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特表2024-533989ポリトリメチレンエーテルグリコールおよびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-18
(54)【発明の名称】ポリトリメチレンエーテルグリコールおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 65/46 20060101AFI20240910BHJP
【FI】
C08G65/46
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024507993
(86)(22)【出願日】2022-08-01
(85)【翻訳文提出日】2024-02-08
(86)【国際出願番号】 KR2022011292
(87)【国際公開番号】W WO2023022393
(87)【国際公開日】2023-02-23
(31)【優先権主張番号】10-2021-0108049
(32)【優先日】2021-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】513193923
【氏名又は名称】エスケー ケミカルズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チョン チェイル
(72)【発明者】
【氏名】チョ ハンギョル
(72)【発明者】
【氏名】チョ ヒョンジュン
【テーマコード(参考)】
4J005
【Fターム(参考)】
4J005AA21
4J005BB01
4J005BC00
(57)【要約】
本発明は、低い水分率と狭い分子量分布を有するポリトリメチレンエーテルグリコールおよびその製造方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子量分布が1.5~2.1であり、水分率が100ppmw以下である、ポリトリメチレンエーテルグリコール。
【請求項2】
前記ポリトリメチレンエーテルグリコールの分子量分布が1.7~2.0である、
請求項1に記載のポリトリメチレンエーテルグリコール。
【請求項3】
前記ポリトリメチレンエーテルグリコールの水分率が45ppmw以下である、
請求項1に記載のポリトリメチレンエーテルグリコール。
【請求項4】
前記ポリトリメチレンエーテルグリコールの数平均分子量が1500~3000である、
請求項1に記載のポリトリメチレンエーテルグリコール。
【請求項5】
前記ポリトリメチレンエーテルグリコールの1,3-プロパンジオールの含有量が100ppmw以下である、
請求項1に記載のポリトリメチレンエーテルグリコール。
【請求項6】
1,3-プロパンジオールを重合してポリトリメチレンエーテルグリコールを含む生成物を製造する段階(段階1);
前記段階1の生成物を100~250℃の温度、および100.0~10.0torrの圧力の条件で薄膜蒸留する段階(段階2);および
前記段階2の蒸留残留物を150~350℃の温度、および1.0~0.001torrの圧力の条件で薄膜蒸留する段階(段階3)を含む、
ポリトリメチレンエーテルグリコールの製造方法。
【請求項7】
前記段階1は、ルイス(Lewis)酸、ブレンステッド(Bronsted)酸、スーパー酸(super acid)、およびこれらの混合物からなる群より選択されるいずれか1つの触媒の存在下で行う、
請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記段階1は、150℃~250℃で行う、
請求項6に記載の製造方法。
【請求項9】
前記段階2は、180℃~230℃で行う、
請求項6に記載の製造方法。
【請求項10】
前記段階2は、50.0~20.0torrで行う、
請求項6に記載の製造方法。
【請求項11】
前記段階3は、200℃~270℃で行う、
請求項6に記載の製造方法。
【請求項12】
前記段階3の薄膜蒸留の温度が、前記段階2の薄膜蒸留の温度と同一であるか、より高い、
請求項6に記載の製造方法。
【請求項13】
前記段階3は、0.01~0.1torrで行う、
