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特表2024-533975PI3Kアイソフォームアルファを阻害する化合物及びがんを処置するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-18
(54)【発明の名称】PI3Kアイソフォームアルファを阻害する化合物及びがんを処置するための方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 405/12 20060101AFI20240910BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240910BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240910BHJP
   A61K 31/4184 20060101ALI20240910BHJP
   C07D 471/04 20060101ALI20240910BHJP
   A61K 31/437 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
C07D405/12 CSP
A61P35/00
A61P43/00 111
A61K31/4184
C07D471/04 107E
A61K31/437
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506896
(86)(22)【出願日】2022-08-08
(85)【翻訳文提出日】2024-03-12
(86)【国際出願番号】 US2022039674
(87)【国際公開番号】W WO2023018636
(87)【国際公開日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】63/231,156
(32)【優先日】2021-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523104074
【氏名又は名称】スコーピオン セラピューティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】セント ジーン, デイビッド ジュニア
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC39
4C086CB05
4C086GA16
4C086MA02
4C086MA05
4C086NA14
4C086ZB26
(57)【要約】
本開示は、ホスファチジルイノシトール4,5-ビスリン酸3-キナーゼ(PI3K)アイソフォームアルファ(PI3Kα)を阻害する式(I)の化合物、及びその医薬として許容される塩を提供する。これらの化学物質は、例えば、増加した(例えば、過剰な)PI3Kα活性化が対象(例えば、ヒト)における病態、疾患、または障害(例えば、がん)の病理及び/または症状及び/または進行の一因となる、病態、疾患、または障害を処置するのに有用である。本開示はまた、それを含有する組成物ならびにその使用方法及び作製方法も提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物:
【化92】

またはその医薬として許容される塩であって、式中、
Zが、OまたはNRであり、
が、水素、C1~C6アルキル、またはC3~C6シクロアルキルであり、
各Rが、独立して選択されるハロゲンであり、
mが、0、1、2、または3であり、
が、ハロゲン、C1~C6アルキル、C1~C6ハロアルキル、1つまたは2つのフルオロにより任意選択で置換されるC3~C6シクロアルキルであり、
が、C1~C6アルキル、C1~C6ハロアルキル、または1つもしくは2つのフルオロにより任意選択で置換されるC3~C6シクロアルキルであり、
、X、X、及びXが、各々独立して、N、CH、またはCRであり、ここで、X、X、X、及びXのうちの2つ以下が、Nであることができ、
各Rが独立して、ハロゲン、-NRにより任意選択で置換されるC1~C6アルキル、C1~C6アルコキシ、C1~C6ハロアルキル、ヒドロキシル、シアノ、-COH、
-NR、-C(=O)NR、-SO(NR)、-SO(C1~C6アルキル)、-S(=O)(=NH)(C1~C6アルキル)、
-C(=O)(C1~C6アルキル)、-CO(C1~C6アルキル)、フェニル、5~6員ヘテロアリール、及び各々が1つまたは2つの独立して選択されるRにより任意選択で置換される3~6員ヘテロシクリルまたは3~6シクロアルキルからなる群から選択され、
各R、RA1、R、RB1、R、RC1、R、RD1、R、及びRが独立して、水素、Rにより任意選択で置換されるC1~C6アルキル、C1~C6ハロアルキル、-C(=O)(C1~C6アルキル)、または-SO(C1~C6アルキル)であるか、あるいは
及びRが、それらに結合している窒素原子と一緒に、4~6員ヘテロシクリルを形成し、
各Rが独立して、フルオロ、ヒドロキシル、シアノ、C1~C6アルキル、C1~C6アルコキシ、-NRA1B1、-C(=O)NRC1D1、及び-COHからなる群から選択される、前記化合物、または前記その医薬として許容される塩。
【請求項2】
mが1である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
mが2である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
各Rが独立して、フルオロ及びクロロから選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
各Rが、フルオロである、請求項1~4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
mが0である、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
、X、X、及びXのうちの1つが、CRであり、その他の3つのX、X、X、及びXが、NまたはCHであるか、あるいは
、X、X、及びXのうちの2つが、独立して選択されるCRであり、その他の2つのX、X、X、及びXが、NまたはCHであるか、あるいは
、X、X、及びXのうちの1つが、CRであり、その他の3つのX、X、X、及びXが、CHであるか、あるいは
、X、X、及びXのうちの2つが、独立して選択されるCRであり、その他の2つのX、X、X、及びXが、CHであるか、あるいは
、X、X、及びXのうちの1つが、CRであり、その他の3つのX、X、X、及びXが、Nであるか、あるいは
、X、X、及びXのうちの2つが、独立して選択されるCRであり、その他の2つのX、X、X、及びXが、Nであるか、あるいは
、X、X、及びXが、X及びXに隣接した炭素原子と一緒に、フェニル、ピリジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、またはピラジニル環を形成する、請求項1~6のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
式(I-a)の構造:
【化93】

を有し、式中、
1Aが、ハロゲンであり、
1Bが、ハロゲンであるか、または不在であり、
及びXが、各々独立して、NまたはCHである、請求項1に記載の化合物、またはその医薬として許容される塩。
【請求項9】
1A及びR1Bが各々、独立して選択されるハロゲンである、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
1A及びR1Bが各々、フルオロであるか、あるいは
1Aが、フルオロであり、R1Bが、不在であるか、あるいは
1Aが、フルオロであり、R1Bが、クロロである、請求項8に記載の化合物。
【請求項11】
が、C1~C6アルキルである、請求項1~10のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項12】
が、メチルである、請求項1~11のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項13】
が、C1~C6ハロアルキルである、請求項1~10のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項14】
が、ジフルオロメチルまたはトリフルオロメチルである、請求項1~10及び13のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項15】
が、ハロゲンである、請求項1~10のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項16】
が、クロロである、請求項1~10及び15のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項17】
が、1つまたは2つのフルオロにより任意選択で置換されるC3~C6シクロアルキルである、請求項1~10のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項18】
が、1つまたは2つのフルオロで置換されたC3~C6シクロアルキルである、請求項1~10及び17のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項19】
が、非置換C3~C6シクロアルキルである、請求項1~10及び17のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項20】
が、シクロプロピルである、請求項19に記載の化合物。
【請求項21】
が、C1~C6アルキルである、請求項1~20のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項22】
が、メチルである、請求項1~21のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項23】
が、C1~C6ハロアルキルである、請求項1~20のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項24】
が、トリフルオロメチルである、請求項1~20及び23のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項25】
が、1つまたは2つのフルオロにより任意選択で置換されるC3~C6シクロアルキルである、請求項1~20のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項26】
が、1つまたは2つのフルオロで置換されたC3~C6シクロアルキルである、請求項1~20及び25のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項27】
が、非置換C3~C6シクロアルキルである、請求項1~20及び25のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項28】
が、シクロプロピルである、請求項1~20及び27のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項29】
が、ハロゲンである、請求項1~28のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項30】
が、C1~C6アルキルである、請求項1~28のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項31】
が、C1~C6アルコキシである、請求項1~28のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項32】
が、C1~C6ハロアルキルである、請求項1~28のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項33】
が、ヒドロキシル、シアノ、または-COHである、請求項1~28のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項34】
が、-NR、-C(=O)NR、-C(=O)(C1~C6アルキル)、または-CO(C1~C6アルキル)である、請求項1~28のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項35】
1つのRが、-SO(NR)、-SO(C1~C6アルキル)、または-S(=O)(=NH)(C1~C6アルキル)である、請求項1~28のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項36】
が、1~2つの独立して選択されるRにより任意選択で置換されるフェニルである、請求項1~28のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項37】
が、1~2つの独立して選択されるRで置換されたフェニルである、請求項1~28及び36のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項38】
が、1~2つの独立して選択されるRにより任意選択で置換される5~6員ヘテロアリールである、請求項1~28のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項39】
が、1~2つの独立して選択されるRで置換された5~6員ヘテロアリールである、請求項1~28及び38のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項40】
が、1つまたは2つの独立して選択されるRにより任意選択で置換される3~6員ヘテロシクリルである、請求項1~28のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項41】
が、1つまたは2つの独立して選択されるRで置換された3~6員ヘテロシクリルである、請求項1~28及び40のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項42】
Zが、Oである、請求項1~41のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項43】
Zが、NRである、請求項1~41のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項44】
前記式(I)の化合物、または前記その医薬として許容される塩が、表A、表B、もしくは表Cにある化合物、または上述のもののうちのいずれかの医薬として許容される塩から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項45】
請求項1~44のいずれか1項に記載の化合物、またはその医薬として許容される塩と、医薬として許容される希釈剤または担体とを含む、医薬組成物。
【請求項46】
がんの処置を必要とする対象において前記がんを処置するための方法であって、前記対象に、治療上有効量の請求項1~44のいずれか1項に記載の化合物もしくはその医薬として許容される塩、または請求項45に記載の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項47】
がんの処置を必要とする対象において前記がんを処置するための方法であって、(a)前記がんがPIK3CA遺伝子、PI3Kαタンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全に関連すると判定することと、(b)前記対象に、治療上有効量の請求項1~44のいずれか1項に記載の化合物もしくはその医薬として許容される塩、または請求項45に記載の医薬組成物を投与することと、を含む、前記方法。
【請求項48】
対象においてPI3Kα関連がんを処置する方法であって、PI3Kα関連がんを有すると特定または診断された対象に、治療上有効量の請求項1~44のいずれか1項に記載の化合物もしくはその医薬として許容される塩、または請求項45に記載の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項49】
対象においてPI3Kα関連がんを処置する方法であって、
(a)前記対象における前記がんがPI3Kα関連がんであると判定することと、
(b)前記対象に、治療上有効量の請求項1~44のいずれか1項に記載の化合物もしくはその医薬として許容される塩、または請求項45に記載の医薬組成物を投与することと、を含む、前記方法。
【請求項50】
対象を処置する方法であって、治療上有効量の請求項1~44のいずれか1項に記載の化合物もしくはその医薬として許容される塩、または請求項45に記載の医薬組成物を、PIK3CA遺伝子、PI3Kαタンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全を有することを示す診療録を有する前記対象に投与することを含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ホスファチジルイノシトール4,5-ビスリン酸3-キナーゼ(PI3K)アイソフォームアルファ(PI3Kα)を阻害する式(I)の化合物、及びその医薬として許容される塩を提供する。これらの化学物質は、例えば、増加した(例えば、過剰な)PI3Kα活性化が対象(例えば、ヒト)における病態、疾患、または障害(例えば、がん)の病理及び/または症状及び/または進行の一因となる、病態、疾患、または障害を処置するのに有用である。本開示はまた、それを含有する組成物ならびにその使用方法及び作製方法も提供する。
【背景技術】
【0002】
PIK3CA遺伝子によってコードされる、ホスファチジルイノシトール4,5-ビスリン酸3-キナーゼ(PI3K)アイソフォームアルファ(PI3Kα)は、PI3K/AKT/TORシグナル伝達ネットワークの一部であり、いくつかのヒトがんにおいて変化している。数人の研究者らは、PI3K/AKTシグナル伝達の役割が、代謝、細胞成長、増殖、血管新生、及び転移等の腫瘍進行を駆動する生理学的及び病態生理学的機能に関与することを示している(Fruman,D.A.The PI3K Pathway in Human Disease.Cell 2017,170,605-635及びJanku,F.et al.,Targeting the PI3K pathway in cancer:Are we making headway?Nat.Rev.Clin.Oncol.2018,15,273-291を参照されたい)。PI3K/AKT/TORシグナル伝達の抑制(例えば、薬理学的または遺伝子的)は、がん細胞死及び腫瘍増殖の退行を引き起こす可能性がある。
【0003】
PI3K経路は、例えば、PIK3CA遺伝子の点変異(複数可)を介して、またはホスファターゼ・テンシンホモログ(PTEN)遺伝子の不活性化を介して活性化され得る。この経路の活性化は、およそ30~50%のヒトがんにおいて起こり、種々の抗がん療法に対する耐性の一因となる(Martini,M.et al.,PI3K/AKT signaling pathway and cancer:An updated review.Ann.Med.2014,46,372-383及びBauer,T.M.et al.,Targeting PI3 kinase in cancer.Pharmacol.Ther.2015,146,53-60を参照されたい)。PI3Kは、p85調節サブユニット、p55調節サブユニット、及びp110触媒サブユニットの3つのサブユニットからなる。それらの異なる構造及び特異的基質に従って、PI3Kは、クラスI、II、及びIIIの3つのクラスに分類される。クラスI PI3Kは、クラスIA及びクラスIB PI3Kを含む。p85調節サブユニット及びp110触媒サブユニットのヘテロ二量体であるクラスIA PI3Kは、ヒトがんに最も明確に関連付けられている種類である。クラスIA PI3Kは、異なる遺伝子(それぞれPIK3CA、PIK3CB、及びPIK3CD)から産生されるp110α、p110β、及びp110δ触媒サブユニットを含む一方で、PIK3CGによって産生されるp110γは、クラスIB PI3Kにおける唯一の触媒サブユニットに相当する。p110αサブユニットをコードする遺伝子であるPIK3CAは、乳癌、結腸癌、胃癌、子宮頸癌、前立腺癌、及び肺癌等の多くのヒトがんにおいて高頻度で変異または増幅している(Samuels Y,et al.High frequency of mutations of the PIK3CA gene in human cancers.Science.2004;304:554を参照されたい)。
【0004】
しかしながら、PI3K阻害剤の開発は、(i)PI3Kの治療的阻害時の適応性分子機構、(ii)内因性p110αに危害を与えないようにしながらPIK3CA変異によるシグナル伝達を特異的に阻害する能力の欠如、(iii)強力な機構的支持が報告されるものを含む合理的組み合わせでのこれらの治療法の使用の制限、及び(iv)持続的なPI3K経路抑制を阻止する用量制限毒性を含めた、いくつかの理由で難問となっている(Hanker et al.,Challenges for the Clinical Development of PI3K Inhibitors:strategies to Improve Their Impact in solid Tumors,Cancer Discovery,April 2019;9:482-491を参照されたい)。追加として、臨床研究及びインビトロ基礎研究の両方から導き出された、PI3K阻害剤に対する感受性を低減するHRAS及びKRAS変異等の、PI3Kシグナル伝達に影響を及ぼす他の因子及び代償経路が存在する(そしてこれらのノックダウンは、PI3K阻害剤に対する感受性を改善することが示されている)(Misrha,R.;PI3K Inhibitors in Cancer:Clinical Implications and Adverse Effects.Int.J.Mol.Sci.2021,22,3464を参照されたい)。
PIK3CAにおけるドメイン欠失は、PI3Kシグナル伝達を顕著に活性化し得、またPI3K阻害剤に対する感受性も増強し得る(Croessmann,S.et al.,Clin.Cancer Res.2018,24,1426-1435を参照されたい)。故に、PI3Kαの標的化は、がん等の増殖性障害の処置のための方策を表す。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Fruman,D.A.The PI3K Pathway in Human Disease.Cell 2017,170,605-635
【非特許文献2】Janku,F.et al.,Targeting the PI3K pathway in cancer:Are we making headway?Nat.Rev.Clin.Oncol.2018,15,273-291
【非特許文献3】Martini,M.et al.,PI3K/AKT signaling pathway and cancer:An updated review.Ann.Med.2014,46,372-383
【非特許文献4】Bauer,T.M.et al.,Targeting PI3 kinase in cancer.Pharmacol.Ther.2015,146,53-60
【非特許文献5】Samuels Y,et al.High frequency of mutations of the PIK3CA gene in human cancers.Science.2004;304:554
【非特許文献6】Hanker et al.,Challenges for the Clinical Development of PI3K Inhibitors:strategies to Improve Their Impact in solid Tumors,Cancer Discovery,April 2019;9:482-491
【非特許文献7】Misrha,R.;PI3K Inhibitors in Cancer:Clinical Implications and Adverse Effects.Int.J.Mol.Sci.2021,22,3464
【非特許文献8】Croessmann,S.et al.,Clin.Cancer Res.2018,24,1426-1435
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
いくつかの実施形態は、式(I)の化合物:
【化1】

またはその医薬として許容される塩を提供し、式中、
Zが、OまたはNRであり、
が、水素、C1~C6アルキル、またはC3~C6シクロアルキルであり、
各Rが、独立して選択されるハロゲンであり、
mが、0、1、2、または3であり、
が、ハロゲン、C1~C6アルキル、C1~C6ハロアルキル、1つまたは2つのフルオロにより任意選択で置換されるC3~C6シクロアルキルであり、
が、C1~C6アルキル、C1~C6ハロアルキル、または1つもしくは2つのフルオロにより任意選択で置換されるC3~C6シクロアルキルであり、
、X、X、及びXが、各々独立して、N、CH、またはCRであり、ここで、X、X、X、及びXのうちの2つ以下が、Nであることができ、
各Rが独立して、ハロゲン、-NRにより任意選択で置換されるC1~C6アルキル、C1~C6アルコキシ、C1~C6ハロアルキル、ヒドロキシル、シアノ、-COH、-NR、-C(=O)NR、-SO(NR)、-SO(C1~C6アルキル)、-S(=O)(=NH)(C1~C6アルキル)、-C(=O)(C1~C6アルキル)、-CO(C1~C6アルキル)、フェニル、5~6員ヘテロアリール、及び各々が1つまたは2つの独立して選択されるRにより任意選択で置換される3~6員ヘテロシクリルまたは3~6シクロアルキルからなる群から選択され、
各R、RA1、R、RB1、R、RC1、R、RD1、R、及びRが独立して、水素、Rにより任意選択で置換されるC1~C6アルキル、C1~C6ハロアルキル、-C(=O)(C1~C6アルキル)、または-SO(C1~C6アルキル)であるか、あるいは
及びRが、それらに結合している窒素原子と一緒に、4~6員ヘテロシクリルを形成し、
各Rが独立して、フルオロ、ヒドロキシル、シアノ、C1~C6アルキル、C1~C6アルコキシ、-NRA1B1、-C(=O)NRC1D1、及び-COHからなる群から選択される。
【0007】
また、式(I)の化合物、またはその医薬として許容される塩と、医薬として許容される担体とを含む、医薬組成物も本明細書で提供される。
【0008】
がんの処置を必要とする対象において該がんを処置するための方法であって、対象に、治療上有効量の本明細書で提供される式(I)の化合物もしくはその医薬として許容される塩、または医薬組成物を投与することを含む、該方法が本明細書で提供される。
【0009】
また、がんの処置を必要とする対象において該がんを処置するための方法であって、(a)がんがPIK3CA遺伝子、PI3Kαタンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全に関連すると判定することと、(b)対象に、治療上有効量の本明細書で提供される式(I)の化合物もしくはその医薬として許容される塩、または医薬組成物を投与することと、を含む、該方法も本明細書で提供される。
【0010】
対象においてPI3Kα関連疾患または障害を処置する方法であって、PI3Kα関連疾患または障害を有すると特定または診断された対象に、治療上有効量の本明細書で提供される式(I)の化合物もしくはその医薬として許容される塩、または医薬組成物を投与することを含む、該方法が本明細書で提供される。
【0011】
本開示はまた、対象においてPI3Kα関連疾患または障害を処置する方法であって、対象におけるがんがPI3Kα関連疾患または障害であると判定することと、対象に、治療上有効量の本明細書で提供される式(I)の化合物もしくはその医薬として許容される塩、または医薬組成物を投与することと、を含む、該方法も提供する。
【0012】
さらに、対象においてPI3Kα関連がんを処置する方法であって、PI3Kα関連がんを有すると特定または診断された対象に、治療上有効量の本明細書で提供される式(I)の化合物もしくはその医薬として許容される塩、または医薬組成物を投与することを含む、該方法が本明細書で提供される。
【0013】
本開示はまた、対象においてPI3Kα関連がんを処置する方法であって、対象におけるがんがPI3Kα関連がんであると判定することと、対象に、治療上有効量の本明細書で提供される式(I)の化合物もしくはその医薬として許容される塩、または医薬組成物を投与することと、を含む、該方法も提供する。
【0014】
対象を処置する方法であって、治療上有効量の本明細書で提供される式(I)の化合物もしくはその医薬として許容される塩、または医薬組成物を、対象がPIK3CA遺伝子、PI3Kαタンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全を有することを示す診療録を有する対象に投与することを含む、該方法が本明細書で提供される。
【0015】
本開示はまた、哺乳類細胞においてPI3Kαを阻害するための方法であって、哺乳類細胞を、有効量の式(I)の化合物、またはその医薬として許容される塩と接触させることを含む、該方法も提供する。
【0016】
他の実施形態には、発明を実施するための形態及び/または特許請求の範囲に記載されるものが含まれる。
【0017】
追加の定義
本明細書に定められる本開示の理解を容易にするために、いくつかの追加の用語が下記で定義される。一般に、本明細書で使用される命名法ならびに本明細書に記載される有機化学、創薬化学、及び薬理学における検査手順は、当該技術分野で周知されており、一般的に用いられるものである。別途規定されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は一般に、本開示が属する技術分野の専門家によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書及び添付の付録全体を通して言及される特許、出願、公開された出願、及び他の刊行物の各々は、参照によりそれらの全体が本明細書に援用される。
【0018】
数または数値範囲に言及する場合の「約」という用語は、言及される数または数値範囲が、近似値、例えば、実験変動及び/または統計学的実験誤差内であり、故にその数または数値範囲が、指定される数または数値範囲の最大±10%変動し得ることを意味する。
【0019】
本明細書で使用される、製剤、組成物、または成分に関しての「許容される」という用語は、処置されている対象の全般的な健康に対して持続的な有害効果を有しないことを意味する。
【0020】
「阻害する」または「の阻害」という用語は、測定可能な量だけ低減すること、または完全に阻止すること(例えば、100%阻害)を意味する。
【0021】
「API」は、医薬品有効成分を指す。
【0022】
本明細書で使用される「有効量」または「治療上有効量」という用語は、処置されている疾患または病態の症状のうちの1つまたは複数をある程度軽減するであろう、投与されている化学物質の十分な量を指す。その結果には、疾患の徴候、症状、もしくは原因の低減及び/または緩和、または生体系の任意の他の所望の変化が含まれる。例えば、治療的使用のための「有効量」は、疾患症状の臨床的に意義のある減少をもたらすのに必要とされる、本明細書に開示される化合物を含む組成物の量である。任意の個々の症例における適切な「有効」量は、用量漸増研究等の任意の好適な技法を使用して決定される。
【0023】
「賦形剤」または「医薬として許容される賦形剤」という用語は、液体もしくは固体の充填剤、希釈剤、担体、溶媒、または封入材料等の、医薬として許容される材料、組成物、またはビヒクルを意味する。一実施形態では、各成分は、医薬製剤のその他の成分と適合性であり、賢明な医療判断の範囲内で、合理的なベネフィット/リスク比に見合って、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、免疫原性、または他の問題もしくは合併症を伴わずにヒト及び動物の組織または臓器と接触して使用するのに好適であるという意味で「医薬として許容される」。例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,21st ed.;Lippincott Williams & Wilkins:Philadelphia,PA,2005、Handbook of Pharmaceutical Excipients,6th ed.;Rowe et al.,Eds.;The Pharmaceutical Press and the American Pharmaceutical Association:2009、Handbook of Pharmaceutical Additives,3rd ed.;Ash and Ash Eds.;Gower Publishing Company:2007、Pharmaceutical Preformulation and Formulation,2nd ed.;Gibson ed.;CRC Press LLC:Boca Raton,FL,2009を参照されたい。
【0024】
「医薬として許容される塩」という用語は、それが投与される生物に顕著な刺激を引き起こさず、かつ化合物の生物学的活性及び特性を排除しない化合物の製剤を指す。ある特定の事例では、医薬として許容される塩は、本明細書に記載の化合物を、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸等といった酸と反応させることによって得られる。いくつかの事例では、医薬として許容される塩は、本明細書に記載の酸性基を有する化合物を塩基と反応させて、塩、例えば、アンモニウム塩、ナトリウム塩もしくはカリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩もしくはマグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、ジシクロヘキシルアミン、N-メチル-D-グルカミン、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン等の有機塩基の塩、及びアルギニン、リジン等といったアミノ酸との塩を形成させることによって、または以前に決定された他の方法によって得られる。薬理学的に許容される塩は、それが医薬において使用され得る限り、特に限定されない。本明細書に記載の化合物が塩基と共に形成する塩の例としては、以下のものが挙げられる:ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、及びアルミニウム等の無機塩基とのその塩;メチルアミン、エチルアミン、及びエタノールアミン等の有機塩基とのその塩;リジン及びオルニチン等の塩基性アミノ酸とのその塩;ならびにアンモニウム塩。塩は、酸付加塩であってもよく、これらは、以下のものとの酸付加塩によって具体的に例示される:塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、及びリン酸等の鉱酸:ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、及びエタンスルホン酸等の有機酸;アスパラギン酸及びグルタミン酸等の酸性アミノ酸。
【0025】
「医薬組成物」という用語は、本明細書に記載の化合物と、担体、安定剤、希釈剤、分散剤、懸濁化剤、及び/または増粘剤等の他の化学成分(本明細書で「賦形剤」と総称される)との混合物を指す。医薬組成物は、化合物の生物への投与を容易にする。直腸、経口、静脈内、エアロゾル、非経口、眼内、経肺、及び局所投与を含むがこれらに限定されない、化合物を投与する複数の技法が当該技術分野で存在する。
【0026】
「対象」という用語は、霊長類(例えば、ヒト)、サル、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、またはマウスを含むがこれらに限定されない、動物を指す。「対象」及び「患者」という用語は、例えば、ヒト等の哺乳類対象に言及して、本明細書で互換的に使用される。
【0027】
「ハロ」という用語は、フルオロ(F)、クロロ(Cl)、ブロモ(Br)、またはヨード(I)を指す。
【0028】
「オキソ」という用語は、二価の二重結合した酸素原子(すなわち、「=O」)を指す。本明細書で使用されるとき、オキソ基は、炭素原子に結合してカルボニルを形成する。
【0029】
「ヒドロキシル」という用語は、-OHラジカルを指す。
【0030】
「シアノ」という用語は、-CNラジカルを指す。
【0031】
「アルキル」という用語は、示される数の炭素原子を含有する、直鎖でも分岐鎖でもあり得る飽和非環式炭化水素ラジカルを指す。例えば、C1-10は、基がその中に1~10個(端点を含む)の炭素原子を有し得ることを示す。アルキル基は、非置換であるか、または1つもしくは複数の置換基で置換されているかのいずれでもあり得る。非限定的な例としては、メチル、エチル、イソ-プロピル、tert-ブチル、n-ヘキシルが挙げられる。この関連で使用される「飽和」という用語は、構成要素としての炭素原子間に単結合のみが存在し、他の利用可能な原子価が水素及び/または本明細書で定義される他の置換基によって占有されていることを意味する。
【0032】
「ハロアルキル」という用語は、1個または複数の水素原子が独立して選択されるハロで置き換えられているアルキルを指す。
【0033】
「アルコキシ」という用語は、-O-アルキルラジカル(例えば、-OCH)を指す。
【0034】
「アリール」という用語は、系における少なくとも1つの環が芳香族(例えば、6炭素の単環式、10炭素の二環式、または14炭素の三環式芳香環系)であり、各環の0、1、2、3、または4個の原子が置換基により置換され得る、6~20炭素の単環式、二環式、三環式、または多環式基を指す。アリール基の例としては、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル等が挙げられる。
【0035】
本明細書で使用される「シクロアルキル」という用語は、例えば、3~20個の環炭素、好ましくは3~16個の環炭素、より好ましくは3~12個の環炭素または3~10個の環炭素または3~6個の環炭素を有する環式飽和炭化水素基を指し、ここで、シクロアルキル基は任意選択で置換され得る。シクロアルキル基の例としては、限定されないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、及びシクロオクチルが挙げられる。シクロアルキルは、複数の縮合環及び/または架橋環を含んでもよい。縮合/架橋シクロアルキルの非限定的な例としては、ビシクロ[1.1.0]ブタン、ビシクロ[2.1.0]ペンタン、ビシクロ[1.1.1]ペンタン、ビシクロ[3.1.0]ヘキサン、ビシクロ[2.1.1]ヘキサン、ビシクロ[3.2.0]ヘプタン、ビシクロ[4.1.0]ヘプタン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビシクロ[3.1.1]ヘプタン、ビシクロ[4.2.0]オクタン、ビシクロ[3.2.1]オクタン、ビシクロ[2.2.2]オクタン等が挙げられる。シクロアルキルにはまた、スピロ環式環(例えば、2つの環がただ1個の原子を介してつなげられているスピロ環式二環)も含まれる。スピロ環式シクロアルキルの非限定的な例としては、スピロ[2.2]ペンタン、スピロ[2.5]オクタン、スピロ[3.5]ノナン、スピロ[3.5]ノナン、スピロ[3.5]ノナン、スピロ[4.4]ノナン、スピロ[2.6]ノナン、スピロ[4.5]デカン、スピロ[3.6]デカン、スピロ[5.5]ウンデカン等が挙げられる。この関連で使用される「飽和」という用語は、構成要素としての炭素原子間に単結合のみが存在することを意味する。
【0036】
本明細書で使用される「ヘテロアリール」という用語は、5~20個の環原子、代替として5、6、9、10、または14個の環原子を有し、系における少なくとも1つの環が、N、O、及びSからなる群から独立して選択される1個または複数のヘテロ原子を含有し、かつ系における少なくとも1つの環が芳香族である(しかし、ヘテロ原子を含有する環である必要はない、例えば、テトラヒドロイソキノリニル、例えば、テトラヒドロキノリニル)、単環式、二環式、三環式、または多環式基を意味する。ヘテロアリール基は、非置換であるか、または1つもしくは複数の置換基で置換されているかのいずれでもあり得る。ヘテロアリールの例としては、チエニル、ピリジニル、フリル、オキサゾリル、オキサジアゾリル、ピロリル、イミダゾリル、トリアゾリル、チオジアゾリル、ピラゾリル、イソオキサゾリル、チアジアゾリル、ピラニル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、トリアジニル、チアゾリルベンゾチエニル、ベンゾオキサジアゾリル、ベンゾフラニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾトリアゾリル、シンノリニル、インダゾリル、インドリル、イソキノリニル、イソチアゾリル、ナフチリジニル、プリニル、チエノピリジニル、ピリド[2,3-d]ピリミジニル、ピロロ[2,3-b]ピリジニル、キナゾリニル、キノリニル、チエノ[2,3-c]ピリジニル、ピラゾロ[3,4-b]ピリジニル、ピラゾロ[3,4-c]ピリジニル、ピラゾロ[4,3-c]ピリジン、ピラゾロ[4,3-b]ピリジニル、テトラゾリル、クロマン、2,3-ジヒドロベンゾ[b][1,4]ジオキシン、ベンゾ[d][1,3]ジオキソール、2,3-ジヒドロベンゾフラン、テトラヒドロキノリン、2,3-ジヒドロベンゾ[b][1,4]オキサチイン、イソインドリン等が挙げられる。いくつかの実施形態では、ヘテロアリールは、チエニル、ピリジニル、フリル、ピラゾリル、イミダゾリル、イソインドリニル、ピラニル、ピラジニル、及びピリミジニルから選択される。明確にするために、ヘテロアリールにはまた、カルボニルに隣接した各環窒素が第三級である(すなわち、3つ全ての原子価が非水素置換基によって占有されている)芳香族ラクタム、芳香環状尿素、またはそのビニログ性類似体、例えば、カルボニルに隣接した各環窒素が第三級である(すなわち、ここでのオキソ基(すなわち、「=O」)がヘテロアリール環の構成部分である)、ピリドン(例えば、
【化2】

