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特表2024-534089Ω-アミノ-カルボン酸およびその誘導体の調製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-18
(54)【発明の名称】Ω-アミノ-カルボン酸およびその誘導体の調製方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 227/18 20060101AFI20240910BHJP
   C07C 229/08 20060101ALI20240910BHJP
   C07C 227/08 20060101ALI20240910BHJP
   C07C 67/313 20060101ALI20240910BHJP
   C07C 69/67 20060101ALI20240910BHJP
   C10M 133/06 20060101ALI20240910BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240910BHJP
   C07C 51/347 20060101ALN20240910BHJP
   C07C 57/03 20060101ALN20240910BHJP
   C10N 40/25 20060101ALN20240910BHJP
【FI】
C07C227/18
C07C229/08
C07C227/08
C07C67/313
C07C69/67
C10M133/06
C07B61/00 300
C07C51/347
C07C57/03
C10N40:25
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024510383
(86)(22)【出願日】2022-08-09
(85)【翻訳文提出日】2024-02-27
(86)【国際出願番号】 IB2022057410
(87)【国際公開番号】W WO2023026127
(87)【国際公開日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】102021000022328
(32)【優先日】2021-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508128303
【氏名又は名称】ベルサリス、ソシエタ、ペル、アチオニ
【氏名又は名称原語表記】VERSALIS S.P.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100174001
【弁理士】
【氏名又は名称】結城 仁美
(72)【発明者】
【氏名】ニコラ ヴェッキニ
(72)【発明者】
【氏名】ミルコ ノダーリ
(72)【発明者】
【氏名】アーマンド ガレオッティ
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル デッレドンネ
【テーマコード(参考)】
4H006
4H039
4H104
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AA03
4H006AB60
4H006AC21
4H006AC46
4H006AC52
4H006AD15
4H006BA20
4H006BA21
4H006BA24
4H006BA48
4H006BA55
4H006BA61
4H006BB11
4H006BB14
4H006BB15
4H006BC10
4H006BC11
4H006BC31
4H006BC34
4H006BE14
4H006BE20
4H006BE40
4H006BQ10
4H006BS10
4H006BT12
4H006BU32
4H006KA31
4H039CA62
4H039CA71
4H039CB30
4H039CF10
4H039CL45
4H104BE02C
4H104BE03C
4H104PA41
(57)【要約】
少なくとも1つのモノ不飽和酸/エステルのCO/H混合物によるヒドロホルミル化によるω-オキソエステル/直鎖酸の合成ステップであって、モノ不飽和酸/エステルは、好ましくは再生可能資源からの油/脂肪のメタセシス反応から得られる、ステップと、前述のω-オキソエステル/直鎖酸を還元的アミノ化に供する、直鎖ω-アミノ酸/エステルおよび/またはω-アミノアミドの合成ステップと、前述の直鎖ω-アミノエステルおよび/またはω-アミノアミドを加水分解に供する、直鎖ω-アミノ酸の起こり得る合成ステップと、を含む、ω-アミノ酸またはその誘導体の合成方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(III)のω-アミノカルボン酸またはその誘導体の調製方法であって、式(I)を有するω-不飽和カルボン酸化合物から出発し、
C=CR’-(Q)-COR’’ (I)
R’は、H、または場合によっては1~10個、好ましくは1~5個の炭素原子で置換された、脂肪族炭化水素基であり、より好ましくは、Hであり、
R’’は、ORまたはNR基、好ましくはORであり、Rは、H、アンモニウム、一価M金属、好ましくはアルカリ金属、C1~C15アルキル基およびC6~C15アリール基、好ましくはC1~C5アルキルから選択され、
およびRは、独立して、H、C1~C15アルキル基およびC6~C15アリール基、好ましくはC1~C5アルキルから選択され、
Qは、二価の、脂肪族の、必要に応じて1~12個の炭素原子、好ましくは3~10個の炭素原子、より好ましくは直鎖、例えば、直鎖ヘプタメチレン基または直鎖ヘキサメチレン基で、置換された、炭化水素基であり、
さらに、当該R’およびQ基は、共に結合して、5~7個の炭素原子を有する脂肪族炭素環構造を形成し得、
当該プロセスは、
(A)式(I)の当該化合物を、ヒドロホルミル化条件下で、好ましくはロジウム(I)およびホスフィン結合剤をベースとする適切なヒドロホルミル化触媒、および必要に応じて適切な溶媒の存在下で、水素および一酸化炭素の混合物と反応させて、式(II)であって、
HOC-CH-CHR’-(Q)-COR’’ (II)
R’、R’’、およびQは、対応して上記で指定した意味を有する、式(II)を有する対応するω-オキソカルボン酸誘導体を得るステップと、
(B)ステップ(A)で得られた当該式(II)の化合物を、好ましくは他の反応生成物からの式(II)の化合物の中間精製ステップの非存在下で、適切な触媒の存在下で水素およびアンモニアとの反応による還元的アミノ化に供し、式(III)のω-アミノカルボン酸誘導体を得、
N-CH-CH-CHR’-(Q)-COR’’ (III)
それを任意の反応溶媒から分離する、ステップと、
(C)必要に応じて式(III)の当該化合物を加水分解に供し、式(III)中のR’’はOHである、対応するω-アミノカルボン酸を得るステップと、
を順に含む、
式(III)のω-アミノカルボン酸またはその誘導体の調製方法。
【請求項2】
前記ステップ(A)における前記ヒドロホルミル化反応は、60~140℃の温度および1.5~6MPaの圧力で、好ましくはエーテル、アルコール、または芳香族溶媒から選択される溶媒中で、実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ステップ(A)におけるヒドロホルミル化反応は、少なくとも1つのホスフィンからなる配位子と、ロジウム、コバルト、イリジウム、ルテニウム、好ましくはロジウム、から選択された金属の可溶性塩または錯体と、を含む触媒の存在下で行われる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記触媒は、HRh(CO)(PPh、(acac)Rh(CO)、[Rh(COD)Cl]および二座または多座ホスフィンから選択されるロジウム錯体を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(A)で得られた反応混合物は、可能な溶媒の少なくとも一部の蒸発および文献で知られている方法の1つを使用した溶媒の回収を除いていかなる分離ステップも実施することなくステップ(B)に移送される、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記還元的アミノ化段階(B)は、水素の存在下、30~200℃、好ましくは50~150℃の温度で、好ましくは3~15MPa、より好ましくは6~9MPaの圧力で、アンモニアを用いて行われる、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記還元的アミノ化ステップ(B)は、コバルトまたはニッケルを含む触媒の存在下で行われる、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記段階(B)において、アンモニアと水素とは、5~25のNH/Hモル比である、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ステップ(B)において得られる式(III)の化合物において、R’’は、R=C1~C5アルキルを有する-OR基であり、前記加水分解ステップ(C)は、酸性または塩基性触媒、好ましくは塩基性触媒、より好ましくは水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムの存在下、水性環境中で行われる、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記式(I)のω-不飽和カルボン酸化合物は、9-デセン酸のエステル、好ましくは9-DAMEである、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
11-アミノウンデカン酸を調製するための、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
基油および少なくとも1つの添加剤を含む潤滑組成物であって、前記添加剤および/または前記基油は、請求項1に記載の式(III)のω-アミノカルボン酸、または請求項1に記載の式(III)のその誘導体であり、前記式(III)のω-アミノカルボン酸および/または式(III)の前記誘導体は、好ましくは、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法に従って得られる、基油および少なくとも1つの添加剤を含む潤滑組成物。
【請求項13】
前記式(III)のω-アミノカルボン酸またはその誘導体は、再生可能起源の式(I)のω-不飽和カルボン酸化合物に由来し、好ましくは再生可能資源からの植物油脂のメタセシス反応から得られる9-デセン酸メチル(9-DAME)から出発する、請求項12に記載の潤滑組成物。
