(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-18
(54)【発明の名称】誘導性IL-2及びPD-1/PD-L1の併用療法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20240910BHJP
A61K 38/20 20060101ALI20240910BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240910BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20240910BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240910BHJP
C07K 14/55 20060101ALI20240910BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
A61K39/395 T
A61K38/20 ZNA
A61P35/00
A61P37/04
A61P43/00 121
C07K14/55
C07K16/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024510252
(86)(22)【出願日】2022-08-16
(85)【翻訳文提出日】2024-03-21
(86)【国際出願番号】 US2022040485
(87)【国際公開番号】W WO2023023070
(87)【国際公開日】2023-02-23
(32)【優先日】2021-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520446126
【氏名又は名称】ウェアウルフ セラピューティクス, インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】524061910
【氏名又は名称】エムエスディー インターナショナル ビジネス ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ウィンストン, ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】ヒックリン, ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】サルメロン-ガルシア, ホセ アンドレス
(72)【発明者】
【氏名】サイデル-デュガン, シンシア
(72)【発明者】
【氏名】ブロドキン, ヘザー
(72)【発明者】
【氏名】アイザックス, ランディ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA22
4C084BA23
4C084BA41
4C084CA53
4C084DA14
4C084MA02
4C084MA17
4C084MA44
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA06
4C084NA15
4C084ZB091
4C084ZB092
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC751
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB11
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG02
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA09
4H045DA04
4H045DA76
4H045EA20
(57)【要約】
本開示は、ペムブロリズマブ(抗PD-1抗体)と併用した誘導性IL-2プロドラッグを含む併用療法を使用してがんを治療するための方法及び組成物に関する。この方法は概して、有効量の誘導性IL-2プロドラッグ、及び抗PD-1抗体またはその抗原結合断片を、投与を必要とする被験者に投与することを含む。好ましい抗PD-1抗体はペムブロリズマブである。誘導性IL-2プロドラッグとは、化合物1、化合物2、化合物3または化合物4のことであってもよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
必要とする被験者に併用療法を投与することを含む、がんの治療方法であって、前記併用療法は、化合物1(配列番号1/配列番号5)、化合物2(配列番号2/配列番号5)、化合物3(配列番号3/配列番号5)、化合物4(配列番号4/配列番号5)または前述のいずれかのアミノ酸配列変異体、及び抗PD-1抗体またはそれらの抗原結合断片を含み、前記抗PD-1抗体またはその抗原結合断片は、(a)軽鎖CDR配列番号6、7及び8と、(b)重鎖CDR配列番号11、12及び13とを含む、前記治療方法。
【請求項2】
a)前記化合物1は、配列番号1の第1ポリペプチド鎖、及び配列番号5の第2ポリペプチド鎖を含み、前記化合物1の前記アミノ酸配列変異体は、配列番号1に対して少なくとも約80%の同一性を有する第1ポリペプチド鎖と、配列番号5に対して少なくとも約80%の同一性を有する第2ポリペプチド鎖とを含み、b)前記化合物2は、配列番号2の第1ポリペプチド鎖、及び配列番号5の第2ポリペプチド鎖を含み、前記化合物2の前記アミノ酸配列変異体は、配列番号2に対して少なくとも約80%の同一性を有する第1ポリペプチド鎖と、配列番号5に対して少なくとも約80%の同一性を有する第2ポリペプチド鎖とを含み、c)前記化合物3は、配列番号3の第1ポリペプチド鎖、及び配列番号5の第2ポリペプチド鎖を含み、前記化合物3の前記アミノ酸配列変異体は、配列番号3に対して少なくとも約80%の同一性を有する第1ポリペプチド鎖と、配列番号5に対して少なくとも約80%の同一性を有する第2ポリペプチド鎖とを含み、d)前記化合物4は、配列番号1の第1ポリペプチド鎖、及び配列番号4の第2ポリペプチド鎖を含み、前記化合物4の前記アミノ酸配列変異体は、配列番号4に対して少なくとも約80%の同一性を有する第1ポリペプチド鎖と、配列番号5に対して少なくとも約80%の同一性を有する第2ポリペプチド鎖とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記抗PD-1抗体またはその抗原結合断片は、(a)配列番号14またはその変異体を含む重鎖可変領域と、(b)配列番号9またはその変異体を含む軽鎖可変領域とを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
重鎖及び軽鎖を含む前記抗PD-1抗体を含み、前記重鎖及び前記軽鎖はそれぞれ配列番号10及び配列番号5の前記アミノ酸配列を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
ペムブロリズマブまたはペムブロリズマブ変異体である前記抗PD-1抗体を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
ペムブロリズマブ(またはバイオシミラー)である前記抗PD-1抗体を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
有効量の前記併用療法を前記被験者に投与する、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記化合物1、前記化合物2、前記化合物3、前記化合物4または前述のいずれかのアミノ酸配列変異体を、前記抗PD-1抗体またはその抗原結合断片と同時に投与する、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記抗PD-1抗体またはその抗原結合断片を、前記化合物1、前記化合物2、前記化合物3、前記化合物4または前述のいずれかのアミノ酸配列変異体の前記投与の前に投与する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記抗PD-1抗体またはその抗原結合断片を、前記化合物1、前記化合物2、前記化合物3、前記化合物4または前述のいずれかのアミノ酸配列変異体の前記投与の後に投与する、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記抗PD-1抗体またはその抗原結合断片を投与し、次いで前記抗PD-1抗体またはその抗原結合断片の前記投与の完了から約30分後に前記化合物1、前記化合物2、前記化合物3、前記化合物4または前述のいずれかのアミノ酸配列変異体を投与する、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記化合物1、前記化合物2、前記化合物3、前記化合物4または前述のいずれかのアミノ酸配列変異体を投与し、次いで前記化合物1、前記化合物2、前記化合物3、前記化合物4または前述のいずれかのアミノ酸配列変異体の前記投与の完了から約30分後に前記抗PD-1抗体またはその抗原結合断片を投与する、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記化合物1、前記化合物2、前記化合物3、前記化合物4または前述のいずれかのアミノ酸配列変異体及び前記抗PD-1抗体、またはその抗原結合断片を、静脈内投与する、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記投与は静脈内注入によるものである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記投与は、経口、非経口、静脈内、関節内、腹腔内、筋肉内、皮下、腔内、経皮、肝内、頭蓋内、噴霧/吸入、気管支鏡検査による設置による、または腫瘍内の投与である、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
約100mg~約600mgの前記抗PD-1抗体またはその抗原結合断片を約3~6週間ごとに投与する、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
200mgの前記抗PD-1抗体またはその抗原結合断片を約3週間ごとに投与する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
400mgの前記抗PD-1抗体またはその抗原結合断片を約6週間ごとに投与する、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
約1mg~約500mgの前記化合物1、前記化合物2、前記化合物3、前記化合物4または前述のいずれかのアミノ酸配列変異体を2週間ごとに投与する、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
約1mg~約240mgの前記化合物1、前記化合物2、前記化合物3、前記化合物4または前述のいずれかのアミノ酸配列変異体を2週間ごとに投与する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
約1mg、約3mg、約10mg、約30mg、約60mg、約120mgもしくは約240mgの化合物1、化合物2、化合物3、化合物4または前述のいずれかのアミノ酸配列変異体を2週間ごとに投与する、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記併用療法が第1選択療法として投与される、請求項1~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記被験者は、以前の治療または進行中の治療に対して完全奏効を達成していない、請求項1~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記以前の治療または進行中の治療には、チェックポイント阻害剤による治療が含まれる、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記チェックポイント阻害剤とは、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体のことである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記チェックポイント阻害剤とは、抗CTLA-4抗体のことである、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記がんは転移性である、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記がんは固形腫瘍を含む、請求項1~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記がんとは、肉腫または癌腫のことである、請求項1~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記がんとは、副腎皮質癌腫、肛門癌、虫垂癌、星細胞腫、基底細胞癌腫、脳腫瘍、胆管癌、膀胱癌、骨癌、乳癌、気管支腫瘍、原発不明癌腫、心臓腫瘍、子宮頸癌、脊索腫、結腸癌、結腸直腸癌、頭蓋咽頭腫、管癌腫、胎児性腫瘍、子宮内膜癌、上衣腫、食道癌、鼻腔神経芽細胞腫、線維性組織球腫、ユーイング肉腫、眼癌、細菌細胞腫瘍、胆嚢癌、胃癌、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍、妊娠性絨毛膜疾患、神経膠腫、頭頸部癌、肝細胞癌、組織球増殖症、下咽頭癌、眼球内黒色腫、島細胞腫瘍、カポジ肉腫、腎臓癌、ランゲルハンス病細胞組織球症、喉頭癌、口唇及び口腔癌、肝臓癌、上皮内小葉癌腫、肺癌、マクログロブリン血症、悪性線維性組織球腫、黒色腫、メルケル細胞癌腫、中皮腫、原発不明の転移性の扁平上皮頚部癌、NUT遺伝子に関連する正中線上の癌腫、口腔癌、多発性内分泌腫瘍症候群、菌状息肉症、骨髄異形成症候群、骨髄異形成/骨髄増殖性新生物、鼻腔及び副鼻腔癌、鼻咽頭癌、神経芽腫、非小細胞肺癌、中咽頭癌、骨肉腫、卵巣癌、膵臓癌、乳頭腫症、傍神経節腫、副甲状腺癌、陰茎癌、咽頭癌、褐色細胞腫、下垂体腫瘍、胸膜肺芽腫、前立腺癌、直腸癌、腎細胞癌、腎盂及び尿管癌、網膜芽細胞腫、ラブドイド腫瘍、唾液腺癌、セザリー症候群、皮膚癌、小細胞肺癌、小腸癌、軟部組織肉腫、脊髄腫瘍、胃の癌、T細胞リンパ腫、奇形腫瘍、精巣癌、咽喉癌、胸腺腫及び胸腺癌腫、甲状腺癌、尿道癌、子宮癌、膣癌、外陰部癌、ならびにウィルムス腫瘍のことである、請求項1~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記がんとは、結腸癌、肺癌、黒色腫、腎細胞癌腫、または乳癌のことである、請求項1~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記がんとは、黒色腫、非小細胞肺癌(NSCLC)、小細胞肺癌(SCLC)、頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)、古典的ホジキンリンパ腫(cHL)、縦隔原発大細胞型B細胞性リンパ腫(PMBCL)、尿路上皮癌腫、マイクロサテライト不安定性が高いまたはミスマッチ修復機構欠損のある癌、マイクロサテライト不安定性が高いまたはミスマッチ修復機構欠損のある結腸直腸癌、胃癌、食道癌、子宮頸癌、肝細胞癌腫(HCC)、メルケル細胞癌腫(MCC)、腎臓細胞癌腫(RCC)、子宮内膜癌腫、腫瘍変異負荷の高い癌、皮膚扁平上皮癌腫(cSCC)、トリプルネガティブ乳癌(TNBC)、または食道癌腫のことである、請求項1~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記がんとは、転移性腎明細胞癌腫または転移性皮膚悪性黒色腫のことである、請求項1~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記がんとは、非小細胞肺癌のことであり、前記方法は、前記被験者にペメトレキセド及びプラチナ化学療法剤を投与することをさらに含む、請求項1~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記がんとは、非小細胞肺癌のことであり、前記方法は、前記被験者にパクリタキセルを投与することをさらに含む、請求項1~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記がんとは、非小細胞肺癌のことであり、前記方法は、前記被験者にタンパク質結合パクリタキセルを投与することをさらに含む、請求項1~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記がんとは、頭頸部扁平上皮癌のことであり、前記方法は、前記被験者にフルオロウラシルを投与することをさらに含む、請求項1~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記がんとは、食道癌腫または胃食道接合部癌腫のことであり、前記方法は、前記被験者にプラチナベース及びフルオロピリミジンベースの化学療法剤を投与することをさらに含む、請求項1~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記がんとは、腎細胞癌腫のことであり、前記方法は、前記被験者にアキシチニブを投与することをさらに含む、請求項1~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記がんとは、子宮内膜癌腫のことであり、前記方法は、前記被験者にレンバチニブを投与することをさらに含む、請求項1~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記がんとは、トリプルネガティブ乳癌のことであり、前記方法は、前記被験者に化学療法剤を投与することをさらに含む、請求項1~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
請求項1~41のいずれか1項に記載の方法に従って、治療を必要とする被験者のがんを治療するために抗PD-1抗体またはその抗原結合断片と併用して使用するための前記化合物1、前記化合物2、前記化合物3、前記化合物4または前述のいずれかのアミノ酸配列変異体を含む医薬組成物であって、前記抗PD-1抗体またはその抗原結合断片は、(a)軽鎖CDR配列番号6、7及び8と、(b)重鎖CDR配列番号11、12及び13とを含む、前記医薬組成物。
【請求項43】
請求項1~41のいずれか1項に記載の方法に従って、治療を必要とする被験者のがんを治療するために前記化合物1、前記化合物2、前記化合物3、前記化合物4または前述のいずれかのアミノ酸配列変異体と併用して使用するための抗PD-1抗体またはその抗原結合断片を含む医薬組成物であって、前記抗PD-1抗体またはその抗原結合断片は、(a)軽鎖CDR配列番号6、7及び8と、(b)重鎖CDR配列番号11、12及び13とを含む、前記医薬組成物。
【請求項44】
化合物1、化合物2、化合物3、化合物4またはその前述のいずれかのアミノ酸配列変異体と、抗PD-1抗体またはその抗原結合断片と、適切な担体と、を含む医薬組成物であって、前記抗PD-1抗体またはその抗原結合断片は、(a)軽鎖CDR配列番号6、7及び8と、(b)重鎖CDR配列番号11、12及び13とを含む、前記医薬組成物。
【請求項45】
a)前記化合物1は、配列番号1の第1ポリペプチド鎖、及び配列番号5の第2ポリペプチド鎖を含み、前記化合物1の前記アミノ酸配列変異体は、配列番号1に対して少なくとも約80%の同一性を有する第1ポリペプチド鎖と、配列番号5に対して少なくとも約80%の同一性を有する第2ポリペプチド鎖とを含み、b)前記化合物2は、配列番号2の第1ポリペプチド鎖、及び配列番号5の第2ポリペプチド鎖を含み、前記化合物2の前記アミノ酸配列変異体は、配列番号2に対して少なくとも約80%の同一性を有する第1ポリペプチド鎖と、配列番号5に対して少なくとも約80%の同一性を有する第2ポリペプチド鎖とを含み、c)前記化合物3は、配列番号3の第1ポリペプチド鎖、及び配列番号5の第2ポリペプチド鎖を含み、前記化合物3の前記アミノ酸配列変異体は、配列番号3に対して少なくとも約80%の同一性を有する第1ポリペプチド鎖と、配列番号5に対して少なくとも約80%の同一性を有する第2ポリペプチド鎖とを含み、d)前記化合物4は、配列番号1の第1ポリペプチド鎖、及び配列番号4の第2ポリペプチド鎖を含み、前記化合物4の前記アミノ酸配列変異体は、配列番号4に対して少なくとも約80%の同一性を有する第1ポリペプチド鎖と、配列番号5に対して少なくとも約80%の同一性を有する第2ポリペプチド鎖とを含む、請求項44に記載の医薬組成物。
【請求項46】
前記抗PD-1抗体またはその抗原結合断片は、(a)配列番号14またはその変異体を含む重鎖可変領域と、(b)配列番号9またはその変異体を含む軽鎖可変領域とを含む、請求項44または45に記載の医薬組成物。
【請求項47】
重鎖及び軽鎖を含む前記抗PD-1抗体を含み、前記重鎖及び前記軽鎖はそれぞれ配列番号10及び配列番号5の前記アミノ酸配列を含む、請求項44または45に記載の医薬組成物。
【請求項48】
ペムブロリズマブまたはペムブロリズマブ変異体である前記抗PD-1抗体を含む、請求項44または45に記載の医薬組成物。
【請求項49】
ペムブロリズマブ(またはバイオシミラー)である前記抗PD-1抗体を含む、請求項44または45に記載の医薬組成物。
【請求項50】
前記医薬組成物とは、静脈内投与用の液体組成物のことである、請求項44~49のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項51】
前記医薬組成物とは、凍結乾燥組成物のことである、請求項44~49のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項52】
前記凍結乾燥組成物は、注射用の水または生理食塩水を使用して再構成するためのものであり、再構成された製剤は静脈内投与に好適である、請求項51に記載の医薬組成物。
【請求項53】
がんの治療で使用するための、化合物1、化合物2、化合物3、化合物4または前述のいずれかのアミノ酸配列変異体、ならびに(a)軽鎖CDR配列番号6、7及び8と、(b)重鎖CDR配列番号11、12及び13とを含む抗PD-1抗体またはその抗原結合断片。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書には、抗PD-1抗体またはその抗原結合断片、及び誘導性IL-2プロドラッグの併用を投与することを含む、がんの治療に有用な治療法及びがんの治療方法が開示される。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年8月17日に出願された米国仮出願第63/233,966号の利益を主張するものであり、その開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
インターロイキン-2(IL-2)は強力な免疫賦活性作用を有しており、マウスモデルの腫瘍の根絶に効果的である可能性があり、組み換え型IL-2療法(アルデスロイキン)が転移性腎細胞癌腫及び転移性黒色腫の治療としてアメリカ食品医薬品局によって承認された。アルデスロイキンは、転移性黒色腫及び腎癌の治療を受けた患者の約10%でがんの完全な退縮を実証した。残念なことに、rIL-2は、末梢で高親和性及び中親和性のIL-2受容体(それぞれ、IL-2Rα/β/γ及びIL-2Rβ/γ)に結合するため、弱い薬物動態(PK)特性、及び用量制限的な全身毒性を有している。高用量のIL-2投与の結果として重篤な低血圧及び血管漏出症候群(VLS)が生じるため、IL-2の使用は専門のケアセンターに限定され、有効レベルに達するまで用量が制限されている。(Pachella LA, et al. J Adv Pract Oncol. 2015;6(3):212-221.)これらの副作用により、推奨される治療レジメンに耐えることができる患者の数が制限され、その結果、IL-2療法の臨床上の利得が全面的に達成される。
【0004】
プロテアーゼ切断を通じて腫瘍微小環境内で条件付きで活性化され、腫瘍内で完全に活性な天然のIL-2サイトカインを放出して強力な抗腫瘍免疫応答を刺激する、IL-2の誘導型は、WO2021097376に記載されている。これらのIL-2プロドラッグは、プロテアーゼで切断可能なリンカーを介して半減期延長ドメイン(例えば、VHドメインなどの抗ヒト血清アルブミン抗体結合断片)に結合した天然IL-2分子と、末梢の正常組織上のIL-2β/γ受容体へのIL-2の結合をブロックするIL-2ブロック要素(例えば、Fabなどの抗IL-2抗体結合断片)を含む。プロテアーゼ切断可能なリンカーが切断されると、完全に活性な天然IL-2が腫瘍内で放出され、強力な抗腫瘍免疫応答を刺激する。
【0005】
免疫チェックポイント阻害剤は、T細胞の機能を調節するタンパク質である。T細胞エフェクター機能は、腫瘍を治療する免疫療法アプローチにとって重要である。しかし、腫瘍の成長、及びがんの進行に伴って、免疫抑制、及びエフェクター機能の低下がしばしば見られる。この現象の背後にある機序の1つは、がん細胞による免疫チェックポイント阻害剤の活性化であり、抗腫瘍免疫応答の抑制につながる。これは通常、がん細胞がその表面にタンパク質を発現し、このタンパク質が腫瘍微小環境内のT細胞表面の免疫チェックポイントタンパク質と相互作用してT細胞の活性を抑制し得る場合に生じる。免疫チェックポイントタンパク質には、例えば、リガンドPD-L1(B7-H1、CD274)及びPD-L2(B7-DC、CD273)に結合するPD-1;B7-1(CD80)及びB7-2(CD86)に結合するCTLA-4(CD152);ガレクチン3、LSECtin及びFGL1に結合するLAG3(CD223);リガンドCeacam1及びガレクチン9に結合するTIM3(HAVCR2);CD112及びCD155に結合するTIGIT(VSTM3、WUCAM);HVEM(TNFRSF14)、B7-H3(CD276)、B7-H4(VTCN1)、VISTA(B7-H5)、KIR、CD44(2B4)に結合するBTLA(CD272);HVEMに結合するCD160(BY55);CD252(OX-40L)に結合するCD134(TNRFSR4、OX40)が含まれる。
【0006】
PD-1は、免疫調節、及び末梢寛容の持続において重要な役割を果たしていると認識されている。PD-1は、ナイーブT、B及びNKT細胞で適度に発現され、リンパ球、単球、骨髄性細胞上のT/B細胞受容体シグナル伝達によって上方制御される(Sharpe et al., The function of programmed cell death 1 and its ligands in regulating autoimmunity and infection.Nature Immunology (2007);8:239-245)。
【0007】
PD-1の2つのリガンドとして知られているPD-L1(B7-H1)及びPD-L2(B7-DC)は、様々な組織に発生するヒトがんに発現している。例えば、卵巣癌、腎癌、結腸直腸癌、膵臓癌、肝癌、黒色腫の大規模なサンプルセットにおいて、PD-L1発現は予後不良と相関し、その後の治療に関係なく全生存率を低下させることが示された(Dong, Haidong et al., Tumor-associated B7-H1 promotes T-cell apoptosis: a potential mechanism of immune evasion. Nat Med. 2002 Aug;8(8):793-800;Yang, Wanhua et al.,PD-1 interaction contributes to the functional suppression of T-cell responses to human uveal melanoma cells in vitro.Invest Ophthalmol Vis Sci. 2008 Jun;49(6 (2008): 49: 2518-2525;Ghebeh, Hazem et al., The B7-H1 (PD-L1) T lymphocyte-inhibitory molecule is expressed in breast cancer patients with infiltrating ductal carcinoma: correlation with important high-risk prognostic factors.Neoplasia (2006) 8: 190-198;Hamanishi, Junzo et al., Programmed cell death 1 ligand 1 and tumor-infiltrating CD8+ T lymphocytes are prognostic factors of human ovarian cancer.Proc. Natl. Acad. Sci. USA (2007): 104: 3360-3365;Thompson, R Houston, and Eugene D Kwon, Significance of B7-H1 overexpression in kidney cancer. Clinical genitourin Cancer (2006): 5: 206-211;Nomi, Takeo et al., Clinical significance and therapeutic potential of the programmed death-1 ligand/programmed death-1 pathway in human pancreatic cancer.Clinical Cancer Research (2007);13:2151-2157;Ohigashi, Yuichiro et al., Clinical significance of programmed death-1 ligand-1 and programmed death-1 ligand 2 expression in human esophageal cancer.Clin. Cancer Research (2005): 11: 2947-2953;Inman, Brant A et al.,PD-L1(B7-H1) expression by urothelial carcinoma of the bladder and BCG-induced granulomata: associations with localized stage progression.Cancer (2007): 109: 1499-1505;Shimauchi, Takatoshi et al., Augmented expression of programmed death-1 in both neoplasmatic and nonneoplastic CD4+ T-cells in adult T-cell Leukemia/ Lymphoma.Int. J. Cancer (2007): 121:2585-2590;Gao, Qiang et al., Overexpression ofPD-L1 significantly associates with tumor aggressiveness and postoperative recurrence in human hepatocellular carcinoma.Clinical Cancer Research (2009) 15: 971-979;Nakanishi, Juro et al., Overexpression of B7-H1 (PD-L1) significantly associates with tumor grade and postoperative prognosis in human urothelial cancers.Cancer Immunol Immunother. (2007) 56: 1173-1182;Hino et al., Tumor cell expression of programmed cell death-1 is a prognostic factor for malignant melanoma.Cancer (2010): 00: 1-9)。
【0008】
同様に、腫瘍浸潤リンパ球上のPD-1発現は、乳癌及び黒色腫における機能不全のT細胞をマークすること(Ghebeh, Hazem et al., Foxp3+tregs and B7-H1+/PD-1+ T lymphocytes co-infiltrate the tumor tissues of high-risk breast cancer patients: implication for immunotherapy.BMC Cancer. 2008 Feb 23;8:57;Ahmadzadeh, Mojgan et al., Tumor antigen-specific CD8 T cells infiltrating the tumor express high levels of PD-1 and are functionally impaired.Blood (2009) 114: 1537-1544)、及び腎癌における予後不良と相関すること(Thompson, R Houston et al.,PD-1 is expressed by tumor infiltrating cells and is associated with poor outcome for patients with renal carcinoma.Clinical Cancer Research (2007) 15: 1757-1761)が見出された。したがって、PD-L1発現腫瘍細胞は、PD-1発現T細胞と相互作用して、T細胞の活性化と免疫学的監視の回避を弱め、それによって腫瘍に対する免疫応答を弱めることに寄与すると提案されている。
【0009】
PD-1軸を標的とする免疫チェックポイント療法は、複数のヒト癌における臨床応答で画期的な改善をもたらした(Brahmer et al., N Engl J Med 2012, 366: 2455-65;Garon et al.N Engl J Med 2015, 372: 2018-28;Hamid et al., N Engl J Med 2013, 369: 134-44;Robert et al., Lancet 2014, 384: 1109-17;Robert et al., N Engl J Med 2015, 372: 2521-32;Robert et al., N Engl J Med 2015, 372: 320-30;Topalian et al., N Engl J Med 2012, 366: 2443-54;Topalian et al., J Clin Oncol 2014, 32: 1020-30;Wolchok et al., N Engl J Med 2013, 369: 122-33)。
免疫チェックポイントタンパク質に結合し、その免疫抑制活性を阻害する抗体などの治療剤が抗腫瘍剤として開発されてきた。現在、そのような薬剤のいくつかががん治療用に市販されており、その例には、抗PD1抗体ペムブロリズマブ(KEYTRUDA(商標))、Merck and Co.,Inc.,Rahway,NJ,USA、ドスタルリマブ(JEMPERLI)、セミプリマブ-rwlc(LIBATYO)、ニボルマブ(OPDIVO(商標))、Bristol-Myers Squibb Company,Princeton,NJ,USA)、カムレリズマブ、チスレリズマブ、トリパリマブ、シンチリマブ(TYVYT);抗PD-L1抗体アベルマブ(BAVENCIO)、デュルバルマブ(IMFINZI)及びアテゾリズマブ(TECENTRIQ);抗CTLA-4抗体イピリムマブ(YERVOY)が含まれる。このような免疫チェックポイント阻害剤を用いる治療は、がん治療に利点を提供するが、全体的な成功率は低いままであり、再発が起こり、チェックポイント阻害に対する耐性が生じる。がんを治療するための改善された方法に対する医療ニーズは満たされていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Pachella LA, et al. J Adv Pract Oncol. 2015;6(3):212-221.
