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特表2024-534107マクロファージの集団を検出する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-18
(54)【発明の名称】マクロファージの集団を検出する方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/06 20060101AFI20240910BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20240910BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240910BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240910BHJP
   G01N 33/68 20060101ALI20240910BHJP
   G01N 33/49 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
C12Q1/06 ZNA
A61P3/04
A61K45/00
A61P43/00 105
G01N33/68
G01N33/49 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024510649
(86)(22)【出願日】2022-08-29
(85)【翻訳文提出日】2024-04-18
(86)【国際出願番号】 SG2022050619
(87)【国際公開番号】W WO2023033729
(87)【国際公開日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】10202109489Y
(32)【優先日】2021-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】503231882
【氏名又は名称】エージェンシー フォー サイエンス,テクノロジー アンド リサーチ
(71)【出願人】
【識別番号】524065365
【氏名又は名称】アオアディ,ミリアム
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】アオアディ,ミリアム
(72)【発明者】
【氏名】ブレリオ,カミーユ
(72)【発明者】
【氏名】ギンフー,フローレント
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
4C084
【Fターム(参考)】
2G045AA02
2G045CA11
2G045DA36
2G045FA37
2G045FB03
4B063QA01
4B063QA05
4B063QA18
4B063QQ02
4B063QQ08
4B063QR48
4B063QS33
4B063QX02
4C084AA17
4C084NA14
4C084ZA70
4C084ZB21
(57)【要約】
【課題】
マクロファージの集団を検出する方法が必要とされている。
【解決手段】
サンプル中のマクロファージの集団を検出する方法であって、サンプル中のマクロファージにおけるCdh5の発現を検出及び/又は決定することを含む方法が提供される。また、マクロファージの集団を検出する及び/又は分離する及び/又は枯渇させるためのキット、マクロファージの集団を枯渇させる方法、肥満及び/又は過体重対象の健康を改善する方法、対象における肥満及び/又は肥満に関連する代謝障害のリスクを決定する方法、並びにその動物モデルも開示される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル中のマクロファージの集団を検出する方法であって、
前記サンプル中のマクロファージにおけるCdh5の発現を検出及び/又は決定することを含む方法。
【請求項2】
前記方法は、前記サンプル中のマクロファージにおいて、CD107a、CD107b、IGFBP7(インスリン様増殖因子結合タンパク質7)、LYVE1、CD36、CD206及び/又はESAMを含む1つ又は複数のマーカーの発現を検出及び決定することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法は、マクロファージマーカーの発現を検出することによって、前記サンプル中のマクロファージである細胞を検出及び決定することをさらに含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記マクロファージはクッパー細胞(KC)であり、任意選択的に、胚由来のクッパー細胞である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記方法は、Clec4f、Lyz2、Vsig4、Csf1r、Adgre1、F4/80、Tim4、Clec4F、及びVsig4の発現を検出することによって、前記サンプル中のマクロファージである細胞を検出及び決定することをさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記方法は、クッパー細胞の第1の集団であるCD206lo及び/又はESAM-を発現する集団と、クッパー細胞の第2の集団であるCD206hi及び/又はESAM+を発現する集団とを検出及び決定することを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記方法は、クッパー細胞の第1の集団であるCD206lo及びESAM-を発現する集団と、クッパー細胞の第2の集団であるCD206hi及びESAM+を発現する集団とを検出及び決定することを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
CD107a、CD107b、IGFBP7(インスリン様増殖因子結合タンパク質7)、LYVE1、CD36、CD206及び/又はESAMを含む1つ又は複数のマーカーの過剰発現は、クッパー細胞の第2の集団である集団を決定する、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記方法は、CD206、ESAM、CD36、及びこれらの組み合わせを含む1つ又は複数のマーカーの存在を検出、選別、及び/又は決定することをさらに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記方法は、マクロファージの第1の集団及び/又は第2の集団を分離することをさらに含み、任意選択的に、前記方法は、クッパー細胞の前記第1の集団及び/又は前記第2の集団を分離することをさらに含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記方法は、Cdh5+、CD107b+、CD206hi及び/又はESAM+のうちの1つ又は複数を発現する細胞の集団を前記サンプルから除去することをさらに含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記方法は、CD45、CD64、F4/80、TIM4、Clec4F、Adgre1(F4/80)、Timd4、Csf1r、及びClec4fを含む1つ又は複数のマーカーの発現を決定することをさらに含み、任意選択的に、前記方法は、1つ又は複数のAdgre1+、Cx3cr1+、Timd4-、Clec4f-、及びこれらの組み合わせを発現する細胞を除去及び/又は排除することをさらに含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
マクロファージの集団を検出する及び/又は分離する及び/又は枯渇させるためのキットであって、
Cdh5を発現するマクロファージの集団を検出するための薬剤を提供することと、
任意選択的に、前記Cdh5を発現するマクロファージの集団を分離することができる薬剤を提供することと、
任意選択的に、前記Cdh5を発現するマクロファージの集団を枯渇させることができる薬剤を提供することと
を含むキット。
【請求項14】
前記キットは、CD107b+、CD206hi及びESAM+を発現するマクロファージの集団を検出するための薬剤をさらに提供し、
任意選択的に、前記CD107b+、CD206hi及びESAM+を発現するマクロファージの集団を分離することができる薬剤を提供し、
任意選択的に、前記CD107b+、CD206hi及びESAM+を発現するマクロファージの集団を枯渇させることができる薬剤を提供する、
請求項13に記載のキット。
【請求項15】
外因的な活性化の際に除去を受けるように遺伝子操作されたCdh5を発現するマクロファージ集団を含むトランスジェニック動物モデル。
【請求項16】
マクロファージの集団を枯渇させる方法であって、
対象において前記マクロファージの集団を検出及び低減することを含み、前記マクロファージの集団は、1つ又は複数のCdh5、CD107b、CD206、及びESAMを発現する、方法。
【請求項17】
肥満及び/又は過体重対象の健康を改善する方法であって、
前記対象においてマクロファージの集団を低減することを含み、
前記マクロファージの集団は、1つ又は複数のCdh5、CD107b、CD206、及びESAMを発現する、方法。
【請求項18】
対象における肥満及び/又は肥満に関連する代謝障害のリスクを決定する方法であって、
マクロファージにおけるIgfbp7/Cd36発現の発現レベルを検出すること
を含む方法。
【請求項19】
前記方法は、前記対象における肥満及び/又は肥満に関連する代謝障害のリスクがあると特定された前記対象を、Cdh5を発現するマクロファージ細胞を枯渇させることができる薬剤によって治療することをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記方法は、CD206hi及びESAM+マクロファージを低減し、任意選択的に、前記方法は、Cdh5+、CD206hi、及びESAM+クッパー細胞を低減する、請求項16~18のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本開示は、広く、マクロファージの集団を検出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
常在性組織マクロファージ(RTM)は、組織特異的な表現型を特徴とし、その常在する組織内で広範な機能を示す免疫細胞の多様な集団である。しかしながら、組織は複雑な環境であり、同じ臓器内でのマクロファージの不均一性は、これまで見落とされてきた。
【0003】
肝臓内には、マイクロビオント(microbiont)、有害な腸管病原体、又は消化の有毒副産物を含有し得る腸から門脈を通って肝臓へ流れる血液の解毒に特定化された、肝類洞内を覆うクッパー細胞(KC)と呼ばれるRTMの集団が存在する。したがって、KCは、古い赤血球又は損傷した赤血球を破壊し、入ってくる脅威を貪食し、炎症中、特に、ウイルス性肝炎、線維症、肝細胞癌、アルコール関連の障害又は非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)/脂肪肝疾患(NAFLD)などの肝臓病態の発生において中心的役割を果たすことができる。しかしながら、これらの病態へのKCの関与は議論の余地のないことだとしても、その正確な作用機序はほとんど不明のままである。
【0004】
KCは胎児肝臓の単球前駆体に由来し、胚発生の初期にその同一性を獲得し、生涯を通してそれ自体を維持する。出生後早期の循環単球は、出生直後はKCのごく一部に寄与するが、定常状態では、KCの再生は骨髄由来の細胞とほぼ完全に無関係である。しかしながら、炎症条件下、又は天然の胚性KCが枯渇すると、単球由来のマクロファージは、死にかけている胚性KCを置換することができる。さらに、KCと並んで、被膜マクロファージ(capsular macrophage)、さらには傷害後に補充される腹腔マクロファージを含む、個体発生的及び機能的に無関係なマクロファージの他のマイナー集団が肝臓に常在する。この結果、起源、表現型及び機能が不均一な肝臓マクロファージ集団のモザイクが生じ、その中でKCは、群を抜いて豊富なものとなる。
【0005】
マウスのKC集団において、定常状態での別個のサブセットの存在が様々な研究で提唱されているが、胚性KCと、単球由来マクロファージとを区別することは困難であるという結論に至っている。これらの別個の集団が肝疾患の病態生理において異なる役割を果たすかどうかも、依然としてとらえどころのないままである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ヒトでの研究において、最近のシングルセルトランスクリプトーム研究では、肝臓マクロファージの2つの主要なサブセットの存在が示唆されているが、これらの別個のサブセットの機能も、依然としてとらえどころのないままである。したがって、マクロファージの集団を検出する方法を提供する必要がある。また、組織又は肝臓マクロファージの亜集団を検出する方法も提供する必要がある。特に、代謝的に活性なマクロファージを検出する方法を提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
概要
一態様では、サンプル中のマクロファージの集団を検出する方法であって、サンプル中のマクロファージにおけるCdh5の発現を検出及び/又は決定することを含む方法が提供される。
【0008】
いくつかの例では、本方法は、サンプル中のマクロファージにおいて、CD107a、CD107b、IGFBP7(インスリン様増殖因子結合タンパク質7)、LYVE1、CD36、CD206及び/又はESAMを含む1つ又は複数のマーカーの発現を検出及び決定することをさらに含む。
【0009】
いくつかの例では、本方法は、マクロファージマーカーの発現を検出することによって、サンプル中のマクロファージである細胞を検出及び決定することをさらに含む。
【0010】
いくつかの例では、マクロファージはクッパー細胞(KC)であり、任意選択的に、胚由来のクッパー細胞である。
【0011】
いくつかの例では、本方法は、Clec4f、Lyz2、Vsig4、Csf1r、Adgre1、F4/80、Tim4、Clec4F、及びVsig4の発現を検出することによって、サンプル中のマクロファージである細胞を検出及び決定することをさらに含む。
【0012】
いくつかの例では、本方法は、クッパー細胞の第1の集団であるCD206lo及び/又はESAM-を発現する集団と、クッパー細胞の第2の集団であるCD206hi及び/又はESAM+を発現する集団とを検出及び決定することを含む。
【0013】
いくつかの例では、本方法は、クッパー細胞の第1の集団であるCD206lo及びESAM-を発現する集団と、クッパー細胞の第2の集団であるCD206hi及びESAM+を発現する集団とを検出及び決定することを含む。
【0014】
いくつかの例では、CD107a、CD107b、IGFBP7(インスリン様増殖因子結合タンパク質7)、LYVE1、CD36、CD206及び/又はESAMを含む1つ又は複数のマーカーの過剰発現は、クッパー細胞の第2の集団である集団を決定する。
【0015】
いくつかの例では、本方法は、CD206、ESAM、CD36、及びこれらの組み合わせを含む1つ又は複数のマーカーの存在を検出、選別、及び/又は決定することをさらに含む。
【0016】
いくつかの例では、本方法は、マクロファージの第1の集団及び/又は第2の集団を分離することをさらに含み、任意選択的に、本方法は、クッパー細胞の第1の集団及び/又は第2の集団を分離することをさらに含む。
【0017】
いくつかの例では、本方法は、Cdh5+、CD107b+、CD206hi及び/又はESAM+のうちの1つ又は複数を発現する細胞の集団をサンプルから除去することをさらに含む。
【0018】
いくつかの例では、本方法は、CD45、CD64、F4/80、TIM4、Clec4F、Adgre1(F4/80)、Timd4、Csf1r、及びClec4fを含む1つ又は複数のマーカーの発現を決定することをさらに含み、任意選択的に、本方法は、1つ又は複数のAdgre1+、Cx3cr1+、Timd4-、Clec4f-、及びこれらの組み合わせを発現する細胞を除去及び/又は排除することをさらに含む。
