(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-18
(54)【発明の名称】高エネルギー電池用の放熱セパレータ
(51)【国際特許分類】
H01M 50/411 20210101AFI20240910BHJP
H01M 50/417 20210101ALI20240910BHJP
H01M 50/449 20210101ALI20240910BHJP
H01M 50/434 20210101ALI20240910BHJP
H01M 50/443 20210101ALI20240910BHJP
H01M 50/431 20210101ALI20240910BHJP
H01M 50/457 20210101ALI20240910BHJP
【FI】
H01M50/411
H01M50/417
H01M50/449
H01M50/434
H01M50/443 M
H01M50/431
H01M50/457
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024510635
(86)(22)【出願日】2022-06-07
(85)【翻訳文提出日】2024-04-17
(86)【国際出願番号】 US2022032442
(87)【国際公開番号】W WO2022178465
(87)【国際公開日】2022-08-25
(32)【優先日】2021-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】598064680
【氏名又は名称】セルガード エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100115679
【氏名又は名称】山田 勇毅
(74)【代理人】
【識別番号】100114177
【氏名又は名称】小林 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】チャン,チェンミン
(72)【発明者】
【氏名】イン,ウェンビン
【テーマコード(参考)】
5H021
【Fターム(参考)】
5H021CC04
5H021EE01
5H021EE04
5H021EE21
5H021HH00
5H021HH01
(57)【要約】
1つ又は複数の層のポリオレフィンを含む微多孔質膜及びこの微多孔質膜の面に固定された放熱層であって、この放熱層は、電池セル内部の熱を放熱し、熱の伝播を低減するよう構成される、放熱層を備える、電池セパレータを提供する放熱層は、ポリマー、正常な電池セル動作範囲内又は正常な電池セル動作範囲を超えて熱を放熱するよう構成された相変化材料、及び/又は高熱伝導材料の少なくとも1つを含むことができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池セパレータであって、
1つ又は複数の層のポリオレフィンを含む微多孔質膜、及び
前記微多孔質膜の面に固定された放熱層であって、前記放熱層は、少なくとも2%の高熱伝導材料を含み、電池セル内部の熱の伝播を低減するよう構成される、前記放熱層を備える、電池セパレータ。
【請求項2】
前記放熱層は、相変化材料を含む、請求項1に記載の電池セパレータ。
【請求項3】
前記相変化材料は、正常な電池セル動作温度範囲内又は正常な電池セル動作温度範囲を超えて熱を放熱するよう構成された、ワックス、有機物質、無機物質、塩、金属、又はそれらの混合物である、請求項2に記載の電池セパレータ。
【請求項4】
前記放熱層は、ポリマー及び/又はブレンドポリマーを含む、請求項1に記載の電池セパレータ。
【請求項5】
前記高熱伝導材料は、0.01W/mk~2200W/mkの熱伝導率範囲を有する、請求項1に記載の電池セパレータ。
【請求項6】
前記高熱伝導材料は、100W/mk~1000W/mkの熱伝導率範囲を有する、請求項1に記載の電池セパレータ。
【請求項7】
前記高熱伝導材料は、AlN、Si
3N
4、又はBNの少なくとも1つである、請求項1に記載の電池セパレータ。
【請求項8】
前記放熱層は、電池セル内部の熱の伝播を少なくとも50%低減するよう構成される、請求項1に記載の電池セパレータ。
【請求項9】
前記放熱層は、電池セルのエネルギー密度を上昇させるよう構成される、請求項1に記載の電池セパレータ。
【請求項10】
前記微多孔質膜は、1つ又は複数のポリオレフィンを含む、請求項1に記載の電池セパレータ。
