IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ クリンスランセ エセ.ア.エセ.の特許一覧 ▶ ナショナル・サイエンティフィック・アンド・テクニカル・リサーチ・カウンシル (コニセト)の特許一覧

特表2024-534100自動生体試料ガラス化、保存、及び解凍システム
<>
  • 特表-自動生体試料ガラス化、保存、及び解凍システム 図1
  • 特表-自動生体試料ガラス化、保存、及び解凍システム 図2a
  • 特表-自動生体試料ガラス化、保存、及び解凍システム 図2b
  • 特表-自動生体試料ガラス化、保存、及び解凍システム 図2c
  • 特表-自動生体試料ガラス化、保存、及び解凍システム 図3
  • 特表-自動生体試料ガラス化、保存、及び解凍システム 図4
  • 特表-自動生体試料ガラス化、保存、及び解凍システム 図5a
  • 特表-自動生体試料ガラス化、保存、及び解凍システム 図5b
  • 特表-自動生体試料ガラス化、保存、及び解凍システム 図5c
  • 特表-自動生体試料ガラス化、保存、及び解凍システム 図6
  • 特表-自動生体試料ガラス化、保存、及び解凍システム 図7a
  • 特表-自動生体試料ガラス化、保存、及び解凍システム 図7b
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-18
(54)【発明の名称】自動生体試料ガラス化、保存、及び解凍システム
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/02 20060101AFI20240910BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20240910BHJP
   C12N 1/04 20060101ALI20240910BHJP
   C12N 5/073 20100101ALN20240910BHJP
【FI】
C12M1/02 B
C12Q1/02
C12N1/04
C12N5/073
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024510514
(86)(22)【出願日】2022-08-22
(85)【翻訳文提出日】2024-04-17
(86)【国際出願番号】 IL2022050917
(87)【国際公開番号】W WO2023026282
(87)【国際公開日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】63/235,764
(32)【優先日】2021-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.STYROFOAM
(71)【出願人】
【識別番号】524064128
【氏名又は名称】クリンスランセ エセ.ア.エセ.
(71)【出願人】
【識別番号】523264655
【氏名又は名称】ナショナル・サイエンティフィック・アンド・テクニカル・リサーチ・カウンシル (コニセト)
【住所又は居所原語表記】Godoy Cruz 2290 C1425FQB Caba, Argentine
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スロビンスキー、デミアン グスタボ
(72)【発明者】
【氏名】ペラルタ、フアン パブロ
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA27
4B029BB11
4B029DD06
4B029DG08
4B029GA02
4B029GA03
4B029GA06
4B029GB10
4B029HA09
4B063QA20
4B063QQ08
4B063QS39
4B065AA90X
4B065BD09
4B065BD12
4B065CA44
4B065CA46
(57)【要約】