請求項6に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリトリメチレンエーテルグリコールおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンは、イソシアネートとポリオールとの反応で製造される高分子樹脂であって、コーティング、接着剤から、繊維、プラスチックと弾性発泡体まで高分子が適用されるほぼすべての用途に適用可能である。しかし、これまで原油ベースのValue chainに頼ってきたポリウレタン産業は、全世界的な気候変化とプラスチックによる環境汚染問題で新たな挑戦に直面し、このため、温室ガスを減らすべく、再生可能なバイオマス(biomass)資源を使用しようとする努力が進められている。
【0003】
ポリウレタンの主原料であるポリオールは、大きく、エステル(ester)タイプとエーテル(ether)タイプとに区分され、バイオマスベースの原料を適用したポリオールの産業的適用は、今のところ、エステルタイプに限られている。しかし、ポリウレタン用ポリオール使用量の70%以上を占めるエーテルタイプの産業的適用は価格と物性の制約により極めて制限的な状態である。
【0004】
バイオマスに由来する1,3-プロパンジオール(1,3-propanediol;1,3-PDO)を原料とするポリトリメチレンエーテルグリコール(poly trimethylene ether glycol;PO3G)は、エーテルタイプのポリオールの温室ガス低減において最も現実的な代案であって、これまでPO3Gを産業的に適用しようとする研究が進められてきた。
【0005】
さらに、PO3Gを適用したポリウレタン重合体は、既存のエーテルタイプのポリオールを適用したポリウレタンに比べて弾性復元力、耐摩耗度特性などにおいて優れた特性があることを確認し、PO3Gを適用したバイオポリウレタンは、石油化学系ポリマーと同一の物性を発現するDrop in typeのバイオポリマーを超えて、その適用領域の拡張が期待されている。
【0006】
一方、PO3Gの重合方法は、米国特許登録番号第6,977,291号および米国特許登録番号第7,745,668号に記載されているように、強酸触媒下で行われるAlcohol condensation反応として、高分子成長はstep growth mechanismで理解できる。
【0007】
これに対し、既存の石油化学系ポリアルキレンエーテルグリコールは、開環重合反応としてChain growth mechanismで高分子成長が行われ、このような差により、PO3Gの分子量分布は、他のアルキレンエーテル系ポリオールと比較した時、broadな分布を有する。
【0008】
一方、分子量分布に関連し、ポリウレタン弾性体の場合、伸張回復性、繰り返し圧縮性などの動的物性の面で分子量の狭いポリオールが好まれており、PTMGに代表される石油化学系ポリアルキレンエーテルグリコールの場合、大韓民国特許公開番号第10-2004-0055677号、米国特許登録番号第4,638,097号、日本国特許登録番号第3,352,702号などでは、ポリオールの分散度を低くするための方策として解重合と溶解度の差を利用した相分離方法を記載している。
【0009】
しかし、前記提示された方法において、添加された水は最終PTMGの物性に重要な影響を与えるが、特に、PTMGに含まれている水分含有量が100ppm未満と除去できない場合、スパンデックス(spandex)重合過程でゲル化現象(gelation)をもたらしてスパンデックス品質を低下させかねないという問題点がある。また、このような方法は、解重合後、さらに後精製工程が必要であり、有機溶媒を使用するので、これを回収するための設備およびエネルギー費用が発生し、商業的適用が難しいというデメリットがある。
【0010】
そこで、薄膜蒸留を用いたオリゴマー除去方法が商業的に多く使用されている。例えば、大韓民国特許公開番号第10-2019-0038162号には、薄膜蒸留方法を用いたポリトリメチレンエーテルグリコールのオリゴマー除去方法が開示されている。しかし、ポリトリメチレンエーテルグリコールの場合、酸触媒下でalcohol condensation反応が主なメカニズムであるが、多様な揮発性酸化副生成物とCyclic oligomerも重合反応時に共に生成される。したがって、薄膜蒸留工程で除去すべき成分は大きく3種類で、酸化副生成物、サイクリックオリゴマー、線状オリゴマーに区分され、これらはそれぞれ異なる蒸気圧を示し、よって、選別的な蒸留方法が要求される。
