(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-18
(54)【発明の名称】リチウムイオン電池用のシリコン-ポリマー系複合アノード、およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/38 20060101AFI20240910BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20240910BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20240910BHJP
H01M 4/485 20100101ALI20240910BHJP
H01M 4/48 20100101ALI20240910BHJP
H01M 10/0569 20100101ALI20240910BHJP
H01M 10/0568 20100101ALI20240910BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20240910BHJP
H01G 11/86 20130101ALI20240910BHJP
H01G 11/06 20130101ALI20240910BHJP
H01G 11/30 20130101ALI20240910BHJP
H01G 11/24 20130101ALI20240910BHJP
H01G 11/68 20130101ALI20240910BHJP
【FI】
H01M4/38 Z
H01M4/36 A
H01M4/58
H01M4/485
H01M4/36 C
H01M4/48
H01M10/0569
H01M10/0568
H01M10/052
H01G11/86
H01G11/06
H01G11/30
H01G11/24
H01G11/68
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508323
(86)(22)【出願日】2022-08-10
(85)【翻訳文提出日】2024-04-08
(86)【国際出願番号】 US2022039923
(87)【国際公開番号】W WO2023018775
(87)【国際公開日】2023-02-16
(32)【優先日】2021-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518343040
【氏名又は名称】ノームズ テクノロジーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100174089
【氏名又は名称】郷戸 学
(74)【代理人】
【識別番号】100186749
【氏名又は名称】金沢 充博
(74)【代理人】
【識別番号】100186749
【氏名又は名称】金沢 充博
(72)【発明者】
【氏名】モガンティー、シュリヤ、エス.
(72)【発明者】
【氏名】ヴァイディヤ、ルトヴィク
(72)【発明者】
【氏名】チュー、シャオジン
【テーマコード(参考)】
5E078
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5E078AA05
5E078AB06
5E078BA30
5E078BA31
5E078DA06
5E078FA12
5E078LA02
5H029AJ14
5H029AK01
5H029AK03
5H029AK05
5H029AL11
5H029AM02
5H029AM07
5H029CJ02
5H029CJ08
5H029CJ12
5H029CJ22
5H029CJ28
5H029HJ01
5H029HJ02
5H029HJ05
5H029HJ14
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA02
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA11
5H050CB11
5H050EA23
5H050FA17
5H050FA18
5H050GA02
5H050GA10
5H050GA12
5H050GA22
5H050GA27
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA05
5H050HA14
(57)【要約】
2以上の異なる分子量(MW)バージョンの同一ポリマーを有するシリコン-ポリマー複合アノード、そのアノードの製造方法、およびそのアノードを含む電気化学エネルギー貯蔵デバイスが開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学エネルギー貯蔵デバイスのための、シリコンと少なくとも1種のポリマー材料とを備えたアノード活物質を製造する方法であって、
a)シリコン粒子と少なくとも2つの異なる分子量バージョンのポリマーを混合して混合物を形成し;
b)前記混合物を集電体上にコーティングして、コーティングされた集電体を形成し;
C)前記コーティングされた集電体に温度処理を施す、ことを備える、方法。
【請求項2】
