(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-18
(54)【発明の名称】191P4D12タンパク質に結合する抗体薬物複合体(ADC)を用いた非筋肉浸潤性膀胱癌(NMIBC)の治療方法
(51)【国際特許分類】
A61K 47/68 20170101AFI20240910BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240910BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240910BHJP
A61P 13/10 20060101ALI20240910BHJP
C07K 16/18 20060101ALI20240910BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20240910BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20240910BHJP
【FI】
A61K47/68 ZNA
A61K9/08
A61P35/00
A61P13/10
C07K16/18
C12P21/08
C12N15/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508641
(86)(22)【出願日】2022-08-12
(85)【翻訳文提出日】2024-03-22
(86)【国際出願番号】 US2022074897
(87)【国際公開番号】W WO2023019236
(87)【国際公開日】2023-02-16
(32)【優先日】2021-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】524054439
【氏名又は名称】アジェンシス,インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】507154181
【氏名又は名称】シージェン インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】カロジーノ クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】ナラヤナン スジャータ
(72)【発明者】
【氏名】ガーグ アミット
【テーマコード(参考)】
4B064
4C076
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4C076AA12
4C076AA95
4C076BB21
4C076CC27
4C076DD09F
4C076DD60Z
4C076DD67Q
4C076EE23F
4C076EE59
4C076FF16
4C076FF36
4C076FF43
4C076FF61
4C076FF63
4C076FF68
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA72
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA10
4H045FA74
(57)【要約】
191P4D12タンパク質(ネクチン-4)に結合する抗体薬物複合体(ADC)を用いた膀胱癌の膀胱内治療方法及び非筋肉浸潤性膀胱癌の治療方法が、本明細書において提供される。
【選択図】
図3D
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト対象における膀胱癌を治療する方法であって、前記対象に有効量の抗体薬物複合体(ADC)を膀胱内投与することを含み、前記ADCが、
モノメチルアウリスタチンE(MMAE)の1単位以上にコンジュゲートした、191P4D12に結合する抗体またはその抗原結合断片
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記膀胱癌が非筋肉浸潤性膀胱癌(NMIBC)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記NMIBCが組織学的に確認されており、上皮内癌(CIS)である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記対象が乳頭状疾患を有する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記対象が乳頭状疾患を有さない、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記NMIBCが組織学的に確認されており、主な組織学的成分(>50%)が尿路上皮(移行上皮)癌である、請求項2~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記対象が、高リスクのカルメット・ゲラン菌(BCG)非応答性疾患を有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記対象が、根治的膀胱全摘除術に不適格であるか、または受けることを拒否している、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記対象の、目に見える全ての乳頭状Ta/T1腫瘍が、前記治療前60日以内に完全に切除されている、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記対象が、残留する純粋なCISを有する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記対象が、残留する純粋なCISを有さない、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記対象は、米国東海岸癌臨床試験グループ(ECOG)活動状態スコアが0である、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記対象は、米国東海岸癌臨床試験グループ(ECOG)活動状態スコアが1である、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記対象は、米国東海岸癌臨床試験グループ(ECOG)活動状態スコアが2である、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記対象の糸球体濾過率(GFR)が50mL/分以上であり、前記対象がニューヨーク心臓協会(NYHA)クラスIIIの心不全を有さない、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記対象は、
a. 好中球絶対数(ANC)が1500/μL以上、
b. ヘモグロビン(Hgb)が10g/dL以上、
c. 血小板数が100,000/μL以上、
d. 血清ビリルビンが1.5×正常上限値(ULN)以下、またはジルベール病を有する患者の場合は3×ULN以下、
e. クレアチニンクリアランス(CrCl)の計算値が30mL/分以上(クレアチニンまたはCrClの代わりにGFRも使用できる)、CrClは、コッククラフト・ゴールト(Cockcroft-Gault)法または腎疾患における食生活改善(MDRD)式を用いて算出されるべきであり、ECOG活動状態が2である対象は、GFR50mL/分以上を有さなければならない、
f. アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)及びアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)が3×ULN以下、または
g. PTまたはaPTTが抗凝固薬の使用目的の治療範囲内である限りにおいて、対象が抗凝固薬治療を受けている場合を除き、国際標準化比(INR)、またはプロトロンビン時間(PT)、活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)もしくは部分トロンボプラスチン時間(PTT)が1.5ULN以下
からなる群から選択される状態の1つ以上を有する、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記対象が、請求項16記載の状態(a)~(g)の全てを有する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記対象の推定平均余命が2年を超える、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記抗体またはその抗原結合断片が、配列番号22に記載の重鎖可変領域のCDRのアミノ酸配列を含む相補性決定領域(CDR)を含む重鎖可変領域と、配列番号23に記載の軽鎖可変領域のCDRのアミノ酸配列を含むCDRを含む軽鎖可変領域とを含む、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記抗体またはその抗原結合断片が、配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号10のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号11のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号12のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む、あるいは、
前記抗体またはその抗原結合断片が、配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号19のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号20のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号21のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む、
請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記抗体またはその抗原結合断片が、配列番号9のアミノ酸配列からなるCDR-H1、配列番号10のアミノ酸配列からなるCDR-H2、配列番号11のアミノ酸配列からなるCDR-H3、配列番号12のアミノ酸配列からなるCDR-L1、配列番号13のアミノ酸配列からなるCDR-L2、及び配列番号14のアミノ酸配列からなるCDR-L3を含むか、あるいは、
前記抗体またはその抗原結合断片が、配列番号16のアミノ酸配列からなるCDR-H1、配列番号17のアミノ酸配列からなるCDR-H2、配列番号18のアミノ酸配列からなるCDR-H3、配列番号19のアミノ酸配列からなるCDR-L1、配列番号20のアミノ酸配列からなるCDR-L2、及び配列番号21のアミノ酸配列からなるCDR-L3を含む、
請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記抗体またはその抗原結合断片が、配列番号22のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号23のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む、請求項1~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記抗体が、配列番号7の20番目のアミノ酸(グルタミン酸)から466番目のアミノ酸(リジン)までの範囲にわたるアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号8の23番目のアミノ酸(アスパラギン酸)から236番目のアミノ酸(システイン)までの範囲にわたるアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む、請求項1~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記抗原結合断片がFab、F(ab’)2、FvまたはscFvである、請求項1~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記抗体が完全ヒト抗体である、請求項1~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記抗体がIgG1であり、軽鎖がカッパ軽鎖である、請求項1~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記抗体またはその抗原結合断片が、組換え的に産生される、請求項1~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記抗体または抗原結合断片が、リンカーを介してMMAEの各単位にコンジュゲートされる、請求項1~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記リンカーは、酵素切断性リンカーであり、かつ抗体またはその抗原結合断片の硫黄原子と結合を形成する、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記リンカーが、-Aa-Ww-Yy-の式を有し、式中、-A-は伸長単位であり、aは0または1であり、-W-はアミノ酸単位であり、wは0~12の範囲の整数であり、-Y-はスペーサー単位であり、yは0、1または2である、請求項28または29に記載の方法。
【請求項31】
前記伸長単位が、下記式(1)の構造を有し、前記アミノ酸単位が、バリン-シトルリンであり、前記スペーサー単位が、下記式(2)の構造を含むPAB基である、請求項30に記載の方法:
。
【請求項32】
前記伸長単位が、抗体またはその抗原結合断片の硫黄原子と結合を形成し、前記スペーサー単位が、カルバメート基を介してMMAEに連結される、請求項30または31に記載の方法。
【請求項33】
前記ADCが、抗体またはその抗原結合断片あたり1~20単位のMMAEを含む、請求項1~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記ADCが、抗体またはその抗原結合断片あたり1~10単位のMMAEを含む、請求項1~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記ADCが、抗体またはその抗原結合断片あたり2~8単位のMMAEを含む、請求項1~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記ADCが、抗体またはその抗原結合断片あたり3~5単位のMMAEを含む、請求項1~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記ADCが以下の構造:
を有し、式中、L-は抗体またはその抗原結合断片を表し、pは1~10である、請求項1~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
pが2~8である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
pが3~5である、請求項37または38に記載の方法。
【請求項40】
pが3~4である、請求項37~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
pが約4である、請求項37~40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記抗体薬物複合体の有効量の平均p値が約3.8である、請求項37~40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
前記ADCが、L-ヒスチジン、ポリソルベート-20(TWEEN-20)、及びトレハロース無水物を含む医薬組成物中に配合される、請求項1~42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
前記ADCが、約20mMのL-ヒスチジン、約0.02%(w/v)のTWEEN-20、約5.5%(w/v)のトレハロース二水和物、及び塩酸塩を含む医薬組成物中に配合され、前記医薬組成物のpHが25℃で約6.0である、請求項1~43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記ADCが、約9mMのヒスチジン、約11mMのヒスチジン塩酸塩一水和物、約0.02%(w/v)のTWEEN-20、及び約5.5%(w/v)のトレハロース二水和物を含む医薬組成物中に配合され、前記医薬組成物のpHが25℃で約6.0である、請求項1~43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記ADCの有効量が、約10mL~約100mLの点滴注入量で、約100mg~約1000mg、約125mg~約950mg、約125mg~約900mg、約125mg~約850mg、約125mg~約800mg、または約125mg~約750mgの用量である、請求項1~45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
前記ADCの有効量が、約25mLの点滴注入量で約125mg~約750mgの用量である、請求項1~46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
前記ADCの有効量が、約25mLの点滴注入量で約125mgの用量である、請求項1~47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
前記ADCの有効量が、約25mLの点滴注入量で約250mgの用量である、請求項1~47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
前記ADCの有効量が、約25mLの点滴注入量で約500mgの用量である、請求項1~47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
前記ADCの有効量が、約25mLの点滴注入量で約750mgの用量である、請求項1~47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
各膀胱内投与の最大滞留時間が約90分間である、請求項1~51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
各膀胱内投与の最大滞留時間が約120分間である、請求項1~51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
各膀胱内投与の滞留時間が、約30分間、40分間、50分間、60分間、70分間、80分間、90分間、または120分間である、請求項1~51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
前記ADCが、誘導段階及び維持段階という2つの段階中に膀胱内投与される、請求項1~54のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
前記維持段階が、前記誘導段階の6~10週間後、6~9週間後、または6~8週間後に開始する、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記ADCが、前記誘導段階中の6週間にわたって、週に1回膀胱内投与される、請求項55または56に記載の方法。
【請求項58】
前記ADCが、前記維持段階中の9ヵ月間にわたって、月に1回膀胱内投与される、請求項55~57のいずれか1項に記載の方法。
【請求項59】
前記ADCが以下の構造:
を有し、式中、L-は抗体またはその抗原結合断片を表し、pは約3~約4であり、前記抗体は、配列番号7の20番目のアミノ酸(グルタミン酸)から466番目のアミノ酸(リジン)までの範囲にわたるアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号8の23番目のアミノ酸(アスパラギン酸)から236番目のアミノ酸(システイン)までの範囲にわたるアミノ酸配列を含む軽鎖とを含み、ここで、前記ADCは、約125mgの用量で、約25mLの点滴注入量及び最大90分間の滞留時間で膀胱内投与され、前記用量は、前記誘導段階中の6週間にわたって週に1回、および前記維持段階中の9ヵ月間にわたって月に1回膀胱内投与され、前記維持段階は、前記誘導段階の6~10週間後に開始する、請求項1~58のいずれか1項に記載の方法。
【請求項60】
前記ADCが以下の構造:
を有し、式中、L-は抗体またはその抗原結合断片を表し、pは約3~約4であり、前記抗体は、配列番号7の20番目のアミノ酸(グルタミン酸)から466番目のアミノ酸(リジン)までの範囲にわたるアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号8の23番目のアミノ酸(アスパラギン酸)から236番目のアミノ酸(システイン)までの範囲にわたるアミノ酸配列を含む軽鎖とを含み、ここで、前記ADCは、約250mgの用量で、約25mLの点滴注入量及び最大90分間の滞留時間で膀胱内投与され、前記用量は、前記誘導段階中の6週間にわたって週に1回、および前記維持段階中の9ヵ月間にわたって月に1回膀胱内投与され、前記維持段階は、前記誘導段階の6~10週間後に開始する、請求項1~58のいずれか1項に記載の方法。
【請求項61】
前記ADCが以下の構造:
を有し、式中、L-は抗体またはその抗原結合断片を表し、pは約3~約4であり、前記抗体は、配列番号7の20番目のアミノ酸(グルタミン酸)から466番目のアミノ酸(リジン)までの範囲にわたるアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号8の23番目のアミノ酸(アスパラギン酸)から236番目のアミノ酸(システイン)までの範囲にわたるアミノ酸配列を含む軽鎖とを含み、ここで、前記ADCは、約500mgの用量で、約25mLの点滴注入量及び最大90分間の滞留時間で膀胱内投与され、前記用量は、前記誘導段階中の6週間にわたって週に1回、および前記維持段階中の9ヵ月間にわたって月に1回膀胱内投与され、前記維持段階は、前記誘導段階の6~10週間後に開始する、請求項1~58のいずれか1項に記載の方法。
【請求項62】
前記ADCが以下の構造:
を有し、式中、L-は抗体またはその抗原結合断片を表し、pは約3~約4であり、前記抗体は、配列番号7の20番目のアミノ酸(グルタミン酸)から466番目のアミノ酸(リジン)までの範囲にわたるアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号8の23番目のアミノ酸(アスパラギン酸)から236番目のアミノ酸(システイン)までの範囲にわたるアミノ酸配列を含む軽鎖とを含み、ここで、前記ADCは、約750mgの用量で、約25mLの点滴注入量及び最大90分間の滞留時間で膀胱内投与され、前記用量は、前記誘導段階中の6週間にわたって週に1回、および前記維持段階中の9ヵ月間にわたって月に1回膀胱内投与され、前記維持段階は、前記誘導段階の6~10週間後に開始する、請求項1~58のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年8月13日に出願された米国出願第63/233,048号、2021年9月9日に出願された米国出願第63/242,380号、及び2022年4月7日に出願された米国出願第63/328,441号の利益を主張し、それぞれの開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
電子的に提出された配列一覧への参照
本出願は、本出願とともにXMLファイル形式で提出されたコンピュータ可読の配列一覧を含み、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。本出願とともに提出された配列一覧XMLファイルは「14369-281-228_SEQ_LISTING.xml」を題とし、2022年8月2日に作成され、サイズが34,743バイトである。
【0003】
1.分野
191P4D12タンパク質(ネクチン-4)に結合する抗体薬物複合体(ADC)を用いた非筋肉浸潤性膀胱癌(NMIBC)の治療方法が、本明細書で提供される。
【背景技術】
【0004】
2.背景
尿路上皮癌(UC)の最も一般的な形態であり、米国(U.S.)で6番目に多いがんである膀胱癌は、ヨーロッパで65,000人を超え、米国で18,000人近くを含め、世界全体で年間約20万人の患者が死亡すると推定される(Bray 2018;Ferlay 2018;Siegel 2019)。膀胱癌の新しい症例の年間診断数は、2018年には全世界で549,000人超と推定される。2020年には、米国における膀胱癌の新しい症例が81,400を超えると推定され、この推定値は2021年には83,000例超に増加した(アメリカ癌協会(ACS)2021年、全米癌研究所(NCI)2021年)。膀胱癌の発生率及び死亡率は、年齢とともに強く増加し、高齢者人口が増加するにつれてますます問題となる。
【0005】
膀胱癌診断の約70%~80%は非筋肉浸潤性疾患である(Chang 2016;Woldu 2017;Kates 2020;Li 2020)。非筋肉浸潤性膀胱癌(NMIBC)は、本質的に乳頭状で粘膜に限定したもの(Ta)、高悪性度及び平坦で上皮に限定したもの(Tisまたは上皮内癌[CIS])、及び粘膜下層または固有層に浸潤したもの(T1)を含むがんの異種群を表す(Pasin 2008)。NMIBC患者のうち、乳頭状疾患が最も多く、患者の約70%が罹患し、T1疾患及びCISは、それぞれ患者の約20%及び約10%が罹患する(Kirkali 2005;Anastasiadis 2012)。
【0006】
NMIBCを治療する標準的な手段は、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)による膀胱腫瘍の外科的切除と、さらなる抗腫瘍活性のための治療薬の膀胱内投与を含む(Kawai 2013;Chang 2016;Woldu 2017;Jamil 2019;Kates 2020)。膀胱内カルメット・ゲラン菌(BCG)は、NMIBC患者、特に高リスク疾患の特徴を有する患者に対して、抗腫瘍活性との相関性を表す局所免疫応答を誘発する、選択すべき治療薬と考えられる(Kassouf 2015;Chang 2016)。
【0007】
BCG非応答性疾患は、BCGによる適切な治療に応答せず、引き続き疾患再発及びUCの後続の段階への進行のリスクが高いNMIBC患者のサブグループを示す。このような患者に対して、BCGによる追加治療は選択肢ではなく、根治的膀胱全摘除術が依然として最善の選択肢である。ゲムシタビン、マイトマイシン、バルビシンなどの膀胱内化学療法剤は一定の効果を示すが、現在のガイドラインでは、根治的膀胱全摘除術以外の治療がBCG非応答性疾患の治療に劣ると記載される(Navai 2016;Taylor 2020)(EAU.Guidelines for Non-muscleinvasive Bladder Cancer.2020.https://uroweb.org/guideline/non-muscle-invasive-bladdercancer/Accessed Feb 16,2021.)。最近、ペムブロリズマブの全身投与がBCG非応答性上皮内癌(CIS)患者の治療として承認されたが、ペムブロリズマブで治療された患者の半数以上は治療に対して完全奏効を示さないため、この患者集団における安全で効果的な膀胱内治療は依然として必要とされる。
【0008】
191P4D12(ネクチン-4としても公知である)は、接着分子のネクチンファミリーに属する、66kDaのI型膜貫通タンパク質である。191P4D12は、3つの免疫グロブリン(Ig)様サブドメインを含む細胞外ドメイン(ECD)、膜貫通ヘリックス、及び細胞内領域から構成される(Takai et al.,Annu Rev Cell Dev Biol(2008);24:309-42)。ネクチンは、カドヘリンを動員し、細胞骨格再編成を調節することができる接着結合部での同種親和性及び異種親和性トランス相互作用の両方によってCa2+非依存性細胞間接着を媒介すると考えられている(Rikitake et al.,Cell Mol Life Sci(2008);65(2):253-63.)。他のネクチンファミリーメンバーに対するネクチン-4の配列同一性は低く、ECDにおいて25%~30%の範囲である(Reymond et al.,Biol Chem(2001);276(46):43205-15)。
【0009】
ネクチン-4は複数のがん、特に尿路上皮癌、乳癌、肺癌、膵臓癌、及び卵巣癌で発現が確認されている。発現レベルが高いほど、疾患進行及び/または予後不良と関連する(Fabre-Lafay et al.,BMC Cancer(2007);7:73)。
【0010】
根治的膀胱全摘除術が不適応または不適格であるBCG非応答性NMIBC患者、あるいは十分な情報に基づき根治的膀胱全摘除術を受けないという決断をした患者にとって、安全かつ有効な膀胱内治療のニーズは未だ満たされていない。
【発明の概要】
【0011】
3.概要
191P4D12に結合する抗体薬物複合体(ADC)の膀胱内投与を用いてヒト対象における膀胱癌を治療する方法が、本明細書において提供される。
【0012】
実施形態1.ヒト対象における膀胱癌を治療する方法であって、前記対象に有効量の抗体薬物複合体(ADC)を膀胱内投与することを含み、前記ADCが、
モノメチルアウリスタチンE(MMAE)の1単位以上にコンジュゲートした、191P4D12に結合する抗体またはその抗原結合断片
を含む、前記方法。
【0013】
実施形態2.前記膀胱癌が非筋肉浸潤性膀胱癌(NMIBC)である、実施形態1に記載の方法。
【0014】
実施形態3.前記NMIBCが組織学的に確認されており、上皮内癌(CIS)である、実施形態2に記載の方法。
【0015】
実施形態4.前記対象が乳頭状疾患を有する、実施形態3に記載の方法。
【0016】
実施形態5.前記対象が乳頭状疾患を有さない、実施形態3に記載の方法。
【0017】
実施形態6.前記NMIBCが組織学的に確認されており、主な組織学的成分(>50%)が尿路上皮(移行上皮)癌である、実施形態2~5のいずれかに記載の方法。
【0018】
実施形態7.前記対象が、高リスクのカルメット・ゲラン菌(BCG)非応答性疾患を有する、実施形態1~6のいずれか1つに記載の方法。
【0019】
実施形態8.前記対象が、根治的膀胱全摘除術に不適格であるか、または受けることを拒否している、実施形態1~7のいずれか1つに記載の方法。
【0020】
実施形態9.前記対象の、目に見える全ての乳頭状Ta/T1腫瘍が、前記治療前60日以内に完全に切除されている、実施形態1~8のいずれか1つに記載の方法。
【0021】
実施形態10.前記対象が、残留する純粋なCISを有する、実施形態9に記載の方法。
【0022】
実施形態11.前記対象が、残留する純粋なCISを有さない、実施形態9に記載の方法。
【0023】
実施形態12.前記対象は、米国東海岸癌臨床試験グループ(ECOG)活動状態スコアが0である、実施形態1~11のいずれか1つに記載の方法。
【0024】
実施形態13.前記対象は、米国東海岸癌臨床試験グループ(ECOG)活動状態スコアが1である、実施形態1~11のいずれか1つに記載の方法。
【0025】
実施形態14.前記対象は、米国東海岸癌臨床試験グループ(ECOG)活動状態スコアが2である、実施形態1~11のいずれか1つに記載の方法。
【0026】
実施形態15.前記対象の糸球体濾過率(GFR)が50mL/分以上であり、前記対象がニューヨーク心臓協会(NYHA)クラスIIIの心不全を有さない、実施形態14に記載の方法。
【0027】
実施形態16.前記対象は、
a.好中球絶対数(ANC)が1500/μL以上、
b.ヘモグロビン(Hgb)が10g/dL以上、
c.血小板数が100,000/μL以上、
d.血清ビリルビンが1.5×正常上限値(ULN)以下、またはジルベール病を有する患者の場合は3×ULN以下、
e.クレアチニンクリアランス(CrCl)の計算値が30mL/分以上(クレアチニンまたはCrClの代わりにGFRも使用できる)、CrClは、コッククラフト・ゴールト(Cockcroft-Gault)法または腎疾患における食生活改善(MDRD)式を用いて算出されるべきであり、ECOG活動状態が2である対象は、GFR50mL/分以上を有さなければならない、
f.アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)及びアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)が3×ULN以下、または
g.PTまたはaPTTが抗凝固薬の使用目的の治療範囲内である限りにおいて、対象が抗凝固薬治療を受けている場合を除き、国際標準化比(INR)、またはプロトロンビン時間(PT)、活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)もしくは部分トロンボプラスチン時間(PTT)が1.5ULN以下
からなる群から選択される状態の1つ以上を有する、実施形態1~15のいずれか1つに記載の方法。
【0028】
実施形態17.前記対象が、実施形態16の状態(a)~(g)の全てを有する、実施形態16に記載の方法。
【0029】
実施形態18.前記対象の推定平均余命が2年を超える、実施形態1~17のいずれか1つに記載の方法。
【0030】
実施形態19.前記抗体またはその抗原結合断片が、配列番号22に記載の重鎖可変領域のCDRのアミノ酸配列を含む相補性決定領域(CDR)を含む重鎖可変領域と、配列番号23に記載の軽鎖可変領域のCDRのアミノ酸配列を含むCDRを含む軽鎖可変領域とを含む、実施形態1~18のいずれか1つに記載の方法。
【0031】
実施形態20.
前記抗体またはその抗原結合断片は、配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号10のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号11のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号12のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む、あるいは、
前記抗体またはその抗原結合断片は、配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号19のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号20のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号21のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む、
実施形態1~19のいずれか1つに記載の方法。
【0032】
実施形態21.
前記抗体またはその抗原結合断片は、配列番号9のアミノ酸配列からなるCDR-H1、配列番号10のアミノ酸配列からなるCDR-H2、配列番号11のアミノ酸配列からなるCDR-H3、配列番号12のアミノ酸配列からなるCDR-L1、配列番号13のアミノ酸配列からなるCDR-L2、及び配列番号14のアミノ酸配列からなるCDR-L3を含むか、
前記抗体またはその抗原結合断片は、配列番号16のアミノ酸配列からなるCDR-H1、配列番号17のアミノ酸配列からなるCDR-H2、配列番号18のアミノ酸配列からなるCDR-H3、配列番号19のアミノ酸配列からなるCDR-L1、配列番号20のアミノ酸配列からなるCDR-L2、及び配列番号21のアミノ酸配列からなるCDR-L3を含む、実施形態1~19のいずれか1つに記載の方法。
【0033】
実施形態22.前記抗体またはその抗原結合断片が、配列番号22のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号23のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、実施形態1~21のいずれか1つに記載の方法。
【0034】
実施形態23.前記抗体が、配列番号7の20番目のアミノ酸(グルタミン酸)から466番目のアミノ酸(リジン)までの範囲にわたるアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号8の23番目のアミノ酸(アスパラギン酸)から236番目のアミノ酸(システイン)までの範囲にわたるアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む、実施形態1~22のいずれか1つに記載の方法。
【0035】
実施形態24.前記抗原結合断片がFab、F(ab’)2、FvまたはscFvである、実施形態1~23のいずれか1つに記載の方法。
【0036】
実施形態25.前記抗体が完全ヒト抗体である、実施形態1~24のいずれか1つに記載の方法。
【0037】
実施形態26.前記抗体がIgG1であり、軽鎖がカッパ軽鎖である、実施形態1~25のいずれか1つに記載の方法。
【0038】
実施形態27.前記抗体またはその抗原結合断片が、組換え的に産生される、実施形態1~26のいずれか1つに記載の方法。
【0039】
実施形態28.前記抗体または抗原結合断片が、リンカーを介してMMAEの各単位にコンジュゲートされる、実施形態1~27のいずれか1つに記載の方法。
【0040】
実施形態29.前記リンカーは、酵素切断性リンカーであり、かつ抗体またはその抗原結合断片の硫黄原子と結合を形成する、実施形態28に記載の方法。
【0041】
実施形態30.前記リンカーが、-Aa-Ww-Yy-の式を有し、式中、-A-は伸長単位であり、aは0または1であり、-W-はアミノ酸単位であり、wは0~12の範囲の整数であり、-Y-はスペーサー単位であり、yは0、1または2である、実施形態28または29に記載の方法。
【0042】
実施形態31.前記伸長単位が、下記式(1)の構造を有し、前記アミノ酸単位が、バリン-シトルリンであり、前記スペーサー単位が、下記式(2)の構造を含むPAB基である、実施形態30に記載の方法:
。
【0043】
実施形態32.前記伸長単位が、抗体またはその抗原結合断片の硫黄原子と結合を形成し、前記スペーサー単位が、カルバメート基を介してMMAEに連結される、実施形態30または31に記載の方法。
【0044】
実施形態33.前記ADCが、抗体またはその抗原結合断片あたり1~20単位のMMAEを含む、実施形態1~32のいずれか1つに記載の方法。
【0045】
実施形態34.前記ADCが、抗体またはその抗原結合断片あたり1~10単位のMMAEを含む、実施形態1~33のいずれか1つに記載の方法。
【0046】
実施形態35.前記ADCが、抗体またはその抗原結合断片あたり2~8単位のMMAEを含む、実施形態1~34のいずれか1つに記載の方法。
【0047】
実施形態36.前記ADCが、抗体またはその抗原結合断片あたり3~5単位のMMAEを含む、実施形態1~35のいずれか1つに記載の方法。
【0048】
実施形態37.前記ADCが以下の構造:
を有し、式中、L-は抗体またはその抗原結合断片を表し、pは1~10である、実施形態1~36のいずれか1つに記載の方法。
【0049】
実施形態38.pが2~8である、実施形態37に記載の方法。
【0050】
実施形態39.pが3~5である、実施形態37または38に記載の方法。
【0051】
実施形態40.pが3~4である、実施形態37~39のいずれか1つに記載の方法。
【0052】
実施形態41.pが約4である、実施形態37~40のいずれか1つに記載の方法。
【0053】
実施形態42.前記抗体薬物複合体の有効量の平均p値が約3.8である、実施形態37~40のいずれか1つに記載の方法。
【0054】
実施形態43.前記ADCが、L-ヒスチジン、ポリソルベート-20(TWEEN-20)、及びトレハロース無水物を含む医薬組成物中に配合される、実施形態1~42のいずれか1つに記載の方法。
【0055】
実施形態44.前記ADCが、約20mMのL-ヒスチジン、約0.02%(w/v)のTWEEN-20、約5.5%(w/v)のトレハロース二水和物、及び塩酸塩を含む医薬組成物中に配合され、前記医薬組成物のpHが25℃で約6.0である、実施形態1~43のいずれか1つに記載の方法。
【0056】
実施形態45.前記ADCが、約9mMのヒスチジン、約11mMのヒスチジン塩酸塩一水和物、約0.02%(w/v)のTWEEN-20、及び約5.5%(w/v)のトレハロース二水和物を含む医薬組成物中に配合され、前記医薬組成物のpHが25℃で約6.0である、実施形態1~43のいずれか1つに記載の方法。
【0057】
実施形態46.前記ADCの有効量が、約10mL~約100mLの点滴注入量で、約100mg~約1000mg、約125mg~約950mg、約125mg~約900mg、約125mg~約850mg、約125mg~約800mg、または約125mg~約750mgの用量である、実施形態1~45のいずれか1つに記載の方法。
【0058】
実施形態47.前記ADCの有効量が、約25mLの点滴注入量で約125mg~約750mgの用量である、実施形態1~46のいずれか1つに記載の方法。
【0059】
実施形態48.前記ADCの有効量が、約25mLの点滴注入量で約125mgの用量である、実施形態1~47のいずれか1つに記載の方法。
【0060】
実施形態49.前記ADCの有効量が、約25mLの点滴注入量で約250mgの用量である、実施形態1~47のいずれか1つに記載の方法。
【0061】
実施形態50.前記ADCの有効量が、約25mLの点滴注入量で約500mgの用量である、実施形態1~47のいずれか1つに記載の方法。
【0062】
実施形態51.前記ADCの有効量が、約25mLの点滴注入量で約750mgの用量である、実施形態1~47のいずれか1つに記載の方法。
【0063】
実施形態52.各膀胱内投与の最大滞留時間が約90分間である、実施形態1~51のいずれか1つに記載の方法。
【0064】
実施形態53.各膀胱内投与の最大滞留時間が約120分間である、実施形態1~51のいずれか1つに記載の方法。
【0065】
実施形態54.各膀胱内投与の滞留時間が、約30分間、40分間、50分間、60分間、70分間、80分間、90分間、または120分間である、実施形態1~51のいずれか1つに記載の方法。
【0066】
実施形態55.前記ADCが、誘導段階及び維持段階という2つの段階中に膀胱内投与される、実施形態1~54のいずれか1つに記載の方法。
【0067】
実施形態56.前記維持段階が、前記誘導段階の6~10週間後、6~9週間後、または6~8週間後に開始する、実施形態55に記載の方法。
【0068】
実施形態57.前記ADCが、前記誘導段階中の6週間にわたって、週に1回膀胱内投与される、実施形態55または56に記載の方法。
【0069】
実施形態58.前記ADCが、前記維持段階中の9ヵ月間にわたって、月に1回膀胱内投与される、実施形態55~57のいずれか1つに記載の方法。
【0070】
実施形態59.前記ADCが以下の構造:
を有し、式中、L-は抗体またはその抗原結合断片を表し、pは約3~約4であり、前記抗体は、配列番号7の20番目のアミノ酸(グルタミン酸)から466番目のアミノ酸(リジン)までの範囲にわたるアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号8の23番目のアミノ酸(アスパラギン酸)から236番目のアミノ酸(システイン)までの範囲にわたるアミノ酸配列を含む軽鎖とを含み、ここで、前記ADCは、約125mgの用量で、約25mLの点滴注入量及び最大90分間の滞留時間で膀胱内投与され、前記用量は、前記誘導段階中の6週間にわたって週に1回、および前記維持段階中の9ヵ月間にわたって月に1回膀胱内投与され、前記維持段階は、前記誘導段階の6~10週間後に開始する、実施形態1~58のいずれか1つに記載の方法。
【0071】
実施形態60.前記ADCが以下の構造:
を有し、式中、L-は抗体またはその抗原結合断片を表し、pは約3~約4であり、前記抗体は、配列番号7の20番目のアミノ酸(グルタミン酸)から466番目のアミノ酸(リジン)までの範囲にわたるアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号8の23番目のアミノ酸(アスパラギン酸)から236番目のアミノ酸(システイン)までの範囲にわたるアミノ酸配列を含む軽鎖とを含み、ここで、前記ADCは、約250mgの用量で、約25mLの点滴注入量及び最大90分間の滞留時間で膀胱内投与され、前記用量は、前記誘導段階中の6週間にわたって週に1回、および前記維持段階中の9ヵ月間にわたって月に1回膀胱内投与され、前記維持段階は、前記誘導段階の6~10週間後に開始する、実施形態1~58のいずれか1つに記載の方法。
【0072】
実施形態61.前記ADCが以下の構造:
を有し、式中、L-は抗体またはその抗原結合断片を表し、pは約3~約4であり、前記抗体は、配列番号7の20番目のアミノ酸(グルタミン酸)から466番目のアミノ酸(リジン)までの範囲にわたるアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号8の23番目のアミノ酸(アスパラギン酸)から236番目のアミノ酸(システイン)までの範囲にわたるアミノ酸配列を含む軽鎖とを含み、ここで、前記ADCは、約500mgの用量で、約25mLの点滴注入量及び最大90分間の滞留時間で膀胱内投与され、前記用量は、前記誘導段階中の6週間にわたって週に1回、および前記維持段階中の9ヵ月間にわたって月に1回膀胱内投与され、前記維持段階は、前記誘導段階の6~10週間後に開始する、実施形態1~58のいずれか1つに記載の方法。
【0073】
実施形態62.前記ADCが以下の構造:
を有し、式中、L-は抗体またはその抗原結合断片を表し、pは約3~約4であり、前記抗体は、配列番号7の20番目のアミノ酸(グルタミン酸)から466番目のアミノ酸(リジン)までの範囲にわたるアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号8の23番目のアミノ酸(アスパラギン酸)から236番目のアミノ酸(システイン)までの範囲にわたるアミノ酸配列を含む軽鎖とを含み、ここで、前記ADCは、約750mgの用量で、約25mLの点滴注入量及び最大90分間の滞留時間で膀胱内投与され、前記用量は、前記誘導段階中の6週間にわたって週に1回、および前記維持段階中の9ヵ月間にわたって月に1回膀胱内投与され、前記維持段階は、前記誘導段階の6~10週間後に開始する、実施形態1~58のいずれか1つに記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0074】
4.図面の簡単な説明
【
図1A-1】ネクチン-4タンパク質のヌクレオチド及びアミノ酸配列を示す。
【
図1B】Ha22-2(2.4)6.1の重鎖のヌクレオチド及びアミノ酸配列を示す。
【
図1C】Ha22-2(2.4)6.1の軽鎖のヌクレオチド及びアミノ酸配列を示す。
【
図1D】Ha22-2(2.4)6.1の重鎖のアミノ酸配列を示す。
【
図1E】Ha22-2(2.4)6.1の軽鎖のアミノ酸配列を示す。
【
図2】膀胱内投与を模倣する条件を用いて、ネクチン-4を過剰発現する膀胱癌細胞(すなわち、UM-UC-3-hネクチン-4
+)におけるin vitroでのエンホルツマブベドチン(EV)の細胞毒性活性を示す。
【
図3A】ネクチン-4
+膀胱同所異種移植マウスモデルにおけるエンホルツマブベドチン(EV)の膀胱内投与の有効性を示す。UM-UC-3-hネクチン4
+-Luc
+細胞による化学的擦過後に同所的に移植されたSCIDマウスの生成と、膀胱内EVをマウスに投与し、膀胱組織の組織学的分析を行うための投与スケジュールを示す。
【
図3B-1】ネクチン-4
+膀胱同所異種移植マウスモデルにおけるエンホルツマブベドチン(EV)の膀胱内投与の有効性を示す。腫瘍生着とEV活性を確認する生物発光イメージング結果を示す。SWFI、注射用無菌水。
【
図3C】ネクチン-4
+膀胱同所異種移植マウスモデルにおけるエンホルツマブベドチン(EV)の膀胱内投与の有効性を示す。EV活性を確認する抗ネクチン-4免疫組織化学結果を示す。
図3Cの右の5つのパネルの膀胱組織は、それぞれ、
図3BのEVの膀胱内投与で治療した5匹のマウス由来であった。
【
図3D】ネクチン-4
+膀胱同所異種移植マウスモデルにおけるエンホルツマブベドチン(EV)の膀胱内投与の有効性を示す。
図3Bの生物発光イメージング結果の定量分析を示す。
【
図3E】ネクチン-4
+膀胱同所異種移植マウスモデルにおけるエンホルツマブベドチン(EV)の膀胱内投与の有効性を示す。膀胱腫瘍組織におけるネクチン-4とMMAEの免疫組織化学(IHC)染色を示し、ネクチン-4とMMAEの共局在を示す。
【
図4】
図A~Bは、さまざまな濃度及び投与量で、単回の膀胱内投与のEVで処置されたSprague-Dawleyラットの膀胱組織における遊離MMAEを示す。
【
図6】滞留時間の異なる長さのEVの単回の膀胱内投与で処置されたSprague-Dawleyラットの膀胱組織における遊離MMAEを示す。
【
図7】NMIBCを有する成人における膀胱内エンホルツマブベドチンの安全性、忍容性、PK及び抗腫瘍活性を評価するために設計された、第1相、非盲検、多施設、用量漸増及び用量拡大試験である第6.1節に記載された臨床試験のスキーマを示す。(BCG=カルメット・ゲラン菌;CIS=非浸潤癌;EV=エンホルツマブベドチン;mTPI=修正毒性確率区間;q3=3ごと;q6=6ごと;TURBT=膀胱腫瘍の経尿道切除;wkly=週1回。所与用量での安全性、または計画された用量レベルより低いか、またはその中間的な用量レベルの調査が企図される。)
【発明を実施するための形態】
【0075】
5.詳細な説明
本開示をさらに説明する前に、本開示が本明細書に記載される特定の実施形態に限定されず、本明細書で使用される用語が特定の実施形態を記載するためのものに過ぎず、限定することを意図するものではないことは、理解されたい。
【0076】
膀胱内治療の効率的な使用において、少なくとも、注入量、滞留時間、用量濃度、総用量、注入液のpH、尿のpH、治療前及び治療中の尿量の減少などを含むさまざまな要因を考慮する必要があり、それにより、有効性と安全性との間の適切なバランスが達成される。本開示は、驚くべきことに、用量濃度及び総用量が、本明細書に開示されるMMAE ADCなどのADCの効率的かつ安全な送達に対する最も重要な要因であることを決定した。本開示は、この知識を用いて、膀胱癌(例えば、非筋肉浸潤性膀胱癌(NMIBC))を治療するためにADCの膀胱内投与を用いる様々な方法の開発に役立てた。
【0077】
5.1 定義
本明細書に記載または参照される技術及び手順には、例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(3d ed.2001);Current Protocols in Molecular Biology(Ausubel et al.eds.,2003);Therapeutic Monoclonal Antibodies:From Bench to Clinic(An ed.2009);Monoclonal Antibodies:Methods and Protocols(Albitar ed.2010);及びAntibody Engineering Vols 1 and 2(Kontermann and Dubel eds.,2d ed.2010)に記載されている広く利用されている方法などの、当業者によって従来の方法論を使用して一般によく理解されている及び/または一般に採用されているものが含まれる。
【0078】
本明細書で特に定義されない限り、本説明で使用される技術用語及び科学用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有する。本明細書を解釈する目的で、以下の用語の説明が適用され、必要に応じて、単数形で使用される用語は複数形も含み、その逆も同様である。記載される用語の説明が参照により本明細書に組み入れられる文書と矛盾する場合、以下に記載される用語の説明が優先されるものとする。
【0079】
「抗体」、「免疫グロブリン」または「Ig」という用語は、本明細書では互換的に使用され、最も広い意味で使用され、具体的には、例えば、以下に記載されるように、モノクローナル抗体(アゴニスト、アンタゴニスト、中和抗体、完全長または無傷のモノクローナル抗体を含む)、ポリエピトープ特異性またはモノエピトープ特異性を有する抗体組成物、ポリクローナル抗体または一価抗体、多価抗体、少なくとも2つの無傷の抗体から形成される多重特異性抗体(例えば、所望の生物学的活性を示す限り、二重特異性抗体)、一本鎖抗体、及びそれらの断片を包含する。抗体は、ヒト、ヒト化、キメラ及び/または親和性成熟抗体、ならびに他の種、例えば、マウス及びウサギ由来の抗体などであり得る。「抗体」という用語は、特定の分子抗原に結合することができ、ポリペプチド鎖の2つの同一の対から構成され、各対が1本の重鎖(約50~70kDa)と1本の軽鎖(約25kDa)とを有し、各鎖の各アミノ末端部分が約100個~約130個またはそれ以上のアミノ酸の可変領域を含み、各鎖の各カルボキシ末端部分が定常領域を含む、免疫グロブリンクラスのポリペプチド内のB細胞のポリペプチド産物を含むことが意図されている。例えば、Antibody Engineering(Borrebaeck ed.,2d ed.1995);及びKuby,Immunology(3d ed.1997)を参照。具体的な実施形態では、特定の分子抗原は、ポリペプチドまたはエピトープを含む、本明細書で提供される抗体によって結合され得る。抗体には、合成抗体、組換え産生抗体、ラクダ化抗体、イントラボディ、抗イディオタイプ(抗Id)抗体、及び上記のいずれかの機能的断片(例えば、抗原結合断片)も含まれるが、これらに限定されず、機能的断片とは、断片が由来する抗体の結合活性の一部または全部を保持する抗体の重鎖または軽鎖ポリペプチドの一部を指す。機能的断片(例えば、抗原結合断片)の非限定的な例としては、単鎖Fv(scFv)(例えば、単一特異性、二重特異性などを含む)、Fab断片、F(ab’)断片、F(ab)2断片、F(ab’)2断片、ジスルフィド結合Fv(dsFv)、Fd断片、Fv断片、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、及びミニボディが挙げられる。特に、本明細書で提供される抗体は、免疫グロブリン分子及び免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、例えば、抗原結合ドメインまたは抗原に結合する抗原結合部位を含む分子(例えば、抗体の1つまたは複数のCDR)を含む。そのような抗体断片は、例えば、Harlow and Lane,Antibodies:A Laboratory Manual(1989);Mol.Biology and Biotechnology:A Comprehensive Desk Reference(Myers ed.,1995);Huston et al.,1993,Cell Biophysics 22:189-224;Pluckthun and Skerra,1989,Meth.Enzymol.178:497-515;及びDay,Advanced Immunochemistry(2d ed.1990)に見出すことができる。本明細書で提供される抗体は、免疫グロブリン分子の任意のクラス(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、及びIgA)または任意のサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2)のものであり得る。抗体は、アゴニスト抗体またはアンタゴニスト抗体であってよい。
【0080】
「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を指し、すなわち、集団を構成する個々の抗体は、少量存在し得る天然に存在する可能性のある変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は非常に特異的であり、単一の抗原部位に向けられる。異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を含むことができるポリクローナル抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に向けられる。
【0081】
「抗原」は、抗体が選択的に結合することができる構造体である。標的抗原は、ポリペプチド、炭水化物、核酸、脂質、ハプテン、または他の天然または合成化合物の場合がある。いくつかの実施形態では、標的抗原はポリペプチドである。特定の実施形態では、抗原は、細胞と会合し、例えば細胞上または細胞内、例えばがん細胞上またはがん細胞内に存在する。
【0082】
「無傷の」抗体は、抗原結合部位ならびにCLならびに少なくとも重鎖定常領域、CH1、CH2及びCH3を含むものである。定常領域は、ヒト定常領域またはそのアミノ酸配列変異体を含む場合がある。特定の実施形態では、無傷の抗体は1つまたは複数のエフェクタ機能を有する。
【0083】
「抗原結合断片」、「抗原結合ドメイン」、「抗原結合領域」という用語及び同様の用語は、抗原と相互作用し、抗原に対する特異性及び親和性を結合物質に付与するアミノ酸残基を含む抗体の部分(例えば、CDR)を指す。本明細書で使用される「抗原結合断片」には、無傷の抗体の一部、例えば、無傷の抗体の抗原結合領域または可変領域を含む「抗体断片」が含まれる。抗体断片の例としては、限定されることなく、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFv断片;ダイアボディ及びジ-ダイアボディ(例えば、Holliger et al.,1993,Proc.Natl.Acad.Sci.90:6444-48;Lu et al.,2005,J.Biol.Chem.280:19665-72;Hudson et al.,2003,Nat.Med.9:129-34;国際公開公報第93/11161号;及び米国特許第5,837,242号及び同第6,492,123号を参照);一本鎖抗体分子(例えば、米国特許第4,946,778号;同第5,260,203号;同第5,482,858号;及び同第5,476,786号を参照);二重可変ドメイン抗体(例えば、米国特許第7,612,181号を参照);単一可変ドメイン抗体(sdAb)(例えば、Woolven et al.,1999,Immunogenetics 50:98-101;及びStreltsov et al.,2004,Proc Natl Acad Sci USA.101:12444-49を参照);ならびに抗体断片から形成された多重特異性抗体が挙げられる。
【0084】
「結合する」または「結合すること」という用語は、例えば複合体を形成することを含む、分子間の相互作用を指す。相互作用は、例えば、水素結合相互作用、イオン結合相互作用、疎水性相互作用、及び/またはファンデルワールス相互作用を含む非共有結合相互作用であり得る。複合体はまた、共有結合もしくは非共有結合、相互作用、または力によって一緒に保持された2つまたはそれ以上の分子の結合を含み得る。抗体上の単一の抗原結合部位と抗原などの標的分子の単一のエピトープとの間の全非共有結合相互作用の強度が、そのエピトープに対する抗体または機能的断片の親和性である。一価抗原に対する結合分子(例えば、抗体)の解離速度(koff)と会合速度(kon)の比(koff/kon)が解離定数KDであり、これは親和性に反比例する。KD値が低いほど、抗体の親和性が高い。KDの値は、抗体と抗原の異なる複合体で異なり、konとkoffの両方に依存する。本明細書で提供される抗体の解離定数KDは、本明細書で提供される任意の方法または当業者に周知の任意の他の方法を使用して決定することができる。1つの結合部位における親和性は、必ずしも抗体と抗原との間の相互作用の真の強度を反映するとは限らない。多価抗原などの複数の反復抗原決定基を含む複合抗原が、複数の結合部位を含む抗体と接触する場合、1つの部位での抗体と抗原との相互作用は、第2の部位での反応の確率を高める。多価抗体と抗原との間のそのような複数の相互作用の強度は、アビディティと呼ばれる。
【0085】
本明細書に記載の抗体またはその抗原結合断片に関連して、「に結合する」、「に特異的に結合する」などの用語及び類似の用語もまた、本明細書では互換的に使用され、ポリペプチドなどの抗原に特異的に結合する抗原結合ドメインの結合分子を指す。抗原に結合するまたは抗原に特異的に結合する抗体または抗原結合断片は、関連する抗原と交差反応性である場合がある。特定の実施形態では、抗原に結合するまたは抗原に特異的に結合する抗体または抗原結合断片は、他の抗原と交差反応しない。抗原に結合するまたは抗原に特異的に結合する抗体または抗原結合断片は、例えば、イムノアッセイ、Octet(登録商標)、Biacore(登録商標)、または当業者に公知の他の技術によって同定することができる。いくつかの実施形態では、抗体または抗原結合断片は、ラジオイムノアッセイ(RIA)及び酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)などの実験技術を使用して決定される任意の交差反応性抗原よりも高い親和性で抗原に結合する場合、抗原に結合するまたは抗原に特異的に結合する。典型的には、特異的または選択的な反応は、バックグラウンドシグナルまたはノイズの少なくとも2倍であり、バックグラウンドの10倍を上回る場合もある。結合特異性に関する考察については、例えば、Fundamental Immunology 332-36(Paul ed.,2d ed.1989)を参照。特定の実施形態では、「非標的」タンパク質への抗体または抗原結合断片の結合の程度は、例えば、蛍光活性化細胞選別(FACS)分析またはRIAによって決定される場合、その特定の標的抗原への結合分子または抗原結合ドメインの結合の約10%未満である。「特異的結合」、「に特異的に結合する」、または「に特異的である」などの用語は、非特異的相互作用と測定可能な程度に異なる結合を意味する。特異的結合は、例えば、一般に結合活性を有さない類似の構造の分子である対照分子の結合と比較して分子の結合を決定することによって測定することができる。例えば、特異的結合は、標的に類似する対照分子、例えば過剰の非標識標的との競合によって決定することができる。この場合、プローブへの標識標的の結合が過剰の非標識標的によって競合的に阻害される場合、特異的結合が示される。抗原に結合する抗体または抗原結合断片は、結合分子が、例えば抗原を標的とする際の診断薬として有用であるように、十分な親和性で抗原に結合することができるものを含む。特定の実施形態では、抗原に結合する抗体または抗原結合断片は、1000nM未満、800nM未満、500nM未満、250nM未満、100nM未満、50nM未満、10nM未満、5nM未満、4nM未満、3nM未満、2nM未満、1nM未満、0.9nM未満、0.8nM未満、0.7nM未満、0.6nM未満、0.5nM未満、0.4nM未満、0.3nM未満、0.2nM未満、もしくは0.1nM未満、または1000nM、800nM、500nM、250nM、100nM、50nM、10nM、5nM、4nM、3nM、2nM、1nM、0.9nM、0.8nM、0.7nM、0.6nM、0.5nM、0.4nM、0.3nM、0.2nM、もしくは0.1nMの解離定数(KD)を有する。特定の実施形態では、抗体または抗原結合断片は、異なる種由来の抗原間で(例えば、ヒト種とカニクイザル種との間で)保存されている抗原のエピトープに結合する。
【0086】
「結合親和性」は、一般に、分子(例えば、抗体などの結合タンパク質)の単一の結合部位とその結合パートナー(例えば、抗原)との間の非共有結合相互作用の総和の強度を指す。特段の指示がない限り、本明細書で使用する場合、「結合親和性」は、結合対(例えば、抗体及び抗原)のメンバー間での1:1の相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。結合分子Xのその結合パートナーYに対する親和性は、一般に、解離定数(KD)によって表すことができる。親和性は、本明細書に記載されるものを含む、当該技術分野において既知の一般的な方法によって測定され得る。低親和性抗体は、一般に抗原にゆっくりと結合し、容易に解離する傾向があるのに対し、高親和性抗体は、一般に抗原により速く結合し、より長く結合したままである傾向がある。結合親和性を測定する様々な方法が当技術分野で公知であり、そのいずれもが本開示の目的のために使用できる。具体的な例示的実施形態は、以下を含む。一実施形態では、「KD」または「KD値」は、当技術分野で公知のアッセイ、例えば結合アッセイによって測定され得る。KDは、例えば、目的の抗体のFabバージョン及びその抗原を用いて行われるRIAで測定される場合がある(Chen et al.,1999,J.Mol Biol 293:865-81)。KDまたはKD値はまた、例えばOctet(登録商標)QK384システムを使用するOctet(登録商標)による、または例えばBiacore(登録商標)TM-2000もしくはBiacore(登録商標)TM-3000を使用するBiacore(登録商標)による、バイオレイヤー干渉法(BLI)または表面プラズモン共鳴(SPR)アッセイを使用することによって測定される場合がある。「オンレート」または「会合の速度」または「会合速度」または「kon」もまた、例えば、Octet(登録商標)QK384、Biacore(登録商標)TM-2000、またはBiacore(登録商標)TM-3000システムを使用して、上述したのと同じバイオレイヤー干渉法(BLI)または表面プラズモン共鳴(SPR)技術を用いて決定される場合がある。
【0087】
特定の実施形態では、抗体または抗原結合断片は、重鎖及び/または軽鎖の一部が、特定の種に由来するかまたは特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一または相同であるが、鎖(1本または複数)の残りが、別の種に由来するかまたは別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一または相同である「キメラ」配列、ならびに、所望の生物学的活性を示す限り、そのような抗体の断片を含むことができる(米国特許第4,816,567号;及びMorrison et al.,1984,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6851-55を参照)。