【0019】
別の態様では、マクロファージの集団を検出する及び/又は分離する及び/又は枯渇させるためのキットであって、Cdh5を発現するマクロファージの集団を検出するための薬剤を提供することと、任意選択的に、Cdh5を発現するマクロファージの集団を分離することができる薬剤を提供することと、任意選択的に、Cdh5を発現するマクロファージの集団を枯渇させることができる薬剤を提供することとを含むキットが提供される。
【0020】
いくつかの例では、本キットは、CD107b+、CD206hi及びESAM+を発現するマクロファージの集団を検出するための薬剤をさらに提供し、任意選択的に、CD107b+、CD206hi及びESAM+を発現するマクロファージの集団を分離することができる薬剤を提供し、任意選択的に、CD107b+、CD206hi及びESAM+を発現するマクロファージの集団を枯渇させることができる薬剤を提供する。
【0021】
さらに別の態様では、外因的な活性化の際に除去を受けるように遺伝子操作されたCdh5を発現するマクロファージ集団を含むトランスジェニック動物モデルが提供される。
【0022】
さらに別の態様では、マクロファージの集団を枯渇させる方法であって、対象においてマクロファージの集団を検出及び低減することを含む方法が提供されており、ここで、マクロファージの集団は、1つ又は複数のCdh5、CD107b、CD206、及びESAMを発現する。
【0023】
さらに別の態様では、肥満及び/又は過体重対象の健康を改善する方法であって、対象においてマクロファージの集団を低減することを含む方法が提供されており、ここで、マクロファージの集団は、1つ又は複数のCdh5、CD107b、CD206、及びESAMを発現する。
【0024】
さらに別の態様では、対象における肥満及び/又は肥満に関連する代謝障害のリスクを決定する方法であって、マクロファージにおけるIgfbp7/Cd36発現の発現レベルを検出することを含む方法が提供される。
【0025】
いくつかの例では、本方法は、対象における肥満及び/又は肥満に関連する代謝障害のリスクがあると特定された対象を、Cdh5を発現するマクロファージ細胞を枯渇させることができる薬剤によって治療することをさらに含む。
【0026】
いくつかの例では、本明細書に開示される態様のいずれかの方法は、CD206hi及びESAM+マクロファージを低減し、任意選択的に、本方法は、Cdh5+、CD206hi、及びESAM+クッパー細胞を低減する。
【0027】
図面の詳細な説明
本開示の例示的な実施形態は、以下の議論から、そして該当する場合には図面と併せて、当業者により良く理解され、容易に明らかになるであろう。本発明の範囲から逸脱することなく、構造的、電気的及び光学的な変化に関する他の修正がなされ得ることは認識されるべきである。例示的な実施形態は、一部の実施形態が1つ又は複数の実施形態と組み合わせて新しい例示的な実施形態を形成し得るので、必ずしも相互に排他的ではない。例示的な実施形態は、本開示の範囲を限定すると解釈されてはならない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1A】遺伝子発現を表すプロット及びヒートマップを示す。CD45+Tomato-肝臓細胞を健康なMs4a3crexRosaTomatoマウスから抽出し、mRNAのライブラリーを作成し、Chromiumテクノロジーを用いて配列決定した。Seurat解析を実行し、別個の遺伝子発現パターンを有する9つのクラスターを画定した。各ドットはシングルセルに対応し、特定されたクラスターに従って着色される。少数の代表的な遺伝子の発現は各クラスターを画定するために重ね合わせられ、異なるクラスター内で最も高度の差次的発現遺伝子(DEG)のヒートマップが表示される。以下の遺伝子は、それぞれのクラスターにおいて最も高度に発現される:クラスター0におけるCd79a及びIgkc、クラスター1におけるCd3g及びTrac、クラスター2におけるId3及びMrc1、クラスター3におけるC1qb及びLyz2、クラスター4におけるCd9及びDpp4、クラスター5におけるNkg7及びCcl5、クラスター6におけるCtla4及びGzmk、クラスター7におけるSiglech及びRunx2、並びにクラスター8におけるCx3cr1及びCd14。
図1B】Adgre1+マクロファージ集団の拡大表示のプロットを示し、Cx3cr1+被膜マクロファージ(Caps.)と、Timd4+Clec4f+KC(KC-c1&KC-c2)の2つのクラスターとが示される。この図のバイオリンプロットは、2つのKCクラスターにおける選択された遺伝子の発現を示す。
図1C】SMARTseq2プロトコルに従って配列決定された、選別されたCD45+CD64+F4/80+肝臓細胞のtSNE投影のプロットを示す。各ドットはシングルセルに対応し、特定されたクラスターに従って着色される。KCクラスターは、c3及びc4に対応する。
図1D】SMARTseq2プロトコルに従って配列決定された、選別されたCD45+CD64+F4/80+肝臓細胞のtSNE投影のプロットを示す。表示されたマクロファージ特異的遺伝子の発現が重ね合わせられる。
図1E】クラスタリングの検証のためにClec4f+KCに焦点を合わせたSMARTseq2(プローブ)及びChromium(参照)データセットの統合のドットプロットを示す。
図1F】Seurat解析で特定された4つのクラスターを重ね合わせた高解像度SMARTseq2データセットの情景(scenic)解析のプロットを示す。Seuratのc3及びc4に対応するマクロファージ集団内の2つの安定した状態を見ることができる。各レギュロンに含まれる遺伝子の数は括弧内に提供される。
図1G】各Seuratで画定されたクラスターからの代表的なレギュロンのバイオリンプロットと共に、シングルセルRNA-seq SMARTseq2データセットの情景解析のプロットを示す。
図1H】37マーカー拡張CyTOFパネルで解析された生肝臓CD45+シングレットにおける異なるクラスターを示す、tSNE解析で投影された表示されたマーカーの発現のドットプロット表示を示す。Phenographアルゴリズムにより教師なし解析を行ない、系列マーカーにより、表示された集団として手動で割り当てられた15のクラスターが明らかにされた。tSNE解析で投影された表示されたマーカーの発現レベルのドットプロット表示。37マーカーCyTOFパネルによって解析された肝臓の生CD45+シングレットの異なるクラスターが示される(13の最も代表的なマーカーが示される)。
図1I】tSNE解析で投影された表示されたマーカーの発現レベルのドットプロット表示を示す。37マーカーCyTOFパネルにより解析された肝臓の生CD45+シングレットの異なるクラスターが示される(24の付加的なマーカーが示される)。
図1J】生肝臓CD45+シングレットのOneSENSEアルゴリズムによるCyTOF解析のプロット及びヒートマップを示す。F4/80+Tim4+KC細胞は、破線の黒枠内に示される。
図2A】肝臓細胞を解析するために使用されるゲーティング戦略によるフローサイトメトリープロットを示す。LSECはCD45lowCD31+細胞として、マクロファージはCD45+Lin-F4/80+CD64+細胞として、単球はCD45+Lin-F4/80-CD64hiLy6Chiとして、caps.macsはCD45+Lin-F4/80+CD64+Tim4-MHCIIhi細胞として、そしてKCはCD45+Lin-F4/80+CD64+Tim4hiMHCIIint細胞として定義される。
図2B】バルクRNA配列決定のための選別戦略を用いたフローサイトメトリー分析と、バルクRNA配列決定解析からの、CD206loCD107b-KC1と、CD206hiCD107b+KC2との間の差次的発現遺伝子(p値<0.001)の中で最も多く発現された200の遺伝子におけるボルケーノプロットとを示す。各ドットは、差次的発現遺伝子を示す。選別された細胞からの核と細胞質との面積比が示される。
図2C】全マクロファージ中のTim4hiKC及びMHCIIhi被膜マクロファージ(左側)、並びにKC中のCD206loESAM-KC1及びCD206hiESAM+KC2(右側)のフローサイトメトリープロットを示す。定量化のために、各ドットは個体を表し、中央値は線で示される。
図2D】MHCIIhi被膜マクロファージ、CD206loESAM-KC1及びCD206hiESAM+KC2のフローサイトメトリープロットを示す。それぞれの表示されたマーカーの発現が示される。
図2E】生肝臓シングレットのtSNE解析で投影された表示されたマーカーの発現レベルのドットプロット表示を示す。データは、手動で画定したKC2(赤色)、KC1(青色)及びLSEC(緑色)を示す、11マーカーフローサイトメトリーパネルによって解析した。
図2F】フローサイトメトリー選別された肝臓のKC1、KC2、被膜マクロファージ及び単球の走査型電子及び光学(サイトスピン)顕微鏡画像を示す。スケールバーは、1μmを表す。
図2G】誕生(0d)から8週齢までの発達において、異なる肝臓細胞集団の相対存在量の動態学によるプロットを示す。
図2H】8週齢のMs4a3crexRosaTomatoマウスにおける表示された集団でのTomatoの発現頻度のフローサイトメトリー測定を示す。各ドットは個体を表し、中央値は線で示される。
図2I】S100a4CrexRosaEYFP及びCsf1rGFPマウスの分析から得られた代表的なフローサイトメトリープロットを示す。各ドットは個体を表し、中央値は線で示される。
図2J】一対のCD45.1/CD45.2並体結合マウスからのCD45.2パラビオント(parabiont)の分析から得られた代表的なフローサイトメトリープロットを示す。WTCD45.1をWTCD45.2に外科的に結合し、3か月後に分析した。各ドットは個体を表し、中央値は線で示される。
図3A】屠殺の5分前に抗CD45(マウス1匹当たり500ng)を静脈内注射したC57BL/6WTマウスの肝臓の分析から得られた代表的なフローサイトメトリープロットを示す。各ドットは個体を表し、中央値は線で示される。非注射対照及び注射マウスが示される。
図3B】WTC57BL/6マウスからの肝臓ビブラトーム切片の低倍率の免疫蛍光顕微鏡画像を示す。切片はClec4F及びCD206に対して標識化され、DAPIで染色される。スケールバーは、20μmを表す。
図3C】WTC57BL/6マウスからの肝臓ビブラトーム切片の高倍率の免疫蛍光顕微鏡画像を示す。切片はClec4F及びCD206に対して標識化され、DAPIで染色される。スケールバーは、10μmを表す。
図3D】インビボでのCD206標識化後のKC1及びKC2の例を示す、単一チャネルの蛍光顕微鏡写真(CD206-赤色及びF4/80-緑色)の単一のzスライスと、DAPI-青色を含む統合画像とを示す。スケールバーは、5μmを表す。
図3E】CD206CrexRosaTomatoマウスを発生させるスキームを示す。
図3F】分析の24時間前にタモキシフェンの単回注射で処置したMrc1creERT2xRosaTomatoマウスからの肝臓切片の免疫蛍光顕微鏡画像を示す。切片はF4/80に対して標識化され、DAPIで染色される。スケールバーは、20μmを表す。独立したフィールドでのF4/80+CD206lo(KC1)及びF4/80+CD206hi(KC2)細胞の32の定量化が表示される。
図3G】F4/80、CD206及びサイトケラチン7に対して標識化された肝臓切片の画像を示す。KC1又はKC2と門脈三つ組との間の距離を測定しプロットした。
図4A】CD45-CD31+LSEC、CD45+Lin-F4/80+CD64+Tim4+ESAM-CD206loKC1、及びCD45+Lin-F4/80+CD64+Tim4+ESAM+CD206hiKC2が投影された、肝臓全体のフローサイトメトリープロットを示す。
図4B】3つの集団における表示されたマーカーの発現強度のフローサイトメトリープロファイルを示す。
図4C】肝臓細胞のイメージングサイトメトリー(イメージストリーム)解析を示す。KC1(青色-上部)及びKC2(赤色-下部)が示される。
図4D】選別された肝臓LSEC及びKC2の走査型電子顕微鏡画像を示す。スケールバーは、1μmを表す。白矢印で示される窓は、拡大画像で示される。
図4E】8週齢のLyz2crexRosaYFPマウスにおいて、表示された集団でのYFPの発現頻度のフローサイトメトリー測定を示す。KC1(下部の正方形)及びKC2(上部の正方形)は、ゲーティング戦略の各ステップで重ね合わせられる。各ドットは個体を表し、中央値は赤線で示される。
図4F】表示されたマーカーの発現に基づいて手動で注釈を付けた免役細胞集団のプロットを示す。CD45+肝臓細胞、KC1及びKC2を選別し、製造業者の推奨に従ってBD Rhapsodyカートリッジにロードした。免疫応答パネルMm(BD)を使用して、397遺伝子の発現のモニタリング及びtSNEの生成を可能にした。
図4G】クロドロネートリポソーム(CLL)に媒介されるKC枯渇後のC57BL/6マウスにおけるLSEC、KC1及びKC2集団の頻度のフローサイトメトリー測定を示す。各ドットは個体を表し、中央値は線で示される。
図4H】クロドロネートリポソームに媒介されるKC枯渇後のMs4a3crexRosaTomatoマウスにおけるKC1及びKC2集団の頻度のフローサイトメトリー測定を示す。各ドットは個体を表し、中央値は線で示される。
図5A】選別された肝臓KC1及びKC2のバルクRNA配列決定からのトランスクリプトームの主成分分析のプロットを示す。
図5B】KC1及びKC2によって発現される遺伝子の発現のドットプロット表示を示す。マクロファージにおいて高発現することが知られている遺伝子は、Clec4f、Lyz2、Csf1r、Timd4であり、LSECで主に発現されると記載されているものは、Mrc1、Pecam1、Esam及びCdh5である。
図5C】2つの集団間のDEGのヒートマップを示す。ヒートマップでは、KC2は、KC1集団と比較して、1364の遺伝子の発現がより高く、51の遺伝子の発現がより低い。
図5D】選別されたKC1、KC2又はLSECで発現されたマクロファージ又は内皮細胞を代表する、選択された遺伝子のヒートマップを示す。
図5E】LSEC、KC1及びKC2の選別後に生成されたバルクRNAseqデータの主成分分析を示す。
図5F】KC1及びKC2において最も多く発現された100の遺伝子のベン図を示す。最も多く発現された100の遺伝子の中には、表示された基準マクロファージ遺伝子を含む64の共通遺伝子が存在する。
図5G】選別されたLSECとKC1との間、又はLSECとKC2との間の差次的発現遺伝子のボルケーノプロットを示し、保存された内皮対KC(両方のサブセット)シグネチャーが強調されている。
図5H図5Aと同じ分析であるが、Lyz2crexRpl22HAマウス(RiboTagアプローチ)から得られたトランスラトームを用いたプロットを示す。
図5I図5Bと同じ分析であるが、Lyz2crexRpl22HAマウス(RiboTagアプローチ)から得られたトランスラトームを用いたプロットを示す。
図5J図5Cと同じ分析であるが、Lyz2crexRpl22HAマウス(RiboTagアプローチ)から得られたトランスラトームを用いたヒートマップを示す。ヒートマップでは、KC2は、KC1集団と比較して、309の遺伝子の発現がより高く、98の遺伝子の発現がより低い。
図5K図5Aと同じ分析であるが、プロテオームを用いたプロットを示す。
図5L図5Bと同じ分析であるが、プロテオームを用いたプロットを示す。
図5M図5Cと同じ分析であるが、プロテオームを用いたヒートマップを示す。ヒートマップでは、KC2は、KC1集団と比較して、509のタンパク質の発現がより高く、32のタンパク質の発現がより低い。
図5N】統合されたトランスクリプトーム、トランスラトーム及びプロテオームデータセットの主成分分析によるプロットを示す。
図5O】異なる技術から特定された最も多く発現された100の遺伝子/タンパク質のベン図を示す。
