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特表2024-533996帯電防止シリコーン剥離コーティング並びにその調製及び使用のための方法
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  • 特表-帯電防止シリコーン剥離コーティング並びにその調製及び使用のための方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-18
(54)【発明の名称】帯電防止シリコーン剥離コーティング並びにその調製及び使用のための方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 183/04 20060101AFI20240910BHJP
   C09D 183/05 20060101ALI20240910BHJP
   C09D 183/07 20060101ALI20240910BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20240910BHJP
   C08L 83/07 20060101ALI20240910BHJP
   C08L 83/05 20060101ALI20240910BHJP
   C08K 5/00 20060101ALI20240910BHJP
   C08L 83/12 20060101ALI20240910BHJP
   B05D 5/08 20060101ALI20240910BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20240910BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
C09D183/04
C09D183/05
C09D183/07
C09D5/02
C08L83/07
C08L83/05
C08K5/00
C08L83/12
B05D5/08 Z
B05D7/24 302Y
B32B27/00 L
B32B27/00 101
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508086
(86)(22)【出願日】2021-08-31
(85)【翻訳文提出日】2024-02-08
(86)【国際出願番号】 CN2021115592
(87)【国際公開番号】W WO2023028819
(87)【国際公開日】2023-03-09
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】ファン、シン
(72)【発明者】
【氏名】ファン、フーミン
(72)【発明者】
【氏名】シュ、ジアイン
(72)【発明者】
【氏名】リュー、ジホア
【テーマコード(参考)】
4D075
4F100
4J002
4J038
【Fターム(参考)】
4D075CA07
4D075DA04
4D075DB01
4D075DB13
4D075DB18
4D075DB31
4D075DB33
4D075DB36
4D075DB37
4D075DB38
4D075DB39
4D075DB46
4D075DB50
4D075DB53
4D075EA06
4D075EA10
4D075EB43
4D075EC35
4F100AH06A
4F100AK42B
4F100AK52A
4F100AT00B
4F100BA02
4F100CA18A
4F100CA22A
4F100CC00A
4F100EH46A
4F100JL14A
4J002CP04Y
4J002CP13W
4J002CP13X
4J002CP18Z
4J002ED018
4J002EZ007
4J002FD14Y
4J002FD157
4J002FD318
4J002FD31Z
4J002GH00
4J002GH01
4J002GH02
4J038DL031
4J038DL041
4J038DL042
4J038DL111
4J038DL112
4J038JC17
4J038JC38
4J038KA06
4J038KA12
4J038MA10
4J038NA10
4J038NA20
4J038PC08
(57)【要約】
シリコーン剥離コーティング分散液は、ポリオルガノシロキサン連続相及び水性不連続相を有する。水性不連続相は、水及びイオン性液体を含む。ポリオルガノシロキサン連続相は、ヒドロシリル化反応硬化性シリコーン剥離コーティング組成物を含む。シリコーン剥離コーティング分散液の調製のための方法、及びシリコーン剥離コーティングを形成するためのその使用のための方法が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーン剥離コーティング分散液であって、
(I)ヒドロシリル化反応硬化性シリコーン剥離コーティング組成物を含む連続相と、
(II)界面活性剤と、
(III)前記連続相中に分散した水性不連続相であって、
(A)イオン性液体と、
(B)水と、
を含み、前記イオン性液体が前記水に溶解している、水性不連続相と、を含む、シリコーン剥離コーティング分散液。
【請求項2】
前記シリコーン剥離コーティング組成物が、
(C)単位式:(R SiO1/2(R SiO1/2(RSiO2/2(R SiO2/2(SiO4/2)(式中、各Rは、脂肪族不飽和を含まない独立して選択された一価炭化水素基であり、各Rは、独立して選択された脂肪族不飽和一価炭化水素基であり、下付き文字a及びbは、1分子当たりの単官能性単位の平均数を表し、下付き文字c及びは、1分子当たりの二官能性単位の平均数を表し、a、b、c、及びdは、2≧a≧0、4≧b≧0、(a+b)=4、4≧c≧0、995≧d≧4であるような平均値を有し、(a+b+c+d)は、室温で回転粘度測定法によって測定された170mPa・s超の粘度を付与するのに十分な値を有する)の分岐状ポリオルガノシロキサンポリマー、
(E)1分子当たり少なくとも2個の脂肪族不飽和基を有するポリジオルガノシロキサン、
((C)前記分岐状ポリオルガノシロキサンポリマーの量及び(E)前記1分子当たり少なくとも2個の脂肪族不飽和基を有するポリジオルガノシロキサンの量は、合わせて100重量部の総計となる)、
(F)1:1超~5:1の、前記剥離コーティング組成物中の脂肪族不飽和基に対するケイ素結合水素原子のモル比(SiH:Vi比)を提供するのに十分な量の、1分子当たり少なくとも3個のケイ素結合水素原子を有するポリオルガノハイドロジェンシロキサン、
(G)シリコーン前記剥離コーティング分散液の重量に基づいて1ppm~500ppmの白金族金属を提供するのに十分なヒドロシリル化反応触媒、
任意選択で、(G)ヒドロシリル化反応抑制剤、及び
任意選択で、(J)定着添加剤を含む、請求項1に記載のシリコーン剥離コーティング分散液。
【請求項3】
前記連続相が、最高90重量%の溶媒を更に含み、前記連続相の100重量%までの残部が、前記シリコーン剥離コーティング組成物である、請求項1又は2に記載のシリコーン剥離コーティング分散液。
【請求項4】
(C)前記分岐状ポリオルガノシロキサンポリマーが、式:[R Si-(O-SiR -O](4-w)-Si-[O-(R SiO)SiR (式中、R及びRは、上記の通りであり、下付き文字v、w、及びxは、200≧v≧1、2≧w≧0、かつ200≧x≧1であるような値を有する)を有する、請求項2又は3に記載のシリコーン剥離コーティング分散液。
【請求項5】
(E)前記ポリジオルガノシロキサンが、単位式(R SiO1/2(R SiO2/2(式中、R及びRは、上記の通りであり、下付き文字jは、1分子当たりの二官能性単位の平均数を表し、10,000≧j≧100である)を有する、請求項2~4のいずれか一項に記載のシリコーン剥離コーティング分散液。
【請求項6】
(F)前記ポリオルガノハイドロジェンシロキサンが、単位式(R HSiO1/2(R SiO1/2(RHSiO2/2(R SiO2/2(式中、Rは、上記の通りであり、下付き文字k及びmは、1分子当たりの単官能性単位の平均数を表し、下付き文字n及びoは、1分子当たりの二官能性単位の平均数を表し、下付き文字k、m、n、及びoは、2≧k≧0、1≧m≧0、(k+m)=2、n>0、o≧0、(k+n)≧3、かつ8≦(k+m+n+o)≦400であるような値を有する)を有する、請求項2~5のいずれか一項に記載のシリコーン剥離コーティング分散液。
【請求項7】
各Rが、独立して、メチル及びフェニルからなる群から選択され、各Rが、独立して、ビニル、アリル、及びヘキセニルからなる群から選択される、請求項2~6のいずれか一項に記載のシリコーン剥離コーティング分散液。
【請求項8】
(II)前記界面活性剤が、(D)シリコーンポリエーテルを含む、請求項1~17のいずれか一項に記載のシリコーン剥離コーティング分散液。
【請求項9】
(D)前記シリコーンポリエーテルが、単位式(D1):(R SiO1/2(R SiO2/2(RSiO2/2(式中、下付き文字eは、1~50であり、下付き文字fは、1~5であり、Rは、上記の通りであり、Rは、H及びアルキル基からなる群から選択され、各Rは、式-(DO(DO)(式中、各Dは、2~4個の炭素原子の独立して選択された二価炭化水素基であり、各Dは、2~4個の炭素原子の独立して選択された二価炭化水素基であり、下付き文字gは、1~20であり、下付き文字hは、1~50である)のポリエーテル基である)を有する、請求項8に記載のシリコーン剥離コーティング分散液。
【請求項10】
共界面活性剤を更に含み、前記共界面活性剤が、単位式(D2):(R SiO1/2(R SiO2/2e’(RSiO2/2f’(式中、Rは、上記の通りであり、下付き文字e’は、0~50であるが、但しe’<eであり、下付き文字f’は、1~5であり、Rは、式-(DO(DO)H(式中、Dは、2~4個の炭素原子の二価炭化水素基であり、下付き文字iは、1~50である)を有する)を有する、請求項9に記載のシリコーン剥離コーティング分散液。
【請求項11】
(A)前記イオン性液体が、
(A1)及び(A2)の合計重量に基づいて90重量%の(A1)トリフルオロメチルスルホン酸リチウムと、
(A1)及び(A2)の合計重量に基づいて10重量%の(A2)リチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドと、を含み、それによって、水溶液を形成し、
(A)前記イオン性液体及び(B)前記水が、前記水性不連続相中に2:1~1:2の重量比(A):(B)で存在する、請求項1~10のいずれか一項に記載のシリコーン剥離コーティング分散液。
【請求項12】
請求項2~11のいずれか一項に記載のシリコーン剥離コーティング分散液を形成するための方法であって、前記方法が、
(1)(A)前記イオン性液体を(B)前記水に溶解させて水溶液を形成することと、
(2)前記水溶液を、
(C)分岐状ポリオルガノシロキサンポリマー及び
(D)シリコーンポリエーテルを含むシロキサン中間体組成物中に分散させ、それによって分散中間体を形成することと、
(3)前記分散中間体を、追加の出発材料と合わせることであって、前記追加の出発材料が、
(E)1分子当たり少なくとも2個の脂肪族不飽和基を有するポリジオルガノシロキサン、
(F)1分子当たり少なくとも3個のケイ素結合水素原子を有するポリオルガノハイドロジェンシロキサン、
(G)ヒドロシリル化反応触媒、
任意選択で、(H)溶媒、
任意選択で、(I)ヒドロシリル化反応抑制剤、及び
任意選択で、(J)定着添加剤を含む、合わせることと、を含む、方法。
【請求項13】
剥離ライナーを調製するための方法であって、前記方法が、
任意選択で、(I)基材の表面を処理することと、
