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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-18
(54)【発明の名称】高速飛行体用の軸受システム
(51)【国際特許分類】
   F42B 10/64 20060101AFI20240910BHJP
   F16C 17/02 20060101ALI20240910BHJP
   F16N 15/00 20060101ALI20240910BHJP
   B64C 30/00 20060101ALI20240910BHJP
   B64C 13/00 20060101ALI20240910BHJP
   B64U 40/10 20230101ALI20240910BHJP
   F16C 32/06 20060101ALI20240910BHJP
   F16N 39/04 20060101ALI20240910BHJP
   F42B 15/10 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
F42B10/64
F16C17/02 Z
F16N15/00
B64C30/00
B64C13/00 Z
B64U40/10
F16C32/06 Z
F16N39/04
F42B15/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508347
(86)(22)【出願日】2022-08-10
(85)【翻訳文提出日】2024-02-09
(86)【国際出願番号】 US2022074747
(87)【国際公開番号】W WO2023019160
(87)【国際公開日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】63/232,823
(32)【優先日】2021-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503455363
【氏名又は名称】レイセオン カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100229448
【弁理士】
【氏名又は名称】中槇 利明
(72)【発明者】
【氏名】スタッガーズ,デイヴィッド ディー.
【テーマコード(参考)】
3J011
3J102
【Fターム(参考)】
3J011AA07
3J011AA09
3J011BA02
3J011JA02
3J011KA02
3J102AA02
3J102BA03
3J102BA17
3J102EA02
(57)【要約】
高速飛行体の操縦翼面用の軸受システムは、操縦翼面を支持するように構成された軸受と、軸受用の潤滑剤を含む加圧された潤滑剤室と、を含む。潤滑剤室内に収容された潤滑剤は、第1の相である。潤滑剤室は、加熱された空気熱環境(高速飛行体の外部の環境)による加熱を受ける。したがって、第1の相の潤滑剤は、加熱された空気熱環境によって潤滑剤室が加熱されると、第1の相から第2の相に転移するように構成されている。第2の相の潤滑剤は、潤滑剤室から軸受に流れて、流れベースの冷却効果を介して軸受を潤滑及び冷却するように構成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高速飛行体の操縦翼面用の軸受システムであって、
前記高速飛行体の前記操縦翼面を支持するように構成された軸受と、
前記軸受に流体的に接続された潤滑剤室であって、前記潤滑剤室は、第1の相の潤滑剤を含み、加熱された空気熱環境による加熱を受け、前記潤滑剤は、前記潤滑剤室が前記加熱された空気熱環境によって加熱されると、前記第1の相から第2の相に転移するように構成されている、前記潤滑剤室と、を含み、
前記第2の相の前記潤滑剤は、前記潤滑剤室から前記軸受に流れて、前記軸受を潤滑及び冷却するように構成されている、前記軸受システム。
【請求項2】
前記潤滑剤室は、前記高速飛行体の機体内に収容されるように構成されている、請求項1に記載の軸受システム。
【請求項3】