【請求項14】
配合物全体に対する再生可能原料由来の炭素の含有率は、少なくとも1重量パーセント(1%)であり、式(III)のω-アミノカルボン酸または式(III)のその誘導体に由来する、請求項13に記載の生体潤滑剤。
【請求項15】
再生可能原料からの炭素の含有率は、単一成分(基油および/または粘度調整剤および/または添加剤)に対して少なくとも25重量%であり、式(III)のω-アミノカルボン酸または式(III)のその誘導体に由来する、請求項13または14に記載の生体潤滑剤。
【請求項16】
前記再生可能原料からの炭素の含有率は、少なくとも50%である、請求項15に記載の生体潤滑剤。
【請求項17】
請求項1から11のいずれか一項に記載の方法に従って、式(III)のω-アミノカルボン酸または式(III)のその誘導体を調製することを含み、および、加えて、追加のステップとその後の前記ω-アミノカルボン酸、式(III)のその誘導体、または上記のうちの1つのさらなる誘導体を、少なくとも1つの潤滑基剤(基油)を含む組成物中に導入することを含む、潤滑または生体潤滑組成物の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ω-アミノカルボン酸またはその誘導体の製造方法、および潤滑剤の分野におけるそれらの使用に関する。
【0002】
より具体的には、本発明は、例えば、11-アミノウンデカン酸もしくは10-アミノデカン酸、またはそれらの誘導体などの脂肪族ω-アミノ酸を、例えば、9-デセン酸または8-ノネン酸などの末端モノ不飽和カルボン酸化合物から出発して製造する、好ましくは潤滑剤の分野、さらにより好ましくは生体潤滑剤の分野での用途向けの、方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ω-アミノカルボン酸またはその誘導体は、潤滑剤の分野、好ましくは生体潤滑剤の分野での用途に使用され得ることが知られている。
【0004】
潤滑剤は、基油と添加剤とをベースに配合され、自動車、産業機械、船舶機械などの多様な市場において、表面間の摩擦を低減する目的で使用される潤滑剤である。用途や使用条件の違いは、化学配合(基油および添加剤の選択および定量)の違いに反映される。
【0005】
例えば、文献では、内燃機関における最も重要な用途に加えて、多くの場合特定の潤滑剤を必要とする他の用途が膨大にあることが報告されており、需要を満たすには、すべての用途の90%超、5,000~10,000の異なる配合が必要である。
【0006】
体積の観点から見ると、基油は、潤滑油の最も重要な成分であり、潤滑油配合物の95%超を占め、すなわち、化学添加剤が配合量の1%のみを占め、残りの99%が基油である潤滑油のファミリー(例:一部の油圧油およびコンプレッサー油)があり、一方、一部の金属加工液は、最大30%の添加剤を含有し得る(Mang,T.、Noll,S.、およびBartels,T.(2011).Lubricants、1.Fundamentals of Lubricants and Lubrication.ウルマン産業化学事典(Ed.).doi:10.1002/14356007.a15_423.pub2における;Mang,T.、Braun,J.、Dresel,W.およびOmeis,J.(2011).Lubricants、2.Components.ウルマン産業化学事典(Ed.).doi:10.1002/14356007.o15_o04における)。
【0007】
例えば、エンジン潤滑剤は、多数の添加剤成分を含有し、その範囲は5~15種類、通常は8種類である。
【0008】
一例として、自動車用潤滑剤の平均組成は質量百分率で基剤77.6%、粘度調整剤10.9%、総添加剤含有量11.5%のように構成される。(出典:ATC DOCUMENT 118、2016年8月、表5-インターネット公開:https://www.atc-europe.org/public/Document%20118%20%20Lubricant%20Additives%20Use%20and%20Benefits.pdf)
【0009】
これに関連して、国際公開第2015/027367号は、2つの極性基で官能化された長鎖化合物(高分子)が極性基を摩擦対のそれぞれの金属表面の各々に配位し、同時に長鎖が2つの金属表面を完全に分離させ、それによって、一端に極性基、他端に無極性炭化水素鎖を有する従来の減摩改質剤とは異なり、相互の接触を防ぎ、非摩耗摩擦を生み出し、潤滑油に優れた耐摩耗性能をもたらすことを教示する。
【0010】
欧州特許第1151994号明細書は、潤滑添加剤、潤滑剤の分散剤、潤滑剤の摩擦調整剤、液体燃料の洗浄剤添加剤として使用できる新規な酸スクシンイミド化合物について言及する。
【0011】
コハク酸イミド誘導体は、脂肪族炭化水素基で置換されたコハク酸アシル化剤とアミノ酸またはその誘導体との反応によって調製される。この目的に適したアミノ酸には、特に、7-アミノヘプタン酸、11-アミノウンデカン酸、および12-アミノデカン酸などのオメガアミノ酸が含まれる。酸スクシンイミド化合物は、ヒドロカルビル置換コハク酸アシル化剤と少なくとも1つのアミノ酸を、当業者によって容易に決定される適切な操作条件下で組み合わせることによって調製される。
【0012】
この特許出願は、出発アミノ酸の起源も調製方法も特定していない。
【0013】
国際公開第2008/147704号は、潤滑粘度油、油溶性モリブデン化合物および低残留耐摩耗剤を含有する潤滑組成物を開示している。この特許出願は、新しい抗酸化剤にも関連する。この潤滑剤組成物は、内燃機関に使用され得る。低残留耐摩耗剤の一般式には、□-アミノカルボン酸のエステルが含まれる。
【0014】
米国特許第5,880,072号明細書には、実質的に等モル量のジカルボン酸とポリオールとの反応から得られる環状アミドおよびモノエステルを含む耐摩耗組成物が記載されており、当該ジカルボン酸は、不飽和脂肪酸の二量体である。好ましい環状アミドは、環化および□-アミノ酸からの水分子の除去によって生成されるラクタムである。ラクタムを与えるアミノ酸の環化は当業者に知られており、参考になるテキスト(https://en.wikipedia.org/wiki/Lactam)でも報告されている。
【0015】
Gonzalez Rodriguez,P.らによる「Tuning the Structure and Ionic Interactions in a Thermochemically Stable Hybrid Layered Titanate-Based Nanocomposite for High Temperature Solid Lubrication」と題する出版物、Adv.Mater.Interfaces 2017,4,1700047には、層状酸化物の熱力学的に安定した構造と有機ポリマーの相対的な柔軟性とを相乗的に組み合わせる、新しい固体の有機無機ナノ複合潤滑剤が記載されている。
【0016】
このナノ複合材料は、レピドクロサイト型H1.07Ti1.73のプロトン化チタン酸塩に11-アミノウンデカン酸を挿入することによって作成される。
【0017】
その使用は、ポリアミドの製造およびポリアミド11(PA11)の製造プロセスでも知られており、11-アミノウンデカン酸モノマーは主にヒマシ油から得られる。
【0018】
後者から、熱酸化的破壊、臭素化およびアンモニアを含むその後の反応を経て、11-アミノウンデカン酸の最終合成が得られる。
【0019】
しかしながら、現在、ヒマシ油以外の供給源から出発して、11-アミノウンデカン酸を良好な収率で得ることを可能にする代替工業的方法は見つかっていない。ただし、多くの努力がなされており、より一般的には、ω-アミノ酸の合成のために提案されている代替方法は、複雑であり、かつ/または収率が低く、最も好ましい場合、例えば約50~60%であり得る。
【0020】
実際、米国特許第8,377,661号明細書には、天然脂肪酸から出発してω-アミノ酸またはそのエステルを合成する方法が記載されている。
【0021】
この特許には、天然の一価不飽和脂肪酸を不飽和のα、ω-二酸またはジエステルに変換することによる、アミノ酸またはそのエステルの合成方法が記載されている。これはホモメタセシス反応または発酵によって起こり、不飽和二酸またはジエステルが生成される。次いで、二酸または不飽和ジエステルは、個々の酸アルデヒドを得るために、不飽和レベルで酸化的解体にさらされる。次に、酸アルデヒドは、還元的アミノ化によってアミノ酸に変換される。
【0022】
米国特許第8,450,509号明細書には、天然脂肪酸から9-アミノナン酸またはそのエステルを合成する方法が記載されている。アミノ酸またはアミノエステルの合成方法は、長鎖不飽和脂肪酸またはそのエステルから出発することを含む。脂肪酸はエチレンとのクロスメタセシスに供され、ω-不飽和酸またはエステルを形成する。このようにして得られたω-不飽和酸/エステルは、酸化的解体に供されてオキソ酸/エステルを生成し得、あるいは必要に応じてホモメタセシスに供されて不飽和の対称二酸/ジエステルを得ることができ、これは次に、酸化的破壊によって、オキソ酸/オキソエステルの形成につながる。これらの化合物のオキソ官能基は、その後減少すると、アミノ酸の形成につながる。
【0023】
米国特許第8,697,401号明細書には、一価不飽和脂肪酸またはそのエステルからアミノ酸またはアミノエステルを合成する方法が記載されている。この特許には、天然由来の一価不飽和脂肪酸またはエステルから出発してアミノ酸を合成する方法が記載されている。この場合も、プロセスは3段階で行われる。第1の段階では、不飽和脂肪酸がホモメタセシス反応を通じて不飽和二酸に変換される。続いて、不飽和二酸は、亜鉛系触媒の存在下でアンモニアと反応することによって不飽和ジニトリルに変換される。第2の段階では、不飽和ジニトリルは、オゾンによる不飽和の酸化的分解によってニトリル酸/エステルに変換される。必要に応じて、不飽和ジニトリルとアクリル酸とのクロスメタセシス反応によって、鎖内にさらに2個の炭素原子を有するニトリル酸/ニトリルエステルを得ることができる。第3の段階では、ニッケルラネー上での水素による還元によってニトリル酸がアミノ酸に変換される。
【0024】
米国特許第8,835,661号明細書には、ニトリル化ステップを含むC11およびC12のω-アミノアルカン酸またはエステルの合成方法が記載されている。初期段階では、ω-不飽和酸または脂肪酸のエステルは、ニオブ系触媒の存在下で、アンモニアによるニトリル化に供され、これによって、ω-不飽和ニトリルが得られる。アクリレートとのクロスメタセシスによって、不飽和ニトリルは不飽和ニトリルエステルに変換され、炭素に担持されたパラジウムの存在下での水素による還元によって、対応するアミノエステルが形成される。
