(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-18
(54)【発明の名称】内因性S―ニトロソチオールの非侵襲的測定
(51)【国際特許分類】
A61B 5/1455 20060101AFI20240910BHJP
【FI】
A61B5/1455
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508638
(86)(22)【出願日】2022-08-11
(85)【翻訳文提出日】2024-04-08
(86)【国際出願番号】 US2022040045
(87)【国際公開番号】W WO2023018861
(87)【国際公開日】2023-02-16
(32)【優先日】2021-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】524054255
【氏名又は名称】ユニバーシティー ホスピタルズ クリーヴランド メディカル センター
(71)【出願人】
【識別番号】524054266
【氏名又は名称】エヌエヌオーエックスエックス,アイエヌシー.
(74)【代理人】
【識別番号】100128347
【氏名又は名称】西内 盛二
(72)【発明者】
【氏名】スタムラー,ジョナサン,エス.
(72)【発明者】
【氏名】ペイコン,エヴァン
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038KK01
4C038KL05
4C038KL07
4C038KX01
(57)【要約】
【課題】本発明は、内因性S―ニトロソチオールのための非侵襲的測定及び関連する測定システム及び方法を提供する。
【解決手段】1つ又は複数のセンサが被験者の関心領域内の1つ又は複数の生体特徴パラメータのセットを非侵襲的に測定することにより、生体特徴パラメータセットにおける各生体特徴パラメータの時系列測定値を提供する。媒体は、関連するプロセッサによって実行されることで処理を実施する機器の読み取り可能な指令を記憶する。前記処理は、生体特徴パラメータの時系列測定値を受信することと、予測モデルを用いて、生体特徴パラメータの時系列測定値から関心領域内の組織の内因性S―ニトロソチオール含有量を示す値を生成することと、関心領域内の組織の内因性S―ニトロソチオール含有量を示す値をユーザインターフェースを介してユーザへ提供することとを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の関心領域内の生体特徴パラメータを非侵襲的に測定して前記生体特徴パラメータの時系列測定値を提供するように構成される少なくとも1つのセンサと、
前記センサに通信する少なくとも1つのプロセッサと、
機器の読み取り可能な指令を記憶する少なくとも1つの非一時的コンピュータ可読媒体とを備え、
少なくとも1つのプロセッサは、前記機器の読み取り可能な指令を実行したときに、
生体特徴パラメータの時系列測定値を受信することと、
予測モデルを用いて、前記生体特徴パラメータの時系列測定値から、関心領域内の組織の内因性S―ニトロソチオール含有量を示す値を生成することと、
関心領域内の組織の内因性S―ニトロソチオール含有量を示す値をユーザインターフェースを介してユーザへ提供することとを含む処理を実行することを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記少なくとも1つのセンサは、近赤外スペクトルセンサを含むことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記少なくとも1つのセンサは、フーリエ変換赤外スペクトロメータを含むことを特徴とする請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記少なくとも1つのセンサは、前記関心領域内の酸素飽和度及び血液容量を非侵襲的に測定して酸素飽和度の時系列測定値と血液容量の時系列測定値とを提供するように構成されるセンサを含むことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記予測モデルを用いた生成は、
血液容量の時系列測定値と酸素飽和度の時系列測定値との間の関係の線形度を特定してパラメータセットを提供することと、
前記パラメータセットから、関心領域内の組織の内因性S―ニトロソチオール含有量を示す値を生成することと、を含むことを特徴とする請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記予測モデルを用いた生成は、
線形回帰モデルを用いて、最適フィッティングラインの勾配を含む前記パラメータセットによって定義された最適フィッティングラインを提供することと、
最適フィッティングラインの勾配から、関心領域内の組織の内因性S―ニトロソチオール含有量を示す値を生成することと、を含むことを特徴とする請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記処理は、前記関心領域への血流に対する生理的遮断及び/又は前記関心領域への血流に対する外部遮断の一方の後、ベースラインよりも高い血流及び酸素飽和度のうちの一方のオーバーシュート応答を測定することで、酸素飽和度の時系列測定値と血液容量の時系列測定値とのうちの一方を提供することを更に含み、
予測モデルを用いた生成は、レート値又はオーバーシュート値を使用することにより、関心領域内の組織の内因性S―ニトロソチオール含有量を示す値を生成することを含むことを特徴とする請求項5に記載のシステム。
【請求項8】
前記センサは、前記被験者の運動期間と前記被験者の運動期間の直後の期間とのうちの一方の期間において、前記関心領域内の前記生体特徴パラメータを非侵襲的に測定するように構成されることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
少なくとも1つのセンサが被験者の関心領域内の生体特徴パラメータを非侵襲的に測定するステップと、
前記少なくとも1つのセンサが生体特徴パラメータの時系列測定値を提供するステップと、
前記少なくとも1つのセンサに通信する少なくとも1つのプロセッサが、前記生体特徴パラメータの時系列測定値から、前記関心領域内の組織の内因性S―ニトロソチオール含有量を示す値を生成するステップと、
前記少なくとも1つのプロセッサが、前記関心領域内の組織の内因性S―ニトロソチオール含有量を示す値を非一時的コンピュータ可読媒体に記憶するステップと、を含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
前記測定は、前記関心領域内の血液容量及び酸素飽和度を非侵襲的に測定することにより、酸素飽和度の時系列測定値と血液容量の時系列測定値とを提供することを含むことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記被験者の関心領域内の血液容量及び酸素飽和度を非侵襲的に測定することは、前記被験者の運動期間において前記関心領域内の血液容量及び酸素飽和度を測定することを含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記被験者の関心領域内の血液容量及び酸素飽和度を非侵襲的に測定することは、前記関心領域への血流に対する生理的遮断と前記関心領域への血流に対する外部遮断とのうちの一方が行われた後、前記関心領域内の血液容量及び酸素飽和度を直ちに測定することを含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記関心領域は、筋肉組織を含み、
非侵襲的に血液容量を測定することは、筋肉組織内の総ヘモグロビン指標を測定することにより、血液容量の時系列測定値を総ヘモグロビン指標の時系列データとして提供することを含み、
前記生成は、予測モデルを用いて、総ヘモグロビン時系列測定値と酸素飽和度の時系列測定値とから、筋肉組織の内因性S―ニトロソチオール含有量を示す値を生成することを含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記酸素飽和度の時系列測定値と前記血液容量の時系列測定値とから前記関心領域内の組織の内因性S―ニトロソチオール含有量を示す値を生成することは、前記血液容量の時系列測定値と前記酸素飽和度の時系列測定値との間の関係の線形度を特定することを含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項15】
血液容量の時系列測定値と酸素飽和度の時系列測定値との間の関係の線形度を特定することは、血液容量の時系列測定値と酸素飽和度の時系列測定値とを線形回帰モデルに適合させることで最適フィッティングラインを提供することを含み、
関心領域内の組織の内因性S―ニトロソチオール含有量を示す値は、最適フィッティングラインの勾配、及び、酸素飽和度と血液容量との間の相関係数のうちの一方から導出されることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
関心領域内の組織の内因性S―ニトロソチオール含有量を示す値は、関心領域内の組織の内因性S―ニトロソチオール含有量を示す第1値を含み、
血液容量の時系列測定値は、血液容量測定値の第1時系列データを含み、
酸素飽和度の時系列測定値は、酸素飽和度測定値の第1時系列データを含み、
前記方法は、
前記少なくとも1つのセンサが被験者の関心領域内の血液容量及び酸素飽和度を非侵襲的に測定するステップと、
前記少なくとも1つのセンサが酸素飽和度測定値の第2時系列データと血液容量測定値の第2時系列データとを提供するステップと、
前記少なくとも1つのプロセッサが、予測モデルを用いて、前記酸素飽和度測定値の第2時系列データと前記血液容量測定値の第2時系列データとから、関心領域内の組織の内因性S―ニトロソチオール含有量を示す第2値を生成するステップと、
前記少なくとも1つのプロセッサが、関心領域内の組織の内因性S―ニトロソチオール含有量を示す第1値と関心領域内の組織の内因性S―ニトロソチオール含有量を示す第2値とを比較するステップとを更に含み、
前記比較の結果は、患者への治療の有効性を示すことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項17】
前記少なくとも1つのプロセッサが、前記関心領域内の組織の内因性S―ニトロソチオール含有量を示す値から、パーソナライズされた一酸化窒素指標を生成するステップを更に含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項18】
前記少なくとも1つのプロセッサが、前記関心領域内の組織の内因性S―ニトロソチオール含有量を示す値から使用可能酸素消耗量(UO2)指標を生成するステップを更に含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項19】
前記少なくとも1つのプロセッサが、UO2の変化の起因を推定することにより、酸素供給及び酸素利用のうちの一方の制限を表すステップを更に含むことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記関心領域内の組織の内因性S―ニトロソチオール含有量を示す値から前記UO2指標を生成するステップは、前記UO2指標をリアルタイムで生成することを含むことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記少なくとも1つのプロセッサが、前記関心領域内の組織の内因性S―ニトロソチオール含有量を示す値から、最大一酸化窒素パワー指標を生成するステップを更に含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項22】
前記関心領域内の組織の内因性S―ニトロソチオール含有量を示す値から前記最大一酸化窒素パワー指標を生成するステップは、前記最大一酸化窒素パワー指標をリアルタイムで生成することを含むことを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記少なくとも1つのプロセッサが、前記関心領域内の組織の内因性S―ニトロソチオール含有量を示す値から、最大一酸化窒素耐性指標を生成するステップを更に含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項24】