【非特許文献2】Sharpe et al., The function of programmed cell death 1 and its ligands in regulating autoimmunity and infection.Nature Immunology (2007);8:239-245
【非特許文献3】Dong, Haidong et al., Tumor-associated B7-H1 promotes T-cell apoptosis: a potential mechanism of immune evasion. Nat Med. 2002 Aug;8(8):793-800
【非特許文献4】Yang, Wanhua et al.,PD-1 interaction contributes to the functional suppression of T-cell responses to human uveal melanoma cells in vitro.Invest Ophthalmol Vis Sci. 2008 Jun;49(6 (2008): 49: 2518-2525
【非特許文献5】Ghebeh, Hazem et al., The B7-H1 (PD-L1) T lymphocyte-inhibitory molecule is expressed in breast cancer patients with infiltrating ductal carcinoma: correlation with important high-risk prognostic factors.Neoplasia (2006) 8: 190-198
【非特許文献6】Hamanishi, Junzo et al., Programmed cell death 1 ligand 1 and tumor-infiltrating CD8+ T lymphocytes are prognostic factors of human ovarian cancer.Proc. Natl. Acad. Sci. USA (2007): 104: 3360-3365
【非特許文献7】hompson, R Houston, and Eugene D Kwon, Significance of B7-H1 overexpression in kidney cancer. Clinical genitourin Cancer (2006): 5: 206-211
【非特許文献8】Nomi, Takeo et al., Clinical significance and therapeutic potential of the programmed death-1 ligand/programmed death-1 pathway in human pancreatic cancer.Clinical Cancer Research (2007);13:2151-2157
【非特許文献9】Ohigashi, Yuichiro et al., Clinical significance of programmed death-1 ligand-1 and programmed death-1 ligand 2 expression in human esophageal cancer.Clin. Cancer Research (2005): 11: 2947-2953
【非特許文献10】Inman, Brant A et al.,PD-L1(B7-H1) expression by urothelial carcinoma of the bladder and BCG-induced granulomata: associations with localized stage progression.Cancer (2007): 109: 1499-1505
【非特許文献11】Shimauchi, Takatoshi et al., Augmented expression of programmed death-1 in both neoplasmatic and nonneoplastic CD4+ T-cells in adult T-cell Leukemia/ Lymphoma.Int. J. Cancer (2007): 121:2585-2590
【非特許文献12】Gao, Qiang et al., Overexpression ofPD-L1 significantly associates with tumor aggressiveness and postoperative recurrence in human hepatocellular carcinoma.Clinical Cancer Research (2009) 15: 971-979
【非特許文献13】Nakanishi, Juro et al., Overexpression of B7-H1 (PD-L1) significantly associates with tumor grade and postoperative prognosis in human urothelial cancers.Cancer Immunol Immunother. (2007) 56: 1173-1182
【非特許文献14】Hino et al., Tumor cell expression of programmed cell death-1 is a prognostic factor for malignant melanoma.Cancer (2010): 00: 1-9
【発明の概要】
【0011】
本開示は、誘導性IL-2プロドラッグ及び抗PD-1抗体、例えばペムブロリズマブを使用してがんを治療するための組成物及び方法に関する。この方法は概して、有効量の誘導性IL-2プロドラッグ、及び抗PD-1抗体またはその抗原結合断片を、投与を必要とする被験者に投与することを含む。好ましい抗PD-1抗体はペムブロリズマブである。誘導性IL-2プロドラッグとは、化合物1、化合物2、化合物3または化合物4のことであってもよい。
【0012】
誘導性IL-2プロドラッグは条件付きで活性になる。誘導性IL-2プロドラッグは2つのポリペプチド鎖を含む。第1ポリペプチド鎖は、アミノ末端からカルボキシ末端までを、すなわちIL-2ポリペプチド(プロテアーゼ切断可能なリンカー)抗ヒト血清アルブミン(HSA)結合単一抗体可変ドメイン(好ましくはプロテアーゼ切断可能なリンカー)IL-2に結合する抗体のVH及びCH1を含む。第2ポリペプチド鎖は、IL-2に結合する抗体のVL及びCLを含み、第1ポリペプチド鎖のVH及びCH1と一緒に、IL-2ポリペプチドに結合するFabを形成する。誘導性IL-2プロドラッグが、関心の部位(例えば、腫瘍微小環境)にない場合、プロドラッグは通常、無損のまま残っている。無損プロドラッグが、IL-2受容体アゴニスト活性を弱めている。誘導性IL-2プロドラッグが、関心の部位(腫瘍微小環境など)にある場合、プロテアーゼ切断可能リンカーは関心の部位で活性なプロテアーゼによって切断され、非弱力化型のIL-2が放出される。この条件付き活性は、非誘導性IL-2療法に付随する全身毒性を制限しながら、IL-2の免疫刺激効果を維持する。無損IL-2プロドラッグには半減期を延長する要素が含まれているが、切断後の非弱力化型のIL-2には含まれていない。その結果、IL-2の短い半減期により、関心の部位の外側での毒性が効果的に制限される。
【0013】
理論に束縛されるものではないが、誘導性IL-2プロドラッグの免疫賦活性効果、及び抗PD-1抗体または抗原結合断片によって引き起こされる免疫抑制の予防により、被験者の免疫系がより効果的にがんと闘うことができる可能性がある。
【0014】
本明細書には、がんを治療する方法が記載される。この方法は、併用療法を、必要とする被験者に投与することを含み、この併用療法は、化合物1、化合物2、化合物3、化合物4または前述のいずれかのアミノ酸配列変異体、及び抗PD-1抗体またはその抗原結合断片を含み、抗PD-1抗体またはその抗原結合断片は、(a)軽鎖CDR配列番号6、7及び8と、(b)重鎖CDR配列番号11、12及び13とを含む。本明細書に開示される方法は、本明細書に開示される有効量の併用療法を、必要とする被験者に投与することを含む。
【0015】
化合物1は、配列番号1の第1ポリペプチド鎖、及び配列番号5の第2ポリペプチド鎖を含み、化合物1のアミノ酸配列変異体は、配列番号1に対して少なくとも約80%の同一性を有する第1ポリペプチド鎖を含むことができ、第2ポリペプチド鎖は配列番号5に対して少なくとも約80%の同一性を含むことができる。化合物2は、配列番号2の第1ポリペプチド鎖、及び配列番号5の第2ポリペプチド鎖を含み、化合物2のアミノ酸配列変異体は、配列番号2に対して少なくとも約80%の同一性を有する第1ポリペプチド鎖、及び配列番号5に対して少なくとも約80%の同一性を有する第2ポリペプチド鎖を含むことができる。化合物3は、配列番号3の第1ポリペプチド鎖、及び配列番号5の第2ポリペプチド鎖を含み、化合物3のアミノ酸配列変異体は、配列番号3に対して少なくとも約80%の同一性を有する第1ポリペプチド鎖、及び配列番号5に対して少なくとも約80%の同一性を有する第2ポリペプチド鎖を含むことができる。化合物4は、配列番号1の第1ポリペプチド鎖、及び配列番号4の第2ポリペプチド鎖を含み、化合物4のアミノ酸配列変異体は、配列番号4に対して少なくとも約80%の同一性を有する第1ポリペプチド鎖、及び配列番号5に対して少なくとも約80%の同一性を有する第2ポリペプチド鎖を含むことができる。
【0016】
抗PD-1抗体またはその抗原結合断片は、(a)配列番号14またはその変異体を含む重鎖可変領域と、(b)配列番号9またはその変異体を含む軽鎖可変領域とを含むことができる。抗PD-1抗体は、配列番号10のアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号5のアミノ酸配列を含む軽鎖を含むことができる。抗PD-1抗体とは、ペムブロリズマブ、ペムブロリズマブ変異体またはバイオシミラーのことであってもよい。
【0017】
化合物1、化合物2、化合物3、化合物4またはアミノ酸配列変異体を、抗PD-1抗体またはその抗原結合断片の前、同時、または後に投与することができる。例えば、抗PD-1抗体またはその抗原結合断片を投与することができ、次いで抗PD-1抗体またはその抗原結合断片の投与完了から約30分後に化合物1、化合物2、化合物3、化合物4またはアミノ酸配列変異体を投与することができる。
【0018】
化合物1、化合物2、化合物3、化合物4または前述のいずれかのアミノ酸配列変異体、及び抗PD-1抗体またはその抗原結合断片を、静脈内投与することができる。例えば、静脈内注入によって投与を行うことができる。他の投与経路には、経口、非経口、静脈内、関節内、腹腔内、筋肉内、皮下、腔内、経皮、肝内、頭蓋内、噴霧/吸入、気管支鏡検査による設置による、または腫瘍内が含まれるが、これらに限定されない。
【0019】
約100mg~約600mgの抗PD-1抗体またはその抗原結合断片を、治療期間中約3~6週間ごとに投与することができる。場合によっては、患者には、200mg、240mg、400mg、480mg、720mg、または2mg/kgの抗PD-1抗体が投与される。場合によっては、200mgの抗PD-1抗体またはその抗原結合断片を、治療期間中約3週間ごとに投与することができる。場合によっては、400mgの抗PD1抗体またはその抗原結合断片を、治療期間中約6週間ごとに投与することができる。場合によっては、ヒト患者には3週間に1回、200mgのペムブロリズマブが投与される。場合によっては、ヒト患者には3週間に1回、2mg/kgのペムブロリズマブが投与される。場合によっては、ヒト患者には6週間に1回、400mgのペムブロリズマブが投与される。
【0020】
約1mg~約500mgの化合物1、化合物2、化合物3、化合物4または前述のいずれかのアミノ酸配列変異体を、治療期間中2週間ごとに投与することができる。例えば、1mg~約240mgの化合物1、化合物2、化合物3、化合物4または前述のいずれかのアミノ酸配列変異体を、治療期間中2週間ごとに投与することができる。例えば、1mg、約3mg、約10mg、約30mg、約60mg、約120mgもしくは約240mgの化合物1、化合物2、化合物3、化合物4または前述のいずれかのアミノ酸配列変異体を、治療期間中2週間ごとに投与することができる。
【0021】
この併用を、第1選択療法として投与することができる。本明細書に開示される方法に好適な被験者は、以前の治療または進行中の治療に対して完全奏効を達成できなかった可能性がある。以前の治療または進行中の治療の例には、チェックポイント阻害剤による治療が含まれ得る。チェックポイント阻害剤とは、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体のことであってもよい。チェックポイント阻害剤とは、ペムブロリズマブのことであってもよい。
【0022】
チェックポイント阻害剤とは、抗CTLA-4抗体のことであってもよい。
【0023】
本明細書に開示される方法による治療に好適ながんには、副腎皮質癌腫、肛門癌、虫垂癌、星細胞腫、基底細胞癌腫、脳腫瘍、胆管癌、膀胱癌、骨癌、乳癌、気管支腫瘍、原発不明癌腫、心臓腫瘍、子宮頸癌、脊索腫、結腸癌、結腸直腸癌、頭蓋咽頭腫、管癌腫、胎児性腫瘍、子宮内膜癌、上衣腫、食道癌、鼻腔神経芽細胞腫、線維性組織球腫、ユーイング肉腫、眼癌、細菌細胞腫瘍、胆嚢癌、胃癌、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍、妊娠性絨毛膜疾患、神経膠腫、頭頸部癌、肝細胞癌、組織球増殖症、下咽頭癌、眼球内黒色腫、島細胞腫瘍、カポジ肉腫、腎臓癌、ランゲルハンス病細胞組織球症、喉頭癌、口唇及び口腔癌、肝臓癌、上皮内小葉癌腫、肺癌、マクログロブリン血症、悪性線維性組織球腫、黒色腫、メルケル細胞癌腫、中皮腫、原発不明の転移性の扁平上皮頚部癌、NUT遺伝子に関連する正中線上の癌腫、口腔癌、多発性内分泌腫瘍症候群、菌状息肉症、骨髄異形成症候群、骨髄異形成/骨髄増殖性新生物、鼻腔及び副鼻腔癌、鼻咽頭癌、神経芽腫、非小細胞肺癌、中咽頭癌、骨肉腫、卵巣癌、膵臓癌、乳頭腫症、傍神経節腫、副甲状腺癌、陰茎癌、咽頭癌、褐色細胞腫、下垂体腫瘍、胸膜肺芽腫、前立腺癌、直腸癌、腎細胞癌、腎盂及び尿管癌、網膜芽細胞腫、ラブドイド腫瘍、唾液腺癌、セザリー症候群、皮膚癌、小細胞肺癌、小腸癌、軟部組織肉腫、脊髄腫瘍、胃の癌、T細胞リンパ腫、奇形腫瘍、精巣癌、咽喉癌、胸腺腫及び胸腺癌腫、甲状腺癌、尿道癌、子宮癌、膣癌、外陰部癌、ならびにウィルムス腫瘍が含まれるが、これらに限定されない。
【0024】
特定の実施形態では、がんとは、黒色腫、非小細胞肺癌(NSCLC)、小細胞肺癌(SCLC)、頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)、古典的ホジキンリンパ腫(cHL)、縦隔原発大細胞型B細胞性リンパ腫(PMBCL)、尿路上皮癌腫、マイクロサテライト不安定性が高いまたはミスマッチ修復機構欠損のある癌、マイクロサテライト不安定性が高いまたはミスマッチ修復機構欠損のある結腸直腸癌、胃癌、食道癌、子宮頸癌、肝細胞癌腫(HCC)、メルケル細胞癌腫(MCC)、腎臓細胞癌腫(RCC)、子宮内膜癌腫、腫瘍変異負荷の高い癌、皮膚扁平上皮癌腫(cSCC)、トリプルネガティブ乳癌(TNBC)、または結腸直腸癌のことであってもよい。
【0025】
特定の実施形態では、がんは、黒色腫、非小細胞肺癌、頭頸部扁平上皮癌、古典的ホジキンリンパ腫、縦隔原発大細胞型B細胞性リンパ腫、尿路上皮癌腫、高マイクロサテライト不安定性またはミスマッチ修復機構欠損癌、胃癌、食道癌、子宮頸癌、肝細胞癌腫、メルケル細胞癌腫、腎細胞癌腫、子宮内膜癌腫、高い突然変異負荷を有する腫瘍を特徴とする癌、皮膚扁平上皮癌腫、トリプルネガティブ乳癌からなる群から選択される。
【0026】
がんとは、転移性、固形腫瘍、肉腫または癌腫のことであってもよい。がんとは、結腸癌、肺癌、黒色腫、腎細胞癌腫、または乳癌のことであってもよい。がんとは、転移性腎明細胞癌腫または転移性皮膚悪性黒色腫のことであってもよい。
【0027】
がんとは、非小細胞肺癌のことであってもよく、方法は、被験者にペメトレキセド及びプラチナ化学療法剤を投与することをさらに含み得る。例えば、化学療法剤とは、パクリタキセルまたはタンパク質結合パクリタキセルのことであってもよい。がんとは、頭頸部扁平上皮癌のことであってもよく、方法は、被験者にフルオロウラシルを投与することをさらに含み得る。がんとは、食道癌腫または胃食道接合部癌腫のことであってもよく、方法は、プラチナベース及びフルオロピリミジンベースの化学療法剤を被験者に投与することをさらに含み得る。がんとは、腎細胞癌腫のことであってもよい。
【0028】
がんとは、子宮内膜癌腫のことであってもよい。がんとは、トリプルネガティブ乳癌のことであってもよく、方法は、被験者に化学療法剤を投与することをさらに含み得る。
【0029】
本開示はまた、ペムブロリズマブ及びペムブロリズマブ変異体などのPD-1アンタゴニストと併用した誘導性IL-2プロドラッグを含む医薬組成物にも関する。この医薬組成物を使用して、本明細書に開示される方法に従ってがんを治療することができる。この医薬組成物とは、静脈内投与用の液体組成物のことであってもよい。代替的に、組成物とは、凍結乾燥組成物のことであってもよい。凍結乾燥組成物を、注射用の水または生理食塩水を使用して再構成することができ、再構成された製剤は静脈内投与に好適である可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】MC38腫瘍を移植され、種々の用量レベルの化合物1、非切断可能リンカーを有するIL-2プロドラッグ(比較例1-NC)、または賦形剤のみで処置されたマウスにおける平均腫瘍体積の進行を示すグラフである。
【
図2】MC38腫瘍移植40日後に動物から採取した脾臓中の腫瘍特異的CD8+T細胞の量を示すチャートである。動物は、誘導性IL-2プロドラッグまたは賦形剤のみで治療された。四量体染色を使用して腫瘍特異的CD8+T細胞を特定し、それらの細胞の記憶マーカーを検査した。
【
図3】誘導性IL-2プロドラッグによる処置後に、ナイーブマウス、または以前に完全なMC38腫瘍退縮があったマウスにおける腫瘍体積の進行を示すグラフである。最初の移植から60日後に、マウスにMC38腫瘍細胞を再投与した。再投与中に治療は施されなかった。
【
図4】MC38腫瘍を移植され、誘導性IL-2プロドラッグまたは賦形剤のみのいずれかで処置されたマウスから抽出された腫瘍における様々な免疫細胞種類の細胞数を示す一連のチャートである。
【
図5】MC38腫瘍を有するマウスに誘導性IL-2プロドラッグを投与した後の様々な時点で収集された血漿及び腫瘍サンプル中の無損誘導性IL-2プロドラッグ及び遊離IL-2レベルを示す一連のグラフである。
【
図6】非ヒト霊長類に、0.05mg/kgから1.25mg/kgまで増加量の化合物1を週1回、2週間投与した後の、化合物1またはrIL-2の血漿曝露を示す一連のグラフである。
【
図7-1】マウスを100μgの化合物1、200μgの化合物1、または賦形剤のみで処置したB16F10腫瘍モデルにおける腫瘍体積の進行を示すグラフである。1x10
5個の腫瘍細胞を動物の脇腹に移植し、腫瘍の増殖をモニタリングした。ひとたび腫瘍が平均体積30~60mm
3に達したら、動物を無作為に抽出して投与した。腫瘍体積及び体重を週に3回記録した。
【
図7-2】マウスを100μgの化合物1、200μgの抗PD-1抗体(RMP1-14)単独、100μgの化合物1及び200μgの抗PD-1抗体(RMP1-14)、または賦形剤のみで処置したB16F10腫瘍モデルにおける腫瘍体積の進行を示すグラフである。1x10
5個の腫瘍細胞を動物の脇腹に移植し、腫瘍の増殖をモニタリングした。ひとたび腫瘍が平均体積30~60mm
3に達したら、動物を無作為に抽出して投与した。腫瘍体積及び体重を週に3回記録した。
【
図8】マウスを化合物1、化合物1及びRMP1-14、または賦形剤のみで処置したB16F10腫瘍モデルにおける体重の進行を示すグラフである。1x10
5個の腫瘍細胞を動物の脇腹に移植し、腫瘍の増殖をモニタリングした。ひとたび腫瘍が平均体積30~60mm
3に達したら、動物を無作為に抽出して投与した。体重を週に3回記録した。
【
図9】実施例2に記載の臨床試験の治験デザイン概略図である。
【
図10-1】賦形剤(PBS、丸)、誘導性IL-2プロドラッグ(化合物1、四角)、抗PD-1(三角)、または誘導性IL-2プロドラッグ(化合物1)及び抗PD-1(ダイヤモンド)で処置したマウスにおける平均腫瘍体積を示すグラフである。投与スケジュールも示されている(矢印)。
【
図10-2】賦形剤で処置された個々のマウスにおける腫瘍体積のグラフである。
【
図10-3】誘導性IL-2プロドラッグ(化合物1)で処置された個々のマウスにおける腫瘍体積のグラフである。
【
図10-4】抗PD-1で処置された個々のマウスにおける腫瘍体積のグラフである。
【
図10-5】誘導性IL-2プロドラッグ(化合物1)及び抗PD-1で処置された個々のマウスにおける腫瘍体積のグラフである。
【
図10-6】賦形剤(PBS、丸)、誘導性IL-2プロドラッグ(化合物1、四角)、抗PD-1(三角)、ならびに誘導性IL-2プロドラッグ及び抗PD-1(ダイヤモンド)で処置したマウスにおける平均体重を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本開示は、ペムブロリズマブ及びペムブロリズマブ変異体などのPD-1アンタゴニストと併用した誘導性IL-2プロドラッグを含む併用療法を使用してがんを治療するための方法及び組成物に関する。
【0032】
定義と略語
他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、特許請求される主題が属する当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。前述の一般的な説明及び以下の詳細な説明は、例示及び説明にすぎず、請求される主題を限定するものではないことを理解するべきである。参照により本明細書に組み込まれているいずれかの資料が本開示の明示的な内容と矛盾する場合、明示的な内容が優先する。本出願では、特に別段の記載がない限り、単数形の使用には複数形も含まれる。本明細書及び付属の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈上、別途明確に指示されない限り、複数形の指示対象を含むことに留意されなければならない。本出願では、文脈上別段の要求がない限り、「または」の使用は「及び/または」を意味する。更に、「含むこと(including)」という用語、ならびに「含む(include)」、「含む(includes)」、及び「含まれる(included)」等の他の形態の使用は、限定的でない。
【0033】
本明細書で使用される節の見出しは、構成目的のみのためであり、記載される主題を限定するものと解釈されるべきではない。
【0034】
本明細書における「いくつかの実施形態」、「ある実施形態」、「一実施形態」、または「他の実施形態」への言及は、実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造、または特性が、本発明の少なくともいくつかの実施形態に含まれることを意味しており、必ずしもすべての実施形態に含まれることを意味していない。「含む(comprising)」、または「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、もしくは「からなる(comprised of)」などの変形は、明細書及び特許請求の範囲全体を通じて、包括的な意味で使用される。つまり、記載された特徴の存在を明確にするが、明示的な表現または必要な含意により文脈上別段の要求がある場合を除き、本発明のいずれかの実施形態の動作または有用性を実質的に高める可能性があるさらなる特徴の存在または追加を排除するものではないという意味で使用される。