生体試料をガラス化、保存、及び解凍するための極低温装置は、装填及び回収構造を備え、装填及び回収構造は、開閉式ドアを有するハウジングと、その内部に回転可能に配置された第2のカルーセル形状部材とをさらに備えるガラス化及び解凍サブ構造を備え、第2のカルーセル形状部材は、極低温環境内に配置されるか又はそこから回収される生体物質容器をガラス化又は解凍するためのガラス化又は解凍する消耗品を収容するように構成された容器と、所与の解凍プロトコルに適合するために解凍消耗品を所定の温度まで加熱するための少なくとも1つの加熱器とを担持し、第2のカルーセル形状部材は、第1のカルーセル形状部材によって担持されるレセプタクルへのリニア・マニピュレータのアクセスを提供する側面凹部を有し、方法は、第1の位置と第2の位置との間で第2のカルーセル形状部材を直線移動させるステップを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体試料をガラス化、保存、及び解凍するための極低温装置であって、前記装置は、
a. その内部空間に液化凍結剤を収容する密閉極低温デュワー瓶と、
b. 前記液化凍結剤の気化相を再液化するように構成された極低温クーラと、
c. 密閉極低温デュワー瓶内に取り付けられた第1のカルーセル形状部材であって、前記第1のカルーセル形状部材は、前記生体物質容器を受容して保存するように構成されたレセプタクルを担持し、前記カルーセル形状部材は、回転軸を有してその回転軸の周りを回転可能である、第1のカルーセル形状部材と、
d. 前記生体物質容器を前記レセプタクル内に装填し、そこから前記生体物質容器を回収するように構成されたリニア・マニピュレータ、及び、前記密閉極低温デュワー瓶を環境から隔離するに構成され、前記生体物質キャリアを装填及び回収するために開閉式の極低温バルブを備える装填及び回収構造と
を備え、
前記装填及び回収構造は、Rの長さのアーム上で前記第1のカルーセル部材の前記回転軸からRのところに配置された軸の周りを回転可能であり、前記レセプタクルは、R-Rの半径及びR+Rの半径の2つの同軸に配置された円周によって画定された環状区域内に配置され、
前記装填及び回収構造は、開閉式ドアを有するハウジングと、その内部に回転可能に配置された第2のカルーセル形状部材とをさらに備えるガラス化及び解凍サブ構造をさらに備え、前記第2のカルーセル形状部材は、前記極低温環境内に配置されるか又はそこから回収される生体物質容器をガラス化又は解凍するためのガラス化又は解凍消耗品を収容するように構成された容器と、所与の解凍プロトコルに適合するために前記解凍消耗品を所定の温度まで加熱するための少なくとも1つの加熱器とを担持し、
前記第2のカルーセル形状部材は、前記第1のカルーセル形状部材によって担持される前記レセプタクルへの前記リニア・マニピュレータのアクセスを提供する側面凹部を有する、極低温装置。
【請求項2】
前記消耗品は、前記生体物質の前記装置内へ前記配置する過程で、前記生体物質の結晶化を防ぐように構成された多数の溶液を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記消耗品は、前記装置から前記生体物質を回収する過程で、前記生体物質を徐々に解凍するように構成された多数の溶液を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記消耗品を収容し、前記第2のカルーセル形状部材上に取り付け可能なレセプタクルを有する交換可能な使い捨て部材を備える、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記第1のカルーセル形状部材は、前記カルーセル形状部材の前記レセプタクル内に配置されるか、又はそこから回収される前記生体物質ホルダを配置するために少なくとも1つのレセプタクルを有する入出ステーションを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記密閉極低温デュワー瓶内の前記凍結剤の液位を測定するように構成されたフロートを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記リニア・マニピュレータは、前記生体物質容器を把持し、運び、離すように構成された磁気フックを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
RFIDタグを備えた前記生体物質容器を識別するためのアンテナを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
生体物質を保存する方法であって、前記方法は、
a. 生体物質を保存するための極低温装置を提供するステップであって、前記装置は、
i. その内部空間に液化凍結剤を収容する密閉極低温デュワー瓶と、
ii. 前記液化凍結剤の気化相を再液化するように構成された極低温クーラと
