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特表2024-534067多価抗バリアントFC領域抗体および使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-18
(54)【発明の名称】多価抗バリアントFC領域抗体および使用方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/46 20060101AFI20240910BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20240910BHJP
   G01N 33/543 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
C07K16/46 ZNA
G01N33/53 N
G01N33/543 545A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024509417
(86)(22)【出願日】2022-08-17
(85)【翻訳文提出日】2024-04-01
(86)【国際出願番号】 EP2022072894
(87)【国際公開番号】W WO2023021055
(87)【国際公開日】2023-02-23
(31)【優先権主張番号】21192040.0
(32)【優先日】2021-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.NONIDET
(71)【出願人】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【弁理士】
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】キュンツェル クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ルッツ アヒム
(72)【発明者】
【氏名】ヴェッセルス ウーヴェ
【テーマコード(参考)】
4H045
【Fターム(参考)】
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045DA76
4H045EA50
4H045FA52
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、薬物抗体のFc領域における1、2、3または4個のアミノ酸変化に対する抗薬物抗体を検出および定量するためのイムノアッセイにおいて陽性対照および較正標準として使用するための、ヒトIgG1サブクラスの野生型Fc領域と比較して前記1、2、3または4個のアミノ酸変化を含むヒトIgG1サブクラスの免疫グロブリンFc領域に特異的に結合する少なくとも4個の結合部位を含む抗体に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトIgG1サブクラスの野生型Fc領域と比較して1、2、3または4個のアミノ酸変化を含む前記ヒトIgG1サブクラスの免疫グロブリンFc領域に特異的に結合する4個または6個の結合部位を含む、抗体。
【請求項2】
少なくとも2つの共有結合した
i)ヒトIgG1サブクラスの野生型Fc領域と比較して1、2、3または4個のアミノ酸変化を含む前記ヒトIgG1サブクラスの免疫グロブリンFc領域に特異的に結合する2個の結合部位をそれぞれが含む、二価完全長抗体、
または
ii)ヒトIgG1サブクラスの野生型Fc領域と比較して1、2、3または4個のアミノ酸変化を含む前記ヒトIgG1サブクラスの免疫グロブリンFc領域に特異的に結合する2個の結合部位をそれぞれが含む、二価完全長抗体の(Fab’)2断片
を含む、抗体多量体。
【請求項3】
前記ヒトIgG1サブクラスの野生型Fc領域と比較して1、2、3または4個のアミノ酸変化を含む前記ヒトIgG1サブクラスの免疫グロブリンFc領域に特異的に結合する前記結合部位が、329位にアミノ酸残基グリシン(Kabat EUインデックスによるナンバリング)を含む前記ヒトIgG1サブクラスの免疫グロブリンFc領域に特異的に結合する結合部位である、請求項1~2のいずれか一項に記載の抗体または抗体多量体。
【請求項4】
前記結合部位の各々が、互いに独立して、
(1)
(a)配列番号09のアミノ酸配列を含むHVR-H1、
(b)配列番号12のアミノ酸配列を含むHVR-H2、
(c)配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR-H3、
(d)配列番号23のアミノ酸配列を含むHVR-L1、
(e)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および
(f)配列番号28のアミノ酸配列を含むHVR-L3、
または
(2)
(a)配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-H1、
(b)配列番号13のアミノ酸配列を含むHVR-H2、
(c)配列番号17のアミノ酸配列を含むHVR-H3、
(d)配列番号23のアミノ酸配列を含むHVR-L1、
(e)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および
(f)配列番号29のアミノ酸配列を含むHVR-L3、
または
(3)
(a)配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-H1、
(b)配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR-H2、
(c)配列番号18のアミノ酸配列を含むHVR-H3、
(d)配列番号23のアミノ酸配列を含むHVR-L1、
(e)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および
(f)配列番号30のアミノ酸配列を含むHVR-L3、
または
(4)
(a)配列番号20のアミノ酸配列を含むHVR-H1、
(b)配列番号21のアミノ酸配列を含むHVR-H2、
(c)配列番号22のアミノ酸配列を含むHVR-H3、
(d)配列番号32のアミノ酸配列を含むHVR-L1、
(e)配列番号34のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および
(f)配列番号35のアミノ酸配列を含むHVR-L3、
または
(5)
(1)~(4)のいずれか1つの混合物
のいずれかを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗体または抗体多量体。
【請求項5】
前記ヒトIgG1サブクラスの野生型Fc領域と比較して1、2、3または4個のアミノ酸変化を含む前記ヒトIgG1サブクラスの免疫グロブリンFc領域に特異的に結合する前記結合部位が、329位にアミノ酸残基グリシンを含みかつ234位および235位にアミノ酸残基アラニン(Kabat EUインデックスによるナンバリング)を含む前記ヒトIgG1サブクラスの免疫グロブリンFc領域に特異的に結合する結合部位である、請求項1~4のいずれか一項に記載の抗体または抗体多量体。
【請求項6】
前記多量体が、二量体、三量体、四量体、五量体、六量体、七量体、八量体、九量体または十量体である、請求項2~5のいずれか一項に記載の抗体多量体。
【請求項7】
インビトロ(架橋)イムノアッセイにおける陽性対照としての、請求項1~6のいずれか一項に記載の抗体または抗体多量体の使用。
【請求項8】
インビトロ(架橋)イムノアッセイにおける標準としての、請求項1~6のいずれか一項に記載の抗体または抗体多量体の使用。
【請求項9】
前記使用が、薬物抗体に対する抗薬物抗体を定量的に決定するための較正関数を生成するためのものであり、前記抗薬物抗体が、野生型Fc領域と比較して変化している前記薬物抗体のFc領域中の1つまたは複数のアミノ酸残基に結合する、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
(血清含有)試料中の抗薬物抗体の存在および/または量を決定するためのイムノアッセイであって、
前記抗薬物抗体が、野生型Fc領域と比較して変化している薬物抗体のFc領域中の少なくとも1つのアミノ酸残基に結合し、
前記イムノアッセイが、捕捉抗体としておよびトレーサー抗体として前記薬物抗体を含み、
請求項1~6のいずれか一項に記載の抗体または抗体多量体が、前記イムノアッセイにおいて陽性対照としてまたは較正標準として使用されることを特徴とする、
イムノアッセイ。
【請求項11】
前記イムノアッセイが架橋ELISAである、請求項10に記載のイムノアッセイ。
【請求項12】
請求項1~6のいずれか一項に記載の抗体または抗体多量体を較正標準として使用し、かつ薬物抗体に対する抗薬物抗体を定量的に決定するための較正関数を生成するために使用する、請求項10~11のいずれか一項に記載のイムノアッセイ。
【請求項13】
N-スクシンイミジル-3-アセチルチオプロピオナート(SATP)およびマレイミドヘキサノイル-N-ヒドロキシスクシンイミド(MHS)を使用した化学的コンジュゲーションによる、請求項2~6のいずれか一項に記載の抗体多量体の製造方法。
【請求項14】
前記多量体が、完全長抗体の多量体である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
抗体多量体の製造方法であって、
329位にアミノ酸残基グリシン(Kabat EUインデックスによるナンバリング)を含むヒトIgG1サブクラスの免疫グロブリンFc領域に特異的に結合する完全長抗体を、N-スクシンイミジル-3-アセチルチオプロピオナート(SATP)およびマレイミドヘキサノイル-N-ヒドロキシスクシンイミド(MHS)を使用して、化学的に架橋することを含み、
前記抗体が、
(1)
(a)配列番号09のアミノ酸配列を含むHVR-H1、
(b)配列番号12のアミノ酸配列を含むHVR-H2、
(c)配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR-H3、
(d)配列番号23のアミノ酸配列を含むHVR-L1、
(e)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および
(f)配列番号28のアミノ酸配列を含むHVR-L3、
または
(2)
(a)配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-H1、
(b)配列番号13のアミノ酸配列を含むHVR-H2、
(c)配列番号17のアミノ酸配列を含むHVR-H3、
(d)配列番号23のアミノ酸配列を含むHVR-L1、
(e)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および
(f)配列番号29のアミノ酸配列を含むHVR-L3、
または
(3)
(a)配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-H1、
(b)配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR-H2、
(c)配列番号18のアミノ酸配列を含むHVR-H3、
(d)配列番号23のアミノ酸配列を含むHVR-L1、
(e)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および
(f)配列番号30のアミノ酸配列を含むHVR-L3
を含む、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、架橋イムノアッセイおよびドメイン検出アッセイにおいて陽性対照としてならびに較正標準として使用することができる多価抗体、特にバリアントFc領域に特異的に結合する抗体の価数増強および多量体(多価抗バリアントFc領域抗体)に関する。本発明による多価抗体は、対応する野生型Fc領域には結合しないが、バリアントFc領域に特異的に結合し、したがって、イムノアッセイにおいて、例えば陽性対照または較正標準として、前記バリアントFc領域の2つを特異的に架橋することができる。それらの製造のための方法およびその使用も本明細書で報告する。
【背景技術】
【0002】
背景
1974年にKoehlerおよびMilsteinが最初にモノクローナル抗体を開発して以来、ヒトにおける治療に適切な抗体の開発に多くの努力が払われてきた。利用可能になった最初のモノクローナル抗体は、マウスおよびラットで開発されたものである。これらの抗体は、ヒトの治療に使用されると、免疫応答が誘導され、すなわち抗げっ歯類抗体の形成のために望ましくない副作用を引き起こした。そのような望ましくない副作用を低減または排除するために多くの努力が注がれてきた。
【0003】
非常に多数のヒトまたはヒト化モノクローナル抗体が現在調査中であり、初回試験のためのヒトへの投与が考慮され得る前に、実験動物において研究される必要がある。
【0004】
ヒト野生型Fc領域を有する標準的な抗体の他に、バリアントFc領域を有する抗体も開発されつつある。これらのバリエーションは、一般に、非天然であるとして免疫応答を誘導する可能性もある。
【0005】
生物学的利用能および免疫原性などの重要な基準は、それらのうちの2つを挙げるだけでも、実験動物の助けを借りて研究されなければならない。これらの研究は、とりわけ、宿主自身の抗体のバックグラウンドにおける抗薬物抗体の定量化を必要とする。ほとんどの場合、哺乳動物を実験動物として使用する。毒性学は、マウスまたはラットのようなげっ歯類において最初に評価されることが多い。薬物開発のより進歩した段階では、特にヒトに薬物を導入する前に、サルであってもそのような前臨床試験に参加させる必要がある。
【0006】
現在、架橋フォーマットの酵素結合免疫吸着サンドイッチアッセイ(ELISA)は、その高いスループットおよび感度、ならびに異なるプロジェクトへ容易に適用できるために(Mikulskis,A.,ら、J.Immunol.Meth.365(2011)38-49(非特許文献1))、免疫原性試験のための最先端のアッセイフォーマットを表している。
【0007】
モノクローナル抗体を用いた標準的な固相抗薬物抗体イムノアッセイは、固相に吸着または結合した薬物抗体(捕捉抗体)、抗薬物抗体、および検出可能な標識、例えば酵素にコンジュゲートされた薬物抗体(トレーサー抗体)の間の複合体の形成を含む。したがって、固相捕捉抗体-抗薬物抗体-トレーサー抗体のサンドイッチが形成される。サンドイッチによって触媒される反応では、抗体コンジュゲート酵素の活性は抗薬物抗体濃度に比例する。標準的なサンドイッチ法はまた、抗薬物抗体が捕捉抗体とトレーサー抗体、すなわち薬物抗体との間を橋渡しするので、架橋イムノアッセイとも呼ばれる。架橋ELISAなどのイムノアッセイは、抗体薬物に対する患者の免疫原性応答の調査における一般的なアッセイタイプである。
【0008】
Mire-Sluis,A.R.ら、J.Immunol.Methods 289(2004)1-16(非特許文献2)は、バイオテクノロジー産物に対する宿主抗体の検出を使用するイムノアッセイの設計および最適化のための推奨事項を要約した。
【0009】
Wadhwa,M.ら、J.Immunol.Methods 278(2003)1-17(非特許文献3)は、治療用生物製剤によって誘導される望ましくない抗体の検出、測定および特徴付けのための戦略を報告した。
【0010】
異なるイムノアッセイの原理は、例えば、Hage,D.S、Anal.Chem.71(1999)294R-304R(非特許文献4)に記載されている。
【0011】
Lu,B.ら、Analyst 121(1996)29R-32R(非特許文献5)は、イムノアッセイに使用するための抗体の配向固定化を報告した。
【0012】
アビジン-ビオチン媒介イムノアッセイは、例えば、Wilchek,M.およびBayer,E.A.、Methods Enzymol.184(1990)467-469(非特許文献6)に報告されている。
【0013】
国際公開第2017/072210号(特許文献1)では、抗バリアントFc領域抗体およびその使用方法が報告されている。
【0014】
Wessels,U.ら、Bioanal.9(2017)849-859(非特許文献7)は、P329G変異を持つ治療用抗体のための新規薬物および可溶性標的耐性抗薬物抗体アッセイを報告した。
【0015】
米国特許出願公開第2008/0118939号(特許文献2)では、コンジュゲートおよびイムノアッセイにおける標準としてのその使用が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】国際公開第2017/072210号
【特許文献2】米国特許出願公開第2008/0118939号
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Mikulskis,A.,ら、J.Immunol.Meth.365(2011)38-49
【非特許文献2】Mire-Sluis,A.R.ら、J.Immunol.Methods 289(2004)1-16
【非特許文献3】Wadhwa,M.ら、J.Immunol.Methods 278(2003)1-17
【非特許文献4】Hage,D.S、Anal.Chem.71(1999)294R-304R
【非特許文献5】Lu,B.ら、Analyst 121(1996)29R-32R
【非特許文献6】Wilchek,M.およびBayer,E.A.、Methods Enzymol.184(1990)467-469
【非特許文献7】Wessels,U.ら、Bioanal.9(2017)849-859
【発明の概要】
【0018】
架橋抗薬物抗体(ADA)アッセイの信頼性は、バックグラウンドを上回る十分なアッセイシグナルをもたらす少なくとも1つの機能的陽性対照、ならびにADAアッセイを使用してADAを定量する場合の較正標準の利用可能性に基づいている。特に、特に改変が薬物抗体(治療用抗体)のFc領域の両方の鎖に存在する場合、Fc領域での改変に対するADAの検出は自明ではない。加えて、ドメイン検出アッセイはまた、適切な感度を有する陽性対照も必要とする。
【0019】
バリアントFc領域に特異的に結合し、野生型Fc領域に実質的に結合しない抗体は、抗バリアントFc領域抗体と呼ばれる。
【0020】
この理論に拘束されるものではないが、標準的な二価Y型抗バリアントFc領域抗体は、その両方の結合特異性で単一のFc領域に同時に結合することができる。それにより、両方の結合部位がブロックされ、架橋複合体の形成がもはや不可能になる。同様に、抗バリアントFc領域抗体は、架橋、すなわち捕捉およびトレーサー薬物抗体への同時結合が防止されるように、立体的に好ましくない配向で結合することができる。したがって、抗薬物抗体架橋ELISAにおいて機能的陽性対照ならびに較正標準が必要とされている。
【0021】
本発明は、ヒトIgG1サブクラスの野生型Fc領域と比較して1、2、3または4個のアミノ酸変化を含むヒトIgG1サブクラスの免疫グロブリンFc領域(バリアントヒトIgG1 Fc領域)に特異的に結合する標準的なY型二価抗体のモノマーが、2つのバリアントFc領域に同時に、すなわち2つのバリアントFc領域間の架橋を形成するための、架橋ADAアッセイにおける陽性対照または較正標準として適している程度まで結合することができないという知見に少なくとも部分的に基づいている。ヒトIgG1サブクラスの野生型Fc領域と比較して1、2、3または4個のアミノ酸変化を含むヒトIgG1サブクラスの免疫グロブリンFc領域に特異的に結合する抗体において、2価を超える価数を増加させることによって、例えば、さらなる結合部位の付加によって、または多量体の形成によって、二価抗体とは対照的に、2つのバリアントFc領域に同時に結合することができ、すなわち、2つのバリアントFc領域を架橋して連結することができることが見出された。
【0022】
本発明は、例えばFc領域内にPro329Gly(PG)置換を導入することによる、例えばADCCであるFc領域エフェクター機能を欠く薬物抗体、機能的陽性対照、ならびにADAアッセイに使用するための較正標準を提供する。本発明による機能的陽性対照および較正標準は、薬物抗体、例えば四価または多量体抗PG抗体のFc領域内の置換に特異的な抗体の価数増強または多量体のいずれかである。
【0023】
架橋ADAアッセイと組み合わせた本発明による多価抗体により、一方ではアッセイの適切な機能を決定することができ、他方ではアッセイの較正が可能であるため、臨床試料の詳細なADA特徴付けが可能になる。本発明による多価抗体を用いた架橋フォーマットのADAイムノアッセイは、Fc領域修飾薬物抗体に対する個々のADA応答の詳細な特徴付けのために補完される。
【0024】
本発明による一態様は、ヒトIgG1サブクラスの野生型Fc領域と比較して1、2、3または4個のアミノ酸変化を含むヒトIgG1サブクラスの免疫グロブリンFc領域に特異的に結合する少なくとも3個の結合部位を含む、抗体である。
【0025】
本発明による一態様は、ヒトIgG1サブクラスの野生型Fc領域と比較して1、2、3または4個のアミノ酸変化を含むヒトIgG1サブクラスの免疫グロブリンFc領域に特異的に結合する抗体の多量体である。
【0026】
本発明による一態様は、329位にアミノ酸残基グリシン(Kabat EUインデックスによるナンバリング)を含むヒトIgG1サブクラスの免疫グロブリンFc領域に特異的に結合する少なくとも3つの結合部位を含む抗体、または329位にアミノ酸残基グリシン(Kabat EUインデックスによるナンバリング)を含むヒトIgG1サブクラスの免疫グロブリンFc領域に特異的に結合する抗体の(二価)(Fab’)断片の多量体であって、結合部位は、
(1)
(a)配列番号09のアミノ酸配列を含むHVR-H1、
(b)配列番号12のアミノ酸配列を含むHVR-H2、
(c)配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR-H3、
(d)配列番号23のアミノ酸配列を含むHVR-L1、
(e)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および
(f)配列番号28のアミノ酸配列を含むHVR-L3、
または
(2)
(a)配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-H1、
(b)配列番号13のアミノ酸配列を含むHVR-H2、
(c)配列番号17のアミノ酸配列を含むHVR-H3、
(d)配列番号23もしくは24のアミノ酸配列を含むHVR-L1、
(e)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および
(f)配列番号29のアミノ酸配列を含むHVR-L3、
または
(3)
(a)配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-H1、
(b)配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR-H2、
(c)配列番号18のアミノ酸配列を含むHVR-H3、
(d)配列番号23もしくは24のアミノ酸配列を含むHVR-L1、
(e)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および
(f)配列番号30のアミノ酸配列を含むHVR-L3、
または
(4)
(1)~(3)のいずれか1つの組み合わせ
を含み、
HVRはKabatに従って決定される。
【0027】
本発明のすべての態様および実施形態の特定の実施形態では、少なくとも三価の抗体(少なくとも3つの結合部位を含む抗体)は、三価、四価、六価、八価または十価の抗体である。好ましい一実施形態では、少なくとも三価抗体は四価の抗体である。
【0028】
本発明のすべての態様および実施形態の特定の実施形態では、少なくとも三価抗体(少なくとも3つの結合部位を含む抗体)は、IgAまたはIgM抗体である。
【0029】
本発明による一態様は、329位にアミノ酸残基グリシン(Kabat EUインデックスによるナンバリング)を含むヒトIgG1サブクラスの免疫グロブリンFc領域に特異的に結合抗体の多量体、または329位にアミノ酸残基グリシン(Kabat EUインデックスによるナンバリング)を含むヒトIgG1サブクラスの免疫グロブリンFc領域に特異的に結合する抗体の(二価)(Fab’)断片の多量体であって、抗体または(Fab’)断片は、
(1)
(a)配列番号09のアミノ酸配列を含むHVR-H1、
(b)配列番号12のアミノ酸配列を含むHVR-H2、
(c)配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR-H3、
(d)配列番号23のアミノ酸配列を含むHVR-L1、
(e)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および
(f)配列番号28のアミノ酸配列を含むHVR-L3、
または
(2)
(a)配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-H1、
(b)配列番号13のアミノ酸配列を含むHVR-H2、
(c)配列番号17のアミノ酸配列を含むHVR-H3、
(d)配列番号23もしくは24のアミノ酸配列を含むHVR-L1、
(e)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および
(f)配列番号29のアミノ酸配列を含むHVR-L3、
または
(3)
(a)配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-H1、
(b)配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR-H2、
(c)配列番号18のアミノ酸配列を含むHVR-H3、
(d)配列番号23もしくは24のアミノ酸配列を含むHVR-L1、
(e)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および
(f)配列番号30のアミノ酸配列を含むHVR-L3
を含み、
HVRはKabatに従って決定される。
【0030】
本発明のすべての態様および実施形態の好ましい一実施形態では、抗体または(Fab’)断片は、329位にアミノ酸残基グリシンを含みかつ234位および235位にアミノ酸残基アラニン(Kabat EUインデックスによるナンバリング)を含むヒトIgG1サブクラスの免疫グロブリンFc領域に、特異的に結合する。
【0031】
本発明のすべての態様および実施形態の特定の実施形態では、多量体は、二量体、三量体、四量体、五量体、六量体、七量体、八量体、九量体または十量体である。
【0032】
本発明による一態様は、インビトロ(架橋)イムノアッセイにおける陽性対照としての本発明による少なくとも三価の抗体の使用である。
【0033】
本発明による一態様は、インビトロ(架橋)イムノアッセイにおける陽性対照としての本発明による多量体の使用である。
【0034】
本発明による一態様は、インビトロ(架橋)イムノアッセイにおける標準としての本発明による少なくとも三価の抗体の使用である。特定の実施形態では、使用は較正関数を生成するためのものである。好ましい一実施形態では、較正関数は、薬物抗体に対する抗薬物抗体を定量的に決定するためのものであり、抗薬物抗体は、野生型Fc領域と比較して変化している薬物抗体のFc領域中の1つまたは複数のアミノ酸残基に結合する。
【0035】
本発明による一態様は、インビトロ(架橋)イムノアッセイにおける標準としての本発明による多量体の使用である。特定の実施形態では、使用は較正関数を生成するためのものである。好ましい一実施形態では、較正関数は、薬物抗体に対する抗薬物抗体を定量的に決定するためのものであり、抗薬物抗体は、野生型Fc領域と比較して変化している薬物抗体のFc領域中の1つまたは複数のアミノ酸残基に結合する。
【0036】
