(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-18
(54)【発明の名称】逆位末端反復配列によるクローズドエンドDNAの作製
(51)【国際特許分類】
C12N 15/86 20060101AFI20240910BHJP
C12N 15/113 20100101ALI20240910BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20240910BHJP
C12N 15/16 20060101ALI20240910BHJP
C12N 15/19 20060101ALI20240910BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240910BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240910BHJP
C12N 15/64 20060101ALI20240910BHJP
C12N 15/866 20060101ALI20240910BHJP
C12N 15/88 20060101ALI20240910BHJP
C12N 15/90 20060101ALI20240910BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240910BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20240910BHJP
A61K 35/12 20150101ALI20240910BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20240910BHJP
A61P 7/04 20060101ALI20240910BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240910BHJP
A61K 9/72 20060101ALI20240910BHJP
C07K 14/755 20060101ALN20240910BHJP
【FI】
C12N15/86 Z ZNA
C12N15/113 Z
C12N15/12
C12N15/16
C12N15/19
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N15/64 Z
C12N15/866 Z
C12N15/88 Z
C12N15/90 Z
A61K48/00
A61K31/7088
A61K35/12
A61K35/76
A61P7/04
A61K9/08
A61K9/72
C07K14/755
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024512008
(86)(22)【出願日】2022-08-22
(85)【翻訳文提出日】2024-04-03
(86)【国際出願番号】 US2022075280
(87)【国際公開番号】W WO2023028455
(87)【国際公開日】2023-03-02
(32)【優先日】2021-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】512147244
【氏名又は名称】バイオベラティブ セラピューティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】アジャイ・メゴディア
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン・ミュラー
(72)【発明者】
【氏名】トンヤオ・リウ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076AA93
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4C087MA17
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4C087NA13
4C087NA14
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4H045AA10
4H045AA20
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4H045CA40
4H045DA66
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、第1の逆位末端反復(ITR)、第2のITR、および標的配列をコードする遺伝子カセットを含む核酸分子を提供する。一部の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRは、ヒトボカウイルスのITRである。また、遺伝子治療適用において核酸分子を使用する方法も開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
異種ポリヌクレオチド配列を含む遺伝子カセットを挟む、第1の逆位末端反復(ITR)および第2のITRを含む核酸分子であって、
第1のITRは、配列番号1と少なくとも約75%同一であるポリヌクレオチド配列を含み、第2のITRは、配列番号2と少なくとも約75%同一であるポリヌクレオチド配列を含む、核酸分子。
【請求項2】
第1のITRは、配列番号1と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%同一であるポリヌクレオチド配列を含む、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項3】
第1のITRは、配列番号1に示されたポリヌクレオチド配列を含む、請求項1または2に記載の核酸分子。
【請求項4】
第2のITRは、配列番号2と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%同一であるポリヌクレオチド配列を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項5】
第2のITRは、配列番号2に示されたポリヌクレオチド配列を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項6】
第1のITRは、配列番号1に示されたポリヌクレオチド配列を含み、第2のITRは、配列番号2に示されたポリヌクレオチド配列を含む、請求項5に記載の核酸分子。
【請求項7】
プロモーターをさらに含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項8】
プロモーターは、組織特異的プロモーターである、請求項7に記載の核酸分子。
【請求項9】
プロモーターは、器官または組織内における異種ポリヌクレオチド配列の発現を駆動し、器官または組織は、筋肉、中枢神経系(CNS)、眼、肝臓、心臓、腎臓、膵臓、肺、皮膚、膀胱、尿路、脾臓、骨髄系およびリンパ系細胞系列、またはこれらの任意の組合せを含む、請求項7または8に記載の核酸分子。
【請求項10】
プロモーターは、肝細胞、上皮細胞、内皮細胞、心筋細胞、骨格筋細胞、類洞細胞、求心性ニューロン、遠心性ニューロン、介在ニューロン、グリア細胞、星状細胞、希突起膠細胞、ミクログリア、上衣細胞、肺上皮細胞、シュワン細胞、サテライト細胞、光受容体細胞、網膜神経節細胞、T細胞、B細胞、NK細胞、マクロファージ、樹状細胞、またはこれらの任意の組合せにおける異種ポリヌクレオチド配列の発現を駆動する、請求項7~9のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項11】
プロモーターは、異種ポリヌクレオチド配列に対して5’側に配置される、請求項7~10のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項12】
プロモーターは、マウストランスサイレチンプロモーター(mTTR)、天然ヒト第VIII因子プロモーター、ヒトアルファ1アンチトリプシンプロモーター(hAAT)、ヒトアルブミン最小プロモーター、マウスアルブミンプロモーター、トリステトラプロリン(TTP)プロモーター、CASIプロモーター、CAGプロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、α1アンチトリプシン(AAT)プロモーター、筋クレアチニンキナーゼ(MCK)プロモーター、ミオシン重鎖アルファ(αMHC)プロモーター、ミオグロビン(MB)プロモーター、デスミン(DES)プロモーター、SPc5-12プロモーター、2R5Sc5-12プロモーター、dMCKプロモーター、tMCKプロモーター、ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)プロモーター、またはA1ATプロモーターである、請求項7~11のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項13】
異種ポリヌクレオチド配列は、イントロン配列をさらに含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項14】
イントロン配列は、異種ポリヌクレオチド配列に対して5’側に配置される、請求項13に記載の核酸分子。
【請求項15】
イントロン配列は、プロモーターに対して3’側に配置される、請求項13または14に記載の核酸分子。
【請求項16】
イントロン配列は、合成イントロン配列を含む、請求項13~15のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項17】
遺伝子カセットは、転写後調節エレメントをさらに含む、請求項1~16のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項18】
転写後調節エレメントは、異種ポリヌクレオチド配列に対して3’側に配置される、請求項17に記載の核酸分子。
【請求項19】
転写後調節エレメントは、ウッドチャック肝炎ウイルス調節エレメント(WPRE)、マイクロRNA結合性部位、DNA核ターゲティング配列、TLR9阻害配列、またはこれらの任意の突然変異を含む、請求項17または18に記載の核酸分子。
【請求項20】
遺伝子カセットは、3’UTRポリ(A)テール配列をさらに含む、請求項1~19のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項21】
3’UTRポリ(A)テール配列は、bGHポリ(A)、アクチンポリ(A)、ヘモグロビンポリ(A)、およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される、請求項20に記載の核酸分子。
【請求項22】
遺伝子カセットは、エンハンサー配列をさらに含む、請求項1~21のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項23】
エンハンサー配列は、第1のITRと第2のITRとの間に配置される、請求項22に記載の核酸分子。
【請求項24】
核酸分子は、5’側から3’側へと、第1のITR、遺伝子カセット、および第2のITRを含み、遺伝子カセットは、組織特異的プロモーター配列、イントロン配列、異種ポリヌクレオチド配列、転写後調節エレメント、および3’UTRポリ(A)テール配列を含む、請求項1~23のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項25】
遺伝子カセットは、5’側から3’側へと、組織特異的プロモーター配列、イントロン配列、異種ポリヌクレオチド配列、転写後調節エレメント、および3’UTRポリ(A)テール配列を含む、請求項24に記載の核酸分子。
【請求項26】
遺伝子カセットは、配列番号3のヌクレオチド配列を含む、請求項25に記載の核酸分子。
【請求項27】
遺伝子カセットは、一本鎖核酸である、請求項1~26のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項28】
遺伝子カセットは、二本鎖核酸である、請求項1~26のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項29】
異種ポリヌクレオチド配列は、治療用タンパク質をコードする、請求項1~28のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項30】
異種ポリヌクレオチド配列は、凝固因子、増殖因子、ホルモン、サイトカイン、抗体、その断片、またはこれらの任意の組合せをコードする、請求項1~29のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項31】
異種ポリヌクレオチド配列は、凝固因子をコードする、請求項1~30のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項32】
異種ポリヌクレオチド配列は、増殖因子をコードする、請求項1~30のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項33】
異種ポリヌクレオチド配列は、ホルモンをコードする、請求項1~30のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項34】
異種ポリヌクレオチド配列は、サイトカインをコードする、請求項1~30のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項35】
異種ポリヌクレオチド配列は、抗体またはその断片をコードする、請求項1~30のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項36】
異種ポリヌクレオチド配列は、X連鎖ジストロフィン、MTM1(ミオチュブラリン)、チロシンヒドロキシラーゼ、AADC、シクロヒドロラーゼ、SMN1、FXN(フラタキシン)、GUCY2D、RS1、CFH、HTRA、ARMS、CFB/CC2、CNGA/CNGB、Prf65、ARSA、PSAP、IDUA(MPS I)、IDS(MPS II)、PAH、GAA(酸性アルファグルコシダーゼ)、GALT、OTC、CMD1A、LAMA2、またはこれらの任意の組合せをコードする、請求項1~30のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項37】
異種ポリヌクレオチド配列は、マイクロRNA(miRNA)をコードする、請求項1~28のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項38】
miRNAは、SOD1、HTT、RHO、CD38、またはこれらの任意の組合せを含む標的遺伝子の発現を下方調節する、請求項37に記載の核酸分子。
【請求項39】
凝固因子は、第I因子(FI)、第II因子(FII)、第III因子(FIII)、第IV因子(FIV)、第V因子(FV)、第VI因子(FVI)、第VII因子(FVII)、第VIII因子(FVIII)、第IX因子(FIX)、第X因子(FX)、第XI因子(FXI)、第XII因子(FXII)、第XIII因子(FXIII)、フォンウィレブラント因子(VWF)、プレカリクレイン、高分子量キニノーゲン、フィブロネクチン、アンチトロンビンIII、ヘパリン補因子II、プロテインC、プロテインS、プロテインZ、プロテインZ関連プロテアーゼ阻害剤(ZPI)、プラスミノーゲン、アルファ2アンチプラスミン、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、ウロキナーゼ、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤1(PAI-1)、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤2(PAI-2)、またはこれらの任意の組合せを含む、請求項31に記載の核酸分子。
【請求項40】
異種ポリヌクレオチド配列は、コドン最適化されている、請求項1~39のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項41】
異種ポリヌクレオチド配列は、ヒトにおける発現のためにコドン最適化されている、請求項40に記載の核酸分子。
【請求項42】
送達剤と共に製剤化される、請求項1~41のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項43】
送達剤は、脂質ナノ粒子(LNP)を含む、請求項42に記載の核酸分子。
【請求項44】
送達剤は、リポソーム、非脂質ポリマー分子、エンドソーム、またはこれらの任意の組合せを含む、請求項42に記載の核酸分子。
【請求項45】
静脈内投与、経皮投与、皮内投与、神経内投与、眼内投与、髄腔内投与、皮下投与、肺内投与、もしくは経口投与、またはこれらの任意の組合せのために製剤化される、請求項1~44のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項46】
静脈内投与のために製剤化される、請求項45に記載の核酸分子。
【請求項47】
in situ注入による投与のために製剤化される、請求項1~44のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項48】
吸入による投与のために製剤化される、請求項1~44のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項49】
請求項1~41のいずれか1項に記載の核酸分子を含むベクター。
【請求項50】
請求項1~41のいずれか1項に記載の核酸分子、または請求項49に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項51】
昆虫細胞である、請求項50に記載の宿主細胞。
【請求項52】
請求項1~41のいずれか1項に記載の核酸を含む医薬組成物。
【請求項53】
請求項49に記載のベクターと、薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項54】
請求項50に記載の宿主細胞と、薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項55】
請求項1~48のいずれか1項に記載の核酸分子と、核酸分子を、それを必要とする対象へと投与するための指示書とを含むキット。
【請求項56】
請求項1~41のいずれか1項に記載の核酸分子を作製するためのバキュロウイルス系。
【請求項57】
請求項1~41のいずれか1項に記載の核酸分子は、昆虫細胞内において作製される、請求項56に記載のバキュロウイルス系。
【請求項58】
そのコードタンパク質の発現の低減を呈するように、変異体VP80遺伝子を含む組換えバクミドをさらに含む、請求項56または57に記載のバキュロウイルス系。
【請求項59】
請求項1~48のいずれか1項に記載の核酸分子を含む、ナノ粒子送達系。
【請求項60】
それを必要とする対象において、異種ポリヌクレオチド配列を発現させる方法であって、対象へと、請求項1~48のいずれか1項に記載の核酸分子、請求項49に記載のベクター、または請求項52~54のいずれか1項に記載の医薬組成物を投与する工程を含む方法。
【請求項61】
それを必要とする対象における疾患または障害を処置する方法であって、対象へと、請求項1~48のいずれか1項に記載の核酸分子、請求項49に記載のベクター、または請求項52~54のいずれか1項に記載の医薬組成物を投与する工程を含む方法。
【請求項62】
出血障害を処置する方法であって、
核酸分子を、それを必要とする対象へと投与する工程
を含み、核酸分子は、配列番号3のヌクレオチド配列を含む、方法。
【請求項63】
障害は、A型血友病である、請求項61または62に記載の方法。
【請求項64】
核酸分子は、静脈内投与、経皮投与、皮内投与、神経内投与、眼内投与、髄腔内投与、皮下投与、経口投与、肺内投与、またはこれらの任意の組合せにより投与される、請求項60~63のいずれか1項に記載の方法。
【請求項65】
核酸分子は、静脈内投与される、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
核酸分子は、in situ注入により投与される、請求項60~63のいずれか1項に記載の方法。
【請求項67】
核酸分子は、吸入により投与される、請求項60~63のいずれか1項に記載の方法。
【請求項68】
対象は、哺乳動物である、請求項60~66のいずれか1項に記載の方法。
【請求項69】
哺乳動物は、ヒトである、請求項67に記載の方法。
【請求項70】
HBoV1 Repをコードする配列であって、挿入されたHBoV1 Rep配列は、レポーター遺伝子またはその機能的部分のリーディングフレームを破壊する、配列と、
配列番号3、9、14、33、または35のヌクレオチド配列を含む核酸分子を含む異種配列と
を含む、組換えバクミド。
【請求項71】
第1のバクミドと第2のバクミドとを含む組換えバクミドのセットであって、
第1のバクミドは、Repをコードする配列を含み、挿入されたRepは、レポーター遺伝子またはその機能的部分のリーディングフレームを破壊し;
第2のバクミドは、配列番号3、9、14、33、または35のヌクレオチド配列を含む核酸分子を含む異種配列を含む、組換えバクミドのセット。
【請求項72】
配列番号3、9、14、33、または35の核酸配列を含む安定細胞株であって、核酸配列は、安定細胞株のゲノム内に安定的に組み込まれた、安定細胞株。
【請求項73】
クローズドエンド化DNA(ceDNA)分子を作出する方法であって、昆虫細胞に、請求項69に記載のバクミドを含む組換えバキュロウイルスを感染させる工程を含む方法。
【請求項74】
クローズドエンド化DNA(ceDNA)分子を作出する方法であって、昆虫細胞に、請求項70に記載の組換えバクミドのセットを含む組換えバキュロウイルスを感染させる工程を含む方法。
【請求項75】
クローズドエンド化DNA(ceDNA)分子を作出する方法であって、Repタンパク質をコードするバキュロウイルスを、請求項71に記載の安定細胞株へと導入する工程を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、参照によりその全体において本明細書に組み入れられる、2021年8月23日に出願された、米国特許仮出願第63/236,215号に対する優先権を主張する。
【0002】
電子的に提出された配列表への言及
XMLフォーマットにより電子的に提出された配列表(名称:SA9-481_SeqListing.xml;サイズ:117,285バイト;および作成日:2022年8月22日)の内容は、参照によりその全体において本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0003】
遺伝子治療は、様々な疾患を処置する持続的手段に対する、潜在的可能性をもたらす。過去において、多くの遺伝子治療による処置は、典型的に、ウイルスベクターの使用に依拠する。この目的のために選択される、各々が、それらを、多かれ、少なかれ、遺伝子治療に適するものとする、顕著に異なる特性を伴う、多数のウイルス性作用物質が存在する。しかし、一部のウイルスベクターの、所望されない特性は、臨床安全性についての懸念を結果としてもたらし、それらの治療的使用を制限している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アデノ随伴ウイルス(AAV)は、一般的な遺伝子治療用ベクターであるが、その欠点を伴わない。AAVゲノムのコード配列は、ウイルスの複製およびパッケージングのほか、導入遺伝子の発現に要求される、逆位末端反復(ITR)により挟まれる。AAV ITRのT字形ヘアピン構造は、AAVベクター内における、導入遺伝子の発現を阻害する、宿主細胞タンパク質による結合を受けやすい。既存のAAVベクター技術の限界を回避しながら、標的配列の効率的かつ持続的発現をもたらすことが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書では、異種ポリヌクレオチド配列を含む遺伝子カセットを挟む、第1の逆位末端反復(ITR)および/または第2のITRを含む、核酸分子およびその使用が開示される。
【0006】
本明細書の一態様では、異種ポリヌクレオチド配列を含む遺伝子カセットを挟む、第1のITRおよび第2のITRを含む核酸分子であって、第1のITRおよび第2のITRは、ボカウイルスITRまたはその断片/誘導体(例えば、1型ヒトボカウイルスITR)である、核酸分子が提供される。本明細書の別の態様では、第1のITRおよび第2のITRを含む核酸分子であって、第1のITRは、配列番号1と少なくとも約75%同一であるポリヌクレオチド配列を含み、第2のITRは、配列番号2と少なくとも約75%同一であるポリヌクレオチド配列を含む、核酸分子が提供される。
【0007】
一部の実施形態では、第1のITRは、配列番号1と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%同一であるポリヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、第1のITRは、配列番号1に示されたポリヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、第1のITRは、配列番号1と少なくとも約50%同一であるポリヌクレオチド配列を含む。
【0008】
一部の実施形態では、第2のITRは、配列番号2と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%同一であるポリヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、第2のITRは、配列番号2に示されたポリヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、第1のITRは、配列番号2と少なくとも約50%同一であるポリヌクレオチド配列を含む。
【0009】
一部の実施形態では、第1のITRは、配列番号1に示されたポリヌクレオチド配列を含み、第2のITRは、配列番号2に示されたポリヌクレオチド配列を含む。
【0010】
一部の実施形態では、核酸分子は、異種ポリヌクレオチド配列と、プロモーター、エンハンサー、イントロン、転写終結シグナル、または転写後調節エレメントなど、少なくとも1つの発現制御配列とを含む、遺伝子カセットをさらに含む。
【0011】
一部の実施形態では、遺伝子カセットは、プロモーターをさらに含む。一部の実施形態では、プロモーターは、組織特異的プロモーターである。一部の実施形態では、プロモーターは、器官内における異種ポリヌクレオチド配列の発現を駆動し、この場合、器官は、筋肉、中枢神経系(CNS)、視器官、肝臓、心臓、腎臓、膵臓、肺、皮膚、膀胱、尿路、脾臓、骨髄系およびリンパ系細胞系列、またはこれらの任意の組合せを含む。一部の実施形態では、プロモーターは、肝細胞、上皮細胞、内皮細胞、心筋細胞、骨格筋細胞、類洞細胞、求心性ニューロン、遠心性ニューロン、介在ニューロン、グリア細胞、星状細胞、希突起膠細胞、ミクログリア、上衣細胞、肺上皮細胞、シュワン細胞、サテライト細胞、光受容体細胞、網膜神経節細胞、T細胞、B細胞、NK細胞、マクロファージ、樹状細胞、またはこれらの任意の組合せにおける異種ポリヌクレオチド配列の発現を駆動する。一部の実施形態では、プロモーターは、異種ポリヌクレオチド配列に対して5’側に配置される。一部の実施形態では、プロモーターは、マウストランスサイレチンプロモーター(mTTR)、天然ヒト第VIII因子プロモーター、ヒトアルファ1アンチトリプシンプロモーター(hAAT)、ヒトアルブミン最小プロモーター、マウスアルブミンプロモーター、トリステトラプロリン(TTP)プロモーター、CASIプロモーター、CAGプロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、α1アンチトリプシン(AAT)プロモーター、筋クレアチニンキナーゼ(MCK)プロモーター、ミオシン重鎖アルファ(αMHC)プロモーター、ミオグロビン(MB)プロモーター、デスミン(DES)プロモーター、SPc5-12プロモーター、2R5Sc5-12プロモーター、dMCKプロモーター、tMCKプロモーター、またはホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)プロモーターである。
【0012】
一部の実施形態では、遺伝子カセットは、イントロン配列をさらに含む。一部の実施形態では、イントロン配列は、異種ポリヌクレオチド配列に対して5’側に配置される。一部の実施形態では、イントロン配列は、プロモーターに対して3’側に配置される。一部の実施形態では、イントロン配列は、合成イントロン配列を含む。
【0013】
一部の実施形態では、遺伝子カセットは、転写後調節エレメントをさらに含む。一部の実施形態では、調節エレメントは、異種ポリヌクレオチド配列に対して3’側に配置される。一部の実施形態では、調節エレメントは、突然変異型ウッドチャック肝炎ウイルス調節エレメント(WPRE)、マイクロRNA結合性部位、DNA核ターゲティング配列、またはこれらの任意の組合せを含む。
【0014】
一部の実施形態では、遺伝子カセットは、3’UTRポリ(A)テール配列をさらに含む。一部の実施形態では、3’UTRポリ(A)テール配列は、bGHポリ(A)、アクチンポリ(A)、ヘモグロビンポリ(A)、およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される。
【0015】
一部の実施形態では、遺伝子カセットは、エンハンサー配列をさらに含む。一部の実施形態では、エンハンサー配列は、第1のITRと第2のITRとの間に配置される。
【0016】
一部の実施形態では、核酸分子は、5’側から3’側へと、第1のITR、遺伝子カセット、および第2のITRを含み、この場合遺伝子カセットは、組織特異的プロモーター配列、イントロン配列、異種ポリヌクレオチド配列、転写後調節エレメント、および3’UTRポリ(A)テール配列を含む。
【0017】
一部の実施形態では、遺伝子カセットは、5’側から3’側へと、組織特異的プロモーター配列、イントロン配列、異種ポリヌクレオチド配列、転写後調節エレメント、および3’UTRポリ(A)テール配列を含む。
【0018】
一部の実施形態では、遺伝子カセットは、一本鎖核酸である。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、二本鎖核酸である。
【0019】
一部の実施形態では、異種ポリヌクレオチド配列は、治療用タンパク質をコードする。
【0020】
一部の実施形態では、異種ポリヌクレオチド配列は、凝固因子、増殖因子、ホルモン、サイトカイン、抗体、その断片、またはこれらの任意の組合せをコードする。一部の実施形態では、異種ポリヌクレオチド配列は、凝固因子をコードする。一部の実施形態では、異種ポリヌクレオチド配列は、増殖因子をコードする。一部の実施形態では、異種ポリヌクレオチド配列は、ホルモンをコードする。一部の実施形態では、異種ポリヌクレオチド配列は、サイトカインをコードする。
【0021】
一部の実施形態では、異種ポリヌクレオチド配列は、FVIIIタンパク質をコードする。
【0022】
一部の実施形態では、異種ポリヌクレオチド配列は、X連鎖ジストロフィン、MTM1(ミオチュブラリン)、チロシンヒドロキシラーゼ、AADC、シクロヒドロラーゼ、SMN1、FXN(フラタキシン)、GUCY2D、RS1、CFH、HTRA、ARMS、CFB/CC2、CNGA/CNGB、Prf65、ARSA、PSAP、IDUA(MPS I)、IDS(MPS II)、PAH、GAA(酸性アルファグルコシダーゼ)、GALT、OTC、CMD1A、LAMA2、またはこれらの任意の組合せをコードする。
【0023】
一部の実施形態では、異種ポリヌクレオチド配列は、マイクロRNA(miRNA)をコードする。一部の実施形態では、miRNAは、SOD1、HTT、RHO、CD38、またはこれらの任意の組合せを含む標的遺伝子の発現を下方調節する。
【0024】
一部の実施形態では、異種ポリヌクレオチド配列は、凝固因子をコードし、この場合、凝固因子は、第I因子(FI)、第II因子(FII)、第III因子(FIII)、第IV因子(FIV)、第V因子(FV)、第VI因子(FVI)、第VII因子(FVII)、第VIII因子(FVIII)、第IX因子(FIX)、第X因子(FX)、第XI因子(FXI)、第XII因子(FXII)、第XIII因子(FXIII)、フォンウィレブラント因子(VWF)、プレカリクレイン、高分子量キニノーゲン、フィブロネクチン、アンチトロンビンIII、ヘパリン補因子II、プロテインC、プロテインS、プロテインZ、プロテインZ関連プロテアーゼ阻害剤(ZPI)、プラスミノーゲン、アルファ2アンチプラスミン、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、ウロキナーゼ、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤1(PAI-1)、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤2(PAI2)、またはこれらの任意の組合せを含む。
【0025】
一部の実施形態では、異種ポリヌクレオチド配列は、コドン最適化されている。一部の実施形態では、異種ポリヌクレオチド配列は、ヒトにおける発現のためにコドン最適化されている。
【0026】
一部の実施形態では、核酸分子は、送達剤と共に製剤化される。一部の実施形態では、送達剤は、脂質ナノ粒子を含む。一部の実施形態では、脂質ナノ粒子は、イオン性である。一部の実施形態では、送達剤は、リポソーム、非脂質ポリマー分子、エンドソーム、またはこれらの任意の組合せを含む。
【0027】
一部の実施形態では、核酸分子は、静脈内投与、経皮投与、皮内投与、神経内投与、眼内投与、髄腔内投与、皮下投与、肺内投与、もしくは経口投与、またはこれらの任意の組合せのために製剤化される。一部の実施形態では、核酸分子は、静脈内投与のために製剤化される。一部の実施形態では、核酸分子は、in situ注入による投与のために製剤化される。一部の実施形態では、核酸分子は、吸入による投与のために製剤化される。
【0028】
本明細書の別の態様では、本明細書で記載される核酸分子を含むベクターが提供される。
【0029】
本明細書の別の態様では、本明細書で記載される核酸分子、または本明細書で記載されるベクターを含む宿主細胞が提供される。一部の実施形態では、宿主細胞は、昆虫細胞である。
【0030】
本明細書の別の態様では、本明細書で記載される核酸分子を含む医薬組成物が提供される。
【0031】
