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特表2024-534097脳のミエリンの状態に影響を及ぼす脱髄疾患または関連疾患によって引き起こされる、個体の脳における変化を表すインディケータの決定方法
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  • 特表-脳のミエリンの状態に影響を及ぼす脱髄疾患または関連疾患によって引き起こされる、個体の脳における変化を表すインディケータの決定方法 図1
  • 特表-脳のミエリンの状態に影響を及ぼす脱髄疾患または関連疾患によって引き起こされる、個体の脳における変化を表すインディケータの決定方法 図2
  • 特表-脳のミエリンの状態に影響を及ぼす脱髄疾患または関連疾患によって引き起こされる、個体の脳における変化を表すインディケータの決定方法 図3
  • 特表-脳のミエリンの状態に影響を及ぼす脱髄疾患または関連疾患によって引き起こされる、個体の脳における変化を表すインディケータの決定方法 図4
  • 特表-脳のミエリンの状態に影響を及ぼす脱髄疾患または関連疾患によって引き起こされる、個体の脳における変化を表すインディケータの決定方法 図5
  • 特表-脳のミエリンの状態に影響を及ぼす脱髄疾患または関連疾患によって引き起こされる、個体の脳における変化を表すインディケータの決定方法 図6
  • 特表-脳のミエリンの状態に影響を及ぼす脱髄疾患または関連疾患によって引き起こされる、個体の脳における変化を表すインディケータの決定方法 図7
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-18
(54)【発明の名称】脳のミエリンの状態に影響を及ぼす脱髄疾患または関連疾患によって引き起こされる、個体の脳における変化を表すインディケータの決定方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20240910BHJP
【FI】
A61B5/055 382
A61B5/055 380
A61B5/055 390
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024510485
(86)(22)【出願日】2022-08-19
(85)【翻訳文提出日】2024-04-17
(86)【国際出願番号】 EP2022073240
(87)【国際公開番号】W WO2023021201
(87)【国際公開日】2023-02-23
(31)【優先権主張番号】2108808
(32)【優先日】2021-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】524063866
【氏名又は名称】ブレインテイル
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ペルルバルグ,バンサン
【テーマコード(参考)】
4C096
【Fターム(参考)】
4C096AA17
4C096AC01
4C096AD14
4C096DC19
4C096DC22
4C096DC28
4C096DE08
(57)【要約】
本発明の一態様は、脱髄性疾患によって引き起こされる脳における変化を表すインディケータの決定のための方法(100)であって:- 脳の各関心領域について、以下の拡散係数:径方向拡散、軸方向拡散、平均拡散、異方性度、またはこれらの係数のうちのいくつかの組み合わせのうちの1つの、領域係数の決定のステップ(101)であって、領域係数は拡散MRI画像から決定されるステップ(101);- 各領域の領域拡散係数の値に関係する条件が満たされた変化した領域の数の決定のステップ(102);- 変化した領域の数による前記インディケータの決定のステップ(103)を含む、方法(100)に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱髄性疾患によって引き起こされる個体の脳の変化を表すインディケータを決定するための方法(100)であって、以下のステップ、
脳のいくつかの関心領域(ROI、・・・ROI、・・・ROI)を集めたセットの各関心領域(ROI)について、以下の拡散係数、すなわち径方向拡散、軸方向拡散、平均拡散、異方性度、またはこれらの係数のうちのいくつかの組み合わせのうちの1つの、前記関心領域(ROI)にわたる平均に対応する領域拡散係数(C)を決定する第1のステップ(101)であって、これらの異なる領域とそれぞれ関連付けられている領域係数は、拡散MRIによって事前に得られた、検査される個体の脳の画像から決定される、第1のステップ(101)、
所与の条件が満たされている関心領域(ROI、・・・ROI、・・・ROI)の数を計数することによって、変化した領域の数(Na)を決定する第2のステップ(102)であって、前記条件は、健康な患者群のこの領域の領域拡散係数の平均に等しい基準領域係数(Cj,ref)と比較される、対象領域と関連付けられた領域拡散係数(C)の値に関係する、第2のステップ(102)、
変化した領域の数(Na)に応じて前記インディケータを決定する第3のステップ(103)
を含むことを特徴とする、方法(100)。
【請求項2】
前記インディケータが前記変化の進展的性質を表し、
第1のステップ(101)で使用された個体の脳の画像が、日付t2に拡散MRIによって撮られた画像であり、
方法が、前記関心領域(ROI、・・・ROI、・・・ROI)の各々について、関心領域(ROI)にわたる拡散係数の平均に対応する初期領域係数(Cj,0)を決定するステップ(201)であって、前記初期領域係数が、日付t2の前の日付t1に拡散MRIによって撮られた個体の脳の初期画像から決定される、ステップ(201)をさらに含み、
第2のステップ(102)において、変化した領域の数(Na)が変化の進行を伴う領域の数(Np)に対応し、条件が以下のように、すなわち、領域拡散係数(C)が初期領域係数(Cj,0)に対して基準領域係数(Cj,ref)から遠ざかって移動した、と定義されるとき、関心領域(ROl)が、変化の進行を伴う領域と見なされる、
請求項1に記載の方法(100)。
【請求項3】
第2のステップ(102)において、領域係数(C)と初期領域係数(Cj,0)との間の距離がz.σより大きいときに、領域拡散係数(C)が、初期領域係数(Cj,0)に対して領域基準係数(Cj,ref)から遠ざかって移動しており、ここで、σが前記健康な患者群についての対象領域の前記領域拡散係数の分散を表し、zが0.5と4との間の最小進展係数である、請求項2に記載の方法(100)。
【請求項4】
前記インディケータが、前記変化の進展的性質を表し、第2のステップ(102)において、変化した領域の数(Na)が変化の退行を伴う領域の数(Nr)であり、前記条件が、領域拡散係数(C)が初期領域係数(Cj,0)に対して基準領域係数(Cj,ref)により近く移動したことであるとき、関心領域(ROI)が、変化の退行を伴う領域と見なされる、請求項2に記載の方法(100)。
【請求項5】
第2のステップ(102)において、領域係数(C)と初期領域係数(Ci,0)との間の距離がz.σより大きいときに、領域拡散係数(C)が、初期領域係数(Ci,0)に対して領域基準係数(Cj,ref)により近く移動しており、ここで、σが前記健康な患者群についての対象領域の前記領域拡散係数の分散を表し、zが0.5と4との間の最小進展係数である、請求項4に記載の方法(100)。
【請求項6】
変化の進行を伴う領域の数(Np)と変化の退行を伴う領域の数(Nr)との差が大きくなるにつれて、前記変化の進展的性質を表すインディケータが一層大きくなる、請求項2および4に記載の、および請求項1から5のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項7】
日付t2が脱髄性疾患タイプの患難に関係した脳の変化に対する処置の適用の日付に後続し、日付t1が前記処置の適用の前記日付の前である、請求項2から6のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項8】
前記インディケータが、脳患難のレベルの静的インディケータであり、第2のステップ(102)において、前記条件が、領域拡散係数(C)と領域基準係数(Cj,ref)との間の距離がz.τより大きいことであり、ここで、τが前記健康な患者群についての対象領域の前記領域拡散係数の分散を表し、zが0.5と4との間の最小距離係数である、請求項1に記載の方法(100)。
