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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-18
(54)【発明の名称】光ファイバのクエンチ検出
(51)【国際特許分類】
   H01B 12/06 20060101AFI20240910BHJP
   G01K 11/3206 20210101ALI20240910BHJP
   A61B 5/055 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
H01B12/06
G01K11/3206 ZAA
A61B5/055 331
A61B5/055 360
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506557
(86)(22)【出願日】2022-08-05
(85)【翻訳文提出日】2024-04-01
(86)【国際出願番号】 US2022039565
(87)【国際公開番号】W WO2023014965
(87)【国際公開日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】63/230,302
(32)【優先日】2021-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】596060697
【氏名又は名称】マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100138759
【弁理士】
【氏名又は名称】大房 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100201743
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 和真
(72)【発明者】
【氏名】サラザール,エリカ
(72)【発明者】
【氏名】ハートウィグ,ザカリー
【テーマコード(参考)】
2F056
4C096
5G321
【Fターム(参考)】
2F056VF02
4C096AB46
4C096AD08
4C096CA02
4C096CA54
4C096FB04
5G321AA04
5G321BA01
5G321BA02
5G321BA03
5G321CA05
5G321CA15
5G321CA24
5G321CA26
5G321CA41
5G321CA42
5G321CA50
5G321CA99
(57)【要約】
高温超伝導体(HTS)ケーブルは、HTSケーブルの長さに沿って延在する少なくとも1つのHTSテープ積層体と、HTSケーブルに沿って延在する少なくとも1つの光ファイバとを含む。少なくとも1つの光ファイバは、少なくとも1つのHTSテープ積層体のクエンチを検出するために、HTSケーブルの長さに沿って互いに間隔をあけて配置された複数のグレーティングを有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温超伝導(HTS)ケーブルであって、
前記HTSケーブルの長さに沿って延在する少なくとも1つのHTSテープ積層体と、
前記HTSケーブルに沿って延在する少なくとも1つの光ファイバとを備え、
前記少なくとも1つの光ファイバが、前記少なくとも1つのHTSテープ積層体のクエンチを検出するために、前記HTSケーブルの前記長さに沿って互いに間隔をあけて配置された複数のグレーティングを有する、高温超伝導(HTS)ケーブル。
【請求項2】
前記HTSケーブルが、前記少なくとも1つのHTSテープ積層体の周囲にジャケットを備える、請求項1に記載のHTSケーブル。
【請求項3】
前記ジャケットが、銅を含む、請求項2に記載のHTSケーブル。
【請求項4】
前記ジャケットに少なくとも1つの溝をさらに含み、前記少なくとも1つの光ファイバが、前記少なくとも1つの溝内に配置される、請求項2または3に記載のHTSケーブル。
【請求項5】
前記少なくとも1つの溝が、前記ジャケットの外表面にある、請求項4に記載のHTSケーブル。
【請求項6】
前記少なくとも1つの溝に接着剤をさらに含み、当該接着剤が前記少なくとも1つの光ファイバを前記少なくとも1つの溝に固定する、請求項4または5に記載のHTSケーブル。
【請求項7】
フォーマをさらに含み、前記少なくとも1つのHTSテープ積層体が、前記フォーマの溝内にある、請求項1から6のいずれか1項に記載のHTSケーブル。
【請求項8】
前記フォーマが、銅を含む、請求項7に記載のHTSケーブル。
【請求項9】
前記複数のグレーティングが、ファイバブラッググレーティングである、請求項1から8のいずれか1項に記載のHTSケーブル。
【請求項10】
前記複数のグレーティングのグレーティングが、前記HTSケーブルに損傷が生じる前に前記HTSケーブル内の電流を低減し得るのに十分短い時間内にクエンチを検出するのに適した距離だけ互いに間隔をあけて配置される、請求項1から9のいずれか1項に記載のHTSケーブル。
【請求項11】
高温超伝導体(HTS)ケーブルの長さに沿って延在する少なくとも1つのHTSテープ積層体を有するHTSケーブル用のクエンチ検出システムであって、
前記HTSケーブルに沿って延在する少なくとも1つの光ファイバであって、前記少なくとも1つの光ファイバが、前記少なくとも1つのHTSテープ積層体のクエンチを検出するために、前記HTSケーブルの前記長さに沿って互いに間隔をあけて配置された複数のグレーティングを有する、少なくとも1つの光ファイバと、
前記少なくとも1つの光ファイバを照射するように構成された光源と、
前記光ファイバからの光を検出するように構成された光検出器と、
前記光検出器によって検出された光を用いて、前記複数のグレーティングのうちの1つまたは複数で温度を感知するように構成された回路と
を備える、クエンチ検出システム。
【請求項12】
ケーブルであって、
フォーマであって、当該フォーマの長さに沿って延在する開口部を有し、高温超伝導(HTS)材料を受け入れるように構成されたフォーマと、
前記フォーマにおける前記開口部の少なくとも一部に配置されたHTS材料と、
前記フォーマの周囲に配置され、前記HTS材料の少なくとも一部に近接して前記フォーマの長さに沿って延在する光ファイバとを備え、
前記光ファイバが、前記フォーマの長さに沿って互いに間隔をあけて配置された複数のグレーティングを有する、ケーブル。
【請求項13】
前記フォーマにおける前記開口部が、前記フォーマの外表面において前記フォーマの長さに沿って延在するチャネルとして設けられ、
前記HTS材料が、前記チャネルの少なくとも一部に配置されたHTSテープ積層体として用意される、請求項12に記載のケーブル。
【請求項14】
前記HTSテープ積層体の少なくとも一部の周囲に配置された導電体をさらに含む、請求項13に記載のケーブル。
【請求項15】
前記導電体が、銅を含む、請求項14に記載のケーブル。
【請求項16】
前記導電体が、当該導電体に設けられた少なくとも1つの溝を有して用意され、前記光ファイバが、前記少なくとも1つの溝内に配置される、請求項14または15に記載のケーブル。
【請求項17】
前記フォーマにおける前記開口部が、前記フォーマの複数の開口部のうちの第1の開口部であり、各開口部が、前記フォーマの長さに沿って延在してHTS材料を受け入れるように構成され、
HTS材料が、前記フォーマにおける前記複数の開口部の少なくとも一部に配置され、
前記光ファイバが、前記フォーマの周囲に配置され、前記HTS材料の少なくとも一部に近接して前記フォーマの長さに沿って延在する複数の光ファイバのうちの第1の開口部であり、前記複数の光ファイバの各々が、前記フォーマの長さに沿って互いに間隔をあけて配置された複数のグレーティングを有する、請求項12に記載のケーブル。
【請求項18】
前記フォーマにおける前記開口部が、前記フォーマの外表面において前記フォーマの長さに沿って延在するチャネルとして設けられ、
前記HTS材料が、前記チャネルの少なくとも一部に配置されたHTSテープ積層体として用意される、請求項17に記載のケーブル。
【請求項19】
前記HTSテープ積層体の少なくとも一部の周囲に配置された導電体をさらに含む、請求項18に記載のケーブル。
【請求項20】
前記導電体が銅を含む、請求項19に記載のケーブル。
【請求項21】
前記導電体において少なくとも1つの光ファイバ溝をさらに含み、前記複数の光ファイバのうちの前記少なくとも1つが、前記光ファイバ溝中に配置される、請求項19または20に記載のケーブル。
【請求項22】
前記導電体が、少なくとも1つの光ファイバ溝をさらに含み、
少なくとも1つの光ファイバが、前記少なくとも1つの光ファイバ溝内に配置される、請求項19または20に記載のケーブル。
【請求項23】
前記導電体が、複数の光ファイバ溝を有して用意され、
少なくとも1つの光ファイバが、前記複数の光ファイバ溝の各々に配置される、請求項19に記載のケーブル。