本明細書の別の態様では、本明細書で記載されるベクターと、薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物が提供される。
【0032】
本明細書の別の態様では、本明細書で記載される宿主細胞と、薬学的に許容される賦形剤とを含む医薬組成物が提供される。
【0033】
本明細書の別の態様では、本明細書で記載される核酸分子と、核酸分子を、それを必要とする対象へと投与するための指示書とを含むキットが提供される。
【0034】
本明細書の別の態様では、本明細書で記載される核酸分子を作製するためのバキュロウイルス系が提供される。
【0035】
一部の実施形態では、核酸分子は、昆虫細胞内において作製される。
【0036】
本明細書の別の態様では、本明細書で記載される核酸分子を含む、ナノ粒子送達系が提供される。
【0037】
本明細書の別の態様では、それを必要とする対象において、異種ポリヌクレオチド配列を発現させる方法であって、対象へと、本明細書で記載される核酸分子、本明細書で記載されるベクター、または本明細書で記載される医薬組成物を投与する工程を含む方法が提供される。
【0038】
本明細書の別の態様では、それを必要とする対象における疾患または障害を処置する方法であって、対象へと、本明細書で記載される核酸分子、本明細書で記載されるベクター、または本明細書で記載される医薬組成物を投与する工程を含む方法が提供される。
【0039】
一部の実施形態では、核酸分子は、静脈内投与、経皮投与、皮内投与、皮下投与、経口投与、肺内投与、神経内投与、眼内投与、髄腔内投与、またはこれらの任意の組合せにより投与される。一部の実施形態では、核酸分子は、静脈内投与される。一部の実施形態では、核酸分子は、in situ注入により投与される。一部の実施形態では、核酸分子は、吸入により投与される。
【0040】
一部の実施形態では、対象は、哺乳動物である。一部の実施形態では、対象は、ヒトである。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1-1】
図1A~1Cは、本発明の一実施形態に従う、バキュロウイルス系内のceDNA作製のために使用されるアプローチについての概略表示を示す図である。
図1Aは、異なる遺伝子座において、FVIIIXTEN遺伝子およびRep遺伝子をコードする、単一の組換えBEVを、ceDNA作製のための、Sf9細胞内の感染に使用した場合における、One BACアプローチについての概略図を示す。
図1Bは、Sf9細胞に、ceDNA作製のために、FVIIIXTENおよび/またはRep遺伝子をコードする組換えBEVを共感染させた場合における、Two BACアプローチについての概略図を示す。
図1Cは、FVIIIXTEN発現カセットを、Sf9細胞ゲノムへと、安定的に組み込み、ceDNA作製のために、Rep遺伝子をコードする組換えBEVを感染させることによりレスキューした場合における、安定細胞株アプローチについての概略図を示す。
【
図2】
図2A~2Bは、ヒトFVIIIXTEN発現構築物についての概略表示を示す図である。
図2Aは、エンハンサーエレメント(A1MB2)を伴う肝臓特異的改変マウストランスサイレチン(mTTR)プロモーター(mTTR482)、ハイブリッド合成イントロン(キメライントロン)、ウッドチャック転写後調節エレメント(WPRE)、およびウシ成長ホルモンポリアデニル化(bGHpA)シグナルの調節下にある、XTEN 144ペプチド(FVIIIXTEN)と融合されたBドメイン欠失型(BDD)コドン最適化ヒト第VIII因子(coFVIII)から構成される、本発明の一実施形態に従う発現構築物についての、線形概略マップを示す。FVIIIXTEN発現カセットは、1型ヒトボカウイルス(HBoV1)野生型(WT)ITRにより挟まれる(配列番号1および配列番号2)。
図2Bは、FVIIIXTEN発現カセット(配列番号3)を、pFastBac1ベクター(Invitrogen)へと挿入することにより作製される、本発明の一実施形態に従うTn7導入ベクターについての概略マップを示す。
【
図3】
図3A~3Cは、本発明の実施形態に従う、複製(Rep)遺伝子発現構築物についての概略表示を示す図である。
図3Aは、AcMNPVポリヘドリンプロモーター下にある、Sfコドン最適化HBoV1 NS1遺伝子に続き、SV40ポリアデニル化シグナル(SV40 PAS)をコードする合成DNAについての線形概略マップを示す。
図3Bは、HBoV1 NS1合成DNA(配列番号4)を、pFastBac1ベクター(Invitrogen)へと挿入することにより作製される、本発明の実施形態に従う、Tn7導入ベクターについての概略マップを示す。
図3Cは、HBoV1 NS1合成DNA(配列番号4)を、参照のために、その全体において本明細書に組み入れられる、「Baculovirus Expression System」、米国特許出願第63/069,073号において記載される通りに創出された、Cre-LoxPドナーベクターへと挿入することにより作製される、本発明の実施形態に従う、Cre-LoxPドナーベクターについての概略マップを示す。
【
図4】
図4A~4Cは、本発明の実施形態に従う、複製(Rep)遺伝子発現構築物についての概略表示を示す図である。
図4Aは、AcMNPV転写エンハンサーhr5エレメントに先立たれた、AcMNPV最初期1(pIE1)プロモーター下にある、Sfコドン最適化HBoV1 NS1遺伝子に続き、SV40ポリアデニル化シグナル(SV40 PAS)をコードする合成DNAについての線形概略マップを示す。
図4Bは、HBoV1 NS1合成DNA(配列番号4)を、pFastBac1ベクター(Invitrogen)へと挿入することにより作製される、本発明の実施形態に従う、Tn7導入ベクターについての概略マップを示す。
図4Cは、HBoV1 NS1合成DNA(配列番号4)を、Cre-LoxPドナーベクターへと挿入することにより作製される、本発明の実施形態に従う、Cre-LoxPドナーベクターについての概略マップを示す。
【
図5】
図5A~5Dは、本発明の実施形態に従う、複製(Rep)遺伝子発現構築物についての概略表示を示す図である。
図5Aは、OpMNPV最初期2(OpIE2)プロモーター下にある、Sfコドン最適化HBoV1 NS1遺伝子に続き、SV40ポリアデニル化シグナル(SV40 PAS)をコードする合成DNAについての線形概略マップを示す。
図5Bは、AcMNPV最初期1(pIE1)プロモーター下にある、Sfコドン最適化HBoV1 NS1遺伝子に続き、SV40ポリアデニル化シグナル(SV40 PAS)をコードする合成DNAについての線形概略マップを示す。
図5Cは、HBoV1 NS1合成DNA(配列番号4)を、pFastBac1ベクター(Invitrogen)へと挿入することにより作製される、本発明の実施形態に従う、Tn7導入ベクターについての概略マップを示す。
図5Dは、AcMNPV最初期1(pIE1)プロモーター下にある、HBoV1 NS1合成DNA(配列番号4)を、米国特許出願第63/069,073号において記載される通りに創出された、Cre-LoxPドナーベクターへと挿入することにより作製される、本発明の実施形態に従う、Cre-LoxPドナーベクターについての概略マップを示す。
【
図6A】ヒトFVIIIXTENを、HBoV1 ITRと共にコードする、組換えバキュロウイルス発現ベクター(BEV)の作出を示す図である。
図6Aは、クローンヒトFVIIIXTENを、HBoV1 ITR(BIVVBac.mTTR.FVIIIXTEN.HBoV1.ITR
Tn7)と共にコードする組換えBIVVBacバクミドの、制限酵素マッピングについての、アガロースゲル電気泳動画像である。
【
図6B】ヒトFVIIIXTENを、HBoV1 ITRと共にコードする、組換えバキュロウイルス発現ベクター(BEV)の作出を示す図である。
図6Bは、表示の通り、HBoV1 ITR(配列番号3)により挟まれた、FVIIIXTEN発現カセットをコードする、組換えBEV(AcBIVVBac.mTTR.FVIIIXTEN.HBoV1.ITR
Tn7)についての概略表示である。
【
図7A】ヒトFVIIIXTENと、Rep遺伝子発現カセットとから構成されるOne BACについての概略表示、およびこれについての確認研究を示す図である。
図7A~7Cは、
図7D~7Fにおいて、赤矢印により指し示される通り、外側/内側のPCRプライマー(配列番号5および配列番号6)によりスクリーニングされる、BIVVBac(mTTR.FVIIIXTEN.HBoV1.ITR)Polh.HBoV1.NS1
LoxP(
図7A)、BIVVBac(mTTR.FVIIIXTEN.HBoV1.ITR)IE1.HBoV1.NS1
LoxP(
図7B)、およびBIVVBac(mTTR.FVIIIXTEN.HBoV1.ITR)HR5.IE1.HBoV1.NS1
LoxP(
図7C)の組換えバクミドクローンについての、アガロースゲル電気泳動画像である。
【
図7B】ヒトFVIIIXTENと、Rep遺伝子発現カセットとから構成されるOne BACについての概略表示、およびこれについての確認研究を示す図である。
図7A~7Cは、
図7D~7Fにおいて、赤矢印により指し示される通り、外側/内側のPCRプライマー(配列番号5および配列番号6)によりスクリーニングされる、BIVVBac(mTTR.FVIIIXTEN.HBoV1.ITR)Polh.HBoV1.NS1
LoxP(
図7A)、BIVVBac(mTTR.FVIIIXTEN.HBoV1.ITR)IE1.HBoV1.NS1
LoxP(
図7B)、およびBIVVBac(mTTR.FVIIIXTEN.HBoV1.ITR)HR5.IE1.HBoV1.NS1
LoxP(
図7C)の組換えバクミドクローンについての、アガロースゲル電気泳動画像である。
【
図7C】ヒトFVIIIXTENと、Rep遺伝子発現カセットとから構成されるOne BACについての概略表示、およびこれについての確認研究を示す図である。
図7A~7Cは、
図7D~7Fにおいて、赤矢印により指し示される通り、外側/内側のPCRプライマー(配列番号5および配列番号6)によりスクリーニングされる、BIVVBac(mTTR.FVIIIXTEN.HBoV1.ITR)Polh.HBoV1.NS1
LoxP(
図7A)、BIVVBac(mTTR.FVIIIXTEN.HBoV1.ITR)IE1.HBoV1.NS1
LoxP(
図7B)、およびBIVVBac(mTTR.FVIIIXTEN.HBoV1.ITR)HR5.IE1.HBoV1.NS1
LoxP(
図7C)の組換えバクミドクローンについての、アガロースゲル電気泳動画像である。
【
図7D】ヒトFVIIIXTENと、Rep遺伝子発現カセットとから構成されるOne BACについての概略表示、およびこれについての確認研究を示す図である。
図7Dは、表示の通り、AcMNPVポリヘドリン(pPolh)プロモーターの下にあるHBoV1 NS1と、HBoV1 ITRにより挟まれた、FVIIIXTEN発現カセットとをコードする、組換えバキュロウイルス発現ベクター(BEV)(AcBIVVBac(mTTR.FVIIIXTEN.HBoV1.ITR)Polh.HBoV1.NS1
LoxP)についての概略マップを示す。
【
図7E】ヒトFVIIIXTENと、Rep遺伝子発現カセットとから構成されるOne BACについての概略表示、およびこれについての確認研究を示す図である。
図7Eは、表示の通り、HBoV1 ITRにより挟まれた、AcMNPV最初期1(pIE1)プロモーター下にあるHBoV1 NS1、およびFVIIIXTEN発現カセットをコードする、組換えBEV(AcBIVVBac(mTTR.FVIIIXTEN.HBoV1.ITR)IE1.HBoV1.NS1
LoxP)についての概略マップを示す。
【
図7F】ヒトFVIIIXTENと、Rep遺伝子発現カセットとから構成されるOne BACについての概略表示、およびこれについての確認研究を示す図である。
図7Fは、表示の通り、AcMNPV転写エンハンサーhr5エレメント(pHR5.IE1)により先立たれたAcMNPV最初期1プロモーターの下にあるHBoV1 NS1と、HBoV1 ITRにより挟まれた、FVIIIXTEN発現カセットとをコードする、組換えBEV(AcBIVVBac(mTTR.FVIIIXTEN.HBoV1.ITR)HR5.IE1.HBoV1.NS1
LoxP)についての概略マップを示す。
【
図8A】本発明の一実施形態に従う、One BACアプローチを使用する、ヒトFVIIIXTEN ceDNAベクターの作製を示す図である。
図8Aは、HBoV1 ITR(AcBIVVBac(mTTR.FVIIIXTEN.HBoV1.ITR)Polh.HBoV1.NS1
LoxP)により挟まれた、AcMNPVポリヘドリンプロモーター下にあるHBoV1 NS1遺伝子と、ヒトFVIIIXTEN発現カセットとをコードする、組換えBEVを使用して、Sf9細胞内における、FVIIIXTEN ceDNAベクター作製のOne BACアプローチについての概略図である。
【
図8B】本発明の一実施形態に従う、One BACアプローチを使用する、ヒトFVIIIXTEN ceDNAベクターの作製を示す図である。
図8Bは、AcBIVVBac(mTTR.FVIIIXTEN.HBoV1.ITR)Polh.HBoV1.NS1
LoxP BEVについての概略マップを示す。
【
図8C】本発明の一実施形態に従う、One BACアプローチを使用する、ヒトFVIIIXTEN ceDNAベクターの作製を示す図である。
図8Cは、(AcBIVVBac(mTTR.FVIIIXTEN.HBoV1.ITR)Polh.HBoV1.NS1
LoxP)BEVの滴定ウイルス原液(P2)を感染させたSf9細胞から単離されたceDNAベクターについての、アガロースゲル電気泳動画像である。FVIIIXTEN ceDNA(ceDNA)、バキュロウイルスDNA(vDNA)、およびSf9細胞ゲノムDNA(gDNA)のサイズに対応するDNAバンドを、矢印により指し示す。
【
図9-1】
図9A~9Dは、HBoV1 NS1をコードする配列を含む、組換えバキュロウイルス発現ベクター(BEV)についての概略、およびこれについての確認研究を示す図である。
図9Aは、AcMNPVポリヘドリン下、AcMNPV転写エンハンサーhr5エレメントにより先立たれた最初期1プロモーター下、またはOpMNPV最初期2プロモーター(それぞれ、BIVVBac.Polh.HBoV1.NS1
Tn7、BIVVBac.HR5.IE1.HBoV1.NS1
Tn7、およびBIVVBac.OpIE2.HBoV1.NS1
Tn7)下にある、HBoV1.NS1の組換えバクミドクローンの、制限酵素マッピングについての、アガロースゲル電気泳動画像である。
図9Bは、AcBIVVBac.Polh.HBoV1.NS1
Tn7についての概略マップを示す。
図9Cは、AcBIVVBac.HR5.IE1.HBoV1.NS1
Tn7についての概略マップを示す。
図9Dは、AcBIVVBac.OpIE2.HBoV1.NS1
Tn7についての概略マップを示す。
【
図10A】本発明の一実施形態に従う、Two BACアプローチを使用する、ヒトFVIIIXTEN ceDNAベクターの作製を示す図である。
図10Aは、Sf9細胞に、HBoV1 ITR(AcBIVVBac.mTTR.FVIIIXTEN.HBoV1.ITR
Tn7)により挟まれた、FVIIIXTEN発現カセットをコードし、かつ/またはAcMNPVポリヘドリンプロモーター(AcBIVVBac.Polh.HBoV1.NS1
Tn7)下にあるHBoV1 NS1遺伝子をコードする、組換えBEVを共感染させた場合における、FVIIIXTEN ceDNAベクター作製のTwo BACアプローチについての概略図である。
【
図10B】本発明の一実施形態に従う、Two BACアプローチを使用する、ヒトFVIIIXTEN ceDNAベクターの作製を示す図である。
図10Bは、AcBIVVBac.mTTR.FVIIIXTEN.HBoV1.ITR
Tn7 BEV、およびAcBIVVBac.Polh.HBoV1.NS1
Tn7 BEVについての概略マップを示す。
【
図10C】本発明の一実施形態に従う、Two BACアプローチを使用する、ヒトFVIIIXTEN ceDNAベクターの作製を示す図である。
図10Cは、表示の通り、比を一定とするAcBIVVBac.mTTR.FVIIIXTEN.HBoV1.ITR
Tn7 BEV、およびAcBIVVBac.Polh.HBoV1.NS1
Tn7 BEVのMOIを相違させるか、またはMOIを一定とするこれらの比を相違させて共感染させたSf9細胞から単離されたceDNAベクターについての、アガロースゲル電気泳動画像である。FVIIIXTEN ceDNAベクター(ceDNA)、バキュロウイルスDNA(vDNA)、およびSf9細胞ゲノムDNA(gDNA)のサイズに対応するDNAバンドを、矢印により指し示す。
【
図11A】本発明の一実施形態に従う、Two BACアプローチを使用する、ヒトFVIIIXTEN ceDNAベクターの作製を示す図である。
図11Aは、Sf9細胞に、HBoV1 ITR(AcBIVVBac.mTTR.FVIIIXTEN.HBoV1.ITR
Tn7)により挟まれた、FVIIIXTEN発現カセットをコードし、かつ/またはAcMNPVポリヘドリンプロモーター(AcBIVVBac.Polh.HBoV1.NS1
Tn7)、もしくはAcMNPV転写エンハンサーhr5エレメントにより先立たれた最初期1プロモーター(AcBIVVBac.HR5.IE1.HBoV1.NS1
Tn7)下にあるHBoV1 NS1遺伝子をコードする、組換えBEVを共感染させた場合における、FVIIIXTEN ceDNAベクター作製のTwo BACアプローチについての概略図である。
【
図11B】本発明の一実施形態に従う、Two BACアプローチを使用する、ヒトFVIIIXTEN ceDNAベクターの作製を示す図である。
図11Bは、AcBIVVBac.mTTR.FVIIIXTEN.HBoV1.ITR
Tn7 BEV、およびAcBIVVBac.HR5.IE1.HBoV1.NS1
Tn7 BEVについての概略マップを示す。
【
図11C】本発明の一実施形態に従う、Two BACアプローチを使用する、ヒトFVIIIXTEN ceDNAベクターの作製を示す図である。
図11Cは、AcBIVVBac.mTTR.FVIIIXTEN.HBoV1.ITR
Tn7 BEV、およびAcBIVVBac.Polh.HBoV1.NS1
Tn7 BEV(左画像)、またはAcBIVVBac.HR5.IE1.HBoV1.NS1
Tn7BEV(右画像)のMOIを相違させて共感染させたSf9細胞から単離されたceDNAベクターについての、アガロースゲル電気泳動画像である。FVIIIXTEN ceDNAベクター(ceDNA)、バキュロウイルスDNA(vDNA)、およびSf9細胞ゲノムDNA(gDNA)のサイズに対応するDNAバンドを、矢印により指し示す。
【
図12】
図12A~12Cは、HBoV1 ITRにより挟まれた、FVIIIXTEN発現カセットをコードする安定細胞株の作出において使用される材料を示す図である。
図12Aは、AcMNPV転写エンハンサーhr5エレメントにより先立たれ、AcMNPV p10ポリアデニル化シグナル(P10 PAS)を後続させる、AcMNPV最初期1(IE1)プロモーター下にある、ネオマイシン耐性マーカーをコードするプラスミドについての概略マップを示す。
図12Bは、AcMNPV転写エンハンサーhr5エレメントにより先立たれ、AcMNPV p10ポリアデニル化シグナル(P10 PAS)を後続させる、AcMNPV最初期1(IE1)プロモーター下にある、増強型緑色蛍光タンパク質(eGFP)マーカーをコードするプラスミドについての概略マップを示す。
図12Cは、安定細胞株を作出するように、Sf9細胞ゲノムへと、安定的に組み込まれた、HBoV1 ITRにより挟まれた、FVIIIXTEN発現カセット(配列番号3)についての概略マップを示す。
【
図13-1】
図13A~13Eは、本発明の一実施形態に従う、Two BACアプローチを使用する、FVIIIXTEN ceDNAベクターの作製/精製についてのワークフローを示す図である。
図13Aは、無血清ESF921培地中における、1mL当たりの細胞密度2.5~3.0×10
6個を達成するように、細胞を、小スケール培養フラスコ(0.5L)から、大スケール培養フラスコ(1.5L)へと、逐次的にスケールアップした、Sf9細胞の拡大および持続(0~2日目における)の概略を示す。
図13Bは、細胞に、HBoV1 ITR(AcBIVVBac.mTTR.FVIIIXTEN.HBoV1.ITR
Tn7)により挟まれた、FVIIIXTEN発現カセットをコードし、かつ/またはAcMNPVポリヘドリンプロモーター(AcBIVVBac.Polh.HBoV1.NS1
Tn7)下にあるHBoV1 NS1遺伝子をコードする、組換えBEVを、それぞれ、細胞1個当たり0.1および0.01プラーク形成単位(pfu)で共感染させた、Sf9大型培養フラスコ(1.5L)における感染およびインキュベーションの持続(2~6日目における)の概略を示す。
図13Cは、感染細胞の細胞密度および生存率を、毎日測定し、細胞生存率が、70~80%に達したら、低速遠心分離により、細胞をペレット化した、処理の持続を伴う、Plasmid Giga Prep Purificationキット、およびアガロースゲル電気泳動(6~7日目における)についての画像を示す。PureLink(商標)HiPure Expi Plasmid Gigaprep Kit(Invitrogen)により、FVIIIXTEN ceDNAベクターを、感染細胞ペレットから精製し、アリコートを、アガロースゲル電気泳動にかけて、FVIIIXTEN ceDNA(ceDNA)、バキュロウイルスDNA(vDNA)、および/またはSf9細胞ゲノムDNA(gDNA)の生産性を決定した。
図13Dは、FVIIIXTEN ceDNA(約8.5kbの断片)を、高分子量DNAから分離するために、Giga-prepにより精製されたDNAを、Prep Cell内のPreparative Agarose Gelへとロードした、処理の持続を伴う、Bio-Rad Model 491 Prep Cell、およびアガロースゲル電気泳動(7~12日目における)についての画像を示す。Preparative Agarose Gel Electrophoresisから、70~80分間隔で回収された溶出画分を、0.8~1.2%のアガロースゲル上で解析して、FVIIIXTEN ceDNAの純度を決定した。
図13Eは、Prep Cellから回収された画分を配合し、3MのNaOAc(pH5.5)10分の1倍容量、および100%のエタノール3倍容量により沈殿させて、精製FVIIIXTEN ceDNAを得た、アガロースゲル電気泳動についての画像を示す。ゲル画像は、FVIIIXTEN ceDNAの純度を、出発材料と比較して示し、矢印は、FVIIIXTEN ceDNAベクター(ceDNA)、バキュロウイルスDNA(vDNA)、およびSf9細胞ゲノムDNA(gDNA)のサイズに対応するDNAバンドを指し示す。
【
図14】
図14A~14Bは、Chromogenix Coatest(登録商標)SP Factor VIII発色アッセイにより測定された、血漿FVIII活性レベルについてのグラフ表示を示す図である。
図14Aは、流体尾静脈注射を介して、1kg当たりの一本鎖FVIIIXTEN HBoV1 ITR DNA(ssDNA)1600または400μgを全身注射された、hFVIIIR593C
+/+/HemAマウスから、異なる間隔で回収された血液サンプル中において測定された、血漿FVIII活性レベルの、グラフへのプロットを示す。
図14Bは、流体尾静脈注射を介して、1kg当たりのFVIIIXTEN HBoV1 ITR ceDNA(ceDNA)80、40、または12μgを全身注射された、hFVIIIR593C
+/+/HemAマウスから、異なる間隔で回収された血液サンプル中において測定された、血漿FVIII活性レベルの、グラフへのプロットを示す。誤差バーは、標準偏差を表す。
【
図15】
図15A~15Cは、AcBIVVBac.Polh.HBoV1.NS1
Tn7バクミドDNAと、本発明の一実施形態に従うVP80 sgRNAとを共トランスフェクトされたSf9細胞についての、赤色蛍光顕微鏡画像(上パネル)または明視野顕微鏡画像(下パネル)を示す図である。
図15Aは、AcBIVVBac.Polh.HBoV1.NS1
Tn7バクミドDNAと、Cas9単独とを共トランスフェクトされた細胞についての顕微鏡画像を示す。
図15Bは、AcBIVVBac.Polh.HBoV1.NS1
Tn7バクミドDNAと、sgRNA.VP80.T1とを共トランスフェクトされた細胞についての顕微鏡画像を示す。
図15Cは、AcBIVVBac.Polh.HBoV1.NS1
Tn7バクミドDNAと、sgRNA.VP80.T2とを共トランスフェクトされた細胞についての顕微鏡画像を示す。
【
図16】
図16A~16Cは、VP80KO BEVの作出を示す図である。
図16Aおよび
図16Bは、CRISPR/Cas9により誘導されるインデルを決定する、BEVクローンである、AcBIVVBac.Polh.HBoV1.NS1ΔVP80
Tn7、およびAcBIVVBac.OpIE2.HBoV1.NS1ΔVP80
Tn7についてのTIDE解析を例示する。
図16Cは、表示の通り、AcBIVVBac.mTTR.FVIIIXTEN.HBoV1.ITR
Tn7 BEV、およびAcBIVVBac.Polh.HBoV1.NS1ΔVP80
Tn7 BEV、またはAcBIVVBac.OpIE2.HBoV1.NS1ΔVP80
Tn7 BEVのMOIを相違させて共感染させたSf9細胞から単離された、FVIIIXTEN ceDNAベクターについてのアガロースゲル電気泳動画像である。FVIIIXTEN ceDNAベクター(ceDNA)、バキュロウイルスDNA(vDNA)、およびSf9細胞ゲノムDNA(gDNA)のサイズに対応するDNAバンドを、矢印により指し示す。
【
図17A】Two BACアプローチを使用する、ヒトFVIIIXTEN HBoV1 ceDNAの作製を示す図である。
図17Aは、FVIIIXTEN ceDNAベクター作製のTwo BACアプローチについての概略図である。
【
図17B】Two BACアプローチを使用する、ヒトFVIIIXTEN HBoV1 ceDNAの作製を示す図である。
図17Bは、AcBIVVBac.mTTR.FVIIIXTEN.HBoV1.ITR
Tn7 BEV、およびAcBIVVBac.Polh.HBoV1.NS1
Tn7 BEVについての概略マップを示す。
【
図17C】Two BACアプローチを使用する、ヒトFVIIIXTEN HBoV1 ceDNAの作製を示す図である。
図17Cは、MOIを、1.0、2.0、3.0、4.0、または5.0として、AcBIVVBac.mTTR.FVIIIXTEN.HBoV1.ITR
Tn7 BEV、およびAcBIVVBac.Polh.HBoV1.NS1
Tn7 BEVを共感染させたSf9細胞から単離された、FVIIIXTEN ceDNAベクターについてのアガロースゲル電気泳動画像である。FVIIIXTEN ceDNAベクター(ceDNA)、バキュロウイルスDNA(vDNA)、およびSf9細胞ゲノムDNA(gDNA)のサイズに対応するDNAバンドを、矢印により指し示す。
【
図18-1】
図18A~18Dは、One BACアプローチを使用する、ヒトFVIIIXTEN HBoV1 ceDNAベクターの作製を示す図である。
図18Aは、Sf9細胞内における、FVIIIXTEN ceDNAベクター作製のOne BACアプローチについての概略図である。
図18Bは、AcBIVVBac(mTTR.FVIIIXTEN.HBoV1.ITR)Polh.HBoV1.NS1
LoxP BEVについての概略マップを示す。
図18Cは、Sf9細胞内において、P2まで増幅されたクローンである、HBoV1 OneBAC BEVから単離された、ceDNAについてのアガロースゲル電気泳動画像である。
図18Dは、MOIを、0.1、0.2、0.3、0.4、または0.5として、HBoV1 OneBAC BEVを感染させたSf9細胞から単離された、ceDNAについてのアガロースゲル電気泳動画像である。FVIIIXTEN ceDNA(ceDNA)、バキュロウイルスDNA(vDNA)、およびSf9細胞ゲノムDNA(gDNA)のサイズに対応するDNAバンドを、矢印により指し示す。
【
図19-1】
図19A~19Cは、in vivoにおける、HBoV1 ssDNAおよびHBoV1 ceDNAの作出および試験を示す図である。
図19Aは、一本鎖DNA(ssDNA)FVIIIXTEN HBoV1についての、アガロースゲル電気泳動画像である。
図19Bは、FVIIIXTEN HBoV1 ceDNAについての、アガロースゲル電気泳動画像である。
図19Cは、ssFVIIIXTENおよびceFVIIIXTENについて、正常のパーセントに照らして正規化されたFVIII発現レベルを示す。誤差バーは、標準偏差を表す。
【
図20】
図20A~20Bは、FVIIIXTEN HBoV1 ceDNAの単量体形態および多量体形態についての試験を示す図である。
図20Aは、FVIIIXTEN HBoV1 ceDNAの単量体形態および多量体形態についての、アガロースゲル電気泳動画像である。
図20Bは、FVIIIXTEN HBoV1 ceDNAの単量体形態および多量体形態を注射されたマウスにおいて、正常のパーセントに照らして正規化されたFVIII発現レベルを示す。誤差バーは、標準偏差を表す。
【
図21-1】
図21A~21Cは、HBoV1 ITR構築物内における、FVIIIXTENの発現を駆動する、肝臓特異的mTTRプロモーターおよびヒトA1ATプロモーターについての試験を示す図である。
図21Aは、HBoV1 WT ITRにより挟まれた、肝臓特異的mTTRプロモーターまたはA1ATプロモーターを伴う、FVIIIXTEN発現カセットについての概略図である。
図21Bは、記載される通り、制限酵素消化により作出された、一本鎖DNA(ssDNA)FVIIIXTEN HBoV1についての、アガロースゲル電気泳動画像である。
図21Cは、
図21Aに描示された、mTTRプロモーター構築物またはA1ATプロモーター構築物を注射されたマウスにおいて、正常のパーセントに照らして正規化されたFVIII発現レベルを示す。誤差バーは、標準偏差を表す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本明細書では、異種ポリヌクレオチド配列を含む遺伝子カセットを挟む、第1の改変逆位末端反復(ITR)および/または第2の改変ITRを含む、核酸分子およびその使用が開示される。一部の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRは、1型ヒトボカウイルス(HBoV1)に由来する。
【0043】
本開示の例示的構築物は、付属の図面および配列表に例示される。本明細書および特許請求の範囲の明確な理解のために、下記に、以下の定義が提供される。
【0044】
定義
「ある(a)」実体または「ある(an)」実体という用語は、この実体のうちの1つまたはそれ以上を指すことが注目される:例えば、「あるヌクレオチド配列」とは、1つまたはそれ以上のヌクレオチド配列を表すことが理解される。同様に、「ある治療用タンパク質」および「あるmiRNA」とは、それぞれ、1つまたはそれ以上の治療用タンパク質、および1つまたはそれ以上のmiRNAを表すことが理解される。このように、本明細書では、「ある(a)」(または「ある(an)」)、「1つまたはそれ以上の」、および「少なくとも1つの」という用語は、互換的に使用される。
【0045】
本明細書では、「約」という用語は、約、およそ、ほぼ、またはこれらの近傍にあることを意味するように使用される。数値範囲と共に使用される場合、「約」という用語は、境界を、示された数値の上側および下側に拡張することにより、この範囲を修飾する。本明細書では一般に、「約」という用語は、数値を、上方または下方(高値または低値)における10パーセントの変動により、言明された値の上側および下側に修飾するように使用される。
【0046】
本明細書で使用される、「および/または」とはまた、選択的に(「または」)解釈される場合に、関連する列挙項目のうちの1つまたはそれ以上の、任意の/全ての可能な組合せ、ならびに組合せの欠如も指し、これを包含する。
【0047】
「核酸」、「核酸分子」、「ヌクレオチド」、「ヌクレオチド(複数可)配列」、および「ポリヌクレオチド」は、互換的に使用され、リボヌクレオシド(アデノシン、グアノシン、ウリジン、またはシチジン;「RNA分子」)、もしくはデオキシリボヌクレオシド(デオキシアデノシン、デオキシグアノシン、デオキシチミジン、またはデオキシシチジン;「DNA分子」)のリン酸エステルポリマー形態、またはホスホロチオエートおよびチオエステルなど、一本鎖形態にあるか、もしくは二本鎖ヘリックス内にある、これらの任意のリン酸エステル類似体を指す。一本鎖核酸配列とは、一本鎖DNA(ssDNA)または一本鎖RNA(ssRNA)を指す。二本鎖である、DNA-DNAヘリックス、DNA-RNAヘリックス、およびRNA-RNAヘリックスも可能である。核酸分子という用語、特に、DNAまたはRNA分子という用語は、分子の一次構造および二次構造だけを指し、分子を、いかなる特定の三次形態にも限定しない。したがって、この用語は、とりわけ、直鎖状DNA分子または環状DNA分子(例えば、制限断片)、プラスミド、超らせんDNA、および染色体において見出される二本鎖DNAを含む。特定の二本鎖DNA分子の構造について論じる場合、本明細書では、配列は、通常の慣行に従い、5’側から3’側の方向に、DNAの非転写鎖(すなわち、mRNAと相同な配列を有する鎖)に沿った配列だけを示して記載される。「組換えDNA分子」とは、分子生物学的操作を受けたDNA分子である。DNAは、cDNA、ゲノムDNA、プラスミドDNA、合成DNA、および半合成DNAを含むがこれらに限定されない。本開示の「核酸組成物」は、本明細書で記載される、1つまたはそれ以上の核酸を含む。
【0048】
本明細書で使用される、「逆位末端反復」(または「ITR」)とは、下流において、その逆相補体、すなわち、回文配列を後続させた、ヌクレオチド(初期配列)のセットを含む、一本鎖核酸配列の5’末端または3’末端に配置された、核酸部分配列を指す。初期配列と、逆相補体との間に介在するヌクレオチド配列は、ゼロを含む、任意の長さでありうる。一実施形態では、本開示に有用なITRは、1つまたはそれ以上の「回文配列」を含む。ITRは、任意の数の機能を有しうる。一部の実施形態では、本明細書で記載されるITRは、ヘアピン構造を形成する。一部の実施形態では、ITRは、T字形ヘアピン構造を形成する。一部の実施形態では、ITRは、T字形以外のヘアピン構造、例えば、U字形ヘアピン構造を形成する。一部の実施形態では、ITRは、細胞核内の核酸分子の生存を、長期間にわたり促進する。一部の実施形態では、ITRは、細胞核内の核酸分子の、恒久的生存(例えば、細胞の全寿命にわたり)を促進する。一部の実施形態では、ITRは、細胞核内の核酸分子の安定性を促進する。一部の実施形態では、ITRは、細胞核内の核酸分子の保持を促進する。一部の実施形態では、ITRは、細胞核内の核酸分子の存続を促進する。一部の実施形態では、ITRは、細胞核内の核酸分子の分解を阻害または阻止する。
