IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ プサン ナショナル ユニバーシティ インダストリー - ユニバーシティ コーポレイション ファンデーションの特許一覧

特表2024-534101オブジェクトが固定された膨潤性高分子の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-18
(54)【発明の名称】オブジェクトが固定された膨潤性高分子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/56 20170101AFI20240910BHJP
   C08F 299/00 20060101ALI20240910BHJP
   A61K 51/06 20060101ALN20240910BHJP
【FI】
A61K47/56
C08F299/00
A61K51/06 100
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024510534
(86)(22)【出願日】2022-08-19
(85)【翻訳文提出日】2024-02-20
(86)【国際出願番号】 KR2022012398
(87)【国際公開番号】W WO2023022554
(87)【国際公開日】2023-02-23
(31)【優先権主張番号】10-2021-0109892
(32)【優先日】2021-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0100043
(32)【優先日】2022-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521219394
【氏名又は名称】プサン ナショナル ユニバーシティ インダストリー - ユニバーシティ コーポレイション ファンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、スン ユン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ソダム
(72)【発明者】
【氏名】イ、ジアン
(72)【発明者】
【氏名】キム、セ ミン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4J127
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076CC41
4C076EE59
4C084AA12
4C084MA66
4C084NA13
4C084ZB26
4J127AA04
4J127BB041
4J127BB081
4J127BB221
4J127BC031
4J127BC131
4J127BD011
4J127BE331
4J127BE33Y
4J127BF061
4J127BF06Y
4J127BG101
4J127BG121
4J127BG161
4J127BG191
4J127BG251
4J127CA01
4J127EA12
4J127FA43
4J127FA44
(57)【要約】
本発明は、オブジェクトが固定された膨潤性高分子の製造方法を開示する。本発明の製造方法は、オブジェクトと結合できる官能基を有するリンカーを含む乾燥された膨潤性高分子に、前記膨潤性高分子と親和性のある溶媒に溶解されたまたは分散された前記オブジェクトの溶液を吸収させる段階を含み、膨潤性高分子の架橋前にオブジェクトを固定する従来の製造方法と違って、膨潤性高分子を利用して高分子の架橋後、オブジェクトを固定する方法を利用することによって、従来技術に比べてオブジェクトを迅速で、かつ非常に高い効率で固定することができるという長所を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オブジェクトと結合できる官能基を有するリンカーを含む乾燥された膨潤性高分子に、前記膨潤性高分子と親和性のある溶媒に溶解されたまたは分散された前記オブジェクト溶液と吸収させることを含む、オブジェクトが固定された膨潤性高分子の製造方法。
【請求項2】
前記膨潤性高分子は、ヒドロゲルであり、
前記溶媒は、水であることを特徴とする、請求項1に記載のオブジェクトが固定された膨潤性高分子の製造方法。
【請求項3】
前記膨潤性高分子は、架橋された疎水性高分子であり、
前記オブジェクトの溶液は、有機溶媒であることを特徴とする、請求項1に記載のオブジェクトが固定された膨潤性高分子の製造方法。
【請求項4】
前記乾燥は、凍結乾燥であることを特徴とする、請求項1に記載のオブジェクトが固定された膨潤性高分子の製造方法。
【請求項5】
前記オブジェクトは、放射性同位元素、金属、イオン化合物、および有機化合物の何れか一つ以上であることを特徴とする、請求項1に記載のオブジェクトが固定された膨潤性高分子の製造方法。
【請求項6】
前記オブジェクトは、金属またはイオン化合物であり、
前記リンカーは、前記金属またはイオン化合物と配位結合できるリガンド化合物である、請求項1に記載のオブジェクトが固定された膨潤性高分子の製造方法。
【請求項7】
前記オブジェクトは、アニオン性官能基を有し、
前記リンカーの官能基は、芳香族化合物またはヘテロシクロ化合物であり、 前記アニオン性官能基と前記リンカーの官能基は、親電子性置換反応をする、請求項1に記載のオブジェクトが固定された膨潤性高分子の製造方法。
【請求項8】
前記ヘテロシクロ化合物は、イミダゾール(imidazole)、ピロール(pyrrole)、フラン(furan)、チオフェン(thiophene)、インドール(indole)、および3,4-ジヒドロキシフェニル(3,4-dihydroxyphenyl)からなる群で選択される、請求項7に記載のオブジェクトが固定された膨潤性高分子の製造方法。
【請求項9】
前記オブジェクトは、カチオン性官能基を有し、
前記リガンドは、キレートである、請求項1に記載のオブジェクトが固定された膨潤性高分子の製造方法。
【請求項10】
前記キレートは、DOTA、DOTAの誘導体、DOTA-GA、DO2A、HBED-CC、NOTA、p-SCN-Bn-NOTA、NODA-GA、PrP9、DTPA、CHX-A’’-DTPA-イソチオシアネート(isothiocyanate)、CHX-A’’-DTPA-マレイミド(maleimide)、CHX-A’’-DTPA-グルタル酸NHSエステル(CHX-A’’-DTPA-glutaric acid NHS ester)、DTPA誘導体(1M3B-DTPA、1B3M-DTPA、1B4M-DTPA、CHX-A-DTPAおよびCHX-B-DTPA)、NETA、NE3TA、NE3TA-Bn、C-NETA、C-NE3TA、C-DOTA-イソチオシアネート(isothiocyanates)、MeO-DOTA-イソチオシアネート(isothiocyanates)、PA-DOTA-イソチオシアネート(isothiocyanates)、1B4M-DTPA-イソチオシアネート(isothiocyanates)、2-(4-ニトロベンジル)-サイクレン(2-(4-nitrobenzyl)-cyclen)、2-(4-ニトロベンジル)-サイクラム(2-(4-nitrobenzyl)-cyclam)、2-(4-ベンズアミドベンジル)-NOTA(2-(4-benzamidobenzyl)-NOTA)、2-(4-ニトロベンジル)-DOTA(2-(4-nitrobenzyl)-DOTA)、2-(4-ニトロベンジル)-TETA(2-(4-nitrobenzyl)-TETA)、1-(4-ニトロ)-B4MDTPA(1-(4-nitro)-B4MDTPA)、TETA、TE2A、TE2Aの誘導体(CB-TE2A、CB-TE1A1P、CB-TE2P、MM-TE2A、DM-TE2A)、サイクラム(cyclam)、サイクラム(cyclam)誘導体(1-(4-ニトロベンジル)-サイクラム(1-(4-nitrobenzyl)-cyclam)、6-(4-ニトロベンジル)-サイクラム(6-(4-nitrobenzyl)-cyclam))、CB-TE2A、CB-TE2A誘導体(3,3’-(1,4,8,11-テトラアザビシクロ[6.6.2]ヘキサデカン-4,11-ジイル)ジプロピオン酸)(3,3’-(1,4,8,11-tetraazabicyclo[6.6.2]hexadecane-4,11-diyl)dipropanoic