【0025】
米国特許第9,221,745号明細書は、ルテニウムカルベン化合物の存在下でのアクリル化合物(アクリロニトリル、アクリル酸、アクリル酸エステル)と別のニトリル/不飽和酸/エステルとの間のクロスメタセシスステップを含む、ω-アミノ酸または長鎖エステル(炭素原子数6~17)の合成方法を記載している。このようにして得られた二官能性不飽和化合物(ニトリルエステルまたはニトリル酸)は、続いて水素化プロセスを受けて、飽和アミノエステル/アミノ酸が得られる。
【0026】
米国特許出願公開2014/323684号明細書には、脂肪酸のクロスメタセシスから得られる不飽和ニトリルのヒドロホルミル化ステップを含む、飽和または不飽和のω-アミノ酸を調製するための方法が記載されている。この特許出願には、3つの段階を経たアミノ酸の合成が記載されている。不飽和ニトリルのヒドロホルミル化の第1の段階、アルデヒドニトリルを酸化して酸ニトリルを生成する第2の段階、ニトリルを還元してアミノ酸を得る第3の段階である。10-ウンデセン酸メチルを用いた比較例から、所定の条件下で、不飽和ニトリルのヒドロホルミル化によって、同様の不飽和エステルよりも優れた直鎖生成物への変換および選択性が生じることが明らかである。
【0027】
米国特許出願公開2016/0115120号明細書には、脂肪酸の不飽和ニトリル/オメガエステルのヒドロホルミル化および異性化を特異的に制御する、脂肪酸の不飽和ニトリル/オメガエステルからアルデヒドを合成する方法が記載されている。この特許出願は、直鎖生成物と分岐生成物の比を最大化するためにヒドロホルミル化反応で使用されるパラメーターの説明に主に焦点を当てている。
【0028】
米国特許第5,973,208号明細書には、水素化触媒、アルコール溶媒、および必要に応じて水の存在下で、アンモニアおよび水素との反応によってジアルデヒドから出発してジアミンを製造する方法が記載されている。
【0029】
実際には、最初の近似として、ω-アミノ酸を調製するさまざまな伝統的な合成方法は2つのクラスに分類され得る。すなわち、ニトリルの化学的性質を主に利用する多段階プロセスの使用に関するが、酸またはエステルの直接ニトリル化またはアクリロニトリルとのクロスメタセシスによって得られるもの、および位置特異的臭化水素化の段階と、その後のBr基のNHによる脂肪族求核置換の段階を含む統合プロセスに関するものである。
【0030】
どちらのクラスにも重大な問題がある。第1のクラスの場合、酸またはエステルのニトリル化は250℃を超える高温を必要とするプロセスであり、末端二重結合の異性化の危険性が高いことが強調される。一方、不飽和化合物のアクリロニトリルとのクロスメタセシスは低い選択性でのみ発生する。
【0031】
第2のクラスの場合、後者のプロセスの重要性はまさに臭化水素酸の使用にあり、接触する材料が耐食性と優れた性能を備えていること、およびω-アミノ酸生成の副産物としての臭化物イオンを含有する重要な量の無機塩の管理が必要である。
【0032】
最近、再生可能または生物源からの化学の開発によって、新しい前駆体が市場で入手可能になった。
【0033】
したがって、例えば、異なる数の炭素原子を有する化合物から出発して、同じω-アミノ酸に到達するなど、市場で入手可能なさまざまなソースを使用可能である、新しく柔軟な合成プロセスを有することが望ましい。
【0034】
通常、例えば、11-アミノウンデカン酸(ナイロン-11の前駆体)の合成は、10-ウンデセン酸から出発して臭化水素化とその後のアミノ化によって行われるが、9-デセン酸またはそのエステルなどの製品から出発して製造され、これは、不飽和天然植物油脂と末端オレフィンとのクロスメタセシス反応によって再生可能資源から容易に得られ得る、および商業規模で大量に入手できる可能性がある、同じものを工業的に得るための簡単で便利なプロセスを有することが望ましいであろう。
【0035】
上記の特許/特許出願のほとんどに記載されている反応は、クロスメタセシス、酸化的解体、ニトリル化、ヒドロホルミル化、還元的アミノ化の組み合わせである。
【0036】
具体的には、上述の反応の中でも、不飽和C=C結合の酸化的分解反応は、酸化剤として有毒なオゾンを使用し、生成コストが高いため、特に不利な点がある。オゾン分解は、大量を必要としない製薬および特殊分野の生産に適用される工業技術である。
【0037】
記載されているさまざまな合成では、最終アミノ酸、ニトリルを生成するために脂肪酸ニトリルを使用することが常に優先され、前述したように、その調整には操作条件にとってかなりの重要性がある。
【0038】
さらに、特許/特許出願に必ずしも明示的に記載されているわけではないが、指定されたすべての段階では中間精製および/または分離手順が必要である。複数の経路オプション、既知の反応に関係する多くのパラメーター、および反応物の変換と目的の生成物への選択性が完全に満足できるものではないことを考慮すると、プロセス全体としてはまだかなりの改善の余地がある。
【0039】
したがって、本発明の目的は、直鎖ω-不飽和カルボン酸、好ましくはエステル、より好ましくはω-カルボン酸のエステルの誘導体から出発して、5~30個の炭素原子を有する、さらにより好ましくは直鎖を有する、脂肪族不飽和族ω-アミノ酸またはその誘導体を合成するための革新的な方法を創出することである。
【0040】
具体的には、本発明の目的は、再生可能起源の9-デセン酸メチル(9-DAME)から出発して、中間精製の数を制限する、ポリアミドの合成に使用され得る11-アミノウンデカン酸を調製することである。
【0041】
したがって、出願人は、エステル/一価不飽和脂肪酸から出発してω-アミノ酸を製造する方法を見つけるという問題を提起した。
【0042】
本出願人は、今回、カルボン酸化合物、好ましくは一価不飽和脂肪酸エステルから出発して、一価不飽和化合物のヒドロホルミル化、このようにして得られたオキソ誘導体の還元的アミノ化の反応ステップを連続して含み、このようにして生成されたω-アミノカルボン酸化合物の可能な加水分解によって所望のω-アミノ酸が得られ、最終的に分離精製の最終段階に供され得、工業的使用に適した形態の生成物を得ることができる、ω-アミノ酸の調製方法を発見した。この方法はバッチ式または連続的に実行され得、連続モードが好ましい。
【0043】
驚くべきことに、実際、出願人は、プロセスが重大な問題を引き起こすことなく、または他の反応からの所望の生成物の中間体の分離段階を必要とせずに、目的の生成物の許容可能な最終純度、および各中間段階での高収率と目的の生成物への変換を保証し、単一の最終精製段階を実行することによって、前述の反応を連続して実行し得ることを発見した。したがって、この態様によって、使用するデバイスの数を簡素化し、プロセス全体の複雑さを大幅に軽減することが可能である。半製品および/または純粋な化学中間体を得ることが適切な場合は、必要に応じて中間精製段階の使用を検討し得る。
【0044】
これらの他の目的は、驚くべきことに、本発明による製造方法によって達成される。
【0045】
したがって、本発明の第1の目的は、式(III)
N-CHCH-CHR’-(Q)-COR’’ (III)
のω-アミノカルボン酸またはその誘導体の調製方法であって、
式(I)を有するω-不飽和カルボン酸化合物から出発し、
C=CR’-(Q)-COR’’ (I)
R’は、H、または場合によっては1~10個、好ましくは1~5個の炭素原子で置換された、脂肪族炭化水素基であり、より好ましくは、Hであり、
R’’は、ORまたはNR基、好ましくはORであり、Rは、H、アンモニウム、一価M金属、好ましくはアルカリ金属、C1~C15アルキル基およびC6~C15アリール基、好ましくはC1~C5アルキルから選択され、
およびRは、独立して、H、C1~C15アルキル基およびC6~C15アリール基、好ましくはC1~C5アルキルから選択され、
Qは、二価の、脂肪族の、必要に応じて1~12個の炭素原子、好ましくは3~10個の炭素原子、より好ましくは直鎖、例えば、直鎖ヘプタメチレン基または直鎖ヘキサメチレン基で、置換された、炭化水素基であり、
さらに、当該R’およびQ基は、共に結合して、5~7個のC原子を有する脂肪族炭素環構造を形成し得、
当該プロセスは、
(A)式(I)の当該化合物を、ヒドロホルミル化条件下で、好ましくはロジウムまたはイリジウムを含有し、ロジウム(I)またはイリジウム(I)をベースとする、好ましくはイリジウム(I)およびホスフィン結合剤をベースとする適切なヒドロホルミル化触媒、および必要に応じて適切な溶媒の存在下で、水素および一酸化炭素の混合物と反応させて、次の式(II)であって、
OHC-CH-CHR’-(Q)-COR’’ (II)
R’、R’’、およびQは、対応して上記で指定した意味を有する、式(II)を有する対応するω-オキソカルボン酸誘導体を得るステップと、
(B)ステップ(A)で得られた当該式(II)の化合物を、好ましくは他の反応生成物からの式(II)の化合物の中間精製ステップの非存在下で、最終的な溶媒の蒸発後、溶液から冷却することによって沈殿する、使用したホスフィン結合剤の回収を一切排除し、当業者に知られている方法の1つによる最終的な触媒の回収を排除し、適切な触媒の存在下で水素およびアンモニアとの反応による還元的アミノ化に供し、式(III)のω-アミノカルボン酸誘導体を得て、
N-CH-CH-CHR’-(Q)-COR’’ (III)
それを任意の反応溶媒から分離する、ステップと、
(C)必要に応じて式(III)の当該化合物を加水分解に供し、式(III)中のR’’はOHである、対応するω-アミノカルボン酸を得るステップと、
を順に含む、
方法を提供することである。
【0046】
したがって、本発明に従って上記のように合成された式(III)のω-アミノカルボン酸および/または式(III)のそのアミノ誘導体は、
国際公開第2015/027367号に記載されているものに従って、摩擦調整剤として、
国際公開第2008/147704号に記載されているものに従って、低残留耐摩耗剤および/または酸化防止剤として、
Gonzalez Rodriguezらの記載に従って、酸化物構造へのインターカレーションそれ自体、
のように直接使用され得る。
【0047】