前記ポリマーがポリアクリロニトリルである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも2つの異なる分子量バージョンのポリマーが、1000~85000の範囲の分子量を有する低分子量バージョンのポリマーと、90000~5000000の範囲の分子量を有する高分子量バージョンのポリマーと、を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記高分子量バージョンのポリマーに対する前記低分子量バージョンのポリマーの比率が、1:1~1:10である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記高分子量バージョンのポリマーに対する前記低分子量バージョンのポリマーの比率が、1:3~1:5である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記混合物が、略30重量%~略90重量%のシリコン粒子と、略10重量%~略40重量%のポリマーとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記コーティングされた集電体に温度処理を施すことは、前記コーティングされた集電体を不活性雰囲気中で略150℃~略600℃の範囲の温度に加熱することを備える、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記コーティングされた集電体を加熱することは、前記コーティングされた集電体を、前記低分子量バージョンのポリマーを溶融させるのに十分な第1温度で加熱し、次いで、前記コーティングされた集電体を、前記高分子量バージョンのポリマーを溶融させるのに十分な第2温度で加熱すること、を備える、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ステップa)の後で、かつステップb)の前に、前記混合物に溶媒を添加して、前記シリコン粒子および前記少なくとも2つの異なる分子量バージョンのポリマーを分散させることをさらに含み、前記溶媒は、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホン(DMSO
2)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、エチレンカーボネート(EC)、およびプロピレンカーボネート(PC)を備える群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
ステップb)の後で、かつステップc)の前に、前記銅集電体にコーティングされた前記混合物から前記溶媒を除去することをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ステップc)が、前記銅集電体にコーティングされた前記混合物から溶剤を除去する、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記シリコン粒子のサイズが略1nm~略100μmの範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
複数の活物質粒子と、低分子量バージョンおよび高分子量バージョンのポリマーと、を有するアノードであって、前記複数の活物質粒子のそれぞれが略1nm~略100μmの粒径を有し、前記複数の活物質粒子が前記低分子バージョンのポリマーによって囲まれているアノードと、
カソードと、
少なくとも1つのリチウム塩を含む電解質と、を備える、電気化学エネルギー貯蔵装置。
【請求項14】
前記複数の活物質粒子がシリコン粒子である、請求項13に記載の電気化学エネルギー貯蔵デバイス。
【請求項15】
前記低分子量バージョンのポリマーが、1つ以上の前記活物質粒子を封入して、低分子量バージョンポリマー封入活物質粒子を形成し、この低分子量バージョンポリマー封入活物質粒子が前記高分子量バージョンのポリマーによってさらに封入される、請求項13に記載の電気化学エネルギー貯蔵デバイス。
【請求項16】
前記ポリマーがポリアクリロニトリルである、請求項13に記載の電気化学エネルギー貯蔵デバイス。
【請求項17】
前記カソードが、リチウム金属酸化物、スピネル、カンラン石、炭素コーティングカンラン石、酸化バナジウム、過酸化リチウム、硫黄、多硫化物、リチウムカーボンモノフルオリド、またはそれらの混合物からなる、請求項13に記載の電気化学エネルギー貯蔵デバイス。
【請求項18】
前記カソードが遷移金属酸化物材料であり、かつ過リチウム化酸化物材料である、請求項13に記載の電気化学エネルギー貯蔵デバイス。
【請求項19】
前記電解質が、a)非プロトン性有機溶媒系と、b)金属塩と、を含み、前記金属塩がリチウム塩を含む、請求項13に記載の電気化学エネルギー貯蔵デバイス。
【請求項20】
前記アノードと前記カソードとを互いに分離する多孔性のセパレータをさらに含む、請求項13に記載の電気化学エネルギー貯蔵デバイス。
【請求項21】
複数の活物質粒子であって、そのそれぞれが略1nm~略100μmの粒径を有する複数の活物質粒子と、