acid)、CB-DO2A、CB-DO2A誘導体(3,3’-(1,4,7,10-テトラアザビシクロ[5.5.2]テトラデカン-4,10-ジイル)ジプロピオン酸)(3,3’-(1,4,7,10-tetraazabicyclo[5.5.2]tetradecane-4,10-diyl)dipropanoic acid))、DiAmSar、SarAr、AmBaSar、DiAmSarの誘導体、AAZTA、NOPOおよびTACN-TMからなる群で選択されたものである、請求項9に記載のオブジェクトが固定された膨潤性高分子の製造方法。
【請求項11】
前記オブジェクトは、有機化合物であり、
前記有機化合物は、アミン基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、およびチオール基の何れか一つを含み、
前記リンカーは、前記有機化合物の官能基と結合できる官能基を有する、請求項1に記載のオブジェクトが固定された膨潤性高分子の製造方法。
【請求項12】
前記有機化合物の官能基がアミン基であり、
前記リンカーの官能基は、アルデヒド基である、請求項11に記載のオブジェクトが固定された膨潤性高分子の製造方法。
【請求項13】
前記有機化合物の官能基がカルボキシル基であり、
前記リンカーの官能基はアミン基である、請求項11に記載のオブジェクトが固定された膨潤性高分子の製造方法。
【請求項14】
前記有機化合物の官能基がヒドロキシル基であり、
前記リンカーの官能基はカルボキシル基である、請求項11に記載のオブジェクトが固定された膨潤性高分子の製造方法。
【請求項15】
前記有機化合物の官能基がチオール基であり、
前記リンカーの官能基はジスルフィド基である、請求項11に記載のオブジェクトが固定された膨潤性高分子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オブジェクトが固定された膨潤性高分子の製造方法に関し、より具体的には、乾燥された膨潤性高分子の吸収特性を利用してオブジェクトを膨潤性高分子に固定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
膨潤性高分子は、高分子の吸水性特徴に基づいて溶媒を吸収して膨潤する性質を有する高分子で、医学、農業、生物工学など非常に広範囲な分野に有用に利用されている。一般的に、膨潤性高分子の膨潤挙動を利用して高分子の架橋空間の間に対象物質を担持することによって、対象物質を伝達する伝達体として利用する。この時、膨潤性高分子と対象物質との安定的な結合のために反応をさせる段階を実行する。
【0003】
現在はかかる段階を膨潤性高分子の架橋前に実行して、高分子と対象物質を先に反応させて結合した後、膨潤性高分子を架橋する方法を採用しているが、これは時間がたくさん必要となり、大量の固定物質を用いても対象物質の固定効率が良くない。よって、膨潤性高分子の単位体積当たり大量の固定物質を迅速に結合させる方法が必要となる。
【0004】
一方、癌疾患は、早期診断や医学技術の発達により死亡率が減少する傾向であるが、今までも全世界死亡原因1位の疾病である。臨床では癌を治療する方法を大きく3種類に分類するが、局所的に癌を取り除くための手術療法、放射線治療法、そして癌が全身に広がっている場合、抗癌剤を利用した化学療法に分類する。特に、放射線治療は、50%以上の癌患者が単独または化学的治療と組み合わせて広く使用されている。
【0005】
放射線治療方法のうち放射性同位元素を利用した療法は、既存の外部放射線治療と違って、大型装備が必要なく、外科的手術に比べて簡便に注射器を利用して投与するので、患者の苦痛を最小化させるという長所がある。現在適用されている放射性同位元素は、90Y、67Cu、188Re、177Lu、131I等であり、静脈注射を通じて溶液状態で体内に注入する。しかしながら、体内を循環する放射性同位元素は、腫瘍細胞に対する選択性の低下で正常細胞と組職に損傷を与え、患者のホルモン分泌異常、脱毛などの副作用を引き起こす。
【0006】
このような問題点を解決するために、最近、溶液上で生分解性高分子に放射性同位元素を化学反応で結合(標識)し、このように製造された高分子-放射性核種コンジュゲート(polymer-radioisotope(drug)conjugate)を注入可能にしながらも、体内に長く留まることができるマイクロ粒子に製剤化して、局所部位のみに放射線治療が可能な技術が開発された(図1a)。しかしながら、半減期を有する高分子-放射性薬物コンジュゲートを製造した後、体内に注入用マイクロ粒子に製剤化するときに、多くの段階と長時間が必要となるため、病院現場で直接製造しにくく、長時間の製剤化過程によって放射性薬物の消失と放射性活性の低下をもたらすようになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の問題点および必要によって提供され、膨潤性高分子に大量の固定物質を迅速で、かつ容易に結合させることができる新型方法を提供することを目的とする。
【0008】
乾燥された膨潤性高分子の吸収を利用することによって、オブジェクトを高い効率で前記膨潤性高分子に固定させることができる、オブジェクトが固定された膨潤性高分子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、オブジェクトと結合できる官能基を有するリンカーを含む乾燥された膨潤性高分子に、前記膨潤性高分子と親和性のある溶媒に溶解されたまたは分散された前記オブジェクト溶液を吸収する過程を含む、オブジェクトが固定された膨潤性高分子の製造方法を提供する。
【0010】
本発明において、前記オブジェクトとは、被固定物と同じ意味を有する単語で、膨潤性高分子に固定される対象を意味する。例えば、前記オブジェクトは、体内に治療および予防のための薬物であってもよい。本発明において、膨潤性高分子は、高分子が架橋されて溶媒に溶解されず、親和性溶媒を早く吸収してその体積が膨脹される性質の高分子を意味する。例えば、新水性溶媒を吸収して新水性溶媒に溶解されない例として、ヒドロゲル、例えば、ヒアルロン酸、アルギン酸塩、キトサンのような多糖類、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、ゼラチン、コラーゲン、アルブミンヒドロゲルであってもよい。疎水性溶媒を吸収し、疎水性有機溶媒に溶解されない例として、疎水性高分子であるポリラクチド(polylactide)、ポリグリコリド(polyglycolide)またはこれらの共重合体であるポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(poly(lactide-co-glycolide)、PLGA)を含み、光架橋グループであるメタクリレート(methacarylate、MA)を含むPLA-ジアクリレート(PLA-diacrylate)、PGA-ジアクリレート(PGA-diacrylate)またはPLGA-ジアクリレート(PLGA-diacrylate)の架橋された高分子であってもよい。好ましくは、本発明の膨潤性高分子は、生体適合性高分子であってもよい。