したがって、本発明の第2の目的は、好ましくは上記の方法に従って製造される、式(III)のω-アミノカルボン酸および/または式(III)のその誘導体を添加剤または基油として含有する潤滑組成物を構成することである。具体的には、上記の方法に従って製造された式(III)のω-アミノカルボン酸またはその誘導体が、再生可能起源からの植物油脂のメタセシス反応のω-不飽和カルボン酸化合物(I)、例えば9-デセン酸メチル(9-デセン酸メチル)から得られる場合、上記組成物は、特に上記の方法に従って製造された式(III)のω-アミノカルボン酸またはその誘導体が上記潤滑組成物の基油(生体潤滑剤)を構成する場合、生体潤滑剤となる。
【0048】
実際、基油は概して潤滑剤組成物全体の最大の割合を占め、内燃機関用潤滑剤では概して少なくとも70~80%を占める。
【0049】
好ましくは、本発明による潤滑剤は、ω-アミノカルボン酸または式(III)のその誘導体からの成分(塩基および/または粘度調整剤および/または添加剤)からの、配合物全体で再生可能原料からの炭素を少なくとも1パーセント(1%)、および/または単一配合物で再生可能原料からの炭素を少なくとも25%、好ましくは50%含有しなければならない。
【0050】
再生可能原料からの炭素含有量は、当業者に既知の方法の1つを用いて推定される。例えば、欧州連合潤滑油用エコラベルアプリケーションパック-バージョン1.0-2011年9月の23/42ページに報告されているように、潤滑剤の炭素含有量は、各成分の再生可能部分(植物および動物油脂由来のC原子をC原子の総数(植物および動物油脂由来のC原子と石油化学由来のC原子を能力の割合で乗算された値)で割った値を乗算して求められる。
【0051】
本発明によれば、ω-アミノカルボン酸という用語は、カルボキシル基-COOHとアミノエチル基-CH-CH-NHとを含む有機化合物を意味し、当該カルボン酸基と当該アミノエチル基は少なくとも2個の炭素原子、好ましくは少なくとも4個の炭素原子によって離隔される。
【0052】
好ましくは、当該カルボキシル基および当該アミノエチル基は、5~15個の炭素原子の鎖によって、より好ましくは式-(CH-の直鎖、rは5~15の整数である、によって離隔される。
【0053】
本発明によれば、「ω-アミノカルボン酸の誘導体」という用語は、カルボン酸基-COOHがカルボン酸塩基-COOM’、M’=アンモニウムまたはアルカリ金属、エステル-COOR、アミド-CONR、R、R、およびRは前述の一般的および好ましい意味を有する、によって置換される、ω-カルボン酸アミノ酸から得られ得る任意の化合物を指す。
【0054】
本発明によれば、別段の指定がない限り、不定単数冠詞aおよびoneについては、少なくとも1つという意味も理解されたい。
【0055】
本発明による方法によれば、ステップ(A)において、式(I)のω-不飽和カルボン酸誘導体、好ましくは、エステル、より好ましくは直鎖脂肪族カルボン酸エステルから開始して、好ましくはロジウムおよび二座ホスフィン配位子をベースとする、適切なヒドロホルミル化触媒系の存在下で合成ガス(水素/一酸化炭素混合物)と反応させることによって、制御された触媒ヒドロホルミル化反応を実施して、式(II)のカルボン酸ω-オキソ誘導体を高収率で、および高l/b比(直鎖/分岐)(式(I)の化合物がすでに分岐アルキル鎖を含む場合、目的のオキソ誘導体とその最終的な分岐またはさらに分岐した異性体との比)で得る。
【0056】
合成ガス中のH/COのモル比は、一級オレフィンのヒドロホルミル化の分野で知られているものに従って当業者によって選択され、好ましくは0.3~3、より好ましくは0.8~1.3、例えば約1である。
【0057】
従来技術と比較して、ステップ(A)は、目的の(好ましくは直鎖)ω-オキソエステル生成物を高収率で得るために必要な、反応混合物の組成および反応時間の点で有利な操作条件によって区別される。
【0058】
この反応は、通常、60~140℃の温度、1.5~6MPaの圧力下で、式(I)の物質、温度および圧力に応じて0.5~24時間、好ましくは1~3時間の範囲の時間実施される。
【0059】
反応は、式(I)の純粋な化合物上で、または適切な量、好ましくは当該反応混合物の合計に対して5~90重量%の有機溶媒の存在下で行われ得る。
【0060】
当該有機溶媒は、例えば、メチルtert-ブチルエーテル(MTBE)、またはメタノールもしくはエタノールなどの1~6個の炭素原子を有するアルコール、またはベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族溶媒、またはヘプタンもしくはシクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素などの直鎖、分岐もしくは環状エーテルなどの、極性溶媒であり得る。
【0061】
好ましくは、溶媒は、反応環境においてホスフィン結合剤、金属Mの化合物および式(I)の物質自体を可溶化できるように、前述の種類の化合物から選択される。
【0062】
さらに、溶媒は、式(I)および(II)の化合物より少なくとも部分的に蒸発によって分離され得るように、それらよりも沸点が低いことが好ましい。
【0063】
好ましい溶媒は、エタノール、メタノール、MTBEおよびトルエンである。
【0064】
有機溶媒がアルコール(メタノールなど)である場合、ヒドロホルミル化反応の最後に、式(II)のω-オキソカルボン酸化合物に由来するアセタールの酸加水分解ステップを、好ましくは当業者に既知の方法で、実施し、対応するアルデヒド基を得る。
【0065】
本発明の方法によれば、大量の文献において入手可能である、すべての目的に適した既知の触媒系をヒドロホルミル化触媒として使用し得る。
【0066】
具体的には、ヒドロホルミル化に適した触媒は、ロジウム、コバルト、イリジウム、ルテニウム、好ましくはロジウム(Rh)およびイリジウム、より好ましくはロジウム、および配位子Lから選択される金属Mの塩または可溶性錯体からなる前駆体と、配位子L、好ましくはホスフィン結合剤、より好ましくは芳香族ホスフィン、特に二座芳香族ホスフィンとを含む。当該錯体中の金属M、特にRhは、好ましくは低酸化状態、例えばRh(I)である。
【0067】
本発明の方法のステップ(A)で通常使用可能なRh塩は、例えば、HRh(CO)(PPh、(acac)Rh(CO)、[Rh(COD)Cl]、RhCl(PPh、好ましくは、(acac)Rh(CO)(acac=アセチルアセトナート、COD=1,5-シクロオクタジエン)などの、第一級オレフィン基をヒドロホルミル化するために当該技術分野で通常使用されるものである。
【0068】
ヒドロホルミル化触媒中のホスフィン配位子Lは、好ましくは二座(Mを配位できる分子あたり2つのP原子)または多座(Mを配位できる2つを超えるP原子)、より好ましくは二座である。それは、予め形成された金属錯体中の金属Mに結合され得、および/またはMの塩、例えばRhが見出されるのと同じ反応環境に添加され得る。
【0069】
好ましくは、配位子Lは、特にそれがホスフィン配位子である場合、Mに対して強いモル過剰で、好ましくは2~40、より好ましくは4~20のL/M比で存在する。
【0070】
この目的に使用され得るホスフィンは、芳香族ホスフィンおよびポリホスフィン、例えば、一般式[P(X)(X)(X)]を有するホスフィンであり、X、XおよびXは独立して、好ましくは、置換されたまたは置換されていない、アリールまたはアリール基を表し、およびmの値は1より大きく、モノホスフィンの場合はm=1、二座ホスフィンの場合はm=2、ポリデン酸ホスフィンの場合はmは2超(通常は3または4)であるように結合している可能性がある。
【0071】
本発明の方法に適した通常の二座ホスフィン配位子は下記のものであり、最も一般的に知られている英語名を便宜上転記する。
BISBI:[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノメチル)-2,2’-ビフェニル]、
Naphos:[2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノメチル)-1,1’-ビナフチル]、
Xantphos:[4,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)-9,9-ジメチルキサンテン]、
BiPhePhos:[6,6’-[(3,3’-ジ-tert-ブチル-5,5’-ジメトキシ-1,1’-ビフェニル-2,2’-ジイル)ビス(オキシ)]ビス(ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン)]、
DPEphos:[ビス(2-ジフェニルホスフィノフェニル)エーテル]、
DBFphos:[4,6-ビス(ジフェニルホスフィノ)ジベンゾフラン]。
【0072】
好ましいホスフィンは、特にXantphosおよびBiPhePhosであり、さらに好ましくは、次の構造式を有する。
【0073】
【化1】
【0074】
ヒドロホルミル化される物質(式Iの化合物)と触媒中の金属M、好ましくはRhとの間の触媒モル比は、1,000~500,000であるが、これらの限度を超え得る。
【0075】
本発明のステップ(A)におけるヒドロホルミル化反応の高感度の態様の1つは、プライマリから内部までオレフィン二重結合の移動によって異性化される生成物に対する、式(II)のω-オキソ誘導体生成物に対する選択性によって表される。
【0076】
95%を超える選択率は、直鎖分子化合物のl/b比(直鎖/分岐)が5を超え、好ましくは20を超える、当該技術分野で知られている最良の触媒を用いて通常得られる。
【0077】
例えば、ロジウム、(アセチルアセトネート)ジカルボニルロジウム(I)、およびBiPhePhos、をベースとする前駆体からなる触媒混合物エステル/Rh比=7500、BiPhePhos/Rh比=8、温度=100℃、の存在下、トルエン、MTBE、またはメタノール中、CO/H=1:1の混合物(4.5MPa)で9-デセン酸メチルをヒドロホルミル化することは、不飽和エステルの完全な変換につながり、ヒドロホルミル化生成物の収率は79%、反応2時間以内の直鎖と分岐ω-オキソエステルとの比l/bは55に等しくなる。
【0078】
ステップ(A)で得られる式(II)の化合物は、それを含む反応混合物(副生成物、触媒および/またはその残留物、ホスフィンおよび任意の溶媒を含む)から精製され得る。
【0079】
しかしながら、出願人は、驚くべきことに、式(II)の中間体化合物を他の反応副生成物から分離および精製するこのステップは、
過度の希釈を避けるために、蒸発による溶媒の起こり得る部分的除去、
プロセスで再利用するためのホスフィンの沈殿および分離による結合剤の回収、