【請求項24】
光ファイバを固定するために、前記複数の光ファイバ溝に接着剤をさらに含む、請求項22または23に記載のケーブル。
【請求項25】
前記複数のグレーティングが、ファイバブラッググレーティングである、請求項12から24のいずれか1項に記載のケーブル。
【請求項26】
前記複数のグレーティングが、前記ケーブルに損傷が生じる前に前記ケーブル内の電流を低減し得るのに十分短い時間内にクエンチを検出するのに適した距離だけ互いに間隔をあけて配置される、請求項12から24のいずれか1項に記載のケーブル。
【請求項27】
核融合エネルギーシステム、磁気共鳴イメージングシステム、核磁気共鳴システム、モータ、送電システム、または粒子加速器のうちの少なくとも1つで使用される、請求項12から24のいずれか1項に記載のケーブル。
【請求項28】
高温超伝導体(HTS)ケーブルの長さに沿って延在する少なくとも1つのHTSテープ積層体を有するHTSケーブル用のクエンチ検出システムであって、
前記クエンチ検出システムが、
前記HTSケーブルに沿って延在する少なくとも1つの光ファイバであって、前記少なくとも1つの光ファイバが、前記少なくとも1つの光ファイバの前記長さに沿って互いに間隔をあけて配置された複数のグレーティングを有する、少なくとも1つの光ファイバと、
前記少なくとも1つの光ファイバを照射するように構成された光源と、
前記少なくとも1つの光ファイバからの光を検出するように構成された光検出器と、
前記光検出器によって検出された光を用いて、前記複数のグレーティングのうちの1つまたは複数で温度を感知するように構成された回路と
を備える、クエンチ検出システム。
【請求項29】
核融合エネルギーシステム、磁気共鳴イメージングシステム、核磁気共鳴システム、モータ、送電システム、または粒子加速器のうちの少なくとも1つで使用される、請求項28に記載のクエンチ検出システム。
【請求項30】
ケーブルであって、
前記ケーブルの長さに沿って延在するHTS材料と、
前記ケーブルの長さに沿って延在する複数の光ファイバであって、前記複数の光ファイバの少なくとも一部が、前記HTS材料に近接し、前記複数の光ファイバの少なくとも一部が、その長さに沿って互いに間隔をあけて配置された複数のグレーティングを有する、複数の光ファイバと
を備える、ケーブル。
【請求項31】
当該ケーブル上に配置された導電体を有し、前記複数の光ファイバが、前記導電体に埋め込まれる、請求項30に記載のケーブル。
【請求項32】
前記導電体が、複数の溝を有して用意され、前記複数の光ファイバのそれぞれが、前記溝のそれぞれに配置される、請求項31に記載のケーブル。
【請求項33】
核融合エネルギーシステム、磁気共鳴イメージングシステム、核磁気共鳴システム、モータ、送電システム、または粒子加速器のうちの少なくとも1つで使用される、請求項30から32のいずれか1項に記載のケーブル。
【請求項34】
前記複数のグレーティングが、前記ケーブルに損傷が生じる前に前記ケーブル内の電流を低減し得るのに十分短い時間内にクエンチを検出するのに適した距離だけ互いに間隔をあけて配置される、請求項30から33のいずれか1項に記載のケーブル。
【請求項35】
前記HTS材料が、少なくとも1つのHTSテープ積層体を含む、請求項31に記載のケーブル。
【請求項36】
前記複数の光ファイバにおける前記複数のグレーティングが、前記HTS材料のクエンチを検出するために、前記ケーブルの前記長さに沿って互いに間隔をあけて配置される、請求項31に記載のケーブル。
【請求項37】
前記複数のグレーティングが、ファイバブラッググレーティングである、請求項30から36のいずれか1項に記載のケーブル。
【請求項38】
ケーブルであって、
複数の高温超伝導体(HTS)構成要素と、
前記ケーブルに沿って延在する複数の導電性セグメントであって、前記複数の導電性セグメントの各々が、前記複数のHTS構成要素のうちの1つを含む、複数の導電性セグメントと、
前記複数の導電性セグメントのうち隣接する導電性セグメント同士の間に配置され、前記複数の導電性セグメントを互いに電気的に絶縁する電気絶縁材料と、
前記ケーブルの長さに沿って延在する少なくとも1つの光ファイバとを備え、
前記少なくとも1つの光ファイバが、前記ケーブルにおけるクエンチ現象を検出するために、前記少なくとも1つの光ファイバの前記長さに沿って互いに間隔をあけて配置された複数のグレーティングを有する、ケーブル。
【請求項39】
前記少なくとも1つの光ファイバが、前記複数の導電性セグメントの1つに配置される、請求項38に記載のケーブル。
【請求項40】
前記少なくとも1つの光ファイバが、前記複数の導電性セグメントのうちの2つ以上に配置される、請求項38に記載のケーブル。
【請求項41】
前記少なくとも1つの光ファイバが、前記複数の導電性セグメントの各々に配置される、請求項38に記載のケーブル。
【請求項42】
前記少なくとも1つの光ファイバが、前記複数の導電性セグメントの1つに配置された複数の光ファイバを含む、請求項38に記載のケーブル。
【請求項43】
前記少なくとも1つの光ファイバが、複数の1つの光ファイバを含み、
前記複数の導電性セグメントのうちの2つ以上が、少なくとも2つの光ファイバを含む、請求項38に記載のケーブル。
【請求項44】
前記少なくとも1つの光ファイバが、複数の1つの光ファイバを含み、複数の光ファイバが、前記複数の導電性セグメントの各々に配置される、請求項38に記載のケーブル。
【請求項45】
前記複数の導電性セグメントの上に配置された導電体を有し、前記少なくとも1つの光ファイバが、前記導電体に埋め込まれる、請求項38に記載のケーブル。
【請求項46】
前記少なくとも1つの光ファイバが、複数の光ファイバに対応し、
前記ケーブルが、同様の複数の溝を有して設けられ、
前記複数の光ファイバのそれぞれが、前記複数の溝のそれぞれに配置される、請求項45に記載のケーブル。
【請求項47】
核融合エネルギーシステム、磁気共鳴イメージングシステム、核磁気共鳴システム、モータ、送電システム、および/または粒子加速器のうちの少なくとも1つに使用される、請求項39から46のいずれか1項に記載のケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
[0001]本出願は、米国特許法第119条(e)の下、2021年8月6日に出願された「Fiber Optic Quench Detection(光ファイバのクエンチ検出)」と題する米国仮特許出願第63/230,302号の優先権を主張するものであり、この米国仮特許出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
[0002]超伝導体は、臨界温度未満では電流に対する電気抵抗がない(「超伝導性」である)材料である。多くの超伝導体では、臨界温度は30K未満であり、そのため、超伝導状態にあるこれらの材料の操作は、液体ヘリウムまたは超臨界ヘリウムで達成され得るような、かなりの冷却を用いて行われる。
【発明の概要】
【0003】
[0003]いくつかの実施形態は、高温超伝導体(HTS:high temperature superconductor)ケーブルを対象とする。HTSケーブルは、HTSケーブルの長さに沿って延在する少なくとも1つのHTSテープ積層体と、HTSケーブルに沿って延在する少なくとも1つの光ファイバとを備え、少なくとも1つの光ファイバは、少なくとも1つのHTSテープ積層体のクエンチ(quench)を検出するために、HTSケーブルの長さに沿って互いに間隔をあけて配置された複数のグレーティングを有する。
【0004】
[0004]いくつかの実施形態では、HTSケーブルは、少なくとも1つのHTSテープ積層体の周囲にジャケット(被覆材)を備える。いくつかの実施形態では、ジャケットは銅を含む。
【0005】
[0005]いくつかの実施形態では、HTSケーブルは、ジャケットに少なくとも1つの溝をさらに含み、少なくとも1つの光ファイバは、少なくとも1つの溝内に配置される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの溝はジャケットの外表面にある。いくつかの実施形態では、HTSケーブルは、少なくとも1つの溝に接着剤をさらに含み、当該接着剤が少なくとも1つの光ファイバを少なくとも1つの溝に固定する。
【0006】
[0006]いくつかの実施形態では、HTSケーブルはフォーマをさらに含み、少なくとも1つのHTSテープ積層体はフォーマの溝内にある。いくつかの実施形態では、フォーマは銅を含む。
【0007】
[0007]いくつかの実施形態では、複数のグレーティングは、ファイバブラッググレーティングである。
【0008】
[0008]いくつかの実施形態では、複数のグレーティングのグレーティングは、HTSケーブルに損傷が生じる前にHTSケーブル内の電流を低減し得るのに十分短い時間内にクエンチを検出するのに適した距離だけ互いに間隔をあけて配置される。
【0009】