本発明のすべての態様および実施形態の特定の実施形態では、インビトロ(架橋)イムノアッセイは、薬物抗体に対する抗薬物抗体を決定するためのものであり、抗薬物抗体は薬物抗体のFc領域に結合する。特定の実施形態では、抗薬物抗体は、野生型Fc領域と比較して変化している薬物抗体のFc領域中の1つまたは複数のアミノ酸残基に結合する。
【0037】
本発明のすべての態様および実施形態の特定の実施形態では、インビトロイムノアッセイはインビトロ架橋ELISAである。
【0038】
本発明のすべての態様および実施形態の特定の実施形態では、薬物抗体は、329位にアミノ酸残基グリシン(Kabat EUインデックスによるナンバリング)を含むヒトIgG1サブクラスの免疫グロブリンFc領域を含む。
【0039】
本発明のすべての態様および実施形態の好ましい一実施形態では、薬物抗体は、329位にアミノ酸残基グリシンを含みかつ234位および235位にアミノ酸残基アラニン(Kabat EUインデックスによるナンバリング)を含むヒトIgG1サブクラスの免疫グロブリンFc領域を含む。
【0040】
本発明のすべての態様および実施形態の好ましい一実施形態では、インビトロイムノアッセイは、捕捉抗体としておよびトレーサー抗体として薬物抗体を含む抗薬物抗体を決定するためのインビトロ架橋イムノアッセイである。
【0041】
本発明による一態様は、(血清含有)試料中の抗薬物抗体の存在および/または量を決定するためのインビトロイムノアッセイであって、
抗薬物抗体は、野生型Fc領域と比較して変化している薬物抗体のFc領域中の少なくとも1つのアミノ酸残基に結合し、
イムノアッセイは、捕捉抗体としておよびトレーサー抗体として薬物抗体を含み、
本発明による少なくとも三価の抗体または本発明による多量体は、イムノアッセイにおいて陽性対照としてまたは較正標準として使用されることを特徴とする。
【0042】
本発明のすべての態様および実施形態の特定の実施形態では、較正標準としての使用は、較正関数を生成するためのものである。好ましい一実施形態では、較正関数は、薬物抗体に対する抗薬物抗体を定量的に決定するためのものであり、抗薬物抗体は、野生型Fc領域と比較して変化している薬物抗体のFc領域中の少なくとも1つアミノ酸残基に結合する。
【0043】
本発明のすべての態様および実施形態の特定の実施形態では、ヒトIgG1サブクラスのバリアント免疫グロブリンFc領域に特異的に結合する抗体は、モノクローナル抗体である。
【0044】
本発明のすべての態様および実施形態の特定の実施形態では、薬物抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体またはキメラ抗体である。
【0045】
一態様は、本発明による多量体の製造方法であって、
329位にアミノ酸残基グリシン(Kabat EUインデックスによるナンバリング)を含むヒトIgG1サブクラスの免疫グロブリンFc領域に特異的に結合する完全長抗体を、N-スクシンイミジル-3-アセチルチオプロピオナート(SATP)およびマレイミドヘキサノイル-N-ヒドロキシスクシンイミド(MHS)を使用して、化学的に架橋することを含み、
抗体は、
(1)
(a)配列番号09のアミノ酸配列を含むHVR-H1、
(b)配列番号12のアミノ酸配列を含むHVR-H2、
(c)配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR-H3、
(d)配列番号23のアミノ酸配列を含むHVR-L1、
(e)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および
(f)配列番号28のアミノ酸配列を含むHVR-L3、
または
(2)
(a)配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-H1、
(b)配列番号13のアミノ酸配列を含むHVR-H2、
(c)配列番号17のアミノ酸配列を含むHVR-H3、
(d)配列番号23もしくは24のアミノ酸配列を含むHVR-L1、
(e)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および
(f)配列番号29のアミノ酸配列を含むHVR-L3、
または
(3)
(a)配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-H1、
(b)配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR-H2、
(c)配列番号18のアミノ酸配列を含むHVR-H3、
(d)配列番号23もしくは24のアミノ酸配列を含むHVR-L1、
(e)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および
(f)配列番号30のアミノ酸配列を含むHVR-L3
(HVRはKabatに従って決定される)
を含む、
方法である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】陽性対照または較正標準として本発明による多量体を使用するイムノアッセイのスキームの図。
図2】捕捉抗体およびトレーサー抗体として、同じであるが誘導体化が異なる薬物抗体を用いて、架橋イムノアッセイにおいて単量体抗PG抗体クローン1.7.24を用いて得られたシグナルの図。
図3】Fc領域に対する抗バリアントFc領域抗体の様々な結合様式であって、(A)は単一のFc領域に両結合部位で同時に結合する図であり、(B)は立体障害の図。
図4】抗バリアントFc領域抗体を多量体化する様式であって、(A)は組換え発現の図であり、(B)は化学架橋の図。
図5】異なる架橋度、すなわち分子サイズを有する架橋抗PG抗体のプールのSEC-クロマトグラムの図。
図6】捕捉抗体およびトレーサー抗体として、同じであるが誘導体化が異なる薬物抗体を用いて、架橋イムノアッセイにおいて多量体抗PG抗体クローン1.7.24を用いて得られたシグナルの図。
図7】捕捉抗体およびトレーサー抗体として、同じであるが誘導体化が異なる薬物抗体を用いて、架橋イムノアッセイにおける直接的な1:1の比較として示される、本発明による単量体抗PG抗体および多量体抗PG抗体のシグナルの図。
図8】捕捉抗体およびトレーサー抗体として、同じであるが誘導体化が異なる薬物抗体を用いて、架橋イムノアッセイにおける直接的な1:1の比較として示される、本発明による単量体抗PG抗体および多量体抗PG抗体のシグナル対ノイズ比の図。
図9】捕捉抗体およびトレーサー抗体として使用される薬物抗体の異なるフォーマット(両方とも同じフォーマット)を用いた架橋イムノアッセイにおける本発明による多量体抗PG抗体の図。
図10】捕捉抗体およびトレーサー抗体として、同じであるが誘導体化が異なる薬物抗体のFc領域を用いて、架橋イムノアッセイにおける較正標準として使用される四価抗PG抗体のシグナルの図。
図11】捕捉剤としてのバリアントFc領域およびトレーサー抗体としてのTCBフォーマットの薬物抗体を用いて、架橋イムノアッセイにおける較正標準として使用されるIgMフォーマットの抗PG抗体のシグナルの図。
【発明を実施するための形態】
【0047】
発明の実施形態の詳細な説明
I.定義
本明細書において使用される場合、重鎖および軽鎖のすべての定常領域およびドメインのアミノ酸位置は、Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、Public Health Service,National Institutes of Health、Bethesda、MD(1991)において説明されるKabatナンバリングシステムによりナンバリングされ、本明細書では「Kabatによるナンバリング」と称される。具体的には、Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、Public Health Service,National Institutes of Health、Bethesda、MD(1991)のKabatナンバリングシステム(647~660頁を参照のこと)が、カッパおよびラムダアイソタイプの軽鎖定常ドメインCLに使用され、Kabat EUインデックスナンバリングシステム(661~723頁を参照のこと)が、重鎖定常ドメイン(CH1、ヒンジ、CH2およびCH3)に使用される。
【0048】
「親和性」とは、分子(例えば、抗体)の単一の結合部位とその結合パートナー(例えば、抗原)との間の非共有相互作用の合計の強度を指す。別途指定されない限り、本明細書で使用される場合、「結合親和性」とは、結合対のメンバー(例えば、抗体と抗原との)間の1:1の相互作用を反映する、固有の結合親和性を指す。一般に、分子XのそのパートナーYに対する親和性は、解離定数(K)によって表すことができる。親和性は、本明細書中に記載のものも含め、当該技術分野で既知の一般的な方法により測定することができる。
【0049】
「(アミノ酸)変化」という用語は、所定の親アミノ酸配列中の少なくとも1つのアミノ酸残基を異なる「置換」アミノ酸残基で置換し、バリアントアミノ酸配列を生成することを表す。1つまたは複数の置換残基は、「天然に存在するアミノ酸残基」(すなわち、遺伝暗号によってコード化される)であってもよく、アラニン(Ala);アルギニン(Arg);アスパラギン(Asn);アスパラギン酸(Asp);システイン(Cys);グルタミン(Gln);グルタミン酸(Glu);グリシン(Gly);ヒスチジン(His);イソロイシン(Ile):ロイシン(Leu);リジン(Lys);メチオニン(Met);フェニルアラニン(Phe);プロリン(Pro);セリン(Ser);スレオニン(Thr);トリプトファン(Trp);チロシン(Tyr);およびバリン(Val)からなる群から選択され得る。特定の実施形態では、置換残基はシステインではない。天然に存在しないアミノ酸残基による置換も、本明細書におけるアミノ酸変化の定義に包含される。「天然に存在しないアミノ酸残基」は、ポリペプチド鎖中の隣接するアミノ酸残基に共有結合することができる、上記の天然に存在するアミノ酸残基以外の残基を意味する。非天然アミノ酸残基の例としては、ノルロイシン、オルニチン、ノルバリン、ホモセリン、aibおよび他のアミノ酸残基類似体、例えばEllmanら、Meth.Enzym.202(1991)301-336に記載されるものが挙げられる。そのような天然に存在しないアミノ酸残基を生成するために、Norenら(Science 244(1989)182)および/またはEllmanら(前出)の手順を使用することができる。簡潔には、これらの手順は、天然に存在しないアミノ酸残基を有するサプレッサーtRNAの化学的活性化、その後のRNAのインビトロ転写および翻訳を伴う。天然に存在しないアミノ酸はまた、化学的ペプチド合成と、それに続く、抗体または抗体断片などの組換え産生されたポリペプチドとのこれらのペプチドの融合によって、ペプチドに組み込むことができる。
【0050】
本出願において、アミノ酸変化が言及されるときはいつでも、それは意図的アミノ酸変化であり、ランダムアミノ酸修飾ではない。
【0051】
「抗バリアント(ヒト)Fc領域抗体」および「バリアント(ヒト)Fc領域に特異的に結合する抗体」という用語は、抗体がバリアント(ヒト)Fc領域を標的とする際の診断剤として有用であるように、十分な親和性でバリアント(ヒト)Fc領域に結合することができる抗体を指す。特定の実施形態では、抗バリアント(ヒト)Fc領域抗体の対応する野生型(ヒト)Fc領域への結合の程度は、抗体のバリアント(ヒト)Fc領域への結合の約10%未満である。これは、例えば表面プラズモン共鳴を使用して決定することができる。特定の実施形態では、バリアント(ヒト)Fc領域に特異的に結合する抗体は、10-8M以下、例えば10-8M~10-12Mの解離定数(K)を有する。
【0052】
本明細書における「薬物抗体」という用語は、最も広い意味で使用され、所望の抗原結合活性を示す限り、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ならびに多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)を含むがこれらに限定されない、様々な抗体構造を包含する。
【0053】
「結合する」という用語は、第1の実体の第2の実体への結合、例えばその抗原に対する抗体の結合を表す。この結合は、例えばBIAcore(登録商標)アッセイ(GE Healthcare、Uppsala、Sweden)を用いて測定することができる。
【0054】
例えば、BIAcore(登録商標)アッセイの可能な一実施形態では、抗原を表面に結合させて、抗体の結合を表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定する。
【0055】
結合親和性は、用語k(結合定数:複合体を形成する結合についての速度定数)、k(解離定数;複合体の解離についての速度定数)、およびK(k/k)に基づいて定義される。あるいは、SPRセンサーグラムの結合シグナルを、共鳴シグナルの高さおよび解離挙動に関して、参照物の応答シグナルと直接比較することもできる。
【0056】
「キメラ」抗体という用語は、重鎖および/または軽鎖の一部が、特定の供給源または種に由来し、一方、重鎖および/または軽鎖の残りが、異なる供給源または種に由来する抗体を指す。
【0057】
抗体の「クラス」は、その重鎖が保有する定常ドメインまたは定常領域の型を指す。抗体には5つの主なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMがあり、これらのいくつかは、さらにサブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG、IgG、IgG、IgG、IgA、およびIgAに分類され得る。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれα、δ、ε、γ、およびμと呼ばれる。
【0058】
「エフェクター機能」は、抗体のクラスにより異なっている抗体のFc領域に起因する生物活性を指す。抗体エフェクター機能の例としては、C1q結合および補体依存性細胞傷害(CDC);Fc受容体結合;抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC);食作用;細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)の下方制御;およびB細胞活性化が挙げられる。
【0059】
Fc受容体結合依存性エフェクター機能は、抗体のFc領域と、造血細胞上の専門化した細胞表面受容体であるFc受容体(FcR)との相互作用によりもたらされ得る。Fc受容体は、免疫グロブリンスーパーファミリーに属しており、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)を介して、免疫複合体の食作用による抗体被覆病原体の除去と、対応する抗体で被覆された赤血球および他の種々の細胞標的(例えば、腫瘍細胞)の溶解との両方を媒介することが示されてきた(例えば、Van de Winkel,J.G.and Anderson,C.L,J.Leukoc.Biol.49(1991)511-524を参照されたい)。FcRは、免疫グロブリンアイソタイプに対するそれらの特異性によって定義され、IgG抗体のFc受容体はFcγRと呼ばれる。Fc受容体結合は、例えばRavetch,J.V.およびKinet,J.P.、J.P.,Annu.Rev.Immunol.9(1991)457-492;Capel,P.J.ら、Immunomethods 4(1994)25-34;de Haas,M.ら、J.Lab.Clin.Med.126(1995)330-341;Gessner,J.E.ら、Ann.Hematol.76(1998)231-248に記載されている。
【0060】
IgG抗体(FcγR)のFc領域に対する受容体の架橋は、ファゴサイトーシス、抗体依存性細胞傷害、および炎症性メディエータの放出、ならびに免疫複合体のクリアランスおよび抗体産生の制御を含む、多種多様なエフェクター機能を誘発する。ヒトにおいて、FcγRの3クラスが以下のように特徴付けられている。
【0061】
- FcγRI(CD64)は、高い親和性で単量体IgGを結合し、マクロファージ、単球、好中球および好酸球上に発現する。アミノ酸残基E233~G236、P238、D265、N297、A327、およびP329(Kabat EUインデックスによるナンバリング)の少なくとも1つにおけるFc領域 IgGの修飾がFcγRIへの結合を低減させる。IgG1およびIgG4へと置換された位置233~236のIgG2残基は、FcγRIへの結合を103倍低減させ、抗体感作赤血球に対するヒト単球応答を排除する(Armour,K.L.,ら,Eur.J.Immunol.29(1999)2613-2624)。
- FcγRII(CD32)は、複合体化したIgGを中等度から低い親和性で結合し、広範に発現する。この受容体は、2つのサブタイプであるFcγRIIAおよびFcγRIIBに分けることができる。FcγRIIAは、殺傷に関与する多くの細胞(例えば、マクロファージ、単球、好中球)に見られ、殺傷プロセスを活性化することができるようである。FcγRIIBは、阻害プロセスにおいて役割を果たすようであり、B細胞、マクロファージ、ならびにマスト細胞および好酸球に見られる。B細胞上では、FcγRIIBは、さらなる免疫グロブリンの産生および例えばIgEクラスへのアイソタイプスイッチングを抑制するよう機能するようである。マクロファージ上では、FcγRIIBは、FcγRIIAによって媒介される食作用を阻害するように働く。好酸球およびマスト細胞上では、B形態は、その別の受容体に結合しているIgEを介して、これらの細胞の活性化を抑制するのに役立つ可能性がある。FcγRIIAに対する結合の低減は、例えば、少なくとも1つのアミノ酸残基E233~G236、P238、D265、N297、A327、P329、D270、Q295、A327、R292およびK414(Kabat EUインデックスによるナンバリング)において変異を有するIgG Fc領域を含む抗体で見られる。
- FcγRIII(CD16)は、中等度から低い親和性でIgGと結合し、2つのタイプとして存在する。FcγRIIIAは、NK細胞、マクロファージ、好酸球ならびにいくつかの単球およびT細胞上で見られ、ADCCを媒介する。FcγRIIIBは、好中球で多く発現する。FcγRIIIAに対する結合の低減は、例えば、少なくとも1つのアミノ酸残基E233-G236、P238、D265、N297、A327、P329、D270、Q295、A327、S239、E269、E293、Y296、V303、A327、K338およびD376(Kabat EUインデックスによるナンバリング)において変異を有するIgG Fc領域を含む抗体で見られる。
【0062】
Fc受容体に対するヒトIgG1上の結合部位のマッピング、上述の変異部位、ならびにFcγRIおよびFcγRIIAへの結合を測定するための方法は、Shields,R.L.,ら,J.Biol.Chem.276(2001)6591-6604において説明されている。
【0063】
本明細書で使用する「Fc受容体」という用語は、受容体と会合した細胞質ITAM配列の存在を特徴とする活性化受容体を指す(例えば、Ravetch,J.V.およびBolland,S.,Annu.Rev.Immunol.19(2001)275-290を参照されたい)。このような受容体は、FcγRI、FcγRIIAおよびFcγRIIIAである。「FcγRの結合がない」という用語は、10μg/mlの抗体濃度で、本明細書で報告する抗体のNK細胞への結合が、国際公開第2006/029879号において報告された抗OX40L抗体LC.001について認められる結合の10%以下であることを表す。
【0064】
IgG4はFcR結合の低下を示すが、他のIgGサブクラスの抗体は強い結合を示す。しかしながら、Pro238、Asp265、Asp270、Asn297(Fc炭水化物の喪失)、Pro329ならびに234、235、236および237、Ile253、Ser254、Lys288、Thr307、Gln311、Asn434およびHis435は、変更されるとFcR結合も減少させる残基である(Shields,R.L.ら、J.Biol.Chem.276(2001)6591-6604;Lund,J.ら、FASEB J.9(1995)115-119;Morgan,A.ら、Immunology 86(1995)319-324;および欧州特許第0307434号)。
【0065】
本明細書の「Fc領域」という用語は、定常領域の少なくとも一部を含有する免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。この用語には、天然配列Fc領域およびバリアントFc領域が含まれる。特定の実施形態では、ヒトIgG重鎖Fc領域は、Cys226から、またはPro230から、重鎖のカルボキシル末端まで伸長する。しかしながら、Fc領域のC末端リジン(Lys447)は、存在していてもよく、または存在していなくてもよい。本明細書で特に明記されない限り、Fc領域または定常領域におけるアミノ酸残基のナンバリングは、Kabat,E.A.ら,Sequences of Proteins of Immunological Interest,第5版,Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991)、NIH Publication 91-3242に記載されるような、EUインデックスとも呼ばれる、EUナンバリングシステムに従う。
【0066】
抗体のFc領域は、補体活性化、C1q結合、C3活性化、およびFc受容体結合に直接関与している。補体系に対する抗体の影響は、特定の条件に依存するが、C1qへの結合は、Fc領域における画定された結合部位によって引き起こされる。そのような結合部位は、最新技術において公知であり、例えば、Lukas,T.J.ら、J.Immunol.127(1981)2555-2560;Brunhouse,R.およびCebra,J.J.、Mol.Immunol.16(1979)907-917;Burton,D.R.ら、Nature 288(1980)338-344;Thommesen,J.E.ら、Mol.Immunol.37(2000)995-1004;Idusogie,E.E.ら、J.Immunol.164(2000)4178-4184;Hezareh,M.ら、J.Virol.75(2001)12161-12168;Morgan,A.ら、Immunology 86(1995)319-324;および欧州特許第0307434号に記載される。そのような結合部位は、例えば、L234、L235、D270、N297、E318、K320、K322、P331およびP329(Kabat EUインデックスによるナンバリング;本明細書で特に明記されない限り、Fc領域または定常領域におけるアミノ酸残基のナンバリングは、Kabat,E.A.ら,Sequences of Proteins of Immunological Interest,第5版,Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991)、NIH Publication 91-3242に記載されるような、EUインデックスとも呼ばれる、EUナンバリングシステムである。サブクラスIgG1、IgG2、およびIgG3の抗体は通常、補体活性化、C1q結合、およびC3活性化を示すのに対し、IgG4は、補体系を活性化せず、C1qと結合せず、C3を活性化しない。「抗体のFc領域」は、当業者に周知の用語であり、抗体のパパイン切断に基づいて画定される。特定の実施形態では、Fc領域はヒトFc領域である。特定の実施形態では、薬物抗体のFc領域は、変異L234AおよびL235A(Kabat EUインデックスによるナンバリング)を含むヒトIgG1サブクラスのものである。
【0067】
「フレームワーク」または「FR」は、超可変領域(HVR)残基以外の可変ドメイン残基を指す。可変ドメインのFRは、一般に、4つのFRドメイン:FR1、FR2、FR3およびFR4からなる。したがって、HVRおよびFR配列は、一般に、VH(またはVL)中で以下の配列:FR1-H1(L1)-FR2-H2(L2)-FR3-H3(L3)-FR4で現れる。
【0068】
「完全長抗体」、「インタクトな抗体」および「全抗体」という用語は、本明細書で互換的に使用され、天然抗体構造と実質的に類似した構造を有する抗体、または本明細書で定義されるFc領域を含む重鎖を有する抗体を指す。
【0069】
「ヒト化」抗体とは、非ヒトHVRからのアミノ酸残基およびヒトFRからのアミノ酸残基を含むキメラ抗体を指す。特定の実施形態では、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的にすべてを含み、HVR(例えばCDR)のすべてまたは実質的にすべてが、非ヒト抗体に対応し、FRのすべてまたは実質的にすべてが、ヒト抗体に対応する。ヒト化抗体は、任意に、ヒト抗体由来の抗体定常領域の少なくとも一部を含んでもよい。抗体、例えば、非ヒト抗体の「ヒト化形態」は、ヒト化を受けた抗体を指す。
【0070】
「超可変領域」または「HVR」という用語は、本明細書で使用される場合、超可変的な配列(「相補性決定領域」または「CDR」)であり、および/または構造的に定義されるループ(「超可変ループ」)を形成し、および/または抗原に接触する残基(「抗原接触」)を含有するアミノ酸残基ストレッチを含む、抗体可変ドメインのそれぞれの領域を指す。一般に、抗体は、VHに3つ(H1、H2、H3)およびVLに3つ(L1、L2、L3)、計6つのHVRを含む。
【0071】
HVRには、次のものが含まれる:
(a)アミノ酸残基26~32(L1)、50~52(L2)、91~96(L3)、26~32(H1)、53~55(H2)、および96~101(H3)に発生する超可変ループ(Chothia,C.およびLesk,A.M.、J.Mol.Biol.196(1987)901-917);
(b)アミノ酸残基24~34(L1)、50~56(L2)、89~97(L3)、31~35b(H1)、50~65(H2)、および95~102(H3)に生じるCDR(Kabat,E.A.ら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、MD(1991)、NIH Publication 91-3242);
(c)アミノ酸残基27c~36(L1)、46~55(L2)、89~96(L3)、30~35b(H1)、47~58(H2)、および93~101(H3)に生じる抗原接触部(MacCallumら、J.Mol.Biol.262:732-745(1996));
(d)アミノ酸残基46~56(L2)、47~56(L2)、48~56(L2)、49~56(L2)、26~35(H1)、26~35b(H1)、49~65(H2)、93~102(H3)、および94~102(H3)を含む、(a)、(b)、および/または(c)の組み合わせ。
【0072】
別途指定されない限り、可変ドメイン中のHVR残基および他の残基(例えば、FR残基)は、上記のKabatらに従ってナンバリングされている。
【0073】
「単離された」多量体は、その天然の環境の構成要素から分離されたものである。特定の実施形態では、多量体は、例えば、電気泳動(例えば、SDS-PAGE、等電点電気泳動法(IEF)、キャピラリー電気泳動)、またはクロマトグラフィ(例えば、イオン交換または逆相HPLC)によって決定して、95%または99%を超える純度まで精製される。抗体の純度を評価するための方法の概説については、例えば、Flatmanら、J.Chromatogr.B 848(2007)79-87を参照されたい。
【0074】