(II)請求項1~11のいずれか一項に記載のシリコーン剥離コーティング分散液を前記基材の前記表面上にコーティングすることと、
(III)前記シリコーン剥離コーティング分散液を乾燥させてフィルムを形成することと、
(IV)前記フィルムを硬化させて、前記基材の前記表面上にシリコーン剥離コーティングを形成することと、を含む、方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法によって調製された、剥離ライナー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
シリコーン剥離コーティング分散液を乾燥及び硬化させて、帯電防止特性を有するシリコーン剥離コーティングを形成することができる。シリコーン剥離コーティング分散液の調製及び使用のための方法が提供される。
【0002】
序論
剥離ライナーからの接着剤の層剥離中に発生した静電荷は、接着フィルムを放電及び塵埃吸着から保護するために放散されなければならない。シリコーン感圧業界における現在の帯電防止解決策は、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate、PET)などのプラスチック基材の片面又は両面に帯電防止プライマを追加でコーティングすることを必要とする。剥離ライナーを製造するためのこの方法は、複数のプロセス工程の問題点に悩まされる場合があるので、コストが増加し、生産性が制限される恐れがあり、帯電防止プライマは、シリコーン剥離コーティング組成物の硬化反応を妨げたり、シリコーン剥離コーティングの界面定着を損なう恐れがある。
【発明の概要】
【0003】
シリコーン剥離コーティング分散液は、ヒドロシリル化反応硬化性シリコーン剥離コーティング組成物を含む連続相と、界面活性剤と、連続相中に分散した水性不連続相と、を含む。水相は、(A)イオン性液体及び(B)水を含む。
【0004】
シリコーン剥離コーティング分散液は、(1)(A)イオン性液体を(B)水に溶解させて水溶液を形成することと、(2)水溶液を、(C)分岐状ポリオルガノシロキサンポリマー及び(D)シリコーンポリエーテルを含むシロキサン中間体組成物中に分散させ、それによって分散中間体を形成することと、(3)分散中間体を、追加の出発材料と合わせることであって、追加の出発材料が、(E)1分子当たり少なくとも2個の脂肪族不飽和基を有するポリジオルガノシロキサン、(F)1分子当たり少なくとも3個のケイ素結合水素原子を有するポリオルガノハイドロジェンシロキサン、及び(G)ヒドロシリル化反応触媒を含む、合わせることと、を含む方法によって形成され得る。
【0005】
剥離ライナーは、任意選択で、(I)裏張り基材の表面を処理することと、(II)裏張り基材の表面上にシリコーン剥離コーティング分散液をコーティングすることと、(III)シリコーン剥離コーティング分散液を乾燥させてフィルムを形成することと、(IV)フィルムを硬化させて裏張り基材の表面上にシリコーン剥離コーティングを形成することと、を含む方法によって、上述の分散液を使用して調製され得る。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】帯電防止特性を有するシリコーン剥離コーティング(102)を含む積層物品(100)の部分断面図を示す。
【0007】
参照番号
101 PETフィルム基材
102 帯電防止シリコーン剥離コーティング
103 接着剤
104 第2のPETフィルム基材
【発明を実施するための形態】
【0008】
上記で紹介したシリコーン剥離コーティング分散液(分散液)は、
(I)ヒドロシリル化反応硬化性シリコーン剥離コーティング組成物(組成物)を含む連続相と、
(II)界面活性剤と、
(III)連続相中に分散した水性不連続相であって、
(A)イオン性液体と、
(B)水と、
を含み、イオン性液体が水に溶解している、水性不連続相と、を含む。
【0009】
(A)イオン性液体
出発材料(A)であるイオン性液体は、分散液から調製されたシリコーン剥離コーティングに帯電防止特性を付与する帯電防止添加剤である。本明細書で使用するのに好適なイオン性液体は、大きいカチオン及び電荷非局在化アニオンを含み得る塩である。イオン性液体は、リチウム塩などの水溶性アルカリ金属塩を含む。イオン性液体は、1つのアルカリ金属塩であってもよく、2つ以上のアルカリ金属塩の組み合わせであってもよい。アルカリ金属塩の例としては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、及びカリウムイオンから選択されるカチオンと、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、テトラクロロアルミニウムイオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、チオシアン酸イオン、過塩素酸イオン、p-トルエンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、ペンタフルオロエタンスルホン酸イオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ジシアンアミドイオン、トリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチドイオン、酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、及びヘキサフルオロアンチモンイオンから選択されるアニオンと、を含む金属塩が挙げられる。あるいは、アルカリ金属塩は、リチウム塩であってもよい。リチウム塩は、例えば、(A1)トリフルオロメタンスルホン酸リチウムLiSOCF、(A2)リチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドLiN(SOCF、LiSO、LiC(SOCF、(A3)LiBF、(A4)LiClO、(A5)LiPF、(A6)LiAsF、(A7)LiSbF、及び(A8)LiB(Cであってもよい。これらのリチウム塩は、単独で、又は(A1)~(A8)のうちの2つ以上の組み合わせのいずれかで使用され得る。あるいは、イオン性液体は、(A1)トリフルオロメタンスルホン酸リチウム及び(A2)リチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドの混合物を含んでもよい。トリフルオロメタンスルホン酸リチウム及びリチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドなどのリチウム塩は、例えば、Monils Chemical Engineering Science & Technology(Shanghai)Co.,Ltd.から市販されている。(A1)トリフルオロメタンスルホン酸リチウム及び(A2)リチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドは、(A)イオン性液体が(A1)及び(A2)の合計重量に基づいて90重量%の(A1)トリフルオロメチルスルホン酸リチウムと(A1)及び(A2)の合計重量に基づいて10重量%を含むような量で存在し得る。出発材料(A)であるイオン性液体及び出発材料(B)である水は、水性不連続相中に2:1~1:2の重量比(A):(B)で存在し得る。
【0010】
(B)水
水(B)は一般に限定されず、ニート(すなわち、担体ビヒクル/溶媒を含まない)及び/又は高純度(すなわち、鉱物質及び/又は他の不純物を含まないか、又は実質的に含まない)が利用され得る。例えば、水(B)は、その中にイオン性液体(A)を溶解させる前に処理されていてもよく、又は処理されていなくてもよい。水を精製するために使用され得るプロセスの例としては、蒸留、濾過、脱イオン化、及びこれらの2つ以上の組み合わせが挙げられ、その結果、水を脱イオン化、蒸留、及び/又は濾過してもよい。あるいは、(B)水は、未処理であってもよい(例えば、水道水、すなわち、都市水系又は更なる精製なしで使用される井戸水によって提供される)。あるいは、その中に(A)イオン性液体を溶解させる前に(B)水を精製してもよい。あるいは、(B)水は、シリコーン剥離コーティング組成物において使用することができる以下に記載されるもののいずれかなどの担体ビヒクル/溶媒を含む混合物(例えば、溶液又は懸濁液)として利用されてもよい。
【0011】
シリコーン剥離コーティング組成物
ヒドロシリル化反応硬化性シリコーン剥離コーティング組成物は、(C)分岐状ポリオルガノシロキサンポリマー、(E)1分子当たり少なくとも2個の脂肪族不飽和基を有するポリジオルガノシロキサン、(F)1分子当たり少なくとも3個のケイ素結合水素原子を有するポリオルガノハイドロジェンシロキサン、及び(G)ヒドロシリル化反応触媒を含む。シリコーン剥離コーティング組成物は、任意選択で、1つ以上の追加の出発材料を更に含んでもよい。1つ以上の追加の出発材料は、(H)溶媒、(I)ヒドロシリル化反応抑制剤、及び(J)定着添加剤からなる群から選択され得る。
【0012】
(C)分岐状ポリオルガノシロキサンポリマー
出発材料(C)は、分岐状ポリオルガノシロキサンポリマーである。分岐状ポリオルガノシロキサンポリマーは、単位式(C1):(R SiO1/2(R SiO1/2(RSiO2/2(R SiO2/2(SiO4/2)(式中、各Rは、脂肪族不飽和を含まない独立して選択された一価炭化水素基であり、各Rは、独立して選択された脂肪族不飽和一価炭化水素基であり、下付き文字a及びbは、1分子当たりの単官能性単位の平均数を表し、下付き文字c及びは、1分子当たりの二官能性単位の平均数を表し、a、b、c、及びdは、2≧a≧0、4≧b≧0、(a+b)=4、4≧c≧0、995≧d≧4であるような平均値を有し、(a+b+c+d)は、室温で回転粘度測定法によって測定された170mPa・s超の粘度を分岐状ポリオルガノシロキサンポリマーに付与するのに十分な値を有する)を有し得る。あるいは、粘度は、170mPa・s超~1000mPa・s、あるいは170mPa・s超~500mPa・s、あるいは180mPa・s~450mPa・s、あるいは190mPa・s~420mPa・sであってもよい。粘度は、#CP-52スピンドルを備えたBrookfield DV-IIIコーンプレート型粘度計で、室温において0.1rpm~50rpmで測定され得る。当業者は、粘度が増加するに従って回転速度が減少することを認識するであろう。好適な分岐状ポリオルガノシロキサンポリマーは、当該技術分野において既知であり、Crayらの米国特許第6,806,339号及びCrayらの米国特許出願公開第2007/0289495号に開示されているものによって例示される既知の方法によって作製され得る。
【0013】
に好適なアルキル基は、直鎖状、分岐状、環状、又はこれらの2つ以上の組み合わせであり得る。アルキル基は、メチル、エチル、プロピル(n-プロピル及び/又はイソプロピルを含む)、ブチル(n-ブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、及び/又はイソブチルを含む)、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、デシル、ドデシル、ウンデシル、及びオクタデシル(及び5~18個の炭素原子を有する分岐状異性体)によって例示され、アルキル基は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、及びシクロヘキシルなどのシクロアルキル基によって更に例示される。あるいは、Rのアルキル基は、メチル、エチル、プロピル、及びブチル、あるいは、メチル、エチル、及びプロピル、あるいは、メチル又はエチルからなる群から選択され得る。あるいは、Rのアリール基は、メチルであり得る。