[0009]いくつかの実施形態は、ケーブルを対象とし、ケーブルは、フォーマであって、その長さに沿って延在する開口部を有し、HTS材料を受け入れるように構成されたフォーマと、フォーマにおける開口部の少なくとも一部に配置されたHTS材料と、フォーマの周囲に配置され、HTS材料の少なくとも一部に近接してフォーマの長さに沿って延在する光ファイバとを備え、光ファイバは、フォーマの長さに沿って互いに間隔をあけて配置された複数のグレーティングを有する。
【0010】
[0010]いくつかの実施形態では、フォーマにおける開口部は、フォーマの外表面においてフォーマの長さに沿って延在するチャネルとして設けられ、HTS材料は、チャネルの少なくとも一部に配置されたHTSテープ積層体として用意される。
【0011】
[0011]いくつかの実施形態では、ケーブルは、HTSテープ積層体の少なくとも一部の周囲に配置された導電体をさらに含む。いくつかの実施形態では、導電体は銅を含む。いくつかの実施形態では、導電体は、当該導電体に設けられた少なくとも1つの溝を有して用意され、光ファイバは、少なくとも1つの溝内に配置される。
【0012】
[0012]いくつかの実施形態では、フォーマにおける開口部は、フォーマの複数の開口部のうちの第1の開口部であり、各開口部は、フォーマの長さに沿って延在してHTS材料を受け入れるように構成され、HTS材料は、フォーマにおける複数の開口部の少なくとも一部に配置され、光ファイバは、フォーマの周囲に配置され、HTS材料の少なくとも一部に近接してフォーマの長さに沿って延在する複数の光ファイバのうちの第1の開口部であり、複数の光ファイバの各々は、フォーマの長さに沿って互いに間隔をあけて配置された複数のグレーティングを有する。
【0013】
[0013]いくつかの実施形態では、フォーマにおける開口部は、フォーマの外表面においてフォーマの長さに沿って延在するチャネルとして設けられ、HTS材料は、チャネルの少なくとも一部に配置されたHTSテープ積層体として用意される。
【0014】
[0014]いくつかの実施形態では、ケーブルは、HTSテープ積層体の少なくとも一部の周囲に配置された導電体をさらに含む。いくつかの実施形態では、導電体は銅を含む。
【0015】
[0015]いくつかの実施形態では、ケーブルは、導電体において少なくとも1つの光ファイバ溝をさらに含み、複数の光ファイバのうちの少なくとも1つは、光ファイバ溝中に配置される。
【0016】
[0016]いくつかの実施形態では、導電体は、少なくとも1つの光ファイバ溝をさらに含み、少なくとも1つの光ファイバは、少なくとも1つの光ファイバ溝内に配置される。
【0017】
[0017]いくつかの実施形態では、導電体は、複数の光ファイバ溝を有して用意され、少なくとも1つの光ファイバは、複数の光ファイバ溝の各々に配置される。
【0018】
[0018]いくつかの実施形態では、ケーブルは、光ファイバを固定するために、複数の光ファイバ溝に接着剤をさらに含む。
【0019】
[0019]いくつかの実施形態では、複数のグレーティングは、ファイバブラッググレーティングである。
【0020】
[0020]いくつかの実施形態では、複数のグレーティングは、ケーブルに損傷が生じる前にケーブル内の電流を低減し得るのに十分短い時間内にクエンチを検出するのに適した距離だけ互いに間隔をあけて配置される。
【0021】
[0021]いくつかの実施形態では、ケーブルは、核融合エネルギーシステム、磁気共鳴イメージングシステム、核磁気共鳴システム、モータ、送電システム、または粒子加速器のうちの少なくとも1つで使用される。
【0022】
[0022]いくつかの実施形態は、ケーブルを対象とし、ケーブルは、当該ケーブルの長さに沿って延在するHTS材料と、ケーブルの長さに沿って延在する複数の光ファイバとを備え、複数の光ファイバの少なくとも一部はHTS材料に近接し、複数の光ファイバの少なくとも一部はその長さに沿って互いに間隔をあけて配置された複数のグレーティングを有する。
【0023】
[0023]いくつかの実施形態では、ケーブルは、その上に配置された導電体をさらに含み、複数の光ファイバは、導電体に埋め込まれる。いくつかの実施形態では、導電体は複数の溝を有して用意され、複数の光ファイバのそれぞれは、溝のそれぞれに配置される。
【0024】
[0024]いくつかの実施形態では、ケーブルは、核融合エネルギーシステム、磁気共鳴イメージングシステム、核磁気共鳴システム、モータ、送電システム、または粒子加速器のうちの少なくとも1つで使用される。
【0025】
[0025]いくつかの実施形態では、複数のグレーティングは、ケーブルに損傷が生じる前にケーブル内の電流を低減し得るのに十分短い時間内にクエンチを検出するのに適した距離だけ互いに間隔をあけて配置される。
【0026】
[0026]いくつかの実施形態では、HTS材料は少なくとも1つのHTSテープ積層体を含む。
【0027】
[0027]いくつかの実施形態では、複数の光ファイバにおける複数のグレーティングは、HTS材料のクエンチを検出するために、ケーブルの長さに沿って互いに間隔をあけて配置される。
【0028】
[0028]いくつかの実施形態では、複数のグレーティングは、ファイバブラッググレーティングである。
【0029】
[0029]いくつかの実施形態は、ケーブルを対象とし、ケーブルは、複数のHTS構成要素と、ケーブルに沿って延在する複数の導電性セグメントであって、複数の導電性セグメントの各々が複数のHTS構成要素のうちの1つを含む、複数の導電性セグメントと、複数の導電性セグメントのうち隣接する導電性セグメント同士の間に配置され、複数の導電性セグメントを互いに電気的に絶縁する電気絶縁材料と、ケーブルの長さに沿って延在する少なくとも1つの光ファイバとを備え、少なくとも1つの光ファイバは、ケーブルにおけるクエンチ現象を検出するために、少なくとも1つの光ファイバの長さに沿って互いに間隔をあけて配置された複数のグレーティングを有する。
【0030】
[0030]いくつかの実施形態では、少なくとも1つの光ファイバは、複数の導電性セグメントの1つに配置される。
【0031】
[0031]いくつかの実施形態では、少なくとも1つの光ファイバは、複数の導電性セグメントのうちの2つ以上に配置される。
【0032】
[0032]いくつかの実施形態では、少なくとも1つの光ファイバは、複数の導電性セグメントの各々に配置される。
【0033】
[0033]いくつかの実施形態では、少なくとも1つの光ファイバは、複数の導電性セグメントの1つに配置された複数の光ファイバを含む。
【0034】
[0034]いくつかの実施形態では、少なくとも1つの光ファイバは、複数の1つの光ファイバを含み、複数の導電性セグメントのうちの2つ以上は、少なくとも2つの光ファイバを含む。
【0035】
[0035]いくつかの実施形態では、少なくとも1つの光ファイバは、複数の1つの光ファイバを含み、複数の光ファイバは、複数の導電性セグメントの各々に配置される。
【0036】
[0036]いくつかの実施形態では、ケーブルは、複数の導電性セグメントの上に配置された導電体をさらに含み、少なくとも1つの光ファイバは、導電体に埋め込まれる。
【0037】
[0037]いくつかの実施形態では、少なくとも1つの光ファイバは、複数の光ファイバに対応し、ケーブルは、同様の複数の溝を有して用意され、複数の光ファイバのそれぞれは、複数の溝のそれぞれに配置される。
【0038】
[0038]いくつかの実施形態では、ケーブルは、核融合エネルギーシステム、磁気共鳴イメージングシステム、核磁気共鳴システム、モータ、送電システム、および/または粒子加速器のうちの少なくとも1つで使用される。
【0039】
[0039]いくつかの実施形態は、HTSケーブルの長さに沿って延在する少なくとも1つのHTSテープ積層体を有するHTSケーブル用のクエンチ検出システムを対象とする。クエンチ検出システムは、HTSケーブルに沿って延在する少なくとも1つの光ファイバであって、少なくとも1つの光ファイバが、少なくとも1つのHTSテープ積層体のクエンチを検出するために、HTSケーブルの長さに沿って互いに間隔をあけて配置された複数のグレーティングを有する、少なくとも1つの光ファイバと、少なくとも1つの光ファイバを照射するように構成された光源と、光ファイバからの光を検出するように構成された光検出器と、光検出器によって検出された光を用いて、複数のグレーティングのうちの1つまたは複数で温度を感知するように構成された回路とを備える。
【0040】
[0040]いくつかの実施形態は、高温超伝導体(HTS)ケーブルの長さに沿って延在する少なくとも1つのHTSテープ積層体を有するHTSケーブル用のクエンチ検出システムを対象とし、クエンチ検出システムは、HTSケーブルに沿って延在する少なくとも1つの光ファイバであって、少なくとも1つの光ファイバが、少なくとも1つの光ファイバの長さに沿って互いに間隔をあけて配置された複数のグレーティングを有する、少なくとも1つの光ファイバと、少なくとも1つの光ファイバを照射するように構成された光源と、少なくとも1つの光ファイバからの光を検出するように構成された光検出器と、光検出器によって検出された光を用いて、複数のグレーティングのうちの1つまたは複数で温度を感知するように構成された回路とを備える。
