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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-18
(54)【発明の名称】超硬冷間加工鋼合金
(51)【国際特許分類】
   C22C 38/00 20060101AFI20240910BHJP
   C22C 38/58 20060101ALI20240910BHJP
   C21D 9/46 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
C22C38/00 302Z
C22C38/58
C21D9/46 F
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508675
(86)(22)【出願日】2022-08-16
(85)【翻訳文提出日】2024-04-01
(86)【国際出願番号】 US2022040501
(87)【国際公開番号】W WO2023023083
(87)【国際公開日】2023-02-23
(31)【優先権主張番号】63/234,016
(32)【優先日】2021-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510192916
【氏名又は名称】テスラ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コマイ,リカルド
(72)【発明者】
【氏名】ロペス-ギャリティ,オマール
(72)【発明者】
【氏名】パティンソン,グラント
(72)【発明者】
【氏名】クーマン,チャールズ
【テーマコード(参考)】
4K037
【Fターム(参考)】
4K037EA01
4K037EA02
4K037EA04
4K037EA05
4K037EA10
4K037EA12
4K037EA13
4K037EA15
4K037EA16
4K037EA17
4K037EA18
4K037EA20
4K037EA21
4K037EA23
4K037EA25
4K037EA27
4K037EA31
4K037EB05
4K037EB08
4K037EB09
4K037FB00
4K037FF00
4K037FG00
4K037FG01
4K037JA06
(57)【要約】
実施形態は、外装車体コンポーネントなどの製品を作製するのに有用な改善された強度、硬度及び耐食性を有する冷間加工鋼合金に関する。冷間加工鋼合金を調製するプロセスも記載されている。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼合金組成物であって、
Feを含み、
硬度が少なくとも約400HVであり、
3重量%塩化ナトリウム水溶液中でのEpit-Eocp耐食性が少なくとも約500mVである、鋼合金組成物。
【請求項2】
前記硬度が約420HV~約500HVである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記Epit-Eocp耐食性が約520mV~約800mVである、請求項1又は請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
少なくとも約1100MPaの降伏強度をさらに含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
1.6mmの厚さで少なくとも約60°の曲げ角度の延性をさらに含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
マルテンサイト形成が約260K~約340Kで始まる、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
少なくとも約12体積%のマルテンサイトをさらに含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
少なくとも約1200MPaの降伏強度をさらに含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
Cr:15~18重量%、
Ni:4~8重量%、
Mn:1.5~6重量%、及び
Fe:Balをさらに含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
N:最大で約0.25重量%をさらに含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
Mo:最大で約2重量%をさらに含む、請求項9又は請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
C:最大で約0.03重量%、
Si:最大で約0.75重量%、
P:最大で約0.045重量%、及び
S:最大で約0.03重量%をさらに含む、請求項9から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
Cu:最大で約0.5重量%、
Co:最大で約0.8重量%、
Al:最大で約0.03重量%、
Ti:最大で約0.03重量%、及び
B:最大で約0.05重量%をさらに含む、請求項9から12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
各々最大で約0.05重量%の少なくとも1つの追加の元素をさらに含み、前記少なくとも1つの追加の元素が合計最大で約0.15重量%である、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
合金を調製するプロセスであって、
Feを含む鋼合金を鋳造する工程、
熱間加工、焼鈍、酸洗及びそれらの組み合わせからなる群から選択される処理ステップを前記鋼合金に実施して、処理された鋼合金を形成する工程、及び
前記処理された鋼合金を冷間加工して、硬度が少なくとも約400HVであり、3重量%塩化ナトリウム水溶液中で少なくとも約500mVのEpit-Eocp耐食性を有する冷間加工鋼合金を形成する工程を含む、プロセス。
【請求項16】
前記処理された鋼合金が、少なくとも約30%の厚さ減少まで冷間加工される、請求項15に記載のプロセス。
【請求項17】
前記冷間加工鋼が約0.01mm~約4mmの厚さを有する、請求項15又は請求項16に記載のプロセス。
【請求項18】
前記冷間加工鋼を機械加工する工程をさらに含む、請求項15から17のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項19】
前記鋼合金を焼鈍する前に熱間加工が行われる、請求項15から18のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項20】
前記鋼合金を熱間加工する前に焼鈍が行われる、請求項15から19のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項21】
前記鋼合金の処理が、該鋼合金前記処理された鋼合金を冷間加工する前に行われる、請求項15から20のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項22】
請求項1に記載の組成物を含む車体を含む車両。
【請求項23】
前記車体が外装車体を含み、該外装車体が前記鋼合金を含む、請求項22に記載の車両。
【請求項24】
前記鋼合金がコーティングされていない、請求項22又は請求項23に記載の車両。
【請求項25】
腐食保護剤が前記鋼合金上に配置されていない、請求項22から24のいずれか一項に記載の車両。
【請求項26】
前記腐食保護剤が塗料である、請求項25に記載の車両。
【請求項27】
前記車両が、電気モータを備える電気車両である、請求項22から26のいずれか一項に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願と共に提出された出願データシートにおいて外国又は国内の優先権主張が特定されているあらゆる出願は、37CFR1.57、並びに規則4.18及び20.6の下で参照により本明細書に組み込まれる。本出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる2021年8月17日に出願された「ULTRA-HARD COLD-WORKED STEEL ALLOY」と題する米国仮出願第63/234,016号の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、鋼合金に関する。より具体的には、本発明は、自動車部品を含む高性能用途のための硬度及び耐食性が改善された鋼合金に関する。