【0035】
誘導性IL-2プロドラッグ
本開示の方法及び組成物で使用する誘導性IL-2プロドラッグは、腫瘍学におけるサイトカインの臨床使用を著しく制限してきた毒性及び短い半減期の問題を克服する。誘導性IL-2プロドラッグには、IL-2Rα/β/γ及びIL-2Rβ/γへの結合及びそれらを通るシグナル伝達の活性化など、天然IL-2の受容体アゴニスト活性を有するIL-2ポリペプチドが含まれているが、誘導性プロドラッグであるため、サイトカイン受容体アゴニスト活性が弱められ、循環半減期が延長される。プロドラッグには、腫瘍微小環境に関連し、典型的には腫瘍微小環境に豊富に存在するか、または選択的に存在するプロテアーゼによって切断されるプロテアーゼ切断配列が含まれる。したがって、誘導性IL-2プロドラッグは腫瘍微小環境で優先的(または選択的)かつ効率的に切断されて活性なIL-2を放出し、IL-2活性を腫瘍微小環境に実質的に制限する。切断により放出されるIL-2は短い半減期を有し、天然に生じるIL-2の半減期と実質的に同様であり、IL-2活性を腫瘍微小環境にさらに制限する。たとえ誘導性IL-2プロドラッグの半減期が延長されたとしても、循環プロドラッグがIL-2活性を弱め、活性なIL-2が腫瘍微小環境に限定されるため、毒性は劇的に低減または排除される。
【0036】
誘導性IL-2プロドラッグは2つのポリペプチド鎖を含む。第1ポリペプチド鎖は、アミノ末端からカルボキシ末端までを、すなわちIL-2ポリペプチド(プロテアーゼ切断可能なリンカー)抗ヒト血清アルブミン(HSA)結合単一抗体可変ドメイン(好ましくはプロテアーゼ切断可能なリンカー)IL-2に結合する抗体のVH及びCH1を含む。第2ポリペプチド鎖は、IL-2に結合する抗体のVL及びCLを含み、第1ポリペプチド鎖のVH及びCH1と一緒に、IL-2ポリペプチドに結合するFabを形成する。化合物1、2、3及び4は、本開示に従って使用するための誘導性IL-2プロドラッグの具体的な例である。化合物1、2、3及び4、ならびにそれらの活性に関する追加の詳細は、WO2021/097376に開示されている。
【表1】
【0037】
末梢において弱められたIL-2活性を保持し、腫瘍微小環境においてプロテアーゼ切断により活性なIL-2を放出する化合物1、2、3及び4のアミノ酸配列変異体も、本開示に従って使用することができる。例えば、プロドラッグは、配列番号1との少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%のアミノ酸配列同一性を有する第1ポリペプチドと、配列番号5との少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%のアミノ酸配列同一性を有する第2ポリペプチドとを含むことができる。
【0038】
プロドラッグは、配列番号2との少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%のアミノ酸配列同一性を有する第1ポリペプチドと、配列番号5との少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%のアミノ酸配列同一性を有する第2ポリペプチドとを含むことができる。
【0039】
プロドラッグは、配列番号3との少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%のアミノ酸配列同一性を有する第1ポリペプチドと、配列番号5との少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%のアミノ酸配列同一性を有する第2ポリペプチドとを含むことができる。
【0040】
プロドラッグは、配列番号4との少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%のアミノ酸配列同一性を有する第1ポリペプチドと、配列番号5との少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%のアミノ酸配列同一性を有する第2ポリペプチドとを含むことができる。
【0041】
すべてのアミノ酸配列変異体プロドラッグについて、プロテアーゼ切断部位がアミノ酸置換を含まないか、または保存的アミノ酸置換のみを含むことで、配列変異体プロドラッグが腫瘍微小環境で切断され、対応する親プロドラッグと実質的に同じ程度でIL-2を放出することが好ましい。同様に、抗HAS単一可変ドメイン及び抗IL2 Fabの相補性決定領域は、アミノ酸置換を含まないか、または保存的アミノ酸置換のみを含むことで、a)配列変異体プロドラッグの血清半減期は、対応する親プロドラッグと実質的に同じになり、b)配列変異体プロドラッグのIL-2アゴニスト活性の減弱は、対応する親プロドラッグと実質的に同じになることが好ましい。
【0042】
【0043】
PD-1アンタゴニスト
「ペムブロリズマブ」という言葉は、Merck&Co.,Inc.(Rahway,NJ,USA)によってブランド名「Keytruda」で販売されているヒト化抗PD-1抗体を指す国際一般名である。ペムブロリズマブ(以前はMK-3475、SCH900475及びランブロリズマブとして知られていた)は、本明細書では「ペンブロ」とも呼ばれ、WHO Drug Information, Vol. 27, No. 2, pages 161-162 (2013)に記載された構造を有し、表3に記載されている重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列及びCDRを含むヒト化IgG4 mAbである。ペムブロリズマブは、Prescribing Information for KEYTRUDA(商標)(Merck&Co.,Inc.,Rahway,NJ,USA、最初の米国承認は2014年、更新は2022年6月)に記載されているように、米国FDAによって承認されている。
【0044】
いずれの治療方法でも使用される「PD-1アンタゴニスト」または「抗PD-1抗体」は、がん細胞上に発現するPD-L1の、免疫細胞(T細胞、B細胞またはNKT細胞)上に発現するPD-1への結合をブロックし、好ましくは、がん細胞上に発現するPD-L2の、免疫細胞に発現するPD-1への結合もブロックするあらゆる化学化合物または生物分子を意味する。PD-1及びそのリガンドの代替名または同義語には、PD-1の場合はPDCD1、PD1、CD279及びSLEB2が、PD-L1の場合はPDCD1L1、PDL1、B7H1、B7-4、CD274及びB7-Hが、PD-L2の場合はPDCD1L2、PDL2、B7-DC、Btdc及びCD273が含まれる。個々のヒトが治療される本発明の治療方法、薬剤及び使用のいずれにおいても、PD-1アンタゴニストはヒトPD-L1のヒトPD-1への結合をブロックし、好ましくは、ヒトPD-L1及びPD-L2の両方のヒトPD-1への結合もブロックする。ヒトPD-1アミノ酸配列は、NCBI Locus No.: NP_005009に記載されている。ヒトPD-L1及びPD-L2のアミノ酸配列は、それぞれNCBI Locus No.: NP_054862及びNP_079515に記載されている。
【0045】
本発明の治療方法、薬剤及び使用において有用なPD-1アンタゴニストは、モノクローナル抗体(mAb)またはその抗原結合断片を含み、これはPD-1またはPD-L1に特異的に結合し、好ましくはヒトPD-1またはヒトPD-L1に特異的に結合する。mAbは、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体であってもよく、ヒト定常領域を含んでもよい。いくつかの実施形態では、ヒト定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4の定常領域からなる群から選択され、いくつかの実施形態では、ヒト定常領域は、IgG1またはIgG4の定常領域である。いくつかの実施形態では、抗原結合断片は、Fab、Fab’-SH、F(ab’)2、scFv及びFv断片からなる群から選択される。
【0046】
本発明の治療方法、薬剤及び使用においてPD-1アンタゴニストとして有用な特定の抗ヒトPD-1 mAbは、ペムブロリズマブである。ペムブロリズマブは、プログラム細胞死1(PD-1)受容体への高い結合特異性を有するが故にプログラム細胞死リガンド1(PD-L1)及びプログラム細胞死リガンド2(PD-L2)との相互作用を阻害する強力なヒト化IgG4モノクローナル抗体である。PD-1リガンドは一部の腫瘍で高レベルで発現しており、PD-1/PD-1リガンド経路を通るシグナル伝達が腫瘍のT細胞免疫学的監視の不活性化に寄与する可能性がある。ペムブロリズマブはPD-1に結合し、PD-L1及びPD-L2との相互作用をブロックし、抗腫瘍免疫応答を含む免疫応答のPD-1経路媒介阻害を解除する。ペムブロリズマブは、多くのがんの適応症にわたって患者の治療に適応されており、そのがんには、黒色腫、非小細胞肺癌(NSCLC)、小細胞肺癌(SCLC)、頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)、古典的ホジキンリンパ腫(cHL)、縦隔原発大細胞型B細胞性リンパ腫(PMBCL)、尿路上皮癌腫、マイクロサテライト不安定性が高いまたはミスマッチ修復機構欠損のある癌、マイクロサテライト不安定性が高いまたはミスマッチ修復機構欠損のある結腸直腸癌、胃癌、食道癌、子宮頸癌、肝細胞癌腫(HCC)、メルケル細胞癌腫(MCC)、腎臓細胞癌腫(RCC)、子宮内膜癌腫、腫瘍変異負荷の高い癌、皮膚扁平上皮癌腫(cSCC)、及びトリプルネガティブ乳癌(TNBC)が含まれる。ペムブロリズマブの重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列を表3に示す。米国特許第8,354,509号及び第8,900,587号を参照されたい。両方とも参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0047】
ペムブロリズマブの変異体またはバイオシミラーも、本発明の治療方法、薬剤及び使用に使用してもよい。本明細書で使用する場合、「ペムブロリズマブ変異体」とは、軽鎖CDRの外側にある位置での3個、2個または1個の保存的アミノ酸置換と、重鎖CDRの外側に位置する6個、5個、4個、3個、2個または1個の保存的アミノ酸置換とを有することを除いて(例えば、変異の位置はFR領域または定常領域にある)、ペムブロリズマブのものと実質的に同一の重鎖及び軽鎖配列を含むが、場合によっては重鎖のC末端リジン残基が欠失しているモノクローナル抗体を意味する。言い換えれば、ペムブロリズマブ及びペムブロリズマブ変異体は同一のCDR配列を含むが、それぞれ、それらの完全長軽鎖配列及び重鎖配列における3個または6個以下の他の位置に保存的アミノ酸置換を有するため互いに異なる。ペムブロリズマブ変異体は、以下の特性に関して、ペムブロリズマブと実質的に同じである:すなわち、以下の特性とはPD-1に対する結合親和性、ならびにPD-L1及びPD-L2のそれぞれのPD-1への結合をブロックする能力である。
【0048】
本発明の治療方法、薬剤及び使用のいくつかの実施形態では、PD-1アンタゴニストは、(a)軽鎖CDR配列番号6、7及び8と、(b)重鎖CDR配列番号11、12及び13とを含むモノクローナル抗体またはその抗原結合断片である。
【0049】
本発明の治療方法、薬剤及び使用のいくつかの実施形態では、PD-1アンタゴニストは、(a)配列番号14またはその変異体を含む重鎖可変領域と、(b)配列番号9またはその変異体を含む軽鎖可変領域とを含むモノクローナル抗体またはその抗原結合断片である。重鎖可変領域配列の変異体は、フレームワーク領域(すなわち、CDRの外側)に最大17個の保存的アミノ酸置換を有することを除いて参照配列と同一であり、好ましくはフレームワーク領域内に10個、9個、8個、7個、6個または5個未満の保存的アミノ酸置換を有する。軽鎖可変領域配列の変異体は、フレームワーク領域(すなわち、CDRの外側)に最大5個の保存的アミノ酸置換を有することを除いて参照配列と同一であり、好ましくは4個、3個または2個未満の保存的アミノ酸置換をフレームワーク領域に有する。
【0050】
本発明の治療方法、薬剤及び使用の別の実施形態では、PD-1アンタゴニストは、(a)配列番号15を含む重鎖と、(b)配列番号19を含む軽鎖とを含むモノクローナル抗体である。
【0051】
本発明の治療方法、薬剤及び使用のすべてにおいて、PD-1アンタゴニストはPD-L1のPD-1への結合を阻害し、好ましくはPD-L2のPD-1への結合も阻害する。上記の治療方法、薬剤及び使用のいくつかの実施形態では、PD-1アンタゴニストは、PD-1に特異的に結合し、PD-L1のPD-1への結合をブロックするモノクローナル抗体またはその抗原結合断片である。一実施形態では、PD-1アンタゴニストは、(a)軽鎖CDR配列番号6、7及び8と、(b)重鎖CDR配列番号11、12及び13とを含む抗PD-1抗体またはその抗原結合断片である。一実施形態では、PD-1アンタゴニストは、(a)配列番号14またはその変異体を含む重鎖可変領域と、(b)配列番号9またはその変異体を含む軽鎖可変領域とを含む抗PD-1抗体またはその抗原結合断片である。一実施形態では、PD-1アンタゴニストは、重鎖及び軽鎖を含む抗PD-1抗体であり、重鎖及び軽鎖は、それぞれ配列番号10及び配列番号5のアミノ酸配列を含む。一実施形態では、PD-1アンタゴニストは、ペムブロリズマブまたはペムブロリズマブ変異体である。一実施形態では、PD-1アンタゴニストはペムブロリズマブである。
【0052】
以下の表3は、本発明の治療方法、薬剤及び使用において使用するための例示的な抗PD-1抗体のアミノ酸配列のリストを提供する。
【表3-1】
【表3-2】
【0053】
併用療法及び医薬組成物
本開示はさらに、誘導性IL-2プロドラッグとPD-1アンタゴニスト(例えば、抗PD-1抗体、例えば、ペムブロリズマブ)との併用を含む併用療法を使用してがんを治療する方法に関する。本開示はまた、そのような方法で使用するための医薬組成物、薬剤とも呼ばれ得る組成物にも関する。この開示により提供されるのは、誘導性IL-2プロドラッグと併用して使用するためのPD-1アンタゴニストを含む医薬組成物と、PD-1アンタゴニストと併用して使用するための誘導性IL-2プロドラッグを含む医薬組成物と、好ましくはペムブロリズマブまたはペムブロリズマブ変異体であるPD-1アンタゴニストと併用して誘導性IL-2プロドラッグを含む医薬組成物と、である。
【0054】
併用療法はまた、1つまたは複数の追加の治療剤を含んでもよい。追加の治療剤とは、例えば、化学療法剤、生物療法剤、免疫原性薬剤(例えば、弱力化したがん細胞、腫瘍抗原、腫瘍由来の抗原または核酸でパルスされた樹状細胞などの抗原提示細胞、免疫刺激性サイトカイン(例えば、IL-2、IFNα2、GM-CSF)、これに限定されないがGM-CSFなどの免疫刺激性サイトカインをコード化する遺伝子でトランスフェクションされた細胞)のことであってもよい。追加の治療剤の具体的な用量及び投与スケジュールはさらに変化することがあり、最適な用量、投与スケジュール及び投与経路は、使用される特定の治療剤に基づいて決定される。
【0055】
本開示は、がんを治療する方法に関するものであり、この方法は、誘導性IL-2プロドラッグと、ペムブロリズマブまたはペムブロリズマブ変異体などのPD-1アンタゴニストとを含む併用療法を、必要とする被験者に投与することを含む。誘導性IL-2プロドラッグ、及びペムブロリズマブなどのPD-1アンタゴニストは、2つの治療剤の薬理学的活性が重複するように被験者に投与される。したがって、誘導性IL-2プロドラッグを、ペムブロリズマブなどのPD-1アンタゴニストの前に、後で、同時に、または手術の直前・術中・直後に投与することができる。この方法のいくつかの実施では、ペムブロリズマブなどのPD-1アンタゴニストが、誘導性IL-2プロドラッグの前に投与される。この方法のいくつかの実施では、ペムブロリズマブなどのPD-1アンタゴニストが、誘導性IL-2プロドラッグの後に投与される。この方法のいくつかの特定の実施では、ペムブロリズマブなどのPD-1アンタゴニストが投与され、次いで、ペムブロリズマブなどのPD-1アンタゴニストの投与が完了してから約30分後に、誘導性IL-2プロドラッグが投与される。
【0056】
本明細書で使用される「有効量」という用語は、投与条件下で所望の効果を達成するために投与される薬剤(誘導性IL-2プロドラッグ及びPD-1アンタゴニスト)の量、すなわち、腫瘍サイズを低減するような、腫瘍負荷を低減するような、無増悪生存期間を延長するような、または全生存期間を延長するような量を指す。選択される実際の有効量は、治療される特定のがん及びそのステージ、ならびに被験者の年齢、性別、体重、民族、以前の治療及びそれらの治療に対する応答及び他の要因などの他の要因に依存する。投与される誘導性IL-2プロドラッグ、及びペムブロリズマブなどのPD-1アンタゴニストの適切な量、ならびに特定の患者に対する投与スケジュールを、これら及び他の考慮事項に基づいて、通常の技量の臨床医によって決定することができる。
【0057】
例えば、約1mg~約500mgの誘導性IL-2プロドラッグを約2週間ごとに投与することができる。そして、約100mg~約600mgのペムブロリズマブまたはペムブロリズマブ変異体を約3~6週間ごとに投与することができる(例えば、3週間ごと(Q3W)に200mgまたは6週間ごと(Q6W)に400mg)。例えば、約1mg~約500mgの誘導性IL-2プロドラッグを約2週間ごとに投与することができる。そして、200mgまたは400mgのペムブロリズマブまたはペムブロリズマブ変異体を約3~6週間ごとに投与することができる(例えば、3週間ごと(Q3W)に200mgまたは6週間ごと(Q6W)に400mg)。小児への投与量は異なる場合がある。例えば、小児患者の場合、ペムブロリズマブは通常、3週間ごとに約2mg/kgで、最大200mgで投与される。
【0058】
本開示の方法及び組成物は、第1選択療法として、または他の療法の後、もしくは他の療法に加えて、必要とする被験者に投与することができる。本開示による治療の必要とする被験者とは、以前の治療または進行中の治療に対して完全奏効を達成できなかった、または以前の治療または進行中の治療に対して部分奏効を達成できなかった被験者のことであってもよい。例えば、本開示による、必要とする被験者または治療中の被験者は、チェックポイント阻害剤を含む以前のまたは進行中の治療に対して完全奏効または部分奏効を達成できなかった被験者のことであってもよい。本開示による治療の必要とする被験者とは、チェックポイント阻害剤を含む進行中または以前の治療により、6ヶ月を超えて(SD>6)安定した疾患を達成できなかった被験者のことであってもよい。実施形態では、被験者は、以前の治療または進行中の治療に対して完全奏効または部分奏効を達成できず、その治療では、1)ペムブロリズマブ(KEYTRUDA)、ドスタルリマブ(JEMPERLI)、セミプリマブ-rwlc(LIBATYO)、ニボルマブ(OPDIVO)、カムレリズマブ、チスレリズマブ、トリパリマブ及びシンチリマブ(TYVYT)などの抗PD1抗体、2)アベルマブ(BAVENCIO)、デュルバルマブ(IMFINZI)及びアテゾリズマブ(TECENTRIQ)などの抗PD-L1抗体、または3)イピリムマブ(YERVOY)などの抗CTLA-4抗体が用いられた。
【0059】
誘導性IL-2プロドラッグ及びPD-1アンタゴニスト(例えば、ペムブロリズマブまたはペムブロリズマブ変異体)は、典型的には、例えば静脈内注射または好ましくは静脈内注入によって全身投与される。他の種類の投与、例えば、経口、非経口、静脈内、関節内、腹腔内、筋肉内、皮下、腔内、経皮、肝内、頭蓋内、噴霧/吸入、気管支鏡法による設置、または腫瘍内などを使用することができる。いくつかの実施形態では、PD-1アンタゴニストは皮下投与される。
【0060】
本発明の特定の実施形態では、併用療法におけるPD-1アンタゴニストは、本明細書に記載の抗PD-1抗体またはその抗原結合断片である。抗PD-1抗体またはその抗原結合断片を、1mg/kg Q2W、2mg/kg Q2W、3mg/kg Q2W、5mg/kg Q2W、10mg/kg Q2W、1mg/kg Q3W、2mg/kg Q3W、3mg/kg Q3W、5mg/kg Q3W、10mg/kg Q3W、及びこれらの用量のいずれかの固定用量当量、すなわち、200mg Q3Wまたは400mg Q6Wなど、からなる群から選択される用量で液体薬剤として投与することができる。いくつかの実施形態では、抗PD-1抗体またはその抗原結合断片は、25mg/mlの抗PD-1抗体またはその抗原結合断片と、10mMヒスチジン緩衝液pH5.5中の7%(w/v)スクロース及び0.02%(w/v)ポリソルベート80とを含む液体薬剤として提供される。他の実施形態では、抗PD-1抗体またはその抗原結合断片は、約125~約200mg/mLの抗PD-1抗体またはその抗原結合断片と、約10mMのヒスチジン緩衝液と、約10mMのL-メチオニンまたはその薬学的に受容可能な塩と、約7%(w/v)スクロースと、約0.02%(w/v)のポリソルベート80とを含む液体薬剤として提供される。一実施形態では、抗PD-1抗体またはその抗原結合断片は、(a)軽鎖CDR配列番号6、7及び8と、(b)重鎖CDR配列番号11、12及び13とを含む。一実施形態では、抗PD-1抗体またはその抗原結合断片は、(a)配列番号14またはその変異体を含む重鎖可変領域と、(b)配列番号9またはその変異体を含む軽鎖可変領域とを含む。一実施形態では、抗PD-1抗体は重鎖及び軽鎖を含み、重鎖及び軽鎖はそれぞれ配列番号10及び配列番号5のアミノ酸配列を含む。一実施形態では、抗PD-1抗体はペムブロリズマブまたはペムブロリズマブ変異体である。一実施形態では、抗PD-1抗体はペムブロリズマブである。
【0061】
いくつかの実施形態では、選択された用量の抗PD-1抗体またはその抗原結合断片は、IV注入によって投与される。一実施形態では、選択された用量の抗PD-1抗体またはその抗原結合断片は、25~40分間、または約30分間の時間にわたってIV注入によって投与される。他の実施形態では、選択された用量の抗PD-1抗体またはその抗原結合断片は皮下投与される。抗PD-1抗体またはその抗原結合断片は、(a)軽鎖CDR配列番号6、7及び8と、(b)重鎖CDR配列番号11、12及び13とを含むことができる。抗PD-1抗体またはその抗原結合断片は、(a)配列番号14またはその変異体を含む重鎖可変領域と、(b)配列番号9またはその変異体を含む軽鎖可変領域とを含むことができる。抗PD-1抗体は重鎖及び軽鎖を含むことができ、重鎖及び軽鎖はそれぞれ配列番号10及び配列番号5のアミノ酸配列を含む。抗PD-1抗体とは、ペムブロリズマブまたはペムブロリズマブ変異体のことであってもよい。抗PD-1抗体とは、ペムブロリズマブのことであってもよい。
【0062】
いくつかの実施形態では、患者は少なくとも24週間、例えば3週間を8サイクル、併用療法で治療される。いくつかの実施形態では、併用療法での治療を、患者がPD効果、またはCR、または進行性疾患の徴候を示すまで継続する。
【0063】