【0041】
[0041]いくつかの実施形態では、クエンチ検出システムは、核融合エネルギーシステム、磁気共鳴イメージングシステム、核磁気共鳴システム、モータ、送電システム、または粒子加速器のうちの少なくとも1つで使用される。
【0042】
[0042]様々な態様および実施形態が、以下の図面を参照して説明される。図面は必ずしも縮尺通りに描かれているわけではないことを諒解されたい。図面では、様々な図面に図示される同一、またはほぼ同一の各構成要素は、同じ符号で表現される。分かりやすくするため、すべての構成要素がすべての図面でラベル付けされるわけではない。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】[0043]本明細書に記載されるいくつかの実施形態による、超伝導性材料におけるクエンチ現象を検出するためのシステムの概略図である。
図2A】[0044]図2Aは、本明細書に記載されるいくつかの実施形態による、光ファイバにおけるファイバブラッググレーティング(FBG:fiber Bragg grating)の概略図である。
図2B】[0045]図2Bは、本明細書に記載されるいくつかの実施形態による、温度の関数として、FBGから反射される光の波長のシフトを示すプロットである。
図3A】[0046]図3Aは、本明細書に記載されるいくつかの実施形態による、複数のFBGを有する光ファイバの概略図である。
図3B】[0047]図3Bは、本明細書に記載されるいくつかの実施形態による、複数のFBGを有する光ファイバからの分解された反射スペクトルを示すプロットである。
図3C】[0048]図3Cは、本明細書に記載されるいくつかの実施形態による、複数のFBGを有する光ファイバからの結合された反射スペクトルを示すプロットである。
図4A】[0049]図4Aは、本明細書に記載されるいくつかの実施形態による、ULFBGを含む光ファイバを含む、クエンチを経験している高温超伝導構成要素の概略図である。
図4B】[0050]図4Bは、本明細書に記載されるいくつかの実施形態による、図3Aの高温超伝導構成要素におけるクエンチの場所に対して異なる部分に配置されたFBGからの入射スペクトルおよび反射スペクトルを示す図である。
図5A】[0051]図5Aは、本明細書に記載されるいくつかの実施形態による、高温超伝導体(HTS)ケーブルの図である。
図5B図5Bは、本明細書に記載されるいくつかの実施形態による、高温超伝導体(HTS)ケーブルの図である。
図6】[0052]本明細書に記載されるいくつかの実施形態による、HTSテープ積層体の斜視図である。
図7】[0053]図7Aは、本明細書に記載されるいくつかの実施形態による、クエンチ検出用の光ファイバを含むHTSケーブルの断面図であり、図7Bは、本明細書に記載されるいくつかの実施形態による、図5Cの光ファイバの拡大図である。
図8】[0055]本明細書に記載されるいくつかの実施形態による、クエンチを引き起こす加熱に対するFBGおよびULFBG応答ならびに電圧応答を示すプロットである。
図9】[0056]本明細書に記載されるいくつかの実施形態による、例示的なコンピューティングデバイスの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
[0057]本明細書で説明するのは、超伝導体におけるクエンチ現象を光学的に検出する技法である。これらの技法は、クエンチ現象を示す超伝導体の温度変化を検出するための光ファイバ温度計測を使用することを含む。超伝導体は、HTS材料とHTSケーブルの長さに沿って延在する1つまたは複数の光ファイバとを含む高温超伝導体(HTS)ケーブルであってもよい。光ファイバは、光ファイバの長さに沿って配置された複数のブラッググレーティングを含むことができる。光源は光ファイバを照射することができ、光検出器は光ファイバからの反射光または透過光を検出することができる。検出された光のスペクトルに基づいて、ブラッググレーティングのうちの1つまたは複数の場所における温度の変化を決定することができる。
【0045】
[0058]超伝導体は、臨界温度未満では電流に対する電気抵抗がない(「超伝導性」である)材料である。超伝導体には、通常臨界温度が30K未満で液体ヘリウムを用いて冷却される低温超伝導体(LTS:low temperature superconductor)と、臨界温度を77Kより高くすることができ、液体窒素を用いて冷却される高温超伝導体(HTS:high temperature superconductor)とがある。LTS材料とHTS材料の両方が、核融合エネルギー、高効率モータ、高効率送電、磁気共鳴イメージング(MRI)、核磁気共鳴(NMR)、および高磁場粒子加速器で応用されてきた。
【0046】
[0059]超伝導状態を維持するためには、超伝導性材料は臨界温度未満で温度を維持しなければならない。しかしながら、局所的なエネルギー散逸(例えば、超伝導体内の電流の流れによる)は、局所的な加熱を引き起こす可能性があり、制御または検出されない場合、超伝導体全体を超伝導レジームから通常の抵抗レジームに遷移させる(「クエンチ」する)熱暴走現象を引き起こす可能性がある。クエンチ現象は超伝導デバイスのダウンタイムにつながるだけでなく、超伝導デバイスの損傷にもつながる可能性がある。
【0047】
[0060]クエンチのリスクを軽減するために、クエンチ検出および保護システムを使用して、クエンチ現象を迅速に検出し、超伝導体から電流および蓄積エネルギーのすべてを取り除くことによって損傷を防止または軽減する。従来のクエンチ検出システムは、通常、超伝導体内の局所的な電圧上昇の検出に依拠するものである。しかしながら、このような電圧ベースのクエンチ検出システムは、電磁誘導によるノイズの影響を受け、誤検出および蓄積されたエネルギーの超伝導体からの不必要なダンピングをもたらす可能性があり、それによりデバイスのダウンタイムおよび/またはデバイスを損傷するリスクを増大させ得る。電圧ベースのクエンチ検出システムは電磁気的な感度があるため、頻繁な電磁干渉を経験する環境では特に難しい。このような環境の一例はトカマク核融合環境であり、この環境では、周囲の磁石およびプラズマにより頻繁に大きな電圧信号が発生し、電圧ベースのクエンチ検出システムに干渉する可能性がある。加えて、電圧ベースのクエンチ検出システムは、超伝導体と接触するために、高電圧絶縁体を通過する複数の電圧タップを必要とする。そのため、各電圧タップは超伝導体の電気絶縁に断絶をもたらし、有害な電気的現象(例えば、アーク放電、短絡)のリスクを増大させる。
【0048】
[0061]本発明者らは、光学システムが電磁干渉の影響を受けにくく、より堅牢で正確な光学ベースのクエンチ検出システムを開発するために使用され得ることを認識し、高く評価している。このような光学ベースのクエンチ検出システムは、光ファイバケーブルを超伝導体内または超伝導体に隣接して埋め込むことによりクエンチ現象を検出するために、光ファイバの温度およびひずみ応答を測定する光ファイバ温度計測を使用することができる。このような光学ベースのクエンチ検出システムで使用される光ファイバは、多数のブラッググレーティング(例えば、ファイバブラッググレーティング(FBG)、超長ファイバブラッググレーティング(ULFBG:ultra-long fiber Bragg grating))を含むことができ、これらは、ブラッググレーティングに入射するあらゆる光の部分を反射するように構成される。反射光のスペクトルは、ブラッググレーティングによって経験される温度および/またはひずみの変化を示すことができ、それにより反射光のスペクトルを分析することによってクエンチ現象が検出できる。
【0049】
[0062]したがって、本発明者らは、超伝導性材料と少なくとも1つの光ファイバとを含むケーブルを開発した。いくつかの実施形態では、超伝導性材料は、ケーブルの長さに沿って延在するHTS材料を含む。いくつかの実施形態では、HTS材料は、ケーブルの長さに沿って延在する少なくとも1つのHTSテープ積層体に配置される。HTSテープ積層体は、HTS材料のセグメントと、HTSセグメントを互いに電気的に絶縁するために隣接するHTSセグメント同士の間に配置された電気絶縁材料とを含むことができる。
【0050】
[0063]いくつかの実施形態では、ケーブルは、当該ケーブルの長さに沿って延在する開口部を有するフォーマを含むことができる。HTS材料は、フォーマの開口部の少なくとも一部に配置することができる。例えば、本明細書に記載されるHTSテープ積層体は、フォーマにおける開口部の少なくとも一部に配置することができる。
【0051】