【0088】
特定の実施形態では、抗体または抗原結合断片は、天然CDR残基が、所望の特異性、親和性及び能力を含む、マウス、ラット、ウサギ、または非ヒト霊長動物などの非ヒト種の対応するCDR(例えば、ドナー抗体)からの残基で置き換えられたヒト免疫グロブリン(例えば、レシピエント抗体)を含むキメラ抗体である非ヒト(例えば、マウス)抗体の「ヒト化」形態の部分を含むことができる。場合によっては、ヒト免疫グロブリンの1つまたは複数のFR領域残基が、対応する非ヒト残基によって置き換えられる。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体またはドナー抗体には見られない残基を含むことができる。これらの修飾は、抗体性能をさらに洗練するために行われる。ヒト化抗体の重鎖または軽鎖は、少なくとも1つまたは複数の可変領域の実質的に全てを含むことができ、CDRの全てまたは実質的に全てが非ヒト免疫グロブリンのCDRに対応し、FRの全てまたは実質的に全てがヒト免疫グロブリン配列のFRである。特定の実施形態では、ヒト化抗体は、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、典型的にはヒト免疫グロブリンの定常領域(Fc)の少なくとも一部を含む。さらなる詳細については、Jones et al.,1986,Nature 321:522-25;Riechmann et al.,1988,Nature 332:323-29;Presta,1992,Curr.Op.Struct.Biol.2:593-96;Carter et al.,1992,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:4285-89;米国特許第6,800,738号;同第6,719,971号;同第6,639,055号;同第6,407,213号;及び同第6,054,297号を参照。
【0089】
特定の実施形態では、抗体または抗原結合断片は、「完全ヒト抗体」または「ヒト抗体」の一部を含むことができ、これらの用語は、本明細書では互換的に使用され、ヒト可変領域及び、例えばヒト定常領域を含む抗体を指す。具体的な実施形態では、これらの用語は、ヒト起源の可変領域及び定常領域を含む抗体を指す。「完全ヒト」抗体は、特定の実施形態では、ポリペプチドに結合し、ヒト生殖系列免疫グロブリン核酸配列の天然に存在する体細胞変異体である核酸配列によってコードされる抗体も包含し得る。「完全ヒト抗体」という用語は、Kabat et al.(Kabat et al.(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91-3242を参照)によって記載されているヒト生殖系列免疫グロブリン配列に対応する可変領域及び定常領域を含む抗体を含む。「ヒト抗体」は、ヒトによって産生される抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有するもの、及び/またはヒト抗体を作製するための技術のいずれかを使用して作製されたものである。ヒト抗体のこの定義は、具体的には、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を除外する。ヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリ(Hoogenboom and Winter,1991,J.Mol.Biol.227:381;Marks et al.,1991,J.Mol.Biol.222:581)及び酵母ディスプレイライブラリ(Chao et al.,2006,Nature Protocols 1:755-68)を含む、当技術分野で公知の様々な技術を使用して産生することができる。Cole et al.,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy 77(1985);Boerner et al.,1991,J.Immunol.147(1):86-95;及びvan Dijk and van de Winkel,2001,Curr.Opin.Pharmacol.5:368-74に記載されている方法も、ヒトモノクローナル抗体の調製に利用可能である。ヒト抗体は、抗原チャレンジに応答してそのような抗体を産生するように改変されているが、その内因性遺伝子座が無効化されているトランスジェニック動物、例えばマウスに抗原を投与することによって調製することができる(例えば、Jakobovits,1995,Curr.Opin.Biotechnol.6(5):561-66;Bruggemann and Taussing,1997,Curr.Opin.Biotechnol.8(4):455-58;及びXENOMOUSE(商標)技術に関する米国特許第6,075,181号及び同第6,150,584号を参照)。また、例えば、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術を介して生成されたヒト抗体に関するLi et al.,2006,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 103:3557-62も参照のこと。
【0090】
特定の実施形態では、抗体または抗原結合断片は、「組換えヒト抗体」の一部を含むことができ、この語句は、組換え手段によって調製、発現、作製または単離されるヒト抗体、例えば、宿主細胞にトランスフェクトされた組換え発現ベクターを使用して発現される抗体、組換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリから単離される抗体、ヒト免疫グロブリン遺伝子についてトランスジェニック及び/またはトランスクロモソーマルである動物(例えば、マウスもしくはウシ)から単離される抗体(例えば、Taylor,L.D.et al.(1992)Nucl.Acids Res.20:6287-6295を参照)、またはヒト免疫グロブリン遺伝子配列の他のDNA配列へのスプライシングを含む任意の他の手段によって調製、発現、作製もしくは単離される抗体を含む。そのような組換えヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域及び定常領域を有することができる(Kabat,E.A.et al.(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91-3242を参照)。しかしながら、特定の実施形態では、そのような組換えヒト抗体は、in vitro突然変異誘発(または、ヒトIg配列についてトランスジェニックな動物を使用する場合、in vivo体細胞突然変異誘発)に供され、したがって、組換え抗体のVH及びVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖系列VH及びVL配列に由来し、それらに関連するが、in vivoでヒト抗体生殖系列レパートリ内に天然には存在しない可能性のある配列である。
【0091】
特定の実施形態では、抗体または抗原結合断片は、「モノクローナル抗体」の一部を含むことができ、本明細書で使用されるこの用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を指し、例えば、集団を構成する個々の抗体は、少量存在する場合がある天然に存在する可能性のある変異を除いて同一であり、各モノクローナル抗体は、典型的には抗原上の単一のエピトープを認識する。具体的な実施形態では、本明細書で使用される「モノクローナル抗体」は、単一のハイブリドーマまたは他の細胞によって産生される抗体である。「モノクローナル」という用語は、抗体を作製するための特定の方法に限定されない。例えば、本開示において有用なモノクローナル抗体は、Kohler et al.,1975,Nature 256:495によって最初に記載されたハイブリドーマ法によって調製されてよいか、または細菌もしくは真核動物もしくは植物細胞において組換えDNA法を使用して作製されてよい(例えば、米国特許第4,816,567号を参照)。「モノクローナル抗体」はまた、例えば、Clackson et al.,1991,Nature 352:624-28及びMarks et al.,1991,J.Mol.Biol.222:581-97に記載されている技術を使用して、ファージ抗体ライブラリから単離されてよい。クローン細胞株及びそれによって発現されるモノクローナル抗体を調製するための他の方法は、当技術分野で周知である。例えば、Short Protocols in Molecular Biology(Ausubel et al.eds.,5th ed.2002)を参照。
【0092】
典型的な4鎖抗体単位は、2本の同一の軽(L)鎖と2本の同一の重(H)鎖で構成されるヘテロ四量体糖タンパク質である。IgGの場合、4鎖単位は一般に約150,000ダルトンである。各L鎖は、1つの共有ジスルフィド結合によってH鎖に連結され、2本のH鎖は、H鎖アイソタイプに応じて1つまたは複数のジスルフィド結合によって互いに連結される。各H鎖及びL鎖はまた、規則的な間隔の鎖内ジスルフィド架橋を有する。各H鎖は、N末端に可変ドメイン(VH)を有し、続いてα鎖及びγ鎖のそれぞれについて3つの定常ドメイン(CH)、μアイソタイプ及びεアイソタイプについて4つのCHドメインを有する。各L鎖は、N末端に可変ドメイン(VL)を有し、続いて他方の末端に定常ドメイン(CL)を有する。VLはVHと整列し、CLは重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)と整列する。特定のアミノ酸残基が、軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインの接触面を形成すると考えられている。VHとVLとの対形成は、単一の抗原結合部位を形成する。様々なクラスの抗体の構造及び特性については、例えば、Basic and Clinical Immunology 71(Stites et al.eds.,8th ed.1994);及びImmunobiology(Janeway et al.eds.,5th ed.2001)を参照。
【0093】
「Fab」または「Fab領域」という用語は、抗原に結合する抗体領域を指す。従来のIgGは、通常、それぞれがY字型IgG構造の2つのアームの一方に存在する、2つのFab領域を含む。各Fab領域は、典型的には、重鎖及び軽鎖のそれぞれの1つの可変領域と1つの定常領域で構成される。より具体的には、Fab領域における重鎖の可変領域及び定常領域はVH及びCH1領域であり、Fab領域における軽鎖の可変領域及び定常領域はVL及びCL領域である。Fab領域内のVH、CH1、VL、及びCLは、本開示による抗原結合能力を付与するために様々な方法で配置することができる。例えば、従来のIgGのFab領域と同様に、VH及びCH1領域は1つのポリペプチド上にあり得、VL及びCL領域は別個のポリペプチド上にあり得る。あるいは、VH、CH1、VL及びCL領域は全て同じポリペプチド上にあり得、以下の節でより詳細に説明するように異なる順序で配向され得る。
【0094】
「可変領域」、「可変ドメイン」、「V領域」または「Vドメイン」という用語は、一般に軽鎖または重鎖のアミノ末端に位置し、重鎖では約120アミノ酸~約130アミノ酸、軽鎖では約100アミノ酸~約110アミノ酸の長さを有し、その特定の抗原に対する各特定の抗体の結合及び特異性に使用される、抗体の軽鎖または重鎖の一部を指す。重鎖の可変領域は、「VH」と称される場合がある。軽鎖の可変領域は、「VL」と称される場合がある。「可変」という用語は、可変領域の特定のセグメントが抗体間で配列が大きく異なるという事実を指す。V領域は、抗原結合を媒介し、特定の抗原に対する特定の抗体の特異性を規定する。しかしながら、可変性は、可変領域の110アミノ酸スパンにわたって均一に分布していない。代わりに、V領域は、それぞれが約9~12アミノ酸長である「超可変領域」と呼ばれるより大きな可変性(例えば、極端な可変性)のより短い領域によって分離された、約15アミノ酸~約30アミノ酸のフレームワーク領域(FR)と呼ばれるより可変性の低い(例えば、比較的不変の)ストレッチからなる。重鎖及び軽鎖の可変領域はそれぞれ、βシート構造を接続し、場合によってはβシート構造の一部を形成するループを形成する3つの超可変領域によって接続された、主にβシート形状を採用する4つのFRを含む。各鎖の超可変領域は、FRによって近接して一緒に保持され、他方の鎖の超可変領域と共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(例えば、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest(5th ed.1991)を参照)。定常領域は、抗原への抗体の結合には直接関与しないが、抗体依存性細胞傷害(ADCC)及び補体依存性細胞傷害(CDC)への抗体の関与などの様々なエフェクタ機能を示す。可変領域は、異なる抗体間で配列が大きく異なる。具体的な実施形態では、可変領域はヒト可変領域である。
【0095】
「Kabatによる可変領域残基ナンバリング」または「Kabatにおけるようなアミノ酸位置ナンバリング」という用語、及びその変形は、Kabat et al.前出における抗体の編集物の重鎖可変領域または軽鎖可変領域に使用されるナンバリングシステムを指す。このナンバリングシステムを使用すると、実際の線状アミノ酸配列は、可変ドメインのFRもしくはCDRの短縮またはFRもしくはCDRへの挿入に対応するより少ないまたは追加のアミノ酸を含み得る。例えば、重鎖可変ドメインは、残基52の後に単一のアミノ酸挿入物(Kabatによる残基52a)及び残基82の後に3つの挿入された残基(例えば、Kabatによる残基82a、82b及び82cなど)を含む場合がある。残基のKabatナンバリングは、抗体の配列と「標準的な」Kabatナンバリング配列との相同性領域でのアラインメントによって、所与の抗体について決定され得る。Kabatナンバリングシステムは、一般に、可変ドメイン中の残基(およそ軽鎖の残基1~107及び重鎖の残基1~113)を指す場合に使用される(例えば、Kabat et al.前出)。「EUナンバリングシステム」または「EUインデックス」は、一般に、免疫グロブリン重鎖定常領域内の残基を指す場合に使用される(例えば、Kabat et al.前出に報告されているEUインデックス)。「KabatにおけるようなEUインデックス」は、ヒトIgG1 EU抗体の残基ナンバリングを指す。他のナンバリングシステムは、例えば、AbM、Chothia、Contact、IMGT、及びAHonによって記載されている。
【0096】
「重鎖」という用語は、抗体に関して使用される場合、約50~70kDaのポリペプチド鎖を指し、アミノ末端部分は約120~130個またはそれ以上のアミノ酸の可変領域を含み、カルボキシ末端部分は定常領域を含む。定常領域は、重鎖定常領域のアミノ酸配列に基づいて、アルファ(α)、デルタ(δ)、イプシロン(ε)、ガンマ(γ)、及びミュー(μ)と称される5つの異なるタイプ(例えば、アイソタイプ)のうちの1つであり得る。異なる重鎖はサイズが異なり、α、δ及びγは約450個のアミノ酸を含み、μ及びεは約550個のアミノ酸を含む。軽鎖と組み合わせると、これらの異なるタイプの重鎖は、IgGの4つのサブクラス、すなわちIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4を含む、それぞれ5つの周知のクラス(例えば、アイソタイプ)の抗体、IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMを生じる。
【0097】
「軽鎖」という用語は、抗体に関して使用される場合、約25kDaのポリペプチド鎖を指し、アミノ末端部分は約100個~約110個またはそれ以上のアミノ酸の可変領域を含み、カルボキシ末端部分は定常領域を含む。軽鎖のおおよその長さは、211アミノ酸~217アミノ酸である。定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)またはラムダ(λ)と称される2つの異なるタイプがある。
【0098】
本明細書で使用される場合、「超可変領域」、「HVR」、「相補性決定領域」、及び「CDR」という用語は互換的に使用される。「CDR」は、免疫グロブリン(Igまたは抗体)VHβシートフレームワークの非フレームワーク領域内の3つの超可変領域(H1、H2もしくはH3)のうちの1つ、または抗体VLβシートフレームワークの非フレームワーク領域内の3つの超可変領域(L1、L2またはL3)のうちの1つを指す。したがって、CDRは、フレームワーク領域配列内に散在する可変領域配列である。
【0099】
CDR領域は当業者に周知であり、周知のナンバリングシステムによって定義されている。例えば、Kabat相補性決定領域(CDR)は配列の可変性に基づいており、最も一般的に使用される(例えば、Kabat et al.前出を参照)。代わりに、Chothiaは構造ループの位置を指す(例えば、Chothia and Lesk,1987,J.Mol.Biol.196:901-17を参照)。Kabatのナンバリング規則を使用して番号付けした場合のChothia CDR-H1ループの末端は、ループの長さに応じてH32とH34の間で異なる(これは、KabatナンバリングスキームがH35A及びH35Bに挿入を配置するためであり;35Aも35Bも存在しない場合、ループは32で終了し;35Aのみが存在する場合、ループは33で終了し;35Aと35Bの両方が存在する場合、ループは34で終了する)。AbM超可変領域は、Kabat CDRとChothia構造ループとの間の妥協点を表し、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェアによって使用される(例えば、Antibody Engineering Vol.2(Kontermann and Dubel eds.,2d ed.2010)を参照)。「接触」超可変領域は、利用可能な複雑な結晶構造の分析に基づいている。開発され、広く採用されている別のユニバーサルナンバリングシステムは、ImMunoGeneTics(IMGT)Information System(登録商標)(Lafranc et al.,2003,Dev.Comp.Immunol.27(1):55-77)である。IMGTは、ヒト及び他の脊椎動物の免疫グロブリン(IG)、T細胞受容体(TCR)、及び主要組織適合遺伝子複合体(MHC)に特化した統合情報システムである。本明細書では、CDRは、アミノ酸配列及び軽鎖または重鎖内の位置の両方に関して言及される。免疫グロブリン可変ドメインの構造内のCDRの「位置」は種間で保存され、ループと呼ばれる構造内に存在するので、構造的特徴に従って可変ドメイン配列を整列させるナンバリングシステムを使用することによって、CDR及びフレームワーク残基が容易に同定される。この情報は、1つの種の免疫グロブリンからのCDR残基を、典型的にはヒト抗体からのアクセプタフレームワークに移植及び置換する際に使用することができる。さらなるナンバリングシステム(AHon)が、Honegger and Pluckthun,2001,J.Mol.Biol.309:657-70によって開発されている。例えば、Kabatナンバリング及びIMGT固有のナンバリングシステムを含むナンバリングシステム間の対応は、当業者に周知である(例えば、Kabat前出;Chothia and Lesk,前出;Martin,前出;Lefranc et al.前出を参照)。これらの超可変領域またはCDRのそれぞれからの残基を、以下の表1に示す。
【0100】
【0101】
所与のCDRの境界は、同定のために使用されるスキームによって異なる場合がある。したがって、特に指定されない限り、所与の抗体またはその領域、例えば可変領域の「CDR」及び「相補性決定領域」という用語、ならびに抗体またはその領域の個々のCDR(例えば、「CDR-H1、CDR-H2)は、本明細書中上記に記載される公知のスキームのいずれかによって定義される相補性決定領域を包含すると理解されるべきである。場合によっては、Kabat、Chothia、またはContact法によって定義されるCDRなどの、特定の1つまたは複数のCDRを同定するためのスキームが指定される。他の場合には、CDRの特定のアミノ酸配列が与えられる。
【0102】
超可変領域は、以下のような「拡張超可変領域」を含む場合がある:VLにおける24~36または24~34(L1)、46~56または50~56(L2)、及び89~97または89~96(L3)、ならびにVHにおける26~35または26~35A(H1)、50~65または49~65(H2)、及び93~102、94~102、または95~102(H3)。
【0103】
「定常領域」または「定常ドメイン」という用語は、抗原への抗体の結合には直接関与しないが、Fc受容体との相互作用などの様々なエフェクタ機能を示す軽鎖及び重鎖のカルボキシ末端部分を指す。この用語は、抗原結合部位を含む免疫グロブリンの他の部分、可変領域と比較してより保存されたアミノ酸配列を含む免疫グロブリン分子の部分を指す。定常領域は、重鎖のCH1、CH2、及びCH3領域ならびに軽鎖のCL領域を含む場合がある。
【0104】
「フレームワーク」または「FR」という用語は、CDRに隣接する可変領域残基を指す。FR残基は、例えば、キメラ、ヒト化、ヒト、ドメイン抗体、ダイアボディ、直鎖抗体、及び二重特異性抗体に存在する。FR残基は、超可変領域残基またはCDR残基以外の可変ドメイン残基である。
【0105】
本明細書における「Fc領域」という用語は、例えば、天然配列Fc領域、組換えFc領域、及び変異体Fc領域を含む、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は変化し得るが、ヒトIgG重鎖Fc領域は、多くの場合、Cys226位のアミノ酸残基またはPro230位のアミノ酸残基からそのカルボキシル末端までに及ぶと定義される。Fc領域のC末端リジン(EUナンバリングシステムによる残基447)は、例えば、抗体の産生もしくは精製中に、または抗体の重鎖をコードする核酸を組換え操作することによって除去し得る。したがって、無傷の抗体の組成物は、全てのK447残基が除去された抗体集団、K447残基が除去されていない抗体集団、及びK447残基を有する抗体と有さない抗体の混合物を含む抗体集団を含む場合がある。「機能的Fc領域」は、天然配列Fc領域の「エフェクタ機能」を有する。例示的な「エフェクタ機能」には、C1q結合;CDC;Fc受容体結合;ADCC;食作用;細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)の下方制御などが含まれる。そのようなエフェクタ機能は、一般に、Fc領域が結合領域または結合ドメイン(例えば、抗体可変領域または抗体可変ドメイン)と組み合わされることを必要とし、当業者に公知の様々なアッセイを使用して評価することができる。「変異体Fc領域」は、少なくとも1つのアミノ酸修飾(例えば、置換、付加、または欠失)によって天然配列Fc領域のアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、変異体Fc領域は、天然配列Fc領域または親ポリペプチドのFc領域と比較して少なくとも1つのアミノ酸置換、例えば、天然配列Fc領域または親ポリペプチドのFc領域中に約1個~約10個のアミノ酸置換、または約1個~約5個のアミノ酸置換を有する。本明細書における変異体Fc領域は、天然配列Fc領域及び/または親ポリペプチドのFc領域と少なくとも約80%の相同性、またはそれらと少なくとも約90%の相同性、例えば、それらと少なくとも約95%の相同性を有し得る。
【0106】
本明細書で使用される場合、「エピトープ」は当技術分野の用語であり、結合分子(例えば、抗体)が特異的に結合することができる抗原の局所領域を指す。エピトープは、線状エピトープ、立体配座エピトープ、非線状エピトープ、または不連続エピトープであり得る。ポリペプチド抗原の場合、例えば、エピトープは、ポリペプチドの連続するアミノ酸であり得るか(「線状」エピトープ)、またはエピトープは、ポリペプチドの2つまたはそれ以上の不連続な領域由来のアミノ酸を含み得る(「立体配座」、「非線状」または「不連続」エピトープ)。一般に、線状エピトープは、二次、三次、または四次構造に依存しても依存しなくてもよいことが当業者には理解されるであろう。例えば、いくつかの実施形態では、結合分子は、天然の三次元タンパク質構造に折り畳まれているかどうかにかかわらず、アミノ酸の群に結合する。他の実施形態では、結合分子は、エピトープを認識して結合するために、特定の立体配座(例えば、屈曲、ねじれ、回転、または折り畳み)を示すようにエピトープを構成するアミノ酸残基を必要とする。
【0107】
「ポリペプチド」及び「ペプチド」及び「タンパク質」という用語は、本明細書では互換的に使用され、任意の長さのアミノ酸のポリマーを指す。ポリマーは直鎖または分岐鎖であってよく、修飾アミノ酸を含んでよく、非アミノ酸によって中断されてもよい。この用語はまた、天然にまたは介入によって、例えば、ジスルフィド結合の形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、または任意の他の操作もしくは修飾によって修飾されたアミノ酸ポリマーを包含する。非天然アミノ酸を含むがこれらに限定されるわけではないアミノ酸の1つまたは複数の類似体、ならびに当技術分野で公知の他の修飾を含むポリペプチドも定義に含まれる。本開示のポリペプチドは、抗体または免疫グロブリンスーパーファミリーの他のメンバーに基づいてよいため、特定の実施形態では、「ポリペプチド」は、一本鎖として、または2つもしくはそれ以上の関連鎖として存在することができることが理解される。
【0108】
本明細書で使用される「薬学的に許容される」という用語は、連邦もしくは州政府の規制機関によって承認されていること、または動物、より具体的にはヒトでの使用について米国薬局方、欧州薬局方、もしくは他の一般に認められている薬局方に記載されていることを意味する。
【0109】
「賦形剤」は、液体または固体の充填剤、希釈剤、溶媒、または封入材料などの薬学的に許容される材料、組成物、またはビヒクルを意味する。賦形剤には、例えば、吸収促進剤、酸化防止剤、結合剤、緩衝剤、担体、コーティング剤、着色剤、希釈剤、崩壊剤、乳化剤、増量剤、充填剤、香味剤、保湿剤、潤滑剤、香料、防腐剤、噴射剤、放出剤、滅菌剤、甘味料、可溶化剤、湿潤剤及びそれらの混合物などの封入材料または添加剤が含まれる。「賦形剤」という用語は、希釈剤、アジュバント(例えば、フロイントアジュバント(完全もしくは不完全)またはビヒクルを指すこともできる。
【0110】
一実施形態では、各成分は、薬学的製剤の他の成分と適合性であり、合理的な利益/リスク比に見合って、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、免疫原性、または他の問題もしくは合併症なしにヒト及び動物の組織または器官と接触して使用するのに適しているという意味で「薬学的に許容される」。例えば、Lippincott Williams&Wilkins:Philadelphia,PA,2005;Handbook of Pharmaceutical Excipients,6th ed.;Rowe et al.,Eds.;The Pharmaceutical Press and the American Pharmaceutical Association:2009;Handbook of Pharmaceutical Additives,3rd ed.;Ash and Ash Eds.;Gower Publishing Company:2007;Pharmaceutical Preformulation and Formulation,2nd ed.;Gibson Ed.;CRC Press LLC:Boca Raton,FL,2009を参照。いくつかの実施形態では、薬学的に許容される賦形剤は、使用される投与量及び濃度で、それに曝露される細胞または哺乳動物に対して非毒性である。いくつかの実施形態では、薬学的に許容される賦形剤は、pH緩衝水溶液である。
【0111】
「MMAE」という略語は、モノメチルアウリスタチンEを指す。
【0112】
文脈上特に指示されない限り、ハイフン(-)はペンダント分子への結合点を指定する。
【0113】
「化学療法剤」という用語は、腫瘍増殖を阻害するのに有効な全ての化学化合物を指す。化学療法剤の非限定的な例としては、アルキル化剤、例えば、ナイトロジェンマスタード、エチレンイミン化合物及びアルキルスルホネート;代謝拮抗剤、例えば、葉酸、プリンまたはピリミジンアンタゴニスト;有糸分裂阻害剤、例えば、ビンカアルカロイド、アウリスタチン及びポドフィロトキシンの誘導体などの抗チューブリン剤;細胞傷害性抗生物質;DNAの発現または複製を損傷または妨害する化合物、例えば、DNA副溝結合剤;ならびに成長因子受容体アンタゴニストが挙げられる。さらに、化学療法剤には、細胞傷害剤(本明細書で定義されるような)、抗体、生物学的分子及び小分子が含まれる。
【0114】
本明細書で使用される場合、「保存的置換」という用語は、当業者に公知であり、一般に、得られる分子の生物学的活性を変化させることなく行われる可能性があるアミノ酸の置換を指す。当業者は、一般に、ポリペプチドの非必須領域における単一アミノ酸置換が生物学的活性を実質的に変化させないことを認識する(例えば、Watson et al.,MOLECULAR BIOLOGY OF THE GENE,The Benjamin/Cummings Pub.Co.,p.224(4th Edition 1987)を参照)。そのような例示的な置換は、好ましくは、表2及び表3に示される置換に従って行われる。例えば、そのような変化には、イソロイシン(I)、バリン(V)及びロイシン(L)のいずれかをこれらの疎水性アミノ酸のいずれか他のもので置換すること;グルタミン酸(E)をアスパラギン酸(D)で置換すること及びその逆;アスパラギン(N)をグルタミン(Q)で置換すること及びその逆;ならびにスレオニン(T)をセリン(S)で置換すること及びその逆が含まれる。他の置換もまた、特定のアミノ酸の環境及びタンパク質の三次元構造におけるその役割に応じて、保存的であると考えることができる。例えば、アラニン(A)及びバリン(V)と同様に、グリシン(G)及びアラニン(A)はしばしば交換可能であり得る。比較的疎水性であるメチオニン(M)は、ロイシン及びイソロイシンとしばしば交換され得、時にバリンとも交換され得る。リジン(K)及びアルギニン(R)は、アミノ酸残基の重要な特徴がその電荷であり、これらの2つのアミノ酸残基の異なるpKが重要ではない位置においてしばしば交換可能である。さらに他の変化は、特定の環境では「保存的」と考えることができる(例えば、本明細書の表3;pages 13-15’’Biochemistry’’2nd ED.Lubert Stryer ed(Stanford University);Henikoff et al.,PNAS 1992 Vol 89 10915-10919;Lei et al.,J Biol Chem 1995 May 19;270(20):11882-11886を参照)。他の置換も許容され、経験的にまたは公知の保存的置換に従って決定されてよい。
【0115】
【0116】
(表3)アミノ酸置換または類似性マトリックス
GCGソフトウェア9.0 BLOSUM62アミノ酸置換マトリックス(ブロック置換マトリックス)から適合。値が高いほど、関連する天然タンパク質において置換が見出される可能性が高い。
【0117】
「相同性」または「相同な」という用語は、2つのポリヌクレオチド間または2つのポリペプチド間の配列類似性を意味することを意図している。類似性は、比較の目的で整列させることができる、各配列における位置を比較することによって決定することができる。2つのポリペプチド配列の所与の位置が同一でない場合、その位置の類似性または保存性は、例えば表3に従ってその位置のアミノ酸の類似性を評価することによって決定することができる。配列間の類似性の程度は、配列によって共有される一致する位置または相同な位置の数の関数である。配列類似性パーセントを決定するための2つの配列のアラインメントは、例えば、Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley and Sons,Baltimore,MD(1999)に記載されているものなどの、当技術分野で公知のソフトウェアプログラムを使用して行うことができる。好ましくは、アライメントにはデフォルトパラメータが使用され、その例を以下に示す。使用できる当技術分野で周知の1つのアライメントプログラムは、デフォルトパラメータに設定したBLASTである。特に、プログラムは、以下のデフォルトパラメータを使用するBLASTN及びBLASTPである:遺伝暗号=標準;フィルタ=なし;鎖=両方;カットオフ=60;期待値=10;マトリックス=BLOSUM62;説明=50配列;ソート順=ハイスコア;データベース=非冗長、GenBank+EMBL+DDBJ+PDB+GenBank CDS翻訳+SwissProtein+SPupdate+PIR。これらのプログラムの詳細は、National Center for Biotechnology Informationで見ることができる。
【0118】
所与のアミノ酸配列または核酸配列の「ホモログ」という用語は、所与のアミノ酸配列または核酸配列に対して実質的な同一性または相同性を有する「ホモログ」の対応する配列を示すことを意図している。
【0119】
2つの配列(例えば、アミノ酸配列または核酸配列)間の同一性パーセントの決定は、数学的アルゴリズムを使用して達成することができる。2つの配列の比較に利用される数学的アルゴリズムの好ましい非限定的な例は、Karlin and Altschul,1993,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.90:5873 5877におけるように修正された、Karlin and Altschul,1990,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.87:2264 2268のアルゴリズムである。そのようなアルゴリズムは、Altschul et al.,1990,J.Mol.Biol.215:403のNBLAST及びXBLASTプログラムに組み込まれている。BLASTヌクレオチド検索は、本明細書に記載の核酸分子に相同なヌクレオチド配列を得るために、例えば、スコア=100、ワード長=12に設定したNBLASTヌクレオチドプログラムパラメータを用いて実施することができる。BLASTタンパク質検索は、本明細書に記載のタンパク質分子に相同なアミノ酸配列を得るために、例えば、スコア50、ワード長=3に設定したXBLASTプログラムパラメータを用いて実施することができる。比較のためにギャップのあるアラインメントを得るには、Altschul et al.,1997,Nucleic Acids Res.25:3389 3402に記載されているようにGapped BLASTを利用することができる。あるいは、PSI BLASTを使用して、分子間の遠隔関係を検出する反復検索を実施することができる(同上)。BLAST、Gapped BLAST、及びPSI Blastプログラムを利用する場合、それぞれのプログラムの(例えば、XBLAST及びNBLASTの)デフォルトパラメータを使用することができる(例えば、ワールドワイドウェブ、ncbi.nlm.nih.govのNational Center for Biotechnology Information(NCBI)を参照)。配列の比較のために利用される数学的アルゴリズムの別の非限定的な例は、Myers and Miller,1988,CABIOS 4:11 17のアルゴリズムである。そのようなアルゴリズムは、GCG配列アラインメントソフトウェアパッケージの一部であるALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれている。アミノ酸配列を比較するためにALIGNプログラムを利用する場合、PAM120加重残基表、ギャップ長ペナルティ12、及びギャップペナルティ4を使用することができる。
【0120】
2つの配列間の同一性パーセントは、ギャップを許容してまたは許容せずに、上記と同様の技術を用いて決定することができる。同一性パーセントの計算では、典型的には、正確な一致のみがカウントされる。
【0121】
「細胞傷害剤」という用語は、細胞の発現活性、細胞の機能を阻害もしくは防止し、及び/または細胞の破壊を引き起こす物質を指す。この用語は、放射性同位体、化学療法剤、ならびに断片及び/またはバリアントを含む、細菌、真菌、植物または動物起源の小分子毒素または酵素的に活性な毒素などの毒素を含むことを意図している。細胞傷害剤の例としては、アウリスタチン(例えば、アウリスタチンE、アウリスタチンF、MMAE及びMMAF)、オーレオマイシン、メイタンシノイド、リシン、リシンA鎖、コンブレスタチン、デュオカルマイシン、ドラスタチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、タキソール、シスプラチン、cc1065、臭化エチジウム、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ジヒドロキシアントラシンジオン、アクチノマイシン、ジフテリア毒素、シュードモナス外毒素(PE)A、PE40、アブリン、アブリンA鎖、モデシンA鎖、α-サルシン、ゲロニン、ミトゲリン、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン、キュリシン、クロチン、カリケアマイシン、サボンソウ(Sapaonaria officinalis)阻害剤、及びグルココルチコイドならびに他の化学療法剤、ならびにAt211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212またはBi213、P32などの放射性同位体、及びLu177を含むLuの放射性同位元素が挙げられるが、これらに限定されるわけではない。抗体はまた、プロドラッグをその活性形態に変換することができる抗がんプロドラッグ活性化酵素に複合化されてよい。
【0122】
本明細書で使用される「有効量」または「治療有効量」という用語は、所望の結果をもたらすのに十分な、本明細書で提供される結合分子(例えば、抗体)または薬学的組成物の量を指す。
【0123】
「対象」及び「患者」という用語は、同義に使用されてよい。本明細書で使用される場合、特定の実施形態では、対象は、非霊長動物(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ネコ、イヌ、ラットなど)または霊長動物(例えば、サル及びヒト)などの哺乳動物である。特定の実施形態では、対象はヒトである。一実施形態では、対象は、状態または障害と診断された哺乳動物、例えばヒトである。別の実施形態では、対象は、状態または障害を発症するリスクがある哺乳動物、例えばヒトである。
【0124】
「投与する」または「投与」は、粘膜、皮内、静脈内、筋肉内送達、及び/または本明細書に記載されているもしくは当技術分野で公知の任意の他の物理的送達方法などによって、体外に存在する物質を患者に注射または他の方法で物理的に送達する行為を指す。
【0125】
本明細書で使用される場合、「治療する」、「治療」及び「治療すること」という用語は、1つまたは複数の治療法の投与に起因する疾患または状態の進行、重症度、及び/または持続期間の減少または改善を指す。治療は、患者が依然として基礎疾患に罹患している可能性があるにもかかわらず、患者に関して改善が観察されるように、基礎疾患に関連する1つまたは複数の症状の減少、緩和及び/または軽減があったかどうかを評価することによって決定される場合がある。「治療すること」という用語は、疾患の管理と改善の両方を含む。「管理する」、「管理すること」、及び「管理」という用語は、対象が必ずしも疾患の治癒をもたらさない治療法から得る有益な効果を指す。
【0126】
「予防する」、「予防すること」、及び「予防」という用語は、疾患、障害、状態、または関連する1つもしくは複数の症状(例えば、がん)の発症(または再発)の可能性を低減することを指す。
【0127】
「がん」または「がん細胞」という用語は、本明細書では、正常な組織または組織細胞からそれを区別する特性を有する、新生物に見られる組織または細胞を示すために使用される。そのような特性には、退形成の程度、形状の不規則性、細胞輪郭の不明瞭さ、核の大きさ、核または細胞質の構造の変化、他の表現型の変化、がんまたは前がん状態を示す細胞タンパク質の存在、有糸分裂の数の増加、及び転移する能力が含まれるが、これらに限定されるわけではない。「がん」に関連する単語には、癌腫、肉腫、腫瘍、上皮腫、白血病、リンパ腫、ポリープ、及び硬性がん、形質転換、新生物などが含まれる。
【0128】
本明細書で使用される場合、「局所進行性」がんとは、出現した場所から近くの組織またはリンパ節へと広がったがんを指す。
【0129】
本明細書で使用される場合、「転移性」がんとは、それが出現した場所から身体の別の場所へと広がったがんを指す。
【0130】
「膀胱内投与」という用語は、尿道カテーテルの挿入を介して治療薬を直接膀胱内に注入することを指す。
【0131】
「滞留時間」という用語は、治療物質が治療された対象の特定の部分または器官(例えば、膀胱)に保持される時間の長さを指す。
【0132】
「約」及び「およそ」という用語は、所与の値または範囲の20%以内、15%以内、10%以内、9%以内、8%以内、7%以内、6%以内、5%以内、4%以内、3%以内、2%以内、1%以内、またはそれ未満を意味する。
【0133】
本開示及び特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈上明らかに別段の指示がない限り、複数形を含む。
【0134】
実施形態が「含む」という用語を用いて本明細書で説明される場合は常に、「からなる」及び/または「から本質的になる」に関して説明される他の類似の実施形態も提供されることが理解される。また、実施形態が「から本質的になる」という語句を用いて本明細書で説明される場合は常に、「からなる」に関して説明される他の類似の実施形態も提供されることが理解される。
【0135】
本明細書で「A及び/またはB」などの語句で使用される「及び/または」という用語は、AとBの両方;AまたはB;A(単独);及びB(単独)を含むことが意図されている。同様に、「A、B、及び/またはC」などの語句で使用される「及び/または」という用語は、以下の実施形態:A、B、及びC;A、B、またはC;AまたはC;AまたはB;BまたはC;A及びC;A及びB;B及びC;A(単独);B(単独);及びC(単独)のそれぞれを包含することが意図されている。
【0136】
「バリアント」という用語は、具体的に記載されたタンパク質(例えば、
図1Aに示す191P4D12タンパク質)の対応する位置(複数可)に1つまたは複数の異なるアミノ酸残基を有するタンパク質などの、記載されたタイプまたは基準からの変異を示す分子を指す。類似体はバリアントタンパク質の一例である。スプライスアイソフォーム及び一塩基多型(SNP)は、バリアントのさらなる例である。
【0137】
本開示の「191P4D12タンパク質」及び/または「191P4D12関連タンパク質」には、本明細書で具体的に特定されるもの(
図1Aを参照)、ならびに本明細書に概説される方法または当技術分野で容易に利用可能な方法に従って過度の実験をすることなく単離/生成及び特性評価することができる対立遺伝子バリアント、保存的置換バリアント、類似体及びホモログが含まれる。異なる191P4D12タンパク質の一部またはその断片を組み合わせる融合タンパク質、及び191P4D12タンパク質と異種ポリペプチドとの融合タンパク質も含まれる。そのような191P4D12タンパク質は、集合的に191P4D12関連タンパク質、本開示のタンパク質、または191P4D12と呼ばれる。「191P4D12関連タンパク質」という用語は、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、もしくは25を超えるアミノ酸、または少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも45、少なくとも50、少なくとも55、少なくとも60、少なくとも65、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも85、少なくとも90、少なくとも95、少なくとも100、少なくとも105、少なくとも110、少なくとも115、少なくとも120、少なくとも125、少なくとも130、少なくとも135、少なくとも140、少なくとも145、少なくとも150、少なくとも155、少なくとも160、少なくとも165、少なくとも170、少なくとも175、少なくとも180、少なくとも185、少なくとも190、少なくとも195、少なくとも200、少なくとも225、少なくとも250、少なくとも275、少なくとも300、少なくとも325、少なくとも330、少なくとも335、少なくとも339もしくはそれ以上のアミノ酸のポリペプチド断片または191P4D12タンパク質配列を指す。「191P4D12」という用語は、ネクチン-4と交換可能に使用される。
【0138】
5.2 選択された患者に対する非筋肉浸潤性膀胱癌(NMIBC)の治療方法
191P4D12に結合する抗体薬物複合体(ADC)の膀胱内投与を介してヒト対象における膀胱癌を治療するための方法が、本明細書において提供される。
【0139】
一態様では、ヒト対象における膀胱癌を治療する方法であって、本明細書で提供されるのは、該対象に有効量の抗体薬物複合体(ADC)を膀胱内投与することを含み、該ADCが、
モノメチルアウリスタチンE(MMAE)の1単位以上にコンジュゲートした、191P4D12に結合する抗体またはその抗原結合断片
を含む、方法を提供する。
【0140】
いくつかの実施形態では、該膀胱癌が非筋肉浸潤性膀胱癌(NMIBC)である。いくつかの実施形態では、NMIBCが組織学的に確認されている。いくつかの実施形態では、NMIBCが上皮内癌(CIS)ある。いくつかの実施形態では、NMIBCが組織学的に上皮内癌(CIS)として確認されている。特定の実施形態では、該対象が乳頭状疾患を有する。特定の実施形態では、該対象が乳頭状疾患を有さない。特定の実施形態では、該NMIBCが組織学的に確認されており、主な組織学的成分(>50%)が尿路上皮(移行上皮)癌である。
【0141】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法で治療されるヒト対象は、高リスクのカルメット・ゲラン菌(BCG)非応答性疾患を有する。特定の実施形態では、高リスクBCG非応答性疾患は、適切なBCG療法終了後12ヵ月以内のCIS単独または再発Ta/T1(非浸潤性乳頭状疾患/腫瘍が上皮下結合組織に浸潤)疾患の持続または再発と定義される。特定の実施形態では、適切なBCG療法とは、初回誘導コース6回のうち5回投与+維持療法3回のうち少なくとも2回投与として定義される。特定の実施形態では、適切なBCG療法とは、初回誘導コース6回のうち5回投与+2回目誘導コース6回のうち少なくとも2回投与として定義される。
【0142】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法で治療されるヒト対象は、根治的膀胱全摘除術に不適格である。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法で治療されるヒト対象は、根治的膀胱全摘除術を受けることを拒否している。
【0143】
いくつかの実施形態では、該対象の、目に見える全ての乳頭状Ta/T1腫瘍が、前記治療前60日以内に完全に切除されている。いくつかの実施形態では、該対象が、残留する純粋なCISを有する。いくつかの実施形態では、該対象は、残留する純粋なCISを有さない。
【0144】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法で治療されるヒト対象は、満足な膀胱機能と、前投薬があっても、本明細書に提供されるADCの点滴注入を少なくとも1時間保持する能力とを有する。いくつかの実施形態では、ヒト対象が少なくとも18歳である。いくつかの実施形態では、ヒト対象の推定平均余命が2年を超える。
【0145】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法で治療されるヒト対象は、米国東海岸癌臨床試験グループ(ECOG)活動状態スコアが0である。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法で治療されるヒト対象は、米国東海岸癌臨床試験グループ(ECOG)活動状態スコアが1である。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法で治療されるヒト対象は、米国東海岸癌臨床試験グループ(ECOG)活動状態スコアが2である。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法で治療されるヒト対象は、米国東海岸癌臨床試験グループ(ECOG)活動状態スコアが2であり、対象の糸球体濾過率(GFR)が50mL/分以上であり、対象は、ニューヨーク心臓協会(NYHA)クラスIIIの心不全を有さない。
【0146】
前段落の方法を含む、本明細書に提供される方法のさらなる実施形態において、本明細書に提供される方法を使用できるヒト対象は、種々の他の状態を有するヒト対象である。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法で治療されるヒト対象は、1500/μL以上の絶対好中球数(ANC)の状態を有する。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法で治療されるヒト対象は、10g/dL以上のヘモグロビン(Hgb)の状態を有する。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法で治療されるヒト対象は、100,000/μL以上の血小板数の状態を有する。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法で治療されるヒト対象は、1.5×ULN以下の正常(ULN)、またはジルベール病を有する対象の場合に3×ULN以下の血清ビリルビンの状態を有する。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法で治療されるヒト対象は、30mL/分以上のクレアチニンクリアランス(CrCl)の計算値の状態を有する。いくつかの実施形態では、CrClは、Cockcroft-Gault法または腎疾患における食生活改善(MDRD)式を用いて計算される。いくつかの態様では、本明細書に提供される方法で治療されるヒト対象は、30mL/分以上のGFRの状態を有する。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法で治療されるヒト対象は、ECOG活動状態が2であり、GFRが50mL/分以上である。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法で治療されるヒト対象は、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)及びアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)の状態が3×ULN以下である。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法で治療されるヒト対象は、PTまたはaPTTが抗凝固薬の使用目的の治療範囲内である限りにおいて、ヒト対象が抗凝固薬治療を受けている場合を除き、国際標準化比(INR)、またはプロトロンビン時間(PT)、活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)もしくは部分トロンボプラスチン時間(PTT)が1.5ULN以下である状態を有する。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法で治療されるヒト対象は、本段落に記載される複数の状態を有する。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法で治療されるヒト対象は、本段落に記載される全ての状態を有する。
【0147】
前段落の方法を含む、本明細書に提供される方法のさらなる実施形態では、本明細書に提供される方法を使用できるヒト対象は、特定の状態を有さないヒト対象である。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法で治療されるヒト対象は、筋肉浸潤性尿路上皮癌(すなわち、T2、T3、またはT4疾患)または転移性疾患の現在または以前の病歴を有さない。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法で治療されるヒト対象は、ADCによる治療前3ヵ月以内に行われるコンピュータ断層撮影(CT)または磁気共鳴画像法(MRI)に示されるような結節または転移性疾患を有さない。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法で治療されるヒト対象は、ADCによる治療前3ヵ月以内に実施された腹部/骨盤の造形を伴うCTまたはMRI尿路造影図に示された、随伴する上路尿路上皮癌を有さない。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法で治療されるヒト対象は、ADCによる治療前6ヵ月以内に、前立腺尿道の尿路上皮癌の既往または随伴がない。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法で治療されるヒト対象は、ADCの投与前に腫瘍関連水腎症を有さない。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法で治療されるヒト対象は、本明細書に提供される方法による治療の最初の投与から4週間以内に全身性抗癌療法(例えば、化学療法、生物学的療法、免疫療法、標的療法、内分泌療法、治験薬)を受けておらず、または本明細書に提供される方法による治療の開始前6週間以内にNMIBCの治療のための任意の膀胱内療法を受けない。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法で治療されるヒト対象は、本明細書に提供される方法による治療開始前の14~60日間に、TURBT手順の直後に細胞傷害性剤(例えば、マイトマイシンC、ドキソルビシン、及びゲムシタビン)の単回点滴を受ける。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法で治療されるヒト対象は、NMIBCのための先行治療に関連する有害事象(AE)に続発する症状(グレード2以上)を有さない。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法で治療されるヒト対象は、尿路上皮癌の治療のために膀胱への放射線を事前に受けない。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法で治療されるヒト対象は、活性感染を有さず、対象は、ADCによる治療開始前14日以内に全身性(例えば、経口または静脈内)抗生物質で治療される。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法で治療されるヒト対象は、膀胱内投与または膀胱内外科的操作に耐性がある。いくつかの実施形態において、本明細書に提供される方法で治療されるヒト対象は、本明細書に提供される方法による治療前の3年以内に悪性腫瘍の病歴、または以前に診断された悪性腫瘍からの残存病変の任意の証拠を有さない。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法で治療されるヒト対象は、適切に治療された子宮頸部のCIS、非黒色腫皮膚癌、乳房の管CIS、またはステージI子宮癌など、転移または死亡のリスクが無視できるほど小さい(例えば、5年全生存率[OS]≧90%)。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法で治療されるヒト対象は、本明細書に提供される方法による治療の少なくとも1年前に、確定的意図で(外科的にまたは放射線療法で)治療された前立腺癌(T2N0M0以下、グリソンスコア≦7)の病歴を有し、その前提として、該対象が前立腺癌でないと考えられ、(1)根治的前立腺切除術を受けた対象は、ADCの投与前の1年超にわたり、前立腺特異的抗原(PSA)が検出されず、かつ、(2)放射線照射を受けた対象は、PSA倍加時間が1年超(1ヵ月超の間隔をおいて測定された少なくとも3つの値に基づく)であり、かつ全PSA値が生化学的再発のPhoenix基準を満たさない(すなわち、最下点より<2.0 ng/mL)、という基準が満たされる。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法で治療されるヒト対象は、ネクチン-4標的療法またはモノメチルアウリスタチンE(MMAE)含有剤に曝露されたことがない。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法で治療されるヒト対象は、自己免疫性または炎症性皮膚障害を有さない。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法で治療されるヒト対象は、乾癬またはアトピー性皮膚炎を有さない。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法で治療されるヒト対象は、進行中の感覚神経障害または運動神経障害グレード2以上を有さない。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法で治療されるヒト対象は、陽性B型肝炎表面抗原及び/または抗B型肝炎コア抗体を有さない。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法で治療されるヒト対象は、B型肝炎のネガティブポリメラーゼ連鎖反応(PCR)アッセイを有し、適切な抗ウイルス予防を有する。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法で治療されるヒト対象は、活動性のC型肝炎感染または公知のヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染を有さない。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法で治療されるヒト対象は、活動性結核を有さない。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法で治療されるヒト対象は、制御されない糖尿病を有さない。いくつかの実施形態では、無制御の糖尿病は、ヘモグロビンA1c(HbA1c)≧8%、またはHbA1cが7%~8%未満であり、関連する糖尿病症状(多尿症または多飲症)を伴う対象として定義される。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法で治療されるヒト対象は、ADCの初回投与前6ヵ月以内に、脳血管事象(例えば、脳卒中または一過性虚血発作)、不安定狭心症、心筋梗塞、またはNYHAクラスIII-IVと一致する心臓症状を有さない。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法で治療されるヒト対象は、エンホルツマブベドチン、またはエンホルツマブベドチンの薬物製剤中に含有される任意の賦形剤(例えば、ヒスチジン、トレハロース二水和物、及び/またはポリソルベート20)に対して重篤な(≧グレード3)過敏症を有さない。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法で治療されるヒト対象は、活動性の角膜炎または角膜潰瘍を有さない。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法で治療されるヒト対象は、点状表層角膜炎を有する。
【0148】
特定の実施形態では、本明細書に提供される方法は、191P4D12 RNAを発現する、191P4D12タンパク質を発現する、または191P4D12 RNA及び191P4D12タンパク質の両方を発現する、非筋肉浸潤性膀胱癌(NMIBC)を有する対象を治療するために使用される。
【0149】
いくつかの実施形態では、がんにおける191P4D12 RNA発現は、ポリヌクレオチドハイブリダイゼーション、配列決定(配列の相対的存在量を評価する)、及び/またはPCR(RT-PCRを含む)によって決定される。いくつかの実施形態では、がんにおける191P4D12タンパク質の発現は、IHC、蛍光活性化細胞選別(FACS)における分析、及び/またはウェスタンブロット法によって決定される。いくつかの実施形態では、がんにおける191P4D12タンパク質の発現は、2つ以上の方法によって決定される。いくつかの実施形態では、がんにおける191P4D12タンパク質の発現は、IHCの2つの方法によって決定される。
【0150】
いくつかの実施形態では、非筋肉浸潤性膀胱癌(NMIBC)は、組織学的、細胞学的、または組織学的及び細胞学的の両方で確認される。
【0151】
別の態様では、本明細書において提供されるのは、ヒト対象におけるNMIBCを治療する方法であり、有効量の抗体薬物複合体を対象に投与するステップを含み、抗体薬物複合体が、
1単位以上のモノメチルアウリスタチンE(MMAE)にコンジュゲートした、191P4D12に結合する抗体またはその抗原結合断片
を含み、抗体またはその抗原結合断片が、配列番号22に示す重鎖可変領域のCDRのアミノ酸配列を含む相補性決定領域(CDR)を含む重鎖可変領域と、配列番号23に示す軽鎖可変領域のCDRのアミノ酸配列を含むCDRを含む軽鎖可変領域とを含み、ここで、対象が、第6節で提供される任意の適切な特性を有する。
【0152】
別の態様では、本明細書において提供されるのは、ヒト対象におけるがんを予防または治療する方法であり、有効量の抗体薬物複合体を対象に投与するステップを含み、抗体薬物複合体が、
1単位以上のモノメチルアウリスタチンE(MMAE)にコンジュゲートした、191P4D12に結合する抗体またはその抗原結合断片
を含み、抗体またはその抗原結合断片が、配列番号22に示す重鎖可変領域のCDRのアミノ酸配列を含む相補性決定領域(CDR)を含む重鎖可変領域と、配列番号23に示す軽鎖可変領域のCDRのアミノ酸配列を含むCDRを含む軽鎖可変領域とを含み、ここで、がんは、第6節で提供される任意の適切なマーカー及び/または特性を有する。
【0153】
さらに別の態様では、本明細書において提供されるのは、ヒト対象におけるがんを予防または治療する方法であり、有効量の抗体薬物複合体を対象に投与するステップを含み、抗体薬物複合体が、
1単位以上のモノメチルアウリスタチンE(MMAE)にコンジュゲートした、191P4D12に結合する抗体またはその抗原結合断片
を含み、ここで、対象が、第6節で提供される任意の適切な特性を有する。さらなる態様では、本明細書において提供されるのは、ヒト対象におけるがんを予防または治療する方法であり、有効量の抗体薬物複合体を対象に投与するステップを含み、抗体薬物複合体が、
1単位以上のモノメチルアウリスタチンE(MMAE)に結合した、191P4D12に結合する抗体またはその抗原結合断片
を含み、ここで、がんは、第6節で提供される任意の適切なマーカー及び/または特性を有する。
【0154】
本明細書に提供される全ての方法、特に前段落で記載される方法において、使用され得るADCは、第3、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6及び6節で記載され、治療のための患者の選択は、本明細書で記載され、本節(第5.2節)及び第3と6節で例示され、治療薬を投与するための投薬レジメン及び医薬組成物は、以下第5.4、5.6、6節に記載され、治療薬の同定、患者の選択、これらの方法の結果の決定、及び/またはこれらの方法の基準として機能するために使用できるバイオマーカーは、本明細書に記載され、本節及び第6節に例示され、バイオマーカーは、第5.7節または当技術分野で知られるように決定され、本明細書で提供される方法の治療成績は、本節(第5.2節)及び第3と6節に記載され、本明細書で提供される方法の追加の治療成績は、本明細書に記載されるバイオマーカーの改善であり得、例えば、本節(第5.2節)及び第3と6節に記載され例示されるものであり、ADCと他の治療薬を含む併用療法は、本節と第5.5節に記載される。従って、当業者であれば、本明細書に提供される方法が、上述及び後述する患者、治療薬、投薬レジメン、バイオマーカー、及び治療成績の全ての順列と組み合わせを含むことを理解するであろう。
【0155】
5.3 本方法のための抗体薬物複合体
第5.2節で提供される方法を含む、本明細書で提供される方法の様々な実施形態では、本方法で使用されるADCは、本明細書及び/または米国特許第8,637,642号(その全体が参照によって本明細書に組み込まれる)に記載される抗191P4D12 ADCを含むか、またはそれである。いくつかの実施形態では、本明細書の方法のために提供される抗191P4D12抗体薬物複合体は、第3及び6節ならびに第5.3.2及び5.3.4節におけるさらなる開示を含む本節(第5.3節)のものを含む、本明細書で提供されるような細胞傷害剤の1つ以上の単位(薬物単位、またはD)に複合化された、第3、5.3.1、及び6節のものを含む、本明細書で提供されるような191P4D12に結合する抗体またはその抗原結合断片を含む。特定の実施形態では、細胞傷害剤(薬物単位、またはD)は、本明細書で提供されるように直接またはリンカー単位(LU)を介して共有結合され得、第3及び6節ならびに第5.3.3節におけるさらなる開示を含む本節(5.3節)のものを含む。