低分子量バージョンおよび高分子量バージョンのポリマーであって、前記複数の活物質粒子が前記低分子バージョンのポリマーによって囲まれており、かつ前記囲まれた複数の活物質粒子がさらに高分子量バージョンのポリマーによって囲まれている低分子量バージョンおよび高分子量バージョンのポリマーと、
を備える、シリコン-ポリマー複合電極。
【請求項22】
前記ポリマーがポリアクリロニトリルである、請求項21に記載の電極。
【請求項23】
前記低分子量バージョンのポリマーは、1000~85000の範囲の分子量を有し、前記高分子量バージョンのポリマーは、90000~5000000の範囲の分子量を有する、請求項21に記載の電極。
【請求項24】
前記高分子量ポリマーに対する前記低分子量ポリマーの比率が、1:1~1:10である、請求項21に記載の電極。
【請求項25】
前記高分子量ポリマーに対する前記低分子量ポリマーの比が、1:3~1:5である、請求項24に記載の電極。
【請求項26】
前記アノードが、略30重量%~略90重量%のシリコン活物質粒子と、略10重量%~略40重量%の前記ポリマーとを含む、請求項21に記載の電極。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2021年8月12日に出願された米国仮特許出願第63/232,330号の出願日の利益を主張するものであり、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本開示は、例えばリチウムイオン電池で使用されるシリコン-ポリマー複合アノードに関する。より具体的には、本開示は、2つ以上の異なる分子量(MW)バージョンの同じポリマーを有するシリコン-ポリマーアノード、および2つ以上の異なる分子量バージョンの同じポリマーを使用するシリコン-ポリマーアノードの製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
リチウムイオン(Li-ion)電池は、家電製品、電気自動車(EV)、電力貯蔵システム(ESS)、スマートグリッドなどで多用されている。リチウムイオン電池のエネルギー密度は、少なくとも部分的には使用されるアノード材料とカソード材料とに依存する。リチウムイオン電池の加工と製造を最適化することで、リチウムイオン電池のエネルギー密度は毎年4~5%向上しているが、次世代技術のエネルギー密度目標を達成するには、このような段階的な向上では不十分である。このような目標を達成するためには、高エネルギー密度の活物質を電極に組み込むなど、電極材料の進歩が必要となる。最近の研究では、主に高エネルギーカソードの開発に焦点が当てられており、アノード材料の開発に特化した研究は限られている。
【0004】
近年、シリコン(Si)は、リチウムイオン電池用の最も魅力的な高エネルギーアノード材料の一つとして注目を集めている。シリコンの低い作動電圧と3579mAh/gという高い理論比容量は、従来のグラファイトの10倍近くであるため、関心が高まっている。しかし、このような著しい利点があるにもかかわらず、シリコンアノードは、激しい体積膨張とそれに伴う粒子破壊に関連するいくつかの課題に直面している。グラファイト電極がリチウムインターカレーション中に10~15%膨張するのに対し、シリコン電極は~300%膨張し、固体電解質界面(SEI)層の構造劣化と不安定化を引き起こす。これは材料の粉砕と電極の剥離を引き起こし、その結果、サイクルに伴う容量低下を引き起こす。
【0005】
この問題に対処するためのアプローチの1つは、シリコン粒子を保護し、シリコン系アノード全体に弾性と機械的強度を与えるために、シリコン系アノードに特定のバインダー材料を使用することである。あるアプローチでは、シリコン粒子をポリアクリロニトリル(PAN)などのポリマーバインダーでコーティングし、その後、PANコーティングシリコン粒子を制御された熱処理によってPANを環化させる。しかしながら、このアプローチは、製造中にシリコン粒子をPANで優先的にコーティングできるかどうかに依存する。したがって、ポリマーバインダーがシリコン粒子を適切かつ十分にコーティングする、シリコン系アノードの改良された調製方法が必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本稿では、以下の「詳細な説明」においてさらに説明されるコンセプトの一部を簡略化して紹介する。本稿および前述の「背景」は、特許請求される主題の重要な側面または本質的な側面を特定することを意図したものではない。さらに、本稿は、特許請求される主題の範囲を決定する際の補助として使用することを意図していない。
【0007】
本明細書には、シリコン-ポリマーアノードのシリコン粒子成分がバインダー材料で適切かつ十分にコーティングされることを確実にする方法を含む、シリコンポリマーアノードおよびその製造方法の様々な実施形態が記載されている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
