(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-18
(54)【発明の名称】1600~2200nmの波長範囲で放射する蛍光体組成物、および短波長赤外線放射PCLED
(51)【国際特許分類】
H01L 33/50 20100101AFI20240910BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20240910BHJP
H01S 5/0225 20210101ALI20240910BHJP
C09K 11/80 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
H01L33/50
G02B5/20
H01S5/0225
C09K11/80
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024509322
(86)(22)【出願日】2022-06-21
(85)【翻訳文提出日】2024-03-07
(86)【国際出願番号】 US2022034342
(87)【国際公開番号】W WO2023022791
(87)【国際公開日】2023-02-23
(32)【優先日】2021-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500507009
【氏名又は名称】ルミレッズ リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100229448
【氏名又は名称】中槇 利明
(72)【発明者】
【氏名】シュミット,ピーター ヨーゼフ
(72)【発明者】
【氏名】ディーデリヒ,トーマス
【テーマコード(参考)】
2H148
4H001
5F142
5F173
【Fターム(参考)】
2H148AA07
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5F142AA22
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5F173MF40
(57)【要約】
波長変換構造が提供される。該波長変換構造は、1600~2200nmの範囲に放射波長を有するSWIR蛍光体を有し、該SWIR蛍光体は、構造的に不規則なガーネット材料、増感剤イオン、および少なくとも1つの希土類エミッタイオンを有する。また、1600~2200nmの範囲の放射波長を有する発光材料が提供される。該発光材料は、(Gd3-u-v-x-y-zLuxTmyHozScvREu)[Sc2-a-bLuaCrbGadAle]{Ga3-cAlc}O12を含み、ここで、RE=La、Y、Yb、Nd、Er、Ceであり、0≦u≦2、0<v≦1、0<x≦1、0<y≦0.5、0≦z≦0.05、0<a≦1、0<b≦0.3、0≦c≦3、0<d≦1.8、0≦e≦1.8である。発光材料を含むIR放射装置では、1600~2200nmの波長範囲の広帯域放射が提供され、少なくとも500nmのスペクトル幅にわたって連続放射スペクトルが得られる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1600~2200nmの範囲に放射波長を有するSWIR蛍光体を含む波長変換構造であって、
前記SWIR蛍光体は、構造的に不規則なガーネット材料、増感剤イオン、および少なくとも1つの希土類エミッタイオンを有する、波長変換構造。
【請求項2】
前記構造的に不規則なガーネット材料は、8配位Gd原子、6配位Ga原子、および4配位Ga原子を有する、立方晶ガーネットホスト格子を有する、請求項1に記載の波長変換構造。
【請求項3】
前記構造的に不規則なガーネット材料は、1原子%を超える濃度で、2以上の格子サイトを占めることができる、Sc、Lu、GaおよびAlの群から選択された1つ以上の原子を有する、請求項1に記載の波長変換構造。
【請求項4】
前記希土類エミッタイオンは、Tm、Ho、La、Y、Yb、Nd、Er、およびCeの少なくとも1つを有する、請求項1に記載の波長変換構造。
【請求項5】
前記希土類エミッタイオンは、TmおよびHoで構成される、請求項1に記載の波長変換構造。
【請求項6】
前記希土類エミッタイオンは、Tmで構成される、請求項1に記載の波長変換構造。
【請求項7】
前記SWIR蛍光体は、(Gd
3-u-v-x-y-zLu
xTm
yHo
zSc
vRE
u)[Sc
2-a-bLu
aCr
bGa
dAl
e]{Ga
3-cAl
c}O
12を有し、ここで、RE=La、Y、Yb、Nd、Er、Ceであり、0≦u≦2、0<v≦1、0<x≦1、0<y≦0.5、0≦z≦0.05、0<a≦1、0<b≦0.3、0≦c≦3、0<d≦1.8、0≦e≦1.8である、請求項1に記載の波長変換構造。
【請求項8】
前記SWIR蛍光体は、Gd
2.367Ho
0.01Tm
0.152Sc
1.6Lu
0.27Ga
1.8Al
1.78Cr0.04O
12、Gd
2.59Tm
0.24Ho
0.02Sc
0.75Lu
0.3Ga
2Al
2Cr
0.1O
12、Gd
2Ho
0.013Tm
0.2Sc
0.67Lu
0.24Ga
1.6Al
3.2Cr
0.08O
12、およびGd
2.67Ho
0.01Tm
0.17Sc
1.8Lu
0.3Ga
2AlCr
0.05O
12の少なくとも1つを有する、請求項1に記載の波長変換構造。
【請求項9】
さらに、1100~1700nmの前記波長範囲に放射を有する追加のIR蛍光体を有する、請求項1に記載の波長変換構造。
【請求項10】
前記追加のIR蛍光体は、1000~1700nmの範囲で放射する、Ni
2+またはNi
2+とCr
3+がドープされたスピネル、ペロブスカイト、およびガーネット型のIR蛍光体の1つ以上を有する、請求項10に記載の波長変換構造。
【請求項11】
1600~2200nmの範囲の放射波長を有する光を放射する発光材料であって、
少なくとも1つの増感剤イオンおよび少なくとも1つの希土類エミッタイオンがドープされた、構造的に不規則なガーネット材料を有する、発光材料。
【請求項12】
前記構造的に不規則なガーネット材料は、8配位Gd原子、6配位Ga原子、および4配位Ga原子を有する立方晶ガーネットホスト格子を有する、請求項11に記載の発光材料。
【請求項13】
前記構造的に不規則なガーネット材料は、1原子%を超える濃度で、2以上の格子サイトを占めることができる、Sc、Lu、GaおよびAlの群から選択された、1つ以上の原子を有する、請求項11に記載の発光材料。
【請求項14】
前記希土類エミッタイオンは、Tm、Ho、La、Y、Yb、Nd、Er、およびCeの少なくとも1つを有する、請求項11に記載の発光材料。
【請求項15】
前記希土類エミッタイオンは、TmおよびHoで構成される、請求項11に記載の発光材料。
【請求項16】
(Gd
3-u-v-x-y-zLu
xTm
yHo
zSc
vRE
u)[Sc
2-a-bLu
aCr
bGa
dAl
e]{Ga
3-cAl
c}O
12を有し、ここで
RE=La、Y、Yb、Nd、Er、Ceであり、0≦u≦2、0<v≦1、0<x≦1、0<y≦0.5、0≦z≦0.05、0<a≦1、0<b≦0.3、0≦c≦3、0<d≦1.8、0≦e≦1.8である、請求項11に記載の発光材料。
【請求項17】
前記希土類エミッタイオンは、Tmで構成される、請求項11に記載の発光材料。
【請求項18】
前記SWIR蛍光体は、Gd
2.367Ho
0.01Tm
0.152Sc
1.6Lu
0.27Ga
1.8Al
1.78Cr
0.04O
12、Gd
2.59Tm
0.24Ho
0.02Sc
0.75Lu
0.3Ga
2Al
2Cr
0.1O
12、Gd
2Ho
0.013Tm
0.2Sc
0.67Lu
0.24Ga
1.6Al
3.2Cr
0.08O
12、およびGd
2.67Ho
0.01Tm
0.17Tm
0.8Lu
0.3Ga
2AlCr
0.05O
12の少なくとも1つを有する、請求項11に記載の発光材料。
【請求項19】
IR放射装置であって、
波長変換構造であって、
SWIR蛍光体を有する波長変換構造であって、前記SWIR蛍光体は、1600~2200nmの波長範囲にわたって放射を有し、少なくとも500nmのスペクトル幅にわたって、連続放射スペクトルを有する、波長変換構造と、
前記波長変換構造に放射するように構成された光源と、
を有する、IR放射装置。
【請求項20】
前記SWIR蛍光体は、(Gd
3-u-v-x-y-zLu
xTm
yHo
zSc
vRE
u)[Sc
2-a-bLu
aCr
bGa
dAl
e]{Ga
3-cAl
c}O
12を有し、ここで、RE=La、Y、Yb、Nd、Er、Ceであり、0≦u≦2、0<v≦1、0<x≦1、0<y≦0.5、0≦z≦0.05、0<a≦1、0<b≦0.3、0≦c≦3、0<d≦1.8、0≦e≦1.8である、請求項19に記載のIR放射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、(i)2022年6月20日に出願された「1600~2200nmの波長範囲で放射する蛍光体組成物、および短波長赤外線放射PCLED」という名称の米国特許出願第17/844,171号、および(ii)2021年8月20日に出願された「1600~2200nmの波長範囲で放射する蛍光体組成物、および短波長赤外線放射PCLED」という名称の米国特許出願第63/235,523号の優先権を主張するものであり、両出願は、全体が参照により本願に組み込まれている。
【0002】
本願は、概して、蛍光体変換発光装置に使用される蛍光体組成物に関し、特に、1600~2200nmの波長範囲の広帯域赤外放射を示す蛍光体組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
半導体発光ダイオードおよびレーザダイオード(本願ではまとめて「LED」と称する)は、現在利用可能な最も効率的な光源の一つである。LEDの発光スペクトルは、通常、装置の構造およびLEDが構成される半導体材料の組成により定められる波長において、単一の狭小ピークを示す。装置構造および材料系の好適な選択により、LEDは、紫外線、可視光、または赤外線の波長で動作するように設計することができる。
【0004】
LEDは、1つ以上の波長変換材料(通常「蛍光体」と称される)と組み合わされ、これはLEDにより放射された光を吸収し、それに応じてより長波長の光を放射する。そのような蛍光体変換LED(「pcLED」)では、LEDにより放射され、蛍光体により吸収される光の割合は、LEDにより放射される光の光路中の蛍光体材料の量、例えば、LEDの上またはその周囲に配置される蛍光体層における蛍光体材料の濃度、および層の厚さに依存する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