【0011】
前記大韓民国特許公開番号第10-2019-0038162号に記載の方法により、これらを同時に分離する場合、蒸気圧の高い酸化副生成物、サイクリックオリゴマーは薄膜蒸留器の表面で凝縮して分離できずに揮発して、トラップ(trap)の表面に凝固して配管詰まり現象を誘発し、さらに真空ポンプまで揮発して安定した真空度を維持できず、ポリトリメチレンエーテルグリコールの品質問題を誘発する。
【0012】
したがって、ポリトリメチレンエーテルグリコールの商業化のためには、安定したオリゴマーおよび酸化副生成物の分離方法が要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、低い水分率と狭い分子量分布を有するポリトリメチレンエーテルグリコールを提供する。
【0014】
また、本発明は、前記ポリトリメチレンエーテルグリコールの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題を解決するために、本発明は、分子量分布が1.5~2.1であり、水分率が100ppmw以下である、ポリトリメチレンエーテルグリコールを提供する。
【0016】
後述のように、ポリトリメチレンエーテルグリコールを製造するにあたり、一次薄膜蒸留および二次薄膜蒸留による精製により、本発明によるポリトリメチレンエーテルグリコールは、分子量分布(Mw/Mn)が狭く、水分率が少ないという特徴がある。
【0017】
具体的には、本発明によるポリトリメチレンエーテルグリコールは、分子量分布が1.5~2.1であるという特徴がある。また、本発明による製造方法で製造されたポリトリメチレンエーテルグリコールは、水分率が100ppmw以下である。この時、「水分率」は、ポリトリメチレンエーテルグリコールの総重量対比、これに含まれている水分の重量を意味する。
【0018】
特に、ポリトリメチレンエーテルグリコールは、スパンデックス重合に使用できるが、この時、ポリトリメチレンエーテルグリコールに含まれている水分は、重合過程でゲル化現象をもたらして製造されたスパンデックスの品質を低下させる主な要因である。そこで、本発明によるポリトリメチレンエーテルグリコールは、後述する一次薄膜蒸留および二次薄膜蒸留により特に水分率を低下させることができるという特徴がある。
【0019】
好ましくは、本発明によるポリトリメチレンエーテルグリコールは、分子量分布が1.6以上、または1.7以上であり;2.0以下、または1.9以下である。好ましくは、本発明によるポリトリメチレンエーテルグリコールは、水分率が90ppmw以下、80ppmw以下、70ppmw以下、60ppmw以下、50ppmw以下、または45ppmw以下である。一方、前記水分率の理論的下限は0ppmwであるが、一例として、5ppmw以上、10ppmw以上、15ppmw以上、または20ppmw以上であってもよい。
【0020】
また、本発明によるポリトリメチレンエーテルグリコールの数平均分子量が1500~3000であり、より好ましくは、1600以上、1700以上、または1800以上であり;2900以下、2800以下、2700以下、2600以下、または2500以下である。
【0021】
また、本発明によるポリトリメチレンエーテルグリコールの1,3-プロパンジオールの含有量が100ppmw以下である。この時、「1,3-プロパンジオールの含有量」は、ポリトリメチレンエーテルグリコールの総重量対比、これに含まれている1,3-プロパンジオールの重量を意味する。
【0022】
好ましくは、本発明によるポリトリメチレンエーテルグリコールの1,3-プロパンジオールの含有量が90ppmw以下、80ppmw以下、70ppmw以下、60ppmw以下、50ppmw以下、40ppmw以下、30ppmw以下、20ppmw以下、10ppmw以下、または5ppmw以下である。
【0023】
また、本発明は、上述したポリトリメチレンエーテルグリコールの製造方法であって、下記の段階を含むポリトリメチレンエーテルグリコールの製造方法を提供する:
