャするステップと;
- 最適化BTFを得るために、以下の式(1)の前記初期を、
【数10】
ここで、
x:サンプル/物体の表面座標
【数11】
:サンプルのベースコートでの照射と観察/視野方向
【数12】
:照射と観察方向に依存するカラーテーブル
a:アルベド又は拡散反射率
【数13】
:マイクロファセットサーフェスの光沢を表現する双方向反射率分布関数(BRDF)に対応する、k番目のCook-Torranceローブ
S
k:k番目のCook-Torranceローブの重み付け
a
k:k番目のCook-Torranceローブのベックマン分布のパラメータ
F
0,k:k番目のCook-Torranceローブのフレネル反射率
【数14】
:照射及び観察方向に依存する空間テクスチャ画像のテーブル
であり、
項
【数15】
と項
【数16】
とにセグメント化し、さらに、第1の項(F1)を、照射及び観察方向
【数17】
に依存するカラーテーブルに対応する第1サブ項と、強度関数
【数18】
に対応する第2サブ項とに分割し、
前記第2サブ項のパラメータを一定に保ちながら前記第1サブ項のパラメータを、第1最適化ステップで最適化し、及び、前記第1サブ項のパラメータを一定に保ちながら前記第2サブ項のパラメータを、第2最適化ステップで最適化することによって、前記キャプチャされたスペクトル反射率データと前記初期BTFの色差を最小化することによって前記初期BTFを前記キャプチャされたスペクトル反射率データに適合させるステップと;
によって得られる最適化された双方向テクスチャ関数(BTF)を含む、システム。
【請求項14】
非一過性のコンピュータ可読記憶媒体であって、前記コンピュータ可読記憶媒体は、コンピュータによって実行されたときに、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法によるステップを前記コンピュータに実行させる指示を含む、コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項15】
少なくとも1つの着色コーティング層でコーティングされた物体の外観を予測するための、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法又は請求項13に記載のシステムの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載される態様は、一般に、異なる照射条件下で少なくとも1つの着色コーティング層でコーティングされた物体の外観を予測するための方法及びシステムに関する。より具体的には、本明細書に記載される態様は、ユーザによって選択された照射条件下でコーティングされた物体の外観を予測し、コーティングされた物体の予測された外観を表示することによって、ディスプレイ装置を使用してコーティングされた物体の外観を表示することに関する。
【背景技術】
【0002】
表面は入射した光を観察者の目に反射させ、表面の反射特性と吸収特性によって物体の視覚的印象を引き起こすため、表面は物体に外観を与える。例えば、すべての光線を反射する表面は観察者には白く見え、光線をすべて吸収する表面は黒く見える。人間が知覚するその他の色はすべて、物体の表面で反射及び吸収される光線の組み合わせによるものである。
【0003】
物体の視覚的印象は、例えば、物体の表面に着色コーティング層を塗布することによって変更されることができる。この場合、視覚的印象は着色コーティング層によって決定される。車両、特に自動車、オートバイ、トラックの車体などの陸上車両は、通常、車両の外観を向上させ、腐食、傷、欠け、紫外線、酸性雨、その他の環境条件から保護するために、複数のコーティング層で処理される。
【0004】
前記コーティングは、一般に前述の効果を達成するために複数のコーティング層の塗布を必要とする複合コーティングシステムである。金属基材の場合、通常、エレクトロコーティングが基材上に塗布され、硬化される。次いで、このエレクトロコーティングは、さらなる着色されたベースコートとクリアコート又は着色クリアコートが、未硬化又は「ウェット」な第1ベースコート及び/又はさらなる着色ベースコートの上に塗布される前に、硬化したプライマーコーティング又は未硬化の着色された第1ベースコートでコーティングされる。プラスチック基材の場合、プライマーコーティングが、少なくとも1つのさらなる着色ベースコートコーティング及びクリアコート又は着色されていないクリアコートが未硬化又は「ウェット」な着色ベースコートコーティング上に塗布される前に、基材の上に塗布され硬化される。塗布されたベースコートとクリアコートは、その後共同硬化される。したがって、このようなシステムは、しばしば「ウェット・オン・ウェット」、「2コート/1ベーク」又は「3コート/1ベーク」と表現される。完全な硬化に至らない乾燥工程は、コーティングの塗布間で使用されることができる。色の観点からの視覚的外観は、通常、着色顔料及び/又は効果顔料を含む着色ベースコートコーティングによって達成される。
【0005】
しかし、少なくとも1つの着色コーティング層でコーティングされた物体などの着色された物体の視覚的な印象は、異なる照射条件下で変化する可能性がある。これは、光源のスペクトルパワー分布、すなわち光源の様々な波長の相対的なパワーが変化する可能性があり、光が人間である観察者の目に反射される仕方も変化するという事実に起因する。しかし、これは視覚的な印象に影響を与え、したがって人間である観察者が知覚するコーティングされた自動車の色に影響を与える。さらに、光源のパワーも、それが照射する物体の知覚される色に影響を与え得る。このように、色は、光源と、着色された物体を照射するために使用される光源と光源のパワーに応じて、異なって知覚される。例えば、自然光は、天候、季節、時間、空にある太陽の位置、物体の位置、物体の周囲などによって大きく異なる場合がある。そのため、晴天下で知覚される着色された物体の色は、曇天下で知覚される同じ着色された物体の色とは異なる場合がある。
【0006】
自動車の全体的な視覚的印象は、他の要因の中でも、消費者が購入を決定する際の重要な基準であるため、自動車設計者及び自動車販売者は、通常、例えば、蛍光灯及び白熱電球、ハロゲン電球、LED光などの、定められたパワーと波長スペクトルを有する人工光源など、特別に設計された照射条件を使用することにより、視覚的印象をより魅力的にする。しかし、照射条件による色知覚の変化の程度は色に大きく依存するため、適切な照射条件の選択は、最適な解を見つけるために異なる照射条件を何度も試行する必要がある。さらに、様々な色の自動車が通常ショールームで展示されるため、ショールームの照射条件は、展示された各色が魅力的に見えるように選択される必要がある。そのため、適切な照射条件の選択は、時間とコストのかかる作業となり得る。さらに、視覚的な印象が期待に合っているかどうかを判断するために、屋外又はガレージ内など実際の照射条件下で自動車を見る顧客からの要望が増えている。しかし、自動車販売業者は常に希望する色のデモ用の自動車を用意しているとは限らないため、これは常に可能であるとは限らない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、最適な照射条件を決定するために異なる照射条件を物理的に設置することなく、自動車のカラーデザイナー又は自動車販売者などのユーザが、様々な照射条件下で、色特に自動車の色の視覚的印象をシミュレーション又は予測することを可能にするコンピュータベースの方法及びシステムを提供することが望ましい。さらに、顧客が購入を希望する物体、特に着色された自動車が、現実の条件下、すなわち顧客の場所における自然光の下で所望の視覚的印象を有するかどうかを決定することを可能にする、コンピュータベースの方法及びシステムを提供することが望ましく、これにより、顧客が、購入後に、物体特に着色された自動車の実際の光条件下での視覚的印象によって、失望しないことを確かにする。最後に、販売前に顧客に利用可能な色の概観を提供するために販売者によって呈示する必要のある、着色された物体、特に着色された自動車の数を減らすコンピュータベースの方法及びシステムを提供することが望ましい。
定義
「外観」とは、観察者の目へのコーティングされた物体の視覚的な印象を指し、表面のスペクトル的及び幾何学的態様がその照射環境及び観察環境と統合された知覚を含む。一般に、外観は、特に視野角度を変えて、及び/又は照射角度を変えて見た場合の、色、効果顔料によって引き起こされる粗さなどの視覚的テクスチャ、輝き、又は表面の他の視覚的効果が含まれる。
【0008】
「デジタル表現」とは、コンピュータ可読形式における着色コーティング層及び照射条件の表現を指し得る。特に、着色コーティング層のデジタル表現は、後述するように、キャプチャされたスペクトル反射率データを使用して初期BTFを最適化することによって得られる最適化された双方向テクスチャ関数(BTF)を含む。着色コーティング層のデジタル表現は、さらなるデータ、例えば、着色コーティング層を調製するために使用されるコーティング材料の配合に関するデータ、カラーコードデータ、色名データ又はそれらの組み合わせを含むことができる。着色コーティング層を調製するために使用されるコーティング材料の配合に関するデータには、コーティング材料中に存在する成分の少なくとも一部の種類及び量に関するデータを含むことができる。照射条件のデジタル表現は、例えば、データ、時間、位置、空のヘイズ(スモッグ)の程度を示すデータ、少なくとも1つの照射センサ及び/又は方位センサ及び/又は視点センサ(vantage point sensor)から取得されたデータ、少なくとも1つのハイダイナミックレンジ(HDR)環境マップ、及びそれらの組み合わせを含むことができる。環境マップは、例えばデータベースに保存されている、予め定義されたHDR環境マップであってよい。
【0009】
「ディスプレイ装置」とは、視覚的形式又は触覚的形式(後者は視覚障害者用の触覚電子ディスプレイ装置に使用され得る)で情報を提示するための出力装置を指す。「ディスプレイ装置のスクリーン」とは、ディスプレイ装置の物理的スクリーンと投影ディスプレイ装置等の投影領域を指す。
【0010】
「インタラクション要素」とは、ユーザ入力を受け取るように構成された要素を指し得る。
【0011】
「通信インターフェース」とは、信号又はデータの転送又は交換などの通信を確立するためのソフトウェア及び/又はハードウェアインターフェースを指し得る。ソフトウェアインターフェースは、例えば関数呼び出し、APIである。通信インターフェースは、トランシーバ及び/又はレシーバを備えることができる。通信は有線でも無線でもよい。通信インターフェースは、1つ以上の通信プロトコルに基づくか、又はそれをサポートする。通信プロトコルは、例えば、Bluetooth(登録商標)、もしくはWiFiなどの近距離通信プロトコル、又は、例えば、第2世代携帯電話ネットワーク(「2G」)、3G、4G、ロングタームエボリューション(「LTE」)、もしくは5Gなどのセルラーもしくはモバイルネットワークなどの長距離通信プロトコルなどの無線プロトコルであり得る。あるいは、それに加えて、通信インターフェースは、独自の短距離又は長距離プロトコルに基づくものであってよい。通信インターフェースは、任意の1つ以上の標準プロトコル及び/又は独自プロトコルをサポートすることができる。
【0012】
「コンピュータプロセッサ」とは、コンピュータ又はシステムの基本動作を行うように構成された任意の論理回路、及び/又は、一般に、計算又は論理演算を行うように構成された装置を指す。特に、処理手段、又はコンピュータプロセッサは、コンピュータ又はシステムを駆動する基本命令を処理するように構成されていてよい。一例として、処理手段又はコンピュータプロセッサは、少なくとも1つの算術論理ユニット(「ALU」)、数学コプロセッサ又は数値コプロセッサなどの少なくとも1つの浮動小数点ユニット(「FPU」)、複数のレジスタ、特にALUへのオペランドを供給し及び演算の結果を保存するように構成されたレジスタと、L1及びL2キャッシュメモリなどのメモリを含むことができる。特に、処理手段、又はコンピュータプロセッサは、マルチコアプロセッサであってよい。具体的には、処理手段、又はコンピュータプロセッサは、中央処理ユニット(「CPU」)であってよく、又はCPUを含んでいてよい。処理手段又はコンピュータプロセッサは、複合命令セットコンピューティング(「CISC」)マイクロプロセッサ、縮小命令セットコンピューティング(「RISC」)マイクロプロセッサ、超長命令語(「VLIW」)マイクロプロセッサ、又は他の命令セットを実装するプロセッサ、又は命令セットの組み合せを実装するプロセッサであってよい。処理手段はまた、特定用途向け集積回路(「ASIC」)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(「FPGA」)、複合プログラマブル論理デバイス(「CPLD」)、デジタル信号プロセッサ(「DSP」)、ネットワークプロセッサなどの1つ以上の特定目的処理デバイスであってよい。本明細書で説明された方法、システム、及びデバイスは、DSP内、マイクロコントローラ内、又は他の任意のサイドプロセッサのソフトウェアとして、あるいはASIC、CPLD、又はFPGA内のハードウェア回路として実装されることができる。処理手段又はプロセッサという用語は、複数のコンピュータシステムにわたって配置された処理デバイスの分散システム(例えば、クラウドコンピューティング)などの1つ以上の処理デバイスも指し得、特に指定しない限り、単一のデバイスに限定されないことが理解されよう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
以上の問題点を視野に入れて解決するために、以下が提案される:少なくとも1つの着色コーティング層でコーティングされている物体の外観を予測し、予測された外観をディスプレイ装置上に表示するためのコンピュータ実装方法であって、前記方法は、以下のステップ:
(i) 通信インターフェースを介して、着色コーティング層のデジタル表現をコンピュータプロセッサに提供するステップと;
(ii)
- 複数の照射条件を含むグラフィカルユーザインターフェースをディスプレイ装置に表示することと;
- 表示された前記複数の照射条件から照射条件を選択したことを示すユーザ入力を前記コンピュータプロセッサで検出することと;
- 前記検出されたユーザ入力に応答して、前記通信インターフェースを介して前記コンピュータプロセッサを用いて、前記検出されたユーザ入力に関連付けられた照射条件のデジタル表現を取得することと;
によって照射条件のデジタル表現を提供するステップと;
(iii) 任意に、前記通信インターフェースを介して前記コンピュータプロセッサに、過去の照射条件から導出されたモデル、及び/又は過去の環境条件から導出された少なくとも1つのモデルを提供するステップと;
(iv) 前記提供された着色コーティング層のデジタル表現、前記提供された照射条件のデジタル表現、及び任意に前記提供されたモデルに基づいて、前記コンピュータプロセッサで前記着色コーティング層の色データを生成するステップと;
(v) 前記コンピュータプロセッサから受信した前記生成された色データを前記ディスプレイ装置に表示するステップと、
を含む。
【0014】
上記の問題点を視野に入れてさらに解決するために、以下が提案される:少なくとも1つの着色コーティング層でコーティングされている物体の外観を予測し、予測された外観をディスプレイ装置に表示する方法であって、前記方法は、以下のステップ:
(i) 通信インターフェースを介して、着色コーティング層のデジタル表現をコンピュータプロセッサに提供するステップであって、前記着色コーティング層のデジタル表現は、以下のステップ:
- カメラベースの測定装置を使用して、前記着色コーティング層の初期BTFを決定するステップと;
- 分光光度計を用いて、予め与えられた数、すなわち限られた数の異なる測定形状について、前記着色コーティング層のスペクトル反射率データをキャプチャするステップと;
- 最適化BTFを得るために、以下の式(1)の前記初期BTFを、
【数1】
ここで、
x:サンプル/物体の表面座標
【数2】
:サンプルのベースコートでの照射と観察/視野方向
【数3】
:照射と観察方向に依存するカラーテーブル
a:アルベド又は拡散反射率
【数4】
:マイクロファセットサーフェスの光沢を表現する双方向反射率分布関数(BRDF)に対応する、k番目のCook-Torranceローブ
S
k:k番目のCook-Torranceローブの重み付け
a
k:k番目のCook-Torranceローブのベックマン分布のパラメータ
F
0,k:k番目のCook-Torranceローブのフレネル反射率
【数5】
:照射及び観察方向に依存する空間テクスチャ画像のテーブル
であり、
項
【数6】
と項
【数7】
にセグメント化し、さらに、第1の項(F1)を、照射及び観察方向
【数8】
に依存するカラーテーブルに対応する第1サブ項と、強度関数
【数9】
に対応する第2サブ項とに分割し、
前記第2サブ項のパラメータを一定に保ちながら前記第1サブ項のパラメータを、第1最適化ステップで最適化することによって、及び、前記第1サブ項のパラメータを一定に保ちながら前記第2サブ項のパラメータを、第2最適化ステップで最適化することによって、前記キャプチャされたスペクトル反射率データと前記初期BTFの色差を最小化することによって前記初期BTFを前記キャプチャされたスペクトル反射率データに適合させるステップと;
によって得られる最適化された双方向テクスチャ関数(BTF)を含む、ステップと;
(ii)
- 複数の照射条件を含むユーザインターフェースをディスプレイ装置に表示することと;
- 表示された前記複数の照射条件から照射条件を選択したことを示すユーザ入力を前記コンピュータプロセッサで検出することと;
- 前記検出されたユーザ入力に応答して、前記通信インターフェースを介して前記コンピュータプロセッサを用いて、前記検出されたユーザ入力に関連付けられた照射条件のデジタル表現を取得することと;
によって照射条件のデジタル表現を提供するステップと;
(iii) 任意に、前記通信インターフェースを介して前記コンピュータプロセッサに、過去の照射条件から導出されたモデル、及び/又は過去の環境条件から導出された少なくとも1つのモデルを提供するステップと;
(iv) 前記提供された着色コーティング層のデジタル表現、前記提供された照射条件のデジタル表現、及び任意に前記提供されたモデルに基づいて、前記コンピュータプロセッサで前記着色コーティング層の色データを生成するステップと;
(v) 前記コンピュータプロセッサから受信した前記生成された色データを前記ディスプレイ装置に表示するステップと、
を含む。
【0015】
本発明による方法及びシステムの本質的な利点は、異なる照射条件下で、少なくとも1つの着色コーティング層でコーティングされた物体、特に自動車ボディの視覚的印象を予測することができることであり、したがって、照射設計者は、様々な光源を物理的に設置して最適化することなく、着色コーティング物体の魅力を高めるために必要な照射条件を迅速に選択することができる。さらに、本方法及びシステムにより、顧客は、購入前に、着色された物体、特に着色された自動車が屋外又は室内、例えばガレージ等の実際の生活条件下で、所望の視覚的印象を有するかどうかを迅速に確認することができ、その結果、購入後の潜在的な失望を低減することができる。最後に、本方法及びシステムは、顧客が購入前に利用可能な色を閲覧して所望の色を選択できるように、販売者が様々な色の物体を提供することを不要にし、その結果、展示スペース及び展示スペースに関連するコストが削減される。
【0016】
さらに開示されるのは、第一の実施形態によるものであり、
少なくとも1つの着色コーティング層でコーティングされている物体の外観を予測するためのシステムであって、前記システムは:
- 任意で、過去の照射条件から導出されたモデル及び/又は過去の環境条件から導出された少なくとも1つのモデルをコンピュータプロセッサに提供するための通信インターフェースと;
- 着色コーティング層のデジタル表現と照射条件のデジタル表現をコンピュータプロセッサに提供するための少なくとも1つの通信インターフェースと;
- スクリーンを備えるディスプレイ装置と;
- ユーザ入力を検出するためのインタラクション要素と;
- 任意で、少なくとも1つの照射センサ、及び/又は、ディスプレイ装置の向きを感知するように適合された少なくとも1つの向きセンサ、及び/又は、ディスプレイ装置を保持するユーザの視点を感知するように適合された少なくとも1つの視点センサと;
- 通信インターフェース、ディスプレイ装置、及び前記任意の少なくとも1つの照射センサ及び/又は向きセンサ及び/又は視点センサと通信するプロセッサであって、前記プロセッサは:
・通信インターフェースを介して、着色コーティング層のデジタル表現を受信することと;
・複数の照射条件を含むユーザインターフェースプレゼンテーションを生成し、表示された複数の照射条件から照射条件を選択したことを示すユーザ入力を検出し、検出されたユーザ入力に応答して、検出されたユーザ入力に関連付けられた照射条件のデジタル表現を取得(retrieve)し;
・任意で、取得された照射条件のデジタル表現と受信されたモデルから、ディスプレイ装置を取り囲む周囲照射条件を計算し;
・受信した着色コーティング層のデジタル表現と、受信した照射条件のデジタル表現又はディスプレイ装置を取り囲む計算された周囲照射条件に基づいて、着色コーティング層の色データを生成する、
ようにプログラムされている、プロセッサと、
を備え、
ディスプレイ装置が、生成されたユーザインターフェースプレゼンテーション及び生成された着色コーティング層の色データをプロセッサから受信し、生成されたユーザインターフェースプレゼンテーション及び色データを表示し、
着色コーティング層のデジタル表現は、上記本発明の方法のステップ(i)に関連して記載されたステップによって得られる最適化された双方向テクスチャ関数(BTF)を含む。
【0017】
プロセッサは、ディスプレイ装置のプロセッサであってよく、すなわち、プロセッサは、スクリーンを収容するディスプレイ装置の筐体内に存在してよく、又は、プロセッサは、ディスプレイ装置の外部に存在してよく、例えば、クラウドコンピューティングデバイスなどのさらなるコンピューティングデバイス内に存在してよい。これは、ディスプレイ装置のプロセッサの計算能力が、色データを生成し、任意に色データの生成前に周囲照射条件を計算するのに十分高くない場合に好ましい。
【0018】
さらに開示されるのは、代替実施形態によるものであり、
少なくとも1つの着色コーティング層でコーティングされている物体の外観を予測するためのシステムであって、前記システムは:
- 任意で、過去の照射条件から導出されたモデル及び/又は過去の環境条件から導出された少なくとも1つのモデルをコンピュータプロセッサに提供するための通信インターフェースと;
- 着色コーティング層のデジタル表現と照射条件のデジタル表現をコンピュータプロセッサに提供するための少なくとも1つの通信インターフェースと;
- スクリーンを備えるディスプレイ装置と;
- ユーザ入力を検出するためのインタラクション要素と;
- 任意で、少なくとも1つの照射センサ、及び/又は、ディスプレイ装置の向きを感知するように適合された少なくとも1つの向きセンサ、及び/又は、ディスプレイ装置を保持するユーザの視点を感知するように適合された少なくとも1つの視点センサと;
- 通信インターフェース、ディスプレイ装置、及び任意の少なくとも1つの照射センサ及び/又は向きセンサ及び/又は視点センサと通信する第1プロセッサであって、前記第1プロセッサは:
・複数の照射条件を含むユーザインターフェースプレゼンテーションを生成し、表示された複数の照射条件から照射条件を選択したことを示すユーザ入力を検出し、検出されたユーザ入力に応答して、検出されたユーザ入力に関連付けられた照射条件のデジタル表現を取得(retrieve)し;
・任意で、取得された照射条件のデジタル表現と受信されたモデルから、ディスプレイ装置を取り囲む周囲照射条件を計算する、
ようにプログラムされている、第1プロセッサと;
- 通信インターフェース及び第1プロセッサと通信する第2プロセッサであって、前記第2プロセッサは:
・通信インターフェースを介して、着色コーティング層のデジタル表現と、第1プロセッサで計算された照射条件又は周囲照射条件のデジタル表現を受信し;
・受信した着色コーティング層のデジタル表現と、受信した照射条件のデジタル表現又は第1プロセッサから受信した計算された周囲照射条件に基づいて、着色コーティング層の色データを生成する、
ようにプログラムされている、第2プロセッサと、
を備え、
ディスプレイ装置が、プロセッサから着色コーティング層の生成された色データを受信し、生成された色データを表示し、
着色コーティング層のデジタル表現は、上記本発明の方法のステップ(i)に関連して記載されたステップによって得られる最適化された双方向テクスチャ関数(BTF)を含む。
【0019】
さらに開示されるのは、さらに別の実施形態によるものであり、
少なくとも1つの着色コーティング層でコーティングされた物体の外観を予測するためのシステムであって、前記システムは:ディスプレイと;1つ以上のコンピューティングノードと;1つ以上のコンピューティングノードによって実行されると、本明細書に記載される本発明の方法をシステムに実行させるように構造化されたコンピュータ実行可能命令をそこに有する1つ以上のコンピュータ可読媒体とを備える。
【0020】
さらに開示されているのは:
非一過性のコンピュータ可読記憶媒体であって、前記コンピュータ可読記憶媒体は、コンピュータによって実行されると、本明細書に記載のコンピュータ実装方法によるステップをコンピュータに実行させる命令を含む。
【0021】
本開示は、本明細書に開示されるシステム、方法、コンピュータプログラム、コンピュータ可読非一過性記憶媒体、コンピュータプログラム製品に同様に適用される。したがって、システム、方法、コンピュータプログラム、コンピュータ可読非一過性記憶媒体、又はコンピュータプログラム製品を区別することはない。方法に関連して開示されるすべての特徴は、本明細書に開示されるシステム、コンピュータプログラム、コンピュータ可読非一過性記憶媒体、及びコンピュータプログラム製品に関しても同様に開示される。
【0022】
さらに開示されるのは、少なくとも1つの着色コーティング層でコーティングされた物体の外観を予測するための、本明細書に開示される方法又は本明細書に開示されるシステムの使用である。
【0023】
さらに開示されるのは、少なくとも1つのコーティング層でコーティングされた物体であって、少なくとも1つのコーティング層の色は、本明細書に開示される方法に従って予測された。
【0024】
実施形態
少なくとも1つの着色コーティング層は、物体の表面の少なくとも一部に存在することができる。物体の表面の少なくとも一部に着色コーティング層が存在することは、次のように理解される:着色コーティング層は物体の表面の少なくとも一部に配置されている。しかし、物体の表面の少なくとも一部と直接接触する必要はない。したがって、前述の硬化エレクトロコート層又はプライマー層などの他のコーティング層が、着色コーティング層と物体との間に存在することができる。
【0025】
少なくとも1つの着色コーティング層は、ベースコート層又は着色クリアコート層であってよい。「ベースコート層」は、自動車塗装及び一般工業塗装で一般的に使用される硬化した色付与中間コーティング層を指し得る。ベースコート層を調製するために使用されるベースコート材料は、ソリッドカラー(ストレートシェード)又は効果カラーコーティングとして配合されることができる。「効果カラーコーティング」は一般に、少なくとも1つの効果顔料と、任意で所望の色と効果を与える他の着色顔料又はスフェア(sphere)を含む。「ストレートシェード」又は「ソリッドカラーコーティング」は主に着色顔料を含み、目に見えるフロップ又はツートーンメタリック効果を示さない。ベースコート層は、ベースコート材料を、任意で少なくとも1つの硬化コーティング層を含む金属又はプラスチック基材に塗布し、塗布されたベースコート材料を乾燥させ、形成されたベースコート膜を硬化させることによって形成される。「着色クリアコート層」とは、クリアコートのような完全に透明かつ無色でもなく、典型的な顔料ベースコートのような完全に不透明でもない、硬化したコーティング層を指し得る。したがって、着色クリアコート層は透明で着色されているか、又は半透明で着色されている。着色は、ベースコートコーティング材料に一般的に使用される少量の顔料を添加することによって実現され得る。着色クリアコート層は、着色ベースコート層などの少なくとも1つのコーティング層を含む一般的な基材上に着色クリアコート材料を塗布し、塗布された着色クリアコート材料を乾燥させ、形成された着色クリアコート膜を硬化させることによって形成される。
【0026】
物体は、自動車又はその部品であってよい。「自動車」という用語は、車、バン、ミニバン、バス、SUV(スポーツ用多目的車);トラック;セミトラック;トラクター;オートバイ;トレーラー;ATV(全地形対応車);ピックアップトラック;ブルドーザー、移動式クレーン及びアースムーバーなどのヘビーデューティームーバー;飛行機;ボート;船舶;及び少なくとも1つのコーティング層で一般的にコーティングされる他の輸送手段などの自動車を指す。
【0027】
一態様では、ディスプレイ装置は、ステップ(i)~(v)で使用されるコンピュータプロセッサとスクリーンとを収容する筐体を備える。したがって、ディスプレイ装置は、コンピュータプロセッサとスクリーンを備える。筐体は、プラスチック製、金属製、ガラス製、又はそれらの組み合わせで作られ得る。
【0028】
別の態様では、ステップ(i)~(iv)又はステップ(ii)~(iv)又はステップ(iv)を実行するディスプレイ装置とコンピュータプロセッサとは、別個のコンポーネントとして構成される。この態様によれば、ディスプレイ装置は、スクリーンを収容する筐体を備えるが、本発明の方法のステップ(i)~(iv)又はステップ(ii)~(iv)又はステップ(iv)を実行するコンピュータプロセッサは備えない。したがって、本発明の方法のステップ(i)~(iv)又はステップ(ii)~(iv)又はステップ(iv)を実行するコンピュータプロセッサは、ディスプレイ装置とは別個に、例えばさらなるコンピューティングデバイス内に存在する。ディスプレイ装置のコンピュータプロセッサとさらなるコンピュータプロセッサは、データ交換を可能にするために通信インターフェースを介して接続される。ディスプレイ装置の外部に存在するさらなるコンピュータプロセッサを使用することにより、ディスプレイ装置のプロセッサによって提供されるよりも高い計算能力を使用することができ、したがって、これらのステップを実行するのに必要な計算時間を短縮し、したがって、生成された色データがディスプレイ装置のスクリーン上に表示されるまでの全体的な時間を短縮することができる。これにより、照射条件の変更の際に着色された物体の外観の変化をリアルタイム又はほぼリアルタイムで表示することができ、その結果、所望の外観、特に色、及び/又は所望の外観をもたらす照射条件をユーザが直感的かつ効率的に選択することができる。さらなるコンピュータプロセッサは、本発明の方法のステップ(i)~(iv)又はステップ(ii)~(iv)又はステップ(iv)がクラウドコンピューティング環境で実行されるように、サーバ上に配置することができる。この場合、ディスプレイ装置はクライアント装置として機能し、インターネットなどのネットワークを介してサーバに接続される。「クライアント装置」とは、その動作の一部として、サーバによって利用可能にされたサービスにアクセスする別のプログラム又はコンピュータのハードウェアもしくはソフトウェアへの要求の送信に依存するコンピュータ又はプログラムを指し得る。好ましくは、サーバはHTTPサーバであり、従来のインターネットウェブベース技術を介してアクセスされる。インターネットベースのシステムは、特に、着色コーティング材料から製造される着色コーティング層の色を設計するサービスを顧客に提供する場合に有用である。