【0049】
一実施形態では、ITRの初期配列および/または逆相補体は、約2~600ヌクレオチド、約2~550ヌクレオチド、約2~500ヌクレオチド、約2~450ヌクレオチド、約2~400ヌクレオチド、約2~350ヌクレオチド、約2~300ヌクレオチド、または約2~250ヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、初期配列および/または逆相補体は、約5~600ヌクレオチド、約10~600ヌクレオチド、約15~600ヌクレオチド、約20~600ヌクレオチド、約25~600ヌクレオチド、約30~600ヌクレオチド、約35~600ヌクレオチド、約40~600ヌクレオチド、約45~600ヌクレオチド、約50~600ヌクレオチド、約60~600ヌクレオチド、約70~600ヌクレオチド、約80~600ヌクレオチド、約90~600ヌクレオチド、約100~600ヌクレオチド、約150~600ヌクレオチド、約200~600ヌクレオチド、約300~600ヌクレオチド、約350~600ヌクレオチド、約400~600ヌクレオチド、約450~600ヌクレオチド、約500~600ヌクレオチド、または約550~600ヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、初期配列および/または逆相補体は、約5~550ヌクレオチド、約5~500ヌクレオチド、約5~450ヌクレオチド、約5~400ヌクレオチド、約5~350ヌクレオチド、約5~300ヌクレオチド、または約5~250ヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、初期配列および/または逆相補体は、約10~550ヌクレオチド、約15~500ヌクレオチド、約20~450ヌクレオチド、約25~400ヌクレオチド、約30~350ヌクレオチド、約35~300ヌクレオチド、または約40~250ヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態では、初期配列および/または逆相補体は、約225ヌクレオチド、約250ヌクレオチド、約275ヌクレオチド、約300ヌクレオチド、約325ヌクレオチド、約350ヌクレオチド、約375ヌクレオチド、約400ヌクレオチド、約425ヌクレオチド、約450ヌクレオチド、約475ヌクレオチド、約500ヌクレオチド、約525ヌクレオチド、約550ヌクレオチド、約575ヌクレオチド、または約600ヌクレオチドを含む。特定の実施形態では、初期配列および/または逆相補体は、約400ヌクレオチドを含む。
【0050】
他の実施形態では、ITRの初期配列および/または逆相補体は、約2~200ヌクレオチド、約5~200ヌクレオチド、約10~200ヌクレオチド、約20~200ヌクレオチド、約30~200ヌクレオチド、約40~200ヌクレオチド、約50~200ヌクレオチド、約60~200ヌクレオチド、約70~200ヌクレオチド、約80~200ヌクレオチド、約90~200ヌクレオチド、約100~200ヌクレオチド、約125~200ヌクレオチド、約150~200ヌクレオチド、または約175~200ヌクレオチドを含む。他の実施形態では、初期配列および/または逆相補体は、約2~150ヌクレオチド、約5~150ヌクレオチド、約10~150ヌクレオチド、約20~150ヌクレオチド、約30~150ヌクレオチド、約40~150ヌクレオチド、約50~150ヌクレオチド、約75~150ヌクレオチド、約100~150ヌクレオチド、または約125~150ヌクレオチドを含む。他の実施形態では、初期配列および/または逆相補体は、約2~100ヌクレオチド、約5~100ヌクレオチド、約10~100ヌクレオチド、約20~100ヌクレオチド、約30~100ヌクレオチド、約40~100ヌクレオチド、約50~100ヌクレオチド、または約75~100ヌクレオチドを含む。他の実施形態では、初期配列および/または逆相補体は、約2~50ヌクレオチド、約10~50ヌクレオチド、約20~50ヌクレオチド、約30~50ヌクレオチド、約40~50ヌクレオチド、約3~30ヌクレオチド、約4~20ヌクレオチド、または約5~10ヌクレオチドを含む。別の実施形態では、初期配列および/または逆相補体は、2ヌクレオチド、3ヌクレオチド、4ヌクレオチド、5ヌクレオチド、6ヌクレオチド、7ヌクレオチド、8ヌクレオチド、9ヌクレオチド、10ヌクレオチド、11ヌクレオチド、12ヌクレオチド、13ヌクレオチド、14ヌクレオチド、15ヌクレオチド、16ヌクレオチド、17ヌクレオチド、18ヌクレオチド、19ヌクレオチド、または20ヌクレオチドからなる。他の実施形態では、初期配列と、逆相補体との間に介在するヌクレオチドは、0ヌクレオチド、1ヌクレオチド、2ヌクレオチド、3ヌクレオチド、4ヌクレオチド、5ヌクレオチド、6ヌクレオチド、7ヌクレオチド、8ヌクレオチド、9ヌクレオチド、10ヌクレオチド、11ヌクレオチド、12ヌクレオチド、13ヌクレオチド、14ヌクレオチド、15ヌクレオチド、16ヌクレオチド、17ヌクレオチド、18ヌクレオチド、19ヌクレオチド、または20ヌクレオチドである(例えば、これらからなる)。
【0051】
したがって、本明細書で使用される「ITR」は、それ自身に折り返しフォールディングし、二本鎖セグメントを形成する場合がある。例えば、配列であるGATCXXXXGATCは、フォールディングされると、二重ヘリックスを形成するように、GATCの初期配列と、その相補体(3’CTAG5’)とを含む。一部の実施形態では、ITRは、初期配列と、逆相補体との間に、連続回文配列(例えば、GATCGATC)を含む。一部の実施形態では、ITRは、初期配列と、逆相補体との間に、中断回文配列(例えば、GATCXXXXGATC)を含む。一部の実施形態では、連続回文配列または中断回文配列の相補性部分は、互いと相互作用して、「ヘアピンループ」構造を形成する。一本鎖ヌクレオチド分子上の少なくとも2つの相補性配列が塩基対合して二本鎖部分を形成すると、本明細書で使用される、「ヘアピンループ」構造が生じる。一部の実施形態では、ITRの一部だけが、ヘアピンループを形成する。他の実施形態では、ITRの全体が、ヘアピンループを形成する。一部の実施形態では、ITRは、それが由来する野生型ITRの、Rep結合性エレメント(RBE)を保持する。RBEの保存は、ITRの安定性および製造目的のために重要でありうる。
【0052】
本明細書で使用される、「パルボウイルス」という用語は、自律複製型である、パルボウイルスおよびディペンドウイルスを含むがこれらに限定されないパルボウイルス科を包含する。自律性パルボウイルスは、例えば、ボカウイルス属、ディペンドウイルス属、エリスロウイルス属、アムドウイルス属、パルボウイルス属、デンソウイルス属、イテラウイルス属、コントラウイルス属、アベパルボウイルス属、コピパルボウイルス属、プロトパルボウイルス属、テトラパルボウイルス属、アンビデンソウイルス属、ブレビデンソウイルス属、ヘパンデンソウイルス属、およびペンスチルデンソウイルス属のメンバーを含む。例示的な自律性パルボウイルスは、1型ヒトボカウイルス(HBoV1)、ブタパルボウイルス、マウス微小ウイルス、イヌパルボウイルス、ミンク腸炎ウイルス、ウシパルボウイルス、ニワトリパルボウイルス、ネコ汎白血球減少症ウイルス、ネコパルボウイルス、ガチョウパルボウイルス(GPV)、H1パルボウイルス、マスコビーダックパルボウイルス、ヘビパルボウイルス、およびB19ウイルスを含むがこれらに限定されない。当業者には、他の自律性パルボウイルスも公知である。例えば、Fieldsら、Virology、2巻、69章(4版、Lippincott-Raven Publishers)を参照されたい。
【0053】
本明細書で使用される、「AAV以外の」という用語は、パルボウイルス科のうちの、任意のアデノ随伴ウイルス(AAV)を除外する、パルボウイルス科に由来する核酸、タンパク質、およびウイルスを包含する。「AAV以外の」は、ボカウイルス属、ディペンドウイルス属、エリスロウイルス属、アムドウイルス属、パルボウイルス属、デンソウイルス属、イテラウイルス属、コントラウイルス属、アベパルボウイルス属、コピパルボウイルス属、プロトパルボウイルス属、テトラパルボウイルス属、アンビデンソウイルス属、ブレビデンソウイルス属、ヘパンデンソウイルス属、およびペンスチルデンソウイルス属の自律複製型メンバーを含むがこれらに限定されない。
【0054】
本明細書で使用される、「アデノ随伴ウイルス」(AAV)という用語は、1型AAV、2型AAV、3型AAV(3Aおよび3B型を含む)、4型AAV、5型AAV、6型AAV、7型AAV、8型AAV、9型AAV、10型AAV、11型AAV、12型AAV、13型AAV、ヘビAAV、トリAAV、ウシAAV、イヌAAV、ウマAAV、ヒツジAAV、ヤギAAV、エビAAV、Gaoら(J.Virol.、78:6381(2004))およびMorisら(Virol.、33:375(2004))により開示されている、AAV血清型およびクレード、ならびに現在公知であるか、またはその後において発見された、他の任意のAAVを含むがこれらに限定されない。例えば、FIELDSら、VIROLOGY、2巻、69章(4版、Lippincott-Raven Publishers)を参照されたい。
【0055】
本明細書で使用される、「~から誘導された」という用語は、指定された分子もしくは生物、または指定された分子もしくは生物に由来する情報(例えば、アミノ酸配列または核酸配列)から単離されるか、またはこれらを使用して作製された成分を指す。例えば、第2の核酸配列(例えば、ITR)に由来する核酸配列(例えば、ITR)は、第2の核酸配列のヌクレオチド配列と同一であるか、または実質的に同様であるヌクレオチド配列を含みうる。ヌクレオチドまたはポリペプチドの場合、誘導された分子種は、例えば、自然発生の突然変異誘発、人工の指向性突然変異誘発、または人工のランダム突然変異誘発により得られる。ヌクレオチドまたはポリペプチドを誘導するのに使用される突然変異誘発は、意図的に方向付けられる場合もあり、意図的にランダムである場合もあり、各々の混合の場合もある。第1のヌクレオチドまたはポリペプチドから誘導される、異なるヌクレオチドまたはポリペプチドを創出する、ヌクレオチドまたはポリペプチドの突然変異誘発は、第1のヌクレオチドまたはポリペプチドから誘導される、異なるヌクレオチドまたはポリペプチドの場合があり、誘導されたヌクレオチドまたはポリペプチドの同定は、例えば、本明細書で論じられる、適切なスクリーニング法によりなされる。ポリペプチドの突然変異誘発は、典型的に、ポリヌクレオチドをコードするポリペプチドの操作を伴う。
【0056】
「カプシド非含有」または「カプシドなし」のベクターまたは核酸分子とは、カプシドを含まないベクター構築物を指す。
【0057】
本明細書で使用される、「コード領域」または「コード配列」とは、アミノ酸へと翻訳可能なコドンからなる、ポリヌクレオチドの部分である。「終止コドン」(TAG、TGA、またはTAA)は、典型的に、アミノ酸へと翻訳されないが、コード領域の部分と考えられるのに対し、任意の隣接する配列、例えば、プロモーター、リボソーム結合性部位、転写終結因子、イントロンなどは、コード領域の部分ではない。コード領域の境界は、典型的に、結果として得られるポリペプチドのアミノ末端をコードする5’末端における開始コドンと、結果として得られるポリペプチドのカルボキシル末端をコードする3’末端における翻訳終止コドンとにより決定される。2つまたはそれ以上のコード領域が、単一のポリヌクレオチド構築物内に存在しうる、例えば、単一のベクター上に存在する場合もあり、別個のポリヌクレオチド構築物内、例えば、別個の(異なる)ベクター上に存在する場合もある。したがって、単一のベクターは、単一のコード領域だけを含有する場合もあり、2つまたはそれ以上のコード領域を含む場合もある。
【0058】
哺乳動物細胞により分泌される、ある特定のタンパク質は、増殖するタンパク質鎖の、粗面小胞体を越える移出が誘発されたら、成熟タンパク質から切断される、分泌型シグナルペプチドと関連する。当業者は、シグナルペプチドが、一般に、ポリペプチドのN末端へと融合され、完全ポリペプチドまたは「全長」ポリペプチドから切断されて、ポリペプチドの分泌形態または「成熟」形態をもたらすことを承知している。ある特定の実施形態では、この配列の天然シグナルペプチドまたは機能的誘導体は、それと作動可能に関連するポリペプチドの分泌を方向付ける能力を保持する。代替的に、異種哺乳動物シグナルペプチド、例えば、ヒト組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA)、またはマウスβ-グルクロニダーゼシグナルペプチド、またはその機能的な誘導体が使用されうる。
【0059】
「下流」という用語は、参照ヌクレオチド配列に対して3’側に配置されたヌクレオチド配列を指す。ある特定の実施形態では、下流のヌクレオチド配列は、転写の起始部に後続する配列に関する。例えば、遺伝子の翻訳開始コドンは、転写開始部位の下流に配置される。
【0060】
「上流」という用語は、参照ヌクレオチド配列に対して5’側に配置されたヌクレオチド配列を指す。ある特定の実施形態では、上流のヌクレオチド配列は、コード領域の5’側、または転写の起始部に配置された配列に関する。例えば、大半のプロモーターは、転写開始部位の上流に配置される。
【0061】
本明細書で使用される、「遺伝子カセット」という用語は、適切な宿主細胞内の、特定のポリヌクレオチド配列の発現を方向付けることが可能なDNA配列であって、目的のポリヌクレオチド配列に作動可能に連結されたプロモーターを含むDNA配列を意味する。遺伝子カセットは、コード領域の上流(5’側非コード配列)、コード領域内、またはコード領域の下流(3’側非コード配列)に配置され、関連するコード領域の転写、RNAプロセシング、安定性、または翻訳に影響を及ぼすヌクレオチド配列を包含しうる。コード領域が、真核細胞内の発現のために意図される場合、ポリアデニル化シグナル配列および転写終結配列は、通例、コード配列に対して3’側に配置されるであろう。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、遺伝子産物をコードするポリヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、miRNAをコードするポリヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、異種ポリヌクレオチド配列を含む。
【0062】
産物、例えば、miRNAまたは遺伝子産物(例えば、治療用タンパク質などのポリペプチド)をコードするポリヌクレオチドは、1つまたはそれ以上のコード領域と作動可能に関連する、プロモーターおよび/または他の発現(例えば、転写または翻訳)制御配列を含みうる。作動可能な関連にある場合、遺伝子産物、例えば、ポリペプチドのコード領域は、遺伝子産物の発現を、調節領域(複数可)の影響下または制御下に置くような形で、1つまたはそれ以上の調節領域と関連する。例えば、プロモーター機能の誘導が、コード領域によりコードされる遺伝子産物をコードするmRNAの転写を結果としてもたらし、プロモーターと、コード領域との間の連結の性格が、遺伝子産物の発現を方向付けるプロモーターの能力に干渉しないか、またはDNA鋳型が転写される能力に干渉しない場合、コード領域と、プロモーターとは、「作動可能に関連する」。プロモーター以外の、他の発現制御配列、例えば、エンハンサー、オペレーター、リプレッサー、および転写終結シグナルもまた、遺伝子産物の発現を方向付けるように、コード領域と作動可能に関連しうる。
【0063】
「発現制御配列」とは、宿主細胞内のコード配列の発現をもたらす、プロモーター、エンハンサー、終結因子などの調節性ヌクレオチド配列を指す。発現制御配列は、一般に、作動可能に連結されたコード核酸の、効率的な転写および翻訳を容易とする、任意の調節性ヌクレオチド配列を包含する。発現制御配列の非限定例は、プロモーター、エンハンサー、翻訳リーダー配列、イントロン、ポリアデニル化認識配列、RNAプロセシング部位、エフェクター結合性部位、またはステム-ループ構造を含む。当業者には、様々な発現制御配列が公知である。これらは、限定せずに述べると、サイトメガロウイルス(イントロンAを伴う、最初期プロモーター)、サルウイルス40(初期プロモーター)、およびレトロウイルス(ラウス肉腫ウイルスなど)に由来する、プロモーターセグメントおよびエンハンサーセグメントなどであるがこれらに限定されない、脊椎動物細胞内において機能する発現制御配列を含む。他の発現制御配列は、アクチン、熱ショックタンパク質、ウシ成長ホルモン、およびウサギβ-グロビンのほか、真核細胞内の遺伝子発現を制御することが可能な他の配列など、脊椎動物遺伝子に由来する発現制御配列を含む。さらなる適切な発現制御配列は、組織特異的プロモーターおよび組織特異的エンハンサーのほか、リンホカイン誘導性プロモーター(例えば、インターフェロンまたはインターロイキンにより誘導されるプロモーター)を含む。他の発現制御配列は、イントロン配列、転写後調節エレメント、およびポリアデニル化シグナルを含む。さらなる例示的発現制御配列については、本開示の他の箇所で論じられる。
【0064】
同様に、当業者には、様々な翻訳制御エレメントも公知である。これらは、リボソーム結合性部位、翻訳開始/終結コドン、およびピコルナウイルスに由来するエレメント(特に、内部リボソーム侵入部位、またはIRES)を含むがこれらに限定されない。
【0065】
本明細書で使用される、「発現」という用語は、ポリヌクレオチドが、遺伝子産物、例えば、RNAまたはポリペプチドをもたらす過程を指す。「発現」は、限定せずに述べると、ポリヌクレオチドの、メッセンジャーRNA(mRNA)、転移RNA(tRNA)、低分子ヘアピンRNA(shRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、または他の任意のRNA産物への転写、およびmRNAの、ポリペプチドへの翻訳を含む。発現は、「遺伝子産物」をもたらす。本明細書で使用された、遺伝子産物は、核酸、例えば、遺伝子の転写により産生されるメッセンジャーRNA、または転写物から翻訳されるポリペプチドでありうる。本明細書で記載される遺伝子産物は、転写後修飾、例えば、ポリアデニル化またはスプライシングを伴う核酸、または翻訳後修飾、例えば、メチル化、グリコシル化、脂質の付加、他のタンパク質サブユニットとの会合、またはタンパク質分解性切断を伴うポリペプチドをさらに含む。本明細書で使用される、「収量」という用語は、遺伝子の発現によりもたらされるポリペプチドの量を指す。
【0066】
「ベクター」とは、核酸の、宿主細胞へのクローニングおよび/または導入のための、任意の媒体を指す。ベクターは、別の核酸セグメントが、接合されたセグメントの複製をもたらすように接合されたレプリコンでありうる。「レプリコン」とは、in vivoにおいて、自律的複製単位として機能する、すなわち、それ自身による制御下における複製が可能である、任意の遺伝子エレメント(例えば、プラスミド、ファージ、コスミド、染色体、ウイルス)を指す。「ベクター」という用語は、in vitro、ex vivo、またはin vivoにおいて、核酸を、細胞へと導入するための媒体を含む。当技術分野では、例えば、プラスミド、改変真核生物ウイルス、または改変細菌ウイルスを含む、多数のベクターが公知であり、使用されている。ポリヌクレオチドの、適切なベクターへの挿入は、適切なポリヌクレオチド断片を、相補性の粘着末端を有する、選び出されたベクターへとライゲーションすることにより達せられる。
【0067】
ベクターは、ベクターを組み込んだ細胞の選択または同定をもたらす、選択用マーカーまたは選択用レポーターをコードするように操作される。選択用マーカーまたは選択用レポーターの発現は、ベクター上に含有された、他のコード領域を組み込み、発現する宿主細胞の同定および/または選択を可能とする。当技術分野で公知であり、使用される、選択用マーカー遺伝子の例は、アンピシリン、ストレプトマイシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ヒグロマイシン、除草剤であるビアラフォス、スルホンアミドなどに対する耐性をもたらす遺伝子;および表現型マーカーとして使用される遺伝子、すなわち、アントシアニン調節的遺伝子、イソペンテニルトランスフェラーゼ(isopentanyl transferase)遺伝子などを含む。当技術分野で公知であり、使用される、レポーターの例は、ルシフェラーゼ(Luc)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、β-ガラクトシダーゼ(LacZ)、β-グルクロニダーゼ(Gus)などを含む。選択用マーカーはまた、レポーターであるとも考えられる。
【0068】
本明細書で使用される、「宿主細胞」という用語は、ssDNAまたはベクターのレシピエントとして使用されるか、または使用されている、例えば、微生物、酵母細胞、昆虫細胞、および哺乳動物細胞を指す。「宿主細胞」という用語は、形質導入された元の細胞の後代を含む。したがって、本明細書で使用される、「宿主細胞」は、一般に、外因性DNA配列を形質導入された細胞を指す。単一の親細胞の後代は、天然の突然変異、偶発的な突然変異、または意図的な突然変異のために、形状またはゲノムDNA相補体もしくは全DNA相補体において、必ずしも、元の親と、完全に同一ではないことが理解される。一部の実施形態では、宿主細胞は、in vitroにおける宿主細胞でありうる。
【0069】
「選択用マーカー」という用語は、マーカー遺伝子の効果、すなわち、抗生剤に対する耐性、除草剤に対する耐性、比色マーカー、酵素、蛍光マーカーなどに基づく選択が可能である同定因子、通例、抗生剤耐性遺伝子または化学物質耐性遺伝子を指し、この場合、効果は、目的の核酸の継承を跡付け、かつ/または目的の核酸を継承した細胞もしくは生物を同定するのに使用される。当技術分野で公知であり、使用される、選択用マーカー遺伝子の例は、アンピシリン、ストレプトマイシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ヒグロマイシン、除草剤であるビアラフォス、スルホンアミドなどに対する耐性をもたらす遺伝子;および表現型マーカーとして使用される遺伝子、すなわち、アントシアニン調節的遺伝子、イソペンテニルトランスフェラーゼ(isopentanyl transferase)遺伝子などを含む。
【0070】
「レポーター遺伝子」という用語は、レポーター遺伝子の効果に基づく同定が可能である同定因子をコードする核酸を指し、この場合、効果は、目的の核酸の継承を跡付け、目的の核酸を継承した細胞もしくは生物を同定し、かつ/または遺伝子発現の誘導もしくは遺伝子の転写を測定するのに使用される。当技術分野で公知であり、使用される、レポーター遺伝子の例は、ルシフェラーゼ(Luc)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、β-ガラクトシダーゼ(LacZ)、β-グルクロニダーゼ(Gus)などを含む。選択用マーカー遺伝子もまた、レポーター遺伝子であると考えられる。
【0071】
「プロモーター」および「プロモーター配列」は、互換的に使用され、コード配列または機能的RNAの発現を制御することが可能なDNA配列を指す。一般に、コード配列は、プロモーター配列に対して3’側に配置される。プロモーターは、それらの全体において、天然の遺伝子に由来するか、または天然において見出される、異なるプロモーターに由来する、異なるエレメントから構成されるか、なおまたは合成DNAセグメントを含む。当業者により、異なるプロモーターは、異なる組織または細胞型における遺伝子の発現を方向付ける場合もあり、異なる発生段階にある遺伝子の発現を方向付ける場合もあり、異なる環境条件もしくは生理学的条件に応答する遺伝子の発現を方向付ける場合もあることが理解される。遺伝子を、大半の細胞型内において、大半の時点において発現させるプロモーターは、一般に、「構成的プロモーター」と称される。遺伝子を、特異的細胞型内において発現させるプロモーターは、一般に、「細胞特異的プロモーター」または「組織特異的プロモーター」と称される。遺伝子を、発生または細胞分化の特異的段階において発現させるプロモーターは、一般に、「発生特異的プロモーター」または「細胞分化特異的プロモーター」と称される。プロモーターを誘導する薬剤、生体分子、化学物質、リガンド、光などへの細胞の曝露、またはこれらによる細胞の処置の後において、遺伝子を発現するように誘導され、遺伝子を発現させるプロモーターは、一般に、「誘導的プロモーター」または「調節的プロモーター」と称される。大半の場合に、調節的配列の正確な境界は、完全に規定されていないので、異なる長さのDNA断片が、同一のプロモーター活性を有しうることが、さらに認識される。さらなる例示的プロモーターについては、本開示の他の箇所で論じられる。
【0072】
プロモーター配列は、典型的に、その3’末端において、転写開始部位により結合され、バックグラウンドを上回る、検出可能なレベルにおいて転写を誘発するのに必要である、最小限の数の塩基またはエレメントを組み入れるように、上流(5’方向)に伸張する。プロモーター配列内には、転写開始部位(例えば、ヌクレアーゼS1を伴うマッピングにより規定されると好都合である)のほか、RNAポリメラーゼの結合の一因となる、タンパク質結合性ドメイン(コンセンサス配列)が見出されるであろう。
【0073】
一部の実施形態では、核酸分子は、組織特異的プロモーターを含む。ある特定の実施形態では、組織特異的プロモーターは、肝臓、肝細胞、および/または内皮細胞における、治療用タンパク質の発現を駆動する。特定の一実施形態では、プロモーターは、TTPプロモーターを含む。特定の一実施形態では、プロモーターは、mTTRプロモーターを含む。特定の一実施形態では、プロモーターは、A1ATプロモーターを含む。
【0074】
「プラスミド」という用語は、細胞の中心的代謝の一部ではなく、通例、環状二本鎖DNA分子の形態にある遺伝子を保有することが多い、染色体外エレメントを指す。このようなエレメントは、選択された遺伝子産物のためのプロモーター断片およびDNA配列を、適切な3’側非翻訳配列と共に、細胞へと導入することが可能である、固有の構築物へと、多数のヌクレオチド配列が接続されるか、または組み換えられた、任意の供給源に由来する、一本鎖または二本鎖のDNAまたはRNAの、直鎖状、環状、または超らせん状である、自律複製型配列、ゲノム組込み配列、ファージまたはヌクレオチド配列でありうる。
【0075】
使用される、真核生物用ウイルスベクターは、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、ポックスウイルス、例えば、ワクシニアウイルスベクター、バキュロウイルスベクター、またはヘルペスウイルスベクターを含むがこれらに限定されない。非ウイルスベクターは、プラスミド、リポソーム、帯電脂質(サイトフェクチン)、DNA-タンパク質複合体、および生体ポリマーを含む。
【0076】
「クローニングベクター」とは、別の核酸セグメントが、接合されたセグメントの複製をもたらすように接合される、プラスミド、ファージ、またはコスミドなど、逐次的に複製される単位長の核酸であり、複製起点を含む、「レプリコン」を指す。ある特定のクローニングベクターは、1つの細胞型、例えば、細菌における複製、および別の細胞、例えば、真核細胞における発現が可能である。クローニングベクターは、典型的に、目的の核酸配列の挿入のための、ベクターおよび/または1つもしくはそれ以上の複数のクローニング部位を含む細胞の選択のために使用される、1つまたはそれ以上の配列を含む。
【0077】
「発現ベクター」という用語は、宿主細胞への挿入の後に、挿入された核酸配列の発現を可能とするようにデザインされた媒体を指す。挿入された核酸配列は、上記で記載された通り、調節領域とのとの作動可能な関連下に置かれる。
【0078】
ベクターは、当技術分野で周知の方法、例えば、トランスフェクション、電気穿孔、マイクロインジェクション、形質導入、細胞融合、DEAEデキストラン、リン酸カルシウム沈殿、リポフェクション(リソソーム融合)、遺伝子銃の使用、またはDNAベクタートランスポーターにより、宿主細胞へと導入される。本明細書で使用される、「培養物」、「~を培養するために」、「~を培養すること」とは、細胞を、細胞の増殖もしくは分裂を可能とするin vitro条件下においてインキュベートするか、または細胞を、生存状態に維持することを意味する。本明細書で使用される、「培養細胞」とは、in vitroにおいて繁殖された細胞を意味する。
【0079】
本明細書で使用される、「ポリペプチド」という用語は、単数形の「ポリペプチド」のほか、複数形の「ポリペプチド」を包含することが意図され、アミド結合(また、ペプチド結合としても公知である)により、直鎖状に連結された単量体(アミノ酸)から構成される分子を指す。「ポリペプチド」という用語は、2つまたはそれ以上のアミノ酸による、1つまたはそれ以上の任意の鎖を指し、具体的長さの産物を指さない。したがって、ペプチド、ジペプチド、トリペプチド、オリゴペプチド、「タンパク質」、「アミノ酸鎖」、または2つもしくはそれ以上のアミノ酸による、1つもしくはそれ以上の鎖を指すのに使用される、他の任意の用語が、「ポリペプチド」の定義内に含まれ、「ポリペプチド」という用語は、これらの用語のうちのいずれかの代わりに使用される場合もあり、これらと互換的に使用される場合もある。「ポリペプチド」という用語はまた、限定せずに述べると、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、公知の保護/ブロッキング基による誘導体化、タンパク質分解性切断、または非自然発生アミノ酸による修飾を含む、ポリペプチドの発現後修飾産物を指すことも意図される。ポリペプチドは、天然の生体供給源に由来する場合もあり、組換え技術により作製される場合もあるが、必ずしも、指示された核酸配列から翻訳されるわけではない。ポリペプチドは、化学合成による作出を含む、任意の方式により作出される。
【0080】
「アミノ酸」という用語は、アラニン(AlaまたはA);アルギニン(ArgまたはR);アスパラギン(AsnまたはN);アスパラギン酸(AspまたはD);システイン(CysまたはC);グルタミン(GlnまたはQ);グルタミン酸(GluまたはE);グリシン(GlyまたはG);ヒスチジン(HisまたはH);イソロイシン(IleまたはI):ロイシン(LeuまたはL);リシン(LysまたはK);メチオニン(MetまたはM);フェニルアラニン(PheまたはF);プロリン(ProまたはP);セリン(SerまたはS);トレオニン(ThrまたはT);トリプトファン(TrpまたはW);チロシン(TyrまたはY);およびバリン(ValまたはV)を含む。非常套的アミノ酸もまた、本開示の範囲内にあり、ノルロイシン、オルニチン、ノルバリン、ホモセリン、およびEllmanら、Meth.Enzym.、202:301~336(1991)において記載されているアミノ酸残基類似体など、他のアミノ酸残基類似体を含む。このような非自然発生のアミノ酸残基を作出するために、Norenら、Science、244:182(1989);およびEllmanら、前出の手順が使用されうる。略述すると、これらの手順は、非自然発生アミノ酸残基を伴うサプレッサーtRNAの化学的活性化に続き、in vitroにおける、RNAの転写および翻訳を伴う。非常套的アミノ酸の導入はまた、当技術分野で公知のペプチド化学反応を使用しても達成される。本明細書で使用される、「極性アミノ酸」という用語は、正味の電荷はゼロであるが、それらの側鎖の異なる部分において、ゼロでない部分電荷を有するアミノ酸(例えば、M、F、W、S、Y、N、Q、C)を含む。これらのアミノ酸は、疎水性相互作用および静電相互作用に参与しうる。本明細書で使用される、「帯電アミノ酸」という用語は、それらの側鎖上において、ゼロでない正味電荷を有しうるアミノ酸(例えば、R、K、H、E、D)を含む。これらのアミノ酸は、疎水性相互作用および静電相互作用に参与しうる。
【0081】
本開示にはまた、ポリペプチドの断片または変異体、およびこれらの任意の組合せも含まれる。本開示のポリペプチド結合性ドメインまたはポリペプチド結合性分子に言及する場合における、「断片」または「変異体」という用語は、参照ポリペプチドの特性(例えば、FcRn結合性ドメインまたはFc変異体に対する、FcRnの結合アフィニティー、FVIII変異体についての凝固活性、またはVWF断片に対する、FVIIIの結合活性)のうちの、少なくとも一部を保持する、任意のポリペプチドを含む。ポリペプチドの断片は、本明細書の他の箇所で論じられる、特異的抗体断片に加えて、タンパク質分解性断片のほか、欠失断片を含むが、自然発生の全長ポリペプチド(または成熟ポリペプチド)を含まない。本開示のポリペプチド結合性ドメインまたはポリペプチド結合性分子の変異体は、上記で記載された断片を含み、また、アミノ酸の置換、欠失、または挿入のために、アミノ酸配列が変更されたポリペプチドも含む。変異体は、天然変異体の場合もあり、非自然発生変異体の場合もある。非自然発生変異体は、当技術分野で公知の突然変異誘発法を使用して作製される。変異体ポリペプチドは、保存的なアミノ酸の置換、欠失、または付加を含む場合もあり、非保存的なアミノ酸の置換、欠失、または付加を含む場合もある。
【0082】
「保存的アミノ酸置換」とは、アミノ酸残基が、類似の側鎖を有するアミノ酸残基により置き換えられるアミノ酸置換である。当技術分野では、塩基性側鎖(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非帯電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ分枝型側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)、および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を含む、類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーが規定されている。したがって、ポリペプチド内のアミノ酸が、同じ側鎖ファミリーに由来する別のアミノ酸により置き換えられる場合、置換は、保存的であると考えられる。別の実施形態では、アミノ酸の連なりは、側鎖ファミリーメンバーの、順序および/または組成が異なる、構造的に類似する連なりにより保存的に置き換えられる。
【0083】