前記関心領域内の組織の内因性S―ニトロソチオール含有量を示す値から前記最大一酸化窒素耐性指標を生成するステップは、前記最大一酸化窒素耐性指標をリアルタイムで生成することを含むことを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項25】
関心領域内の組織の内因性S―ニトロソチオール含有量を示す値を生成することは、関心領域内の組織の内因性S―ニトロソチオール含有量を示す値をリアルタイムで生成することを含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項26】
少なくとも1つのセンサが被験者の関心領域内の血液容量及び酸素飽和度を非侵襲的に測定するステップと、
前記少なくとも1つのセンサが酸素飽和度の時系列測定値と血液容量の時系列測定値とを提供するステップと、
前記少なくとも1つのセンサに通信する少なくとも1つのプロセッサが予測モデルを介して血液容量の時系列測定値と酸素飽和度の時系列測定値との間の線形関係を特定するステップと、
前記少なくとも1つのプロセッサが、特定された線形関係に基づいて、酸素飽和度の時系列測定値と血液容量の時系列測定値とから、関心領域内の組織の内因性S―ニトロソチオール含有量を示す値を生成するステップと、
前記少なくとも1つのプロセッサが、関心領域内の組織の内因性S―ニトロソチオール含有量を示す値を非一時的コンピュータ可読媒体に記憶するステップと、を含むことを特徴とする方法。
【請求項27】
前記被験者の関心領域内の血液容量及び酸素飽和度を非侵襲的に測定することは、前記被験者の運動期間又は前記運動期間の直後の1つの期間において前記関心領域内の血液容量及び酸素飽和度を測定することを含むことを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項28】
血液容量の時系列測定値と酸素飽和度の時系列測定値との間の関係の線形度を特定することは、血液容量の時系列測定値と酸素飽和度の時系列測定値とを線形回帰モデルに適合させることで最適フィッティングラインを提供することを含み、
関心領域内の組織の内因性S―ニトロソチオール含有量を示す値は、最適フィッティングラインの勾配から導出されることを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記被験者の前記関心領域内の血液容量及び酸素飽和度を非侵襲的に測定することは、近赤外スペクトルによって前記関心領域内の血液容量及び酸素飽和度を測定することを含むことを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記少なくとも1つのプロセッサが、前記関心領域内の組織の内因性S―ニトロソチオール含有量を示す値から、最大一酸化窒素耐性指標と、最大一酸化窒素パワー指標と、使用可能酸素消耗量指標と、パーソナライズされた最大一酸化窒素指標とのうちの少なくとも1つを生成するステップを更に含むことを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項31】
血液容量及び酸素飽和度を非侵襲的に測定することは、運動又は遮断の一方の後、酸素飽和度及び血液容量のうちの一方のレート又はオーバーシュートを特定することを含み、
血液容量の時系列測定値と酸素飽和度の時系列測定値との間の線形関係を特定することは、関心領域内の組織の内因性S―ニトロソチオール含有量を示す最適フィッチング値を提供することを含み、
前記方法は、少なくとも1つのプロセッサが、パーソナライズされた最大一酸化窒素測定値と、UO2値と、最大一酸化窒素耐性と、最大一酸化窒素パワーとのうちの少なくとも1つを前記最適フィッチング値によって測定するステップを更に含むことを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項32】
前記少なくとも1つのプロセッサが関心領域内の組織の内因性S―ニトロソチオール含有量を示す値をユーザへ提供するステップと、
前記少なくとも1つのプロセッサが被験者へ運動を割り当てることにより、血液中のS―ニトロソチオールレベルを増加させるステップと、を更に含むことを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項33】
前記少なくとも1つのプロセッサが、前記関心領域内の組織の内因性S―ニトロソチオール含有量を示す値から、健康と機能と体力との少なくとも1つの指標を推定するステップを更に含むことを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項34】
前記少なくとも1つのプロセッサが、関心領域内の組織の内因性S―ニトロソチオール含有量を示す値から、組織のUO2含有量を示す値を推定するステップと、
前記少なくとも1つのプロセッサが、関心領域内の組織のUO2含有量を示す値から、健康と機能と体力とのうちの少なくとも1つの測定値を推定するステップと、を更に含むことを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項35】
前記関心領域内の組織の内因性S―ニトロソチオール含有量を示す値は、関心領域内のヘモグロビンから放出されたS―ニトロソチオールを表すことを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項36】
内因性S―ニトロソチオールの値は、組織の再酸素化速度を予測可能であることを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項37】
関心領域内の組織の内因性S―ニトロソチオール含有量は、組織の再酸素化速度を予測可能であることを特徴とする請求項7に記載のシステム。
【請求項38】
前記少なくとも1つのプロセッサが、前記UO2測定結果が認知症を有さない被験者に対して低いと特定することにより、認知症又は認知機能喪失のリスクを示すステップを更に含むことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項39】
前記認知症又は認知機能喪失は、アルツハイマー病に関連することを特徴とする請求項38に記載の方法。
【請求項40】
少なくとも1つのプロセッサが、関心領域内の組織の内因性S―ニトロソチオール含有量を示す値から第1UO2測定値を生成するステップと、
少なくとも1つのプロセッサが、関心領域内の組織の内因性S―ニトロソチオール含有量を示す第2値から第2UO2測定値を生成するステップと、
前記少なくとも1つのプロセッサが、前記第1UO2測定値が認知症を有さない被験者に対して低いと特定することにより、認知症又は認知機能喪失を示すステップと、
少なくとも1つのプロセッサが、第2UO2測定値が第1UO2測定値に対して増加することが被験者の認知症又は認知機能の改善を示すと特定するステップと、を更に含むことを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項41】
前記認知症又は認知機能喪失は、アルツハイマー病に関連することを特徴とする請求項40に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(関連出願)
本願は、35 U.S.C.§119(e)に基づいて2021年8月13日に提出された米国特許出願第63/232,686号、2021年12月14日に提出された米国特許出願第63/289,470号、2022年5月9日に提出された米国特許出願第63/339,871号、2022年6月1日に提出された米国特許出願第63/347,661号の優先権を主張し、それらの全ての内容は、援用によって本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、診断システムに関し、より具体的に、内因性S―ニトロソチオールの非侵襲的測定に関する。
【背景技術】
【0003】
一酸化窒素(NO)は、平滑筋弛緩、血管拡張、炎症反応、並びに、血小板付着及び凝集の抑制を含む多くの生理作用に関連している。NOの天然貯蔵器を見つけること、及び生物学的に有効なNO及びその代替生物学的活性形態のレベルを調節する方法を見つけることは、これらの生理的作用を制御する手段を提供することができる。一酸化窒素(NO)とS―ニトロソチオール(SNO)は、酸素とともにヘモグロビンによって運搬される。NO自体が赤血球から逃れることができないため、SNOは、NOの生物活性形態と血液中に残存するNOの唯一の内因性活性形態である。例えば、酸素不足又は運動時に、SNOは、組織中のヘモグロビンから放出されて、血管を拡張し、それによって組織へ酸素を供給する。そのため、RBCから放出されたSNOは、組織中の微小血管の血流量を制御する一方、SNOがないと、組織は、酸素を供給することができない(Zhang PNAS 2015, Premont Circ Res 2019)。したがって、SNOレベルは、VO2(組織が消費する酸素量)の重要な構成要素である。非侵襲的手段が酸素化ヘモグロビンを検出するために利用され得るが、NO又はSNOの内因性レベルを検出可能な手段は、存在しない。
【発明の概要】
【0004】
1つの例示は、システムを提供する。当該システムは、被験者の関心領域内の生体特徴パラメータを非侵襲的に測定して前記生体特徴パラメータの時系列測定値を提供するように構成される少なくとも1つのセンサと、前記センサに通信する少なくとも1つのプロセッサと、機器の読み取り可能な指令を記憶する少なくとも1つの非一時的コンピュータ可読媒体とを備え、少なくとも1つのプロセッサは、前記機器の読み取り可能な指令を実行したときに、生体特徴パラメータの時系列測定値を受信することと、予測モデルを用いて、前記生体特徴パラメータの時系列測定値から、関心領域内の組織の内因性S―ニトロソチオール含有量を示す値を生成することと、関心領域内の組織の内因性S―ニトロソチオール含有量を示す値をユーザインターフェースを介してユーザへ提供することとを含む処理を実行する。
【0005】
もう1つの例示は、内因性S―ニトロソチオールの非侵襲的測定のための方法を提供する。少なくとも1つのセンサを介して被験者の関心領域内に生体特徴パラメータを非侵襲的に測定することにより、前記生体特徴パラメータの時系列測定値を提供する。関心領域内の組織の内因性S―ニトロソチオール含有量を示す値は、前記生体特徴パラメータの時系列測定値から生成される。関心領域内の組織の内因性S―ニトロソチオール含有量を示す値は、非一時的コンピュータ可読媒体に記憶されている。1つの態様において、内因性S―ニトロソチオールの値は、組織の再酸素化速度を予測可能である。
【0006】
もう1つの例示は、内因性S―ニトロソチオールの非侵襲的測定のための別の方法を提供する。少なくとも1つのセンサを介して被験者の関心領域内の血液容量及び酸素飽和度を非侵襲的に測定することにより、酸素飽和度の時系列測定値と血液容量の時系列測定値と提供する。予測モデルによって前記血液容量の時系列測定値と前記酸素飽和度の時系列測定値との間の線形関係を特定する。特定された線形関係に基づいて、前記酸素飽和度の時系列測定値と前記血液容量の時系列測定値とから関心領域内の組織の内因性S―ニトロソチオール含有量を示す値を特定する。前記関心領域内の組織の内因性S―ニトロソチオール含有量を示す値は、非一時的コンピュータ可読媒体に記憶されている。
【0007】
1つの実施形態において、本発明は、被験者中の認知症又は認知機能喪失の存在又はリスクを特定する方法を提供する。前記方法は、運動期間において被験者の最大一酸化窒素レベルを測定することでUO2測定値を算出することを含む。認知症を有さない被験者にとって、低いUO2測定値は、認知症又は認知機能喪失のリスクが存在することを意味する。1つの態様において、前記認知症又は認知機能喪失は、アルツハイマー病に関連する。
【0008】
もう1つの実施形態において、本発明は、被験者の認知症又は認知機能の改善を特定する方法を提供する。前記方法は、第1時点と第2時点とでのUO2測定値を用いて被験者の運動期間における最大一酸化窒素レベルを測定することを含む。前記第2時点は、前記第1時点での測定の後の運動案の後の時間である。認知症を有さない被験者にとって、低いUO2測定値は、前記第1時点での認知症又は認知機能喪失を示し、且つ前記第1時点に対して前記第2時点でのUO2測定値の増加は、被験者の認知症又は認知機能の改善を示す。1つの態様において、前記認知症又は認知機能喪失は、アルツハイマー病に関連する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】被験者の関心領域内の組織の内因性S―ニトロソチオール含有量を示す値を生成するためのシステムの1つの例示を示す。
【