【背景技術】
【0003】
[関連技術の説明]
市販の「3xx」シリーズのステンレス鋼合金のファミリーを含む、腐食に耐える多くの「ステンレス」鋼がある。これらの合金の最も一般的なものは、301、304/304L、316/316Lであり、一般的に様々な製品形態で製造されている。それらの微細構造及び強度の方法に基づいて区別される他のステンレス鋼製品:オーステナイト(3xxシリーズ)、マルテンサイト(4xxシリーズ)、フェライト、デュプレックス、及び析出硬化性(PH)も存在する。
【0004】
硬度を高めるために、マルテンサイト鋼は一般に、合金の完全なマルテンサイト変態及び硬化を確実にするために、時には極低温処理を含む制御された熱処理及び急冷サイクルを必要とする。しかしながら、このような処理の追加は合金コストを増加させ、熱処理は高価な設備を必要とし、製品形態によってはターゲット製品の反りを引き起こす可能性がある。さらに、耐食性マルテンサイト鋼は、典型的には、耐食性のために比較的多量のコバルトを組み込む。しかしながら、コバルトは、マルテンサイト合金の使用コストを増加させる高価な材料である。
【発明の概要】
【0005】
本開示及び従来技術を超えて達成される利点を要約する目的で、本開示の特定の目的及び利点が本明細書に記載される。そのような目的や利点のすべてが、任意の特定の実施形態において達成され得るわけではない。したがって、例えば、当業者は、本発明が、本明細書で教示又は示唆され得るような他の目的や利点を必ずしも達成することなく、本明細書で教示されるような1つの利点又は利点群を達成又は最適化するように具体化又は実施され得ることを認識するであろう。
【0006】
これらの実施形態はすべて、本明細書に開示される発明の範囲内にあることが意図されている。これら及び他の実施形態は、添付の図面を参照して好ましい実施形態の以下の詳細な説明から当業者に容易に明らかになるが、本発明は開示された任意の特定の好ましい実施形態(複数可)に限定されない。
【0007】
一態様では、鋼合金組成物が記載される。組成物はFeを含み、硬度が少なくとも約400HVであり、3重量%塩化ナトリウム水溶液中でのEpit-Eocp耐食性が少なくとも約500mVである。
【0008】
いくつかの実施形態では、硬度は約420HV~約500HVである。いくつかの実施形態では、Epit-Eocp耐食性は、約520mV~約800mVである。いくつかの実施形態では、Epit-Eocp耐食性は、約520mV~約600mVである。いくつかの実施形態では、組成物は、少なくとも約1100MPaの降伏強度を有する。いくつかの実施形態では、組成物は、1.8mmの厚さで少なくとも約60°の曲げ角度の延性を有する。いくつかの実施形態では、マルテンサイト形成は、約260K~約340Kで始まる。いくつかの実施形態では、マルテンサイト形成は、約260K~約320Kで始まる。いくつかの実施形態では、組成物は、少なくとも約12体積%のマルテンサイトを有する。いくつかの実施形態では、組成物は、少なくとも約1100MPaの降伏強度を有する。
【0009】
いくつかの実施形態では、組成物は、
Cr:15~18重量%、
Ni:4~8重量%、
Mn:1.5~6重量%、
Fe:Balを含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、組成物は最大で約0.25重量%のNをさらに含む。いくつかの実施形態では、組成物は最大で約2重量%のMoをさらに含む。いくつかの実施形態では、組成物は、最大で約0.03重量%のC、最大で約0.75重量%のSi、最大で約0.045重量%のP、及び最大で約0.03重量%のSを含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、組成物は、
C:最大で約0.03重量%、
N:0.05~0.25重量%、
Cr:15~18重量%、
Ni:4~8重量%、
Mn:1.5~6重量%、
Si:最大で約0.75重量%、
Mo:0.5~2重量%、
P:最大で約0.045重量%、
S:最大で約0.03重量%、及び
Fe:Balを含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、組成物は、
Cu:最大で約0.5重量%、
Co:最大で約0.8重量%、
Al:最大で約0.03重量%、
Ti:最大で約0.03重量%、及び
B:最大で約0.05重量%を含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、組成物は各々最大で約0.05重量%の少なくとも1つの追加の元素をさらに含み、少なくとも1つの追加の元素は合計最大で約0.15重量%である。
【0014】
別の態様では、合金を調製するプロセスが記載される。このプロセスは、Feを含む鋼合金を鋳造すること、熱間加工、焼鈍、酸洗及びそれらの組み合わせからなる群から選択される処理ステップを鋼合金に実施して、処理された鋼合金を形成すること、及び、処理された鋼合金を冷間加工して、硬度が少なくとも約400HVであり、3重量%塩化ナトリウム水溶液中で少なくとも約500mVのEpit-Eocp耐食性を有する冷間加工鋼合金を形成することを含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、処理された鋼合金は、少なくとも約30%の厚さ減少まで冷間加工される。いくつかの実施形態では、冷間加工鋼は、約0.01mm~約4mmの厚さを有する。いくつかの実施形態では、冷間加工鋼は、約1mm~約4mmの厚さを有する。いくつかの実施形態では、プロセスは、冷間加工鋼を機械加工することをさらに含む。いくつかの実施形態では、熱間加工は、鋼合金を焼鈍する前に行われる。いくつかの実施形態では、焼鈍は、鋼合金を熱間加工する前に行われる。いくつかの実施形態では、鋼合金の処理は、鋼合金 処理された鋼合金を冷間加工する前に行われる。
【0016】
別の態様では、鋼合金組成物を含む車体を備える車両が記載される。いくつかの実施形態では、車体は外装車体を含み、外装車体は鋼合金を含む。いくつかの実施形態では、鋼合金はコーティングされていない。いくつかの実施形態では、腐食保護剤は鋼合金上に配置されない。いくつかの実施形態では、腐食保護剤は塗料である。いくつかの実施形態では、車両は、電気モータを備える電気車両である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1A】耐孔食指数(PREN)対マルテンサイト形成開始温度(Ms)における耐食性についての鋼合金の計算結果を示す。
【0018】
図1B】FCC、BCC及びHCPの間の駆動力比較についての鋼合金の計算結果を示す。
【0019】
図2A】耐孔食指数(PREN)対マルテンサイト形成開始温度(Ms)における耐食性についての鋼合金A4、A7及びA8の計算結果を示す。
【0020】
図2B】FCC、BCC及びHCPの間の駆動力比較についての鋼合金A4、A7及びA8の計算結果を示す。
【0021】
図2C】耐孔食指数(PREN)対マルテンサイト形成開始温度(Ms)における耐食性についての合金1~7の計算結果を示す。
【0022】
図3】市販の鋼合金の実際のそれぞれの値に対して示された鋼合金A4、A7及びA8の計算された硬度対耐食性のAshby Plotを示す。
【0023】
図4A】50lbスケールで24%減少まで冷間加工で調製されたA4合金の光学顕微鏡写真を示す。
図4B】50lbスケールで24%減少まで冷間加工で調製されたA4合金の光学顕微鏡写真を示す。
【0024】
図5A】50lbスケールで36%減少まで冷間加工で調製されたA4合金の光学顕微鏡写真を示す。
図5B】50lbスケールで36%減少まで冷間加工で調製されたA4合金の光学顕微鏡写真を示す。
【0025】
図6A】50lbスケールで44%減少まで冷間加工で調製されたA4合金の光学顕微鏡写真を示す。
図6B】50lbスケールで44%減少まで冷間加工で調製されたA4合金の光学顕微鏡写真を示す。
【0026】