ピリミドン(例えば、
【化3】

ピリダジノン(例えば、
【化4】

ピラジノン(例えば、
【化5】

及びイミダゾロン(例えば、
【化6】

のうちの1つまたは複数も含まれる。
【0037】
「ヘテロシクリル」という用語は、単環式の場合は1~3個のヘテロ原子、二環式の場合は1~6個のヘテロ原子、または三環式もしくは多環式の場合は1~9個のヘテロ原子を有する、3~16個の環原子を有する単環式、二環式、三環式、または多環式の飽和または部分的に不飽和の環系(例えば、5~8員単環式、8~12員二環式、または11~14員三環式環系)を指し、該ヘテロ原子がO、N、またはSから選択され(例えば、炭素原子、及び単環式、二環式、または三環式である場合にそれぞれ1~3、1~6、または1~9個のN、O、またはSのヘテロ原子)、ここで、原子価が許容する限り、1個または複数の環原子が1~3つのオキソにより置換され得(例えば、ラクタムを形成する)、1個または複数のNまたはS原子が1~2つのオキシドにより置換され得(例えば、N-オキシド、S-オキシド、またはS,S-ジオキシドを形成する)、また各環の0、1、2、または3個の原子が置換基により置換され得る。ヘテロシクリル基の例としては、ピペラジニル、ピロリジニル、ジオキサニル、モルホリニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピリジル、ジヒドロピラジニル、ジヒドロピリジル、ジヒドロピロリル、ジヒドロフラニル、ジヒドロチオフェニル等が挙げられる。ヘテロシクリルは、複数の縮合環及び架橋環を含んでもよい。縮合/架橋ヘテロシクリルの非限定的な例としては、2-アザビシクロ[1.1.0]ブタン、2-アザビシクロ[2.1.0]ペンタン、2-アザビシクロ[1.1.1]ペンタン、3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン、5-アザビシクロ[2.1.1]ヘキサン、3-アザビシクロ[3.2.0]ヘプタン、オクタヒドロシクロペンタ[c]ピロール、3-アザビシクロ[4.1.0]ヘプタン、7-アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン、6-アザビシクロ[3.1.1]ヘプタン、7-アザビシクロ[4.2.0]オクタン、2-アザビシクロ[2.2.2]オクタン、3-アザビシクロ[3.2.1]オクタン、2-オキサビシクロ[1.1.0]ブタン、2-オキサビシクロ[2.1.0]ペンタン、2-オキサビシクロ[1.1.1]ペンタン、3-オキサビシクロ[3.1.0]ヘキサン、5-オキサビシクロ[2.1.1]ヘキサン、3-オキサビシクロ[3.2.0]ヘプタン、3-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン、7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタン、6-オキサビシクロ[3.1.1]ヘプタン、7-オキサビシクロ[4.2.0]オクタン、2-オキサビシクロ[2.2.2]オクタン、3-オキサビシクロ[3.2.1]オクタン等が挙げられる。ヘテロシクリルにはまた、スピロ環式環(例えば、2つの環がただ1個の原子を介してつなげられているスピロ環式二環)も含まれる。スピロ環式ヘテロシクリルの非限定的な例としては、2-アザスピロ[2.2]ペンタン、4-アザスピロ[2.5]オクタン、1-アザスピロ[3.5]ノナン、2-アザスピロ[3.5]ノナン、7-アザスピロ[3.5]ノナン、2-アザスピロ[4.4]ノナン、6-アザスピロ[2.6]ノナン、1,7-ジアザスピロ[4.5]デカン、7-アザスピロ[4.5]デカン2,5-ジアザスピロ[3.6]デカン、3-アザスピロ[5.5]ウンデカン、2-オキサスピロ[2.2]ペンタン、4-オキサスピロ[2.5]オクタン、1-オキサスピロ[3.5]ノナン、2-オキサスピロ[3.5]ノナン、7-オキサスピロ[3.5]ノナン、2-オキサスピロ[4.4]ノナン、6-オキサスピロ[2.6]ノナン、1,7-ジオキサスピロ[4.5]デカン、2,5-ジオキサスピロ[3.6]デカン、1-オキサスピロ[5.5]ウンデカン、3-オキサスピロ[5.5]ウンデカン、3-オキサ-9-アザスピロ[5.5]ウンデカン等が挙げられる。
【0038】
本明細書で使用されるとき、芳香環の例としては、ベンゼン、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、ピリドン、ピロール、ピラゾール、オキサゾール、チオアゾール、イソオキサゾール、イソチアゾール等が挙げられる。
【0039】
本明細書で使用されるとき、環が「部分的に不飽和」であるとして説明される場合、それは、その環が芳香族でないことを条件として、該環が1以上の追加の不飽和度(環自体に起因する不飽和度、例えば、構成要素としての環原子間の1つまたは複数の二重または三重結合に加えて)を有することを意味する。かかる環の例としては、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、ジヒドロピリジン、テトラヒドロピリジン、ジヒドロピロール、ジヒドロフラン、ジヒドロチオフェン等が挙げられる。
【0040】
疑義を避けるために、かつ別途明記されない限り、二環式またはより高次の環系(例えば、三環式、多環式環系)を形成するのに十分な数の環原子を含有する環及び環式基(例えば、本明細書に記載のアリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、シクロアルキル等)に関して、かかる環及び環式基は、縮合点が(i)隣接する環原子上に位置するもの(例えば、[x.x.0]環系(ここで、0は、ゼロの原子架橋を表す)(例えば、
【化7】

(ii)単一の環原子上に位置するもの(スピロ縮合環系)(例えば、
【化8】

または(iii)環原子の連続した配列上に位置するもの(架橋の全長が>0である架橋環系)(例えば、
【化9】

を含めた、縮合環を有するものを包含することが理解される。
【0041】
加えて、本実施形態の化合物を構成する原子は、かかる原子の全ての同位体を含むことが意図される。本明細書で使用される同位体には、原子番号が同じであるが、質量数が異なる原子が含まれる。一般例として、かつ限定することなく、水素の同位体には、トリチウム及びジュウテリウムが含まれ、炭素の同位体には、13C及び14Cが含まれる。
【0042】
加えて、本明細書に包括的または具体的に開示される化合物は、全ての互変異性形態を含むことが意図される。故に、例として、部分:
【化10】

を含有する化合物は、部分:
【化11】

を含有する互変異性形態を包含する。同様に、ヒドロキシルにより任意選択で置換されるように説明されるピリジニルまたはピリミジニル部分は、ピリドンまたはピリミドン互変異性形態を包含する。
【0043】
本明細書で提供される化合物は、種々の立体化学形態を包含し得る。化合物はまた、ある特定の化合物における構造的非対称性の結果として生じる、エナンチオマー(例えば、R及びS異性体)、ジアステレオマー、ならびにラセミ混合物及びジアステレオマーの混合物を含めたエナンチオマー(例えば、R及びS異性体)の混合物、ならびに個々のエナンチオマー及びジアステレオマーも包含する。別途指示されない限り、開示される化合物が、立体化学構造(例えば、「平坦な」構造)を指定することなく構造によって呼称または図示され、1つまたは複数のキラル中心を有する場合、それは該化合物の全ての考えられる立体異性体を表すことが理解される。
【0044】
本開示の1つまたは複数の実施形態の詳細が、添付の図面及び以下の説明に記載される。本開示の他の特徴及び利点は、それらの説明及び図面、ならびに特許請求の範囲から明らかとなろう。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本開示は、ホスファチジルイノシトール4,5-ビスリン酸3-キナーゼ(PI3K)アイソフォームアルファ(PI3Kα)を阻害する式(I)の化合物、及びその医薬として許容される塩を提供する。これらの化学物質は、例えば、増加した(例えば、過剰な)PI3Kα活性化が対象(例えば、ヒト)における病態、疾患、または障害(例えば、がん)の病理及び/または症状及び/または進行の一因となる、病態、疾患、または障害を処置するのに有用である。本開示はまた、それを含有する組成物ならびにその使用方法及び作製方法も提供する。
【0046】
式(I)の化合物
いくつかの実施形態は、式(I)の化合物:
【化12】

またはその医薬として許容される塩を提供し、式中、
Zが、OまたはNRであり、
が、水素、C1~C6アルキル、またはC3~C6シクロアルキルであり、
各Rが、独立して選択されるハロゲンであり、
mが、0、1、2、または3であり、
が、ハロゲン、C1~C6アルキル、C1~C6ハロアルキル、1つまたは2つのフルオロにより任意選択で置換されるC3~C6シクロアルキルであり、
が、C1~C6アルキル、C1~C6ハロアルキル、または1つもしくは2つのフルオロにより任意選択で置換されるC3~C6シクロアルキルであり、
、X、X、及びXが、各々独立して、N、CH、またはCRであり、ここで、X、X、X、及びXのうちの2つ以下が、Nであることができ、
各Rが独立して、ハロゲン、-NRにより任意選択で置換されるC1~C6アルキル、C1~C6アルコキシ、C1~C6ハロアルキル、ヒドロキシル、シアノ、-COH、-NR、-C(=O)NR、-SO(NR)、-SO(C1~C6アルキル)、-S(=O)(=NH)(C1~C6アルキル)、-C(=O)(C1~C6アルキル)、-CO(C1~C6アルキル)、フェニル、5~6員ヘテロアリール、及び各々が1つまたは2つの独立して選択されるRにより任意選択で置換される3~6員ヘテロシクリルまたは3~6シクロアルキルからなる群から選択され、
各R、RA1、R、RB1、R、RC1、R、RD1、R、及びRが独立して、水素、Rにより任意選択で置換されるC1~C6アルキル、C1~C6ハロアルキル、-C(=O)(C1~C6アルキル)、または-SO(C1~C6アルキル)であるか、あるいは
及びRが、それらに結合している窒素原子と一緒に、4~6員ヘテロシクリルを形成し、
各Rが独立して、フルオロ、ヒドロキシル、シアノ、C1~C6アルキル、C1~C6アルコキシ、-NRA1B1、-C(=O)NRC1D1、及び-COHからなる群から選択される。
【0047】
いくつかの実施形態では、mは、0である。いくつかの実施形態では、mは、1である。いくつかの実施形態では、mは、2である。いくつかの実施形態では、mは、3である。
【0048】
いくつかの実施形態では、
【化13】

は、
【化14】

である。いくつかの実施形態では、
【化15】

は、
【化16】

である。いくつかの実施形態では、
【化17】

は、
【化18】

である。いくつかの実施形態では、
【化19】

は、
【化20】

である。いくつかの実施形態では、
【化21】

は、
【化22】

である。いくつかの実施形態では、
【化23】

は、
【化24】

である。いくつかの実施形態では、
【化25】

は、
【化26】

である。いくつかの実施形態では、
【化27】

は、
【化28】

である。いくつかの実施形態では、
【化29】

は、
【化30】

である。いくつかの実施形態では、
【化31】

は、
【化32】

である。いくつかの実施形態では、
【化33】

は、
【化34】

である。
【0049】
いくつかの実施形態では、各Rは、独立して選択されるハロゲンである。いくつかの実施形態では、各Rは独立して、フルオロ及びクロロから選択される。いくつかの実施形態では、各Rは、フルオロである。
【0050】
いくつかの実施形態では、Rは、ハロゲンである。いくつかの実施形態では、Rは、フルオロである。いくつかの実施形態では、Rは、クロロである。
【0051】
いくつかの実施形態では、Rは、C1~C6アルキルである。いくつかの実施形態では、Rは、C1~C3アルキルである。いくつかの実施形態では、Rは、メチルである。
【0052】
いくつかの実施形態では、Rは、C1~C6ハロアルキルである。いくつかの実施形態では、Rは、C1~C3ハロアルキルである。いくつかの実施形態では、Rは、ジフルオロメチルである。いくつかの実施形態では、Rは、トリフルオロメチルである。
【0053】
いくつかの実施形態では、Rは、1つまたは2つのフルオロにより任意選択で置換されるC3~C6シクロアルキルである。いくつかの実施形態では、Rは、1つまたは2つのフルオロで置換されたC3~C6シクロアルキルである。いくつかの実施形態では、Rは、1つのフルオロで置換されたC3~C6シクロアルキルである。いくつかの実施形態では、Rは、2つのフルオロで置換されたC3~C6シクロアルキルである。いくつかの実施形態では、Rは、1つのフルオロで置換されたC3~C4シクロアルキルである。いくつかの実施形態では、Rは、2つのフルオロで置換されたC3~C4シクロアルキルである。いくつかの実施形態では、Rは、非置換C3~C6シクロアルキルである。いくつかの実施形態では、Rは、シクロプロピルである。
【0054】
いくつかの実施形態では、X、X、X、及びXのうちの1つは、CRであり、その他の3つのX、X、X、及びXは、NまたはCHである。いくつかの実施形態では、X、X、X、及びXのうちの2つは、独立して選択されるCRであり、その他の2つのX、X、X、及びXは、NまたはCHである。いくつかの実施形態では、X、X、X、及びXのうちの1つは、CRであり、その他の3つのX、X、X、及びXは、CHである。いくつかの実施形態では、X、X、X、及びXのうちの2つは、独立して選択されるCRであり、その他の2つのX、X、X、及びXは、CHである。いくつかの実施形態では、X、X、X、及びXのうちの1つは、CRであり、その他の3つのX、X、X、及びXは、Nである。いくつかの実施形態では、X、X、X、及びXのうちの2つは、独立して選択されるCRであり、その他の2つのX、X、X、及びXは、Nである。
【0055】
いくつかの実施形態では、X、X、X、及びXは、X及びXに隣接した炭素原子と一緒に、フェニル、ピリジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、またはピラジニル環を形成する。
【0056】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、式(I-a):
【化35】

またはその医薬として許容される塩であり、式中、
1Aが、ハロゲンであり、
1Bが、ハロゲンであるか、または不在であり(すなわち、R1Bが不在である場合、原子価を満たすためにR1B位置に水素が存在する)、
及びXが、各々独立して、NまたはCHである。
【0057】
いくつかの実施形態では、式(I-a)の化合物は、
【化36】

またはその医薬として許容される塩であり、式中、
1Aが、ハロゲンであり、
及びXが、各々独立して、NまたはCHである。
【0058】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、式(I-b):
【化37】

またはその医薬として許容される塩であり、式中、
1Aが、ハロゲンであり、
1Bが、ハロゲンであるか、または不在である(すなわち、R1Bが不在である場合、原子価を満たすためにR1B位置に水素が存在する)。
【0059】
いくつかの実施形態では、式(I-b)の化合物は、
【化38】

またはその医薬として許容される塩であり、式中、R1Aが、ハロゲンである。
【0060】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、式(I-c):
【化39】

またはその医薬として許容される塩であり、式中、
1Aが、ハロゲンであり、
1Bが、ハロゲンであるか、または不在である(すなわち、R1Bが不在である場合、原子価を満たすためにR1B位置に水素が存在する)。
【0061】
いくつかの実施形態では、式(I-c)の化合物は、
【化40】

またはその医薬として許容される塩であり、
式中、R1Aが、ハロゲンである。
【0062】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、式(I-d):
【化41】

またはその医薬として許容される塩であり、式中、
1Aが、ハロゲンであり、
1Bが、ハロゲンであるか、または不在である(すなわち、R1Bが不在である場合、原子価を満たすためにR1B位置に水素が存在する)。
【0063】
いくつかの実施形態では、式(I-d)の化合物は、
【化42】

またはその医薬として許容される塩であり、
式中、R1Aが、ハロゲンである。
【0064】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、式(I-e):
【化43】

またはその医薬として許容される塩であり、式中、
1Aが、ハロゲンであり、
1Bが、ハロゲンであるか、または不在である(すなわち、R1Bが不在である場合、原子価を満たすためにR1B位置に水素が存在する)。
【0065】
いくつかの実施形態では、式(I-e)の化合物は、
【化44】

またはその医薬として許容される塩であり、
式中、R1Aが、ハロゲンである。
【0066】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、式(I-f):
【化45】

またはその医薬として許容される塩であり、式中、
1Aが、ハロゲンであり、
1Bが、ハロゲンであるか、または不在であり(すなわち、R1Bが不在である場合、原子価を満たすためにR1B位置に水素が存在する)、
及びXが、各々独立して、NまたはCHである。
【0067】
いくつかの実施形態では、式(I-f)の化合物は、
【化46】

またはその医薬として許容される塩であり、式中、
1Aが、ハロゲンであり、
及びXが、各々独立して、NまたはCHである。
【0068】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、式(I-g):
【化47】

またはその医薬として許容される塩であり、式中、
1Aが、ハロゲンであり、
1Bが、ハロゲンであるか、または不在である(すなわち、R1Bが不在である場合、原子価を満たすためにR1B位置に水素が存在する)。
【0069】
いくつかの実施形態では、式(I-g)の化合物は、
【化48】

またはその医薬として許容される塩であり、式中、R1Aが、ハロゲンである。
【0070】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、式(I-h):
【化49】

またはその医薬として許容される塩であり、式中、
1Aが、ハロゲンであり、
1Bが、ハロゲンであるか、または不在である(すなわち、R1Bが不在である場合、原子価を満たすためにR1B位置に水素が存在する)。
【0071】
いくつかの実施形態では、式(I-h)の化合物は、
【化50】

またはその医薬として許容される塩であり、
式中、R1Aが、ハロゲンである。
【0072】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、式(I-i):
【化51】

またはその医薬として許容される塩であり、式中、
1Aが、ハロゲンであり、
1Bが、ハロゲンであるか、または不在である(すなわち、R1Bが不在である場合、原子価を満たすためにR1B位置に水素が存在する)。
【0073】
いくつかの実施形態では、式(I-i)の化合物は、
【化52】

またはその医薬として許容される塩であり、
式中、R1Aが、ハロゲンである。
【0074】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、式(I-j):
【化53】

またはその医薬として許容される塩であり、式中、
1Aが、ハロゲンであり、
1Bが、ハロゲンであるか、または不在である(すなわち、R1Bが不在である場合、原子価を満たすためにR1B位置に水素が存在する)。
【0075】
いくつかの実施形態では、式(I-j)の化合物は、
【化54】

またはその医薬として許容される塩であり、
式中、R1Aが、ハロゲンである。
【0076】
いくつかの実施形態では、R1A及びR1Bは各々、独立して選択されるハロゲンである。いくつかの実施形態では、R1A及びR1Bは各々、フルオロである。いくつかの実施形態では、R1Aは、フルオロであり、R1Bは、クロロである。いくつかの実施形態では、R1Aは、フルオロであり、R1Bは、不在である(その場合、水素がR1Bを置き換える)。
【0077】
いくつかの実施形態では、Rは、C1~C6アルキルである。いくつかの実施形態では、Rは、C1~C3アルキルである。いくつかの実施形態では、Rは、メチルである。
【0078】
いくつかの実施形態では、Rは、C1~C6ハロアルキルである。いくつかの実施形態では、Rは、C1~C3ハロアルキルである。いくつかの実施形態では、Rは、ジフルオロメチルである。いくつかの実施形態では、Rは、トリフルオロメチルである。
【0079】
いくつかの実施形態では、Rは、ハロゲンである。いくつかの実施形態では、Rは、クロロである。
【0080】
いくつかの実施形態では、Rは、1つまたは2つのフルオロにより任意選択で置換されるC3~C6シクロアルキルである。いくつかの実施形態では、Rは、1つまたは2つのフルオロで置換されたC3~C6シクロアルキルである。いくつかの実施形態では、Rは、非置換C3~C6シクロアルキルである。いくつかの実施形態では、Rは、シクロプロピルである。いくつかの実施形態では、Rは、シクロブチルである。いくつかの実施形態では、Rは、シクロペンチルである。いくつかの実施形態では、Rは、シクロヘキシルである。
【0081】
いくつかの実施形態では、Rは、C1~C6アルキルである。いくつかの実施形態では、Rは、C1~C3アルキルである。いくつかの実施形態では、Rは、メチル、エチル、またはイソプロピルである。いくつかの実施形態では、Rは、メチルである。いくつかの実施形態では、Rは、エチルである。いくつかの実施形態では、Rは、イソプロピルである。
【0082】
いくつかの実施形態では、Rは、C1~C6ハロアルキルである。いくつかの実施形態では、Rは、C1~C3ハロアルキルである。いくつかの実施形態では、Rは、トリフルオロメチルである。いくつかの実施形態では、Rは、ジフルオロメチルである。
【0083】
いくつかの実施形態では、Rは、1つまたは2つのフルオロにより任意選択で置換されるC3~C6シクロアルキルである。いくつかの実施形態では、Rは、1つまたは2つのフルオロで置換されたC3~C6シクロアルキルである。いくつかの実施形態では、Rは、非置換C3~C6シクロアルキルである。いくつかの実施形態では、Rは、シクロプロピルである。いくつかの実施形態では、Rは、シクロブチルである。いくつかの実施形態では、Rは、シクロペンチルである。いくつかの実施形態では、Rは、シクロヘキシルである。
【0084】
いくつかの実施形態では、Rは、ハロゲンである。いくつかの実施形態では、Rは、フルオロである。いくつかの実施形態では、Rは、クロロである。
【0085】
いくつかの実施形態では、Rは、C1~C6アルキルである。いくつかの実施形態では、Rは、C1~C4アルキルである。いくつかの実施形態では、Rは、メチルである。いくつかの実施形態では、Rは、エチルである。いくつかの実施形態では、Rは、プロピルまたはイソプロピルである。いくつかの実施形態では、Rは、n-ブチル、sec-ブチル、イソ-ブチル、またはtert-ブチルである。
【0086】
いくつかの実施形態では、Rは、C1~C6アルコキシである。いくつかの実施形態では、Rは、C1~C3アルコキシである。いくつかの実施形態では、Rは、メトキシである。いくつかの実施形態では、Rは、エトキシである。いくつかの実施形態では、Rは、エトキシである。いくつかの実施形態では、Rは、イソプロピルオキシである。
【0087】
いくつかの実施形態では、Rは、C1~C6ハロアルキルである。いくつかの実施形態では、Rは、C1~C3ハロアルキルである。いくつかの実施形態では、Rは、トリフルオロメチルである。いくつかの実施形態では、Rは、ジフルオロメチルである。
【0088】
いくつかの実施形態では、Rは、ヒドロキシルである。
【0089】
いくつかの実施形態では、Rは、シアノまたは-COHである。
【0090】
いくつかの実施形態では、Rは、-NRである。いくつかの実施形態では、R及びRは各々、水素である。いくつかの実施形態では、R及びRのうちの一方は、水素であり、R及びRのうちの他方は、Rにより任意選択で置換されるC1~C6アルキルである。いくつかの実施形態では、R及びRのうちの一方は、水素であり、R及びRのうちの他方は、Rで置換されたC1~C3アルキルである。いくつかの実施形態では、R及びRのうちの一方は、水素であり、R及びRのうちの他方は、フルオロ、ヒドロキシル、シアノ、C1~C6アルキル、C1~C6アルコキシ、-NRA1B1、-C(=O)NRC1D1、及び-COHからなる群から選択されるRで置換された、C1~C3アルキルである。
【0091】
いくつかの実施形態では、Rは、
【化55】