【0011】
従来には、かかる膨潤性高分子にオブジェクトが結合された形態の化合物を製造する際において、まず、オブジェクトを固定させた後、高分子を架橋結合して製造している。しかしながら、本発明は、まず高分子を架橋結合した後にオブジェクトを固定させる方法を提供する。本発明者は、オブジェクトと結合できる官能基またはリンカーを含む架橋および乾燥された膨潤性高分子を製造した後、これを前記膨潤性高分子に親和性のある溶媒に溶解されたまたは分散されたオブジェクトの溶液を吸収させれば、少量のオブジェクトの溶液でも高い結合効率を提供することができるということを新しく見つけた。また、かかる本発明の製造方法は、予めオブジェクトが固定された高分子を製造するのではなく、必要な現場で乾燥された高分子とオブジェクトを含む溶液を反応させて、非常に簡単に製造できるという特徴があることを見出した。
【0012】
本発明において、前記オブジェクトは、放射性同位元素、金属、イオン化合物、および有機化合物からなる群で選択された何れか一つであってもよい。
【0013】
好ましくは、前記オブジェクトは、生体内で薬理効果を提供する物質であってもよい。
【0014】
前記放射性同位元素は、放射性ハロゲン族元素または放射性金属元素で選択された何れか一つ以上であってもよく、例えば、放射性同位元素は、123I、124I、125I、131I、211At、64Cu、67Ga、68Ga、44Sc、47Sc、111In、177Lu、86Y、90Y、89Zr、212Bi、213Bi、166Ho、99mTc、212Pbおよび225Acなどからなる群で選択された何れか一つ以上であってもよい。
【0015】
前記金属は、金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、パラジウム(Pd)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)およびこれらの合金などからなる群で選択された何れか一つ以上であってもよい。しかしながら、本発明では記載された放射性同位元素と金属の種類に対して必ず限定するものではない。
【0016】
前記オブジェクトと前記リンカーの結合は、オブジェクトが膨潤性高分子に固定されることができる形態の結合であれば可能であり、例えば、共有結合、水素結合、配位結合、非共有結合、例えばイオン結合またはファンデルワールス結合などのような結合であってもよい。しかしながら、本発明はこのような特定結合に限定されるものではない。特に、前記膨潤性高分子生体内に注入されて目的する機能を実行する際に、前記オブジェクトが固定されている形態であれば可能である。
【0017】
本発明の一実施例において、前記オブジェクトが金属またはイオン化合物である場合、前記リンカーは、前記金属または前記イオン化合物と配位結合できるリガンド化合物であってもよい。
【0018】
本発明の一実施例において、前記オブジェクトがカチオン性官能基を有する場合、前記リガンドは、キレート(chelator)であってもよい。カチオン性金属とキレートの結合で製造されたオブジェクトが固定された膨潤性高分子は、例えば、それぞれ次のような下記化学式1~3の構造を有することができる。
【0019】
【化1】
【0020】
前記化学式1において、Mは、放射性金属元素であり、nは、1以上の整数であってもよい。
【0021】
前記化学式1の構造を有する膨潤性高分子で、前記Mは、具体的には、64Cu、67Ga、68Ga、44Sc、47Sc、111In、177Lu、86Y、90Y、89Zr、212Bi、213Bi、166Hoおよび99mTc群から選択されたものであってもよい。前記Mは、化学式1のヒアルロン酸メタアクリレート(hyalrunonate methacrylate、HAMA)に結合されたジエチレントリアミン五酢酸(Diethylenetriaminepentaacetic acid、DTPA)に配位結合されて標識されてもよい。
【0022】
【化2】
【0023】
前記化学式2において、Mは、放射性金属元素であり、nは、1以上の整数であってもよい。
【0024】
前記化学式2の構造を有する膨潤性高分子で、前記Mは、具体的には、64Cu、67Ga、68Ga、44Sc、47Sc、111In、177Lu、86Y、90Y、89Zr、213Bi、212Pbおよび225Acからなる群で選択されたものであってもよい。前記Mは、化学式2のヒアルロン酸メタアクリレート(hyalrunonate methacrylate、HAMA)に結合されたドデカンテトラ酢酸(dodecane tetraacetic acid、DOTA)に配位結合されて標識されてもよい。
【0025】
【化3】
【0026】
前記化学式3において、Mは、放射性金属元素であり、nは、1以上の整数であってもよい。
【0027】
前記化学式3の構造を有する膨潤性高分子で、前記Mは、具体的には、64Cu、67Ga、68Ga、44Sc、47Sc、111In、177Lu、86Y、90Y、212Bi、213Biおよび212Pbからなる群で選択されたものであってもよい。前記Mは、化学式3のヒアルロン酸メタアクリレート(hyalrunonate methacrylate、HAMA)に結合されたトリアザシクロノナン三酢酸(triazacyclononane triacetic acid、NOTA)に配位結合されて標識されてもよい。
【0028】
本発明において、前記キレートは、DOTA、DOTAの誘導体、DOTA-GA、DO2A、HBED-CC、NOTA、p-SCN-Bn-NOTA、NODA-GA、PrP9、DTPA、CHX-A’’-DTPA-イソチオシアネート(isothiocyanate)、CHX-A’’-DTPA-マレイミド(maleimide)、CHX-A’’-DTPA-グルタル酸NHSエステル(CHX-A’’-DTPA-glutaric acid NHS ester)、DTPA誘導体(1M3B-DTPA、1B3M-DTPA、1B4M-DTPA、CHX-A-DTPAおよびCHX-B-DTPA)、NETA、NE3TA、NE3TA-Bn、C-NETA、C-NE3TA、C-DOTA-イソチオシアネート(isothiocyanates)、MeO-DOTA-イソチオシアネート(isothiocyanates)、PA-DOTA-イソチオシアネート(isothiocyanates)、1B4M-DTPA-イソチオシアネート(isothiocyanates)、2-(4-ニトロベンジル)-サイクレン(2-(4-nitrobenzyl)-cyclen)、2-(4-ニトロベンジル)-サイクラム(2-(4-nitrobenzyl)-cyclam)、2-(4-ベンズアミドベンジル)-NOTA(2-(4-benzamidobenzyl)-NOTA)、2-(4-ニトロベンジル)-DOTA(2-(4-nitrobenzyl)-DOTA)、2-(4-ニトロベンジル)-TETA(2-(4-nitrobenzyl)-TETA)、1-(4-ニトロ)-B4MDTPA(1-(4-nitro)-B4MDTPA)、TETA、TE2A、TE2Aの誘導体(CB-TE2A、CB-TE1A1P、CB-TE2P、MM-TE2A、DM-TE2A)、サイクラム(cyclam)、サイクラム(cyclam)誘導体(1-(4-ニトロベンジル)-サイクラム(1-(4-nitrobenzyl)-cyclam)、6-(4-ニトロベンジル)-サイクラム(6-(4-nitrobenzyl)-cyclam))、CB-TE2A、CB-TE2A誘導体(3,3’-(1,4,8,11-テトラアザビシクロ[6.6.2]ヘキサデカン-4,11-ジイル)ジプロピオン酸)((3,3’-(1,4,8,11-tetraazabicyclo[6.6.2]hexadecane-4,11-diyl)dipropanoic acid))、CB-DO2A、CB-DO2A誘導体(3,3’-(1,4,7,10-テトラアザビシクロ[5.5.2]テトラデカン-4,10-ジイル)ジプロピオン酸)(3,3’-(1,4,7,10-tetraazabicyclo[5.5.2]tetradecane-4,10-diyl)dipropanoic acid))、DiAmSar、SarAr、AmBaSar、DiAmSarの誘導体、AAZTA、NOPOおよびTACN-TMからなる群で選択された何れか一つ以上であってもよい。但し、本発明ではこれらの種類に必ず限定されるものではない。