いくつかの実施形態では、シリコン-ポリマーアノードの製造方法は、概して、シリコン粒子、低分子量ポリマー、および高分子量ポリマーを混合して混合物を形成するステップと、混合物を銅集電体上にコーティングしてコーティング銅集電体を形成するステップと、コーティング銅集電体に温度処理を施すステップとを含む。いくつかの実施形態では、ポリマーはポリアクリロニトリル(PAN)である。いくつかの実施形態では、低分子量PANは、略1000~略85000の範囲の分子量を有し、高分子量PANは、略90000~略5000000の範囲の分子量を有する。
【0009】
いくつかの実施形態では、電気化学エネルギー貯蔵デバイスは、概して、アノード、カソード、および電解質を含む。アノードは、複数の活物質粒子および少なくとも1つのポリマーを含んでもよく、該ポリマーの少なくとも2つの異なる分子量バージョンがアノードに組み込まれる。複数の活物質は、略1nm~略100μmの粒径を有するシリコン粒子であってもよい。2つの異なる分子量バージョンのポリマーは、略1000~略85000の範囲の分子量を有する低分子量バージョンと、略90000~略5000000の範囲の分子量を有する高分子量バージョンであってもよい。いくつかの実施形態では、ポリマーはポリアクリロニトリル(PAN)であり、アノードは低分子量PANおよび高分子量PANを含む。
【0010】
本明細書に記載された技術におけるこれらのおよび他の態様は、本明細書の詳細な説明および図を考慮した後に明らかになるであろう。しかしながら、特許請求される主題の範囲は、添付の特許請求の範囲によって決定されるべきものであり、与えられた主題が「背景」に記載されたいずれかまたはすべての問題に対処しているかどうか、あるいは「要約」に記載された特徴または態様を含むかどうかによって決定されるものではないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
開示された技術の非限定的かつ非網羅的な実施形態(好ましい実施形態を含む)を、以下の図を参照して説明する。ここで、同様の引用数字は、特に断りのない限り、各種の図を通して同様の部品を指す。
【0012】
【
図1】
図1は、本明細書で説明される技術の様々な実施形態に係るシリコンポリマー複合アノードの製造方法を示すフロー図である。
【0013】
【
図2】
図2は、本明細書に記載の技術の様々な実施形態に係るシリコン-ポリマー複合アノードの概略図である。
【0014】
【
図3】
図3は、分子量80K~200KのPANポリマーのDSCデータのグラフである。
【0015】
【
図4】
図4は、比較用の熱処理アノードと、本明細書に記載の技術の実施形態に従って調製された熱処理アノードのFT-IRプロファイルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
実施形態については、添付の図面を参照して以下により詳細に説明されるが、これらは本明細書の一部を構成し、特定の例示的な実施形態を説明するために示すものである。これらの実施形態は、当業者が本技術を実施できるように十分詳細に開示されている。しかしながら、実施形態は、多くの異なる形態で実施することができ、本明細書に記載の実施形態に限定されると解釈されるべきではない。したがって、以下の詳細な説明は、限定的な意味で捉えられるものではない。
【0017】
本明細書には、シリコン-ポリマーアノード複合材料、その製造方法、およびシリコン-ポリマーアノード材料を組み込んだエネルギー貯蔵デバイスの様々な実施形態が記載されている。
【0018】
本明細書に記載のアノード材料に含まれるシリコン粒子には、任意の適切なシリコン複合材料を使用することができる。いくつかの実施形態では、シリコン複合粒子は、炭素コーティングシリコン粒子などのシリコン-炭素複合材料である。いくつかの実施形態では、酸化シリコン(SiOx)が使用される。シリコン複合材料は、シリコンと不活性金属または非金属との合金であることもできる。本明細書に記載の実施形態で使用するのに適したシリコン複合材料の他の例は、グラフェン-シリコン複合材料、グラフェン酸化物-シリコン-炭素ナノチューブ、シリコン-ポリピロール、および、ナノサイズおよびミクロンサイズのシリコン粒子の複合材料である。前述したように、アノード材料にはシリコン複合材料の任意の組み合わせを使用することもできるし、単一のシリコン複合材料のみを使用することもできる。
【0019】
アノードに使用されるポリマーには、同じポリマーの少なくとも2つの異なる分子量形態、つまり低分子量バージョンポリマーと高分子量バージョンポリマーが提供される。ポリマーの鎖長はポリマーの分子量を決定するため、低分子量バージョンは高分子量バージョンよりも鎖長が短い。鎖長はポリマーの融点に影響することから、低分子量ポリマーは高分子量ポリマーよりも融点が低くなる。ポリマーを熱処理すると、低分子量ポリマーが最初に溶融し、シリコン活物質を選択的に封入する。その結果、低分子量ポリマーは、制御された方法で活物質粒子のまわりに保護層を形成する。その後、高分子量ポリマーが溶融し、アノード全体をよりマクロなレベルで保護する。その結果として得られるシリコン-ポリマーアノード複合材料は、体積膨張を抑え、その結果生じるアノードの粒子破壊を低減する。
【0020】
