(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-18
(54)【発明の名称】注入情報を収集するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
A61M 5/31 20060101AFI20240910BHJP
A61M 5/315 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
A61M5/31 530
A61M5/315 510
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024510642
(86)(22)【出願日】2022-08-25
(85)【翻訳文提出日】2024-04-19
(86)【国際出願番号】 US2022041590
(87)【国際公開番号】W WO2023028268
(87)【国際公開日】2023-03-02
(32)【優先日】2021-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518264424
【氏名又は名称】クリーデンス メドシステムズ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Credence MedSystems,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】シュルザス,アラン イー.
(72)【発明者】
【氏名】レオン,ミナ エム.
(72)【発明者】
【氏名】ティラック,ジェフ
(72)【発明者】
【氏名】ディアス,スティーヴン エイチ.
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD08
4C066EE14
4C066QQ41
4C066QQ42
4C066QQ48
4C066QQ54
4C066QQ55
4C066QQ73
4C066QQ77
4C066QQ78
4C066QQ82
(57)【要約】
注入用のシステムはシリンジ本体を含み、このシリンジ本体は、近位端および遠位端と、シリンジ内部と、その近位端にあるシリンジフランジとを含む。また、本システムは、シリンジ内部に配置されたストッパ部材も含む。本システムは、ストッパ部材に結合され、ストッパ部材をシリンジ本体に対してシリンジ内部で遠位方向に挿入するよう操作されるように構成されたプランジャ部材をさらに含む。さらに、本システムは、シリンジ本体の遠位端に結合された針を含む。さらに、本システムは、シリンジ本体に取り外し可能に結合されたスマートフランジを含む。スマートフランジは、取付データを測定するための取付センサを含む。また、スマートフランジは、取付データを分析して、スマートフランジに配置されたシリンジ本体の有無およびタイプを判定するプロセッサも含む。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
注入用のシステムであって、
近位端および遠位端と、シリンジ内部と、前記近位端にあるシリンジフランジとを有するシリンジ本体と、
前記シリンジ内部に配置されたストッパ部材と、
前記ストッパ部材に結合され、前記ストッパ部材を前記シリンジ本体に対して前記シリンジ内部で遠位方向に挿入するよう操作されるように構成されたプランジャ部材と、
前記シリンジ本体の遠位端に結合された針と、
シリンジ本体に取り外し可能に結合されたスマートフランジとを備え、前記スマートフランジが、
前記スマートフランジに配置されたシリンジ本体の有無およびタイプに対応する取付データを測定する取付センサと、
前記取付データを分析して、前記スマートフランジに配置されたシリンジ本体の有無およびタイプを判定するプロセッサとを備えることを特徴とするシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記プランジャ部材が、X字形の断面を有し、
前記スマートフランジが、横向きの取付開口部を規定し、
前記スマートフランジが、前記プランジャ部材が前記横向きの取付開口部に入る際に前記プランジャ部材の向きを定めるように構成された一対の方向付けリブを備えることを特徴とするシステム。
【請求項3】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記取付センサが、
前記スマートフランジによって規定される取付空間内に延出する接触部材と、
取付細長部材であって、前記接触部材が前記取付細長部材の中間部分に結合される、取付細長部材と、
前記取付細長部材の遠位端に結合された取付磁気部材と、
前記取付磁気部材に隣接して配置された取付磁気センサとを含むことを特徴とするシステム。
【請求項4】
請求項3に記載のシステムにおいて、
前記接触部材および前記スマートフランジは、前記シリンジ本体を前記スマートフランジの取付空間内に配置することにより前記接触部材が前記スマートフランジに対して相対的に動くように構成され、
前記取付細長部材および前記接触部材は、前記接触部材が前記スマートフランジに対して相対的に動くことにより前記取付細長部材が弾性変形するように構成され、
前記取付磁気部材および前記取付細長部材は、前記取付細長部材が弾性変形することにより前記取付磁気部材が前記取付磁気センサに対して相対的に動くように構成され、
前記取付磁気センサは、前記取付磁気部材の動きを検出し、検出した前記取付磁気部材の動きに基づいて、前記取付データを生成することを特徴とするシステム。
【請求項5】
請求項3に記載のシステムにおいて、
前記取付磁気センサが、磁気抵抗角度センサであることを特徴とするシステム。
【請求項6】
請求項3に記載のシステムにおいて、
前記スマートフランジが、内部空間を規定し、
前記取付細長部材、前記取付磁気部材および前記取付磁気センサが、前記内部空間に配置されていることを特徴とするシステム。
【請求項7】
請求項3に記載のシステムにおいて、
前記スマートフランジが、前記シリンジ本体に対する前記プランジャ部材の相対的な動きに対応する注入データを測定する注入センサをさらに備え、
前記プロセッサが、前記注入データを分析して、注入イベントの発生を判定することを特徴とするシステム。
【請求項8】
請求項7に記載のシステムにおいて、
前記注入センサが、
ホイールと、
前記ホイールに結合され、前記スマートフランジに回転可能に取り付けられた注入細長部材と、
前記細長部材の遠位端に結合された注入磁気部材と、
前記磁気部材に隣接して配置された注入磁気センサとを含むことを特徴とするシステム。
【請求項9】
請求項8に記載のシステムにおいて、
前記スマートフランジが、内部空間を規定し、
前記注入細長部材、前記注入磁気部材および前記注入磁気センサが、前記内部空間に配置されていることを特徴とするシステム。
【請求項10】
請求項8に記載のシステムにおいて、
前記ホイールが、前記接触部材であり、
前記注入細長部材が、前記取付細長部材であり、
前記注入磁気部材が、前記取付磁気部材であり、
前記注入磁気センサが、前記取付磁気センサであることを特徴とするシステム。
【請求項11】
請求項8に記載のシステムにおいて、
前記ホイールおよび前記スマートフランジは、前記プランジャ部材が前記スマートフランジに対して軸方向に動くと前記ホイールが回転するように構成され、
前記注入細長部材および前記ホイールは、前記ホイールが回転すると前記注入細長部材が回転するように構成され、
前記注入磁気部材および前記注入細長部材は、前記注入細長部材が回転すると前記注入磁気部材が前記注入磁気センサに対して相対的に回転するように構成され、
前記注入磁気センサは、前記注入磁気部材の回転を検出し、検出した前記注入磁気部材の回転に基づいて、前記注入データを生成することを特徴とするシステム。
【請求項12】
請求項8に記載のシステムにおいて、
前記注入磁気センサが、磁気抵抗回転センサであることを特徴とするシステム。
【請求項13】
請求項8に記載のシステムにおいて、
前記プランジャ部材は、X字形の断面を有し、4つの半径方向に延びる部分を含み、
前記ホイールおよび前記プランジャ部材は、前記ホイールが前記プランジャ部材の4つの半径方向に延びる部分のうちの2つに接触するように構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項14】
請求項7に記載のシステムにおいて、
前記注入センサが、
前記スマートフランジに回転可能に取り付けられたローラと、
前記ローラ部材の遠位端に結合された注入磁気部材と、
前記注入磁気部材に隣接して配置された注入磁気センサとを含むことを特徴とするシステム。
【請求項15】
請求項14に記載のシステムにおいて、
前記スマートフランジが、内部空間を規定し、
前記注入細長部材、前記注入磁気部材および前記注入磁気センサが、前記内部空間に配置されていることを特徴とするシステム。
【請求項16】
請求項14に記載のシステムにおいて、
前記ローラおよび前記スマートフランジは、前記スマートフランジに対して前記プランジャ部材が軸方向に動くと前記ローラが回転するように構成され、
前記注入磁気部材および前記ローラは、前記ローラが回転すると前記注入磁気部材が前記注入磁気センサに対して相対的に回転するように構成され、
前記注入磁気センサは、前記注入磁気部材の回転を検出し、検出した前記注入磁気部材の回転に基づいて、前記注入データを生成することを特徴とするシステム。
【請求項17】
請求項14に記載のシステムにおいて、
前記注入磁気センサが、磁気抵抗回転センサであることを特徴とするシステム。
【請求項18】
請求項14に記載のシステムにおいて、
前記プランジャ部材は、X字形の断面を有し、4つの半径方向に延びる部分を含み、
前記ローラおよび前記プランジャ部材は、前記ローラが前記プランジャ部材の4つの半径方向に延びる部分のうちの2つに接触するように構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項19】
請求項18に記載のシステムにおいて、
前記スマートフランジは、前記ローラが前記プランジャ部材の4つの半径方向に延びる部分のうちの2つに接触している場合にのみ、前記スマートフランジが前記プランジャ部材に取り付けられることを可能にするサイズの取付空間を規定する一対の方向付けリブを含むことを特徴とするシステム。
【請求項20】
請求項14に記載のシステムにおいて、
前記ローラは、それぞれ異なるサイズを有する複数のシリンジ本体を収容するように、前記スマートフランジ内に懸架されていることを特徴とするシステム。
【請求項21】
請求項7に記載のシステムにおいて、
前記注入センサが、
ホイールと、
前記ホイールに隣接して配置されて、前記ホイールの回転を測定する注入センサとを含むことを特徴とするシステム。
【請求項22】
請求項21に記載のシステムにおいて、
前記注入センサが、光学センサであることを特徴とするシステム。
【請求項23】
請求項21に記載のシステムにおいて、
前記注入センサが、容量性センサであることを特徴とするシステム。
【請求項24】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記シリンジ本体が、シリンジフランジを含み、
前記スマートフランジが、前記スマートフランジを前記シリンジ本体に解放可能に結合するように構成された複数のスナップを備えることを特徴とするシステム。
【請求項25】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記シリンジ本体が、0.3ml、0.5mlおよび1mlからなる群のなかから選択された容積を有することを特徴とするシステム。
【請求項26】
注入用のシステムであって、
近位端および遠位端と、シリンジ内部と、前記近位端にあるシリンジフランジとを有するシリンジ本体と、
