(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-18
(54)【発明の名称】分光器に基づくオープン・パス・ガス検知器
(51)【国際特許分類】
G01N 21/3504 20140101AFI20240910BHJP
G01N 21/33 20060101ALI20240910BHJP
G01N 21/359 20140101ALI20240910BHJP
G01N 21/39 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
G01N21/3504
G01N21/33
G01N21/359
G01N21/39
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024510354
(86)(22)【出願日】2022-07-27
(85)【翻訳文提出日】2024-04-12
(86)【国際出願番号】 US2022038488
(87)【国際公開番号】W WO2023022865
(87)【国際公開日】2023-02-23
(32)【優先日】2021-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524061943
【氏名又は名称】スペクトロニクス・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SPECTRONIX LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ベン-アデレット,ヨッシ
(72)【発明者】
【氏名】シーントップ,ウジエル
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA01
2G059BB01
2G059EE01
2G059EE12
2G059HH01
2G059HH03
2G059JJ01
2G059KK01
2G059MM01
2G059MM05
(57)【要約】
オープン・パス・ガス検知システム(200)は、送信器(202)と受信器(204)を含む。送信器(202)は、オープン・パスを渡らせる広帯域スペクトルを有する照射光(216)を生成するように構成される。受信器(204)は、照射光(216)がオープン・パスを通過した後の、送信器(202)からの照射光(216)を検知するように構成される。受信器(204)は、照射光(216)のスペクトル情報を決定し、スペクトル情報に基づいて少なくとも一つの目的のガスを識別し、少なくとも一つの目的のガスに基づいて出力(222)を提供するように構成された少なくとも一つの分光器(218)を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オープン・パス・ガス検知システムであって、
オープン・パスを渡らせる照射光を生成するように構成された送信器であって、前記照射光が広帯域スペクトルを有する送信器、及び、
前記送信器からの前記照射光が前記オープン・パスを通過した後の、前記照射光を検知するように構成された受信器であって、前記照射光のスペクトル情報を決定し、前記スペクトル情報に基づいて少なくとも一つの目的のガスを識別し、前記少なくとも一つの目的のガスに基づく出力を提供するように構成された、少なくとも一つの分光器、を含む受信器、
を含む、オープン・パス・ガス検知システム。
【請求項2】
前記スペクトル情報を決定することが、第1の基準波長強度に対する第1の信号波長強度の比を求めること、及び、第2の基準波長強度に対する第2の信号波長強度の比を求めること、を含む、請求項1に記載のオープン・パス・ガス検知システム。
【請求項3】
前記受信器が、目的のガスに関連する複数のスペクトル・フィンガープリントを記憶する記憶装置を含む、請求項2に記載のオープン・パス・ガス検知システム。
【請求項4】
前記受信器が、前記スペクトログラフィック情報を、前記複数のスペクトル・フィンガープリントの少なくとも一つと照合して、前記少なくとも一つの目的のガスを検知するように構成された制御装置を含む、請求項3に記載のオープン・パス・ガス検知システム。
【請求項5】