[0064]いくつかの実施形態では、ケーブルは、当該ケーブルの長さに沿って延在する1つまたは複数の光ファイバをさらに含むことができる。光ファイバは、ケーブルの長さに沿って互いに間隔をあけて配置された複数のグレーティングを含むことができる。光ファイバは、ケーブル内の超伝導性材料のクエンチを検出するように構成することができる。いくつかの実施形態では、光ファイバはHTS材料に近接して配置することができる。いくつかの実施形態では、光ファイバはフォーマの周囲に配置することができる。
【0052】
[0065]本発明者らはさらに、超伝導性材料におけるクエンチ現象を検出するためのクエンチ検出システムを開発した。いくつかの実施形態では、超伝導性材料は、HTSケーブルの長さに沿って延在する少なくとも1つのHTSテープ積層体を含むHTSケーブルである。いくつかの実施形態では、クエンチ検出システムは、超伝導性材料の長さに沿って延在する少なくとも1つの光ファイバを含み、少なくとも1つの光ファイバは、超伝導体の長さに沿って互いに間隔をあけて配置されたグレーティング(例えば、FBG、ULFBG)を含む。
【0053】
[0066]いくつかの実施形態では、クエンチ検出システムは、光ファイバを照射するように構成された光源と、光ファイバからの光を検出するように構成された光検出器と、光検出器によって検出された光を用いて、光ファイバのグレーティングのうちの1つまたは複数で温度を感知するように構成された回路とをさらに含む。いくつかの実施形態では、光源、光検出器、および/または回路は、単一のデバイスに組み合わされてもよい(例えば、単一の筐体内に配置される)。
【0054】
[0067]以下は、クエンチ検出のための技法に関連する様々な概念およびその実施形態の、より詳細な説明である。本明細書に記載される様々な態様は、数多くの方法のいずれかで実施され得ることを諒解されたい。具体的な実装形態の例は、本明細書では単に例示目的で提供される。加えて、以下の実施形態で説明される様々な態様は、単独でまたは任意の組み合わせで使用することができ、本明細書で明示的に説明される組み合わせに限定されない。
【0055】
[0068]図1は、本明細書に記載されるいくつかの実施形態による、超伝導性材料におけるクエンチ現象を検出するためのシステム100の概略図である。図1の例示的な例では、システム100は、超伝導体110、光ファイバ120、光源130、光検出器140、回路150、ネットワーク160、およびコンピューティングシステム170を含む。システム100は例示であり、クエンチ検出システムは、図1に示された構成要素に加えて、またはその代わりに、任意の適切なタイプの1つまたは複数の他の構成要素を有していてもよいことを諒解されたい。例えば、クエンチ検出システム内に追加的な(例えば、2つ以上の)コンピューティングシステムが存在してもよい。別の例として、いくつかの実施形態では、光源130、光検出器140、および/または回路150は、単一のデバイスに組み合わされてもよい(例えば、単一の筐体内に配置される)。
【0056】
[0069]いくつかの実施形態では、超伝導体110は、任意の適切な超伝導性材料とすることができる。例えば、超伝導体110はLTSおよび/またはHTS材料を含むことができる。いくつかの実施形態では、超伝導体110は、モータ、送電、MRI、NMR、粒子加速器、および/または核融合エネルギーシステム内で使用されるような、超伝導性の電磁石および/または送電線を形成するように配置され得る。いくつかの実施形態では、超伝導体110は、本明細書で図5Aおよび図5Bに関連してより詳細に説明するように、1つまたは複数のHTSテープ積層体を含むことができる。
【0057】
[0070]いくつかの実施形態では、光ファイバ120は超伝導体110と熱的に接触していてもよい。例えば、光ファイバ120は、超伝導体110に近接して配置されてもよいし、および/または超伝導体110内に埋め込まれてもよい。図1の例は単一の光ファイバ120を示すが、本明細書で説明される技術の態様はこの点で限定されないことを諒解されたい。いくつかの実施形態では、複数の光ファイバがあってもよい。例えば、光ファイバの数は、2~50、2~25、2~10、もしくは2~7の範囲内、またはこれらの範囲内の任意の範囲内とすることができる。
【0058】
[0071]いくつかの実施形態では、光ファイバ120は、光ファイバ120の長さに沿って配置された多数のグレーティング122を含み得る。グレーティングは、特定波長の光を反射し、他の波長の光を透過するように構成された回折格子であってもよい。例えば、グレーティング122は、ファイバブラッググレーティング(FBG)または超長ファイバブラッググレーティング(ULFBG)としてもよい。図1の図は、等しく間隔をあけられた4つのグレーティング122を示しているが、本明細書に記載される技術の態様は、グレーティング122の数またはそれらの間隔に関して限定されないので、等しく間隔をあけられ得る、または非均等に間隔をあけられ得る、4つよりも多いグレーティング122が存在してもよいことを諒解されたい。いくつかの実施形態では、グレーティング122は、超伝導体110または超伝導体110を収容するデバイスの他の構成要素を損傷する前に、超伝導体110内の蓄積エネルギーを取り除くことができるように、十分に短い時間内にクエンチ現象を検出するのに適した1つまたは複数の距離だけ間隔をあけて配置することができる。
【0059】
[0072]FBGの例示的な例を図2Aに示す。光ファイバはブラッググレーティングを含み、これは光ファイバの一定の長さに渡って光ファイバコアの屈折率が周期的に変調するものである。広帯域光がブラッググレーティングに照射されると、グレーティングは特定の波長成分λだけを反射する。反射ブラッグ波長は次式で与えられる。
λ=2Λneff
【0060】
ここで、neffはコアの実効屈折率であり、Λはナノメートル単位のグレーティング周期である。FBGは温度およびひずみの両方に敏感であり、これらのパラメータの変化は、実効屈折率およびグレーティング周期の両方に影響を及ぼすため、ブラッグ波長のシフトをもたらす。
【0061】
[0073]図2Bは、本明細書に記載されるいくつかの実施形態による、温度の関数として、FBGから反射される光の波長のシフトを示すプロットである。曲線202は、約10Kの温度におけるFBGを有する光ファイバからの反射光のスペクトルであり、曲線214は、約273Kの温度における光ファイバからの反射光のスペクトルである。曲線204~212は、曲線202と214の温度の間で温度が上昇したときの単一FBGの反射光のスペクトルである。図2Bから分かるように、光ファイバのFBGによって反射されるピーク波長は、温度に応じて、曲線214で示されるような長い値から、曲線202で示されるような短い値へとシフトする。
【0062】
[0074]いくつかの実施形態では、多数のFBG、またはULFBGが光ファイバ120内に配置されてもよい。例えば、光ファイバ120は、多数のFBGが1つの長いFBGとして機能するように、グレーティング同士の間に1mmギャップの間隔をあけて配置された一連の9ミリメートル長のFBGを含むULFBGを含むことができる。このようなULFBGは、何メートルもの長さの光ファイバの温度変化を監視するのに使用できる。
【0063】
[0075]単一のFBGの反射スペクトルは単一のピークを示すが、1つのULFBGに組み合わされると、反射スペクトルはより複雑な挙動を示すことがある。複数のFBGを有するULFBGを含む光ファイバの簡単な例を図3Aに示す。FBG1に入射した光の一部は反射され、特定の波長λを持つ。残りの光はFBG1を通ってFBG2に透過する。FBG2では、FBG2が異なる特定波長の光λ≠λを反射し、残りの光をFBG3に透過するように、温度を上昇させる。FBG3はFBG2よりも温度が低いため、第3の波長の光λ≠λ≠λを反射する。その結果、いくつかの波長が、場合によっては異なる振幅で反射される。このように、光ファイバに沿ったあらゆる場所における温度の変化により、少なくとも2つの影響が生じる。すなわち、(1)従来の単一FBGの性質である、支配的な反射波長の変化、(2)反射スペクトル全体の形状の変化、である。
【0064】
[0076]図3Bで図形的に示されるように、ULFBGからの個々の反射は、従来の単一FBGと類似した明確なピークを示すことがあるが、これらの反射の合計は、図3Cに示されるように、組み合わさった不明確なスペクトルのようになることがある。これは、ULFBGの反射スペクトルが、光ファイバの長さに沿って同時に生じる温度およびひずみの変化すべてに応答し、光ファイバに沿った熱源の場所に関係なく、温度変動の迅速な検出をもたらすために起こる。
【0065】
[0077]ULFBGを有する光ファイバの熱応答の別の例を図4Aおよび図4Bに示す。図4Aは、超伝導体410、およびULFBG422を含む光ファイバ420の概略図である。超伝導体410はセクションI、II、III、およびIVに分割され、セクションIIIには超伝導体410の温度を上昇させるホットスポット412を含む。熱Qdissは、ホットスポット412からセクションIIとIVの両方に散逸する。
