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特表2024-534026火花点火式内燃機関の運転方法及び本方法を実施するための制御装置
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  • 特表-火花点火式内燃機関の運転方法及び本方法を実施するための制御装置 図1
  • 特表-火花点火式内燃機関の運転方法及び本方法を実施するための制御装置 図2
  • 特表-火花点火式内燃機関の運転方法及び本方法を実施するための制御装置 図3a
  • 特表-火花点火式内燃機関の運転方法及び本方法を実施するための制御装置 図3b
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-18
(54)【発明の名称】火花点火式内燃機関の運転方法及び本方法を実施するための制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 19/02 20060101AFI20240910BHJP
   F02M 21/02 20060101ALI20240910BHJP
   F02D 41/18 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
F02D19/02 B
F02M21/02 G
F02D41/18
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024508752
(86)(22)【出願日】2022-08-16
(85)【翻訳文提出日】2024-04-10
(86)【国際出願番号】 EP2022072865
(87)【国際公開番号】W WO2023021036
(87)【国際公開日】2023-02-23
(31)【優先権主張番号】102021121214.6
(32)【優先日】2021-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520078075
【氏名又は名称】ケヨウ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】KEYOU GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コッホ ダニエル
【テーマコード(参考)】
3G092
3G301
【Fターム(参考)】
3G092AA01
3G092AB09
3G092BB02
3G092FA01
3G092FA16
3G092HB01X
3G301HA22
3G301JA01
3G301JA22
3G301LB01
3G301MA12
(57)【要約】
火花点火式内燃機関の運転方法であって、前記内燃機関は水素を燃料として用いて運転され、ラムダ噴射値は、内燃機関の燃焼室に供給される噴射燃料量(F噴射)と、内燃機関の外部から燃焼室に供給される空気量(L)とに基づく混合気の形成を示す値であり、
ここで、噴射燃料量(F噴射)は、少なくともいくつかの範囲内において、ラムダ標的値とは独立して決定される。水素エンジンの適切な運転を保証するために、噴射燃料量(F噴射)は、少なくともいくつかの範囲内において、少なくとも空気量(L)に基づいて決定される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
火花点火式内燃機関の運転方法であって、
前記内燃機関は水素を燃料として用いて運転され、
ラムダ噴射値は、前記内燃機関の燃焼室に供給される噴射燃料量(F噴射)及び前記内燃機関の外部から前記燃焼室に供給される空気量(L)に基づく混合気の形成を示す値であり、
前記噴射燃料量(F噴射)は、少なくともいくつかの範囲内において、ラムダ標的値とは独立して決定され、好ましくは、少なくとも既定燃料量(Fdef)に基づいて決定され、特に好ましくは、前記既定燃料量(Fdef)と等しく、並びに
前記噴射燃料量は、少なくともいくつかの範囲内において、前記空気量に基づいて決定される、運転方法。
【請求項2】
前記噴射燃料量は、少なくともいくつかの範囲内において、ラムダ標的範囲([λ標的-l;λ標的-u])に基づいて決定され、前記噴射燃料量は、前記ラムダ噴射値が、少なくとも一方の側において第1のラムダ標的限界値により制限されるラムダ標的値の前記ラムダ標的範囲内にあるよう決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1のラムダ標的限界値は、ラムダ標的値の前記範囲の下限値(λ標的-l)であり、好ましくは、1.2以上及び2.5以下であり、特に好ましくは、1.2以上及び1.8以下であり、さらに好ましくは1.2に相当する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記噴射燃料量は、好ましくは、既定燃料量及び前記空気量(L)に基づく混合気の形成を示すラムダ既定値(λ既定)が、前記ラムダ標的範囲([λ標的-l;λ標的-u])外である場合に、前記ラムダ噴射値が前記標的ラムダ限界値(λ標的-l)に相当するよう、決定される、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記ラムダ標的範囲([λ標的-l;λ標的-u])、特に前記第1のラムダ標的限界値は、可変である、請求項2~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記内燃機関は、少なくともいくつかの範囲内において、排気ガスを前記燃焼室に再循環させる排気ガス再循環装置、及び/又は、好ましくは水である燃焼に関与しない不活性媒体を前記燃焼室に供給する不活性媒体供給装置をさらに備える、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記噴射燃料量は、少なくともいくつかの範囲内において、排気ガス再循環量(R)及び/又は不活性媒体供給量に基づいて決定される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ラムダ標的範囲([λ標的-l;λ標的-u])、特に前記第1のラムダ標的限界値は、前記排気ガス再循環量(R)及び/又は不活性媒体供給量に依存し、好ましくは前記第1のラムダ標的限界値は、要求排気ガス再循環量及び/又は不活性媒体供給量の増加に伴って小さくされる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
排気ガス再循環量及び/又は不活性媒体供給量は、前記既定燃料量及び前記空気量に基づいた混合気の形成を示すラムダ既定値(λλ既定)が前記ラムダ標的範囲外であるか及び/又は性能要求の限界値を超えている場合に、要求又は増大される、請求項6~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記要求排気ガス再循環量及び/又は不活性媒体供給量は、前記内燃機関に対する前記性能要求が高まるに伴って大きくされる、請求項6~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記既定燃料量(Fdef)は少なくとも前記内燃機関に対する性能要求に基づいて決定され、前記既定燃料量は、好ましくは、前記性能要求が高まるに伴って増やされる、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記噴射燃料量は、少なくともいくつかの範囲内において、ノックシグナル値に基づいて決定され、好ましくは、前記第1のラムダ標的限界値は、前記ノックシグナル値の増大に伴って大きくされる、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
火花点火式内燃機関の運転方法であって、
前記内燃機関は水素を燃料として用いて運転され、前記内燃機関は複数の燃焼室を備え、
少なくとも1つの燃焼室に関連するノックシグナル値に基づいて、前記少なくとも1つの燃焼室の噴射燃料量並びに少なくとも1つの他の燃焼室の噴射燃料量は共に決定され、好ましくは、前記1つの燃焼室の前記噴射燃料量は、前記1つの燃焼室の前記ノックシグナル値が低減するよう決定され、特に好ましくは、前記1つの燃焼室はリーンな水素/空気混合気で運転され、及び、前記複数の燃焼室の前記少なくとも1つの他の燃焼室において、前記噴射燃料量は、すべての燃焼室に供給される所定の燃料の量である全体の既定燃料量にできるだけ近似するように決定され、再び好ましくは達成される、運転方法。
【請求項14】
前記少なくとも1つの燃焼室の既定燃料量と比べた変更量は、
少なくとも部分的に、好ましくは全体的に、関連するノックシグナル値が低い少なくとも1つの他の燃焼室の前記燃料量に加えられることが好ましく、さらに、複数の他の燃焼室の前記燃料量にそれぞれ加えられることがより好ましく、及び/又は