【請求項11】
前記ポリオレフィンは、ポリエチレン、ポリプロピレン、又は両者の組合せである、請求項1に記載の電池セパレータ。
【請求項12】
前記微多孔質膜は、単層膜、二層膜、三層膜、又は多層膜である、請求項1に記載の電池セパレータ。
【請求項13】
前記放熱層は、バインダーを含む、請求項1に記載の電池セパレータ。
【請求項14】
電池セルであって、
負極、
正極、及び
前記負極及び前記正極の間に配置されたセパレータであって、前記セパレータは、
1つ又は複数の層のポリオレフィンを含む微多孔質膜、及び
前記微多孔質膜の面に固定された放熱層であって、前記放熱層は、少なくとも2%の高熱伝導材料を含み、電池セル内部の熱の伝播を低減するよう構成される、前記放熱層を備える、前記セパレータを備える、
電池セル。
【請求項15】
前記放熱層は、相変化材料を含む、請求項14に記載の電池セル。
【請求項16】
前記相変化材料は、正常な電池セル動作温度範囲内又は正常な電池セル動作温度範囲を超えて熱を放熱するよう構成された、ワックス、有機物質、無機物質、塩、金属、又はそれらの混合物である、請求項15に記載の電池セル。
【請求項17】
前記放熱層は、ポリマー及び/又はブレンドポリマーを含む、請求項14に記載の電池セル。
【請求項18】
前記高熱伝導材料は、0.01W/mk~2200W/mkの熱伝導率範囲を有する、請求項14に記載の電池セル。
【請求項19】
前記高熱伝導材料は、100W/mk~1000W/mkの熱伝導率範囲を有する、請求項14に記載の電池セル。
【請求項20】
前記高熱伝導材料は、AlN、Si
3N
4、又はBNの少なくとも1つである、請求項14に記載の電池セル。
【請求項21】
前記放熱層は、電池セル内部の熱の伝播を少なくとも50%低減するよう構成される、請求項14に記載の電池セル。
【請求項22】
前記放熱層は、電池セルのエネルギー密度を上昇させるよう構成される、請求項14に記載の電池セル。
【請求項23】
1つ又は複数の層のポリオレフィン若しくはポリオレフィンのブレンド又はポリオレフィン及び他の材料の混合物を含む少なくとも1つの微多孔質膜、及び前記少なくとも1つの微多孔質膜の少なくとも1つの面に固定された少なくとも1つの放熱層を備える電池セパレータであって、前記放熱層は、電池セル内部の熱を放熱し、熱の伝播を低減するよう構成され、前記放熱層は、正常な電池セル動作範囲内又は正常な電池セル動作範囲を超えて熱を放熱するよう構成された熱伝導材料又は相変化材料の少なくとも1つを含むことができ、前記放熱層はまた任意選択で少なくとも1つの吸熱材料又は高熱容量材料を含むこともでき、前記放熱層はまた任意選択で2つの微多孔質膜の間に配置されてもよい、電池セパレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願データ
本願は、特許協力条約第8条に従って、2021年8月24日に出願された米国仮特許出願第63/236,245号に対する優先権を主張し、この出願はその全体を参照により本明細書に援用される。
【0002】
本明細書に記載される技術は概して、高エネルギー密度電池用の放熱特性を組み込んだ、セパレータ、膜、及び/又は薄膜、並びにより具体的にはこれらのシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
電池セパレータは、他の役割のなかでも、電池の正極と負極との間に配置される物理的障壁を形成して電極同士が物理的に接触し、例えば内部短絡を生じるのを防ぐ微多孔質膜である。3C電池、電気駆動車両(EDV)電池、電力貯蔵システム(ESS)電池などのリチウムイオン電池では、動作中に、電池セルの電極が膨張し、部分的に熱の発生に基づいて接触し、このことが、内部圧力が加えられたことにより電池セルの性能に影響を及ぼし、又は爆発若しくは火災を引き起こす可能性につながる。更に、電池のエネルギー密度が上昇するにつれ、短絡が生じた場合に発生する熱が高くなり、熱の伝播が大きくなるため、電池セルの性能及び安全性がより問題となる。
【0004】
その結果として、電池セルシステムへと組み込まれて従来の電池セパレータより高い性能特性、高いエネルギー密度、及び改善された安全性を与えることができる改善されたセパレータ、膜、及び/又は薄膜の必要性がある。
【発明の概要】
【0005】