【0014】
に好適なアリール基は、単環式又は多環式であり得、ペンダントヒドロカルビル基を有し得る。例えば、Rのアリール基としては、フェニル、トリル、キシリル、及びナフチルが挙げられ、ベンジル、1-フェニルエチル、及び2-フェニルエチルなどのアラルキル基が更に挙げられる。あるいは、Rのアリール基は、フェニル、トリル、又はベンジルなどの単環式であってもよく、あるいは、Rのアリール基は、フェニルであってもよい。
【0015】
上記及び下記の式中、Rはアルケニル基であってもよい。好適なアルケニル基は、ヒドロシリル化反応を促進するために末端アルケニル官能基を有していてもよく、例えば、Rは、式
【0016】
【化1】

(式中、下付き文字yは、0~6であり、は、結合点(即ち、ケイ素原子への結合点)を示す)を有し得る。あるいは、各Rは、独立して、ビニル、アリル、及びヘキセニルからなる群から選択されてもよい。あるいは、各Rは、独立して、ビニル及びアリルからなる群から選択されてもよい。あるいは、各Rは、ビニルであってもよい。あるいは、各Rは、アリルであってもよい。
【0017】
あるいは、(C)分岐状ポリオルガノシロキサンポリマーは、式(C2):[RSi-(O-SiR -O](4-w)-Si-[O-(R SiO)SiR (式中、R及びRは、上記の通りであり、下付き文字v、w、及びxは、200≧v≧1、2≧w≧0、かつ200≧x≧1であるような値を有する)を有していてもよい。あるいは、式(C2)中、各Rは、独立してメチル及びフェニルからなる群から選択されてもよく、各Rは、独立してビニル、アリル、及びヘキセニルからなる群から選択されてもよい。出発材料(C2)に好適な分岐状ポリオルガノシロキサンは、ポリオルガノシリケート樹脂と、環状ポリジオルガノシロキサン又は直鎖状ポリジオルガノシロキサンと、を含む混合物を、酸又はホスファゼン塩基などの触媒の存在下で加熱し、その後触媒を中和するなどの既知の方法によって調製され得る。
【0018】
あるいは、出発材料(C)のための分岐状ポリオルガノシロキサンポリマーは、単位式(C3):(R SiO1/2aa(R SiO1/2bb(R SiO2/2cc(RSiO2/2ee(RSiO3/2dd(式中、R及びRは、上記の通りであり、下付き文字aa≧0、下付き文字bb>0、下付き文字ccは、15~995であり、下付き文字dd>0、下付き文字ee≧0である)のシルセスキオキサンを含んでもよい。下付き文字aaは、0~10であり得る。あるいは、下付き文字aaは、12≧aa≧0、あるいは、10≧aa≧0、あるいは、7≧aa≧0、あるいは、5≧aa≧0、あるいは、3≧aa≧0であるような値を有し得る。あるいは、下付き文字bb≧1である。あるいは、下付き文字bb≧3である。あるいは、下付き文字bbは、12≧bb>0、あるいは、12≧bb≧3、あるいは、10≧bb>0、あるいは、7≧bb>1、あるいは、5≧bb≧2、あるいは、7≧bb≧3であるような値を有し得る。あるいは、下付き文字ccは、800≧cc≧15、あるいは400≧cc≧15であるような値を有し得る。あるいは、下付き文字eeは、800≧ee≧0、あるいは、800≧ee≧15、あるいは、400≧ee≧15であるような値を有し得る。あるいは、下付き文字eeは、0であり得る。あるいは、数量(cc+ee)は、995≧(cc+ee)≧15であるような値を有し得る。あるいは、下付き文字dd≧1である。あるいは、下付き文字ddは、1~10であり得る。あるいは、下付き文字ddは、10≧dd>0、あるいは、5≧dd>0、あるいは、dd=1であるような値を有し得る。あるいは、下付き文字ddは、1~10であり得、あるいは、下付き文字ddは、1又は2であり得る。あるいは、下付き文字dd=1の場合、下付き文字bbは、3であり得、下付き文字ccは、0であり得る。下付き文字bbの値は、シルセスキオキサンの重量に基づいて、0.1%~1%、あるいは0.2%~0.6%のアルケニル含有量を有するシルセスキオキサンを提供するのに十分であり得る。出発材料(C3)のための好適なシルセスキオキサンは、Brownらの米国特許第4,374,967号、Enamiらの米国特許第6,001,943号、Nabetaらの米国特許第8,546,508号、及びEnamiの米国特許第10,155,852号において開示されているものによって例示される。
【0019】
(E)脂肪族不飽和ポリジオルガノシロキサン
シリコーン剥離コーティング組成物中の出発材料(E)は、1分子当たり少なくとも2つの脂肪族不飽和基を含有するポリオルガノシロキサンである。ポリジオルガノシロキサンは、単位式(E1):(R SiO1/2(R SiO2/2(式中、R及びRは、上記の通りであり、下付き文字jは、1分子当たりの二官能性単位の平均数を表し、10,000≧j≧100である)を有し得る。
【0020】
出発材料(E)は、アルケニル官能性ポリジオルガノシロキサン、例えば、(E1-1)ビス-ジメチルビニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン、(E1-2)ビス-ジメチルビニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルフェニルシロキサン)、(E1-3)ビス-ジメチルビニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/ジフェニルシロキサン)、(E1-4)ビス-フェニル,メチル,ビニル-シロキシ末端ポリジメチルシロキサン、(E1-5)ビス-ジメチルヘキセニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン、(E1-6)ビス-ジメチルヘキセニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルフェニルシロキサン)、(E1-7)ジメチルヘキセニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/ジフェニルシロキサン)、及び(E1-8)(E1-1)~(E1-7)のうちの2つ以上の組み合わせを含み得る。あるいは、出発材料(E)は、(E1-1)ビス-ジメチルビニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン、(E1-5)ビス-ジメチルヘキセニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン、又は両方からなる群から選択され得る。
【0021】
出発材料(E)について上記したポリジオルガノシロキサンを調製する方法、例えば、対応するオルガノハロシラン及びオリゴマーの加水分解及び縮合、又は環状ポリジオルガノシロキサンの平衡化は、当該技術分野において既知であり、例えば、米国特許第3,284,406号、同第4,772,515号、同第5,169,920号、同第5,317,072号、及び同第6,956,087号を参照されたく、これらは、アルケニル基を有する直鎖状ポリジオルガノシロキサンの調製を開示している。アルケニル基を有する直鎖状ポリジオルガノシロキサンの例は、例えば、商品名DMS-V00、DMS-V03、DMS-V05、DMS-V21、DMS-V22、DMS-V25、DMS-V-31、DMS-V33、DMS-V34、DMS-V35、DMS-V41、DMS-V42、DMS-V43、DMS-V46、DMS-V51、DMS-V52でGelest Inc.(Morrisville,Pennsylvania,USA)から市販されている。他のアルケニル基を有する直鎖状ポリジオルガノシロキサンは、DSCから市販されている。
【0022】
出発材料(C)分岐状ポリオルガノシロキサンポリマー及び出発材料(E)1分子当たり少なくとも2個の脂肪族不飽和基を有するポリジオルガノシロキサンは、合わせてシリコーン剥離コーティング組成物の100重量部の総計となる量で存在する。あるいは、出発材料(C)の量は、シリコーン剥離コーティング組成物の2重量部~10重量部、あるいは3重量部~9重量部であってもよい。あるいは、出発材料(E)の量は、シリコーン剥離コーティング組成物の20重量部~40重量部であってもよい。
【0023】
(F)ポリオルガノハイドロジェンシロキサン
シリコーン剥離コーティング組成物中の出発材料(F)は、ポリオルガノハイドロジェンシロキサンであり、これはシリコーン剥離コーティング組成物を硬化させるための架橋剤として機能し得る。ポリオルガノハイドロジェンシロキサンは、1分子当たり少なくとも3個のケイ素結合水素原子を有する。ポリオルガノハイドロジェンシロキサンは、単位式(F1):(R HSiO1/2(R SiO1/2(RHSiO2/2(R SiO2/2(式中、Rは、上記の通りであり、下付き文字k及びmは、1分子当たりの単官能性単位の平均数を表し、下付き文字n及びoは、1分子当たりの二官能性単位の平均数を表し、下付き文字k、m、n、及びoは、2≧k≧0、1≧m≧0、(k+m)=2、n>0、o≧0、(k+n)≧3、かつ8≦(k+m+n+o)≦400であるような値を有する)を有し得る。
【0024】
本明細書で使用するのに好適なポリオルガノハイドロジェンシロキサンは、以下のものによって例示される:
(i)α,ω-ジメチルハイドロジェンシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルハイドロジェンシロキサン)、
(ii)α,ω-ジメチルハイドロジェンシロキシ末端ポリメチルハイドロジェンシロキサン、
(iii)α,ω-トリメチルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルハイドロジェンシロキサン)、
(iv)α,ω-トリメチルシロキシ末端ポリメチルハイドロジェンシロキサン、
(v)α-ジメチルハイドロジェンシロキシ,ω-トリメチルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルハイドロジェンシロキサン)、
(vi)α-ジメチルハイドロジェンシロキシ,ω-トリメチルシロキシ末端ポリメチルハイドロジェンシロキサン、
(vii)これらの2つ以上の組み合わせ。あるいは、(F)ポリオルガノハイドロジェンシロキサンは、(iii)α,ω-トリメチルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルハイドロジェンシロキサン)、(iv)α,ω-トリメチルシロキシ末端ポリメチルハイドロジェンシロキサン、又は両方からなる群から選択されてもよい。
【0025】
ポリオルガノハイドロジェンシロキサンは、市販もされており、例えば、Gelest,Inc.(Morrisville,Pennsylvania,USA)から入手可能なもの、例えば、HMS-H271、HMS-071、HMS-993;HMS-301及びHMS-301 R、HMS-031、HMS-991、HMS-992、HMS-993、HMS-082、HMS-151、HMS-013、HMS-053、HAM-301、HPM-502、及びHMS-HM271である。オルガノハロシランの加水分解及び縮合等、本明細書での使用に好適な直鎖状及び分岐状ポリオルガノハイドロジェンシロキサンを調製する方法は、Speierの米国特許第2,823,218号、Jeramらの米国特許第3,957,713号、及びHardmanらの米国特許第4,329,273号に例示されているように、当該技術分野において周知である。
【0026】