図2】被験者の関心領域内の組織の内因性S―ニトロソチオール含有量を示す値を生成するためのシステムのもう1つの例示を示す。
【
図3】運動期間の患者のPNOレベルを示すグラフである。
【
図4】運動期間の患者のVO2レベルを示すグラフである。
【
図5】選手がセンサーを用いて血液容量及び酸素飽和度を記録して全身フィットネス自転車を操作する際のUO2測定値の時系列データとVO2測定値の時系列データのグラフである。
【
図6】選手がセンサーを用いて血液容量及び酸素飽和度を記録して全身フィットネス自転車を操作する際のUO2測定値の時系列データとVO2測定値の時系列データのグラフである。
【
図7】6か月の期間内で毎週に記録された選手の最大NO(MAX―NO)パワーのグラフである。
【
図8】6週間内で記録された選手の最大NO(MAX―NO)耐性とその臨界パワーとの間の関係を散点図として示す。
【
図9】被験者の関心領域内の組織の内因性S―ニトロソチオール含有量を示す値を生成するための方法の1つの例示を示す。
【
図10】被験者の関心領域内の組織の内因性S―ニトロソチオール含有量を示す値を生成するための方法のもう1つの例示を示す。
【
図11】被験者の関心領域内の組織の内因性S―ニトロソチオール含有量を示す値を生成するためのもう1つの方法を示す。
【
図12】(NO)を使用するプロスポーツプラットフォームの指標及び使用例を示す。
【
図13】3群の番号の下のMax(NO)―回復レベルの選手回復測定値の棒グラフを示す。
【
図14】経時的に変化する個人最大一酸化窒素(PNO)及び経時的に変化する(NO)再生を示す。
【
図15】運動による筋肉酸素化(SmO2)及びs―ニトロソチオール(PNO)への影響を示す図である。
【
図16】運動による筋肉酸素化(SmO2)及びs―ニトロソチオール(PNO)への影響を示す曲線グラフである。ここで、(+)相関性が(―)相関内にネストされ、且つ(+)相関が(+)相関内にネストされる。
【
図17A】対照βC93マウス及び対応するβC93A突然変異動物の代表的追跡を示す
【
図17B】対照βC93マウス及び対応するβC93A突然変異動物の腓腹筋における基礎pO
2を示す。
【
図17C】対照βC93マウス及び対応するβC93A突然変異体動物の筋肉pO2の遮断後の回復率を示す。
【
図18A】患者群の新鮮な動脈血から分離されたSNO―Hbを示す。
【
図18D】患者群のSNOと総HbNOとの比を示す。
【
図19A】健康対照群とPAD患者のHb酸素化の経時的な回復の代表的な近赤外センサ測定値を示す。
【
図19B】足首にカフを使用して脚部で測定する患者群中の再灌流回復半減期を示す。
【
図19C】大腿にカフを使用して脚部で測定する患者群中の再灌流回復半減期を示す。
【
図19D】大腿にカフを使用して下腿で測定する患者群中の再灌流回復半減期を示す。
【
図19E】SNO―Hbレベルと回復半減期との相関性を示す。
【
図20】NOHb測定値と臨床化学結果との間の相関性を示す。
【
図21】NOHb測定値と充血NIRS半減期との間の相関性を示す。
【
図23】本明細書に開示されたシステム及び方法の実施例を実現可能なハードウェアコンポーネントの例示的なシステムを示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書で使用されるように、「含む」という用語は、含有を意味するが、それに限定されない。「基づく」という用語は、少なくとも部分的に基づくことを意味する。また、本明細書又は請求項に記載された「一」、「第一」、「第1」や「もう1つの」の要素又はそれらの等価物が挙げられた場合に、これらの要素のうちの1つまたは複数を含むものとして解釈すべきであり、これらの要素のうちの2つまたは複数は、あえて排除されない。
【0011】
本明細書で使用されるように、生物物質の「量」は、物質の体積、質量、飽和度又は濃度のいずれかを表すことができる。
【0012】
本明細書で使用されるように、「生理パラメータ」は、被験者の生理状態の連続値、分類値又は順番値を表す。
【0013】
本明細書で使用されるように、「予測モデル」は、パラメータの将来の状態を予測する、又は直接測定されていないパラメータの現在の状態を推定するための数学モデルである。
【0014】
本明細書で使用されるように、「被験者」は、人又は他の哺乳動物である。
【0015】
本明細書で使用されるように、「生体特徴パラメータ」は、被験者の健康又は体力を示す測定パラメータを指す。
【0016】
本明細書で使用されるように、測定のために被験者から血液又は組織を抽出する必要がない場合に、測定は、「非侵襲的に」行われる。
【0017】
本明細書で使用されるように、「被験者へ治療を提供する」ことは、治療剤を応用すること、被験者に機械的力または電気的エネルギーを与えること、治療上の利点をもたらす特定の行動やタスクを被験者に指示することを含んでもよい。
【0018】
本明細書で使用されるように、「PNO」又は個人一酸化窒素は、赤血球(RBCs)に由来し、ヘモグロビン中のs―ニトロソチオールと同定される血液中のNOの生物活性形態の個体レベルである。なお、RBC中のSNOは、他のSNOと平衡しており、PNOは、異なるNO由来(及び関連するNOx)で形成される可能性があり、RBCから放出されたs―チオソチオールは、異なる方式で発生することにより、組織中にNO及びs―ニトロソチオールを生成する。そのため、PNOは、NO由来の生物活性を表し、RBCまたは組織に酸素を供給するするための他の方法で形成されたNOの任意の生物活性形態を含む。PNOは、ヘモグロビンの酸素飽和度と総ヘモグロビンとの間の直接相関性を表す相対測定値である。例示として、高いレベルのSNOを有する個体は、低いレベルのSNOを有する個体よりも組織へ酸素を迅速に再供給可能であり、例えば、通常の運動の運動期間の筋肉回復が挙げられてもよい。
【0019】
本明細書で使用されるように、「UO2」は、一酸化窒素の計算に基づいて測定された関心領域内の組織に用いられる酸素量である。この計算は、PNO指標と組織に用いられる酸素量との積として推定される。
【0020】
本明細書で使用されるように、「最大NOパワー」は、一酸化窒素による測定値であり、個体の最大エネルギー利用率を反映する。前記最大エネルギー利用率は、ワット単位のエネルギー利用率の真の測定値に直接相関し、PNO指標の最大値と運動中の筋肉組織の最大エネルギー利用率から導出される。そして、「最大NO耐性」は、一酸化窒素の測定値に基づいて、臨界パワーの増加、持久力表現の重要標準測定値に直接相関する個体の最大エネルギー供給レートを反映し、前記重要標準測定値は、運動後の休憩期間中に生成されるPNO指標の最大変化率を導出する。
【0021】
本明細書で使用されるように、ユーザが対応する測定から1分間以内に得られる計算又は判定は、「リアルタイム」である。一実施形態において、リアルタイム計算は、測定の10秒以内に実行される。
【0022】
個体で消費される酸素量(VO2)は、現在世界中の医師及び生理学者が使用する身体能力を測定可能な重要標準である。VO2は、肺、心血管、筋肉系の吸収、輸送、酸素消費の総合的な能力を示す。VO2を測定するための従来のシステム及び方法は、侵襲性を有し及び/又は細かく制御すべき条件を必要とする。例えば、従来のVO2測定は、選手が実験室にマスクを装着する必要があり、測定ツールが35000ドル以上かかる場合がある。
【0023】
ここで説明する実施形態では、運動期間に一酸化窒素の放出によって酸素がどれだけ使用可能であるかを決定し、個体の一酸化窒素レベルをモニタリングして、身体能力やその他の生理特性を決定するのに利用されている。パーソナライズされた一酸化窒素(PNO)と呼ばれる1つの測定可能な値は、運動中に循環赤血球から放出された幾つかの活性化一酸化窒素の測定値である。血液中のS―ニトロソチオールが示す活性化一酸化窒素は、組織(心臓と脳を含む)に酸素を送達する血管を開くため、患者の一酸化窒素レベルはその健康に密接に関連する。この指標と、後述する他の指標とをモニタリングすることにより、システムは、運動者が運動に対してどれだけの一酸化窒素を放出したか、運動者がどれくらいの強さの運動を必要とするか、それらがどれくらいの時間運動すべきか、及びどのような運動が最も適しているかを特定することができ、それによって体力、機能及び健康の改善を提供する。筋肉における小血管で測定される酸素飽和度は、個体や環境に関連するため、測定から導出されるPNO指標は、患者や環境に関連する。しかし、測定は、相対的である可能性があるが、ある程度のみで相対的であり、個体のPNO測定は、個体の健康や体能の信頼指標として用いることができる。
【0024】
UO2の血液容量及び酸素飽和度を算出するためのセンサは、ポータブル且つ軽便であり、現在市場においてVO2測定に用いられている多くの装置の5パーセント未満である。また、標準VO2テスト及び測定ツールは、呼気ガス濃度に依存してシステム酸素消費を測定する。しかし、これらの中心測定を行うため、筋肉に発生する代謝過程に関する重要な情報を逃してしまう。したがって、なぜ個体のVO2最大値が高くないかを開示できない。また、UO2測定は、筋肉レベルで行われる(一酸化窒素濃度の影響を受ける)ため、酸素消費を測定するだけでなく、それを増加させるための速度制限要因(例えば、血流量が不足している、又は、酸素に対する筋肉の利用率が低い)を特定することを許容する。これにより、身体能力診断のための診断用測定ツールだけでなく、どのような運動の処方が必要かを提示して健康や身体性能を向上させることができる。例えば、UO2の変化の起因は、時系列測定値から特定され、且つ酸素供給の制限(血流量が限られたと表す)又は酸素利用の制限(筋肉機能不足と表す)として特定されてもよい。
【0025】
図1は、被験者の関心領域内の組織の内因性S―ニトロソチオール含有量を示す値を生成するためのシステム100の一例を示す。理解すべきことは、システム100は、組織の内因性S―ニトロソチオールの含有量を示す値を非侵襲的且つリアルタイムに特定することができる。これは、組織のS―ニトロソチオール含有量及び当該含有量から導き出される指標を、被験者の運動期間又はその後又は筋肉組織血流量が他の生理又は外部から遮断されたときの動作又は生体特徴パラメータに適合させるために用いることができる。システム100は、1群の少なくとも1つのセンサ102を含んでもよく、センサ102は、関心領域内の生体特徴パラメータを非侵襲的に測定して生体特徴パラメータの少なくとも1つの時系列測定値を提供する。一例では、生体特徴パラメータが血液容量及び酸素飽和度を含む場合、1群のセンサ102は、血液容量及び酸素飽和度の両方を測定する単一のセンサ又はこれらの測定を共通に提供する複数のセンサを含んでもよい。一実施形態では、単一の光学センサは、近赤外光スペクトルを用いて酸素飽和度及び血液容量を測定し、総ヘモグロビン濃度及び酸素飽和度の変化に基づいて血流量を決定する。なお、1群のセンサ102は、一般的に被験者の関心領域内の複数の生体特徴パラメータを記録する追加のセンサを含んでもよい。
【0026】
各センサインターフェース104、予測モデル106及びユーザインターフェース108は、非一時的コンピュータ可読媒体110に記憶され且つ対応するプロセッサ112によって実行される機器の読み取り可能な指令として実現されてもよい。センサインターフェース104は、前記1群のセンサ102から生体特徴パラメータの時系列測定値を受信してデータを調整して予測モデル104に使用させてもよい。また、予測モデル104は、例えば、年齢、性別、ゲノムデータ、栄養情報、薬物の摂取、関連病歴等の、コンピュータ可読媒体110に記憶された被験者に関するデータを用いてもよい。
【0027】
予測モデル110は、1つ又は複数のパターン認識アルゴリズムを利用して、各パターン認識アルゴリズムにより、センサインターフェース104を介して提供されるデータ及び任意の付加データを解析して、当該関心領域に存在する内因性S―ニトロソチオールの量を示す連続又は分類パラメータを関心領域に割り当てることができる。複数の分類又は回帰モデルを用いる場合、調停要素を利用して複数のモデルからのコヒーレント結果を提供してもよい。所定の分類器のトレーニングプロセスは、その実現方式に応じて変化するが、トレーニングは、通常、トレーニングデータを出力分類に関連する1つ又は複数のパラメータに統計的に集約することに関わる。決定木等のルールベースモデルは、例えば、1つ又は複数の人間の専門家が提供するドメイン知識を用いてトレーニングデータを代替又は補完し、抽出した特徴を用いてユーザを分類するルールを選択してもよい。様々な技術のうちのいずれか1つは、サポートベクターマシン(SVM)、回帰モデル、自己組織化マッピング、ファジー論理システム、データ融合プロセス、ブートストラップ統合法及びサックバック法、ルールベースシステム又は人工ニューラルネットワーク(ANN)を含む分類アルゴリズムに用いることができる。