当技術分野で公知である、「同一性パーセント」という用語は、配列を比較することにより決定される、2つもしくはそれ以上のポリペプチド配列、または2つもしくはそれ以上のポリヌクレオチド配列の間の関係である。当技術分野において、「同一性」とはまた、場合によって、このような配列の連なりの間のマッチにより決定される、ポリペプチド配列またはポリヌクレオチド配列の間の配列類縁性の程度も意味する。「同一性」は、「Computational Molecular Biology」(Lesk,A.M.編)、Oxford University Press、New York(1988);「Biocomputing:Informatics and Genome Projects」(Smith,D.W.編)、Academic Press、New York(1993);「Computer Analysis of Sequence Data」、I部(Griffin,A.M.およびGriffin,H.G.編)、Humana Press、New Jersey(1994);「Sequence Analysis in Molecular Biology」(Von Heijne,G.編)、Academic Press(1987);および「Sequence Analysis Primer」(Gribskov,M.およびDevereux,J.編)、Stockton Press、New York(1991)において記載された方法を含むがこれらに限定されない、公知の方法により、たやすく計算される。同一性を決定する、好ましい方法は、被験配列の間の最も良好なマッチをもたらすようにデザインされる。同一性を決定する方法は、一般に入手可能なコンピュータプログラムにおいてコード化されている。配列アライメントおよび同一性パーセントの計算は、LASERGENEバイオインフォマティクス計算ソフトパッケージ(DNASTAR,Inc.、Madison、WI)の、Megalignプログラム、GCGプログラムパッケージ(Wisconsin Package Version 9.0、Genetics Computer Group(GCG)、Madison、WI);BLASTP、BLASTN、BLASTX(Altschulら、J.Mol.Biol.、215:403(1990));およびDNASTAR(DNASTAR,Inc.1228 S.Park St.Madison,WI 53715 USA)などの配列解析ソフトウェアを使用して実施される。本出願の文脈では、解析のために、配列解析ソフトウェアが使用される場合、解析の結果は、そうでないことが指定されない限りにおいて、参照されるプログラムの「デフォルト値」に基づくことが理解されるであろう。本明細書で使用される、「デフォルト値」とは、最初に初期化されたときに、ソフトウェアにより元からロードされていた、値またはパラメータの任意のセットを意味する。クエリー配列(例えば、核酸配列)と、参照配列との同一性パーセントを決定する目的では、参照配列内のヌクレオチドにマッチするクエリー配列内のヌクレオチドだけが、同一性パーセントを計算するのに使用される。したがって、クエリー配列またはその指定部分(例えば、ヌクレオチド1~522)と、参照配列との同一性パーセントの決定において、同一性パーセントは、マッチしたヌクレオチドの数を、完全クエリー配列内のヌクレオチド総数により除することにより計算されるであろう。
【0084】
本明細書で使用された、本開示の特定の配列内のヌクレオチドに対応するヌクレオチドは、本開示の配列のアライメントにより、参照配列に照らした同一性を最大化するように同定される。参照配列内の、同等のアミノ酸を同定するのに使用される番号は、本開示の配列内の、対応するアミノ酸を同定するのに使用される番号に基づく。
【0085】
本明細書で使用される、「~を処置する」、「処置」、「~を処置すること」とは、例えば、疾患もしくは状態の重症度の軽減;疾患経過の持続期間の短縮;疾患もしくは状態と関連する、1つもしくはそれ以上の症状の改善;疾患もしくは状態を伴う対象への、必ずしも、疾患もしくは状態の治癒を伴わない、有益な効果の施与;または疾患もしくは状態と関連する、1つもしくはそれ以上の症状の予防を指す。
【0086】
本明細書で使用される、「~を投与すること」とは、薬学的に許容される核酸分子、これから発現されるポリペプチド、または本開示の核酸分子を含むベクターを、薬学的に許容される経路を介して、対象へと施すことを意味する。投与経路は、静脈内、例えば、静脈内注射および静脈内注入でありうる。さらなる投与経路は、例えば、皮下投与、筋内投与、経口投与、経鼻投与、および肺内投与を含む。核酸分子、ポリペプチド、およびベクターは、少なくとも1つの賦形剤を含む医薬組成物の部分として投与されうる。
【0087】
本明細書で使用される、「脂質ナノ粒子」とは、1つまたはそれ以上のカチオン性脂質を含む、ナノメートルスケール(例えば、1nm~1,000nm)の、少なくとも1つの寸法を有する粒子を指す。一部の実施形態では、脂質ナノ粒子は、核酸(例えば、mRNA)などの活性薬剤または治療剤を、関連する標的部位(例えば、細胞、組織、器官、腫瘍など)へと送達するのに使用される製剤中に組み入れられる。一部の実施形態では、本明細書で開示される脂質ナノ粒子は、核酸を含む。このような脂質ナノ粒子は、典型的に、中性脂質、帯電脂質、ステロイド、およびポリマーコンジュゲート脂質から選択される、1つまたはそれ以上の賦形剤を含む。一部の実施形態では、核酸などの活性薬剤または治療剤は、脂質ナノ粒子の脂質部分に封入される場合もあり、脂質ナノ粒子の脂質部分の一部または全部により、水性腔内に封入される場合もあり、これにより、活性薬剤または治療剤を、酵素による分解、または有害な免疫応答など、宿主生物もしくは宿主細胞の機構により誘発される、他の所望されない効果から保護する。
【0088】
本明細書で使用される、「薬学的に許容される」とは、生理学的に許容可能であり、典型的に、ヒトへと投与された場合に、胸焼け、めまいなど、毒性もしくはアレルギー性または類似する望ましくない反応をもたらさない、分子実体および組成物を指す。場合により、本明細書で使用される、「薬学的に許容される」という用語は、動物における使用について、より特定すると、ヒトにおける使用について、米国連邦政府もしくは州政府の規制機関により承認されているか、または米国薬局方もしくは他の一般に認識された薬局方に収載されていることを意味する。
【0089】
本明細書で使用される、「それを必要とする対象」という語句は、本開示の核酸分子、ポリペプチド、またはベクターの投与から利益を得る、哺乳動物対象などの対象を含む。一部の実施形態では、対象は、ヒト対象である。一部の実施形態では、対象は、血友病を伴う個体である。対象は、成人の場合もあり、年少者(例えば、12歳未満)の場合もある。
【0090】
本明細書で使用される、「治療用タンパク質」という用語は、対象へと投与される、当技術分野で公知である、任意のポリペプチドを指す。一部の実施形態では、治療用タンパク質は、凝固因子、増殖因子、抗体、これらの機能的断片、またはこれらの組合せから選択されるタンパク質を含む。本明細書で使用される、「凝固因子」という用語は、対象における出血挿間の持続を防止するか、またはこれを減少させる、自然発生であるか、または組換えにより作製された分子またはその類似体を指す。言い換えると、「凝固因子」という用語は、凝固促進活性を有する分子、すなわち、血液を凝固(coagulateまたはclot)させる、フィブリノーゲンの、不溶性フィブリンのメッシュへの転換の一因となる分子を意味する。本明細書で使用される、「凝固因子」は、活性化型凝固因子、そのチモーゲン、または活性化可能凝固因子を含む。「活性化可能凝固因子」とは、活性形態へと転換されることが可能である、不活性形態にある(例えば、そのチモーゲン形態にある)凝固因子である。「凝固因子」という用語は、第I因子(FI)、第II因子(FII)、第III因子(FIII)、第IV因子(FIV)、第V因子(FV)、第VI因子(FVI)、第VII因子(FVII)、第VIII因子(FVIII)、第IX因子(FIX)、第X因子(FX)、第XI因子(FXI)、第XII因子(FXII)、第XIII因子(FXIII)、フォンウィレブラント因子(VWF)、プレカリクレイン、高分子量キニノーゲン、フィブロネクチン、アンチトロンビンIII、ヘパリン補因子II、プロテインC、プロテインS、プロテインZ、プロテインZ関連プロテアーゼ阻害剤(ZPI)、プラスミノーゲン、アルファ2アンチプラスミン、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、ウロキナーゼ、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤1(PAI-1)、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤2(PAI2)、これらのチモーゲン、これらの活性化形態、またはこれらの任意の組合せを含むがこれらに限定されない。
【0091】
本明細書で使用される、「凝固活性」とは、フィブリン凝固物の形成に至る生化学的反応のカスケードに参与し、かつ/または出血もしくは出血挿間の重症度、持続、もしくは頻度を低減する能力を意味する。
【0092】
本明細書で使用される、「増殖因子」という用語は、サイトカインおよびホルモンを含む、当技術分野で公知である、任意の増殖因子を含む。
【0093】
本明細書で使用される、「異種」または「外因性」という用語は、所与の文脈において、例えば、細胞内またはポリペプチド内に、通常見出されない分子を指す。例えば、外因性分子または異種分子は、細胞へと導入され、例えば、トランスフェクションまたは遺伝子操作の他の形態による、細胞の操作後だけにおいて存在するが、異種アミノ酸配列は、それが、天然において見出されないタンパク質内に存在する場合もある。
【0094】
本開示のヌクレオチド配列との比較として、本明細書で使用される場合における、「参照ヌクレオチド配列」は、FVIII配列に対応する部分が、最適化されていないことを除き、本開示のヌクレオチド配列と、本質的に同一であるポリヌクレオチド配列である。一部の実施形態では、本明細書で開示される核酸分子のための、参照ヌクレオチド配列は、配列番号32である。
【0095】
ヌクレオチド配列に関して、本明細書で使用される、「最適化された」という用語は、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を指し、この場合、ポリヌクレオチド配列は、このポリヌクレオチド配列の特性を増強するように突然変異している。一部の実施形態では、最適化は、転写レベルを上昇させるか、翻訳レベルを上昇させるか、定常状態におけるmRNAレベルを上昇させるか、基本転写因子などの調節タンパク質への結合を増大もしくは低下させるか、スプライシングを増大もしくは低下させるか、またはポリヌクレオチド配列によりもたらされるポリペプチドの収量を増大させるようになされる。ヌクレオチド配列を最適化するように、ポリヌクレオチド配列に対してなされる変化の例は、コドン最適化、G/C含量最適化、リピート配列の除去、ATリッチエレメントの除去、潜在スプライス部位の除去、転写または翻訳を抑制するシス活性化エレメントの除去、poly-Tまたはpoly-A配列の付加または除去、コザックコンセンサス配列など、転写を増強する転写開始部位の近傍における配列の付加、ステムループ構造を形成しうる配列の除去、不安定化配列の除去、CpGモチーフの除去、および2つまたはそれ以上のこれらの組合せを含む。
【0096】
核酸分子
本開示のある特定の態様は、遺伝子治療のためのAAVベクターの欠陥を克服することを目的とする。特に、本開示のある特定の態様は、第1のITR、第2のITR、および遺伝子カセットを含む核酸分子を対象とする。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、治療用タンパク質および/または治療用miRNAをコードする。一部の実施形態では、第1のITRと第2のITRは、異種ポリヌクレオチド配列を含む遺伝子カセットを挟む。一部の実施形態では、核酸分子は、カプシドタンパク質、複製タンパク質、および/またはアセンブリータンパク質をコードする遺伝子を含まない。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、治療用タンパク質をコードする。一部の実施形態では、治療用タンパク質は、凝固因子を含む。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、miRNAをコードする。ある特定の実施形態では、遺伝子カセットは、第1のITRと第2のITRとの間に配置される。一部の実施形態では、核酸分子は、1つまたはそれ以上の非コード領域をさらに含む。ある特定の実施形態では、1つまたはそれ以上の非コード領域は、プロモーター配列、イントロン、転写後調節エレメント、3’UTRポリ(A)配列、またはこれらの任意の組合せを含む。
【0097】
一実施形態では、遺伝子カセットは、一本鎖核酸である。別の実施形態では、遺伝子カセットは、二本鎖核酸である。別の実施形態では、遺伝子カセットは、クローズドエンド二本鎖ceDNAである。
【0098】
一部の実施形態では、核酸分子は、(a)パルボウイルス科の、AAV以外のメンバー(例えば、HBoV1 ITR)に由来するITRである、第1のITR;(b)組織特異的プロモーター配列、例えば、TTPプロモーターまたはTTRプロモーター;(c)イントロン、例えば、合成イントロン;(d)miRNAまたは治療用タンパク質、例えば、凝固因子をコードするヌクレオチド;(e)転写後調節エレメント、例えば、WPRE;(f)3’UTRポリ(A)テール配列、例えば、bGHpA;(g)パルボウイルス科の、AAV以外のメンバー(例えば、HBoV1 ITR)に由来するITRである、第2のITRを含む。一部の実施形態では、核酸分子は、(a)パルボウイルス科の、AAV以外のメンバー(例えば、HBoV1 ITR)に由来するITRである、第1のITR;(b)組織特異的プロモーター配列、例えば、mTTRプロモーター;(c)イントロン、例えば、合成イントロン;(d)miRNAまたは治療用タンパク質、例えば、凝固因子をコードするヌクレオチド;(e)転写後調節エレメント、例えば、WPRE;(f)3’UTRポリ(A)テール配列、例えば、bGHpA;(g)パルボウイルス科の、AAV以外のメンバー(例えば、HBoV1 ITR)に由来するITRである、第2のITRを含む。一部の実施形態では、組織特異的プロモーターは、ヒトアルファ1アンチトリプシン(A1AT)プロモーターである。一部の実施形態では、組織特異的プロモーターは、配列番号36のヌクレオチド配列を含む。
【0099】
本明細書の一部の実施形態では、配列番号9と少なくとも約75%同一であるヌクレオチド配列を含む遺伝子カセットを含む、単離核酸分子が開示される。本明細書の一部の実施形態では、配列番号9に対する、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む核酸分子が開示される。
【0100】
本明細書の一部の実施形態では、配列番号33と少なくとも約75%同一であるヌクレオチド配列を含む遺伝子カセットを含む、単離核酸分子が開示される。本明細書の一部の実施形態では、配列番号33に対する、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む核酸分子が開示される。
【0101】
本明細書の一部の実施形態では、配列番号14と少なくとも約75%同一であるヌクレオチド配列を含む遺伝子カセットを含む、単離核酸分子が開示される。本明細書の一部の実施形態では、配列番号14に対する、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む核酸分子が開示される。
【0102】
本明細書の別の態様では、第VIII因子(FVIII)ポリペプチドを発現する遺伝子カセットを含み、遺伝子カセットは、配列番号35と少なくとも約85%同一であるヌクレオチド配列を含む、単離核酸分子が開示される。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、配列番号35と少なくとも約90%同一であるヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、配列番号35と少なくとも約95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一であるヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、ヌクレオチド配列は、配列番号35と少なくとも50%同一である。
【0103】
本明細書ではまた、第VIII因子(FVIII)ポリペプチドを発現する遺伝子カセットを含み、遺伝子カセットは、配列番号35のヌクレオチド配列を含む、単離核酸分子も開示される。
【0104】
ある特定の実施形態では、本明細書で開示される核酸分子は、1型ヒトボカウイルス(HBoV1)に由来するITR配列を含む。ある特定の実施形態では、本明細書で開示される核酸分子は、配列番号1または配列番号2と少なくとも約75%同一である、第1のITRを含む。
【0105】
A.逆位末端反復(ITR)
本開示のある特定の態様は、第1のITR、例えば、5’側ITRと、第2のITR、例えば、3’側ITRとを含む核酸分子を対象とする。典型的に、ITRは、原核生物プラスミドからの、パルボウイルス(例えば、AAV)DNAの複製およびレスキューまたは切出しに関与する(Samulskiら、1983、1987;Senapathyら、1984;GottliebandMuzyczka、1988)。加えて、ITRは、AAVプロウイルスの組込み、およびAAV DNAの、ビリオンへのパッケージングに要求される、最小限の配列であるとも考えられる(McLaughlinら、1988;Samulskiら、1989)。これらのエレメントは、パルボウイルスゲノムの効率的複製に不可欠である。ITR機能に必須である、最小限の規定的エレメントは、Rep結合性部位および末端分離部位+ヘアピン形成を可能とする可変性回文配列であることが仮定される。回文ヌクレオチド領域は、通常、シス側において、DNA複製起点、およびウイルスのためのパッケージングシグナルとして、一体に機能する。ITR内の相補性配列は、DNA複製時に、ヘアピン構造へとフォールディングする。一部の実施形態では、ITRは、T字形ヘアピン構造へとフォールディングする。他の実施形態では、ITRは、T字形以外のヘアピン構造、例えば、U字形ヘアピン構造へとフォールディングする。データは、AAV ITRのT字形ヘアピン構造が、ITRにより挟まれた導入遺伝子の発現を阻害しうることを示唆する。例えば、Zhouら(2017)、Scientific Reports、7:5432を参照されたい。T字形ヘアピン構造を形成しないITRを利用することにより、この阻害形態は回避される。したがって、ある特定の態様では、AAV以外のITRを含むポリヌクレオチドは、T字形ヘアピンを形成するAAV ITRを含むポリヌクレオチドと比較して、導入遺伝子の発現を改善した。
【0106】
本明細書で使用される、「逆位末端反復」(または「ITR」)とは、下流において、その逆相補体、すなわち、回文配列を後続させた、ヌクレオチド(初期配列)のセットを含む、一本鎖核酸配列の5’末端または3’末端に配置された、核酸部分配列を指す。初期配列と、逆相補体との間に介在するヌクレオチド配列は、ゼロを含む、任意の長さでありうる。一実施形態では、本開示に有用なITRは、1つまたはそれ以上の「回文配列」を含む。ITRは、任意の数の機能を有しうる。一部の実施形態では、本明細書で記載されるITRは、ヘアピン構造を形成する。一部の実施形態では、ITRは、T字形ヘアピン構造を形成する。一部の実施形態では、ITRは、T字形以外のヘアピン構造、例えば、U字形ヘアピン構造を形成する。一部の実施形態では、ITRは、細胞核内の核酸分子の生存を、長期間にわたり促進する。一部の実施形態では、ITRは、細胞核内の核酸分子の、恒久的生存(例えば、細胞の全寿命にわたり)を促進する。一部の実施形態では、ITRは、細胞核内の核酸分子の安定性を促進する。一部の実施形態では、ITRは、細胞核内の核酸分子の保持を促進する。一部の実施形態では、ITRは、細胞核内の核酸分子の存続を促進する。一部の実施形態では、ITRは、細胞核内の核酸分子の分解を阻害または阻止する。
【0107】
したがって、本明細書で使用される「ITR」は、それ自身に折り返しフォールディングし、二本鎖セグメントを形成する場合がある。例えば、配列であるGATCXXXXGATCは、フォールディングされると、二重ヘリックスを形成するように、GATCの初期配列と、その相補体(3’CTAG5’)とを含む。一部の実施形態では、ITRは、初期配列と、逆相補体との間に、連続回文配列(例えば、GATCGATC)を含む。一部の実施形態では、ITRは、初期配列と、逆相補体との間に、中断回文配列(例えば、GATCXXXXGATC)を含む。一部の実施形態では、連続回文配列または中断回文配列の相補性部分は、互いと相互作用して、「ヘアピンループ」構造を形成する。一本鎖ヌクレオチド分子上の少なくとも2つの相補性配列が塩基対合して二本鎖部分を形成すると、本明細書で使用される、「ヘアピンループ」構造が生じる。一部の実施形態では、ITRの一部だけが、ヘアピンループを形成する。他の実施形態では、ITRの全体が、ヘアピンループを形成する。
【0108】
一部の実施形態では、ITRは、自然発生ITRを含む、例えば、ITRは、パルボウイルス科のメンバーに由来するITRの全部または一部を含む。一部の実施形態では、ITRは、合成配列を含む。一実施形態では、第1のITRまたは第2のITRは、合成配列を含む。別の実施形態では、第1のITRおよび第2のITRの各々は、合成配列を含む。一部の実施形態では、第1のITRまたは第2のITRは、自然発生配列を含む。別の実施形態では、第1のITRおよび第2のITRの各々は、自然発生配列を含む。
【0109】
一部の実施形態では、ITRは、自然発生ITRの部分、例えば、切断型ITRを含むか、またはこれからなる。一部の実施形態では、ITRは、自然発生ITRの断片を含むか、またはこれからなり、この場合、断片は、少なくとも約5ヌクレオチド、少なくとも約10ヌクレオチド、少なくとも約15ヌクレオチド、少なくとも約20ヌクレオチド、少なくとも約25ヌクレオチド、少なくとも約30ヌクレオチド、少なくとも約35ヌクレオチド、少なくとも約40ヌクレオチド、少なくとも約45ヌクレオチド、少なくとも約50ヌクレオチド、少なくとも約55ヌクレオチド、少なくとも約60ヌクレオチド、少なくとも約65ヌクレオチド、少なくとも約70ヌクレオチド、少なくとも約75ヌクレオチド、少なくとも約80ヌクレオチド、少なくとも約85ヌクレオチド、少なくとも約90ヌクレオチド、少なくとも約95ヌクレオチド、少なくとも約100ヌクレオチド、少なくとも約125ヌクレオチド、少なくとも約150ヌクレオチド、少なくとも約175ヌクレオチド、少なくとも約200ヌクレオチド、少なくとも約225ヌクレオチド、少なくとも約250ヌクレオチド、少なくとも約275ヌクレオチド、少なくとも約300ヌクレオチド、少なくとも約325ヌクレオチド、少なくとも約350ヌクレオチド、少なくとも約375ヌクレオチド、少なくとも約400ヌクレオチド、少なくとも約425ヌクレオチド、少なくとも約450ヌクレオチド、少なくとも約475ヌクレオチド、少なくとも約500ヌクレオチド、少なくとも約525ヌクレオチド、少なくとも約550ヌクレオチド、少なくとも約575ヌクレオチド、または少なくとも約600ヌクレオチドを含み;ITRは、自然発生ITRの機能的特性を保持する。ある特定の実施形態では、ITRは、自然発生ITRの断片を含むか、またはこれからなり、この場合、断片は、少なくとも約129ヌクレオチドを含み;ITRは、自然発生ITRの機能的特性を保持する。ある特定の実施形態では、ITRは、自然発生ITRの断片を含むか、またはこれからなり、この場合、断片は、少なくとも約102ヌクレオチドを含み;ITRは、自然発生ITRの機能的特性を保持する。一部の実施形態では、ITRは、それが由来する野生型ITRの、Rep結合性エレメント(RBE)を保持する。一部の実施形態では、ITRは、それが由来する野生型ITRのRBEのうちの少なくとも1つを保持する。一部の実施形態では、ITRは、それが由来する野生型ITRのRBEまたはその機能的部分のうちの少なくとも1つを保持する。RBEの保存は、ITRの安定性および製造目的のために重要でありうる。
【0110】
一部の実施形態では、ITRは、自然発生ITRの部分を含むか、またはこれからなり、この場合、断片は、自然発生ITRの長さのうちの、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%を含み;断片は、自然発生ITRの機能的特性を保持する。一部の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRは、野生型HBoV1 ITRに由来する。一部の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRは、野生型B19 ITRに由来する。一部の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRは、野生型GPV ITRに由来する。
【0111】
ある特定の実施形態では、ITRは、適正にアライメントされた場合に、相同な自然発生ITRの部分に対する、少なくとも50%、少なくとも51%、少なくとも52%、少なくとも53%、少なくとも54%、少なくとも55%、少なくとも56%、少なくとも57%、少なくとも58%、少なくとも59%、少なくとも60%、少なくとも61%、少なくとも62%、少なくとも63%、少なくとも64%、少なくとも65%、少なくとも66%、少なくとも67%、少なくとも68%、少なくとも69%、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する配列を含むか、またはこれからなり;この場合、ITRは、自然発生ITRの機能的特性を保持する。他の実施形態では、ITRは、適正にアライメントされた場合に、相同な自然発生ITRの部分に対する、少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含むか、またはこれからなり;この場合、ITRは、自然発生ITRの機能的特性を保持する。一部の実施形態では、ITRは、適正にアライメントされた場合に、相同な自然発生ITRの部分に対する、少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むか、またはこれからなり;この場合、ITRは、自然発生ITRの機能的特性を保持する。一部の実施形態では、ITRは、適正にアライメントされた場合に、相同な自然発生ITRの部分に対する、少なくとも70%の配列同一性を有する配列を含むか、またはこれからなり;この場合、ITRは、自然発生ITRの機能的特性を保持する。一部の実施形態では、ITRは、適正にアライメントされた場合に、相同な自然発生ITRの部分に対する、少なくとも60%の配列同一性を有する配列を含むか、またはこれからなり;この場合、ITRは、自然発生ITRの機能的特性を保持する。一部の実施形態では、ITRは、適正にアライメントされた場合に、相同な自然発生ITRの部分に対する、少なくとも50%の配列同一性を有する配列を含むか、またはこれからなり;この場合、ITRは、自然発生ITRの機能的特性を保持する。
【0112】
一部の実施形態では、ITRは、AAVゲノムに由来するITRを含む。一部の実施形態では、ITRは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、およびAAV11、ならびにこれらの任意の組合せから選択されるAAVゲノムのITRである。一部の実施形態では、ITRは、天然単離物、例えば、天然ヒト単離物を含む、当業者に公知である、任意のAAVゲノムのITRである。特定の実施形態では、ITRは、AAV2ゲノムのITRである。別の実施形態では、ITRは、その5’末端および3’末端において、AAVゲノムのうちの1つまたはそれ以上に由来するITRを含むように遺伝子操作された合成配列である。
【0113】
一部の実施形態では、ITRは、AAVゲノムに由来しない(すなわち、ITRは、AAVではないウイルスに由来する)。一部の実施形態では、ITRは、AAV以外のITRである。一部の実施形態では、ITRは、ボカウイルス属、ディペンドウイルス属、エリスロウイルス属、アムドウイルス属、パルボウイルス属、デンソウイルス属、イテラウイルス属、コントラウイルス属、アベパルボウイルス属、コピパルボウイルス属、プロトパルボウイルス属、テトラパルボウイルス属、アンビデンソウイルス属、ブレビデンソウイルス属、ヘパンデンソウイルス属、ペンスチルデンソウイルス属、ならびにこれらの任意の組合せからなる群から選択されるがこれらに限定されないパルボウイルス科に由来する、AAVゲノム以外のITRである。ある特定の実施形態では、ITRは、1型ヒトボカウイルス(HBoV1)に由来する。別の実施形態では、ITRは、パルボウイルスである、エリスロウイルスB19(ヒトウイルス)に由来する。別の実施形態では、ITRは、マスコビーダックパルボウイルス(MDPV)株に由来する。ある特定の実施形態では、MDPV株は、弱毒化MDPV株、例えば、MDPV FZ91-30株である。他の実施形態では、MDPV株は、病原性MDPV株、例えば、MDPV YY株である。一部の実施形態では、ITRは、ブタパルボウイルス、例えば、ブタパルボウイルスU44978株に由来する。一部の実施形態では、ITRは、マウス微小ウイルス、例えば、マウス微小ウイルスU34256株に由来する。一部の実施形態では、ITRは、イヌパルボウイルス、例えば、イヌパルボウイルスM19296株に由来する。一部の実施形態では、ITRは、ミンク腸炎ウイルス、例えば、ミンク腸炎ウイルスD00765株に由来する。一部の実施形態では、ITRは、ディペンドパルボウイルス属に由来する。一実施形態では、ディペンドパルボウイルス属は、ディペンドウイルス属ガチョウパルボウイルス(GPV)株である。具体的な実施形態では、GPV株は、弱毒化GPV株、例えば、GPV 82-0321V株である。別の特異的実施形態では、GPV株は、病原性GPV株、例えば、GPV B株である。
【0114】
核酸分子の第1のITRおよび第2のITRは、同じゲノム、例えば、同じウイルスのゲノムに由来する場合もあり、異なるゲノム、例えば、2つまたはそれ以上の異なるウイルスゲノムのゲノムに由来する場合もある。ある特定の実施形態では、第1のITRおよび第2のITRは、同じAAVゲノムに由来する。具体的な実施形態では、本発明の核酸分子内に存在する、2つのITRは、同じであり、特に、AAV2 ITRでありうる。他の実施形態では、第1のITRは、AAVゲノムに由来し、第2のITRは、AAVゲノムに由来しない(例えば、AAV以外のゲノムに由来する)。他の実施形態では、第1のITRは、AAVゲノムに由来せず(例えば、AAV以外のゲノムに由来し)、第2のITRは、AAVゲノムに由来する。さらに他の実施形態では、第1のITRおよび第2のITRのいずれも、AAVゲノムに由来しない(例えば、AAV以外のゲノムに由来する)。特定の一実施形態では、第1のITRと第2のITRとは、同一である。
【0115】
一部の実施形態では、第1のITRは、AAV以外のゲノムに由来し、第2のITRは、AAV以外のゲノムに由来し、この場合、第1のITRおよび第2のITRは、同じゲノムに由来する。AAV以外のウイルスゲノムの非限定例は、ボカウイルス属、ディペンドウイルス属、エリスロウイルス属、アムドウイルス属、パルボウイルス属、デンソウイルス属、イテラウイルス属、コントラウイルス属、アベパルボウイルス属、コピパルボウイルス属、プロトパルボウイルス属、テトラパルボウイルス属、アンビデンソウイルス属、ブレビデンソウイルス属、ヘパンデンソウイルス属、およびペンスチルデンソウイルス属に由来する。一部の実施形態では、第1のITRは、AAV以外のゲノムに由来し、第2のITRは、AAV以外のゲノムに由来し、この場合、第1のITRおよび第2のITRは、異なるウイルスゲノムに由来する。
【0116】
一部の実施形態では、第1のITRは、AAVゲノムに由来し、第2のITRは、1型ヒトボカウイルス(HBoV1)に由来する。他の実施形態では、第2のITRは、AAVゲノムに由来し、第1のITRは、1型ヒトボカウイルス(HBoV1)に由来する。
【0117】
一部の実施形態では、第1のITRは、AAVゲノムまたはAAV以外のゲノムに由来するITRの全部または一部を含むか、またはこれからなり、第2のITRは、AAVゲノムまたはAAV以外のゲノムに由来するITRの全部または一部を含むか、またはこれからなる。一部の実施形態では、AAVゲノムまたはAAV以外のゲノムに由来するITRの一部は、自然発生のAAVゲノムまたはAAV以外のゲノムに由来するITRの切断形である。一部の実施形態では、AAVゲノムまたはAAV以外のゲノムに由来するITRの一部は、自然発生のAAVゲノムまたはAAV以外のゲノムに由来するITRの一部を含む。例えば、AAVゲノムまたはAAV以外のゲノムに由来するITRの一部は、自然発生のAAVゲノムまたはAAV以外のゲノムに由来するITRの一部を含み、少なくとも1つのRBEまたはその機能的部分は、保存的である。
【0118】
ある特定の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRは、HBoV1に由来するITRの全部または一部を含むか、またはこれからなる。ある特定の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRは、HBoV1に由来するITRの全部または一部を含むか、またはこれからなる。一部の実施形態では、第2のITRは、第1のITRの逆相補体である。一部の実施形態では、第1のITRは、第2のITRの逆相補体である。一部の実施形態では、HBoV1に由来する、第1のITRおよび/または第2のITRは、ヘアピン構造を形成することが可能である。ある特定の実施形態では、ヘアピン構造は、T字形ヘアピンを含まない。
【0119】
一部の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRは、配列番号1または2に示されたヌクレオチド配列と少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%同一であるヌクレオチド配列を含むか、またはこれからなり、この場合、第1のITRおよび/または第2のITRは、それが由来するHBoV1 ITRの機能的特性を保持する。一部の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRは、配列番号1または2から選択されるヌクレオチド配列と少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%同一であるヌクレオチド配列を含むか、またはこれからなり、この場合、第1のITRおよび/または第2のITRは、ヘアピン構造を形成することが可能である。ある特定の実施形態では、ヘアピン構造は、T字形ヘアピンを含まない。