本明細書で使用される場合、「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られた抗体を指し、すなわち、その集団を構成する個々の抗体は、同一であり、および/または同じエピトープに結合するが、例えば、自然に発生する変異を含有するか、またはモノクローナル抗体調製物の産生中に生じる、抗体のごく一部は例外である。異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を通常含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対するものである。したがって、修飾語「モノクローナル」は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の製造を必要とするものとして解釈されるべきではない。例えば、モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法、組換えDNA法、ファージディスプレイ法、およびヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部または一部を含むトランスジェニック動物を利用する方法を含むがこれらに限定されない様々な技術によって作製することができ、そのような方法およびモノクローナル抗体を作製するための他の例示的な方法は、本明細書に記載されている。
【0075】
「自然抗体」とは、様々な構造を有する天然に存在する免疫グロブリン分子を指す。例えば、天然IgG抗体は、ジスルフィド結合した2つの同一の軽鎖および2つの同一の重鎖から構成される、約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。N末端からC末端に向けて、各重鎖は、可変重鎖ドメインまたは重鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VH)と、続いて3つの定常ドメイン(CH1、CH2およびCH3)とを有し、第1と第2の定常ドメインの間にヒンジ領域が位置する。同様に、N末端からC末端まで、各軽鎖は、可変軽ドメインまたは軽鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VL)を有し、これに定常軽(CL)ドメインが続く。抗体の軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)およびラムダ(λ)と呼ばれる2つのタイプのいずれかに割り当てられてもよい。
【0076】
「バリアント(ヒト)Fc領域」という用語は、少なくとも1つの「アミノ酸変化」によって「野生型」(ヒト)Fc領域アミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を示す。特定の実施形態では、バリアントFc領域は、天然Fc領域と比較して少なくとも1つのアミノ酸変化、例えば天然Fc領域に対して約1~約10個のアミノ酸変化、特定の実施形態では約1~約5個のアミノ酸変化を有する。特定の実施形態では、(バリアント)Fc領域は、野生型Fc領域と少なくとも約80%の相同性を有し、特定の実施形態では、バリアントFc領域は、少なくとも約90%の相同性を有し、好ましい一実施形態では、バリアントFc領域は、少なくとも約95%の相同性を有する。
【0077】
バリアントFc領域は、含まれるアミノ酸変化によって定義される。したがって、例えば、P329Gという用語は、親(野生型)Fc領域と比較してアミノ酸の329位にプロリンからグリシンへの変異を有するバリアントFc領域を表す。野生型アミノ酸の同一性は不明であってもよく、その場合、上記バリアントは329Gと呼ばれる。「変化」という用語は、天然に存在するアミノ酸に対する変化ならびに非天然に存在するアミノ酸に対する変化を意味する(例えば、米国特許第6,586,207号、国際公開第98/48032号、国際公開第03/073238号、米国特許出願公開第2004/0214988号、国際公開第2005/35727号、国際公開第2005/74524号、Chin,J.W.ら、J.Am.Chem.Soc.124(2002)9026-9027;Chin,J.W.およびSchultz,P.G.、ChemBioChem 11(2002)1135-1137;Chin,J.W.ら、PICAS United States of America 99(2002)11020-11024;Wang,L.およびSchultz,P.G.,Chem.(2002)1-10)。
【0078】
「野生型Fc領域」という用語は、自然界で見出されるFc領域のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を意味する。野生型ヒトFc領域としては、天然ヒトIgG1 Fc領域(非AおよびAアロタイプ)、天然ヒトIgG2 Fc領域、天然ヒトIgG3 Fc領域および天然ヒトIgG4 Fc領域ならびにその天然起源のバリアントが挙げられる。
【0079】
「薬物抗体」という用語は、ヒトにおける治療薬としての使用を意図した任意の抗体調製物に関する。好ましくは、そのような薬物抗体はモノクローナル抗体である。さらに好ましいそのようなモノクローナル抗体は、類人猿から得られるか、またはヒトモノクローナル抗体である。好ましくは、ヒトモノクローナル抗体である。また、好ましいそのような薬物モノクローナル抗体は、ヒト化モノクローナル抗体である。
【0080】
本願内で使用される場合の「価」という用語は、(抗体)分子内に特定の数の結合部位が存在することを表す。したがって、「二価」、「四価」および「六価」という用語は、(抗体)分子中に、それぞれ2つの結合部位、4つの結合部位、および6つの結合部位の存在を表す。本発明による少なくとも三価の抗体は、好ましい一実施形態では「四価」である。「結合部位」は、抗体軽鎖可変ドメイン(VL)と抗体重鎖可変ドメイン(VH)の同種対によって形成される。
【0081】
「可変領域」または「可変ドメイン」という用語は、抗体の抗原への結合に関与する抗体の重鎖または軽鎖のドメインを指す。天然の抗体の重鎖および軽鎖の可変ドメイン(それぞれVHおよびVL)は、一般に、類似の構造を有しており、各ドメインは、4つの保存されたフレームワーク領域(FR)と、3つの超可変領域(HVR)とを含む。(例えばKindt,T.J.ら、Kuby Immunology、第6版、W.H.Freeman and Co.、N.Y.(2007)、p.91を参照されたい)抗原結合特異性を付与するには、単一のVHまたはVLドメインで十分であり得る。さらに、特定の抗原に結合する抗体を、抗原に結合する抗体からのVHまたはVLドメインを使用して単離して、それぞれ相補的なVLまたはVHドメインのライブラリーをスクリーニングしてもよい(例えば、Portolano,S.ら、J.Immunol.150(1993)880-887;Clackson,T.ら、Nature 352(1991)624-628を参照されたい)。
【0082】
II.組成物および方法
本発明は、ヒトIgG1サブクラスの野生型Fc領域と比較して1、2、3または4個のアミノ酸変化を含むヒトIgG1サブクラスの免疫グロブリンFc領域に特異的に結合する単量体二価抗体が、十分な感度/量で、すなわち2つのバリアントFc領域間の(検出可能な)架橋を形成するための十分な感度/量で、2つのバリアントFc領域に結合することができず、ADAアッセイにおける陽性対照または較正標準として使用することができないという知見に少なくとも部分的に基づいている。
【0083】
二価形態とは対照的に、ヒトIgG1サブクラスの野生型Fc領域と比較して1、2、3または4個のアミノ酸変化を含むヒトIgG1サブクラスの免疫グロブリンFc領域に特異的に結合する抗体の多価形態は、十分な感度/量で2つのバリアントFc領域に結合することができる、すなわち、十分な量/感度で2つのバリアントFc領域を連結することができるので、ADAアッセイにおける陽性対照および/または較正標準として適していることが見出された。
【0084】
例えば、Fc領域内にPro329Gly(PG)置換を導入することによる、Fc受容体および/またはFcエフェクター機能への結合を欠く薬物抗体について、ADAアッセイに使用するための機能的陽性対照ならびに較正標準が本明細書に報告される。本発明による機能的陽性対照および較正標準は、薬物(治療)抗体のFc領域内のアミノ酸変化に特異的な抗体の多価形態、例えば抗PG抗体の少なくとも三価形態または多量体形態である。
【0085】
架橋アッセイと組み合わせた本発明による多価抗体により、アッセイの適切な機能を決定することができるため、臨床試料の詳細なADA特徴付けが可能になる。本発明による多価抗体を用いた架橋抗薬物抗体イムノアッセイは、Fc領域修飾薬物抗体に対する個々のADA応答の詳細な特徴付けのために補完される。
【0086】
本発明による一態様は、ヒトIgG1サブクラスの野生型Fc領域と比較して1、2、3または4個のアミノ酸変化を含むヒトIgG1サブクラスの免疫グロブリンFc領域に特異的に結合する抗体の多価形態である。
【0087】
第1の実施例では、抗PG抗体、すなわちP329G変化を有するIgGサブクラスのヒトFc領域に特異的に結合する抗体の、図4Cによる化学的にコンジュゲートされた多量体を用いて、本発明を以下に例示する。これは、単に本発明を例示するために提示され、限定として解釈すべきではない。真の範囲は、添付の特許請求の範囲に記載される。
【0088】
より詳細には、捕捉抗体およびトレーサー抗体として、同じであるが誘導体化が異なる薬物抗体を用いて、架橋イムノアッセイにおける陽性対照としての使用について単量体抗PG抗体クローン1.7.24を試験した。結果を図2に示す。
【0089】
100%マトリックス中の1,000ng/mLの濃度までの二価Y型(=単量体)抗PG抗体クローン1.7.24シグナルを検出できなかったことが見出された。さらに、10,000ng/mLの濃度では、0.13AUのシグナルしか得られなかった。2,500ng/mLの抗PG抗体クローン1.7.24(実施例4A参照)の濃度では、シグナル対ノイズ比は2AU超であった。
【0090】
規制当局は、少なくとも100ng/mLの閾値を要求している。これは、ADA陽性対照の感度が100%マトリックス中で100ng/mLに達するべきであることを意味する(例えば、2019年のFDAガイダンスを参照されたい)。
【0091】
一般に、シグナルは、ブランク試料、すなわち分析物を含まない試料の少なくとも2倍の値である場合、使用に十分であると考えられる。
【0092】
したがって、単量体抗PG抗体クローン1.7.24は、その感度が低いために、抗薬物抗体アッセイにおける陽性対照および較正標準として適していない。
【0093】
異なるクローン、すなわち抗PG抗体クローン1.3.17で同じ挙動が見られた。この単量体抗体では、ブランク値のわずか1.85倍のシグナルが100ng/mLで得られた(実施例4B参照)。したがって、このクローンもまた、単量体形態であり、ADAアッセイにおいて陽性対照または較正標準として使用するのに感受性が十分でない。
【0094】
これらの単量体抗PG抗体は、ADAアッセイにおいて架橋を形成できないのはなぜか?この理論に拘束されるものではないが、1つの抗PG抗体が両方のパラトープで1つの薬物抗体分子に結合するか(図3Aを参照)、または抗PG抗体の1つの結合部位のみがFc領域に結合することができ、他方は立体的にブロックされる(図3Bを参照)と仮定する。
【0095】
この問題に対処するために、多価抗PG抗体の使用が有利であることが見出された。
【0096】
任意の種類の価数増強技術、例えば二量体または融合分子としての組換え産生、例えばIgA(図4A参照)もしくはIgMなどの異なる抗体フォーマットへの変更、結合部位の付加(図4B参照)、または例えばN-スクシンイミジル-3-アセチルチオプロピオナート(SATP)およびマレイミドヘキサノイル-N-ヒドロキシスクシンイミド(MHS)を使用した化学的コンジュゲーション(図4C参照)を適用することができる。
【0097】
N-スクシンイミジル-3-アセチルチオプロピオナート(SATP)およびマレイミドヘキサノイル-N-ヒドロキシスクシンイミド(MHS)を使用した抗PG抗体クローン1.7.24の例示的な化学的コンジュゲーションを行った。反応はスムーズに進行した。SECを使用して反応生成物を分析し、異なる画分を回収した。図5から分かるように、異なる程度の多量体化を有する多量体、すなわち高度に架橋された多量体(プール2)から二量体および三量体のみを得ることができる。
【0098】
すべてのプールを架橋ADAアッセイで試験した。プール2、3および4を混合した。プールを一緒に混合することは、化学的に結合したタンパク質を使用する一般的な手順である。混合する前に、ADA ELISAアッセイを実施し、最も高いシグナルを有するプールを組み合わせた。これにより、より高い収率がもたらされる。結果を図6に示す。単量体抗体と比較してすべてのプールで、増加したシグナルを得ることができることを見出すことができる。これにより、初めて、架橋ADA決定イムノアッセイにおける陽性対照および較正標準としての使用が可能になる。
【0099】
さらに、高い架橋度、すなわちプール2および3で最も顕著な改善が得られることを見出すことができる。
【0100】
図7および図8では、本発明による単量体二価抗PG抗体クローン1.7.24および多価抗PG抗体クローン1.7.24は、シグナルおよびシグナル対ノイズ比に関して直接的な1:1の比較として示されている。両方の場合において、実質的な改善を見ることができる。例えば、多価抗PG抗体クローン1.7.24のシグナル対ノイズ比(S/N)は、80ng/mLの濃度で4.5であり、1000ng/mLの濃度で83.6である。二価抗PG抗体クローン1.7.24のS/Nは、1000ng/mLの濃度でわずか3.8である。
【0101】
さらに、多価抗PG抗体は、異なるフォーマットの異なる薬物抗体で試験されている。フォーマットとは無関係に、シグナルの改善を見ることができる(図9参照)。
【0102】
第2の実施例では、組換え産生された四価形態の抗PG抗体、すなわちP329G変化を有するIgGサブクラスのヒトFc領域に特異的に結合する抗体を用いて、図4Bに従って本発明を以下に例示する。これは、単に本発明を例示するために提示され、決して限定として解釈すべきではない。真の範囲は、添付の特許請求の範囲に記載される。
【0103】
より詳細には、捕捉抗体およびトレーサー抗体として、同じであるが誘導体化が異なる薬物抗体のFc領域を用いて、架橋イムノアッセイにおける較正標準として四価抗PG抗体を使用した。結果を図10に示す。
【0104】
第3の実施例では、組換え産生されたIgMバリアントの抗PG抗体、すなわちP329G変化を有するIgGサブクラスのヒトFc領域に特異的に結合する抗体を用いて、本発明を以下に例示する。これは、単に本発明を例示するために提示され、決して限定として解釈すべきではない。真の範囲は、添付の特許請求の範囲に記載される。
【0105】
より詳細には、捕捉試薬としてのFc領域およびトレーサー抗体としてのTCBフォーマットの完全薬物を用いて、架橋イムノアッセイにおける較正標準としてIgMバリアント抗PG抗体を使用した。結果を図11に示す。
【0106】
A.例示的な抗バリアントFc領域抗体
架橋アッセイでは、ADAは、差次的に標識された薬物抗体によって捕捉および検出される。しかしながら、架橋アッセイは、IgMを含む様々なIgサブタイプのADAを検出することができ、あらゆる種類の治療用抗体に適用可能である(Mire-Sluis,A.R.ら、J.Immunol.Meth.289(2004)1-16(2004);Geng,D.ら、J.Pharm.Biomed.Anal.39(2005)364-375)。架橋アッセイでは、ADAと薬物抗体との複合体が、治療用抗体の結合領域とは無関係に検出される。さらに、本発明によるアッセイは、Fc領域内にP329G修飾がある薬物抗体に特に適している。この群の薬物抗体について、アッセイは一般的なアプローチを表し、容易に適用することができる。
【0107】
要約すると、本明細書に記載のアッセイは、Fc領域修飾薬物抗体に対するADAの強力かつ高感度の検出の可能性を提供する。標準的な架橋アッセイと組み合わせて、免疫応答をより詳細に特徴付けるために使用することができる。
【0108】
本明細書に記載のアッセイは一般的なアプローチであり、すべての薬物抗体、例えばPro329Gly置換を有するもの、すなわちFcγR結合が防止/消失されたものに適用可能である。本発明によるアッセイはADAを検出し、2つの異なる標識薬物抗体、(i)二標識薬物抗体および(ii)dig標識薬物抗体に基づいている。
【0109】
さらに、薬物抗体のFc受容体および補体の両方に対する親和性に影響を及ぼし、その結果、それらの機能的プロファイルを変化させる、PG置換以外のいくつかの他のFc修飾が同定されている(Moore,G.L.ら、MAbs 2(2010)181-189;Richards,J.O.ら、Mol.Cancer.Ther.7(2008)2517-2527;Lazar,G.A.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 103(2010)4005-4010;Schlothauer,T.ら、Prot.Eng.Des.Sel.29(2016)457-466)。
【0110】
本明細書で報告されるアッセイの原理は、これらが特異的抗体の生成を可能にする限り、広範囲のFc領域変化に転用することができる。
【0111】
要約すると、従来の架橋アッセイと本発明による多価抗体との組み合わせは、Fcエフェクター機能が抑制または変化した薬物抗体の免疫原性プロファイルを特徴付けるのに役立つ。
【0112】
本発明による一態様は、ヒトIgG1サブクラスの野生型Fc領域と比較して1、2、3または4個のアミノ酸変化を含むヒトIgG1サブクラスの免疫グロブリンFc領域に特異的に結合する多価抗体である。
【0113】
特異的に結合するとは、抗体がヒトIgG1サブクラスの野生型免疫グロブリンFc領域に10-8mol/l以上のK値で結合することをいう。
【0114】
本発明による一態様は、329位にアミノ酸残基グリシン(Kabat EUインデックスによるナンバリング)を含むヒトIgG1サブクラスの免疫グロブリンFc領域に特異的に結合する多価抗体であって、多価抗体は、
(1)
(a)配列番号09のアミノ酸配列を含むHVR-H1、
(b)配列番号12のアミノ酸配列を含むHVR-H2、
(c)配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR-H3、
(d)配列番号23のアミノ酸配列を含むHVR-L1、
(e)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および
(f)配列番号28のアミノ酸配列を含むHVR-L3、
または
(2)
(a)配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-H1、
(b)配列番号13のアミノ酸配列を含むHVR-H2、
(c)配列番号17のアミノ酸配列を含むHVR-H3、
(d)配列番号23もしくは24のアミノ酸配列を含むHVR-L1、
(e)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および
(f)配列番号29のアミノ酸配列を含むHVR-L3、
または
(3)
(a)配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-H1、
(b)配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR-H2、
(c)配列番号18のアミノ酸配列を含むHVR-H3、
(d)配列番号23もしくは24のアミノ酸配列を含むHVR-L1、
(e)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および
(f)配列番号30のアミノ酸配列を含むHVR-L3、
または
(4)
(a)配列番号20のアミノ酸配列を含むHVR-H1、
(b)配列番号21のアミノ酸配列を含むHVR-H2、
(c)配列番号22のアミノ酸配列を含むHVR-H3、
(d)配列番号32のアミノ酸配列を含むHVR-L1、
(e)配列番号34のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および
(f)配列番号35のアミノ酸配列を含むHVR-L3、
または
(5)
(1)および/または(2)および/または(3)および/または(4)のいずれか1つの混合物または組み合わせ
を含む、少なくとも3つの結合部位を含む。
【0115】
本発明のすべての態様および実施形態の好ましい一実施形態では、多価抗体は、329位にアミノ酸残基グリシンを含みかつ234位および235位にアミノ酸残基アラニン(Kabat EUインデックスによるナンバリング)を含むヒトIgG1サブクラスの免疫グロブリンFc領域に、特異的に結合する。好ましい一実施形態では、多価抗体は、四価抗体または二価抗体の多量体形態または二価抗体の多量体(Fab’)2断片である。
【0116】
二価(Fab’)断片は、ジスルフィド結合によって互いに連結された2つの抗原結合部位を有する。完全長Y型抗体をパパインで消化すると、2つの個々のFab断片が産生される。ヒンジ領域の一部を保持す(Fab’)断片は、IgGまたはIgM抗体のペプシン消化によって産生される。
【0117】
本発明のすべての態様および実施形態の特定の実施形態では、多量体は、二量体、三量体、四量体、五量体、六量体、七量体、八量体、九量体または十量体である。
【0118】
本発明による一態様は、(架橋)イムノアッセイにおける陽性対照としての本発明による多価抗体の使用である。
【0119】
本発明による一態様は、(架橋)イムノアッセイにおける較正標準としての本発明による多価抗体の使用である。特定の実施形態では、使用は較正関数を生成するためのものである。好ましい一実施形態では、較正関数は、薬物抗体に対する抗薬物抗体を定量的に決定するためのものであり、抗薬物抗体は、野生型Fc領域と比較して変化している薬物抗体のFc領域中の少なくとも1つアミノ酸残基に結合する。
【0120】
本発明のすべての態様および実施形態の特定の実施形態では、(架橋)イムノアッセイは、薬物抗体に対する抗薬物抗体を決定するためのものであり、抗薬物抗体は薬物抗体のFc領域に結合する。特定の実施形態では、抗薬物抗体は、野生型Fc領域と比較して変化している薬物抗体のFc領域中の少なくとも1つのアミノ酸残基に結合する。
【0121】
本発明のすべての態様および実施形態の特定の実施形態では、イムノアッセイは架橋ELISAである。
【0122】
本発明のすべての態様および実施形態の特定の実施形態では、薬物抗体は、329位にアミノ酸残基グリシン(Kabat EUインデックスによるナンバリング)を含むヒトIgG1サブクラスの免疫グロブリンFc領域を含む。
【0123】
本発明のすべての態様および実施形態の好ましい一実施形態では、薬物抗体は、329位にアミノ酸残基グリシンを含みかつ234位および235位にアミノ酸残基アラニン(Kabat EUインデックスによるナンバリング)を含むヒトIgG1サブクラスの免疫グロブリンFc領域を含む。
【0124】
本発明のすべての態様および実施形態の特定の実施形態では、薬物抗体は、253、310および435位にアミノ酸残基アラニン(Kabat EUインデックスによるナンバリング)を含むヒトIgG1サブクラスの免疫グロブリンFc領域を含む。
【0125】
本発明のすべての態様および実施形態の好ましい一実施形態では、イムノアッセイは、捕捉抗体としておよびトレーサー抗体として薬物抗体を含む抗薬物抗体を決定するための架橋イムノアッセイである。
【0126】
本発明による一態様は、(血清含有)試料中の抗薬物抗体の存在および/または量を決定するためのイムノアッセイであって、
抗薬物抗体は、野生型Fc領域と比較して変化している薬物抗体のFc領域中の少なくとも1つのアミノ酸残基に結合し、
イムノアッセイは、捕捉抗体としておよびトレーサー抗体として薬物抗体を含み、
本発明による多価抗体は、イムノアッセイにおいて陽性対照としてまたは較正標準として使用されることを特徴とする。
【0127】
本発明のすべての態様および実施形態の特定の実施形態では、較正標準としての使用は、較正関数を生成するためのものである。好ましい一実施形態では、較正関数は、薬物抗体に対する抗薬物抗体を定量的に決定するためのものであり、抗薬物抗体は、野生型Fc領域と比較して変化している薬物抗体のFc領域中の少なくとも1つアミノ酸残基に結合する。
【0128】
本発明のすべての態様および実施形態の特定の実施形態では、ヒトIgG1サブクラスのバリアント免疫グロブリンFc領域に特異的に結合する抗体はモノクローナル抗体である。
【0129】
本発明のすべての態様および実施形態の特定の実施形態では、薬物抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体またはキメラ抗体である。
【0130】
一態様は、N-スクシンイミジル-3-アセチルチオプロピオナート(SATP)およびマレイミドヘキサノイル-N-ヒドロキシスクシンイミド(MHS)を使用して、バリアントFc領域に特異的に結合する完全長抗体を化学的に架橋することを含む、本発明による多量体の製造方法である。
【0131】
一態様は、329位にアミノ酸残基グリシン(Kabat EUインデックスによるナンバリング)を含むヒトIgG1サブクラスの免疫グロブリンFc領域に特異的に結合する完全長抗体を化学的に架橋することを含む、本発明による多量体の製造方法であって、
抗体は、
(1)
(a)配列番号09のアミノ酸配列を含むHVR-H1、
(b)配列番号12のアミノ酸配列を含むHVR-H2、
(c)配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR-H3、
(d)配列番号23のアミノ酸配列を含むHVR-L1、
(e)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および
(f)配列番号28のアミノ酸配列を含むHVR-L3、
または
(2)
(a)配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-H1、
(b)配列番号13のアミノ酸配列を含むHVR-H2、
(c)配列番号17のアミノ酸配列を含むHVR-H3、
(d)配列番号23もしくは24のアミノ酸配列を含むHVR-L1、
(e)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および
(f)配列番号29のアミノ酸配列を含むHVR-L3、
または
(3)
(a)配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-H1、
(b)配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR-H2、
(c)配列番号18のアミノ酸配列を含むHVR-H3、
(d)配列番号23もしくは24のアミノ酸配列を含むHVR-L1、
(e)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および
(f)配列番号30のアミノ酸配列を含むHVR-L3、
または
(4)
(a)配列番号20のアミノ酸配列を含むHVR-H1、
(b)配列番号21のアミノ酸配列を含むHVR-H2、
(c)配列番号22のアミノ酸配列を含むHVR-H3、
(d)配列番号32のアミノ酸配列を含むHVR-L1、
(e)配列番号34のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および
(f)配列番号35のアミノ酸配列を含むHVR-L3、
または
(5)
(1)~(4)のいずれか1つの組み合わせ
を含み、
N-スクシンイミジル-3-アセチルチオプロピオナート(SATP)およびマレイミドヘキサノイル-N-ヒドロキシスクシンイミド(MHS)を使用して、化学的に架橋することを含む、本発明による多量体の製造方法である。
【0132】
本発明のすべての態様および実施形態の好ましい一実施形態では、抗バリアントFc領域抗体は、
(1)
(a)配列番号09のアミノ酸配列を含むHVR-H1、
(b)配列番号12のアミノ酸配列を含むHVR-H2、
(c)配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR-H3、
(d)配列番号23のアミノ酸配列を含むHVR-L1、