【0028】
例えば、SVM分類器は、超平面と呼ばれる複数の関数を利用してN次元特徴空間における境界を概念的に区画することができ、ここで、N次元の各々は、特徴ベクトルの関連特徴を表す。境界は、各分類に関連する固有値の範囲を定義してもよい。したがって、所定の入力特徴ベクトルの、特徴空間中の境界に対する位置に基づいて、所定の入力特徴ベクトルの連続又は分類出力値を特定してもよい。一実施形態において、SVMは、線形又は非線形カーネルを用いるカーネル法によって実現されてもよい。トレーニングされたSVM分類器は、最適な超平面に収束して相関特徴に対して最大化マージンを有する解を得ることができる。
【0029】
ANN分類器は、互いに接続される複数のノードを含んでもよい。特徴ベクトルからの値は、複数の入力ノードに供給されてもよい。入力ノードは、これらの入力値を1つ又は複数の中間ノードの層にそれぞれ提供してもよい。所定の中間ノードは、前のノードから1つ以上の出力値を受信してもよい。受信された値は、分類器の学習時に確立された一連の重みに応じて重み付けされてもよい。中間ノードは、ノードでの伝達関数に基づいて、受信した値を単一の出力に変換してもよい。例えば、中間ノードは、受信された値を加算し、加算値について整流関数処理を行ってもよい。ANNの出力は、連続的又は分類された出力値であってもよい。一例において、ノードの最終層は、ANNの出力分類の信頼値を提供し、各ノードは、分類器の関連出力分類の1つの信頼度を示す相関値を有する。前記信頼値は、損失関数、例えばクロスエントロピー損失関数に基づいてもよい。損失関数は、ANNを最適化するために使用され得る。一例では、損失関数をできるだけ小さくするためにANNを最適化することができる。
【0030】
多くのANN分類器は、完全接続且つフィードフォワードである。しかし、畳み込みニューラルネットワークは、畳み込み層を含み、前の層からのノードは、畳み込み層におけるノードのサブセットのみに接続される。再帰型ニューラルネットワークは、ノード間の接続が時系列データに沿って有向グラフを形成するニューラルネットワークである。フィードフォワードネットワークと異なり、再帰型ニューラルネットワークは、早い段階での入力による状態のフィードバックを合弁してもよい。これにより、所定の入力に対する再帰型ニューラルネットワークの出力は、入力だけでなく、1つ又は複数の以前に入力された関数であってもよい。一例として、長・短期記憶(LSTM)ネットワークは、再帰型ニューラルネットワークの修正バージョンであるため、過去のデータをメモリに記憶しやすくなる。
【0031】
ルールベース分類器は、抽出された特徴に1群の論理ルールを適用して出力分類を選択することができる。ルールは、順番に適用でき、各ステップの論理結果は、後のステップの分析に影響する。具体的な規則及びその配列は、任意又は全てのトレーニングデータ、以前の状況からのシミュレーション推論又は既存分野の知識に基づいて特定されてもよい。ルールベース分類器の一例は、特徴セットの特徴の値と階層木構造における対応する閾値とを比較して特徴ベクトルの分類を選択する決定木アルゴリズムである。ランダムフォレスト分類器は、ブートストラップ統合法又は「袋詰め」法を用いて決定木アルゴリズムを修正する。前記方法において、トレーニングセットのランダムサンプル上で複数の決定木をトレーニングし、複数の決定木に跨る平均(例えば、平均数、中央値又はパターン)結果を返すことができる。分類タスクについて、各ツリーからの結果が分類されているため、モーダル結果を用いることができる。
【0032】
予測モデル106の出力は、関心領域に存在する内因性S―ニトロソチオールの量、又は関心領域に存在する内因性S―ニトロソチオールの量の増減、又は量の範囲を示す分類パラメータ等の連続パラメータであってもよい。予測モデル106の出力は、例えば電子健康記録データベースに記憶されてもよく、及び/又はユーザインターフェース108を介して関連ディスプレイにおいてユーザに提供されてもよい。
【0033】
図2は、被験者の関心領域内の組織の内因性S―ニトロソチオール含有量の値を非侵襲的に且つリアルタイムに生成するためのシステム200のもう1つの例を示す。一例において、前記組織は、筋肉組織であり、前記内因性S―ニトロソチオールは、ヘモグロビンによる内因性S―ニトロソチオールであり、前記内因性S―ニトロソチオールの量は、筋肉トレーニング中又は筋肉組織からの血流量が生理的遮断又は外部遮断を受けた後で決定される。システム200は、近赤外分光(NIRS)センサ202を含んでもよい。当該近赤外分光センサ202は、関心領域内の血液容量及び酸素飽和度を非侵襲的に測定することにより、血液容量の時系列測定値及び酸素飽和度の時系列測定値を提供する。一実施形態において、前記血液容量の時系列測定値は、総ヘモグロビンインデックスの時系列データとして表されてもよい。分光センサは、センサを皮膚に当接させる結束バンドを含んでもよい。当該結束バンドは、可撓性及び/又は弾性を有してもよい。一例として、前記センサは、リストバンドに結合されてもよい。当業者は、本明細書に記載の測定装置を任意の関連する関心領域に接続するように、結束バンド又は任意の他のパーツが配置され得ることを認識する。
【0034】
一酸化窒素(NO)計算ユニット210は、非一時的コンピュータ可読媒体212に記憶され且つ対応するプロセッサ214によって実行される機器の読み取り可能な指令として実現されてもよい。NO計算ユニット210は、センサインターフェース222、回帰モデル224及びユーザインターフェース226を含んでもよい。センサインターフェース222は、NIRSセンサから血液容量の時系列測定値及び酸素飽和度の時系列測定値を受信してデータを調整して回帰モデル224に使用させてもよい。
【0035】
回帰モデル224は、血液容量値の時系列データと酸素飽和度値の時系列データとの間の関係を特定し、特定された関係を示すパラメータを少なくとも1つ提供してもよい。一例では、関係は、線形であり、2つの時系列データによって提供される順序対は、最適フィッティングラインに適合することができる。ここで提供されるパラメータは、最適フィッティングラインの勾配であり、組織内のS―ニトロソチオール量は、勾配から導出される。別の例では、パラメータは、酸素飽和度と血液容量との間の相関係数によって導出される。そして、ユーザインターフェース226を介してユーザにその値を提供することができる。一例では、前記値を直接表示する代替又は補充として、前記値は、被験者の健康及び身体能力を示す他の指標をリアルタイムに計算するために用いられてもよい。
【0036】
図3は、運動期間における患者のPNOレベルを示すグラフ300である。縦軸302は、PNOレベルを示し、横軸304は、秒単位の運動連続時間を示し、各時間のPNOレベルは、図においてハッチング領域306として示されている。約百秒では患者へ休憩期間308が提供され、PNOレベル306は、前記期間中とその後の短時間でレベルを維持する。
【0037】
上述したように、VO2測定は、医師が使用する身体能力の重要な標準測定である。従来、VO2測定は、侵襲性試験及び高価な実験室設備を必要とするが、システム200は、局所組織内で当該測定を非侵襲的に行うことができ、日常生活活動(UO2と定義する)の間に利用できる。
図4は、運動中の患者のUO2レベルを示すグラフ400である。縦軸402は、UO2レベルを示し、横軸404は、秒単位の運動連続時間を示し、時間ごとにUO2レベルはグラフ上においてハッチング領域406として示されている。約百秒では、患者に休憩期間408が提供され、この休憩期間において、UO2レベル406は、急激に低下することが分かる。
【0038】
UO2測定値は、一酸化窒素に関する局所的な筋肉酸素消費量測定値であり、その挙動パターンは、真のVO2測定と同様である。具体的には、UO2は、局所一酸化窒素測定値と血流量との関数に基づいて生成され、関心領域における筋肉組織の使用可能酸素の測定値を示すことができる。
図5及び
図6に示すように、UO2測定値は、VO2の優れた代替であり、UO2は、低端VO2測定装置のコストの約百パーセントの一のセンサを用いて測定することができる。
【0039】
図5は、選手がセンサを用いて血液容量及び酸素飽和度を記録して全身フィットネス自転車を操作する際のUO2測定値502の時系列データとVO2測定値504の時系列データのグラフ500である。左縦軸506は、mL/kg/minを単位としてVO2を表し、右縦軸508は、任意単位でUO2を表し、横軸506は、経過時間を表す。測定されたUO2 502と測定されたVO2 504との間には非常に強い相関(r=0.95)が見られた。このことから明らかなように、推定されたVO2最大値は、UO2測定値から導出され得る。前記グラフから導出されたVO2最大値は、68ml/kg/minである。
【0040】
同様に、
図6は、選手が異なる肢体に2つのセンサを用いて血液容量及び酸素飽和度を記録して全身フィットネス自転車を操作する際のUO2測定値602の時系列データとVO2測定値604の時系列データのグラフ600である。左縦軸606は、mL/kg/minを単位としてVO2を表し、右縦軸608は、任意単位でUO2を表し、横軸610は、経過時間を表す。測定されたUO2 602と測定されたVO2 604との間には、非常に強い相関(r=0.95)が見られた。
【0041】
活性化一酸化窒素レベルは、酸素の供給を反映する。酸素の供給及び利用が良好であるほど、機能はよくなる。最大NO(MAX―NO)パワー及び最大NO(MAX―NO)耐性は、一酸化窒素に関連する、上記系統で生成可能な測定値であり、個体の実パワー出力及び最大持久力レベルと密接に関連している。
【0042】
図7は、6か月の期間内で毎週に記録された選手の最大NOパワーのグラフ700を示す。左縦軸702は、最大NO(MAX―NO)パワーを任意単位で示し、右縦軸704は、選手の最大パワー出力をワットで示し、横軸706は、経過時間を週で示す。選手が増加するにつれて(ワット単位の最大パワー出力708を追加することで測定する)、その最大(MAX―NO)パワー710も増加する。測定された最大NO(MAX―NO)パワー710とワット単位の最大パワー出力708との間の非常に強い相関性(R
2=0.95)により、MAX―NOパワーが表現の優れたバイオマーカーとして確立される。
【0043】
図8は、6週間内で記録された1群の21名の選手の最大NO(MAX―NO)耐性改善とその臨界パワー(持久力の重要標準、ワット単位で測定)との関係を散点図として示すグラフ800を示す。縦軸802は、21名の選手の最大NO(MAX―NO)耐性の改善率を示し、横軸804は、選手の臨界パワーの向上を示し、単位はワットである。このグラフから、最大NO(MAX―NO)耐性の改善と臨界パワーの向上との間に有意な相関があるため、最大NO(MAX―NO)耐性を持久力の非侵襲的測定値として特定していることが分かる。
【0044】
なお、患者のこれらの指標の数値に基づいて、具体的なトレーニングやその他の療法を策定することができる。例えば、最大NOパワーが大きい個体は、最大NO耐性よりも、血液から酸素を抽出し、それが配達可能な骨格筋において、より高い速度で利用することができる。これらの個体は、連続方式で低強度、長時間の運動を実行することで、運動スキームにおいて最適な収益を得る。例えば、ジョーンズさん、二十八歳、最大NO(Max―NO)パワーは6、及び最大NO(Max―NO)耐性は3であり、毎週3日毎に彼の最大UO2の50―55%で20分走るように規定することができる。これにより、数週間の間における彼の最大NO(Max―NO)耐性の向上が期待できる。
【0045】
或いは、最大NO(Max―NO)パワーに比べて、最大NO(Max―NO)耐性が高い個体は、それらが血液から酸素を抽出し、エネルギー生産のより遥かに速い速度で、作動筋肉に酸素を供給することができる。これらの個体は、高強度、短時間、その間に休憩時間を介在する運動スキームにおいて最適な収益を得る。これらの場合、UO2は非常に強い急激な増加があり、運動ターン間で相対的に低い点数を有する。例えば、ベネット夫人、48歳の自転車運転手、最大NO(Max―NO)耐性が7、且つ最大NO(Max―NO)パワーが2.5である。週2日で、自身のUO2の上昇が停止するまで、最大強度に近いスパートをかけ、その後、3分間休憩し、6サイクルを繰り返すように規定してもよい。これにより、数週間の間で最大NO(Max―NO)パワーと最大UO2を共に改善することが期待できる。
