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特表2024-534038坑井現場メタン熱分解装置及びフレアリングに代わる坑井現場メタン熱分解方法
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  • 特表-坑井現場メタン熱分解装置及びフレアリングに代わる坑井現場メタン熱分解方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-18
(54)【発明の名称】坑井現場メタン熱分解装置及びフレアリングに代わる坑井現場メタン熱分解方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/26 20060101AFI20240910BHJP
【FI】
C01B3/26
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508999
(86)(22)【出願日】2022-08-26
(85)【翻訳文提出日】2024-02-15
(86)【国際出願番号】 EP2022025395
(87)【国際公開番号】W WO2023030684
(87)【国際公開日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】102021000022781
(32)【優先日】2021-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517029381
【氏名又は名称】ヌオーヴォ・ピニォーネ・テクノロジー・ソチエタ・レスポンサビリタ・リミタータ
【氏名又は名称原語表記】Nuovo Pignone Tecnologie S.R.L.
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ディフォッジオ,ロッコ
【テーマコード(参考)】
4G140
【Fターム(参考)】
4G140DA03
4G140DC02
(57)【要約】
【解決手段】 メタン熱分解反応器及びメタン熱分解方法であって、天然ガス気泡を形成するために、天然ガス流(11)を多孔質透過性プレート(3)に通すステップと、メタンを反応させて水素及び二酸化炭素を得るために、多孔質透過性プレート(3)によって支持された溶融金属カラム(2)を通して天然ガス流をバブリングするステップと、水素ガス流(12)と炭素スラグとを分離するステップと、を含み、多孔質透過性プレート(3)の細孔のサイズは、溶融金属が細孔に入るのに必要な毛細管圧力が溶融金属カラム(2)の底部圧力を超えるようなサイズである、方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタン熱分解反応器であって、容器(6)と、前記容器(6)の下部に配置された多孔質透過性プレート(3)と、前記多孔質透過性プレート(3)の下方に配置された少なくとも1つの天然ガス流入口(11)と、前記反応器の上部に配置された少なくとも1つの水素生成物流出口(12)と、を備え、前記多孔質透過性プレート(3)は、天然ガス流の通過を可能にするように、また前記多孔質透過性プレート(3)と前記容器(6)の上部のヘッドスペース(8)との間で溶融金属カラム(2)を支持するように適合されており、前記多孔質透過性プレート(3)の細孔のサイズは、溶融金属が前記細孔に入るのに必要な毛管圧力が溶融金属カラム(2)の底部圧力を超えるようなサイズである、メタン熱分解反応器。
【請求項2】
前記溶融金属カラム(2)の上部に吸引ライン(10)をさらに備える、請求項1に記載のメタン熱分解反応器。
【請求項3】
前記多孔質透過性プレート(3)の下に、前記天然ガス流の通過を可能にするように適合された断熱層(4)をさらに備える、請求項1又は2に記載のメタン熱分解反応器。
【請求項4】
前記断熱層(4)の下に、前記天然ガス流から微粒子を濾過して除去するように、また前記天然ガス流の通過を可能にするように適合された第2の多孔質透過性プレート(5)をさらに備える、請求項3に記載のメタン熱分解反応器。
【請求項5】
前記コンテナ(6)の周囲に配置されたジュワービン(7)をさらに備える、請求項1~4のいずれか一項に記載のメタン熱分解反応器。
【請求項6】
前記容器(6)及び前記溶融金属カラム(2)の周りに配置された火炎ノズル(13)をさらに備える、請求項1~5のいずれか一項に記載のメタン熱分解反応器。
【請求項7】
前記容器(6)及び前記溶融金属カラム(2)の周りに配置された誘導加熱用のコイル(14)をさらに備える、請求項1~5のいずれか一項に記載のメタン熱分解反応器。
