(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-18
(54)【発明の名称】速度及び方向の監視が強化された、レゾルバ及びモータの制御のためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
G01D 5/20 20060101AFI20240910BHJP
【FI】
G01D5/20 110Q
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506957
(86)(22)【出願日】2022-05-24
(85)【翻訳文提出日】2024-02-05
(86)【国際出願番号】 US2022030632
(87)【国際公開番号】W WO2023027790
(87)【国際公開日】2023-03-02
(32)【優先日】2021-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】513307933
【氏名又は名称】パーカー-ハネフィン コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】PARKER-HANNIFIN CORPORATION
【住所又は居所原語表記】6035 Parkland Blvd. Cleveland, OH 44124 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ウストリー,ジェラール
(72)【発明者】
【氏名】ブラッド,デイヴィッド・ティ
(72)【発明者】
【氏名】トゥープス,パトリック・シイ
(72)【発明者】
【氏名】ビーチ,ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】グンディ,サイ・キラン
【テーマコード(参考)】
2F077
【Fターム(参考)】
2F077AA02
2F077AA04
2F077FF34
2F077PP26
2F077TT33
(57)【要約】
例示的な方法は:レゾルバから正弦波フィードバック信号及び余弦波フィードバック信号を受信するステップ;整流済み正弦波信号及び整流済み余弦波信号を生成するステップ;上記正弦波フィードバック信号、上記余弦波フィードバック信号、上記整流済み正弦波信号、及び上記整流済み余弦波信号を用いて、電気モータの軸の回転の方向を決定するステップ;上記回転の方向を決定する上記ステップに関連する情報を用いて、上記整流済み正弦波信号及び上記整流済み余弦波信号を、それぞれ符号付き正弦波信号及び符号付き余弦波信号に変換するステップ;上記符号付き正弦波信号及び上記符号付き余弦波信号を用いて、上記軸の回転の速度を決定するステップ;上記回転の方向及び上記回転の速度を、レゾルバ‐デジタルコンバータによって決定された各回転の方向及び各回転の速度と比較するステップ;並びに上記比較するステップに基づいて、上記電気モータを動作させるステップを含む。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータコントローラにおいて、電気モータの出力軸に結合されたレゾルバから正弦波フィードバック信号及び余弦波フィードバック信号を受信するステップであって、前記正弦波フィードバック信号及び前記余弦波フィードバック信号は、前記レゾルバに提供される励磁信号を変調する、ステップ;
前記正弦波フィードバック信号及び前記余弦波フィードバック信号を、前記励磁信号の各周波数より低い周波数でサンプリングすることによって、整流済み正弦波信号及び整流済み余弦波信号を生成するステップ;
前記モータコントローラによって、前記正弦波フィードバック信号、前記余弦波フィードバック信号、前記整流済み正弦波信号、及び前記整流済み余弦波信号を用いて、前記出力軸の回転の方向を決定するステップ;
前記回転の方向を決定する前記ステップに関連する情報を用いて、前記整流済み正弦波信号及び前記整流済み余弦波信号を、それぞれ符号付き正弦波信号及び符号付き余弦波信号に変換するステップ;
前記モータコントローラによって、前記符号付き正弦波信号及び前記符号付き余弦波信号を用いて、前記出力軸の回転の速度を決定するステップ;
前記モータコントローラによって決定された前記回転の方向及び前記回転の速度を、前記正弦波フィードバック信号及び前記余弦波フィードバック信号を用いてレゾルバ‐デジタルコンバータによって決定された各方向及び各速度と比較するステップ;並びに
前記比較するステップに基づいて、前記モータコントローラによって前記電気モータを動作させるステップ
を含む、方法。
【請求項2】
前記正弦波フィードバック信号及び前記余弦波フィードバック信号から、前記励磁信号の各周波数より低い周波数でサンプリングされたデータ点を有する正弦波データバッファ及び余弦波データバッファを生成するステップを更に含み、ここで、前記整流済み正弦波信号及び前記整流済み余弦波信号を生成する前記ステップは、前記正弦波データバッファ及び前記余弦波データバッファに基づくものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記正弦波データバッファ及び前記余弦波データバッファを生成する前記ステップは:
それぞれのアナログ/デジタルコンバータ(ADC)を用いて、前記正弦波フィードバック信号及び前記余弦波フィードバック信号をそれぞれの離散値に変換するステップ;並びに
前記ADCの各出力を、前記励磁信号の各周波数より低い周波数でフィルタリングするステップ
を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記整流済み正弦波信号及び前記整流済み余弦波信号を生成する前記ステップは、前記整流済み正弦波信号及び前記整流済み余弦波信号の振幅が前記正弦波フィードバック信号及び前記余弦波フィードバック信号それぞれの振幅に比例するようなものである、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記整流済み正弦波信号及び前記整流済み余弦波信号の振幅が前記正弦波フィードバック信号及び前記余弦波フィードバック信号それぞれの振幅に比例するように、前記整流済み正弦波信号及び前記整流済み余弦波信号を生成する前記ステップは:
各データバッファ内の正又は負の半サイクルのうち最初に発生するものを識別するステップ;及び
前記正又は負の半サイクルを構成するデータ点の絶対値を合計するステップ
を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記電気モータの前記出力軸の前記回転の方向を決定する前記ステップは:
前記整流済み余弦波信号が前記整流済み正弦波信号を超えるとき、及び前記整流済み正弦波信号が前記整流済み余弦波信号を超えるときを示す第1の論理信号を生成するステップ;並びに
前記正弦波フィードバック信号と上余弦波フィードバック信号との積が正であるとき、及び前記積が負であるときを示す第2の論理信号を生成するステップ
を含み、
前記電気モータの前記出力軸の前記回転の方向を決定する前記ステップは、前記第1の論理信号及び前記第2の論理信号に基づくものである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記回転の方向を決定する前記ステップに関連する情報を用いて、前記整流済み正弦波信号及び前記整流済み余弦波信号を、それぞれ前記符号付き正弦波信号及び前記符号付き余弦波信号に変換する前記ステップは:
前記第1の論理信号及び前記第2の論理信号に対応する状態信号を生成するステップ;
前記正弦波フィードバック信号及び前記余弦波フィードバック信号の最初の180°と2つ目の180°とを区別するトグル信号を生成するステップ;並びに
前記状態信号及び前記トグル信号に基づいて、余弦波の乗数及び正弦波の乗数を決定するステップ
を含み、
前記整流済み正弦波信号及び前記整流済み余弦波信号を前記符号付き正弦波信号及び前記符号付き余弦波信号に変換する前記ステップは、前記余弦波の乗数及び前記正弦波の乗数に基づくものである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記出力軸の回転の速度を決定する前記ステップは:
前記符号付き正弦波信号及び前記符号付き余弦波信号を、ローパスフィルタを通してフィルタリングして、フィルタリング済み正弦波信号及びフィルタリング済み余弦波信号を生成するステップ
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記出力軸の前記回転の速度を決定する前記ステップは:
前記フィルタリング済み正弦波信号及び前記フィルタリング済み余弦波信号を、追跡位相ロックループを通して処理するステップ
を更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記モータコントローラによって決定された前記出力軸の前記回転の速度を、前記レゾルバ‐デジタルコンバータによって決定された各前記速度と比較する前記ステップは:
前記モータコントローラによって決定された前記速度と、前記レゾルバ‐デジタルコンバータによって決定された各前記速度との間の、差分の大きさを決定するステップ
を含み、
前記比較するステップに基づいて前記電気モータを動作させる前記ステップは:
前記差分が差分閾値未満である場合、又は前記差分が持続時間閾値未満の期間にわたって差分閾値を超える場合に、前記電気モータを通常の動作モードで動作させる指示を提供し、
前記差分が前記持続時間閾値より長く前記差分閾値を超える場合に、前記電気モータを安全動作モードで動作させる指示を提供する、ステップ
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記モータコントローラによって決定された前記回転の方向を、前記レゾルバ‐デジタルコンバータによって決定された各前記回転の方向と比較する前記ステップは:
前記モータコントローラによって決定された前記回転の方向が、前記レゾルバ‐デジタルコンバータによって決定された各前記回転の方向と同一である場合、又は前記モータコントローラによって決定された前記回転の方向が、持続時間閾値未満の期間にわたって、前記レゾルバ‐デジタルコンバータによって決定された各前記回転の方向と異なっている場合に、前記電気モータを通常の動作モードで動作させる指示を提供し、
前記モータコントローラによって決定された前記回転の方向が、前記持続時間閾値より長い時間にわたって、前記レゾルバ‐デジタルコンバータによって決定された各前記回転の方向と異なる場合に、前記電気モータを安全動作モードで動作させる指示を提供する、ステップ
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記正弦波フィードバック信号及び前記余弦波フィードバック信号から、前記励磁信号の各周波数より低い周波数でサンプリングされたデータ点を有する正弦波データバッファ及び余弦波データバッファを生成するステップ;並びに
前記正弦波フィードバック信号及び前記余弦波フィードバック信号に対して信号完全性チェックを実施するステップ
を更に含み、
前記信号完全性チェックを実施する前記ステップは:
所与の正弦波データバッファ又は余弦波データバッファ内の特定のデータ点が前の2つの正弦波データバッファ又は余弦波データバッファと比べて変化しているかどうかを決定するステップ
を含み、
前記電気モータを動作させる前記ステップは更に、前記信号完全性チェックに基づくものである、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記正弦波フィードバック信号及び前記余弦波フィードバック信号から、前記励磁信号の各周波数より低い周波数でサンプリングされたデータを有する正弦波データバッファ及び余弦波データバッファを生成するステップ;
前記正弦波データバッファ及び前記余弦波データバッファから、最大正弦値、最小正弦値、最大余弦値、及び最小余弦値を抽出するステップ;並びに
前記正弦波フィードバック信号及び前記余弦波フィードバック信号に対して信号完全性チェックを実施するステップ
を更に含み、
前記信号完全性チェックを実施する前記ステップは:
前記最大正弦値、前記最小正弦値、前記最大余弦値、及び前記最小余弦値それぞれの大きさが許容値未満であるかどうかを決定するステップ
を含み、
前記電気モータを動作させる前記ステップは更に、前記信号完全性チェックに基づくものである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記正弦波フィードバック信号及び前記余弦波フィードバック信号から、前記励磁信号の各周波数より低い周波数でサンプリングされたデータを有する正弦波データバッファ及び余弦波データバッファを生成するステップ;
前記正弦波データバッファ及び前記余弦波データバッファから、最大正弦値、最小正弦値、最大余弦値、及び最小余弦値を抽出するステップ;並びに
前記正弦波フィードバック信号及び前記余弦波フィードバック信号に対して信号完全性チェックを実施するステップ
を更に含み、
前記信号完全性チェックを実施する前記ステップは:
(i)前記最大正弦値の大きさと前記最小正弦値の大きさとの間の差分が許容値未満であるかどうか;及び
(ii)前記最大余弦値の大きさと前記最小余弦値の大きさとの間の差分が許容値未満であるかどうかを決定するステップ
を含み、
前記電気モータを動作させる前記ステップは更に、前記信号完全性チェックに基づくものである、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記整流済み正弦波信号の二乗と前記整流済み余弦波信号の二乗とを決定するステップ;
前記整流済み正弦波信号と前記整流済み余弦波信号との二乗和を決定するステップ;及び
信号完全性チェックを実施するステップ
を更に含み、
前記信号完全性チェックを実施する前記ステップは:
前記二乗和が許容最大値と許容最小値の間に制限されているかどうかを決定するステップ
を含み、
前記電気モータを動作させる前記ステップは更に、前記信号完全性チェックに基づくものである、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記符号付き正弦波信号の二乗と前記符号付き余弦波信号の二乗とを決定するステップ;
前記符号付き正弦波信号と前記符号付き余弦波信号との二乗和を決定するステップ;及び
信号完全性チェックを実施するステップ
を更に含み、
前記信号完全性チェックを実施する前記ステップは:
前記二乗和が許容最大値と許容最小値の間に制限されているかどうかを決定するステップ
を含み、
前記電気モータを動作させる前記ステップは更に、前記信号完全性チェックに基づくものである、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
電気モータであって:
(i)一次コイル、正弦波コイル、及び余弦波コイルを有するレゾルバステータと、(ii)前記電気モータの出力軸に設置され、前記出力軸と共に回転するように構成された、レゾルバロータであって、前記レゾルバロータは二次コイルを備える、レゾルバロータと、を備える、レゾルバ;
レゾルバ‐デジタルコンバータであって、(i)励磁信号を前記レゾルバステータの前記一次コイルに提供し、ここで前記励磁信号は、前記レゾルバロータの前記二次コイルを励磁することにより、前記正弦波コイル内で正弦波フィードバック信号を、及び前記余弦波コイル内で余弦波フィードバック信号を生成するものであり、(ii)前記正弦波フィードバック信号及び前記余弦波フィードバック信号を受信し、(iii)前記正弦波フィードバック信号及び前記余弦波フィードバック信号を用いて、前記出力軸の回転の方向及び回転の速度を決定するように構成された、レゾルバ‐デジタルコンバータ;並びに