【0156】
いくつかの実施形態では、抗体薬物複合体化合物は、以下の式:
L-(LU-D)p(I)
を有するか、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物であり、式中、
Lは抗体単位、例えば、第3、5.3.1、及び6節で提供されるような、例えば、抗ネクチン-4抗体またはその抗原結合断片であり、
(LU-D)は、リンカー単位-薬物単位部分であり、式中、
LU-は、例えば、第3節及び6ならびに第5.3.3節におけるさらなる開示を含む本節(第5.3節)で提供されるようなリンカー単位であり、
Dは、例えば、第3及び6節ならびに第5.3.2及び5.3.4節におけるさらなる開示を含む本節(第5.3節)で提供されるような、標的細胞に対する細胞増殖抑制活性または細胞傷害活性を有する薬物単位であり、
pは、第3及び6節ならびに本節(第5.3節)で提供されるさらなる例を含む、1~20の整数である。
【0157】
いくつかの実施形態では、pは、1~20、1~19、1~18、1~17、1~16、1~15、1~14、1~13、1~12、1~11、1~10、1~9、1~8、1~7、1~6、1~5、1~4、1~3、または1~2の範囲である。いくつかの実施形態では、pは、2~20、2~19、2~18、2~17、2~16、2~15、2~14、2~13、2~12、2~11、2~10、2~9、2~8、2~7、2~6、2~5、2~4、または2~3の範囲である。いくつかの実施形態では、pは、3~20、3~19、3~18、3~17、3~16、3~15、3~14、3~13、3~12、3~11、3~10、3~9、3~8、3~7、3~6、3~5、または3~4の範囲である。いくつかの実施形態では、pは約1である。いくつかの実施形態では、pは約2である。いくつかの実施形態では、pは約3である。いくつかの実施形態では、pは約4である。いくつかの実施形態では、pは約3.8である。いくつかの実施形態では、pは約5である。いくつかの実施形態では、pは約6である。いくつかの実施形態では、pは約7である。いくつかの実施形態では、pは約8である。いくつかの実施形態では、pは約9である。いくつかの実施形態では、pは約10である。いくつかの実施形態では、pは約11である。いくつかの実施形態では、pは約12である。いくつかの実施形態では、pは約13である。いくつかの実施形態では、pは約14である。いくつかの実施形態では、pは約15である。いくつかの実施形態では、pは約16である。いくつかの実施形態では、pは約17である。いくつかの実施形態では、pは約18である。いくつかの実施形態では、pは約19である。いくつかの実施形態では、pは約20である。
【0158】
いくつかの実施形態では、抗体薬物複合体化合物は、以下の式:
L-(Aa-Ww-Yy-D)p(II)
を有するか、またはその薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物であり、式中、
Lは抗体単位、例えば、第3、5.3.1、及び6節で提供されるような、例えば、抗ネクチン-4抗体またはその抗原結合断片であり、
-Aa-Ww-Yy-は、リンカー単位(LU)であり、式中、
-A-は、伸長単位であり、
aは、0または1であり、
各-W-は独立してアミノ酸単位であり、
wは0~12の範囲の整数であり、
-Y-は、自己犠牲スペーサー単位であり、
yは0、1または2であり、
各々が、例えば、第3及び6節ならびに第5.3.3節におけるさらなる開示を含む本節(第5.3節)で提供されるようなものであり、
Dは、例えば、第3及び6節ならびに第5.3.2及び5.3.4節におけるさらなる開示を含む本節(第5.3節)で提供されるような、標的細胞に対する細胞増殖抑制活性または細胞傷害活性を有する薬物単位であり、
pは、第3及び6節ならびに本節(第5.3節)で提供されるさらなる例を含む、1~20の整数である。
【0159】
いくつかの実施形態では、aは0または1であり、wは0または1であり、yは0、1、または2である。いくつかの実施形態では、aは0または1であり、wは0または1であり、yは0または1である。いくつかの実施形態では、pは、1~20、1~19、1~18、1~17、1~16、1~15、1~14、1~13、1~12、1~11、1~10、1~9、1~8、1~7、1~6、1~5、1~4、1~3、または1~2の範囲である。いくつかの実施形態では、pは、2~20、2~19、2~18、2~17、2~16、2~15、2~14、2~13、2~12、2~11、2~10、2~9、2~8、2~7、2~6、2~5、2~4、または2~3の範囲である。いくつかの実施形態では、pは、3~20、3~19、3~18、3~17、3~16、3~15、3~14、3~13、3~12、3~11、3~10、3~9、3~8、3~7、3~6、3~5、または3~4の範囲である。いくつかの実施形態では、pは約1である。いくつかの実施形態では、pは約2である。いくつかの実施形態では、pは約3である。いくつかの実施形態では、pは約4である。いくつかの実施形態では、pは約3.8である。いくつかの実施形態では、pは約5である。いくつかの実施形態では、pは約6である。いくつかの実施形態では、pは約7である。いくつかの実施形態では、pは約8である。いくつかの実施形態では、pは約9である。いくつかの実施形態では、pは約10である。いくつかの実施形態では、pは約11である。いくつかの実施形態では、pは約12である。いくつかの実施形態では、pは約13である。いくつかの実施形態では、pは約14である。いくつかの実施形態では、pは約15である。いくつかの実施形態では、pは約16である。いくつかの実施形態では、pは約17である。いくつかの実施形態では、pは約18である。いくつかの実施形態では、pは約19である。いくつかの実施形態では、pは約20である。いくつかの実施形態では、wが0でない場合、yは1または2である。いくつかの実施形態では、wが1~12である場合、yは1または2である。いくつかの実施形態では、wは2~12であり、yは1または2である。いくつかの実施形態では、aは1であり、w及びyは0である。
【0160】
第5.2節で提供される方法を含む、本明細書で提供される方法のいくつかの具体的な実施形態では、本方法のために本明細書で提供されるADCいずれかの一部としての細胞傷害剤は、MMAEを含むか、MMAEからなるか、またはMMAEである。
【0161】
複数の抗体またはその抗原結合断片を含む組成物の場合、薬物負荷は、抗体単位あたりの薬物分子の平均数であるpによって表される。薬物負荷は、抗体あたり薬物(D)1~20の範囲であり得る。複合化反応の調製において抗体あたりの薬物の平均数は、質量分析、ELISAアッセイ、及びHPLCなどの従来の手段によって特性決定され得る。pに関する抗体薬物複合体の定量的分布を特定することもできる。場合によっては、他の薬物負荷を有する抗体薬物複合体からの、pが一定値である均一な抗体薬物複合体の分離、精製、及び特性決定を、逆相HPLCまたは電気泳動などの手段によって行うことができる。特定の例示的な実施形態では、pは2~8である。
【0162】
本明細書で提供される方法のためのADCの追加実施形態は、米国特許第8,637,642号及び国際出願第PCT/US2019/056214(公開番号WO2020/117373)に記載されていて、その両方ともそれら全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0163】
第3、5.2、及び6節ならびに本節(第5.3節)を含む、本明細書で提供される方法のいくつかの実施形態では、ADCは、エンホルツマブベドチンである。第3、5.2、及び6節ならびに本節(第5.3節)を含む、本明細書で提供される方法の特定の実施形態では、ADCは、エンホルツマブベドチンのバイオシミラーである。
【0164】
5.3.1 抗191P4D12抗体または抗原結合断片
一実施形態では、ネクチン-4関連タンパク質に結合する抗体またはその抗原結合断片は、配列番号2のアミノ酸配列を含むネクチン-4タンパク質に特異的に結合する抗体または抗原結合断片である(
図1Aを参照)。191P4D12タンパク質をコードする対応するcDNAは、配列番号1の配列を有する(
図1Aを参照)。
【0165】
配列番号2のアミノ酸配列を含むネクチン-4タンパク質に特異的に結合する抗体には、他のネクチン-4関連タンパク質に結合することができる抗体が含まれる。例えば、配列番号2のアミノ酸配列を含むネクチン-4タンパク質に結合する抗体は、ネクチン-4変異体及びそのホモログまたは類似体などのネクチン-4関連タンパク質に結合することができる。
【0166】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗ネクチン-4抗体はモノクローナル抗体である。
【0167】
いくつかの実施形態では、抗体は、
図1B及び1Cに示すように、配列番号4のアミノ酸配列を含む重鎖(配列番号3のcDNA配列)、及び/または配列番号6のアミノ酸配列を含む軽鎖(配列番号5のcDNA配列)を含む。
【0168】
いくつかの実施形態では、抗ネクチン-4抗体またはその抗原結合断片は、配列番号22(これは、配列番号7の20番目のアミノ酸(グルタミン酸)から136番目のアミノ酸(セリン)までの範囲のアミノ酸配列である)に示される重鎖可変領域の相補性決定領域(CDR)のアミノ酸配列を含むCDRを含む重鎖可変領域と、配列番号23(これは、配列番号8の23番目のアミノ酸(アスパラギン酸)から130番目のアミノ酸(アルギニン)までの範囲のアミノ酸配列である)に示される軽鎖可変領域のCDRのアミノ酸配列を含むCDRを含む軽鎖可変領域とを含む。特定の実施形態では、抗ネクチン-4抗体またはその抗原結合断片は、配列番号22(これは、配列番号7の20番目のアミノ酸(グルタミン酸)から136番目のアミノ酸(セリン)までの範囲のアミノ酸配列である)に示される重鎖可変領域配列中の対応する相補性決定領域1(CDR-H1)、CDR-H2、及びCDR-H3のアミノ酸配列を含むCDR-H1、CDR-H2、及びCDR-H3を含む重鎖可変領域と、配列番号23(これは、配列番号8の23番目のアミノ酸(アスパラギン酸)から130番目のアミノ酸(アルギニン)までの範囲のアミノ酸配列である)に示される軽鎖可変領域配列中の対応するCDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3のアミノ酸配列を含むCDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3を含む軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、抗ネクチン-4抗体またはその抗原結合断片は、配列番号22(これは、配列番号7の20番目のアミノ酸(グルタミン酸)から136番目のアミノ酸(セリン)までの範囲のアミノ酸配列である)に示される重鎖可変領域の相補性決定領域(CDR)のアミノ酸配列からなるCDRを含む重鎖可変領域と、配列番号23(これは、配列番号8の23番目のアミノ酸(アスパラギン酸)から130番目のアミノ酸(アルギニン)までの範囲のアミノ酸配列である)に示される軽鎖可変領域のCDRのアミノ酸配列からなるCDRを含む軽鎖可変領域とを含む。特定の実施形態では、抗ネクチン-4抗体またはその抗原結合断片は、配列番号22(これは、配列番号7の20番目のアミノ酸(グルタミン酸)から136番目のアミノ酸(セリン)までの範囲のアミノ酸配列である)に示される重鎖可変領域配列中の対応するCDR-H1、CDR-H2、及びCDR-H3のアミノ酸配列からなる相補性決定領域1(CDR-H1)、CDR-H2、及びCDR-H3を含む重鎖可変領域と、配列番号23(これは、配列番号8の23番目のアミノ酸(アスパラギン酸)から130番目のアミノ酸(アルギニン)までの範囲のアミノ酸配列である)に示される軽鎖可変領域配列中の対応するCDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3のアミノ酸配列からなるCDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3を含む軽鎖可変領域とを含む。配列番号22、配列番号23、配列番号7及び配列番号8は、
図1D及び
図1Eに示され、以下に列挙される通りである。
配列番号22
EVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYNMNWVRQAPGKGLEWVSYISSSSSTIYYADSVKGRFTISRDNAKNSLSLQMNSLRDEDTAVYYCARAYYYGMDVWGQGTTVTVSS
配列番号23
DIQMTQSPSSVSASVGDRVTITCRASQGISGWLAWYQQKPGKAPKFLIYAASTLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQANSFPPTFGGGTKVEIKR
配列番号7
MELGLCWVFLVAILEGVQCEVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYNMNWVRQAPGKGLEWVSYISSSSSTIYYADSVKGRFTISRDNAKNSLSLQMNSLRDEDTAVYYCARAYYYGMDVWGQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
配列番号8
MDMRVPAQLLGLLLLWFPGSRCDIQMTQSPSSVSASVGDRVTITCRASQGISGWLAWYQQKPGKAPKFLIYAASTLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQANSFPPTFGGGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
【0169】
CDR配列は、周知のナンバリングシステムに従って決定することができる。上記のように、CDR領域は当業者に周知であり、周知のナンバリングシステムによって定義されている。例えば、Kabat相補性決定領域(CDR)は配列の可変性に基づいており、最も一般的に使用される(例えば、Kabat et al.前出を参照)。代わりに、Chothiaは構造ループの位置を指す(例えば、Chothia and Lesk,1987,J.Mol.Biol.196:901-17を参照)。Kabatのナンバリング規則を使用して番号付けした場合のChothia CDR-H1ループの末端は、ループの長さに応じてH32とH34の間で異なる(これは、KabatナンバリングスキームがH35A及びH35Bに挿入を配置するためであり;35Aも35Bも存在しない場合、ループは32で終了し;35Aのみが存在する場合、ループは33で終了し;35Aと35Bの両方が存在する場合、ループは34で終了する)。AbM超可変領域は、Kabat CDRとChothia構造ループとの間の妥協点を表し、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェアによって使用される(例えば、Antibody Engineering Vol.2(Kontermann and Dubel eds.,2d ed.2010)を参照)。「接触」超可変領域は、利用可能な複雑な結晶構造の分析に基づいている。開発され、広く採用されている別のユニバーサルナンバリングシステムは、ImMunoGeneTics(IMGT)Information System(登録商標)(Lafranc et al.,2003,Dev.Comp.Immunol.27(1):55-77)である。IMGTは、ヒト及び他の脊椎動物の免疫グロブリン(IG)、T細胞受容体(TCR)、及び主要組織適合遺伝子複合体(MHC)に特化した統合情報システムである。本明細書では、CDRは、アミノ酸配列及び軽鎖または重鎖内の位置の両方に関して言及される。免疫グロブリン可変ドメインの構造内のCDRの「位置」は種間で保存され、ループと呼ばれる構造内に存在するので、構造的特徴に従って可変ドメイン配列を整列させるナンバリングシステムを使用することによって、CDR及びフレームワーク残基が容易に同定される。この情報は、1つの種の免疫グロブリンからのCDR残基を、典型的にはヒト抗体からのアクセプタフレームワークに移植及び置換する際に使用することができる。さらなるナンバリングシステム(AHon)が、Honegger and Pluckthun,2001,J.Mol.Biol.309:657-70によって開発されている。例えば、Kabatナンバリング及びIMGT固有のナンバリングシステムを含むナンバリングシステム間の対応は、当業者に周知である(例えば、Kabat前出;Chothia and Lesk,前出;Martin,前出;Lefranc et al.前出を参照)。これらの超可変領域またはCDRのそれぞれからの残基は、上記の表1に示されている。
【0170】
いくつかの実施形態では、抗ネクチン-4抗体またはその抗原結合断片は、Kabat ナンバリングによる配列番号22に示される重鎖可変領域のCDRのアミノ酸配列を含むCDR(CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3)を含む重鎖可変領域と、Kabatナンバリングによる配列番号23に示される軽鎖可変領域のCDRのアミノ酸配列を含むCDRを含む軽鎖可変領域とを含む。
【0171】
いくつかの実施形態では、抗ネクチン-4抗体またはその抗原結合断片は、AbMナンバリングによる配列番号22に示される重鎖可変領域のCDRのアミノ酸配列を含むCDR(CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3)を含む重鎖可変領域と、AbMナンバリングによる配列番号23に示される軽鎖可変領域のCDRのアミノ酸配列を含むCDRを含む軽鎖可変領域とを含む。
【0172】
他の実施形態では、抗ネクチン-4抗体またはその抗原結合断片は、Chothiaナンバリングによる配列番号22に示される重鎖可変領域のCDRのアミノ酸配列を含むCDR(CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3)を含む重鎖可変領域と、Chothiaナンバリングによる配列番号23に示される軽鎖可変領域のCDRのアミノ酸配列を含むCDRを含む軽鎖可変領域とを含む。
【0173】
他の実施形態では、抗ネクチン-4抗体またはその抗原結合断片は、Contactナンバリングによる配列番号22に示される重鎖可変領域のCDRのアミノ酸配列を含むCDR(CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3)を含む重鎖可変領域と、Contactナンバリングによる配列番号23に示される軽鎖可変領域のCDRのアミノ酸配列を含むCDRを含む軽鎖可変領域とを含む。
【0174】
さらに他の実施形態では、抗ネクチン-4抗体またはその抗原結合断片は、IMGTナンバリングによる配列番号22に示される重鎖可変領域のCDRのアミノ酸配列を含むCDR(CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3)を含む重鎖可変領域と、IMGTナンバリングによる配列番号23に示される軽鎖可変領域のCDRのアミノ酸配列を含むCDRを含む軽鎖可変領域とを含む。
【0175】
いくつかの実施形態では、抗ネクチン-4抗体またはその抗原結合断片は、Kabatナンバリングによる配列番号22に示される重鎖可変領域のCDRのアミノ酸配列からなるCDR(CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3)を含む重鎖可変領域と、Kabatナンバリングによる配列番号23に示される軽鎖可変領域のCDRのアミノ酸配列からなるCDRを含む軽鎖可変領域とを含む。
【0176】
いくつかの実施形態では、抗ネクチン-4抗体またはその抗原結合断片は、AbMナンバリングによる配列番号22に示される重鎖可変領域のCDRのアミノ酸配列からなるCDR(CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3)を含む重鎖可変領域と、AbMナンバリングによる配列番号23に示される軽鎖可変領域のCDRのアミノ酸配列からなるCDRを含む軽鎖可変領域とを含む。
【0177】
他の実施形態では、抗ネクチン-4抗体またはその抗原結合断片は、Chothiaナンバリングによる配列番号22に示される重鎖可変領域のCDRのアミノ酸配列からなるCDR(CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3)を含む重鎖可変領域と、Chothiaナンバリングによる配列番号23に示される軽鎖可変領域のCDRのアミノ酸配列からなるCDRを含む軽鎖可変領域とを含む。
【0178】
他の実施形態では、抗ネクチン-4抗体またはその抗原結合断片は、Contactナンバリングによる配列番号22に示される重鎖可変領域のCDRのアミノ酸配列からなるCDR(CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3)を含む重鎖可変領域と、Contactナンバリングによる配列番号23に示される軽鎖可変領域のCDRのアミノ酸配列からなるCDRを含む軽鎖可変領域とを含む。
【0179】
さらに他の実施形態では、抗ネクチン-4抗体またはその抗原結合断片は、IMGTナンバリングによる配列番号22に示される重鎖可変領域のCDRのアミノ酸配列からなるCDR(CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3)を含む重鎖可変領域と、IMGTナンバリングによる配列番号23に示される軽鎖可変領域のCDRのアミノ酸配列からなるCDRを含む軽鎖可変領域とを含む。
【0180】
上記のように、異なるナンバリングシステムによるCDR配列は、例えば抗原受容体ナンバリング及び受容体分類(Antigen receptor Numbering And Receptor ClassificatIon)(ANARCI)によって提供されるものなどのオンラインツールを使用して容易に決定することができる。例えば、ANARCIによって決定されたKabatナンバリングによる配列番号22内の重鎖CDR配列、及び配列番号23内の軽鎖CDR配列を以下の表4に列挙する。
【0181】
【0182】
別の例として、ANARCIによって決定されたIMGTナンバリングによる配列番号22内の重鎖CDR配列、及び配列番号23内の軽鎖CDR配列を以下の表5に列挙する。
【0183】
【0184】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号9のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号10のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号11のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号12のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号13のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号14のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む。
【0185】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号16のアミノ酸配列を含むCDR-H1、配列番号17のアミノ酸配列を含むCDR-H2、配列番号18のアミノ酸配列を含むCDR-H3、配列番号19のアミノ酸配列を含むCDR-L1、配列番号20のアミノ酸配列を含むCDR-L2、及び配列番号21のアミノ酸配列を含むCDR-L3を含む。
【0186】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号9のアミノ酸配列からなるCDR-H1、配列番号10のアミノ酸配列からなるCDR-H2、配列番号11のアミノ酸配列からなるCDR-H3、配列番号12のアミノ酸配列からなるCDR-L1、配列番号13のアミノ酸配列からなるCDR-L2、及び配列番号14のアミノ酸配列からなるCDR-L3を含む。
【0187】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号16のアミノ酸配列からなるCDR-H1、配列番号17のアミノ酸配列からなるCDR-H2、配列番号18のアミノ酸配列からなるCDR-H3、配列番号19のアミノ酸配列からなるCDR-L1、配列番号20のアミノ酸配列からなるCDR-L2、及び配列番号21のアミノ酸配列からなるCDR-L3を含む。
【0188】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号22のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号23のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む。
【0189】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号22のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域と、配列番号23のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域とを含む。
【0190】
いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号7の20番目のアミノ酸(グルタミン酸)から466番目のアミノ酸(リジン)までの範囲のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号8の23番目のアミノ酸(アスパラギン酸)から236番目のアミノ酸(システイン)までの範囲のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む。
【0191】
いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号7の20番目のアミノ酸(グルタミン酸)から466番目のアミノ酸(リジン)までの範囲のアミノ酸配列からなる重鎖と、配列番号8の23番目のアミノ酸(アスパラギン酸)から236番目のアミノ酸(システイン)までの範囲のアミノ酸配列からなる軽鎖とを含む。
【0192】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される抗体のアミノ酸配列修飾(複数可)が企図される。例えば、特異性、熱安定性、発現レベル、エフェクタ機能、グリコシル化、免疫原性の低下、または溶解度を含むがこれらに限定されるわけではない、抗体の結合親和性及び/または他の生物学的特性を最適化することが望ましい場合がある。したがって、本明細書に記載の抗体に加えて、抗体変異体が調製され得ることが企図される。例えば、抗体変異体は、適切なヌクレオチド変化をコードDNAに導入することによって、及び/または所望の抗体もしくはポリペプチドの合成によって調製することができる。アミノ酸変化が抗体の翻訳後プロセスを変化させ得ること、例えばグリコシル化部位の数もしくは位置を変化させ得ること、または膜固定特性を変化させ得ることを当業者は認識している。
【0193】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、例えば、抗体への任意の種類の分子の共有結合によって化学的に修飾される。抗体派生物には、例えば、グリコシル化、アセチル化、ペグ化、リン酸化、アミド化、公知の保護基/ブロッキング基による誘導体化、タンパク質分解切断、細胞リガンドまたは他のタンパク質への結合などによって化学修飾された抗体が含まれ得る。多くの化学修飾のいずれもが、特異的な化学的切断、アセチル化、製剤化、ツニカマイシンの代謝合成などを含むがこれらに限定されるわけではない公知の技術によって実施され得る。さらに、抗体は、1つまたは複数の非古典的アミノ酸を含み得る。
【0194】
変異は、元の抗体またはポリペプチドと比較してアミノ酸配列の変化をもたらす、単一ドメイン抗体またはポリペプチドをコードする1つまたは複数のコドンの置換、欠失または挿入であり得る。アミノ酸置換は、ロイシンのセリンによる置換などの、1つのアミノ酸を類似の構造的及び/または化学的特性を含む別のアミノ酸で置換した結果、例えば保存的アミノ酸置換であり得る。当業者に公知の標準的な技術を使用して、例えば、アミノ酸置換をもたらす部位特異的突然変異誘発及びPCR媒介突然変異誘発を含む、本明細書で提供される分子をコードするヌクレオチド配列に突然変異を導入することができる。挿入または欠失は、約1~5アミノ酸の範囲であってもよい。特定の実施形態では、置換、欠失、または挿入は、元の分子と比較して、25未満のアミノ酸置換、20未満のアミノ酸置換、15未満のアミノ酸置換、10未満のアミノ酸置換、5未満のアミノ酸置換、4未満のアミノ酸置換、3未満のアミノ酸置換、または2未満のアミノ酸置換を含む。具体的な実施形態では、置換は、1つまたは複数の予測される非必須アミノ酸残基で行われる保存的アミノ酸置換である。許容される変異は、配列中のアミノ酸の挿入、欠失または置換を体系的に行い、得られた変異体を親抗体によって示される活性について試験することによって決定され得る。
【0195】
アミノ酸配列挿入には、1つの残基から複数の残基を含むポリペプチドまでの長さに及ぶアミノ末端及び/またはカルボキシル末端融合、ならびに単一または複数のアミノ酸残基の配列内挿入が含まれる。末端挿入の例としては、N末端メチオニル残基を有する抗体が挙げられる。
【0196】
保存的アミノ酸置換によって生成された抗体は、本開示に含まれる。保存的アミノ酸置換では、アミノ酸残基は、同様の電荷を有する側鎖を含むアミノ酸残基で置換される。上記のように、類似の電荷を有する側鎖を含むアミノ酸残基のファミリーが当技術分野で定義されている。これらのファミリーには、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ分岐側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸が含まれる。あるいは、飽和突然変異誘発などによって、突然変異をコード配列の全部または一部に沿ってランダムに導入することができ、得られた突然変異体を生物学的活性についてスクリーニングして、活性を保持する突然変異体を同定することができる。突然変異誘発後、コードされたタンパク質を発現させることができ、タンパク質の活性を決定することができ、特性を維持するかまたは有意に変化させないように保存的(例えば、類似の特性及び/または側鎖を有するアミノ酸のグループ内での)置換を行い得る。
【0197】
アミノ酸は、それらの側鎖の特性の類似性に従ってグループ化し得る(例えば、Lehninger,Biochemistry 73-75(2d ed.1975)を参照):(1)非極性:Ala(A)、Val(V)、Leu(L)、Ile(I)、Pro(P)、Phe(F)、Trp(W)、Met(M);(2)非荷電極性:Gly(G)、Ser(S)、Thr(T)、Cys(C)、Tyr(Y)、Asn(N)、Gln(Q);(3)酸性:Asp(D)、Glu(E);及び(4)塩基性:Lys(K)、Arg(R)、His(H)。あるいは、天然に存在する残基は、共通の側鎖特性に基づいてグループに分けられ得る:(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;(3)酸性:Asp、Glu;(4)塩基性:His、Lys、Arg;(5)鎖の配向に影響を及ぼす残基:Gly、Pro;及び(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0198】
例えば、抗体の適切な立体配座の維持に関与しない任意のシステイン残基を、例えば、アラニンまたはセリンなどの別のアミノ酸で置換して、分子の酸化安定性を改善し、異常な架橋を防止することもできる。
【0199】
変形は、オリゴヌクレオチド媒介(部位特異的)突然変異誘発、アラニンスキャニング及びPCR突然変異誘発などの当技術分野で公知の方法を使用して行うことができる。部位特異的突然変異誘発(例えば、Carter,1986,Biochem J.237:1-7;及びZoller et al.,1982,Nucl.Acids Res.10:6487-500を参照)、カセット突然変異誘発(例えば、Wells et al.,1985,Gene 34:315-23を参照)、または他の公知の技術をクローン化DNAに対して実施して、抗抗MSLN抗体変異体DNAを産生することができる。
【0200】
抗体の共有結合修飾は、本開示の範囲内に含まれる。共有結合修飾には、抗体の標的アミノ酸残基を、抗体の選択された側鎖またはN末端もしくはC末端残基と反応することができる有機誘導体化剤と反応させることが含まれる。他の修飾には、グルタミニル残基及びアスパラギニル残基のそれぞれ対応するグルタミル残基及びアスパルチル残基への脱アミド化、プロリン及びリジンのヒドロキシル化、セリル残基またはトレオニル残基のヒドロキシル基のリン酸化、リジン、アルギニン及びヒスチジン側鎖のα-アミノ基のメチル化(例えば、Creighton,Proteins:Structure and Molecular Properties 79-86(1983)を参照)、N末端アミンのアセチル化、ならびに任意のC末端カルボキシル基のアミド化が含まれる。
【0201】
本開示の範囲内に含まれる抗体の他の種類の共有結合修飾には、抗体またはポリペプチドの天然のグリコシル化パターンを変化させること(例えば、Beck et al.,2008,Curr.Pharm.Biotechnol.9:482-501;及びWalsh,2010,Drug Discov.Today 15:773-80を参照)、及び抗体を様々な非タンパク質性ポリマー、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール、またはポリオキシアルキレンの1つに、例えば、米国特許第4,640,835号;同第4,496,689号;同第4,301,144号;同第4,670,417号;同第4,791,192号;または同第4,179,337号に記載されている方法で連結することが含まれる。
【0202】
特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体または抗原結合断片は、配列番号7に示される重鎖と特定の相同性または同一性を有する重鎖と、配列番号8に示される軽鎖と特定の相同性または同一性を有する軽鎖とを含む。そのような相同性または同一性を有する重鎖/軽鎖の実施形態は、さらに以下に示される通りである。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体または抗原結合断片は、配列番号7に示される重鎖と70%を超える相同性または同一性を有する重鎖を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体または抗原結合断片は、配列番号7に示される重鎖と75%を超える相同性または同一性を有する重鎖を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体または抗原結合断片は、配列番号7に示される重鎖と80%を超える相同性または同一性を有する重鎖を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体または抗原結合断片は、配列番号7に示される重鎖と85%を超える相同性または同一性を有する重鎖を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体または抗原結合断片は、配列番号7に示される重鎖と90%を超える相同性または同一性を有する重鎖を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体または抗原結合断片は、配列番号7に示される重鎖と95%を超える相同性または同一性を有する重鎖を含む。特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体または抗原結合断片は、配列番号7に示される重鎖に対して、いずれかの示された相同性または同一性を有する重鎖を含み、そのCDR(CDR-H1、CDR-H2、及びCDR-H3)は、配列番号7に示される重鎖中のCDRと同一である。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体または抗原結合断片は、配列番号8に示される軽鎖と70%を超える相同性または同一性を有する軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体または抗原結合断片は、配列番号8に示される軽鎖と75%を超える相同性または同一性を有する軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体または抗原結合断片は、配列番号8に示される軽鎖と80%を超える相同性または同一性を有する軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体または抗原結合断片は、配列番号8に示される軽鎖と85%を超える相同性または同一性を有する軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体または抗原結合断片は、配列番号8に示される軽鎖と90%を超える相同性または同一性を有する軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体または抗原結合断片は、配列番号8に示される軽鎖と95%を超える相同性または同一性を有する軽鎖を含む。特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体または抗原結合断片は、配列番号8に示される軽鎖に対して、いずれかの示された相同性または同一性を有する軽鎖を含み、そのCDR(CDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3)は、配列番号8に示される軽鎖中のCDRと同一である。特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体または抗原結合断片は、本段落で提供される任意の相同軽鎖及び任意の相同重鎖を組合せまたは順列を問わずに含む。
【0203】
特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体または抗原結合断片は、配列番号22に示される重鎖可変領域と特定の相同性または同一性を有する重鎖可変領域と、配列番号23に示される軽鎖可変領域と特定の相同性または同一性を有する軽鎖可変領域とを含む。そのような相同性または同一性を有する重鎖可変領域及び軽鎖可変領域の実施形態は、さらに以下に示される通りである。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体または抗原結合断片は、配列番号22に示される重鎖可変領域と70%を超える相同性または同一性を有する重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体または抗原結合断片は、配列番号22に示される重鎖可変領域と75%を超える相同性または同一性を有する重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体または抗原結合断片は、配列番号22に示される重鎖可変領域と80%を超える相同性または同一性を有する重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体または抗原結合断片は、配列番号22に示される重鎖可変領域と85%を超える相同性または同一性を有する重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体または抗原結合断片は、配列番号22に示される重鎖可変領域と90%を超える相同性または同一性を有する重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体または抗原結合断片は、配列番号22に示される重鎖可変領域と95%を超える相同性または同一性を有する重鎖可変領域を含む。特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体または抗原結合断片は、配列番号22に示される重鎖可変領域に対して、いずれかの示された相同性または同一性を有する重鎖可変領域を含み、そのCDR(CDR-H1、CDR-H2、及びCDR-H3)は、配列番号22に示される重鎖可変領域中のCDRと同一である。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体または抗原結合断片は、配列番号23に示される軽鎖可変領域と70%を超える相同性または同一性を有する軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体または抗原結合断片は、配列番号23に示される軽鎖可変領域と75%を超える相同性または同一性を有する軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体または抗原結合断片は、配列番号23に示される軽鎖可変領域と80%を超える相同性または同一性を有する軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体または抗原結合断片は、配列番号23に示される軽鎖可変領域と85%を超える相同性または同一性を有する軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体または抗原結合断片は、配列番号23に示される軽鎖可変領域と90%を超える相同性または同一性を有する軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体または抗原結合断片は、配列番号23に示される軽鎖可変領域と95%を超える相同性または同一性を有する軽鎖可変領域を含む。特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体または抗原結合断片は、配列番号23に示される軽鎖可変領域に対して、いずれかの示された相同性または同一性を有する軽鎖可変領域を含み、そのCDR(CDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3)は、配列番号23に示される軽鎖可変領域中のCDRと同一である。特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体または抗原結合断片は、本段落で提供される任意の相同軽鎖可変領域及び任意の相同重鎖可変領域を組合せまたは順列を問わずに含む。
【0204】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗ネクチン-4抗体は、American Type Culture Collection(ATCC)アクセッション番号PTA-11267の下に寄託されたハイブリドーマによって産生されるHa22-2(2,4)6.1と称される抗体の重鎖及び軽鎖CDR領域、またはHa22-2(2,4)6.1の重鎖及び軽鎖CDR領域のアミノ酸配列と相同であるアミノ酸配列を含む重鎖及び軽鎖CDR領域を含み、当該抗体は、American Type Culture Collection(ATCC)アクセッション番号PTA-11267の下に寄託されたハイブリドーマによって産生されるHa22-2(2,4)6.1と称される抗ネクチン-4抗体の望ましい機能的特性を保持する。
【0205】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗ネクチン-4抗体は、American Type Culture Collection(ATCC)アクセッション番号PTA-11267の下に寄託されたハイブリドーマによって産生されるHa22-2(2,4)6.1と称される抗体の重鎖及び軽鎖CDR領域(CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3)、またはHa22-2(2,4)6.1の重鎖及び軽鎖CDR領域のアミノ酸配列と相同であるアミノ酸配列からなる重鎖及び軽鎖CDR領域を含み、当該抗体は、American Type Culture Collection(ATCC)アクセッション番号PTA-11267の下に寄託されたハイブリドーマによって産生されるHa22-2(2,4)6.1と称される抗ネクチン-4抗体の望ましい機能的特性を保持する。
【0206】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合断片は、ヒト化重鎖可変領域及びヒト化軽鎖可変領域を含み、その場合に、
(a)重鎖可変領域は、American Type Culture Collection(ATCC)アクセッション番号PTA-11267の下に寄託されたハイブリドーマによって産生される抗体に示される重鎖可変領域CDRのアミノ酸配列を含むCDR(CDR-H1、CDR-H2、及びCDR-H3)を含み;
(b)軽鎖可変領域は、American Type Culture Collection(ATCC)アクセッション番号PTA-11267の下に寄託されたハイブリドーマによって産生される抗体に示される軽鎖可変領域CDRのアミノ酸配列を含むCDR(CDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3)を含む。
【0207】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合断片は、ヒト化重鎖可変領域及びヒト化軽鎖可変領域を含み、その場合に、
(a)重鎖可変領域は、American Type Culture Collection(ATCC)アクセッション番号PTA-11267の下に寄託されたハイブリドーマによって産生される抗体に示される重鎖可変領域CDRのアミノ酸配列からなるCDR(CDR-H1、CDR-H2、及びCDR-H3)を含み;
(b)軽鎖可変領域は、American Type Culture Collection(ATCC)アクセッション番号PTA-11267の下に寄託されたハイブリドーマによって産生される抗体に示される軽鎖可変領域CDRのアミノ酸配列からなるCDR(CDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3)を含む。
【0208】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗ネクチン-4抗体は、American Type Culture Collection(ATCC)アクセッション番号PTA-11267の下に寄託されたハイブリドーマによって産生されるHa22-2(2,4)6.1と称される抗体の重鎖及び軽鎖可変領域、またはHa22-2(2,4)6.1の重鎖及び軽鎖可変領域のアミノ酸配列と相同であるアミノ酸配列を含む重鎖及び軽鎖可変領域を含み、当該抗体は、本明細書で提供される抗ネクチン-4抗体の望ましい機能的特性を保持する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗ネクチン-4抗体は、American Type Culture Collection(ATCC)アクセッション番号PTA-11267の下に寄託されたハイブリドーマによって産生されるHa22-2(2,4)6.1と称される抗体の重鎖及び軽鎖可変領域、またはHa22-2(2,4)6.1の重鎖及び軽鎖可変領域のアミノ酸配列と相同であるアミノ酸配列からなる重鎖及び軽鎖可変領域を含み、当該抗体は、本明細書で提供される抗ネクチン-4抗体の望ましい機能的特性を保持する。本開示の抗体の定常領域として、任意のサブクラスの定常領域を選択することができる。一実施形態では、重鎖定常領域としてヒトIgG1定常領域を、軽鎖定常領域としてヒトIgカッパ定常領域を使用することができる。
【0209】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗ネクチン-4抗体は、American Type Culture Collection(ATCC)アクセッション番号PTA-11267の下に寄託されたハイブリドーマによって産生されるHa22-2(2,4)6.1と称される抗体の重鎖及び軽鎖、またはHa22-2(2,4)6.1の重鎖及び軽鎖可変領域のアミノ酸配列と相同であるアミノ酸配列を含む重鎖及び軽鎖可変領域を含み、当該抗体は、本明細書で提供される抗ネクチン-4抗体の望ましい機能的特性を保持する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗ネクチン-4抗体は、American Type Culture Collection(ATCC)アクセッション番号PTA-11267の下に寄託されたハイブリドーマによって産生されるHa22-2(2,4)6.1と称される抗体の重鎖及び軽鎖、またはHa22-2(2,4)6.1の重鎖及び軽鎖可変領域のアミノ酸配列と相同であるアミノ酸配列からなる重鎖及び軽鎖可変領域を含み、当該抗体は、本明細書で提供される抗ネクチン-4抗体の望ましい機能的特性を保持する。
【0210】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合断片は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、その場合に、
(a)重鎖可変領域は、American Type Culture Collection(ATCC)アクセッション番号PTA-11267の下に寄託されたハイブリドーマによって産生される抗体の重鎖可変領域アミノ酸配列と少なくとも80%相同または同一であるアミノ酸配列を含み;及び
(b)軽鎖可変領域は、American Type Culture Collection(ATCC)アクセッション番号PTA-11267の下に寄託されたハイブリドーマによって産生される抗体の軽鎖可変領域アミノ酸配列と少なくとも80%相同または同一であるアミノ酸配列を含む。
【0211】
特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体または抗原結合断片は、American Type Culture Collection(ATCC)アクセッション番号PTA-11267の下に寄託されたハイブリドーマによって産生される抗体の重鎖可変領域アミノ酸配列と一定の相同性または同一性を有する重鎖可変領域と、American Type Culture Collection(ATCC)アクセッション番号PTA-11267の下に寄託されたハイブリドーマによって産生される抗体の軽鎖可変領域アミノ酸配列と一定の相同性または同一性を有する軽鎖可変領域とを含む。そのような相同性または同一性を有する重鎖可変領域及び軽鎖可変領域の実施形態は、さらに以下に示される通りである。いくつかの実施形態では、重鎖可変領域は、American Type Culture Collection(ATCC)アクセッション番号PTA-11267の下に寄託されたハイブリドーマによって産生される抗体の重鎖可変領域アミノ酸配列と少なくとも85%相同または同一であるアミノ酸配列を含む。他の実施形態では、重鎖可変領域は、American Type Culture Collection(ATCC)アクセッション番号PTA-11267の下に寄託されたハイブリドーマによって産生される抗体の重鎖可変領域アミノ酸配列と少なくとも90%相同または同一であるアミノ酸配列を含む。さらに他の実施形態では、重鎖可変領域は、American Type Culture Collection(ATCC)アクセッション番号PTA-11267の下に寄託されたハイブリドーマによって産生される抗体の重鎖可変領域アミノ酸配列と少なくとも95%相同または同一であるアミノ酸配列を含む。他の実施形態では、重鎖可変領域は、American Type Culture Collection(ATCC)アクセッション番号PTA-11267の下に寄託されたハイブリドーマによって産生される抗体の重鎖可変領域アミノ酸配列と85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%相同または同一であり得る。いくつかの実施形態では、軽鎖可変領域は、American Type Culture Collection(ATCC)アクセッション番号PTA-11267の下に寄託されたハイブリドーマによって産生される抗体の軽鎖可変領域アミノ酸配列と少なくとも85%相同または同一であるアミノ酸配列を含む。他の実施形態では、軽鎖可変領域は、American Type Culture Collection(ATCC)アクセッション番号PTA-11267の下に寄託されたハイブリドーマによって産生される抗体の軽鎖可変領域アミノ酸配列と少なくとも90%相同または同一であるアミノ酸配列を含む。さらに他の実施形態では、軽鎖可変領域は、American Type Culture Collection(ATCC)アクセッション番号PTA-11267の下に寄託されたハイブリドーマによって産生される抗体の軽鎖可変領域アミノ酸配列と少なくとも95%相同または同一であるアミノ酸配列を含む。他の実施形態では、軽鎖可変領域は、American Type Culture Collection(ATCC)アクセッション番号PTA-11267の下に寄託されたハイブリドーマによって産生される抗体の軽鎖可変領域アミノ酸配列と85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%相同または同一であり得る。特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体または抗原結合断片は、本段落で提供される任意の相同軽鎖可変領域及び任意の相同重鎖可変領域を組合せまたは順列を問わずに含む。
【0212】
他の実施形態では、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合断片は、重鎖及び軽鎖を含み、その場合に、
(a)重鎖は、American Type Culture Collection(ATCC)アクセッション番号PTA-11267の下に寄託されたハイブリドーマによって産生される抗体の重鎖アミノ酸配列と少なくとも80%相同または同一であるアミノ酸配列を含み;及び
(b)軽鎖は、American Type Culture Collection(ATCC)アクセッション番号PTA-11267の下に寄託されたハイブリドーマによって産生される抗体の軽鎖アミノ酸配列と少なくとも80%相同または同一であるアミノ酸配列を含む。
【0213】
特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体または抗原結合断片は、American Type Culture Collection(ATCC)アクセッション番号PTA-11267の下に寄託されたハイブリドーマによって産生される抗体の重鎖アミノ酸配列と一定の相同性または同一性を有する重鎖と、American Type Culture Collection(ATCC)アクセッション番号PTA-11267の下に寄託されたハイブリドーマによって産生される抗体の軽鎖アミノ酸配列と一定の相同性または同一性を有する軽鎖とを含む。そのような相同性または同一性を有する重鎖及び軽鎖の実施形態は、さらに以下に示される通りである。いくつかの実施形態では、重鎖は、American Type Culture Collection(ATCC)アクセッション番号PTA-11267の下に寄託されたハイブリドーマによって産生される抗体の重鎖アミノ酸配列と少なくとも85%相同または同一であるアミノ酸配列を含む。他の実施形態では、重鎖は、American Type Culture Collection(ATCC)アクセッション番号PTA-11267の下に寄託されたハイブリドーマによって産生される抗体の重鎖アミノ酸配列と少なくとも90%相同または同一であるアミノ酸配列を含む。さらに他の実施形態では、重鎖は、American Type Culture Collection(ATCC)アクセッション番号PTA-11267の下に寄託されたハイブリドーマによって産生される抗体の重鎖アミノ酸配列と少なくとも95%相同または同一であるアミノ酸配列を含む。他の実施形態では、重鎖は、American Type Culture Collection(ATCC)アクセッション番号PTA-11267の下に寄託されたハイブリドーマによって産生される抗体の重鎖アミノ酸配列と85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%相同または同一であり得る。いくつかの実施形態では、軽鎖は、American Type Culture Collection(ATCC)アクセッション番号PTA-11267の下に寄託されたハイブリドーマによって産生される抗体の軽鎖アミノ酸配列と少なくとも85%相同または同一であるアミノ酸配列を含む。他の実施形態では、軽鎖は、American Type Culture Collection(ATCC)アクセッション番号PTA-11267の下に寄託されたハイブリドーマによって産生される抗体の軽鎖アミノ酸配列と少なくとも90%相同または同一であるアミノ酸配列を含む。さらに他の実施形態では、軽鎖は、American Type Culture Collection(ATCC)アクセッション番号PTA-11267の下に寄託されたハイブリドーマによって産生される抗体の軽鎖アミノ酸配列と少なくとも95%相同または同一であるアミノ酸配列を含む。他の実施形態では、軽鎖は、American Type Culture Collection(ATCC)アクセッション番号PTA-11267の下に寄託されたハイブリドーマによって産生される抗体の軽鎖アミノ酸配列と85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%相同または同一であり得る。特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体または抗原結合断片は、本段落で提供される任意の相同軽鎖及び任意の相同重鎖を組合せまたは順列を問わずに含む。
【0214】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合断片は、191P4D12の特異的エピトープに結合する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合断片は、191P4D12のVC1ドメインに結合する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合断片は、191P4D12のVC1ドメインには結合するが、C1C2ドメインには結合しない。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合断片は、191P4D12の1番目から147番目のアミノ酸残基に結合する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合断片は、191P4D12の1番目から147番目のアミノ酸残基に位置するエピトープに結合する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合断片は、191P4D12の1番目から10番目のアミノ酸残基に結合する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合断片は、191P4D12の11番目から20番目のアミノ酸残基に結合する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合断片は、191P4D12の21番目から30番目のアミノ酸残基に結合する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合断片は、191P4D12の31番目から40番目のアミノ酸残基に結合する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合断片は、191P4D12の41番目から50番目のアミノ酸残基に結合する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合断片は、191P4D12の51番目から60番目のアミノ酸残基に結合する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合断片は、191P4D12の61番目から70番目のアミノ酸残基に結合する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合断片は、191P4D12の71番目から80番目のアミノ酸残基に結合する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合断片は、191P4D12の81番目から90番目のアミノ酸残基に結合する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合断片は、191P4D12の91番目から100番目のアミノ酸残基に結合する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合断片は、191P4D12の101番目から110番目のアミノ酸残基に結合する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合断片は、191P4D12の111番目から120番目のアミノ酸残基に結合する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合断片は、191P4D12の121番目から130番目のアミノ酸残基に結合する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合断片は、191P4D12の131番目から140番目のアミノ酸残基に結合する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合断片は、191P4D12の141番目から147番目のアミノ酸残基に結合する。本明細書で提供される抗体またはその抗原結合断片の特定の実施形態の結合エピトープは、その全体が参照により本明細書に組み入れられるWO2012/047724において決定され、記載されている。
【0215】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合断片は、ヒトで観察される191P4D12変異体間で共通する191P4D12のエピトープに結合する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合断片は、ヒトで観察される191P4D12多型間で共通する191P4D12のエピトープに結合する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合断片は、ヒトがんで観察される191P4D12多型間で共通する191P4D12のエピトープに結合する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合断片は、191P4D12または191P4D12変異体の生物学的機能を結合、内在化、破壊、または調節するであろう191P4D12のエピトープに結合する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合断片は、191P4D12とリガンド、基質、及び結合パートナーとの間の相互作用を破壊するであろう191P4D12のエピトープに結合する。
【0216】
本明細書で提供される操作された抗体には、VH及び/またはVL内のフレームワーク残基に修飾が行われたものが含まれる(例えば、抗体の特性を改善するために)。典型的には、そのようなフレームワーク修飾は、抗体の免疫原性を低下させるために行われる。例えば、1つのアプローチは、1つまたは複数のフレームワーク残基を対応する生殖系列配列に「復帰突然変異」させることである。より具体的には、体細胞突然変異を受けた抗体は、抗体が由来する生殖系列配列とは異なるフレームワーク残基を含み得る。そのような残基は、抗体フレームワーク配列を、抗体が由来する生殖系列配列と比較することによって同定することができる。フレームワーク領域配列をそれらの生殖系列配置に戻すために、体細胞突然変異を、例えば部位特異的突然変異誘発またはPCR媒介突然変異誘発によって生殖系列配列に「復帰突然変異」させることができる(例えば、ロイシンからメチオニンに「復帰突然変異」させる)。そのような「復帰突然変異」された抗体も本開示に包含されることが意図されている。
【0217】
別の種類のフレームワーク修飾は、T細胞エピトープを除去し、それによって抗体の潜在的な免疫原性を低下させるために、フレームワーク領域内、またはさらには1つもしくは複数のCDR領域内の1つまたは複数の残基を変異させる工程を含む。このアプローチは、「脱免疫化」とも称され、Carr et al.による米国特許出願公開第2003/0153043号にさらに詳細に記載されている。
【0218】
フレームワーク領域またはCDR領域内で行われる修飾に加えて、またはその代わりに、本開示の抗体は、典型的には血清半減期、補体結合、Fc受容体結合、及び/または抗原依存性細胞傷害などの抗体の1つまたは複数の機能的特性を改変するために、Fc領域内に修飾を含むように操作され得る。さらに、本明細書で提供される抗191P4D12抗体は、やはり抗体の1つまたは複数の機能的特性を改変するために、化学的に修飾され得る(例えば、1つもしくは複数の化学部分を抗体に結合させることができる)か、またはそのグリコシル化を改変するように修飾され得る。これらの実施形態のそれぞれを以下でさらに詳細に説明する。
【0219】