(e)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および
(f)配列番号28のアミノ酸配列を含むHVR-L3、
または
(2)
(a)配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-H1、
(b)配列番号13のアミノ酸配列を含むHVR-H2、
(c)配列番号17のアミノ酸配列を含むHVR-H3、
(d)配列番号23もしくは24のアミノ酸配列を含むHVR-L1、
(e)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および
(f)配列番号29のアミノ酸配列を含むHVR-L3、
または
(3)
(a)配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-H1、
(b)配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR-H2、
(c)配列番号18のアミノ酸配列を含むHVR-H3、
(d)配列番号23もしくは24のアミノ酸配列を含むHVR-L1、
(e)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および
(f)配列番号30のアミノ酸配列を含むHVR-L3、
または
(4)
(a)配列番号20のアミノ酸配列を含むHVR-H1、
(b)配列番号21のアミノ酸配列を含むHVR-H2、
(c)配列番号22のアミノ酸配列を含むHVR-H3、
(d)配列番号32のアミノ酸配列を含むHVR-L1、
(e)配列番号34のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および
(f)配列番号35のアミノ酸配列を含むHVR-L3、
または
(5)
(1)~(4)のいずれか1つの混合物
を含む。
【0133】
本発明で使用される抗体は、以下の配列(Kabatに従って決定されるHVR)を有する。
【0134】
配列番号36(シグナル配列なしの配列番号05):E VQLVESGGDL VKPGGSLKLS CAASGFTFSS YGMSWVRQTP DKRLEWVATI SSGGSYIYYP DSVKGRFTIS RDNAKNTLYL QMSSLKSEDT AMYYCARLGM ITTGYAMDYW GQGTSVTVSS
配列番号06:DVLMTQTPLS LPVSLGDQAS ISCRSSQTIV HSTGHTYLEW FLQKPGQSPK LLIYKVSNRF SGVPDRFSGS GSGTDFTLKI SRVEAEDLGV YYCFQGSHVP YTFGGGTKLE IK
配列番号37(シグナル配列なしの配列番号07):EV KLLESGGGLV QPGGSLKLSC AASGFDFSRY WMNWVRQAPG KGLEWIGEIT PDSSTINYTP SLKDKFIISR DNAKNTLYLQ MIKVRSEDTA LYYCVRPYDY GAWFASWGQG TLVTVSA
配列番号08:QAVVTQESAL TTSPGETVTL TCRSSTGAVT TSNYANWVQE KPDHLFTGLI GGTNKRAPGV PARFSGSLIG DKAALTITGA QTEDEAIYFC ALWYSNHWVF GGGTKLTVL
【0135】
本発明のすべての態様および実施形態の特定の実施形態では、本発明による多価抗体の調製に使用される抗バリアント(ヒト)Fc領域抗体(抗AAA抗体)は、
● アミノ酸残基(A)253、(A)310および(A)435(Kabat EUインデックスによるナンバリング)を含むIgG1サブクラスのバリアント(ヒト)Fc領域上のエピトープに特異的に結合し、
● 253、310および435位にアラニンアミノ酸残基(Kabat EUインデックスによるナンバリング)を有するIgG1サブクラスのバリアント(ヒト)Fc領域に特異的に結合し、
● 253位にイソロイシンアミノ酸残基および310位にヒスチジンアミノ酸残基および435位にヒスチジンアミノ酸残基(Kabat EUインデックスによるナンバリング)を有するIgG1サブクラスの野生型(ヒト)Fc領域に(特異的に)結合せず、
● 253位にイソロイシンアミノ酸残基および310位にヒスチジンアミノ酸残基および435位にヒスチジンアミノ酸残基および329位にグリシンアミノ酸残基および234位にアラニンアミノ酸残基および235位にアラニンアミノ酸残基(Kabat EUインデックスによるナンバリング)を有するIgG1サブクラスの(ヒト)Fc領域に(特異的に)結合せず、
● 253位にイソロイシンアミノ酸残基および310位にヒスチジンアミノ酸残基および435位にヒスチジンアミノ酸残基および329位にプロリンアミノ酸残基および234位にロイシンアミノ酸残基および235位にロイシンアミノ酸残基(Kabat EUインデックスによるナンバリング)を有するIgG1サブクラスのバリアント(ヒト)Fc領域に(特異的に)結合しない。
【0136】
「(特異的に)結合しない」という用語は、結合が決定されるアッセイでは、得られた結果が、問題の抗体を含まない試料、すなわちブランク試料または緩衝液試料で得られた結果と有意に異ならないことを意味する。
【0137】
本発明のすべての態様および実施形態の特定の実施形態では、バリアント(ヒト)Fc領域は、変異I253A、H310AおよびH435A(Kabat EUインデックスによるナンバリング)を有するヒトIgG1またはIgG4サブクラスのFc領域である。
【0138】
本発明のすべての態様および実施形態の特定の実施形態では、本発明による多量体の生成のために使用される各アミノ酸残基アラニンを253、310および435位(Kabat EUインデックスによるナンバリング)に含むIgG1サブクラスのFc領域に特異的に結合する抗Fc領域抗体は、(a)配列番号09または10のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号12、13または14のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)配列番号16、17または18のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)配列番号23または24のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L2;および(f)配列番号28、29または30のアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたは6つのHVRを含む。
【0139】
本発明のすべての態様および実施形態の特定の実施形態では、本発明の多価抗体を作製するために使用される抗体は、(a)(i)配列番号09または10のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(ii)配列番号12または13または14のアミノ酸配列を含むHVR-H2、および(iii)配列番号16、17または18から選択されるアミノ酸配列を含むHVR-H3を含むVHドメイン;ならびに(b)(i)配列番号23または24のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(ii)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および(c)配列番号28、29または30のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含むVLドメインを含む。
【0140】
本発明のすべての態様および実施形態の特定の実施形態では、本発明による多価抗体を作製するために使用される抗体は、(a)配列番号09のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号12のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)配列番号23のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L2;および(f)配列番号28から選択されるアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。
【0141】
本発明のすべての態様および実施形態の特定の実施形態では、本発明による多価抗体を作製するために使用される抗体は、(a)配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号13のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)配列番号17のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)配列番号23のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L2;および(f)配列番号29から選択されるアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。
【0142】
本発明のすべての態様および実施形態の特定の実施形態では、本発明による多価抗体を作製するために使用される抗体は、(a)配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)配列番号18のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)配列番号23のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L2;および(f)配列番号30から選択されるアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。
【0143】
本発明のすべての態様および実施形態の特定の実施形態では、本発明による多価抗体を作製するために使用される抗体は、以下のHVR位置で置換された任意の1つまたは複数のアミノ酸を含む:
- HVR-H1(配列番号11)では:5位;
- HVR-H2(配列番号15)では:3位、7位、8位、11位、12位;
- HVR-H3(配列番号19)では:2位、10位;
- HVR-L1(配列番号25)では:3位、14位;
- HVR-L2(配列番号27)では:4位;および
- HVR-L3(配列番号31)では:1位、6位。
【0144】
特定の実施形態では、置換は、本明細書で提供される保存的置換である。特定の実施形態では、以下のアミノ酸残基のいずれか1つまたは複数(単独または互いに独立した組み合わせのいずれか1つ)は、任意の組み合わせで存在し得る:
- HVR-H1(配列番号11)では:5位に、S、T、NおよびQからなるアミノ酸残基の群から選択される中性親水性アミノ酸残基;
- HVR-H2(配列番号15)では:3位に、S、T、N、Q、DおよびEからなるアミノ酸残基の群から選択される中性親水性または酸性アミノ酸残基、7位に、S、T、N、Q、H、KおよびRからなるアミノ酸残基の群から選択される中性親水性または塩基性アミノ酸残基、8位に、S、T、N、Q、GおよびPからなるアミノ酸残基の群から選択される中性親水性アミノ酸残基または鎖配向に影響を及ぼす残基、11位に、S、T、N、Q、G、P、W、YおよびFからなるアミノ酸残基の群から選択される中性親水性もしくは芳香族アミノ酸残基または鎖配向に影響を及ぼす残基、12位に、S、T、N、Q、GおよびPからなるアミノ酸残基の群から選択される中性親水性アミノ酸残基または鎖配向に影響を及ぼす残基;
- HVR-H3(配列番号19)では:2位に、M、A、V、L、I、W、Y、およびFからなるアミノ酸残基の群から選択される疎水性または芳香族アミノ酸残基、10位に、S、T、N、Q、W、Y、およびFからなるアミノ酸残基の群から選択される中性親水性または芳香族アミノ酸残基;
- HVR-L1(配列番号25)では:3位に、S、T、NおよびQからなるアミノ酸残基の群から選択される中性親水性アミノ酸残基、14位に、S、T、N、Q、DおよびEからなるアミノ酸残基の群から選択される中性親水性または酸性アミノ酸残基;
- HVR-L2(配列番号27)では:4位に、E、D、H、KおよびRからなるアミノ酸残基の群から選択される酸性または塩基性アミノ酸残基;ならびに
- HVR-L3(配列番号31)では:1位に、M、A、V、LおよびIからなるアミノ酸残基の群から選択される疎水性アミノ酸残基、6位に、S、T、N、Q、DおよびEからなるアミノ酸残基の群から選択される中性親水性または酸性アミノ酸残基。
【0145】
上記置換のすべての可能な組み合わせは、配列番号11、15、19、25、27、および31のコンセンサス配列に包含される。
【0146】
配列番号07は、N末端に18アミノ酸残基のシグナルペプチドを含む重鎖可変ドメインのマウス配列である。配列番号37は、配列番号07からシグナル配列を削除したものである。
【0147】
配列番号02および配列番号04は、それぞれ、N末端に19アミノ酸残基のシグナルペプチドを含む軽鎖可変ドメインのマウス配列である。
【0148】
本発明のすべての態様および実施形態の特定の実施形態では、本発明による多価抗体を作製するために使用される抗体は、配列番号01に由来する重鎖可変ドメインアミノ酸配列および配列番号02に由来する軽鎖可変ドメインアミノ酸配列を含み、ヒト化抗体は、重鎖可変ドメインとして配列番号01のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変ドメインとして配列番号02のアミノ酸配列を含むキメラ抗体またはマウス抗体と同じ結合特異性を有する。
【0149】
本発明のすべての態様および実施形態の特定の実施形態では、本発明による多価抗体を作製するために使用される抗体は、配列番号03に由来する重鎖可変ドメインアミノ酸配列および配列番号04に由来する軽鎖可変ドメインアミノ酸配列を含み、ヒト化抗体は、重鎖可変ドメインとして配列番号03のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変ドメインとして配列番号04のアミノ酸配列を含むキメラ抗体またはマウス抗体と同じ結合特異性を有する。
【0150】
本発明のすべての態様および実施形態の特定の実施形態では、本発明による多価抗体を作製するために使用される抗体は、配列番号07に由来する重鎖可変ドメインアミノ酸配列および配列番号08に由来する軽鎖可変ドメインアミノ酸配列を含み、ヒト化抗体は、重鎖可変ドメインとして配列番号07のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変ドメインとして配列番号08のアミノ酸配列を含むキメラ抗体またはマウス抗体と同じ結合特異性を有する。
【0151】
本発明のすべての態様および実施形態の特定の実施形態では、本発明による多価抗体を作製するために使用される抗体は、配列番号01、03および37のいずれか1つのアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)配列を含む。特定の実施形態では、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有するVH配列は、参照配列と比較して、置換(例えば、保存的置換)、挿入または欠失を含むが、その配列を含む抗バリアント(ヒト)Fc領域抗体は、バリアント(ヒト)Fc領域に結合する能力を保持する。特定の実施形態では、配列番号01、03および37のいずれか1つにおいて合計で1~10個のアミノ酸が置換、挿入、および/または欠失されている。特定の実施形態では、置換、挿入、または欠失は、HVRの外側の領域で(すなわち、FRで)生じる。任意に、抗バリアント(ヒト)Fc領域抗体は、配列の翻訳後修飾を含む、配列番号01、03および37のいずれか1つのVH配列を含む。
【0152】
本発明のすべての態様および実施形態の特定の実施形態では、本発明による多価抗体を作製するために使用される抗体は、配列番号02、04または08のいずれか1つのアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を含む。特定の実施形態では、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有するVL配列は、参照配列と比較して、置換(例えば、保存的置換)、挿入または欠失を含むが、その配列を含む抗バリアント(ヒト)Fc領域抗体は、バリアント(ヒト)Fc領域に結合する能力を保持する。特定の実施形態では、配列番号02、04または08において合計で1~10個のアミノ酸が置換、挿入、および/または欠失されている。特定の実施形態では、置換、挿入、または欠失は、HVRの外側の領域で(すなわち、FRで)生じる。任意に、抗バリアント(ヒト)Fc領域抗体は、配列の翻訳後修飾を含む、配列番号02、04または08のVL配列を含む。
【0153】
本発明のすべての態様および実施形態の特定の実施形態では、本発明による多価抗体を作製するために使用される抗体は、上に提供される実施形態のいずれかのようなVHおよび上に提供される実施形態のいずれかのようなVLを含む。特定の実施形態では、抗体は、(i)配列番号01および配列番号02のVHおよびVL配列、または(ii)それぞれ配列番号03および配列番号04のVHおよびVL配列、または(iii)それらの配列の翻訳後修飾を含む、配列番号37および配列番号08のVHおよびVL配列を含む。
【0154】
本発明のすべての態様および実施形態の特定の実施形態では、本明細書に記載の本発明による多価抗体の調製に使用される抗バリアント(ヒト)Fc領域抗体(抗PG抗体)は、
● アミノ酸残基(A)234、(A)235および(G)329(Kabat EUインデックスによるナンバリング)を含むIgG1サブクラスのバリアント(ヒト)Fc領域上のエピトープに特異的に結合し、
● 234および235位にアラニンアミノ酸残基、および329位にグリシンアミノ酸残基(Kabat EUインデックスによるナンバリング)を有するIgG1サブクラスのバリアント(ヒト)Fc領域に特異的に結合し、
● 234位および235にアラニンアミノ酸残基、329位にグリシンアミノ酸残基ならびに253位にイソロイシンアミノ酸残基ならびに310位にヒスチジンアミノ酸残基ならびに435位にヒスチジンアミノ酸残基(Kabat EUインデックスによるナンバリング)を有するIgG1サブクラスのバリアント(ヒト)Fc領域に特異的に結合し、
● 234、235、253、310および435位にアラニンアミノ酸残基、および329位にグリシンアミノ酸残基(Kabatによるナンバリング)を有するIgG1サブクラスのバリアント(ヒト)Fc領域に特異的に結合し、
● 234および235位にロイシンアミノ酸残基、および329位にプロリンアミノ酸残基(Kabatによるナンバリング)を有するIgG1サブクラスの野生型(ヒト)Fc領域に(特異的に)結合せず、
● 234および235位にロイシンアミノ酸残基、ならびに329位にプロリンアミノ酸残基ならびに253位にイソロイシンアミノ酸残基ならびに310位にヒスチジンアミノ酸残基ならびに435位にヒスチジンアミノ酸残基(Kabatによるナンバリング)を有するIgG1サブクラスの野生型(ヒト)Fc領域に(特異的に)結合せず、
● 234および235位にロイシンアミノ酸残基、ならびに329位にプロリンアミノ酸残基ならびに253位にアラニンアミノ酸残基ならびに310位にアラニンアミノ酸残基ならびに435位にアラニンアミノ酸残基(Kabatによるナンバリング)を有するIgG1サブクラスのバリアント(ヒト)Fc領域に(特異的に)結合しない。
【0155】
抗PG抗体の作製のために行った免疫を、P329G、L234AおよびL235AFc領域置換を有するヒトIgG1を用いて行ったので、これらのアミノ酸残基に特異的に結合する抗体が得られることが期待された。驚くべきことに、得られた抗体は、L234AおよびL235A変異の有無とは無関係に、P329G変異のみを有するヒトIgG1およびFc領域断片に特異的に結合し、一方、ヒト野生型IgG1ならびに変異L234AおよびL235Aを有するヒトIgG1は結合しなかった。したがって、本発明による多量体を作製するために使用される抗PG抗体は、ヒトIgG1のFc領域における単一のP329G置換に特異的である。
【0156】
本発明のすべての態様および実施形態の特定の実施形態では、バリアント(ヒト)Fc領域は、変異P329G(Kabat EUインデックスによるナンバリング)を有するヒトIgG1またはIgG4サブクラスのFc領域である。
【0157】
本発明のすべての態様および実施形態の特定の実施形態では、本発明による多価抗体を作製するために使用される抗体は、(a)配列番号20のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号21のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)配列番号22のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)配列番号32のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)配列番号34のアミノ酸配列を含むHVR-L2;および(f)配列番号35のアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたは6つのHVRを含む329位にアミノ酸残基グリシン(ならびに任意に234および235位にアミノ酸残基アラニン)(Kabat EUインデックスによるナンバリング)を含むIgG1サブクラスのFc領域に特異的に結合する抗Fc領域抗体である。
【0158】
本発明のすべての態様および実施形態の特定の実施形態では、本発明による多価抗体を作製するために使用される抗体は、(a)(i)配列番号20のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(ii)配列番号21のアミノ酸配列を含むHVR-H2、および(iii)配列番号22から選択されるアミノ酸配列を含むHVR-H3を含むVHドメイン;ならびに(b)(i)配列番号32のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(ii)配列番号34のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および(c)配列番号35のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含むVLドメインを含む。
【0159】
本発明のすべての態様および実施形態の特定の実施形態では、本発明による多価抗体を作製するために使用される抗体は、(a)配列番号20のアミノ酸配列を含むHVR-H1;(b)配列番号21のアミノ酸配列を含むHVR-H2;(c)配列番号22のアミノ酸配列を含むHVR-H3;(d)配列番号32のアミノ酸配列を含むHVR-L1;(e)配列番号34のアミノ酸配列を含むHVR-L2;および(f)配列番号35から選択されるアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。
【0160】
本発明のすべての態様および実施形態の特定の実施形態では、本発明による多価抗体を作製するために使用される抗体において抗バリアント(ヒト)Fc領域抗体のアミノ酸は、以下のHVR位置で置換される:
- HVR-L1(配列番号33)では:9位。
【0161】
特定の実施形態では、置換は、本明細書で提供される保存的置換である。特定の実施形態では、以下のアミノ酸残基のいずれか1つまたは複数(単独または互いに独立した組み合わせのいずれか1つ)は、任意の組み合わせで存在し得る:
- HVR-L1(配列番号33)では:9位に、S、T、N、Q、GおよびPからなるアミノ酸残基の群から選択される中性親水性アミノ酸残基または鎖配向に影響を及ぼす残基。
【0162】
上記置換のすべての可能な組み合わせは、配列番号33のコンセンサス配列に包含される。
【0163】
配列番号05は、N末端に19アミノ酸残基のシグナルペプチドを含む重鎖可変ドメインのマウス配列である。配列番号36は、配列番号05からシグナル配列を削除したものである。
【0164】
本発明のすべての態様および実施形態の特定の実施形態では、本発明による多価抗体を作製するために使用される抗体は、配列番号05に由来する重鎖可変ドメインアミノ酸配列および配列番号06に由来する軽鎖可変ドメインアミノ酸配列を含み、ヒト化抗体は、重鎖可変ドメインとして配列番号05のアミノ酸配列を含み、軽鎖可変ドメインとして配列番号06のアミノ酸配列を含むキメラ抗体またはマウス抗体と同じ結合特異性を有する。
【0165】
本発明のすべての態様および実施形態の特定の実施形態では、本発明による多価抗体を作製するために使用される抗体は、配列番号36のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)配列を含む。特定の実施形態では、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有するVH配列は、参照配列と比較して、置換(例えば、保存的置換)、挿入または欠失を含むが、その配列を含む抗バリアント(ヒト)Fc領域抗体は、バリアント(ヒト)Fc領域に結合する能力を保持する。特定の実施形態では、配列番号36において合計で1~10個のアミノ酸が置換、挿入、および/または欠失されている。特定の実施形態では、置換、挿入、または欠失は、HVRの外側の領域で(すなわち、FRで)生じる。任意に、抗バリアント(ヒト)Fc領域抗体は、配列の翻訳後修飾を含む、配列番号36のようなVH配列を含む。
【0166】
本発明のすべての態様および実施形態の特定の実施形態では、本発明による多価抗体を作製するために使用される抗体は、配列番号06のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を含む。特定の実施形態では、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有するVL配列は、参照配列と比較して、置換(例えば、保存的置換)、挿入または欠失を含むが、その配列を含む抗バリアント(ヒト)Fc領域抗体は、バリアント(ヒト)Fc領域に結合する能力を保持する。特定の実施形態では、配列番号06において合計で1~10個のアミノ酸が置換、挿入、および/または欠失されている。特定の実施形態では、置換、挿入、または欠失は、HVRの外側の領域で(すなわち、FRで)生じる。任意に、抗バリアント(ヒト)Fc領域抗体は、配列の翻訳後修飾を含む、配列番号06のVL配列を含む。
【0167】
本発明のすべての態様および実施形態の特定の実施形態では、本発明による多価抗体を作製するために使用される抗体は、上に提供される実施形態のいずれかのようなVHおよび上に提供される実施形態のいずれかのようなVLを含む。特定の実施形態では、抗体は、配列の翻訳後修飾を含む、配列番号36および配列番号06のVHおよびVL配列を含む。
【0168】
本発明のすべての態様および実施形態の特定の実施形態では、上記実施形態のいずれかによる抗バリアント(ヒト)Fc領域抗体は、キメラ、ヒト化またはヒト抗体を含むモノクローナル抗体である。特定の実施形態では、抗バリアント(ヒト)Fc領域抗体が抗体断片、例えばダイアボディまたはF(ab’)断片である。特定の実施形態では、抗体は、完全長抗体、例えば、本明細書において定義されるヒトIgG1サブクラスのインタクトな抗体または他の抗体クラスもしくはアイソタイプである。
【0169】
本発明の一態様は、ヒトIgG1サブクラスの野生型Fc領域と比較して1、2、3または4個のアミノ酸変化を含むヒトIgG1サブクラスの免疫グロブリンFc領域に特異的に結合する4個または6個の結合部位を含む、抗体である。
【0170】
本発明の一態様は、少なくとも2つの共有結合した
i)ヒトIgG1サブクラスの野生型Fc領域と比較して1、2、3または4個のアミノ酸変化を含むヒトIgG1サブクラスの免疫グロブリンFc領域に特異的に結合する2個の結合部位をそれぞれが含む、二価完全長抗体、