1,3-プロパンジオールを重合してポリトリメチレンエーテルグリコールを含む生成物を製造する段階(段階1);
前記段階1の生成物を100~250℃の温度、および100.0~10.0torrの圧力の条件で薄膜蒸留する段階(段階2);および
前記段階2の蒸留残留物を150~350℃の温度、および1.0~0.001torrの圧力の条件で薄膜蒸留する段階(段階3)を含む、
ポリトリメチレンエーテルグリコールの製造方法。
【0024】
本発明は、ポリトリメチレンエーテルグリコールの製造中に発生する線状オリゴマー、サイクリックオリゴマーおよび酸化副生成物を段階的に除去するためのものであって、これにより、ポリトリメチレンエーテルグリコールの精製工程の運転効率性を確保し、同時に水分率を最大限に低下させ、分子量分布が狭いポリトリメチレンエーテルグリコールを製造するためのものである。
【0025】
このために、前記段階1でポリトリメチレンエーテルグリコールを製造した後に、前記段階2および3のような異なる条件で薄膜蒸留を2回実施して、線状オリゴマー、サイクリックオリゴマーおよび酸化副生成物を段階的に除去することを特徴とする。
【0026】
以下、各段階別に本発明を詳細に説明する。
【0027】
(段階1)
本発明の段階1は、1,3-プロパンジオールを重合してポリトリメチレンエーテルグリコールを含む生成物を製造する段階である。
【0028】
前記段階1は、1,3-プロパンジオールからポリトリメチレンエーテルグリコールを製造する反応であればその反応条件は特に制限されず、好ましくは、重縮合触媒を用いて1,3-プロパンジオールを重縮合してポリトリメチレンエーテルグリコールを製造する。
【0029】
具体的には、前記重縮合触媒としては、ルイス(Lewis)酸、ブレンステッド(Bronsted)酸、スーパー酸(super acid)、およびこれらの混合物からなる群より選択される。より好ましくは、触媒は、無機酸、有機スルホン酸、ヘテロ多価酸および金属塩からなる群より選択される。最も好ましくは、触媒は、硫酸、フルオロスルホン酸、リン酸、p-トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ホスホタングステン酸、ホスホモリブデン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、1,1,2,2-テトラフルオロエタンスルホン酸、1,1,1,2,3,3-ヘキサフルオロプロパンスルホン酸、ビスマストリフラート、イットリウムトリフラート、イッテルビウムトリフラート、ネオジムトリフラート、ランタントリフラート、スカンジウムトリフラートおよびジルコニウムトリフラートからなる群より選択される。触媒はまた、ゼオライト、フッ素化アルミナ、酸処理シリカ、酸処理シリカ-アルミナ、ヘテロ多価酸、およびジルコニア、チタニア、アルミナおよび/またはシリカ上に支持されたヘテロ多価酸からなる群より選択される。より好ましくは、重縮合触媒として硫酸を使用する。
【0030】
前記触媒は、反応混合物の重量の0.1~20wt%の濃度で使用することが好ましく、より好ましくは、1wt%以上、2wt%以上、3wt%以上、または4wt%以上かつ;15wt%以下、10wt%以下、または5wt%以下で使用する。
【0031】
また、好ましくは、前記重縮合は、150℃~250℃で行い、より好ましくは、160℃~220℃で行う。また、前記反応は、不活性気体の存在下で行うことが好ましく、窒素下で行うことが好ましい。
【0032】
一方、前記段階1は、製造されるポリトリメチレンエーテルグリコールの数平均分子量が1500~3000になるまで行うことが好ましく、具体的には、1時間~48時間行うことが好ましい。
【0033】
一方、前記縮重合後には、ポリトリメチレンエーテルグリコールに結合した酸を除去するために加水分解反応を追加的に進行させることができる。また、前記加水分解反応に続いて、中和反応を追加的に進行させることができる。
【0034】
(段階2)
本発明の段階2は、前記段階1の生成物を一次的に薄膜蒸留して、前記段階1の生成物に含まれている高揮発性成分を先に除去するための段階である。
【0035】