前記制御装置、検知器が、前記少なくとも一つの目的のガスの識別を、閾値と比較して、前記出力を提供するように構成される、請求項4に記載のオープン・パス・ガス検知システム。
【請求項6】
前記少なくとも一つの分光器が、NIR分光器を含む、請求項1に記載のオープン・パス・ガス検知システム。
【請求項7】
前記少なくとも一つの分光器が、MIR分光器を含む、請求項1に記載のオープン・パス・ガス検知システム。
【請求項8】
前記少なくとも一つの分光器が、SWIR分光器を含む、請求項1に記載のオープン・パス・ガス検知システム。
【請求項9】
前記少なくとも一つの分光器が、UV分光器を含む、請求項1に記載のオープン・パス・ガス検知システム。
【請求項10】
前記少なくとも一つの分光器が、複数の分光器を含む、請求項1に記載のオープン・パス・ガス検知システム。
【請求項11】
前記検知器が、防爆ハウジングを含み、前記少なくとも一つの分光器が、前記防爆ハウジングの窓に近接して配置される、請求項1に記載のオープン・パス・ガス検知システム。
【請求項12】
前記検知器が、前記スペクトル情報に基づいて調整を実行するように構成される、請求項1に記載のオープン・パス・ガス検知システム。
【請求項13】
前記出力が、局所的に提供される、請求項1に記載のオープン・パス・ガス検知システム。
【請求項14】
前記検知器が、前記出力を、遠隔装置に無線で提供するように構成される、請求項1に記載のオープン・パス・ガス検知システム。
【請求項15】
前記送信器が、前記オープン・パスを通過する前記照射光をコリメートする、コリメート光学系を含む、請求項1に記載のオープン・パス・ガス検知システム。
【請求項16】
少なくとも一つのガスを検知する方法であって、
照射光のビームを、オープン・パスを渡らせて、受信器に送出すること、
前記受信器で、前記照射光が前記オープン・パスを通過した後の、前記照射光のスペクトル成分を検知すること、
少なくとも一つの目的のガスを検知するために、前記検知されたスペクトル成分を、複数の目的のガスに関連するスペクトル・フィンガープリントと比較すること、及び、
前記検知された目的のガスを示す出力を提供すること、
を含む、方法。
【請求項17】
前記スペクトル成分の検知が、前記受信器内の分光器を用いて行われる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記分光器が、NIR分光器であり、前記目的のガスが、炭化水素である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記分光器が、UV分光器であり、前記目的のガスが、有毒ガスである、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記スペクトル・フィンガープリントが、前記受信器内に記憶され、前記検知されたスペクトル成分をスペクトル・フィンガープリントと比較することが、前記受信器内の制御装置によって行われる、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景
オープン・パス・ガス検知器(Open Path Gas Detectors : OPGD)は、長距離に渡るガスの存在を監視するために、一般的には設置される、見通し内(line-of-sight)型ガス・モニターである。オープン・パス・ガス検知器は、高速の応答を提供し、極端な条件下でも作動し、広い範囲を監視するために必要な機器の数がより少なくてすむ。これらの検知器は、一般的に、個々の化学物質に固有のスペクトル・フィンガープリント(spectral fingerprint)を検知する。そのようなガス検知器は、一般的に、一対のデバイス、すなわちソース(source)ユニットと検知器ユニット、から構成される。ソースユニットは、オープン・パスを通過する高エネルギービームを生成する。ターゲットガスは、照射されたエネルギーの一部を吸収し、残りは透過させる。検知器ユニットは、ターゲットガスに基づき、特定のスペクトル範囲で、透過エネルギーを検知する。
【0002】
