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特表2024-534117流体試料中の汚染物質を検出するシステム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-18
(54)【発明の名称】流体試料中の汚染物質を検出するシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/65 20060101AFI20240910BHJP
   G01N 33/00 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
G01N21/65
G01N33/00 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024511972
(86)(22)【出願日】2022-04-08
(85)【翻訳文提出日】2024-04-15
(86)【国際出願番号】 US2022024091
(87)【国際公開番号】W WO2023027774
(87)【国際公開日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】17/554,841
(32)【優先日】2021-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/236,445
(32)【優先日】2021-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】592096443
【氏名又は名称】ホリバ インスツルメンツ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】HORIBA INSTRUMENTS INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ホルト ティモシー マイケル
(72)【発明者】
【氏名】セスタク ミケーレ エヌ.
【テーマコード(参考)】
2G043
【Fターム(参考)】
2G043AA01
2G043AA03
2G043CA03
2G043EA03
2G043JA01
2G043NA05
(57)【要約】
流体試料中の汚染物質を検出するシステムが開示される。システムは、コロイド分散液循環路であって、局在表面プラズモン共鳴を呈することが可能なコロイド粒子(「LSPR粒子」)を有するコロイド分散液を収容するリザーバと、ラマン分光計/フローセルと、コロイド分散液循環路を通してコロイド分散液を循環させるポンプとを有する、コロイド分散液循環路を有する。コロイド分散液レベルセンサがコロイド分散液循環路内におけるコロイド分散液の程度を測定する。透過弁が、LSPR粒子よりも小さな細孔サイズを有することでLSPR粒子が通過することを防ぐ限外濾過膜を通して、コロイド分散液循環路内におけるコロイド分散液を方向転換させる。試料が、流体試料注入弁を介してコロイド分散液循環路に導入され得る。プロセッサが、ラマン分光計/フローセル、ポンプ、透過弁、コロイド分散液レベルセンサ、及び流体試料注入ポートに接続される。プロセッサは、試料を分析するために複数のステップを行う。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体試料中の汚染物質を検出するシステムであって、
コロイド分散液循環路であって、
局在表面プラズモン共鳴(「LSPR」)粒子を有するコロイド分散液を含むリザーバと、
ラマン分光計/フローセルと、
前記コロイド分散液循環路を通して前記コロイド分散液を循環させるポンプと、
を含む、コロイド分散液循環路と、
前記コロイド分散液循環路内における前記コロイド分散液の濃度又は程度を判定するように構成されたコロイド分散液レベルセンサと、
前記LSPR粒子よりも小さな細孔サイズを有することで前記LSPR粒子が通過することを防ぐ限外濾過膜を通して、前記コロイド分散液循環路内における前記コロイド分散液を方向転換させるように構成された透過弁と、
前記流体試料を前記コロイド分散液循環路に導入するように構成された流体試料注入弁と、
前記ポンプ、前記ラマン分光計/フローセル、前記透過弁、前記コロイド分散液レベルセンサ、及び前記流体試料注入ポートに接続されるプロセッサであって、以下のステップ、すなわち
a.前記ポンプを起動するステップと、
b.前記ラマン分光計/フローセルから第1の信号を読み出すステップであって、前記信号はラマン散乱に基づく、第1の信号を読み出すステップと、
c.前記コロイド分散液レベルセンサによって示される、所定のコロイド分散液レベルに達するように、前記透過弁を開いて前記コロイド分散液を前記限外濾過膜に方向転換させるステップと、
d.前記流体試料注入弁を開いて、それにより前記流体試料を前記コロイド分散液循環路に導入するステップと、
e.前記ラマン分光計/フローセルから第2の信号を読み出すステップであって、前記第2の信号はラマン散乱に基づく、第2の信号を読み出すステップと、
f.前記第1の信号及び前記第2の信号に基づいて、前記流体試料中の汚染物質の存在を判定するステップと、