図1を参照すると、本明細書に記載の複合アノード材料を調製するための方法100の一実施形態を示すフロー図は、概して、シリコン粒子とポリマーバインダーとを共に混合して混合物を形成するステップ110であって、ポリマーバインダーが少なくとも2つの異なる分子量バージョンのポリマーバインダーを含むステップ110と、混合物に溶媒を添加し、混合物を集電体上にコーティングするステップ120と、コーティングから溶媒を除去し、コーティングされた集電体を熱処理に供するステップ130と、を含む。
【0021】
ステップ110に関しては、シリコン粒子および少なくとも1種のポリマーバインダーを一緒に混合して混合物を形成するが、ここで、少なくとも1種のポリマーバインダーは、少なくとも高分子量バージョンポリマーおよび少なくとも低分子量バージョンポリマーの形態で提供される。これらの材料を混合する任意の方法を使用することができる。いくつかの実施形態では、機械的混合が使用される。例えば、固形物を低回転数でボールミルすることによって成分を混合することができる。
【0022】
いくつかの実施形態において、ポリマーバインダー材料はポリアクリロニトリル(PAN)である。低分子量バージョンのPANは、略1000~略85000の範囲の分子量(MW)を有しうる。高分子量バージョンのPANは、略90000~略5000000の範囲の分子量(MW)を有しうる。PANは、化学式(C3H3N)nを有するポリマーである。商業用途に製造されるほとんどすべてのPANは、アクリロニトリルと他のモノマーとを混合して得られるコポリマーであるため、本明細書で使用するPANには、PANのコポリマーも含まれる。例えば、繊維分野では、ビニルエステル(酢酸ビニル、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル)とともに、炭素繊維分野では、アクリルアミド、ビニルピロリドン、イタコン酸とともに、難燃性モダクリル繊維では、塩化ビニル、塩化ビニリデンとともに、スチレンがSAN熱可塑性樹脂やABSに使用される。
【0023】
いくつかの実施形態では、混合物は、略30重量%~略90重量%のシリコン粒子と、略10重量%~略40重量%のポリマー(高分子量バージョンと低分子量バージョンの組み合わせ)と、を含む。いくつかの実施形態において、混合物のポリマー成分中の高分子量ポリマーに対する低分子量ポリマーの比率は、略1:1~略1:10の範囲、例えば、略1:3~略1:5の範囲にある。
【0024】
ステップ120では、溶媒を混合物に加えて、活性物質を分散させる。任意の適切な溶媒を任意の適切な量で使用しうる。いくつかの実施形態では、溶媒は無水NMPである。他の適切な溶媒としては、限定されるものではないが、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホン(DMSO2)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)などが挙げられる。溶媒をシリコンとポリマーの混合物と任意の適当な時間、例えば、略12時間混合することができる。例えば、剪断混合や遠心混合を用いて、固形分を溶媒中に分散させることができる。
【0025】
ステップ120は、さらに、スラリー混合物を集電体上にコーティングすることを含む。集電体の材料は、銅などの任意の適切な集電体材質でありうる。集電体上に混合物をコーティングするための任意の適切な方法を使用することができる。いくつかの実施形態では、コーティング工程は、卓上型ドクターブレードコーターなどを使用して実施することができる。
【0026】
ステップ130では、集電体上にコーティングされた材料から溶媒を除去し、コーティングされた集電体に熱処理を施す。このステップは、2つの別個の動作として説明することができるが、いくつかの実施形態では、熱処理ステップの一部としてコーティングから溶媒を除去することが可能である。溶媒が最初に除去される場合、溶媒は、その後の熱処理工程で使用される温度よりも一般的に低い温度でコーティングを加熱することによって除去されうる。例えば、いくつかの実施形態では、溶媒を除去するには、まずコーティングされた集電体を略60℃の温度に(対流式オーブン内などで)さらして、溶媒を蒸発させる。
【0027】
溶媒除去に続いて、ステップ130は、コーティングされた集電体に熱処理を施すことを継続する。熱処理は、不活性雰囲気中でコーティングされた集電体を略150℃~略600℃の範囲の温度で、例えば、略330℃の不活性アルゴンガス雰囲気中で、加熱することを含みうる。熱処理工程は、概して、コーティングのポリマー成分を環化させることを目的とする。前述のように、いくつかの実施形態では、コーティングのポリマー成分は、PANである。PANの環化は、PAN分子の架橋によりニトリル結合(C≡N)が二重結合(C=N)に変換されるプロセスである。このプロセスにより、弾性はあるが機械的に堅牢なPAN繊維のラダーポリマー鎖が得られ、これにより、シリコン粒子の制御された断片化が可能になる。
【0028】