図7A】50lbスケールで56%減少まで冷間加工で調製されたA4合金の光学顕微鏡写真を示す。
図7B】50lbスケールで56%減少まで冷間加工で調製されたA4合金の光学顕微鏡写真を示す。
【0027】
図8】50kgスケールで調製されたA4、A7及びA8合金の実験的に測定された硬度、強度及び伸び特性を示す。
【0028】
図9】様々な程度まで冷間加工された50kgスケールで調製されたA4合金の長手方向応力-歪み実験データを示す。
【0029】
図10】様々な程度まで冷間加工された50kgスケールで調製されたA7合金の長手方向応力-歪み実験データを示す。
【0030】
図11】様々な程度まで冷間加工された50kgスケールで調製されたA8合金の長手方向応力-歪み実験データを示す。
【0031】
図12A】50kgスケールで調製された冷間加工A4合金の光学顕微鏡写真を示す。
【0032】
図12B】50kgスケールで調製された冷間加工A7合金の光学顕微鏡写真を示す。
【0033】
図12C】50kgスケールで調製された冷間加工A8合金の光学顕微鏡写真を示す。
【0034】
図13A】A4合金及びA7合金のEpit-Eocp耐食性の実験結果を示す。
【0035】
図13B】A4合金及びA7合金の腐食電流密度Icorrの実験結果を示す。
【0036】
図14A】A4、A7、B1、B2及びB3のEpit-Eocp耐食性の実験結果を示す。
【0037】
図14B】A4、A7、B1、B2及びB3合金の腐食電流密度Icorrの実験結果を示す。
【0038】
図15A】耐孔食指数(PREN)での耐食性に対するA4、A7、B1、B2及びB3合金のEpit-Eocp耐食性の実験結果を示す。
【0039】
図15B】耐孔食指数(PREN)での耐食性に対するA4、A7、B1、B2及びB3合金の腐食電流密度Icorrの実験結果を示す。
【0040】
図16A】合金1、合金2及び合金4のEpit-Eocp耐食性の実験結果を示す。
【0041】
図16B】合金1、合金2及び合金4の腐食電流密度Icorrの実験結果を示す。
【0042】
図17】タイプ301ステンレス鋼と比較した合金1の長手方向及び横方向の曲げ角度の実験結果を示す。
【0043】
図18】A4合金の応力歪み実験データを示す。
【発明の詳細な説明】
【0044】
本開示は、以下の詳細な説明を参照することによって理解され得る。説明を明確にするために、様々な図面の特定の要素は、縮尺通りに描かれておらず、概略的又は概念的に表されている場合があり、そうでなければ実施形態の特定の物理的構成に正確に対応していない場合があることに留意されたい。
【0045】
実施形態は、外装車体コンポーネントなどの製品を作製するのに有用な改善された強度、硬度及び耐食性を有する「冷間加工」(例えば、冷間圧延)鋼合金に関する。このような冷間加工鋼合金は、外装車体コンポーネント上の腐食保護剤(例えば、塗料)の必要性を回避しながら、外装車体コンポーネントが、凹み、引っ掻き及び孔食に耐えることを可能にし得る。冷間加工(例えば、冷間圧延)は、オーステナイト母材の歪み誘起マルテンサイト相変態に部分的に起因して、開示された鋼合金を強化し、これが耐擦傷性及び耐凹み性のための改善された硬度及び強度を付与する。有利には、開示された鋼合金の相変態は、耐食性を維持しながら硬度及び強度を増加させることが分かった。
【0046】
一実施形態は、硬度が少なくとも約400HVであり、3重量%塩化ナトリウム水溶液中でのEpit-Eocp耐食性が少なくとも約500mVである、冷間加工鋼合金である。いくつかの実施形態では、冷間加工鋼合金は、少なくとも約1150MPaの降伏強度、少なくとも約420HV又は43HRCの硬度、1.8mm厚さで少なくとも約60°の曲げ角度、及び少なくとも約500mVの3重量%塩化ナトリウム水溶液中でのEpit-Eocp耐食性を有する。いくつかの実施形態では、冷間加工鋼合金は、少なくとも約1100MPaの降伏強度、少なくとも約420HV又は43HRCの硬度、1.6mm厚さで少なくとも約60°の曲げ角度、及び少なくとも約520mVの3重量%塩化ナトリウム水溶液中でのEpit-Eocp耐食性を有する。いくつかの実施形態では、冷間加工鋼合金は、約1200MPaの降伏強度、少なくとも約45HRCの硬度、1.8mm厚さで少なくとも約65°の曲げ角度、及び少なくとも約530mVの3重量%塩化ナトリウム水溶液中でのEpit-Eocp耐食性を有する。
【0047】
別の実施形態は、硬度が少なくとも約400HVであり、3重量%塩化ナトリウム水溶液中でのEpit-Eocp耐食性が少なくとも約500mVである、冷間加工鋼合金である。いくつかの実施形態では、冷間加工鋼合金は、少なくとも約1100MPaの降伏強度、少なくとも約420HV又は43HRCの硬度、1.6mm厚さで少なくとも約60°の曲げ角度、及び少なくとも約520mVの3重量%塩化ナトリウム水溶液中でのEpit-Eocp耐食性を有する。いくつかの実施形態では、冷間加工鋼合金は、約1200MPaの降伏強度、少なくとも約45HRCの硬度、1.8mm厚さで少なくとも約65°の曲げ角度、及び少なくとも約530mVの3重量%塩化ナトリウム水溶液中でのEpit-Eocp耐食性を有する。
【0048】
・鋼合金組成物
本明細書に開示される鋼合金は、冷間加工時に改善された硬度及び耐食性を有することが分かった。いくつかの実施形態では、鋼合金はステンレス鋼合金である。鋼合金は、本明細書では、合金内の全元素及び粒子の重量パーセント(重量%)、並びに合金の特定の特性によって記載される。本明細書に記載の任意の合金の残りの組成は、鉄(Fe)及び偶発的な不純物を含むことが理解されよう。
【0049】
不純物は、出発材料中に存在し得るか、又は鋼合金を作製するための処理及び/又は製造のステップの1つにおいて導入され得る。偶発的な不純物は、硬度、耐食性、降伏強度、引張強度、延性、マルテンサイト形成及び/又はフェライト形成などの組成物の材料特性に影響を及ぼさない又は実質的に影響を及ぼさない化合物及び/又は元素である。いくつかの実施形態では、偶発的な不純物又は他の元素の合計は、1重量%、0.8重量%、0.5重量%、0.2重量% 0.15重量%、0.1重量%、0.05重量%若しくは0.01重量%であるか、約その値であるか、最大でその値であるか、又は最大で約その値であるか、又はそれらの間の任意の範囲の値である。いくつかの実施形態では、列挙されていない各元素の偶発的な不純物又は各追加の元素は、0.8重量%、0.5重量%、0.2重量% 0.1重量%、0.05重量%、0.01重量%、0.005重量%若しくは0.001重量%であるか、約その値であるか、最大でその値であるか、又は最大で約その値であるか、又はそれらの間の任意の範囲の値である。
【0050】
いくつかの実施形態では、鋼合金は、耐食性及び硬化特性のために少なくとも部分的に窒素の取り込みを含む。いくつかの実施形態では、鋼合金は、耐食性及び歪み誘起マルテンサイト遷移特性のために少なくとも部分的にクロムを含む。いくつかの実施形態では、鋼合金は、靭性及び調整されたオーステナイト安定性のために少なくとも部分的にニッケルを含む。いくつかの実施形態では、鋼合金は、オーステナイト安定性、費用対効果及び積層欠陥エネルギー調整特性のために、少なくとも部分的にマンガンを含む。いくつかの実施形態では、鋼合金は、耐食性及び硬化特性のために、並びに耐食性を高めるために低炭素含有量を可能にするために、少なくとも部分的にモリブデンを含む。
【0051】