を行うように構成されたプロセッサと、
を備える、システム。
【請求項2】
前記コロイド分散液循環路は、前記リザーバと前記ラマン分光計/フローセルとの間にリザーバ弁をさらに含み、前記リザーバ弁は前記プロセッサに接続され、前記プロセッサは、前記ステップ(b)中、前記リザーバ弁を開くようにさらに構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記ステップ(c)の後、前記プロセッサは、前記所定のコロイド分散液レベルを維持するように前記透過弁を調整する、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記システムは、洗浄液を洗浄液リザーバから前記コロイド分散液循環路に導入するように構成された洗浄弁をさらに備え、前記洗浄弁は前記プロセッサに接続され、前記ステップ(c)の後、前記プロセッサは、
前記流体試料注入弁を閉じ、
前記透過弁を開き、
前記洗浄弁を開く、
請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記システムは、前記プロセッサに接続されるデータベースをさらに含み、前記データベースは、複数のスペクトルを複数の汚染物質と関連付けるデータを含み、前記ステップ(f)において、前記プロセッサは、前記データベースデータに基づいて汚染物質の種類を特定するようにさらに構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記ステップ(f)において、前記プロセッサは、前記第2の信号の強度に基づいて汚染物質の量を特定するようにさらに構成される、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
試料中の汚染物質を検出する方法であって、
a. 液体とコロイド局在表面プラズモン共鳴(「LSPR」)粒子とからなるコロイド分散液を導入することと、
b. 前記LSPR粒子に表面増強ラマン散乱を誘導するのに十分な電磁放射に前記コロイド分散液を曝露することと、
c. 前記ステップ(b)からの散乱電磁放射線を測定することと、
d. 前記コロイド分散液に前記試料を導入することと、
e. LSPR粒子の前記コロイド分散液中に表面増強ラマン散乱を誘導するのに十分な電磁放射に前記試料/前記コロイド分散液混合物を曝露することと、
f. 前記ステップ(e)からの散乱電磁放射線を測定することと、
g. 前記ステップ(c)からの測定値を前記ステップ(f)からの測定値と比較することによって、前記試料中の汚染物質の存在を判定することと、
を含む、方法。
【請求項8】
前記ステップ(a)の後、前記コロイド分散液から液体を透過させることによって前記LSPR粒子を濃縮するステップをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ステップ(a)の後、前記コロイド分散液から液体のみを透過させることによって所定のコロイド分散液レベルに前記LSPR粒子を濃縮するステップと、
前記ステップ(d)、(e)及び(f)中、前記試料/コロイド分散液混合物を透過させて前記所定のコロイド分散液レベルを維持するステップと、
をさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
h. 前記ステップ(c)及び(f)からの前記測定値を、複数のスペクトルを複数の汚染物質と関連付けるデータを含むデータベースと比較するステップと、
i. 前記ステップ(h)における比較に基づいて汚染物質の種類を特定するステップと、をさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
j. 前記ステップ(f)における測定値の強度に基づいて汚染物質の量を特定するステップをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記コロイド分散液循環路を洗浄するために洗浄液を循環させることをさらに含む、請求項7に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体中の汚染物質を検出するシステム及び方法に関する。
【0002】
[関連出願]
本出願は、2021年8月24日に出願された米国仮出願63/236,445及び2021年12月17日に出願された米国非仮出願17/554841に対する優先権を主張し、これらの出願の両方の内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