後述する段階3の二次薄膜蒸留とは異なり、前記高揮発性成分を先に除去するために、前記段階2の薄膜蒸留条件は、100~250℃の温度、および100.0~10.0torrの圧力の条件で行って、前記条件は、後述する段階3の薄膜蒸留条件と比較して、温度は相対的に同等であるか、低く、圧力は相対的に高い。つまり、後述する段階3の薄膜蒸留条件と比較して、高揮発性成分を前記段階2により優先的に除去することができる。
【0036】
一方、本発明で使用する用語「薄膜蒸留」とは、分離しようとする混合物を薄い薄膜にして熱源と接触する表面積を高めることを利用する蒸留方法を意味する。例えば、薄膜蒸留器の内部に流入した混合物が物理的な力(例えば、wiper)によって薄膜蒸留器の内部壁面に薄い薄膜を形成し、これに熱源(例えば、heating media)により適正温度を適用して蒸留する方式で、薄膜蒸留が可能である。また、薄膜蒸留器の内部の圧力を低下させると、物質の蒸気圧が低くなって、本来の沸点より低い温度で蒸発が起こるという利点がある。また、薄膜蒸留器の内部には、蒸発した物質、つまり、除去しようとする物質を回収するための凝縮器(condenser)を備えることができる。
【0037】
さらに、前記薄膜蒸留は、分離しようとする混合物を連続的に適用できるという利点がある。例えば、分離しようとする混合物を前記蒸留器の上部に連続的に投入し、前記蒸留器の下部に精製された混合物を回収する方式で連続的に薄膜蒸留が可能である。
【0038】
前記段階2の薄膜蒸留は、100~250℃の温度で行い、好ましくは、110℃以上、120℃以上、130℃以上、140℃以上、150℃以上、160℃以上、170℃以上、または180℃以上かつ;240℃以下、または230℃以下で行う。前記温度が150℃未満の場合には、蒸留の効果がわずかで除去しようとする物質の除去が難しく、前記温度が250℃を超えると、ポリトリメチレンエーテルグリコールの熱的酸化が発生する恐れがある。
【0039】
前記段階2の薄膜蒸留は、100.0~10.0torrの圧力で行い、好ましくは、90.0torr以下、80.0torr以下、70.0torr以下、60.0torr以下、または50.0torr以下かつ、15.0torr以上、または20.0torr以上で行う。前記圧力が100.0torr超過の場合には、分離効率が低くなるというデメリットがあり、前記圧力が10.0torr未満の場合には、サイクリックオリゴマー、水などの揮発性物質が薄膜蒸留器の表面で凝縮して分離できずに揮発して、トラップ(trap)の表面に凝固して配管詰まり現象を誘発するというデメリットがある。
【0040】
一方、前記薄膜蒸留器内で揮発した成分、つまり、除去しようとする物質は凝縮器を通して薄膜蒸留器の下部に排出可能であり、これにより、残りの精製された混合物、つまり、蒸留残留物を別に回収することができる。
【0041】
(段階3)
本発明の段階3は、前記段階2で薄膜蒸留で精製された生成物、つまり、前記段階2の蒸留残留物を二次的に薄膜蒸留してポリトリメチレンエーテルグリコールをさらに精製して、分子量分布が狭く、水分率が低いポリトリメチレンエーテルグリコールを製造するための段階である。
【0042】
上述した段階2の一次薄膜蒸留により高揮発性成分が除去されたため、前記段階3の二次薄膜蒸留条件は、前記段階2の一次薄膜蒸留条件と比較して、温度は相対的に高く、圧力は相対的に低い。これにより、分子量分布が狭いポリトリメチレンエーテルグリコールとして精製しながら、同時に水分を除去してポリトリメチレンエーテルグリコールの水分率を低下させることができる。
【0043】
前記段階3の薄膜蒸留は、150~300℃の温度で行い、好ましくは、160℃以上、170℃以上、180℃以上、190℃以上、または200℃以上かつ;290℃以下、280℃以下、または270℃以下で行う。前記温度が150℃未満の場合には、蒸留の効果がわずかで除去しようとする物質の除去が難しく、前記温度が300℃を超えると、ポリトリメチレンエーテルグリコールの熱的酸化が発生する恐れがある。
【0044】
好ましくは、前記段階3の薄膜蒸留の温度が、前記段階2の薄膜蒸留の温度と同一であるか、より高い。
【0045】