蛍光体変換型LEDは、LEDにより放射される光の全てが1つ以上の蛍光体によって吸収されるように設計されてもよく、その場合、pcLEDからの放射は、完全に蛍光体からとなる。そのような場合、蛍光体は、例えば、LEDにより直接は効率的に生成されないスペクトル領域の光を放射するように選択され得る。
【0006】
あるいは、pcLEDは、LEDにより放射された光の一部のみが蛍光体によって吸収されるように設計されてもよく、その場合、pcLEDからの放射は、LEDにより放射された光と蛍光体により放射された光の混合となる。LED、蛍光体、および蛍光体組成物の好適な選択により、そのようなpcLEDは、例えば、所望の色温度および所望の演色特性を有する光を放射するように設計され得る。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施態様では、波長変換構造が提供され、該波長変換構造は、1600~2200nmの範囲に放射波長を有するSWIR蛍光体を有し、前記SWIR蛍光体は、構造的に不規則なガーネット材料、増感剤イオン、および少なくとも1つの希土類エミッタイオンを有する。前記構造的に不規則なガーネット材料は、構造的に規則的なガドリニウムガリウムガーネットから誘導された組成物(Gd3)[Ga2]{Ga3}O12を有し、8配位Gd原子、6配位Ga原子、および4配位Ga原子を有してもよい。構造的に不規則なガーネット材料は、2以上の格子サイトを占めることができる原子を有してもよい。ガドリニウムは、Tm、Ho、La、Y、Yb、Nd、ErおよびCeを含む群から選択された希土類元素の少なくとも1つにより、一部が置換されてもよい。希土類エミッタ元素は、TmとHoの組み合わせであってもよい。希土類エミッタ元素は、Tmであってもよい。SWIR蛍光体は、(Gd3-u-v-x-y-zLuxTmyHozScvREu)[Sc2-a-b-d-eLuaCrbGadAle]{Ga3-cAlc}O12を含み、ここで、RE=La、Y、Yb、Nd、Er、Ceであり、0≦u≦2、0<v≦1、0<x≦1、0<y≦0.5、0≦z≦0.05、0<a≦1、0<b≦0.3、0≦c≦3、0<d≦1.8、0≦e≦1.8である。SWIR蛍光体の未ドープホスト格子は、構造的に不規則な立方晶のガーネット構造型で結晶化された(Gd,Lu,Sc)3[Sc,Lu,Ga,Al])2{Ga,Al}3O12を有してもよい。SWIR蛍光体は、Gd2.367Ho0.01Tm0.152Sc1.6Lu0.27Ga1.8Al1.78Cr0.04O12、Gd2.59Tm0.24Ho0.02Sc0.75Lu0.3Ga2Al2Cr0.1O12、Gd2Ho0.013Tm0.2Sc0.67Lu0.24Ga1.6Al3.2Cr0.08O12およびGd2.67Ho0.01Tm0.17Sc1.8Lu0.3Ga2AlCr0.05O12の少なくとも1つを有してもよい。波長変換構造は、さらに、追加のIR蛍光体を有し、これは、1100~1700nmの波長範囲で光を放射してもよい。追加のIR蛍光体は、1000~1700nmの範囲で放射する、Ni2+、またはNi2+とCr3+がドープされたスピネル、ペロブスカイト、およびガーネット型IR蛍光体の1つ以上を含んでもよい。例えば、組成が(Gd)3[Sc,Ga,Ni,Zr,Cr]2{Ga,Al}3O12のNi2+およびCr3+がドープされたガーネット蛍光体、例えばGd3Ga3.7ScAl0.18Ni0.02Zr0.021Cr0.1O12およびGd3Ga4.7Al0.18Ni0.02Zr0.021Cr0.1O12が挙げられる。
【0008】
別の態様では、1600~2200nmの範囲に放射波長を有する光を放射する発光材料が提供される。該発光材料は、少なくとも1つの増感剤イオンおよび少なくとも1つの希土類エミッタイオンがドープされた、構造的に不規則なガーネット材料を含む。構造的に不規則なガーネット材料は、構造的に規則的なガドリニウムガリウムガーネット(Gd3)[Ga2]{Ga3}O12から誘導された組成物を有し、3つの8配位Gd原子、2つの6配位Ga原子、および3つの4配位Ga原子を有する。構造的に不規則なガーネット材料は、2以上の格子サイトを占めることができる原子を有してもよい。ガドリニウムは、Tm、Ho、La、Y、Yb、Nd、ErおよびCeの少なくとも1つを含む群から選択された希土類元素の少なくとも1つにより、一部が置換されてもよい。希土類エミッタイオンは、TmとHoの組み合わせであってもよい。希土類エミッタイオンは、Tmであってもよい。SWIR蛍光体は、(Gd3-u-v-x-y-zLuxTmyHozScvREu)[Sc2-a-b-d-eLuaCrbGadAle]{Ga3-cAlc}O12を有し、ここでRE=La、Y、Yb、Nd、Er、Ceであり、0≦u≦2、0<v≦1、0<x≦1、0<y≦0.5、0≦z≦0.05、0<a≦1、0<b≦0.3、0≦c≦3、0<d≦1.8、0≦e≦1.8である。SWIR蛍光体は、構造的に不規則な立方晶のガーネット構造型で結晶化する(Gd,Lu)3(Sc,Lu)2(Ga,Al)3を有してもよい。SWIR蛍光体は、Gd2.367Ho0.01Tm0.152Sc1.6Lu0.27Ga1.8Al1.78Cr0.04O12、Gd2.59Tm0.24Ho0.02Sc0.75Lu0.3Ga2Al2Cr0.1O12、Gd2Ho0.013Tm0.2Sc0.67Lu0.24Ga1.6Al3.2Cr0.08O12およびGd2.67Ho0.01Tm0.17Sc1.8Lu0.3Ga2AlCr0.05O12の少なくとも1つを有してもよい。
【0009】
さらに別の態様では、IR放射装置が提供され、該IR放射装置は、波長変換構造を有し、該波長変換構造は、1600~2200nmの波長範囲にわたって放射し、少なくとも500nmのスペクトル幅にわたって連続放射スペクトルを有するSWIR蛍光体と、前記波長変換構造に一次光を放射するように構成された光源と、を有する。SWIR蛍光体は、(Gd3-u-v-x-y-zLuxTmyHozScvREu)[Sc2-a-b-d-eLuaCrbGadAle]{Ga3-cAlc}O12を有し、ここで、RE=La、Y、Yb、Nd、Er、Ceであり、0≦u≦2、0<v≦1、0<x≦1、0<y≦0.5、0≦z≦0.05、0<a≦1、0<b≦0.3、0≦c≦3、0<d≦1.8、0≦e≦1.8である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】赤外線発光装置の一部としての波長変換構造の実施形態を示した図である。
【
図2】赤外線発光装置の一部としての波長変換構造の別の実施形態を示した図である。
【
図4】LEDと直接接触する波長変換構造を有するIR放射装置の断面図である。
【
図5】LEDに近接した波長変換構造を有するIR放射装置の断面図である。
【
図6】LEDから離間された波長変換構造を有するIR放射装置の断面図である。
【
図7】IR放射装置を含むIR分光計を示した図である。
【
図8A】SWIR pcLEDのアレイの断面を示した図である。
【
図8B】SWIR pcLEDのアレイの概略的な上面図である。
【
図9A】pcLEDのアレイが実装される電子回路基板の概略的な上面図である。
【
図9B】同様に、
図9Aの電子回路基板に実装されたSWIR pcLEDのアレイを示した図である。
【
図10A】導波管および投影レンズに対して配置されたSWIR pcLEDのアレイの概略断面を示した図である。
【
図11】適応照明システムを有する例示的なカメラフラッシュシステムを概略的に示した図である。
【
図12】適応照明システムを有する例示的なディスプレイ(例えば、AR/VR/MR)システムを概略的に示した図である。
【
図13】、Gd
2.367Ho
0.01Tm
0.152Sc
1.6Lu
0.27Ga
1.8Al
1.78Cr
0.04O
12SWIR蛍光体のX線粉末パターン(銅放射線)を示した図である。
【
図14】Gd
2.367Ho
0.01Tm
0.152Sc
1.6Lu
0.27Ga
1.8Al
1.78Cr
0.04O
12SWIR蛍光体の走査型電子顕微鏡(SEM)像を示した図である。
【
図15】可視スペクトル範囲におけるGd
2.367Ho
0.01Tm
0.152Sc
1.6Lu
0.27Ga
1.8Al
1.78Cr
0.04O
12SWIR蛍光体のパワー反射スペクトルを示した図である。
【
図16】Gd
2.367Ho
0.01Tm
0.152Sc
1.6Lu
0.27Ga
1.8Al
1.78Cr
0.04O
12SWIRR蛍光体を含むSWIR pcLEDの正規化された短波長赤外放射スペクトルを示した図である。
【
図17】
図17は、Gd
2.59Tm
0.24Ho
0.02Sc
0.75Lu
0.3Ga
2Al
2Cr
0.1O
12SWIR蛍光体のX線粉末パターン(銅放射線)を示した図である。
【
図18】Gd
2.59Tm
0.24Ho
0.02Sc
0.75Lu
0.3Ga
2Al
2Cr
0.1O
12SWIR蛍光体を含むSWIR pcLEDの正規化された短波赤外放射スペクトルを示した図である。
【
図19】、実施例5の焼結SWIR蛍光体セラミックの走査型電子顕微鏡写真を示した図である。
【
図20】実施例6の被覆セラミック板の光透過性を示した図である。
【
図21】実施例7の蛍光体変換LEDのSWIR発光スペクトルを示した図である。
【
図22A】IR分光測定試験機器を概略的に示した図である。
【
図22B】試験サンプルを含む、
図22AのIR分光測定試験機器を概略的に示した図である。
【
図23】ポリスチレン試験サンプルのFT-IRスペクトルである。
【
図24】実施例8の蛍光体のSWIR波長範囲におけるスペクトルパワー分布である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の詳細な説明は、図面を参照して読まれる必要がある。図面において、同一の参照符号は、異なる図面全体にわたって同様の素子を表す。図面は、必ずしも縮尺通りではなく、選択された実施形態を示しており、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。詳細な説明は、例示として示されており、本発明の原理を限定するものではない。
【0012】
本願では、短波長の赤外線放射線範囲(「SWIR」)の赤外放射線を放射できる蛍光体、より具体的には、1600nmから2200nmの範囲のピーク波長を有する赤外放射線を放射できるSWIR蛍光体が開示される。特に、本願に記載のSWIR蛍光体は、1600nm~2200nmの範囲の高い変換効率を維持したまま、発光ギャップを生じさせずに、連続的な放射スペクトルを提供することができる。例えば、本願に開示のSWIR蛍光体は、少なくとも500nmのスペクトル幅にわたって、連続的な放射スペクトルを提供することができ、1600nmから2200nmの発光範囲において、この範囲におけるメジアン値のスペクトルパワーの少なくとも20%である、最小スペクトルパワーを有してもよい。
【0013】