前記シリンジ内部に配置されたストッパ部材と、
前記ストッパ部材に結合され、前記ストッパ部材を前記シリンジ本体に対して前記シリンジ内部で遠位方向に挿入するよう操作されるように構成されたプランジャ部材と、
前記シリンジ本体の遠位端に結合された針と、
シリンジ本体に取り外し可能に結合されたスマートフランジとを備え、前記スマートフランジが、
前記シリンジ本体に対する前記プランジャ部材の動きに対応する注入データを測定する注入センサと、
前記注入データを分析して注入イベントの発生を判定するプロセッサとを含むことを特徴とするシステム。
【請求項27】
請求項26に記載のシステムにおいて、
前記注入センサが、
前記スマートフランジに回転可能に取り付けられた第1および第2のローラと、
それぞれの第1および第2のローラに結合された第1および第2のロータディスクと、
前記第1および第2のロータディスクに隣接して配置された第1および第2の容量性センサとを含むことを特徴とするシステム。
【請求項28】
請求項27に記載のシステムにおいて、
前記第1および第2のローラの各々が、弾性材料で覆われたマンドレルを含むことを特徴とするシステム。
【請求項29】
請求項28に記載のシステムにおいて、
前記注入センサが、前記第1および第2のローラのそれぞれのマンドレルに通されたU字形部材をさらに含むことを特徴とするシステム。
【請求項30】
請求項29に記載のシステムにおいて、
前記U字形部材は、前記第1および第2のローラのそれぞれのマンドレルが互いに離れるように動くときに、前記第1および第2のローラのそれぞれのマンドレルを互いに向けて動かす付勢力を加えるように構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項31】
請求項27に記載のシステムにおいて、
前記第1および第2のロータディスクの各々が、複数の金属パッドを含むことを特徴とするシステム。
【請求項32】
請求項27に記載のシステムにおいて、
前記第1および第2の容量性センサの各々が、ステータを含むことを特徴とするシステム。
【請求項33】
請求項27に記載のシステムにおいて、
前記プロセッサが、前記容量性センサの各々に高周波電流を印加するように構成されていることを特徴とするシステム。
【請求項34】
請求項27に記載のシステムにおいて、
前記注入センサが、
前記第1のロータディスクと第1の容量性センサとの間に配置された第1の誘電体部材と、
前記第2のロータディスクと第2の容量性センサとの間に配置された第2の誘電体部材とをさらに含むことを特徴とするシステム。
【請求項35】
請求項27に記載のシステムにおいて、
前記注入センサが、
前記第1の容量性センサの反対側で前記第1のロータディスクに隣接して配置された第3の容量性センサと、
前記第2の容量性センサの反対側で前記第2のロータディスクに隣接して配置された第4の容量性センサとをさらに含むことを特徴とするシステム。
【請求項36】
請求項27に記載のシステムにおいて、
前記第1および第2のローラが、前記スマートフランジに対して相対的に動くことができることを特徴とするシステム。
【請求項37】
請求項27に記載のシステムにおいて、
前記スマートフランジに配置された前記シリンジ本体の有無およびタイプに対応する取付データを測定する取付センサをさらに備え、
前記プロセッサが、前記取付データを分析して、前記スマートフランジに配置されたシリンジ本体の有無およびタイプを判定することを特徴とするシステム。
【請求項38】
請求項37に記載のシステムにおいて、
前記取付センサが、
前記第1のローラに結合された接触部材と、
前記接触部材に隣接して配置された接触検出器とを含み、前記第1のローラが前記第2のローラから離れるように変形すると、前記接触部材が前記接触検出器に接触するようになっていることを特徴とするシステム。
【請求項39】
注入システムから排出された注入流体の量を特定するための方法であって、
シリンジ本体をスマートフランジに取り付けるステップと、
前記シリンジ本体を前記スマートフランジに取り付けた後であって、前記シリンジ本体内のプランジャ部材を移動させる前に、前記スマートフランジに対する前記プランジャ部材の第1の位置を検出して記憶するステップと、
前記プランジャ部材を前記第1の位置から近位方向に移動させて前記シリンジ本体内に空気を引き込んだ後、前記スマートフランジに対する前記プランジャ部材の第2の位置を検出して記憶するステップと、
前記プランジャ部材を前記第2の位置から遠位方向に移動させて空気の少なくとも一部を注入流体のバイアルに注入した後、前記スマートフランジに対する前記プランジャ部材の第3の位置を検出して記憶するステップと、
前記プランジャ部材の第3の位置を前記プランジャ部材のベースライン/ゼロ位置として保存するステップと、
前記プランジャ部材を前記第3の位置から近位方向に移動させて注入流体の少なくとも一部と空気の一部を前記シリンジ本体内に引き込んだ後、前記スマートフランジに対する前記プランジャ部材の第4の位置を検出して記憶するステップと、
前記プランジャ部材を前記第4の位置から遠位方向に僅かに移動させて前記シリンジ本体からいくらかの空気を排出させた後、前記スマートフランジに対する前記プランジャ部材の第5の位置を検出して記憶するステップと、
前記スマートフランジに対する前記プランジャ部材の第5の位置および前記プランジャ部材のベースライン/ゼロ位置から、前記シリンジ本体内の注入流体の量を計算するステップとを備えることを特徴とする方法。
【請求項40】
請求項39に記載の方法において、
前記スマートフランジに対する前記プランジャ部材の第3の位置が、前記シリンジ本体の遠位端において前記プランジャ部材に結合されたストッパ部材の位置に対応することを特徴とする方法。
【請求項41】
請求項39に記載の方法において、
前記シリンジ本体内の注入流体の量をユーザに伝えるステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項42】
請求項41に記載の方法において、
前記注入流体の量を伝えることが、注入流体の量を表示すること、および注入流体の量の音響インジケータを再生することからなる群のなかから選択されることを特徴とする方法。
【請求項43】
請求項39に記載の方法において、
前記シリンジ本体内の注入流体の量が注入流体の予め設定された量と等しいときをユーザに示すステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項44】
請求項39に記載の方法において、
前記シリンジ本体内の注入流体の量が注入流体の予め設定された量よりも多いときをユーザに示すステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項45】
注入用のシステムであって、
近位端および遠位端と、シリンジ内部と、前記近位端にあるシリンジフランジとを有するシリンジ本体と、
前記シリンジ内部に配置されたストッパ部材と、
前記ストッパ部材に結合され、前記ストッパ部材を前記シリンジ本体に対して前記シリンジ内部で遠位方向に挿入するよう操作されるように構成されたプランジャ部材と、
前記シリンジ本体の遠位端に結合された針と、
シリンジ本体に取り外し可能に結合されたスマートフランジとを備え、前記スマートフランジが、
前記プランジャ部材を長手方向軸に沿って移動させる駆動ホイールと、
前記駆動ホイールを回転させるモータと、
前記プランジャ部材を前記駆動ホイールに押し付けるアイドラホイールとを含むことを特徴とするシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、流体注入に対する様々なレベルの制御を容易にするための注入システム、デバイスおよびプロセスに関し、より詳細には、医療環境における安全シリンジに関連するシステムおよび方法に関する。さらに詳細には、本発明は、注入関連情報を管理するための注入システム、デバイスおよびプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
図1A(2)に示すような数百万ものシリンジが、医療環境で毎日消費されている。典型的なシリンジ(2)は、管状本体(4)、プランジャ(6)および注射針(8)を含む。
図1Bに示すように、そのようなシリンジ(2)は、患者に流体を注入するだけでなく、薬瓶、バイアル、バッグまたは他の薬剤封入システム(10)などの容器から流体を引き出すか、またはそれら容器内に流体を排出するために利用することもできる。実際、米国などの一部の国では、無菌状態の維持に関する懸念と、規制上の制約により、特定の患者の環境に示すように、シリンジ(2)と一緒に薬瓶(10)を使用した場合、そのような薬瓶は、一人の患者に対してのみ使用され、その後、処分しなければならず、それにより薬瓶や残りの薬剤の廃棄物から多くの医療廃棄物がもたらされ、特定の重要な薬剤の周期的な不足の原因にもなる。
【0003】
図2Aを参照すると、3本のルアー型シリンジ(12)が示されており、それぞれが、遠位側に配置されたルアー継手形状(14)を有し、それらが、
図2Bに示すルアーマニホールドアセンブリ(16)などの同様の継手形状を有する他のデバイスと結合されるようになっている。
図2Bのルアーマニホールドアセンブリは、静脈内注入バッグの使用の有無にかかわらず、患者に液体薬剤を静脈内投与するために使用することができる。
図2Aのシリンジのルアー継手(14)は、「雄」ルアー継手と呼ばれ、
図2Bのルアー継手(18)は、「雌」ルアー継手と呼ばれることもあり、ルアーインターフェースの一方は、ネジ山が形成されて(この場合、その構成を「ルアーロック」構成と称することもある)、両者が相対的な回転により結合され、それが圧縮荷重と組み合わされる場合もある。言い換えれば、ルアーロックの一実施形態では、回転が、場合によっては圧縮とともに、雄継手(14)のネジ山を係合させるために利用され、このネジ山は、雌継手(18)上のフランジと係合して、デバイスを流体封入された結合状態とするように構成されている。別の実施形態では、ネジ山または回転を用いることなく、圧縮を使用してルアー係合を提供するために、テーパ状のインターフェース形状が利用されることもある(そのような構成は、「スリップオン」または「円錐」ルアー構成と称することもある)。そのようなルアー結合は、オペレータにとって比較的安全であると認識されているが、ルアー結合の組立中に薬剤がこぼれたり、漏れたり、部品が破損したりする危険性がある。
【0004】
一方、針注入構成を使用すると、鋭い針が人や望ましくない構造物に接触したり、刺したりする危険性がある。このような理由から、いわゆる「安全シリンジ」が開発されてきた。安全シリンジ(20)の一実施形態が、
図3に示されており、この実施形態では、管状のシールド部材(22)が、シリンジ本体(4)に対してロック位置から解放されたときに、針(8)を覆うようにバネ付勢されている。安全シリンジ(24)の別の実施形態が、
図4Aおよび
図4Bに示されている。この構成では、シリンジ本体(4)に対してプランジャ(6)が完全に挿入された後、
図4Bに示すように、引き込み可能な針(26)が、管状本体(4)内の安全位置に引き込まれる(28、26)ように構成されている。それ自体に納めるように構成されたそのような形態は、血液の飛び散り/エアロゾル化の問題や、誤作動して作動が早過ぎる可能性のある予め載荷されたエネルギーの安全な貯蔵、バネ圧縮体積内の残留デッドスペースに起因する全用量注射を与える際の精度の喪失、および/または痛みや患者の不安に関連し得る引き込み速度制御の喪失に関連する可能性がある。
【0005】
図5Aおよび
図5Bに示すようなプレフィルドシリンジアセンブリに対する需要の増加により、シリンジ市場がさらに複雑化しており、それらは一般に、シリンジ本体または「薬剤封じ込め送達システム」(34)と、プランジャ先端、プラグまたはストッパ(36)と、ルアー型インターフェースに取り付けられた遠位シールまたはキャップ(35)とを備える(