図5P】KC1又はKC2に特異的な一般経路(左側)又は代謝関連経路(右側)のRNA-seqベースの沖積プロットを示す。
図5Q】定常状態でKC1と比較したKC2のRNA-seqベースの統合ネットワーク分析を示す。遺伝子発現データセットのネットワークベースの統合は、当該技術分野で知られている他の研究によって記載されるように実行した。簡単に言うと、統合ネットワーク分析のためのトポロジカルツールをKEGG経路にマッピングした。偽発見率(FDR)に基づいて上方制御及び下方制御された代謝遺伝子を、全ての本質的なKEGG経路の属性を維持するモデルにマッピングした。
図5R】KC1とKC2との間の代謝関連の上位10のDEGのヒートマップを示す。
図6A】9週間の給餌の後、普通食(ND)又は高脂肪食(HFD)を与えたマウス肝臓のヘマトキシリン及びエオシン染色の画像を示す。
図6B】表示された時間にわたってHFDを与えたマウスにおいてKC内のKC1及びKC2の頻度のフローサイトメトリープロットを示す。各ドットは個体を表し、中央値は線で示される。
図6C】表示された時点のHFDにおけるMs4a3CrexRosaTomatoマウスの分析から得られた代表的なフローサイトメトリープロットを示す。各ドットは個体を表し、中央値は線で示される。
図6D図6Cで見られるものと同様のフローサイトメトリープロットを示すが、KC1及びKC2集団においてゲーティングを行った。
図6E】異なる食餌(ND普通食、HFD高脂肪食、MCDメチオニン-コリン欠乏食)にわたって、KC1とKC2との間の上位DEGのヒートマップを示す。
図6F】LDLの取込み及び脂質貯蔵に焦点を合わせたKC1及びKC2のRNA-seqベースの分析を示す。
図6G】ND及びHFD給餌マウスから選別されたKC1又はKC2間の全DEGを用いた経路分析を示す。
図6H】ND又はHFDマウスから選別されたKC1間のDEGのヒートマップ及び経路分析を示す。基準DEGは、ボックス内に表示される。
図6I】ND又はHFDマウスから選別されたKC2間のDEGのヒートマップ及び経路分析を示す。基準DEGはボックス内に表示され、NDとHFDとの間のDEGの統合ネットワーク分析が提供される。
図6J】当該技術分野で知られている研究から抽出されたシングルセルRNAseqデータ(55,118細胞)のプロットを示す。KCは、Clec4fの発現が高いことから特定された。Cd36及びMrc1の発現は、KC集団に重ね合わせられる。
図6K】表示された集団におけるCD36の発現強度のフローサイトメトリープロファイル及びMFIの定量化を示す。
図7A】組換えの誘導のためにタモキシフェンを強化した食餌を1週間与えた後のCdh5CreERT2xRosaTomatoマウスの分析からの代表的なフローサイトメトリープロットを示す。表示された肝臓細胞集団に対して陽性細胞の割合が示される。
図7B】キメラCdh5CreERT2xRosaTomatoマウスのイメージングを示す。肝臓を処理し、ビブラトームにより切片にし(厚さ300μmの切片)、Iba-1及びTomatoで染色した。
図7C】タモキシフェン-食餌誘導の終了から表示された時点後のCdh5CreERT2xRosaTomatoマウスの分析からの代表的なフローサイトメトリープロットを示す。
図7D】KC2枯渇マウスの発生の概略図を示す。
図7E】Cdh5creERT2xRosaDTRマウスにおける肝臓KCのフローサイトメトリー分析を示す。1回のDT注射後の表示された時点でKC2枯渇の特異的な除去をモニターした。
図7F】6週間のHFD後のマウスの画像を示す。HFDの最初の6週間にわたる対照及びKC2枯渇マウスの絶対体重。
図7G】6週間のHFD後の対照及びKC2枯渇マウスにおける白色脂肪組織重量によるプロットを示す。
図7H】表示されたマウスの肝臓における過酸化水素及びマロンジアルデヒドアッセイのプロットを示す。
図7I】HFDの6週目に一晩絶食させたマウスにおいて実施された耐糖能試験によるプロットを示す。
図7J】表示されたマウスからの肝臓切片のヘマトキシリン及びエオシン染色の画像を示す。
図7K】表示されたマウスにおける循環トリグリセリドの測定によるプロットを示す。
図7L】HFDの最初の1週間にわたって代謝ケージに個別に入れられたマウスのエネルギー摂取及び消費の測定によるプロットを示す。
図7M】HFDの最初の1週間にわたって代謝ケージに個別に入れられたマウスのエネルギー摂取及び消費の測定によるプロットを示す。
図7N】HFDの最初の1週間にわたって代謝ケージに個別に入れられたマウスのエネルギー摂取及び消費の測定によるプロットを示す。
図7O】HFDの最初の1週間にわたって代謝ケージに個別に入れられたマウスのエネルギー摂取及び消費の測定によるプロットを示す。
図7P】HFDの最初の1週間にわたって代謝ケージに個別に入れられたマウスのエネルギー摂取及び消費の測定によるプロットを示す。
図7Q】フローサイトメトリー分析プロットを示す。負荷されていないFITC標識化グルカンカプセル化siRNA粒子(GeRP)をマウスに静脈内注射し、24時間後に肝臓細胞を分析した。
図7R】表示された選別された細胞における処置の最後にqPCRによって評価されたCd36発現のプロットを示す。スクランブルRNA(Scr)又はCd36に対するsiRNA(si-CD36)を含有するGeRPを週に3回、2週間にわたってマウスに注射した。
図7S】GERP処置の最後の体重のプロットを示す。
図7T】処置の最後に測定された血糖及び耐糖能試験(GTT)のプロットを示す。
図7U】CD36KD及びScr処置マウスからのデータを比較する経路分析を示しており、調節された経路が表示される。バルクRNA-seqは、全肝臓マクロファージにおいて実施した。
図7V】同じマウスの肝臓における酸化ストレスマーカーMDA及びH2O2の測定によるプロットを示す。各ドットは個体を表し、中央値は線で示される。
図7W】CD36KD及びScr処置マウスからのトリグリセリドの肝臓濃度のプロットを示す。
図8A】文献で入手可能ないくつかのヒト肝臓データセットからのCD45細胞(PTPRC発現)を分析することによって得られたUMAP投影を示す。教師なしクラスタリングは、Seurat解析パイプラインを用いて実施した。統合サンプルを用いたUMAPにおけるマクロファージマーカー(Cd14及びCd68)及びKC2マーカー(Mrc1及びLyve1)の正規化された発現レベルの特徴プロット表示。
図8B】文献で入手可能ないくつかのヒト肝臓データセットからのCD45細胞(PTPRC発現)を分析することによって得られたUMAP投影を示す。教師なしクラスタリングは、Seurat解析パイプラインを用いて実施した。統合サンプルを用いたUMAPにおけるマクロファージマーカー(Cd14及びCd68)及びKC2マーカー(Mrc1及びLyve1)の正規化された発現レベルの特徴プロット表示。
図9】本出願の概要を含む概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
実施形態の説明
一態様では、サンプル中のマクロファージの集団を検出する方法であって、サンプル中のマクロファージにおけるCdh5の発現を検出及び/又は決定することを含む方法が提供される。
【0030】
本明細書で使用される場合、「発現」という用語は、核酸発現(例えば、遺伝子発現及び/又はRNA発現)及びタンパク質発現を指すために緩く使用されている。
【0031】
いくつかの例では、本方法は、サンプル中のマクロファージにおいて、CD107a、CD107b、IGFBP7(インスリン様増殖因子結合タンパク質7)、LYVE1、CD36、CD206及び/又はESAMを含む1つ又は複数のマーカーの発現を検出及び決定することをさらに含む。いくつかの例では、本方法は、2つ以上、又は3つ以上、又は4つ以上、又は5つ以上、又は6つ以上、又は7つ全てのマーカーの発現を検出及び/又は決定することを含む。いくつかの例では、本方法は、本明細書に開示される2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ又は全てのマーカーの発現を検出及び/又は決定することを含む。
【0032】
いくつかの例では、本方法は、マクロファージマーカーの発現を検出することによって、サンプル中のマクロファージである細胞を検出及び決定することをさらに含む。
【0033】
いくつかの例では、マクロファージは肝臓マクロファージである。肝臓マクロファージは、長い間、腸の下流の門脈から入ってくる潜在的な侵入者に対する肝臓の防御を担当する組織スカベンジャーの均一な集団であると考えられてきた。この機能は重要であるが、これは、マクロファージの役割のより一層詳細な一覧の中の1つにすぎない。現在、マクロファージが組織特異的な恒常性機能を媒介する能力についての認識が高まっている。
【0034】
いくつかの例では、マクロファージはクッパー細胞(KC)であり、任意選択的に、胚由来のクッパー細胞である。
【0035】
当該技術分野で知られているように、クッパー細胞(KC)は、それが常在する組織である肝臓に高度に適応された不均一な免疫細胞集団を表す。この臓器は生物の代謝の基礎であり、したがって、KCは、多くの代謝プロセスにおいて大きな役割を果たす。
【0036】
いくつかの例では、マクロファージの集団は、クッパー細胞の第1の集団(すなわち、KC1)及び/又はクッパー細胞の第2の集団(すなわち、KC2)であり得る。いくつかの例では、KC1及びKC2は、典型的な(又は基準の)マクロファージ遺伝子発現、RNA発現、及び/又はタンパク質発現も発現し得る。
【0037】
いくつかの例では、マクロファージは、代謝的に活性なマクロファージである。
【0038】
本明細書で使用される場合、「基準マーカー」又は「典型的なマーカー」又は「普遍的なマーカー」という用語は、互いに関連して使用されるべきであり、マクロファージの全てではなくてもほとんどのサブタイプで発現されることが当該技術分野において知られているマーカーを指すために互換的に使用される。
【0039】
いくつかの例では、マクロファージ遺伝子は、Clec4f、Lyz2、Vsig4、Csf1r及びAdgre1(F4/80)などであり得る。いくつかの例では、典型的な(基準の)及び/又は普遍的なマクロファージマーカーは、F4/80、Tim4、Clec4F、及びVsig4などを含むがこれらに限定されない、1つ又は複数のマーカーを含む。
【0040】
いくつかの例では、本方法は、Clec4f、Lyz2、Vsig4、Csf1r、Adgre1、F4/80、Tim4、Clec4F、及びVsig4の発現を検出することによって、サンプル中のマクロファージである細胞を検出及び決定することをさらに含む。
【0041】
マウス肝臓という特定の状況では、KCは類洞に局在化されることが知られており、通常、F4/80、CD64及びTim4などの特定のマーカーを発現する細胞の均一な集団として説明される。しかしながら、本開示の発明者らは、本開示の発明者らによりESAM-LYVE1-CD206-Cd36-KC1に対抗してKC2と名付けられた、特にESAM、LYVE1、CD206及びCD36を発現する亜集団により、CD64+F4/80+Tim4+KCの不均一性を観察した。本開示の発明者らは、マクロファージをその起源に従って追跡することが知られているいくつかの運命マッピング(fate-mapping)システムを使用することによって、いずれの集団も真のクッパー細胞であることを確認した。
【0042】
KC1及びKC2は同じレベルで標識化されており、そのマクロファージの性質が確認された。しかしながら、本開示の発明者らは、KC2が、Esam、Lyve1又はPecam1などの、古典的に内皮細胞に割り当てられた多くのマーカーを発現することも観察した。したがって、本開示の発明者らは、これらの内皮関連遺伝子の1つであるCdh5に基づいた別の利用可能な運命マッピングシステムを使用することを決断した。このシステムでは、KC2は効率的に標識化されるが、KC1は標識化されず、2つの集団を区別するための強力な手段が提供される。
【0043】
したがって、いくつかの例では、本方法は、クッパー細胞の第1の集団(すなわち、KC1)であるCD206lo及び/又はESAM-を発現する集団と、クッパー細胞の第2の集団(すなわち、KC2)であるCD206hi及び/又はESAM+を発現する集団とを検出及び決定することを含む。いくつかの例では、本方法は、クッパー細胞の第1の集団(すなわち、KC1)であるCD206lo及びESAM-を発現する集団と、クッパー細胞の第2の集団(すなわち、KC2)であるCD206hi及びESAM+を発現する集団とを検出及び決定することを含む。
【0044】
KC2集団において特異的に発現される遺伝子の中には、特にインスリン様増殖因子結合タンパク質7(igfbp7)という遺伝子があり、これは、ごく最近、肝臓マクロファージによる肝細胞代謝の制御を可能にする重要な遺伝子として説明された遺伝子である。肝臓マクロファージにおいてこの遺伝子を特異的にサイレンシングすると、肝細胞の初期化によって、高脂肪食を与えたマウスで肥満症状が消失されることが示された。しかしながら、KC2に特異的な遺伝子の中で注目すべき別の遺伝子は、細胞内でこれらの脂質の輸入を担う脂肪酸トランスポーターであるCd36であった。
【0045】
したがって、いくつかの例では、本方法は、CD31、CD63、CD81、CD107a、Lyve1、IGFBP7(インスリン様増殖因子結合タンパク質7)、CD36、及びこれらの組み合わせを含む1つ又は複数のマーカーの発現を検出及び決定することをさらに含み、任意選択的に、1つ又は複数のマーカーの過剰発現によってクッパー細胞の第2の集団(すなわち、KC2)である集団が決定される。いくつかの例では、本方法は、CD107a、CD107b、IGFBP7、LYVE1、CD36、CD206及び/又はESAM、並びに及びこれらの組み合わせを含む1つ又は複数のマーカーの発現を検出及び決定することをさらに含み、1つ又は複数のマーカーの過剰発現によって、クッパー細胞の第2の集団(すなわち、KC2)である集団が決定される。いくつかの例では、本方法は、2つ以上、又は3つ以上、又は4つ以上、又は5つ以上、又は6つ以上、又は7つ全てのマーカーの発現を検出及び/又は決定することを含む。いくつかの例では、本方法は、本明細書に開示される2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、又は全てのマーカーの発現を検出及び/又は決定することを含む。
【0046】
いくつかの例では、クッパー細胞の第2の集団(すなわち、KC2)は、形態学的にその表面に窓(fenestrae)がない。いくつかの例では、クッパー細胞の第2の集団(すなわち、KC2)は、LSEC関連遺伝子を発現する。いくつかの例では、LSEC関連遺伝子は、Mrc1、Pecam1(CD31)、Esam、Kdr、Lyve1、及びこれらの組み合わせのうちの1つ又は複数を含み得るが、これらに限定されない。
【0047】
いくつかの例では、本方法は、CD206、ESAM、CD36、及びこれらの組み合わせを含む1つ又は複数のマーカーの存在を検出、選別、及び/又は決定することをさらに含む。
【0048】
いくつかの例では、本方法は、マクロファージの第1の集団及び/又は第2の集団を分離することをさらに含み、任意選択的に、本方法は、クッパー細胞の第1の集団及び/又は第2の集団を分離することをさらに含む。
【0049】
いくつかの例では、本方法は、Cdh5、CD107b、CD206hi及びESAM+のうちの1つ又は複数を発現する細胞の集団(すなわち、クッパー細胞の第2の集団)をサンプルから除去することをさらに含む。
【0050】
いくつかの例では、本方法は、CD45、CD64、F4/80、TIM4、Clec4F、Adgre1(F4/80)、Timd4、Csf1r、及びClec4fを含む1つ又は複数のマーカーの発現を決定することをさらに含む。
【0051】
いくつかの例では、本方法は、被膜マクロファージを(除去又はゲーティングすることによって)排除することをさらに含む。いくつかの例では、被膜マクロファージは、Adgre1+、Cx3cr1+、Timd4-、Clec4f-などを含む1つ又は複数の遺伝子を発現する。