【請求項9】
複数の関心領域(ROI、ROI、ROI)は、以下の領域、すなわち、前脳幹、後脳幹、右大脳脚、左大脳脚、脳梁膝、脳梁幹、脳梁膨大部、右内包前肢、左内包前肢、右内包後肢、左内包後肢、右矢状層、左矢状層、右上縦束、左上縦束、右外包、左外包、右放線冠、および左放線冠の領域のうちの全てまたはいくつかから選択されることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項10】
健康な個体群が、各関心領域(ROI)について少なくとも2つの健康な個体を含むことを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の方法(100)を実施するためのシステム(10)であって、システムが、以下のステップ、
〇 脳のいくつかの関心領域(ROI、・・・ROI、・・・ROI)を集めたセットの各関心領域(ROI)について、以下の拡散係数、すなわち、径方向拡散、軸方向拡散、平均拡散、異方性度、またはこれらの係数のうちのいくつかの組み合わせのうちの1つの、前記関心領域(ROI)にわたる平均に対応する領域拡散係数(C)を決定する第1のステップ(101)であって、これらの異なる領域とそれぞれ関連付けられている領域係数は、拡散MRIによって事前に得られた、検査される個体の脳の画像から決定される、第1のステップ(101)、
〇 所与の条件が満たされている関心領域(ROI、・・・ROI、・・・ROI)の数を計数することによって、変化した領域の数(Na)を決定する第2のステップ(102)であって、前記条件は、健康な患者群のこの領域の領域拡散係数の平均に等しい基準領域係数(Cj,ref)に対する、対象領域と関連付けられた領域拡散係数(C)の値に関係する、第2のステップ(102)、
〇 変化した領域の数(Na)に応じて前記インディケータを決定する第3のステップ(103)
を行うように構成された、処理モジュール(32)
を含むことを特徴とする、システム(10)。
【請求項12】
命令を含むコンピュータプログラム製品であって、命令は、プログラムがコンピュータによって実行されると、コンピュータに、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法(100)のステップを実施させる、コンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の技術分野は、磁気共鳴イメージング(MRI)の分野であり、より詳しくは、脱髄または関連の病変に罹患した個体の脳の変化の程度を評価するための拡散テンソルMRIの分野である。
【0002】
本発明は、特に、脱髄性疾患によって引き起こされる個体の脳の変化を表すインディケータを決定するための方法に関する。本発明はまた、この決定方法を実施するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
脱髄性疾患は、多発性硬化症(MS)、大脳白質萎縮症、および副腎脊髄ニューロパシー(AMN)を含む。この種類の病変は、一次性脱髄として知られている。最も一般的なMSは、世界中でおよそ3百万人の人々に影響を及ぼしている。
【0004】
多発性硬化症(MS)は、免疫システムによるミエリン鞘に対する攻撃を通して軸索変性を引き起こす炎症性自己免疫疾患である。この疾患の原因は依然として不明であるが、いくつかの遺伝学的代替、環境、または感染の組み合わせなどのいくつかの因子が、この疾患の発展のための危険因子であるように思われる。MSの症状は:運動障害、感覚障害、視覚障害、平衡障害、尿障害、性的障害、または認知障害など非常に様々であり、全てが神経系の脱髄の直接的な結果である。
【0005】
副腎脊髄ニューロパシー(AMN)は、最も一般的なペルオキシソーム病である。これは、X染色体上の病原性ABCD1変異によって引き起こされ、ペルオキシソームベータ酸化の変化、ならびに血漿および組織、特に脳、脊髄および副腎皮質の白質における超長鎖脂肪酸の蓄積をもたらし、神経系の脱髄につながる。AMNは、臨床上、ヘテロジニアスな表現型をもたらし、表現型のうちの最も一般的な表現型は、膀胱の不調、感覚性運動失調、および下肢痛を伴う進行性の痙攣性不全対麻痺によって特徴付けられる脊髄神経障害である。
【0006】
軸索の脱髄をもたらす病変は他にもある。例えば、筋萎縮性側索硬化症(ALS)が該当する。これらの疾患は、二次性脱髄と分類される。
【0007】
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、運動ニューロンに影響を及ぼす変性疾患であり、その原因およびメカニズムは依然として誤って理解されている。この疾患の第1の症状は、最初に影響を受けた脳のゾーンに応じて、ヒンジングまたは飲み込みが困難となる、腕、手、脚、または口に影響を及ぼす主に運動機能障害である。疾患が進行すると、問題が身体の残りの部分の筋肉に広がり、筋肉の喪失および協調上の問題につながり、さらには呼吸筋まで影響を及ぼす。ALSの形態によっては、認知問題を引き起こすこともわかっている。MSおよびAMNのように、ALSは、運動ニューロンの死と関連して軸索の脱髄をもたらす。
【0008】
一次性脱髄または二次性脱髄を伴うこれらの種類の疾患は、重度の障害である場合が多く、多くの人を冒し、現在の療法よりも効果的な処置が緊急で必要とされている。MSおよびAMNについては、進行を遅らせ、変性の再燃を防止することを狙った処置のみが存在する。例えばAMNの場合、現在の処置は対症療法的であり:脱髄および炎症性病変を止めるために行われる造血幹細胞移植は、AMNにおける脊髄症の進行を防ぐようには思われない。
【0009】
これらの病状がもたらす病変および潜在的な処置の効果を効果的に評価するために(新しい処置の開発および検証を可能にするため)、進行性脱髄性疾患に関連した脳の変化の程度を表す、高いエフェクトサイズを伴うバイオマーカーが実際に必要である。
【0010】
これらの条件について、白質病変の重症度およびそれらの悪化は、通常の検査方法を使用して評価するのが難しく:例えば、従来の磁気共鳴イメージング(MRI)によって提供されるバイオマーカーは、健康な患者における偽陽性、または脱髄性疾患を有する患者における偽陰性の結果の検出につながる場合が多いため、十分にロバストではない。
【0011】
脳MRI技術のうちで、文書WO2014060695A2もまた知られている。これは、患者が昏睡状態を脱する確率を決定するための方法を記載している。このため、径方向拡散、軸方向拡散、および異方性度の領域値が、脳の異なる領域に対して決定される。これらの値の全てはあらかじめ正規化されて、分類器に入力され、分類器は、昏睡状態を脱する確率を出力する。この分類器は、健康な患者および疾患を有する患者(全部で約100人の患者が1年を超える期間にわたって監視されている)に対応するMRI画像に基づいてあらかじめ訓練されている。しかしながら、この文書に記載の分類器は、昏睡状態を脱する確率を決定するようにパラメータ化されてはいるが、上述したような脱髄性疾患の進展を検出または監視するようにパラメータ化されてはいない(言い換えれば、この文書で提供されている分類器の調節可能なパラメータの値は、昏睡状態を脱する確率を決定するが、アプリオリには問題の疾患のうちの1つを検出しないように適合されている)。さらに、問題の学習段階に起因して、そのような分類器の使用は限定的であり、このことにより、この学習のためだけに奉仕できる多数の基準患者のフォローアップを必要とする。
【0012】
文書WO2014060695A2に記載の発明は、ロバストであり、昏睡状態を引き起こした脳病変を表す高いエフェクトサイズのバイオマーカーの使用を教示している。この場合、これらのバイオマーカーは、径方向拡散、軸方向拡散、および異方性度である。
【0013】
しかしながら、WO2014060695A2に記載の方法は、昏睡状態を脱する確率を予測するための学習ツールに依存している。これらのツールは、AMNに罹患した患者の脳の変化の程度の迅速な評価の必要性と一致しない、時間のかかる学習段階を必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】国際公開第2014/060695号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