ポリオルガノハイドロジェンシロキサンのケイ素結合水素(Si-H)含有量は、ASTM E168に準拠して定量赤外分析を使用して求めることができる。ヒドロシリル化硬化プロセスに依存する場合、ケイ素結合水素の脂肪族不飽和基(例えば、ビニルなどのアルケニル及び/又はアルキニル)に対する比が重要である。概ね、これは、組成物中の脂肪族不飽和基(例えば、ビニル[V])の総重量%と、組成物中のケイ素結合水素[H]の総重量%とを計算することによって決定され、水素の分子量を1、ビニルの分子量を27とすると、ビニルに対するケイ素結合水素のモル比は27[H]/[V]である。ポリオルガノハイドロジェンシロキサンは、1:1超~5:1の、シリコーン剥離コーティング組成物中の脂肪族不飽和基に対するケイ素結合水素原子のモル比(SiH:Vi比)を提供するのに十分な量で存在する。
【0027】
(G)ヒドロシリル化反応触媒
シリコーン剥離コーティング組成物中の出発材料(G)は、ヒドロシリル化反応触媒である。この触媒は、出発材料(C)及び(E)中の脂肪族不飽和基と出発材料(F)中のケイ素結合水素原子との間の反応を促進するであろう。当該触媒は、白金族金属を含む。白金族金属は、白金、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、オスミウム、及びイリジウムからなる群から選択され得る。あるいは、白金族金属は、白金であり得る。
【0028】
例えば、(G)ヒドロシリル化反応触媒は、上述の(G1)白金族金属、(G2)そのような金属の化合物、例えば、クロリドトリス(トリフェニルホスファン)ロジウム(I)(Wilkinson触媒)、ロジウムジホスフィンキレート(例えば、[1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]ジクロロジロジウム又は[1,2-ビス(ジエチルホスフィノ)エタン]ジクロロジロジウム)、塩化白金酸(Speier触媒)、塩化白金酸六水和物、二塩化白金、(G3)化合物(G2)と脂肪族不飽和オルガノポリシロキサンとの錯体、又は(G4)マトリックス若しくはコアシェル型構造にマイクロカプセル化された白金族金属化合物であり得る。白金と脂肪族不飽和オルガノポリシロキサンとの錯体としては、1,3-ジエチル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンと白金との錯体(Karstedt触媒)、及びテトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン中のPt(0)錯体(Ashby錯体)が挙げられる。あるいは、ヒドロシリル化反応触媒は、樹脂マトリックス中にマイクロカプセル化された上記のような化合物又は錯体(G5)であり得る。好適な白金含有触媒の具体例としては、六水和物の形態若しくは無水物の形態のいずれかの塩化白金酸、又は塩化白金酸をビニル官能性ポリジメチルシロキサン(例えば、ジビニルテトラメチルジシロキサン)などの脂肪族不飽和オルガノシリコン化合物と反応させることを含む方法によって得られる白金含有触媒、又はRoyの米国特許第6,605,734号に記載されているアルケン-白金-シリル錯体が挙げられる。アルケン-白金-シリル錯体は、例えば、0.015モルの(COD)PtClを、0.045モルのCOD及び0.0612モルのHMeSiClと混合することによって調製され得る(式中、CODは、シクロオクタジエニルを表し、Meは、メチルを表す)。他の例示的なヒドロシリル化反応触媒は、Speierの米国特許第2,823,218号、Ashbyの同第3,159,601号、Lamoreauxの同第3,220,972号、Chalkらの同第3,296,291号、Willingの同第3,419,593号、Modicの同第3,516,946号、Karstedtの同第3,715,334号、Karstedtの同第3,814,730号、Chandraの同第3,928,629号、Leeらの同第3,989,668号、Leeらの同第4,766,176号、Leeらの同第4,784,879号、Togashiの同第5,017,654号、Chungらの同第5,036,117号、及びBrownの同第5,175,325号、並びにTogashiらの欧州特許出願公開第0347895(A)号に記載されている。出発材料(G)に好適なヒドロシリル化反応触媒は市販されており、例えばSYL-OFF(商標)4000触媒及びSYL-OFF(商標)2700は、Dow Silicones Corporation(Midland,Michigan,USA)から入手可能である。
【0029】
出発材料(G)は、1つのヒドロシリル化反応触媒又は上記のヒドロシリル化反応触媒のうちの2つ以上の組み合わせであり得る。組成物中の(G)ヒドロシリル化反応触媒の量は、出発材料(C)、(E)、及び(F)の選択、それらのアルケニル基及びケイ素結合水素原子のそれぞれの含有量、並びにシリコーン剥離コーティング組成物中に存在する(I)ヒドロシリル化反応抑制剤の量を含む様々な要因に依存するが、触媒の量は、SiH及びアルケニル基のヒドロシリル化反応を触媒するのに十分であるか、あるいは触媒の量は、シリコーン剥離コーティング分散液の重量に基づいて、少なくとも0.01ppm、あるいは少なくとも0.05ppm、あるいは少なくとも0.1ppm、あるいは少なくとも0.5ppm、あるいは少なくとも1ppm、あるいは少なくとも170ppmの白金族金属を提供するのに十分である。同時に、触媒の量は、同じ基準で、最高800質量ppm、あるいは最高500質量ppm、あるいは最高200質量ppmの白金族金属を提供するのに十分である。
【0030】
(H)溶媒
シリコーン剥離コーティング分散液の連続相は、任意選択で、溶媒を更に含んでもよい。組成物の流動及びヒドロシリル化反応触媒などの特定の出発材料の導入を促進するために、シリコーン剥離コーティング組成物の調製中に溶媒を添加してもよい。本明細書で使用することができる溶媒は、シリコーン剥離コーティング組成物の出発材料の流動化を助けるが、本質的に出発材料と反応しないものである。溶媒は、出発材料の溶解性及び溶媒の揮発性に基づいて選択してもよい。溶解性とは、溶媒が出発材料を溶解及び/又は分散させるのに十分であることを指す。揮発性とは、溶媒の蒸気圧を指す。溶媒の揮発性が高すぎる(蒸気圧が高すぎる)場合、ヒドロシリル化反応中に気泡が形成される場合があり、この気泡は破裂を引き起こす恐れがある、又は他の方法により反応生成物の特性を弱め、若しくは悪影響を与える恐れがある。しかしながら、溶媒が十分に揮発性でない(蒸気圧が低過ぎる)場合、溶媒が、シリコーン剥離コーティング組成物を硬化させることによって調製されたシリコーン剥離コーティング中に可塑剤として残存する場合がある。
【0031】
好適な溶媒としては、好適な蒸気圧を有するポリオルガノシロキサン、例えば、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、及び他の低分子量ポリオルガノシロキサン、例えば、0.5~1.5cStのDOWSIL(商標)200流体及びDOWSIL(商標)OS流体(これらは、DSCから市販されている)が挙げられる。
【0032】
あるいは、溶媒は有機溶媒を含んでもよい。有機溶媒は、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、若しくはキシレンなどの芳香族系炭化水素、ヘプタン、ヘキサン若しくはオクタンなどの脂肪族炭化水素、又はジクロロメタン、1,1,1-トリクロロエタン、若しくは塩化メチレンなどのハロゲン化炭化水素であってもよい。あるいは、溶媒は、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ヘプタン、及びこれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択されてもよい。
【0033】
溶媒の量は、選択される溶媒の種類、並びにシリコーン剥離コーティング組成物のために選択される他の出発材料の量及び種類を含む様々な要因に依存するであろう。しかしながら、溶媒の量は、シリコーン剥離コーティング組成物中の全ての出発材料の重量に基づいて、1%~99%、あるいは2%~90%の範囲であり得る。例えば混合及び送達を助けるために、組成物の調製中に溶媒を添加してもよい。任意選択で、溶媒の全て又は一部を、組成物を調製した後に除去してもよい。あるいは、シリコーン剥離コーティング分散液の連続相は、最高90重量%の溶媒を含んでもよく、連続相の100重量%までの残部はシリコーン剥離コーティング組成物である。
【0034】
(I)抑制剤
出発材料(I)は、抑制剤を取り除いたことを除いて同じ出発材料を含有する組成物と比べてヒドロシリル化反応を変化させるために使用することができるヒドロシリル化反応抑制剤(抑制剤)である。出発材料(I)は、(I1)アセチレン系アルコール、(I2)シリル化アセチレン系アルコール、(I3)エン-イン化合物、(I4)トリアゾール、(I5)ホスフィン、(I6)メルカプタン、(I7)ヒドラジン、(I8)アミン、(I9)フマラート、(I10)マレアート、(I11)エーテル、(I12)一酸化炭素、(I13)アルケニル官能性シロキサンオリゴマー、及び(I14)これらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択され得る。あるいは、ヒドロシリル化反応抑制剤は、(I1)アセチレン系アルコール、(I2)シリル化アセチレン系アルコール、(I9)フマラート、(I10)マレアート、(I13)一酸化炭素、(I14)これらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択されてもよい。あるいは、抑制剤はアセチレン系アルコールを含んでもよい。
【0035】
アセチレン系アルコールは、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、1-ブチン-3-オール、1-プロピン-3-オール、2-メチル-3-ブチン-2-オール及び3-メチル-1-ブチン-3-オールなどのメチルブチニル、3-メチル-1-ペンチン-3-オール、3-フェニル-1-ブチン-3-オール、4-エチル-1-オクチン-3-オール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、及び1-エチニル-1-シクロヘキサノールなどのエチニルシクロヘキサノール、並びにそれらの組み合わせによって例示される。アセチレン系アルコールは、当該技術分野において既知であり、様々な供給元から市販されており、例えば、Kookootsedesらの米国特許第3,445,420号を参照されたい。あるいは、抑制剤は、シリル化アセチレン系化合物であってもよい。理論に束縛されるものではないが、シリル化アセチレン系化合物を添加すると、シリル化アセチレン系化合物を含有していない、又は上記したものなどの有機アセチレン系アルコール抑制剤を含有する出発材料のヒドロシリル化による反応生成物と比較して、ヒドロシリル化反応から調製される反応生成物の黄変が低減すると考えられる。シリル化アセチレン系化合物は、(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)トリメチルシラン、((1,1-ジメチル-2-プロピニル)オキシ)トリメチルシラン、ビス(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)ジメチルシラン、ビス(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)シランメチルビニルシラン、ビス((1,1-ジメチル-2-プロピニル)オキシ)ジメチルシラン、メチル(トリス(1,1-ジメチル-2-プロピニルオキシ))シラン、メチル(トリス(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ))シラン、(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)ジメチルフェニルシラン、(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)ジメチルヘキセニルシラン、(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)トリエチルシラン、ビス(3-メチル-1-ブチン-3-オキシ)メチルトリフルオロプロピルシラン、(3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オキシ)トリメチルシラン、(3-フェニル-1-ブチン-3-オキシ)ジフェニルメチルシラン、(3-フェニル-1-ブチン-3-オキシ)ジメチルフェニルシラン、(3-フェニル-1-ブチン-3-オキシ)ジメチルビニルシラン、(3-フェニル-1-ブチン-3-オキシ)ジメチルヘキセニルシラン、(シクロヘキシル-1-エチン-1-オキシ)ジメチルヘキセニルシラン、(シクロヘキシル-1-エチン-1-オキシ)ジメチルビニルシラン、(シクロヘキシル-1-エチン-1-オキシ)ジフェニルメチルシラン、(シクロヘキシル-1-エチン-1-オキシ)トリメチルシラン、及びそれらの組み合わせによって例示される。本明細書における抑制剤として有用なシリル化アセチレン系化合物は、当該技術分野において既知の方法によって調製することができ、例えば、Bilgrienらの米国特許第6,677,407号は、酸受容体の存在下でクロロシランと反応させることによって上記のアセチレン系アルコールをシリル化することを開示している。