図5Aは定位置にあるキャップ35を示しているが、
図5Bはルアー型インターフェース(14)を例示するために、キャップを取り外してある)。液体薬剤は、遠位シール(35)とプランジャ先端(36)の遠位端(37)との間の容積または薬剤リザーバ(40)内にある。プランジャ先端(36)は、標準的なブチルゴム材料を含むことができ、関連するシリンジ本体(34)構造および材料に対する好ましいシールおよび相対運動特性を容易にするために、生体適合性潤滑性コーティング(例えば、ポリテトラフルオロエチレン(「PTFE」)などでコーティングされている。
図5Bのシリンジ本体(34)の近位端は、シリンジ本体(34)の材料と一体的に形成された従来の一体型シリンジフランジ(38)を備える。フランジ(38)は、シリンジ本体(34)から半径方向に延びるように構成されており、シリンジ本体(34)の周囲の全周または円周の一部となるように構成されている。部分的なフランジは、「クリップドフランジ」として知られており、他方のフランジは「フルフランジ」として知られている。フランジは、指でシリンジを把持するために使用され、プランジャを押して注射を行うための支持を提供する。シリンジ本体(34)は、好ましくは、ガラスまたはポリマーのような半透明の材料を含む。薬剤チャンバまたはリザーバ(40)内に封じ込められた容積を形成し、針を介した関連流体の排出を補助するために、プランジャ先端(36)をシリンジ本体(34)内に配置することができる。シリンジ本体(34)は、ほぼ円筒形を(すなわち、円形の断面形状を有するプランジャ先端36がシリンジ本体に対してシールを確立するように)規定することができ、または楕円形などの他の断面形状を有するように構成することもできる。
【0006】
このようなアセンブリは、充填、包装および医薬品/薬剤インターフェーシング材料の選択とコンポーネントの使用に関する世界の絶え間なく変化する規制のすべてを満たす余裕のある世界で数少ない製造業者によって標準化され、正確に大量製造される可能性があるため、望ましい。しかしながら、そのような単純な構成では、一般的に、単回使用、安全性、自動無効化および針刺し防止に関する新しい世界基準を満たすことはできない。このため、特定のサプライヤは、1つのソリューションで規格のすべてまたはその少なくとも一部を満たそうとする、より「垂直」なソリューション、例えば、
図5Cに示すようなシステム(41)に移行してきており、多くの異なるシナリオでそれらの基準を満たそうとした結果、そのような製品には大きな制約があり(
図3~
図4Bを参照して上述したような制約を含む)、在庫および使用費用が比較的高くなる可能性がある。
【0007】
自動化された注入情報収集は、医療情報学、個別化医療、電子医療記録、および個別化ウェアラブルコンピューティングデバイスに限定されるものではないが、それらを含む様々な医療分野における進歩に繋がる可能性がある。収集された注入情報は、注入薬剤投与の管理およびスケジューリングにおいて患者を支援するために使用することができる。また、収集された注入情報を第三者(例えば、医療提供者、臨床/医療研究機関、製薬会社、保険会社など)に送信して、医療の管理と個別化を改善することもできる。収集可能な注入情報のタイプには、リアルタイムの注入モニタリング、データキャプチャおよびフィードバックなどがある。そのような注入情報の収集により、臨床試験の遠隔監視やデータの完全性が可能になる。そのような注入情報の収集により、コンプライアンスを向上させてコストを抑制することもできる。さらに、そのような注入情報の収集により、ユーザコホートへの集中的なメッセージングも可能になる。さらに、そのような注入情報の収集により、使用パターンの特徴を明らかにし、疾患管理を改善することもできる。
【0008】
注入システムのタイプにかかわらず、注入剤(例えば、薬剤)の送達に関連する情報を収集することにより、多くの利点が得られる。注入剤が患者により自己投与される実施形態では、注入薬剤の送達に関連する情報(すなわち、「注入情報」)を収集することにより、患者のコンプライアンスの判定を容易にすることができる。そのような実施形態では、注入情報が、注入タイミング、注入が送達されたか否か、および/または注入のサイズ/投与量を含み得る。患者のノンコンプライアンスは医療費を増加させるため、患者のコンプライアンスを判定することにより、医療費を削減し、医療結果を改善することができる。注入剤が医療専門家によって投与される実施形態においても、注入情報を収集することにより、注入薬剤送達の追跡精度を高めることができ、その結果、医療コストを削減し、(例えば、注入が適切に送達されたか否かを判定することにより)医療結果を改善することができる。注入情報の収集を自動化することにより、最小限の人的介入で、または人的介入なしで、それらの利点および他の多くの利点を確保することができる。
【0009】
糖尿病の治療および管理の典型的な例では、糖尿病に罹患している何百万人ものアメリカ人が、注入インスリンを含む様々な注入薬剤を摂取している。しかしながら、注入インスリンには、適切な投与量を調整することが困難であるなどの様々なリスクが含まれ、その結果、治療不足や低血糖が生じる可能性がある。そのようなリスクがあるにもかかわらず、およそ10,000,000人のアメリカ人が糖尿病を管理するために毎日インスリンを摂取している。インスリンは、主に3つの方法、シリンジ、ペンおよびポンプで投与される。バイアルとシリンジは、最も費用対効果の高いインスリン投与方法である。インスリン注入に特化した注入情報を収集することで、注入インスリンに関連するリスクを減らすことができる。また、インスリン注入情報は、デジタル/バーチャル糖尿病クリニックの一部として糖尿病の治療管理に使用することもできる。患者ケアは、行動データ、状況データおよびリアルタイムデータの収集、予測分析および適応学習、並びに、モバイルでの関与およびフィードバックによって改善することができる。
【0010】
現在利用可能な構成の欠点に対処する注入システムが必要とされている。特に、従来供給されているシリンジおよびカートリッジの既存の比較的よく制御されたサプライチェーンを利用しながら、注入情報を自動的に収集することができる注入システムが必要とされている。さらに、収集された注入情報に基づいて様々な関係者(例えば、患者、医療提供者、臨床/医学研究機関、製薬会社、保険会社など)と連絡を取り、医療結果を改善し、医療費を削減する注入システムが必要とされている。
【発明の概要】
【0011】
実施形態は注入システムを対象とする。特に、実施形態は、注入剤の送達に関連する情報を収集する安全注入システムを対象とする。
【0012】
一実施形態では、注入用のシステムがシリンジ本体を含み、このシリンジ本体が、近位端および遠位端と、シリンジ内部と、その近位端にあるシリンジフランジとを含む。また、本システムは、シリンジ内部に配置されたストッパ部材も含む。本システムは、ストッパ部材に結合され、ストッパ部材をシリンジ本体に対してシリンジ内部で遠位方向に挿入するよう操作されるように構成されたプランジャ部材をさらに含む。さらに、本システムは、シリンジ本体の遠位端に結合された針を含む。さらに、本システムは、シリンジ本体に取り外し可能に結合されたスマートフランジを含む。スマートフランジは、スマートフランジに配置されたシリンジ本体の有無およびタイプに対応する取付データを測定するための取付センサを含む。また、スマートフランジは、取付データを分析して、スマートフランジに配置されたシリンジ本体の有無およびタイプを判定するためのプロセッサも含む。
【0013】
1または複数の実施形態では、取付センサが、スマートフランジによって規定される取付空間内に延出する接触部材を含む。取付センサは、取付細長部材を含むこともでき、この取付細長部材の中間部分に接触部材が結合される。取付センサは、取付細長部材の遠位端に結合された取付磁気部材をさらに含むことができる。さらに、取付センサは、取付磁気部材に隣接して配置された取付磁気センサを含むことができる。
【0014】
1または複数の実施形態において、接触部材およびスマートフランジは、シリンジ本体をスマートフランジの取付空間内に配置することにより接触部材がスマートフランジに対して相対的に動くように構成される。取付細長部材および接触部材は、接触部材がスマートフランジに対して相対的に動くと、取付細長部材が弾性変形するように構成することができる。取付磁気部材および取付細長部材は、取付細長部材が弾性変形することにより取付磁気部材が取付磁気センサに対して相対的に動くように構成することができる。取付磁気センサは、取付磁気部材の動きを検出し、検出した取付磁気部材の動きに基づいて取付データを生成することができる。
【0015】
1または複数の実施形態では、取付磁気センサが磁気抵抗角度センサである。スマートフランジは内部空間を規定することができ、取付細長部材、取付磁気部材および取付磁気センサは、内部空間に配置することができる。
【0016】
1または複数の実施形態では、スマートフランジが、シリンジ本体に対するプランジャ部材の相対的な動きに対応する注入データを測定するための注入センサをさらに含む。プロセッサは、注入データを分析して、注入イベントの発生を判定することができる。注入センサは、ホイールと、ホイールに結合され、スマートフランジに回転可能に取り付けられた注入細長部材と、細長部材の遠位端に結合された注入磁気部材と、磁気部材に隣接して配置された注入磁気センサとを含むことができる。スマートフランジは、内部空間を規定することができ、注入細長部材、注入磁気部材および注入磁気センサは、内部空間に配置することができる。ホイールは接触部材であってもよい。注入細長部材は、取付細長部材であってもよい。注入磁気部材は、取付磁気部材であってもよい。注入磁気センサは、取付磁気センサであってもよい。
【0017】
1または複数の実施形態において、ホイールおよびスマートフランジは、プランジャ部材がスマートフランジに対して軸方向に動くとホイールが回転するように構成されている。注入細長部材およびホイールは、ホイールが回転すると注入細長部材が回転するように構成することができる。注入磁気部材および注入細長部材は、注入細長部材が回転すると注入磁気センサに対して注入磁気部材が相対的に回転するように構成することができる。注入磁気センサは、注入磁気部材の回転を検出し、検出した注入磁気部材の回転に基づいて注入データを生成することができる。注入磁気センサは、磁気抵抗回転センサであってもよい。
【0018】
1または複数の実施形態では、プランジャ部材がX字形の断面を有し、4つの半径方向に延びる部分を含む。ホイールおよびプランジャ部材は、ホイールがプランジャ部材の4つの半径方向に延びる部分のうちの2つに接触するように構成することができる。
【0019】
1または複数の実施形態では、注入センサが、スマートフランジに回転可能に取り付けられたローラと、ローラの遠位端に結合された注入磁気部材と、注入磁気部材に隣接して配置された注入磁気センサとを含む。スマートフランジは、内部空間を規定することができ、注入細長部材、注入磁気部材および注入磁気センサは、内部空間に配置することができる。ローラおよびスマートフランジは、スマートフランジに対してプランジャ部材が軸方向に動くとローラが回転するように構成することができる。注入磁気部材およびローラは、ローラが回転すると注入磁気部材が注入磁気センサに対して相対的に回転するように構成することができる。注入磁気センサは、注入磁気部材の回転を検出し、検出した注入磁気部材の回転に基づいて注入データを生成することができる。注入磁気センサは、磁気抵抗回転センサであってもよい。
【0020】