からなる群から選択され、Rが、フルオロ、ヒドロキシル、シアノ、C1~C6アルキル、C1~C6アルコキシ、-NRA1B1、-C(=O)NRC1D1、及び-COHからなる群から選択される。
【0092】
いくつかの実施形態では、R及びRのうちの一方は、水素であり、R及びRのうちの他方は、C1~C3アルキルである。いくつかの実施形態では、R及びRのうちの一方は、水素であり、R及びRのうちの他方は、メチルである。
【0093】
いくつかの実施形態では、R及びRは各々、C1~C6アルキルである。いくつかの実施形態では、R及びRは各々、C1~C3アルキルである。いくつかの実施形態では、R及びRは各々、メチルである。いくつかの実施形態では、R及びRのうちの一方は、水素であり、R及びRのうちの他方は、C1~C6ハロアルキルである。いくつかの実施形態では、R及びRのうちの一方は、水素であり、R及びRのうちの他方は、C1~C3ハロアルキルである。いくつかの実施形態では、R及びRは各々、C1~C6ハロアルキルである。いくつかの実施形態では、R及びRは各々、C1~C3ハロアルキルである。いくつかの実施形態では、R及びRのうちの一方は、C1~C6アルキルであり、R及びRのうちの一方のうちの他方は、C1~C6ハロアルキルである。
【0094】
いくつかの実施形態では、Rは、
【化56】

からなる群から選択される。
【0095】
いくつかの実施形態では、Rは、-C(=O)NRである。いくつかの実施形態では、R及びRは各々、水素である。いくつかの実施形態では、R及びRのうちの一方は、水素であり、R及びRのうちの他方は、C1~C6アルキルである。いくつかの実施形態では、R及びRのうちの一方は、水素であり、R及びRのうちの他方は、C1~C4アルキルである。いくつかの実施形態では、R及びRのうちの一方は、水素であり、R及びRのうちの他方は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、またはtert-ブチルである。いくつかの実施形態では、R及びRは各々、C1~C6アルキルである。いくつかの実施形態では、R及びRは各々、C1~C4アルキルである。いくつかの実施形態では、R及びRは各々、メチル、エチル、プロピル、またはブチルである。
【0096】
いくつかの実施形態では、R及びRのうちの一方は、水素であり、R及びRのうちの他方は、C1~C6ハロアルキルである。いくつかの実施形態では、R及びRのうちの一方は、水素であり、R及びRのうちの他方は、C1~C3ハロアルキルである。いくつかの実施形態では、R及びRは各々、C1~C6ハロアルキルである。いくつかの実施形態では、R及びRは各々、C1~C3ハロアルキルである。いくつかの実施形態では、R及びRのうちの一方は、C1~C6アルキルであり、R及びRのうちの他方は、C1~C6ハロアルキルである。
【0097】
いくつかの実施形態では、1つのRは、-SO(NR)である。いくつかの実施形態では、R及びRは各々、水素である。いくつかの実施形態では、R及びRのうちの一方は、水素であり、R及びRのうちの他方は、C1~C6アルキルである。いくつかの実施形態では、R及びRのうちの一方は、水素であり、R及びRのうちの他方は、C1~C4アルキルである。いくつかの実施形態では、R及びRのうちの一方は、水素であり、R及びRのうちの他方は、メチルである。いくつかの実施形態では、R及びRは各々、C1~C6アルキルである。いくつかの実施形態では、R及びRは各々、C1~C3アルキルである。いくつかの実施形態では、R及びRは各々、メチルである。いくつかの実施形態では、R及びRのうちの一方は、水素であり、R及びRのうちの他方は、C1~C6ハロアルキルである。いくつかの実施形態では、R及びRのうちの一方は、水素であり、R及びRのうちの他方は、C1~C3ハロアルキルである。いくつかの実施形態では、R及びRは各々、C1~C6ハロアルキルである。いくつかの実施形態では、R及びRは各々、C1~C3ハロアルキルである。いくつかの実施形態では、R及びRのうちの一方は、C1~C6アルキルであり、R及びRのうちの他方は、C1~C6ハロアルキルである。いくつかの実施形態では、Rは、-SO(C1~C6アルキル)である。いくつかの実施形態では、Rは、-SO(C1~C3アルキル)である。いくつかの実施形態では、Rは、-SOMeである。いくつかの実施形態では、Rは、-SOEtである。
【0098】
いくつかの実施形態では、Rは、-S(=O)(=NH)(C1~C6アルキル)である。いくつかの実施形態では、Rは、-S(=O)(=NH)(C1~C3アルキル)である。いくつかの実施形態では、Rは、-S(=O)(=NH)Meである。
【0099】
いくつかの実施形態では、Rは、-C(=O)(C1~C6アルキル)である。いくつかの実施形態では、Rは、-C(=O)(C1~C3アルキル)である。いくつかの実施形態では、Rは、-C(=O)Meである。
【0100】
いくつかの実施形態では、Rは、-CO(C1~C6アルキル)である。いくつかの実施形態では、Rは、-CO(C1~C4アルキル)である。いくつかの実施形態では、Rは、-COMeである。
【0101】
いくつかの実施形態では、Rは、1~2つの独立して選択されるRにより任意選択で置換されるフェニルである。いくつかの実施形態では、Rは、1つのRで置換されたフェニルである。いくつかの実施形態では、Rは、
【化57】

からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、Rは、2つの独立して選択されるRで置換されたフェニルである。いくつかの実施形態では、Rは、
【化58】

からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、Rは、非置換フェニルである。
【0102】
いくつかの実施形態では、Rは、1~2つの独立して選択されるRにより任意選択で置換される5~6員ヘテロアリールである。いくつかの実施形態では、Rは、5員ヘテロアリールである。いくつかの実施形態では、Rは、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、フラニル、チオフェニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、チアゾリル、フルザニル(furzanyl)、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、オキサトリアゾリル、及びチアトリアゾリルからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、Rは、6員ヘテロアリールである。いくつかの実施形態では、Rは、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、及びトリアジニルからなる群から選択される。
【0103】
いくつかの実施形態では、Rは、1つまたは2つの独立して選択されるRにより任意選択で置換される3~6員ヘテロシクリルである。いくつかの実施形態では、Rは、1つまたは2つの独立して選択されるRで置換された3~6員ヘテロシクリルである。いくつかの実施形態では、Rは、1つのRで置換された3~6員ヘテロシクリルである。いくつかの実施形態では、Rは、2つの独立して選択されるRで置換された3~6員ヘテロシクリルである。いくつかの実施形態では、Rは、1つまたは2つの独立して選択されるRにより任意選択で置換される3~6員シクロアルキルである。いくつかの実施形態では、Rは、1つまたは2つの独立して選択されるRで置換された3~6員シクロアルキルである。いくつかの実施形態では、Rは、1つのRで置換された3~6員シクロアルキルである。いくつかの実施形態では、Rは、2つの独立して選択されるRで置換された3~6員シクロアルキルである。いくつかの実施形態では、Rは、非置換3~6員シクロアルキルである。
【0104】
いくつかの実施形態では、1つのRは、フルオロである。いくつかの実施形態では、1つのRは、シアノである。いくつかの実施形態では、1つのRは、ヒドロキシルである。いくつかの実施形態では、1つのRは、C1~C6アルキルである。いくつかの実施形態では、1つのRは、C1~C3アルキルである。いくつかの実施形態では、1つのRは、メチルである。
【0105】
いくつかの実施形態では、1つのRは、C1~C6アルコキシである。いくつかの実施形態では、1つのRは、C1~C3アルコキシである。いくつかの実施形態では、1つのRは、メトキシである。
【0106】
いくつかの実施形態では、1つのRは、-COHである。
【0107】
いくつかの実施形態では、1つのRは、-NRA1B1である。いくつかの実施形態では、RA1及びRB1は各々、水素である。いくつかの実施形態では、RA1及びRB1のうちの一方は、水素であり、RA1及びRB1のうちの他方は、C1~C6アルキルである。いくつかの実施形態では、RA1及びRB1のうちの一方は、水素であり、RA1及びRB1のうちの他方は、C1~C3アルキルである。いくつかの実施形態では、RA1及びRB1のうちの一方は、水素であり、RA1及びRB1のうちの他方は、メチルである。いくつかの実施形態では、RA1及びRB1は各々、C1~C6アルキルである。いくつかの実施形態では、RA1及びRB1は各々、メチルである。
【0108】
いくつかの実施形態では、RA1及びRB1のうちの一方は、水素であり、RA1及びRB1のうちの他方は、C1~C6ハロアルキルである。いくつかの実施形態では、RA1及びRB1のうちの一方は、水素であり、RA1及びRB1のうちの他方は、C1~C3ハロアルキルである。いくつかの実施形態では、RA1及びRB1は各々、C1~C6ハロアルキルである。いくつかの実施形態では、RA1及びRB1のうちの一方は、C1~C6アルキルであり、RA1及びRB1のうちの他方は、C1~C6ハロアルキルである。
【0109】
いくつかの実施形態では、1つのRは、-C(=O)NRC1D1である。いくつかの実施形態では、RC1及びRD1は各々、水素である。いくつかの実施形態では、RC1及びRD1のうちの一方は、水素であり、RC1及びRD1のうちの他方は、C1~C6アルキルである。いくつかの実施形態では、RC1及びRD1のうちの一方は、水素であり、RC1及びRD1のうちの他方は、C1~C3アルキルである。いくつかの実施形態では、RC1及びRD1のうちの一方は、水素であり、RC1及びRD1のうちの他方は、メチルである。いくつかの実施形態では、RC1及びRD1は各々、C1~C6アルキルである。いくつかの実施形態では、RC1及びRD1は各々、C1~C3アルキルである。いくつかの実施形態では、RC1及びRD1は各々、メチルである。いくつかの実施形態では、RC1及びRD1のうちの一方は、水素であり、RC1及びRD1のうちの他方は、C1~C6ハロアルキルである。いくつかの実施形態では、RC1及びRD1のうちの一方は、水素であり、RC1及びRD1のうちの他方は、C1~C3ハロアルキルである。いくつかの実施形態では、RC1及びRD1は各々、C1~C6ハロアルキルである。いくつかの実施形態では、RC1及びRD1のうちの一方は、C1~C6アルキルであり、RC1及びRD1のうちの他方は、C1~C6ハロアルキルである。
【0110】
いくつかの実施形態では、Rは、非置換3~6員ヘテロシクリルである。
【0111】
いくつかの実施形態では、Rは、1つまたは2つの独立して選択されるRにより任意選択で置換される4~6員ヘテロシクリルである。いくつかの実施形態では、Rは、アゼチジニル、ピロリジニル、ピペリジニル、モルホリニル、またはテトラヒドロピラニルである。いくつかの実施形態では、Rは、1-アゼチジニル、1-ピロリジニル、1-ピペリジニル、1-モルホリニル、または4-テトラヒドロピラニルである。いくつかの実施形態では、Rは、1-アゼチジニル、1-ピロリジニル、または1-ピペリジニルである。
【0112】
いくつかの実施形態では、Rは、
【化59】

であり、式中、環Bは、アゼチジニル、ピロリジニル、またはピペリジニルであり、各々がフルオロ、ヒドロキシル、シアノ、-C(=O)NRC1D1、または-COHから独立して選択される1~2つのRにより任意選択で置換される。
【0113】
いくつかの実施形態では、
【化60】

は、アゼチジニルである。いくつかの実施形態では、
【化61】

は、ピロリジニルである。いくつかの実施形態では、
【化62】

は、ピペリジニルである。
【0114】
いくつかの実施形態では、
【化63】

は、非置換である。いくつかの実施形態では、

【化64】

は、1つのRで置換される。いくつかの実施形態では、
【化65】

は、2つの独立して選択されるRで置換される。
【0115】
いくつかの実施形態では、1つのRは、フルオロである。いくつかの実施形態では、1つのRは、ヒドロキシルである。いくつかの実施形態では、1つのRは、シアノである。いくつかの実施形態では、1つのRは、-C(=O)NRC1D1である。いくつかの実施形態では、1つのRは、-CONHである。いくつかの実施形態では、1つのRは、-COHである。
【0116】
いくつかの実施形態では、1~2つの独立して選択されるRは、窒素に対して遠位の環Bの位置に結合している。いくつかの実施形態では、
【化66】

は、
【化67】

であり、式中、1つまたは2つの独立して選択されるRがアゼチジンの3位にて結合している。いくつかの実施形態では、
【化68】

は、
【化69】

であり、式中、1つまたは2つの独立して選択されるRがピロリジンの3位にて結合している。いくつかの実施形態では、
【化70】

は、

【化71】

であり、式中、1つまたは2つの独立して選択されるRがピペリジンの4位にて結合している。
【0117】
いくつかの実施形態では、Zは、Oである。
【0118】
いくつかの実施形態では、Zは、NRである。
【0119】
いくつかの実施形態では、Rは、水素である。
【0120】
いくつかの実施形態では、Rは、C1~C6アルキルである。いくつかの実施形態では、Rは、C1~C3アルキルである。いくつかの実施形態では、Rは、メチルである。
【0121】
いくつかの実施形態では、Rは、C3~C6シクロアルキルである。いくつかの実施形態では、Rは、C3~C4シクロアルキルである。いくつかの実施形態では、Rは、シクロプロピルである。いくつかの実施形態では、Rは、シクロブチルである。
【0122】
非限定的な例示的化合物
いくつかの実施形態では、化合物は、実施例1~5における化合物(例えば、化合物1~7)からなる群から選択されるか、またはその医薬として許容される塩である。
【0123】
いくつかの実施形態では、化合物は、表Aに描写される化合物からなる群から選択されるか、またはその医薬として許容される塩である。