前記他の燃焼室の前記それぞれのノックシグナル値に依存する前記それぞれの燃焼室の前記燃料量に加えられる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の方法を実施するための、制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火花点火式内燃機関の運転方法、並びに、本方法を実施するための制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
火花点火式ガソリンエンジンにおいては、制御された空気量に基づいて燃焼室に供給される燃料量を決定することが知られている。特に、ガソリンエンジンの性能を高める場合には、流路断面積がスロットルバルブによって拡大される。この場合、燃料量は、一定の、典型的には化学量論的空気/燃料混合気(ラムダ=1)となるように、流路断面積を流れる空気量に依存して決定される。
【0003】
水素を燃料として用いてこのようなガソリンエンジンが運転される場合、燃料量の既述の制御は適切ではない。水素の燃焼挙動は、ガソリンエンジンにおいて通常用いられるガソリンなどの燃料の燃焼挙動とは大きく異なるためである。
【0004】
国際公開第2021/005344 A1号パンフレットは、水素により運転される火花点火式内燃機関を示す。エンジン性能は燃料量によってのみ制御される。しかしながら、このような燃料のみによる制御では、エンジン挙動に悪影響を及ぼす燃焼異常が生じる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明は、水素により運転される内燃機関の要求を満たす燃料量の決定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る目的は、請求項1に記載の方法により充足される。
【0007】
第1の独立態様によれば、火花点火式内燃機関の運転方法が提供されており、ここで、内燃機関は水素を燃料として用いて運転され、ラムダ噴射値は、内燃機関の燃焼室に供給される噴射燃料量及び内燃機関の外部から燃焼室に供給される空気量に基づく混合気の形成を示す値であり、ここで、噴射燃料量は、少なくともいくつかの範囲内において、ラムダ標的値とは独立して決定され、好ましくは、少なくとも既定燃料量に基づいて決定され、特に好ましくは、既定燃料量と等しい。加えて、噴射燃料量は、少なくともいくつかの範囲内において、空気量に基づいて決定される。
【0008】
第1の態様によれば、燃料量は制御変数であることが可能である。より正確には、噴射される噴射燃料量は、少なくともいくつかの範囲内において、所定のラムダ標的値とは独立して決定される。従って、例えば、エンジンに供給される空気量に変動が生じた場合、燃料量は、従来のガソリン方式の場合のように、供給される空気量に束縛されることなく、既定燃料量に基づいて自由に決定することが可能である。燃料量の決定は従って、ディーゼル方式に従う。噴射燃料量は、少なくともいくつかの範囲内において、固定ラムダ標的値とは独立して決定され噴射される。内燃機関は、少なくともいくつかの範囲内において、品質制御システムに従って運転される。これにより、内燃機関の柔軟性を高めることが可能である。しかしながら、空気量が考慮されない場合、内燃機関は、ノッキングなどの燃焼異常を引き起こす燃焼混合気で運転されることとなる恐れがある。従って、本発明によれば、噴射燃料量は、少なくともいくつかの範囲内において、空気量に基づいて決定される。これにより、ラムダ噴射値を制限して、例えば、ノッキングを防止することが可能である。
【0009】
空気量は、好ましくは、モデリングにより計測及び/又は入手される。これにより、燃焼室に供給される空気量に関する結論を導き出すことが可能となる。
【0010】
噴射燃料量は、好ましくは、少なくともいくつかの範囲内において、既定燃料量と等しくなるよう決定される。これは、所望の既定燃料量は、供給される空気量とは独立して設定及び噴射可能であることを意味する。
【0011】
さらなる態様によれば、噴射燃料量は、ラムダ噴射値が、少なくとも一方の側において、第1のラムダ標的限界値により制限されるラムダ標的値のラムダ標的範囲内にあるよう、少なくともいくつかの範囲内において、ラムダ標的範囲に基づいて決定可能である。
【0012】
一定の範囲内において、水素/空気混合気(ラムダ噴射値)の制限が、燃焼異常の発生を抑制するために必要となる可能性がある。燃料量は、内燃機関に供給される空気量を考慮した場合に、水素/空気混合気が燃焼異常が生じない範囲内となるように決定することが可能である。この範囲は、複数の可能なラムダ標的値を含むと共に、少なくとも一方の側において、ラムダ標的限界値により制限される。本態様によれば、従って、空気量が燃料量の決定に際して考慮される。
【0013】
第1のラムダ標的限界値は、好ましくは、ラムダ標的値の範囲の下限値であり、好ましくは、1.2以上及び2.5以下であり、特に好ましくは、1.2以上及び1.8以下であり、さらに好ましくは、これは1.2に相当する。
【0014】
これにより、過剰にリッチな水素/空気混合気が燃焼に供されることがないように保証することが可能である。水素燃料内燃機関は、好ましくは、リーン範囲(ラムダ>1)内で運転される。例えば、性能範囲に応じて、限界値は既述の値範囲から収集可能である。ラムダ標的限界値は、従って、性能範囲にわたって可変であることが好ましい。
【0015】
さらに他の態様によれば、噴射燃料量は、好ましくは、既定燃料量及び空気量に基づいた混合気の形成を示すラムダ既定値がラムダ標的範囲外である場合に、ラムダ噴射値が標的ラムダ限界値に相当するよう決定することが可能である。
【0016】
これにより、燃料量を、許容可能な燃焼混合気の限界まで調整することが可能となる。従って、燃料量は、適切な許容可能な燃焼混合気が供給される空気量から得られるよう決定される。特に、ラムダ標的限界値はラムダ既定値に対するラムダ標的範囲の次の値であるために、既定燃料量の補正は比較的小さくすることが可能となる。
【0017】
さらに他の態様によれば、ラムダ標的範囲、特に第1のラムダ標的限界値は、可変であることが可能である。
【0018】
本態様によれば、内燃機関の柔軟性が高められる。境界条件に応じて、制限は、より強く又は弱くすることが可能である。
【0019】
さらに他の態様によれば、内燃機関は、少なくともいくつかの範囲内において、燃焼室に排気ガスを再循環させる排気ガス再循環装置をさらに備えていることが可能である。
【0020】
排気ガス再循環を設けることで、燃焼室における燃焼を安定化することが可能である。例えば、ミスファイアに起因する内燃機関のノッキングを防止可能である。特にリーン燃焼の場合、再循環された排気ガスは、燃焼の安定化を補助する未燃焼の酸素(残存ガス)を顕著な割合で含有する。再循環された排気ガスは、燃焼に対して不活性であることが好ましい。
【0021】
代わりに、又は、追加的に、内燃機関は、燃焼に関与しない不活性媒体、好ましくは水を燃焼室に供給するよう構成された不活性媒体供給装置を備えていることが可能である。
【0022】
不活性媒体を供給することで、燃焼温度を下げることで燃焼を安定化することも可能である。特に、不活性媒体は液体又は気体の水であることが可能である。水素を燃焼させる場合に特に不活性であり、従って、温度を下げることが可能である。さらに、追加の排気を防止することが可能である。
【0023】
好ましくは、噴射燃料量は、少なくともいくつかの範囲内において、排気ガス再循環量及び/又は不活性媒体供給量に基づいて決定される。
【0024】
従って、噴射燃料量の決定に際して、排気ガス再循環量及び/又は不活性媒体供給量に影響される燃焼挙動を考慮に入れることが可能である。
【0025】
さらに他の態様によれば、ラムダ標的範囲、特に第1のラムダ標的限界値は排気ガス再循環量及び/又は不活性媒体供給量に依存していることが可能であり、好ましくは、第1のラムダ標的範囲は、要求排気ガス再循環量及び/又は不活性媒体供給量の増加に伴って低減可能である。
【0026】
排気ガス再循環量及び/又は不活性媒体供給量は燃焼に影響を及ぼすことが可能である。従って、制限は、排気ガス再循環量及び/又は不活性媒体供給量に依存してラムダ標的範囲により行うことが可能である。排気ガス再循環並びに不活性媒体供給は燃焼を安定化させるため、許容されるラムダ標的値の範囲を拡大することが可能である。これは、特に、下限値としての第1のラムダ標的限界値を小さくすることにより達成可能である。
【0027】
さらに他の態様によれば、排気ガス再循環量及び/又は不活性媒体供給量は、既定燃料量及び空気量に基づいた混合気の形成を示すラムダ既定値がラムダ標的範囲外であるか及び/又は性能要求の限界値を超えている場合、要求される可能性がある。
【0028】