1つ以上のプロセッサと、命令を記憶した非一時的コンピュータ可読媒体とを備えるモータコントローラであって、前記命令は、前記1つ以上のプロセッサによって実行された場合に:
前記正弦波フィードバック信号及び前記余弦波フィードバック信号を受信するステップ;
前記正弦波フィードバック信号及び前記余弦波フィードバック信号を、前記励磁信号の各周波数より低い周波数でサンプリングすることによって、整流済み正弦波信号及び整流済み余弦波信号を生成するステップ;
前記正弦波フィードバック信号、前記余弦波フィードバック信号、前記整流済み正弦波信号、及び前記整流済み余弦波信号を用いて、前記出力軸の各回転の方向を決定するステップ;
各前記回転の方向を決定する前記ステップに関連する情報を用いて、前記整流済み正弦波信号及び前記整流済み余弦波信号を、それぞれ符号付き正弦波信号及び符号付き余弦波信号に変換するステップ;
前記符号付き正弦波信号及び前記符号付き余弦波信号を用いて、前記出力軸の各回転の速度を決定するステップ;
前記モータコントローラによって決定された各前記方向及び各前記速度を、前記レゾルバ‐デジタルコンバータによって決定された前記回転の方向及び前記回転の速度と比較するステップ;並びに
前記比較するステップに基づいて、前記電気モータを動作させるステップ
を含む動作を、前記モータコントローラに実施させるものである、モータコントローラ
を備える、電気モータ。
【請求項18】
前記モータコントローラによって決定された前記出力軸の各前記回転の速度を、前記レゾルバ‐デジタルコンバータによって決定された前記速度と比較する前記ステップは:
前記モータコントローラによって決定された各前記速度と、前記レゾルバ‐デジタルコンバータによって決定された各前記速度との間の、差分の大きさを決定するステップ
を含み、
前記比較するステップに基づいて前記電気モータを動作させる前記ステップは:
前記差分が差分閾値未満である場合、又は前記差分が持続時間閾値未満の期間にわたって差分閾値を超える場合に、前記電気モータを通常の動作モードで動作させる指示を提供し、
前記差分が前記持続時間閾値より長く前記差分閾値を超える場合に、前記電気モータを安全動作モードで動作させる指示を提供する、ステップ
を含む、請求項17に記載の電気モータ。
【請求項19】
前記モータコントローラによって決定された各前記回転の方向を、前記レゾルバ‐デジタルコンバータによって決定された前記回転の方向と比較する前記ステップは:
前記モータコントローラによって決定された各前記回転の方向が、前記レゾルバ‐デジタルコンバータによって決定された前記回転の方向と同一である場合、又は前記モータコントローラによって決定された各前記回転の方向が、持続時間閾値未満の期間にわたって、前記レゾルバ‐デジタルコンバータによって決定された前記回転の方向と異なっている場合に、前記電気モータを通常の動作モードで動作させる指示を提供し、
前記モータコントローラによって決定された各前記回転の方向が、前記持続時間閾値より長い時間にわたって、前記レゾルバ‐デジタルコンバータによって決定された前記回転の方向と異なる場合に、前記電気モータを安全動作モードで動作させる指示を提供する、ステップ
を含む、請求項17に記載の電気モータ。
【請求項20】
前記電気モータを通常の動作モードで動作させるステップは、前記電気モータを動作させる前記ステップを、前記レゾルバ‐デジタルコンバータによって決定された前記回転の速度及び前記回転の方向に依存するステップを含み、
前記電気モータを安全動作モードで動作させるステップは、前記電気モータのパフォーマンスを低下させるステップを含む、請求項19に記載の電気モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願の相互参照>
本出願は、2021年8月23日出願の米国仮特許出願第63/235,833号に対する優先権を主張するものであり、上記仮特許出願の全内容は、あたかも本明細書内に完全に記載されているかのように、参照により本出願に援用される。
【背景技術】
【0002】
電気モータは、工業施設、車両(例えば電気自動車)、及び移動式油圧機械(例えばホイールローダ、掘削機等)等の多様な用途に使用される。
例えば、
電気モータはポンプを駆動でき、続いてこのポンプが流体の流れを提供することで、油圧アクチュエータが駆動される。別の例では、電気モータは電気自動車に使用される。
【0003】
電気モータは、上記モータの出力軸の回転の位置、速度、及び/又は方向を示すセンサ情報を提供するように構成された、回転位置センサを含むことができる。そしてモータコントローラは上記センサ情報を受信して閉ループフィードバック制御を実装し、上記モータの速度及びトルクを制御する。
【0004】
既存の電気モータシステムのモータコントローラは、センサ情報が正確であるかどうか、又はエラーが発生しているかどうか(例えばセンサ若しくはセンサの信号処理が誤動作して誤ったフィードバックを生成しているかどうか)を評価する方法を有していない場合がある。従って既存のモータシステムは、高レベルの機能的安全性を有していない。例えば、センサが誤動作し、センサ信号が不正確である場合、モータコントローラはこのような不正確な情報に基づいてモータの動作を継続する可能性があり、これは危険を伴い得る。
【0005】
電気モータの機能的安全性を強化することが望ましい場合がある。特に、回転位置センサ信号の信号完全性をチェックして、上記センサ信号に基づいて決定される速度及び方向の推定値の信頼レベルを向上させるための更なる処理を実装することが望ましい場合がある。これにより、モータの機能的安全性を強化でき、コントローラが何らかの矛盾を検出した場合に補正的な安全手段を実装できる。
【0006】
本明細書で行われる開示は、これらの考慮事項、及び他の考慮事項に関して提示される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示は、速度及び方向の監視が強化された、レゾルバ及びモータの制御のためのシステム及び方法に関連する実装形態を説明する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の例示的実装形態では、本開示は方法を説明する。上記方法は:モータコントローラにおいて、電気モータの出力軸に結合されたレゾルバから正弦波フィードバック信号及び余弦波フィードバック信号を受信するステップであって、上記正弦波フィードバック信号及び上記余弦波フィードバック信号は、上記レゾルバに提供される励磁信号を変調する、ステップ;上記正弦波フィードバック信号及び上記余弦波フィードバック信号を、上記励磁信号の各周波数より低い周波数でサンプリングすることによって、整流済み正弦波信号及び整流済み余弦波信号を生成するステップ;上記モータコントローラによって、上記正弦波フィードバック信号、上記余弦波フィードバック信号、上記整流済み正弦波信号、及び上記整流済み余弦波信号を用いて、上記出力軸の回転の方向を決定するステップ;上記回転の方向を決定する上記ステップに関連する情報を用いて、上記整流済み正弦波信号及び上記整流済み余弦波信号を、それぞれ符号付き正弦波信号及び符号付き余弦波信号に変換するステップ;上記モータコントローラによって、上記符号付き正弦波信号及び上記符号付き余弦波信号を用いて、上記出力軸の回転の速度を決定するステップ;上記モータコントローラによって決定された上記回転の方向及び上記回転の速度を、上記正弦波フィードバック信号及び上記余弦波フィードバック信号を用いてレゾルバ‐デジタルコンバータによって決定された各方向及び各速度と比較するステップ;並びに上記比較するステップに基づいて、上記モータコントローラによって上記電気モータを動作させるステップを含む。
【0009】
第2の例示的実装形態では、本開示は電気モータを説明する。上記電気モータは:(i)一次コイル、正弦波コイル、及び余弦波コイルを有するレゾルバステータと、(ii)上記電気モータの出力軸に設置され、上記出力軸と共に回転するように構成された、レゾルバロータであって、上記レゾルバロータは二次コイルを備える、レゾルバロータと、を備える、レゾルバ;レゾルバ‐デジタルコンバータであって、(i)励磁信号を上記レゾルバステータの上記一次コイルに提供し、ここで上記励磁信号は、上記レゾルバロータの上記二次コイルを励磁することにより、上記正弦波コイル内で正弦波フィードバック信号を、及び上記余弦波コイル内で余弦波フィードバック信号を生成するものであり、(ii)上記正弦波フィードバック信号及び上記余弦波フィードバック信号を受信し、(iii)上記正弦波フィードバック信号及び上記余弦波フィードバック信号を用いて、上記出力軸の回転の方向及び回転の速度を決定するように構成された、レゾルバ‐デジタルコンバータ;並びにモータコントローラを含む。上記モータコントローラは、1つ以上のプロセッサと、命令を記憶した非一時的コンピュータ可読媒体とを含み、上記命令は、上記1つ以上のプロセッサによって実行された場合に、上記第1の例示的実装形態の方法の動作を含む動作を上記モータコントローラに実施させるものである。
【0010】
以上の概要は単なる例示であり、いかなる限定も意図していない。上述の例示的な態様、実装形態、及び特徴に加えて、図面及び以下の詳細な説明を参照することで、更なる態様、実装形態、及び特徴が明らかになるだろう。
【0011】
例示的な実施例の特徴と考えられる新規の特徴は、添付の特許請求の範囲に記載されている。しかしながら、これらの例示的な実施例、及びその好ましい使用形態、更なる目的、及び説明は、本開示の例示的な実施例に関する以下の詳細な説明を、添付の図面と併せて参照することによって、最もよく理解されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1A】
図1Aは、ある例示的実装形態による電気モータの斜視図を示す。
【
図2】
図2は、ある例示的実装形態によるレゾルバの分解立体図を示す。
【
図3】
図3は、別の例示的実装形態によるレゾルバの概略図を示す。
【
図4A】
図4Aは、ある例示的実装形態による励磁信号のグラフを示す。
【
図4B】
図4Bは、ある例示的実装形態による、正弦波コイル内で生成される正弦波フィードバック信号のグラフを示す。
【
図4C】
図4Cは、ある例示的実装形態による、余弦波コイル内で生成される余弦波フィードバック信号のグラフを示す。
【
図5】
図5は、ある例示的実装形態による電気モータの制御システムのブロック図を示す。
【
図6】
図6は、ある例示的実装形態による、サンプリングされたデータ及び適用されたウィンドウを示すグラフを示す。
【
図7】
図7は、ある例示的実装形態によるセンサ信号処理モジュールのブロック図を示す。
【
図8】
図8は、ある例示的実装形態による、
図6の各ウィンドウ内の正の半サイクル又は負の半サイクルのいずれか最初に発生するものの、識別及び分離を示すグラフを示す。
【
図9】
図9は、ある例示的実装形態による、正弦波フィードバック信号及び余弦波フィードバック信号の正又は負の半サイクルの積分値を示すグラフを示す。
【
図10】
図10は、ある例示的実装形態による、整流済み余弦波信号が整流済み正弦波信号を超えるときを示す第1の論理信号を示すグラフを示す。
【
図11】
図11は、ある例示的実装形態による、正回転中の正弦波フィードバック信号、余弦波フィードバック信号、第1の論理信号1002、及び第2の論理信号を示すグラフを示す。
【
図12】
図12は、ある例示的実装形態による、負回転中の正弦波フィードバック信号、余弦波フィードバック信号、第1の論理信号、及び第2の論理信号を示すグラフを示す。
【
図13】
図13は、ある例示的実装形態による、正回転中の状態信号及びトグル信号を伴う整流済み正弦波信号及び整流済み余弦波信号の一部分を示すグラフである。
【
図14】
図14は、ある例示的実装形態による、再構成された符号付き正弦波信号及び符号付き余弦波信号を示すグラフである。
【
図15】
図15は、ある例示的実装形態による、負回転中の状態信号及びトグル信号を伴う整流済み正弦波信号及び整流済み余弦波信号の一部分を示すグラフである。
【
図16】
図16は、ある例示的実装形態による、再構成された符号付き正弦波信号及び符号付き余弦波信号を示すグラフである。
【
図17】
図17は、ある例示的実装形態による速度抽出モジュールのローパスフィルタの出力信号を示すグラフを示す。
【
図18】
図18は、ある例示的実装形態による追跡位相ロックループのブロック図を示す。
【
図19】
図19は、ある例示的実装形態によるレゾルバ速度モニタのブロック図を示す。
【
図20】
図20は、ある例示的実装形態によるレゾルバ方向モニタ2000のブロック図を示す。
【
図21】
図21は、ある例示的実装形態による、特定の上限と下限との間にとどまる整流済み正弦波信号及び整流済み余弦波信号の二乗和を示すグラフを示す。
【
図22】
図22は、ある例示的実装形態による、特定の上限と下限との間にとどまる符号付き正弦波信号及び符号付き余弦波信号の二乗和を示すグラフを示す。
【
図23】
図23は、ある例示的実装形態による計算デバイスを例示するブロック図を示す。
【
図24】
図24は、ある例示的実装形態による、電気モータを動作させるためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
ある例示的な電気モータは、上記電気モータのロータに結合された出力軸に取り付けられた、レゾルバを有してよい。上記レゾルバは、上記ロータの回転位置、回転速度、及び回転方向を示す信号を提供するように構成される。上記信号はレゾルバ‐デジタルコンバータで処理でき、上記レゾルバ‐デジタルコンバータは、上記レゾルバから受信した上記信号を、位置、速度、及び方向の値に変換する。
【0014】
モータコントローラは、上記レゾルバ‐デジタルコンバータの出力を受信して、上記モータの速度及びトルクを制御するための閉ループフィードバック制御スキームを実装する。本開示のシステム及び方法は、上記レゾルバ‐デジタルコンバータが実施する処理に対して並列の、別の信号処理経路を有し、これにより、センサ信号の完全性をチェックして、上記レゾルバ‐デジタルコンバータによって提供された速度フィードバック及び方向フィードバックを個別に確認することを伴う。
【0015】
この構成により、上記モータコントローラは、上記レゾルバ及び上記レゾルバ‐デジタルコンバータの出力信号の信頼性をチェックするよう構成される。上記モータコントローラが矛盾を検出すると、上記モータコントローラは、上記モータを、上記モータを駆動するシステムを安全に動作させるために上記モータの速度を制限するセーフモード又は低パフォーマンスモードに切り替えることができる。これにより、システムの機能的安全性が強化される。
【0016】
図1Aは、ある例示的実装形態による電気モータ100の斜視図を示し、
図1Bはある例示的実装形態による電気モータ100の側面図を示し、
図1Cはある例示的実装形態による電気モータ100の正面図を示す。電気モータ100はハウジング102を有し、これはその中に、電気モータ100の部品が中に配置される内部チャンバを有する。
【0017】