【0046】
他の例では、上半身のPNOレベルが下半身のPNOレベルよりも高い個体は、その上半身が行われている運動量を減少させ、その下半身が行われている運動量を増加させるように、そのパワー出力の再割り当てが指示される。これにより、それらの下半身のPNOレベルを増加させ、より大きな全身PNO値を得ることができる。このように、より長い時間継続することができる。これにより、脳、心臓、筋肉への酸素の送達が増加する。もう1つの例において、早発性アルツハイマー病に罹患した個体は、PNOレベルを改善するようにトレーニングされ、脳の血流量が改善される。例えば、レビー夫人、70歳、早原発性アルツハイマー病に罹患している。毎日30分歩くように規定してもよい。これは、彼女のPNOを5まで増加させることを目的とする。運動過程においてPNOが15まで増加するように、レビー夫人が毎日3分間自転車ルーチンを行い、運動量を調整するように規定してもよい。6か月が立つと、彼女の記憶及びベースラインPNOの改善が期待される。
【0047】
議論されているように、VO2は、現在、全世界中の医師及び生理学者が使用する身体能力の重要な標準測定値であり、肺、心血管及び筋肉系の吸収、輸送及び酸素消費の総合能力を示す。UO2測定値は、一酸化窒素に関する局所的な筋肉酸素消費量であり、その挙動パターンは、真のVO2測定と同様である。具体的には、UO2は、関心領域における筋肉組織に使用可能な酸素の測定値を示すように、局所一酸化窒素測定値及び血流量の関数に基づいて生成されてもよい。
図5及び
図6に示すように、UO2測定値はVO2の優れた代替である。
【0048】
アルツハイマー病に罹患している個体は、低いVO2を有することが知られている。VO2は、微小血管血流量に大きく依存し、赤血球由来の一酸化窒素は、血流量を制御している。したがって、ここでは、UO2の一酸化窒素による測定値がVO2であると記述されているため、PNOは、個体におけるVO2最大値を予測可能である。そこで、別の実施形態では、本発明は、バイオマーカーとしてUO2を用いることにより、アルツハイマー病又は早着性疾患のリスクを決定する方法を提供する。これらのUO2(及びPNO)を改善すると、アルツハイマー病が改善又は予防される。一方、本発明は、血流量減少に関連する疾患(例えば、認知症や血流量や心血管/心臓代謝疾患に関する認知機能の他の減少)のリスクを特定する方法を提供する。例えば、アルツハイマー病に罹患している個体に運動スキームを規定し、経時的にUO2測定を行って疾患の改善を特定する。例えば、運動スキームが開始される前の開始時点において、UO2が測定され、第2時点(及び他の選択可能な時点)において、UO2が測定されることにより、UO2値が増加したか否か、例えば、認知機能又は認知症の改善が反映されているか否かが判断される。、当業者に知られている認知テストを含む他の相補的なテストを用いることができ、さらに個体の疾患状態の改善を評価する。
【0049】
別の例では、組織の内因性S―ニトロソチオール含有量を示す値(例えば、UO2測定値)は、神経変性疾患(例えばパーキンソン病)の存在又はリスクを特定するために使用され得る。例えば、神経変性疾患に罹患していない被験者に対して、低UO2測定値は、神経変性疾患のリスクを示す。例えば、本明細書に開示されるシステム及び方法は、患者のNO及び/又はsNOをモニタリングし、それを標準又は個性化閾値と比較し、前記標準又は個性化閾値は、血液/脳バリアの機能を適量のO、血液栄養素及び栄養因子(例えば脳由来神経栄養因子(BDNF))を提供する状態に関連付けて、脳細胞が正常に運行することを維持する。特にパーキンソン病は、sNOレベルに影響する激しい運動に反応することが証明されている。例えば、Salgado, Sanjay, Nori Williams, Rima Kotian, and Miran Salgado. 2013. 「An Evidence―Based Exercise Regimen for Patients with Mild to Moderate Parkinson’s Disease「 Brain Sciences 3, no. 1: 87―100. https://doi.org/10.3390/brainsci3010087; Maggie Fox (Dec. 11, 2017). 「Vigorous exercise can slow Parkinson's「 NBC News. https://www.nbcnews.com/health/health―news/vigorous―exercise―can―slow―parkinson―s―n828521; and Schenkman, Margaret et al. 「Effect of High―Intensity Treadmill Exercise on Motor Symptoms in Patients With De Novo Parkinson Disease: A Phase 2 Randomized Clinical Trial.「 JAMA neurology vol.75,2 (2018): 219―226. doi: 10.1001/jamaneurol.2017.3517.これらの参考文献のそれぞれは、引用により本明細書に組み込まれる。
【0050】
もう1つの例において、ジャックさんは、心臓病に罹っている60歳のビジネスマンである。他のPNOレベルが13まで改善されるように、毎日30分間の運動の運動スキームを規定してもよい。上記の例において、時間の経過とともに、他の運動スキームは、40分間まで増加し、PNOが倍増し、これは、心筋に酸素含有血液を提供する能力が増加することを示す。もう1つの例において、スティーブンソン夫人は、3人の幼い子供を持つ長居した母親であり、日常生活の中で子供の歩みに追いつくように努力しており、最大UO2が43である。週2日の運動の運動スキームを規定してもよい。第1日は、彼女の最大UO2の50%―60%での20分から30分の中強度のトレーニングを含み、第2日は、その最大UO2の75%―85%での5分間の運動の3回のターンを含む。これにより、体力、エネルギー及び彼女の最大UO2の増加が期待される。同様に、他の例において、ジェームズさんは、糖尿病に罹っている60歳のビジネスマンである。彼のベースライン血糖は、200である。他のPNOレベルが12まで増加するように、毎日20分間の運動の運動スキームを規定してもよい。この例では、時間の経過とともに40分間の運動まで増加可能であり、PNOが倍増した。これは、筋肉に酸素を含む血液を提供することと、その後の安静時血糖を減少させる能力が増加することを示している。
【0051】
上記構造及び機能特徴に鑑み、
図9~11を参照して、例示的な方法をより良く理解する。しかし、説明を簡単にするために、
図9~
図11の例示的な方法は、直列に実行されるものとして示されている。理解すべきことは、本実施例が図示された順序に限定されない。幾つかの動作は、他の例において、本明細書に示されるものと異なる順序で、複数回及び/又は同時に発生することができる。また、記述された全ての動作を実行して方法を実現する必要はない。例えば、これらの方法の各々は、
図1のシステム100及び/又は
図2のシステム200によって実行されてもよい。
【0052】
図9は、被験者の関心領域内の組織の内因性S―ニトロソチオール含有量を示す値を生成するための方法900の1つの例示を示す。902において、被験者の関心領域内のセンサ102/202により生体特徴パラメータを非侵襲的に測定することで生体特徴パラメータの時系列測定値を提供してもよい。一例において、これらの測定は、被験者が運動に参加しているときに行われる。別の例において、これらの測定は、被験者が運動に関与した後の休憩期間中に行われる。他の例では、関心領域の血流量が生理的又は外部的に遮断された後、又は生理的に酸素が枯渇した直後に測定されてもよい。一実施形態では、酸素不足を誘発した後にベースラインよりも高い血流量及び酸素飽和度のうちの1つのオーバーシュート応答を測定することで、酸素飽和度の時系列測定値と血液容量の時系列測定値との一方を提供する。予測モデルは、オーバーシュート又はレート値を用いて、関心領域内の組織の内因性S―ニトロソチオール含有量を示す値を生成する。
【0053】
904において、関心領域内の組織の内因性S―ニトロソチオール含有量を示す値は、プロセッサ112/214が予測モデル106/224を介して時系列データから生成することができる。一実施形態において、血液容量を示す第1時系列データと酸素飽和度を示す第2時系列データとの間の線形関係を特定し、前記線形関係に基づいて前記値を特定する。例えば、線形回帰モデルに2つの時系列データを供給して酸素飽和度と血液容量との経時的な最適フィッティングラインを提供する。関心領域内の組織の内因性S―ニトロソチオール含有量を示す値は、最適フィッティングラインの勾配から導出することができる。906において、関心領域内の組織の内因性S―ニトロソチオール含有量を示す値は、プロセッサ112/214によって非一時的コンピュータ可読媒体110/212として実現されるメモリに記憶されてもよい。一例において、方法900は、関心領域内の内因性S―ニトロソチオール含有量に対する治療の影響を治療後に発生する値と治療前に発生する記憶値とを比較することによって決定するように、被験者に提供される治療の前後に実行されてもよい。また、記憶された値は、被験者の最大一酸化窒素耐性指標、最大一酸化窒素パワー指標、使用可能酸素消費指標、及びパーソナライズされた一酸化窒素指標のうちの1つ又は複数を生成するために用いられてもよい。
【0054】
図10は、関心領域内の組織の内因性S―ニトロソチオール量を示す値を生成するための方法のもう1つの例示を示す。1002において、センサ102/202によって関心領域内の血液容量及び酸素飽和度を非侵襲的に測定することで、第1時系列データの酸素飽和度測定値と第2時系列データの血液容量測定値とを提供してもよい。例えば、近赤外スペクトルによって組織中の血液容量と酸素飽和度の両方を特定してもよい。一例において、これらの測定は、被験者が運動に参加しているときに行われる。1004において、第1時系列データと第2時系列データとの間の線形関係は、プロセッサ112/214が予測モデル106/224を介して特定することができる。例えば、2つの時系列データを線形回帰モデルへ与えて酸素飽和度と血液容量との間の経時的な最適フィッティングラインを提供してもよい。
【0055】
1006において、プロセッサ112/214により、第1時系列データと第2時系列データとの間の線形関係から、関心領域内の組織の内因性S―ニトロソチオール含有量を示す値を生成することができる。1つの実施形態において、線形関係は、第1時系列データと第2時系列データとの間の最適フィッティングラインとして表され、関心領域内の組織の内因性S―ニトロソチオール含有量を示す値は、最適フィッティングラインの勾配から導出することができる。1008において、関心領域内の組織の内因性S―ニトロソチオール含有量を示す値は、プロセッサ112/214によって非一時的コンピュータ可読媒体110/212として実現されるメモリに記憶されてもよい。また、記憶された値は、被験者の最大一酸化窒素耐性指標、最大一酸化窒素パワー指標、使用可能酸素消費指標、及びパーソナライズされた一酸化窒素指標のうちの1つ又は複数を生成するために用いられてもよい。
【0056】
図11は、被験者の関心領域内の組織の内因性S―ニトロソチオール含有量を示す値を生成するためのもう1つの方法1100を示す。1102において、被験者に対して有酸素運動に参加するように指示する。一例では、被験者に対して自転車に乗るように指示してもよい。1104において、運動の影響を受ける被験者の筋肉の関心領域における血液容量及び酸素飽和度は、酸素飽和度測定値の第1時系列データと血液容量測定値の第2時系列データが提供されるように、センサ102/202によって非侵襲的に測定されてもよい。
【0057】
1106において、プロセッサ112/214は、関心領域内の血液容量の時系列データと酸素飽和度の時系列データとのうちの少なくとも1つを調整して、無関係な影響を除去してもよい。組織内の血流量は、プロスタグランジン、カテコールアミン、一酸化窒素、温度、キナーゼ、アデノシン三リン酸(ATP)、酸素欠損等の多くの要因によって媒介される。例えば、炎症時キナーゼは、流量が増加し、NOは、せん断及びAch誘導の血管拡張を媒介する。ヘモグロビンによって放出されたNOの血流量への影響を測定しやすくするために、収集した血流量データを調整してこれらの要因の影響を除去してもよい。例えば、多くの有酸素運動は、ある程度予測可能な期間における筋肉の繰り返し収縮に関わる。このような血液容量の減少は、周期的な信号として定量化され、血液容量の時系列測定値から除去可能な別の時系列データと示されてもよい。血液容量及び酸素飽和度のうちの一方又は両方に対する他の生理学的影響は、位置及び特定の運動に応じて変化し、これらの影響を示す信号を付加することで、血液容量と酸素飽和度との関係を示す非線形な影響を時系列データから除去することができる。