【表4】
【0124】
いくつかの実施形態では、化合物は、表Bに描写される化合物からなる群から選択されるか、またはその医薬として許容される塩である。
【表5】
【0125】
いくつかの実施形態では、化合物は、表Cに描写される化合物からなる群から選択されるか、またはその医薬として許容される塩である。
【表6】
【0126】
医薬組成物及び投与
一般条項
いくつかの実施形態では、化学物質(例えば、PI3Kαを阻害する化合物、またはその医薬として許容される塩)は、本明細書に記載される化学物質及び1つまたは複数の医薬として許容される賦形剤、ならびに任意選択で1つまたは複数の追加の治療剤を含む、医薬組成物として投与される。
【0127】
いくつかの実施形態では、化学物質は、1つまたは複数の従来の医薬品賦形剤と組み合わせて投与することができる。医薬として許容される賦形剤には、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、自己乳化型薬物送達系(SEDDS)、例えば、d-α-トコフェロールポリエチレングリコール1000コハク酸エステル、医薬品剤形において使用される界面活性剤、例えば、Tweens(登録商標)、ポロキサマー、または他の類似のポリマー送達マトリックス、血清タンパク質、例えば、ヒト血清アルブミン、緩衝物質、例えば、リン酸塩、トリス、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩または電解質、例えば、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイダルシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックポリマー、及び羊毛脂が含まれるが、これらに限定されない。シクロデキストリン、例えば、α-、β、及びγ-シクロデキストリン、または化学修飾された誘導体、例えば、2-及び3-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンを含めたヒドロキシアルキルシクロデキストリン、または他の可溶化誘導体もまた、本明細書に記載の化合物の送達を強化するために使用することができる。本明細書に記載される化学物質を0.005%~100%の範囲で含有し、残部が無毒の賦形剤から構成される、剤形または組成物が調製されてもよい。企図される組成物は、本明細書で提供される化学物質を0.001%~100%、一実施形態では0.1~95%、別の実施形態では75~85%、さらなる実施形態では20~80%含有してもよい。かかる剤形を調製する実際の方法は、当業者に既知であるか、または明らかとなろう。例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,22nd Edition(Pharmaceutical Press,London,UK.2012)を参照されたい。
【0128】
投与経路及び組成物の成分
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化学物質またはその医薬組成物は、それを必要とする対象に、任意の容認された投与経路によって投与することができる。許容される投与経路には、頬側、皮膚、子宮頸管内、洞内、気管内、経腸、硬膜外、間質内、腹部内、動脈内、気管支内、滑液包内、脳内、大槽内、冠動脈内、皮内、管内、十二指腸内、硬膜内、表皮内、食道内、胃内、歯肉内、腸内、リンパ内、髄内、髄膜内、筋肉内、卵巣内、腹腔内、前立腺内、肺内、副鼻腔内、脊髄内、滑膜内、精巣内、髄腔内、尿細管内、腫瘍内、子宮内、血管内、静脈内、鼻腔、経鼻胃、経口、非経口、経皮、硬膜外、直腸、呼吸器(吸入)、皮下、舌下、粘膜下、局所、経皮、経粘膜、経気管、尿管、尿道、及び膣が含まれるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態では、好ましい投与経路は、非経口(例えば、腫瘍内)である。
【0129】
組成物は、非経口投与用に製剤化、例えば、静脈内、筋肉内、皮下、またはさらには腹腔内経路を介した注射用に製剤化され得る。典型的には、かかる組成物は、溶液または懸濁液のいずれかとしての注射剤として調製され得、注射前の液体の添加により溶液または懸濁液を調製するための使用に好適な固体形態もまた調製され得、調製物はまた乳化され得る。かかる製剤の調製は、本開示に照らして当業者には既知であろう。
【0130】
注射用の使用に好適な医薬品形態には、滅菌水溶液または分散体;ゴマ油、ピーナツ油、または水性プロピレングリコールを含む製剤;及び滅菌注射液または分散体の即時調製のための滅菌粉末が含まれる。全ての場合において、形態は、滅菌されていなければならず、それが容易に注射され得る程度まで流動性でなければならない。それはまた、製造及び保管の条件下で安定であるべきであり、細菌及び真菌等の微生物の汚染作用から保護されなければならない。
【0131】
担体もまた、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール等)、その好適な混合物、及び植物油を含有する、溶媒または分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチン等のコーティングの使用、分散体の場合には必要とされる粒子径の維持、及び界面活性剤の使用によって維持され得る。微生物の作用の阻止は、種々の抗細菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール等によってもたらすことができる。多くの場合、等張剤、例えば、糖または塩化ナトリウムを含めることが好ましい。注射用組成物の長期的吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを組成物中に使用することによってもたらされ得る。
【0132】
滅菌注射液は、必要とされる量の活性化合物を、上記で列挙した種々の他の成分を必要に応じて含む適切な溶媒中に組み込み、続いて濾過滅菌することによって調製される。一般に、分散体は、種々の滅菌された活性成分を、基本的な分散媒及び上記で列挙したものからの必要とされる他の成分を含有する滅菌ビヒクルに組み込むことによって調製される。滅菌注射液の調製のための滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、真空乾燥及び凍結乾燥技法であり、これにより、任意の追加的な所望の成分を加えた活性成分の粉末が、先に滅菌濾過したそれらの溶液から得られる。
【0133】
腫瘍内注射は、例えば、Lammers,et al.,“Effect of Intratumoral Injection on the Biodistribution and the Therapeutic Potential of HPMA Copolymer-Based Drug Delivery Systems”Neoplasia.2006,10,788-795に考察される。
【0134】
ゲル剤、クリーム剤、浣腸、または直腸坐剤としての直腸組成物中で使用可能な薬理学的に許容される賦形剤には、限定されないが、ココアバターグリセリド、ポリビニルピロリドン等の合成ポリマー、PEG(PEG軟膏等)、グリセリン、グリセリンゼラチン、水添植物油、ポロキサマー、種々の分子量のポリエチレングリコール及びポリエチレングリコールの脂肪酸エステルVaselineの混合物、無水ラノリン、サメ肝油、サッカリンナトリウム、メントール、スイートアーモンドオイル、ソルビトール、安息香酸ナトリウム、アノキシド(anoxid)SBN、バニラ精油、エアロゾル、フェノキシエタノール中パラベン、p-オキシ安息香酸メチルナトリウム、p-オキシ安息香酸プロピルナトリウム、ジエチルアミン、カルボマー、カルボポール、メチルオキシ安息香酸(methyloxybenzoate)、マクロゴールセトステアリルエーテル、ココイルカプリロカプラート(cocoyl caprylocaprate)、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、流動パラフィン、キサンタンガム、カルボキシ-メタ重亜硫酸塩、エデト酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、メタ重亜硫酸カリウム、グレープフルーツ種子抽出物、メチルスルホニルメタン(MSM)、乳酸、グリシン、ビタミンA及びE等のビタミン、ならびに酢酸カリウムのうちのいずれか1つまたは複数が含まれる。
【0135】
ある特定の実施形態では、坐剤は、周囲温度では固体であるが体温では液体であるため直腸内で溶けて活性化合物を放出する、ココアバター、ポリエチレングリコール、または坐剤ワックス等の好適な非刺激性の賦形剤または担体と、本明細書に記載の化学物質とを混合することによって調製され得る。他の実施形態では、直腸投与用の組成物は、浣腸の形態である。
【0136】
他の実施形態では、本明細書に記載の化合物またはその医薬組成物は、経口投与(例えば、固体または液体剤形)を用いた消化管またはGI管への局所送達に好適である。
【0137】
経口投与用の固体剤形には、カプセル剤、錠剤、丸剤、散剤、及び顆粒剤が含まれる。かかる固体剤形では、化学物質は、クエン酸ナトリウムもしくはリン酸二カルシウム等の1つまたは複数の医薬として許容される賦形剤、及び/または:a)デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、及びケイ酸等の充填剤もしくは増量剤、b)例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、及びアカシア等の結合剤、c)グリセロール等の保湿剤、d)寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモもしくはタピオカデンプン、アルギン酸、ある特定のシリケート、及び炭酸ナトリウム等の崩壊剤、e)パラフィン等の溶解遅延剤、f)第四級アンモニウム化合物等の吸収促進剤、g)例えば、セチルアルコール及びグリセロールモノステアレート等の湿潤剤、h)カオリン及びベントナイトクレイ等の吸収剤、ならびにi)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、及びそれらの混合物等の滑沢剤と混合される。カプセル剤、錠剤、及び丸剤の場合、剤形はまた、緩衝剤を含んでもよい。類似の種類の固体組成物がまた、ラクトースすなわち乳糖等の賦形剤、ならびに高分子量ポリエチレングリコール等を使用した、軟質充填及び硬質充填ゼラチンカプセルにおける充填剤として用いられてもよい。
【0138】
一実施形態では、組成物は、丸剤または錠剤等の単位剤形の形態をとり、故に組成物は、本明細書で提供される化学物質と共に、ラクトース、スクロース、リン酸二カルシウム等といった希釈剤、ステアリン酸マグネシウム等といった滑沢剤、及びデンプン、アカシアガム、ポリビニルピロリジン、ゼラチン、セルロース、セルロース誘導体等といった結合剤を含有してもよい。別の固体剤形においては、粉末、球形顆粒(marume)、溶液または懸濁液(例えば、炭酸プロピレン、植物油、PEG、ポロキサマー124、またはトリグリセリド中)は、カプセル(ゼラチンまたはセルロース系カプセル)に封入される。例えば、各薬物の顆粒を含むカプセル(またはカプセル中の錠剤)、二層錠剤、二区画ゲルカプセル等の、本明細書で提供される1つまたは複数の化学物質または追加の活性薬剤が物理的に分離されている単位剤形もまた企図される。腸溶性コーティングまたは遅延放出経口剤形もまた企図される。
【0139】
他の生理学的に許容される化合物には、湿潤剤、乳化剤、分散剤、または微生物の増殖もしくは作用を防止するのに特に有用な防腐剤が含まれる。種々の防腐剤が周知されており、これには、例えば、フェノール及びアスコルビン酸が含まれる。
【0140】
ある特定の実施形態では、賦形剤は、滅菌されており、望ましくない物質を概して含まない。これらの組成物は、従来の周知されている滅菌技法によって滅菌することができる。錠剤及びカプセル剤等の種々の経口剤形の賦形剤に関して、滅菌性は所要ではない。通常はUSP/NF標準品で十分である。
【0141】
ある特定の実施形態では、固体経口剤形は、化学物質が胃または下部GI、例えば、上行結腸及び/または横行結腸及び/または遠位結腸及び/または小腸に送達されやすいように組成物を化学的及び/または構造的に仕向ける1つまたは複数の成分をさらに含むことができる。例示的な製剤技法は、例えば、Filipski,K.J.,et al.,Current Topics in Medicinal Chemistry,2013,13,776-802に記載され、同文献は参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0142】
例としては、上部GI標的化技法、例えば、アコーディオンピル(Intec Pharma)、フローティングカプセル、及び粘膜壁に接着することができる材料が挙げられる。
【0143】
他の例としては、下部GI標的化技法が挙げられる。腸管内の種々の領域を標的化するために、いくつかの腸溶/pH応答性コーティング剤及び賦形剤が利用可能である。これらの材料は、典型的には、薬物放出が所望されるGI領域に基づいて選択される、特定のpH範囲で溶解または浸食するように設計されるポリマーである。これらの材料はまた、酸に不安定な薬物を胃液から保護するか、または活性成分が上部GIに刺激性であり得る場合に曝露を制限するように機能する(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートシリーズ、Coateric(ポリビニル酢酸フタレート)、酢酸フタル酸セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース酢酸エステルコハク酸エステル、Eudragitシリーズ(メタクリル酸-メタクリル酸メチルコポリマー)、及びMarcoat)。他の技法には、GI管内の局所的な細菌叢に応答する剤形、大腸内圧崩壊型(Pressure-controlled)結腸送達カプセル、及びPulsincapが含まれる。
【0144】
眼内組成物には、限定されないが、以下のもののうちのいずれかの1つまたは複数が含まれ得る:ビスコゲン(viscogens)(例えば、カルボキシメチルセルロース、グリセリン、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール)、安定剤(例えば、Pluronic(登録商標)(トリブロックコポリマー)、シクロデキストリン)、防腐剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、ETDA、SofZia(ホウ酸、プロピレングリコール、ソルビトール、及び塩化亜鉛;Alcon Laboratories,Inc.)、Purite(安定化オキシクロロ複合体;Allergan,Inc.))。
【0145】
局所組成物には、軟膏剤及びクリーム剤が含まれ得る。軟膏剤は、典型的にワセリンまたは他の石油誘導体に基づく半固体調製物である。選択された活性薬剤を含有するクリーム剤は、典型的には、水中油または油中水のいずれかである場合が多い、粘稠な液体または半固体エマルションである。クリーム基剤は、典型的には、水洗性であり、油相、乳化剤、及び水相を含有する。ときには「内部」相とも呼ばれる、油相は一般に、ワセリン及びセチルまたはステアリルアルコール等の脂肪族アルコールから構成され、水相は、必ずしもそうではないが通常は、体積が油相を超え、一般に保湿剤を含有する。クリーム製剤中の乳化剤は一般に、非イオン性、アニオン性、カチオン性、または両性の界面活性剤である。他の担体またはビヒクルと同様に、軟膏基剤は、不活性、安定、非刺激性、かつ非感作性であるべきである。
【0146】
上述の実施形態のうちのいずれにおいても、本明細書に記載の医薬組成物には、以下のもののうちの1つまたは複数を含み得る:脂質、二重層間架橋多層小胞、生分解性ポリ(D,L-乳酸-co-グリコール酸)[PLGA]ベースまたはポリ無水物ベースのナノ粒子またはマイクロ粒子、及びナノ多孔質粒子支持脂質二重層。
【0147】
投薬量
投薬量は、患者の必要性、処置されている病態の重症度、及び用いられている特定の化合物に応じて変動させてもよい。特定の状況に適正な投薬量の決定は、医学分野の専門家によって決定され得る。総計の1日投薬量が分割され、1日を通して少量に分けて、または継続送達を提供する手段によって投与されてもよい。
【0148】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物は、約0.001mg/Kg~約500mg/Kg(例えば、約0.001mg/Kg~約200mg/Kg、約0.01mg/Kg~約200mg/Kg、約0.01mg/Kg~約150mg/Kg、約0.01mg/Kg~約100mg/Kg、約0.01mg/Kg~約50mg/Kg、約0.01mg/Kg~約10mg/Kg、約0.01mg/Kg~約5mg/Kg、約0.01mg/Kg~約1mg/Kg、約0.01mg/Kg~約0.5mg/Kg、約0.01mg/Kg~約0.1mg/Kg、約0.1mg/Kg~約200mg/Kg、約0.1mg/Kg~約150mg/Kg、約0.1mg/Kg~約100mg/Kg、約0.1mg/Kg~約50mg/Kg、約0.1mg/Kg~約10mg/Kg、約0.1mg/Kg~約5mg/Kg、約0.1mg/Kg~約1mg/Kg、約0.1mg/Kg~約0.5mg/Kg)の投薬量で投与される。
【0149】
レジメン
上述の投薬量は、連日(例えば、単回用量としてまたは2回以上の分割用量として)または非連日(例えば、隔日間、2日毎、3日毎、週1回、週2回、2週間に1回、月1回)投与することができる。
【0150】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物の投与期間は、1日、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間、4ヶ月間、5ヶ月間、6ヶ月間、7ヶ月間、8ヶ月間、9ヶ月間、10ヶ月間、11ヶ月間、12ヶ月間にわたるか、またはそれよりも長い。さらなる実施形態では、投与が停止される期間は、1日、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間、4ヶ月間、5ヶ月間、6ヶ月間、7ヶ月間、8ヶ月間、9ヶ月間、10ヶ月間、11ヶ月間、12ヶ月間にわたるか、またはそれよりも長い。ある実施形態では、治療用化合物は、個体に一定期間投与され、続いて別個の一定期間が設けられる。別の実施形態では、治療用化合物は、第1の期間にわたって投与され、第1の期間に続いて第2の期間が設けられ、この第2の期間中に投与が停止され、続いて治療用化合物の投与が開始される第3の期間が設けられ、次いで第3の期間に続いて投与が停止される第4の期間が設けられる。この実施形態のある態様では、治療用化合物の投与期間、続いて投与が停止される期間は、決定された一定期間または未決定の一定期間にわたって反復される。さらなる実施形態では、投与期間は、1日、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間、4ヶ月間、5ヶ月間、6ヶ月間、7ヶ月間、8ヶ月間、9ヶ月間、10ヶ月間、11ヶ月間、12ヶ月間にわたるか、またはそれよりも長い。さらなる実施形態では、投与が停止される期間は、1日、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間、4ヶ月間、5ヶ月間、6ヶ月間、7ヶ月間、8ヶ月間、9ヶ月間、10ヶ月間、11ヶ月間、12ヶ月間にわたるか、またはそれよりも長い。
【0151】
処置方法
適応症
PIK3CA遺伝子によってコードされるホスファチジルイノシトール4,5-ビスリン酸3-キナーゼアイソフォームアルファ(PI3Kα)を阻害するための方法が本明細書で提供される。例えば、PIK3CA遺伝子、PI3Kαタンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全に関連する疾患または障害(すなわち、PI3Kα関連疾患または障害)、例えば、PIK3CA関連過成長症候群((PROS)、例えば、Venot,et al.,Nature,558,540-546(2018)を参照されたい)、脳障害(例えば、巨脳症-毛細血管奇形症候群(MCAP)及び片側巨脳症として)、先天性脂肪腫(例えば、血管奇形の過成長)、表皮母斑及び骨格/脊椎異常(例えば、CLOVES症候群)ならびに線維脂肪過形成(FH)、またはがん(例えば、PI3Kα関連がん)を処置または予防するのに有用なPI3Kαの阻害剤が本明細書で提供される。
【0152】
本明細書で使用される「PI3Kα阻害剤」は、PI3Kα不活性化活性(例えば、阻害するまたは減少させる)を示す任意の化合物を含む。いくつかの実施形態では、PI3Kα阻害剤は、1つまたは複数の変異を有するPI3Kαに対して選択的であり得る。
【0153】
試験化合物がPI3Kαの阻害剤として作用する能力は、当該技術分野で既知のアッセイによって実証され得る。本明細書で提供される化合物及び組成物のPI3Kα阻害剤としての活性は、インビトロ、インビボ、または細胞株においてアッセイされ得る。インビトロアッセイには、当該キナーゼの阻害を決定するアッセイが含まれる。代替のインビトロアッセイは、阻害剤が当該タンパク質キナーゼに結合する能力を定量するものであり、これは結合前に化合物を放射性標識し、化合物/キナーゼ複合体を単離して、結合した放射性標識の量を決定することによって、または新たな化合物が既知の放射性リガンドに結合させたキナーゼと共にインキュベートされる競合実験を実施することによってのいずれかで測定され得る。
【0154】
本明細書で提供されるPI3Kα阻害剤の効力は、EC50値によって決定され得る。実質的に類似の条件下で決定したときに、より低いEC50値を有する化合物は、より高いEC50値を有する化合物と比べてより強力な阻害剤である。いくつかの実施形態では、実質的に類似の条件は、インビトロまたはインビボで(例えば、野生型PI3Kα、変異PI3Kα、またはそれらのうちのいずれかの断片を発現する腫瘍細胞、A594細胞、U2OS細胞、A431細胞、Ba/F3細胞、または3T3細胞において)、PI3Kα依存性リン酸化レベルを決定することを含む。
【0155】
本明細書で提供されるPI3Kα阻害剤の効力はまた、IC50値によっても決定され得る。実質的に類似の条件下で決定したときに、より低いIC50値を有する化合物は、より高いIC50値を有する化合物と比べてより強力な阻害剤である。いくつかの実施形態では、実質的に類似の条件は、インビトロまたはインビボで(例えば、野生型PI3Kα、変異PI3Kα、またはそれらのうちのいずれかの断片を発現する腫瘍細胞、SKOV3、T47D、CAL33、BT20、HSC2、OAW42、NCI、HCC1954、NCIH1048、Detroit562、A594細胞、U2OS細胞、A431細胞、A594細胞、U2OS細胞、Ba/F3細胞、または3T3細胞において)、PI3Kα依存性リン酸化レベルを決定することを含む。
【0156】
野生型PI3Kαと、本明細書に記載される1つまたは複数の変異を含有するPI3Kαとの間の選択性はまた、表面プラズモン共鳴法及び蛍光ベースの結合アッセイ等のインビトロアッセイ、ならびにPI3Kα活性のバイオマーカーであるpAKTのレベル等の細胞アッセイ、または細胞増殖が変異PI3Kαキナーゼ活性に依存する増殖アッセイを使用しても測定され得る。
【0157】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される化合物は、PI3Kαの強力で選択的な阻害を示し得る。例えば、本明細書で提供される化合物は、PI3Kαのらせん状のホスファチジルイノシトールキナーゼ相同ドメインの触媒ドメインに結合し得る。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される化合物は、1つまたは複数の変異、例えば、表1及び2にある変異を含むPI3Kαキナーゼに対してナノモル濃度の効力を示し得る。
【0158】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される化合物は、変異PI3Kαの強力で選択的な阻害を示し得る。例えば、本明細書で提供される化合物は、キナーゼドメインにおけるアロステリック部位に結合し得る。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される化合物は、活性化変異を含むPI3Kαタンパク質に対してナノモル濃度の効力を示し得、関連するキナーゼ(例えば、野生型PI3Kα)に対する活性は最小限である。野生型PI3Kαの阻害は、生活の質及び服薬遵守に影響を及ぼし得る望ましくない副作用(例えば、高血糖症及び皮疹)を引き起こす可能性がある。場合によっては、野生型PI3Kαの阻害はまた、用量制限毒性につながる可能性がある。例えば、Hanker,et al.,Cancer Disc.2019,9,4,482-491を参照されたい。
【0159】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物、またはその医薬として許容される塩は、PI3Kαを選択的に標的とすることができる。例えば、式(I)の化合物、またはその医薬として許容される塩は、別のキナーゼまたは非キナーゼ標的よりもPI3Kαを選択的に標的とすることができる。
【0160】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物、またはその医薬として許容される塩は、野生型PI3Kαの阻害と比べて、本明細書に記載される1つまたは複数の変異(例えば、表1または表2に記載される1つまたは複数の変異)を含有するPI3Kαのより大きな阻害を示し得る。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物、またはその医薬として許容される塩は、野生型PI3Kαの阻害と比べて、本明細書に記載される1つまたは複数の変異を含有するPI3Kαの少なくとも2倍、3倍、5倍、10倍、25倍、50倍、または100倍大きな阻害を示し得る。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物、またはその医薬として許容される塩は、野生型PI3Kαの阻害と比べて、本明細書に記載される1つまたは複数の変異を含有するPI3Kαの最大1000倍大きな阻害を示し得る。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物、またはその医薬として許容される塩は、野生型PI3Kαの阻害と比べて、本明細書に記載の変異の組み合わせを有するPI3Kαの最大10000倍大きな阻害を示し得る。
【0161】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物、またはその医薬として許容される塩は、野生型PI3Kαの阻害と比べて、本明細書に記載される1つまたは複数の変異を含有するPI3Kαの約2倍~約10倍大きな阻害を示し得る。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物、またはその医薬として許容される塩は、野生型PI3Kαの阻害と比べて、本明細書に記載される1つまたは複数の変異を含有するPI3Kαの約10倍~約100倍大きな阻害を示し得る。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物、またはその医薬として許容される塩は、野生型PI3Kαの阻害と比べて、本明細書に記載される1つまたは複数の変異を含有するPI3Kαの約100倍~約1000倍大きな阻害を示し得る。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物、またはその医薬として許容される塩は、野生型PI3Kαの阻害と比べて、本明細書に記載される1つまたは複数の変異を含有するPI3Kαの約1000倍~約10000倍大きな阻害を示し得る。
【0162】
式(I)の化合物、またはその医薬として許容される塩は、PI3Kα関連疾患及び障害、例えば、PIK3CA関連過成長症候群(PROS)、ならびに血液がん及び固形腫瘍(例えば、進行性または転移性固形腫瘍)を含めたがん等の増殖性障害等の、PI3Kα阻害剤で処置され得る疾患及び障害を処置するのに有用である。
【0163】
本明細書で使用されるとき、「処置する」または「処置」という用語は、治療措置または予防措置を指す。有益なまたは所望の臨床結果には、検出可能であるか検出不能であるかにかかわらず、疾患または障害または病態に関連する症状の全体的または部分的な軽減、疾患の程度の減弱、安定化した(すなわち、悪化していない)疾患状態、疾患進行の遅延または緩徐化、疾患状態(例えば、疾患の1つまたは複数の症状)の改善または緩和、及び寛解(部分的であるか完全であるかにかかわらず)が含まれるが、これらに限定されない。「処置」はまた、処置を受けない場合に予想される生存期間と比較して生存期間を延長することも意味し得る。
【0164】
本明細書で使用されるとき、「対象」、「個体」、または「患者」という用語は、互換的に使用され、マウス、ラット、他の齧歯類、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ウマ、霊長類、及びヒト等の哺乳動物を含む、任意の動物を指す。いくつかの実施形態では、対象は、ヒトである。いくつかの実施形態では、対象は、処置及び/または予防されるべき疾患または障害の少なくとも1つの症状を経験している、及び/またはそれを呈している。
【0165】
いくつかの実施形態では、対象は、(例えば、規制当局により承認された、例えば、FDAにより承認されたアッセイまたはキットを使用して決定したときに)PIK3CA遺伝子、PI3Kαタンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全を伴うがん(PI3Kα関連がん)を有すると特定または診断されている。いくつかの実施形態では、対象は、(例えば、規制当局により承認されたアッセイまたはキットを使用して決定したときに)PIK3CA遺伝子、PI3Kαタンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全に対して陽性である腫瘍を有する。例えば、対象は、表1または表2に記載される変異に対して陽性である腫瘍を有する。対象は、PIK3CA遺伝子、PI3Kαタンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全に対して陽性である(例えば、規制当局により承認された、例えば、FDAにより承認されたアッセイまたはキットを使用して陽性であると特定された)腫瘍(複数可)を有する対象であり得る。対象は、その腫瘍がPIK3CA遺伝子、PI3Kαタンパク質、またはその発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全を有する(例えば、腫瘍が、規制当局により承認された、例えば、FDAにより承認されたキットまたはアッセイを使用してそのように特定された)対象であり得る。いくつかの実施形態では、対象は、PI3Kα関連がんを有することが疑われる。いくつかの実施形態では、対象は、対象がPIK3CA遺伝子、PI3Kαタンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全を有する腫瘍を有することを示す診療録を有する(また任意選択で、診療録は、対象が本明細書で提供される組成物のうちのいずれかで処置されるべきであることを示す)。
【0166】
いくつかの実施形態では、対象は、小児対象である。
【0167】
本明細書で使用される「小児対象」という用語は、診断または処置時点で21歳未満である対象を指す。「小児」という用語はさらに、新生児(出生から生後1ヶ月まで)、乳児(生後1ヶ月から2歳まで);子供(2歳から12歳まで)、及び青年(12歳から21歳まで(22歳の誕生日までであるが、22歳を含まない))を含む種々の亜集団に分割され得る。Berhman RE,Kliegman R,Arvin AM,Nelson WE.Nelson Textbook of Pediatrics,15th Ed.Philadelphia:W.B.Saunders Company,1996、Rudolph AM,et al.Rudolph’s Pediatrics,21st Ed.New York:McGraw-Hill,2002、及びAvery MD,First LR.Pediatric Medicine,2nd Ed.Baltimore:Williams & Wilkins;1994。いくつかの実施形態では、小児対象は、出生から生後28日まで、日齢29日から2歳未満まで、2歳から12歳未満まで、または12歳から21歳まで(22歳の誕生日までであるが、22歳を含まない)である。いくつかの実施形態では、小児対象は、出生から生後28日まで、日齢29日から1歳未満まで、月齢1ヶ月から月齢4ヶ月未満まで、月齢3ヶ月から月齢7ヶ月未満まで、月齢6ヶ月から1歳未満まで、1歳から2歳未満まで、2歳から3歳未満まで、2歳から7歳未満まで、3歳から5歳未満まで、5歳から10歳未満まで、6歳から13歳未満まで、10歳から15歳未満まで、または15歳から22歳未満までである。
【0168】
ある特定の実施形態では、式(I)の化合物、またはその医薬として許容される塩は、本明細書で定義される疾患及び障害(例えば、PIK3CA関連過成長症候群(PROS)及びがん)を予防するのに有用である。本明細書で使用される「予防する」という用語は、本明細書に記載される疾患もしくは病態、またはその症状の全体的または部分的な発症、再発、もしくは広がりを遅延させることを意味する。
【0169】
本明細書で使用される「PI3Kα関連疾患または障害」という用語は、PIK3CA遺伝子、PI3Kαタンパク質、またはそれらのうちのいずれか(例えば、1つまたは複数)の発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全(例えば、本明細書に記載のPIK3CA遺伝子、またはPI3Kαタンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全の種類のうちのいずれか)に関連するまたはそれを有する疾患または障害を指す。PI3Kα関連疾患または障害の非限定的な例としては、例えば、PIK3CA関連過成長症候群(PROS)、脳障害(例えば、巨脳症-毛細血管奇形症候群(MCAP)及び片側巨脳症として)、先天性脂肪腫(例えば、血管奇形の過成長)、表皮母斑及び骨格/脊椎異常(例えば、CLOVES症候群)ならびに線維脂肪過形成(FH)、またはがん(例えば、PI3Kα関連がん)が挙げられる。
【0170】
本明細書で使用される「PI3Kα関連がん」という用語は、PIK3CA遺伝子、PI3Kαタンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全に関連するまたはそれを有するがんを指す。PI3Kα関連がんの非限定的な例が本明細書に記載される。
【0171】
「PIK3CA遺伝子、PI3Kαタンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全」という語句は、遺伝子変異(例えば、野生型PI3Kαと比較して少なくとも1つのアミノ酸の欠失を含むPI3Kαの発現をもたらすPIK3CA遺伝子における変異、野生型PI3Kαと比較して1つまたは複数の点変異を有するPI3Kαの発現をもたらすPIK3CA遺伝子における変異、野生型PI3Kαと比較して少なくとも1つの挿入されたアミノ酸を有するPI3Kαの発現をもたらすPIK3CA遺伝子における変異、細胞におけるPI3Kαレベルの増加をもたらす遺伝子重複、または細胞におけるPI3Kαレベルの増加をもたらす調節配列(例えば、プロモーター及び/またはエンハンサー)における変異)、野生型PI3Kαと比較してPI3Kαに少なくとも1つのアミノ酸の欠失を有するPI3KαをもたらすPI3Kα mRNAの選択的スプライシングバージョン)、または(例えば、非がん性対照細胞と比較して)異常な細胞シグナル伝達及び/または調節不全の自己分泌/傍分泌シグナル伝達に起因する哺乳類細胞における野生型PI3Kαの発現の増加(例えば、レベルの増加)を指す。別の例として、PIK3CA遺伝子、PI3Kαタンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全は、構成的に活性であるか、または変異を含まないPIK3CA遺伝子によってコードされるタンパク質と比較して増加した活性を有するPI3Kαをコードする、PIK3CA遺伝子における変異であり得る。PI3Kαの点変異/置換/挿入/欠失の非限定的な例が表1及び表2に記載される。
【0172】
PI3Kαを参照しての「活性化変異」という用語は、例えば、同一の条件下でアッセイしたときに、例えば、野生型PI3Kαと比較して、増加したキナーゼ活性を有するPI3Kαの発現をもたらす、PIK3CA遺伝子における変異を説明する。例えば、活性化変異は、例えば、同一の条件下でアッセイしたときに、例えば、野生型PI3Kαと比較して、増加したキナーゼ活性を有する1つまたは複数(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個)のアミノ酸置換(例えば、本明細書に記載のアミノ酸置換のうちのいずれかの任意の組み合わせ)を有するPI3Kαの発現をもたらす、PIK3CA遺伝子における変異であり得る。別の例では、活性化変異は、例えば、同一の条件下でアッセイしたときに、例えば、野生型PI3Kαと比較して、1つまたは複数(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個)のアミノ酸が欠失したPI3Kαの発現をもたらす、PIK3CAにおける変異であり得る。別の例では、活性化変異は、例えば、同一の条件下でアッセイしたときに、野生型PI3Kα、例えば、本明細書に記載の例示的な野生型PI3Kαと比較して、少なくとも1個(例えば、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも12個、少なくとも14個、少なくとも16個、少なくとも18個、または少なくとも20個)のアミノ酸が挿入されたPI3Kαの発現をもたらす、PIK3CA遺伝子における変異であり得る。活性化変異の追加の例は、当該技術分野で既知である。
【0173】
「野生型(wild type)」または「野生型(wild-type)」という用語は、参照される核酸またはタンパク質に関連する疾患または障害を有しない対象において典型的に見出される核酸(例えば、PIK3CA遺伝子またはPI3Kα mRNA)またはタンパク質(例えば、PI3Kα)配列を説明する。
【0174】
「野生型(wild type)PI3Kα」または「野生型(wild-type)PI3Kα」という用語は、PI3Kα関連疾患、例えば、PI3Kα関連がんを有しない(また任意選択で、PI3Kα関連疾患を発症する増加したリスクも有しない及び/またはPI3Kα関連疾患を有することが疑われない)対象において見出されるか、またはPI3Kα関連疾患、例えば、PI3Kα関連がんを有しない(また任意選択で、PI3Kα関連疾患を発症する増加したリスクも有しない及び/またはPI3Kα関連疾患を有することが疑われない)対象からの細胞もしくは組織において見出される、正常なPI3Kα核酸(例えば、PIK3CAまたはPI3Kα mRNA)またはタンパク質を説明する。
【0175】
がんの処置を必要とする対象においてがん(例えば、PI3Kα関連がん)を処置する方法が本明細書で提供され、該方法は、対象に、治療上有効量の式(I)の化合物もしくはその医薬として許容される塩、またはその医薬組成物を投与することを含む。例えば、PI3Kα関連がんの処置を必要とする対象においてPI3Kα関連がんを処置するための方法が本明細書で提供され、該方法は、a)対象からの試料中のPIK3CA遺伝子、PI3Kαタンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全を検出することと、b)治療上有効量の式(I)の化合物、またはその医薬として許容される塩を投与することとを含む。いくつかの実施形態では、PIK3CA遺伝子、PI3Kαタンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全は、PI3Kαタンパク質の1つまたは複数の置換/点変異/挿入を含む。PI3Kαタンパク質の置換/挿入/欠失の非限定的な例が表1及び表2に記載される。
【0176】
いくつかの実施形態では、PI3Kαタンパク質の置換/挿入/欠失は、E542A、E542G、E542K、E542Q、E542V、E545A、E545D、E545G、E545K、E545Q、M1043I、M1043L、M1043T、M1043V、H1047L、H1047Q、H1047R、H1047Y、G1049R、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、PI3Kαタンパク質の置換/挿入/欠失は、H1047X(式中、Xは、任意のアミノ酸である)である。
【0177】
本明細書に記載の方法または使用のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、がん(例えば、PI3Kα関連がん)は、血液がん及び固形腫瘍から選択される。
【0178】
本明細書に記載の方法または使用のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、がん(例えば、PI3Kα関連がん)は、乳癌(HER2及びHER2乳癌の両方、ER乳癌、及びトリプルネガティブ乳癌を含む)、子宮内膜癌、肺癌(腺癌の肺癌及び肺扁平上皮癌を含む)、食道扁平上皮癌、卵巣癌、結腸直腸癌、食道胃接合部腺癌、膀胱癌、頭頸部癌(中咽頭扁平上皮癌等の頭頸部扁平上皮癌を含む)、甲状腺癌、神経膠腫、子宮頸癌、リンパ管腫、髄膜腫、黒色腫(ブドウ膜黒色腫を含む)、腎臓癌、膵神経内分泌腫瘍(pNET)、胃癌、食道癌、急性骨髄性白血病、再発性及び難治性多発性骨髄腫、ならびに膵臓癌から選択される。
【0179】
本明細書に記載の方法または使用のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、がん(例えば、PI3Kα関連がん)は、乳癌(HER2及びHER2乳癌の両方、ER乳癌、及びトリプルネガティブ乳癌を含む)、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、卵巣癌、リンパ管腫、髄膜腫、頭頸部扁平上皮癌(中咽頭扁平上皮癌を含む)、黒色腫(ブドウ膜黒色腫を含む)、腎臓癌、膵神経内分泌腫瘍(pNET)、胃癌、食道癌、急性骨髄性白血病、再発性及び難治性多発性骨髄腫、膵臓癌、肺癌(腺癌の肺癌及び肺扁平上皮癌を含む)、ならびに子宮内膜癌から選択される。
【0180】
本明細書に記載の方法または使用のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、がん(例えば、PI3Kα関連がん)は、乳癌、肺癌、子宮内膜癌、食道扁平上皮癌、卵巣癌、結腸直腸癌、食道胃接合部腺癌、膀胱癌、頭頸部癌、甲状腺癌、神経膠腫、及び子宮頸癌から選択される。
【0181】
本明細書に記載の方法または使用のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、PI3Kα関連がんは、乳癌である。本明細書に記載の方法または使用のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、PI3Kα関連がんは、結腸直腸癌である。本明細書に記載の方法または使用のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、PI3Kα関連がんは、子宮内膜癌である。本明細書に記載の方法または使用のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、PI3Kα関連がんは、肺癌である。
【0182】
本明細書に記載の方法または使用のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、PI3Kα関連がんは、表1及び表2に記載されるがんから選択される。

【表1-1】

【表1-2】

【表1-3】

【表1-4】

【表1-5】

【表1-6】

【表1-7】

【表1-8】

【表1-9】

【表1-10】

【表1-11】

【表1-12】

【表1-13】

【表1-14】

【表1-15】

【表1-16】

【表1-17】

【表1-18】


【表2-1】

【表2-2】

【表2-3】
【0183】
いくつかの実施形態では、PIK3CA遺伝子、PI3Kαタンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全は、(野生型PI3Kαタンパク質と比較して)少なくとも1つの残基が欠失していることによりPI3Kαタンパク質ドメインの構成的活性をもたらすPI3Kαの選択的スプライスバリアントである発現タンパク質をもたらす、PI3Kα mRNAにおけるスプライスバリエーションを含む。
【0184】
いくつかの実施形態では、PIK3CA遺伝子、PI3Kαタンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全は、野生型PI3Kαタンパク質と比較して、1つもしくは複数のアミノ酸置換もしくは挿入を有するPI3Kαタンパク質の産生をもたらす、PIK3CA遺伝子における少なくとも1つの点変異、または1つもしくは複数のアミノ酸が挿入もしくは除去されたPI3Kαタンパク質の産生をもたらす、PIK3CA遺伝子における欠失を含む。場合によっては、結果として生じる変異PI3Kαタンパク質は、野生型PI3Kαタンパク質または同じ変異を含まないPI3Kαタンパク質と比較して、増加した活性を有する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物は、野生型PI3Kαタンパク質または同じ変異を含まないPI3Kαタンパク質と比べて、結果として生じる変異PI3Kαタンパク質を選択的に阻害する。
【0185】
ヒトホスファチジルイノシトール4,5-ビスリン酸3-キナーゼアイソフォームアルファの例示的な配列(UniProtKBエントリP42336)(配列番号1)