一実施形態では、CH1のヒンジ領域は、ヒンジ領域内のシステイン残基の数が変化する、例えば増加または減少するように修飾される。このアプローチは、Bodmer et al.による米国特許第5,677,425号にさらに記載されている。CH1のヒンジ領域内のシステイン残基の数は、例えば、軽鎖及び重鎖の組み立てを容易にするために、または抗191P4D12抗体の安定性を増加もしくは減少させるために変更される。
【0220】
別の実施形態では、抗体のFcヒンジ領域は、抗191P4D12抗体の生物学的半減期を減少させるように変異される。より具体的には、抗体が天然のFc-ヒンジドメインSpA結合と比較して低下したブドウ球菌(Staphylococcyl)プロテインA(SpA)結合を有するように、Fc-ヒンジ断片のCH2-CH3ドメイン界面領域に1つまたは複数のアミノ酸変異が導入される。このアプローチは、Ward et al.による米国特許第6,165,745号にさらに詳細に記載されている。
【0221】
別の実施形態では、抗191P4D12抗体は、その生物学的半減期を増加させるように修飾される。様々なアプローチが可能である。例えば、Wardの米国特許第6,277,375号に記載されているように変異を導入することができる。あるいは、生物学的半減期を増加させるために、Presta et al.による米国特許第5,869,046号及び同第6,121,022号に記載されているように、IgGのFc領域のCH2ドメインの2つのループから得られるサルベージ受容体結合エピトープを含むように、抗体をCH1またはCL領域内で変化させることができる。
【0222】
さらに他の実施形態では、Fc領域は、抗体のエフェクタ機能(複数可)を改変するために、少なくとも1つのアミノ酸残基を異なるアミノ酸残基で置き換えることによって改変される。例えば、アミノ酸特異的残基から選択される1つまたは複数のアミノ酸を、抗体がエフェクタリガンドに対して変化した親和性を有するが、親抗体の抗原結合能を保持するように、異なるアミノ酸残基で置き換えることができる。親和性が変化するエフェクタリガンドは、例えば、Fc受容体または補体のC1成分であり得る。このアプローチは、どちらもWinter et al.による米国特許第5,624,821号及び同第5,648,260号にさらに詳細に記載されている。
【0223】
抗191P4D12抗体と191P4D12関連タンパク質との反応性は、必要に応じて191P4D12関連タンパク質、191P4D12発現細胞またはその抽出物を使用して、ウェスタンブロット、免疫沈降、ELISA、及びFACS分析を含む多くの周知の手段によって確立することができる。191P4D12抗体またはその断片は、検出可能なマーカーで標識され得るか、または第2の分子に複合化され得る。適切な検出可能なマーカーには、放射性同位体、蛍光化合物、生物発光化合物、化学発光化合物、金属キレート剤または酵素が含まれるが、これらに限定されるわけではない。さらに、2つまたはそれ以上の191P4D12エピトープに特異的な二重特異性抗体は、当技術分野で一般的に公知の方法を使用して生成される。ホモ二量体抗体はまた、当技術分野で公知の架橋技術によって生成することができる(例えば、Wolff et al.,Cancer Res.53:2560-2565)。
【0224】
さらに別の具体的な実施形態では、本明細書で提供される抗191P4D12抗体は、Ha22-2(2,4)6.1と称される抗体の重鎖及び軽鎖を含む抗体である。Ha22-2(2,4)6.1の重鎖は、配列番号7の20番目のE残基から466番目のK残基までの範囲のアミノ酸配列からなり、Ha22-2(2,4)6.1の軽鎖は、配列番号8の配列の23番目のD残基から236番目のC残基までの範囲のアミノ酸配列からなる。
【0225】
Ha22-2(2,4)6.1と称される抗体を産生するハイブリドーマは、2010年8月18日にAmerican Type Culture Collection(ATCC),P.O.Box 1549,Manassas,VA 20108に(Federal Expressを介して)送付され、アクセッション番号PTA-11267が割り当てられた。
【0226】
抗ネクチン-4抗体の追加の実施形態は、米国特許第8,637,642号及び国際出願第PCT/US2019/056214(公開番号WO2020/117373)に記載されていて、その両方ともそれら全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0227】
5.3.2 細胞傷害性剤(薬物単位)
本明細書で提供される方法に使用されるADCが、細胞傷害剤に複合化された抗体またはその抗原結合断片を含む場合、本開示は、方法に使用するためのADCの一部として細胞傷害剤の種々の実施形態をさらに提供する。第5.2節で提供される方法を含む、本明細書で提供される方法の種々の実施形態では、本方法のために本明細書で提供されるADCのいずれかの一部としての細胞傷害剤は、チューブリン破壊剤を含むか、チューブリン破壊剤からなるか、またはチューブリン破壊剤である。一実施形態では、細胞傷害剤はチューブリン破壊剤である。いくつかの実施形態では、チューブリン破壊剤は、ドラスタチン、アウリスタチン、ヘミアスタリン、ビンカアルカロイド、マイタンシノイド、エリブリン、コルヒチン、プロカブリン、フォモプシン、エポチロン、クリプトフィシン、及びタキサンからなる群より選択される。具体的な一実施形態では、チューブリン破壊剤はアウリスタチンである。さらなる具体的な実施形態では、アウリスタチンは、モノメチルアウリスタチンE(MMAE)、モノメチルアウリスタチンF(MMAF)、AFP、またはアウリスタチンTである。さらに別の具体的な実施形態では、アウリスタチンは、モノメチルアウリスタチンE(MMAE)である。
【0228】
第5.2節で提供される方法を含む、本明細書で提供される方法の種々の実施形態では、本方法のために本明細書で提供されるADCいずれかの一部としての細胞傷害剤は、米国特許第8,637,642号及び国際出願第PCT/US2019/056214(公開番号WO2020/117373)(その両方ともそれら全体が参照によって本明細書に組み込まれる)に記載される細胞傷害剤から選択される任意の剤を含むか、それからなるか、またはそれである。
【0229】
いくつかの実施形態では、アウリスタチンはMMAEである(式中、波線は、抗体薬物複合体のリンカーとの共有結合を示す)。
【0230】
いくつかの実施形態では、MMAE及びリンカー成分(本明細書でさらに記載)を含む例示的な実施形態は、以下の構造を有する(式中、Lは抗体(例えば、抗ネクチン-4抗体またはその抗原結合断片)を表し、pは1~12の範囲である)。
【0231】
前段落に記載された式のいくつかの実施形態では、pは、1~20、1~19、1~18、1~17、1~16、1~15、1~14、1~13、1~12、1~11、1~10、1~9、1~8、1~7、1~6、1~5、1~4、1~3、または1~2の範囲である。前段落に記載された式のいくつかの実施形態では、pは、2~20、2~19、2~18、2~17、2~16、2~15、2~14、2~13、2~12、2~11、2~10、2~9、2~8、2~7、2~6、2~5、2~4、または2~3の範囲である。前段落に記載された式のいくつかの実施形態では、pは、3~20、3~19、3~18、3~17、3~16、3~15、3~14、3~13、3~12、3~11、3~10、3~9、3~8、3~7、3~6、3~5、または3~4の範囲である。前段落に記載された式のいくつかの実施形態では、pは約1である。前段落に記載された式のいくつかの実施形態では、pは約2である。前段落に記載された式のいくつかの実施形態では、pは約3である。前段落に記載された式のいくつかの実施形態では、pは約4である。前段落に記載された式のいくつかの実施形態では、pは約3.8である。前段落に記載された式のいくつかの実施形態では、pは約5である。前段落に記載された式のいくつかの実施形態では、pは約6である。前段落に記載された式のいくつかの実施形態では、pは約7である。前段落に記載された式のいくつかの実施形態では、pは約8である。前段落に記載された式のいくつかの実施形態では、pは約9である。前段落に記載された式のいくつかの実施形態では、pは約10である。前段落に記載された式のいくつかの実施形態では、pは約11である。前段落に記載された式のいくつかの実施形態では、pは約12である。前段落に記載された式のいくつかの実施形態では、pは約13である。前段落に記載された式のいくつかの実施形態では、pは約14である。前段落に記載された式のいくつかの実施形態では、pは約15である。前段落に記載された式のいくつかの実施形態では、pは約16である。前段落に記載された式のいくつかの実施形態では、pは約17である。前段落に記載された式のいくつかの実施形態では、pは約18である。前段落に記載された式のいくつかの実施形態では、pは約19である。前段落に記載された式のいくつかの実施形態では、pは約20である。
【0232】
典型的には、ペプチドベースの薬物単位は、2つまたはそれ以上のアミノ酸及び/またはペプチド断片の間にペプチド結合を形成することによって調製することができる。そのようなペプチド結合は、例えば、ペプチド化学の分野で周知の液相合成法(E.Schroder and K.Lubke,“The Peptides”,volume 1,pp 76-136,1965,Academic Pressを参照)に従って調製することができる。アウリスタチン/ドラスタチン薬物単位は、US 5635483;US 5780588;Pettit et al(1989)J.Am.Chem.Soc.111:5463-5465;Pettit et al(1998)Anti-Cancer Drug Design 13:243-277;Pettit,G.R.,et al.Synthesis,1996,719-725;Pettit et al(1996)J.Chem.Soc.Perkin Trans.1 5:859-863;及びDoronina(2003)Nat Biotechnol 21(7):778-784の方法に従って調製することができる。
【0233】
細胞傷害剤の追加の実施形態は、米国特許第8,637,642号及び国際出願第PCT/US2019/056214(公開番号WO2020/117373)に記載されていて、その両方ともそれら全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0234】
5.3.3 リンカー
典型的には、抗体薬物複合体は、薬物単位(例えば、MMAE)と抗体単位(例えば、抗191P4D12抗体またはその抗原結合断片)との間にリンカー単位を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、リンカーの切断が細胞内環境で抗体から薬物単位を放出するように、細胞内条件下で切断可能である。さらに他の実施形態では、リンカー単位は切断可能ではなく、薬物は、例えば抗体分解によって放出される。いくつかの実施形態では、リンカーは、細胞内環境(例えば、リソソームまたはエンドソームまたはカベオラ内)に存在する切断剤によって切断可能である。リンカーは、例えば、リソソームまたはエンドソームプロテアーゼを含むがこれらに限定されるわけではない細胞内ペプチダーゼまたはプロテアーゼ酵素によって切断されるペプチジルリンカーであり得る。いくつかの実施形態では、ペプチジルリンカーは、少なくとも2アミノ酸長または少なくとも3アミノ酸長である。他の実施形態では、切断可能なリンカーはpH感受性であり、すなわち、特定のpH値で加水分解に感受性である。典型的には、pH感受性リンカーは酸性条件下で加水分解可能である。例えば、リソソーム中で加水分解可能な酸不安定性リンカー(例えば、ヒドラゾン、セミカルバゾン、チオセミカルバゾン、シスアコニットアミド、オルトエステル、アセタール、ケタールなど)を使用することができる。さらに他の実施形態では、リンカーは還元条件下で切断可能である(例えば、ジスルフィドリンカー)。例えば、SATA(N-スクシンイミジル-S-アセチルチオアセテート)、SPDP(N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート)、SPDB(N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)ブチレート)及びSMPT(N-スクシンイミジル-オキシカルボニル-アルファ-メチル-アルファ-(2-ピリジル-ジチオ)トルエン)、SPDB及びSMPTを使用して形成することができるものを含む、様々なジスルフィドリンカーが当技術分野で公知である。
【0235】
「リンカー単位」(LU)は、薬物単位と抗体単位とを連結して抗体薬物複合体を形成するために使用することができる二官能性化合物である。いくつかの実施形態では、リンカー単位は、式:
-Aa-Ww-Yy-
を有し、
式中、-A-は伸長単位であり、
aは0または1であり、
各-W-は独立してアミノ酸単位であり、
wは0~12の範囲の整数であり、
-Y-は自己犠牲スペーサー単位であり、
yは0、1または2である。
【0236】
いくつかの実施形態では、aは0または1であり、wは0または1であり、yは0、1または2である。いくつかの実施形態では、aは0または1であり、wは0または1であり、yは0または1である。いくつかの実施形態では、wが1~12である場合、yは1または2である。いくつかの実施形態では、wは2~12であり、yは1または2である。いくつかの実施形態では、aは1であり、w及びyは0である。リンカーならびに伸長単位、アミノ酸単位、及びスペーサー単位の各々は、米国特許第8,637,642号及び国際出願第PCT/US2019/056214(公開番号WO2020/117373)に記載されていて、その両方ともそれら全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0237】
抗体-薬物複合体の実施形態は、以下を含み得る:
(式中、w及びyはそれぞれ0、1または2である)、
(式中、w及びyはそれぞれ0である)、
。
【0238】
5.3.4 薬物負荷
薬物負荷はpによって表され、分子中の抗体あたりの薬物単位の平均数である。薬物負荷は、抗体あたり1~20薬物単位(D)の範囲であり得る。本明細書で提供されるADCは、例えば1~20の範囲の薬物単位と複合化した抗体または抗原結合断片の集合を含む。複合化反応からのADCの調製物中の抗体あたりの薬物単位の平均数は、質量分析及びELISAアッセイなどの従来の手段によって特徴付けることができる。pに関するADCの定量的分布も決定し得る。場合によっては、他の薬物負荷を有するADCからの、pが特定の値である均一なADCの分離、精製及び特徴付けは、電気泳動などの手段によって達成し得る。
【0239】
特定の実施形態では、本明細書で提供されるADCの薬物負荷は、1~20の範囲である。特定の実施形態では、本明細書で提供されるADCの薬物負荷は、1~18の範囲である。特定の実施形態では、本明細書で提供されるADCの薬物負荷は、1~15の範囲である。特定の実施形態では、本明細書で提供されるADCの薬物負荷は、1~12の範囲である。特定の実施形態では、本明細書で提供されるADCの薬物負荷は、1~10の範囲である。特定の実施形態では、本明細書で提供されるADCの薬物負荷は、1~9の範囲である。特定の実施形態では、本明細書で提供されるADCの薬物負荷は、1~8の範囲である。特定の実施形態では、本明細書で提供されるADCの薬物負荷は、1~7の範囲である。特定の実施形態では、本明細書で提供されるADCの薬物負荷は、1~6の範囲である。特定の実施形態では、本明細書で提供されるADCの薬物負荷は、1~5の範囲である。特定の実施形態では、本明細書で提供されるADCの薬物負荷は、1~4の範囲である。特定の実施形態では、本明細書で提供されるADCの薬物負荷は、1~3の範囲である。特定の実施形態では、本明細書で提供されるADCの薬物負荷は、2~12の範囲である。特定の実施形態では、本明細書で提供されるADCの薬物負荷は、2~10の範囲である。特定の実施形態では、本明細書で提供されるADCの薬物負荷は、2~9の範囲である。特定の実施形態では、本明細書で提供されるADCの薬物負荷は、2~8の範囲である。特定の実施形態では、本明細書で提供されるADCの薬物負荷は、2~7の範囲である。特定の実施形態では、本明細書で提供されるADCの薬物負荷は、2~6の範囲である。特定の実施形態では、本明細書で提供されるADCの薬物負荷は、2~5の範囲である。特定の実施形態では、本明細書で提供されるADCの薬物負荷は、2~4の範囲である。特定の実施形態では、本明細書で提供されるADCの薬物負荷は、3~12の範囲である。特定の実施形態では、本明細書で提供されるADCの薬物負荷は、3~10の範囲である。特定の実施形態では、本明細書で提供されるADCの薬物負荷は、3~9の範囲である。特定の実施形態では、本明細書で提供されるADCの薬物負荷は、3~8の範囲である。特定の実施形態では、本明細書で提供されるADCの薬物負荷は、3~7の範囲である。特定の実施形態では、本明細書で提供されるADCの薬物負荷は、3~6の範囲である。特定の実施形態では、本明細書で提供されるADCの薬物負荷は、3~5の範囲である。特定の実施形態では、本明細書で提供されるADCの薬物負荷は、3~4の範囲である。
【0240】
特定の実施形態では、本明細書で提供されるADCの薬物負荷は、1~約8、約2~約6、約3~約5、約3~約4、約3.1~約3.9、約3.2~約3.8、約3.2~約3.7、約3.2~約3.6、約3.3~約3.8、または約3.3~約3.7の範囲である。
【0241】
特定の実施形態では、本明細書で提供されるADCの薬物負荷は、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、またはそれ以上である。特定の実施形態では、本明細書で提供されるADCの薬物負荷は、約3.1、約3.2、約3.3、約3.4、約3.5、約3.6、約3.7、約3.8、または約3.9である。
【0242】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるADCの薬物負荷は、2~20、2~19、2~18、2~17、2~16、2~15、2~14、または2~13の範囲である。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるADCの薬物負荷は、3~20、3~19、3~18、3~17、3~16、3~15、3~14、または3~13の範囲である。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるADCの薬物負荷は、約1である。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるADCの薬物負荷は、約2である。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるADCの薬物負荷は、約3である。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるADCの薬物負荷は、約4である。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるADCの薬物負荷は、約3.8である。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるADCの薬物負荷は、約5である。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるADCの薬物負荷は、約6である。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるADCの薬物負荷は、約7である。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるADCの薬物負荷は、約8である。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるADCの薬物負荷は、約9である。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるADCの薬物負荷は、約10である。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるADCの薬物負荷は、約11である。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるADCの薬物負荷は、約12である。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるADCの薬物負荷は、約13である。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるADCの薬物負荷は、約14である。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるADCの薬物負荷は、約15である。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるADCの薬物負荷は、約16である。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるADCの薬物負荷は、約17である。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるADCの薬物負荷は、約18である。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるADCの薬物負荷は、約19である。いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるADCの薬物負荷は、約20である。
【0243】
特定の実施形態では、複合化反応中に、理論上の最大値よりも少ない薬物単位が抗体に複合化される。抗体は、例えば、薬物-リンカー中間体ともリンカー試薬とも反応しないリジン残基を含み得る。一般に、抗体は、薬物単位に連結され得る多くの遊離及び反応性システインチオール基を含まない;実際に、抗体中のほとんどのシステインチオール残基はジスルフィド架橋として存在する。特定の実施形態では、抗体は、部分的または完全な還元条件下で、ジチオスレイトール(DTT)またはトリカルボニルエチルホスフィン(TCEP)などの還元剤で還元されて、反応性システインチオール基を生成し得る。特定の実施形態では、抗体を変性条件に供して、リジンまたはシステインなどの反応性求核基を露出させる。いくつかの実施形態では、リンカー単位または薬物単位は、抗体単位上のリジン残基を介して複合化される。いくつかの実施形態では、リンカー単位または薬物単位は、抗体単位上のシステイン残基を介して複合化される。
【0244】
いくつかの実施形態では、リンカー単位または薬物単位に結合するアミノ酸は、抗体またはその抗原結合断片の重鎖にある。いくつかの実施形態では、リンカー単位または薬物単位に結合するアミノ酸は、抗体またはその抗原結合断片の軽鎖にある。いくつかの実施形態では、リンカー単位または薬物単位に結合するアミノ酸は、抗体またはその抗原結合断片のヒンジ領域にある。いくつかの実施形態では、リンカー単位または薬物単位に結合するアミノ酸は、抗体またはその抗原結合断片のFc領域にある。他の実施形態では、リンカー単位または薬物単位に結合するアミノ酸は、抗体またはその抗原結合断片の定常領域(例えば、重鎖のCH1、CH2もしくはCH3、または軽鎖のCH1)にある。さらに他の実施形態では、リンカー単位または薬物単位に結合するアミノ酸は、抗体またはその抗原結合断片のVHフレームワーク領域にある。さらに他の実施形態では、リンカー単位または薬物単位に結合するアミノ酸は、抗体またはその抗原結合断片のVLフレームワーク領域にある。
【0245】
ADCの負荷(薬物/抗体比)は、様々な方法で、例えば、(i)抗体に対する薬物-リンカー中間体またはリンカー試薬のモル過剰を制限すること、(ii)複合化の反応時間または温度を制限すること、(iii)システインチオール修飾のための部分的または制限的な還元条件、(iv)システイン残基の数及び位置がリンカー-薬物結合の数及び/または位置の制御のために改変されるように、抗体のアミノ酸配列を組換え技術によって操作すること(本明細書及び国際公開公報第2006/034488号(その全体が参照により本明細書に組み入れられる)に開示されるように調製されたチオMabまたはチオFabなど)によって、制御され得る。
【0246】
複数の求核基が薬物-リンカー中間体またはリンカー試薬と反応し、続いて薬物単位試薬と反応する場合、得られる生成物は、抗体単位に結合した1つまたは複数の薬物単位が分布しているADC化合物の混合物であることが理解されるべきである。抗体あたりの薬物の平均数は、抗体に特異的でかつ薬物に特異的な二重ELISA抗体アッセイによって混合物から計算され得る。個々のADC分子は、質量分析によって混合物中で同定され、HPLC、例えば疎水性相互作用クロマトグラフィによって分離され得る(例えば、Hamblett,K.J.,et al.”Effect of drug loading on the pharmacology,pharmacokinetics,and toxicity of an anti-CD30 antibody-drug conjugate,”Abstract No.624,American Association for Cancer Research,2004 Annual Meeting,March 27-31,2004,Proceedings of the AACR,Volume 45,March 2004;Alley,S.C.,et al.”Controlling the location of drug attachment in antibody-drug conjugates,”Abstract No.627,American Association for Cancer Research,2004 Annual Meeting,March 27-31,2004,Proceedings of the AACR,Volume 45,March 2004)。特定の実施形態では、単一の負荷値を有する均一なADCは、電気泳動またはクロマトグラフィによって複合混合物から単離され得る。
【0247】
抗体薬物複合体を調製、スクリーニング及び特徴付けるための方法は、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる米国特許第8,637,642号に記載されているように、当業者に公知である。
【0248】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法のための抗体薬物複合体は、米国特許第8,637,642号に記載される方法に従って調製され、以下の式を有するAGS-22M6Eである:
式中、LはHa22-2(2,4)6.1であり、pは1~20である。
【0249】
いくつかの実施形態では、pは、1~20、1~10、1~9、1~8、1~7、1~6、1~5、1~4、1~3、または1~2の範囲である。いくつかの実施形態では、pは、2~10、2~9、2~8、2~7、2~6、2~5、2~4、または2~3の範囲である。他の実施形態では、pは約1である。他の実施形態では、pは約2である。他の実施形態では、pは約3である。他の実施形態では、pは約4である。他の実施形態では、pは約5である。他の実施形態では、pは約6である。他の実施形態では、pは約7である。他の実施形態では、pは約8である。他の実施形態では、pは約9である。他の実施形態では、pは約10である。いくつかの実施形態では、pは約3.1である。いくつかの実施形態では、pは約3.2である。いくつかの実施形態では、pは約3.3である。いくつかの実施形態では、pは約3.4である。いくつかの実施形態では、pは約3.5である。他の実施形態では、pは約3.6である。いくつかの実施形態では、pは約3.7である。いくつかの実施形態では、pは約3.8である。いくつかの実施形態では、pは約3.9である。いくつかの実施形態では、pは約4.0である。いくつかの実施形態では、pは約4.1である。いくつかの実施形態では、pは約4.2である。いくつかの実施形態では、pは約4.3である。いくつかの実施形態では、pは約4.4である。いくつかの実施形態では、pは約4.5である。他の実施形態では、pは約4.6である。いくつかの実施形態では、pは約4.7である。いくつかの実施形態では、pは約4.8である。いくつかの実施形態では、pは約4.9である。いくつかの実施形態では、pは約5.0である。
【0250】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法において使用されるADCは、エンホルツマブベドチンである。エンホルツマブベドチンは、プロテアーゼ切断可能リンカーを介して微小管破壊剤(MMAE)に複合化された完全ヒト免疫グロブリンG1カッパ(IgG1Κ)抗体から構成されるADCである(Challita-Eid PM et al,Cancer Res.2016;76(10):3003-13)。エンホルツマブベドチンは、細胞表面の191P4D12タンパク質に結合してADC-191P4D12複合体の内在化をもたらし、次いで、これがリソソーム区画に輸送され、そこでリンカーのタンパク質分解切断を介してMMAEが放出されることによって、抗腫瘍活性を誘導する。MMAEの細胞内放出は、その後、チューブリン重合を破壊し、G2/M期細胞周期停止及びアポトーシス細胞死をもたらす(Francisco JA et al,Blood.2003 Aug 15;102(4):1458-65)。
【0251】
上記及び米国特許第8,637,642号に記載されているように、AGS-22M6Eは、マウスハイブリドーマ細胞株に由来するADCである。エンホルツマブベドチンは、AGS-22M6E ADCのチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株由来等価物であり、ヒト治療のために使用される例示的な生成物である。エンホルツマブベドチンは、AGS-22M6Eと同じアミノ酸配列、リンカー及び細胞傷害性薬物を有する。エンホルツマブベドチンとAGS-22M6Eとの間の同等性は、191P4D12に対する結合親和性、in vitro細胞傷害性、及びin vivo抗腫瘍活性などの広範な分析的及び生物学的特性評価試験を通して確認された。
【0252】
一実施形態では、本明細書で提供されるADCは、EV、PADCEV、AGS-22M6E、AGS-22C3E、AGS-22C3Eとしても公知であるエンホルツマブベドチンである。エンホルツマブベドチンは抗191P4D12抗体を含み、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号7のアミノ酸残基20からアミノ酸残基466までを含む重鎖と、配列番号8のアミノ酸残基23からアミノ酸残基236までを含む軽鎖とを含む。
【0253】
エンホルツマブベドチンは、プロテアーゼ切断可能なマレイミドカプロイルバリン-シトルリン(vc)リンカー(SGD-1006)を介して小分子微小管破壊剤であるモノメチルアウリスタチンE(MMAE)に複合化された完全ヒト抗ネクチン-4 IgG1カッパモノクローナル抗体(AGS-22C3)で構成された、ネクチン-4に対する抗体薬物複合体(ADC)である。抗体の鎖間ジスルフィド結合を構成するシステイン残基で複合化が行われ、薬物対抗体比がおよそ3.8:1の生成物が生成される。分子量は、およそ152kDaである。
【0254】
【0255】
各抗体分子におよそ4分子のMMAEが結合している。エンホルツマブベドチンは、抗体と小分子成分との化学的複合化によって生成される。抗体は哺乳動物(チャイニーズハムスター卵巣)細胞によって生成され、小分子成分は化学合成によって生成される。
【0256】
エンホルツマブベドチン注射剤は、防腐剤非含有の白色からオフホワイト色の滅菌凍結乾燥粉末として、静脈注射用の単回投与バイアルで提供される。エンホルツマブベドチンの含量はバイアルあたり20mg及びバイアルあたり30mgであり、USPの注射用滅菌水(それぞれ2.3mL及び3.3mL)で再構成する必要があり、最終濃度10mg/mLの透明からわずかに白濁、無色から淡黄色の溶液が得られる。再構成後、各バイアルから2mL(20mg)及び3mL(30mg)を回収できる。再構成後の溶液は、1mLごとにエンホルツマブベドチン10mg、ヒスチジン(1.4mg)、ヒスチジン塩酸塩一水和物(2.31mg)、ポリソルベート20(0.2mg)、及びトレハロース二水和物(55mg)を含有し、pHは6.0である。
【0257】
5.4 医薬組成物
本明細書で提供される方法の特定の実施形態では、本方法で使用されるADCは、「医薬組成物」として提供される。そのような医薬組成物は、本明細書で提供される抗体薬物複合体、及び1つまたは複数の薬学的に許容されるまたは生理学的に許容される賦形剤を含む。特定の実施形態では、抗体薬物複合体は、1つもしくは複数のさらなる剤と組み合わせて、またはそれとは別個に提供される。そのような1つまたは複数のさらなる剤、及び1つまたは複数の薬学的に許容されるまたは生理学的に許容される賦形剤を含む組成物も提供される。特定の実施形態では、抗体薬物複合体及びさらなる剤(複数可)は、治療上許容される量で存在する。医薬組成物は、本明細書で提供される方法及び使用に従って使用され得る。したがって、例えば、医薬組成物は、本明細書で提供される治療方法及び使用を実施するために、対象にex vivoまたはin vivoで投与することができる。本明細書で提供される医薬組成物は、意図される方法または投与経路と適合するように製剤化することができ、例示的な投与経路は本明細書に記載されている。
【0258】
いくつかの実施形態では、がんまたは腫瘍を調節する抗体薬物複合体の医薬組成物が提供される。
【0259】
本明細書で提供される方法の特定の実施形態では、ADCを含む医薬組成物は、本明細書に記載の様々な疾患及び障害(例えば、がん)の治療または予防に使用することができる、本明細書に開示されるまたは当業者に公知の他の治療活性作用物質または化合物をさらに含み得る。上記のように、さらなる治療活性物質または化合物は、別個の医薬組成物(複数可)中に存在してもよい。
【0260】
医薬組成物は、典型的には、治療有効量の本明細書で提供される抗体薬物複合体の少なくとも1つ、及び1つまたは複数の薬学的に許容される製剤化剤を含む。特定の実施形態では、医薬組成物は、本明細書に記載の1つまたは複数のさらなる剤をさらに含む。
【0261】
一実施形態では、医薬組成物は、本明細書で提供される抗体薬物複合体を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、治療有効量の本明細書で提供される抗体薬物複合体を含む。特定の実施形態では、医薬組成物は、薬学的に許容される賦形剤を含む。
【0262】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される医薬組成物中の抗体薬物複合体は、上記の第5.3節に記載される抗体薬物複合体から選択される。
【0263】
特定の実施形態では、医薬組成物は、0.1mg/mL~100mg/mLの濃度の抗体薬物複合体を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、1mg/mL~20mg/mLの濃度の抗体薬物複合体を含む。他の実施形態では、医薬組成物は、5mg/mL~15mg/mLの濃度の抗体薬物複合体を含む。他の実施形態では、医薬組成物は、8mg/mL~12mg/mLの濃度の抗体薬物複合体を含む。他の実施形態では、医薬組成物は、9mg/mL~11mg/mLの濃度の抗体薬物複合体を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約9.5mg/mLの濃度の抗体薬物複合体を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約9.6mg/mLの濃度の抗体薬物複合体を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約9.7mg/mLの濃度の抗体薬物複合体を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約9.8mg/mLの濃度の抗体薬物複合体を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約9.9mg/mLの濃度の抗体薬物複合体を含む。さらに他の実施形態では、医薬組成物は、約10mg/mLの濃度の抗体薬物複合体を含む。さらに他の実施形態では、医薬組成物は、約10.1mg/mLの濃度の抗体薬物複合体を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約10.2mg/mLの濃度の抗体薬物複合体を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約10.3mg/mLの濃度の抗体薬物複合体を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約10.3mg/mLの濃度の抗体薬物複合体を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約10.4mg/mLの濃度の抗体薬物複合体を含む。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約10.5mg/mLの濃度の抗体薬物複合体を含む。
【0264】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される医薬組成物は、
【0265】
L-ヒスチジン、TWEEN-20、及びトレハロース二水和物またはスクロースの少なくとも一方を含む。いくつかの態様では、本明細書で提供される医薬組成物は、塩酸(HCl)またはコハク酸をさらに含む。
【0266】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される医薬組成物において有用なL-ヒスチジンの濃度は、5mM~50mMの範囲である。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される医薬組成物中のL-ヒスチジンの濃度は、10mM~40mMの範囲である。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される医薬組成物中のL-ヒスチジンの濃度は、15mM~35mMの範囲である。
【0267】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される医薬組成物中のL-ヒスチジンの濃度は、15mM~30mMの範囲である。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される医薬組成物中のL-ヒスチジンの濃度は、15mM~25mMの範囲である。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される医薬組成物中のL-ヒスチジンの濃度は、15mM~35mMの範囲である。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される医薬組成物中のL-ヒスチジンの濃度は、約16mMである。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される医薬組成物中のL-ヒスチジンの濃度は、約17mMである。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される医薬組成物中のL-ヒスチジンの濃度は、約18mMである。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される医薬組成物中のL-ヒスチジンの濃度は、約19mMである。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される医薬組成物中のL-ヒスチジンの濃度は、約20mMである。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される医薬組成物中のL-ヒスチジンの濃度は、約21mMである。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される医薬組成物中のL-ヒスチジンの濃度は、約22mMである。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される医薬組成物中のL-ヒスチジンの濃度は、約23mMである。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される医薬組成物中のL-ヒスチジンの濃度は、約24mMである。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される医薬組成物中のL-ヒスチジンの濃度は、約25mMである。
【0268】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される医薬組成物に有用なTWEEN-20の濃度は、0.001%~0.1%(v/v)の範囲である。別の実施形態では、TWEEN-20の濃度は、0.0025%~0.075%(v/v)の範囲である。一実施形態では、TWEEN-20の濃度は、0.005%~0.05%(v/v)の範囲である。別の実施形態では、TWEEN-20の濃度は、0.0075%~0.025%(v/v)の範囲である。別の実施形態では、TWEEN-20の濃度は、0.0075%~0.05%(v/v)の範囲である。別の実施形態では、TWEEN-20の濃度は、0.01%~0.03%(v/v)の範囲である。特定の一実施形態では、TWEEN-20の濃度は、約0.01%(v/v)である。特定の一実施形態では、TWEEN-20の濃度は、約0.015%(v/v)である。特定の一実施形態では、TWEEN-20の濃度は、約0.016%(v/v)である。特定の一実施形態では、TWEEN-20の濃度は、約0.017%(v/v)である。特定の一実施形態では、TWEEN-20の濃度は、約0.018%(v/v)である。特定の一実施形態では、TWEEN-20の濃度は、約0.019%(v/v)である。特定の一実施形態では、TWEEN-20の濃度は、約0.02%(v/v)である。特定の一実施形態では、TWEEN-20の濃度は、約0.021%(v/v)である。特定の一実施形態では、TWEEN-20の濃度は、約0.022%(v/v)である。特定の一実施形態では、TWEEN-20の濃度は、約0.023%(v/v)である。特定の一実施形態では、TWEEN-20の濃度は、約0.024%(v/v)である。特定の一実施形態では、TWEEN-20の濃度は、約0.025%(v/v)である。
【0269】
一実施形態では、本明細書で提供される医薬組成物に有用なトレハロース二水和物の濃度は、1%~20%(w/v)の範囲である。別の実施形態では、トレハロース二水和物の濃度は、2%~15%(w/v)の範囲である。一実施形態では、トレハロース二水和物の濃度は、3%~10%(w/v)の範囲である。別の実施形態では、トレハロース二水和物の濃度は、4%~9%(w/v)の範囲である。別の実施形態では、トレハロース二水和物の濃度は、4%~8%(w/v)の範囲である。別の実施形態では、トレハロース二水和物の濃度は、4%~7%(w/v)の範囲である。別の実施形態では、トレハロース二水和物の濃度は、4%~6%(w/v)の範囲である。別の実施形態では、トレハロース二水和物の濃度は、4.5%~6%(w/v)の範囲である。別の実施形態では、トレハロース二水和物の濃度は、約4.6%(w/v)である。別の実施形態では、トレハロース二水和物の濃度は、約4.7%(w/v)である。別の実施形態では、トレハロース二水和物の濃度は、約4.8%(w/v)である。別の実施形態では、トレハロース二水和物の濃度は、約4.9%(w/v)である。別の実施形態では、トレハロース二水和物の濃度は、約5.0%(w/v)である。別の実施形態では、トレハロース二水和物の濃度は、約5.1%(w/v)である。別の実施形態では、トレハロース二水和物の濃度は、約5.2%(w/v)である。別の実施形態では、トレハロース二水和物の濃度は、約5.3%(w/v)である。別の実施形態では、トレハロース二水和物の濃度は、約5.4%(w/v)である。別の実施形態では、トレハロース二水和物の濃度は、約5.5%(w/v)である。別の実施形態では、トレハロース二水和物の濃度は、約5.6%(w/v)である。別の実施形態では、トレハロース二水和物の濃度は、約5.7%(w/v)である。別の実施形態では、トレハロース二水和物の濃度は、約5.8%(w/v)である。別の実施形態では、トレハロース二水和物の濃度は、約5.9%(w/v)である。別の実施形態では、トレハロース二水和物の濃度は、約6.0%(w/v)である。別の実施形態では、トレハロース二水和物の濃度は、約6.1%(w/v)である。別の実施形態では、トレハロース二水和物の濃度は、約6.2%(w/v)である。別の実施形態では、トレハロース二水和物の濃度は、約6.3%(w/v)である。別の実施形態では、トレハロース二水和物の濃度は、約6.4%(w/v)である。別の実施形態では、トレハロース二水和物の濃度は、約6.5%(w/v)である。
【0270】
特定の実施形態では、トレハロース二水和物のモル濃度は、50mM~300mMである。他の実施形態では、トレハロース二水和物のモル濃度は、75mM~250mMである。いくつかの実施形態では、トレハロース二水和物のモル濃度は、100mM~200mMである。他の実施形態では、トレハロース二水和物のモル濃度は、130mM~150mMである。いくつかの実施形態では、トレハロース二水和物のモル濃度は、135mM~150mMである。特定の実施形態では、トレハロース二水和物のモル濃度は、約135mMである。特定の実施形態では、トレハロース二水和物のモル濃度は、約136mMである。特定の実施形態では、トレハロース二水和物のモル濃度は、約137mMである。特定の実施形態では、トレハロース二水和物のモル濃度は、約138mMである。特定の実施形態では、トレハロース二水和物のモル濃度は、約139mMである。特定の実施形態では、トレハロース二水和物のモル濃度は、約140mMである。特定の実施形態では、トレハロース二水和物のモル濃度は、約141mMである。特定の実施形態では、トレハロース二水和物のモル濃度は、約142mMである。特定の実施形態では、トレハロース二水和物のモル濃度は、約143mMである。特定の実施形態では、トレハロース二水和物のモル濃度は、約144mMである。特定の実施形態では、トレハロース二水和物のモル濃度は、約145mMである。特定の実施形態では、トレハロース二水和物のモル濃度は、約146mMである。特定の実施形態では、トレハロース二水和物のモル濃度は、約150mMである。特定の実施形態では、トレハロース二水和物のモル濃度は、約151mMである。特定の実施形態では、トレハロース二水和物のモル濃度は、約151mMである。特定の実施形態では、トレハロース二水和物のモル濃度は、約152mMである。特定の実施形態では、トレハロース二水和物のモル濃度は、約153mMである。特定の実施形態では、トレハロース二水和物のモル濃度は、約154mMである。特定の実施形態では、トレハロース二水和物のモル濃度は、約155mMである。
【0271】
一実施形態では、本明細書で提供される医薬組成物に有用なスクロースの濃度は、1%~20%(w/v)の範囲である。別の実施形態では、スクロースの濃度は、2%~15%(w/v)の範囲である。一実施形態では、スクロースの濃度は、3%~10%(w/v)の範囲である。別の実施形態では、スクロースの濃度は、4%~9%(w/v)の範囲である。別の実施形態では、スクロースの濃度は、4%~8%(w/v)の範囲である。別の実施形態では、スクロースの濃度は、4%~7%(w/v)の範囲である。別の実施形態では、スクロースの濃度は、4%~6%(w/v)の範囲である。別の実施形態では、スクロースの濃度は、4.5%~6%(w/v)の範囲である。別の実施形態では、スクロースの濃度は、約4.6%(w/v)である。別の実施形態では、スクロースの濃度は、約4.7%(w/v)である。別の実施形態では、スクロースの濃度は、約4.8%(w/v)である。別の実施形態では、スクロースの濃度は、約4.9%(w/v)である。別の実施形態では、スクロースの濃度は、約5.0%(w/v)である。別の実施形態では、スクロースの濃度は、約5.1%(w/v)である。別の実施形態では、スクロースの濃度は、約5.2%(w/v)である。別の実施形態では、スクロースの濃度は、約5.3%(w/v)である。別の実施形態では、スクロースの濃度は、約5.4%(w/v)である。別の実施形態では、スクロースの濃度は、約5.5%(w/v)である。別の実施形態では、スクロースの濃度は、約5.6%(w/v)である。別の実施形態では、スクロースの濃度は、約5.7%(w/v)である。別の実施形態では、スクロースの濃度は、約5.8%(w/v)である。別の実施形態では、スクロースの濃度は、約5.9%(w/v)である。別の実施形態では、スクロースの濃度は、約6.0%(w/v)である。別の実施形態では、スクロースの濃度は、約6.1%(w/v)である。別の実施形態では、スクロースの濃度は、約6.2%(w/v)である。別の実施形態では、スクロースの濃度は、約6.3%(w/v)である。別の実施形態では、スクロースの濃度は、約6.4%(w/v)である。別の実施形態では、スクロースの濃度は、約6.5%(w/v)である。
【0272】
特定の実施形態では、スクロースのモル濃度は、50mM~300mMである。他の実施形態では、スクロースのモル濃度は、75mM~250mMである。いくつかの実施形態では、スクロースのモル濃度は、100mM~200mMである。他の実施形態では、スクロースのモル濃度は、130mM~150mMである。いくつかの実施形態では、スクロースのモル濃度は、135mM~150mMである。特定の実施形態では、スクロースのモル濃度は、約135mMである。特定の実施形態では、スクロースのモル濃度は、約136mMである。特定の実施形態では、スクロースのモル濃度は、約137mMである。特定の実施形態では、スクロースのモル濃度は、約138mMである。特定の実施形態では、スクロースのモル濃度は、約139mMである。特定の実施形態では、スクロースのモル濃度は、約140mMである。特定の実施形態では、スクロースのモル濃度は、約141mMである。特定の実施形態では、スクロースのモル濃度は、約142mMである。特定の実施形態では、スクロースのモル濃度は、約143mMである。特定の実施形態では、スクロースのモル濃度は、約144mMである。特定の実施形態では、スクロースのモル濃度は、約145mMである。特定の実施形態では、スクロースのモル濃度は、約146mMである。特定の実施形態では、スクロースのモル濃度は、約150mMである。特定の実施形態では、スクロースのモル濃度は、約151mMである。特定の実施形態では、スクロースのモル濃度は、約151mMである。特定の実施形態では、スクロースのモル濃度は、約152mMである。特定の実施形態では、スクロースのモル濃度は、約153mMである。特定の実施形態では、スクロースのモル濃度は、約154mMである。特定の実施形態では、スクロースのモル濃度は、約155mMである。
【0273】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される医薬組成物は、HClを含む。他の実施形態では、本明細書で提供される医薬組成物は、コハク酸を含む。
【0274】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される医薬組成物は、5.5~6.5の範囲のpHを有する。他の実施形態では、本明細書で提供される医薬組成物は、5.7~6.3の範囲のpHを有する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される医薬組成物は、約5.7のpHを有する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される医薬組成物は、約5.8のpHを有する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される医薬組成物は、約5.9のpHを有する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される医薬組成物は、約6.0のpHを有する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される医薬組成物は、約6.1のpHを有する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される医薬組成物は、約6.2のpHを有する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される医薬組成物は、約6.3のpHを有する。
【0275】
いくつかの実施形態では、pHは室温で測定される。他の実施形態では、pHは15℃~27℃で測定される。さらに他の実施形態では、pHは4℃で測定される。さらに他の実施形態では、pHは25℃で測定される。
【0276】
いくつかの実施形態では、pHはHClによって調整される。いくつかの実施形態では、医薬組成物はHClを含み、医薬組成物は室温で5.5~6.5の範囲のpHを有する。いくつかの実施形態では、医薬組成物はHClを含み、医薬組成物は室温で5.7~6.3の範囲のpHを有する。いくつかのより具体的な実施形態では、医薬組成物はHClを含み、医薬組成物は室温で約5.7のpHを有する。いくつかのより具体的な実施形態では、医薬組成物はHClを含み、医薬組成物は室温で約5.8のpHを有する。いくつかのより具体的な実施形態では、医薬組成物はHClを含み、医薬組成物は室温で約5.9のpHを有する。いくつかのより具体的な実施形態では、医薬組成物はHClを含み、医薬組成物は室温で約6.0のpHを有する。いくつかのより具体的な実施形態では、医薬組成物はHClを含み、医薬組成物は室温で約6.1のpHを有する。いくつかのより具体的な実施形態では、医薬組成物はHClを含み、医薬組成物は室温で約6.2のpHを有する。いくつかのより具体的な実施形態では、医薬組成物はHClを含み、医薬組成物は室温で約6.3のpHを有する。
【0277】
いくつかの実施形態では、医薬組成物はHClを含み、医薬組成物は15℃~27℃で5.5~6.5の範囲のpHを有する。いくつかの実施形態では、医薬組成物はHClを含み、医薬組成物は15℃~27℃で5.7~6.3の範囲のpHを有する。いくつかのより具体的な実施形態では、医薬組成物はHClを含み、医薬組成物は15℃~27℃で約5.7のpHを有する。いくつかのより具体的な実施形態では、医薬組成物はHClを含み、医薬組成物は15℃~27℃で約5.8のpHを有する。いくつかのより具体的な実施形態では、医薬組成物はHClを含み、医薬組成物は15℃~27℃で約5.9のpHを有する。いくつかのより具体的な実施形態では、医薬組成物はHClを含み、医薬組成物は15℃~27℃で約6.0のpHを有する。いくつかのより具体的な実施形態では、医薬組成物はHClを含み、医薬組成物は15℃~27℃で約6.1のpHを有する。いくつかのより具体的な実施形態では、医薬組成物はHClを含み、医薬組成物は15℃~27℃で約6.2のpHを有する。いくつかのより具体的な実施形態では、医薬組成物はHClを含み、医薬組成物は15℃~27℃で約6.3のpHを有する。
【0278】
いくつかの実施形態では、pHはコハク酸によって調整される。いくつかの実施形態では、医薬組成物はコハク酸を含み、医薬組成物は室温で5.5~6.5の範囲のpHを有する。いくつかの実施形態では、医薬組成物はコハク酸を含み、医薬組成物は室温で5.7~6.3の範囲のpHを有する。いくつかのより具体的な実施形態では、医薬組成物はコハク酸を含み、医薬組成物は室温で約5.7のpHを有する。いくつかのより具体的な実施形態では、医薬組成物はコハク酸を含み、医薬組成物は室温で約5.8のpHを有する。いくつかのより具体的な実施形態では、医薬組成物はコハク酸を含み、医薬組成物は室温で約5.9のpHを有する。いくつかのより具体的な実施形態では、医薬組成物はコハク酸を含み、医薬組成物は室温で約6.0のpHを有する。いくつかのより具体的な実施形態では、医薬組成物はコハク酸を含み、医薬組成物は室温で約6.1のpHを有する。いくつかのより具体的な実施形態では、医薬組成物はコハク酸を含み、医薬組成物は室温で約6.2のpHを有する。いくつかのより具体的な実施形態では、医薬組成物はコハク酸を含み、医薬組成物は室温で約6.3のpHを有する。
【0279】
いくつかの実施形態では、医薬組成物はコハク酸を含み、医薬組成物は15℃~27℃で5.5~6.5の範囲のpHを有する。いくつかの実施形態では、医薬組成物はコハク酸を含み、医薬組成物は15℃~27℃で5.7~6.3の範囲のpHを有する。いくつかのより具体的な実施形態では、医薬組成物はコハク酸を含み、医薬組成物は15℃~27℃で約5.7のpHを有する。いくつかのより具体的な実施形態では、医薬組成物はコハク酸を含み、医薬組成物は15℃~27℃で約5.8のpHを有する。いくつかのより具体的な実施形態では、医薬組成物はコハク酸を含み、医薬組成物は15℃~27℃で約5.9のpHを有する。いくつかのより具体的な実施形態では、医薬組成物はコハク酸を含み、医薬組成物は15℃~27℃で約6.0のpHを有する。いくつかのより具体的な実施形態では、医薬組成物はコハク酸を含み、医薬組成物は15℃~27℃で約6.1のpHを有する。いくつかのより具体的な実施形態では、医薬組成物はコハク酸を含み、医薬組成物は15℃~27℃で約6.2のpHを有する。いくつかのより具体的な実施形態では、医薬組成物はコハク酸を含み、医薬組成物は15℃~27℃で約6.3のpHを有する。
【0280】
いくつかの具体的な実施形態では、本明細書で提供される医薬組成物は、約20mMのL-ヒスチジン、約0.02%(w/v)のTWEEN-20、及び約5.5%(w/v)のトレハロース二水和物または約5%(w/v)のスクロースの少なくとも一方を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される医薬組成物は、HClまたはコハク酸をさらに含む。いくつかの実施形態では、pHは室温で約6.0である。いくつかの実施形態では、pHは25℃で約6.0である。
【0281】
いくつかの具体的な実施形態では、本明細書で提供される医薬組成物は、約20mMのL-ヒスチジン、約0.02%(w/v)のTWEEN-20、約5.5%(w/v)のトレハロース二水和物及びHClを含む。いくつかの実施形態では、pHは室温で約6.0である。いくつかの実施形態では、pHは25℃で約6.0である。
【0282】
いくつかの具体的な実施形態では、本明細書で提供される医薬組成物は、約20mMのL-ヒスチジン、約0.02%(w/v)のTWEEN-20、約5%(w/v)のスクロース及びHClを含む。いくつかの実施形態では、pHは室温で約6.0である。いくつかの実施形態では、pHは25℃で約6.0である。
【0283】
他の具体的な実施形態では、本明細書で提供される医薬組成物は、約20mMのL-ヒスチジン、約0.02%(w/v)のTWEEN-20、約5.5%(w/v)のトレハロース二水和物及びコハク酸を含む。いくつかの実施形態では、pHは室温で約6.0である。いくつかの実施形態では、pHは25℃で約6.0である。
【0284】
いくつかの具体的な実施形態では、本明細書で提供される医薬組成物は、約20mMのL-ヒスチジン、約0.02%(w/v)のTWEEN-20、約5%(w/v)のスクロース及びコハク酸を含む。いくつかの実施形態では、pHは室温で約6.0である。いくつかの実施形態では、pHは25℃で約6.0である。
【0285】
具体的な実施形態では、本明細書で提供されるものは、
(a)以下の構造:
を含み、式中、L-は、抗体またはその抗原結合断片(例えば、抗ネクチン-4抗体またはその抗原結合断片)を表し、pは1~10である抗体薬物複合体;ならびに
(b)約20mMのL-ヒスチジン、約0.02%(w/v)のTWEEN-20、約5.5%(w/v)のトレハロース二水和物、及びHClを含む、薬学的に許容される賦形剤を含み、抗体薬物複合体は約10mg/mLの濃度であり、pHは25℃で約6.0である。
【0286】
別の具体的な実施形態では、本明細書で提供される医薬組成物は、
(a)以下の構造:
を含み、式中、L-は、抗体またはその抗原結合断片(例えば、抗ネクチン-4抗体またはその抗原結合断片)を表し、pは1~10である抗体薬物複合体;ならびに
(b)約20mMのL-ヒスチジン、約0.02%(w/v)のTWEEN-20、約5.5%(w/v)のトレハロース二水和物、及びコハク酸を含む、薬学的に許容される賦形剤を含み、
抗体薬物複合体は約10mg/mLの濃度であり、pHは25℃で約6.0である。
【0287】
さらに別の具体的な実施形態では、本明細書で提供される医薬組成物は、
(a)以下の構造:
を含み、式中、L-は、抗体またはその抗原結合断片(例えば、抗ネクチン-4抗体またはその抗原結合断片)を表し、pは1~10である抗体薬物複合体;ならびに
(b)約20mMのL-ヒスチジン、約0.02%(w/v)のTWEEN-20、約5.0%(w/v)のスクロース、及びHClを含む、薬学的に許容される賦形剤を含み、
抗体薬物複合体は約10mg/mLの濃度であり、pHは25℃で約6.0である。
【0288】
特定の数(及びその数値範囲)が提供されているが、特定の実施形態では、上記数(または数値範囲)の例えば2%、5%、10%、15%または20%以内の数値も企図されることが理解される。
【0289】
ビヒクル中の一次溶媒は、本質的に水性または非水性のいずれかであり得る。さらに、ビヒクルは、医薬組成物のpH、オスモル濃度、粘度、無菌性または安定性を改変または維持するための他の薬学的に許容される賦形剤を含み得る。特定の実施形態では、薬学的に許容されるビヒクルは水性緩衝液である。他の実施形態では、ビヒクルは、例えば、塩化ナトリウム及び/またはクエン酸ナトリウムを含む。
【0290】
本明細書で提供される医薬組成物は、本明細書に記載されるように、抗体薬物複合体及び/またはさらなる剤の放出速度を改変または維持するためのさらに他の薬学的に許容される製剤化剤を含み得る。そのような製剤化剤には、徐放性製剤の調製において当業者に公知の物質が含まれる。薬学的及び生理学的に許容される製剤化剤に関するさらなる参考文献については、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Ed.(1990,Mack Publishing Co.,Easton,Pa.18042)ページ1435-1712、The Merck Index,12th Ed.(1996,Merck Publishing Group,Whitehouse,NJ);及びPharmaceutical Principles of Solid Dosage Forms(1993,Technonic Publishing Co.,Inc.,Lancaster,Pa.)を参照。投与に適したさらなる医薬組成物は当技術分野で公知であり、本明細書で提供される方法及び組成物に適用可能である。
【0291】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される医薬組成物は液体形態である。他の実施形態では、本明細書で提供される医薬組成物は凍結乾燥されている。
【0292】
医薬組成物は、その意図される投与経路と適合するように製剤化することができる。したがって、医薬組成物は、非経口(例えば、皮下(s.c.)、静脈内、筋肉内、または腹腔内)、皮内、経口(例えば、摂取)、吸入、腔内、頭蓋内、及び経皮(局所)を含む経路による投与に適した賦形剤を含む。他の例示的な投与経路は本明細書に記載されている。
【0293】
医薬組成物は、滅菌注射用の水性または油性の懸濁液の形態であり得る。この懸濁液は、本明細書に開示されているかまたは当業者に公知の適切な分散剤または湿潤剤及び懸濁化剤を使用して製剤化され得る。滅菌注射用調製物はまた、例えば、1,3-ブタンジオール中の溶液のような、非毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の滅菌注射用溶液または懸濁液であり得る。使用され得る許容される希釈剤、溶媒及び分散媒には、水、リンゲル液、等張塩化ナトリウム溶液、Cremophor EL(商標)(BASF,Parsippany,NJ)またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール)、ならびにそれらの適切な混合物が含まれる。さらに、滅菌固定油は、溶媒または懸濁媒として慣例的に使用されている。この目的のために、合成モノグリセリドまたはジグリセリドを含む任意の無刺激性固定油を使用し得る。さらに、オレイン酸などの脂肪酸は、注射剤の調製に使用される。特定の注射用製剤の長期吸収は、吸収を遅延させる剤(例えば、モノステアリン酸アルミニウムまたはゼラチン)を含めることによって達成することができる。
【0294】
一実施形態では、本明細書で提供される医薬組成物は、局所または全身投与のために、注射、注入、または埋込みによって非経口投与され得る。本明細書で使用される非経口投与には、静脈内、動脈内、腹腔内、髄腔内、脳室内、尿道内、胸骨内、頭蓋内、筋肉内、滑液包内、及び皮下投与が含まれる。
【0295】
一実施形態では、本明細書で提供される医薬組成物は、注射前の液体中の溶液または懸濁液に適した溶液、懸濁液、エマルジョン、ミセル、リポソーム、ミクロスフェア、ナノシステム、及び固体形態を含む、非経口投与に適した任意の剤形で製剤化され得る。そのような剤形は、薬学の当業者に公知の従来の方法に従って調製することができる(例えば、Remington,The Science and Practice of Pharmacy、前出を参照)。
【0296】
一実施形態では、非経口投与を意図した医薬組成物は、水性ビヒクル、水混和性ビヒクル、非水性ビヒクル、微生物の増殖に対する抗菌剤または防腐剤、安定剤、溶解促進剤、等張剤、緩衝剤、酸化防止剤、局所麻酔剤、懸濁化剤及び分散剤、湿潤剤または乳化剤、錯化剤、金属イオン封鎖剤またはキレート剤、凍結保護剤、凍結乾燥保護剤、増粘剤、pH調整剤、及び不活性ガスを含むが、これらに限定されるわけではない1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤を含み得る。
【0297】