【0058】
1108において、プロセッサ112/214は、血液容量の時系列測定値から導出された血流量と酸素飽和度との間の線形関係を識別する統計処理を行い、関心領域内の組織の内因性S―ニトロソチオール含有量を示す値を前記線形関係から生成してもよい。例えば、線形回帰分析を行い、回帰分析において生成される最適フィッティングラインの勾配を、血流量と酸素飽和度との間の線形関係を定量化することができる。また、2つのパラメータの間の相関係数を生成し、特に、筋肉酸素が枯渇し、勾配が生じにくい直線関係を評価することができる。1110において、関心領域内の組織の内因性S―ニトロソチオール含有量を示す値は、プロセッサ112/214によって非一時的コンピュータ可読媒体110/212として実現されるメモリに記憶されてもよい。
【0059】
図12は、プロ選手の指標と使用例を示す。具体的な指標は、異なる積極的運動結果に関連してもよく、例えば、最大速度、パワー又は持久力の改善である。また、指標は、選手の回復及び再生に対するモニタリング、予測、計画を支援することに役立つ。例えば、一酸化窒素の測定は、運動活動の進行を支援し、人の血液供給における一酸化窒素の内在性の増加を最大化するために用いることができる。もう1つの例において、一酸化窒素の回復をモニタリングすることにより、選手が試合中又は何局の間にどれくらいの休憩を必要とするかを特定することができる。第3の例示において、対応性のあるトレーニングにより、一酸化窒素の再生をモニタリング及び/又は改善して、けがリスクを低減し、けがから競技場に戻ることができる。
【0060】
図13は、運動ルーチンにおいて実行される群数に対する最大NO回復(MAX NO Recovery)の例示的な測定を示す。最大NO回復(Max(NO)―Recovery)は、運動後の筋肉組織の再酸素化速度を導出するものであり、種々の要因(例えば、(NO)濃度、呼吸モード、及び有酸素体能レベル)の影響を受ける。最大(NO)回復(Max(NO)―recovery)は、選手がどのようにリアルタイムに回復するか、及び運動後、いつ完全に回復するかを知らせることができる。また、個人は、最大NO回復(Max(NO)―Recovery)スコアを増加させるようにトレーニングされてもよい。このように、トレーニングの後又はトレーニングの隙間でより速く回復することは、可能になる。グラフに示すように、選手の最大NO回復(MAX NO Recovery)は、2群でピークに達している。選手が実行すべき群の最大量が特定されるように、ピーク最大NO回復(MAX NO Recovery)からの降下について閾値を設定してもよい。調節によって、選手は、より多くの群数でピークに達することができ、及び/又はピーク後の降下速度が低下する可能性がある。
【0061】
図14は、経時的に変化するPNOと最大NO再生(MAX NO Regeneration)の例示的な測定を示す。PNO測定は、運動期間中の運動と休憩時間帯を交互に経由する選手をプロットしたグラフである。選手が運動するとPNOが増加する。回復期間において、PNOがフォールバックする。選手が発生したPNOが多いほど、その健康及び機能は、良好になる。PNOは、けがリスクを軽減するとともに、個体が再生期間に再けがするリスクを低減するためにも用いられてもよい。健常な脚と怪我している脚との間でPNOレベルを比較することで、選手に負荷能力を知らせることができる。
【0062】
けが人が異なる時間に摂取した一酸化窒素レベルを比較することにより、けが修復が完全回復に対して行った組織損傷回復レベルを特定することができる。休憩時に最大NO再生(MAX NO Registration)の測定値を算出してもよい。最大NO再生(MAX NO Registration)を記録するために、カフを個体の上腕又は大腿の上部に置き、その後、生体センサをカフの遠位側の大筋肉に置いてもよい。カフは、肢体の血液に圧力が遮断されるまでガスを充填することができる。血流が遮断されると、個体は、休憩を維持することができ、カフが一定時間ガス充填し、その後、カフが自動的にガスを放出し、血流を肢体に戻すことを可能にする。バイオマーカー測定は、虚血後再灌流時に記録することができ、NOレベルの計算に用いることができる。
【0063】
例示的な測定において、選手の最大NO再生(MAX NO Registration)スコアは、右ACL手術を受けてから12週間にその左脚と右脚に描画される。健常左脚と怪我右脚との差異は、回復過程全体において容易に追従できる。前記指標は、従来の指標(例えば、強度)と組み合わせて用いることができる。前記指標は、競技場にできるだけ早く戻り、過度の怪我リスクがないように、選手のトレーニング方法を最適化するために用いられてもよい。
【0064】
図15に示すように、PNO又は筋肉酸素化作用(SmO2)を測定するとき、異なる傾向が同時に現れる。マクロ傾向は、血流量の自動調節を示す。骨格筋に酸素を利用すると、筋肉血流量に代償性が増加する。この場合、筋肉血液容量の指標(図示せず)である総ヘモグロビン(THb)と筋肉酸素との間に逆線形相関が見られる。このため、一酸化窒素及びs―ニトロソチオール(PNO)の顕著な増加が見られた。この応答は数秒から数分継続することができる。
【0065】
ミクロ傾向は、積極的な充血を示す。筋肉が収縮すると、血流量が制限されるため、酸素レベルが低下する。そして、次回の収縮前の筋肉弛緩段階では、血流量及び酸素飽和度が増加する。アクティブ充血期間において、SmO2とTHbは、線形相関である。
図15におけるミクロ傾向は、PNOの急激な増加及び減少に伴う能動的な充血反応を示している。
【0066】
当業者は、マクロ傾向が運動期間PNOにおいて全体として増加を示すが、マクロ傾向内において、PNOの微小な増加/減少からなるミクロ傾向が存在することに気付くべきである。これらの2つの傾向は、ともに筋肉血流量の調節に用いられる。
【0067】
図16に示すように、筋肉収縮が血流量に対して通常よりも強い影響を持つ場合のように、マクロ傾向とミクロ傾向が正の線形相関を示す場合もある。このため、自動調整応答をはっきり見ることができない。しかし、線形相関が検討されているため、正の相関でも負の相関でもPNOが増加する。
【0068】
図16において、(―)相関内にネストされたの(+)相関と、(+)相関内にネストされた(+)相関が存在する。両者を視覚的に区別することができないが、可能性がある(第2群のPNO値が高いのは、+/+相関が原因ではない)。
【0069】
組織が損傷した後、けが人は、組織損傷が既に完全に回復したと信じて、全ての重量を損傷した組織に置く可能性、及び/又は、損傷した身体部位が完全に回復したと信じたが、実際に前記組織損傷が完全に回復していない可能性がある。実際の全ての組織損傷回復は、損傷した肢体(即ち、腕又は脚)と対応する同じタイプの損傷していない肢体とからの一酸化窒素レベルを比較することによって特定することができる。本明細書に記載された指標に基づいて、けがをしたものは、再度けがする可能性を低下させたまま、全面的な活動を継続することができる。
【0070】
<実施例:検討>
SNO、特にSNO―Hb―βCys93の臨床に関する低酸素血管拡張測定における重要性を確定するために、ヒトHbを発現するマウスを用いた。マウスのSNO―Hbは、枯渇し、低酸素血管が拡張した損害に起因する多くの心血管欠陥を示す。前記研究において、Cys93 SNOに対する模擬反応性充血の標準臨床案の機能結果を検査した。即ち、大腿動脈が5分間遮断された後に、腓腹筋における再酸素化の測定(針状電極によるpO2の測定)を行った。
【0071】
図17Aは、対照群βC93マウス及び対応するβC93A突然変異動物の代表的な追跡を示す。正常な低酸素血管拡張活性を有するβC93マウスでは、動脈閉塞解除(即ち、大腿動脈血流回復)の後、組織pO
2反応が速やかに回復し、ひいてはベースラインを超える。これに対し、βC93A動物は遅延反応を示し、放出(リリース)後の5分間の記録間隔において、筋肉酸素がベースラインレベルに回復しなかった。
図17Bに示すように、群データの比較から、βC93Aマウスの腓腹筋の基礎pO
2が明らかに低下し、p=0.032であり、我々のこれまでの研究と一致することが見られる。群データの比較から、βC93Aマウスの筋肉pO
2は、βC93対照群に比べて、5分後の回復速度が遅くなった(46±17vs.28±15mm Hg;p=0.004)ことが更に見られる。
図17Cに示すように、群データの比較から、γβC93マウスに比べて、筋肉pO
2の閉塞後回復速度は顕著に低減され、約正常速度の半分(それぞれ0.23±0.15vs.0.13±0.11mm Hg/sec)であり、p=0.036であった。したがって、SNO―Hb欠乏は、血流量の短期間な中断による組織酸素化の速度及び全体効率を低下させる。
【0072】
年齢にマッチした健常対照群と、全身性(即ち心不全及び慢性閉塞性肺疾患(COPD))又は末梢性(即ち末梢血管疾患及び鎌状細胞障害)酸素化欠陥疾患(即ち、糖尿病末梢動脈疾患(PAD)、駆血分率が低下した心不全(HF)、COPD、及び鎌状細胞障害(SCD))に罹患したと診断された患者において、赤血球SNOレベルを測定した。各群の具体的な取り込み基準及び疾患の状況は、拡張方法を参照されたい。53名の被験者のうち、49名の研究がなされている(13名の健常者、13名のPAD、6名のHF、9名のCOPD及び8名のSCD)。
【0073】
RBCを現場で処理し、橈骨動脈から採取して約1時間内に水銀結合光解―化学発光法によりSNO―Hb及び第一鉄ニトロソhbを定量化した。機器の故障により、9名の被験者の値は、破棄された(即ち、診断と、それらのデータを廃棄したとの決定は、患者の生理状態を知らない技術者によってなされた)。残りのサンプルの結果は、
図18A―Dに示される。
【0074】
図18Aに示すように、正常ボランティア(n=10)では、動脈ヘモグロビンSNO―Hbレベルは1000 Hb毎、2.6±1.3であり、この濃度は他の健常被験者群に記録されている濃度と類似している。HF群(n=5;1000 Hb毎、2.5±0.6)及びCOPD群(n=5;1000 Hb毎、2.0±1.3)におけるSNO―Hbレベルは、対照群と変わらない。しかし、PAD(n=11;1.5±1.2)及びSCD(n=5;0.9±0.6)の患者の血液からのSNO―Hbの量は、正常対照よりも著しく低い(p<0.05)。SNO―Hbレベルの低下は、NO生成の全体的な減少に起因する可能性があり、Hb分子内部の過程の欠陥によって、NOがヘモグロビンからチオールへ分子内移動できない可能性もあり、即ち、先に報告されたSCD、PH及び酸素欠乏状態における健康な被験者のように、不活性FeNOの数の増加に反映される。なお、
図18Cに示すように、Hbに結合したNO(HbNO)の総量は、いずれの患者群においても正常と区別されない。しかし、
図18Bに示すように、HbFeNO濃度は、PAD、COPD及びSCDの被験者群において正常よりも明らかに高く、HFを除く全ての群におけるSNOと総HbNOとの比率が有意に低下した:正常ボランティア及びHF患者の0.69±0.13及び0.67±0.16から、PADの0.36±0.30、COPDの0.36±0.22及びSCDの0.24±0.20にそれぞれ低下した。SNO―Hbと各種の臨床化学パラメータとの間の関連性についても、探知性分析を行う。
図18Cは、総HbNOを、
図18Dは、識別された患者群のSNOと総HbNOとの比率をプロットしたものである。
図20(n=33)に示すように、データセットを分析したところ、血漿亜硝酸塩レベルとSNO―Hb、及び亜硝酸塩とSNO―Hb/総HbNO比率との間には負の相関性があることが分かった。SNO―HbとFeNOレベルとの差異、SNOと総HbNOとの比率、及び血漿亜硝酸塩とNO生物活性との間の負の相関性は、いずれも、PAD、COPD及びSCD患者の赤血球にNO処理欠陥が存在することを示す。
【0075】