いくつかの実施形態では、鋼合金組成物は、最大で若しくは最大で約0.03重量%のC、0.05~0.25重量%の範囲若しくは約その範囲のN、15~18重量%の範囲若しくは約その範囲のCr、4~8重量%の範囲若しくは約その範囲のNi、1.5~6重量%の範囲若しくは約その範囲のMn、最大で若しくは最大で約0.75重量%のSi、0.5~2重量%の範囲若しくは約その範囲のMo、最大で若しくは最大で約0.045重量%のP、最大で若しくは最大で約0.03重量%のSを含み、残りの組成(重量%による)はFe及び偶発的な不純物である。いくつかの実施形態では、鋼合金組成物は、最大で若しくは最大で約0.03重量%のC、0.15~0.25重量%の範囲若しくは約その範囲のN、16~18重量%の範囲若しくは約その範囲のCr、5~6重量%の範囲若しくは約その範囲のNi、1.5~2.5重量%の範囲若しくは約その範囲のMn、最大で若しくは最大で約0.75重量%のSi、1~2重量%の範囲若しくは約その範囲のMo、最大で若しくは最大で約0.045重量%のP、最大で若しくは最大で約0.03重量%のSを含み、残りの組成(重量%による)はFe及び偶発的な不純物である。いくつかの実施形態では、鋼合金組成物は、最大で若しくは最大で約0.03重量%のC、0.15~0.25重量%の範囲若しくは約その範囲のN、16~18重量%の範囲若しくは約その範囲のCr、5~6重量%の範囲若しくは約その範囲のNi、1.5~3.0重量%の範囲若しくは約その範囲のMn、最大で若しくは最大で約0.75重量%のSi、1~2重量%の範囲若しくは約その範囲のMo、最大で若しくは最大で約0.045重量%のP、最大で若しくは最大で約0.03重量%のSを含み、残りの組成(重量%による)はFe及び偶発的な不純物である。いくつかの実施形態では、鋼合金組成物は、最大で若しくは最大で約0.03重量%のC、0.05~0.15重量%の範囲若しくは約その範囲のN、15~17重量%の範囲若しくは約その範囲のCr、6~8重量%の範囲若しくは約その範囲のNi、1.5~2.5重量%の範囲若しくは約その範囲のMn、最大で若しくは最大で約0.75重量%のSi、0.5~1.5重量%の範囲若しくは約その範囲のMo、最大で若しくは最大で約0.045重量%のP、最大で若しくは最大で約0.03重量%のSを含み、残りの組成(重量%による)はFe及び偶発的な不純物である。いくつかの実施形態では、鋼合金組成物は、最大で若しくは最大で約0.03重量%のC、0.05~0.15重量%の範囲若しくは約その範囲のN、15~17重量%の範囲若しくは約その範囲のCr、4~6重量%の範囲若しくは約その範囲のNi、4~6重量%の範囲若しくは約その範囲のMn、最大で若しくは最大で約0.75重量%のSi、0.75~1.5重量%の範囲若しくは約その範囲のMo、最大で若しくは最大で約0.045重量%のP、最大で若しくは最大で約0.03重量%のSを含み、残りの組成(重量%による)はFe及び偶発的な不純物である。いくつかの実施形態では、鋼合金組成物は、最大で若しくは最大で約0.03重量%のC、0.11重量%の範囲若しくは約その範囲のN、16重量%の範囲若しくは約その範囲のCr、6重量%の範囲若しくは約その範囲のNi、2重量%の範囲若しくは約その範囲のMn、最大で若しくは最大で約0.75重量%のSi、1.2重量%の範囲若しくは約その範囲のMo、最大で若しくは最大で約0.045重量%のP、最大で若しくは最大で約0.03重量%のSを含み、残りの組成(重量%による)はFe及び偶発的な不純物である。いくつかの実施形態では、鋼合金組成物は、最大で若しくは最大で約0.03重量%のC、0.12重量%の範囲若しくは約その範囲のN、13重量%の範囲若しくは約その範囲のCr、4重量%の範囲若しくは約その範囲のNi、6重量%の範囲若しくは約その範囲のMn、最大で若しくは最大で約0.75重量%のSi、2重量%の範囲若しくは約その範囲のMo、最大で若しくは最大で約0.045重量%のP、最大で若しくは最大で約0.03重量%のSを含み、残りの組成(重量%による)はFe及び偶発的な不純物である。いくつかの実施形態では、鋼合金組成物は、最大で若しくは最大で約0.03重量%のC、0.05~0.15重量%の範囲若しくは約その範囲のN、10~15重量%の範囲若しくは約その範囲のCr、3.5~4.5重量%の範囲若しくは約その範囲のNi、4~6重量%の範囲若しくは約その範囲のMn、最大で若しくは最大で約0.75重量%のSi、1.5~2.5重量%の範囲若しくは約その範囲のMo、最大で若しくは最大で約0.045重量%のP、最大で若しくは最大で約0.03重量%のSを含み、残りの組成(重量%による)はFe及び偶発的な不純物である。いくつかの実施形態では、鋼合金組成物は、最大で若しくは最大で約0.03重量%のC、0.1重量%の範囲若しくは約その範囲のN、11重量%の範囲若しくは約その範囲のCr、4重量%の範囲若しくは約その範囲のNi、6重量%の範囲若しくは約その範囲のMn、最大で若しくは最大で約0.75重量%のSi、1.0重量%の範囲若しくは約その範囲のMo、最大で若しくは最大で約0.045重量%のP、最大で若しくは最大で約0.03重量%のSを含み、残りの組成(重量%による)はFe及び偶発的な不純物である。いくつかの実施形態では、鋼合金組成物は、最大で若しくは最大で約0.03重量%のC、0.05~0.15重量%の範囲若しくは約その範囲のN、10~15重量%の範囲若しくは約その範囲のCr、3.5~4.5重量%の範囲若しくは約その範囲のNi、4~6重量%の範囲若しくは約その範囲のMn、最大で若しくは最大で約0.75重量%のSi、0.5~1.5重量%の範囲若しくは約その範囲のMo、最大で若しくは最大で約0.045重量%のP、最大で若しくは最大で約0.03重量%のSを含み、残りの組成(重量%による)はFe及び偶発的な不純物である。いくつかの実施形態では、鋼合金組成物は、最大で若しくは最大で約0.03重量%のC、0.15重量%の範囲若しくは約その範囲のN、16重量%の範囲若しくは約その範囲のCr、5.5重量%の範囲若しくは約その範囲のNi、2.7重量%の範囲若しくは約その範囲のMn、最大で若しくは最大で約0.75重量%のSi、1.25重量%の範囲若しくは約その範囲のMo、最大で若しくは最大で約0.045重量%のP、最大で若しくは最大で約0.03重量%のSを含み、残りの組成(重量%による)はFe及び偶発的な不純物である。いくつかの実施形態では、最大の偶発的な不純物又は他の元素は、合計、合計約、最大で合計、又は最大で合計約0.15若しくは0.1重量%である。いくつかの実施形態では、各元素の偶発的な不純物又は他の各元素は、0.05重量%であるか、約0.05重量%であるか、最大で0.05重量%であるか、又は最大で約0.05重量%である。
【0052】
いくつかの実施形態では、鋼合金組成物は、0.1重量%、0.05重量%、0.04重量%、0.03重量%、0.02重量%、0.01重量%若しくは0.005重量%の量、約その量、少なくともその量、少なくとも約その量、最大でその量、又は最大で約その量、又はそれらの間の任意の範囲の値の炭素(C)を含む。いくつかの実施形態では、鋼合金組成物は、1重量%、0.5重量%、0.25重量%、0.2重量%、0.15重量%、0.12重量%、0.11重量%、0.1重量%、0.05重量%若しくは0.01重量%の量、約その量、少なくともその量、少なくとも約その量、最大でその量、又は最大で約その量、又はそれらの間の任意の範囲の値の窒素(N)を含む。いくつかの実施形態では、鋼合金組成物は、25重量%、20重量%、19重量%、18重量%、17重量%、16重量%、15重量%、14重量%、13重量%、12重量%、11重量%、若しくは10重量%の量、約その量、少なくともその量、少なくとも約その量、最大でその量、又は最大で約その量、又はそれらの間の任意の範囲の値のクロム(Cr)を含む。いくつかの実施形態では、鋼合金組成物は、15重量%、10重量%、9重量%、8重量%、7重量%、6重量%、5.5重量%、5重量%、4重量%、3重量%、2重量%、1重量%若しくは0.5重量%の量、約その量、少なくともその量、少なくとも約その量、最大でその量、又は最大で約その量、又はそれらの間の任意の範囲の値のニッケル(N)を含む。いくつかの実施形態では、鋼合金組成物は、15重量%、10重量%、9重量%、8重量%、7重量%、6重量%、5重量%、4重量%、3重量%、2.7重量%、2.5重量%、2重量%、1.5重量%、1重量%、0.5重量%若しくは0.1重量%の量、約その量、少なくともその量、少なくとも約その量、最大でその量、又は最大で約その量、又はそれらの間の任意の範囲の値のマンガン(Mn)を含む。いくつかの実施形態では、鋼合金組成物は、2重量%、1重量%、0.9重量%、0.8重量%、0.75重量%、0.7重量%、0.65重量%、0.6重量%、0.55重量%、0.5重量%、0.4重量%、0.3重量%、0.2重量%、0.1重量%若しくは0.05重量%の量、約その量、少なくともその量、少なくとも約その量、最大でその量、又は最大で約その量、又はそれらの間の任意の範囲の値のケイ素(Si)を含む。いくつかの実施形態では、鋼合金組成物は、5重量%、4重量%、3重量%、2重量%、1.7重量%、1.5重量%、1.4重量%、1.25重量%、1.2重量%、1重量%、0.9重量%、0.8重量%、0.75重量%、0.7重量%、0.6重量%、0.5重量%、0.4重量%、0.3重量% 0.2重量%、0.1重量%若しくは0.05重量%の量、約その量、少なくともその量、少なくとも約その量、最大でその量、又は最大で約その量、又はそれらの間の任意の範囲の値のモリブデン(Mo)を含む。