(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-18
(54)【発明の名称】脂質ナノ粒子製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 47/44 20170101AFI20240910BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20240910BHJP
A61K 9/51 20060101ALI20240910BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20240910BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20240910BHJP
A61K 47/28 20060101ALI20240910BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240910BHJP
A61K 38/02 20060101ALI20240910BHJP
A61K 38/19 20060101ALI20240910BHJP
A61K 38/22 20060101ALI20240910BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240910BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20240910BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20240910BHJP
A61K 31/713 20060101ALI20240910BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240910BHJP
C12N 15/11 20060101ALI20240910BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240910BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20240910BHJP
C08G 65/324 20060101ALI20240910BHJP
C07K 14/47 20060101ALN20240910BHJP
C07K 16/00 20060101ALN20240910BHJP
【FI】
A61K47/44
A61K9/16
A61K9/51
A61K47/34
A61K47/24
A61K47/28
A61K45/00
A61K38/02
A61K38/19
A61K38/22
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K31/7088
A61K31/7105
A61K31/713
A61P43/00 105
A61P43/00 111
C12N15/11 Z
C12N5/10
C12P21/02 C
C08G65/324
C07K14/47
C07K16/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024509404
(86)(22)【出願日】2022-08-17
(85)【翻訳文提出日】2024-04-16
(86)【国際出願番号】 AU2022050913
(87)【国際公開番号】W WO2023019310
(87)【国際公開日】2023-02-23
(32)【優先日】2021-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】304044531
【氏名又は名称】モナシュ ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】ヘアス ベイシム アリ オル-ワシティ
(72)【発明者】
【氏名】コリン ウィリアム ポートン
(72)【発明者】
【氏名】カ トゥ ジョーン ホ
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C076
4C084
4C085
4C086
4H045
4J005
【Fターム(参考)】
4B064AG32
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4B065AB01
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4H045AA10
4H045AA11
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4H045CA40
4H045EA31
4H045FA74
4J005BD00
4J005BD05
4J005BD07
(57)【要約】
本発明は、脂質ナノ粒子、脂質ナノ粒子を含む製剤及び前記脂質ナノ粒子及びその製剤を用いて疾患又は状態を治療する方法に関する。脂質ナノ粒子は、a)活性剤;(b)ナノ粒子中に存在する全脂質の約40mol%~約60mol%を含む、カチオン性脂質及び/又はイオン化脂質;(c)ナノ粒子中に存在する全脂質の約5mol%~約20mol%を含むリン脂質;(d)ナノ粒子中に存在する全脂質の約30mol%~約50mol%を含む構造脂質;(e)ナノ粒子中に存在する全脂質の約0.05mol%~0.5mol%未満を含むPEG化脂質、を含む。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂質ナノ粒子であって、:
(a)活性剤
(b)ナノ粒子中に存在する全脂質の約40mol%~約60mol%を含む、カチオン性脂質及び/又はイオン化脂質
(c)ナノ粒子中に存在する全脂質の約5mol%~約20mol%を含むリン脂質;
(d)ナノ粒子中に存在する全脂質の約30mol%~約50mol%を含む構造脂質;
(e)ナノ粒子中に存在する全脂質の約0.05mol%~0.5mol%未満を含むPEG化脂質、
を含む、脂質ナノ粒子。
【請求項2】
前記PEG化脂質は、粒子中に存在する全脂質の約0.06mol%~約0.5mol%、約0.07mol%~約0.5mol%、約0.08mol%~約0.5mol%、約0.09mol%~約0.5mol%、約0.1mol%~約0.5mol%、約0.15mol%~約0.5mol%、約0.2mol%~約0.5mol%、約0.25mol%~約0.5mol%、約0.3mol%~約0.5mol%、約0.3mol%~約0.5mol%、約0.35mol%~約0.5mol%、約0.4mol%~約0.5mol%、約0.45mol%~約0.5mol%、約0.05mol%~約0.45mol%、約0.05mol%~約0.4mol%、約0.05mol%~約0.35mol%、約0.05mol%~約0.3mol%、約0.05mol%~約0.25mol%、約0.05mol%~約0.2mol%、約0.05mol%~約0.15mol%、約0.05mol%~約0.1mol%、約0.05mol%~約0.09mol%、約0.05mol%~約0.08mol%、約0.05mol%~約0.07mol%、又は約0.05mol%~約0.06mol%を含む、請求項1に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項3】
前記PEG化脂質は、粒子中に存在する全脂質の0.06mol%~0.5mol%、0.07mol%~0.5mol%、0.08mol%~0.5mol%、0.09mol%~0.5mol%、0.1mol%~0.5mol%、0.15mol%~0.5mol%、0.2mol%~0.5mol%、0.25mol%~0.5mol%、0.3mol%~0.5mol%、0.3mol%~0.5mol%、0.35mol%~0.5mol%、0.4mol%~0.5mol%、0.45mol%~0.5mol%、0.05mol%~0.45mol%、0.05mol%~0.4mol%、0.05mol%~0.35mol%、0.05mol%~0.3mol%、0.05mol%~0.25mol%、0.05mol%~0.2mol%、0.05mol%~0.15mol%、0.05mol%~0.1mol%、0.05mol%~0.09mol%、0.05mol%~0.08mol%、0.05mol%~0.07mol%、又は0.05mol%~0.06mol%を含む、請求項1又は2に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項4】
前記PEG化脂質は、粒子中に存在する全脂質の0.05mol%、0.06mol%、0.07mol%、0.08mol%、0.09mol%、0.1mol%、0.15mol%、0.2mol%、0.25mol%、0.3mol%、0.35mol%、0.4mol%、又は0.45mol%を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項5】
前記PEG化脂質は、PEGで修飾されたホスファチジルエタノールアミン、PEGで修飾されたホスファチジン酸、PEGで修飾されたセラミド、PEGで修飾されたジアルキルアミン、PEGで修飾されたジアシルグリセロール、PEGで修飾されたジアルキルグリセロール、及びそれらの混合物からなる群より選択される、請求項1~4のいずれか1項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項6】
前記PEG化脂質は、PEG-c-DOMG、PEG-DMG、PEG-DLPE、PEG-DMPE、PEG-DPPC、又はPEG-DSPE脂質からなる群より選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項7】
前記PEG化脂質は、PEG-DSPEである、請求項6に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項8】
前記PEG化脂質は、約100Da~約100,000Da、約100Da~約100,000Da、約1000Da~約9000Da、約1000Da~約8000Da、約1000Da~約7000Da、約1000Da~約6000Da、約1000Da~約5000Da、約1000Da~約4000Da、約1000Da~約3000Da、又は約1000Da~約2000Daの分子量を有するPEG成分を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項9】
前記PEG化脂質は、約1,000Da~5,000Da、好ましくは約2,000Da~5,000Daの分子量を有するPEG成分を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項10】
前記PEG化脂質は、10,000Da、9,000Da、8,000Da、7,000Da、6,000Da、5,000Da、4,000Da、3,000Da、2,000Da、1,000Da、900Da、800Da、700Da、600Da、500Da、400Da、300Da、200Da、及び100Daの分子量を有するPEG成分を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項11】
前記PEG化脂質は、DSPE-PEGであって、前記PEGは、2000Daの分子量を有する、請求項1~10のいずれか1項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項12】
前記カチオン性脂質は、N,N-ジオレイル-N,N-ジメチルアンモニウムクロリド(DODAC)、1,2-ジオエイルオキシ-3-(ジメチルアミノ)プロパン(DODAP)、1,2-ジオレイルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DODMA)、1,2-ジステアリルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DSDMA)、N-(1-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、N,N-ジステアリル-N,N-ジメチルアンモニウムブロミド(DDAB)、N-(1-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTAP)、3-(N-(N’,N’-ジメチルアミノエタン)-カルバモイル)コレステロール(DC-Chol)、N-(1,2-ジミリスチルオキシプロプ-3-イル)-N,N-ジメチル-N-ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DMRIE)、2,3-ジオレイルオキシ-N-[2-(スペルミンカルボキサミド)エチル]-N,N-ジメチル-1-プロパナミニウムトリフルオロアセテート(DOSPA)、ジオクタデシルアミドグリシルスペルミン(DOGS)、3-ジメチルアミノ-2-(コレスト-5-エン-3-β-オキシブタン-4-オキシ)-1-(シス,シス-9,12-オクタデカジエノキシ)プロパン(CLinDMA)、2-[5’-(コレスト-5-エン-3.β.オキシ)-3’-オキサペントキシ)-3-ジメチル-1-(シス,シス-9’,1-2’-オクタデカジエノキシ)プロパン(CpLinDMA)、N,N-ジメチル-3,4-ジオレイルオキシベンジルアミン(DMOBA)、1,2-N,N’-ジオレイルカルバミル-3-ジメチルアミノプロパン(DOcarbDAP)、1,2-N,N’-ジリノレイルカルバミル-3-ジメチルアミノプロパン(DLincarbDAP)、1,2-ジリノレオイルカルバミル-3-ジメチルアミノプロパン(DLinCDAP)、4-ヒドロキシブチル)アザンジイル)ビス(ヘキサン-6,1-ジイル)ビス(2-ヘキシルデカノエート)(ALC-3015)、8-[(2-ヒドロキシエチル)[6-オキソ-6-(ウンデシルオキシ)ヘキシル]アミノ]-オクタン酸,1-オクチルノニルエステル(SM-102)及びこれらの混合物のいずれか1つである、請求項1~11のいずれか1項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項13】
前記カチオン性脂質は、式Iであって、
【化1】
R
1及びR
2は、独立して選択され、H又はC
1-C
3アルキルであって、R
3及びR
4は、独立して選択され、約10~約20個の炭素原子を有するアルキル基であって、R
3及びR
4の少なくとも1つは、少なくとも2つの不飽和部位を含み、好ましくは、式Iのカチオン性脂質は、1,2-ジリノレイルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLinDMA)又は1,2-ジリノレイルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLenDMA)である、請求項1~11のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項14】
前記カチオン性脂質は、式IIであって、
【化2】
R
1及びR
2は、独立して選択され、H又はC
1-C
3アルキルであって、R
3及びR
4は、独立して選択され、約10~約20個の炭素原子を有するアルキル基であって、R
3及びR
4の少なくとも1つは、少なくとも2つの不飽和部位を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項15】
前記カチオン性脂質は、式IIIであって、
【化3】
R
1及びR
2は、同一であるか、それとも相違しており、独立して、任意に置換されたC
12-C
24アルキル、任意に置換されたC
12-C
24アルケニル、任意に置換されたC
12-C
24アルキニル、又は任意に置換されたC
12-C
24アシルであって;R
3及びR
4は、同一であるか、それとも相違しており、独立して、任意に置換されたC
1-C
6アルキル、任意に置換されたC
1-C
6アルケニル、又は任意に置換されたC
1-C
5アルキニルであるか、あるいはR
3及びR
4は、結合して、4~6個の炭素原子並びに窒素及び酸素から選択される1又は2個のヘテロ原子の任意に置換された複素環を形成してもよく;R
5は、存在しないか、あるいは水素又はC1-C6アルキルのいずれかであり、第4級アミンを提供し;m、n及びpは、同一であるか、それとも相違しており、m、n及びpが同時に0ではないという条件で、独立して0又は1のいずれかであり;qは、0、1、2、3又は4であり;かつY及びZは、同一であるか、それとも相違しており、独立してO、S又はNHである、請求項1~11のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項16】
前記式IIIのカチオン性脂質は、2,2-ジリノレイル-4-(2-ジメチルアミノエチル)-[1,3]-ジオキソラン(DLin-K-C2-DMA;「XTC2」)、2,2-ジリノレイル-4-(3-ジメチルアミノプロピル)-[1,3]-ジオキソラン(DLin-K-C3-DMA)、2,2-ジリノレイル-4-(4-ジメチルアミノブチル)-[1,3]-ジオキソラン(DLin-K-C4-DMA)、2,2-ジリノレイル-5-ジメチルアミノメチル-[1,3]-ジオキソラン(DLin-K6-DMA)、2,2-ジリノレイル-4-N-メチルペピアジノ-[1,3]-ジオキソラン(DLin-K-MPZ)、2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノメチル-[1,3]-ジオキソラン(DLin-K-DMA)、1,2-ジリノレイルカルバモイルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-C-DAP)、1,2-ジリノレイルオキシ-3-(ジメチルアミノ)アセトキシプロパン(DLin-DAC)、1,2-ジリノレイルオキシ-3-モルホリノプロパン(DLin-MA)、1,2-ジリノレイル-3-ジメチルアミノプロパン(DLinDAP)、1,2-ジリノレイルチオ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-S-DMA)、1-リノレイルオキシ-2-リノレイルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-2-DMAP)、1,2-ジリノレイルオキシ-3-トリメチルアミノプロパンクロリド塩(DLin-TMA.C1)、1,2-ジリノレオイル-3-トリメチルアミノプロパンクロリド塩(DLin-TAP.C1)、1,2-ジリノレイルオキシ-3-(N-メチルピペラジノ)プロパン(DLin-MPZ)、3-(N,N-ジリノレイルアミノ)-1,2-プロパンジオール(DLinAP)、3-(N,N-ジオレイルアミノ)-1,2-プロパンジオール(DOAP)、1,2-ジリノレイルオキシ-3-(2-N,N-ジメチルアミノ)エトキシプロパン(DLin-EG-DMA)、又はそれらの混合物である、請求項15に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項17】
前記カチオン性脂質は、DODAP、DLin-DMA、DLin-K-DMA、DLin-K2-DMA DLin-MC3-DMAである、請求項1~16のいずれか1項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項18】
前記カチオン性脂質は、粒子中に存在する全脂質の約40mol%~約60mol%、約40mol%~約55mol%、約40mol%~約50mol%、約40mol%~約45mol%、約45mol%~約60mol%、約50mol%~約60mol%、又は約55mol%~約60mol%を含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項19】
前記カチオン性脂質は、粒子中に存在する全脂質の約40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59又は60mol%を含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項20】
前記リン脂質は、カチオン性リン脂質である、請求項1~19のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項21】
前記リン脂質は、不飽和脂質である、請求項1~20のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項22】
前記リン脂質は、多価不飽和脂質である、請求項1~20のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項23】
前記リン脂質は、式(IV)に記載のものであって:
【化4】
式中、脂質部分を表して、R及びR’は、同一又は相違していてもよい、不飽和を有するか、あるいは有さない脂肪酸部分を表す、請求項1~22のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項24】
前記リン脂質部分は、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、2-リゾホスファチジルコリン、及びスフィンゴミエリンからなる群より選択される、請求項1~23のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項25】
前記リン脂は、ラウリン酸、ミリスチン酸、ミリストレイン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、α-リノレン酸、エルカ酸、フィタン酸、アラキジン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ベヘン酸、ドコサペンタエン酸、及びドコサヘキサエン酸からなる非限定的な群より選択される脂肪酸部分を有する、請求項1~24のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項26】
前記リン脂質は、レシチン、ホスファチジルエタノールアミン、リゾレシチン、リゾホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、スフィンゴミエリン、卵スフィンゴミエリン(ESM)、ケファリン、カルジオリピン、ホスファチジン酸、セレブロシド、ジセチルホスフェート、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、パルミトイルオレオイル-ホスファチジルコリン(POPC)、パルミトイルオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(POPE)、パルミトイルオレオイル-ホスファチジルグリセロール(POPG)、ジオレイルホスファチジルエタノールアミン4-(N-マレイミドメチル)-シクロヘキサン-1-カルボキシレート(DOPE-mal)、ジパルミトイル-ホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジミリストイル-ホスファチジルエタノールアミン(DMPE)、ジステアロイル-ホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、モノメチル-ホスファチジルエタノールアミン、ジメチル-ホスファチジルエタノールアミン、ジエライドイル-ホスファチジルエタノールアミン(DEPE)、ステアロイルオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(SOPE)、リゾホスファチジルコリン、ジリノレオイルホスファチジルコリン、及びそれらの混合物である、請求項1~23のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項27】
前記リン脂質は、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)である、請求項1~26のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項28】
前記リン脂質は、粒子中に存在する全脂質の約5mol%~約20mol%、約5mol%~約15mol%、約5mol%~約10mol%、約10mol%~約20mol%、又は約15mol%~約20mol%を含む、請求項1~27のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項29】
前記リン脂質は、典型的には、粒子中に存在する全脂質の5mol%~20mol%、5mol%~15mol%、5mol%~10mol%、10mol%~20mol%、又は15mol%~20mol%を含む、請求項1~27のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項30】
前記構造脂質は、コレステロール、フェコステロール、シトステロール、エルゴステロール、カンペステロール、スチグマステロール、ブラシカステロール、トマチジン、トマチン、ウルソール酸、α-トコフェロール、及びそれらの混合物からなる群より選択される、請求項1~29のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項31】
前記構造脂質は、コレステロールである、請求項1~30のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項32】
前記構造脂質は、粒子中に存在する全脂質の約30mol%~約50mol%、約30mol%~約45mol%、約30mol%~約40mol%、約30mol%~約35mol%、約35mol%~約50mol%、約40mol%~約50mol%、又は約45mol%~約50mol%を含む、請求項1~31のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項33】
前記構造脂質は、典型的には、粒子中に存在する全脂質の30mol%~50mol%、30mol%~45mol%、30mol%~40mol%、30mol%~35mol%、35mol%~50mol%、40mol%~50mol%又は45mol%~50mol%を含む、請求項1~31のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項34】
前記活性剤は、ペプチド又はポリペプチドを含むか、あるいは、からなる、請求項1~33のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項35】
前記ポリペプチドは、抗体、好ましくは、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、抗体フラグメント;ヒト化抗体、組換え抗体、組換えヒト抗体、Primatized(商標)抗体、又はそれらの混合物を含む、請求項34に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項36】
前記ペプチド又はポリペプチドは、サイトカイン、増殖因子、アポトーシス因子、分化誘導因子、細胞表面受容体、リガンド、ホルモン、小分子(例えば、有機小分子又は化合物)、又はそれらの混合物を含む、請求項34に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項37】
前記活性剤は、核酸を含むか、あるいは、からなる、請求項1~33のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項38】
前記核酸は、干渉RNA分子、好ましくは、siRNA、aiRNA、miRNA、又はそれらの混合物を含む、請求項37に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項39】
前記核酸は、一本鎖若しくは二本鎖DNA、RNA、又はDNA/RNAハイブリッド、好ましくは、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、プラスミド、免疫刺激オリゴヌクレオチド、又はそれらの混合物を含む、請求項37に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項40】
前記活性剤は、mRNAである、請求項1~39のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項41】