【0029】
ディスプレイ装置は、モバイルディスプレイ装置でも固定型ディスプレイ装置でもよいが、好ましくはモバイルディスプレイ装置である。固定型ディスプレイ装置には、コンピュータモニタ、テレビスクリーン、プロジェクタなどが含まれる。モバイルディスプレイ装置には、ラップトップ、又はスマートフォン及びタブレットなどのハンドヘルドデバイスが含まれる。
【0030】
ディスプレイ装置のスクリーンは、適切な解像度と色域を有する任意の放射型又は反射型ディスプレイ技術に従って構築されることができる。適切な解像度は、例えば、72ドット/インチ(dpi)以上の解像度、例えば、300dpi、600dpi、1200dpi、2400dpi以上の解像度である。これにより、生成された色データが高品質で表示され得ることが保証される。適切な広色域とは、標準赤緑青(sRGB)以上の色域である。様々な実施形態では、スクリーンは、人間の視覚によって知覚可能な色域と同様の色域を選択することができる。一態様では、ディスプレイ装置のスクリーンは、液晶ディスプレイ(LCD)技術に従って、特にタッチスクリーンパネルをさらに備える液晶ディスプレイ(LCD)技術に従って構築される。LCDは、任意の適切な照射源によってバックライトを当てられてよい。しかしながら、LCDスクリーンの色域は、発光ダイオード(LED)バックライト又はバックライトを選択することによって、拡大されるか、又は改善されすることができる。別の態様では、ディスプレイ装置のスクリーンは、発光ポリマー又は有機発光ダイオード(OLED)技術に従って構築される。さらに別の態様では、ディスプレイ装置のスクリーンは、電子ペーパー又はインクなどの反射型ディスプレイ技術に従って構築されることができる。電子インク/ペーパーディスプレイの既知のメーカーとしては、E INK及びXEROXなどが含まれる。好ましくは、ディスプレイ装置のスクリーンは、ユーザが様々な角度からスクリーンを見たときに、色褪せたり大きく変化したりしない画像を生成することができるように、適度に広い視野も有する。LCDスクリーンは偏光によって動作するため、一部のモデルは高度な視野角依存性を示す。しかし、様々なLCDの構造は、比較的広い視野を持ち、そのために好ましい場合がある。例えば、薄膜トランジスタ(TFT)技術に従って構築されたLCDスクリーンは、適切に広い視野を有し得る。また、電子ペーパー/インク技術及びOLED技術に従って構築されたスクリーンは、多くのLCDスクリーンよりも広い視野を有する場合があり、このような理由で選択される場合がある。
【0031】
さらに別の代替態様では、ディスプレイ装置は、提供された着色コーティング層のデジタル表現、及び/又は照射条件のデジタル表現、及び/又は生成された色データを、投影領域上に投影する、例えば表示するように構成された投影ディスプレイ装置である。この場合、投影領域は、先に概説したように、ディスプレイ装置のスクリーンに対応する。デジタル表現及び/又は生成された色データの投影に使用される投影面は、平坦な壁又は机、自動車又はその一部、又は定義された3D空間などの2D又は3D表面であってよい。一例では、生成された色データは、自動車又はその一部の形態の3D表面に投影されることができる。3D表面は着色されていても、半透明であっても、透明であってもよい。別の例では、生成された色データは、3Dホログラム技術を使用して投影装置によって表示され、これは、後述するレンダリングプロセスによって得られる自動車又はその部品などの着色された3D物体が、予め定義された空間内に自由に投影され、3Dメガネなどを使用せずに見ることができる。外観をデザインする物体の形状に対応した投影面の使用、又は着色ホログラムの使用は、ユーザが着色された物体の外観と物体の所望の外観を直接比較することができるため、生成された外観の視覚性を高めることができる。投影面上のユーザ入力は、画像検出システムを介して投影ディスプレイ装置で検出されることができる。画像を投影し、及び/又は、画像を投影し、これらの画像に対するユーザのインタラクションを検出するために使用される適切な投影ディスプレイ装置は、当該技術分野において周知である。
【0032】
さらに別の態様では、前述したように、スクリーンを収容する筐体を備えるディスプレイ装置と投影ディスプレイ装置とを組み合わせて使用することができる。一例では、スクリーンを収容する筐体を備えるディスプレイ装置をステップ(i)から(iv)に使用し、投影ディスプレイ装置をステップ(v)において生成された色データを表示するために使用することができる。別の例では、投影ディスプレイ装置がステップ(i)から(iv)で使用される一方、スクリーンを収容する筐体を備えるディスプレイ装置は、ステップ(v)では、生成された色データを表示するために使用されることができる。
【0033】
ディスプレイ装置は、ディスプレイ装置とのユーザインタラクションを容易にするためのインタラクション要素を備えていてよい。一例では、インタラクション要素は、入力装置又は入出力装置、特にマウス、キーボード、トラックボール、タッチスクリーン又はそれらの組み合わせなどの物理的インタラクション要素であってよい。別の例では、インタラクション要素は、指のジェスチャ又は手の動きなどのジェスチャの形式でのユーザ入力が受信される投影領域であってよい。
【0034】
一態様では、ステップ(iv)と(v)は同時に実行される。「同時に」とは、コンピュータプロセッサがステップ(iv)を実行し、ディスプレイ装置が生成された色データを表示するのに要する時間を指す。好ましくは、この時間は、ユーザが、数秒まで、特に1秒までのような妥当な時間内に、着色された物体の表示された外観に及ぼす照射条件の変化が影響を即座に見ることができるように十分に小さく、したがって、照射条件を インタラクティブに変更することができ、その結果、所望の外観及び/又は照射条件を迅速かつ正確に選択することができる。
【0035】
ステップ(i):
本発明の方法のステップ(i)では、着色コーティング層のデジタル表現は、通信インターフェースを介してコンピュータプロセッサに提供される。本発明の方法の第1の実施形態によれば、着色コーティング層のデジタル表現は、好ましくは、色空間データ、光沢データ、外観データ、テクスチャ特性、又はそれらの組み合わせを含む。色空間データの一例は、L*a*b*によって定義され、ここで、L*は光度を表し、a*は赤色/緑色の外観を表し、b*は黄色/青色の外観を表す。色空間データの別の例は、L*、C*、hによって定義され、ここで、L*は明度を表し、C*は彩度を表し、hは色相を表す。外観データは、例えば、長波長値、短波長値、DOI(画像の明瞭値)を含むことができる。長波値と短波値はオレンジピールの程度を示し、DOIは輝きと光沢の程度を示す。「テクスチャ特性」という用語は、効果コーティングの粗さ特性及び/又は輝き特性を指す。効果コーティングの粗さ特性及び輝き特性は、例えば、当該技術分野で知られているように、マルチアングル分光光度計によって取得されたテクスチャ画像から決定されることができる。テクスチャ画像は白黒画像でもカラー画像でもよい。
【0036】
本発明の方法の代替実施形態によれば、着色コーティング層のデジタル表現は、最適化された双方向テクスチャ関数(BTF)を含み、このBTFは以下のステップ:
- カメラベースの測定装置を使用して、前記着色コーティング層の初期BTFを決定するステップと;
- 分光光度計を用いて、予め与えられた数、すなわち限られた数の異なる測定形状について、前記着色コーティング層のスペクトル反射率データをキャプチャするステップと;
- 最適化BTFを得るために、式(1)の前記初期BTFを、
【数10】
ここで、
x:サンプル/物体の表面座標
【数11】
:サンプルのベースコートでの照射と観察/視野方向
【数12】
:照射と観察方向に依存するカラーテーブル
a:アルベド又は拡散反射率
【数13】
:マイクロファセットサーフェスの光沢を表現する双方向反射率分布関数(BRDF)に対応する、k番目のCook-Torranceローブ
S
k:k番目のCook-Torranceローブの重み付け
a
k:k番目のCook-Torranceローブのベックマン分布のパラメータ
F
0,k:k番目のCook-Torranceローブのフレネル反射率
【数14】
:照射及び観察方向に依存する空間テクスチャ画像のテーブル
であり、
項
【数15】
と項
【数16】
にセグメント化し、さらに、第1の項(F1)を、照射及び観察方向
【数17】
に依存するカラーテーブルに対応する第1サブ項と、強度関数
【数18】
に対応する第2サブ項とに分割し、
前記第2サブ項のパラメータを一定に保ちながら前記第1サブ項のパラメータを、第1最適化ステップで最適化し、及び、前記第1サブ項のパラメータを一定に保ちながら前記第2サブ項のパラメータを、第2最適化ステップで最適化することによって、前記キャプチャされたスペクトル反射率データと前記初期BTFの色差を最小化することによって前記初期BTFを前記キャプチャされたスペクトル反射率データに適合させるステップと;
によって得られる。
【0037】
最初のステップでは、カメラベースの測定装置は、異なる視野角で、異なる照射角度で、異なる照射色で、及び/又は異なる露光時間で、サンプルの複数の画像(写真)を作成し、したがって、照射角度、視野角、照射色及び/又は露光時間の複数の組み合わせを考慮した複数の測定データが提供される。適切なカメラベースの測定装置は市販されており、例えば、X-Rite TAC7(登録商標)測定装置などがある。サンプルとしては、硬化した着色コーティング層又はクリアコート層でコーティングされた着色コーティング層を含む硬化した多層コーティングでコーティングされた小型フラットパネルが使用される。測定装置から得られた画像は、初期BTFを得るために後処理される。後処理には、照射及び視野角は一定であるが、照射色及び露光時間はそれぞれ変化させた状態で撮影された画像から高ダイナミックレンジの画像を作成することが含まれ得る。後処理には、サンプルに対する写真の遠近感を補正すること、及び写真から色とテクスチャのデータを抽出することも含まれる。後処理によって得られたデータに基づいて、初期BTFのパラメータが決定される。双方向テクスチャ関数(BTF)は、平面テクスチャ座標(x,y)及び視野と照射球面角に依存する6次元関数であり、したがってBTFは、視野方向と照射方向、すなわち視野角と照射角の関数としてのテクスチャの外観の表現である。考慮される物体の表面の幾何学的形状は未知であり、測定されないため、これは画像ベースの表現である。BTFは、通常、可能な視野方向と照射方向の半球のサンプリングで表面を画像化することによってキャプチャされるため、BTF測定は通常、画像の集合となる(Dana, Kristin J.ら「Real-5 世界の表面の反射率とテクスチャ(Reflectance and Texture of Real-5 World Surfaces)」, ACM Transactions on Graphics, 第18巻、1999年、1~34頁を参照)。
【0038】
第2ステップでは、スペクトル反射率曲線は、測定ジオメトリの限られた数だけ取得される。測定ジオメトリのそれぞれは、特定の照射角/方向及び特定の視野角/方向によって定義される。スペクトル反射率測定は、例えば、ハンドヘルド分光光度計、例えば、6つの測定ジオメトリ(-15°、15°、25°、45°、75°、110°の固定照射角及び視野角/測定角)を有するByk-Mac I(登録商標)、12個の測定ジオメトリ(2つの照射角と6つの測定角)を有するX-Rite MAT12(登録商標)、又はX-Rite MA 98(登録商標)(2つの照射角と最大11個の測定角)によって行われる。これらの測定装置から得られるスペクトル反射率データは、最初のステップで使用されたカメラベースの測定装置から得られる色情報よりも正確である。
【0039】
第3のステップでは、初期BTFを2つの主要項(F1)と(F2)にセグメント化(分割)する。第1項(F1)は、均質な双方向反射率分布関数
【数19】
であり、測定形状のみに依存するサンプルの反射率特性を記述する。このBRDFは不透明な表面で光がどのように反射するかを定義する4つの実変数の関数である。この関数は、入射光方向
【数20】
と出射方向
【数21】
を入力し、方向
【数22】
から表面に入射する放射照度に対する
【数23】
に沿って出る反射放射照度の比率を返す。一般的に、BRDFは散乱ジオメトリの関数として3つの色座標からなり、したがって、BRDFを扱う際には、特定の照度と表色系(CIELABなど)を特定し、データに含める必要がある。BRDFは、照射角と反射散乱角の関数として材料(サンプル)の測光反射光散乱特性を記述する、あらゆる材料(ここではサンプルを意味する)の測光データの集合体である。BRDFは、材料(サンプル)、特にサンプルに含まれるゴニオアパレント材料のスペクトル及び空間反射散乱特性を記述し、材料の外観の記述を提供する。したがって、光沢、ヘイズ、色など、他の多くの外観属性は、BRDFから簡単に導き出すことができる。
【0040】
第2項(F2)は、サンプル
【数24】
の空間的に変化する外観を説明するテクスチャ関数であり、すなわち、視野と照射に依存するテクスチャ画像を追加する。遠くから見たとき、サンプルの全体的な色の印象は、単一点の色によって決まるのではなく、より広いエリアの平均的な色によって決まる。視野と照射に依存するテクスチャ画像は、すべてのピクセルで平均化すると、各RGBチャンネルの強度の合計がゼロになるという特性がある。この特性のため、テクスチャ画像のより大きな領域にわたる平均色はゼロ又はゼロに近いと仮定され、全体の色を変更することなくテクスチャ画像をオーバーレイすることができ、初期BTFを最適化する際にテクスチャ画像、したがって項(F2)を無視することができる。したがって、初期BTFを最適化する際には、項(F1)のみが最適化される。
【0041】
そして、第1項(F1)、すなわちBRDFは、さらに、照射及び観測方向
【0042】
【数25】
に依存するカラーテーブルに対応する第1サブ項及び強度関数に対応する第2サブ項
【数26】
に分割される。その後、キャプチャされたスペクトル反射率データと初期BTFとの間の色差は、第1最適化ステップでは、第2サブ項のパラメータを一定に保ちながら、第1サブ項のパラメータを最適化することによって、そして、第2最適化ステップでは、第1サブ項のパラメータを一定に保ちながら、第2サブ項のパラメータを最適化することによって、最小化される。
【0043】
第1最適化ステップでは、各スペクトル測定ジオメトリに対する第1サブ項のパラメータを最適化することは、以下:
- キャプチャされたスペクトル反射率データから第1のCIEL*a*b*値を計算することと、
- 式(1)の初期BTFから第2のCIEL*a*b*値を計算することと、
- 第1のCIELa*b*値から第2のCIELa*b*値を減算することにより、a*座標及びb*座標の補正ベクトルを計算することと、
- 第1サブ項に保存された視野角及び照射角の全範囲に対する補正ベクトルをコンポーネントごとに補間(interpolate)及び外挿することと、
- 補正されたBTF CIEL*a*b*値を取得するために、補間された補正ベクトルを、第1サブ項に保存された各スペクトル測定ジオメトリの第2のCIEL*a*b*値に適用することと、
- 補正されたBTF CIEL*a*b*値を線形sRGB座標に変換し、線形sRGB座標を正規化することと、
- 正規化されたsRGB座標を第1サブ項に保存することと、
を含み得る。
【0044】
マルチレベルB-スプライン補間アルゴリズム(Lee, Seungyongら「マルチレベル B30 スプラインによる散乱データ補間(Scattered data interpolation with multilevel B30 splines)」、視覚化とコンピュータグラフィックスに関するIEEEトランザクション(IEEE transactions on visualization and computer graphics) 3巻, 1997, 228-244頁)は、補正ベクトルのコンポーネントごとに補間及び外挿に使用されることができる。
【0045】
第2最適化ステップでは、第2サブ項のパラメータを最適化することは、以下:
- すべてのスペクトル反射率測定ジオメトリにわたる色差の合計に基づいてコスト関数を定義することと、
- キャプチャされたスペクトル反射率データから第1のCIEL*a*b*値を計算することと、
- 異なるスペクトル反射率ジオメトリにおける式(1)の初期BTFから第2のCIEL*a*b*値を計算することと、
- 重み付き色差式を用いて、第2のCIEL*a*b*値と第1のCIEL*a*b*値とを比較することと、
- コスト関数が最小化されるように、非線形最適化法を使用して第2サブ項のパラメータを最適化することと、
を含み得る。
【0046】
コスト関数 C(α,S,F
0,a)は、式(2)に従って、すべての反射率測定ジオメトリにわたって定義されることができる:
【数27】
であって
G:スペクトル反射率データが利用可能な測定ジオメトリのセット
g:測定ジオメトリのセットのうち1つ
ΔE(f
Test,f
Ref):色f
Testとf
Refの差を測定する重み付き色差式
【数28】
:スペクトル測定から導出される基準色
【数29】
:与えられた照射と観測方向に対する初期BTFから計算されたテストカラー
α=(α
1,α
2,α
3,):3つのCook-Torranceローブのベックマン分布のパラメータベクトル
S=(S
1,S
2,S
3):3つのCook-Torranceローブの重み付けベクトル
F
0=(F
0,1,F
0,2,F
0,3):3つのCook-Torranceローブのフレネル反射のベクトル
P(α,S,F
0,a):ペナルティ関数
【0047】
式(2)に示されるように、コスト関数は、特定の制約を考慮するように設計されたペナルティ関数によって補完されることができる。このような制約は、例えば、強度関数のパラメータ値を有効な範囲に保ち、現実には観察されない最適化されたBTFにおける効果を防ぐために使用されることができる。一例では、制約は発見的に定義される。色差を計算するために、初期BTFは異なるスペクトル反射率測定ジオメトリで評価され、得られたCIE L*a*b*値は、例えばDIN6157/2に定義されている式などの重み付き色差式を用いてスペクトル反射率測定からのCIE L*a*b*値と比較され、強度関数のパラメータは、コスト関数が最小化するように、例えばネルダーミーアダウンヒルシンプレックス法などの非線形最適化法を使用して最適化される。
【0048】
第1及び第2最適化ステップは、最適化されたBTFの精度をさらに向上させるために繰り返し/反復して実行され得る。反復の回数は、指定され、予め定義され得る。3回の反復で既に信頼できる良い結果が得られることが分かった。最適化されたBTFは、カメラベースの装置から直接得られる初期BTFよりも正確であるため、最適化されたBTFを使用して色を表示する場合、測定された色と比較してより高い色精度が得られる。
【0049】
ステップ(i)の一態様では、着色コーティング層のデジタル表現を提供することが、ディスプレイ装置のスクリーン上に既存のカラーライブラリを表示することと、表示された既存のライブラリから色を選択することと、選択された色に基づいて着色コーティング層のデジタル表現を得ることと、得られた着色コーティング層のデジタル表現を通信インターフェースを介してコンピュータプロセッサに提供することと、を含む。「既存のカラーライブラリ」という用語は、予め選択された色の設定量を有するデータベースを指す。既存のカラーライブラリは、少なくとも2つの異なる色を含むことができ、各色は、コーティング材料から調製される着色コーティング層の色に対応し、各色は、前述のように計算された最適化された双方向テクスチャ関数(BTF)によって定義されるか、又は、色空間データ及び/もしくは光沢データ及び/もしくは外観データ及び/もしくはテクスチャ特性によって定義される。
【0050】
既存のカラーライブラリを表示することは、仮想物体の物体データを提供すること、任意でさらなる色データを提供すること、既存のライブラリに存在するカラーに関連する最適化されたBTFをマッピングすること、又は既存のライブラリに存在するカラーに関連する色空間データ及び/又は光沢データ及び/又は外観データ及び/又はテクスチャ特性をマッピングすること、及び任意でさらなる色データを提供された仮想物体データにマッピングすること、及び予め定義された照射条件を使用してマッピング結果をレンダリングすることを含み得る。予め定義された光条件は、点光源、指向性光源又はスポットライトなどの直接光源(分析光源とも呼ばれる)、又はハイダイナミックレンジ(HDR)環境マップ、特にハイダイナミックレンジ(HDR)環境マップを含むことができる。直接光源を使用するレンダリングプロセスは、当該技術分野において知られており、リアルタイムで実行されることができる(例えば、OpenGLシェーディング言語(OpenGL shading language,)、Rost, R. J.らAddisonWesley Professional、2009年を参照)。ハイダイナミックレンジ(HDR)環境マップを使用するレンダリングプロセスは、イメージベースドライティングとして技術水準で知られている(例えば、Debevec, Paul 「イメージベースドライティング(Image-based lighting)(Image-Based Lighting)」, IEEE Computer Graphics and Applications, 2002年3月/4月、37~34頁を参照)。これらのプロセスでは、実世界の照射を全方位、高ダイナミックレンジの画像としてキャプチャし、その照射を環境の表現にマッピングし、コンピュータグラフィックスオブジェクトを環境内に配置し、コンピュータグラフィックスオブジェクトを照射する環境からの光をシミュレートすることによって、実世界からの光の画像で現実又は仮想物体が照射される。したがって、イメージベースドライティングを使用したレンダリング結果は、実世界の照射を使用するため、より現実的であると認識される。したがって、着色された物体のよりリアルな画像を得るために、イメージベースドライティングを使用してレンダリングプロセスを実行することが好ましい場合がある。仮想物体は、着色された領域などの仮想2D物体、又はカラーチップ、ドーム形状、自動車ボディ、又はそのような自動車ボディの一部などの仮想3D物体から選択されることができる。自動車ボディ又はその一部は、一般的な自動車ボディ又はその一部であってよく、又は特定の自動車ボディ又はその一部であってよい。「一般的な自動車ボディ又はその一部」という用語は、自動車ボディ又はその一部が、自動車、オートバイなどの車両クラスの一般的な表現であることを指す。このような汎用ボディは、それぞれの車両クラスの一般的な形状を表現するために使用されるだけで、通常は製造されない。これに対して、「特定の自動車ボディ又はその一部」という用語は、製造される実際の自動車ボディと同じ形状を有する自動車ボディ又はその一部を指す。仮想物体のデータは、ディスプレイ装置のメモリ、又はディスプレイ装置と通信インターフェースを介して接続されたデータベースなどのコンピュータ可読媒体に保存され得る。一例では、ユーザは、レンダリング前に仮想物体を選択することができる。この目的のために、利用可能な仮想物体がディスプレイ装置のスクリーン上でユーザに表示され、ユーザはインタラクション要素を介して所望の物体を選択することができる。選択された仮想物体に関連する物体データは、次いで、レンダリング前に、データベース又は内部メモリなどのコンピュータ可読媒体からプロセッサによって取得される。別の例では、予め定義された仮想物体がレンダリングに使用される。さらに別の例では、ユーザは、通信インターフェースを介してデータ記憶媒体に記憶された仮想物体を、コンピュータプロセッサに提供することができる。レンダリングに使用される仮想物体は、着色された仮想物体であってよい。一例では、利用可能な又は予め定義された仮想物体に関連する色データが、選択された又は予め定義された仮想物体に基づいてプロセッサによって取得される。別の例では、ユーザは、先に開示したように、ディスプレイ装置のスクリーン上に表示された既存のカラーライブラリから色を選択することができる。次に、選択された色に関連する色データは、レンダリング前に、ディスプレイ装置のメモリ又はデータベースなどのコンピュータ可読媒体から取得される。着色された仮想物体を使用することにより、選択された色がさらに着色コーティング層と組み合わされている場合、ユーザは物体の全体的な視覚的印象を表示することができる。着色コーティング層が着色クリアコートであり、その下にある着色ベースコート層と組み合わされる場合、ベースコート層の色は、その少なくとも部分的な透明性により、着色されたクリアコート層を通して少なくとも部分的に見えるので、これは好ましいかもしれない。表示された既存のカラーライブラリは、既存のライブラリに存在する表示された色を閲覧する際のユーザの快適性を高めるため、例えば、ズーム、移動、回転、及び/又はスクロールによって操作されることができる。
【0051】
既存のカラーライブラリは、コンピュータ可読媒体に保存されることができ、先に開示したレンダリングステップを実行するコンピュータプロセッサに通信インターフェースを介して提供されることができる。コンピュータ可読媒体は、ディスプレイ装置のメモリであってよく、又はディスプレイ装置と通信インターフェース、特に無線通信インターフェースを介して接続されたデータベースなどの外部記憶装置であってよい。ユーザは、ディスプレイ装置内に存在し、通信インターフェースを介してディスプレイ装置に結合された、又はディスプレイ装置によって投影されるインタラクション要素を介して、表示された既存のカラーライブラリから色を選択することができる。表示された既存のカラーライブラリから所望の色を選択した後、着色コーティング層のデジタル表現は、選択された色に基づいて前記デジタル表現をデータベース検索することにより得ることができる。予め定義されたカラーライブラリを表示することで、ユーザは利用可能な全ての色を容易に閲覧することができ、ユーザが直感的な方法で所望の色を選択することができる。
【0052】
ステップ(i)の代替態様では、着色コーティング層のデジタル表現を提供するステップは、コーティング層識別データを提供することと、提供されたコーティング層識別データに基づいてコーティング層のデジタル表現を得ることと、得られたデジタル表現を提供することとを含む。コーティング層識別データを提供することは、着色コーティング層の最適化された双方向テクスチャ関数(BTF)を提供すること、及び/又は着色コーティング層を示すデータを提供することを含み得る。着色コーティング層を示すデータは、色番号、色名、QRコード、バーコードなどを指し得る。このようなデータは、ディスプレイ装置のスクリーンを介してユーザによって提供され得る。スクリーンは、ユーザのデータ入力を容易にするためにGUIを備えていてよい。コーティング層のデジタル表現は、次いで、提供されたコーティング層識別データに基づいて、前記デジタル表現のデータベースを検索することによって得られることができる。
【0053】
一態様では、ステップ(i)は、提供された着色コーティング層のデジタル表現に関連する色をディスプレイ装置のスクリーン上に表示することをさらに含む。「提供されたデジタル表現に関連する色」とは、ディスプレイ装置のスクリーン上に色を表示するために、着色コーティング層のデジタル表現に含まれる最適化されたBTFを使用することによって得られる表示色を指す。得られた色データを表示することは、仮想物体の物体データを提供すること、及び提供された色データ及び提供された物体データを予め定義された照射条件を使用してレンダリングすることを含み得る。予め定義された照射条件、レンダリングプロセス、及び仮想物体は、前述したものと同様であってよい。この態様により、ユーザは、着色された仮想物体の視覚的印象が可能な限りリアルに表示されるように外観を設計すべき現実の物体に対応する仮想物体を選択することができる。さらに、これにより、ユーザは、選択された色が所望の色に対応しているかどうかを確認することができ、したがって、例えば、誤った色識別データを入力することによって、又は既述の既存のライブラリから誤った色を選択することによって、誤った開始色が選択された場合に、ユーザが開始色を修正することができる。
【0054】
ステップ(ii):
本発明の方法のステップ(ii)では、照射条件のデジタル表現は、複数の照射条件を含むユーザインターフェースをディスプレイ装置上に表示し、表示された複数の照射条件から照射条件を選択したことを示すユーザ入力をコンピュータプロセッサで検出し、検出されたユーザ入力に応答して、検出されたユーザ入力に関連付けられた照射条件のデジタル表現を、通信インターフェースを介してコンピュータプロセッサで取得することによって提供される。「複数の照射条件」という用語は、少なくとも2つの異なる照射条件、すなわち、少なくとも2つの照射条件が互いに異なることを指す。ユーザインターフェースは、プロセッサによって生成されたユーザインターフェース生成に基づいて、ディスプレイ装置によって表示されてよい。ユーザインターフェース生成は、複数の照射条件とは別に、さらなるボタン、メニュー等を含んでいてよい。複数の照射条件は、アイコン、画像、テキスト、又はそれらの組み合わせを使用して、ユーザインターフェースのプレゼンテーション内に描かれてよい。
【0055】
一態様では、複数の照射条件は、少なくとも(i)ディスプレイ装置を取り囲む周囲照射、及び(ii)予め定義されたハイダイナミックレンジ(HDR)環境マップ、及び(iii)特定の時間、日付及び場所に関連付けられた周囲光を含む。
【0056】
一態様では、ユーザ入力はインタラクション要素を介して検出される。インタラクション要素は、前述したように、物理的な入力装置、入出力装置、又は投影された入力装置であってよい。
【0057】
一態様では、照射条件のデジタル表現を取得することが、
- 通信インターフェースを介して、日付、時間、位置、特に地理的位置、及び任意で空のヘイズの程度を示すデータを取得すること、及び/又は
- 通信インターフェースを介して、ディスプレイ装置の少なくとも1つの照射センサから取得されたデータ、ディスプレイ装置の少なくとも1つの向きセンサから取得されたデータ、及び任意で少なくとも1つの視点センサから取得されたデータを取得すること、及び/又は
- 通信インターフェースを介して少なくとも1つのハイダイナミックレンジ(HDR)環境マップを取得すること、
を含む。
【0058】
ディスプレイ装置の照射センサ及び視点センサはそれぞれ、CMOS撮像モジュール、組み込みカメラ、又は前述のような同様のデバイスとして実装され得る。向きセンサは、ディスプレイ装置の筐体内に配置することができ、ディスプレイ装置の1つ以上の軸の周りのピッチ、ロール、ヨーなど、ディスプレイ装置の動きを感知することができる任意の適切なタイプのセンサを含むことができる。このようなセンサには、ジャイロセンサの代わりに、又はジャイロセンサに加えて、カリフォルニア州サンタクララのINVENSENCE CORP.から入手可能なものなどの微小電気機械(MEM)ジャイロセンサ、及び傾斜計、加速度計などを含めることができる。ハイダイナミックレンジ(HDR)環境は、回転対物レンズ又は魚眼レンズを備えた特殊なカメラを使用することにより、シーンを反映する球体を撮影することにより、又は画像をステッチしてシーンを囲む球体に画像を変換することにより得ることができる。
【0059】