一実施形態では、適切な水性ビヒクルには、水、生理食塩水、食塩水またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、等張デキストロース注射液、滅菌水注射液、デキストロース及び乳酸加リンゲル注射液が含まれるが、これらに限定されるわけではない。非水性ビヒクルには、植物起源の固定油、ヒマシ油、トウモロコシ油、綿実油、オリーブ油、落花生油、ペパーミント油、ベニバナ油、ゴマ油、大豆油、硬化植物油、硬化大豆油、及びココナッツ油の中鎖トリグリセリド、及びパーム種子油が含まれるが、これらに限定されるわけではない。水混和性ビヒクルには、エタノール、1,3-ブタンジオール、液体ポリエチレングリコール(例えば、ポリエチレングリコール300及びポリエチレングリコール400)、プロピレングリコール、グリセリン、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、及びジメチルスルホキシドが含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0298】
一実施形態では、適切な抗菌剤または防腐剤には、フェノール、クレゾール、水銀、ベンジルアルコール、クロロブタノール、p-ヒドロキシ安息香酸メチル及びプロピル、チメロサール、塩化ベンザルコニウム(例えば、塩化ベンゼトニウム)、メチル-及びプロピル-パラベン、ならびにソルビン酸が含まれるが、これらに限定されるわけではない。適切な等張剤には、塩化ナトリウム、グリセリン及びデキストロースが含まれるが、これらに限定されるわけではない。適切な緩衝剤には、リン酸塩及びクエン酸塩が含まれるが、これらに限定されるわけではない。適切な酸化防止剤は、重亜硫酸塩及びメタ重亜硫酸ナトリウムを含む、本明細書に記載されるものである。適切な局所麻酔剤にはプロカイン塩酸塩が含まれるが、これに限定されるわけではない。適切な懸濁化剤及び分散剤は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びポリビニルピロリドンを含む、本明細書に記載されるものである。適切な乳化剤には、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート80、及びトリエタノールアミンオレエートを含む、本明細書に記載されるものが含まれる。適切な金属イオン封鎖剤またはキレート剤には、EDTAが含まれるが、これに限定されるわけではない。適切なpH調整剤には、水酸化ナトリウム、塩酸、クエン酸、及び乳酸が含まれるが、これらに限定されるわけではない。適切な錯化剤には、シクロデキストリン、例えばα-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリン、及びスルホブチルエーテル7-β-シクロデキストリン(CAPTISOL(登録商標)、CyDex、Lenexa、KS)が含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0299】
一実施形態では、本明細書で提供される医薬組成物は、単回投与または複数回投与用に製剤化され得る。単回投与製剤は、アンプル、バイアル、またはシリンジに包装される。複数回投与非経口製剤は、静菌濃度または静真菌濃度の抗菌剤を含み得る。全ての非経口製剤は、当技術分野で公知でありかつ実施されているように、無菌でなければならない。
【0300】
一実施形態では、医薬組成物は、すぐに使用できる滅菌溶液として提供される。別の実施形態では、医薬組成物は、使用前にビヒクルで再構成される、凍結乾燥粉末及び皮下注射用錠剤を含む滅菌乾燥可溶性製品として提供される。さらに別の実施形態では、医薬組成物は、すぐに使用できる滅菌懸濁液として提供される。さらに別の実施形態では、医薬組成物は、使用前にビヒクルで再構成される滅菌乾燥不溶性製品として提供される。さらに別の実施形態では、医薬組成物は、すぐに使用できる滅菌エマルジョンとして提供される。
【0301】
一実施形態では、本明細書で提供される医薬組成物は、遅延放出、持続放出、パルス放出、制御放出、標的放出、及びプログラム放出形態を含む、即時放出または改変放出剤形として製剤化され得る。
【0302】
水の添加による水性懸濁液の調製に適した分散性粉末及び顆粒は、分散剤または湿潤剤、懸濁化剤及び1つもしくは複数の防腐剤と混合された活性成分を提供する。適切な分散剤または湿潤剤及び懸濁化剤が本明細書に例示される。
【0303】
医薬組成物はまた、インプラント、リポソーム、ヒドロゲル、プロドラッグ及びマイクロカプセル化送達システムを含む制御放出製剤などの、急速な分解または身体からの排出から組成物を保護するための賦形剤を含むことができる。例えば、モノステアリン酸グリセリルまたはステアリン酸グリセリルなどの時間遅延材料を単独で、またはワックスと組み合わせて使用し得る。注射用医薬組成物の長期吸収は、吸収を遅延させる剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムまたはゼラチンを含めることによって達成することができる。微生物の作用の防止は、様々な抗菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどによって達成することができる。
【0304】
本明細書で提供される医薬組成物は、-80℃、4℃、25℃または37℃で保存し得る。
【0305】
凍結乾燥組成物は、本明細書で提供される液体医薬組成物を凍結乾燥することによって作製することができる。具体的な実施形態では、本明細書で提供される医薬組成物は、凍結乾燥医薬組成物である。いくつかの実施形態では、医薬製剤は凍結乾燥粉末であり、溶液、エマルジョン及び他の混合物として投与するために再構成することができる。それらはまた、固体またはゲルとして再構成及び製剤化され得る。
【0306】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される凍結乾燥製剤の調製は、凍結乾燥、無菌濾過、バイアルへの充填、凍結乾燥チャンバ内でのバイアルの凍結のための製剤化されたバルク溶液のバッチ処理、その後の凍結乾燥、栓締め及びキャッピングを含む。
【0307】
凍結乾燥製剤の調製には、凍結乾燥機を使用することができる。例えば、VirTis Genesis Model ELパイロットユニットを使用することができる。ユニットは、3つの作業棚(使用可能な全棚面積は約0.4平方メートル)を有するチャンバ、外部コンデンサ、及び機械式真空ポンプシステムを組み込んでいる。カスケード式の機械的冷凍により、棚を-70℃またはそれ以下に、外部コンデンサを-90℃またはそれ以下に冷却することができる。棚温度及びチャンバ圧力は、それぞれ+/-0.5℃及び+/-2ミクロン(milliTorr)に自動的に制御された。ユニットは、キャパシタンスマノメータ真空計、ピラニ真空計、圧力変換器(0~1気圧を測定するため)、及び相対湿度センサを備えていた。
【0308】
凍結乾燥粉末は、本明細書で提供される抗体薬物複合体またはその薬学的に許容される派生物を適切な溶媒に溶解することによって調製することができる。いくつかの実施形態では、凍結乾燥粉末は滅菌されている。溶液のその後の滅菌濾過、続いて当業者に公知の標準条件下での凍結乾燥により、所望の製剤が提供される。一実施形態では、得られた溶液は、凍結乾燥のためにバイアルに分配される。各バイアルは、単回投与量または複数回投与量の抗体薬物複合体を含む。凍結乾燥粉末は、適切な条件下、例えば約4℃から室温で保存することができる。
【0309】
この凍結乾燥粉末を注射用水で再構成することにより、非経口投与に使用するための製剤が提供される。再構成のために、凍結乾燥粉末を滅菌水または他の適切な賦形剤に添加する。そのような量は、経験的に決定し、特定のニーズに応じて調整することができる。
【0310】
例示的な再構成手順を以下に示す:(1)5mLまたは3mLのシリンジに18または20ゲージの針を取り付け、注射用水(WFI)グレードの水をシリンジに充填する;(2)シリンジに気泡がないことを確保しながら、シリンジの目盛を使用して適切な量のWFIを測定する;(3)ゴム栓に針を挿入する;(4)シリンジの内容物全体をバイアル壁から容器に分注し、シリンジ及び針を取り外し、シャープコンテナに入れる;(4)バイアルを連続的に旋回させて、バイアルの内容物全体を完全に再構成されるまで慎重に可溶化し(例えば、約20秒~約40秒)、発泡をもたらし得るタンパク質溶液の過度の撹拌を最小限に抑える。
【0311】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される医薬組成物は、密閉容器中の乾燥滅菌凍結乾燥粉末または水不含濃縮物として供給され、例えば、水または生理食塩水を用いて対象への投与のために適切な濃度に再構成することができる。特定の実施形態では、抗体薬物複合体は、少なくとも0.1mg、少なくとも0.5mg、少なくとも1mg、少なくとも2mg、少なくとも3mg、少なくとも5mg、少なくとも10mg、少なくとも15mg、少なくとも25mg、少なくとも30mg、少なくとも35mg、少なくとも45mg、少なくとも50mg、少なくとも60mg、少なくとも75mg、少なくとも80mg、少なくとも85mg、少なくとも90mg、少なくとも95mg、または少なくとも100mgの単位投与量で、密閉容器中の乾燥滅菌凍結乾燥粉末として供給される。凍結乾燥抗体薬物複合体は、その元の容器中で2~8℃で保存することができ、抗体薬物複合体は、再構成後12時間以内、例えば6時間以内、5時間以内、3時間以内、または1時間以内に投与することができる。代替的な実施形態では、本明細書で提供される抗体薬物複合体を含む医薬組成物は、抗抗体薬物複合体の量及び濃度を示す密閉容器中の液体形態で供給される。特定の実施形態では、抗体薬物複合体の液体形態は、密封容器中で、少なくとも0.1mg/ml、少なくとも0.5mg/ml、少なくとも1mg/ml、少なくとも5mg/ml、少なくとも10mg/ml、少なくとも15mg/ml、少なくとも25mg/ml、少なくとも30mg/ml、少なくとも40mg/ml、少なくとも50mg/ml、少なくとも60mg/ml、少なくとも70mg/ml、少なくとも80mg/ml、少なくとも90mg/ml、または少なくとも100mg/mlで供給される。
【0312】
医薬組成物の追加の実施形態は、米国特許第8,637,642号及び国際出願第PCT/US2019/056214(公開番号WO2020/117373)に記載されていて、その両方ともそれら全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0313】
5.5 併用療法の方法
本明細書に提供される医薬組成物を使用して腫瘍細胞の増殖を阻害する方法は、化学療法もしくは放射線療法、またはその両方と組み合わせて使用することができ、化学療法もしくは放射線療法を開始する前、開始中、または開始後、ならびにそれらの任意の組み合わせ(すなわち、化学療法及び/または放射線療法を開始する前及び開始中、開始前及び開始後、開始中及び開始後、または開始前、開始中、開始後)に、本発明の医薬組成物を投与することを含む。治療プロトコル及び特定の患者のニーズに応じて、本方法は、最も有効な治療を提供し、最終的に患者の寿命を延長する方法で実施される。このような併用療法に関する追加的な実施形態は、米国特許第8,637,642号及び国際出願第PCT/US2019/056214号(公開番号WO2020/117373)に記載され、これらの両方は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0314】
5.6 各方法におけるADCの投与量
いくつかの実施形態では、がんの予防及び/または治療に有効な予防薬もしくは治療薬(例えば、本明細書に提供される抗体薬物複合体)、または本明細書に提供される医薬組成物の量は、標準的な臨床技術によって決定することができる。いくつかの実施形態では、有効量は、in vitroまたは動物モデル試験系から誘導された用量反応曲線から外挿することができる。製剤に採用される正確な用量は、投与経路や対象のがんの重症度によっても異なり、医師の判断と各患者の状況に応じて決定されるべきものであることを理解される。
【0315】
いくつかの実施形態では、本節(第5.6節)において様々な投与量が記載される方法のADCは、エンホルツマブベドチン(EV)である。
【0316】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される医薬組成物に製剤化された抗体薬物複合体の患者への投与経路は、経鼻、筋肉内、静脈内、またはそれらの組み合わせであるが、本明細書に記載される他の経路も許容される。各用量は、同一の投与経路によって投与されてもされなくてもよい。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される医薬組成物中に配合される抗体薬物複合体は、1つ以上の追加の治療薬の他の用量と同時に、または後に、複数の投与経路を介して投与することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される抗体薬物複合体を含む医薬組成物は、膀胱内に投与される。
【0317】
本明細書に提供される抗体薬物複合体を含む医薬組成物に関して、ADCの有効量は、約10mL~約100mLの注入容量で、約10mg~約1000mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約10mL~約100mLの注入容量で、約125mg~約950mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約10mL~約100mLの注入容量で、約125mg~約900mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約10mL~約100mLの注入容量で、約125mg~約850mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約10mL~約100mLの注入容量で、約125mg~約800mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約10mL~約100mLの注入容量で、約125mg~約750mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約25mLの注入容量で、約125mg~約750mgの用量である。
【0318】
いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約10mg~約1000mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約50mg~約1000mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約100mg~約900mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約125mg~約900mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約125mg~約850mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約125mg~約800mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約125mg~約750mgの用量である。
【0319】
いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約100mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約125mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約150mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約200mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約250mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約300mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約350mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約400mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約450mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約500mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約550mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約600mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約650mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約700mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約750mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約800mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約850mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約900mgの用量である。
【0320】
いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、100mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、125mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、150mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、200mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、250mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、300mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、350mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、400mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、450mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、500mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、550mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、600mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、650mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、700mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、750mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、800mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、850mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、900mgの用量である。
【0321】
いくつかの実施形態では、注入容量は約10mL~約100mLである。いくつかの実施形態では、注入容量は約10mL~約50mLである。いくつかの実施形態では、注入容量は約15mL~約30mLである。いくつかの実施形態では、注入容量は約10mLである。いくつかの実施形態では、注入容量は約15mLである。いくつかの実施形態では、注入容量は約20mLである。いくつかの実施形態では、注入容量は約25mLである。いくつかの実施形態では、注入容量は約30mLである。いくつかの実施形態では、注入容量は約35mLである。いくつかの実施形態では、注入容量は約40mLである。いくつかの実施形態では、注入容量は約45mLである。いくつかの実施形態では、注入容量は約50mLである。いくつかの実施形態では、注入容量は約55mLである。いくつかの実施形態では、注入容量は約60mLである。いくつかの実施形態では、注入容量は約65mLである。いくつかの実施形態では、注入容量は約70mLである。いくつかの実施形態では、注入容量は約75mLである。いくつかの実施形態では、注入容量は約80mLである。いくつかの実施形態では、注入容量は約85mLである。いくつかの実施形態では、注入容量は約90mLである。いくつかの実施形態では、注入容量は約95mLである。いくつかの実施形態では、注入容量は約100mLである。
【0322】
いくつかの実施形態では、注入容量は10mLである。いくつかの実施形態では、注入容量は15mLである。いくつかの実施形態では、注入容量は20mLである。いくつかの実施形態では、注入容量は25mLである。いくつかの実施形態では、注入容量は30mLである。いくつかの実施形態では、注入容量は35mLである。いくつかの実施形態では、注入容量は40mLである。いくつかの実施形態では、注入容量は45mLである。いくつかの実施形態では、注入容量は50mLである。いくつかの実施形態では、注入容量は55mLである。いくつかの実施形態では、注入容量は60mLである。いくつかの実施形態では、注入容量は65mLである。いくつかの実施形態では、注入容量は70mLである。いくつかの実施形態では、注入容量は75mLである。いくつかの実施形態では、注入容量は80mLである。いくつかの実施形態では、注入容量は85mLである。いくつかの実施形態では、注入容量は90mLである。いくつかの実施形態では、注入容量は95mLである。いくつかの実施形態では、注入容量は100mLである。
【0323】
いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約10mLの注入容量で、約100mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約10mLの注入容量で、約125mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約10mLの注入容量で、約150mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約10mLの注入容量で、約200mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約10mLの注入容量で、約250mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約10mLの注入容量で、約300mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約10mLの注入容量で、約350mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約10mLの注入容量で、約400mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約10mLの注入容量で、約450mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約10mLの注入容量で、約500mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約10mLの注入容量で、約550mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約10mLの注入容量で、約600mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約10mLの注入容量で、約650mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約10mLの注入容量で、約700mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約10mLの注入容量で、約750mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約10mLの注入容量で、約800mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約10mLの注入容量で、約850mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約10mLの注入容量で、約900mgの用量である。
【0324】
いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、10mLの注入容量で、100mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、10mLの注入容量で、125mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、10mLの注入容量で、150mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、10mLの注入容量で、200mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、10mLの注入容量で、250mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、10mLの注入容量で、300mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、10mLの注入容量で、350mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、10mLの注入容量で、400mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、10mLの注入容量で、450mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、10mLの注入容量で、500mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、10mLの注入容量で、550mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、10mLの注入容量で、600mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、10mLの注入容量で、650mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、10mLの注入容量で、700mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、10mLの注入容量で、750mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、10mLの注入容量で、800mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、10mLの注入容量で、850mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、10mLの注入容量で、900mgの用量である。
【0325】
いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約15mLの注入容量で、約100mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約15mLの注入容量で、約125mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約15mLの注入容量で、約150mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約15mLの注入容量で、約200mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約15mLの注入容量で、約250mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約15mLの注入容量で、約300mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約15mLの注入容量で、約350mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約15mLの注入容量で、約400mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約15mLの注入容量で、約450mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約15mLの注入容量で、約500mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約15mLの注入容量で、約550mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約15mLの注入容量で、約600mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約15mLの注入容量で、約650mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約15mLの注入容量で、約700mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約15mLの注入容量で、約750mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約15mLの注入容量で、約800mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約15mLの注入容量で、約850mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約15mLの注入容量で、約900mgの用量である。
【0326】
いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、15mLの注入容量で、100mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、15mLの注入容量で、125mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、15mLの注入容量で、150mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、15mLの注入容量で、200mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、15mLの注入容量で、250mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、15mLの注入容量で、300mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、15mLの注入容量で、350mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、15mLの注入容量で、400mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、15mLの注入容量で、450mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、15mLの注入容量で、500mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、15mLの注入容量で、550mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、15mLの注入容量で、600mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、15mLの注入容量で、650mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、15mLの注入容量で、700mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、15mLの注入容量で、750mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、15mLの注入容量で、800mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、15mLの注入容量で、850mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、15mLの注入容量で、900mgの用量である。
【0327】
いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約20mLの注入容量で、約100mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約20mLの注入容量で、約125mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約20mLの注入容量で、約150mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約20mLの注入容量で、約200mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約20mLの注入容量で、約250mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約20mLの注入容量で、約300mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約20mLの注入容量で、約350mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約20mLの注入容量で、約400mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約20mLの注入容量で、約450mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約20mLの注入容量で、約500mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約20mLの注入容量で、約550mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約20mLの注入容量で、約600mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約20mLの注入容量で、約650mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約20mLの注入容量で、約700mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約20mLの注入容量で、約750mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約20mLの注入容量で、約800mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約20mLの注入容量で、約850mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約20mLの注入容量で、約900mgの用量である。
【0328】
いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、20mLの注入容量で、100mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、20mLの注入容量で、125mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、20mLの注入容量で、150mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、20mLの注入容量で、200mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、20mLの注入容量で、250mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、20mLの注入容量で、300mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、20mLの注入容量で、350mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、20mLの注入容量で、400mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、20mLの注入容量で、450mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、20mLの注入容量で、500mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、20mLの注入容量で、550mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、20mLの注入容量で、600mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、20mLの注入容量で、650mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、20mLの注入容量で、700mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、20mLの注入容量で、750mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、20mLの注入容量で、800mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、20mLの注入容量で、850mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、20mLの注入容量で、900mgの用量である。
【0329】
いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約25mLの注入容量で、約100mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約25mLの注入容量で、約125mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約25mLの注入容量で、約150mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約25mLの注入容量で、約200mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約25mLの注入容量で、約250mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約25mLの注入容量で、約300mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約25mLの注入容量で、約350mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約25mLの注入容量で、約400mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約25mLの注入容量で、約450mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約25mLの注入容量で、約500mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約25mLの注入容量で、約550mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約25mLの注入容量で、約600mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約25mLの注入容量で、約650mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約25mLの注入容量で、約700mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約25mLの注入容量で、約750mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約25mLの注入容量で、約800mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約25mLの注入容量で、約850mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約25mLの注入容量で、約900mgの用量である。
【0330】
いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、25mLの注入容量で、100mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、25mLの注入容量で、125mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、25mLの注入容量で、150mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、25mLの注入容量で、200mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、25mLの注入容量で、250mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、25mLの注入容量で、300mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、25mLの注入容量で、350mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、25mLの注入容量で、400mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、25mLの注入容量で、450mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、25mLの注入容量で、500mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、25mLの注入容量で、550mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、25mLの注入容量で、600mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、25mLの注入容量で、650mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、25mLの注入容量で、700mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、25mLの注入容量で、750mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、25mLの注入容量で、800mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、25mLの注入容量で、850mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、25mLの注入容量で、900mgの用量である。
【0331】
いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約30mLの注入容量で、約100mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約30mLの注入容量で、約125mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約30mLの注入容量で、約150mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約30mLの注入容量で、約200mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約30mLの注入容量で、約250mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約30mLの注入容量で、約300mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約30mLの注入容量で、約350mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約30mLの注入容量で、約400mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約30mLの注入容量で、約450mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約30mLの注入容量で、約500mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約30mLの注入容量で、約550mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約30mLの注入容量で、約600mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約30mLの注入容量で、約650mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約30mLの注入容量で、約700mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約30mLの注入容量で、約750mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約30mLの注入容量で、約800mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約30mLの注入容量で、約850mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約30mLの注入容量で、約900mgの用量である。
【0332】
いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、30mLの注入容量で、100mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、30mLの注入容量で、125mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、30mLの注入容量で、150mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、30mLの注入容量で、200mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、30mLの注入容量で、250mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、30mLの注入容量で、300mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、30mLの注入容量で、350mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、30mLの注入容量で、400mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、30mLの注入容量で、450mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、30mLの注入容量で、500mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、30mLの注入容量で、550mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、30mLの注入容量で、600mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、30mLの注入容量で、650mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、30mLの注入容量で、700mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、30mLの注入容量で、750mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、30mLの注入容量で、800mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、30mLの注入容量で、850mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、30mLの注入容量で、900mgの用量である。
【0333】
いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約35mLの注入容量で、約100mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約35mLの注入容量で、約125mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約35mLの注入容量で、約150mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約35mLの注入容量で、約200mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約35mLの注入容量で、約250mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約35mLの注入容量で、約300mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約35mLの注入容量で、約350mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約35mLの注入容量で、約400mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約35mLの注入容量で、約450mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約35mLの注入容量で、約500mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約35mLの注入容量で、約550mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約35mLの注入容量で、約600mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約35mLの注入容量で、約650mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約35mLの注入容量で、約700mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約35mLの注入容量で、約750mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約35mLの注入容量で、約800mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約35mLの注入容量で、約850mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約35mLの注入容量で、約900mgの用量である。
【0334】
いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、35mLの注入容量で、100mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、35mLの注入容量で、125mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、35mLの注入容量で、150mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、35mLの注入容量で、200mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、35mLの注入容量で、250mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、35mLの注入容量で、300mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、35mLの注入容量で、350mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、35mLの注入容量で、400mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、35mLの注入容量で、450mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、35mLの注入容量で、500mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、35mLの注入容量で、550mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、35mLの注入容量で、600mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、35mLの注入容量で、650mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、35mLの注入容量で、700mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、35mLの注入容量で、750mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、35mLの注入容量で、800mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、35mLの注入容量で、850mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、35mLの注入容量で、900mgの用量である。
【0335】
いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約40mLの注入容量で、約100mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約40mLの注入容量で、約125mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約40mLの注入容量で、約150mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約40mLの注入容量で、約200mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約40mLの注入容量で、約250mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約40mLの注入容量で、約300mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約40mLの注入容量で、約350mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約40mLの注入容量で、約400mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約40mLの注入容量で、約450mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約40mLの注入容量で、約500mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約40mLの注入容量で、約550mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約40mLの注入容量で、約600mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約40mLの注入容量で、約650mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約40mLの注入容量で、約700mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約40mLの注入容量で、約750mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約40mLの注入容量で、約800mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約40mLの注入容量で、約850mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約40mLの注入容量で、約900mgの用量である。
【0336】
いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、40mLの注入容量で、100mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、40mLの注入容量で、125mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、40mLの注入容量で、150mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、40mLの注入容量で、200mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、40mLの注入容量で、250mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、40mLの注入容量で、300mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、40mLの注入容量で、350mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、40mLの注入容量で、400mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、40mLの注入容量で、450mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、40mLの注入容量で、500mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、40mLの注入容量で、550mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、40mLの注入容量で、600mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、40mLの注入容量で、650mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、40mLの注入容量で、700mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、40mLの注入容量で、750mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、40mLの注入容量で、800mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、40mLの注入容量で、850mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、40mLの注入容量で、900mgの用量である。
【0337】
いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約45mLの注入容量で、約100mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約45mLの注入容量で、約125mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約45mLの注入容量で、約150mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約45mLの注入容量で、約200mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約45mLの注入容量で、約250mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約45mLの注入容量で、約300mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約45mLの注入容量で、約350mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約45mLの注入容量で、約400mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約45mLの注入容量で、約450mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約45mLの注入容量で、約500mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約45mLの注入容量で、約550mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約45mLの注入容量で、約600mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約45mLの注入容量で、約650mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約45mLの注入容量で、約700mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約45mLの注入容量で、約750mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約45mLの注入容量で、約800mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約45mLの注入容量で、約850mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約45mLの注入容量で、約900mgの用量である。
【0338】
いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、45mLの注入容量で、100mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、45mLの注入容量で、125mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、45mLの注入容量で、150mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、45mLの注入容量で、200mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、45mLの注入容量で、250mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、45mLの注入容量で、300mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、45mLの注入容量で、350mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、45mLの注入容量で、400mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、45mLの注入容量で、450mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、45mLの注入容量で、500mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、45mLの注入容量で、550mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、45mLの注入容量で、600mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、45mLの注入容量で、650mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、45mLの注入容量で、700mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、45mLの注入容量で、750mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、45mLの注入容量で、800mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、45mLの注入容量で、850mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、45mLの注入容量で、900mgの用量である。
【0339】
いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約50mLの注入容量で、約100mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約50mLの注入容量で、約125mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約50mLの注入容量で、約150mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約50mLの注入容量で、約200mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約50mLの注入容量で、約250mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約50mLの注入容量で、約300mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約50mLの注入容量で、約350mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約50mLの注入容量で、約400mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約50mLの注入容量で、約450mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約50mLの注入容量で、約500mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約50mLの注入容量で、約550mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約50mLの注入容量で、約600mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約50mLの注入容量で、約650mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約50mLの注入容量で、約700mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約50mLの注入容量で、約750mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約50mLの注入容量で、約800mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約50mLの注入容量で、約850mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、約50mLの注入容量で、約900mgの用量である。
【0340】
いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、50mLの注入容量で、100mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、50mLの注入容量で、125mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、50mLの注入容量で、150mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、50mLの注入容量で、200mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、50mLの注入容量で、250mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、50mLの注入容量で、300mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、50mLの注入容量で、350mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、50mLの注入容量で、400mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、50mLの注入容量で、450mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、50mLの注入容量で、500mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、50mLの注入容量で、550mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、50mLの注入容量で、600mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、50mLの注入容量で、650mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、50mLの注入容量で、700mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、50mLの注入容量で、750mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、50mLの注入容量で、800mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、50mLの注入容量で、850mgの用量である。いくつかの実施形態では、ADCの有効量は、50mLの注入容量で、900mgの用量である。
【0341】
いくつかの実施形態では、各膀胱内投与の最大滞留時間は約120分である。いくつかの実施形態では、各膀胱内投与の最大滞留時間は約90分である。いくつかの実施形態では、各膀胱内投与の最大滞留時間は、対象の許容滞留時間である。いくつかの実施形態では、各膀胱内投与の最大滞留時間は、約30分間~約120分間である。いくつかの実施形態では、各膀胱内投与の最大滞留時間は、約30分間~約90分間である。いくつかの実施形態では、各膀胱内投与の滞留時間は約30分間である。いくつかの実施形態では、各膀胱内投与の滞留時間は約40分間である。いくつかの実施形態では、各膀胱内投与の滞留時間は約50分間である。いくつかの実施形態では、各膀胱内投与の滞留時間は約60分間である。いくつかの実施形態では、各膀胱内投与の滞留時間は約70分間である。いくつかの実施形態では、各膀胱内投与の滞留時間は約80分間である。いくつかの実施形態では、各膀胱内投与の滞留時間は約90分間である。いくつかの実施形態では、各膀胱内投与の滞留時間は約100分間である。いくつかの実施形態では、各膀胱内投与の滞留時間は約110分間である。いくつかの実施形態では、各膀胱内投与の滞留時間は約120分間である。いくつかの実施形態では、各膀胱内投与の滞留時間は30分間である。いくつかの実施形態では、各膀胱内投与の滞留時間は40分間である。いくつかの実施形態では、各膀胱内投与の滞留時間は50分間である。いくつかの実施形態では、各膀胱内投与の滞留時間は60分間である。いくつかの実施形態では、各膀胱内投与の滞留時間は70分間である。いくつかの実施形態では、各膀胱内投与の滞留時間は80分間である。いくつかの実施形態では、各膀胱内投与の滞留時間は90分間である。いくつかの実施形態では、各膀胱内投与の滞留時間は100分間である。いくつかの実施形態では、各膀胱内投与の滞留時間は110分間である。いくつかの実施形態では、各膀胱内投与の滞留時間は120分間である。
【0342】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される抗体薬物複合体を含む医薬組成物は、誘導段階中に膀胱内に投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される抗体薬物複合体を含む医薬組成物は、維持段階中に膀胱内に投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される抗体薬物複合体を含む医薬組成物は、2つの段階中に膀胱内に投与され、ここで、2つの段階は誘導段階及び維持段階である。いくつかの実施形態では、維持段階は、誘導段階の後に開始する。いくつかの実施形態では、維持段階は、誘導段階の6~10週間後、6~9週間後、または6~8週間後に開始する。いくつかの実施形態では、維持段階は、誘導段階の10週間後に開始する。いくつかの実施形態では、維持段階は、誘導段階の9週間後に開始する。いくつかの実施形態では、維持段階は、誘導段階の8週間後に開始する。いくつかの実施形態では、維持段階は、誘導段階の7週間後に開始する。いくつかの実施形態では、維持段階は、誘導段階の6週間後に開始する。
【0343】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される抗体薬物複合体を含む医薬組成物は、約1~約25回投与され、用量は、必要に応じて、例えば、毎週、隔週、毎月、隔月、3ヵ月毎など、医師によって決定されるように投与され得る。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される抗体薬物複合体を含む医薬組成物は、毎週投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される抗体薬物複合体を含む医薬組成物は、隔週投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される抗体薬物複合体を含む医薬組成物は、毎月投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される抗体薬物複合体を含む医薬組成物は、隔月投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される抗体薬物複合体を含む医薬組成物は、3ヵ月毎に投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される抗体薬物複合体を含む医薬組成物は、NMIBCを治療するために25回、24回、23回、22回、21回、20回、19回、18回、17回、16回、15回、14回、13回、12回、11回、10回、9回、8回、7回、6回、5回、4回、3回、2回または1回投与され、用量は、約10mL~約100mLの注入容量で約10mg~約1000mgである。
【0344】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される抗体薬物複合体を含む医薬組成物は、誘導段階中に、週に1回、4週間にわたり膀胱内に投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される抗体薬物複合体を含む医薬組成物は、誘導段階中に、週に1回、5週間にわたり膀胱内に投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される抗体薬物複合体を含む医薬組成物は、誘導段階中に、週に1回、6週間にわたり膀胱内に投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される抗体薬物複合体を含む医薬組成物は、誘導段階中に、週に1回、7週間にわたり膀胱内に投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される抗体薬物複合体を含む医薬組成物は、誘導段階中に、週に1回、8週間にわたり膀胱内に投与される。
【0345】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される抗体薬物複合体を含む医薬組成物は、維持段階中に、月に1回、6ヵ月間にわたり膀胱内に投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される抗体薬物複合体を含む医薬組成物は、維持段階中に、月に1回、7ヵ月間にわたり膀胱内に投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される抗体薬物複合体を含む医薬組成物は、維持段階中に、月に1回、8ヵ月間にわたり膀胱内に投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される抗体薬物複合体を含む医薬組成物は、維持段階中に、月に1回、9ヵ月間にわたり膀胱内に投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される抗体薬物複合体を含む医薬組成物は、維持段階中に、月に1回、10ヵ月間にわたり膀胱内に投与される。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される抗体薬物複合体を含む医薬組成物は、維持段階中に、月に1回、11ヵ月間にわたり膀胱内に投与される。
【0346】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される抗体薬物複合体を含む医薬組成物は、誘導段階中に、週に1回6週間にわたり、維持段階中で月に1回9ヵ月間にわたり、膀胱内に投与され、維持段階は、誘導段階の6~10週間後、6~9週間後、または6~8週間後に開始する。
【0347】
本明細書に提供される方法のより具体的な実施形態では、ADCは以下の構造を有する:
式中、L-は抗体またはその抗原結合断片を表し、pは約3~約4であり、該抗体は、配列番号7の20番目のアミノ酸(グルタミン酸)から466番目のアミノ酸(リジン)までの範囲にわたるアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号8の23番目のアミノ酸(アスパラギン酸)から236番目のアミノ酸(システイン)までの範囲にわたるアミノ酸配列を含む軽鎖とを含み、ここで、該ADCは、約125mgの用量で、約25mLの点滴注入量及び最大90分間の滞留時間で膀胱内投与され、該用量は、誘導段階中の6週間にわたって週に1回、および維持段階中の9ヵ月間にわたって月に1回膀胱内投与され、維持段階は、誘導段階の6~10週間後に開始する。
【0348】
本明細書に提供される方法のより具体的な実施形態では、ADCは以下の構造を有する:
式中、L-は抗体またはその抗原結合断片を表し、pは約3~約4であり、該抗体は、配列番号7の20番目のアミノ酸(グルタミン酸)から466番目のアミノ酸(リジン)までの範囲にわたるアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号8の23番目のアミノ酸(アスパラギン酸)から236番目のアミノ酸(システイン)までの範囲にわたるアミノ酸配列を含む軽鎖とを含み、ここで、該ADCは、約250mgの用量で、約25mLの点滴注入量及び最大90分間の滞留時間で膀胱内投与され、該用量は、誘導段階中の6週間にわたって週に1回、および維持段階中の9ヵ月間にわたって月に1回膀胱内投与され、維持段階は、誘導段階の6~10週間後に開始する。
【0349】
本明細書に提供される方法のより具体的な実施形態では、ADCは以下の構造を有する:
式中、L-は抗体またはその抗原結合断片を表し、pは約3~約4であり、該抗体は、配列番号7の20番目のアミノ酸(グルタミン酸)から466番目のアミノ酸(リジン)までの範囲にわたるアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号8の23番目のアミノ酸(アスパラギン酸)から236番目のアミノ酸(システイン)までの範囲にわたるアミノ酸配列を含む軽鎖とを含み、ここで、該ADCは、約500mgの用量で、約25mLの点滴注入量及び最大90分間の滞留時間で膀胱内投与され、該用量は、誘導段階中の6週間にわたって週に1回、および維持段階中の9ヵ月間にわたって月に1回膀胱内投与され、維持段階は、誘導段階の6~10週間後に開始する。
【0350】
本明細書に提供される方法のより具体的な実施形態では、ADCは以下の構造を有する:
式中、L-は抗体またはその抗原結合断片を表し、pは約3~約4であり、該抗体は、配列番号7の20番目のアミノ酸(グルタミン酸)から466番目のアミノ酸(リジン)までの範囲にわたるアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号8の23番目のアミノ酸(アスパラギン酸)から236番目のアミノ酸(システイン)までの範囲にわたるアミノ酸配列を含む軽鎖とを含み、ここで、該ADCは、約750mgの用量で、約25mLの点滴注入量及び最大90分間の滞留時間で膀胱内投与され、該用量は、誘導段階中の6週間にわたって週に1回、および維持段階中の9ヵ月間にわたって月に1回膀胱内投与され、維持段階は、誘導段階の6~10週間後に開始する。
【0351】
5.7 バイオマーカーを決定する方法
本開示では、本明細書で提供されるマーカーのいずれの発現も、当技術分野において公知である種々の方法によって決定できることを規定する。いくつかの実施形態では、マーカーの発現は、マーカー遺伝子から転写されたmRNAの量または相対量によって決定することができる。一実施形態では、マーカー遺伝子の発現は、マーカー遺伝子がコードするタンパク質産物の量または相対量によって決定することができる。別の実施形態では、マーカー遺伝子の発現は、マーカー遺伝子がコードするタンパク質産物によって誘発される生物学的または化学的な応答のレベルによって決定することができる。加えて、特定の実施形態では、マーカー遺伝子の発現は、マーカー遺伝子の発現と相関する1つまたは複数の遺伝子の発現によって決定することができる。
【0352】
上記のように、マーカー遺伝子の遺伝子転写物(例えば、mRNA)のレベルまたは量をマーカー遺伝子の発現レベルの代用として使用することができる。本明細書に例示されるものを含め、多数の異なるPCRまたはqPCRプロトコルが当技術分野において公知である。いくつかの実施形態では、種々のマーカー遺伝子のmRNAレベルを決定するために、種々のPCR法またはqPCR法が適用または適合される。定量的PCR(qPCR)(リアルタイムPCRとも称される)は、定量的測定のみならず、時間及び汚染の低減も提供するため、いくつかの実施形態に適用及び適合される。本明細書で使用される場合、「定量的PCR(または「qPCR」)」は、反応生成物のサンプリングの反復を必要とせずに、PCR増幅の進行が発生している時に直接モニタリングすることを指す。定量的PCRでは、シグナルがバックグラウンドレベルを超え、反応がプラトーに達する前に、生成され、追跡された反応生成物をシグナル伝達機構(例えば、蛍光)を介してモニタリングすることができる。検出可能なレベルまたは「閾値」レベルの蛍光を達成するのに必要なサイクル数は、PCRプロセス開始時の増幅可能な標的の濃度と正比例しており、試料中の標的核酸量のリアルタイムな測定値を示すシグナル強度の測定が可能である。mRNAの発現レベルの決定にqPCRを適用する場合、mRNAからDNAへの逆転写という追加工程をqPCR分析の前に実施する。PCR法の例は、文献(Wong et al.,BioTechniques 39:75-85(2005);D’haene et al.,Methods 50:262-270(2010))で参照することができ、これらは、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。PCRアッセイの例も、米国特許第6,927,024号で参照でき、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。RT-PCR法の例は、米国特許第7,122,799号で参照でき、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。蛍光in situ PCRの方法は、米国特許第7,186,507号に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0353】
具体的な一実施形態では、qPCRを実施して、マーカー遺伝子のmRNAレベルを以下のように決定または測定することができる。簡潔には、マーカー遺伝子及び1つまたは複数のハウスキーピング遺伝子についての複製qPCR反応の平均Ct(サイクル閾値)値(または本明細書で同義にCq(定量サイクル)と称する)を決定する。次に、以下の例示的な式:マーカー遺伝子ΔCt=(マーカー遺伝子の平均Ct-ハウスキーピング遺伝子Aの平均Ct)を使用して、ハウスキーピング遺伝子のCt値に対してマーカー遺伝子の平均Ct値を正規化することができる。次に、相対マーカー遺伝子ΔCtを用いて、例えば、mRNA発現=2-△Ctの式を使用することによりマーカー遺伝子mRNAの相対レベルを決定することができる。Ct値及びCq値の概要については、MIQEガイドライン(Bustin et al.,The MIQE Guidelines:Minimum Information for Publication of Quantitative Real-Time PCR Experiments,Clinical Chemistry 55:4(2009))を参照のこと。
【0354】
当技術分野において公知である他の一般的な使用方法を、マーカー遺伝子の発現の代用として試料中のマーカー遺伝子のRNA転写物の定量化に使用することができ、これには、ノーザンブロッティング及びin situハイブリダイゼーション(Parker & Barnes,Methods in Molecular Biology 106:247-283(1999));RNAse保護アッセイ(Hod,Biotechniques 13:852- 854(1992));マイクロアレイ(Hoheisel et al.,Nature Reviews Genetics 7:200-210(2006);Jaluria et al.,Microbial Cell Factories 6:4(2007));及びポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(Weis et al,Trends in Genetics 8:263-264(1992))が含まれる。RNA in situハイブリダイゼーション(ISH)とは、細胞及び組織の状況を維持しながら、血中循環腫瘍細胞(CTC)または組織切片などの細胞内の特定のRNA配列、例えば、メッセンジャーRNA(mRNA)、ロングノンコーディングRNA(lncRNA)、及びマイクロRNA(miRNA)を測定及び局在検出するために広範に使用されている分子生物学手法である。ISHは、プローブなどの直接的または間接的に標識された相補的DNAまたはRNA鎖を使用して、試料中、特に組織または細胞の部分または切片中(in situ)のDNAまたはRNAなどの特定の核酸に結合させ、局在化させるハイブリダイゼーションの一種である。プローブの種類は、二本鎖DNA(dsDNA)、一本鎖DNA(ssDNA)、一本鎖相補的RNA(sscRNA)、メッセンジャーRNA(mRNA)、マイクロRNA(miRNA)、リボソームRNA、ミトコンドリアRNA、及び/または合成オリゴヌクレオチドであり得る。「蛍光in situハイブリダイゼーション」または「FISH」という用語は、蛍光標識を利用するISHの一種を指す。「発色in situハイブリダイゼーション」または「CISH」という用語は、発色標識を用いたISHの一種を指す。ISH法、FISH法、及びCISH法は、当業者に周知されている(例えば、Stoler,Clinics in Laboratory Medicine 10(1):215-236(1990);In situ hybridization.A practical approach,Wilkinson,ed.,IRL Press,Oxford(1992);Schwarzacher and Heslop-Harrison,Practical in situ hybridization,BIOS Scientific Publishers Ltd,Oxford(2000)を参照)。したがって、RNA ISHは、細胞及び組織内の遺伝子発現の時空間的可視化ならびに定量化を可能にする。これは、研究及び診断において広範に応用されている(Hu et al.,Biomark.Res.2(1):1-13,doi:10.1186/2050-7771-2-3(2014);Ratan et al.,Cureus 9(6):e1325.doi:10.7759/cureus.1325(2017);Weier et al.,Expert Rev.Mol.Diagn.2(2):109-119(2002))。蛍光RNA ISHは、RNAの標識及び検出にそれぞれ蛍光色素及び蛍光顕微鏡を利用する。蛍光RNA ISHは、4~5個の標的配列の多重化を可能にすることができる。
【0355】
あるいは、マーカー遺伝子の発現の代用として試料中のマーカー遺伝子のRNA転写物を配列決定技術によって決定することができる。配列決定に基づく遺伝子発現解析の代表的な方法として、Serial Analysis of Gene Expression(SAGE)、及びmassively parallel signature sequencing(MPSS)による遺伝子発現解析が挙げられる。
【0356】
いくつかの実施形態では、転写された全RNAのプール中でのマーカー遺伝子のRNA転写物(例えば、mRNAを含む)の相対的存在量によってマーカー遺伝子の発現を決定することができる。マーカー遺伝子のRNA転写物のそのような相対的存在量は、RNA-seqとして公知である次世代シーケンシングによって決定することができる。RNA-seq手順の一例では、異なる供給源(血液、組織、細胞)からのRNAを精製し、場合により濃縮し(例えば、オリゴ(dT)プライマーを用いる)、cDNAに変換し、断片化する。ランダムに断片化されたcDNAライブラリから、数百万または数十億もの短い配列リードが生成される。Zhao et al.BMC genomics 16:97(2015);Zhao et al.Scientific Reports 8:4781(2018);Shanrong Zhao et al.,RNA,2020年4月13日事前公開,doi:10.1261/rna.074922.120(これらは全て、その全体が参照により本明細書に組み入れられる)を参照のこと。マーカー遺伝子の各mRNA転写物の発現レベルは、正規化時にマッピングされた断片の総数によって決定され、これはその存在量レベルと正比例する。いくつかの正規化法が公知であり、これを使用すると、遺伝子発現を決定するパラメータとしてRNA転写物の存在量を使用しやすくなる。正規化法には、RPKM(Reads Per Kilobase Million)、FPKM(Fragments Per Kilobase Million)、及び/またはTPM(Transcripts Per Kilobase Million)がある。簡潔には、RPKMは次のように計算することができる。試料の総リード数を計数し、その数を1,000,000で割る。これは「100万あたりの」換算係数である。リード数を「100万あたりの」換算係数で割る。これをシーケンス深度に対して正規化し、100万あたりのリード数(RPM)を得て、RPM値を遺伝子深度(キロベース単位)で割ると、RPKMが得られる。FPKMは、リードが断片に置き換わる以外、RPKMと密に関連する。RPKMはシングルエンドRNA-seq用に作成されたものであり、リードはどれもシーケンスされた1つの断片に対応する。FPKMはペアエンドRNA-seq用に作成されたものであり、1つの断片に2つのリードが対応するか、あるいはペアのうち片方のリードがマッピングされなかった場合、1つの断片に1つのリードが対応する。TPMは、RPKM及びFPKMと酷似しており、次のように計算される。リード数を各遺伝子長(キロベース単位)で割り、キロベースあたりのリード(RPK)を得る。試料のRPK値を据えて計数し、その数を1,000,000で割り、「100万あたりの」換算係数を得る。RPK値を「100万あたりの」換算係数で割ると、TPMが得られる。Zhao et al.BMC genomics 16:97(2015);Zhao et al.Scientific Reports 8:4781(2018);Shanrong Zhao et al.,RNA,2020年4月13日事前公開,doi:10.1261/rna.074922.120(これらは全て、その全体が参照により本明細書に組み入れられる)を参照のこと。
【0357】
一実施形態では、マーカー遺伝子の発現は、RNA-seq、例えば、TPM、RPKM、及び/またはFPKMによって決定される。いくつかの実施形態では、マーカー遺伝子の発現は、TPMによって決定される。いくつかの実施形態では、マーカー遺伝子の発現は、RPKMによって決定される。いくつかの実施形態では、マーカー遺伝子の発現は、FPKMによって決定される。
【0358】
先述のように、マーカー遺伝子の発現は、対象からの試料において決定することができる。いくつかの実施形態では、試料は、血液試料、血清試料、血漿試料、体液(例えば、がんの組織液を含む組織液)、または組織(例えば、がん組織またはがん周辺組織)である。いくつかの実施形態では、試料は組織試料である。いくつかの実施形態では、組織試料は、哺乳動物、特にヒトから単離または抽出された組織画分である。いくつかの実施形態では、組織試料は、哺乳動物、特にヒトから単離または抽出された細胞の集団である。いくつかの実施形態では、組織試料は、生検から得た試料である。特定の実施形態では、ヒト対象を含む対象の様々な臓器から試料を得ることができる。いくつかの実施形態では、試料は、がんを有する対象の臓器から得られる。いくつかの実施形態では、試料は、がんを有する対象の、がんを有する臓器から得られる。他の実施形態では、試料、例えば参照試料は、患者または第2のヒト対象の正常な臓器から得られる。
【0359】
本明細書で提供される方法の特定の実施形態では、組織として、膀胱、尿管、乳房、肺、結腸、直腸、卵巣、卵管、食道、子宮頸部、子宮内膜、皮膚、喉頭、骨髄、唾液腺、腎臓、前立腺、脳、脊髄、胎盤、副腎、膵臓、副甲状腺、下垂体、精巣、甲状腺、脾臓、扁桃腺、胸腺、心臓、胃、小腸、肝臓、骨格筋、末梢神経、中皮、または眼からの組織が挙げられる。
【0360】
本明細書で提供される方法のさらなる実施形態では、種々のマーカー遺伝子の発現を、当技術分野において公知である様々なイムノアッセイによって検出することができ、これには、免疫組織化学(IHC)アッセイ、イムノブロッティングアッセイ、FACSアッセイ、及びELISAが含まれる。
【0361】
様々なIHCアッセイにおいて、種々のマーカー遺伝子の発現を、マーカー遺伝子がコードするタンパク質産物に対する抗体によって検出することができる。組織切片のIHC染色は、試料中のタンパク質の存在を評価または検出する信頼性の高い方法であることが示されている。IHC技術は抗体を利用して、一般には発色法または蛍光法により、in situで細胞抗原をプローブ及び可視化する。マーカー遺伝子がコードするタンパク質産物を特異的に標的とするポリクローナル抗血清及びモノクローナル抗体などの一次抗体または抗血清を使用して、IHCアッセイでマーカー遺伝子の発現を検出することができる。いくつかの実施形態では、抗体と標的との結合が生じるのに十分な時間、特異的標的に対する一次抗体と組織試料を接触させる。詳細に先述したように、抗体は、例えば、放射性標識、蛍光標識、ビオチンなどのハプテン標識、または西洋ワサビペルオキシダーゼもしくはアルカリホスファターゼなどの酵素といった、抗体自体での直接標識によって検出することができる。あるいは、一次抗体に対して特異的な抗血清、ポリクローナル抗血清、またはモノクローナル抗体を含む標識二次抗体と組み合わせて、非標識一次抗体を使用する。IHCのプロトコル及びキットは当技術分野において周知されており、市販されている。スライド作製及びIHC処理の自動化システムが市販されている。Leica BOND Autostainer及びLeica Bond Refine Detectionシステムは、このような自動化システムの一例である。
【0362】
いくつかの実施形態では、IHCアッセイは、非標識一次抗体を標識二次抗体と組み合わせた間接アッセイで行われる。間接アッセイは、組織試料中の、マーカー遺伝子がコードするタンパク質産物の検出に2つの抗体を利用する。最初に、非結合一次抗体を組織に塗布し(第1層)、組織試料中の標的抗原と反応させる。次に、一次抗体の抗体アイソタイプを特異的に認識する酵素標識二次抗体を塗布する(第2層)。二次抗体が一次抗体と反応した後、基質-色原体を塗布する。第2層の抗体は、ペルオキシダーゼなどの酵素で標識することができる。この酵素は、色原体3,3’-ジアミノベンジジン(DAB)と反応して、反応部位に茶褐色の沈着物を生成する。この方法は、シグナル増幅システムを用いたシグナル増幅が見込まれるため、高感度かつ多用途である。
【0363】
特定の実施形態では、検出の感度を高めるために、シグナル増幅システムを使用することができる。本明細書で使用される「シグナル増幅システム」とは、結合した一次抗体または二次抗体を検出することで得られるシグナルを増加させるために使用できる試薬及び方法のシステムを意味する。シグナル増幅システムは、標的タンパク質検出の感度を高め、検出シグナルを増加させ、検出限界の下限を低下させる。シグナル増幅システムには、酵素標識システム及びマクロ標識システムを含む、数種のシグナル増幅システムがある。これらのシステム/手法は相互に排他的ではなく、組み合わせて使用すると相加効果が得られる。
【0364】
マクロ標識またはマクロ標識システムとは、共通の足場に付着または組み込まれる数十(例えば、フィコビリタンパク質)から数百万(例えば、蛍光マイクロスフィア)のナンバリングした標識の集合である。抗体などの標的特異的親和性試薬に足場を結合することができ、それにより、組み込まれた標識が結合時に標的と集合的に会合する。マクロ標識中の標識は、フルオロフォア、ハプテン、酵素、及び/または放射性同位体など、本明細書に記載の標識のいずれかであり得る。シグナル増幅システムの一実施形態では、標識鎖ポリマーを複合化した二次抗体を使用した。ポリマー技術は、デキストランのHRP酵素標識不活性「棘状」分子を利用したものであり、これには、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、50、またはそれ以上の二次抗体分子を付着させることができるため、システムがさらに高感度になる。
【0365】
酵素標識システムに基づくシグナル増幅システムは、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)またはアルカリホスファターゼなどの酵素の触媒活性を利用して、in situで標的タンパク質または核酸配列の高密度標識を生成する。一実施形態では、チラミドを使用してHRPのシグナルを増加させることができる。そのようなシステムでは、HRPにより、標識チラミド誘導体が反応性の高い、短寿命のチラミドラジカルに酵素的に変換される。次に、標識活性チラミドラジカルが、HRP-抗体-標的相互作用部位付近の残基(主にタンパク質チロシン残基のフェノール部分)に共有結合する。その結果、その部位での標識数が増幅され、シグナル局在の拡散関連損失が最小限に抑えられる。結果として、1倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、25倍、30倍、50倍、75倍、または100倍にシグナルを増幅することができる。当業者には公知であるように、チラミドの標識は、フルオロフォア、酵素、ハプテン、放射性同位体、及び/またはフォトフォアを含む、本明細書に記載の標識のいずれであってもよい。他の酵素に基づく反応を利用して、シグナル増幅を創出することもできる。例えば、アルカリホスファターゼには酵素標識蛍光(ELF)シグナル増幅を利用でき、その場合、アルカリホスファターゼは弱青色蛍光基質(ELF97ホスフェート)を酵素的に切断し、並外れて大きなストークスシフトと優れた光安定性を示す明黄緑色蛍光沈着物に変換する。チラミドに基づくシグナル増幅システムとELFシグナル増幅のいずれもが市販されており、例えば、ThermoFisher Scientific(Waltham,MA USA 02451)製のものがある。
【0366】
したがって、本明細書で提供される方法のいくつかの実施形態では、マーカー遺伝子の発現レベルは、シグナル増幅システムを使用するIHCを用いて検出される。いくつかの実施形態では、さらに標本を対比染色して、細胞要素及び細胞内要素を識別する。
【0367】
いくつかの実施形態では、マーカー遺伝子がコードするタンパク質産物の発現レベルを、イムノブロッティングアッセイを使用して、マーカー遺伝子がコードするタンパク質産物に対する抗体を用いて検出することもできる。イムノブロッティングアッセイのいくつかの実施形態では、タンパク質を電気泳動によって分離し、膜(通常はニトロセルロース膜またはPVDF膜)に転写する場合が多い(ただし、必ずしもそうである必要はない)。IHCアッセイと同様に、マーカー遺伝子がコードするタンパク質産物を特異的に標的とするポリクローナル抗血清及びモノクローナル抗体などの一次抗体または抗血清を使用して、マーカー遺伝子の発現を検出することができる。いくつかの実施形態では、抗体と抗原との結合が生じるのに十分な時間、特異的標的に対する一次抗体と膜を接触させ、結合抗体を、例えば、放射性標識、蛍光標識、ビオチンなどのハプテン標識、または西洋ワサビペルオキシダーゼもしくはアルカリホスファターゼなどの酵素といった、一次抗体自体での直接標識によって検出することができる。他の実施形態では、上記のような間接アッセイにおいて、一次抗体に対して特異的な標識二次抗体と組み合わせて非標識一次抗体を使用する。本明細書に記載されるように、二次抗体は、例えば、酵素、または蛍光標識、発光標識、比色標識、または放射性同位体などの他の検出可能な標識で標識することができる。イムノブロッティングのプロトコル及びキットは当技術分野において周知されており、市販されている。イムノブロッティング用の自動化システム、例えば、iBind Western Systems for Western blotting(ThermoFisher,Waltham,MA USA 02451)が市販されている。イムノブロッティングとしては、ウェスタンブロット、in-cellウェスタンブロット、及びドットブロットが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。ドットブロットは、タンパク質試料を電気泳動によって分離せず、膜に直接スポットする簡素化された手順である。in cellウェスタンブロットは、マイクロタイタープレートに細胞を播種し、細胞を固定/透過処理し、その後、一次標識一次抗体または非標識一次抗体、続いて本明細書に記載の標識二次抗体により検出することを伴う。
【0368】
他の実施形態では、マーカー遺伝子がコードするタンパク質産物の発現レベルは、蛍光活性化セルソーティング(FACS)アッセイを含むフローサイトメトリーアッセイにおいて、本明細書に記載の抗体を用いて検出することもできる。IHCアッセイまたはイムノブロッティングアッセイと同様に、FACSアッセイにおいて、マーカー遺伝子がコードするタンパク質産物を特異的に標的とするポリクローナル抗血清及びモノクローナル抗体などの一次抗体または抗血清を使用して、タンパク質の発現を検出することができる。いくつかの実施形態では、抗体と抗原との結合が生じるのに十分な時間、特異的標的タンパク質に対する一次抗体と共に細胞を染色し、結合抗体を、例えば、一次抗体上の蛍光標識またはビオチンなどのハプテン標識といった、一次抗体での直接標識によって検出することができる。他の実施形態では、上記のような間接アッセイにおいて、一次抗体に対して特異的な蛍光標識二次抗体と組み合わせて非標識一次抗体を使用する。FACSは、各細胞の特定の光散乱及び蛍光特性に基づいて、一度に1細胞ずつ、蛍光標識生体細胞の混合物を選別または分析する方法を提供する。例えば、フローサイトメーターは、標的タンパク質の発現レベルを示す蛍光色素タグ付き抗体の強度を検出して報告する。その結果、マーカー遺伝子がコードするタンパク質産物の発現レベルを、そのようなタンパク質産物に対する抗体を使用して検出することができる。非蛍光細胞質タンパク質もまた、透過処理された細胞を染色することによって観察することができる。FACS染色及び分析を実施するための方法は、当業者に周知されており、Teresa S.Hawley and Robert G.Hawley in Flow Cytometry Protocols,Humana Press,2011(ISBN 1617379506,9781617379505)に記載されている。
【0369】
他の実施形態では、マーカー遺伝子がコードするタンパク質産物の発現レベルは、酵素免疫アッセイ(EIA)またはELISAなどのイムノアッセイを使用して検出することもできる。EIAアッセイ及びELISAアッセイのいずれも、例えば、血液、血漿、血清、または骨髄を含む多種多様な組織及び試料の分析用として、当技術分野において公知である。広範なELISAアッセイ形式が利用可能であり、例えば、その全体が参照により本明細書に組み入れられる米国特許第4,016,043号、同第4,424,279号、及び同第4,018,653号を参照のこと。これには、従来の競合結合アッセイに加え、非競合型のシングルサイトアッセイとツーサイトアッセイ(すなわち「サンドイッチ」アッセイ)の両方が含まれる。これらのアッセイにはまた、標的タンパク質への標識抗体の直接結合も含まれる。サンドイッチアッセイが一般的に使用されるアッセイ形式である。サンドイッチアッセイ技術の変形例は多数存在する。例えば、典型のフォワードアッセイでは、非標識抗体を固体基板上に固定し、試験しようとする試料を結合分子と接触させる。適切な期間、すなわち抗体-抗原複合体の形成を可能にするのに十分な期間、インキュベーションした後、検出可能なシグナルを生成できるレポーター分子で標識された、抗原特異的二次抗体を添加してさらにインキュベートし、抗体-抗原-標識抗体の別の複合体を形成するのに十分な時間をかける。未反応の物質を洗い流し、レポーター分子によって生成されたシグナルの観察によって抗原の存在を決定する。結果は、可視シグナルの単純な観察による定性的なもの、または既知量の標的タンパク質を含有する対照試料と比較することによる定量的なもののいずれかでもあり得る。
【0370】
EIAまたはELISAアッセイのいくつかの実施形態では、酵素が二次抗体に複合化されている。他の実施形態では、蛍光標識二次抗体を酵素標識二次抗体の代わりに使用して、ELISAアッセイ形式で検出可能なシグナルを生成することができる。特定の波長の光を照射することによって活性化されると、蛍光色素標識抗体は光エネルギーを吸収し、分子内に励起状態が誘発され、続いて光学顕微鏡で視覚的に検出可能である特徴的な色の光を放射する。EIA及びELISAと同様に、蛍光標識抗体を最初の抗体-標的タンパク質複合体に結合させる。非結合試薬を洗い流した後、残りの三次複合体を適切な波長の光にさらに露出する。観測された蛍光は、対象となる標的タンパク質の存在を示す。免疫蛍光技術及びEIA技術はいずれも当技術分野において極めて十分に確立されたものであり、本明細書で開示されている。
【0371】
本明細書に記載のイムノアッセイでは、それぞれ酵素活性標識または非酵素標識を検出できる限り、多数の酵素標識または非酵素標識のいずれをも利用することができる。したがって、酵素は標的タンパク質の検出に利用することができる検出可能なシグナルを生成するものである。特に有用な検出可能なシグナルは発色シグナルまたは蛍光シグナルである。したがって、標識として使用するのに特に有用な酵素としては、発色基質または蛍光基質を利用可能である酵素が挙げられる。そのような発色基質または蛍光基質は酵素反応によって、顕微鏡または分光法を使用して容易に検出及び/または定量化できる容易に検出可能な発色生成物または蛍光生成物に変換することができる。そのような酵素は当業者に周知されており、これには、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼなどを含むがこれらに限定されるわけではない(Hermanson,Bioconjugate Techniques,Academic Press,San Diego(1996)を参照)。周知の発色基質または蛍光基質を有する他の酵素には、発色性または蛍光性のペプチド基質を利用してタンパク質分解切断反応を検出できる種々のペプチダーゼが含まれる。発色基質及び蛍光基質の使用は、細菌診断においても周知されており、これには、限定されるわけではないが、α-及びβ-ガラクトシダーゼ、β-グルクロニダーゼ、6-ホスホ-β-D-ガラクトシド、6-ホスホガラクトヒドロラーゼ、α-グルオシダーゼ、α-グルコシダーゼ、アミラーゼ、ノイラミニダーゼ、エステラーゼ、リパーゼなどの使用が含まれ(Manafi et al.,Microbiol.Rev.55:335-348(1991))、公知の発色基質または蛍光基質を有するそのような酵素は、本開示の方法での使用に容易に適合させることができる。
【0372】
検出可能なシグナルを生成するための種々の発色基質または蛍光基質は、当業者に周知されており、市販されている。検出可能なシグナルを生成するために利用できる例示的な基質としては、西洋ワサビペルオキシダーゼでは、3,3’-ジアミノベンジジン(DAB)、3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB)、クロロナフトール(4-CN)(4-クロロ-1-ナフトール)、2,2’-アジノ-ビス(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸)(ABTS)、o-フェニレンジアミン二塩酸塩(OPD)、及び3-アミノ-9-エチルカルバゾール(AEC));アルカリホスファターゼでは、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-1-リン酸(BCIP)、ニトロブルーテトラゾリウム(NBT)、Fast Red(Fast Red TR/AS-MX)、及びp-ニトロフェニルリン酸(PNPP);β-ガラクトシダーゼでは、1-メチル-3-インドリル-β-D-ガラクトピラノシド及び2-メトキシ-4-(2-ニトロビニル)フェニルβ-D-ガラクトピラノシド;α-グルコシダーゼでは、2-メトキシ-4-(2-ニトロビニル)フェニルβ-D-グルコピラノシドなどが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。例示的な蛍光基質としては、アルカリホスファターゼでは、4-(トリフルオロメチル)ウンベリフェリルリン酸;ホスファターゼでは、4-メチルウンベリフェリルリン酸ビス(2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール)、4-メチルウンベリフェリルリン酸ビス(シクロヘキシルアンモニウム)、及び4-メチルウンベリフェリルリン酸;西洋ワサビペルオキシダーゼでは、QuantaBlu(商標)及びQuantaRed(商標);β-ガラクトシダーゼでは、4-メチルウンベリフェリルβ-D-ガラクトピラノシド、フルオレセイン ジ(β-D-ガラクトピラノシド)、及びナフトフルオレセイン ジ-(β-D-ガラクトピラノシド);β-グルコシダーゼでは、3-アセチルウンベリフェリルβ-D-グルコピラノシド、及び4-メチルウンベリフェリル-β-D-グルコピラノシド;ならびにα-ガラクトシダーゼでは、4-メチルウンベリフェリル-α-D-ガラクトピラノシドが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。検出可能なシグナルを生成するための例示的な酵素及び基質はまた、例えば、米国公開第2012/0100540号にも記載されている。発色基質または蛍光基質を含む、種々の検出可能な酵素基質は周知されており、市販されている(Pierce,Rockford IL;Santa Cruz Biotechnology,Dallas TX;Invitrogen,Carlsbad CA;42 Life Science;Biocare)。概して、基質は、標的核酸の部位に付着する沈着物を形成する生成物に変換される。他の例示的な基質としては、HRP-Green(42 Life Science)、Biocare(Concord CA;biocare.net/products/detection/chromogens)製のBetazoid DAB、Cardassian DAB、Romulin AEC、Bajoran Purple、Vina Green、Deep Space Black(商標)、Warp Red(商標)、Vulcan Fast Red、及びFerangi Blueが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0373】
イムノアッセイのいくつかの実施形態では、検出可能な標識は、一次抗体、または有する可能性のある非標識一次抗体を検出する二次抗体のいずれかに直接結合することができる。例示的な検出可能な標識は当業者に周知されており、これには、発色標識または蛍光標識を含むがこれらに限定されるわけではない(Hermanson,Bioconjugate Techniques,Academic Press,San Diego(1996)を参照)。標識として有用である例示的なフルオロフォアとしては、ローダミン誘導体、例えば、テトラメチルローダミン、ローダミンB、ローダミン6G、スルホローダミンB、Texas Red(スルホローダミン101)、ローダミン110、及びそれらの誘導体、例えば、テトラメチルローダミン-5-(または6)、リサミンローダミンBなど;7-ニトロベンゾ-2-オキサ-1,3-ジアゾール(NBD);フルオレセイン及びその誘導体;ダンシル(5-ジメチルアミノナフタレン-1-スルホニル)などのナフタレン;クマリン誘導体、例えば、7-アミノ-4-メチルクマリン-3-酢酸(AMCA)、7-ジエチルアミノ-3-[(4’-(ヨードアセチル)アミノ)フェニル]-4-メチルクマリン(DCIA)、Alexa蛍光色素(Molecular Probes)など;4,4-ジフルオロ-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン(BODIPY(商標))及びその誘導体(Molecular Probes;Eugene Oreg.);ピレン及びスルホン化ピレン、例えば、Cascade Blue(商標)、及び8-メトキシピレン-1,3,6-トリスルホン酸などを含むその誘導体;ピリジルオキサゾール誘導体及びダポキシル誘導体(Molecular Probes);Lucifer Yellow(3,6-ジスルホネート-4-アミノ-ナフタルイミド)及びその誘導体;CyDye(商標)蛍光色素(Amersham/GE Healthcare Life Sciences;Piscataway NJ)などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。例示的な発色団としては、フェノールフタレイン、マラカイトグリーン、ニトロフェニルなどのニトロ芳香族、ジアゾ色素、ダブシル(4-ジメチルアミノアゾベンゼン-4’-スルホニル)などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0374】
顕微鏡法または分光法などの当業者に周知の方法を利用して、結合した一次抗体または二次抗体に関連する発色性または蛍光性の検出可能シグナルを可視化することができる。
【0375】
本節(第5.7節)で提供される方法、当技術分野において公知である種々のがんモデルで使用することができる。一実施形態では、マウス異種移植がんモデルが使用される。簡潔には、T-24細胞及びUM-UC-3細胞をATCCから購入し、推奨培地条件を使用して培養する。T-24 hNectin-4(ヒトネクチン-4)細胞及びUM-UC-3ネクチン-4細胞は、pRCDCMEP-CMV-hNectin-4 EF1-Puro構築物を使用して、ヒトネクチン-4含有レンチウイルスを親細胞に形質導入することにより生成し、ピューロマイシンを使用して選択する。T-24ネクチン-4(クローン1A9)細胞をヌードマウスに移植し、トロカールを用いて継代し、腫瘍体積が約200mm3に達した後、治療群あたり7匹の動物へのエンホルツマブベドチン(3mg/kg)または非結合ADC(3mg/kg)の単回腹腔内(IP)投与により処置した。このモデルを用いたフォローアップICD試験は、RNA-seq、フロー、免疫組織化学(IHC)、及びLuminexによる下流分析のために、処置後5日での腫瘍採取を要する。腫瘍をホルマリンで固定し、FFPE組織ブロックとして調製する。ブロックを4μmに切断し、F4/80、CD11cを使用して免疫組織化学を実施する。免疫組織化学染色したスライド切片をLeica AT2デジタル全スライドスキャナーでスキャンし、ネクチン4、CD11c、及びF4/80染色に合わせたカスタムメイドのアルゴリズムを使用したVisiopharmソフトウェアで画像を解析する。アルゴリズムは、染色強度及びバックグラウンド染色に基づいて最適化されている。ネクチン4についての陽性染色率を算出し、F480及びCD11cについて1mm2あたりの陽性細胞を算出する。
【0376】
腫瘍の切片をCell Lysis Buffer 2(R&D Systems(登録商標)、カタログ番号895347)に溶解する。腫瘍試料からのサイトカイン及びケモカインを、MILLIPLEX MAPマウスサイトカイン/ケモカイン磁気ビーズパネル(Millipore)を使用して測定し、LUMINEX MAGPIXシステムで読み取る。
【0377】
RNA-seq分析の場合、TRIZOL Plus RNA Purification Kit(Life Technologies)を製造業者のプロトコルに従って使用して急速凍結腫瘍からRNAを単離し、高品質のRNA(RNA完全性の平均数>8)を得る。RNA選択法には、Poly(A)選択及びIllumina製mRNA Library Prep Kitを使用し、Hi-Seq 2×150bp、シングルインデックス(Illumina)で読み取る。配列リードをヒト及びマウスのトランスクリプトームにマッピングし、100万あたりの総リードを決定した。
【0378】
本開示は一般に、多数の実施形態を説明するために断定的な文言を使用して提供される。本開示はまた、具体的には、物質または材料、方法のステップ及び条件、プロトコル、手順、アッセイまたは分析などの特定の主題が完全にまたは部分的に除外される実施形態を含む。したがって、本開示は一般に、本開示が含まないものに関して本明細書では表現されていないが、それにもかかわらず、本開示に明示的に含まれない態様が本明細書に開示される。
【0379】
本開示を実施するために発明者が知る最良の形態を含む、本開示の特定の実施形態が、本明細書に記載される。前述の説明を読むと、開示された実施形態の変形が当業者に明らかになる可能性があり、当業者はそのような変形を適切に使用し得ると予想される。したがって、本開示が、本明細書に具体的に記載されたものとは別の方法で実施され、本開示が、適用法令に認められる、本明細書に添付の特許請求の範囲に列挙された主題の全ての修正及び等価物を含むことを目的とする。さらに、本明細書で特に指示されない限り、または文脈と明らかに矛盾しない限り、その全ての可能な変形における上述の要素の任意の組み合わせが本開示に包含される。
【0380】
本明細書で引用される全ての刊行物、特許出願、アクセッション番号、及び他の参考文献は、あたかも各個々の刊行物または特許出願が参照により組み入れられることが具体的かつ個別に示されているかのごとくに、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0381】
本開示のいくつかの実施形態を説明してきた。それにもかかわらず、本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な修正を行い得ることが理解されるであろう。
【実施例】
【0382】
6. 実施例
6.1 実施例1-動物モデルにおけるエンホルツマブベドチンの膀胱内投与の有効性及び安全性試験
6.1.1 ネクチン-4+膀胱同所性異種移植マウスモデルにおける有効性試験
この試験は、ネクチン-4+膀胱同所性異種移植マウスモデルにおけるエンホルツマブベドチン(EV)の膀胱内投与の有効性を測定することを目的とする。具体的には、任意の特定の作用機序に限定されるものではないが、膀胱内投与によるEVの局所投与は、EVの全身投与と比較して全身への曝露を低減し、安全性プロファイルを改善しながら、NMIBC細胞へのEVの直接曝露を可能にし得る。
【0383】
表6は、マウス及びラットにおける前臨床実験の用量選択を示す。ヒトネクチン-4とルシフェラーゼを発現するように操作したヒト尿路上皮膀胱癌細胞株UM-UC-3(すなわち、UM-UC-3-hNectin4+-Luc+)を用い、マウス同所性モデルをSCIDマウスで開発した。EVはラット及びヒトのネクチン-4オルソログに同程度の親和性で結合するため、安全性評価をラットで行った。
【0384】
(表6)用量の選択
a体重78kgの患者(薬物動態EVモデル集団の平均体重)、200gのラット、25gのマウスを想定する。
b膀胱の容積から求めた膀胱表面積で、V=(4/3)πr
3、SA=4πr
2(Andersson KE,et al.Physiol Rev.2004;84:935-986)。注:全身への曝露が限定的であり、投薬経路が局所的であるため、体表面積による用量スケーリングは適切ではない。代わりに、適切な前臨床用量を確保するため、総用量を膀胱組織表面積に対して正規化した(U.S. Food and Drug Administration. Estimating the Maximum Safe Starting Dose in Initial Clinical Trials for Therapeutics in Adult Healthy Volunteers 2005. www. fda. gov/media/72309/ download. 2022年3月1日にアクセス)。
【0385】
ネクチン-4は、非筋肉浸潤性膀胱癌(NMIBC)及び筋肉浸潤性膀胱癌(MIBC)を含む、膀胱癌の全ての段階にわたって高度に発現される(データは示されない)。膀胱内投与を模倣した条件下でin vitroにおけるEVの細胞傷害活性を評価するために、ネクチン-4過剰発現膀胱癌細胞(UM-UC-3-hNectin-4
+)を、EV、非結合抗ネクチン-4抗体、非結合MMAE、または対照ADCのいずれかに曝露した(
図2)。IV投与は、細胞を96時間曝露することによってモデル化された。膀胱内投与は、2時間及び24時間の曝露後、試験物を洗浄することでモデル化された。細胞死を、Cell TiterGlo(登録商標)(Promega Coporation,Madison,WI,USA)を用いて測定した。曝露を96時間から2時間に減少すると、非結合MMAEでは効力(EC
90)が44倍減少したが、EVではほとんど変化しなかった(2倍)。対照ADC及び非結合抗ネクチン-4は、EC
90を決定するのに十分な活性を示さなかった(データは示されない)。従って、EVは、膀胱内投与を模倣した条件を用いて、in vitroで細胞障害活性を維持する(
図2)。
【0386】
ネクチン-4
+膀胱同所性異種移植マウスモデルを構築するために、ルシフェラーゼ形質導入UM-UC-3-hネクチン4+-Luc+、膀胱癌細胞をSCID-ベージュ系マウスにカテーテルを介して経尿道的に注入した(
図3A)。この試験では合計18匹のマウスを使用した:3匹のマウスを未治療とした(
図3B、左端のパネル「未治療」);5匹のマウスを週1回、2週間、滅菌水の2時間膀胱内投与で治療した(
図3B、左から2番目のパネル「ビヒクル(SWFI)2時間膀胱内投与」);5匹のマウスを週1回、2週間、0.75mg EVの2時間膀胱内投与で治療した(0.05mLの15mg/mLのEV(注:マウスにおける15mg/mlの用量濃度は、マウスにおける0.5mg/cm
2の用量/膀胱表面積に相当する)(
図3B、「EV 2時間膀胱内投与」と題された左から3番目のパネル);5匹のマウスを、0.75mgのEV(3mg/mLの0.25mLのEV)の静脈内投与で2週間、週1回治療した(
図3B、「EV IV投与」と題された右端のパネル)。マウスを画像化して、EVの有効性を測定した。さらに、EV投与24時間後に各マウスから血液を採取し、薬物動態解析を行った。本明細書に関わる方法は、当業者に周知である。
【0387】
図3Bの生物発光イメージング結果に示すように、膀胱腫瘍は、未治療マウス及び滅菌水の2時間膀胱内投与で治療したマウスにおいて大きく増殖した(
図3B、「未治療」と題する左端のパネル及び「ビヒクル(SWFI)2時間膀胱内投与」と題する左から2番目のパネル)。対照的に、EVを2時間膀胱内投与したマウス、及びEVを静脈内投与したマウスでは、膀胱腫瘍が実質的に退縮した(
図3B、「EV 2時間膀胱内投与」と題する左から3番目のパネル及び「EV IV投与」と題する右端のパネル)。
図3Cに示す抗ネクチン-4免疫組織化学の結果からも、EVを2時間膀胱内投与したマウスでは膀胱腫瘍が退縮したことがわかる。
図3Cの右の5つのパネルの膀胱組織は、それぞれ、
図3BのEVの膀胱内投与で治療した5匹のマウス由来であった。さらに、
図3Bの生物発光イメージング結果を定量化し、
図3D及び表7にまとめた。EVの2時間滞留時間膀胱内投与で治療したマウスでは、腫瘍増殖阻害(TGI)は、17日目に97.1%であった(対照と比較して総流束単位(光子/秒)の分析により測定)(
図3B、「EV 2時間膀胱内」と題する左から3番目のパネル、
図3D、及び表7)。
【0388】
(表7)NMIBC同所性モデルにおけるEVの腫瘍増殖阻害
腫瘍増殖阻害を、試験終了時(開始16日後)の未治療対照群と比較した腫瘍生物発光シグナルの平均値から計算した。膀胱内用量15mg/mLは、全用量750μgであり、膀胱表面積の0.5mg/cm
2の用量に相当する。静脈内投与されたEVの総量は約1/10であり、25グラムのマウスあたり75μgであった。
【0389】
さらに、免疫組織化学(IHC)染色を行い、膀胱腫瘍組織におけるネクチン-4及びMMAEの局在を評価した(
図3E)。特に、最初のEV投与から6時間後に腫瘍を採取し、
図3Eに示すように、ネクチン-4と抗MMAEについて染色した。IHC分析は、ビオチン結合抗MMAE一次抗体によって検出されるように、薬物の共局在を伴う膀胱腫瘍組織におけるネクチン-4の存在を示した。
【0390】
上記の結果から、本明細書で使用されるネクチン-4+膀胱同所性異種移植マウスモデルにおける腫瘍(NMIBC)の生着及び膀胱内EV活性が確認された。
【0391】
6.1.2 Sprague-Dawleyラットを用いた安全性試験
この試験は、再構成されたEVに対して最大で実現可能な種々の濃度及び投与量のエンホルツマブベドチン(EV)の単回膀胱内投与後のSprague-Dawleyラットにおける局所組織、血漿曝露、及び組織薬物レベルに対する効果を特徴付けることを目的とする。
【0392】
表8に示す試験デザインに従って、15、30、または50mg/mLのEVを0.1、0.2、0.4mLずつ、雌性Sprague-Dawleyラットに2時間単回膀胱内投与した。
【0393】
【0394】
局所組織(腎臓、膀胱、尿管、及び尿道)におけるADCとMMAEの濃度を決定するために、これらの組織を、EV投与の24時間後に各ラットから採取して、生体分析及び抗MMAE免疫組織化学(IHC)分析を行った。ADCとMMAEの血清濃度を決定するために、300μLの血液を、異なる時点(EV投与の1時間後、6時間後、24時間後、72時間後、及び168時間後)で各ラットから採取し、生体分析した。本明細書に関わる方法は、当業者に周知である。
【0395】
図4A及び
図4Bの生物分析結果、ならびに表9の抗MMAE IHC結果に示されるように、大きな注入容量よりも、用量濃度及び総用量は高いほど、膀胱組織中のMMAEレベルをさらに向上させた。具体的には、
図4Aは、雌性ラットに0.3~4.1mg/cm
2の用量で15~50mg/mLを2時間の滞留時間で投与したEVの単回膀胱内投与を示し、質量ベースで最大100mg/kgの用量を表す。24時間後の総MMAEの膀胱レベルを、膀胱組織重量に対して正規化した。MMAEは、膀胱組織において最大7日間検出され、ピーク濃度は、投与後24時間以内であった。加えて、MMAEは一般に検出されず、血清中で検出されたADCはごくわずかであった(<1ng/mL)。濃度を一定に保ち、滞留時間を30~120分で変化させた場合、全MMAEレベルに有意差はなかった(データ示されない)。したがって、EVの総用量と濃度を高くすることは、注入量や滞留時間の変更よりも活性を高め、組織内薬物濃度を増加させることになる。上記の結果から、雌性Sprague-Dawleyラットに対して15、30、または50mg/mLのエンホルツマブベドチンを0.1、0.2、または0.4mLの単回の膀胱内投与した場合の認容性は良好であることが示された。従って、EVの膀胱内投与は、Sprague-Dawleyラットにおいて限定された全身曝露を伴うEVの効果的な局所投与を提供した。
【0396】
(表9)局所組織における抗MMAE IHC