前記活性剤は、脂質粒子の脂質部分内に完全にカプセル化されており、脂質粒子内の活性剤又は治療薬は、水溶液中で、例えば、ヌクレアーゼ又はプロテアーゼによる酵素分解に対して耐性を示す、請求項1~40のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項42】
前記脂質ナノ粒子は、標的細胞の表面上の分子に特異的に結合するターゲティングリガンドを含まない、請求項1~41のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項43】
前記脂質ナノ粒子の平均サイズは、例えば、動的光散乱法(DLS)によって測定される、約100nmより大きい、請求項1~342のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項44】
前記平均サイズは、約75nm、80nm、85nm、90nm、95nm、100nm、105nm、110nm、115nm、120nm、125nm、130nm、135nm、140nm、145nm、150nm、155nm、165nm、170nm、175nm、180nm、185nm、190nm、195nm、200nm、205nm、210nm、215nm、220nm、225nm、230nm、235nm、240nm、245nm、250nm、255nm、260nm、265nm、270nm、275nm、280nm、285nm、290nm、295nm、300nm、305nm、310nm、315nm、320nm、325nm、330nm、335nm、340nm、345nm、350nm、355nm、360nm、365nm、370nm、375nm、380nm、385nm、390nm、395nm、400nm、405nm、410nm、415nm、420nm、425nm、430nm、435nm、440nm、445nm、450nm、455nm、460nm、465nm、470nm、475nm、480nm、485nm、490nm、又は500nmより大きく(greater than,or great than)てもよい、請求項1~43のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項45】
本発明のナノ粒子の前記平均サイズは、約75nm~約500nm、約80nm~約500nm、約90nm~約500nm、約100nm~約500nm、約110nm~約500nm、約120nm~約500nm、約130nm~約500nm、約140nm~約500nm、約150nm~約500nm、約160nm~約500nm、約170nm~約500nm、約180nm~約500nm、約190nm~約500nm、約200nm~約500nm、約210nm~約500nm、約220nm~約500nm、約230nm~約500nm、約240nm~約500nm、約250nm~約500nm、約260nm~約500nm、約270nm~約500nm、約280nm~約500nm、約300nm~約500nm、約310nm~約500nm、約320nm~約500nm、約330nm~約500nm、約340nm~約500nm、約350nm~約500nm、約360nm~約500nm、約370nm~約500nm、約380nm~約500nm、約390nm~約500nm、約400nm~約500nm、約410nm~約500nm、約420nm~約500nm、約430nm~約500nm、約440nm~約500nm、約450nm~約500nm、約460nm~約500nm、約470nm~約500nm、約480nm~約500nm、又は約490nm~約500nmであってもよい、請求項1~43のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項46】
本発明のナノ粒子の前記平均サイズは、約100nm~約490nm、約100nm~約480nm、約100nm~約470nm、約100nm~約460nm、約100nm~約450nm、約100nm~約440nm、約100nm~約430nm、約100nm~約420nm、約100nm~約430nmまで、約100nm~約420nm、約100nm~約410nm、約100nm~約400nm、約100nm~約390nm、約100nm~約380nm、約100nm~約370nm、約100nm~約360nm、約100nm~約350nm、約1000nm~約340nm、約100nm~約330nm、約100nm~約320nm、約100nm~約310nm、約100nm~約300nm、約100nm~約290nm、約100nm~約280nm、約100nm~約270nm、約100nm~約260nm、約100nm~約250nm、約100nm~約240nm、約100nm~約230nm、約100nm~約220nm、約100nm~約210nm、約100nm~約200nm、約100nm~約190nm、約100nm~約180nm、約100nm~約170nm、約100nm~約160nm、約100nm~約150nm、約100nm~約140nm、約100nm~約130nm、約100nm~約120nm、又は約100nm~約110nmであってもよい、請求項1~45のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項47】
前記脂質ナノ粒子は、約0~約0.25、例えば、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.10、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.20、0.21、0.22、0.23、0.24、又は0.25などの多分散指数を有する、求項1~46のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項48】
前記脂質ナノ粒子は、約0.10~約0.20の多分散指数を有する、請求項1~46のいずれか1項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項49】
前記ナノ粒子組成物のゼータ電位は、約-50mV~約+10mV、好ましくは、約-20mV~約+5mVである、請求項1~48のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子。
【請求項50】
請求項1~49のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子、及び薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項51】
細胞に活性剤を導入する方法であって、好ましくは、細胞がインビボで存在して、請求項1~49のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子と細胞を接触させ、それによって活性剤(例えば、核酸)を細胞に導入することを含む、方法。
【請求項52】
活性剤のインビボ送達のための方法であって、請求項1~49のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子、又は請求項50に記載の医薬組成物を、それを必要とする対象に投与して、それによって活性剤をインビボで送達することを含む、方法。
【請求項53】
それを必要とする対象において疾患又は状態を治療又は予防するための方法であって、請求項1~49のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子又は請求項50に記載の医薬組成物を対象に投与して、それによって、それを必要とする対象において疾患又は状態を治療又は予防することを含む、方法。
【請求項54】
細胞、好ましくは哺乳動物細胞において目的のポリペプチドを産生する方法であって、前記方法は、請求項1~47のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子、又は請求項50に記載の医薬組成物と細胞を接触させることを含み、前記活性剤が目的のポリペプチドをコードするmRNAであって、前記mRNAは、細胞内で翻訳されて目的のポリペプチドを産生することが可能である、方法。
【請求項55】
mRNAを細胞、好ましくは哺乳動物細胞に送達する方法であって、前記方法は、請求項1~49のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子、又は請求項50に記載の医薬組成物を対象に投与し、ここで前記活性剤はmRNAであり、それによってmRNAを細胞に送達することを含む、方法。
【請求項56】
前記細胞は、脾臓に存在する細胞である、請求項51、54又は55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記脾臓に存在する細胞は、脾臓の細胞又は脾臓に輸送される対象の別の部分に由来する細胞である、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
mRNAを標的組織に送達するための方法であって、請求項1~49のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子、又は請求項50に記載の医薬組成物を対象に投与し、ここで前記活性剤はmRNAであり、それによってmRNAを標的組織に送達することを含む、方法。
【請求項59】
前記標的組織は、哺乳動物の脾臓である、請求項55に記載の方法。
【請求項60】
それを必要とする対象において疾患又は状態を治療又は予防するための医薬の製造において、請求項1~49のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子、又は請求項50に記載の医薬組成物。
【請求項61】
それを必要とする対象において疾患又は状態の治療又は予防で用いる、請求項1~49のいずれか一項に記載の脂質ナノ粒子、又は請求項50に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の技術分野
本発明は、脂質ナノ粒子、脂質ナノ粒子を含む製剤及び前記脂質ナノ粒子及びその製剤を用いて疾患(diseases)又は状態(conditions)を治療する方法に関する。
【0002】
関連出願
本出願は、オーストラリア仮出願 AU 2021902567の優先権を主張するものであり、その全内容が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
小分子薬物、タンパク質、及び核酸などの生物学的に活性な物質の効果的な標的送達は、継続的な医学的課題の典型となる。特に、核酸の細胞への送達は、そのような種の相対的不安定性及び低い細胞透過性により困難である。したがって、核酸のような治療薬及び/又は予防薬の細胞への送達を容易にする方法及び組成物を開発する必要性が存在する。
【0004】
脂質含有ナノ粒子組成物、リポソーム、及びリポプレックスは、小分子薬物、タンパク質、及び核酸などの生物学的に活性な物質の細胞及び/又は細胞内区画への輸送体として有効であることが証明されている。そのような組成物には、一般に、「カチオン性」及び/又はアミノ(イオン化)脂質、多価不飽和脂質を含むリン脂質、構造脂質(例えば、ステロール)、及び/又はポリエチレングリコールを含む脂質(PEG脂質)の1つ以上が含まれる。カチオン性及び/又はイオン化脂質(Cationic and/or ionizable lipids)としては、例えば、容易にプロトン化され得るアミン含有脂質が挙げられる。
【0005】
脂質ナノ粒子製剤の送達有効性を改善することを目指して努力なされてきた。かかる努力の多くは、より適切なカチオン性脂質を開発することに向けられてきた。これらの努力にもかかわらず、特に治療上の使用を対象とする脂質ナノ粒子ベースの薬物送達システムに関して、有効性の向上という観点での改善が依然として必要とされている。
【0006】
その結果、有効性を向上する、特に、臓器分布を変化するための新規及び/又は改良された脂質ナノ粒子に対する必要性が存在する。
【0007】
本明細書における任意の先行技術への言及は、この先行技術がいかなる法域においても周知の一般知識の一部を形成していること、又はこの先行技術が当業者によって理解され、関連性があるとみなされ、及び/又は他の先行技術と組み合わされることが合理的に期待され得ることを承認又は示唆するものではない。
【発明の概要】
【0008】
一態様において、本発明は、以下を含む脂質ナノ粒子を提供する:
(a)活性剤;
(b)ナノ粒子中に存在する全脂質の約40mol%~約60mol%を含むカチオン性及び/又はイオン化脂質;
(c)ナノ粒子中に存在する全脂質の約5mol%~約20mol%を含むリン脂質;
(d)ナノ粒子中に存在する全脂質の約30mol%~約50mol%を含む構造脂質;
(e)ナノ粒子中に存在する全脂質の約0.05mol%~0.5mol%未満を含むPEG化脂質。
【0009】
好ましい実施形態において、脂質粒子中の活性剤又は治療剤が、水溶液中で酵素分解、例えば、ヌクレアーゼ又はプロテアーゼによる分解に対して耐性であるように、活性剤又は治療剤は、脂質粒子の脂質部分内に完全にカプセル化される。他の好ましい実施形態において、脂質粒子は、ヒトのような哺乳動物に対して実質的に非毒性である。
【0010】
一実施形態において、脂質ナノ粒子は、標的細胞の表面上の分子に特異的に結合する標的リガンドを含まない。別法として、脂質ナノ粒子は、標的リガンドを含まない。
【0011】
別の態様において、本発明は、本発明の脂質ナノ粒子及び薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤を含む医薬組成物を提供する。
【0012】
別の態様において、本発明は、活性剤(例えば、核酸)を細胞に導入する方法を提供しており、好ましくは、細胞は、インビボで存在し、前記方法は、細胞を本発明の脂質ナノ粒子と接触させ、それによって活性剤(例えば、核酸)を細胞に導入することを含む。
【0013】
別の態様において、本発明は、活性剤のインビボ送達のための方法を提供しており、前記方法は、本発明の脂質ナノ粒子を、それを必要とする対象に投与し、それによって対象に活性剤を送達することを含む。
【0014】
別の態様において、本発明は、それを必要とする対象の疾患又は状態を治療又は予防するための方法を提供しており、前記方法は、本発明の脂質ナノ粒子又は医薬組成物を対象に投与し、それによって、それを必要とする対象の疾患又は状態を治療又は予防することを含む。
【0015】
別の態様において、本発明は、それを必要とする対象における疾患又は状態を治療又は予防するための医薬の製造における本発明の脂質ナノ粒子又は医薬組成物を提供する。
【0016】
別の態様において、本発明は、それを必要とする対象における疾患又は状態の治療又は予防で用いるための本発明の脂質ナノ粒子又は医薬組成物を提供する。
【0017】
別の態様において、本発明は、細胞、好ましくは哺乳動物細胞において、目的のポリペプチドを産生する方法を提供しており、前記方法は、細胞を本発明の脂質ナノ粒子と接触させることを含み、前記活性剤は、目的のポリペプチドをコードするmRNAであり、前記mRNAは、細胞内で翻訳されて目的のポリペプチドを産生することができる。
【0018】
別の態様において、本発明は、mRNAを細胞、好ましくは哺乳動物細胞に送達する方法を提供しており、前記方法は、前記活性剤がmRNAである、本発明の脂質ナノ粒子を対象に投与し、それによってmRNAを細胞に送達することを含む。
【0019】
任意の態様又は実施形態において、細胞は、哺乳動物細胞である。
【0020】
任意の態様又は実施形態において、細胞は。脾臓に位置する細胞である。脾臓に位置する細胞は、脾臓の細胞又は脾臓に輸送される対象の別の部分に由来する細胞であってもよい。
【0021】
任意の実施形態において、脂質ナノ粒子は、肝臓と比較すると、脾臓を優先的に標的とする。一実施形態において、脂質ナノ粒子は、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5、11、11.5、12、12.5、13、13.5、14、又は14.5を超える脾臓/肝臓の標的比を有する。一実施形態において、脂質ナノ粒子は、約8以上、約14以上、又は実施例及び図を含む本明細書中に記述されている任意の他の値の脾臓/肝臓の標的比を有する。典型的には、脾臓/肝臓の標的比は、ナノルシフェラーゼアッセイなど、実施例を含む本明細書において記述されているアッセイを用いて決定される。
【0022】
別の態様において、本発明は、標的組織へのmRNAデリバリーのための方法を提供しており、前記方法は、前記活性剤がmRNAである、本発明の脂質ナノ粒子を対象に投与し、それによって標的組織にmRNAを送達することを含む。
【0023】
好ましくは、標的組織は、哺乳動物の脾臓である。
【0024】
別の態様において、本発明は、本発明の脂質ナノ粒子を産生するためのプロセスを提供しており、前記プロセスは、以下を含む;
・カチオン性及び/又はイオン化脂質、リン脂質、構造脂質及びPEG化脂質の溶液を混合して所望のモル比をもたらすこと、
それによって脂質ナノ粒子を産生すること。
【0025】
好ましくは、プロセスは、脂質を混合する工程に活性剤を添加することをさらに含む。一実施形態において、脂質ナノ粒子は、脂質成分対活性剤が、wt:wt比で約5:1~約50:1の間であるように形成される。一実施形態において、溶液中の最終脂質濃度は、約5.5mM~約50mMの間であり、好ましくは、エタノールで希釈される。
【0026】
カチオン性及び/又はイオン化脂質、リン脂質、構造脂質及びPEG化脂質の溶液を混合して所望のモル比をもたらすことにより、脂質溶液が形成されることができる。一実施形態において、脂質溶液は、Nano-Assemblerマイクロ流体ベースのシステムなどのマイクロ流体システムを用いて、約0.5ml/分~約8ml/分の間の流量で、活性剤を含む溶液中に迅速に注入され、それによって、約1:1~約4:1の間、好ましくは3:1の水対エタノール比を有する懸濁液を生成する。
【0027】
典型的には、NP比(窒素対ホスフェート)は、4~7の間に維持される。
【0028】
一実施形態において、本発明の脂質ナノ粒子を産生するプロセスは、本明細書中の実施例、例えば、実施例1に記述されている工程の1つ以上、又は全てを含む。
【0029】
本明細書で使用される場合、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、用語「comprise」並びに「comprising」、「comprises」、及び「comprised」などの用語の変形は、さらなる添加剤、成分、整数値(integers)又は工程を除外することを意図するものではない。
【0030】
本発明のさらなる態様及び先の段落に記述されている態様のさらなる実施形態は、例として、かつ添付の図面を参照して与えられる下記の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】
図1.NanoAssemblerを使用する脂質ナノ粒子生成の図解。
【0032】
【
図2】
図2.MIPS-LNPの粒径及び多分散性指数。(A)典型的なMIPS-LNP(n=3)の初期粒径及び多分散性指数(PDI)、これは粒子が、薬学的に許容されるサイズ及び分散性の両方の範囲内に含まれるということを示している。(B)MIPS-LNP対従来のLNPの粒径分布。(C)0日目、7日目及び6ヵ月目でのDMG-PEGを用いて産生された粒子の安定性。
【0033】
【
図3】
図3.DODAP脂質を使用するMIPS-LNPの脾臓送達嗜好性。円グラフは、IM注射後の筋肉を除いた組織における比例した遺伝子発現を示す。筋肉以外では、MIPS-LNP(A)は、用量の>75%を脾臓(ピンク色)に送達し、両方のリンパ節(DLN及び非DLN)にも積極的に送達するが、筋肉組織外では、従来のLNP(B)の用量のほとんどが、IM注射後に肝臓に入り、これはIV注射後の粒子の分布とある程度酷似している。組織のキー(Key to tissue):非DLN-非流入領域リンパ節(non-draining lymph nodes)、DLN-流入領域リンパ節(draining lymph nodes)、SP-脾臓、KD-腎臓、LG-肺、LV-肝臓。
【0034】
【
図4】
図4.MIPS-LNPは、従来のLNPと比較して、脾臓内での遺伝子導入及び発現を増進する。(A)マウスにMIPS-LNP製剤を筋肉内注射した結果として、従来のLNPと比較して、脾臓での遺伝子発現レベルが~100倍高くなる(強調表示されたボックス(highlighted box))。(n=3又は4)。組織のキー:非DLN-非流入領域リンパ節、DLN-流入領域リンパ節、SP-脾臓、KD-腎臓、LG-肺、LV-肝臓、QM-大腿四頭筋。(B)マウスにMIPS-LNP製剤(DODAPを使用)を静脈注射した結果として、脾臓における遺伝子発現レベルが従来のLNPよりも約500倍高くなる(強調表示されたボックス)。(n=2又は3)。LN1及びLN2-サンプルリンパ節。(C)MIPS-LNPの静脈内注射後に選別された脾細胞の分析では、従来のLNPと比較した、遺伝子発現レベルの増強が表示される。10μgのDODAP製剤化ナノルシフェラーゼmRNAをすべての実験で注射した。
【0035】
【
図5】
図5.オボアルブミン標的ワクチンのマウスモデルプロトコルの図解。フローサイトメーター及びFloJoソフトウェアを用いて分析を実施した。
【0036】
【
図6】
図6.MIPS-LNPは、オボアルブミンのエピトープに対する標的特異的細胞傷害性T細胞の死滅(killing)の増強(CD8+細胞応答)を誘導する。オボアルブミンをコードするmRNAを用いるワクチン接種後の細胞傷害性T細胞によるオボアルブミンパルス標的細胞のインビボ死滅。データは、非パルス状の細胞と比較した、致死の割合として提示した。各処置につき最低n=3を使用。データは、10μgの投与で、MIPS製剤が完全な殺細胞活性を誘導するのに対し、標準(従来型)LNPは誘導しないということを示している。
【0037】
【
図7】
図7.スクロース(Suc)の有無にかかわらず、様々な緩衝液中での凍結融解サイクル前後のLNPの粒径。異なるトリス緩衝液組成を使用した。スクロースもまた、保護剤として使用した。緩衝液間に大きな相違はなかったが、スクロースは、MIPS製剤の凍結融解安定性にとって重要であった。
【0038】
【
図8】
図8.ナノルシフェラーゼレベルは、0.15モル%又は1.5モル%のいずれかでDSPE-PEG又はDMG-PEGのいずれかを含むLNP製剤に、ナノルシフェラーゼmRNAを静脈内(A)又は筋肉内(大腿四頭筋)(B)送達した後の、組織の単位質量あたりの相対光単位として表された。LNP製剤は、DLin-MC3-DMA(50モル%)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)(10モル%)、PEG化脂質(0.15モル%又は1.5モル%)、コレステロール(脂質含量の残り、すなわち、それぞれ39.85モル%又は38.5モル%)を含んでいた。(A)ポストホック(post hoc)一対比較(pairwise compassion)を用いるANOVA。
*p<0.05,
**p<0.01;(B)ポストホック一対比較(pairwise compassion)を用いるANOVA。
*p<0.05,
**p<0.01、点線は、t検定
*p<0.05により分析されたデータを示す。組織のキー:LN1及びLN2-サンプルリンパ節、DLN-IM注射後の流入領域リンパ節、nDLA-非流入領域リンパ節(代替肢)、QM-大腿四頭筋。
【0039】
【
図9】
図9.DMG-PEGを含むLNP製剤の筋肉内データ(
図8にも示す)の統計比較。この実験では、DLinMC3 DMAをMIPS製剤に使用した。
【0040】
【
図10】
図10.筋肉内注射後の脾臓への組織ターゲティングは、脾臓及び肝臓におけるナノルシフェラーゼ活性を比として比較することにより示される。(A)0.15モル%のPEG化脂質を含むDMG-PEG及びDSPE-PEG製剤は両方とも、IM注射後に脾臓を標的とした。(B)肝臓に対する脾臓へのターゲティングは、低濃度のDMG-PEGでより顕著である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
実施形態の詳細な説明
次に、本発明の特定の実施形態について詳細に説明する。本発明を実施形態と併せて説明するが、本発明をこれらの実施形態に限定する意図はないことが理解されるであろう。それどころか、本発明は、特許請求の範囲によって規定される本発明の範囲内に含まれることができる、全ての代替物(alternatives)、修正物(modifications)、及び均等物(equivalents)をカバーすることを意図している。
【0042】
当業者は、本発明の実施において使用され得る、本明細書中に記述されているものと類似又は同等の多くの方法及び材料を認識するであろう。本発明は、記述された方法及び材料に決して限定されない。本明細書において開示及び規定される本発明は、本文又は図面から言及されるか、あるいは明らかな2つ以上の個々の特徴の全ての代替的な組み合わせにまで及ぶことが理解されるであろう。これらの異なる組み合わせは全て、本発明の様々な代替的態様を構成する。
【0043】
本明細書において言及される特許及び刊行物は全て、参照によりその全体が組み込まれる。
【0044】
本明細書の解釈上、単数形で使用される用語は、複数形も含み、逆の場合も同じである。
【0045】
別段の指示がない限り、本明細書において使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。さらに、本明細書において記述されている方法又は材料と類似又は同等の、任意の方法又は材料を本発明の実施に使用することができる。本発明の目的のために、下記の用語を定義する。
【0046】
本明細書で使用する場合、「a」、「an」、又は「the」という用語は、1つの部材(one member)を有する態様を含むだけでなく、2つ以上の部材を有する態様も含む。例えば、単数形の「a」、「an」、及び「the」は、文脈上明白に別段の指示をしている場合を除いて複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「細胞(a cell)」への言及は、複数のかかる細胞を含み、「薬剤(the agent)」への言及は、当業者などに既知の一又は複数の薬剤への言及を含む。本明細書の解釈上、単数形で使用される用語は、複数形も含み、逆の場合も同じである。
【0047】
本発明は、脾臓における細胞のトランスフェクションの増加をもたらす脂質ナノ粒子の驚くべき開発に基づいている。これは、脂質ナノ粒子が脾臓の細胞(例えば、脾細胞)の表面上の分子に特異的に結合する標的リガンドを含まないので、驚くべきことである。さらに、従来の脂質ナノ粒子と比較して、本発明の脂質ナノ粒子は、体内の一又は複数の他の部位(例えば、心臓、肝臓、腎臓、肺、血液、及び/又はリンパ節)におけるトランスフェクションを有意に増加させないので、細胞の感染の増加は、脾臓に特異的である。脾臓のこのトランスフェクションの増強は、本発明の脂質ナノ粒子を静脈内に、あるいは筋肉内に投与した場合に観察されるように、投与経路に依存しない。その上、本発明の脂質ナノ粒子によっても提供される利点は、脂質ナノ粒子のPEG-脂質含量が、ナノ粒子の全脂質の狭いmol%範囲内にある場合にのみ生じる。
【0048】
PEG-脂質のこの低く狭いmol%範囲は、直径が100nmに等しいか、あるいはより大きいナノ粒子をもたらすが、これは現在の脂質ナノ粒子の直径70~100nmのサイズ範囲より大きい。典型的には、本発明の脂質ナノ粒子は、直径が125nmより大きく、例えば、140~160nmなどである。
【0049】
本発明の脂質ナノ粒子のもう一つの特性は、異常に高い負のゼータ電位である。より高電荷の種は、細胞、組織、及び体内の他の要素と不必要に相互作用をする可能性があるため、正又は負の比較的低い電荷を有するナノ粒子が一般的に望ましい。しかしながら、本発明の脂質ナノ粒子は、高い負のゼータ電位を有し、驚くべきことに、脾臓における受動的ターゲティングの増加を示す。
【0050】
最後に、本発明の脂質ナノ粒子は、長期間、例えば、4℃で少なくとも5ヶ月間安定である。
【0051】
いかなる理論又は作用機序にもとらわれず、粒径の増大が、食細胞による相互作用及び更新を増強し、高度に負のゼータ電位と併せて、脾臓送達及び抗原提示細胞のトランスフェクションを促進すると考えられている。