前記潤滑剤室と前記軸受とに流体的に接続されたマニフォールドをさらに含み、前記第2の相の前記潤滑剤を前記潤滑剤室から前記軸受に移送するように構成されている、請求項1または請求項2に記載の軸受システム。
【請求項4】
前記潤滑剤室は、前記高速飛行体の前記操縦翼面内に収容されるように構成され、前記第1の相の前記潤滑剤を前記潤滑剤室内に保持するための潤滑剤保持部を含む、請求項1に記載の軸受システム。
【請求項5】
前記潤滑剤保持部は複数の通気口を含み、前記複数の通気口を通って、前記第2の相の前記潤滑剤は、前記潤滑剤室から前記軸受に流れ出るように構成されている、請求項4に記載の軸受システム。
【請求項6】
前記軸受は、スリーブと前記スリーブを貫通するシャフトとを含む滑り軸受である、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の軸受システム。
【請求項7】
前記滑り軸受の前記スリーブは、前記第2の相の前記潤滑剤が、前記スリーブの内径と前記滑り軸受の前記シャフトの外径との間の間隙内に流れるための、前記スリーブの外径から前記スリーブの内径まで延びるポートを含む、請求項6に記載の軸受システム。
【請求項8】
前記滑り軸受の前記スリーブの前記内径は、前記第2の相の前記潤滑剤を、前記スリーブの前記内径と前記滑り軸受の前記シャフトの前記外径との間の前記間隙に内に分配するための少なくとも1つの経路を含む、請求項7に記載の軸受システム。
【請求項9】
前記軸受は気体軸受であり、前記第1の相の前記潤滑剤は、液体から気化して気体である前記第2の相になるように構成された液体である、請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の軸受システム。
【請求項10】
前記軸受は気体軸受であり、前記第1の相の前記潤滑剤は、固体から融解及び気化して気体である前記第2の相になるように構成された固体である、請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の軸受システム。
【請求項11】
前記軸受は気体軸受であり、前記第1の相の前記潤滑剤は、固体から昇華して気体である前記第2の相になるように構成された固体である、請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の軸受システム。
【請求項12】
前記軸受は静圧軸受であり、前記第1の相の前記潤滑剤は、固体から融解して液体である前記第2の相になるように構成された固体である、請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の軸受システム。
【請求項13】
高速飛行体であって、
機体と、
前記機体に取り付けられ、前記機体内に少なくとも部分的に収容された軸受によって支持された操縦翼面と、
前記軸受に流体的に接続された潤滑剤室であって、前記潤滑剤室は、第1の相の潤滑剤を含み、加熱された空気熱環境による加熱を受け、前記潤滑剤は、前記潤滑剤室が前記加熱された空気熱環境によって加熱されると、前記第1の相から第2の相に転移するように構成されている、前記潤滑剤室と、を含み、
前記第2の相の前記潤滑剤は、前記潤滑剤室から前記軸受に流れて、前記軸受を潤滑及び冷却するように構成されている、前記高速飛行体。
【請求項14】
前記潤滑剤室は前記高速飛行体の機体内に収容されている、請求項13に記載の高速飛行体。
【請求項15】
前記潤滑剤室と前記軸受とに流体的に接続されたマニフォールドをさらに含み、前記第2の相の前記潤滑剤を前記潤滑剤室から前記軸受に移送するように構成されている、請求項14に記載の高速飛行体。
【請求項16】
前記潤滑剤室は、前記操縦翼面内に収容され、前記第1の相の前記潤滑剤を前記潤滑剤室内に保持するための潤滑剤保持部を含む、請求項13に記載の高速飛行体。
【請求項17】
前記潤滑剤保持部は複数の通気口を含み、前記複数の通気口を通って、前記第2の相の前記潤滑剤は、前記潤滑剤室から前記軸受に流れ出るように構成されている、請求項16に記載の高速飛行体。
【請求項18】
操縦翼面が高速飛行体に取り付けられている軸受を潤滑及び冷却する方法であって、