IHCスコア:
-=<1%の移行細胞染色陽性
1=1~25%陽性
2=26~50%陽性
3=50~75%陽性
4=>75%陽性
【0397】
毒性の可能性を評価し、膀胱内EVの薬物動態を特徴付けるために、雌性ラットにEVまたは対照を6回毎週膀胱内投与した。表10に示すように、皮膚及び骨髄を含む以前に同定された標的組織において、顕微鏡的所見は存在しなかった。EVの無影響量に対応する用量は、承認されたヒトIV用量の>20倍に相当する。
【0398】
【0399】
膀胱内投与されたEVの血清濃度は、有効なELISAベースのアッセイを用いて、EVの最初の投与後に決定された(平均±SEM)(
図5)。EVの平均C
maxは750ng/mL以下(すなわち、臨床的に承認された用量のIV C
maxの1/35より小さい)であり、有効な質量分析アッセイでは検出可能な血清MMAEはなかった。時間濃度曲線下の血清面積の推定は、最高EV用量(30mg/kg)のみに限定され、注入後24時間までしか検出できなかった。非結合MMAEの血清濃度は、定量の下限未満(<10 pg/mL)であった。したがって、EVの膀胱内投与は、全身への曝露を制限し、全身吸収は低く一過性である。
【0400】
したがって、表9と
図5から、EVの膀胱内投与は、検出可能な局所毒性も全身毒性もなく、一過性の全身吸収も低く、忍容性が高いことが示された。任意の特定の作用機構によって制限されることなく、これらのデータはまた、膀胱内EVの低い全身吸収が、全身投与されたEVで観察される最も一般的な有害事象の発生率を低下させ得ることを示す。
【0401】
6.1.3 Sprague-Dawleyラットにおける滞留時間の長さの影響
本試験は、Sprague-Dawleyラットにエンホルツマブベドチン(EV)を異なる滞留時間の長さで膀胱内投与し、膀胱組織中のMMAE濃度を測定することを目的とする。
【0402】
具体的には、24匹の雌性Sprague-Dawleyラットを無作為に4群(1群あたり6匹のラット)に分類した。30mg/mLのEVを各ラットに単回用量0.4mLずつ、30分、60分、90分、120分かけて膀胱内投与した。EV投与24時間後に各ラットから膀胱組織を採取し、生物分析を行い、膀胱組織中のMMAEレベルを測定した。本明細書に関わる方法は、当業者に周知である。
【0403】
図6に示すように、30分から120分までの異なる滞留時間のEVを膀胱内投与したラットでは、膀胱組織のMMAEレベルに実質的な差は見られなかった。ADCが標的細胞に到達するのを阻害し、従来の小分子よりも拡散を制御する可能性のある粘液層などの因子が存在する場合、このようなin vivoの結果はやや意外である。理論に束縛されることなく、ラットにおいて膀胱組織のMMAEが飽和に達するには、比較的短い滞留時間で十分であると思われる。
【0404】
6.2 仮説例2-非筋肉浸潤性膀胱癌(NMIBC)成人患者を対象としたエンホルツマブベドチン膀胱内投与の安全性、忍容性、PK及び抗腫瘍活性を評価するために設計された、第1相、非盲検、多施設、用量漸増及び用量拡大試験
6.2.1 臨床試験で使用する薬物
エンホルツマブベドチンは、微小管破壊剤モノメチルアウリスタチンE(MMAE)に共有結合したネクチン-4標的モノクローナル抗体(AGS-22C3)である。エンホルツマブベドチンは、
● 完全ヒトIgG1Κ抗体(AGS-22C3)と、
● 微小管破壊剤MMAEと、
● MMAEをAGS-22C3に共有結合させる、プロテアーゼ切断可能なマレイミドカプロイル-バリン-シトルリン(vc)リンカーと、という3つの機能的サブユニットを有する。
【0405】
エンホルツマブベドプチンは、ネクチン-4のVドメインに結合する(Challita-Eid et al.,Cancer Res(2016);76(10):3003-13.)。推定される作用機構において、薬物は、細胞表面上のネクチン-4タンパク質に結合し、内在化され、vcリンカーのタンパク質分解切断及びMMAEの細胞内放出を引き起こす。遊離MMAEは、その後、チューブリン重合を阻害し、有糸分裂の停止を引き起こす。
【0406】
6.2.2 試験概要
6.2.2.1 プロトコル名
非筋肉浸潤性膀胱癌(NMIBC)患者に対するエンホルツマブベドチンの膀胱内投与試験
【0407】
6.2.2.2 試験目的
主要項目
● NMIBCを有する対象におけるエンホルツマブベドチンの膀胱内投与の安全性及び忍容性を評価すること
● NMIBCを有する対象におけるエンホルツマブベドチンの膀胱内投与の最大耐容量(MTD)または推奨用量を同定すること
【0408】
副次項目
● エンホルツマブベドチン膀胱内投与の薬物動態(PK)を評価すること
● エンホルツマブベドチン膀胱内投与の免疫原性を評価すること
● エンホルツマブベドチン膀胱内投与の抗腫瘍活性を完全奏効率(CR)で評価すること
● CRの持続時間を評価すること
● 膀胱摘出率を評価すること
● 無増悪生存(PFS)を評価すること
● 無嚢胞生存率(CFS)を評価すること
【0409】
探索
●エンホルツマブベドチンに対する応答性、毒性、薬力学、薬物動態/薬力学(PK/PD)関係、または耐性に関連するバイオマーカーを評価すること
●対象が報告した治療経験及び対象が報告した治療忍容性を評価すること
【0410】
6.2.2.3 試験対象集団
選択基準
1. 対象は、組織学的に確認された、in situ癌腫(CIS)(乳頭状疾患の有無は問わない)を伴う非筋肉浸潤性尿路上皮(移行細胞)癌を有さなければならない。組織学的確認は、試験治療の初回投与前の60日以内に行うべきである。
2. 主な組織学的成分(>50%)は、尿路上皮(移行細胞)癌でなければならない。純粋な変異組織は除外される。
3. 対象は、以下のように定義される高リスクのカルメット・ゲラン菌(BCG)非応答性疾患を有さなければならない。
● 適切なBCG療法終了後12ヵ月以内に、CIS単独、または再発したTa/T1(非浸潤性乳頭状疾患/腫瘍が上皮下結合組織に浸潤する)病変が持続または再発した場合。
適切なBCG療法は、以下の1つとして定義される:
● 初期誘導コースにおける6回投与中の5回投与+維持療法における3回投与中の少なくとも2回投与
● 初期誘導コースにおける6回投与中の5回投与+2回目誘導コースにおける6回投与中の少なくとも2回投与
注:世界中のBCG不足に起因して、十分なBCGコースを完了できない、またはBCG療法の低減された用量を受けた対象は、医療モニタと相談の上、登録することができる。
4. 治験責任医師の見解では、対象者は根治的膀胱全摘除術不適格であるか、または拒否していなければならない。
5. 目に見える全ての乳頭状Ta/T1腫瘍は、登録前60日以内に完全に切除されていなければならない。純粋なCISの残留は許される。
● T1腫瘍を有することが認められた全ての対象は、試験治療を開始する前に、追加の再TURBT(経尿道的膀胱腫瘍切除術)を受けるべきである。再病期分類TURBTは、浸潤のない(腫瘍が存在しない)固有筋層を示さなければならない。
6. 対象は、十分な膀胱機能と、前投薬があっても試験薬の点滴を最低1時間保持できる能力とを有さなければならない。
7. 18歳以上。
8. 米国東海岸癌臨床試験グループ(ECOG)活動状態のスコアは、該当する場合、Karnofskyスケールを用いた活動状態の変換に関して0、1、または2である。
ECOG活動状態が2の対象は、さらに以下の基準を満たさなければならない。
● 糸球体濾過率(GFR)≧50mL/分
● ニューヨーク心臓協会(NYHA)クラスIIIの心不全を有してはならない
9. 以下のベースライン臨床検査データ:
● 好中球絶対数(ANC)が1500/μL以上であること
● ヘモグロビン(Hgb)が10g/dL以上であること
● 血小板数が100,000/μL以上であること
● 血清ビリルビン≦1.5×正常上限値(ULN)、または≦ジルベール病を有する患者の場合は3×ULN
● クレアチニンクリアランス(CrCl)の計算値が30mL/分以上(クレアチニンまたはCrClの代わりにGFRも使用できる)。CrClは、Cockcroft-Gault法または腎疾患における食生活改善(MDRD)式を用いて算出される。ECOG活動状態が2の対象は、GFRが50mL/分以上でなければならない。
● アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)及びアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)が3×ULN以下であること
● PTまたはaPTTが抗凝固薬の使用目的の治療範囲内である限りにおいて、対象が抗凝固薬治療を受けている場合を除き、国際標準化比(INR)、またはプロトロンビン時間(PT)、活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)もしくは部分トロンボプラスチン時間(PTT)が1.5ULN以下であること。
10. 推定平均余命>2年間。
11. 妊娠可能な女性とは、女性として生まれ、初潮を経験し、外科的不妊手術(子宮摘出、両側卵管切除、両側卵巣摘出など)を受けないか、閉経していない人をいう。閉経期とは、臨床的には、45歳超の人で、他の生物学的、生理学的、薬理学的原因がない場合に、12ヵ月間無月経が続くことと定義される。妊娠の可能性のある女性対象は、以下の条件を満たさなければならない:
● 試験期間中及び試験薬最終投与後少なくとも6ヵ月間は妊娠を希望しないことに同意すること。
● 1日目前3日以内に、血清または尿による妊娠検査(最低感度25mIU/mLまたはβヒト絨毛性ゴナドトロピン[β-hCG]相当単位)の結果が陰性であること。偽陽性の結果が出た女性対象で、妊娠が陰性であることを証明する文書がある場合は、参加資格がある。
● 異性との性交渉がある場合は、スクリーニング時から試験期間中、及び試験薬最終投与後少なくとも6ヵ月間は、失敗率が1%未満の有効性の高い避妊法を一貫して使用しなければならない。
● 女性対象は、スクリーニング時から試験期間中、及び試験薬最終投与後少なくとも6ヵ月間は、授乳または卵子提供を行わないことに同意しなければならない。
12. 父親となりうる男性対象とは、精巣があり、外科的不妊手術(例えば、精管切除術の後、その手術が有効であったことを証明する臨床試験)を受けない、男性として生まれた人である。父親となりうる男性対象は、以下の条件を満たさなければならない。
● スクリーニング時から試験期間中、及び試験薬最終投与後少なくとも6ヵ月間は精子提供を行わないこと。男性対象には、本試験の治療による生殖機能及び生殖能力への負のリスクについて説明する。治療に先立ち、男性対象には妊孕性温存と精子凍結保存に関する情報を求めるよう助言すべきである。
● スクリーニング時から試験期間中、及び試験薬最終投与後少なくとも6ヵ月間は、失敗率が1%未満の有効性の高い避妊法を一貫して使用すること。
● 妊娠中または授乳中のパートナー(複数可)がいる男性対象は、試験期間中及び試験薬最終投与後少なくとも6ヵ月間は、妊娠期間中またはパートナーが授乳中の間精液への二次曝露を防止するための2つの避妊法のうち1つを一貫して使用しなければならない。
13. 対象は書面によるインフォームドコンセントを提供しなければならない。
【0411】
除外基準
1. 筋肉浸潤性尿路上皮癌(すなわち、T2、T3、またはT4疾患)または転移性疾患に現在罹っているまたはその既往歴がある。
2. 試験治療開始前3ヵ月以内にコンピュータ断層撮影(CT)または磁気共鳴画像法(MRI)で認められた結節性または転移性疾患。
3. 試験治療開始前3ヵ月以内に実施された腹部/骨盤の造影付きCTまたはMRI尿路造影で認められた上部尿路上皮癌の併発。
4. 試験開始前6ヵ月以内に、治験責任医師の評価により、前立腺尿道の尿路上皮癌の既往または併発が判明する対象。
5. スクリーニング時に腫瘍に関連した水腎症を有する対象(治験責任医師が確認した場合、腫瘍以外の原因による水腎症を有する対象も可)。
6. 対象は、試験治療の最初の投与から4週間以内に他のいずれかの全身性抗癌療法(例えば、化学療法、生物学的療法、免疫療法、標的療法、内分泌療法、治験薬)を受けたことがあるか、または試験治療の開始前6週間以内にNMIBCの治療のための任意の膀胱内療法を受けたことがあるが、以下を除く:
● 細胞傷害性剤(例えば、マイトマイシンC、ドキソルビシン、及びゲムシタビン)は、TURBT治療の直後に単一の点滴注入として投与される場合、試験治療開始の14~60日前に許容されること
7. 対象は、NMIBCに対する以前の治療に関連した有害事象(AE)に続発する症状(グレード2以上)を有する。
8. 対象は、尿路上皮癌のために膀胱への放射線照射を受けたことがある。
9. 試験治療開始前14日以内に全身性(経口または静脈内など)抗生物質を必要とする活動性感染症。予防用抗生物質(例えば、尿路感染症[UTI]または慢性閉塞性肺疾患の予防のため)を受ける対象は適格である。
10. 膀胱内投与または膀胱内外科的操作に耐えられない対象。
11. 試験薬の初回投与前3年以内に他の悪性腫瘍の既往歴がある、または以前に診断された悪性腫瘍の残存病変が認められる。適切に治療された子宮頸部のCIS、非黒色腫皮膚癌、乳房の管CIS、またはステージI子宮癌など、転移または死亡のリスクが無視できるほど小さい可能性の悪性腫瘍(例えば、5年全生存率[OS]≧90%)は除外される。
● 試験開始の少なくとも1年前に確定的治療(外科的治療または放射線療法)を受けた前立腺癌(T2N0M0以下、グリソンスコアが7以下)の既往歴があった対象は、前立腺癌を有さないとみなされ、以下の基準を満たすことを条件に適格とする:
(i). 根治的前立腺摘除術を受けた対象は、前立腺特異抗原(PSA)が1年超検出されず、スクリーニング時にも検出されないこと。
(ii). 放射線照射を受けた対象は、PSA倍加時間が1年を超え(1ヵ月超の間隔をおいて測定された少なくとも3つの値に基づく)、かつ総PSA値がPhoenixの生化学的再発の基準を満たさないこと(すなわち、最下点より<2.0ng/mL)。
12. ネクチン-4標的療法またはモノメチルアウリスタチンE(MMAE)含有剤への前曝露。
13. 乾癬やアトピー性皮膚炎などの自己免疫疾患または炎症性皮膚疾患で、何らかの治療を必要とする活動性の疾患がある対象。
14. グレード2以上の感覚神経障害または運動神経障害が継続する対象。
15. B型肝炎表面抗原及び/または抗B型肝炎コア抗体が陽性の対象。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)アッセイが陰性である対象は、適切な抗ウイルス予防を許容される。
16. 活動性のC型肝炎感染または既知のヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染。C型肝炎治療歴のある対象は、12週間以上のウイルス学的反応の持続が証明される場合に許容される。地元の保健当局が義務付けない限り、HIV検査の必要はない。
17. 活動性結核の既往がある。
18. 糖尿病が制御されない対象。制御ない糖尿病とは、ヘモグロビンA1c(HbA1c)が8%以上、またはHbA1cが7%~8%未満で、他に説明されない糖尿病症状(多尿症または多飲症)を伴うものと定義される。
19. エンホルツマブベドチンの初回投与前6ヵ月以内に、脳血管事象(脳卒中または一過性虚血発作)、不安定狭心症、心筋梗塞、またはNYHAクラス III~IVに一致する心臓症状の既往歴が証明される。
20. インフォームドコンセント時から試験薬最終投与後少なくとも6ヵ月までの間に授乳中、妊娠中、または妊娠を計画する対象。
21. エンホルツマブベドチン、またはエンホルツマブベドチンの薬物製剤中に含有される任意の賦形剤(ヒスチジン、トレハロース二水和物、及びポリソルベート20を含む)に対して重篤な(≧グレード3)過敏症が知られる。
22. 活動性角膜炎または角膜潰瘍を有する対象。点状表層角膜炎を有する対象は、治験責任医師の意見においてその疾患が適切に治療される場合に許容される。
23. 治験責任医師の見解により、対象が計画された治療及び追跡調査を受ける、または耐える能力を損なうと思われるその他の重篤な基礎疾患。
【0412】
6.2.2.4 予定対象数
この試験には約58名の対象が登録される。これには、用量漸増において評価される最大約18人の対象と、用量拡大において評価される最大約40人の対象が含まれる(それぞれ約20人の対象の最大2コホート)。
【0413】
6.2.2.5 試験デザイン
本試験は、NMIBCの成人患者を対象としたエンホルツマブベドチン膀胱内投与の安全性、忍容性、PK及び抗腫瘍活性を評価するために設計された、第1相、非盲検、多施設、用量漸増及び用量拡大試験である。
【0414】
この試験は、以下の2部で実施する:
【0415】
用量漸増:約18人の対象を治療して、エンホルツマブベドチン膀胱内投与の安全性、忍容性、及び全身曝露を評価して、MTD及び/または推奨用量を同定する。
【0416】
用量拡大:エンホルツマブベドチン膀胱内投与の安全性、PK、及び抗腫瘍活性をさらに評価するため、約40人の対象(約20名ずつの2コホートまで)をMTDまたは推奨用量で治療する。
【0417】
用量漸増及び用量拡大では、CIS(乳頭状疾患の有無にかかわらず)を有するBCG非応答性NMIBCの成人対象を登録する。全ての対象は、膀胱内投与を介して、治験中の治験薬であるエンホルツマブベドチンを受ける。本試験での治療は誘導段階と維持段階に行われ、対象は維持段階終了後に追跡調査期間に入る。
【0418】
誘導段階中に、対象は、エンホルツマブベドチンの膀胱内注入を週に1回(q1wk)、6週間にわたって受ける。誘導段階の完了から6~8週間後、対象は、最初の試験中応答評価を受け、その後、維持段階に入る。維持段階中に、対象は、月に1回、合計9回投与で膀胱内エンホルツマブベドチンを受ける。
【0419】
維持段階の完了後、対象は試験の追跡調査段階に入る。標準的な膀胱鏡検査(すなわち、膀胱鏡検査±生検)及び細胞診による腫瘍応答評価は、登録後最初の2年間は最初の誘導用量から3ヵ月ごとに、その後、登録後5年間にわたり、疾患再発、進行、その後の抗癌療法の開始、または死亡のいずれかが最初に起こるまで6ヵ月ごとに行われる。疾患持続、再発、進行、または後続の抗癌療法の開始に起因する研究治療の中断後、対象は生存追跡調査に入り、追跡調査不能、同意の撤回、死亡、または治験依頼者による試験中止のいずれかが最初に起こるまで、生存及び後続の抗癌療法データは6ヵ月(±2週間)ごとに収集され、登録後最長5年間続く。
【0420】
膀胱鏡検査法及び尿細胞診による応答評価は、次回の試験薬投与前14日以内に完了しなければならない。膀胱鏡検査異常、陽性、または尿細胞診異常のある対象は、治験責任医師の臨床的判断により、追加の評価(例えば、画像診断、生検、麻酔下での検査)を受ける必要がある。
【0421】
本試験では、12ヵ月目の評価時に膀胱マッピング生検が必要となる。目に見える腫瘍がない場合は、膀胱の全ての象限から生検を行うべきである(最低4回の生検が必要)。生検は他の全ての来院時には必要とされないが、有効性を考慮するために臨床的に示される場合に考慮される。
【0422】
最初の試験実施3ヵ月後の評価を含む試験実施中の評価において、CISの有無にかかわらず高悪性度T1疾患または病期進行が認められた対象は、試験治療を中止する。試験開始3ヵ月後の最初の評価でCISが持続または高悪性度Ta疾患が再発した対象は、試験治療の継続に再同意した後に治療を継続し、6ヵ月後に再度評価され得る。6ヵ月後の評価から、高リスクNMIBCが持続または再発した対象、または病勢進行した対象は、試験治療を中止する。低悪性度腫瘍の出現、存在、残存は再発とはみなされない。低悪性度腫瘍のみを有する対象は、切除及び組織学的確認後に治療を続けるべきである。
【0423】
疾患の持続、再発、進行以外の理由で試験治療を中止した対象は、本試験の追跡調査段階に留まる。
【0424】
用量漸増
エンホルツマブベドチンの全身投与は、PD-1阻害剤またはPD-L1阻害剤とプラチナ製剤を含む化学療法を受けたことのある局所進行性または転移性尿路上皮癌患者を対象に、1.25mg/kg(最大投与量125mg)の用量で現在米国で承認されている。エンホルツマブベドチンの全身投与の安全性プロファイルは十分に確立されており、複数の臨床試験においてこの用量レベルで評価される。この確立された全身投与量とその安全性プロファイルを考慮し、本試験ではエンホルツマブベドチンを125mgから膀胱内投与で評価する。
【0425】
本試験の用量漸増部分では、4つの計画用量レベル(125、250、500、及び750mg)でエンホルツマブベドチンの濃度を漸増させ、25mLの注入量と最大90分間の滞留時間(または対象の許容滞留時間;実際の滞留時間は適切な電子症例報告書に記録される)で評価する。最大約18人の対象を登録して、安全性、忍容性、全身性バイオアベイラビリティを評価し、MTD及び/または推奨される用量の膀胱内エンホルツマブベドチンを同定する。
【0426】
用量漸増は修正毒性確率区間(mTPI)法を用いて行われる。登録は、コホート単位で行われる。
【0427】
エンホルツマブベドチンは、誘導段階には6週間、週に1回、膀胱内に投与され、維持段階には1ヵ月に1回、9回投与、上表の計画用量で投与される。また、治験依頼者及び/または安全性監視委員会(SMC)は、低用量及び/または中間用量レベルの調査を推奨することができる。MTDに達しない場合、750mgより高い用量レベルを検討することができる。
【0428】
用量制限毒性
用量制限毒性(DLT)は、試験の用量漸増部分で評価される。DLT評価期間は、誘導開始から誘導投与全6回終了までの期間に1週間を加えた期間である。対象は、DLTを経験したか、またはエンホルツマブベドチンの誘導用量を最低5回受けた場合、DLT評価可能(DE)対象と考えられる。
【0429】
DLTは、エンホルツマブベドチン膀胱内投与に関連すると治験責任医師が評価した場合、以下のいずれかとして定義される。グレード付けは、NCI CTCAE第5.0版に従って行われる:
● 血尿、排尿困難、尿閉、頻尿・尿意切迫、膀胱けいれんなどのグレード3以上の尿路系の治療出現AEの発生
● 鼠径部または会陰部におけるグレード3以上の局所皮膚反応または粘膜反応
● 治験責任医師による評価で、血栓閉塞につながる著明な血尿が治験薬に関連する
● グレード3以上の血液学的毒性(ベースラインから2グレード以上増加した場合)は、以下を含む。
○ 好中球減少熱
- グレード3の発熱性好中球減少症とは、ANCが1000/mm3未満で、
かつ38.3℃(101°F)超の体温が1回のみ、または38℃(100.4°F)以上の体温が1時間超持続する場合と定義される
- グレード4の発熱性好中球減少症とは、ANCが1000/mm3未満で、
かつ38.3℃(101°F)超の体温が1回のみ、または38℃(100.4°F)以上の体温が1時間超持続し、生命を脅かす可能性があり、緊急介入を要するものと定義される
○ グレード4の好中球減少症または血小板減少症が7日超続く
○ 出血を伴うグレード3の血小板減少症
● その他のグレード3以上の非血液学的AE(基礎疾患、併発疾患、悪性腫瘍による説明を除く)
● 未解決の治療関連グレード2AEが14日超続く
● 基礎疾患や外因によるものでないことが明らかな死亡
● Hy’s lawの症例
【0430】
以下の非血液学的毒性は、DLTと見なされない:
● グレード3の悪心/嘔吐または下痢が72時間未満で、制吐剤及びその他の支持療法が十分である
● グレード3の疲労<1週間
● ≧グレード3の電解質異常またはその他の非血液学的臨床検査異常で、72時間未満持続し、臨床的に合併症がなく、自然に治癒するか、従来の内科的介入に応答する
● ≧グレード3のアミラーゼまたはリパーゼで、膵炎の症状や臨床症状を伴わない
【0431】
用量拡大
エンホルツマブベドチン膀胱内投与の安全性、忍容性、PK、及び抗腫瘍活性をさらに特徴付けるために、最大2つの用量拡大コホート(コホートあたり約20人の対象)に約40人の対象を追加登録する。試験の用量漸増部分でMTDが同定された場合、対応する用量レベルが用量拡大で評価される。治験依頼者は、MTDに達しない場合、または異なる用量レベルがさらなる評価を必要とする場合、SMCと相談して、用量拡大において2つ以上の用量レベルを評価することもできる。これらの用量拡大コホートの開始は、用量漸増中に示された安全性と活性の累積に基づいて、SMCと相談して治験依頼者によって決定される。
【0432】
安全監視委員会
治験責任医師(複数可)と治験依頼者の代表者(研究医療モニタ、薬物安全性代表者、臨床科学者、及び生物統計学者を含む)で構成されるSMCは、対象の安全性を監視し、用量漸増及び用量拡大を通して用量推奨を行う。SMCは、所与の用量での安全性をさらに評価すること(すなわち、所与の用量で対象を追加登録すること)、または計画された用量レベルより低い、もしくは中間的な用量レベルの調査を推奨してもよい。SMCはまた、DLTウィンドウを超える累積的曝露に起因して出現し得る安全性の問題を識別するために、累積的安全性データを検討する。SMCはまた、抗腫瘍活性データを検討して、ベネフィット-リスク特性が用量またはコホートについて、試験の継続または中止を支持するかどうかを決定することができる。SMCは推奨を行い、最終決定は治験依頼者が行う。さらなる詳細は、SMC宣言に文書化される。
【0433】
6.2.2.6 治験薬、用量及び投与方法
エンホルツマブベドチンは、誘導段階には6週間、週に1回、膀胱内に投与され、維持段階には1ヵ月に1回、9回投与される。
【0434】
6.2.2.7 治療の持続時間
誘導段階中に、対象は、6週間にわたって、週に1回、エンホルツマブベドチンの膀胱内注入を受ける。誘導段階の完了から6~8週間後、対象は、最初の試験中応答評価を有し、その後、維持段階に入る。維持段階中に、対象は、月に1回、合計9回投与で膀胱内エンホルツマブベドチンを受ける。
【0435】
6.2.2.8 112B応答/有効性評価
本試験における腫瘍反応性の評価は、スクリーニング時に標準的な膀胱鏡検査(すなわち、膀胱鏡検査±生検)及び細胞診を行い、その後、登録後最初の2年間は最初の誘導投与から3ヵ月ごとに評価し、その後登録後5年間は6ヵ月ごとに評価する。
【0436】
膀胱鏡検査法及び尿細胞診による応答評価は、次回の試験薬投与前d14日以内に完了しなければならない。膀胱鏡検査異常、陽性、または尿細胞診異常のある対象は、治験責任医師の臨床的判断により、追加の評価(例えば、画像診断、生検、麻酔下での検査)を受ける必要がある。
【0437】
年1回の上部管画像診断は、対象が試験を受ける間、臨床的に指示された場合に行われる。
【0438】
本試験では、12ヵ月目の評価時に膀胱マッピング生検が必要となる。目に見える腫瘍がない場合は、膀胱の全ての象限から生検を行うべきである(最低4回の生検が必要)。生検は他の全ての来院時には必要とされないが、有効性を考慮するために臨床的に示される場合に考慮される。
【0439】
対象は、以下の所見の全てを有する場合にCRを有すると考えられる。
1. 膀胱鏡検査:膀胱の外観は正常。膀胱鏡検査で膀胱の外観に異常がある場合、生検は陰性か、悪性度の低いTa、悪性度の低い尿路上皮乳頭状新生物、または悪性度の低い乳頭腫でなければならない。ランダムに膀胱生検を実施する場合、これらの生検は陰性であるか、低悪性度の疾患を示すべきである。
2. 尿細胞診:陰性。
a. 決定的でない尿細胞診は、プロトコルに従って評価されるべきである。
b. 尿細胞診が陽性であった場合は、膀胱鏡検査±生検、画像診断により臨床的評価を行う必要がある
3. 画像診断(実施された場合):正常、または異常が見つかった場合は、所見が膀胱内のCRを支持するものでなければならない。
【0440】
試験治療薬の膀胱内投与のため、対象は、上部管または前立腺尿道にがんが見つかり、ランダム膀胱生検が陰性の場合、悪性尿細胞診を伴う膀胱鏡検査が陰性であればCRとみなされる。
【0441】
持続性疾患は、乳頭状疾患を伴うまたは伴わないCIS疾患の存在として定義される(高悪性度Ta/T1)。
【0442】
再発は、治療開始後の高悪性度疾患(高悪性度Ta、T1、またはCIS)の再出現として定義される。再発は、生検によって確認されなければならない。
【0443】
進行とは、以下のいずれかの発症と定義される:T1疾患(固有層浸潤)、≧T2疾患(筋浸潤)、リンパ節転移(N1+)、遠隔転移(M1)、または悪性度が低悪性度から高悪性度に上昇すること。
【0444】
低悪性度の疾患の持続、出現、存在は再発とはみなされない。低悪性度乳頭状疾患が再発した対象は、切除術を受けて試験を継続することができる。
【0445】
6.2.2.9 薬動力学的及び免疫原性評価
PK及び抗治療抗体(ATA)分析用の血液サンプルとPK分析用の尿サンプルは、プロトコルで規定された時点で採取される。推定されるエンホルツマブベドチンの用量関連血中PKパラメータは、濃度-時間曲線下面積(AUC)、最大濃度(Cmax)、最大濃度までの時間(Tmax)、見かけの終末半減期(t1/2)、及びトラフ濃度(Ctrough)を含み得るが、これらに限定されない。必要に応じて、追加の分析項目も評価される。
【0446】
6.2.2.10 薬動力学的及びバイオマーカー評価
腫瘍組織におけるバイオマーカー
登録後12ヵ月以内に採取された保存腫瘍組織は、入手可能な場合(最も最近に利用可能な組織を使用すべきである)、全ての対象に必要である。新たにカットしたスライドのみを提供できる場合は、最低10~15切片が必要(10切片未満の場合は治験依頼者に問い合わせること)。生検は12ヵ月目の評価時に必要であり、他の全ての評価時には臨床的適応に応じて実施すべきである。治療中に採取した生検由来の組織をバイオマーカー評価に使用する。
【0447】
治療前の腫瘍の生物学的特性と対象の転帰との関係を理解するために、TURBT(腫瘍生検)由来の組織を検査する。生検は、腫瘍内の特定の薬力学的、予測的、予後的バイオマーカーについて評価される。組織が、登録後に採取された標準的な生検から入手可能である場合、治療に対する耐性や作用機序、応答性のバイオマーカーをさらに同定するために検査される。
【0448】
腫瘍組織におけるバイオマーカー評価は、免疫組織化学及び次世代シークエンシングによるネクチン-4及びPD-L1発現の中心的評価、腫瘍のサブタイプ分類、腫瘍微小環境分析、ならびにがんで一般的に変化する遺伝子またはRNAの体細胞変異もしくは変化のプロファイリングを含み得るが、これらに限定されない。
【0449】
血液及び/または尿中のバイオマーカー
腫瘍細胞に対するエンホルツマブベドチンの主な効果は、局所、腫瘍関連、及び末梢免疫細胞の活性化状態の変化をもたらし得る。血液及び尿サンプルにおけるバイオマーカー評価は、循環/無細胞腫瘍DNA、可溶性ネクチン-4の酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)評価、尿中バイオマーカーの免疫アッセイ、ならびに免疫細胞サブセット及びサイトカインの存在量を含む免疫機能のマーカーを含み得るが、これらに限定されない。
【0450】
6.2.2.11 安全性評価
安全性評価は、重篤な有害事象(SAE)を含むAEの監視及び記録、併用薬の記録、ならびにプロトコルで指定された身体診察所見と臨床検査の測定を含む。
【0451】
6.2.2.12 他の評価
対象視点は、治療経験及び忍容性について45~60分間の電話インタビューを通して定性的に評価される。これらのインタビュー中に調査されるトピック及び質問に関する追加の詳細は、Subject Interview Guide文書に記載される。用量漸増中及び用量拡大中のインタビューは、以下の時点:誘導段階の終了時、維持段階の5回投与終了時、及び維持段階の終了時に行われる。
【0452】
6.2.2.13 統計的方法
用量漸増とMTDの同定はmTPI法を用いて行う。用量漸増が終了した時点で、モデルによるDLT確率の推定値が95%信頼区間とともに示される。DE分析セットは、DLTを経験したか、または少なくとも5回のエンホルツマブベドチンの誘導用量を受けた、用量漸増における全ての治療対象を含む。DE分析セットは、MTDの決定するための主要母集団である。
【0453】
安全性及び抗腫瘍活性の評価項目は、試験薬の投与量を問わず治療を受けた対象全員を含む、全治療対象分析セットに基づく記述統計を用いて要約される。試験の任意時点でのCR率、3、6、12、18、及び24ヵ月でのCR率、ならびに膀胱摘出率を、95%両側正確信頼区間(CI)とともにまとめた。CR期間、PFS、無嚢胞生存期間はKaplan-Meier法を用いて推定した。
【0454】
拡大コホートでは、正式な仮説検証は予定されない。観察されたCR率が30%~50%の範囲にあると仮定すると、コホートあたり20人の対象を用いた95%及び80%の正確CIを以下の表11にまとめる。
【0455】
【0456】
6.2.3 目的
本試験は、NMIBC患者を対象にエンホルツマブベドチン膀胱内投与の安全性、忍容性、PK、及び抗腫瘍活性を評価する。本試験の具体的な目的と対応するエンドポイントを以下の表12に要約する。
【0457】
(表12)
AE=有害事象、ATA=抗治療抗体、AUC=濃度-時間曲線下面積、Cmax=最大濃度、CR=完全奏効、Ctrough=トラフ濃度、DLT=用量制限毒性、MTD=最大耐量、NMIBC=非筋肉浸潤性膀胱癌、PD-Ll=プログラムされた死-リガンド1(programmed death-ligand 1)、PK=薬物動態、PK/PD=薬物動態/薬力学、Tmax=最大濃度発現時間、t1/2=半減期
【0458】
6.2.4 治験計画書
6.2.4.1 試験デザインの概要
本試験は、NMIBCの成人患者を対象としたエンホルツマブベドチン膀胱内投与の安全性、忍容性、PK及び抗腫瘍活性を評価するために設計された、第1相、非盲検、多施設、用量漸増及び用量拡大試験である。
【0459】
この試験は、以下の2部で実施した:
● 用量漸増:約18人の対象を治療して、エンホルツマブベドチン膀胱内投与の安全性、忍容性、及び全身曝露を評価して、最大耐量(MTD)及び/または推奨用量を同定する。
● 用量拡大:エンホルツマブベドチン膀胱内投与の安全性、PK、及び抗腫瘍活性をさらに評価するため、約40人の対象(約20名ずつの2コホートまで)をMTDまたは推奨用量で治療する。
【0460】
用量漸増及び用量拡大では、CIS(乳頭状疾患の有無にかかわらず)を有するBCG非応答性NMIBCの成人対象を登録する。全ての対象は、膀胱内投与を介して、治験中の治験薬であるエンホルツマブベドチンを受ける。本試験での治療は誘導段階と維持段階に行われ、対象は維持段階終了後に追跡調査期間に入る。
【0461】
誘導段階中に、対象は、エンホルツマブベドチンの膀胱内注入を週に1回(q1wk)、6週間にわたって受ける。誘導段階の完了から6~8週間後、対象は、最初の試験中応答評価を有し、その後、維持段階に入る。維持段階中に、対象は、月に1回、合計9回投与で膀胱内エンホルツマブベドチンを受ける。
【0462】
維持段階の完了後、対象は試験の追跡調査段階に入る。標準的な膀胱鏡検査(すなわち、膀胱鏡検査±生検)及び細胞診による腫瘍応答評価は、登録後最初の2年間は最初の誘導用量から3ヵ月ごとに、その後、登録後5年間にわたり、疾患再発、進行、その後の抗がん療法の開始、または死亡のいずれかが最初に起こるまで6ヵ月ごとに行われる。疾患持続、再発、進行、または後続の抗がん療法の開始に起因する研究治療の中断後、対象は生存追跡調査に入り、追跡調査不能、同意の撤回、死亡、または治験依頼者による試験中止のいずれかが最初に起こるまで、生存及び後続の抗がん療法データは6ヵ月(±2週間)ごとに収集され、登録後最長5年間続く。
【0463】
膀胱鏡検査法及び尿細胞診による応答評価は、次回の試験薬投与前14日以内に完了しなければならない。膀胱鏡検査異常、陽性、または尿細胞診異常のある対象は、治験責任医師の臨床的判断により、追加の評価(例えば、画像診断、生検、麻酔下での検査)を受ける必要がある。
【0464】
本試験では、12ヵ月目の評価時に膀胱マッピング生検が必要となる。目に見える腫瘍がない場合は、膀胱の全ての象限から生検を行うべきである(最小限の生検)。生検は他の全ての来院時には必要とされないが、有効性を考慮するために臨床的に示される場合に考慮される。
【0465】
最初の試験実施3ヵ月後の評価を含む試験実施中の評価において、CISの有無にかかわらず高悪性度T1疾患または病期進行が認められた対象は、試験治療を中止する。試験開始3ヵ月後の最初の評価でCISが持続または高悪性度Ta疾患が再発した対象は、試験治療の継続に再同意した後に治療を継続し、6ヵ月後に再度評価され得る。6ヵ月後の評価から、高リスクNMIBCが持続または再発した対象、または病勢進行した対象は、試験治療を中止する。低悪性度腫瘍の出現、存在、残存は再発とはみなされない。低悪性度腫瘍のみを有する対象は、切除及び組織学的確認後に治療を続けるべきである。
【0466】
疾患の持続、再発、進行以外の理由で試験治療を中止した対象は、本試験の追跡調査段階に留まる。
図7は、全体的な試験デザインを示す。
【0467】
治験責任医師(複数可)と治験依頼者の代表者(研究医療モニタ、薬物安全性代表者、臨床科学者、及び生物統計学者を含む)で構成される安全監視委員会(SMC)は、対象の安全性を監視し、用量漸増及び用量拡大を通して用量推奨を行う。SMCは、所与の用量での安全性をさらに評価すること(すなわち、所与の用量で対象を追加登録すること)、または計画された用量レベルより低い、もしくは中間的な用量レベルの調査を推奨してもよい。SMCはまた、用量制限毒性(DLT)ウィンドウを超える累積的曝露に起因して出現し得る安全性の問題を識別するために、累積的安全性データを検討する。SMCはまた、抗腫瘍活性データを検討して、ベネフィットとリスク特性が用量またはコホートについて、試験の継続または中止を支持するかどうかを決定することができる。SMCは推奨を行い、最終決定は治験依頼者が行う。さらなる詳細は、SMC宣言に文書化される。
【0468】
(i) 用量漸増コホート
約18人の対象を用量漸増に登録する。
【0469】
用量漸増は、安全性及び忍容性を評価し、エンホルツマブベドチン膀胱内投与のMTD及び/または推奨される用量を同定するために、修正毒性確率区間(mTPI)法(Ji 2010)を用いて行われる。安全性、PK、薬力学、バイオマーカー分析、及び予備的な抗腫瘍活性を使用して、推奨される用量とスケジュールを決定する。
【0470】
mTPI法は、ベイズモデルを使用して、各用量レベルの毒性率と目標DLT率との間の相対距離を反映する3つの間隔の事後確率を計算する。投与決定規則は、目標DLT率25%、マージン5%で決定される。3つの間隔は、(0%、20%)、(20%、30%)、及び(30%、100%)であり、対応する投与決定規則は以下の通りである:
1. 現在の用量DLT率が20%未満の可能性が高い場合、漸増し、
2. 現在の用量DLT率が20%~30%の間である可能性が高い場合、そのまま維持し、
3. 現在の用量DLT率が30%を超える可能性が高い場合、漸減する。
【0471】
用量設定の決定を表13に示す。「E」は用量の漸増、「S」は用量の維持、「D」は用量の漸減を表す。決定「DU」は、現在の用量レベルが高い毒性のために許容できないことを意味する。DLT率が25%を超える事後確率が95%を超える場合、その用量は許容できない毒性を有すると定義される。
【0472】
(表13)mTPI設計のための用量決定スプレッドシート
D=次の低用量に漸減、DLT=用量制限毒性、DU=現在の用量が、許容できないほど毒性である、E=次の高用量に漸増、mTPI=修正毒性確率区間、S=現在の用量で維持。
【0473】
登録は、コホート単位で行われる。用量漸増及びその後のコホート規模(最低2人の対象)の決定は、各コホート終了後にSMCと相談して治験依頼者によって行われる。現在のコホートの対象は、次のコホートが登録される前に、DLT期間の全期間観察されなければならない。予防措置として、本試験における最初の2人の対象には、各対象が試験薬の初回投与を受けた後、次の対象に投与するまでに72時間の観察期間が設けられる。用量レベル1以上では、最初の対象がエンホルツマブベドチンの膀胱内投与を受けた後、その用量レベルで後続の対象に投与する前に、72時間の観察期間が必要である。DLTの評価不能と判断された対象は交代する。用量漸増を中止する前に、推定MTDで最低6例のDLT評価可能症例(DE)が観察される。MTDは、評価された全用量にわたる全ての対象のデータに基づいて推定される。MTDに達しない場合は、安全性、PK、薬力学、バイオマーカーのデータ、及び予備的な抗腫瘍活性を使用して、推奨される用量を決定する。
【0474】
低用量または中間用量レベルへの漸減は、SMCと相談して治験依頼者によって任意の時点で行われる。
【0475】
本試験の用量漸増部分では、4つの計画用量レベル(125、250、500、及び750mg、表3を参照)でエンホルツマブベドチンの濃度を漸増させ、25mLの注入量と最大90分間の滞留時間(または対象の許容滞留時間;実際の滞留時間は適切な電子症例報告書[eCRF]に記録される)で評価する。本試験の用量漸増部分には最大約18人の対象が登録される。エンホルツマブベドチンは、誘導段階には6週間、週に1回、膀胱内に投与され、維持段階には1ヵ月に1回、9回投与、表14に示す計画用量で投与される。また、治験依頼者及び/またはSMCは、低用量及び/または中間用量レベルの調査を推奨することができる。MTDに達しない場合、750mgより高い用量レベルを検討することができる。
【0476】
(表14)用量漸増スキーマ
q1wk=週1回、SMC=安全監視委員会、投与頻度:誘導 週1回×6週間、維持:月1回×9回投与、注入容量25mL。
a 新たな臨床データに基づいて、SMCはより低用量または中間用量レベルの検討を推奨することがある。
【0477】
(ii) 用量拡大コホート
エンホルツマブベドチン膀胱内投与の安全性、忍容性、PK、及び抗腫瘍活性をさらに特徴付けるために、最大2つの用量拡大コホート(コホートあたり約20人の対象)に約40人の対象を追加登録する。試験の用量漸増部分でMTDが同定された場合、対応する用量レベルが用量拡大で評価される。治験依頼者は、MTDに達しない場合、または異なる用量レベルがさらなる評価を必要とする場合、SMCと相談して、用量拡大において2つ以上の用量レベルを評価することもできる。これらの用量拡大コホートの開始は、用量漸増中に示された安全性と活性の累積に基づいて、SMCと相談して治験依頼者によって決定される。
【0478】
(iii) 治療の持続時間
誘導段階中に、対象は、6週間にわたって、週に1回、エンホルツマブベドチンの膀胱内注入を受ける。誘導段階の完了から6~8週間後、対象は、最初の試験中応答評価を有し、その後、維持段階に入る。維持段階中に、対象は、月に1回、合計9回投与で膀胱内エンホルツマブベドチンを受ける。
【0479】
(iv) 用量制限毒性
DLTは、本試験の用量漸増部分で評価される。DLT評価期間は、誘導開始から誘導投与全6回終了までの期間に1週間を加えた期間である。対象は、DLTを経験したか、またはエンホルツマブベドチンの誘導用量を最低5回受けた場合、DLT評価可能(DE)対象と考えられる。
【0480】
DLTは、エンホルツマブベドチン膀胱内投与に関連すると治験責任医師が評価した場合、以下のいずれかとして定義される。グレード付けは、米国国立癌研究所の有害事象共通用語基準(NCI CTCAE)第5.0版に従って行われる:
● 血尿、排尿困難、尿閉、頻尿・尿意切迫、膀胱けいれんなどのグレード3以上の尿路系の治療出現AEの発生
● 鼠径部または会陰部におけるグレード3以上の局所皮膚反応または粘膜反応
● 治験責任医師による評価で、血栓閉塞につながる著明な血尿が試験薬に関連する
● グレード3以上の血液学的毒性(ベースラインから2グレード以上増加した場合)は、以下を含む。
○ 好中球減少熱
● グレード3の発熱性好中球減少症は、絶対好中球数(ANC)と定義される。
● <1,000/mm3未満で、38.3℃(101°F)を超える体温、または38℃(100.4°F)以上の体温が1時間超持続する
● グレード4の発熱性好中球減少症とは、ANCが1000/mm3未満で、かつ38.3℃(101°F)超の体温が1回のみ、または38℃(100.4°F)以上の体温が1時間超持続し、生命を脅かす可能性があり、緊急介入を要するものと定義される
○ グレード4の好中球減少症または血小板減少症が7日超続く
○ 出血を伴うグレード3の血小板減少症
● その他のグレード3以上の非血液学的AE(基礎疾患、併発疾患、悪性腫瘍による説明を除く)
● 未解決の治療関連グレード2AEが14日超続く
● 基礎疾患や外因によるものでないことが明らかな死亡
● Hy’s lawの症例
【0481】
以下の非血液学的毒性は、DLTと見なされない:
● グレード3の悪心/嘔吐または下痢が72時間未満で、制吐剤及びその他の支持療法が十分である
● グレード3の疲労<1週間
● ≧グレード3の電解質異常またはその他の非血液学的臨床検査異常が持続する
● 72時間未満持続し、臨床的に合併症がなく、自然に治癒するか、従来の内科的介入に応答する
● ≧グレード3のアミラーゼまたはリパーゼで、膵炎の症状や臨床症状を伴わない
【0482】
(v) 停止基準
(a) コホートレベルでの登録停止
死亡がエンホルツマブベドチンに関連すると治験依頼者が判断した場合、以下の通りまで、その用量及びそれ以上の用量で登録が停止される:
1. 治験責任医師、治験依頼者及びSMCがこの症例を検討し、
2. 治験依頼者は、該当する規制当局に対し、安全性評価の結果及び該当するコホートにおける登録再開の正当性を通知し、現地規制により必要とされる場合には、再開の承認を得る。
【0483】
(b) 全試験の登録中止
試験全体のベネフィットとリスクのバランスがマイナスと見なされた場合、治験依頼者によって全試験への登録が中止される。
【0484】
安全性は、治験依頼者とSMCによって試験期間中継続的に監視され、毒性の発現率及び/または重症度が試験集団に容認できないリスク・ベネフィット評価につながる場合には、登録中止が検討される。治験依頼者はSMCと相談して、既に治療を受ける対象に治療を継続させるか、登録継続のためのプロトコルの修正を検討するか、あるいは試験を中止するかを検討する。
【0485】
安全性の懸念のために登録が中止された場合、登録の再開は、適切な修正と規制当局への通知を行った後でなければならず、現地の規制により再開が必要とされる場合には、その承認が必要となる。
【0486】
(vi) 研究の終了
本試験は、最後の対象が登録されてから約5年後、または追跡調査中の対象がいなくなった時点のいずれか早い時点で終了する。さらに、治験依頼者は任意の時点で試験を終了することができる。
【0487】
(vii) 安全監視委員会
SMCは、用量漸増及び用量拡大を通して、エンホルツマブベドチンの安全性を監視する。SMCは、治験責任医師(複数可)と治験依頼者の代表者(研究医療モニタ、薬物安全性代表者、臨床科学者、及び生物統計学者を含む)で構成される。委員会は、用量漸増の決定や治療出現(TE)毒性に関連するデータのレビューを含む定期的及び/または臨時の会議を通じて、本試験参加者の安全性を監視する。少なくとも、コホート中の全ての対象がDLT評価期間を完了した後、SMC会議が試験の用量漸増期間中に開催される。SMCは、安全性評価及びDLT決定のために、登録された対象の臨床データをレビューする。SMCは、mTPI決定規則表と併せて、用量レベル及びコホートサイズに関する推奨を行う。mTPIモデルに従った用量レベルで複数のコホートが登録される。SMCはまた、累積対象データの再検討に関して、用量拡大期間中、四半期に1回程度会議を開く。
【0488】
DLTの決定及び用量漸増の推奨に加え、SMCは、該当する場合、試験中に以下の推奨の1つ以上を行うことができる:
● 所与の用量における安全性のさらなる評価
● 試験薬投与の代替アプローチの評価(投与時間の延長、投与前の前投薬の必要性など)
● 用量漸増中の低用量または中間用量の評価
● 漸増中の用量レベルの活性及び忍容性に基づき、拡張コホートで評価される用量(複数可)を推奨する
● 安全性と活性のデータに基づくエンホルツマブベドチン膀胱内投与の単剤投与量とスケジュールの推奨
● MTDに達しない場合は、用量漸増中により高い用量レベルを評価する
【0489】
さらなる詳細は、SMC宣言に文書化される。
【0490】
6.2.4.2 考察と試験デザインの根拠
このファースト・イン・ヒューマン(FIH)試験は、エンホルツマブベドチンを誘導段階には週1回、6週間、維持期には月1回、計9回膀胱内に投与し、その安全性と忍容性を評価する第1相、用量漸増及び用量拡大試験であり、NMIBC患者を対象にMTDを推定し、及び/または推奨用量及びスケジュールを決定する。エンホルツマブベドチン膀胱内投与の初期臨床開発では、BCG非応答性で、標準的な治療法の選択肢がなく(例えば、根治的膀胱全摘除術に不適格、あるいは拒否している)、治療医師の意見でエンホルツマブベドチン膀胱内投与の候補とされる対象に、その評価が行われる。
【0491】
用量漸増は、エンホルツマブベドチンの膀胱内投与におけるMTDの推定及び/または推奨用量の決定に用いられる。用量漸増が完了し、薬剤の初期安全性が実証された後、エンホルツマブベドチン膀胱内投与の安全性と抗腫瘍活性をさらに評価するため、それぞれ約20人の対象からなる最大2つの拡大コホートが登録される。拡大コホートにより、エンホルツマブベドチン膀胱内投与の安全性、忍容性、PK、抗腫瘍活性に関する追加情報を収集することができる。この情報は、エンホルツマブベドチン膀胱内投与のさらなる開発の基礎となる。
【0492】
(i) 用量漸増中にmTPIを使用するための根拠
mTPI用量漸増法は、従来の「3+3」用量決定法よりも優れる可能性があるため、この試験に選ばれた。これらの利点には、事前に規定したあらゆるDLT率を目標とすることができること、MTDを超える対象の治療数を少なくして安全性を向上させること、柔軟なコホートサイズを可能にすることなどがある(Ji 2010)。mTPI法はまた、全ての用量レベルで治療を受けた全ての対象の情報をMTDの推定に使用して、MTDの推定精度を向上させる。
【0493】
(ii) 対象を治療群に割り当てる方法
用量漸増中、対象の用量レベルへの割り当ては、表13に示すmTPI決定規則により決定され、治験依頼者による対象登録の承認時に行われる。
【0494】
用量拡大中、対象は約20人ずつ最大2つのコホートに登録される。試験の用量漸増部分でMTDが同定された場合、対応する用量レベルが用量拡大で評価される。治験依頼者は、MTDに達しない場合、または異なる用量レベルがさらなる評価を必要とする場合、SMCと相談して、用量拡大において2つ以上の用量レベルを評価することもできる。これらの用量拡大コホートの開始は、用量漸増中に示された安全性と活性の累積に基づいて、SMCと相談して治験依頼者によって決定される。
【0495】
医療モニタは試験期間中、エンホルツマブベドチン膀胱内投与の安全性を評価し、安全性の理由から、特定の用量レベルに対する対象のモデルの割り当てを無効にすることができる。
【0496】
(iii) 用量選択の根拠
現在米国では、ネオアジュバント/アジュバント、局所進行性、転移性においてPD-1阻害剤またはPD-L1阻害剤とプラチナ製剤を含む化学療法を受けたことのある局所進行性または転移性UC患者の治療薬として、エンホルツマブベドチンの全身投与が1.25mg/kg(最大用量125mgまで)で承認されており、臨床試験においてもこの用量で評価される。この用量レベルでのエンホルツマブベドチンの安全性プロファイルは、全身性固形腫瘍治験において、特に膀胱癌において十分に確立される(EV-101、EV-201、EV-301;更なる詳細は治験責任医師用パンフレットを参照)。前臨床試験での忍容性、全身吸収の低さ、及び125mgのエンホルツマブベドチン全身投与の既知の安全性プロファイルを考慮し、本試験ではエンホルツマブベドチンを125mgから膀胱内投与で評価する。
【0497】
(iv) 盲検及び非盲検
これは非盲検試験である。
【0498】
6.2.5 試験対象集団
対象は、試験に適格であるためには、登録基準を全て満たす必要がある。適格性基準は、治験責任医師によって免除されることはなく、適正臨床診察監査及び/または健康規制当局の検査の場合にレビューを受ける。
【0499】
6.2.5.1 選択基準と除外基準
第6.2.2節を参照する。
【0500】
6.2.5.2 妊娠の可能性
妊娠可能な人とは、女性として生まれ、初潮を経験し、外科的不妊手術(子宮摘出、両側卵管切除、両側卵巣摘出など)を受けないか、閉経していない人をいう。閉経期とは、臨床的には、45歳超の人で、他の生物学的、生理学的、薬理学的原因がない場合に、12ヵ月間無月経が続くことと定義される。
【0501】
父親となりうる人とは、精巣があり、外科的不妊手術(例えば、精管切除術の後、その手術が有効であったことを証明する臨床試験)を受けない、男性として生まれた人である。
【0502】
6.2.5.3 対象の試験治療または評価からの除外
対象が試験治療からまたは試験から除外される場合、本試験の治験依頼者に通知しなければならない。対象の試験中止の理由(複数可)は、対象の医療記録及び症例報告書(CRF)に記載されなければならない。
【0503】
(i) 試験治療の中止
対象の試験治療は、以下のいずれかの理由で中止される:
● プロトコルによる治療完了
● 持続性、再発性、または進行性の疾患
○ 最初の試験実施3ヵ月後の評価を含む試験実施中の評価において、CISの有無にかかわらず高悪性度T1疾患が認められた対象は、試験治療を中止する
○ 試験開始3ヵ月後の最初の評価でCISが持続または高悪性度Ta疾患が再発した対象は、試験治療の継続に再同意した後に治療を継続し、6ヵ月後に再度評価され得る
○ 6ヵ月後の評価から、高リスクNMIBCが持続または再発した対象、または病勢進行した対象は、試験治療を中止する。
● 低悪性度腫瘍の出現、存在、残存は再発とはみなされない。低悪性度腫瘍のみを有する対象は、切除及び組織学的確認後に治療を続けるべきである
● 有害事象(AE)
● 妊娠
● 治験責任医師の決定
● 対象決定、非AE
● 治験依頼者による試験終了
● その他、非AE
【0504】
試験治療を中止する対象は、同意が撤回されない限り、追跡調査の研究に引き続き参加する。
【0505】
(ii) 肝安全性に関連する治療中止推奨
ウイルス性肝炎、既往または急性の肝疾患、肝障害に関連する他の薬剤への曝露など、肝機能検査値の上昇について説明がない場合は、対象の試験治療を中止する。治験責任医師は、治験治療を継続することが対象の最善の利益にならないと判断することができる。次のような場合は、治療の中止を考慮すべきである:
● ALTまたはAST >8 × ULN
● ALTまたはAST>5×ULNが2週間超続く
● ALTもしくはAST>3×ULN、総ビリルビン>2×ULN、またはINR> 1.5(INR検査が適用/評価される場合)
● ALTまたはASTが3×ULNを超え、肝障害を示唆する症状(例えば、右上腹部の痛みや圧痛)及び/または好酸球増加症(5%超)が認められる
【0506】
これらの治療中止推奨は、FDAの業界向けガイダンス(Drug-Induced Liver Injury:Premarketing Clinical Evaluation,July 2009)に基づく。本推奨は、開発中の薬剤に関する臨床経験の蓄積に基づく治験責任医師への基本的な指針であり、エンホルツマブベドチンの臨床経験に特化したものではない。
【0507】
(iii) 対象の試験からの離脱
対象の試験は、以下のいずれかの理由で中止される:
● プロトコルによる試験完了
● 対象の同意撤回
● 治験依頼者による試験終了
● 追跡調査の喪失
● 死亡
● その他
【0508】
6.2.6 治療
6.2.6.1 実施した治療
全ての対象は、膀胱内投与を介して、本プロトコルの治験薬であるエンホルツマブベドチンを受ける。
【0509】
6.2.6.2 治験薬
エンホルツマブベドチンの調製、投与、保存に関する詳細な情報は、「Pharmacy Instructions」に記載される。
【0510】
(i) 説明
エンホルツマブベドチンは、MMAE及びリンカーサブユニットの両方を含む化学中間体を、抗体のシステイン残基に結合させることによって生成される。得られたADCは、抗体1個あたり平均3.8個の薬物分子を含む。エンホルツマブベドチン製剤は、無菌で、保存剤を含まなく、白色からオフホワイトの凍結乾燥粉末であり、膀胱内投与のために再構成される。エンホルツマブベドチンを30mg単回用量バイアルで供給する。
【0511】
(ii) 用量及び投与
エンホルツマブベドチンは、誘導段階には6週間、週に1回、膀胱内に投与され、維持段階には1ヵ月に1回、9回投与される。
【0512】
本試験の用量漸増部分では、4つの計画用量レベル(125、250、500、及び750mg)でエンホルツマブベドチンの濃度を漸増させ、25mLの注入量と最大90分間の滞留時間(または対象の許容滞留時間;実際の滞留時間は適切なeCRFに記録される)で評価する。
【0513】
(iii) 用量の変更
毒性に対する投与延期または投与量の変更は、治験責任医師が対象ごとに医療モニタと相談しながら行う。本試験の用量漸増期間中、DLT評価期間中にDLT基準を満たす毒性が発現した場合、毒性が適切に管理され、治験責任医師が試験治療の再開が適切と判断し、医療モニタから承認が得られない限り、対象は試験治療を中止される。観察されたAEのタイプ及び重症度は、決定を下ろすために考慮される。
【0514】
投与が延期された場合、対象は標準治療と治験日程に従って、3ヵ月ごとに反応評価を受け続けなければならない。
【0515】
(a) 誘導段階
誘導段階の投与遅延は、医療モニタの承認があれば14日間まで認められる。誘導段階の間、治験責任医師は、未解決の毒性により予定された誘導治療を1回のみスキップすることができる。予定された誘導治療を1回よりも多くスキップする必要がある対象は、試験治療を中止する。
【0516】
誘導段階の間にDLT基準を満たす有害事象が発生した対象は、毒性が適切に管理され、治験責任医師がエンホルツマブベドチンの膀胱内投与の再開が適切と判断し、医療モニタから再開の承認が得られない限り、エンホルツマブベドチン膀胱内投与による治療を受けるべきでない。観察されたAEのタイプ及び重症度は、決定を下ろすために考慮される。
【0517】
対象は、医療モニタと相談した後、同じ用量レベルまたは減少した用量レベルで治療を再開し得る。DLT に該当するAEが発生した後に対象が治療を継続し、同じAEが再発した場合、治療は永久に中止されなければならない。エンホルツマブベドチン膀胱内投与の永久中止の基準を満たすAEが発生した対象は、用量の減量または変更を含め、試験治療を再開することはできない。
【0518】
同じグレード3のAEが2回発生した場合、エンホルツマブベドチンの膀胱内投与は永久に中止すべきである。
【0519】
用量遅延≧14日を必要とする、治療に関連しないその他のAEが発生した場合は、医療モニタに連絡する。
【0520】
(b) 維持段階
維持段階の間、用量遅延を必要とする未解決の治療関連グレード2以上のAEを有する対象は、AEがグレード1またはベースライン重症度に戻るまで、予定された維持用量を保持し得る。任意の未解決AEに対する治療遅延が28日を超える場合、対象が治験を継続する進行中の臨床的利益があるかどうかを決定するために、医療モニタと相談すべきである。維持用量は、スキップされるのではなく、遅延されるべきである。治療に関連した毒性が未解決のため、連続2回の維持投与を遅らせることは許されず、治療を永久に中止しなければならない。
【0521】
対象は、医療モニタと相談した後、同じ用量レベルまたは減少した用量レベルで治療を再開し得る。DLT に該当するAEが発生した後に対象が治療を継続し、同じAEが再発した場合、治療は永久に中止されなければならない。エンホルツマブベドチン膀胱内投与の永久中止の基準を満たすAEが発生した対象は、用量の減量または変更を含め、試験治療を再開することはできない。
【0522】
同じグレード3のAEが2回発生した場合、エンホルツマブベドチンの膀胱内投与は永久に中止することとなる。
【0523】
(c) 治療関連毒性に対する用量変更
エンホルツマブベドチン関連血液毒性及び非血液毒性の用量変更推奨を、それぞれ表15及び表16に示す。
【0524】
(表15)エンホルツマブベドチンに関連した血液毒性に対する推奨用量変更
【0525】
(表16)エンホルツマブベドチンに関連した非血液毒性に対する推奨用量変更
試験治療を通じて、高血糖を除くグレード3/4の電解質平衡異常/臨床検査異常で、臨床的後遺症を伴わず、発症から72時間以内に補充/適切な管理により改善される場合は、中止の必要はない(例えば、グレード4の低ナトリウム血症)。
【0526】
(iv) 保管及び取り扱い
エンホルツマブベドチンを含むバイアル及び溶液の保管のために、冷蔵は2~8℃に設定されるべきである。制御された位置は、薬剤師、治験責任医師、または正式に指定された人にのみアクセス可能でなければならない。試験薬は、投与前に再構成されなければならない。
【0527】
試験薬に対する光の影響は評価されない。したがって、エンホルツマブベドチンの凍結乾燥粉末、再構成薬物生成物及び/または投与溶液のバイアルは、使用時間まで光から保護されることが推奨される。
【0528】
試験薬の再構成されたバイアルを振盪しない。
【0529】
任意の部分的に使用されたバイアルまたは調製された投与溶液は、施設内薬物廃棄手順に従って現場で廃棄されるべきである。未使用のバイアルは、施設によって廃棄されるか、または治験依頼者の承認後に治験依頼者に返却する。
【0530】
6.2.6.3 必要とされる前投薬と後投薬
エンホルツマブベドチンの膀胱内投与に必要な前投薬や後投薬はない。
【0531】
皮膚との接触または刺激を防止するために、外性器官周囲への点滴注入前に局所皮膚バリア軟膏の使用が考慮される。
【0532】
対象、特に女性には、投与当日の排尿後に性器を洗浄し、必要に応じてバリア軟膏を使用するように指導する。
【0533】
6.2.6.4 併用療法
対象の福祉に必要であると治験責任医師が判断した全ての治療は、禁止薬として指定されたものを除き、地域社会の医療水準に従って、治験責任医師の裁量で実施される。
【0534】
投与された全ての併用薬及び血液製剤は、初日(投与前)から安全報告期間まで記録される。試験プロトコルに関連するAEに対して投与された併用薬は、インフォームドコンセントの時点から記録されるべきである。
【0535】
(i) 必要とされる併用療法
必要とされる併用療法はない。
【0536】
(ii) 許可される併用療法
慢性プレドニゾン(またはそれに相当するもの)を≦20mg/日の用量で併用する。医学的適応がある場合、試験中に発生した急性の症状を治療するために、プレドニゾン(またはそれに相当するもの)の高用量投与が期間限定で許可される。制吐薬の使用が許容される。
【0537】
強力なチトクロームP450(CYP)3A4阻害剤またはP-糖タンパク質(P-gp)阻害剤をエンホルツマブベドチンと併用投与する対象は、有害反応について注意深く監視する必要がある。
【0538】
ワクチンによる日常的な予防は認められるが、使用されるワクチンは生きた微生物を含まないことが推奨される。
【0539】
ベースライン時にB型肝炎表面抗原及び/または抗B型肝炎コア抗体が陽性で、PCRアッセイが陰性の対象は、地域または施設のガイドラインに従って、適切な抗ウイルス予防または定期的な監視モニタリングを受けるべきである。
【0540】
尿路感染症のリスクを最小限にするため、臨床的適応があれば予防的抗生物質の投与は許可される。対象が症候性UTIを有する場合、抗生物質のフルコースで治療し、治癒するまで試験薬は中止される。
【0541】
抗コリン薬は、頻尿、切迫感、失禁の症状がある対象に処方される。
【0542】
対象の福祉に必要であると治験責任医師が判断した全ての治療は、地域社会の医療水準に従って、治験責任医師の裁量で実施される。
【0543】
(iii) 禁止される併用療法
利尿剤は投与日の前夜、または試験薬投与前の投与日には服用しないこと。
【0544】
可能な限り、エンホルツマブベドチン膀胱内投与4~6時間前の水分摂取は避けるべきである。
【0545】
対象は試験期間中、他の治験薬、放射線治療、膀胱内治療、または全身抗悪性腫瘍治療を受けることはできない。
【0546】
6.2.6.5 治療出現する有害事象の管理
(i) 高血糖の管理
治験責任医師は血糖値をモニタし、高血糖の症状が認められた場合には、感染症の徹底的な評価も含め、追加的な評価を行うことが推奨される。加えて、ステロイドが他の疾患の治療に使用される場合、血糖値のモニタリングが必要になることがある。血糖値の上昇が観察された場合、対象は地域の標準治療に従って治療を行い、内分泌内科への紹介が考慮される。
【0547】
対象、特に糖尿病または高血糖の既往歴のある対象、または継続中の対象は、血糖値の制御が困難になった場合、または頻尿、喉の渇きの増加、目のかすみ、疲労感、頭痛などの高血糖を示唆する症状が現れた場合、直ちに医師に連絡するよう助言されるべきである。
【0548】
ベースライン時にHbA1cが高値(≧6.5%)で試験に参加した対象は、誘導段階に適切な医療機関に紹介され、グルコース管理を受けるべきである。毎回の投与前に血糖値をチェックし、血糖値が250mg/dLを超える場合は投与を中止する。対象の血糖が250mg/dL以下に改善され、臨床的及び代謝的に安定すると、投与を継続することができる。インスリンの使用は、標準的なケアの一部として許容される。エンホルツマブベドチンに関連すると考えられる血糖値>500mg/dLに関して、薬物の中断と基礎診断を決定するための高血糖の完全な評価を必要とする。高血糖/高血糖が250mg/dL以下に改善されると、医療モニタと相談の上、注意深く監視しながら投与を再開することができる。対象が新たに糖尿病を発症した場合は、代謝パネル、尿ケトン、HbA1c、C-ペプチドで評価することにより、以前のチェックポイント阻害剤療法の設定における1型糖尿病の新たな発症を評価する。
【0549】
(ii) エンホルツマブベドチンによる発疹の管理
エンホルツマブベドチンは、ネクチン-4指向性抗体薬物複合体である。ネクチン-4は、尿路上皮癌で高発現する細胞接着分子である。ネクチン-4は、皮膚のケラチノサイト、汗腺、毛包などの正常組織にも低レベルから中レベルで発現するため、皮膚反応は予想される事象である。したがって、皮膚反応はエンホルツマブベドチンを用いた全ての臨床試験で問題となる有害事象である。
【0550】
2019年12月18日(米国におけるエンホルツマブベドチンの承認日)から2020年10月22日までの市販後安全性データの累積的検討により、IVエンホルツマブベドチンを受けた15人の患者において重度の皮膚有害反応の報告が確認され、その中には致命的な転帰となる患者もいた。これらの反応は、主に第1の治療サイクルで発生した。これらの症例で報告されたAEは、Stevens-Johnson症候群(SJS:5例)、水疱(3例)、水疱性皮膚炎(3例)、対称性薬物関連棘間及び撓骨性発疹(SDRIFE:2例)、ならびに剥脱性皮膚炎、剥脱性発疹、表皮壊死、口腔咽頭水疱、口内炎、中毒性表皮壊死融解症(TEN)が各1例であった。