【0052】
脂質ナノ粒子は、本明細書において記述されているような、多くの用途を有するが、脾臓の細胞のトランスフェクションの増強は、ワクチンに見出されるような抗原性分子又は免疫原性分子(又は抗原性分子若しくは免疫原性分子を産生するように細胞を誘導する分子)のための特に有益な送達ビヒクル(delivery vehicle)を提供する。脾細胞ターゲティングは、免疫チェックポイント(immunocheckpoint)阻害のためのタンパク質の発現などの多くの応用、並びにMIPS製剤による標的mRNAデリバリーを介した、抗原特異的耐性、一般的な耐性の誘導を誘導する、他の応用、並びにmRNAデリバリー、siRNAデリバリー、他の分子(例えば、MIPS LNPに組み込まれた小薬物など)を用いる、DNA又は他の任意の核酸又はmRNAデリバリーの手段を介した、自己免疫疾患に対抗すること、脾細胞によって引き起こされる炎症を軽減すること又はアレルギー反応及びアナフィラキシー反応を軽減することにおける応用にとって魅力的である。
【0053】
定義
本明細書で使用する場合、一又は複数の目的の値に適用される「約(approximately)」及び「約(about)」という用語は、記載された基準値に類似する値を指す。特定の実施形態において、「約(approximately)」又は「約(about)」という用語は、別段の記載がない限り、あるいは文脈上明白な場合を除き(そのような数値が可能値の100%を超える場合を除く)、いずれの方向(より大きいか、あるいはより小さい)にしても、記載された基準値の25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、又はそれ以下に収まる値の範囲を指す。例えば、ナノ粒子組成物の脂質成分中の所与の化合物の量の文脈で使用される場合、「約」は、言及された値の±10%を意味することができる。例えば、約40%の所与の化合物を有する脂質成分を含むナノ粒子組成物は、30~50%の化合物を含む可能性がある。
【0054】
ナノ粒子
本発明のナノ粒子の平均サイズは、例えば、動的光散乱法(DLS)によって測定される約100nmより大きくてもよい。例えば、平均粒径は、約75nm、80nm、85nm、90nm、95nm、100nm、105nm、110nm、115nm、120nm、125nm、130nm、135nm、140nm、145nm、150nm、155nm、165nm、170nm、175nm、180nm、185nm、190nm、195nm、200nm、205nm、210nm、215nm、220nm、225nm、230nm、235nm、240nm、245nm、250nm、255nm、260nm、265nm、270nm、275nm、280nm、285nm、290nm、295nm、300nm、305nm、310nm、315nm、320nm、325nm、330nm、335nm、340nm、345nm、350nm、355nm、360nm、365nm、370nm、375nm、380nm、385nm、390nm、395nm、400nm、405nm、410nm、415nm、420nm、425nm、430nm、435nm、440nm、445nm、450nm、455nm、460nm、465nm、470nm、475nm、480nm、485nm、490nm、又は500nmより大きいか、あるいはより大きく(greater than, or great than)てもよい。
【0055】
いくつかの実施形態において、本発明のナノ粒子の平均粒径は、約75nm~約500nm、約80nm~約500nm、約90nm~約500nm、約100nm~約500nm、約110nm~約500nm、約120nm~約500nm、約130nm~約500nm、約140nm~約500nm、約150nm~約500nm、約160nm~約500nm、約170nm~約500nm、約180nm~約500nm、約190nm~約500nm、約200nm~約500nm、約210nm~約500nm、約220nm~約500nm、約230nm~約500nm、約240nm~約500nm、約250nm~約500nm、約260nm~約500nm、約270nm~約500nm、約280nm~約500nm、約300nm~約500nm、約310nm~約500nm、約320nm~約500nm、約330nm~約500nm、約340nm~約500nm、約350nm~約500nm、約360nm~約500nm、約370nm~約500nm、約380nm~約500nm、約390nm~約500nm、約400nm~約500nm、約410nm~約500nm、約420nm~約500nm、約430nm~約500nm、約440nm~約500nm、約450nm~約500nm、約460nm~約500nm、約470nm~約500nm、約480nm~約500nm、又は約490nm~約500nmであってもよい。
【0056】
いくつかの実施形態において、本発明のナノ粒子の平均粒径は、約100nm~約490nm、約100nm~約480nm、約100nm~約470nm、約100nm~約460nm、約100nm~約450nm、約100nm~約440nm、約100nm~約430nm、約100nm~約420nm、約100nm~約430nm、約100nm~約420nm、約100nm~約410nm、約100nm~約400nm、約100nm~約390nm、約100nm~約380nm、約100nm~約370nm、約100nm~約360nm、約100nm~約350nm、約1000nm~約340nm、約100nm~約330nm、約100nm~約320nm、約100nm~約310nm、約100nm~約300nm、約100nm~約290nm、約100nm~約280nm、約100nm~約270nm、約100nm~約260nm、約100nm~約250nm、約100nm~約240nm、約100nm~約230nm、約100nm~約220nm、約100nm~約210nm、約100nm~約200nm、約100nm~約190nm、約100nm~約180nm、約100nm~約170nm、約100nm~約160nm、約100nm~約150nm、約100nm~約140nm、約100nm~約130nm、約100nm~約120nm、又は約100nm~約110nmであってもよい。
【0057】
ナノ粒子は比較的均質であってもよい。多分散性指数は、ナノ粒子組成物の均質性、例えば、ナノ粒子組成物の粒度分布を示すために使用されてもよい。小さい(例えば、0.3未満)多分散性指数は、一般に、狭い粒度分布を示す。ナノ粒子組成物は、約0~約0.25、例えば、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.10、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.20、0.21、0.22、0.23、0.24、又は0.25などの多分散性指数を有することができる。いくつかの実施形態において、ナノ粒子組成物の多分散性指数は、約0.10~約0.20であってもよい。
【0058】
本明細書で使用する場合、「ゼータ電位」とは、例えば、ナノ粒子中の脂質の界面動電位である。
【0059】
ナノ粒子のゼータ電位は、粒子の界面動電位を示すために使用されることができる。例えば、ゼータ電位は、ナノ粒子の表面電荷を表すことができる。より高電荷の種は、細胞、組織、及び体内の他の要素と望ましくない相互作用をする可能性があるため、正又は負の比較的低い電荷を有するナノ粒子が一般的に望ましい。しかしながら、現在の脂質ナノ粒子は、異常に高い負のゼータ電位を有する。いくつかの実施形態において、ナノ粒子のゼータ電位は、約-50mV~約+10mV、好ましくは約-10mV~約+5mVであることができる。いくつかの実施形態において、ナノ粒子のゼータ電位は、-50mV~+10mV、好ましくは-10mV~+5mVであることができる。さらに、いくつかの実施形態において、ナノ粒子のゼータ電位は、約-20mV~約-5mV、約-15mV~約-5mV、約-10mV~約-5mV、約-20mV~約-10mVであってもよい。さらに、いくつかの実施形態において、ナノ粒子のゼータ電位は、-20mV~-5mV、-15mV~-5mV、-10mV~-5mV、-20mV~-10mVであってもよい。さらに、いくつかの実施形態において、ナノ粒子のゼータ電位は、約-5mV、約-10MV、約-15mV又は約-20mVであってもよい。その上、いくつかの実施形態において、ナノ粒子のゼータ電位は、-5mV、-10mV、-15mV又は-20mVであってもよい。
【0060】
脂質ナノ粒子は、実施例1などの実施例に列挙されたものを含む、本明細書において記述されているいずれか1つであってもよい。
【0061】
カチオン性及び/又はイオン化脂質
様々なカチオン性脂質のいずれかが、本発明の脂質ナノ粒子に使用されることができる。
【0062】
本発明で有用であるカチオン性脂質は、生理的pHで正味の正電荷を有する多数の脂質種のいずれかであり得る。かかる脂質には、N,N-ジオレイル-N,N-ジメチルアンモニウムクロリド(DODAC)、1,2-ジオエイルオキシ-3-(ジメチルアミノ)プロパン(DODAP)、1,2-ジオレイルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DODMA)、1,2-ジステアリルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DSDMA)、N-(1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、N,N-ジステアリル-N,N-ジメチルアンモニウムブロミド(DDAB)、N-(1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル)-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTAP)、3-(N-(N’,N’-ジメチルアミノエタン)-カルバモイル)コレステロール(DC-Chol)、N-(1,2-ジミリスチルオキシプロップ-3-イル)-N,N-ジメチル-N-ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DMRIE)、2,3-ジオレイルオキシ-N-[2(スペルミン-カルボキサミド)エチル]-N,N-ジメチル-1-プロパナミニウムトリフルオロアセテート(DOSPA)、ジオクタデシルアミドグリシルスペルミン(DOGS)、3-ジメチルアミノ-2-(コレスト-5-エン-3-β-オキシブタン-4-オキシ)-1-(シス,シス-9,12-オクタデカジエノキシ)プロパン(CLinDMA)、2-[5’-(コレスト-5-エン-3.β.-オキシ)-3’-オキサペントキシ)-3-ジメチル-1-(シス,シス-9’,1-2’-オクタデカジエノキシ)プロパン(CpLinDMA)、N,N-ジメチル-3,4-ジオレイルオキシベンジルアミン(DMOBA)、1,2-N,N’-ジオレイルカルバミル-3-ジメチルアミノプロパン(DOcarbDAP)、1,2-N,N’-ジリノレイルカルバミル-3-ジメチルアミノプロパン(DLincarbDAP)、1,2-ジリノレオイルカルバミル-3-ジメチルアミノプロパン(DLinCDAP)、4-ヒドロキシブチル)アザンジイル)ビス(ヘキサン-6,1-ジイル)ビス(2-ヘキシルデカノエート)(ALC-0315)、8-[(2-ヒドロキシエチル)[6-オキソ-6-(ウンデシルオキシ)ヘキシル]アミノ]-オクタン酸,1-オクチルノニルエステル(SM-102)及びこれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。これらの脂質及び関連類似体の多くは、米国特許公開第20060083780号及び第20060240554号;米国特許第5,208,036号;同第5,264,618号;同第5,279,833号;同第5,283,185号;同第5,753,613号;及び同第5,785,992号;並びにPCT公開第WO 96/10390号に記述されており、これらの開示はそれぞれ、あらゆる目的のために、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。さらに、カチオン性脂質の多数の市販製剤が入手可能であり、本発明で使用され得る。これらには、例えば、LIPOFECTIN(登録商標)(DOTMA及びDOPEを含む市販のカチオン性リポソーム、GIBCO/BRL、Grand Island、N.Y.、USA製);LIPOFECTAMINE(登録商標)(DOSPA及びDOPEを含む市販のカチオン性リポソーム、GIBCO/BRL製);及びTRANSFECTAM(登録商標)(DOGSを含む市販のカチオン性リポソーム、Promega Corp.、Madison、Wis、USA製)が含まれる。
【0063】
さらに、下記の構造を有する式Iのカチオン性脂質は、本発明において有用である。
【化1】
ここで、R
1及びR
2は、独立して選択され、H又はC
1-C
3アルキルであり、R
3及びR
4は、独立して選択され、約10~約20の炭素原子を有するアルキル基であり、R
3及びR
4の少なくとも1つは、少なくとも2つの不飽和部位を含む。特定の例において、R
3及びR
4は両方とも同じであり、すなわち、R
3及びR
4は両方ともリノレイル(C
18)などである。特定の他の例において、R
3及びR
4は相違しており、すなわち、R
3はテトラデクトリエニル(C
14)であり、R
4はリノレイル(C
18)である。好ましい実施態様において、式Iのカチオン性脂質は対称であり、すなわち、R
3及びR
4は両方とも同じである。別の好ましい実施形態において、R
3及びR
4は、両方とも少なくとも2つの不飽和部位を含む。いくつかの実施形態において、R
3及びR
4は、ドデカジエニル、テトラデカジエニル、ヘキサデカジエニル、リノレイル、及びイコサジエニルからなる群より独立して選択される。好ましい実施形態において、R3及びR4は両方ともリノレイルである。いくつかの実施形態において、R
3及びR
4は、少なくとも3つの不飽和部位を含み、例えば、ドデカトリエニル、テトラデカトリエニル、ヘキサデカトリエニル、リノレニル、及びイコサトリエニルから独立して選択される。特に好ましい実施形態において、式Iのカチオン性脂質は、1,2-ジリノレイルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLinDMA)又は1,2-ジリノレイルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLenDMA)である。
【0064】
さらに、下記の構造を有する式IIのカチオン性脂質は、本発明において有用である。
【化2】
ここで、R
1及びR
2は、独立して選択され、H又はC
1-C
3アルキルであり、R
3及びR
4は、独立して選択され、約10~約20の炭素原子を有するアルキル基であり、R
3及びR
4の少なくとも1つは、少なくとも2つの不飽和部位を含む。特定の例において、R
3及びR
4は両方とも同じであり、すなわち、R
3及びR
4は両方ともリノレイル(C
18)などである。特定の他の例において、R
3及びR
4は相違しており、すなわち、R
3はテトラデクトリエニル(C
14)であり、R
4はリノレイル(C
18)である。好ましい実施態様において、本発明のカチオン性脂質は対称であり、すなわち、R
3及びR
4は両方とも同じである。別の好ましい実施形態において、R
3及びR
4は、両方とも少なくとも2つの不飽和部位を含む。いくつかの実施形態において、R
3及びR
4は、ドデカジエニル、テトラデカジエニル、ヘキサデカジエニル、リノレイル、及びイコサジエニルからなる群より独立して選択される。好ましい実施形態において、R
3及びR
4は両方ともリノレイルである。いくつかの実施形態において、R
3及びR
4は、少なくとも3つの不飽和部位を含み、例えば、ドデカトリエニル、テトラデカトリエニル、ヘキサデカトリエニル、リノレニル、及びイコサトリエニルから独立して選択される。
【0065】
その上、下記の構造(又はその塩)を有する式IIIのカチオン性脂質は、本発明において有用である。
【化3】
ここで、R
1及びR
2は、同じか、あるいは相違しており、独立して、任意に置換されたC
12-C
24アルキル、任意に置換されたC
12-C
24アルケニル、任意に置換されたC
12-C
24アルキニル、又は任意に置換されたC
12-C
24アシルであり;R
3及びR
4は、同じか、あるいは相違しており、独立して、任意に置換されたC
1-C
6アルキル、任意に置換されたC
1-C
6アルケニル、又は任意に置換されたC
1-C
5アルキニルであるか、あるいはR
3及びR
4は、結合して、4~6個の炭素原子及び窒素及び酸素から選択される1又は2個のヘテロ原子の任意に置換された複素環を形成してもよい;R5は、存在しないか、あるいは水素又は第4級アミンを提供するためのC
1-C
6アルキルのいずれかであり、;m、n及びpは、同じか、あるいは相違しており、独立して0又は1のいずれかであり、ただし、m、n及びpは、同時に0ではない;qは、0、1、2、3又は4であり;そしてY及びZは、同じか、あるいは相違しており、独立してO、S又はNHである。
【0066】
いくつかの実施形態において、式IIIのカチオン性脂質は、2,2-ジリノレイル-4-(2-ジメチルアミノエチル)-[1,3]-ジオキソラン(DLin-K-C2-DMA;「XTC2」)、2,2-ジリノレイル-4-(3-ジメチルアミノプロピル)-[1,3]-ジオキソラン(DLin-K-C3-DMA)、2,2-ジリノレイル-4-(4-ジメチルアミノブチル)-[1,3]-ジオキソラン(DLin-K-C4-DMA)、2,2-ジリノレイル-5-ジメチルアミノメチル-[1,3]-ジオキソラン(DLin-K6-DMA)、2,2-ジリノレイル-4-N-メチルペピアジノ-[1,3]-ジオキソラン(DLin-K-MPZ)、2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノメチル-[1,3]-ジオキソラン(DLin-K-DMA)、1,2-ジリノレイルカルバモイルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-C-DAP)、1,2-ジリノレイルオキシ-3-(ジメチルアミノ)アセトキシプロパン(DLin-DAC)、1,2-ジリノレイルオキシ-3-モルホリノプロパン(DLin-MA)、1,2-ジリノレイル-3-ジメチルアミノプロパン(DLinDAP)、1,2-ジリノレオイルチオ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-S-DMA)、1-リノレオイル-2-リノレオイルオキシ-3-ジメチルアミノプロパン(DLin-2-DMAP)、1,2-ジリノレオイルオキシ-3-トリメチルアミノプロパンクロリド塩(DLin-TMA.C1)、1,2-ジリノレオイル-3-トリメチルアミノプロパンクロリド塩(DLin-TAP.C1)、1,2-ジリノレイルオキシ-3-(N-メチルピペラジノ)プロパン(DLin-MPZ)、3-(N,N-ジリノレイルアミノ)-1,2-プロパンジオール(DLinAP)、3-(N,N-ジオレイルアミノ)-1,2-プロパンジオール(DOAP)、1,2-ジリノレイルオキソ-3-(2-N,N-ジメチルアミノ)エトキシプロパン(DLin-EG-DMA)、又はそれらの混合物である。好ましい実施形態において、式IIIのカチオン性脂質は、DLin-K-C2-DMA(XTC2)である。
【0067】
好ましくは、カチオン性脂質は、DODAP、DLin-DMA、DLin-K-DMA、DLin-K2-DMA DLin-MC3-DMAである。
【0068】
カチオン性脂質は、典型的には、粒子中に存在する全脂質の約40mol%~約60mol%、約40mol%~約55mol%、約40mol%~約50mol%、約40mol%~約45mol%、約45mol%~約60mol%、約50mol%~約60mol%、又は約55mol%~約60mol%を含む。
【0069】
カチオン性脂質は、典型的には、粒子中に存在する全脂質の約40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59又は60mol%を含む。
【0070】
リン脂質
本明細書で使用する場合、「リン脂質」とは、リン酸部分及び不飽和脂肪酸鎖などの、一又は複数の炭素鎖を含む脂質である。リン脂質は、一又は複数の多重(例えば、二重又は三重)結合(例えば、一又は複数の不飽和)を含むことができる。特定のリン脂質は、膜への融合を促進することができる。例えば、カチオン性リン脂質は、膜(例えば、細胞膜又は細胞内膜)の一又は複数の負に帯電したリン脂質と相互作用することができる。リン脂質の膜への融合は、一又は複数の脂質含有組成物の要素が膜を通過することを可能にし、例えば、一又は複数の要素を細胞に送達することを可能にする。
【0071】
脂質ナノ粒子又は組成物の脂質成分は、一又は複数のリン脂質、例えば、一又は複数の(ポリ)不飽和脂質を含むことができる。リン脂質は、一又は複数の脂質二重層に集合することができる。一般に、リン脂質は、リン脂質部分及び一又は複数の脂肪酸部分を含むことができる。例えば、リン脂質は、式(IV)による脂質であってもよい:
【化4】
これはリン脂質部分を表しており、R及びR’は、同じであっても異なっていてもよい、不飽和を有するか、あるいは有さない脂肪酸部分を表す。リン脂質部分は、以下からなる非限定的な群より選択されることができる:
・ホスファチジルコリン、
・ホスファチジルエタノールアミン、
・ホスファチジルグリセロール、
・ホスファチジルセリン、
・ホスファチジン酸、
・2-リゾホスファチジルコリン、及び
・スフィンゴミエリン。
【0072】
脂肪酸部分は、以下からなる非限定的な群より選択されることができる:
・ラウリン酸、
・ミリスチン酸、
・ミリストレイン酸、
・パルミチン酸、
・パルミトレイン酸、
・ステアリン酸、
・オレイン酸、
・リノール酸、
・α-リノレン酸、
・エルカ酸、
・フィタン酸、
・アラキジン酸、
・アラキドン酸、
・エイコサペンタエン酸、
・ベヘン酸、
・ドコサペンタエン酸、
・ドコサヘキサエン酸。
【0073】
分岐、酸化、環化及びアルキンを含む修飾及び置換を有する天然種を含む、非天然種もまた、意図される。例えば、リン脂質は、一又は複数のアルキン(例えば、一又は複数の二重結合が三重結合で置換されたアルケニル基)で官能基化されるか、あるいは架橋されてもよい。適切な反応条件下では、アルキン基は、アジドに曝露されると、銅触媒環状付加反応を受ける。かかる反応は、ナノ粒子組成物の脂質二重層を官能化して膜透過又は細胞認識を促進するか、あるいは、ナノ粒子組成物をターゲティング又はイメージング部分(例えば、色素)のような有用成分と結合させるのに有用である。
【0074】
意図されるのは、例えば、レシチン、ホスファチジルエタノールアミン、リゾレシチン、リゾホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、スフィンゴミエリン、卵スフィンゴミエリン(ESM)、ケファリン、カルジオリピン、ホスファチジン酸、セレブロシド、ジセチルホスフェート、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、パルミトイルオレオイル-ホスファチジルコリン(POPC)、パルミトイルオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(POPE)、パルミトイルオレオイル-ホスファチジルグリセロール(POPG)、ジオレイルホスファチジルエタノールアミン4-(N-マレイミドメチル)-シクロヘキサン-1-カルボキシレート(DOPE-mal)、ジパルミトイル-ホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジミリストイル-ホスファチジルエタノールアミン(DMPE)、ジステアロイル-ホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、モノメチル-ホスファチジルエタノールアミン、ジメチル-ホスファチジルエタノールアミン、ジエライドイル-ホスファチジルエタノールアミン(DEPE)、ステアロイルオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(SOPE)、リゾホスファチジルコリン、ジリノレオイルホスファチジルコリン、及びこれらの混合物などのリン脂質である。他のジアシルホスファチジルコリン及びジアシルホスファチジルエタノールアミンリン脂質もまた、使用され得る。これらの脂質中のアシル基は、好ましくは、C10-C24炭素鎖を有する脂肪酸由来のアシル基、例えば、ラウロイル、ミリストイル、パルミトイル、ステアロイル、又はオレオイルである。
【0075】
いくつかの実施形態において、ナノ粒子組成物はDSPCを含む。特定の実施形態において、ナノ粒子組成物はDOPEを含む。いくつかの実施形態において、ナノ粒子組成物は、DSPC及びDOPEの両方を含む。
【0076】
リン脂質は、典型的には、粒子中に存在する全脂質の約5mol%~約20mol%、約5mol%~約15mol%、約5mol%~約10mol%、約10mol%~約20mol%、又は約15mol%~約20mol%を含む。
【0077】
リン脂質は、典型的には、粒子中に存在する全脂質の5mol%~20mol%、5mol%~15mol%、5mol%~10mol%、10mol%~20mol%、又は15mol%~20mol%を含む。
【0078】
構造脂質
ナノ粒子組成物の脂質成分は、一又は複数の構造脂質を含むことができる。構造脂質は、コレステロール、フェコステロール、シトステロール、エルゴステロール、カンペステロール、スチグマステロール、ブラシカステロール、トマチジン、トマチン、ウルソール酸、α-トコフェロール、及びこれらの混合物からなる群より選択され得るが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、構造脂質はコレステロールである。いくつかの実施形態において、構造脂質は、コレステロール及びコルチコステロイド(例えば、プレドニゾロン、デキサメタゾン、プレドニゾン、及びヒドロコルチゾンなど)、又はその組み合わせを含む。さらに、構造脂質は、スクアレン、スクアレン又はその組み合わせであってもよい。
【0079】
構造脂質は、ゲラニルアセテート、ファルネシルアセテート又はゲラニル-ゲラニル、又はエーテル、エステル、又は他の誘導体を含む脂質を含んでもよい。
【0080】
構造脂質は、典型的には、粒子中に存在する全脂質の約30mol%~約50mol%、約30mol%~約45mol%、約30mol%~約40mol%、約30mol%~約35mol%、約35mol%~約50mol%、約40mol%~約50mol%、又は約45mol%~約50mol%を含む。
【0081】
構造脂質は、典型的には、粒子中に存在する全脂質の30mol%~50mol%、30mol%~45mol%、30mol%~40mol%、30mol%~35mol%、35mol%~50mol%、40mol%~50mol%、又は45mol%~50mol%を含む。
【0082】
PEG化脂質
脂質ナノ粒子又は組成物の脂質成分は、一又は複数のPEG又はPEG修飾脂質を含むことができる。そのような種は、その代わりにPEG化脂質と呼ばれる可能性がある。本明細書で使用する場合、「PEG脂質」又は「PEG化脂質」は、ポリエチレングリコール成分を含む脂質を指す。PEG脂質は、以下からなる非限定的な群より選択されることができる:
・PEG修飾ホスファチジルエタノールアミン、
・PEG修飾ホスファチジン酸、
・PEG修飾セラミド、
・PEG修飾ジアルキルアミン、
・PEG修飾ジアシルグリセロール、
・PEG修飾ジアルキルグリセロール、及び
・それらの混合物。
【0083】
例えば、PEG脂質は、PEG-c-DOMG、PEG-DMG、PEG-DLPE、PEG-DMPE、PEG-DPPC、又はPEG-DSPE脂質であることができる。
【0084】
別の実施形態において、PEG化脂質は、DMG-PEGとしても知られている、1,2-ジミリストイル-rac-グリセロ-3-メトキシポリエチレングリコール-2000であってもよい。
【0085】
別の実施形態において、PEG化脂質は、2-[(ポリエチレングリコール)-2000]-N,N-ジテトラデシルアセトアミド(ALC-0159)であってもよい。
【0086】