例えば、触媒からのヒドロホルミル化生成物の蒸留など、当業者に既知の方法の1つによってまたはヒドロホルミル化生成物からの触媒のナノ濾過によって、(ステレンボッシュ大学工学修士号の要件を部分的に満たして発表された論文、Waylin Lee PeddieによるSeparation of Homogeneous hydroformylation catalysts using Organic Solvent Nanofiltration、に表される)または、例えば米国特許第5,773,665号明細書に記載されているように、酸の形態のイオン性樹脂への吸収によって、得られる触媒の大部分の回収、
を除き、後続のステップが還元的アミノ化である場合には実行され得ず、
反応混合物全体は、特に干渉することなく直接還元的アミノ化段階(B)に移され得ることを発見した。このようにして、水素化および分岐副生成物からの費用のかかる分離および精製手順が回避される。
【0080】
本発明による方法の後続段階(B)において、起こり得る溶媒の部分蒸発および/または使用したホスフィン結合剤の起こり得る回収および/または触媒の回収を除いて、好ましくは反応混合物から分離されない、ステップ(A)から得られる式(II)のω-オキソ誘導体は、還元的アミノ化に供され、それを式(III)の対応するω-アミノカルボン酸誘導体に変換する。
【0081】
ステップ(B)の還元的アミノ化は、すでに知られており、多数の物質について文献で報告されており、アルデヒドから出発するアミンの合成に広く使用されている反応である(例えば、Morrison,Boyd-Organic Chemistry 906-908ページ IV版を参照)。米国特許第8,377,661号明細書では、触媒としてNiラネーを使用し、100~150atmの水素圧で4時間実施される。
【0082】
本発明の目的に適した還元的アミノ化触媒は、例えば、鉄、コバルト、ニッケル、またはルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウムもしくは白金などの貴金属などの、好ましくはコバルト、ニッケル、パラジウムおよび白金である、周期表の第8、9および10族の1つ以上の金属をベースとする市販または合成の水素化システムである。
【0083】
これらの触媒は、分散相、コロイド状、海綿状(例えば、ラネーNi)または担持/結合相において使用され得、好ましくは高表面積を有する無機相上の担持/結合形態で、さらにより好ましくはシリカ、アルミナまたはシリカアルミナ上の担持/結合相で使用され得る。
【0084】
したがって、本方法のステップ(B)によれば、式(II)の化合物の還元的アミノ化は、周期表の第8、9または10族の水素化特性を有する金属をベースとする還元触媒を使用して行われ、好ましくはニッケル、コバルト、パラジウムおよび白金の中から選択され、0.01~0.25のモル比HO/NHの水の存在下で、5~25のモル比NH/HのアンモニアとHとの混合物を含む。
【0085】
反応は、ω-オキソ誘導体に対してアンモニア過剰で、好ましくは30~60のモル比NH/(化合物(II))で行われる。
【0086】
反応温度は30~200℃、好ましくは50~150℃であり、圧力は3~15MPa、より好ましくは6~9MPaである。
【0087】
ω-オキソエステルの還元的アミノ化反応は、0.1~3.0時間、好ましくは0.5~1時間の反応時間でバッチ式(撹拌機、加熱ジャケット及びガス及び液体流の入口を備えた反応器中)で行われ得る。あるいは、それは、例えば、1つ以上の段階を備えた管型反応器中で連続的に実施され得る。連続モードは、特に工業規模での生産性の問題に適する。
【0088】
還元的アミノ化は、水素雰囲気下、還元触媒の存在下で、ω-オキソ-誘導体(II)とアンモニアとの反応によって起こる。
【0089】
還元的アミノ化反応は、有機溶媒、好ましくはメチルtert-ブチルエーテル、メタノール、エタノールおよびイソプロパノールから選択される有機溶媒の存在下で実施され得る。
【0090】
式(II)の化合物が直鎖ω-オキソ誘導体である好ましい場合には、主な還元的アミノ化生成物は、対応する直鎖ω-アミノ誘導体(III)であり、分岐アミノ誘導体に関して主に得られる。
【0091】
対応するアミノアミドの形成は、観察され、その中で最も豊富なのは直鎖のω-アミノアミドである。しかしながら、これらの化合物は、加水分解のステップ(C)の終了時に所望のω-カルボン酸アミノ酸も生成するため、望ましい。
【0092】
本発明の方法のステップ(B)で得られる式(III)のカルボン酸のω-アミノ誘導体は、R’’が既にOHでない限り、対応するアミノ酸を合成するために必要に応じて加水分解に供され得、または、目的に最も適した技術、例えばpH4~7の酸性水溶液中での抽出とそれに続く中和による精製ステップの後に、そのまま使用され得る。
【0093】
一方、所望の化合物が対応するω-アミノカルボン酸である場合、これが好ましい態様であり、本発明の方法は、特に、この場合において式(III)の化合物におけるR’’はエステル基またはアミド基(R’’=ORまたはR’’=NR、Rはアルキルまたはアリールであり、Rおよび/またはRはH、アルキル、またはアリールに関わらず)である、所望の生成物の収率を最適化するために出願人が選択した条件下で、さらに、ステップ(B)の反応混合物から式(III)の化合物を分離する必要なく、行われる加水分解の任意のステップ(C)を含む。
【0094】
エステルまたはアミドの加水分解は文献で広く知られている反応であり、当業者であればアルカリ触媒と酸触媒の両方を使用してさまざまな方法で行われ得る(Morrison,Boyd-Organic Chemistry, 6th Ed.,Par.20.17-20.18)。したがって、下記に説明する方法は、出願人が使用した条件を指す。
【0095】
式(III)のω-アミノ誘導体と上記で特定したR’’との、好ましくは直鎖の、加水分解反応は、塩酸などの酸触媒、または水酸化ナトリウムなどの塩基性触媒の存在下、水を用いて行われる。塩基性加水分解が好ましい。
【0096】
アミノアミドでも、同じ反応条件下では加水分解が起こり、対応するアミノ酸が得られ、プロセス全体の収率の向上に役立つ。
【0097】
加水分解は、好ましくは高温、好ましくは40~120℃、さらにより好ましくは試薬混合物の沸騰温度で行われ、以前の還元的アミノ化ステップで使用したエステル結合および/または有機溶媒の加水分解中に生成されるアルコール(メタノールなど)を連続的に除去し、塩基性触媒を使用する場合、還流モードで蒸気を沸騰および部分的に凝縮させて操作することが可能である。
【0098】
式(III)の化合物がω-アミノカルボン酸のアルキルアミド(式(II)においてR=-NR’R’’)である場合には、塩基性触媒が常に必要である。
【0099】
加水分解は、化学量論的に過剰な水中で行われる、この過剰な水は、反応の開始時または反応中に特別なラインから注入することにより確実に供給され得る。加水分解の主生成物は、所望のω-アミノ酸、好ましくは直鎖アミノ酸である。エンドユーザーの要求に応じて、このようにして得られた好ましくは直鎖のω-アミノ酸、または加水分解ステップ(C)の前にその誘導体を、本明細書で既に知られている方法の1つを使用して、例えば分別結晶化によって、対応する分岐異性体アミノ酸によって構成される不純物から分離し得る。しかしながら、本発明の方法によって有利に非常に高いl/b(直鎖/分岐)比を得られ得、また生成物のその後の使用の要件に従って、この分離はほとんどの場合省略され得る。
【0100】
ニトリルを試薬として使用する先行技術の特許(例えば、米国特許第2014/0323684号明細書、米国特許第9,567,293号明細書、米国特許第9,096,490号明細書)では、ニトリルは、300℃~600℃の範囲の温度で無水ガスアンモニアと反応させることによって生成される。続いて、得られたニトリル酸/エステルは、対応するアミノ酸/アミノエステルを得るために水素によるさらなる還元反応を必要とする。
【0101】
しかしながら、本発明の方法では、アミノ還元ステップによって、目的のアミノ誘導体/アミノ酸を80~120℃の温度で単一ステップで得ることがすでに可能である。
【0102】
本発明による方法はまた、ニトリルを使用する最先端技術に関して有利であり、ニトリルの製造にはシアン化水素の使用が含まれる。この場合、実際には、アミノ化は行わないが、ニトリルを水素で還元して、対応するアミノ酸/アミノエステルを得ることが常に必要である。さらに、シアン化水素の使用は、本発明によるアンモニアの使用よりもはるかに大きなリスクをもたらす。
【0103】
好ましくは、本発明の方法において、段階(A)または(B)で得られた反応混合物の中間精製は行われず、その回収および使用のための起こり得る溶媒蒸発ならびに当業者に知られている1つの方法による触媒の回収手順のみが行われる。
【0104】
これに関して、例えば、ヒドロホルミル化段階ではトルエン、第二の還元的アミノ化段階ではメタノールなど、異なる溶媒が使用され得る。
【0105】
しかしながら、出願人は、驚くべきことに、両方の反応段階に単一の溶媒を使用し、プロセスをさらに簡素化する可能性を確認した。
【0106】
この溶媒はエーテル類の中から選択され得る。具体的には、プロセスの段階(A)および(B)の唯一の反応溶媒としてメチルtert-ブチルエーテル(MTBE)を使用することが、この目的に特に適していることが明らかになった。
【0107】
本発明の方法では、すべての反応段階と最終精製段階を連続的に行い得る。
【0108】
具体的には、ヒドロホルミル化反応と還元的アミノ化反応とに単一の溶媒を使用することでプロセスがさらに簡素化され、連続構成では生産性と運転コストの点でさらに効率的になる。
【0109】
ω-不飽和エステルまたはアミドから出発するω-アミノ酸の合成に単一の統合プロセスを使用する可能性も、ヒドロホルミル化および還元的アミノ化に単一の溶媒を使用する可能性も、従来技術のいずれの方法においても以前に記載されていない。
【0110】
加水分解ステップ(C)に続く、好ましくは直鎖のω-カルボン酸アミノ酸の分離/精製ステップは、これが塩基性環境で行われる場合、最大3~9、好ましくは5~7であるpH値の加水分解混合物の酸性化を含み、その結果、目的の生成物が沈殿する。
【0111】
pH補正による沈殿は、高温、低温、室温のいずれでも実行され得る。5~10℃での冷蔵による低温沈殿が好ましい。
【0112】
こうして沈殿した、好ましくは直鎖のω-アミノカルボン酸は、目的に適した任意の液体-固体分離方法、例えば濾過および/または遠心分離によって母液から分離される。このようにして分離された生成物の精製は、当業者に知られている通常の技術、例えばその後の洗浄を使用して行われる。最初に水で洗浄し、次に有機溶媒で洗浄することが好ましい。有機溶媒としては、アセトンまたは酢酸エチルの使用が特に好ましい。