1または複数の実施形態では、プランジャ部材がX字形の断面を有し、4つの半径方向に延びる部分を含む。ローラおよびプランジャ部材は、ローラがプランジャ部材の4つの半径方向に延びる部分のうちの2つに接触するように構成することができる。スマートフランジは、ローラがプランジャ部材の4つの半径方向に延びる部分のうちの2つに接触している場合にのみ、スマートフランジがプランジャ部材に取り付けられるようなサイズの取付空間を規定する一対の方向付けリブを含むことができる。ローラは、それぞれの異なるサイズを有する複数のシリンジ本体を収容するように、スマートフランジ内で懸架することができる。
【0021】
1または複数の実施形態では、注入センサが、ホイールと、ホイールの回転を測定するためにホイールに隣接して配置された注入センサとを含む。注入センサは、光学センサおよび/または容量性センサであってもよい。シリンジ本体は、シリンジフランジを含むことができ、スマートフランジは、スマートフランジをシリンジ本体に解放可能に結合するように構成された複数のスナップを含むことができる。シリンジ本体は、0.3ml、0.5mlおよび1mlからなる群のなかから選択された容積を有することができる。シリンジ本体は、2.25ml、3mlまたは5mlなどの他の任意の容積を有することもできる。プランジャ部材は、X字形の断面を有することができる。スマートフランジは、側方を向く取付開口部を規定することができ、スマートフランジは、プランジャ部材が側方を向く取付開口部に入る際にプランジャ部材を方向付けるように構成された一対の方向付けリブを含むことができる。
【0022】
別の実施形態では、注入用のシステムがシリンジ本体を含み、このシリンジ本体が、近位端および遠位端と、シリンジ内部と、その近位端にあるシリンジフランジとを含む。また、本システムは、シリンジ内部に配置されたストッパ部材も含む。本システムは、ストッパ部材に結合され、ストッパ部材をシリンジ本体に対してシリンジ内部で遠位方向に挿入するよう操作されるように構成されたプランジャ部材をさらに含む。さらに、本システムは、シリンジ本体の遠位端に結合された針を含む。さらに、本システムは、シリンジ本体に取り外し可能に結合されたスマートフランジを含む。スマートフランジは、シリンジ本体に対するプランジャ部材の動きに対応する注入データを測定するための注入センサを含む。また、スマートフランジは、注入データを分析して注入イベントの発生を判定するためのプロセッサも含む。
【0023】
1または複数の実施形態では、注入センサが、スマートフランジに回転可能に取り付けられた第1および第2のローラを含む。また、注入センサは、それぞれの第1および第2のローラに結合された第1および第2のロータディスクも含むことができる。注入センサは、第1および第2のロータディスクに隣接して配置された第1および第2の容量性センサをさらに含むことができる。第1および第2のローラの各々は、弾性材料で覆われたマンドレルを含むことができる。注入センサは、第1および第2のローラのそれぞれのマンドレルに通されたU字形部材をさらに含むことができる。U字形部材は、第1および第2のローラのそれぞれのマンドレルが互いに離れるように動くときに、第1および第2のローラのそれぞれのマンドレルを互いに向けて動かす付勢力を加えるように構成することができる。第1および第2のロータディスクの各々は、複数の金属パッドを含むことができる。第1および第2の容量性センサの各々は、ステータを含むことができる。
【0024】
1または複数の実施形態では、プロセッサが、高周波電流を容量性センサの各々に印加するように構成される。注入センサは、第1のロータディスクと第1の容量性センサとの間に配置された第1の誘電体部材と、第2のロータディスクと第2の容量性センサとの間に配置された第2の誘電体部材とをさらに含むことができる。注入センサは、第1の容量性センサの反対側で第1のロータディスクに隣接して配置された第3の容量性センサと、第2の容量性センサの反対側で第2のロータディスクに隣接して配置された第4の容量性センサとをさらに含むことができる。第1および第2のローラは、スマートフランジに対して相対的に動くことができる。
【0025】
1または複数の実施形態では、本システムが、スマートフランジに配置されたシリンジ本体の有無およびタイプに対応する取付データを測定するための取付センサをさらに含み、プロセッサが、取付データを分析して、スマートフランジに配置されたシリンジ本体の有無およびタイプを特定する。取付センサは、第1のローラに結合された接触部材と、接触部材に隣接して配置された接触検出器とを含むことができ、第1のローラが第2のローラから離れるように変形すると、接触部材が接触検出器に接触するようになっている。
【0026】
さらに別の実施形態では、注入システムから排出された注入流体の量を特定するための方法が、シリンジ本体をスマートフランジに取り付けるステップを含む。また、本方法は、シリンジ本体をスマートフランジに取り付けた後であって、シリンジ本体内のプランジャ部材を移動させる前に、スマートフランジに対するプランジャ部材の第1の位置を検出して記憶するステップも含む。さらに、本方法は、プランジャ部材を第1の位置から近位方向に移動させてシリンジ本体内に空気を引き込んだ後、スマートフランジに対するプランジャ部材の第2の位置を検出して記憶するステップを含む。さらに、本方法は、プランジャ部材を第2の位置から遠位方向に移動させて空気の少なくとも一部を注入流体のバイアル内に注入した後、スマートフランジに対するプランジャ部材の第3の位置を検出して記憶するステップを含む。さらに、本方法は、プランジャ部材の第3の位置をプランジャ部材のベースライン/ゼロ位置として保存するステップを含む。また、本方法は、プランジャ部材を第3の位置から近位方向に移動させて注入流体の少なくとも一部と空気の一部をシリンジ本体内に引き込んだ後、スマートフランジに対するプランジャ部材の第4の位置を検出して記憶するステップも含む。さらに、本方法は、プランジャ部材を第4の位置から遠位方向に僅かに移動させてシリンジ本体から若干の空気を排出させた後、スマートフランジに対するプランジャ部材の第5の位置を検出して記憶するステップを含む。さらに、本方法は、スマートフランジに対するプランジャ部材の第5の位置と、プランジャ部材のベースライン/ゼロ位置とから、シリンジ本体内の注入流体の量を計算するステップを含む。
【0027】
1または複数の実施形態では、スマートフランジに対するプランジャ部材の第3の位置が、シリンジ本体の遠位端においてプランジャ部材に結合されたストッパ部材の位置に対応する。本方法は、シリンジ本体内の注入流体の量をユーザに伝えるステップをさらに含むことができる。注入流体の量を伝えることは、注入流体の量を表示すること、および注入流体の量の音響インジケータを再生することからなる群のなかから選択することができる。本方法は、シリンジ本体内の注入流体の量が注入流体の予め設定された量と等しいときをユーザに示すステップをさらに含むことができる。本方法は、シリンジ本体内の注入流体の量が注入流体の予め設定された量よりも多いときをユーザに示すステップをさらに含むことができる。
【0028】
さらに別の実施形態では、注入用のシステムがシリンジ本体を含み、このシリンジ本体が、近位端および遠位端と、シリンジ内部と、その近位端にあるシリンジフランジとを含む。また、本システムは、シリンジ内部に配置されたストッパ部材も含む。本システムは、ストッパ部材に結合され、ストッパ部材をシリンジ本体に対してシリンジ内部で遠位方向に挿入するよう操作されるように構成されたプランジャ部材をさらに含む。さらに、本システムは、シリンジ本体の遠位端に結合された針を含む。さらに、本システムは、シリンジ本体に取り外し可能に結合されたスマートフランジを含む。スマートフランジは、プランジャ部材を長手方向軸に沿って移動させるための駆動ホイールと、駆動ホイールを回転させるためのモータと、プランジャ部材を駆動ホイールに押し付けるためのアイドラホイールとを含む。
【0029】
スマートフランジは、製造業者によって予め薬剤が充填されたシリンジ、および/または注入前にユーザによって充填されるシリンジとともに利用することができる。何れの場合も、スマートフランジは、シリンジに予め取り付けられたものであっても、あるいは注入時にシリンジに取り付けられるものであってもよい。さらに、スマートフランジの電子部品およびセンサの一部またはすべては、プランジャロッド内またはプランジャロッド上に配置されるようにしてもよい。
【0030】
上述した実施形態および他の実施形態は、以下の詳細な説明に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0031】
この特許または出願ファイルには、少なくとも1のカラー図面が含まれている。カラー図面を含むこの特許または特許出願公開の写しは、請求および必要な手数料の支払により、米国特許商標庁から提供される。
【0032】
実施形態の上述した態様および他の態様は、添付図面を参照してさらに詳細に説明されており、それら図面においては、様々な図面中の同じ要素が共通の符号によって示されている。
【0033】
【
図3】
図3は、従来の注入シリンジ構成の様々な態様を示している。
【
図6】
図6は、いくつかの実施形態に係るシリンジから分離されたスマートフランジおよびシリンジに取り外し可能に結合されたスマートフランジを示している。
【
図7】
図7A~
図7Cは、いくつかの実施形態に係るスマートフランジとともに使用するための異なるサイズの3本のシリンジを示している。
【
図8】
図8は、いくつかの実施形態に係るシリンジおよびこれに取り外し可能に結合され得るスマートフランジを示している。
【
図9】
図9は、いくつかの実施形態に係るシリンジに取り外し可能に結合されるスマートフランジを示している。
【
図10】
図10Aおよび
図10Bは、いくつかの実施形態に係るシリンジに取り外し可能に結合される前のスマートフランジを示している。
図10Cおよび
図10Dは、いくつかの実施形態に係る市販の磁気抵抗センサを概略的に示している。
【
図11】
図11A~
図11Cは、いくつかの実施形態に係る様々なサイズのシリンジに取り外し可能に結合されるスマートフランジを示している。
【
図13】
図13は、いくつかの実施形態に係る注入センサを有するスマートフランジを示している。
【
図14】
図14は、いくつかの実施形態に係る注入センサを有するスマートフランジを示している。
【
図15】
図15は、いくつかの実施形態に係るシリンジに取り付けられようとしている注入センサを有するスマートフランジを示している。
【
図16】
図16は、いくつかの実施形態に係るシリンジに取り外し可能に取り付けられた注入センサを有するスマートフランジを示している。
【
図17】
図17は、一実施形態に係るスマートフランジが取り外し可能に結合されたシリンジを使用してバイアルから薬剤を注入する方法を示している。
【
図18】
図18は、一実施形態に係るスマートフランジが取り外し可能に結合されたシリンジを使用してバイアルから薬剤を注入する方法を示している。
【
図19】
図19は、一実施形態に係るスマートフランジが取り外し可能に結合されたシリンジを使用してバイアルから薬剤を注入する方法を示している。
【
図20】
図20は、一実施形態に係るスマートフランジが取り外し可能に結合されたシリンジを使用してバイアルから薬剤を注入する方法を示している。
【
図21】
図21は、一実施形態に係るスマートフランジが取り外し可能に結合されたシリンジを使用してバイアルから薬剤を注入する方法を示している。
【
図22】
図22は、いくつかの実施形態に係るシリンジに取り外し可能に結合されたスマートフランジを示している。
【
図23】
図23Aおよび
図23Bは、いくつかの実施形態に係るシリンジに取り外し可能に結合される前のスマートフランジを示している。
【
図24】