または
ii)ヒトIgG1サブクラスの野生型Fc領域と比較して1、2、3または4個のアミノ酸変化を含むヒトIgG1サブクラスの免疫グロブリンFc領域に特異的に結合する2個の結合部位をそれぞれが含む、二価完全長抗体の(Fab’)2断片
を含む、抗体多量体である。
【0171】
本発明の一態様は、ヒトIgG1サブクラスの野生型Fc領域と比較して1、2、3または4個のアミノ酸変化を含むヒトIgG1サブクラスの免疫グロブリンFc領域に特異的に結合する結合部位が、329位にアミノ酸残基グリシン(Kabat EUインデックスによるナンバリング)を含むヒトIgG1サブクラスの免疫グロブリンFc領域に特異的に結合する結合部位である、本発明による抗体または抗体多量体である。
【0172】
本発明の一態様は、本発明による抗体または抗体多量体であり、結合部位の各々は、互いに独立して、
(1)
(a)配列番号09のアミノ酸配列を含むHVR-H1、
(b)配列番号12のアミノ酸配列を含むHVR-H2、
(c)配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR-H3、
(d)配列番号23のアミノ酸配列を含むHVR-L1、
(e)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および
(f)配列番号28のアミノ酸配列を含むHVR-L3、
または
(2)
(a)配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-H1、
(b)配列番号13のアミノ酸配列を含むHVR-H2、
(c)配列番号17のアミノ酸配列を含むHVR-H3、
(d)配列番号23のアミノ酸配列を含むHVR-L1、
(e)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および
(f)配列番号29のアミノ酸配列を含むHVR-L3、
または
(3)
(a)配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-H1、
(b)配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR-H2、
(c)配列番号18のアミノ酸配列を含むHVR-H3、
(d)配列番号23のアミノ酸配列を含むHVR-L1、
(e)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および
(f)配列番号30のアミノ酸配列を含むHVR-L3、
または
(4)
(a)配列番号20のアミノ酸配列を含むHVR-H1、
(b)配列番号21のアミノ酸配列を含むHVR-H2、
(c)配列番号22のアミノ酸配列を含むHVR-H3、
(d)配列番号32のアミノ酸配列を含むHVR-L1、
(e)配列番号34のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および
(f)配列番号35のアミノ酸配列を含むHVR-L3、
または
(5)
(1)~(4)のいずれか1つの混合物
のいずれかを含む。
【0173】
本発明の一態様は、ヒトIgG1サブクラスの野生型Fc領域と比較して1、2、3または4個のアミノ酸変化を含むヒトIgG1サブクラスの免疫グロブリンFc領域に特異的に結合する結合部位が、329位にアミノ酸残基グリシンならびに234および235位にアミノ酸残基アラニン(Kabat EUインデックスによるナンバリング)を含むヒトIgG1サブクラスの免疫グロブリンFc領域に特異的に結合する結合部位である、本発明による抗体または抗体多量体である。
【0174】
本発明の一態様は、多量体が、二量体、三量体、四量体、五量体、六量体、七量体、八量体、九量体または十量体である、本発明による抗体多量体である。
【0175】
本発明の一態様は、インビトロ(架橋)イムノアッセイにおける陽性対照としての、本発明による抗体または抗体多量体の使用である。
【0176】
本発明の一態様は、インビトロ(架橋)イムノアッセイにおける標準としての、本発明による抗体または抗体多量体の使用である。
【0177】
本発明の一態様は、本発明による抗体または抗体多量体の使用であり、使用は、薬物抗体に対する抗薬物抗体を定量的に決定するための較正関数を生成するためのものであり、抗薬物抗体は、野生型Fc領域と比較して変化している薬物抗体のFc領域中の1つまたは複数のアミノ酸残基に結合する。
【0178】
本発明の一態様は、(血清含有)試料中の抗薬物抗体の存在および/または量を決定するためのイムノアッセイであって、
抗薬物抗体は、野生型Fc領域と比較して変化している薬物抗体のFc領域中の少なくとも1つのアミノ酸残基に結合し、
イムノアッセイは、捕捉抗体としておよびトレーサー抗体として薬物抗体を含み、
本発明による抗体または抗体多量体は、イムノアッセイにおいて陽性対照としてまたは較正標準として使用されることを特徴とする。
【0179】
本発明の一態様は、本発明による抗体または抗体多量体を使用するイムノアッセイであって、イムノアッセイは架橋ELISAである。
【0180】
本発明の一態様は、本発明による抗体または抗体多量体を較正標準として使用し、薬物抗体に対する抗薬物抗体を定量的に決定するための較正関数を生成するために使用する、イムノアッセイである。
【0181】
本発明の一態様は、N-スクシンイミジル-3-アセチルチオプロピオナート(SATP)およびマレイミドヘキサノイル-N-ヒドロキシスクシンイミド(MHS)を使用して、ヒトIgG1サブクラスの野生型Fc領域と比較して1、2、3または4個のアミノ酸変化を含むヒトIgG1サブクラスの免疫グロブリンFc領域に特異的に結合する2個の結合部位をそれぞれが含む二価の完全長抗体の化学的コンジュゲーションにより、本発明による抗体多量体の製造方法である。
【0182】
本発明の一態様は、多量体が完全長抗体の多量体である、本発明による抗体多量体の製造のための方法である。
【0183】
本発明の一態様は、抗体多量体の製造方法であって、
329位にアミノ酸残基グリシン(Kabat EUインデックスによるナンバリング)を含むヒトIgG1サブクラスの免疫グロブリンFc領域に特異的に結合する完全長抗体を、N-スクシンイミジル-3-アセチルチオプロピオナート(SATP)およびマレイミドヘキサノイル-N-ヒドロキシスクシンイミド(MHS)を使用して、化学的に架橋することを含み、
抗体が、
(1)
(a)配列番号09のアミノ酸配列を含むHVR-H1、
(b)配列番号12のアミノ酸配列を含むHVR-H2、
(c)配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR-H3、
(d)配列番号23のアミノ酸配列を含むHVR-L1、
(e)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および
(f)配列番号28のアミノ酸配列を含むHVR-L3、
または
(2)
(a)配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-H1、
(b)配列番号13のアミノ酸配列を含むHVR-H2、
(c)配列番号17のアミノ酸配列を含むHVR-H3、
(d)配列番号23のアミノ酸配列を含むHVR-L1、
(e)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および
(f)配列番号29のアミノ酸配列を含むHVR-L3、
または
(3)
(a)配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-H1、
(b)配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR-H2、
(c)配列番号18のアミノ酸配列を含むHVR-H3、
(d)配列番号23のアミノ酸配列を含むHVR-L1、
(e)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および
(f)配列番号30のアミノ酸配列を含むHVR-L3
を含む。
【0184】
ヒトIgG1サブクラスの野生型Fc領域と比較して1、2、3または4個のアミノ酸変化を含むヒトIgG1サブクラスの免疫グロブリンFc領域に特異的に結合する結合部位を含む抗体は、当技術分野で公知の任意の方法を使用して作製することができる。
【0185】
例えば、抗体は、Fc領域の少なくともそれぞれのバリアント分を含む免疫遺伝子を実験動物に投与することによって調製され得る。バリアントFc領域を提示するための適切な構築物は、例えば国際公開第2012/150320号に報告されている。
【0186】
抗体は、ハイブリドーマに基づく方法によっても作製され得る。例えば、ヒトモノクローナル抗体を産生するためのヒト骨髄腫細胞株およびマウス-ヒト異種骨髄腫細胞株が記載されている。(例えば、Kozbor J.Immunol.、133:3001(1984);Brodeurら、Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications、51~63頁(Marcel Dekker,Inc.、New York、1987);およびBoernerら、J.Immunol.、147:86(1991)を参照されたい)ヒトB細胞ハイブリドーマ技術によって生成されたヒト抗体も、Liら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、103:3557-3562(2006)に記載されている。追加の方法としては、例えば、米国特許第7,189,826号(ハイブリドーマ細胞株からのモノクローナルヒトIgM抗体の産生を説明)およびNi、Xiandai Mianyixue、26(4):265-268(2006)(ヒト-ヒトハイブリドーマを説明)に記載される方法が挙げられる。ヒトハイブリドーマ技術(トリオーマ技術)はまた、VollmersおよびBrandlein、Histology and Histopathology、20(3):927-937(2005)ならびにVollmersおよびBrandlein、Methods and Findings in Experimental and Clinical Pharmacology、27(3):185-91(2005)に記載されている。
【0187】
抗体はまた、ヒト由来のファージディスプレイライブラリーから選択される可変ドメイン配列を単離することによって作製され得る。その後、そのような可変ドメイン配列は、所望のヒト定常ドメインと組み合わせられ得る。
【0188】
抗体ライブラリーから抗体を選択するための技術は、当技術分野で公知である。
【0189】
特定の実施形態では、上記の実施形態のいずれかによる抗バリアント(ヒト)Fc領域抗体は、以下の1~3項に記載される特徴のうちのいずれかを、単独または組み合わせで組み込み得る。
【0190】
1.抗体断片
特定の実施形態では、本発明による多価抗体を作製するために使用される抗体は、二価抗体断片である。二価抗体断片には、F(ab’)、およびこれらが二価である限り、以下に記載される他の断片が含まれるが、これらに限定されない。特定の抗体断片の総説としては、Hudson,P.J.ら、Nat.Med.9(2003)129-134を参照されたい。エピトープ残基に結合し、増加したインビボ半減期を有するサルベージ受容体を含むFabおよびF(ab’)断片の考察については、米国特許第5,869,046号を参照されたい。
【0191】
ダイアボディは、二価または二重特異性であり得る2つの抗原結合部位を有する抗体断片である。例えば、欧州特許第0404097号;国際公開第1993/01161号;Hudson,P.J.ら、Nat.Med.9(2003)129-134;およびHolliger,P.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90(1993)6444-6448を参照されたい。トリアボディおよびテトラボディはまた、Hudson,P.J.ら、Nat.Med.9(20039 129-134)においても記載されている。
【0192】
抗体断片は、限定されないが、本明細書に記載されるように、インタクトな抗体のタンパク質分解による消化、および組換え宿主細胞(例えば、大腸菌(E.coli)またはファージ)による産生を含め、種々の技術によって作製され得る。
【0193】
2.キメラ抗体およびヒト化抗体
特定の実施形態では、本発明による多価抗体を作製するために使用される抗体は、キメラ抗体である。特定のキメラ抗体は、例えば、米国特許第4,816,567号、およびMorrison,S.L.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81(1984)6851-6855に記載されている。一例では、キメラ抗体は、非ヒト可変領域(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、またはサルなどの非ヒト霊長類に由来する可変領域)およびヒト定常領域を含む。更なる例では、キメラ抗体は、クラスまたはサブクラスが親抗体のそれらから変更されている「クラススイッチ」抗体である。キメラ抗体は、その抗原結合断片を含む。
【0194】
特定の実施形態では、キメラ抗体は、ヒト化抗体である。典型的には、非ヒト抗体は、ヒトに対する免疫原性を低減するために、親の非ヒト抗体の特異性と親和性を保持したままヒト化されている。一般に、ヒト化抗体は、HVR、例えば、CDR(またはその一部)が非ヒト抗体に由来し、FR(またはその一部)がヒト抗体配列に由来する1つまたは複数の可変ドメインを含む。ヒト化抗体はまた、任意にヒト定常領域の少なくとも一部を含む。いくつかの実施形態は、ヒト化抗体のいくつかのFR残基は、例えば、抗体特異性または親和性を回復するか、または改善するために、非ヒト抗体(例えば、HVR残基が由来する抗体)由来の対応する残基で置換されている。
【0195】
ヒト化抗体およびその作製方法は、例えば、Almagro,J.C.およびFransson,J.、Front.Biosci.13(2008)1619-1633に概説され、例えば、Riechmann,I.ら、Nature 332(1988)323-329;Queen,C.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86(1989)10029-10033;米国特許第5,821,337号、同第7,527,791号、同第6,982,321号、および同第7,087,409号;Kashmiri,S.V.ら、Methods 36(2005)25-34(特異性決定領域(SDR)のグラフト化を記載);Padlan,E.A.、Mol.Immunol.28(1991)489-498(「リサーフェイシング」を記載);Dall’Acqua,W.F.ら、Methods 36(2005)43-60(「FRシャッフリング」を記載);ならびにOsbourn,J.ら、Methods 36(2005)61-68およびKlimka,A.ら、Br.J.Cancer 83(2000)252-260(FRシャッフリングに対する「ガイド選択」アプローチを記載)にさらに記載されている。
【0196】
ヒト化のために使用され得るヒトフレームワーク領域には、「ベストフィット」法を使用して選択されるフレームワーク領域(例えば、Sims,M.J.ら、J.Immunol.151(1993)2296-2308を参照されたい);軽鎖可変領域または重鎖可変領域の特定のサブグループのヒト抗体のコンセンサス配列に由来するフレームワーク領域(例えば、Carter,P.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89(1992)4285-4289;およびPresta,L.G.ら、J.Immunol.151(1993)2623-2632を参照されたい);ヒト成熟(体細胞変異)フレームワーク領域またはヒト生殖系列フレームワーク領域(例えば、Almagro,J.C.およびFransson,J.、Front.Biosci.13(2008)1619-1633を参照されたい);およびFRライブラリーのスクリーニングに由来するフレームワーク領域(例えば、Baca,M.ら、J.Biol.Chem.272(1997)10678-10684およびRosok,M.J.ら、J.Biol.Chem.271(19969 22611-22618)を参照されたい)を含むが、これらに限定されない。
【0197】
3.抗体バリアント
特定の実施形態では、本明細書中に提供される本発明による多価抗体を作製するために使用される抗体のアミノ酸配列バリアントが意図される。例えば、抗体の結合親和性および/または他の生物学的特性を改善することが望ましい場合がある。抗体のアミノ酸配列バリアントは、抗体をコードするヌクレオチド配列に適切な修飾を導入することにより、またはペプチド合成により調製することができる。そのような修飾としては、例えば、抗体のアミノ酸配列内の残基からの欠失および/または抗体のアミノ酸配列内の残基への挿入および/または抗体のアミノ酸配列内の残基の置換が挙げられる。欠失、挿入および置換の任意の組み合わせは、最終的な構築物が、所望の特性、例えば、抗原結合を有する限り、最終的な構築物に到達するように行うことができる。
【0198】
a)置換、挿入、および欠失バリアント
特定の実施形態では、1つまたは複数のアミノ酸置換を有する抗体バリアントが提供される。置換による変異誘発のための目的の部位には、HVRおよびFRが含まれる。保存的置換は、表1において、「好ましい置換」の見出しの下に示される。実質的なさらなる変化は、以下の表に「例示的な置換」の見出しの下に示され、アミノ酸側鎖クラスを参照して以下にさらに記載される。アミノ酸置換を目的の抗体に導入し、生成物を所望の活性、例えば、抗原結合の保持/改善、免疫原性の低減、またはADCCもしくはCDCの改善についてスクリーニングしてもよい。
【0199】
アミノ酸は、一般的な側鎖特性に従って分類され得る:
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
(3)酸性:Asp、Glu;
(4)塩基性:His、Lys、Arg;
(5)鎖配向に影響を及ぼす残基:Gly、Pro;
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0200】
非保存的置換は、これらのクラスのうちの1つのメンバーを別のクラスと交換することを伴う。
【0201】
一種の置換バリアントは、親抗体(例えば、ヒト化抗体またはヒト抗体)の1つまたは複数の超可変領域残基の置換を伴う。一般的には、さらなる試験のために選択され、得られたバリアントは、親抗体と比較して、特定の生物学的特性に改変(例えば改善)(例えば親和性の向上、免疫原性の低下)を有し、および/または親抗体の特定の生物学的特性を実質的に保持する。例示的な置換型バリアントは、親和性成熟した抗体であり、例えば、本明細書に記載されるようなファージディスプレイに基づく親和性成熟技法を使用して、簡便に生成され得る。簡単に言えば、1つまたは複数のHVR残基が変異しており、ファージ上に提示されたバリアント抗体が、特定の生物学的活性(例えば、結合親和性)のためにスクリーニングされる。
【0202】
変更(例えば、置換)は、例えば、抗体親和性を改善するために、HVRにおいて行われてもよい。そのような変更は、HVR「ホットスポット」、すなわち、体細胞成熟プロセス中に高頻度で変異を経るコドンによってコードされる残基(例えば、Chowdhury,P.S.、Methods Mol.Biol.207(2008)179-196)、および/または抗原と接触する残基において行われてもよく、得られたバリアントVHまたはVLを結合親和性について試験する。二次ライブラリーの構築および二次ライブラリーからの再選択による親和性成熟は、例えばHoogenboom,H.R.ら、Methods in Molecular Biology 178(2002)1-37に記載されている。親和性成熟のいくつかの実施形態では、多様性が、様々な方法(例えば、エラープローンPCR、鎖シャッフリング、またはオリゴヌクレオチド指向性変異誘発)のうちのいずれかによって、成熟させるために選択された可変遺伝子に導入される。次いで、二次ライブラリーを作製する。その後、このライブラリーをスクリーニングして、所望の親和性を有する任意の抗体バリアントを同定する。多様性を導入する別の方法は、複数のHVR残基(例えば、一度に4~6個の残基)をランダム化するHVR指向的手法を伴う。抗原結合に関与するHVR残基は、例えば、アラニンスキャニング変異誘発またはモデリングを使用して、特異的に同定され得る。特にCDR-H3およびCDR-L3が標的とされることが多い。
【0203】
特定の実施形態では、置換、挿入、または欠失は、そのような変更が抗原に結合する抗体の能力を実質的に低下させない限り、1つまたは複数のHVR内で生じ得る。例えば、結合親和性を実質的に低下させない保存的変化(例えば、本明細書に提供される保存的置換)が、HVR中で行われてよい。このような変化は、例えば、HVR内の抗原接触残基の外側であり得る。上に提供されるバリアントVHおよびVL配列の特定の実施形態では、各HVRは、変化していないか、または1つ、2つもしくは3つ以下のアミノ酸置換を含有するかのいずれかである。
【0204】
変異誘発を標的とし得る抗体の残基または領域の同定のための有用な方法は、Cunningham,B.C.およびWells,J.A.、Science 244(1989)1081-1085によって記載されるように、「アラニンスキャンニング変異誘発」と呼ばれる。この方法では、抗体と抗原との相互作用が影響を受けるかどうかを決定するために、残基または標的残基群(例えば、帯電した残基、例えば、Arg、Asp、His、LysおよびGlu)を同定し、中性または負に帯電したアミノ酸(例えば、アラニンまたはポリアラニン)によって置き換える。さらなる置換を、初期置換に対する機能的感受性を示すアミノ酸位置に導入してもよい。あるいは、またはこれに加えて、抗体と抗原との間の接触点を同定するための抗原-抗体複合体の結晶構造。このような接触残基および隣接残基は、置換の候補として標的にしても排除してもよい。バリアントをスクリーニングして、所望の特性を有するか否かを決定してもよい。
【0205】
アミノ酸配列挿入には、1個の残基から、100個以上の残基を含むポリペプチドまでの長さの範囲のアミノ末端および/またはカルボキシル末端融合、ならびに単一または複数のアミノ酸残基の配列内挿入が含まれる。末端挿入の例としては、N末端メチオニル残基を有する抗体が挙げられる。抗体分子の他の挿入バリアントとしては、抗体の血清半減期を延長させる酵素(例えばADEPTのための)またはポリペプチドに対する抗体のN末端またはC末端への融合物が挙げられる。
【0206】
b)グリコシル化バリアント
特定の実施形態では、本発明による多価抗体を作製するために使用される抗体は、抗体がグリコシル化される程度を増加または減少させるように変更される。抗体へのグリコシル化部位の付加または欠失は、1つまたは複数のグリコシル化部位が作成または除去されるようにアミノ酸配列を改変することにより、簡便に達成され得る。
【0207】
抗体がFc領域を含む場合、それに結合した炭水化物が改変され得る。哺乳動物細胞によって産生された天然型抗体は、典型的には、N結合によってFc領域のCH2ドメインのAsn297に一般に付着される分岐状の二分岐オリゴ糖を含む。例えば、Wright,A.およびMorrison,S.L.、TIBTECH 15(1997)26-32を参照されたい。オリゴ糖としては、様々な炭水化物、例えば、マンノース、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトース、およびシアル酸、ならびに二分岐オリゴ糖構造の「幹」のGlcNAcに付着したフコースが挙げられ得る。いくつかの実施形態では、本発明の抗体中のオリゴ糖の改変は、特定の改良された特性を有する抗体バリアントを作成するために行われてもよい。
【0208】
特定の実施形態では、本発明による多価抗体を作製するために使用される抗体は、Fc領域に(直接的または間接的に)結合したフコースを欠く炭水化物構造を有する抗体バリアントである。例えば、このような抗体内のフコースの量は、1%~80%、1%~65%、5%~65%または20%~40%であってもよい。フコースの量は、例えば、国際公開第2008/077546号に記載されるMALDI-TOF質量分析法によって測定される、Asn297に結合したすべての糖構造(例えば、複合体、ハイブリッド、および高マンノース構造)の合計に対する、Asn297での糖鎖内のフコースの平均量を計算することによって決定される。Asn297は、Fc領域内の約297位(Fc領域残基のEUナンバリング)に位置するアスパラギン残基を指すが、Asn297はまた、抗体におけるマイナーな配列変異に起因して、297位から約±3アミノ酸の上流または下流、すなわち、294~300位の間に位置してもよい。このようなフコシル化バリアントは、改善されたADCC機能を有し得る。例えば、米国特許出願公開第2003/0157108号、同第2004/0093621号を参照されたい。「脱フコシル化」または「フコース欠損」抗体バリアントに関する刊行物の例としては:米国特許出願公開第2003/0157108号明細;国際公開第2000/61739号;同第2001/29246号;米国特許出願公開第2003/0115614号;同第2002/0164328号;同第2004/0093621号;同第2004/0132140号;同第2004/0110704号;同第2004/0110282号;同第2004/0109865号;国際公開第2003/085119号;同第2003/084570号;同第2005/035586号;同第2005/035778号;同第2005/053742号;同第2002/031140号;Okazaki,Aら、J.Mol.Biol.336(2004)1239-1249;Yamane-Ohnuki,N.ら、Biotech.Bioeng.87(2004)614-622が挙げられる。脱フコシル化抗体を産生することができる細胞株の例としては、タンパク質フコシル化が欠損したLec13 CHO細胞(Ripka,J.ら、Arch.Biochem.Biophys.249(1986)533-545;米国特許出願公開第2003/0157108号;および国際公開第2004/056312号、特に実施例11)、およびノックアウト細胞株、例えばα-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子FUT8ノックアウトCHO細胞(例えば、Yamane-Ohnuki,N.ら、Biotech.Bioeng.87(2004)614-622;Kanda,Y.ら、Biotechnol.Bioeng.94 2006)680-688;国際公開第2003/085107号)が挙げられる。
【0209】
例えば、抗体のFc領域に結合した二分岐オリゴ糖がGlcNAcにより二分されている、二分されたオリゴ糖を有する抗体バリアントがさらに包含される。このような抗体バリアントは、低減されたフコシル化および/または改善されたADCC機能を有し得る。そのような抗体バリアントの例は、例えば、国際公開第2003/011878号;米国特許第6,602,684号;および米国特許出願公開第2005/0123546号に記載されている。Fc領域に付着したオリゴ糖中に少なくとも1つのガラクトース残基を有する抗体バリアントも提供される。このような抗体バリアントは、改善されたCDC機能を有し得る。そのような抗体バリアントは、例えば、国際公開第1997/30087号、同第1998/58964号、および同第1999/22764号に記載されている。
【0210】
c)Fc領域バリアント
特定の実施形態では、1つまたは複数のアミノ酸修飾が、本発明による多価抗体を作製するために使用される抗体のFc領域内に導入され、それによってFc領域バリアントが作製され得る。Fc領域バリアントは、1つまたは複数のアミノ酸位置にアミノ酸修飾(例えば、置換)を含むヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4のFc領域)を含み得る。