PEG化脂質は、約100ダルトン(Da)~10,000Da又は望ましいそれ以上(場合により0.1~10kDaを含むが、これらに限定されない)を含むが、これらに限定されない、実際的に望ましい任意の分子量(molecular mass)の分子量(a molecular weight)を有するPEG成分を有してもよい。PEGの分子量は、約100Da~約10,000Da以上を含むがこれらに限定されない広い範囲のものであってもよい。PEGは、10,000Da、9,000Da、8,000Da、7,000Da、6,000Da、5,000Da、4,000Da、3,000Da、2,000Da、1,000Da、900Da、800Da、700Da、600Da、500Da、400Da、300Da、200Da、及び100Daを含むが、これらに限定されない、約100Da~約100,000Daであってもよい。いくつかの実施形態において、PEGは、約100Da~10,000Da、約1000Da~9,000Da、約1000Da~8,000Da、約1000Da~7,000Da、約1000Da~6,000Da、約1000Da~5,000Da、約1000Da~4,000Da、約1000Da~3,000Da、又は約1000Da~2,000Daである。いくつかの実施形態において、PEGは、約1000Da~5000Daである。いくつかの実施形態において、PEGは、約2,000Da~5,000Daである。
【0087】
PEG化脂質は、典型的には、粒子中に存在する全脂質の約0.05mol%~約0.5mol%、約0.06mol%~約0.5mol%、約0.07mol%~約0.5mol%、約0.08mol%~約0.5mol%、約0.09mol%~約0.5mol%、約0.1mol%~約0.5mol%、約0.15mol%~約0.5mol%、約0.2mol%~約0.5mol%、約0.25mol%~約0.5mol%、約0.3mol%~約0.5mol%、約0.3mol%~約0.5mol%、約0.35mol%~約0.5mol%、約0.4mol%~約0.5mol%、約0.45mol%~約0.5mol%、約0.05mol%~約0.45mol%、約0.05mol%~約0.4mol%、約0.05mol%~約0.35mol%、約0.05mol%~約0.3mol%、約0.05mol%~約0.25mol%、約0.05mol%~約0.2mol%、約0.05mol%~約0.15mol%、約0.05mol%~約0.1mol%、約0.05mol%~約0.09mol%、約0.05mol%~約0.08mol%、約0.05mol%~約0.07mol%、又は約0.05mol%~約0.06mol%を含む。
【0088】
PEG化脂質は、典型的には、粒子中に存在する全脂質の0.05mol%~0.5mol%、0.06mol%~0.5mol%、0.07mol%~0.5mol%、0.08mol%~0.5mol%、0.09mol%~0.5mol%、0.1mol%~0.5mol%、0.15mol%~0.5mol%、0.2mol%~0.5mol%、0.25mol%~0.5mol%、0.3mol%~0.5mol%、0.3mol%~0.5mol%、0.35mol%~0.5mol%、0.4mol%~0.5mol%、0.45mol%~0.5mol%、0.05mol%~0.45mol%、0.05mol%~0.4mol%、0.05mol%~0.35mol%、0.05mol%~0.3mol%、0.05mol%~0.25mol%、0.05mol%~0.2mol%、0.05mol%~0.15mol%、0.05mol%~0.1mol%、0.05mol%~0.09mol%、0.05mol%~0.08mol%、0.05mol%~0.07mol%、又は0.05mol%~0.06mol%を含む。
【0089】
PEG化脂質は、典型的には、粒子中に存在する全脂質の0.05mol%、0.06mol%、0.07mol%、0.08mol%、0.09mol%、0.1mol%、0.15mol%、0.2mol%、0.25mol%、0.3mol%、0.35mol%、0.4mol%、又は0.45mol%を含む。
【0090】
本明細書で使用する場合、モル%及びmol%は同義で使用される。
【0091】
活性剤
脂質ナノ粒子は、一又は複数の治療薬及び/又は予防薬を含むことができる。本開示は、治療薬及び/又は予防薬を哺乳動物細胞又は器官に送達する方法、任意に哺乳動物細胞において目的のポリペプチドを産生する方法、及び治療薬及び/又は予防薬を含む脂質ナノ粒子を哺乳動物に投与すること及び/又は哺乳動物細胞と接触させることを含む、それを必要とする哺乳動物の疾患又は障害を治療する方法を特徴とする。
【0092】
治療薬及び/又は予防薬は、生物学的に活性な物質を含み、その代わりに「活性剤」と呼ばれる。治療薬及び/又は予防薬は、一旦細胞又は器官に送達されると、細胞、器官、又は他の身体組織又は体系に望ましい変化をもたらす物質であることができる。そのような薬剤は、一又は複数の疾患、障害、又は状態の治療に有用であることができる。いくつかの実施形態において、治療薬及び/又は予防薬は、特定の疾患、障害、又は状態の治療に有用な小分子薬物である。ナノ粒子組成物において有用な薬剤の例には、抗腫瘍薬(antineoplastic agents)(例えば、ビンクリスチン、ドキソルビシン、ミトキサントロン、カンプトテシン、シスプラチン、ブレオマイシン、シクロホスファミド、メトトレキセート、及びストレプトゾトシン)、抗がん剤(antitumor agents)(例えば、アクチノマイシンD、ビンクリスチン、ビンブラスチン、シスチンアラビノシド、アントラサイクリン、アルキル化剤、白金化合物、代謝拮抗剤、及びメトトレキサート及びプリン及びピリミジンアナログなどのヌクレオシドアナログ)、抗感染剤、局所麻酔薬(例えば、ジブカイン及びクロルプロマジン)、βアドレナリン遮断薬(例えば、プロプラノロール、チモロール、及びラベトロール(labetolol))、抗高血圧薬(例えば、クロニジン及びヒドララジン)、抗うつ薬(例えば、イミプラミン、アミトリプチリン、及びドキセピム(doxepim))、抗けいれん薬(anti-conversants)(例えば、フェニトイン)、抗ヒスタミン薬(例えば、ジフェンヒドラミン、クロルフェニリミン(chlorphenirimine)、及びプロメタジン)、抗生物質製剤/抗菌剤(例えば、ゲンタマイシン、シプロフロキサシン、及びセフォキシチン)、抗真菌薬(例えば、ミコナゾール、テルコナゾール、エコナゾール、イソコナゾール、ブタコナゾール(butaconazole)、クロトリマゾール、イトラコナゾール、ナイスタチン、ナフチフィン、及びアムホテリシンB)、抗寄生虫剤、ホルモン、ホルモン拮抗薬、免疫調節剤、神経伝達物質拮抗薬、抗緑内障薬、ビタミン、麻酔薬、及び造影剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0093】
本発明は、一又は複数の活性剤を含む新規な脂質ナノ粒子、脂質粒子を製造する方法、及び脂質ナノ粒子を送達及び/又は投与する方法(例えば、疾患又は障害の治療のため)を提供する。
【0094】
一態様において、本発明は以下を含む脂質ナノ粒子を提供する:
(a)活性剤
(b)ナノ粒子中に存在する全脂質の約40mol%~約60mol%を含むカチオン性及び/又はイオン化脂質
(c)ナノ粒子中に存在する全脂質の約5mol%~約20mol%を含むリン脂質;
(d)ナノ粒子中に存在する全脂質の約30mol%~約50mol%を含む構造脂質;
(e)ナノ粒子中に存在する全脂質の約0.05mol%~0.5mol%未満を含むPEG化脂質。
【0095】
本明細書で使用する場合、(b)、(c)、(d)及び(e)は「脂質成分」と呼ばれる可能性がある。
【0096】
特定の実施形態において、活性剤又は治療薬は、脂質ナノ粒子中の活性剤が、例えば、ヌクレアーゼ又はプロテアーゼによる酵素分解に対して水溶液中で耐性を有示すように、脂質粒子の脂質部分内に完全に封入される。特定の他の実施形態において、脂質ナノ粒子は、ヒトなどの哺乳動物に対して実質的に無毒性である。
【0097】
いくつかの実施形態において、活性剤又は治療薬は、核酸を含む。特定の実施態様において、核酸は、例えば、siRNA、aiRNA、miRNA、又はそれらの混合物などの干渉RNA分子を含む。特定の他の実施態様において、核酸は、一本鎖若しくは二本鎖DNA、RNA、又は例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、プラスミド、免疫刺激性オリゴヌクレオチド、若しくはそれらの混合物のようなDNA/RNAハイブリッドを含む。
【0098】
脂質ナノ粒子中のmRNAの量は、mRNAのサイズ、配列、及び他の特性に依存する可能性がある。脂質ナノ粒子中のmRNAの量はまた、脂質ナノ粒子のサイズ、組成、所望の標的、及び他の特性にも依存する可能性がある。mRNA及び他の要素(例えば、脂質)の相対量もまた、変化する可能性がある。いくつかの実施形態において、ナノ粒子組成物中のmRNAに対する脂質成分のwt/wt比は、約5:1~約50:1、例えば、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、11:1、12:1、13:1、14:1、15:1、16:1、17:1、18:1、19:1、20:1、25:1、30:1、35:1、40:1、45:1、及び50:1などであることができる。例えば、mRNAに対する脂質成分のwt/wt比は、約10:1~約40:1であってもよい。ナノ粒子組成物中のmRNAの量は、例えば、吸光分光法(例えば、紫外可視分光法)を用いて測定されることができる。
【0099】
いくつかの実施形態において、ナノ粒子組成物中のmRNAに対する脂質成分のwt/wt比は、約5:1~約50:1である。特定の実施形態において、wt/wt比は、約10:1~約40:1である。
【0100】
いくつかの実施形態において、一又は複数のmRNA、脂質、及びそれらの量は、特定のN:P比を提供するように選択されることができる。組成物のN:P比は、mRNA中のリン酸基の数に対する、一又は複数の脂質中の窒素原子のモル比を指す。一般に、N:P比は低い方が好ましい。一又は複数のmRNA、脂質、及びそれらの量は、約2:1~約8:1、例えば、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、及び8:1などのN:P比を提供するように選択されることができる。特定の実施形態において、N:P比は、約2:1~約5:1であってもよい。好ましい実施形態において、N:P比は、約4:1であってもよい。他の実施形態において、N:P比は、約5:1~約8:1である。例えば、N:P比は、約5.0:1、約5.5:1、約5.67:1、約6.0:1、約6.5:1、又は約7.0:1であってもよい。
【0101】
いくつかの実施形態において、ナノ粒子組成物のN:P比は、約2:1~約8:1である。特定の実施形態において、N:P比は、約2:1~約5:1である。好ましい実施形態において、N:P比は、約4:1である。特定の実施形態において、N:P比は、約5:1~約8:1である。例えば、N:P比は、約5.0:1、約5.5:1、約5.67:1、約6.0:1、約6.5:1、又は約7.0:1であってもよい。
【0102】
他の実施形態において、活性剤又は治療薬は、ペプチド又はポリペプチドを含む。特定の例において、ペプチド又はポリペプチドは、例えば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、抗体フラグメント;ヒト化抗体、組換え抗体、組換えヒト抗体、Primatized(商標)抗体、又はそれらの混合物などの抗体を含む。特定の他の実施態様において、ペプチド又はポリペプチドは、サイトカイン、成長因子、アポトーシス因子、分化誘導因子、細胞表面レセプター、リガンド、ホルモン、小分子(例えば、有機小分子(small organic molecule)又は化合物)、又はそれらの混合物を含む。
【0103】
いくつかの実施形態において、活性剤は、治療剤、又はその塩若しくは誘導体である。治療薬誘導体は、それら自体に治療効果があるか、あるいはさらなる修飾により活性となる、プロドラッグであってもよい。したがって、一実施形態において、治療薬誘導体は、未修飾の薬剤と比較して、一部又は全ての治療活性を保持するが、別の実施形態において、治療薬誘導体は、治療活性を欠くが、さらなる修飾により活性となるプロドラッグである。
【0104】
A.核酸
特定の実施形態において、本発明の脂質ナノ粒子は、核酸と結合し(associated with)、核酸-脂質ナノ粒子(例えば、NALP)をもたらす。いくつかの実施形態において、核酸は、脂質粒子中に完全に封入される。本明細書で使用する場合、「核酸」という用語は、任意のオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドを含み、最大で60までのヌクレオチドを含む断片は一般にオリゴヌクレオチドと称され、より長い断片はポリヌクレオチドと称される。
【0105】
特定の実施形態において、本発明のオリゴヌクレオチドは、約15~約60ヌクレオチド長である。核酸は、本発明の脂質粒子中に単独で、あるいはペプチド、ポリペプチド、又は従来の薬物のような小分子を含む本発明の脂質ナノ粒子と組み合わせて(例えば、共投与)投与されることができる。
【0106】
本発明の文脈において、「ポリヌクレオチド」及び「オリゴヌクレオチド」という用語は、天然に存在する塩基、糖及びインターシュガー(intersugar)(バックボーン)リンケージからなるヌクレオチド又はヌクレオシドモノマーのポリマー又はオリゴマーを指す。「ポリヌクレオチド」及び「オリゴヌクレオチド」という用語はまた、天然に存在しないモノマー、又はその一部を含むポリマー又はオリゴマーも含み、これらは同様に機能する。そのような修飾オリゴヌクレオチド又は置換オリゴヌクレオチドは、例えば、細胞取り込みの促進、免疫原性の低下、ヌクレアーゼの存在下での安定性の向上などの特性のために、しばしば天然型よりも好まれる。
【0107】
オリゴヌクレオチドは、一般に、デオキシリボオリゴヌクレオチド又はリボオリゴヌクレオチドに分類される。デオキシリボオリゴヌクレオチドは、デオキシリボースと呼ばれる五炭糖からなり、この糖の5’及び3’の炭素でホスフェートに共有結合して、交互の、非分岐ポリマー(an alternating,unbranched polymer)を形成する。リボオリゴヌクレオチドは、五炭糖がリボースである同様の反復構造からなる。
【0108】
本発明による核酸-脂質ナノ粒子中に存在する核酸は、既知である任意の形態の核酸を含む。本明細書において使用される核酸は、一本鎖DNA若しくはRNA(例えば、mRNA前駆体、成熟mRNA、mRNA)、又は二本鎖DNA若しくはRNA、又はDNA-RNAハイブリッドであり得る。二本鎖DNAの例は、本明細書において記述されており、例えば、構造遺伝子、制御領域及び終端領域を含む遺伝子、並びにウイルスDNA又はプラスミドDNAのような自己複製系を含む。二本鎖RNAの例は、本明細書において記述されており、例えば、siRNA、並びにaiRNA及びpre-miRNAなどの他のRNAi剤を含む。一本鎖核酸には、例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、成熟miRNA、及び三重鎖形成オリゴヌクレオチドが含まれる。
【0109】
本発明の脂質ナノ粒子に含まれるか、あるいはそれによってカプセル化されるmRNAは、目的のポリペプチドをコードすることができる。好ましくは、mRNAは、細胞内で翻訳されて目的のポリペプチドを産生することができる。目的のポリペプチドは、体液性(例えば、B細胞又はT細胞)免疫系を刺激するために使用されるような、抗原性又は免疫原性ポリペプチドであってもよい。目的のポリペプチドは、哺乳動物、好ましくはヒトの治療又は予防免疫に有用である。目的のポリペプチドは、疾患又は状態、好ましくは、状態は感染症であるが、に対する治療又は予防効果を提供するために有用であることができる。感染症は、任意の微生物、例えば、細菌、ウイルス、真菌又は原虫などによるものであってもよい。ウイルスは、コロナウイルス、好ましくは、SARS-CoV又はSARS-CoV-2を含むが、これらに限定されない任意のウイルスであってもよい。
【0110】
本発明の核酸は、一般に核酸の特定の形態に依存して、様々な長さのものであってもよい。例えば、特定の実施形態において、プラスミド又は遺伝子は、長さが約100~約100,000ヌクレオチド残基の範囲であることができる。特定の実施形態において、オリゴヌクレオチドは、約10~約100ヌクレオチド長であり得る。様々な関連する実施形態において、一本鎖、二本鎖、及び三本鎖のオリゴヌクレオチドは、長さが約10~約60ヌクレオチド、約15~約60ヌクレオチド、約20~約50ヌクレオチド、約15~約30ヌクレオチド、又は約20~約30ヌクレオチドの範囲であることができる。
【0111】
特定の実施形態において、本発明のオリゴヌクレオチド(又はその鎖)は、標的ポリヌクレオチド配列に特異的にハイブリダイズするか、あるいは相補的である。本明細書で使用する場合、「特異的にハイブリダイズ可能」及び「相補的」という用語は、DNA又はRNA標的とオリゴヌクレオチドの間に安定で特異的な結合が生じるような、十分な程度の相補性を示す。オリゴヌクレオチドは、特異的にハイブリダイズ可能であるために、その標的核酸配列と100%相補的である必要はないことが理解される。好ましい実施態様において、標的配列へのオリゴヌクレオチドの結合が、標的配列の正常な機能を妨害し、それによる有用性又は発現の欠失を引き起こす場合、オリゴヌクレオチドは特異的にハイブリダイズ可能であり、特異的結合が望まれる条件下、すなわち、インビボアッセイ若しくは治療的処置、又はインビトロアッセイについては生理学的条件下で、アッセイが実施される条件下で、非標的配列へのオリゴヌクレオチドの非特異的結合を回避するのに十分な程度の相補性が存在するしたがって、オリゴヌクレオチドは、それが標的としているか、あるいはそれが特異的にハイブリダイズする遺伝子又はmRNA配列の領域と比較して、1、2、3、又はそれ以上の塩基置換を含むことができる。
【0112】
1.siRNA
本発明の核酸-脂質粒子のsiRNA成分は、目的の標的遺伝子の発現をサイレンシングすることができる。siRNA二重鎖の各鎖は、典型的には約15~約60ヌクレオチド長、好ましくは約15~約30ヌクレオチド長である。特定の実施形態において、siRNAは、少なくとも1つの修飾ヌクレオチドを含む。修飾siRNAは、一般に、対応する非修飾siRNA配列よりも免疫刺激性(immunostimulatory)が低く、目的の標的遺伝子に対するRNAi活性を保持する。いくつかの実施形態において、修飾siRNAは、2’OMe-グアノシン、2’OMe-ウリジン、2’OMe-アデノシン、及び/又は2’OMe-シトシンヌクレオチドなどの少なくとも1つの2’OMeプリン又はピリミジンヌクレオチドを含む。好ましい実施形態において、一又は複数のウリジン及び/又はグアノシンヌクレオチドが修飾される。修飾ヌクレオチドは、siRNAの一方の鎖(すなわち、センス又はアンチセンス)又は両方の鎖に存在し得る。siRNA配列は、オーバーハング(例えば、Elbashirら、Genes Dev.、15:188(2001)又はNyilnenら、Cell、107:309(2001)に記述されているような3’又は5’オーバーハング)を有していてもよく、あるいはオーバーハングを欠いていてもよい(すなわち、平滑末端を有する)。
【0113】
修飾siRNAは、一般に、siRNA二本鎖の二本鎖領域中の約1%~約100%(例えば、約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%)の修飾ヌクレオチドを含む。特定の実施形態において、siRNAの二本鎖領域中の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、又はそれ以上のヌクレオチドは修飾ヌクレオチドを含む。
【0114】
いくつかの実施形態において、siRNAの二本鎖領域中のヌクレオチドの約25%未満(例えば、約25%、24%、23%、22%、21%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、又は1%未満)が修飾ヌクレオチドを含む。
【0115】
他の実施形態において、siRNAの二本鎖領域中の約1%~約25%(例えば、約1%~25%、2%~25%、3%~25%、4%~25%、5%~25%、6%~25%、7%~25%、8%~25%、9%~25%、10%~25%、11%~25%、12%~25%、13%~25%、14%~25%、15%~25%、16%~25%、17%~25%、18%~25%、19%~25%、20%~25%、21%~25%、22%~25%、23%~25%、24%~25%など)、又は約1%~約20%(例えば、約1%~20%、2%~20%、3%~20%、4%~20%、5%~20%、6%~20%、7%~20%、8%~20%、9%~20%、10%~20%、11%~20%、12%~20%、13%~20%、14%~20%、15%~20%、16%~20%、17%~20%、18%~20%、19%~20%、1%~19%、2%~19%、3%~19%、4%~19%、5%~19%、6%~19%、7%~19%、8%~19%、9%~19%、10%~19%、11%~19%、12%~19%、13%~19%、14%~19%、15%~19%、16%~19%、17%~19%、18%~19%、1%~18%、2%~18%、3%~18%、4%~18%、5%~18%、6%~18%、7%~18%、8%~18%、9%~18%、10%~18%、11%~18%、12%~18%、13%~18%、14%~18%、15%~18%、16%~18%、17%~18%、1%~17%、2%~17%、3%~17%、4%~17%、5%~17%、6%~17%、7%~17%、8%~17%、9%~17%、10%~17%、11%~17%、12%~17%、13%~17%、14%~17%、15%~17%、16%~17%、1%~16%、2%~16%、3%~16%、4%~16%、5%~16%、6%~16%、7%~16%、8%~16%、9%~16%、10%~16%、11%~16%、12%~16%、13%~16%、14%~16%、15%~16%、1%~15%、2%~15%、3%~15%、4%~15%、5%~15%、6%~15%、7%~15%、8%~15%、9%~15%、10%~15%、11%~15%、12%~15%、13%~15%、14%~15%など)のヌクレオチドは修飾ヌクレオチドを含む。
【0116】
さらなる実施形態において、例えば、siRNAの一方又は両方の鎖がウリジン及び/又はグアノシンヌクレオチドで選択的に修飾される場合、結果として生じる修飾siRNAは、約30%未満の修飾ヌクレオチド(例えば、約30%、29%、28%、27%、26%、25%、24%、23%、22%、21%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、又は1%未満の修飾ヌクレオチド)、又は約1%~約30%の修飾ヌクレオチド(例えば、約1%~30%、2%~30%、3%~30%、4%~30%、5%~30%、6%~30%、7%~30%、8%~30%、9%~30%、10%~30%、11%~30%、12%~30%、13%~30%、14%~30%、15%~30%、16%~30%、17%~30%、18%~30%、19%~30%、20%~30%、21%~30%、22%~30%、23%~30%、24%~30%、25%~30%、26%~30%、27%~30%、28%~30%、又は29%~30%の修飾ヌクレオチド)を含み得る。
【0117】
a.siRNA配列の選択
適切なsiRNA配列は、当技術分野において知られている任意の手段を用いて同定され得る。典型的には、Elbashirら、Nature、411:494-498(2001)及びElbashirら、EMBO J.、20:6877-6888(2001)に記述されている方法は、Reynoldsら、Nature Biotech.、22(3):326-330(2004)に記載されている合理的設計規則と併用される。
【0118】
一般に、目的の標的遺伝子からの転写産物の3’のAUG開始コドンのヌクレオチド配列は、ジヌクレオチド配列(例えば、AA、NA、CC、GG、又はUU、ここでN=C、G、又はU)に関してスキャンされる(例えば、Elbashirら、EMBO J.、20:6877-6888(2001)を参照されたい)。ジヌクレオチド配列の直近の3’のヌクレオチド(nucleotides immediately 3’)は、潜在的なsiRNA配列(すなわち、標的配列又はセンス鎖配列)として同定される。典型的には、ジヌクレオチド配列の直近の3’の19、21、23、25、27、29、31、33、35、又はそれ以上のヌクレオチドは、潜在的なsiRNA配列として同定される。いくつかの実施形態では、ジヌクレオチド配列は、AA又はNA配列であり、AA又はNAジヌクレオチドの直近の3’の19個のヌクレオチドは、潜在的なsiRNA配列として同定される。siRNA配列は、通常、標的遺伝子の長さに沿って異なる位置に間隔を置いて配置される。siRNA配列のサイレンシング効率をさらに高めるために、潜在的なsiRNA配列は、例えば、標的細胞又は生物において、他のコード配列と相同性の領域を含まない部位を同定するために分析されることができる。例えば、約21塩基対の適切なsiRNA配列は、典型的には、標的細胞又は生物におけるコード配列と16~17より多い連続した塩基対の相同性(more than 16-17 contiguous base pairs of homology)を有さない。siRNA配列がRNA Pol IIIプロモーターから発現する場合、4つより多い連続したA又はT(more than 4 contiguous A’s or T’s)を欠くsiRNA配列が選択される。
【0119】
一旦潜在的なsiRNA配列が同定されると、相補的な配列(すなわち、アンチセンス鎖配列)を設計することができる。潜在的なsiRNA配列はまた、当技術分野において知られている様々な基準を用いて分析されることもできる。例えば、siRNA配列は、それらのサイレンシング効率を高めるために合理的設計アルゴリズムによって分析されて、一又は複数の下記の特徴を有する配列を同定することができる:(1)約25%~約60%のG/C含量、(2)センス鎖の15~19位に少なくとも3つのA/U、(3)内部反復なし、(4)センス鎖の19位にA、(5)センス鎖の3位にA、(6)センス鎖の10位にU、(7)センス鎖の19位にG/Cなし、(8)センス鎖の13位にGなし。これらの各特徴の適切な値を割り当て、siRNAの選択に有用であるアルゴリズムを組み込むsiRNA設計ツールは、例えば、http://boz094.ust.hk/RNAi/siRNAで見出される。当業者であれば、一又は複数の前述の特性を有する配列が、潜在的なsiRNA配列としてさらなる分析及び試験のために選択される可能性があることを十分理解するであろう。
【0120】
さらに、一又は複数の下記の基準を有する潜在的なsiRNA配列は、しばしばsiRNAとして除外され得る:(1)一列に(in a row)4つ以上の同じ塩基のストレッチ(a stretch)を含む配列;(2)Gのホモポリマーを含む配列(すなわち、これらのポリマーの構造上の特徴に起因する可能性のある非特異的効果を低減するため);(3)三重塩基モチーフ(triple base motifs)(例えば、GGG、CCC、AAA、又はITT)を含む配列;(4)一列に7個以上のG/Cのストレッチを含む配列;及び(5)内部折り返し構造(internal fold-back structures)をもたらす候補内の4個以上の塩基の直接反復(direct repeats)を含む配列。しかしながら、当業者であれば、一又は複数の前述の特徴を有する配列が、潜在的なsiRNA配列としてさらなる分析及び試験のために依然として選択される可能性があることを十分理解するであろう。
【0121】
いくつかの実施形態において、潜在的なsiRNA配列は、例えば、Khvorovaら、Cell、115:209-216(2003);及びSchwarzら、Cell、115:199-208(2003)に記述されているように、siRNA二重鎖非対称性に基づいて、さらに分析されることができる。他の実施形態において、潜在的なsiRNA配列は、例えば、Luoら、Biophys.Res.Commun.、318:303-310(2004)に記述されているように、標的部位での二次構造に基づいて、さらに分析されることができる。例えば、標的部位での二次構造は、Mfoldアルゴリズム(http://www.bioinfo.rpi.edu/applications/mfold/rna/forml.cgiで入手可能)を用いてモデル化されて、塩基対合又はステムループの形状の二次構造が少ない標的部位でのアクセシビリティに有利に働くsiRNA配列を選択することができる。