本願に開示のSWIR蛍光体は、青色スペクトル範囲の波長を有する光によって励起されてもよい。広帯域SWIR蛍光体材料は、短い波長の青色光を、より長いSWIR波長の広帯域放射に効率的に変換することができる。用語の経済性のため、赤外放射線は、「赤外光」、「IR光」、または「光」と称され得る。
【0014】
また、本願では、本願に開示のSWIR蛍光体を有する光源が開示される。そのような光源は、LEDのような一次光源と、波長変換構造と、を有し、後者は、SWIR蛍光体を有し、本願に開示のように、1600~2200nmの範囲の波長を放射し、例えば、SWIR pcLEDが形成される。そのような光源における広帯域SWIR蛍光体の使用は、光源により放射される波長を2200nmまで延伸させる一方、広い波長範囲にわたって連続的なスペクトルパワー分布が提供され、高い変換効率を維持される。
【0015】
光源内の波長変換構造は、さらに、追加の蛍光体を含んでもよい。追加の蛍光体は、例えば、他のSWIR蛍光体を有し、赤外波長範囲の他の部分における波長、例えば、1000~1700nmのスペクトル範囲を放射してもよい。また、追加の蛍光体により、SWIR蛍光体のより効率的な励起が可能となってもよい。
【0016】
また本願では、そのような広帯域SWIR蛍光体を含む波長変換構造装置が開示される。広帯域SWIR蛍光体を有する波長変換構造装置は、さら、追加の蛍光体を有してもよい。
【0017】
また本願では、IR吸収分光用途に使用される分光装置における広帯域SWIR蛍光体を有する発光装置の使用が開示され、タングステンフィラメントランプのような従来の白熱光源の代わりに、本願に開示のSWIR pcLEDのような、SWIR蛍光体を有する発光装置が使用される。現在、2300Kの範囲のCCTを有するタングステンフィラメント光源は、SWIR分光計システムに必要なスペクトル範囲(例えば、1000nmから3000μm)をカバーするために使用されている。しかしながら、タングステンフィラメント光源は、機械的なロバスト性、分光計の感度を高める迅速変調能力、および例えば、小型の手のひらサイズの装置およびウェアラブル装置またはスマートフォンへのIR吸収分光計の一体化に必要な、コンパクト性が劣る。本願に記載のSWIR蛍光体では、分光計用途に好適な広げられた放射帯域と高い変換効率とが組み合わされ、これは、必要な電力がより少なくなることを意味し、ウェアラブル装置のような小型化された装置に使用することができる。
【0018】
またそのようなSWIR pcLEDの特定の用途は、医療分野であり、すなわち、センサおよび組織の内視鏡ハイパースペクトルまたはマルチスペクトル撮像の分野であり、ここでは、効率的で高強度の光源が特に必要となる(例えば、林らのスペクトル腫瘍診断のための可視から短波長-赤外波長における広帯域LED光源、Appl.Phys.Lett.110,233701(2017)参照)。他の用途には、例えば、特有のIR吸収パターンにより容易に同定できる、マクロ分子組成が異なるポリマーの検出および検知、ならびにハイパースペクトル撮像用途が含まれる。
【0019】
開示された光源は、効率的であり、1600~2200nmの波長範囲、ならびに1000nm~2200nmの範囲を網羅する分光計システム、センサ、およびハイパースペクトルまたはマルチスペクトル撮像システムのさらなる小型化、コスト削減が可能となる。
【0020】
(SWIR蛍光体組成物)
本願に記載のSWIR蛍光体化合物は、(i)構造的に不規則なガーネットホスト格子材料;(ii)少なくとも1つの増感剤イオン;および(iii)少なくとも1つの希土類エミッタイオンを含む。
【0021】
構造的に不規則なガーネットホスト格子材料は、複数の化学的に異なるドーピングサイトを有するガーネット格子である。ガーネット格子の不規則構造は、多重ホストを提供し、これは、希土類エミッタイオンドーパントの放射バンドを広げ、広帯域放射スペクトルをもたらす一方、十分な結晶構造を維持し、高い変換効率が提供される。本願で使用される「構造的に不規則」と言う用語は、例えばX線回折実験で特徴付けることができる、規則的な平均構造または長距離の並進周期性を有する材料を表す。しかしながら、異なる結晶学的格子サイトは、不規則ではあるものの、より統計的な方法で、化学的に異なる原子種によって占められ、増感剤およびエミッタイオン用の、化学的にわずかに異なる置換型格子サイトの大きな変化をもたらし、従って、不均一に広がったスペクトル的特徴が得られる。これは、SWIR蛍光体の用途に特に望ましい。ホスト格子は、ドーパントの光学的性質に実質的な影響を及ぼし、その化学的環境の変化により、ドーパントサイトにおける結晶場の変化が生じ、これにより、不均一な、従って、より広い放射が得られる。従って、本願に記載のような構造的に不規則なガーネットホスト格子の使用は、より連続的な放射スペクトルの提供を支援し得る。同時に、顕著に不規則なホスト格子の使用は、例えば光学的に活性な格子欠陥の高濃度化により、変換効率の低下につながるおそれがある。特に、ここではCr3+増感コンバータの所望の広がり効果は、ガーネット材料へのLu、ScおよびAlのような添加元素の比較的多くの量の添加によって、実現される。
【0022】
本願で使用される構造的に不規則なガーネットホスト格子組成物は、3つの8配位Gd原子、2つの6配位Ga原子、および3つの4配位Ga原子を有するガドリニウムガーネットGd3Ga2Ga3O12から得ることができる。一例のホスト格子組成物は、例えば、LuおよびSc(8および6配位を有し得る)ならびにAl(6および4配位を有し得る)のような、2以上の格子サイトを占有できる原子を含んでもよい。この不規則性は、ガーネット構造の各種格子点にわたる一種類の元素の統計的分布により、引き起こされる。例えば、ルテチウムまたはスカンジウムは、8および6配位の格子サイトを占める一方、ガリウムおよびアルミニウムは、トレース量または欠陥レベル(>1原子%)を超える濃度で、6および4配位の格子サイトを占めることができる。例えばクロム(III)およびツリウムにより、(Gd,Lu,Sc,Tm)3[Sc,Lu,Ga,Al,Cr]2{Ga,Al}3O12に従って、ホスト格子がさらにドープされると、これらのドーパントは、それぞれ、複数の化学的に異なる6または8配位のサイトを占有し、これはホスト格子元素を占有する複数サイトの統計的分布によって生じる。結果として、この不規則性により、例えば、それぞれ、クロム(III)およびツリウムの吸収および放射遷移の、所望の広がりが得られる。サイトの混合占有により、酸素配位子電荷および距離および/または配位形状の点で、複数の異なる放射サイトがもたらされる。そのような構造的に不規則な構造は、構成される放射バンドの広がりをもたらし、さらには所望の範囲にわたりスペクトルパワーの分布がより均一になる。
【0023】
構造的に不規則なガーネットホスト格子の例は、立方晶ガーネット構造型で結晶化する(Gd,Lu,Sc)3(Sc,Lu,Ga)2(Ga,Al)3O12である。この例では、ガーネット相を形成する二元酸化物の組成は、ルテチウムが8配位および6配位のカチオンサイトに取り込まれるように選択される。あるいは、構造的に不規則なホスト格子の別の例は、(Gd,Lu,Sc)3Sc2(Ga,Al)3O12であり、これもまた、立方晶系のガーネット構造型に結晶化し、8配位および6配位のサイトの両方にSc原子を有する。
【0024】
本願に記載のSWIR蛍光体は、少なくとも1つの増感剤イオンでドープされる。増感剤イオンは、例えば、LEDからの青色または赤色のポンプ光を効率的に吸収し、吸収されたエネルギーを希土類エミッタイオンに伝達し、希土類エミッタイオンは、最終的に、所望のスペクトル範囲の光を放射する。青色または赤色スペクトル範囲において、一次LED光源からの励起光を効率的に吸収するため、ホスト材料には、例えば、6配位のサイト上の増感剤イオンとして、Cr(III)がドープされてもよい。
【0025】
本願に記載のSWIR蛍光体は、少なくとも1つの希土類エミッタイオン、または希土類エミッタイオンの組み合わせでドープされ、所望のスペクトル範囲での放射を提供する。例えば、1600~2200nmの波長範囲で放射を提供するSWIR蛍光体は、Tm(III)およびHo(III)またはTm(III)のみでドープされた8配位サイトを有してもよい。また、ホスト格子にEr(III)をドープして、~1500nmにまで放射範囲を広げることができる。励起特性および放射特性は、さらに、Gdの追加部分をLa、Y、Yb、Nd、またはCeで置換することにより、調整することができる。
【0026】
本願に記載のSWIR蛍光体は、以下の組成を有するガーネット材料の種類からの蛍光体を含む組成物を有してもよい:(Gd3-u-v-x-y-zLuxTmyHozScvREu)[Sc2-a-b-d-eLuaCrbGadAle]{Ga3-cAlc}O12、ここで、RE=La、Y、Yb、Nd、Er、Ceであり、0≦u≦2、0<v≦1、0<x≦1、0<y≦0.5、0≦z≦0.05、0<a≦1、0<b≦0.3、0≦c≦3、0<d≦1.8、0≦e≦1.8である。この種のガーネット材料の組成を有するSWIR蛍光体の例は、以下により詳細に記載されており、これには、Gd2.367Ho0.01Tm0.152Sc1.6Lu0.27Ga1.8Al1.78Cr0.04O12、Gd2.59Tm0.24Ho0.02Sc0.75Lu0.3Ga2Al2Cr0.1O12、Gd2Ho0.013Tm0.2Sc0.67Lu0.24Ga1.6Al3.2Cr0.08O12、およびGd2.67Ho0.01Tm0.17Sc1.8Lu0.3Ga2AlCr0.05O12が含まれる。
【0027】
SWIR蛍光体組成物の製造中、例えば粉末系光体プロセス中に、SWIR蛍光体の結晶品質を高めるため、フッ化物のようなフラックス剤を付与することができ、その結果、そのようなフラックス剤からの元素がSWIR組成物に組み込まれてもよい。SWIR蛍光体組成物に有用なフラックス系の例は、フッ化ガドリニウムである。フッ化物フラックスの適用の結果、所望の特性を劣化させることなく、最終的なSWIR蛍光体組成物に一部のフッ化物イオンを取り込むことができる。別のフラックス系は、例えば、フッ化バリウムBaF2、またはAlF3水和物であってもよい。適用され得る他の一例のフラックス系には、例えば、酸化ケイ素が含まれ、これは、以下により詳細に記載される、セラミック蛍光体波長変換構造の製造に有益であり、これは、多結晶マトリクスの少なくとも一部として本願に記載のSWIR蛍光体を含む、多結晶焼結ルミネセンス変換素子として特徴付けられる。シリカフラックス剤は、微細シリカ粉末として添加され、または例えば、処理中に加水分解されるアルコキシ状のテトラエチルオルトケイ酸塩のような、前駆体の形態で添加されてもよい。多結晶マトリックスの他の部分は、例えば、酸化アルミニウムAl2O3のような酸化物、または(Al,Ga)2O3のような混合酸化物であってもよい。
【0028】