【0066】
[0078]図4Bは、図4Aの光ファイバ420のセクションI~セクションIVの各々における入射スペクトル(上段)および反射スペクトル(下段)を示す。入力光の元のスペクトル、および光ファイバ420からの全反射スペクトルを左に示す。図4Bに示されるように、セクションIのULFBGは波長λの光を反射し、波長λの光がセクションIIに透過するのを妨げる。セクションIIはセクションIとほぼ同じ温度なので、セクションII中のULFBGから光は反射せず、すべての光がセクションIIIに透過する。セクションIIIはホットスポット412を含むため、異なる実効屈折率を有し、セクションIII中のULFBGに波長λ≠λの光を反射させ、波長λの光がセクションIVに透過するのを妨げる。そしてやはり、セクションIVはセクションIおよびIIとほぼ同じ温度であるため、セクションIV中のULFBGによって光が反射されることはない。したがって、光ファイバからの反射スペクトルは、波長λおよびλを持つ光を含む。
【0067】
[0079]図1に戻ると、図1に示されるように、システム100は、光ファイバ120に光学的に結合された光源130および光検出器140を含む。いくつかの実施形態では、光源130は、レーザ光源、発光ダイオード(LED)光源、または任意の他の適切なタイプの光源であってもよい。光源130は、光ファイバ120に与えられる入力光132を生成するように構成され得る。例えば、光源130は、複数の波長を有する入力光132(例えば、広帯域スペクトル光)を生成するように構成することができる。いくつかの実施形態では、入力光132は、超伝導体110の動作温度における光ファイバ120のブラッグ波長の中心付近またはそれに近い複数の波長を有することがある。いくつかの実施形態では、光源130は、コヒーレントな入力光132を生成するように構成されてもよい。
【0068】
[0080]いくつかの実施形態では、光検出器140は、光ファイバ120のグレーティング122によって反射または透過される受信光142を検出するように構成され得る。例えば、光検出器140は、受信光142のスペクトルを検出するように、および/または受信光142のピーク波長を決定するように構成され得る。いくつかの実施形態では、光検出器140は、光スペクトラムアナライザ(OSA:optical spectrum analyzer)、積分球検出器、波長計、または任意の他の適切な光検出器であってもよい。
【0069】
[0081]いくつかの実施形態では、光検出器140は、回路150に結合されてもよい。回路150は、光検出器140の出力に基づいて超伝導体110の温度を決定するように構成されてもよい。例えば、回路150は、光検出器140から光スペクトルを受信して受信光スペクトルのピーク波長を決定し、そのピーク波長に対応する温度を決定するように構成され得る。回路150は、FPGA、ASIC、マイクロコントローラ、および/または他のマイクロプロセッシング技術を含むがこれらに限定されない、任意の適切な電子回路を使用して実装することができる。
【0070】
[0082]いくつかの実施形態では、システム100は、回路150に通信可能に結合されたコンピューティングシステム170を含む。コンピューティングシステム170は、回路150から情報を受信するように、および/または回路150から受信した情報を処理するように構成された任意の適切な電子デバイスであり得る。いくつかの実施形態では、コンピューティングシステム170は、デスクトップコンピュータ、ラックマウントコンピュータ、または任意の他の適切な固定電子デバイスなどの固定電子デバイスであり得る。あるいは、コンピューティングシステム170は、ラップトップコンピュータ、スマートフォン、タブレットコンピュータ、または回路150から情報を受信するように、および/もしくは回路150から受信した情報を処理するように構成され得る他の任意のポータブルデバイスなどのポータブルデバイスであってもよい。
【0071】
[0083]いくつかの実施形態では、回路150およびコンピューティングシステム170は、任意選択のネットワーク160によって通信可能に接続され得る。ネットワーク160は、ローカルエリアまたはワイドエリアの企業ネットワークおよび/またはインターネットを含む、1つまたは複数のローカルエリアおよび/またはワイドエリアの、有線および/または無線ネットワークとすることができる、またはそれらを含むことができる。したがって、ネットワーク160は、例えば、ハードワイヤードネットワーク(例えば、ある施設内のローカルエリアネットワーク)、ワイヤレスネットワーク(例えば、Wi-Fiおよび/またはセルラネットワークを介して接続されるもの)、クラウドベースのコンピューティングネットワーク、またはそれらの任意の組み合わせとすることができる。例えば、いくつかの実施形態では、超伝導体110、光ファイバ120、光源130、光検出器140、および回路150は、同一施設内に配置され、互いに直接接続されるか、ネットワーク160を介して互いに接続されてもよく、一方でコンピューティングシステム170は、遠隔施設内に配置され、ネットワーク160を介して回路150に接続されてもよい。しかしながら、本明細書で説明される技術の態様はこの点で限定されないため、いくつかの実施形態では、コンピューティングシステム170は、ネットワーク160によって接続されるのではなく、回路150に直接接続されてもよいことを諒解されたい。
【0072】
[0084]いくつかの実施形態では、コンピューティングシステム170は、クエンチ検出ファシリティ172を含み得る。クエンチ検出ファシリティ172は、光検出器140によって得られ、回路150によって処理されたデータを分析するように構成され得る。クエンチ検出ファシリティ172は、例えば、回路150によって出力された温度データを解析して、超伝導体110においてクエンチ現象が発生しようとしているか、および/または現在発生しているかを判定するように構成され得る。例えば、クエンチ検出ファシリティ172は、回路150によって出力された温度データがしきい温度値よりも大きいかどうかを判定するように構成されてもよく、ならびに/または、熱暴走現象が発生しようとしているか、および/もしくは現在発生しているかどうかを判定するために、経時的に温度データに関数をフィッティングさせるように構成されてもよい。
【0073】
[0085]いくつかの実施形態では、コンピューティングシステム170は、クエンチ軽減ファシリティ174をさらに含むことができる。クエンチ軽減ファシリティ174は、クエンチ検出ファシリティ172によるクエンチ現象であるとの判定に応答して、超伝導体110からエネルギーを除去させる命令を生成するように構成され得る。例えば、クエンチ軽減ファシリティ174は、超伝導体110に蓄積されたエネルギーを取り除くために、超伝導体110に流れる電流を除去させる(例えば、超伝導体110をシャントまたは他の方法で短絡させる)命令を生成するように構成され得る。
【0074】
[0086]本明細書で説明される技術の態様はこの点で限定されないため、クエンチ検出ファシリティ172および/またはクエンチ軽減ファシリティ174は、ハードウェア、ソフトウェア、またはハードウェアとソフトウェアの任意の適切な組み合わせとして実装され得る。図1に示されるように、クエンチ検出ファシリティ172およびクエンチ軽減ファシリティ174は、コンピューティングシステム170の1つまたは複数のプロセッサによって実行されるソフトウェア(例えば、実行可能命令)で実装されることなどによって、コンピューティングシステム170によって実装されてもよい。しかしながら、他の実施形態では、クエンチ検出ファシリティ172および/またはクエンチ軽減ファシリティ174は、追加的または代替的に、システム100の1つまたは複数の他の要素に実装されてもよい。例えば、クエンチ検出ファシリティ172および/またはクエンチ軽減ファシリティ174は、回路150に実装されてもよい。他の実施形態において、クエンチ検出ファシリティ172および/またはクエンチ軽減ファシリティ174は、システム100から遠隔に配置され、ネットワーク160を介してデータを受信するコンピューティングデバイスなど、別のデバイスにおいて、または別のデバイスとともに実装されてもよい。
【0075】
[0087]図1の例では、超伝導体110はHTSケーブルに相当してもよい。図5Aおよび図5Bから分かるように、HTSケーブル500はフォーマ516を含み、フォーマ516は、フォーマ516の外表面に設けられ、その長さに沿って延在するチャネル内に配置されたHTSテープ積層体518を有する。HTSテープ積層体518は、はんだ519を用いてそれぞれのチャネルに保持される。内側ジャケット520(例えば、銅ジャケット)はフォーマ516およびHTSテープ積層体518の周りに配置され、めっき522(例えば、銀めっき)は内側ジャケット520の上に配置されてもよい。内側ジャケット520の表面全体がめっきされてもよいが、いくつかの実施形態では、内側ジャケット520の一部のみがめっきされてもよい。したがって、図5Aに示されるように、内側ジャケット520の表面の約半分だけが、その上にめっき522を配置されて有する。内側ジャケット520の周囲には、外側ジャケット524(例えば、スチール製またはステンレス製ジャケット)が配置される。