そのため、AMNに関連した脳の変化の程度を表し、高いエフェクトサイズを伴い、ロバストであり、即座に得ることができ、簡潔で、医療専門家が理解しやすいバイオマーカーが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、脱髄性疾患によって引き起こされる脳の変化の程度を表すロバストなインディケータの単純で迅速な決定を、前記インディケータが簡潔で、医療従事者が理解しやすいやり方で可能にすることによって、上述した問題への解決策を提供する。
【0017】
脱髄性疾患は、多発性硬化症(MS)、大脳白質萎縮症、もしくは副腎脊髄ニューロパシー(AMN)などの一次性脱髄、または筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの二次性脱髄につながる全ての病変であると考えられている。
【0018】
より正確には、本発明の目的は、前記インディケータを決定するための方法およびその方法を実施するためのシステムである。
【0019】
本発明の第1の態様は、脱髄性疾患によって引き起こされる個体の脳の変化を表すインディケータを決定するための方法であって、以下のステップ:
- 脳のいくつかの関心領域を集めたセットの各関心領域について、以下の拡散係数:径方向拡散、軸方向拡散、平均拡散、異方性度、またはこれらの係数のうちのいくつかの組み合わせのうちの1つの、前記関心領域にわたる平均に対応する領域拡散係数を決定する第1のステップであって、これらの異なる領域とそれぞれ関連付けられている領域係数は、拡散MRIによって事前に得られた、検査される個体の脳の画像から決定される、第1のステップ;
- 所与の条件が満たされている関心領域の数を計数することによって、変化した領域の数を決定する第2のステップであって、前記条件は、健康な患者群のこの領域の領域拡散係数の平均に等しい基準領域係数と比較される、対象領域と関連付けられた領域拡散係数の値に関係する、第2のステップ;
- 変化した領域の数に応じて前記インディケータを決定する第3のステップと
を含む方法に関する。
【0020】
本発明により、医療従事者は、脱髄性疾患によって引き起こされる脳の変化を表すインディケータ、特に、ミエリンの変化を表すインディケータを有する。実際に、径方向拡散、軸方向拡散、平均拡散、異方性度、またはこれらの係数のうちのいくつかの組み合わせなどの拡散テンソルのMRI画像から得られた拡散係数は、ミエリン変化にセンシティブである。加えて、インディケータは、いくつかの関心領域について決定され、それによって個体のレベルにおける脳の変化を表すようになる。さらに、インディケータは、平均された拡散係数から決定されるので、脳の変化状態を表し、したがって、測定の不確実性およびばらつきにあまりセンシティブではない。
【0021】
インディケータはまた、変化した関心領域の数に応じて決定され、有益であるため、単純、簡潔、定量的、および医療従事者が理解しやすい。
【0022】
インディケータはまた、特に、健康な患者群について取得された画像から抽出された拡散係数との比較によって、医療従事者が変化の重症度を評価できるようにする。
【0023】
加えて、インディケータは、脳の変化の進展を表し、特にそれらの変性性のゆえ、特に、対象の疾患が他の脊髄性疾患と区別可能であるため、医療従事者が時間および空間にわたる変化における変化量を評価できるようにする。
【0024】
最後に、インディケータは、重症度スケールにおける障害を評価できるようにするEDSS(総合障害度尺度(Expanded Disability Status Scale))、および運動障害、括約筋機能障害、痙性および感覚性変化など、脊髄症に関連する症状に基づいて患難の重症度を評価できるようにするSSPROM(進行性脊髄症のための重症度スコアシステム(Severity Score System for Progressive Myelopathy))などの他のインディケータと相関されるため、脳の変化状態を表す。
【0025】
上の段落で論じた特徴に加えて、本発明の第1の態様に記載の方法は、以下のうちから、個別に、または技術的に可能な組み合わせにしたがって、考えられる1つ以上のさらなる特徴を有し得る。
【0026】
第1の代替の実施形態は、本発明による方法であって、前記インディケータが前記変化の進展的性質を表し:
- 第1のステップで使用された個体の脳の画像が、日付t2に拡散MRIによって撮られた画像であり、
- 方法が:前記関心領域の各々について、関心領域にわたる拡散係数の平均に対応する初期領域係数を決定するステップであって、前記初期領域係数が、日付t2の前の日付t1に拡散MRIによって撮られた個体の脳の初期画像から決定される、ステップをさらに含み、
- 第2のステップにおいて、変化した領域の数が変化の進行を伴う領域の数に対応し、条件が以下のように:領域拡散係数が初期領域係数に対して基準領域係数から遠ざかって移動した、と定義されるとき、関心領域が、変化の進行を伴う領域と見なされる、
方法に関する。
【0027】
各関心領域について、例えば、t2に対応する前記領域係数の値と領域基準係数の値との間の距離が、t1に対応する初期領域係数の値と領域基準係数の値との間の距離より大きいとき、領域拡散係数が領域基準係数から遠ざかって移動したと見なされ得る。
【0028】
この代替の実施形態により、第1の日付t1に得られた初期領域係数を第2の日付t2に得られた領域係数と比較することによって、および領域係数を健康な患者群から得られた基準係数と比較することによって、各関心領域について脳の脱髄の進行を決定可能である。したがって、本方法は、変化した関心領域の変化が悪化したかどうか、および無変化の関心領域が変化したかどうかを検出可能にする。したがって、本方法によって決定されたインディケータは、深刻な患難の場合であっても、脱髄性疾患の変性性を表す。
【0029】
インディケータは、それ自体で、脳の変化において進展が存在するかどうか、およびその進展が変化の進行によって引き起こされているかどうかを表すため、さらに単純で簡潔である。
【0030】
第1の代替の実施形態の副代替は、本発明による方法であって、第2のステップにおいて、領域係数と初期領域係数との間の距離がz.σより大きいときに、領域拡散係数が、初期領域係数に対して基準領域係数から遠ざかって移動しており、ここで、σが前記健康な患者群についての対象領域の前記領域拡散係数の分散を表し、zが0.5と4との間の最小進展係数である、方法に関する。
【0031】
この副代替により、脳領域は、それらの変化の進行が有意である場合のみ、すなわち、それらの領域係数における進展が、健康な患者群について得られた前記領域係数の分散を表す値より大きい場合、インディケータによって計数される。
【0032】
第1の代替の実施形態の代替は、本発明の方法であって、前記インディケータが前記変化の進展的性質を表し、前記インディケータが、前記変化の進展的性質を表し、第2のステップにおいて、変化した領域の数が変化の退行を伴う領域の数であり、前記条件が、領域拡散係数が初期領域係数に対して基準領域係数により近く移動したことであるとき、関心領域が、変化の退行を伴う領域と見なされる、方法に関する。
【0033】
各関心領域について、例えば、t2に対応する前記領域係数の値と領域基準係数の値との間の距離が、t1に対応する初期領域係数の値と領域基準係数の値との間の距離より小さいとき、領域拡散係数が領域基準係数により近く移動したと見なされ得る。
【0034】
先の代替の実施形態の副代替は、本発明による方法であって、前記インディケータが前記変化の進展的性質を表し、第2のステップにおいて、領域係数と初期領域係数との間の距離がz.σより大きいときに、拡散領域係数が、初期領域係数に対して基準領域係数により近く移動しており、ここで、σが前記健康な患者群についての対象領域の前記領域拡散係数の分散を表し、zが0.5と4との間の最小進展係数である、方法に関する。
【0035】
この副代替により、第1の日付に得られた初期領域係数を第2の日付に得られた領域係数と比較することによって、および領域係数を健康な患者群から得られた基準係数と比較することによって、各関心領域について脳の脱髄の退行が決定可能である。したがって、本方法は、変化した関心領域の変化が改善したかどうか、および変化した関心領域が無変化になったかどうかを検出可能にする。さらに、脳領域は、それらの変化の退行が有意である場合のみ、すなわち、それらの領域係数における進展が健康な患者群について得られた上記の領域係数の分散を表す値より大きい場合、インディケータによって計数される。
【0036】