【請求項8】
前記多孔質透過性プレート(3)は、より大きな細孔サイズのプレート(16)のより厚い区分の上にある、より微細な細孔サイズのプレート(15)の薄いベニヤに分割される、請求項1~7のいずれか一項に記載のメタン熱分解反応器。
【請求項9】
メタン熱分解のための方法であって、
-天然ガス気泡を形成するために、天然ガス流(11)を多孔質透過性プレート(3)に通すステップと、
-メタンを反応させて水素及び二酸化炭素を得るために、前記多孔質透過性プレート(3)によって支持された溶融金属カラム(2)を通して前記天然ガス流をバブリングするステップと、
-水素ガス流(12)と炭素スラグとを分離するステップと、を含み、
前記多孔質透過性プレート(3)の前記細孔のサイズは、前記溶融金属が前記細孔に入るのに必要な毛細管圧力が前記溶融金属カラム(2)の底部圧力を超えるようなサイズである、方法。
【請求項10】
前記炭素を分離するステップは、前記溶融金属カラム(2)の上方の炭素スラグ層(9)から前記炭素を吸引することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記多孔質透過性プレート(3)の上流で前記天然ガス流(11)を濾過するステップをさらに含む、請求項9又は10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水素を生成するためのメタンの熱分解のための装置に関する。本明細書に開示される実施形態は、具体的には、坑井現場メタン熱分解装置及びフレアリングの代替としての坑井現場メタン熱分解に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、特に遠隔地における坑井現場メタンは、フレアリングを通じて安価な方法で処分されている。しかしながら、フレアリングはCOを生成する。メタンを単に大気中に放出することは、フレアリングよりもさらに安価であるが、メタンは、二酸化炭素よりも28倍~36倍悪い温室温暖化係数(Greenhouse Warming Potential、GWP)を有すると推定される。したがって、直接的なメタンの放出は適切な代替法ではない。
【0003】
二酸化炭素(CO)は、地球の大気中で最も重要な長寿命の温室効果ガスである。主に化石燃料の使用及び伐採からの人為的な排出による大気中の二酸化炭素濃度の加速的な増加は、地球温暖化をもたらし、二酸化炭素排出の削減の必要性は、世界的な主要な関心事となっている。
【0004】
典型的な水素生成はまた、主に天然ガスの水蒸気改質に基づいており、この技術は副生成物としてかなりの量の二酸化炭素を生成するので、二酸化炭素排出の一因となる。直接的なCO排出を伴わない代替的な水素生成技術が調査中である。水素生成のために化石炭化水素を改質しながらCOの形成を回避する1つの方法は、クラッキング又は熱分解としても知られる直接的な熱分解又は熱触媒分解である。メタンを主成分とする天然ガスの熱分解は、この分野において有望なアプローチである。さらに、未燃焼天然ガスは、HS又は他の有害ガスを含有する可能性があり、これらも熱分解によって分解される。
【0005】
以下の単純化された反応式、
CH→C+2H
によって記述されるメタン熱分解反応は吸熱性であり、標準反応エンタルピーは74.8kJ/molである。
【0006】
平衡組成物に有利な高温及び長い滞留時間は、エタン、エチレン及びアセチレンなどの中間体を生成する確率を低下させるが、これは、そのような炭化水素が高温で不安定であるためである。最近の熱分解装置の設計は、触媒、すなわち金属(例えば、Ni、Fe、Cu、Co)の適用のための流動床に主に基づいており、これは、反応速度を増加させ、活性化エネルギーを減少させることによってより低い反応温度を可能にする。それにもかかわらず、全ての触媒は、活性部位上への炭素の堆積、又はさらには触媒の機械的摩耗に起因する不活性化を被る。触媒の失活に加えて、分解反応中の固体炭素の形成は、反応器の目詰まりをもたらし得る。これらの制限を回避する炭化水素の連続分解のためのアプローチは、熱分解気泡塔反応器における熱伝達流体として液体金属(溶融した純スズ、インジウム、ガリウム、若しくは鉛、又はそれらと、それらの触媒活性を増加させ得るニッケル、白金、若しくはパラジウムとの合金など)を利用することである。炭化水素気泡の単純な機構モデルは、それらがマイクロリアクタとして機能するそれらの界面を連続的に更新し、液体金属の表面に浮遊する固体炭素粒子と、液体金属カラムの上部から泡立つ気体水素とを放出するというものである。このようにして、触媒反応器の目詰まりの前述の欠点を回避することができる。浮遊炭素粒子スラグは、炭素粒子除去の一例として、溶融金属表面の表面から真空除去することができる。さらに、液体金属及び/又は生成された炭素は、反応を加速するための潜在的な触媒として機能することができる。