添加量が十分に少なく、得られるSWIR蛍光体の所望の特性が大きく劣化せず、結晶化速度の改善または高密度化のような利点が得られる場合には、SWIR蛍光体組成物に他の化合物が添加されてもよい。そのような他の化合物の例は、例えば、MgO、CaOまたはSrOのようなアルカリ土類化合物、またはそれぞれの炭酸塩、酸化ジルコニウム、または酸化ハフニウム、酸化ニオブまたは酸化タンタル、酸化ゲルマニウム、二酸化ケイ素、または上記リストに明示的に記載されていない他の希土類酸化物であってもよい。
【0029】
(1600~2200nmの波長範囲にわたって放射する波長変換構造を有する赤外発光装置)
図1には、1600~2200nmの波長範囲にわたってIR光を放射するIR発光装置の一実施形態を示す。IR発光装置101は、波長変換構造108を有する。波長変換構造108は、開示された1600~2200nmの波長範囲で放射するSWIR蛍光体の少なくとも1つを含む。波長変換構造108に加えて、照明装置101は、一次光源100を有する。一次光源100は、LEDまたは他の好適な光源であってもよく、これには、例えば、共振キャビティ発光ダイオード(RCLED)および垂直キャビティレーザダイオード(VCSEL)が含まれる。例えば、一次光源100は、青色発光LEDであってもよく、または赤色発光LEDを含んでもよい。一次光源100は、第1の光104を放射する。第1の光104の一部は、波長変換構造108に入射する。波長変換構造108は、第1の光104を吸収し、第2の光112を放射する。必ずしも必要ではないが、波長変換構造108は、装置からの最終放射スペクトルの一部に、第1の光がほとんどまたは全く含まれないように構造化されてもよい。
【0030】
波長変換構造108は、例えば、本願に記載の任意のSWIR蛍光体を有し、そのようなSWIR蛍光体は、構造的に不規則なガーネットホスト格子、少なくとも1つの増感剤イオン、および少なくとも1つの希土類放出イオンを有してもよい。例えば、波長変換構造108は、SWIR蛍光体を有し、これは、構造的に不規則なガーネットホスト格子、Cr(III)増感剤イオン、ならびにTm(III)およびHo(III)の希土類エミッタイオン有してもよい。例えば、波長変換構造108は、以下の組成を有する種類のガーネット材料からのSWIR蛍光体を有してもよい:
(Gd3-u-v-x-y-zLuxTmyHozScvREu)[Sc2-a-b-d-eLuaCrbGadAle]{Ga3-cAlc}O12、ここでRE=La、Y、Yb、Nd、Er、Ceであり、0≦u≦2、0<v≦1、0<x≦1、0<y≦0.5、0≦z≦0.05、0<a≦1、0<b≦0.3、0≦c≦3、0<d≦1.8、0≦e≦1.8である。
【0031】
波長変換構造108は、例えば青色スペクトル範囲で励起され得るSWIR蛍光体を含んでもよい。例えば、光源100は、AlInGaNおよび/またはInGaNタイプのエミッタであってもよく、440~460nmの波長範囲の第1の光104を放射してもよい。また、光源100は、赤色スペクトル範囲の第1の光104を放射する光源であってもよく、例えば、光源100は、600~650nm波長範囲の波長を放射するAlInGaPタイプのエミッタであってもよく、または700~1000nm範囲の波長を放射するInGaAsタイプのエミッタであってもよい。ただし、これらの赤色光の発光光源は、青色の波長範囲の光源よりもSWIR蛍光体の励起効率が劣る。
【0032】
波長変換構造108に含まれるSWIR蛍光体の変換効率を改善するため、赤色発光蛍光体のような追加の蛍光体が含まれてもよい。これは、青色発光一次LED光源によって励起され得る。
図2には、IR発光装置201を示す。開示されたSWIR蛍光体材料の1つ以上を含む波長変換構造は、さらに、第2の蛍光体システムと組み合わされてもよい。
図2において、波長変換構造218は、本願に記載の1600~2200nmの範囲で放射するSWIR蛍光体を含むSWIR蛍光体部分208と、IR発光装置201の一部としての第2の蛍光体部分202とを有する。
図2において、光源200は、LEDであっても、任意の他の好適な光源(例えば、共振キャビティ発光ダイオード(RCLED)および垂直キャビティレーザダイオード(VCSEL)を含む)であってもよい。光源200は、第1の光204を放射する。
【0033】
第1の光204は、波長変換構造218に入射され、これは、本願に記載の1つ以上のSWIR蛍光体を含むSWIR蛍光体部分208と、第2の蛍光体システム202とを有する。第1の光204の一部は、波長変換構造218の第2の蛍光体部分202に入射される。第2の蛍光体202は、第1の光204を吸収し、第3の光206を放射する。第3の光206は、波長変換構造218のSWIR蛍光体部分208のSWIR蛍光体の励起範囲内にある波長範囲を有してもよい。第3の光206は、SWIR蛍光体部分208に入射される。SWIR蛍光体部分208は、第3の光206の全てまたは一部を吸収し、第4の光210を放射する。また、第1の光204の一部は、波長変換構造218のSWIR蛍光体部分208に入射されてもよい。SWIR蛍光体部分208は、第1の光204を吸収して第2の光212を放射してもよく、または第1の光204は、SWIR蛍光体部分208を通過してもよい。
【0034】
必須ではないが、SWIR蛍光体208および第2の蛍光体202を含む波長変換構造218は、装置からの最終的な放射スペクトルの一部に、第1の光または第3の光がほとんどまたは全く存在しないように構造化されてもよい。
【0035】
IR発光装置201における使用に有益であり得るそのような第2の蛍光体システムの例には、2018年9月13日に出願された「赤外線発光装置」と言う名称の米国特許出願第16/393,428号に開示されたものが含まれる。この文献は、その全体が参照により本本願に組み込まれる。特に、第2の蛍光体202は、例えば、Eu2+ドープ赤色放射材料であってもよく、例えば、Ba0.2Ca0.06Sr1.64Si4.98Al0.02O0.02N7.98:Eu0.1のようなM2-xSi5-yAlyOyN8-y:Eux(M=Ba、Sr、Ca)組成のBSSNE型蛍光体;例えば、Ca.985SiAlN3:Eu0.015のようなM1-xSiAlN3:Eux(M=Sr、Ca)組成のCASN型またはSCASN型蛍光体;または例えば、(Ba0.5Ca0.5)0.995LiAl3N4:Eu0.005(M=Ba、Sr、Ca)のようなM1-xLiAl3N4:Eux(M=Ba、Sr、Ca);または例えば、Sr0.996Li2Al1.996Si0.004O1.996N2.004:Eu0.004のようなM1-xLi2Al2-ySiyO2-yN2+y:Eux(M=Ba、Sr、Ca)である。これらは、UCr4C4構造タイプの規則的な構造の変種に結晶化されてもよく、BaおよびCaは、特定の格子サイトを占有する。RbNaLi6Si2O8のような酸化物についても、同様の規則化された変種が知られている。In(Ba0.5Ca0.5)1-xLiAl3N4:Euxでは、BaサイトのEuに対して~630nmで狭帯域放射が得られる一方、CaサイトのEuでは、>700nmの波長でNIR放射が得られる。他の例では、第2の蛍光体202は、組成がCa0.985SiAlN:Eu0.015のCASN型蛍光体であってもよい。CASN型の赤色放射蛍光体は、例えば三菱化学社(BR-101シリーズ)から市販されている。
【0036】
本願に記載のSWIR蛍光体は、さらに、例えば、40nm~140nmの範囲の厚さを有するSiO2層およびNb2O5層を交互に使用することにより、誘電体コーティング構造と組み合わせることができる。一次ポンプLED光を反射し、SWIR範囲において蛍光体放射光を透過するダイクロイックコーティングは、IR発光装置の特性を高める上で有益な解決策となり得る。すなわち、そのようなダイクロイックコーティングは、SWIR蛍光体により提供される放射スペクトルを変化させることなく、青色光を逆反射させ、波長変換構造に再吸収されるチャンスを得ることができる。
【0037】
図2では、波長変換構造218は、2つの分離したブロックとして、SWIR蛍光体208および第2の蛍光体システム202を有するように示されているが、他の実施形態では、波長変換構造のSWIR蛍光体208および第2の蛍光体システム202は、組み合わされまたは混合されてもよい。波長変換構造108および218を形成する方法について、以降により詳細に記載されている。
【0038】
(1100~2200nmの波長範囲にわたって放射する波長変換構造を有するIR発光装置)
本願に記載のSWIR蛍光体は、さらに、追加のIR蛍光体と組み合わされ、IR発光装置から放射されるIR放射の波長範囲を広げることができる。例えば、本願に記載のSWIR蛍光体は、本願に記載のSWIR蛍光体の1600~2200nmの波長範囲未満の短い波長でIR光を放射する追加のIR蛍光体と組み合わされ、IR発光装置により放射される光の波長範囲が短波長に拡張されてもよい。
【0039】
再度
図1を参照すると、波長変換構造108は、例えば、本願に記載のSWIR蛍光体および追加のIR蛍光体を有してもよい。一次光源100は、第1の光104を放射する。第1の光104の一部は、波長変換構造108に入射され、この例では、波長変換構造108は、本願に記載の1つ以上のSWIR蛍光体に加えて、1つ以上の追加のIR蛍光体を有する。波長変換構造108は、第1の光104を吸収し、第2の光112を放射する。波長変換構造108は、SWIR蛍光体および追加のIR蛍光体の両方を有するため、第2の光112は、追加のIR蛍光体の波長および本願に記載のSWIR蛍光体の1600~2200nmの波長を含む広い波長範囲にわたって、IR光を放射する。
【0040】
一例では、含まれる追加のIR蛍光体は、「1100~1700nmの範囲におけるSWIR pcLEDおよび蛍光体の放射」という名称の2020年9月23日に出願された米国特許出願第17/035,233号に開示された短波長のIR放射蛍光体であり、この出願は、その全体が参照により本本願に組み込まれる。特に、追加のIR蛍光体は、1つ以上のNi2+、またはNi2+およびCr3+ドープスピネル、ペロブスカイト、ならびに1000~1700nmの範囲で放射するガーネット型IR蛍光体であってもよい。例えば、追加のIR蛍光体は、Li0.5-0.5x(Ga,Sc)2.5-0.5x-yO4:Nix,Cry(ここで、0≦x≦1、0<y≦0.1、0≦z≦1、0≦u≦0.2)スピネル型の追加IR蛍光体を有してもよく、装置101は、一次光源100内に、620~630nmの放射のAlInGaP型LEDを有してもよい。より具体的には、装置101は、Li0.49Sc0.05Ga2.384O4:Ni0.013,Cr0.05スピネル型追加IR蛍光体を含む波長変換構造108を有してもよく、一次光源100として、622nmの放射のAlInGaP型LEDを有してもよい。そのような追加のIR蛍光体を本願に記載のSWIR蛍光体と組み合わせることにより、装置101のIR放射範囲が1600nm~2200nmの範囲より短い波長に拡張され、照明装置101は、1100nm~2200nmの範囲で放射する。