【化72】
【0186】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物、またはその医薬として許容されるものは、1つまたは複数のPI3Kα変異を有すると特定されているがんを処置するのに有用である。したがって、がんであると診断された(またはそれを有すると特定された)対象を処置するための方法であって、対象に治療上有効量の式(I)の化合物、またはその医薬として許容される塩を投与することを含む、該方法が本明細書で提供される。
【0187】
また、PI3Kα関連がんを有すると特定または診断された対象を処置するための方法であって、対象に治療上有効量の式(I)の化合物もしくはその医薬として許容される塩、またはその医薬組成物を投与することを含む、該方法も本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、対象もしくは対象からの生検試料中のPIK3CA遺伝子、PI3Kαタンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全を特定するための規制当局により承認された、例えば、FDAにより承認された試験もしくはアッセイの使用を通して、または本明細書に記載のアッセイの非限定的な例のうちのいずれかを実施することによって、PI3Kα関連がんを有すると特定または診断された対象。いくつかの実施形態では、試験またはアッセイは、キットとして提供される。いくつかの実施形態では、がんは、PI3Kα関連がんである。
【0188】
「規制当局」という用語は、当該国での医薬品の医学的使用の承認のための国の当局を指す。例えば、規制当局の非限定的な例は、米国食品医薬品局(FDA)である。
【0189】
また、がんの処置を必要とする対象においてがんを処置するための方法も提供され、該方法は、(a)対象においてPI3Kα関連がんを検出することと、(b)対象に治療上有効量の式(I)の化合物もしくはその医薬として許容される塩、またはその医薬組成物を投与することとを含む。これらの方法のいくつかの実施形態は、対象に別の抗がん剤(例えば、免疫療法)を投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、対象は、別の抗がん処置、例えば、腫瘍の少なくとも部分切除または放射線療法で以前に処置された。いくつかの実施形態では、対象は、対象もしくは対象からの生検試料中のPIK3CA遺伝子、PI3Kαタンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全を特定するための規制当局により承認された、例えば、FDAにより承認された試験もしくはアッセイの使用を通して、または本明細書に記載のアッセイの非限定的な例のうちのいずれかを実施することによって、PI3Kα関連がんを有すると判定される。いくつかの実施形態では、試験またはアッセイは、キットとして提供される。いくつかの実施形態では、がんは、PI3Kα関連がんである。
【0190】
また、対象を処置する方法であって、対象がPIK3CA遺伝子、PI3Kαタンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全を有するかどうかを判定するために対象から得られた試料に対してアッセイを実施することと、治療上有効量の式(I)の化合物もしくはその医薬として許容される塩、またはその医薬組成物を、PIK3CA遺伝子、PI3Kαタンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全を有すると判定された対象に投与すること(例えば、特異的または選択的に投与すること)とを含む、該方法も提供される。これらの方法のいくつかの実施形態は、対象に別の抗がん剤(例えば、免疫療法)を投与することをさらに含む。これらの方法のいくつかの実施形態では、対象は、別の抗がん処置、例えば、腫瘍の少なくとも部分切除または放射線療法で以前に処置された。いくつかの実施形態では、対象は、PI3Kα関連がんを有することが疑われる対象、PI3Kα関連がんの1つもしくは複数の症状を呈する対象、またはPI3Kα関連がんを発症するリスクが高い対象である。いくつかの実施形態では、アッセイは、次世代シーケンシング、パイロシーケンシング、免疫組織化学的検査、またはブレイクアパートFISH分析を利用する。いくつかの実施形態では、アッセイは、規制当局により承認されたアッセイ、例えば、FDAにより承認されたキットである。いくつかの実施形態では、アッセイは、液体生検である。これらの方法において使用され得る追加の非限定的なアッセイが本明細書に記載される。追加のアッセイもまた当該技術分野で既知である。
【0191】
また、対象がPIK3CA遺伝子、PI3Kαタンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全を有するかどうかを判定するために(ここで、PIK3CA遺伝子、PI3Kαタンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全が存在すると、対象がPI3Kα関連がんを有することが特定される)対象から得られた試料に対してアッセイ(例えば、インビトロアッセイ)を実施するステップを通して、PI3Kα関連がんを有すると特定または診断された対象においてPI3Kα関連がんを処置する際に使用するための、式(I)の化合物もしくはその医薬として許容される塩、またはその医薬組成物も提供される。また、対象がPIK3CA遺伝子、PI3Kαタンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全を有するかどうかを判定するために(ここで、PIK3CA遺伝子、PI3Kαタンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全が存在すると、対象がPI3Kα関連がんを有することが特定される)対象から得られた試料に対してアッセイを実施するステップを通して、PI3Kα関連がんを有すると特定または診断された対象においてPI3Kα関連がんを処置するための医薬の製造のための、式(I)の化合物、またはその医薬として許容される塩の使用も提供される。本明細書に記載の方法または使用のうちのいずれかのいくつかの実施形態は、対象が、アッセイの実施を通してPIK3CA遺伝子、PI3Kαタンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全を有すると判定され、式(I)の化合物もしくはその医薬として許容される塩、またはその医薬組成物を投与されるべきであると、対象の診療録(例えば、コンピュータ可読媒体)に記録することをさらに含む。いくつかの実施形態では、アッセイは、次世代シーケンシング、パイロシーケンシング、免疫組織化学的検査、またはブレイクアパートFISH分析を利用する。いくつかの実施形態では、アッセイは、規制当局により承認されたアッセイ、例えば、FDAにより承認されたキットである。いくつかの実施形態では、アッセイは、液体生検である。
【0192】
また、がんの処置を必要とする対象、またはPI3Kα関連がんを有すると特定もしくは診断された対象におけるがんの処置において使用するための、式(I)の化合物、またはその医薬として許容される塩も提供される。また、PI3Kα関連がんを有すると特定または診断された対象においてがんを処置するための医薬の製造のための、式(I)の化合物、またはその医薬として許容される塩の使用も提供される。いくつかの実施形態では、対象は、対象または対象からの生検試料中のPIK3CA遺伝子、PI3Kαタンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全を特定するための規制当局により承認された、例えば、FDAにより承認されたキットの使用を通してPI3Kα関連がんを有すると特定または診断される。本明細書で規定されるように、PI3Kα関連がんは、本明細書に記載されると共に、当該技術分野で既知であるものを含む。
【0193】
本明細書に記載の方法または使用のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、対象は、PIK3CA遺伝子、PI3Kαタンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全を伴うがんを有すると特定または診断されている。本明細書に記載の方法または使用のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、対象は、PIK3CA遺伝子、PI3Kαタンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全に対して陽性である腫瘍を有する。本明細書に記載の方法または使用のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、対象は、PIK3CA遺伝子、PI3Kαタンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全に対して陽性である腫瘍(複数可)を有する対象であり得る。本明細書に記載の方法または使用のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、対象は、その腫瘍がPIK3CA遺伝子、PI3Kαタンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全を有する対象であり得る。本明細書に記載の方法または使用のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、対象は、PI3Kα関連がんを有することが疑われる。いくつかの実施形態では、PI3Kα関連がんの処置を必要とする対象においてPI3Kα関連がんを処置するための方法が本明細書で提供され、該方法は、a)対象からの試料中のPIK3CA遺伝子、PI3Kαタンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全を検出することと、b)治療上有効量の式(I)の化合物、またはその医薬として許容される塩を投与することとを含む。いくつかの実施形態では、PIK3CA遺伝子、PI3Kαタンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全は、PI3Kαタンパク質の1つまたは複数の点変異/挿入/欠失を含む。PI3Kαタンパク質の点変異/挿入/欠失の非限定的な例が表1及び表2に記載される。いくつかの実施形態では、PI3Kαタンパク質の点変異/挿入/欠失は、H1047X(式中、Xは、任意のアミノ酸である)である。いくつかの実施形態では、PI3Kαタンパク質の点変異/挿入/欠失は、E542A、E542G、E542K、E542Q、E542V、E545A、E545D、E545G、E545K、E545Q、M1043I、M1043L、M1043T、M1043V、H1047L、H1047Q、H1047R、H1047Y、及びG1049Rからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、PIK3CA遺伝子、PI3Kαタンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全を伴うがんは、規制当局により承認された、例えば、FDAにより承認されたアッセイまたはキットを使用して判定される。いくつかの実施形態では、PIK3CA遺伝子、PI3Kαタンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全を伴う腫瘍は、規制当局により承認された、例えば、FDAにより承認されたアッセイまたはキットを使用して判定される。
【0194】
本明細書に記載の方法または使用のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、対象は、対象がPIK3CA遺伝子、PI3Kαタンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全を有する腫瘍を有することを示す診療録を有する。また、対象を処置する方法であって、治療上有効量の式(I)の化合物、またはその医薬として許容される塩を、対象がPIK3CA遺伝子、PI3Kαタンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全を有することを示す診療録を有する対象に投与することを含む、該方法も提供される。
【0195】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、対象がPIK3CA遺伝子、PI3Kαタンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくはレベルの調節不全を有するかどうかを判定するために対象から得られた試料に対してアッセイを実施することを含む。いくつかのかかる実施形態では、該方法はまた、PIK3CA遺伝子、PI3Kαタンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全を有すると判定された対象に、治療上有効量の式(I)の化合物、またはその医薬として許容される塩を投与することも含む。いくつかの実施形態では、該方法は、対象から得られた試料に対して実施されるアッセイを介して、対象がPIK3CA遺伝子、PI3Kαタンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくはレベルの調節不全を有すると判定することを含む。かかる実施形態では、該方法はまた、対象に治療上有効量の式(I)の化合物、またはその医薬として許容される塩を投与することも含む。いくつかの実施形態では、PIK3CA遺伝子、PI3Kαタンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルにおける調節不全は、PIK3CA遺伝子における1つまたは複数の点変異(例えば、本明細書に記載のPI3Kα点変異のうちの1つまたは複数のうちのいずれか)である。PIK3CA遺伝子における1つまたは複数の点変異は、例えば、以下のアミノ酸置換、欠失、及び挿入のうちの1つまたは複数を有するPI3Kαタンパク質の翻訳をもたらし得る:E542A、E542G、E542K、E542Q、E542V、E545A、E545D、E545G、E545K、E545Q、M1043I、M1043L、M1043T、M1043V、H1047L、H1047Q、H1047R、H1047Y、及びG1049R。PIK3CA遺伝子における1つまたは複数の変異は、例えば、以下のアミノ酸のうちの1つまたは複数を有するPI3Kαタンパク質の翻訳をもたらし得る:542、545、1043、及び1047、及び1049。いくつかの実施形態では、PIK3CA遺伝子、PI3Kαタンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルにおける調節不全は、1つまたは複数のPI3Kαアミノ酸置換(例えば、本明細書に記載のPI3Kαアミノ酸置換のうちのいずれか)である。これらの方法のいくつかの実施形態は、対象に別の抗がん剤(例えば、免疫療法)を投与することをさらに含む。
【0196】
本明細書に記載の方法または使用のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、対象からの試料を使用して、対象がPIK3CA遺伝子、またはPI3Kαタンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全を有するかどうかを判定するために使用されるアッセイには、例えば、次世代シーケンシング、免疫組織化学的検査、蛍光顕微鏡法、ブレイクアパートFISH分析、サザンブロット法、ウェスタンブロット法、FACS分析、ノーザンブロット法、及びPCRベースの増幅(例えば、RT-PCR及びリアルタイム定量RT-PCR)が含まれ得る。当該技術分野で周知されているように、アッセイは、典型的には、例えば、少なくとも1つの標識された核酸プローブまたは少なくとも1つの標識された抗体もしくはその抗原結合断片を用いて実施される。アッセイは、PIK3CA遺伝子、PI3Kαタンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全を検出するための当該技術分野で既知の他の検出方法を利用することができる(例えば、本明細書で引用される参考文献を参照されたい)。いくつかの実施形態では、試料は、対象からの生体試料または生検試料(例えば、パラフィン包埋生検試料)である。いくつかの実施形態では、対象は、PI3Kα関連がんを有することが疑われる対象、PI3Kα関連がんの1つもしくは複数の症状を有する対象、及び/またはPI3Kα関連がんを発症する増加したリスクを有する対象)である。
【0197】
いくつかの実施形態では、PIK3CA遺伝子、PI3Kαタンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全は、液体生検(流体生検または流体相生検と様々に称される)を使用して特定され得る。例えば、Karachialiou et al.,“Real-time liquid biopsies become a reality in cancer treatment”,Ann.Transl.Med.,3(3):36,2016を参照されたい。液体生検法を使用して、総腫瘍量及び/またはPIK3CA遺伝子、PI3Kαタンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全を検出することができる。液体生検は、対象から比較的容易に(例えば、簡単な採血を介して)得られる生体試料に対して実施され得、一般に、腫瘍量及び/またはPIK3CA遺伝子、PI3Kαタンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全を検出するために使用される慣習的な方法よりも侵襲性が低い。いくつかの実施形態では、液体生検を使用して、慣習的な方法よりも早期の段階でPIK3CA遺伝子、PI3Kαタンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全の存在を検出することができる。いくつかの実施形態では、液体生検において使用される生体試料には、血液、血漿、尿、脳脊髄液、唾液、痰、気管支肺胞洗浄液、胆汁、リンパ液、嚢胞液、便、腹水、及びそれらの組み合わせが含まれ得る。いくつかの実施形態では、液体生検を使用して、循環腫瘍細胞(CTC)を検出することができる。いくつかの実施形態では、液体生検を使用して、セルフリーDNAを検出することができる。いくつかの実施形態では、液体生検を使用して検出されるセルフリーDNAは、腫瘍細胞に由来する循環腫瘍DNA(ctDNA)である。ctDNAの分析(例えば、限定されないが、次世代シーケンシング(NGS)、慣習的なPCR、デジタルPCR、またはマイクロアレイ解析等の高感度検出技法を使用した)を使用して、PIK3CA遺伝子、PI3Kαタンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全を特定することができる。
【0198】
また、細胞においてPI3Kα活性を阻害するための方法も提供され、該方法は、細胞を式(I)の化合物、またはその医薬として許容される塩と接触させることを含む。いくつかの実施形態では、接触はインビトロで行う。いくつかの実施形態では、接触はインビボで行う。いくつかの実施形態では、接触はインビボで行い、該方法は、有効量の式(I)の化合物、またはその医薬として許容される塩を、異常なPI3Kα活性を有する細胞を有する対象に投与することを含む。いくつかの実施形態では、細胞は、がん細胞である。いくつかの実施形態では、がん細胞は、本明細書に記載される任意のがんである。いくつかの実施形態では、がん細胞は、PI3Kα関連がん細胞である。本明細書で使用されるとき、「接触」という用語は、示される部分をインビトロ系またはインビボ系で一緒にまとめることを指す。例えば、PI3Kαタンパク質と本明細書で提供される化合物との「接触」には、PI3Kαタンパク質を有するヒト等の個体または対象に本明細書で提供される化合物を投与すること、ならびに、例えば、本明細書で提供される化合物を、PI3Kαタンパク質を含有する細胞調製物または精製調製物を含有する試料に導入することを含む。
【0199】
また、インビトロまたはインビボで細胞増殖を阻害する方法も本明細書で提供され、該方法は、細胞を、本明細書で定義される有効量の式(I)の化合物もしくはその医薬として許容される塩、またはその医薬組成物と接触させることを含む。
【0200】
さらに、インビトロまたはインビボで細胞死を増加させる方法が本明細書で提供され、該方法は、細胞を、本明細書で定義される有効量の式(I)の化合物もしくはその医薬として許容される塩、またはその医薬組成物と接触させることを含む。また、対象において腫瘍細胞の死滅を増加させる方法も本明細書で提供される。該方法は、対象に有効な式(I)の化合物、またはその医薬として許容される塩を、腫瘍細胞の死滅を増加させるのに有効な量で投与することを含む。
【0201】
「治療上有効量」という語句は、かかる処置を必要とする対象に投与されるときに、(i)PI3Kαタンパク質関連疾患もしくは障害を処置する、(ii)特定の疾患、病態、もしくは障害の1つもしくは複数の症状を軽減、改善、もしくは排除する、または(iii)本明細書に記載の特定の疾患、病態、もしくは障害の1つもしくは複数の症状の発症を遅延させるのに十分な化合物の量を意味する。かかる量に対応するであろう式(I)の化合物、またはその医薬として許容される塩の量は、特定の化合物、病状及びその重症度、処置を必要とする対象の固有性(例えば、体重)等の要因に応じて様々であろうが、それでも当業者によって通例のように決定され得る。
【0202】
医薬品として用いられる場合、式(I)の化合物(その医薬として許容される塩を含む)は、本明細書に記載される医薬組成物の形態で投与することができる。
【0203】
組み合わせ
腫瘍内科学の分野において、異なる形態の処置の組み合わせを使用してがんを有する各対象を処置することは通常の慣行である。腫瘍内科学において、本明細書で提供される組成物に加えたかかる共同処置または治療法の他の構成要素(複数可)は、例えば、手術、放射線療法、ならびに他のキナーゼ阻害剤、シグナル伝達阻害剤、及び/またはモノクローナル抗体等の化学療法剤であり得る。例えば、手術は、開腹手術または低侵襲手術であり得る。したがって、式(I)の化合物、またはその医薬として許容される塩はまた、がん処置に対する補助剤としても有用であり得、つまり、それらは、1つまたは複数の追加の治療法または治療剤、例えば、同じまたは異なる作用機序によって作用する化学療法剤と組み合わせて使用することができる。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物、またはその医薬として許容される塩は、追加の治療剤または追加の治療法の投与前に使用することができる。例えば、それを必要とする対象は、式(I)の化合物、またはその医薬として許容される塩の1回または複数回の用量を一定期間投与され、次いで腫瘍の少なくとも部分切除を受けることが可能である。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物、またはその医薬として許容される塩の1回または複数回の用量での処置は、腫瘍の少なくとも部分切除の前に腫瘍のサイズ(例えば、腫瘍量)を低減する。いくつかの実施形態では、それを必要とする対象は、式(I)の化合物、またはその医薬として許容される塩の1回または複数回の用量を一定期間、1回または複数回の放射線療法の下で投与され得る。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物、またはその医薬として許容される塩の1回または複数回の用量での処置は、1回または複数回の放射線療法の前に腫瘍のサイズ(例えば、腫瘍量)を低減する。
【0204】
いくつかの実施形態では、対象は、標準治療(例えば、マルチキナーゼ阻害剤等の化学療法剤、免疫療法、または放射線(例えば、放射性ヨウ素)の投与)に不応または不耐であるがん(例えば、局所進行性または転移性腫瘍)を有する。いくつかの実施形態では、対象は、以前の治療(例えば、マルチキナーゼ阻害剤等の化学療法剤、免疫療法、または放射線(例えば、放射性ヨウ素)の投与)に不応または不耐であるがん(例えば、局所進行性または転移性腫瘍)を有する。いくつかの実施形態では、対象は、標準治療のないがん(例えば、局所進行性または転移性腫瘍)を有する。いくつかの実施形態では、対象は、PI3Kα阻害剤未経験である。例えば、対象は、選択的PI3Kα阻害剤での処置に対して未経験である。いくつかの実施形態では、対象は、PI3Kα阻害剤未経験ではない。いくつかの実施形態では、対象は、キナーゼ阻害剤未経験である。いくつかの実施形態では、対象は、キナーゼ阻害剤未経験ではない。いくつかの実施形態では、対象は、以前の治療を受けたことがある。例えば、マルチキナーゼ阻害剤(MKI)または別のPI3K阻害剤、例えば、ブパリシブ(BKM120)、アルペリシブ(BYL719)、WX-037、コパンリシブ(ALIQOPATM、BAY80-6946)、ダクトリシブ(NVP-BEZ235、BEZ-235)、タセリシブ(GDC-0032、RG7604)、ソノリシブ(sonolisib)(PX-866)、CUDC-907、PQR309、ZSTK474、SF1126、AZD8835、GDC-0077、ASN003、ピクチリシブ(GDC-0941)、ピララリシブ(pilaralisib)(XL147、SAR245408)、ゲダトリシブ(PF-05212384、PKI-587)、セラベリシブ(TAK-117、MLN1117、INK1117)、BGT-226(NVP-BGT226)、PF-04691502、アピトリシブ(GDC-0980)、オミパリシブ(GSK2126458、GSK458)、ボクスタリシブ(XL756、SAR245409)、AMG511、CH5132799、GSK1059615、GDC-0084(RG7666)、VS-5584(SB2343)、PKI-402、ウォルトマンニン、LY294002、PI-103、リゴサチブ、XL-765、LY2023414、SAR260301、KIN-193(AZD-6428)、GS-9820、AMG319、またはGSK2636771での処置。
【0205】
本明細書に記載の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、式(I)の化合物(またはその医薬として許容される塩)は、1つまたは複数の追加の治療法または治療(例えば、化学療法)剤から選択される、治療上有効量の少なくとも1つの追加の治療剤と組み合わせて投与される。
【0206】
追加の治療剤の非限定的な例としては、他のPI3Kα標的治療剤(すなわち、他のPI3Kα阻害剤)、EGFR阻害剤、HER2阻害剤、RAS経路標的治療剤(本明細書に記載されるmTOR阻害剤を含む)、PARP阻害剤、他のキナーゼ阻害剤(例えば、受容体型チロシンキナーゼ標的治療剤(例えば、Trk阻害剤またはマルチキナーゼ阻害剤))、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、シグナル伝達経路阻害剤、アロマターゼ阻害剤、選択的エストロゲン受容体モジュレーターまたは分解薬(SERM/SERD)、チェックポイント阻害剤、アポトーシス経路のモジュレーター(例えば、オバトクラックス(obataclax));細胞障害性化学療法薬、血管新生標的療法、免疫療法を含めた免疫標的薬剤、及び放射線療法が挙げられる。
【0207】
いくつかの実施形態では、EGFR阻害剤は、オシメルチニブ(AZD9291、メレレクチニブ(merelectinib)、TAGRISSOTM)、エルロチニブ(TARCEVA(登録商標))、ゲフィチニブ(IRESSA(登録商標))、セツキシマブ(ERBITUX(登録商標))、ネシツムマブ(PORTRAZZATM、IMC-11F8)、ネラチニブ(HKI-272、NERLYNX(登録商標))、ラパチニブ(TYKERB(登録商標))、パニツムマブ(ABX-EGF、VECTIBIX(登録商標))、バンデタニブ(CAPRELSA(登録商標))、ロシレチニブ(CO-1686)、オルムチニブ(OLITATM、HM61713、BI-1482694)、ナクオチニブ(naquotinib)(ASP8273)、ナザルチニブ(EGF816、NVS-816)、PF-06747775、イコチニブ(BPI-2009H)、アファチニブ(BIBW2992、GILOTRIF(登録商標))、ダコミチニブ(PF-00299804、PF-804、PF-299、PF-299804)、アビチニブ(AC0010)、AC0010MA EAI045、マツズマブ(EMD-7200)、ニモツズマブ(h-R3、BIOMAb EGFR(登録商標))、ザルツマブ(zalutumab)、MDX447、デパツキシズマブ(ヒト化mAb806、ABT-806)、デパツキシズマブマホドチン(ABT-414)、ABT-806、mAb806、カネルチニブ(CI-1033)、シコニン、シコニン誘導体(例えば、デオキシシコニン、イソブチリルシコニン、アセチルシコニン、β,β-ジメチルアクリルシコニン及びアセチルアルカンニン)、ポジオチニブ(NOV120101、HM781-36B)、AV-412、イブルチニブ、WZ4002、ブリガチニブ(AP26113、ALUNBRIG(登録商標))、ペリチニブ(EKB-569)、タルロキソチニブ(tarloxotinib)(TH-4000、PR610)、BPI-15086、Hemay022、ZN-e4、テセバチニブ(KD019、XL647)、YH25448、エピチニブ(epitinib)(HMPL-813)、CK-101、MM-151、AZD3759、ZD6474、PF-06459988、バルリチニブ(ASLAN001、ARRY-334543)、AP32788、HLX07、D-0316、AEE788、HS-10296、アビチニブ(avitinib)、GW572016、ピロチニブ(SHR1258)、SCT200、CPGJ602、Sym004、MAb-425、モドツキシマブ(TAB-H49)、フツキシマブ(futuximab)(992DS)、ザルツムマブ、KL-140、RO5083945、IMGN289、JNJ-61186372、LY3164530、Sym013、AMG595、BDTX-189、アバチニブ(avatinib)、ディスラプチン(Disruptin)、CL-387785、EGFRBiアーム自己T細胞、及びEGFR CAR-T療法である。いくつかの実施形態では、EGFR標的治療剤は、オシメルチニブ、ゲフィチニブ、エルロチニブ、アファチニブ、ラパチニブ、ネラチニブ、AZD-9291、CL-387785、CO-1686、またはWZ4002から選択される。
【0208】
例示的なHER2阻害剤には、トラスツズマブ(例えば、TRAZIMERA(商標)、HERCEPTIN(登録商標))、ペルツズマブ(例えば、PERJETA(登録商標))、トラスツズマブエムタンシン(T-DM1またはado-トラスツズマブエムタンシン、例えば、KADCYLA(登録商標))、ラパチニブ、KU004、ネラチニブ(例えば、NERLYNX(登録商標))、ダコミチニブ(例えば、VIZIMPRO(登録商標))、アファチニブ(GILOTRIF(登録商標))、ツカチニブ(例えば、TUKYSA(商標))、エルロチニブ(例えば、TARCEVA(登録商標))、ピロチニブ、ポジオチニブ、CP-724714、CUDC-101、サピチニブ(sapitinib)(AZD8931)、タネスピマイシン(17-AAG)、IPI-504、PF299、ペリチニブ、S-222611、及びAEE-788が含まれる。
【0209】
本明細書で使用される「RAS経路標的治療剤」には、RAS経路における任意のタンパク質の不活性化活性(例えば、キナーゼ阻害、アロステリック阻害、二量体化の阻害、及び分解の誘導)を示す任意の化合物が含まれる。RAS経路におけるタンパク質の非限定的な例としては、RAS(例えば、KRAS、HRAS、及びNRAS)、RAF(ARAF、BRAF、CRAF)、MEK、ERK、PI3K、AKT、及びmTOR等の、RAS-RAF-MAPK経路またはPI3K/AKT経路におけるタンパク質のうちのいずれか1つが挙げられる。いくつかの実施形態では、RAS経路モジュレーターは、RAS経路におけるタンパク質に対して選択的であり得、例えば、RAS経路モジュレーターは、RASに対して選択的であり得る(別称、RASモジュレーター)。いくつかの実施形態では、RASモジュレーターは、共有結合性阻害剤である。いくつかの実施形態では、RAS経路標的治療剤は、「KRAS経路モジュレーター」である。KRAS経路モジュレーターには、KRAS経路における任意のタンパク質の不活性化活性(例えば、キナーゼ阻害、アロステリック阻害、二量体化の阻害、及び分解の誘導)を示す任意の化合物が含まれる。KRAS経路におけるタンパク質の非限定的な例としては、KRAS、RAF、BRAF、MEK、ERK、PI3K(すなわち、本明細書に記載される他のPI3K阻害剤)、AKT、及びmTOR等の、KRAS-RAF-MAPK経路またはPI3K/AKT経路におけるタンパク質のうちのいずれか1つが挙げられる。いくつかの実施形態では、KRAS経路モジュレーターは、RAS経路におけるタンパク質に対して選択的であり得、例えば、KRAS経路モジュレーターは、KRASに対して選択的であり得る(別称、KRASモジュレーター)。いくつかの実施形態では、KRASモジュレーターは、共有結合性阻害剤である。
【0210】
KRAS標的治療剤(例えば、KRAS阻害剤)の非限定的な例としては、BI1701963、AMG510、ARS-3248、ARS1620、AZD4785、SML-8-73-1、SML-10-70-1、VSA9、AA12、及びMRTX-849が挙げられる。
【0211】
RAS標的治療剤のさらなる非限定的な例としては、BRAF阻害剤、MEK阻害剤、ERK阻害剤、PI3K阻害剤、AKT阻害剤、及びmTOR阻害剤が挙げられる。いくつかの実施形態では、BRAF阻害剤は、ベムラフェニブ(ZELBORAF(登録商標))、ダブラフェニブ(TAFINLAR(登録商標))、及びエンコラフェニブ(BRAFTOVI(登録商標))、BMS-908662(XL281)、ソラフェニブ、PLX3603、RAF265、RO5185426、GSK2118436、ARQ736、GDC-0879、PLX-4720、AZ304、PLX-8394、HM95573、RO5126766、LXH254、またはそれらの組み合わせである。
【0212】
いくつかの実施形態では、MEK阻害剤は、トラメチニブ(MEKINIST(登録商標)、GSK1120212)、コビメチニブ(COTELLIC(登録商標))、ビニメチニブ(MEKTOVI(登録商標)、MEK162)、セルメチニブ(AZD6244)、PD0325901、MSC1936369B、SHR7390、TAK-733、RO5126766、CS3006、WX-554、PD98059、CI1040(PD184352)、ヒポテマイシン、またはそれらの組み合わせである。
【0213】
いくつかの実施形態では、ERK阻害剤は、FRI-20(ON-01060)、VTX-11e、25-OH-D3-3-BE(B3CD、ブロモアセトキシカルシジオール)、FR-180204、AEZ-131(AEZS-131)、AEZS-136、AZ-13767370、BL-EI-001、LY-3214996、LTT-462、KO-947、KO-947、MK-8353(SCH900353)、SCH772984、ウリキセルチニブ(BVD-523)、CC-90003、GDC-0994(RG-7482)、ASN007、FR148083、5-7-オキソゼアノール(Oxozeaenol)、5-ヨードツベルシジン、GDC0994、ONC201、またはそれらの組み合わせである。
【0214】
いくつかの実施形態では、他方のPI3K阻害剤は、別のPI3Kα阻害剤である。いくつかの実施形態では、他方のPI3K阻害剤は、汎PI3K阻害剤である。いくつかの実施形態では、他方のPI3K阻害剤は、ブパリシブ(BKM120)、アルペリシブ(BYL719)、WX-037、コパンリシブ(ALIQOPATM、BAY80-6946)、ダクトリシブ(NVP-BEZ235、BEZ-235)、タセリシブ(GDC-0032、RG7604)、ソノリシブ(PX-866)、CUDC-907、PQR309、ZSTK474、SF1126、AZD8835、GDC-0077、ASN003、ピクチリシブ(GDC-0941)、ピララリシブ(XL147、SAR245408)、ゲダトリシブ(PF-05212384、PKI-587)、セラベリシブ(TAK-117、MLN1117、INK1117)、BGT-226(NVP-BGT226)、PF-04691502、アピトリシブ(GDC-0980)、オミパリシブ(GSK2126458、GSK458)、ボクスタリシブ(XL756、SAR245409)、AMG511、CH5132799、GSK1059615、GDC-0084(RG7666)、VS-5584(SB2343)、PKI-402、ウォルトマンニン、LY294002、PI-103、リゴサチブ、XL-765、LY2023414、SAR260301、KIN-193(AZD-6428)、GS-9820、AMG319、GSK2636771、またはそれらの組み合わせから選択される。
【0215】
いくつかの実施形態では、AKT阻害剤は、ミルテホシン(IMPADIVO(登録商標))、ウォルトマンニン、NL-71-101、H-89、GSK690693、CCT128930、AZD5363、イパタセルチブ(GDC-0068、RG7440)、A-674563、A-443654、AT7867、AT13148、ウプロセルチブ(uprosertib)、アフレセルチブ、DC120、2-[4-(2-アミノプロパ-2-イル)フェニル]-3-フェニルキノキサリン、MK-2206、エデルホシン、ミルテホシン、ペリホシン、エルシルホスホコリン、エルホシン(erufosine)、SR13668、OSU-A9、PH-316、PHT-427、PIT-1、DM-PIT-1、トリシリビン(リン酸トリシリビン一水和物)、API-1、N-(4-(5-(3-アセトアミドフェニル)-2-(2-アミノピリジン-3-イル)-3H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-3-イル)ベンジル)-3-フルオロベンズアミド、ARQ092、BAY1125976、3-オキソ-チルカル酸、ラクトキノマイシン、boc-Phe-ビニルケトン、ペリホシン(D-21266)、TCN、TCN-P、GSK2141795、ONC201、またはそれらの組み合わせから選択される。
【0216】
いくつかの実施形態では、mTOR阻害剤は、MLN0128、ビスツセルチブ(AZD-2014)、オナタセルチブ(CC-223)、CC-115、エベロリムス(RAD001)、テムシロリムス(CCI-779)、リダフォロリムス(AP-23573)、シロリムス(ラパマイシン)、リダフォロリムス(MK-8669)、またはそれらの組み合わせから選択される。
【0217】
ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤の非限定的な例としては、ロナファルニブ、チピファルニブ、BMS-214662、L778123、L744832、及びFTI-277が挙げられる。
【0218】
いくつかの実施形態では、化学療法剤には、アントラサイクリン、シクロホスファミド、タキサン、白金系薬剤、マイトマイシン、ゲムシタビン、エリブリン(HALAVEN(商標))、またはそれらの組み合わせが含まれる。
【0219】
タキサンの非限定的な例としては、パクリタキセル、ドセタキセル、アブラキサン、及びタキソテールが挙げられる。
【0220】
いくつかの実施形態では、アントラサイクリンは、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、及びそれらの組み合わせから選択される。
【0221】
いくつかの実施形態では、白金系薬剤は、カルボプラチン、シスプラチン、オキサリプラチン、ネダプラチン(nedplatin)、四硝酸トリプラチン、フェナントリプラチン、ピコプラチン、サトラプラチン、及びそれらの組み合わせから選択される。
【0222】
PARP阻害剤の非限定的な例としては、オラパリブ(LYNPARZA(登録商標))、タラゾパリブ、ルカパリブ、ニラパリブ、ベリパリブ、BGB-290(パミパリブ)、CEP9722、E7016、イニパリブ、IMP4297、NOV1401、2X-121、ABT-767、RBN-2397、BMN673、KU-0059436(AZD2281)、BSI-201、PF-01367338、INO-1001、及びJPI-289が挙げられる。
【0223】
アロマターゼ阻害剤の非限定的な例としては、アミノグルテチミド、テストラクトン、アナストロゾール、レトロゾール、エキセメスタン、ボロゾール、ホルメスタン、及びファドロゾールが挙げられる。
【0224】
選択的エストロゲン受容体モジュレーターまたは分解薬(SERM/SERD)の非限定的な例としては、タモキシフェン、フルベストラント、ブリラネストラント、エラセストラント、ギレデストラント(giredestrant)、アムセネストラント(SAR439859)、AZD9833、リントデストラント、LSZ102、LY3484356、ZN-c5、D-0502、及びSHR9549が挙げられる。
【0225】
免疫療法の非限定的な例としては、免疫チェックポイント治療法、アテゾリズマブ(TECENTRIQ(登録商標))、アルブミン結合パクリタキセルが挙げられる。免疫チェックポイント療法の非限定的な例としては、CTLA-4、PD-1、PD-L1、BTLA、LAG-3、A2AR、TIM-3、B7-H3、VISTA、IDO、及びそれらの組み合わせを標的とする阻害剤が挙げられる。いくつかの実施形態では、CTLA-4阻害剤は、イピリムマブ(YERVOY(登録商標))である。いくつかの実施形態では、PD-1阻害剤は、ペムブロリズマブ(KEYTRUDA(登録商標))、ニボルマブ(OPDIVO(登録商標))、セミプリマブ(LIBTAYO(登録商標))、またはそれらの組み合わせから選択される。いくつかの実施形態では、PD-L1阻害剤は、アテゾリズマブ(TECENTRIQ(登録商標))、アベルマブ(BAVENCIO(登録商標))、デュルバルマブ(IMFINZI(登録商標))、またはそれらの組み合わせから選択される。いくつかの実施形態では、LAG-3阻害剤は、IMP701(LAG525)である。いくつかの実施形態では、A2AR阻害剤は、CPI-444である。いくつかの実施形態では、TIM-3阻害剤は、MBG453である。いくつかの実施形態では、B7-H3阻害剤は、エノブリツズマブである。いくつかの実施形態では、VISTA阻害剤は、JNJ-61610588である。いくつかの実施形態では、IDO阻害剤は、インドキシモドである。例えば、Marin-Acevedo,et al.,J Hematol Oncol.11:39(2018)を参照されたい。
【0226】
いくつかの実施形態では、追加の治療法または治療剤は、フルベストラント、カペシタビン、トラスツズマブ、ado-トラスツズマブエムタンシン、ペルツズマブ、パクリタキセル、nab-パクリタキセル、エンザルタミド、オラパリブ、ペグ化リポソームドキソルビシン(PLD)、トラメチニブ、リボシクリブ、パルボシクリブ、ブパリシブ、AEB071、エベロリムス、エキセメスタン、シスプラチン、レトロゾール、AMG479、LSZ102、LEE011、セツキシマブ、AUY922、BGJ398、MEK162、LJM716、LGH447、イマチニブ、ゲムシタビン、LGX818、アムセネストラント、及びそれらの組み合わせから選択される。
【0227】
いくつかの実施形態では、追加の治療剤はまた、特定の抗がん療法の潜在的な副作用を処置するために及び/または緩和療法として(例えば、オピオイド及びコルチコステロイド)投与されてもよい。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の追加の治療法または治療剤は、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体アゴニスト、ナトリウム-グルコース輸送タンパク質2(SGLT-2)阻害剤、ジペプチジルペプチダーゼ4(DPP-4)阻害剤、メトホルミン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0228】
GLP-1受容体アゴニストの非限定的な例としては、リラグルチド(VICTOZA(登録商標)、NN2211)、デュラグルチド(LY2189265、TRULICITY(登録商標))、エキセナチド(BYETTA(登録商標)、BYDUREON(登録商標)、エキセンジン-4)、タスポグルチド、リキシセナチド(LYXUMIA(登録商標))、アルビグルチド(TANZEUM(登録商標))、セマグルチド(OZEMPIC(登録商標))、ZP2929、NNC0113-0987、BPI-3016、及びTT401が挙げられる。
【0229】
SGLT-2阻害剤の非限定的な例としては、ベキサグリフロジン、カナグリフロジン(INVOKANA(登録商標))、ダパグリフロジン(FARXIGA(登録商標))、エンパグリフロジン(JARDIANCE(登録商標))、エルツグリフロジン(STEGLATRO(商標))、イプラグリフロジン(SUGLAT(登録商標))、ルセオグリフロジン(LUSEFI(登録商標))、レモグリフロジン、セルグリフロジン(serfliflozin)、リコグリフロジン(licofliglozin)、ソタグリフロジン(ZYNQUISTA(商標))、及びトホグリフロジンが挙げられる。
【0230】
DPP-4阻害剤の非限定的な例としては、シタグリプチン(JANUVIA(登録商標))、ビルダグリプチン、サキサグリプチン(ONGLYZA(登録商標))、リナグリプチン(TRADJENDA(登録商標))、ゲミグリプチン、アナグリプチン、テネリグリプチン、アログリプチン、トレラグリプチン(NESINA(登録商標))、オマリグリプチン、エボグリプチン、及びデュトグリプチンが挙げられる。
【0231】
いくつかの実施形態では、対象はまた、血糖値を管理するために特定の食生活及び/または運動療法を維持するように指示される。
【0232】
したがって、がんを処置する方法であって、それを必要とする対象に、がんの処置のための同時、別個、または順次の使用に向けた、(a)式(I)の化合物、またはその医薬として許容される塩、(b)追加の治療剤、及び(c)任意選択で少なくとも1つの医薬として許容される担体を含む、がんを処置するための医薬品の組み合わせを投与することを含み、式(I)の化合物、またはその医薬として許容される塩、及び追加の治療剤の量が合わせてがんを処置する上で有効である、該方法もまた本明細書で提供される。
【0233】
いくつかの実施形態では、追加の治療剤(複数可)は、がんにおける標準治療である、上記で列挙した治療法または治療剤のうちのいずれか1つを含み、ここで、がんは、PIK3CA遺伝子、PI3Kαタンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全を有する。
【0234】
これらの追加の治療剤は、当業者に既知の標準的な薬務に従って、式(I)の化合物もしくはその医薬として許容される塩、またはその医薬組成物の1回または複数回の用量と共に、同じもしくは別個の剤形の一部として、同じもしくは異なる投与経路を介して、及び/または同じもしくは異なる投与スケジュールで投与されてもよい。
【0235】
また、(i)がんの処置を必要とする対象においてがんを処置するための医薬品の組み合わせであって、がんの処置のための同時、別個、または順次の使用に向けた、(a)式(I)の化合物、またはその医薬として許容される塩、(b)少なくとも1つの追加の治療剤(例えば、本明細書に記載のまたは当該技術分野で既知の例示的な追加の治療剤のうちのいずれか)、及び(c)任意選択で少なくとも1つの医薬として許容される担体を含み、式(I)の化合物、またはその医薬として許容される塩、及び追加の治療剤の量が合わせてがんを処置する上で有効である、該医薬品の組み合わせ、(ii)かかる組み合わせを含む医薬組成物、(iii)がんの処置のための医薬の調製のためのかかる組み合わせの使用、ならびに(iv)同時、別個、または順次の使用に向けた組み合わせた調製物としてのかかる組み合わせを含む商用包装物または製品、ならびがんの処置を必要とする対象におけるがんの処置方法も本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、がんは、PI3Kα関連がんである。
【0236】
本明細書で使用される「医薬品の組み合わせ」という用語は、複数の活性成分の混合または組み合わせからもたらされる薬物療法を指し、活性成分の固定の組み合わせ及び非固定の組み合わせの両方を含む。「固定の組み合わせ」という用語は、式(I)の化合物、またはその医薬として許容される塩、及び少なくとも1つの追加の治療剤(例えば、化学療法剤)が両方とも、単一の組成物または投薬量の形態で対象に同時に投与されることを意味する。「非固定の組み合わせ」という用語は、式(I)の化合物、またはその医薬として許容される塩、及び少なくとも1つの追加の治療剤(例えば、化学療法剤)が、それを必要とする対象に同時に、並行に、または介在する可変の時間制限を設けて順次に投与され得るように、別個の組成物または投薬量として製剤化されることを意味し、かかる投与は、対象の体内において2つ以上の化合物の有効なレベルをもたらす。これらはまた、カクテル療法、例えば、3つ以上の活性成分の投与にも当てはまる。
【0237】
したがって、がんを処置する方法であって、それを必要とする対象に、がんの処置のための同時、別個、または順次の使用に向けた、(a)式(I)の化合物、またはその医薬として許容される塩、及び(b)追加の治療剤を含む、がんを処置するための医薬品の組み合わせを投与することを含み、式(I)の化合物及び追加の治療剤が同時に、別個に、または順次に投与され、式(I)の化合物、またはその医薬として許容される塩、及び追加の治療剤の量が合わせてがんを処置する上で有効である、該方法もまた本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物、またはその医薬として許容される塩、及び追加の治療剤は、別個の投薬量として同時に投与される。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物、またはその医薬として許容される塩、及び追加の治療剤は、共同で治療上有効量で、例えば、1日の投薬量または断続的な投薬量で、別個の投薬量として任意の順序で順次に投与される。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物、またはその医薬として許容される塩、及び追加の治療剤は、組み合わせた投薬量として同時に投与される。
【0238】
実施形態
実施形態1:式(I)の化合物:
【化73】