【0036】
あるいは、抑制剤は、エン-イン化合物、例えば、3-メチル-3-ペンテン-1-イン、3,5-ジメチル-3-ヘキセン-1-イン、及びこれらの組み合わせであってもよい。あるいは、抑制剤は、ベンゾトリアゾールによって例示されるトリアゾールを含んでもよい。あるいは、抑制剤は、ホスフィンを含んでもよい。あるいは、抑制剤は、メルカプタンを含んでもよい。あるいは、抑制剤は、ヒドラジンを含んでもよい。あるいは、抑制剤は、アミンを含んでもよい。アミンは、テトラメチルエチレンジアミン、3-ジメチルアミノ-1-プロピン、n-メチルプロパルギルアミン、プロパルギルアミン、1-エチニルシクロヘキシルアミン、又はそれらの組み合わせによって例示される。あるいは、抑制剤は、フマラートを含んでもよい。フマラートとしては、フマル酸ジエチルなどのフマル酸ジアルキル、フマル酸ジアリルなどのフマル酸ジアルケニル、及びフマル酸ビス-(メトキシメチル)エチルなどのフマル酸ジアルコキシアルキルが挙げられる。あるいは、抑制剤は、マレアートを含んでもよい。マレアートとしては、マレイン酸ジエチルなどのマレイン酸ジアルキル、マレイン酸ジアリルなどのマレイン酸ジアルケニル、及びマレイン酸ビス-(メトキシメチル)エチルなどのマレイン酸ジアルコキシアルキルが挙げられる。あるいは、抑制剤は、エーテルを含んでもよい。
【0037】
あるいは、抑制剤は、一酸化炭素を含んでもよい。あるいは、抑制剤は、アルケニル官能性シロキサンオリゴマーを含んでもよく、これは、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラヘキセニルシクロテトラシロキサン、1,3-ジビニル-1,3-ジフェニル-1,3-ジメチルジシロキサン、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、及びこれらの2つ以上の組み合わせによって例示されるメチルビニルシクロシロキサンなどの環状又は直鎖状であってもよい。上記の抑制剤として有用な化合物は、例えば、Sigma-Aldrich Inc.又はGelest,Inc.から市販されており、当該技術分野において既知であり、例えば、Leeらの米国特許第3,989,667号を参照されたい。本明細書で使用するのに好適な抑制剤は、米国特許出願公開第2007/0099007号の段落[0148]~[0165]に安定剤Eとして記載されているものによって例示される。
【0038】
抑制剤の量は、所望の作業可使時間、使用される特定の抑制剤、並びに触媒の選択及び量を含む様々な要因に依存するであろう。しかしながら、存在する場合、抑制剤の量は、シリコーン剥離コーティング組成物中の全ての出発材料の重量に基づいて、0重量%~1重量%、あるいは0重量%~5重量%、あるいは0.001重量%~1重量%、あるいは0.01重量%~0.5重量%、あるいは0.0025重量%~0.025重量%であってもよい。
【0039】
(J)定着添加剤
出発材料(J)は、任意選択の定着添加剤である。理論に束縛されるものではないが、定着添加剤は、本明細書に記載のシリコーン剥離コーティング分散液から調製されたシリコーン剥離コーティングによる裏張り基材への結合を促進することになると考えられる。
【0040】
好適な定着添加剤としては、シランカップリング剤(メチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリメトキシシリル)プロパン、及びビス(トリメトキシシリルヘキサンなど);並びに当該シランカップリング剤の混合物又は反応混合物が挙げられる。あるいは、定着添加剤は、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、又は3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランであってもよい。
【0041】
例示的な定着添加剤は、米国特許出願公開第2012/0328863号(段落[0091])及び米国特許出願公開第2017/0233612号(段落[0041])など、当該技術分野において既知である。定着添加剤は、市販されている。例えば、SYL-OFF(商標)297、SYL-OFF(商標)SL 9176、及びSYL-OFF(商標)SL 9250は、DSCから入手可能である。他の例示的な定着添加剤としては、(J-1)ビニルトリアセトキシシラン、(J-2)グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、並びに(J-3)(J-1)及び(J-2)の組み合わせが挙げられる。この組み合わせ(J-3)は、混合物及び/又は反応生成物であってもよい。
【0042】
定着添加剤の量は、組成物が適用される基材の種類を含む様々な要因に依存する。しかしながら、定着添加剤の量は、組成物中の全出発材料の合計重量に基づいて、1~5%、あるいは1%~3%、あるいは1.9%~2.1%であってもよい。
【0043】
(II)界面活性剤
上述のシリコーン剥離コーティング分散液は、(II)界面活性剤を更に含む。界面活性剤は、上述のシリコーン剥離コーティング組成物を含む連続相への、同様に上述のイオン性液体及び水を含む水性不連続相の分散液を形成することができる。界面活性剤は、(D)シリコーンポリエーテルを含む。
【0044】
シリコーンポリエーテルは、単位式(D1):(R SiO1/2(R SiO2/2(RSiO2/2(式中、Rは、上記の通りであり、各Rは、独立して選択されたポリエーテル基であり、下付き文字eは、1~500、あるいは1~200、あるいは1~50、あるいは40~50、あるいは10~45であり、下付き文字fは、1~1000、あるいは1~300、あるいは1~40、あるいは1~5、あるいは2~5である)を有する。ポリエーテル基であるRは、式-(DO(DO)(式中、各Dは、2~4個の炭素原子の独立して選択された二価炭化水素基であり、各Dは、2~4個の炭素原子の独立して選択された二価炭化水素基であり、Rは、H又は1~10個の炭素原子のアルキル基からなる群から選択され、下付き文字gは、1~20、あるいは1~3であり、下付き文字hは、1~50、あるいは4~50、あるいは8~40である)を有する。あるいは、Dは、式C2p(式中、下付き文字pは、3~12、あるいは3~6である)を有していてもよい。あるいは、各Dは、C及びCからなる群から選択されてもよい。あるいは、Rは、Hであってもよい。好適な(D)シリコーンポリエーテルは、当該技術分野において既知であり、Soudaらの米国特許第8,877,886号に開示されているものなどの既知の方法によって作製され得る。出発材料(D)に好適なシリコーンポリエーテルは市販されており、例えば、DOWSIL(商標)ES-5612はDSCから市販されている。
【0045】
界面活性剤である出発材料(II)は、任意選択で、共界面活性剤を更に含んでもよい。共界面活性剤は、少なくとも1つの局面で(D1)とは異なる第2のシリコーンポリエーテル、有機ポリエーテル、又はそれらの組み合わせであってもよい。
【0046】
第2のシリコーンポリエーテルは、単位式(D2):式(R SiO1/2(R SiO2/2e’(RSiO2/2f’(式中、R及びRは、上記の通りであり、下付き文字e’及び下付き文字f’は、1分子当たりの二官能性単位の平均数を表し、eが0~500、あるいは0~200、あるいは0~50、あるいは0~45であるような値を有するが、但し、e’<eであり、下付き文字f’は、1~1000、あるいは1~300、あるいは1~40、あるいは1~5、あるいは1~2である)を有し得る。Rは、式-(DO(DO)H(式中、各Dは、2~4個の炭素原子の独立して選択された二価炭化水素基であり、下付き文字gは、1~20、あるいは1~3であり、下付き文字iは、1~50である)を有する。あるいは、各Dは、C及びCからなる群から選択されてもよい。あるいは、下付き文字iは、1~10、あるいは5~10であってもよい。あるいは、単位式(D2)中、下付き文字e’は0であってもよく、下付き文字f’は1であってもよい。式(D2)のシリコーンポリエーテルは市販されており、例えば、XIAMETER(商標)OFX-5211はDSCから市販されている。
【0047】
あるいは、シリコーンポリエーテル共界面活性剤は、ポリオキシエチレン若しくはポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマー単位がシロキサン骨格にグラフトされている熊手型構造を有していてもよく、又はシリコーンポリエーテルは、ABAブロックコポリマー構造(式中、ABA構造のAはポリエーテル部分を表し、Bはシロキサン部分を表す)を有していてもよい。あるいは、SPEは、その中のケイ素原子に結合しているポリエーテル基を有するポリオルガノシリケート樹脂などの樹脂構造を有していてもよい。好適なSPEとしては、DSC製のDOWSIL(商標)OFX-5329 Fluidが挙げられる。他のシリコーンポリエーテル界面活性剤は、当該技術分野において既知であり、市販もされている、例えば、DOWSIL(商標)502W及びDOWSIL(商標)67添加剤は、DSCから市販されている。
【0048】
あるいは、共界面活性剤は、有機ポリエーテルを含んでもよい。好適な有機ポリエーテルは、当該技術分野において既知であり、市販されている。例えば、好適な有機ポリエーテルとしては、DOWFAX(商標)非イオン性界面活性剤、例えば、TDCCから入手可能なDOWFAX(商標)Nシリーズなどの直鎖状EO/POブロックコポリマーが挙げられる。
【0049】
シリコーン剥離コーティング分散物中の(II)界面活性剤の量は、(C)分岐状ポリオルガノシロキサンポリマー及び(E)1分子当たり少なくとも2個の脂肪族不飽和基を有するポリジオルガノシロキサンの選択及び量を含む様々な要因に依存するが、(II)界面活性剤の量は、出発材料(C)及び(E)の合計重量に基づいて0.1重量部~5重量部であり得る。あるいは、(D1)シリコーンポリエーテルの量は、出発材料(C)及び(E)の合計重量に基づいて0.1重量部~5重量部であってもよい。あるいは、共界面活性剤が存在する場合、(D1)シリコーンポリエーテルの量は、出発材料(C)及び(E)の合計重量に基づいて0.1重量部~5重量部未満であってもよい。