いくつかの実施形態では、鋼合金組成物は、1重量%、0.5重量%、0.1重量%、0.08重量%、0.07重量%、0.06重量%、0.05重量%、0.045重量%、0.04重量%、0.03重量%、0.02重量%、0.01重量%若しくは0.005重量%の量、約その量、少なくともその量、少なくとも約その量、最大でその量、又は最大で約その量、又はそれらの間の任意の範囲の値のリン(P)を含む。いくつかの実施形態では、鋼合金組成物は、1重量%、0.5重量%、0.1重量%、0.08重量%、0.07重量%、0.06重量%、0.05重量%、0.045重量%、0.04重量%、0.03重量%、0.02重量%、0.01重量%若しくは0.005重量%の量、約その量、少なくともその量、少なくとも約その量、最大でその量、又は最大で約その量、又はそれらの間の任意の範囲の値の硫黄(S)を含む。いくつかの実施形態では、鋼合金組成物は、2重量%、1重量%、0.9重量%、0.8重量%、0.7重量%、0.6重量%、0.5重量%、0.4重量%、0.3重量%、0.2重量%、0.1重量%、0.08重量%、0.07重量%、0.06重量%、0.05重量%、0.045重量%、0.04重量%、0.03重量%、0.02重量%、0.01重量%若しくは0.005重量%の量、約その量、少なくともその量、少なくとも約その量、最大でその量、又は最大で約その量、又はそれらの間の任意の範囲の値の銅(Cu)を含む。いくつかの実施形態では、鋼合金組成物は、2重量%、1重量%、0.9重量%、0.8重量%、0.7重量%、0.6重量%、0.5重量%、0.4重量%、0.3重量%、0.2重量%、0.1重量%、0.08重量%、0.07重量%、0.06重量%、0.05重量%、0.045重量%、0.04重量%、0.03重量%、0.02重量%、0.01重量%若しくは0.005重量%の量、約その量、少なくともその量、少なくとも約その量、最大でその量、又は最大で約その量、又はそれらの間の任意の範囲の値のコバルト(Co)を含む。いくつかの実施形態では、鋼合金組成物は、1重量%、0.5重量%、0.1重量%、0.08重量%、0.07重量%、0.06重量%、0.05重量%、0.045重量%、0.04重量%、0.03重量%、0.02重量%、0.01重量%若しくは0.005重量%の量、約その量、少なくともその量、少なくとも約その量、最大でその量、又は最大で約その量、又はそれらの間の任意の範囲の値のアルミニウム(Al)を含む。いくつかの実施形態では、鋼合金組成物は、1重量%、0.5重量%、0.1重量%、0.08重量%、0.07重量%、0.06重量%、0.05重量%、0.045重量%、0.04重量%、0.03重量%、0.02重量%、0.01重量%若しくは0.005重量%の量、約その量、少なくともその量、少なくとも約その量、最大でその量、又は最大で約その量、又はそれらの間の任意の範囲の値のチタン(Ti)を含む。いくつかの実施形態では、鋼合金組成物は、1重量%、0.5重量%、0.1重量%、0.08重量%、0.07重量%、0.06重量%、0.05重量%、0.045重量%、0.04重量%、0.03重量%、0.02重量%、0.01重量%若しくは0.005重量%の量、約その量、少なくともその量、少なくとも約その量、最大でその量、又は最大で約その量、又はそれらの間の任意の範囲の値のホウ素(B)を含む。いくつかの実施形態では、鋼合金組成物は、0.1重量%、0.07重量%、0.05重量%、0.04重量%、0.03重量%、0.02重量%、0.01重量%若しくは0.005重量%の量、約その量、最大でその量、又は最大で約その量、又はそれらの間の任意の範囲の値の、列挙されていない各元素の偶発的な不純物又は各追加の元素を含む。いくつかの実施形態では、鋼合金組成物は、合計で1重量%、0.5重量%、0.3重量%、0.2重量%、0.15重量%、0.1重量%、0.07重量%、0.05重量%、0.04重量%、0.03重量%、0.02重量%、0.01重量%若しくは0.005重量%の量、約その量、最大でその量、又は最大で約その量、又はそれらの間の任意の範囲の値の最大の偶発的な不純物又は追加の元素を含む。
【0053】
いくつかの実施形態では、鋼合金組成物は、50体積%、40体積%、30体積%、25体積%、20体積%、18体積%、16体積%、15体積%、14体積%、13体積%、12体積%、11体積%、10体積%、8体積%若しくは5体積%の量、約その量、少なくともその量、少なくとも約その量、最大でその量、又は最大で約その量、又はそれらの間の任意の範囲の値のマルテンサイトを含む。いくつかの実施形態では、鋼合金組成物は、50体積%、40体積%、30体積%、25体積%、20体積%、18体積%、16体積%、15体積%、14体積%、13体積%、12体積%、11体積%、10体積%、8体積%若しくは5体積%の量、約その量、少なくともその量、少なくとも約その量、最大でその量、又は最大で約その量、又はそれらの間の任意の範囲の値のフェライトを含む。
【0054】
重量%Fe-Cr-Ni-Mo-Mn-C-N-0.75Siでの鋼合金の計算調査空間を実施し、図1A及び図1Bに示し、図1Aは、耐孔食指数(PREN)対マルテンサイト形成開始温度(Ms)における耐食性についての計算結果を示し、図1Bは、FCC、BCC及びHCP間の駆動力比較についての計算結果を示す。計算調査空間を使用して、予測マルテンサイト形成温度範囲及び耐孔食指数(PREN)と共に鋼合金組成範囲を、鋼合金A1~A8について以下の表1に示す。
【表1】
【0055】
図2A及び図2Bは、合金A4、A7及びA8について、それぞれ、耐孔食指数(PREN)対マルテンサイト形成開始温度(Ms)における耐食性、並びにFCC、BCC及びHCPの間の駆動力比較についての計算結果を示す。図2Cは、A4(すなわち、合金1)、A7(すなわち、合金2)、A8(すなわち、合金3)、B1(すなわち、合金4)、B2(すなわち、合金5)、B3(すなわち、合金6)及びA4(2)(すなわち、合金7)について、それぞれ、耐孔食指数(PREN)対マルテンサイト形成開始温度(Ms)における耐食性についての計算結果を示す。合金A4(すなわち、合金1)、A7(すなわち、合金2)、A8(すなわち、合金3)、B1(すなわち、合金4)、B2(すなわち、合金5)、B2(2)、B3(すなわち、合金6)、B3(2)、A4(2)(すなわち、合金7)及びA4(3)の鋼合金組成範囲を以下の表2に示す。
【表2】
【0056】
図3は、市販の鋼合金の実際のそれぞれの値に対して示された鋼合金A4、A7及びA8の計算された硬度対耐食性のAshby Plotを示す。図3に示すように、合金A4、A7及びA8は、420HVの硬度及び304L/316L市販合金の耐食性に近づくか又はそれを超えるように計算される。
【0057】
・鋼合金の結晶性
いくつかの実施形態では、鋼合金は、Oテンパーの焼鈍状態のオーステナイト鋼である。加工硬化により、歪み誘起マルテンサイトが形成され得る。歪み誘起マルテンサイトが形成される程度は、温度及び圧力を含む冷間加工の条件での合金のオーステナイト安定性に起因し得る。いくつかの実施形態では、より多くの歪み誘起マルテンサイトが形成されるにつれて、合金はより硬くなり、強磁性特性が増加し、耐食性が改善され、及び/又は材料の強度が改善され得る。
【0058】
いくつかの実施形態では、鋼合金は、500K、450K、400K、350K、340K、330K、320K、310K、300K、290K、289K、280K、270K、260K、250K、240K、220K、200K若しくは150Kで、約その値で、少なくともその値で、少なくとも約その値で、最大でその値で、又は最大で約その値で、又はそれらの間の任意の範囲の値で、マルテンサイト結晶構造を形成する。
【0059】
・合金硬度
合金硬度は、耐擦傷性を付与し、特定レベルの耐孔食性及び耐環境性を合金に維持するように制御され得る。合金の硬度は、様々なスケールに従って与えられ、及び/又は計算され得る。いくつかの実施形態では、硬度はロックウェルスケール(例えば、HRC)で与えられる。いくつかの実施形態では、硬度はビッカースケール(すなわちHV)で与えられる。
【0060】