【0052】
別の態様では、マクロファージの集団を検出する及び/又は分離する及び/又は枯渇させるためのキットであって、Cdh5を発現するマクロファージの集団を検出するための薬剤を提供することと、任意選択的に、Cdh5を発現するマクロファージの集団を分離することができる薬剤を提供することと、任意選択的に、Cdh5を発現するマクロファージの集団を枯渇させることができる薬剤を提供することとを含むキットが提供される。
【0053】
いくつかの例では、本キットは、CD107b、CD206hi及びESAM+を発現するマクロファージの集団を検出するための薬剤をさらに提供し、任意選択的に、CD107b、CD206hi及びESAM+を発現するマクロファージの集団を分離することができる薬剤を提供し、任意選択的に、CD107b、CD206hi及びESAM+を発現するマクロファージの集団を枯渇させることができる薬剤を提供する。いくつかの例では、本キットは、CD107a、CD107b、IGFBP7、LYVE1、CD36、CD206及び/又はESAM、並びにこれらの組み合わせを含む1つ又は複数のマーカーを発現するマクロファージの集団を検出するための薬剤も含み得る。いくつかの例では、本キットは使用説明書を含み、1つ又は複数のマーカーの過剰発現によってクッパー細胞の第2の集団(すなわち、KC2)である集団が決定される。いくつかの例では、本キットは、本明細書に開示される2つ以上、又は3つ以上、又は4つ以上、又は5つ以上、又は6つ以上、又は7つ以上、又は全てのマーカーを検出するための薬剤も含み得る。いくつかの例では、本キットは、本明細書に開示される2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、又は全てのマーカーを検出するための薬剤も含み得る。
【0054】
特異的な標識化に加えて、KC2のターゲティングにより、本開示の発明者らは、KC2が効率的に除去され得る枯渇モデル(Cdh5creERT2xRosaDTRマウス)を開発することができた。したがって、さらに別の態様では、外因的な活性化の際に除去を受けるように遺伝子操作されたCdh5を発現するマクロファージ集団を含むトランスジェニック動物モデルが提供される。
【0055】
例えば、動物モデルは、マウス、又はラット、非ヒト霊長類などであり得るが、これらに限定されない。いくつかの例では、動物施設は、特定病原体不在条件下にある。いくつかの例では、本方法は、C57/BL6、BALB/c、CD-1、SCID、A/J、スプラーグドーリー、ウィスター、アカゲザル、ニホンザル、アヌビスヒヒ(Olive baboon)、リスザル、オマキザルなどであるがその背景に限定されない動物モデルの使用を含み得る。いくつかの例では、本方法は、C57/BL6背景マウスの使用を含む。
【0056】
いくつかの例では、トランスジェニック動物モデルは、トランスジェニックマウスモデルである。いくつかの例では、マウスモデルは、Cdh5creERT2xRosaDTRマウスである。いくつかの例では、動物モデルは、マクロファージ集団の誘導的且つ特異的な枯渇を可能にする。いくつかの例では、動物モデルは、クッパー細胞集団、任意選択的に、クッパー細胞の第2の集団(すなわち、KC2)の誘導的且つ特異的な枯渇を可能にする。いくつかの例では、Cdh5creERT2xRosaDTRマウスは、Cdh5creERT2マウス(MGI:3848982)をRosaDTRマウス(MGI:3772576)と交配させることによって得られたものである。これらの動物では、タモキシフェン処置により、Cdh5発現細胞のみでジフテリア(Diphteria)毒素受容体の発現が誘導されることになる。いくつかの例では、Cdh5creERT2xRosaDTRマウスにおけるKC2を含む細胞の枯渇は、前もってタモキシフェン処置されたマウスにジフテリア毒素(DT)を注射することによって誘発される。
【0057】
さらに別の態様では、マクロファージの集団を枯渇させる方法であって、対象においてマクロファージの集団を検出及び低減することを含む方法が提供されており、ここで、マクロファージの集団は、1つ又は複数のCdh5、CD107b、CD206、及びESAMを発現する。
【0058】
いくつかの例では、枯渇させるマクロファージの集団は、第2のクッパー細胞集団(すなわち、KC2)である。いくつかの例では、第2のクッパー細胞集団の枯渇は、肥満における代謝障害の改善を提供する。いくつかの例では、第2のクッパー細胞集団の枯渇は、酸化ストレスの改善、改善された耐糖能及び/又はあまり顕著でない脂肪症を提供する。
【0059】
際だったことに、KC2枯渇マウスは、高脂肪食を与えたときに、体重が増加しなかった。さらに、これらのマウスでは、耐糖能が改善され、脂肪肝が防止された。注目すべきことに、KCにおけるCd36の特異的なサイレンシングは、大きさは小さくても、同等の効果を有した。これにより、CD36hiKC2は、CD36の発現によって、肥満に関連する肝臓の酸化ストレスを制御することが示された。
【0060】
肥満は高い罹患率に関連する世界的な疾患であり、その根絶は、次世紀の最も重要な健康面の課題の1つを構成する。しかしながら、疾患の病因は、依然としてとらえどころのないままであり、効果的な治療戦略を設計するためにはより深い理解が必要である。マクロファージの不均一性は組織を越えて十分に認識されているが、同じ組織内の多様性は見落とされることが多い。この研究により、マウス肝臓におけるクッパー細胞の2つの亜集団の共存が明らかになり、マイナーなCD206hiCD36hi亜集団(KC2)は代謝機能を有しており、肥満に関連する肝臓酸化ストレスの制御に関与する。特に、本開示の発明者らは、肥満の発症に特異的に関与するKCの亜集団(KC2)を特定し、それらを特異的に標識化して枯渇させるためのシステムを開発し、肥満を打ち負かすための新しい戦略への道を開いた。
【0061】
したがって、別の態様では、肥満及び/又は過体重対象の健康を改善する方法であって、対象においてマクロファージの集団を低減することを含む方法が提供されており、ここで、マクロファージの集団は、1つ又は複数のCdh5、CD107b、CD206、及びESAMを発現する。
【0062】
また本発明者らは、KC2におけるCD36の発現も標的とし、KC2におけるCD36経路が肥満に関連する肝臓酸化ストレスを制御することを示す。したがって、さらに別の態様では、対象における肥満及び/又は肥満に関連する代謝障害のリスクを決定する方法であって、マクロファージにおけるIgfbp7及び/又はCd36発現の発現レベルを検出することを含む方法が提供される。
【0063】
いくつかの例では、本方法は、対象における肥満及び/又は肥満に関連する代謝障害のリスクがあると特定された対象を、Cdh5を発現するマクロファージ細胞を枯渇させることができる薬剤で処置することをさらに含む。
【0064】
いくつかの例では、本方法は、CD206hi及びESAM+マクロファージを低減し、任意選択的に、本方法は、Cdh5+、CD206hi、及びESAM+クッパー細胞を低減する。いくつかの例では、本方法は、マクロファージの亜集団を統計的に有意な量で低減する。いくつかの例では、マクロファージの亜集団は、KC1及び/又はKC2であり得る。いくつかの例では、クッパー細胞の集団の減少は、対象の状態(例えば、代謝障害)を改善するのに十分である。
【0065】
いくつかの例では、本方法は、生体サンプルを採取することをさらに含み得る。いくつかの例では、生体サンプルは、固体サンプル又は液体サンプルを含み得る。いくつかの例では、生体サンプルは、固体サンプル(例えば、肝臓サンプル)を含む。
【0066】
いくつかの例では、本方法は、キット(例えば、比色分析キット)を用いて、生物学的含有量(例えば、総トリグリセリド(TG)含有量)を決定することを含む。いくつかの例では、生物学的含有量(例えば、TG含有量)は、キット(例えば、Pierce BCAタンパク質アッセイキット)によって決定される濃度(例えば、タンパク質濃度)に対して正規化される。
【0067】
いくつかの例では、本方法は、キット(例えば、Amplex(商標)Red過酸化水素/ペルオキシダーゼアッセイキット、又は脂質過酸化(MDA)アッセイキット(比色分析/蛍光分析))を用いて、化合物(例えば、H、又はマロンジアルデヒド)の細胞内量を測定することを含む。いくつかの例では、本方法は、表示されたキット(例えば、比色分析キット)と共に分析計(例えば、臨床化学分析計)を用いて、液体サンプル(例えば、血漿多分析物)のプロファイリングを実施することを含む。
【0068】
いくつかの例では、本方法は、遠心分離で細胞を単離することによって、分析(例えば、フローサイトメトリー分析)のための固体サンプル(例えば、肝細胞)を調製することを含む。いくつかの例では、固体サンプル(例えば、肝細胞)を酵素(例えば、コラゲナーゼ、又はデオキシリボヌクレアーゼI)によって消化して、細胞(例えば、マクロファージ)を単離した。いくつかの例では、酵素消化は、例えば、5分間、又は10分間、又は15分間、又は20分間、又は25分間、又は30分間、又は35分間、又は40分間などで実施されるが、これらに限定されない。いくつかの例では、酵素消化は、例えば、34℃、35℃、36℃、37℃、38℃、39℃、40℃などの温度で実施されるが、これらに限定されない。いくつかの例では、酵素消化は、針(例えば、18G針)を通すことによって、37℃で30分間実施される。
【0069】
いくつかの例では、単離された細胞(例えば、マクロファージ)を、細胞(例えば、赤血球)の溶解後に分析(例えば、フローサイトメトリー)のために抗体によって直接染色した。データは、当該技術分野で知られている機器(例えば、LSRII又はImagestream Amnis)を用いて生成され、当該技術分野で知られているソフトウェア(例えば、Flow Jo)によって分析された。当該技術分野で知られている機器(例えば、FACS Aria II又はIII)を用いて細胞を選別した。
【0070】
いくつかの例では、本方法は、分析(例えば、フローサイトメトリー)のために生体サンプル(例えば、細胞)を調製し、標識化し、データを記録することを含む。いくつかの例では、生体サンプル(例えば、細胞)は、抗体(例えば、細胞生存率を決定するために、シスプラチン)で染色される。キット(例えば、Cytofkit)及びアルゴリズム(例えば、One-sense)を用いて分析を実施した。
【0071】
いくつかの例では、本方法は、プラットフォーム(例えば、Chromiumシングルセル3’プラットフォーム)を用いて、ゲノム解析(例えば、10Xゲノム解析)のためのサンプルを処理することを含む。いくつかの例では、本方法は、商事会社(例えば、Novagene AIT)によるレーン(例えば、Novaseqレーン)において細胞(例えば、CD45+Tomato-、又はCD45+Tomato+細胞)をプールし、配列決定することを含む。
【0072】
いくつかの例では、本方法は、翻訳解析(例えば、RiboTag解析)のためのサンプルを調製することを含む。いくつかの例では、本方法は、細胞を選別し、緩衝液(例えば、溶解緩衝液)及び化合物(例えば、シクロヘキシミド)中に再懸濁させることを含む。いくつかの例では、細胞ホモジネートを遠心分離して(例えば、10,000g、4℃で10分間)、細胞片を除去した。いくつかの例では、上清を氷上に移し、抗体(例えば、抗HA、又はマウスモノクローナルIgC1抗体)を上清に添加した。いくつかの例では、インキュベーションは、低温室で1時間、又は2時間、又は3時間、又は4時間、又は5時間、又は6時間、又は7時間、又は8時間、又は9時間、又は10時間、又は11時間、又は12時間などを含み得るが、これらに限定されない。いくつかの例では、上清を有し、抗体が添加されたサンプルは、低速回転させながら低温室(例えば、4℃)で4時間インキュベートされる。
【0073】
いくつかの例では、本方法は、緩衝液(例えば、均質化緩衝液)で洗浄することにより、サンプルに対して磁気ビーズ(例えば、DynabeadsプロテインG)を平衡化することを含む。いくつかの例では、サンプルを抗体と共にインキュベーション(例えば、4時間)した後、磁気ビーズ(例えば、DynabeadsプロテインG)をサンプルに添加した。いくつかの例では、サンプルは、低温室(例えば、4℃)で一晩さらにインキュベートされる。いくつかの例では、サンプルを緩衝液(例えば、高塩濃度緩衝液)で1回、又は2回、又は3回洗浄した。いくつかの例では、低温室において回転板上で、サンプルを緩衝液(例えば、高塩濃度緩衝液)で3回洗浄した(例えば、1回の洗浄につき5分)。
【0074】
いくつかの例では、本方法は、過剰な緩衝液を磁化ビーズから除去することを含み、精製された核酸(例えば、RNA)をサンプル(例えば、シングルセルサンプル)として使用した。いくつかの例では、本方法は、配列決定法(例えば、シングルセルRNA配列決定法)を用いて、核酸ライブラリー(例えば、cDNAライブラリー)を作成することを含む。
【0075】
いくつかの例では、本方法は、実験(例えば、Rhapsody実験)のために、一緒にプールされたバーコード化サンプル(例えば、12個のサンプル)を用いてシングルランで細胞を捕獲することを含む。いくつかの例では、本方法は、標的化された核酸(例えば、mRNA)に従ってサンプルを処理し、キット(例えば、Rhapsody標的化mRNA及びAbseq増幅キット)を用いてサンプルタグライブラリーを作製することを含む。いくつかの例では、サンプルは、次に、機器(例えば、Illumina HiSeq 4000システム)において、品質管理のスパイクイン(例えば、20%PhiX)を用いて、サイクル(例えば、2x151サイクル)のラン(例えば、インデックス付ペアエンドシーケンシングラン(indexed paired-end sequencing run))を受ける。
【0076】
いくつかの例では、本方法は、動物の屠殺の前に、抗体(例えば、F4/80 Alexa Fluor 488、CD206-APC)を動物(例えば、野生型C57BL/6マウス)に注射することにより、イメージング(例えば、共焦点免疫蛍光)のために細胞(例えば、KC1、KC2集団)を標識化することを含む。
【0077】
いくつかの例では、本方法は、サンプル(例えば、肝葉)を固定液で固定し(例えば、パラホルムアルデヒドにより一晩)、次に糖溶液と共にインキュベートする(例えば、30%スクロースと共に24時間)ことを含む。いくつかの例では、本方法は、固定したサンプル(例えば、肝葉)を包埋化合物(例えば、オプティマル・カッティング・テンパラチャー(optimal cutting temperature)(OCT))に包埋し、機器を用いて切片に切断するか、或いは機器切片の場合は低融点ゲル(例えば、4%アガロース)中に包埋することを含む。
【0078】
いくつかの例では、本方法は、サンプルを固定液(例えば、グルタルアルデヒド、室温で1時間)及び化合物(例えば、四酸化オスミウム、室温で1時間)中で固定することを含む。いくつかの例では、本方法は、一連の段階的なアルコール(例えば、25%~100%のエタノール)を通してサンプルを脱水し、乾燥機(例えば、CPD030臨界点乾燥機)を用いて乾燥させることを含む。いくつかの例では、本方法は、機器(例えば、SCD005高真空スパッタコーター)を用いたコーティング(例えば、スパッタコーティング)により、細胞を増殖させる表面に金属(例えば、5nmの金)をコーティングすることを含む。いくつかの例では、本方法は、検出器(例えば、インレンズ二次電子検出器)を使用し、電圧(例えば、加速電圧8kV)で顕微鏡(例えば、電解放出JSM-6701F走査型電子顕微鏡)を用いて、コーティングしたサンプルを検査することを含む。
【0079】
2つの要素を指す場合に本明細書で使用される「関連する」という用語は、2つの要素間の広範な関係性を指す。関係性には、物理的関係、化学的関係又は生物学的関係が含まれるが、これらに限定されない。例えば、要素Aが要素Bと関連する場合、要素A及びBは直接又は間接的に互いに結合されてもよいし、或いは要素Aが要素Bを含有するか又はその逆であってもよい。
【0080】