一例では、通信インターフェースを介して位置、特に地理的位置を示すデータを取得するステップは、ディスプレイ装置上に世界地図を表示することと、インタラクション要素を介して、表示された世界地図上の位置を選択したことを示すユーザ入力を検出することと、検出されたユーザ入力に応答して、プロセッサとの通信インターフェースを介して、前記選択された地理的位置に関連付けられたデータ、特にGPSデータを取得することとを含み得る。世界地図は、ディスプレイ装置上に表示されたアイコン(ユーザインターフェースに表示された複数の照射条件のうちの1つに対応する)を選択したことを示すユーザ入力に応答して表示され得る。世界地図は、ディスプレイ装置の内部メモリもしくは外部データベースなどのデータ記憶媒体に記憶されていてよく、又はグーグルマップ(Google Maps)などのウェブアクセスサービスを介して提供されてよい。ユーザは、表示された世界地図上で所望の位置を見つけやすくするために、インタラクション要素を使用して、世界地図をズームもしくは移動させ、又は、都市名などの検索文字列を入力することができる。別の例では、GPS、セルラーモジュールなどの位置決定モジュールを使用してディスプレイ装置の位置を決定し、次いで決定された位置をコンピュータプロセッサとの通信インターフェースを介して取得することができる。
【0060】
通信インターフェースを介して日付及び/又は時間及び/又は空のヘイズの程度を示すデータを取得することが、日付又は時間又はヘイズに対応する少なくとも1つのレギュレータを含む少なくとも1つの調整ツールを表示することと、インタラクション要素を介して、少なくとも1つの調整ツールを操作することを示すユーザ入力を検出すること、特に、インタラクション要素を介して少なくとも1つの表示された調整ツールの少なくとも1つのレギュレータの動きを検出することによってユーザ入力を検出することと、検出されたユーザ入力に応答して、それぞれのレギュレータの位置に関連付けられた日付又は時間又はヘイズを決定することを含むことができる。「調整ツール」は、表示された日付及び/又は時間、或いは空のヘイズを修正することを可能にするグラフィカルユーザインターフェースの一部を指し得る。調整ツールの使用は、日付及び/又は時間及び/又はヘイズの操作に関してユーザガイダンスを提供し、したがって、所望のパラメータを設定するユーザ直感的な方法を提示する。インタラクション要素を介して少なくとも1つの調整ツールを操作するステップは、例えば、インタラクション要素を使用して調整ツールのそれぞれのレギュレータを動かすことによって、インタラクション要素を介して日付及び/又は時間及び/又はヘイズを調整することを含み得る。一例では、ユーザは、調整ツールを操作することによって、時間及び/又は日付及び/又はヘイズを自由に選択することができる。別の例では、日付、時間又はヘイズの少なくとも1つは固定されていてよく、すなわち、選択された位置/時間に関連する実際の時間又は実際の日付又は予め定義されたヘイズなど予め定義された値が、コンピュータプロセッサとの通信インターフェースを介してデータ記憶媒体から取得されてよい。
【0061】
ディスプレイ装置の少なくとも1つの照射センサから取得されたデータは、ルクスレベル、スペクトル成分、照射方向、ディスプレイ装置を取り囲む環境の少なくとも1つの写真、特に少なくとも1つのハイダイナミックレンジ(HDR)又はローダイナミックレンジ(LDR)の写真、又はそれらの組み合わせなど、ディスプレイ装置を取り囲む照射条件に関するデータを含み得る。ルクスレベルは、ディスプレイ装置のスクリーンの表面に入射する周囲光の一般的なレベルを表すことができる。スペクトルコンテンツは、周囲光のスペクトル成分を表す場合がある。照射方向は、主要な照射方向、すなわち周囲光が入射する主な方向を含み得る。物体の外観が、1つ又は少数の周囲光源がある環境でモデル化される場合、1つ又は少数の明瞭な主要な照射方向が存在する可能性がある。一方、表面の外観が複数の光源又は拡散光源を含む拡散周囲環境下でモデル化される場合は、主要な照射方向が存在しない可能性がある。照射センサから取得されたデータを使用することで、予め定義された照射光源を使用する代わりに、着色された物体の外観を予測する際に、ディスプレイ装置を取り囲む環境に存在する実際の照射源の影響を考慮することが可能になる。
【0062】
ディスプレイ装置の少なくとも1つの視点センサから取得されたデータは、ディスプレイ装置を見るユーザを示す少なくとも1つの写真を含むことができる。様々な実施形態によれば、照射センサ及び視点センサは、単一のセンサによって取得された少なくとも1つの写真から導出された有利な点の位置情報及び照射情報の両方を有する単一のセンサとして実装され得る。
【0063】
少なくとも1つのハイダイナミックレンジ(HDR)環境マップを取得することは、ディスプレイ装置のスクリーン上に少なくとも1つのハイダイナミックレンジ(HDR)環境マップを表示することと、インタラクション要素を介して表示されたハイダイナミックレンジ(HDR)環境マップを選択したことを示すユーザ入力を検出することと、検出されたユーザ入力に応答して、通信インターフェースを介して検出されたユーザ入力に関連付けられたハイダイナミックレンジ(HDR)環境マップを取得することとを含み得る。選択されたHDR環境マップに関連するデータは、既存のHDR環境マップ、すなわち、以前に取得され、データ記憶媒体に記憶されたHDR環境マップを含むことができる。ディスプレイ装置上に少なくとも1つのHDR環境マップを表示するステップは、ディスプレイ装置上に少なくとも1つの既存のHDR環境マップを表示することを含み得る。既存のHDR環境マップは、ディスプレイ装置の内部メモリなどのデータ記憶媒体に記憶されてよく、又は表示前に通信インターフェースを介してデータベースから取得されてよい。選択されたHDR環境マップを取得することは、コンピュータプロセッサとの通信インターフェースを介して検出されたユーザ入力に基づいて、外部データベース又は内部メモリなどのデータ記憶メモリから選択されたHDR環境マップを取得することを含み得る。
【0064】
一態様では、ステップ(ii)は、取得された照射条件をディスプレイ装置に表示することをさらに含み得る。一例では、これは、前述のように、過去の照射条件から導出されたモデルを使用して、日付、時間、位置、特に地理的位置、及び任意で空のヘイズの程度を示すデータからHDR環境マップを計算すること、及び計算されたHDR環境マップを表示することを含み得る。別の例では、これは、前述のように、過去の環境条件から導出された少なくとも1つのモデルを使用して、照射センサ及び/又は向きセンサ及び/又は視点センサによって取得されたデータからHDR環境マップを計算すること、及び計算されたHDR環境マップを表示することを含み得る。さらに別の例では、これは、取得された既存のHDR環境マップを表示することを含み得る。ユーザに提供された照射条件をディスプレイ装置に表示することにより、ユーザは、所望の照射条件が選択されたかどうかを確認し、必要に応じて入力を修正することができる。
【0065】
任意のステップ(iii):
本発明の方法の任意のステップ(iii)では、過去の照射条件から導出されたモデル及び/又は過去の環境条件から導出されたモデルが、通信インターフェースを介してコンピュータプロセッサに提供される。このステップは、以下のステップ(iii)に関連して説明するように、照射条件のデジタル表現をコンピュータプロセッサに提供した後に実行することもできる。通信インターフェースは、有線又は無線であってよく、特に無線であってよい。無線通信インターフェースの例としては、WLAN、WiFi又はブルートゥースがある。コンピュータプロセッサは、任意の適切な種類のプロセッサであってよい。様々な実施形態によれば、コンピュータプロセッサ、特にディスプレイ装置のプロセッサは、グラフィックス処理を処理するように特別に設計されたグラフィックス処理ユニット(GPU)を備えることができる。例えば、適切なGPUは、NVIDIA及びAMD(Advanced Micro Devices,Inc.)から入手可能である。プロセッサはまた、メモリ及び入出力デバイスなどのインタラクション要素と通信することもできる。入出力デバイスは、ユーザがデバイスを構成すること、及び/又はデータを入力することを可能にすることができる。様々な実施形態では、ディスプレイ装置は、ユーザが情報を入力し、ユーザにプロセスをガイドできるようにするスクリーン上又は二次ディスプレイ上にメニュー駆動ユーザインターフェースを提供することができる。他の周辺機器に加えて、プロセッサは、例えばRS232又はユニバーサルシリアルバス(USB)リンクなどの有線又は無線のデータリンクを介してコンピュータと通信することができる。
【0066】
ステップ(iii)の一態様では、過去の照射条件から導出されたモデルは、昼間の空の物理ベースの分析モデルである。このようなモデルは当技術分野で知られており、昼光の使用を含むレンダリングプロセスに一般的に使用されている。適切なモデルの1つは、式(3)のPreethamモデル、
【数30】
その中で
γ は、視野方向と太陽を指すベクトルが成す角度であり、
θ は天頂と視界方向が成す角度であり、
A、B、C、D、Eは放射輝度分布パラメータある。
【0067】
パラメータAからEは、1つのパラメータである濁度を引数にとり、パラメータAからEを返す一次関数と、天頂輝度を計算するための濁度と太陽仰角の二次関数から分析的に計算される。輝度に加えて、Preethamモデルには同じアプローチを使用して計算される2つの彩度チャンネルも提供されており、出力は分光放射輝度データに変換することができる。もう1つの適切なモデルは、I. Hosekら「フルスペクトルのスカイドーム放射輝度の分析モデル(An analytic model for full spectral sky-dome radiance)」, ACM Transactions on Graphics, 2012年, 第31巻, 記事No.: 95, https://doi.org/10.1145/2185520.2185591 に記載されているモデルである。後者のモデルは、大気の濁度値が高い場合にも低い場合にも良好な結果をもたらすため、本発明では後者のモデルを使用することが好ましい。Hosekらのモデルは、半球上の各点と各波長の分光放射輝度データを提供し、これを使用して、球状パノラマの下半分を予め定義された底部カラーで任意に埋めるHDR環境マップを計算することができる。この目的のために、HDRIのピクセルの分光放射輝度データが計算され、計算された各ピクセルの分光放射輝度データは、sRGB値又はCIEL*a*b*値などの色空間データに変換される。
【0068】
ステップ(iii)の一態様では、過去の環境条件から導出された少なくとも1つのモデルは、ディスプレイ装置の照射センサ及び/又は向きセンサ及び/又は視点センサから取得されたデータと、ディスプレイ装置を取り囲む周囲光条件との間の関係を提供する。「周囲光」は、前述のモデルを使用してディスプレイ装置の周囲光を決定する目的で、環境に明示的に供給されない任意の光源を指し得る。この用語は通常、既に自然に利用可能な光源(太陽、月、雷など)又は既に使用されている人工光(部屋を照らすためなど)を指す。ディスプレイ装置を取り囲む周囲光条件は、ディスプレイ装置のCMOSイメージングモジュール、組み込みカメラ、又は同様のデバイスなどの照射センサ及び/又は視点センサによって取得されたデータから、当技術分野で一般的に知られている多数のモデルを使用して決定されることができる。一例では、照射センサと視点センサは、単一のセンサとして実装されることができる。前記センサによって取得されたデータは、ハイダイナミックレンジ(HDR)写真又はローダイナミックレンジ(LDR)写真を含むことができる。1つの適切なモデルは、例えば、P.Debevec, 「イメージベースドライティング(Image-based lighting)」, ACM SIGGRAPH 2006 Courses, pages 4-es 及び, Q. Yangら, 「携帯電話のパノラマのための画像整列とステッチを支援される慣性センサ(Inertial sensors aided image alignment and stitching for panorama on mobile phones)」, モバイル位置情報サービスに関する第1回国際ワークショップ議事録(Proceedings of the 1st International Workshop on Mobile Location-Based Service), 2011, 21~30頁(以下HDRIモデルと呼ぶ)。別の適切なモデルは、ローダイナミックレンジ(LDR)写真から色と明るさを導出し、当該値を使用して、ディスプレイ装置を囲む周囲光条件を推定する(以下、周囲光モデルと呼ぶ)。このような周囲光モデルの一例は、AppleのARKitプログラムライブラリに実装されている。他の適切なモデルは、ローダイナミックレンジ(LDR)写真から球面調和(SH)係数を計算する(以下、SH係数モデルと呼ぶ)。放射照度が方位によって滑らかに変化することを考慮すると、表面の放射照度を正確に表現するために必要な係数はわずか9つであるため、当該係数は、離れた光源からの直接照射を圧縮するための非常に効果的な手法である。一例では、SH係数は、照射及び/又は視点センサによって取得されたデータに存在する色、明るさ、及び主照射方向から、AppleのARKitプログラムライブラリに実装されているように計算することができ、主照射方向は、写真などの取得されたデータで認識された顔の影を使用して決定される。計算されたSH係数は、ステップ(v)において色データを生成するために使用されることができ(例えばOpenGLシェーディング言語, Rost, R. J.,ら, AddisonWesley Professional, 2009を参照)、又はステップ(v)において色データを生成する前に、HDR環境マップはSH係数から計算されることができる(例えばP.-P.Sloan、「Stupid Spherical Harmonics (SH) tricks」, Game Developers Conference 2008、2008年2月参照)。別の例では、SH係数及びHDR環境マップは、GoogleのARCoreプログラムライブラリに実装されているようなトレーニング済みニューラルネットワークを使用して、限られた視野(FOV)でローダイナミックレンジ(LDR)写真から計算されることができる(例えば、C. LeGendreら「DeepLight: 制約のないモバイル複合現実のための学習照射(Learning Illumination for Unconstrained Mobile Mixed Reality)」, Proceedings of the IEEE/CVF Conference on Computer Vision and Pattern Recognition, 5918から5928を参照)。
【0069】
ステップ(iv):
本発明の方法のステップ(iv)では、着色コーティング層の色データは提供された着色コーティング層のデジタル表現、提供された照射条件のデジタル表現、及び任意で提供されたモデルに基づいて、コンピュータプロセッサで生成される。一態様では、コンピュータプロセッサで色データを生成するステップは、仮想物体の物体データを提供することと、任意で少なくとも1つのさらなるコーティング層のさらなる色データを提供することと、提供された着色コーティング層のデジタル表現と任意でさらなる色データとを提供された仮想物体上にマッピングすることと、提供された照射条件のデジタル表現と任意で提供されたモデルを使用してマッピング結果をレンダリングすることとを含む。
【0070】
仮想物体は、幾何学的形状などの2D仮想物体であってよく、又はチップ、ドーム形状、自動車ボディ又はその一部などの3D仮想物体であってよい。仮想物体は、予め定義された仮想物体であってよく、マッピング前に表示された予め定義された物体からユーザによって選択されてよく、又は前述のようにマッピング前にユーザによって提供されてもよい。さらなる色データを提供するステップは、着色コーティング層の少なくとも1つのさらなる色を、特に、前述したような既存のカラーライブラリから選択することと、選択された色に関連付けられた色データを、レンダリング前にプロセッサに提供することを含んでよい。これにより、ユーザは、複数の着色コーティング層を含む着色された物体の外観をモデル化することができる。
【0071】
提供された照射条件のデジタル表現に応じて、前記デジタル表現に含まれるデータは、レンダリング前に適切な提供されたモデルを使用してコンピュータプロセッサによって処理されるか、又はレンダリングに直接使用されるかのいずれかである。一例では、提供された照射条件のデジタル表現に含まれるデータは、ディスプレイ装置のプロセッサを使用して処理され得る。これは、ディスプレイ装置のプロセッサが、数ミリ秒から数秒などの妥当な時間内にレンダリング前のデータ処理を実行するのに十分な計算能力を有する場合に好ましい場合がある。別の例では、処理は、ディスプレイ装置の外部に存在するさらなるプロセッサによって実行される。これは、ディスプレイ装置のプロセッサの計算能力が、許容可能な時間内にレンダリング前のデータ処理を実行するには不十分である場合に好ましい場合がある。
【0072】
一態様では、ステップ(iv)は、着色コーティング層の色データを生成する前に、提供された照射条件のデジタル表現と、過去の環境条件から導出された提供された少なくとも1つのモデルとから、ディスプレイ装置を取り囲む周囲照射条件をコンピュータプロセッサで計算することをさらに含む。この場合、提供される照射条件のデジタル表現は、照射センサ、向きセンサ、及び視点センサのうちの少なくとも1つのセンサによって取得されたデータを含む。周囲照射条件は、周囲光モデル、HDR環境マップモデル、又はSH係数モデルなど、前述のように過去の環境条件から導出された少なくとも1つのモデルを使用して、取得されたセンサデータからコンピュータプロセッサで計算される。一例では、周囲照射条件を計算することは、前述のように、照射センサによって取得されたデータから明るさ及び色を推定することによって周囲光を計算することを含み得る。別の例では、周囲照射条件を計算することは、前述のように、照射センサ及び向きセンサによって取得されたデータからHDR環境マップを計算することを含み得る。さらに別の例では、周囲光条件を計算することは、照射センサによって取得されたデータから、及び任意で、視点センサによって取得されたデータから、球面調和(SH)係数を計算すること、及び任意で、前述のように、計算されたSH係数からHDR環境マップを計算することを含み得る。
【0073】
視点の位置は、視点センサによって、又はディスプレイ装置の照射及び視点センサの組み合わせによって取得された写真から導出することができる。例えば、人間の目は、任意の適切なアルゴリズムにしたがって写真内で識別され得る。目はディスプレイ装置のスクリーンに向けられていると仮定してよい。また、目とディスプレイ装置のスクリーンの表面上のそれぞれの点との間の距離は、例えば、少なくとも1つの向きセンサによって感知されるディスプレイ装置の向きに基づいて想定されることができる。例えば、ユーザがディスプレイ装置を目の高さに近い位置で保持する場合、腰の近くに保持する場合よりも、最初はより直立した角度で保持する傾向がある。少なくとも1つの写真における目の位置、目の向き、及び目とディスプレイ装置の表面上のそれぞれの点との間の距離から、視点の位置を導き出すことができる。
【0074】
レンダリングは、前述のように、提供された又は計算されたHDR環境マップを使用して(例えば、Debevec, Paul 「イメージベースドライティング(Image-based lighting)」, IEEE Computer Graphics and Applications, 2002年3月/4月、37~34頁を参照)、又は前述のように、計算されたSH係数を使用して(例えばOpenGLシェーディング言語, Rost, R. J.,ら, AddisonWesley Professional, 2009を参照)、イメージベースドライティング(Image-based lighting)(IBL)で実行され得る。レンダリングされた物体は、予め定義された背景、又はディスプレイ装置のスクリーン上に表示されたGUIを介してユーザによって選択された背景の前に配置され得る。背景は、異なる色を含む均一な色であってよく、又は環境の写真であってよい。ユーザによる背景の選択は、インタラクション要素を介して表示された複数の予め定義された背景から背景を選択すること、又はユーザによって背景を提供することのいずれかを含むことができる。選択された背景は、その後、ユーザの選択に基づいてデータ記憶媒体から取得され、コンピュータプロセッサに提供され得る。ユーザによる背景の提供は、データ記憶媒体から保存された画像などの背景を取得すること、又はディスプレイ装置の照射センサを使用して環境の写真を取得すること、及び取得された背景又は取得された写真をコンピュータプロセッサに提供することを含み得る。ユーザによる背景の選択により、ユーザは、レンダリングされた物体を所望の環境に表示することができ、したがって、現実世界条件下での物体の外観のより良い印象を得ることができる。
【0075】
一例では、レンダリングはディスプレイ装置のプロセッサによって実行される。周囲照射条件が前述のようにこのプロセッサで計算される場合、プロセッサは、計算された周囲照射条件をレンダリングに直接使用することができる。周囲照射条件がさらなるプロセッサで計算される場合、計算された周囲照射条件は、レンダリング前に通信インターフェースを介してディスプレイ装置のプロセッサに提供される。別の例では、レンダリングは、ディスプレイ装置の外部に存在するさらなるプロセッサによって実行され、レンダリング結果は、スクリーンに表示するために、通信インターフェースを介してディスプレイ装置のプロセッサに提供される。これは、ディスプレイ装置のプロセッサの計算能力が、許容可能な時間内にレンダリングを実行するには不十分である場合、すなわち、ディスプレイ装置のプロセッサが1秒以内に少なくとも25枚の画像をレンダリングできない場合に好ましい場合がある。
【0076】
ステップ(iv)の一態様では、生成された色データは、ステップ(iii)で提供された照射条件のデジタル表現に含まれるデータの変化に応答して、特に、少なくとも1つの照射センサから提供されたデータの変化に応答して、及び/又は、少なくとも1つの向きセンサから提供されたデータの変化に応答して、及び/又は、少なくとも1つの視点センサから提供されたデータの変化に応答して、再計算され、ディスプレイ装置のスクリーン上に表示される。再計算は、提供された照射条件のデジタル表現に含まれるデータ、特に、少なくとも1つのセンサによって取得されたデータが、例えば、ディスプレイ装置を取り囲む照射条件を変更すること、及び/又はディスプレイ装置の向きを変更すること、及び/又は視点を変更することによって、変更されたことを検出されると、自動的に、すなわち、ユーザのインタラクションなしに実行されてもよい。この目的のために、コンピュータプロセッサは、少なくとも1つのセンサによって取得されたデータの変化、又は時間、位置、場所、ヘイズなどのユーザによって以前に入力されたデータの変更を検出するようにプログラムされてもよく、新たに取得されたセンサデータ又は修正された入力を使用して、生成された色データの再計算を開始してもよい。再計算及び再計算された色データの表示は、リアルタイム又はほぼリアルタイムで実行されることができる。このようにして、ユーザがディスプレイ装置を傾けたり回転させたり、視点又は時間/位置/ヘイズを変更すると、ディスプレイ装置のスクリーン上に表示される着色された物体の外観は、あたかもユーザが実際のサンプルを傾けたり回転させたり、実際のサンプルに対する視点を変更し、又は実際のサンプルの時間/位置/ヘイズを変更しているかのように動作する場合がある。
【0077】
ステップ(v):
ステップ(v)では、ステップ(iv)で生成された色データは、ディスプレイ装置のスクリーン上に表示される。一態様では、コンピュータプロセッサから受信した色データをディスプレイ装置のスクリーンに表示するステップは、生成された色データ、特に各レンダリング点をディスプレイ装置のスクリーンにマッピングし、ディスプレイ装置のスクリーンにレンダリングされた物体を表示させることを含む。物体が平面などの二次元である場合、各レンダリング点とディスプレイ装置のスクリーン上のピクセル又はピクセルグループとの間には一対一の相関があり得る。しかし、様々な実施形態では、レンダリングされた点の数が利用可能なピクセルの数を超える場合がある。この場合、複数の点の外観を平均化するか、又はそれ以外の場合は単一のピクセル又はピクセルグループに集約することができる。三次元物体では、物体の形状により、複数のレンダリング点が同じピクセル又はピクセルグループにマッピングされる可能性がある。このようなことが起こると、適切な補正を任意の適切な方法に従って行うことができる。例えば、表面上の点の1つが視点に対して別の点を不明瞭にする傾向がある場合、関連するピクセル又はピクセルグループは、視点に最も近い点の外観を表示することができる。また、例えば、複数の点にマッピングされたピクセルは、点の外観の平均又は他の集約を表示することができる。また、三次元物体がディスプレイ装置のスクリーンにマッピングされる場合、マッピングは、ファセット、頂点、又は三次元物体を表現する他の任意の適切な方法に基づいてよい。
【0078】
デジタル表現に関連付けられた色が、ステップ(i)においてディスプレイ装置のスクリーン上に既に表示されている場合、又は前述の再計算が実行された場合、プロセッサから受信した色データをディスプレイ装置のスクリーン上に表示するステップは、ステップ(v)を実行することに応答して、又はステップ(iv)において実行された再計算に応答して、ステップ(i)でディスプレイ装置のスクリーン上に表示された色を自動的に更新することを含んでもよい。自動的に更新することは、更新のために必要とされるユーザのインタラクションなしに、表示された色を更新することを指し得る。ディスプレイ装置のスクリーンに表示される色を自動的に更新することは、ステップ(iv)で生成された生成色データ、特に各レンダリング点をディスプレイ装置のスクリーンにマッピングすること含んでよく、したがって、ディスプレイ装置のスクリーンに、ステップ(i)で表示される色をステップ(iv)のレンダリング結果で更新させるか、又はステップ(v)で表示される色をステップ(iv)で実行された再計算のレンダリング結果で更新させる。
【0079】
一態様では、ステップ(v)は、生成された色データ及び/又はさらなるデータをコンピュータ可読媒体に記憶することをさらに含む。さらなるデータは、前述のモデルのうちの1つを使用して、提供された照射条件のデジタル表現から計算された周囲光条件、ならびにセンサデータ又はユーザによって入力されたデータなどの計算に使用されたデータを含むことができる。生成された色データ及び/又はさらなるデータを保存することは、保存されたデータが再び必要とされる場合に迅速に取得することができ、計算によって生成される必要がないため、予測プロセスの速度を向上させることができる。データは、着色コーティング層のデジタル表現及び照射条件のデジタル表現に関連付けられ、色データの生成前にコンピュータプロセッサがアクセス可能なデータベースに保存されてよい。例えば、コンピュータプロセッサは、前述したように色データを生成する前に、データベースにアクセスし、提供された着色コーティング層のデジタル表現及び提供された照射条件のデジタル表現に基づいて、生成された色データ及び/又は計算された周囲光条件が利用可能であるかどうかをチェックすることができる。これにより、本発明の方法の使用中に、生成された色データ及び/又は計算された周囲光条件を含むデータベースを構築することができ、色データ及び/又は周囲光条件をコンピュータプロセッサによって生成する必要がなく、代わりにデータベースから迅速に取得できるため、ステップ(iv)の速度を向上させることができる。
【0080】
一態様では、ステップ(v)は、表示された色を既存のカラーライブラリ又は新たに生成されたカラーライブラリに追加して、修正されたカラーライブラリを生成することをさらに含む。新しく生成されたカラーライブラリは、前記ライブラリに最初の色を追加する前にユーザによって生成され得、したがって、前記ライブラリに表示される色を追加する前のいかなる色を含まない。修正されたカラーライブラリは、着色コーティング層の色を設計する際に修正されたカラーライブラリを将来使用するために、保存されたユーザプロファイルと関連付けられることができる。これにより、ユーザは、予測された色を保存及び取得し、後の時点で予測された色を修正することができる。ユーザは、修正されたカラーライブラリから少なくとも1つの追加したカラーを削除することもできる。一例では、ユーザは、グループ化基準に従って、既存のカラーライブラリ又は修正されたカラーライブラリに存在する色をソートして、ソートされたカラーライブラリを作成することもできる。ソートされたカラーライブラリは、ソートされたカラーライブラリを将来提供するために、保存されたユーザプロファイルと関連付けられることができる。ソートされたカラーライブラリは、お気に入りリストを表すことができる。グループ化基準は、ユーザによって任意に選択されることができ、又はユーザ選択のためにスクリーンに表示される予め定義された基準であってよく、例えば、新しくデザインされた色、最近選択された色などであってよい。
【0081】
さらなるステップ
一態様では、ステップ(i)から(v)、又はステップ(ii)から(v)、又はステップ(i)、(iv)及び(v)が繰り返される。これにより、(ステップ(i)から(v)を繰り返すことによって)新しい色と異なる照射条件を選択し、(ステップ(ii)から(v)を繰り返すことによって)選択された色の照射条件を修正し、(ステップ(i)、(iv)及び(v)を繰り返すことによって)選択された照射条件の色を修正することができる。ステップ(i)から(v)、ステップ(ii)から(v)、又はステップ(i)、(iv)及び(v)が繰り返される場合、生成された色データをディスプレイ装置のスクリーンに表示するステップは、ステップ(i)から(v)の繰り返しに応答して、又はステップ(ii)から(v)の繰り返しに応答して、又はステップ(i)、(iv)及び(v)の繰り返しに応答して、ステップ(v)でディスプレイ装置のスクリーンに表示される色を自動的に更新することを含んでよい。ステップ(i)又は(v)で表示される色を自動的に更新することにより、所定の色に対する照射条件の影響を視覚化することができ、したがって、所望の色を選択する際にユーザにインタラクション的ガイダンスを提供することができる。
【0082】
ある態様では、本発明の方法はさらに以下のステップ:
(vi) 着色コーティング層の修正されたデジタル表現を生成するために、提供された着色コーティング層のデジタル表現を修正するステップと;
(vii) 任意でステップ(vii)を繰り返すステップと;
(viii) 着色コーティング層の修正されたデジタル表現に基づいて、コーティング層の色データを生成するステップと;
(ix) プロセッサから受信した生成された色データをディスプレイ装置のスクリーンに表示するステップと;
(x) 任意でステップ(vii)から(ix)を繰り返すステップと;
(xi) 任意で、着色コーティング層の修正されたデジタル表現が少なくとも1つの予め定義された許容誤差内にあるかどうかをコンピュータプロセッサで判断するステップと;
(xii) 任意で、修正されたデジタル表現が少なくとも1つの予め定義された許容誤差内にあるという決定に従って:着色コーティング層の修正されたデジタル表現を使用して、ステップ(ii)から(v)を繰り返するステップと;