iii. 密閉極低温デュワー瓶内に取り付けられた第1のカルーセル形状部材であって、前記第1のカルーセル形状部材は、前記生体物質容器を受容して保存するように構成されたレセプタクルを担持し、前記カルーセル形状部材は、回転軸を有してその回転軸の周りを回転可能である、第1のカルーセル形状部材と、
iv. 前記生体物質容器を前記レセプタクル内に装填し、そこから前記生体物質容器を回収するように構成されたリニア・マニピュレータを備える装填及び回収構造であって、
前記装填及び構造は、Rの長さのアーム上で前記カルーセル部材の前記回転軸からRのところに配置された軸の周りを回転可能であり、前記レセプタクルは、R-Rの半径及びR+Rの半径の2つの同軸に配置された円周によって画定された環状区域内に配置され、
前記装填及び構造は、開閉式ドアを有するハウジングと、その内部に回転可能に配置された第2のカルーセル形状部材とをさらに備えるガラス化及び解凍サブ構造をさらに備え、前記第2のカルーセル形状部材は、極低温環境内に配置されるか又はそこから回収される生体物質容器をガラス化又は解凍するためのガラス化又は解凍消耗品を収容するように構成された容器と、所与の解凍プロトコルに適合するために所定の温度まで解凍消耗品を加熱するための少なくとも1つの加熱器とを担持し、
前記第2のカルーセル形状部材は、前記第1のカルーセル形状部材によって担持される前記レセプタクルへの前記リニア・マニピュレータのアクセスを提供する側面凹部を有する、ステップと、
b. 前記ガラス化及び解凍サブ構造内の前記生体物質キャリア内に収容された前記生体物質をガラス化するステップと、
c. ガラス化された生体物質を有するガラス化された前記生体物質キャリアを前記ガラス化及び解凍サブ構造から前記密閉極低温デュワー瓶内へ運ぶステップと、
d. 前記第1のカルーセル形状部材の前記レセプタクル内へ前記生体物質キャリアを配置するステップと、
e. 前記生体物質キャリアを保存するステップと、
f. 前記生体物質キャリアを前記密閉極低温デュワー瓶から回収するステップと、
g. 前記ガラス化及び解凍サブ構造内の前記生体物質キャリア内に収容された前記生体物質を解凍するステップと
を含み、
前記方法は、第1の位置と第2の位置との間で前記第2のカルーセル形状部材を直線移動させるステップを含み、前記第1の位置では、前記第2のカルーセル形状部材は、開いている前記開閉式ドアを介して外側に突出しており、消耗品は、前記第2のカルーセル部材内へ装填され、且つ、前記第2のカルーセル部材から回収され、生体物質キャリア内に収容された前記生体物質は、前記リニア・マニピュレータに接続され、又は前記リニア・マニピュレータに対して切り離され、前記第2の位置では、前記開閉式ドアは閉じられ、前記第2のカルーセル形状部材は、前記生体物質を収容する前記生体物質キャリアが、前記生体物質のガラス化の過程で、対象の前記ガラス化消耗品内に、又は、前記装置から前記生体物質を解凍する過程で、前記加熱器内に、前記リニア・マニピュレータによって挿入可能であるように、前記リニア・マニピュレータと協調して配置される、方法。
【請求項10】
前記ガラス化された生体物質容器を運ぶ前記ステップは、前記第1のカルーセル形状部材の前記レセプタクルへの前記リニア・マニピュレータの前記アクセスを提供するために、前記極低温バルブに対して前記第2のカルーセル形状部材の前記側面凹部を配向するステップを含む、請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極低温機器、特に、生殖細胞及び胚を保存するための凍結保存システムに関する。
【背景技術】
【0002】
凍結保存は、凍結保存されたときと同じ特性を維持しながら、生体物質を長い期間をかけて保存し、生体物質を後で使用するために利用される技術である。この目的のために、凍結剤を保存することができるデュワー又は断熱タンクは、工業及び科学において、-173.15℃(100K)未満の温度で試料を凍結保存するために使用される。
【0003】
凍結保存技術はいくつか存在し、その中には、緩慢凍結及びガラス化を含めることができる。ガラス化は、並外れた生存率を有し、ほとんどの生殖補助医療の研究所では標準になってきている。したがって、凍結保存された試料は、その生存期間中、ガラス化及び解凍される必要があった。ガラス化は、凍結保護物質が試料に添加されて、結晶化及び破損を被ることなく試料が凍結できるようにする技術である。代わりに、解凍は、凍結保存されたときの特性を維持するために、凍結保護物質を制御された方法で排出してガラス化から回復する技術である。