いくつかの実施形態では、鋼合金は、35HRC、40HRC、41HRC、42HRC、43HRC、44HRC、45HRC、46HRC、47HRC、48HRC、49HRC、50HRC、52HRC、55HRC若しくは60HRC、約その値、少なくともその値、少なくとも約その値、最大でその値、又は最大で約その値、又はそれらの間の任意の範囲の値の硬度を有する。いくつかの実施形態では、鋼合金は、350HV、370HV、375HV、380HV、390HV、400HV、410HV、420HV、430HV、450HV、475HV若しくは500HV、約その値、少なくともその値、少なくとも約その値、最大でその値、又は最大で約その値、又はそれらの間の任意の範囲の値の硬度を有する。
【0061】
・耐食性/耐酸化性
冷間加工鋼合金は、自動車車両が極端な高温及び低温環境にさらされる自動車用途で使用されるような過酷な環境内で持ちこたえることが期待される。いくつかの実施形態では、鋼合金は、耐腐食性及び/又は耐酸化性であり、耐環境性及び/又は耐溶解性を改善する。合金の耐食性は、様々なスケールに従って、及び/又は他の既知の合金に対して与えられ得る。いくつかの実施形態では、耐食性は耐孔食指数(PREN)スケールで与えられる。いくつかの実施形態では、耐食性は、3重量%塩化ナトリウム水溶液中での臨界孔食電位(Epit)と開回路電位(Eocp)との差として与えられる。いくつかの実施形態では、孔食電位は、飽和カロメル電極(SCE)に対して測定される。
【0062】
いくつかの実施形態では、鋼合金の耐食性は、304L合金又は316L合金と同等であるか、ほぼ同等であるか、少なくとも同等であるか、又は少なくともほぼ同等である。いくつかの実施形態では、鋼合金の耐食性は、15PREN、18PREN、20PREN、21PREN、22PREN、23PREN、24PREN、25PREN、26PREN、27PREN、28PREN、29PREN、30PREN、32PREN、35PREN若しくは40PRENであるか、約その値であるか、少なくともその値であるか、又は少なくとも約その値であるか、又はそれらの間の任意の範囲の値である。いくつかの実施形態では、3重量%塩化ナトリウム水溶液中での鋼合金のEpit-Eocp耐食性は、SCEに対して450mV、SCEに対して480mV、SCEに対して490mV、SCEに対して500mV、SCEに対して510mV、SCEに対して520mV、SCEに対して530mV、SCEに対して540mV、SCEに対して550mV、SCEに対して560mV、SCEに対して570mV、SCEに対して580mV、SCEに対して590mV、SCEに対して600mV、SCEに対して620mV、SCEに対して650mV、SCEに対して700mV、SCEに対して750mV、SCEに対して800mV若しくはSCEに対して850mVであるか、約その値であるか、少なくともその値であるか、又は少なくとも約その値であるか、又はそれらの間の任意の範囲の値である。いくつかの実施形態では、3重量%塩化ナトリウム水溶液中での鋼合金の腐食電流密度は、10nA/cm、15nA/cm、20nA/cm、25nA/cm、30nA/cm、35nA/cm、40nA/cm、45nA/cm、50nA/cm、55nA/cm、60nA/cm、65nA/cm若しくは70nA/cmであるか、約その値であるか、少なくともその値であるか、又は少なくとも約その値であるか、又はそれらの間の任意の範囲の値である。
【0063】
・合金降伏強度
鋼合金は、改善された降伏強度を有し得、これにより耐凹み性及び耐擦傷性が改善され得る。
【0064】
いくつかの実施形態では、鋼合金の降伏強度は、900MPa、1000MPa、1050MPa、1100MPa、1150MPa、1200MPa、1250MPa、1300MPa、1450MPa、1500MPa、1600MPa、1700MPa、1800MPa、2000MPa若しくは2500MPaであるか、少なくともその値であるか、又は少なくとも約その値であるか、又はそれらの間の任意の範囲の値である。
【0065】
・合金極限引張強度
いくつかの実施形態では、鋼合金の極限引張強度は、800MPa、900MPa、1000MPa、1050MPa、1100MPa、1150MPa、1200MPa、1250MPa、1300MPa、1450MPa、1500MPa、1600MPa、1700MPa、1800MPa、2000MPa若しくは2500MPaであるか、約その値であるか、少なくともその値であるか、又は少なくとも約その値であるか、又はそれらの間の任意の範囲の値である。
【0066】
・合金延性
鋼合金の延性はまた、部品が自動車用途での使用に適しているように考慮されてもよい。合金の延性は、曲げ角度及び/又は合金の伸びによって測定することができるが、曲げ角度が好ましい。
【0067】
いくつかの実施形態では、合金の曲げ角度は、40°、50°、55°、60°、65°、70°、75°、80°、85°、90°、95°、100°、110°、120°、130°、140°若しくは160°であるか、約その値であるか、少なくともその値であるか、少なくとも約その値であるか、最大でその値であるか、又は最大で約その値であるか、又はそれらの間の任意の範囲の値である。いくつかの実施形態では、曲げ角度は、1.0mm、1.5mm、1.8mm、2mm、2.2mm、2.5mm、2.8mm、3mm、若しくは4mm、約その値、最大でその値、最大で約その値、少なくともその値、又は少なくとも約その値、又はそれらの間の任意の範囲の値の断面厚さで測定される。いくつかの実施形態では、曲げ角度は、VDA238-100評価基準を使用して測定される。いくつかの実施形態では、長手方向曲げ角度が測定される。いくつかの実施形態では、長手方向曲げ角度は、圧延方向に対して平行な方向に測定された曲げ角度である。いくつかの実施形態では、横方向の曲げ角度は、圧延方向に垂直な方向で測定される。
処理方法
【0068】
本開示の実施形態は、冷間加工鋼合金を調製するプロセスを含む。鋼合金は、硬度、強度及び/又は耐食性などの合金特性を改善するために冷間加工される。いくつかの実施形態では、冷間加工は、結晶特性、降伏強度、極限引張強度及び/又は延性などの追加の合金特性を改善する。いくつかの実施形態では、冷間加工は、冷間加工前に鋼合金に対して延性を達成又は維持するように構成される。いくつかの実施形態では、冷間加工は、合金を冷間圧延することによって実施され得る。
【0069】
いくつかの実施形態では、プロセスは、本明細書に記載の元素組成の合金を鋳造することをさらに含む。いくつかの実施形態では、プロセスは、合金を熱間加工(例えば、熱間圧延及び/又は熱間伸線)、焼鈍及び/又は酸洗することをさらに含む。いくつかの実施形態では、プロセスは、合金を冷間加工(例えば冷間圧延及び/又は冷間伸線)する前に、合金を熱間加工(例えば、熱間圧延及び/又は熱間伸線)、焼鈍及び/又は酸洗することをさらに含む。いくつかの実施形態では、合金の熱間加工は、合金の焼鈍及び/又は酸洗の前に行われる。いくつかの実施形態では、合金の熱間加工は、合金の焼鈍及び/又は酸洗の後に行われる。
【0070】
いくつかの実施形態では、プロセスは、鋼合金及び/又は冷間加工鋼合金を切断及び/又は機械加工することをさらに含む。いくつかの実施形態では、鋼合金はモノリシック金属シートである。いくつかの実施形態では、モノリシック金属シートは、初期モノリシック金属シートを提供し、初期モノリシック金属シートを切断して切断モノリシック金属シートを形成し、切断モノリシック金属シートを成形してモノリシック金属シートを形成することによって製造され得る。いくつかの実施形態では、モノリシック金属シートはドアパネルの形状である。いくつかの実施形態では、モノリシック金属シートは、フレームの外部の形状である。いくつかの実施形態では、切断はレーザー切断によって行われる。
【0071】
いくつかの実施形態では、合金は、冷間加工前の厚さに対して、20%、25%、30%、35%、40%、42%、44%、46%、48%、50%、52%、55%、60%、65%、70%、75%若しくは80%、約その値、少なくともその値、少なくとも約その値、最大でその値、又は最大で約その値、又はそれらの間の任意の範囲の値の厚さ減少(すなわち、冷間加工%=100*([初期厚さ]-[冷間加工厚さ])/[初期厚さ])まで冷間加工される。いくつかの実施形態では、合金は、0.01mm、0.05mm、0.1mm、0.3mm、0.5mm、1mm、2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、8mm、10mmの厚さ、約その厚さ、最大でその厚さ、又は最大で約その厚さまで冷間加工される。いくつかの実施形態では、冷間加工鋼合金は、シート、プレート、ワイヤ、バー、又はそれらの組み合わせから選択される形態である。いくつかの実施形態では、鋼合金の処理は、鋼合金 処理された鋼合金を冷間加工する前に行われる。