(xiii) 任意で、修正されたデジタル表現が少なくとも1つの予め定義された許容誤差内にあるという決定に従って:通信インターフェースを介して修正されたデジタル表現をコーティング材料製造サイトに提供し、任意で、提供された修正されたデジタル表現に基づいてコーティング材料を製造するステップと;
(xiv) 任意で、修正されたデジタル表現が少なくとも1つの予め定義された許容誤差外であるという決定に従って:ディスプレイ装置のスクリーン上に少なくとも1つの推奨事項を表示するステップと;
(xv) 任意で、修正されたデジタル表現が少なくとも1つの予め定義された許容誤差外であるという決定に従って:ステップ(vi)から(ix)、又はステップ(vi)から(x)、又はステップ(vi)から(xiv)を繰り返すステップと、
を含む。
【0083】
ステップ(vi):
着色コーティング層のデジタル表現を生成するために、提供された着色コーティング層のデジタル表現を修正するステップ(vi)は、以下:
- 任意で、提供されたデジタル表現に関連する着色コーティング材料の配合に関するデータを取得し、取得されたデータを通信インターフェースを介してコンピュータプロセッサに提供することと;
- 着色コーティング層の調製に使用されるコーティング材料に含まれる成分の少なくとも一部を、ディスプレイ装置のスクリーン上に表示することと;
- インタラクション要素を介して、少なくとも1つの表示された成分を操作することと;
- コンピュータプロセッサで前記操作を検出することと;
- コンピュータプロセッサにより、検出された操作を、着色コーティング層の修正されたデジタル表現に変換することと、
を含み得る。
【0084】
着色コーティング層を調製するために使用されるコーティング材料の配合に関するデータは、コーティング材料中に存在する成分の少なくとも一部の種類及び量に関するデータを含むことができる。着色コーティング材料は通常、少なくとも1種の顔料、少なくとも1種の結合剤及び少なくとも1種の溶剤を含む。さらなる成分は、例えば、充填剤、マット剤、架橋剤及び添加剤である。提供された着色コーティング層のデジタル表現がこのようなデータを含んでいない場合、このデータは、このデータがステップ(ii)で提供された着色コーティング層のそれぞれのデジタル表現と関連付けられているデータベースから取得されることができる。
【0085】
着色コーティング層を調製するために使用されるコーティング配合物中に存在する成分の少なくとも一部をディスプレイ装置のスクリーン上に表示することは、複数のレギュレータを含む少なくとも1つの調整ツールを表示することを含み得、各レギュレータは、コーティング材料中に存在する成分の種類及び量に対応する。少なくとも1つの調整ツールは、提供されたコーティング層のデジタル表現から生成されてよい。これは、提供された着色コーティング層のデジタル表現に含まれる着色コーティング層を調製するために使用されるコーティング材料の配合に関するデータをコンピュータプロセッサで決定することと、決定されたデータに基づいて少なくとも1つの調整ツールを生成することとを含み得る。一例では、調整ツールは、複数の視覚的に異なる区画を有するボックスであってよく、各区画は、コーティング材料に存在する成分の種類を示し、各区画のサイズは、それぞれの成分の量を示し、複数のレギュレータは、区画を分離する視覚的要素、特に線に対応する。成分の種類は、成分の種類を示すグラフィック表現を用いて区画内に表示されることができる。グラフィック表現は、提供された着色コーティング層のデジタル表現から得られることができ、着色された顔料のカラーチップ、メタリック効果顔料の金属片、ガラスフレークのガラス片、結合剤の固体ブロックなどの画像から選択され得る。異なるサイズの区画を有し、特定の成分のグラフィック表現を含むボックスを使用することにより、関連する成分の概要が容易になり、区画のサイズ及び/又は区画内に存在する成分を変更することにより、各成分の種類/量がコーティング層の得られる色に及ぼす影響を容易に評価することができる。コーティング材料の配合を修正の基礎として使用することは、色が着色に与える影響を調べることができ、その結果、非常に直感的な方法で所望の視覚的外観を設計することができる。
【0086】
インタラクション要素を介して少なくとも1つの表示された成分を操作することは、インタラクション要素を介して少なくとも1つの表示された成分の種類及び/又は量を調整することを含み得る。一例では、これは、インタラクション要素を介して、少なくとも1つの表示された調整ツールの少なくとも1つのレギュレータを動かすことを含み得る。
【0087】
一例では、操作は、通信インターフェースを介してインタラクション要素と接続されたプロセッサによって検出され、2つのプロセッサを接続するさらなる通信インターフェースを介してコンピュータプロセッサに提供され得る。これは、タッチスクリーンのジェスチャを検出するパネルプロセッサを備えるタッチパネルが使用される場合に好ましい。検出されたタッチスクリーンのジェスチャは、通信インターフェースを介して、ディスプレイ装置の内部又は外部に存在し得るコンピュータプロセッサに提供される。別の例では、ユーザ入力は、ディスプレイ装置の内部に存在するコンピュータプロセッサで検出されることができる。これは、外部入力装置がインタラクション要素として使用される場合に好ましい。
【0088】
検出されたユーザ入力は、コンピュータプロセッサにより、着色コーティング層の修正されたデジタル表現に変換される。これは、検出されたユーザ入力を、着色コーティング層を調製するために使用される着色コーティング材料の修正配合データに変換することを含むことができる。着色コーティング材料の修正配合データは、好ましくは、数値を含み、前述のようにユーザによって実行されたコーティング材料の成分の修正に反映される。したがって、検出されたユーザ入力を変換することは、非修正着色コーティング材料の配合データの数値を修正することを含み得、ここで、修正は検出されたユーザ入力を反映する。一例では、変換は、ディスプレイ装置の内部に存在するコンピュータプロセッサによって実行される。別の例では、変換は、ディスプレイ装置の外部に存在する、特に別のコンピューティングデバイスの内部に存在するさらなるコンピュータプロセッサによって、通信インターフェースを介してユーザ入力を前記さらなるプロセッサに提供し、提供されたユーザ入力に基づいて変換を実行することによって実行される。
【0089】
ステップ(vii):
任意のステップ(vii)では、ステップ(vi)を少なくとも1回繰り返す。これは、少なくとも1つのさらなる着色コーティング層が物体上に存在し、少なくとも1つのさらなるコーティング層の色も修正されるべき場合に好ましい。
【0090】
ステップ(viii):
ステップ(viii)では、着色コーティング層の色データは、着色コーティング層の修正されたデジタル表現に基づいて、コンピュータプロセッサで生成される。ステップ(vii)が繰り返される場合、ユーザは、ステップ(vii)を少なくとも2回実行することによって得られたすべての修正デジタル表現に基づくコーティング層の色データをステップ(viii)で生成すべきか、又は選択された修正デジタル表現の色データをステップ(viii)で生成すべきかを選択することができる。前者の場合、後述するステップ(ix)で表示される生成された色データは、着色コーティング層の組み合わせの視覚的印象に対応する。後者の場合、ステップ(ix)で表示される生成された色データは、選択された着色コーティング層の視覚的印象に対応し、ステップ(viii)で選択されなかった修正デジタル表現の色データは、(ix)及び(x)の繰り返しで生成されてよい。一例では、着色コーティング層の修正デジタル表現に基づいて色データを生成することは、修正デジタル表現に基づいて、特に、提供された着色コーティング材料の修正配合データに基づいてデータベース又はルックアップテーブルから、色データを取得することによって、着色コーティング材料の修正配合データに基づいて、色データを取得することを含み得る。これには、取得された色データを、色距離、外観距離又はそれらの組み合わせなどの予め定義された許容誤差と比較することが含まれ得る。別の例では、着色コーティング層の修正デジタル表現に基づいて色データを生成することは、着色コーティング層の修正デジタル表現から、特に着色コーティング材料の修正配合データから、色データを計算するために、過去のコーティング層及び過去のコーティング層を調製するために使用された着色コーティング材料の過去の配合の色データに基づいてパラメータ化されたデータ駆動モデルを使用することを含み得る。「データ駆動モデル」は、少なくとも部分的にデータから導出されるモデルを指し得る。データ駆動モデルを使用すると、物理化学法則によってモデル化できない関係を記述することができる。データ駆動モデルを使用すると、物理化学法則から方程式を解くことなく関係を記述することができる。これにより、計算能力を削減し、速度を向上させることができる。データ駆動モデルは、統計から導出されてよい(Statistics 4th edition, David Freedmanら、W.W. Norton & Company Inc.、2004)。データ駆動モデルは、機械学習から導出されてよい(大規模データ マイニングのための機械学習と深層学習のフレームワークとライブラリ: 調査(Machine Learning and Deep Learning frameworks and libraries for large-scale data mining: a survey), Artificial Intelligence Review, Vol.52, 2019, 77から124頁)から導出されてよい。データ駆動モデルは、経験的モデル又はいわゆる「ブラックボックスモデル」を含むことができる。経験的モデル又は「ブラックボックス」モデルは、機械学習、ディープラーニング、ニューラルネットワーク、又は他の形態の人工知能の1つ以上を使用することによって構築されるモデルを指し得る。経験的モデル又は「ブラックボックス」モデルは、トレーニングデータとテストデータとの間に良好な適合をもたらす任意のモデルであってよい。あるいは、データ駆動モデルは、厳密モデル又は「ホワイトボックス」モデルを含み得る。厳密なモデル又は「ホワイトボックス」モデルとは、物理化学法則に基づくモデルを指す。物理化学法則は、第一原理から導出されてよい。物理化学的法則は、化学反応速度論、質量保存則、運動量保存則とエネルギー保存則、任意の次元における粒子集団、物理的及び/又は化学的関係の1つ以上を含むことができる。厳密なモデル又は「ホワイトボックス」モデルは、それぞれの問題を支配する物理化学法則に従って選択されることができる。データ駆動モデルは、ハイブリッドモデルを含むことができる。「ハイブリッドモデル」とは、ホワイトボックスモデルとブラックボックスモデルを含むモデルを指し、例えば、Von Stochらの総説論文、Computers & Chemical Engineering、第60巻、2014年、86~101頁を参照されたい。過去のコーティング層の色データ及び過去のコーティング層を調製するために使用される着色コーティング材料の過去の配合をパラメータ化されたデータ駆動モデルは、当該技術分野でよく知られており、例えば、US20020184167A1及びUS20090078936A1に開示されている。
【0091】
ステップ(ix):
ステップ(ix)では、生成された色データがディスプレイ装置のスクリーン上に表示される。これは、仮想物体の物体データを提供すること、任意で少なくとも1つのさらなるコーティング層のさらなる色データを提供すること、及び前述のように予め定義された照射条件を使用して、生成された色データ、提供された物体データ、及び任意で提供されたさらなる色データをレンダリングすることを含み得る。レンダリングは、前述のように、ディスプレイ装置のプロセッサ、又はさらなるプロセッサによって実行されてよい。このステップは、前述のようにステップ(vi)~(ix)を実行することに応答して、ステップ(v)で表示される色を自動的に更新することを含んでよい。ステップ(ix)は、生成された色データ及び/又は表示された色データを保存すること、表示された色データを既存のカラーライブラリ又は新たに生成されたカラーライブラリに追加すること、及びステップ(v)に関連して前述したように、変更されたカラーライブラリに関連するさらなるステップを含むことができる。
【0092】
任意のステップ(x):
任意のステップ(x)では、ステップ(vii)から(ix)が繰り返される。これにより、所望の色が得られるまでコーティング材料の配合を修正することができる。
【0093】
任意のステップ(xi):
任意のステップ(xi)では、コンピュータプロセッサは、着色コーティング層の修正されたデジタル表現が予め定義された許容誤差内にあるかどうかを決定する。これにより、ユーザによって設計された色が、ある予め定義された許容誤差を満たすことを保証することができる。このような許容誤差は、成分の最大量又は最小量、成分の少なくとも一部の許容可能な組み合わせ、及びそれらの組み合わせから選択されることができる。成分は、顔料、結合剤、溶媒、又は着色コーティング層を調製するために使用されるコーティング材料中に存在するさらなる成分であってよい。特に、特定の顔料タイプ及び/又は結合剤の最大量又は最小量、及び/又は顔料タイプ及び/又は結合剤の許容される組み合わせを、予め定義された許容誤差として選択することができる。予め定義された許容誤差は、データベースなどの記憶装置に保存されてもよく、通信インターフェースを介してステップ(xi)を実行するコンピュータプロセッサに提供されてよい。コーティング層の修正されたデジタル表現が少なくとも1つの予め定義された許容誤差内にあるかどうかを決定するステップは、コンピュータプロセッサ、特にディスプレイ装置のコンピュータプロセッサを使用して、修正されたデジタル表現に含まれるコーティング材料の修正された配合のデータを少なくとも1つの予め定義された許容誤差と比較することを含んでよい。比較は、厳密なモデルを使用して行われることができる。厳密なモデルは、それぞれの問題を支配する物理化学法則に従って選択されることができる。
【0094】
任意のステップ(xii):
任意のステップ(xii)では、修正されたデジタル表現が、少なくとも1つの、特にすべての、予め定義された許容誤差内にある場合に、ステップ(ii)から(v)が繰り返される。これにより、ユーザは、修正された色が、定義された照射条件下でも所望の外観を有するかどうかを確認することができる。一実施形態では、任意のステップ(xii)は、ステップ(xi)の前に実行することもできる。しかし、ユーザによって設計された色が、定義された基準を満たし、物体上に製造及び適用できることが保証され、したがって、ユーザによって所望される場合、設計された色を有する着色された物体を製造することができるため、ステップ(xi)の後にステップ(xii)を実行することが望まれる。
【0095】
任意のステップ(xiii):
任意のステップ(xiii)では、着色コーティング材料の修正されたデジタル表現は、通信インターフェースを介してコーティング材料の製造サイトに提供される。一例では、これは、ユーザが着色コーティング層の修正されたデジタル表現を使用してステップ(ii)~(v)を繰り返した際に、ディスプレイ装置のスクリーン上に表示された着色された物体の外観に満足した場合(すなわち、着色コーティング層の修正されたデジタル表現がステップ(ii)で提供された場合)に、ユーザによってトリガされよい。別の例では、ユーザはステップ(xiii)をスキップして直接ステップ(xiii)に進むことができる。修正されたデジタル表現は、好ましくは、インタラクション要素を介して受信されたユーザ入力を変換することによって得られる修正された配合を含む。一例では、コーティング層の修正されたデジタル表現をコーティング材料製造サイトに提供するステップは、通信インターフェースを介して、修正されたデジタル表現に関連する配合データをコーティング材料製造サイトに配置された処理装置に提供することを含む。別の例では、コーティング層の修正されたデジタル表現をコーティング製造サイトに提供するステップは、通信インターフェースを介して、修正されたデジタル表現に関連する配合データを、データベース又はクラウドなどのコンピュータ可読媒体に提供することを含む。このコンピュータ可読媒体は、次いで、提供された修正表現に基づいてコーティング材料を製造する前に、コーティング製造サイトに配置された処理装置によってアクセスされ得る。一例では、少なくとも1つの予め定義された許容誤差、特にすべての予め定義された許容誤差が、コーティング材料の修正された表現によって満たされる場合、修正されたデジタル表現は、ユーザインタラクションなしに、コーティング製造者に自動的に提供される。メッセージがディスプレイ装置のスクリーンに表示されるか、又はコーティング材料製造サイトへのデータ転送の状況をユーザに知らせるために、電子メールがユーザに送信される。別の例では、ユーザは、ディスプレイ装置のスクリーン上のそれぞれのボタンをクリックすることによって、修正されたデジタル表現をコーティング材料製造サイトに積極的に提供しなければならない場合がある。ステップ(xiv)は、修正されたデジタル表現が前述のようにコーティング材料製造サイトに提供された後、提供された修正されたデジタル表現に基づいてコーティング材料を製造することをさらに含むことができる。この目的のために、提供された修正デジタル表現は、特に、コーティング材料製造サイトに配置された処理ユニットによって、製造プロセスに必要な予め定義された製造要件又はデータ形式を満たすように適合又は変換され得る。次に、製造されたコーティング材料は、一般的に知られている塗布技術を使用して、金属板又はドーム形状のレリーフなどの基材に塗布し、熱硬化させることができる。得られた硬化した着色コーティング層は、任意で硬化したクリアコート層でコーティングされてよく、その後、ユーザに提供し、ユーザによってステップ(vi)から(ix)で設計された色と比較され得る。このステップにより、ステップ(vi)から(ix)でユーザが設計した色が、提供された修正デジタル表現に基づいてコーティング製造者によって製造されることが保証される。着色コーティング層がユーザの期待と一致しない場合、ユーザはステップ(vi)から(ix)を繰り返すか、又はコーティング製造者がコーティング材料の配合を適合させて、より一致する着色コーティング層を提供することができる。
【0096】
任意のステップ(xiv):
ステップ(xi)で実行された決定により、修正されたデジタル表現が少なくとも1つの予め定義された許容誤差を満たさないことが判明した場合、少なくとも1つの推奨事項が、任意のステップ(xiv)で、ディスプレイのスクリーン上でユーザに表示されることができる。推奨事項は、データベースなどのコンピュータ可読媒体に保存されてよい。一例として、コンピュータプロセッサは、推奨事項を含むデータベースにアクセスすることができ、決定の結果に基づいて、それぞれの推奨事項を取得することができる。次いで、前記取得された推奨事項は、ディスプレイ装置のスクリーン上でユーザに表示される。推奨事項の例としては、「配合要件が満たされていません。顔料の種類/量を修正してください。」があり得る。
【0097】
ステップ(xv):
ステップ(xi)で実行された決定により、修正されたデジタル表現が少なくとも1つの予め定義された許容誤差を満たさないことが判明した場合、ステップ(vi)から(ix)、又はステップ(vi)から(x)、又はステップ(vi)から(xiv)を繰り返すことができる。予め定義された許容誤差を満たすために必要な修正に関するユーザガイダンスを提供するために、推奨事項を表示した後にこのステップを実行することが好ましい場合がある。
【0098】
ステップ(vi)から(ix)及び任意のステップ(x)から(xiv)により、ステップ(v)で表示された着色された物体の外観が所望の外観と一致しない場合に色を修正することができる。着色コーティング材料の配合のグラフィック表現の使用は、コーティング材料の成分が着色コーティング層の色に及ぼす影響を素早く把握することができ、したがってコーティング組成物に関する深い知識がなくても、色の修正のインタラクションガイダンスが可能になる。
【0099】
一態様では、本方法は、通信インターフェースを介してコンピュータプロセッサにアイテムの注文指示を提供するステップをさらに含み、注文指示は、ステップ(v)で表示された色に関するデータ、又は少なくとも1つの予め定義された許容誤差を満たす着色コーティング層の修正されたデジタル表現に関連する色に関するデータを含む。通信インターフェースを介して注文指示を受信するコンピュータプロセッサは、ディスプレイ装置とは別に存在し、すなわち、さらなるコンピューティングデバイス内に存在する。コンピュータプロセッサを備えるさらなるコンピューティングデバイスは、例えば自動車ディーラーのような販売者、又は自動車メーカーのような着色アイテムを製造する会社に配置されてよい。販売者は、任意で、製造プロセス又は販売者への配送に必要なさらなるデータを含むように注文指示を修正した後、アイテムの製造者に注文指示を転送することができる。一例では、アイテムは自動車であってよい。別の例では、アイテムは家具、衣類などであってよい。ステップ(v)で表示される色に関するデータは、ステップ(ii)において提供された着色コーティング層のデジタル表現、及び当該デジタル表現に関連付けられたデータ、例えばカラーコード、色名、コーティング材料の配合などであってよい。少なくとも1つの所定の許容誤差を満たす着色コーティングの修正されたデジタル表現に関連する色に関するデータは、コーティング材料の配合であってよい。注文指示は、ユーザによって実行されるアイテムのさらなる構成、ユーザ情報、支払詳細などのさらなるデータを含んでよい。本発明の方法のこのステップは、異なる照射条件下でのアイテムの色の予測が、購入するアイテムを構成するプロセス内、例えば自動車コンフィギュレータ内で実行される場合に実行されることが好ましい。これにより、色を選択し、選択された色がユーザによって所望される外観を提供するかどうかを決定するために異なる照射条件下でその色を見ることによって、ユーザは自動車などのアイテムの所望の色を選択することができる。
【0100】
本発明システムの実施形態:
前述のシステムは、少なくとも1つのデータベースをさらに備えることができる。このようなデータベースは、着色コーティング層のデジタル表現、コーティング材料の配合に関連する色データ、照射条件のデジタル表現、過去の照射条件から導出されたモデル、過去の環境条件から導出されたモデル、過去のコーティング層の色データ及び過去のコーティング層を調製するために使用された着色コーティング材料の過去の配合にパラメータ化されたデータ駆動モデル、仮想物体の物体データ、及びさらなるコーティング層の色データを含むことができる。前述のデータベースは、任意の組み合わせで使用されることができる。
【0101】
一態様では、システムは、着色コーティング層の色データを測定するための装置をさらに備える。色データを測定するための適切な装置は、当該技術分野において周知である。
【0102】
さらなる実施形態又は態様は、以下の番号の項に記載されている:
【0103】
1. 少なくとも1つの着色コーティング層でコーティングされている物体の外観を予測し、予測された外観を表示装置に表示するためのコンピュータ実装方法であって、前記方法は、
(i) 通信インターフェースを介して、着色コーティング層のデジタル表現をコンピュータプロセッサに提供するステップと;
(ii)
- 複数の照射条件を含むグラフィカルユーザインターフェースをディスプレイ装置に表示することと;
- 表示された前記複数の照射条件から照射条件を選択したことを示すユーザ入力を前記コンピュータプロセッサで検出することと;
- 前記検出されたユーザ入力に応答して、前記通信インターフェースを介して前記コンピュータプロセッサを用いて、前記検出されたユーザ入力に関連付けられた照射条件のデジタル表現を取得することと;
によって照射条件のデジタル表現を提供するステップと;
(iii) 任意に、前記通信インターフェースを介して前記コンピュータプロセッサに、過去の照射条件から導出されたモデル、及び/又は過去の環境条件から導出された少なくとも1つのモデルを提供するステップと;
(iv) 前記提供された着色コーティング層のデジタル表現、前記提供された照射条件のデジタル表現、及び任意に前記提供されたモデルに基づいて、前記コンピュータプロセッサで前記着色コーティング層の色データを生成するステップと;
(v) 前記コンピュータプロセッサから受信した前記生成された色データを前記ディスプレイ装置に表示するステップと、
を含む、方法。
【0104】
2. 前記着色コーティング層のデジタル表現が、色空間データ、光沢データ、外観データ、テクスチャ特性、又はそれらの組み合わせを含む、項1に記載の方法。
【0105】
3.少なくとも1つの着色コーティング層でコーティングされている物体の外観を予測し、予測された外観をディスプレイ装置に表示する方法であって、前記方法は、以下のステップ:
(i) 通信インターフェースを介して、着色コーティング層のデジタル表現をコンピュータプロセッサに提供するステップであって、前記着色コーティング層のデジタル表現は、以下のステップ:
- カメラベースの測定装置を使用して、前記着色コーティング層の初期BTFを決定するステップと;
- 分光光度計を用いて、予め与えられた数、すなわち限られた数の異なる測定形状について、前記着色コーティング層のスペクトル反射率データをキャプチャするステップと;
- 最適化BTFを得るために、式(1)の前記初期BTFを、
【数31】
ここで、
x:サンプル/物体の表面座標
【数32】
:サンプルのベースコートでの照射と観察/視野方向
【数33】
:照射と観察方向に依存するカラーテーブル
a:アルベド又は拡散反射率
【数34】
:マイクロファセットサーフェスの光沢を表現する双方向反射率分布関数(BRDF)に対応する、k番目のCook-Torranceローブ
S
k:k番目のCook-Torranceローブの重み付け
a
k:k番目のCook-Torranceローブのベックマン分布のパラメータ
F
0,k:k番目のCook-Torranceローブのフレネル反射率
【数35】
:照射及び観察方向に依存する空間テクスチャ画像のテーブル
項
【数36】
と項
【数37】
とにセグメント化し、さらに、第1の項(F1)を、照射及び観察方向
【数38】
に依存するカラーテーブルに対応する第1サブ項と、強度関数
【数39】
に対応する第2サブ項とに分割し、
前記第2サブ項のパラメータを一定に保ちながら前記第1サブ項のパラメータを、第1最適化ステップで最適化し、及び、前記第1サブ項のパラメータを一定に保ちながら前記第2サブ項のパラメータを、第2最適化ステップで最適化することによって、前記キャプチャされたスペクトル反射率データと前記初期BTFの色差を最小化することによって前記初期BTFを前記キャプチャされたスペクトル反射率データに適合させるステップと;
によって得られる最適化された双方向テクスチャ関数(BTF)を含む、ステップと;
(ii)
- 複数の照射条件を含むユーザインターフェースをディスプレイ装置に表示することと;
- 表示された前記複数の照射条件から照射条件を選択したことを示すユーザ入力を前記コンピュータプロセッサで検出することと;
- 前記検出されたユーザ入力に応答して、前記通信インターフェースを介して前記コンピュータプロセッサを用いて、前記検出されたユーザ入力に関連付けられた照射条件のデジタル表現を取得することと;
によって照射条件のデジタル表現を提供するステップと;
(iii) 任意に、前記通信インターフェースを介して前記コンピュータプロセッサに、過去の照射条件から導出されたモデル、及び/又は過去の環境条件から導出された少なくとも1つのモデルを提供するステップと;
(iv) 前記提供された着色コーティング層のデジタル表現、前記提供された照射条件のデジタル表現、及び任意に前記提供されたモデルに基づいて、前記コンピュータプロセッサで前記着色コーティング層の色データを生成するステップと;
(v) 前記コンピュータプロセッサから受信した前記生成された色データを前記ディスプレイ装置に表示するステップと、
を含む、方法。
【0106】
4. 前記少なくとも1つの着色コーティング層が、前記物体の表面の少なくとも一部に存在する、先行する項のいずれか1つに記載の方法。
【0107】
5. 前記少なくとも1つの着色コーティング層が、ベースコート層又は着色クリアコート層、特にベースコート層である、先行する項のいずれか1つに記載の方法。
【0108】
6. 前記物体は自動車又はその一部である、先行する項のいずれか1つに記載の方法。
【0109】
7. 前記ディスプレイ装置は、移動式又は固定式のディスプレイ装置であって、好ましくは移動式のディスプレイ装置である、先行する項のいずれか1つに記載の方法。
【0110】
8. 前記ディスプレイ装置のスクリーンが液晶ディスプレイ(LCD)又は有機発光ダイオードディスプレイ(OLED)であって、特に、タッチスクリーンパネル備えるLCD又はOLEDディスプレイである、先行する項のいずれか1つに記載の方法。
【0111】
9. 前記ディスプレイ装置は、ステップ(i)~(v)で使用されるコンピュータプロセッサとスクリーンとを収容する筐体を備える、先行する項のいずれか1つに記載の方法。
【0112】
10. 前記ディスプレイ装置及びステップ(i)~(iv)又はステップ(ii)~(iv)又はステップ(iv)を実行する前記コンピュータプロセッサが、別個のコンポーネントとして構成される、項1から8のいずれか1つに記載の方法。
【0113】
11. ステップ(iv)及び(v)が同時に実行される、先行する項のいずれか1つに記載の方法。
【0114】
12. カメラベースの測定装置を使用して前記着色コーティング層の初期BTFを測定することは、前記カメラベースの測定装置を使用して、異なる視野角で、異なる照射角度で、異なる照射色に対して、及び/又は異なる露光時間に対して、前記着色コーティング層の複数の画像を作成することを含み、したがって、照射角度、視野角、照射色及び/又は露光時間の複数の組み合わせを考慮した複数の測定データを提供する、項3から12のいずれか1つに記載の方法。
【0115】
13. 異なる照射色及び異なる露光時間を有するが、等しい照射角度及び視野角を有する画像が、それぞれ、高ダイナミックレンジを有する画像に結合される、項12に記載の方法。
【0116】
14. 前記第1最適化ステップでは、各スペクトル測定ジオメトリに対する第1サブ項のパラメータを最適化することは、以下:
- 前記キャプチャされたスペクトル反射率データから第1のCIEL*a*b*値を計算することと、
- 式(1)の初期BTFから第2のCIEL*a*b*値を計算することと、
- 前記第1のCIELa*b*値から前記第2のCIELa*b*値を減算することにより、a*座標及びb*座標の補正ベクトルを計算することと、
- 前記第1サブ項に保存された視野角及び照射角の全範囲に対する前記補正ベクトルをコンポーネントごとに補間(interpolate)及び外挿することと、
- 補正されたBTF CIEL*a*b*値を取得するために、補間された補正ベクトルを、前記第1サブ項に保存された各スペクトル測定ジオメトリの前記第2のCIEL*a*b*値に適用することと、
- 前記補正されたBTF CIEL*a*b*値を線形sRGB座標に変換し、線形sRGB座標を正規化することと、
- 前記正規化されたsRGB座標前記を第1サブ項に保存することと、
を含む、項3から13のいずれか1つに記載の方法。
【0117】
15. マルチレベルBスプライン補間アルゴリズムが前記補正ベクトルのコンポーネントごとの補間及び外挿に使用される、項14に記載の方法。
【0118】
16. 前記第2最適化ステップでは、前記第2サブ項のパラメータを最適化することは、以下:
- すべてのスペクトル反射率測定ジオメトリにわたる色差の合計に基づいてコスト関数を定義することと、