【0120】
一部の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRは、配列番号1のヌクレオチド配列を含むか、またはこれからなる。一部の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRは、配列番号2のヌクレオチド配列を含むか、またはこれからなる。一部の実施形態では、第1のITRは、配列番号1に示されたヌクレオチド配列を含むか、またはこれからなる。一部の実施形態では、第2のITRは、配列番号2に示されたヌクレオチド配列を含むか、またはこれからなる。一部の実施形態では、第1のITRは、配列番号1に示されたヌクレオチド配列を含むか、またはこれからなり、第2のITRは、配列番号2に示されたヌクレオチド配列を含むか、またはこれからなる。
【0121】
当業者に、本明細書で記載される、第1のITR配列のうちのいずれかは、本明細書で記載される、第2のITR配列のうちのいずれかとマッチされることが察知されるであろう。一部の実施形態では、本明細書で記載される、第1のITR配列は、5’側ITR配列である。一部の実施形態では、本明細書で記載される、第2のITR配列は、3’側ITR配列である。一部の実施形態では、本明細書で記載される、第2のITR配列は、5’側ITR配列である。一部の実施形態では、本明細書で記載される、第1のITR配列は、3’側ITR配列である。当業者は、遺伝子カセットの構成に関して、本明細書で記載される、第1のITRおよび第2のITRの適切な配向性を決定することができるであろう。
【0122】
別の特定の実施形態では、ITRは、その5’末端および3’末端において、AAVゲノムに由来しないITRを含むように遺伝子操作された合成配列である。別の特定の実施形態では、ITRは、その5’末端および3’末端において、AAV以外のゲノムのうちの1つまたはそれ以上に由来するITRを含むように遺伝子操作された合成配列である。本発明の核酸分子内に存在する、2つのITRは、同じAAV以外のゲノムの場合もあり、異なるAAV以外のゲノムの場合もある。特に、ITRは、同じAAV以外のゲノムに由来しうる。具体的な実施形態では、本発明の核酸分子内に存在する、2つのITRは、同じであり、特に、AAV2 ITRでありうる。
【0123】
一部の実施形態では、ITR配列は、1つまたはそれ以上の回文配列を含む。本明細書で開示されるITRの回文配列は、天然の回文配列(すなわち、天然において見出される配列)、偽回文配列などの合成配列(すなわち、天然において見出されない配列)、およびこれらの組合せまたは修飾形態を含むがこれらに限定されない。「偽回文配列」とは、二次構造を形成する、天然AAV内の配列、またはAAV以外の回文配列に対する、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%、もしくは5%未満を含む、80%未満の核酸配列同一性を共有するか、またはこれを共有しない、不完全回文配列を含む、回文DNA配列である。天然回文配列は、本明細書で開示される、任意のゲノムから得られるか、またはこれらに由来する。合成回文配列は、本明細書で開示される、任意のゲノムに基づきうる。
【0124】
回文配列は、連続配列の場合もあり、中断配列の場合もある。一部の実施形態では、中断配列であり、この場合、回文配列は、第2の配列の挿入を含む。一部の実施形態では、第2の配列は、プロモーター、エンハンサー、インテグラーゼのための組込み部位(例えば、CreリコンビナーゼまたはFlpリコンビナーゼのための部位)、遺伝子産物のためのオープンリーディングフレーム、またはこれらの組合せを含む。
【0125】
一部の実施形態では、ITRは、ヘアピンループ構造を形成する。一実施形態では、第1のITRは、ヘアピン構造を形成する。別の実施形態では、第2のITRは、ヘアピン構造を形成する。さらに別の実施形態では、第1のITRおよび第2のITRのいずれも、ヘアピン構造を形成する。一部の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRは、T字形ヘアピン構造を形成しない。ある特定の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRは、T字形以外のヘアピン構造を形成する。一部の実施形態では、T字形以外のヘアピン構造は、U字形ヘアピン構造を含む。
【0126】
一部の実施形態では、本明細書で記載される核酸分子内のITRは、転写活性化ITRでありうる。転写活性化ITRは、少なくとも1つの転写活性エレメントの組入れにより転写活性化された、野生型ITRの全部または一部を含みうる。多様な種類の転写活性エレメントが、この文脈における使用のために適する。一部の実施形態では、転写活性エレメントは、構成的転写活性エレメントである。構成的転写活性エレメントは、持続レベルの遺伝子転写をもたらし、導入遺伝子が、持続ベースで発現されることが所望される場合に好ましい。他の実施形態では、転写活性エレメントは、誘導的転写活性エレメントである。誘導的転写活性エレメントは、一般に、誘導因子(または誘導条件)の非存在下において、低活性を呈し、誘導因子(または誘導条件への切換え)の存在下において、上方調節される。発現が、ある特定の時点もしくはある特定の位置に限り所望されるか、または誘導剤を使用して、発現レベルを滴定することが所望される場合に、誘導的転写活性エレメントは、好ましい場合がある。転写活性エレメントはまた、組織特異的でもありうる;すなわち、ある特定の組織または細胞型だけにおいて活性を呈する。
【0127】
転写活性エレメントは、様々な形で、ITRへと組み込まれる。一部の実施形態では、転写活性エレメントは、ITRの任意の部分に対して5’側、またはITRの任意の部分に対して3’側に組み込まれる。他の実施形態では、転写活性化ITRの転写活性エレメントは、2つのITR配列の間にある。転写活性エレメントが、隔てられなければならない、2つまたはそれ以上のエレメントを含む場合、これらのエレメントは、ITRの部分と交互に存在する。一部の実施形態では、ITRのヘアピン構造は、欠失し、転写エレメントの逆位リピートにより置き換えられる。この後者の配置ならば、構造内の欠失部分を模倣するヘアピンを創出するであろう。転写活性化ITR内に、複数のタンデム転写活性エレメントが存在する場合もあり、これらは、隣接する場合もあり、隔てられる場合もある。加えて、タンパク質結合性部位(例えば、Rep結合性部位)も、転写活性化ITRの転写活性エレメントへと導入される。転写活性エレメントは、RNAポリメラーゼによるDNAの転写の制御が、RNAを形成することを可能とする、任意の配列を含む場合があり、例えば、下記に規定される、転写活性エレメントを含みうる。
【0128】
転写活性化ITRは、比較的限定的なヌクレオチド配列の長さにおいて、核酸分子へと、転写活性化およびITR機能の両方をもたらし、これは、核酸分子から運ばれ、発現される導入遺伝子の長さを効果的に最大化する。転写活性エレメントの、ITRへの組込みは、様々な形で達せられる。ITR配列、および転写活性エレメントの配列要件の比較は、ITR内のエレメントをコードする方式に対する洞察をもたらしうる。例えば、転写活性は、転写活性エレメントの機能的エレメントを複製するITR配列内における、特異的変化の導入を介して、ITRへと付加される。当技術分野では、特異的部位において、特定のヌクレオチド配列を、効率的に付加し、欠失させ、かつ/または変化させる、多数の技法が存在する(例えば、DengおよびNickoloff(1992)、Anal.Biochem.、200:81~88を参照されたい)。転写活性化ITRを創出する、別の方式は、ITR内の所望の位置における、制限部位の導入を伴う。加えて、当技術分野で公知の方法を使用して、複数の転写活性化エレメントが、転写活性化ITRへと組み込まれる。
【0129】
例示を目的として述べると、転写活性化ITRは、TATAbox、GCbox、CCAATbox、Sp1部位、Inr領域、CRE(cAMP調節エレメント)部位、ATF-1/CRE部位、APBβbox、APBαbox、CArGbox、CCACbox、または当技術分野で公知の、転写に関与する、他の任意のエレメントなど、1つまたはそれ以上の転写活性エレメントの組入れにより作出される。
【0130】
B.治療用タンパク質
本開示のある特定の態様は、第1のITR、第2のITR、および標的配列をコードする遺伝子カセットを含み、標的配列は、治療用タンパク質をコードする、核酸分子を対象とする。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、1つの治療用タンパク質をコードする。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、1つを超える治療用タンパク質をコードする。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、同じ治療用タンパク質の、2つまたはそれ以上のコピーをコードする。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、同じ治療用タンパク質の、2つまたはそれ以上の変異体をコードする。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、2つまたはそれ以上の、異なる治療用タンパク質をコードする。
【0131】
本開示のある特定の実施形態は、第1のITR、第2のITR、および治療用タンパク質をコードする遺伝子カセットを含み、治療用タンパク質は、凝固因子を含む、核酸分子を対象とする。一部の実施形態では、凝固因子は、FI、FII、FIII、FIV、FV、FVI、FVII、FVIII、FIX、FX、FXI、FXII、FXIII、VWF、プレカリクレイン、高分子量キニノーゲン、フィブロネクチン、アンチトロンビンIII、ヘパリン補因子II、プロテインC、プロテインS、プロテインZ、プロテインZ関連プロテアーゼ阻害剤(ZPI)、プラスミノーゲン、アルファ2アンチプラスミン、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、ウロキナーゼ、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤1(PAI-1)、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤2(PAI2)、これらの任意のチモーゲン、これらの任意の活性形態、およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される。一実施形態では、凝固因子は、FVIIIまたはその変異体もしくは断片を含む。別の実施形態では、凝固因子は、FIXまたはその変異体もしくは断片を含む。別の実施形態では、凝固因子は、FVIIまたはその変異体もしくは断片を含む。別の実施形態では、凝固因子は、VWFまたはその変異体もしくは断片を含む。
【0132】
一部の実施形態では、核酸分子は、第1のITR、第2のITR、および標的配列をコードする遺伝子カセットを含み、この場合、標的配列は、治療用タンパク質をコードし、治療用タンパク質は、第VIII因子ポリペプチドを含む。本明細書で使用される通り、本出願を通して、「FVIII」と略記される、「第VIII因子」とは、そうでないことが指定されない限りにおいて、凝固におけるその正常の役割下にある、機能的FVIIIポリペプチドを意味する。したがって、「FVIII」という用語は、機能的である、変異体ポリペプチドを含む。「FVIIIタンパク質」は、FVIIIポリペプチド(またはタンパク質)またはFVIIIと互換的に使用される。FVIII機能の例は、凝固を活性化させる能力、第IX因子の補因子として作用する能力、またはCa2+およびリン酸脂質の存在下において、第IX因子と共に、テナーゼ複合体を形成し、次いで、テナーゼ複合体が、第X因子を、活性化形態であるXaへと転換する能力を含むがこれらに限定されない。
【0133】
本明細書で使用される治療用タンパク質内のFVIII部分は、FVIII活性を有する。FVIII活性は、当技術分野で公知である、任意の方法により測定される。多数の試験:活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)試験、発色アッセイ、ROTEMアッセイ、プロトロンビン時間(PT)試験(また、INRを決定するのにも使用される)、フィブリノーゲン試験(クラウス法を介することが多い)、血小板カウント、血小板機能試験(PFA-100を介することが多い)、TCT、出血時間、混合試験(患者の血漿が、正常血漿と混合された場合に、異常性が是正されるかどうか)、凝固因子アッセイ、アンチリン酸脂質抗体、D-二量体、遺伝子的試験(例えば、第V因子ライデン突然変異である、プロトロンビン突然変異G20210A)、希釈ラッセルヘビ毒時間(dRVVT)、その他の血小板機能試験、トロンボエラストグラフィー(TEGまたはSonoclot)、トロンボエラストメトリー(TEM(登録商標)、例えば、ROTEM(登録商標))、またはユーグロブリン溶解時間(ELT)が、凝固系の機能について評価するのに利用可能である。
【0134】
aPTT試験は、「内因性」経路(また、接触活性化経路とも称される)および共通凝固経路の両方の効能を測定する、性能指標である。この試験は、一般に、市販の組換え凝固因子、例えば、FVIIIの凝固活性を測定するのに使用される。aPTT試験は、外因性経路を測定する、プロトロンビン時間(PT)と共に使用される。
【0135】
ROTEM解析は、止血の全動態:凝固時間、凝固物の形成、凝固物の安定性、および溶解についての情報をもたらす。トロンボエラストメトリーにおける、異なるパラメータは、血漿凝固系の活性、血小板機能、線維素溶解、またはこれらの相互作用に影響を及ぼす、多くの因子に依存する。このアッセイは、二次止血についての全体像をもたらしうる。
【0136】
発色アッセイ機構は、活性化FVIIIが、活性化第IX因子、リン酸脂質、およびカルシウムイオンの存在下において、第X因子の、第Xa因子への転換を加速化させる、血液凝固カスケードの原理に基づく。第Xa因子活性は、第Xa因子に特異的な、p-ニトロアニリド(pNA)基質の加水分解により評価される。405nMにおいて測定される、p-ニトロアニリンの初期放出速度は、第Xa因子活性と正比例するので、サンプル中のFVIII活性とも正比例する。発色アッセイは、International Society on Thrombosis and Hemostatsis(ISTH)の、Scientific and Standardization Committee(SSC)の、FVIII and Factor IX Subcommitteeにより推奨されている。1994年以来、発色アッセイはまた、FVIII濃縮物の効力割当てのための、欧州薬局方による参照法ともなっている。
【0137】
一部の実施形態では、遺伝子カセットは、FVIIIポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み、この場合、ヌクレオチド配列は、コドン最適化されている。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、mTTRプロモーターにより駆動される、コドン最適化FVIIIをコードするヌクレオチド配列と、合成イントロンとを含む。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、参照によりその全体において組み入れられる、国際出願第PCT/US2017/015879号において開示されているヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、PCT/US2017/015879において記載されている遺伝子カセットである、「hFVIIIco6XTEN」である。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、配列番号32を含む。
【0138】
一部の実施形態では、遺伝子カセットは、XTEN 144ペプチドと融合された、Bドメイン欠失型(BDD)コドン最適化ヒト第VIII因子(BDDcoFVIII)をコードする、コドン最適化cDNAを含む。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、配列番号9として示された、ヌクレオチド配列のセットを含む。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、配列番号33として示された、ヌクレオチド配列のセットを含む。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、配列番号14として示された、ヌクレオチド配列のセットを含む。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、配列番号14のヌクレオチド配列を有する。一部の実施形態では、核酸分子は、配列番号35のヌクレオチド配列を含む。
【0139】
一部の実施形態では、遺伝子カセットは、mTTRプロモーターにより駆動される、コドン最適化FVIIIをコードするヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、A1MB2エンハンサーエレメントをさらに含む。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、キメライントロンまたは合成イントロンをさらに含む。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、ウッドチャック転写後調節エレメント(WPRE)をさらに含む。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、ウシ成長ホルモンポリアデニル化(bGHpA)シグナルをさらに含む。
【0140】
一部の実施形態では、本開示は、FVIII活性を伴うポリペプチドをコードする、コドン最適化核酸分子を対象とする。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、全長FVIIIポリペプチドをコードする。他の実施形態では、核酸分子は、FVIIIのBドメインの全部または一部が欠失した、Bドメイン欠失型(BDD)FVIIIポリペプチドをコードする。
【0141】
他の実施形態では、本明細書で開示される核酸分子は、1つもしくはそれ以上のCpGモチーフの除去、および/または少なくとも1つのCpGモチーフのメチル化によりさらに最適化される。本明細書で使用される、「CpGモチーフ」とは、グアノシンへのリン酸結合により連結された、非メチル化シトシンを含有するジヌクレオチド配列を指す。「CpGモチーフ」という用語は、メチル化CpGジヌクレオチドおよび非メチル化CpGジヌクレオチドの両方を包含する。非メチル化CpGモチーフは、細菌由来の核酸およびウイルス由来の核酸(例えば、プラスミドDNA)内では一般的であるが、脊椎動物DNAでは、抑制され、大部分がメチル化される。したがって、非メチル化CpGモチーフは、迅速な炎症応答を惹起するように、哺乳動物宿主を刺激する。Klinmanら(1996)、PNAS、93:2879~2883。CpG除去の例示的方法については、Yew,N.S.ら(2002)、MolTher.、5(6):731~738;および国際出願第PCT/US2001/010309号において記載されている。一部の実施形態では、本明細書で開示される核酸分子は、少数のCpGモチーフを含有するように修飾されている(すなわち、CpG低減型またはCpG欠失型)。一実施形態では、選択されたアミノ酸のためのコドントリプレット内に配置されたCpGモチーフは、CpGモチーフを欠く、同じアミノ酸のためのコドントリプレットへと変化させる。一部の実施形態では、本明細書で開示される核酸分子は、自然免疫応答を低減するように最適化されている。
【0142】
特定の一実施形態では、核酸分子は、配列番号10またはその断片と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする。一部の実施形態では、本開示の核酸分子は、シグナルペプチドまたはその断片を含むFVIIIポリペプチドをコードする。他の実施形態では、核酸分子は、シグナルペプチドを欠くFVIIIポリペプチドをコードする。一部の実施形態では、シグナルペプチドは、配列番号11のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、シグナルペプチドは、配列番号10のアミノ酸1~19を含む。
【0143】
一部の実施形態では、核酸分子は、第1のITR、第2のITR、および標的配列をコードする遺伝子カセットを含み、標的配列は、治療用タンパク質をコードし、治療用タンパク質は、増殖因子を含む。増殖因子は、当技術分野で公知である、任意の増殖因子から選択される。一部の実施形態では、増殖因子は、ホルモンである。他の実施形態では、増殖因子は、サイトカインである。一部の実施形態では、増殖因子は、ケモカインである。
【0144】
一部の実施形態では、増殖因子は、アドレノメジュリン(AM)である。一部の実施形態では、増殖因子は、アンジオポエチン(Ang)である。一部の実施形態では、増殖因子は、自己分泌型運動因子である。一部の実施形態では、増殖因子は、骨形成性タンパク質(BMP)である。一部の実施形態では、BMPは、BMP2、BMP4、BMP5、およびBMP7から選択される。一部の実施形態では、増殖因子は、毛様体神経栄養因子ファミリーメンバーである。一部の実施形態では、毛様体神経栄養因子ファミリーメンバーは、毛様体神経栄養因子(CNTF)、白血病阻害性因子(LIF)、インターロイキン6(IL-6)から選択される。一部の実施形態では、増殖因子は、コロニー刺激因子である。一部の実施形態では、コロニー刺激因子は、マクロファージコロニー刺激因子(m-CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、および顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)から選択される。一部の実施形態では、増殖因子は、表皮増殖因子(EGF)である。一部の実施形態では、増殖因子は、エフリンである。一部の実施形態では、エフリンは、エフリンA1、エフリンA2、エフリンA3、エフリンA4、エフリンA5、エフリンB1、エフリンB2、およびエフリンB3から選択される。一部の実施形態では、増殖因子は、エリスロポエチン(EPO)である。一部の実施形態では、増殖因子は、線維芽細胞増殖因子(FGF)である。一部の実施形態では、FGFは、FGF1、FGF2、FGF3、FGF4、FGF5、FGF6、FGF7、FGF8、FGF9、FGF10、FGF11、FGF12、FGF13、FGF14、FGF15、FGF16、FGF17、FGF18、FGF19、FGF20、FGF21、FGF22、およびFGF23から選択される。一部の実施形態では、増殖因子は、ウシ胎仔ソマトトロフィン(FBS)である。一部の実施形態では、増殖因子は、GDNFファミリーメンバーである。一部の実施形態では、GDNFファミリーメンバーは、グリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)、ニュールツリン、ペルセフィン、およびアルテミンから選択される。一部の実施形態では、増殖因子は、増殖分化因子9(GDF9)である。一部の実施形態では、増殖因子は、肝細胞増殖因子(HGF)である。一部の実施形態では、増殖因子は、ヘパトーマ由来増殖因子(HDGF)である。一部の実施形態では、増殖因子は、インスリンである。一部の実施形態では、増殖因子は、インスリン様増殖因子である。一部の実施形態では、インスリン様増殖因子は、インスリン様増殖因子1(IGF-1)またはIGF-2である。一部の実施形態では、増殖因子は、インターロイキン(IL)である。一部の実施形態では、ILは、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、およびIL-7から選択される。一部の実施形態では、増殖因子は、角化細胞増殖因子(KGF)である。一部の実施形態では、増殖因子は、遊走刺激因子(MSF)である。一部の実施形態では、増殖因子は、マクロファージ刺激タンパク質(MSP)または肝細胞増殖因子様タンパク質(HGFLP)である。一部の実施形態では、増殖因子は、ミオスタチン(GDF-8)である。一部の実施形態では、増殖因子は、ニューレグリンである。一部の実施形態では、ニューレグリンは、ニューレグリン1(NRG1)、NRG2、NRG3、およびNRG4から選択される。一部の実施形態では、増殖因子は、神経栄養因子である。一部の実施形態では、増殖因子は、脳由来神経栄養因子(BDNF)である。一部の実施形態では、増殖因子は、神経増殖因子(NGF)である。一部の実施形態では、NGFは、神経栄養因子3(NT-3)またはNT-4である。一部の実施形態では、増殖因子は、胎盤増殖因子(PGF)である。一部の実施形態では、増殖因子は、血小板由来増殖因子(PDGF)である。一部の実施形態では、増殖因子は、レナラーゼ(RNLS)である。一部の実施形態では、増殖因子は、T細胞増殖因子(TCGF)である。一部の実施形態では、増殖因子は、トロンボポエチン(TPO)である。一部の実施形態では、増殖因子は、形質転換増殖因子である。一部の実施形態では、形質転換増殖因子は、形質転換増殖因子アルファ(TGF-α)またはTGF-βである。一部の実施形態では、増殖因子は、腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)である。一部の実施形態では、増殖因子は、血管内皮増殖因子(VEGF)である。
【0145】
C.発現制御配列
一部の実施形態では、本開示の核酸分子またはベクターは、少なくとも1つの発現制御配列をさらに含む。例えば、本開示の単離核酸分子は、少なくとも1つの発現制御配列に作動可能に連結される。発現制御配列は、例えば、プロモーター配列、またはプロモーター-エンハンサーの組合せでありうる。
【0146】
構成的哺乳動物プロモーターは、以下の遺伝子:ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)、アデノシンデアミナーゼ、ピルビン酸キナーゼのためのプロモーター、ベータ-アクチンプロモーター、および他の構成的プロモーターを含むがこれらに限定されない。真核細胞内で構成的に機能する、例示的なウイルスプロモーターは、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)、サルウイルス(例えば、SV40)、パピローマウイルス、アデノウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ラウス肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、モロニー白血病ウイルスの長鎖末端反復(LTR)、および他のレトロウイルス、ならびに単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼプロモーターに由来するプロモーターを含む。当業者には、他の構成的プロモーターも公知である。本開示の遺伝子発現配列に有用なプロモーターはまた、誘導的プロモーターも含む。誘導的プロモーターは、誘導剤の存在下において発現される。例えば、メタロチオネインプロモーターは、ある特定の金属イオンの存在下において、転写および翻訳を促進するように誘導される。当業者には、他の誘導的プロモーターも公知である。
【0147】
一実施形態では、本開示は、組織特異的プロモーターおよび/またはエンハンサーの制御下における、導入遺伝子の発現を含む。別の実施形態では、プロモーターまたは他の発現制御配列は、肝細胞における、導入遺伝子の発現を選択的に増強する。ある特定の実施形態では、プロモーターまたは他の発現制御配列は、肝細胞、類洞細胞、および/または内皮細胞における、導入遺伝子の発現を選択的に増強する。特定の一実施形態では、プロモーターまたは他の発現制御配列は、内皮細胞における、導入遺伝子の発現を選択的に増強する。ある特定の実施形態では、プロモーターまたは他の発現制御配列は、筋細胞、中枢神経系、眼、肝臓、心臓、またはこれらの任意の組合せにおける、導入遺伝子の発現を選択的に増強する。肝臓特異的プロモーターの例は、マウストランスサイレチンプロモーター(mTTR)、天然ヒト第VIII因子プロモーター、ヒトアルファ1アンチトリプシンプロモーター(hAAT)、ヒトアルブミン最小プロモーター、およびマウスアルブミンプロモーターを含むがこれらに限定されない。一部の実施形態では、本明細書で開示される核酸分子は、mTTRプロモーターを含む。mTTRプロモーターについては、Costaら(1986)、Mol.Cell.Biol.、6:4697において記載されている。FVIIIプロモーターについては、FigueiredoおよびBrownlee、1995、J.Biol.Chem.、270:11828~11838において記載されている。一部の実施形態では、プロモーターは、肝臓特異的プロモーター(例えば、α1アンチトリプシン(AAT)プロモーター)、筋特異的プロモーター(例えば、筋クレアチニンキナーゼ(MCK)プロモーター、ミオシン重鎖アルファ(αMHC)プロモーター、ミオグロビン(MB)プロモーター、およびデスミン(DES)プロモーター)、合成プロモーター(例えば、SPc5-12プロモーター、2R5Sc5-12プロモーター、dMCKプロモーター、およびtMCKプロモーター)、またはこれらの任意の組合せから選択される。
【0148】
一部の実施形態では、導入遺伝子の発現は、肝臓へとターゲティングされる。ある特定の実施形態では、導入遺伝子の発現は、肝細胞へとターゲティングされる。他の実施形態では、導入遺伝子の発現は、内皮細胞へとターゲティングされる。特定の一実施形態では、導入遺伝子の発現は、内因性FVIIIを天然において発現する任意の組織へとターゲティングされる。一部の実施形態では、導入遺伝子の発現は、中枢神経系へとターゲティングされる。ある特定の実施形態では、導入遺伝子の発現は、ニューロンへとターゲティングされる。一部の実施形態では、導入遺伝子の発現は、求心性ニューロンへとターゲティングされる。一部の実施形態では、導入遺伝子の発現は、遠心性ニューロンへとターゲティングされる。一部の実施形態では、導入遺伝子の発現は、介在ニューロンへとターゲティングされる。一部の実施形態では、導入遺伝子の発現は、グリア細胞へとターゲティングされる。一部の実施形態では、導入遺伝子の発現は、星状細胞へとターゲティングされる。一部の実施形態では、導入遺伝子の発現は、希突起膠細胞へとターゲティングされる。一部の実施形態では、導入遺伝子の発現は、ミクログリアへとターゲティングされる。一部の実施形態では、導入遺伝子の発現は、上衣細胞へとターゲティングされる。一部の実施形態では、導入遺伝子の発現は、シュワン細胞へとターゲティングされる。一部の実施形態では、導入遺伝子の発現は、サテライト細胞へとターゲティングされる。一部の実施形態では、導入遺伝子の発現は、筋組織へとターゲティングされる。一部の実施形態では、導入遺伝子の発現は、平滑筋へとターゲティングされる。一部の実施形態では、導入遺伝子の発現は、心筋へとターゲティングされる。一部の実施形態では、導入遺伝子の発現は、骨格筋へとターゲティングされる。一部の実施形態では、導入遺伝子の発現は、眼へとターゲティングされる。一部の実施形態では、導入遺伝子の発現は、光受容体細胞へとターゲティングされる。一部の実施形態では、導入遺伝子の発現は、網膜神経節細胞へとターゲティングされる。
【0149】
本明細書で開示される核酸分子内において有用である、他のプロモーターは、マウストランスサイレチンプロモーター(mTTR)、天然ヒトFVIIIプロモーター、ヒトアルファ1アンチトリプシンプロモーター(hAAT)、ヒトアルブミン最小プロモーター、マウスアルブミンプロモーター、トリステトラプロリン(TTP)プロモーター、CASIプロモーター、CAGプロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、α1アンチトリプシン(AAT)プロモーター、筋クレアチニンキナーゼ(MCK)プロモーター、ミオシン重鎖アルファ(αMHC)プロモーター、ミオグロビン(MB)プロモーター、デスミン(DES)プロモーター、SPc5-12プロモーター、2R5Sc5-12プロモーター、dMCKプロモーター、tMCKプロモーター、ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)プロモーター、もしくはヒトアルファ1アンチトリプシン(A1AT)プロモーター、またはこれらの任意の組合せを含む。
【0150】
一部の実施形態では、本明細書で開示される核酸分子は、トランスサイレチン(TTR)プロモーターを含む。一部の実施形態では、プロモーターは、マウストランスサイレチン(mTTR)プロモーターである。mTTRプロモーターの非限定例は、参照によりその全体において本明細書に組み入れられる、米国公開第US2019/0048362号において開示されている、mTTR202プロモーター、mTTR202optプロモーター、およびmTTR482プロモーターを含む。一部の実施形態では、プロモーターは、肝臓特異的改変マウストランスサイレチン(mTTR)プロモーターである。一部の実施形態では、プロモーターは、肝臓特異的改変マウストランスサイレチン(mTTR)プロモーターである、mTTR482プロモーターである。mTTR482プロモーターの例については、Kyostio-Mooreら(2016)、Mol Ther Methods Clin Dev.、3:16006;およびNambiar B.ら(2017)、Hum Gene Ther Methods、28(1):23~28において記載されている。一部の実施形態では、プロモーターは、配列番号16の核酸配列を含む、肝臓特異的改変マウストランスサイレチン(mTTR)プロモーターである。一部の実施形態では、組織特異的プロモーターは、ヒトアルファ1アンチトリプシン(A1AT)プロモーターである。一部の実施形態では、組織特異的プロモーターは、配列番号36のヌクレオチド配列を含む。
【0151】