【0076】
[0088]この例示的な実施形態では、ケーブル500は、1つまたは複数のジャケットに囲まれた導電性(例えば、銅製)フォーマ中に複数のチャネルを有する。各チャネルはHTSテープ積層体を有し、金属(例えば、はんだ)が充填される。ケーブル500はまた、任意選択で冷却チャネル529を含む。
【0077】
[0089]図5Bに示されるように、例示的なチャネルの幅はW1であり、フォーマ516の直径はD1であり、内側ジャケット520の直径はD2であり、外側ジャケット524の直径はD3である。いくつかの実施形態では、内側ジャケット520は銅からなってもよく、外側ジャケット524はステンレス鋼からなってもよい。しかし、これは単なる例示であり、ジャケットおよびフォーマには他の適切な材料を使用することができる。
【0078】
[0090]次に図6を参照すると、例示的なHTSテープ積層体600は、第1の安定化層に対応する第1の層602を含む(ここでは安定化層602は銅を含む)。層602の上にはオーバレイ層604(ここではオーバレイ602は銀を含む)が配置される。層604の上には基板606が配置される。この例では、基板606は、任意の適切な材料から用意することができ、電解研磨された表面を有して用意される。バッファ積層体608は基板606の上に配置される。この例では、バッファ積層体608は、マグネトロンスパッタリング技術を用いて配置された1つまたは複数の材料を含み得る。HTS材料610は、バッファ積層体608の上に配置される。この例示的な実施形態では、HTS材料は、イットリウムバリウム銅酸化物(YBCO)などの希土類バリウム銅酸化物超伝導体(REBCO)を含むことができる。HTS材料層610の上に配置されているのはオーバレイヤ612であり、オーバレイ612の上に配置されているのは第2の安定化層614である。オーバレイヤ612および安定化層614は、上述したような、それぞれオーバレイ604および安定化層602と同じ材料からなってもよい。
【0079】
[0091]次に図7Aおよび図7Bを参照すると、HTSケーブル700は、光ファイバ712を受け入れるように構成された1つまたは複数の溝710を含むことができる。図7Aおよび図7Bに示されるように、溝710は、HTSケーブル700の内側ジャケット520の外側表面に配置することができる。いくつかの実施形態では、溝710は、HTSケーブル700の他の表面(例えば、内側ジャケット520の内面、冷却チャネル529の内面)に配置されてもよい。
【0080】
[0092]溝710は、いくつかの実施形態では、HTSケーブル700の長さに沿って延在することができる。溝は、図7Aの例に示すように、HTSケーブル700の片側に配置することができる。いくつかの実施形態では、溝710および光ファイバ712は、ケーブル700の円周の、その全体を含め、より小さいまたはより大きい部分の周囲に配置されてもよい。
【0081】
[0093]いくつかの実施形態では、光ファイバ712は接着剤を使用して溝710に固定することができる。例えば、光ファイバ712は、光ファイバ712とフォーマ516とHTSテープ積層体518との間の熱結合を確実にするために、熱伝導性接着剤(例えば、銀接着剤)を用いて溝710に固定することができる。
【0082】
[0094]光ファイバ712は、HTSケーブル700内またはその近傍の任意の位置に配置することができる。いくつかの実施形態では、光ファイバ712は、溝(例えば、溝710)内に配置されるのではなく、HTSケーブル700の表面上に配置されてもよい。例えば、光ファイバ712は、接着剤(例えば、熱伝導性接着剤)を用いて、HTSケーブル700の任意の適切な表面(例えば、内側ジャケット520の外面または内面、冷却チャネル529の内面)に接着することができる。
【0083】
[0095]次に図8を参照すると、光学クエンチ検出システムと電圧ベースのクエンチ検出システムとを比較する実験から収集されたデータが示される。曲線802は、ヒータによる超伝導体への熱パルスの印加を示す。縦の破線は、熱パルス印加の開始(左)と熱パルス印加の終了(右)を示す。曲線804は、熱パルス印加の部位の測定温度を示す。曲線806および808は、それぞれULFBGとFBGを有する光ファイバを用いて決定された信号を示し、曲線810および812は超伝導体の異なるノードで取られた電気的測定値である。図8から分かるように、曲線806および808は、曲線810の電気的測定値とほぼ同じ時間応答を示しており、光クエンチ検出が超伝導性材料におけるクエンチ現象を検出するための堅牢かつ正確な技法であることを示している。
【0084】
[0096]いくつかの実施形態では、本明細書に記載される技法は、アプリケーションソフトウェア、システムソフトウェア、ファームウェア、ミドルウェア、組み込みコード、または任意の他の適切なタイプのコンピュータコードを含め、ソフトウェアとして実装されるコンピュータ実行可能命令で具体化され得る。このようなコンピュータ実行可能命令は、多数の適切なプログラミング言語および/またはプログラミングツールもしくはスクリプティングツールのいずれかを使用して記述することができ、フレームワークまたは仮想マシン上で実行される実行可能機械語コードまたは中間コードとしてコンパイルすることもできる。
【0085】
[0097]本明細書に記載される技法がコンピュータ実行可能命令として具体化される場合、これらのコンピュータ実行可能命令は、これらの技法に従って動作するアルゴリズムの実行を完了するための1つまたは複数の動作をそれぞれが実現する多数の機能ファシリティとしてなど、任意の適切な方法で実施することができる。「機能ファシリティ」とは、どのようにインスタンス化されたものであれ、1つまたは複数のコンピュータと統合され、1つまたは複数のコンピュータによって実行されるとき、1つまたは複数のコンピュータに特定の動作上の役割を実行させる、コンピューティングシステムの構造的な構成要素である。機能ファシリティは、ソフトウェア要素の一部であってもよいし、ソフトウェア要素全体であってもよい。例えば、機能ファシリティは、プロセスの機能として、または離散プロセスとして、または任意の他の適切な処理単位として実装することができる。本明細書に記載される技法が複数の機能ファシリティとして実装される場合、各機能ファシリティは独自の方法で実装されてもよく、すべてが同じ方法で実装される必要はない。加えて、これらの機能ファシリティは、適宜、並列におよび/または順次に実行することができ、それらが実行されているコンピュータ上の共有メモリを使用して、メッセージ受け渡しプロトコルを使用して、または任意の他の適切な方法で、互いの間で情報を渡すことができる。
【0086】
[0098]一般に、機能ファシリティは、特定のタスクを実行する、または特定の抽象データ型を実装するルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構造などを含む。通常、機能ファシリティの機能は、それらが動作するシステムにおいて所望に応じて組み合わせてもよいし、分散させてもよい。いくつかの実装形態では、本明細書の技法を遂行する1つまたは複数の機能ファシリティは、ともに完全なソフトウェアパッケージを形成することができる。これらの機能ファシリティは、代替実施形態では、例えば胎児心臓分析ファシリティのようなソフトウェアプログラムアプリケーションとして、ソフトウェアプログラムアプリケーションを実装するために、他の無関係な機能ファシリティおよび/またはプロセスと相互作用するように適合させることができる。
【0087】
[0099]本明細書では、1つまたは複数のタスクを遂行するためのいくつかの例示的な機能ファシリティについて説明した。しかしながら、記載された機能ファシリティおよびタスクの分割は、本明細書に記載される例示的な技術を実装することができる機能ファシリティのタイプの単なる例示であり、実施形態は、特定の数、分割、または機能ファシリティのタイプで実装されることに限定されないことを諒解されたい。いくつかの実装形態では、すべての機能が単一の機能ファシリティに実装されることがある。また、いくつかの実装形態では、本明細書に記載される機能ファシリティのいくつかは、他のものと一緒に、または他のものとは別に(すなわち、単一ユニットとして、または別個のユニットとして)実装されてもよく、あるいはこれらの機能ファシリティのいくつかは実装されなくてもよいことを諒解されたい。
【0088】