本明細書に開示される方法及び組成物を使用して、任意の適切ながん、特に肉腫及び癌腫などの固形腫瘍を治療することができる。例えば、本明細書に開示される方法及び組成物を使用して、副腎皮質癌腫、肛門癌、虫垂癌、星細胞腫、基底細胞癌腫、脳腫瘍、胆管癌、膀胱癌、骨癌、乳癌、気管支腫瘍、原発不明癌腫、心臓腫瘍、子宮頸癌、脊索腫、結腸癌、結腸直腸癌、頭蓋咽頭腫、管癌腫、胎児性腫瘍、子宮内膜癌、上衣腫、食道癌、鼻腔神経芽細胞腫、線維性組織球腫、ユーイング肉腫、眼癌、細菌細胞腫瘍、胆嚢癌、胃癌、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍、妊娠性絨毛膜疾患、神経膠腫、頭頸部癌、肝細胞癌、組織球増殖症、ホジキンリンパ腫、下咽頭癌、眼球内黒色腫、島細胞腫瘍、カポジ肉腫、腎臓癌、ランゲルハンス病細胞組織球症、喉頭癌、口唇及び口腔癌、肝臓癌、上皮内小葉癌腫、肺癌、悪性線維性組織球腫、黒色腫、メルケル細胞癌腫、中皮腫、原発不明の転移性の扁平上皮頚部癌、NUT遺伝子に関連する正中線上の癌腫、口腔癌、多発性内分泌腫瘍症候群、菌状息肉症、鼻腔及び副鼻腔癌、鼻咽頭癌、神経芽腫、非小細胞肺癌、中咽頭癌、骨肉腫、卵巣癌、膵臓癌、乳頭腫症、傍神経節腫、副甲状腺癌、陰茎癌、咽頭癌、褐色細胞腫、下垂体腫瘍、胸膜肺芽腫、原発性中枢神経系リンパ腫、前立腺癌、直腸癌、腎細胞癌、腎盂及び尿管癌、網膜芽細胞腫、ラブドイド腫瘍、唾液腺癌、セザリー症候群、皮膚癌、小細胞肺癌、小腸癌、軟部組織肉腫、脊髄腫瘍、胃の癌、T細胞リンパ腫、奇形腫瘍、精巣癌、咽喉癌、胸腺腫及び胸腺癌腫、甲状腺癌、尿道癌、子宮癌、膣癌、外陰部癌、非ホジキンリンパ腫、頭頸部扁平上皮癌腫、悪性胸膜中皮腫、ならびにウィルムス腫瘍を治療することができる。
【0064】
好ましくは、本明細書に開示される方法及び組成物を使用して、結腸癌、肺癌、黒色腫、腎細胞癌腫、または乳癌を治療する。
【0065】
特定の実施形態では、本明細書に開示される方法及び組成物を使用して、黒色腫、非小細胞肺癌(NSCLC)、小細胞肺癌(SCLC)、頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)、古典的ホジキンリンパ腫(cHL)、縦隔原発大細胞型B細胞性リンパ腫(PMBCL)、尿路上皮癌腫、高マイクロサテライト不安定性またはミスマッチ修復機構欠損の癌、高マイクロサテライト不安定性またはミスマッチ修復機構欠損の結腸直腸癌、胃癌、食道癌、子宮頸癌、肝細胞癌腫(HCC)、メルケル細胞癌腫(MCC)、腎臓細胞癌腫(RCC)、子宮内膜癌腫、腫瘍変異負荷の高い癌、皮膚扁平上皮癌腫(cSCC)、トリプルネガティブ乳癌(TNBC)、尿路上皮癌腫、結腸直腸癌、または食道癌腫を治療する。
【0066】
本明細書に開示される方法及び組成物のいずれをも使用して、PD-L1及びPD-L2の一方または両方について検査結果が陽性、好ましくはPD-L1発現について検査結果が陽性であるがんを有するヒト被験者を治療することができる。いくつかの実施形態では、PD-L1発現は、患者から採取された腫瘍サンプルのFFPEまたは凍結組織切片に関するIHCアッセイにおいて、診断用抗ヒトPD-L1抗体またはその抗原結合断片を使用して検出される。通常、被験者の医師は、PD-1アンタゴニストによる治療の開始前に、患者から採取した腫瘍組織サンプルにおけるPD-L1発現を判定するための診断用検査を指示することになるが、医師は、例えば治療サイクルの完了後など治療開始後いつでも、最初の診断検査またはその後の診断用検査を指示できることが想定される。一実施形態では、PD-L1発現は、PD-L1 IHC 22C3 pharmDxアッセイによって測定される。別の実施形態では、患者のPD-L1発現についての単核炎症密度スコアは≧2である。別の実施形態では、被験者のPD-L1発現についての単核炎症密度スコアは≧3である。別の実施形態では、被験者のPD-L1発現についての単核炎症密度スコアは≧4である。別の実施形態では、被験者のPD-L1発現についての腫瘍割合スコアは≧1%である。別の実施形態では、被験者のPD-L1発現についての腫瘍割合スコアは≧10%である。別の実施形態では、被験者のPD-L1発現についての腫瘍割合スコアは≧20%である。別の実施形態では、被験者のPD-L1発現についての腫瘍割合スコアは≧30%である。別の実施形態では、被験者のPD-L1発現についての腫瘍割合スコアは≧40%である。別の実施形態では、被験者のPD-L1発現についての腫瘍割合スコアは≧50%である。さらなる実施形態では、被験者のPD-L1発現についての複合陽性スコアは≧1%である。さらなる実施形態では、被験者のPD-L1発現についての複合陽性スコアは1~20%である。さらなる実施形態では、被験者のPD-L1発現についての複合陽性スコアは≧2%である。さらなる実施形態では、被験者のPD-L1発現についての複合陽性スコアは≧5%である。なおもさらなる実施形態では、被験者のPD-L1発現についての複合陽性スコアは≧10%である。さらなる実施形態では、被験者のPD-L1発現についての複合陽性スコアは≧15%である。なおもさらなる実施形態では、被験者のPD-L1発現についての複合陽性スコアは≧20%である。
【0067】
特定の実施形態では、本明細書に開示される方法及び組成物を使用して、黒色腫を治療する。一例として、本明細書に開示される方法及び組成物を使用して、切除不能または転移性の黒色腫を有する被験者における黒色腫を治療することができる。別の一例として、本明細書に開示される方法及び組成物を、完全切除後のリンパ節(複数可)が関与する黒色腫を有する被験者のアジュバント治療に使用することができる。
【0068】
特定の実施形態では、本明細書に開示される方法及び組成物を使用して、非小細胞肺癌(NSCLC)を治療する。一例として、本明細書に開示される方法及び組成物を使用して、NSCLCを有する被験者におけるNSCLCを治療することができ、このNSCLCは、FDA承認の検査により判定されたとおりPD-L1を発現しており(例えば、腫瘍割合スコア(TPS)≧1%)、EGFR異常もALKゲノム腫瘍異常もなく、被験者が外科的切除または根治的化学放射線療法の候補にならないステージIIIであるか、または転移性である。別の一例として、本明細書に開示される方法及び組成物を使用して、転移性NSCLCを有する患者におけるNSCLCを治療することができ、この患者の腫瘍は、FDA承認の検査により判定されたとおりPD-L1(TPS≧1%)を発現しており、プラチナ含有化学療法中またはプラチナ含有化学療法後に疾患進行が見られる。別の一例として、本明細書に開示される方法及び組成物を、EGFR異常もALKゲノム腫瘍異常もない転移性非扁平上皮NSCLC患者の第1選択治療として、ペメトレキセド及びプラチナ化学療法と併用して使用することができる。別の一例として、本明細書に開示される方法及び組成物を、転移性扁平上皮を有するNSCLC患者の第1選択治療として、カルボプラチンと、パクリタキセルまたはパクリタキセルタンパク質結合型のいずれかとを併用して使用することができる。
【0069】
特定の実施形態では、本明細書に開示される方法及び組成物を使用して、SCLCを治療する。一例として、本明細書に開示される方法及び組成物を使用して、転移性SCLCを有する被験者におけるSCLCを治療することができ、このSCLCでは、プラチナベース化学療法中またはプラチナベース化学療法後に疾患進行が見られ、以前に少なくとも1つの他の治療法が用いられていた。
【0070】
特定の実施形態では、本明細書に開示される方法及び組成物を使用して、HNSCCを治療する。一例として、本明細書に開示される方法及び組成物を使用して、転移性または切除不能再発性のHNSCCを有する被験者におけるHNSCCを治療することができ、この被験者の腫瘍は、FDA承認の検査により判定されたとおりPD-L1(例えば、複合陽性スコア(CPS)≧1)を発現している。別の一例として、本明細書に開示される方法及び組成物を使用して、再発性または転移性のHNSCCを有する被験者におけるHNSCCを治療することができ、このHNSCCでは、プラチナ含有化学療法中またはプラチナ含有化学療法後に疾患進行が見られる。別の一例として、本明細書に開示される方法及び組成物を、転移性または切除不能再発性のHNSCCを有する患者の第1選択治療のために、プラチナ及びフルオロウラシルと併用して使用することができる。
【0071】
特定の実施形態では、本明細書に開示される方法及び組成物を使用して、cHLを治療する。一例として、本明細書に開示される方法及び組成物を使用して、再発性または難治性のcHLを有する被験者におけるcHLを治療することができる。別の一例として、本明細書に開示される方法及び組成物を使用して、小児被験者におけるcHLを治療することができ、この小児被験者は、難治性cHL、または2つもしくはそれより多くの治療法の後に再発したcHLを有している。
【0072】
特定の実施形態では、本明細書に開示される方法及び組成物を使用して、PMBCLを治療する。一例として、本明細書に開示される方法及び組成物を使用して、被験者におけるPMBCLを治療することができ、この被験者は難治性PMBCLを有しているか、またはこの被験者は以前の2つもしくはそれより多くの治療法の後に再発している。
【0073】
特定の実施形態では、本明細書に開示される方法及び組成物を使用して、尿路上皮癌腫を治療する。一例として、本明細書に開示される方法及び組成物を使用して、尿路上皮癌腫を治療することができ、この尿路上皮癌腫を有する被験者は、局所進行性または転移性の尿路上皮癌を有しており、シスプラチン含有化学療法に適格ではなく、その腫瘍がFDA承認の検査により判定されたとおりPD-L1(例えば、複合陽性スコア(CPS)≧10)を発現しているか、または被験者は、PD-L1の状態にかかわらず、いかなるプラチナ含有化学療法にも適格ではない。別の一例として、本明細書に開示される方法及び組成物を使用して、尿路上皮癌腫を治療することができ、この尿路上皮癌腫を有する被験者は、局所進行性または転移性の尿路上皮癌を有しており、プラチナ含有化学療法中もしくはプラチナ含有化学療法後、またはプラチナ含有化学療法によるネオアジュバントもしくはアジュバントの治療後12ヶ月以内に、進行した疾患を有している。別の一例として、本明細書に開示される方法及び組成物を使用して、尿路上皮癌腫を治療することができ、この尿路上皮癌腫を有する被験者は、カルメットゲラン桿菌(BCG)非反応性高リスク筋層非浸潤性膀胱癌(NMIBC)を有し、乳頭状腫瘍の有無にかかわらず上皮内癌(CIS)を有し、膀胱切除術を受ける資格がない、または受けないことを選択した被験者である。
【0074】
特定の実施形態では、本明細書に開示される方法及び組成物を使用して、高マイクロサテライト不安定性(MSI-H)またはミスマッチ修復機構欠損(dMMR)の癌を治療する。一例として、本明細書に開示される方法及び組成物を使用して、切除不能または転移性のMSI-HまたはdMMRの癌を有する被験者のMSI-HまたはdMMRの癌を治療することができ、ここでは、固形腫瘍が以前の治療後に進行したが被験者には満足のいく代替治療の選択肢がない、またはフルオロピリミジン、オキサリプラチン及びイリノテカンによる治療後に結腸直腸癌が進行している。
【0075】
特定の実施形態では、本明細書に開示される方法及び組成物を使用して、高マイクロサテライト不安定性(MSI-H)またはミスマッチ修復機構欠損(dMMR)の結腸直腸癌を治療する。一例として、本明細書に開示される方法及び組成物を使用して、切除不能または転移性のMSI-HまたはdMMRの結腸直腸癌を有する被験者におけるMSI-HまたはdMMRの結腸直腸癌を治療することができる。
【0076】
特定の実施形態では、本明細書に開示される方法及び組成物を使用して、胃癌を治療する。一例として、本明細書に開示される方法及び組成物を使用して、再発性の局所進行性または転移性の胃または胃食道接合部の腺癌を有する被験者における胃癌を治療することができ、この被験者の腫瘍は、FDA承認の検査により判定されたとおりPD-L1(例えば、複合陽性スコア(CPS)≧1)を発現しており、フルオロピリミジン含有及びプラチナ含有の化学療法、ならびに適切であればHER2/neu標的療法を含む以前の2つまたはそれ以上の治療法中または治療法後に疾患進行が見られる。
【0077】
特定の実施形態では、本明細書に開示される方法及び組成物を使用して、食道癌を治療する。一例として、本明細書に開示される方法及び組成物を使用して、被験者における食道癌を治療するために使用することができ、この被験者は、局所進行性または転移性の食道または胃食道接合部(GEJ)の癌腫(例えば、GEJより1~5センチメートル上に発生源を有する腫瘍)を有するが、この癌腫は外科的切除またはプラチナ及びフルオロピリミジンベースの化学療法と併用した根治的化学放射線療法には適さない。別の一例として、本明細書に開示される方法及び組成物を使用して、被験者における食道癌を治療するために使用することができ、この被験者は、局所進行性または転移性の食道または胃食道接合部(GEJ)の癌腫(例えば、GEJより1~5センチメートル上に発生源を有する腫瘍)を有するが、この癌腫は、FDA承認の検査により判定されたとおりPD-L1(CPS≧10)を発現する扁平上皮組織型腫瘍を有する患者向けの以前の1つまたは複数の全身治療法の後での、外科的切除または根治的化学放射線療法には適さない。
【0078】
特定の実施形態では、本明細書に開示される方法及び組成物を使用して、子宮頸癌を治療する。一例として、本明細書に開示される方法及び組成物を使用して、再発性または転移性子宮頸癌を有する被験者における子宮頸癌を治療することができ、この被験者には、化学療法中または化学療法後に疾患進行が見られ、その腫瘍は、FDA承認の検査により判定されたとおりPD-L1(例えば、複合陽性スコア(CPS)≧1)を発現している。
【0079】
特定の実施形態では、本明細書に開示される方法及び組成物を使用して、HCCを治療する。一例として、本明細書に開示される方法及び組成物を使用して、ソラフェニブで以前に治療された被験者におけるHCCを治療することができる。
【0080】
特定の実施形態では、本明細書に開示される方法及び組成物を使用して、MCCを治療する。一例として、本明細書に開示される方法及び組成物を使用して、再発性の局所進行性または転移性のMCCを有する被験者におけるMCCを治療することができる。
【0081】
特定の実施形態では、本明細書に開示される方法及び組成物を使用して、RCCを治療する。一例として、本明細書に開示される方法及び組成物は、進行性RCCを有する患者の第1選択治療のために、アキシチニブと併用して使用することができる。
【0082】
特定の実施形態では、本明細書に開示される方法及び組成物を使用して、子宮内膜癌腫を治療する。一例として、本明細書に開示される方法及び組成物を、MSI-HでもdMMRでもない進行性子宮内膜癌腫を有する被験者の治療のためにレンバチニブと併用して使用することができ、この被験者は、以前の全身療法後に疾患が進行しており、根治目的の手術または放射線療法の候補ではない。
【0083】
特定の実施形態では、本明細書に開示される方法及び組成物を使用して、高腫瘍遺伝子変異量(TMB-H)癌を治療する。一例として、本明細書に開示される方法及び組成物を使用して、被験者におけるTMB-H癌を治療することができ、この被験者は、FDA承認の検査により判定されたとおり腫瘍遺伝子変異量高スコア(例えば、≧10変異/百万塩基(mut/Mb))の切除不能または転移性の固形腫瘍を有し、この固形腫瘍は以前の治療後に進行しており、この被験者には満足のいく代替治療の選択肢がない。
【0084】
特定の実施形態では、本明細書に開示される方法及び組成物を使用して、皮膚扁平上皮癌腫(cSCC)を治療する。一例として、本明細書に開示される方法及び組成物を、再発性または転移性の皮膚扁平上皮癌腫を有する被験者におけるcSCCを治療するために使用することができ、この皮膚扁平上皮癌腫は手術または放射線療法では治癒できない。
【0085】
特定の実施形態では、本明細書に開示される方法及び組成物を使用して、トリプルネガティブ乳癌(TNBC)を治療する。一例として、本明細書に開示される方法及び組成物を、局所再発性切除不能または転移性のTNBCを有する被験者の治療のために化学療法と併用して使用することができ、この被験者の腫瘍は、FDA承認の検査により判定されたとおりPD-L1(例えば、複合陽性スコア(CPS)≧10)を発現している。
【0086】
本開示の方法及び組成物を使用して治療されるがんとは、転移性癌のことであってもよい。
【0087】
特定の実施形態では、本明細書に開示される方法及び組成物を使用して、転移性腎明細胞癌腫または転移性皮膚悪性黒色腫を治療する。
【0088】
この方法の実施形態では、化合物1、2、3もしくは4またはそのアミノ酸配列変異体を、3週間ごとに約1mg~約240mgの量でがんを有する被験者に投与し、ペムブロリズマブ(またはペムブロリズマブ変異体、またはバイオシミラー)を、約3週間ごと(Q3W)に200mg、または約6週間ごと(Q6W)に400mgの量で投与する。
【0089】
化合物1、2、3もしくは4またはそのアミノ酸配列変異体を、がんを有する被験者に3週間ごとに約1mgの量で投与することができ、抗PD-1抗体またはその抗原結合断片を、転移性腎明細胞癌腫または転移性皮膚悪性黒色腫など、本明細書に開示されるがんまたは腫瘍を治療するために、約3週間ごとに200mg、または約6週間ごとに400mgの量で投与する。抗PD-1抗体またはその抗原結合断片は、(a)軽鎖CDR配列番号6、7及び8と、(b)重鎖CDR配列番号11、12及び13とを含むことができる。抗PD-1抗体またはその抗原結合断片は、(a)配列番号14またはその変異体を含む重鎖可変領域と、(b)配列番号9またはその変異体を含む軽鎖可変領域とを含むことができる。抗PD-1抗体は重鎖及び軽鎖を含むことができ、重鎖及び軽鎖はそれぞれ配列番号10及び配列番号5のアミノ酸配列を含む。抗PD-1抗体とは、ペムブロリズマブまたはペムブロリズマブ変異体のことであってもよい。抗PD-1抗体とは、ペムブロリズマブ(またはバイオシミラー)のことであってもよい。
【0090】
化合物1、2、3もしくは4またはそのアミノ酸配列変異体を、がんを有する被験者に3週間ごとに約1mg~約3mg(例えば、1mg、2mgまたは3mg)の量で投与することができ、ペムブロリズマブなどの抗PD-1抗体またはその抗原結合断片を、転移性腎明細胞癌腫または転移性皮膚悪性黒色腫など、本明細書に開示されるがんまたは腫瘍を治療するために、約3週間ごと(Q3W)に200mg、または約6週間ごと(Q6W)に400mgの量で投与する。抗PD-1抗体またはその抗原結合断片は、(a)軽鎖CDR配列番号6、7及び8と、(b)重鎖CDR配列番号11、12及び13とを含むことができる。抗PD-1抗体またはその抗原結合断片は、(a)配列番号14またはその変異体を含む重鎖可変領域と、(b)配列番号9またはその変異体を含む軽鎖可変領域とを含むことができる。抗PD-1抗体は重鎖及び軽鎖を含むことができ、重鎖及び軽鎖はそれぞれ配列番号10及び配列番号5のアミノ酸配列を含む。抗PD-1抗体とは、ペムブロリズマブまたはペムブロリズマブ変異体のことであってもよい。抗PD-1抗体とは、ペムブロリズマブ(またはバイオシミラー)のことであってもよい。
【0091】
化合物1、2、3もしくは4またはそのアミノ酸配列変異体を、がんを有する被験者に3週間ごとに約10mgの量で投与することができ、ペムブロリズマブなどの抗PD-1抗体またはその抗原結合断片を、転移性腎明細胞癌腫または転移性皮膚悪性黒色腫など、本明細書に開示されるがんまたは腫瘍を治療するために、約3週間ごとに200mg、または約6週間ごとに400mgの量で投与する。抗PD-1抗体またはその抗原結合断片は、(a)軽鎖CDR配列番号6、7及び8と、(b)重鎖CDR配列番号11、12及び13とを含むことができる。抗PD-1抗体またはその抗原結合断片は、(a)配列番号14またはその変異体を含む重鎖可変領域と、(b)配列番号9またはその変異体を含む軽鎖可変領域とを含むことができる。抗PD-1抗体は重鎖及び軽鎖を含むことができ、重鎖及び軽鎖はそれぞれ配列番号10及び配列番号5のアミノ酸配列を含む。抗PD-1抗体とは、ペムブロリズマブまたはペムブロリズマブ変異体のことであってもよい。抗PD-1抗体とは、ペムブロリズマブ(またはバイオシミラー)のことであってもよい。
【0092】
化合物1、2、3もしくは4またはそのアミノ酸配列変異体を、がんを有する被験者に3週間ごとに約30mgの量で投与することができ、ペムブロリズマブなどの抗PD-1抗体またはその抗原結合断片を、転移性腎明細胞癌腫または転移性皮膚悪性黒色腫など、本明細書に開示されるがんまたは腫瘍を治療するために、約3週間ごとに200mg、または約6週間ごとに400mgの量で投与する。抗PD-1抗体またはその抗原結合断片は、(a)軽鎖CDR配列番号6、7及び8と、(b)重鎖CDR配列番号11、12及び13とを含むことができる。抗PD-1抗体またはその抗原結合断片は、(a)配列番号14またはその変異体を含む重鎖可変領域と、(b)配列番号9またはその変異体を含む軽鎖可変領域とを含むことができる。抗PD-1抗体は重鎖及び軽鎖を含むことができ、重鎖及び軽鎖はそれぞれ配列番号10及び配列番号5のアミノ酸配列を含む。抗PD-1抗体とは、ペムブロリズマブまたはペムブロリズマブ変異体のことであってもよい。抗PD-1抗体とは、ペムブロリズマブ(またはバイオシミラー)のことであってもよい。
【0093】
化合物1、2、3もしくは4またはそのアミノ酸配列変異体を、がんを有する被験者に3週間ごとに約60mgの量で投与することができ、抗PD-1抗体またはその抗原結合断片を、転移性腎明細胞癌腫または転移性皮膚悪性黒色腫など、本明細書に開示されるがんまたは腫瘍を治療するために、約3週間ごとに200mg、または約6週間ごとに400mgの量で投与する。抗PD-1抗体またはその抗原結合断片は、(a)軽鎖CDR配列番号6、7及び8と、(b)重鎖CDR配列番号11、12及び13とを含むことができる。抗PD-1抗体またはその抗原結合断片は、(a)配列番号14またはその変異体を含む重鎖可変領域と、(b)配列番号9またはその変異体を含む軽鎖可変領域とを含むことができる。抗PD-1抗体は重鎖及び軽鎖を含むことができ、重鎖及び軽鎖はそれぞれ配列番号10及び配列番号5のアミノ酸配列を含む。抗PD-1抗体とは、ペムブロリズマブまたはペムブロリズマブ変異体のことであってもよい。抗PD-1抗体とは、ペムブロリズマブ(またはバイオシミラー)のことであってもよい。
【0094】
化合物1、2、3もしくは4またはそのアミノ酸配列変異体を、がんを有する被験者に3週間ごとに約120mgの量で投与することができ、抗PD-1抗体またはその抗原結合断片を、転移性腎明細胞癌腫または転移性皮膚悪性黒色腫など、本明細書に開示されるがんまたは腫瘍を治療するために、約3週間ごとに200mg、または約6週間ごとに400mgの量で投与する。抗PD-1抗体またはその抗原結合断片は、(a)軽鎖CDR配列番号6、7及び8と、(b)重鎖CDR配列番号11、12及び13とを含むことができる。抗PD-1抗体またはその抗原結合断片は、(a)配列番号14またはその変異体を含む重鎖可変領域と、(b)配列番号9またはその変異体を含む軽鎖可変領域とを含むことができる。抗PD-1抗体は重鎖及び軽鎖を含むことができ、重鎖及び軽鎖はそれぞれ配列番号10及び配列番号5のアミノ酸配列を含む。抗PD-1抗体とは、ペムブロリズマブまたはペムブロリズマブ変異体のことであってもよい。抗PD-1抗体とは、ペムブロリズマブ(またはバイオシミラー)のことであってもよい。
【0095】
化合物1、2、3もしくは4またはそのアミノ酸配列変異体を、がんを有する被験者に3週間ごとに約240mgの量で投与することができ、抗PD-1抗体またはその抗原結合断片を、転移性腎明細胞癌腫または転移性皮膚悪性黒色腫など、本明細書に開示されるがんまたは腫瘍を治療するために、約3週間ごとに200mg、または約6週間ごとに400mgの量で投与する。抗PD-1抗体またはその抗原結合断片は、(a)軽鎖CDR配列番号6、7及び8と、(b)重鎖CDR配列番号11、12及び13とを含むことができる。抗PD-1抗体またはその抗原結合断片は、(a)配列番号14またはその変異体を含む重鎖可変領域と、(b)配列番号9またはその変異体を含む軽鎖可変領域とを含むことができる。抗PD-1抗体は重鎖及び軽鎖を含むことができ、重鎖及び軽鎖はそれぞれ配列番号10及び配列番号5のアミノ酸配列を含む。抗PD-1抗体とは、ペムブロリズマブまたはペムブロリズマブ変異体のことであってもよい。抗PD-1抗体とは、ペムブロリズマブ(またはバイオシミラー)のことであってもよい。