図24は、明瞭にするためにいくつかの構成要素を省略した、いくつかの実施形態に係るスマートフランジの注入センサをスマートフランジのハウジングとともに示す斜視図である。
【
図25】
図25は、明瞭にするためにいくつかの構成要素を省略した、いくつかの実施形態に係るスマートフランジの注入センサをスマートフランジのハウジングとともに示す分解図である。
【
図26】
図26は、明瞭にするためにいくつかの構成要素を省略した、いくつかの実施形態に係るスマートフランジの注入センサをスマートフランジのハウジングとともに示す分解図である。
【
図27】
図27は、明瞭にするためにいくつかの構成要素を省略した、いくつかの実施形態に係るスマートフランジの注入センサをスマートフランジのハウジングとともに示す断面図である。
【
図28】
図28は、いくつかの実施形態に係るスマートフランジが取り外し可能に結合されたシリンジを使用して注入される薬剤の量を測定しながらバイアルから薬剤を注入する方法を示すフローチャートである。
【
図29】
図29は、いくつかの実施形態に係るシリンジに取り外し可能に結合され、プランジャドライバを含むスマートフランジを示している。
【
図30】
図30は、いくつかの実施形態に係るシリンジに取り外し可能に結合され、プランジャドライバを含むスマートフランジを示している。
【
図31】
図31は、いくつかの実施形態に係るシリンジに取り外し可能に結合され、プランジャドライバを含むスマートフランジを示している。
【
図32】
図32は、いくつかの実施形態に係るシリンジに取り外し可能に結合され、プランジャドライバを含むスマートフランジを示している。
【0034】
様々な実施形態の上記および他の利点および目的を得る方法をより良く理解するために、添付の図面を参照しながら、実施形態のより詳細な説明を提供する。なお、図面は一定の縮尺で描かれておらず、同様の構造または機能の要素が、全体を通して同様の符号で示されていることに留意されたい。それらの図面は、特定の例示的な実施形態のみを示しており、よって実施形態の範囲を限定するものとみなされるべきではないことを理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0035】
スマートフランジを有する例示的な注入システムおよびスマート注入方法
図6を参照すると、注入システム(110)は、シリンジ本体(112)と、ストッパ部材(114)と、プランジャ部材(116)と、針アセンブリ(118)と、シリンジ本体(112)に取り外し可能に取り付けられたスマートフランジ(150)とを含む。シリンジ本体(112)は、開口した近位端(120)および開口した遠位端(122)を含む。さらに、シリンジ本体(112)は、シリンジ内部(124)と、その近位端(120)にあるシリンジフランジ(126、
図7A~
図7C参照)とを含む。ストッパ部材(114)は、シリンジ内部(124)に配置され、かつプランジャ部材(116)に結合されており、プランジャ部材(116)を操作してストッパ部材(114)をシリンジ内部(124)で遠位方向に挿入することにより、針アセンブリ(118)を介してシリンジ内部(124)から注入物質(例えば、流体)を排出することが可能となっている。針アセンブリ(118)は、その近位端に針結合部材を含むようにしてもよく、あるいは針アセンブリ(118)は、シリンジ本体(112)に固定されるようにしてもよい。プランジャ部材(116)は、近位端パッド(132)を含み、それにより、ユーザの手の指(例えば、親指)を使用してプランジャ部材(116)を手動で容易に操作することができる一方で、ユーザの手の1または複数の他の指が(例えば、シリンジフランジ(126)の遠位面またはその上に配置されたスマートフランジ(150)に対して)対抗する力を提供することができる。
【0036】
図7A~
図7Cは、いくつかの実施形態に係るスマートフランジ(150、
図6参照)とともに使用するための異なるサイズの3本のシリンジ本体(112、112’、112’’)を示している。
図7Aは、0.3mlの容積を有するシリンジ本体(112)を示しており、シリンジ本体(112)が約0.204インチの外径を有し、プランジャ部材(116)がシリンジ本体(112)に適合するように約0.104インチの外径を有する。
図7Bは、0.5mlの容積を有するシリンジ本体(112’)を示しており、シリンジ本体(112’)が約0.226インチの外径を有し、プランジャ部材(116’)がシリンジ本体(112’)に適合するように約0.122インチの外径を有する。
図7Cは、1mlの容積を有するシリンジ本体(112’’)を示しており、シリンジ本体(112’’)が約0.267インチの外径を有し、プランジャ部材(116’’)がシリンジ本体(112’’)に適合するように約0.168インチの外径を有する。
図7A~
図7Cに示す針アセンブリ(118、118’、118’’)は、シリンジ本体(112、112’、112’’)に適合するように、僅かに異なる近位端を有することもできる。他の実施形態では、シリンジ本体が、2.25ml、3mlまたは5mlなど、他の任意の容積を有することもできる。シリンジ本体(112、112’、112’’’)のサイズにかかわらず、各シリンジ本体(112、112’、112’’’)のシリンジフランジ(126)および近位端部材(128)は、スマートフランジ(150、
図6参照)の取付を容易にするために同じ形状を有する。
【0037】
図8は、スマートフランジ(150)がシリンジ本体(112)に取り外し可能に結合される前の様子を示している。
図8に示すスマートフランジ(150)は、シリンジフランジ(126)および近位端部材(128)の周りでシリンジ本体(112)にクリップ/スナップ留めするように設計されている。ユーザは、スマートフランジ(150)により規定される取付開口部/ノッチ(190)を、シリンジ本体(112)のシリンジフランジ(126)および近位端部材(128)にスナップ留めすることができる。シリンジフランジ(126)および近位端部材(128)は、異なる容積のシリンジ本体(112、112’、112’’、
図7A~
図7C参照)において同じとすることができるため、スマートフランジ(150)は、それらの容積に関係なく、シリンジ本体に取り外し可能に結合することができる。この態様により、スマートフランジ(150)は、従来の注入システムコンポーネントの既存のサプライチェーンで利用可能な多種多様なシリンジ本体(112)とともに使用することができる。
【0038】
図9は、シリンジ本体(112)に取り外し可能に結合された後のスマートフランジ(150)を示している。スマートフランジ(150)は、
図8に示すように、スマートフランジ(150)がシリンジ本体(112)のシリンジフランジ(126)および近位端部材(128)上にスライドされたときに、シリンジ本体(112)の近位端部材(128)の周囲で弾性的に変形するように構成された一対のスナップ(162)を含む。
【0039】
図10Aは、スマートフランジ(150)における
図10Bの断面図のレベルを示している。
図10Bに示すように、いくつかの実施形態によれば、スマートフランジ(150)が、その中に配置された取付センサ(160)を有する。取付センサ(160)は、スマートフランジ(150)が取り付けられたシリンジ本体のタイプ(例えば、サイズ)および有無に対応する取付データを測定するように構成されている。
図10Bは、何れかのシリンジ本体に取り付けられる前のスマートフランジ(150)を示している。取付センサ(160)は、接触部材(162)を含み、この接触部材は、スマートフランジ(150)により規定される取付開口部/ノッチ(190)内に部分的に延在する。また、取付センサ(160)は、接触部材(162)が結合される取付細長部材(164)も含む。取付細長部材(164)は、その中間部分に結合された接触部材(162)を介して加えられる力によって弾性変形するように構成された金属ワイヤまたはロッドであり得る。いくつかの実施形態では、接触部材(162)が、取付細長部材(164)を通すことができる開口部を有することができる。そのような実施形態では、接触部材(162)が取付細長部材(164)にスライド可能に結合されるが、取付用開口部/ノッチ(190)に出入りする接触部材(162)の動きが、依然として取付細長部材(164)を弾性変形させる。取付センサ(160)は、取付細長部材(164)の遠位端に結合された取付磁気部材(166)をさらに含む。さらに、取付センサ(160)は、取付磁気部材(166)に隣接して配置された磁気センサ(168)を含む。磁気センサ(168)は、磁気抵抗角度センサであってもよい。磁気抵抗角度センサは、ホール効果センサのような他のタイプの磁気センサよりもこの用途において感度が高いため、このタイプの取付センサ(160)において有用である。さらに、磁気抵抗センサは全極性である(すなわち、N極とS極で動作する)。ホール効果センサはN極かS極の何れかで動作する。全極性モードで動作することで、センサがN極とS極の両方の動きに反応するため、移動する磁場からの信号が2倍になり、磁気抵抗センサはこの用途でより高い精度で動作することができる。
【0040】
図10Cおよび
図10Dは、いくつかの実施形態に係る市販の磁気抵抗センサを概略的に示している。磁気抵抗センサの主な用途の1つは、変位の高精度な非接触測定である。そのようなセンサの一例として、Honeywell Sensing and Control社のAPS00Bがある。APS00B高分解能磁気角度位置センサICは、磁気飽和磁場検知用に設計された角度または回転変位測定のための小型表面実装デバイスである。磁気抵抗センサは、集積回路(IC)表面を通過する磁束の方向に応じて変化するアナログ出力電圧を生成する。
【0041】
APS00Bは、ハネウェルの異方性磁気抵抗(AMR)技術を使用しており、ホール効果ベースの磁気センサに比べていくつかの利点がある。AMRは、10分の1度および/または10分の1ミリメートルよりも優れた分解能を持ち、磁石とセンサのギャップの大きな変動に耐え、衝撃や振動に対して不感受性を示す。この技術は、直角位相(正弦および余弦)信号を生成するデュアル飽和モードのホイートストンブリッジに使用され、最大180°の拡張角度測定範囲を提供する。
【0042】
フランジをシリンジに取り付けると、接触部材(162)がプランジャロッド(112)によって動かされる。接触部材(162)が動くと、細長部材(164)が屈曲する。屈曲は、屈曲平面を規定する。
図A、B、Cに開示の磁気抵抗センサは、センサ取付面に平行な磁場に反応するように設計されている。この場合、センサ取付面は屈曲平面に平行であり、これにより磁気抵抗センサは、細長部材に加えられた屈曲の量に対応する屈曲平面内の磁石の動きを検出することができる。磁気抵抗センサは、医療分析計や磁場エンコーダなどの精密で非接触の変位アプリケーションのための単極検知に適している。別の実施形態では、角度位置センサ(108)と角度回転センサの両方を使用することができる。
図12Bに示すような磁気回転センサは、細長部材(164)の他端に配置され、角度位置センサとともに使用することができる。デバイスに組み込むことができる他のエンコーディングおよび/または角度検知技術には、光学エンコーダ、ホール効果センサ、トンネル磁気抵抗(TMR)センサ、加速度計、フランジ方位センサ、フランジ先端センサ、ジャイロ位置センサ、慣性運動ユニットセンサ、容量エンコーダ、誘導エンコーダ、機械エンコーダ、インクリメンタルエンコーダ、可換エンコーダ、および/またはロータリーエンコーダを形成するように配向された一連の機械スイッチがある。
【0043】
図11A、
図11Bおよび
図11Cは、それぞれ0.3ml、0.5mlおよび1mlの容積を有するシリンジ本体(112、112’、112’’)に取り付けられたスマートフランジ(150)を示している。
図11A、
図11B、
図11Cの断面図のレベルは、