またはその医薬として許容される塩であって、式中、
Zが、OまたはNRであり、
が、水素、C1~C6アルキル、またはC3~C6シクロアルキルであり、
各Rが、独立して選択されるハロゲンであり、
mが、0、1、2、または3であり、
が、ハロゲン、C1~C6アルキル、C1~C6ハロアルキル、1つまたは2つのフルオロにより任意選択で置換されるC3~C6シクロアルキルであり、
が、C1~C6アルキル、C1~C6ハロアルキル、または1つもしくは2つのフルオロにより任意選択で置換されるC3~C6シクロアルキルであり、
、X、X、及びXが、各々独立して、N、CH、またはCRであり、ここで、X、X、X、及びXのうちの2つ以下が、Nであることができ、
各Rが独立して、ハロゲン、-NRにより任意選択で置換されるC1~C6アルキル、C1~C6アルコキシ、C1~C6ハロアルキル、ヒドロキシル、シアノ、-COH、
-NR、-C(=O)NR、-SO(NR)、-SO(C1~C6アルキル)、-S(=O)(=NH)(C1~C6アルキル)、
-C(=O)(C1~C6アルキル)、-CO(C1~C6アルキル)、フェニル、5~6員ヘテロアリール、及び各々が1つまたは2つの独立して選択されるRにより任意選択で置換される3~6員ヘテロシクリルまたは3~6シクロアルキルからなる群から選択され、
各R、RA1、R、RB1、R、RC1、R、RD1、R、及びRが独立して、水素、Rにより任意選択で置換されるC1~C6アルキル、C1~C6ハロアルキル、-C(=O)(C1~C6アルキル)、または-SO(C1~C6アルキル)であるか、あるいは
及びRが、それらに結合している窒素原子と一緒に、4~6員ヘテロシクリルを形成し、
各Rが独立して、フルオロ、ヒドロキシル、シアノ、C1~C6アルキル、C1~C6アルコキシ、-NRA1B1、-C(=O)NRC1D1、及び-COHからなる群から選択される、前記化合物、または前記その医薬として許容される塩。
【0239】
実施形態2:mが1である、実施形態1に記載の化合物。
【0240】
実施形態3:mが2である、実施形態1に記載の化合物。
【0241】
実施形態4:
【化74】

が、
【化75】

である、実施形態1または2に記載の化合物。
【0242】
実施形態5:
【化76】

が、
【化77】

である、実施形態1または2に記載の化合物。
【0243】
実施形態6:
【化78】

が、
【化79】

である、実施形態1または3に記載の化合物。
【0244】
実施形態7:各Rが独立して、フルオロ及びクロロから選択される、実施形態1~6のいずれか1つに記載の化合物。
【0245】
実施形態8:各Rが、フルオロである、実施形態1~7のいずれか1つに記載の化合物。
【0246】
実施形態9:mが0である、実施形態1に記載の化合物。
【0247】
実施形態10:X、X、X、及びXのうちの1つが、CRであり、その他の3つのX、X、X、及びXが、NまたはCHである、実施形態1~9のいずれか1つに記載の化合物。
【0248】
実施形態11:X、X、X、及びXのうちの2つが、独立して選択されるCRであり、その他の2つのX、X、X、及びXが、NまたはCHである、実施形態1~9のいずれか1つに記載の化合物。
【0249】
実施形態12:X、X、X、及びXのうちの1つが、CRであり、その他の3つのX、X、X、及びXが、CHである、実施形態1~9のいずれか1つに記載の化合物。
【0250】
実施形態13:X、X、X、及びXのうちの2つが、独立して選択されるCRであり、その他の2つのX、X、X、及びXが、CHである、実施形態1~9のいずれか1つに記載の化合物。
【0251】
実施形態14:X、X、X、及びXのうちの1つが、CRであり、その他の3つのX、X、X、及びXが、Nである、実施形態1~9のいずれか1つに記載の化合物。
【0252】
実施形態15:X、X、X、及びXのうちの2つが、独立して選択されるCRであり、その他の2つのX、X、X、及びXが、Nである、実施形態1~9のいずれか1つに記載の化合物。
【0253】
実施形態16:X、X、X、及びXが、X及びXに隣接した炭素原子と一緒に、フェニル、ピリジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、またはピラジニル環を形成する、実施形態1~9のいずれか1つに記載の化合物。
【0254】
実施形態17:式(I-a)の構造:
【化80】

を有し、式中、
1Aが、ハロゲンであり、
1Bが、ハロゲンであるか、または不在であり、
及びXが、各々独立して、NまたはCHである、実施形態1に記載の化合物、またはその医薬として許容される塩。
【0255】
実施形態18:式(I-b)の構造:
【化81】