【0029】
一実施例において、前記オブジェクトがアニオン性官能基を有する場合、前記リンカーの官能基は、芳香族化合物またはヘテロシクロ化合物であってもよく、前記アニオン性官能基と前記リンカーの官能基は、親電子性置換反応によって結合することができる。例えば、ヘテロシクロ化合物は、イミダゾール(imidazole)、ピロール(pyrrole)、フラン(furan)、チオフェン(thiophene)、インドール(indole)、および3,4-ジヒドロキシフェニル(3,4-dihydroxyphenyl)などからなる群で選択されるものであってもよい。
【0030】
一例として、アニオン性官能基とキレートの結合により製造されたオブジェクトが固定された膨潤性高分子は、下記化学式4の構造を有することができる。
【0031】
【化4】
【0032】
前記化学式4で、Xは、放射性ハロゲン族元素であり、nは、1以上の整数であってもよい。前記Xは、化学式4のヒアルロン酸メタアクリレート(hyalrunonate methacrylate、HAMA)に結合されたアミノプロピルイミダゾール(aminopropyl imidazole、API)に標識されてもよい。
【0033】
一実施例において、前記オブジェクトはイオン化されることができる官能基を有する場合、架橋された膨潤性高分子に反対電荷の官能基を有すれば、イオン結合でオブジェクトを固定させることができる。例えば、オブジェクトにカチオン化されるアミン基(amine group、-NH)がある場合、HAMAのアニオンとなるカルボキシル基(carboxyl group、-COOH)とイオン結合で固定されることができる。逆に、オブジェクトにアニオン化される-COOHまたはスルホン酸基(sulfonic acid group、-SOH)がある場合、HAMAにジアセチル反応でアミン基を直ちに取り入れるか、アミン基を有するリンカーを取り入れてイオン結合でオブジェクトを固定することができる。特に、アミノ酸で構成されたタンパク質は、両末端に-COOHと-NHを有しているので、容易に固定することができる。
【0034】
一実施例において、前記オブジェクトは有機化合物であり、前記有機化合物は、アミン基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、およびチオール基の何れか一つまたは一つ以上の第1官能基を含み、前記リンカーは、前記第1官能基と結合できる第2官能基を有してもよい。
【0035】
一実施例において、前記有機化合物がアミン基(amine group、-NH)を含む場合、前記リンカーの官能基は、前記アミン基と結合できるアルデヒド基(aldehyde group、-CHO)を含んでもよい。前記アミン基とアルデヒド基が反応して結合することによって、前記オブジェクトが前記膨潤性高分子に固定されることができる。
【0036】
他の実施例において、前記有機化合物の官能基がカルボキシル基(Carboxyl group、-COOH)を含む場合、前記リンカーの官能基は、前記カルボキシル基と結合できるアミン基(amine group、-NH)を含んでもよい。前記カルボキシル基とアミン基が反応して結合することによって、前記オブジェクトが前記膨潤性高分子に固定されることができる。
【0037】
また他の実施例において、前記有機化合物の官能基がヒドロキシル基(hydroxy group、-OH)を含む場合、前記リンカーの官能基は、カルボキシル基(Carboxyl group、-COOH)を含んでもよい。前記ヒドロキシル基と前記カルボキシル基が反応して結合することによって、前記オブジェクトが前記膨潤性高分子に固定されることができる。
【0038】
また他の実施例において、前記有機化合物の官能基がチオール基(thiol group、-SH)を含む場合、前記リンカーの官能基は、ジスルフィド基(disulfide group、-S-S-)を含んでもよい。前記チオール基と前記ジスルフィド基が反応して結合することによって、前記オブジェクトが前記膨潤性高分子に固定されることができる。
【0039】
一方、本発明において、前記乾燥された膨潤性高分子は、凍結乾燥、熱風乾燥、常圧乾燥、および真空乾燥などで選択されたいずれか一つの方法によって製造されたものであってもよいが、好ましくは、前記乾燥は、凍結乾燥方法によって製造されたものであってもよい。また、乾燥された膨潤性高分子は、パウダー(powder)またはエアロゲル(aerogel)形態であってもよい。
【0040】
前記乾燥された膨潤性高分子に前記オブジェクト溶液を吸収させる段階を実行する前に、前記オブジェクトと結合できる官能基を有し、前記官能基が乾燥された膨潤性高分子のリンカーに結合できる結合剤を反応させる段階を追加的に実行してもよい。しかし、必ずこれに限定するのではなくて、必要な場合に選択的に実行してもよい。
【0041】
前記乾燥された膨潤性高分子に前記オブジェクト溶液を吸収させる段階は、乾燥された膨潤性高分子を前記オブジェクト溶液に担持して実行してもよいが、好ましくは、前記乾燥された膨潤性高分子が前記オブジェクト溶液を吸収することができる十分な時間を提供することができるように乾燥された膨潤性高分子に前記オブジェクト溶液を徐々に滴下または添加することによって実行してもよい。前記吸収段階によって、前記オブジェクトは、膨潤性高分子内に担持された状態ではないリンカーと化学的に結合されることによって、膨潤性高分子に固定されることができる。
【発明の効果】
【0042】
乾燥された膨潤性高分子は、多孔性構造からなっており、オブジェクト溶液を浸透現象で迅速に吸収する性質を有し、迅速に吸収されたオブジェクト溶液は、膨潤性高分子の官能基と会う確率が急激に増加するようになり、それにより、少量のオブジェクトの溶液を用いて高い効率の結合を提供することができる。
【0043】
また、本発明によれば、膨潤性高分子を必要とする現場(例えば、病院)で水分内に標識することができ、単一工程であるが、高い効率でオブジェクトを標識することができて、使用者の便宜性の向上およびオブジェクト廃棄物の画期的な減少効果を提供することができる。また、オブジェクトとして放射性同位元素を用いる場合、現場で短時間内に標識することができて、放射性同位元素の活性低下を最小化しながら標識することができるという長所を有する。
【0044】