多くの工業が非常に高純度の化学物質を必要とする。十億分率(ppb)以下の検出限界を必要とする液体化学物質には、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)又は誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP-OES)、クロマトグラフィー技法、例えば高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、ヘッドスペースガスクロマトグラフィー(ヘッドスペースGC)、及び、同様の高度な分析方法などの、現況技術の分析技法を用いる。これらの技法は多くの場合、分析を完了するのにかなりの試料調製を必要とする。多くの工業が、インプロセス、インライン又はインサイチュで液体化学物質を測定する必要がある。例として、化学物質製造システム、化学物質ブレンドシステム、化学物質分配システム、化学物質容器、及び、別個のプロセスにおいてそのような化学物質を用いる処理ツールが挙げられるが、これらに限定されない。液体化学物質を用いる処理ツールとして、洗浄、エッチング、噴霧、コーティング、半導体処理、研磨などが挙げられ得るが、これらに限定されない。バイオテクノロジー用途及び薬理用途もまた、インライン及びインサイチュの両方で超高純度の化学物質を必要とし得る。多くの高度な分析技法は、インラインでのサンプリング及び測定が非常に費用のかかるものであるか、又は、非常に大規模であるとともに化学プロセスにおける確立が非現実的である。そのため、ppmレベル以下で化学物質及び不純物を検出及び特定することが可能な、インプロセス、インライン及び/又はインサイチュでの小型の化学監視システムの必要性がある。
【0004】
表面増強ラマン分光法(SERS)、共鳴ラマン分光法、表面増強共鳴ラマン分光法(SERRS)などの増強ラマン分光法、及び同様の分析技法は、必要とされる化学物質及び不純物の濃度レベルを検出することが可能であるとともに、化学物質及び不純物の化学的性質を特定することができる。本明細書において、ラマン共鳴を用いて液体化学処理において不純物及び低濃度の化学物質を分光検出及び特定する、インライン、インプロセス、及びインサイチュでの化学分析が可能なデバイスが開示される。デバイスはまた、オフライン分析ツールとして機能することができる。
【発明の概要】
【0005】
流体試料中の汚染物質を効果的に検出するシステムが開示される。システムは、コロイド分散液循環路であって、局在表面プラズモン共鳴を呈することが可能なコロイド粒子(「LSPR粒子」)を有するコロイド分散液を収容するリザーバと、ラマン分光計/フローセルと、コロイド分散液循環路を通してコロイド分散液を循環させるポンプとを有する、コロイド分散液循環路を有する。コロイド分散液レベルセンサがコロイド分散液循環路内におけるコロイド分散液の程度を測定する。LSPR粒子よりも小さな細孔サイズを有することでLSPR粒子が通過することを防ぐ限外濾過膜を介して、透過弁が、コロイド分散液循環路内におけるコロイド分散液を方向転換させる。試料が、流体試料注入弁を介してコロイド分散液循環路に導入され得る。プロセッサが、ラマン分光計/フローセル、ポンプ、透過弁、コロイド分散液レベルセンサ、及び流体試料注入ポートに接続される。プロセッサは、以下のステップ、すなわち、(a)ポンプを起動するステップと、(b)ラマン分光計/フローセルから第1の信号を読み出すステップであって、信号はラマン散乱に基づく、第1の信号を読み出すステップと、(c)コロイド分散液レベルセンサによって示される、所定のコロイド分散液レベルに達するように、透過弁を開いてコロイド分散液を限外濾過膜に方向転換させるステップと、(d)流体試料注入弁を開いて、それにより流体試料をコロイド分散液循環路に導入するステップと、(e)ラマン分光計/フローセルから第2の信号を読み出すステップであって、第2の信号はラマン散乱に基づく、第2の信号を読み出すステップと、(f)第1の信号及び第2の信号に基づいて、流体試料中の汚染物質の存在を判定するステップと、を行う。
【0006】
コロイド分散液循環路はまた、リザーバとラマン分光計/フローセルとの間にリザーバ弁を含み得る。リザーバ弁は、プロセッサがステップ(b)中にリザーバ弁を開くことができるようにプロセッサに接続され得る。ステップ(c)の後、プロセッサは、所定のコロイド分散液レベルを維持するように透過弁を調整することができる。
【0007】
システムはまた、洗浄液を洗浄液リザーバからコロイド分散液循環路に導入する洗浄弁を有し得る。洗浄弁はプロセッサに接続され得る。プロセッサはさらに、流体試料注入弁を閉じ、透過弁を開き、洗浄弁を開くことができる。
【0008】
システムは、プロセッサに接続されるデータベースを含み得る。データベースは、複数のスペクトルを複数の汚染物質に関連付けるデータを含み、プロセッサは、データベースにアクセスして、データベースデータに基づいて汚染物質の種類を特定することができる。プロセッサはまた、第2の信号の強度に基づいて汚染物質の量を特定することができる。
【0009】
試料中の汚染物質を検出する方法も開示される。方法は、(a)液体とコロイド局在表面プラズモン共鳴(「LSPR」)粒子とからなるコロイド分散液を導入するステップと、(b)LSPR粒子のコロイド分散液中に表面増強ラマン散乱を誘導するのに十分な電磁放射線にコロイド分散液を曝露するステップと、(c)ステップ(b)からの散乱電磁放射線を測定するステップと、(d)コロイド分散液に試料を導入するステップと、(e)LSPR粒子のコロイド分散液中に表面増強ラマン散乱を導入するのに十分な電磁放射に試料/コロイド分散液混合物を曝露するステップと、(f)ステップ(e)からの散乱電磁放射線を測定するステップと、(g)ステップ(c)からの測定値をステップ(f)からの測定値と比較することによって試料中の汚染物質の存在を検出するステップと、を含む。