炭化処理工程中に、PAN前酸化繊維の環構造が炭素繊維の疑似グラファイト構造に変化することが研究で示されている。炭化処理には、概して、300℃~略700℃の低温炭化と、700℃~略1500℃の高温炭化の2段階が含まれる。炭化処理中、PAN前酸化繊維の環構造は、複雑な熱分解と再構築を経て、元の化学的・物理的構造が破壊される。一方、より小さな環化構造ユニットは、著しく縮小する架橋、重縮合、熱分解を伴って、徐々に疑似グラファイト構造へと変化した。その結果、安定化された繊維の元の構造は完全に消失し、新しい疑似グラファイトの微結晶構造が生成された。熱分解、重縮合、再構築を経て、低温炭化処理におけるPAN系の前酸化繊維の環化構造およびその凝集構造は著しく変化した。熱処理温度が450℃より低かった第一段階では、主な化学反応は、非環式直鎖分子鎖または部分的な環化構造での脱水素化と熱分解であった。この段階では、環状構造の成長は明らかではなかった。しかし、多数の熱分解は、元の前酸化構造の破壊に影響した。これは内部応力の著しい増加をもたらし、さらに、環状構造の再配向を誘発した。第二段階では、熱処理が450℃を超えると、脱水素化と熱分解の程度が急速に低下し、芳香族複素環構造の重縮合と再構築が徐々に進行した。初期の芳香族複素環の再構築プロセスは不規則で不均一な分布であった。異なるスケールの一連の複素環構造が欠陥とともに形成され、張力の誘導下でさらに整列した。この段階で、新しい疑似グラファイト結晶構造が徐々に形成され、熱処理温度の上昇に伴い、グラファイト層のd間隔がわずかに減少し、結晶子サイズがゆっくりと増加した。第3段階では、550℃での熱処理後、疑似グラファイトベース構造が徐々に形成された。熱処理温度の上昇に伴い、d間隔はさらにわずかに減少し、結晶子サイズはゆっくりと増加した。炭素繊維の最終構造に似た新しい規則構造が徐々に発達した。
【0029】
前述したように、低分子量バージョンのPANと高分子量バージョンのPANは融解温度が異なる。例えば、低分子量バージョンのPANの溶融温度は略150℃~略400℃である一方で、高分子量バージョンのPANの溶融温度は略250℃~略600℃である。シリコン粒子を選択的に封入する低分子量PANの利点を得るために、ステップ130の熱処理部分は、漸進的または段階的な温度上昇を介して実施してもよい。漸進的加熱プロセスでは、温度を連続的に上昇させる。低分子量PANの溶融温度に達すると、低分子量PANはシリコン粒子を選択的にコーティングするが、高分子量PANは徐々に上昇する温度が高分子量PANの溶融温度に達するまで影響を受けずに残る。この時点で、高分子量PANは複合アノード全体をマクロレベルで保護する。段階的なアプローチでは、温度を低分子量PANの溶融温度に設定し、シリコン粒子を低分子量PANで選択的にコーティングするのに十分な時間保持し、その後、温度を高分子量PANの溶融温度まで上げて保持し、マクロレベルのアノード保護を形成する。
【0030】
本明細書に記載の方法を介して調製されるアノード複合材料は、概して、少なくとも2つの材料(シリコンおよびポリマー)を含む。前述したように、シリコンは典型的には粒子の形で提供され、ポリマーは少なくとも2つの異なる分子量バージョンで提供される。以下により詳細に説明されるように、アノード材料は追加の材料を含んでもよいが、シリコンおよびポリマーがアノード複合材料の主要成分である。
【0031】
いくつかの実施形態では、シリコンは、シリコン粒子の形態でアノード複合材料に存在する。シリコン粒子のサイズは、略1nm~略100μmの範囲でありうる。いくつかの実施形態では、シリコン粒子は、アノード複合材料の略30重量%~略90重量%、例えば、略50重量%~略80重量%である。
【0032】
アノード複合材料は、少なくとも1つのポリマーをさらに含む。アノード複合材料のポリマー成分は、典型的にはバインダー材料として機能する。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのポリマーは、ポリアクリロニトリル(PAN)である。必要に応じて、他のポリマー材料もアノード複合材料に含まれうる。いくつかの実施形態では、ポリマーはアノード複合材料の略10重量%~略40重量%である。前述したように、PANはポリマーバインダーとして使用され、弾性はあるが強固な膜を形成し、バインダーマトリックス内でのシリコン粒子の制御された断片化/粉砕を可能にする。
【0033】
PANポリマーは、少なくとも2つの異なる分子量バージョンでアノードに提供される。例えば、アノード複合材料は、低分子量バージョンのPANと高分子量バージョンのPANを含みうる。低分子量バージョンのPANは、略1000~略85000の範囲の分子量を有することができる。高分子量バージョンのPANは、略90000~略5000000の範囲の分子量を有することができる。
【0034】
本開示では、アノード複合材料が2つの異なる分子量バージョンのポリマーバインダー材料を含む実施形態を主に説明するが、アノード複合材料は、3つ、4つ、5つ、またはそれ以上の異なる分子量バージョンのポリマー、例えば、PANを含むことも可能であることが理解されるべきである。
【0035】
アノード複合材料中に存在しうる他の材料としては、限定されるものではないが、ハードカーボン、グラファイト、スズ、およびゲルマニウム粒子が挙げられる。これら材料は、アノード複合材料中に存在する場合、アノード複合材料の略0.1重量%~略50重量%の範囲で存在しうる。
【0036】