さらに、本発明で提案する製造方法は、一つの物質に限定されるのではなく、吸収過程で担持されることができる有機および低分子化合物(chemical)から高分子のペプチド、遺伝子治療剤、タンパク質薬物まで多様な種類の薬物の標識にも活用されることができるという長所がある。また、粒子だけでなく、フィルム、スポンジ、パッチなど多様な製剤にも活用されることができて、多様な応用分野に活用される潜在力を有する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】本発明のオブジェクトが固定された膨潤性高分子の製造方法を説明するための図面で、a)従来の製造方法、およびb)本発明の製造方法を示す。
図2】本発明の製造方法による実施例1と従来の製造方法による比較例1のオブジェクト(131I)の固定効率を比較するための図面である。
図3】本発明の製造方法において酸化剤の濃度および吸収時間によるオブジェクト(131I)の固定効率を示した図面である。
図4】本発明の製造方法において、リンカーとオブジェクトとの結合の一実施例を説明するための図面である。
図5a】本発明の製造方法において、リンカーとオブジェクトとの結合の一実施例を説明するための図面である。
図5b】本発明の製造方法において、リンカーとオブジェクトとの結合の一実施例を説明するための図面である。
図6a】本発明の製造方法において、リンカーとオブジェクトとの結合の一実施例を説明するための図面である。
図6b】本発明の製造方法において、リンカーとオブジェクトとの結合の一実施例を説明するための図面である。
図6c】本発明の製造方法において、リンカーとオブジェクトとの結合の一実施例を説明するための図面である。
図6d】本発明の製造方法において、リンカーとオブジェクトとの結合の一実施例を説明するための図面である。
図6e】本発明の製造方法において、リンカーとオブジェクトとの結合の一実施例を説明するための図面である。
図7a】本発明の製造方法において、リンカーとオブジェクトとの結合の一実施例を説明するための図面である。
図7b】本発明の製造方法において、リンカーとオブジェクトとの結合の一実施例を説明するための図面である。
図8a】本発明の製造方法において、リンカーとオブジェクトとの結合の一実施例を説明するための図面である。
図8b】本発明の製造方法において、リンカーとオブジェクトとの結合の一実施例を説明するための図面である。
図9a】本発明の製造方法において、リンカーとオブジェクトとの結合の一実施例を説明するための図面である。
図9b】本発明の製造方法において、リンカーとオブジェクトとの結合の一実施例を説明するための図面である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、添付図面を参照して本発明の実施例について詳しく説明する。本発明は多様な変更を加えることができ、多様な実施形態を有することができ、特定の実施例を図面に例示して本文に詳細に説明する。しかしながら、これは本発明を特定の開示形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物乃至代替物を含むものに理解されるべきである。各図面の説明において、類似する参照符号は類似する構成要素を示す。
【0047】
本出願で用いた用語は単に特定の実施例を説明するために用いられたものであって、本発明を限定しようとする意図はない。単数の表現は文脈上明白に異なることを意味しない限り、複数の表現を含む。本出願で、「含む」または「有する」等の用語は、明細書上に記載された特徴、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであって、一つまたはそれ以上の他の特徴や段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものなどの存在または付加の可能性を予め排除しないことに理解すべきである。
【0048】
異なりに定義されない限り、技術的または科学的用語を含んでここで用いられるすべての用語は、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有している。一般的に用いらっる辞書に定義されているような用語は、関連技術の文脈上有する意味と一致する意味を有するものと解析されるべきであり、本出願で明白に定義しない限り、理想的または過度に形式的な意味に解析されない。
【0049】
以下、本発明の図面を参照して本発明のオブジェクトが固定された膨潤性高分子の製造方法について具体的に説明する。
【0050】
図1は、本発明のオブジェクトが固定された膨潤性高分子の製造方法を説明するための図面で、a)従来のオブジェクトが固定された高分子の製造方法とb)本発明の製造方法を比較して示す。
【0051】
図1を参照すると、a)従来のオブジェクトが固定された高分子の製造方法は、高分子にオブジェクトと結合できる官能基を有するリンカーとオブジェクトを一緒に反応させて先に結合させた後、架橋させて製造することを含む。従来の製造方法は、多くの段階と長時間が必要となるため、オブジェクトの活性を低下させる虞があって、現場(on-site)で簡単に使用にくいという短所がある。これを解決するために、一般的にオブジェクトの濃度を高めて反応時間を減少させる方法を利用しているが、溶解度を超える一定以上の濃度では、オブジェクトが溶解されないため、困難がある。その他に、従来の製造方法は、オブジェクトが非常に低い効率で高分子に結合されるという短所がある。
【0052】
一方、b)本発明の製造方法は、オブジェクトと結合できる官能基を有するリンカーを膨潤性高分子に反応させて結合させた後、乾燥し、その後、これを前記膨潤性高分子と親和性のある溶媒に溶解されたまたは分散された前記オブジェクト溶液と吸収させることによって製造することを含む。本発明の膨潤性高分子の製造方法の場合、オブジェクトが膨潤性高分子粒子内の反応グループ(linker)と結合することができるように、吸収段階によって膨潤性高分子の粒子内の局所部位の濃度(local concentration)を相対的にさらに高めることができるので、短時間内にオブジェクトを結合することができるという長所がある。また、オブジェクトと結合できる官能基を有するリンカーを含む乾燥された膨潤性高分子と前記膨潤性高分子と親和性のある溶媒に溶解されたまたは分散された前記オブジェクト溶液さえあれば、どの現場でも簡単に固定物が固定された膨潤性高分子を製造することができ、短時間内に非常に高い結合率を提供することができるという長所を有し、工程効率も向上させることができる。
【0053】
以下、具体的な実施例および比較例によって本発明のオブジェクトが固定された膨潤性高分子の製造方法についてより詳しく説明する。ただ、本発明の実施例は本発明の一部実施形態に過ぎず、本発明の範囲が下記実施例に限定されるものではない。
【0054】
[実施例1]