排気ガス再循環量及び/又は不活性媒体供給量によって燃焼を安定化することにより、排気ガス再循環又は不活性媒体供給を伴わずにラムダ既定値がラムダ標的範囲外である場合、ラムダ標的範囲を正確に拡大可能である。性能要求が高まるに伴って燃料に対する要求が高まり、これが、ラムダ既定値が許容範囲外となる可能性がある理由である。従って、排気ガス再循環量及び/又は不活性媒体供給量もまた性能要求の限界値を超えて要求される可能性がある。自動車における加速プロセスなどの内燃機関の負荷における一時的な増加においては、必要な性能は、排気ガス再循環量及び/又は不活性媒体供給量を要求することにより提供可能である。排気ガス再循環量及び/又は不活性媒体供給量を伴わなければ、ラムダ標的範囲はより制限されることとなり、必要な性能を提供することはできないためである。排気ガス再循環量及び/又は不活性媒体供給量は、好ましくは少なくとも全負荷範囲において要求される。
【0029】
代わりに、又は、追加で、ラムダ既定値がラムダ標的範囲外である場合、すなわち、限界値に達しているか、又は、下回る/上回る場合であって、特に、下限値未満に下回るか、及び/又は、性能要求の限界値を超えて上回る場合、要求排気ガス再循環量及び/又は不活性媒体供給量は増加させることが可能である。
【0030】
従って、第1のラムダ標的限界値はこれに従って小さくすることが可能であり、また、ラムダ既定値を設定可能である。これにより、排気ガス再循環量の適切な制御及び要求に基づく混合が可能となる。
【0031】
さらに他の態様によれば、要求排気ガス再循環量及び/又は不活性媒体供給量は、内燃機関に対する性能要求の増加に伴って増やすことが可能である。
【0032】
これにより、排気ガス再循環及び/又は不活性媒体供給が燃焼を安定化させるため、より高い性能要求で望まれるとおり、よりリッチな混合気、すなわち、より低いラムダ噴射値の設定が可能となり、そして、低いラムダ噴射値においても内燃機関のノッキングを防止することが可能である。従って、排気ガス再循環量及び/又は不活性媒体供給量の増加を性能の向上に利用可能である。これは、一時的なプロセスに有利である。さらに他の態様によれば、既定燃料量は、少なくとも内燃機関に対する性能要求に基づいて決定可能である。
【0033】
従って、性能要求は、既定燃料量、従って、噴射燃料量の決定に係る基礎とされることが可能である。
【0034】
好ましくは、性能要求が高まるに伴って既定燃料量は増加し、逆もまた同様である。水素/空気混合気の発熱量は混合気中の燃料の割合に相関する。従って、燃料量を増やすことでより高い性能を達成することが可能である。
【0035】
さらに他の態様によれば、噴射燃料量は、少なくともいくつかの範囲内において、ノックシグナル値に基づいて決定可能である。
【0036】
本態様によれば、ノックシグナル値、従って、燃焼異常を示す値を、燃料量の決定において考慮することが可能である。内燃機関の関連するシリンダのノッキングに対する傾向に関する情報は、ノックシグナル値に基づいて、例えば先行する燃焼サイクルから得ることが可能である。ノッキングに対する傾向は、燃焼室壁の温度、圧縮及び製造公差などの要因に応じる。これらの要因は、ノックシグナル値による現在のサイクルに対する噴射燃料量の決定において用いることが可能である。ノックシグナル値はまた、再循環された排気ガスの組成に関する情報を提供することが可能である。例えば、より強いノッキングを示すノックシグナル値は、燃焼の安定化がより困難となる排気ガス中における低酸素含有量に関する情報をもたらすことが可能である。
【0037】
第1のラムダ標的限界値は、ノックシグナル値が増加するに伴って大きくされることが好ましい。
【0038】
これにより、内燃機関におけるノッキングを軽減することが可能である。なぜならば、ラムダ標的限界値を大きくすることで、混合気をリーンとし、ノッキングに対する傾向を低減することが可能である。
【0039】
本発明のさらに他の態様によれば、火花点火式内燃機関の運転方法が提供されており、ここで、内燃機関は水素を燃料として用いて運転されると共に、内燃機関は複数の燃焼室を備え、ここで、a)少なくとも1つの燃焼室に関連するノックシグナル値に基づいて、少なくとも1つの燃焼室の噴射燃料量並びに少なくとも1つの他の燃焼室の噴射燃料量は共に決定され、好ましくは、この1つの燃焼室の噴射燃料量は1つの燃焼室のノックシグナル値が低減するよう決定され、特に好ましくは、この1つの燃焼室はリーンな水素/空気混合気で運転され、及び、複数の燃焼室の少なくとも1つの他の燃焼室において、噴射燃料量は、すべての燃焼室に供給される所定の燃料の量である全体の既定燃料量にできるだけ近似するように決定され、再び好ましくは達成される。
【0040】
燃焼室の各々において、少なくともいくつかの範囲内において品質制御が行われるため、本発明の本態様によれば、少なくとも1つの他のシリンダにおける燃料量は、少なくとも1つの燃焼室のノックシグナル値に基づいて適応させることが可能である。特に、少なくとも1つの燃焼室における燃料量の調整は、個々の燃焼室で補償可能である。少なくとも1つの燃焼室のノックシグナル値は、少なくとも1つの他の燃焼室よりも高いことが好ましい。本態様は、総括して燃料量の再分配として定義可能である第2の独立態様として提供されることが可能であり、又は、第1の独立態様に係る先行する態様と組み合わせて提供されることが可能である。本態様は同様に燃焼異常の発生を低減し、従って、水素により運転される内燃機関のニーズが考慮された方法を提供する。
【0041】
全体の既定燃料量は、性能要求に基づいて決定された燃料量であることが可能である。例えば、一定の性能が達成されるべき場合、一定のシリンダの燃焼室におけるノッキングに関わらず、他のシリンダにおける燃料量を相応に適応させることにより、この性能を達成するか、又は、この性能に少なくとも近づくことが可能である。
【0042】
a)において、少なくとも1つの燃焼室の既定燃料量と比した変更量は、少なくとも部分的に、好ましくは全体的に、関連するノックシグナル値が低い少なくとも1つの他の燃焼室の燃料量に加えられることが好ましく、複数の他の燃焼室の燃料量にそれぞれ加えられることが特に好ましい。さらに他の態様によれば、変更量は、他の燃焼室のそれぞれのノックシグナル値に依存するそれぞれの燃焼室の燃料量に加えることが可能である。
【0043】
そして、燃料量は、少なくとも1つの燃焼室において、例えば下方ラムダ標的限界値を大きくすることにより低減することが可能であり、また、燃料量は、この低減量により、好ましくは、少なくとも1つの他の燃焼室において増やすことが可能であり、ここで、内燃機関の全体性能出力を維持することが可能である。
【0044】
第2の独立態様において、a)に追加して:
b)少なくとも1つの燃焼室において排気ガス再循環量を増やすステップ;
c)少なくとも1つの燃焼室における点火タイミングを遅い時点にシフトするステップ;及び
d)内燃機関に対する性能要求を低減するステップ
の少なくとも1つ実施することが可能である。
【0045】
上記の第1の独立態様に関して既に記載したとおり、燃焼はb)により安定化することが可能である。排気ガス再循環量の増加は、少なくとも、臨界(最高)ノックシグナル値が付随する1つの燃焼室において、例えば、それぞれの燃焼室への供給路におけるバルブ又はスロットルによって行われる。しかしながら、これは、複数の燃焼室の各々に対して全体的に有利に行うことが可能であり、ここでは、バルブ又はスロットルは供給路の各々に設けられている必要性はなく、制御は、中央バルブによって行うことが可能である。これによりシステムが簡素化されると共に、すべてのシリンダ又は燃焼室のそれぞれにおいて燃焼が確実に安定化される。このため、燃料量を、少なくとも1つの他の燃焼室において増やすことが可能である。少なくとも1つの燃焼室における変更量は、従って、少なくとも1つの他の燃焼室において良好に吸収可能である。
【0046】
点火位置を遅延させることで早すぎる制御されていない燃焼が防止されるため、少なくとも1つの燃焼室におけるノッキングはc)により低減可能である。特に、点火プラグは遅い時点で作動可能である。点火タイミングの遅い時点へのシフトは、例えば、燃焼室を画定するピストンのピストン位置又はクランク角に関連すると共に、点火点の基準値を基準とすることを意味する。基準値は、例えば、前のサイクルからの点火点であることが可能であり、又は、1つの燃焼室の燃焼ラムダに関連する、好ましくはそれぞれのラムダに対して最適な点火点である他の基準値であることが可能である。特に、混合気は、ピストンが基準時点よりも上死点に近い時点で点火可能である。
【0047】
臨界ノックシグナル値である少なくとも1つの燃焼室における既定燃料量はd)により低減可能であり、これにより、混合気をリーンとし、そして、ノッキングに対する傾向を低減することが可能である。
【0048】
例えば、ノックシグナル値の限界値をまだ上回っていると判断された場合には、好ましくは、ステップb)、c)及びd)が上記の順番で実施される。例えば、a)に従う再分配にも関わらず、高すぎるノックシグナル値が1つの燃焼室において継続して生じていると判断された場合、b)を実施することが可能である。ステップc)及びd)についても同様である。これは、再分配及び排気ガス再循環などのエンジンに優しいステップを先ず実施可能であることを意味する。
【0049】