【0004】
ガラス化、凍結保存、及び解凍技術は、大部分が職人技的な方法で実行され、使用者の経験によって、この試料がガラス化/解凍後に固有特性を維持する可能性が決まる。さらに、これらの技術は、試料を急速に冷却(ガラス化)及び加熱(解凍)する必要があり、それによって、デュワー又はタンク内に保存された試料に対して追加の凍結剤供給源が必要となる。
【0005】
特定の目的で将来使用するために凍結保存しなければならない試料の特性を維持し、これらの処置を実行するための凍結剤を不要にするためには、後に使用するためにガラス化、保存、及び解凍される試料の処理に加えて、蒸発した凍結剤の再利用に基づいて、ガラス化、保存及び解凍プロセスを自動化する必要がある。
【0006】
WO2020165909は、生体物質容器、すなわち(a)その内部空間に液化ガスを収容する密閉極低温デュワー瓶と、(b)内部空間に配置され、生体物質容器を受容し保存するように構成されたマトリックス状のレセプタクルと、(c)生体物質容器を装填及び回収するための手段であって、マトリックス内で生体物質容器を装填及び回収するように構成されたリニア・ケーン・マニピュレータ(linear cane manipulator)を備える手段とを保存するための極低温装置を開示している。この手段は、密閉極低温デュワー瓶を取り囲む外環境から内部空間を隔離するエア・ロックを備える。エア・ロックは、密閉された態様でリニア・ケーン・マニピュレータによって操作される生体物質容器を通過させるように構成される。
【0007】
レセプタクルは、その軸の周りを回転可能な第1のカルーセル部材によって担持される。レセプタクルは、カルーセル部材上に分散された多数のグループ内に配置される。レセプタクルの各グループは、カルーセル部材の回転軸から距離Rのところに位置する中心点を有する。グループ内の各レセプタクルの中心は、その中心点の周りで距離Rのところに位置する。リニア・ケーン・マニピュレータは、リニア・ケーン・マニピュレータの回転軸と、対象のレセプタクルのグループの中心点とが一致するように、Rの長さのアーム上でカルーセル部材の回転軸からRのところに配置された軸の周りを回転可能である。対象のレセプタクルは、リニア・ケーン・マニピュレータがRアーム上でその軸の周りを回転することによって、装填可能又は回収可能である。
【0008】
米国特許出願公開第20190008142号は、1つ又は複数のキャリアによって担持される少なくとも1つの生体試料に対して凍結処置を実行するように構成された自動装置を開示している。この装置は、キャリア・ホルダと、容器ホルダと、キャリア・ドライバと、容器ドライバとを含む。キャリア・ホルダは、少なくとも1つの生体試料を保持しながら、1つ又は複数のキャリアを直立配向で保持する。容器ホルダは、容器ホルダ上の所定の位置に2つ以上の容器をそれぞれ保持する。キャリア・ドライバは、キャリア・ホルダを並進させ、容器ドライバは、キャリア・ホルダにアクセス可能な位置にそれらのうちの1つを配置するように所定の位置を並進させ、その結果、キャリア・ドライバは、キャリア・ホルダによって保持される1つ又は複数のキャリアのそれぞれの活性部分を、キャリア・ホルダにアクセス可能な位置で所定の垂直な深さに沈めることができる。
【0009】
極低温環境に配置される前の各生体試料は、所定のプロトコルに従って徐々にガラス化されるべきである。生体試料を配置することと同様に、極低温環境から回収された生体試料は、室温まで加熱される。したがって、保存される生体物質が結晶化してその構造が破壊されるのを防ぎ、上記生体物質を回収する前に徐々に解凍する自動ガラス化のために構成された一体的に配置された極低温システムを提供するために、長年にわたって満たされていないニーズが存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】WO2020165909
【特許文献2】米国特許出願公開第20190008142号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】S.Yavin、Measurement of Essential Physical Properties of Vitrification Solutions、Theriogenology 67(2007)、81~89頁
【発明の概要】
【0012】