【0007】
この技術の適用は、1)容器からの過剰な熱損失を防止することによって、反応器チャンバ内の溶融金属をしばしば1000℃より高い温度に維持すること、2)吸熱メタン熱分解反応及び熱漏れに対して失われる熱を置換するために、誘導的にあるいは水素炎を用いて金属を加熱し続けること、ならびに3)結果として生じる炭素スラグを除去及び処分すること、を含む課題を提示することになり、そのような課題は、特に遠隔地において、坑井現場メタンにメタン熱分解を適用することを困難にする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、より高い効率を有し、現在の技術のシステムよりも小型である改良された熱分解装置が有益であり、技術において歓迎されるであろう。
【0009】
一態様において、本明細書に開示される主題は、より短い溶融金属カラムを利用することができるので、よりコンパクトな設計を可能にする、メタン気泡サイズをはるかに小さくすることによって、反応速度をより速くし、メタンの水素への変換をより完全にすることを対象とする。溶融金属カラムを支持するために、また天然ガスを溶融金属カラムの底部に導入するために使用される多孔質透過性プレートは、ガスがカラム内に上方に容易に流れることを可能にする一方で、溶融金属及びその熱の大部分が下方に流れることを阻止し、それによって溶融金属からの熱損失及びそれを高温に保つために必要なエネルギーを低減する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明の開示される実施形態、及びそれに付随する利点の多くについての完全な理解は、添付図面に関連して考慮される場合、以下の発明を実施するための形態を参照することによって、それらがより良好に理解される際に容易に得られるであろう。
図1図1は、第1の実施形態による熱分解装置の概略断面図である。
図2図2は、第2の実施形態による熱分解装置の概略断面図である。
図3図3は、第3の実施形態による熱分解装置の概略断面図である。
図4図4は、第4の実施形態による熱分解装置の一部分の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
一態様によれば、本主題は、天然ガス(坑井現場メタン)が下方から溶融金属カラムを通って流れて水素と炭素に分解される熱分解装置を対象とする。溶融金属は、多孔質透過性のセラミックフリットによって支持される。セラミックフリットの細孔のサイズは、天然ガスが溶融金属カラムに接触する際に気泡を形成しながら、それを通って上方に流れることを可能にするが、同時に、細孔は、溶融金属がそれを通って下方に流れることを防止するのに十分に小さい。セラミック微小球の断熱層が、透過性セラミックフリットの下に配置される。最後に、別の多孔質透過性のセラミックフリットがセラミック微小球の断熱層の下に配置されて、生の天然ガス中の懸濁粒子を濾過して除去する。
【0012】
ここで、本開示の実施形態を詳細に参照し、これらの1つ以上の例は、図に例示されている。各例は、本開示を限定するものではなく、本開示の説明として提供するものである。実際には、本開示の範囲又は趣旨から逸脱することなく、本開示に様々な修正及び変形を加えることができるということが、当業者には明らかであろう。本明細書全体を通して「ある実施形態」又は「一実施形態」又は「いくつかの実施形態」への言及は、一実施形態に関して説明される特定の特徴、構造、又は特性が、開示される主題の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体を通して様々な個所において「ある実施形態では」又は「一実施形態では」又は「いくつかの実施形態では」という句が現れると、それは、必ずしも同一の実施形態を指しているものではない。また、特定の特徴、構造、又は特性は、1つ以上の実施形態において、任意の好適な様式において組み合わされてもよい。
【0013】
様々な実施形態の要素を提示する際、冠詞「a」、「an」、「the」、及び「said」は、当該要素が1つ以上あることを意味することを意図している。「備える(comprising)」、「含む(including)」、及び「有する(having)」という用語は、非排他的であることが意図され、列記された要素以外の追加の要素が存在し得ることを意味するものである。
【0014】