前記高速飛行体の加熱された空気熱環境によって、前記高速飛行体内の潤滑剤室を加熱するステップであって、前記潤滑剤室は第1の相の潤滑剤を含む、前記ステップと、
前記加熱することによって、前記第1の相の前記潤滑剤を第2の相に転移させるステップと、
前記第2の相の前記潤滑剤を前記潤滑剤室から前記軸受に移送して、前記軸受を潤滑及び冷却するステップと、を含む、方法。
【請求項19】
前記軸受は、スリーブと前記スリーブを貫通するシャフトとを含む滑り軸受であり、前記方法はさらに、前記第2の相の前記潤滑剤を、前記スリーブの内径と前記滑り軸受の前記シャフトの外径との間の間隙内に分配するステップを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記転移させるステップは、前記第1の相の前記潤滑剤を気化、融解、または昇華させて前記第2の相にすることのうちの少なくとも1つを含む、請求項18または請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は全般的に、高速飛行体に関し、より詳細には、高速飛行体用の飛行制御軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
飛行体の動的制御には、テールフィン、エレベータ、エルロン、エレボン、ラダー、フラップ、スラットなどの移動操縦翼面が必要である。このような操縦翼面、特に固定軸を中心として旋回するものは、通常、飛行体の機体に伝達される荷重を支持するための軸受によって飛行体に取り付けられている。ジャーナル軸受(本明細書では「滑り軸受」と言う)は、このような軸受の一例である。滑り軸受は、好適な材料のスリーブを貫通する単純な円形のシャフトから構成され、それら2つの間に制御されたクリアランスを有する。滑り軸受は通常、他のタイプの軸受よりも摩擦が高い。たとえば、ボール軸受は、操縦翼面を取り付けるために使用される別の軸受例であり、滑り軸受よりも摩擦が低く、よりコンパクトで効率的な飛行制御システムを可能にする。しかし、超音速または極超音速飛行体などの高速飛行体の場合、このような高速飛行体の高熱空気熱環境が原因で、ボール軸受は好適でない場合がある。さらに、戦術ミサイル用の他の従来の軸受材料、構造、及び取り付け場所も、通常、摩擦がより高く、したがって故障の確率がより高いために、高速飛行体に対しては困難であることが証明されている。
【発明の概要】
【0003】
前述の問題を解決するために、高速飛行体の操縦翼面用の軸受システムは、空気熱環境による高速飛行体の通常は不都合で避けられない加熱を利用することによって、低摩擦軸受を実現する。具体的には、本明細書に記載の軸受システムは、高速飛行体の加熱された空気熱環境からの熱を使用して潤滑剤を生成し、この潤滑剤が滑り軸受内に流れて、軸受の潤滑及び冷却の両方を行う。潤滑剤は、高速飛行体における潤滑剤室内に保存される。加熱された空気熱環境を受けると、潤滑剤は、第1の相から第2の相への相変化を経て軸受に流れ、その潤滑及び冷却を行う。潤滑剤が軸受を通って流れて高速飛行体から排出されると、潤滑剤は、軸受及びそれが流れる他の飛行体コンポーネントの流れベースの冷却の付加利益をもたらす。
【0004】
本開示の態様によれば、高速飛行体の操縦翼面用の軸受システムは、高速飛行体の操縦翼面を支持するように構成された軸受を含む。軸受システムはまた、軸受に流体的に接続された潤滑剤室を含む。潤滑剤室は、第1の相の潤滑剤を含み、加熱された空気熱環境による加熱を受ける。潤滑剤は、加熱された空気熱環境によって潤滑剤室が加熱されると、第1の相から第2の相に転移するように構成されている。第2の相の潤滑剤は、潤滑剤室から軸受に流れて、軸受を潤滑及び冷却するように構成されている。
【0005】
この概要のいずれかの段落(複数可)の実施形態によれば、潤滑剤室は、高速飛行体の機体内に収容されるように構成されている。
【0006】
この概要のいずれかの段落(複数可)の実施形態によれば、軸受システムは、潤滑剤室と軸受とに流体的に接続されたマニフォールドをさらに含み、第2の相の潤滑剤を潤滑剤室から軸受に移送するように構成されている。