少なくとも第2の独立態様において、燃料量の再分配が可能であるか、例えば、燃焼室の少なくとも1つにおけるノックシグナル値がノックシグナル値の限界値未満であるかの検証を行うことがさらに好ましく、この場合、少なくとも1つの燃焼室からノックシグナル値が低い燃焼室に燃料を再分配することが可能である。その場合、燃料再分配を行うことが可能であり、そうでない場合には、ステップb)、c)及びd)の1つを行うことが可能である。
【0050】
さらに他の態様によれば、噴射燃料量は、少なくともいくつかの範囲内において、内燃機関の排気セクションにおけるラムダセンサ計測値に基づいて決定することが可能である。
【0051】
これにより排気ガス中の残存ガス含有量の判定が可能となり、前の燃焼サイクルからの混合比に関する情報を提供することが可能である。排気ガス再循環が要求される場合、この情報は二重の関連性を有することが可能である。なぜなら、排気ガス再循環を介して燃焼室に戻された排気ガスの残存ガス含有量に関する情報をも提供するからである。従って、ラムダ標的限界値を同様に、ラムダセンサ計測値に基づいて決定することも可能である。
【0052】
さらなる態様によれば、前記態様の1つに係る方法を実施する制御装置が提供されている。
【0053】
次いで、例えば水素燃焼エンジンを備える自動車にこの制御装置が設けられている場合には、上記の態様に係る方法を実行することが可能である。
【0054】
本発明のさらなる態様によれば、内燃機関に接続されたコンピュータで実行された場合に、コンピュータに上記の態様に係る方法を行わせるプログラムが提供されている。
【0055】
本発明のさらに他の態様によれば、上記のプログラムが記憶されたコンピュータ読取り可能な記憶媒体が提供されている。
【0056】
添付の図面を参照して、以下に本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0057】
図1図1は、本発明に係る方法を示すフローチャートを示す。
図2図2は、回転速度に対する性能プロファイルと、回転速度に対する排気ガス再循環率とを比較する。
図3a図3aは、水素燃料内燃機関における混合気の外部形成を概略的に示す。
図3b図3bは混合気の内部形成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0058】
図1に示されているフローチャートは、例えば、水素燃料内燃機関における燃料の量の制御に用いることが可能である方法を示す。特に、インジェクタによりそれぞれの燃焼室に計量される、次の燃焼サイクルのための水素の量を決定することが可能である。内燃機関は、各燃焼室のシリンダヘッドに点火プラグを備える。本発明の目的のために、これらは火花点火式内燃機関である。内燃機関は、シリンダ、シリンダヘッド、及び、クランクシャフトに連結されたピストンにより規定可能である少なくとも1つの燃焼室を備える。本方法は、この燃焼室に対する燃焼サイクルの燃料を制御するものであって、燃焼室内において水素/空気混合気が燃焼される。
【0059】
本方法によれば、先ず、既定燃料量Fdefが、好ましくは要求負荷に応じて特定される。ここで、既定燃料量Fdefは燃料の発熱量に応じて調整される。同様に、例えば空気質量センサにより計測され、内燃機関の外部から燃焼室に流入する周囲空気Lの量が決定可能である。次いで、これらの2つの値から、既定燃料量Fdef及び周囲空気Lからもたらされるラムダ既定値λ既定をステップS1において算出可能である。
【0060】
その後、次いで、ラムダ既定値λ既定が下限値λ標的-l及び上限値λ標的-uを伴うラムダ標的範囲[λ標的-l;λ標的-u]の範囲内にあるかを、ステップS2において検証可能である。この場合には、ステップS3において、噴射燃料量F噴射が既定燃料量Fdefと等しく設定される。
【0061】
ステップS2においてラムダ既定値λ空気-既定がラムダ標的範囲[λ標的-l;λ標的-u]外である場合には、ステップS41において、噴射燃料量F噴射は、ラムダ初期値であるラムダλ既定に近い限界値λ標的-l又はλ標的-uと等しく設定可能である。噴射燃料量F噴射は従って、ステップS41の場合には補正される。ラムダ標的範囲[λ標的-l;λ標的-u]は、特定の内燃機関について予め判定することが可能である。本発明によれば、ステップS2におけるラムダ標的範囲[λ標的-l;λ標的-u]はラムダ標的範囲であり、ここでは、排気ガス再循環量は燃焼室に再循環されない。これらの場合には、下限値λ標的-lは、好ましくは2.0以上及び4.5以下であり、より好ましくは2.0以上及び4以下であり、特に好ましくは2.2~3.8である。
【0062】
ステップS2においてラムダ既定値λ空気-既定が排気ガス再循環を伴わずにラムダ標的範囲[λ標的-l;λ標的-u]外である場合、内燃機関が追加で排気ガス再循環装置を備えている場合には、代わりに、排気ガス再循環量をステップS42において要求することが可能である。要求から実際に燃焼室に供給される排気ガス再循環量Ractは、例えば空気質量センサにより決定又はモデリングすることが可能である。好ましくは、空気量及び排気ガス再循環量の少なくとも一方が、空気量と排気ガス再循環量との相互作用に基づいて検出される。例えば、排気ガス再循環量Ractは、燃焼室充填量と空気量との差から得ることが可能である。排気ガス再循環装置の代りに、又は、これに追加して、内燃機関は、不活性媒体供給装置を備えていることも可能である。不活性媒体供給装置は、水などの不活性媒体を燃焼室に直接又は間接的に供給可能である。不活性媒体は燃焼に関与せず、少なくとも900J/(kg×K)、好ましくは少なくとも1500J/(kg×K)、さらにより好ましくは少なくとも4000J/(kg×K)の比熱容量を有することが好ましい。
【0063】
排気ガス再循環及び不活性媒体供給は、内燃機関の燃焼室内における燃焼を確実に安定化させる。例えば、ミスファイアに起因する内燃機関のノッキングを少なくとも低減させるか、又は、完全に防止することさえ可能である。
【0064】
排気ガス再循環量Ractを考慮した異なるラムダ標的範囲[λ標的-l;λ標的-uは、要求排気ガス再循環量Ractに基づいて決定することが可能である。このラムダ標的範囲[λ標的-l;λ標的-uにおいて、特に、下限値λ標的-lは、ステップS2におけるものと比して小さくされている。これは、よりリッチな水素/空気混合気を燃焼異常を伴うことなく燃焼させることが可能であることを意味する。ラムダ標的範囲[λ標的-l;λ標的-uは、利用可能な排気ガス再循環量に依存する。排気ガス再循環量が多い場合、ラムダ下限値は、好ましくは1.2の値まで小さくすることが可能である。
【0065】
ステップS44において、ステップS2におけるものと類似の比較が再度行われる。ラムダ既定値λ既定が、排気ガス再循環量Ractを考慮した下限値λ標的-l及び上限値λ標的-uを伴うラムダ標的範囲[λ標的-i;λ標的-uの範囲内であるかが特に検証される。この場合には、ステップS45において、噴射燃料量F噴射が既定燃料量Fdefと等しく設定される。
【0066】
そうでなければ、噴射燃料量F噴射は、ステップS46において、排気ガス再循環量Ractを考慮しながら、ラムダ既定値λ既定に近いラムダ標的範囲の限界値λ標的-l又はλ標的-uに等しく設定される。従って、ステップS46の場合には、噴射燃料量F噴射は補正される。
【0067】
代わりに、ラムダ既定値λ既定がラムダ標的範囲外である場合、すなわち、限界値、特に下限値λ標的-lを超えるか下回ると判定された場合、排気ガス再循環量を増加することが可能であることに留意されたい。これはステップS42で生じる可能性があり、この場合、この増加は、初期要求に関連付けられる。しかしながら、これは、現在の排気ガス再循環量が充分ではない場合、ステップS44の後に生じる可能性がある。
【0068】
同様に、排気ガス再循環量はステップS2において既に存在可能であり、そして、排気ガス再循環量の増加はステップS42において要求されることが可能である。
【0069】
ここで、本発明の有利な効果を記載する。
【0070】
図1を参照して示す方法によれば、燃料量は制御変数であることが可能である。より正確には、噴射される噴射燃料量は、少なくともいくつかの範囲内において、所定のラムダ標的値とは独立して決定される。特に、噴射燃料量は、ラムダ標的範囲[λ標的-l;λ標的-u]内で、所定のラムダ標的値とは独立して決定可能である。例えば、エンジンに供給される空気量に変動が生じた場合、燃料量は、従来のガソリン方式の場合のように、供給される空気量に束縛されることなく、既定燃料量Fdefに基づいて自由に決定することが可能である。噴射燃料量は、少なくともいくつかの範囲内において、上記の実施形態において、ラムダ標的範囲[λ標的-l;λ標的-u]内において、固定ラムダ標的値とは独立して決定される。これにより、内燃機関の柔軟性を高めることが可能である。加えて、空気量Lは、ラムダ既定値λ既定又はラムダ噴射値をそれぞれ決定するために決定される。噴射燃料量が次いで、空気量に基づいて決定される。好ましくは、ここでは、燃料量は、空気量及びラムダ標的範囲に基づいて決定される。