2つの要素を指す場合に本明細書で使用される「隣接する」という用語は、1つの要素が別の要素と極めて接近していることを指し、それらの要素は互いに接触していてもよいが、それに限定されず、或いはさらに、それらの要素が、それらの間に配置された1つ又は複数のさらなる要素によって分離されていることを含むこともある。
【0081】
「及び/又は」という用語、例えば「X及び/又はY」は、「X及びY」或いは「X又はY」のいずれかを意味すると理解され、両方の意味又はいずれかの意味に対する明確な支持を提供すると解釈されるべきである。
【0082】
さらに、本明細書中の記載では、「実質的に」という語は、使用される場合は常に、「全体的に」又は「完全に」などを含むが、これらに限定されないと理解される。加えて、「含む(comprising)」、「含む(comprise)」などの用語は、使用される場合は常に、明確に記載されていない他の成分に加えて、このような用語の後に記載される要素/成分を広範に含むという点で、非限定的な記述言語であることが意図される。例えば、「含む」が使用される場合、「1つの」特徴への言及は、その特徴の「少なくとも1つ」への言及であることも意図される。「からなる(consisting)」、「からなる(consist)」などの用語は、適切な文脈では、「含む(comprising)」、「含む(comprise)」などの用語のサブセットとして考慮され得る。したがって、「含む(comprising)」、「含む(comprise)」などの用語を使用する本明細書に開示される実施形態では、これらの実施形態は、「からなる(consisting)」、「からなる(consist)」などの用語を使用する対応する実施形態に対する教示を提供することが認識されるであろう。さらに、「約」、「およそ」などの用語は、使用される場合は常に、通常、妥当な変動、例えば、開示される値の+/-5%の変動、又は開示される値の4%の変動、又は開示される値の3%の変動、開示される値の2%の変動、又は開示される値の1%の変動を意味する。
【0083】
さらに、本明細書中の記載では、特定の値は範囲で開示されることがある。範囲の端点を示す値は、好ましい範囲を示すことが意図される。範囲が記載されている場合は常に、その範囲は、可能性のある全ての部分範囲、及びその範囲内の個々の数値を包含し、教示することが意図される。すなわち、範囲の端点は、柔軟性のない限定と解釈されるべきではない。例えば、1%~5%の範囲の記載は、1%~2%、1%~3%、1%~4%、2%~3%などの部分範囲、並びに1%、2%、3%、4%及び5%などのその範囲内の個々の値を具体的に開示したことが意図される。その範囲内の個々の数値が、整数、分数及び少数も含むことは、認識されるべきである。さらに、範囲が記載されている場合は常に、その範囲は、示された数値端点からさらに少数点以下2桁又は有効数字2桁まで(適切な場合)の値を包含し、教示することも意図される。例えば、1%~5%の範囲の記載は、1.00%~5.00%及び1.0%~5.0%の範囲、並びにそれらの範囲に広がる全てのその中間値(例えば、1.01%、1.02%...4.98%、4.99%、5.00%及び1.1%、1.2%...4.8%、4.9%、5.0%など)を具体的に開示したことが意図される。上記の具体的な開示の意図は、範囲のあらゆる深さ/幅に適用可能である。
【0084】
さらに、いくつかの実施形態を記載する際、本開示は、方法及び/又はプロセスを特定のステップシーケンスで開示していることがある。しかしながら、他に要求されない限り、その方法又はプロセスは、開示される特定のステップシーケンスに限定されるべきではないことが認識されるであろう。他のステップシーケンスも可能であり得る。本明細書に開示されるステップの特定の順序は、不当な限定として解釈されるべきではない。他に要求されない限り、本明細書に開示される方法及び/又はプロセスは、記載された順序で実行されるステップに限定されるべきではない。ステップのシーケンスは変更され得るが、依然として本開示の範囲内に含まれる。
【0085】
さらに、本開示は本明細書で議論される特徴/特性のうちの1つ又は複数を有する実施形態を提供するが、これらの特徴/特性のうちの1つ又は複数は、他の代替実施形態では放棄されることもあり、本開示は、このような放棄及びこれらの関連する代替実施形態に対する支持を提供することが認識されるであろう。
【実施例
【0086】
実験セクション
材料&方法
動物モデル
マウス
全てのマウス実験及び手順は、シンガポールの農業食品畜産庁(Agri-Food and Veterinary Authority)及び実験動物研究のための国家諮問委員会(National Advisory Committee for Laboratory Animal Research)のガイドラインに従って、生物資源センター(Biological Resource Center)の動物実験委員会(Institutional Animal Care and Use Committee)(Agency for Science, Technology and Research, Singapore)による承認を受けた(ICUAC No.181402)。
【0087】
C57/BL6マウスは、Jackson Laboratoryから入手した。全てのマウスは、生物資源センターの動物施設において特定病原体不在条件下で繁殖及び飼育され、C57BL/6背景に維持された。インビボ実験で使用した全てのマウスは、明記されない限り、7~12週齢であった。マウスには、高脂肪食(脂肪60%-#D12492 Research Diets Inc.)を自由に与えるか、又は指定された場合にはタモキシフェン強化食(Teklad TD.130855 EnVigo)を与えた。耐糖能試験については、マウスを一晩絶食させてから、(Andrikopoulos et al., 2008)に従って、強制経口投与によって2g.kg-1のグルコースを与えた。次に、表示された時点で血糖を測定した。
【0088】
間接熱量測定(代謝チャンバ)
代謝ケージ研究については、マウスを個々に代謝チャンバ内に収容し、22℃において午前6時から午後6時までライトをつける12時間の明暗サイクルで維持した。開回路の間接熱量測定システムにおいてTSA代謝チャンバ(TSA System, Germany)を用いて、酸素消費量、CO2排出量、食物消費量、運動量及びエネルギー消費量を測定した。
【0089】
グルカンカプセル化siRNA粒子(GERP)の投与
当該技術分野で知られている他の研究によって以前に記載されたようにGERPを調製した。HFDを8週間与えたマウスを、まずその体重及び耐糖能に従ってランダム化した。次に、Cd36に対するsiRNA(5’-GCAAAUGCAAAGAAGGAAA-3’)(配列番号1)、又は陰性対照(Scr:5’-CAGUCGCGUUUGCGACUGG-3’)(配列番号2)(Dharmacon)(80μg)、及びEndoporter(0,1mM)が負荷された総用量2mgのGERPでマウスを処置した。蛍光標識(FITC)GERPを、静脈内注射により15日間にわたってマウスに6回投与した。
【0090】
マウスの生化学的パラメータ
肝臓サンプルを採取し、直ちに急速冷凍した。これらから、市販の比色分析キット(Roche;TG12016648)により、総トリグリセリド(TG)含有量を決定した。TG濃度は、製造業者の使用説明書に従ってPierce BCAタンパク質アッセイキット(Thermofisher;23227)により決定されるタンパク質濃度に対して正規化した。細胞内H2O2量は、Amplex(商標)Red過酸化水素/ペルオキシダーゼアッセイキット(Life Technologies;A22188)を用いて測定した。マロンジアルデヒド含有量は、脂質過酸化(MDA)アッセイキット(比色分析/蛍光分析)(Abcam;ab118970)を用いて測定した。血漿多分析物プロファイルは、表示された比色分析キット(全て、Biosentec)と共に臨床化学分析計(Mindray BS-240 Pro, BioSentec)を用いて実施した。全てのアッセイは、製造業者の使用説明書に従って実施した。
【0091】
細胞の調製
マクロファージの細胞単離、フローサイトメトリー及び選別
標準的な標識化手順を使用して、フローサイトメトリー分析のための細胞を調製した。当該技術分野で知られている他の研究によって以前に記載されたように、密度勾配を用いた遠心分離により肝細胞を単離した。マクロファージのために、コラゲナーゼ/デオキシリボヌクレアーゼI(0.2mg.ml-1のコラゲナーゼ、5単位.ml-1のデオキシリボヌクレアーゼI及びRPMI中10%のFBS)中、肝小葉を37℃で30分間消化し、18G針の数回の通過によって解離を完了させた。細胞損失を回避するために濃縮は行わず、単離した細胞は、赤血球溶解後にフローサイトメトリーのために直接染色した。使用した抗体は、主要リソース表に記載される。データは、LSRII(BD Bioscience)又はImagestream Amnis(Merck)によって獲得し、Flow Jo(Tree Star, Inc.)で解析した。FACS Aria II又はIII(BD Bioscience)を用いて細胞を選別した。
【0092】
飛行時間によるサイトメトリー(CyTOF)
当該技術分野で知られている他の研究によって以前に記載されたように、細胞を調製し、標識化し、データを記録した。簡単に言うと、従来のフローサイトメトリーの場合のように細胞を調製し、シスプラチンで染色して細胞生存率を決定した。使用した抗体は表1に記載される。使用した抗体は市販されており、金属と機能的に複合体が形成された(さらなる詳細は、PMID: 32607886/ Methods Mol Biol. 2020;2164:87-99./ doi: 10.1007/978-1-0716-0704-6_10.において見出すことができ、その内容は、参照によって本明細書中に援用される)。CytofKit及びOne-senseアルゴリズムを用いて、結果を解析した。
【0093】
質量分析
選別した細胞集団を尿素溶解緩衝液(8Mの尿素/トリス-HCl 50mM、pH8)中で溶解させ、TCEP 20mMの存在下、室温で20分間還元し、さらに55mMのクロロアセトアミドでアルキル化した。100mMの重炭酸トリエチルアンモニウム(TEAB、pH8.5;Sigma-Aldrich#T7408)で希釈した後、サンプルを比率(1:100)のリシルエンドペプチダーゼ(LysC、Wako #129-02541)及びトリプシン(Promega、#V5117)で、それぞれ4時間及び18時間消化した。
【0094】
サンプルをトリフルオロ酢酸(TFA Sigma-Aldrich#T6508;1%v/v)でさらに酸性化し、室温で10分間、14,000RPMで遠心沈殿させ、HLB96ウェルプレート(Waters、#WAT058951)を用いて脱塩した。粗ステップの高pH逆相分画(4画分、Reposil-Pur Basic C18 10μm、Dr Maisch Gmbh#r10.b9.0025)の後に、Obritrap Fusion Lumos質量分析計(Thermo Fisher Scientific)に連結したEasy LC 1000(Thermo Fisher Scientific)において、溶媒A(水中0.1%のギ酸)及び溶媒B(水中99.9%のアセトニトリル、0.1%のギ酸)の75分の勾配で、各画分を50cm(内径75μm)EASY-Spray RP-C18 LCカラム(Thermo Scientific)で分離した。
【0095】
ピークリストは、MaxQuantソフトウェアバージョン1.6.7.0を用いて作成した。スペクトルは、以下の固定修飾:カルバミドメチル(C)と、可変修飾:酸化(M)、脱アミド化(NQ)アセチル(N末端タンパク質)とを用いて、ターゲット-デコイMouse Uniprotデータベースに対して検索した。最大2回の切断ミスを許容し、質量許容差は、OT-MSサーベイスキャンでは4.5ppmの質量偏差(再較正後)であり、IT-MS/MSイオンフラグメントでは0.5Daであった。FDRは、1%に設定した。ラベルフリー定量(LFQ)を実施した。
【0096】
トランスクリプトミクス
ライブラリーの作製
バルクRNAseq実験については、20,000~50,000個の細胞をFACS選別し、製造業者のプロトコルに従ってArcturus PicoPure(登録商標)RNA単離キット(Arcturus(登録商標)Thermo Fisher Scientific, Waltham, MA, USA)を用いて、全RNAを抽出した。RIN(RNA Integrity Number)範囲5.8~6.7及びRINの中央値6.4での品質評価のために、全てのマウスRNAをAgilentバイオアナライザー(Agilent, Santa Clara, CA, USA)で解析した。2ngの全RNA及び1ulのERCC RNA Spike in Controls(Ambion(登録商標)Thermo Fisher Scientific, Waltham, MA, USA)の1:50,000希釈物を使用し、以下の変更を加えてSmart-Seq v2プロトコルを用いてcDNAライブラリーを作製した:1.20μMのテンプレート・スイッチ・オリゴ(template switch oligo)(TSO)の添加;2.Illumina Nextera XTキット(Illumina, San Diego, CA, USA)の1/5反応による200pgのcDNAの使用。
【0097】
Perkin Elmer Labchip(Perkin Elmer, Waltham, MA, USA)においてDNA高感度試薬キットを用いて、cDNAライブラリーの長さ分布をモニターした。全てのサンプルは、Illumina HiSeq 4000システム(Illumina)において2x151サイクルのインデックス付ペアエンドシーケンシングランを受けた(25サンプル/レーン)。
【0098】
Smart-seq2シングルセル解析については、96ウェルプレートにおいて288のシングルセルを選別し、以下の変更を加えてSmart-seq v2プロトコルを用いてcDNAライブラリーを作製した:1.1mg/mlのBSA溶解緩衝液(Ambion(登録商標)Thermo Fisher Scientific, Waltham, MA, USA);2.Illumina Nextera XTキット(Illumina, San Diego, CA, USA)の1/5反応による200pgのcDNAの使用。
【0099】
Perkin Elmer Labchip(Perkin 41 Elmer, Waltham, MA, USA)においてDNA高感度試薬キットを用いて、cDNAライブラリーの長さ分布をモニターした。全てのサンプルは、Illumina HiSeq 4000システム(Illumina, San Diego, CA, USA)において2x151サイクルのインデックス付ペアエンドシーケンシングランを受けた(298サンプル/レーン)。QCフィルタリングの後、169個の細胞を解析のために使用した。
【0100】
10X解析ついては、Chromiumシングルセル3’(v3 Chemistry)プラットフォーム(10x Genomics, Pleasanton, CA)を用いてサンプルを処理した。簡単に言うと、KCを含む100,000個の細胞CD45+Tomato-及び100,000個の細胞CD45+Tomato+をプールし、Novagene AITによるNovaseqレーン上で配列決定した。QCフィルタリングの後、78,944個の細胞を解析に使用した。
【0101】