【0010】
方法はさらに、ステップ(a)の後、コロイド分散液から液体を透過させることによってLSPR粒子を濃縮し得る。
【0011】
方法はまた、ステップ(a)の後、コロイド分散液から液体のみを透過させることによって所定のコロイド分散液レベルにLSPR粒子を濃縮させるステップと、ステップ(d)、(e)及び(f)中、所定のコロイド分散液レベルを維持するように試料/コロイド分散液混合物を透過させるステップと、を含み得る。
【0012】
方法は、ステップ(c)及び(f)からの測定値を、複数のスペクトルを複数の汚染物質と関連付けるデータを含むデータベースと比較するステップと、ステップ(h)における比較に基づいて汚染物質の種類を特定するステップと、をさらに含み得る。
【0013】
方法は、ステップ(f)における測定値の強度に基づいて汚染物質の濃度又は量を特定するステップを含み得る。
【0014】
当業者に明らかとなるであろう、さらなる態様、代替形態及び変形形態もまた、本明細書において開示され、本発明の一部として含まれるように具体的に意図される。本発明は、本出願又は関連出願において特許庁が許可する特許請求の範囲においてのみ記載され、特定の例の以下の概要説明は、法的保護の範囲を決して限定、規定又は異なるかたちで確立しない。
【0015】
本発明は、添付の図面を参照しながらよりよく理解することができる。図面における構成要素は、必ずしも縮尺通りではなく、代わりに本発明の例示的な態様を明確に示すことに主眼が置かれている。図面において、同様の参照番号は、種々の図及び/又は実施形態の全体を通して対応する部分を示す。さらに、種々の開示する実施形態の様々な特徴を組み合わせて、本開示の一部であるさらなる実施形態を形成することができる。特定の構成要素及び細部は、本発明をより明確に説明する助けとなるように図面にないこともあることが理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】流体試料中の汚染物質を検出するシステムを示す図である。
図2】システムの開始構成の図である。
図3】システムが所定のコロイド分散液レベルに達しつつある構成の図である。
図4】システムが所定のコロイド分散液レベルに達した構成の図である。
図5】非定常状態の試料分析構成の図である。
図6】定常状態の試料分析構成の図である。
図7図2図4に示す構成によるコロイド局在プラズモン共鳴粒子の濃度を示す。
図8】システムの洗浄構成の図である。
図9】試料中の汚染物質を検出する方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
ここで、本発明を実施するために本発明者らが意図する最良の形態を含む、本発明のいくつかの特定の例を参照する。これらの特定の実施形態の例は、添付の図面に示す。本発明をこれらの特定の実施形態と併せて説明するが、説明又は例示する実施形態に本発明を限定することを意図するものではないことが理解されるであろう。それとは逆に、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の趣旨及び範囲内に含まれ得るような、代替物、修正物、及び均等物を含むことが意図される。
【0018】
以下の説明において、本発明の完全な理解を与えるために多くの特定の詳細を記載する。本発明の特定の例示的な実施形態は、これらの特定の詳細のいくつか又はすべてなしに実施されてもよい。他の場合では、当業者によく知られているプロセス動作は、本発明を不必要に曖昧にしないために詳細に説明されていない。本発明の様々な技法及び機構は、明確にするために単数形で説明する場合がある。しかしながら、いくつかの実施形態は、別段に述べられていない限り、技法の複数回の反復又は複数の機構を含むことに留意されたい。同様に、本明細書において図示及び説明する方法の様々なステップは、特定の実施形態では、必ずしも示された順序で行われるわけではないか又は全く行われない。したがって、本明細書において論じる方法のいくつかの実施は、図示又は説明するステップよりも多い又は少ないステップを含み得る。さらに、本発明の技法及び機構は、2つ以上の実体間の接続、関係又はやりとりを説明する場合がある。実体間の接続又は関係は、様々な他の実体又はプロセスが任意の2つの実体間に存在する又は生じ得るため、必ずしも直接の妨げのない接続を意味するわけではないことに留意されたい。したがって、示す接続は、別段に述べられていない限り、必ずしも直接の妨げのない接続を意味するわけではない。
【0019】
例示的な特徴の以下のリストは、添付の図面に対応し、参照を容易にするために提供され、同様の参照符号は、本明細書及び図面の全体を通して対応する特徴を示す。
【符号の説明】
【0020】
5 流体汚染物質検出システム
7 コロイド分散液循環路
8 ポンプ
10 リザーバ
12 コロイド分散液レベルセンサ
15 ラマン分光計/フローセル
20 限外濾過膜
22 透過液体