【0050】
例えば、反応性希釈剤、芳香剤、防腐剤、着色剤、染料、顔料、酸化防止剤、熱安定剤、難燃剤、流動制御添加剤、殺生物剤、充填剤(増量及び補強充填剤を含む)、界面活性剤、チキソトロープ剤、及びpH緩衝剤を含む他の任意選択の出発材料が、シリコーン剥離コーティング分散液中に存在してもよい。組成物は、任意の形態にあってもよく、更なる組成物に組み込まれてもよい。あるいは、シリコーン剥離コーティング分散液は、微粒子を含まなくてもよいか、又は分散液の0~30重量%などの限られた量の微粒子(例えば、充填剤及び/又は顔料)のみ含有してもよい。理論に束縛されることを望むものではないが、微粒子は、凝集したり、又は他の方法でシリコーン剥離コーティングを形成するために使用されるコータ機器に固着する恐れがあると考えられる。加えて、光透過性が望ましい場合、微粒子は、シリコーン剥離コーティング及びそれを使用して形成された剥離ライナーの光学的特性、例えば、透過性を妨げる恐れがある、及び/又は微粒子は、被着材の接着性に損害を与える恐れがある。
【0051】
シリコーン剥離コーティング分散液は、フルオロオルガノシリコーン化合物を含まなくてもよい。硬化中、フルオロ化合物は、その表面張力が低いため、分散液又はそれを用いて形成されたシリコーン剥離コーティングと、分散液が適用され、シリコーン剥離コーティングが形成される基材との界面、例えば分散液/PETフィルム界面に急速に移動し得ると考えられる。このような移動は、フッ素含有バリアを作製することによって、基材へのシリコーン剥離コーティング(硬化によって調製される)の定着に悪影響を与える恐れがある。バリアを作製することにより、フルオロオルガノシリコーン化合物は、シリコーン剥離コーティング分散液の任意の出発材料が界面で反応することを阻止し、硬化及び/又は帯電防止特性に影響を及ぼし得る。更に、フルオロオルガノシリコーン化合物は、通常、高価である。
【0052】
シリコーン剥離コーティング分散液を形成する方法
上述のシリコーン剥離コーティング分散液は、
(1)(A)イオン性液体を(B)水に溶解させて水溶液を形成することと、
(2)水溶液を、
(C)分岐状ポリオルガノシロキサンポリマー及び
(D)シリコーンポリエーテルを含むシロキサン中間体組成物中に分散させ、それによって分散中間体を形成することと、
(3)分散中間体を、追加の出発材料と合わせることであって、追加の出発材料が、
(E)1分子当たり少なくとも2個の脂肪族不飽和基を有するポリジオルガノシロキサン、
(F)1分子当たり少なくとも3個のケイ素結合水素原子を有するポリオルガノハイドロジェンシロキサン、
(G)ヒドロシリル化反応触媒、
任意選択で、(H)溶媒、
任意選択で、(I)ヒドロシリル化反応抑制剤、及び
任意選択で、(J)定着添加剤を含む、合わせることと、を含む方法によって調製され得る。
理論に束縛されるものではないが、分散中間体が工程(2)で調製される上述の添加順序は、安定な分散液の調製を容易にし、帯電防止添加剤をシリコーン剥離コーティング組成物と組み合わせると、以下の比較例4に示すように、硬化して所望の耐性を有するシリコーン剥離コーティングを形成しない組成物が形成されると考えられる。
【0053】
工程(1)は、バッチ、半バッチ、又は連続機器において、室温又は高温での混合などの任意の簡便な手段によって実施され得る。工程(1)における混合は、例えば、チェンジカンミキサ、ダブル遊星形ミキサ、円錐スクリューミキサ、リボンブレンダー、ダブルアーム又はシグマブレードのミキサなどの中/低剪断によるバッチ混合機器を使用して行うことができる。あるいは、高剪断及び/又は高速分散機を有するバッチ機器を、工程(1)、工程(2)、及び/又は工程(3)で使用することができ、これらとしては、Charles Ross & Sons(NY)、Hockmeyer Equipment Corp.(NJ)によって作製される機器、バッチ混合機器(例えば、Speedmixer(商標)の商品名で販売されているもの)、及びバンバリー型(CW Brabender Instruments Inc.、NJ)及びヘンシェル型(Henschel mixers America、TX)を含む、高剪断作用を行うバッチ機器のような機器が挙げられる。連続ミキサ/コンパウンダの実際の例としては、Krupp Werner&Pfleiderer Corp(Ramsey、NJ)及びLeistritz(NJ)によって製造されているものなどの、単軸押出機、二軸押出機、及び多軸押出機、共回転押出機、二軸逆回転押出機、二段階押出機、二軸回転式連続ミキサ、動的又は静的ミキサ、又はこれらの機器の組み合わせなどの押出機が挙げられる。工程(2)及び(3)は、室温で実施されてもよい。
【0054】
剥離ライナーの調製のための方法
上記の通り調製されたシリコーン剥離コーティング分散液を使用して、剥離ライナーを調製することができる。剥離ライナーは、
任意選択で、(I)裏張り基材の表面を処理することと、
(II)上記のシリコーン剥離コーティング分散液を裏張り基材の表面上にコーティングすることと、
(III)シリコーン剥離コーティング分散液を乾燥させてフィルムを形成することと、
(IV)フィルムを硬化させて、裏張り基材の表面上にシリコーン剥離コーティングを形成することと、を含む方法によって調製され得る。
【0055】
工程(I)において、裏張り基材(基材)は限定されない。基材は、熱硬化性及び/又は熱可塑性であってもよいプラスチックを含み得る。しかしながら、基材は、あるいは、ガラス、金属、セルロース(例えば、紙)、厚紙、板紙、ポリマー材料、又はそれらの組み合わせであってもよく、又は含んでもよい。好適な基材の具体例としては、クラフト紙、ポリエチレンコーティングクラフト紙(PEKコーティング紙)、感熱紙、普通紙などの紙基材;ポリアミド(polyamide、PA)などのポリマー基材;ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate、PET)、ポリブチレンテレフタレート(polybutylene terephthalate、PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(polytrimethylene terephthalate、PTT)、ポリエチレンナフタレート(polyethylene naphthalate、PEN)、液晶ポリエステルなどのポリエステル;ポリエチレン(polyethylene、PE)、ポリプロピレン(polypropylene、PP)、ポリブチレンなどのポリオレフィン;スチレン樹脂;ポリオキシメチレン(polyoxymethylene、POM);ポリカーボネート(polycarbonate、PC);ポリメチレンメタクリレート(polymethylenemethacrylate、PMMA);ポリ塩化ビニル(polyvinyl chloride、PVC);ポリフェニレンスルフィド(polyphenylene sulfide、PPS);ポリフェニレンエーテル(polyphenylene ether、PPE);ポリイミド(polyimide、PI);ポリアミドイミド(polyamideimide、PAI);ポリエーテルイミド(polyetherimide、PEI);ポリスルホン(polysulfone、PSU);ポリエーテルスルホン;ポリケトン(polyketone、PK);ポリエーテルケトン;ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol、PVA);ポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketone、PEEK);ポリエーテルケトンケトン(polyetherketoneketone、PEKK);ポリアリレート(polyarylate、PAR);ポリエーテルニトリル(polyethernitrile、PEN);フェノール樹脂;フェノキシ樹脂;トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セロハンなどのセルロース;ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素化樹脂;ポリスチレン型、ポリオレフィン型、ポリウレタン型、ポリエステル型、ポリアミド型、ポリブタジエン型、ポリイソプレン型、フルオロ型などの熱可塑性エラストマー;並びにこれらのコポリマー及び組み合わせが挙げられる。
【0056】
工程(I)において、剥離コーティング分散液を適用する前に基材の表面を処理することは、プラズマ処理又はコロナ放電処理などの任意の簡便な手段によって実施してもよい。あるいは、基材は、プライマを適用することによって処理することができる。工程(I)は、任意選択であり、存在していなくてもよい。
【0057】
シリコーン剥離コーティング分散液は、例えば、噴霧、ドクターブレード、浸漬、スクリーン印刷などの任意の簡便な手段によって、又はロールコータ、例えば、オフセットウェブコータ、キスコータ、若しくはエッチングされたシリンダーコータによって基材に適用することができる。
【0058】
工程(II)において、シリコーン剥離コーティング分散液は、上記のものなどの任意の基材に適用することができる。あるいは、シリコーン剥離コーティング組成物は、ポリマーフィルム基材、例えばポリエステル、特にポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、又はポリスチレンのフィルムに適用してもよい。あるいは、シリコーン剥離コーティング分散液は、プラスチックコート紙、例えば、ポリエチレンでコーティングされた紙、グラシン、スーパーカレンダー紙、又はクレーコートクラフト紙を含む紙基材に適用してもよい。剥離コーティング組成物は、あるいは、金属箔基材、例えばアルミニウム箔に適用することができる。
【0059】
工程(III)は、(B)水、及び存在する場合には(H)溶媒の全て又は一部分を除去するのに十分な時間50℃~100℃で加熱するなどの任意の従来の手段によって実施することができる。方法は、シリコーン剥離コーティング組成物を硬化させて、基材の表面上にシリコーン剥離コーティングを形成することを更に含んでもよい。硬化は、100℃~200℃で加熱するなどの任意の従来の手段によって実施することができる。
【0060】
製造コータ条件下で、硬化は、120℃~150℃の空気温度で、1秒~6秒、あるいは1.5秒~3秒の滞留時間で行うことができる。加熱は、オーブン、例えば、空気循環オーブン若しくはトンネル炉内で、又は加熱されたシリンダの周りにコーティングされた基材を通すことによって実施することができる。
【0061】
図1は、上記の通り作製することができる積層物品(100)の部分断面図を示す。積層物品(100)は、PETフィルム裏張り基材(101)の表面上に帯電防止シリコーン剥離コーティング(102)を有する裏張り基材(101)で構成された剥離ライナーを有する。第2のPETフィルム基材(104)の表面上の接着剤(103)は、剥離ライナーによって保護され、この場合、帯電防止シリコーン剥離コーティング(102)の表面は接着剤(103)の表面に接触する。
【実施例
【0062】
以下の実施例は、当業者に本発明を例解するために提示されるものであり、特許請求の範囲に記載の本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。これらの実施例で使用した出発材料を表1に記載する。
【0063】
【表1】
【0064】