したがって、本発明の目的は、生体試料をガラス化、保存、及び解凍するための極低温装置を開示することである。上記装置は、(a)その内部空間に液化凍結剤を収容する密閉極低温デュワー瓶と、(b)液化凍結剤の気化相を再液化するように構成された極低温クーラと、(c)密閉極低温デュワー瓶内に取り付けられた第1のカルーセル形状部材であって、第1のカルーセル形状部材は、生体物質容器を受容して保存するように構成されたレセプタクルを担持し、カルーセル形状部材は、回転軸を有してその回転軸の周りを回転可能である、第1のカルーセル形状部材と、(d)生体物質容器をレセプタクル内に装填し、そこから生体物質容器を回収するように構成されたリニア・マニピュレータ、及び、密閉極低温デュワー瓶を環境から隔離するように構成され、生体物質キャリアを装填及び回収するために開閉式の極低温バルブを備える装填及び回収構造とを備える。
【0013】
装填及び回収構造は、Rの長さのアーム上で第1のカルーセル部材の回転軸からRのところに配置された軸の周りを回転可能であり、レセプタクルは、R-Rの半径及びR+Rの半径の2つの同軸に配置された円周によって画定された環状区域内に配置される。
【0014】
本発明の中心的な目的は、開閉式ドアを有するハウジングと、その内部に回転可能に配置された第2のカルーセル形状部材とをさらに備えるガラス化及び解凍サブ構造をさらに備える装填及び回収構造を提供することであり、第2のカルーセル形状部材は、極低温環境内に配置される生体物質容器をガラス化するためのガラス化消耗品を収容するように構成された容器と、装置から回収される生体物質容器を加熱するための少なくとも1つの加熱器とを担持する。第2のカルーセル形状部材は、第1のカルーセル形状部材によって担持されるレセプタクルへのリニア・マニピュレータのアクセスを提供する側面凹部を有する。
【0015】
本発明の別の目的は、第1の位置と第2の位置との間で直線移動可能な第2のカルーセル形状部材を開示することであり、第1の位置では、第2のカルーセル形状部材は、開いている開閉式ドアを介して外側に突出しており、消耗品は、第2のカルーセル部材内へ装填され且つ、第2のカルーセル部材から回収される。生体物質容器内に収容された生体物質は、第2の位置でリニア・マニピュレータに接続され、又はリニア・マニピュレータに対して切り離され、開閉式ドアは閉じられ、第2のカルーセル形状部材は、生体物質を収容する生体物質キャリアが、生体物質のガラス化の過程で、対象のガラス化消耗品内に、又は、装置から生体物質を解凍する過程で解凍消耗品内に、リニア・マニピュレータによって挿入可能であるように、リニア・マニピュレータと協調して配置される。
【0016】
本発明のさらなる目的は、生体物質の装置内へ配置する過程で、生体物質の結晶化を防ぐ凍結保護物質の濃度を徐々に変化させるように構成された多数の溶液及び吸収剤を含む消耗品を開示することである。
【0017】
本発明のさらなる目的は、装置から生体物質を回収する過程で、生体物質を徐々に解凍するように構成された多数の溶液及び吸収剤を含む消耗品を開示することである。
【0018】
本発明のさらなる目的は、消耗品を収容し、第2のカルーセル形状部材上に取り付け可能なレセプタクルを有する交換可能な使い捨て部材を備える装置を開示することである。
【0019】
本発明のさらなる目的は、カルーセル形状部材のレセプタクル内に配置されるか、又はそこから回収される生体物質ホルダを配置するために凍結剤内に浸された少なくとも1つのレセプタクルを有する入出ステーションを備える第1のカルーセル形状部材を開示することである。
【0020】
本発明のさらなる目的は、密閉極低温デュワー瓶内の凍結剤の液位を測定するように構成されたフロートを備える装置を開示することである。
【0021】
本発明のさらなる目的は、生体物質容器を把持し、運び、離すように構成された磁気フックを備えるリニア・マニピュレータを開示することである。
【0022】
本発明のさらなる目的は、RFIDタグを備えた生体物質容器を識別するためのアンテナを備える装置を開示することである。
【0023】