炭化水素ガスを検知するための非分散赤外分光法と、有毒ガス、及び/又は、可燃性ガスを検知するためのUV分光法、の使用が知られている。これは基本的に、監視される領域内の経路に沿って、広帯域の照射光を送出することを含む。照射光の波長は、2つの異なる範囲の間で選択される。一つ目は、目的のガスにより吸収され、信号(「信号」の波長は、
図1Aの箱形状部(box)10に示されている)と称されるものであり、もう一つは、目的のガスが有意な吸収を示さない、異なる波長範囲の基準(「基準」の波長は、
図1Aの箱形状部20に示されている)として選択されるものである。監視される領域において、経路に沿って通過した照射光の強度と、その照射光の比(信号と基準)における減衰が、監視される領域内における、ターゲットガスの量の測定値を提供する。しかし、目的のガスによる吸収以外の要因であっても、照射光を減衰させる可能性があり、これには、雨、霧、及び/又は、蒸気による干渉、又は、遮蔽、照射光の大気散乱、レンズ表面の汚染(例えば、汚れや結露等による)、及び、部品の経年劣化が含まれる。これらのような場合、誤警報が発生する可能性がある。したがって、現状のオープン・パス・ガス検知器の信頼性には限界がある。
【0003】
現状のオープン・パス・ガス検知器は、一般的に、信号と基準の各検知器用のビームスプリッタを含む、画像化システムを使用する。各検知器は、適切な波長が目的の検知器に送出されるようにするための専用のバンドパス干渉フィルターを有する。この構成では、ビームスプリッタを使用することにより、チャンネルの最大数が2チャンネルに制限される。
【発明の概要】
【0004】
オープン・パス・ガス検知システムは、送信器と受信器を含む。送信器は、広帯域のスペクトルの波長を有する照射光を、オープン・パスを渡らせて生成するように構成されている。受信器は、照射光がオープン・パスを通過した後、送信器からの照射光を検知するように構成される。受信器は、照射光のスペクトル情報(spectroscopic information)を決定し、スペクトル情報に基づいて少なくとも一つの目的のガスを識別し、少なくとも一つの目的のガスに基づいて出力を提供するように構成された、少なくとも一つの分光器を含む。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1A】オープン・ガス検知器の透過率対波長のグラフである。
【
図1B】メタンと水の一対の波長帯域における透過率対波長のグラフである。
【
図2A】一実施形態に係る、様々な波長を使用したオープン・ガス検知器の透過率対波長のグラフである。
【
図2B】一実施形態に係る、様々な波長を使用したオープン・ガス検知器の透過率対波長のグラフである。
【
図3】一実施形態に係る、分光器に基づくオープン・パス・ガス検知器の概略図である。
【
図4A】一実施形態に係る、透過率対波長の測定値、及び、理論値のグラフである。
【
図4B】一実施形態に係る、透過率対波長の測定値、及び、理論値のグラフである。
【
図5】本発明の一実施形態に係る、オープン・パス・ガス検知システムのシステム・ブロック図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る、オープン・パス・ガス検知システムの作動方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
例示的実施形態の詳細な説明
本明細書に記載される実施形態においては、ガス(有毒ガス、及び/又は、炭化水素等)検知用の低分解能の分光器(紫外線(UV)、及び/又は、短波赤外線/中赤外線(SWIR/MIDIR)の範囲内)を使用する新しい光学式オープン・パス・ガス検知器を提供する。現状のオープン・パス・ガス検知器は、許容可能な感度を提供するが、誤警報に対する耐性が比較的低く、ガスに対する選択性が限られている。これらのハードルを克服するために、本明細書に記載された実施形態においては、誤警報に対する高い耐性を備えた診断用マルチガス用にカスタマイズされた、自律型であり、小型化されて、低解像度である、分光器のUV、及び、IRバージョンを提供する。
【0007】