【0096】
所望により、追加の治療剤を被験者に投与することができる。通常、このような追加の治療剤は、化学療法剤(例えば、アドリアマイシン、セルビジン、ブレオマイシン、アルケラン、ベルバン、オンコビン、フルオロウラシル、チオテパ、メトトレキサート、ビサントレン、ノアントロン、チグアニン、シタリビン、プロカラビジン)などの抗がん剤、他の免疫チェックポイント阻害剤(例えば、抗CTLA4(イピリムマブ(YERVOY)))、他のサイトカイン(IL-12または誘導性IL-12プロドラッグなど)、血管新生阻害剤、抗体薬物複合体(例えば、トラスツズマブエムタンシン(KADCYLA)、トラスツズマブデルクステカン(ENHERTU)、エンフォルツマブベドチン(PADCEV)、サシツズマブゴビテカン(TRODELVY)、細胞療法(例えば、CAR-T、TCT-T、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)療法などのT細胞療法)、腫瘍溶解性ウイルス、放射線療法及び/または低分子である。
【0097】
追加の治療剤とは、例えば、ペメトレキセド、プラチナ化学療法剤、カルボプラチン、パクリタキセル、タンパク質結合パクリタキセル、フルオロウラシル、フルオロピリミジンベースの化学療法剤、またはアキシチニブのことであってもよい。
【0098】
例えば、転移性非扁平上皮非小細胞肺癌を治療するための方法は、本明細書に開示される誘導性IL-2プロドラッグ、抗PD-1抗体(またはその抗原結合断片)、ペメトレキセド及びプラチナ化学療法剤を投与することを含むことができる。抗PD-1抗体またはその抗原結合断片は、(a)軽鎖CDR配列番号6、7及び8と、(b)重鎖CDR配列番号11、12及び13とを含むことができる。抗PD-1抗体またはその抗原結合断片は、(a)配列番号14またはその変異体を含む重鎖可変領域と、(b)配列番号9またはその変異体を含む軽鎖可変領域とを含むことができる。抗PD-1抗体は重鎖及び軽鎖を含むことができ、重鎖及び軽鎖はそれぞれ配列番号10及び配列番号5のアミノ酸配列を含む。抗PD-1抗体とは、ペムブロリズマブまたはペムブロリズマブ変異体のことであってもよい。抗PD-1抗体とは、ペムブロリズマブ(またはバイオシミラー)のことであってもよい。
【0099】
別の例では、転移性扁平上皮非小細胞肺癌を治療するための方法は、本明細書に開示される誘導性IL-2プロドラッグ、抗PD-1抗体(またはその抗原結合断片)、及びパクリタキセルを投与することを含むことができる。抗PD-1抗体またはその抗原結合断片は、(a)軽鎖CDR配列番号6、7及び8と、(b)重鎖CDR配列番号11、12及び13とを含むことができる。抗PD-1抗体またはその抗原結合断片は、(a)配列番号14またはその変異体を含む重鎖可変領域と、(b)配列番号9またはその変異体を含む軽鎖可変領域とを含むことができる。抗PD-1抗体は重鎖及び軽鎖を含むことができ、重鎖及び軽鎖はそれぞれ配列番号10及び配列番号5のアミノ酸配列を含む。抗PD-1抗体とは、ペムブロリズマブまたはペムブロリズマブ変異体のことであってもよい。抗PD-1抗体とは、ペムブロリズマブ(またはバイオシミラー)のことであってもよい。
【0100】
別の例では、転移性扁平上皮非小細胞肺癌を治療するための方法は、本明細書に開示される誘導性IL-2プロドラッグ、抗PD-1抗体(またはその抗原結合断片)、及びタンパク質結合パクリタキセルを投与することを含むことができる。抗PD-1抗体またはその抗原結合断片は、(a)軽鎖CDR配列番号6、7及び8と、(b)重鎖CDR配列番号11、12及び13とを含むことができる。抗PD-1抗体またはその抗原結合断片は、(a)配列番号14またはその変異体を含む重鎖可変領域と、(b)配列番号9またはその変異体を含む軽鎖可変領域とを含むことができる。抗PD-1抗体は重鎖及び軽鎖を含むことができ、重鎖及び軽鎖はそれぞれ配列番号10及び配列番号5のアミノ酸配列を含む。抗PD-1抗体とは、ペムブロリズマブまたはペムブロリズマブ変異体のことであってもよい。抗PD-1抗体とは、ペムブロリズマブ(またはバイオシミラー)のことであってもよい。
【0101】
別の例では、転移性または切除不能な再発性の頭頸部扁平上皮癌を治療するための方法は、本明細書に開示される誘導性IL-2プロドラッグ、抗PD-1抗体(またはその抗原結合断片)、及びフルオロウラシルを投与することを含むことができる。抗PD-1抗体またはその抗原結合断片は、(a)軽鎖CDR配列番号6、7及び8と、(b)重鎖CDR配列番号11、12及び13とを含むことができる。抗PD-1抗体またはその抗原結合断片は、(a)配列番号14またはその変異体を含む重鎖可変領域と、(b)配列番号9またはその変異体を含む軽鎖可変領域とを含むことができる。抗PD-1抗体は重鎖及び軽鎖を含むことができ、重鎖及び軽鎖はそれぞれ配列番号10及び配列番号5のアミノ酸配列を含む。抗PD-1抗体とは、ペムブロリズマブまたはペムブロリズマブ変異体のことであってもよい。抗PD-1抗体とは、ペムブロリズマブ(またはバイオシミラー)のことであってもよい。
【0102】
別の例では、外科的切除または根治的化学放射線療法が適さない局所進行性または転移性の食道または胃食道接合部の癌腫を治療する方法は、本明細書に開示される誘導性IL-2プロドラッグ、抗PD-1抗体(またはその抗原結合断片)、ならびにプラチナベース及びフルオロピリミジンベースの化学療法剤を投与することを含む。抗PD-1抗体またはその抗原結合断片は、(a)軽鎖CDR配列番号6、7及び8と、(b)重鎖CDR配列番号11、12及び13とを含むことができる。抗PD-1抗体またはその抗原結合断片は、(a)配列番号14またはその変異体を含む重鎖可変領域と、(b)配列番号9またはその変異体を含む軽鎖可変領域とを含むことができる。抗PD-1抗体は重鎖及び軽鎖を含むことができ、重鎖及び軽鎖はそれぞれ配列番号10及び配列番号5のアミノ酸配列を含む。抗PD-1抗体とは、ペムブロリズマブまたはペムブロリズマブ変異体のことであってもよい。抗PD-1抗体とは、ペムブロリズマブ(またはバイオシミラー)のことであってもよい。
【0103】
別の例では、進行性腎細胞癌腫を治療する方法は、本明細書に開示される誘導性IL-2プロドラッグ、抗PD-1抗体(またはその抗原結合断片)、及びアキシチニブを投与することを含む。抗PD-1抗体またはその抗原結合断片は、(a)軽鎖CDR配列番号6、7及び8と、(b)重鎖CDR配列番号11、12及び13とを含むことができる。抗PD-1抗体またはその抗原結合断片は、(a)配列番号14またはその変異体を含む重鎖可変領域と、(b)配列番号9またはその変異体を含む軽鎖可変領域とを含むことができる。抗PD-1抗体は重鎖及び軽鎖を含むことができ、重鎖及び軽鎖はそれぞれ配列番号10及び配列番号5のアミノ酸配列を含む。抗PD-1抗体とは、ペムブロリズマブまたはペムブロリズマブ変異体のことであってもよい。抗PD-1抗体とは、ペムブロリズマブ(またはバイオシミラー)のことであってもよい。
【0104】
別の例では、腎細胞癌腫を治療するための方法は、化合物1、2、3もしくは4またはそのアミノ酸配列変異体を3週間ごとに約240mgの量でがんを有する被験者に投与することを含むことができ、抗PD-1抗体またはその抗原結合断片を約3週間ごとに200mg、または約6週間ごとに400mgの量で投与し、アキシチニブを5mgの量で毎日2回経口投与する。抗PD-1抗体またはその抗原結合断片は、(a)軽鎖CDR配列番号6、7及び8と、(b)重鎖CDR配列番号11、12及び13とを含むことができる。抗PD-1抗体またはその抗原結合断片は、(a)配列番号14またはその変異体を含む重鎖可変領域と、(b)配列番号9またはその変異体を含む軽鎖可変領域とを含むことができる。抗PD-1抗体は重鎖及び軽鎖を含むことができ、重鎖及び軽鎖はそれぞれ配列番号10及び配列番号5のアミノ酸配列を含む。抗PD-1抗体とは、ペムブロリズマブまたはペムブロリズマブ変異体のことであってもよい。抗PD-1抗体とは、ペムブロリズマブ(またはバイオシミラー)のことであってもよい。
【0105】
別の例では、以前の全身療法後に疾患が進行し、根治目的の手術または放射線療法の候補者ではない被験者における、高マイクロサテライト不安定性でなく、ミスマッチ修復機構欠損でもない進行性子宮内膜癌腫を治療する方法は、本明細書に開示される誘導性IL-2プロドラッグ、抗PD-1抗体(またはその抗原結合断片)、及びレンバチニブを投与することを含む。抗PD-1抗体またはその抗原結合断片は、(a)軽鎖CDR配列番号6、7及び8と、(b)重鎖CDR配列番号11、12及び13とを含むことができる。抗PD-1抗体またはその抗原結合断片は、(a)配列番号14またはその変異体を含む重鎖可変領域と、(b)配列番号9またはその変異体を含む軽鎖可変領域とを含むことができる。抗PD-1抗体は重鎖及び軽鎖を含むことができ、重鎖及び軽鎖はそれぞれ配列番号10及び配列番号5のアミノ酸配列を含む。抗PD-1抗体とは、ペムブロリズマブまたはペムブロリズマブ変異体のことであってもよい。抗PD-1抗体とは、ペムブロリズマブ(またはバイオシミラー)のことであってもよい。
【0106】
別の例では、子宮内膜癌腫または腎細胞癌腫を治療するための方法は、化合物1、2、3もしくは4またはそのアミノ酸配列変異体を3週間ごとに約240mgの量でがんを有する被験者に投与することを含むことができ、抗PD-1抗体またはその抗原結合断片を約3週間ごとに200mg、または約6週間ごとに400mgの量で投与し、レンバチニブを20mgの量で毎日1回経口投与する。抗PD-1抗体またはその抗原結合断片は、(a)軽鎖CDR配列番号6、7及び8と、(b)重鎖CDR配列番号11、12及び13とを含むことができる。抗PD-1抗体またはその抗原結合断片は、(a)配列番号14またはその変異体を含む重鎖可変領域と、(b)配列番号9またはその変異体を含む軽鎖可変領域とを含むことができる。抗PD-1抗体は重鎖及び軽鎖を含むことができ、重鎖及び軽鎖はそれぞれ配列番号10及び配列番号5のアミノ酸配列を含む。抗PD-1抗体とは、ペムブロリズマブまたはペムブロリズマブ変異体のことであってもよい。抗PD-1抗体とは、ペムブロリズマブ(またはバイオシミラー)のことであってもよい。
【0107】
別の例では、腫瘍がPD-L1を発現する局所再発性切除不能または転移性のトリプルネガティブ乳癌を治療する方法は、本明細書に開示される誘導性IL-2プロドラッグ、抗PD-1抗体(またはその抗原結合断片)、及び化学療法剤を投与することを含む。抗PD-1抗体またはその抗原結合断片は、(a)軽鎖CDR配列番号6、7及び8と、(b)重鎖CDR配列番号11、12及び13とを含むことができる。抗PD-1抗体またはその抗原結合断片は、(a)配列番号14またはその変異体を含む重鎖可変領域と、(b)配列番号9またはその変異体を含む軽鎖可変領域とを含むことができる。抗PD-1抗体は重鎖及び軽鎖を含むことができ、重鎖及び軽鎖はそれぞれ配列番号10及び配列番号5のアミノ酸配列を含む。抗PD-1抗体とは、ペムブロリズマブまたはペムブロリズマブ変異体のことであってもよい。抗PD-1抗体とは、ペムブロリズマブ(またはバイオシミラー)のことであってもよい。
【0108】
医薬組成物は、液体、凍結乾燥などの様々な形態をとることができ、典型的には適切な薬学的に受容可能な担体を含む。薬学的に受容可能な担体(または賦形剤)は、医薬組成物の非活性成分構成要素であり、生物学的またはその他の点で望ましくないものではない。すなわち、材料は、望ましくない生物学的影響を引き起こしたり、またはそれが含まれる医薬製剤または組成物の他の成分と有害な様式で相互作用を起こしたりすることなく被験者に投与される。担体を頻繁に選択して、活性成分の分解を最小限に抑え、被験者における悪い副作用を最小限に抑える。
【0109】
適切な担体及びその処方は、Remington: The Science and Practice of Pharmacy,21stEdition, David B. Troy, ed., Lippicott Williams&Wilkins (2005)に記載されている。薬学的に受容可能な担体の例には、滅菌水、生理食塩水、リンゲル溶液などの緩衝溶液、及びデキストロース溶液が含まれるが、これらに限定されない。他の担体には、免疫原性ポリペプチドを含む固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスなどの徐放性製剤が含まれる。マトリックスは、フィルム、リポソームまたは微粒子などの成形品の形態をしている。例えば、投与経路及び投与される組成物の濃度に依存して、特定の担体がより好ましい場合がある。担体は、キメラポリペプチド、またはキメラポリペプチドをコード化する核酸配列をヒトもしくは他の被験者に投与するのに好適な担体である。
【0110】
非経口投与用の調合剤には、滅菌水溶液または非水溶液、懸濁液及び乳濁液が含まれる。非水溶媒の例には、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、オレイン酸エチルなどの注射用有機エステルが挙げられる。水性担体には、水、アルコール/水溶液、乳濁液または懸濁液(生理食塩水及び緩衝媒体など)が含まれる。非経口賦形剤には、塩化ナトリウム溶液、デキストロースリンゲル液、デキストロース及び塩化ナトリウム、乳酸リンゲル液または不揮発性油が含まれる。静脈内賦形剤には、流体及び栄養補給剤、電解質補給剤(デキストロースリンゲル液をベースとするものなど)などが含まれる。保存剤及び他の添加剤、例えば抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤及び不活性ガスなどが場合によっては存在する。典型的には、適切な量の薬学的に受容可能な塩を製剤中で使用して製剤を等張にするが、所望により、製剤を高張または低張にすることもできる。溶液のpHは概して約5~約8、または約7~7.5である。
【0111】
局所投与用の製剤には、軟膏、ローション、クリーム、ゲル、滴剤、座薬、スプレー、液体及び粉末が含まれる。従来の医薬担体、水溶液、粉末、または油性基剤、増粘剤などが場合によっては必要であるか、または望ましい。
【0112】
経口投与用の組成物には、粉末もしくは顆粒、水もしくは非水性媒体中の懸濁液もしくは溶液、カプセル、小袋またはテーブルが含まれる。増粘剤、香味料、希釈剤、乳化剤、分散助剤または結合剤が場合によっては望ましい。
【0113】
また、本開示はキットに関連し、このキットは、a)適切な容器(例えば、バイアル、バッグなど)中の誘導性IL-2プロドラッグ組成物を含む医薬組成物(例えば液体組成物または凍結乾燥組成物として)と、b)適切な容器(例えば、バイアル、バッグなど)中の抗PD-1抗体(またはその抗原結合断片)を含む組成物(例えば液体組成物または凍結乾燥組成物として)とを含む。キットは、凍結乾燥組成物の再構成のための滅菌水または生理食塩水などの他の成分をさらに含むことができる。抗PD-1抗体またはその抗原結合断片は、(a)軽鎖CDR配列番号6、7及び8と、(b)重鎖CDR配列番号11、12及び13とを含むことができる。抗PD-1抗体またはその抗原結合断片は、(a)配列番号14またはその変異体を含む重鎖可変領域と、(b)配列番号9またはその変異体を含む軽鎖可変領域とを含むことができる。抗PD-1抗体は重鎖及び軽鎖を含むことができ、重鎖及び軽鎖はそれぞれ配列番号10及び配列番号5のアミノ酸配列を含む。抗PD-1抗体とは、ペムブロリズマブまたはペムブロリズマブ変異体のことであってもよい。抗PD-1抗体とは、ペムブロリズマブ(またはバイオシミラー)のことであってもよい。
【0114】
他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての専門用語、表記法、及びその他の科学用語は、本発明が関係する当業者によって一般的に理解される意味を有することを意図している。場合によっては、一般に理解されている意味を有する用語は、明快にするため、及び/またはすぐに参照できるように、本明細書で定義されており、このような定義を本明細書に含めることは、必ずしも当技術分野で概して理解されているものとの違いを表すものと解釈されるべきではない。本明細書に記載または参照される技術及び手順は、当業者によって概して理解されており、従来の方法論を使用して一般的に採用されている。その例には、例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual 4th ed. (2012) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NYに記載され、広く利用されている分子クローニング手法がある。必要に応じて、市販のキット及び試薬の使用を伴う手順は、特に明記されない限り、概して製造業者が定めたプロトコル及び条件に従って実施される。
【0115】
「サイトカイン」は、特に免疫系の細胞によって分泌され、免疫系のモジュレーターである免疫調節タンパク質(インターロイキンまたはインターフェロンなど)の分類のいずれかを指す周知の専門用語である。本明細書に開示される融合タンパク質に使用することができるサイトカインポリペプチドには、これらに限定されないが、TGF-α及びTGF-β(例えば、TGFbeta1、TGFbeta2、TGFbeta3)などの形質転換成長因子と、インターフェロン(例えば、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγ、インターフェロンカッパ、インターフェロンオメガなど)と、インターロイキン(例えば、IL-1、IL-1α、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-14、IL-15、IL-16、IL-17、IL-18、IL-21及びIL-25)と、腫瘍壊死因子(腫瘍壊死因子α及びリンホトキシンなど)と、ケモカイン(例えば、C-X-Cモチーフケモカイン10(CXCL10)、CCL19、CCL20、CCL21)と、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CS)と、さらには、サイトカインの同族受容体を活性化するそのようなポリペプチドの断片(すなわち、前述のものの機能的断片)も含まれる。「ケモカイン」は、近くの応答性細胞に指向性走化性を誘導する能力を持つ小型サイトカインのファミリーのいずれかを指す専門用語である。
【0116】
本明細書で使用する場合、「誘導性」という用語は、プロドラッグの一部であるタンパク質、すなわちIL-2がその受容体に結合し、腫瘍微小環境におけるプロドラッグの切断時に活性を引き起こす能力を指す。本明細書に開示される誘導性IL-2プロドラッグは、IL-2アゴニスト活性が減弱しているか、または活性がないが、腫瘍微小環境で切断されると活性なIL-2を放出する。
【0117】
「減弱した」活性は、生物活性、典型的にはIL-2受容体アゴニスト活性が、天然IL-2の活性と比較して低下することを意味する。本明細書に開示される誘導性IL-2プロドラッグは、IL-2受容体アゴニスト活性が減弱しており、天然IL-2と比較して、少なくとも約10倍、少なくとも約50倍、少なくとも約100倍、少なくとも約250倍、少なくとも約500倍、少なくとも約1000倍以下のアゴニスト活性である。腫瘍微小環境で切断されると、活性なIL-2が放出される。典型的には、放出されるIL-2は、そのプロドラッグのIL-2受容体活性化活性よりも少なくとも約10倍、少なくとも約50倍、少なくとも約100倍、少なくとも約250倍、少なくとも約500倍、または少なくとも約1000倍大きいIL-2受容体アゴニスト活性を有している。
【0118】
本明細書で使用する場合、「ペプチド」、「ポリペプチド」、または「タンパク質」という用語は、ペプチド結合によって結合された2つまたはそれよりも多くのアミノ酸を意味するために広く使用される。タンパク質、ペプチド及びポリペプチドも、本明細書ではアミノ酸配列を指すために互換的に使用される。ポリペプチドという用語は、本明細書では分子を構成するアミノ酸の特定のサイズまたは数を示唆するために使用されるものではなく、本発明のペプチドは数個以上のアミノ酸残基を含み得ることを認識すべきである。
【0119】
全体を通して使用される「被験者」とは、脊椎動物、より具体的には、哺乳類(例えば、ヒト、ウマ、ネコ、イヌ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、マウス、ウサギ、ラット及びモルモット)、鳥類、爬虫類、両生類、魚類、その他の任意の動物のことであってもよい。いくつかの実施形態では、哺乳類はヒトである。この用語は特定の年齢または性別を意味するものではない。したがって、男性か女性かを問わず、成人及び新生児の被験者が対象となることが意図されている。本明細書で使用する場合、「患者」または「被験者」は互換的に使用されてもよく、疾患または障害(例えば、がん)を有する被験者を指することができる。患者または被験者という用語には、ヒト及び獣医学の被験者が含まれる。本明細書で使用する「必要とする被験者」という用語は、本明細書で定義されるがんまたは感染病と診断された、またはそれらを有すると疑われる被験者を指す。
【0120】
本明細書で使用する場合、「治療」、「治療する」または「治療すること」という用語は、疾患もしくは病態の影響、または疾患もしくは病態の症状を軽減する方法を指す。したがって、開示された方法において、治療とは、腫瘍体積の低減、腫瘍負荷の低減、死亡の低減など、確立された疾患もしくは病態の重症度において、または疾患もしくは病態の症状において、少なくとも約10%の、少なくとも約20%の、少なくとも約30%の、少なくとも約40%の、少なくとも約50%の、少なくとも約60%の、少なくとも約70%の、少なくとも約80%の、少なくとも約90%の、または実質的に完全な軽減のことを指すことができる。例えば、疾患を治療するための方法は、対照と比較して被験者において疾患の1つまたは複数の症状において10%の軽減がある場合に、治療であるとみなされる。したがって、この軽減は、天然レベルまたは対照レベルと比較して10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、または10%~100%の間の任意のパーセントの軽減になる可能性がある。治療は、必ずしも疾患、病態、または疾患もしくは病態の症状の治癒または完全な除去を指すわけではないことが理解される。
【0121】
本明細書で使用する場合、疾患または障害の「予防する」、「予防する」、及び「予防」という用語は、例えば、被験者が疾患または障害の1つまたは複数の症状を示し始める前、またはほぼ同時に起こる、キメラポリペプチドまたはキメラポリペプチドをコード化する核酸配列の投与し、これにより、疾患または障害の1つまたは複数の症状の発症または悪化を抑制または遅延させる行動を指す。
【0122】
本明細書で使用する場合、「低下する」、「軽減する」または「抑制する」の言及には、適切な対照レベルと比較して、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%以上の変化が含まれる。このような用語には、アゴニスト活性などの機能または特性の完全な除去が含まれる場合があるが、必ずしも含まれるわけではない。
【0123】