【0041】
別の例では、含まれる追加のIR蛍光体は、前述の第2の蛍光体システムと同様の、広いIR放射範囲を有するIR発光装置においてSWIR蛍光体と共に使用される、追加の第2の蛍光体システムを必要としてもよい。再度
図2を参照すると、追加のIR蛍光体と共に使用される第2の蛍光体システムは、スペクトル範囲を広げることができ、追加のIR蛍光体の効率的な励起が可能となり、従って、装置201で使用され得る一次光源200の種類の数を増加させることができる。すなわち、追加のIR蛍光体202と共に使用される追加の第2の蛍光体システムは、本願に記載のSWIR蛍光体と共に使用するため、前述の第2の蛍光体システムと共に含まれても、含まれなくてもよい。追加の第2の蛍光体システムは、一次光源200からの第1の光204を吸収し、追加のIR蛍光体を励起するために必要な波長範囲の外側の光を放射する。例えば、追加の第2の蛍光体システム202は、一次光源200として青色または緑色のLEDから放射される第1の光204を吸収してもよい。次に、第2の蛍光体システム202は、赤色スペクトル範囲の第3の光206を放射する。第2の蛍光体システム202から放射された第3の光206は、追加のIR蛍光体部分208を励起する。
【0042】
例えば、装置201は、追加の第2の蛍光体システム202として追加された、Eu2+蛍光体のような、緑色から赤色の放射蛍光体を含んでもよく、一次光源200として青色発光LEDを使用してもよい。追加の第2の蛍光体システム202で使用される赤色放射蛍光体の例には、(Sr,Ca)AlSiN3:Euおよび(Ba,Sr,Ca)2Si5 -xAlxOxN8-x:Euが含まれる。
【0043】
例示の装置では、一次光源200は、青色光を放射するInGaN型エミッタであってもよい。波長変換構造218は、追加の第2蛍光体システム202としての橙赤色放射(Ba,Sr)2Si5N8:Eu蛍光体、および追加のIR蛍光体部分212としてのLi0.5-0.5x(Ga,Sc)2.5-0.5x-yO4:Nix,Cryスピネル蛍光体、ならびに本願に記載のSWIR蛍光体を有してもよい。特に、装置201は、一次光源200としての440~460nmを放射するInGaN型エミッタと、追加の第2の蛍光体システムとしての橙赤色放射蛍光体(Ba0.4Sr0.6)2-xSi5N8:Eu0.02、追加のIR蛍光体としてのLi0.49Sc0.05Ga2.384O4:Ni0.013、Cr0.05、および本願に記載のSWIR蛍光体を有する波長変換構造218と、を有してもよい。追加の第2の蛍光体システム202は、Cr3+ドープ蛍光体を有し、これは、700~1000nmの波長範囲で放射し、青色から緑色および赤色のスペクトル範囲で励起することができる。そのようなCr3+蛍光体の発光は、Ni2+ドープされた追加のIR蛍光体によって再吸収される。追加の第2の蛍光体システム202は、文献から知られている他のNi2+蛍光体システムを含んでもよい。一例には、LaMgGa11O19:Ni、MgO:Ni、MgF2:Ni、Ga2O3:Ni,Ge、またはRE2AEMg2TV3O12:Niの組成のガーネット(RE=Y、La、Lu、Gd、Nd、Yb、Tm、Er;AE=Ca、Sr;TV=Si、Ge)が含まれる。
【0044】
図1および
図2に示すように、IR発光装置は、波長変換構造を有し、これは、例えば光源100、200と共に使用されてもよい。光源100、200は、発光ダイオード(LED)であってよい。一実施形態では、発光ダイオードによって放射された光は、波長変換構造内の蛍光体によって吸収され、異なる波長で放射される。
図3には、好適な発光ダイオード、すなわち、
図2に関して示されたような照明装置において使用される青色光を放射するIII族-窒化物LEDの一例を示す。SWIR蛍光体および/または追加のIR蛍光体は、第2の蛍光体および/または青色光を吸収しSWIR光を放射する、追加の第2の蛍光体と組み合わされる。
【0045】
以下の実施例では、半導体発光装置は、青色またはUV光を放射するIII族-窒化物LEDであるが、レーザダイオードのようなLED、および他のIII-V族材料、III族-リン化物、III族-ヒ素化物、II-VI族材料、ZnO、またはSi系材料のような他の材料系で構成された半導体発光装置も使用可能であり、これは、例えば、波長変換構造における、SWIR蛍光体を励起するために必要な波長の範囲により、またはSWIR蛍光体と第2の蛍光体との組み合わせにより、定められる。
【0046】
図3には、本開示の実施形態に使用され得るIII族-窒化物LED1を示す。任意の好適な半導体発光装置が使用されてもよく、本開示の実施形態は、
図3に示す装置に限定されない。
図3の装置は、当技術分野で知られているように、成長基板10上にIII族-窒化物半導体構造を成長させることによって形成される。成長基板は、しばしばサファイアであるが、例えば、SiC、Si、GaN、または複合基板のような、任意の好適な基板であってもよい。III族-窒化物半導体構造が成長される成長基板の表面は、成長の前にパターン化され、粗面化され、またはテクスチャ化されてもよく、装置からの光抽出が改善される。成長表面の反対側の成長基板の表面(すなわち、光の大部分がフリップチップ構成で抽出される表面)は、成長の前または後にパターン化され、粗面化され、またはテクスチャ化され、これにより、装置からの光抽出が改善されてもよい。
【0047】
半導体構造は、n型領域とp型領域の間に挟まれた発光領域または活性領域を有する。最初にn型領域16が成長されてもよい。n型領域16は、異なる組成およびドーパント濃度の複数の層を有し、これには、例えば、バッファ層または核形成層のような調製層、および/または、成長基板の除去を容易にするように設計され、n型であってもまたは意図的にドープされていなくてもよい層、ならびに、発光領域が効率的に発光する上で好ましい、特定の光学的、材料的、または電気的特性のために設計されたn型またはp型の装置層、が含まれる。発光領域または活性領域18は、n型領域の上に成長される。好適な発光領域の例には、単一の厚いもしくは薄い発光層、またはバリア層によって分離された複数の薄いもしくは厚い発光層を含む、複数の量子井戸発光領域が含まれる。次に、p型領域20が発光領域の上に成長されてもよい。n型領域と同様、p型領域は、異なる組成、厚さ、およびドーパント濃度の複数の層を含んでもよく、これには、意図的にドープされていない層、またはn型層が含まれる。
【0048】
成長後、p型領域の表面にpコンタクトが形成される。pコンタクト21は、しばしば、反射金属およびガード金属のような、複数の導電層を有し、後者は、反射金属のエレクトロマイグレーションを防止しまたは低減してもよい。反射金属は、しばしば銀であるが、任意の好適な材料が使用されてもよい。pコンタクト21を形成した後、pコンタクト21、p型領域20、および活性領域18の一部が除去され、n型領域16の一部が露出され、ここにn型コンタクト22が形成される。nコンタクト22およびpコンタクト21は、ギャップ25によって互いに電気的に絶縁され、ギャップには、シリコンの酸化物または他の任意の好適な材料のような誘電体が充填されてもよい。複数のnコンタクトビアが形成されてもよい。nコンタクト22およびpコンタクト21は、
図3に示した配置に限定されない。nコンタクトおよびpコンタクトは、再分配され、当技術分野で知られているように、誘電体/金属スタックを有するボンドパッドが形成されてもよい。
【0049】
LED1に対する電気的接続を形成するため、nコンタクト22およびpコンタクト21の上に、1つ以上の相互接続26および28が形成され、またはこれらと電気的に接続される。相互接続26は、
図3においてnコンタクト22と電気的に接続される。相互接続28は、pコンタクト21と電気的に接続される。相互接続26および28は、誘電体層24およびギャップ27により、nコンタクトおよびpコンタクト22、21から、および相互から電気的に絶縁される。相互接続26および28は、例えば、はんだ、スタッドバンプ、金層、または他の任意の好適な構造であってもよい。
【0050】
基板10は、薄肉化されてもよく、または完全に除去されてもよい。いくつかの実施形態では、薄肉化によって露出された基板10の表面は、パターン化され、テクスチャ化され、または粗面化され、光抽出が改善される。
【0051】
本開示の実施形態では、任意の好適な発光装置は、光源に使用されてもよい。本発明は、
図3に示す特定のLEDに限定されるものではない。光源、例えば、
図3に示すLEDは、ブロック1によって、以降の
図4、
図5および
図6に示されている。
【0052】
(SWIR蛍光体および該SWIR蛍光体を含む波長変換構造の形成)
本願に記載のSWIR蛍光体は、任意の好適な方法を用いて形成することができる。一例の方法では、安定な化合物、例えば、ガーネットホスト、増感剤イオン、および希土類元素が形成される元素を含有する、酸化物が、例えばボールミル粉砕により、好適な比率で混合される。次に、混合物は、中間ボールミル粉砕され、高温、例えば1500℃を超える温度で焼成され、次に、得られた粉末は、例えば、水で洗浄され、乾燥され、ふるいわけされ、SWIR蛍光体材料の粉末が形成される。これは、ふるいにより定められた範囲の直径を有する粒子を有し、例えば、50μmのふるいを使用した場合、50μmの未満の粒子が得られる。次に、得られたSWIR蛍光体粉末を使用して、本願に記載の波長変換構造が形成される。
【0053】
図1に関して記載された波長変換構造108は、1つ以上のSWIR蛍光体、または1つ以上のSWIR蛍光体と、1つ以上の追加のIR蛍光体との組合せを有し、例えば、粉末形態、セラミック形態、または任意の他の好適な形態で製造することができる。波長変換構造108は、1つ以上の構造に形成され、これは、光源とは別個に形成され、光源とは別個に取り扱うことができ、例えば予め構成されたガラスまたはセラミックタイルに形成され、または光源の上または上方に形成されたコンフォーマルなまたは他のコーティングのような、光源とin-situで形成される構造に形成されてもよい。
【0054】
いくつかの実施形態では、波長変換構造108は、例えば、透明マトリクス、ガラスマトリクス、セラミックマトリクス、または任意の他の好適な材料もしくは構造に分散された、粉末であってもよい。マトリクス中に分散されたSWIR蛍光体は、例えば、単一化され、または光源上に配置されたタイルに形成されてもよい。ガラスマトリックスは、例えば、1000℃未満の軟化点を有する低融点ガラス、または任意の他の好適なガラスもしくは他の透明材料であってもよい。セラミックマトリックス材料は、例えば、CaF2のようなフッ化物塩または任意の他の好適な材料であってもよい。
【0055】