したがって、本方法によって決定されたインディケータは、脳の変化の進展が存在するかどうか、および進展が変化の退行によって引き起こされているかどうかを表す。
【0037】
先の副代替の実施形態と両立する副代替の実施形態は、本発明の方法であって、変化の進行を伴う領域の数と変化の退行を伴う領域の数との差が大きくなるにつれて、前記変化の進展的性質を表すインディケータが一層大きくなる、方法に関する。
【0038】
したがって、インディケータは、単純、簡潔、定量的であり、および、脱髄性疾患によって引き起こされる脳の変化を表すため、医療従事者が理解しやすい。
【0039】
代替の実施形態は、本発明による方法であって、日付t2が脱髄性疾患タイプの患難に関連した脳の変化に対する処置の適用の日付に後続し、日付t1が前記処置の適用の前記日付の前である、方法に関する。
【0040】
この代替により、本方法によって決定されたインディケータは、脱髄に対する処置の適用後の脳の変化の進展を評価可能にする。
【0041】
第2の代替の実施形態は、本発明による方法であって、前記インディケータが、脳患難のレベルの静的インディケータであり、第2のステップにおいて、前記条件が、領域拡散係数と領域基準係数との間の距離がz.σより大きいことであり、ここで、σが前記健康な患者群についての対象領域の前記領域拡散係数の分散を表し、zが0.5と4との間の最小距離係数である、方法を説明する。
【0042】
この第2の代替は、所与の瞬間における脳の変化状態を表し、個体のレベルの脳の脱髄の重症度に関する情報を提供するインディケータを得ることを可能にする。
【0043】
この静的インディケータは、健康な患者群と比較して、変化が有意である関心領域の数を表す単一のスカラであるため、さらに、単純、簡潔、定量的であり、および医療従事者が理解しやすい。
【0044】
本発明による方法の代替の実施形態は、複数の関心領域が、以下の領域:前脳幹、前脳幹、右脳脚、左脳脚、脳梁膝、脳梁幹、脳梁膨大部、右内包前肢、左内包前肢、右内包後肢、左内包後肢、右矢状層、左矢状層、右上縦束、左上縦束、右外包、左外包、右放線冠、および左放線冠の領域のうちの全てまたはいくつかから選ばれることを説明する。
【0045】
代替の実施形態は、健康な個体群が、各関心領域について少なくとも2つの健康な個体を含むという点で、本発明による方法に関係する。
【0046】
代替の実施形態は、少なくとも2つの健康な個体のうちの少なくとも一方が、各関心領域について同じまたは異なるという点で、本発明による方法を説明する。
【0047】
言い換えれば、各関心領域について、領域基準係数が、同じ健康な個体群から、または異なる健康な個体群から決定され得る。
【0048】
本発明の第2の態様は、先の実施形態のいずれかに記載の方法を実施するためのシステムであって、以下のステップ:
- 脳のいくつかの関心領域を集めたセットの各関心領域について、以下の拡散係数:径方向拡散、軸方向拡散、平均拡散、異方性度、またはこれらの係数のうちのいくつかの組み合わせのうちの1つの、前記関心領域にわたる平均に対応する領域拡散係数の決定の第1のステップであって、これらの異なる領域とそれぞれ関連付けられている領域係数は、拡散MRIによって事前に得られた、検査される個体の脳の画像から決定される、第1のステップ;
- 所与の条件が満たされている関心領域の数を計数することによって、変化した領域の数を決定する第2のステップであって、前記条件は、健康な患者群のこの領域の領域拡散係数の平均に等しい基準領域係数に対する、対象領域と関連付けられた領域拡散係数の値に関係する、第2のステップ;
- 変化した領域の数に応じて前記インディケータを決定する第3のステップ
を行うように構成された処理モジュール
を含む、システムに関する。
【0049】
本発明の最後の態様は、命令を含むコンピュータプログラム製品であって、命令は、プログラムがコンピュータによって実行されると、コンピュータに、先の実施形態のいずれかに記載の方法のステップを実施させる、コンピュータプログラム製品に関する。
【0050】
本発明およびその様々な用途は、以下の説明を読み、添付の図面を検討することで、より深く理解されるようになる。
【0051】
図は、本発明を示すために提供されており、決して本発明を限定する目的のものではない。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1】本発明によるシステムの一実施形態を示す図である。
図2】本発明による方法の一般的な説明図である。
図3】本発明による方法の第1の実施形態を示すブロック図である。
図4】本発明による方法の第2の実施形態を示すブロック図である。
図5】本発明によるシステムの第2の実施形態を示す図である。
図6】副腎脊髄ニューロパシーに罹患した複数の個体に対する図4の方法の第2の実施形態によって決定されたインディケータの実験結果を、EDSSおよびSSPROMインディケータと比較する図である。
図7】副腎脊髄ニューロパシーに罹患した複数の個体に対する図3および図4の方法の2つの実施形態によって決定されたインディケータの実験結果を集約した図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
特段の指定がない限り、異なる図に現れる同じ要素は、単一の参照符号を有する。
【0054】
本発明は、システムと、そのシステムによって実施される方法とに関する。方法は、一次性または二次性一次性脱髄をもたらす病変に起因して神経系の脱髄によって引き起こされる個体の脳の変化を表すインディケータを決定するために利用される。システムは、3つの別個のサブシステムを含み、図1を参照して説明される。次いで、本発明の方法が、図2および図3により詳細に説明される。本方法の2つの代替が提供されており、一方は、所与の時刻におけるミエリン鞘の変化を決定可能にするものであり、他方は、時間の経過に伴う脳の脱髄の進行を監視可能にする。この方法は、患者の脳の拡散テンソルのMRIによって計測される、磁場における異方性変動から計算された拡散係数に基づいており、それらの係数を、健康な患者群からのデータと比較する。
【0055】
システムの開示
本発明の第1の態様は、脱髄性疾患によって引き起こされた個体の脳の変化を決定するためのシステムに関する。
【0056】
図1は、本発明によるシステム10の概略図を示す。
【0057】
システム10は:
- 〇 制御モジュール21;および
〇 拡散テンソルMRI(磁気共鳴イメージング)撮像モジュール22
を備える取得システム20
- 〇 揮発性メモリ31;
〇 処理モジュール32;
〇 不揮発性メモリ33;
を備える処理システム30
- 〇 表示モジュール41
を備える情報システム40
- 取得システム20と処理システム30とを接続する接続50;
- 取得システム20と情報システム40とを接続する接続60;
- 処理システム30と情報システム40とを接続する接続70
を備える。
【0058】
取得システム20は、個体に対する脳の拡散テンソルMRI画像の取得を実行するように構成されている。より正確には、制御モジュール21は、個体の脳の画像の拡散テンソルMRI取得を実行するために撮像モジュール22を駆動し、この画像を取得するように構成されている。
【0059】
拡散テンソルMRIとは、脳の繊維構造の異方性にセンシティブである水分子の拡散方向の分布をMRIによって計測するための任意の技法を意味する。
【0060】
制御モジュール21は、コンピュータ、モバイル装置、プロセッサ、または撮像モジュール22を駆動し、その結果として脳の拡散テンソルMRI画像を取得して、メモリに記憶する命令を実行可能な任意の他の装置でもよい。
【0061】
撮像モジュールは、例えば企業Philips(TM)、General Electric(TM)(GE)またはSiemens(TM)からの例えば1.5 Tesla、3.0 Tesla、または7.0 TeslaのMRI装置でもよい。
【0062】
脳の画像は、MRI装置によって得られた任意の種類の画像であり得る。例えば、非強調画像または拡散強調画像でもよい。
【0063】
制御モジュール21は、撮像を行う施術者によって制御されてもよく、または自律的で、事前に記録された命令に従ってもよい。
【0064】
取得システム20は、接続50を介して、処理システム30に脳の取得された画像に関連するデータを送信するように構成され、このデータは、例えば、脳の画像の全てもしくは一部、または、処理後、例えばフィルタリング、セグメント化、平均化、もしくは分類後の脳の画像から得られたデータであり得る。
【0065】