【0122】
一旦潜在的なsiRNA配列が同定されると、その配列は、例えば、インビトロサイトカインアッセイ又はインビボ動物モデルを用いて、任意の免疫刺激特性(immunostimulatory properties)に関して分析され得る。GUリッチモチーフ(例えば、5’-GU-3’,5’-UGU-3’,5’-GUGU-3’,5’-UGUGU-3’など)のようなsiRNA配列のセンス鎖及び/又はアンチセンス鎖中のモチーフはまた、配列が免疫刺激性であるかどうかの指標も提供し得る。一旦siRNA分子が免疫刺激性であることが見出されると、本明細書において記述されているようなその免疫刺激特性を低下させるように改良することができる。非限定的な例として、siRNA配列は、細胞が検出可能な免疫応答を生じさせるような条件下で哺乳動物レスポンダー細胞(responder cell)と接触して、siRNAが免疫刺激性siRNAであるか、あるいは非免疫刺激性siRNAであるかを決定することができる。哺乳動物レスポンダー細胞は、ナイーブ哺乳動物(a naive mammal)(すなわち、以前にsiRNA配列の遺伝子産物と接触したことのない哺乳動物)由来であってもよい。哺乳動物レスポンダー細胞は、例えば、末梢血単核細胞(PBMC)、マクロファージなどであってもよい。検出可能な免疫応答は、例えば、TNF-α、IFN-α、IFN-β、IFN-γ、IL-6、IL-12、又はそれらの組み合わせなどのサイトカイン又は成長因子の産生を含んでいてもよい。免疫刺激性であると同定されたsiRNA分子は、その後、少なくとも1つのセンス鎖及び/又はアンチセンス鎖上のヌクレオチドを修飾ヌクレオチドで置換することによって、その免疫刺激特性を低下させるように修飾され得る。例えば、siRNA二本鎖の二本鎖領域の約30%未満(例えば、約30%、25%、20%、15%、10%、又は5%未満)のヌクレオチドは、2’OMeヌクレオチドのような修飾ヌクレオチドで置換され得る。次に、修飾siRNAは、上述のような哺乳動物レスポンダー細胞と接触して、その免疫刺激特性が減少又は消失し(abrogated)たということを確認することができる。
【0123】
免疫応答を検出するのに適切なインビトロアッセイには、Davidらの二重モノクローナル抗体サンドイッチ免疫測定法(米国特許第4,376,110号);モノクローナル-ポリクローナル抗体サンドイッチアッセイ(Wideら、in Kirkham and Hunter,eds.,Radioimmunoassay Methods,E.andS. Livingstone,Edinburgh(1970));Gordonらの「ウェスタンブロット」法(米国特許第4,452,901号);標識リガンドの免疫沈降(Brownら、J.Biol.Chem.、255:4980-4983(1980));例えば、Rainesら、J.Biol.Chem.、257:5154-5160(1982)によって記述されているような酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA);蛍光色素の使用を含む免疫細胞化学的手法(Brooksら、Clin.Exp.Immunol.、39:477(1980));及び活性の中和(Bowen-Popeら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:2396-2400(1984))が含まれるが、これらに限定されない。上述の免疫学的検定に加えて、多数の他の免疫学的検定が利用可能であり、米国特許第3,817,827号;第3,850,752号;第3,901,654号;第3,935,074号;第3,984,533号;第3,996,345号;第4,034,074号;及び第4,098,876号に記述されているものを含む。これらの参考文献の開示は、あらゆる目的のために、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0124】
免疫応答を検出するためのインビボモデルの非限定的な例としては、例えば、Judgeら、Mol.Ther.、13:494-505(2006)に記述されているようなアッセイが挙げられる。特定の実施形態において、アッセイは、次のとおりに実施され得る:(1)siRNAは、外側尾静脈への標準的な静脈内注射によって投与され得る;(2)血液は、投与の約6時間後に心臓穿刺によって収集され、サイトカイン分析のために血漿として処理され得る;そして(3)サイトカインは、製造者の指示に従ってサンドイッチELISAキットを使用して定量され得る(例えば、マウス及びヒトIFN-α(PBL Biomedical;ピスカタウェイ、N.J.);ヒトIL-6及びTNF-α(eBioscience;サンディエゴ、Calif.);並びにマウスIL-6、TNF-α及びIFN-γ(BD Biosciences;サンディエゴ、Calif.)。
【0125】
サイトカイン及び成長因子に特異的に結合するモノクローナル抗体は、複数の供給源から市販されており、当技術分野において既知の方法を用いて作成され得る(例えば、Kohlerら、Nature、256:495-497(1975)及びHarlow and Lane、ANTIBODIES、A LABORATORY MANUAL、Cold Spring Harbor Publication、New York(1999)を参照されたい)。モノクローナル抗体の作成は、以前に記述されており、当技術分野において既知の、任意の手段によって達成され得る(Buhringら、in Hybridoma、第10巻、第1号、77-78頁(1991))。いくつかの方法において、モノクローナル抗体は、検出を容易にするために(例えば、分光学的、光化学的、生化学的、電気的、光学的、又は化学的手段によって検出可能な任意の組成物で)標識される。
【0126】
b.siRNA分子の作成
siRNAは、例えば、一又は複数の単離された低分子干渉RNA(small-interfering RNA)(siRNA)二重鎖として、より長い二本鎖RNA(dsRNA)として、あるいはDNAプラスミド中の転写カセットから転写されたsiRNA又はdsRNAとしてなどを含む、いくつかの形態で提供され得る。siRNA配列は、オーバーハング(例えば、Elbashirら、Genes Dev.、15:188(2001)又はNykanenら、Cell、107:309(2001)に記述されているような3’又は5’オーバーハング)を有するか、あるいはオーバーハングを欠いていてもよい(すなわち、平滑末端を有するように)。
【0127】
RNA集団は、長いRNA前駆体(long precursor RNAs)を提供するために使用され得るか、あるいは選択された標的配列と実質的又は完全な同一性を有する長いRNA前駆体は、siRNAを作るために使用され得る。RNAsは、当業者に周知の方法に従って、細胞又は組織から単離、合成、及び/又はクローニングされ(cloned)得る。RNAは、混合群(細胞又は組織から得られたもの、cDNAから転写されたもの、減算されたもの(subtracted)、選択されたものなど)であり得るか、あるいは単一の標的配列を表し得る。RNAは、天然に存在するもの(例えば、組織又は細胞サンプルから単離されたもの)、インビトロで合成されたもの(例えば、T7又はSP6ポリメラーゼ及びPCR産物又はクローニングされたcDNAを用いたもの)、又は化学的に合成されたものであり得る。
【0128】
長いdsRNAを形成するために、合成RNAに関して、相補体もまた、インビトロで転写され、ハイブリダイズされてdsRNAを形成する。天然に存在するRNA集団が使用される場合、RNA集団に対応するcDNAを転写するか、あるいはRNAポリメラーゼを使用することによって、RNAの相補体もまた、提供される(例えば、E.coli RNAse III又はDicerによる消化のためにdsRNAを形成する)。その後、RNA前駆体は、消化のためにハイブリダイズされて二本鎖RNAを形成する。dsRNAsは、対象に直接投与され得るか、あるいは投与前にインビトロで消化され得る。
【0129】
RNAを単離する方法、RNAを合成する方法、核酸をハイブリダイズする方法、cDNAライブラリーを作成及びスクリーニングする方法、並びにPCRを実施する方法は、当技術分野において周知である(米国特許第4,683,195号及び第4,683,202号;PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications(Innisら編、1990)を参照されたい)。発現ライブラリーもまた、当業者に周知である。本発明で使用する一般的な方法を開示している追加の基本的なテキストとしては、Sambrookら、Molecular Cloning,A Laboratory Manual(第2版、1989年);Kriegler、Gene Transfer and Expression:A Laboratory Manual(1990);及びCurrent Protocols in Molecular Biology(Ausubelら編、1994)が挙げられる。これらの参考文献の開示は、あらゆる目的のために、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0130】
好ましくは、siRNAは、化学的に合成される。本発明のsiRNA分子を含むオリゴヌクレオチドは、例えば、Usmanら、J.Am.Chem.Soc.、109:7845(1987);Scaringeら、Nucl.Acids Res.、18:5433(1990);Wincottら、Nucl.Acids Res.、23:2677-2684(1995);及びWincottら、Methods Mol.Bio.、74:59(1997)などの当技術分野において既知の様々な技術のいずれかを用いて合成され得る。オリゴヌクレオチドの合成は、例えば、5’末端のジメトキシトリチル及び3’末端のホスホロアミダイトなどの一般的な核酸保護基及びカップリング基を利用する。非限定的な例として、小規模合成は、0.2μmolスケールのプロトコルを用いてApplied Biosystemsのシンセサイザーで実施され得る。その代わりに、0.2μmolスケールでの合成は、Protogene(パロアルト、カリフォルニア州)の96ウェルプレートのシンセサイザーで実施され得る。しかしながら、より大きいか、あるいは小さいスケールの合成もまた、本発明の範囲内である。オリゴヌクレオチドの合成に適した試薬、RNA脱保護の方法、及びRNA精製の方法もまた、当業者に知られている。
【0131】
siRNA分子はまた、タンデム合成技術(a tandem synthesis technique)によって合成されることもでき、両鎖は、切断可能なリンカー(a cleavable linker)により分離された単一の連続したオリゴヌクレオチドフラグメント又は鎖として合成され、その後切断されて、siRNA二重鎖を形成するためにハイブリダイズする別々の断片又は鎖を提供する。リンカーは、ポリヌクレオチドリンカー又は非ヌクレオチドリンカーであり得る。siRNAのタンデム合成(tandem synthesis)は、マルチウェル/マルチプレート合成プラットフォーム及びバッチリアクター、合成カラムなどを使用する大規模合成プラットフォームの両方に容易に適応し得る。その代わりに、siRNA分子は2つの、異なるオリゴヌクレオチドから組み立てられることができ、一方のオリゴヌクレオチドはsiRNAのセンス鎖を含み、他方はアンチセンス鎖を含む。例えば、各鎖は、別々に合成され、合成及び/又は脱保護後にハイブリダイゼーション又はライゲーションにより結合され得る。特定の他の例において、siRNA分子は、単一の連続したオリゴヌクレオチドフラグメントとして合成され、そこで自己相補的なセンス領域及びアンチセンス領域がハイブリダイズしてヘアピン二次構造を有するsiRNA二重鎖を形成し得る。
【0132】
c.siRNA配列の修飾
特定の態様において、siRNA分子は、2本の鎖及び2本鎖領域中の少なくとも1つの修飾ヌクレオチドを有する2重鎖を含み、各鎖は約15~約60ヌクレオチド長である。有利なことには、修飾siRNAは、対応する非修飾siRNA配列よりも免疫刺激性が低いが、標的配列の発現をサイレンシングする能力を保持する。好ましい実施形態において、siRNA分子に導入される化学修飾の程度は、siRNAの免疫刺激特性の減少又は消失とRNAi活性の保持の間のバランスを取る。非限定的な例として、目的の遺伝子を標的とするsiRNA分子は、その標的遺伝子の発現をサイレンシングする(silence)能力を保持しながら、siRNAによって生成される免疫応答を排除するために、siRNA二重鎖内の選択的なウリジン及び/又はグアノシンヌクレオチドで最小限の修飾(例えば、約30%、25%、20%、15%、10%、又は5%未満の修飾)を受けることができる。
【0133】
本発明での使用に適した修飾ヌクレオチドの例には、2’-O-メチル(2’OMe)、2’-デオキシ-2’-フルオロ(2’F)、2’-デオキシ、5-C-メチル、2’-O-(2-メトキシエチル)(MOE)、4’-チオ、2’-アミノ、又は2’-C-アリル基を有するリボヌクレオチドが含まれるが、これらに限定されない。例えば、Saenger,Principles of Nucleic Acid Structure,Springer-Verlag編、(1984)に記述されているようなノーザンコンフォメーションを有する修飾ヌクレオチドもまた、siRNA分子での使用に適している。かかる修飾ヌクレオチドには、限定されないが、ロック核酸(locked nucleic acid)(LNA)ヌクレオチド(例えば、2’-O、4’-C-メチレン-(D-リボフラノシル)ヌクレオチド)、2’-O-(2-メトキシエチル)(MOE)ヌクレオチド、2’-メチル-チオエチルヌクレオチド、2’-デオキシ-2’-フルオロ(2’F)ヌクレオチド、2’-デオキシ-2’-クロロ(2’Cl)ヌクレオチド、及び2’-アジドヌクレオチドが含まれる。特定の実施態様において、本明細書中に記述されているsiRNA分子は、一又は複数のG-クランプヌクレオチドを含む。G-クランプヌクレオチドとは、修飾シトシンアナログを指し、修飾が、二重鎖内の相補的グアニンヌクレオチドのワトソン・クリック及びフーグスティーン面の両方を水素結合する能力を与える(例えば、Linら、J Am.Chem.Soc.,120:8531-8532(1998)を参照されたい)。さらに、例えば、C-フェニル、C-ナフチル、他の芳香族誘導体、イノシン、アゾールカルボキサミド、並びにニトロアゾール誘導体、例えば、3-ニトロピロール、4-ニトロインドール、5-ニトロインドール、及び6-ニトロインドールなどのようなヌクレオチド塩基アナログを有するヌクレオチド(例えば、Loakes,Nucl. Acids Res.,29:2437-2447(2001)を参照されたい)は、siRNA分子に組み込まれることができる。
【0134】
特定の実施形態において、siRNA分子は、一又は複数の化学修飾、例えば、末端キャップ部分(terminal cap moieties)、リン酸骨格(phosphate backbone)修飾などをさらに含むことができる。末端キャップ部分の例には、限定されないが、反転デオキシ脱塩基残基(inverted deoxy abasic residues)、グリセリル修飾、4’,5’-メチレンヌクレオチド、1-(β-D-エリスロフラノシル(erythrofuranosyl))ヌクレオチド、4’-チオヌクレオチド、炭素環ヌクレオチド、1,5-アンヒドロヘキシトールヌクレオチド、L-ヌクレオチド、α-ヌクレオチド、修飾塩基ヌクレオチド、トレオ-ペントフラノシルヌクレオチド、非環式3’,4’-セコヌクレオチド、非環式3,4-ジヒドロキシブチルヌクレオチド、非環式3,5-ジヒドロキシペンチルヌクレオチド、3’-3’-反転ヌクレオチド部分(inverted nucleotide moieties)、3’-3’-反転脱塩基部分(inverted abasic moieties)、3’-2’-反転ヌクレオチド部分、3’-2’-反転脱塩基部分、5’-5’-反転ヌクレオチド部分、5’-5’-反転脱塩基部分、3’-5’-反転デオキシ脱塩基部分(inverted deoxy abasic moieties)、5’-アミノアルキルホスフェート、1,3-ジアミノ-2-プロピルホスフェート、3-アミノプロピルホスフェート、6-アミノヘキシルホスフェート、1,2-アミノドデシルホスフェート、ヒドロキシプロピルホスフェート、1,4-ブタンジオールホスフェート、3’-ホスホロアミダート、5’-ホスホロアミダート、ヘキシルホスフェート(hexylphosphate)、アミノヘキシルホスフェート、3’-ホスフェート、5’-アミノ、3’-ホスホロチオエート、5’-ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート(phosphorodithioate)、及び架橋又は非架橋メチルホスホネート又は5’-メルカプト部分が含まれる(例えば、米国特許第5,998,203号;Beaucageら、Tetrahedron 49:1925(1993)を参照されたい)。リン酸骨格修飾の非限定的な例(すなわち、修飾されたヌクレオチド間の結合(modified internucleotide linkages)をもたらす)としては、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、モルホリノ、アミデート、カルバメート、カルボキシメチル、アセトアミデート、ポリアミド、スルホネート、スルホンアミド、スルファメート、ホルムアセタール(formacetal)、チオホルムアセタール(thioformacetal)、及びアルキルシリル置換が挙げられる(例えば、Hunzikerら、Nucleic Acid Analogues:Synthesis and Properties,in Modern Synthetic Methods,VCH,331-417(1995);Mesmaekerら,Novel Backbone Replacements for Oligonucleotides,in Carbohydrate Modifications in Antisense Research,ACS,24-39(1994)を参照されたい)。そのような化学修飾は、siRNAのセンス鎖、アンチセンス鎖、又は両鎖の5’末端及び/又は3’末端で起こり得る。これらの参考文献の開示は、あらゆる目的のために、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0135】
いくつかの実施形態において、siRNA分子のセンス鎖及び/又はアンチセンス鎖は、約1~約4つ(例えば、1、2、3、又は4つ)の2’-デオキシリボヌクレオチド及び/又は修飾ヌクレオチド及び非修飾ヌクレオチドの任意の組み合わせを有する3’末端オーバーハング(a 3’-terminal overhang)をさらに含み得る。siRNA分子に導入され得る修飾ヌクレオチド及び化学修飾のタイプの追加の例は、例えば、英国特許第GB 2,397,818 B号並びに米国特許公開第20040192626号、同第20050282188号、及び同第20070135372号に記述されており、これらの開示は、あらゆる目的のために、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0136】
本明細書において記述されているsiRNA分子は、任意に、siRNAの一方又は両方の鎖に一又は複数の非ヌクレオチドを含み得る。本明細書で使用する場合、「非ヌクレオチド」という用語は、糖及び/又はリン酸置換を含む、一又は複数のヌクレオチド単位の代わりに、核酸鎖に組み込まれることができ、残りの塩基がそれらの活性を示すことを可能にする任意の基又は化合物を指す。その基又は化合物は、一般に認識されるヌクレオチド塩基、例えば、アデノシン、グアニン、シトシン、ウラシル、又はチミンなどを含まず、それ故に1’位に塩基を欠くという点で非塩基性である。
【0137】
他の実施形態において、siRNAの化学修飾は、siRNA分子に複合体(a conjugate)を付着させることを含む。複合体は、例えば生分解性リンカーのような共有結合を介して、siRNAのセンス鎖及び/又はアンチセンス鎖の5’及び/又は3’末端に付着し得る。複合体はまた、例えば、カルバメート基又は他の連結基を介してsiRNAにも結合し得る(例えば、米国特許公開第25000074771号、同第20050043219号、及び同第20050158727号を参照されたい)。特定の実施態様において、複合体は、細胞内へのsiRNAの送達を促進する分子である。siRNAへの付着に適した共役分子(conjugate molecules)の例には、限定されないが、コレステロールなどのステロイド、ポリエチレングリコール(PEG)などのグリコール、ヒト血清アルブミン(HSA)、脂肪酸、カロテノイド、テルペン、胆汁酸、フォレート(folates)(例えば、葉酸、フォレートアナログ及びその誘導体)、糖(例えば、ガラクトース、ガラクトサミン、N-アセチルガラクトサミン、グルコース、マンノース、フルクトース、フコースなど)、リン脂質、ペプチド、細胞取り込みを媒介することができる細胞レセプターのためのリガンド、及びそれらの組み合わせが含まれる(例えば、米国特許公開第20030130186号、同第20040110296号、及び同第20040249178号;米国特許第6,753,429号を参照のされたい)。他の例としては、米国特許公開第20050119470号及び同第20050107325号に記述されている親油性部分、ビタミン、ポリマー、ペプチド、タンパク質、核酸、小分子、オリゴ糖、炭水化物クラスター、インターカレーター、マイナーグルーブバインダー、切断剤(cleaving agent)、及び架橋剤共役分子が挙げられる。さらに他の例としては、米国特許公開第20050153337号に記述されている2’-O-アルキルアミン、2’-O-アルコキシアルキルアミン、ポリアミン、C5-カチオン性修飾ピリミジン、カチオン性ペプチド、グアニジニウム基、アミジニウム(amidininium)基、カチオン性アミノ酸共役分子が挙げられる。追加の例としては、米国特許公開第20040167090号に記述されている疎水基、膜活性化合物、細胞透過性化合物、細胞標的シグナル、相互作用修飾因子(interaction modifier)、及び立体安定剤共役分子が挙げられる。さらなる例としては、米国特許公開第20050239739号に記述されている共役分子が挙げられる。使用される複合体のタイプ及びsiRNA分子への接合の程度は、RNAi活性を保持しながら、siRNAの薬物動態プロファイル、生物学的利用能、及び/又は安定性の改善について評価され得る。したがって、当業者は、様々な複合体を付着させたsiRNA分子をスクリーニングして(screen)、様々な周知のインビトロ細胞培養又はインビボ動物モデルのいずれかを用いて、改善された特性及び完全なRNAi活性を有するものを同定することができる。上述の特許文献の開示は、あらゆる目的のために、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0138】
d.標的遺伝子
本明細書において記述されている核酸-脂質粒子のsiRNA成分は、目的の遺伝子の翻訳(すなわち、発現)を下方制御又はサイレンシングするために使用され得る。目的の遺伝子には、ウイルス感染及び生存に関連する遺伝子、代謝性疾患及び障害(例えば、肝臓疾患及び障害)に関連する遺伝子、腫瘍形成及び細胞形質転換(例えば、がん)に関連する遺伝子、血管新生遺伝子(angiogenic genes)、免疫調節遺伝子、例えば、炎症及び自己免疫反応に関連するものなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0139】
代謝性疾患及び障害(例えば、肝臓が標的である障害並びに肝臓疾患及び障害)に関連する遺伝子としては、例えば、
脂質異常症で発現する遺伝子(例えば、LXRα及びLXRβなどの肝臓X受容体(Genback Accession No.NM_007121)、ファルネソイドX受容体(FXR)(Genbank Accession No.NM_005123)、ステロール調節エレメント結合タンパク質(SREBP)、サイト1プロテアーゼ(SIP)、3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル補酵素-A還元酵素(HMG補酵素-A還元酵素)、アポリポタンパク質B(ApoB)(Genbank Accession No.NM_000384)、アポリポタンパク質CIII(ApoC3)(Genbank Accession Nos.NM_000040及びNG_008949 REGION:5001.8164)、及びアポリポタンパク質E(ApoE)(Genbank Accession Nos.NM_000041及びNG_007084 REGION:5001.8612));並びに糖尿病で発現する遺伝子(例えば、グルコース6-ホスファターゼ)が挙げられる(例えば、Formanら、Cell,81:687(1995);Seolら、Mol.Endocrinol.、9:72(1995)、Zavackiら、Proc. Natl.Acad.Sci.USA,94:7909(1997);Sakaiら、Cell,85:1037-1046(1996);Duncanら、J.Biol.Chem.,272:12778-12785(1997);Willyら、Genes Dev.,9:1033-1045(1995);Lehmannら、J.Biol.Chem.、272:3137-3140(1997);Janowskiら、Nature、383:728-731(1996);及びPeetら、Cell、93:693-704(1998)を参照されたい)。当業者は、代謝性疾患及び障害(例えば、肝臓が標的である疾患及び障害、並びに肝臓疾患及び障害)に関連する遺伝子には、肝臓自体で発現する遺伝子及び他の器官及び組織で発現する遺伝子が含まれるということを十分理解するであろう。代謝性疾患及び障害に関連する遺伝子をコードする配列のサイレンシングは、疾患又は障害を治療するために用いられる従来の薬剤の投与と組み合わせて都合よく使用され得る。ApoB遺伝子を標的とするsiRNA分子の非限定的な例としては、米国特許公開第20060134189号に記述されているものが挙げられ、その開示は、あらゆる目的のために、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。ApoC3遺伝子を標的とするsiRNA分子の非限定的な例としては、2009年1月26日に出願された米国仮出願第61/147,235号に記述されたものが挙げられ、その開示は、あらゆる目的のために、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0140】