【0072】
・車両
本開示の実施形態は、開示された鋼合金を含む車両を含む。いくつかの実施形態では、車両の少なくとも1つの外装パネル及び/又は本体は、鋼合金を含む。いくつかの実施形態では、車両アーキテクチャは、車両の外装パネルが車両の構造性能にも寄与するように設計され、車両のそのような外装パネルは「エクソスケルトン」と呼ばれ得る。いくつかの実施形態では、外装パネルは、鋼合金のモノリシック金属シートであるか、又はそれから形成される。いくつかの実施形態では、モノリシック金属シートの耐食性は、防食コーティング又は腐食保護剤(例えば、塗料)を適用することなく車両の外装パネルを利用することを可能にする。いくつかの実施形態では、外装パネルの外面は塗料を含まない。
【0073】
いくつかの実施形態では、車両は自動車車両である。いくつかの実施形態では、車両は電気モータを備える。いくつかの実施形態では、自動車車両はトラック又は車(例えばセダン)である。いくつかの実施形態では、外装パネルは、ドアパネル、ルーフパネル、底部パネル、フードパネル、フェンダーパネル、トランクパネル、リフトゲートパネル、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、外装パネルはドアパネルである。
【0074】
自動車車両などの車両を製造する方法も開示される。いくつかの実施形態では、モノリシック金属シートが提供され、少なくとも1つのコンポーネントがモノリシック金属シートに直接取り付けられて外装パネルを形成し、外装パネルが車体の外部に取り付けられる。
【実施例
【0075】
・実施例1-50lbスケール
合金A4のターゲット範囲内の合金を50lbスケールで調製し、実際の組成合金元素値を表3に示す。合金は、合金を鋳造し、次いで合金を機械加工し、次いで合金を熱間圧延し、次いで合金を焼鈍及び酸洗することによって形成した。次いで、合金の焼鈍及び酸洗後に合金を試験及び画像化し、その後の様々な程度までの合金の冷間圧延後にも試験及び画像化した。
【表3】
【0076】
表3の実際の合金組成物は様々な程度まで冷間加工され、表4は様々な冷間加工量についての結果をまとめている。図4A及び図4Bは、24%減少まで冷間加工した表3の実際の合金組成物の光学顕微鏡写真を示す。図5A及び図5Bは、36%減少まで冷間加工した表3の実際の合金組成物の光学顕微鏡写真を示す。図6A及び図6Bは、44%減少まで冷間加工した表3の実際の合金組成物の光学顕微鏡写真を示す。図7A及び図7Bは、56%減少まで冷間加工した表3の実際の合金組成物の光学顕微鏡写真を示す。表4は、異なる減少パーセンテージまで冷間加工した表4の実際の合金組成物の実験データをまとめたものである。
【表4】
【0077】
・実施例2-50kgスケール
合金A4、A7及びA8のターゲット範囲内の合金を50kgスケールで調製し、実際の組成合金元素値を表5に示す。合金は、合金を鋳造し、次いで合金を焼鈍及び酸洗し、次いで合金を熱間圧延することによって形成した。次いで、合金の焼鈍及び酸洗後に合金を試験及び画像化し、その後の様々な程度までの合金の冷間圧延後にも試験及び画像化した。
【表5】
【0078】
合金A4、A7及びA8についての表5の実際の合金組成物は様々な程度まで冷間加工され、表6A~6Cは様々な冷間加工量についての結果をまとめている。合金A4、A7及びA8についての表5の実際の合金組成物についての硬度、強度及び伸びの実験特性を図8に示す。図9~11は、様々な程度までそれぞれ冷間加工された合金A4、A7及びA8についての表5の実際の合金組成物の長手方向の応力-歪み実験データを示す。図12A図12B及び図12Cは、それぞれ冷間加工された合金A4、A7及びA8についての表5の実際の合金組成物の光学顕微鏡写真を示す。
【表6A】
【表6B】
【表6C】
【0079】
・実施例3
A4合金のターゲット範囲内の合金を170メートルトンスケール及び50kgスケールで調製した。A7合金のターゲット範囲内の合金を50kgスケールで調製した。合金は、合金を鋳造し、次いで合金を機械加工し、次いで合金を熱間圧延し、次いで合金を焼鈍及び酸洗することによって形成した。次いで、合金の焼鈍及び酸洗後に合金を試験し(焼鈍と表示)、その後の合金の冷間圧延後にも試験した(冷間圧延と表示)。
【0080】
図13Aは、標準カロメル電極(SCE)に対して測定した、3重量%塩化ナトリウム水溶液中、50kgスケール(実験室スケール)及び170メートルトンスケール(ミルスケール)で調製したA4合金及びA7合金のEpit-Eocp耐食性の実験結果を示す。図13Aに示すように、A4合金は、170メートルトンスケールで調製された700mVに近い又はそれを超えるEpit-Eocp耐食性を有する。図13Bは、3重量%塩化ナトリウム水溶液中、50kgスケール(実験室スケール)及び170メートルトンスケール(ミルスケール)で調製したA4合金及びA7合金の腐食電流密度Icorrの実験結果を示す。
【0081】
表7は、異なる条件におけるA4及びA7合金についての耐食性の実験結果のいくつかをまとめたものである。
【表7】
【0082】
・実施例4
A4、A7、B1、B2及びB3合金のターゲット範囲内の合金を50kgスケール(実験室スケール)で調製した。また、A4合金のターゲット範囲内の合金を170メートルトンスケールで調製した。合金は、合金を鋳造し、次いで合金を機械加工し、次いで合金を熱間圧延し、次いで合金を焼鈍及び酸洗することによって形成した。次いで、合金の焼鈍及び酸洗後に合金を試験した(焼鈍と表示)。
【0083】
図14Aは、標準カロメル電極(SCE)に対して測定した、3重量%塩化ナトリウム水溶液中、50kgスケール(実験室スケール)で調製したA4、A7、B1、B2及びB3合金並びに170メートルトンスケール(ミルスケール)で調製したA4合金のEpit-Eocp耐食性の実験結果を示す。図14Bは、3重量%塩化ナトリウム水溶液中、50kgスケール(実験室スケール)で調製したA4、A7、B1、B2及びB3合金並びに170メートルトンスケールで調製したA4合金(ミルスケール)の腐食電流密度Icorrの実験結果を示す。
【0084】
図15Aは、標準カロメル電極(SCE)対耐孔食指数(PREN)での耐食性に対して測定した、3重量%塩化ナトリウム水溶液中、50kgスケール(実験室スケール)で調製したA4、A7、B1、B2及びB3合金並びに170メートルトンスケール(ミルスケール)で調製したA4合金のEpit-Eocp耐食性の実験結果を示す。図15Bは、標準カロメル電極(SCE)対耐孔食指数(PREN)における耐食性に対して測定した、3重量%塩化ナトリウム水溶液中、50kgスケール(実験室スケール)で調製したA4、A7、B1、B2及びB3合金並びに170メートルトンスケール(ミルスケール)で調製したA4合金の腐食電流密度Icorrの実験結果を示す。
【0085】
・実施例5
合金1(すなわち、A4合金)、合金2(すなわち、A7合金)、合金4(すなわち、B1合金)のターゲット範囲内の合金を50kgスケールで調製した。合金は、合金を鋳造し、次いで合金を機械加工し、次いで合金を熱間圧延し、次いで合金を焼鈍及び酸洗することによって形成した。次いで、合金の焼鈍及び酸洗後に合金を試験し(焼鈍と表示)、その後の合金の冷間圧延後にも試験した(冷間圧延と表示)。
【0086】
図16Aは、標準カロメル電極(SCE)に対して測定した、3重量%塩化ナトリウム水溶液中、50kgスケールで焼鈍及び冷間加工して調製した合金1(すなわち、A4合金)、合金2(すなわち、A7合金)、及び合金4(すなわち、B1合金)のEpit-Eocp耐食性の実験結果を示す。図16Bは、3重量%塩化ナトリウム水溶液中、50kgスケールで焼鈍及び冷間加工して調製した合金1、合金2、及び合金4の腐食電流密度Icorrの実験結果を示す。
【0087】
表8は、異なる条件における合金2及び合金4についての耐食性の実験結果のいくつかをまとめたものである。