取得システム20と処理システム30との間の接続50は、特性において、有線(例えば、イーサネット、USB、SATA、PCI)または無線(例えば、WiFi、Bluetooth)でもよい。
【0066】
処理システム30は、取得システム20から接続50を介して処理システム30によって受信されたデータを受信するように構成されている。
【0067】
処理システム30は、データを処理するようにさらに構成されている。
【0068】
処理システム30は、命令を実行するための任意のシステムでもよい。例えば、処理システム30は、コンピュータまたはサーバでもよい。処理システム30はまた、ローカル、または例えばクラウドタイプのサービスの形態でリモートでもよい。
【0069】
方法の開示
処理システム30は、図2に示されるように、本発明による方法100を実施するように構成されている。方法100は、脳のミエリンの状態に影響を及ぼす脱髄性疾患のタイプの疾患によって引き起こされる個体の脳の変化を表すインディケータの決定を可能にする。
【0070】
方法100は、脳のいくつかの関心領域ROI、・・・ROI、・・・ROIを集めたセットの各関心領域ROIについて、領域拡散係数Cが決定されるステップ101を含む。この領域係数Cは、以下の拡散係数:径方向拡散、軸方向拡散、平均拡散、異方性度、またはこれらの係数のうちのいくつかの組み合わせのうちの1つの、前記関心領域ROIにわたる平均に対応する。それぞれこれらの異なる領域ROI、・・・ROI、・・・ROIと関連付けられた領域係数は、拡散MRIによって事前に得られた、検査される個体の脳の画像から決定される。「事前に」とは、脳の画像が、例えば個体の検査時など、上述した方法の実施前に取得されることを意味する。したがって、本方法は、実施されるために、個体の存在を必要とせず、画像のみが必要である。
【0071】
関心領域ROI、・・・ROI、・・・ROIは脳領域であり、特に、81個の健康な対象の拡散データから構築された48個の白質領域を有するICBM-DTI-81 atlas(Moriら、2005年)で定義されるような白質領域である。健康な対象とは、動物または人間にかかわらず、脳を有するが、あらゆる種類の脳疾患または患難を有さない生物を意味する。
【0072】
関心領域ROI、ROI、ROIは、以下の領域から選択され得る:前脳幹(ICBM2、7および8)、後脳幹(ICBM9から14)、右大脳脚(ICBM15)、左大脳脚(ICBM16)、脳梁膝(ICBM3)、脳梁幹(ICBM4)、脳梁膨大部(ICBM5)、右内包前肢(ICBM17)、左内包前肢(ICBM18)、右内包後肢(ICBM19)、左内包後肢(ICBM20)、右矢状層(ICBM21、29、31および47)、左矢状層(ICBM22、30、32および48)、右上縦束(ICBM41)、左上縦束(ICBM42)、右外包(ICBM33)、左外包(ICBM34)、右放線冠(ICBM23、25および27)、ならびに左放線冠(ICBM24、26および28)。
【0073】
「ICBM n」なる表記は、ICBM-DTI-81 atlasの第n領域を指す。
【0074】
単に、ICBM-DTI-81 atlasによって規定される構成とは異なって結合または分割するために、異なって領域を構成できるため、上述した領域以外のICBM-DTI-81 atlasの領域を使用可能である。
【0075】
また、SchottenのCatani-Thiebaut atlasなどの他のアトラスも使用可能である。
【0076】
一方、画像中の関心領域を識別し、区切るセグメント化技法に依存することが可能である。例えば、エッジ検出または形状認識によるセグメント化を適用可能である。さらに、関心領域を識別するための機械学習ツールに依存することも可能である。
【0077】
したがって、関心領域ROI、・・・ROI、・・・ROIの各々について、領域拡散係数Cは、前記関心領域ROIの少なくとも1つの拡散係数の平均によって決定される。
【0078】
この平均は、脳の画像の各ボクセル上で測定された拡散係数の値をとることによって計算される空間平均であり得るが、これに限定されない。また、例えば関心領域ROIの面積による、または正則化関数による重み付き平均でもよい。
【0079】
方法100は、所与の条件が満たされる関心領域ROI、・・・ROI、・・・ROIの数を計数することによって、変化した領域Naの数を決定する第2のステップ102を含み、前記条件は、健康な患者群のこの領域の領域拡散係数の平均に等しい基準領域係数Cj,refと比較される、対象領域と関連付けられた領域拡散係数Cの値に関係する。
【0080】
脳の各関心領域ROIについて、領域基準係数Cj,refが決定される。この領域基準係数Cj,refは、対象の拡散係数についての基準値を示す。この基準値は、脱髄性疾患に罹患していない個体の拡散係数についての平均正常値を示す。領域基準係数Cj,refは、健康な患者群に対して決定された領域拡散係数の値を平均することによって取得される。この平均は、場合によっては重みづけされ得る。
【0081】
領域基準係数を決定することは、利用可能な患者群を有することを必要とする。各関心領域ROIについて少なくとも2人の健康な患者が必要とされる。加えて、領域基準係数が、脳の関心領域ROI毎に、全体的または部分的に異なる健康な患者群を用いて決定されることが可能である。そのような群の課題は、領域基準係数のロバストな推定を有することである。
【0082】
したがって、関心領域ROIは、それが領域係数Cの値および対象の関心領域の領域基準係数Cj,refの値に関係する前記条件を満たすときに、変化したと言われる。
【0083】
各関心領域ROIについて、領域係数Cが前処理され得る。例えば、各領域係数Cは、前記関心領域ROIの基準領域係数Cj,refによって正規化または無次元化され得、または健康な患者群から得られた領域係数値の平均をそれから減算し、次いで、健康な患者群に対して得られた領域係数値の標準偏差によって除算することによって中心化および縮小化され得る。
【0084】
方法100は、変化した領域の数Naに応じて前記インディケータを決定する第3のステップ103を含む。
【0085】
進展インディケータを決定するための実施形態
方法100は、相補的実施形態および独立実施形態の2つにより実施され得る。第1の実施形態では、前記変化の進展的性質を表すインディケータが得られる。第2の実施形態では、脳の患難のレベルの静的インディケータが得られる。したがって、当業者には理解されるように、これらの実施形態は、互いに独立して、もしくは同時に行われてもよく、または組み合わせられてもよく、もしくは部分的のみ行われてもよい。
【0086】
図3は、変化の進展的性質を表すインディケータを決定するための追加のステップ201が追加された方法100の動作を概略的に示す。
【0087】
この第1の実施形態では、変化の進展的性質を表すインディケータを決定するための方法100は、上述した方法100の3つのステップ101、102および103を繰り返し、以下の特徴が結合されている:
- 第1のステップ101で用いられている個体の脳の画像が、日付t2に拡散MRIによって撮られた画像である、
- 方法は、前記関心領域ROI、・・・ROI、・・・ROIの各々について、関心領域ROIにわたる拡散係数の平均に対応する初期領域係数Cj,0を決定するステップ201であって、前記初期領域係数は、日付t2の前の日付t1に拡散MRIによって撮られた個体の脳の初期画像から決定される、ステップ201をさらに含む、
- 第2のステップ102において、変化した領域Naの数は変化の進行を有する領域の数Npに対応し、関心領域ROIは、条件が以下のように:領域拡散係数Cが、初期領域係数Cj,0に対して基準領域係数Cj,refから遠ざかって移動した、と定義されるときに変化の進行を有する領域と見なされる。
【0088】
言い換えれば、第1の拡散テンソルMRI画像取得は、取得システム20によって日付t1に行われる。次いで、第2の取得が、取得システム20によってt1に後続する日付t2に行われる。t1とt2の間の時間間隔は、検査のコンテキストに依存しており、例えば、1日、1か月、または1年でもよい。
【0089】
2つの多かれ少なかれ離れた連続時刻における脳の画像を利用可能にすることの利益は、ミエリン変化の進展を評価できることである。これは、疾患の自然な進展を通した変化の進行または退行を監視することを伴い得る。また、ミエリンに影響を及ぼす処置の適用後の変化の進展を監視するためにも使用され得る。それで、方法100は、脳の変化の進行または退行を評価することによってその処置の有効度を評価するために使用され得る。