「配列変異体」という用語は、参照ポリペプチドと実質的に同様の生物学的活性を有するが、アミノ酸配列が異なるポリペプチドのアミノ酸配列を指す、または参照配列と実質的に同様の生物学的活性を有する(例えば、実質的に同様の活性を有するタンパク質をコード化する)が、ヌクレオチド配列が異なる核酸のヌクレオチド配列を指す。典型的には、「配列変異体」のアミノ酸配列またはヌクレオチド配列は、参照配列のアミノ酸配列またはヌクレオチド配列と非常に類似している(例えば、少なくとも約80%類似している)。当業者は、2つのポリペプチドまたは2つの核酸の同一性を決定する方法を容易に理解する。例えば、定義された数のヌクレオチドまたはアミノ酸にわたって同一性が最高レベルとなるように、2つの配列を整列させた後に同一性を計算することができる。比較のための配列の最適な整列を、Smith and Waterman Adv. Appl. Math. 2:482 (1981)の局所的同一性アルゴリズムによって、Needleman and Wunsch, J. Mol. Biol. 48:443 (1970)の同一性整列アルゴリズムによって、Pearson and Lipman, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:2444 (1988)の類似性検索法によって、これらのアルゴリズム(GAP, BESTFIT, FASTA及びTFASTA、ただし、Wisconsin Genetics Software Package(Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, Wis.)より)のコンピュータによる実装によって、または検査によって実施してもよい。
【0124】
「保存的アミノ酸置換」という用語は、ポリペプチド内のアミノ酸を、参照アミノ酸と同様の生化学的特性(サイズ、電荷、疎水性など)を有する別のアミノ酸で置換することを指す専門用語である。ポリペプチドのアミノ酸配列における保存的アミノ酸置換は、頻繁にはポリペプチドの全体的な構造または機能を大きく変化させないことは周知である。例示的な保存的置換を以下の表4に示す。
【表4】
【0125】
本明細書で引用されるすべての特許及び非特許刊行物の全開示は、すべての目的のためにその全体が参照によりそれぞれ本明細書に組み込まれる。
【表5-1】
【表5-2】
【表5-3】
【実施例】
【0126】
以下は本発明の方法及び組成物の例である。本明細書に提供される全体的な説明を考慮すれば、他の様々な実施形態を実施してもよいことが理解される。
【0127】
実施例1:誘導性IL-2及び抗PD-1前臨床モデル
これらの実施例では、「インダカイン(INDUKINE)」という用語は、詳細な説明に開示されている誘導性IL-2プロドラッグを指すために使用される。
【0128】
化合物1は、MC38結腸癌腫、B16F10黒色腫及びCT26結腸癌腫モデルを含む複数のマウス同系腫瘍モデルで評価され、強力な単剤抗腫瘍活性及び免疫記憶形成が実証されている。
【0129】
実施例1A:MC38マウスモデル
マウスにMC38腫瘍を移植し、腫瘍の大きさが100~150mm
3の場合に無作為に治療グループに分けた。次いで、マウスを週に2回、滴定量のリン酸緩衝溶液(PBS)(賦形剤として機能)、化合物1、または対照IL-2インダカイン分子のいずれかで治療した。この対照IL-2インダカイン分子は、プロテアーゼで切断可能なリンカーを使用せずに処理されており、したがって、切断されおらず、腫瘍微小環境でIL-2を放出しない(非切断可能対照)。合計で4回の用量を投与した。マウスはインダカイン分子による治療によく耐え、体重減少の兆候はなかった。
図1に示すように、化合物1は用量依存的な様式で腫瘍を効果的に治療した。
【0130】
腫瘍の免疫学的拒絶の特徴の1つは、その後の腫瘍再免疫試験に対する防御記憶の発達である。IL-2インダカイン分子で処置した動物における腫瘍拒絶の結果として免疫学的記憶が生じるかどうかを調べるために、最初のMC38移植から40日後の腫瘍特異的記憶CD8+T細胞の存在を求めて、IL-2インダカインツール分子(本質的に化合物1と同じ生物学的特性を有する)で処置した動物の脾臓を検査した。四量体染色を使用して腫瘍特異的CD8+T細胞を特定し、それらの細胞の記憶マーカーを検査した。
図2に示すように、保護動物からの四量体陽性細胞の約60%が記憶細胞表現型CD44+KLRG1-CD127+を発現したのと比較して、対照動物からの四量体陽性細胞はわずか20%であった。
【0131】
これらの脾細胞の表現型は腫瘍特異的記憶の生成を示唆しているが、記憶応答の最終的な試験は、同じ腫瘍モデルによる再免疫試験に対する防御である。したがって、IL-2インダカインツール分子による治療後に完全なMC38腫瘍退縮を前もって示したマウスに、最初の移植から60日後により多くのMC38腫瘍細胞を移植することによって再免疫試験を行った。再免疫試験中に治療は施されなかった。
図3に示すように、MC38腫瘍細胞を移植されたナイーブ対照動物とは異なり、IL-2インダカインツール分子で以前に治療した動物はいずれも腫瘍を発症しなかった。これは、IL-2インダカイン分子による以前の治療後の腫瘍拒絶の結果として免疫学的記憶が生じていることを示唆している。
【0132】
IL-2インダカイン分子が腫瘍退縮を誘導する機序をより深く理解するために、PBSまたはIL-2インダカインツール分子のいずれかで治療したマウスからのMC38腫瘍を、第1週の2回目の投与から24時間後に採取し、腫瘍浸潤リンパ球を収集した。その後、腫瘍浸潤リンパ球はフローサイトメトリーによって分析された。初回投与の5日後、IL-2インダカインツール分子による治療の結果として、NK細胞、CD8+Tエフェクター細胞、腫瘍特異的四量体+CD8+Tエフェクター細胞を含む免疫細胞が大量に流入することが観察された。Treg(CD4+CD25+FOXP3+細胞として定義される)の数は増加したが、CD8+T細胞の増加はTregの増加をはるかに上回り、その結果、CD8+/Treg比が大幅に増加した(
図4を参照)。さらに、IL-2インダカインツール分子による治療の結果として、グランザイムBなどの炎症性サイトカインを産生するTregのサブセットが得られ、腫瘍内に広がるTregが抑制的な表現型を持たないことが示された。まとめると、これらのデータは、IL-2インダカイン分子による治療により、このモデルにおける免疫細胞の腫瘍浸潤と活性化が増加し、それによって抗腫瘍免疫が促進されることを示している。
【0133】
IL-2インダカイン分子内の条件的に活性化されたプロテアーゼで切断可能なリンカーが、IL-2を腫瘍に局所送達しながら、IL-2の全身活性を制限することが観察された。全身投与の結果として腫瘍へのIL-2の局所送達を生じさせることができるかどうかを試験するために、MC38腫瘍を有するマウスにIL-2インダカインツール分子を投与した後の様々な時点で血漿及び腫瘍サンプルを収集し、総インダカイン分子または無損インダカイン分子、及びインダカイン分子の活性化により放出された遊離IL-2の存在を分析した。
図5に示されるように、血漿中の総インダカイン分子の曝露は、腫瘍内での曝露よりも約8倍高く、したがって、このモデルにおけるプロドラッグの腫瘍組織浸透が好ましいことを示している。血漿中には低レベルの遊離IL-2が検出され、血漿中の無損インダカイン分子の0.03%が遊離IL-2を放出するように処理された。対照的に、腫瘍内の無損インダカイン分子の総数の2%がIL-2を放出するように処理された。さらに、血漿中の遊離IL-2は、投与後24時間で観察された最大血漿濃度(C
max)に達したが、この曝露は一時的であった。対照的に、腫瘍内の遊離IL-2曝露レベルは、より高いC
maxを有し、長期にわたり持続された。腫瘍内でのインダカイン分子のこの優先的な活性化の結果として、血漿と比較して腫瘍内で約11倍の遊離IL-2の曝露が生じる。これは、IL-2インダカイン分子の全身送達後、腫瘍依存性処理が腫瘍内でのIL-2の蓄積を促進することを示唆している。
【0134】
実施例1B.非ヒト霊長類の忍容性及びPK
探索的調査では、化合物1を非ヒト霊長類(NHP)に投与して、化合物1の忍容性を決定し、化合物1、及び化合物1から放出されるIL-2の両方のPK特性を測定した。最初の調査では、週に1回、2週間、0.05mg/kgから1.25mg/kgまで増加する量の化合物1を動物に投与した。1.25mg/kgの用量での濃度対時間曲線下面積(AUC)として測定された化合物1の血漿曝露は、最大耐用量(MTD)である0.084mg/kgの用量でのrIL-2の血漿曝露よりも500倍以上高くなっており、
図6の上部パネル(それぞれ左及び右)に示されるように、化合物1がIL 2の高い全身曝露を達成したことを確認した。初回投与後の化合物1の平均半減期は約57時間であり、これは複数の用量レベルにわたって一貫していた。化合物1から放出された遊離IL-2の血漿レベルは非常に低く、
図6の下部パネルに示すように、遊離IL-2を放出するように処理された血漿化合物1の0.01%未満であった。これは、NHP中の循環における化合物1の安定性を裏付ける。重要なことに、NHPの化合物1処置後に測定できた循環遊離IL-2のC
maxは、そのMTDにおけるrIL-2のC
maxよりも大幅に低かった。その後の調査では、動物は、最大2mg/kgの用量の化合物1によく耐えた。
【0135】
実施例1C:抗PD-1抗体と併用した化合物1
化合物1を、抗PD1抗体(RMP1-14)の添加の有無にかかわらず、B16F10同系腫瘍モデルにおいて試験した。1x10
5個の腫瘍細胞を動物の脇腹に移植し、腫瘍の増殖をモニタリングした。ひとたび腫瘍が平均体積30~60mm
3に達したら、表6に記載されているように動物を無作為に抽出して投与した。
【表6】
【0136】
腫瘍体積及び体重は週に3回記録され、2回の測定の間には2~3日の隔たりがあった。化合物1による治療は、単剤療法として用量依存的な有効性を示した。このモデルにおける抗PD1による単剤療法には有効性がなく、抗PD1処置マウスの腫瘍体積は賦形剤のみで処置したマウスの腫瘍体積と同様であった。しかし、化合物1及び抗PD1抗体を使用した併用療法は腫瘍制御を相乗的に改善し、化合物1または抗PD-1抗体のいずれの単剤療法よりも効果的であった。その結果を
図7A、
図7B及び
図8に示す。
【0137】
実施例2:選択された進行性または転移性の固形腫瘍を有する患者における単剤療法としての、及びペムブロリズマブと併用してのIL-2プロドラッグの多施設共同フェーズI/Ib用量漸増調査
【表7-1】
【表7-2】
【表7-3】
【表7-4】
【0138】
概要及び背景情報
インターロイキン-2
インターロイキン(IL)-2は炎症誘発性サイトカインであり、T細胞とナチュラルキラー(NK)細胞の増殖と活性化を通じて免疫介在性のがん細胞の死滅を促進し、分化抗原群(CD)8細胞のエフェクター細胞及びメモリー細胞への分化を誘導することができる。IL-2受容体(IL-2R)は、IL-2Rα(CD25)、IL-2Rβ(CD122)、及びIL-2Rγ(CD132)という名の3つのサブユニットで構成される。単量体IL-2Rαへの結合はシグナル伝達を誘導しないが、β及びγサブユニットの複合体から構成される中親和性二量体受容体への結合はシグナル伝達を誘導する。3つのサブユニットすべてで構成される三量体受容体は、IL-2に対する高親和性受容体であり、中親和性受容体よりも約100倍高い結合親和性を有している。中親和性または高親和性IL-2Rへの結合により、標的免疫細胞内のヤヌスキナーゼ/シグナル伝達兼転写活性化因子(STAT)、分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)、及びホスホイノシチド3キナーゼシグナル伝達経路は活性化され、その結果として、免疫細胞の活性化及び増殖がもたらされる。
【0139】
中親和性のIL-2Rβ/γは、NK細胞、単球、マクロファージ、ならびに静止したCD4+及びCD8+T細胞に発現するが、高親和性のIL-2Rα/β/γは、活性化されたT細胞及びNK細胞上で一時的に誘導され、CD4+FoxP3+制御性T細胞(Treg)に構成的に発現する。IL-2の基礎レベルは主にTreg上の高親和性IL-2Rα/β/γに結合し、免疫恒常性を維持する。免疫応答中のIL-2産生の結果として、中親和性受容体及び高親和性受容体の両方を活性化することができるレベルのIL-2が生じ、その結果として、エフェクターリンパ球集団の活性化及び増殖が生じる。
【0140】
多数の前臨床研究により、IL-2の投与がマウスモデルにおける腫瘍の根絶に効果的であることが実証されている。この概念は臨床的にも検証されており、組み換え型IL-2(rIL-2)療法(アルデスロイキン)が1992年に腎細胞癌腫に対して承認され、1998年には転移性黒色腫に対して承認された。アルデスロイキンは、転移性黒色腫及び腎臓癌の治療を受けた患者の約10%でがんの完全な退縮を実証した。残念なことに、rIL-2は薬物動態(PK)特性が弱く、末梢の高親和性及び中親和性受容体に結合するために用量規定全身毒性がある。高用量のIL-2投与の結果として重篤な低血圧及び血管漏出症候群(VLS)が生じるため、IL-2の使用は専門のケアセンターに限定され、有効レベルに達するまで用量が制限されている。これらの副作用により、推奨される治療レジメンに耐えることができる患者の数が制限され、その結果、IL-2療法の臨床上の利得が全面的に達成される。IL-2の臨床上の利得を制限する別の要因は、IL-2は高親和性IL-2Rα/β/γに結合することによって、抗腫瘍免疫応答に対抗する可能性がある免疫抑制性Tregの拡大を誘導することであると主張されている。
【0141】
IL-2プロドラッグ
IL-2プロドラッグは、rIL-2療法で観察される重篤な毒性を最小限に抑えると共に、進行性腫瘍または転移性腫瘍に単剤療法として、または免疫チェックポイント阻害剤と併用して投与した場合に臨床上の利得を最大化するように設計された、全身送達され、条件付きで活性化されるインターロイキン2の形態である。
【0142】
IL-2プロドラッグは、末梢及び半減期延長ドメインのIL-2Rβ/γ発現正常組織へのIL-2の結合を排除するために、プロテアーゼで切断可能なリンカーを介してIL-2Rβ/γ阻害要素の両方に結合した天然IL-2分子を用いて処理されている。プロドラッグは、プロテアーゼ切断を通じて腫瘍微小環境で条件付きで活性化され、腫瘍内で完全に活性な天然のIL-2サイトカインを放出し、強力な抗腫瘍免疫応答を刺激する。
【0143】
いくつかの企業はまた、毒性を軽減すると共にTregの活性化を軽減することを期待して、中親和性受容体IL-2Rβ/γにのみ結合し、高親和性受容体IL-2Rα/β/γへの結合を回避する分子(いわゆる「非アルファ」分子)を処理することにより、rIL-2の限界に対処するように設計されたIL-2療法を開発している。しかしながら、これらの分子の多くは末梢でIL-2Rβ/γ受容体を活性化し(IL-2Rβ/γ阻害要素の欠如により)、IL-2Rα結合が減少するために腫瘍微小環境(TME)における新たにプライミングを受けたT細胞増殖の誘導も弱められる。そのため、有効な曝露に達する能力が制限される可能性がある。最近発表された研究が示すように、最適な抗腫瘍活性には高親和性受容体IL-2Rα/β/γへの結合が必要である可能性がある。第1に、抗プログラム細胞死1(PD-1)療法に対する陽性応答後の基底細胞癌腫を有するがん患者におけるT細胞のクローン含有量及び活性化状態の分析により、それらの腫瘍はクローン置換の処理を経ており、その処理では、治療後に見つかる活性化/枯渇したT細胞のほとんどは、拡大中に高親和性受容体IL-2Rα/β/γを発現する新たに活性化されたクローンであることが示された。これらの細胞は、この処理中に外因性の完全に活性なIL-2の存在から利得を受けることになる。第2に、高親和性受容体IL-2Rα/β/γを通るシグナル伝達は、効果的な記憶形成及び二次応答の生成を指示する重要な役割を果たす。
【0144】
IL-2プロドラッグの具体的な設計特徴は、IL-2とIL-2Rβ/γとの相互作用を末梢で阻害して全身毒性を最小限に抑えながら、IL-2Rα/β/γ結合により天然IL-2をTMEに送達し、抗腫瘍免疫応答の促進におけるIL-2の全面的な薬効を実現することにより、これらの課題に対処する。特定の実施形態では、この実施例2で使用されるIL-2プロドラッグは化合物1である。特定の実施形態では、この実施例2で使用されるIL-2プロドラッグは化合物2である。特定の実施形態では、この実施例2で使用されるIL-2プロドラッグは化合物3である。特定の実施形態では、この実施例2で使用されるIL-2プロドラッグは化合物4である。
【0145】
ペムブロリズマブ
ペムブロリズマブは、プログラム細胞死1(PD-1)受容体への高い結合特異性を有する強力なヒト化免疫グロブリン(Ig)G4(IgG4)モノクローナル抗体である。したがって、プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)及びプログラム細胞死リガンド2(PD-L2)とのその相互作用を阻害する。前臨床インビトロデータに基づくと、ペムブロリズマブはPD-1に対して高い親和性及び強力な受容体ブロック活性を有している。ペムブロリズマブは、受容可能な前臨床安全性プロファイルを有しており、進行性悪性腫瘍に対する静脈内(IV)免疫療法として臨床開発中である。KEYTRUDA(登録商標)(ペムブロリズマブ)は、さまざまな適応症にわたる患者の治療に適応されている。
【0146】
ペムブロリズマブに関する詳細な背景情報については、承認されたラベルを参照のこと。
【0147】
調剤上の背景及び治療の背景
腫瘍性形質転換の増殖を制御する上で、無損の免疫学的監視機能が重要であることは数十年前から知られている。蓄積されている証拠により、がん組織内の腫瘍浸潤リンパ球と様々な悪性腫瘍における好ましい予後との間に相関関係があることが示されている。特に、CD8+T細胞の存在及びCD8+エフェクターT細胞/FoxP3+Tregの比率は、卵巣癌、結腸直腸癌、膵臓癌、肝細胞癌腫、悪性黒色腫及び腎細胞癌腫などの固形悪性腫瘍における予後の改善と長期生存と相関している。腫瘍浸潤リンパ球はエクスビボで増殖させて再注入されて、黒色腫などのがんにおいて永続的な客観的な腫瘍応答を誘導することができる。
【0148】
PD-1受容体とリガンドとの相互作用は、免疫制御を抑制するように腫瘍によって乗っ取られる主要な経路である。健常な状態下で活性化されたT細胞の細胞表面に発現されるPD-1の通常の機能は、自己免疫反応を含む不要なまたは過剰な免疫応答を抑制的に調節することである。PD-1(遺伝子PDCD1によってコード化される)は、CD28及び細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)に関連するIgスーパーファミリーのメンバーであり、このCTLA-4は、そのリガンド(PD-L1及び/またはPD L2)の結合時に抗原受容体シグナル伝達を負に調節することが示されている。
【0149】
マウスPD-1の構造は解明されている。PD-1とそのファミリーメンバーは、リガンド結合を担うIg可変(IgV)型ドメインと、シグナル伝達分子の結合を担う細胞質尾部とを含む1型膜貫通型糖タンパク質である。PD-1の細胞質尾部には、2つのチロシン依存性シグナル伝達モチーフ、免疫受容体チロシン依存性抑制モチーフ、及び免疫受容体チロシン依存性スイッチモチーフが含まれる。T細胞刺激後、PD-1はチロシンホスファターゼ、Srcホモロジー2ドメイン含有タンパク質チロシンホスファターゼ(SHP)-1及びSHP-2を細胞質尾部内の免疫受容体チロシン依存性スイッチモチーフに動員し、CD3T細胞シグナル伝達カスケードに関与するCD3ζ、タンパク質キナーゼCθ、ゼータ鎖関連タンパク質キナーゼ70などのエフェクター分子の脱リン酸化を引き起こす。PD-1がT細胞応答を抑制的に調節する機序は、CTLA-4の機序と同様であるが、CTLA-4とは異なる。これは、両方の分子が重複するシグナル伝達タンパク質のセットを調節するためである。結果として、PD-1/PD-L1経路は、炎症誘発性T細胞指向機序(本明細書に開示されるIL-2プロドラッグによって生成されるものなど)と併用した治療介入の魅力的な標的である。
【0150】
調査の理論的根拠
rIL-2などの炎症誘発性サイトカインを含む免疫療法は、複数のがんの適応症に対する十分に確立された治療法となっている。rIL-2療法は、転移性腎細胞癌腫(mRCC)及び皮膚悪性黒色腫において永続的な完全奏効を伴う劇的な臨床活性を実証し、それぞれ1992年と1998年にこれらの適応症についてアメリカ食品医薬品局(FDA)の承認を得た。しかしながら、高用量IL-2療法の投与は、その半減期が短く、薬学的特性が乏しく、集中治療室で監視された条件下で患者に投与する必要がある重篤な毒性のために制限されてきた。したがって、時間の経過とともに、PD-L1アンタゴニストなどのチェックポイント阻害剤及び標的療法など、より忍容性の高い他の治療法に置き換えられてきた。高用量(HD)IL-2による現在の治療結果を記録及び調査するために設立された全国的な観察データベースである悪性腫瘍登録における治療パターン及び臨床応答を評価するためのプロロイキンR観察調査からのデータは、以前のチェックポイント阻害剤治療を含む標準治療後に、または標準治療と併用して、配列決定された、転移性黒色腫及びmRCCにおけるHD IL-2の全奏効率及び延命効果が、永続的で長期的な応答を示した以前の報告データと一貫していることを示した。
【0151】
がん治療は向上し、悪性黒色腫及びmRCC以外にも多数の腫瘍タイプがチェックポイント阻害に敏感であることが証明されているにもかかわらず、安全に投与することができる次世代の全面的に強力なIL-2に対する医療ニーズは依然として満たされてないままである。IL-2プロドラッグは、全身に送達され、条件付きで活性化されるIL-2インダカイン分子であり、免疫感受性の進行性または転移性の固形腫瘍において、rIL-2療法で観察される重篤な毒性を最小限に抑え、単剤療法として、または免疫チェックポイント阻害剤(CPI)と併用して投与した場合に、臨床上の利得が最大化されるように開発されている。
【0152】
CPI療法が活性を実証した腫瘍タイプにおける単剤療法としての、またはCPIと併用してのIL-2プロドラッグは、IL-2の全面的な生物学的効力を安全に送達し、その結果として、強力な抗腫瘍免疫応答を生じさせる可能性がある。
【0153】
カニクイザルからのデータは、マウス腫瘍モデルにおける有効な曝露に関連する用量でのIL-2プロドラッグの安全な送達により、幅広い治療指数を実証した。抗PD-1耐性モデルにおけるIL-2プロドラッグと抗PD-1の併用は、相乗的な抗腫瘍活性を示した。
【0154】
これは、選択された進行性または転移性の固形腫瘍における単独またはペムブロリズマブと併用したIL-2プロドラッグの全身投与での安全性、忍容性、PK、及び予備的な抗腫瘍活性を判定する、ならびにさらなる調査に適切な用量及びスケジュールを特定する、第1/1b相の用量漸増及び拡大の調査である。
【0155】
IL-2プロドラッグ開始用量の理論的根拠
IL-2プロドラッグの開始用量は、IND実現調査データまたはGLP毒性学データに基づいて選択され、2週間ごと(Q2W)に全身に送達される。IL-2プロドラッグの現在の提案用量は、1、3、10、30、60、120、及び240mgである。3mgの用量に対して予測されるCmax及びAUCは、DRF NHP毒性学調査で投与された最高用量と比較した場合、それぞれ65倍及び31倍の曝露マージンを有すると予想される。また、3mgの用量(70kgの患者では0.542nmol/kg)は、連続5日間8時間ごとに投与されるrIL-2の推奨用量(2.387nmol/kg)よりも少なく、IL-2プロドラッグのすべての用量レベルにおいて、遊離IL-2への全身曝露は、連続IV注入として与えられるrIL 2の最大許容曝露を下回ると予想される。IL-2プロドラッグのファースト・イン・ヒューマン(FIH)開始用量及び理論的根拠の確認は、GLP毒性学調査の実施後に最終決定される。
【0156】
ペムブロリズマブの用量の理論的根拠
この調査でのペムブロリズマブの計画用量は6週間ごと(Q6W)に400mgである。
【0157】
ペムブロリズマブの400mg Q6W投与レジメンは、Q3Wで200mgのペムブロリズマブが現在のところ適切であるすべての治療環境において、3週間ごと(Q3W)に200mg投与と同様の利得-リスクのプロファイルを有すると予想される。具体的には、以下の理論的根拠を考慮すれば、モデル及びシミュレーション分析に基づいて、ペムブロリズマブの400mg Q6Wの投与レジメンが適切であると考えられる。