25 透過液体リザーバ25
30 流体試料
35 コロイド局在表面プラズモン共鳴(「LSPR」)粒子
37 プロセッサ
45 限外濾過膜透過弁
50 透過流路
55 リザーバ弁
60 流体試料弁/注入ポート
65 流体試料注入路
70 洗浄液リザーバ
75 洗浄弁
900 試料中の汚染物質を検出する方法
905~970 方法900のステップ
【0021】
ラマン分光法は、化学構造、相及び多形、結晶化度並びに分子間相互作用に関する詳細情報を提供する非破壊化学分析技術である。ラマン分光法は、光と物質における化学結合との相互作用に基づく。ラマン分光法は、分子が高強度レーザ光源からの入射光を散乱させる光散乱技術である。散乱光の大部分は、レーザ源と同じ波長(又は色)にあり、有用な情報を提供せず、これはレイリー散乱と呼ばれる。しかしながら、少量の光(典型的には、0.0000001%)が異なる種々の波長(又は色)で散乱され、このことは分析物の化学構造に依存し、これはラマン散乱と呼ばれる。
【0022】
ラマンスペクトルは、複数のピークを特徴とし、ラマン散乱光の強度及び波長位置を示す。各ピークは、C-C、C=C、N-O、C-Hなどのような個々の結合、ベンゼン環呼吸振動モード、ポリマー鎖振動、格子モードなどのような結合グループを含む、特定の分子結合振動に対応する。
【0023】
局在表面プラズモン(LSP)は、表面プラズモンの閉じ込めにより、励起波長に匹敵する又は励起波長よりも小さいサイズのナノ粒子において形成される。金又は銀などの導電性ナノ粒子又は同様のナノスケール構造が光によって励起されると、振動電場が伝導電子をコヒーレントに振動させる。このコヒーレンスは、可視光を桁違いに局在的に増強させる。
【0024】
プラズモンは、導電性物質における電子振動のディスクリート(discreet)測定単位(フォトンのような)である。光が適切な物質と相互作用すると、伝導帯における電子の振動が表面プラズモンを生成する。光の入射周波数よりも小さいナノ粒子について、プラズモンは、ナノ粒子の表面に限定され、局在表面プラズモンと呼ばれる。光の周波数がナノ粒子の自然な共鳴周波数と一致すると、局在表面プラズモン共鳴がナノ粒子の表面において起こる。局在表面プラズモン共鳴(「LSPR」)の結果、表面に非常に強い電磁信号が生じる。共鳴周波数及び強い電磁場を用いて、粒子の表面にある又はその近くにある分子を検出するとともに特徴付けることができる。表面増強ラマン分光法は、これらの効果を用いて、ナノ粒子の表面において又はその近くで非常に低い分子濃度を特徴付ける。
【0025】
LSPRナノ構造は、サイズが典型的には3~1000nmの、LSPRが可能な元素を含有する被覆又は層粒子、自身の共鳴を改善する構造を有するナノ粒子、ナノシェル、ナノ棒、ナノワイヤ、ナノクラスタ、ナノスター、集合ナノ粒子、繭型ナノ粒子、ナノシート、並びに、物質の共鳴特性を改善又は調整することができる同様の形状及び構造である、金属ナノ粒子、金属合金ナノ粒子、ドープされた及びドープされていない半導体ナノ粒子、金属酸化物ナノ粒子、並びにこれらのタイプの物質の複合体を含むがこれらに限定されない。
【0026】
本明細書において開示する汚染物質検出システムは、コロイドLSPR粒子、典型的には、液体中に分散されたナノスケール構造(金又は銀など)を、LSPR粒子のサイズ及び特性に基づいて選択される透過性限外濾過膜を通して流れるように導入する。透過性膜を通る循環は、液体とフィルタ膜を通過するのに十分に小さい溶解物質のみを除去することによってLSPR物質を濃縮し、したがって、LSPRナノスケール構造は、コロイド分散液循環路内に保持されるため、濃度が増加することを可能にする。LSPR粒子が濃縮するにつれ、ナノスケール構造が液体中で互いに近づく。LSPR物質の最適な濃度が達成されると、ナノ構造を共鳴状態に励起するためにレーザを用いるラマン分光計/フローセルを使用してラマン信号を測定することができる。したがって、ラマン分光計/フローセルの調査対象の量が、(SERS)表面増強ラマンスペクトル、共鳴ラマンスペクトル、及び/又は(SERRS)表面増強共鳴ラマンスペクトルを示す。SERS、SERRS及び共鳴ラマン分光法はすべて、調査対象の量内の物質のラマン散乱の著しい増加を生じさせ、分光計が多数桁まで検出限界を高めることを可能にする。実際、LSPRナノ粒子の増強共鳴は、隣接した吸着される汚染物質を照明するスポットライトのように働き、これは他の場合では従来の技法において検出されない又は見られない。LSPR粒子の最適な濃度が達成されると、試料の投入により限外濾過膜の透過率を最適化することによってサンプリングをインラインで実行することができる。或いは、オフライン測定のために、試料をデバイスのコロイド分散液循環路の経路に注入することができる。
【0027】