【0211】
特定の実施形態では、本発明による多価抗体を作製するために使用される抗体は、すべてではなくいくつかのエフェクター機能を保有することにより、インビボでの抗体の半減期が重要ではあるが特定のエフェクター機能(補体およびADCCなど)が不要または有害である用途に望ましい候補となる抗体バリアントが企図される。CDCおよび/またはADCC活性の低下/消失を確認するために、インビトロおよび/またはインビボの細胞毒性アッセイを実施することができる。例えば、Fc受容体(FcR)結合アッセイを行って、抗体がFcγR結合を欠く(したがって、ADCC活性を欠く可能性がある)が、FcRn結合能を保持していることを確実にすることができる。ADCCを媒介するための主要な細胞であるNK細胞は、FcγRIIIのみを発現するが、一方で単球は、FcγRI、FcγRIIおよびFcγRIIIを発現する。造血細胞でのFcR発現は、Ravetch,J.V.およびKinet,J.P.,Annu.Rev.Immunol.9(1991)457-492の464ページの表3に要約されている。目的の分子のADCC活性を評価するためのインビトロアッセイの非限定的な例は、米国特許第5,500,362号(例えば、Hellstrom,I.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83(1986)7059-7063;およびHellstrom,I.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82(1985)1499-1502を参照されたい);米国特許第5,821,337号(例えば、Bruggemann,M.ら、J.Exp.Med.166(1987)1351-1361を参照されたい)に記載されている。あるいは、非放射性アッセイ方法を使用してもよい(例えば、フローサイトメトリーのためのACTI(商標)非放射性細胞傷害アッセイ(CellTechnology,Inc.カリフォルニア州マウンテンビュー)、およびCytoTox96(登録商標)非放射性細胞傷害性アッセイ(Promega、ウィスコンシン州マディソン))。このようなアッセイに有用なエフェクター細胞としては、末梢血単核球(PBMC)およびナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。あるいは、または加えて、目的の分子のADCC活性は、インビボで、例えば、Clynes,R.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95(1998)652-656に開示されているような動物モデルで評価してもよい。抗体がC1qに結合することができず、したがってCDC活性を欠くことを確認するために、C1q結合アッセイを行ってもよい(例えば、国際公開第2006/029879号および国際公開第2005/100402号のC1qおよびC3c結合ELISAを参照されたい)。補体活性化を評価するために、CDCアッセイを実施してもよい(例えば、Gazzano-Santoro,H.ら、J.Immunol.Methods 202(1996)163-171;Cragg,M.S.ら、Blood 101(2003)1045-1052;およびCragg,M.S.およびM.J.Glennie、Blood 103(2004)2738-2743を参照されたい)。FcRn結合およびインビトロクリアランス/半減期の決定はまた、当技術分野で知られている方法を用いて行うことができる(例えば、Petkova,S.B.ら、Int.Immunol.18(2006:1759-1769)を参照されたい)。
【0212】
低減したエフェクター機能を有する抗体としては、Fc領域残基238、265、269、270、297、327、および329のうちの1つまたは複数の置換を有する抗体が挙げられる(米国特許第6,737,056号)。そのようなFc変異体は、残基265および297のアラニンへの置換を有するいわゆる「DANA」Fc変異体を含む、アミノ酸265位、269位、270位、297位、および327位のうちの2つ以上に置換を有するFc変異体を含む(米国特許第7,332,581号)。
【0213】
FcRに対する結合が改善または減少した特定の抗体バリアントが記載されている(例えば、米国特許第6,737,056号;国際公開第2004/056312号、およびShields,R.L.ら、J.Biol.Chem.276(2001)6591-6604を参照されたい)。
【0214】
特定の実施形態では、抗体バリアントは、ADCCを改善する1つまたは複数のアミノ酸置換、例えば、Fc領域の298位、333位、および/または334位(残基のEUナンバリング)での置換を有するFc領域を含む。
【0215】
特定の実施形態では、例えば、米国特許第6,194,551号、国際公開第99/51642号、およびIdusogie,E.E.ら、J.Immunol.164(2000)4178-4184に記載されているように、C1q結合および/または補体依存性細胞傷害(CDC)の変化(すなわち、改善または減少)をもたらすFc領域内での変更が行われる。
【0216】
増加した半減期と、母体IgGの胎児への移送に関与する新生児Fc受容体(FcRn)への改善された結合とを有する抗体(Guyer,R.Lら、J.Immunol.117(1976)587-593、およびKim,J.K.ら、J.Immunol.24(1994)2429-2434)は、米国特許出願公開第2005/0014934号に記載されている。それらの抗体は、FcRnへのFc領域の結合を改善する1つまたは複数の置換をFc領域内に有するFc領域を含む。そのようなFcバリアントとしては、1つまたは複数のFc領域残基:238、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424または434で置換、例えばFc領域残基434の置換を有するものが挙げられる(米国特許第7,371,826号)。
【0217】
Fc領域バリアントの他の例に関して、Duncan,A.R.およびWinter,G.、Nature 322(1988)738-740;米国特許第5,648,260号;米国特許第5,624,821号;および国際公開第94/29351号も参照されたい。
【0218】
本発明による多量体を作製するために使用される抗体の重鎖のC末端は、アミノ酸残基PGKで終わる完全なC末端であってもよい。重鎖のC末端は、C末端アミノ酸残基のうち1つまたは2つが除去された、短くされたC末端であってもよい。好ましい一実施形態では、重鎖のC末端は、PGで終わる短くなったC末端である。
【0219】
d)システイン操作抗体バリアント
特定の実施形態では、抗体の1つまたは複数の残基がシステイン残基で置換されているシステイン人工抗体、例えば、「thioMAb」を作成することが望ましい場合がある。特定の実施形態では、置換された残基は、抗体のアクセス可能な部位に存在する。これらの残基をシステインで置換することにより、反応性チオール基は、それによって抗体のアクセス可能な部位に配置され、本明細書にさらに記載されるように、抗体を薬物部位またはリンカー薬物部位などの他の部位に抱合させてイムノコンジュゲートを作製するために使用され得る。特定の実施形態では、1つまたは複数の以下の残基のいずれかがシステインで置換されていてもよい。軽鎖のV205(Kabatナンバリング)、重鎖のA118(EUナンバリング)、および重鎖Fc領域のS400(EUナンバリング)。システイン操作抗体は、例えば、米国特許第7,521,541号に記載されるように作製され得る。
【0220】
B.組換え方法および組成物
抗体は、例えば、米国特許第4,816,567号に記載されるように、組換え方法および組成物を使用して産生することができる。特定の実施形態では、本明細書に記載される抗バリアント(ヒト)Fc領域抗体をコードする単離された核酸が提供される。このような核酸は、抗体のVLを含むアミノ酸配列および/または抗体のVHを含むアミノ酸配列(例えば、抗体の軽鎖および/または重鎖)をコードし得る。さらなる実施形態では、そのような核酸を含む1つまたは複数のベクター(例えば、発現ベクター)が提供される。さらなる実施形態では、このような核酸を含む宿主細胞が提供される。そのような一実施形態では、宿主細胞は、(例えば、形質転換された)以下を含む:(1)抗体のVLを含むアミノ酸配列と、抗体のVHを含むアミノ酸配列とをコードする核酸を含むベクター、または(2)抗体のVLを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第1のベクター、および抗体のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第2のベクター。特定の実施形態では、宿主細胞は、真核細胞、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞またはリンパ系細胞(例えば、Y0、NS0、PS20細胞)である。特定の実施形態では、抗バリアント(ヒト)Fc領域抗体を作製する方法であって、上記に提供される抗体をコードする核酸を含む宿主細胞を、その抗体の発現に好適な条件下で培養することと、任意に、抗体を宿主細胞(または宿主細胞培養培地)から回収することとを含む、方法が提供される。
【0221】
抗バリアント(ヒト)Fc領域抗体の組換え産生のために、例えば、上記のものなどの抗体をコードする核酸を単離し、宿主細胞内でのさらなるクローニングおよび/または発現のために、1つまたは複数のベクター中に挿入する。このような核酸は、従来の手順を用いて(例えば、抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合できるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)容易に単離および配列決定され得る。
【0222】
抗体をコードするベクターのクローニングまたは発現のための適切な宿主細胞としては、本明細書に記載の原核細胞または真核細胞が挙げられる。例えば、抗体は、特に、グリコシル化およびFcエフェクター機能が必要とされていない場合には、細菌中で産生されてもよい。細菌中の抗体断片およびポリペプチドの発現については、例えば、米国特許第5,648,237号、米国特許第5,789,199号および米国特許第5,840,523号を参照されたい。大腸菌における抗体断片の発現を記載しているCharlton,K.A.、In:Methods in Molecular Biology、Vol.248、Lo,B.K.C.(編集)、Humana Press、Totowa、NJ(2003)pp.245-254も参照されたい)発現後、抗体は、適切な画分中の細菌細胞ペーストから単離されてもよく、さらに精製されてもよい。
【0223】
抗体をコードするベクターのクローニングまたは発現宿主としては、原核生物に加えて、糸状菌や酵母などの真核微生物が適しており、その中にはグリコシル化経路が「ヒト化」されており、結果として部分的または完全にヒトのグリコシル化パターンを有する抗体を作製する真菌株や酵母株も含まれる。Gerngross,T.U.、Nat.Biotech.22(2004)1409-1414;およびLi,H.ら、Nat.Biotech.24(2006)210-215を参照されたい。
【0224】
また、グリコシル化抗体を発現させるのに適した宿主細胞は、多細胞生物(無脊椎動物および脊椎動物)に由来する。無脊椎動物細胞の例としては、植物細胞および昆虫細胞が挙げられる。多くのバキュロウイルス株が同定されており、特に、スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)細胞のトランスフェクションのために、これを昆虫細胞と組み合わせて使用してもよい。
【0225】
植物細胞培養物も、宿主として利用することができる。例えば、米国特許第5,959,177号、米国特許第6,040,498号、米国特許第6,420,548号、米国特許第7,125,978号および米国特許第6,417,429号(トランスジェニック植物において抗体を産生するためのPLANTIBODIES(商標)技術を記載)を参照されたい。
【0226】
脊椎動物細胞も宿主として使用され得る。例えば、懸濁液中で増殖するように適合されている哺乳動物細胞株は有用であり得る。有用な哺乳動物宿主細胞株の他の例は、SV40(COS-7)によって形質転換されたサル腎臓CV1株;ヒト胎児腎臓系統(例えば、Graham,F.L.ら、J.GenVirol.36(1977)59-74に記載の293または293細胞);ベビーハムスター腎臓細胞(BHK);マウスセルトリ細胞(例えば、Mather,J.P.、Biol.Reprod.23(1980)243-252に記載のTM4細胞);サル腎臓細胞(CV1);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76);ヒト子宮頸癌細胞(HELA);イヌ腎臓細胞(MDCK);buffalo系ラット肝細胞(BRL3A);ヒト肺細胞(W138);ヒト肝細胞(HepG2);マウス乳腺腫瘍(MMT060562);例えば、Mather,J.P.ら、Annals N.Y.Acad.Sci.383(1982)44-68に記載のTRI細胞;MRC5細胞;およびFS4細胞である。他の有用な哺乳類宿主細胞株としては、DHFRCHO細胞(Urlaub,G.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77(1980)4216-4220)を含むチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞;および骨髄腫細胞株、例えばY0、NS0およびSp2/0が挙げられる。抗体産生に適した特定の哺乳動物宿主細胞の総説については、例えば、Yazaki,P.およびWu,A.M.、Methods in Molecular Biology、Vol.248、Lo,B.K.C.(編集)、Humana Press、Totowa、NJ(2004)、pp.255-268を参照されたい。
【0227】
C.アッセイ
本発明による多価抗バリアント(ヒト)Fc領域抗体は、当技術分野で公知の様々なアッセイで使用することができる。
【0228】
本発明による多価抗体は、Fc領域にそれぞれの変異を含む治療用抗体またはそのような治療用抗体に対する抗薬物抗体を、例えば試料中で検出しなければならない場合に特に有用である。
【0229】
本発明によるすべての態様および実施形態の特定の実施形態では、薬物抗体は、
i)変異P329GもしくはP329G、L234AおよびL235A、ならびに/または
ii)変異I253A、H310AおよびH435A
を含む。
【0230】
本発明によるすべての態様および実施形態の特定の実施形態では、それぞれの変異を含む抗体は、
i)変異P329GもしくはP329G、L234AおよびL235A、ならびに/または
ii)変異I253A、H310AおよびH435A
を含む抗体である。
【0231】
本発明による一態様は、(試料中の)Fc領域にそれぞれの変異を含む治療用抗体(すなわち、Fc領域にそれぞれの変異を含む抗体)に対する/特異的に結合する抗薬物抗体を決定するための陽性対照または(較正)標準のいずれかとしての、(抗原架橋)イムノアッセイにおける本発明による多価抗体の使用である。検出および捕捉に必要なそれぞれの他の試薬は、検出および捕捉に応じて誘導体化、固定化または標識された治療用抗体である。
【0232】
このアッセイは、任意の非ヒト血清に適用可能である。特定の実施形態では、使用は、非ヒト実験動物の血清試料中で測定するためのものである。
【0233】
このようなアッセイは、10%カニクイザル血清中で100pg/mL未満、例えば40~80pg/mL(アッセイ濃度)の定量下限(閾値)を有する。
【0234】
本発明による一態様は、治療用抗体が(試料中の)Fc領域においてそれぞれの変異を含む、治療用抗体に対する抗薬物抗体を決定するためのイムノアッセイにおける本発明による多価抗体の使用である。
【0235】
本発明のすべての態様および実施形態の特定の実施形態では、薬物抗体は捕捉抗体として使用される。捕捉抗体は、特定の実施形態では、固体表面に固定化される。この固体表面は、好ましい一実施形態では、マルチウェルプレートのウェル(壁または底部またはその両方)である。
【0236】
本発明のすべての態様および実施形態の特定の実施形態では、薬物抗体はトレーサー抗体として使用される。トレーサー抗体を検出するために、適切な標識にコンジュゲートさせる。
【0237】
本発明のすべての態様および実施形態の特定の実施形態では、試料は、マーモセットおよびタマリン、旧世界ザル、コビトキツネザルおよびネズミキツネザル、テナガザルおよび小型類人猿、キツネザル、ならびにそれらの交配種から選択される実験動物から、またはヒトから得られる。特定の実施形態では、試料は、アカゲザル、またはマーモセットサル、またはヒヒサル、またはカニクイザル、またはヒトから得られる。特定の実施形態では、実験動物は、マカク(macaca)またはマカク(macaque)サルである。特定の実施形態では、試料は、カニクイザルまたはアカゲザルまたはヒトから得られる。
【0238】
本発明のすべての態様および実施形態の特定の実施形態では、イムノアッセイはサンドイッチイムノアッセイである。
【0239】
本発明のすべての態様および実施形態の特定の実施形態では、薬物(治療用)抗体とそのコンジュゲーションパートナーとの結合は、N末端および/またはε-アミノ基(リジン)、異なるリジンのε-アミノ基、抗体のアミノ酸骨格のカルボキシ-、スルフヒドリル-、ヒドロキシル-、および/またはフェノール官能基、ならびに/あるいは抗体の炭水化物構造の糖アルコール基を介して化学的に結合することによって行われる。特定の実施形態では、捕捉抗体は、特異的結合対を介して固定化される。好ましい一実施形態では、捕捉抗体はビオチンにコンジュゲート化され、固定化は、固定化アビジンまたはストレプトアビジンを介して行われる。特定の実施形態では、トレーサー抗体は、特異的結合対を介して検出可能な標識にコンジュゲートされる。好ましい一実施形態では、トレーサー抗体は、ジゴキシゲニンにコンジュゲートされ、検出可能な標識への連結は、ジゴキシゲニンに対する抗体を介して行われる。特定の実施形態では、薬物抗体はヒトまたはヒト化抗体である。特定の実施形態では、ヒトまたはヒト化抗体はモノクローナル抗体である。
【0240】
本発明による一態様は、改変された(エフェクター機能サイレント)Fc領域を有する治療用抗体に対する抗薬物抗体、または(試料中の)そのFc領域を決定するためのサンドイッチ/架橋イムノアッセイの正しい/適切な機能を決定するための方法であって、
a)本発明による多価抗体を、固体表面に固定化された薬物(治療用)抗体またはそのFc領域(断片)とインキュベートして二量体複合体を形成する工程、
b)前記二量体複合体を、検出可能な標識にコンジュゲートされた薬物(治療用)抗体とインキュベートして、三元複合体を形成する工程、および
c)三元複合体が工程b)で形成された場合/工程b)で形成された三元複合体を検出することができる場合、サンドイッチ/架橋イムノアッセイの正しい/適切な機能を決定する工程
を含む、方法である。
【0241】
本発明による一態様は、改変された(エフェクター機能サイレント)Fc領域を有する治療用抗体に対する抗薬物抗体、または(試料中の)そのFc領域を決定するためのサンドイッチ/架橋イムノアッセイを較正するための方法であって、
a)本発明による多価抗体を、少なくとも2つの異なる濃度で、固体表面に固定化された薬物(治療用)抗体またはそのFc領域(断片)と別々にインキュベートして、二量体複合体にする工程、
b)前記二量体複合体の各々を、検出可能な標識にコンジュゲートされた薬物(治療用)抗体と別々にインキュベートして、三元複合体を形成する工程、
c)検出可能な標識の量を決定することによって、工程c)で形成された三元複合体のそれぞれの量を決定する工程、および
d)工程c)で決定された量に基づいて検量線を計算し、それによってサンドイッチ/架橋イムノアッセイを較正する工程
を含む、方法である。
【0242】
本発明の一態様は、(試料中の)Fc受容体結合抑制ヒトまたはヒト化薬物抗体(すなわち、Fc領域においてそれぞれの変異を含む抗体)に対する抗薬物抗体の存在/(試料中の)Fc受容体結合抑制ヒトまたはヒト化薬物抗体(すなわち、Fc領域においてそれぞれの変異を含む抗体)のFc領域を決定するための抗薬物抗体イムノアッセイであって、方法は、以下の工程を以下の順序:
a)Fc受容体結合抑制ヒトもしくはヒト化薬物抗体またはそのFc領域断片が固定化された固相を、(固相結合薬物抗体-抗薬物抗体複合体が形成されるように)哺乳動物の血清を含む試料とインキュベートする工程、
b)(工程a)で形成された薬物抗体-抗薬物抗体複合体が結合した)固相を、検出可能な標識にコンジュゲートされた薬物抗体またはそのFc領域断片と共にインキュベートする工程、および
c)検出可能な標識の存在を決定し、それにより、試料中のFc受容体結合抑制ヒトまたはヒト化薬物抗体に対する抗薬物抗体の存在を決定することによって、工程b)における固相結合複合体の形成を決定する工程
で含み、
それによって、本発明による多価抗体を使用してイムノアッセイの正しい機能が決定されている。
【0243】
本発明の一態様は、(試料中の)Fc受容体結合抑制ヒトまたはヒト化薬物抗体(すなわち、Fc領域においてそれぞれの変異を含む抗体)に対する抗薬物抗体の存在/(試料中の)Fc受容体結合抑制ヒトまたはヒト化薬物抗体(すなわち、Fc領域においてそれぞれの変異を含む抗体)のFc領域を決定するための抗薬物抗体イムノアッセイであって、方法は、以下の工程を以下の順序:
a)Fc受容体結合抑制ヒトまたはヒト化薬物抗体が固定化された固相を、(固相結合薬物抗体-抗薬物抗体複合体が形成されるように)哺乳動物の血清を含む試料とインキュベートする工程、
b)(工程a)で形成された薬物抗体-抗薬物抗体複合体が結合した)固相を、検出可能な標識にコンジュゲートされた薬物抗体と共にインキュベートする工程、および
c)検出可能な標識の存在を決定し、それにより、試料中のFc受容体結合抑制ヒトまたはヒト化薬物抗体に対する抗薬物抗体の存在を決定することによって、工程b)における固相結合複合体の形成を決定する工程
で含み、
それによって、本発明による多価抗体を使用してイムノアッセイの標準/検量線が決定されている。
【0244】
本発明によるすべての態様および実施形態の特定の実施形態では、各インキュベーション工程の後に以下の工程:
- 結合していない化合物を除去するために固相を洗浄する工程
が続く。
【0245】
本発明によるすべての態様および実施形態の特定の実施形態では、検出可能な標識の存在または量の決定は、以下:
- 検出可能な標識の存在を決定することによって前の工程における固相結合複合体の形成を決定し、決定された標識の量を決定することによって複合体の量を決定する工程
によって行われる。
【0246】
本発明のすべての態様および実施形態の特定の実施形態では、Fc受容体結合抑制ヒトまたはヒト化薬物抗体は、ヒトIgG1またはIgG4サブクラスのものである。
【0247】
本発明のすべての態様および実施形態の特定の実施形態では、Fc受容体結合抑制ヒトまたはヒト化薬物抗体は、ヒトIgG1サブクラスのものであり、両方のFc領域ポリペプチドに変異L234A、L235AおよびP329Gを有するか、またはFc受容体結合抑制ヒトまたはヒト化薬物抗体は、ヒトIgG4サブクラスのものであり、両方のFc領域ポリペプチドに変異S228P、L235EおよびP329Gを有する(ナンバリングはKabatによるEUナンバリングシステムに従う)。
【0248】
本発明のすべての態様および実施形態の特定の実施形態では、Fc受容体結合抑制ヒトまたはヒト化薬物抗体は、ヒトIgG1サブクラスのものであり、両方のFc領域ポリペプチドに変異I253A、H310AおよびH435Aを有する(ナンバリングはKabatによるEUナンバリングシステムに従う)。
【0249】
本発明のすべての態様および実施形態の特定の実施形態では、Fc受容体結合抑制ヒトまたはヒト化薬物抗体は、二重特異性抗体、または三重特異性抗体、または四重特異性抗体、または五重特異性抗体、または六重特異性抗体である。好ましい一実施形態では、Fc受容体結合抑制ヒトまたはヒト化薬物抗体は二重特異性抗体である。
【0250】
本発明のすべての態様および実施形態の特定の実施形態では、哺乳動物血清は、ヒト血清またはカニクイザル血清またはマウス血清である。
【0251】
本発明のすべての態様および実施形態の特定の実施形態では、標識の存在および/または量は、酵素結合呈色反応、表面プラズモン共鳴、電気化学発光、またはラジオイムノアッセイを使用して決定される。
【0252】
本発明のすべての態様および実施形態の特定の実施形態では、固相は、結合対の第1のメンバーにコンジュゲートされ、固相に固定化される化合物は、結合対の第2のメンバーにコンジュゲートされる。そのような結合対(第1のメンバー/第2のメンバー)は、特定の実施形態では、ストレプトアビジンまたはアビジン/ビオチン、抗体/抗原(例えば、Hermanson,G.T.ら、Bioconjugate Techniques、Academic Press(1996)を参照されたい)、レクチン/多糖、ステロイド/ステロイド結合タンパク質、ホルモン/ホルモン受容体、酵素/基質、IgG/プロテインAおよび/またはGなどから選択される。特定の実施形態では、固相に固定される化合物は、N末端および/またはε-アミノ基(リジン)、異なるリジンのε-アミノ基、ポリペプチドのアミノ酸骨格のカルボキシ-、スルフヒドリル-、ヒドロキシル-および/またはフェノール官能基、ならびに/あるいはポリペプチドの炭水化物構造の糖アルコール基を介して化学的に結合することによって、結合対の第2のメンバーにコンジュゲートされる。
【0253】
異なるアミノ基を介したそのようなコンジュゲーションは、第1の工程において、ε-アミノ基の一部を化学保護剤でアシル化することによって、例えばシトラコニル化によって行うことができる。第2の工程では、残りのアミノ基を介してコンジュゲーションを行う。続いて、シトラコニル化が除去され、結合パートナーは、残存する遊離アミノ基を介して固相に固定化される、すなわち、得られた結合パートナーは、シトラコニル化によって保護されていないアミノ基を介して固相に固定化される。適切な化学保護剤は、保護されていない側鎖アミンで結合を形成し、N末端の結合よりも安定性が低く、N末端の結合とは異なる。多くのこのような化学保護剤が知られている(例えば、欧州特許第0651761号を参照されたい)。特定の実施形態では、化学保護剤としては、マレイン酸無水物またはシトラコン酸無水物などの環状ジカルボン酸無水物を含む。
【0254】
好ましい一実施形態では、結合対の第1のメンバーはストレプトアビジンであり、結合対の第2のメンバーはビオチンである。特定の実施形態では、固相はストレプトアビジンにコンジュゲートされ、固相に固定化される化合物はビオチン化される。特定の実施形態では、固相は、ストレプトアビジン被覆常磁性ビーズまたはストレプトアビジン被覆セファロースビーズまたはマルチウェルプレートのストレプトアビジン被覆ウェルである。
【0255】
本発明のすべての態様および実施形態の特定の実施形態では、固相にコンジュゲートされる化合物は、少なくとも2つの化合物を含む混合物であり、その少なくとも2つの化合物ビオチンにコンジュゲートされ、それによって固相に固定される部位が異なる。
【0256】
本発明によるすべての態様および実施形態の特定の実施形態では、本発明による多量体の多量体化は、N末端および/またはε-アミノ基(リジン)、異なるリジンのε-アミノ基、ポリペプチドのアミノ酸骨格のカルボキシ-、スルフヒドリル-、ヒドロキシル-、および/またはフェノール官能基、ならびに/あるいはポリペプチドの炭水化物構造の糖アルコール基を介して化学的に結合することによって行われる。
【0257】