この要約は、詳細な説明で以下に更に記載される概念の抜粋を単純化した形態で導入するために提供される。この要約は、特許請求の範囲の主題の重要な特徴又は必須の特徴を特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲の主題の範囲を決定する補助として別個に使用されることを意図するものでもない。
【0006】
本明細書に記載される技術の実施形態は、増加する電池又はセルエネルギー密度、より具体的にはLi、Na、及びAl電池又はセルの増加する電池又はセルエネルギー密度に関する。更に、本明細書に記載される技術の実施形態は、例えば放熱により、電池セルの熱の伝播を低減すること及び/又は停止することに関する。したがって、本明細書に記載される技術の実施形態は、電池性能及び/又は安全性を改善することができる。
【0007】
いくつかの実施形態によれば、1つ又は複数の層のポリオレフィンを含む微多孔質膜及び微多孔質膜の面に固定された放熱層であって、この放熱層は、電池セル内部の熱の伝播を低減するよう構成される、放熱層を備える、電池セパレータを提供する。放熱層は、正常な電池セル動作温度範囲内又は正常な電池セル動作温度範囲を超えて熱を放熱するよう構成された相変化材料及び/又は高熱容量材料を含むことができる。いくつかの例では、放熱層は、電池セル内部の熱の伝播を低減する及び/又は停止するよう構成される。いくつかの他の例では、放熱層は、電池セルのエネルギー密度を上昇させるよう構成される。
【0008】
更なるいくつかの実施形態によれば、負極、正極、及び負極と正極との間に配置されたセパレータを備える電池セルを提供する。いくつかの例では、セパレータは、1つ又は複数の層のポリオレフィンを含む微多孔質膜及び微多孔質膜の面に固定された放熱層であって、この放熱層は、電池セル内部の熱の伝播を低減するよう構成される、放熱層を備える。放熱層は、正常な電池セル動作温度範囲内又は正常な電池セル動作温度範囲を超えて熱を放熱するよう構成された相変化材料及び/又は高熱容量材料を含むことができる。いくつかの例では、放熱層は、電池セル内部の熱の伝播を低減する及び/又は停止するよう構成される。いくつかの他の例では、放熱層は、電池セルのエネルギー密度を上昇させるよう構成される。
【0009】
本発明の追加の目的、利点、及び新規の特徴は、部分的に、続く説明に記載され、部分的に、以下のものを調査すると当業者に明らかになる、又は本発明の実行により学習することができる。
【0010】
本明細書に示される技術の態様は、添付の図面を参照して以下に詳細に記載され、
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本明細書に記載される技術のいくつかの態様による、電池セルの熱の伝播を低減する及び/又は熱を放熱するための電池セパレータ構造の例示的構成を示し、
【0012】
【
図2】
図2は、本明細書に記載される技術のいくつかの態様による、電池セパレータによって提供される電池セルの熱の伝播の低減及び/又は熱の放熱を示す概略図を示し、
【0013】
【
図3】
図3は、本明細書に記載される技術のいくつかの態様による、放熱電池セパレータを組み込んだ電池セルと類似した電池システムの中のエネルギー密度を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示の態様の主題は、法廷要件を満たすよう本明細書に明確に記載される。しかしながら、記載自体は、本特許の範囲を限定することを意図するものではない。むしろ、本発明者らは、クレームされた主題が、他の現在の又は将来の技術と併せて、本文書に記載されたものと類似する色々なステップ又はステップの組合せを含む、他の方法で具体化されてもよいと企図している。更に、「ステップ」及び/又は「ブロック」という用語は本明細書で、使用される方法の色々な要素を暗示するために使用することができるが、用語は、個別のステップの順序が明確に記載されてない限り及び記載されている場合を除いて、本明細書に開示される様々なステップの中の又は間の任意の特定の順序を暗示すると解されるべきではない。
【0015】
したがって、本明細書に記載される実施形態は、以下の詳細な説明、実施例、及び図面を参照することにより、より容易に理解されることができる。しかしながら、本明細書に記載の要素、装置、及び方法は、詳細な説明、実施例、及び図面に示される特定の実施形態に限定されない。本明細書に例示の実施形態は、本発明の原理の単なる例示に過ぎないと理解されるべきである。当業者にとって、本発明の精神及び範囲を逸脱することなく、多数の変形及び適応が容易に明らかとなる。