【0090】
日付t1およびt2で取得された画像は、方法100のステップを行うために、処理システム30に送信される。その結果として、処理システムは、時刻t2に取得された画像のための領域係数の決定に関する方法100の第1のステップ101を実行し、時刻t1に取得された画像のための初期領域係数の決定に関する方法100のステップ201を実行する。
【0091】
次いで、各関心領域ROIについて、領域係数Cの値が初期領域係数Cj,0の値に対して基準領域係数Cj,refの値から遠ざかって移動したか、基準領域係数Cj,refの値により近く移動したかを確認するために、領域係数および初期領域係数が基準領域係数と比較される。
【0092】
目的は時間t1とt2との間の領域係数Cの進展が変化の進行に対応する関心領域ROI、・・・ROI、および進展が変化の退行に対応する関心領域ROI、・・・ROIを決定することである。
【0093】
それにより、進展が変化の進行または退行に対応する関心領域ROI、・・・ROI、・・・ROIの数を計数することによって、前記変化の進展的性質を表すインディケータを決定できる。この計数はまた、各関心領域ROIにしたがって、例えばそれらの位置または疾患または臨床検査との関連性にしたがって重みづけされ得る。
【0094】
脳の変化の進行または退行が証明される場合、第2のステップ102において、各関心領域ROIについて、初期領域係数Cj,0と領域係数Cとの間の距離を定量化することによってその変化の進展が有意であるかどうかを評価することがさらに可能である。この距離は、例えば、領域係数Cと初期領域係数Cj,0との間の差に等しい、または比例している。
【0095】
この目的のために、第2のステップ102において、各領域について、領域係数Cと初期領域係数Cj,0との間の差がze.σより大きいかどうかを決定することが可能であり、ここで:
σは、例えば、健康な患者群に対して決定された関心領域ROIの領域係数Cの値の標準偏差、または関心領域ROIについて、健康な患者群に対して決定された領域係数の値の分散を表す任意の他の量の標準偏差である。σは、場合によっては、関心領域ROI、・・・ROI、・・・ROIが変化の進行または変化の退行を伴う場合に異なり得る。σは、場合によっては、各関心領域ROIについて異なり得る;
は、例えば0.5と4との間の最小進展係数であり、その目的は、σの割合を定義することであり、それを上回ると進展が有意であると見なされる。場合によっては、関心領域ROI、…、ROI、・・・、ROIが変化の進行または変化の退行を伴う場合に、zが異なってもよい。場合によっては、zは、各関心領域ROIについて異なり得る。
【0096】
例えば、領域係数Cと初期領域係数Cj,0との間の距離が、健康な患者群について得られた領域係数の値から計算された標準偏差の1倍より大きい場合に、変化の進展が関心領域ROIにおいて有意であると定義することが可能である。
【0097】
それにより、第3のステップ103において、進展が変化の進行または退行に対応し、変化の進行または退行が有意である、関心領域ROI、・・・ROI、・・・ROIの数に等しいまたは比例している、前記変化の進展的性質を表すインディケータを決定することが可能である。
【0098】
さらに、第3のステップ103において決定された前記変化の進展的性質を表すインディケータは、変化の証明された有意の進行が存在する関心領域ROI、・・・ROI、・・・ROIの数と、変化の証明されている有意の退行が存在する関心領域ROI、・・・ROI、・・・ROIの数との間の差に比例する距離を計算することによって決定されることが、企図可能である。
【0099】
さらに、日付t1が処置の適用の前であり、日付t2が前記処置の適用に後続する場合、インディケータはまた、脳の変化の進行に対する前記処置の影響を表す。
【0100】
静的インディケータの決定のための実施形態
第2の実施形態では、方法300によって決定されたインディケータが、脳患難のレベルの静的インディケータである。
【0101】
図4は、第2の実施形態による方法100の動作を概略的に示す。
【0102】
この第1の実施形態では、脳患難のレベルの静的インディケータを決定するための方法100が、上述した方法100の3つのステップ101、102および103を繰り返す。本方法は、それに以下の特徴が結合されている:第2のステップ102において、前記条件が、領域拡散係数Cと領域基準係数Cj,refとの間の距離がzs.τよりも大きいことである。τは、前記健康な患者群についての対象領域の前記領域拡散係数の分散を表し、zは、0.5と4との間の最小距離係数である。
【0103】
静的インディケータは、脳の画像から、所与の時刻における脳患難のレベルを決定可能にする。
【0104】
言い換えれば、各関心領域ROIについて、領域係数Cと基準領域係数Cj,refとの間の距離が決定される。この距離は、例えば領域係数Cと領域基準係数Cj,refとの間の差に等しいまたは比例している。
【0105】
それにより、各領域ROIについて、前記距離がzs.τよりも大きいかどうかを決定することによって、変化が有意であるかどうかを評価可能であり、ここで:
τは、例えば、健康な患者群について決定された関心領域ROIの領域係数の値の標準偏差、または関心領域ROIに対して健康な患者群について決定された領域係数の値の分散を表す任意の他の量である。τは、各関心領域ROIについて異なってもよい。場合によっては、τは、σと等しくてもよい;
は、例えば0.5と4との間の最小距離係数であり、その目的は、τの割合を定義することであり、それを上回る変化が有意であると見なされる。場合によっては、zは、各関心領域ROIについて異なってもよい。
【0106】
例えば、領域係数Cと基準領域係数Cj,refの距離が、健康な患者群について得られた領域係数の値から計算された標準偏差の2倍より大きいときに、変化が関心領域ROIにおいて有意であると定義することが可能である。
【0107】
それにより、脳患難のレベルの静的インディケータが、変化が有意である関心領域ROI、・・・ROI、・・・ROIの数に等しいまたは比例していると決定可能である。
【0108】
表示システムの開示
表示システムは、処理システム30から、接続70を介して、脳のミエリンの状態に影響を及ぼす脱髄性疾患のタイプの疾患によって引き起こされる個体の脳の変化を表すインディケータを受信するように構成されている。このインディケータは、上記で説明した2つの実施形態のうちの一方により決定され得る。
【0109】
表示システム40は、医療従事者が、方法100によって決定されたインディケータを受信可能なようにさらに構成されている。
【0110】
接続70は、特性において、有線(例えば:イーサネット、USB、SATA、PCI)または無線(例えば:WiFi、Bluetooth)でもよい。
【0111】
表示システム40はまた、取得システム20から、接続60を介して、脳の取得画像に関係するデータを受信するように構成されてもよく、このデータは、取得システム20から接続50を介して処理システム30に送信されるデータとは異なるデータでもよい。
【0112】
接続60は、特性において、有線(例えば、イーサネット、USB、SATA、PCI)または無線(例えば、WiFi、Bluetooth)でもよい。
【0113】
次いで、医療従事者は、例えば脳の画像の取得からもたらされるデータおよび方法100の結果にアクセスできる。
【0114】
したがって、取得システム20はまた、取得データを表示システム40に送信するように構成可能である。
【0115】
したがって、取得システム40は、取得システム20によって送信された取得データを表示するように構成され得る。
【0116】
システムが方法100のインディケータ、場合によっては取得データを受信および表示できるようにする表示モジュール41は、データを受信および表示できる任意の装置(例えば、タブレット、モバイル電話、ラップトップもしくはデスクトップコンピュータ、接続されたオブジェクトなど)でもよい。
【0117】
表示システム40は、場合によっては、患者用であることが意図され得、それによって患者は、彼の検査結果にアクセス可能で、例えば、方法100のインディケータ、場合によっては脳の画像を受信可能である。
【0118】