・ PKシミュレーションは、ペムブロリズマブ曝露の観点で次のことを示している。
・ 400mg Q6Wでの投与間隔にわたる平均濃度(またはAUC)は、承認された200mg Q3W用量の場合と同様であり、よって投与レジメンの間の有効性の橋渡しとなる。
・ 400mg Q6Wでのトラフ濃度(Cmin)は、概して、大多数(>99%)の患者で2mg/kgまたは200mg Q3Wで達成される濃度の範囲内にある。
・ 400mg Q6Wでのピーク濃度(Cmax)は、臨床試験された最高用量の10mg/kg Q2WのCmaxをはるかに下回っており、400mg Q6Wの安全性プロファイルがペムブロリズマブの確立された安全性プロファイルに匹敵するはずであることを裏付けている。
・ ペムブロリズマブの曝露応答は適応症全体で平坦であることが実証されており、黒色腫及び非小細胞肺癌における全生存率予測では、同様の曝露を考慮すれば、400mg Q6Wでの有効性が200mgまたは2mg/kg Q3Wでの有効性と同様であると予想されることが実証されている。したがって、400mg Q6Wはあらゆる適応症にわたって有効であると予想される。
【0158】
リスク/利益
この調査に登録される患者は、治療の選択肢が限られている転移性悪性腫瘍を有する患者である。このプロトコルには、適切な適格基準及び具体的な用量規定毒性(DLT)の定義、ならびに具体的なモニタリングガイドライン、用量の変更、及び個々の患者の中止規則が含まれている。
【0159】
調査の目的
一次的目的
この調査の用量漸増フェーズの一次的目的は以下のとおりである。
・ MTD及び/または拡大期推奨用量(RDE)を決定し、IL-2プロドラッグの安全性及び忍容性を評価する。
・ MTD及び/またはRDEを決定し、ペムブロリズマブと併用したIL-2プロドラッグの安全性と忍容性を評価する。
【0160】
この調査の拡大フェーズの主な目的は以下のとおりである。
・ 単剤療法として、及びペムブロリズマブと併用して投与した場合のIL-2プロドラッグの安全性をさらに特徴付ける。
・ 進行性または転移性の腎明細胞癌腫及び進行性または転移性の皮膚悪性黒色腫において、(単剤療法としての、及びペムブロリズマブと併用しての)IL-2プロドラッグの抗腫瘍活性を、固形がんの治療効果判定基準(RECIST)1.1による全奏効率(ORR)(完全奏効[CR]+部分奏効[PR])、及び免疫RECIST(iRECIST)による免疫ORR(iORR)(iORR=免疫CR+免疫PR)による測定で評価する。
【0161】
二次的目的
この調査の二次的目的は以下のとおりである。
・ IL-2プロドラッグ(親化合物及び遊離IL-2)のPKプロファイルを特徴付ける。
・ RECIST1.1及びiRECISTによるORR(CR+PR)、DOR及びPFSによって測定される、IL-2プロドラッグの抗腫瘍活性を評価する。
・ RECIST1.1によるORR(CR+PR)、DOR及びPFS、ならびにiRECISTによるiORR(iORR=免疫完全奏効[iCR]+免疫部分奏効[iPR])、iDOR及びiPFSによって測定される、ペムブロリズマブと併用したIL-2プロドラッグの抗腫瘍活性を評価する。
・ 単剤療法としての、またはペムブロリズマブと併用してのIL-2プロドラッグへの応答での、血液中、ベースライン及び治療後の腫瘍生検における特定の免疫学的バイオマーカーの変化を評価する。
・ RECIST1.1及び免疫RECIST(iRECIST)による奏効期間(DOR)と無増悪生存期間(PFS)によって測定される、進行性または転移性の腎細胞癌腫及び進行性または転移性の皮膚悪性黒色腫における(単剤療法としての、またはペムブロリズマブと併用しての)IL-2プロドラッグの抗腫瘍活性を評価する。
・ 抗薬物抗体(ADA)応答を生成する可能性を含む、IL-2プロドラッグの免疫原性を評価する。
【0162】
探索的目的
この調査の探索的目的は以下のとおりである。
・ IL-2プロドラッグ(単独及びペムブロリズマブと併用して)の薬力学(PD)活性を評価する。
・ 単剤療法としての、またはペムブロリズマブと併用してのIL-2プロドラッグの治療結果と相関する可能性のある末梢血液及び腫瘍中の免疫学的バイオマーカーを調査する。
・ 標的の関与及び免疫経路活性化の潜在的なバイオマーカーを求めて、腫瘍生検を評価する。
【0163】
調査の説明
これは、単独またはペムブロリズマブと併用したIL-2プロドラッグの安全性プロファイル及びMTDならびに/またはRDEを決定するためのFIHの非盲検の多施設共同の調査である。
【0164】
この調査では、再発性/難治性の局所進行性または転移性の免疫療法感受性固形腫瘍(CPIが承認される特定の適応症として定義される)を有する用量漸増フェーズの単剤療法及び併用アームに、標準治療で進行したか、または標準治療に耐えられない、もしくは利得が証明された標準治療が存在しない患者を登録する。患者は、以前の抗PD-1または-(L)1阻害剤を単独または他の薬剤と併用して含む以前のCPI療法を受けることになる。併用アームの患者は、疾患の進行、または毒性以外の理由のいずれかにより、その治療を中止するべきであった。調査のすべてのフェーズの患者は、以前にIL2指向治療を受けていない可能性がある。
【0165】
進行性もしくは転移性の腎明細胞癌腫、または進行性もしくは転移性の皮膚悪性黒色腫を有する患者は用量拡大フェーズの単剤療法及び併用療法アームに登録される。単剤療法の用量拡大の場合、mRCCを有する患者は以前に最大3種類の治療法を受けていた可能性があり、以前に血管新生抑制療法(VEGFi)及びCPIを受けていなければならない。v-rafマウス肉腫ウイルスがん遺伝子ホモログB1(BRAF)野生型皮膚悪性黒色腫を有する患者は、抗PD-(L)1阻害剤療法を単独またはCTLA-4阻害剤もしくは他の療法と併用して受けていなければならない。BRAF変異黒色腫を有する患者は、MEK阻害剤の有無にかかわらずCPI及びBRAF阻害剤を含む2種類の治療法を以前に受けていた可能性がある。
【0166】
具体的には、用量拡大フェーズの併用部分にいるmRCC患者の場合、患者は以前に2つ以下の治療法を受けていなければならず、そのうち1つのみが単独または併用した抗PD-(L)1阻害剤を含んでいなければならない。用量拡大フェーズの併用部分に登録された皮膚悪性黒色腫の患者は、BRAF変異の状態に応じて、以前に0~2つの治療法を受けていた可能性がある。用量拡大フェーズの併用療法アームの患者は、免疫関連毒性のために以前のCPI療法を中止すべきではなかった。
【0167】
用量漸増中の特定の用量コホートへの患者の割り当て、及び用量拡大中の特定のアームへの患者の割り当ては、スポンサーによって調整される。単剤療法及び併用療法アームが並行して開設される場合、適格な患者は利用可能なスロットに順番に登録される。
【0168】
この調査の全体的なサンプルサイズは、用量漸増フェーズ及び用量拡大フェーズの間で約150人の患者だが、IL-2プロドラッグの単剤療法、及びペムブロリズマブと併用したIL-2プロドラッグの観察されたDLTプロファイルに応じて異なる。
【0169】
【0170】
用量漸増フェーズ
用量漸増には、修正毒性確率間隔(mTPI)-2の設計を利用する。IL-2プロドラッグの開始用量は、2週間ごと(Q2W)に1mgまたは3mgの固定用量でIV投与であってもよく、提案される用量は、mTPI-2によってサポートされている場合、1、3、10、30、60、120、及び240mgIV Q2Wであってもよい。中間用量を評価してもよい。Q3Wへの投与レジメンの変更は、観察されたPK及び安全性プロファイルに基づいて行ってもよく、修正によって実施される。それぞれの新しい未試験の用量レベルでの第1患者及び第2患者への投与の間には少なくとも2日の時差が必要であり、第2患者及び第3患者への投与の間には1日の時差が必要である。
【0171】
mTPI-2設計を使用した用量確認
【0172】
IL-2プロドラッグのMTD及び/またはRDEを決定するために、目標DLT率に約30%、及び受容可能なDLT範囲に25%~35%(ε1=ε2=0.05)を有するmTPI-2設計が適用される。
【0173】
IL-2プロドラッグの現在の提案用量は、1、3、10、30、60、120、及び240mgである。3mgの用量に対して予測されるCmax及びAUCは、GLP NHP毒性学調査で投与された最高用量と比較した場合、それぞれ65倍及び31倍の曝露マージンを有すると予想される(FIH開始用量は、GLP毒性学調査の完了後に最終的に承認される)。また、3mgの用量(70kgの患者では0.542nmol/kg)は、連続5日間8時間ごとに投与されるrIL 2の推奨用量(2.387nmol/kg)よりも少なく、IL-2プロドラッグのすべての用量レベルにおいて、遊離IL-2への全身曝露は、連続IV注入として与えられるrIL-2の最大許容曝露を下回ると予想される。総親薬(IL-2プロドラッグ)及び遊離IL-2の両方の測定を実行し、観察されたPK及び安全性プロファイルに基づいて次のコホートの用量を選択する際に考慮してもよい。
【0174】
漸増または段階的縮小の決定は、最初の28日の期間(サイクル1)の所与の用量でのDLT及び有害事象、特に重篤な免疫関連毒性の発生に基づいて、用量漸増委員会(DEC)によって行われる。
【0175】
連続的な安全性評価フェーズでは、各投与ごとに最少でも3人の患者が必要である。DLTの集積率及び発生率に応じて、最後の患者が28日のDLT評価期間を完了するまで、3人、4人、5人または6人の患者を新しい用量ごとに登録してもよい。例えば、所与の用量レベルで最初の3人の患者のうち1人がDLTを発症した場合、追加のDLTデータが入手可能になるまで、この用量レベルで追加で登録する患者は3人以下とすべきである。なぜなら、追加の患者のうち2人(すなわち、5人の患者中3人)がDLTを経験した場合、この用量は段階的に縮小されるからである。所与の用量レベルで最初の3人の患者のうち2人がDLTを発症した場合、用量は次に低いレベルに段階的に縮小される。所与の用量レベルで最初の3人の患者のうち3人がDLTを発症した場合、この用量は受容不可能なほど有毒であるとみなされる(すなわち、用量は段階的に縮小し、再びその用量に再漸増されることはない)。より低い用量が使用され、所与の用量レベルで次の3人の患者のうち0人がDLTを発症した場合、用量を次のレベルに再漸増させることができる。同じ用量コホートに3人、4人、5人または6人の患者が登録されている場合でも、同じ原則が適用される。
【0176】
mTPI-2の設計に基づくと、ある用量で登録されているがDLT評価についてまだ完全に評価可能でない患者の数は、その用量が受容不可能なほど有毒であるとみなされる前に、DLTを発症するリスクがある残りの患者の数を超えてはならない。合計で3~12人の患者を、所与の用量レベルで連続安全性評価フェーズに登録してもよい。
【0177】
用量の漸増及びRDEの確認は概して、最大12人の患者が、受容可能だと見出されて選択された用量のうちのいずれかで治療を受けた後に終了する。MTDは、推定されるDLT確率が約30%に最も近くなるように与えられ得る用量レベルとして定義される。MTDの推定は、DLTの発生率の推定に基づいている。投与量を選択してさらなる登録に進む前にデータの全体性を熟考し、調査全体を通して明らかになったPK及び安全性データに基づいて漸増スケジュールを調節してRDEを決定してもよい。
【0178】
ガイドラインを生成するために使用した目標毒性率は30%であったが、MTDで観察されたDLTを有する患者の比率は30%をわずかに上回るかまたは下回ってもよいことに留意されたい。
【0179】
ペムブロリズマブによる用量漸増フェーズ
最初の併用コホートの用量漸増は、第3回の単剤療法用量コホートの完了後(すなわち、第4回の単剤療法用量コホートと並行して)ペムブロリズマブと併用したIL-2プロドラッグで開始される。ペムブロリズマブコホートと併用したIL-2プロドラッグの用量漸増は、上述のような、単剤療法の場合と同じルールを使用するmTPI2設計に従い、IL-2プロドラッグの開始用量レベルは、その時点での単剤療法の用量漸増において安全であると判定された最高用量よりも1つ下の用量レベルである。新しい用量レベルごとに、ペムブロリズマブと併用して試験されるIL-2プロドラッグの用量レベルは、単剤療法として安全かつ忍容可能であることが示されていなければならない。ペムブロリズマブの服用量は、400mg Q6Wという承認された用量で投与され、漸増または段階的縮小は行われない。
【0180】
用量制限毒性基準
毒性は、米国国立がん研究所-有害事象共通用語規準(NCI CTCAE)バージョン5.0に従って評価される。IL-2プロドラッグの単剤療法、及びペムブロリズマブの併用用量漸増の両方のDLT観察期間は28日間である。DLTは、少なくとも調査薬に関連している可能性があると共に患者に内在する基礎疾患、他の医学的状態、または併用投薬もしくは処置に合理的に起因するとは考えられない有害事象として定義される。
【0181】
調査中止のルール
サイクル1以降の漸増部分では、及び拡大部分中は、調査ではDLT基準が使用され、いずれかの時点で被験者の33%を超えてこれらのDLT基準を満たす毒性が観察された場合、DECは入手可能な安全性データを審査するために招集され、適切なその後のステップ(例えば、用量の改良、調査評価の変更、調査の終了など)を決定する。このような審査が行われている間、登録は一時停止される場合がある。単独またはペムブロリズマブと併用したIL-2プロドラッグに関連する可能性があると考えられると共に、調査治療の初回投与を受けてから28日以内に発生したいかなる死亡も、その結果として、調査登録の一時停止及び現在の投与レベルの中止をもたらし、調査にさらに登録する前に、DECによる迅速な臨時評価を可能にする。
【0182】
用量拡大フェーズ
ひとたび、用量漸増フェーズにおいて単剤療法としての、またはペムブロリズマブと併用してのIL-2プロドラッグについて、それぞれのMTD(複数可)及び/またはRDE(複数可)が決定されると、患者は、以下に具体的に述べる腫瘍タイプのそれぞれの拡大アーム、つまり2つの単剤療法拡大アーム及び2つの併用拡大アームに登録され、それぞれに最大20人の患者が登録される。単剤療法及び併用療法の拡大アームが開設され、個別に登録を開始する場合がある。進化する安全性及び有効性データに基づいて、修正により追加の患者を登録してもよい。4つの拡大コホートには以下が含まれる。
1.アームA:進行性またはmRCCにおけるRDEでの単剤療法としてのIL-2プロドラッグ;
2.アームB:進行性または転移性皮膚悪性黒色腫におけるRDEでの単剤療法としてのIL-2プロドラッグ;
3.アームC:進行性またはmRCCにおけるRDEでのペムブロリズマブと併用したIL-2プロドラッグ;及び
4.アームD:進行性または転移性皮膚悪性黒色腫におけるRDEでのペムブロリズマブと併用したIL-2プロドラッグ。
【0183】
調査対象集団の選択
この調査では、再発性/難治性の局所進行性または転移性の免疫療法感受性固形腫瘍(CPIが承認される特定の適応症として定義される)を有する用量漸増フェーズの単剤療法及び併用アームに、標準治療で進行したか、または標準治療に耐えられない、もしくは利得が証明された標準治療が存在しない患者を登録する。患者は、以前の抗プログラム死1(PD-1)または-(L)1阻害剤を単独または他の薬剤と併用して含む以前のCPI療法を受けることになる。用量漸増フェーズの併用アームに登録された患者は、疾患の進行、または免疫関連毒性以外の理由のいずれかにより、その治療を中止するべきであった。調査のすべてのフェーズの患者は、以前にIL2指向治療を受けていない可能性がある。
【0184】
局所進行性もしくは転移性の腎明細胞癌腫、または局所進行性もしくは転移性の皮膚悪性黒色腫を有する患者は用量拡大フェーズの単剤療法及び併用療法アームに登録される。単剤療法の用量拡大の場合、mRCCを有する患者は以前に最大3種類の治療法を受けていた可能性があり、以前に血管新生抑制療法(血管内皮増殖因子阻害剤「VEGFi」)及びCPIを受けていなければならない。BRAF野生型皮膚悪性黒色腫患者は、以前に1つの治療法を受けていた可能性があり、CPI、抗PD-(L)1阻害剤療法を単独または細胞毒性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)阻害剤または他の治療法と併用して受けている必要がある。v-rafマウス肉腫ウイルスがん遺伝子ホモログB1(BRAF)変異黒色腫を有する患者は、分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼキナーゼ(MEK)阻害剤の有無にかかわらずCPI及びBRAF阻害剤を含む2つの治療法を以前に受けていた可能性がある。具体的には、用量拡大フェーズの併用部分にいるmRCC患者の場合、患者は以前に2つ以下の治療法を受けていなければならず、そのうち1つのみが単独または併用した抗PD-(L)1阻害剤、及びVEGFiを含んでいなければならない。用量拡大フェーズの併用部分に登録された皮膚悪性黒色腫の患者は、BRAF変異の状態に応じて、以前に0~2つの治療法を受けていた可能性がある。用量拡大フェーズの併用療法群の患者は、免疫関連毒性のために以前のCPI療法を中止すべきではなかった。
【0185】
包含基準
調査に参加するには、各患者が以下の基準をすべて満たしていなければならない。
1.書面によるインフォームドコンセントフォーム(ICF)を理解し、自発的に署名することができ、プロトコルの要件に喜んで従うことができる;
2.臨床調査のすべての部分で抗PD-(L)1治療に適応となる固形腫瘍の適応症(例えば、黒色腫、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、頭頸部扁平上皮癌、尿路上皮癌、高マイクロサテライト不安定性またはミスマッチ修復機構欠損の癌、高マイクロサテライト不安定性またはミスマッチ修復機構欠損の結腸直腸癌、胃癌、食道癌、子宮頸癌、肝細胞癌腫、メルケル細胞癌腫、腎明細胞癌腫、子宮内膜癌腫、腫瘍遺伝子変異量高スコア癌、皮膚扁平上皮癌腫、進行性基底細胞癌腫)の組織学的または細胞学的記録を有する;
3.単剤療法の用量漸増:免疫療法が承認されている再発性/難治性の局所進行性または転移性の固形腫瘍を有し、CPIを含む標準治療で進行したか、もしくはそれに耐えられない、または利得が証明された標準治療が存在しない患者;
【0186】
併用療法の用量漸増:免疫療法が承認されている再発性/難治性の局所進行性または転移性の固形腫瘍を有し、CPIを含む標準治療で進行したか、もしくはそれに耐えられない、または利得が証明された標準治療が存在しない患者。患者は、RECIST1.1もしくはiRECISTで定義されている以前のCPIで進行したか、または毒性以外の理由で中止していなければならない。
・ いずれの用量漸増アームの患者も、以前に3つ以下の治療法を受けていた可能性がある。
【0187】
単剤療法の用量拡大:以前にCPIを単独または併用して受けた、再発した進行性/mRCCまたは皮膚悪性黒色腫を有する患者。
・ アームA:再発した進行性またはmRCCを有する患者:以前に3つ以下の治療法を受けていた可能性があり、そのうちの1つのみにCPIが含まれており、抗血管新生剤(VEGFi)を受けていなければならない;
・ アームB:再発した進行性または転移性の皮膚悪性黒色腫を有する患者:BRAF V600野生型(WT)に対する以前の1つ以下の治療法と、BRAF V600変異体に対する以前の2つ以下の治療法とを受けていた可能性があり、分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼキナーゼ(MEK)阻害剤の有無にかかわらずBRAF阻害剤を受けていた可能性がある。再発までに6か月を超える場合、アジュバント療法は治療法の1つとして除外される。T-VEC療法は許可されているものの、治療済み病変を生検の標的病変として使用することはできない。
【0188】
併用用量拡大:再発した進行性/mRCCまたは転移性の皮膚悪性黒色腫を有する患者。
・ アームC:再発した進行性またはmRCCを有する患者:以前に2つ以下の治療法を受けていた可能性があり、そのうちの1つのみにCPIが含まれており、抗血管新生剤(VEGFi)を受けていなければならない;
・ アームD:再発した進行性または転移性の皮膚悪性黒色腫を有する患者:BRAFの状態に応じた以前の0~2つの治療法と、BRAF V600 WTに対する以前の0~1つの治療法と、VRAF V600変異体に対する以前の0~2つの治療法とを受けていた可能性があり、これには、MEK阻害剤の有無にかかわらず、CPI及びBRAF阻害剤が含まれる可能性がある。再発までに6か月を超える場合、アジュバント療法は治療法の1つとして除外される。T-VEC療法は許可されているものの、治療済み病変を標的病変として、または生検に使用することはできない。
4.18歳以上;
5.米国東海岸癌臨床試験グループ(ECOG)パフォーマンスステータスは0または1である;
6.RECIST1.1による少なくとも1つの測定可能な病変を有する(以前に照射された領域にある病変は、そのような病変で進行が実証されている場合は測定可能であるとみなされる);
7.原発性または転移性の固形腫瘍病変の治療前及び治療後の生検を受けることに同意する;
8.以下によって定義される適切な臓器及び骨髄機能を有している。
a.好中球絶対数≧1.5×109/L(≧1500/mm3);
b.ヘモグロビン≧9.0g/dLまたは同等。以前の2週間以内に濃厚赤血球輸血を行わずに基準を満たさなければならない;
c.血小板数≧100×109/L(≧100,000/mm3);
d.総ビリルビンが、ジルベール症候群がない場合には≦1.5×ULN、患者がジルベール症候群を有している場合には≦3×ULN;
e.測定または計算されたクレアチニンクリアランス(推定糸球体濾過速度)≧30mL/分/1.73m2;及び
f.肝臓転移を有する患者の場合にはALT及びAST≦2.5×ULNまたは≦5×ULN。
9.生殖能力のある男性及び女性は、治療期間中、及び調査薬の最後の投与後4か月間は非常に効果的な避妊を順守する意欲があること;
【0189】
男性の調査参加者は、調査治療中、及び調査薬の最後の投与後最長6か月間は精子の提供を控えるべきである。
【0190】
出産の可能性のある女性とは、初経後、永久的に不妊でない限り閉経になるまで繁殖力がある女性のことである。永久的不妊法には、子宮摘出術、両側卵管切除術、両側卵巣摘出術などがある。
【0191】
男性は、両側精巣摘出術によって永久的に不妊にならない限り、思春期以降は繁殖力があるとみなされる。
【0192】
除外基準
以下の基準のいずれかを満たす患者は、調査への参加から除外される。
1.現在治療中のがんとは無関係であり、治癒したとみなされており、治験責任医師の意見では再発のリスクは低いことが提示されている別の活動性悪性腫瘍(第2がん)の病歴が、限局性がんを除いて前の2年以内にある。これらの例外には、基底細胞もしくは扁平上皮皮膚癌、表在性膀胱癌、または前立腺、子宮頸部もしくは乳房の上皮内癌が含まれるが、これらに限定されない;
2.ステロイドを必要とした(非感染性)肺炎/間質性肺疾患の病歴がある、または現在肺炎/間質性肺疾患を有している。
3.用量拡大フェーズアームでブドウ膜黒色腫または粘膜黒色腫の診断を受けている;
4.以前にIL-2指向治療を受けたことがある;
5.同種組織/固形臓器移植を受けたことがある;
6.ステロイドを必要とする症候性脳転移があることがわかっている。以前に脳転移と診断された患者は、治療を完了し、登録前に放射線療法または手術の急性影響から回復し、神経学的に安定しており、無症状であれば、適格である;