膨潤性高分子の製造に用いられたヒアルロン酸メタアクリレート(hyalrunonate methacrylate、HAMA)を合成するために、ヒアルロン酸(1g)を25℃で脱イオン水(Deionised water)(10mL)に入れ、撹拌機を利用して、1000RPM(rotation perminute)で1時間溶解して溶液を製造した後、溶液の温度を4℃に下げ、無水メタクリル酸(methacrylic anhydride)(1.6g)を添加しながら、1MのNaOHを利用して溶液のpHを9に調節しながら24時間反応して混合物を製造した。前記混合物の未反応物を除去するために、セルロースメンブレン(cellulose membrane)(Molecular weight cut-off:3500)に混合物を満たし、脱イオン水で8時間ごとに脱イオン水を交換しながら96時間透析過程を行った。透析された反応物を凍結乾燥して架橋可能なHAMAを得た。その次、HAMAにオブジェクト(放射性ヨード、131I)と結合する反応グループ(linker、API)を取り入れるための反応を行った。このために、HAMA高分子(1g)をpHが7.4のリン酸緩衝生理食塩水(Phosphate-buffered saline、PBS)(100mL)に添加し、撹拌機を利用して、1000RPMで1時間溶解して高分子溶液を製造した。その次、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(1-Ethyl-3-(3-dimethylaminopropyl)carbodiimide、EDC)(900mg)とN-ヒドロキシスクシンイミド(N-Hydroxysuccinimide)(1100mg)を高分子溶液に追加し、1000RPMで1時間撹拌した。その後、40mLのPBSに溶けているAPI(600mg)を混合物に添加して24時間撹拌して反応物を得た。前記混合物の未反応物を除去するために、セルロースメンブレン(cellulose membrane)(Molecular weight cut-off:3500)に混合物を満たし、脱イオン水で8時間ごとに脱イオン水を交換しながら、96時間透析過程を行った。透析された反応物を凍結乾燥して、APIが結合されたHAMA-APIを得た。
【0055】
継いで、オブジェクトを固定することができる膨潤性高分子を製造するために、前記HAMA-API(50mg)と光開始剤であるフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィン酸リチウム(Lithium phenyl-2,4,6-trimethylbenzoylphosphinate、LAP)(1mg)を脱イオン水(1mL)に溶かした後、オイル(oil)上に数十ミクロンの大きさで分散させた後、強度300mW/cmの365nmの光を60秒間照射して、ヒドロゲル粒子形態の架橋された高分子を製造した。その後、不純物(オイル、光開始剤など)を除去するためにエタノール(ethyl alcohol)と脱イオン水で架橋された高分子を2回洗浄し、脱イオン水に分散されている架橋された高分子を凍結乾燥過程によってオブジェクト(131I)を固定することができる膨潤性高分子を得た。粒子形態の乾燥された膨潤性高分子が入っているバイアルにクロラミンT(0.5mg)が含まれた1mCi濃度のNa131I(100μL)水溶液を添加して、10分間ボルテックス(vortexing)した後、ピロ亜硫酸ナトリウム(Sodium Metabisulfite)溶液(10mg/mL、10μL)を添加して、放射性ヨードの標識を終結(quenching)させた。上清液は除去し、追加的なエタノールと脱イオン水で洗浄過程を経て最終的に放射線ヨードが固定され膨潤された高分子を製造した。
【0056】
比較例1
本発明の比較例1は従来の製造方法を利用して製造した。HA(240mg)を25℃で脱イオン水(Deionised water)(20mL)に溶解して第1溶液を製造した後、前記第1溶液のpHを4℃で1MのNaOHを利用して、pH9に調節した後、無水メタクリル酸(methacrylic anhydride)(420mg)を添加して、24時間撹拌しながら混合物を製造した。前記混合物を脱イオン水で8時間ごとに96時間透析過程を行った後、透析された生成物を凍結乾燥して、ヒアルロン酸メタアクリレート(hyalrunonate methacrylate、HAMA)を得た。その次、前記HAMAにN-(3-アミノプロピル)-イミダゾール(N-(3-Aminopropyl)-imidazole)を反応させて、HAMAのカルボキシル基とAPIのアミン基の間のアミド化反応によってAPIをHAMAに接合させた。具体的には、HAMA(240mg)をリン酸緩衝生理食塩水(Phosphate-buffered saline、PBS)(40mL、pH7.4)に25℃で4時間溶解させた後、EDC(230mg、1.2mmol)とNHS(276mg、2.4mmol)を入れて30分間撹拌して、HAMAのカルボキシル基を活性化させた。その後、PBS(10mL)に溶解されたAPI(150mg、1.2mmol)を滴下して、12時間反応を行った。生成された混合物をPBSで透析し、凍結乾燥してAPIが結合されたHAMA(HAMA-API)を得た。
【0057】
継いで、HAMA-APIにオブジェクトであるヨードを固定するために、HAMA-APIのイミダゾール環のヨード化のために触媒(酸化剤)としてクロラミンT(Chloramine T)を用いた。1.5mLの遠心分離チューブにHAMA-API(24mg)を500μLのPBS(pH7.4)に溶解させ、100μLのNa131Iを10分間添加した。その次、PBS(pH7.4)に溶解されたクロラミンT溶液(5mg/mL、10μL)を混合物に添加して、10分間ボルテックス(vortexing)した後、ピロ亜硫酸ナトリウム(Sodium Metabisulfite)溶液(10mg/mL、10μL)を添加してヨード化をケンチング(quench)した。残留物を除去するためにエタノール(ethyl alcohol)(1mL)を反応に添加し、混合物を5000RPMで20分間遠心分離した。上清液(supernatant)を除去し、ヨードで標識されたHAMA(I-HAMAまたは131I-HAMA)を得た。
【0058】
図2は、本発明の製造方法によって製造された実施例1の131I固定効率と従来の製造方法によって製造された比較例1の131I固定効率を比較するための図面である。
【0059】
図2を参照すると、従来の溶液に基づく製造方法(Solution-based)で製造する場合、オブジェクトである131Iの固定効率が約39%と非常に低い一方、本発明の膨潤性高分子を利用した製造方法(Freeze-dried)で製造する場合、131Iの固定効率が約68%で、従来技術と比べて顕著に高いオブジェクトの固定効率を提供することを確認することができる。
【0060】
図3は、本発明の製造方法によって製造された実施例1の製造過程において、a)酸化剤であるクロラミンTの濃度による131Iの固定効率とb)乾燥されたHAMA-API膨潤性高分子と131I溶液の吸収反応時間による131Iの固定効率を示す図面である。
【0061】
図3を参照すると、a)使用された酸化剤の濃度が増加するほど、131Iの固定効率が増加することを確認することができ、b)HAMA-API膨潤性高分子に131I溶液を吸収させる場合、1分ばかりに約65%以上の131Iが固定されたことを確認することができる。よって、本発明の製造方法は、乾燥された膨潤性高分子にオブジェクトを含む溶液を反応させる単純な工程だけでも非常に迅速にオブジェクトを膨潤性高分子に固定させることができる方法であることが分かり、これによって、オブジェクトの活性低下を最小化させることができ、どの現場でも簡単で、かつ迅速に製造することができることを予想することができる。
【0062】
[実施例2]
カチオン性金属が固定されたHAMA膨潤性高分子
HAMAにオブジェクト(カチオン性放射性同位元素)と結合するキレート剤(linker、DTPA)を取り入れるための反応を行った。このために、HAMA高分子(0.7g)をpHが7.4のリン酸緩衝生理食塩水(Phosphate-buffered saline、PBS)(30mL)に添加し、撹拌機を利用して1000RPMで1時間溶解して、高分子溶液を製造した。その後、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)4-メトキシモルホリニウムクロリド(4-(4,6-Dimethoxy-1,3,5-triazin-2-yl)-4-methylmorpholinium chloride、DMTMM)(0.35g)を高分子溶液に追加し、1000RPMで6時間撹拌した。その後、2mLのPBSに溶けているp-NH2-Bn-DTPA(0.42g)を混合物に添加して18時間撹拌して反応物を得た。前記混合物の未反応物を除去するために、セルロースメンブレンに混合物を満たし、脱イオン水で12時間ごとに脱イオン水を交換しながら透析過程を72時間行った。透析された反応物を凍結乾燥して、DTPAが結合されたHAMA-DTPAを得た。