SWIR蛍光体、またはSWIR蛍光体と追加のIR蛍光体との組み合わせは、例えば平均直径が3~50μmの範囲の粒子を含む粉末に適用され、波長変換構造が形成されてもよい。粉末は、硬化性ポリシロキサン型樹脂に分散され、例えば、一次発光LEDを含むパッケージに分配する手段によって設置されてもよい。また粉末は、低融点ガラス粉末と混合され、ガラス軟化温度以上の温度に加熱され、ガラスコンバータ構造(PiG)中に蛍光体が形成されてもよい。あるいは、SWIR蛍光体は、シリコーン樹脂に混合され、ガラス基板に成形されまたは取り付けられ、ガラス構造上に蛍光体が形成されてもよい(PoG)。
【0056】
波長変換構造108は、例えば、粉末SWIR蛍光体、または粉末状SWIR蛍光体と粉末状の追加SWIR蛍光体の組み合わせを、シリコーンのような透明材料と混合し、分配し、またはその他の方法で光路に配置することにより、形成されてもよい。粉末形態において、SWIR蛍光体および追加のIR蛍光体の平均粒子サイズ(例えば、粒子直径)は、ある実施形態では、少なくとも1μmであり、ある実施形態では50μm以下であり、ある実施形態では少なくとも5μmであり、ある実施形態では20μm以下であってもよい。ある実施形態では、個々のSWIR蛍光体粒子または粉末SWIR蛍光体層は、ケイ酸塩、リン酸塩、および/または1つ以上の酸化物のような1つ以上の材料で被覆され、例えば、吸収および発光特性が改善され、ならびに/または材料の機能寿命が延長されてもよい。
【0057】
図2に関して記載した波長変換構造218のような、第2の蛍光体システムおよび/または追加の第2の蛍光体システムが含まれる波長変換構造は、波長コンバータ108に関する前述の方法と同様の方法を用いて製造することができる。
【0058】
SWIR蛍光体と第2の蛍光体、ならびに/または追加のIR蛍光体と追加の第2の蛍光体は、単一の波長変換層において相互に混合されてもよく、または別個の波長変換層として形成されてもよい。別個の波長変換層を有する波長変換構造では、SWIR蛍光体と第2の蛍光体、および/または追加のIR蛍光体と追加の第2の蛍光体は、積層され、第2の蛍光体(および/または追加の第2のIR蛍光体)は、SWIR蛍光体(および/または追加のIR蛍光体)と光源の間に配置され、あるいはSWIR蛍光体(および/または追加のIR蛍光体)は、第2の蛍光体(および/または追加の第2の蛍光体)と光源の間に配置されてもよい。
【0059】
図4、
図5、
図6には、LED1と波長変換構造30とが組み合わされた装置を示す。波長変換構造30は、例えば、
図1に示すようなSWIR蛍光体を含む波長変換構造108、または前述の実施形態および例による、
図2に示すようなSWIR蛍光体および第2蛍光体を有する波長変換構造218であってもよい。
【0060】
図4では、波長変換構造30は、LED1に直接接続される。例えば、波長変換構造は、
図3に示した基板10に直接接続されてもよく、あるいは基板10が除去された場合、半導体構造に直接接続されてもよい。
【0061】
図5では、波長変換構造30は、LED1に近接して配置されているが、LED1とは直接接続されていない。例えば、波長変換構造30は、接着層32、小さな空隙、または任意の他の好適な構造により、LED1から分離されてもよい。いくつかの実施形態では、LED1と波長変換構造30との間の間隔は、例えば、500μm未満であってもよい。
【0062】
図6では、波長変換構造30は、LED1から離間されている。ある実施形態では、LED1と波長変換構造30との間の間隔は、例えば、ミリメートルオーダーであってもよい。そのような装置は、「遠隔蛍光体」装置と称されてもよい。
【0063】
波長変換構造30は、正方形、長方形、多角形、六角形、円形、または他の任意の好適な形状であってもよい。波長変換構造は、LED1と同じサイズ、LED1よりも大きいサイズ、またはLED1よりも小さいサイズであってもよい。
【0064】
複数の波長変換材料および複数の波長変換構造は、単一の装置で使用することができる。
【0065】
また装置は、SWIR蛍光体、第2の蛍光体、追加のIR蛍光体、および/または前述の追加の第2の蛍光体に加えて、例えば、従来の蛍光体、有機蛍光体、量子ドット、有機半導体、II-VI族またはIII-V族半導体、II-VI族またはIII-V族半導体の量子ドット、またはナノ結晶、顔料、ポリマー、または発光する他の材料のような、他の波長変換材料を含んでもよい。
【0066】
複数の波長変換材料は、相互に混合され、または別個の構造として形成されてもよい。
【0067】
いくつかの実施形態では、波長変換構造または装置に、例えば、光学特性を改善する材料、散乱を促進する材料、および/または熱特性を改善する材料のような、他の材料が添加されてもよい。そのような材料の例は、本願に記載の構造的に不規則な立方晶系ガーネットSWIR蛍光体の多結晶セラミックにおける第2の相としての(Al,Ga)2O3である。
【0068】
(IR分光計)
図7には、赤外分光計700の図を示す。
図1および2の101、201のような、本願に記載の1つ以上のSWIR蛍光体を有する発光装置は、IR吸収分光法用途に使用される分光器装置に使用されてもよい。
図7では、IR分光計700は、IR発光装置710を有し、これは、例えば発光装置101、201のような、1つ以上のSWIR蛍光体、またはSWIR蛍光体と追加のIR蛍光体(それぞれ、第2の蛍光体システム、または追加の第2の蛍光体システムとを有し、または有しない)の組み合わせを有してもよい。また、IR光源710は、
図8Aおよび
図8Bに関して以下に示すような、IR光源アレイであってもよい。IR分光計700は、さらに、IR光を感知するセンサ/検出器730を有し、これは、例えば、フォトレジスタまたはフォトダイオードであり、光導波素子および/または回折要素とさらに組み合わせることができる。一実施形態では、センサ/検出器730は、特に小型化された装置において、IR光を検出するように特別に形成され、例えば薄膜PbSに形成された鉛カルコゲナイド(PbS、PbSe)系のフォトレジスタ検出素子を有し、これは、1000~3000nmの波長範囲にわたってIR放射を検出してもよい。スペクトル解像度を提供するため、PbSフォトレジスタのような感知素子は、例えばバンドパスフィルタのような、光学フィルタ素子のアレイと組み合わされてもよい。IR分光計700は、さらに、例えば、プロセッサ740を有し、センサ/検出器730から受信されたデータが処理されてもよい。プロセッサ740は、コントローラ機能を含み、IR発光装置710および/またはセンサ検出器730が制御されてもよい。またIR分光計700は、
図7に示すように、IR発光装置710とセンサ検出器730との間で、サンプルがIR分光計に挿入される場合、サンプル720の場所を含んでもよい。ただし、別の例(図示せず)では、センサ/検出器は、例えばIR分光計の外側でサンプルから反射した後に、IR発光装置から放射されたIR光を検出するように配置されてもよく、その結果、センサ/検出器が反射スペクトルを検出する。
【0069】
動作中、IR発光装置710は、IR光705を放射し、これは、1600~2200nmの範囲の広帯域放射であってもよく、あるいは1100~2200nmの範囲の広帯域放射であってもよく、これは、IR発光装置710の波長変換構造における蛍光体の組み合わせに依存する。放射された光は、サンプル720に入り(または、構成に応じて、サンプル720から反射される)、IR吸収スペクトルのIR光は、センサ/検出器730によって検出されるサンプル720から出射される(または、そこから反射される)。
【0070】
(IR放射アレイ)
図8A~8Bには、それぞれ、SWIR pcLED810のアレイ800の断面図および上面図を示す。SWIR pcLED810は、それぞれ、
図1、
図2および
図7に示すように、照明装置101、201、または710として構造化され、波長コンバータを有し、これは、蛍光体画素806に含有された本願に記載のSWIR蛍光体の1つ以上を有し、半導体ダイオード812は、基板802上に配置される。波長コンバータは、1つ以上のSWIR蛍光体、またはSWIR蛍光体と追加のIR蛍光体との組み合わせを含み、前述のように、第2の蛍光体システムおよび/または追加の第2の蛍光体システムを有し、または有しない。そのようなアレイは、任意の好適な方法で配置された任意の好適な数のSWIR pcLEDを有してもよい。図示された例では、アレイ800は、共通基板上にモノリシックに形成されるように示されているが、代わりに、SWIR pcLEDのアレイは、別個の個々のpcLEDから形成されてもよい。基板802は、必要に応じて、LEDを駆動するためのCMOS回路を含んでもよく、任意の好適な材料から形成されてもよい。
【0071】
図8A~8Bには、3×3の9個のpcLEDのアレイを示すが、そのようなアレイは、例えば、数十個、数百個、または数千個のLEDを含んでもよい。個々のLED(画素)は、アレイの平面内に、例えば、1ミリメートル(mm)以下、500ミクロン以下、100ミクロン以下、または50ミクロン以下の幅(例えば、側面長さ)を有してもよい。そのようなアレイにおけるLEDは、ストリートまたはレーンによって相互に離間配置され、ストリートまたはレーンのアレイの平面内の幅は、例えば、数百ミクロン、100ミクロン以下、50ミクロン以下、10ミクロン以下、または5ミクロン以下である。示された例では、対称マトリクス内に配列された矩形画素が示すされているが、画素およびアレイは、任意の好適な形状または配置を有してもよい。
【0072】
アレイの平面(例えば、側長)が約50ミクロン以下の寸法を有するLEDは、通常、マイクロLEDと呼ばれ、そのようなマイクロLEDのアレイは、マイクロLEDアレイと称されてもよい。
【0073】
LEDのアレイ、またはそのようなアレイの一部は、セグメント化されたモノリシック構造として形成されてもよい。個々のLED画素は、トレンチおよび/または絶縁材料により、相互に電気的に絶縁されているが、電気的に絶縁されたセグメントは、半導体構造の一部により、相互に物理的に接続されたままである。
【0074】
LEDアレイ内の個々のLEDは、個々にアドレス指定可能であってもよく、アレイ内の画素のグループまたはサブセットの一部として、アドレス指定可能であってもよく、またはアドレス指定ができなくてもよい。従って、発光画素アレイは、微細粒強度、光分布の空間的および時間的な制御が必要となる、またはその利益を受ける任意の用途に有益である。これらの用途には、これに限られるものではないが、画素ブロックまたは個々の画素から放射される光の正確な特別なパターン化が含まれる。用途に応じて、放射光は、スペクトル的に別個であってもよく、時間的に適応的であってもよく、および/または環境的に応答性であってもよい。そのような発光画素アレイは、各種強度、空間または時間的なパターンで、予めプログラムされた光分布を提供してもよい。放射光は、少なくとも一部が受信されたセンサデータに基づいてもよく、光無線通信に使用されてもよい。関連のエレクトロニクスおよび光学系は、画素、画素ブロック、または装置レベルで別個であってもよい。