【0113】
場合によっては水と有機溶媒とによる洗浄サイクルを繰り返すことによって得られる、所望の程度まで精製された生成物は、最後に、不活性ガスによるフラッシュ、真空下での加熱、または凍結乾燥などの当業者に知られている通常の技術を使用して乾燥される。本発明の特に好ましい実施形態において、出願人は、9-デセン酸メチル(9-DAME)から出発して11-アミノウンデカン酸を製造するための新規かつ独自のプロセスを発見した。当該9-DAMEは、特に再生可能資源からの植物油脂のメタセシス反応から得られる。
【0114】
したがって、本発明による方法を、9-DAMEから出発する11-アミノウンデカン酸の製造に関して下記にさらに詳細に説明するが、前述の式(I)の範囲内で、異なる構造および異なる数の炭素原子を有するオメガ不飽和カルボン酸化合物(塩、酸、アミド、エステル)を使用する同じ本発明の方法の適用に対する限定的な意味で決して理解されるものではない。
【0115】
9-DAMEおよびMTBE溶媒の混合物は、ロジウム系触媒およびホスフィン結合剤の添加後、再循環しながらCSTRまたは管型反応器に連続的に供給される。好ましい解決策は、液体と気体との接触を促進する装置、例えば、液体試薬混合物をエジェクターに供給し、反応器内に含まれる反応物相の混合を促進する循環ポンプを備えた宇和底に位置する液体ジェットエジェクターなど、液体と気体の間の接触を促進する装置を備えたCSTR反応器に基づくものである。さらに好ましい解決策は、直列に配置されたこれらの特性を備えた2つの反応器を提供するものである。ヒドロホルミル化反応は、60~140℃、好ましくは80~120℃、さらにより好ましくは100~110℃の温度で、0.5~24時間、好ましくは1~3時間の滞留時間で起こる。9-DAMEは溶媒の非存在下で供給し得るが、溶媒中の混合物が好ましい。当該溶媒は、溶液全体に対して最大90重量%、好ましくは溶液全体に対して5~70重量%、より好ましくは30~60重量%存在し得る。
【0116】
ヒドロホルミル化反応に使用される水素と一酸化炭素のガス状混合物(合成ガス)は、一酸化炭素1部当たり水素3部~一酸化炭素3部当たり水素1部のモル組成を有し、好ましくは、水素1部に対して一酸化炭素1部のモル比からなる。反応が行われる合成ガスの圧力は、1.5~6MPa(15~60bar)、好ましくは3~5MPaである。
【0117】
好ましくは、ヒドロホルミル化触媒は、ロジウム、好ましくは(アセチルアセトナート)ジカルボニルロジウム(I)の前駆体と、二座ホスフィン配位子、好ましくは分子量786.78Daを有するBiPhePhos(BiPhePhosとは、分子「6,6’-[(3,3’-ジ-tert-ブチル-5,5’-ジメトキシ-1,1’-ビフェニル-2,2’-ジイル)ビス(オキシ)]ビス(ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン)」を指す)の前駆体、との反応によってその場で調製される有機金属ロジウム錯体である。9-DAMEとロジウム前駆体とのモル比は2,500~20,000、好ましくは5,000~15,000である。二座ホスフィン配位子とロジウム前駆体のモル比は、好ましくは2~40、より好ましくは4~20である。
【0118】
主なヒドロホルミル化生成物である直鎖ω-オキソエステルは、最大80%の収率で得られる。不飽和エステルの変換率は73~99.9%であり、ヒドロホルミル化生成物(直鎖、より分岐している)に対する選択率は60~99%であり、直鎖ヒドロホルミル化生成物に対する選択率(分岐ヒドロホルミル化生成物の直鎖/合計比、l/bとして表される)は25より大きい。
【0119】
言及したすべての変換率、選択率および収率の値は、実施例に記載の内部標準の存在下での反応混合物のガスクロマトグラフィー分析によって決定された値を指す(内部標準化)。
【0120】
反応器から出る流は気液分離器で減圧され、液体流から固体として分離するホスフィン結合剤の一部を回収する(部分的熱回収の可能性あり)ために液体画分が冷却される。固体の分離は、重力分離機または遠心分離機で都合よく行われ得る。連続水平遠心分離機に基づくセットアップは、好ましいセットアップである。清澄化された液相は、所望の生成物の分離の次の段階に送られる一方、固体はヒドロホルミル化反応器への投入物としてリサイクルされる。このようにして、ホスフィン結合剤を回収してプロセスで再利用され得る。
【0121】
清澄化された液体流は、場合により蒸発器に供給され得、溶媒および未反応の9-DAMEを回収する。当技術分野で既知の任意の種類の蒸発器を本発明の目的に有利に使用し得る。好ましくは、「ケトル」タイプの蒸発器が使用される。この目的に使用できる蒸発器の種類の詳細については、例えば、ペリーの化学工学者ハンドブック、マグロウヒル (第 7 版 - 1997 年)、セクション11、108 ~ 118 ページに記載されている。別のセットアップは、平坦蒸留塔または充填蒸留塔の使用に基づく。 蒸留塔を使用すると、溶媒と未反応の9-DAMEのリサイクルが可能になり、蒸発器を使用する場合よりもヒドロホルミル化反応の生成物の含有量が低くなる。
【0122】
蒸発器から出る液体流、またはヒドロホルミル化生成物と触媒とを含有する蒸留塔の底からの液体流は、一部は触媒をリサイクルするためにヒドロホルミル化に再循環され得、一部は、例えば、米国特許第5,773,665号明細書(ELF Atochem)または米国特許第6,946,580号明細書(Davy process Technologies)に記載されている方法など、文献および当業者に知られている方法の1つを用いて行われ得る触媒の除去セクションに送られる。
【0123】
触媒および結合剤が除去された液体流は、次いで交換器に送られ、30℃~200℃、好ましくは80℃~140℃、より好ましくは100℃~110℃の温度に加熱される。当該交換器からの当該電流は、還元的アミノ化反応のための反応器に送られる。当該反応器は、好ましくは固定床、より好ましくは「トリクルベッド」構成であり、1~50h-1、好ましくは3~10h-1のWHSV(試薬混合物全体に対する重量時空間速度)で運転される。当該反応器にはサーモスタットシステムが備えられ、水素化触媒を含有する。好ましい水素化触媒は、コバルトまたはニッケルをベースとした市販タイプのものであり、好ましくはアルミナまたはシリカ/アルミナ上に担持される。当該反応器には液体アンモニアが供給される。反応は、ω-オキソエステルに対してアンモニアが過剰で行われ、アンモニアとω-オキソエステルとのモル比は15~70、好ましくは30~60である。
【0124】
還元的アミノ化反応は、有機溶媒、好ましくはメチルtert-ブチルエーテル、メタノール、エタノールおよびイソプロパノールの間から選択される有機溶媒の存在下で実施され得る。メチルtert-ブチルエーテルが好ましい。当該溶媒は、反応混合物に対して5重量%~90重量%、好ましくは30重量%~70重量%、より好ましくは反応混合物に対して50重量%で存在し得る。
【0125】
還元的アミノ化反応は、アンモニアに対して2~10重量%の水の存在下で行うことが好ましい。当該反応器には、Hもまた、0.3~30MPa(3~300bar)、好ましくは3~15MPa(30~150bar)、より好ましくは6~9MPa(60~90bar)の最大圧力で供給される。反応器は、反応器ヘッドから出たガスをコンプレッサー/ファンによって反応器の底に再循環することによってガスでフラッシュされた状態に保たれる。上記で指定したモル比を維持するために、新鮮なアンモニアの一部が連続的に供給される。回収Hの一部は、上記で指定された圧力値を維持するために供給される。反応生成物の混合物および場合によっては溶媒からなる流が反応器の底から出てくる。この反応器の好ましいセットアップは、「トリクルベッド」型反応器の上部に設置された液体ジェットエジェクターの使用を通じて、過剰ガス、特にアンモニアを再循環することを伴うものである。原液は、ポンプを通じて再循環される同じ反応混合物である。
【0126】
還元的アミノ化の主生成物は、直鎖のω-アミノエステル(11-アミノウンデカン酸メチル)である、主な副生成物は、アルデヒド基の還元的アミノ化生成物およびエステル基の文脈的アミド化、すなわち、ω-アミノアミドである。しかし、この化合物は、その後の加水分解段階の終わりに、目的のω-アミノ酸も生成するため、興味深いものである。ω-オキソエステル変換は、定量的であり、アミノエステルに対する選択率は88%より高く、アミノ化アミド化生成物(ω-アミノアミド)に対する選択率は12%未満である。言及されたすべての変換率、選択率および収率の値は、内部標準の存在下での反応混合物のガスクロマトグラフィー分析によって決定された値を指す。
【0127】
当該電流は、溶解したアンモニアおよび溶媒を回収するためのシステムに適切に送られ得る。好ましいセットアップは、反応混合物が0.1~2.0MPa(1÷20bar)、好ましくは0.3~0.8MPa(3÷8bar)、さらにより好ましくは0.4MPa~0.6MPa(4÷6bar)まで減圧された後、反応混合物が受ける脱気装置に基づくものであり、溶解アンモニアの大部分と溶媒の一部とが蒸気相に移行して部分的に蒸発する。脱気装置を出た液体は、溶媒を回収するために蒸発器に供給される。微量の溶媒を含む反応混合物は、蒸発器の底から出る。蒸発器からの蒸気は脱気装置に供給される。脱気装置には、液相と蒸気相との2つの相の分離と接触を促進するいくつかの多孔板が含まれる。脱気装置から出た蒸気相は、20~250℃、好ましくは80~150℃、さらに好ましくは105~130℃の温度で作動する還流型の第一凝縮器で、次いで、-75~80℃、好ましくは-20~30℃、さらに好ましくは-5~15℃の温度で動作するポストコンデンサー内で部分的に凝縮される。コンデンサーからの出口に集まる液体は再利用される溶媒であるが、ポストコンデンサーから出る液体は主にアンモニアで構成されており、次いで、アンモニアも再利用される。
【0128】
蒸発器を出た混合物は、加水分解段階(C)に送られ得るが、好ましい構成では、最初に、絶対圧10~400kPa、好ましくは50~250kPa、例えば、絶対圧 80 kPa、のさらなる脱気装置に送られる。このさらなる脱気装置では、残留溶媒含有量は1重量%未満、好ましくは0.1重量%未満、さらにより好ましくは0.01重量%未満に低減される。この脱気装置で分離した蒸気は、-75~80℃、好ましくは-20~30℃、さらに好ましくは-5~15℃の温度で凝縮され、その後、最初の脱気装置に再循環される。エステルの加水分解は文献で知られている反応であり、当業者であれば様々な方法で行われ得る。したがって、下記に特定する方法は、出願人が使用した条件を指すものであり、本発明の方法を限定するものとは決してみなされない。