電気モータ100は、ハウジング102の上記内部チャンバ内に固定的に位置決めされたステータを含む。上記ステータは、上記ステータの本体(例えば積層体スタック)の周りに巻かれたワイヤ巻線を含むことができ、磁界を生成するように構成される。特に電気モータ100は、電気モータ100に電力を供給するためにケーブルを接続できる電気モータコネクタ104を有することができ、上記ステータの上記ワイヤ巻線を通して電流が供給されると、磁界が生成される。
【0018】
電気モータ100は更に、上記ステータ内に位置決めされたロータを含む。電気モータ100は更に、上記ステータと上記ロータとの間の環状の空間内において上記ロータに取り付けられた、磁石を含むことができる。上記磁石は、上記ステータが生成した磁界と相互作用することにより、上記ロータを回転させてトルクを生成するよう構成される。上記ロータは出力軸106に結合され、この出力軸106は、例えばスプラインを介して電気モータ100によって駆動されることになる別のデバイス(例えばポンプ、ホイール、ギヤボックス等)に結合できる。
【0019】
図1Bは、電気モータ100の後端の部分断面図を示し、これは、電気モータ100が更に、出力軸106に取り付けられたレゾルバ200を含むことを示している。レゾルバ200は、出力軸106の回転位置及び速度を示すセンサ情報を提供するために使用できる、電磁トランスデューサとして構成される。
【0020】
図2はある例示的実装形態によるレゾルバ200の分解立体図を示し、
図3はある例示的実装形態によるレゾルバ200の概略図を示す。レゾルバ200は、レゾルバステータ202及びレゾルバロータ204を有する回転トランスとして構成できる。レゾルバロータ204は電気モータ100の出力軸106に取り付けられるため、レゾルバロータ204は、出力軸106と共に、同一方向に同一の回転速度で回転する。
【0021】
レゾルバロータ204及びレゾルバステータ202はいずれも、マルチスロット積層体と2組の巻線とを用いて製造できる。上記巻線は、一定ピッチ可変ターンパターン、又は可変ピッチ可変ターンパターンで、スロット付き積層体内に構成して分布させることができる。一例として、巻線の分布は正弦曲線パターンである。
【0022】
特に
図3を参照すると、レゾルバステータ202は3つの巻線、即ち:励磁器又は一次コイル300、正弦波コイル302、及び余弦波コイル304を有する。正弦波コイル302及び余弦波コイル304は2相巻線として構成され、互いに対して磁気的に垂直となるように構成される。
【0023】
レゾルバロータ204は二次コイル306を有する。従って二次コイル306はレゾルバロータ204と共に回転する。この構成により、レゾルバ200は回転トランスとして動作する。特に、所望の周波数を有する励磁信号308が生成され(例えば以下で説明されるレゾルバ‐デジタルコンバータ502等のレゾルバ‐デジタルコンバータによって生成され)、ここで励磁信号308は一次コイル300を通過する交流(AC)信号であり、二次コイル306内で電流/電圧を誘導する。
【0024】
二次コイル306が電気モータ100の出力軸106と共に回転すると、磁界が生成され、これは、互いに対して磁気的に垂直となるように配置された(例えば互いから90°で構成された)正弦波コイル302及び余弦波コイル304を励磁する。このような励磁により、正弦波コイル302及び余弦波コイル304はそれぞれ正弦波フィードバック信号及び余弦波フィードバック信号を生成する。
【0025】
図4Aは、ある例示的実装形態による励磁信号308のグラフを示し、
図4Bは、ある例示的実装形態による、正弦波コイル302内で生成される正弦波フィードバック信号400のグラフを示し、
図4Cは、ある例示的実装形態による、余弦波コイル304内で生成される余弦波フィードバック信号402のグラフを示す。図示されているように、正弦波フィードバック信号400及び余弦波フィードバック信号402は、高い周波数を有する励磁信号308(即ち搬送波信号)を変調する低周波数信号である。例えば搬送波信号は、2キロヘルツ(KHz)~20KHzの範囲内の励磁周波数(例えば8KHzの周波数)を有することができ、一方、上記低周波数信号は、0~500Hzの範囲内の周波数(例えば300Hzの周波数)を有する。よって、励磁信号308は搬送波信号として動作し、正弦波フィードバック信号400及び余弦波フィードバック信号402は、励磁信号308の1つ以上の特性(例えば振幅)を変化させる。従って、正弦波フィードバック信号400及び余弦波フィードバック信号402を、変調(modulation)信号又は被変調(modulated)信号と呼ぶこともできる。
【0026】
正弦波フィードバック信号400及び余弦波フィードバック信号402の振幅は、レゾルバロータ204(及び出力軸106)の機械的回転の角度の正弦及び余弦に比例して、励磁信号308を変調する。従ってレゾルバ200は、ベクトルをその正弦成分と余弦成分とに分解する。
【0027】
正弦波フィードバック信号400及び余弦波フィードバック信号402の相対的な大きさを測定し、レゾルバステータ202に対するレゾルバロータ204の角度の決定に使用する。特に、励磁信号308を変調する正弦波フィードバック信号400及び余弦波フィードバック信号402は、上記レゾルバ‐デジタルコンバータに戻されるアナログ信号であり、そこで上記アナログ信号は処理されて、レゾルバロータ204の位置及び速度を示す情報が提供される。レゾルバロータ204の位置及び速度は、レゾルバロータ204が取り付けられた出力軸106の位置及び速度を示す。
【0028】
一例として、上記レゾルバ‐デジタルコンバータは、正弦波フィードバック信号400及び余弦波フィードバック信号402を復調してフィルタリングできる。上記レゾルバ‐デジタルコンバータは、正弦波フィードバック信号400及び余弦波フィードバック信号402を特定の周波数でサンプリングし、レゾルバロータ204の角度を、正弦波フィードバック信号400を余弦波フィードバック信号402で除算した逆正接として、又は追跡位相ロックループを用いて、決定できる。続いて回転速度を、回転位置信号を時間で微分することによって、又は位置の変化をサンプリング期間で除算することによって、又は上記追跡位相ロックループを用いて、決定できる。
【0029】
次に、決定された位置及び速度を、上記モータを制御するように構成されたマイクロコントローラに提供する。上記マイクロコントローラは、電気モータ100の閉ループ速度及びトルクの制御を目的として、上記位置及び速度を使用する。
【0030】
電気モータ100によって駆動されるデバイスの制御は、レゾルバ‐デジタルコンバータによって提供される位置及び速度情報の精度に依存するため、レゾルバ‐デジタルコンバータの出力の信頼性を強化及び監視することが望ましい場合がある。特に、レゾルバ200の出力信号をその完全性に関してチェックする、追加の監視を提供することが望ましい場合がある。また、レゾルバ信号の並列処理を実施することにより、電気モータ100の回転の速度及び方向を独立して決定し、決定された速度及び方向をレゾルバ‐デジタルコンバータの出力と比較することで、速度値及び方向値の信頼性を保証することが望ましい場合もある。信号の完全性のチェックが合格であり、速度及び方向の値がレゾルバ‐デジタルコンバータの出力と一致する場合、上記モータコントローラは電気モータ100を通常動作モードで動作させる。矛盾が存在する場合、上記モータコントローラは、システムの安全性を保証するために、電気モータ100を安全動作モードで動作させることができる。
【0031】
図5は、ある例示的実装形態による電気モータ100の制御システム500のブロック図を示す。制御システム500は、電気モータ100の出力軸106に取り付けられた上述のレゾルバ200を含む。
【0032】
制御システム500は、相互に通信するレゾルバ‐デジタルコンバータ502及びモータコントローラ504を含む。モータコントローラ504は例えば、金属酸化物半導体集積回路チップを有するマイクロコントローラとすることができる。モータコントローラ504は、1つ以上のプロセッサを、メモリ及びプログラム可能な入出力周辺機器と共に含むことができる。プロセッサとしては、汎用プロセッサ(例えばINTEL(登録商標)シングルコアマイクロプロセッサ若しくはINTEL(登録商標)マルチコアマイクロプロセッサ)、又は専用プロセッサ(例えばデジタル信号プロセッサ、グラフィックプロセッサ、若しくは特定用途向け集積回路(application specific integrated circuit:ASIC)プロセッサ)が挙げられる。プロセッサは、本明細書全体を通して説明されている動作を実施するために、コンピュータ可読プログラム命令(computer‐readable program instruction:CRPI)を実行するよう、構成できる。プロセッサは、(例えばCRPIによって)ソフトウェアコード化された機能に加えて、又はその代わりに、ハードコード化された機能を実行するように構成できる。
【0033】
モータコントローラ504は搬送周波数生成器506を有する。搬送周波数生成器506は、上述のようにレゾルバステータ202の一次コイル300を励磁する励磁信号308の、周波数を生成するように構成される。ある例では、搬送周波数生成器506は、励磁信号308の搬送周波数を生成するよう構成された、一連の分周器、フィルタリングを伴う単側波帯ミキサ、マルチプレクサ等を含むソフトウェア及びハードウェアモジュールを有することができるモジュールである。用語「モジュール(module)」は、本明細書では一般に、ソフトウェア、ハードウェア、又はソフトウェアコンポーネントとハードウェアコンポーネントとの組み合わせを含むものとして使用される。
【0034】
モータコントローラ504は、レゾルバ‐デジタルコンバータ502との通信を容易にする通信インタフェースを有することができる。一例としてモータコントローラ504は、シリアルペリフェラルインタフェース(serial peripheral interface:SPI)508、例えば短距離通信のための同期シリアル通信インタフェースを有することができる。SPI508は、マスター/スレーブアーキテクチャを用いて全二重モードで通信でき、例えば4線シリアルバスと呼ばれることもある。しかしながら、本明細書ではSPI通信は一例として使用される。パラレルインタフェース、又は他のタイプのインタフェースを、モータコントローラ504とレゾルバ‐デジタルコンバータ502との間に使用することもできる。
【0035】
モータコントローラ504は、搬送周波数生成器506によって生成された搬送周波数を、SPI508を介してレゾルバ‐デジタルコンバータ502に通信し、続いてレゾルバ‐デジタルコンバータ502は励磁信号308を生成して、これをレゾルバステータ202の一次コイル300に提供する。そして上述のように、レゾルバ200は正弦波フィードバック信号400及び余弦波フィードバック信号402をレゾルバ‐デジタルコンバータ502に戻し、続いてレゾルバ‐デジタルコンバータ502は出力軸106の回転の位置、速度、及び方向を決定する。
【0036】
正弦波フィードバック信号400及び余弦波フィードバック信号402をレゾルバ‐デジタルコンバータ502に提供するのに加えて、これらは
図5に示されているように、二次又は並列信号処理のために、モータコントローラ504に戻される。モータコントローラ504は第1の処理モジュール又は第1の処理コア510を有することができ、これは、アナログ被変調信号である正弦波フィードバック信号400及び余弦波フィードバック信号402を、正弦波データバッファ512及び余弦波データバッファ514といったデータバッファ内に配置されたデジタル又は離散データ点に変換するよう、構成される。
【0037】
例えば第1の処理コア510は、正弦波フィードバック信号400を第1のサンプリング周波数(例えば高サンプリング周波数)で離散値に変換する、正弦波アナログ/デジタルコンバータ(正弦波ADC)516を有することができる。説明のための一例として、正弦波ADC516は、デルタ・シグマ型アナログ/デジタルコンバータ(DS ADC)を含むことができる。DS ADCはまず、正弦波フィードバック信号400に対してデルタ変調を実施できる。即ちDS ADCは、正弦波フィードバック信号400の絶対値ではなく変化(デルタ)を符号化できる。従ってDS ADCは、数値のストリームではなくパルスのストリームを生成する。デルタ・シグマ変調では、デジタル出力を1ビットデジタル/アナログコンバータ(digital‐to‐analog converter:DAC)に通し、得られたアナログ信号を正弦波フィードバック信号400(デルタ変調前の信号)に加算し(シグマ)、それにより、デルタ変調によって導入される誤差を低減することによって、変調の精度を向上させることができる。他のADCスキームも使用できる。
【0038】
次に、正弦波ADC516の出力は、正弦波復調器又は正弦波フィルタ518を通過する。
図5に示されているように、正弦波フィルタ518は、搬送周波数生成器506によって生成された搬送周波数を受信するか、又はこの搬送周波数へのアクセスを有する。正弦波フィルタ518は、正弦波ADC516の出力を、搬送周波数(レゾルバ200の一次コイル300の励磁周波数)より低い第2の周波数でサンプリングする。例えば正弦波フィルタ518は、正弦波ADC516の出力を、搬送周波数より少なくとも1.6倍低い周波数でフィルタリング又はサンプリングできる。これにより、正弦波データバッファ512が正弦波フィードバック信号400(被変調正弦波信号)の少なくとも1回の完全なサイクルを含むことが保証される。
【0039】
同様に、第1の処理コア510は、余弦波フィードバック信号402を高サンプリング周波数で離散値に変換する、余弦波ADC520を有することができる。説明のための一例として、余弦波ADC520は、上述のように動作するDS ADCを含むことができる。次に、余弦波ADC520の出力は、余弦波復調器又は余弦波フィルタ522を通過し、これは正弦波フィルタ518と同様に、搬送周波数生成器506によって生成された搬送周波数へのアクセスを有する。余弦波フィルタ522は、余弦波ADC520の出力を、搬送周波数より低い周波数(例えば搬送周波数より少なくとも1.6倍低い周波数)でフィルタリング又はサンプリングするように構成される。これにより、余弦波データバッファ514が余弦波フィードバック信号402(被変調余弦波信号)の少なくとも1回の完全なサイクルを含むことが保証される。
【0040】
従って第1の処理コア510は、高サンプルレートで動作するデュアル同期ADC(例えばDS ADC)を用いて、アナログ被変調信号である正弦波フィードバック信号400及び余弦波フィードバック信号402を離散値に変換する。変換されたサンプルは、2つのバッファ、即ち正弦波データバッファ512及び余弦波データバッファ514のそれぞれに配置されるか、又はそこでウィンドウ処理される。
【0041】
図6は、ある例示的実装形態による、サンプリングされたデータ及び適用されたウィンドウを示すグラフ600を示す。説明のための一例として、
図6はそれぞれ32個のサンプルを有するウィンドウを示す。他のサンプル数も使用できる(例えば64、128等)。
図6に示されているように、離散値602を、例えば正弦波フィードバック信号400から抽出し、続いて方形波又は台形波604を適用することにより、上記値を複数のウィンドウへと、ウィンドウあたり32サンプルとなるように分割する。
【0042】
データバッファウィンドウは正弦波フィードバック信号400と同期されない。上述のように、データバッファウィンドウの周波数は、搬送周波数生成器506によって生成された搬送周波数より低く(例えば1.6倍低く)なるように選択され、これにより、正弦波データバッファ512及び余弦波データバッファ514の各バッファ(即ち各データバッファウィンドウ)がそれぞれ、正弦波フィードバック信号400及び余弦波フィードバック信号402の1回の完全なサイクルを有することが保証される。