治療効能を達成するように、発現レベルは、1つまたはそれ以上のエンハンサーエレメントを使用して、さらに増強される。1つまたはそれ以上のエンハンサーは、単独で施される場合もあり、1つまたはそれ以上のプロモーターエレメントと併せて施される場合もある。典型的に、発現制御配列は、複数のエンハンサーエレメント、および組織特異的プロモーターを含む。一実施形態では、エンハンサーは、α-1-マイクログロビン/ビクニンエンハンサーの、1つまたはそれ以上のコピーを含む(Rouetら(1992)、J.Biol.Chem.、267:20765~20773;Rouetら(1995)、Nucleic Acids Res.、23:395~404;Rouetら(1998)、Biochem.J.334:577~584;Illら(1997)、Blood Coagulation Fibrinolysis、8:S23~S30)。一部の実施形態では、エンハンサーは、HNF1、(センス)-HNF3、(センス)-HNF4、(アンチセンス)-HNF1、(アンチセンス)-HNF6、(センス)-EBP、(アンチセンス)-HNF4(アンチセンス)を含む、Enh1を伴う、EBP、DBP、HNF1、HNF3、HNF4、HNF6などの肝臓特異的転写因子結合性部位に由来する。
【0152】
一部の実施形態では、エンハンサーエレメントは、1つまたは2つの改変プロトロンビンエンハンサー(pPrT2)、1つまたは2つのアルファ1ミクロビクニンエンハンサー(A1MB2)、改変マウスアルブミンエンハンサー(mEalb)、B型肝炎ウイルスエンハンサーII(HE11)、またはCRM8エンハンサーを含む。一部の実施形態では、A1MB2エンハンサーは、国際出願第PCT/US2019/055917号において開示されているエンハンサーである。一部の実施形態では、エンハンサーエレメントは、A1MB2である。一部の実施形態では、エンハンサーエレメントは、複数コピーのA1MB2エンハンサー配列を含む。一部の実施形態では、A1MB2エンハンサーは、FVIIIポリペプチドをコードする核酸配列に対して5’側に配置される。一部の実施形態では、A1MB2エンハンサーは、mTTRプロモーターなどのプロモーター配列に対して5’側に配置される。一部の実施形態では、エンハンサーエレメントは、配列番号15の核酸配列を含む、A1MB2エンハンサーである。
【0153】
一部の実施形態では、本明細書で開示される核酸分子は、イントロンまたはイントロン配列を含む。一部の実施形態では、イントロン配列は、自然発生イントロン配列である。一部の実施形態では、イントロン配列は、合成配列である。一部の実施形態では、イントロン配列は、自然発生イントロン配列に由来する。一部の実施形態では、イントロン配列は、ハイブリッド合成イントロンまたはキメライントロンである。一部の実施形態では、イントロン配列は、は、ニワトリベータ-アクチンイントロン/ウサギベータ-グロビンイントロンからなり、5つの既存のATG配列を消失させて、偽翻訳開始を低減するように修飾されたキメライントロンである。一部の実施形態では、キメライントロンは、配列番号17の核酸配列を含む。一部の実施形態では、イントロン配列は、FVIIIポリペプチドをコードする核酸配列に対して5’側に配置される。一部の実施形態では、キメライントロンは、mTTRプロモーターなどのプロモーター配列に対して5’側に配置される。
【0154】
一部の実施形態では、本明細書で開示される核酸分子は、転写後調節エレメントを含む。ある特定の実施形態では、転写後調節エレメントは、突然変異型ウッドチャック肝炎ウイルス調節エレメント(WPRE)を含む。WPREは、ウイルスベクターにより送達される導入遺伝子の発現を増強すると考えられる。WPREの例については、Zuffereyら(1999)、J Virol.、73(4):2886~2892;Loebら(1999)、Hum Gene Ther.、10(14):2295~2305において記載されている。一部の実施形態では、WPREは、FVIIIポリペプチドをコードする核酸配列に対して3’側に配置される。一部の実施形態では、WPREは、配列番号18の核酸配列を含む。
【0155】
一部の実施形態では、本明細書で開示される核酸分子は、転写終結因子を含む。一部の実施形態では、転写終結因子は、ポリアデニル化(ポリ(A))配列である。転写終結因子の非限定例は、ウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナル(BGHpA)、サルウイルス40ポリアデニル化シグナル(SV40pA)、または合成ポリアデニル化シグナルに由来する転写終結因子を含む。一実施形態では、3’UTRポリ(A)テールは、アクチンポリ(A)部位を含む。一実施形態では、3’UTRポリ(A)テールは、ヘモグロビンポリ(A)部位を含む。一部の実施形態では、転写終結因子は、BGHpAである。BGHpA転写終結因子の例については、Woychikら(1984)、PNAS、81:3944~3948において記載されている。一部の実施形態では、転写終結因子は、FVIIIポリペプチドをコードする核酸配列をコードする遺伝子カセットの3’末端に配置される。一部の実施形態では、転写終結因子は、配列番号19の核酸配列を含むBGHpAである。
【0156】
一部の実施形態では、本明細書で開示される核酸分子は、1つまたはそれ以上のDNA核ターゲティング配列(DTS)を含む。DTSは、このような配列を含有するDNA分子の、核への移動を促進する。ある特定の実施形態では、DTSは、SV40エンハンサー配列を含む。ある特定の実施形態では、DTSは、c-Mycエンハンサー配列を含む。一部の実施形態では、核酸分子は、第1のITRと第2のITRとの間に配置されたDTSを含む。一部の実施形態では、核酸分子は、第1のITRに対して3’側に配置され、かつ、導入遺伝子(例えば、FVIIIタンパク質)に対して5’側に配置されたDTSを含む。一部の実施形態では、核酸分子は、導入遺伝子に対して3’側に配置され、かつ、核酸分子上の第2のITRに対して5’側に配置されたDTSを含む。
【0157】
一部の実施形態では、本明細書で開示される核酸分子は、toll様受容体9(TLR9)阻害配列を含む。例示的TLR9阻害配列については、例えば、Trieuら(2006)、Crit Rev Immunol.、26(6):527~44;Ashmanら、Int’l Immunology、23(3):203~14において記載されている。
【0158】
一部の実施形態では、本明細書で開示される核酸分子は、HBoV1の非構造タンパク質をコードする核酸配列を含む。「非構造タンパク質」とは、HBoV1により発現される、6つのタンパク質、すなわち、NS1、NS1-70、NS2、NS3、NS4、およびNP1のうちのいずれかを指す。非構造タンパク質は、単一のウイルスプレmRNAの、選択的スプライシングおよびポリアデニル化を介して作出されるmRNA転写物により発現される。NS1~NS4のタンパク質は、同じオープンリーディングフレーム(ORF)の、異なる領域内においてコードされる。NS1は、HBoV1の複製起点に結合し、おそらく、ローリングヘアピンの複製時に、起点の一本鎖DNA(ssDNA)にニックを入れる。NS1は、真核細胞内におけるHBoV1 ITR媒介ベクターの発現において重要な役割を果たす。一実施形態では、HBoV1 NS1を発現する発現構築物を作出した。一部の実施形態では、本明細書で開示される核酸分子は、Shenら(2015)、J Virology、89(19):10097~10109において記載されている非構造タンパク質をコードする。
【0159】
一部の実施形態では、核酸分子は、マイクロRNA(miRNA)結合性部位を含む。一実施形態では、miRNA結合性部位は、miR-142-3pに対する、miRNA結合性部位である。他の実施形態では、miRNA結合性部位は、Rennieら(2016)、RNA Biol.、13(6):554~560により記載されている、miRNA結合性部位である。
【0160】
バキュロウイルス内における、ceDNAの作製
バキュロウイルスは、昆虫に感染する、最も顕著なウイルスである。それらの大部分が、鱗翅目の昆虫に由来する、500を超えるバキュロウイルス分離株が同定されている。2つの、最も一般的な分離株は、オートグラファカリフォルニカ多重核多角体病ウイルス(Autographa californica multiple nucleopolyhedrovirus)(AcMNPV)、およびカイコ核多角体病ウイルス(BmNPV)である。発現ベクターの中で、バキュロウイルスは、それらの並外れた遺伝子カーゴ容量(最大で、数十kb、一部では、最大で、100kbと報告している)のために、傑出している。この導入遺伝子容量は、組換えAAVベクター(最大で、38kbの発現カセット)の作製のために使用されている。しかし、遺伝子治療のためのウイルスベクターまたは非ウイルスベクターを作製する場合、いくつかのバキュロウイルス発現ベクターは、昆虫宿主細胞への感染を要求されることが多い。バキュロウイルス発現ベクターの各々の作出は、時間がかかり、作製費用がかさむことから、大半のバキュロウイルス発現ベクター系の著明な欠点を表す。しかし、既存のバクミドツールにより達せられる、複数の導入遺伝子を収容するように、特異的にデザインされた、新たな多用途型バキュロウイルスシャトルベクター(バクミド)が作出された。この多用途型バクミド(「BIVVBac」と呼ばれる)はまた、in vivoにおける遺伝子治療のほか、任意の所望のタンパク質、例えば、組換えタンパク質の作製のための、rAAVベクターの作製のためにも使用される。このバクミド発現系については、参照によりその全体において本明細書に組み込まれる、米国特許出願第63/069,073号において、さらに記載されている。
【0161】
ある特定の実施形態では、開示される核酸分子は、「BIVVBac」組換えバクミドを含む、バキュロウイルス発現ベクター系を使用して作製される。ある特定の実施形態では、BIVVBacは、少なくとも2つの外来配列挿入部位を含む、遺伝子改変AcMNPVである。少なくとも2つの外来配列挿入部位を含むバクミドを含む、バキュロウイルス発現ベクター系は、作出される必要がある、バキュロウイルス発現ベクターの総数の低減を可能とする。
【0162】
ある特定の実施形態では、BIVVBacは、第1の外来配列挿入部位および第2の外来配列挿入部位を含む。外来配列(例えば、異種配列、異種遺伝子)の挿入を駆動するのに、異なる機構を利用すると、第1の外来配列挿入部位と第2の外来配列挿入部位は異なりうる。外来配列の挿入は、当技術分野で公知の任意の方法により駆動される。例えば、外来配列は、転移により挿入される場合もあり、部位特異的組換えにより挿入される場合もある。外来配列の挿入時に、レポーター遺伝子が破壊されるよう、外来配列挿入部位は、レポーター遺伝子内に組み入れられるようにデザインされる。レポーター遺伝子の破壊は、外来配列がその中に挿入されたバクミドクローンを同定する一助となりうる。このような実施形態では、外来配列挿入部位が、インフレームにおいて、レポーター遺伝子と融合されるか、またはレポーター遺伝子が、インフレームにおいて、外来配列挿入部位と融合される。
【0163】
ある特定の実施形態では、第1の外来配列挿入部位は、転移を介して、外来配列の挿入を可能とする。ある特定の実施形態では、第1の外来配列挿入部位は、トランスポゾンの挿入のための、優先的標的部位を含む。ある特定の実施形態では、第1の外来配列挿入部位は、トランスポゾンの挿入のための、優先的標的部位である。ある特定の実施形態では、第1の外来配列挿入部位は、細菌トランスポゾンのための接合部位である、優先的標的部位である。当業者には、適切な細菌トランスポゾン、およびそれらの対応する接合部位が公知である。例えば、トランスポゾンであるTn7は、細菌染色体の特異的部位(attTn7)へと、高頻度で転移するその能力について公知である。したがって、ある特定の実施形態では、第1の外来配列挿入部位は、Tn7トランスポゾン(例えば、attTn7)のための接合部位である、優先的標的部位である。一部の実施形態では、第1の外来配列挿入部位は、mini-Tn7トランスポゾン(例えば、Tn7転移因子による認識およびTn7トランスポゾンの挿入のために要求される最小DNA配列である、mini-attTn7)のための接合部位である、優先的標的部位である。
【0164】
ある特定の実施形態では、第2の外来配列挿入部位は、部位特異的組換えを介して、外来配列の挿入を可能とする。ある特定の実施形態では、第2の外来配列挿入部位は、部位特異的組換えイベントを媒介することが可能な、優先的標的部位を含む。当業者には、多様な部位特異的リコンビナーゼ技術が公知である。例えば、Cre-loxP系は、loxP部位と呼ばれる、34塩基対のDNA配列を認識することが可能である、Creリコンビナーゼを介する、部位特異的組換えを媒介する。したがって、第2の外来配列挿入部位は、Cre媒介型組換えのための、優先的標的部位である。ある特定の実施形態では、第2の外来配列挿入部位は、Creリコンビナーゼにより認識することが可能な、loxP部位またはこれらの変異体を含む、優先的標的部位である。
【0165】
一部の実施形態では、組換えバクミドは、バクミドが、そのコードタンパク質の発現の低減を呈するように、変異体VP80遺伝子を含む。例えば、本明細書では、VP80遺伝子遺伝子座内の挿入および/または欠失に起因する、不活化VP80遺伝子を含む、バキュロウイルスDNA骨格が開示される。一部の実施形態では、組換えバクミドは、米国特許出願第US63/069,115号において開示されているバクミドを含む。
【0166】
ある特定の実施形態では、ceDNAは、単一のバキュロウイルス発現ベクターを使用して作製される。この「OneBAC」アプローチでは、単一のバキュロウイルス発現ベクター(例えば、BIVVBac)は、バキュロウイルス系内のceDNA作製に要求される、全ての必須エレメントをコードし、潜在的に、ceDNA作製のための、任意のバキュロウイルス許容性細胞株において使用される。このアプローチは、
図1Aに描示される通りである。
【0167】
ある特定の実施形態では、ceDNAは、複数のバキュロウイルス発現ベクターを使用して作製される。この「TwoBAC」アプローチでは、ceDNA作製に要求される必須エレメントは、2つの異なるバキュロウイルス(例えば、2つのBIVVBacバクミド)へと挿入され、潜在的に、バキュロウイルス感染に許容性である任意の細胞株における共感染のために使用される。このアプローチは、
図1Bに描示される通りである。
【0168】
ある特定の実施形態では、ceDNAは、安定細胞株により作製される。このアプローチでは、ceDNA作製に要求される必須エレメントは、バキュロウイルス系の、いずれの構成要素へも挿入される。このアプローチは、
図1Cに描示される通りである。安定細胞株は、バキュロウイルス遺伝子プロモーター(例えば、バキュロウイルス構成的遺伝子プロモーター)の制御下における、タンパク質コード配列の安定的組込みにより作出される。ある特定の実施形態では、安定細胞株は、昆虫安定細胞株である。
【0169】
当技術分野では、核酸の、様々な宿主細胞株への安定的組込みのための方法が公知である。例えば、選択(例えば、選択用マーカーの使用を介する)の反復は、選択用マーカーを含有する核酸(ならびにAAVのcap遺伝子およびrep遺伝子、ならびに/またはrAAVゲノム)を組み込んだ細胞について選択するのに使用される。他の実施形態では、核酸は、プロデューサー細胞株を作出するように、細胞株へと、部位特異的に組み込まれる。当技術分野では、FLP/FRT(例えば、O’Gorman,S.ら(1991)、Science、251:1351~1355を参照されたい)、Cre/loxP(例えば、Sauer,B.およびHenderson,N.(1988)、Proc.Natl.Acad.Sci.、85:5166~5170を参照されたい)、およびphi C31-att(例えば、Groth,A.C.ら(2000)、Proc.Natl.Acad.Sci.、97:5995~6000を参照されたい)など、いくつかの部位特異的組換え系が公知である。
【0170】
本開示はまた、本開示の核酸分子によりコードされるポリペプチドも提供する。一部の実施形態では、本開示のポリペプチドは、本明細書で開示される単離核酸分子を含むベクターによりコードされる。さらに他の実施形態では、本開示のポリペプチドは、本明細書で開示される単離核酸分子を含む宿主細胞により作製される。
【0171】
宿主細胞
本開示はまた、本開示の核酸分子またはベクターを含む宿主細胞も提供する。本明細書で使用される、「形質転換」という用語は、広義において、レシピエント宿主細胞への、DNAの導入であって、遺伝子型を変化させ、結果として、レシピエント細胞の変化をもたらす導入を指すように使用されるものとする。
【0172】
「宿主細胞」とは、組換えDNA法を使用して構築され、少なくとも1つの異種遺伝子をコードするベクターにより形質転換された細胞を指す。本開示の宿主細胞は、好ましくは、哺乳動物由来であり;最も好ましくは、ヒト由来またはマウス由来である。当業者は、それらの目的に最も良く適した、特定の宿主細胞株を、優先的に決定する能力を伴うと見なされている。例示的宿主細胞株は、CHO、DG44、およびDUXB11(チャイニーズハムスター卵巣細胞株、DHFR欠失)、HELA(ヒト子宮頚癌)、CVI(サル腎臓細胞株)、COS(SV40T抗原を伴う、CVI細胞の派生細胞)、R1610(チャイニーズハムスター線維芽細胞)BALBC/3T3(マウス線維芽細胞)、HAK(ハムスター腎臓細胞株)、SP2/O(マウス骨髄腫)、P3x63-Ag8.653(マウス骨髄腫)、BFA-1c1BPT(ウシ内皮細胞)、RAJI(ヒトリンパ球)、PER.C6(登録商標)、NS0、CAP、BHK21、およびHEK293(ヒト腎臓)を含むがこれらに限定されない。特定の一実施形態では、宿主細胞は、CHO細胞、HEK293細胞、BHK21細胞、PER.C6(登録商標)細胞、NS0細胞、CAP細胞、およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される。一部の実施形態では、本開示の宿主細胞は、昆虫由来である。特定の一実施形態では、宿主細胞は、SF9細胞である。宿主細胞株は、典型的に、商業サービスである、American Tissue Culture Collection、または公刊された文献から入手可能である。
【0173】
本開示の核酸分子またはベクターの、宿主細胞への導入は、当業者に周知である、多様な技法により達せられる。これらは、トランスフェクション(電気泳動および電気穿孔を含む)、プロトプラスト融合、リン酸カルシウム沈殿、エンベロープDNAを伴う細胞融合、マイクロインジェクション、および無傷ウイルスによる感染を含むがこれらに限定されない。Ridgway,A.A.G.「Mammalian Expression Vectors」、24.2章、470~472頁、「Vectors」、RodriguezおよびDenhardt編(Butterworths、Boston、Mass.1988)を参照されたい。最も好ましくは、宿主へのプラスミド導入は、電気穿孔を介する。形質転換細胞は、軽鎖および重鎖の作製に適切な条件下において増殖させ、重鎖タンパク質および/または軽鎖タンパク質の合成についてアッセイされる。例示的アッセイ法は、酵素免疫測定アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、または蛍光活性化細胞分取解析(FACS)、免疫組織化学などを含む。
【0174】
本開示の単離核酸分子またはベクターを含む宿主細胞は、適切な増殖培地中において増殖させる。本明細書で使用される、「適切な増殖培地」という用語は、細胞の増殖に要求される栄養物質を含有する培地を意味する。細胞の増殖に要求される栄養物質は、炭素供給源、窒素供給源、必須アミノ酸、ビタミン、ミネラル、および増殖因子を含みうる。場合により、培地は、1つまたはそれ以上の選択因子を含有しうる。場合により、培地は、子ウシ血清またはウシ胎仔血清(FCS)を含有しうる。一実施形態では、培地は、実質的に、IgGを含有しない。増殖培地は、一般に、例えば、DNA構築物上の選択用マーカーにより補完されるか、またはDNA構築物を共トランスフェクトされた、薬物選択または必須栄養物質の欠損により、DNA構築物を含有する細胞について選択するであろう。培養された哺乳動物細胞は、一般に、市販の血清含有培地または無血清培地(例えば、MEM、DMEM、DMEM/F12)中において増殖させる。一実施形態では、培地は、CDoptiCHO(Invitrogen、Carlsbad、CA.)である。別の実施形態では、培地は、CD17(Invitrogen、Carlsbad、CA.)である。使用される特定の細胞株に適切な培地の選択は、当業者の水準内にある。
【0175】
本開示の態様は、本明細書で記載される核酸分子をクローニングする方法であって、複雑な二次構造が可能な核酸分子を、適切なベクターへと挿入する工程と、結果として得られるベクターを、適切な細菌宿主株へと導入する工程とを含む方法をもたらす。当技術分野で公知の通り、核酸の複雑な二次構造(例えば、長い回文領域)は、不安定であり、細菌宿主株内のクローニングが困難な場合がある。例えば、第1のITRおよび第2のITR(例えば、AAV以外のパルボウイルスITR、例えば、HBoV1 ITR)を含む、本開示の核酸分子は、常套的方法を使用するクローニングが困難な場合がある。長いDNA回文配列は、DNAの複製を阻害し、大腸菌、バチルス属、連鎖球菌属、ストレプトミセス属、出芽酵母、マウス、およびヒトのゲノム内において不安定である。これらの影響は、鎖内塩基対合による、ヘアピンまたは十字型構造の形成から生じる。大腸菌内では、DNA複製の阻害は、SbcC突然変異体またはSbcD突然変異体において、著明に克服される場合がある。SbcDは、SbcCD複合体のヌクレアーゼサブユニットであり、SbcCは、ATPアーゼサブユニットである。大腸菌SbcCD複合体は、長い回文配列の複製を阻止する一因となる、エクソヌクレアーゼ複合体である。SbcCD複合体は、ATP依存性二本鎖DNAエクソヌクレアーゼ活性、およびATP非依存性一本鎖DNAエンドヌクレアーゼ活性を伴う核である。SbcCDは、DNA回文配列を認識し、生じるヘアピン構造を攻撃することにより、複製フォークを崩壊させうる。
【0176】
ある特定の実施形態では、適切な細菌宿主株は、十字型DNA構造を分解することが不可能である。ある特定の実施形態では、適切な細菌宿主株は、SbcCD複合体内の破壊を含む。一部の実施形態では、SbcCD複合体内の破壊は、SbcC遺伝子内および/またはSbcD遺伝子内の遺伝子破壊を含む。ある特定の実施形態では、SbcCD複合体内の破壊は、SbcC遺伝子内の遺伝子破壊を含む。当技術分野では、SbcC遺伝子内の遺伝子破壊を含む、多様な細菌宿主株が公知である。例えば、限定せずに述べると、細菌宿主株である、PMC103は、遺伝子型である、sbcC、recD、mcrA、ΔmcrBCFを含み;細菌宿主株である、PMC107は、遺伝子型である、recBC、recJ、sbcBC、mcrA、ΔmcrBCFを含み;細菌宿主株である、SUREは、遺伝子型である、recB、recJ、sbcC、mcrA、ΔmcrBCF、umuC、uvrCを含む。したがって、一部の実施形態では、本明細書で記載される核酸分子をクローニングする方法は、複雑な二次構造が可能な核酸分子を、適切なベクターへと挿入する工程と、結果として得られるベクターを、宿主株である、PMC103、PMC107、またはSUREへと導入する工程とを含む。ある特定の実施形態では、本明細書で記載される核酸分子をクローニングする方法は、複雑な二次構造が可能な核酸分子を、適切なベクターへと挿入する工程と、結果として得られるベクターを、宿主株であるPMC103へと導入する工程とを含む。
【0177】
当技術分野では、適切なベクターが公知である。ある特定の実施形態では、本開示のクローニング法における使用に適するベクターは、低コピー量ベクターである。ある特定の実施形態では、本開示のクローニング法における使用に適するベクターは、pBR322である。
【0178】
したがって、本開示は、核酸分子をクローニングする方法であって、複雑な二次構造が可能な核酸分子を、適切なベクターへと挿入する工程と、結果として得られるベクターを、SbcCD複合体内の破壊を含む、細菌宿主株へと導入する工程とを含み、核酸分子は、第1の逆位末端反復(ITR)、および第2のITRを含み、第1のITRおよび/または第2のITRは、配列番号1もしくは2に示されたヌクレオチド配列、またはこれらの機能的誘導体と少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または100%同一であるヌクレオチド配列を含む方法を提供する。
【0179】
FVIIIポリペプチドの作製
本開示はまた、本開示の核酸分子によりコードされるポリペプチドも提供する。一部の実施形態では、本開示のポリペプチドは、本明細書で開示される単離核酸分子を含むベクターによりコードされる。さらに他の実施形態では、本開示のポリペプチドは、本開示の単離核酸分子を含む宿主細胞により作製される。
【0180】
本開示の最適化核酸分子から、FVIIIタンパク質を組換えにより作製するために、様々な方法が利用可能である。所望の配列を有するポリヌクレオチドは、デノボの固相DNA合成により作製される場合もあり、既に製造されたポリヌクレオチドの、PCRによる突然変異誘発を介して作製される場合もある。オリゴヌクレオチド媒介突然変異誘発は、ヌクレオチド配列内に、置換、挿入、欠失、または変更(例えば、コドンの変更)を製造するための1つの方法である。例えば、出発DNAは、所望の突然変異をコードするオリゴヌクレオチドを、一本鎖DNA鋳型とハイブリダイズさせることにより変更される。ハイブリダイゼーションの後、DNAポリメラーゼは、オリゴヌクレオチドプライマーを組み込む、鋳型の第2の相補鎖の全体を合成するのに使用される。一実施形態では、遺伝子操作、例えば、プライマーベースのPCR突然変異誘発は、本開示のポリヌクレオチドを作製するための、本明細書で規定される変更を組み込むのに十分である。
【0181】
組換えタンパク質の作製のために、FVIIIタンパク質をコードする、本開示の最適化ポリヌクレオチド配列は、適切な発現媒体、すなわち、挿入されたコード配列の転写および翻訳に必要なエレメント、またはRNAウイルスベクターの場合、複製および翻訳に必要なエレメントを含有するベクターへと挿入される。
【0182】
本開示のポリヌクレオチド配列は、ベクターへと、適正なリーディングフレーム内に挿入される。次いで、発現ベクターは、ポリペプチドを発現する適切な標的細胞にトランスフェクトされる。当技術分野で公知のトランスフェクション法は、リン酸カルシウム沈殿(Wiglerら、1978、Cell、14:725)、および電気穿孔(Neumannら、1982、EMBO J.、1:841)を含むがこれらに限定されない。本明細書で記載されるFVIIIタンパク質を、真核細胞内において発現させるのに、様々な宿主発現ベクター系が利用される。一実施形態では、真核細胞は、哺乳動物細胞(例えば、HEK293細胞、PER.C6(登録商標)細胞、CHO細胞、BHK細胞、Cos細胞、HeLa細胞)を含む動物細胞である。本開示のポリヌクレオチド配列はまた、FVIIIタンパク質の分泌を可能とするシグナル配列もコードしうる。当業者は、FVIIIタンパク質が翻訳されるときに、シグナル配列は、細胞により切断されて、成熟タンパク質を形成することを理解するであろう。当技術分野では、多様なシグナル配列、例えば、天然第VII因子シグナル配列、天然第IX因子シグナル配列、およびマウスIgK軽鎖シグナル配列が公知である。代替的に、シグナル配列が組み入れられない場合、FVIIIタンパク質は、細胞を溶解させることにより回収される。
【0183】
本開示のFVIIIタンパク質は、齧歯動物、ヤギ、ヒツジ、ブタ、またはウシなどのトランスジェニック動物において合成される。「トランスジェニック動物」という用語は、外来遺伝子を、それらのゲノムへと組み込んだ、非ヒト動物を指す。この遺伝子は、生殖細胞系列組織内に存在するため、親から、子孫へと受け渡される。外因性遺伝子は、単一細胞胚へと導入される(Brinsterら、1985、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、82:4438)。当技術分野では、免疫グロブリン分子を産生するトランスジェニック動物を含む、トランスジェニック動物を作製する方法が公知である(Wagnerら、1981、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、78:6376;McKnightら、1983、Cell、34:335;Brinsterら、1983、Nature、306:332;Ritchieら、1984、Nature、312:517;Baldassarreら、2003、Theriogenology、59:831;Roblら、2003、Theriogenology、59:107;Malassagneら、2003、Xenotransplantation10(3):267)。
【0184】
発現ベクターは、組換え作製タンパク質の、容易な精製または同定を可能とするタグをコードしうる。例は、ハイブリッドタンパク質が作製され;pGEXベクターが、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)タグを伴うタンパク質を発現させるのに使用されるように、本明細書で記載されるFVIIIタンパク質のコード配列が、lac Zコード領域とインフレームにおいて、ベクターへとライゲーションされたベクターである、pUR278(Rutherら、1983、EMBO J.、2:1791)を含むがこれらに限定されない。これらのタンパク質は、通例、可溶性であり、グルタチオン-アガロースビーズへの吸着に続く、遊離グルタチオンの存在下における溶出により、細胞から、容易に精製される。ベクターは、精製の後における、タグの容易な除去のための切断部位(例えば、PreCission Protease(Pharmacia、Peapack、N.J.))を含む。
【0185】
本開示の目的で、多数の発現ベクター系が援用される。これらの発現ベクターは、典型的に、宿主生物内において、エピソームとして、または宿主染色体DNAの不可分の部分として複製可能である。発現ベクターは、プロモーター(例えば、天然会合プロモーターまたは異種プロモーター)、エンハンサー、シグナル配列、スプライスシグナル、エンハンサーエレメント、および転写終結配列を含むがこれらに限定されない発現制御配列を含みうる。好ましくは、発現制御配列は、真核宿主細胞を形質転換するか、またはこれらにトランスフェクトすることが可能なベクター内の、真核プロモーター系である。発現ベクターはまた、ウシパピローマウイルス、ポリオーマウイルス、アデノウイルス、ワクシニアウイルス、バキュロウイルス、レトロウイルス(RSV、MMTVまたはMOMLV)、サイトメガロウイルス(CMV)、またはSV40ウイルスなどの動物ウイルスに由来するDNAエレメントも利用しうる。他の発現ベクターは、内部にリボソーム結合性部位を伴う、ポリシストロニック系の使用を伴う。
【0186】
一般に、発現ベクターは、所望のDNA配列により形質転換された細胞の検出を可能とする、選択マーカー(例えば、アンピシリン耐性、ヒグロマイシン耐性、テトラサイクリン耐性、またはネオマイシン耐性)(例えば、Itakuraら、米国特許第4,704,362号を参照されたい)を含有する。DNAを、それらの染色体へと組み込んだ細胞は、トランスフェクトされた宿主細胞の選択を可能とする、1つまたはそれ以上のマーカーを導入することにより選択される。マーカーは、栄養要求性宿主に、原栄養性をもたらす場合もあり、殺生物剤(例えば、抗生剤)耐性をもたらす場合もあり、銅などの重金属に対する耐性をもたらす場合もある。選択用マーカー遺伝子は、発現されるDNA配列へと、直接連結される場合もあり、共形質転換により、同じ細胞へと導入される場合もある。
【0187】
最適化FVIII配列を発現させるために有用なベクターの例は、NEOSPLA(米国特許第6,159,730号)である。このベクターは、サイトメガロウイルスプロモーター/エンハンサー、マウスベータグロビン主要プロモーター、SV40複製起点、ウシ成長ホルモンポリアデニル化配列、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼエクソン1およびエクソン2、ジヒドロ葉酸レダクターゼ遺伝子および同リーダー配列を含有する。このベクターは、可変領域遺伝子および定常領域遺伝子の組込み時における、極めて高レベルの抗体の発現、細胞のトランスフェクションに続く、G418含有培地中の選択およびメトトレキサートの増幅を結果としてもたらすことが見出されている。ベクター系についてはまた、それらの各々が、参照によりその全体において本明細書に組み入れられる、米国特許第5,736,137号および同第5,658,570号においても教示されている。この系は、例えば、1日当たり細胞1個当たり>30pgの高発現レベルをもたらす。他の例示的ベクター系も、例えば、米国特許第6,413,777号において開示されている。
【0188】
他の実施形態では、本開示のポリペプチドは、ポリシストロニック構築物を使用して発現される。これらの発現系では、多量体結合性タンパク質の、複数のポリペプチドなど、複数の目的の遺伝子産物が、単一のポリシストロニック構築物から作製される。これらの系は、真核宿主細胞内において、比較的高レベルのポリペプチドを作製するのに、内部リボソーム侵入部位(IRES)を使用するので有利である。適合性のIRES配列は、これもまた、本明細書に組み入れられる、米国特許第6,193,980号において開示されている。
【0189】
より一般には、ポリペプチドをコードする、ベクターまたはDNA配列が製造されると、発現ベクターは、適切な宿主細胞へと導入される。すなわち、宿主細胞は、形質転換される。プラスミドの、宿主細胞への導入は、上記で論じられた通り、当業者に周知である、多様な技法により達せられる。形質転換細胞は、FVIIIポリペプチドの作製に適切な条件下において増殖させ、FVIIIポリペプチドの合成についてアッセイされる。例示的アッセイ法は、酵素免疫測定アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、または蛍光活性化細胞分取解析(FACS)、免疫組織化学などを含む。
【0190】
組換え宿主からの、ポリペプチドの単離のための工程についての記載において、「細胞」および「細胞培養物」という用語は、そうでないことが明確に指定されない限りにおいて、ポリペプチドの供給源を表示するように、互換的に使用される。言い換えると、「細胞」からの、ポリペプチドの回収は、スピンダウンされた全細胞からの回収を意味する場合もあり、培地および懸濁細胞の両方を含有する細胞培養物を意味する場合もある。
【0191】
タンパク質発現のために使用される宿主細胞株は、本開示の単離核酸は、ヒト細胞内の発現のために最適化されるので、好ましくは、哺乳動物由来であり;最も好ましくは、ヒト由来またはマウス由来である。例示的宿主細胞株については、上記で記載されている。FVIII活性を伴うポリペプチドを作製する方法についての、一実施形態では、宿主細胞は、HEK293細胞である。FVIII活性を伴うポリペプチドを作製する方法についての、別の実施形態では、宿主細胞は、CHO細胞である。