[0100]本明細書で記載される技法を実装するコンピュータ実行可能命令(1つまたは複数の機能ファシリティとして、または任意の他の方法で実装される場合)は、いくつかの実施形態では、1つまたは複数のコンピュータ可読媒体上に符号化されて、機能を媒体に提供することができる。コンピュータ可読媒体としては、ハードディスクドライブなどの磁気媒体、コンパクトディスク(CD)またはデジタルバーサタイルディスク(DVD)などの光学媒体、永続的または非永続的なソリッドステートメモリ(例えば、フラッシュメモリ、磁気RAMなど)、または任意の他の適切な記憶媒体が挙げられる。このようなコンピュータ可読媒体は、以下に説明する図9のコンピュータ可読記憶媒体906として(すなわち、コンピューティングデバイス900の一部として)、またはスタンドアロンの別個の記憶媒体としてを含めて、任意の適切な方法で実装され得る。本明細書で使用される場合、「コンピュータ可読媒体」(「コンピュータ可読記憶媒体」とも呼ばれる)は、有形の記憶媒体を指す。有形の記憶媒体は非一時的なもので、少なくとも1つの物理的、構造的な構成要素を有する。本明細書で使用される場合、「コンピュータ可読媒体」において、少なくとも1つの物理的、構造的な構成要素は、情報が埋め込まれた媒体を作成するプロセス、そこに情報を記録するプロセス、または情報を有する媒体を符号化する任意の他のプロセスの間、何らかの方法で改変され得る少なくとも1つの物理的性質を有する。例えば、コンピュータ可読媒体の物理的構造の一部の磁化状態は、記録プロセス中に改変される可能性がある。
【0089】
[0101]技法がコンピュータ実行可能命令として具体化され得る、すべてではないがいくつかの実装形態において、これらの命令は、図9の例示的なコンピュータシステムを含む、任意の適切なコンピュータシステムにおいて動作する1つもしくは複数の適切なコンピューティングデバイス上で実行され得るか、または1つもしくは複数のコンピューティングデバイス(または1つもしくは複数のコンピューティングデバイスの1つもしくは複数のプロセッサ)は、コンピュータ実行可能命令を実行するようにプログラムされ得る。コンピューティングデバイスまたはプロセッサは、命令が、データストア(例えば、オンチップキャッシュまたは命令レジスタ、バスを介してアクセス可能なコンピュータ可読記憶媒体、1つまたは複数のネットワークを介してアクセス可能で、デバイス/プロセッサによってアクセス可能なコンピュータ可読記憶媒体など)などに、コンピューティングデバイスまたはプロセッサからアクセス可能な方法で記憶されている場合に、命令を実行するようにプログラムされ得る。これらのコンピュータ実行可能命令を含む機能ファシリティは、単一の多目的プログラマブルデジタルコンピューティングデバイス、処理能力を共有して本明細書に記載される技法を共同で遂行する2つ以上の多目的コンピューティングデバイスの協調システム、本明細書に記載される技法を実行する専用の単一のコンピューティングデバイスもしくはコンピューティングデバイスの協調システム(ともに配置されるか、地理的に分散される)、本明細書に記載される技法を遂行するための1つもしくは複数のフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、または任意の他の適切なシステムと統合され、その動作を指示することができる。
【0090】
[0102]図9は、本明細書に記載される技法を実装するシステムにおいて使用され得るコンピューティングデバイス900の形態におけるコンピューティングデバイスの1つの例示的な実装形態を示すが、他の実装形態も可能である。図9は、コンピューティングシステムが本明細書に記載の原理に従ってクエンチ検出システムおよび/またはクエンチ軽減システムとして動作するために必要な構成要素の描写でもなく、包括的な描写でもないことを意図されることを諒解されたい。
【0091】
[0103]コンピューティングデバイス900は、少なくとも1つのプロセッサ902、ネットワークアダプタ904、およびコンピュータ可読記憶媒体906を含むことができる。コンピューティングデバイス900は、例えば、デスクトップまたはラップトップのパーソナルコンピュータ、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、スマート携帯電話、または任意の他の適切なコンピューティングデバイスとすることができる。ネットワークアダプタ904は、コンピューティングデバイス900が、任意の適切なコンピューティングネットワークを介して、他の任意の適切なコンピューティングデバイスと有線および/または無線で通信することを可能にする、任意の適切なハードウェアおよび/またはソフトウェアであり得る。コンピューティングネットワークは、無線アクセスポイント、スイッチ、ルータ、ゲートウェイ、および/または他のネットワーク機器、ならびにインターネットを含め、2つ以上のコンピュータ間でデータを交換するための任意の適切な有線および/または無線の通信媒体を含むことができる。コンピュータ可読媒体906は、プロセッサ902によって処理されるデータおよび/または実行される命令を記憶するように適合させることができる。プロセッサ902は、データの処理および命令の実行を可能にする。データおよび命令は、コンピュータ可読記憶媒体906に記憶することができる。
【0092】
[0104]コンピュータ可読記憶媒体906に記憶されたデータおよび命令は、本明細書に記載される原理に従って動作する技法を実装するコンピュータ実行可能命令を含むことができる。図9の例では、コンピュータ可読記憶媒体906は、上述のように、様々なファシリティを実装し、様々な情報を記憶するコンピュータ実行可能命令を記憶する。コンピュータ可読記憶媒体906は、光ファイバ温度計測データからクエンチ現象を示す情報を導出するように構成されたクエンチ検出ファシリティ908、および/または、クエンチ現象が検出された場合に超伝導性材料から蓄積エネルギーを除去させるように構成されたクエンチ軽減ファシリティ910を記憶することができる。
【0093】
[0105]図9には図示されていないが、コンピューティングデバイスは、さらに、入力および出力デバイスを含む、1つまたは複数の構成要素および周辺機器を有することができる。これらのデバイスは、とりわけユーザインターフェースを提示するために使用することができる。ユーザインターフェースを提供するために使用できる出力デバイスの例としては、出力の視覚的な提示用のプリンタまたはディスプレイスクリーン、および出力の聴覚的な提示用のスピーカまたはその他のサウンド生成デバイスが挙げられる。ユーザインターフェース用に使用できる入力デバイスの例としては、キーボード、およびマウス、タッチパッド、デジタイズタブレットなどのポインティングデバイスが挙げられる。別の例として、コンピューティングデバイスは、音声認識または他の可聴フォーマットで入力情報を受け取ることができる。
【0094】
[0106]このように、本技術の少なくとも1つの実施形態のいくつかの態様を説明したが、当業者には様々な変更、修正、および改良が容易に生じることが理解されよう。
【0095】
[0107]本明細書で記載される技術の様々な態様は、単独で、組み合わせて、または前述で説明した実施形態に具体的に記載されていない様々な配置構成で使用することができ、したがって、前述した説明で規定したまたは図面に図示した構成要素の詳細および配置構成への適用において限定されるものではない。例えば、一実施形態に記載された態様は、他の実施形態に記載された態様と任意の方法で組み合わせることができる。
【0096】
[0108]請求項要素を修飾する、請求項における「第1の(first)」、「第2の(second)」、「第3の(third)」などの序数詞の使用は、それ自体、優先順位、先行順位、またはある請求項要素の他の請求項要素に対する順序、または方法の行為が実行される時間的順序を意味するものではなく、請求項要素を区別するために、ある名称を有する1つの請求項要素を、同じ名称を有する(ただし序数詞を使用する)別の要素から区別するためのラベルとして使用されるにすぎない。
【0097】
[0109]また、本明細書で使用される語句および用語は、説明のためのものであり、限定的なものとみなされるべきではない。本明細書において、「含む(including)」、「含む、備える、(comprising)」、または「有する(having)」、「含有する(containing)」、「関与する(involving)」、およびそれらの変形の使用は、その後に列挙される項目およびその均等物、ならびに追加的な項目を包含することを意味する。
【0098】
[0110]用語「約、ほぼ(approximately)」および「約(about)」は、いくつかの実施形態では目標値の±20%以内、いくつかの実施形態では目標値の±10%以内、いくつかの実施形態では目標値の±5%以内、いくつかの実施形態では目標値の±2%以内を意味するために使用され得る。用語「約、ほぼ(approximately)」および「約(about)」は、目標値を含む場合がある。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】