【0016】
そのうえ、本明細書に開示される全ての範囲は、本明細書に含まれる任意の及び全ての部分範囲を包含すると理解されるべきである。例えば、「1.0~10.0」という規定範囲は、1.0以上の最小値で始まり10.0以下の最大値で終わる任意の及び全ての部分範囲、例えば1.0~5.3、又は4.7~10.0、又は3.6~7.9を含むとみなされるべきである。
【0017】
本明細書に開示される全ての範囲も、明示的別段の定めをした場合を除き、この範囲の端点を含むとみなされるべきである。例えば、「5~10(between 5 and 10)」又は「5~10(5 to 10)」又は「5~10(5-10)」の範囲は概して、端点5及び10を含むとみなされるべきである。
【0018】
更に、「まで」という語句は、ある量(amount)又は量(quantity)と共に用いられる場合、この量は、少なくとも検出可能な量(amount)又は量(quantity)であると理解されるべきである。例えば、特定量「まで」の量で存在する材料は、検出可能な量から特定量を含むそれ以下の量で存在することができる。
【0019】
更に、任意の開示される実施形態では、「実質的に(substantially)」、「およそ(approximately)」及び「約(about)」という用語は、明記されるもの「の「割合percentage」内」で置き換えてもよく、割合は、0.1、1、5、及び10%を含む。
【0020】
セパレータ又は微多孔質膜(本明細書では電池セパレータ又は放熱セパレータとも称される)は、様々な機能、例えば、とりわけ電池の正極と負極との間の電気的接触を防ぎ、電極間のイオン輸送を可能にし、シャットダウン特性などの温度ヒューズとして働くなどを実行するよう電池又はセルに組み込まれる。
【0021】
電池又はセルの特定のエネルギー及び/又はエネルギー密度は、他の特性の中でも、電池のエネルギー及び電気的範囲、性能、及び安全性をある程度まで決定する電池又はセルの特性(例えば、化学物質、材料、包装及び/又はサイズ)に関連する。電池成分及び化学物質が改良されたので、高エネルギー出力及び電気的範囲を可能にする高エネルギー電池又はセル(例えば、Li、Liイオン、Na、Naイオン、Al、Alイオン)を作成できる。したがって、高エネルギー電池、セル、及び電池システムは、より高い動作温度を有することができ、更に、短絡が起きた場合、動作温度で又は動作温度を超えた電池セル又はシステムによる熱の伝播により、加熱、爆発又は火災などの動作上及び安全性の問題が生じることができる。
【0022】
従来のLi、Na、及びAl系電池又はセルでは、高エネルギー密度電池又はセルに関連する機能性、能力及び/又は安全性の問題に対処するよう構成されることができる成分/材料、システム、及び/又は方法が組み込まれなかったため、電池又はセルの設計及び能力が制限される可能性がある。
【0023】
本発明の技術の実施形態によれば、セパレータ(本明細書では多孔質/微多孔質膜、及びフィルム/薄膜とも互換的に使用される)を電池又は電池システムに実装することができ、電池又は電池システム内部の熱の伝播を軽減、低減、及び/又は停止するよう構成されることができる。いくつかの他の実施形態では、本明細書に記載されるセパレータ、又は高熱セパレータは、電池又は電池システムを高エネルギー密度にすることを可能とすることができ、例えば、350Wh/kg超及び/又は650Ah/l超のエネルギー密度を可能とするよう構成される。
【0024】
いくつかの実施形態によれば、改善された高エネルギー密度電池用の、微多孔質膜及び1つ又は複数の放熱層を組み込んだセパレータ又は膜システムを提供し、1つ又は複数の放熱層は、例えば高エネルギー密度電池の内部短絡及び/又は正常若しくは異常なサイクルによる熱を放熱することにより電池セルの温度上昇を低減又は軽減することができる。
【0025】
いくつかの例では、放熱層は、放熱材料を含む。いくつかの更なる例では、放熱材料は、高熱伝導材料であることができる。いくつかの更なる例では、放熱材料は、相変化材料であることができる。本明細書に記載される態様によれば、放熱材料は、正常な電池セル動作温度範囲内又は正常な電池セル動作温度範囲を超えて熱を放熱する(例えば伝導する及び/又は伝達する)よう構成されることができる。更に、1つ又は複数の放熱層は、1つ又は複数のポリマー膜及び/又はセラミックコーティングを含むセパレータ及び/又は膜システムの一部であることができる又は組み込まれることができる。いくつかの例では、放熱材料を1つ又は複数のポリマーとブレンドすることができる。