本発明のさらなる目的は、生体物質を保存する方法を開示することである。上記方法は、(a)生体物質を保存するための極低温装置を提供するステップであって、装置は、(i)その内部空間に液化凍結剤を収容する密閉極低温デュワー瓶と、(ii)液化凍結剤の気化相を再液化するように構成された極低温クーラと、(iii)密閉極低温デュワー瓶内に取り付けられた第1のカルーセル形状部材であって、第1のカルーセル形状部材は、生体物質容器を受容して保存するように構成されたレセプタクルを担持し、カルーセル形状部材は、回転軸を有してその回転軸の周りを回転可能である、第1のカルーセル形状部材と、(iv)生体物質容器をレセプタクル内に装填し、そこから生体物質容器を回収するように構成されたリニア・マニピュレータを備える装填及び回収構造であって、装填及び回収構造は、Rの長さのアーム上でカルーセル部材の回転軸からRのところに配置された軸の周りを回転可能であり、レセプタクルは、R-Rの半径及びR+Rの半径の2つの同軸に配置された円周によって画定された環状区域内に配置され、装填及び回収構造は、開閉式ドアを有するハウジングと、その内部に回転可能に配置された第2のカルーセル形状部材とをさらに備えるガラス化及び解凍サブ構造をさらに備え、第2のカルーセル形状部材は、極低温環境内に配置されるか又はそこから回収される生体物質容器をガラス化又は解凍するためのガラス化又は解凍消耗品を収容するように構成された容器と、所与の解凍プロトコルに適合するために所定の温度まで解凍消耗品を加熱するための少なくとも1つの加熱器とを担持し、第2のカルーセル形状部材は、第1のカルーセル形状部材によって担持されるレセプタクルへのリニア・マニピュレータのアクセスを提供する側面凹部を有する、ステップと、(b)ガラス化及び解凍サブ構造内の生体物質キャリア内に収容された生体物質をガラス化するステップと、(c)ガラス化された生体物質を有するガラス化された生体物質キャリアをガラス化及び解凍サブ構造から密閉極低温デュワー瓶内へ運ぶステップと、(d)第1のカルーセル形状部材のレセプタクル内へ生体物質キャリアを配置するステップと、(e)生体物質キャリアを保存するステップと、(f)生体物質キャリアを密閉極低温デュワー瓶から回収するステップと、(g)ガラス化及び解凍サブ構造内の生体物質キャリア内に収容された生体物質を解凍するステップとを含む。
【0024】
上記方法は、第1の位置と第2の位置との間で第2のカルーセル形状部材を直線移動させるステップを含み、第1の位置では、第2のカルーセル形状部材は、開いている開閉式ドアを介して外側に突出しており、消耗品は、第2のカルーセル部材内へ装填され、且つ、第2のカルーセル部材から回収され、生体物質キャリア内に収容された生体物質は、リニア・マニピュレータに接続され、又はリニア・マニピュレータに対して切り離され、第2の位置では、開閉式ドアは閉じられ、第2のカルーセル形状部材は、生体物質を収容する生体物質キャリアが、生体物質のガラス化の過程で、対象のガラス化消耗品内に、又は、装置から生体物質を解凍する過程で加熱器内に、リニア・マニピュレータによって挿入可能であるように、リニア・マニピュレータと協調して配置される。
【0025】
本発明のさらなる目的は、第1のカルーセル形状部材のレセプタクルへのリニア・マニピュレータのアクセスを提供するために、極低温バルブに対して第2のカルーセル形状部材の側面凹部を配向するステップを含む、ガラス化された生体物質容器を運ぶステップを開示することである。
【0026】
本発明を理解するため、及び、それが実際にどのように実施され得るかを確かめるために、複数の実施例は、以下、添付の図面を参照して、非限定的な例としてのみ説明されるように適合される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】生体物質を保存するための極低温装置の全体図の正面図である。
図2a】生体物質を保存するための極低温装置の内部構造の等角分解組立図である。
図2b】装填及び回収構造の回転駆動装置の等角図である。
図2c】入出ステーションの等角図である。
図3】生体物質を保存するための極低温装置の概略幾何学図である。
図4】装填及び回収構造の全体的な等角図である。
図5a】自動アーム・システム構造のガラス化及び解凍カルーセルの拡大図である。
図5b】ガラス化及び解凍カルーセル構造の平面図である。
図5c】ガラス化及び解凍カルーセル構造の下方からの等角図である。
図6】交換可能な使い捨て部材であって、ガラス化及び解凍カルーセル上に取り付け可能な部材の等角図である。
図7a】リニア・マニピュレータの磁気ハンドの全体的な等角図を表す。