【0071】
噴射燃料量は、少なくともラムダ標的範囲内において、既定燃料量Fdefと等しくなるよう決定される。これは、一定のラムダ標的値に関わらず、所望の既定燃料量を設定及び噴射可能であることを意味する。「ラムダ標的範囲」という用語は、上記の説明のとおり、排気ガス再循環を伴わないラムダ標的範囲[λ標的-l;λ標的-u]と、排気ガス再循環を伴うラムダ標的範囲[λ標的-l;λ標的-uとの複数のラムダ標的範囲を含むことが可能である。
【0072】
噴射燃料量F噴射は、ステップS41及びS46において、ラムダ噴射値が、少なくとも一方の側において、第1のラムダ標的限界値λ標的-lにより制限されるラムダ標的値のラムダ標的範囲内にあるよう、決定される。噴射燃料量は、ステップS41及びS46において、増分ΔFが既定燃料量Fdefに加えられるよう決定される。下限値λ標的-lを下回る場合、この増分は負の値であり、従って、燃料量を減らすことによりラムダ噴射値は高められる。反対に、上限値を超える場合、増分は正の値である。本事例における空気量は固定であり、すなわち、制御されておらず、吸気セクションにおける計測により決定された実際の空気量Lであり、従って、ラムダ噴射値は燃料量を制御することにより設定されることに留意されたい。
【0073】
増分ΔF、従って噴射燃料量は、ラムダ噴射値がラムダ標的限界値に相当するよう決定することが可能である。これにより、燃料量を、許容可能な燃焼混合気の限界まで調整することが可能となる。従って、燃料量は、供給される実際の空気量から適切な許容可能な燃焼混合気が得られるよう決定される。特に、ラムダ標的限界値はラムダ既定値に対してラムダ標的範囲の次の値であるために、既定燃料量の補正は比較的小さくすることが可能となる。
【0074】
上記の実施形態において、ラムダ標的値の範囲の下限値は排気ガス再循環量に依存し、好ましくは、1.2以上及び2.5以下であり、特に好ましくは、1.2以上及び1.8以下であり、さらに好ましくは、これは1.2に相当する。
【0075】
これにより、過剰にリッチな水素/空気混合気が燃焼に供されることないように保証することが可能である。従って、水素燃料内燃機関は、リーン範囲(ラムダ>1)内で運転される。性能範囲に応じて、限界値は、上記の値範囲から収集可能である。ラムダ標的限界値は、従って、性能範囲にわたって可変であることが好ましい。
【0076】
上記のとおり、ラムダ標的範囲[λ標的-l;λ標的-uは、利用可能な排気ガス再循環量に依存する。そして、ラムダ標的範囲は可変であることが可能である。
【0077】
上記のとおり、本実施形態の内燃機関はさらに、少なくともいくつかの範囲内において、燃焼室に排気ガスを再循環させる排気ガス再循環装置を備える。排気ガス再循環により、燃焼室中における燃焼を安定化させることが可能である。例えば、ミスファイアに起因する内燃機関のノッキングを防止可能である。特にリーン燃焼の場合、再循環された排気ガスは、燃焼の安定化を補助する未燃焼の酸素(残存ガス)を顕著な割合で含有する。
【0078】
ラムダ標的範囲[λ標的-l;λ標的-uは利用可能な排気ガス再循環量に依存するのみならず、実施形態において、下限値λ標的-lは排気ガス再循環量に依存して調整される。従って、排気ガス再循環量は、排気ガス再循環が有効である少なくともいくつかの範囲内において、噴射燃料量の決定に際して考慮される。特に、第1のラムダ標的限界値は、要求排気ガス再循環量の増加に伴って小さくすることが可能である。図1において矢印で示されているとおり、排気ガス再循環量はラムダ標的範囲の限界値に影響を与えるのみならず、供給される周囲空気量Lにも作用することに留意されたい。排気ガス再循環量が増加するに伴って、燃焼室に供給されるべき空気量は低減するからである。既定燃料量が同じままである場合、ステップS44において考慮されなければならないラムダ既定値が小さくなる。図1において、ステップS2に係る空気量Lは直前のサイクルからのものなどの計測された空気量L(記憶された)であることが可能であり、その一方で、現在計測された空気量は実際の排気ガス再循環量を考慮して低減されて、ステップS44について使用可能であることに留意されたい。換言すると、排気ガス再循環量の要求が必要であるか判断するため、空気量の基準値を使用可能であり、これは直前のサイクルの現在の計測値から得ることが好ましいが、所与の内燃機関について事前に決定することも可能である。排気ガス再循環量に対する要求は必ずしもステップS2からの比較に先行する必要は無いことに留意されたい。代わりに、排気ガス再循環量はまた、いつでも、又は、一定の性能範囲に対して要求することが可能である。
【0079】
図1に示されているとおり、排気ガス再循環量Ractは、既定燃料量及び空気量に基づく混合気の形成を示すラムダ既定値がラムダ標的範囲[λ標的-l;λ標的-u外である時に排気ガス再循環量が既に存在する場合には、要求されるか、又は、増加される。
【0080】
排気ガス再循環量によって燃焼を安定化することにより、排気ガス再循環を伴わずにラムダ既定値がラムダ標的範囲外である場合、ラムダ標的範囲を正確に拡大可能である。性能要求が高まるに伴って燃料に対する要求が高まり、これが、ラムダ既定値が許容範囲外となる可能性がある理由である。従って、排気ガス再循環量もまた性能要求の限界値を超えて要求される可能性がある(すなわち、性能要求の限界値が超えると判断された場合)。自動車における加速プロセスなどの内燃機関における負荷の一時的な増加においては、必要な性能は、排気ガス再循環量を要求することにより提供可能である。排気ガス再循環量を伴わなければ、ラムダ標的範囲はより制限されることとなり、必要な性能を提供することはできないためである。
【0081】
実施形態において性能要求によって既定燃料量Fdefが増加するに伴って、要求排気ガス再循環量が増加する。特に、既定燃料量Fdefでは達成できない、排気ガス再循環を伴わないラムダ標的範囲[λ標的-l;λ標的-u]が計測された空気量Lからもたらされた場合、排気ガス再循環量が要求される。排気ガス再循環量は、例えば、排気ガス再循環セクションにおけるバルブによって、ラムダ標的範囲[λ標的-l;λ標的-u]が、空気量及び既定燃料量Fdefからもたらされるラムダ噴射値を含むこととなるよう有利に調整される。既定燃料量Fdefは性能要求が高まるに伴って増やされるため、要求排気ガス再循環量もまた増加される。従って、要求排気ガス再循環量は、内燃機関に対する性能要求が増加するに伴って、有利に増加される。
【0082】
これにより、排気ガス再循環が燃焼を安定化させるため、より高い性能要求で望まれるとおり、よりリッチな混合気、すなわち、より低いラムダ噴射値の設定が可能となり、そして、低いラムダ噴射値においても内燃機関のノッキングを防止することが可能である。従って、排気ガス再循環量の増加を性能の向上に利用可能である。これは、一時的なプロセス及び全負荷に特に有利である。この効果を図2に示す。図2の上部には、排気ガス再循環率EGRのプロファイルが回転速度にわたって示されている。ここに見ることが可能であるとおり、排気ガス再循環は回転速度限界値であるn限界を超えた場合に提供されると共に、そこから連続的に増加する。他方で、性能のプロファイルを図2の下部に示す。ここでは、排気ガス再循環量の増加によってもより高い性能が提供可能であることが示されている。中実線は、排気ガス再循環が提供されている際の性能のプロファイルを示す。破線のプロファイルは、排気ガス再循環を伴わない場合である。排気ガス再循環を伴わない場合、燃料量を増加しても、性能の大幅な増加はもはや可能ではない。
【0083】
これらは固定のラムダ値に制御されるため、従来のガソリンエンジンではこのような効果は生じない。従って、従来のガソリンエンジンで排気ガス再循環量が増加すると、空気量を減少させなければならず、これは燃料量の減少をももたらす。
【0084】
燃焼混合気の発熱量は出力される性能と相関する。このため、既定燃料量Fdefは少なくとも内燃機関に対する性能要求に基づいて決定される。
【0085】
従って、性能要求は、既定燃料量、ひいては噴射燃料量の決定に係る基礎とされることが可能である。
【0086】
性能要求が増加するに伴って、既定燃料量は好ましくは増加し、逆もまた同様である。水素/空気混合気の発熱量は混合気中の燃料の割合に相関する。これは、燃料量を増やすことでより高い性能要求を満たすことが可能であることを意味する。
【0087】
上記の実施形態においては、噴射燃料量を決定するために、少なくともいくつかの範囲内において、ノックシグナル値を使用することが可能である。
【0088】