図2を参照すると、アノード複合材料の材料は、特定の配向で配置されてもよい。いくつかの実施形態では、低分子量PAN220は、シリコン粒子210を取り囲む、挟む、カプセル化する、または他の方法でコーティングする。
図2に示すように、低分子量PAN220は1つのシリコン粒子を取り囲んでいる。しかしながら、複数のシリコン粒子210を低分子量PAN220によって一緒にカプセル化しうることが理解されるべきである。
図2にも示すように、低分子量PAN220によってカプセル化されたシリコン粒子210の組み合わせは、高分子量PAN230によって一緒にカプセル化されるか、または結合される。この構成において、複数の低分子量PANカプセル化シリコン粒子は、高分子量PANポリマーバインダーマトリックス全体に分散され、本明細書に記載のアノード複合材料の特定の配向を形成する。
図2には、説明の目的で、低分子量PANと高分子量PANが明確に異なる区別可能な成分として示されているが、最終的なアノード複合材料では、低分子量PANと高分子量PANは実際には区別できない場合があることが理解されるべきである。
【0037】
シリコン粒子210を取り囲む低分子量PAN220は、前述のハードカーボン、グラファイト、スズ、およびゲルマニウム粒子などの追加材料をさらに含んでもよい。かくして、いくつかの実施形態では、シリコン粒子210は、ハードカーボン、グラファイト、スズ、およびゲルマニウム粒子のうちの1つ以上と混合された低分子量PANの層によって取り囲まれる。
【0038】
図3は、分子量(MW)が80K~200KのPANポリマーの、25~500℃の温度範囲における1.7℃/分でのDSCデータを示したものである。分子量4200および分子量15200のPANのピーク温度は235~240℃付近であるが、高分子量のPANのピーク温度は260~270℃付近である。分子量80Kと100KのPANは、いずれも263℃付近に幅広い発熱ピークを示すが、高分子量(150Kと200K)のPANは、265~270℃付近に鋭いピークを示す。分子量80Kと100KのPANのプロファイルにおける広めのピークは、高めのエンタルピによって示され、5-6ニトリル(C≡N)がC=Nに完全に転化した結果でありうる。このデータを以下の表1に示す。
【0039】
【0040】
本明細書に記載のアノード複合材料は、電気化学エネルギー貯蔵デバイスに組み込むことができる。電気化学エネルギー貯蔵デバイスは、概して、本明細書に記載のアノード材料、カソード、および電解質を含む。いくつかの実施形態では、電気化学エネルギー貯蔵デバイスは、リチウム二次電池である。いくつかの実施形態では、二次電池は、リチウム電池、リチウムイオン電池、リチウム硫黄電池、リチウム空気電池、ナトリウムイオン電池、またはマグネシウム電池である。いくつかの実施形態では、電気化学エネルギー貯蔵デバイスは、キャパシタなどの電気化学電池である。いくつかの実施形態において、キャパシタは、非対称キャパシタまたはスーパーキャパシタである。いくつかの実施形態では、電気化学電池は一次電池である。いくつかの実施形態では、一次電池はリチウム/MnO2電池またはリチウム/ポリ(-フッ化炭素)電池である。
【0041】
電気化学エネルギー貯蔵デバイスで使用するのに適したカソードには、限定されるべきではないが、リチウム金属酸化物、スピネル、カンラン石、炭素コーティングカンラン石、LiCoO2、LiNiO2、LiMn0.5Ni0.5O2、LiMn0.3Co0.3Ni0.3O2、LiMn2O4、LiFeO2、LiNixCoyMetzO2、AnlB2(XO4)3、酸化バナジウム、過酸化リチウム、硫黄、多硫化物、リチウムカーボンモノフルオリド(LiCFxとしても知られている)、またはそれらの任意の2つ以上の混合物が含まれる。ここで、Metは、Al、Mg、Ti、B、Ga、Si、Mn、またはCoであり;Aは、Li、Ag、Cu、Na、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、またはZnであり;Bは、Ti、V、Cr、Fe、またはZrであり;Xは、P、S、Si、W、またはMoであり;そして、0≦x≦0.3、0≦y≦0.5、および0≦z≦0.5であり、0≦nl≦0.3である。いくつかの実施形態によれば、スピネルは、Li1+xMn2-zMet’’’
yO4-mX’
nの式を有するスピネルマンガン酸化物であり、ここで、Met’’’は、Al、Mg、Ti、B、Ga、Si、Ni、またはCoであり;X’は、S、またはFであり;そして、0≦x≦0.3、0≦y≦0.5、0≦z≦0.5、0≦m≦0.5、および0≦n≦0.5である。他の実施形態において、カンラン石は、LiFePO4、またはLi1+xFe1zMet’’
yPO4-mX’
nの式を有し、ここで、Met’’は、Al、Mg、Ti、B、Ga、Si、Ni、Mn、またはCoであり;X’は、S、またはFであり;そして、0≦x≦0.3、0≦y≦0.5、0≦z≦0.5、0≦m≦0.5、および0≦n≦0.5である。
【0042】
いくつかの実施形態では、電気化学エネルギー貯蔵デバイスの電解質成分は、a)非プロトン性有機溶媒系;およびb)金属塩を含む。一実施形態では、非プロトン性有機溶媒系は、電解質の60重量%~90重量%の範囲にある。一実施形態では、金属塩は電解質の10重量%~30重量%の範囲にある。