腫瘍形成及び細胞形質転換(例えば、がん(cancer)又は他の腫瘍(neoplasia))に関連する遺伝子配列の例としては、Eg5(KSP、KIF11;Genbank Accession No.NM_004523)などの有糸分裂キネシン;ポロ様キナーゼ1(PLK-1)(Genbank Accession No.NM_005030;Barrら、Nat.Cell Biol.5:429-440(2004))などのセリン/スレオニンキナーゼ;WEE1(Genbank Accession No.NM_003390及びNM_001143976)などのチロシンキナーゼ;XIAP(Genbank Accession No.NM_001167)などのアポトーシス阻害剤;CSN1、CSN2、CSN3、CSN4、CSN5(JAB1;Genbank Accession No.NM_006837)、CSN6、CSN7A、CSN7B、及びCSN8などのCOP9シグナルソームサブユニット;COP1(RFWD2;Genbank Accession No.NM_022457及びNM_001001740)などのユビキチンリガーゼ;並びにHDAC1、HDAC2(Genbank Accession No.NM 001527)、HDAC3、HDAC4、HDAC5、HDAC6、HDAC7、FIDAC8、HDAC9などのヒストン脱アセチル化酵素などが挙げられる。Eg5及びXIAP遺伝子を標的とするsiRNA分子の非限定的な例としては、2007年5月29日に出願された米国特許出願シリアル番号第11/807,872号に記述されているものが挙げられ、その開示は、あらゆる目的のために、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。PLK-1遺伝子を標的とするsiRNA分子の非限定的な例としては、米国特許公開第20050107316号及び同第20070265438号;並びに2008年12月23日に出願された米国特許出願シリアル番号第12/343,342号に記述されているものが挙げられ、これらの開示は、あらゆる目的のために、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。CSN5遺伝子を標的とするsiRNA分子の非限定的な例としては、2008年4月15日に出願された米国仮出願第61/045,251号に記述されたものが挙げられ、その開示は、あらゆる目的のために、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0141】
腫瘍形成及び細胞形質転換に関連する遺伝子配列のさらなる例としては、MLL融合遺伝子、BCR-ABL(Wildaら、Oncogene、21:5716(2002);Scherrら、Blood、101:1566(2003))、TEL-AML1、EWS-FLI1、TLS-FUS、PAX3-FKHR、BCL-2、AML1-ETO、及びAML1-MTG8(Heidenreichら、Blood、101:3157(2003))などの転座配列;多剤耐性遺伝子(Niethら、FEBS Lett、545:144(2003);Wuら、Cancer Res.、63:1515(2003))、サイクリン(Liら、Cancer Res.、63:3593(2003);Zouら、Genes Dev.、16:2923(2002))、β-カテニン(Vermaら、Clin Cancer Res.、9:1291(2003))、テロメラーゼ遺伝子(Kosciolekら、Mol Cancer Ther、Mol Cancer Ther.、2:209(2003))、c-MYC、N-MYC、BCL-2、成長因子受容体(例えば、EGFR/ErbB1(Genbank Accession Nos.NM_005228、NM_201282、NM_201283、及びNM_201284;また、Nagyら、Exp.Cell Res.,285:39-49(2003)も参照されたい)、ErbB2/HER-2(Genbank Accession Nos.NM_004448及びNM_001005862)、ErbB3(Genbank Accession Nos.NM001982及びNM_001005915)、及びErbB4(Genbank Accession Nos.NM_005235及びNM_001042599))などの過剰発現配列;並びにRAS(総説:Tuschl及びBorkhardt、Mol.Interventions,2:158(2002)に概説されている)のような変異配列が挙げられる。EGFR遺伝子を標的とするsiRNA分子の非限定的な例としては、2007年5月29日に出願された米国特許出願シリアル番号第11/807,872号に記述されたものが挙げられ、その開示は、あらゆる目的のために、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0142】
DNA修復酵素をコードする配列のサイレンシングは、化学療法剤の投与と組み合わせて使用される(Collisら、Cancer Res.、63:1550(2003))。腫瘍の移動に関連するタンパク質をコードする遺伝子もまた、目的の標的配列であり、例えば、インテグリン、セレクチン、及びメタロプロテアーゼである。前述の例は排他的なものではない。当業者は、腫瘍形成又は細胞形質転換、腫瘍増殖、又は腫瘍の移動を容易にするか、あるいは促進する任意の遺伝子配列の全体又は一部が鋳型配列として含まれ得るということを十分理解するであろう。
【0143】
血管新生遺伝子は、新しい血管の形成を促進することができる。特に興味深いのは血管内皮増殖因子(VEGF)(Reichら、Mol.Vis.,9:210(2003))又はVEGFRである。VEGFRを標的とするsiRNA配列は、例えば、GB 2396864;米国特許公開第20040142895号;及びCA 2456444に記載されており、これらの開示は、あらゆる目的のために、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0144】
抗血管新生遺伝子は、新生血管形成を阻害することができる。これらの遺伝子は、血管新生が疾患の病理学的進行で役割を果たすがんの治療に特に有用である。抗血管新生遺伝子の例には、エンドスタチン(例えば、米国特許第6,174,861号を参照されたい)、アンギオスタチン(例えば、米国特許第5,639,725号を参照されたい)、及びVEGFR2(例えば、Decaussinら、J.Pathol.、188:369-377(1999)を参照されたい)が含まれるが、これらに限定されず、これらの開示は、あらゆる目的のために、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0145】
免疫調節遺伝子は、一又は複数の免疫応答を調節する遺伝子である。免疫調節遺伝子の例には、限定されないが、成長因子(例えば、TGF-α、TGF- β、EGF、FGF、IGF、NGF、PDGF、CGF、GM-CSF、SCFなど)、インターロイキン(例えば、IL-2、IL-4、IL-12(Hillら、J.Immunol.、171:691(2003))、IL-15、IL-18、IL-20など)、インターフェロン(例えば、IFN-α、IFN-β、IFN-γなど)及びTNFが含まれる。Fas及びFasリガンド遺伝子もまた、目的の免疫調節標的配列である(Songら、Nat.Med.,9:347(2003))。造血細胞及びリンパ細胞における二次シグナル伝達分子をコードする遺伝子もまた、本発明に含まれ、例えば、ブルトン型チロシンキナーゼ(Btk)(Heinonenら、FESS Lett.、527:274(2002))のようなTecファミリーキナーゼである。
【0146】
細胞レセプターリガンドには、細胞表面レセプター(例えば、インスリンレセプター、EPOレセプター、Gタンパク質共役型受容体、チロシンキナーゼ活性を有するレセプター、サイトカインレセプター、成長因子受容体など)に結合して、レセプターが関与する生理学的経路(例えば、グルコースレベルの調節、血球発生、有糸分裂など)を調節(例えば、阻害、活性化など)することができるリガンドが含まれる。細胞レセプターリガンドの例には、サイトカイン、成長因子、インターロイキン、インターフェロン、エリスロポエチン(EPO)、インスリン、グルカゴン、Gタンパク質共役型受容体リガンドなどが含まれるが、これらに限定されない。トリヌクレオチド反復(例えば、CAG反復)の拡大をコードするテンプレートは、球脊髄性筋萎縮症(spinobulbular muscular atrophy)又はハンチントン病などのトリヌクレオチド反復の拡大によって引き起こされる神経変性障害における病原性配列をサイレンシングするのに利用される(Caplenら、Hum.Mol.Genet.,11:175(2002))。
【0147】
治療目的のために上述の遺伝子のいずれかの発現をサイレンシングするときの有用性に加えて、本明細書において記述されているsiRNAはまた、診断、予防、予後、臨床、及び他のヘルスケア用途と同様に、研究及び開発用途にも有用である。非限定的な例として、siRNAは、目的の遺伝子が治療標的となる可能性を有するかどうかを試験することを対象とする標的バリデーション研究において使用され得る。siRNAはまた、潜在的な治療標的としての遺伝子を発見することを目的とする標的同定研究においても使用され得る。
【0148】
2.aiRNA
siRNAと同様に、非対称干渉RNA(aiRNA)は、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)を採用し、アンチセンス鎖の5’末端に対してヌクレオチド10と11の間の標的配列の配列特異的切断を媒介することによって、哺乳類細胞における様々な遺伝子の効果的なサイレンシングをもたらすことができる(Sunら、Nat.Biotech.、26:1379-1382(2008))。典型的には、aiRNA分子は、センス鎖及びアンチセンス鎖を有する短いRNA二重鎖を含み、前記二重鎖がアンチセンス鎖の3’末端及び5’末端にオーバーハングを含む。センス鎖は相補的なアンチセンス鎖と比べて両端が短いため、aiRNAは、一般に非対称である。いくつかの態様において、aiRNA分子は、siRNA分子に使用されるものと似ている条件下で設計、合成、及びアニーリングされることができる。非限定的な例として、aiRNA配列は、siRNA配列を選択するために、上述の方法を用いて選択及び生成されてもよい。
【0149】
別の実施形態において、様々な長さ(例えば、約10~25、12~20、12~19、12~18、13~17、又は14~17塩基対、より典型的には12、13、14、15、16、17、18、19、又は20塩基対)のaiRNA二重鎖は、目的のmRNAを標的とするためにアンチセンス鎖の3’及び5’末端でのオーバーハングを考慮して設計されることができる。特定の例において、aiRNA分子のセンス鎖は、約10~25、12~20、12~19、12~18、13~17、又は14~17ヌクレオチド長、より典型的には12、13、14、15、16、17、18、19、又は20ヌクレオチド長である。特定の他の例において、aiRNA分子のアンチセンス鎖は、約15~60、15~50、又は15~40ヌクレオチド長であり、より典型的には、約15~30、15~25、又は19~25ヌクレオチド長であり、好ましくは、約20~24、21~22、又は21~23ヌクレオチド長である。
【0150】
いくつかの実施形態において、5’アンチセンスオーバーハングは、1、2、3、4、又はそれ以上の非標的ヌクレオチド(例えば、「AA」、「UU」、「dTdT」など)を含む。他の実施形態において、3’アンチセンスオーバーハングは、1、2、3、4、又はそれ以上の非標的ヌクレオチド(例えば、「AA」、「UU」、「dTdT」など)を含む。特定の態様において、本明細書中に記述されているaiRNA分子は、例えば、二本鎖(double-stranded)(duplex)領域及び/又はアンチセンスオーバーハングにおいて、一又は複数の修飾ヌクレオチドを含むことができる。非限定的な例として、aiRNA配列は、siRNA配列に関して、上述した一又は複数の修飾ヌクレオチドを含んでもよい。好ましい実施形態において、aiRNA分子は、例えば、2’OMe-グアノシンヌクレオチド、2’OMe-ウリジンヌクレオチド、又はそれらの混合物などの2’OMeヌクレオチドを含む。
【0151】
特定の実施形態において、aiRNA分子は、siRNA分子のアンチセンス鎖、例えば、本明細書中で記述されているsiRNA分子の1つのアンチセンス鎖に対応するアンチセンス鎖を含むことができる。他の実施形態において、aiRNA分子は、例えば、ウイルス感染及び生存に関連する遺伝子、代謝性疾患及び障害に関連する遺伝子、腫瘍形成及び細胞形質転換に関連する遺伝子、血管新生遺伝子、炎症及び自己免疫反応に関連する遺伝子などの免疫調節遺伝子、リガンドレセプター遺伝子、及び神経変性障害に関連する遺伝子など、上記で規定された標的遺伝子のいずれかの発現をサイレンシングするために使用されることができる。
【0152】
3.miRNA
一般に、マイクロRNA(miRNA)は、遺伝子発現を制御する約21-23ヌクレオチド長の一本鎖RNA分子である。miRNAは、DNAから転写される遺伝子によってコードされるが、miRNAsはタンパク質には翻訳されない(非コードRNA);その代わりに、それぞれの一次転写産物(a pri-miRNA)は、pre-miRNAと呼ばれる短いステムループ構造、かつ最終的には機能的な成熟miRNAに加工される。成熟miRNA分子は、一又は複数のメッセンジャーRNA(mRNA)分子と部分的に、あるいは完全に相補的であり、それらの主な機能は、遺伝子発現を下方制御することである。miRNA分子の同定については、例えば、Lagos-Quintanaら、Science,294:853-858;Lauら、Science,294:858-862;及びLeeら、Science,294:862-864に記述されている。
【0153】
miRNAをコードする遺伝子は、加工された成熟miRNA分子よりもはるかに長い。miRNAは、最初にキャップ及びポリAテールを有する一次転写産物又はpri-miRNAとして転写され、細胞核内でpre-miRNAとして知られる、短い、~70ヌクレオチド(~70-nucleotide)のステムループ構造に加工される。このプロセシングは、動物ではヌクレアーゼDrosha及び二本鎖RNA結合タンパク質Pashaからなるマイクロプロセッサ複合体として知られるタンパク質複合体によって実施される(Denliら、Nature、432:231-235(2004))。これらのpre-miRNAは、次に、エンドヌクレアーゼDicerとの相互作用によって細胞質で成熟miRNAにプロセシングされ(processed)、それはまた、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)の形成も開始する(Bernsteinら、Nature,409:363-366(2001))。DNAのセンス鎖又はアンチセンス鎖のいずれかは、miRNAを生じさせる鋳型として機能し得る。
【0154】
Dicerがpre-miRNAのステムループを切断する場合、2つの相補的な短いRNA分子が形成されるが、RISC複合体に組み込まれるのは1つだけである。この鎖は、ガイド鎖として知られ、RISC複合体の触媒活性RNaseであるアルゴノートタンパク質によって、5’末端の安定性に基づいて選択される(Preallら、Curr.Biol.,16:530-535(2006))。アンチガイド鎖又はパッセンジャー鎖として知られる残りの鎖は、RISC複合体の基質として分解される(Gregoryら、Cell,123:631-640(2005))。活性RISC複合体に組み込まれた後、miRNAsは、それらの相補的なmRNA分子と塩基対を形成し、標的mRNAの分解及び/又は翻訳抑制を誘導する。
【0155】
哺乳類のmiRNA分子は、通常、標的mRNA配列の3’UTRの部位と相補的である。特定の例において、標的mRNAへのmiRNAのアニーリングは、タンパク質翻訳機構を妨げることによってタンパク質の翻訳を阻害する。特定の他の例において、標的mRNAへのmiRNAのアニーリングは、RNA干渉(RNAi)と似ている過程を介して標的mRNAの切断及び分解を促進する。miRNAはまた、標的mRNAに対応するゲノム部位のメチル化を標的としてもよい。一般に、miRNAは、miRNPと総称されるタンパク質の相補体と関連して機能する。
【0156】
特定の態様において、本明細書中に記述されているmiRNA分子は、約15~100、15~90、15~80、15~75、15~70、15~60、15~50、又は15~40ヌクレオチド長、より典型的には、約15~30、15~25、又は19~25ヌクレオチド長、好ましくは、約20~24、21~22、又は21~23ヌクレオチド長である。特定の他の態様において、miRNA分子は、一又は複数の修飾ヌクレオチドを含んでいてもよい。非限定的な例として、miRNA配列は、siRNA配列に関して、一又は複数の上述の修飾ヌクレオチドを含んでいてもよい。好ましい実施形態において、miRNA分子は、例えば、2’OMe-グアノシンヌクレオチド、2’OMe-ウリジンヌクレオチド、又はそれらの混合物などの2’OMeヌクレオチドを含む。
【0157】
いくつかの実施形態において、miRNA分子は、例えば、ウイルス感染及び生存に関連する遺伝子、代謝性疾患及び障害に関連する遺伝子、腫瘍形成及び細胞形質転換に関連する遺伝子、血管新生遺伝子、炎症及び自己免疫反応に関連する遺伝子などの免疫調節遺伝子、リガンドレセプター遺伝子、及び神経変性障害に関連する遺伝子などの、上記で規定された標的遺伝子のいずれかの発現をサイレンシングするために使用されることができる。
【0158】
他の実施形態において、目的のmRNAを標的とするmiRNAの活性を妨げる一又は複数の薬剤は、本発明の脂質粒子(例えば、核酸-脂質粒子)を用いて投与される。遮断薬の例には、立体ブロックオリゴヌクレオチド(steric blocking oligonucleotides)、ロック核酸オリゴヌクレオチド、及びモルフォリノオリゴヌクレオチドが含まれるが、これらに限定されない。かかる遮断薬は、miRNAに直接結合するか、あるいは標的mRNA上のmiRNA結合部位に結合してもよい。
【0159】
4.アンチセンスオリゴヌクレオチド
一実施形態において、核酸は、目的の標的遺伝子又は配列を対象にするアンチセンスオリゴヌクレオチドである。「アンチセンスオリゴヌクレオチド」又は「アンチセンス」という用語は、標的ポリヌクレオチド配列に相補的であるオリゴヌクレオチドを含む。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、選択された配列に相補的であるDNA又はRNAの一本鎖である。アンチセンスRNAオリゴヌクレオチドは、RNAに結合することによって、相補的なRNA鎖の翻訳を阻害する。アンチセンスDNAオリゴヌクレオチドは、特定の相補的な(コード又は非コード)RNAを標的とするために使用され得る。結合が起こる場合、このDNA/RNAハイブリッドは、酵素RNaseHによって分解され得る。特定の実施態様において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは,約10~約60ヌクレオチド、より好ましくは約15~約30ヌクレオチドを含む。この用語はまた、所望の標的遺伝子に正確に相補的でない可能性があるアンチセンスオリゴヌクレオチドを包含する(encompasses)。したがって、本発明は、アンチセンスに非標的特異的活性が見いだされる場合、又は標的配列との一又は複数のミスマッチを含むアンチセンス配列が特定の用途に最も好ましい場合に利用され得る。
【0160】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、タンパク質合成の効果的で標的化された阻害剤であることが証明されており、その結果、標的遺伝子によるタンパク質の合成を特異的に阻害するために使用され得る。タンパク質合成を阻害するアンチセンスオリゴヌクレオチドの有効性は十分に確立されている。例えば、ポリガラクツロナーゼ(polygalactauronase)及びムスカリン2型アセチルコリン受容体の合成は、それぞれのmRNA配列を対象にするアンチセンスオリゴヌクレオチドによって阻害される(米国特許第5,739,119号及び第5,759,829号参照)。さらに、アンチセンス阻害の例は、核タンパク質サイクリン、多剤耐性遺伝子(MDR1)、ICAM-1、E-セレクチン、STK-1、線条体GABAA受容体、及びヒトEGFで実証されている(Jaskulskiら、Science、240:1544-6(1988);Vasanthakumarら、Cancer Commun.、1:225-32(1989);Penisら、Brain Res Mal Brain Res.、15;57:310-20(1998);並びに米国特許第5,801,154号;第5,789,573号;第5,718,709号及び第5,610,288号参照)。その上、様々な異常細胞増殖、例えば、がんを阻害し、治療するために使用され得るアンチセンス構築物もまた、記述されている(米国特許第5,747,470号;同第5,591,317号;及び同第5,783,683号参照)。これらの参考文献の開示は、あらゆる目的のために、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0161】
アンチセンスオリゴヌクレオチドを産生する方法は、当技術分野で公知であり、任意のポリヌクレオチド配列を標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを産生するために容易に適合し得る。与えられた標的配列に特異的なアンチセンスオリゴヌクレオチド配列の選択は、選択された標的配列の分析、並びに二次構造、Tm、結合エネルギー、及び相対的安定性の決定に基づいている。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、宿主細胞内で標的mRNAへの特異的結合を減少させるか、あるいは妨げる二量体、ヘアピン、又は他の二次構造を形成するそれらの相対的不能に基づいて選択されることができる。mRNAの非常に好ましい標的領域には、AUG翻訳開始コドン又はその近くの領域、及びmRNAの5’領域と実質的に相補的な配列が含まれる。これらの二次構造の解析及び標的部位選択の考慮は、例えば、OLIGOプライマー解析ソフトウェア(Molecular Biology Insights)のv.4及び/又はBLASTN 2.0.5アルゴリズムソフトウェアを用いて実施され得る(Altschulら、Nucleic Acids Res.、25:3389-402(1997))。
【0162】
5.リボザイム
本発明の別の実施態様によれば、核酸-脂質粒子は、リボザイムと関連している。リボザイムは、エンドヌクレアーゼ活性を有する特定の触媒ドメインを有するRNA-タンパク質複合体である(Kimら、Proc.Natl.Acad Sci.USA.,84:8788-92(1987);及びForsterら、Cell,49:211-20(1987)参照)。例えば、多くのリボザイムは、高度な特異性でリン酸エステル転移反応を促進し、しばしばオリゴヌクレオチド基質中のいくつかのリン酸エステルの1つだけを切断する(Cechら、Cell,27:487-96(1981);Michelら、J.Mol.Biol.,216:585-610(1990);Reinhold-Hurekら、Nature,357:173-6(1992)参照)。この特異性は、化学反応に先立って、基質がリボザイムの内部ガイド配列(「IGS」)に特異的な塩基対合相互作用を介して結合するという要件に起因している。
【0163】
現在、少なくとも6つの基本的な種類の天然に存在する酵素RNA分子が知られている。それぞれが生理学的条件下で、トランスのRNAホスホジエステル結合の加水分解に触媒作用を及ぼし得る(ひいては、他のRNA分子を切断し得る)。一般に、酵素核酸は、最初に標的RNAに結合することによって作用する。そのような結合は、標的RNAを切断するために作用する分子の酵素部分にごく近接して保持されている酵素核酸の標的結合部分を通じて起こる。したがって、酵素核酸は、最初に標的RNAを認識し、次に相補的塩基対合を介して結合させ、一旦正しい部位に結合すると、標的RNAを切断するために酵素的に作用する。そのような標的RNAの戦略的な切断は、コードされたタンパク質の合成を指示するその能力を損なうであろう。酵素核酸がそのRNA標的を結合させ、切断した後、それは、別の標的を探すためにそのRNAから遊離し、そして、繰り返し新しい標的を結合させ、切断し得る。
【0164】
酵素核酸分子は、例えば、ハンマーヘッド、ヘアピン、δ型肝炎ウイルス、グループIイントロン又はRNaseP RNA(RNAガイド配列と関連して)、又はNeurospora VS RNAモチーフで形成される。ハンマーヘッドモチーフの具体例は、例えば、Rossiら、Nucleic Acids Res.、20:4559-65(1992)に記述されている。ヘアピンモチーフの例は、例えば、EP 0360257、Hampelら、Biochemistry、28:4929-33(1989);Hampelら、Nucleic Acids Res.、18:299-304(1990);及び米国特許第5,631,359号に記述されている。δ型肝炎ウイルスモチーフの例は、例えば、Perrottaら、Biochemistry、31:11843-52(1992)に記述されている。RNasePモチーフの例は、例えば、Guerrier-Takadaら、Cell、35:849-57(1983)に記述されている。Neurospora VS RNAリボザイムモチーフの例は、例えば、Savilleら、Cell,61:685-96(1990);Savilleら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,88:8826-30(1991);Collinsら、Biochemistry,32:2795-9(1993)に記述されている。グループIイントロンの例は、例えば、米国特許第4,987,071号に記述されている。本発明に従って使用される酵素核酸分子の重要な特徴は、一又は複数の標的遺伝子DNA又はRNA領域に相補的である特異的基質結合部位を有するということ、及び分子にRNA切断活性を与えるその基質結合部位の内部又は周囲にヌクレオチド配列を有するということである。したがって、リボザイム構築物は、本明細書において言及された特定のモチーフに限定される必要はない。これらの参考文献の開示は、あらゆる目的のために、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0165】
任意のポリヌクレオチド配列を標的とするリボザイムを産生する方法は、当技術分野で知られている。リボザイムは、例えば、PCT公報第WO 93/23569号及び第WO 94/02595号に記述されたとおりに設計され、当該明細書において記述されたとおりにインビトロ及び/又はインビボで試験されるように合成されることができる。これらのPCT公報の開示は、あらゆる目的のために、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0166】
リボザイム活性は、リボザイム結合アームの長さを変えるか、あるいは血清リボヌクレアーゼによる分解を防止する修飾(例えば、PCT公報第WO 92/07065号、第WO 93/15187号、第WO 91/03162号、及び第WO 94/13688号;EP 92110298.4;並びに米国特許第5,334,711号を参照されたい、これらは酵素RNA分子の糖部分に加えることができる様々な化学修飾について記述しており、これらの開示はそれぞれ、あらゆる目的のために、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)、細胞内での効力を増強する修飾、及びRNA合成時間を短縮し、化学的必要条件を低減するための幹II塩基(stem II bases)の除去を有するリボザイムを化学的に合成することによって最適化され得る。
【0167】
6.免疫刺激性オリゴヌクレオチド
本発明の脂質粒子に関連する核酸は、ヒトなどの哺乳動物である、対象に投与された場合、免疫応答を誘導することができる免疫刺激性オリゴヌクレオチド(ISS;一本鎖又は二本鎖)を含む免疫刺激性(immunostimulatory)であってもよい。ISSには、例えば、ヘアピン二次構造につながる特定のパリンドローム(Yamamotoら、J.Immunol.、148:4072-6(1992)参照)、又はCpGモチーフ、及び他の既知のISSの特徴(マルチGドメインなど;PCT公報第WO 96/11266号参照;その開示は、あらゆる目的のために、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)が含まれる。
【0168】
免疫刺激性核酸は、免疫応答を引き起こすために標的配列に特異的に結合し、その発現を低下させることが要求されない場合、非配列特異的であると見なされる。したがって、特定の免疫刺激性核酸は、天然に存在する遺伝子又はmRNAの領域に対応する配列を含むことができるが、それにしても非配列特異的免疫刺激性核酸と見なされる可能性がある。
【0169】