【表8】
【0088】
・実施例6
合金1のターゲット範囲内の合金(すなわち、A4合金)を準備した。図17は、タイプ301ステンレス鋼と比較した、いくつかの例による合金1の長手方向及び横方向の曲げ角度を示す。図17に示すように、合金1の長手方向の曲げ角度は約84°であり、合金1の横方向の曲げ角度は約122°であり、一方、タイプ301合金の長手方向の曲げ角度は約64°であり、タイプ301合金の横方向の曲げ角度は約109°である。合金1の長手方向の曲げ角度及び横方向の曲げ角度の両方は、タイプ301合金よりも大きく、合金1がタイプ301合金よりも延性が高いことを示している。
実施例7
【0089】
A4合金のターゲット範囲内の合金を170メートルトンスケールで調製した。合金は、合金を鋳造し、次いで合金を機械加工し、次いで合金を熱間圧延し、次いで合金を焼鈍及び酸洗することによって形成した。次いで、合金を焼鈍及び酸洗し、その後の合金の冷間圧延後に試験した。
【0090】
図18は、長手方向、横方向、及び長手方向から45°に冷間加工した170メートルトンスケールで調製したA4合金の応力-歪み実験結果を示す。長手方向の応力-歪み曲線は、合金の圧延方向に平行な方向に応力を加えた場合に測定される。横方向の応力-歪み曲線は、合金の圧延方向に垂直な方向に応力を加えた場合に測定される。
【0091】
特定の実施形態を説明したが、これらの実施形態は例としてのみ提示したものであり、本開示の範囲を限定することは意図していない。実際、本明細書に記載の新規な方法及びシステムは、様々な他の形態で具体化され得る。また、本開示の要旨を逸脱しない範囲で、本明細書に記載されるシステムや方法の種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。添付の特許請求の範囲及びそれらの均等物は、本開示の範囲及び要旨に含まれるような形態又は修正を包含することを意図している。
【0092】
特定の態様、実施形態、又は実施例に関連して記載された特徴、材料、特性、又はグループは、互換性がない場合を除き、このセクション又は本明細書の他の箇所に記載された任意の他の態様、実施形態、又は実施例に適用可能であると理解されるべきである。本明細書(任意の添付の特許請求の範囲、要約、及び図面を含む)に開示された特徴のすべて、及び/又はそのように開示された任意の方法若しくはプロセスのステップのすべては、そのような特徴及び/又はステップの少なくともいくつかが相互に排他的である組み合わせを除いて、任意の組み合わせで組み合わせることができる。保護は、任意の前述の実施形態の詳細に限定されない。保護は、本明細書(任意の添付の特許請求の範囲、要約、及び図面を含む)に開示された特徴の任意の新規なもの、若しくは任意の新規な組み合わせ、又はそのように開示された任意の方法若しくはプロセスのステップの任意の新規なもの、若しくは任意の新規な組み合わせに及ぶ。
【0093】
さらに、別個の実施態様の文脈で本開示に記載されている特定の特徴は、単一の実施態様において組み合わせて実施することもできる。逆に、単一の実施態様の文脈で説明されている様々な特徴は、複数の実施態様において別々に、又は任意の適切な部分組み合わせで実施することもできる。さらに、特徴は特定の組み合わせで作用するものとして上述され得るが、特許請求される組み合わせからの1つ又は複数の特徴は、場合によっては、組み合わせから削除することができ、組み合わせは、部分組み合わせ又は部分組み合わせの変形として特許請求され得る。
【0094】
さらに、操作は、特定の順序で図面に示され、又は本明細書に記載され得るが、そのような操作は、望ましい結果を達成するために、示された特定の順序で、又は連続した順序で実行される必要はなく、すべての操作が実行される必要もない。図示又は説明されていない他の操作を、例示的な方法及びプロセスに組み込むことができる。例えば、記載された操作のいずれかの前、後、同時に、又は間に、1つ又は複数の追加の操作を実行することができる。さらに、操作は、他の実施態様において並べ替えてもよく、又は順番を変えてもよい。いくつかの実施形態では、図示及び/又は開示されたプロセスで行われる実際のステップは、図に示されたものとは異なり得ることが当業者には理解されよう。実施形態に応じて、上述したステップのうちの特定のステップを削除してもよく、他のステップを追加してもよい。さらに、上記で開示された特定の実施形態の特徴及び属性は、追加の実施形態を形成するために異なる方法で組み合わせてもよく、そのすべてが本開示の範囲内に入る。また、上記の実施態様における様々なシステムのコンポーネントの分離は、すべての実施態様においてそのような分離を必要とすると理解されるべきではなく、記載されたコンポーネント及びシステムは、一般に、単一の製品に一緒に統合されるか、又は複数の製品にパッケージ化され得ることを理解されたい。例えば、本明細書に記載のエネルギー貯蔵システムのコンポーネントのいずれかは、エネルギー貯蔵システムを形成するために、別個に提供することができ、又は一体化することができる(例えば、一緒に包装されるか、又は一緒に取り付けられる)。
【0095】
本開示の目的のために、特定の態様、利点、及び新規な特徴が本明細書に記載されている。必ずしもそのような利点のすべてが、任意の特定の実施形態に従って達成され得るわけではない。したがって、例えば、当業者は、本開示が、本明細書で教示又は示唆され得るような他の利点を必ずしも達成することなく、本明細書で教示されるような1つの利点又は利点群を達成するように具体化又は実施され得ることを認識するであろう。
【0096】
「can」、「could」、「might」、又は「may」などの条件付き言語は、特に明記しない限り、又は使用される文脈内で他の意味で理解されない限り、一般に、特定の実施形態が特定の特徴、要素、及び/又はステップを含むが、他の実施形態は含まないことを伝えることを意図している。したがって、そのような条件付き言語は、一般に、特徴、要素、及び/又はステップが1つ又は複数の実施形態に何らかの形で必要とされること、又は1つ又は複数の実施形態が、ユーザ入力又はプロンプトの有無にかかわらず、これらの特徴、要素、及び/又はステップが任意の特定の実施形態に含まれるか、又は実行されるべきかを決定するための論理を必然的に含むことを意図するものではない。
【0097】
句「X、Y及びZのうちの少なくとも1つ」などの接続言語は、特に明記しない限り、項目、用語などがX、Y、又はZのいずれかであり得ることを伝えるために一般に使用される文脈で理解される。したがって、そのような接続詞は、一般に、特定の実施形態が少なくとも1つのX、少なくとも1つのY、及び少なくとも1つのZの存在を必要とすることを意味することを意図していない。
【0098】
本明細書で使用される「およそ(approximately)」、「約(about)」、「一般に(generally)」、及び「実質的に(substantially)」などの本明細書で使用される程度の言語は、依然として所望の機能を実行するか、又は所望の結果を達成する、記載された値、量、又は特性に近い値、量、又は特性を表す。例えば、「およそ(approximately)」、「約(about)」、「一般に(generally)」、及び「実質的に(substantially)」という用語は、所望の機能又は所望の結果に応じて、記載された量の10%未満以内、5%未満以内、1%未満以内、0.1%未満以内、及び0.01%未満以内の量を指し得る。
【0099】
本開示の範囲は、このセクション又は本明細書の他の場所における好ましい実施形態の特定の開示によって限定されることを意図するものではなく、このセクション又は本明細書の他の場所に提示されるように、又は将来提示されるように、特許請求の範囲によって定義され得る。特許請求の範囲の文言は、特許請求の範囲で使用される文言に基づいて広く解釈されるべきであり、本明細書中又は本出願の審査中に記載された実施例に限定されず、実施例は非排他的であると解釈されるべきである。
【0100】
本明細書で提供される見出しは、存在する場合、便宜上のものに過ぎず、本明細書に開示される装置及び方法の範囲や意味に必ずしも影響しない。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図12C
図13A
図13B
図14A
図14B
図15A
図15B
図16A
図16B
図17
図18
【国際調査報告】