ここで図1を参照すると、本発明の流体汚染物質検出システム5が、コロイド分散液循環路7と、コロイド分散液レベルセンサ12と、透過弁45と、コロイド分散液循環路7に流体試料30を導入するように構成された流体試料注入弁60と、プロセッサ37とを備える。コロイド分散液循環路7はそれ自体、コロイド局在表面プラズモン共鳴(以下、LSPR)粒子35を有するコロイド分散液を保持又は収容するリザーバ10と、ラマン分光計又はフローセル15と、コロイド分散液を循環させるポンプ8とを備える。透過弁45は、限外濾過膜20を介して、コロイド分散液循環路7内におけるコロイド分散液を方向転換させるように構成されている。限外濾過膜20は、LSPR粒子35よりも小さな細孔サイズを有することでLSPR粒子35が通過することを防ぐ。LSPR粒子35を収容するリザーバ10内の液体はコロイド分散液を形成し、コロイド分散液は次いで、限外濾過膜20により濾過することができ、そのため、透過液体22が循環路から濾過除去されて透過液リザーバ25に入ることにより、流体汚染物質検出システム5によってリザーバ10内のLSPR粒子35の濃度を所望のレベルに調整することができる。プロセッサ37は、コロイド分散液レベルセンサ12から信号を読み出して、コロイド分散液循環路7内におけるコロイド分散液の程度を判定し、ただし、コロイド分散液レベルセンサ12は、リザーバ10に又はその近くに配置されているものとして図1において示されているが、機能性に影響することなく、また、本発明の範囲から逸脱することなく、コロイド分散液循環路7に沿って他の場所に配置することができる。流体汚染物質検出システム5は任意選択的に、リザーバ10に戻る、コロイド分散液を含有する循環流体の流れを、よりよく調整するために、コロイド分散液循環路7内にリザーバ弁55を含んでもよい。破線によって図1において表されたコロイド分散液循環路7は、リザーバ10からポンプ8を通ってラマン分光計又はフローセル15に流れるとともにリザーバ弁55を通ってリザーバ10に戻る循環流体の経路を指す。限外濾過膜透過弁45が開かれると、循環流体の一部もまた、弁45及び限外濾過膜20を通ってリザーバ弁55及びリザーバ10に流れることができ、この経路はまた、透過弁45が開位置にある場合にコロイド分散液循環路7の一部として含まれる。任意選択的に、システム5は、流体試料30の分析が完了した後で洗浄液を洗浄液リザーバ70からコロイド分散液循環路7に導入する洗浄弁75を含んでもよい。
【0028】
流体汚染物質検出システム5のプロセッサ37は、ポンプ8、ラマン分光計/フローセル15、透過弁45、コロイド分散液レベルセンサ12、及び流体試料注入ポート60に接続される。プロセッサ37は、以下のステップ、すなわち、(a)ポンプ8を起動するステップと、(b)ラマン分光計/フローセル15から第1の信号を読み出すステップであって、信号はラマン散乱に基づく、第1の信号を読み出すステップと、(c)コロイド分散液レベルセンサ12によって示される、所定のコロイド分散液レベルに達するように、透過弁45を開いてコロイド分散液を限外濾過膜20に方向転換させるステップと、(d)流体試料注入弁60を開いて、それにより流体試料30をコロイド分散液循環路7に導入するステップと、(e)ラマン分光計/フローセル15から第2の信号を読み出すステップであって、第2の信号はラマン散乱に基づく、第2の信号を読み出すステップと、(f)ステップ(b)において得られた第1の信号及びステップ(e)において得られた第2の信号に基づいて、流体試料30中の汚染物質の存在を判定するステップと、を行うように構成されている。図1に示すように、システム5が、任意選択的なリザーバ弁55を含む場合、リザーバ弁55は、リザーバ10とラマン分光計又はフローセル15との間に接続され、プロセッサ37はさらに、ラマン分光計/フローセル15からラマン散乱信号を読み出す場合に、ステップ(b)中、リザーバ弁55を開くように構成される。
【0029】
ここで図2を参照すると、システム5は、リザーバ10がLSPR粒子35を含有する液体(すなわち、コロイド分散液)で満ちており、流体試料30が、流体試料弁又は注入ポート60を介してコロイド分散液循環路7にまだ導入されていない場合の、開始構成で示されている。流体試料弁/注入ポート60及び透過弁45は両方とも閉じられている。試料液体30中の微小な量又は濃度の汚染物質を検出するために理想的な共鳴を達成するには、コロイド分散液を透過させて透過液体22を循環路7から除去することによってLSPR粒子間の距離を調整するようにシステム5を動作させ、これにより、コロイド分散液のLSPR粒子35の濃度を増加させ、信号強度を最適化するように調整する。プロセッサ37は、最適な濃度が達成されたかどうかを判定するためにラマン分光計/フローセル15から読み出しを行ってもよい。さらに、流体試料中の予測される汚染物質の種類及び濃度に応じて、コロイド分散液中のLSPR粒子の最適な濃度は様々であり得る。
【0030】
図3は、流体試料30が導入される前にシステム5が最適な共鳴でベースライン信号を読み出すことができるように、流体汚染物質検出システム5が所望される所定の濃度に達しつつある構成にあるシステム状態を示す。限外濾過透過膜弁45が開かれており、したがって、コロイド分散液中の液体が限外濾過膜20を通過している。膜20がLSPR粒子35よりも小さな細孔サイズを有しているため、膜20を通過するとともに透過液体リザーバ25に入る透過液体22は、有意な量のLSPR粒子35をいっさい含有しない。任意選択的なリザーバ弁55は、このプロセスにおいて役立つように開かれていても又は閉じられていてもよく、この開閉は、最適な共鳴を達成するとともにラマン散乱のためにベースライン読み出しを得る目的で行われる。最適な濃度は、ラマン分光計/フローセル15から検出されてもよく、又は、プロセッサ37によってアクセスされるデータベースからの情報と併せて、若しくはデータベースからの情報を用いることなく、コロイド分散液レベルセンサ12によって検出することができる。