ここで図面を参照すると、図1は、本開示の一実施形態による例示的な熱分解装置の概略図を示す。特に、図1に示される例示的な実施形態では、熱分解装置1が示されており、溶融金属カラム2は、多孔質透過性プレート3、特に多孔質透過性のセラミック上部フリット3によって下から支持されている。
【0015】
一実施形態によれば、溶融金属カラム2の温度は、1000~1100℃の範囲にある。
【0016】
セラミック上部フリット3の細孔のサイズは、毛管圧力を考慮すると、細孔が小さすぎて、溶融金属がセラミック上部フリット3に入ることさえできず、言うまでもなく、セラミック上部フリット3を通って流れることさえできないようなサイズである。毛管圧力は、(天然ガスに対する)溶融金属の界面張力と、(溶融金属とセラミックとの間の)接触角の余弦との積を細孔径で割ったものの2倍に等しい。液体金属は全て、真空中で高い表面張力を有し、任意のガスに対して対応する高い界面張力を有する。そのため、液体金属表面を変形させてマイクロメートルサイズの細孔にするには非常に高い圧力が必要である。その高い入口圧力は、任意の妥当な高さの液体金属の任意のカラムの底部におけるカラム重量圧力をはるかに超える可能性が高い。したがって、液体金属が細孔内に侵入することが防止される。
【0017】
すなわち、溶融金属がセラミック上部フリット3の細孔に入るのに必要な毛細管圧力は、溶融金属カラム2の底部圧力(これは、その密度×重力加速度×カラムの高さによって与えられる)を超えるので、溶融金属が細孔に入ることが防止される。
【0018】
しかしながら、メタンは、文献に報告されているミリメートルサイズの気泡の代わりに、小さなマイクロメートルサイズの気泡の形態で、セラミック上部フリット3の広い領域全体にわたって、フリットを通して溶融金属の底部へと上向きにポンプ輸送され得る。
【0019】
セラミック上部フリット3の細孔が小さいほど、溶融金属が細孔に入ることなく、溶融金属2のカラムがより高くなり得る。また、より小さい細孔は、より速く熱くなるより小さいメタン気泡を作る。気泡がより迅速に熱くなる場合、より短い溶融金属カラムを使用することができ、これにより、よりコンパクトな設計が可能になる。しかしながら、より小さい細孔は、セラミック上部フリット3を横切るメタンの圧力降下がより大きいことを意味し、ガス流を減少させるので、最小細孔サイズには実用上の限界及びトレードオフがある。
【0020】
例示的な実施形態では、10μmの細孔サイズ(CoorのP-10-Cとして)は、高さ70インチの溶融金属カラム2を支持することができ、これは、本開示によるカラムが実際にあるよりもおそらくはるかに高い。
【0021】
図1の実施形態によれば、下方への熱損失を低減するために、セラミック上部フリット3は、高温の中空セラミック微小球の断熱層4上に着座する。この中空性は、低い質量密度、低い熱伝導率、閉じた表面、及び低い熱容量をもたらす。この球形状は、等方性の性質及び低い表面積対体積比を確実にする。例示的なセラミック微小球材料は、アルミノケイ酸塩又は非晶質リン酸アルミニウム又はホウケイ酸ガラスであり得る。マイクロ気泡は、可能な限り低い熱伝導率を有するべきである。例示的な実施形態において、セラミック微小球は、K1(65ミクロン)及びS15(55ミクロン)であり、共に3Mによって生産され、静止空気の約2倍の熱伝導率しか有さない。各3Mシリーズ内で、熱伝導率は、マイクロバブルサイズの減少と共に増加するので、より大きなサイズのマイクロバブルが好ましい。
【0022】
最後に、中空セラミック微小球のこの層4は、第2の多孔質透過性プレート5、特に、それを通して上向きにポンプ輸送される生の天然ガス内の微粒子を濾過して除去する多孔質透過性のセラミック下部フリット5の上部に着座する。セラミック下部フリット5の細孔は、粗い微粒子フィルタとしてのみ使用されるので、セラミック上部フリット3の細孔よりもはるかに大きくてもよい。
【0023】
溶融金属カラムは、好ましくは1370℃の融点を有する鋼などの高温固体金属で作られた容器6によって横方向に収容される。ジュワービンは、熱損失を回避するために鋼製容器の周りに配置される。ジュワービンの壁7は、高度に絶縁性の材料、好ましくはForrest Machining Inc.のOrbital Ceramics製のFRCIで作られており、これは宇宙船が地球の大気に再び入るときに宇宙船を保護するために使用される熱タイルに類似している。
【0024】
ジュワービンの上部からの熱損失は、高温液体の溶融金属カラムの高さをジュワービンの全高の3分の1未満に制限することによって大幅に低減される。図1の例示的な実施形態によれば、ヘッドスペース8が溶融金属カラム2の上方に示されている。