- 前記キャプチャされたスペクトル反射率データから前記第1のCIEL*a*b*値を計算することと、
- 異なるスペクトル反射率ジオメトリにおける式(1)の前記初期BTFから第2のCIEL*a*b*値を計算することと、
- 重み付き色差式を用いて、前記第2のCIEL*a*b*値と前記第1のCIEL*a*b*値とを比較することと、
- 前記コスト関数が最小化されるように、非線形最適化法を使用して前記第2サブ項のパラメータを最適化することと、
を含む、項3から15のいずれか1つに記載の方法。
【0119】
17. 前記コスト関数は、前記強度関数のパラメータ値を有効範囲に維持するための特定の制約を考慮するためのペナルティ関数を含む、項16に記載の方法。
【0120】
18. 前記最適化BTFの精度を向上させるために、前記第1最適化ステップ及び前記第2最適化ステップが繰り返し/反復的に、特に予め定義された回数実行される、項3から17のいずれか1つに記載の方法。
【0121】
19. 前記着色コーティング層のデジタル表現を提供することが、前記ディスプレイ装置のスクリーン上に既存のカラーライブラリを表示することと、前記表示された既存のライブラリから色を選択することと、前記選択された色に基づいて前記着色コーティング層のデジタル表現を得ることと、前記得られた着色コーティング層のデジタル表現を前記通信インターフェースを介して前記コンピュータプロセッサに提供することと、を含む、先行する項のいずれか1つに記載の方法。
【0122】
20. 前記既存のカラーライブラリは、少なくとも2つの異なる色を含み、各色は、コーティング材料から調製される着色コーティング層の色に対応し、各色は、前記最適化された双方向テクスチャ関数(BTF)によって定義されるか、又は、色空間データ及び/もしくは光沢データ及び/もしくは外観データ及び/もしくはテクスチャ特性によって定義される、項19に記載の方法。
【0123】
21. 前記既存のカラーライブラリを前記ディスプレイ装置のスクリーン上に表示することは、仮想物体の物体データを提供することと、任意でさらなる色データを提供することと、前記既存のライブラリに存在するカラーに関連する前記最適化されたBTF又は色空間データ及び/もしくは光沢データ及び/もしくは外観データ及び/もしくはテクスチャ特性、及び任意で追加の色データを提供された仮想物体データにマッピングすることと、マッピング結果を予め定義された照射条件を使用してレンダリングすることとを含む、項20に記載の方法。
【0124】
22. 前記仮想物体は、幾何学的形状などの仮想2Dオブジェクト、又はチップ、ドーム形状、自動車ボディ又はその一部などの仮想3D物体から選択される、項21に記載の方法。
【0125】
23. 前記予め定義された照射条件が、直接光源又はハイダイナミックレンジ(HDR)環境マップ、特にハイダイナミックレンジ(HDR)環境マップから選択される、項21又は22に記載の方法。
【0126】
24. 前記着色コーティング層のデジタル表現を提供するステップは、コーティング層識別データを提供することと、提供されたコーティング層識別データに基づいてコーティング層のデジタル表現を得ることと、得られたデジタル表現を提供することとを含む、項1から18のいずれか1つに記載の方法。
【0127】
25. コーティング層識別データを提供することが、前記着色コーティング層の前記最適化された双方向テクスチャ関数(BTF)を提供すること、及び/又は前記着色コーティング層を示すデータを提供することを含む、項24に記載の方法。
【0128】
26. 前記着色コーティング層のデジタル表現を取得するステップが、前記選択された色又は提供されたコーティング層の識別に基づいて、前記デジタル表現のデータベースを検索することとしてさらに定義される、項19から25のいずれか1つに記載の方法。
【0129】
27. ステップ(i)が、前記提供された着色コーティング層のデジタル表現に関連する色を前記ディスプレイ装置のスクリーン上に表示することをさらに含む、先行する項のいずれか1つに記載の方法。
【0130】
28. 前記複数の照射条件は、少なくとも(i)前記ディスプレイ装置を取り囲む周囲照射、及び(ii)予め定義されたハイダイナミックレンジ(HDR)環境マップ、及び(iii)特定の時間、日付及び場所に関連付けられた周囲光を含む、先行する項のいずれか1つに記載の方法。
【0131】
29. 前記ユーザ入力が、インタラクション要素、特にマウス、キーボード、トラックボール、タッチスクリーン又はそれらの組み合わせなどの物理的インタラクション要素を介して検出される、先行する項のいずれか1つに記載の方法。
【0132】
30. 前記照射条件のデジタル表現を取得することが、
- 前記通信インターフェースを介して、日付、時間、位置、特に地理的位置、及び任意で空のヘイズの程度を示すデータを取得すること、及び/又は
- 前記通信インターフェースを介して、前記ディスプレイ装置の少なくとも1つの照射センサから取得されたデータ、前記ディスプレイ装置の少なくとも1つの向きセンサから取得されたデータ、及び任意で少なくとも1つの視点センサから取得されたデータを取得すること、及び/又は
- 前記通信インターフェースを介して少なくとも1つのハイダイナミックレンジ(HDR)環境マップを取得すること、
を含む、先行する項のいずれか1つに記載の方法。
【0133】
31. 前記通信インターフェースを介して位置、特に地理的位置を示すデータを取得するステップは、ディスプレイ装置上に世界地図を表示することと、前記インタラクション要素を介して、前記表示された世界地図上の位置を選択したことを示すユーザ入力を検出することと、前記検出されたユーザ入力に応答して、前記通信インターフェースを介して、前記選択された地理的位置に関連付けられたデータ、特にGPSデータを取得することとを含む、項30に記載の方法。
【0134】
32. 前記通信インターフェースを介して日付及び/又は時間及び/又は空のヘイズの程度を示すデータを取得することが、日付又は時間又はヘイズに対応する少なくとも1つのレギュレータを含む少なくとも1つの調整ツールを表示することと、インタラクション要素を介して、前記少なくとも1つの調整ツールを操作することを示すユーザ入力を検出すること、特に、前記インタラクション要素を介して少なくとも1つの調整ツールの少なくとも1つのレギュレータの動きを検出することによってユーザ入力を検出することと、検出されたユーザ入力に応答して、それぞれのレギュレータの位置に関連付けられた日付又は時間又はヘイズを決定することを含む、項30又は31に記載の方法。
【0135】
33. 前記ディスプレイ装置の少なくとも1つの照射センサから取得されたデータは、ルクスレベル、スペクトル成分、照射方向、前記ディスプレイ装置を取り囲む環境の少なくとも1つの写真、特に少なくとも1つのハイダイナミックレンジ(HDR)又はローダイナミックレンジ(LDR)の写真、又はそれらの組み合わせなど、前記ディスプレイ装置を取り囲む前記照射条件に関するデータを含む、項30から32のいずれか1つに記載の方法。
【0136】
34. 前記ディスプレイ装置の少なくとも1つの視点センサから取得されたデータは、前記ディスプレイ装置を見るユーザを示す少なくとも1つの写真を含む、項30から33のいずれか1つに記載の方法。
【0137】
35. 少なくとも1つのハイダイナミックレンジ(HDR)環境マップを取得することは、前記ディスプレイ装置上に少なくとも1つのハイダイナミックレンジ(HDR)環境マップを表示することと、前記インタラクション要素を介して表示されたハイダイナミックレンジ(HDR)環境マップを選択したことを示すユーザ入力を検出することと、前記検出されたユーザ入力に応答して、前記通信インターフェースを介して検出されたユーザ入力に関連付けられたハイダイナミックレンジ(HDR)環境マップを取得することとを含む、項30から34のいずれか1つに記載の方法。
【0138】
36. ステップ(ii)が、前記提供された照射条件を前記ディスプレイ装置のスクリーン上に表示することをさらに含む、先行する項のいずれか1つに記載の方法。
【0139】
37. 過去の照射条件から導出されたモデルは、昼間の空の物理ベースの分析モデルである、先行する項のいずれか1つに記載の方法。
【0140】
38. 前記過去の環境条件から導出された少なくとも1つのモデルは、前記ディスプレイ装置の照射センサ及び/又は向きセンサ及び/又は視点センサから取得されたデータと、前記ディスプレイ装置を取り囲む周囲光条件との間の関係を提供する、先行する項のいずれか1つに記載の方法。
【0141】
39. 前記照射センサ及び/又は前記視点センサによって取得されたデータが、ハイダイナミックレンジ(HDR)写真又はローダイナミックレンジ(LDR)写真を含む、項38に記載の方法。
【0142】
40. 前記コンピュータプロセッサで色データを生成するステップは、仮想物体の物体データを提供することと、任意で少なくとも1つのさらなるコーティング層のさらなる色データを提供することと、前記提供された着色コーティング層のデジタル表現と任意でさらなる色データとを前記提供された仮想物体上にマッピングすることと、前記提供された照射条件のデジタル表現と任意で前記提供されたモデルを使用して前記マッピング結果をレンダリングすることとを含む、先行する項のいずれか1つに記載の方法。
【0143】
41. 前記仮想物体が、幾何学的形状のような2D仮想物体、又はチップ、ドーム形状、自動車ボディ又はその一部のような3D仮想物体である、項40に記載の方法。
【0144】
42. ステップ(iv)は、前記着色コーティング層の色データを生成する前に、前記提供された照射条件のデジタル表現と、前記提供された過去の環境条件から導出された少なくとも1つのモデルとから、前記ディスプレイ装置を取り囲む周囲照射条件を前記コンピュータプロセッサで計算することをさらに含む、先行する項のいずれか1つに記載の方法。
【0145】
43. 前記コンピュータプロセッサを用いて、前記ディスプレイ装置を取り囲む前記周囲照射条件を計算することは、
- 前記照射センサによって取得された前記データの明るさと色を推定することによって周囲光条件を計算することと、
- 前記照射センサと前記照射センサによって取得されたデータからハイダイナミックレンジ(HDR)環境マップを計算することと、又は
- 前記照射センサによって取得された前記データから、及び任意で、視点センサによって取得されたデータから、球面調和(SH)係数を計算すること、及び任意で、前記計算されたSH係数からHDR環境マップを計算すること、
を含む、項42に記載の方法。
【0146】
44. 前記生成された色データは、ステップ(iii)で提供された前記照射条件のデジタル表現に含まれるデータの変化に応答して、特に、少なくとも1つの照射センサから提供されたデータの変化に応答して、及び/又は、少なくとも1つの向きセンサから提供されたデータの変化に応答して、及び/又は、少なくとも1つの視点センサから提供されたデータの変化に応答して、再計算され、前記ディスプレイ装置のスクリーン上に表示される、先行する項のいずれか1つに記載の方法。
【0147】
45. 前記コンピュータプロセッサから受信した前記色データを前記ディスプレイ装置のスクリーンに表示するステップは、前記生成された色データ、特に各レンダリングされた点を前記ディスプレイ装置の前記スクリーンにマッピングすることを含む、先行する項のいずれか1つに記載の方法。
【0148】
46. 前記プロセッサから受信した前記色データを前記ディスプレイ装置上に表示するステップは、ステップ(v)を実行することに応答して、ステップ(i)で前記ディスプレイ装置の前記スクリーン上に表示された色を自動的に更新することを含む、項27から45のいずれか1つに記載の方法。
【0149】
47. 前記ディスプレイ装置に表示される前記色を自動的に更新するステップが、ステップ(iv)で生成された生成色データ、特に各レンダリング点を前記ディスプレイ装置にマッピングして、ステップ(i)で表示される色を生成された色データで更新することを含む、項46に記載の方法。
【0150】
48. ステップ(v)が、生成された色データ及び/又は照射条件の前記提供されたデジタル表現及び少なくとも1つの提供されたモデルから計算された周囲照射条件などのさらなるデータを、コンピュータ可読媒体に保存することをさらに含む、先行する項のいずれか1つに記載の方法。
【0151】
49. ステップ(v)は、表示された色を既存のカラーライブラリ又は新たに生成されたカラーライブラリに追加して、修正されたカラーライブラリを生成することをさらに含む、先行する項のいずれか1つに記載の方法。
【0152】
50. 前記修正されたカラーライブラリは、着色コーティング層の色を設計する際に修正されたカラーライブラリを将来使用するために、保存されたユーザプロファイルと関連付けられる、項49に記載の方法。
【0153】
51. 前記修正されたカラーライブラリから少なくとも1つの追加された色を削除することをさらに含む、条項49又は50に記載の方法。
【0154】
52. ソートされたカラーライブラリを作成するために、グループ化基準に従って、既存のカラーライブラリ又は修正されたカラーライブラリに存在する色をソートすることと、前記ソートされたカラーライブラリの将来の提供のために、前記ソートされたカラーライブラリを、保存されたユーザプロファイルに任意で関連付けることとをさらに含む、条項49から51のいずれか1つに記載の方法。
【0155】
53. 生成された色データを前記ディスプレイ装置の前記スクリーン上に表示するステップは、ステップ(ii)から(v)を繰り返すことに応答して、又はステップ(iii)から(v)を繰り返すことに応答して、又はステップ(ii)と(v)を繰り返すことに応答して、ステップ(v)において前記ディスプレイ装置の前記スクリーン上に表示される色を自動的に更新することを含む、先行する項のいずれか1つに記載の方法。
【0156】
54. ステップ(i)~(v)又はステップ(ii)~(v)又はステップ(i)、(iv)及び(v)を繰り返すことをさらに含む、先行する項のいずれか1つに記載の方法。
【0157】
55.
(vi) 前記着色コーティング層の修正されたデジタル表現を生成するために、前記提供された着色コーティング層のデジタル表現を修正するステップと;
(vii) 任意でステップ(vii)を繰り返すステップと;
(viii) 前記着色コーティング層の修正されたデジタル表現に基づいて、前記コーティング層の色データを生成するステップと;
(ix) 前記プロセッサから受信した前記生成された色データを前記ディスプレイ装置のスクリーンに表示するステップと;
(x) 任意でステップ(vii)から(ix)を繰り返すステップと;
(xi) 任意で、前記着色コーティング層の修正されたデジタル表現が少なくとも1つの予め定義された許容誤差内にあるかどうかを前記コンピュータプロセッサで判断するステップと;
(xii) 任意で、修正されたデジタル表現が少なくとも1つの予め定義された許容誤差内にあるという決定に従って:着色コーティング層の修正されたデジタル表現を使用して、ステップ(ii)から(v)を繰り返するステップと;
(xiii) 任意で、前記修正されたデジタル表現が少なくとも1つの予め定義された許容誤差内にあるという決定に従って:前記通信インターフェースを介して前記修正されたデジタル表現をコーティング材料製造サイトに提供し、任意で、前記提供された修正されたデジタル表現に基づいてコーティング材料を製造するステップと;
(xiv) 任意で、前記修正されたデジタル表現が少なくとも1つの予め定義された許容誤差外であるという決定に従って:前記ディスプレイ装置の前記スクリーン上に少なくとも1つの推奨事項を表示するステップと;
(xv) 任意で、前記修正されたデジタル表現が少なくとも1つの予め定義された許容誤差外であるという決定に従って:ステップ(vi)から(ix)、又はステップ(vi)から(x)、又はステップ(vi)から(xiv)を繰り返すステップと、
をさらに含む、先行する項のいずれか1つに記載の方法。
【0158】
56. 前記通信インターフェースを介してコンピュータプロセッサにアイテムの注文指示を提供するステップをさらに含み、前記注文指示が、ステップ(v)で表示された色に関するデータ、又は少なくとも1つの予め定義された許容誤差を満たす前記着色コーティング層の前記修正されたデジタル表現に関連する色に関するデータを含む、先行する項のいずれか1つに記載の方法。
【0159】
57. 少なくとも1つの着色コーティング層でコーティングされている物体の外観を予測するためのシステムであって、前記システムは:
- 任意で、過去の照射条件から導出されたモデル及び/又は過去の環境条件から導出された少なくとも1つのモデルをコンピュータプロセッサに提供するための通信インターフェースと;
- 着色コーティング層のデジタル表現と照射条件のデジタル表現をコンピュータプロセッサに提供するための少なくとも1つの通信インターフェースと;
- スクリーンを備えるディスプレイ装置と;
- ユーザ入力を検出するためのインタラクション要素と;
- 任意で、少なくとも1つの照射センサ、及び/又は、前記ディスプレイ装置の向きを感知するように適合された少なくとも1つの向きセンサ、及び/又は前記ディスプレイ装置を保持するユーザの視点を感知するように適合された少なくとも1つの視点センサと;
- 前記通信インターフェース、前記ディスプレイ装置、及び前記任意の少なくとも1つの照射センサ及び/又は向きセンサ及び/又は視点センサと通信するプロセッサであって、前記プロセッサは:
・通信インターフェースを介して、前記着色コーティング層のデジタル表現を受信し;
・複数の照射条件を含むユーザインターフェースプレゼンテーションを生成し、表示された複数の照射条件から照射条件を選択したことを示すユーザ入力を検出し、前記検出されたユーザ入力に応答して、前記検出されたユーザ入力に関連付けられた照射条件のデジタル表現を取得(retrieve)し;
・任意で、前記取得された照射条件のデジタル表現と受信されたモデルから、前記ディスプレイ装置を取り囲む周囲照射条件を計算し;
・前記受信した着色コーティング層のデジタル表現と、前記受信した照射条件のデジタル表現又はディスプレイ装置を取り囲む計算された周囲照射条件に基づいて、前記着色コーティング層の色データを生成する、
ようにプログラムされている、プロセッサと、
を備え、
前記ディスプレイ装置が、前記生成されたユーザインターフェースプレゼンテーション及び前記生成された着色コーティング層の色データを前記プロセッサから受信し、前記生成されたユーザインターフェースプレゼンテーション及び色データを表示し、
前記着色コーティング層のデジタル表現は、以下のステップ:
- カメラベースの測定装置を使用して、前記着色コーティング層の初期BTFを決定するステップと;
- 分光光度計を用いて、予め与えられた数、すなわち限られた数の異なる測定形状について、前記着色コーティング層のスペクトル反射率データをキャプチャするステップと;
- 最適化BTFを得るために、式(1)の前記初期BTFを、
【数40】
ここで、
x:サンプル/物体の表面座標
【数41】
:サンプルのベースコートでの照射と観察/視野方向
【数42】
:照射と観察方向に依存するカラーテーブル
a:アルベド又は拡散反射率
【数43】
:マイクロファセットサーフェスの光沢を表現する双方向反射率分布関数(BRDF)に対応する、k番目のCook-Torranceローブ
S
k:k番目のCook-Torranceローブの重み付け
a
k:k番目のCook-Torranceローブのベックマン分布のパラメータ
F
0,k:k番目のCook-Torranceローブのフレネル反射率
【数44】
:照射及び観察方向に依存する空間テクスチャ画像のテーブル
であり、
項
【数45】
と項
【数46】
にセグメント化し、さらに、第1の項(F1)を、照射及び観察方向
【数47】
に依存するカラーテーブルに対応する第1サブ項と、強度関数
【数48】
に対応する第2サブ項とに分割し、
前記第2サブ項のパラメータを一定に保ちながら前記第1サブ項のパラメータを、第1最適化ステップで最適化し、及び、前記第1サブ項のパラメータを一定に保ちながら前記第2サブ項のパラメータを、第2最適化ステップで最適化することによって、前記キャプチャされたスペクトル反射率データと前記初期BTFの色差を最小化することによって前記初期BTFを前記キャプチャされたスペクトル反射率データに適合させるステップと;
によって得られる最適化された双方向テクスチャ関数(BTF)を含む、システム。
【0160】
58. 少なくとも1つの着色コーティング層でコーティングされている物体の外観を予測するためのシステムであって、前記システムは:
- 任意で、過去の照射条件から導出されたモデル及び/又は過去の環境条件から導出された少なくとも1つのモデルをコンピュータプロセッサに提供するための通信インターフェースと;
- 着色コーティング層のデジタル表現と照射条件のデジタル表現を前記コンピュータプロセッサに提供するための少なくとも1つの通信インターフェースと;
- スクリーンを備えるディスプレイ装置と;
- ユーザ入力を検出するためのインタラクション要素と;
- 任意で、少なくとも1つの照射センサ、及び/又は、前記ディスプレイ装置の向きを感知するように適合された少なくとも1つの向きセンサ、及び/又は前記、ディスプレイ装置を保持するユーザの視点を感知するように適合された少なくとも1つの視点センサと;
- 前記通信インターフェース、前記ディスプレイ装置、及び前記任意の少なくとも1つの照射センサ及び/又は向きセンサ及び/又は視点センサと通信する第1プロセッサであって、前記第1プロセッサは:
・複数の照射条件を含むユーザインターフェースプレゼンテーションを生成し、表示された複数の照射条件から照射条件を選択したことを示すユーザ入力を検出し、前記検出されたユーザ入力に応答して、前記検出されたユーザ入力に関連付けられた照射条件のデジタル表現を取得(retrieve)し;
・任意で、前記取得された照射条件のデジタル表現と受信されたモデルから、前記ディスプレイ装置を取り囲む周囲照射条件を計算する、
ようにプログラムされている、第1プロセッサと、
- 前記通信インターフェース及び第1プロセッサと通信する第2プロセッサであって、前記第2プロセッサは:
・前記通信インターフェースを介して、前記着色コーティング層のデジタル表現と、前記第1プロセッサで計算された照射条件又は周囲照射条件のデジタル表現を受信し;
・受信した前記着色コーティング層のデジタル表現と、受信した照射条件のデジタル表現又は前記第1プロセッサから受信した前記計算された周囲照射条件に基づいて、前記着色コーティング層の色データを生成する、
ようにプログラムされている、第2プロセッサと、
を備え、
前記ディスプレイ装置が、前記第1プロセッサから生成されたユーザインターフェースプレゼンテーションと、前記第2プロセッサから生成された色データを受信し、
前記着色コーティング層のデジタル表現は、以下のステップ:
- カメラベースの測定装置を使用して、前記着色コーティング層の初期BTFを決定するステップと;
- 分光光度計を用いて、予め与えられた数、すなわち限られた数の異なる測定形状について、前記着色コーティング層のスペクトル反射率データをキャプチャするステップと;
- 最適化BTFを得るために、式(1)の前記初期BTFを、
【数49】
ここで、
x:サンプル/物体の表面座標
【数50】
:サンプルのベースコートでの照射と観察/視野方向
【数51】
:照射と観察方向に依存するカラーテーブル
a:アルベド又は拡散反射率
【数52】
:マイクロファセットサーフェスの光沢を表現する双方向反射率分布関数(BRDF)に対応する、k番目のCook-Torranceローブ
S
k:k番目のCook-Torranceローブの重み付け
a
k:k番目のCook-Torranceローブのベックマン分布のパラメータ
F
0,k:k番目のCook-Torranceローブのフレネル反射率
【数53】
:照射及び観察方向に依存する空間テクスチャ画像のテーブル
であり、
項
【数54】
と項
【数55】
にセグメント化し、さらに、第1の項(F1)を、照射及び観察方向
【数56】
に依存するカラーテーブルに対応する第1サブ項と、強度関数
【数57】
に対応する第2サブ項とに分割し、
前記第2サブ項のパラメータを一定に保ちながら前記第1サブ項のパラメータを、第1最適化ステップで最適化し、及び、前記第1サブ項のパラメータを一定に保ちながら前記第2サブ項のパラメータを、第2最適化ステップで最適化することによって、前記キャプチャされたスペクトル反射率データと前記初期BTFの色差を最小化することによって前記初期BTFを前記キャプチャされたスペクトル反射率データに適合させるステップと;
によって得られる最適化された双方向テクスチャ関数(BTF)を含む、システム。
【0161】
59. 少なくとも1つの着色コーティング層でコーティングされた物体の外観を予測するためのシステムであって、前記システムは、ディスプレイと、1つ以上のコンピューティングノードと、前記1つ以上のコンピューティングノードによって実行されたときに、項1から56のいずれか1つに記載の方法を前記システムに実行させるように構造化されたコンピュータ実行可能指示を有する1つ以上のコンピュータ可読記憶媒体と、を備える、システム。
【0162】
60. 非一過性のコンピュータ可読記憶媒体であって、前記コンピュータ可読記憶媒体は、コンピュータによって実行されたときに、項1から56のいずれか1つに記載の方法によるステップを前記コンピュータに実行させる指示を含む、コンピュータ可読記憶媒体。
【0163】
61. 少なくとも1つの着色コーティング層でコーティングされた物体の外観を予測するための、項1から56のいずれか1つに記載の方法又は項57から59のいずれか1つに記載のシステムの使用。
【0164】
62. 少なくとも1つの着色コーティング層でコーティングされた物体であって、少なくとも1つのコーティング層の色が、項1から56のいずれか1つに記載の方法に従って予測される、物体。
【図面の簡単な説明】
【0165】
本発明のこれらの特徴及び他の特徴は、本発明の例示的な実施形態に関する以下の説明においてより完全に記載される。任意の特定の要素又は行為に関する議論を容易に識別するために、参照番号の最上位桁は、その要素が最初に導入される図番号を指す。本明細書は、添付図面を参照して提示される:
【
図1】
図1aは、本発明の第1実施形態による、少なくとも1つの着色コーティング層でコーティングされた物体の外観を予測するための方法のブロック図である。
図1bは、本発明の第2実施形態による、少なくとも1つの着色コーティング層でコーティングされた物体の外観を予測する方法のブロック図である。
【
図2】
図2aは、本発明の第1の実施形態によるシステムを示す図である。
図2bは、本発明の第2実施形態によるシステムを示す図である。
図2cは、本発明の第3の実施形態によるシステムを示す図である。
【
図3】着色コーティング層がドーム型レリーフの形態で仮想3D物体上に表示される既存のカラーライブラリを示すグラフィカルユーザインターフェースを有するディスプレイ装置を備えるシステムの平面図である。
【
図4】調整ツールを示すグラフィカルユーザインターフェースと、選択された照射条件に関連する色で着色された自動車ボディの形の仮想3D物体とを有するディスプレイ装置を備えるシステムの平面図である。
【
図5】
図5aは、周囲照射とディスプレイ装置の向きに関連する色で着色されたドーム型レリーフの形態で仮想3D物体を示すグラフィカルユーザインターフェースを有するディスプレイ装置を備えるシステムの3D図である。
図5bは、周囲照射とディスプレイ装置の向きに関連する色で着色されたドーム型レリーフの形態で仮想3D物体を示すグラフィカルユーザインターフェースを有するディスプレイ装置を備えるシステムの3D図である。
【
図6】利用可能なハイダイナミックレンジ(HDR)マップ環境を示すグラフィカルユーザインターフェースを有するディスプレイ装置を備えるシステムの平面図である。
【
図7】
図7aは、選択されたハイダイナミックレンジ(HDR)マップ環境を使用して生成された色で着色された自動車ボディの一部の形態で仮想3D物体を示すグラフィカルユーザインターフェースを有するディスプレイ装置を備えるシステムの平面図である。
図7bは、異なる視野角から見たときに、選択されたハイダイナミックレンジ(HDR)マップ環境を使用して生成された色で着色された自動車ボディの一部の形態で仮想3D物体を示すグラフィカルユーザインターフェースを有するディスプレイ装置を備えるシステムの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0166】
図面の詳細な説明
以下に記載する詳細な説明は、本主題の様々な態様の説明を意図したものであり、本主題が実施され得る唯一の構成を表すことを意図したものではない。添付の図面は、本明細書に組み込まれ、詳細な説明の一部を構成する。詳細な説明には、本主題の完全な理解を提供する目的で具体的な詳細が含まれる。しかしながら、これらの具体的な詳細がなくても主題事項を実施できることは当業者には明らかであろう。
【0167】
図1aは、本発明による、少なくとも1つの着色コーティング層でコーティングされた物体の外観を予測し、予測された外観をディスプレイ装置のスクリーン上に表示するための方法100の非限定的な第1実施形態を示す。この例では、着色コーティング層はベースコート層であり、物体は自動車又はその一部、例えばトリム部品、バンパーなどである。この例では、ディスプレイ装置は、タブレット又はスマートフォンなどのタッチスクリーンを備えるLCDスクリーンを有する携帯型ディスプレイ装置である。別の例では、ディスプレイ装置は、固定型コンピュータ、コンピュータと通信インターフェースを介して接続されたテレビスクリーン、投影ディスプレイ装置などの固定型装置である。この例では、ディスプレイ装置は、プロセッサと同様にスクリーンを収容する筐体を有する。別の例では、プロセッサはディスプレイ装置とは別に、例えば有線又は無線通信インターフェースを介してディスプレイ装置に結合された外部装置上に存在する。
【0168】
ブロック102では、ルーチン101は、既存のカラーライブラリをディスプレイ装置のスクリーンに表示するかどうかを決定する。この決定は、例えば、ユーザプロファイルなどのユーザデータに基づいて行うことができる。これにより、各既存カラーライブラリをカスタマイズしてユーザの快適性を高めることができるように、ユーザに応じて異なる既存カラーライブラリを表示することができる。ルーチン101は、ブロック102において、既存のカラーライブラリを表示すると決定した場合、ブロック104に進み、そうでない場合は後述するブロック106に進む。
【0169】
ブロック104では、ルーチン101は、それぞれの既存のカラーライブラリをディスプレイ装置のスクリーン上に表示する。この例の既存のライブラリは、195の異なる色を含み、各色は、着色コーティング材料から調製される着色コーティング層の色に対応し、各色は、前述のように最適化されたBTFによって定義される。この例では、予め定義されたカラーライブラリは、仮想物体の予め定義された物体データを提供し、予め定義された照射条件(イメージベースドライティング(Image-based lighting))を使用して、予め定義されたカラーライブラリに存在する色データ及び提供された物体データをレンダリングすることにより、ディスプレイ装置のスクリーン上に表示される(例えば
図3参照)。仮想物体の予め定義された物体データは、通信インターフェースを介してデータベースからプロセッサに提供される。この例では、仮想物体はドーム形状を有する3D仮想物体である。別の例では、仮想物体は、着色された領域などの2D仮想物体である。この例では、ユーザは、表示された既存のカラーライブラリをスクロールして、インタラクション要素を介して表示されているすべての色を見ることができる。インタラクション要素は、タッチスクリーンジェスチャ、マウスクリック、ショートカット、又はそれらの組み合わせであってよい。