【0192】
本開示のポリペプチドをコードする遺伝子はまた、細菌または酵母または植物細胞など、非哺乳動物細胞内においても発現される。この点で、細菌など、哺乳動物以外の多様な単細胞微生物、すなわち、培養物中の増殖または発酵が可能な微生物もまた形質転換できることが察知されるであろう。形質転換を受けやすい細菌は、大腸菌またはサルモネラ属の株などの腸内細菌科;枯草菌などのバチルス科;肺炎球菌属;連鎖球菌属およびインフルエンザ菌のメンバーを含む。細菌内において発現されると、ポリペプチドは、典型的に、封入体の一部となることも、さらに察知されるであろう。ポリペプチドは、単離され、精製され、次いで、機能的分子へとアセンブルされなければならない。
【0193】
代替的に、本開示の最適化ヌクレオチド配列は、トランスジェニック動物のゲノムへの導入、および、後続する、トランスジェニック動物のミルク中における発現のために、導入遺伝子内に組み込まれる(例えば、Deboerら、US5,741,957;Rosen、US5,304,489;およびMeadeら、US5,849,992を参照されたい)。適切な導入遺伝子は、カゼインまたはベータラクトブロブリンなどの乳腺特異的遺伝子に由来するプロモーターおよびエンハンサーと、作動可能に連結されたポリペプチドのコード配列を含む。
【0194】
in vitroにおける作製は、スケールアップが、所望のポリペプチドを大量にもたらすことを可能とする。当技術分野では、組織培養条件下において、哺乳動物細胞を培養するための技法が公知であり、例えば、エアリフト型反応槽内、もしくは連続攪拌型反応槽内における、均質の懸濁培養物、または例えば、中空糸内、マイクロカプセル内、アガロースマイクロビーズ上、もしくはセラミックカートリッジ上に、固定化もしくは封入された細胞培養物を含む。必要であり、かつ/または所望である場合、ポリペプチドの溶液は、例えば、合成ヒンジ領域ポリペプチドの優先的生合成の後、または本明細書で記載されるHICクロマトグラフィー工程の前もしくは後において、常套的クロマトグラフィー法例えば、ゲル濾過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、DEAE-セルロースを介するクロマトグラフィー、または(免疫)アフィニティークロマトグラフィーにより精製される。場合により、下流における精製を容易とするように、アフィニティータグ配列(例えば、His(6)タグ)が、ポリペプチド配列へと接合されるか、またはポリペプチド配列内に組み入れられる場合がある。
【0195】
発現されると、FVIIIタンパク質は、硫酸アンモニウム沈殿、アフィニティーカラムクロマトグラフィー、HPLC精製、ゲル電気泳動など(一般に、Scopes、「Protein Purification」(Springer-Verlag、N.Y.(1982)を参照されたい)を含む、当技術分野の標準的手順に従い精製される。少なくとも約90~95%の均質性を有する、実質的に純粋なタンパク質が、医薬への使用に好ましく、98~99%またはそれ以上の均質性が、最も好ましい。
【0196】
医薬組成物
本開示の単離核酸分子、核酸分子によりコードされる、FVIII活性を有するポリペプチド、ベクター、または宿主細胞を含有する組成物は、適切な、薬学的に許容される担体を含有しうる。例えば、組成物は、活性化合物の、作用部位への送達のためにデザインされる製造物への処理を容易とする賦形剤および/または補助剤を含有しうる。
【0197】
医薬組成物は、ボーラス注射による非経口投与(すなわち、静脈内投与、皮下投与、または筋内投与)のために製剤化される。注射用製剤は、単位剤形、例えば、アンプルまたは保存剤を添加された複数回投与用容器により提示される。組成物は、油性媒体中または水性媒体中の懸濁液、溶液、またはエマルジョンなどの形態を取り、懸濁剤、安定化剤、および/または分散剤など、製剤化剤を含有しうる。代替的に、有効成分は、適切な媒体、例えば、発熱物質非含有水による構成のための粉末形態の場合もある。
【0198】
非経口投与に適する製剤はまた、水溶性形態、例えば、水溶性塩形態にある活性化合物の水溶液も含む。加えて、適切な油性注射用懸濁液としての、活性化合物の懸濁液も投与される。適切な親油性溶媒または媒体は、脂肪油、例えば、ゴマ油、または合成脂肪酸エステル、例えば、オレイン酸エチルもしくはトリグリセリドを含む。水性注射用懸濁液は、懸濁液の粘稠度を増大させる物質であって、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、およびデキストランを含む物質を含有しうる。場合により、懸濁液はまた、安定化剤も含有しうる。リポソームもまた、細胞または間質腔への送達のために、本開示の分子を封入するのに使用される。例示的な、薬学的に許容される担体は、生理学的に適合性である溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤、水、生理食塩液、リン酸緩衝生理食塩液、デキストロース、グリセロール、エタノールなどである。一部の実施形態では、組成物は、等張剤、例えば、糖、マンニトール、ソルビトールなどの多価アルコール、または塩化ナトリウムを含む。他の実施形態では、組成物は、保湿剤など、薬学的に許容される物質、または有効成分の保管寿命または効能を増強する、保湿剤または乳化剤、保存剤または緩衝剤など、少量の補助物質を含む。
【0199】
本開示の組成物は、例えば、液体(例えば、注射用溶液および注入用溶液)剤形、分散液剤形、懸濁液剤形、半固体剤形、および固体剤形を含む、様々な形態でありうる。好ましい形態は、投与方式および治療適用に依存する。
【0200】
組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、分散液、リポソーム、または高薬物濃度に適する、他の秩序構造として製剤化される。滅菌注射用溶液は、有効成分を、適切な溶媒中に、要求量において、要求に応じて、上記で列挙された成分のうちの1つまたは組合せと共に組み込むのに続き、濾過滅菌を行うことにより製造される。一般に、分散液は、有効成分を、塩基性分散媒と、上記で列挙された成分に由来する、他の要求される成分とを含有する滅菌媒体へと組み込むことにより製造される。滅菌注射用溶液を製造するための滅菌粉末の場合、好ましい製造方法は、あらかじめ滅菌濾過された溶液から、有効成分+任意のさらなる所望の成分の粉末をもたらす、真空乾燥および凍結乾燥である。溶液の適正な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングを使用することにより維持される場合もあり、分散液の場合には、要求される粒子サイズを維持することにより維持される場合もあり、界面活性剤を使用することにより維持される場合もある。注射用組成物の持続吸収は、組成物中に、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸塩およびゼラチンを組み入れることによりもたらすことができる。
【0201】
有効成分は、制御放出製剤またはデバイスにより製剤化される。このような製剤およびデバイスの例は、インプラント、経皮パッチ、およびマイクロカプセル化送達系を含む。生体分解性ポリマー、生体適合性ポリマー、例えば、エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸が使用される。当技術分野では、このような製剤およびデバイスを製造するための方法が公知である。例えば、「Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems」、J.R.Robinson編、Marcel Dekker,Inc.、New York、1978を参照されたい。
【0202】
注射用デポ製剤は、ポリラクチド-ポリグリコリドなどの生体分解性ポリマー中において、薬物のマイクロカプセル化マトリックスを形成することにより作製される。薬物対ポリマー比、および援用されるポリマーの性格に応じて、薬物放出速度が制御される。他の例示的生体分解性ポリマーは、ポリオルトエステルおよびポリ無水物である。注射用デポ製剤はまた、薬物を、リポソーム内またはマイクロエマルジョン内に封入することによっても製造される。
【0203】
組成物へは、補助活性化合物が組み込まれる場合もある。一実施形態では、本開示のキメラタンパク質は、別の凝固因子、またはその変異体、断片、類似体、もしくは誘導体と共に製剤化される。例えば、凝固因子は、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XI因子、第XII因子、第XIII因子、プロトロンビン、フィブリノーゲン、フォンウィレブラント因子、もしくは組換え可溶性組織因子(rsTF)、または前出のうちのいずれかの活性化形態を含むがこれらに限定されない。止血剤の凝固因子はまた、抗フィブリン溶解薬、例えば、イプシロン-アミノカプロン酸、トラネキサム酸も含みうる。
【0204】
投与レジメンは、所望の最適の応答をもたらすように調整される。例えば、単回ボーラスが投与される場合もあり、時間経過にわたり、何回分かに分割された用量が投与される場合もあり、治療状況の緊急性により指し示される通り、用量は、これに応じて、低減される場合もあり、増大される場合もある。投与の容易さ、および投与量の均一性のために、非経口組成物を、単位剤形において製剤化することが有利である。例えば、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」(Mack Pub.Co.、Easton、Pa.、1980)を参照されたい。
【0205】
活性化合物に加えて、液体剤形は、水、エチルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油、グリセロール、テトラヒドルフルルリルアルコール、ポリエチレングリコール、およびソルビタンの脂肪酸エステルなどの不活性成分を含有しうる。
【0206】
適切な医薬担体の非限定例もまた、E.W.Martinによる、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」において記載されている。賦形剤の一部の例は、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、滑石、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノールなどを含む。組成物はまた、pH緩衝試薬および保湿剤または乳化剤も含有しうる。
【0207】
経口投与のために、医薬組成物は、常套的手段により製造される、錠剤またはカプセルの形態を取りうる。組成物はまた、液体、例えば、シロップまたは懸濁液としても製造される。液体は、懸濁剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体、または水素化可食性脂肪)、乳化薬剤(レシチンまたはアカシアガム)、非水性媒体(例えば、アーモンド油、油性エステル、エチルアルコール、または分画植物油)、および保存剤(例えば、メチル-p-ヒドロキシベンゾエートもしくはプロピル-p-ヒドロキシベンゾエート、またはソルビン酸)を含みうる。製剤はまた、芳香剤、着色剤、および甘味剤も含みうる。代替的に、組成物は、水または別の適切な媒体により構成するための、乾燥生成物として提供される。
【0208】
口腔内投与のために、組成物は、常套的プロトコールに従う、錠剤またはトローチ剤の形態を取りうる。
【0209】
吸入投与のために、本開示に従う使用のための化合物は、賦形剤を伴うか、またはこれを伴わない、噴霧化エアゾールの形態において、または、場合により、高圧ガス、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロメタン、二酸化炭素、または他の適切なガスによる、加圧パックまたは噴霧器からのエアゾールスプレーの形態において送達されると好都合である。加圧エアゾールの場合、投与量単位は、計量された量を送達するバルブを装備することにより決定される。インヘラーまたは吸入器における使用のための、化合物と、ラクトースまたはデンプンなど、適切な粉末基剤とによる粉末ミックスを含有する、例えば、ゼラチンによるカプセルおよびカートリッジが製剤化される。
【0210】
医薬組成物はまた、例えば、ココアバターまたは他のグリセリドなど、常套的な座剤用基剤を含有する、座剤または停留浣腸として、直腸内投与のためにも製剤化される。
【0211】
一実施形態では、医薬組成物は、第VIII因子活性を有するポリペプチド、第VIII因子活性を有するポリペプチドをコードする最適化核酸分子、核酸分子を含むベクター、またはベクターと薬学的に許容される担体とを含む宿主細胞を含む。一部の実施形態では、組成物は、局所投与、眼内投与、非経口投与、髄腔内投与、硬膜下投与、および経口投与からなる群から選択される経路により投与される。非経口投与は、静脈内投与または皮下投与でありうる。
【0212】
処置法
一部の態様では、本開示は、それを必要とする対象における疾患または状態を処置する方法であって、本明細書で開示される核酸分子、ベクター、ポリペプチド、または医薬組成物を投与する工程を含む方法を対象とする。
【0213】
一部の実施形態では、本開示は、出血障害を処置する方法を対象とする。一部の実施形態では、本開示は、A型血友病を処置する方法を対象とする。
【0214】
単離核酸分子、ベクター、またはポリペプチドは、静脈内投与、皮下投与、筋内投与されるか、または任意の粘膜表面を介して、例えば、経口、舌下、口腔内、舌下、鼻腔内、直腸内、膣内、または肺内経路を介して投与されうる。凝固因子タンパク質は、キメラタンパク質の、所望の部位への徐放を可能とする、生体ポリマーによる固体支持体内に植え込まれる場合もあり、これへと連結される場合もある。
【0215】
一実施形態では、単離核酸分子、ベクター、またはポリペプチドの投与経路は、非経口経路である。本明細書で使用される、「非経口」という用語は、静脈内投与、動脈内投与、腹腔内投与、筋内投与、皮下投与、直腸内投与、または膣内投与を含む。一部の実施形態では、単離核酸分子、ベクター、またはポリペプチドは、静脈内投与される。これらの投与形態の全ては、本開示の範囲内にあることが、明確に想定されるが、投与のための形態は、特に、静脈内注射または動脈内注射または滴下のための注射用溶液であろう。
【0216】
状態の処置のための、本開示の組成物の有効用量は、投与手段、標的部位、患者の生理学的状態、患者が、ヒトであるのか、動物であるのか、投与される他の医薬、および処置が、予防処置であるのか、治療処置であるのかを含む、多くの異なる因子に応じて変動する。通例、患者は、ヒトであるが、トランスジェニック哺乳動物を含む、非ヒト哺乳動物もまた、処置される場合がある。処置投与量は、安全性および効能を最適化する、当業者に公知である、規定の方法を使用して滴定される。
【0217】
本開示の核酸分子、ベクター、またはポリペプチドは、場合により、処置(例えば、予防的処置または治療的処置)を必要とする障害または状態の処置において効果的である、他の薬剤と組み合わせて投与される。
【0218】
本明細書で使用された、補助療法を伴うか、またはこれらと組み合わせた、本開示の単離核酸分子、ベクター、またはポリペプチドの投与とは、治療および開示されるポリペプチドの、逐次投与もしくは逐次適用、同時投与もしくは同時適用、併存投与もしくは併存適用、併用投与もしくは併用適用、共時投与もしくは共時適用、または並行投与もしくは並行適用を意味する。当業者は、組合せ療法レジメンの、多様な成分の投与または適用が、処置の効能を増強するようなタイミングでなされることを察知するであろう。当業者(例えば、医師)であれば、効果的な組合せ療法レジメンを、選択された補助療法、および本明細書の教示に基づき、不要な実験を伴わずに、たやすく識別することが可能であろう。
【0219】
本開示の単離核酸分子、ベクター、またはポリペプチドは、1つまたはそれ以上の薬剤と共に、またはこれらと組み合わせて(例えば、組合せ治療レジメンをもたらすように)使用されることも、さらに察知されるであろう。本開示のポリペプチドまたはポリヌクレオチドと組み合わされる、例示的薬剤は、処置される特定の障害のための、現行の標準治療を表す薬剤を含む。このような薬剤は、化学物質の場合もあり、天然におけるバイオ医薬品の場合もある。「バイオ医薬品」または「バイオ医薬剤」という用語とは、治療剤としての使用のために意図される、生物および/またはそれらの産物から作製される、任意の薬学的活性剤を指す。
【0220】
本開示のポリヌクレオチドまたはポリペプチドと組み合わせて使用される薬剤の量は、対象により変動する場合もあり、当技術分野で公知の内容に従い投与される場合もある。例えば、Bruce A Chabnerら、「Antineoplastic Agents」、GOODMANおよびGILMAN、「PHARMACOLOGICAL BASIS OF THERAPEUTICS」、1233~1287(Joel G.Hardmanら編、9版、1996)を参照されたい。別の実施形態では、標準治療と符合する、このような薬剤の量が投与される。
【0221】
一実施形態では、本明細書ではまた、本明細書で開示される核酸分子と、核酸分子を、それを必要とする対象へと投与するための指示書とを含むキットも開示される。本明細書の別の実施形態では、本明細書で提供される核酸分子を作製するためのバキュロウイルス系が開示される。核酸分子は、昆虫細胞内において作製される。別の実施形態では、発現構築物のためのナノ粒子送達系が提供される。発現構築物は、本明細書で開示される核酸分子を含む。
【0222】
遺伝子治療
一部の実施形態では、本明細書で開示される核酸分子は、遺伝子治療において使用される。本明細書で開示される、最適化FVIII核酸分子は、FVIIIの発現が要求される、任意の文脈において使用される。一部の実施形態では、核酸分子は、配列番号2のヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、核酸分子は、配列番号1のヌクレオチド配列を含む。
【0223】
例えば、体細胞の遺伝子治療は、A型血友病のための可能な処置として探索されている。遺伝子治療は、ベクターの単回投与の後に、FVIIIの持続的な内因性産生を介して、疾患を治癒させる、その潜在的可能性のために、血友病のための、特に魅力的な処置である。A型血友病は、その臨床症状が、血漿中において、微量(200ng/ml)で循環する、単一の遺伝子産物(FVIII)の欠如に、完全に帰せられるため、遺伝子置換アプローチに十分に適する。
【0224】
一態様では、本明細書で記載される核酸分子は、AAVによる遺伝子治療において使用される。AAVは、多数の哺乳動物細胞に感染することが可能である。例えば、Tratschinら(1985)、Mol.Cell Biol.、5:3251~3260;およびGrimmら(1999)、Hum.Gene Ther.、10:2445~2450を参照されたい。rAAVベクターは、細胞内における、遺伝子産物の発現を方向付ける調節配列の制御下にある、目的の遺伝子、またはその断片をコードする核酸配列を保有する。一部の実施形態では、rAAVは、担体、および投与に適する、さらなる成分と共に製剤化される。
【0225】
別の態様では、本明細書で記載される核酸分子は、レンチウイルスによる遺伝子治療において使用される。レンチウイルスは、ウイルスゲノムが、RNAである、RNAウイルスである。宿主細胞にレンチウイルスが感染すると、ゲノムRNAが、DNA中間体へと逆転写され、感染された細胞の染色体DNAへと、極めて効率的に組み込まれる。一部の実施形態では、レンチウイルスは、担体、および投与に適する、さらなる成分と共に製剤化される。別の態様では、本明細書で記載される核酸分子は、アデノウイルス療法において使用される。遺伝子治療のためのアデノウイルスの使用についての総説は、例えば、Woldら(1985)、Curr Gene Ther.、13(6):421~33において見出される。別の態様では、本明細書で記載される核酸分子は、非ウイルス性遺伝子治療において使用される。本開示の最適化FVIIIタンパク質は、哺乳動物、例えば、ヒト患者のin vivoにおいて作製され、遺伝子治療アプローチを、出血凝固障害、関節血症、筋内出血、口内出血、出血、筋肉への出血、経口出血、外傷、外傷頭部、消化器出血、頭蓋内出血、腹腔内出血、胸郭内出血、骨折、中枢神経系出血、咽頭後隙内の出血、後腹膜腔内の出血、および腸腰筋鞘内の出血からなる群から選択される、出血疾患または出血障害の処置に使用すれば、治療的に有益であろう。一実施形態では、出血疾患または出血障害は、血友病である。別の実施形態では、出血疾患または出血障害は、A型血友病である。これは、適切な発現制御配列に作動可能に連結された、最適化FVIIIコード核酸の投与を伴う。ある特定の実施形態では、これらの配列は、ウイルスベクターへと組み込まれる。このような遺伝子治療に適するウイルスベクターは、アデノウイルスベクター、レンチウイルスベクター、バキュロウイルスベクター、エプスタイン-バーウイルスベクター、パポバウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、およびアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを含む。ウイルスベクターは、複製欠損ウイルスベクターでありうる。他の実施形態では、アデノウイルスベクターは、そのE1遺伝子またはE3遺伝子を欠失させている。他の実施形態では、配列は、当業者に公知である、非ウイルスベクターへも組み込まれる。
【0226】
別の態様では、本明細書で開示される核酸分子は、生物の遺伝情報(例えば、ゲノム)の特異的変更のために使用される。本明細書で使用される、「変更」または「遺伝情報の変更」という用語は、細胞のゲノム内の、任意の変化を指す。遺伝性障害の処置の文脈では、変更は、挿入、欠失、および/または補正を含みうるがこれらに限定されない。
【0227】
一部の態様では、変更はまた、遺伝子のノックイン、ノックアウト、またはノックダウンも含みうる。本明細書で使用される、「ノックイン」という用語は、DNA配列またはその断片の、ゲノムへの付加を指す。ノックインされる、このようなDNA配列が、全遺伝子を含む場合もあり、全遺伝子または遺伝子が、遺伝子または前出の任意の部分もしくは断片と関連する調節配列を含む場合もある。例えば、突然変異体遺伝子を保有する細胞のゲノムへと、野生型タンパク質をコードするcDNAが挿入される。ノックイン戦略は、全体的にも、部分的にも、欠損遺伝子を置き換えることを必要としない。場合によって、ノックイン戦略は、既存の配列の、用意された配列による置換、例えば、突然変異体対立遺伝子の、野生型コピーによる置換をさらに伴いうる。「ノックアウト」という用語は、遺伝子または遺伝子発現の消失を指す。例えば、遺伝子は、リーディングフレームの破壊をもたらす、ヌクレオチド配列の欠失または付加によりノックアウトされる。別の例として述べると、遺伝子は、遺伝子の一部を、非関与性の配列により置き換えることによりノックアウトされる。本明細書で使用される、「ノックダウン」とは、遺伝子またはその遺伝子産物(複数可)の発現の低減を指す。遺伝子ノックダウンの結果として、タンパク質の活性または機能が弱められる場合もあり、タンパク質レベルが低減または無化される場合もある。
【0228】
一部の実施形態では、本明細書で開示される核酸配列は、ゲノム編集のために使用される。ゲノム編集とは一般に、ゲノムのヌクレオチド配列を、好ましくは、精密な方式または所定の方式で修飾する工程を指す。本明細書で記載されるゲノム編集法の例は、部位指向ヌクレアーゼを使用して、デオキシリボ核酸(DNA)を、ゲノム内の正確な標的位置で切断し、これにより、一本鎖DNA切断または二本鎖DNA切断を、ゲノム内の特定の位置において創出する方法を含む。このような切断は、近年、Coxら(2015)、Nature Medicine、21(2):121~31において総説された通り、相同性指向修復(HDR)および非相同末端結合(NHEJ)など、天然の内因性細胞過程により修復される場合があり、規則的に修復されている。これら2つの主要なDNA修復工程は、代替的経路のファミリーからなる。NHEJは、二本鎖切断から生じるDNA末端を直接接続するが、場合によって、遺伝子発現を破壊する場合もあり、増強する場合もある、ヌクレオチド配列の喪失または付加を伴う。HDRは、規定されたDNA配列を、切断点に挿入するための鋳型として、相同配列またはドナー配列を利用する。相同配列は、姉妹染色分体など、内因性ゲノム内に存在しうる。代替的に、ドナーは、ヌクレアーゼにより切断される遺伝子座との相同性が大きな領域を有するが、また、切断された標的遺伝子座へと組み込まれる欠失を含む、さらなる配列または配列変化も含有しうる、プラスミド、一本鎖オリゴヌクレオチド、二本鎖オリゴヌクレオチド、二重鎖オリゴヌクレオチド、またはウイルスなどの外因性核酸でありうる。第3の修復機構は、「代替的NHEJ」ともまた称され、切断部位において、小規模の欠失および挿入が生じうるという点で、遺伝子結果がNHEJと同様である、マイクロ相同性媒介型末端結合(MMEJ)でありうる。MMEJは、より好適な、DNA末端の接続による修復結果を駆動するように、DNA切断部位を挟む、少数の塩基対による相同配列を使用しうるが、近年の報告は、この工程の分子機構についてさらに解明している(例えば、ChoおよびGreenberg(2015)、Nature、518、174~76を参照されたい)。一部の場合には、DNA切断部位における潜在的なマイクロ相同性についての解析に基づき、可能性が高い修復結果を予測することが可能でありうる。
【0229】
これらのゲノム編集機構の各々は、所望のゲノムの変更を創出するのに使用される。ゲノム編集工程内の段階は、意図される突然変異の近傍部位としての標的遺伝子座内において、1つのDNA切断、または二本鎖切断もしくは2つの一本鎖切断としての2つのDNA切断を創出することでありうる。これは、CRISPRエンドヌクレアーゼ系など、部位指向ポリペプチドの使用を介して達成される。
【0230】
別の態様では、本明細書で記載される核酸分子は、FVIII ceDNAの、脂質ナノ粒子(LNP)媒介送達において使用される。血漿中の核酸の分解を阻み、細胞内へのオリゴヌクレオチドの取込みを容易とするのに、中性脂質、コレステロール、PEG、PEG化脂質など、他の脂質成分を伴う、カチオン性脂質から形成される脂質ナノ粒子と、オリゴヌクレオチドとが使用されている。このような脂質ナノ粒子は、本明細書で記載される核酸分子を、対象へと送達するのに使用される。
【0231】
本開示は、対象における、FVIII活性を伴うポリペプチドの発現を増大させる方法であって、本開示の単離核酸分子を、それを必要とする対象へと投与する工程を含み、ポリペプチドの発現は、配列番号6を含む参照核酸分子と比べて増大される方法を提供する。本開示はまた、対象における、FVIII活性を伴うポリペプチドの発現を増大させる方法であって、本開示のベクターを、それを必要とする対象へと投与する工程を含み、ポリペプチドの発現は、参照核酸分子を含むベクターと比べて増大される方法も提供する。
【0232】
本明細書で記載される、多様な態様、実施形態、および選択肢の全ては、任意の変化形および全ての変化形において組み合わされる。
【0233】
本明細書で言及される、全ての刊行物、特許、および特許出願は、各個別の刊行物、特許、または特許適用が、参照により組み入れられるように、具体的、かつ、個別に指し示された場合と同じ程度に、参照により本明細書に組み入れられる。
【0234】
実施例
前出の開示を提供したが、本明細書で提供される実施例への参照により、さらなる理解が得られる。これらの実施例は、例示だけを目的とするものであり、限定的であることは意図されない。
【実施例1】
【0235】
ceDNA作製のためのアプローチ
バキュロウイルス昆虫細胞系では、組換えBEVは、強力なプロモーター下にある、目的の遺伝子を送達し、昆虫細胞内におけるウイルスの複製に不可欠である、転写複合体をもたらす。バキュロウイルス昆虫細胞系は、安定細胞株の形態において、目的の導入遺伝子を、バキュロウイルスゲノム内および/または昆虫細胞ゲノム内に挿入する柔軟性をもたらす。バキュロウイルス昆虫細胞系の、これらの利点を利用して、スケーラビリティーの容易さに従う、広範な選択をもたらすように、ceDNA作製の、3つの異なるアプローチをデザインした。
【0236】
1.OneBAC
導入遺伝子発現のためのOneBacアプローチの使用について探索するために、Tn7転移を介して、最適化FVIIIXTEN発現カセットを、BIVVBac内のポリヘドリン遺伝子座内のmini-attTn7部位に、パルボウイルスITRと共に挿入し、同じ骨格内において、Cre-LoxP組換えを介して、ITR特異的複製(Rep)遺伝子発現カセットを、EGT遺伝子座内の、LoxP部位に挿入した。次いで、
図1Aに描示される通り、FVIIIXTEN ceDNAを作製する、Sf9細胞内の感染のために、組換えBEVを作出し、使用した。下記で記載される通り、Rep発現レベルを制御するために、異なるプロモーターを使用して、ceDNA作製のためのOneBacアプローチの概念を実証した。
【0237】
2.TwoBAC:
導入遺伝子発現のためのTwoBacアプローチの使用について探索するために、Tn7転移を介して、最適化FVIIIXTEN発現カセットを、2つの異なるBIVVBacバクミド内のポリヘドリン遺伝子座内のmini-attTn7部位に、パルボウイルスITRおよびITR特異的複製(Rep)遺伝子発現カセットと共に挿入した。次いで、
図1Bに描示される通り、FVIIIXTEN ceDNAを作製する、Sf9細胞内の共感染のために、組換えBEVを作出し、使用した。以下の実験で記載される通り、再現可能なceDNAの生産性を得るように、感染多重度(MOI)比が異なる2つのバキュロウイルス、およびRep発現レベルの微調整を使用して、Two BACアプローチと関連する難題について探索した。
【0238】
3.安定細胞株:
導入遺伝子発現のための安定細胞株アプローチの使用について探索するために、パルボウイルスITRを伴う、最適化FVIIIXTEN発現カセットにより、安定細胞株を作出した。Tn7転移を介して、ITR特異的複製(Rep)遺伝子発現カセットを、BIVVBacバクミド内のポリヘドリン遺伝子座内のmini-attTn7部位に挿入した。次いで、
図1Cに描示される通り、FVIIIXTEN ceDNAを作製する、FVIIIXTEN安定細胞株内の感染のために、組換えRep.BEVを作出し、使用した。以下の実験で記載される通り、安定細胞株を作出する工程を早めるプロキシとして、GFPを使用する、FACS細胞分取を介して、FVIIIXTEN形質転換体を富化することにより、安定細胞株アプローチと関連する難題について探索した。
【実施例2】
【0239】
FVIIIXTEN HBoV1 ITR発現構築物
自律性パルボウイルスである、1型ヒトボカウイルス(HBoV1)は、野生型2型アデノ随伴ウイルス(AAV2)の複製を支援するヘルパーウイルスである。FVIIIXTEN ceDNA作製のための、AAVならびにAAV以外のパルボウイルスITRの使用については、バキュロウイルス系において裏付けられている(例えば、米国特許出願第63/069,073号を参照されたい)。HBoV1 ITRは、他のパルボウイルスITRと比較して、固有のサイズおよび形態を有する。HBoV1 5’側(REH)ITRが、140bpの長さ(配列番号1)であり、完全な塩基対合を伴う、「U」字形ヘアピンを形成するのに対し、3’側(LEH)ITRは、200bpの長さ(配列番号2)であり、三叉分岐点を伴うループを形成し、これは、HBoV1 ITRを、他のパルボウイルスITRの末端領域と顕著に異なる、非対称性とする(
図2A)。
【0240】
FVIIIXTEN ceDNAの作製における使用のために、HboV1 ITRについて探索した。非対称ITRは、導入遺伝子を安定化させることにより、長期間にわたる持続的発現を増強しうることを仮定した。この仮説について検証するために、GenScript(登録商標)(Piscataway、NJ)を介して、エンハンサーエレメント(A1MB2)を伴う肝臓特異的改変マウストランスサイレチン(mTTR)プロモーター(mTTR482)、ハイブリッド合成イントロン(キメライントロン)、ウッドチャック転写後調節エレメント(WPRE)、ウシ成長ホルモンポリアデニル化(bGHpA)シグナル、および隣接するヒトHBoV1 5’側ITR/3’側ITRの調節下にある、XTEN 144ペプチド(FVIIIXTEN)を含む、Bドメイン欠失型(BDD)コドン最適化ヒト第VIII因子(BDDcoFVIII)を含むDNA構築物を合成して、配列番号3として示された核酸配列セットを作出した(
図2A)。この合成DNAを、pFastBac1(Invitrogen)ベクターへとクローニングして、pFastBac.mTTR.FVIIIXTEN.HBoV1.ITR導入ベクターを作出した(
図2B)。次いで、下記で記載される通り、このベクターをBIVVBac
DH10B大腸菌に形質転換して、組換えBEVである、AcBIVVBac.Polh.GPV.Rep
Tn7を作製した。
【実施例3】
【0241】
HBoV1 NS1(非構造)発現構築物
HBoV1 NS1 Tn7導入ベクター
HBoV1は、単一のウイルスプレmRNAの、選択的スプライシングおよびポリアデニル化を介して作出されるmRNA転写物により、5つの非構造タンパク質、すなわち、NS1、NS2、NS3、NS4、およびNP1を発現することが公知である。NS1~NS4のタンパク質は、同じオープンリーディングフレーム(ORF)の、異なる領域内においてコードされる。NS1は、N末端、中央部、およびC末端のそれぞれにおける、起点結合性/エンドヌクレアーゼドメイン(OBD)、ヘリカーゼドメイン、および推定トランス活性化ドメイン(TAD)からなる。NS1は、HBoV1の複製起点に結合し、おそらく、ローリングヘアピンの複製時に、起点の一本鎖DNA(ssDNA)にニックを入れる。
【0242】
真核細胞内のITR媒介ベクター作製における、NS1の役割について探索し、HBoV1 ITRに挟まれたFVIIIXTEN ceDNAベクターゲノムを、Sf9細胞から「レスキューする」ために、HBoV1 NS1発現構築物を作出し、BIVVBacへと挿入して、Sf9細胞内において、HBoV1 NS1を発現する組換えBEVを作製した。
【0243】
発現ベクターを作出するために、HBoV1 NS1のコード配列を、HBoV1ゲノム(GenBank受託番号:JQ923422)から得、GenScript(登録商標)を介して、配列番号4として示された核酸配列セットを作出する合成の前に、Sf細胞ゲノムについてコドン最適化した。次いで、合成HBoV1 NS1 DNAを、AcMNPVポリヘドリンプロモーターの制御下にある、pFastBac1(Invitrogen)ベクター(
図3A)へとクローニングして、pFastBac.Polh.HBoV1.NS1導入ベクター(