異なるアミノ基を介したカップリングは、第1の工程において、ε-アミノ基の一部を化学保護剤でアシル化することによって、例えばシトラコニル化によって行うことができる。第2の工程では、残りのアミノ基を介してコンジュゲーションを行う。続いて、シトラコニル化が除去され、結合パートナーは、残存する遊離アミノ基を介して固相にコンジュゲートされる、すなわち、得られた結合パートナーは、シトラコニル化によって保護されていないアミノ基を介して固相にコンジュゲートされる。適切な化学保護剤は、保護されていない側鎖アミンで結合を形成し、N末端の結合よりも安定性が低く、N末端の結合とは異なる。多くのこのような化学保護剤が知られている(例えば、欧州特許第0651761号を参照されたい)。特定の実施形態では、化学保護剤としては、マレイン酸無水物またはシトラコン酸無水物などの環状ジカルボン酸無水物を含む。
【0258】
本発明のすべての態様および実施形態の特定の実施形態では、薬物抗体またはそのFc領域は、受動吸着によって固相にコンジュゲートされる。受動吸着は、例えば、Butler,J.E.による「Solid Phases in Immunoassay」(1996)205-225ならびにDiamandis,E.P.およびChristopoulos,T.K.(編)による「Immunoassay」(1996)Academic Press(San Diego)に記載されている。
【0259】
「薬物抗体」という用語は、ヒト治療薬として承認されるために臨床試験で試験されているかまたは試験されたことがあり、疾患の治療のために個体に投与することができる抗体を表す。特定の実施形態では、薬物抗体はモノクローナル抗体である。さらなる実施形態では、薬物抗体は、類人猿、もしくはヒト抗体遺伝子座で形質転換された動物から得られるか、またはヒトモノクローナル抗体であるか、またはヒト化モノクローナル抗体である。特定の実施形態では、薬物抗体はヒトモノクローナル抗体である。特定の実施形態では、薬物抗体はヒト化モノクローナル抗体である。薬物抗体は、腫瘍学的疾患(例えば、非ホジキンリンパ腫、乳癌、および結腸直腸癌を含む血液学的悪性腫瘍および固形悪性腫瘍)、免疫学的疾患、中枢神経疾患、血管疾患、または感染症などの様々な疾患の治療に広く使用されている。
【0260】
「エピトープ」という用語は、抗体に特異的に結合することができるタンパク質決定基を表す。エピトープは、通常、アミノ酸または糖側鎖などの分子の化学的に活性な表面群からなり、通常、エピトープは、特定の三次元構造特性、ならびに特定の電荷特徴を有する。立体構造エピトープおよび非立体構造エピトープは、変性溶媒の存在下で、立体構造エピトープに対する結合が失われるが、非立体構造エピトープに対する結合は失われないことから区別される。
【0261】
異なるイムノアッセイの原理は、例えば、Hage,D.S.(Anal.Chem.71(1999)294R-304R)に記載されている。Lu,B.ら(Analyst 121(1996)29R-32R)は、イムノアッセイに使用するための抗体の配向固定化を報告している。アビジン-ビオチン媒介イムノアッセイは、例えば、Wilchek,M.およびBayer,E.A.、Methods Enzymol.184(1990)467-469に報告されている。
【0262】
ポリペプチドおよびモノクローナル抗体ならびにそれらの定常ドメインは、ポリペプチド/タンパク質、ポリマー(例えば、PEG、セルロースまたはポリスチロール)、または酵素などの結合対のメンバーに結合するためのいくつかの反応性アミノ酸側鎖を含む。アミノ酸の化学反応性基は、例えば、アミノ基(リシン、アルファ-アミノ基)、チオール基(シスチン、システインおよびメチオニン)、カルボン酸基(アスパラギン酸、グルタミン酸)、および糖アルコール基である。そのような方法は、例えば、「Bioconjugation」、MacMillan Ref.Ltd.、1999、50-100ページに記載されている。
【0263】
ポリペプチドおよび抗体の最も一般的な反応性基の1つは、アミノ酸リジンの脂肪族ε-アミンである。一般に、ほぼすべてのポリペプチドおよび抗体は、豊富なリジンを含有する。リジンアミンは、pH8.0(pKa=9.18)を超えると適度に良好な求核剤となるため、様々な試薬と容易かつ清浄に反応して安定な結合を形成する。アミン反応性試薬は、主にリシンおよびタンパク質のα-アミノ基と反応する。反応性エステル、特にN-ヒドロキシ-スクシンイミド(NHS)エステルは、アミン基の修飾のために最も一般的に使用される試薬の1つである。水性環境下での反応に最適なpHはpH8.0~9.0である。イソチオシアネートはアミン修飾試薬であり、タンパク質と共にチオ尿素結合を形成する。イソチオシアネートは、水溶液中のタンパク質アミン(最適にはpH9.0~9.5で)と反応する。アルデヒドは、穏やかな水性条件下で脂肪族および芳香族アミン、ヒドラジン、およびヒドラジドと反応して、イミン中間体(シッフ塩基)を形成する。シッフ塩基は、穏やかなまたは強い還元剤(水素化ホウ素ナトリウムまたはシアノ水素化ホウ素ナトリウムなど)で選択的に還元されて、安定なアルキルアミン結合を誘導することができる。アミンを修飾するために使用されている他の試薬は、酸無水物である。例えば、ジエチレントリアミン五酢酸無水物(DTPA)は、2つのアミン反応性無水物基を含有する二官能性キレート剤である。これは、アミノ酸のN末端およびε-アミン基と反応してアミド結合を形成し得る。無水物環は開環して、配位錯体中の金属に強く結合することができる多価の金属キレート化アームを生成する。
【0264】
ポリペプチドおよび抗体における別の一般的な反応性基は、硫黄含有アミノ酸シスチンおよびその還元生成物システイン(または半シスチン)からのチオール残基である。システインは、アミンよりも求核性であり、一般にタンパク質中で最も反応性の官能基である遊離チオール基を含有する。チオールは一般に中性pHで反応性であるため、アミンの存在下で他の分子に選択的に結合することができる。遊離スルフヒドリル基は比較的反応性であるため、これらの基を有するタンパク質は、ジスルフィド基またはジスルフィド結合としてそれらの酸化形態で存在することが多い。そのようなタンパク質では、反応性遊離チオールを生成するためにジチオトレイトール(DTT)などの試薬によるジスルフィド結合の還元が必要である。チオール反応性試薬は、ポリペプチド上のチオール基に結合してチオエーテル結合生成物を形成する試薬である。これらの試薬は、わずかな酸性から中性のpHで迅速に反応し、したがってアミン基の存在下で選択的に反応することができる。文献は、トラウト試薬(2-イミノチオラン)、スクシンイミジル(アセチルチオ)アセテート(SATA)およびスルホスクシンイミジル6-[3-(2-ピリジルジチオ)プロピオンアミド]ヘキサノエート(Sulfo-LC-SPDP)などのいくつかのチオール化架橋試薬の使用を報告して、反応性アミノ基を介して複数のスルフヒドリル基を導入する効率的な方法を提供する。ハロアセチル誘導体、例えばヨードアセトアミドは、チオエーテル結合を形成し、チオール修飾のための試薬でもある。さらなる有用な試薬はマレイミドである。マレイミドとチオール反応性試薬との反応は、ヨードアセトアミドと本質的に同じである。マレイミドは、わずかな酸性から中性のpHで迅速に反応する。
【0265】
抗体における別の一般的な反応性基はカルボン酸である。ポリペプチドおよび抗体は、C末端位置およびアスパラギン酸およびグルタミン酸の側鎖内にカルボン酸基を含有する。水中のカルボン酸の比較的低い反応性は、通常、ポリペプチドおよび抗体を選択的に修飾するためにこれらの基を使用することを困難にする。この際、カルボン酸基は、通常、水溶性カルボジイミドを用いて反応性エステルに変換され、アミン、ヒドラジド、ヒドラジンなどの求核試薬と反応する。アミン含有試薬は、リジンのより高度に塩基性のε-アミンの存在下で活性化カルボン酸と選択的に反応して安定なアミド結合を形成するために、弱塩基性でなければならない。pHが8.0を超えて上昇すると、タンパク質架橋が起こり得る。
【0266】
過ヨウ素酸ナトリウムを使用して、抗体に結合した炭水化物部分内の糖のアルコール部分をアルデヒドに酸化することができる。各アルデヒド基は、カルボン酸について記載されるように、アミン、ヒドラジド、またはヒドラジンと反応させることができる。炭水化物部分は主に抗体の結晶化可能な断片(Fc)領域上に見出されるので、抗原結合部位から離れた炭水化物の部位特異的修飾によってコンジュゲーションを達成することができる。シアノ水素化ホウ素ナトリウム(穏やかで選択的)または水素化ホウ素ナトリウム(強い)水溶性還元剤による中間体の還元によってアルキルアミンに還元することができるシッフ塩基中間体が形成される。
【0267】
「試料」という用語は、生物またはかつて生物であったものからの任意の量の物質を含むが、これらに限定されない。そのような生物としては、ヒト、マウス、サル、ラット、ウサギ、および他の動物が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、試料は、サル、特にカニクイザル、またはウサギ、またはマウス、またはラット、またはヒトから得られる。そのような物質としては、特定の実施形態では、臨床ルーチンにおいて最も広く使用されている試料源である、個体由来の全血または血清が挙げられるが、これらに限定されない。
【0268】
「固相」は非流体物質を表し、ポリマー、金属(常磁性、強磁性粒子)、ガラス、およびセラミックなどの材料から作られた粒子(マイクロ粒子およびビーズを含む);シリカ、アルミナ、およびポリマーゲルなどのゲル物質;ポリマー、金属、ガラス、および/またはセラミックから作られていてもよい、キャピラリー;ゼオライトおよび他の多孔性物質;電極;マイクロタイタープレート;固体ストリップ;ならびにキュベット、チューブまたは他の分光計試料容器が挙げられる。固相成分は、「固相」がその表面に試料中の物質と相互作用することを意図した少なくとも1つの部分を含むという点で、不活性固体表面とは区別される。固相は、チップ、チューブ、ストリップ、キュベット、もしくはマイクロタイタープレートなどの静止した成分であってもよく、またはビーズおよびマイクロ粒子などの静止していない成分であってもよい。タンパク質および他の物質の非共有結合または共有結合のいずれかを可能とする様々なマイクロ粒子が使用されてもよい。このような粒子としては、ポリスチレンおよびポリ(メチルメタクリレート)などのポリマー粒子;金ナノ粒子、金コロイドなどの金粒子;ならびにシリカ、ガラス、金属酸化物粒子などのセラミック粒子などが挙げられる。例えば、Martin,C.R.ら、Analytical Chemistry-News&Features、70(1998)322A-327A、またはButler,J.E.、Methods22(2000)4-23を参照されたい。
【0269】
色素原(蛍光または発光基および色素)、酵素、NMR活性基、金属粒子またはハプテン、例えばジゴキシゲニンから、検出可能な標識が特定の実施形態において選択される。検出可能な標識はまた、光活性化可能な架橋基、例えばアジドまたはアジリン基であってもよい。電気化学発光によって検出することができる金属キレートはまた、特定の実施形態では、シグナル放出基であり、ルテニウムキレート、例えばルテニウム(ビスピリジル) 2+キレートが特に好ましい。適切なルテニウム標識基は、例えば、欧州特許第0580979号、国際公開第90/05301号、国際公開第90/11511号および国際公開第92/14138号に記載されている。
【0270】
本明細書に記載のイムノアッセイおよび方法で使用されるいくつかの化合物は、結合対のメンバーにコンジュゲートされる。コンジュゲーションは、特定の実施形態では、N末端および/またはε-アミノ基(リジン)、異なるリジンのε-アミノ基、化合物のアミノ酸骨格のカルボキシ-、スルフヒドリル-、ヒドロキシル-、および/またはフェノール官能基、ならびに/あるいは化合物の炭水化物構造の糖アルコール基を介して化学的に結合することによって行われる。コンジュゲートされた化合物は、特定の実施形態では、結合対のメンバーにコンジュゲートされた少なくとも2つの化合物の混合物であり、混合物中の少なくとも2つの化合物は、それらが結合対のメンバーにコンジュゲートする部位が異なる。例えば、混合物は、アミノ酸骨格のアミノ酸を介したコンジュゲーションおよび炭水化物の糖アルコール基を介したコンジュゲーションを含み得る。また、例えば、混合物は、アミノ酸骨格の異なるアミノ酸残基を介して結合対のメンバーにコンジュゲートされた化合物を含み得る。「異なるアミノ酸残基」という表現は、2つの異なる種類のアミノ酸、例えばリジンおよびアスパラギン酸、またはチロシンおよびグルタミン酸、または化合物のアミノ酸配列におけるそれらの位置が異なるアミノ酸骨格の2つのアミノ酸残基のいずれかを示す。後者の場合、アミノ酸は同じ種類または異なる種類であってもよい。「部位が異なる」という表現は、部位の種類、例えばアミノ酸もしくは糖アルコール基、または例えば化合物が結合対のメンバーにコンジュゲートされるアミノ酸骨格のアミノ酸の数のいずれかの違いを示す。
【0271】
直接検出のために、標識基は、任意の既知の検出可能なマーカー基、例えば色素、発光標識基、例えば化学発光基、例えばアクリジニウムエステルもしくはジオキセタン、または蛍光色素、例えばフルオレセイン、クマリン、ローダミン、オキサジン、レゾルフィン、シアニンおよびそれらの誘導体から選択することができる。標識基の他の例は、ルテニウムまたはユーロピウム錯体などの発光金属錯体、例えばELISAまたはCEDIA(クローニングされた酵素ドナーイムノアッセイ、例えば、EP-A-0061888)に使用される酵素、および放射性同位体である。
【0272】
間接検出システムは、例えば、検出試薬、例えば検出抗体がバイオアフィン結合対の第1のパートナーで標識されることを含む。適切な結合対の例は、ハプテンまたは抗原/抗体、ビオチンまたはビオチン類似体、例えばアミノビオチン、イミノビオチンまたはデスチオビオチン/アビジンまたはストレプトアビジン、糖/レクチン、核酸または核酸類似体/相補的核酸、および受容体/リガンド、例えばステロイドホルモン受容体/ステロイドホルモンである。好ましい第1の結合対メンバーは、ハプテン、抗原およびホルモンを含む。ジゴキシンなどのハプテンおよびビオチンならびにその類似体が特に好ましい。そのような結合対の第2のパートナー、例えば抗体、ストレプトアビジンなどは、通常、例えば上記のような標識による直接検出を可能にするように標識される。
【0273】
イムノアッセイは当業者に周知である。そのようなアッセイを実施するための方法ならびに実際の適用および手順は、関連するテキストにまとめられている。関連するテキストの例は、Tijssen,P.、Preparation of enzyme-antibody or other enzyme-macromolecule conjugates(「Practice and theory of enzyme immunoassays」(1990)、221-278ページ、R.H.Burdonおよびv.P.H.Knippenberg編、Elsevier、Amsterdam)および免疫学的検出方法を取り扱う「Methods in Enzymology」(S.PColowick、N.O.Caplan編、Academic Press)の種々の巻、特に第70、73、74、84、92および121巻である。
【0274】
上記のすべての免疫学的検出方法において、使用される試薬の結合、例えば抗体のその対応する抗原への結合を可能にする試薬条件が選択される。当業者は、複合体という用語を使用することによってそのような結合事象の結果を指す。本発明によるアッセイ方法で形成された複合体は、最新技術の手順によって、前記治療用抗体の対応する濃度と相関する。使用される検出試薬に応じて、この相関工程は、総治療用抗体、活性抗体または抗原結合治療用抗体の濃度をもたらす。
【0275】
本発明による方法およびイムノアッセイは、インビトロ方法およびイムノアッセイである。
【実施例
【0276】
III.実施例
以下は、本発明の方法および組成物の実施例である。上に提供された一般的な説明を前提として、他の様々な実施形態が実施され得ることが理解される。
【0277】
実施例1
材料および方法
ヒト免疫グロブリンの軽鎖および重鎖のヌクレオチド配列に関連する一般的な情報は、Kabat,E.A.ら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、Public Health Service,National Institutes of Health、Bethesda、MD(1991)で得られる。抗体鎖のアミノ酸は、Kabat(Kabat,E.A.ら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、Public Health Service,National Institutes of Health、Bethesda、MD(1991))によるナンバリングに従ってナンバリングされ、参照される。
【0278】
組換えDNA技術
標準的な方法を使用して、Sambrook,J.ら、Molecular cloning:A laboratory manual;Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、New York、1989に記載されるように、DNAを操作することができる。分子生物学的試薬を製造者の指示書に従って使用する。
【0279】
遺伝子合成
化学合成によって作られるオリゴヌクレオチドから、所望の遺伝子セグメントを調製することができる。PCR増幅を含めて、オリゴヌクレオチドをアニーリングおよび連結することによって、単一の制限エンドヌクレアーゼ切断部位に隣接することができる長い遺伝子セグメントを構築し、その後、示された制限部位を介してクローニングすることができる。DNA配列決定によって、サブクローニングされた遺伝子断片のDNA配列を確認することができる。
【0280】
DNA配列決定
DNA配列は、二本鎖配列決定によって決定することができる。
【0281】
DNAおよびタンパク質配列分析および配列データ管理
配列作成、マッピング、分析、注釈付けおよび図示のために、GCG(Genetics Computer Group、Madison、Wisconsin)ソフトウェアパッケージバージョン10.2およびInfomaxのVector NT1 Advance suiteバージョン8.0を使用することができる。
【0282】
発現ベクター
抗体の発現のために、CMV-イントロンAプロモーターを用いたもしくは用いないcDNA構成またはCMVプロモーターを用いたゲノム構成のいずれかに基づく(例えば、HEK293細胞における)一過性発現のための発現プラスミドを適用することができる。
【0283】
抗体発現カセット以外に、ベクターは、
- 大腸菌においてプラスミドの複製を可能にする複製起源、
- 大腸菌においてアンピシリン耐性を与えるβ-ラクタマーゼ遺伝子
を含み得る。
【0284】
抗体遺伝子の転写ユニットは、以下の要素、
- 5’末端の固有の制限部位
- ヒトサイトメガロウイルス由来の最初期遺伝子およびプロモーター、
- cDNA構成の場合におけるイントロンA配列、
- ヒト抗体遺伝子由来の5’-非翻訳領域、
- 免疫グロブリン重鎖シグナル配列、
- cDNAとしてのまたはゲノムエクソン-イントロン構成での、それぞれの抗体鎖をコードする核酸、
- ポリアデニル化シグナル配列を有する3’非翻訳領域、
- 3’末端の固有の制限部位
から構成され得る。
【0285】
抗体鎖をコードする融合遺伝子は、PCRおよび/または遺伝子合成によって作製され、それぞれのベクター中の固有の制限部位を用いて、核酸セグメントに従って接続することにより、既知の組換え方法および技術でアセンブリすることができる。サブクローン化された核酸配列は、DNA配列決定によって確認することができる。一過性トランスフェクションのために、形質転換された大腸菌培養物からのプラスミド調製によって、より大量のプラスミドを調製することができる。
【0286】
細胞培養技術
Current Protocols in Cell Biology(2000)、Bonifacino,J.S.、Dasso,M.、Harford,J.B.、Lippincott-Schwartz,J.およびYamada,K.M.(編)、John Wiley&Sons,Inc.に記載されている標準的な細胞培養技術を使用することができる。
【0287】
HEK293系における一過性トランスフェクションによる組換え抗体産生
抗体は一過性発現によって産生することができる。したがって、製造業者の指示に従ってHEK293系(Invitrogen)を使用して、それぞれのプラスミドによるトランスフェクションを行うことができる。簡潔に述べれば、シェークフラスコまたは撹拌発酵槽のいずれかにおいて、無血清FreeStyle(商標)293発現培地(Invitrogen)中で懸濁状態で増殖させたHEK293細胞(Invitrogen)を、各々の発現プラスミドおよび293fectin(商標)またはfectin(Invitrogen)の混合物でトランスフェクトすることができる。2Lシェークフラスコ(Corning)に、HEK293細胞を600mL中1.0×10細胞/mLの密度で播種し、120rpm、8%のCOでインキュベートすることができる。翌日、約1.5×10細胞/mLの細胞密度で、細胞を、A)600μgの総プラスミドDNA(1μg/mL)を含む20mLのOpti-MEM培地(Invitrogen)およびB)1.2mLの293 fectinまたはfectin(2μL/mL)が補充された20mLのOpti-MEM培地の約42mLの混合物でトランスフェクトすることができる。グルコース消費に従って発酵の経過の間にグルコース溶液を添加することができる。分泌された抗体を含有する上清を、一般に、5~10日後に回収し、抗体を上清から直接精製するか、または上清を凍結および保存することができる。
【0288】
タンパク質決定
精製された抗体および誘導体のタンパク質濃度を、Paceら,Protein Science 4(1995)2411-1423に従って、アミノ酸配列に基づいて計算されたモル吸光係数を使用して、280nmでの光学密度(OD)を決定することによって決定することができる。
【0289】
上清中の抗体濃度決定
細胞培養物上清中の抗体および誘導体の濃度を、プロテインAアガロースビーズ(Roche Diagnostics GmbH、マンハイム、ドイツ)による免疫沈降によって推定することができる。したがって、60μLのプロテインAアガロースビーズをTBS-NP40(50mM NaClおよび1%Nonidet-P40を補充した150mM Tris緩衝液、pH7.5)で3回洗浄することができる。その後、1~15mLの細胞培養物上清を、TBS-NP40中で予め平衡状態にしたプロテインAアガロースビーズに適用することができる。室温で1時間インキュベートした後、ビーズを、Ultrafree-MC-フィルタカラム(Amicon)上で、0.5mLのTBS-NP40で1回、0.5mLの2xリン酸緩衝生理食塩水(2×PBS、Roche Diagnostics GmbH、マンハイム、ドイツ)で2回洗浄し、0.5mLの100mMクエン酸Na緩衝液(pH5.0)で4回、簡単に洗浄することができる。結合した抗体を、35μLのNuPAGE(登録商標)LDS試料緩衝液(Invitrogen)を加えることによって溶出することができる。試料の半分をNuPAGE(登録商標)試料還元剤と組み合わせるか、またはそれぞれ還元せずに残し、70℃で10分間加熱することができる。その結果、5~30μlを、4~12%のNuPAGE(登録商標)Bis-Tris SDS-PAGEゲル(Invitrogen)(非還元SDS-PAGE用のMOPS緩衝液および還元SDS-PAGE用のNuPAGE(登録商標)酸化防止ランニング緩衝液添加剤(Invitrogen)を含むMES緩衝液を含む)に適用し、クマシーブルーで染色することができる。
【0290】
細胞培養物上清中の抗体の濃度を、アフィニティHPLCクロマトグラフィによって定量的に測定することができる。簡単に説明すると、プロテインAに結合する抗体を含有する細胞培養物上清を、200mM KHPO、100mMクエン酸ナトリウム(pH7.4)中、Applied Biosystems Poros A/20カラムに適用し、Agilent HPLC 1100システムで、200mM NaCl、100mMクエン酸(pH2.5)を用いて溶出することができる。溶出した抗体をUV吸光度およびピーク面積の積分によって定量することができる。精製した標準IgG1抗体を標準とした。
【0291】
または、細胞培養物上清中の抗体および誘導体の濃度を、サンドイッチ-IgG-ELISAによって測定することができる。簡単に説明すると、StreptaWell High Bind Streptavidin A-96ウェルマイクロタイタープレート(Roche Diagnostics GmbH、マンハイム、ドイツ)を、100μL/ウェルのビオチン化抗ヒトIgG捕捉分子F(ab’)2-抗ヒトFcγ抗体-BI(Dianova)で、0.1μg/mLで室温で1時間かけて、または4℃で一晩かけてコーティングし、その後、200μL/ウェルのPBS、0.05%Tween(PBST、Sigma)を用いて3回洗浄することができる。その後、それぞれの抗体含有細胞培養物上清のPBS(Sigma)における100μL/ウェルの希釈系列をウェルに加え、室温で振盪機で1~2時間インキュベートすることができる。ウェルを200μL/ウェルPBSTで3回洗浄することができ、結合した抗体を、室温で振盪機で1~2時間インキュベートすることにより、検出抗体として0.1μg/mLの100μL F(ab’)2-抗ヒトFcγ抗体-POD(Dianova)を用いて検出した。未結合の検出抗体を、200μL/ウェルのPBSTで3回洗浄することによって除去することができる。100μLABTS/ウェルを添加し、続いてインキュベートすることによって、結合した検出抗体を検出することができる。吸光度の決定は、Tecan Fluor Spectrometerで、測定波長405nm(リファレンス波長492nm)で行った。
【0292】
分取抗体精製
標準プロトコルを参照して、濾過した細胞培養物上清から抗体を精製することができる。簡潔に述べると、抗体を、Protein A Sepharoseカラム(GE Healthcare)に適用し、PBSで洗浄することができる。抗体の溶出をpH2.8で達成した後、直ちに中和することができる。凝集したタンパク質を、PBSまたは150mM NaClを含む20mMヒスチジン緩衝液(pH6.0)中のサイズ排除クロマトグラフィ(Superdex 200,GE Healthcare)によって単量体抗体から分離することができる。単量体抗体画分をプールし、(必要に応じて)例えばMILLIPORE Amicon Ultra(30MWCO)遠心濃縮機を使用して濃縮し、冷凍し、-20℃または-80℃で保存することができる。試料の一部を、例えばSDS-PAGE、サイズ排除クロマトグラフィ(SEC)または質量分析による後続のタンパク質分析および分析的特徴付けのために提供することができる。
【0293】
SDS-PAGE
NuPAGE(登録商標)Pre-Castゲルシステム(Invitrogen)を、製造業者の説明書に従って、使用することができる。特に、10%または4~12%のNuPAGE(登録商標)Novex(登録商標)Bis-TRIS Pre-Castゲル(pH6.4)、およびNuPAGE(登録商標)MES(還元型ゲル、NuPAGE(登録商標)抗酸化ランニング緩衝液添加剤を含む)またはMOPS(非還元型ゲル)ランニング緩衝液を使用することができる。
【0294】
CE-SDS
マイクロ流体Labchip技術(PerkinElmer、USA)を使用して、CE-SDSによって純度および抗体完全性を分析することができる。したがって、製造業者の説明書に従ってHT Protein Express Reagent Kitを使用して、CE-SDS分析用に5μlの抗体溶液を調製し、HT Protein Express Chipを使用してLabChip GXIIシステムで分析することができる。LabChip GX Softwareを使用してデータを分析することができる。