【0007】
この概要のいずれかの段落(複数可)の実施形態によれば、潤滑剤室は、高速飛行体の操縦翼面内に収容されるように構成され、第1の相の潤滑剤を潤滑剤室内に保持するための潤滑剤保持部を含む。
【0008】
この概要のいずれかの段落(複数可)の実施形態によれば、潤滑剤保持部は複数の通気口を含み、この複数の通気口を通って、第2の相の潤滑剤は、潤滑剤室から軸受に流れ出るように構成されている。
【0009】
この概要のいずれかの段落(複数可)の実施形態によれば、軸受は、スリーブとスリーブを貫通するシャフトとを含む滑り軸受である。
【0010】
この概要のいずれかの段落(複数可)の実施形態によれば、滑り軸受のスリーブは、第2の相の潤滑剤が、スリーブの内径と滑り軸受のシャフトの外径との間の間隙内に流れるための、スリーブの外径からスリーブの内径まで延びるポートを含む。
【0011】
この概要のいずれかの段落(複数可)の実施形態によれば、滑り軸受のスリーブの内径は、第2の相の潤滑剤を、スリーブの内径と滑り軸受のシャフトの外径との間の間隙内に分配するための少なくとも1つの経路を含む。
【0012】
この概要のいずれかの段落(複数可)の実施形態によれば、軸受は気体軸受であり、第1の相の潤滑剤は、液体から気化して気体である第2の相になるように構成された液体である。
【0013】
この概要のいずれかの段落(複数可)の実施形態によれば、軸受は気体軸受であり、第1の相の潤滑剤は、固体から融解及び気化して気体である第2の相になるように構成された固体である。
【0014】
この概要のいずれかの段落(複数可)の実施形態によれば、軸受は気体軸受であり、第1の相の潤滑剤は、固体から昇華して気体である第2の相になるように構成された固体である。
【0015】
この概要のいずれかの段落(複数可)の実施形態によれば、軸受は静圧軸受であり、第1の相の潤滑剤は、固体から融解して液体である第2の相になるように構成された固体である。
【0016】
別の本開示の態様によれば、高速飛行体は、機体と、機体に取り付けられ、機体内に少なくとも部分的に収容された軸受によって支持された操縦翼面とを含む。高速飛行体は、軸受に流体的に接続された潤滑剤室を含む。潤滑剤室は、第1の相の潤滑剤を含み、加熱された空気熱環境による加熱を受ける。潤滑剤は、加熱された空気熱環境によって潤滑剤室が加熱されると、第1の相から第2の相に転移するように構成されている。第2の相の潤滑剤は、潤滑剤室から軸受に流れて、軸受を潤滑及び冷却するように構成されている。
【0017】
この概要のいずれかの段落(複数可)の実施形態によれば、潤滑剤室は高速飛行体の機体内に収容されている。
【0018】
この概要のいずれかの段落(複数可)の実施形態によれば、高速飛行体は、潤滑剤室と軸受とに流体的に接続されたマニフォールドをさらに含み、第2の相の潤滑剤を潤滑剤室から軸受に移送するように構成されている。
【0019】
この概要のいずれかの段落(複数可)の実施形態によれば、潤滑剤室は、操縦翼面内に収容され、第1の相の潤滑剤を潤滑剤室内に保持するための潤滑剤保持部を含む。
【0020】
この概要のいずれかの段落(複数可)の実施形態によれば、潤滑剤保持部は複数の通気口を含み、この複数の通気口を通って、第2の相の潤滑剤は、潤滑剤室から軸受に流れ出るように構成されている。
【0021】
別の本開示の態様によれば、操縦翼面が高速飛行体に取り付けられている軸受を潤滑及び冷却する方法は、高速飛行体の加熱された空気熱環境によって、高速飛行体内の潤滑剤室を加熱することを含む。潤滑剤室は、第1の相の潤滑剤を含む。本方法はまた、加熱することによって、第1の相の潤滑剤を第2の相に転移させることを含む。そして、本方法は、第2の相の潤滑剤を潤滑剤室から軸受に移送して、軸受を潤滑及び冷却することを含む。
【0022】
この概要のいずれかの段落(複数可)の実施形態によれば、軸受は、スリーブとスリーブを貫通するシャフトとを含む滑り軸受であり、本方法はさらに、第2の相の潤滑剤を、スリーブの内径と滑り軸受のシャフトの外径との間の間隙内に分配することを含む。
【0023】