本態様によれば、ノックシグナル値、従って、燃焼異常を示す値を、燃料量の決定に際して考慮することが可能である。内燃機関のそれぞれのシリンダのノッキングに対する傾向に関する情報は、ノックシグナル値に基づいて、例えば先行する燃焼サイクルから得ることが可能である。ノッキングに対する傾向は、燃焼室壁の温度、圧縮及び製造公差などの要因に応じる。これらの要因は、ノックシグナル値による現在のサイクルに対する噴射燃料量の決定において用いることが可能である。ノックシグナル値はまた、再循環された排気ガスの組成に関する情報を提供することが可能である。例えば、より強いノッキングを示すノックシグナル値は、燃焼の安定化がより困難となる排気ガス中における低酸素含有量に関する情報をもたらすことが可能である。ノックシグナル値はまた、要求される排気ガス再循環量とは異なる可能性がある実際に利用可能な排気ガス再循環量に関する情報を提供することが可能である。空気量計測値におけるエラーもまた、考慮され、及び、補償が可能である。
【0089】
ラムダ標的範囲は、好ましくは、ノックシグナル値に基づいて決定され、及び、特に好ましくは、第1のラムダ標的限界値はノックシグナル値の増大に伴って大きくされる。
【0090】
これにより、内燃機関におけるノッキングを軽減することが可能である。なぜならば、ラムダ標的限界値を大きくすることで、混合気をリーンとし、ノッキングに対する傾向を低減することが可能である。
【0091】
ノックシグナル値もまた、以下のように考慮に入れることが可能である。例えば、上記の実施形態のステップS2において、ラムダ標的範囲がノックシグナル値に基づいて調整される場合、燃料量はステップS41において増分ΔFだけ変えられる。
【0092】
しかしながら、複数の燃焼室が設けられている場合、ステップS41の実行による増分ΔFの負の値を、ステップa)において、少なくとも1つの他の燃焼室からの燃料量に加えることが可能であり、又は、増分ΔFの負の値を複数の燃焼室間で割ることが可能である。
【0093】
これは、従って、少なくとも1つの燃焼室の噴射燃料量、並びに、少なくとも1つの他の燃焼室の噴射燃料量は共に、少なくとも1つの燃焼室に関連する(計測された)ノックシグナル値に基づいて決定可能であることを意味する。ステップS41におけるノックシグナル値に基づいたラムダ標的範囲の決定、及び、その後の燃料量の補正により、1つの燃焼室のノックシグナル値は小さくすることが可能であり、一方で、複数の燃焼室の少なくとも1つの他の燃焼室において、燃料量は、すべての燃焼室に供給される所定の燃料量である全体の既定燃料量にできるだけ近似するよう決定され、及び、再度好ましくは達成される。1つの燃焼室は、既定燃料量と比して少ない噴射燃料量で達成可能である既定燃料量からもたらされる混合気と比してリーンな混合気で運転が続けられることが可能である。
【0094】
特に、少なくとも1つの燃焼室における燃料量の調整は、個々の燃焼室で補償可能である。好ましくは、少なくとも1つの燃焼室のノックシグナル値は、少なくとも1つの他の燃焼室よりも高い。
【0095】
全体の既定燃料量は、性能要求に基づいて決定される燃料量であることが可能である。個別の燃焼室の各々の既定燃料量は、例えば、燃焼室が同じである場合、全体の既定燃料量を燃焼室の数で割ることにより、全体の既定燃料量から決定することが可能である。
【0096】
好ましくは、a)において、上記のとおり、1つの燃焼室の既定燃料量と比した変更量の量は、少なくとも部分的に、好ましくは全体的に、少なくとも1つの他の燃焼室の燃料量によって補償される。
【0097】
既述の燃料量の再分配は、他の燃焼室のそれぞれのノックシグナル値に依存して行われることが可能である。そして、関連ノックシグナル値が低い燃焼室は、より大きな割合の変更量を比例的に補償可能である。
【0098】
全体の既定燃料量又は性能要求が再分配により達成可能である場合、ステップS42~S46は省略可能である。
【0099】
しかしながら、再分配及び排気ガス再循環を組み合わせことが可能である。例えば、全体の既定燃料量が他の燃焼室における補償によっては達成できないと判断された場合、燃焼室の少なくとも1つにおいて排気ガス再循環量を増やすことが可能である。これは、上記のステップb)に相当する。上記において既に説明したとおり、燃焼はb)により安定化させることが可能である。排気ガス再循環量の増加は、少なくとも、臨界(最高)ノックシグナル値が付随する1つの燃焼室において、例えば、それぞれの燃焼室への供給路におけるバルブ又はスロットルにより行われる。しかしながら、これはまた、複数の燃焼室の各々に対して全体的に行うことが可能であり、この場合、バルブ又はスロットルを供給路の各々に設ける必要性はなく、制御は中央バルブで行うことが可能である。これによりシステムが簡素化されると共に、すべてのシリンダ又は燃焼室のそれぞれにおいて燃焼が確実に安定化される。このため、燃料量を、少なくとも1つの他の燃焼室において増やすことが可能である。少なくとも1つの燃焼室における変更量は、従って、少なくとも1つの他の燃焼室において良好に吸収可能である。
【0100】
排気ガス再循環量を増やす代わりに、又は、これに追加して、少なくとも1つの燃焼室における点火タイミングを遅い時点(ステップc))にシフトすることも可能であり、及び/又は、内燃機関に対する性能要求を低減させることが可能である(ステップd))。
【0101】
点火位置を遅延させることで早すぎる制御されていない燃焼が防止される。特に、点火プラグは遅い時点で作動可能である。点火点の遅い時点へのシフトは、例えば、燃焼室を画定するピストンのピストン位置又はクランク角に関連すると共に、点火点の基準値を基準とすることを意味する。基準値は、例えば、前のサイクルからの点火点であることが可能であり、又は、1つの燃焼室の燃焼ラムダに関連する、好ましくは最適な点火点である他の基準値であることが可能である。特に、混合気は、ピストンが基準時点よりも上死点の近くに位置している点火点で点火可能である。
【0102】
性能要求の低減とは、全体の既定燃料量を低減可能であることを意味する。これは、特に、少なくとも1つの燃焼室において、既定燃料量を低減し、これにより、性能要求を低減することにより達成される。
【0103】
例えば、再分配にも関わらずノックシグナル値が許容される限界値よりも高いと判断された場合には、再分配の後に排気ガス再循環の制御を作動させることが有利である。
【0104】
次いで、ステップb)、c)及びd)をこの順番で実行する。これは、再分配及び排気ガス再循環などのエンジンに優しいステップを先ず実行可能であることを意味する。
【0105】
燃料量の再分配が可能であるかの検証を行うことも可能である。その場合、燃料再分配を行うことが可能であり、そうでない場合には、ステップb)、c)及びd)のいずれか1つが実行可能である。
【0106】
再分配の態様は、必ずしも空気量に基づいて噴射燃料量を決定する態様と組み合わされる必要はなく、独立して適用することも可能である。従って、この目的のために、空気量を計測する必要性はない。
【0107】
燃焼室の数に関わらず、燃料量は、ノックシグナル値及び/又は排気ガス再循環量に基づいて決定することが可能である。特に、排気ガス再循環量は、ノックシグナル値に基づいて決定することが可能である。例えば、上記の実施形態のステップS2におけるラムダ標的範囲をノックシグナル値に基づいて適応させることが可能である。排気ガス再循環量を増加させることにより、ラムダ標的範囲を増加させることが可能である。従って、排気ガス再循環量は、ノックシグナル値の増大に伴って、有利に増加される。
【0108】
同様に、本実施形態においては、ラムダセンサを排気セクションに設けることが可能である。次いで、ラムダセンサからのシグナル値を用いて噴射燃料量を決定することも可能である。
【0109】
これにより排気ガス中の残存ガス含有量を判定することが可能であり、前の燃焼サイクルからの混合比に関する情報を提供することが可能である。排気ガス再循環が要求される場合、この情報は二重の関連性を有することが可能である。なぜなら、排気ガス再循環を介して燃焼室に戻された排気ガスの残存ガス含有量に関する情報をも提供するからである。従って、ラムダ標的限界値を、ラムダセンサ計測値に基づいて決定することも可能である。
【0110】
上記の実施形態において、空気量(空気質量)は、例えば、空気質量計を用いて計測される。しかしながら、空気量はまた、例えば、パラメータを用いてモデリングが可能である。図3a及び3bは、燃焼室中におけるシリンダ充填量、すなわち、燃料、空気及び再循環された排気ガスの混合気の組成を示す。図3aに係る混合気の外部形成では、空気質量流量m空気及び再循環された排気ガスの質量流量mEGRが下流に供給される。さらに下流では、水素質量流量mH2がシリンダへの供給路に供給される。供給路の混合ゾーンにおいて、空気流入路からの空気の質量流、排気ガス流入路からの再循環された排気ガスの質量流、及び、燃料流入路からの水素の質量流が混合される。これにより、混合気質量流量m混合が得られる。混合質量流がシリンダに流入する時間を積分すると、燃料、空気及びEGRからなるシリンダ充填質量m混合気が得られる。それぞれの流入路における質量流量を計測する空気質量計を、空気流入路並びに排気ガス流入路の両方に配置することが可能である。経時的な積分で、混合気m混合気に存在する空気質量L及び排気ガスRactの再循環量が得られる。しかしながら、これらの値の1だけを計測すること、又は、いずれも計測しないことさえも可能であり、少なくとも1つの空気質量センサを省略することが可能である。例えば、最大シリンダ容積及び/又は流入路の断面積が既知である場合、ガスの量(質量)のそれぞれは、例えば、それぞれの流入路における圧力センサーによりモデリングすることが可能である。