前記段階3の薄膜蒸留は、1.0~0.0001torrの圧力で行い、好ましくは、0.9torr以下、0.8torr以下、0.7torr以下、0.6torr以下、0.5torr以下、0.4torr以下、0.3torr以下、0.2torr以下、または0.1torr以下かつ、0.001torr以上、または0.01torr以上で行う。前記圧力が1.0torr超過の場合には、分離効率が低くなって、本発明が目標とする分子量分布を達成できないというデメリットがあり、前記圧力が0.0001torr未満の場合には、分離効率が過度に高くなって、製品内に残るべき成分まで分離されて最終製品の収率が低下するというデメリットがある。
【発明の効果】
【0046】
上述のように、本発明によるポリトリメチレンエーテルグリコールおよびその製造方法は、低い水分率と狭い分子量分布を有するポリトリメチレンエーテルグリコールの提供を可能にする。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、本発明の実施形態を下記の実施例でより詳細に説明する。ただし、下記の実施例は本発明の実施形態を例示するに過ぎず、本発明の内容が下記の実施例によって限定されるのではない。
【0048】
以下の製造例、実施例および比較例において、下記のように各物性を測定した。
【0049】
1)分子量分布(Mw/Mn)、およびオリゴマーの総含有量(wt%)
以下、各実施例で製造したポリトリメチレンエーテルグリコールを1wt%の濃度でTHF(tetrahydrofuran)に溶解し、Gel permeation chromatography(製造元:WATERS、モデル:Alliance、Detecter:2414 RI Detector、Column:Strygel HR 0.5/1/4)を用い、Polyethylene glycolを標準物質として、重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)をそれぞれ算出した。このように測定されたMwおよびMnから分子量分布値とMn400以下の低分子量Oligomerの含有量を計算した。
【0050】
2)1,3-PDOの含有量(wt%)、およびCyclic oligomerの含有量(wt%)
以下、各実施例で製造したポリトリメチレンエーテルグリコール0.5gをメタノール10mLに溶解した後、ガスクロマトグラフィー(model:agilent7890、column:DBWAX)を用いて測定し、それぞれのReference物質1gをメタノール10mLに溶解した後、濃度に応じて追加希釈してstandard referenceとして測定して、ポリトリメチレンエーテルグリコールに含まれている1,3-PDOの含有量(wt%)、およびCyclic oligomerの含有量(wt%)を計算した。
【0051】
3)OHV
以下、各実施例で製造したポリトリメチレンエーテルグリコール6gとアセチル化試薬(acetic anhydride/pyridine=10/40vol%)15mLを、100mLフラスコに注入し、100℃で30分間還流雰囲気下で反応させた。反応後、常温に冷却し、蒸留水50mLを注入した。前記製造された反応物を自動滴定器(製造会社:metrohm、Titrino716)を用いて0.5ノルマル濃度のKOHで滴定反応を実施し、OHVは、下記の数式1により計算した。
【0052】
[数式1]
OHV=56.11×0.5×(A-B)/サンプル投入量
前記数式1中、
56.11は、KOHの分子量を意味し、
0.5は、KOHのノルマル濃度を意味し、
Aは、blank testに使用されたKOH溶液の分注量であり、
Bは、sampleの滴定に使用されたKOH溶液の分注量である。
【0053】
前記測定されたOHVは、下記の数式2により末端基平均分子量(Mn)に換算した。
【0054】
[数式2]
Mn=(56.11×2/OHV)×1000
【0055】
4)水分率
以下、各実施例で製造したポリトリメチレンエーテルグリコール0.5gをvolumertric Karl fisher Titrator(Mettler compact V20S)に注入してサンプル中の水分率を測定した。
【0056】
製造例:ポリオールの製造
1)ポリオールAの製造
(段階a)