図7b】リニア・マニピュレータの磁気ハンドの拡大等角図を表す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下の説明は、いかなる当業者も本発明を利用することができるように提供され、発明者によって企図されたこの発明を実行する最良の形態を記載する。しかしながら、本発明の一般的な原理は、生体物質を保存するための極低温装置及びそれを実施する方法を提供するために具体的に規定されるため、様々な修正形態が、当業者には依然として明らかであるように適合されている。
【0029】
生体物質を保存するための極低温装置100を示す図1を参照する。上記装置は、その内部空間に液化凍結剤を収容する密閉極低温デュワー瓶10と、液化凍結剤の気化相を再液化するように構成された極低温クーラ20と、装填及び回収構造30とを備える。
【0030】
次に、極低温装置100の内部構造を示す図2a~図2cを参照する。具体的には、図2aは、モータ27によって駆動されるシャフト25によって回転可能な第1のカルーセル形状部材23を示す。装填及び回収構造30は、リニア・マニピュレータ39とエア・ロック35とを備える。数字31は、発泡スチロール多層絶縁材(Styrofoam and Multilayer isolation)で作られた対流及び輻射シールドを指す。装填及び回収構造30は、ベアリング33上に回転可能に取り付けられる。エア・ロック35は、ドア37を備えており、ドア37は、閉じたときにその周囲に沿ってシール部材36によって密閉され、エア・ロックのバルブのうちの1つとして機能し、円柱47がドア37を押し開けてエア・ロック35内へのアクセスを提供するような図4に示すねじ71とナット49内の駆動モータ51とを含む機構によって開くことができる。リニア・マニピュレータ39の構造的な特徴は、以下に詳細に記載される。
【0031】
次に、装填及び回収構造30の回転機構を示す図2bを参照する。上述のように、構造30は、ベアリング33上に取り付けられる。モータ59は、クラウン55と永久的に係合する歯車57を回転させる。したがって、装填及び回収構造30は、その軸の周りを360°回転可能である。
【0032】
次に、複数の周方向に配置されたレセプタクル69を有する第1のカルーセル形状部材23の部分拡大図を示す図2cを参照する。上記レセプタクルは、生体物質容器(図示せず)を受容するように構成される。第1のカルーセル形状部材23は、生体物質容器の一時的な配置のために入出力ステーション61を備える。ガラス化された生体物質容器は、密閉極低温デュワー瓶10内に迅速に運ばれ、密閉極低温デュワー瓶10から回収して保存レセプタクル69内に配置する前に一時的に配置するためにレセプタクル67に位置決めされる。入出力ステーション61は、他のシステムから試料を配置する場合、又は、異なるシステムに保存し続けるために試料を回収する場合に、ガラス化又は解凍処置を回避することができるように生体物質容器を運ぶように構成された運搬容器(図示せず)用のレセプタクル63を備える。数字65は、凍結剤液位が測定できるフロートを挿入するためのレセプタクルを指す。
【0033】
次に、生体物質を保存するための開示された装置の幾何学的構造を示す図3を参照する。第1のカルーセル部材23は、生体物質容器を保存するためのレセプタクルが、第1のカルーセル部材23の回転軸140上にその中心を有する円周110と120との間に配置されるように配置される。数字145は、軌道115に沿って軸140の周りを回転する装填及び回収構造30の回転軸を指す。軸145は、軸140からRだけ離れている。リニア・マニピュレータは、この図に垂直な方向に移動可能である。軸145の周りを回転可能なリニア・マニピュレータの任意の位置には、135の番号が付けられている。したがって、保存レセプタクルへのアクセスは、3つの自由度を有する構造によって提供される。具体的には、2つの回転自由度が軸140及び145の周りの回転によって実現される一方、並進自由度は、リニア・マニピュレータによって提供される。
【0034】
図2及び図3の組合せを参照すると、生体物質容器は、リニア・マニピュレータ39によって第1のカルーセル形状部材23に配置され、第1のカルーセル形状部材23から回収される。上述のように、システムは、3つの自由度を有し、第1のカルーセル形状部材23は、シャフト25を介して動力を伝達するモータ27によってその回転軸の周りを回転する。一方、装填及び回収構造30は、2つの自由度を有する。具体的には、モータ59は、装填及び回収構造30がその回転軸の周りを360°回転可能であるように、ベアリング33のハウジングに固定されたクラウン55を引っ張るピニオン57を動かす。開示された幾何学的構造がR-Rの半径及びR+Rの半径を有する円周(図3を参照)の間の第1のカルーセル形状部材23上に配置された任意の保存レセプタクルへのアクセスを提供することを理解されたい。