【0170】
ブロック106では、ルーチン101は、ユーザ入力(例えば、ユーザによる表示された既存のライブラリからの色の選択)を検出し、検出されたユーザ入力(例えば、選択された色)に基づいて着色コーティング層のデジタル表現をデータベースから取得し、取得されたデジタル表現を通信インターフェースを介してコンピュータプロセッサに提供する。着色コーティング層のデジタル表現は、前述したステップによって得られた最適化された双方向関数(BTF)を含み、着色コーティング層を調製するために使用されるコーティング材料の配合、色名、色識別番号などのさらなるデータを含むことができる。ユーザ入力は、例えば、タッチスクリーンのジェスチャ、マウスのクリック、ショートカットなどのインタラクション要素を介して実行されることができる。
【0171】
ブロック108では、ルーチン101は、ディスプレイ装置のスクリーン上、例えばGUI内で複数の照射条件を表示する。この目的のために、ルーチン101は、前記複数の照射条件を含むユーザインターフェースプレゼンテーションを生成することができ、前記ユーザインターフェースプレゼンテーションは、次にディスプレイ装置のスクリーン上に表示される。この例では、利用可能な照射条件は、ディスプレイ装置を取り囲む周囲光の使用(環境)、既存のHDR環境マップの使用(HDRI)の使用、及び特定の時間、日付及び場所に関連付けられた周囲光の使用(sky model)を含む。複数の照射条件は、アイコン、画像、テキスト、又はそれらの組み合わせを使用してユーザインターフェース内に表示されてよく、インタラクション要素を介してそれぞれのアイコン、画像、テキスト、又はそれらの組み合わせを選択することによって選択されてよい。一例では、選択された照射条件がユーザに表示され、GUIは、ユーザ入力の修正を可能にするために、異なる照射条件の選択に戻る可能性を提供してよい。
【0172】
ブロック110では、ルーチン101は、表示された複数の照射条件から照射条件を選択したことを示すユーザ入力を検出し、ブロック112に進む。
【0173】
ブロック112では、ルーチン101は、ブロック110において検出されたユーザ入力に基づいて、インタラクション要素を介してユーザによって選択された照射条件を決定する。ユーザ選択に応じて、ルーチン101は、ブロック114(決定されたユーザ選択がHDR環境マップの使用に対応する場合)、又はブロック116(決定されたユーザ選択がディスプレイ装置を取り囲む周囲光の使用に対応する場合)、又はブロック124(決定されたユーザ選択が特定の時間、日付、及び場所に関連付けられた周囲光の使用に対応する場合)に進む。
【0174】
ブロック114では、ルーチン101は、利用可能なHDR環境マップをディスプレイ装置のスクリーン上、例えばGUI内に表示する。この例では、利用可能なHDR環境マップは、データベース又はディスプレイ装置の内部メモリなどのデータ記憶媒体から利用可能な環境マップに関連付けられた画像を取得し、取得された画像を表示することによってGUI上に表示される(例えば、後述する
図6に示されるように)。ユーザによるインタラクション要素を介した表示されたHDR画像の選択は、ルーチン101によって検出され、以下ブロック116で説明するように、それぞれのHDR環境マップを取得するために使用される。一例では、ユーザは、ブロック134で色データを生成するために使用される視野方向と同様に、選択されたHDR環境マップの向きをさらに選択することができる。この目的のために、ルーチン101は、選択されたHDR環境マップを含むGUIを表示し、ユーザは、マップを回転させることによって向きを変更することができる。視野方向は、利用可能な方向のリストを表示することによって、又はオブジェクト及び人物を含むグラフィックを表示することによって選択されてもよく、ユーザは、リストから適切なエントリを選択することによって、又は表示された物体に対して人物を移動させることによって選択することができる。ユーザの選択は、ルーチン101によって検出され、コンピュータプロセッサによって、HDR環境マップの選択された方向及び/又は選択された視野方向に変換される。別の例では、HDR環境マップの予め定義された向き及び予め定義された視野方向が、ブロック134において色データを生成するために使用され、ユーザは、後述するように、HDR環境マップの向き及び/又は視野方向を変更することができる。
【0175】
ブロック116では、ルーチン101は、ブロック114において検出されたユーザ選択に関連付けられたHDR環境マップをデータベースなどのデータ記憶媒体から取得し、検索されたHDR環境マップをプロセッサに提供する。取得されたHDR環境マップは、前述した照射条件のデジタル表現に対応する。
【0176】
ブロック118では、ルーチン101は、ディスプレイ装置の照射及び/又は向き及び/又は視点センサによるデータの取得を開始し、取得したデータをディスプレイ装置の内部メモリなどのデータ記憶媒体に保存する。データ取得は、予め定義された期間にわたって実行されてよく、又はユーザが方法100を終了するか、又は後述するように異なる照射条件を選択するまで実行されてよい。データは、取得時間、センサ名などのさらなるメタデータとともに保存されてよい。取得されたデータは、方法100が数回繰り返される場合、取得されたセンサデータを保存するために必要なデータストレージの量を削減するために、方法の終了時に削除されてよい。ディスプレイ装置の照射及び/又は向き及び/又は視点センサによって取得されたデータは、前述した照射条件のデジタル表現に対応する。
【0177】
ブロック120では、ルーチン101は、通信インターフェースを介して、データベース又はディスプレイ装置の内部メモリなどのデータ記憶媒体から、過去の環境条件から導出されたモデルを取得し、取得されたモデルをコンピュータプロセッサに提供する。過去の環境条件から導出される適切なモデルには、前述したHDRIモデル、周囲光モデル、及び球面調和係数モデル、ならびに前述したようにSH係数からHDR環境マップを推定するデータ駆動モデルが含まれる。
【0178】
ブロック122では、ブロック120又は後述するブロック126で取得されたモデルと、ブロック118で取得されたセンサデータ又は後述するブロック124で検出されたユーザ入力とに基づいて、周囲照射条件が計算される。一例では、周囲照射条件を計算することは、前述したように、ディスプレイ装置を取り囲む環境の少なくとも1つの写真など、照射センサによって取得されたデータから推定された色及び明るさから周囲光条件を計算することを含み得る。別の例では、周囲照射条件を計算することは、前述のように、取得されたセンサデータからHDR環境マップ及び/又は球面調和(SH)係数を計算することを含み得る。計算された周囲照射条件は、例えば、計算されたHDR環境マップの形態で、ディスプレイ装置のスクリーン上に表示されてよい(例えば、
図4、参照符号416を参照)。
【0179】
ブロック124では、ルーチン101は、日付、時間、場所、及び任意にヘイズの程度のユーザ入力を検出する。この例では、ユーザが日付、時間、場所、及び任意で空のヘイズの程度のうちの少なくとも1つを入力することを可能にする少なくとも1つの調整ツールを含むGUIが、例えば
図4に示されるようなディスプレイ装置のスクリーン上に表示される。ユーザは、表示された調整ツール、及びインタラクション型カレンダー、地図などのさらなるアイコンを使用して、インタラクション要素を介して、日付、時間、場所、及び任意でヘイズの程度を入力することができる。表示された調整ツール又はアイコンは、現在の時間、現在の日付、ディスプレイ装置の位置、及び予め定義されたヘイズの程度などの予め定義されたデータを含むことができる。調整ツールのレギュレータは、インタラクション要素を介してユーザによって操作されることができる。ルーチン101は、調整ツールのレギュレータの位置から、時間、日付、及び任意にヘイズを決定することができる。ディスプレイ装置の位置は、ディスプレイ装置のGPSモジュールを使用して決定されることができる。時間、日付、位置、及び任意でヘイズの程度に関する入力された又は予め定義されたデータは、前述の照射条件のデジタル表現に対応する。
【0180】
ブロック126では、ルーチン101は、通信インターフェースを介して、データベース又はディスプレイ装置の内部メモリなどのデータ記憶媒体から、過去の照射条件から導出されたモデルを取得し、取得されたモデルをコンピュータプロセッサに提供する。過去の照射条件から導出される適切なモデルは、I. Hosekら「フルスペクトルのスカイドーム放射輝度の分析モデル(An analytic model for full spectral sky-dome radiance)」, ACM Transactions on Graphics, 2012年, 第31巻, 記事No.: 95, https://doi.org/10.1145/2185520.2185591 に記載されている昼間の空の物理ベースの分析モデルである。ブロック126の後、ルーチン101は前述のようにブロック122に進む。
【0181】
ブロック116又は122の後、ルーチン101はブロック128に進む。ブロック128では、ルーチン101は、予め定義された仮想物体データが後述のブロック134に関連して説明する色データの生成に使用されるどうかを決定する。予め定義された仮想物体データが使用される場合、ルーチン101はブロック130に進み、そうでない場合、ルーチン101はブロック132に進む。
【0182】
ブロック130では、ルーチン101は予め定義された仮想物体データを取得する。この例では、これには、GUI上の利用可能な仮想物体を示すアイコン、画像、テキスト又はそれらの組み合わせをディスプレイ装置のスクリーン上に表示すること、表示された仮想物体の選択を示すユーザ入力を検出すること、検出されたユーザ入力に基づいて仮想物体データをデータベース又はディスプレイ装置の内部メモリなどのデータ記憶媒体から取得すること、及び取得された仮想物体データをコンピュータプロセッサに提供することが含まれる。利用可能な仮想物体は、着色された領域のような2D物体、又はドーム形状のレリーフもしくは異なるタイプの一般的な自動車(すなわち、SUV、スポーツカーなどの異なる自動車タイプを表す自動車の形状)などの3D物体を含むことができる。
【0183】
ブロック132では、ルーチン101は、例えば、仮想物体データを含むファイルを提供することによって、又はディスプレイ装置の内部メモリに保存されたそれぞれのファイルを選択することによって、ユーザによって提供された仮想物体データを検出する。これには、仮想物体データを提供するための利用可能なオプションがユーザに表示されるディスプレイ装置のスクリーン上にGUIを提供することが含まれ得る。ユーザ定義の仮想物体データを使用することにより、ユーザ固有のニーズに合わせて仮想物体データをカスタマイズすることができ、したがってユーザの快適性が向上する。
【0184】
一例(図示せず)では、方法100はブロック133をさらに含むことができる。ブロック133では、ルーチン101は、少なくとも1つのさらなる着色コーティング層が、ブロック134において色データを生成するために使用されるかどうかを決定する。この場合、ルーチン101は、少なくとも1つのさらなる着色コーティング層の色データをプロセッサに提供する。そうでない場合、ルーチン101は以下に説明するブロック134に進む。一例では、少なくとも1つのさらなるコーティング層の色データは、既存のカラーライブラリを表示し、ユーザによる表示色の選択を検出し、選択された色に関連する色データをデータベース又はディスプレイ装置の内部メモリなどのデータ記憶媒体から取得し、取得された色データをコンピュータプロセッサに提供することによって提供される。別の例では、ユーザは、さらなる着色コーティング層のタイプ(さらなるベースコート、着色クリアコートなど)及び/又は色情報(色名、色コードなど)に関する情報を入力することができ、ルーチン101は、入力された情報に基づいて色データを取得し、取得された色データをコンピュータプロセッサに提供する。少なくとも1つのさらなる着色コーティング層の色データを使用することにより、2つ以上の着色コーティング層を含む多層コーティングの色データを生成することができ、したがって、方法100を外観が予測されるコーティングのそれぞれの層構造に適合させることができる。
【0185】
ブロック134では、コーティング層の色データは、
- ブロック106で提供された着色コーティング層のデジタル表現と
- ブロック130又は132で提供された仮想物体データと
- ブロック116で提供されたHDR環境マップ、又はブロック122で計算された周囲照射条件と、
に基づいてコンピュータプロセッサを用いて生成される。
【0186】
色データがブロック116において提供されるHDR環境マップを用いて生成される場合、ブロック114において選択されたHDR環境マップの向き及び/又は視野角、又はHDR環境マップの予め定義された向き及び/又は予め定義された視野方向が、レンダリングプロセスに使用される。HDR環境マップの予め定義された方向が使用される場合、向きは、後述するように、ブロック138/140において表示されるHDR環境マップを回転させることによってユーザによって適合させることができる。色データは、提供された仮想物体上の提供された着色コーティング層のデジタル表現をマッピングし、提供されたHDR環境マップ又は提供された周囲照射条件を使用してマッピング結果をレンダリングすることによって生成される。提供されたHDR環境マップ又は提供された周囲照射条件を使用するレンダリングは、例えばイメージベースドライティング(IBL)を使用して前述のように実行される。
【0187】
ブロック136では、ルーチン101は、提供された着色コーティング層のデジタル表現に関連する色データが、ディスプレイ装置のスクリーン上に既に表示されているかどうかを決定する。例えば、提供された着色コーティング層のデジタル表現に関連する色データは、ブロック104又はブロック124において表示され得る。提供された着色コーティング層のデジタル表現に関連する色データがディスプレイ装置のスクリーン上に既に表示されている場合、ルーチン101はブロック140に進み、そうでない場合、ルーチン101はブロック138に進む。
【0188】
ブロック138では、ルーチン101は、生成された色データ、すなわち各レンダリングされた点をディスプレイ装置のスクリーンにマッピングすることによって、ブロック134において生成された色データをディスプレイ装置のスクリーンに表示し、ディスプレイ装置のスクリーンに、予め定義された又は選択された背景の前に配置されたレンダリングされた物体を表示させる。この例では、レンダリングされた物体は、均一な色を有する予め定義された背景の前に配置される。別の例では、レンダリングされた物体は、ユーザ定義の背景の前に配置される。ユーザ定義の背景は、予め定義された背景のリストから背景の選択を検出することによって、又は写真などユーザによって提供された背景を使用することによって提供され得る。ユーザ定義の背景を使用すると、仮想物体の周辺をカスタマイズすることができ、ユーザは特定の周囲における物体の外観の印象を得ることができる。これにより、仮想物体を現実の環境に配置することができるため、表示された外観がユーザの要求を満たすかどうかの判断が向上する可能性がある。色データは、HDR環境マップにおける視野方向の変更(例えば
図7bを参照)、生成された色データの保存、生成された色データへのコメントの追加、又は後述するさらなるブロックの実行などのさらなる動作をユーザが実行できるように、さらなるアイコン、画像、テキスト、又はそれらの組み合わせを含むGUIに表示されてよい。色データの他に、ブロック122で計算された周囲照射条件、ブロック124で表示された調整ツール、又はブロック106で選択された色に関する情報などのさらなるデータが、ディスプレイ装置のスクリーン上に表示され得る。
【0189】
ブロック140では、ルーチン101は、以前に表示された色が生成された色データによって置き換えられるように、生成された色データ、すなわち各レンダリングされた点をディスプレイ装置のスクリーンにマッピングすることによって、ディスプレイ装置のスクリーン上の表示された色をブロック134において生成された色データを使用して自動的に更新する。更新は、ブロック138に関連して説明されるように、さらなるアイコン、画像、テキスト、もしくはそれらの組み合わせ、又はさらなるデータをディスプレイ装置のGUI上に表示することを含み得る。
【0190】
ブロック142では、ルーチン101は、ブロック138又はブロック140の後に取得されたセンサデータが、ブロック118において取得されたセンサデータに対して変更されたかどうか、又はユーザが、ブロック124において入力されたデータなどの入力データ、又はブロック114において選択されたHDR環境マップの視野角などの予め定義データを変更したかどうかを決定する。ルーチン101が、センサデータ又はユーザ入力又は予め定義データが変更されていないと決定した場合、ルーチンは、後述するブロック144に進む。ルーチン101がセンサデータ又はユーザ入力又は予め定義されたデータが変更されたと決定した場合、ルーチン101は、ブロック122(センサデータ又はユーザ入力が変更された場合)又はブロック134(予め定義データがユーザによって変更された場合)のいずれかに進む。
【0191】
センサデータの変化を決定することは、ブロック118で取得されたデータとブロック122を実行した後に取得されたデータとを比較し、その差が予め定義された閾値を超えるかどうかを決定することを含み得る。ブロック122を実行する前にデータ取得が終了した場合、ルーチン101は、ブロック142においてブロック122に関連して説明したように、センサデータ取得を開始し、ブロック118において取得されたデータと、前述のようにブロック142において取得されたデータとを比較することができる。ルーチン101が取得されたセンサデータの差が予め定義された閾値を超えていると決定した場合、ルーチン101はブロック122に進み、プロセッサは、ブロック122の後に取得されたセンサデータ、又は前述のブロック122に関連して説明されたようにブロック142で取得されたセンサデータを使用して周囲照射条件を計算する。ルーチン101が、取得されたセンサデータの差が予め定義された閾値未満である(すなわち、重大な変更が生じていない)と決定した場合、ルーチン101はブロック144に進む。
【0192】
ユーザ入力の変化を決定することは、例えば、ブロック138においてGUI上に表示された調整ツール又はインタラクション型アイコンのレギュレータを動かすことによって、ブロック124において入力されたデータとブロック138において入力されたそれぞれのデータとを比較することを含み得る。
【0193】
予め定義されたデータの変更を決定することは、予め定義されたHDR環境マップの視野角と、ブロック138において表示されたHDR環境マップの視野角とを比較することを含み得る。ブロック138においてユーザが視野角を変更した場合、ルーチン101はブロック134に進み、ブロック116において提供されたHDR環境マップ及びブロック138において定義された視野角を使用して色データを生成する。
【0194】
前述のように取得されたセンサデータ、ユーザ入力又は予め定義されたデータの変更に応答して、ディスプレイ装置のスクリーン上に色データを再計算して表示することにより、現在のセンサデータ、ユーザ入力又は予め定義されたデータを使用して、生成された色データを自動的に更新することができる。一例では、再生された色データの再計算及び表示は、取得、入力、又は予め定義されたデータにおける前述した変更の検出時に、自動的に、すなわち、ユーザのインタラクションなしに実行される。これにより、ユーザは、ディスプレイ装置の向き、場所、時間、データ、ヘイズの程度、又は視野角など、様々なパラメータが表示される外観に与える影響を理解することができる。再計算された色データの再計算と表示は、リアルタイム又はほぼリアルタイムで実行されるため、ユーザがディスプレイ装置を傾けたり回転させたり、視点又は時間/日付/位置/ヘイズを変更すると、ユーザは、スクリーン上に表示された着色された物体の外観が実際のサンプルのように動作するという印象を得ることができる。
【0195】
ブロック144では、ルーチン101は、ブロック112で決定された照射条件を変更するか、方法100を終了するかを決定する。一例では、これには、ディスプレイ装置のスクリーン上にそれぞれのメニューを表示し、ユーザに所望のオプションを選択するよう促すことが含まれる。別の例では、ルーチン101は、例えば、利用可能な照射条件を示すそれぞれのユーザアイコンの選択を検出することによって、ユーザがブロック110に戻りたいことを示すユーザ入力を検出する。ルーチン101がブロック144でユーザが照射条件を変更したいと決定した場合、ルーチン101はブロック110に進む。そうでない場合、ルーチン101は、ユーザの選択に応じてブロック146に進むか、又は方法を終了する。ブロック110に戻ることにより、ユーザは、選択された色に対する異なる照射条件の影響を調べることができ、選択された色が、着色された物体に関連するすべての照射条件下で必要な外観を有するかどうかを判断することができる。
【0196】
ブロック146では、ルーチン101はブロック104で選択された色を変更するかどうかを決定する。一例では、これは、所望のオプションを選択するようユーザに促すそれぞれのメニューをディスプレイ装置のスクリーン上に表示することを含む。別の例では、ルーチン101は、例えば、色を選択したことを示すそれぞれのユーザアイコンの選択を検出することによって、ユーザがブロック102に戻りたいことを示すユーザ入力を検出する。ブロック146では、ルーチン101が、ユーザが色を変更したいと判断した場合、ルーチン101はブロック102に進む。そうでなければ、ルーチン101は方法を終了する。ブロック102に戻ると、ブロック104で選択された色の外観が所望の外観にならない場合に、ユーザは新しい色を選択することができる。
【0197】
図1bは、本発明による、少なくとも1つの着色コーティング層でコーティングされた物体の外観を予測し、予測された外観をディスプレイ装置のスクリーン上に表示するための方法100'の非限定的な第2実施形態を示す。この例では、着色コーティング層はベースコート層であり、物体はトリム部品、バンパーなどの自動車又はその部品である。この例では、ディスプレイ装置は、タブレット又はスマートフォンなどのタッチスクリーンを含むLCDスクリーンを有する携帯型ディスプレイ装置である。別の例では、ディスプレイ装置は、固定型コンピュータ、通信インターフェースを介してコンピュータに接続されたテレビスクリーン、投影ディスプレイ装置などの固定型装置である。この例では、ディスプレイ装置は、プロセッサと同様にスクリーンを収容する筐体を有する。別の例では、プロセッサはディスプレイ装置とは別に、例えば有線又は無線の通信インターフェースを介してディスプレイ装置に結合された外部装置上に存在する。
【0198】
図1bの方法100'は、
図1aに関連して前述したブロック102から146を含む。さらに、方法100'は、以下に説明するブロック148から168を含む。一例では、方法100'は、ブロック138又はブロック140でディスプレイ装置のスクリーン上に表示された着色された物体の予測された外観が、ユーザnによって所望される外観と一致しないとユーザが決定した場合に実行される。次に、ユーザは、ブロック138又はブロック140においてディスプレイ装置のスクリーン上に表示された色を修正するために方法100'を実行することができる。別の例では、方法100'は、ブロック104で選択された色で着色されるアイテムの注文指示をユーザが行いたい場合に実行される。
【0199】
ブロック148では、ルーチン101'は、ブロック138又は140で表示された色データの視覚的外観が許容できるかどうかを決定する。これには、GUI上にそれぞれのメニューを表示し、適切な選択を行うようユーザに促すことが含まれる。ルーチン101'は、ブロック148において視覚的外観が許容可能であると決定した場合、ブロック150に進み、そうでない場合、後述するブロック154に進む。
【0200】
ブロック150では、ルーチン101'は、ユーザがどのようなさらなるアクションを望むかを決定する。これには、GUI上にそれぞれのダイアログを表示し、適切な選択を行うようユーザに促すことが含まれ得る。ルーチン101'が、ユーザが前述したブロック102又は110を繰り返したい(つまり、照射条件又は色を変更したい)と決定した場合、ルーチン101'はそれぞれブロック102又は110に進む。ルーチン101'は、ユーザが方法の終了を望んでいると決定した場合、ルーチン101'は方法100'を終了する。ルーチン101'が、ユーザが注文指示を出したいと決定した場合、ルーチン101'は後述のブロック152に進む。着色コーティング層の修正されたデジタル表現を使用してブロック110に進むことにより、ユーザは、修正された色が利用可能な照射条件下で所望の外観をもたらすかどうかを確認することができ、したがって、仮想色設計プロセス中のユーザの快適性が向上する。このブロックでは、ユーザは、生成された色データを、データベース又はディスプレイ装置の内部メモリなどのデータ記憶媒体に、任意に、コメント、ラベルなどのさらなるデータと組み合わせて保存するオプションも有することができる。これにより、必要に応じて保存された色データを取得することができ、したがって、それぞれの色データを計算するために必要な時間を短縮することができる。
【0201】
ブロック152では、ルーチン101'は、アイテムの注文指示を生成し、生成された注文指示を通信インターフェースを介してさらなるコンピューティングデバイスに提供する。一例では、さらなるコンピューティングデバイスは、例えば自動車ディーラーなどの販売者、又は自動車製造業者などの着色されたアイテムを製造する会社、又はコーティング材料製造サイトに配置される。提供された注文指示は、ブロック138又は140に表示された色に関するデータ、例えば、カラーコード、色名、着色コーティング層を調製するために使用されたコーティング材料の配合、コーティング材料の(修正された)配合、及びそれらの組み合わせを含む。注文指示は、ユーザによって実行されるアイテムのさらなる構成、ユーザ情報、支払詳細などのさらなるデータを含むことができる。本発明の方法100'内で所望の色を有するアイテムの注文指示を送信することにより、ユーザは、所望の色に関して必要な全ての詳細を販売者又は製造者に直接提供することができ、したがって、不必要なデータ転送を回避し、データ損失又は誤ったデータ転送のリスクを低減することができる。注文指示を送信した後、提供された注文に含まれる情報に基づいて着色アイテム/コーティング材料が製造され、提供された注文に関連付けられたユーザに提供されてよい。ルーチン101'は、次にブロック153に進む。
【0202】
ブロック153では、ルーチン101'は、ユーザが方法100'を終了したいのか、又は
図1aに関連して説明したブロック102に戻りたいのかを決定する。この目的のために、ルーチン101'は、それぞれのダイアログをディスプレイ装置のスクリーン上に表示し、ユーザに適切な選択を促すことができる。ルーチン101'でユーザが方法100'を終了したいと決定した場合、ルーチン101'は方法100'を終了する。そうでない場合、ルーチン101'は
図1aに関連して説明したブロック102に進む。
【0203】
ブロック154では、ルーチン101'は、ブロック106で提供された着色コーティング層のデジタル表現をディスプレイ装置のスクリーン上に表示する。表示されたデジタル表現は、提供されたデジタル表現に関連するコーティング材料を調製するために使用される成分の少なくとも一部を含み、すなわち、ブロック104で選択された色を調製するために使用されるコーティング材料に存在する成分の少なくとも一部が、ブロック154においてディスプレイ装置のスクリーン上に表示される。一例では、前述したように予め定義された照射条件を使用して、ステップ106で提供されたデジタル表現に含まれる色データで仮想物体をレンダリングすることによって得られるレンダリングされた仮想物体が、このブロックにおいてスクリーン上に追加的に表示される。この例では、自動車の一部の予め定義された仮想物体データが使用され、表示された仮想物体を回転又はズームすることができる。別の例では、ユーザが仮想物体を選択し、選択された物体に関連する物体データがデータベースから取得され、レンダリングプロセスに使用される。
【0204】
ブロック156では、ルーチン101'は、ユーザによる着色コーティング層の表示されたデジタル表現の修正を検出する。これには、ユーザがタッチスクリーンのジェスチャなどのインタラクション要素を介して少なくとも1つの表示された成分を修正すること、及びディスプレイ装置のプロセッサを使用してユーザ入力を検出することを含むことができる。この例では、着色コーティング層を調製するために使用されるコーティング配合物中に存在する成分は、複数のレギュレータを含む少なくとも1つの調節ツールを使用して表示され、各レギュレータは、コーティング材料中に存在する成分の種類及び量に対応する。調整ツールは、前記デジタル表現に含まれるコーティング材料の配合に関するデータを調整ツールに変換することにより、ブロック106で提供された着色コーティング層のデジタル表現から、ルーチン101'によって生成される。この例では、調整ツールは、複数の視覚的に区別できる区画を有するボックスであり、各区画は、コーティング材料中に存在する成分の種類を示し、各区画のサイズは、それぞれの成分の量を示し、複数のレギュレータは、区画を区切る線に対応する。成分の種類は、それぞれの成分の種類を示すグラフィカル表現を使用して各区画に表示される。グラフィカル表現は、提供されたデジタル表現に含まれる配合データを、着色顔料のカラーチップ、メタリック効果顔料の金属片、ガラスフレークのガラス片、結合剤の固体ブロックなど、成分の種類ごとに予め定義された画像と関連付け、前記画像をそれぞれの区画に表示することによって、提供された着色コーティング層のデジタル表現から得られる。異なるサイズの区画を有し、特定の成分のグラフィカル表現を含むボックスを使用することは、化学構造及び硬化化学を深く理解することなく、コーティング材料の関連成分の概要を容易に把握することができ、各成分の種類/量がコーティング層の色に及ぼす影響を容易に評価することができる。別の例では、調整ツールは、各成分の種類と量を含むリストの形態を有し、ユーザは、別の成分を選択するか、又はリストされた量を変更することによって、成分の種類/量を変更することができる。リストは、提供されたデジタル表現に含まれる配合データから生成される。一例では、タッチスクリーンのジェスチャは、タッチスクリーンパネルのパネルプロセッサで検出され、パネルプロセッサから通信インターフェースを介してコンピュータプロセッサに提供される。ブロック156は繰り返されてよく、すなわち、所望の色が得られるまで配合を修正することができる。
【0205】
ブロック158では、ルーチン101'は、ブロック156で検出されたユーザの修正に基づいて、着色コーティング層の修正されたデジタル表現を生成する。この例では、検出されたタッチスクリーンのジェスチャは、着色コーティング層の調製に使用される着色コーティング材料の修正配合データに変換される。したがって、修正されたデジタル表現は、修正されたコーティング材料の配合データを含む。
【0206】