【0043】
このように、正弦波データバッファ512及び余弦波データバッファ514内のデータは、被変調正弦波及び余弦波信号、即ち正弦波フィードバック信号400及び余弦波フィードバック信号402の、非同期ウィンドウを表す。上述の比較的低いサンプリング周波数によって、正弦波データバッファ512及び余弦波データバッファ514の各バッファが、それぞれ被変調正弦波又は余弦波信号の少なくとも1回の完全なサイクルを含むことが保証される。
【0044】
再び
図5を参照すると、第1の処理コア510は更に、ダイレクトメモリアクセスコントローラ、即ちDMAC524を含むことができ、これは、正弦波データバッファ512及び余弦波データバッファ514へのアクセスを提供するように構成される。特に、モータコントローラ504は第2の処理コア526を更に含み、DMAC524は、ダイレクトメモリアクセス(direct memory access:DMA)によって、正弦波データバッファ512及び余弦波データバッファ514を第2の処理コア526へと送るように構成される。
【0045】
一例として、DMAC524は、第1の処理コア510をあまり関与させずに、又は第1の処理コア510とは独立して、第2の処理コア526を、正弦波データバッファ512及び余弦波データバッファ514を記憶した第1の処理コア510内のメモリに、直接アクセスさせる、ハードウェアデバイスとして構成できる。DMAC524は、第2の処理コア526との通信のためのインタフェースの電子回路を有することができる。
【0046】
ある例では、第1の処理コア510及び第2の処理コア526は、一時的なエラーに対する保護のためにクロックサイクルが同期される、ロックステップコアとして構成される。第2の処理コア526は、正弦波データバッファ512及び余弦波データバッファ514のデータに対して複数の動作を実施するよう構成された、センサ信号処理モジュール528を含む。特に第2の処理コア526は:(i)レゾルバ200によって提供された信号の完全性をチェックする動作;(ii)正弦波フィードバック信号400及び余弦波フィードバック信号402の振幅を抽出する動作;(iii)正弦波フィードバック信号400及び余弦波フィードバック信号402から回転の方向を抽出する動作;(iv)正弦波フィードバック信号400及び余弦波フィードバック信号402から回転速度を抽出する動作;(v)レゾルバの方向の機能的安全性を監視する動作;並びに(vi)レゾルバの速度の機能的安全性を監視する動作を含む、動作を実施できる。
【0047】
図7は、ある例示的実装形態によるセンサ信号処理モジュール528の部分ブロック
図700を示す。センサ信号処理モジュール528は、少なくとも3つの処理モジュール、即ち振幅抽出モジュール702、方向抽出モジュール704、及び速度抽出モジュール706を含む。センサ信号処理モジュール528は更に、レゾルバ速度モニタ1900及びレゾルバ方向モニタ2000といった他のモジュールを含み、以下で説明されるような信号の完全性のチェックの実施といった、他のプロセスを実施する。
【0048】
振幅抽出モジュール702は、正弦波データバッファ512及び余弦波データバッファ514に記憶された値を受信し、上記値には、レゾルバ200によって提供された生の被変調正弦波及び余弦波フィードバック信号の(即ち正弦波フィードバック信号400及び余弦波フィードバック信号402の)、サンプリングされた値が含まれる。続いて振幅抽出モジュール702は、上記被変調信号の振幅を抽出する。特に振幅抽出モジュール702は、正弦波データバッファ512及び余弦波データバッファ514の各ウィンドウ内の、被変調正弦波及び余弦波フィードバック信号の最初の正の半サイクル又は最初の負の半サイクル(いずれか最初に発生するもの)を、識別して分離する。
【0049】
図8は、ある例示的実装形態による、
図6の各ウィンドウ内での、正の半サイクル又は負の半サイクルのいずれか最初に発生するものの識別及び分離を示すグラフ800を示す。例えばウィンドウ802内では、振幅抽出モジュール702は、ウィンドウ802内の最初の完全な負の半サイクルよりも前に発生した最初の完全な正の半サイクルとしてサブウィンドウ805内に画定された、正の半サイクル804を識別する。サブウィンドウ805はウィンドウ802のサブウィンドウであり、従って、正の半サイクル804の点の個数は、ウィンドウ802内の32サンプルよりも少ない。
【0050】
同様に、(i)ウィンドウ806内では、振幅抽出モジュール702は、ウィンドウ806内の最初の完全な正の半サイクルよりも前に発生した最初の完全な負の半サイクルとしてサブウィンドウ809内に画定された、負の半サイクル808を識別し;(ii)ウィンドウ810内では、振幅抽出モジュール702は、ウィンドウ810内の最初の完全な負の半サイクルよりも前に発生した最初の完全な正の半サイクルとしてサブウィンドウ813内に画定された、正の半サイクル812を識別し、これ以降も同様である。続いて振幅抽出モジュール702は、正弦波フィードバック信号400及び余弦波フィードバック信号402(即ち被変調正弦波及び余弦波信号)それぞれに関する正の半サイクル又は負の半サイクルそれぞれの絶対データ値を全て合計する(即ち累積する、又は時間で積分する)。
【0051】
図9は、ある例示的実装形態による、正弦波フィードバック信号400及び余弦波フィードバック信号402の正又は負の半サイクルの積分値を示すグラフ900を示す。特にグラフ900は整流済み正弦波信号902及び整流済み余弦波信号904を示す。
【0052】
図示されているように、整流済み正弦波信号902及び整流済み余弦波信号904は複数の段を有し、各段は、32サンプルのある特定のウィンドウ内(例えばウィンドウ802又はウィンドウ806内)の、ある特定の正又は負の半サイクル(例えば正の半サイクル804又は負の半サイクル809)を構成するデータ点の値の合計を表す。
【0053】
このように、整流済み正弦波信号902及び整流済み余弦波信号904の振幅又は値は、それぞれ正弦波フィードバック信号400及び余弦波フィードバック信号402に比例する。正又は負の半サイクルそれぞれの絶対値の合計を取ることにより、全ての値が正の値として考えられているため、
図9の信号は「整流済み(rectified)」と呼ばれる。
【0054】
有利には、例えば信号のピークを考えるのではなく、値の積分又は累算によって整流済み正弦波信号902及び整流済み余弦波信号904を生成することは、ノイズフィルタ効果を有し得る。このようにして、所与の時点における振幅の決定の精度を向上させることができる。
【0055】
これらのプロセスにより、振幅抽出モジュール702は、励磁信号308の搬送周波数の影響を排除して、整流済み正弦波信号902及び整流済み余弦波信号904を生成する。整流済み正弦波信号902及び整流済み余弦波信号904は、レゾルバ200によって生成された整流及び復調済みの正弦波及び余弦波信号の、サンプリングされたバージョンを表す。
【0056】
再び
図7を参照すると、整流済み正弦波信号902及び整流済み余弦波信号904は、振幅抽出モジュール702から方向抽出モジュール704に提供される。方向抽出モジュール704は被変調信号(即ち正弦波フィードバック信号400及び余弦波フィードバック信号402)も受信する。
【0057】
方向抽出モジュール704は、これに続いて、整流済み正弦波信号902及び整流済み余弦波信号904を用いて、出力軸106の回転の方向であるレゾルバロータ204の回転の方向を決定するよう構成される。ある例では、方向抽出モジュール704はまず、整流済み余弦波信号904が整流済み正弦波信号902を超えるときを示す論理信号を生成する。上記論理信号は他の場所にゼロ値を割り当てる。
【0058】
図10は、ある例示的実装形態による、整流済み余弦波信号904が整流済み正弦波信号902を超えるときを示す第1の論理信号1002を示すグラフ1000を示す。図示されているように、第1の論理信号1002は、整流済み余弦波信号904が整流済み正弦波信号902を超えるときに値1を、そして整流済み正弦波信号902が整流済み余弦波信号904を超えるときに値0を有する、方形波である。
【0059】
続いて方向抽出モジュール704は、被変調正弦波及び余弦波レゾルバ信号から、即ち正弦波フィードバック信号400及び余弦波フィードバック信号402から、第2の論理信号を生成する。特に、この第2の論理信号は、正弦波フィードバック信号400と余弦波フィードバック信号402との積(即ち乗算)から生成される。正弦波フィードバック信号400と余弦波フィードバック信号402との積が正である場合、上記第2の論理信号は値1を有する。正弦波フィードバック信号400と余弦波フィードバック信号402との積が負である場合、上記第2の論理信号は値-1を有する。この第2の論理信号は、レゾルバロータ204が正の方向に回転しているか負の方向に回転しているかに応じて異なる。
【0060】
図11は、ある例示的実装形態による、正回転中の正弦波フィードバック信号400、余弦波フィードバック信号402、第1の論理信号1002、及び第2の論理信号1102を示すグラフ1100を示し、
図12は、ある例示的実装形態による、負回転中の正弦波フィードバック信号400、余弦波フィードバック信号402、第1の論理信号1002、及び第2の論理信号1202を示すグラフ1200を示す。
【0061】
方向抽出モジュール704は、上記第2の論理信号の値又はレベル、及び第1の論理信号1002の信号エッジに基づいて、回転の方向を決定する。信号エッジとは、第1の論理信号1002の、ローからハイへの遷移部(立ち上がりエッジ)、又はハイからローへの遷移部(立ち下がりエッジ)である。この場合、「ロー(low)」は0を意味し、「ハイ(high)」は1を意味する。
【0062】
例えば、第1の論理信号1002の立ち下がりエッジにおいて上記第2の論理信号が正である場合、回転の方向は正である(
図11)。第1の論理信号1002の立ち下がりエッジにおいて上記第2の論理信号が負である場合、回転の方向は負である(
図12)。第1の論理信号1002の立ち上がりエッジにおいて上記第2の論理信号が負である場合、回転の方向は正である(
図11)。第1の論理信号1002の立ち上がりエッジにおいて上記第2の論理信号が正である場合、回転の方向は負である(
図12)。
【0063】
正弦波フィードバック信号400と余弦波フィードバック信号402との積は、45°の回転ごとに、即ちサイクル又は回転の1/4ごとに、変化する。従って方向抽出モジュール704は、レゾルバロータ204(及び出力軸106)の回転の方向を、サイクルの1/4ごとに決定する。
【0064】
再び
図7を参照すると、整流済み正弦波信号902及び整流済み余弦波信号904、並びに方向抽出モジュール704によって抽出されたレゾルバ方向情報は、速度抽出モジュール706に供給される。次に速度抽出モジュール706は、このような信号、並びに回転の方向の決定に関連する情報(例えば第1の論理信号1002及び第2の論理信号1102、1202)を用いて、レゾルバロータ204の回転速度を決定する。
【0065】
最初のステップとして、速度抽出モジュール706は、整流済み正弦波信号902、整流済み余弦波信号904、第1の論理信号1002、及び第2の論理信号(例えば第2の論理信号1102又は第2の論理信号1202)を用いて、符号付き正弦波及び余弦波信号を生成する。速度抽出モジュール706はまず、第1の論理信号1002及び第2の論理信号1102、1202の値に基づいて、「状態(state)」を決定するか又は割り当てる。表1は、第1の論理信号1002及び第2の論理信号1102、1202の特定の値に基づいて割り当てられる「状態」値を示す。
【0066】
【0067】
各状態は、45°の回転(即ち正弦波フィードバック信号400及び余弦波フィードバック信号402のサイクルの1/4)にわたって持続する。従って、状態0、1、2、3の1回の完全なシーケンスは、180°の回転を表す。表1の状態の値は任意に選択され、他の値又は順序を使用することもできる。
【0068】
連続する複数の状態、即ち正回転に関する(0,1,2,3,0,1,2,3)又は負回転に関する(3,2,1,0,3,2,1,0)を通過することにより、速度抽出モジュール706は、正弦波フィードバック信号400及び余弦波フィードバック信号402の第1の180°(即ち前半)と第2の180°(即ち後半)とを区別する、追加の「トグル(toggle)」論理信号を導出する。
【0069】
図13は、ある例示的実装形態による、正回転中の状態信号1302及びトグル信号1304を伴う整流済み正弦波信号902及び整流済み余弦波信号904の一部分を示すグラフ1300である。速度抽出モジュール706は、状態信号1302及びトグル信号1304を用いて、表2に示されているように正弦波及び余弦波信号の乗数を決定する。
【0070】
【表2】
表2:正回転の正弦波及び余弦波の乗数の導出
【0071】
続いて速度抽出モジュール706は、正弦波及び余弦波信号の乗数を用いて、完全な正弦波及び余弦波信号を再構成する。例えば速度抽出モジュール706は、整流済み正弦波信号902及び整流済み余弦波信号904に、表2に基づく適切な正弦波及び余弦波信号の乗数を乗算する。
図14は、ある例示的実装形態による、再構成された符号付き正弦波信号1402及び符号付き余弦波信号1404を示すグラフ1400を示す。
【0072】
一方、負回転の間には、割り当てられた連続する複数の状態はシーケンス(3,2,1,0,3,2,1,0)を通過する。
図15は、ある例示的実装形態による、負回転中の状態信号1502及びトグル信号1504を伴う整流済み正弦波信号902及び整流済み余弦波信号904の一部分を示すグラフ1500である。速度抽出モジュール706は、状態信号1502及びトグル信号1504を用いて、表3に示されているように正弦波及び余弦波信号の乗数を決定する。
【0073】
【表3】
表3:負回転の正弦波及び余弦波の乗数の導出
【0074】
続いて速度抽出モジュール706は、表3の正弦波及び余弦波信号の乗数を用いて、完全な正弦波及び余弦波信号を再構成する。
図16は、ある例示的実装形態による、再構成された符号付き正弦波信号1602及び符号付き余弦波信号1604を示すグラフ1600を示す。
【0075】
特に、
図14、16に示されている再構成された符号付き信号は、正弦波フィードバック信号400及び余弦波フィードバック信号402とパルス整列されておらず、従ってレゾルバロータ204の回転位置の決定には使用できない。しかしながら、導出される速度及び方向は、これらが位相の整列に依存しないため、正確である。
【0076】
複数の例では、速度抽出モジュール706は更に、追跡位相ロックループ(PLL)及びローパスフィルタ(LPF)を含む。この例では、速度抽出モジュール706は、LPFを通して、符号付き正弦波信号1402、1602、及び符号付き余弦波信号1404、1604をフィルタリングするか通過させることにより、これらを平滑化する(即ち信号ノイズを低減する)。LPFブレーク周波数は、例えば、最大レゾルバ回転速度において有意な位相遅延が追加されないように選択できる。説明のための一例として、LPFブレーク周波数は250Hzに設定できる。
【0077】
図17は、ある例示的実装形態による速度抽出モジュール706のLPFの出力信号を示すグラフ1700を示す。特に