図10Aに示される
図10Bのレベルと同じである。シリンジ本体(112、112’、112’’)の容積および対応する半径が増加するにつれて、それぞれのシリンジ本体(112、112’、112’’)と接触する接触部材(162)は、それぞれのシリンジ本体(112、112’、112’’)によってスマートフランジ(150)内にさらに押し込まれる。接触部材(162)が、それぞれのシリンジ本体(112、112’、112’’)の半径の増加によりスマートフランジ(150)内へさらに押し込まれると、取付細長部材(164)が接触部材(162)によってさらに変形し、取付細長部材(164)の中央部分がスマートフランジ(150)内へさらに押し込まれた状態となる。取付細長部材(164)が接触部材(162)によってさらに変形すると、
図11A、
図11Bおよび
図11Cに示すように、取付磁気部材(166)がそれぞれのシリンジ本体(112、112’、112’’)に向かってさらに移動する。取付磁気センサ(168)は、取付磁気部材(166)が取付磁気センサ(168)に対して相対的に動くと、その位置を検出する。
【0044】
取付磁気センサ(168)は、取付磁気部材(166)の相対位置に対応する取付データを生成する。スマートフランジ(150)は、取付データを分析して、スマートフランジ(150)が取り付けられたシリンジ本体(112、112’または112’’)の有無およびタイプ(例えば、サイズ)を判定するプロセッサを含む。スマートフランジ(150)が取り付けられたシリンジ本体(112、112’または112’’)のタイプを判定することによって、スマートフランジ(150)および/または接続されたプロセッサは、(本明細書に記載の)プランジャ部材の動きに対応する注入データから注入のサイズを特定することができる。
【0045】
図12Aは、スマートフランジ(150)における
図12Bの断面図のレベルを示している。
図12Aおよび
図12Bは、プランジャ部材(116)が内部に配置されたシリンジ本体(112)に取り付けられた、いくつかの実施形態に係るスマートフランジ(150)を示している。スマートフランジ(150)の内部には、注入センサ(170)が配置されている。注入センサ(170)は、注入イベント(例えば、シリンジ本体の内部からの一定量の注入)の発生に対応する注入データを測定するように構成されている。注入センサ(170)はホイール(172)を含み、このホイールはスマートフランジ(150)により規定された取付開口部/ノッチ(190)内に部分的に延出する。また、注入センサ(170)は、ホイール(172)が結合された注入細長部材(174)も含む。注入細長部材(174)は、ホイール(172)をプランジャ部材(116)に対して弾性的に押圧するように構成された金属ワイヤまたはロッドであってもよく、プランジャ部材(116)の軸方向の動きによってホイール(172)が回転するようになっている。注入細長部材(174)は、ホイール(172)とともに回転するようにホイールに結合されている。さらに、注入センサ(170)は、注入細長部材(174)の遠位端に結合された注入磁気部材(176)を含み、注入細長部材(174)の回転により、注入磁気部材(176)も回転するようになっている。さらに、注入センサ(170)は、注入磁気部材(176)に隣接して配置され、注入磁気部材(176)の回転を検出するように構成された磁気センサ(178)を含む。この磁気センサ(178)は、磁気抵抗回転センサであってもよく、かつ/またはトンネル磁気抵抗(TMR)センサであってもよい。
【0046】
注入磁気センサ(178)は、注入磁気部材(176)の回転に対応する注入データを生成する。スマートフランジ(150)は、注入データを分析して、スマートフランジ(150)に対するプランジャ部材(116)の動きの方向および大きさを特定するプロセッサを含む。プランジャ部材(116)の動きの方向および大きさを特定することにより、スマートフランジ(150)および/または接続されたプロセッサは、注入イベント(すなわち、ある量の流体がシリンジ本体(112)内に引き込まれたこと、および/またはシリンジ本体から排出されたこと)の発生を判定することができる。上述したように、シリンジ本体(112)のサイズに対応する取付データも、シリンジ本体(112)内に引き込まれた流体の量および/またはシリンジ本体の外に排出された流体の量の特定に使用することができる。
【0047】
取付開口部/ノッチ(190)は、X字形の断面の4つの半径方向に延びる部分(「アーム」)のうちの2つがホイール(172)と接触するように回転される場合にのみ、X字形の断面を有するプランジャ部材(116)が取付開口部/ノッチ(190)に入ることができるようなサイズおよび形状であってもよい。また、スマートフランジ(150)は、取付開口部/ノッチ(190)のサイズおよび形状を制限するように構成された一対の方向付けリブ(181;
図8および
図12B参照)も含み、それにより、取付開口部/ノッチ(190)は、X字形の断面の4つのアームのうちの2つがホイール(172)と接触するように、プランジャ部材(116)を方向付けるか回転させるようになっている。そのような構成は、ホイール(172)が注入細長部材(174)によってプランジャ部材(116)に押し付けられるときに、プランジャ部材(116)とホイール(172)との間の接触を増加させ、それによって、プランジャ部材(116)の軸方向の動きとホイール(172)の回転との間の対応を改善することができる。
【0048】
いくつかの実施形態では、注入センサ(170)が取付センサとしても機能することができる。そのような実施形態では、シリンジ本体(112)のサイズが大きくなるにつれて、プランジャ部材(116)のサイズも大きくなる。センサ(170)は、取付センサ(160)について本明細書で説明したのと同様の機構を用いて、プランジャ部材のサイズの増加を検出する。
【0049】
図13および
図14は、いくつかの実施形態に係るスマートフランジ(150’)を示している。
図15および
図16は、プランジャ部材(116)が内部に配置されたシリンジ本体(112)に取り付けられようとしているスマートフランジ(150’)を示している。スマートフランジ(150’)は、その中に配置された注入センサ(180)を有する。注入センサ(180)は、注入イベント(例えば、シリンジ本体の内部からの一定量の注入)の発生に対応する注入データを測定するように構成されている。注入センサ(180)はローラ(182)を含み、このローラは、スマートフランジ(150’)によって規定された取付開口部/ノッチ(190)内に部分的に延出するようにスマートフランジ(150’)に懸架されている。また、注入センサ(180)は、ローラ(182)の遠位端に結合された注入磁気部材(186)も含み、注入細長部材(184)の回転により、注入磁気部材(186)も回転するようになっている。さらに、注入センサ(180)は、注入磁気部材(186)に隣接して配置され、注入磁気部材(186)の回転を検出するように構成された磁気センサを含む。磁気センサは、磁気抵抗回転センサであってもよい。
【0050】
注入磁気センサは、注入磁気部材(186)の回転に対応する注入データを生成する。スマートフランジ(150’)は、注入データを分析して、スマートフランジ(150’)に対するプランジャ部材(116)の動きの方向および大きさを特定するプロセッサを含む。プランジャ部材(116)の動きの方向および大きさを特定することにより、スマートフランジ(150’)および/または接続されたプロセッサは、注入イベント(すなわち、シリンジ本体(112)内への一定量の流体の引き込みおよび/またはシリンジ本体からの一定量の流体の排出)の発生を判定することができる。上述したように、シリンジ本体(112)のサイズに対応する取付データも、シリンジ本体(112)内に引き込まれた流体の量および/またはシリンジ本体の外に排出された流体の量の特定に使用することができる。
【0051】
スマートフランジ(150’)は、取付開口部/ノッチ(190)のサイズおよび形状を制限するように構成された一対の方向付けリブ(181)を含み、それにより、X字形の断面の4つの半径方向に延びる部分(「アーム」)のうちの2つがローラ(182)と接触するように、X字形の断面を有するプランジャ部材(116)が取付開口部/ノッチ(190)に進入する際に、取付開口部/ノッチ(190)が、プランジャ部材を方向付けるか回転させるようになっている。そのような構成は、ローラ(182)がその懸架機構によってプランジャ部材(116)に押し付けられるとき、および対向するローラ(反対方向からプランジャ部材を押圧する)を含むかまたはローラを含まない別の方向付けリブによって、プランジャ部材(116)がローラ(182)から離れる方向に動くのを阻止されるときに、プランジャ部材(116)とローラ(182)との間の接触を増加させ、それによってプランジャ部材(116)の軸方向の動きとローラ(182)の回転との間の対応を改善する。
【0052】
注入センサ(170、180)は磁気センサとして説明されているが、他の実施形態では、注入センサは他の測定様式を利用することもできる。いくつかの実施形態では、注入センサが、ホイールに回転可能に結合された様々な明領域および暗領域の回転を測定する光学センサである。いくつかの実施形態では、注入センサが容量性センサである(後述)。
【0053】
図17~
図21は、液体薬剤(例えば、インスリン)の注入に使用されるいくつかの実施形態に係るスマートフランジ(150)を含む注入システム(110)を示している。スマートフランジ(150)は、取付開口部/ノッチ(190)のサイズおよび形状を制限するように構成された一対の方向付けリブ(181)を含み、それにより、X字形の断面の4つの半径方向に延びる部分(「アーム」)のうちの2つが取付開口部/ノッチ(190)内で内側を向いてセンサと接触するように、X字形の断面を有するプランジャ部材(116)が取付開口部/ノッチ(190)に入るときに、プランジャ部材を方向付けるかまたは回転させるようになっている。
図17は、シリンジ本体(112)内に液体薬剤が取り込まれる前の注入システム(110)を示している。スマートフランジ(150)は既にシリンジ本体(112)に取り付けられている。いくつかの実施形態では、スマートフランジ(150)をシリンジ本体(112)に取り付けると、スマートフランジ(150)内のプロセッサが作動する。スマートフランジ(150)内の取付センサは、本明細書で説明するように、シリンジ本体(112)の有無およびタイプ(例えば、サイズ)を検出することができる。
【0054】
図18は、注入システム(110)による液体薬剤のバイアル(200)の貫通と、バイアル(200)内への空気の注入を示している。スマートフランジ(150)内の注入センサは、プランジャ部材(116)の動きを測定し、バイアル(200)内に注入された空気の量を特定することができる。
【0055】
図19は、バイアル(200)内の圧力の増加によって一部の空気がシリンジ本体(112)内に押し戻される様子を示している。スマートフランジ(150)の注入センサは、プランジャ部材(116)の動きを測定し、シリンジ本体(112)内に押し戻された空気の量を特定することができる。
【0056】
図20は、注入システム(110)とそれに接続されたバイアル(200)を反転させた後の、バイアル(200)からシリンジ本体(112)内への液体薬剤の一部の引き込みを示している。スマートフランジ(150)の注入センサは、プランジャ部材(116)の動きを測定し、シリンジ本体(112)内に引き込まれた液体薬剤の量を特定することができる。また、スマートフランジ(150)は、加速度計、先端センサ、ジャイロスコープまたは他の慣性運動ユニットセンサなどの方位センサも含むことができ、注入システム(110)が、液体薬剤の引き込み中にバイアルに挿入されたときに、反転されているか、またはバイアルシールが下方を向くように方向付けられていることを確認することができる。注入システム(110)の代替的な実施形態は、シリンジ(112)が充填されて注入の準備ができていることをスマートフランジ(150)に伝えるために、適切な量のインスリンが引き込まれたら、ユーザが押すためのボタンを提供する。ボタンは、スマートフランジ(150)の近位面または遠位面に配置することができる。