【0295】
分析用サイズ排除クロマトグラフィ
抗体の凝集およびオリゴマー状態の決定のためのサイズ排除クロマトグラフィ(SEC)を、HPLCクロマトグラフィによって実施することができる。簡潔に述べると、プロテインA精製抗体を、Dionex Ultimate(登録商標)システム(Thermo Fischer Scientific)上の300mM NaCl、50mM KHPO/KHPO緩衝液(pH7.5)中のTosoh TSKgel G3000SWカラムに、またはDionex HPLC-System上の2×PBS中のSuperdex 200カラム(GE Healthcare)に適用することができる。溶出した抗体をUV吸光度およびピーク面積の積分によって定量することができる。BioRad Gel Filtration Standard 151-1901が標準として機能した。
【0296】
質量分析法
抗体は、リン酸緩衝液またはTris緩衝液中、タンパク質濃度1mg/mlで、37℃で最大17時間、N-グリコシダーゼFを用いて脱グリコシル化することができる。制限LysC(Roche Diagnostics GmbH、マンハイム、ドイツ)消化は、Tris緩衝液(pH8)中、100μgの脱グリコシル化抗体を用いて、それぞれ室温で120時間または37℃で40分間行うことができる。質量分析の前に、Sephadex G25カラム(GE Healthcare)でのHPLCによって試料を脱塩することができる。合計質量を、TriVersa NanoMate source(Advion)が取り付けられたmaXis 4G UHR-QTOF MSシステム(Bruker Daltonik)でのESI-MSによって決定した。
【0297】
ハイブリドーマを使用した抗体の作製
ハイブリドーマ細胞株を、10%FCSおよび一般的に使用される補助剤を補充したRPMI1640中1.0×10~2.2×10細胞/mLの初期細胞密度(生細胞)で接種し、Tフラスコ(Celline、IBS)で約3週間増殖させる。培養上清からの抗体の精製は、例えばBruck,C.ら、Methods Enzymol.121(1986)587-596に報告される標準的なタンパク質化学法に従って行われる。
【0298】
実施例2
本発明による多量体の単量体の特徴付け
ストレプトアビジン被覆マルチウェルプレート(SA-MTP)のウェルに、ビオチン化抗PG Fc領域抗体またはビオチン化抗AAA Fc領域抗体をそれぞれ結合させて、捕捉プレートを作製した。過剰の未結合抗体を洗浄によって除去した。ヒトおよびカニクイザル血清にスパイクした試料/標準抗体(10%最終濃度)を、捕捉プレートでコーティングしたSA-MTPマルチウェルプレートのウェルに添加し、室温で1時間インキュベートした。洗浄後、ウェルをジゴキシゲン化抗ヒトκ抗体M1.7.10と共にインキュベートした(例えば、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2011/048043号を参照されたい)。洗浄後、結合したジゴキシゲン化抗ヒトκ抗体複合体を西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識抗ジゴキシゲニン抗体と共にインキュベートした。別の洗浄工程の後、ABTS溶液をウェルに添加し、インキュベートした。呈色反応の生成物をElisaリーダーによって405nmの波長(リファレンス波長:490nm)で測定した。各試料または標準の吸光度値を三連で決定した。
【0299】
以下の表は、本明細書に捕捉抗体として報告される抗バリアント(ヒト)Fc領域抗体M1.3.17(配列番号03および04)を含む血清中の変異P329G、L234A、L235A、I253A、H310AおよびH435Aを有する抗VEGF/ANG2抗体について決定された吸光値を示す。
【0300】
以下の表は、本明細書に捕捉抗体およびトレーサー抗体として報告される異なる抗体を使用して、Fc領域における異なる変異を有する異なる特異性の抗体について決定された吸光値を示す。
【0301】
アッセイB:捕捉抗体:M1.6.22-Bi/M1.7.24-Bi/M1.3.17-Bi
トレーサー抗体:1.7.10-Dig
アッセイC:捕捉抗体:M1.6.22-Bi/M1.7.24-Bi/M1.3.17-Bi
トレーサー化合物:FcγRI-Dig
M1.6.22=抗AAAバリアントFc領域抗体、
M1.7.10=抗IgG1κ抗体、
M1.7.24=抗PGバリアントFc領域抗体、
M1.3.17=抗PGバリアントFc領域抗体、
試料:
1)抗VEGF/ANG2抗体(変異P329G/L234A/L235A/I253A/H310A/H435Aを有するIgG1サブクラス)、
2)抗VEGF/ANG2抗体(変異P329G/L234A/L235Aを有するIgG1サブクラス)、
3)抗IGF-1R抗体(変異I253A/H310A/H435Aを有するIgG1サブクラス)、
4)抗P-セレクチン抗体(変異S228P/L235Eを有するIgG4サブクラス)、
5)抗VEGF/ANG2抗体(野生型IgG1サブクラス)。
【0302】
【0303】
アッセイD:捕捉抗体:M1.7.24-Bi/M1.3.17-Bi
トレーサー抗体:1.7.10-Dig/M1.19.31-Dig
M1.7.10=抗IgG1κ抗体
M1.19.31=抗IgG1κ抗体
M1.7.24=抗PGLALAバリアントFc領域抗体
M1.3.17=抗PGLALAバリアントFc領域抗体
試料:
6)抗Dig抗体(変異P329G/L234A/L235Aを有するIgG1サブクラス)
【0304】
【0305】
実施例3
本発明による多価抗体の形成
抗PG抗体クローン1.7.24SATPの調製
単量体二価抗PG抗体クローン1.7.24を、150mM NaCl、pH7.8を含有する100mMリン酸カリウム緩衝液に対して透析し、約15mg/mLのタンパク質濃度に調整した。N-スクシンイミジル-3-アセチルチオプロピオナート(SATP)をDMSOに溶解し、1:5(単量体抗体:SATP)のモル比で抗体溶液に添加した。pHをpH7.1に調整し、混合物を25℃で60分間インキュベートした。10mMの最終濃度でL-リジンを添加することによって反応を停止させ、200mM NaCl、1mM EDTA、pH6.1を含有する10mMリン酸カリウム緩衝液に対する透析によって過剰のSATPを除去した。
【0306】
抗PG抗体クローン1.7.24MHの調製
単量体二価抗PG抗体クローン1.7.24を、30mMリン酸カリウム緩衝液、pH7.4に対して透析し、その後、約25mg/mLのタンパク質濃度に調整した。マレイミドヘキサノイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(MHS)をDMSOに溶解し、1:6(単量体IgG:MHS)のモル比で抗体溶液に添加した。pHをpH7.1に調整し、混合物を25℃で60分間インキュベートした。10mMの最終濃度までL-リジンを添加することによって反応を停止させ、pHをpH6.2に調整し、200mM NaCl、1mM EDTA、pH6.1を含有する10mMリン酸カリウム緩衝液に対する透析によって過剰のMHSを除去した。
【0307】
抗PG抗体クローン1.7.24SATPと抗PG抗体クローン1.7.24MHとの化学的コンジュゲーション
抗PG抗体クローン1.7.24SATPを、2%(v/v)1Mヒドロキシルアミン、pH7.5とのインキュベーションによって脱アセチル化し、25℃で45分間インキュベートした。脱アセチル化抗体を抗PG抗体クローン1.7.24MH(脱アセチル化IgG:IgG-MHのモル比=1:3)と混合し、200mM NaCl、1mM EDTA、pH6.1を含有する10mMリン酸カリウム緩衝液で希釈して、1.5mg/mLの脱アセチル化抗PG抗体クローン1.7.24および4.5mg/mLの抗PG抗体クローン1.7.24MHの最終濃度にした。pHをpH7.1に調整し、混合物を25℃でインキュベートした。コンジュゲーションプロセスを分析用ゲル濾過カラム(例えば、TSK3000)で分析した。システインを最終濃度1mMまで添加することによって、45分後にコンジュゲーションを停止した。さらに30分間のインキュベーション後、N-メチルマレイミド(NMM)を最終濃度5mMまで添加し、pHをpH7.5に調整した。25℃で60分間インキュベートした後、コンジュゲートを精製し、S300ゲル濾過クロマトグラフィによってサイズごとに分画して、非コンジュゲート抗体を除去した。6つのプールを得た。プール6は、単量体抗PG抗体クローン1.7.24のみを含有していた。
【0308】
実施例4-比較例
抗薬物抗体アッセイにおける較正標準としての二価単量体抗体
標準曲線を生成する可能性を確認するための標準として、単量体完全長抗PGFc領域抗体クローン1.3.17の希釈系列を調製した。
【0309】
変異P329G、L234A、L235A、I253A、H310A、およびH435Aを有するビオチン化抗VEGF/ANG2抗体、ならびに変異P329G、L234A、L235A、I253A、H310A、およびH435Aを有するジゴキシゲン化抗VEGF/ANG2抗体を、室温で一晩、標準と共にプレインキュベートした。プレインキュベーション後、試料をストレプトアビジン被覆マルチウェルプレートに移し、室温で1時間インキュベートした。過剰の未結合抗体を洗浄によって除去した。洗浄工程後、変異P329G、L234A、L235A、I253A、H310A、およびH435Aを有するビオチン化およびジゴキシゲン化抗VEGF/ANG2抗体、ならびに単量体完全長抗PG Fc領域抗体M1.3.17(配列番号03および04)を含む結合ジゴキシゲン化複合体を、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識抗ジゴキシゲニン抗体で検出した。洗浄工程後およびそれぞれの基質とのインキュベーション時に、形成された複合体中に存在するHRPは、ABTSが着色生成物に変換されることを触媒する。Elisaリーダーによって405nmの波長(リファレンス波長:490nm)でシグナルを測定した。各血清試料の吸光度値を三連で決定した。
【0310】
以下の表は、捕捉抗体(ビオチン化)としての血清中の変異P329G、L234A、L235A、I253A、H310AおよびH435Aを有する抗VEGF/ANG2抗体、ならびに標準としての単量体完全長抗バリアント(ヒト)Fc領域抗体M1.3.17(配列番号03および04)を有するトレーサー抗体(ジゴキシゲン化)について決定された吸光値を示す。
【0311】
125ng/mLの濃度では、シグナル対ノイズ比は1.85である。免疫原性アッセイにおける感度の規制当局の要件は100ng/mLである。したがって、低感度の単量体二価抗PG抗体M1.3.17は、ADAアッセイの陽性対照としても較正標準としても適していない。125ng/mLの濃度では、シグナルはブランクのシグナルのわずか1.85倍であり、したがって、有効なアッセイのために当局が必要とする閾値に達しないことを見出すことができる。
【0312】
実施例5
化学的コンジュゲーションによって得られた本発明による多価抗体の、陽性対照および較正標準としての使用
一般的なアッセイ:
すべての工程を室温(RT)で行い、試料および品質管理を5%HPS(ヒトプール血清)の存在下で分析した。試料を、薬物-BI(ビオチン化薬物抗体)および薬物-DIG(ジゴキシゲン化薬物抗体)を含有する低クロス緩衝液(登録商標)で希釈することによってそれぞれの濃度に調整した。それぞれの濃度のそれぞれのビオチン化捕捉およびジゴキシゲン化検出抗体(=薬物(治療用)抗体)とのインキュベーションは、RT(室温)および450rpmで振盪しながら、SA-MTP(ストレプトアビジン被覆マルチタイター(ウェル)プレート)上で直接または誘導体化されていないMTP(プレインキュベーションプレート)中で2時間行った。その後、必要に応じて、試料(100μL)をSA被覆MTPに移し、RT(450rpm)で1時間インキュベートした。次いで、ウェルを3回洗浄した(それぞれ300μLの洗浄緩衝液)。100μLのポリクローナル抗DIG-S-Fab-HRPコンジュゲート(50 mU/mL)を添加し、1時間インキュベートした後、プレートを再度洗浄した(それぞれ300μLの洗浄緩衝液で3回)。最後に、ウェルあたり100μLのABTS基質を添加し、呈色反応を405nm(リファレンス波長490nm)で測光的に評価した。試料を二連で測定し、平均した。複製の精度が変動係数(CV)の20%以下である場合、測定は有効であると認められた。
【0313】
プール選択
プール選択のために、マトリックスを全く含まない0.115μg/mLのビオチン化非標的化抗体IL2融合物(非標的化IgG-IL2)および0.230μg/mLのジゴキシゲン化非標的化IgG-IL2を用いた架橋ELISAを使用した。2時間のインキュベーションを伴い、ストレプトアビジン被覆マイクロタイタープレート(SA-MTP)でアッセイを直接行った。
【0314】
第1の工程では、プール1~5を、10倍希釈工程で10,000ng/mLから100ng/mLまでの濃度のアッセイ緩衝液中で別々に試験した。
【0315】
プールをビオチン化およびジゴキシゲン化非標的化IgG-IL2コンジュゲートで1対20で希釈した。
【0316】
プール2、3および4を一緒にプールし、3つすべてが、上記のADAアッセイにおいて高い結合シグナルを示した。クローン1.7.24に由来する精製多価抗PG抗体プールを約0.5mg/mLに濃縮し、-80℃で保存した。
【0317】
多量体対単量体の比較
多量体と多量体とを比較するために、以下のアッセイを使用した。クローン1.7.24に由来する多価抗PG抗体および単量体二価抗PG抗体クローン1.7.24の混合プール2、3、4を、10,000ng/mLから開始して0.6ng/mLまで段階的に1対2で希釈した。次いで、これらの試料を20の希釈係数でビオチン化およびジゴキシゲン化非標的化IgG-IL2コンジュゲートで希釈し、プレインキュベーションプレート上で2時間インキュベートした後、SA-MTPに移した。その後、ペルオキシダーゼコンジュゲートポリクローナル抗DIG抗体および基質ABTSが続く。光学密度(OD)を405nm(リファレンス波長490nm)で測定する。
【0318】
異なるフォーマットの薬物抗体
多価抗PG抗体の一般的な適用性を確認するために、すなわち、薬物抗体のフォーマットとは無関係に陽性対照および較正標準として使用することができる場合、3つの異なるフォーマットである非標的化IgG-IL2(標的に結合していない生殖細胞系抗体の重鎖のC末端に融合したインターロイキン-2)、標的化IgG-IL2(治療標的に特異的に結合する抗体の重鎖のC末端に融合したインターロイキン-2)およびTCB(T細胞二重特異性フォーマット)の薬物抗体を試験した。標的化IgG-IL2-BIおよび-DIGならびにTCB-BIおよび-DIGの濃度は、それぞれ0.5μg/mLであった。非標的化IgG-IL2については、上記のプール選択例で使用した濃度と同じ濃度を使用した(0.115μg/mLの薬物-BIおよび0.230μg/mLの薬物-DIG)。
【0319】
クローン1.7.24に由来する多価抗PG抗体を、ヒトプール血清で希釈系列1対2で10μg/mLから0.6ng/mLまで希釈した。
【0320】
したがって、12.5μLの試料および237.5μLの薬物-BI/薬物-DIG溶液をプレインキュベーションプレートに添加することによって、クローン1.7.24に由来する希釈された多価抗PG抗体を薬物-BIおよび薬物-DIGで希釈した。2時間のインキュベーション後、形成された複合体をSA-MTPに添加し、前述のようにさらに処理した。
【0321】
【0322】
実施例6
四価融合タンパク質として組換え発現により作製された本発明の多価抗体の、較正標準としての使用
この実施例では、四価形態の抗PG抗体クローン1.7.24を使用した。この四価形態は、抗PG抗体クローン1.7.24の付加Fabを各重鎖C末端に融合することによって得られた。
【0323】
バリアントFc領域-BI(ビオチン化バリアントFc領域断片)およびバリアントFc領域-DIG(ジゴキシゲン化バリアントFc領域断片)を捕捉およびトレーサー分子として使用した。
【0324】
結果を図10に示す。
【0325】
実施例7
IgMとして組換え発現により作製された本発明の多価抗体の、較正標準としての使用
この実施例では、IgM型の抗PG抗体を使用した。このIgM型は組換え産生されている。IgMを細胞培養物の未精製上清としてELISAで使用した。上清を希釈せずに試験し、緩衝液で1:5に連続希釈した。
【0326】
バリアントFc領域-BI(ビオチン化バリアントFc領域断片)およびTCBフォーマットの薬物抗体(ジゴキシゲン化薬物抗体)を捕捉およびトレーサー分子として使用した。
【0327】
結果を図11および以下の表に示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【配列表】
2024534067000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2024-08-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0045
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0045】
一態様は、本発明による多量体の製造方法であって、
329位にアミノ酸残基グリシン(Kabat EUインデックスによるナンバリング)を含むヒトIgG1サブクラスの免疫グロブリンFc領域に特異的に結合する完全長抗体を、N-スクシンイミジル-3-アセチルチオプロピオナート(SATP)およびマレイミドヘキサノイル-N-ヒドロキシスクシンイミド(MHS)を使用して、化学的に架橋することを含み、
抗体は、
(1)
(a)配列番号09のアミノ酸配列を含むHVR-H1、
(b)配列番号12のアミノ酸配列を含むHVR-H2、
(c)配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR-H3、
(d)配列番号23のアミノ酸配列を含むHVR-L1、
(e)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および
(f)配列番号28のアミノ酸配列を含むHVR-L3、
または
(2)
(a)配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-H1、
(b)配列番号13のアミノ酸配列を含むHVR-H2、
(c)配列番号17のアミノ酸配列を含むHVR-H3、
(d)配列番号23もしくは24のアミノ酸配列を含むHVR-L1、
(e)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および
(f)配列番号29のアミノ酸配列を含むHVR-L3、
または
(3)
(a)配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-H1、
(b)配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR-H2、
(c)配列番号18のアミノ酸配列を含むHVR-H3、
(d)配列番号23もしくは24のアミノ酸配列を含むHVR-L1、
(e)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および
(f)配列番号30のアミノ酸配列を含むHVR-L3
(HVRはKabatに従って決定される)
を含む、
方法である。
[本発明1001]
ヒトIgG1サブクラスの野生型Fc領域と比較して1、2、3または4個のアミノ酸変化を含む前記ヒトIgG1サブクラスの免疫グロブリンFc領域に特異的に結合する4個または6個の結合部位を含む、抗体。
[本発明1002]
少なくとも2つの共有結合した
i)ヒトIgG1サブクラスの野生型Fc領域と比較して1、2、3または4個のアミノ酸変化を含む前記ヒトIgG1サブクラスの免疫グロブリンFc領域に特異的に結合する2個の結合部位をそれぞれが含む、二価完全長抗体、
または
ii)ヒトIgG1サブクラスの野生型Fc領域と比較して1、2、3または4個のアミノ酸変化を含む前記ヒトIgG1サブクラスの免疫グロブリンFc領域に特異的に結合する2個の結合部位をそれぞれが含む、二価完全長抗体の(Fab’)2断片
を含む、抗体多量体。
[本発明1003]
前記ヒトIgG1サブクラスの野生型Fc領域と比較して1、2、3または4個のアミノ酸変化を含む前記ヒトIgG1サブクラスの免疫グロブリンFc領域に特異的に結合する前記結合部位が、329位にアミノ酸残基グリシン(Kabat EUインデックスによるナンバリング)を含む前記ヒトIgG1サブクラスの免疫グロブリンFc領域に特異的に結合する結合部位である、本発明1001~1002のいずれかの抗体または抗体多量体。
[本発明1004]
前記結合部位の各々が、互いに独立して、
(1)
(a)配列番号09のアミノ酸配列を含むHVR-H1、
(b)配列番号12のアミノ酸配列を含むHVR-H2、
(c)配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR-H3、
(d)配列番号23のアミノ酸配列を含むHVR-L1、
(e)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および
(f)配列番号28のアミノ酸配列を含むHVR-L3、
または
(2)
(a)配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-H1、
(b)配列番号13のアミノ酸配列を含むHVR-H2、
(c)配列番号17のアミノ酸配列を含むHVR-H3、
(d)配列番号23のアミノ酸配列を含むHVR-L1、
(e)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および
(f)配列番号29のアミノ酸配列を含むHVR-L3、
または
(3)
(a)配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-H1、
(b)配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR-H2、
(c)配列番号18のアミノ酸配列を含むHVR-H3、
(d)配列番号23のアミノ酸配列を含むHVR-L1、
(e)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および
(f)配列番号30のアミノ酸配列を含むHVR-L3、
または
(4)
(a)配列番号20のアミノ酸配列を含むHVR-H1、
(b)配列番号21のアミノ酸配列を含むHVR-H2、
(c)配列番号22のアミノ酸配列を含むHVR-H3、
(d)配列番号32のアミノ酸配列を含むHVR-L1、
(e)配列番号34のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および
(f)配列番号35のアミノ酸配列を含むHVR-L3、
または
(5)
(1)~(4)のいずれか1つの混合物
のいずれかを含む、本発明1001~1003のいずれかの抗体または抗体多量体。
[本発明1005]
前記ヒトIgG1サブクラスの野生型Fc領域と比較して1、2、3または4個のアミノ酸変化を含む前記ヒトIgG1サブクラスの免疫グロブリンFc領域に特異的に結合する前記結合部位が、329位にアミノ酸残基グリシンを含みかつ234位および235位にアミノ酸残基アラニン(Kabat EUインデックスによるナンバリング)を含む前記ヒトIgG1サブクラスの免疫グロブリンFc領域に特異的に結合する結合部位である、本発明1001~1004のいずれかの抗体または抗体多量体。
[本発明1006]
前記多量体が、二量体、三量体、四量体、五量体、六量体、七量体、八量体、九量体または十量体である、本発明1002~1005のいずれかの抗体多量体。
[本発明1007]
インビトロ(架橋)イムノアッセイにおける陽性対照としての、本発明1001~1006のいずれかの抗体または抗体多量体の使用。
[本発明1008]
インビトロ(架橋)イムノアッセイにおける標準としての、本発明1001~1006のいずれかの抗体または抗体多量体の使用。
[本発明1009]
前記使用が、薬物抗体に対する抗薬物抗体を定量的に決定するための較正関数を生成するためのものであり、前記抗薬物抗体が、野生型Fc領域と比較して変化している前記薬物抗体のFc領域中の1つまたは複数のアミノ酸残基に結合する、本発明1008の使用。
[本発明1010]
(血清含有)試料中の抗薬物抗体の存在および/または量を決定するためのイムノアッセイであって、
前記抗薬物抗体が、野生型Fc領域と比較して変化している薬物抗体のFc領域中の少なくとも1つのアミノ酸残基に結合し、
前記イムノアッセイが、捕捉抗体としておよびトレーサー抗体として前記薬物抗体を含み、
本発明1001~1006のいずれかの抗体または抗体多量体が、前記イムノアッセイにおいて陽性対照としてまたは較正標準として使用されることを特徴とする、
イムノアッセイ。
[本発明1011]
前記イムノアッセイが架橋ELISAである、本発明1010のイムノアッセイ。
[本発明1012]
本発明1001~1006のいずれかの抗体または抗体多量体を較正標準として使用し、かつ薬物抗体に対する抗薬物抗体を定量的に決定するための較正関数を生成するために使用する、本発明1010~1011のいずれかのイムノアッセイ。
[本発明1013]
N-スクシンイミジル-3-アセチルチオプロピオナート(SATP)およびマレイミドヘキサノイル-N-ヒドロキシスクシンイミド(MHS)を使用した化学的コンジュゲーションによる、本発明1002~1006のいずれかの抗体多量体の製造方法。
[本発明1014]
前記多量体が、完全長抗体の多量体である、本発明1013の方法。
[本発明1015]
抗体多量体の製造方法であって、
329位にアミノ酸残基グリシン(Kabat EUインデックスによるナンバリング)を含むヒトIgG1サブクラスの免疫グロブリンFc領域に特異的に結合する完全長抗体を、N-スクシンイミジル-3-アセチルチオプロピオナート(SATP)およびマレイミドヘキサノイル-N-ヒドロキシスクシンイミド(MHS)を使用して、化学的に架橋することを含み、
前記抗体が、
(1)
(a)配列番号09のアミノ酸配列を含むHVR-H1、
(b)配列番号12のアミノ酸配列を含むHVR-H2、
(c)配列番号16のアミノ酸配列を含むHVR-H3、
(d)配列番号23のアミノ酸配列を含むHVR-L1、
(e)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および
(f)配列番号28のアミノ酸配列を含むHVR-L3、
または
(2)
(a)配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-H1、
(b)配列番号13のアミノ酸配列を含むHVR-H2、
(c)配列番号17のアミノ酸配列を含むHVR-H3、
(d)配列番号23のアミノ酸配列を含むHVR-L1、
(e)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および
(f)配列番号29のアミノ酸配列を含むHVR-L3、
または
(3)
(a)配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-H1、
(b)配列番号14のアミノ酸配列を含むHVR-H2、
(c)配列番号18のアミノ酸配列を含むHVR-H3、
(d)配列番号23のアミノ酸配列を含むHVR-L1、
(e)配列番号26のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および
(f)配列番号30のアミノ酸配列を含むHVR-L3
を含む、
方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】変更
【補正の内容】
【配列表】
2024534067000001.xml
【国際調査報告】