ブロック160では、ルーチン101'は、ブロック158で得られた修正デジタル表現に基づいてコーティング層の色データを生成する。この例では、色データを生成することは、過去のコーティング層の色データと過去のコーティング層を調製するために使用された着色コーティング材料の過去の配合にパラメータ化されたデータ駆動モデルを提供し、提供されたデータ駆動モデル及び着色コーティング材料の修正配合データに基づいて色データを計算することを含む。データ駆動モデルは、データベースなどのコンピュータ可読媒体に保存され、通信インターフェースを介してプロセッサに提供される。適切なデータ駆動モデルの例は、US20020184167A1に開示されている。別の例では、色データは、着色コーティング材料の修正配合データに基づいてデータベース又はルックアップテーブルから色データを取得することによって生成される。この例では、最も一致する色データを提供するために、取得された色データを予め定義された許容誤差と比較することを含むことができる。
【0207】
ブロック162では、ルーチン101'は、ブロック160において生成された色データをディスプレイ装置のスクリーン上に表示する。この例では、生成された色データをディスプレイ装置のスクリーン上に表示することは、ブロック156から160を実行することに応答して、生成された色データ及び仮想物体データを前述のように予め定義された照射条件を使用してレンダリングし、ブロック154に表示された色をブロック162のレンダリング結果で更新することによって、ブロック154に表示された仮想物体の色を、自動的に更新することを含む。一例では、ブロック154から162が繰り返される。これは、表示された色がユーザの所望する色と一致しない場合に好ましい。
【0208】
ブロック164では、ルーチン101'は、ブロック158において生成された修正されたデジタル表現が少なくとも1つの予め定義された許容誤差内、特に全ての予め定義された許容誤差内にあるかどうかを決定する。この例では、予め定義された許容誤差は、顔料及び結合剤の最大量又は最小量、許容される顔料及び結合剤の組み合わせ、及びそれらの組み合わせから選択される。予め定義された許容誤差は、安定性基準、製造工程基準などに基づいてコーティング製造者によって決定されることができる。予め定義された許容誤差は、データベースなどの記憶装置に保存され、決定前に通信インターフェースを介してコンピュータプロセッサに提供される。決定は、コンピュータプロセッサを使用して、修正されたデジタル表現に含まれるコーティング材料の修正された配合のデータを、少なくとも1つの予め定義された許容誤差と比較することによって実行される。決定の結果は、ディスプレイ装置のスクリーン上でユーザに表示されることができる。この例では、比較はディスプレイ装置のコンピュータプロセッサによって実行される。別の例では、比較は、ディスプレイ装置の外部に存在するさらなるコンピュータプロセッサによって実行される。この目的のために、修正されたデジタル表現は、決定前に通信インターフェースを介してさらなるプロセッサに提供され、決定の結果は、決定の完了後に前記通信インターフェースを介してディスプレイ装置のプロセッサに提供されてよい。ルーチン101'が、修正されたデジタル表現が、少なくとも1つの、好ましくは全ての、予め定義された許容誤差内にあると決定された場合、ルーチン101'はブロック148に進む。ルーチン101'が、修正されたデジタル表現が少なくとも1つの予め定義された許容誤差の範囲外であると決定された場合、ルーチン101'はブロック168に進む。
【0209】
ブロック166では、ルーチン101'は、ブロック164で実行された決定の結果、修正されたデジタル表現が少なくとも1つの予め定義された許容誤差を満たさない場合、少なくとも1つの推奨事項をディスプレイ装置のスクリーン上に表示する。推奨事項はデータベースに保存され、決定結果に基づいて、すなわちどの許容誤差が満たされていないかに基づいて、データベースと通信インターフェースを介して接続されたプロセッサによって取得される。一例では、表示される推奨事項は:「[化合物X]の量が多すぎます。量を減らすか、別の[化合物]を選択してください。」である。括弧内の用語は、具体例では、予め定義された許容誤差から外れている化合物の名前に置き換えられている。
【0210】
ブロック168では、ルーチン101'は、ユーザがコーティング材料の修正を繰り返すことを望むかどうかを決定する。これには、GUI上にそれぞれのメニューを表示し、ユーザに適切な選択を行うよう促すことが含まれ得る。ルーチン101で、ユーザがコーティング材料の修正を繰り返すことを望むと決定した場合、ルーチン101'はブロック154に進む。そうでなければ、ルーチン101'は前述したブロック153に進む。
【0211】
図2aは、本発明の方法、例えば
図1に関連して説明した方法100を実施するために使用されることができる着色コーティング材料から製造される着色コーティング層の外観を設計するためのシステム200の第1実施形態を示す。この例では、システム200は、通信インターフェース234、236、238を介してデータベース216、218、220に結合されるディスプレイ装置202である。ディスプレイ装置202は、通信インターフェース240、242、244を介してセンサ222、224、228に結合されてよい。示されているように、コンピュータシステム200は、例えばメモリ214から取得された指示を実行し、コンピュータシステム200に関連する動作、すなわち、
- 通信インターフェースを介して、着色コーティング層のデジタル表現、照射条件のデジタル表現、及び任意で前述のモデルを受信することと;
- 受信した照射条件のデジタル表現から、ディスプレイ装置を取り囲む周囲照射条件、ディスプレイ装置の向き、及び任意で視点位置を任意で導出することと;
- 受信された着色コーティング層のデジタル表現、受信された照射条件のデジタル表現又は導出されたディスプレイ装置を取り囲む周囲照射条件、ディスプレイ装置の向き、及び任意に視点、及び任意に受信されたモデルに基づいて、着色コーティング層の色データを生成することと;
- 任意に、提供された照射条件のデジタル表現の変化に応答して、特に、向きセンサ及び/又は照射センサ及び/又は視点センサによって取得されたデータの変化に応答して、着色コーティング層の色データを任意で再計算することと;
を実行するように構成されたプロセッサ212を含む。
【0212】
ディスプレイ装置202は、提供された着色コーティング層のデジタル表現、提供された照射条件のデジタル表現、及びプロセッサ212から受信した着色コーティング層の生成された色データを、特にグラフィカルユーザインターフェース(GUI)を介して、ユーザに表示するためのスクリーン204を備える。この目的のために、ディスプレイ装置202は、通信インターフェースを介してプロセッサ212に動作可能に結合される。この例では、ディスプレイ装置202は、通信インターフェース228、230、232、324、感知回路208及び入出力(I/O)コントローラ210を介してプロセッサ212に接続される。別の例では、ディスプレイ装置202は、通信インターフェースを介してプロセッサ212に直接結合される。この例では、ディスプレイ装置202は、プロセッサ212及びメモリ214と一体化され、デスクトップコンピュータ(オールインワンマシン)、ラップトップ、ハンドヘルド又はタブレットなどを形成する。別の例では、ディスプレイ装置202は、別個のコンポーネント(周辺装置、図示せず)であってよい。一例として、ディスプレイ装置202は、モノクロディスプレイ、カラーグラフィックスアダプタ(CGA)ディスプレイ、エンハンスドグラフィックスアダプタ(EGA)ディスプレイ、可変グラフィックスアレイ(VGA)ディスプレイ、スーパーVGAディスプレイ、液晶ディスプレイ(例えば、アクティブマトリックス、パッシブマトリックスなど)、陰極線管(CRT)、プラズマディスプレイなどであってよい。
【0213】
システムは、通信インターフェースを介してプロセッサ212に動作可能に結合されたユーザ入力を検出するためのインタラクション要素206をさらに含む。この例では、インタラクション要素206は、プロセッサがインタラクション要素206を介してユーザ入力を検出できるように、感知装置208及び入出力(I/O)コントローラ210を介してプロセッサ212に動作可能に結合されるタッチスクリーンである。タッチスクリーン206は、ディスプレイ装置202のスクリーン204の前に配置される透明パネルである。この例では、タッチスクリーン206はディスプレイ装置202と一体化されている。別の例では、タッチスクリーン206は別個のコンポーネントである。タッチスクリーン206は、ユーザのタッチから入力を受信し、この情報をプロセッサ212に送信するように構成されている。この目的のために、タッチスクリーン206は、その表面上のタッチ、及びタッチの位置と大きさを認識する。タッチスクリーン206は、一般に、例えば、タッチスクリーン206全体に配置された感知点を使用することによって、それに近接する物体及び/又はそこに加えられる圧力を検出するように構成された感知装置を含む。最も単純なケースでは、信号は、例えば静電容量を使用することにより、物体が感知点の上に配置されるたびに生成される。この例では、タッチスクリーン206は、通信インターフェース228を介してタッチスクリーン206に接続され、感知装置からデータを取得する感知回路208を含む。感知回路208は、通信インターフェース230を介して、プロセッサ212に動作可能に結合された入出力(I/O)コントローラ210に接続される。この例では、(I/O)コントローラ210は別個のコンポーネントである。別の例では、(I/O)コントローラ210は、プロセッサ212と一体化されている。I/Oコントローラ210は、一般に、タッチスクリーン206などの1つ以上のI/Oデバイスとのインストラクションを制御するように構成される。I/Oコントローラ210は、一般に、プロセッサ212と、プロセッサとの通信を望むI/Oデバイスとの間でデータを交換することによって動作する。したがって、感知回路208から取得されたデータは、(I/O)コントローラ210を介してプロセッサ212に供給される。別の例では、プロセッサはこの機能を含んでよい。一例では、感知回路208は、プロセッサ212が生データを処理するように、生データをプロセッサ212に送信するように構成される。例えば、プロセッサ212は、感知回路208からデータを受信し、次に、システム200内でデータをどのように使用するかを決定する。データは、各感知点の座標、及び各感知点に加えられた圧力を含むことができる。別の例では、感知回路208は、感知点からパルスを読み取り、プロセッサ212が理解できるデータに変換することによって、生データ自体を処理するように構成される。感知回路208は、フィルタリング処理及び/又は変換処理を実行することができる。フィルタリング処理は、典型的には、プロセッサ212が冗長データ又は非必須データで過負荷にならないように、ビジーデータストリームを低減するために実施される。変換処理は、プロセッサ212に送信又は報告する前に生データを調整するために実施されてよい。変換は、各タッチ領域の中心点(例えば、重心)を決定することを含んでよい。感知回路208は、タッチスクリーン206の異なる態様を制御することが可能であるタッチスクリーンプログラムを保存するための記憶素子を含むことができる。例えば、タッチスクリーンプログラムは、選択された感知点(例えば、座標)に基づいてどのようなタイプの値を出力するかを含むことができる。感知回路208は一般に1つ以上のマイクロコントローラを含み、各マイクロコントローラは1つ以上の感知点を監視する。マイクロコントローラは、例えば、特定用途向け集積回路(ASIC)に対応していてよく、これはファームウェアと連携して、感知装置からの信号を監視し、監視された信号を処理し、この情報をプロセッサ212に報告する。適切なタッチスクリーンは市販されており、スマートフォン又はタブレットなどのモバイル機器に一般的に含まれている。別の例では、インタラクション要素206は、通信インターフェースを介してプロセッサ212に動作可能に結合されたマウスである。マウスは、タッチスクリーンに関連して前述したように、入出力(I/O)コントローラ210を介してプロセッサに接続されてよい。
【0214】
データベース216、218、220は、着色コーティング層のデジタル表現、過去の照射条件から導出されたモデル、及び/又は過去の環境条件から導出されたモデル及び照射条件のデジタル表現を保存することができる。データベース216、218、220に保存された情報は、通信インターフェース234、236、238を介してプロセッサ212によって取得され、
図1のステップ108に関連して説明したように、周囲照射条件を計算するため、及び/又は色データを生成するために使用される。
【0215】
装置200は、様々な実施形態に従って、例えば、向きセンサ222、照射センサ224及び/又は視点センサ226などの環境条件を感知するためのセンサを含むことができる。センサ222、224、226からの読み取り値は、
図1のステップ106に関連して説明したように、通信インターフェース240、242、244を介してプロセッサ212に提供される。これらの読み取り値は、
図1のステップ108に関連して説明したように、データベース220に保存されたモデルを使用して、プロセッサ212で周囲照射条件を計算するために使用される。計算された周囲照射条件は、
図1のステップ108に関連して説明されるように、コーティングされた物体が装置200の実際の環境とインタラクションしているかのように、コーティングされた物体の外観を予測するためにプロセッサ212によって使用される。向きセンサ222は、例えば、
図5a及び
図5bに示すように、その軸の少なくとも1つの周りのデバイスのピッチ、ロール及びヨーを感知することができる。装置200が回転すると、コーティングされた物体の外観を予測する際に考慮される環境要因が変化する可能性があることが理解され得る(例えば、主要な照射方向などの照射方向、視点位置など)。したがって、プロセッサ212は、この装置200のピッチ、ロール及びヨーを考慮し、環境条件の適切な変化を計算することができる。様々な実施形態によれば、コーティングされた物体の表示された外観に対する結果として生じる変化は、
図1のステップ110に関連して説明したように、リアルタイム又はほぼリアルタイムで更新され得る。このようにして、ユーザが装置200を傾けたり回転させたりすると、スクリーン204によって表示されるコーティングされた物体の外観は、あたかもユーザが実際のサンプルを傾けたり回転させたりしているかのように動作することがある。向きセンサ222は、ディスプレイ装置202内に配置されることができ、前述のように、1つ以上の軸に関する装置200の動きを感知することができる任意の適切なタイプのセンサを備えることができる。照射センサ224は、例えば、ルクスレベル、スペクトル成分、主要な照射方向などの照射方向を含む装置200を取り囲む照射条件を感知することができ、又はディスプレイ装置を取り囲む環境の少なくとも1つの写真、例えば少なくとも1つのHDR又はLDRの写真を撮影するために使用されてよい。様々な実施形態によれば、照射センサ224は、CMOS撮像モジュール、組み込みカメラ、又は画像をキャプチャすることができる任意の他のセンサとして実装されてよい。プロセッサ212は、次いで、前述したように、キャプチャされた画像を考慮して周囲照射条件を導出することができる。視点センサ226は、視点の位置を特定するために使用され、CMOSイメージングモジュール、組み込みカメラ、又は同様のデバイスとして実装されてよい。視点の位置は、前述のように、結果として得られる画像から導出されることができる。また、様々な実施形態によれば、照射センサ224及び視点センサ226は、前述のように、当該センサ224aによって取得された画像から導出される視点位置及び照射情報の両方を有する単一のセンサ224aとして実装されてよい。
【0216】
プロセッサ212は、シングルチッププロセッサであってよく、又は複数のコンポーネントで実装されてよい。ほとんどの場合、プロセッサ212は、オペレーティングシステムとともに動作し、コンピュータコードを実行し、データを生成及び使用する。この例では、コンピュータコードとデータは、プロセッサ212に動作可能に結合されたメモリ214内に存在する。メモリ214は一般に、コンピュータシステム200によって使用されるデータを保持する場所を提供する。一例として、メモリ214は、読出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、ハードディスクドライブ及び/又は同種のものを含むことができる。別の例では、コンピュータコード及びデータは、取り外し可能な記憶媒体に常駐し、必要なときにコンピュータシステムにロード又はインストールされることができる。リムーバブル記憶媒体には、例えば、CD-ROM、PC-CARD、フロッピーディスク、磁気テープ、ネットワークコンポーネントなどがある。この例では、プロセッサ212は、データベース216、218から通信インターフェース234、236を介して着色コーティング層のデジタル表現と照射条件のデジタル表現を取得する。この目的のために、既存のカラーライブラリ及び予め定義されたHDR環境マップが、ディスプレイ装置202のスクリーン204上に表示され、カラー及びHDR環境マップのユーザの選択が、前述したように、タッチスクリーン206を介して検出される。次いで、プロセッサ212は、
図1のステップ104に関連して説明したように、選択された色に関連する着色コーティング層のデジタル表現を、通信インターフェース234を介してデータベース216から取得し、
図1のステップ106に関連して説明したように、選択されたHDR環境マップに関連する照射条件のデジタル表現を、通信インターフェース236を介してデータベース218から取得する。別の例では、プロセッサ212は、データがセンサ222、224、226又はセンサ222、224aから取得され、通信インターフェース240、242、244を介してプロセッサ212に提供される場合に、データベース220から通信インターフェース238を介して、過去の照射条件から導出された少なくとも1つの前述したモデル及び/又は過去の環境条件から導出された少なくとも1つのモデルをさらに取得し得る。データベース220から取得されたモデルは、
図1のステップ108に関連して説明したように、色データを生成する前に、前述したように、センサ222、224、226又はセンサ222、224aによって取得されたデータから周囲照射条件を計算するためにプロセッサ212によって使用される。次いで、プロセッサ212は、
図1のステップ108に関連して説明したように、前述したレンダリングプロセスによって色データを生成するために、取得された着色コーティング層のデジタル表現及びデジタル表現の照射条件又は計算された周囲照射条件を使用する。前記レンダリングプロセスに使用される仮想物体データは、データベース216、218、220のいずれかに保存されるか、又はさらなるデータベース(図示せず)に保存される。次に、レンダリングされた物体は、
図1のステップ110に関連して説明したように、プロセッサ212が、生成された色データをディスプレイ装置のスクリーンにマッピングすることによってレンダリングプロセスを実行した後に、ディスプレイ装置によって表示される。この例では、レンダリングされた物体を表示することは、既存のカラーライブラリから選択されたカラーを更新することを含む。これにより、ユーザは、選択された色に対する異なる照射条件の影響を理解するように、選択された色に対する選択された照射条件の影響を確認できる。
【0217】
一例では、プロセッサ212はさらに
- 提供された着色コーティング層のデジタル表現、特に、
図1のステップ112に関連して説明したように、提供されたデジタル表現に関連する着色コーティング材料を調製するために使用されるコーティング材料の成分の少なくとも一部を表示するように;及び
-
図1のステップ112に関連して説明したように、好ましくはインタラクション要素206を介してユーザ入力を検出することによって、ユーザによる着色コーティング層の表示されたデジタル表現の修正を検出するように;及び
- 検出されたユーザ入力を、着色コーティング層の修正されたデジタル表現に変換するように;及び
-
図1のステップ114に関連して説明したように、修正されたデジタル表現に基づいてコーティング層の色データを生成するように;及び
- 任意で、コーティング層の生成された修正されたデジタル表現が、少なくとも1つの予め定義された許容誤差内、特に
図1のステップ118に関連して説明したようにすべての予め定義された許容誤差内であるかどうかを決定するように;及び
- 任意で、
図1のステップ120に関連して説明したように、通信インターフェースを介して着色コーティング材料の修正されたデジタル表現をコーティング材料製造サイトに提供するように;及び/又は
-
図1のステップ122に関連して説明したように、修正されたデジタル表現が少なくとも1つの予め定義された許容誤差を満たさない場合、任意で、ディスプレイ装置のスクリーン上に少なくとも1つの推奨事項を表示するように;及び/又は
-
図1のステップ124に関連して説明したように、通信インターフェースを介して、アイテムの注文指示をさらなるコンピュータプロセッサに提供するように、
プログラムされ得る。
【0218】
図2bは、本発明の方法、例えば
図1に関連して説明した方法100を実施するために使用されることができる着色コーティング材料から製造される着色コーティング層の色を設計するためのシステム201の第2実施形態を示す。この例では、システム201は、通信インターフェース228'、230'、232'を介してセンサ216'、218'、220'、すなわち向きセンサ216'、照射センサ218'及び視点センサ220'に結合され得るディスプレイ装置202'を備える。
図2aに関連して説明したように、照射センサ218'及び視点センサ220'は、単一のセンサ218aとして構成されてよい。ディスプレイ装置202'は、提供されたコーティング層のデジタル表現、提供された照射条件のデジタル表現又は計算された周囲照射条件、及びプロセッサ212'から受信された生成された色データを、特にグラフィカルユーザインターフェース(GUI)を介して、ユーザに表示するためのスクリーン204'を有する。この目的のために、ディスプレイ装置202'は、通信インターフェースを介してプロセッサ212'に動作可能に結合され、プロセッサ212'は、
- 通信インターフェース228'、230'、232'を介して、照射条件のデジタル表現、すなわち
図1のステップ108に関連して説明したようにセンサ216'、218'、220'によって取得されたデータを受信し;
- 通信インターフェース244'を介して、受信された照射条件のデジタル表現を、さらなるコンピューティングデバイス252'に提供し;及び
-
図1のステップ110に関連して説明したように、ディスプレイ装置202'のスクリーン204'に表示するために、計算された周囲照射条件と生成された色データを、さらなるコンピューティングデバイス252'から受信する、
ように構成される。
【0219】
この例では、ディスプレイ装置202'は、通信インターフェース222'、224'、226'、感知回路208'、及び入出力(I/O)コントローラ210'を介してプロセッサ212'に接続されている。別の例では、ディスプレイ装置202'は、通信インターフェースを介してプロセッサ212'に直接結合される。この例では、ディスプレイ装置202'は、プロセッサ212'及びメモリ214'と一体化されて、デスクトップコンピュータ(オールインワンマシン)、ラップトップ、ハンドヘルド又はタブレットなどを形成する。別の例では、ディスプレイ装置202'は、別個のコンポーネント(周辺装置、図示せず)であってよい。この例では、ディスプレイ装置202'は、
図2aに関連して説明したようなインタラクション要素206'をさらに含み、ディスプレイ装置202'のプロセッサ212'は、
図1及び2aに関連して説明したようなインタラクション要素206'を介したユーザ入力を検出するために使用される。
【0220】
システム201は、通信インターフェース244'を介してディスプレイ装置202'に接続され、通信インターフェース246'、248'、250'を介してデータベース238'、240'、242'に接続されたコンピューティングデバイス252'をさらに含む。データベース238'、240'、242'は、着色コーティング層のデジタル表現、照射条件のデジタル表現、及び過去の照射条件から導出された前述のモデル、及び/又は過去の環境条件から導出された前述のモデルを含む。コンピューティングデバイス234'は、単一のコンピューティングデバイスであってよく、又はサーバ環境に配置されていてよい。後者の場合、ディスプレイ装置202'は、クライアントデバイスとして機能することができ、インターネットなどのネットワーク(すなわち、通信インターフェース244')を介してサーバ(すなわち、コンピューティングデバイス234')にアクセスすることができる。好ましくは、サーバは、HTTPサーバであってよく、従来のインターネットウェブベース技術を介してアクセスされる。インターネットベースのシステムは、着色コーティング材料から製造される着色コーティング層の色を設計するサービスが顧客に提供される場合、又は大企業で提供される場合、特に有用である。
【0221】
コンピューティングデバイス252'は、例えばメモリ236'から取得された命令を実行し、システム201に関連する動作、すなわち
- 任意に、通信インターフェース244'を介して、プロセッサ212'から照射条件のデジタル表現を受信すること;
- 任意で、
図1のステップ106に関連して説明したように、受信した照射条件のデジタル表現とデータベース242'に保存されたモデルから、ディスプレイ装置を取り囲む周囲照射条件を計算すること;
- ディスプレイ装置202'のスクリーン204'に表示するために、計算された周囲照射条件を、通信インターフェース244'を介してプロセッサ212'に任意で提供すること;及び
-
図1のステップ108に関連して説明したように、データベース238'に保存された着色コーティング層のデジタル表現と、データベース240'に保存された照射条件のデジタル表現又は計算された周囲照射条件を使用して、着色コーティング層の色データを生成すること、
を実行するように構成されたプロセッサ234'を含む。
【0222】
本発明の方法の異なるステップを実行する2つの異なるコンピュータプロセッサを使用することにより、高い計算能力を必要とするステップを別のコンピューティングデバイスに移行させることができ、したがって、許容可能な時間枠内で計算を実行するために高い計算能力を使用することを含み得る色データの生成に必要な計算時間に悪影響を及ぼすことなく、限られた計算能力を有するディスプレイ装置を使用することができる。したがって、システムのこの実施形態は、周囲照射条件が前述のモデルを使用して計算される場合、又は色データの生成が前述のように修正されたデジタル表現及びデータ駆動モデルを使用して色データをレンダリングによって、又は計算することによって実行される場合に、特に好ましい。適切なコンピュータプロセッサ212'及び234'に関して、
図2aを参照する。一例では、コンピューティングデバイス252'のプロセッサ334'は、
図1及び
図2aに関連して説明したように、選択された色に関連する着色コーティング層のデジタル表現、照射条件のデジタル表現、及び仮想物体データ(メモリ236'又は図示しないさらなるデータベースのいずれかに保存されている)を取得し、前述したレンダリングプロセス、特にイメージベースドライティング(Image-based lighting)を使用して色データを計算する。別の例では、コンピューティングデバイス252'のプロセッサ334'は、
図1及び
図2aに関連して説明したように、選択された色に関連する着色コーティング層のデジタル表現を取得し、前述した計算された周囲照射条件とレンダリングプロセスを使用して、色データを計算する。さらに別の例では、プロセッサ334'は、-第1ステップでは-提供された着色コーティング層のデジタル表現と、予め定義されたHDR環境マップなどの照射条件とに基づいて色データを計算することができ、-第2ステップでは-提供された着色コーティング層のデジタル表現と計算された周囲光条件とに基づいて色データを計算することができ、又はその逆でもよい。第1ステップの後に表示される色は、第2ステップを実行した後のレンダリング結果で更新されることができる。これにより、表示された着色された物体に対する異なる照射条件の影響を表示することができ、使用時に主要な照射条件を使用して着色された物体の外観を予測することができるため、したがって、所望の色を選択する際のユーザの快適性が向上する。
【0223】
一例では、プロセッサ234'によって計算された周囲照射条件は、計算された周囲照射条件を、通信インターフェース244'を介してプロセッサ212'に提供することによって、ディスプレイ装置202'のスクリーン204'によって表示される。計算された周囲照射条件は、例えば、計算されたHDR環境マップであってよい。別の例では、プロセッサ234'によって生成された色データは、通信インターフェース244'を介してプロセッサ212'に提供され、プロセッサは、レンダリング結果をディスプレイ装置202'のスクリーン204'にマッピングする。さらに別の例では、計算された周囲照射条件と生成された色データは、ディスプレイ装置202'のスクリーン204'に表示するためにプロセッサ212'に転送される。この例では、レンダリングされた物体を表示することは、既存のカラーライブラリから選択されたカラーを更新することを含む。
【0224】
一例では、プロセッサ212'は、さらに
- 提供された着色コーティング層のデジタル表現、特に、
図1のステップ112に関連して説明したように、提供されたデジタル表現に関連する着色コーティング材料を調製するために使用されるコーティング材料の成分の少なくとも一部を表示するように;及び
-
図1のステップ112に関連して説明したように、好ましくはインタラクション要素206を介してユーザ入力を検出することによって、ユーザによる着色コーティング層の表示されたデジタル表現の修正を検出するように;及び
- 検出されたユーザ入力を、着色コーティング層の修正されたデジタル表現に変換するように;及び
- 任意で、コーティング層の生成された修正されたデジタル表現が、少なくとも1つの予め定義された許容誤差内、特に
図1のステップ118に関連して説明したようにすべての予め定義された許容誤差内であるかどうかを決定するように;及び
- 任意で、
図1のステップ120に関連して説明したように、通信インターフェースを介して着色コーティング材料の修正されたデジタル表現をコーティング材料製造サイトに提供するように;及び/又は
-
図1のステップ122に関連して説明したように、修正されたデジタル表現が少なくとも1つの予め定義された許容誤差を満たさない場合、任意で、ディスプレイ装置のスクリーン上に少なくとも1つの推奨事項を表示するように;及び/又は
-
図1のステップ124に関連して説明したように、通信インターフェースを介して、アイテムの注文指示をさらなるコンピュータプロセッサに提供するように、
プログラムされ得る。
【0225】
プロセッサ234'は、さらに
-
図1のステップ114に関連して説明したように、修正されたデジタル表現に基づいてコーティング層の色データを生成するように、プログラムされ得る。
【0226】
図2cは、本発明の方法、例えば
図1に関連して説明した方法100を実施するために使用されることができる着色コーティング材料から製造される着色コーティング層の色を設計するためのシステム201の第3実施形態を示す。この例では、システム203は、通信インターフェース228''、230''、232''を介してセンサ216''、218''、220''、すなわち向きセンサ216''、照射センサ218''及び視点センサ220''に結合され得るディスプレイ装置202''を備える。