【0043】
いくつかの実施形態では、電解質は、60重量%~90重量%の範囲で、開鎖もしくは環状カーボネート、カルボン酸エステル、亜硝酸エステル、エーテル、スルホン、スルホキシド、ケトン、ラクトン、ジオキソラン、グライム、クラウンエーテル、シロキサン、リン酸エステル、亜リン酸エステル、モノもしくはポリホスファゼン、またはそれらの混合物から選択される非プロトン性有機溶媒系を含む。
【0044】
いくつかの実施形態では、電解質は10重量%~30重量%の範囲のリチウム塩を含む。様々なリチウム塩が使用されてもよく、リチウム塩は、例えば、Li(AsF6);Li(PF6);Li(CF3CO2);Li(C2F5CO2); Li(CF3SO3;Li[N(CP3SO2)2];Li[C(CF3SO2)3];Li[N(SO2C2F5)2];Li(ClO4);Li(BF4);Li(PO2F2);Li[PF2(C2O4)2];Li[PF4C2O4];リチウムアルキルフルオロホスフェート;Li[B(C2O4)2];Li[BF2C2O4];Li2[B12Z12-jHj];Li2[B10X10-j’Hj’]、またはそれらの任意の2つ以上の混合物を含み、ここで、Zは、各出現において独立してハロゲンであり、jは0~12の整数であり、j’は1~10の整数である。
【0045】
いくつかの実施形態では、電解質は、硫黄含有化合物、リン含有化合物、ホウ素含有化合物、シリコン含有化合物、フッ素含有化合物、窒素含有化合物、少なくとも1つの不飽和炭素-炭素結合を含む化合物、カルボン酸無水物、またはそれらの混合物などの添加剤を含む。いくつかの実施形態において、添加剤はイオン性の液体である。さらに、添加剤は電解質の0.01重量%~10重量%の範囲で存在する。
【0046】
電気化学エネルギー貯蔵デバイスが二次電池であるいくつかの実施形態では、二次電池は、正極と負極を分離するセパレータをさらに含む。リチウム電池のセパレータは、しばしば微多孔性ポリマーフィルムである。フィルムを形成するためのポリマーの例としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン、セルロース、ニトロセルロース、ポリスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリブテン、または任意の2つ以上のそのようなポリマーのコポリマーもしくは混合物が挙げられる。いくつかの例では、セパレータは、電子ビーム処理された微多孔性ポリオレフィンセパレーターである。電子線処理は、セパレータの変形温度を上昇させ、それに応じて高温での熱安定性を高めることができる。さらに、または代替的に、セパレータは、遮断セパレータとすることができる。遮断セパレータは、略130℃を超えるトリガー温度を有し、電気化学電池が略130℃までの温度で作動することを可能とすることができる。
【0047】
本開示は、以下の具体例を参照してさらに説明される。これらの実施例は説明のために与えられており、本開示または以下の特許請求の範囲を限定するものではないことを理解されたい。
【0048】
実施例1 異なる分子量PANを備えたシリコン-ポリマーアノードの調製
【0049】
1μmのシリコン粉末を、分子量80000(80K)のPAN、および分子量200000(200K)のPANと低回転数でボールミルによって混合し、シリコン:80KのPAN:200KのPANの比率を、8:1:1とした。無水DMFを溶媒として使用し、導電性カーボン添加剤C65を遠心混合を利用して分散させた後、シリコンPAN固体混合物を分散液に添加した。スラリーを一晩混合し、卓上型ドクターブレードコーターを用いて銅集電体にスラリーを塗布し、固形分担持量3mg/cm2以上の電極を得た。次いで、電極を不活性アルゴン雰囲気中で330℃で熱処理する前に、対流式オーブンで60℃で乾燥させた。
【0050】
実施例2 比較例のシリコン-ポリマーアノードの調製
【0051】
比較用の電極には、1μmのシリコン粉末と80KのPANをシリコン:80KのPANが8:2の割合で混合されたもの(比較例2A)と、200KのPANをシリコン:200KのPANが8:2の割合で混合されたもの(比較例2B)を作製した。同様な混合およびコーティング手順を用いて、固体担持量3mg/cm2以上の電極を作製した後、対流式オーブンで60℃で乾燥させた。次いで、比較用の電極を不活性アルゴン雰囲気で330℃で熱処理した。
【0052】
熱処理後のアノードを比較するための
図4におけるFT-IRプロファイルは、C=Nに対応する1600cm
-1での鋭いピークに基づくPAN環化の兆候を示している。
【0053】
上述から、本発明の特定の実施形態が例示の目的で本明細書に記載されたが、本発明の範囲から逸脱することなく様々な変更がなされうることが理解されよう。従って、本発明は、添付の特許請求の範囲以外には限定されない。
【手続補正書】
【提出日】2024-04-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】全図
【補正方法】変更
【補正の内容】
【国際調査報告】