【0025】
炭素スラグ層9は、炭素密度が液体金属密度よりもはるかに低いので、溶融金属カラム2の上に形成される。真空ライン10は、溶融金属カラム2の上部から炭素スラグを時々吸引するために存在する。
【0026】
図1の実施形態によれば、熱分解装置1は以下のように動作する。天然ガス流11は、底部から熱分解装置1に入り、最初にセラミック下部フリット5を通過し、ここで濾過によって天然ガス流から微粒子が除去される。続いて、天然ガス流は、セラミック微小球の断熱層4及び多孔質透過性のセラミック上部フリット3を通過し、そこで、直径が10分の1mm以下の小さなマイクロメートルサイズの気泡に分割される。マイクロメートルサイズの気泡は、溶融金属カラム2を通過し、周囲の流体温度までほぼ瞬時に加熱される。いかなるガスの熱伝導率も低いが、これらのマイクロメートルサイズの気泡は、気泡の中心までずっと、熱のほぼ瞬間的な伝達及び即時の温度平衡を可能にする。結果として、熱分解反応速度はそれに応じて増加する。熱分解反応の生成物として形成された固体炭素及びガス状水素は、液体金属カラムの上部に放出され、小さな炭素煤粒子は、密度差により液体金属表面の上部に浮遊する層9を形成する。
【0027】
吸熱反応であるメタン熱分解反応は、正確な温度を維持するために溶融金属カラムに熱を供給する必要がある。生成したHの一部は、次の反応(ΔH=-486kJ/mol)
2H+O→2H
に従って燃焼されて溶融金属カラムに熱を供給することができる。高い発熱反応であるので、生成されたHの15%の燃焼は、脱炭反応を継続するのに十分な熱を提供することができる。
【0028】
水素ガス流12は、熱分解装置1の上部から流出する。このようにして生成された水素は、内燃機関又は燃料電池に供給して電気を発生させるために使用することができる。
【0029】
炭素煤は、溶融金属カラム2の上部から除去され、タイヤ又は他の産業に販売され得る。
【0030】
いくつかの実施形態では、溶融金属を加熱するための電気を生じるために、あるいは、十分に高度な太陽集光器を用いて溶融金属を直接加熱するか、若しくは加熱するのを補助するために、太陽エネルギーが使用されてもよい。
【0031】
引き続き図1を参照して、本開示による熱分解装置の更なる実施形態を図2に示す。同じ参照番号は、図1にすでに例示されており、上で説明したものと同じか又は対応する部品、要素、又は構成要素を表し、ここでは再度説明されない。この実施形態では、溶融金属カラム2に熱を提供するために、溶融金属カラム2の周りに火炎ノズル13が配置され得る。
【0032】
引き続き図1及び図2を参照すると、熱分解装置のさらなる実施形態が図3に示されている。同じ参照番号は、図1及び図2にすでに例示されており、上で説明したものと同じか又は対応する部品、要素、又は構成要素を表し、ここでは再度説明されない。特に、この実施形態によれば、溶融金属の誘導加熱のためのコイル14が使用され得る。
【0033】
さらに別の実施形態では、特に図4を参照すると、小さな気泡を形成するために小さな細孔サイズを維持しながら、セラミック上部フリット3を通してメタンをポンプ輸送するときに圧力降下を過度に増加させないために、セラミック上部フリット3は、より大きな細孔サイズのフリット16のより厚い区分の上にある最も微細な細孔サイズのフリット15の薄いベニヤに分割される。一実施形態によれば、最も微細な細孔サイズのフリット15のベニヤは、CoorsからのP-1/2-AC(0.5ミクロン細孔)であり得る。したがって、上部フリットに関しては、セラミック上部フリット3が単一の材料から作製される場合に、セラミック上部フリット3がより大きな細孔サイズのフリット16(最大10ミクロン)の上の最も微細な細孔サイズのフリット15のベニヤに分割される場合、細孔サイズは、1/2ミクロンからの範囲に及び得る。
【0034】
さらに他の実施形態では、図示されていないが、溶融金属カラム2と接触する表面積をさらに大きくするために、底部フリットは、カラムの底部で単に平坦で水平なディスクである代わりに、カップ形状で周囲に延在することができる。
【0035】
本発明は、様々な特定の実施形態に関して説明されてきたが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲を逸脱することなく多くの修正、変更、及び省略が可能であることが、当業者には明らかであろう。加えて、本明細書で別段の指定がない限り、いずれのプロセス又は方法ステップの順序又は配列も、代替的な実施形態に従って変更又は再配列され得る。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】