【0129】
加水分解は、加水分解装置と呼ばれる、好ましくはCSTRタイプのもので、加水分解装置内の水を再循環する部分還流凝縮器および、塩基性触媒、好ましくは水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムの存在下で、0.5~12時間、好ましくは2~6時間の滞留時間で製造されプロセスの副生成物を構成するメタノールの大部分を凝縮する後凝縮器によって形成される加熱システムと凝縮システムとが取り付けられる、反応器内で連続的に行われる。必要に応じて、NaOHまたはKOHを添加することによって、溶液のpHを12超の値に維持する。加水分解は高温で、好ましくは混合物の沸点で行われる。加水分解生成物は、反応器の底から出る、主な生成物はω-直鎖アミノ酸であり、分岐アミノ酸よりも主に得られる。必要に応じて、加水分解反応器から出た溶液を、最初に加水分解温度に温度調節された静的分離器に送り得る。副生成物の一部は分離器の上部から除去される。水性流は、下記から得られ、沈殿/結晶化によって目的の生成物の分離セクションに送られる。
【0130】
目的の加水分解生成物を含む当該水流に、pHを3~9、好ましくは5~7の値に調整するために酸が添加される。酸は、無水または溶液中のHClまたは酢酸であり得る。HCl溶液が好ましい。当該溶液は2~20℃、好ましくは5~10℃の温度に冷却され、次いで混合タンクに送られ、そこで生成物は沈殿を形成し、この沈殿は液相に保持され、濁った混合物または「スラリー」を形成し、これは、続いて、プロセスの最終生成物を構成するΩ-直鎖アミノ酸によって形成された固体の濾過および洗浄システムに送られる。
【0131】
このように分離された後のω-アミノ酸の精製は、当業者に知られている通常の技術を用いて行われ得る。 例えば、再結晶化、あまり溶解しない1つ以上の液体での洗浄、電気泳動などによって行われ得る。例えば、ω-直鎖アミノ酸は、最初に水で、次にそれが難溶性(好ましくは1g/l未満の溶解度)の有機液体、例えばアセトンまたはブタノンなどのケトン、メタノールまたはエタノールなどのアルコール、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステルなどで冷洗浄することによって精製され得る。アセトンおよび酢酸エチルが好ましい。得られた白色固体は、不活性ガスによるフラッシュ、真空下での加熱、または凍結乾燥などの目的に適した既知の技術の1つによって便利に乾燥される。
【0132】
有機洗浄液は塔内で蒸留回収され、塔頂および塔底から高沸点化合物および不純物が得られる。結晶化/沈殿および濾過操作については、例えば「Industrial & Engineering Chemistry Research,2016,55,7462-7472」または「American Institute of Chemical Engineers(AIChE) Journal、1991年、37(8)、1121-1128」、の文献の記事など、従来技術にすでに存在するものを使用することが可能である。
【0133】
直鎖ω-アミノ酸の純度は、当業者に知られている方法の1つに従って生成物をシリル化した後、ガスクロマトグラフィー分析(GC-FID)によって決定される。
【0134】
上記のように、本発明の方法で得られる式(III)のω-アミノカルボン酸または式(III)のその誘導体は、ω-アミノカルボン酸それ自体、またはそれに由来する化合物における使用に関して、例えば当技術分野で知られている方法、例えば、オリゴマー化、環化(例えば、ラクタム形成)に従って、および当技術分野で記載されている他の官能化反応、例えば、脂肪族炭化水素基で置換されたコハク酸アシラントとの反応によって、潤滑組成物の調製に便利に使用され得る。
【0135】
本発明によるω-アミノカルボン酸から有利に得られ得る誘導体化合物の例は、特徴部分として11-アミノウンデカン酸誘導体を含み、例えば欧州特許第1151994号明細書において、潤滑剤または潤滑剤添加剤として当該技術分野で既に認識されている化合物S酸-8、S酸-6、Sアミド1、Sアミド5、Sアミド9、Sアミド10、Sエステル7、Sエステル8、Sエステル4、であり得る。
【0136】
したがって、本発明のさらなる目的は、前述の方法に従って、さらに、少なくとも1つの潤滑基剤(基油)を含む組成物中の当該ω-アミノカルボン酸、式(III)のその誘導体、または上記のうちの1つのさらなる誘導体(例えば、式(III)の誘導体から出発するオリゴマー化および/または環化化合物)を導入する追加のその後の段階に加えて、式(III)のω-アミノカルボン酸または式(III)のその誘導体を調製することを含む、潤滑または生体潤滑組成物の調製方法を構成する。
【0137】
次に、本発明を以下の実施例でさらに示すが、これらは単に例として示したものであり、本明細書に記載し特許請求する本発明を決して限定するものではない。
【実施例
【0138】
下記の例では、特に指定しない限り、次の略語および以下の資料を参照する。
合成ガス(加圧シリンダー内のモル比1:1における水素と一酸化炭素とのガス状混合物):prod.SAPIO,IT、
9-デセン酸メチル(9-DAME):純度98%超、prod.Elevance(Clean(登録商標)1000)、(CAS 25601-41-6)、
(アセチルアセトナート)ジカルボニルロジウム(I)((acac)Rh(CO)):純度98%、prod.Aldrich,cod.288101(CAS 14874-82-9、PM=258,03Da);
6,6’-[(3,3’-ジ-tert-ブチル-5,5’-ジメトキシ-1,1’-ビフェニル-2,2’-ジイル)ビス(オキシ)]-ビス(ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン(BiPhePhos):純度:97%、prod.Aldrich、cod.699535(CAS 121627-17-6、PM=786,78Da);
メチル tert-ブチルエーテル(溶媒、MTBE):純度99.8%、prod.Sigma-Aldrich、
トルエン:純度99.8%、prod.Sigma-Aldrich;
メタノール:純度99.8%、prod.Sigma-Aldrich;
アセトン:純度99.8%。
【0139】
(ガスクロマトグラフィー分析)
ヒドロホルミル化および還元的アミノ化反応の試薬および生成物を定量するためのガスクロマトグラフィー分析は、スプリット/スプリレス インジェクターおよびHP-1 カラム(100%ポリジメチルシロキサン、Agilent J&W)を備えた水素炎イオン化検出器を備えたAgilent 7890Bガスクロマトグラフを使用して、フューズドシリカWCOT、長さ25m、ID0.20mm、膜厚0.33μm、キャリアガスH、0.8ml/min、定流量、500:1スプリット比、温度インジェクター300℃、検出器温度330℃、オーブン温度プログラム40℃~8℃/分、最大320℃で、実行される。
【0140】
定量は、n-ドデカン(内部標準)に対する利用可能な成分の応答係数を測定することによって、内部標準化法で実行される。
【0141】
サンプル0.5gを正確に秤量し、常に正確に定容して、クロロホルム中の約3000ppmのn-ドデカンの溶液を2mLバイアルに入れて定容することによってサンプルを分析する。
【0142】
指定された例はバッチモードを指す(実験を簡単にするため)が、これは対応する連続プロセスの代表でもある。
【0143】
(例1:MTBE中での合成ガスによる9-DAMEのヒドロホルミル化)
エステルモル比/Rh=5065、Lモル比(ホスフィン酸)/Rh=16。
【0144】
メカニカルスターラー、加熱ジャケット、およびガス入口を備えた500mlオートクレーブに、不活性雰囲気中で予め調製した102g(0.542mol)の9-DAME、28.3mg(0.107mmol)の(acac)Rh(CO)1381mg(1.703mmol)のBiPhePhosを含有する70mlのMTBE溶液を導入し、窒素気流下で1時間撹拌し、さらに約60mlのMTBEを導入する。
【0145】
オートクレーブを合成ガスで2回フラッシュし、次いで室温で3.0MPaまで加圧し、撹拌しながら100℃の温度(反応器内の圧力が約5.0MPaとなる温度)にする。
【0146】
反応は2時間継続し、その終了時に反応器を冷却し、液体反応混合物を排出し、そのまま窒素雰囲気下に維持する。
【0147】
内部標準の存在下で行われたガスクロマトグラフィー分析から、9-DAMEの変換は99.9%、ヒドロホルミル化生成物(オキソエステル)に対する選択率は76%、11-オキソウンデカン酸メチル(ω-オキソエステル)間のl/b比およびその分岐異性体の合計が53に等しいことが観察される。
【0148】
(実施例2:11-オキソウンデカン酸メチルの還元的アミノ化)
メカニカルスターラー、加熱マントル、触媒用バスケットおよびガス入口を備えた250mlオートクレーブに、アルミナ上に担持されたコバルトベースの水素化触媒30g(HTC Co 2000 RP 1.2mm、アルミナ上に担持された15%のCo、市販の製品Johnson Matthey Chemicals GmbH、D-米国特許第8,293,676号明細書の表3の21~22列の、実施例Jからのデータ)を専用の触媒ホルダー内に置き、水素雰囲気中で活性化する。
【0149】
触媒の活性化は、まず大気圧で窒素を流すことによって行われ、その後反応器を25~50℃/hの温度上昇で最大150℃に加熱し、この温度に達したら、水素を30ml/minの流量で供給し、温度を180℃まで上昇させる。
【0150】
この時点で、ガスフラッシングが完全に水素ベースになるまで(流量200ml/min)、窒素流量を徐々に減少させることによって水素流量を増加させる。これらの温度と流量条件下で、活性化を18時間継続させ、その後、触媒を不活性雰囲気に保つために窒素流を回復し(同時に水素流を減らし)、システムを段階的に冷却し、室温にする。
【0151】
次いで、水素を排出し、58g(3.41mol)のアンモニアガスを導入する。反応器を再び気体水素で最大3.8MPaまで加圧し、次いで、42%(24.3g、113.3mmol)の11-オキソウンデカン酸メチルを含有し、上記実施例1で得られた液体反応混合物57.8gをそれに充填し、そこに58gのMTBEおよび4.7gの水を添加する(アンモニアに対して8重量%)。次に、オートクレーブを撹拌しながら100℃まで加熱し、圧力を8.9MPaに達させる。所望の温度に達したら、反応を1時間続けてから冷却し、オートクレーブから取り出す。