DOWSIL(商標)、SYL-OFF(商標)、及びXIAMETER(商標)のブランドの出発材料は、DSCから市販されている。リチウム塩は、Monils Chemical Engineering Science & Technology(Shanghai)Co.,Ltd.から購入した。トルエンは、Sinopharm Chemical Reagent Co.LTD.から購入した。帯電防止添加剤2及び3もMonils Chemical Engineering Science & Technology(Shanghai)Co.,Ltd.から購入した。
【0065】
この参考例1では、以下の通りシリコーン剥離コーティング分散液を調製した:
(1)激しく撹拌しながら帯電防止添加剤を水に溶解させることによって水溶液を調製した。
(2)DOWSIL(商標)2-7757及びDOWSIL(商標)ES-5612をSpeedMixer(3500rpm、60秒)によって混合して、シロキサン中間体組成物を形成した。
(3)SpeedMixer(3500rpm、60秒)によって、水溶液をシロキサン中間体組成物に徐々に(例えば、2g、2g、2g、3g、3g、3g、3gの順序で)ブレンドした。得られた分散中間体は、最高40%の帯電防止添加剤含有量を有する白色クリームの形態で得られた。帯電防止添加剤のより少ない分散中間体を作製するために、不連続(内部)相中の帯電防止添加剤の濃度をそれに応じて低下させてもよい。
(4)得られた分散中間体を、SpeedMixer(3500rpm、60秒)によってSYL-OFF(商標)7226と混合した。混合物をトルエンで希釈して、90%トルエンを含む組成物を得た。SYL-OFF(商標)297定着添加剤及びSYL-OFF(商標)4000触媒を順次添加及び混合して(3500rpm、60秒)、シリコーン剥離コーティング分散液を形成した。使用した各出発材料の量を以下の表2及び3に示す。
【0066】
この参考例2では、参考例1に従って調製したシリコーン剥離コーティング分散液を、マイヤーロッド(#6)を用いて、0.6~0.8g/m-2のコーティング重量に相当する10cm秒-1の速度で、PETフィルム((210cm×297cm、50μm、コロナ処理済み)上にコーティングした。次いで、得られたフィルムを乾燥させ、140℃で30秒間加熱することによって硬化させ、次いで室温まで冷却し、それによって、PETフィルムの表面上にシリコーン剥離コーティングを含む剥離ライナーを形成した。
【0067】
この参考例3では、参考例2に記載の通り調製した各シリコーン剥離コーティングの表面抵抗を、デジタル表面抵抗計(TECMAN、TM385、測定範囲:10~1012Ωsq-1、精度:±10%)によって室温(20~25℃)で測定した。表面抵抗の測定は、各シリコーン剥離コーティング上の3つの異なる位置においてトリプリケートで行った。参照として裸のPETフィルムを用いて、X線蛍光分光計(XRF、Oxford Lab-X Supreme8000)によって、コーティング重量(coating weight、CW)、すなわち、シリコーン剥離コーティングの面密度を求めた。試験前にシリコーン剥離コーティングを7日間又は30日間エージングした。
【0068】
この参考例4では、剥離ライナーからの剥離力を測定するために、180度剥離試験を使用して室温における剥離力(release force at room temperature、RF-RT)を評価した。Tesa7475標準テープを(硬化)シリコーン剥離コーティング上に積層し、積層したサンプル上に20g/cmの負荷重量を置き、RT(25℃の室温)に20時間放置した。20時間後、負荷重量を外して、サンプルを30分間静置した。次いで、FINAT試験方法No.10(FINAT Technical Handbook 7th edition,2005)を使用して、ChemInstrumentsのAR-1500によって剥離力を試験した。
【0069】
剥離ライナーからの剥離力を測定するために、180度剥離試験を使用して、70℃でエージングした後の剥離力(RF-70℃エージング)を評価した。Tesa7475標準テープを(硬化)シリコーン剥離コーティング上に積層し、積層したサンプル上に20g/cmの負荷重量を置き、70℃で20時間放置した。20時間後、負荷重量を外して、サンプルを30分間静置した。次いで、FINAT試験方法No.10(FINAT Technical Handbook 7th edition,2005)を使用して、ChemInstrumentsのAR-1500によって剥離力を試験した。
【0070】
参考例3において上記の通りコート重量を評価し、その後、摩耗試験機(Elcometer 1720)を使用して30サイクル/分の速度で各サンプルを30サイクル摩擦した。相対的な定着性能を測定するために、摩擦落ち後のコート重量を再び上記のように評価した。(摩擦落ち後のCW)/(摩擦落ち前のCW)×100%として定着を算出した。
【0071】
【表2】
【0072】
【表3】
【0073】
比較例1及び5(CE1、CE5)は、帯電防止添加剤を含まないシリコーン剥離コーティング組成物から調製されたシリコーン剥離コーティングが、表2の表面抵抗値>1012Ω sq-1によって示されるように、試験した条件下で絶縁性であり、したがって静電荷を放散させることができないことを示した。
【0074】
比較例2及び3(CE2、CE3)は、従来の帯電防止添加剤([BMIM][TFSI])及び([MeBuN][TFSI])が、これらの従来の帯電防止添加剤を含有するシリコーン剥離コーティング組成物から調製されたシリコーン剥離コーティングに十分な帯電防止効果を提供しなかったことを示した。試験した条件下において、CE1及びCE2の両方の表面抵抗値は、表2に示すように1012Ωsq-1超であった。理論に束縛されるものではないが、不十分な帯電防止効果は、シリコーン剥離コーティング組成物への従来の帯電防止添加剤の非混和性に起因していたと考えられる。
【0075】
比較例4(CE4)は、リチウム塩をシリコーン剥離コーティング組成物に直接ブレンドする米国特許出願公開第2020/0048508(A1)号に記載の方法に従って調製した。得られたシリコーン剥離コーティングは低い抵抗値を有しており、このことは、(実施例において)本明細書に記載の通り調製されたシリコーン剥離コーティング分散液が、試験した条件下で優れた性能を有していたことを示した。
【0076】
実施例1及び2(IE1、IE2)は、それぞれ、10%及び20%の帯電防止添加剤1を含有し、フィルムを室温で数日間放置した後表面抵抗が数桁減少することを示した。
【0077】
実施例3(IE3)は、30%の帯電防止添加剤1を含有し、30日後に10Ωsq-1の表面抵抗を示した。大量の帯電防止添加剤1は、シリコーン剥離コーティングの外観に影響を与える可能性があり、したがって、このシリコーン剥離コーティング組成物は、透明なシリコーン剥離コーティングを必要としない用途における使用により好適なものとする。
【0078】
実施例4(IE4)は、界面活性剤XIAMETER(商標)OFX-5211をIE2のシリコーン剥離コーティング組成物に添加しても、表2の比較例の全ての表面抵抗よりも低い表面抵抗≦1011Ωsq-1を有するシリコーン剥離コーティングが依然として提供されたことを示した。
【0079】
IE5、IE6、IE7:帯電防止剤1が水相の40%を占めていたIE1~IE4と比較して内相中の帯電防止剤の濃度を低下させることによって、シリコーン中水型エマルジョン中の帯電防止剤1の割合を20%に減少させた。同量の水相を他の出発材料と合わせた場合、帯電防止剤1の量は半減した。結果として、10%の帯電防止添加剤1(IE5、IE6)では10Ωsq-1の表面抵抗が記録された。試験した条件下では、共界面活性剤(XIAMETER(商標)OFX-5211)を添加しても初期抵抗は変化しなかったが、室温でエージングした後の抵抗に影響を与えた。表面抵抗は、2%の共界面活性剤(IE6)の追加によって7日後から10Ωsq-1に減少した。帯電防止剤1の含有量を更に減少させると、試験した条件下で初期導電率(IE7)が低下した。
【0080】
解決されるべき課題
嵩高い置換基を有する大きなイオンを含むイオン性液体、特にリチウム塩は、帯電防止剤として有用であるが、非極性ポリオルガノシロキサンとの混和性が低い。したがって、イオン性液体は、ポリオルガノシロキサンマトリックスから分離する傾向があり、これは、米国特許出願公開第2020/0048508(A1)号に開示されているものなどのポリオルガノシロキサンマトリックス及びイオン性液体を含有する組成物から調製されたシリコーン剥離コーティングにおいて構造的欠陥及び外観上の欠陥を引き起こし得る。加えて、イオン性液体の解離度及びイオン移動度が非極性マトリックスにおいて制限され、その結果イオン伝導率が制限される。リチウム塩は、シリコーン剥離コーティング中の帯電防止添加剤として以前から使用されているが、これは、一部の用途についてはシリコーン剥離コーティングに帯電防止特性を提供するのに望ましいものよりも高い1012Ωsq-1超の表面抵抗を達成することができる。
【0081】
産業上の利用可能性
本シリコーン剥離コーティング分散液は、水溶性イオン性液体及びシリコーン剥離コーティング組成物を組み込む。上記の実施例に示されるように、シリコーン剥離コーティング分散液から形成されたフィルムを乾燥及び硬化させて、試験条件下で7~30日後に≦1011Ωsq-1の表面抵抗を有するシリコーン剥離コーティングを形成することができる。シリコーン剥離コーティングを調製するために本明細書に記載されるシリコーン剥離コーティング分散液を使用して、表面抵抗を1桁以上改善する(すなわち、低下させる)ことができる。
【0082】
用語の定義及び使用
全ての量、比及び百分率は、特に指示しない限り、重量に基づく。組成物中の全ての出発材料の量は、100重量%の総計となる。発明の概要及び要約は、参照により本明細書に組み込まれる。冠詞「a」、「an」、及び「the」は各々、明細書の文脈によって特に指示されない限り、1つ以上を指す。単数形は、別途記載のない限り、複数形を含む。用語「含むこと(comprising)」及びその派生語、例えば「含む(comprise)」及び「含む(comprises)」は、本明細書において、それらの最も広い意味で、「含むこと(including)」、「含む(include)」、「から本質的になる(consist(ing)essentially of)」、及び「からなる(consist(ing)of))という見解を意味し、包含するように使用されている。実例を列記する「例えば(for example)」「例えば(e.g.)」、「例えば(such as)」及び「が挙げられる(including)」の使用は、列記された例のみに限定しない。したがって、「例えば(for example)」又は「例えば/など(such as)」は、「例えば、それらに限定されないが(for example,but not limited to)」又は「例えば、それらに限定されないが(such as,but not limited to)」を意味し、他の類似した、又は同等の例を包含する。
【0083】
添付の特許請求の範囲は、「発明を実施するための形態」を表現するために、かつそこに記載される特定の化合物、組成物、又は方法に限定されず、添付の特許請求の範囲の範疇の特定の実施形態間で異なり得ることを理解されたい。様々な実施形態の特定の特徴又は態様を説明するための本明細書に依拠する任意のマーカッシュ群に関して、全ての他のマーカッシュ要素から独立したそれぞれのマーカッシュ群の各要素から、異なる、特別な、かつ/又は予期しない結果が得られる可能性がある。マーカッシュ群の各要素は、添付の特許請求の範囲の範囲内で、特定の実施形態に、個々に及び又は組み合わされて依拠され得、十分なサポートを提供する。