【0063】
継いで、オブジェクトを固定できる膨潤性高分子を製造するために、前記HAMA-DTPA(50mg)と光開始剤であるLAP(10mg)を脱イオン水(1mL)に溶かした後、オイル(oil)上に数十ミクロンの大きさで分散させた後、強度7W/cmの365nmの光を60秒間照射して、ヒドロゲル粒子形態の架橋された高分子を製造した。その後、不純物(オイル、光開始剤など)を除去するために、エタノール(ethyl alcohol)と脱イオン水で架橋された高分子を3回洗浄し、脱イオン水に分散されている架橋された高分子を凍結乾燥過程を通じてオブジェクト(カチオン性放射性同位元素)を固定することができる膨潤性高分子を得た。粒子形態の乾燥された膨潤性高分子(3mg)が入っているバイアルに5-6mCi濃度のZrCl(100μL)水溶液を添加し、27℃、15000RPM条件の撹拌機で1時間反応した。上清液は除去し、追加的な脱イオン水で洗浄過程を経て、最終的に放射線ジルコニウムが固定されて、膨潤された高分子を製造した。
【0064】
図4によれば、膨潤性高分子によってジルコニウムイオンと結合する固定効率を確認することができ、カチオン性金属を固定することができるDTPAが結合された膨潤性高分子で約90%の固定効率を有することに確認された。
【0065】
[実施例3]
ドキソルビシンが固定されたHAMA膨潤性高分子
図5aは、本発明の製造方法によって製造された実施例3の製造過程を示す図面である。
【0066】
図5aを参照すると、本発明の実施例3は、カチオン化されるアミン基を有する被固定物とアニオン化されるカルボキシル基を有する膨潤性高分子にイオン結合で固定する方法である。脱イオン水に膨潤されているヒアルロン酸膨潤性高分子と凍結乾燥されたヒアルロン酸膨潤性高分子が盛られた容器にアミン基を有する被固定物にドキソルビシン(Doxorubicin)溶液1mL(5mg/mL)を吸収させた。前記吸収過程で、溶媒は2つの物質がイオン化されることができるpH(5-5.5)に調整し、撹拌機で1時間反応させた。
【0067】
反応後、遠心分離機を利用して3000RPMで膨潤性高分子を3分間沈澱させ、反応に参加しない上清液を取得し、UV分光計を利用して、490nmでの吸光度を分析した。図5bによれば、溶液に基づく製造方法に比べて、膨潤性高分子に固定されたドキソルビシンは約70%以上の担持効率(loading effciency、LE)を確認することができた。
【0068】
[実施例4]
カチオン性薬物が固定されたHAMA膨潤性高分子
図6a、図6bは、本発明の製造方法によって製造された実施例4の製造過程を示す図面である。
【0069】
図6aを参照すると、本発明の実施例4は、アミン基を有する被固定物とアルデヒド基を含むリンカーの結合を利用して製造した。まず、アルデヒド基を含むメタクリレート基が結合されたヒアルロン酸(hyaluronic acidmethacrylate、HAMA)膨潤性高分子にアルデヒド基を含むリンカーを提供するために、HAMAに過ヨウ素酸ナトリウム(NaI0)を24時間反応させた後、架橋および凍結乾燥して、乾燥されたHAMA-アルデヒド(HAMA-aldehyde)膨潤性高分子を製造した。その後、前記乾燥されたHAMA-アルデヒド(HAMA-aldehyde)膨潤性高分子にアミン基を有する被固定物として5-アミノフルオレセイン (5-Aminofluorescein)と反応させた。前記吸収過程で5-アミノフルオレセイン(5-Aminofluorescein)のアミン基とHAMA-アルデヒド(HAMA-aldehyde)膨潤性高分子のアルデヒド基と反応して、カチオン性薬物が結合されたHAMA膨潤性高分子が製造された。
【0070】
また、図6bではHAMA膨潤性高分子にアルデヒド基を含むリンカーを提供するために、HAMAに3-アミノ-1,2-プロパンジオール(3-Amino-1,2-propanediol)を反応させた後、架橋および凍結乾燥して、リンカーが結合された膨潤性高分子を製造した。その後、過ヨウ素酸ナトリウム(NaI0)を反応させた後、凍結乾燥して、乾燥されたHAMA-アルデヒド(HAMA-aldehyde)膨潤性高分子を製造した。乾燥されたHAMA-アルデヒド(HAMA-aldehyde)膨潤性高分子にアミン基を有する被固定物として5-アミノフルオレセイン (5-Aminofluorescein)溶液を吸収させる段階を実行して、5-アミノフルオレセイン(5-Aminofluorescein)のアミン基と乾燥されたHAMA-アルデヒド(HAMA-aldehyde)膨潤性高分子のアルデヒド基を結合させた。それによって、アミン基とアルデヒド基の結合で固定された、カチオン性薬物が固定されたHAMA膨潤性高分子が製造された。
【0071】
反応後、遠心分離機を利用して3000RPMで3分間膨潤性高分子を沈澱させた。反応に参加しない上清液を取得し、蛍光プレートリーダを利用して、520nmでの蛍光を分析した。図6c、図6dによれば、膨潤性高分子に固定された5-アミノフルオレセイン(5-Aminofluorescein)は、リンカーが標識されないHAMAと比べて約20%の担持効率(loading effciency、LE)を確認することができた。図6eは、本発明の製造方法によって製造された実施例4の製造方法によって製造された比較例4の5-AFL固定効率を比較するための図面である。図6eを参照すると、従来の溶液に基づく製造方法(Solution-based)で製造する場合、オブジェクトである5-AFLの固定効率が約2%と非常に低い一方、本発明の膨潤性高分子を利用した製造方法(Freeze-dried)で製造する場合、5-AFLの固定効率が約21%で、従来の技術と比べて顕著に高いオブジェクトの固定効率を提供することを確認することができる。
【0072】
[実施例5]
メルカプトプリン(6-Mercaptopurine)が固定されたHAMA膨潤性高分子
図7は、本発明の製造方法によって製造された実施例5の製造過程を示す図面である。
【0073】
図7を参照すると、本発明の実施例5は、ジスルフィド(-S-S-、ジスルフィドグループ)を有する被固定物とチオール基(thiol、-SH)を含むリンカーの結合を利用して製造した。HAMA膨潤性高分子にチオール基を含むリンカーを結合するために、(2-ピリジルチオ)システアミン塩酸塩((2-pyridylthio)cysteamine hydrochlorid)を反応させた後、架橋および凍結乾燥して、乾燥されたHAMA-チオール(HAMA-thiol)膨潤性高分子を製造した。その後、乾燥されたHAMA-チオール(HAMA-thiol)膨潤性高分子にジスルフィド基を含む薬物であるメルカプトプリンを含む溶液を利用して高分子に吸収させた。前記吸収過程で、メルカプトプリンのジスルフィド基とHAMA-チオール(HAMA-thiol)膨潤性高分子のチオール基が結合されて、メルカプトプリンが固定されたHAMA膨潤性高分子が製造された。
【0074】
[実施例6]
クロラムブシルが固定されたHAMA膨潤性高分子