【0111】
図3aとは異なり、図3bは混合気の内部形成の事例を示し、ここで、燃料は、好ましくは燃焼室が閉じられている時に、シリンダに供給される。従って、混合ゾーンでは、空気の質量流量及び再循環された排気ガスの質量流量のみが混合される。ここでも、空気量及び排気ガス再循環量は計測又はモデリングが可能である。
【0112】
空気量及び/又は排気ガス再循環量は、好ましくは、実施されれる燃焼サイクルに係る既知の実際の変数であり、これらは、例えば、センサー又はモデリングに基づいて決定可能である。燃料量は、例えば噴射ノズルを開くことにより制御可能である。両方のタイプの混合気において、燃料量は既知の変数を用いて適応可能である。
【0113】
上記の方法は、両方のタイプの内燃機関における使用に好適である。
【0114】
上記のステップは必ずしもすべてが提供される必要性はなく、また、必ずしもこの順序で実行される必要も無い。排気ガス再循環が作動されない範囲内においては、例えばステップS42~S46は省略することが可能である。しかしながら、例えば特定の性能要求のために制御装置が排気ガス再循環量を直接要求する場合には、ステップS3~S41もまた省略することが可能である。
【0115】
上記の説明において、排気ガス再循環について言及がされる場合は常に、不活性媒体供給を代わりに、又は、組み合わせて使用することも可能である。
【0116】
本発明は、空気量が規制されない内燃機関に特に好適である。しかしながら、例えば、燃焼室への供給路に、部分負荷範囲において供給路の断面を制限し、及び、全負荷範囲において断面を完全に開放するスロットルバルブを設けることも可能である。
【0117】
水素のみを、燃料として用いることが好ましい。
【0118】
ラムダ標的範囲は1つのラムダ標的値のみを含んでいることも可能であり、従って、燃料量は常に、例えば排気ガス再循環量に依存する変数である標的ラムダ値と関連して調整することが可能である。
【0119】
本開示において、「いくつかの範囲内において」という用語は、好ましくは、性能範囲及び/又はラムダ範囲を指す。例えば、ラムダ標的範囲内では、燃料量は、ラムダ標的値とは独立して決定される。例えば、空気量は、一定の性能範囲内においてのみ決定可能である。例えば、エンジンがノッキングを起こす恐れがないため、部分負荷範囲においては空気量に基づいた決定を行うことが出来ない。
【0120】
別段の規定がある場合を除き、「少なくとも」という用語は、全体をも含む。
【0121】
「性能」という用語は、内燃機関のトルク及び/又は回転速度を含む。
【0122】
「量」という用語は特に質量を含むが、例えば、粒子の数又は体積を含むことも可能である。
【0123】
本開示における「噴射」は、燃焼混合気の形成のためのいずれかのタイプの燃料供給を含む。
図1
図2
図3a
図3b
【手続補正書】
【提出日】2023-06-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
火花点火式内燃機関の運転方法であって、
前記内燃機関は水素を燃料として用いて運転され、前記内燃機関は、少なくともいくつかの範囲内において、排気ガスを前記燃焼室に再循環させる排気ガス再循環装置、及び/又は、好ましくは水である前記燃焼に関与しない不活性媒体を前記燃焼室に供給する不活性媒体供給装置をさらに備え、
ラムダ噴射値は、前記内燃機関の燃焼室に供給される噴射燃料量(F噴射)及び前記内燃機関の外部から前記燃焼室に供給される空気量(L)に基づく混合気の形成を示す値であり、
前記噴射燃料量(F噴射)は、少なくともいくつかの性能範囲内において、ラムダ標的値とは独立して、少なくとも既定燃料量(Fdef)に基づいて、並びに、排気ガス再循環量(R)及び/又は不活性媒体供給量に基づいて決定され、特に好ましくは、前記既定燃料量(Fdef)と等しく、並びに
前記噴射燃料量は、少なくともいくつかの性能範囲内において、前記空気量に基づいて決定され、
前記噴射燃料量は、少なくともラムダ標的範囲([λ 標的-l ;λ 標的-u ])に基づいて、かつ、前記ラムダ標的範囲([λ 標的-l ;λ 標的-u ])内においてラムダ標的値とは独立して決定され、前記噴射燃料量は、前記ラムダ噴射値が、少なくとも一方の側において第1のラムダ標的限界値により制限されるラムダ標的値の前記ラムダ標的範囲内にあるよう決定され、前記ラムダ標的範囲([λ 標的-l ;λ 標的-u ])、特に前記第1のラムダ標的限界値は、前記排気ガス再循環量(R)及び/又は不活性媒体供給量に依存し、好ましくは前記第1のラムダ標的限界値は、要求排気ガス再循環量及び/又は不活性媒体供給量の増加に伴って小さくされることを特徴とする、運転方法。
【請求項2】
前記第1のラムダ標的限界値は、ラムダ標的値の前記範囲の下限値(λ標的-l)であり、好ましくは、1.2以上及び2.5以下であり、特に好ましくは、1.2以上及び1.8以下であり、さらに好ましくは1.2に相当する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記噴射燃料量は、好ましくは、既定燃料量及び前記空気量(L)に基づく混合気の形成を示すラムダ既定値(λ既定)が、前記ラムダ標的範囲([λ標的-l;λ標的-u])外である場合に、前記ラムダ噴射値が前記標的ラムダ限界値(λ標的-l)に相当するよう、決定される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
排気ガス再循環量及び/又は不活性媒体供給量は、前記既定燃料量及び前記空気量に基づいた混合気の形成を示すラムダ既定値(λλ既定)が前記ラムダ標的範囲外であるか及び/又は性能要求の限界値を超えている場合に、要求又は増大される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記要求排気ガス再循環量及び/又は不活性媒体供給量は、前記内燃機関に対する前記性能要求が高まるに伴って大きくされる、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記既定燃料量(Fdef)は少なくとも前記内燃機関に対する性能要求に基づいて決定され、前記既定燃料量は、好ましくは、前記性能要求が高まるに伴って増やされる、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記噴射燃料量は、少なくともいくつかの範囲内において、ノックシグナル値に基づいて決定され、好ましくは、前記第1のラムダ標的限界値は、前記ノックシグナル値の増大に伴って大きくされる、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
火花点火式内燃機関の運転方法であって、
前記内燃機関は水素のみを燃料として用いて運転され、前記内燃機関は複数の燃焼室を備え、
少なくとも1つの燃焼室に関連するノックシグナル値に基づいて、前記少なくとも1つの燃焼室の噴射燃料量並びに少なくとも1つの他の燃焼室の噴射燃料量は共に決定され、前記1つの燃焼室の前記噴射燃料量は、前記1つの燃焼室の前記ノックシグナル値が低減するよう決定され、前記1つの燃焼室はリーンな水素/空気混合気で運転され、及び、前記複数の燃焼室の前記少なくとも1つの他の燃焼室において、前記噴射燃料量は、すべての燃焼室に供給される所定の燃料の量である全体の既定燃料量にできるだけ近似するように決定され、再び好ましくは達成される、運転方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの燃焼室の既定燃料量と比べた変更量は、
少なくとも部分的に、好ましくは全体的に、関連するノックシグナル値が低い少なくとも1つの他の燃焼室の前記燃料量に加えられることが好ましく、さらに、複数の他の燃焼室の前記燃料量にそれぞれ加えられることがより好ましく、及び/又は
前記他の燃焼室の前記それぞれのノックシグナル値に依存する前記それぞれの燃焼室の前記燃料量に加えられる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の方法を実施するための、制御装置。
【手続補正書】
【提出日】2024-04-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
火花点火式内燃機関の運転方法であって、
前記内燃機関は水素を燃料として用いて運転され、前記内燃機関は、少なくともいくつかの範囲内において、排気ガスを前記燃焼室に再循環させる排気ガス再循環装置、及び/又は、好ましくは水である前記燃焼に関与しない不活性媒体を前記燃焼室に供給する不活性媒体供給装置をさらに備え、
ラムダ噴射値は、前記内燃機関の燃焼室に供給される噴射燃料量(F噴射)及び前記内燃機関の外部から前記燃焼室に供給される空気量(L)に基づく混合気の形成を示す値であり、