図17は、LPFから得られたフィルタリング済み正弦波信号1702及びフィルタリング済み余弦波信号1704を図示している。
【0078】
ある例では、速度抽出モジュール706は、フィルタリング済み正弦波信号1702及びフィルタリング済み余弦波信号1704を、追跡位相ロックループ(PLL)を通して更に処理する。PLLは、レゾルバロータ204の回転速度を示す速度信号を生成するように構成され、ここで上記速度信号の位相は、LPFによって提供された、入力される正弦波及び余弦波信号の位相に関連し、またPLLもまた、上記速度信号を更に平滑化するフィルタリング効果を有する。
【0079】
図18は、ある例示的実装形態による追跡PLL1800のブロック図を示す。PLL1800は、LPFからフィルタリング済み正弦波信号1802及びフィルタリング済み余弦波信号1804を受信する(フィルタリング済み正弦波信号1802及びフィルタリング済み余弦波信号1804は、例えばフィルタリング済み正弦波信号1702及びフィルタリング済み余弦波信号1704を表す)。フィルタリング済み正弦波信号1802には、乗算ブロック1806において、以下で説明するように決定される回転の角度の変化「Δ」の余弦である(CosΔ)が乗算される。フィルタリング済み余弦波信号1804には、乗算ブロック1808において、回転の角度の変化「Δ」の正弦である(SinΔ)が乗算される。
【0080】
差分ブロック1810では、乗算ブロック1808の出力が乗算ブロック1806の出力から減算される。正弦関数及び余弦関数の特性により、差分ブロック1810の出力はSin(θ-Δ)となる。更に、(θ-Δ)の値が小さい場合、Sin(θ-Δ)は(θ-Δ)に略等しい。従って、差分ブロック1810の出力は(θ-Δ)とみなすことができる。差分(θ-Δ)は、エラー信号1812として、比例積分(proportional‐integral:PI)閉ループフィードバックコントローラであるPIコントローラ1814に提供される。
【0081】
エラー信号1812には、乗算ブロック1816において積分ゲインKIが乗算され、乗算ブロック1818において比例ゲインKPが乗算される。乗算ブロック1816の出力は、加算ブロック1820において単位遅延ブロック1822(即ちz-1離散時間演算子)の出力に加算される。単位遅延ブロック1822は、その入力をサンプリング期間(Tcycle)だけ保持して遅延させる。従って単位遅延ブロック1822は、その入力を1回の繰り返しだけ保持して遅延させる。従って、加算ブロック1820の出力は、エラー信号1812の時間での積分に相当する。
【0082】
加算ブロック1820の出力は、飽和ブロック1824に送られる。飽和ブロック1824は出力信号を生成するが、これは、上限及び下限の飽和値までに区切られた入力信号の値である。
【0083】
飽和ブロック1824の出力は、加算ブロック1826において乗算ブロック1818の出力に加算される。加算ブロック1826の出力は、ラジアン/サンプリング期間(rad/Tcycle)を単位とする回転速度である。追跡PLL1800は、この回転速度出力信号を、上限及び下限の飽和値までに区切られた値に制限するための、別の飽和ブロック1828を有することができる。続いて飽和ブロック1828の出力に、乗算ブロック1830においてサンプリング期間Tcycleが乗算されて、ラジアン/秒(rad/s)を単位とするレゾルバロータ204及び電気モータ100の出力軸106の回転速度(Ω)を示す速度信号1831が生成される。
【0084】
飽和ブロック1828の出力は加算ブロック1832にも提供され、そこで、加算ブロック1832の出力を入力とする別の単位遅延ブロック1834の出力に加算される。よって、加算ブロック1832の出力は事実上、rad/Tcycleを単位とする回転速度である飽和ブロック1828の出力の積分である。従って加算ブロック1832の出力は、ラジアンを単位とするレゾルバロータ204及び出力軸106の回転の角度の変化「Δ」である。
【0085】
続いて、角度変化「Δ」は、(SinΔ)及び(CosΔ)をそれぞれ計算するためのSinブロック1836及びCosブロック1838に提供される。上述のように、フィルタリング済み正弦波信号1802には乗算ブロック1806において(CosΔ)が乗算され、フィルタリング済み余弦波信号1804には乗算ブロック1808において(SinΔ)が乗算される。
【0086】
このように、方向抽出モジュール704は、レゾルバロータ204及び電気モータ100の出力軸106の回転の方向を示す情報を生成し、速度抽出モジュール706は、レゾルバロータ204及び電気モータ100の出力軸106の回転速度Ωを示す情報を生成する。センサ信号処理モジュール528はレゾルバ速度モニタ及びレゾルバ方向モニタを更に含み、これらは、方向抽出モジュール704及び速度抽出モジュール706によって出力された上記方向情報及び速度情報を、レゾルバ‐デジタルコンバータ502によって生成された方向及び速度と比較することにより、電気モータ100の方向及び速度を監視して、上記速度情報及び方向情報の精度を保証する。
【0087】
図19は、ある例示的実装形態によるレゾルバ速度モニタ1900のブロック図を示す。差分ブロック1906では、レゾルバ‐デジタルコンバータ502によって生成された速度信号1902が、速度抽出モジュール706によって生成された推定速度である速度信号1831と比較される。差分ブロック1906によって生成された差分の絶対値(absolute value)(即ち差分ブロック1906によって生成された差分の絶対値(modulus)、即ち上記差分の符号を無視した非負の値)が、絶対値ブロック1908において決定される。
【0088】
続いて絶対値ブロック1908の出力信号1909は、絶対値ブロック1908によって生成された差分を差分閾値1907(即ち10%の差分等の所定の差分値)と比較する比較器1910に、入力として提供される。出力信号1909が差分閾値1907を満たす場合(例えば差分閾値1907が差分閾値1907以上である場合)、比較器1910は信号1911(例えばトリガ値1)をタイマーブロック1912に送信し、タイマーを始動させる。出力信号1909が差分閾値1907を満たさない(例えば差分閾値1907未満である)場合、比較器1910は、タイマーを始動させるためにタイマーブロック1912をトリガしない(例えばタイマーブロック1912をトリガしない値0を送信する)。
【0089】
タイマー出力1913はタイマーブロック1912によって、タイマー出力1913を持続時間閾値1917(即ち5ミリ秒といった期間閾値)と比較する比較器1914に提供される。次に比較器1914は、セット信号1915をラッチブロック1916に送信する。
【0090】
出力信号1909の値が差分閾値1907未満に留まる場合、又は出力信号1909が持続時間閾値1917より短い持続時間にわたって差分閾値1907を超えたままとなる(即ち、タイマーが持続時間閾値1917に達する前に出力信号1909が差分閾値1907未満に戻る)場合、セット信号1915は、ある特定の値(例えば値0)を有することができる。セット信号1915のこのような特定の値に応答して、ラッチブロック1916はレゾルバ速度モニタ出力信号1918を出力し、これは、レゾルバ‐デジタルコンバータ502によって出力された速度が正確であり、電気モータ100の制御において信頼できるものであることを示す。
【0091】
一方、出力信号1909の値が、持続時間閾値1917を超える期間にわたって、差分閾値1907を超えたままとなる場合、比較器1914は、異なる値(例えば値1)を有するセット信号1915を送信する。この場合、セット信号1915はラッチブロック1916にレゾルバ速度モニタ出力信号1918を出力させ、これは、レゾルバ‐デジタルコンバータ502によって出力された速度が、電気モータ100の制御において信頼できないものであることを示す。続いてモータコントローラ504は、電気モータ100を、セーフモード又は限定パフォーマンスモードで動作させることができる。速度の何らかの矛盾が解消されると、レゾルバ速度モニタ1900はリセット信号1920によってラッチブロック1916をリセットできる。
【0092】
従って、速度抽出モジュール706によって導出された速度信号1831は、レゾルバ‐デジタルコンバータ502によって提供された速度信号と比較され、これら2つの信号の間の差分が計算される。上記差分が、所定の期間より長い持続時間にわたって、所定の許容可能なレベルを超えている場合、モータコントローラ504を作動させるため(システムのパフォーマンスを低下させる、又は安全な状態で動作させるため)のエラー信号が生成される。
【0093】
更に、センサ信号処理モジュール528は、レゾルバロータ204の回転の方向を監視する。そしてセンサ信号処理モジュール528は、レゾルバ‐デジタルコンバータ502によって決定された方向が信頼できるものであるかどうかを示す信号を提供する。
【0094】
図20は、ある例示的実装形態によるレゾルバ方向モニタ2000のブロック図を示す。レゾルバ‐デジタルコンバータ502によって生成された方向信号は、0又は1の値を有する変換済み方向信号2002に変換される。例えば、正回転の場合に上記値を1とし、負回転の場合に上記値を0とする。同様に、方向抽出モジュール704によって生成された推定方向を示す方向信号も、0又は1の値を有する変換済み方向信号2004に変換される。-1及び1等、他の値を使用することもできる。
【0095】
変換済み方向信号2002、2004は続いて、排他的論理和(XOR)ブロック2006に提供される。XORブロック2006は、レゾルバ‐デジタルコンバータ502からの変換済み方向信号2002が方向抽出モジュール704からの変換済み方向信号2004とは異なる場合にのみ値1を有する出力信号2008を提供するように構成される。両方の信号が一致する場合、XORブロック2006は値0を出力する。よって、レゾルバ‐デジタルコンバータ502及び方向抽出モジュール704の両方によって推定された方向が一致する場合、XORブロック2006は値0を出力し;これらが一致しない場合、XORブロック2006は値1を出力する。
【0096】
XORブロック2006の出力信号2008は、出力信号2008を値0.5(又は0と1との間の他のいずれの閾値)と比較する比較器2010に提供される。出力信号2008が0.5より大きい場合、比較器2010は信号2011(例えばトリガ値1)をタイマーブロック2012に送信し、タイマーを始動させる。出力信号2008が0.5未満である場合、比較器2010は、タイマーを始動させるためにタイマーブロック2012をトリガしない(例えばタイマーブロック2012をトリガしない値0を送信する)。
【0097】
タイマー出力2013はタイマーブロック2012によって、タイマー出力2013を持続時間閾値2017(即ち5ミリ秒といった期間閾値)と比較する比較器2014に提供される。次に比較器2014は、セット信号2015をラッチブロック2016に送信する。
【0098】
出力信号2008の値が0.5未満に留まる場合、又は出力信号2008が持続時間閾値2017より短い持続時間にわたって0.5を超えたままとなる場合、セット信号2015は、ある特定の値(例えば値0)を有することができ、ラッチブロック2016はレゾルバ方向モニタ出力信号2018を出力し、これは、レゾルバ‐デジタルコンバータ502によって出力された方向が正確であり、電気モータ100の制御において信頼できるものであることを示す。
【0099】
一方、出力信号2008の値が、持続時間閾値2017より長い期間にわたって、0.5を超えたままとなる場合、比較器2014は、異なる値(例えば値1)を有するセット信号2015を送信する。この場合、セット信号2015はラッチブロック2016にレゾルバ方向モニタ出力信号2018を出力させ、これは、レゾルバ‐デジタルコンバータ502によって出力された方向が、電気モータ100の制御において信頼できないものであることを示す。続いてモータコントローラ504は、電気モータ100を、セーフモード又は限定パフォーマンスモードで動作させることができる。方向の何らかの矛盾が解消されると、レゾルバ方向モニタ2000はリセット信号2020によってラッチブロック2016をリセットできる。
【0100】
従って、方向抽出モジュール704によって導出されたレゾルバ方向信号は、レゾルバ‐デジタルコンバータ502によって提供された方向信号と比較される。これら2つの方向信号が、所定の期間より長い持続時間にわたって、一致しない場合、モータコントローラ504を作動させるため(システムのパフォーマンスを低下させる、又は安全な状態で動作させるため)のエラー信号が生成される。
【0101】
複数の例では、速度信号及び方向信号の監視に加えて、又はその代わりに、モータコントローラ504、及び特にセンサ信号処理モジュール528は、信号の完全性を評価するための異なる信号処理のステージにおいて、信号完全性チェック動作を実施できる。用語「完全性(integrity)」は、本明細書では、信号を信頼できるものにする信号の品質の尺度を示すために使用される。いずれかの信号完全性チェックが不合格であった場合、モータコントローラ504を作動させるため(システムのパフォーマンスを低下させる、又は安全な状態で動作させるため)のエラー信号が生成される。
【0102】
図7を再び参照すると、最初の3つの信号完全性チェックは、正弦波データバッファ512及び余弦波データバッファ514の生の正弦波及び余弦波バッファデータに対して実施できる。4つ目の信号完全性チェックは、振幅抽出モジュール702によって出力される信号に対して実施され、5つ目の信号完全性チェックは、方向抽出モジュール704によって出力される信号に対して実施される。
【0103】
特に、第1のチェックは、正弦波フィードバック信号400及び余弦波フィードバック信号402(即ちレゾルバ被変調正弦波及び余弦波信)がバッファデータの複数のウィンドウ間で変化していることを保証することを目的とする。例えば、センサ信号処理モジュール528は、以下が満たされているかどうかをチェックする:
【0104】
【0105】
【0106】
【0107】
である場合、sin(x)又はcos(x)は、データバッファ内のx番目のデータ要素を表し、(n)は現在のデータバッファを表し、(n-1)は1つ前のデータバッファを表し、(n-2)は1つ前のデータバッファより1つ前のデータバッファを表し、Buffer_Lengthはデータバッファの長さ(例えば32、64、又は128要素)を表す。例えば、正弦波データバッファ512及び余弦波データバッファ514のバッファ長が32サンプルである場合、x=9、及びy=25となる。他の例では、センサ信号処理モジュール528は、バッファ長の1/4及び3/4だけでなく1/2においても、これらのチェックを実施できる。
【0108】
よって、センサ信号処理モジュール528は、所与の正弦波データバッファ又は余弦波データバッファ内の特定のサンプル位置における正弦及び余弦の値(即ち特定のデータ点)が、前の2つのデータバッファにおける各データ点に比べて変化したかどうかをチェックする。上記値の変化は、信号が信頼できるものでありかつ現実的なものであり得るため、この第1のチェックに合格するものであることを示す。
【0109】