この研究は、βC93Aマウスの反応性充血におけるSNO―Hbの作用を実証しようとしている。採血後、短期間な肢体血流遮断の後、近赤外分光(NIRS)装置を用いて下腿と脚部組織の酸素化を測定した。脚部の虚血は、血液の閉塞危機を誘発する可能性があるため、SCD患者は、本研究群から除外される。他の群における被験者は、半臥位に置かれ、大腿上部と下腿下部の足首近傍に空気入りカフが巻き付けられている。各カフを1秒間に迅速に膨張させて動脈血の流れ(目標圧力=収縮期血圧+約130mm Hg;最大300mm Hg)を停止し、遮断期を5分間保持した後、カフ圧を解放して組織酸素化を5分間測定した。2回のカフの膨張/記録過程の間には5分間の回復間隔があり、まず足首カフを使用し、脚部の状況を記録し、次に大腿カフを使用し、それぞれ脚部と下腿上部を記録する。45名の被験者に対して遮断試験を行った。被験者の疾患の状況やRBC SNOレベルを知らない者がNIRS曲線をオフライン分析した。脚部運動及び/又は差の信号分解能により、独立分析群は、記録された近赤外スペクトルにおいて13名が解読不能であると考えられるため除外され、残りの11名の健常者、8名のPAD患者、6名のHF患者及び7名のCOPD患者のデータを比較に用いる。
【0076】
実験終点は、秒単位で測定された組織酸素化回復(即ち、ベースラインの50%まで回復)の半減期(t
1/2)であり、結果が
図19A―Eに示される。
図19Aは、1名の健常被験者及び1名のPAD患者が、大腿カフを外した後の代表的な脚部組織酸素化の回復軌跡を示す。健常被験者の再酸素化反応は、迅速であり、t
1/2は10秒であり、PAD患者の組織酸素化応答が遅延し、t
1/2は22秒である。
図17Aに示すように、これは、βC93対照群マウスの大腿動脈遮断を解除した後の組織pO
2の急速回復と、βC93Aマウスの緩慢な回復とに非常に似ている。
図19B、
図19C及び
図19Dは、それぞれ、足首関節及び大腿カフの遮断後の脚部再酸素化のt
1/2と大腿遮断後下腿再酸素化のt
1/2の定量化群データ(平均値±SD)を示している。全ての3項目の測定において、健常被験者が記録した平均t
1/2値は、約10秒であり、前の検討結果と一致した。重要なことは、
図19Eに示すように、1群のSNO―Hbレベルが再灌流率に直接関連する。全ての3群の患者の平均t
1/2値は向上したが、PAD患者群のみが足首関節又はカフにガスを充填した後の足部の再灌流半減期が著しく延長した。また、
図21に示すように、脚部再灌流t
1/2とSNO―Hbレベルとの間、SNO―Hbと総HbNOとの比率との間に明らかな逆数相関性があるが、FeNOレベルとの間に逆数の相関性がなく、それによってRBC SNOを再酸素化反応に関連付ける。
【0077】
多くの臨床病において、微小血管血流が損傷し、組織が虚血する。しかし、血流量を増加させる薬物は、組織酸素化を改善しない。また、血流の臨床測定側が内皮成分、特にNOに重視するが、NOは組織酸素化においては作用しない。一方、確実な根拠に示すように、組織酸素化を調整する血流は、S―ニトロソヘモグロビンによって調節される。換言すれば、血圧を促進する血流量は、内皮NOによって調節され、組織酸素化を調節する血流量は、RBC―SNOによって制御される。反応性充血は、組織酸素化を回復させるために生じた短期間な虚血の後の血流量の増加である。反応性充血は、内皮NOに起因するものの、マウスの血管拡張と血流量の反応において、RBC―SNOが主な役割を果たす。この項目は、マウスと人体の組織酸素化を直接測定することを含む。重要なことは、この研究によれば、SNO―Hbを必要として酸素欠損組織を酸素化させるとともに、SNO―Hbにおける欠損によって酸素化障害を引き起こすことが証明された。また、患者体内のSNO―Hbレベルは、短期間な局所酸素欠損後の組織酸素化状況を予測することもでき、これは、微循環血流の1番目のバイオマーカーであることを示している。
【0078】
研究は、呼吸サイクル3―ガスモデルを提出し、モデルにおいて、O2/NOが同時にHbにロードされ、その後、SNO―Hbが血管拡張性SNOを放出して、血流と組織の酸素供給を調節する。突然変異マウスは、βCys93からSNOを携帯又は割り当てることができないため、一般的に組織酸素化機能が損なわれる。
図17Bに示すように、基本条件下での組織欠損に加えて、突然変異マウスは、全体の酸素欠乏及び領域虚血条件下でも組織酸素化障害を示す。逆に、酸素欠乏条件は、酸素負荷に影響したり、他の方式でHbの異種転移に影響したりしても、S―ニトロソ化に影響する。これは、SNO―Hbレベルの低下、又はSNO―Hbと総HbNOとの比率の低下として表され、NOが依然としてヘム鉄に結合しているため、単にCys93に移行できないためである。それ相応に、
図18A―Dに示すように、酸素の病理学的変化を特徴とする疾患状態(COPD、PAD及びSCD)の患者のSNO―Hb及びSNO/HbNOレベルが低く、以前の報告が確認された。SNO―Hbと総Hbに関するNO(SNO―Hb+Hb FeNO;総HbNO)の比率(活性FeNOの累積がないことを示す)は、単独のSNO―Hbの指標よりも鋭敏な生物活性損失指標であることが予想される。このため、NO/SNO加工欠陥は、組織酸素が不足している複数の疾患において観察され、且つ、Hbによっては、FeNOをSNO―βCys93―Hbに変換することができずに関連付けられている可能性がある。同様に、SNO―Hbと亜硝酸塩との比率、SNO―Hb/HbNOと血液中の亜硝酸塩との比率が実際に逆数に関連することが発見され、これは前の研究結果と一致し、即ち、
図20に示すように、高い亜硝酸塩がSNO―Hbの形成を阻害する。したがって、亜硝酸塩レベルは、血流量又は組織酸素化と無関係である。
【0079】
PAD患者は、明らかな微小血管機能障害特徴を有する。
図19A―Eに示すように、下肢の一時虚血から試験が回復した場合には、当該群における再灌流は有意に遅延しており、いずれの場合においても、健康対照と比較して再酸素化のt
1/2が長い。重要なことに、他の群において、t
1/2と再酸素化との統計学的な差は見られなかったが、全ての患者群におけるSNO―Hbレベルと酸素化比率との間に有意な相関性が見られた。要するに、マウスの遺伝学的検証と組み合わせて、これらの結果は、SNO―Hbが血流量の自動調節の重要なドライバであることを示し、これにより、組織血流量が組織酸素化を制御する。
【0080】
これらの発見は、様々な臨床的意義を有する。反応性充血は、顕著なRBC SNO画分を有し、先に内皮機能の指標とされている。一般に、内皮NOと赤血球SNOの役割は、異なり、前者は血管の健康に影響を与え、後者は組織の健康に影響を与える。研究結果から、赤血球SNO―Hbは、組織酸素化状態のバイオマーカーであり、特に、SNO―Hbは、再灌流率に直接関連することが示された。また、この研究により、反応性充血試験は、患者のSNO―Hb機能を試験する効果的な測定であることが示された。RBC SNOの能力を強化することは、組織酸素化を改善することができ、幅広い臨床効果を有することができる。
【0081】
実施例:測定装置
図22は、測定装置2200の一例を示す図。ここで、測定装置2200は、患者に装着可能である。測定装置2200は、1つ又は複数の光源2201(例えば、発光ダイオード、有機発光ダイオード、レーザ又は複数の波長を発生する単一の光源)を含んでもよい。1つ又は複数の光源2201は、アレイを形成してもよい。制御回路及び/又はプロセッサは、1つ又は複数の光源2201を制御してもよい。例えば、システム100及び/又はシステム200のうちの1つ又は複数は、測定装置2200内に組み込まれて測定装置2200に結合され、又は測定装置2200と通信することができる。したがって、プロセッサ112/214は、1つ又は複数の光源2201を制御してもよい。前記1つ又は複数の光源2201は、複数の波長の光を生成可能である。一例として、前記1つ又は複数の光源2201は、525nm、650nm、750nm、810nm、850nm及び970nmの光を発生する。別の例では、少なくとも1つの光源2201は、緑色光を生成し、少なくとも1つの光源は、赤色光を生成し、少なくとも1つの光源は、赤外光を生成する。
【0082】
測定装置2200は、1つ又は複数の光受信器2202(例えば、フォトダイオード又は光センサ)を含んでもよい。1つ又は複数の光受信器2202は、アレイを形成してもよい。1つ又は複数の光受信器2202は、1つ又は複数の光源2201から所定の距離に配置されてもよい。1つ又は複数の光受信器2202は、システム100及び/又は200のセンサ102/202のうちの1つ又は複数として使用され得る。1つ又は複数の光受信器2202から受信された情報は、デジタル変換器において変換されてもよい。測定装置2200は、1つ又は複数の光受信器2202からのデータを処理するための1つ又は複数のプロセッサ(例えば、プロセッサ112/214)を含んでもよい。測定装置2200は、データを外部システム及び/又はプロセッサに伝送するための通信インターフェース(例えば、ブルートゥース、WiFi及び5G等)を含んでもよい。測定装置2200は、データを記憶するための1つ又は複数のメモリ装置(例えば、コンピュータ可読媒体110/212)を含んでもよい。
【0083】
測定装置2200aは、装置においてデータを提示するためのディスプレイ及び/又はオーディオ出力2203を含む。あるいは、外部システムにデータを提示してもよい。例えば、測定装置2200は、通信インターフェースを介してパーソナルコンピュータ又はモバイルデバイスと通信し、当該パーソナルコンピュータ又はモバイルデバイスを介してユーザに出力してもよい。一例では、当該パーソナルコンピュータ又はモバイルデバイスは、システム100及び/又は200として使用され得る。
【0084】
測定装置2200は、センサ102/202に含まれ得る温度計及び生体インピーダンスセンサを含む1つ又は複数の追加検知素子を含んでもよいが、これらに限定されない。追加検知素子によって収集されたデータは、強化された測定及び後処理分析を提供することができる。
【0085】
測定装置2200の動作は、データキャプチャシーケンスを開始させることを含み得る。データキャプチャシーケンスは、オン及びオフにされたタイミングシーケンスで前記1つ又は複数の光源2201を活性化することを含んでもよい。データキャプチャシーケンスは、前記1つ又は複数の光源2201の活性化を所定の距離で結合して前記1つ又は複数の光受信器2202を活性化することを含んでもよい。発生した光の異なる波長は、体内の異なる物質を標的とするように配置されてもよい。光受信器2202と光源2201との間の異なる所定距離は、体内の異なる深さを標的とすることができる。一例として、緑色光(約530nm)は、3mmの距離のパルスレートを対象とすることができる。赤色光(約660nm)は、脱酸素化ヘモグロビンを標的とすることができ、赤外線(約940nm~980nm)は、光受信器2202の光源2201からの距離を与えた場合に体の様々な深さにおけるオキシヘモグロビンを標的とすることができる。790~810nmにおける赤外線は、等倍体ヘモグロビンを標的とする。測定装置2200は、1つ又は複数の光受信器2202からの信号をキャプチャすることができる。キャプチャされた信号は、前処理されてもよい(即ち、デジタル変換器及び/又はフィルタリング処理を実行する)。キャプチャされた信号は、バイオマーカーに変換されてもよい。バイオマーカーは、更に処理、記憶及び/又は通信(例えば、装置上及び/又は外部システムへ)されてもよい。
【0086】
実施例:コンピュータシステム
図23は、本明細書に開示されたシステム及び方法の例示的なハードウェアコンポーネントを実現できる例示的なシステム2300を示す概略ブロック図である。システム2300は、様々なシステム及びサブシステムを含み得る。システム2300は、パーソナルコンピュータ、ノートパソコン、モバイルコンピューティングデバイス、ワークステーション、コンピュータシステム、装置、特定用途向け集積回路(ASIC)、サーバ、ブレードサーバ、サーバ群等のうちの1つ又は複数を含んでもよい。
【0087】
システム2300は、システムバス2302、処理手段2304、システムメモリ2306、メモリ装置2308と2310、通信インターフェース2312(例えば、ネットワークインターフェース)、通信リンク2214、ディスプレイ2316(例えば、ビデオ画面)及び入力装置2318(例えば、キーボード、タッチスクリーン及び/又はマウス)を含み得る。システムバス2302は、処理手段2304及びシステムメモリ2306と通信することができる。追加メモリ装置2308及び2310、例えば、ハードディスクドライブ、サーバ、独立データベース又は他の不揮発性メモリは、システムバス2302と通信してもよい。システムバス2302は、処理手段2304、メモリ装置2306と2310、通信インターフェース2312、ディスプレイ2316及び入力装置2318を互いに接続する。幾つかの例では、システムバス2302は、USB(Universal Serial Bus)ポート等の追加ポート(図示せず)を更に接続する。