代替的に、表示モジュール41は、方法100のインディケータに関係する情報を提供する情報モジュールでもよい。例えば、情報モジュールは、表示システム40にアクセスした患者に、この患者が視覚的に変化している場合、方法100のインディケータを受信するようにオーラルに通知し得る。別の例では、情報モジュールは、脳の変化に関係するコメントを表示し、したがって、方法100のインディケータを表示しなくてもよい。これらの例によって、当業者は、表示モジュール41が、いくつかのやり方で方法100のインディケータにアクセスしたい患者または医療従事者に対して通知できることが理解できよう。
【0119】
健康な患者群を撮像するためのシステム
方法100は、健康な個体群から得られた領域基準係数の可用性に基づく。
【0120】
したがって、図5は、健康な個体群から領域基準係数を得るためのシステムを示す。
【0121】
システム80は:
- 制御モジュール81;および
- 拡散テンソルMRI撮像モジュール82
を含む。
【0122】
取得システム80は、健康な患者群の脳の拡散テンソルMRI画像を取得するように構成されている。より正確には、制御モジュール81は、健康な患者群の各個体の脳の画像の拡散テンソルMRI取得を行うために、撮像モジュール82を駆動して、この画像を取得するように構成されている。
【0123】
拡散テンソルMRIとは、脳の繊維構造の異方性にセンシティブである水分子の拡散方向の分布をMRIによって計測するための任意の技法を意味する。
【0124】
制御モジュール81は、撮像モジュール82を駆動し、その結果として、脳の拡散テンソルMRI画像を取得し、メモリに記憶する命令を実行できるコンピュータ、モバイル装置、プロセッサ、または任意の他の装置でもよい。
【0125】
例えば、撮像モジュールは、例えばPhilips、General Electric(GE)、またはSiemensなどの企業からの1.5 Tesla、3.0 Tesla、または7.0 TeslaのMRI装置でもよい。
【0126】
脳の画像は、好ましくは、拡散強調画像である。
【0127】
制御モジュール81は、撮像を行う施術者によって制御されてもよく、または自律的で、事前に記録された命令に従ってもよい。
【0128】
制御モジュール81は、システム20によって使用されるものと同じであっても、異なってもよい。
【0129】
同様に、撮像モジュール82は、システム20によって使用されるものと同一であっても、異なってもよい。
【0130】
健康な患者群の脳画像の全てが取得されると、制御モジュール81は、各関心領域ROIについて、健康な患者群から収集された脳画像から基準領域係数を決定することが可能である。
【0131】
基準領域係数の決定は、処理モジュール30、またはシステム10および80の外部にある別のモジュールによって実行されることもさらに可能である。
【0132】
各関心領域ROIについて、基準領域係数Cj,refの値は、前記領域ROIについて、健康な患者群のうちの各個体に対して得られた領域係数の値の平均に等しいまたは比例していてもよい。この平均は、対象関心領域ROIに応じて異なって実行されてもよい。
【0133】
決定されると、基準領域係数は、システム20、30、40もしくは80のうちの1つ、またはシステム10および80の外部にある別のシステムのメモリに記憶されることが、企図可能である。領域係数が処理システム30上に記憶される場合、不揮発性メモリ31または揮発性メモリ33に記憶され得る。領域係数が取得システム20または表示システム40に記憶される場合、処理システム30は、接続50または70のうちの一方を介してそれらの係数にアクセスできる。これらの係数が取得システム80またはシステム10および80以外のシステムに記憶される場合、これらの係数は、有線または無線接続を介して処理システム30がアクセス可能である。
【0134】
有線接続とは、例えばイーサネット、USB、PCI、またはSATA接続など、2つのシステムまたはモジュール間のハードウェア接続を意味する。無線接続は、例えばWiFiまたはBluetooth接続など、2つのシステムまたはモジュール間の非ハードウェア接続であると理解される。
【0135】
用途例
方法100の用途例を以下に挙げる。
【0136】
この説明の目的は、脳脱髄に対する処置の影響を強調することである。
【0137】
この例のため、方法は、副腎脊髄ニューロパシー(AMN)に罹患している患者群に適用される。それで、この群は、2つのグループ:処置を受けるAMNグループと、処置のプラセボを受けるプラセボグループとに分割される。
【0138】
この例は、領域径方向拡散値から決定された領域係数のみを扱う。
【0139】
一方、基準領域係数は、健康な患者群から決定され、したがって上記方法によって定義される。
【0140】
対象となる脳の関心領域ROI、・・・ROI、・・・ROIは、19個あり:前脳幹(ICBM2、7および8)、後脳幹(ICBM9から14)、右大脳脚(ICBM15)、左大脳脚(ICBM16)、脳梁膝(ICBM3)、脳梁幹(ICBM4)、脳梁膨大部(ICBM5)、右内包前肢(ICBM17)、左内包前肢(ICBM18)、右内包後肢(ICBM19)、左内包後肢(ICBM20)、右矢状層(ICBM21、29、31および47)、左矢状層(ICBM22、30、32および48)、右上縦束(ICBM41)、左上縦束(ICBM42)、右外包(ICBM33)、左外包(ICBM34)、右放線冠(ICBM23、25および27)、ならびに左放線冠(ICBM24、26および28)である。
【0141】
加えて、AMN患者群の各関心領域ROIについて、領域係数Cが決定される。AMNグループおよびプラセボグループは、別個に処置される。
【0142】
これらの領域係数は、領域毎の基準領域係数Cj,refの値の平均および標準偏差によって縮小化および中心化される。したがって、各領域係数Cは、対象領域の領域基準係数Cj,refの値の標準偏差の割合として表される。
【0143】
第1に、これらの19個の関心領域ROI、・・・ROI、・・・ROIに基づいてAMNに罹患している各患者について、静的インディケータが決定される。言い換えれば、変化した関心領域の数が計数される。変化した関心領域は、中心化され縮小化された領域係数Cと零値との間の差が基準領域係数Cj,refの値の標準偏差の2倍より大きい領域である。それで、静的インディケータは、変化した関心領域の総数である。このインディケータは、以後「index-19」と呼ばれる。
【0144】
第2に、進展インディケータが決定される。
【0145】
index-19について得られた領域係数は、初期領域係数になる。
【0146】
方法の日付t2に対応する、index-19を決定するための画像の取得に後続する日付において、画像の新しい取得が、AMNを有する患者群のうちの各患者について実行される。領域係数は、これらの画像から抽出される。これらの領域係数も、領域毎の基準領域係数Cj,refの値の平均および標準偏差によって中心化および縮小化される。
【0147】
日付t2は、AMNグループのための処置の適用、およびプラセボグループのためのこの処置のプラセボの適用に後続している。
【0148】
領域係数が初期領域係数と比較されて、変化の進展が存在する領域を識別する。
【0149】
それにより、変化の進展が存在する領域、すなわち、領域係数Cの値が、初期領域係数Cj,0から、基準領域係数Cj,ref(本明細書では零値)から遠ざかって移動した領域が決定可能である。
【0150】
また、変化の退行が存在する領域、すなわち、領域係数Cの値が、初期領域係数Cj,0から、領域基準係数Cj,ref(本明細書では零値)からより近く移動した領域が決定可能である。
【0151】
各関心領域ROIについて領域係数Cの値と初期領域係数Cj,0の値との差を定量化することは、変化の進展が有意な領域を識別可能にする。本明細書では、進展は、2つの値間の差が、各関心領域ROIについての基準領域係数Cj,refの値の標準偏差の1倍よりも大きいときに、有意であると見なされる。
【0152】
次いで、変化の進行が存在する関心領域ROI、・・・ROI、・・・ROIの数と、変化の退行が存在する関心領域ROI、・・・ROI、・・・ROIの数とに応じて進展インディケータが決定される。ここでの進展インディケータは、2つの数間の差である。それで、進展インディケータは、「index-var t1-t2」と呼ばれる。
【0153】
第3のステップで、方法は、t2に後続する日付t3に対して繰り返される。次いで、日付t1と日付t3との間の脳の変化の進展を表すindex-var t1-t3、および日付t2と日付t3との間の脳の変化の進展を表すindex-var t2-t3が決定される。