本明細書に記載される実施形態によれば、照射光の測定が、ガス選択性、及び、読み取り精度を増大しながら、性能を大幅に改善し、誤警報の発生率を低減させるように、複数の信号波長、及び、複数の基準波長で実行される。本明細書に記載される実施形態においては、ガスのスペクトル・フィンガープリントを測定し、次いで、ターゲットのガスが吸収される異なる波長における比率、及び、相関を計算する。
【0008】
図1Bは、メタン、及び、水についての一対の波長帯域における透過率対波長のグラフである。
図1Bは、2つのチャネル(すなわち、単一の信号、及び、基準)を使用する現在のオープン・パス・ガス検知器の限界を示す。
図1Bは、メタン26と水蒸気28の両方を含むオープン・パスについて、一対の波長帯域22、24における、透過率対波長を示す。メタン、及び、水蒸気の場合、中赤外照射光に対して、水、及び、水蒸気は、減衰の一般的な原因である、特定の電磁放射線を吸収する微粒子として作用する。この場合、誤警報から保護することができる。さらに、散乱、回折、及び、他のプロセスも、信号に寄与し、影響を与える可能性がある。この場合、誤警報を回避するためには、信号帯域がガス以外の物質に対して鈍感であることが必要であるが、2つのチャンネルのみしか使用しない場合は、まさにこの点で、エラーが発生する可能性がある。
【0009】
図2A、及び、
図2Bは、本発明の実施形態に係る、様々な波長を使用するオープン・ガス検知器の透過率対波長のグラフである。
図2Aは、
図1Aに示される2チャンネルアプローチと比較して、様々なガスの存在、及び/又は、濃度を決定する場合の、目的の多数の波長帯域(30、40、50、60、70、80)を示す。同様に、
図2Bは、
図1Bに示される2チャンネルアプローチと比較して、様々なガスの存在、及び/又は、濃度を決定する場合の、目的の波長帯域の数を示す。より詳細には、
図2Aは、近赤外領域の2.0μm~3.0μmの間に、約0.15μmの帯域幅を有する、6つの異なる波長帯域を示す。別の実施形態においては、
図2Bは、1.9μmと2.6μmの間の、18の異なる波長帯域90-1、90-2、・・・、90-18を示し、各帯域は、約0.038μmの帯域幅を有する。
図2A、及び、
図2Bに示すように、このように増加させた数の波長帯域を利用することで、目的のガスのみを検知することが可能になり、誤警報の発生率を低減することができる。
【0010】
図3は、一実施形態に係る、分光器に基づく、オープン・パス・ガス検知器の概略図である。オープン・パス・ガス検知器100は、送信器、又は、ソース102、及び、受信器、又は、検知器104、を含む。ソース102は、多数の波長の照射光を生成する照射光ソースを含む。いくつかの実施形態においては、照射光波長は、IRからUV波長の範囲とすることができる。他の実施形態においては、波長の範囲は、IRパルスのような、より小さい領域内である。ソース102内のコリメート光学系106は、コリメートされた光ビーム108を、送信器102からオープン・パスを通して、受信器104に投射するために使用される。受信器104は、入射光を捕捉し、分析のために分光器(すなわち、リアルタイムのスペクトル検知が可能な検知器)にエネルギーを集束させる望遠鏡光学系110を含む。光は、大気のオープン・パスを通過するときに、ビーム・パス内に存在する任意の化合物(例えば、ガス、又は、水蒸気)の影響を受ける。オープン・パス内のガスの場合、様々な波長での検知照射光の固有な組み合わせが「スペクトル・フィンガープリント」を提供する。一実施形態においては、分光器を有する受信器/検知器104は、目的となる各ガスのスペクトル・フィンガープリントのリストを含む記憶装置も含む。目的のガスに相関する、この記憶されたスペクトル・フィンガープリント情報により、受信器/検知器は、受信した照射光を分析して、各ガスを識別することができる。従って、検知器104によって、オープン・パスを通過した後のビーム108から収集された照射光は、ガスの記憶されたライブラリの基準と比較され、分析にパターンマッチング技術が使用される。さらに、ガスの測定値は、測定値が、相関係数が十分に高いか、そうでなければ閾値を超えた場合にのみ報告されるように、相関係数の閾値に従うようにすることができる。本明細書に記載された実施形態によれば、より高い分解能を提供するために、様々な基準帯域に対する様々な信号帯域の照射光レベルの複数の比率を使用することができる。