テフロン材質の撹拌機とspargerが装着された20L GLASS材質の二重ジャケット反応器に1,3-プロパンジオール(15kg)および硫酸(150g)を充填した後、23時間、窒素sparging下、166℃で重合物を製造し、反応副生成物は上部コンデンサにより除去した。
【0057】
(段階b)
以後、脱イオン水(5kg)を添加し、生成された混合物を、窒素Blowing下で4時間95℃に維持して、重合時に形成された酸エステルを加水分解させた。加水分解後、1000mLの脱イオン水中の170gのsoda ashを添加し、窒素ストリーム下で撹拌しながら混合物を80℃に加熱した。中和を1時間継続し、次に、生成物を減圧下で120℃で乾燥させ、Nutche filterを用いて濾過してポリトリメチレンエーテルグリコール生成物を得た。
【0058】
2)ポリオールBの製造
前記ポリオールAの製造方法と同様の方法で製造し、前記段階aで反応時間を23時間から25時間に変更して、ポリトリメチレンエーテルグリコール生成物を得た。
【0059】
前記それぞれ製造されたポリオールAとポリオールBに対する物性は、下記表1に示した。
【0060】
【表1】
【0061】
実施例および比較例
Lab scale薄膜蒸留設備を用いて、前記製造例で各製造したポリオールに精製を行った。
【0062】
具体的には、前記薄膜蒸留設備は、VTA社のVKL-70-4modelでcondenserがdistillation columnの内部に設けられているShort path distillation typeであって、evaporation diameterおよびsurface areaがそれぞれ70mmおよび0.04m2であった。下記の精製は前記薄膜蒸留設備2台をSeriesに連結して行った。Hot oil systemによってdistillation column jacketが適正温度にsettingされ、vacuum pumpによってcolumnの内部が目標真空度に到達すれば、先に製造した各サンプルを一番目の薄膜蒸留器のdistillation上部に適正feed rateで投入した。この時、wiperが装着されているmechanical stirrerによってポリトリメチレンエーテルグリコールはcolumnの内部で均一な厚さを有する薄膜に形成され、揮発した低分子量物質は内部のcondenserで凝縮してdistillate側に排出され、一次精製ポリトリメチレンエーテルグリコールをresidueとして排出されると、ギヤポンプで2番目の薄膜蒸留器のDistillation上部に投入されて2番目の薄膜蒸留を実施して、二次精製されたポリトリメチレンエーテルグリコールはResidueとして排出された。
【0063】
各比較例と実施例については1kg/hrのFeed rateで1時間テストを実施し、テスト後にサンプリングして物性を測定する一方、薄膜蒸留器の真空度の変化とTrapの汚染の有無を確認し、その結果を下記表2および3に示した。
【0064】
【表2】
【0065】
【表3】
【0066】
前記表2および3に示されているように、ポリトリメチレンエーテルグリコール薄膜蒸留工程を進行させるにあたり、狭い分子量分布を得るために、一次的に1torr以下の高真空薄膜蒸留を実施する場合、比較例1および2のようにOligomerの含有量は低下させることができるが、蒸気圧の低い成分がCold trapの表面で析出する現象を発生し、これによって当該工程の真空度を長期間維持できず、均一な分子量分布を得にくかった。下記表4は、比較例2の析出した汚染物の成分を分析した結果であって、大部分が蒸気圧の低いサイクリックオリゴマー、1,3-PDO、線状二量体、三量体であることを確認することができた。
【0067】
【表4】
【0068】
これに対し、高揮発性を示す前記成分を低真空下で一次薄膜蒸留で精製した後、二次薄膜蒸留を実施した実施例1~9はそれぞれ、コールドトラップの汚染なしに薄膜蒸留工程を進行させることができ、これによって長期間薄膜蒸留工程性を確保することができた。
【0069】
また、大部分がCondenserで分離が行われるので、薄膜蒸留器内のPressure dropが発生せず高真空度を長期間維持することができ、これによってポリトリメチレンエーテルグリコールの低い水分率、品質均一性、および1.5~2.1の狭い分子量分布を確保することができた。
【国際調査報告】