【0154】
図5は、上述したEDSSスコアおよびSSPROMスコアに応じてのindex-19を示す。本図は、AMNグループおよびプラセボグループのEDFFインディケータとSSPROMインディケータとの間の相関を示す。黒線は、全患者についてのそれぞれのインディケータ間の退行曲線を示す。
【0155】
図6は、健康な患者群(ここでは基準グループによって示される)およびAMNグループおよびプラセボグループのindex-19値の分布を示す。AMNグループおよびプラセボグループのindex-var t1-t2、index-var t1-t3およびindex-var t2-t3もまた示されている。本図は、異なるグループ間のindex値およびindex-var値における有意の差を示す。特に、処置の適用後、変化の進展は、プラセボグループよりもAMNグループにおいて大幅に有意でなくなっている。これは、処置が脱髄に対する影響を有することと、ここで使用されるバイオマーカー、本明細書では径方向拡散がミエリン状態の変化にセンシティブであることとの両方を示唆する。このセンシティビティは、静的インディケータではさらに顕著であり、インディケータ値の分布が健康な患者とAMN患者との間の鮮明な差を示している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2024-05-02
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱髄性疾患によって引き起こされる個体の脳の変化を表すインディケータを決定するための方法(100)であって、以下のステップ、
脳のいくつかの関心領域(ROI、・・・ROI、・・・ROI)を集めたセットの各関心領域(ROI)について、以下の拡散係数、すなわち径方向拡散、軸方向拡散、平均拡散、異方性度、またはこれらの係数のうちのいくつかの組み合わせのうちの1つの、前記関心領域(ROI)にわたる平均に対応する領域拡散係数(C)を決定する第1のステップ(101)であって、これらの異なる領域とそれぞれ関連付けられている領域係数は、拡散MRIによって事前に得られた、検査される個体の脳の画像から決定される、第1のステップ(101)、
所与の条件が満たされている関心領域(ROI、・・・ROI、・・・ROI)の数を計数することによって、変化した領域の数(Na)を決定する第2のステップ(102)であって、前記条件は、健康な患者群のこの領域の領域拡散係数の平均に等しい基準領域係数(Cj,ref)と比較される、対象領域と関連付けられた領域拡散係数(C)の値に関係する、第2のステップ(102)、
変化した領域の数(Na)に応じて前記インディケータを決定する第3のステップ(103)
を含むことを特徴とする、方法(100)。
【請求項2】
前記インディケータが前記変化の進展的性質を表し、
第1のステップ(101)で使用された個体の脳の画像が、日付t2に拡散MRIによって撮られた画像であり、
方法が、前記関心領域(ROI、・・・ROI、・・・ROI)の各々について、関心領域(ROI)にわたる拡散係数の平均に対応する初期領域係数(Cj,0)を決定するステップ(201)であって、前記初期領域係数が、日付t2の前の日付t1に拡散MRIによって撮られた個体の脳の初期画像から決定される、ステップ(201)をさらに含み、
第2のステップ(102)において、変化した領域の数(Na)が変化の進行を伴う領域の数(Np)に対応し、条件が以下のように、すなわち、領域拡散係数(C)が初期領域係数(Cj,0)に対して基準領域係数(Cj,ref)から遠ざかって移動した、と定義されるとき、関心領域(ROl)が、変化の進行を伴う領域と見なされる、
請求項1に記載の方法(100)。
【請求項3】
第2のステップ(102)において、領域係数(C)と初期領域係数(Cj,0)との間の距離がz.σより大きいときに、領域拡散係数(C)が、初期領域係数(Cj,0)に対して領域基準係数(Cj,ref)から遠ざかって移動しており、ここで、σが前記健康な患者群についての対象領域の前記領域拡散係数の分散を表し、zが0.5と4との間の最小進展係数である、請求項2に記載の方法(100)。
【請求項4】
前記インディケータが、前記変化の進展的性質を表し、第2のステップ(102)において、変化した領域の数(Na)が変化の退行を伴う領域の数(Nr)であり、前記条件が、領域拡散係数(C)が初期領域係数(Cj,0)に対して基準領域係数(Cj,ref)により近く移動したことであるとき、関心領域(ROI)が、変化の退行を伴う領域と見なされる、請求項2に記載の方法(100)。
【請求項5】
第2のステップ(102)において、領域係数(C)と初期領域係数(Ci,0)との間の距離がz.σより大きいときに、領域拡散係数(C)が、初期領域係数(Ci,0)に対して領域基準係数(Cj,ref)により近く移動しており、ここで、σが前記健康な患者群についての対象領域の前記領域拡散係数の分散を表し、zが0.5と4との間の最小進展係数である、請求項4に記載の方法(100)。
【請求項6】
変化の進行を伴う領域の数(Np)と変化の退行を伴う領域の数(Nr)との差が大きくなるにつれて、前記変化の進展的性質を表すインディケータが一層大きくなる、請求項2および4に記載の、および請求項1から5のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項7】
日付t2が脱髄性疾患タイプの患難に関係した脳の変化に対する処置の適用の日付に後続し、日付t1が前記処置の適用の前記日付の前である、請求項2からのいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項8】
前記インディケータが、脳患難のレベルの静的インディケータであり、第2のステップ(102)において、前記条件が、領域拡散係数(C)と領域基準係数(Cj,ref)との間の距離がz.τより大きいことであり、ここで、τが前記健康な患者群についての対象領域の前記領域拡散係数の分散を表し、zが0.5と4との間の最小距離係数である、請求項1に記載の方法(100)。
【請求項9】
複数の関心領域(ROI、ROI、ROI)は、以下の領域、すなわち、前脳幹、後脳幹、右大脳脚、左大脳脚、脳梁膝、脳梁幹、脳梁膨大部、右内包前肢、左内包前肢、右内包後肢、左内包後肢、右矢状層、左矢状層、右上縦束、左上縦束、右外包、左外包、右放線冠、および左放線冠の領域のうちの全てまたはいくつかから選択されることを特徴とする、請求項1から5および8のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項10】
健康な個体群が、各関心領域(ROI)について少なくとも2つの健康な個体を含むことを特徴とする、請求項1から5および8のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項11】
請求項1から5および8のいずれか一項に記載の方法(100)を実施するためのシステム(10)であって、システムが、以下のステップ、
〇 脳のいくつかの関心領域(ROI、・・・ROI、・・・ROI)を集めたセットの各関心領域(ROI)について、以下の拡散係数、すなわち、径方向拡散、軸方向拡散、平均拡散、異方性度、またはこれらの係数のうちのいくつかの組み合わせのうちの1つの、前記関心領域(ROI)にわたる平均に対応する領域拡散係数(C)を決定する第1のステップ(101)であって、これらの異なる領域とそれぞれ関連付けられている領域係数は、拡散MRIによって事前に得られた、検査される個体の脳の画像から決定される、第1のステップ(101)、
〇 所与の条件が満たされている関心領域(ROI、・・・ROI、・・・ROI)の数を計数することによって、変化した領域の数(Na)を決定する第2のステップ(102)であって、前記条件は、健康な患者群のこの領域の領域拡散係数の平均に等しい基準領域係数(Cj,ref)に対する、対象領域と関連付けられた領域拡散係数(C)の値に関係する、第2のステップ(102)、
〇 変化した領域の数(Na)に応じて前記インディケータを決定する第3のステップ(103)
を行うように構成された、処理モジュール(32)
を含むことを特徴とする、システム(10)。
【請求項12】
命令を含むコンピュータプログラム製品であって、命令は、プログラムがコンピュータによって実行されると、コンピュータに、請求項1から5および8のいずれか一項に記載の方法(100)のステップを実施させる、コンピュータプログラム製品。
【国際調査報告】