【0057】
図21は、液体薬剤を患者に注入した後の注入システム(110)を示している。スマートフランジ(150)の注入センサは、プランジャ部材(116)の動きを測定し、シリンジ本体(112)から排出された液体薬剤の量を特定することができる。
【0058】
図17~
図21に示す注入ステップ中に収集されたデータはすべて、スマートフランジ(150)に記録することができ、かつ/または医療処置管理システムのプロセッサに送信することができる。本明細書に記載の取付および注入に関連するデータの収集、分析および保存により、注入をより正確に監視することができ、それによって医療処置を改善することができる。
【0059】
図22は、いくつかの実施形態に係る注入システム(2210)を示している。注入システム(2210)は、同様に、シリンジ本体(2212)と、ストッパ部材(図示せず、
図6のストッパ部材(114)参照)と、プランジャ部材(2216)と、シリンジ本体(2212)に着脱可能に取り付けられたスマートフランジ(2250)とを含む。シリンジ本体(2212)は、開口した近位端(2220)および開口した遠位端(2222)を含む。開口した遠位端(2222)は、針アセンブリ(図示せず)に結合することができる。また、シリンジ本体(2212)は、シリンジ内部(2224)と、その近位端(2220)にあるシリンジフランジ(2226)とを含む。
図6に示す注入システム(110)と同様に、プランジャ部材(2216)を操作して、ストッパ部材(図示せず)をシリンジ内部(2224)で遠位方向に挿入することにより、注入可能な物質(例えば、流体)を、開口した遠位端(2222)を介してシリンジ内部(2224)から排出することができる。プランジャ部材(2216)は、近位端パッド(2232)を含み、それにより、ユーザの手の指(例えば、親指)を使用してプランジャ部材(2216)を手動で容易に操作することができる一方で、ユーザの手の1または複数の他の指が(例えば、シリンジフランジ(2226)の遠位面またはその上に配置されたスマートフランジ(2250)に対して)対抗する力を提供することができる。
【0060】
【0061】
スマートフランジ(2250)は、その内部に配置された注入センサ(2480;
図24~
図27参照)を有する。注入センサ(2480)は、注入イベント(例えば、シリンジ本体の内部からの一定量の注入、および/またはバイアルからシリンジ本体の内部への一定量の取り込み)の発生に対応する注入データを測定するように構成されている。注入センサ(2480)は、一対のローラ(2482)を含み、それらのローラは、スマートフランジ(2250)によって規定された取付開口部/ノッチ(2290)内に部分的に延出するようにスマートフランジ(2250)に懸架されている。ローラ(2482)の各々は、弾性材料(例えば、Robert)によって覆われたマンドレルを含むことができる。また、注入センサ(2480)は、それぞれのローラ(2482)の近位端にそれぞれ結合された一対のロータディスク(2486)も含み、ローラ(2482)の回転によりロータディスク(2486)も回転するようになっている。さらに、注入センサ(2480)は、それぞれのロータディスク(2486)に隣接して配置され、それぞれのロータディスク(2486)の回転を検出するように構成された一対の容量性センサ(2488;
図25参照)も含む。スマートフランジ(2250)は、取付開口部/ノッチ(2290)のサイズおよび形状を制限するように構成された一対の方向付けリブ(2281)を含み、それにより、X字形の断面の4つの半径方向に延びる部分(「アーム」)の両側のペアがセンサの各ローラ(2482)と接触するように、X字形の断面を有するプランジャ部材(2216)が取付開口部/ノッチ(2290)に入るときに、取付開口部/ノッチ(2290)がプランジャ部材を方向付けるかまたは回転させるようになっている。
【0062】
図26に示すように、ロータディスク(2486)は、ロータディスク(2486)の周囲に配置された複数の金属パッド(2487)を含む。
図25に示すように、容量性センサ(2488)は、集積回路基板上の複数の金属パッドで形成されたステータ(2489)を含む。それぞれのステータ(2489)に対するロータディスク(2486)の回転により、静電容量の変化が生じ、それを、ロータディスク(2486)とステータ(2489)との間の空気を誘電体として使用する、容量性センサ(2488)によって検出することができる。容量性センサ(2488)は、変化する静電容量を検出するために、高周波信号(例えば、電流)をそれぞれのステータ(2489)に印加する。金属パッド(2487)は、リソグラフィ技術を使用してロータディスク(2486)およびステータ(2488)上に形成することができる。
【0063】
本明細書で説明するような容量性センサは、殆ど電力を必要としないため、薄型のスマートフランジを容易にする。いくつかの実施形態では、ロータとステータとの間に誘電体材料を加えることができる。いくつかの実施形態では、容量性センサの第1のペアに対するロータディスクの反対側に、容量性センサの第2のペアを配置することができる。いくつかの実施形態では、金属パッドの代わりに、正弦波パターンをロータディスクおよび/またはステータ上に形成することもできる。
【0064】
図25~
図27に示すように、U字形部材(2484)は、容量性センサ(2488)、ステータ(2489)、ロータディスク(2486)およびローラ(2482)に通されて、それらの部品を物理的に結合しながらも、ローラ(2482)がU字形部材(2484)上で回転することを可能にすることができる。U字形部材(2484)は、互いに向けて付勢される一対のアーム(2485)を有し、それにより、それぞれのアーム(2485)上に通されたローラ(2482)が取付開口部/ノッチ(2290)を挟んで互いに向けて付勢されるようになっている。このため、ローラ(2482)は、
図27に示すように、プランジャ部材(2216)の両側を圧迫して、ローラ(2482)とプランジャ部材(2216)との間の接触を改善するように構成されている。ローラ(2482)とプランジャ部材(2216)との間の接触を改善することにより、注入センサ(2480)によるプランジャ部材(2216)の動きの検出の精度が向上する。さらに、2つのローラ(2482)を有することにより、プロセッサがプランジャ部材(2216)の差動運動または絶対運動を検出することができる。また、ローラ(2482)を2つ有することにより、プロセッサは、プランジャ部材(2216)の動きの間にローラ(2482)の一方がスキップした場合に、最大回転/移動値を利用することができる。また、U字形部材(2484)は、スマートフランジ(2250)の長軸に沿って移動可能であり、様々なプランジャ部材(2216)を受け入れるための公差をローラ(2482)に与えることができる。
【0065】
注入容量性センサ(2488)は、ロータディスク(2486)の回転に対応する注入データを生成する。スマートフランジ(2250)は、注入データを分析して、スマートフランジ(2250)に対するプランジャ部材(2216)の動きの方向および大きさを特定するプロセッサを含む。プランジャ部材(2216)の動きの方向および大きさを特定することにより、スマートフランジ(2250)および/または接続されたプロセッサは、注入イベント(すなわち、シリンジ本体(2212)内への一定量の流体の引き込みおよび/またはシリンジ本体からの一定量の流体の排出)の発生を判定することができる。上述したように、シリンジ本体(2212)のサイズに対応する取付データも、シリンジ本体(2212)内に引き込まれた流体の量および/またはシリンジ本体の外に排出された流体の量の特定において使用することができる。
【0066】
いくつかの実施形態では、取付センサが、注入センサ(2480)と構成要素を共有することができる。例えば、接触部材を第1および/または第2のローラ(2482)に結合させることができる。接触検出器は、第1および/または第2のローラ(2482)が互いに離れるように変形することによって接触部材が接触検出器と接触するように、接触部材に隣接して配置されるものであってもよい。接触部材と接触検出器との間の接触により、スマートフランジ(2250)がシリンジ(2212)に取り付けられていることを示す信号をプロセッサに送信することができる。
【0067】
図28は、いくつかの実施形態に係る(本明細書に記載されるような)スマートフランジが取り外し可能に結合されたシリンジを使用して、注入される流体の量を特定しながら、バイアルから注入流体(例えば、液体薬剤)を注入する方法(2800)を示すフローチャートである。
【0068】
ステップ(2802)では、空のシリンジ(例えば、インスリンシリンジ)が、取付センサおよび注入/位置センサを有するスマートフランジに取り付けられる。ステップ(2804)では、空のシリンジをスマートフランジに最初に接続する際に、スマートフランジが、初期プランジャ部材位置を記録し、その初期プランジャ部材位置を「初期ゼロ」に設定する。
【0069】
ステップ(2806)では、スマートフランジが、プランジャ部材の近位方向の動きを検出し、初期ゼロからの負の値として記録する。スマートフランジは、初期接続後のプランジャ部材の近位方向の動きが、ユーザがシリンジ内に空気を引き込むことであると仮定するようにプログラムされ得る。
【0070】
ステップ(2808)では、スマートフランジが、プランジャ部材の遠位方向の動きを検出し、正の値として記録する。スマートフランジは、最初の近位方向の動きの後のプランジャ部材の遠位方向の動きが、ベーパーロックを回避するためにユーザが注入流体(例えば、インスリン)のバイアル内に空気を注入することであると仮定するようにプログラムされ得る。スマートフランジは、プランジャ部材が動く遠位方向の最大値が、プランジャ部材に結合された部材がシリンジの遠位端に到達することに対応すると仮定するようにプログラムされ得る。
【0071】
ステップ(2810)では、スマートフランジが、プランジャ部材が動く遠位方向の最大値を、後の注入プロセスにおける距離/量の測定のための「新しいゼロ」として設定する。したがって、スマートフランジは、シリンジの底部におけるプランジャ部材の位置を「新しいゼロ」位置として設定するようにプログラムされる。
【0072】
ステップ(2812)では、スマートフランジが、プランジャ部材の近位方向の動きを検出し、新しいゼロからの負の値として記録する。スマートフランジは、新しいゼロを設定した後のプランジャ部材の近位方向の動きが、ユーザが注入流体(例えば、インスリン)および空気をシリンジ内に引き込むことであると仮定するようにプログラムされ得る。
【0073】
ステップ(2814)では、スマートフランジが、プランジャ部材の遠位方向の動きを検出し、正の値として記録する。スマートフランジは、プランジャ部材の微小な遠位方向の動きが、注入流体とともに引きり込まれた空気をユーザが排出することであると仮定するようにプログラムされ得る。いくつかの実施形態では、位置センサを使用して、このパージ/脱泡プロセス中におけるシリンジの遠位端のほぼ上向きの姿勢を検出することができる。
【0074】