【0075】
図9A~9Bに示すように、SWIR pcLEDアレイ800は、電子回路基板900に取り付けられ、これは、電力および制御モジュール902、センサモジュール904、ならびにLED取り付け領域906を有してもよい。電力および制御モジュール902は、外部ソースから電力および制御信号を受信し、センサモジュール904からの信号を受信し、これらに基づいて電力および制御モジュール902は、LEDの動作を制御する。センサモジュール904は、任意の好適なセンサ、例えば、温度センサまたは光センサから信号を受信してもよい。あるいは、SWIR pcLEDアレイ800は、電力および制御モジュールおよびセンサモジュールとは別個のボード(図示せず)に取り付けられてもよい。
【0076】
個々のSWIR pcLEDは、必要な場合、蛍光体層に隣接して配置され、または蛍光体層上に配置されたレンズまたは他の光学素子と組み合わされて導入され、または配置されてもよい。そのような光学素子は、図には示されていないが、「一次光学素子」と称されてもよい。また、
図10A~10Bに示すように、SWIR pcLEDアレイ800(例えば、電子回路基板900上に取り付けられる)は、意図された用途に使用するため、導波路、レンズ、またはその両方のような、二次光学素子と組み合わせて配置されてもよい。
図10Aでは、SWIR pcLED810によって放射された光は、導波路1002によって集められ、投影レンズ1004に誘導される。投影レンズ1004は、例えば、フレネルレンズであってもよい。
図10Bにおいて、SWIR pcLED810によって放射された光は、介在導波路を使用することなく、投影レンズ1004によって直接収集される。この配置は、SWIR pcLEDが相互に十分に近接して離間される場合、特に好適であり、また各種用途に使用され得る。マイクロLEDディスプレイ用途では、例えば、
図10A~10Bに示されたものと同様の光学的配置が使用されてもよい。一般に、光学素子の任意の好適な配置は、所望の用途に応じて、本願に記載のLEDアレイと組み合わせて使用されてもよい。
【0077】
独立に動作可能なLEDのアレイは、(例えば、前述のような)レンズ、レンズ系、または他の光学系と組み合わせて使用され、特定の目的に適合可能な照明が提供されてもよい。例えば、そのような適応照明システムでは、動作の際に、照射されたサンプルまたは物体にわたって、波長および/または強度によって変化する照明が提供され、および/または所望の方向に誘導されてもよい。コントローラは、サンプル内の態様または人の位置およびスペクトル特性を示すデータを受信するように構成され、その情報に基づいて、LEDアレイにおけるLEDを制御し、シーンに適合された照明が提供される。そのようなデータは、例えば、イメージセンサ、または光学センサ(例えば、レーザースキャニング)または非光学センサ(例えば、ミリメートルレーダ)によって提供することができる。そのような適応照明は、モバイル装置、VR、およびARアプリケーションにとって、ますます重要になっている。
【0078】
図11には、SWIR pcLEDアレイおよびレンズシステム1102を有する、一例としてのカメラフラッシュシステム1100を概略的に示す。これらは、前述のシステムと同様であってもよく、または同一であってもよい。またフラッシュシステム1100は、SWIR pcLEDドライバ1106を有し、これはマイクロプロセッサのようなコントローラ1104によって制御されてもよい。またコントローラ1104は、カメラ1107およびセンサ1108に結合され、メモリ1110に記憶された命令およびプロファイルに従って作動されてもよい。カメラ1107および適応照明システム1102は、コントローラ1104によって制御され、それらの視野が適合されてもよい。
【0079】
センサ1108は、例えば、位置センサ(例えば、ジャイロスコープおよび/または加速度計)および/またはシステム1100の位置、速度、および方向を定めるために使用され得る、他のセンサを有してもよい。センサ1108からの信号は、コントローラ1104に供給され、コントローラ1104の好適な動作経路(例えば、どのLEDが現在ターゲットを照射しており、どのLEDが所定の時間後にターゲットを照射するか)を定めるために使用されてもよい。
【0080】
動作の際、1102におけるLEDアレイの一部のまたは全ての画素からの照射は、調整され、不活性化され、フル強度で作動され、または中間強度で作動されてもよい。1102においてLEDアレイにより放射された光のビーム焦点化または操舵は、画素の1つ以上のサブセットを作動させることにより電子的に実施され、光学系を動かすことなく、または照明装置においてレンズの焦点を変化させることなく、ビーム形状の動的調整が可能となる。
【0081】
図12には、一例としてのディスプレイ(例えば、AR/VR/MR)システム1200を概略的に示す。これは、適応発光アレイ1210、ディスプレイ1220、発光アレイコントローラ1230、センサシステム1240、およびシステムコントローラ1250を有する。センサシステム1240に制御入力が提供される一方、システムコントローラ1250に電力およびユーザデータ入力が提供される。いくつかの実施形態では、システム1200に含まれるモジュールは、単一の構造にコンパクトに配置することができ、または1つ以上の素子は、別々に取り付けられ、ワイヤレス通信または有線通信を介して接続され得る。例えば、発光アレイ1210、ディスプレイ1220、およびセンサシステム1240がヘッドセットまたはメガネに取り付けられ、発光コントローラおよび/またはシステムコントローラ1250は、別々に取り付けられる。
【0082】
発光アレイ1210は、前述のような1つ以上の適応性発光アレイを有し、これを用いて、例えば、グラフィックまたはオブジェクトパターンで光を投影することができ、AR/VR/MRシステムをサポートすることができる。あるの実施形態では、マイクロLEDのアレイを使用することができる。
【0083】
システム1200は、適応性発光アレイ1210および/またはディスプレイ1220に広範囲の光学系を組み込むことができ、例えば、適応性発光アレイ1210により放射された光がディスプレイ1220に結合される。
【0084】
センサシステム1240は、例えば、環境を監視するカメラ、深さセンサ、またはオーディオセンサのような外部センサと、AR/VR/MRヘッドセット位置を監視する加速度計または2軸もしくは3軸ジャイロスコープのような内部センサと、を有してもよい。他のセンサは、これに限られるものではないが、空気圧センサ、応力センサ、温度センサ、または局所的なまたは遠隔での環境モニタリングに必要な、任意の他の好適なセンサを有し得る。ある実施形態では、制御入力は、ヘッドセットまたはディスプレイ位置に基づく検出タッチまたはタップ、ジェスチャー入力、または制御を有し得る。
【0085】
センサシステム1240からのデータに応答して、システムコントローラ1250は、発光アレイコントローラ1230に画像または命令を送信することができる。また、画像または命令に対する変更または修正は、必要に応じて、ユーザデータ入力または自動データ入力によっても行い得る。ユーザデータ入力は、これに限られるものではないが、音声命令、触覚フィードバック、眼もしくは瞳孔の配置、または接続キーボード、マウス、もしくはゲームコントローラにより提供されるものを含み得る。
【0086】
(例)
以下の実施例では、本願に記載のSWIR蛍光体の組成物およびこれらのSWIR蛍光体を含むpcLEDが記載される。
【0087】
(例1)
例1では、Gd2.367Ho0.01Tm0.152Sc1.6Lu0.27Ga1.8Al1.78Cr0.04O12のSWIR蛍光体組成物の合成について説明する。28.7gの酸化ガドリニウム(Treibacher、>99.98%)、7.66gの酸化スカンジウム(Treibacher、99.99%)、3.65gの酸化ルテチウム(Rhodia、99.99%)、11.6gの酸化ガリウム(Dowa Electronics Materials、4N)、0.236gの酸化クロム(II)(Alfa Aesar、98%)、6.22gの酸化アルミニウム(Baikowski、SP‐DBM)、0.128gの酸化ホルミウム(K.Rasmus&Co、4N)、2.027gの酸化ツリウム(Alfa Aesar、>99.9%)、および1.01gのフッ化ガドリニウム(Materion、4N)を混合することにより、Gd2.367Ho0.01Tm0.152Sc1.6Lu0.27Ga1.8Al1.78Cr0.04O12のSWIR蛍光体組成物を合成した。遊星ボールミリングにより、これらの化合物を混合した。次に、混合物を空気雰囲気中、1540℃で8時間焼成した後、ボールミリングを行い、その後空気雰囲気中、1510℃で8時間焼成した。混合物の2回目の焼成後、混合物の粉砕およびボールミル粉砕を行い、SWIR蛍光体の粉末を得た。SWIR蛍光体粉末を水で洗浄し、空気下300℃で乾燥させ、最終的に50μmのふるいを通し、ふるい分けした。
【0088】
図13には、実施例1で得られたGd
2.367Ho
0.01Tm
0.152Sc
1.6Lu
0.27Ga
1.8Al
1.78Cr
0.04O
12SWIR蛍光体のX線粉末パターン1300(銅放射線)を示す。灰色線1310は、立方晶ガーネット構造モデルを用いて計算した適合反射の位置と高さを示す。例aでは、12.266Åの立方格子定数および6.38g/cm
3の計算密度を示す。
【0089】
図14には、例1で得られたGd
2.367Ho
0.01Tm
0.152Sc
1.6Lu
0.27Ga
1.8Al
1.78Cr
0.04O
12SWIR蛍光体粉末の走査型電子顕微鏡(SEM)像1400を示す。
【0090】
図15には、可視スペクトル範囲における例1の電力反射スペクトル1500を示す。可視スペクトル範囲の反射最小1510は、約450nmの青色スペクトル領域にある。
【0091】
(例2)
例2には、例1で合成されたSWIR蛍光体を含むSWIR pcLEDの形成を示す。例1のSWIR蛍光体を含むSWIR pcLEDは、真空下で、例1で合成されたGd2.367Ho0.01Tm0.152Sc1.6Lu0.27Ga1.8Al1.78Cr0の粉末を熱硬化性シリコーン樹脂と混合することにより、形成された(蛍光体/シリコーン重量比は1.6)。SWIR蛍光体と熱硬化性シリコーン樹脂の混合物を、InGaN青色エミッタ(発光波長~450nm)を含む中電力LEDパッケージに分配した。
【0092】
図16には、例2で形成されたSWIR pcLEDの正規化された短波赤外放射スペクトル1600を示す。放射スペクトルは、SWIR pcLEDからの放射が1610~2130nmの範囲を網羅することが示されている。波長範囲1610~2130nmに対する、最大放射パワーに対する最小放射パワー161および平均放射パワー162は、それぞれ、12%および53%(点線および破線)よりも大きい。