【0088】
処理手段2304は、コンピューティング装置であってもよく、特定用途向け集積回路(ASIC)を含んでもよい。処理手段2304は、指令セットを実行して本明細書に開示された実施例の動作を実現する。前記処理手段は、処理コアを含んでもよい。
【0089】
追加メモリ装置2306、2308及び2310は、テキスト又はコンパイル形式でデータ、プログラム、指令、データベースクエリ、及びコンピュータを操作するのに必要な任意の他の情報を記憶してもよい。メモリ2306、メモリ2308及び2310は、メモリカード、磁気ディスクドライブ、光ディスク(CD)、又はネットワークを介してアクセス可能なサーバ等のコンピュータ可読媒体(統合又は移動可能な)として実装されてもよい。幾つかの例において、前記メモリ2306、メモリ2308及びメモリ2310は、テキスト、画像、ビデオ及び/又はオーディオを含んでもよく、その一部は、人間によって理解され得るフォーマットで利用可能である。
【0090】
追加的又は代替的に、システム2300は、通信インターフェース2312を介して外部データソース又はクエリソースにアクセスすることができ、通信インターフェース2312は、システムバス2302及び通信リンク2314と通信することができる。
【0091】
動作において、システム2300は、システム100、システム200及び/又は測定装置2200等の本発明のシステムの1つ又は複数の部分を実装するように構成され得る。幾つかの例によれば、診断システムを実現するためのコンピュータは、前記システムメモリ2306及び前記メモリ装置2308及び2310のうちの1つ又は複数に論理的に常駐することができる。処理手段2304は、システムメモリ2306及びメモリ装置2308と2310に由来する1つ又は複数のコンピュータ実行可能指令を実行する。本明細書で使用される「コンピュータ可読媒体」という用語は、処理手段2304に指令を提供して実行される媒体を指す。媒体は、共通プロセッサ又は関連するプロセッサの群に動作可能に接続された複数のディスクリートコンポーネント上に分散され得る。
【0092】
以上の説明において具体的な詳細を示し、実施例に対する徹底的な理解を提供する。しかし、これらの具体的な細部がない場合に実施例を実践することができることを理解されたい。例えば、不要なディテールが実施されないように、物理コンポーネントをブロック図に示すことができる。その他の場合、曖昧な実施形態を回避するために、周知の回路、プロセス、アルゴリズム、構造及び技術は、不要な詳細がない場合に示されてもよい。
【0093】
上記技術、ブロック、ステップ及び装置の実現は、様々な方式で完了されてもよい。例えば、これらの技術、ブロック、ステップ及び装置は、ハードウェア、ソフトウェア又はそれらの組み合わせによって実現されてもよい。ハードウェア実装に関し、処理手段は、1つ又は複数の特定用途向け集積回路(ASIC)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、デジタル信号処理装置(DSPD)、プログラマブル論理デバイス(PLD)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、及び上記機能を実行するように設計された他の電子ユニット及び/又はそれらの組み合わせ内で実装されてもよい。
【0094】
また、実施例は、フロー図、フローチャート、データフローチャート、構造図又はブロック図を描く過程として記述することができる。なお、フローチャートにおいては、一連の処理として動作を説明しているが、複数の動作を平行又は同時に行うようにしてもよい。また、操作の順序を並び替えてもよい。プロセスの動作が完了されたが、図に含まれていない追加ステップがある場合には、当該プロセスが終了される。プロセスは、方法、関数、プロセス、サブルーチン、サブプログラム等に対応してもよい。プロセスが関数に対応する場合、その終了は、当該関数が呼び出し関数又は主関数に戻ることに対応する。
【0095】
また、実施例は、ハードウェア、ソフトウェア、スクリプト言語、ファームウェア、ミドルウェア、マイクロコード、ハードウェア記述言語及び/又はそれらの任意の組み合わせによって実現されてもよい。ソフトウェア、ファームウェア、ミドルウェア、スクリプト言語及び/又はマイクロコードで実現される場合、必要なタスクを実行するプログラムコード又はコードセグメントは、例えば記憶媒体の機械可読媒体に記憶されてもよい。コードセグメント又は機器の読み取り可能な指令は、プロセス、関数、サブプログラム、プログラム、ルーチン、サブルーチン、モジュール、パッケージ、スクリプト、セット又は指令、データ構造及び/又はプログラムステートメントの任意の組み合わせを表すことができる。コードセグメントは、情報、データ、引数、パラメータ及び/又はメモリ内容を伝達及び/又は受信することにより、別のコードセグメント又はハードウェア回路に結合されてもよい。情報、引数、パラメータ、データ等は、任意の適切な手段を介して伝達、転送又は伝送することができ、メモリ共有、メッセージ転送、手形転送、ネットワーク伝送等を含む。
【0096】
ファームウェア及び/又はソフトウェアの実現について、これらの方法は、本明細書に記載された機能を実行するモジュール(例えば、プロセス、機能等)で実現されてもよい。指令を具現化する任意の機械可読媒体は、本明細書に記載の方法を実施するために使用され得る。例えば、ソフトウェアコードは、メモリに記憶されてもよい。メモリは、プロセッサ内又はプロセッサ外で実現されてもよい。本明細書で使用されるように、用語「メモリ」は、如何なるタイプの長期、短期、揮発性、不揮発性又は他の記憶媒体を指し、如何なるタイプのメモリ又はメモリの数又はメモリを記憶する媒体のタイプに限定されない。
【0097】
また、本明細書に開示されるように、用語「記憶媒体」は、データを記憶するための1つ又は複数のメモリを表すことができ、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、磁気RAM、コアメモリ、磁気ディスク記憶媒体、光記憶媒体、フラッシュメモリ装置及び/又は情報を記憶するための他の機械可読媒体を含む。用語「機械可読媒体」は、ポータブル又は固定型記憶装置、光記憶装置、無線チャネル、及び/又は、指令及び/又はデータを含む又は携帯可能な様々な他の記憶媒体を含むが、これらに限定されない。
【0098】
本発明は、以下の実施例を含む。
以上の記述において、本発明に記載された本発明の例示的な実施形態を徹底的に理解するために、具体的な詳細を説明した。しかし、これらの具体的な細部がなくても、様々な実施形態が実施され得ることは、明らかである。例えば、回路、システム、ネットワーク、プロセス及び他のコンポーネントは、不必要な細部において曖昧な例で実現されないように、ブロック図形式でコンポーネントとして示されてもよい。その他の場合、例示を曖昧させることを回避するために、周知の回路、プロセス、アルゴリズム、構造及び技術は、不要な詳細がない場合に示されてもよい。例示的な実施形態の説明は、当業者に本発明を実現するための例示的な実施形態を提供しているが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、素子の機能及び配置を様々に変更することができる。したがって、本発明は、請求項の範囲内に含まれる全ての変更、修正及び変化を含むことを意図する。
【0099】
上記実施例を参照して本発明を説明したが、修正及び変化が本発明の趣旨及び範囲内に含まれていることは、理解されるべきである。したがって、本発明は、以下の特許請求の範囲のみによって制限される。
【手続補正書】
【提出日】2024-04-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の関心領域内の生体特徴パラメータを非侵襲的に測定して前記生体特徴パラメータの時系列測定値を提供するように構成される少なくとも1つのセンサと、
前記センサに通信する少なくとも1つのプロセッサと、
機器の読み取り可能な指令を記憶する少なくとも1つの非一時的コンピュータ可読媒体とを備え、
少なくとも1つのプロセッサは、前記機器の読み取り可能な指令を実行したときに、
生体特徴パラメータの時系列測定値を受信することと、
予測モデルを用いて、前記生体特徴パラメータの時系列測定値から、関心領域内の組織の内因性S―ニトロソチオール含有量を示す値を生成することと、
関心領域内の組織の内因性S―ニトロソチオール含有量を示す値をユーザインターフェースを介してユーザへ提供することとを含む処理を実行することを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記少なくとも1つのセンサは、近赤外スペクトルセンサを含むことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記少なくとも1つのセンサは、前記関心領域内の酸素飽和度及び血液容量を非侵襲的に測定して酸素飽和度の時系列測定値と血液容量の時系列測定値とを提供するように構成されるセンサを含むことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記予測モデルを用いた生成は、
血液容量の時系列測定値と酸素飽和度の時系列測定値との間の関係の線形度を特定してパラメータセットを提供することと、
前記パラメータセットから、関心領域内の組織の内因性S―ニトロソチオール含有量を示す値を生成することと、を含むことを特徴とする請求項
3に記載のシステム。
【請求項5】
前記処理は、前記関心領域への血流に対する生理的遮断及び/又は前記関心領域への血流に対する外部遮断の一方の後、ベースラインよりも高い血流及び酸素飽和度のうちの一方のオーバーシュート応答を測定することで、酸素飽和度の時系列測定値と血液容量の時系列測定値とのうちの一方を提供することを更に含み、
予測モデルを用いた生成は、レート値又はオーバーシュート値を使用することにより、関心領域内の組織の内因性S―ニトロソチオール含有量を示す値を生成することを含むことを特徴とする請求項
3に記載のシステム。
【請求項6】
少なくとも1つのセンサが被験者の関心領域内の生体特徴パラメータを非侵襲的に測定するステップと、
前記少なくとも1つのセンサが生体特徴パラメータの時系列測定値を提供するステップと、
前記少なくとも1つのセンサに通信する少なくとも1つのプロセッサが、前記生体特徴パラメータの時系列測定値から、前記関心領域内の組織の内因性S―ニトロソチオール含有量を示す値を生成するステップと、
前記少なくとも1つのプロセッサが、前記関心領域内の組織の内因性S―ニトロソチオール含有量を示す値を非一時的コンピュータ可読媒体に記憶するステップと、を含むことを特徴とする方法。
【請求項7】
前記測定は、前記関心領域内の血液容量及び酸素飽和度を非侵襲的に測定することにより、酸素飽和度の時系列測定値と血液容量の時系列測定値とを提供することを含むことを特徴とする請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
前記被験者の関心領域内の血液容量及び酸素飽和度を非侵襲的に測定することは、前記被験者の運動期間
と、前記関心領域への血流に対する生理的遮断の期間と、前記関心領域への血流に対する外部遮断の期間のうちの1つの期間において
、前記関心領域内の血液容量及び酸素飽和度を測定することを含むことを特徴とする請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
前記関心領域は、筋肉組織を含み、
非侵襲的に血液容量を測定することは、筋肉組織内の総ヘモグロビン指標を測定することにより、血液容量の時系列測定値を総ヘモグロビン指標の時系列データとして提供することを含み、
前記生成は、予測モデルを用いて、総ヘモグロビン時系列測定値と酸素飽和度の時系列測定値とから、筋肉組織の内因性S―ニトロソチオール含有量を示す値を生成することを含むことを特徴とする請求項
7に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つのプロセッサが、前記関心領域内の組織の内因性S―ニトロソチオール含有量を示す値から、パーソナライズされた一酸化窒素指標
と、使用可能酸素消費(UO2)指標と、最大一酸化窒素耐性指標と、最大一酸化窒素パワー指標とのうちの1つを生成するステップを更に含むことを特徴とする請求項
7に記載の方法。
【国際調査報告】