この概要のいずれかの段落(複数可)の実施形態によれば、転移させるステップは、第1の相の潤滑剤を気化、融解、または昇華させて第2の相にすることのうちの少なくとも1つを含む。
【0024】
以下の説明及び添付図面では、本開示で説明する特定の例示的な実施形態について詳細に述べる。しかし、これらの実施形態は、本開示の原理を使用し得る種々の方法のうちのほんの数例を示すものである。他の目的、利点、及び新規な特徴は、以下の詳細な説明を図面と併せて考えると、明らかになる。
【0025】
添付図面は、本開示の種々の態様を示している。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】高速飛行体の概略図である。
図2】第1の実施形態による高速飛行体の軸受システムの断面概略図である。
図3】第1の実施形態による高速飛行体の軸受システムの概略図である。
図4】第1の実施形態による高速飛行体の軸受システムの他の断面概略図である。
図5】第2の実施形態による高速飛行体の軸受システムの断面概略図である。
図6】操縦翼面が高速飛行体に取り付けられている軸受を潤滑及び冷却する方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
全般的な実施形態によれば、高速飛行体の操縦翼面用の軸受システムは、操縦翼面を支持するように構成された軸受と、軸受用の潤滑剤を含む加圧された潤滑剤室とを含み、潤滑剤室内に収容された潤滑剤は第1の相である。潤滑剤室は、加熱された空気熱環境(高速飛行体の外部の環境)による加熱を受ける。したがって、第1の相の潤滑剤は、加熱された空気熱環境によって潤滑剤室が加熱されると、第1の相から第2の相に転移するように構成されている。第2の相の潤滑剤は、潤滑剤室から軸受に流れて、流れベースの冷却効果を介して軸受を潤滑及び冷却するように構成されている。
【0028】
軸受システム12を有する高速飛行体10を、図1に概略的に示す。高速飛行体10は、たとえば、音速よりも大きい(マッハ1よりも大きい)速度を有する超音速飛行体、または音速の5倍よりも大きい(マッハ5よりも大きい)速度を有する極超音速飛行体であってもよい。軸受システム12は全般的に、操縦翼面14を高速飛行体10の機体16に取り付けるべき場所に配置され、操縦翼面14が軸受システム12によって支持され得るようになっている。図示した操縦翼面12はテールフィンであるが、エレベータ、エルロン、エレボン、ラダー、フラップ、スラットなどの他の操縦翼面も、本明細書に記載の軸受システム12によって支持され得ることが理解される。
【0029】
図2~5を参照して、軸受システム12は、少なくとも軸受18及び加圧された潤滑剤室20を含む。軸受システム12は、どのくらいの数の操縦翼面14を機体16に取り付けるべきかに応じて、2つ以上の軸受18及び2つ以上の潤滑剤室20を含んでいてもよい。たとえば、機体16に取り付けるように構成された各操縦翼面14は、関連する軸受18及び潤滑剤室20を有していてもよい。軸受18は、高速飛行体10の機体16内に少なくとも部分的に収容されて、操縦翼面14を支持するように構成され、操縦翼面14の動きを制御するためにアクチュエータ22に結合されていてもよい。
【0030】
潤滑剤室20は、第1の相の潤滑剤を含み、高速飛行体の加熱された空気熱環境による加熱を受ける。したがって、第1の相の潤滑剤は、潤滑剤室が加熱されると第1の相から第2の相に転移するように構成されている。第2の相に転移したら、第2の相の潤滑剤は、たとえば、図2の矢印24によって特定される流路または図5の流路25に沿って、潤滑剤室20から軸受18に流れて、軸受18を潤滑及び冷却するように構成されている。
【0031】
潤滑剤室20は、高速飛行体10の機体16内に収容してもよいし(図2~4に示すように)、代替的に操縦翼面14内に収容してもよい(図5に示すように)。潤滑剤室20が高速飛行体10の機体16内に収容される実施形態(図2~4)について、最初に説明する。この実施形態では、特に図3に関して、軸受システム12は、潤滑剤室20と軸受18とに流体的に接続されたマニフォールド26をさらに含んでいてもよい。マニフォールド26は、第2の相の潤滑剤を潤滑剤室20から軸受18に移送するように構成されている。たとえば、マニフォールド26は、潤滑剤室20からマニフォールド26へ及びマニフォールド26から軸受18への流路を形成する配管28を含んでいてもよい。マニフォールド26は、複数のオリフィスを含んでいてもよく、潤滑剤室20から軸受18への第2の相の潤滑剤の流量を調節するように構成してもよい。このようにして、マニフォールド26は、軸受18への第2の相の潤滑剤の好適な圧力及び質量流量を確実にしてもよい。