第2のチェックは、正弦波フィードバック信号400及び余弦波フィードバック信号402(即ちレゾルバ被変調正弦波及び余弦波信号)が許容最大値又は最小値を超えないことを保証することを目的とする。例えばセンサ信号処理モジュール528は、正弦波フィードバック信号400の最大正弦値「MaxSin」を識別して正弦波データバッファ512から抽出でき、また正弦波フィードバック信号400の最小正弦値「MinSin」も識別して抽出できる。続いてセンサ信号処理モジュール528は、MaxSin及びMinSinの大きさが振幅閾値(例えば許容値)AMPLMax未満である、即ち:
【0110】
【0111】
であるかどうかをチェックする。チェックが合格である場合、正弦波フィードバック信号400は信頼できるものとなる。
【0112】
同様に、センサ信号処理モジュール528は、余弦波フィードバック信号402の最大余弦値「MaxCos」を識別して余弦波データバッファ514から抽出でき、また余弦波フィードバック信号402の最小余弦値「MinCos」も識別して抽出できる。続いてセンサ信号処理モジュール528は、MaxCos及びMinCosの大きさが振幅閾値AMPLMax未満である、即ち:
【0113】
【0114】
であるかどうかをチェックする。チェックが合格である場合、余弦波フィードバック信号402は信頼できるものとなる。
【0115】
第3のチェックは、正弦波フィードバック信号400及び余弦波フィードバック信号402(即ちレゾルバ被変調正弦波及び余弦波信号)が許容オフセットを超えないことを保証することを目的とする。例えばセンサ信号処理モジュール528は、最大正弦波及び余弦波データ値と最小正弦波及び余弦波データ値との間の差の大きさが最大許容値DCMax未満である、即ち:
【0116】
【0117】
センサ信号処理モジュール528は、正弦波及び余弦波振幅信号が振幅抽出モジュール702において抽出された後で、第4の信号完全性チェックを実施する。換言すれば、センサ信号処理モジュール528は、(励磁搬送周波数を除いた)整流済み正弦波信号902及び整流済み余弦波信号904に対して第4の信号完全性チェックを実施する。
【0118】
第4の信号完全性チェックでは、センサ信号処理モジュール528は、整流済み正弦波信号902及び整流済み余弦波信号904のベクトルの大きさが限界値以内に留まる、即ち:
【0119】
【0120】
よって、センサ信号処理モジュール528は、整流済み正弦波信号902及び整流済み余弦波信号904の二乗の和を決定し、この二乗の和が許容最大値と許容最小値との間に制限されていることを保証するためのチェックを実施する。
図21は、ある例示的実装形態による、特定の上限2104と下限2106との間に留まる整流済み正弦波信号902及び整流済み余弦波信号904の二乗の和2102を示すグラフ2100を示す。これは、信号が信頼できるものであることを示す。和2102が上限2104と下限2106との間に留まっていない場合、この第4のチェックは不合格となる。
【0121】
センサ信号処理モジュール528は、正弦波及び余弦波方向(再構成された、整流されていない)信号が方向抽出モジュール704において抽出された後で、第5の信号完全性チェックを実施する。換言すれば、センサ信号処理モジュール528は、符号付き正弦波信号1402及び符号付き余弦波信号1404に対して第5の信号完全性チェックを実施する。
【0122】
第5の信号完全性チェックでは、センサ信号処理モジュール528は、符号付き正弦波信号1402及び符号付き余弦波信号1404のベクトルの大きさが最大値及び最小値若しくは限界値以内に留まる、又はこれらの間に制限される、即ち:
【0123】
【0124】
よって、センサ信号処理モジュール528は、符号付き正弦波信号1402及び符号付き余弦波信号1404の二乗の和を決定し、この二乗の和が最大値と最小値との間にあることを保証するためのチェックを実施する。
図22は、ある例示的実装形態による、特定の上限2204と下限2206との間に留まる符号付き正弦波信号1402及び符号付き余弦波信号1404の二乗の和2202を示すグラフ2200を示す。これは、信号が信頼できるものであることを示す。和2202が上限2204と下限2206との間に留まっていない場合、この第5のチェックは不合格となる。
【0125】
図5を再び参照すると、モータコントローラ504は更に、センサ信号処理モジュール528と通信するモータ制御モジュール530を含む。複数の例では、モータ制御モジュール530は、第1の処理コア510若しくは第2の処理コア526に含まれたものであってよく、又は別個のモジュールとして含まれていてもよい。
【0126】
モータ制御モジュール530は、インバータを含むことができる。例えば上記インバータは、プリント回路基板(printed circuit board:PCB)として構成できる。PCBは、電子部品(例えばマイクロプロセッサ、集積チップ、キャパシタ、抵抗等)を機械的に支持し、また、非導電性基板上の及び/又は非導電性基板の間の1つ以上の銅積層体のシート層にエッチングされた、導電性トラック、パッド、及び他の特徴部分を介して、これらを電気的に接続する。部品は一般的には、PCBへの電気的接続及び機械的固定のために、PCBにはんだ付けされる。
【0127】
上記インバータは複数のバスバーを含むことができ、これらのバスバーは導電性であり、また、
図1に示されている電気モータコネクタ104にケーブルを介して接続された直流(DC)電力を受け取るように構成される。続いてこのDC電力は、上記インバータに取り付けられた部品に供給される。
【0128】
一例として、DC電力は、バッテリから上記インバータに供給できる。この構成では、DC電力は上記バスバーに供給され、次に上記バスバーが上記インバータの他の部品に電力を伝達する。
【0129】
上記インバータは、上記インバータで受け取ったDC電力を3相交流(AC)電力に変換する、電力コンバータとして構成でき、この3相交流(AC)電力を電気モータ100のステータのワイヤ巻線に供給して、電気モータ100を駆動できる。例えば上記インバータは、上記インバータに取り付けられ、正のDC端子及び負のDC端子に電気的に接続されるように構成された、半導体切替マトリクスを含むことができる。
【0130】
上記半導体切替マトリクスは、DCから3相電力への変換をサポートする、いずれの構成の半導体切替デバイスを含むことができる。例えば上記半導体切替マトリクスは、ブリッジ素子を有する3相を含むことができ、上記ブリッジ素子は、入力DC端子に電気的に結合され、また3相AC出力端子に接続される。
【0131】
ある例では、上記半導体切替マトリクスは、複数のトランジスタ(例えば絶縁ゲートバイポーラトランジスタ、又は金属酸化物半導体電界効果トランジスタ)を含む。上記トランジスタは、例えばモータコントローラ504のマイクロプロセッサによって提供されるパルス幅変調(pulse width modulated:PWM)信号によって、アクティブ又は「オン」状態と非アクティブ又は「オフ」状態との間で切替可能である。
【0132】
上記半導体切替マトリクスの上記トランジスタは、PWM信号によって、特定の時点でアクティブ化及び非アクティブ化されるため、AC電圧波形がAC出力端子で生成される。従って、AC出力端子における電圧波形はパルス幅変調されており、電位DC+と電位DC-との間でスイングする。次にこのAC電圧波形がステータのワイヤ巻線に供給されて、電気モータ100を駆動する。
【0133】
センサ信号処理モジュール528は、レゾルバ‐デジタルコンバータ502によって生成された速度及び方向信号が信頼できるものであるかどうか、従って電気モータ100を通常動作モードで動作させるべきかどうかを示す情報を、モータ制御モジュール530に提供するように構成される。例えば、レゾルバ速度モニタ1900及びレゾルバ方向モニタ2000の出力によって、レゾルバ‐デジタルコンバータ502からの信号が信頼できるものであること、及び/又は上記信号が上述の5つの信号完全性チェック全てに合格していることが示されている場合、センサ信号処理モジュール528はモータ制御モジュール530に、通常の動作を行うように指示する。通常の動作の実施は、電気モータ100の速度及びトルクを、レゾルバ‐デジタルコンバータ502によって提供された位置、速度、及び方向信号を用いて制御するために、閉ループフィードバックループを実装することを含む。
【0134】
そうでない場合(即ち、レゾルバ速度モニタ1900及びレゾルバ方向モニタ2000の出力によって、レゾルバ‐デジタルコンバータ502からの信号が信頼できるものではないこと、又は信号チェックのうちのいずれかが不合格であることが示されている場合)、センサ信号処理モジュール528はモータ制御モジュール530に、セーフモード又は低パフォーマンスモードでの動作を行うように指示する。セーフモード又は低パフォーマンスモードでは、モータ制御モジュール530は、レゾルバ200に対抗するシステム内の他の速度センサに依存してよく、電気モータ100によって提供される速度及びトルクを制限することによって、システムを安全に動作させ、またシステムを安全な状態に置くことができる、例えば油圧機械の器具を地上の安全な位置に位置決めできる、又は機械の車両を停止させることができるようにすることができる。ある例では、電気モータ100をセーフモードで動作させることは、システムの安全を確保するために電気モータ100を停止させることを含む。別の例では、セーフモードで動作させることは、電気モータ100を、ゼロトルクを発生させながら惰行状態で動作させることを含んでよい。別の例では、セーフモードで動作させることは、電気モータ100を、独立したモータ速度センサに基づいて動作させることを含んでよく、電気モータ100に、事前に定義された速度限界よりも低いパフォーマンスレベルで動作するように命令できる。
【0135】
制御システム500の部品は、互いに、及び/又は各システムに結合された他の部品と、相互接続されて機能するように構成されていてよい。本明細書に記載の制御システム500の動作又は部品のうちの1つ以上は、追加の動作要素若しくは物理的部品へと分割することも、又は組み合わせて更に少数の動作要素若しくは物理的部品とすることもできる。更なるいくつかの例では、更なる動作要素及び/又は物理的部品を制御システム500に追加してもよい。また更に、制御システム500の部品又はモジュールのうちのいずれは、本明細書に記載の論理動作を実装するための1つ以上の命令を含むプログラムを実行するよう構成されたプロセッサ(例えばマイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ等)を含んでよく、又はプロセッサの形態で提供されてもよい。制御システム500は更に、1つ以上のプロセッサによって実行されたときに制御システム500に上述の動作を実施させるプログラムコードを記憶するための、例えばディスク又はハードドライブを含む記憶デバイスといったいずれのタイプのコンピュータ可読媒体(非一時的媒体)又はメモリを含んでよい。ある例では、制御システム500は他のシステム内に含まれていてもよい。
【0136】
図23は、ある例示的実装形態による計算デバイス2300を例示するブロック図を示す。計算デバイス2300は例えば、レゾルバ‐デジタルコンバータ502、搬送周波数生成器506、モータコントローラ504、第1の処理コア510、第2の処理コア526、モータ制御モジュール530等といった上述のコントローラ又はデバイスのうちのいずれかを表す。
【0137】
計算デバイス2300は:プロセッサ2302;プロセッサ2302によって実行できる、実行可能な命令2305を記憶した、データストレージ又はメモリ2304;通信インタフェース2306;及び入出力インタフェース2308を含み、これらは全て、バス2310又は類似の機構によって結合できる。いくつかの実施形態では、計算デバイス2300は、他の部品及び/又は周辺デバイス(例えば着脱式ストレージ等)を含んでよい。
【0138】
プロセッサ2302は、中央演算処理装置(CPU)、コプロセッサ(例えば数学、グラフィックス、若しくは暗号化コプロセッサ)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、ネットワークプロセッサ、及び/又はプロセッサの動作を実施する形態の集積回路若しくはコントローラといった、いずれのタイプのコンピュータ処理要素のうちの1つ以上であってよい。いくつかの場合においては、プロセッサ2302は1つ以上のシングルコアプロセッサであってよい。他の場合においては、プロセッサ2302は、複数の独立した処理ユニット(例えば第1の処理コア510及び第2の処理コア526)を伴う、1つ以上のマルチコアプロセッサであってよい。プロセッサ2302は、実行中の命令及び関連データを一時的に記憶するためのレジスタメモリ、並びに最近使用された命令及びデータを一時的に記憶するためのキャッシュメモリも含んでいてよい。
【0139】
メモリ2304は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、並びに不揮発性メモリ(例えばフラッシュメモリ、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ、コンパクトディスク(CD)、デジタルビデオディスク(DVD)、及び/又はテープ型ストレージ)を含むがこれらに限定されない、いずれの形態の、コンピュータが使用できるメモリであってよい。よってメモリ2304は、メインメモリユニットと長期ストレージとの両方を表す。
【0140】
メモリ2304は、実行可能な命令2305と、データであって、その上で実行可能な命令2305を動作させることができる、データとを記憶する。例えばメモリ2304は実行可能な命令2305を非一時的コンピュータ可読媒体に記憶でき、これにより、プロセッサ2302は、本明細書又は添付の図面で開示されている方法、プロセス、又は動作のいずれかを実施するために上記命令を実行できる。メモリ2304は、計算デバイス2300のオペレーティングシステム、並びに様々なソフトウェアモジュール、ファームウェア、及びアプリケーションも含むことができる。
【0141】
通信インタフェース2306は、計算デバイス2300を様々なネットワーク(例えばインターネット、CANネットワーク、独自のネットワーク等)と通信させることができる。通信インタフェース2306は、イーサネット(例えばファストイーサネット、ギガビットイーサネット等)等の1つ以上の有線インタフェースの形態を取ってよい。通信インタフェース2306はまた、同軸ケーブル若しくは電力線といった1つ以上の非イーサネット媒体を介した、又は同期光ネットワーキング(Synchronous Optical Networking:SONET)若しくはデジタル加入者線(digital subscriber line:DSL)技術といった広域媒体を介した、通信をサポートするものであってもよい。通信インタフェース2306は更に、IEEE802.11(Wi‐Fi)、BLUETOOTH(登録商標)、全地球測位システム(global positioning system:GPS)、又はより広域の無線インタフェースといった、1つ以上の無線インタフェースの形態を取ってよい。しかしながら、他の形態の物理レイヤーインタフェース、及び他のタイプの標準的な又は独自の通信プロトコルを、通信インタフェース2306上で使用してよい。更に通信インタフェース2306は、複数の物理インタフェースを備えてよい。例えば、計算デバイス2300のいくつかの実装形態は、イーサネット、BLUETOOTH(登録商標)、及びWi‐Fiインタフェースを含んでよい。
【0142】