前記噴射燃料量(F噴射)は、少なくともいくつかの性能範囲内において、ラムダ標的値とは独立して、少なくとも既定燃料量(Fdef)に基づいて、並びに、排気ガス再循環量(R)及び/又は不活性媒体供給量に基づいて決定され、特に好ましくは、前記既定燃料量(Fdef)と等しく、並びに
前記噴射燃料量は、少なくともいくつかの性能範囲内において、前記空気量に基づいて決定され、
前記噴射燃料量は、少なくともラムダ標的範囲([λ標的-l;λ標的-u])に基づいて、かつ、前記ラムダ標的範囲([λ標的-l;λ標的-u])内においてラムダ標的値とは独立して決定され、前記噴射燃料量は、前記ラムダ噴射値が、少なくとも一方の側において第1のラムダ標的限界値により制限されるラムダ標的値の前記ラムダ標的範囲内にあるよう決定され、前記ラムダ標的範囲([λ標的-l;λ標的-u])、特に前記第1のラムダ標的限界値は、前記排気ガス再循環量(R)及び/又は不活性媒体供給量に依存し、好ましくは前記第1のラムダ標的限界値は、要求排気ガス再循環量及び/又は不活性媒体供給量の増加に伴って小さくされることを特徴とする、運転方法。
【請求項2】
前記第1のラムダ標的限界値は、ラムダ標的値の前記範囲の下限値(λ標的-l)であり、好ましくは、1.2以上及び2.5以下であり、特に好ましくは、1.2以上及び1.8以下であり、さらに好ましくは1.2に相当する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記噴射燃料量は、好ましくは、既定燃料量及び前記空気量(L)に基づく混合気の形成を示すラムダ既定値(λ既定)が、前記ラムダ標的範囲([λ標的-l;λ標的-u])外である場合に、前記ラムダ噴射値が前記標的ラムダ限界値(λ標的-l)に相当するよう、決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
排気ガス再循環量及び/又は不活性媒体供給量は、前記既定燃料量及び前記空気量に基づいた混合気の形成を示すラムダ既定値(λλ既定)が前記ラムダ標的範囲外であるか及び/又は性能要求の限界値を超えている場合に、要求又は増大される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記要求排気ガス再循環量及び/又は不活性媒体供給量は、前記内燃機関に対する前記性能要求が高まるに伴って大きくされる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記既定燃料量(Fdef)は少なくとも前記内燃機関に対する性能要求に基づいて決定され、前記既定燃料量は、好ましくは、前記性能要求が高まるに伴って増やされる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記噴射燃料量は、少なくともいくつかの範囲内において、ノックシグナル値に基づいて決定され、好ましくは、前記第1のラムダ標的限界値は、前記ノックシグナル値の増大に伴って大きくされる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
火花点火式内燃機関の運転方法であって、
前記内燃機関は水素のみを燃料として用いて運転され、前記内燃機関は複数の燃焼室を備え、
少なくとも1つの燃焼室に関連するノックシグナル値に基づいて、前記少なくとも1つの燃焼室の噴射燃料量並びに少なくとも1つの他の燃焼室の噴射燃料量は共に決定され、前記1つの燃焼室の前記噴射燃料量は、前記1つの燃焼室の前記ノックシグナル値が低減するよう決定され、前記1つの燃焼室はリーンな水素/空気混合気で運転され、及び、前記複数の燃焼室の前記少なくとも1つの他の燃焼室において、前記噴射燃料量は、すべての燃焼室に供給される所定の燃料の量である全体の既定燃料量にできるだけ近似するように決定され、再び好ましくは達成される、運転方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの燃焼室の既定燃料量と比べた変更量は、
少なくとも部分的に、好ましくは全体的に、関連するノックシグナル値が低い少なくとも1つの他の燃焼室の前記燃料量に加えられることが好ましく、さらに、複数の他の燃焼室の前記燃料量にそれぞれ加えられることがより好ましく、及び/又は
前記他の燃焼室の前記それぞれのノックシグナル値に依存する前記それぞれの燃焼室の前記燃料量に加えられる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の方法を実施するための、制御装置。
【請求項11】
内燃機関に連結されたコンピュータ上で実行した場合に、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法をコンピュータに実行させる、プログラム。
【請求項12】
請求項11に記載されたプログラムが保存されているコンピュータが読み取り可能な、記憶媒体。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0004
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0004】
欧州特許出願公開第1754874号明細書および西独国特許出願公開第102019213132号明細書は、火花点火式内燃機関の運転方法を示しており、排気ガスの再循環量を増加させて、よりリッチな混合気を燃焼させている。
米国特許第7421330号明細書は、内燃機関がいくつかの燃焼室を備え、特定の燃焼室についてノック監視が行われる方法を示している。
国際公開第2021/005344号は、水素により運転される火花点火式内燃機関を示す。エンジン性能は燃料量によってのみ制御される。しかしながら、このような燃料のみによる制御では、エンジン挙動に悪影響を及ぼす燃焼異常が生じる可能性がある。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
本発明によれば、噴射燃料量は、ラムダ噴射値が、少なくとも一方の側において、第1のラムダ標的限界値により制限されるラムダ標的値のラムダ標的範囲内にあるよう、少なくともいくつかの範囲内において、ラムダ標的範囲に基づいて決定される。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0023
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0023】
本発明によれば、噴射燃料量は、少なくともいくつかの範囲内において、排気ガス再循環量及び/又は不活性媒体供給量に基づいて決定される。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0025
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0025】
本発明によれば、ラムダ標的範囲、特に第1のラムダ標的限界値は排気ガス再循環量及び/又は不活性媒体供給量に依存しており、好ましくは、第1のラムダ標的範囲は、要求排気ガス再循環量及び/又は不活性媒体供給量の増加に伴って低減可能である。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0039
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0039】
本発明のさらに他の態様によれば、火花点火式内燃機関の運転方法が提供されており、ここで、内燃機関は水素を燃料として用いて運転されると共に、内燃機関は複数の燃焼室を備え、ここで、a)少なくとも1つの燃焼室に関連するノックシグナル値に基づいて、少なくとも1つの燃焼室の噴射燃料量並びに少なくとも1つの他の燃焼室の噴射燃料量は共に決定され、この1つの燃焼室の噴射燃料量は1つの燃焼室のノックシグナル値が低減するよう決定され、この1つの燃焼室はリーンな水素/空気混合気で運転され、及び、複数の燃焼室の少なくとも1つの他の燃焼室において、噴射燃料量は、すべての燃焼室に供給される所定の燃料の量である全体の既定燃料量にできるだけ近似するように決定され、再び好ましくは達成される。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0052
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0052】
さらなる態様によれば、本発明の前記態様の1つに係る方法を実施する制御装置が提供されている。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0054
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0054】
本発明のさらなる態様によれば、内燃機関に接続されたコンピュータで実行された場合に、コンピュータに本発明の上記の態様に係る方法を行わせるプログラムが提供されている。
【国際調査報告】