図8は、本発明の製造方法によって製造されたクロラムブシルが固定されたHAMA膨潤性高分子の製造過程を示す図面である。
【0075】
図8を参照すると、カルボキシル基を有するオブジェクトとアミン基を含むリンカーの結合を利用して製造した。まず、HAMA高分子にアミン基(-NH)を含むリンカーを提供するために、シスタミン(Cystamine)を反応させた後、架橋および凍結乾燥してリンカーが結合された膨潤性高分子を製造した。その後、リンカーが結合された膨潤性高分子にカルボキシル基を含む薬物であるクロラムブシル(Chlorambucil)を含む溶液を吸収させた。前記吸収過程で、クロラムブシルのカルボキシル基と膨潤性高分子のアミン基が結合されて、クロラムブシルが結合された膨潤性高分子が製造された。
【0076】
[実施例7]
パクリタキセルが固定されたHAMA膨潤性高分子
図9は、本発明の製造方法によって製造されたパクリタキセルが固定されたHAMA膨潤性高分子の製造過程を示す図面である。
【0077】
図9を参照すると、ヒドロキシル基を有するオブジェクトとカルボキシル基を含むリンカーの結合を利用して製造した。まず、HAMA高分子にカルボキシル基を含むリンカーを提供するために、アラニン(Alanine)を反応させて結合した後、架橋および凍結乾燥して、リンカーが結合された膨潤性高分子を製造した。その後、リンカーが結合された膨潤性高分子にヒドロキシル基(-OH)を含む薬物であるパクリタキセル(paclitaxel)を含む溶液を利用して高分子に吸収させた。前記吸収過程で、パクリタキセルのヒドロキシル基と前記膨潤性高分子のカルボキシル基が結合されて、パクリタキセルが固定された膨潤性高分子が製造された。
【0078】
実施例で示したように、本発明の製造方法のオブジェクトと結合できる官能基を有するリンカーを含む乾燥された膨潤性高分子は、高分子を架橋および乾燥させた後、リンカーを結合して製造することができ、または高分子にリンカーを結合した後、架橋および乾燥させて製造することができる。
【0079】
以上、本発明の好ましい実施例を参照して説明したが、当該技術分野において熟練された当業者は、特許請求範囲に記載された本発明の思想および領域から逸脱しない範囲内で本発明を多様に修正および変更させることができることを理解すべきである。
【0080】
本明細書に記載された略語は、次の通りである。
【0081】
DOTA
1,4,7,10-tetraazacyclododecane-1,4,7,10-tetraacetic acid
【0082】
DOTA-GA
2-(4,7,10-tris(carboxymethyl)-1,4,7,10-tetraazacyclododecan-1-yl)pentanedioic acid
【0083】
DO2A
1,4,7,10-tetraazacyclododecane-1,7-diacetic acid
【0084】
HBED-CC
3,3’-(3,3’-(ethane-1,2-diylbis((carboxymethyl)azanediyl))bis(methylene)bis(4-hydroxy-3,1-phenylene))dipropanoic acid
【0085】
NOTA
1,4,7-triazonane-1,4,7-triacetic acid
【0086】
p-SCN-Bn-NOTA
2-(4-isothiocyanatobenzyl)-NOTA
【0087】
NODA-GA
2-(4,7-bis(carboxymethyl)-1,4,7-triazonan-1-yl)pentanedioic acid
【0088】
PrP9
1,4,7-triazonane-1,4,7-tri(2-carboxyethyl)methyl phosphinic acid
【0089】
DTPA
Diethylenetriamine-pentaacetic acid
【0090】
p-SCN-CHX-A’’-DTPA
2S-(4-isothiocyanatobenzyl)cyclohexyldiethylenetriamine-pentaacetic acid
【0091】
p-SCN-CHX-B’’-DTPA
2R-(4-isothiocyanatobenzyl)cyclohexyldiethylenetriamine-pentaacetic acid
【0092】
NETA
(2-(4,7-bis(carboxymethyl)-1,4,7-triazonan-1-yl)ethylazane-diacetic acid
【0093】
NE3TA
7-(2-(carboxymethylamino)ethyl)-1,4,7-triazonane-1,4-diacetic acid
【0094】
NE3TA-Bn
(7-(2-(benzyl(carboxymethyl)amino)ethyl)-1,4,7-triazonane-1,4-diacetic acid
【0095】
C-NETA
2,2’-(2-(4,7-bis(carboxymethyl)-1,4,7-triazonan-1-yl)-(2-(4-isothiocyanatobenzyl))ethylazanediyl)diacetic acid
【0096】
C-NE3TA
2,2’-(7-(2-(carboxymethylamino)-2-(4-isothiocyanatobenzyl)ethyl)-1,4,7-triazonane-1,4-diyl)diacetic acid
【0097】
C-DOTA
2-(4-nitrobenzyl)-DOTA
【0098】
1B3M-DTPA
1-benzyl-3-methyldiethylenetriamine-pentaacetic acid
【0099】
1B4M-DTPA
1-benzyl-4-methyldiethylenetriamine-pentaacetic acid
【0100】
1M3B-DTPA
1-methyl-3-benzyldiethylenetriamine-pentaacetic acid
【0101】
TETA
1,4,8,11-tetraaza-cyclotetradecane-1,4,8,11-tetraacetic acid
【0102】
TE2A
1,4,8,11-tetraazacyclo-tetradecane-1,8-diacetic acid
【0103】
CB-TE2A
1,4,8,11-tetraazabicyclo[6.6.2]hexadecane-4,11-diacetic acid
【0104】
CB-DO2A
1,4,7,10-tetraazabicyclo[5.5.2]tetradecane-4,10-diacetic acid
【0105】
DiAmSar
3,6,10,13,16,19-hexaazabicyclo[6.6.6]icosane-1,8-diamine
【0106】
SarAr
N-(4-aminobenzyl)-3,6,10,13,16,19-hexaazabicyclo[6.6.6]icosane-1,8-diamine
【0107】
AmBaSar
4-((8-amino-3,6,10,13,16,19-hexaazabicyclo[6.6.6]icosan-1-ylamino)methyl)benzoic acid
【0108】
AAZTA
6-amino-6-methylperhydro-1,4-diazepinetetraacetic acid
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
図6a
図6b
図6c
図6d
図6e
図7a
図7b
図8a
図8b
図9a
図9b
【国際調査報告】