入出力インタフェース2308は、ユーザ及び周辺デバイスと計算デバイス2300との対話を容易にすることができる。入出力インタフェース2308は、キーボード、マウス、タッチスクリーン等の、1つ以上のタイプの入力デバイスを含んでよい。同様に入出力インタフェース2308は、スクリーン、モニタ、プリンタ、及び/又は1つ以上の発光ダイオード(light emitting diode:LED)といった、1つ以上のタイプの出力デバイスを含んでよい。更に、又はあるいは、計算デバイス2300は、例えばユニバーサルシリアルバス(universal serial bus:USB)又は高精細度マルチメディアインタフェース(high‐definition multimedia interface:HDMI)ポートインタフェースを用いて、他のデバイスと通信してよい。
【0143】
図24は、ある例示的実装形態による、電気モータを動作させるための方法2400のフローチャートである。方法2400を、例えば制御システム500によって(例えばモータコントローラ504によって)実施することによって、電気モータ100を制御できる。
【0144】
方法2400は、ブロック2402~2414のうちの1つ以上によって示されているような、1つ以上の動作又はアクションを含んでよい。これらのブロックは順番に図示されているが、これらのブロックはいくつかの例では並行して、及び/又は本明細書に記載されているものとは異なる順序で、実施される場合もある。また、所望の実装形態に基づいて、様々なブロックを組み合わせてより少数のブロックにする、更なる複数のブロックに分割する、及び/又は削除することもできる。
【0145】
更に、方法2400、並びに本明細書で開示される他のプロセス及び動作に関して、フローチャートは本発明の実施例のうちの、可能性のある1つの実装形態の動作を示す。これに関して、各ブロックは、プロセス内の特定の論理動作又はステップを実装するためにプロセッサ(例えばモータコントローラ504の処理コア)によって実行可能な1つ以上の命令を含む、モジュール、セグメント、又はプログラムコードの一部分を表すことができる。プログラムコードは、いずれのタイプのコンピュータ可読媒体又はメモリ、例えばディスク又はハードドライブを含む記憶デバイス等に記憶できる。コンピュータ可読媒体は、例えばレジスタメモリ、プロセッサキャッシュ、及びランダムアクセスメモリ(RAM)のような、データを短期間記憶するコンピュータ可読媒体といった、非一時的コンピュータ可読媒体又はメモリを含んでよい。コンピュータ可読媒体は、例えば読み出し専用メモリ(ROM)、光学又は磁気ディスク、コンパクトディスク読み出し専用メモリ(CD‐ROM)のような二次又は永続的長期ストレージといった、非一時的媒体又はメモリを含んでもよい。コンピュータ可読媒体は、他のいずれの揮発性又は不揮発性記憶システムであってもよい。コンピュータ可読媒体は、例えばコンピュータ可読記憶媒体、有形記憶装置、又は他の製造品と考えることができる。更に、方法2400、並びに本明細書で開示される他のプロセス及び動作に関して、
図24の1つ以上のブロックは、プロセス内の特定の論理動作を実施するように配設された回路構成又はデジタル論理を表す場合もある。
【0146】
ブロック2402では、方法2400は、モータコントローラ(例えばモータコントローラ504)において、正弦波フィードバック信号(例えば正弦波フィードバック信号400)及び余弦波フィードバック信号(例えば余弦波フィードバック信号402)を、電気モータ(例えば電気モータ100)の出力軸(例えば出力軸106)に結合されたレゾルバ(例えばレゾルバ200)から受信するステップを含み、ここで上記正弦波フィードバック信号及び上記余弦波フィードバック信号は、上記レゾルバに提供される励磁信号(例えば励磁信号308)を変調する。この例について、搬送周波数生成器506は、SPI508を介してレゾルバ‐デジタルコンバータ502に搬送周波数を提供でき、レゾルバ‐デジタルコンバータ502はこの搬送周波数を有する励磁信号308を生成する。
【0147】
ブロック2404では、方法2400は、上記正弦波フィードバック信号及び上記余弦波フィードバック信号を、上記励磁信号の各周波数より低い周波数(例えば上記搬送周波数より少なくとも1.6倍低い周波数)でサンプリングすることによって、整流済み正弦波信号(例えば整流済み正弦波信号902)及び整流済み余弦波信号(例えば整流済み余弦波信号904)を生成するステップを含む。例えば上記モータコントローラは、上記正弦波フィードバック信号及び上記余弦波フィードバック信号から、上記励磁信号(例えば励磁信号308)の各周波数より低い周波数でサンプリングされたデータ点を有する正弦波データバッファ(例えば正弦波データバッファ512)及び余弦波データバッファ(例えば余弦波データバッファ514)を生成でき、ここで、上記整流済み正弦波信号及び上記整流済み余弦波信号を生成する上記ステップは、上記正弦波データバッファ及び上記余弦波データバッファに基づくものである(
図5~6を参照)。
【0148】
ある例では、
図5に関して既に説明されているように、上記正弦波データバッファ及び上記余弦波データバッファを生成する上記ステップは:それぞれのアナログ/デジタルコンバータ(例えば正弦波ADC516及び余弦波ADC520)を用いて、上記正弦波フィードバック信号及び上記余弦波フィードバック信号をそれぞれの離散値に変換するステップ;並びに上記ADCの各出力を、上記励磁信号の各周波数より低い周波数で、(例えば正弦波フィルタ518及び余弦波フィルタ522を用いて)フィルタリングするステップを含むことができる。
【0149】
更に、上記整流済み正弦波信号及び上記整流済み余弦波信号を生成する上記ステップは、上記整流済み正弦波信号及び上記整流済み余弦波信号の振幅が、上記正弦波フィードバック信号及び上記余弦波フィードバック信号それぞれの振幅に比例するようなものである。例えば、
図7~9に関して既に説明されているように、振幅抽出モジュール702は、各データバッファ内の正又は負の半サイクルを識別し、及び上記正又は負の半サイクルを構成するデータ点の絶対値を合計する。
【0150】
ブロック2406では、方法2400は、上記モータコントローラによって、上記正弦波フィードバック信号、上記余弦波フィードバック信号、上記整流済み正弦波信号、及び上記整流済み余弦波信号を用いて、上記出力軸の回転の方向を決定するステップを含む。例えば、方向抽出モジュール704は、上記整流済み余弦波信号が上記整流済み正弦波信号を超えるとき、及び上記整流済み正弦波信号が上記整流済み余弦波信号を超えるときを示す第1の論理信号(例えば
図10の第1の論理信号1002)を生成し、また、上記正弦波フィードバック信号と上余弦波フィードバック信号との積が正であるとき、及び上記積が負であるときを示す第2の論理信号(例えば
図11~12の第2の論理信号1102、1202)を生成し、ここで、上記電気モータの上記出力軸の上記回転の方向を決定する上記ステップは、上記第1の論理信号及び上記第2の論理信号に基づくものである。例えば、方向抽出モジュール704は上述のように、上記第2の論理信号の値又はレベルと、上記第1の論理信号の信号エッジとに基づいて、上記回転の方向を決定する。
【0151】
ブロック2408では、方法2400は、上記回転の方向を決定する上記ステップに関連する情報を用いて(例えば第1の論理信号1002及び第2の論理信号1102、1202を用いて)、上記整流済み正弦波信号及び上記整流済み余弦波信号を、それぞれ符号付き正弦波信号(例えば符号付き正弦波信号1402、1602)及び符号付き余弦波信号(例えば符号付き余弦波信号1404、1604)に変換するステップを含む。例えば速度抽出モジュール706は:(i)上記第1の論理信号及び上記第2の論理信号に対応する状態信号(例えば
図13の状態信号1302、1502;上の表1を参照)を生成し;(ii)上記正弦波フィードバック信号及び上記余弦波フィードバック信号の最初の180°(即ち最初の半回転)と2つ目の180°(即ち2つ目の半回転)とを区別する、トグル信号(例えばトグル信号1304、1504)を生成し;(iii)上記状態信号及び上記トグル信号に基づいて、余弦波の乗数及び正弦波の乗数(上の表2~3を参照)を決定し、ここで、上記整流済み正弦波信号及び上記整流済み余弦波信号を上記符号付き正弦波信号及び上記符号付き余弦波信号に変換する上記ステップは、上記余弦波の乗数及び上記正弦波の乗数に基づくものである(
図14、16を参照)。
【0152】
ブロック2410では、方法2400は、上記モータコントローラによって、上記符号付き正弦波信号及び上記符号付き余弦波信号を用いて上記出力軸の回転の速度を決定するステップを含む。例えば速度抽出モジュール706は、上記符号付き正弦波信号及び上記符号付き余弦波信号を、ローパスフィルタを通してフィルタリングして、フィルタリング済み正弦波信号1702及びフィルタリング済み余弦波信号1704を生成する(
図17を参照)。ある例では、速度抽出モジュール706は続いて、上記フィルタリング済み正弦波信号及び上記フィルタリング済み余弦波信号を、追跡位相ロックループ(例えば追跡PLL1800)を通して処理することにより、速度信号1831を生成する。
【0153】
ブロック2412では、方法2400は、上記モータコントローラによって決定された上記回転の方向及び速度を、レゾルバ‐デジタルコンバータ(例えばレゾルバ‐デジタルコンバータ502)によって上記正弦波フィードバック信号及び上記余弦波フィードバック信号を用いて決定された各方向及び各速度と比較するステップを含む。例えば、レゾルバ速度モニタ1900に関して既に説明されているように、センサ信号処理モジュール528は、上記モータコントローラによって決定された上記速度と、上記レゾルバ‐デジタルコンバータによって決定された各上記速度との間の、差分の大きさを決定する。また、レゾルバ方向モニタ2000に関して既に説明されているように、センサ信号処理モジュール528は、上記モータコントローラによって決定された上記回転の方向と、上記レゾルバ‐デジタルコンバータによって決定された各上記回転の方向とを比較して、これらが同一であるかそうでないかを決定する。
【0154】
ブロック2414では、方法2400は、上記モータコントローラによって、上記比較するステップに基づいて上記電気モータを動作させるステップを含む。例えば、
図19に関して既に説明されているように、速度の上記差分が差分閾値1907未満である場合、又は上記差分が持続時間閾値1917未満の期間にわたって差分閾値1907を超える場合、レゾルバ速度モニタ1900は、(例えば上記電気モータの動作時に上記レゾルバ‐デジタルコンバータによって決定される回転の速度及び方向に応じて)上記電気モータを通常の動作モードで動作させる指示を提供する。上記差分が持続時間閾値1917より長く差分閾値1907を超える場合、レゾルバ速度モニタ1900は、上記電気モータを安全動作モード(例えば低パフォーマンスモード)で動作させる指示を提供する。
【0155】
同様に、方向に関しては、
図20に関して既に説明されているように、上記モータコントローラによって決定された回転の方向が、上記レゾルバ‐デジタルコンバータによって決定された各回転の方向と同一である場合、又は上記モータコントローラによって決定された回転の方向が、持続時間閾値2017未満の期間にわたって、上記レゾルバ‐デジタルコンバータによって決定された各回転の方向と異なっている場合、レゾルバ方向モニタ2000は上記電気モータを通常の動作モードで動作させる指示を提供する。上記モータコントローラによって決定された回転の方向が、持続時間閾値2017より長い時間にわたって、上記レゾルバ‐デジタルコンバータによって決定された各回転の方向と異なる場合、レゾルバ方向モニタ2000は、上記電気モータを安全動作モードで動作させる指示を提供する。
【0156】
上記方法本明細書全体を通して説明されているような、方法2400によって実行及び実施できる更なる動作を含むことができる。一例として、上記方法は、上述の5つの信号完全性チェックを実施するステップを更に含むことができる。信号チェックが不合格であった場合、センサ信号処理モジュール528は、モータ制御モジュール530に、セーフモード又は低パフォーマンスモードで動作するように指示する。
【0157】
以上の詳細な説明は、添付の図面を参照して、本開示のシステムの様々な特徴及び動作を説明している。本明細書に記載の例示的実装形態は、限定を意味するものではない。本開示の複数の特定の態様を、多様な異なる構成で配置して組み合わせることができ、その全てが本明細書で企図されている。
【0158】
更に、文脈によってそうでないことが示唆されていない限り、各図に図示された特徴を互いに組み合わせて使用してもよい。従って、これらの図は一般に、図示されている全ての特徴が各実装形態に必要であるわけではないことを理解した上で、1つ以上の全体的な実装形態の構成要素の複数の態様として見るべきものである。
【0159】
更に、本明細書又は特許請求の範囲における要素、ブロック、又はステップの列挙は、分かりやすさを目的としたものである。よってこのような列挙は、これらの要素、ブロック、又はステップが特定の配置に従うこと又はある特定の順序で実施されることを要求又は暗示するものとして理解してはならない。
【0160】
更に、デバイス又はシステムは、図に提示されている機能を実施するために使用されるものであっても、又は図に提示されている機能を実施するように構成されていてもよい。いくつかの例では、デバイス及び/又はシステムの構成要素は、(ハードウェア及び/又はソフトウェアを用いて)これらの構成要素が実際にそのようなパフォーマンスを実現するための構成及び構造を有するように、構成されていてもよい。他の例では、デバイス及び/又はシステムの構成要素は、例えばある特定の様式で動作する際に、該機能を実施するように適合される、該機能を実施できる、又は該機能の実施に適したものとなるように、配置されていてもよい。
【0161】
用語「略、実質的に(substantially)」は、記載されている特性、パラメータ、又は値が必ずしも正確に達成されなくてよく、例えば公差、測定誤差、測定精度の限界、及び当業者に公知の他の因子を含む偏差又はばらつきが、上記特性が提供することを意図している効果を妨げないような量で発生し得ることを意味している。
【0162】
本明細書に記載の配置は、例示のみを目的としたものである。従って当業者は、他の配置並びに他の要素(例えば機械、インタフェース、動作、順序、及び動作のグループ化等)を代わりに使用でき、所望の結果に応じて一部の要素を完全に省略してもよいことを理解するだろう。更に、記載されている要素の多くは、別個の若しくは分散された構成要素として、又は他の構成要素といずれの好適な組み合わせ及び場所で組み合わせて実装され得る、機能的エンティティである。
【0163】
様々な態様及び実装形態が本明細書で開示されているが、他の態様及び実装形態が当業者には明らかであろう。本明細書で開示されている様々な態様及び実装形態は例示を目的としたものであり、限定を意図したものではなく、その真の範囲は、以下の特許請求の範囲と、このような特許請求の範囲が権利を有する均等物の全範囲とによって示される。また、本明細書で使用されている用語は、特定の実装形態の説明のみを目的としたものであり、限定を意図したものではない。
【0164】
よって、本開示の実施形態は、以下に列挙される番号付き例示的実施形態(enumerated example embodiment:EEE)のうちの1つに関連することができる。
【0165】