【0026】
いくつかの実施形態では、セパレータ(又は電池セパレータ若しくは放熱セパレータ)は、微多孔質膜(例えばポリマー膜)及び放熱材料を含む1つ又は複数の放熱層を備える。
【0027】
本明細書に記載される微多孔質膜及び/又は放熱材料は、1つ又は複数の層のポリオレフィン、フルオロカーボン、ポリアミド、ポリエステル、ポリアセタール(又はポリオキシメチレン)、ポリスルフィド、ポリビニルアルコール、ポリビニリデン、これらの共重合体、又はこれらの組合せを含むことができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される微多孔質膜は、1つ又は複数の層のポリプロピレン(PP)又はポリエチレン(PE)などのポリオレフィン(PO)、ポリオレフィンのブレンド、ポリオレフィンの1つ又は複数の共重合体、又は前述のもののいずれかの組合せを含む。本発明の技術により使用されるポリオレフィンは、本明細書に記載される微多孔質膜又はセパレータの特性と矛盾しない任意の分子量であることができると理解される。
【0028】
微多孔質膜は、いくつかの例では、20~80%の範囲の結晶度を有するポリマーなどの、半結晶ポリマーを含む。いくつかの他の実施形態では、本明細書に記載される微多孔質膜又はセパレータは、単層、二層、三層、又は多層構造を有することができる。例えば、三層又は多層膜は、2つの外側層及び1つ又は複数の内側層を含むことができる。いくつかの例では、微多孔質膜は、1、2、3、4、5又はそれ以上の内側層を含むことができる。いくつかの他の例では、層の各々は、一緒に共押し出しされる及び/又は積層されることができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される微多孔質膜又はセパレータは、PP及び/又はPEの任意の単層、二層、三層、又は多層構造を有することができる。
【0029】
本明細書に記載される微多孔質膜は更に、充填材、エラストマー、湿潤剤、潤滑剤、難燃剤、核剤、及び本開示の目的と矛盾しない他の追加の成分及び/又は添加剤を含むことができる。
【0030】
いくつかの例では、放熱材料は、正常な電池動作温度範囲内又は正常な電池動作温度範囲を超えて熱を放熱する(例えば、伝導する及び/又は伝達する)能力がある又は放熱するよう構成された、ワックス、有機又は無機物質、塩、金属、又はこれらの混合物などの、相変化材料を含むことができる。いくつかの例示的実施形態では、相変化材料は、ポリエチレン(PE)ワックスである。いくつかの他の例では、放熱材料は、正常な電池動作温度範囲内又は正常な電池動作温度範囲を超えて熱を放熱する(例えば、伝導する及び/又は伝達する)能力がある又は放熱するよう構成された高熱伝導材料を含むことができる。高熱伝導材料は、例えば、ポリマー若しくはポリマーブレンド、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ケイ素(Si3N4)、及び窒化ホウ素(BN)、又は前述のもののいずれかを含む混合物を含むことができる。いくつかの例示的実施形態では、放熱材料は、約0.01W/mK~約2200W/mK、より具体的には約100W/mK~約1000W/mKの熱伝導範囲を有することができる。いくつかの実施形態では、放熱材料は、高熱伝導材料及び相変化材料の混合物を含む。1つの例示的実施形態では、放熱層は、PEワックスなどの相変化ワックス並びにAlN、BN、又はAlN及びBNの混合物などの放熱成分を含むことができる。いくつかの更なる実施形態では、放熱層は、放熱材料及びバインダー材料及び/又は他の添加剤を含むことができる。例えば、バインダー材料は、限定されることなく、とりわけPVA、PVDF、CMCを含むことができる。いくつかの実施形態では、放熱層は、吸熱材料、例えば正常な電池動作温度範囲内又は正常な電池動作温度範囲を超えて吸熱する能力がある又は吸熱するよう構成された、有機若しくは無機物質、金属、金属塩、又はこれらの混合物などの吸熱材料又は高熱容量(Cp)材料を含むことができる。いくつかの実施形態では、高熱容量材料の熱容量(CP)は、約100J/kgK~約5000J/kgKであることができ、例えば高熱容量材料の熱容量(CP)は、約2500J/kgK~約4000J/kgKであることができる。