【0032】
潤滑剤室20は、高速飛行体10の機体16に適合されいてもよいし、これと一体になっていてもよい。たとえば、潤滑剤室20は、機体14の内面に対して位置決めしてもよい。このようにして、潤滑剤室20は、機体16の外部の加熱された空気熱環境による加熱を受ける結果、潤滑剤室20内の第1の相の潤滑剤を加熱して、第2の相に転移させることができる。
【0033】
図4をより詳細に参照して、軸受18は、スリーブ30とスリーブ30を貫通するシャフト32とを有し、シャフト32の外径とスリーブ30の内径との間にクリアランスまたは間隙34を有する滑り軸受であってもよい。シャフト32は、操縦翼面14の動きを制御するために、アクチュエータ22及び操縦翼面14に結合してもよい。滑り軸受18のスリーブ30は、第2の相の潤滑剤が滑り軸受18の間隙34内に流れるように、スリーブ30の外径からスリーブ30の内径まで延びるポート36を含んでいてもよい。さらに、スリーブ30の内径は、第2の相の潤滑剤を間隙34内で滑り軸受18を潤滑するように分配し得る少なくとも1つの経路38を含んでいてもよい。
【0034】
軸受18はさらに、第2の相の潤滑剤が軸受18及び高速飛行体10を全体的に出られるように構成された1つ以上の排出ポート40を含んでいてもよい。1つ以上の排出ポート40は、アクチュエータ22の付近、または加熱を受け得る高速飛行体10の他のコンポーネントの付近を通過してもよい。このようにして、第2の相の潤滑剤は、軸受18、アクチュエータ22、及びそれが流れる任意の他の飛行体コンポーネントに対して、流れベースの冷却効果をもたらす働きをし得る。
【0035】
図5を参照して、潤滑剤室20が高速飛行体の操縦翼面14内に収容される実施形態について、次に説明する。この実施形態では、潤滑剤室20は、高速飛行体10の操縦翼面14に適合されているかまたはそれと一体になっている。たとえば、潤滑剤室20は、操縦翼面14の内面に対して位置決めしてもよい。このようにして、潤滑剤室20は、機体16及び操縦翼面14の外部の加熱された空気熱環境による加熱を受ける。潤滑剤室20は、第1の相の潤滑剤を潤滑剤室20内に維持するように構成された潤滑剤保持部42を含んでいてもよい。潤滑剤保持部42は、複数の通気口44を含んでいてもよく、この複数の通気口44を通して、第2の相の潤滑剤が、潤滑剤室20が加熱されて第1の相の潤滑剤が第2の相に転移するときに流れてもよい。したがって、第2の相の潤滑剤は、潤滑剤室20から操縦翼面14の中心に向かって、軸受18へと流れ出てもよい。軸受18は、前述したようにスリーブ30及びシャフト32を有する滑り軸受であってもよい。しかし、図5に示したように、スリーブ30は、シャフト32の代わりに操縦翼面14の動きを制御するために、アクチュエータ22及び操縦翼面14に結合されるように構成してもよい。機体16は、軸受18のスリーブ30を固定するためのシール46を含んでいてもよい。
【0036】
前述した実施形態のいずれにおいても、軸受18の材料は、それが適用される荷重及び環境に適した任意の材料であってもよい。軸受18は、気体軸受または静圧軸受であってもよい。静圧軸受は、高い剛性によって非常に高い荷重を支持し、流れベースの冷却によって熱を取り除き得る。気体供給軸受は、極めて低い摩擦及び高い剛性を提供し、高い荷重を支持し、同様の方法で流れベースの冷却によって熱を取り除き得る。軸受18が気体軸受である場合、第1の相の潤滑剤は、加圧液体から気化して加圧気体である第2の相になるように構成された加圧液体であってもよい。代替的に、第1の相の潤滑剤は、固体から融解及び気化して加圧気体である第2の相になるように構成された固体であってもよい。そうでない場合には、第1の相の潤滑剤は、固体から昇華して加圧気体である第2の相になるように構成された固体であってもよい。軸受18が静圧軸受である場合、第1の相の潤滑剤は、たとえば、固体から融解して加圧液体である第2の相になるように構成された固体であってもよい。非限定的な例として、使用する潤滑剤材料はワックスであってもよい。使用する特定の潤滑剤材料は、たとえば、軸受18によって支持される荷重、高速飛行体10のミッションの継続時間、または必要とされる冷却量に対処するように最適化してもよい。