EEE1は:モータコントローラにおいて、電気モータの出力軸に結合されたレゾルバから正弦波フィードバック信号及び余弦波フィードバック信号を受信するステップであって、上記正弦波フィードバック信号及び上記余弦波フィードバック信号は、上記レゾルバに提供される励磁信号を変調する、ステップ;上記正弦波フィードバック信号及び上記余弦波フィードバック信号を、上記励磁信号の各周波数より低い周波数でサンプリングすることによって、整流済み正弦波信号及び整流済み余弦波信号を生成するステップ;上記モータコントローラによって、上記正弦波フィードバック信号、上記余弦波フィードバック信号、上記整流済み正弦波信号、及び上記整流済み余弦波信号を用いて、上記出力軸の回転の方向を決定するステップ;上記回転の方向を決定する上記ステップに関連する情報を用いて、上記整流済み正弦波信号及び上記整流済み余弦波信号を、それぞれ符号付き正弦波信号及び符号付き余弦波信号に変換するステップ;上記モータコントローラによって、上記符号付き正弦波信号及び上記符号付き余弦波信号を用いて、上記出力軸の回転の速度を決定するステップ;上記モータコントローラによって決定された上記回転の方向及び上記回転の速度を、上記正弦波フィードバック信号及び上記余弦波フィードバック信号を用いてレゾルバ‐デジタルコンバータによって決定された各方向及び各速度と比較するステップ;並びに上記比較するステップに基づいて、上記モータコントローラによって上記電気モータを動作させるステップを含む、方法である。
【0166】
EEE2は:上記正弦波フィードバック信号及び上記余弦波フィードバック信号から、上記励磁信号の各周波数より低い周波数でサンプリングされたデータ点を有する正弦波データバッファ及び余弦波データバッファを生成するステップを更に含み、ここで、上記整流済み正弦波信号及び上記整流済み余弦波信号を生成する上記ステップは、上記正弦波データバッファ及び上記余弦波データバッファに基づくものである、EEE1に記載の方法である。
【0167】
EEE3は、上記正弦波データバッファ及び上記余弦波データバッファを生成する上記ステップが:それぞれのアナログ/デジタルコンバータ(ADC)を用いて、上記正弦波フィードバック信号及び上記余弦波フィードバック信号をそれぞれの離散値に変換するステップ;並びに上記ADCの各出力を、上記励磁信号の各周波数より低い周波数でフィルタリングするステップを含む、EEE2に記載の方法である。
【0168】
EEE4は、上記整流済み正弦波信号及び上記整流済み余弦波信号を生成する上記ステップが、上記整流済み正弦波信号及び上記整流済み余弦波信号の振幅が上記正弦波フィードバック信号及び上記余弦波フィードバック信号それぞれの振幅に比例するようなものである、EEE2又は3に記載の方法である。
【0169】
EEE5は、上記整流済み正弦波信号及び上記整流済み余弦波信号の振幅が上記正弦波フィードバック信号及び上記余弦波フィードバック信号それぞれの振幅に比例するように、上記整流済み正弦波信号及び上記整流済み余弦波信号を生成する上記ステップが:各データバッファ内の正又は負の半サイクルのうち最初に発生するものを識別するステップ;及び上記正又は負の半サイクルを構成するデータ点の絶対値を合計するステップを含む、EEE4に記載の方法である。
【0170】
EEE6は、上記電気モータの上記出力軸の上記回転の方向を決定する上記ステップが:上記整流済み余弦波信号が上記整流済み正弦波信号を超えるとき、及び上記整流済み正弦波信号が上記整流済み余弦波信号を超えるときを示す第1の論理信号を生成するステップ;並びに上記正弦波フィードバック信号と上余弦波フィードバック信号との積が正であるとき、及び上記積が負であるときを示す第2の論理信号を生成するステップを含み、ここで、上記電気モータの上記出力軸の上記回転の方向を決定する上記ステップは、上記第1の論理信号及び上記第2の論理信号に基づくものである、EEE1~5のいずれか1つに記載の方法である。
【0171】
EEE7は、上記回転の方向を決定する上記ステップに関連する情報を用いて、上記整流済み正弦波信号及び上記整流済み余弦波信号を、それぞれ上記符号付き正弦波信号及び上記符号付き余弦波信号に変換する上記ステップが:上記第1の論理信号及び上記第2の論理信号に対応する状態信号を生成するステップ;上記正弦波フィードバック信号及び上記余弦波フィードバック信号の最初の180°と2つ目の180°とを区別するトグル信号を生成するステップ;並びに上記状態信号及び上記トグル信号に基づいて、余弦波の乗数及び正弦波の乗数を決定するステップを含み、ここで、上記整流済み正弦波信号及び上記整流済み余弦波信号を上記符号付き正弦波信号及び上記符号付き余弦波信号に変換する上記ステップは、上記余弦波の乗数及び上記正弦波の乗数に基づくものである、EEE6に記載の方法である。
【0172】
EEE8は、上記出力軸の回転の速度を決定する上記ステップが:上記符号付き正弦波信号及び上記符号付き余弦波信号を、ローパスフィルタを通してフィルタリングして、フィルタリング済み正弦波信号及びフィルタリング済み余弦波信号を生成するステップを含む、EEE1~7のいずれか1つに記載の方法である。
【0173】
EEE9は、上記出力軸の上記回転の速度を決定する上記ステップが:上記フィルタリング済み正弦波信号及び上記フィルタリング済み余弦波信号を、追跡位相ロックループを通して処理するステップを更に含む、EEE8に記載の方法である。
【0174】
EEE10は、上記モータコントローラによって決定された上記出力軸の上記回転の速度を、上記レゾルバ‐デジタルコンバータによって決定された各上記速度と比較する上記ステップが:上記モータコントローラによって決定された上記速度と、上記レゾルバ‐デジタルコンバータによって決定された各上記速度との間の、差分の大きさを決定するステップを含み、ここで、上記比較するステップに基づいて上記電気モータを動作させる上記ステップは、上記差分が差分閾値未満である場合、又は上記差分が持続時間閾値未満の期間にわたって差分閾値を超える場合に、上記電気モータを通常の動作モードで動作させる指示を提供し、上記差分が上記持続時間閾値より長く上記差分閾値を超える場合に、上記電気モータを安全動作モードで動作させる指示を提供するステップを含む、EEE1~9のいずれか1つに記載の方法である。
【0175】
EEE11は、上記モータコントローラによって決定された上記回転の方向を、上記レゾルバ‐デジタルコンバータによって決定された各上記回転の方向と比較する上記ステップが:上記モータコントローラによって決定された上記回転の方向が、上記レゾルバ‐デジタルコンバータによって決定された各上記回転の方向と同一である場合、又は上記モータコントローラによって決定された上記回転の方向が、持続時間閾値未満の期間にわたって、上記レゾルバ‐デジタルコンバータによって決定された各上記回転の方向と異なっている場合に、上記電気モータを通常の動作モードで動作させる指示を提供し、上記モータコントローラによって決定された上記回転の方向が、上記持続時間閾値より長い時間にわたって、上記レゾルバ‐デジタルコンバータによって決定された各上記回転の方向と異なる場合に、上記電気モータを安全動作モードで動作させる指示を提供するステップを含む、EEE1~10のいずれか1つに記載の方法である。
【0176】
EEE12は:上記正弦波フィードバック信号及び上記余弦波フィードバック信号から、上記励磁信号の各周波数より低い周波数でサンプリングされたデータ点を有する正弦波データバッファ及び余弦波データバッファを生成するステップ;並びに上記正弦波フィードバック信号及び上記余弦波フィードバック信号に対して信号完全性チェックを実施するステップを更に含み、上記信号完全性チェックを実施する上記ステップは:所与の正弦波データバッファ又は余弦波データバッファ内の特定のデータ点が前の2つの正弦波データバッファ又は余弦波データバッファと比べて変化しているかどうかを決定するステップを含み、ここで上記電気モータを動作させる上記ステップは更に、上記信号完全性チェックに基づくものである、EEE1~11のいずれか1つに記載の方法である。
【0177】
EEE13は:上記正弦波フィードバック信号及び上記余弦波フィードバック信号から、上記励磁信号の各周波数より低い周波数でサンプリングされたデータを有する正弦波データバッファ及び余弦波データバッファを生成するステップ;上記正弦波データバッファ及び上記余弦波データバッファから、最大正弦値、最小正弦値、最大余弦値、及び最小余弦値を抽出するステップ;並びに上記正弦波フィードバック信号及び上記余弦波フィードバック信号に対して信号完全性チェックを実施するステップを更に含み、上記信号完全性チェックを実施する上記ステップは:上記最大正弦値、上記最小正弦値、上記最大余弦値、及び上記最小余弦値それぞれの大きさが許容値未満であるかどうかを決定するステップを含み、ここで上記電気モータを動作させる上記ステップは更に、上記信号完全性チェックに基づくものである、EEE1~12のいずれか1つに記載の方法である。
【0178】
EEE14は:上記正弦波フィードバック信号及び上記余弦波フィードバック信号から、上記励磁信号の各周波数より低い周波数でサンプリングされたデータを有する正弦波データバッファ及び余弦波データバッファを生成するステップ;上記正弦波データバッファ及び上記余弦波データバッファから、最大正弦値、最小正弦値、最大余弦値、及び最小余弦値を抽出するステップ;並びに上記正弦波フィードバック信号及び上記余弦波フィードバック信号に対して信号完全性チェックを実施するステップを更に含み、上記信号完全性チェックを実施する上記ステップは:(i)上記最大正弦値の大きさと上記最小正弦値の大きさとの間の差分が許容値未満であるかどうか;及び(ii)上記最大余弦値の大きさと上記最小余弦値の大きさとの間の差分が許容値未満であるかどうかを決定するステップを含み、ここで上記電気モータを動作させる上記ステップは更に、上記信号完全性チェックに基づくものである、EEE1~13のいずれか1つに記載の方法である。
【0179】
EEE15は:上記整流済み正弦波信号の二乗と上記整流済み余弦波信号の二乗とを決定するステップ;上記整流済み正弦波信号と上記整流済み余弦波信号との二乗和を決定するステップ;及び信号完全性チェックを実施するステップを更に含み、上記信号完全性チェックを実施する上記ステップは:上記二乗和が許容最大値と許容最小値の間に制限されているかどうかを決定するステップを含み、ここで上記電気モータを動作させる上記ステップは更に、上記信号完全性チェックに基づくものである、EEE1~14のいずれか1つに記載の方法である。
【0180】
EEE16は:上記符号付き正弦波信号の二乗と上記符号付き余弦波信号の二乗とを決定するステップ;上記符号付き正弦波信号と上記符号付き余弦波信号との二乗和を決定するステップ;及び信号完全性チェックを実施するステップを更に含み、上記信号完全性チェックを実施する上記ステップは:上記二乗和が許容最大値と許容最小値の間に制限されているかどうかを決定するステップを含み、ここで上記電気モータを動作させる上記ステップは更に、上記信号完全性チェックに基づくものである、EEE1~15のいずれか1つに記載の方法である。
【0181】
EEE17は、電気モータであって:(i)一次コイル、正弦波コイル、及び余弦波コイルを有するレゾルバステータと、(ii)上記電気モータの出力軸に設置され、上記出力軸と共に回転するように構成された、レゾルバロータであって、上記レゾルバロータは二次コイルを備える、レゾルバロータと、を備える、レゾルバ;レゾルバ‐デジタルコンバータであって、(i)励磁信号を上記レゾルバステータの上記一次コイルに提供し、ここで上記励磁信号は、上記レゾルバロータの上記二次コイルを励磁することにより、上記正弦波コイル内で正弦波フィードバック信号を、及び上記余弦波コイル内で余弦波フィードバック信号を生成するものであり、(ii)上記正弦波フィードバック信号及び上記余弦波フィードバック信号を受信し、(iii)上記正弦波フィードバック信号及び上記余弦波フィードバック信号を用いて、上記出力軸の回転の方向及び回転の速度を決定するように構成された、レゾルバ‐デジタルコンバータ;並びに1つ以上のプロセッサと、命令を記憶した非一時的コンピュータ可読媒体とを備えるモータコントローラであって、上記命令は、上記1つ以上のプロセッサによって実行された場合に:上記正弦波フィードバック信号及び上記余弦波フィードバック信号を受信するステップ;上記正弦波フィードバック信号及び上記余弦波フィードバック信号を、上記励磁信号の各周波数より低い周波数でサンプリングすることによって、整流済み正弦波信号及び整流済み余弦波信号を生成するステップ;上記正弦波フィードバック信号、上記余弦波フィードバック信号、上記整流済み正弦波信号、及び上記整流済み余弦波信号を用いて、上記出力軸の各回転の方向を決定するステップ;各上記回転の方向を決定する上記ステップに関連する情報を用いて、上記整流済み正弦波信号及び上記整流済み余弦波信号を、それぞれ符号付き正弦波信号及び符号付き余弦波信号に変換するステップ;上記符号付き正弦波信号及び上記符号付き余弦波信号を用いて、上記出力軸の各回転の速度を決定するステップ;上記モータコントローラによって決定された各上記方向及び各上記速度を、上記レゾルバ‐デジタルコンバータによって決定された上記回転の方向及び上記回転の速度と比較するステップ;並びに上記比較するステップに基づいて、上記電気モータを動作させるステップを含む動作を、上記モータコントローラに実施させるものである、モータコントローラを備える、電気モータである。
【0182】
EEE18は、上記モータコントローラによって決定された上記出力軸の各上記回転の速度を、上記レゾルバ‐デジタルコンバータによって決定された上記速度と比較する上記ステップが:上記モータコントローラによって決定された各上記速度と、上記レゾルバ‐デジタルコンバータによって決定された各上記速度との間の、差分の大きさを決定するステップを含み、ここで、上記比較するステップに基づいて上記電気モータを動作させる上記ステップは、上記差分が差分閾値未満である場合、又は上記差分が持続時間閾値未満の期間にわたって差分閾値を超える場合に、上記電気モータを通常の動作モードで動作させる指示を提供し、上記差分が上記持続時間閾値より長く上記差分閾値を超える場合に、上記電気モータを安全動作モードで動作させる指示を提供するステップを含む、EEE17に記載の電気モータである。
【0183】
EEE19は、上記モータコントローラによって決定された各上記回転の方向を、上記レゾルバ‐デジタルコンバータによって決定された上記回転の方向と比較する上記ステップが:上記モータコントローラによって決定された各上記回転の方向が、上記レゾルバ‐デジタルコンバータによって決定された上記回転の方向と同一である場合、又は上記モータコントローラによって決定された各上記回転の方向が、持続時間閾値未満の期間にわたって、上記レゾルバ‐デジタルコンバータによって決定された上記回転の方向と異なっている場合に、上記電気モータを通常の動作モードで動作させる指示を提供し、上記モータコントローラによって決定された各上記回転の方向が、上記持続時間閾値より長い時間にわたって、上記レゾルバ‐デジタルコンバータによって決定された上記回転の方向と異なる場合に、上記電気モータを安全動作モードで動作させる指示を提供するステップを含む、EEE17又は18に記載の電気モータである。
【0184】
EEE20は、上記電気モータを通常の動作モードで動作させるステップが、上記電気モータを動作させる上記ステップを、上記レゾルバ‐デジタルコンバータによって決定された上記回転の速度及び上記回転の方向に依存するステップを含み、上記電気モータを安全動作モードで動作させるステップが、上記電気モータのパフォーマンスを低下させるステップを含む、EEE19に記載の電気モータである。
【国際調査報告】