【0093】
(例3)
例3では、Gd2.59Tm0.24Ho0.02Sc0.75Lu0.3Ga2Al2Cr0.1O12のSWIR蛍光体組成物の合成を説明する。29.56gの酸化ガドリニウム(Treibacher、>99.98%)、3.39gの酸化スカンジウム(Treibacher、99.99%)、3.87gの酸化ルテチウム(Rhodia、99.99%)、12.34gの酸化ガリウム(Dowa Electronics Materials、4N)、0.493gの酸化クロム(II)(Alfa Aesar、98%)、6.22gの酸化アルミニウム(Baikowski、SP‐DBM)、0.255gの酸化ホルミウム(K. Rasmus&Co、4N)、2.995gの酸化ツリウム(Alfa Aesar、>99.9%)、および1.04gのフッ化ガドリニウム(Materion、4N)を混合することにより、組成Gd2.59Tm0.24Ho0.02Sc0.75Lu0.3Ga2Al2Cr0.1O12のSWI蛍光体を合成した。遊星ボールミリングにより、これらの化合物を混合した。次に、空気雰囲気中、1540℃で8時間混合物を焼成した後、ボールミリングを行い、その後空気雰囲気中、1510℃で8時間焼成した。混合物の2回目の焼成後、混合物の粉砕およびボールミル粉砕を行い、SWIR蛍光体の粉末を得た。SWIR蛍光体粉末を水で洗浄し、空気中、300℃で乾燥し、最終的に50μmのふるいを通してふるい分けした。
【0094】
図17には、例3において形成されたGd
2.59Tm
0.24Ho
0.02Sc
0.75Lu
0.3Ga
2Al
2Cr
0.1O
12のSWIR蛍光体組成物のX線粉末パターン1700(銅放射線)を示す。灰色線1710は、立方晶ガーネット構造モデルを用いて計算した適合反射の位置と高さを表す。例aには、12.301Åの立方格子定数および6.62g/cm
3の計算密度を示す。
【0095】
(例4)
例4では、例3で合成されたSWIR蛍光体を含むSWIR pcLEDの形成について説明する。例3のSWIR蛍光体を含むSWIR pcLEDは、真空下で、例3で合成したGd2.59Tm0.24Ho0.02Sc0.75Lu0.3Ga2Al2Cr0.1O12の粉末を、熱硬化性シリコーン樹脂(蛍光体/シリコーン重量比1.6)と混合することにより形成した。SWIR蛍光体と熱硬化性シリコーン樹脂の混合物は、InGaN青色エミッタ(放射波長~450nm)を含む中電力LEDパッケージに分配された。
【0096】
図18には、例4で形成されたSWIR pcLEDの正規化された短波赤外放射スペクトル1800を示す。放射スペクトルは、SWIR pcLEDからの放射が1600~2130nmのスペクトル範囲をカバーすることを示す。波長範囲1610~2130nmに対して、最大放射パワーに対する最小放射パワー181および平均放射パワー182は、それぞれ、12%および46%(点線および破線)よりも大きい。
【0097】
(例5)
例5には、波長変換構造の形成を示す。この構造は、主要多結晶相としてのSWIRガーネット蛍光体組成Gd2Ho0.013Tm0.2Sc0.67Lu0.24Ga1.6Al3.2Cr0.08O12、および少量相としての追加の(Al,Ga)2O3を含む複合セラミック板である。89.92gの酸化ガドリニウム(Treibacher、>99.98%)、11.58gの酸化スカンジウム(Treibacher、99.99%)、11.85gの酸化ルテチウム(Rhodia、99.99%)、37.18gの酸化ガリウム(Dowa Electronics Materials、4N)、1.512gの酸化クロム(II)(Alfa Aesar、98%)、40.46gの酸化アルミニウム(Baikowski、SP-DBM)、0.611gの酸化ホルミウム(K.Rasmus&Co、4N)、および9.57gの酸化ツリウム(Alfa Aesar、>99.9%)を混合することにより、SWIR蛍光体組成Gd2Ho0.013Tm0.2Sc0.67Lu0.24Ga1.6Al3.2Cr0.08O12を調製した。分散剤(2wt% Maliam AKM-0531)が添加されたボールミル処理により、これらの化合物を、99gのエタノールおよび107μlのテトラエチルオルトシリケート(Merck、p.a.)中で混合し、0.72μmの平均粒子サイズを得た。ポリビニルブチラールバインダおよび可塑剤システム(Sekisui BL-5、G-260)を添加後、セラミックテープをキャストし、乾燥させ、積層、ラミネートした。600℃での脱バインダ処理後、セラミック板を空気雰囲気下で1580℃、8時間焼結した。得られた複合セラミックは、厚さが197μmであり、主として、立方晶ガーネット構造で結晶化され、格子定数は、a0=12.160Åであり、一部(Al,Ga)2O3二次相を有する。
【0098】
図19には、焼結後のSWIR蛍光体セラミックの走査型電子顕微鏡写真1900を示す。明るいセラミック粒子1910は、ガーネット蛍光体相であり、暗いセラミック粒子1920は、(Al、Ga)
2O
3の二次相から構成される。
【0099】
(例6)
以下の表1のレシピに従って、例5のSWIR蛍光体複合セラミックをシリカとニオビアの酸化物層で被覆し、二色性コーティングを得た。コーティングは、反応性ガスとしての酸素を用い、シリコンおよびニオブ金属のターゲットを用いた反応性スパッタリングにより、焼結後のセラミックの表面に設置された。
【0100】
【表1】
図20には、0°の入射角で得られた、この例のコーティングされたセラミックの波長の関数としての光透過性のグラフ2000を示す。
【0101】
(例7)
例6で製造したセラミックを、サイズ1060×1060μmのプレートレットにダイシングした後、得られたコンバータ構造(非コーティング表面を有する)を、1mm2の発光表面を有し、440nmの放射を示すInGaN一次LED(LUXEONTM、Lumileds)光源に取り付けた。コンバータ構造は、非コーティング表面がLED上に配置されるように取り付けられた。
【0102】
図21には、この例で形成された蛍光体変換LEDのSWIR放射スペクトル2100を示す。
図21に見られるように、放射スペクトルは、SWIR pcLEDからの放射が1600~2130nmのスペクトル範囲を網羅することを示す。1610~2130nmの波長範囲において、最大放射パワーに対する最小放射パワー2110および平均放射パワー2120は、それぞれ、10%超および35%超である。
図22Aおよび22Bに示す機器を用いて、分光法用の光源として例7のSWIR pcLEDを評価した。
図22Aおよび22Bにおいて、試験機器2200は、この例2210において形成されたSWIR pcLEDを有し、これは、波長変換構造2を有する青色発光InGaN一次LED1を有する。例6において形成されたダイクロイックコーティング3が取り付けられる。SWIR pcLED2210は、IR分光計光ファイバ4に近接して配置される。
図22Bには、評価サンプル(ポリスチレン)5を示す。SWIR pcLED 2210を、Nanoquest(登録商標)FT-IR分光計4(Ocean Inside)の光ファイバに近接(10~20mmの距離)させ、ポリスチレン評価サンプル5を光路に配置する前に、まず、参照スペクトルを記録した(
図22)。
図23には、ポリスチレン評価サンプルのFT-IRスペクトルを示す。
【0103】
(例8)
例8には、分光計用の光源の形成を示す。これは、2つの異なる波長変換構造に形成された2つの異なる蛍光体を含み、光源の放射は、より短波長まで拡張される。この例の光源は、以下の2つの波長変換構造を含む:(1)第1の波長変換構造は、本願に記載のSWIR蛍光体Gd
2.32Tm
0.18Sc
1.5Lu
0.3Ga
1.81Al
1.81Cr
0.1O
12を有する。(2)第2のセラミック波長変換構造は、2020年9月23日に出願された「1100~1700nmの範囲におけるSWIR pcLEDおよび蛍光体の放射」という名称の米国特許出願第17/035,233号に記載のガーネット構造を有し、これは、組成がGd
3Ga
3.7ScAl
0.18Ni
0.02Zr
0.021Cr
0.1O
12であり、格子定数は、a
0=12.32222Åである。第1の波長変換構造は、セラミック板として形成され、SWIRガーネット蛍光体組成物Gd
2.32Tm
0.18Sc
1.5Lu
0.3Ga
1.81Al
1.81O
12を有し、例5に記載の方法を用いて製造された。例えば、78.251gの酸化ガドリニウム(Treibacher、3N5)、19.451gの酸化スカンジウム(Treibacher、4N)、11.114gの酸化ルテチウム(Rhodia、4N)、31.54gの酸化ガリウム(Dowa Elecronics Materials、4N)、1.41gの酸化クロム(III)(Alfa Aesar、99%)、17.17gの酸化ガリウム(Baikowski、SP-DBM)、6.445gの酸化ツリウム(Treibacher、4N)、および110μlのテトラエチルオルトシリケート(Merck、p.a.)を、エタノール中で粉砕し、0.87μmの平均粒子サイズが得られた。例5に記載のような成形および焼成工程の後、セラミックSWIR蛍光体セラミックが得られる。これは、単位セル定数a
0=12.293Åである。第2の波長変換構造は、2020年9月23日に出願された「1100~1700nmの範囲におけるSWIR pcLEDおよび蛍光体の放射」という名称の米国特許出願第17/035,233号の記載に従って、形成された。第1および第2のセラミックコンバータ構造は、それぞれ、Gd
3Ga
3.7ScAl
0.18Ni
0.02Zr
0.021Cr
0.1O
12、およびGd
2.32Tm
0.18Sc
1.5Lu
0.3Ga
1.81Al
1.81Cr
0.1O
12蛍光体を有し、440nm放射の一次LED光源に取り付けられ、
図24に示すSWIR波長範囲2400におけるスペクトルパワー分布を有する照明システムが得られた。
図24において、破線2410には、青色発光一次LED光源によって励起されるGd
3Ga
3.7ScAl
0.18Ni
0.02Zr
0.021Cr
0.1O
12蛍光体材料のみを有する照明システムのスペクトルパワー分布を示し、点線2420には、青色発光一次LED光源によって励起されるGd
2.32Tm
0.18Sc
1.5Lu
0.3Ga
1.81Al
1.81Cr
0.1O
12蛍光体材料のみを有する照明システムのスペクトルパワー分布を示す。
【0104】
本開示は一例であり、限定的なものではない。本開示に照らして、当業者にはさらなる修正が明らかであり、そのような修正は、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図される。
【国際調査報告】