【0031】
図4は、所望される所定の濃度に達した際の流体汚染物質検出システム5を示す。この所定の濃度は、コロイド分散液レベルセンサ12によって示すことができる。所定のコロイド分散液に達すると、限外濾過膜透過弁45がオフにされ、そのため、ここでは弁45が閉じられている。換言すると、図4は、ラマンフローセル15からの読み出しにおいて最適な信号強度を達成するためにコロイド分散液の濃度(したがって、LSPR粒子35の濃度)が最適なレベルにある場合に発動されるシステム状態を示す。
【0032】
したがって、図3は、前述した、プロセッサ37によって行われるステップ(c)、すなわち、コロイド分散液レベルセンサ12によって示される、所定のコロイド分散液レベルに達するように、透過弁45を開いてコロイド分散液を限外濾過膜20に方向転換させるステップを示す。図4は、ステップ(c)の完了時のシステムを示す。ステップ(b)は、システム5への流体試料30の導入前に少なくとも一回行われるべきであるが、ステップ(c)の間中も一回以上又は繰り返し行われてもよいことに留意されたい。したがって、システム5は、試料30が分析のために導入される前にラマン分光計/フローセル15から1つ以上のベースライン読み出しを有し得る。
【0033】
図4における状態に達した後、システム5は、非定常状態の分析(図5)又は定常状態の分析若しくはインライン分析(図6)に進むことができる。相違は、非定常状態の分析では、透過膜弁45は閉じられたままであり、そのため、流体試料30が導入されるにつれ、コロイド分散液循環路7内で循環しているコロイド分散液の程度は一定のままとはならないことである。非定常状態は、少量の有限流体試料を検査するのに用いられ得る。
【0034】
システム5が、より大型の既存の製造システムとともにその一部としてインラインで使用される場合、変更量の液体がラマン分光法/フローセル15の読み出し精度に影響する可能性があり、そのため、定常状態の分析が望まれ得る。図6に示す定常状態の分析構成では、限外濾過膜透過弁45、及び(存在する場合は)リザーバ弁55が、コロイド分散液中の液体の一部が透過液体22として流出して透過液体リザーバ25に入ることを可能にするように調整される。この調整は、分析される流体試料30がリザーバ10に入るにつれ、流体試料弁/注入ポート60によって、システム5に、より詳細には、コロイド分散液循環路7に導入される液体の量が循環路7から透過する液体22の量とほぼ同じであるようになされ、そのため、総循環流体の量が変わらないままであるとともに、ラマン分光計/フローセル15からのより正確な読み出しのためにLSPR粒子35の濃度が比較的変わらないままである。
【0035】
図5の非定常状態の構成又は図6の定常状態の構成において、プロセッサ37は、(d)流体試料注入弁60を開いて流体試料30をコロイド分散液循環路7に導入するステップと、(e)ラマン分光計/フローセル15から第2の信号を読み出すステップであって、第2の信号はラマン散乱に基づく、第2の信号を読み出すステップと、(f)第1の信号(又は流体試料30が導入される前に得られた以前の信号(複数可))及び第2の信号に基づいて、流体試料30中の汚染物質の存在及び/又は濃度を判定するステップと、を行い得る。ステップ(f)中、プロセッサ37は、フローセル15からの第2の信号の強度に基づいて流体試料30中の汚染物質の量又は濃度を特定するように構成することができる。
【0036】
システム5は、1つ又は複数のプロセッサ37に接続されるデータベースをさらに含み得、データベースは、複数のスペクトルを複数の汚染物質と関連付けるデータを含み、ステップ(f)において、プロセッサ37はさらに、データベースデータに基づいて流体試料30中の汚染物質の種類を特定するように構成される。さらに、システム5が、図6に示す定常状態の構成で流体試料30を分析する場合、プロセッサ37は、所定のコロイド分散液レベルを維持するように透過弁45を調整し、これは、論じたように、一定量の循環流体を維持することによって達成することができる。
【0037】
図7は、所望される所定のコロイド分散液レベル(又は、所定のLSPR粒子濃度)に達するように、システムを図3の構成で動作させるにつれて減少する、リザーバ10内の(コロイド分散液循環路7によって循環された)コロイド分散液の量を示す。なお、コロイド分散液中のLSPR粒子35の濃度は、コロイド分散液が減少するにつれて増加する。循環路内及びリザーバ10内の流体の量は、液体の一部が限外濾過膜20を通って透過して透過液体リザーバ25に入るにつれて減少する。
【0038】