を有する、実施形態17に記載の化合物、またはその医薬として許容される塩。
【0256】
実施形態19:式(I-c)の構造:
【化82】

を有する、実施形態17に記載の化合物、またはその医薬として許容される塩。
【0257】
実施形態20:式(I-d)の構造:
【化83】

を有する、実施形態17に記載の化合物、またはその医薬として許容される塩。
【0258】
実施形態21:式(I-e)の構造:
【化84】

を有する、実施形態17に記載の化合物、またはその医薬として許容される塩。
【0259】
実施形態22:R1A及びR1Bが各々、独立して選択されるハロゲンである、実施形態17~21のいずれか1つに記載の化合物。
【0260】
実施形態23:R1A及びR1Bが各々、フルオロである、実施形態17~21のいずれか1つに記載の化合物。
【0261】
実施形態24:R1Aが、フルオロであり、R1Bが、不在である、実施形態17~21のいずれか1つに記載の化合物。
【0262】
実施形態25:R1Aが、フルオロであり、R1Bが、クロロである、実施形態17~21のいずれか1つに記載の化合物。
【0263】
実施形態26:Rが、C1~C6アルキルである、実施形態1~25のいずれか1つに記載の化合物。
【0264】
実施形態27:Rが、メチルである、実施形態1~26のいずれか1つに記載の化合物。
【0265】
実施形態28:Rが、C1~C6ハロアルキルである、実施形態1~25のいずれか1つに記載の化合物。
【0266】
実施形態29:Rが、ジフルオロメチルまたはトリフルオロメチルである、実施形態1~25及び28のいずれか1つに記載の化合物。
【0267】
実施形態30:Rが、ハロゲンである、実施形態1~25のいずれか1つに記載の化合物。
【0268】
実施形態31:Rが、クロロである、実施形態1~25及び30のいずれか1つに記載の化合物。
【0269】
実施形態32:Rが、1つまたは2つのフルオロにより任意選択で置換されるC3~C6シクロアルキルである、実施形態1~25のいずれか1つに記載の化合物。
【0270】
実施形態33:Rが、1つまたは2つのフルオロで置換されたC3~C6シクロアルキルである、実施形態1~25及び32のいずれか1つに記載の化合物。
【0271】
実施形態34:Rが、非置換C3~C6シクロアルキルである、実施形態1~25及び32のいずれか1つに記載の化合物。
【0272】
実施形態35:Rが、シクロプロピルである、実施形態34に記載の化合物。
【0273】
実施形態36:Rが、C1~C6アルキルである、実施形態1~35のいずれか1つに記載の化合物。
【0274】
実施形態37:Rが、C1~C3アルキルである、実施形態1~36のいずれか1つに記載の化合物。
【0275】
実施形態38:Rが、メチル、エチル、またはイソプロピルである、実施形態1~37のいずれか1つに記載の化合物。
【0276】
実施形態39:Rが、メチルである、実施形態1~38のいずれか1つに記載の化合物。
【0277】
実施形態40:Rが、エチルである、実施形態1~38のいずれか1つに記載の化合物。
【0278】
実施形態41:Rが、イソプロピルである、実施形態1~38のいずれか1つに記載の化合物。
【0279】
実施形態42:Rが、C1~C6ハロアルキルである、実施形態1~35のいずれか1つに記載の化合物。
【0280】
実施形態43:Rが、トリフルオロメチルである、実施形態1~35及び42のいずれか1つに記載の化合物。
【0281】
実施形態44:Rが、1つまたは2つのフルオロにより任意選択で置換されるC3~C6シクロアルキルである、実施形態1~35のいずれか1つに記載の化合物。
【0282】
実施形態45:Rが、1つまたは2つのフルオロで置換されたC3~C6シクロアルキルである、実施形態1~35及び44のいずれか1つに記載の化合物。
【0283】
実施形態46:Rが、非置換C3~C6シクロアルキルである、実施形態1~35及び44のいずれか1つに記載の化合物。
【0284】
実施形態47:Rが、シクロプロピルである、実施形態1~35及び44~46のいずれか1つに記載の化合物。
【0285】
実施形態48:Rが、ハロゲンである、実施形態1~47のいずれか1つに記載の化合物。
【0286】
実施形態49:Rが、C1~C6アルキルである、実施形態1~47のいずれか1つに記載の化合物。
【0287】
実施形態50:Rが、メチルである、実施形態1~47及び49のいずれか1つに記載の化合物。
【0288】
実施形態51:Rが、C1~C6アルコキシである、実施形態1~47のいずれか1つに記載の化合物。
【0289】
実施形態52:Rが、メトキシである、実施形態1~47及び51のいずれか1つに記載の化合物。
【0290】
実施形態53:Rが、C1~C6ハロアルキルである、実施形態1~47のいずれか1つに記載の化合物。
【0291】
実施形態54:Rが、トリフルオロメチルである、実施形態1~47及び53のいずれか1つに記載の化合物。
【0292】
実施形態55:Rが、ヒドロキシルである、実施形態1~47のいずれか1つに記載の化合物。
【0293】
実施形態56:Rが、シアノまたは-COHである、実施形態1~47のいずれか1つに記載の化合物。
【0294】
実施形態57:Rが、-NRである、実施形態1~47のいずれか1つに記載の化合物。
【0295】
実施形態58:R及びRが各々、水素である、実施形態1~47及び57のいずれか1つに記載の化合物。
【0296】
実施形態59:R及びRのうちの一方が、水素であり、R及びRのうちの他方が、Rにより任意選択で置換されるC1~C6アルキルである、実施形態1~47及び57のいずれか1つに記載の化合物。
【0297】
実施形態60:R及びRのうちの一方が、水素であり、R及びRのうちの他方が、Rで置換されたC1~C3アルキルである、実施形態1~47及び57のいずれか1つに記載の化合物。
【0298】
実施形態61:R及びRのうちの一方が、水素であり、R及びRのうちの他方が、フルオロ、ヒドロキシル、シアノ、C1~C6アルキル、C1~C6アルコキシ、-NRA1B1、-C(=O)NRC1D1、及び-COHからなる群から選択されるRで置換された、C1~C3アルキルである、実施形態1~47及び60のいずれか1つに記載の化合物。
【0299】
実施形態62:R及びRのうちの一方が、水素であり、R及びRのうちの他方が、メチルである、実施形態1~47及び57のいずれか1つに記載の化合物。
【0300】
実施形態63:R及びRが各々、C1~C6アルキルである、実施形態1~47及び57のいずれか1つに記載の化合物。
【0301】
実施形態64:R及びRが各々、メチルである、実施形態1~47、57及び63のいずれか1つに記載の化合物。
【0302】
実施形態65:R及びRのうちの一方が、水素であり、R及びRのうちの他方が、C1~C6ハロアルキルである、実施形態1~47及び57のいずれか1つに記載の化合物。
【0303】
実施形態66:R及びRが各々、C1~C6ハロアルキルである、実施形態1~47及び57のいずれか1つに記載の化合物。
【0304】
実施形態67:R及びRのうちの一方が、C1~C6アルキルであり、R及びRのうちの一方のうちの他方が、C1~C6ハロアルキルである、実施形態1~47及び57のいずれか1つに記載の化合物。
【0305】
実施形態68:1つのRが、-C(=O)NRである、実施形態1~47のいずれか1つに記載の化合物。
【0306】
実施形態69:R及びRが各々、水素である、実施形態1~47及び68のいずれか1つに記載の化合物。
【0307】
実施形態70:R及びRのうちの一方が、水素であり、R及びRのうちの他方が、C1~C6アルキルである、実施形態1~47及び68のいずれか1つに記載の化合物。
【0308】
実施形態71:R及びRのうちの一方が、水素であり、R及びRのうちの他方が、メチルである、実施形態1~47及び68のいずれか1つに記載の化合物。
【0309】
実施形態72:R及びRが各々、C1~C6アルキルである、実施形態1~47及び68のいずれか1つに記載の化合物。
【0310】
実施形態73:R及びRが各々、メチルである、実施形態1~47、及び68のいずれか1つに記載の化合物。
【0311】
実施形態74:R及びRのうちの一方が、水素であり、R及びRのうちの他方が、C1~C6ハロアルキルである、実施形態1~47及び68のいずれか1つに記載の化合物。
【0312】
実施形態75:R及びRが各々、C1~C6ハロアルキルである、実施形態1~47及び68のいずれか1つに記載の化合物。
【0313】
実施形態76:R及びRのうちの一方が、C1~C6アルキルであり、R及びRのうちの他方が、C1~C6ハロアルキルである、実施形態1~47及び68のいずれか1つに記載の化合物。
【0314】
実施形態77:1つのRが、-SO(NR)である、実施形態1~47のいずれか1つに記載の化合物。
【0315】
実施形態78:R及びRが各々、水素である、実施形態1~47及び77のいずれか1つに記載の化合物。
【0316】
実施形態79:R及びRのうちの一方が、水素であり、R及びRのうちの他方が、C1~C6アルキルである、実施形態1~47及び77のいずれか1つに記載の化合物。
【0317】
実施形態80:R及びRのうちの一方が、水素であり、R及びRのうちの他方が、メチルである、実施形態1~47、77及び79のいずれか1つに記載の化合物。
【0318】
実施形態81:R及びRが各々、C1~C6アルキルである、実施形態1~47及び77のいずれか1つに記載の化合物。
【0319】
実施形態82:R及びRが各々、メチルである、実施形態1~47及び77のいずれか1つに記載の化合物。
【0320】
実施形態83:R及びRのうちの一方が、水素であり、R及びRのうちの他方が、C1~C6ハロアルキルである、実施形態1~47及び77のいずれか1つに記載の化合物。
【0321】
実施形態84:R及びRが各々、C1~C6ハロアルキルである、実施形態1~47及び77のいずれか1つに記載の化合物。
【0322】
実施形態85:R及びRのうちの一方が、C1~C6アルキルであり、R及びRのうちの他方が、C1~C6ハロアルキルである、実施形態1~47及び77のいずれか1つに記載の化合物。
【0323】
実施形態86:Rが、-SO(C1~C6アルキル)である、実施形態1~47のいずれか1つに記載の化合物。
【0324】
実施形態87:Rが、-SOMeである、実施形態1~47及び86のいずれか1つに記載の化合物。
【0325】
実施形態88:Rが、-SOEtである、実施形態1~47及び86のいずれか1つに記載の化合物。
【0326】
実施形態89:Rが、-S(=O)(=NH)(C1~C6アルキル)である、実施形態1~47のいずれか1つに記載の化合物。
【0327】
実施形態90:Rが、-S(=O)(=NH)Meである、実施形態1~47及び89のいずれか1つに記載の化合物。
【0328】
実施形態91:Rが、-C(=O)(C1~C6アルキル)である、実施形態1~47のいずれか1つに記載の化合物。
【0329】
実施形態92:Rが、-C(=O)Meである、実施形態1~47及び91のいずれか1つに記載の化合物。
【0330】
実施形態93:Rが、-CO(C1~C6アルキル)である、実施形態1~47のいずれか1つに記載の化合物。
【0331】
実施形態94:Rが、-COMeである、実施形態1~47及び93のいずれか1つに記載の化合物。
【0332】
実施形態95:Rが、1~2つの独立して選択されるRにより任意選択で置換されるフェニルである、実施形態1~47のいずれか1つに記載の化合物。
【0333】
実施形態96:Rが、1~2つの独立して選択されるRにより任意選択で置換される5~6員ヘテロアリールである、実施形態1~47のいずれか1つに記載の化合物。
【0334】
実施形態97:Rが、1つまたは2つの独立して選択されるRにより任意選択で置換される3~6員ヘテロシクリルである、実施形態1~47のいずれか1つに記載の化合物。
【0335】
実施形態98:Rが、1つまたは2つの独立して選択されるRで置換された3~6員ヘテロシクリルである、実施形態1~47及び97のいずれか1つに記載の化合物。
【0336】
実施形態99:Rが、1つのRで置換された3~6員ヘテロシクリルである、実施形態1~47及び97~98のいずれか1つに記載の化合物。
【0337】
実施形態100:Rが、2つの独立して選択されるRで置換された3~6員ヘテロシクリルである、実施形態1~47及び97~98のいずれか1つに記載の化合物。
【0338】
実施形態101:Rが、1つまたは2つの独立して選択されるRにより任意選択で置換される3~6員シクロアルキルである、実施形態1~47のいずれか1つに記載の化合物。
【0339】
実施形態102:1つのRが、フルオロである、実施形態1~47及び97~101のいずれか1つに記載の化合物。
【0340】
実施形態103:1つのRが、ヒドロキシルである、実施形態1~47及び97~101のいずれか1つに記載の化合物。
【0341】
実施形態104:1つのRが、シアノである、実施形態1~47及び97~101のいずれか1つに記載の化合物。
【0342】
実施形態105:1つのRが、C1~C6アルキルである、実施形態1~47及び97~101のいずれか1つに記載の化合物。
【0343】
実施形態106:1つのRが、メチルである、実施形態1~47及び97~101のいずれか1つに記載の化合物。
【0344】
実施形態107:1つのRが、C1~C6アルコキシである、実施形態1~47及び97~101のいずれか1つに記載の化合物。
【0345】
実施形態108:1つのRが、メトキシである、実施形態1~47及び97~101のいずれか1つに記載の化合物。
【0346】
実施形態109:1つのRが、-COHである、実施形態1~47及び97~101のいずれか1つに記載の化合物。
【0347】
実施形態110:1つのRが、-NRA1B1である、実施形態1~47及び97~101のいずれか1つに記載の化合物。
【0348】
実施形態111:RA1及びRB1が各々、水素である、実施形態1~47、97~101及び110のいずれか1つに記載の化合物。
【0349】
実施形態112:RA1及びRB1のうちの一方が、水素であり、RA1及びRB1のうちの他方が、C1~C6アルキルである、実施形態1~47、97~101及び110のいずれか1つに記載の化合物。
【0350】
実施形態113:RA1及びRB1のうちの一方が、水素であり、RA1及びRB1のうちの他方が、メチルである、実施形態1~47、97~101及び110のいずれか1つに記載の化合物。
【0351】
実施形態114:RA1及びRB1が各々、C1~C6アルキルである、実施形態1~47、97~101及び110のいずれか1つに記載の化合物。
【0352】
実施形態115:RA1及びRB1が各々、メチルである、実施形態1~47、97~101及び110のいずれか1つに記載の化合物。
【0353】
実施形態116:RA1及びRB1のうちの一方が、水素であり、RA1及びRB1のうちの他方が、C1~C6ハロアルキルである、実施形態1~47、97~101及び110のいずれか1つに記載の化合物。
【0354】
実施形態117:RA1及びRB1が各々、C1~C6ハロアルキルである、実施形態1~47、97~101及び110のいずれか1つに記載の化合物。
【0355】
実施形態118:RA1及びRB1のうちの一方が、C1~C6アルキルであり、RA1及びRB1のうちの他方が、C1~C6ハロアルキルである、実施形態1~47、97~101及び110のいずれか1つに記載の化合物。
【0356】
実施形態119:1つのRが、-C(=O)NRC1D1である、実施形態1~47及び97~101のいずれか1つに記載の化合物。
【0357】
実施形態120:RC1及びRD1が各々、水素である、実施形態1~47、97~101及び119のいずれか1つに記載の化合物。
【0358】
実施形態121:RC1及びRD1のうちの一方が、水素であり、RC1及びRD1のうちの他方が、C1~C6アルキルである、実施形態1~47、97~101及び119のいずれか1つに記載の化合物。
【0359】
実施形態122:RC1及びRD1のうちの一方が、水素であり、RC1及びRD1のうちの他方が、メチルである、実施形態1~47、97~101及び119のいずれか1つに記載の化合物。
【0360】
実施形態123:RC1及びRD1が各々、C1~C6アルキルである、実施形態1~47、97~101及び119のいずれか1つに記載の化合物。
【0361】
実施形態124:RC1及びRD1が各々、メチルである、実施形態1~47、97~101及び119のいずれか1つに記載の化合物。
【0362】
実施形態125:RC1及びRD1のうちの一方が、水素であり、RC1及びRD1のうちの他方が、C1~C6ハロアルキルである、実施形態1~47、97~101及び119のいずれか1つに記載の化合物。
【0363】
実施形態126:RC1及びRD1が各々、C1~C6ハロアルキルである、実施形態1~47、97~101及び119のいずれか1つに記載の化合物。
【0364】
実施形態127:RC1及びRD1のうちの一方が、C1~C6アルキルであり、RC1及びRD1のうちの他方が、C1~C6ハロアルキルである、実施形態1~47、97~101及び119のいずれか1つに記載の化合物。
【0365】
実施形態128:Rが、非置換3~6員ヘテロシクリルである、実施形態1~47及び97のいずれか1つに記載の化合物。
【0366】
実施形態129:Rが、1つまたは2つの独立して選択されるRにより任意選択で置換される4~6員ヘテロシクリルである、実施形態1~47及び98のいずれか1つに記載の化合物。
【0367】
実施形態130:Rが、アゼチジニル、ピロリジニル、ピペリジニル、モルホリニル、またはテトラヒドロピラニルである、実施形態1~47及び129のいずれか1つに記載の化合物。
【0368】
実施形態131:Rが、1-アゼチジニル、1-ピロリジニル、1-ピペリジニル、1-モルホリニル、または4-テトラヒドロピラニルである、実施形態1~47及び129~130のいずれか1つに記載の化合物。
【0369】
実施形態132:Rが、
【化85】

であり、式中、環Bが、アゼチジニル、ピロリジニル、またはピペリジニルであり、各々がフルオロ、ヒドロキシル、シアノ、-CONH、または-COHから独立して選択される1~2つのRにより任意選択で置換される、実施形態129に記載の化合物。
【0370】
実施形態133:環Bが、アゼチジニルである、実施形態132に記載の化合物。
【0371】
実施形態134:環Bが、ピロリジニルである、実施形態132に記載の化合物。
【0372】
実施形態135:環Bが、ピペリジニルである、実施形態132に記載の化合物。
【0373】
実施形態136:環Bが、非置換である、実施形態132に記載の化合物。
【0374】
実施形態137:環Bが、1つのRで置換されている、実施形態132に記載の化合物。
【0375】
実施形態138:Rが、フルオロである、実施形態137に記載の化合物。
【0376】
実施形態139:Rが、ヒドロキシルである、実施形態137に記載の化合物。
【0377】
実施形態140:Rが、シアノである、実施形態137に記載の化合物。
【0378】
実施形態141:Rが、-CONHである、実施形態137に記載の化合物。
【0379】
実施形態142:Rが、-COHである、実施形態137に記載の化合物。
【0380】
実施形態143:環Bが、2つの独立して選択されるRで置換されている、実施形態132に記載の化合物。
【0381】
実施形態144:1つのRが、フルオロである、実施形態143に記載の化合物。
【0382】
実施形態145:1つのRが、ヒドロキシルである、実施形態143に記載の化合物。
【0383】
実施形態146:1つのRが、シアノである、実施形態143に記載の化合物。
【0384】
実施形態147:1つのRが、-CONHである、実施形態143に記載の化合物。
【0385】
実施形態148:1つのRが、-COHである、実施形態143に記載の化合物。
【0386】
実施形態149:各Rが、前記窒素に対して遠位の環Bの位置に結合している、実施形態132~148のいずれか1つに記載の化合物。
【0387】
実施形態150:Zが、Oである、実施形態1~149のいずれか1つに記載の化合物。
【0388】
実施形態151:Zが、NRである、実施形態1~149のいずれか1つに記載の化合物。
【0389】
実施形態152:前記式(I)の化合物、または前記その医薬として許容される塩が、表A、表B、もしくは表Cにある化合物、または上述のもののうちのいずれかの医薬として許容される塩から選択される、実施形態1に記載の化合物。
【0390】
実施形態153:実施形態1~152のいずれか1つに記載の化合物、またはその医薬として許容される塩と、医薬として許容される希釈剤または担体とを含む、医薬組成物。
【0391】
実施形態154:がんの処置を必要とする対象において前記がんを処置するための方法であって、前記対象に、治療上有効量の実施形態1~152のいずれか1つに記載の化合物もしくはその医薬として許容される塩、または実施形態153に記載の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
【0392】
実施形態155:がんの処置を必要とする対象において前記がんを処置するための方法であって、(a)前記がんがPIK3CA遺伝子、PI3Kαタンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全に関連すると判定することと、(b)前記対象に、治療上有効量の実施形態1~152のいずれか1つに記載の化合物もしくはその医薬として許容される塩、または実施形態153に記載の医薬組成物を投与することと、を含む、前記方法。
【0393】
実施形態156:対象においてPI3Kα関連がんを処置する方法であって、PI3Kα関連がんを有すると特定または診断された対象に、治療上有効量の実施形態1~152のいずれか1つに記載の化合物もしくはその医薬として許容される塩、または実施形態153に記載の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
【0394】
実施形態157:対象においてPI3Kα関連がんを処置する方法であって、
(a)前記対象における前記がんがPI3Kα関連がんであると判定することと、
(b)前記対象に、治療上有効量の実施形態1~152のいずれか1つに記載の化合物もしくはその医薬として許容される塩、または実施形態153に記載の医薬組成物を投与することと、を含む、前記方法。
【0395】
実施形態158:対象を処置する方法であって、治療上有効量の実施形態1~152のいずれか1つに記載の化合物もしくはその医薬として許容される塩、または実施形態153に記載の医薬組成物を、前記対象がPIK3CA遺伝子、PI3Kαタンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全を有することを示す診療録を有する前記対象に投与することを含む、前記方法。
【0396】
実施形態159:前記対象における前記がんがPI3Kα関連がんであると判定する前記ステップが、前記対象からの試料中のPIK3CA遺伝子、PI3Kαタンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルにおける調節不全を検出するためのアッセイを実施することを含む、実施形態155及び157のいずれか1つに記載の方法。
【0397】
実施形態160:前記対象から試料を得ることをさらに含む、実施形態159に記載の方法。
【0398】
実施形態161:前記試料が、生検試料である、実施形態160に記載の方法。
【0399】
実施形態162:前記アッセイが、シーケンシング、免疫組織化学的検査、酵素結合免疫吸着測定法、及び蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)からなる群から選択される、実施形態159~161のいずれか1つに記載の方法。
【0400】
実施形態163:前記FISHが、ブレイクアパートFISH分析である、実施形態162に記載の方法。
【0401】
実施形態164:前記シーケンシングが、パイロシーケンシングまたは次世代シーケンシングである、実施形態162に記載の方法。
【0402】
実施形態165:PIK3CA遺伝子、PI3Kαタンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルにおける前記調節不全が、前記PIK3CA遺伝子における1つまたは複数の点変異である、実施形態155、158、及び159のいずれか1つに記載の方法。
【0403】
実施形態166:PIK3CA遺伝子における前記1つまたは複数の点変異が、表1に例示される以下のアミノ酸位置のうちの1つまたは複数に1つまたは複数のアミノ酸置換を有するPI3Kαタンパク質の翻訳をもたらす、実施形態165に記載の方法。
【0404】
実施形態167:PIK3CA遺伝子における前記1つまたは複数の点変異が、表2における変異から選択される、実施形態166に記載の方法。
【0405】
実施形態168:PIK3CA遺伝子における前記1つまたは複数の点変異が、ヒトPI3Kαタンパク質のアミノ酸1047位における置換を含む、実施形態166に記載の方法。
【0406】
実施形態169:前記置換が、H1047Rである、実施形態168に記載の方法。
【0407】
実施形態170:前記PI3Kα関連がんが、乳癌、肺癌、子宮内膜癌、食道扁平上皮癌、卵巣癌、結腸直腸癌、食道胃接合部腺癌、膀胱癌、頭頸部癌、甲状腺癌、神経膠腫、及び子宮頸癌からなる群から選択される、実施形態156、157、及び159~169のいずれか1つに記載の方法。
【0408】
実施形態171:前記PI3Kα関連がんが、乳癌、結腸直腸癌、肺癌、または子宮内膜癌である、実施形態156、157、及び159~170のいずれか1つに記載の方法。
【0409】
実施形態172:追加の治療法または治療剤を前記対象に投与することをさらに含む、実施形態154~171のいずれか1つに記載の方法。
【0410】
実施形態173:前記追加の治療法または治療剤が、放射線療法、細胞障害性化学療法薬、キナーゼ標的治療薬、アポトーシスモジュレーター、シグナル伝達阻害剤、免疫標的療法、及び血管新生標的療法から選択される、実施形態172に記載の方法。
【0411】
実施形態174:前記追加の治療剤が、1つまたは複数のキナーゼ標的治療薬から選択される、実施形態173に記載の方法。
【0412】
実施形態175:前記追加の治療剤が、チロシンキナーゼ阻害剤である、実施形態174に記載の方法。
【0413】
実施形態176:前記追加の治療剤が、mTOR阻害剤である、実施形態174に記載の方法。
【0414】
実施形態177:前記追加の治療剤が、フルベストラント、カペシタビン、トラスツズマブ、ado-トラスツズマブエムタンシン、ペルツズマブ、パクリタキセル、nab-パクリタキセル、エンザルタミド、オラパリブ、ペグ化リポソームドキソルビシン(PLD)、トラメチニブ、リボシクリブ、パルボシクリブ、ブパリシブ、AEB071、エベロリムス、エキセメスタン、シスプラチン、レトロゾール、AMG479、LSZ102、LEE011、セツキシマブ、AUY922、BGJ398、MEK162、LJM716、LGH447、イマチニブ、ゲムシタビン、LGX818、アムセネストラント、及びそれらの組み合わせから選択される、実施形態173に記載の方法。
【0415】
実施形態178:前記追加の治療剤が、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体アゴニスト、ナトリウム-グルコース輸送タンパク質2(SGLT-2)阻害剤、ジペプチジルペプチダーゼ4(DPP-4)阻害剤、メトホルミン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、実施形態173に記載の方法。
【0416】
実施形態179:実施形態1~152のいずれか1つに記載の化合物もしくはその医薬として許容される塩、または実施形態153に記載の医薬組成物、及び前記追加の治療剤が、別個の投薬量として同時に投与される、実施形態172~178のいずれか1つに記載の方法。
【0417】
実施形態180:実施形態1~152のいずれか1つに記載の化合物もしくはその医薬として許容される塩、または実施形態153に記載の医薬組成物、及び前記追加の治療剤が、別個の投薬量として任意の順序で順次に投与される、実施形態172~178のいずれか1つに記載の方法。
【0418】
実施形態181:哺乳類細胞においてPI3Kαを調節するための方法であって、前記哺乳類細胞を、有効量の実施形態1~152のいずれか1つに記載の化合物、またはその医薬として許容される塩と接触させることを含む、前記方法。
【0419】
実施形態182:前記接触させることが、インビボで起こる、実施形態181に記載の方法。
【0420】
実施形態183:前記接触させることが、インビトロで起こる、実施形態181に記載の方法。
【0421】
実施形態184:前記哺乳類細胞が、哺乳類がん細胞である、実施形態181~183のいずれか1つに記載の方法。
【0422】
実施形態185:前記哺乳類がん細胞が、哺乳類PI3Kα関連がん細胞である、実施形態184に記載の方法。
【0423】
実施形態186:前記細胞が、PIK3CA遺伝子、PI3Kαタンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルの調節不全を有する、実施形態181~185のいずれか1つに記載の方法。
【0424】
実施形態187:PIK3CA遺伝子、PI3Kαタンパク質、またはそれらのうちのいずれかの発現もしくは活性もしくはレベルにおける前記調節不全が、前記PIK3CA遺伝子における1つまたは複数の点変異である、実施形態186に記載の方法。
【0425】
実施形態188:PIK3CA遺伝子における前記1つまたは複数の点変異が、表1に例示される以下のアミノ酸位置のうちの1つまたは複数に1つまたは複数のアミノ酸置換を有するPI3Kαタンパク質の翻訳をもたらす、実施形態187に記載の方法。
【0426】
実施形態189:PIK3CA遺伝子における前記1つまたは複数の点変異が、表2における変異から選択される、実施形態188に記載の方法。
【0427】
実施形態190:PIK3CA遺伝子における前記1つまたは複数の点変異が、ヒトPI3Kαタンパク質のアミノ酸1047位における置換を含む、実施形態189に記載の方法。
【0428】
実施形態191:前記置換が、H1047Rである、実施形態190に記載の方法。
【実施例
【0429】
化合物の調製
本明細書に開示される化合物は、当業者に既知のまたは本明細書における教示に照らした標準的な合成方法及び手順を用いることによって、市販の出発物質、文献で既知の化合物を使用して、または容易に調製される中間体から様々な方式で調製され得る。本明細書に開示される化合物の合成は、特定の所望の置換基に関して変更を加えながら、本明細書で提供されるスキームに概して従うことによって達成することができる。
【0430】
有機分子の調製ならびに官能基の変換及び操作のための標準的な合成方法及び手順は、関連性のある科学文献からまたは当該分野の標準的な教本から得ることができる。いずれか1つまたはいくつかの情報源に限定するものではないが、R.Larock,Comprehensive Organic Transformations,VCH Publishers(1989)、L.Fieser and M.Fieser,Fieser and Fieser’s Reagents for Organic Synthesis,John Wiley and Sons(1994)、Smith,M.B.,March,J.,March’ s Advanced Organic Chemistry:Reactions,Mechanisms,and Structure,5th edition,John Wiley & Sons:New York,2001、及びGreene,T.W.,Wuts,P.G.M.,Protective Groups in Organic Synthesis,3rd edition,John Wiley & Sons:New York,1999等の典型的な原本が、当該技術分野で既知の有機合成についての有用で認知された参考教本である。合成方法の以下の説明は、本開示の化合物の調製のための一般手順を限定するのではなく、例示することを目的とする。
【0431】
本明細書に開示される合成プロセスは、多種多様な官能基を許容し得るため、種々の置換された出発物質を使用することができる。プロセスは一般に、全体的なプロセスの終わりまたは終わり近くの所望の最終化合物を提供するが、ある特定の事例では、化合物をその医薬として許容される塩にさらに変換することが望ましい場合がある。
【0432】
実施例1:化合物1及び2の合成
【化86】
ステップ1
DCM(10mL)中の(S)-1-(5-フルオロ-3-メチルベンゾフラン-2-イル)-2-メチルプロパン-1-アミン(1.0g、4.52mmol)及びNaHCO(飽和水溶液、4mL)の混合物に、チオホスゲン(1.04g、9.05mmol)を0℃で添加した。反応混合物を0℃で4時間撹拌した。完了後、得られた混合物を水(40mL)で希釈し、DCM(40mL×3)で抽出した。合わせた有機層をブライン(50mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、濾過した。濾液を減圧濃縮して、(S)-5-フルオロ-2-(1-イソチオシアナト-2-メチルプロピル)-3-メチルベンゾフラン(1.1g、93%)を黄色の油として得、それをさらに精製することなく次のステップに使用した。H NMR (400 MHz, DMSO-d) δ 7.62 (dd, J = 9.0, 4.1 Hz, 1H), 7.45 (dd, J = 8.7, 2.6 Hz, 1H), 7.21 - 7.15 (m, 1H), 5.24 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 2.38 - 2.29 (m, 1H), 2.23 (s, 3H), 1.10 (d, J = 6.7 Hz, 3H), 0.86 (d, J = 6.7 Hz, 3H).
【0433】
ステップ2
MeCN(5mL)中の(S)-5-フルオロ-2-(1-イソチオシアナト-2-メチルプロピル)-3-メチルベンゾフラン(200mg、0.76mmol)及び3,4-ジアミノベンゾニトリル(112mg、0.84mmol)の混合物を70℃で8時間撹拌した。室温まで冷却した後、得られた混合物を減圧濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(DCM/MeOHを1から5%)によって精製して、(S)-1-(2-アミノ-5-シアノフェニル)-3-(1-(5-フルオロ-3-メチルベンゾフラン-2-イル)-2-メチルプロピル)チオ尿素(260mg、86%)を黄色の固体として得た。MS (ESI):C2121FNOSに対する質量計算値, 396.14, m/z実測値397.1 [M+H]
【0434】
ステップ3
MeCN(5mL)中の(S)-1-(2-アミノ-5-シアノフェニル)-3-(1-(5-フルオロ-3-メチルベンゾフラン-2-イル)-2-メチルプロピル)チオ尿素(260mg、0.66mmol)、フェニル-λ-ヨーダンジイル(iodanediyl)ジアセタート(318.8mg、0.99mmol)及びDIPEA(425.7mg、3.3mmol)の溶液を室温で3時間撹拌した。完了後、得られた混合物を水(30mL)で希釈し、DCM(30mL×3)で抽出した。合わせた有機層をブライン(40mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、濾過した。濾液を減圧濃縮し、残渣をフラッシュクロマトグラフィー(DCM/MeOHを1から5%)によって精製して、(S)-2-((1-(5-フルオロ-3-メチルベンゾフラン-2-イル)-2-メチルプロピル)アミノ)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-6-カルボニトリル(1、144mg、58.9%)をオレンジ色の固体として得た。MS (ESI):C2119FNOに対する質量計算値, 362.15, m/z実測値363.2 [M+H] H NMR (400 MHz, DMSO-d) δ 10.87 (d, J = 37.8 Hz, 1H), 7.76 (m, 1H), 7.59 - 7.42 (m, 2H), 7.39 - 7.19 (m, 3H), 7.08 (m, 1H), 4.94 (q, J = 8.9 Hz, 1H), 2.35 - 2.28 (m, 1H), 2.27 (s, 3H), 1.07 (d, J = 6.6 Hz, 3H), 0.84 (d, J = 6.7 Hz, 3H).
【0435】
ステップ4
DMSO(2mL)中の(S)-2-((1-(5-フルオロ-3-メチルベンゾフラン-2-イル)-2-メチルプロピル)アミノ)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-6-カルボニトリル(50mg、0.14mmol)、KCO(38.6mg、0.28mmol)及びH(0.2mL、30%(水溶液))の溶液を室温で3時間撹拌した。得られた混合物を水(10mL)で希釈し、DCM(10mL×3)で抽出し、合わせた有機層をブライン(30mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、濾過した。濾液を減圧濃縮し、残渣をフラッシュクロマトグラフィー(DCM/MeOHを1から8%)によって精製して、(S)-2-((1-(5-フルオロ-3-メチルベンゾフラン-2-イル)-2-メチルプロピル)アミノ)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-6-カルボキサミド(2、30mg、56%)を白色の固体として得た。MS (ESI):C2121FNに対する質量計算値, 380.16, m/z実測値381.1 [M+H] H NMR (400 MHz, DMSO-d) δ 10.62 (s, 1H), 7.68 (d, J = 13.1 Hz, 2H), 7.51 - 7.33 (m, 4H), 7.14 - 6.97 (m, 3H), 4.93 (q, J = 8.7 Hz, 1H), 2.34 - 2.31 (m, 1H), 2.28 (s, 3H), 1.08 (d, J = 6.5 Hz, 3H), 0.84 (d, J = 6.7 Hz, 3H).
【0436】
実施例2:化合物3の合成
【化87】