ステップ(2816)では、スマートフランジが、ステップ(2814)でシリンジから空気が排出された後のシリンジ内の注入流体の量を計算し、記録する。いくつかの実施形態では、シリンジ内の注入流体の値が、スマートフランジに無線接続されたスマートフォンに表示され、かつ/またはスマートフォンまたはスマートフランジのスピーカを介して通知され得る。また、予め設定された適切な量の注入流体がシリンジ内に吸い上げられたことを示すために、緑色光または音響インジケータも提示することができる。
【0075】
いくつかの実施形態では、シリンジ内の注入流体の体積の表示を、視覚障害のあるユーザのために大きな数字で示すことができる。いくつかの実施形態では、シリンジ内の注入流体のリアルタイムの体積(例えば、脱泡後)を、視覚障害のあるユーザによる使用を容易にするために、音で通知することもできる(例えば、「10U」、「20U」、「30U」など)。いくつかの実施形態では、スマートフランジが、不適切な量の注入流体(例えば、過度に多量のインスリン)がシリンジ内に吸い上げられた場合に、視覚的および/または聴覚的な警告を発することができる。
【0076】
図29~
図32は、シリンジ本体(2912)に取り外し可能に結合され、プランジャドライバ(2960)を含むいくつかの実施形態に係るスマートフランジ(2900)を示している。プランジャドライバ(2960)は、長手方向軸に沿ってプランジャ部材(2916)を移動させるように構成されている。プランジャドライバ(2960)は、駆動ホイール(2962)と、駆動ホイール(2962)を回転させるモータ(2964)と、駆動ホイール(2962)にプランジャ部材(2916)を押し付けるためのアイドラホイール(2966)とを含む。
【0077】
駆動ホイール(2962)は、プランジャ部材(2916)を前進および後退させるように構成された新しい刻み付きゴムおよび/または金属のホイールであってもよい。モータ(2964)は、トルクを増大させるための特注のギアボックスを有する市販のDCモータであってもよい。アイドラホイール(2966)は、駆動ホイール(2962)に対してプランジャ部材(2916)を圧迫するようバネ付勢されるようにしてもよい。
図31に示すように、スマートフランジ(2900)は、プランジャ部材(2916)に対してアイドラホイール(2966)を係合させるためのクラムシェル設計を有することもできる。
【0078】
スマートフランジ(2900)内のプランジャドライバ(2960)は、視覚障害のあるユーザおよび/または手先の不自由なユーザのための注入システム(2900)の使用を容易にする。特に、本明細書に記載されるような注入センサと組み合わせることにより、プランジャドライバ(2960)を有するスマートフランジ(2900)は、ユーザによる流体薬剤の注入を自動化することができる。例えば、このようなスマートフランジ(2900)は、グルコース測定値、食物摂取、運動などの他の様々な患者情報に応じて、特定量のインスリンを糖尿病患者に送達することができる。特定量のインスリンが、ユーザにより駆動されるのではなく、(スマートフランジに結合された)アプリケーションからのソフトウェアによって駆動される場合、これは、人工膵臓のような閉ループシステムを作成するための小さなステップである。
【0079】
スマートフランジを有する電子インスリン日誌システム
【0080】
本明細書に記載のスマートフランジデバイスは、コンピューティングデバイスとの間で情報を受信および/または送信するための電子通信機能を含む。コンピューティングデバイスは、携帯電話、スマートフォン、タブレット、スマートウォッチ、パーソナルコンピュータまたは他のコンピューティングデバイスであってもよい。スマートフランジデバイスとシリンジおよびコンピューティングデバイス上で実行されるソフトウェアとの組み合わせにより、ボーラス注入および/または基礎注入を経時的に記録するなど、患者に投与されたインスリン投与の履歴を記録するための電子インスリン日誌システムを作成することができる。日誌には、インスリンの基礎および/またはボーラス投与量、インスリンの種類および濃度、投与の時間、投与のタイミングを思い出させるためのアラートを含むインスリン関連情報が記録されることとなる。代替的には、それらデータが、ユーザの入力やインタラクションなしに、ソフトウェアアプリケーションに直接送信される。日誌は、連続グルコース監視システムおよび/または血糖計とリアルタイムまたは遅延後(非同期)にリンクすることができる。日誌は、複数のコンピューティングデバイス間で移動可能なインスリン投与の記録を作成するために、クラウドコンピューティングシステムにデータをアップロードすることができ、かつ/またはクラウドコンピューティングシステムからデータをダウンロードすることができる。電子インスリン日誌は、投与およびグルコース値/レベルに関するバックアップ安全対策として機能するケアパートナー(両親、配偶者、友人、介護者など)とリアルタイムでデータを共有することもできる。また、電子インスリン日誌は、将来のインスリン投与推奨量を計算するための基礎および/またはボーラスインスリン計算機も含むことができる。
【0081】
患者が摂取したインスリンの記録は、インスリンバイアル上のカラーコードリングを認識することにより、スマートフランジによって自動的に判定することができる。インスリン製剤は、速効型、短時間作用型、中間作用型、長時間作用型、インスリン混合型などの様々なタイプに分類される。異なるインスリンタイプには、異なるカラーコードのラベルが付けられる。スマートフランジデバイスおよび/またはシステムは、光電池、デジタルカメラまたは他の電子検知要素でカラーコードを検知することによって、インスリンのタイプを認識し、記録するように構成され得る。コンピューティングデバイスは、インスリンバイアルのラベルを直接読み取るために、バーコードリーダ、QRコードリーダまたはOCR文字認識ソフトウェアを有するように構成され得る。代替的には、ユーザはインスリンのタイプを電子インスリン日誌に手動で入力することもできる。インスリン日誌は、インスリン投与に対する患者の個々の反応を通知および/または特定するために使用され、将来のインスリン投与のタイプ、量および/または頻度を決定するために使用され得る。インスリン日誌ソフトウェアは、血糖計から患者の血糖値を読み取って記録し、食物摂取、運動、時間帯、睡眠または他のパラメータに基づいて患者のインスリン投与要件を決定するシステムの一部であってもよい。
【0082】
本明細書に記載の様々なシステムおよび方法は、手動で作動するプランジャ部材を有する注入システムを示しているが、本明細書に記載の注入データ収集システムおよび方法は、ペン型注入器のような自動または半自動注入システムでも同様に良好に機能する。
【0083】
様々な例示的な実施形態が本明細書に記載されている。これらの例は、非限定的な意味で参照される。これらは、より広範に適用可能な態様を例示するために提供されている。本開示の真の趣旨および範囲から逸脱することなく、記載の態様に様々な変更を加えることができ、均等物に置き換えることができる。さらに、特定の状況、材料、物質の組成、プロセス、プロセス行為またはステップを、本開示の目的、趣旨または範囲に適合させるために、多くの変更を加えることができる。さらに、当業者によって理解されるように、本明細書に記載および例示された個々のバリエーションの各々は、本開示の範囲または趣旨から逸脱することなく、他のいくつかの実施形態の何れかの特徴から容易に分離され、またはそれらの特徴と組み合わされ得る個別の構成要素および特徴を有する。そのような変更はすべて、本開示に関連する特許請求の範囲内にあることが意図されている。
【0084】
対象となる注入情報収集手順を実行するために説明したデバイスの何れかが、そのような介入を実行する際に使用するためにパッケージ化された組合せで提供されるものであってもよい。それらの供給「キット」は、使用説明書をさらに含み、かつ/または、そのような目的のために一般的に採用されるような無菌トレイまたは容器にパッケージ化されるものであってもよい。
【0085】
本開示は、対象のデバイスを用いて実行され得る方法を含む。その方法は、そのような好適なデバイスを提供する行為を含むことができる。そのような提供は、エンドユーザによって実行されるものであってもよい。すなわち、「提供する」という行為は、エンドユーザが、対象となる方法において、必要なデバイスを提供するために、取得、アクセス、アプローチ、配置、セットアップ、起動、電源投入またはその他の行為を行うことを単に必要とするだけである。本明細書に記載の方法は、論理的に可能な任意の順序で、あるいは記載された事象の順序で、記載された事象を実行することができる。
【0086】
本開示の例示的な態様は、材料の選択および製造に関する詳細とともに、上述されている。本開示の他の詳細に関しては、それらは、先に引用した特許および刊行物に関連して理解され得るだけでなく、当技術分野の当業者には一般的に知られているか、または理解され得るものである。例えば、当技術分野の当業者であれば、1または複数の潤滑性コーティング(例えば、ポリビニルピロリドン系組成物などの親水性ポリマー、テトラフルオロエチレンなどのフルオロポリマー、親水性ゲルまたはシリコーン)を、必要に応じて、移動可能に結合された部分の比較的大きな境界面など、デバイスの様々な部分に関連して使用することができ、それにより例えば、器具の他の部分または近くの組織構造物に対するそのような対象の低摩擦操作または前進を容易にすることができることを理解するであろう。一般的にまたは論理的に採用される追加の行為に関して、本開示の方法に基づく態様についても同様のことが当てはまるであろう。
【0087】
さらに、様々な特徴を任意に組み込んだいくつかの例を参照して実施形態を説明してきたが、本開示は、本開示の各バリエーションに関して企図されるように記載または開示されたものに限定されるものではない。本開示の真の趣旨および範囲から逸脱することなく、記載の本開示に様々な変更を加えることができ、(本明細書に記載されているか、または簡潔にするために含まれていないかにかかわらず)均等物に置き換えることができる。さらに、値の範囲が提供される場合、その範囲の上限と下限との間のすべての介在値と、記載した範囲内の他の記載した値または介在値が、本開示の範囲内に包含されることを理解されたい。
【0088】
また、記載した本発明のバリエーションの任意の特徴は、独立して、または本明細書に記載された特徴のうちの任意の1または複数の特徴と組み合わせて記載および主張され得ることが企図される。単数の項目への言及は、同じ項目が複数存在する可能性を含む。より具体的には、本明細書およびこれに付随する特許請求の範囲で使用されるように、単数形「a」、「an」、「said」および「the」は、特に明記しない限り、複数の指示対象を含む。言い換えれば、冠詞の使用は、本開示に付随する特許請求の範囲と同様に、上記説明における主題項目の「少なくとも1つ」を可能にする。そのような請求項は、任意選択的な要素を除外するように起草される場合があることに留意されたい。このため、この記述は、請求項の要素の列挙に関連して、「単独」、「のみ」などの排他的な用語を使用する先の記載、または「否定的な」限定を使用するための先の記載として機能することを意図している。
【0089】
そのような排他的な用語を使用することなく、本開示に付随する請求項における「含む」という用語は、所与の数の要素がそのような請求項に列挙されているかどうか、または特徴の追加がそのような請求項に記載された要素の性質を変化させるとみなされるかどうかにかかわらず、任意の追加要素を含むことを可能にするものとする。本明細書で具体的に規定されている場合を除き、本明細書で使用されるすべての技術的および科学的用語は、請求項の有効性を維持しつつ、可能な限り広く一般的に理解される意味を与えるものとする。
【0090】
本開示の幅は、提供された実施例および/または主題の明細書に限定されるものではなく、むしろ、本開示に付随する請求項の文言の範囲によってのみ限定されるものである。
【国際調査報告】