【0037】
さらに、前述した実施形態のいずれにおいても、潤滑剤室20は、ヒートシンクとして機能してもよく、相変化ベースの冷却によって高速飛行体10または操縦翼面14に対して断熱効果をもたらしてもよい。すなわち、機体16または操縦翼面14のいずれかの内壁上に潤滑剤室20を配置することによって、機体16または操縦翼面14それぞれへの熱流を軽減し得る。したがって、潤滑剤室20の配置を、過熱しやすい高速飛行体の任意の構造または部分に対してこのような断熱効果をもたらすように最適化し得る。
【0038】
図6を参照して、加熱された空気熱環境を受ける高速飛行体に操縦翼面を取り付ける軸受を潤滑及び冷却する方法100を示す。たとえば、本方法100は、本明細書に記載の高速飛行体10及び軸受システム12(図1~5)に適用可能であってもよい。本方法100は、加熱された空気熱環境によって、高速飛行体内の少なくとも1つの潤滑剤室を加熱するステップ102を含む。潤滑剤室は、第1の相の潤滑剤を含む。そして、本方法100は、加熱するステップ102によって第1の相の潤滑剤を第2の相に転移させるステップ104を含む。転移させるステップ104は、第1の相の潤滑剤を気化、融解、または昇華させて第2の相にすることのうちの少なくとも1つを含んでいてもよい。たとえば、前述したように、第1の相の潤滑剤は液体であってもよく、転移させること104は、液体を気化させて気体である第2の相にすることを含んでいてもよい。代替的に、第1の相の潤滑剤は固体であってもよく、転移させること104は、固体を融解及び気化させて加圧気体である第2の相にすることを含んでいてもよい。そうでない場合には、第1の相の潤滑剤は固体であってもよく、転移させること104は、固体を昇華させて加圧気体である第2の相にすることを含んでいてもよい。最後に、第1の相の潤滑剤は固体であってもよく、転移させること104は、固体を融解させて加圧液体である第2の相にすることを含んでいてもよい。
【0039】
本方法100はまた、第2の相の潤滑剤を潤滑剤室から軸受に移送して、軸受を潤滑及び冷却するステップ106を含む。移送するステップ106は、マニフォールドを用いて移送すること106を制御することを含んでいてもよい。マニフォールドを介した移送するステップ106はまた、第2の相の潤滑剤の流量を調整することを含んでいてもよい。そして、本方法100は、第2の相の潤滑剤を低摩擦軸受から高速飛行体の外部に排出して、第2の相の潤滑剤によって吸収された熱を高速飛行体から取り除くステップを含んでいてもよい。
【0040】
上記の開示は特定の好ましい実施形態または実施形態(複数)に関して図示し説明してきたが、本明細書及び添付図面を読んで理解すれば、同等の変更及び修正が当業者に想起されることは明らかである。詳細には、前述の要素(コンポーネント、アセンブリ、デバイス、組成物など)によって実行される種々の機能に関して、このような要素を説明するために用いる用語(「手段」への言及を含む)は、特に断りのない限り、本明細書で例示した典型的な実施形態または実施形態(複数)における機能を実行する開示した構造と構造的に等価でなくても、説明した要素の特定の機能を実行する(すなわち、機能的に等価な)任意の要素に対応することが意図されている。加えて、特定の特徴を、いくつかの例示した実施形態の1つ以上に関してのみ上記で説明した場合があるが、このような特徴は、任意の所与のまたは特定の用途に対して望ましく有利であり得るように、他の実施形態の1つ以上の他の特徴と組み合わせてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】