一実施形態において、免疫刺激性核酸又はオリゴヌクレオチドは、少なくとも1つのCpGジヌクレオチドを含む。オリゴヌクレオチド又はCpGジヌクレオチドは、非メチル化又はメチル化されていてもよい。別の実施形態において、免疫刺激性核酸は、メチル化シトシンを有する少なくとも1つのCpGジヌクレオチドを含む。一実施形態において、核酸は、単一のCpGジヌクレオチドを含み、前記CpGジヌクレオチド中のシトシンはメチル化されている。代替の実施形態において、核酸は、少なくとも2つのCpGジヌクレオチドを含み、前記CpGジヌクレオチド中の少なくとも1つのシトシンはメチル化されている。さらなる実施形態において、配列中に存在するCpGジヌクレオチド中の各シトシンは、メチル化されている。別の実施形態において、核酸は、複数のCpGジヌクレオチドを含み、前記CpGジヌクレオチドの少なくとも1つはメチル化シトシンを含む。本発明の組成物及び方法での使用に適した免疫刺激性オリゴヌクレオチドの例は、2008年12月31日出願のPCT出願第PCT/US08/88676号、PCT公報第WO 02/069369号及び第WO 01/15726号、米国特許第6,406,705号、及びRaneyら、J.Pharm.Exper.Ther.、298:1185-92(2001)に記述されており、これらの開示は、あらゆる目的のために、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。特定の実施形態において、本発明の組成物及び方法で使用されるオリゴヌクレオチドは、ホスホジエステル(「PO」)主鎖又はホスホロチオエート(「PS」)主鎖、及び/又はCpGモチーフ中の少なくとも1つのメチル化シトシン残基を有する。
【0170】
B.他の活性剤
特定の実施形態において、本発明の脂質ナノ粒子に関連する活性剤は、一又は複数の治療用タンパク質、ポリペプチド、又は有機小分子又は化合物を含むことができる。そのような治療上有効な薬剤(agents)又は薬物(drugs)の非限定的な例としては、抗がん剤(oncology drugs)(例えば、化学療法薬、ホルモン療法薬、免疫療法薬、放射線治療薬など)、脂質低下薬、抗ウイルス薬、抗炎症化合物、抗うつ薬、興奮剤、鎮痛剤、抗生物質、避妊薬、解熱剤、血管拡張剤、抗血管形成剤(anti-angiogenics)、細胞血管剤(cytovascular agents)、シグナル伝達阻害剤、抗不整脈薬などの心臓脈管薬、ホルモン、血管収縮剤、及びステロイドが挙げられる。これらの活性剤は、本発明の脂質粒子中に単独で、あるいは干渉RNAなどの核酸を含む本発明の脂質粒子と組み合わせて(例えば、共投与)投与されることができる。
【0171】
化学療法薬の非限定的な例としては、白金ベースの薬剤(例えば、オキサリプラチン、シスプラチン、カルボプラチン、スピロプラチン、イプロプラチン、サトラプラチンなど)、アルキル化剤(例えば、シクロホスファミド、イホスファミド、クロラムブシル、ブスルファン、メルファラン、メクロレタミン、ウラムスチン、チオテパ、ニトロソウレアなど)、代謝拮抗剤(例えば、5-フルオロウラシル(5-FU)、アザチオプリン、メトトレキサート、ロイコボリン、カペシタビン、シタラビン、フロクスウリジン、フルダラビン、ゲムシタビン、ペメトレキセド、ラルチトレキセドなど)、植物アルカロイド(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、ビンデシン、ポドフィロトキシン、パクリタキセル(タキソール)、ドセタキセルなど)、トポイソメラーゼ阻害剤(例えば、イリノテカン(CPT-11;Camptosar)、トポテカン、アムサクリン、エトポシド(VP16)、リン酸エトポシド、テニポシドなど)、抗腫瘍抗生物質(例えば、ドキソルビシン、アドリアマイシン、ダウノルビシン、エピルビシン、アクチノマイシン、ブレオマイシン、マイトマイシン、ミトキサントロン、プリカマイシンなど)、チロシンキナーゼ阻害剤(例えば、ゲフィチニブ(イレッサ(登録商標))、スニチニブ(スーテント(登録商標);SU11248)、エルロチニブ(タルセバ(登録商標);OSI-1774)、ラパチニブ(GW572016;GW2016)、カネルチニブ(CI 1033)、セマキシニブ(semaxinib)(SU5416)、バタラニブ(PTK787/ZK222584)、ソラフェニブ(BAY43-9006)、イマチニブ(グリベック(登録商標);STI571)、ダサチニブ(BMS-354825)、レフルノミド(SU101)、バンデタニブ(ザクティマ(商標);ZD6474)など)、薬学的に許容されるそれらの塩、それらの立体異性体、それらの誘導体、それらのアナログ、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0172】
従来のホルモン療法薬の例としては、限定されないが、ステロイド(例えば、デキサメタゾン)、フィナステリド、アロマターゼ阻害剤、タモキシフェン、及びゴセレリン及び他のゴナドトロピン放出ホルモンアゴニスト(GnRH)が挙げられる。
【0173】
従来の免疫療法薬の例には、免疫刺激剤(例えば、Bacillus Calmette-Guerin(BCG)、レバミソール、インターロイキン-2、α-インターフェロンなど)、モノクローナル抗体(例えば、抗CD20、抗HER2、抗CD52、抗HLA-DR、及び抗VEGFモノクローナル抗体)、免疫毒素(例えば、抗CD33モノクローナル抗体-カリキアミシン複合体、抗CD22モノクローナル抗体-緑膿菌外毒素複合体など)、放射免疫治療(例えば、111In、90Y、131Iと結合した抗CD20モノクローナル抗体など)が含まれるが、これらに限定されない。
【0174】
従来の放射線治療薬の例には、47Sc、64Cu、67Cu、37Sr、86Y、37Y、90Y、105Rh、111Ag、111In、117mSn、149Pm、153Sm、166Ho、177Lu、186Re、188Re、211At、及び212Biなどの放射性核種が含まれるが、これらに限定されるものではなく、任意に腫瘍抗原に対する抗体と結合する。
【0175】
本発明に従って使用されることができる追加の抗がん剤には、アルケラン、アロプリノール、アルトレタミン、アミホスチン、アナストロゾール、araC、三酸化ヒ素、ベキサロテン、biCNU、カルムスチン、CCNU、セレコキシブ、クラドリビン、シクロスポリンA、シトシンアラビノシド、シトキサン、デクスラゾキサン、DTIC、エストラムスチン、エキセメスタン、FK506、ゲムツズマブ-オゾガマイシン、ハイドレア、ヒドロキシ尿素、イダルビシン、インターフェロン、レトロゾール、ロイスタチン、リュープロリド、リトレチノイン(litertinoin)、メガストロール、L-PAM、メスナ、メトキサレン、ミトラマイシン、ナイトロジェンマスタード、パミドロネート、ペガデマーゼ、ペントスタチン、ポルフィマーナトリウム、プレドニゾン、リツキサン、ストレプトゾシン、STI-571、タキソテール、テモゾラミド(temozolamide)、VM-26、トレミフェン、トレチノイン、ATRA、バルルビシン、及びベルバン(velban)が含まれるが、これらに限定されない。本発明に従って使用されることができる抗がん剤の他の例は、エリプチシン(ellipticin)及びエリプチシンアナログ又は誘導体、エポチロン、細胞内キナーゼ阻害剤、並びにカンプトテシンである。
【0176】
トリグリセリド、コレステロール、及び/又はグルコースの上昇に関連する脂質疾患又は障害を治療するための脂質低下剤の非限定的な例としては、スタチン、フィブラート、エゼチミブ、チアゾリジンジオン、ナイアシン、β遮断薬、ニトログリセリン、カルシウム拮抗薬、魚油、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0177】
抗ウイルス薬の例には、アバカビル、アシクロビル(aciclovir)、アシクロビル(acyclovir)、アデホビル、アマンタジン、アンプレナビル、アルビドール、アタザナビル、アトリプラ、シドホビル、コンビビル、ダルナビル、デラビルジン、ジダノシン、ドコサノール、エドクスジン、エファビレンツ、エムトリシタビン、エンフビルチド、エンテカビル、エントリー阻害剤、ファムシクロビル、多剤混合薬、ホミビルセン、ホスアンプレナビル、ホスカルネット、ホスホネート(fosfonet)、融合阻害剤、ガンシクロビル、イバチタビン、イムノビル(imunovir)、イドクスウリジン、イミキモド、インジナビル、イノシン、インテグラーゼ阻害剤、インターフェロンIII型(例えば、IFN-λ1、IFN-λ2、IFN-λ3などのIFN-λ分子)、インターフェロンII型(例えば、IFN-γ)、インターフェロンI型(例えば、PEG化IFN-α、IFN-β、IFN-κ、IFN-δ、IFN-ε、IFN-τ、IFN-ω、及びIFN-ξなどのIFN-α)、インターフェロン、ラミブジン、ロピナビル、ロビリド、MK-0518、マラビロク、モロキシジン、ネルフィナビル、ネビラピン、ネキサビル、ヌクレオシド類似体、オセルタミビル、ペンシクロビル、ペラミビル、プレコナリル、ポドフィロトキシン、プロテアーゼ阻害剤、逆転写酵素阻害剤、リバビリン、リマンタジン、リトナビル、サキナビル、スタブジン、相乗的エンハンサー、テノホビル、テノホビルジソプロキシル、ティプラナビル、トリフルリジン、トリジビル(trizivir)、トロマンタジン、ツルバダ、バラシクロビル、バルガンシクロビル、ビクリビロク、ビダラビン、ビラミジン、ザルシタビン、ザナミビル、ジドブジン、薬学的に許容されるそれらの塩、それらの立体異性体、それらの誘導体、それらのアナログ、及びそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0178】
追加の薬剤としては、ゾタロリムス、シロリムス、ラパマイシン、エベロリムス、バイオリムス、ミオリムス、ノボリムス、テムシロリムス、デフォロリムス、メリリムス、タクロリムス、ピメクロリムス、リダフォロリムス(ridaforolimus)、薬学的に許容されるそれらの塩、それらの立体異性体、それらの誘導体、それらのアナログ、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0179】
医薬組成物
脂質ナノ粒子は、医薬組成物として全部又は一部において製剤化される(be formulated)ことができる。医薬組成物は、一又は複数のナノ粒子を含むことができる。例えば、医薬組成物は、一又は複数の異なる治療薬及び/又は予防薬を含む一又は複数のナノ粒子を含むことができる。医薬組成物は、本明細書において記述されているような一又は複数の薬学的に許容される賦形剤又は副成分をさらに含むことができる。医薬組成物及び医薬品の処方及び製造のための一般的なガイドラインは、例えば、Remington’s The Science and Practice of Pharmacy,21st Edition,A.R.Gennaro;Lippincott,Williams&Wilkins,Baltimore,Md.,2006で入手可能である。従来の賦形剤及び副成分は、任意の従来の賦形剤又は副成分が脂質ナノ粒子の一又は複数の成分と不適合である可能性がある場合を除き、任意の医薬組成物に使用されることができる。賦形剤又は副成分は、脂質ナノ粒子の成分との組み合わせが望ましくない生物学的効果又はその他の有害な効果をもたらす可能性がある場合、脂質ナノ粒子の成分と不適合である可能性がある。
【0180】
いくつかの実施形態において、一又は複数の賦形剤又は副成分は、脂質ナノ粒子を含む医薬組成物の全質量又は体積の50%超を構成することができる。例えば、一又は複数の賦形剤又は副成分は、医薬品協定(a pharmaceutical convention)の50%、60%、70%、80%、90%、又はそれ以上を構成してもよい。いくつかの実施形態において、薬学的に許容される賦形剤は、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%純粋である。いくつかの実施形態において、賦形剤は、ヒトでの使用及び動物用として承認されている。いくつかの実施形態において、賦形剤は、米国食品医薬品局によって承認されている。いくつかの実施形態において、賦形剤は医薬品グレードである。いくつかの実施形態において、賦形剤は、米国薬局方(USP)、欧州薬局方(EP)、英国薬局方、及び/又は国際薬局方の基準を満たす。
【0181】
本開示に従った医薬組成物中の一又は複数の脂質ナノ粒子、一又は複数の薬学的に許容される賦形剤、及び/又は任意の付加成分の相対量は、処置される対象の同一性、サイズ、及び/又は状態に応じて、さらに組成物が投与される経路に応じて変化するであろう。一例として、医薬組成物は、0.1%~100%(wt/wt)の一又は複数の脂質ナノ粒子を含むことができる。
【0182】
特定の実施形態において、本発明の脂質ナノ粒子及び/又は医薬組成物は、保管及び/又は出荷のために冷蔵又は冷凍される(例えば、約-150℃~約0℃、又は約-80℃~約-20℃(例えば、約-5℃、-10℃、-15℃、-20℃、-25℃、-30℃、-40℃、-50℃、-60℃、-70℃、-80℃、-90℃、-130℃又は-150℃)の温度などの約4℃以下の温度で保管される)。
【0183】
特定の実施形態において、本発明の薬学的組成物は、本明細書中に開示される脂質ナノ粒子、並びにトリス、アセテート(例えば、酢酸ナトリウム)、シトレート(例えば、クエン酸ナトリウム)、生理食塩水、PBS、及びスクロースの1つ以上から選択される薬学的に許容される担体を含む。特定の実施形態において、本開示の医薬組成物は、約7~8(例えば、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9若しくは8.0、又は7.5~8又は7~7.8)のpH値を有する。例えば、本開示の医薬組成物は、本明細書中に開示されるナノ粒子組成物、トリス、生理食塩水及びスクロースを含み、例えば、約-20℃での保管及び/又は出荷に適している、約7.5~8のpHを有する。例えば、本開示の医薬組成物は、本明細書において開示される脂質ナノ粒子及びPBSを含み、例えば、約4℃以下での保管及び/又は出荷に適した、約7~7.8のpHを有する。本開示の文脈における「安定性」、「安定化」及び「安定」とは、所与の製造、調製、輸送、保管及び/又は使用中の条件下、例えば、せん断力、凍結/融解ストレスなどのストレスが加えられた場合の、化学的又は物理的変化(例えば、分解、粒径の変化、凝集、カプセル化の変化など)に対する、本明細書中に開示されるナノ粒子組成物及び/又は医薬組成物の耐性を指す。
【0184】
好ましい実施形態において、本発明の脂質ナノ粒子は、トリスHCl、トリスアセテート、TT/AAを含む、本明細書中に記述されている任意の一又は複数の緩衝液中で、一又は複数の二糖類、又は例えば、スクロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、マルチトール、若しくはラクチトールなどの分子を含む二糖を用いて処方される。以下の実施例において示されるように、スクロースを用いて製剤化された脂質ナノ粒子は、凝集することなく解凍後に再構成され得る。
【0185】
脂質ナノ粒子及び/又は一又は複数の脂質ナノ粒子を含む医薬組成物は、一又は複数の特定の細胞、組織、器官、又は腎系などの、それらの系若しくは群への治療薬及び/又は予防薬の送達によって提供される治療効果から利益を得る可能性のある患者又は対象を含む、任意の患者又は対象に投与されることができる。脂質ナノ粒子及び脂質ナノ粒子を含む医薬組成物の本明細書において提供される説明は、主にヒトへの投与に適している組成物を対象にするが、そのような組成物は、一般に任意の他の哺乳動物への投与に適していることが当業者に理解されるであろう。組成物を様々な動物への投与に適する状態にするために、ヒトへの投与に適する組成物の改良はよく理解されており、人並みに熟練した獣医薬学者は、もしあれば、単なる普通の実験を用いて、そのような改良を設計及び/又は実施することができる。組成物の投与が考えられる対象には、ヒト、他の霊長類、及び例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ネコ、イヌ、マウス、及び/又はラットなどの商業的に関連のある哺乳動物を含む他の哺乳動物が含まれるが、これらに限定されない。
【0186】
一又は複数の脂質ナノ粒子を含む医薬組成物は、薬理学の技術分野において既知の、あるいは今後開発される任意の方法によって調製されることができる。一般に、そのような調製方法には、賦形剤及び/又は1つ以上の他の副成分に関連する有効成分をもたらすこと、及び次に、望ましい場合か、あるいは必要ならば、製品を所望の単回又は複数回投与単位に分割、成形、及び/又は包装することが含まれる。
【0187】
本開示に従った医薬組成物は、単回単位用量として、及び/又は複数の単回単位用量として、バルクで調製、包装、及び/又は販売されることができる。本明細書で使用する場合、「単位用量」とは、所定量の有効成分(例えば、脂質ナノ粒子)を含む医薬組成物の離散量である。有効成分の量は、一般に、対象に投与されることになる有効成分の投与量に等しい、及び/又はかかる投与量の都合の良い分数(fraction)、例えば、かかる投与量の2分の1若しくは3分の1などである。
【0188】
医薬組成物は、様々な投与経路及び投与方法に適した様々な形態で調製されることができる。例えば、医薬組成物は、液体剤形(例えば、エマルション、マイクロエマルション、ナノエマルション、溶液、懸濁液、シロップ、及びエリキシル)、注射剤型、固体剤形(例えば、カプセル、錠剤(tablets)、丸薬(pills)、粉末、及び顆粒)、局所及び/又は経皮投与のための剤形(例えば、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、粉末、溶液、スプレー、吸入剤、及びパッチ)、懸濁液、粉末、及び他の形態で調製されてもよい。
【0189】
経口及び非経口投与のための液体剤形には、薬学的に許容されるエマルション、マイクロエマルション、ナノエマルション、溶液、懸濁液、シロップ、及び/又はエリキシルが含まれるが、これらに限定されない。有効成分に加えて、液体剤形は、例えば、水又は他の溶媒、可溶化剤及びエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1.3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(特に、綿実油、落花生油、コーン油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、及びゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール及びソルビタンの脂肪酸エステルなどのエマルション、並びにそれらの混合物などの当該技術分野で一般に使用される不活性希釈剤を含むことができる。不活性希釈剤の他に、経口組成物は、追加の治療薬及び/又は予防薬、追加の薬剤、例えば、湿潤剤、乳化剤及び懸濁化剤、甘味剤、香味剤、及び/又は芳香剤などを含むことができる。非経口投与のための特定の実施形態において、組成物は、Cremophor(登録商標)、アルコール、油、変性油、グリコール、ポリソルベート、シクロデキストリン、ポリマー、及び/又はそれらの組み合わせなどの可溶化剤と混合される。
【0190】
注射用製剤、例えば、滅菌注射用水性又は油性懸濁液は、適切な分散剤、湿潤剤、及び/又は懸濁化剤を用いて、既知の技術に従って製剤化するされるができる。滅菌注射製剤は、非毒性の、非経口的に許容される希釈剤及び/又は溶媒中の、例えば、1,3-ブタンジオール中の溶液として、滅菌注射溶液、懸濁液、及び/又は乳剤であることができる。水、リンゲル液、U.S.P.、及び等張塩化ナトリウム溶液は、使用されることができる容認可能なビヒクル及び溶媒である。滅菌固定油は、溶媒又は懸濁媒体として従来の方法で使用されている。この目的のために、合成モノグリセリド又はジグリセリドを含む、任意の無菌性の固定油が使用され得る。オレイン酸のような脂肪酸は、注射物質の調製に使用され得る。
【0191】
注射製剤は、例えば、細菌保持フィルターを介したろ過によって、及び/又は使用前に滅菌水又は他の滅菌注射媒体に溶解又は分散し得る滅菌固体組成物の形態で滅菌剤を組み込むことによって滅菌され得る。
【0192】
直腸又は膣投与のための組成物は、典型的には座薬であり、組成物を適切な非刺激性賦形剤、例えば、ココアバター、ポリエチレングリコール又は座薬ワックスなどと混合することによって調製されることができ、これらの組成物は、周囲温度では固体であるが体温では液体であり、それ故に直腸又は膣腔内で融解して有効成分を放出する。
【0193】
経口投与のための固形剤形には、カプセル、錠剤、丸薬、フィルム、粉末、及び顆粒が含まれる。そのような固形剤形において、有効成分は、クエン酸ナトリウム又はリン酸二カルシウムなどの少なくとも1つの不活性で薬学的に許容される賦形剤及び/又は充填剤又は増量剤(例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、及びケイ酸)、結合剤(例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリジノン(polyvinylpyrrolidinone)、スクロース、及びアカシア)、保湿剤(例えば、グリセロール)、崩壊剤(例えば、寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモ又はタピオカデンプン、アルギン酸、特定のシリケート、及び炭酸ナトリウム)、溶解遅延剤(例えば、パラフィン)、吸収促進剤(例えば、第4級アンモニウム化合物)、湿潤剤(例えば、セチルアルコール及びグリセロールモノステアレート)、吸収剤(例えば、カオリン及びベントナイトクレー、シリケート)、及び潤滑剤(例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム)、並びにそれらの混合物である。カプセル、錠剤及び丸薬の場合、剤形は、緩衝剤を含んでもよい。
【0194】
同様のタイプの固体組成物は、ラクトース又は乳糖などの賦形剤及び高分子量ポリエチレングリコールなどを用いて、ソフト及びハード充填ゼラチンカプセルの充填剤として使用されることができる。錠剤、糖衣錠、カプセル、丸薬及び顆粒の固形剤形は、腸溶コーティング及び医薬製剤技術分野で周知の他のコーティングなどのコーティング及び殻を用いて調製され得る。これらは、任意に乳白剤を含むことができ、腸管の特定の部分においてのみ、あるいは優先的に、任意に、遅延して有効成分を放出する組成のものであり得る。使用され得る包理組成物の例としては、重合物質及びワックスが挙げられる。同様のタイプの固体組成物は、ラクトース又は乳糖などの賦形剤及び高分子量ポリエチレングリコールなどを用いて、ソフト及びハード充填ゼラチンカプセルの充填剤として使用されることができる。
【0195】
組成物の局所及び/又は経皮投与のための剤形としては、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、粉末、溶液、スプレー、吸入剤、及び/又はパッチが挙げられる。一般に、有効成分は、滅菌条件下で、薬学的に許容される賦形剤及び/又は任意の必要とされる防腐剤及び/又は必要である可能性がある緩衝液と混和される。さらに、本開示は、経皮パッチの使用を検討しており、このパッチは、しばしば、身体への化合物の制御された送達を提供するという付加的な利点を有する。そのような剤形は、例えば、化合物を適切な媒体に溶解及び/又は分散することによって調製されることができる。代替的又は付加的に、速度制御膜を提供すること及び/又はポリマーマトリクス及び/又はゲル中に化合物を分散させることのいずれかによって、速度を制御することができる。
【0196】
本明細書において記述されている皮内医薬組成物の送達に使用するための適切な装置としては、米国特許第4,886,499号;第5,190,521号;第5,328,483号;第5,527,288号;第4,270,537号;第5,015,235号;第5,141,496号;及び第5,417,662号に記述されているもののような短針装置が挙げられる。皮内組成物は、PCT公報WO 99/34850に記述されているもの及びその機能的等価物などの皮膚への針の有効侵入長を制限する装置によって投与されることができる。液体ジェット式注射器を介して、及び/又は角質層を貫通し、真皮に到達するジェットを生成する針を介して、液体組成物を真皮に送達するジェット注射装置が適している。ジェット注射装置は、例えば、米国特許第5,480,381号;第5,599,302号;第5,334,144号;5,993,412号;第5,649,912号;第5,569,189号;第5,704,911号;第5,383,851号;第5,893,397号;第5,466,220号;第5,339,163号;第5,312,335号;第5,503,627号;第5,064,413号;第5,520,639号;第4,596,556号;第4,790,824号;第4,941,880号;第4,940,460号;及びPCT公報WO 97/37705及びWO 97/13537に記述されている。圧縮ガスを使用して粉末状のワクチンを皮膚の外層から真皮まで加速させる弾道粉末/粒子送達装置(Ballistic powder/particle delivery devices)が適している。代替的又は追加的に、従来の注射器は、皮内投与のための古典的なマントゥー法に使用されることができる。
【0197】
局所投与に適した製剤には、液体及び/又は半液体製剤、例えば、塗布薬、ローション、クリーム、軟膏及び/又はペーストなどの水中油型及び/又は油中水型エマルション、及び/又は溶液及び/又は懸濁液などが含まれるが、これらに限定されない。有効成分の濃度は、溶媒中の有効成分の溶解限界と同じくらい高くてもよいが、局所投与可能な製剤は、例えば、約1%~約10%(wt/wt)の有効成分を含んでもよい。局所投与のための製剤は、本明細書において記述されている一又は複数の付加成分をさらに含んでもよい。
【0198】
医薬組成物は、口腔を介した肺投与に適した製剤で調製、包装、及び/又は販売されることができる。そのような製剤は、有効成分を含む乾燥粒子を含んでもよい。そのような組成物は、都合が良いことには、粉末を分散させるために推進剤の流れを向けることができる乾燥粉末リザーバを含む装置を用いて、及び/又は密閉容器内の低沸点推進剤に溶解及び/又は懸濁した有効成分を含む装置などの自己推進溶媒/粉末分注容器(a self-propelling solvent/powder dispensing container)を用いて投与するための乾燥粉末の形態である。乾燥粉末組成物は、砂糖のような固体微粉末希釈剤を含んでもよく、単位用量形態で都合よく提供される。
【0199】
低沸点推進剤は、一般に、大気圧で65°F未満の沸点を有する液体推進剤を含む。一般に、推進剤は、組成物の50%~99.9%(wt/wt)を構成することができ、有効成分は、組成物の0.1%~20%(wt/wt)を構成することができる。推進剤は、液体の非イオン性界面活性剤及び/又は固体のアニオン性界面活性剤及び/又は固体の希釈剤(有効成分を含む粒子と同じオーダーの粒径を有してもよい)などの付加成分をさらに含んでよい。
【0200】
肺送達のために製剤化された医薬組成物は、溶液及び/又は懸濁液の液滴の形態で有効成分を提供することができる。そのような製剤は、任意に無菌の、有効成分を含む、水性及び/又は希アルコール溶液及び/又は懸濁液として調製、包装、及び/又は販売されることができ、任意の噴霧及び/又は霧化装置(nebulization and/or atomization device)を用いて都合よく投与されることができる。そのような製剤は、サッカリンナトリウムのような香味剤、揮発性油、緩衝剤、表面活性剤、及び/又はメチルヒドロキシベンゾエートのような防腐剤を含むが、これらに限定されない一又は複数の付加成分をさらに含んでもよい。この投与経路によって提供される液滴は、約1nm~約200nmの範囲の平均直径を有することができる。
【0201】
肺送達に有用であるような本明細書おいて記述されている製剤は、医薬組成物の経鼻送達に有用である。鼻腔内投与に適した別の製剤は、有効成分を含み、約0.2μm~約500μmの平均粒子を有する粗粉末である。そのような製剤は、嗅ぎたばこを吸う方法で、すなわち、鼻の近くに保持された粉末の容器から鼻腔を通過して急速に吸入することによって投与される。
【0202】