【0011】
本発明の実施形態によれば、受信器104は分光器を含む。この装置は、光ビームからスペクトログラフィック(spectrographic)情報を、直接に検知する。したがって、その分光器は、単純な光検知器、又は、オープン・パス・フーリエ変換赤外分光法(OP-FTIR)システム等のフーリエ変換を使用してスペクトル情報を導出する検知器、とさえも異なる。スペクトログラフィック検知器は、膨大な数の波長帯域(
図2Bに示される18帯域等、又は、それ以上)を同時に捕捉することが可能であり、その後、受信器によって、これらの波長帯域が、検知器内に記憶された、記憶されたスペクトル・フィンガープリントと比較するために、信号帯域、又は、基準帯域のいずれかとして分析される。
【0012】
本発明の実施形態によって使用することができる分光器の一例としては、一次元(1D)(線形アレイ)、又は、二次元(2D)シリコンベースの電荷結合素子(CCD)、等のマルチチャンネルの分光器である。二次元CCDは、一般的に、長方形に配置された、数千個の素子(画素)を有する分光器である。二次元CCDの中には、近赤外(NIR)領域から1.1ミクロンまでの高い応答性を提供するものがある。それより長い波長では、光子エネルギーが低くなるため、二次元CCD分光器に、特定の材料を使用する必要がある。例えば、インジウムガリウムヒ素(InGaAs)は、0.9~1.7μmの領域で適切な検知を提供し、この材料を使用した分光器は、2.0μmまでの検知を提供する構成で入手可能である。より長い波長の検知のための、HgCdTe、又は、InSb等の異なる材料を使用した他のマルチチャンネル検知器も入手可能である。さらに、他のマルチチャンネル検知器としては、PbS、及び/又は、PbSeセンサが含まれるが、これらに限定はされない。本明細書に記載される実施形態によれば、受信器は、NIR分光器、及び/又は、UV分光器を含むことができる。スペクトル検知が可能な二次元CCDアレイは、市販されていて入手可能である。
【0013】
図4A、及び、
図4Bは、各々、一実施形態に係る、透過率対波長の測定値、及び、理論値のグラフである。
図4A、及び、4Bは、オープン・ガス検知器の測定された応答が、理論的な応答から逸脱し得ることを示す。受信信号は、照射ソースと受信器の間に、他の物質(すなわち、目的のガス以外の物質)、が存在すると影響を受ける可能性がある。例えば、赤外線照射光の場合、水蒸気、及び/又は、埃のような粒子、が特に懸念される。信号の減衰は、目的のガス中の電磁放射線の吸収によって引き起こされ得るが、経路中の埃、又は、光学素子上の汚れ、による散乱、又は、閉塞によっても減衰され得る。例えば、ビームが、水蒸気によって減衰された場合、スペクトル・フィンガープリントは、ガスとは異なる波長であるため、拒絶され、パターンマッチング分析をパスしない。このようにして、本明細書に記載された実施形態は、目的のガスに対する高い選択性を提供する一方で、誤警報に対する高い耐性を提供する。
【0014】
図5は、本発明の実施形態に係るオープン・パス・ガス検知システムのシステム・ブロック図である。オープン・パス・ガス検知システム200は、送信器202、及び、受信器204を含む。送信器202、及び、受信器204の各々は、各々のハウジング206、208内に収容される。
【0015】
オープン・パス・ガス検知器が動作する環境の多くは、揮発性、又は、爆発性が高く、ガス検知システムの火花、又は、表面温度の上昇によって発火する可能性がある。従って、このようなガス検知システムでは、防爆定格に適合することが非常に望ましい。このような定格は、準拠する電気装置内で発生されたいかなる爆発や炎も、装置の環境において、発火しないことが要求される。このような定格は、ハウジングの壁の厚さ、及び、材料、装置内部から外部環境への消炎経路の提供等の、設計上の制約を押し進める。防爆定格の一例として、爆発の可能性のある雰囲気に対するEx-d規格 EN60079-0、及び、EN60079-1に対するATEX認証がある。一般的に、防爆ハウジングは、内部の爆発を、破裂することなく封じ込めるのに十分な機械的堅牢性を備えることができるように、比較的嵩張っている。一般的に、このような防爆容器は、爆発の圧力に耐えるように設計された、非常に堅牢な金属製の筐体である。しかし、光学機器の場合、筐体には、照射光が周囲環境へと透過するように、何らかの窓を設ける必要がある。