【0152】
内部標準の存在下で反応粗生成物に対して行われたガスクロマトグラフィー分析から、11-オキソウンデカン酸メチルおよび他のオキソエステルの、対応する99%の還元的アミノ化生成物への変換が観察される。これらのうち、98%はアミノエステルであり、一方、還元的アミノ化と文脈的アミド化の生成物(アミノアミド)は2%になる。
【0153】
最初のヒドロホルミル化段階で得られた飽和エステルは副生成物として残り、部分的に対応する飽和アミドに変換される。
【0154】
(実施例3:実施例2のアミノエステルとアミノアミドの混合物の加水分解および得られた11-アミノ-ウンデカン酸の精製)
スターラー、加熱マントルおよび還流冷却器を備えた500mlのフラスコに、実施例2の反応粗生成物から出発して溶媒(MTBE)の一部を除去することによって得られた、50.8質量%の11-アミノウンデカン酸メチルを含有し、MTBE中のアミノエステルおよびアミノアミドの混合物35gを真空蒸着によって充填し、これに約300mlの水および45%NaOHをpH12に達するまで添加した。
【0155】
混合物を撹拌しながら沸騰温度まで加熱し、これらの条件下で還流下で6時間放置する。加水分解の終了後、混合物を冷却し、塩酸を加えてpHを6の値に戻す。
【0156】
白色の沈殿物の形成が観察され、これを一晩冷やして沈殿させた。固体をブフナー漏斗での真空濾過によって分離し、水および少量の冷アセトンで繰り返し洗浄する。
【0157】
11-アミノウンデカン酸(12.7g)が非常に微細な白色固体として得られ、プロトンと炭素13での核磁気共鳴分析によって特徴付けられる。融点は181~183℃である。直鎖アミノエステル(11-アミノウンデカン酸メチル)に関して計算したモル収率は76%である。
【0158】
(実施例4:合成ガスを使用したメタノール中での 9-DAMEのヒドロホルミル化)
上記の実施例1で使用したような500mlのオートクレーブに、25.4g(0.135mol)の9-DAMEを210mlのメタノールおよび予め不活性雰囲気中で調製し、窒素流下で1時間撹拌し続けた4.9mg(0.0186mmol)の(acac)Rh(CO)と10mlのメタノール中の118mg(0.145mmol)のBiPhePhosとを含有する溶液に導入した。オートクレーブを合成ガスで2回フラッシュし、撹拌しながら最大4.5 MPaに加圧し、温度を100℃に高める。反応は2時間継続し、その終了時に反応器を冷却し、反応混合物を排出する。
【0159】
内部標準の存在下で実施したガスクロマトグラフィー分析から、9-DAME変換率は99.9%、ヒドロホルミル化生成物(遊離アルデヒドおよびジメチルアセタールの両方の形態のオキソエステル)に対する選択率は80%、および直鎖化合物 (11-オキソウンデカン酸メチル+11,11-ジメトキシ-ウンデカン酸メチル)間のl/b比、対応する分岐異性体の合計が44に等しいことが観察される。
【0160】
還流下、pH1で3時間実施する反応粗生成物の酸加水分解によって、ジメチルアセタールを対応するオキソエステルに変換され得る。
【0161】
(実施例5:MTBEでの合成ガスによる9-DAMEのヒドロホルミル化)
エステルモル比/Rh=4970、モル比L/Rh=16。
【0162】
上記の実施例1で使用したような500mlのオートクレーブに、25.5g(0.1356mol)の9-DAME、不活性雰囲気中で予め調製され、窒素流下で1時間撹拌下に維持された7.2mg(0.0273mmol)の(acac)Rh(CO)および349mg(0.430mmol)のBiPhePhosを含有する35mlのMTBEの溶液および約185mlのMTBEを導入する。オートクレーブを合成ガスで2回フラッシュし、室温で最大3.0MPa(30bar)に加圧し、撹拌しながら100℃(反応器内の圧力が約5.0MPa(約50bar)になる温度)にする。反応は2時間継続し、その終了時に反応器を冷却し、液体反応混合物を排出し、そのまま窒素雰囲気下に維持する。
【0163】
内部標準の存在下で行われたガスクロマトグラフィー分析から、9-DAMEの変換率は99.9%、ヒドロホルミル化生成物(オキソエステル)に対する選択率は71%、11-オキソウンデカン酸メチル(ω-オキソエステル)間のl/b比およびその分岐異性体の合計が55に等しいことが観察される。
【0164】
(実施例6:11-オキソウンデカン酸メチルの還元的アミノ化)
上記の実施例2で使用したような250mlのオートクレーブに、専用の触媒ホルダー内に配置し、コバルト水素化触媒について上記実施例2で既に記載したように、水素雰囲気中で予め活性化したシリカ-アルミナ(Ni-3288E1/16インチ3F、約60%のNi、ニュージャージー州Engelhard De Meern B.V.の市販製品)上に担持されたニッケルをベースとする水素化触媒30gの存在下、56g(3.29mol)のアンモニアガスを室温で充填する。反応器をガス状水素で最大3.8MPa(38bar)まで加圧し、次いで真空蒸発によって反応溶媒(MTBE)の一部を除去した後、上記実施例5に記載のように得られた26.2質量%(17.7g、82.9mmol)の11-オキソウンデカン酸メチルを含有するオキソエステルの混合物67.6gを導入する。45gのMTBEおよび4gの水も供給される(アンモニアに対して7重量%)。
【0165】
MTBE中のオキソエステル溶液の装填の最後に、オートクレーブは撹拌しながら108℃まで加熱され、圧力は8.4MPa(84bar)に達する。所望の温度に達したら、反応を60分間(1時間)続けた後、冷却してオートクレーブから取り出す。
【0166】
内部標準の存在下で反応粗生成物に対して行われたガスクロマトグラフィー分析から、11-オキソウンデカン酸メチルおよび他のオキソエステルの対応する還元的アミノ化生成物への完全な変換が観察される。これらのうち、98%はアミノエステルであり、一方、還元的アミノ化と文脈的アミド化(アミノアミド)との生成物の量は2%である。第1のヒドロホルミル化段階で得られた飽和エステルは副生成物として残り、部分的に対応する飽和アミドに変換される。
【0167】
(実施例7:トルエン中での合成ガスによる9-デセン酸メチルのヒドロホルミル化)
T=100℃、合成ガス圧力=4.5MPa、エステル/Rhモル比=5000、L/Rhモル比=16。
【0168】
上記の実施例1で使用したような500mlのオートクレーブ内で、25g(0.133mol)の9-デセン酸メチルを220mlの乾燥トルエンおよびドライボックス内で予め調製し、窒素下で1時間撹拌した7mg(0.0266mmol)の(acac)Rh(CO)と345mg(0.425mmol)のBiPhePhosのトルエン溶液とを含有する溶液中に入れる。オートクレーブを合成ガスで2回フラッシュし、次に最大4.5MPaまで加圧し、撹拌しながら100℃の温度にする。反応は2時間継続し、その終了時に反応器を冷却し、反応混合物を排出する。
【0169】
内部標準の存在下で行ったガスクロマトグラフィー分析から、9-デセン酸メチルの変換率は99.9%、ヒドロホルミル化生成物(オキソエステル)に対する選択率は71%、および11-オキソウンデカン酸メチル(ω-オキソエステル)のl/bおよびその分岐異性体の合計が66に等しいことが観察される。
【0170】
(実施例8:水の存在下での11-オキソウンデカン酸メチルの還元的アミノ化、既に水素で加圧された反応器へのオキソエステルの供給)
上記の実施例2で使用したような250mlのオートクレーブに、専用の触媒ホルダー内に配置され、水素雰囲気中で事前に活性化されたシリカ-アルミナ(Ni-3288E1/16インチ 3F、約60%のNi、Engelhard De Meern B.V.、NLの市販製品)上に担持されたニッケルをベースとする水素化触媒30gの存在下で、88g(5.17mol)のアンモニアガスを室温で充填する。反応器をガス状水素で最大3.4MPa(34bar)まで加圧し、次いで真空下での蒸発によって反応溶媒(トルエン)の大部分を除去した後、93gのメタノールおよび4.7gの水(アンモニアに対して5.3重量%)の添加とともに、57質量%(18.2g、85.1mmol;アンモニア/オキソエステル比=60)の11-オキソウンデカン酸メチルを含有する、実施例7で得られた32gの反応混合物をそれに供給する。
【0171】
オキソエステルのメタノール溶液の装填が終了すると、オートクレーブは撹拌しながら108℃まで加熱され、圧力は8.2MPa(82bar)に達する。所望の温度に達したら、反応を60分間続けてから冷却し、オートクレーブから取り出す。
【0172】
内部標準の存在下で反応粗生成物に対して行われたガスクロマトグラフィー分析から、11-オキソウンデカン酸メチルおよび他のオキソエステルの対応する還元的アミノ化生成物への完全な変換が観察される。これらのうち、88%はアミノエステルであり、還元的アミノ化と文脈的アミド化(アミノアミド)と生成物の量は12%である。第1のヒドロホルミル化段階で得られた飽和エステルは副生成物として残り、部分的に対応する飽和アミドに変換される。
【0173】
(実施例9:実施例8からの11-アミノ-ウンデカン酸メチルの加水分解および得られた11-アミノ-ウンデカン酸の精製)
上記の実施例3で使用したような500mlのフラスコに、50質量%の11-アミノウンデカン酸メチルを含有する、実施例8の反応粗生成物から出発して溶媒(メタノール)の一部を除去することによって得られたアミノエステルとアミノアミドのメタノール混合物26.2gを、真空蒸発によって充填し、これに約300mlの水および40%NaOHをpH12に達するまで添加する。混合物を撹拌しながら沸騰温度まで加熱し、これらの条件下で還流下で6時間放置する。加水分解の終了後、混合物を冷却し、塩酸を加えてpHを6の値に戻す。
【0174】
白色の沈殿物の形成が観察され、これを一晩冷やして沈殿させた。固体をブフナー漏斗での真空濾過によって分離し、少量の冷アセトンで繰り返し洗浄する。
【0175】
11-アミノウンデカン酸(10.4g)が非常に微細な白色固体として得られ、プロトンと炭素13での核磁気共鳴分析によって特徴付けられる。融点は180~184℃である。直鎖アミノエステル(11-アミノウンデカン酸メチル)に関して計算したモル収率は85%である。
【0176】
表1と2は、上記の例の要約データを示す。
【0177】
最後に、本文中で特に言及されていないさらなる修正および変形が、本明細書に記載され図示されているプロセスに対して行われ得ることが理解されるが、それらは、添付の特許請求の範囲内での本発明の明らかな変形とみなされるべきである。
【0178】
【表1】
【0179】
【表2】
【国際調査報告】