鼻腔投与に適した製剤は、例えば、約0.1%(as little as 0.1%)(wt/wt)~約100%(as much as 100%)(wt/wt)の有効成分を含み、本明細書において記述されている一又は複数の付加成分を含むことができる。医薬組成物は、口腔投与に適した製剤で調製、包装、及び/又は販売されることができる。そのような製剤は、例えば、従来の方法を用いて製造される錠剤及び/又はトローチ剤の形態であってもよく、例えば、0.1%~20%(wt/wt)の有効成分、経口溶解性及び/又は分解性組成物を含む残り(balance)、及び任意に、本明細書において記述されている一又は複数の付加成分であってもよい。別法として、口腔投与に適した製剤は、有効成分を含む粉末及び/又はエアロゾル化及び/又は霧化溶液(an aerosolized and/or atomized solution)及び/又は懸濁液を含むことができる。そのような粉末化、エアロゾル化、及び/又はエアロゾル化(aerosolized, and/or aerosolized)製剤は、分散した場合、約0.1nm~約200nmの範囲の平均粒子及び/又は液滴サイズを有し、本明細書において記述されている一又は複数の任意の付加成分をさらに含むことができる。
【0203】
医薬組成物は、眼投与に適した製剤で調製、包装、及び/又は販売されることができる。そのような製剤は、例えば、水性又は油性液体賦形剤中の有効成分の、例えば、0.1/1.0%(wt/wt)溶液及び/又は懸濁液を含む点眼薬の形態であってもよい。かかる点眼薬は、緩衝剤、塩、及び/又は本明細書において記述されている、一又は複数のその他の任意の付加成分をさらに含んでもよい。有用である他の眼投与可能な製剤には、有効成分を微結晶形態及び/又はリポソーム製剤中に含むものが含まれる。点耳薬及び/又は点眼薬は、本開示の範囲内であると考えられる。
【0204】
疾患及び障害の治療方法
脂質ナノ粒子は、疾患、障害、又は状態の治療に有用であることができる。特に、そのような組成物は、タンパク質又はポリペプチド活性の欠損又は異常を特徴とする疾患、障害、又は状態の治療に有用であることができる。例えば、欠損又は異常ポリペプチドをコードするmRNAなどの活性(an active active)を含むナノ粒子組成物を細胞に投与又は送達することができる。mRNAのその後の翻訳は、ポリペプチドを産生し、それによってポリペプチドの欠失又はポリペプチドに起因する異常な活性によって引き起こされる問題を低減又は除去することができる。翻訳が迅速に起こる可能性があるので、本方法及び組成物は、急性疾患、障害、又は状態、例えば、敗血症、脳卒中、心筋梗塞などの治療に有用であることができる。ナノ粒子組成物に含まれる治療薬及び/又は予防薬はまた、所与の種の転写速度を変化させることができ、それによって遺伝子発現に影響を及ぼすことができる。
【0205】
組成物が投与される可能性があるタンパク質又はポリペプチド活性の機能不全又は異常を特徴とする疾患、障害、及び/又は状態には、希少疾患、感染性疾患(ワクチン及び治療薬(therapeutics)の両方として)、がん及び増殖性疾患、遺伝的疾患(例えば、嚢胞性線維症)、自己免疫疾患、糖尿病、神経変性疾患、心臓血管疾患及び腎血管疾患、並びに代謝性疾患が含まれるが、これらに限定されない。複数の疾患、障害、及び/又は状態は、タンパク質活性の欠損(又は適切なタンパク質機能が生じないように実質的に低下した)によって特徴付けられることができる。そのようなタンパク質は、存在しないか、あるいは本質的に機能しない可能性がある。機能不全タンパク質の具体例は、嚢胞性線維症を引き起こす、CFTRタンパク質の機能不全タンパク質変異体を産生する、嚢胞性線維症膜貫通コンダクタンス制御因子(CFTR)遺伝子のミスセンス突然変異体である。
【0206】
本開示は、RNAを含む本発明の脂質ナノ粒子を投与することによって、対象におけるそのような疾患、障害、及び/又は状態を治療する方法を提供し、前記RNAは、対象の細胞内に存在する異常なタンパク質活性に拮抗するか、あるいは他の方法で克服するポリペプチドをコードするmRNAであることができる。
【0207】
本開示は、一又は複数の治療薬及び/又は予防薬を含む脂質ナノ粒子を投与することを含む方法、及びそれを含む医薬組成物を提供する。治療の及び予防のという用語は、本開示の特徴及び実施形態に関して本明細書において互換的に使用され得る。治療組成物、又はその画像化、診断、若しくは予防組成物は、疾患、障害、及び/又は状態、及び/又は任意の他の目的の予防、治療、診断、又は画像化に有効な任意の適正な量及び任意の投与経路を用いて対象に投与され得る。所与の対象に投与される具体的な量は、対象の種、年齢、及び一般的な状態;投与の目的;特定の組成物;投与の様式;などに依存して変化することができる。本開示に従った組成物は、投与の容易さ及び投与量の均一性のために、投与単位形態で製剤化されることができる。しかしながら、本開示の脂質ナノ粒子又は医薬組成物の1日当たりの総使用量は、健全な医学的判断の範囲内で主治医によって決定されるということが理解されるであろう。特定の患者に対する特定の治療上有効な、予防上有効な、あるいはその他の方法で適切な用量レベル(例えば、画像化のための)は、もしあれば、治療される障害の重症度及び同定;採用される一又は複数の治療薬及び/又は予防薬;採用される特定の組成物;患者の年齢、体重、一般的な健康状態、性別、及び食事;採用される特定の医薬組成物の投与時間、投与経路、及び排泄速度;治療の期間;採用される特定の医薬組成物と併用又は同時に使用される薬物;並びに医療技術分野において周知の同様の要因を含む、様々な要因に依存する。
【0208】
一又は複数の治療薬及び/又は予防薬を含む脂質ナノ粒子は、任意の経路で投与されることができる。いくつかの実施形態において、本明細書中に記述されている一又は複数の脂質ナノ粒子を含む予防、診断、又は画像化組成物を含む組成物は、経口、静脈内、筋肉内、動脈内、髄内、髄腔内、皮下、心室内、経皮又は皮内、皮膚間、直腸、膣内、腹腔内、眼内、網膜下、硝子体内、局所(例えば、粉末、軟膏、クリーム、ゲル、ローション、及び/又は液滴による)、粘膜、経鼻、口腔、経腸、硝子体、腫瘍内、舌下、鼻腔内を含む一又は複数の様々な経路によって;気管内注入、気管支注入、及び/又は吸入によって;経口スプレー及び/又は粉末、鼻腔用スプレー、及び/又はエアロゾルとして、及び/又は門脈カテーテルを介して投与される。いくつかの実施形態において、組成物は、静脈内、筋肉内、皮内、動脈内、腫瘍内、皮下、眼内、網膜下、硝子体内、又は吸入によって投与されることができる。一般に、最も適切な投与経路は、一又は複数の治療薬及び/又は予防薬を含むナノ粒子組成物の性質(例えば、血流及び胃腸管のような種々の身体環境におけるその安定性)、患者の状態(例えば、患者が特定の投与経路に耐えられるかどうか)などを含む様々な要因に依存する。
【0209】
特定の実施形態において、本開示に従った組成物は、約0.0001mg/kg~約10mg/kg、約0.001mg/kg~約10mg/kg、約0.005mg/kg~約10mg/kg、約0.01mg/kg~約10mg/kg、約0.05mg/kg~約10mg/kg、約0.1mg/kg~約10mg/kg、約1mg/kg~約10mg/kg、約2mg/kg~約10mg/kg、約5mg/kg~約10mg/kg、約0.0001mg/kg~約5mg/kg、約0.001mg/kg~約5mg/kg、約0.005mg/kg~約5mg/kg、約0.01mg/kg~約5mg/kg、約0.05mg/kg~約5mg/kg、約0.1mg/kg~約5mg/kg、約1mg/kg~約5mg/kg、約2mg/kg~約5mg/kg、約0.0001mg/kg~約2.5mg/kg、約0.001mg/kg~約2.5mg/kg、約0.005mg/kg~約2.5mg/kg、約0.01mg/kg~約2.5mg/kg、約0.05mg/kg~約2.5mg/kg、約0.1mg/kg~約2.5mg/kg、約1mg/kg~約2.5mg/kg、約2mg/kg~約2.5mg/kg、約0.0001mg/kg~約1mg/kg、約0.001mg/kg~約1mg/kg、約0.005mg/kg~約1mg/kg、約0.01mg/kg~約1mg/kg、約0.05mg/kg~約1mg/kg、約0.1mg/kg~約1mg/kg、約0.0001mg/kg~約0.25mg/kg、約0.001mg/kg~約0.25mg/kg、約0.005mg/kg~約0.25mg/kg、約0.01mg/kg~約0.25mg/kg、約0.05mg/kg~約0.25mg/kg、又は約0.1mg/kg~約0.25mg/kgの治療薬及び/又は予防薬(例えば、mRNA)を所与の用量で送達するのに十分な投与量レベルで投与されることができ、ここで、1mg/kg(mpk)の用量は、対象の体重1kgあたり1mgの治療薬及び/又は予防薬を提供する。いくつかの実施形態において、ナノ粒子組成物の治療薬及び/又は予防薬(例えば、mRNA)の約0.001mg/kg~約10mg/kgの用量を投与することができる。他の実施形態において、治療薬及び/又は予防薬の約0.005mg/kg~約2.5mg/kgの用量を投与することができる。特定の実施形態において、約0.1mg/kg~約1mg/kgの用量を投与することができる。他の実施形態において、約0.05mg/kg~約0.25mg/kgの用量を投与することができる。所望のレベルのmRNAの発現及び/又は治療、診断、予防、又は画像化効果を得るために、同一又は異なる量で、1日に一又は複数回、用量を投与することができる。所望の投与量は、例えば、1日3回、1日2回、1日1回、1日おき、3日おき、1週間ごと、2週間ごと、3週間ごと、又は4週間ごとに送達されることができる。特定の実施形態において、所望の投与量は、複数回投与(例えば、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、11回、12回、13回、14回、又はそれ以上の投与)を用いて送達されることができる。いくつかの実施形態において、単回投与は、例えば、外科的処置の前又は後に、あるいは急性疾患、障害、又は状態の場合に投与されることができる。
【0210】
一又は複数の治療薬及び/又は予防薬を含む本発明の脂質ナノ粒子は、一又は複数の他の治療薬、予防薬、診断用薬、又は造影剤剤と組み合わせて使用されることができる。「と組み合わせて」とは、これらの送達方法が本開示の範囲内であるが、薬剤が同時に投与されなければならない、及び/又は一緒に送達するために製剤化されなければならない
という意味を含むことを意図するものではない。例えば、一又は複数の異なる治療薬及び/又は予防薬を含む一又は複数の脂質ナノ粒子を組み合わせて投与することができる。脂質ナノ粒子は、一又は複数の他の所望の治療薬又は医療処置と同時に、その前に、あるいはその後に投与され得る。一般に、各薬剤は、その薬剤に関して決定された用量で、及び/又はタイムスケジュールで投与される。いくつかの実施形態において、本開示は、生物学的利用能を改善し、代謝を低減及び/又は改変し、排泄を阻害し、及び/又は体内分布を改変する薬剤と組み合わせた、脂質ナノ粒子、組成物、又はその画像化、診断、若しくは予防組成物の送達を包含する。
【0211】
さらに、組み合わせて利用される治療的、予防的、診断的、又は画像化活性剤は、単一の組成物中で一緒に投与されるか、あるいは異なる組成物中で別々に投与されてもよいことが理解されるであろう。一般に、組み合わせて利用される薬剤は、それらが個々に利用されるレベルを超えないレベルで利用されることが期待される。いくつかの実施形態において、組み合わせて利用されるレベルは、個別に利用されるレベルよりも低くてもよい。
【0212】
併用レジメンに採用する治療(治療薬又は処置)の特定の組み合わせは、所望の治療薬及び/又は処置の適合性及び達成されるべき所望の治療効果を考慮に入れるであろう。また、採用される治療は、同じ障害(例えば、がんの治療に有用な組成物が化学療法剤と同時に投与される)に対して所望の効果を達成することができるか、あるいは異なる効果(例えば、インフュージョンリアクション(infusion related reactions)などの任意の副作用の制御)を達成することができることが理解されるであろう。
【実施例】
【0213】
実施例1-脂質ナノ粒子の生成
ナノ粒子は、マイクロフルイディクス及び2つの流体流のT字路の混合(-junction mixing of two fluid streams)などの混合過程で作成されることができ、一方の流体流が治療薬及び/又は予防薬を含み、他方が脂質成分を有する。脂質組成物は、カチオン性脂質(DODAC、DODAP又はDlim-MC3-DMAなど)、リン脂質(DOPE又はDSPCなど)、PEG脂質(1,2-ジミリストイル-rac-グリセロ-3-メトキシポリエチレングリコール-2000など、DMG-PEGとしても知られる)及び構造脂質(コレステロール又はコルチコステロイド(プレドニゾロン、デキサメタゾン、プレドニゾン、及びヒドロコルチゾンなど)、又はその組み合わせなど)をエタノール中で、約50mMの濃度で組み合わせることによって調製される。別段の定めがない限り、本明細書において「MIPS-LNP」と呼ばれるナノ粒子には、以下で言及される脂質ナノ粒子1~4のいずれか1つが含まれる。溶液は、例えば、4℃で保管する場合には冷蔵され、例えば、-20℃で保管する場合には凍結される必要がある。脂質を所望のモル比をもたらすように組み合わせ、エタノールで約5.5mM~約50mMの最終脂質濃度に希釈する。治療薬及び/又は予防薬及び脂質成分を含むナノ粒子組成物は、約5:1~約50:1の脂質成分対治療薬及び/又は予防薬のwt:wt比で、治療薬及び/又は予防薬を含む溶液を有する脂質溶液を組み合わせることによって調製される。脂質溶液は、例えば、マイクロ流体又はT字接合ベースのシステムを用いて、約0.5ml/min~約8ml/minの流速で核酸溶液と混合され、約1:1~約4:1、好ましくは3:1の水対エタノール比を有する脂質ナノ粒子懸濁液を産生する。ここで、NP比(窒素体ホスフェート)は4~7の間で維持される。溶液は、後述のように、最適な緩衝液で直ちに希釈又は緩衝液交換されることができる。
【0214】
生成された脂質ナノ粒子の例としては、以下が挙げられる:
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【0215】
RNAを含むナノ粒子組成物に関して、脱イオン水中で0.133~0.6mg/ml濃度のRNA溶液をpH3~4.5の25mM酢酸ナトリウム緩衝液で希釈し、貯蔵液を形成する(
図1)。ナノ粒子の製剤化後、ナノ粒子組成物は、透析又はタンジェンシャルフローろ過によって処理され、エタノールを除去し、緩衝液交換を達成し得る。例えば、製剤は、分子量カットオフが10kDであるSlide-A-Lyzerカセット(Thermo Fisher Scientific Inc.,Rockford,III.)を用いて、一次製品の200倍の体積で、pH7.4のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に対して2回透析される。最初の透析は、室温で3時間実行される。結果として生じるナノ粒子懸濁液は、ガラスバイアル中で0.4又は0.22μmの滅菌フィルターを通ってろ過され、密封される。0.01mg/ml~0.50mg/mlのナノ粒子組成物溶液が一般に得られる。いくつかの実施形態において、Repligen製のタンジェンシャルフローろ過(TFF)を透析カセットの代わりに使用した。さらに、pH7.4のトリススクロース溶液は、製剤の一部が-10~-80℃で凍結されるのを可能にするために使用された。
【0216】
上述の方法は、NanoAssemblrマイクロフルイディクスを用いてナノ沈殿及び粒子形成を誘導する。T字接合及び直接注射を含むが、これらに限定されない別のプロセスは、同様のナノ沈殿を達成するために使用されることができる。mRNAストック、及びカプセル化脂質の濃度を高くしたり低くしたりして、ナノ沈殿の際に使用することもできる。
【0217】
LNPは、一般に、静脈注射後、肝臓に受動的に送達されるように製剤化される。肝臓へのsiRNAを標的とするLNP(OnPattro、Alnylam Pharmaceuticals)は、2018年にFDAによってヒトへの使用が承認された。本発明者らは、このタイプの製品を従来のLNPと呼んでいる。
【0218】
実施例2-脂質ナノ粒子の構造特性評価
脂質ナノ粒子サイズ、多分散性指数(PDI)、及びナノ粒子組成物のゼータ電位は、Zetasizer(Malvern instruments)を用いて測定された。つまり、透析された粒子を使い捨てキュベット(例えば、ゼータセル(Malvern)又はUVキュベット)に入れた。キュベットをゼータサイザー内に置き、測定を記録した。ゼータサイザーのソフトウェア12.0を用いてサイズの計算を再コード化した。
【0219】
MIPS-LNPは、PEG化脂質含量のモル比を、従来のLNP組成物で使用されている0.5モル%濃度未満に低下させることによって製造され得る。一般に、従来のLNPは、1.5モル%のPEG化脂質で形成される。本発明者らは、LNPのPEG化脂質含量濃度を低下させると、粒径が100nmより大きくなるということを観察した(
図2A)。対照的に、従来のLNP製剤は、サイズが100nm未満の粒子を生成するが、MIPs-LNP及び従来のLNPは、両方とも同様の粒度分布プロファイルを維持する(
図2B)。さらに、本発明者らは、PEG化脂質0.15モル%のMIPS-LNPが、PEG化モル%濃度の低下した状態で、4℃で少なくとも6ヶ月間安定であるということを示した(
図2C)。MIPS-LNPの全体的な製剤は、脾臓のような免疫器官へのアクセスを高めるのに有益である、非常に強い負のゼータ電位を提供する(データは示さず)。
【0220】
本明細書において記述されている生物物理学的特性評価は、上記で言及された脂質ナノ粒子3又は4で実施された。
【0221】
実施例3-脂質ナノ粒子の機能的特性評価
筋肉内注射(IM)は、特にウイルス性疾患及び細菌性疾患のワクチン接種に用いられる一般的な投与方法である。DODAPをイオン化脂質(例えば、上記で言及された脂質ナノ粒子3又は4)として用いて、本発明者らは、IM注射後、MIPS-LNPによって誘導された筋肉組織以外の遺伝子発現の>75%が、従来のLNPによって誘導された~10%と比較して、脾臓にあるということを実証した(
図3)。MIPS-LNPによるmRNAの送達はまた、驚くべきことに、従来の小型LNPと比べて、脾臓におけるレポーター遺伝子であるナノルシフェラーゼの~100倍高い濃度をもたらす(
図4A)。この研究では、10μgのナノルシフェラーゼmRNAの用量が使用された。さらに、MIPS-LNPは、注射部位からのリンパ流のすぐ下流ではないリンパ節(非流入領域リンパ節として知られている)へのアクセスを獲得することが示されている。
【0222】
本発明者らは、LNPの平均サイズが大きいほど、抗原提示細胞、すなわち、ワクチン応答を指揮する免疫細胞によるより優れた取り込みにつながるということを示した。現在のLNPの一般的なサイズは、70-100nmの範囲である。MIPS-LNPは、100nmより大きく設計されている。特に直径125nmより大きい(典型的には140-160nm)。しかし、より大きな粒子は脾臓への選択的受動的送達をさらに加えることができる(データは示さず)。
【0223】
静脈内(IV)注射は、入院患者の治療-例えば、がんワクチン接種に使用され得る別の投与方法である。本発明者らは、MIPS-LNP(超大型LNP)による、IV注射を介した、10μgのナノルシフェラーゼmRNAの用量を用いるmRNAの送達が、従来の小型LNPと比べて、脾臓におけるレポーター遺伝子であるナノルシフェラーゼの~500倍高い濃度をもたらす(ボックスによるハイライト)ということを実証した(
図4B)。さらに、MIPS-LNPは、従来のLNPと比較して、様々な選別された脾臓細胞におけるレポーター遺伝子の発現を介した遺伝子導入の実質的な増加を明示した(
図4C)。MIPS-LNPはまた、製剤を肝臓(肝臓へのsiRNAの送達のために設計された従来のLNP製剤の主な使用対象)から迂回させるという利点も有する。ワクチンにとって、肝臓での遺伝子発現を低下させることは、有益と見なされる。-すなわち、「オフターゲット」領域を減少させることによって副作用を減少させること。これらの研究で遺伝子発現を分析するために、注射から16-24時間後に組織を採取し、組織を量り、1mlのGloLysis緩衝液を加え、M-tubes(Miltenyl)を用いて均質化した。チューブを遠心分離機にかけ(10000g×1min)、上清を収集した。ナノルシフェラーゼ遺伝子発現の分析は、NanoGloアッセイ(Promega)によって提案されたとおり実施された。遺伝子発現レベルは、ルシフェラーゼの設定を用いてプレートリーダー(Perkin elmer)で定量化された。組織1gあたりの遺伝子発現を計算及びプロットした。
【0224】
脾臓細胞における遺伝子発現は、ナノルシフェラーゼ(10ug)を注射して約16時間後に測定された。脾細胞は、コラゲナーゼ消化(2mg/ml)によって単離され、最初にCD8、CD11C、F4/80、mPDCA-1で標識され、FACSを用いて分離された。次に、分離された集団は、ルシフェラーゼ発現(すなわち、細胞集団あたりの特異的取り込み及び発現)に関して、上述のようにNanoGloアッセイを用いて分析された。
【0225】
この例では、MIPS-LNPは、従来のLNPと比較して、肝臓への送達が2.3倍低い(表1)。
【表5】
【0226】
実施例4-抗原分子の脂質ナノ粒子送達に対する細胞免疫応答
免疫応答のレベルを決定するために、オボアルブミン抗原を用いた抗原特異的死滅アッセイを使用した。C57BLマウス(8~24週齢)に静脈内ワクチン接種した。
【0227】
MIPS-LNPによる抗原分子送達に対する細胞性免疫応答に関して、本発明者らは、インビボでmRNAワクチンモデルを使用した。マウスは、0日目に抗原性オボアルブミンmRNA構築物を含むMIPS-LNPで免疫を与えられた。細胞追跡標識SIINFEKL脾細胞を5日目にドナーマウスから免疫化マウスに移植し、ワクチン接種を受けたマウスの脾細胞を単離し、24時間後に分析した(
図5)。SIINFEKLパルス細胞(抗原保有細胞)の死滅のレベルを細胞コントロール(SIINFEKLなし)と比較した。MIPS-LNPは、オボアルブミンエピトープに対する標的特異的細胞傷害性T細胞の死滅の増強を誘導した(
図6)。MIPS-LNPは、少量のmRNAをマウスに投与した(10ug)場合、ほぼ完全な死滅を誘導した。比較して、従来のLNPは、同じmRNAの用量で有効なワクチン接種を生じさせなかった。注射前と比較した抗原欠失率と抗原含有率(死滅)の差は、フローサイトメーターを用いて測定され、百分率としてプロットされた。
【0228】
実施例5-MIPS-LNPの物理的安定性
MIPS製剤を用いて医薬品の製造が可能であることを証明するため、本発明者らは、製剤を「凍結融解」できるかどうかを試験し、使用前の輸送のために冷凍庫での保管を可能にした。製品(上記の脂質ナノ粒子1)を上述のように様々な緩衝液中で製剤化及び透析し、複数回凍結した(
図7)。凍結保護剤(a cryoprotectant)としてスクロースを添加した全ての製剤は、著しい凝集を起こすことなく、解凍後に粒子の再構成を明示した。したがって、MIPS-LNP製剤は、輸送に対して安定であることが示され、医薬品として使用可能であることを実証する。
【0229】
実施例6-LNP送達におけるPEG化脂質含量の効果
LNP送達に対するPEG化脂質濃度の効果を証明するために、本発明者らは、DLin-MC3-DMA(50モル%)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)(10モル%)、PEG化脂質(0.15モル%又は1.5モル%)、コレステロール(脂質含量の残り-すなわち、それぞれ39.85モル%又は38.5モル%)を含む2つの製剤を調製した。DSPE-PEG又はDMG-PEGをPEG化脂質として使用した。ナノルシフェラーゼmRNAをLNP製剤(「0.15モル%」又は「1.5モル%」)にパッケージングし、BalbCマウス(8~24週齢)に筋肉内注射(IM)又は静脈内注射(IV)した。14~18時間後、器官を単離し、重量を量った。器官をM-tubes(Miltenyi Biotec)及びGlo-lysis緩衝液(Promega)を用いて均質化した。(RLU)としてのナノルシフェラーゼ活性は、ナノルシフェラーゼ溶解キット(Nano-Glo(登録商標)Luciferase Assay System,Promega)を用いて、製造者の指示に従って測定された。
【0230】
IV注射後、脾臓及びリンパ節のナノルシフェラーゼ濃度は、0.15モル%製剤の方が1.5モル%製剤よりも一貫して50~100倍高かった。IM注射後のリンパ組織に対する傾向もまた、一貫していたが、その差は5~10倍であった(
図8)。特に、IM注射した0.15モル%のDMG-PEG製剤は、1.5モル%のDMG-PEG製剤と比較して、脾臓では有意に高濃度、肝臓では濃度のナノルシフェラーゼを産生した(
図9)。0.15モル%のPEG化脂質を含むDMG-PEG及びDSPE-PEG製剤は、両方ともナノルシフェラーゼmRNAを肝臓から脾臓へのルートに切り替えた(
図10A)。
【0231】
実施例7-脂質ナノ粒子中のPEG化脂質含量
1.5モル%より低いPEG化脂質含量がLNP mRNA送達に有益な効果をもたらすことを確立したので、本発明者らは、LNP製剤に最適なPEG化脂質の範囲を決定しようとした。
【0232】
様々なDMG-PEG脂質組成物を0.1モル%~1.5モル%の範囲で試験し、コレステロール組成物を適切に調整した。ナノルシフェラーゼmRNAをLNP製剤中にパッケージングし、組成物をBalbCマウス(8~24週)にIM注射した。
【表6】
【0233】
0.2モル%~0.5モル%のDMG-PEGは、標準的な1.5モル%のPEG化脂質製剤と比較して、脾臓におけるナノルシフェラーゼの高い発現をもたらし、この特定の範囲で脾臓の送達が促進されることを示唆している(表2)。しかしながら、0.1モル%~0.5モル%のDMG-PEG LNP製剤は、全て1.5モル%のDMG-PEG LNP製剤よりも脾臓/肝臓の発現比が有意に高かった。同様の効果はまた、非流入領域リンパにも見られ、ナノルシフェラーゼの発現は0.2モル%のDMG-PEGで最も高かった(データは示さず)。流入領域リンパ節、注射を受けた大腿四頭筋及び肝臓でのナノルシフェラーゼ発現に有意差はなかったが、0.1~0.2モル%の平均発現レベルは高い範囲より低かった(データは示さず)。
【0234】
PEG化脂質の範囲をさらに解明するために、本発明者らは、LNP製剤中の0.15モル%、0.2モル%、0.25モル%、0.3モル%及び0.35モル%のDMG-PEGを試験した。上記のように、ナノルシフェラーゼmRNAをLNP製剤中にパッケージングし、組成物をIM注射した。前回の結果と同様に、脾臓、非流入領域リンパ節及びリンパ節におけるナノルシフェラーゼの最も高い発現レベルは、0.15モル%で見られ、DMG-PEG含量が増加するにつれて発現が減少する傾向が見られた(データは示さず)。
【0235】
DMG-PEG含量の減少は、脾臓のナノルシフェラーゼ発現の増加及び肝臓のナノルシフェラーゼ発現の減少と関連していた(データは示さず)。同様に、DMG-PEGの減少と非流入領域リンパ球の送達及び発現の増加の間にも関係がある。さらに、低濃度のDMG-PEGは、ナノルシフェラーゼ発現を肝臓から脾臓へのルートに切り替えた(表3)。
【表7】
【0236】
総合して、これらの結果は、MIPS-LNPで処方されているように、LNPのPEG化の減少が脾臓内での粒子の取り込み及び遺伝子発現を促進するということを明示している。MIPS-LNP製剤(例としてDODAPを使用)は、免疫応答を増強し、恐らくがん用予防ワクチン及び治療ワクチンの両方の効率を向上させる。脾臓細胞ターゲティングは、免疫チェックポイント阻害のためのタンパク質の発現などの多くの応用、並びにMIPS製剤による標的mRNAデリバリーを介した、抗原特異的耐性、一般的な耐性の誘導を誘導する、他の応用、並びにmRNAデリバリー、siRNAデリバリー、他の分子(例えば、MIPS LNPに組み込まれた小薬物など)を用いる、DNA又は他の任意の核酸又はmRNAデリバリーの手段を介した、自己免疫疾患に対抗すること、脾細胞によって引き起こされる炎症を軽減すること又はアレルギー反応及びアナフィラキシー反応を軽減することにおける応用に魅力的である。従来のLNPは、脾細胞に送達せず、それ故に上記の概略の応用に使用する場合には劣る。
【0237】
本明細書で開示及び規定された本発明は、本文又は図面で言及されるか、あるいは、から明らかな2つ以上の個々の特徴の全ての代替的な組み合わせにまで及ぶことが理解されるであろう。これらの異なる組み合わせは全て、本発明の様々な代替的態様を構成する。
【国際調査報告】