RiboTag解析ついては、当該技術分野で知られている他の研究によって記載されるようにサンプルを調製した。簡単に言うと、50,000個の細胞を選別し、1mlの溶解緩衝液(RNaseフリー水中の50mMのトリス、pH7.4、100mMのKCl、12mMのMgCl2、1%のNP-40、1mMのDTT、1:100のプロテアーゼ阻害剤(Sigma Aldrich)、200単位/mlのRNasin(Promega)及び0.1mg/mlのシクロヘキシミド(Sigma Aldrich))中に氷上で再懸濁させた。細胞片を除去するために、ホモジネートをEppendorf管に移し、10,000g及び4℃で10分間遠心分離した。上清を氷上で新しいEppendorf管に移し、5μl(=125μg)の抗HA抗体(H9658、Sigma Aldrich)又は5μl(=1μg)のマウスモノクローナルIgG1抗体(Sigma、Cat#M5284)を上清に添加した後、4℃の低温室でゆっくり回転させながら4時間のインキュベーションを行った。一方、DynabeadsプロテインG(Thermo Fisher Scientific)を100μl/サンプルで、3回洗浄することにより均質化緩衝液に対して平衡化した。
【0102】
抗体による4時間のインキュベーションの最後に、ビーズを各サンプルに添加した後、4℃の低温室で一晩インキュベーションを行った。高塩濃度緩衝液(RNaseフリー水中の50mMのトリス、300mMのKCl、12mMのMgCl2、1%のNP-40、1mMのDTT、1:200のプロテアーゼ阻害剤、100単位/mlのRNasin及び0.1mg/mlのシクロヘキシミド)を用いて、低温室においてローテーター上で1回の洗浄につき5分、サンプルを3回洗浄した。洗浄の最後に、ビーズを磁化し、過剰な緩衝液を除去した。次に、回収されたRNAが少量であることを考慮して、精製RNAをシングルセルサンプルとして処理した。Illumina Nextera XTキットのために300pgのcDNAを使用したこと以外は、上記のシングルセルRNA配列決定法を用いて、cDNAライブラリーを作成した。
【0103】
Rhapsody実験については、全てのプロセスを、製造業者(BD Biosciences)のプロトコルに従って行った。一緒にプールされた12個のバーコード化サンプルを用いて、16,775個の細胞をシングルランで捕獲した。BD Rhapsody(商標)標的化mRNA及びAbseq増幅キット(Doc ID: 210969 Rev 3.0)を用いて、BD mRNA標的化及びサンプルタグライブラリー作製に従って、サンプルを処理した。次に、サンプルは、Illumina HiSeq 4000システム(Illumina, San Diego, CA, USA)において、20%PhiXスパイクインを用いて、2x151サイクルのインデックス付ペアエンドシーケンシングランを受けた。
【0104】
トランスクリプトームデータの解析
STAR 2.5.3aを用いて、生の読取りデータをGENCODEからのマウス参照ゲノムGRCm38_M13にアライメントした。遺伝子発現値(TPM(transcripts per million))は、同じRSEMプログラムを用いて計算した。次元削減(PCA、tSNE及びUMAP)、クラスタリング、及び差次的発現遺伝子(DEG)解析は、Seuratバージョン2.4.3を用いて行った。ウィルコクソンの順位和検定を実施して、差次的発現遺伝子のp値を計算した。p値を得た後、データセット内の遺伝子の総数に基づくボンフェローニ補正を用いてp値の調整を実施し、調整されたp値<0.05を統計的有意性の閾値として使用した。標準的な統合パイプラインによりSeuratバージョン3.0.1を用いて、10X及びSMARTSeq2データの統合を行った。
【0105】
イメージング
共焦点イメージング
動物の屠殺の10分前に、2μgのF4/80 Alexa flour 488(Biolegend#123120)及び2μgのCD206-APC(Biolegend#141708)をWT C57BL/6マウスに静脈内注射することにより、共焦点免疫蛍光イメージングのためにKC1及びKC2を標識化した。4%のパラホルムアルデヒドを含むPBS中で肝葉を一晩固定してから、30%のスクロースを含むPBS中で24時間インキュベートした。続いて、肝葉をO.C.T(Killik Bio-Optica#05-9801)に包埋して、-14℃で低温保持装置を用いて60μm厚の切片に切断するか、或いは200μM厚のビブラトーム切片の場合は、4%の低融点アガロース(Sigma-Aldrich)に包埋した。
【0106】
O.C.T包埋組織については、切片をブロッキング緩衝液(PBS、0.5%のBSA、0.3%のトリトン(Triton))で15分間ブロックしてから、洗浄/染色緩衝液(PBS、0.2%のBSA、0.1%のトリトン)中でCD38 Alexa flour 594(Biolegend#102725)を用いて室温で60分間染色し、5分間で2回洗浄し、DAPI(Sigma#28718-90-3)で5分間染色し、再度洗浄し、Fluorosave(商標)試薬(Millipore#345789)を用いたイメージングのために取り付けた。63x油浸対物レンズを備えたSP5共焦点顕微鏡(Leica)を用いて画像を取得した。可視化を目的とし、不均等なスライド照明を補償するために、Imaris Normalize Layersツールを用いて、層の蛍光強度を正規化した。続いて、Imaris Channel Arithmeticsツールを用いてAPCシグナルから深赤色の自己蛍光チャネルをチャネル42で減算すること(channel 42 subtraction)により、画像から自己蛍光をフィルター処理した。
【0107】
アガロース包埋組織については、0.4%のトリトンX-100(Sigma-Aldrich)及び3%のBSA(Sigma-Aldrich)を補充したPBS中で1時間、切片を透過処理し、ブロッキング緩衝液(3%のBSAを補充したPBS)中で1時間プレインキュベートした。次に、適切な一次及び二次抗体により組織を室温で2時間標識化した。
【0108】
走査型電子顕微鏡法
0.1Mのリン酸緩衝液中2.5%のグルタルアルデヒド中で細胞を室温で1時間(pH7.4)固定し、1%の四酸化オスミウム(Ted Pella Inc)により室温で1時間処理し、次に、25%から100%までの段階的なエタノールシリーズにより脱水させ、CPD030臨界点乾燥機(Bal-Tec AG, Liechtenstein)を用いて乾燥させた。細胞を増殖させる表面、及び接着面に、SCD005高真空スパッタコーター(Bal-Tec AG)を用いてスパッタコーティングにより5nmの金をコーティングした。コーティングしたサンプルは、インレンズ二次電子検出器を使用し、加速電圧8kVで電解放出JSM-6701F走査型電子顕微鏡(JEOL Ltd., United States)を用いて検査した。
【0109】
統計解析
DEG解析は、Seurat v3パッケージを用いて実施した。tpm/カウントマトリックスから得られた全てのDEGは、logFC閾値0.25を用いて正規化した値において計算した。ウィルコクソンの順位和検定を実施して、差次的発現遺伝子のp値を計算した。p値を得た後、データセット内の遺伝子の総数に基づいたボンフェローニ補正を用いてp値の調整を行い、調整されたp値<0.05を統計的有意性の閾値として使用した。
【0110】
【表1】
【0111】
【表2】
【0112】
【表3】
【0113】
【表4】
【0114】
【表5】
【0115】
結果
不偏アプローチはKCトランスクリプトーム不均一性を明らかにする
偏りのない方法でKCの不均一性を評価するために、本開示の発明者らは最初に、シングルセルRNA-seq技術を使用した。図1A~1Gは、KCの不均一性を明らかにする不偏アプローチを示す。本開示の発明者らは、定常状態のマウス肝臓から肝臓CD45+白血球を精製し、Chromiumシングルセル遺伝子発現技術(10X)を用いることにより、数千の個々の細胞をプロファイリングした。一様多様体の近似及び投影(uniform manifold approximation and projection)(UMAP)次元削減解析及び自動クラスタリングを用いたこのデータセットのSeurat解析により、CD45+細胞集団において9つの主要クラスター(#0~#8)が特定された(図1A)。基準の集団マーカーを使用することによって、これらのクラスターを手動で注釈を付けた:#0はB細胞を表し、#1はT細胞を表し、#4は単球及びcDCを表し、#5はNK細胞を表し、#6はNKT細胞を表し、#7はpDCを表し、#8は被膜マクロファージを表す。
【0116】
クラスター#2及び#3に関して、これらの細胞は、Adgre1(F4/80をコードする)、Timd4、Csf1r及びClec4fなどの古典的にクッパー細胞(KC)によって高発現されている多数の遺伝子を同時発現した(図1A)。肝臓マクロファージと考えられる集団である全Adgre1+細胞に焦点を合わせると、本開示の発明者らは、被膜マクロファージに対応するCx3cr1+Timd4-Clec4f-細胞のサブクラスターと、Mrc1(CD206)及びLamp2(CD107b)などの遺伝子を差次的に発現するCx3cr1-Timd4+Clec4f+KCの2つのクラスターとを特定した(図1B)。
【0117】
加えて、高解像度SMARTseq2プラットフォームを用いて、本開示の発明者らは、選別された肝臓CD64+F4/80+細胞を4つのクラスターに分けられることを観察した(図1C)。これらのクラスターのうち、2つの主要なクラスターc3及びc4だけが基準KCのシグネチャーを有し、一方、c1及びc2は無関係のシグネチャーを示し(図1D)、細胞選別中の汚染によることが示された。次に、数千の細胞で生成された低解像度10Xデータと、より深いが数が制限されたSMARTseq2データとを統合することにより、本開示の発明者らは、2つの異なるシングルセルRNA-seq技術で観察されたKCの2つのクラスターの存在を検証した(図1E)。
【0118】
次に、本開示の発明者らは情景解析パイプラインを使用して、最も感度の高いSMARTseq2シングルセルRNA-seqデータセットにおける制御ネットワークを明らかにした。これにより、Nr1h3(肝臓X受容体アルファ)及びSpicなどの基準KC転写因子の高発現を伴う、肝臓マクロファージと一致するレギュロン活性パターンを保有する全KC集団は、2つの異なる状態に分けられることが確認された(図1F)。
【0119】
さらに、KCの各クラスターは特定のレギュロン活性プロファイルを示し、例えば、Runx3はc3においてより活性であり、Klf6は、c4においてより活性であった(図1G)。したがって、本発明における不偏シングルセルRNA-seqアプローチは、定常状態で存在するKCの2つの別個のサブセットを明らかにした。これらの知見をタンパク質レベルで検証するために、本開示の発明者らは、マスサイトメトリー技術を使用して、共通の骨髄性マーカーと、不偏シングルセルトランスクリプトームアプローチによって特定されたCD206及びCD107bなどの推定マーカーとの拡張パネルの発現をモニターした(図1H及び1I)。定常状態のマウス肝臓からの生CD45+細胞におけるこれらのマーカーの発現を統合することにより、本開示の発明者らは、肝臓に存在する主要な免疫細胞サブセットを特定した:CD19+B細胞(#3)、CD90+T細胞(#1、#4、#8及び#13)、CD49b+NK細胞(#12)、SiglecH+BST2+pDC(#7)、Ly6C+単球(#14)、CD11c+cDC(#5)、SiglecF+好酸球(#10)、Ly6G+好中球(#11)、並びに2つのクラスターで構成されるF4/80+Tim4+KCの大きな集団(#6及び#15)(図1H及び1I)。
【0120】
このKC集団に焦点を合わせて、系列及びマーカー次元の手動定義を可能にするOne-SENSE(非線形確率論的埋込(nonlinear stochastic embedding)による一次元単独発現(one-dimensional soli-expression))解析により、この集団内の2つのクラスターによって差次的発現されるいくつかのマーカーが明らかになり、特にCD206であるが、CD107a&b、CD81及びLyve1も明らかになった(図1J)。
【0121】
したがって、不偏トランスクリプトーム及びプロテオームアプローチを組み合わせることにより、本開示の発明者らは、KCがCD206loCD107b-集団(=KC1)及びCD206hiCD107b+集団(=KC2)にさらに分けられることを明らかにした。
【0122】
KCは共通の胚起源を共有する2つの亜集団に分けられる
この教師なしアプローチに基づいて、本開示の発明者らは、KC集団を解析するために、従来のフローサイトメトリーで使用するためのマーカーのパネルを設計した。KCは、古典的に、CD45+CD64+F4/80+TIM4+Clec4F+細胞であると定義されており、低発現のCD11b及びLy6Cを伴う(図2A)。本開示の発明者らは、CD206及びCD107bを使用してKC1及びKC2を特定及び選別し、これらの2つの集団のトランスクリプトームシグネチャーを生成した(図2B)。
【0123】
上位の差次的発現遺伝子(DEG)には、以前に報告された脾臓樹状細胞のマーカーであるEsamがある。したがって、本開示の発明者らは、CD206及びESAMを2つの信頼できるマーカーとして保持し、従来のフローサイトメトリーにより後でCD206loESAM-KC1及びCD206hiESAM+KC2を定義するために、これらのマーカーを使用した(図2C)。また本開示の発明者らは、2つの集団において、CD63、CD81、CD107a及びLyve1を含む、高処理アプローチによりKC2によって過剰発現されるとして強調された他のマーカーの発現も測定した(図2D)。
【0124】
これらのマーカーは全てKC2によって発現され、本開示の発明者らは、KC1の特異的マーカーを特定することができなかった。しかしながら、KC1及びKC2は、CD206及びESAMの発現に基づく手動のゲーティング又はアルゴリズムベースの次元削減の使用のいずれかによって明確に区別することができた(図2E)。選別されたKC1及びKC2は同等の形態を有し、電子顕微鏡及びサイトスピンでは区別ができなかった(図2F)。
【0125】
本開示の発明者ら及び当該技術分野で知られている研究の他の著者らは、KCは、胎児肝臓単球に由来し、成体KC集団を維持するために骨髄単球の最低限の寄与があることを示した。しかしながら、いくつかの報告では、単球由来の細胞は、非恒常性条件下ではKC同一性を獲得し得ることが示されている。したがって、2つの亜集団の起源を明確にし、それらを真のKCとして正確に分類するために、本開示の発明者らは、最初に、KC集団内の不均一性がいつ出現したかを調べ、出生から成人期までのKC1及びKC2の存在を解析した。単球とマクロファージの比率は出生後最初の数週間は動的であったが、KC1集団とKC2集団の比率は非常に安定しており、出生時に既に確立されており、たとえ各亜集団が胚形成での別個の波の間に出現したことを本開示の発明者らが公式に排除できなかったとしても、これらはいずれも出生前の前駆体から生じることが示唆された(図2G)。
【0126】
次に、本開示の発明者らは、単球運命マッピングMs4a3crexRosaTomatoマウスモデルを使用して、可能性のある単球の寄与を評価した。予想されたように、単球及び単球由来の被膜マクロファージは、生体マウスで高度にタグ付けされたが、KC1及びKC2は、同等で非常に低いタグ付けを示した(図2H)。加えて、S100a4CRExRosaYFP及びCsf1RGFPマウスでは、KC1及びKC2において高度及び同等のレポーター発現が観察され、両方の亜集団のマクロファージの性質が確認された(図2I)。
【0127】
また本発明の発明者らは、CD45.1/CD45.2並体結合マウスを解析することによってもこのことを確認し、このマウスでは、当該技術分野で知られている他の研究によって以前に示されたように、単球由来の被膜マクロファージと対照的に、KC1及びKC2の両方において体循環を共有した3ヶ月後に非宿主キメリズムが非常に低かった(図2J)。
【0128】
まとめると、これらの結果により、KCサブセットは両方とも真の胚由来のKCであり、したがって、個体発生的に別個の集団ではなく、むしろKCの2つの異なる状態を表すことが示される。
【0129】
KC1及びKC2はその場で重複する分布パターンを有する