【0016】
危険な環境を保護するもう一つの方法は、その中で動作する装置に、本質安全の要件に準拠することを要求することである。電子機器が本質安全である場合、たとえ故障状態下であっても、爆発を発生させるのに必要な温度、又は、火花を発生させることが本質的にできない。本質安全の仕様の一例としては、1998年10月にFactory Mutual Researchによって公布された「APPROVAL STANDARD INTRINSICALLY SAFE APPARATUS AND ASSOCIATED APPARATUS FOR USE IN CLASS I, II, AND III, DIVISION 1 HAZARDOUS (CLASSIFIED) LOCATIONS, CLASS NUMBER 3610」という名称の規格がある。本質安全の要件では、一般的に、AC回路等の高電圧、高電流、及び/又は、高ワット数を伴う回路では単純に準拠が不可能であるような、低いエネルギーレベルを規定する。本明細書に記載される少なくともいくつかの実施形態においては、回路は、上記したような本質安全の要件に準拠するように設計、及び、構成される。
【0017】
本明細書に記載された実施形態は、好ましくは、送信器202、及び/又は、受信器204内に、本質安全の仕様に準拠する、防爆ハウジング206、208、及び/又は、回路を含む。
【0018】
送信器202は、ソースレーザー駆動モジュール212に結合された制御装置210を含む。ソースレーザー駆動モジュール310は、制御装置210から信号を受信すると、照射器モジュール214に、適切なパルス、又は、信号216を、ハウジング窓217を介して、受信器204に向かって生成させるように、ソースレーザー駆動モジュール212が構成されるように、周波数制御、及び、パルス生成ロジックと同様に、電力処理コンポーネントを含むことができる。照射器214は、キセノンランプ、及び/又は、レーザーソース等の、一つ以上の個別の照射器を含むことができる。制御装置210は、レーザー駆動モジュール212に、パルス、又は、信号216を生成させることができるような回路、又は、ロジックの、任意で適切な構成とすることができる。一実施形態においては、制御装置210は、マイクロプロセッサである。
【0019】
受信器204は、ハウジング208の窓219の近くに配置された、一つ以上の分光器218を含む。一つ以上の分光器218は、上述したタイプのものであってよく、制御装置220に結合される。各分光器は、パルス、又は、信号216がオープン・パスを通過した後、パルス、又は、信号216からスペクトログラフィック情報を同時に捕捉することができる。一つの分光器は、1.9~2.6μm等の、一つの特定の領域におけるスペクトル情報を取得するように構成されることができ、別の分光器は、UV等の別の領域におけるスペクトル情報を取得するように構成されることができる。一つ以上の分光器218は、そのスペクトル情報を制御装置220に提供するように、制御装置220に結合される。制御装置220は、一つ以上の分光器218からスペクトル情報を受信し、有用なガス検知情報を生成し、そのようなガス検知情報を出力モジュール222に提供することができる回路、又は、論理の任意で適切な構成とすることができる。一実施形態においては、制御装置220は、マイクロプロセッサである。出力モジュールは、ローカルディスプレイ、ローカル警報出力、及び/又は、出力を提供するための一つ以上の遠隔システムと相互作用するように構成された無線通信モジュール、を含むことができる。
【0020】