【0035】
次に、装填及び回収構造30を詳細に示す図4を参照する。リニア・マニピュレータ39は、リニア・ガイド43に沿って直線移動可能なスライダ79を含む。スライダ79は、モータ77によって駆動されるねじ73と螺合するナット45に機械的に接続される。エア・ロック35は、ドア37が開放位置にある状態で示されており、開放位置にあることで、極低温環境に配置される、及び/又は、上記極低温環境から回収される容器内に収容されている生体物質をガラス化及び解凍するための第2のカルーセル形状部材83へのアクセスが提供される。
【0036】
次に、第2のカルーセル形状部材83の等角図及び平面図を示す図5a~図5cを参照する。図6では、数字83aは、予め装填された状態で提供することができる第2のカルーセル形状部材83上に取り付けることができる交換可能な使い捨て部材を指す。本発明の一実施例によれば、部材83は、ガラス化に使用可能な消耗品を収容する容器97を有する。本発明の別の実施例によれば、部材83は、生体物質を解凍するのに使用可能な消耗品を収容する容器97を有する。ステーション99は、ガラス化若しくは解凍の処置の前又は後に、生体物質容器を廃棄するように構成される。突起101は、交換可能な使い捨てカルーセル形状部材83aを部材83上に手動で操作するために使用される。
【0037】
上記第2のカルーセル形状部材は、取り付けられるときに部材83の容器97を受容するように構成された多数のキャビティ87を備える。第2のカルーセル形状部材83は、支持体81上に取り付けられ、歯車77及び79を介してモータ93によって回転可能である。数字91は、容器89内に取り付けられたヒータを指す。リニア・マニピュレータ39(図4)によって担持された生体物質容器(図示せず)を装填する過程で、上記生体物質容器は、生体物質が適切にガラス化又は解凍されるように、所定のプロトコルに従ってガラス化又は解凍消耗品を収容する多数の容器97内に連続的に浸漬される。ガラス化及び解凍の概念は、米国特許出願公開第20190008142号、及び、S.Yavin、Measurement of Essential Physical Properties of Vitrification Solutions、Theriogenology 67(2007)、81~89頁で知ることができる。生体物質を浸漬するために利用可能な容器97の連続的な変化は、リニア・マニピュレータ39が定常位置にある間に第2のカルーセル形状部材83の回転によって実現される。解凍の過程で、解凍消耗品及びその中の溶液は、加熱器91を使用して所定の温度まで熱化される。温度が、選択された解凍プロトコルにとって正しい温度になると、生体物質容器は、解凍消耗品内に挿入され、システム100から回収される前に第2のカルーセル部材83の回転によって容器97内の異なる解凍溶液内で行ったり来たり揺れ動く。生体物質キャリア内に収容された生体物質のガラス化及び解凍の説明された処置は、ドア37が閉じられた状態で実行されることが強調されるべきである。この場合、第2のカルーセル形状部材83を回転させることによって容器87及び加熱器91がリニア・マニピュレータ39の下に位置決め可能であるようなガラス化/解凍位置である。
【0038】
次に、リニア・マニピュレータ39を示す図7a及び図7bを参照する。図4に示すように、スライダ39は、ねじ73によって直線移動可能なナット45に機械的に接続される。したがって、リニア・マニピュレータ39の動作ストロークは、その軸に沿っている。リニア・マニピュレータ39は、その遠位端に、軸方向磁気フック103と軸外れ磁気フック105とを含む磁気ハンド75を備える。磁気フックは、磁気的に係合するために高透過性材料を有し得る生体物質容器内に収容された生体物質をガラス化、配置、回収、及び解凍する過程でそれらを操作する生体物質容器を把持するように構成される。
【0039】
本発明は、その実施例を参照して特に示され、説明されてきたが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態及び細部において様々な変更がなされ得ることが、当業者には理解されよう。
図1
図2a
図2b
図2c
図3
図4
図5a
図5b
図5c
図6
図7a
図7b
【国際調査報告】