【0031】
いくつかの態様によれば、放熱層は、少なくとも2%の放熱材料、例えば少なくとも5%の放熱材料、例えば少なくとも10%の放熱材料を含む。いくつかの他の態様によれば、放熱材料は、セパレータシステム全体に少なくとも2%の量で存在する。いくつかの例示的実施形態では、放熱材料は、層に2%~5%、2%~10%、2%~20%、2%~30%、2%~40%、2%~50%の量で存在することができる。いくつかの他の実施形態では、放熱材料は、層に50%まで、60%まで、70%まで、80%まで、90%まで、100%までの量で存在する。
【0032】
放熱層は、ポリマー膜の1つ又は複数の面に配置されることができる、すなわち、放熱層は、ポリマー膜の第1の平面上に及び/又はポリマー膜の第2の平面上に配置されることができる。いくつかの例では、放熱層は、ポリマー膜の層の間に配置されることができる。
【0033】
いくつかの実施形態では、セパレータは更に、1つ又は複数の粒子状セラミック又はセラミック系層及び/又はコーティングを含むことができる。したがって、セパレータは、ポリマー膜(すなわち1つ又は複数の層のポリオレフィン)、1つ又は複数の放熱層、及び1つ又は複数のセラミック又はセラミック系層及び/又はコーティングを含むことができる。いくつかの例では、放熱層は、ポリマー膜の一方の面(例えば第1の面)上に配置されることができ、セラミック層は、ポリマー膜の他方の面(例えば第2の面)上に配置されることができる。いくつかの更なる例では、放熱層及びセラミック層は、2つのポリマー膜層の間に配置されることができる。いくつかの更なる例では、放熱層及びセラミック層は両方とも、ポリマー膜の面の1つ(すなわち、第1の面又は第2の面)上に配置されることができる。いくつかの更なる例では、放熱層及びセラミック層を合わせて単層又は組合せた層/複合層とすることができる。組合せた層は、ポリマー膜の1つ又は複数の面上又はポリマー膜の間に配置されることができる。
【0034】
放熱層、セラミック層、及び/又は複合層は、1つ又は複数の基材、例えばポリマー膜上にコーティングされ、押し出され、積層され、挟まれ、又は固定されることができると企図される。更に、層のいずれかに、例えば放熱層及び/又はセラミック層の成分として任意の既知のバインダー及び/又は接着剤を利用することができる。
【0035】
いくつかの実施形態によれば、本明細書に記載される放熱セパレータは、例えば-40℃~400℃の温度範囲で100J/mK以上の熱伝導率を示すことができ、及び/又は熱をかけた場合例えば少なくとも2℃の温度の急激な上昇を示すことができる。
【0036】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される放熱セパレータは、電池又はセルに組み込まれることができる。電池セルは、他の構成要素の中でも、負極、正極、及び負極と正極との間に配置されたセパレータを含むことができる。負極と正極との間に配置されたセパレータは、本明細書に記載される放熱セパレータであることができる。
【0037】
いくつかの例では、例えば動作中又は短絡が起きた場合、放熱セパレータは、電池又はセル内部の熱の伝播を、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、80%、又は少なくとも90%低減することができる。いくつかの例では、放熱セパレータは、熱の伝播を停止することができる。
【0038】
いくつかの態様によれば、放熱セパレータは、改善された体積エネルギー密度(Wh/l)及び/又は質量エネルギー密度(Wh/kg)を有する電池又はセルを可能にすることができる。いくつかの例では、例えば、放熱セパレータは、300Wh/l超、400Wh/l超、500Wh/l超、又は600Wh/l超の体積エネルギー密度を有する電池又はセルを可能にすることができる。いくつかの例では、例えば、放熱セパレータは、300Wh/kg超、400Wh/kg超、又は500Wh/kg超の質量エネルギー密度を有する電池又はセルを可能にすることができる。
【0039】
ここで図面を参照すると、