肝臓における2つのサブセットの潜在的な異なる亜局在性を評価するために、本開示の発明者らは最初に、静脈内注射された抗CD45抗体へのそれらの近接性を調べた。KC1及びKC2は同等の効率で標識化され、それらの類洞局在性が確認された(図3A)。次に、本開示の発明者らは、より詳細な解析のために、WTマウスからの肝臓切片の免疫蛍光顕微鏡と結合して、二光子顕微鏡法を使用してこれらの細胞をその場で見た。Clec4F+KCは、Clec4F-CD206+LSECと容易に区別され、KC2は、CD206も発現するClec4F+又はF4/80+KCとして検出された(図3B~D)。
【0130】
これを十分に検証するために、本開示の発明者らは、タモキシフェン誘導後にCD206を発現する細胞を本開示の発明者らが追跡することができるモデルを確立するために、Mrc1creERT2マウスを作製し(図3E)、これをRosaTomatoマウスと交配させた。免役染色により、本開示の発明者らは、従来のフローサイトメトリー分析においてCD206マーカーを用いることにより観察された割合に従って、これらのマウスではKCの約15%がtomatoでタグ付けされることを観察した(図3F)。
【0131】
また本開示の発明者らは、F4/80+CD206loKC1及びF4/80+CD206hiKC2と、その最も近い門脈三つ組との間の距離も測定し、肝臓代謝のゾネーションがKC1及びKC2の分布に影響を与えるかどうかを評価した。2つの集団のゾネーションに関して、有意差は観察されなかった(図3G)。まとめると、これらの観察により、KC1及びKC2は、肝臓において重複する分布パターンを有することが示唆される。
【0132】
KC2はLSEC関連/内皮マーカーを発現するが、LSECとは異なる
KC1及びKC2は、マクロファージであり、F4/80、Tim4、Clec4F及びVsig4などの基準マクロファージマーカーを発現する。しかしながら、KC2は、CD206、CD31、ESAM、さらには本開示の発明者らにより非常に普遍的なマクロファージマーカーとして最近特定されたLyve1などの、内皮細胞によって発現されることが知られているマーカーも示した(図4A及び4B)。
【0133】
このような発現パターンを理解し、その検出がKCによる肝類洞内皮細胞(LSEC)の食作用から生じる可能性を排除するために、本開示の発明者らは、フローサイトメトリーを顕微鏡法と結合したイメージストリーム解析を実施し、個々の細胞のイメージングを可能にした。本開示の発明者らは、ESAM及びCD206の標識化が、KC2細胞にわたって均一に分布していることを観察し、これらのマーカーの表面発現が示された(図4C)。さらに、LSECはその表面に窓を有し、これは、KC2細胞には存在しなかった(図4D)。
【0134】
さらに、本開示の発明者らは、基準骨髄性遺伝子Lyz2を発現する細胞がタグ付けされたLyz2crexRosaYFPマウスを分析し、KC1及びKC2はいずれも高度に標識化されているが、内皮細胞はタグ付けされていないことを観察した(図4E)。本開示の発明者らは、数千のシングルセルにおける400のマーカーの迅速な並列配列決定を可能にするRhapsody技術を使用することにより、KC1及びKC2のマクロファージの性質も確認した。選別されたKC1及びKC2のこのより低解像度のシングルセルトランスクリプトームプロファイルを肝臓白血球集団全体と比較して、本開示の発明者らは、KC1及びKC2がいずれもマクロファージ集団内で明らかにクラスター化されることを見出し、それらのマクロファージ同一性がさらに確認された(図4F)。
【0135】
機能レベルでは、本開示の発明者らは、クロドロネートリポソームアプローチを使用して、両方の集団の食作用能力を試験した:リポソームを注射すると、LSECではなく、KC1及びKC2が同様に枯渇し、同等の食作用活性が示された(図4G)。
【0136】
さらに、KCの枯渇は、Timd4などのわずかな重要なKC遺伝子が数週間前に再発現されていなくても、KC様の表現型を急速に獲得する単球の補充を誘導することが知られている。クロドロネートリポソームに媒介される枯渇をMs4a3crexRosaTomatoマウスにおいて実施した場合、本開示の発明者らは、CD64+Tomato+Tim4-単球由来マクロファージが、CD206loESAM-KC1様集団及びCD206hiESAM+KC2様集団の両方を定常状態に相当する比率で急速に生じさせることを観察した(図4H)。これは、補充されたナイーブ成熟単球が、KC1様及びKC2様の両方のプロファイルを獲得する能力を有するという事実を強調し、KC1及びKC2の両方の同一性が肝臓の微小環境によって強く決定されることが示唆される。
【0137】
KC1及びKC2は別個の遺伝子及びタンパク質発現シグネチャーを示す
次に、本開示の発明者らは、CD206loESAM-KC1及びCD206hiESAM+KC2を選別して、それらの機能をより良く理解するために、バルクRNA-seqのためのSMARTseq2プロトコルを用いてより深いトランスクリプトーム解析を実施した。この高解像度では、2つの集団は互いに明確に分離され(図5A~C)、また選別されたCD45-CD31+LSECとも異なっていた(図5D及び5E)。KC1及びKC2は、Clec4f、Lyz2、Vsig4、Csf1r及びAdgre1(F4/80)を含む、同様の基準マクロファージ遺伝子を発現した(図5F及び5G)。
【0138】
このマクロファージシグネチャーに加えて、本開示の発明者らが前に見出したように、KC2は、多数のLSEC関連遺伝子、特に、Mrc1、Pecam1(CD31)、Esam、Kdr及びLyve1を高発現した。これらのLSEC関連遺伝子がKC2によって実際に発現され、LSECの食作用のために検出されなかったことを確認するために、本開示の発明者らは、RiboTag戦略を用いて、2つの集団の活発に転写されたRNA(トランスラトーム)を評価した。本開示の発明者らは、本開示の発明者らがKC1及びKC2の両方からのリボソームを精製することができるLyz2creXRpl22HAマウスを作製し、それらに関連するRNAを配列決定した。この方法を用いると、初期材料の量、そしてそれに応じて検出される全体的な発現が減少したにもかかわらず、「LSEC関連遺伝子」Mrc1、Esam及びLyve1のKC2発現を含め、KC1とKC2との間には依然として大きな違いがあった(図5H~J)。
【0139】
タンパク質レベルでは、本開示の発明者らは、選別されたKC1及びKC2において質量分析により約4,500のタンパク質の発現も測定し、同等の差次的発現されたタンパク質、特にKC2においてより豊富なESAM及びCD31を見出した(図5K~M)。最後に、本開示の発明者らは、トランスクリプトーム、トランスラトーム及びプロテオームデータを統合して、ロバストなKC1及びKC2のパン-オミクス(pan-omics)同一性を生成した(図5N):コアKCプログラムは両方の集団にわたって保存されたが(図5O図14B)、経路解析により、KC1ではより強い免疫シグネチャーが特定され、一方、細胞接着、及び特に代謝経路に関連する遺伝子、特にCd36は、KC2において上方制御された(図5P~R)。
【0140】
KC2は代謝機能を示す
本開示の発明者らはさらに、KC2集団において強調されたこのパン-オミクスの明白な代謝シグネチャーの有意性を探索した。本開示の発明者らは、KC2における炭水化物及び脂質の代謝に関与する遺伝子の上方制御を観察したので、本開示の発明者らは、マウスにおいて耐糖能障害及び脂肪肝を含む肥満及びその関連の代謝障害を誘導する高脂肪食(HFD)給餌のモデルを使用することを選択した(図6A)。本開示の発明者らは、普通食を与えたマウスと比較して、KC2集団の相対頻度の増加に気付いた(図6B)。
【0141】
当該技術分野で知られている他の研究において以前に報告されたように、本開示の発明者らは、HFDの最初の9週間において、単球の運命マッパー(fate-mapper)Ms4a3crexRosaTomatoマウスの肝臓への有意な単球補充に気付かなかった(図6C)。HFD下のMs4a3crexRosaTomatoマウスの肝臓におけるKC2の標識化は18週間後に増加し、これにより、KC2集団の増殖は、HFDの後期時点でのみ、単球補充に部分的に依存することが示唆された(図6C及び6D)。
【0142】
次に、本開示の発明者らは、HFDを2か月間与えたマウスから選別されたKCの2つの集団のトランスクリプトームプロファイルを比較した。2つのKC亜集団間の大きな違いは、これらがいずれもHFDにおいてより顕著な代謝指向性シグネチャーを獲得する(図6F~I)ことに気付いたとしても保存された(図6E)。特に、KC2では、脂肪酸プロセシングに関与する遺伝子は上方制御され、アミノ酸異化反応に関連する遺伝子は下方制御された。本開示の発明者らは、HFDにおいて上方制御される遺伝子の中にCd36を見出したが、これは、マクロファージでの脂質の取込み及び酸化ストレスの調節におけるその役割について文献で広く記載されている遺伝子である。
【0143】
したがって、本開示の発明者らは、最近になって独立して発表されたマウス肝臓シングルセルRNA-seqデータセットにおいて、KC2によるCd36の発現を調べた。Clec4f+KC集団に焦点を合わせることにより、本開示の発明者らは、Cd36がMrc1+KCにおいてより発現されることを観察した(図6J)。次に、本開示の発明者らは、従来のフローサイトメトリーを使用してこれらのトランスクリプトーム結果を検証し、CD36マーカーシグナルが実際に定常状態でKC1と比較してKC2において強く上昇し、HFDにおいて上方制御されることを観察した(図6K)。これらのデータにより、KC2は、食餌性肥満において脂質ハンドリングが調節される代謝応答性マクロファージ集団として強調された。
【0144】
KCにおけるCD36特異的ターゲティングは肝臓代謝を調節する
肝臓代謝におけるKC2の役割をさらに研究するために、本開示の発明者らは、HFDによって誘発される代謝的な課題との関連で、KC2を標的にすることによる介入的アプローチを採用した。マクロファージ指向の運命マッピングモデルは全て、KC1及びKC2を区別することができなかったので、本開示の発明者らは、これらのツールではKC2を特異的に標的にしなかった。したがって、本開示の発明者らはパン-オミクスシグネチャー(図5)を使用してKC2特異的マーカーを特定し、これは、KC2を標的にし、HFD給餌マウスにおけるその機能的有意性を調査するために使用され得る。
【0145】
Cdh5はコアKC遺伝子と考えられるが、並行して、Cdh5creERT2xRosaTomatoモデルをうまく使用して、内皮細胞を標識化した。Cdh5は、RNAレベル及びタンパク質レベルの両方でKC2においてより発現され、タモキシフェンを7日間与えたCdh5creERT2xRosaTomatoマウスにおいて、KC1ではなくKC2が特異的にタグ付けされた(図7A及び7B)。注目すべきことに、2つのサブセットの標識化は、経時的に非常に安定しており、定常状態における1つのサブセットから別のサブセットへの転換を除いて、タモキシフェン処置後13週間に変化は観察されなかった(図7C)。したがって、本開示の発明者らは、Cdh5creERT2xRosaDTRマウスを作製し、キメラを生成し(同様にCdh5を発現する放射線抵抗性LSECのターゲティングを回避するために、Cdh5creERT2xRosaDTR骨髄をWTレシピエントに移植した)、KC2の誘導的且つ特異的な枯渇を可能にするシステムを確立した(図7D)。タモキシフェン誘導後、本開示の発明者らは、ジフテリア毒素(DT)をタモキシフェン処置キメラCdh5creERT2xRosaDTRマウスに注射することによってこのシステムを検証し、KC2枯渇の動態を追跡した。Tim4+CD206hiESAM+KC2は、1回のDT注射の後に効率的に枯渇したが、Tim4+CD206loESAM-KC1では枯渇せず(図7E)、一方例えば、脂肪組織マクロファージは影響を受けず、KC2を標的とするためのこのような戦略の特異性が支持された。
【0146】
次に、本開示の発明者らは、タモキシフェン及びDT処置したCdh5creERT2xRosaDTRキメラ(KC2欠乏群)にHFDを数週間与えて、HFDで引き起こされた代謝変化におけるKC2の役割を評価した。HFDはKC2欠乏動物の体重増加を誘発しなかったが、KC2が十分な動物は、HFDの期間にわたって体重が増加した(図7F及び7G)。HFD給餌の際にKC2における脂質代謝及び酸化ストレスに関与する遺伝子の注目すべき制御を考慮して、本開示の発明者らは、酸化ストレスの周知のマーカーである活性酸素種(ROS)Hと、KC2枯渇後の脂質過酸化副産物マロンジアルデヒド(MDA)との両方の量をモニターした。予想通りに、HFDは、ROS及びMDAの増加を誘発した(図7H)。しかしながら、KC2の枯渇は、ROS及びMDAの両方の減少をもたらし、KC2は、肥満に関連する肝臓脂質過酸化及び酸化ストレスに寄与し得ることが示唆された。これは、KC2欠乏動物において耐糖能の改善と、あまり顕著でない脂肪症とを伴った(図7I及び7J)。しかしながら、肥満、酸化ストレス、脂肪症及び耐糖能障害を含む代謝障害が減少したとしても、トリグリセリド(TG)の血清中濃度は増加した(図7K)。
【0147】
これらの結果と一致して、間接熱量測定により、HFDの初期段階において、KC2枯渇動物は、KC2が十分な動物よりも、食物摂取量が少なく、VO2及びVCO2の呼吸交換率に関するエネルギー消費量が高く、自発運動活性が増加していることが明らかにされた(図7L~P)。特に、肝臓、膵臓、脂肪組織、及び脳を含む種々の臓器間の代謝機能の絡み合いを考慮すれば、これらの観察は、KC2枯渇に続く徹底的な代謝の再配線を反映することができ、今後の詳細な研究に値するであろう。
【0148】
しかしながら、このような全身的な効果の可能性を回避するために、本開示の発明者らは、KCにおけるCd36の特異的なサイレンシングのために、グルカンカプセル化siRNA粒子(GeRP)に基づいて、より標的化された戦略を使用した。本開示の発明者らは、GeRPが肝臓のマクロファージに特異的に送達されるが、他の臓器のマクロファージ又は他の細胞には送達されないことを以前に示したが、本開示の発明者らは、まずFITC-GeRPを使用して、肝臓細胞集団内でのターゲティングの特異性を検証した。静脈内注射されると、FITC-GeRPはKC1及びKC2でのみ回収され、内皮細胞及び単球などの他の肝臓細胞では回収されず、両方のKC亜集団の等しい食作用能力が確認された(図7Q)。次に、マウスにHFDを7週間与え、対照スクランブルsiRNA又はCd36標的siRNAのいずれかが負荷されたGeRPで2週間処置した。この処置は、KCにおけるCd36短期の特異的サイレンシングを可能にした(図7R)。2週間の処置期間中に、本開示の発明者らが体重増加に対する有意な効果を観察しなかったとしても(図7S)、Cd36siRNA処置動物において血糖及び耐糖能の両方が改善された(図7T)。
【0149】
KC表現型に対するCd36の効果をさらに調べるために、本開示の発明者らは次に、Cd36サイレンシング後のトランスクリプトームプロファイルを解析し、脂質代謝に関与する遺伝子の調節を観察した(図7U)。最後に、本開示の発明者らは、肝臓のROS及びMDA濃度に対するCd36サイレンシングの効果を試験した。本開示の発明者らの仮説と一致して、Cd36サイレンシングは、MDA及びROSの両方の蓄積を減少させた(図7V)。これは、肝臓トリグリセリド含有量とは無関係に生じた(図7W)。まとめると、これらのデータにより、肝臓の代謝恒常性の制御のために肥満マウスにおいてKC2により特異的に発現されるCD36の重要な役割が強調される。
【0150】
本明細書において、本開示の発明者らは、健康なマウス肝臓における表現型的及び機能的に異なる2つのKCサブセットの存在を報告する。肝臓は現在、いくつかのマクロファージ集団の共通のニッチ(niche)であると認識されているが、これらの2つのKCの集団は、これらを他の単球由来の肝臓マクロファージと明確に区別する共通の胚起源を共有する。KC1及びKC2は定常状態で存在し、新生児期又は炎症時に起こる単球の補充の結果ではない。これらの2つの集団は共通のコアマクロファージシグネチャーを共有し、Clec4f、Lyz2、又はCsf1rを含む周知のKC-コアマーカーの発現が高いが、KC2はさらに、これまでLSECに限定されると考えらえていた一連の遺伝子を発現する。