【0084】
本明細書で使用される略語を、以下の表4に定義する。
【0085】
【表4】
【0086】
本発明の実施形態
第1の実施形態では、シリコーン剥離コーティング分散液を作製する方法は、
(1)(A)イオン性液体を(B)水に溶解させて水溶液を形成することであって、イオン性液体がリチウム塩を含み、
(A)イオン性液体及び(B)水が、水溶液中に2:1~1:2の重量比(A):(B)で存在する、形成することと、
(2)水溶液をシロキサン中間体組成物中に分散させることであって、シロキサン中間体組成物が、
(C)単位式:(R SiO1/2(R SiO1/2(RSiO2/2(R SiO2/2(SiO4/2)(式中、各Rは、脂肪族不飽和を含まない独立して選択された一価炭化水素基であり、各Rは、独立して選択された脂肪族不飽和一価炭化水素基であり、下付き文字a及びbは、1分子当たりの単官能性単位の平均数を表し、下付き文字c及びは、1分子当たりの二官能性単位の平均数を表し、a、b、c、及びdは、2≧a≧0、4≧b≧0、(a+b)=4、4≧c≧0、995≧d≧4であるような平均値を有し、(a+b+c+d)は、室温で回転粘度測定法によって測定された170mPa・s超の粘度を付与するのに十分な値を有する)の分岐状ポリオルガノシロキサンポリマー、及び
(D)単位式(D1)(R SiO1/2(R SiO2/2(RSiO2/2(式中、下付き文字eは、1~50であり、下付き文字fは、1~5であり、Rは、上記の通りであり、Rは、H及びアルキル基からなる群から選択され、Rは、式-(DO(DO)(式中、各Dは、2~4個の炭素原子の二価炭化水素基であり、各Dは、独立して選択された2~4個の炭素原子の二価炭化水素基であり、下付き文字gは、1~20であり、下付き文字hは、1~50である)のポリエーテル基である)
を含む、分散させることと、
(3)分散中間体を、追加の出発材料と合わせることであって、追加の出発材料が、
(E)1分子当たり少なくとも2個の脂肪族不飽和基を有するポリジオルガノシロキサンであって、単位式(R SiO1/2(R SiO2/2(式中、R及びRは、上記の通りであり、下付き文字jは、1分子当たりの二官能性単位の平均数を表し、10,000≧j≧100である)を有する、(E)ポリジオルガノシロキサン、
(F)1分子当たり少なくとも3個のケイ素結合水素原子を有するポリオルガノハイドロジェンシロキサンであって、式(R HSiO1/2(R SiO1/2(RHSiO2/2(R SiO2/2(式中、Rは、上記の通りであり、下付き文字k及びmは、1分子当たりの単官能性単位の平均数を表し、下付き文字n及びoは、1分子当たりの二官能性単位の平均数を表し、下付き文字k、m、n、及びoは、2≧k≧0、1≧m≧0、(k+m)=2、n>0、o≧0、(k+n)≧3、かつ8≦(k+m+n+o)≦400であるような値を有する)を有する、(F)ポリオルガノハイドロジェンシロキサン、及び
(G)ヒドロシリル化反応触媒、を含む、合わせることと、を含む。
【0087】
第2の実施形態では、第1の実施形態の方法において、工程(III)における追加の出発材料は、(H)溶媒、(I)ヒドロシリル化反応抑制剤、(J)定着添加剤、又は(H)、(I)、及び(J)のうちの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される出発材料を更に含む。
【0088】
第3の実施形態では、第1の実施形態又は第2の実施形態の方法は、工程(II)において共界面活性剤を添加することを更に含む。
【0089】
第4の実施形態では、第1~第3の実施形態のいずれか1つの方法において、(A)イオン性液体は、
(A1)及び(A2)の合計重量に基づいて90重量%の(A1)トリフルオロメチルスルホン酸リチウムと、
(A1)及び(A2)の合計重量に基づいて10重量%の(A2)リチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドと、を含み、それによって、水溶液を形成する。
図1
【手続補正書】
【提出日】2024-03-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーン剥離コーティング分散液であって、
(I)ヒドロシリル化反応硬化性シリコーン剥離コーティング組成物を含む連続相と、
(II)界面活性剤と、
(III)前記連続相中に分散した水性不連続相であって、
(A)イオン性液体と、
(B)水と、
を含み、前記イオン性液体が前記水に溶解している、水性不連続相と、を含む、シリコーン剥離コーティング分散液。
【請求項2】
前記シリコーン剥離コーティング組成物が、
(C)単位式:(R SiO1/2(R SiO1/2(RSiO2/2(R SiO2/2(SiO4/2)(式中、各Rは、脂肪族不飽和を含まない独立して選択された一価炭化水素基であり、各Rは、独立して選択された脂肪族不飽和一価炭化水素基であり、下付き文字a及びbは、1分子当たりの単官能性単位の平均数を表し、下付き文字c及びは、1分子当たりの二官能性単位の平均数を表し、a、b、c、及びdは、2≧a≧0、4≧b≧0、(a+b)=4、4≧c≧0、995≧d≧4であるような平均値を有し、(a+b+c+d)は、室温で回転粘度測定法によって測定された170mPa・s超の粘度を付与するのに十分な値を有する)の分岐状ポリオルガノシロキサンポリマー、
(E)1分子当たり少なくとも2個の脂肪族不飽和基を有するポリジオルガノシロキサン、
((C)前記分岐状ポリオルガノシロキサンポリマーの量及び(E)前記1分子当たり少なくとも2個の脂肪族不飽和基を有するポリジオルガノシロキサンの量は、合わせて100重量部の総計となる)、
(F)1:1超~5:1の、前記剥離コーティング組成物中の脂肪族不飽和基に対するケイ素結合水素原子のモル比(SiH:Vi比)を提供するのに十分な量の、1分子当たり少なくとも3個のケイ素結合水素原子を有するポリオルガノハイドロジェンシロキサン、
(G)シリコーン前記剥離コーティング分散液の重量に基づいて1ppm~500ppmの白金族金属を提供するのに十分なヒドロシリル化反応触媒、
任意選択で、(G)ヒドロシリル化反応抑制剤、及び
任意選択で、(J)定着添加剤を含む、請求項1に記載のシリコーン剥離コーティング分散液。
【請求項3】
前記連続相が、最高90重量%の溶媒を更に含み、前記連続相の100重量%までの残部が、前記シリコーン剥離コーティング組成物である、請求項1に記載のシリコーン剥離コーティング分散液。
【請求項4】
(C)前記分岐状ポリオルガノシロキサンポリマーが、式:[R Si-(O-SiR -O](4-w)-Si-[O-(R SiO)SiR (式中、R及びRは、上記の通りであり、下付き文字v、w、及びxは、200≧v≧1、2≧w≧0、かつ200≧x≧1であるような値を有する)を有する、請求項2に記載のシリコーン剥離コーティング分散液。
【請求項5】
(E)前記ポリジオルガノシロキサンが、単位式(R SiO1/2(R SiO2/2(式中、R及びRは、上記の通りであり、下付き文字jは、1分子当たりの二官能性単位の平均数を表し、10,000≧j≧100である)を有する、請求項2に記載のシリコーン剥離コーティング分散液。
【請求項6】
(F)前記ポリオルガノハイドロジェンシロキサンが、単位式(R HSiO1/2(R SiO1/2(RHSiO2/2(R SiO2/2(式中、Rは、上記の通りであり、下付き文字k及びmは、1分子当たりの単官能性単位の平均数を表し、下付き文字n及びoは、1分子当たりの二官能性単位の平均数を表し、下付き文字k、m、n、及びoは、2≧k≧0、1≧m≧0、(k+m)=2、n>0、o≧0、(k+n)≧3、かつ8≦(k+m+n+o)≦400であるような値を有する)を有する、請求項2に記載のシリコーン剥離コーティング分散液。
【請求項7】
各Rが、独立して、メチル及びフェニルからなる群から選択され、各Rが、独立して、ビニル、アリル、及びヘキセニルからなる群から選択される、請求項2に記載のシリコーン剥離コーティング分散液。
【請求項8】
(II)前記界面活性剤が、(D)シリコーンポリエーテルを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のシリコーン剥離コーティング分散液。
【請求項9】
(D)前記シリコーンポリエーテルが、単位式(D1):(R SiO1/2(R SiO2/2(RSiO2/2(式中、下付き文字eは、1~50であり、下付き文字fは、1~5であり、Rは、上記の通りであり、Rは、H及びアルキル基からなる群から選択され、各Rは、式-(DO(DO)(式中、各Dは、2~4個の炭素原子の独立して選択された二価炭化水素基であり、各Dは、2~4個の炭素原子の独立して選択された二価炭化水素基であり、下付き文字gは、1~20であり、下付き文字hは、1~50である)のポリエーテル基である)を有する、請求項8に記載のシリコーン剥離コーティング分散液。
【請求項10】
共界面活性剤を更に含み、前記共界面活性剤が、単位式(D2):(R SiO1/2(R SiO2/2e’(RSiO2/2f’(式中、Rは、上記の通りであり、下付き文字e’は、0~50であるが、但しe’<eであり、下付き文字f’は、1~5であり、Rは、式-(DO(DO)H(式中、Dは、2~4個の炭素原子の二価炭化水素基であり、下付き文字iは、1~50である)を有する)を有する、請求項9に記載のシリコーン剥離コーティング分散液。
【請求項11】
(A)前記イオン性液体が、
(A1)及び(A2)の合計重量に基づいて90重量%の(A1)トリフルオロメチルスルホン酸リチウムと、
(A1)及び(A2)の合計重量に基づいて10重量%の(A2)リチウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドと、を含み、それによって、水溶液を形成し、
(A)前記イオン性液体及び(B)前記水が、前記水性不連続相中に2:1~1:2の重量比(A):(B)で存在する、請求項1~7のいずれか一項に記載のシリコーン剥離コーティング分散液。
【請求項12】
請求項2~7のいずれか一項に記載のシリコーン剥離コーティング分散液を形成するための方法であって、前記方法が、
(1)(A)前記イオン性液体を(B)前記水に溶解させて水溶液を形成することと、
(2)前記水溶液を、
(C)分岐状ポリオルガノシロキサンポリマー及び
(D)シリコーンポリエーテルを含むシロキサン中間体組成物中に分散させ、それによって分散中間体を形成することと、
(3)前記分散中間体を、追加の出発材料と合わせることであって、前記追加の出発材料が、
(E)1分子当たり少なくとも2個の脂肪族不飽和基を有するポリジオルガノシロキサン、
(F)1分子当たり少なくとも3個のケイ素結合水素原子を有するポリオルガノハイドロジェンシロキサン、
(G)ヒドロシリル化反応触媒、
任意選択で、(H)溶媒、
任意選択で、(I)ヒドロシリル化反応抑制剤、及び
任意選択で、(J)定着添加剤を含む、合わせることと、を含む、方法。
【請求項13】
剥離ライナーを調製するための方法であって、前記方法が、
任意選択で、(I)基材の表面を処理することと、
(II)請求項1~7のいずれか一項に記載のシリコーン剥離コーティング分散液を前記基材の前記表面上にコーティングすることと、
(III)前記シリコーン剥離コーティング分散液を乾燥させてフィルムを形成することと、
(IV)前記フィルムを硬化させて、前記基材の前記表面上にシリコーン剥離コーティングを形成することと、を含む、方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法によって調製された、剥離ライナー。
【国際調査報告】