図1は、電池セパレータ構造102、104、106(例えば、放熱セパレータ)の例示的構成を示し、本明細書に記載される技術のいくつかの態様によれば、本開示のいくつかの実施形態は、この構成を電池セル内の熱の伝播を低減する及び/又は熱を放熱するために使用することができる。本明細書に記載されるこれ及び他の配置は、例として記載されるにすぎないことを理解すべきである。示されるものに加えて、又は示されるものの代わりに、他の配置及び要素を使用することができ、いくつかの要素は、分かりやすくするために全て省略されてもよい。
【0040】
示される成分の中でも、電池セパレータ102は、微多孔質膜102a及び微多孔質膜102aの一方の面に固定された放熱層102bを含む。電池セパレータ104は、微多孔質膜104a及び104a’並びに放熱層104bを含む。電池セパレータ106は、微多孔質膜106a、並びに放熱層106b及び106b’を含む。いくつかの実施形態では、放熱層106b、106bの1つは、粒子状セラミック又はセラミック系層と置き換えることができる。いくつかの更なる実施形態では、層102b、104b、106b、及び106b’のいずれかは、放熱材料及びセラミック材料を含む複合層であることができる。
【0041】
次に
図2では、本明細書に記載されるいくつかの実施形態による放熱電池セパレータの実装により提供される電池セルの熱の伝播の低減及び/又は熱の放熱を示す概略図が示される。電池セル202内部の熱の発生及び伝播を引き起こす内部短絡204を有する電池セル202を提供する。電池セパレータ(例えば放熱セパレータ)は、微多孔質膜208及び放熱層210を有する電池セル内に実装される。本明細書に記載される実施形態による電池セパレータを実装した、内部短絡204’を有する電池セル202’を提供し、この場合いかなる熱の伝播又は熱エネルギーの伝達も低減及び/又は停止される。
【0042】
図3では、本明細書に記載される技術のいくつかの態様による、電池セパレータを組み込んだ電池セルと類似した電池システムの中の、エネルギー密度を示す概略図が示される。図に示すように、微多孔質膜及び放熱材料を含む放熱層を備えた放熱セパレータを組み込んだ電池302は、電池システムにより大きなエネルギー密度能力を提供する。
【0043】
いくつかの更なる実施形態によれば、電池セル内の熱の伝播、例えば高エネルギー密度電池の正常な動作温度による、又は電池セル内部の内部短絡による熱の伝播を低減する及び/又は停止する方法が提供される。いくつかの例示的実施形態によれば、方法は、微多孔質膜、例えば1つ又は複数の層のポリオレフィンを含む微多孔質膜を備えるセパレータを提供することを含む。微多孔質膜は、放熱材料及び/又は相変化材料を含む層でコーティングされた又は積層された1つ又は複数の平面側部を有することができる。放熱材料及び/又は相変化材料は、微多孔質膜にコーティング、そうでなければ固定(例えば押し出される、積層される)されることができる。いくつかの実施形態によれば、微多孔質膜は、少なくとも2%の高熱伝導材料及び/又は相変化材料を含む放熱層でコーティング又は積層される。高熱伝導材料及び/又は相変化材料を含むセパレータは、電池セル内に実装されることができ、高エネルギー密度電池の態様と一致する熱範囲に供される。一度熱範囲に供されると、セパレータ及び/又は放熱材料層は、0.01W/mK~約2200W/mK、より具体的には約100W/mK~約1000W/mKの割合で熱を伝導する及び/又は放熱することができる。
【0044】
本発明の少なくとも特定の実施形態、態様又は目的によれば、1つ又は複数の層のポリオレフィン若しくはポリオレフィンのブレンド又はポリオレフィン及び他の材料の混合物を含む少なくとも1つの微多孔質膜、及び少なくとも1つの微多孔質膜の少なくとも1つの面に固定された少なくとも1つの放熱層であって、放熱層は、電池セル内部の熱を放熱する及び熱の伝播を低減するよう構成され、放熱層は、正常な電池セル動作範囲内又は正常な電池セル動作範囲を超えて熱を放熱するよう構成された少なくとも1つの熱伝導材料又は相変化材料を含むことができ、放熱層はまた、少なくとも1つの吸熱材料又は高熱容量材料も含むことができ、放熱層はまた、2つの微多孔質膜の間に配置されてもよい、及び/又は同種のものである、放熱層を備える電池セパレータが提供される。
【0045】