7.重度の心血管疾患を有している。その例には、調査薬の初回投与前6か月以内の心筋梗塞、動脈血栓塞栓症もしくは脳血管血栓塞栓症、症候性律動不整、もしくは医学的治療を必要とする不安定な律動不整、治療が必要な狭心症、症候性の末梢血管疾患、ニューヨーク心臓協会分類3または4のうっ血性心不全、または先天性QT延長症候群の病歴が含まれる;
8.スクリーニング時に重大な心電図(ECG)異常がある。その例には、投薬を必要とする不安定な心臓不整脈、左脚ブロック、第2度房室(AV)ブロック2型、第3度AVブロック、グレード2以上の徐脈、またはフリデリシアの式(QTcF)を使用して心拍数に対して補正された470msec超のQT間隔が含まれる;
9.過去2年間に全身治療(すなわち、疾患修飾性抗リウマチ薬剤または免疫抑制薬の使用)を必要とした活動性の自己免疫疾患を有している;
注:補充療法(例えば、副腎、甲状腺、または下垂体機能不全に対するチロキシン、インスリン、または生理的コルチコステロイド補充療法)は許可されている。
10.免疫不全と診断され、免疫抑制療法を受けている、または慢性的な全身もしくは腸内ステロイド療法(プレドニゾンまたは同等の用量>10mg/日)もしくは調査薬の初回投与前7日以内の他の任意の形態の免疫抑制療法を受けている;
注:スクリーニング時及び調査参加中、患者は全身性コルチコステロイド(10mg/日以下の用量のプレドニゾンまたは同等物)、または局所、眼球内、関節内または吸入のコルチコステロイドを使用してもよい。
11.調査薬の初回投与前2週間以内の大手術(バスキュラーアクセス配置を除く);
12.調査薬の初回投与前5半減期または4週間(いずれか短い方)以内の治験薬剤または抗がん療法(化学療法、生物学的療法、免疫療法、抗がん漢方薬、または他の抗がん薬草療法を含む)。さらに、治験抗がん療法を同時に行うことは許可されていない;
13.以前の放射線療法を、調査治療開始から2週間以内に受けている。参加者は、すべての放射線関連毒性から回復して、コルチコステロイドを必要とせず、放射線肺炎を有していないことが必須である。非CNS疾患に対する緩和放射線療法(2週間以内の放射線療法)の場合は、1週間のウォッシュアウトが許される;
14.脱毛症、及びグレード2の以前のプラチナ治療に関連した神経障害を除いて、調査薬の開始時点で米国国立がん研究所有害事象共通用語規準(NCI CTCAE)バージョン5.0グレード1を超える、以前の治療による毒性が継続している;
15.調査薬の開始前及び調査参加中にシトクロムP450(CYP)3A4の強力な阻害剤または誘導剤を使用している;
16.主要なCYP450アイソザイムに対する感受性の高い基材を使用している;
17.患者がICFに署名する能力を妨げる、患者が調査に協力し参加する能力に悪影響を及ぼす、または調査結果の解釈を危うくする可能性が高いと治験責任医師が判断した、精神疾患または薬物乱用を含む、何らかの病気、医学的状態、臓器系の機能不全、または社会的状況がある;
18.調査薬の初回投与後30日以内に生ワクチンまたは弱毒化生ワクチンの接種を受けた;
注:死菌ワクチンまたはその他の形式の投与は許可されている。
19.活動性無制御全身性の細菌、ウイルス、または真菌感染症を有する;
20.既知のヒト免疫不全ウイルス(HIV)抗体を有する;
21.B型肝炎表面抗原及びB型肝炎コア抗体、または定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)検査によるB型肝炎ウイルスDNAによって判定される活動性感染症を有する;
22.qPCR検査によるC型肝炎ウイルス(HCV)抗体またはHCV RNAによって判定される活動性感染症を有する;
23.妊娠中または授乳中である;
注:治療前(72時間以内)に尿妊娠検査で陽性反応が出たWOCBPと定義される。尿検査が陽性である場合、または陰性が確認できない場合は、血清妊娠検査が必要になる。
24.調査薬成分のいずれかに対する過敏症の病歴がある;または
25.患者は、甲状腺異常、または補充療法における有害事象を除く、任意のグレードの免疫関連有害事象(irAE)により以前の抗PD-(L)-1療法を中止した場合、IL-2プロドラッグとペムブロリズマブの併用アームから除外される。
【0193】
調査治療
治験生成物
IL-2プロドラッグは、フリップキャップを有する20Rガラスバイアルで供給される凍結乾燥生成物として開発された。滅菌水で再構成すると、各バイアルは5mg/mLまたは10mg/mLの公称容積6mLを含む。凍結乾燥されたIL-2プロドラッグは2℃~8℃で貯蔵される。
【0194】
調査薬の投与
全体的な投与の説明
IL-2プロドラッグ:
【0195】
IL-2プロドラッグの単剤療法は、RECISTによる進行性疾患、受容不可能な毒性、患者による同意の撤回、治験責任医師による患者の中止、調査もしくは治療を終了するというスポンサーの決定、または死亡まで、28日サイクルでシリンジポンプを介した15分間のIV注入としてQ2Wで投与される。注入に関連した反応が発生した場合、注入継続時間を延長してもよい。
【0196】
用量漸増フェーズ中は、それぞれの新しい未試験の用量レベルでの第1患者及び第2患者への投与の間には少なくとも2日の時差が必要であり、第2患者及び第3患者への投与の間には1日の時差が必要である。
【0197】
ペムブロリズマブ:
【0198】
ペムブロリズマブは、すべての処置と評価が完了した後、6週間(42日)の各治療サイクルの1日目にIV注入を使用して投与される。
【0199】
ペムブロリズマブは、30分間のIV注入を使用して400mgの用量として投与される。施設は、注入タイミングを可能な限り30分に近づけるようにあらゆる努力を払う必要がある。しかしながら、施設ごとの注入ポンプのばらつきを考慮すれば、-5分から+10分の時間枠が許容される(すなわち、注入時間は30分[-5分/+10分])。
【0200】
用量漸増フェーズまたは用量拡大フェーズのIL-2プロドラッグ+ペムブロリズマブ併用アームの場合、ペムブロリズマブが最初に投与される。患者は、ペムブロリズマブの全注入を受けてから約30分後にIL-2プロドラッグの注入を受けることができる。
【0201】
ペムブロリズマブの投与は18サイクル(約2年)に制限される。しかしながら、患者が臨床上の利得を得ている限り、上記のIL-2プロドラッグのセクションの基準に従って、IL-2プロドラッグを単剤療法として継続してもよい。
【0202】
用量変更ガイドライン
患者が、IL-2プロドラッグ、ペムブロリズマブ、またはその両方(irAEを含む)に関連する可能性のある、試験治療下で発現した有害事象(TEAE)を経験した場合、さらなる用量の変更、中止、または永久的中止が行われる可能性がある。サイクル1では、患者が、調査薬に関連するグレード2以上のTEAEを経験していない場合、用量変更を回避するべきである。後続のサイクルでは、投与の中断及び/または変更は許容される。
【0203】
調査手順
試験と評価
バイタルサインと身体診察
バイタルサインが測定され、これには収縮期血圧と拡張期血圧、心拍数、体温の測定が含まれる。
【0204】
スクリーニングでは、身体診察、ならびに関連する系統、体重及び身長の検査が行われる。身長はスクリーニングビジット時にのみ測定されるが、やり残した場合には後に測定してもよい。疾患部位及び症状を対象とした簡易身体診察は、サイクル1後の次のサイクルの1日目に実行される。
【0205】
薬物動態及び心電図
薬物動態
親化合物及び遊離IL-2のIL-2プロドラッグPK評価用の血漿サンプルを取得する。可能性のある安全性または抗腫瘍活性の所見と関連して曝露を理解するために治験責任医師が必要と考えた場合、追加のPK評価を実施してもよい。サンプルを収集し、IL-2プロドラッグ及び遊離IL-2の濃度を、検証された生物分析方法で測定する。
【0206】
心電図
12誘導ECGを取る。用量漸増フェーズ中のDLT期間全体を通して、連続3回の12誘導ECGを(1分以上の間隔をあけて)取る。用量漸増フェーズ中のDLT期間後及び用量拡大フェーズ全体を通して単一の12誘導ECGを取る。例外的事象または異常が観察された場合は、単一のECGを繰り返す必要がある。ECG測定が血液サンプルの採取と同時に行われる場合、PKサンプルの収集時間に影響を与えないように、血液サンプル収集の十分前にECG評価のタイミングを選ぶ必要がある。患者が安静な(半横臥位または半仰臥位の)姿勢で5分間静かに呼吸した後にECGを記録する。調査薬投与の15~30分前に投与前のすべてのECGを取る。ECGの評価には、心拍数、PR、QRS、QT、及びQTcF間隔というECGパラメータにおける変化の評価が含まれる。Medpace Core Laboratoryは調査の用量漸増フェーズ用の機器を提供し、ECG画像はセンターに保存される。ECGのローカル評価及び機器は調査の拡大フェーズ中に利用され、ECG画像はローカルに保存される。
【0207】
薬力学
以下の表8に具体的に述べているように、薬力学的評価及びバイオマーカー評価のために全血液サンプルを収集する。
【0208】
バイオマーカー評価の目標は、臨床調査の裏付けとなるデータを提供することだが、実際的な理由または戦略的な理由(例えば、サンプル数が不十分、サンプルの品質に関連する問題、または分析を妨げるアッセイに関連する問題、相関分析の実行が不可能であるなど)のいずれかにより、収集を停止する、分析を実行しない、または中止するという決定が下される状況がある。したがって、調査中に得られた結果に応じて、スポンサーの裁量でサンプル収集分析が省略される場合がある。
【表8】
【0209】
RECIST及びiRECISTによる腫瘍測定
腫瘍はRECIST1.1(Tumor Measurements and Assessment of Disease Response using RECIST 1.1を参照)及びiRECIST(Modified Response Evaluation Criteria in Solid Tumors 1.1 for Immune-Based Therapeutics (IRECIST) Quick Referenceを参照)に基づいて評価される。ベースライン疾患評価には、胸部、腹部、骨盤、またはサイクル1の1日目から28日以内のスクリーニング時に疾患関与が疑われるその他の任意の領域のコンピュータ断層撮影(CT)または磁気共鳴(MR)画像検査を使用した放射線腫瘍測定が含まれる。CNS転移を有する患者は、スクリーニング中に脳画像検査を受けなければならない(MR画像検査が好ましいが、MR画像検査が禁忌の場合は造影CTも許容される)。各モダリティでは、明らかな禁忌(例えば、標準的な予防治療では対処できない腎機能の低下またはアレルギー)がない限り、静脈内(IV)及び経口造影剤を利用する必要がある(胸部CTにはIV造影剤は必要ない)。調査中のスキャンは、最初の6サイクルについてはサイクル1の1日目から8週間(±7日)ごとに、その後は12週間(±7日)ごとに実行する必要があり、胸部、腹部、骨盤、またはベースラインでの既知の疾患のその他の任意の領域の画像検査を含み、RECIST1.1及びiRECISTによる進行性疾患、同意の撤回、または新しい抗がん療法の開始まで、ベースライン画像検査に使用したものと同じモダリティを使用する。
【0210】
生検及びアーカイブ腫瘍サンプル
免疫表現型検査、がん遺伝子発現解析、免疫組織化学による腫瘍免疫構造の評価には、治療前及び治療後の生検が必要である。しかしながら、必要な数のコアを含む新鮮な生検の収集が医学的に不可能な場合、患者は調査を継続してもよく、アーカイブ腫瘍サンプルが要求される。ベースラインでは、フローサイトメトリーによる免疫表現型検査のために新鮮な生検(2コア)が必要である。また、ベースラインでは、新たに得られた生検(4コア)、または新鮮な生検が医学的に不可能な場合には(腫瘍ブロックが好ましい)アーカイブ生検のいずれかからの組織が、癌遺伝子発現分析、及び免疫組織化学による腫瘍免疫構造評価のために収集される。登録後の28日間のスクリーニング期間中、いつでもベースラインサンプルを収集してもよい。調査では、免疫表現型検査、癌遺伝子発現分析、及び免疫組織化学による腫瘍免疫構造評価のために、サイクル1の22日目と28日目の間に生検(6コア)を収集する。2回目の生検のタイミングは、進化するバイオマーカーデータに基づいて変更してもよい。
【0211】
有効性及び薬物動態の評価
調査の評価項目
一次評価項目(用量漸増フェーズ)
この調査の用量漸増フェーズの一次評価項目は以下のとおりである。
・ IL-2プロドラッグ単独のMTD及び/またはRDE;
・ ペムブロリズマブと併用したIL-2プロドラッグのMTD及び/またはRDE;及び
・ 単独及びペムブロリズマブと併用したIL-2プロドラッグのTEAE及び重篤な有害事象(SAE)の頻度、重症度、関連性、安全性検査パラメータの変化、及びDLT(観察された場合)。
【0212】
一次評価項目(用量拡大フェーズ)
この調査の用量拡大フェーズの一次評価項目は以下のとおりである。
・ 単独及びペムブロリズマブと併用したIL-2プロドラッグのTEAE及びSAEの頻度、重症度、関連性、安全性検査パラメータの変化、及びDLT(観察された場合);及び
・ ORR(ORR=CR+PR)、RECIST1.1によるDOR、及びiRECISTによるiORR(iORR=iCR+iPR)。
【0213】
二次評価項目(用量漸増フェーズ及び用量拡大フェーズ)
この調査の用量漸増フェーズ及び用量拡大フェーズの二次評価項目は以下のとおりである。
・ IL-2プロドラッグ及び遊離IL-2の血漿濃度ならびに計算されたPKパラメータ;
・ DOR、ならびにRECIST1.1及びiDORによるPFS、ならびにiRECISTによるiPFS;
・ 単独及びペムブロリズマブと併用したIL-2プロドラッグに対する応答での、T細胞サブセットを含む末梢免疫細胞のベースラインからの変化の特性評価;
・ 免疫組織化学(IHC)によって測定される、単独及びペムブロリズマブと併用したIL-2プロドラッグに対する応答での、ベースライン及び治療後の腫瘍生検における免疫学的バイオマーカーの変化;及び
・ ADAのレベルによって示される、IL-2プロドラッグ(単独及びペムブロリズマブと併用して)の免疫原性の発生率。
【0214】
探索的評価項目
この調査の用量漸増フェーズ及び用量拡大フェーズの探索的評価項目は以下のとおりである。
・ 単独及びペムブロリズマブと併用したIL-2プロドラッグによるPD効果は以下のとおりである。
・ IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-8、IL-10、IL-13、IL-15、可溶性CD25、インターフェロンガンマ、形質転換成長因子ベータ、腫瘍壊死因子アルファを含むが、これらに限定されないサイトカインの調節;
・ 末梢血液中のリンパ球及び好酸球のレベルの変化;
・ T細胞サブセットを含む腫瘍内免疫細胞の特性評価;
・ 腫瘍における免疫応答の遺伝子発現プロファイルの変化;
・ IL-2の腫瘍内レベルの変化。
【0215】
安全性評価:特に関心のある有害事象
単独及びペムブロリズマブと併用したIL-2プロドラッグの安全性及び忍容性プロファイルは、有害事象(DLT、SAE、及び特別に関心のある有害事象[AESI]を含む)、身体診察所見(ECOGのパフォーマンスステータスを含む)、臨床検査評価、バイタルサイン測定及びECGをモニタリングすることによって評価される。有害事象は、NCI CTCAEバージョン5.0に従って等級分けされる。この調査では、AESIには以下のものが含まれる。
・ ≧グレード2 CRS;及び
・ ≧グレード2 CLS。
【0216】
併用アームの場合、AESIには以下のものが含まれる。
・ 過剰摂取の治療で定義されている、臨床症状にも異常な検査結果にも関連しないペムブロリズマブの過剰摂取。
・ プロトコル指定の臨床検査または予定外の臨床検査によって決定される、正常値の上限の3倍以上になるASTまたはALT検査値の上昇、正常値の上限の2倍以上になる総ビリルビン検査値の上昇、及び同時に検査値が正常値の上限の2倍未満であるアルカリホスファターゼ。
【0217】
統計分析
IL-2プロドラッグ及び遊離IL-2の血漿濃度を、検証済みの生物分析アッセイで測定する。IL-2プロドラッグ及び遊離IL-2の以下のPKパラメータを、ノンコンパートメント解析、すなわち観察された最大血漿濃度(Cmax)、観察された最大血漿濃度までの時間(Tmax)、時間0からtまでの濃度対時間曲線の下の面積(AUC0-t)、濃度時間対時間0から無限大までの曲線の下の面積(AUC0-inf)、クリアランス(CL)、分布容積(Vd)、及び消失半減期(t1/2)を使用して血漿濃度から計算する。必要に応じて、用量コホートごとに要約統計を生成する。
【0218】
平均IL-2プロドラッグ及び遊離IL-2の血漿濃度と時間の関係を示すプロットを、用量グループ及びフェーズごとに線形及び片対数形式で生成する。個々の血漿濃度と時間の関係を示すグラフも提供される。
【0219】
特に指定のない限り、抗腫瘍活性解析を安全性解析対象集団で実施する。RECIST1.1及びiRECIST基準による腫瘍応答データをリスト化して要約する。最良の全体的な応答がCRまたはPRであることが確認された患者の観察された割合に基づいて、各コホートについてORRを推定する。最良の全体的な応答がiCRまたはiPRであると確認された患者の観察された割合に基づいて、各コホートについてiORRを推定する。カプラン・マイヤー法を使用して、DOR、iDOR、PFS及びiPFSを説明的に要約する。
【0220】
概して、すべての安全分析は説明的であり、安全性解析対象集団の適切な要約統計とともに表形式で提示される。
【0221】
単独及びペムブロリズマブと併用したIL-2プロドラッグの安全性及び忍容性プロファイルは、有害事象(DLT、SAE及びAESIを含む)、身体診察所見(ECOGのパフォーマンスステータスを含む)、臨床検査評価、バイタルサイン測定及びECGをモニタリングすることによって評価される。有害事象は、NCI CTCAEバージョン5.0に従って等級分けされる。
【0222】
TEAEを有する患者の数と割合を、器官別大分類及び基本語によって要約する。グレード3以上のTEAE、薬関連のTEAE、試験治療下で発現したSAE、薬関連の試験治療下で発現したSAE、調査薬の中止につながるTEAE、調査薬の中止につながる、薬関連のTEAE、調査薬の用量低減/中断につながるTEAE、及び調査薬の用量低減/中断につながる、薬関連のTEAEを同じ様式で要約する。この調査の用量漸増フェーズのサイクル1中のDLTを、主要な器官別大分類及び基本語によって要約する。
【0223】
抗腫瘍活性解析
現地の治験責任医師の評価に基づいてRECIST1.1及びiRECIST基準を使用して、すべての有効性を行う。
【0224】
全奏効率:
【0225】
確認されたCR及び/またはPRの達成によって定義される全奏効率を、パーセント率及び95%信頼区間(CI)によって提示する。固形腫瘍のサイズの変化については、ウォーターフォールプロットを提示する。すべての応答評価について、スイマープロットを提示する。すべての応答評価をリスト化する。
【0226】
3、6、及び9か月目の臨床的有効率:
【0227】
CR及び/またはPR及び/またはSDの達成によって定義される、3、6、及び9か月目の臨床的有効率を、パーセント率及び95%CIで提示する。ウォーターフォールプロットを提示する。
【0228】
奏効期間:
【0229】
PRまたはCRの最初の評価からPDのその後の最初の評価までの時間として定義される奏効期間を、奏効期間の中央値及びそれぞれの95%CIを含む説明的統計によって要約する。奏効期間もまた、リスト化される。
【0230】
無増悪生存期間(PFS)及び全生存率(OS):
【0231】
最初の治療を受けてからPD/OSまでの時間を、カプラン・マイヤー推定値、PFS/OSの中央値、及びそれぞれの95%CIによって要約する。イベントのない患者は、PFSについては最後に利用可能な腫瘍評価が行われた時点で、OSについては生存が分かっている最後の時点で打ち切られる。
【0232】
最良の全体的な応答がiCRまたはiPRであると確認された患者の観察された割合に基づいて、各コホートについてiORRを推定する。カプラン・マイヤー法を使用して、DOR、iDOR、PFS及びiPFSを説明的に要約する。
【0233】
薬物動態解析
PK解析対象集団を、すべてのPKデータの要約に使用する。記述統計を超える正式な統計分析は計画されていない。各PKパラメータについて、個々及び平均のデータならびに要約統計を提示する。このPKパラメータの例には、患者数、算術平均、幾何平均(最大血漿濃度までの時間(tmax)、及び最後の測定可能な血漿濃度までの時間(tlast)については、幾何平均は計算されない)、標準偏差(StD)、信頼値(CV)、中央値、最小値と最大値が含まれる。
【0234】
薬力学解析
血液及び腫瘍微小環境における血清サイトカイン及び免疫細胞サブセットに対する免疫学的変化の結果、変化、増減率、及び最大増減率を説明的に要約する。
【0235】
サンプルサイズの決定
この調査の全体的なサンプルサイズは、用量漸増フェーズ及び用量拡大フェーズの間で約150人の患者であり、IL-2プロドラッグの単剤療法、及びペムブロリズマブと併用したIL-2プロドラッグの観察されたDLTプロファイルに応じて異なる。
【0236】
実施例3:CT26マウスモデル
インビトロでMMP9を発現する急速増殖結腸腺癌細胞株であるCT26細胞株を使用した。この腫瘍モデルを使用して、融合タンパク質が腫瘍の増殖に影響を与える能力を検査した。
【表9】
【0237】
潰瘍形成を低減させる細胞を移植するために、マウスにイソフルランで麻酔を施した。雌BALB/cマウスを、脇腹への1.5x10
5のCT26腫瘍細胞皮下注射により準備した。細胞注入量は0.1mL/マウスであった。開始日のマウスの年齢は8~12週であった。腫瘍が平均サイズ100~150mm
3に達した時にペアマッチを実行し、表9に従って処置を開始した。誘導性IL-2プロドラッグは化合物1(WW0621/WW0523)、抗PD-1抗体はRMP1-14であった。体重は調査の開始時に測定され、その後は調査の終了まで隔週で測定された。調査が終了するまで、腫瘍サイズのキャリパー測定を隔週で実施した。有害反応があれば直ちに報告された。30%を超える体重減少が1回観察された、または3回連続して25%を超える体重減少が測定されたいかなる個々の動物もすべて安楽死させた。平均体重減少が20%を超える、または死亡率が10%を超えるいかなるグループでも、結果として投与は停止された。このグループは安楽死にならず、回復が許可された。動物は個々に監視された。調査の評価項目は、腫瘍体積1500mm
3または45日のいずれか早い方であった。応答個体はより長く追跡された。終点に達した時、動物を安楽死させた。この調査における化合物1または抗PD-1による処置は、単剤療法としての有効性を示した。化合物1及び抗PD1抗体を使用する併用療法は腫瘍制御を改善し、化合物1または抗PD-1抗体のいずれかの単剤療法よりも効果的であった。結果を
図10A~
図10Fに示す。
【0238】
他の実施形態
上記の開示は、独立した有用性を有する複数の異なる発明を包含し得る。これらの発明の各々を、その好ましい形態(複数可)で開示してきたが、多数の変形が可能であるため、本明細書に開示及び例示されるその具体的な実施形態は限定的な意味で考慮されるべきではない。本発明の主題には、本明細書で開示される様々な要素、特徴、機能、及び/または特性の、すべての新規かつ非自明の組み合わせ及び部分組み合わせが含まれる。以下の特許請求の範囲は、新規かつ非自明とみなされる特定の組み合わせ及び部分組み合わせを特に指摘している。特徴、機能、要素、及び/または特性の他の組み合わせ及び部分組み合わせで具体化された発明は、本出願、本出願からの優先権を主張する出願、または関連出願において特許請求され得る。そのような特許請求の範囲もまた、異なる発明を対象とするのか、または同じ発明を対象とするのか、また、元の特許請求の範囲と比較して範囲が広いか、狭いか、等しいか、もしくは異なるかということにかかわらず、本開示の発明の主題に含まれるとみなされる。
【配列表】
【国際調査報告】