図2a及び
図2bに関連して説明したように、照射センサ218''及び視点センサ220''は、単一のセンサ218bとして構成されてよい。ディスプレイ装置202''は、提供されたコーティング層のデジタル表現、提供された照射条件のデジタル表現又は計算された周囲照射条件、及びプロセッサ212''から受信された生成された色データを、特にグラフィカルユーザインターフェース(GUI)を介して、ユーザに表示するためのスクリーン204''を有する。この目的のために、ディスプレイ装置202''は、通信インターフェースを介してプロセッサ212''に動作可能に結合され、プロセッサ212''は、
- 通信インターフェース228''、230''、232''を介して、照射条件のデジタル表現、すなわち
図1のステップ106に関連して説明したようにセンサ216''、218''、220''によって取得されたデータを受信し;
-
図1のステップ106に関連して説明したように、受信した照射条件のデジタル表現とデータベース242''に保存されたモデルから、ディスプレイ装置を取り囲む周囲照射条件を計算する、
ように構成される。
【0227】
受信された照射条件のデジタル表現から周囲照射条件を計算するために必要な過去の照射条件から導出されたモデル及び/又は過去の環境条件から導出されたモデルは、プロセッサ212''によって、通信インターフェース250''を介してデータベース242''から取得される。
【0228】
この例では、ディスプレイ装置202''は、
図2a及び
図2bで説明したディスプレイ装置に対応する。
【0229】
システム203はさらに、通信インターフェース244''を介してディスプレイ装置202''に接続され、通信インターフェース246''、248''を介してデータベース238''、240''に接続されたコンピューティングデバイス252''を含む。データベース238'、240'は、着色コーティング層のデジタル表現と照射条件のデジタル表現を含む。コンピューティングデバイス234''は、単一のコンピューティングデバイスであってよく、又はサーバ環境に配置されていてよい。後者の場合、ディスプレイ装置202''はクライアントデバイスとして機能し、インターネットなどのネットワーク(すなわち通信インターフェース244'')を介してサーバ(すなわちコンピューティングデバイス234'')にアクセスすることができる。好ましくは、サーバはHTTPサーバであってよく、従来のインターネットウェブベース技術を介してアクセスされ得る。インターネットベースのシステムは、着色コーティング材料から製造される着色コーティング層の色を設計するサービスが顧客に提供される場合、又は大企業で提供される場合、特に有用である。
【0230】
コンピューティングデバイス252''は、例えばメモリ236''から取得された命令を実行し、システム203に関連する動作、すなわち、
- 任意に、通信インターフェース244'を介して、プロセッサ212''で計算された周囲照射条件を受信するようにことと;
-
図1のステップ108に関連して説明したように、データベース238''に保存された着色コーティング層のデジタル表現と、データベース240''に保存された照射条件のデジタル表現又は計算された周囲照射条件とを使用して、着色コーティング層の色データを生成すること、
を実行するように構成されたプロセッサ234''を含む。
【0231】
本発明の方法の異なるステップを実行する2つの異なるコンピュータプロセッサを使用することにより、高い計算能力を必要とするステップを別のコンピューティングデバイスに移行させることができ、したがって、許容可能な時間枠内で計算を実行するために高い計算能力を使用することを含み得る色データの生成に必要な計算時間に悪影響を及ぼすことなく、限られた計算能力を有するディスプレイ装置を使用することができる。したがって、システムのこの実施形態は、色データの生成が、レンダリングによって実行されるか、又は前述したように修正されたデジタル表現及びデータ駆動モデルを使用して色データを計算することによって実行される場合に、特に好ましい。適切なコンピュータプロセッサ212''及び234''ならびに色データの生成に関して、
図2a及び
図2bを参照する。
【0232】
一例では、プロセッサ212''によって計算された周囲照射条件は、
図2bに関連して説明したように、ディスプレイ装置202''のスクリーン204''上に表示される。生成された色データは、
図2a及び
図2bに関連して説明したように、ディスプレイ装置202''のスクリーン204''上に表示するために、通信インターフェース244''を介してプロセッサ234''からプロセッサ212''に転送される。レンダリングされた物体を表示することは、レンダリング結果で既存のカラーライブラリから選択されたカラーを更新することを含み得る。
【0233】
一例では、プロセッサ212''は、さらに
- 提供された着色コーティング層のデジタル表現、特に、
図1のステップ112に関連して説明したように、提供されたデジタル表現に関連する着色コーティング材料を調製するために使用されるコーティング材料の成分の少なくとも一部を表示するように;及び
-
図1のステップ112に関連して説明したように、好ましくはインタラクション要素206を介してユーザ入力を検出することによって、ユーザによる着色コーティング層の表示されたデジタル表現の修正を検出するように;及び
- 検出されたユーザ入力を、着色コーティング層の修正されたデジタル表現に変換するように;及び
- 任意で、コーティング層の生成された修正されたデジタル表現が、少なくとも1つの予め定義された許容誤差内、特に
図1のステップ118に関連して説明したようにすべての予め定義された許容誤差内であるかどうかを決定するように;及び
- 任意で、
図1のステップ120に関連して説明したように、通信インターフェースを介して着色コーティング材料の修正されたデジタル表現をコーティング材料製造サイトに提供するように;及び/又は
-
図1のステップ122に関連して説明したように、修正されたデジタル表現が少なくとも1つの予め定義された許容誤差を満たさない場合、任意で、ディスプレイ装置のスクリーン上に少なくとも1つの推奨事項を表示するように;及び/又は
-
図1のステップ124に関連して説明したように、通信インターフェースを介して、アイテムの注文指示をさらなるコンピュータプロセッサに提供するように、
プログラムされ得る。
【0234】
プロセッサ234''は、さらに、
-
図1のステップ114に関連して説明したように、修正されたデジタル表現に基づいてコーティング層の色データを生成するように、
プログラムされ得る。
【0235】
図3は、既存のカラーライブラリを示すグラフィカルユーザインターフェース306がユーザに表示されるスクリーン304を有するディスプレイ装置302を備える/からなるシステム300の平面図を示す。適切なシステムは、
図2a~
図2cに関連して説明される。グラフィカルユーザインターフェース304は、例えば、
図1のブロック104に表示され得る。この例では、グラフィカルユーザインターフェース304は、スマートフォンなどの携帯型ディスプレイ装置302に表示される。別の例では、グラフィカルユーザインターフェース304は、固定型コンピュータモニタなどの固定型ディスプレイ装置に表示される。グラフィカルユーザインターフェース306は、着色コーティング層の色がドーム形状308を有する3D仮想物体上に示される既存のカラーライブラリを示す。この例では、既存のカラーライブラリには195色が含まれており、そのうち65色がディスプレイ装置のスクリーン上に表示されている。タッチスクリーンのジェスチャを介して既存のカラーライブラリ306をスクロールすることによって、さらに色を閲覧することができる。既存のカラーライブラリは、ディスプレイ装置302の内部にプロセッサが存在する状態で、予め定義された照射条件(イメージベースドライティング(Image-based lighting))を使用して、仮想ドーム形状物体の物体データ、予め定義されたライブラリに関連付けられた色データをレンダリングし、レンダリング結果をスクリーン304に表示することによって表示される。この例では、予め定義されたライブラリに関連付けられた色データは、データベースに保存され、
図2a~
図2cに関連して説明したように、レンダリングの前に、通信インターフェース、好ましくは無線通信インターフェースを介してディスプレイ装置のプロセッサに提供される。別の例では、予め定義されたカラーライブラリに関連する色データは、ディスプレイ装置302の内部に存在するメモリ上に保存される。予め存在するライブラリに存在する色に関連する色データは、前述したように最適化されたBTFによって定義される。
【0236】
図4は、調整ツール408.1、408.2、及び予め定義された照射条件416に関連する色で着色された自動車ボディ418の一部の形態の仮想3D物体を示すグラフィカルユーザインターフェース406がユーザに表示されるスクリーン404を有するディスプレイ装置402を備える/からなるシステム400の平面図を示す。アイコン422は、色が、位置、日付、時間、及び任意に空のヘイズに関するデータを使用して計算されることを示している。適切なシステムは、
図2aから
図2cに関連して説明される。グラフィカルユーザインターフェース404は、例えば、
図1のブロック106に表示され得る。
【0237】
この例では、グラフィカルユーザインターフェース404は、2つの調整ツール408.1及び408.2を備え、それぞれのレギュレータ410.1及び410.2を動かすことによって、自動車ボディ418の前に表示される現在時間及びヘイズを調整するために使用されることができる。この例では、ユーザは、地図アイコン412をクリックし、表示される世界地図を使用して所望の位置にナビゲートすることにより、位置を選択することができる。別の例では、ディスプレイ装置404はユーザの現在位置を決定することができ、これは次いで前述のように周囲照射条件を計算するために使用される。この例では、ユーザはカレンダーアイコン414をクリックすることによって、所望の日付を選択できる。
【0238】
グラフィカルユーザインターフェース404は、
図1のステップ106に関連して説明したように、予め定義された位置、予め定義された時間、予め定義された日付、及び予め定義された空のヘイズなどの予め定義された値から得られる計算されたHDR環境マップ416をさらに含み、これは、前述の調整ツール410.1、410.2、マップアイコン412及び/又はカレンダーアイコン414を使用することによって、位置、日付、時間、ヘイズのうちの少なくとも1つの調整時にリアルタイム又はほぼリアルタイムで更新され得る。
【0239】
グラフィカルユーザインターフェースは、例えば
図1又は
図3のステップ104に関連して説明したように、既存のカラーライブラリから選択された色で着色された自動車ボディ418の一部をさらに備える。着色された自動車ボディの一部を表示することは、周囲照射条件、すなわち、I. Hosekら「フルスペクトルのスカイドーム放射輝度の分析モデル(An analytic model for full spectral sky-dome radiance)」, ACM Transactions on Graphics, 2012年, 第31巻, 記事No.: 95, https://doi.org/10.1145/2185520.2185591 に記載されているような、過去の照射条件から導出されたモデルを使用して、予め定義された位置、データ、時間、及びヘイズから計算された、表示されたHDR環境マップ416を使用して、仮想物体データ及び既存の色データから選択された色に関連付けられた色データをレンダリングすることを含み得る。一例では、レンダリングに使用される仮想自動車部品は、予め定義された仮想物体である。別の例では、レンダリングに使用される仮想自動車部品は、レンダリング前にユーザが選択されることができる。着色された自動車部品の表示色は、周囲照射条件を再計算し、再計算された周囲照射条件を使用してレンダリングを実行することにより、位置、時間、日付、又はヘイズの少なくとも1つが修正されると、リアルタイム又はほぼリアルタイムで更新される。グラフィカルユーザインターフェース404上に着色された自動車418を表示するために使用される自動車の現在選択されている形状は、黒いシンボル420によって示される。ユーザは、シンボル420の上のそれぞれの灰色のアイコンをクリックすることによって形状を変更することができ、表示された着色された自動車418は、更新された仮想物体データを使用して新しいレンダリングを実行することによって、リアルタイムで自動的に更新される。照射条件の修正時にリアルタイム又はほぼリアルタイムで色を更新することにより、ユーザは、選択された照射条件、例えばユーザの住居に通常存在する照射条件下での着色された物体の外観を見ることができる。これにより、ユーザは、既存のライブラリから選択された色が、ユーザ固有の照射条件下で所望の外観を提供するかどうかを確認することができ、したがって、自動車などのアイテムの色を選択する際のユーザの快適性を向上させ、購入後のユーザの失望を軽減することができる。
【0240】
図5a及び5bはそれぞれ、周囲照射及びディスプレイ装置の向きに関連する色で着色されたドームレリーフ508、5018の形態の仮想3D物体を示すグラフィカルユーザインターフェース506、516を有するディスプレイ装置502、512を備えるシステム500、501の3Dビューである。アイコン510、520は、向きセンサ及び/又は照射センサ、及びオプションで視点センサから取得したデータを使用して色が計算されることを示す。適切なシステムは、
図2aから
図2cに関連して説明される。グラフィカルユーザインターフェース506、516は、例えば、
図1のブロック106に表示されることができる。
図5aの仮想ドームレリーフ508の色データは、
図3に関連して説明したように、既存のライブラリから選択された色に関連する色データと、ドームレリーフの予め定義された仮想物体データを使用して、
図1のステップ108に関連して説明したように、周囲照射条件を使用して前記データをレンダリングすることによって生成される。周囲照射条件は、例えばApple’s ARKit又はGoogle’s ARCoreプログラムライブラリに実装されているように、向きセンサと照射センサ、及び任意で視点センサから取得されたデータ、ならびに、前述のように過去の環境条件から導出された少なくとも1つのモデルから計算される。
【0241】
図5bに示すように、ディスプレイ装置の向きが変更されると、変更された向きデータを使用して色データが再計算される。この目的のために、周囲照射条件は向きセンサからの更新データを使用して再計算され、再計算された周囲照射データがレンダリングに使用される。ドームレリーフ518の色の更新は、表示された色が、あたかもユーザが本物のドームレリーフを手の中で回しているように振る舞うように、リアルタイム又はほぼリアルタイムで実行される。
【0242】
図6は、自動車のぼやけた形状の前に、利用可能なハイダイナミックレンジ(HDR)環境マップ608.1、608.nを示すグラフィカルユーザインターフェース606を有するディスプレイ装置602を備えるシステム600の平面図である。グラフィカルユーザインターフェース606は、例えば、
図1のブロック106に表示され得る。選択されたHDR環境マップの下で着色された自動車を表示するために使用される自動車の現在選択されている形状は、アイコン610で表示される。アイコン612は、このモードでは、予め定義されたHDR環境マップを使用して色が表示されることをユーザに示す。このモードで表示される色は、
図1及び
図3のステップ104に関連して説明したように、既存のカラーライブラリを使用してユーザによって選択されたものである。ユーザは、それぞれのアイコン610と表示された予め定義されたHDR環境マップ608.1、608.nの1つをクリックすることによって、仮想物体と所望のHDR環境マップを選択することができる。予め定義されたHDR環境マップは、
図2aから2cに関連して説明したようにデータベースに保存されることができる。
【0243】
仮想物体と表示されたHDR環境マップを選択すると、既存のカラーライブラリから選択された色に関連する色データと、選択された仮想物体に関連する仮想物体データは選択されたHDR環境マップを使用してレンダリングされる。レンダリング結果は
図7aに表示される。
【0244】
図7aは、選択されたハイダイナミックレンジ(HDR)環境マップを使用して生成された色で着色された自動車ボディの一部708の形態の仮想3D物体を示すグラフィカルユーザインターフェース706を有するディスプレイ装置702を備えるシステム700の平面図である。便宜上、選択されたHDR環境マップ714は、着色された自動車の下に示されている。アイコン710及び712は、
図6のアイコン610及び612に関連して説明したのと同じ意味を有する。
【0245】
ユーザは、表示されたHDR環境マップ722内の位置をクリックすることによって、HDR環境マップの向きを変更することができ、表示された着色された自動車は、
図7bに示されるように、HDR環境マップの変更された向きを使用して色データ及び仮想物体データをレンダリングする際に得られるレンダリング結果でリアルタイム又はほぼリアルタイムに更新されることができる。これにより、ユーザは、HDR環境マップの異なる向きを使用した色物体の外観の変化を理解することができる。予め定義されたHDR環境マップを使用することにより、ユーザは、着色された物体の外観を調整するために実際の照射コンセプトをインストールすることなく、所望の外観をもたらすHDR環境マップを決定することができる。これにより、例えば自動車の売り場など、着色された物体の提示に関連するコストを大幅に削減することができる。
【手続補正書】
【提出日】2024-04-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの着色コーティング層でコーティングされている物体の外観を予測し、予測された外観を表示装置に表示するためのコンピュータ実装方法であって、前記方法は、
(i) 通信インターフェースを介して、着色コーティング層のデジタル表現をコンピュータプロセッサに提供するステップと;
(ii)
- 複数の照射条件を含むグラフィカルユーザインターフェースをディスプレイ装置に表示することと;
- 表示された前記複数の照射条件から照射条件を選択したことを示すユーザ入力を前記コンピュータプロセッサで検出することと;
- 前記検出されたユーザ入力に応答して、前記通信インターフェースを介して前記コンピュータプロセッサを用いて、前記検出されたユーザ入力に関連付けられた照射条件のデジタル表現を取得することと;
によって照射条件のデジタル表現を提供するステップと;
(iii) 任意に、前記通信インターフェースを介して前記コンピュータプロセッサに、過去の照射条件から導出されたモデル、及び/又は過去の環境条件から導出された少なくとも1つのモデルを提供するステップと;
(iv) 前記提供された着色コーティング層のデジタル表現、前記提供された照射条件のデジタル表現、及び任意に前記提供されたモデルに基づいて、前記コンピュータプロセッサで前記着色コーティング層の色データを生成するステップと;
(v) 前記コンピュータプロセッサから受信した前記生成された色データを前記ディスプレイ装置に表示するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記着色コーティング層のデジタル表現が、色空間データ、光沢データ、外観データ、テクスチャ特性、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1つの着色コーティング層でコーティングされている物体の外観を予測し、予測された外観をディスプレイ装置に表示する方法であって、前記方法は、以下のステップ:
(i) 通信インターフェースを介して、着色コーティング層のデジタル表現をコンピュータプロセッサに提供するステップであって、前記着色コーティング層のデジタル表現は、以下のステップ:
- カメラベースの測定装置を使用して、前記着色コーティング層の初期BTFを決定するステップと;
- 分光光度計を用いて、予め与えられた数、すなわち限られた数の異なる測定形状について、前記着色コーティング層のスペクトル反射率データをキャプチャするステップと;
- 最適化BTFを得るために、以下の式(1)の前記初期BTFを、
【数1】
ここで、
x:サンプル/物体の表面座標
【数2】
:サンプルのベースコートでの照射と観察/視野方向
【数3】
:照射と観察方向に依存するカラーテーブル
a:アルベド又は拡散反射率
【数4】
:マイクロファセットサーフェスの光沢を表現する双方向反射率分布関数(BRDF)に対応する、k番目のCook-Torranceローブ
S
k:k番目のCook-Torranceローブの重み付け
a
k:k番目のCook-Torranceローブのベックマン分布のパラメータ
F
0,k:k番目のCook-Torranceローブのフレネル反射率
【数5】
:照射及び観察方向に依存する空間テクスチャ画像のテーブル
であり、
項
【数6】
と項
【数7】
とにセグメント化し、さらに、第1の項(F1)を、照射及び観察方向
【数8】
に依存するカラーテーブルに対応する第1サブ項と、強度関数
【数9】
に対応する第2サブ項とに分割し、
前記第2サブ項のパラメータを一定に保ちながら前記第1サブ項のパラメータを、第1最適化ステップで最適化し、及び、前記第1サブ項のパラメータを一定に保ちながら前記第2サブ項のパラメータを、第2最適化ステップで最適化することによって、前記キャプチャされたスペクトル反射率データと前記初期BTFの色差を最小化することによって前記初期BTFを前記キャプチャされたスペクトル反射率データに適合させるステップと;
によって得られる最適化された双方向テクスチャ関数(BTF)を含む、ステップと;
(ii)
- 複数の照射条件を含むユーザインターフェースをディスプレイ装置に表示することと;
- 表示された前記複数の照射条件から照射条件を選択したことを示すユーザ入力を前記コンピュータプロセッサで検出することと;
- 前記検出されたユーザ入力に応答して、前記通信インターフェースを介して前記コンピュータプロセッサを用いて、前記検出されたユーザ入力に関連付けられた照射条件のデジタル表現を取得することと;
によって照射条件のデジタル表現を提供するステップと;
(iii) 任意に、前記通信インターフェースを介して前記コンピュータプロセッサに、過去の照射条件から導出されたモデル、及び/又は過去の環境条件から導出された少なくとも1つのモデルを提供するステップと;
(iv) 前記提供された着色コーティング層のデジタル表現、前記提供された照射条件のデジタル表現、及び任意に前記提供されたモデルに基づいて、前記コンピュータプロセッサで前記着色コーティング層の色データを生成するステップと;
(v) 前記コンピュータプロセッサから受信した前記生成された色データを前記ディスプレイ装置に表示するステップと、
を含む、方法。
【請求項4】
前記着色コーティング層のデジタル表現を提供することが、前記ディスプレイ装置のスクリーン上に既存のカラーライブラリを表示することと、前記表示された既存のライブラリから色を選択することと、前記選択された色に基づいて前記着色コーティング層のデジタル表現を得ることと、前記得られた着色コーティング層のデジタル表現を前記通信インターフェースを介して前記コンピュータプロセッサに提供することと、を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記照射条件のデジタル表現を取得することが、
- 前記通信インターフェースを介して、日付、時間、位置、特に地理的位置、及び任意で空のヘイズの程度を示すデータを取得すること、及び/又は
- 前記通信インターフェースを介して、前記ディスプレイ装置の少なくとも1つの照射センサから取得されたデータ、前記ディスプレイ装置の少なくとも1つの向きセンサから取得されたデータ、及び任意で少なくとも1つの視点センサから取得されたデータを取得すること、及び/又は
- 前記通信インターフェースを介して少なくとも1つのハイダイナミックレンジ(HDR)環境マップを取得すること、
を含む、請求項
1又は3に記載の方法。
【請求項6】
前記通信インターフェースを介して日付及び/又は時間及び/又は空のヘイズの程度を示すデータを取得することが、日付又は時間又はヘイズに対応する少なくとも1つのレギュレータを含む少なくとも1つの調整ツールを表示することと、インタラクション要素を介して、前記少なくとも1つの調整ツールを操作することを示すユーザ入力を検出すること、特に、前記インタラクション要素を介して少なくとも1つの調整ツールの少なくとも1つのレギュレータの動きを検出することによってユーザ入力を検出することと、検出されたユーザ入力に応答して、日付又は時間又はヘイズを決定することと、を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ディスプレイ装置の少なくとも1つの照射センサから取得されたデータは、ルクスレベル、スペクトル成分、照射方向、前記ディスプレイ装置を取り囲む環境の少なくとも1つの写真、特に少なくとも1つのハイダイナミックレンジ(HDR)又はローダイナミックレンジ(LDR)の写真、又はそれらの組み合わせなど、前記ディスプレイ装置を取り囲む前記照射条件に関するデータを含む、請求項
1又は3に記載の方法。
【請求項8】
前記過去の照射条件から導出されたモデルは、昼間の空の物理ベースの分析モデルである、請求項
1又は3に記載の方法。
【請求項9】
前記過去の環境条件から導出された少なくとも1つのモデルは、前記ディスプレイ装置の照射センサ及び/又は向きセンサ及び/又は視点センサから取得されたデータと、前記ディスプレイ装置を取り囲む周囲光条件との間の関係を提供する、請求項
1又は3に記載の方法。
【請求項10】
前記コンピュータプロセッサで色データを生成するステップは、仮想物体の物体データを提供することと、任意で少なくとも1つのさらなるコーティング層のさらなる色データを提供することと、前記提供された着色コーティング層のデジタル表現と任意のさらなる色データとを前記提供された仮想物体上にマッピングすることと、、前記提供された照射条件のデジタル表現と任意の前記提供されたモデルを使用して前記マッピングの結果をレンダリングすることとを含む、請求項
1又は3に記載の方法。
【請求項11】
ステップ(iv)は、前記着色コーティング層の色データを生成する前に、前記提供された照射条件のデジタル表現と、前記提供された過去の環境条件から導出された少なくとも1つのモデルとから、前記ディスプレイ装置を取り囲む周囲照射条件を前記コンピュータプロセッサで計算することをさらに含む、請求項
1又は3に記載の方法。
【請求項12】
前記コンピュータプロセッサから受信した前記色データを前記ディスプレイ装置のスクリーンに表示するステップは、前記生成された色データ、特に各レンダリングされた点を前記ディスプレイ装置の前記スクリーンにマッピングすることを含む、請求項
1又は3に記載の方法。
【請求項13】
少なくとも1つの着色コーティング層でコーティングされている物体の外観を予測するためのシステムであって、前記システムは:
- 任意で、過去の照射条件から導出されたモデル及び/又は過去の環境条件から導出された少なくとも1つのモデルをコンピュータプロセッサに提供するための通信インターフェースと;
- 着色コーティング層のデジタル表現と照射条件のデジタル表現を前記コンピュータプロセッサに提供するための少なくとも1つの通信インターフェースと;
- スクリーンを備えるディスプレイ装置と;
- ユーザ入力を検出するためのインタラクション要素と;
- 任意で、少なくとも1つの照射センサ、及び/又は、前記ディスプレイ装置の向きを感知するように適合された少なくとも1つの向きセンサ、及び/又は前記ディスプレイ装置を保持するユーザの視点を感知するように適合された少なくとも1つの視点センサと;
- 前記通信インターフェース、前記ディスプレイ装置、及び前記任意の少なくとも1つの照射センサ及び/又は向きセンサ及び/又は視点センサと通信するプロセッサであって、前記プロセッサは:
・通信インターフェースを介して、前記着色コーティング層のデジタル表現を受信し;
・複数の照射条件を含むユーザインターフェースプレゼンテーションを生成し、表示された複数の照射条件から照射条件を選択したことを示すユーザ入力を検出し、前記検出されたユーザ入力に応答して、前記検出されたユーザ入力に関連付けられた照射条件のデジタル表現を取得し;
・任意で、前記受信された照射条件のデジタル表現と受信されたモデルから、前記ディスプレイ装置を取り囲む周囲照射条件を計算し;
・前記受信した着色コーティング層のデジタル表現と、前記受信した照射条件のデジタル表現又はディスプレイ装置を取り囲む計算された周囲照射条件に基づいて、前記着色コーティング層の色データを生成する、
ようにプログラムされている、プロセッサと、
を備え、
前記ディスプレイ装置が、前記生成されたユーザインターフェースプレゼンテーション及び前記生成された着色コーティング層の色データを前記プロセッサから受信し、前記生成されたユーザインターフェースプレゼンテーション及び色データを表示し、
前記着色コーティング層のデジタル表現は、以下のステップ:
- カメラベースの測定装置を使用して、前記着色コーティング層の初期BTFを決定するステップと;
- 分光光度計を用いて、予め与えられた数、すなわち限られた数の異なる測定形状について、前記着色コーティング層のスペクトル反射率データをキャプチャするステップと;
- 最適化BTFを得るために、以下の式(1)の前記初期を、
【数10】
ここで、
x:サンプル/物体の表面座標
【数11】
:サンプルのベースコートでの照射と観察/視野方向
【数12】
:照射と観察方向に依存するカラーテーブル
a:アルベド又は拡散反射率
【数13】
:マイクロファセットサーフェスの光沢を表現する双方向反射率分布関数(BRDF)に対応する、k番目のCook-Torranceローブ
S
k:k番目のCook-Torranceローブの重み付け
a
k:k番目のCook-Torranceローブのベックマン分布のパラメータ
F
0,k:k番目のCook-Torranceローブのフレネル反射率
【数14】
:照射及び観察方向に依存する空間テクスチャ画像のテーブル
であり、
項
【数15】
と項
【数16】
とにセグメント化し、さらに、第1の項(F1)を、照射及び観察方向
【数17】
に依存するカラーテーブルに対応する第1サブ項と、強度関数
【数18】
に対応する第2サブ項とに分割し、
前記第2サブ項のパラメータを一定に保ちながら前記第1サブ項のパラメータを、第1最適化ステップで最適化し、及び、前記第1サブ項のパラメータを一定に保ちながら前記第2サブ項のパラメータを、第2最適化ステップで最適化することによって、前記キャプチャされたスペクトル反射率データと前記初期BTFの色差を最小化することによって前記初期BTFを前記キャプチャされたスペクトル反射率データに適合させるステップと;
によって得られる最適化された双方向テクスチャ関数(BTF)を含む、システム。
【請求項14】
非一過性のコンピュータ可読記憶媒体であって、前記コンピュータ可読記憶媒体は、コンピュータによって実行されたときに、請求項
1又は3に記載の方法によるステップを前記コンピュータに実行させる指示を含む、コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項15】
少なくとも1つの着色コーティング層でコーティングされた物体の外観を予測するための、請求項
1又は3に記載の方法又は請求項13に記載のシステムの使用。
【国際調査報告】