示された及び記載された様々な構成要素及び/又はステップ、並びに示されていないものの多くの異なる配置が、以下の特許請求の範囲から逸脱することなく可能である。本発明の技術の実施形態は、制限するよりはむしろ例示する目的で記載されている。本開示を参照すると代わりの実施形態が明らかになるだろう。前述のものを実装する別の手段は、以下の特許請求の範囲から逸脱することなく完了することができる。特定の特徴及びサブコンビネーションは有用であり、他の特徴及びサブコンビネーションを参照することなく使用することができ、特許請求の範囲内にあると企図される。
【手続補正書】
【提出日】2024-04-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池セパレータであって、
1つ又は複数の層のポリオレフィンを含む微多孔質膜、及び
前記微多孔質膜の面に固定された放熱層であって、前記放熱層は、少なくとも2%の高熱伝導材料を含み、電池セル内部の熱の伝播を低減するよう構成される、前記放熱層を備える、電池セパレータ。
【請求項2】
前記放熱層は、相変化材料を含む、請求項1に記載の電池セパレータ。
【請求項3】
前記相変化材料は、正常な電池セル動作温度範囲内又は正常な電池セル動作温度範囲を超えて熱を放熱するよう構成された、ワックス、有機物質、無機物質、塩、金属、又はそれらの混合物である、請求項2に記載の電池セパレータ。
【請求項4】
前記放熱層は、ポリマー及び/又はブレンドポリマーを含む、請求項1に記載の電池セパレータ。
【請求項5】
前記高熱伝導材料は、0.01W/mk~2200W/mkの熱伝導率範囲を有する、請求項1に記載の電池セパレータ。
【請求項6】
前記高熱伝導材料は、100W/mk~1000W/mkの熱伝導率範囲を有する、請求項1に記載の電池セパレータ。
【請求項7】
前記高熱伝導材料は、AlN、Si
3N
4、又はBNの少なくとも1つである、請求項1に記載の電池セパレータ。
【請求項8】
前記放熱層は、電池セル内部の熱の伝播を少なくとも50%低減するよう構成される、請求項1に記載の電池セパレータ。
【請求項9】
前記微多孔質膜は、1つ又は複数のポリオレフィンを含む、請求項1に記載の電池セパレータ。
【請求項10】
前記ポリオレフィンは、ポリエチレン、ポリプロピレン、又は両者の組合せである、請求項1に記載の電池セパレータ。
【請求項11】
前記微多孔質膜は、単層膜、二層膜、三層膜、又は多層膜である、請求項1に記載の電池セパレータ。
【請求項12】
電池セルであって、
負極、
正極、及び
前記負極及び前記正極の間に配置されたセパレータであって、前記セパレータは、
1つ又は複数の層のポリオレフィンを含む微多孔質膜、及び
前記微多孔質膜の面に固定された放熱層であって、前記放熱層は、少なくとも2%の高熱伝導材料を含み、電池セル内部の熱の伝播を低減するよう構成される、前記放熱層を備える、前記セパレータを備える、
電池セル。
【請求項13】
前記放熱層は、相変化材料を含む、請求項
12に記載の電池セル。
【請求項14】
前記相変化材料は、正常な電池セル動作温度範囲内又は正常な電池セル動作温度範囲を超えて熱を放熱するよう構成された、ワックス、有機物質、無機物質、塩、金属、又はそれらの混合物である、請求項
13に記載の電池セル。
【請求項15】
前記放熱層は、ポリマー及び/又はブレンドポリマーを含む、請求項
12に記載の電池セル。
【請求項16】
前記高熱伝導材料は、0.01W/mk~2200W/mkの熱伝導率範囲を有する、請求項
12に記載の電池セル。
【請求項17】
前記高熱伝導材料は、100W/mk~1000W/mkの熱伝導率範囲を有する、請求項
12に記載の電池セル。
【請求項18】
前記高熱伝導材料は、AlN、Si
3N
4、又はBNの少なくとも1つである、請求項
12に記載の電池セル。
【請求項19】
1つ又は複数の層のポリオレフィン若しくはポリオレフィンのブレンド又はポリオレフィン及び他の材料の混合物を含む少なくとも1つの微多孔質膜、及び前記少なくとも1つの微多孔質膜の少なくとも1つの面に固定された少なくとも1つの放熱層を備える電池セパレータであって、前記放熱層は、電池セル内部の熱を放熱し、熱の伝播を低減するよう構成され、前記放熱層は、正常な電池セル動作範囲内又は正常な電池セル動作範囲を超えて熱を放熱するよう構成された熱伝導材料又は相変化材料の少なくとも1つを含むことができ、前記放熱層はまた任意選択で少なくとも1つの吸熱材料又は高熱容量材料を含むこともでき、前記放熱層はまた任意選択で2つの微多孔質膜の間に配置されてもよい、電池セパレータ。
【国際調査報告】