【0151】
これらの結果は、培養初代KCがいくつかの機能的抗原をLSECと共有することを示す、当該技術分野で知られている過去の研究と一致している:しかしながら、前述の研究で使用された包括的なアプローチでは、KCの特定の亜集団を検出することができなかった。当該技術分野で知られている研究による最近の研究では、従来のフローサイトメトリーを用いて、LSECによるKC集団の潜在的な汚染が検出されたが、本開示の発明者らは、シングルセルRNA-seqデータセットにおいて、この微量の汚染を特定し、除外することができた。したがって、本開示の発明者らが特定したKC2集団は、運命マッピングモデル及びマクロファージ-コア遺伝子の高発現によって証明される真のKCから構成される。本開示の本研究と一致して、KCのCD206+集団の存在は、当該技術分野で知られている最近発表された研究でヒトにおいて既に報告されており、本発明者らによって作成された予備データによって検証された(図8)。さらに、KC2との類似性を有するマクロファージのLyve1+CD206+集団がアテローム性動脈硬化巣にも存在しており、このような「代謝性」マクロファージは肝臓以外のニッチにも存在し得ることが示唆される。注目すべきことに、CD206+マクロファージついて、当該技術分野で知られている研究によって、血液由来の細胞物質の活発な食作用における役割が提唱されている。まとめると、当該技術分野で知られている研究によるこれらのデータはマクロファージ生物学におけるこの受容体の中心的役割を示し、CD206は、これらの細胞の今後の分析に系統的に包含されるべきである。
【0152】
これはまた、差次的なLyve1及びCD206の発現によって区別される、肺間質マクロファージの、そして組織を全体にわたる2つの集団についての最近の知見と類似している。本開示の発明者らがここで特定した他の重要なバイオマーカーはESAMである。その発現がLSECに限定されると考えられていたこの分子は、脾臓DCのサブセットによっても発現されるが、これまでマクロファージによって発現されるとは考えられていなかった。Lyve1、Cd206及びEsamは、長い間、内皮に限定された遺伝子と考えられていたが、肝臓における本開示の結果及び他の臓器における以前の結果はこの概念を再検討しており、RTMにおけるこれらのマーカーの完全な機能的役割をさらに調査する必要があるとしても、これらの遺伝子がRTMによっても発現され得ることを明確に示す。
【0153】
CD206-集団とCD206+集団との間の大きな違いは、マクロファージの起源、すなわち単球由来又は胚由来とは完全に無関係であり、常在するニッチによってのみ規定されるはずであり、ニッチがマクロファージ同一性を駆動する1つの支配的な因子であるという概念が強化される。しかしながら、ここで、本開示の発明者らは、各サブセットに対して別個のサブ肝臓ニッチ(sub-liver niche)を特定することができなかった。肝臓における代謝ゾネーションは重要であり、肝細胞及びLSECのトランスクリプトームパターンを形作るが、KC1及びKC2は腺房内にランダムに分布しているようであり、したがって、その極性化は、酸素又は栄養の利用性以外の未知の因子と関連している可能性が高い。これらの決定因子の特定は、本開示の発明者らが肝臓内に存在する別個の「ニッチ」と呼ぶことができるものの理解を広げるはずである。これはまた、KC1対KC2の同一性に寄与し得る、星細胞及びLSECを含む肝臓の他の異なる細胞型の不均一性を調査する必要性も強調する。実際、最近の研究では、胚性KCの枯渇マウスモデルにおいて、肝臓に侵入する単球が、肝臓の星細胞及びLSECとのクロストークによってKC様細胞に初期化されることが示された。これらの2つの研究により、肝臓星細胞、LSEC及びマクロファージで構成される重要な肝臓トリプティック(triptych)が特定された。したがって、これら3つの異なる細胞型及びその潜在的な亜集団の間のクロストークを解読し、そして特に、種々の肝臓病態との関連におけるその調節がどのような方法であるかを解読することは、さらなる研究の課題となる。
【0154】
ここで特定されるKCサブセットとの関連において、本開示の発明者らは、KC2は定常状態で既に存在しており、代謝的な課題に応答する態勢にあることを強調することを希望する。したがって、この細胞同一性がどのようにして生じるかを決定することは、ヒト集団のほぼ4分の1が非アルコール性脂肪性肝疾患に罹患していることを考慮すれば、肝臓病態を理解するために有用であろう。これに従って、NASH及び肝硬変の際に肝臓星細胞によって分泌されてマクロファージ生物学に影響を与える重要な「ステラカイン(stellakine)」の特定によって明らかであるように、細胞性肝臓トリプティックもヒトに存在すると思われる。当該技術分野で知られている研究において例示されるように、シングルセルトランスクリプトミクスの最近の進歩と、それに続くマウス及びヒトの両方におけるいくつかのアトラスの公開は、ヒトにおける対応する機能的に別個のKC1及びKC2集団の存在がまだ正式に確立されていないとしても、肝臓学及び肝疾患についての我々の知識を向上させるであろう。
【0155】
機能的には、本開示の発明者らは、KC2の特異的な代謝的役割を特定した。しかしながら、KC2のみが肝臓代謝の制御に関与すると主張することは誤解を招きかねないであろう。本開示のデータはむしろ、KC2集団の方がよりこの機能に関与すると思われるとしても、両方のKC亜集団がこの機能に関与することを強調している。さらに、KC2が定常状態で存在し、肥満の後期に生じる単球補充に依存しないことは注目すべきである。これに従って、当該技術分野で知られているこれまでの研究では、KCが均一な集団であると考えて、代謝における肝臓マクロファージの中心的役割が示された。当該技術分野で知られている研究の著者らは、KCによる代謝制御において非炎症性因子のインスリン様増殖因子結合タンパク質7(IGFBP7)が重要であることを示した。重要なことに、Cd36に加えて、本開示の発明者らは、Igfbp7がKC1とKC2との間の上位の差次的発現遺伝子の1つであり、KC2で高度に過剰発現されていることを観察した。したがって、本研究で報告される効果がほとんどKC2集団によって引き起こされ得ると仮定することは誘惑的である。加えて、本開示の発明者らは、肝臓の代謝制御におけるKC2発現受容体CD36の役割についての直接的な証拠を提供する。これらの結果は、NASHの発症及び肥満関連障害における新たなCD36の中心的役割と完全に一致している。KC2枯渇の全身的な効果をより良く理解するためにはさらなる調査が必要とされるが、脂質トランスポーターCD36をサイレンシングするための本発明者らの標的アプローチにより、グルコース恒常性及び酸化ストレスの制御におけるこれらの細胞の重要な役割が明らかにされた。肥満においてKCの酸化ストレスを減少させると、肝臓代謝を改善し、ROS濃度を低下できることは、以前に報告されている。ここで、本開示の発明者らは、KC2がCD36を介して脂質を処理することでこのプロセスにおいて主要な役割を果たすことを示すことにより、この観察をさらに洗練させた。
【0156】
しかしながら、NASHの病因についての正確な理解はまだ達成されていないこと、そしてヒトは恐らく一連の収束性疾患(convergent disease)を発症することを認識すべきである。したがって、NASHの他の実験モデルにおいてKCが異なる関与を示す可能性を排除することはできない。例えば、メチオニン-コリン欠乏(MCD)食により誘発されるNASHモデルにおいて、炎症性単球は肝臓に侵入し、肝臓マクロファージ恒常性の一過性の変化を誘発することが示されている。さらに、当該技術分野で知られている異なる食餌を使用するごく最近の研究では、胚由来のKCが数週間後に消失し、そして病態の発症に関連していて肥満個体からの脂肪組織で既に報告されているものと同程度である単球由来の脂質関連マクロファージ(LAM)の集団によって置換されることが報告されている。しかしながら、これらの研究は本質的に齧歯類ベースのモデルを使用したものであり、定義上、ヒト疾患を模倣する能力には制限があり得る。一例として、MCD誘発性NASHは、重度且つ急速な体重減少、肝臓の炎症、そしてそれに続く線維症に関連する。後者がヒトの状況に近いことがあり得るとしても、前者は臨床的に観察されず、モデル特有の副作用の原因となる可能性がある。反対に、HFD誘発性NASHは、ヒトの肥満誘発性疾患をより反映し得るが、肝線維症を誘発する効率は低い。したがって、ヒトNAFLD/NASHを完全に再現すると広く認められたモデルはまだ存在しないことを想起させることが基本であると思われる。そうは言っても、本明細書中で本開示の発明者らが使用したHFDモデルは、初期段階で肝臓において単球の有意な補充を誘発しない。したがって、研究のほとんどは、代謝的に課題のある肝臓に補充された単球由来のLAMに焦点を合わせたものであったが、本開示の研究は、胚性KCの一部が既に代謝機能を担う運命にあることを示す。さらなる研究は、この状況又はさらに他の状況におけるその正確な役割をさらに洗練させ、肝臓代謝疾患の調節のためのKC2の代謝機能を標的とする革新的治療法の設計を可能にするはずである。
【0157】
最後に、本開示の発明者らが2つの別個のKC1及びKC2集団、並びにKC2の代謝機能を記載した本研究と並行して、本開示の発明者らは、B型肝炎ウイルスの病態形成マウスモデルにおけるその抗原呈示能力を調査した。これにより、2つの集団間の重要な違いが明らかになり、KC2はIL-2シグナル伝達に顕著に応答し、肝細胞抗原に対する効率的なT細胞媒介性応答の開始に関与する。この研究は、免疫応答の開始におけるKC2亜集団の特異的な効果を報告し、組織常在性マクロファージ集団の不均一性を調査する本発明者らのアプローチを検証する。実際、文献では1つの共通組織からのマクロファージが均一の集団を構成すると仮定することが多いとしても、本開示及び当該技術分野で知られている以前の研究において報告されるデータは、異なるマクロファージ集団が居住する組織下ニッチが存在することを示した。したがって、マクロファージベースの治療戦略の開発は、革新的な治療の特異性及び効率を改善するために、この不均一性を考慮に入れなければならないであろう。
【0158】
要約すると、本開示の発明者らは、シングルセルトランスクリプトミクスを特定の単球運命マッピングモデル及び機能的検証と組み合わせることによって、KCの不均一性を明らかにすることを目的とし、高次元アプローチを使用して、マウス肝臓のマクロファージ集団を特徴付けた。本開示の発明者らは、定常状態のマウス肝臓において、コアシグネチャーを共有するが多数の遺伝子及びタンパク質を差次的発現する、胚由来のクッパー細胞(KC)の中の2つの別個の集団を特定した:主要なCD206loESAM-集団(KC1)及びマイナーなCD206hiESAM+集団(KC2)。本開示の発明者らは、これらの集団の共通の胚起源と、これらが炎症性単球及びTim4-被膜マクロファージから独立していることとを確認した。
【0159】
機能的には、本開示の発明者らは、KC1及びKC2が特異的なトランスクリプトーム及びプロテオームシグネチャーを有することを見出した。KC2は、定常状態と食餌性肥満及び肝臓脂肪症との両方で、脂肪酸代謝を含む代謝プロセスに関与する遺伝子を発現した。CD206hiESAM+KC2は、脂肪酸トランスポーターCD36を高発現することにより、肥満マウスモデルにおける肝臓代謝の制御に関与する。KC2の枯渇又は脂肪酸トランスポーターCd36の標的化サイレンシングによる機能的特徴付けは、肥満に関連する肝臓酸化ストレスにおけるKC2の重大な寄与を強調した(図9)。本研究により、KCは予測よりも不均一であることが明らかになり、特に、代謝機能に関係する亜集団が記載された。
【0160】
適用
本明細書に開示される方法の実施形態は、マクロファージの亜集団を検出するための正確なマーカーを提供する。また開示される方法の実施形態は、肥満及び/又は肥満に関連する代謝障害のリスクを決定する方法も提供しようとする。
【0161】
有利に、本開示は、代謝機能を示すクッパー細胞の亜集団の積極的な枯渇/ターゲティングを含む、肥満を調節する方法を提供する。
【0162】
さらにより有利には、本開示は、肥満を制御する肝臓マクロファージの役割を容易に評価することができるCdh5creERT2-RosaTomatoマウスモデルを提供する。
【0163】
また本開示は、肥満発症の感受性マーカーとしての、肝臓マクロファージにおけるIgfbp7/Cd36発現レベルの診断的使用も提供する。
【0164】
また本開示は、Igfbp7/Cd36の発現又は関連の下流経路を阻害する特定の薬物の開発によって、本明細書に開示される方法及び/又は混合物の治療的使用も提供する。
【0165】
また本開示は、マウスクッパー細胞(KC)の2つのサブセットを明らかにする不偏ハイスループットアプローチも提供する。
【0166】
また本開示は、別個の代謝シグネチャーを示すCD206hiESAM+KC2細胞を有する別個のクッパー細胞集団を特徴付ける方法も提供する。
【0167】
また本開示は、代謝的に関係するKC2サブセットを枯渇させる方法が食餌性肥満を予防することも有利に提供する。
【0168】
また本開示は、CD36hiKC2が、CD36の発現によって肥満に関連する肝臓酸化ストレスを制御するという洞察も提供する。したがって、本開示は、肥満に関連する肝臓酸化ストレスを患っている対象を改善する方法を提供する。
【0169】
広く記載される本開示の趣旨又は範囲から逸脱することなく、本明細書に開示される実施形態に対して他の変形及び/又は修正がなされ得ることは、当業者によって認識されるであろう。例えば、本明細書の記載において、異なる例示的な実施形態の特徴は、異なる例示的な実施形態にわたって、例えば、混合され、組み合わせられ、交換され、組み込まれ、採用され、修正され、又は包含され得る。したがって、本実施形態はあらゆる点で説明的なものであって、限定的なものではないと考えられるべきである。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図1H
図1I
図1J
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図2H
図2I
図2J
図3A
図3B
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図3D
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図3F
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図4A
図4B
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図4D
図4E
図4F
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図4H
図5A-5C】
図5D
図5E
図5F
図5G
図5H-5J】
図5K-5M】
図5N
図5O
図5P
図5Q
図5R
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図6G
図6H
図6I
図6J
図6K
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図7G
図7H
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図7J
図7K
図7L
図7M
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図7O
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図7Q
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図7S
図7T
図7U
図7V
図7W
図8A
図8B
図9
【配列表】
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【国際調査報告】