ステップ1
MeCN(5mL)中の(S)-5-フルオロ-2-(1-イソチオシアナト-2-メチルプロピル)-3-メチルベンゾフラン(200mg、0.76mmol)及び3,4-ジアミノベンゼンスルホンアミド(157mg、0.84mmol)の混合物を70℃で8時間撹拌した。完了後、得られた混合物を減圧濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(DCM/MeOHを1から5%)によって精製して、(S)-4-アミノ-3-(3-(1-(5-フルオロ-3-メチルベンゾフラン-2-イル)-2-メチルプロピル)チオウレイド)ベンゼンスルホンアミド(270mg、79%)を白色の固体として得た。MS (ESI):C2023FNに対する質量計算値, 450.12, m/z実測値451.0 [M+H]
【0437】
ステップ2
MeCN(3mL)中の(S)-4-アミノ-3-(3-(1-(5-フルオロ-3-メチルベンゾフラン-2-イル)-2-メチルプロピル)チオウレイド)ベンゼンスルホンアミド(170mg、0.38mmol)、フェニル-λ-ヨーダンジイルジアセタート(183.5mg、0.57mmol)及びDIPEA(245mg、1.9mmol)の溶液を室温で3時間撹拌した。完了後、得られた混合物を水(30mL)で希釈し、DCM(30mL×3)で抽出した。合わせた有機層をブライン(40mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、濾過した。濾液を減圧濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(DCM/MeOHを1から5%)によって精製して、(S)-2-((1-(5-フルオロ-3-メチルベンゾフラン-2-イル)-2-メチルプロピル)アミノ)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-6-スルホンアミド(3、50mg、32%)を黄色の固体として得た。MS (ESI):C2021FNSに対する質量計算値, 416.13, m/z実測値417.2 [M+H] H NMR (400 MHz, DMSO-d) δ 10.77 (d, J = 21.0 Hz, 1H), 7.68 - 7.59 (m, 1H), 7.58 - 7.48 (m, 2H), 7.41 - 7.32 (m, 2H), 7.22 - 7.19 (m, 1H), 7.10 - 7.03 (m, 3H), 4.93 (q, J = 9.1 Hz, 1H), 2.34 - 2.30 (m, 1H), 2.28 (d, J = 4.9 Hz, 3H), 1.10 - 1.07 (m, 3H), 0.84 (d, J = 6.7 Hz, 3H).
【0438】
実施例3:化合物4の合成
【化88】

ステップ1
MeCN(5mL)中の(S)-5-フルオロ-2-(1-イソチオシアナト-2-メチルプロピル)-3-メチルベンゾフラン(220mg、0.84mmol)及び4-(メチルスルホニル)ベンゼン-1,2-ジアミン(171.9mg、0.92mmol)の混合物を70℃で8時間撹拌した。得られた混合物を減圧濃縮し、残渣をフラッシュクロマトグラフィー(DCM/MeOHを1から5%)によって精製して、(S)-1-(2-アミノ-5-(メチルスルホニル)フェニル)-3-(1-(5-フルオロ-3-メチルベンゾフラン-2-イル)-2-メチルプロピル)チオ尿素(240mg、64%)を白色の固体として得た。MS (ESI):C2124FNに対する質量計算値, 449.12, m/z実測値450.1 [M+H]
【0439】
ステップ2
MeCN(3mL)中の(S)-1-(2-アミノ-5-(メチルスルホニル)フェニル)-3-(1-(5-フルオロ-3-メチルベンゾフラン-2-イル)-2-メチルプロピル)チオ尿素(120mg、0.27mmol)、フェニル-λ-ヨーダンジイルジアセタート(128.8mg、0.4mmol)及びDIPEA(172.9mg、1.34mmol)の溶液を室温で3時間撹拌した。得られた混合物を水(20mL)で希釈し、DCM(20mL×3)で抽出した。合わせた有機層をブライン(30mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥させた。濾過後、濾液を減圧濃縮した。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(DCM/MeOHを1から5%)によって精製して、(S)-N-(1-(5-フルオロ-3-メチルベンゾフラン-2-イル)-2-メチルプロピル)-6-(メチルスルホニル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-アミン(4、60mg、54%)を黄色の固体として得た。MS (ESI):C2122FNSに対する質量計算値, 415.14, m/z実測値416.1 [M+H] H NMR (400 MHz, DMSO-d) δ 10.95 - 10.81 (m, 1H), 7.85 - 7.58 (m, 2H), 7.50 (m, 1H), 7.46 - 7.23 (m, 3H), 7.08 (m, 1H), 5.01 - 4.88 (m, 1H), 3.09 (d, J = 5.4 Hz, 3H), 2.36 - 2.31 (m, 1H), 2.28 (d, J = 4.6 Hz, 3H), 1.13 - 1.03 (m, 3H), 0.85 (d, J = 6.6 Hz, 3H).
【0440】
実施例3:化合物5a及び5bの合成
【化89】

ステップ1
DMSO(20mL)中の5-ブロモピリジン-2,3-ジアミン(1.6g、8.38mmol)の溶液に、(1S,2S)-1-N,2-N-ジメチルシクロヘキサン-1,2-ジアミン(596mg、4.19mmol)、メタンスルフィン酸ナトリウム(1.71g、16.7mmol)、トリフルオロメタンスルホン酸銅(I)ベンゼン錯体(2g)を添加し、反応物を130℃で13時間撹拌した。反応物を水で希釈し、EAで抽出した。有機層を乾燥させ、濃縮して粗生成物を得、それをシリカゲルでのカラムクロマトグラフィー(EA)によって精製して、5-(メチルスルホニル)ピリジン-2,3-ジアミン(200mg、13%)を得た。MS (ESI):CSに対する質量計算値, 187.04, m/z実測値188.0 [M+H]
【0441】
ステップ2
DCM及び飽和NaHCO中の2,2,2-トリフルオロ-1-(5-フルオロ-3-メチルベンゾフラン-2-イル)エタン-1-アミン(260mg、1.05mmol)の溶液に、チオホスゲン(240mg、2.1mmol)を0℃で添加した。反応物を10分間撹拌し、DCMを収集し、乾燥させて粗生成物を得、それをシリカゲルでのカラムクロマトグラフィー(PE)によって精製して、5-フルオロ-3-メチル-2-(2,2,2-トリフルオロ-1-イソチオシアナトエチル)ベンゾフラン(200mg、69%)を油として得た。
【0442】
ステップ3
ACN(5mL)中の5-フルオロ-3-メチル-2-(2,2,2-トリフルオロ-1-イソチオシアナトエチル)ベンゾフラン(200mg、0.69mmol)の溶液に、5-(メチルスルホニル)ピリジン-2,3-ジアミン(200mg、1.06mmol)を添加し、混合物を20℃で3時間撹拌した。溶媒を除去して粗生成物を得、それをシリカゲルでのカラム(PE:EA=1:1)によって精製して、1-(2-アミノ-5-(メチルスルホニル)ピリジン-3-イル)-3-(2,2,2-トリフルオロ-1-(5-フルオロ-3-メチルベンゾフラン-2-イル)エチル)チオ尿素(100mg、30%)を得た。MS (ESI):C1816に対する質量計算値, 476.06, m/z実測値477.0 [M+H]
【0443】
ステップ4
ACN(5mL)中の1-(2-アミノ-5-(メチルスルホニル)ピリジン-3-イル)-3-(2,2,2-トリフルオロ-1-(5-フルオロ-3-メチルベンゾフラン-2-イル)エチル)チオ尿素(100mg、0.20mmol)の溶液に、DIEA(200mg、1.55mmol)及びフェニル-l3-ヨーダンジイルジアセタート(674mg、2.1mmol)を添加し、反応物を20℃で16時間撹拌した。混合物を濃縮して粗生成物を得、それを分取HPLCによって精製して、6-(メチルスルホニル)-N-(2,2,2-トリフルオロ-1-(5-フルオロ-3-メチルベンゾフラン-2-イル)エチル)-3H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-2-アミン(25mg、26%)を得た。MS (ESI):C1814Sに対する質量計算値, 442.07, m/z実測値443.1 [M+H]
HPLC条件:
カラム:WELCH Xtimate C18 21.2×250mm 10um
条件:A水(0.1%FA)B(アセトニトリル)
9分間でBを45から75%、Bを100%で1分間保持、1.5分間でBを45%に戻す、15分で停止。
流量:25mL/分
検出器:214
【0444】
ステップ5
25mgの6-(メチルスルホニル)-N-(2,2,2-トリフルオロ-1-(5-フルオロ-3-メチルベンゾフラン-2-イル)エチル)-3H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-2-アミンをSFCに供して、(R)-6-(メチルスルホニル)-N-(2,2,2-トリフルオロ-1-(5-フルオロ-3-メチルベンゾフラン-2-イル)エチル)-3H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-2-アミン(5a、7.1mg)及び(S)-6-(メチルスルホニル)-N-(2,2,2-トリフルオロ-1-(5-フルオロ-3-メチルベンゾフラン-2-イル)エチル)-3H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-2-アミン(5b、6.5mg)を得た。
分離条件:
装置:SFC 150
カラム:Daicel CHIRALCEL IF、250mm×30mm内径、10μm
移動相:CO/MeOH[0.2%NH(MeOH中7M溶液)]=75/25
流量:80g/分
波長:UV214nm
温度:35℃
化合物5a
MS (ESI):C1814Sに対する質量計算値, 442.07, m/z実測値443.1 [M+H]
H NMR (400 MHz, DMSO-d) δ 8.60 (s, 1H), 7.99 (s, 1H), 7.50 (dd, J = 8.0, 4.0 Hz, 1H), 7.34 (dd, J = 8.0, 4.0 Hz, 1H), 7.14 (td, J = 8.0, 4.0 Hz, 1H), 6.35 - 6.29 (m, 1 H), 3.18 (s, 3 H), 2.40 (s, 3 H).
化合物5b
MS (ESI):C1814Sに対する質量計算値, 442.07, m/z実測値443.1 [M+H]
H NMR (400 MHz, DMSO-d) δ 8.60 (s, 1H), 7.99 (s, 1H), 7.50 (dd, J = 8.0, 4.0 Hz, 1H), 7.22 (dd, J = 8.0, 4.0 Hz, 1H), 6.99 (td, J = 8.0, 4.0 Hz, 1H), 6.23 - 6.17(m, 1 H), 3.03 (s, 3 H), 2.28 (s, 3 H).
【0445】
実施例4:化合物6a及び6bの合成
【化90】

ステップ1
DCM(10mL)中の2,2,2-トリフルオロ-1-(5-フルオロ-3-メチル-1-ベンゾフラン-2-イル)エタンアミン(250mg、1.01mmol)の溶液に、NaHCO(水溶液)及びクロロメタンカルボチオイル(chloromethanecarbothioyl)クロリド(232mg、2.02mmol)を添加した。混合物を25℃で3時間撹拌し、次いでDCMで抽出した。有機層をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空濃縮した。残渣をシリカゲルでのカラムクロマトグラフィー(EA/PEを0から10%)によって精製して、5-フルオロ-3-メチル-2-(2,2,2-トリフルオロ-1-イソチオシアナトエチル)ベンゾフラン(240mg、82%)を淡黄色の油として得た。MS (ESI):C12NOSに対する質量計算値, 289.0.
【0446】
ステップ2
ACN(10mL)中の5-フルオロ-3-メチル-2-(2,2,2-トリフルオロ-1-イソチオシアナトエチル)ベンゾフラン(240mg、083mmol)の溶液に、4-メタンスルホニルベンゼン-1,2-ジアミン(154mg、083mmol)を添加した。混合物を25℃で2時間撹拌し、次いでTEA(419mg、4.15mmol)及び((ジアセトキシヨード)ベンゼン(1.1g、3.32mmol)を添加した。混合物を25℃で2時間撹拌し、次いで真空濃縮した。残渣をシリカゲルでのカラムクロマトグラフィー(PE/EAを5/1から2/1)によって精製して、5-(メチルスルホニル)-N-(2,2,2-トリフルオロ-1-(5-フルオロ-3-メチルベンゾフラン-2-イル)エチル)-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-アミン(260mg、71%)を白色の固体として得た。MS (ESI):C1915Sに対する質量計算値, 441.1, m/z実測値442.1 [M+H]
【0447】
ステップ3
260mgのラセミ体をSFCによって分離して、(6a、81.9mg)を白色の固体として及び(6b、87.0mg)を白色の固体として得た。
キラル分離条件:
装置:SFC 80
カラム:Daicel CHIRALCEL OD、250mm×30mm内径、10μm
移動相:CO2/MeOH[0.2%NH3(MeOH中7M溶液)]=80/20
流量:70g/分
波長:UV214nm
温度:35℃
化合物6a
MS (ESI):C1915Sに対する質量計算値, 441.1, m/z実測値442.1 [M+H] +.
H NMR (400 MHz, DMSO-d) δ 11.13 (s, 1H), 8.80 - 8.67 (m, 1H), 7.81 - 7.68 (m, 1H), 7.63 (dd, J = 8.8, 4.0 Hz, 1H), 7.51 (dd, J = 8.8, 2.8 Hz, 2H), 7.42 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.23 (td, J = 9.2, 2.8 Hz, 1H), 6.32 (s, 1H), 3.12 (s, 3H), 2.34 (s, 3H).
化合物6b
MS (ESI):C1915Sに対する質量計算値, 441.1, m/z実測値442.1 [M+H]
H NMR (400 MHz, DMSO-d) δ 11.17 (s, 0.47 H), 11.05 (s, 0.53 H), 8.74 (d, J = 9.2 Hz, 0.54 H), 8.66 (d, J = 9.6 Hz, 0.46 H), 7.77 (d, J = 1.6 Hz, 0.54 H), 7.73 (d, J = 1.2 Hz, 0.46 H), 7.68 - 7.59 (m, 1 H), 7.55 - 7.47 (m, 2 H), 7.43 (d, J = 0.4 Hz, 0.60 H), 7.41 (d, J = 0.8 Hz, 0.36 H), 7.30 - 7.18 (m, 1 H), 6.40 - 6.24 (m, 1 H), 3.13 (s, 1.45 H), 3.12 (s, 1.53 H), 2.35 (s, 1.41H), 2.34 (s, 1.62 H).
【0448】
実施例5:化合物7a及び7bの合成
【化91】

ステップ1
DCM(5mL)中の2,2,2-トリフルオロ-1-(5-フルオロ-3-メチルベンゾフラン-2-イル)エタン-1-アミン(320mg、1.3mmol)及びNaHCO(飽和水溶液、1.2mL)の混合物に、チオホスゲン(299mg、2.6mmol)を0℃で添加した。反応混合物を0℃で4時間撹拌し、得られた混合物を水(40mL)で希釈し、DCM(40mL×3)で抽出した。合わせた有機層をブライン(40mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、濾過した。濾液を減圧濃縮して、5-フルオロ-3-メチル-2-(2,2,2-トリフルオロ-1-イソチオシアナトエチル)ベンゾフラン(300mg、80%)を無色の油として得、それをさらに精製することなく次のステップに使用した。H NMR (400 MHz, DMSO-d) δ 7.68 - 7.45 (m, 2H), 7.29 - 7.18 (m, 1H), 6.82 - 6.76 (m, 1H), 2.34 - 2.25 (m, 3H).
【0449】
ステップ2
MeCN(5mL)中の5-フルオロ-3-メチル-2-(2,2,2-トリフルオロ-1-イソチオシアナトエチル)ベンゾフラン(200mg、0.69mmol)及びピリミジン-2,4,5-トリアミン(95mg、0.76mmol)の混合物を70℃で8時間撹拌した。室温まで冷却した後、得られた混合物を減圧濃縮した。残渣をシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィー(DCM/MeOHを1から5%)によって精製して、1-(2,5-ジアミノピリミジン-4-イル)-3-(2,2,2-トリフルオロ-1-(5-フルオロ-3-メチルベンゾフラン-2-イル)エチル)チオ尿素(180mg、63%)を白色の固体として得た。MS (ESI):C1614OSに対する質量計算値, 414.09, m/z実測値415.1 [M+H]
【0450】
ステップ3
MeCN(5mL)中の1-(2,5-ジアミノピリミジン-4-イル)-3-(2,2,2-トリフルオロ-1-(5-フルオロ-3-メチルベンゾフラン-2-イル)エチル)チオ尿素(180mg、0.43mmol)、フェニル-λ-ヨーダンジイルジアセタート(209mg、0.65mmol)及びDIPEA(277mg、2.15mmol)の溶液を室温で3時間撹拌した。完了後、得られた混合物を水(30mL)で希釈し、DCM(30mL×3)で抽出した。合わせた有機層をブライン(30mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥させ、濾過した。濾液を減圧濃縮した。残渣をシリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィー(DCM/MeOHを1から5%)によって精製して、N-(2,2,2-トリフルオロ-1-(5-フルオロ-3-メチルベンゾフラン-2-イル)エチル)-7H-プリン-2,8-ジアミン(106mg、65%)を黄色の固体として得た。MS (ESI):C1612Oに対する質量計算値, 380.1, m/z実測値381.1 [M+H]
【0451】
ステップ4
化合物7(106mg)をSFC 80(Daicel CHIRALCEL OX、250×30mm内径、10μm、75/25 CO/MeOH[0.2%NH3(MeOH中7M溶液)]、70g/分、120バール、35℃)によって分離して、2つのエナンチオマー:(R)-N-(2,2,2-トリフルオロ-1-(5-フルオロ-3-メチルベンゾフラン-2-イル)エチル)-7H-プリン-2,8-ジアミン(7a、30mg、28%)を薄黄色の固体として及び(S)-N-(2,2,2-トリフルオロ-1-(5-フルオロ-3-メチルベンゾフラン-2-イル)エチル)-7H-プリン-2,8-ジアミン(7b、35.2mg、33%)を薄黄色の固体としてそれぞれ得た。
化合物7a:
MS (ESI):C1612Oに対する質量計算値, 380.1, m/z実測値381.1 [M+H]
H NMR (400 MHz, DMSO-d) δ 11.15 - 10.46 (m, 1H), 8.81 (d, J = 9.4 Hz, 1H), 7.94 (s, 1H), 7. 64 - 7.61 (m, 1H), 7.50 (d, J = 8.6 Hz, 1H), 7.22 (t, J = 9.2 Hz, 1H), 6.34 - 6.13 (m, 1H), 5.94 - 5.71 (m, 2H), 2.32 (s, 3H).
化合物7b:
MS (ESI):C1612Oに対する質量計算値, 380.1, m/z実測値381.1 [M+H]
H NMR (400 MHz, DMSO-d) δ 11.16 - 10.47 (m, 1H), 8.82 - 8.11 (m, 1H), 8.12 - 7.82 (m, 1H), 7. 64 - 7.61 (m, 1H), 7. 51 - 7.49 (m, 1H), 7. 25 - 7.20 (m, 1H), 6.27 (s, 1H), 5.94 - 5.74 (m, 2H), 2.32 (s, 3H).
【0452】
均一時間分解蛍光法(HTRF)アッセイ-pAKT-T47D
均一時間分解蛍光法(HTRF)を使用して化合物をアッセイした。表3を参照されたい。
【0453】
材料、試薬、及び設備
Gibco RPMI 1640培地、フェノールレッド不含;Gibco RPMI 1640培地;Gibcoトリプシン-EDTA(0.5%)、フェノールレッド不含;Gibco DPBS;トリパンブルー溶液0.4%(Corning);Avantor Seradigmプレミアムグレードウシ胎児血清(FBS);Greiner 784080-384ウェルTC処理済み白色プレート;pAKT(Ser473)HTRF;Gibcoインスリン、ヒト組換え、亜鉛溶液;Gibco Recovery細胞培養凍結培地;Countess II FL自動細胞計数器(ThermoFisher);Countess IIスライド(ThermoFisher);顕微鏡;及びPHERAstar FSXマイクロプレートリーダー(BMG LABTECH,Inc.)。
【0454】
手順
Scinamic細胞株IDはT47D.1であり、HTRF検出はpAKT(S473)であり、PI3Kα H1047R変異が存在し、播種密度は5000であり、時点は1時間であり、使用した培地はRPMI+10%FBS(フェノールレッド不含)+0.2単位/mlウシインスリンであった。
【0455】
細胞培養維持:
●細胞密度は、100%コンフルエントに達することのないようにした。細胞は、それらが約80%コンフルエントに達したときに1:5分割した。
○細胞は週2回分割した(月曜日及び金曜日)。
○18継代目を過ぎた細胞は使用しなかった(約2ヶ月間の維持)。
○抗生物質は組織培養維持またはアッセイに使用しなかった。
【0456】
細胞の凍結について:
1.トリプシン化細胞を収集し、計数した。細胞を1000rpmで5分間ペレット状にし、上清を吸引した。
2.ペレット状になった細胞を3e6細胞/1mL凍結培地(Gibco凍結培地)で穏やかに再懸濁した。例えば、9e6個の総細胞が存在する場合、細胞ペレットを3mLの凍結培地に再懸濁した。
3.再懸濁した細胞/クライオバイアルの1mLのアリコートを計量した。細胞を適切な細胞凍結容器(すなわちMr.FrostyまたはCorning CoolCell凍結システム)中、-80℃で凍結した。
4.細胞を長期保存用の液体窒素クライオタンクに移した。
【0457】
細胞の解凍について:
1.細胞を液体窒素タンクから取り出した。クライオバイアルを小さな「氷のペレット」が残るまで37℃の水浴中で解凍した。次いでこれを70%エタノールと共に吹き付けてから、TC/BSCフードに移動させた。
2.新鮮な培地9mlを15mLコニカルチューブに加えた。10mLの新鮮な培地をT75 TC処理済みフラスコに加えた。
3.凍結培地中の細胞1mLをクライオバイアルから、培地を含有する15mLコニカルチューブに穏やかに移した。
4.1000rpmで5分間遠心分離して細胞をペレット状にした。
5.培地/凍結培地を吸引した。
6.細胞ペレットを5mLの新鮮な培地に穏やかに再懸濁し、10mLの新鮮な培地を含むT75フラスコに移した。フラスコを37℃のインキュベーター(5%CO)に配置する。
【0458】
プロトコル
1日目
手順は以下の通りであった:
1.ARPを調製した:
a.Echoを使用して10mMのソースプレートから目的プレートに12.5nLをスタンプした。同日に使用しない場合、プレートを直ちに密封し、-20℃で凍結した。
b.凍結したARPを使用する場合、プレートを解凍し、1000rpm×1分間スピンした。
2.細胞(接着)の調製:
a.細胞から培地を吸引した。細胞を滅菌1倍PBSで洗浄した。PBSを吸引し、適切な量のトリプシンを添加した。
b.ひとたび細胞が完全にトリプシン化されると、適切な培地を添加して細胞を再懸濁した。細胞を15mLまたは50mLコニカルチューブに移した。
c.Countess II細胞計数器で細胞を計数した。
3.細胞の播種:
a.細胞を適切な播種密度で調製した。Multidrop Combiを使用して、Greiner 784080-384ウェルTC処理済み白色プレートの1ウェル当たり12μLの希釈細胞をカラム1~23に分注した。12uLの適切なフェノール不含培地をカラム24にのみ添加した。
b.プレートを37℃の組織培養インキュベーターに適切な処理時間にわたって配置した(「アッセイ」表を参照されたい)。
4.HTRF溶解バッファーを調製した
a.所望の実験を実施するために必要とされるHTRF溶解バッファーマスターミックスの量に、分注に必要とされるいずれの余分の死容積(1ウェル当たり4μL所要)を加えたものを計算する。ブロッキング試薬を4倍溶解バッファー中に1:25の比で希釈する(すなわち0.1mLのブロッキング試薬溶液+2.4mLの4倍溶解バッファー)。
b.4uLの溶解バッファーマスターミックスを、試料またはDMSOを含む全てのウェルに添加する。プレートを1000rpmで1分間遠心分離する。
c.室温で30分間インキュベートする。
5.HTRF抗体を調製した
a.所望の実験を実施するために必要とされるHTRF抗体マスターミックスの量に、分注に必要とされるいずれの余分の死容積(1ウェル当たり4mL所要)を加えたものを計算した。Eu Cryptate抗体及びd2抗体を検出バッファーに各々1:40の比で添加した(すなわち100μLのEu Cryptate+100μLのd2 Cryptate+3800μLの検出バッファー)。
b.4μLの抗体マスターミックスを、培地のみのカラム24を含めて各ウェルに添加した。
c.プレートを1000rpmで1分間遠心分離した。蓋をし、プレートを湿らせたペーパータオルまたは何らかの同様のものと共にジップロック(登録商標)袋に入れることによって「湿度室」を作成し、遮光しながら室温で一晩インキュベートした。
2日目
6.HTRFプロトコルを使用してPHERAstar/Envisionで測定した。プレートを読み取るときには、全てのウェルを読み取った。
【0459】
上述のアッセイを使用した、ある特定の化合物の生物学的活性を表2に示す。T47D pAKTのIC50(nM)に関してK範囲は以下の通りである:Aは<200nMを表し、Bは200nM≦IC50<500nMを表し、Cは≧500nMを表す。NDは、明記される化合物についてそのアッセイで値が判定されなかったことを表す。
【表3】


【国際調査報告】