制御装置220は、検知される少なくとも一つのガス種についてのスペクトル・フィンガープリント情報を含む、スペクトル・フィンガープリント記憶装置224を含む。このようなスペクトル・フィンガープリント情報においては、一般的に、特定のガスが吸収線を有する波長を含む。記憶装置224には、各ガスについての多数の吸収波長を含み、膨大な数の異なるガスについて、そのような情報を記憶することができる。加えて、又は、代替的に、フィンガープリント記憶装置224は、NIR、MIDIR、SWIR、及び/又は、UV等の様々な周波数領域に渡っての、目的の各ガスについての、透過率対波長の、デジタル化された標識を含むことができる。制御装置220は、ハードウェア、ソフトウェア、又は、それらの組み合わせ、によって、パターンマッチングエンジン226を提供するように構成される。パターンマッチングエンジン226は、一つ以上の分光器からスペクトル情報を受信し、既知のパターンマッチング技術を適用して、検知されたスペクトル情報と一致するスペクトル・フィンガープリントを有する一つ以上のガスを識別する。一実施形態においては、パターンマッチングエンジンの出力は、信頼度、又は、確率の表示とともに、潜在的に検知されたガスのリストである。この実施形態においては、パターンマッチングエンジン226の出力は、信頼度、又は、確率が、予め定義された閾値、又は、最近(例えば、1時間)の時間窓に渡る確率の統計関数(標準偏差等)に基づく閾値、等の、閾値を超えるか否かに基づいて、一つ以上のガス検知出力を選択するために、閾値ロジック228に提供される。
【0021】
図6は、本発明の実施形態に係るオープン・パス・ガス検知システムを動作させる方法の流れ図である。方法300には、オープン・パス・ガス送信器、及び、受信器が構成されるブロック302が存在する。一実施例としては、このような構成は、ガス検知が望まれるオープン・光路パスを画定するために、単に二つの装置を取り付けることを必要とする。しかしながら、例えば、受信器に記憶されたスペクトル・フィンガープリントを有する全ての既知のガスのより大きなセットの中から、検知のために一つ以上のガスを選択すること等、他の初期設定操作を行うこともできる。ガスのサブセットが選択されると、パターンマッチング、及び、閾値化処理が簡略化され、より正確になる可能性がある。次に、ブロック304において、送信器は、オープン・パスに沿って照射光を生成する。この照射光は、所定のスペクトル特性を有する一つ以上のレーザーからのものであってもよいし、あるいは、照射光は、キセノンランプからの閃光のような、比較的広いスペクトルのパルスであってもよい。上述したように、この照射光は、オープン・パスに沿ってガスの分子と相互作用し、受信器に到達する照射光のスペクトル組成に影響を与える。ブロック306において、受信器は、受信器内に配置された一つ以上の分光器を用いて、オープン・パスを通過した照射光を受光する。分光器は、様々な波長における照射光の振幅に基づいてスペクトル情報を生成する。上述したように、このような分光器は、一つ以上の二次元CCDアレイを含むことができる。ブロック308において、一つ以上の分光器は、各々のスペクトル情報を、(例えば、CCDアレイを読み出すこと等により)制御装置に提供する。ブロック310において、制御装置は、受信したスペクトル情報と、制御装置、又は、制御装置に結合された記憶装置に格納された一つ以上のスペクトル・フィンガープリントとを使用して、パターンマッチング処理を実行する。マッチング処理の結果は、ブロック312で示されるように、制御装置によって、出力を生成するために使用される。出力は、局所的に提供されるか、及び/又は、プロセス制御装置等の遠隔装置に無線で通信されることができる。破線のブロック314で示されるように、方法300は、ブロック304に戻ることによって反復するので、本方法は、任意に、スペクトル検知、及び/又は、マッチング処理を、経時的に、学習、及び/又は、調整することを含む。そのような調整の例としては、ソースによって提供される初期照射光の強度、及び/又は、波長分布を変更することを含む。例えば、広帯域のソースが使用された場合、そのような調整は、レーザー照射ソースへの切り替えを含むことができる。調整の別の例としては、水蒸気、蒸気、又は、雨からの干渉等の環境変動に応じて、マッチング処理、又は、閾値ロジック228内のパラメータ、のいずれかを変更することを含む。
【0022】
本発明を、好ましい実施形態を参照して説明してきたが、当業者であれば、本発明の精神、及び、範囲から逸脱することなく、形態、及び、細部において変更を加えることが可能であることを認識できるであろう。
【国際調査報告】