【0551】
尿路上皮癌のエンホルツマブベドチン単剤療法の全身投与試験において、重篤な皮膚有害事象(SAE)が749例中11例(1.5%)に報告され、その内訳は水疱性皮膚炎(0.4%)、薬疹(0.4%)、水疱(0.1%)、結膜炎(0.1%)、SJS(0.1%)、口内炎(0.1%)、中毒性皮疹(0.1%)であった。
【0552】
また、対象に皮膚反応、口腔粘膜、粘膜炎や結膜炎を含む眼球異常の徴候や症状がある場合は、直ちに治験責任医師に連絡するよう助言する。最初のサイクルから治療期間中、対象の皮膚反応を注意深く監視する。軽度から中等度の皮膚反応に対しては、臨床的適応に応じて局所コルチコステロイドや抗ヒスタミン薬などの適切な治療を考慮する。グレード2の発疹または皮膚反応が悪化した場合は、エンホルツマブベドチンの投与を中止することを検討する。グレード3または4の発疹または皮膚反応、あるいはSJSまたはTENが疑われる場合または確認された場合は、エンホルツマブベドチンを永久に中止し、専門医療機関への紹介を検討する。
【0553】
(a) 局所スキンケアケア
エンホルツマブベドチンが皮膚や粘膜表面から曝露された場合の安全性は、進行中の臨床試験や前臨床試験で評価されない。注入中の薬物や注入後の尿が皮膚、眼、粘膜に偶発的に曝露することはないように注意すべきである。
【0554】
注入時、滞留時、排泄時に不注意で皮膚が露出することがあるため、治験責任医師は各注入前に性器及び会陰部の皮膚刺激または皮膚破壊がないか検査する必要がある。皮膚刺激や皮膚破壊を最小限に抑えるため、局所バリア軟膏や包帯剤を塗布し、これらを行うときに皮膚が曝露しないようにする。注入前に皮膚に著しい変化または破壊が認められた場合は、医療モニタへの相談に加えて、必要な予防措置及び/または投与中止を考慮する必要がある。性器、会陰部、その他の患部の目視検査は、可能な場合、または対象が偶発的な曝露や皮膚刺激に関連する症状を報告した場合に、尿排泄後に行うべきである。
【0555】
対象は尿排泄後に手を洗うべきである。対象が偶発的に曝露した場合は、直ちに石鹸と水で患部を洗うべきである。翌日以降、患部に赤み、かゆみ、腫れなどの症状が出ないか観察すべきである。適切な治療と追跡調査のため、いかなる症状も直ちに担当治験責任医師に報告されなければならない。
【0556】
(iii) アレルギー性/過敏症反応
アレルギー性/過敏症反応は、アレルゲンへの曝露による局所的または全身的な有害反応を特徴とする(NCI CTCAE 第5.0版)。アレルギー性/過敏症反応は、かゆみ、各種発疹、蕁麻疹、吐き気、嘔吐、背部痛、腹痛などの徴候や症状の組み合わせとして現れることがある。
【0557】
許容される措置は、用量変更(表16)と併用薬を含む。
【0558】
(iv) 過量投与の管理
エンホルツマブベドチンの>10%の過量投与があった場合、治験施設は過量投与に気づき次第、治験依頼者に通知しなければならない。患者は有害反応について注意深く観察されるべきである。施設内標準に従った補助治療を実施すべきである。
【0559】
6.2.6.6 治療遵守
試験薬の投与は試験実施施設のスタッフが行い、原資料及びCRFに文書化される。
【0560】
6.2.7 試験作業
6.2.7.1 治験日程
AE及び併用薬は、投与1日目(投与前)から安全報告期間まで記録される。試験プロトコルに関連するあらゆるAE、及びAEの治療のために投与された併用薬は、インフォームドコンセントの時点から記録されるべきである。
【0561】
臨床検査評価(血清化学パネル、全血球数[CBC](鑑別[臨床的に指示された場合は手動による鑑別])、尿検査[異常結果に対する反射顕微鏡検査])、身体検査、体重、及びECOG活動状態は、誘導段階の1週目1日目の試験薬投与前3日以内に実施される。関連する全ての臨床検査評価の結果は、投与前に確認されなければならない。治験日程を表17に示す。
【0562】
(表17)治験日程
AE=有害事象、ALT=アラニンアミノトランスフェラーゼ、AST=アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、ATA=抗治療抗体、CBC=全血球数、CIS=上皮内癌、CT=コンピュータ断層撮影、D/d=日、ECOG=米国東海岸癌臨床試験グループ、ECG=心電図、EOT=治療終了、HbA1c=ヘモグロビンA1c、MRI=磁気共鳴画像化、PK=薬物動態、PT/PTT/INR=プロトロンビン時間/部分的トロンボプラスチン時間/国際標準化比、q1wk=週1回、TURBT=経尿道的膀胱腫瘍切除術、Wk=週
A 処置は、誘導段階の各週の1日目と2日目に週1回実施される。
B (誘導段階終了後6~8週間後に行われる)最初の試験応答評価後、対象は維持段階に入る。処置は、維持段階中の毎月1日目と15日目に実施される。
C EOT評価は、非プロトコール抗癌剤治療を開始する前に行うべきである。EOT評価が最終試験治療後30日より前に終了した場合は、対象の最終試験治療後30~37日目に電話によるスクリーニングを実施し、AEプロファイルに変化がないことを確認する。
D 疾患の持続、再発、進行以外の理由で試験治療を中止した対象、及び維持段階を終了した対象は、本試験の追跡調査段階に入る。追跡調査は、登録後最初の2年間は最初の誘導用量から3ヵ月ごとに、その後、登録後5年間にわたり、疾患再発、進行、その後の抗癌療法の開始、または死亡のいずれかが最初に起こるまで6ヵ月ごとに行われる。
E 誘導段階中の2日目の来院は、診療所において、またはテレヘルス/電話診察で行われる。4日目の来院は1週目、2週目、6週目のみ。2日目と4日目のPKサンプルは、外部のホームヘルパー業者による自宅検査で採取することも可能である。
F 15日目の来院は、最初の3回の維持用量投与中に必要であり、AE及び併用薬の評価を行うため、テレヘルス/電話で実施される。
G 初日前7日以内に実施された場合は不要。妊娠検査は、誘導段階の第1週、第3週、第6週、第9週の試験初日、及び維持段階の各月の試験初日に必要とされる。
H エンホルツマプベドチンの最終投与後6ヵ月間、毎月採取された。
I 初日前3日以内に実施された場合は不要。
J 実際に来院する場合に行われる。
K 過去12ヵ月以内に測定された身長が使用される。
L 臨床的適応がある場合、試験中の任意の時点で実施される。
M 誘導段階の第1週、第3週、第6週のみ血清化学パネルが必要。
N 臨床的適応がある場合。
O バイタルサインを収集し、投与前と最初の排泄から2時間後にAEを記録する。
P 医学的に禁忌でない限り、IV造影による診断品質の胸部CTが必要である。対象がIV造影に耐えられない場合は、非造影胸部CTが許容される。上部尿路、腹部、骨盤の画像診断には、造影剤を使用したCTまたはMRI尿路造影(医学的に禁忌でない限り)が許容される。試験治療開始前3ヵ月以内に同様のモダリティによる画像診断を行ったことがある場合は、その画像を使用する。
Q 用量漸増中及び用量拡大中のインタビューは、以下の時点(+7日間のウィンドウ):誘導段階の終了時、維持段階の5回投与終了時、及び維持段階の終了時に行われる。誘導段階の6週目より前に中止した対象は、最終来院時に終了時インタビューを受ける。
R インフォームドコンセント時から。
S 維持段階中に、エンホルツマブベドチンを月1回、計9回膀胱内投与する。
T 登録から12ヵ月以内に採取された直近のTURBTから採取された保存腫瘍標本または組織が、入手可能な場合には必要とされる。入手可能な最新の組織を使用すべきである。新たにカットしたスライドのみを提供できる場合は、最低10~15切片が必要(10切片未満の場合は治験依頼者に問い合わせること)。
U 膀胱鏡検査法及び尿細胞診による応答評価は、次回の試験薬投与前14日以内に完了しなければならない。膀胱鏡検査異常、陽性、または尿細胞診異常のある対象は、治験責任医師の臨床的判断により、追加の評価(例えば、画像診断、生検、麻酔下での検査)を受ける必要がある。
V 対象は維持段階に入る前に膀胱鏡検査を受けなければならない。
W 目に見える全ての乳頭状Ta/T1腫瘍は、登録前60日以内に完全に切除されていなければならない。純粋なCISの残留は許される。T1疾患を有する対象は、試験開始前に反復TURBTを受けるべきである。再病期分類TURBTは、浸潤のない固有筋層を示さなければならない。標準的な膀胱鏡検査(すなわち、膀胱鏡検査±生検)及び細胞診による腫瘍応答評価は、登録後最初の2年間は最初の誘導用量から3ヵ月ごとに、その後、登録後5年間にわたり、疾患再発、進行、その後の抗癌療法の開始、または死亡のいずれかが最初に起こるまで6ヵ月ごとに行われる。全ての対象について、膀胱鏡検査異常、尿細胞診陽性、疑わしい所見または不確定な所見を有する2つ以上の連続した尿細胞診検体などの腫瘍評価中の所見に基づいて、臨床的適応があれば追加評価(画像診断、生検など)を検討すべきである。
X 本試験では、12ヵ月目の評価時に膀胱マッピング生検が必要となる。目に見える腫瘍がない場合は、膀胱の全ての象限から生検を行うべきである(最低4回の生検が必要)。生検は他の全ての来院時には必要とされないが、有効性を考慮するために臨床的に示される場合に考慮される。
Y 疾患の持続、再発、進行、またはその後の抗癌剤治療の開始による試験治療の中止後、対象は生存追跡調査に入る。生存期間及びその後の抗癌剤治療に関するデータは、追跡不能、同意の撤回、死亡、または治験依頼者による試験中止のいずれかが最初に起こるまで、6ヵ月(±2週間)ごとに、登録後最長5年間収集される。
Z 投与前に採血またはフィンガースティックで血糖値が250mg/dL未満であることを確認する。
AA 血清化学パネルとしては、アルブミン、アルカリホスファターゼ、ALT、AST、重炭酸塩、血液尿素窒素、カルシウム、クレアチニン、塩化物、乳酸脱水素酵素、リン、カリウム、ナトリウム、総ビリルビン、アミラーゼ、リパーゼ、グルコース、及び尿酸検査が挙げられる。
BB 視力検査、細隙灯検査、眼圧検査、及び拡張眼底検査を含むがこれらに限定されない、適格な検眼士または眼科医によって行われる眼の精密検査。その後の眼検査は、臨床的な指示に応じて実施される。EOT細隙灯検査は、本試験中に角膜AEが発生した対象に必要であり、最終投与から少なくとも4週間以内に実施されなければならない。
CC 4ヵ月目のみ。試験開始3ヵ月後の最初の評価でCISが持続または高悪性度Ta疾患が再発した対象は、試験治療の継続に再同意した後に治療を継続し、6ヵ月後に再度評価され得る。
DD 疾患の全ての既知の部位は、スクリーニング時に記録され、その後の各腫瘍評価時に再評価されるべきである。
【0563】
(表18)PK、ATA、及びバイオマーカー採取(血液)
ATA=抗治療抗体;cfDNA=循環遊離DNA;EOT=治療終了;N/A=該当せず;PBMC=末梢血単核球;PK=薬物動態;TURBT=経尿道的膀胱腫瘍切除術
A 試験中に標準治療の一環として腫瘍サンプルを採取する場合、可能であれば、バイオマーカー検査用にそのサンプルの一部を治験依頼者に提出すべきである。治療中に採取した生検由来の組織をバイオマーカー評価に使用する。
B TURBTがスクリーニングウィンドウ内で実施される場合、スクリーニング時のバイオマーカー評価のための採取は、TURBTの前またはTURBT時に行うべきである。
c 登録から12ヵ月以内に採取された直近のTURBTから採取された保存腫瘍標本または組織が、入手可能な場合には必要とされる。入手可能な最新の組織を使用すべきである。新たにカットしたスライドのみを提供できる場合は、最低10~15切片が必要(10切片未満の場合は治験依頼者に問い合わせること)。
D 2日目と4日目のPKサンプルは、外部のホームヘルパー業者による自宅検査で採取することも可能である。
E 本試験では、12ヵ月目の評価時に膀胱マッピング生検が必要となる。目に見える腫瘍がない場合は、膀胱の全ての象限から生検を行うべきである(最低4回の生検が必要)。生検は他の全ての来院時には必要とされないが、有効性を考慮するために臨床的に示される場合には考慮される。
F 追跡調査は、登録後最初の2年間は最初の誘導用品から3ヵ月ごとに、その後、登録後5年間にわたり、疾患再発、進行、その後の抗癌療法の開始、または死亡のいずれかが最初に起こるまで6ヵ月ごとに行われる。
【0564】
(表19)PK及びバイオマーカー採取(尿)
cfDNA=循環遊離DNA、EOT=治療終了、N/A=該当せず、PK=薬物動態、TURBT=経尿道的膀胱腫瘍切除術
A TURBTがスクリーニングウィンドウ内で実施される場合、スクリーニング時のバイオマーカー評価のための採取は、TURBTの前またはTURBT時に行うべきである。
B 滞留時間終了直後の排尿を採取するべきである。採尿は、試験薬の最大90分間の滞留時間(または対象が許容できる滞留時間の終了)後の排尿とする。
c 試験薬注入後、対象は最大90分間の滞留時間にわたり、または対象の許容滞留時間が終了するまで試験薬を保持する。
D 最大90分間の滞留時間排尿終了後(または対象の許容滞留時間排尿終了後)に2回目の採尿を行う。
E 2日目と4日目のPKサンプルは、外部のホームヘルパー業者による自宅検査で採取することも可能である。
F 追跡調査は、登録後最初の2年間は最初の誘導用量から3ヵ月ごとに、その後、登録後5年間にわたり、疾患再発、進行、その後の抗癌療法の開始、または死亡のいずれかが最初に起こるまで6ヵ月ごとに行われる。
【0565】
6.2.7.2 スクリーニング検査(およそ28日目~1日目)
● インフォームドコンセント
● 選択/除外基準による試験の適格性
● 病歴
● 心電図(ECG)
● 画像診断(試験治療開始前3ヵ月以内に同様のモダリティによる画像診断を行ったことがある場合は、その画像を使用する。)
○ 医学的に禁忌でない限り、IV造影による診断品質の胸部CTが必要である。対象がIV造影に耐えられない場合は、非造影胸部CTが許容される。
○ 上部尿路、腹部、骨盤の画像診断には、造影剤を使用したCTまたはMRI尿路造影(医学的に禁忌でない限り)が許容される。
● 眼科精密検査
● 登録時に提出する保存腫瘍生検標本の採取を開始する
● 膀胱鏡検査及び細胞診(疾患の全ての既知の部位は、スクリーニング時に記録され、その後の各腫瘍評価時に再評価されるべきである。T1疾患を有する対象は、試験開始前に反復TURBTを受けるべきである。再病期分類TURBTは、浸潤のない固有筋層を示さなければならない。)
● 生検(臨床的適応がある場合)
● バイオマーカー評価のための血液及び尿サンプルの採取(可能な場合、また該当する場合は、TURBT前またはTURBT時に採取する)
【0566】
6.2.7.3 ベースライン検査(およそ7日目~1日目)
● 身体診察
● 身長と体重(過去12ヵ月以内に測定された身長が使用される)
● バイタルサイン
● ECOG活動状態
● 血液と尿のサンプル採取:
○ CBC(末梢血液像)
○ 血清化学パネル(グルコースを含む)
○ HbA1c
○ 血清検査(B型肝炎、C型肝炎)
○ プロトロンビン時間/部分トロンボプラスチン時間/国際標準化比(PT/PTT/INR)
○ 尿検査(異常値には反射顕微鏡検査を実施)
○ 妊娠可能性のある対象の血清または尿に対して、β-hCG妊娠検査を行う
【0567】
6.2.7.4 誘導段階(1ヵ月目~3ヵ月目)
(i) 1週目の1日目~6週目(1週目の±1日後のみ)
● エンホルツマブベドチンの膀胱内投与前:
○ 対象/除外基準に従って対象の適格性を確認し、病歴を記録する(1週目のみ)
○ 身体検査;新しい症状や進行中の症状について検討*
○ 体重*
○ ECOG活動状態(1週目のみ)*
○ バイタルサイン
○ AE及び併用薬の収集(該当する場合)
○ 血液及び/または尿のサンプル採取:
○ 血清化学パネル(1週目、3週目、6週目のみ)*
○ 投与前にグルコースが250mg/dL未満であることを採血またはフィンガースティックで確認すること
○ CBC(末梢血液像)*
○ PT/PTT/INR(臨床的適応がある場合)
○ PK/抗治療抗体(ATA)評価
○ バイオマーカー評価
○ 血清または尿によるβ-hCG妊娠試験(1週目、3週目、及び6週目)(妊娠可能性のある対象のみ)(投与前7日以内に採取された場合は不要)
○ 尿検査(異常値には反射顕微鏡検査を実施)*
● 臨床検査の結果を検討し、試験薬投与前に適格性を確認すること(1週目のみ)
● エンホルツマブベドチン膀胱内投与(週1回、6週間投与予定)
● エンホルツマブベドチンの膀胱内投与終了後:
○ バイタルサイン(最初の排泄から2時間[±15分間]後に採取する)
○ 最初の排泄から2時間の観察
○ AE及び併用薬の収集(該当する場合)
○ PK評価のための血液及び尿サンプル
* 1週目の1日目のみ、投与前3日以内に指示された評価を収集する。
【0568】
(ii) 1週目の2日目~6週目
誘導段階中の2日目の来院は、診療所において、またはテレヘルス/電話で行われる。診療所での受診がない対象については、在宅医療提供者を通じて血液と尿サンプルを採取する。
● 健康診断(現地で実施する場合のみ)
● 対象インタビュー(+7日間;6週目のみ;誘導段階の第6週以前に中止した対象は最終検査時に終了インタビューを受ける)
● AE及び併用薬の収集(該当する場合)
● PK評価のための血液及び尿サンプル(±4時間;1週目、2週目、6週目のみ)
【0569】
(iii) 1週目の4日目~6週目
診療所での受診がない対象については、在宅医療提供者を通じて血液と尿サンプルを採取する。
● AE及び併用薬の収集(該当する場合)
● PK評価のための血液及び尿サンプル(±4時間;1週目、2週目、6週目のみ)
【0570】
(iv) 9週目の1日目(±3日)
血清または尿によるβ-hCG妊娠検査(妊娠可能性のある対象のみ)
【0571】
6.2.7.5 維持段階(4ヵ月目~12ヵ月目)
(i) 1日目(±3日)
● エンホルツマブベドチンの膀胱内投与前:
○ インフォームドコンセント(4ヵ月目のみ;試験開始3ヵ月後の最初の評価でCISが持続または高悪性度Ta疾患が再発した対象は、試験治療の継続に再同意した後に治療を継続し、6ヵ月後に再度評価され得る)
○ 身体検査;新しい症状や進行中の症状について検討
○ 体重
○ ECOG活動状態
○ バイタルサイン
○ AE及び併用薬の収集(該当する場合)
○ 血液及び/または尿のサンプル採取:
○ 血清化学パネル
○ 投与前にグルコースが250mg/dL未満であることを採血またはフィンガースティックで確認すること
○ CBC(末梢血液像)
○ PT/PTT/INR(臨床的適応がある場合)
○ PK/ATA評価
○ バイオマーカー評価
○ 血清または尿によるβ-hCG妊娠試験(妊娠可能性のある対象のみ)(投与前7日以内に採取された場合は不要)
○ 尿検査(異常値には反射顕微鏡検査を実施)
○ 膀胱鏡検査及び細胞診(対象は、維持段階に入る前、及び登録後最初の2年間は最初の誘導投与から3ヵ月ごとに膀胱鏡検査を受けなければならず、また、試験薬投与前14日以内に完了しなければならない)
○ 膀胱マッピング生検(12ヵ月目の評価時に必要となる。目に見える腫瘍がない場合は、膀胱の全ての象限から生検を行うべきである[最低4回の生検が必要]。生検は他の全ての来院時には必要とされないが、有効性を考慮するために臨床的に示される場合に考慮される。)
● エンホルツマブベドチン膀胱内投与(月に1回、合計9回投与予定)
● エンホルツマブベドチンの膀胱内投与終了後:
○ バイタルサイン(最初の排泄から2時間[±15分間]後に採取する)
○ 最初の排泄から2時間の観察
○ AE及び併用薬の収集(該当する場合)
○ PK評価のための血液及び尿サンプル
【0572】
(ii) 15日目(±3日)
15日目の来院は、最初の3回の維持用量投与中に必要であり、AE及び併用薬の評価を行うためにテレヘルス/電話で実施される。
● 対象インタビュー(維持段階の5回投与終了時及び維持期終了時[+7日間]に実施予定)
【0573】
6.2.7.6 応答評価
本試験における腫瘍反応性の評価は、スクリーニング時に標準的な膀胱鏡検査(すなわち、膀胱鏡検査±生検)及び細胞診を行い、その後、登録後最初の2年間は最初の誘導投与から3ヵ月ごとに評価し、その後登録後5年間は6ヵ月ごとに評価する。
【0574】
膀胱鏡検査法及び尿細胞診による応答評価は、次回の試験薬投与前14日以内に完了しなければならない。膀胱鏡検査異常、陽性、または尿細胞診異常のある対象は、治験責任医師の臨床的判断により、追加の評価(例えば、画像診断、生検、麻酔下での検査)を受ける必要がある。
【0575】
本試験では、12ヵ月目の評価時に膀胱マッピング生検が必要となる。目に見える腫瘍がない場合は、膀胱の全ての象限から生検を行うべきである(最低4回の生検が必要)。生検は他の全ての来院時には必要とされないが、有効性を考慮するために臨床的に示される場合に考慮される。
【0576】
6.2.7.7 治療終了時検査(試験薬最終投与から30~37日後)
治療終了(EOT)検査は、AEによる遅延がない限り、試験薬の最終投与から30~37日後に行う。注:3ヵ月目の膀胱鏡検査後に治療を中止した対象のEOT検査までの期間が37日を超えるが、EOT評価は新たな抗がん剤治療を開始する前に行われなければならない。EOT 評価が試験最終治療後30日より前に終了した場合、対象に最終治療後30~37日目に連絡し、AEを評価する。
● 身体診察
● バイタルサイン
● ECOG活動状態
● 該当する場合、眼科精密検査(EOT細隙灯検査は、本試験中に角膜AEが発生した対象に必要であり、最終投与から少なくとも4週間で実施されなければならない)
● AE及び併用薬の収集(該当する場合)
● 血液及び/または尿のサンプル採取:
○ 血清化学パネル(グルコースを含む)
○ CBC(末梢血液像)
○ PK/ATA評価
○ バイオマーカー評価
○ 血清または尿によるβ-hCG妊娠検査(妊娠可能性のある対象のみ)
○ 尿検査(異常値には反射顕微鏡検査を実施)
● 疾患の状態、生存状態、初回以降の治療の収集(該当する場合)
【0577】
6.2.7.8 追跡調査(±1週間)
疾患の持続、再発、進行以外の理由で試験治療を中止した対象、及び維持段階を終了した対象は、本試験の追跡調査段階に入る。追跡調査段階において、標準的な膀胱鏡検査(すなわち、膀胱鏡検査±生検)及び細胞診による腫瘍応答評価は、登録後最初の2年間は最初の誘導用量から3ヵ月ごとに、その後、登録後5年間にわたり、疾患再発、進行、その後の抗がん療法の開始、または死亡のいずれかが最初に起こるまで6ヵ月ごとに行われる。
【0578】
以下の評価は、登録後最初の2年間は最初の誘導用量から3ヵ月ごとに、その後、登録後5年間にわたり、疾患再発、進行、その後の抗がん療法の開始、または死亡のいずれかが最初に起こるまで6ヵ月ごとに行われる。
● 身体診察
● 血清または尿によるβ-hCG妊娠検査(妊娠可能性のある対象のみ)(エンホルツマブベドチンの最終投与後6ヵ月間、毎月採取すること)
● 尿検査(異常値には反射顕微鏡検査を実施)
● 画像診断(臨床的適応がある場合)
● バイオマーカー評価のための血液及び尿サンプル
● 膀胱鏡検査及び細胞診
● 生検(臨床的適応がある場合)
● 重症で試験治療に関連すると考えられる場合、AEを収集する
【0579】
6.2.7.9 生存追跡調査(±2週間)
疾患の持続、再発、進行、またはその後の抗がん剤治療の開始による試験治療の中止後、対象は生存追跡調査に入る。病状、生存期間及びその後の抗がん剤治療に関するデータは、追跡不能、同意の撤回、死亡、または治験依頼者による試験中止のいずれかが最初に起こるまで、6ヵ月(±2週間)ごとに、登録後最長5年間収集される。
【0580】
6.2.7.10 試験終了/追跡調査終了
対象が試験中止の基準を満たした日付と試験中止の理由が記録される。
【0581】
6.2.8 試験評価
6.2.8.1 スクリーニング/ベースライン評価
適格性基準を満たす対象のみが、この試験に登録される。
【0582】
対象の病歴には、過去の重要な病歴、現在の状態、過去の悪性腫瘍の治療歴及び治療に対する応答、ならびに任意の併用薬に関する詳細なレビューが含まれる。
【0583】
身体検査には、以下の身体部分/システム、すなわち、腹部、四肢、頭部、心臓、肺、頸部、及び神経学的検査が含まれる。体重及び身長も測定し、身長は過去12ヵ月以内に測定したものを使用する。
【0584】
スクリーニング検査では、眼の精密検査が行われる。
【0585】
血液検査及び尿検査には、CBC(末梢血液像)、血清化学パネル、HbA1c、グルコース、血清検査(B及びC型肝炎)、PT/PTT/INR、ならびに尿検査(異常な結果に対する反射顕微鏡検査を行う)が含まれる。妊娠可能性のある対象に対して、血清または尿による妊娠検査を行う。
【0586】
バイオマーカー評価のための血液及び尿サンプルを採取する。登録から12ヵ月以内に採取された直近のTURBTから採取された保存腫瘍標本または組織は、入手可能な場合には必要とされる。さらなる詳細については、表18及び表19を参照する。
【0587】
心電図はすべての対象に対してスクリーニング時に実施される。
【0588】
試験治療開始前3ヵ月以内に、胸部CT、上部消化管、腹部、骨盤の画像診断とCTまたはMRIによる尿路造影が必要とされる。胸部CTの場合、造影剤を用いた画像診断が望ましい。対象がIV造影に耐えられない場合は、非造影CTが許容される。上部尿路、腹部、骨盤の画像診断には、造影剤を使用したCTまたはMRI尿路造影(医学的に禁忌でない限り)が許容される。
【0589】
6.2.8.2 応答/抗腫瘍活性評価
本試験における腫瘍反応性の評価は、スクリーニング時に標準的な膀胱鏡検査(すなわち、膀胱鏡検査±生検)及び細胞診を行い、その後、登録後最初の2年間は最初の誘導投与から3ヵ月ごとに評価し、その後登録後5年間は6ヵ月ごとに評価する。
【0590】
膀胱鏡検査法及び尿細胞診による応答評価は、次回の試験薬投与前14日以内に完了しなければならない。膀胱鏡検査異常、陽性、または尿細胞診異常のある対象は、治験責任医師の臨床的判断により、追加の評価(例えば、画像診断、生検、麻酔下での検査)を受ける必要がある。
【0591】
年1回の上部管画像診断は、対象が試験を受ける間、臨床的に指示された場合に行われる。
【0592】
白色光膀胱鏡検査、狭帯域画像化膀胱鏡検査、または蛍光(青色光)膀胱鏡検査は、試験中の評価に許容される。試験治療開始後、各対象は試験期間中可能な限り同じ膀胱鏡検査法を用いて疾患のモニタリングを受け、試験CRFに記録されるべきである。
【0593】
本試験では、12ヵ月目の評価時に膀胱マッピング生検が必要となる。目に見える腫瘍がない場合は、膀胱の全ての象限から生検を行うべきである(最低4回の生検が必要)。生検は他の全ての来院時には必要とされないが、有効性を考慮するために臨床的に示される場合に考慮される。
【0594】
対象は、以下の所見の全てを有する場合にCRを有すると考えられる。
1. 膀胱鏡検査:膀胱の外観は正常。膀胱鏡検査で膀胱の外観に異常がある場合、生検は陰性か、悪性度の低いTa、悪性度の低い尿路上皮乳頭状新生物、または悪性度の低い乳頭腫でなければならない。ランダムに膀胱生検を実施する場合、これらの生検は陰性であるか、低悪性度の疾患を示すべきである。
2. 尿細胞診:陰性。
a. 決定的でない尿細胞診は、評価されるべきである。
b. 尿細胞診が陽性であった場合は、膀胱鏡検査±生検、画像診断により臨床的評価を行う必要がある
3. 画像診断(実施された場合):正常、または異常が見つかった場合は、所見が膀胱内のCRを支持するものでなければならない。
【0595】
試験治療薬の膀胱内投与のため、対象は、上部管または前立腺尿道にがんが見つかり、ランダム膀胱生検が陰性の場合、悪性尿細胞診を伴う膀胱鏡検査が陰性であればCRとみなされる。
【0596】
(i) 尿細胞学の解釈
● 対象が試験中に尿細胞診で陽性を示した場合、治験責任医師は臨床的な指示に従い、膀胱鏡検査及び/または上腸管画像診断を行い、さらなる評価を行わなければならない。
● 尿細胞診が陽性であっても、疾患進行の指標として単独で用いることはできず、補助的臨床試験は、実施されなければならない。
● 尿細胞診の結果が「不満足」、「非定型細胞」、「疑わしい」、「不確定」の場合は、次の21日以内に再度細胞診を行わなければならない。サンプル間の時間は最低でも24時間を超える必要がある。
● 連続2回の尿細胞診の結果が「疑わしい」、「不確定」の場合、担当治験責任医師の判断により、膀胱鏡検査及び/または上部管画像診断によるさらなる臨床評価が必要となる。
● 尿細胞診が「疑わしい」、「不確定」で、かつ生検が陰性の場合、結果は陰性と解釈される。
● 連続2回の結果が「不満足」、「非定型細胞」の場合、全体の結果は陰性とみなされる。
【0597】
持続性疾患は、乳頭状疾患を伴うまたは伴わないCIS疾患の存在として定義される(高悪性度Ta/T1)。
【0598】
再発は、治療開始後の高悪性度疾患(高悪性度Ta、T1、またはCIS)の再出現として定義される。再発は、生検によって確認されなければならない。
【0599】
進行とは、以下のいずれかの発症と定義される:T1疾患(固有層浸潤)、≧T2疾患(筋浸潤)、リンパ節転移(N1+)、遠隔転移(M1)、または悪性度が低悪性度から高悪性度に上昇すること。
【0600】
低悪性度の疾患の持続、出現、存在は再発とはみなされない。低悪性度乳頭状疾患が再発した対象は、切除術を受けて試験を継続することができる。
【0601】
対象の臨床データは、CRF源検証に利用可能でなければならない。
【0602】
6.2.8.3 薬動力学的及び免疫原性評価
PK及びATA分析のための血液及び尿サンプルは、表18及び表19に提供されるサンプル採取スケジュールに従って、試験期間中採取される。エンホルツマブベドチン、ac-MMAE、全抗体(TAb)、及び非結合MMAE濃度は、検証されたアッセイを用いて決定される。アッセイは、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)や、さらなる特徴付けが必要な場合は他のアッセイを含み得る。PKサンプルは、他のエンホルツマブベドチン関連種の可能な分析のために保存される。血清中のエンホルツマブベドチンに対するATAレベルを測定するために、電気化学発光アッセイが使用される。推定されるエンホルツマブベドチンの用量関連血中PKパラメータは、濃度-時間曲線下面積(AUC)、最大濃度(Cmax)、最大濃度までの時間(Tmax)、見かけの終末半減期(t1/2)、及びトラフ濃度(Ctrough)を含み得るが、これらに限定されない。
【0603】
必要に応じて、追加の分析項目も評価される。
【0604】
6.2.8.4 薬動力学的及びバイオマーカー評価
バイオマーカー評価は、尿、末梢血、腫瘍組織において、本節及びスケジュール表に概説されたとおりに実施される。バイオマーカー評価は、対象選択には使用されない。エンホルツマブベドチンの治療前及び治療中は、応答、耐性、または安全性に関連する探索的、予測的、及び予後のバイオマーカーを監視する。
【0605】
腫瘍細胞に対するエンホルツマブベドチンの主な効果は、局所、腫瘍関連、及び末梢免疫細胞の活性化状態の変化をもたらし得る。血液及び尿サンプルにおけるバイオマーカー評価は、循環/無細胞腫瘍DNA、可溶性ネクチン-4のELISA評価、尿中バイオマーカーの免疫アッセイ、ならびに免疫細胞サブセット及びサイトカインの存在量を含む免疫機能のマーカーを含み得るが、これらに限定されない。
【0606】
登録後12ヵ月以内に採取された保存腫瘍組織は、入手可能な場合(最も最近に入手可能な組織を使用すべきである)、全ての対象に必要である。新たにカットしたスライドのみを提供できる場合は、最低10~15切片が必要(10切片未満の場合は治験依頼者に問い合わせること)。生検は12ヵ月目の評価時に必要であり、他の全ての評価時には臨床的適応に応じて実施すべきである。試験中に標準治療の一環として腫瘍サンプルを採取する場合、そのサンプルの一部はバイオマーカー試験のために治験依頼者に提出されるべきである。
【0607】
生検は、適切な訓練を受けた臨床施設の担当者が採取すべきである。生検部位の腫瘍内容を十分に確認し、生検の採取及び処理技術が最適であることを確認するため、可能な限り病理医が生検に立ち会うことが推奨される(Ferry-Galow 2018)。
【0608】
治療前の腫瘍の生物学的特性と対象の転帰との関係を理解するために、TURBT(腫瘍生検)由来の組織を検査する。生検は、腫瘍内の特定の薬力学的、予測的、予後的バイオマーカーについて評価される。組織が、登録後に採取された標準的な生検から入手可能である場合、治療に対する耐性や作用機序、応答性のバイオマーカーをさらに同定するために検査され得る。
【0609】
腫瘍組織におけるバイオマーカー評価は、免疫組織化学及び次世代シークエンシングによるネクチン-4及びPD-L1発現の中心的評価、腫瘍のサブタイプ分類、腫瘍微小環境分析、ならびにがんで一般的に変化する遺伝子またはRNAの体細胞変異もしくは変化のプロファイリングを含み得るが、これらに限定されない。
【0610】
6.2.8.5 生体試料保管施設
米国のみでは、追加の同意を提供する対象に対して、残りの未同定の血液及び/または組織は、研究治験依頼者によって保持され、新規の治療薬の標的の評価、ADC感受性及び耐性機構の生物学、ならびにADCのバイオマーカーの同定を含むが、それらに限定されない、将来の研究に使用される。将来の研究のために提供された血液及び組織サンプルは、最大25年間保管される。追加の同意が提供されない場合、試験が完了し、全ての適用可能な規制義務が満たされた後に、任意の残りの生物学的サンプルが破棄される。
【0611】
6.2.8.6 対象インタビュー
対象視点は、治療経験及び忍容性について45~60分間の電話インタビューを通して定性的に評価される。これらのインタビュー中に調査されるトピック及び質問に関する追加の詳細は、Subject Interview Guideに記載される。用量漸増中及び用量拡大中のインタビューは、以下の時点:誘導段階の終了時、維持段階の5回投与終了時、及び維持段階の終了時に行われる。
【0612】
6.2.8.7 安全性評価
本試験期間中の安全性評価は、SAEを含むAEの監視と記録、併用薬の記録、プロトコルで指定された身体検査所見と臨床検査の測定を含む。
【0613】
(i) 有害事象
(a) 定義
有害事象
医薬品規制調和国際会議(ICH)のE2Aガイドライン定義、迅速報告用の標準規格及び21CFR 312.32のIND安全報告によれば、AEとは、医薬品を投与された対象または治験対象に発生した医療上の不都合な事象であって、当該治療との因果関係が必ずしもないものをいう。
【0614】
検査結果、病状、その他の出来事を有害事象CRFに記録するか否かを決定する際には、以下の情報を考慮すべきである:
● インフォームドコンセントの時点から試験1日前まで、試験プロトコルに関連するAEのみが記録されるべきである。プロトコルに関連するAEとは、プロトコルで義務付けられた手順の結果として発生した不慮の医療事象と定義される。
● NC I CTCAEグレードが上昇するような、試験1日目の投与前に存在する、または進行中の全ての病状を記録するべきである。
● 試験1日目の投与前に存在した、または進行中であった病状のうち、重症度が悪化した、頻度が増加した、試験薬に関連するようになった、またはその他の方法で悪化したが、NCI CTCAEグレードの増加の閾値に達しなかったものは記録されるべきである。
● 試験初日(投与中及び投与後)から安全報告期間終了まで、全てのAE(試験薬との関連は問わない)は記録されるべきである。任意の処置(例えば、生検)に関連して発生した合併症は、その処置がプロトコルで義務付けられるか否かに関わらず、AEとして記録されるべきである。
● 一般的に、臨床検査値の異常は、臨床徴候や症状を伴う場合、介入を必要とする場合、SAEを生じる場合、または試験の中止や治療の中断・中止を生じる場合を除き、AEとして記録されるべきでない。臨床検査異常に起因するAEを記録する場合、異常そのものではなく、結果として生じた病態を記録すべきである(例えば、「ヘモグロビン低下」ではなく「貧血」を記録する)。
【0615】
重篤な有害事象
AEは、以下の基準のいずれかを満たす場合、SAEとして分類されるべきである:
致命的: AEにより死亡
生命に関わる: AEにより、対象が直ちに死亡する危険性がある。この分類は、より重篤な場合、仮に死に至る可能性のあるAEには適用されない。
入院: AEの結果、入院を余儀なくされた、または既存の入院が延長された。
この基準では、インフォームドコンセントに署名する前に計画された選択的な医学的・外科的処置や治療のための入院、または定期検診はSAEではない。緩和ケア施設またはホスピスケア施設への入院は、入院とはみなされない。基礎がんまたは試験標的疾患の計画された治療のための入院または長期入院は、SAEとして捕捉する必要はない。
生活不能/無力化: 対象が通常の生活機能を遂行する能力が持続的または著しく損なわれる、あるいは実質的に中断されるようなAE。
先天性異常または出生異常: 受胎前または妊娠中に分子または試験治療レジメンに曝露された対象の子または胎児に有害な転帰が生じること。
医学的に有意: AEは上記基準のいずれにも該当しないが、対象を危険にさらす可能性があり、上記に列挙した転帰のいずれかを予防するために医学的または外科的介入を必要とするか、または感染因子の医薬品を介した感染が疑われる可能性がある。潜在的なDILIは、医学的に有意な事象とも考えられる。
【0616】
有害事象の重症度
AE重症度は、NCI CTCAE、第5.0版を用いて分類すべきである。これらの基準は、試験マニュアルで提供される。
【0617】
AEの重症度及び重篤度は独立して評価される。「重症度」は、AEの強度を特徴付ける。「重篤な」は規制上の定義であり、規制当局の報告義務を定義するための治験依頼者のガイドとなる(上記のSAEの定義を参照)。
【0618】
有害事象と試験治療との関係
各AEとエンホルツマブベドチンとの関係は、治験責任医師が以下の基準で評価する:
関連:薬物とAEとの因果関係を示唆する証拠がある。例えば、
一般的でなく、薬物曝露と強く関連することが知られる事象(例えば、血管浮腫、肝障害、スティーブンス・ジョンソン症候群)が単発で発生した場合
薬物への曝露に一般的に関連しないが、薬物に曝露された集団では一般的でない事象(例えば、腱断裂)が1回以上発生した場合
非関連性:AEの他の原因がより妥当である(例えば、基礎疾患によるもの、試験集団で一般的に発生するもの)、またはAEの発現と試験治療薬の投与との時間的順序が確立できない、または因果関係が生物学的にあり得ないと考えられる。
【0619】
(b) 有害事象の誘発と記録の手順
治験責任医師及び治験担当者は、対象の質問中に誘発されたか、身体検査、臨床検査及び/またはその他の手段で発見されたかにかかわらず、全てのAE及びSAEを、適宜、CRF及び/またはSAE表に記録することにより報告する。
【0620】
有害事象の誘発
各臨床試験において、AEの報告を引き出すために、非制限的または非指示的な質問方法を用いるべきである。
【0621】
有害事象の記録
以下の情報は、有害事象CRFに記録されるべきである。
● 発症日及び解決日を含む説明
● SAE基準を満たすかどうか
● 重症度
● 試験治療またはその他の因果関係
● 結果
【0622】
診断と徴候や症状との比較
一般的には、個々の症状を列挙するよりも、統一的な診断を用いる方が望ましい。症状のグループ分けは、各構成徴候及び/または症状が、標準的な医学教科書で証明されるように、診断の医学的に確認された構成要素である場合にのみ行われるべきである。徴候や症状のいずれかの側面が、診断の古典的なパターンに適合しない場合、個々の症状は別のAEとして報告される。
【0623】
重篤な有害事象の記録
SAEに関して、事象(複数可)はCRFとSAE表の両方に記録される。SAEを記録する場合、以下を考慮すべきである:
● 死亡はある事象の結果である。死亡をもたらす事象は、SAE表とCRFの両方に記録され、報告されるべきである。
● 入院、外科的処置、診断的処置については、処置そのものではなく、外科的処置または診断的処置に至った病気をSAEとして記録すべきである。その処置は、病気に対して取られた処置の一部として、説明文に記載されるべきである。
【0624】
基礎的悪性腫瘍の進行
基礎的悪性腫瘍の進行は有効性の変数として評価されるため、AEまたはSAEとして報告されるべきではない。「疾患の進行」、「疾患の進行」、「悪性疾患の進行」、その他類似の用語は、AEまたはSAEを説明するために使用されるべきではない。しかしながら、進行に伴う臨床症状が、基礎悪性腫瘍の進行のみに起因するものと判断できない場合、または試験中の疾患について予想される進行パターンに合致しない場合は、AEまたはSAEとして報告される。加えて、基礎悪性腫瘍の進行による合併症は、AEまたはSAEとして報告されるべきである。
【0625】
妊娠
薬物安全性への通知
妊娠報告表は、父親となり得る対象のパートナーに生じた妊娠を含め、試験薬(複数可)初回投与時から試験薬最終投与後6ヵ月までに生じた全ての妊娠について記入する。妊娠予定日が対象の最初の試験薬投与後である場合、対象のパートナーに発生した妊娠のみが報告される。妊娠が判明してから48時間以内に、治験依頼者の医薬品安全性部門に電子メールまたはファックスを送信する。全ての妊娠を全期間監視し、全ての周産期及び新生児の転帰を報告すべきである。乳児は、最低8週間追跡されるべきである。
【0626】
CRFに関するデータの収集
試験薬(複数可)の最終投与から30日以内に発生した全ての妊娠(上記のとおり)も有害事象CRFに記録される。
【0627】
妊娠中絶は、偶発的、治療的、または自発的にかかわらず、SAEとして報告されなければならない。上記の「重篤な」基準で定義される先天性異常または出生欠陥は、SAEとして報告されるべきである。
【0628】
角膜有害事象
グレード2以上の角膜潰瘍または角膜炎のAEは、それぞれのNCI CTCAEカテゴリー内で評価されるべきである。グレード1の角膜潰瘍または角膜炎のAEは、「眼障害-その他、具体的に」の基準に従って評価されるべきである。その他の角膜AEは記録し、「眼障害-その他、具体的に」の基準に従って評価されるべきである。
【0629】
糖尿病及び高血糖
糖尿病のグレード付けは、グルコース不耐性のNCI CTCAE v5.0事象項に基づくべきである。高血糖のグレード付けは、高血糖のNCI CTCAE v5.0事象項に基づくべきである。
【0630】
潜在的な薬物性肝傷害
Hy’s Lawは、試験薬が重篤な肝毒性の発生率を増加させる可能性と重症度を推定するために用いられる。
【0631】
臨床試験における肝毒性の欠如は、試験される臨床的状況における潜在的な薬物誘発性肝損傷(DILI)の限られた予測値を提供する。しかしながら、臨床試験でHy’s Law症例が1例見つかると不吉であり、2例見つかると重篤なDILIの可能性を高度に予測することになる。
【0632】
定義
簡単に説明すると、潜在的なHy’s Lawの事例には以下の3つの要素が含まれる:
1. アミノトランスフェラーゼ(ALT及び/またはAST)の上昇>3×ULNかつ
2. 総ビリルビン値>2×ULNであり、胆汁うっ滞の初期所見(すなわち血清アルカリホスファターゼの上昇)がない、
かつ
3. アミノトランスフェラーゼ上昇及び高ビリルビン血症の原因として、ウイルス性肝炎、慢性または急性の既往の肝疾患、肝毒性を有することが知られる他の薬物(複数可)の投与など(ただし、これらに限定されない)、他に直ちに考えられるものはない。
【0633】
報告要件
任意の潜在的なHy’s Lawの事例は、SAEとして扱われ、治験依頼者に迅速に報告されるべきである。
【0634】
報告には利用可能な全ての情報を含めるべきであり、問題が完全に解決し、補足データを得るための全ての試みが完了するまで、追跡調査を注意深く開始すべきである。
【0635】
DILIの可能性を示唆する異常な臨床検査結果の追跡調査
一般に、血清ALTまたはASTが>3×ULNに上昇した場合は、血清ALT、AST、アルカリホスファターゼ、総ビリルビンを48~72時間以内に再検査し、異常の確認と悪化の有無を判断する。
【0636】
肝毒性の潜在的な交絡因子や代替原因を調査するために、適切な医学的評価を開始すべきである。この調査の間、試験薬の差し控えを検討する。
【0637】
(c) 有害事象及び重篤な有害事象の報告期間
全てのAE及びSAEの安全報告期間は、試験初日(投与前)から試験最終治療後30日までとする。しかしながら、全ての研究プロトコル関連AEは、インフォームドコンセントの時点から記録される。安全報告期間後に発生し、治験責任医師の見解において試験治療に関連すると考えられる全てのSAEも、治験依頼者に報告されるべきである。
【0638】
SAEは、有意な変化がベースラインに戻るか、事象が安定化(回復/解決)するか、治験責任医師が臨床的に重要でないと判断するか、対象が死亡するか同意を撤回するまで追跡調査される。全ての非重篤なAEは、安全報告期間を通して追跡される。特定の非重篤なAEは、解決、ベースラインへの復帰、または試験終了まで追跡される。
【0639】
(d) 重篤な有害事象は、即時報告を必要とする
治験責任医師は、SAEを観察または知った後24時間以内に、その事象と治験の治療レジメンとの関係にかかわらず、その事象を治験依頼者に報告する。
【0640】
初回SAE報告の場合、利用可能な症例の詳細はSAE表に記録される。少なくとも、以下が含まれるべきである:
● 対象番号
● 事象発生日
● 事象の説明
● 既知の場合は試験治療薬
● 治験責任医師の因果関係評価
【0641】
記入されたSAE表は、24時間以内に治験依頼者の医薬品安全性部門に電子メールまたはファックスで送信される(SAE報告書に指定された電子メールまたはファックス番号を参照)。
【0642】
関連する追跡情報が入手可能になり次第、治験依頼者に提出する。
【0643】
(e) 規制当局への治験依頼者の安全報告
治験責任医師は、全てのSAEを治験依頼者に報告することが要求される。治験依頼者は、予期せぬ重篤な副作用の疑い(SUSAR)を含む全てのSAEを、現地の法令または規制当局の報告要件に従って規制当局に報告する。
【0644】
(f) 特に注目すべき有害事象
特定の非重篤な有害事象(AESI)は、解決、ベースラインへの復帰、対象の休薬、試験終了、または事象が十分に特徴付けられる程度に慢性化するまで追跡調査する(関連する併用薬の収集を含む)。
【0645】
この目的でエンホルツマブベドチンに関連するAESIは、以下のリストの事象を含むが、これらに限定されない:
● 皮膚反応
● 末梢神経障害
● 角膜事象
● 高血糖
【0646】
AESIは電子データ収集(EDC)により速やかに報告されるべきである。重篤な基準を満たす事象が発生した場合は、24時間以内に重篤な事象として報告されるべきである。
【0647】
(ii) バイタルサイン
バイタルサインの測定には、心拍数、収縮期及び拡張期血圧、体温が含まれる。バイタルサイン値は記録され、臨床的に有意なバイタルサイン異常と関連する診断は、AEまたは既往症として記録される。
【0648】
(iii) 臨床検査検査
サンプルは地元のラボで採取される。現地の臨床検査試験には、安全性の評価と臨床判断のための施設内標準検査が含まれる。試験期間中、予定された時点(治験日程を参照)において、安全性を評価するため、以下の臨床検査が現地の検査機関により実施される:
● 血清化学パネルとしては、アルブミン、アルカリホスファターゼ、ALT、AST、重炭酸塩、血液尿素窒素、カルシウム、クレアチニン、塩化物、乳酸脱水素酵素(LDH)、リン、カリウム、ナトリウム、総ビリルビン、アミラーゼ、リパーゼ、グルコース、及び尿酸が挙げられる。
● HbA1c
● グルコース(投与前に採血またはフィンガースティックで250mg/dL未満であることを確認する必要がある)。
● CBC(末梢血液像)には以下の検査が含まれる:5分類(好中球、リンパ球、単球、好酸球、好塩基球)を有する白血球数、血小板数、Hgb、ヘマトクリット。
● 計算されたCrCl(クレアチニンまたはCrClの代わりにGFRを使用することも可能である)。CrClは、Cockcroft-Gault法またはMDRD式を用いて算出される。
【0649】
試験期間中、予定された時点(治験日程を参照)において、安全性を評価するため、現地の検査機関により以下の臨床評価(複数可)が実施される:
● 血清検査(B型肝炎、C型肝炎)
● PT/PTT/INR
● 尿検査
○ 標準的な尿検査(異常がある場合は反射顕微鏡検査を含む)
○ 妊娠可能性のある対象の血清または尿に対して、β-hCG妊娠検査を行う
【0650】
(iv) 身体診察
身体検査には、以下の身体部分/システム、すなわち、腹部、四肢、頭部、心臓、肺、頸部、及び神経学的検査が含まれる。体重及び身長も測定される。過去12ヵ月以内に測定された身長が使用される。
【0651】
エンホルツマブベドチンの膀胱内投与に先立ち、腹痛(特に下腹部、脇腹、尿道)、発熱、悪寒、閉塞を示唆する症状、皮疹、出血の徴候(極小または肉眼的血尿、血栓)の有無など、新規または継続中の症状について対象に質問することが推奨される。全体的な臨床評価でAEが示唆された場合、治験責任医師の判断により、症状が消失するまでさらなる治療を中止すべきである。
【0652】
(v) ECOG活動状態
ECOG活動状態は、プロトコル指定の時点で評価される。
【0653】
(vi) 心電図
全ての対象は、スクリーニング時に12誘導心電図を3回測定する。臨床的に適切であれば、追加のECGを実施すべきである。対象が仰臥位に少なくとも5分間置かれた後、ECGが行われる。ECGは可能な場合、バイオマーカーサンプルを得る前に行われるべきである。
【0654】
各ECG間の待機期間は必要とされない。追跡の電子コピーまたは紙コピーは、中央評価の可能性があるため、治験依頼者の被指名者に提出される。
【0655】
(vii) 妊娠検査
妊娠の可能性がある対象には、ベースライン時、誘導段階の第1週、第3週、第6週、第9週の試験初日、維持段階の各月の試験初日、EOT来院時、及びエンホルツマブベドチンの最終投与後6ヵ月間は毎月、少なくとも25mIU/mLの感度を有する血清または尿のβ-hCG妊娠検査を実施する。対象が試験薬を投与される前に、妊娠陰性の結果が必要である。妊娠検査は、施設内治験審査委員会/独立倫理委員会(IRB/IEC)の要請に応じて、またはローカル規制によって要求される場合には、繰り返し実施することもできる。
【0656】
(viii) 画像診断
対象はスクリーニング時に上部管、腹部、骨盤のCTまたはMRI尿路造影図と胸部の画像診断を受ける。対象がIV造影に耐えられない場合は、非造影CTでもよい。上部尿路、腹部、骨盤の画像診断には、造影剤を使用したCTまたはMRI尿路造影(医学的に禁忌でない限り)が認められる。試験治療開始前3ヵ月以内に同様のモダリティによる画像診断を行ったことがある場合は、その画像を使用する。
【0657】
(ix) 眼科精密検査
対象はスクリーニング時に、視力検査、細隙灯検査、眼圧検査、及び拡張眼底検査を含むがこれらに限定されない、適格な検眼士または眼科医によって行われる眼の精密検査を受ける。その後の眼検査は、臨床的な指示に応じて実施される。EOT細隙灯検査は、本試験中に角膜AEが発生した対象に必要であり、最終投与から少なくとも4週間で実施されなければならない。
【0658】
6.2.8.8 治療後の評価
(i) 追跡調査評価
疾患の持続、再発、進行以外の理由で試験治療を中止した対象、及び維持段階を終了した対象は、本試験の追跡調査段階に入る。身体診察、尿検査、妊娠検査は、治験日程に記載される通りに行われる。臨床的適応がある場合は画像診断を行う。追跡期間中、標準的な膀胱鏡検査(すなわち、膀胱鏡検査±生検)及び細胞診による腫瘍応答評価は、登録後最初の2年間は最初の誘導用量から3ヵ月ごとに、その後、登録後5年間にわたり、疾患再発、進行、その後の抗がん療法の開始、または死亡のいずれかが最初に起こるまで6ヵ月ごとに行われる。
【0659】
(ii) 全生存期間追跡評価
疾患の持続、再発、進行、またはその後の抗がん剤治療の開始による試験治療の中止後、対象は生存追跡調査に入る。生存期間及びその後の抗がん剤治療に関するデータは、追跡不能、同意の撤回、死亡、または治験依頼者による試験中止のいずれかが最初に起こるまで、6ヵ月(±2週間)ごとに、登録後最長5年間収集される。
【0660】
6.2.8.9 測定の妥当性
この試験で使用される安全対策は、試験薬の潜在的な有害反応を評価するための標準的な手順と考えられる。
【0661】
応答は、NMIBCにおける応答を評価するための標準的な膀胱鏡検査±生検及び細胞診によって評価される。このプロトコルにおける評価間隔は、疾患管理に適切であると考えられる。
【0662】
免疫原性は一般に生物製剤について評価され、したがって、標準的な試験を実施して、エンホルツマブベドチンに対する特異的抗体の存在の可能性を検出する。薬物動態学的評価はまた、用量-曝露-応答関係の特徴付けを明らかにするための臨床試験において一般的である。
【0663】
6.2.9 データ分析法
6.2.9.1 サンプルサイズの決定
この試験には約58名の対象が登録される。これには、用量漸増で評価される約18人の対象と、最大2つの拡大コホートで評価される約40人の対象(各コホート約20人)が含まれる。
【0664】
用量漸増を完了するのに必要な対象の正確な数は、MTDに達すると評価された用量レベルの数及び各用量レベルで治療された対象の数に依存するため、未知である。
【0665】
拡大コホートでは、正式な仮説検証は予定されない。観察されたCR率が30%~50%の範囲にあると仮定すると、コホートあたり20人の対象を用いた95%及び80%の正確CIを以上の表11にまとめる。
【0666】
6.2.9.2 試験エンドポイントの定義
試験エンドポイントは6.1.3目的に示される。エンドポイント定義は、この節に示される。
【0667】
(i) 完全奏効率
CR率は、CRを達成する対象の割合として定義される。
【0668】
対象は、以下の所見の全てを有する場合にCRを有すると考えられる。
1. 膀胱鏡検査:膀胱の外観は正常。膀胱鏡検査で膀胱の外観に異常がある場合、行われる生検は陰性か、悪性度の低いTa、悪性度の低い尿路上皮乳頭状新生物、または悪性度の低い乳頭腫でなければならない。ランダムに膀胱生検を実施する場合、これらの生検は陰性であるか、低悪性度の疾患を示すべきである。
2. 尿細胞診:陰性。
a. 決定的でない尿細胞診は、評価されるべきである。
b. 尿細胞診が陽性であった場合は、膀胱鏡検査±生検、画像診断により臨床的評価を行う必要がある
3. 画像診断(実施された場合):正常、または異常が見つかった場合は、所見が膀胱内のCRを支持するものでなければならない。
【0669】
試験治療薬の膀胱内投与のため、対象は、上部管または前立腺尿道にがんが見つかり、ランダム膀胱生検が陰性の場合、悪性尿細胞診を伴う膀胱鏡検査が陰性であればCRとみなされる。
【0670】
ベースライン後に応答評価を受けなかった対象は、CRを達成しないと考えられる。
【0671】
(ii) 完全奏効期間
CRの持続期間は、最初にCRが証明されてから、再発、進行、または何らかの原因による死亡のいずれかが最初に起こるまでの期間と定義される。
【0672】
CRを達成し、生存しており、分析時に疾患の再発及び進行がない対象は、最後の疾患評価で削除される。詳細な削除規則は統計解析計画書(SAP)に記載される。
【0673】
(iii) 膀胱摘出率
膀胱摘出率は、その後膀胱摘出を受けた対象の割合として定義される。
【0674】
(iv) 無増悪生存期間
無増悪生存期間(PFS)は、試験治療開始から最初の進行の証拠または何らかの原因による死亡のいずれかが最初に起こるまでの期間と定義される。分析時点で生存しており、進行のない対象は、最後の疾患評価で削除される。詳細な削除規則はSAPに記載される。
【0675】
(v) 無嚢胞生存率
無嚢胞生存期間(CFS)は、試験治療開始から膀胱摘出術または何らかの原因による死亡のいずれかが最初に起こるまでの期間と定義される。分析時点で生存しており、膀胱摘出術を受けない対象は、生存が確認された最後の日付で削除される。詳細な削除規則はSAPに記載される。
【0676】
6.2.9.3 統計及び分析計画
高レベル統計及び分析計画を以下に要約する。より詳細で包括的な計画がSAPにおいて提供される。
【0677】
(i) 検討事項
本試験は第1相用量漸増試験であり、その後の拡大コホートが予定される。全ての分析は記述的である。
【0678】
連続変数の記述には記述統計量(平均値、中央値、標準偏差、最小値、最大値)を用いる。カテゴリー変数の説明には、頻度と割合を用いる。
【0679】
(a) 無作為化と盲検化
本試験は非盲検用量漸増・拡大試験である。無作為化は利用されず、盲検化は適用できない。
【0680】
(b) 共変量の調整
共変量の調整は計画されない。
【0681】
(c) ドロップアウト及び欠落データの取り扱い
特に明記しない限り、欠落データを作成する。欠落AE開始日及び停止日は、事象の持続時間及びTE状態を計算する目的で与えられる。欠落データの取り扱いに関する詳細は、SAPに提供される。
【0682】
(d) 多施設共同試験
本試験には複数の施設が参加するが、どの施設でも施設別の分析が必要となるほどの対象が得られるとは予想されない。
【0683】
(e) 複数の比較及び多重度
この第1相試験では、多重比較は予定されておらず、アルファ調整は必要ない。
【0684】
(f) データ変換及び導出
解析計画において特に指定がない限り、2日(例えば、開始日時、終了日時)に基づく時間変数は、(終了日時-開始日時+1)(日数)として算出される。
【0685】
全ての統計分析で使用されるベースライン値は、分析計画において特に明記しない限り、試験薬初回投与前の直近の非欠損測定である。
【0686】
(g) 分析セット
全対象分析セット
全治療対象(ATS)分析セットには、任意の量のエンホルツマブベドチンの投与を受けた全ての対象が含まれる。ATS分析セットは、安全性と有効性のエンドポイントの解析に使用される。
【0687】
DLT評価可能分析セット
DE分析セットには、DLTを経験したか、エンホルツマブベドチンの誘導投与を少なくとも5回受けた、用量漸増中の全治療対象が含まれる。DE分析セットはMTDの決定に使用される。
【0688】
(h) サブグループの検査
探索的分析として、選択したエンドポイントについてサブグループ分析を行った。サブグループは、以下を含み得るが、これらに限定されない:
● 以前の治療
● 疾患サブタイプ
● ネクチン-4発現レベル
【0689】
(i) 分析のタイミング
本試験の最終分析は、すべての対象が治療と追跡期間を終了した後、あるいは治験依頼者による試験終了後に行われる。
【0690】
(ii) 対象の処置
試験対象を処置によって集計し、各分析セットの対象数をまとめる。試験治療を中止した対象及び試験から離脱した対象は、中止または離脱の理由とともに要約される。
【0691】
(iii) 対象の特徴
人口統計とその他のベースライン特性は要約される。詳細はSAPに記載される。
【0692】
(iv) 治療遵守
試験薬は、治験実施医療機関で膀胱内に投与される。治療遵守の要件は計画されない。
【0693】
(v) 有効性分析
全ての有効性分析は、ATS分析セットを用いて行われる。
【0694】
試験開始時のCR率と3、6、12、18、及び24ヵ月後のCR率を正確な95%CIとともにまとめた。
【0695】
CRの持続時間は、Kaplan-Meier法を用いて推定される。CRを達成する対象のみが分析に含まれる。
【0696】
Kaplan-Meier法を用いてPFS及びCFSを推定する。kaplan-Meierプロットは適切な場合に提示される。詳細な方法は、SAPにおいて提供される。
【0697】
膀胱摘出率は正確な95%信頼区間とともに要約される。
【0698】
(vi) 薬動力学的及び免疫原性分析
血液及び尿中のエンホルツマブベドチン濃度を、各PKサンプリング時点での記述統計量と共に要約する。算出される用量関連PKパラメータには、AUC、Cmax、Tmax、t1/2及びCtroughを含み得るが、これらに限定されず、非コンパートメント分析によって推定され、記述統計によって要約される。必要に応じて、追加の分析項目も評価される。PKと薬力学的エンドポイント、安全性、または有効性との間の関係を調べる。
【0699】
ATAの発生率は、記述統計によって要約される。
【0700】
(vii) バイオマーカー分析
バイオマーカーパラメータ(例えば、ベースライン値、ベースラインからの絶対的及び相対的変化)と抗腫瘍活性、安全性、PKパラメータとの関係を検討する。関心があると判定された関係及び関連データを要約する。詳細は、SAPまたはバイオマーカー分析計画に別々に記載される。
【0701】
(viii) 患者報告転帰分析
患者から報告された転帰は、対象のインタビューを通じて収集される。これらのインタビューから作成されるトランスクリプトの分析は、別個の文書に記載される。
【0702】
(ix) 安全性分析
全ての安全性分析は、ATS分析セットを用いて行われる。
【0703】
(a) 曝露範囲
治療の持続時間、用量の数、総用量、及び用量強度を要約する。投与遅延、スキップ、減量を含む投与量の変更についてまとめた。詳細は、SAPに提供される。
【0704】
(b) 有害事象
AEの概要は、全ての治療出現する有害事象(TEAE)、治療関連TEAE、グレード3以上のTEAE、治療関連グレード3以上のTEAE、TE SAE、治療関連TE SAE、死に至るTEAE、死に至る治療関連TEAE、治療中止に至るTEAE、及び治療中止に至る治療関連TEAEの発生率の一覧を提供する。AEは、試験治療の最初の投与後及び最終投与後30日以内に新たに発生または悪化した場合に、治療が緊急に発生すると定義される。
【0705】
TEAEは、Medical Dictionary for Regulatory Activities(MedDRA)が推奨する用語、重症度、試験薬との関係について要約される。1人の対象に同じ優先用語で同じAEが複数回発生した場合、AEの発生は1回と数える。投与量の変更または治療中止に至ったTEAEも同様にまとめた。
【0706】
全てのTEAE、グレード3以上のTEAE、及び治療中止に至ったTEAEが記載される。
【0707】
(c) 用量制限毒性
DLTを経験する対象の数及び割合は、DE分析セットについて要約される。DLT確率のモデルベース推定値は、各用量レベルについて95%信頼区間とともに示される。
【0708】
(d) 死亡と重篤な有害事象
SAEはTEAEと同様に列挙され、要約される。致命的な転帰を招いた事象は列挙される。
【0709】
(e) 臨床検査結果
臨床検査値(例えば、化学、血液学、及び尿検査)を来院ごとに要約する。ベースラインから最大ベースライン後NCI CTCAEグレードへのシフトを表に示す。
【0710】
臨床検査値は、NCI CTCAEによるグレードとともに記載され、正常な基準範囲外の値にはフラグが付けられる。
【0711】
(f) 他の安全性分析
バイタルサイン
バイタルサインの測定値(収縮期及び拡張期血圧、心拍数、体温)が記載される。
【0712】
ECOG活動状態
ベースラインから最良及び最悪ベースライン後スコアへのシフトを表に示す。
【0713】
ECG
ECGの状態(正常、臨床的に有意な異常、臨床的に有意でない異常)が記載される。
【0714】
(x) 中間分析
正式な中間分析は計画されない。試験の用量漸増部分では、各コホート終了後に治験依頼者とSMCがデータを評価し、DLTを判定して用量漸増の決定に役立てる。SMCは、安全性及びDLTを継続的に監視する。
【0715】
SMCの決定プロセス、及びSMCの役割と責任については、別文書に詳述される。
【0716】
この試験の中間データは、米国臨床腫瘍学会の年次総会などの学術会議で発表される。
【0717】
6.2.10 用語の略称及び定義の一覧表
ADC 抗体薬物複合体
AE 有害事象
AESI 特に注目すべき有害事象
ALT アラニンアミノトランスフェラーゼ
ANC 絶対好中球数
aPTT 部分トロンボプラスチン時間
AST アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ
ATA 抗治療抗体
ATS 全治療対象者
AUA 米国泌尿器科学会
AUC 濃度時間-曲線下の面積
β-hCG ベータヒト絨毛性ゴナドトロピン
BCG カルメット・ゲラン菌
BICR 盲検独立中央審査
Cmax 最大濃度
CrCl クレアチニンクリアランス
Ctrough トラフ濃度
CBC 全血球数
CFS 無嚢胞生存率
CI 信頼区間
CIS 上皮内癌
CR 完全奏効率
CRF 症例報告書
CT コンピュータ断層撮影法
CYP シトクロムP450
DE DLT評価可能
DILI 薬物性肝傷害
DLT 用量制限毒性
DOR 完全奏効期間
DU 現在の用量は許容できないほど毒性である
EAU 欧州泌尿器科学会
ECD 細胞外ドメイン
ECG 心電図
ECOG 米国東海岸癌臨床試験グループ
eCRF 電子症例報告書
ELISA 酵素結合免疫吸着アッセイ
EOT 治療終了
FIH ファースト・イン・ヒューマン
GFR 糸球体濾過率
HbA1c ヘモグロビンA1c
Hgb ヘモグロビン
HIV ヒト免疫不全ウイルス
HR ハザード比
ICH 医薬品規制調和国際会議
IEC 独立倫理委員会
Ig 免疫グロブリン
IND 治験薬
IRB 施設内治験審査委員会
IRR 注入関連の反応
IV 静脈内
LDH 乳酸デヒドロゲナーゼ
mAB モノクローナル抗体
MDRD 腎疾患における食生活改善
MedDRA 医薬品規制用語集
MMAE モノメチルウリスタチンE
MRHD ヒトの最大推奨用量
MRI 磁気共鳴画像法
MTD 最大耐量
mTPI 修正毒性確率区間
NCI CTCAE 米国国立癌研究所の有害事象共通用語基準
NMIBC 非筋肉浸潤性膀胱癌
NOAEL 無毒性量
NYHA ニューヨーク心臓協会
ORR 客観的応答率
OS 全生存期間
PACS 画像保存通信システム
PCR ポリメラーゼ連鎖反応
PD-1 プログラム細胞死タンパク質1
PD-L1 プログラム死リガンド1
PFS 無増悪生存期間
P-gp P-糖タンパク質
PK 薬物動態
PK/PD 薬物動態/薬力学
PN 末梢神経障害
PSA 前立腺特異抗原
PT/PTT/INR プロトロンビン時間/部分トロンボプラスチン時間/国際標準化比:週1回/週2回
SAE 重篤な有害事象
SAP 解析計画書
SJS スティーブンス・ジョンソン症候群
SMC 安全監視委員会
SUSAR 予期せぬ重篤な副作用の疑い
t1/2 半減期
TAb 全抗体
TE 治療出現
TEAE 治療出現の有害事象
TEN 中毒性表皮壊死融解症
Tmax 最大濃度までの時間
TURBT 膀胱腫瘍の経尿道切除
UC 尿路上皮癌
ULN 基準値上限
US 米国
UTI 尿路感染症
【配列表】
【国際調査報告】