流体汚染物質検出システム5が、洗浄液を洗浄液リザーバ70からコロイド分散液循環路7に導入するように構成されている洗浄弁75をさらに含んでもよいことは、前に述べた。図8は、洗浄液を循環させるための、システム5についての洗浄構成を示す。洗浄弁75は、プロセッサ37に接続されるとともにプロセッサ37によって動作され、プロセッサ37は、ステップ(c)の後の或る時点で以下のステップ、すなわち、流体試料弁又は注入ポート60を閉じるステップと、透過弁45を開くステップと、洗浄弁75を開くステップと、を行うことができる。好ましくは、洗浄液は、限外濾過膜20を通って透過して透過液体リザーバ25に入ることができる。洗浄液は、コロイド分散液循環路に導入され、汚染物質が除去されるまで透過されてもよい。これは、ラマン分光計/フローセル15から読み出しを行い、ベースラインラマン信号に達する(つまり、図4においてシステム5のラマン信号に一致する信号が達成される)まで洗浄プロセスを続けることによって、確定され得る。汚染物質が吸着される場合、洗浄液は、LSPR粒子表面から汚染物質を、選択的に溶解、錯化、酸化、還元、又はそれらの任意の組み合わせを行うように選択されるべきである。
【0039】
ここで、図9に示す、試料900中の汚染物質を検出する方法を論じる。方法は最低でも、(a)液体(905)とコロイドLSPR粒子とからなるコロイド分散液を導入する(910)ことと、(b)LSPR粒子のコロイド分散液中に表面増強ラマン散乱を誘導するのに十分な電磁放射でコロイド分散液を曝露する(915)ことと、(c)ステップ(b)からの散乱電磁放射線を測定する(920)とともにこれを第1の測定値として記憶する(925)ことと、(d)コロイド分散液に試料を導入する(940)ことと、(e)LSPR粒子のコロイド分散液中に表面増強ラマン散乱を誘導するのに十分な電磁放射で試料/コロイド分散液混合物を曝露する(945)ことと、(f)ステップ(e)からの散乱電磁放射線を測定する(950)とともにこれを第2の測定値として記憶する(955)ことと、(g)ステップ(c)からの測定値をステップ(f)からの測定値と比較することによって試料中の汚染物質の存在を判定する(960)ことと、を含む。ステップ(a)の後、おそらくはステップ(d)の前に、方法は、コロイド分散液から液体を透過させる(930、935)ことによってLSPR粒子を濃縮することをさらに含み得る。コロイド分散液から液体を透過させる(930)ステップ及びコロイド分散液が所定のコロイド分散液レベルに達したかどうかを決定する(935)ステップは、放射にコロイド分散液を曝露する(915)こととコロイド分散液からの散乱電磁放射を測定する(920)こととの後で行われるものとして示されているが、ステップ(930、935)はまた、(915、920)の前に又は(915、920)と同時に行われてもよい。
【0040】
方法は、コロイド分散液から液体のみを透過させる(930、935)ことによって所定のコロイド分散液レベルにLSPR粒子を濃縮することに加え、ステップ(d)、(e)及び(f)中、試料/コロイド分散液混合物を透過させて所定のコロイド分散液レベルを維持する(942)こともさらに含むことができる。これは、図6におけるシステム構成に類似している。
【0041】
方法900は、(h)ステップ(c)及び(f)からの測定値を、複数のスペクトルを複数の汚染物質と関連付けるデータを含むデータベースと比較する(963)ステップと、(i)ステップ(h)における比較に基づいて汚染物質の種類を特定する(図9における965)ステップと、をさらに含み得る。方法900はまた、(j)ステップ(f)における測定値の強度に基づいて汚染物質の濃度又は量を特定する(図9における970)ステップを含み得る。方法900のさらなる変形形態は、ステップ930の一部、ステップ942の一部、又はそれらステップの両方の一部として、異なるサイズの細孔をそれぞれが有する複数の膜から濾過膜を選択すること、したがって、コロイド分散液から液体を透過させるように、異なるサイズの粒子を透過させることを含み得る。加えて、方法900は、コロイド分散液循環路を洗浄するために洗浄液を循環させることをさらに含み得る。
【0042】
本発明の例を示すが本発明の範囲を限定しない特定の実施形態に関して本発明を説明してきた。様々な態様及び要素を有する様々な例示的なシステムを図示及び説明してきた。別段に示されていない限り、これらのシステムのいずれもの任意の特徴、態様又は要素は、システムのいずれもの任意の他の特徴、態様又は要素から取り除かれても、それらに付け加えられても、それらと組み合わされても又はそれらによって変更されてもよい。当業者には明らかであるように、上記で説明したシステム及び方法に対する変更及び改造は、添付の特許請求の範囲によってのみ定義される本発明の主旨及び範囲から逸脱することなく行うことができる。さらに、本出願人は、添付の特許請求の範囲及び「明細書中の実施形態が厳密に同一の広がりを持つ」ことを特に意図していない(Phillips対AHW Corp.,415 F.3d 1303,1323(米国連邦巡回控訴裁判所、2005年)(大法廷))。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】