図3B)を作出した。合成HBoV1 NS1 DNAはまた、pFastBac.HR5.IE1.HBoV1.NS1導入ベクター(
図4B)を作出するように、AcMNPV転写因子hr5エレメントに先立たれた、最初期1(IE1)プロモーターの制御下にある、pFastBac1(Invitrogen)ベクター(
図4A)へともクローニングした。合成HBoV1 NS1 DNAはまた、pFastBac.OpIE2.HBoV1.NS1導入ベクター(
図5C)を作出するように、OpMNPV最初期2(IE2)プロモーター下にある、pFastBac1(Invitrogen)ベクター(
図5A)へともクローニングした。次いで、これらのベクターをBIVVBac
DH10B大腸菌に形質転換して、組換えBEV:それぞれ、AcBIVVBac.Polh.HBoV1.NS1
Tn7、AcBIVVBac.HR5.IE1.HBoV1.NS1
Tn7、またはAcBIVVBac.OpIE2.HBoV1.NS1
Tn7を作製した。
【0244】
次いで、FVIIIXTEN ceDNAベクターを作出する、Sf9細胞内における、FVIIIXTEN BEVを伴う共感染(TwoBAC)のために、これらの組換えBEVを使用した。
【0245】
HBoV1 NS1 Cre-LoxPドナーベクター
ceDNAの作製のためのOneBacアプローチの使用について探索するために、HBoV1 NS1遺伝子を、ポリヘドリン遺伝子座内のTn7部位において、FVIIIXTEN発現カセットをコードする、組換えBIVVBac内のLoxP部位に挿入した。これらの部位において、これらの遺伝子の両方を挿入するための根拠は、これもまた、回文リピートである、LoxP配列と共に、FVIIIXTENを挟む、逆位末端反復配列(ITR)の干渉を回避することであった。
【0246】
加えて、上記で記載された、OneBAC系と関連する難題に取り組むために、FVIIIXTEN HBoV1 ITR/NS1の両方をコードするOneBAC内における、HBoV1 NS1の発現レベルを制御するように、感染サイクル中の異なる時点およびレベルにおいて発現される、バキュロウイルス遺伝子の異なるプロモーターについて調べた。
【0247】
合成Sfコドン最適化HBoV1 NS1 DNAを、AcMNPVポリヘドリンプロモーター(
図3A)、またはAcMNPV転写エンハンサーhr5エレメントが前にある最初期1プロモーター(
図4A)、およびない最初期1プロモーター(
図5B)の制御下にある、Cre-LoxPドナーベクター(米国特許出願第63/069,073号において記載されている)へとクローニングして、それぞれ、Cre-LoxPドナーベクターである、pCL.Polh.HBoV1.NS1(
図3C)、pCL.HR5.IE1.HBoV1.NS1(
図4C)、およびpCL.IE1.HBoV1.NS1(
図5D)を作出した。これらの構築物は、「プラスミドCre-LoxP」のための接頭辞である、「pCL」により名指される(
図3C、4C、5Dを参照されたい)。次いで、結果として得られるCre-LoxPドナーベクターを、LoxP部位において、下記で記載される通り、FVIIIXTEN HBoV1 ITRを、Tn7部位においてコードする、BIVVBacバクミド(
図6B)へと挿入した。
【実施例4】
【0248】
FVIIIXTEN HBoV1 ITRバキュロウイルス発現ベクター(BEV)
FVIIIXTEN発現カセットを、HBoV1 ITRと共にコードする組換えBEV(
図2A)を作出するために、まず、BIVVBac
DH10B大腸菌(米国特許出願第63/069,073号において記載されている)を、Tn7導入ベクターである、pFastBac.mTTR.FVIIIXTEN.HBoV1.ITR(
図2B)により高度形質転換した。形質転換体は、カナマイシン、ゲンタマイシン、X-Gal、およびIPTGにより選択した。BIVVBac内の、mini-attTn7挿入部位における、FVIIIXTEN発現カセットおよびゲンタマイシン耐性遺伝子の部位特異的転移は、LacZα(mini-attTn7と、インフレームで融合された)を破壊し、X-Gal媒介二重抗生剤選択時において、白色大腸菌コロニーを結果としてもたらした。組換えバクミドDNAは、アルカリ溶解ミニプレップ法により、白色大腸菌コロニーから単離し、制限酵素により消化して、正確な遺伝子構造を決定した。制限酵素マッピングの結果が、各組換えバクミドについて予測された断片を示したことは、BIVVBacのポリヘドリン遺伝子座内に、HBoV1 ITRを伴う、FVIIIXTEN発現カセット部位特異的転移を示唆する(
図6A)。さらなる確認を、導入プラスミドに対して内側および外側にあるプライマーを使用して、予測挿入部位にわたる領域をPCR増幅し、結果として得られる増幅配列をシーケンシングすることにより得た(データは示さない)。
【0249】
FVIIIXTEN発現カセットを、HBoV1 ITRと共にコードする、正確な組換えバクミドを、マキシプレップ精製し、製造元の指示書に従い、Cellfectin(登録商標)(Invitrogen)トランスフェクション試薬を使用して、Sf9細胞にトランスフェクトした。トランスフェクションの4~5日後、既に記載されている通りに、後代バキュロウイルスを採取し、Sf9細胞内において、プラーク精製した。Jarvisら(2014)、Methods Enzymol.、536:149~163。組換えBEVである、AcBIVVBac.mTTR.FVIIIXTEN.HBoV1.ITR
Tn7(
図6B)の、プラーク精製された、6つのRFP+クローンを、T25フラスコ内の、10%の熱不活化ウシ胎仔血清(FBS)を補充された、ESF-921培地中に、1mL当たり0.5×10
6個で播種されたSf9細胞内において、P1(第1継代)まで増幅した。感染の4~5日後、全てのクローンが、各BEVクローンについて、RFP+細胞の数により決定される感染の進行を示したことは、ウイルスは、正常な複製が可能であり、バキュロウイルスゲノム内の、HBoV1 ITRを伴うFVIIIXTEN導入遺伝子の挿入が、後代ウイルスの作製に対して有害作用を及ぼさなかったことを示唆する。最高度のRFP+クローンを、作業BEV原液(P2)を作製する、Sf9細胞内のさらなる増幅のために選択し、次いで、ceDNAベクターの作製のための、TwoBAC系内の、HBoV1 NS1 BEVによる共感染のために使用した。
【実施例5】
【0250】
FVIIIXTEN HBoV1 ITR+HBoV1 NS1バキュロウイルス発現ベクター(BEV)
BIVVBacが、複数の導入遺伝子を収容するのに使用されるのかどうかについて調べるために、異なるプロモーターの制御下にある、2つの導入遺伝子発現カセット:1)FVIIIXTEN HBoV1 ITR、および2)HBoV1 NS1をコードする、誘導体ベクターのファミリーを作出した。これらのBEVは、2つの工程において作製した。まず、上記で記載された通り、Tn7転移を介して、HBoV1 ITRを伴う、FVIIIXTEN発現カセットを、BIVVBac内の、ポリヘドリン遺伝子座内の、mini-attTn7部位に挿入した。次いで、Creリコンビナーゼ(New England Biolabs)を使用する、in vitroCre-LoxP組換えを介して、HBoV1 NS1発現カセットを、EGT遺伝子座内のLoxP部位に挿入するために、結果として得られるバクミドである、BIVVBac.mTTR.FVIIIXTEN.HBoV1.ITR(
図6B)を使用した。
【0251】
工程では、AcMNPVポリヘドリンプロモーター(
図3C)、またはAcMNPV転写エンハンサーhr5エレメントが前にある最初期1(IE1)プロモーター(
図4C)、およびない最初期1(IE1)プロモーター(
図5D)の下にある、HBoV1 NS1をコードするCre-LoxPドナーベクターを、BIVVBac.mTTR.FVIIIXTEN.HBoV1.ITRバクミド(
図6B)へと挿入した。組換え反応物をDH10B大腸菌に形質転換し、形質転換体は、カナマイシン、ゲンタマイシン、およびアンピシリンにより選択した。制限酵素マッピングにより、かつ/または導入プラスミドに対して内側および外側にあるプライマーを使用して、予測挿入部位にわたる領域をPCR増幅し(
図7A、7B、および7D)、結果として得られる増幅配列をシーケンシングすることにより、三重抗生剤耐性コロニーをスクリーニングした。
【0252】
両方の導入遺伝子カセットをコードする、正確な組換えバクミドを、マキシプレップ精製し、Cellfectin(登録商標)(Invitrogen)トランスフェクション試薬を使用して、Sf9細胞にトランスフェクトした。トランスフェクションの4~5日後、後代バキュロウイルスを採取し、Sf9細胞内において、プラーク精製した。各組換えBEV(AcBIVVBac(mTTR.FVIIIXTEN.HBoV1.ITR)Polh.HBoV1.NS1
LoxP:
図7D;AcBIVVBac(mTTR.FVIIIXTEN.HBoV1.ITR)IE1.HBoV1.NS1
LoxP:
図7E;およびAcBIVVBac(mTTR.FVIIIXTEN.HBoV1.ITR)HR5.IE1.HBoV1.NS1
LoxP:
図7F)の、プラーク精製された、6つのRFP+クローンおよびGFP+クローンを、T25フラスコ内の、10%の熱不活化ウシ胎仔血清(FBS)を補充された、ESF921培地中に、1mL当たり0.5×10
6個で播種されたSf9細胞内において、P1(第1継代)まで増幅した。感染の4~5日後、全てのクローンが、各組換えBEVについて、GFP+細胞およびRFP+細胞の数により決定される感染の進行を示したことは、ウイルスは、正常の複製が可能であり、同じバキュロウイルスゲノム内の、複数の導入遺伝子の挿入が、後代ウイルスの作製に対して有害作用を及ぼさなかったことを示唆する。P1ウイルスを、低速遠心分離により採取し、感染細胞ペレットを、免疫ブロット法によるHBoV1 NS1の検出のために処理した。最後に、各BEVのクローンを発現する最高度のHBoV1 NS1をさらに増幅して、作業BEV原液(P2)を作製するのに続き、Sf9細胞内において滴定した。滴定されたBEVは、下記で記載される通り、FVIIIXTEN ceDNAベクターを作製するのに、Sf9細胞内の感染のために使用した。
【実施例6】
【0253】
OneBACからの、FVIIIXTEN HBoV1 ITR ceDNAベクターの作製
FVIIIXTEN HBoV1 ITRおよびHBoV1 NS1遺伝子の両方をコードするOneBAC BEV(
図7D~7F)を、Sf9細胞内における、FVIIIXTEN ceDNA作製のために調べた。1mL当たりの細胞約2.5×10
6個に、感染多重度(MOI)を、細胞1個当たり0.1、0.5、1.0、2.0、または3.0プラーク形成単位(pfu)とする、各BEVの滴定作業原液(P2)を感染させた(
図8A)。細胞を、無血清ESF-921培地50mLへと懸濁させ、次いで、72~96時間にわたり、または28℃のシェーキングインキュベーター内の細胞生存率が、60~70%に達するまでインキュベートした。感染の約96時間後、感染細胞を採取し、ペレットを、製造元の指示書に従う、PureLink Maxi Prep DNA単離キット(Invitrogen)による、FVIIIXTEN ceDNAベクターの単離のために処理した。最終溶出画分を、0.8~1.2%のアガロースゲル電気泳動上で解析して、FVIIIXTEN ceDNAベクターの生産性を決定した。
【0254】
FVIIIXTENを、HBoV1 ITRおよびポリヘドリン駆動型HBoV1-NS1と共にコードする、AcBIVVBac(mTTR.FVIIIXTEN.HBoV1.ITR)Polh.HBoV1.NS1
LoxP BEV(
図8B)についてのアガロースゲル解析を、
図8Cに示す。結果は、全ての被験用量において、FVIIIXTEN HBoV1 ITR(約8.5kb)ceDNAのサイズに対応するDNAバンドを示し、MOIの増大に応じて、生産性も増大した。
【0255】
この結果は、生産性の低減が、ウイルス量の増大と共に、既に観察された、AAV2 ITR OneBACにより得られた、ceDNAの生産性と逆であった。理論に束縛されずに述べると、HBoV1-NS1タンパク質は、DNA複製のための、HBoV1 ITRの末端分離部位において、固有の結合機構およびエンドヌクレアーゼ活性を有しうるが、これは、REH ITRおよびLEH ITRの顕著に異なる構造(
図2A)に起因しうる。
【0256】
結論として述べると、これらの実験は、One BACアプローチが、FVIIIXTENを、HBoV1 ITRおよびNS1導入遺伝子と共にコードする、単一の組換えBEVからのceDNA作製の概念を実証することを示した。それはまた、バキュロウイルスシャトルベクター(BIVVBac)内の、異なる遺伝子座に挿入された、複数の導入遺伝子の実現可能性および機能性、ならびにバキュロウイルス昆虫細胞系における、組換えAAVベクターの作製のための、その潜在的使用も示す。
【実施例7】
【0257】
HBoV1 NS1(非構造的)バキュロウイルス発現ベクター(BEV)
構造的に特徴づけられた、唯一のパルボウイルスNS1 N末端ヌクレアーゼドメインは、AAV2 Repに由来し、AAV2 Repは、複製起点(Ori)において、連続テトラオリゴヌクレオチドリピートに結合する。しかし、このようなテトラオリゴヌクレオチドリピートは、AAVに特異的であり、HBoV1には存在しない。実際、HBoV1ゲノムのLEH(3’側ITR)が、三叉分岐点を伴うループを形成するのに対し、REH(5’側ITR)は、完全な塩基対合を伴うヘアピンであり(
図2A)、LEHおよびREHは、ボカウイルスにおいて保存的であり、AAVゲノムおよびパルボウイルスB19(B19V)ゲノムの末端領域と、顕著に異なる。これらの所見は、HBoV1における、NS1による、Oriの認識方式が、AAVにおける認識方式と顕著に異なることを示唆する。さらに、AAVは、ヒト疾患を引き起こすことが公知ではなく、ウイルスの複製は、ヘルペスウイルスまたはアデノウイルスなどのヘルパーウイルスを要求するため、ディペンドウイルスである。HBoV1 NS1は、AAV Repと、わずかに14%の配列同一性を共有する。HBoV1-NS1は、Oriに対する推定結合性部位である、正に帯電した表面を含有し、パルボウイルスについて提起されている、共通のローリング-ヘアピン機構と同様に、HBoV DNAの複製を直接支援することが裏付けられている。
【0258】
HBoV1-NS1は、真核細胞内におけるITR媒介ベクター作製に不可欠であると考えられる。ITRに挟まれたFVIIIXTENベクターゲノムの、Sf9細胞からの潜在的「レスキュー」、またはFVIIIXTEN BEVについて探索するために、HBoV1-NS1をコードする組換えBEVを、異なるバキュロウイルスプロモーター下で作出して、Sf9細胞内の、NS1の発現レベルを最適化した。
【0259】
これらのBEVを作出するために、BIVVBac
DH10B大腸菌(米国特許出願第63/069,073号を参照されたい)を、Tn7導入ベクターである、pFastBac.Polh.HBoV1-NS1(
図3B)、pFastBac.HR5.IE1.HBoV1-NS1(
図4B)、またはpFastBac.OpIE2.HBoV1.NS1(
図5C)により高度形質転換した。形質転換体は、カナマイシン、ゲンタマイシン、X-Gal、およびIPTGにより選択した。BIVVBac内のmini-attTn7挿入部位における、HBoV1-NS1発現カセットおよびゲンタマイシン耐性遺伝子の部位特異的転移は、LacZα(mini-attTn7と、インフレームで融合された)を破壊し、X-Gal媒介二重抗生剤選択時において、白色大腸菌コロニーを結果としてもたらした。したがって、組換えバクミドDNAは、アルカリ溶解ミニプレップ法により、白色大腸菌コロニーから単離し、制限酵素により消化して、正確な遺伝子構造を決定した。制限酵素マッピングの結果が、各組換えバクミドについて予測された断片を示したことは、BIVVBacのポリヘドリン遺伝子座内における、HBoV1-NS1の部位特異的転移を示唆する(
図9A)。さらなる確認を、導入プラスミドに対して内側および外側にあるプライマーを使用して、予測挿入部位にわたる領域をPCR増幅し、結果として得られる増幅配列をシーケンシングすることにより得た(データは示さない)。
【0260】
製造元の指示書に従い、Cellfectin(登録商標)(Invitrogen)トランスフェクション試薬を使用して、Sf9細胞に、Polh.HBoV1-NS1、HR5.IE1.HBoV1-NS1、またはOpIE2-HBoV1-NS1をコードすることが確認された、正確な組換えバクミドをトランスフェクトした。トランスフェクションの4~5日後、既に記載されている通りに、後代バキュロウイルスを採取し、Sf9細胞内において、プラーク精製した。Jarvisら(2014)、Methods Enzymol.、536:149~163。各組換えBEVである、AcBIVVBac.Polh.HBoV1-NS1
Tn7(
図9B)、AcBIVVBac.HR5.IE1.HBoV1.NS1
Tn7(
図9C)、およびAcBIVVBac.OpIE2.HBoV1.NS1
Tn7(
図9D)の、6つのプラーク精製RFP+クローンを、T25フラスコ内の、10%の熱不活化ウシ胎仔血清(FBS)を補充された、ESF-921培地中に、1mL当たり0.5×10
6個で播種されたSf9細胞内において、P1(第1継代)まで増幅した。感染の4~5日後、全てのクローンが、各BEVクローンについて、RFP+細胞の数により決定される感染の進行を示したことは、ウイルスは、正常の複製が可能であり、バキュロウイルスゲノム内の、HBoV1-NS1の挿入が、後代ウイルスの作製に対して有害作用を及ぼさなかったことを示唆する。
【0261】
最高度のRFP+クローンを、作業BEV原液(P2)を作製する、Sf9細胞内のさらなる増幅のために選択した。次いで、滴定ウイルス原液を、ceDNAベクターの作製のための、TwoBAC系またはFVIIIXTEN HBoV1 ITRのための安定細胞株における、FVIIIXTEN BEVによる共感染のために使用した。
【実施例8】
【0262】
TwoBACからの、FVIIIXTEN HBoV1 ITR ceDNAベクターの作製
導入遺伝子発現のためのTwo BACアプローチについて探索するために、FVIIIXTEN HBoV1 ITRを、ポリヘドリン駆動型HBoV1-NS1 BEVと共にコードする、クローン組換えBEVを、Sf9細胞内における、FVIIIXTEN ceDNAベクター作製のための、比を1:10および1:5とする場合のMOIを相違させるか、またはMOIを、細胞1個当たり0.3、1.0、3.0、および5.0pfuとする場合の比を相違させる共感染について調べた(
図10A)。具体的には、1mL当たりの細胞約2.0×10
6個を、無血清ESF-921培地50mL中に播種し、MOIを、細胞1個当たり0.1、0.3、0.5、1.0、3.0、5.0pfuとする、AcBIVVBac.mTTR.FVIIIXTEN.HBoV1.ITR
Tn7 BEVの滴定作業原液(P2)を、それぞれ、比を1:10で一定に保つ場合のMOIを、細胞1個当たり0.01、0.03、0.05、0.1、0.3、0.5pfuとするか、または比を1:5で一定に保つ場合のMOIを、細胞1個当たり0.02、0.06、0.1、0.2、0.6、1.0pfuとする、AcBIVVBac.Polh.HBoV1-NS1
Tn7 BEVと共に共感染させた。同様に、細胞はまた、MOIを、細胞1個当たり0.3、1.0、3.0、または5.0pfuで一定とする場合の比を、1:1、1:2、1:5、または1:10としても共感染させた(
図10B)。各場合に、ウイルス接種物は除去せず、細胞を、28℃のシェーキングインキュベーター内の細胞生存率が、60~70%に達するまでインキュベートした。感染の約96時間後、感染細胞を採取し、ペレットを、製造元の指示書に従う、PureLink Maxi Prep DNA単離キット(Invitrogen)による、FVIIIXTEN ceDNAベクターの単離のために処理した。最終溶出画分を、0.8~1.2%のアガロースゲル電気泳動上で解析して、ceDNAの生産性を決定した。
【0263】
予測される通り、アガロースゲル解析は、条件が異なると、FVIIIXTEN ceDNAの生産性の程度が変動することを示した。しかし、MOIを、細胞1個当たり3.0pfuとして共感染させたTwoBACは、ウイルス量比の増大と共に、FVIIIXTEN ceDNAの生産性のレベルの上昇を示し、1:10が、他の被験条件と比較して、最高のウイルス量比であった(
図10C)。高ウイルス量は、FVIIIXTEN HBoV1 ITR ceDNAの生産性を改善すると考えられるが、これは、OneBAC BEV(実施例6を参照されたい)における観察と符合する。これは、Sf9細胞内における、HBoV1-ITR依存的FVIIIXTEN ceDNA複製のための、高レベルのHBoV1-NS1の要件をさらに示唆する。
【0264】
OneBACまたはTwoBACによる結果は、HBoV1-NS1の複製レベルが、バキュロウイルス系におけるFVIIIXTEN ceDNAの生産性に対して著明な影響を及ぼすことを指し示す。
【0265】
バキュロウイルスゲノムの、異なるプロモーターを利用することにより、上記で論じられた、いくつかの異なる共感染条件について調べる代替法として、FVIIIXTEN ceDNAの生産性を改善する、他の方式について探索した。バキュロウイルス遺伝子プロモーターは、感染サイクルにおける、それらの転写開始に従い、最初期プロモーター、初期プロモーター、後期プロモーター、および極後期プロモーターへと分けられる。これらの中で、名称が指し示す通り、最初期(ie)遺伝子プロモーターは、ウイルス感染の後、即時的にオンになり、感染サイクルを通して、活性を維持する。しかし、ポリヘドリンなどの後期遺伝子プロモーターまたは極後期遺伝子プロモーターは、ウイルスが、感染の後期段階に達するまで、サイレントを維持される。
【0266】
バキュロウイルスゲノムからのプロモーターの、この広範な選択範囲を利用するために、最初期1(IE1)プロモーターを、HBoV1-NS1について調べた。IE1プロモーターに先立ち、Sf9細胞内の発現レベルを上昇させることが示されている、転写エンハンサーhr5エレメントを組み入れた。これは、
図9Cに描示される通り、AcMNPV転写エンハンサーhr5エレメントに先立たれる、AcMNPV最初期1(IE1)プロモーターの制御下にある、HBoV1-NS1をコードする組換えBEVを作出した。
【0267】
図10Cで得られた結果に基づき、比を1:10で一定に保つことにより、MOIを相違させて、Sf9細胞に、FVIIIXTEN HBoV1 ITR、およびhr5.IE1駆動型HBoV1-NS1をコードするBEVを共感染させた。陽性対照として、ポリヘドリン駆動型HBoV1-NS1 BEVを組み入れ、これもまた、同じ実験セット内において調べた。より具体的には、1mL当たりのSf9細胞約2.0×10
6個に、MOIを、細胞1個当たり0.1、0.3、0.5、1.0、3.0、5.0pfuとする、AcBIVVBac.mTTR.FVIIIXTEN.HBoV1.ITR
Tn7 BEV(
図10B)の滴定作業原液(P2)を、比を1:10で一定に保つ場合のMOIを、細胞1個当たり0.01、0.03、0.05、0.1、0.3、0.5pfuとする、AcBIVVBac.Polh.HBoV1-NS1
Tn7 BEV、またはAcBIVVBac.hr5.IE1.HBoV1-NS1
Tn7 BEV(
図11B)と共に共感染させた。上記で記載された通りに、残りの手順を踏んだ(実施例6を参照されたい)。
【0268】
最終溶出画分を、0.8~1.2%のアガロースゲル電気泳動上で解析して、ceDNAの生産性を決定した。ポリヘドリン駆動型HBoV1-NS1の共感染が、MOIの増大に伴う、FVIIIXTEN ceDNAの生産性のレベルの上昇を示したことは、ceDNA作製のための、Two BACアプローチの再現性をさらに確認する。しかし、驚くべきことに、
図10Cで観察される通り、hr5.IE1駆動型HBoV1-NS1の共感染は、検出可能なレベルのFVIIIXTEN ceDNAをほとんど示さず、MOIの増大に伴う、生産性の明らかな上昇は見られなかった。
【0269】
このデータは、HBoV1-NS1の初期発現が、HBoV1 ITRを伴うFVIIIXTEN ceDNAをレスキューするのに、それほど重要ではない可能性があることを示唆する。そうではなく、感染の後期における高発現レベルが、HBoV1 ITRを伴うFVIIIXTEN ceDNAの効率的レスキューおよび生産性に要求される。これらの結果は、Sf9細胞内における、HBoV1-ITR依存的FVIIIXTEN ceDNA複製のための、高レベルのHBoV1-NS1の要件をさらに確認する。
【0270】
結論として述べると、これらの実験は、Two BACアプローチが、HBoV1 ITRおよび/またはNS1導入遺伝子を伴うFVIIIXTENをコードする、2つ組換えBEVからのceDNA作製の概念を実証することを示した。これらの実験はまた、Sf9細胞内において、FVIIIXTEN ceDNAの高度の生産性を達成するための、最適のMOI比および/またはプロモーター重要性も裏付ける。
【実施例9】
【0271】
FVIIIXTEN HBoV1 ITRのための安定細胞株
昆虫細胞ゲノムは、バキュロウイルス感染の後に、治療適用のためのceDNAを作製するように、潜在的に改変されることを仮定した。この仮説について検証するために、転写エンハンサーhr5エレメントに先立たれ、AcMNPV p10ポリアデニル化シグナルを後続させる、AcMNPV最初期(ie1)プロモーターの制御下にある、ネオマイシン耐性マーカーをコードするプラスミド(pUC57.HR5.IE1.NeoR.P10PAS:配列番号7)(
図12A)、または増強型緑色蛍光タンパク質(eGFP)をコードするプラスミド(pUC57.HR5.IE1.eGFP.P10PAS:配列番号8)(
図12B)を、GenScript(登録商標)(Piscataway、NJ)から合成した。
【0272】
改変リン酸カルシウムトランスフェクション法を使用して、Sf9細胞に、FVIIIXTENを、HBoV1 ITRと共にコードするプラスミド(Sf.mTTR.FVIIIXTEN.HBoV1.ITR)(
図12C)と共に、これらのプラスミドを、共トランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後、細胞を、蛍光顕微鏡下で視覚化して、トランスフェクション効率を決定したところ、結果が、>80%のGFP+細胞を示したことは、高度のトランスフェクション効率を示唆する。トランスフェクションの72時間後、細胞は、完全TNMFH培地(10%のFBS+0.1%のPluronic F68を補充された、Grace’s Insect Medium)中に、1.0mg/mLの最終濃度で懸濁させた、G418抗生剤(Sigma Aldrich)により選択した。選択の約1週間後、約50%の形質転換細胞が回収されたことは、ネオマイシン耐性マーカーが、この細胞集団へと、安定的に組み込まれたことを示唆する。生存細胞を、選択培地から採取し、新鮮な完全TNMFH培地をフィードし、コンフルエンス増殖まで増殖させた。コンフルエント細胞は、それらが分裂し続けるのに応じて、付着培養物として、大型培養槽へと、漸進的に拡大した。その後、ポリクローナル細胞集団を、完全TNMFH培地中の1継代にわたる、振盪フラスコ内の増殖、およびESF-921培地を補充された10%のFBS中の1継代にわたる、振盪フラスコ内の増殖により、懸濁培養へと適合させた。最後に、細胞を、懸濁培養物として、振盪フラスコ内の無血清ESF-921へと適合させた。これらの振盪フラスコ培養物は、4日ごとの継代を伴い、無血清ESF-921培地中において、規定通りに維持し、細胞増殖をモニタリングした。
【実施例10】
【0273】
FVIIIXTEN ceDNAの精製
バキュロウイルス昆虫細胞系では、組換えBEVは、強力なプロモーター下にある、目的の遺伝子を送達し、昆虫細胞内におけるウイルスの複製に不可欠である、転写複合体をもたらす。典型的に、バキュロウイルスDNAゲノムは、核内において複製され、各々が、全長DNAゲノムを含有する、数千万個の後代ウイルス粒子を産生する。バキュロウイルスゲノムDNAは、シリカゲルカラムなど、プラスミドDNAベースの精製法を使用して、DNAを、昆虫細胞から単離する間に、ceDNAと共に共精製されることが裏付けられている。市販のプラスミドDNAキットのカラムは、一般に、DNAを、それらの分子量に基づき分離するようにデザインされていないので、典型的に、サンプル中に存在する、全ての形態のDNAは、これらのカラムに結合する。さらに、高分子量DNAの結合能は、低分子量DNAと異なる場合があり、アニオン交換ベースのキットカラムは、異なるサイズのDNAの結合効率に基づき最適化されていない。
【0274】
ceDNAプレップ中において観察された高分子量DNA(>20kb)は、低分子量FVIIIXTEN ceDNA(約8.5kb)と共に共精製された、バキュロウイルスゲノムDNAおよび/またはSf9細胞ゲノムDNAであった可能性が高い(例えば、
図8C、10C、および11Cを参照されたい)ことを仮定した。
【0275】
既に、感染性後代ウイルスの作製に要求される、VP80などのバキュロウイルスカプシド遺伝子をノックアウトすることにより、バキュロウイルスDNAを低減する、間接的アプローチを援用した。このアプローチは、ノックアウトBEVから得られたceDNAプレップ中の、バキュロウイルスDNAの著明な低減を示した(米国特許出願第63/069,115号を参照されたい)。このアプローチは、バキュロウイルスDNAの夾雑の低減において効率的であったが、感染細胞ペレットから得られた全DNAのうちの、著明な数量(約60%)で存在する、細胞ゲノムDNAを低減することは不可能であった。
【0276】
したがって、FVIIIXTEN ceDNAを、望ましくないDNAから分離する直接的アプローチを援用し、感染細胞ペレットに由来する全DNAプレップから、精製FVIIIXTEN(>95%の純度)を効率的に得ることを裏付けた。この新規のアプローチは、異なるタンパク質分子を、それらのサイズおよび電荷に従い分離するために広範に使用されている、製剤用電気泳動を利用する。例えば、Michov,B.(2020)、「Electrophoresis」、Berlin、Boston:De Gruyter、405~424頁を参照されたい。例えば、Bio-Rad Model 491 prep cellまたは他のこのようなユニットは、それらのサイズに基づき、複合体分子を分離するのに使用される。
【0277】
ceDNA精製の全ワークフローを、
図13に示すが、このワークフローにおいて、工程は、無血清昆虫細胞培養培地中のSf9細胞培養物の、0.5Lから、1.5L、または大容量へのスケールアップにより始まる(
図13A)。典型的に、1mL当たり約1.3×10
6個の播種密度で、2日間にわたるインキュベーションの後、所望される、1mL当たり約2.5×10
6個の細胞密度に達したら、細胞に、OneBAC BEVまたはTwoBAC BEV(ceDNA作製のために使用されるアプローチに依存する)を、最適化MOIで感染させ、細胞を、28℃のシェーキングインキュベーター内において、生存率が、約60~70%に達するまでインキュベートするが、これは、典型的に、約4日間を要する(
図13B)。生存率が、約70%に達したら、細胞を採取し、製造元の指示書に従う、PureLink HiPure Expi Plasmid Gigaprep精製キット(Invitrogen)など、アニオン交換クロマトグラフィーキットカラムによる、全DNA精製のために処理する。精製されたDNA素材のアリコートは、0.8~1.2%のアガロースゲルによる電気泳動において照合して、DNAの生産性および完全性を決定する(
図13C)。
【0278】
次いで、精製された素材を、製造元の指示書に従いアセンブルされ、0.5%の製剤用アガロースゲル、および0.25%のスタッキングアガロースゲルを含有する、製剤用アガロースゲル電気泳動ユニットへとロードする。サンプルは、4℃、低電圧(約40ボルトで一定とする)で、緩衝液再循環流量を、約50mL/分とし、溶出緩衝液流量を、50μL/分として、6~7日間にわたり泳動させて、70~80分後に、画分回収チャンバー内において、各画分を回収する。連続溶出電気泳動の後において、各画分20μLを、0.8~1.2%のアガロースゲル電気泳動において照合して、FVIIIXTEN ceDNAの純度を決定する(
図13D)。所望の画分を組み合わせて、-20℃において、1~2時間にわたり、3MのNaOAc、pH5.5および100%のEtOHにより沈殿させる。最後に、沈殿したFVIIIXTEN ceDNAを、高速でペレット化させ、TE緩衝液、pH8.0への再懸濁の前に、70%のEtOHにより、1回洗浄した。精製されたFVIIIXTEN ceDNAは、0.8~1.2%のアガロースゲル電気泳動において、再度照合して、in vivo効能研究のために、動物へと注射する前に、純度および完全性を確認する(
図13E)。
【実施例11】
【0279】
FVIIIXTEN HBoV1 ITRの、in vivoにおける効能
ssFVIIIXTEN HBoV1 ITR(一本鎖DNA)
ITR領域内において形成されたヘアピンは、長期間にわたる、持続的な、高レベルの導入遺伝子発現を可能とすることを仮定した。HBoV1 ITRの機能性について、in vivoにおいて探索するために、コドン最適化ヒトFVIIIXTENを、あらかじめ形成されたHBoV1 ITRと共に含む、一本鎖DNA(ssDNA)を、hFVIIIR593C+/+/HemAマウスにおいて調べた。これらのマウスは、軽度のA型血友病を伴う患者において、高頻度で観察される突然変異を保有する、改変ヒト凝固第VIII因子(FVIII)cDNAの発現を駆動する、マウスアルブミン(Alb)プロモーターを伴うようにデザインされた、ヒトFVIII-R593C導入遺伝子を含有する。これらのマウスはまた、FVIII遺伝子のノックアウトも保有し、内因性FVIIIタンパク質について欠損性である。これらの二重突然変異体マウスは、ヒトFVIIIの注射に対して忍容性であり、FVIII活性を有さない。これらの二重突然変異体マウスは、ヒトFVIIIによる処置の後に、阻害性抗体をごく微量しか産生せず、FVIII応答性であるT細胞またはB細胞を欠く。hFVIIIR593C+/+/HemAマウスについては、Brilら(2006)、Thromb.Haemost.、95(2):341~7においてさらに記載されている。
【0280】
あらかじめ形成されたHBoV1 ITRを伴う、一本鎖FVIIIXTEN(ssFVIIIXTEN)は、95℃におけるPvuII消化の二本鎖DNA断片産物(FVIII発現カセットおよびプラスミド骨格)を変性させ、次いで、4℃で冷却して、回文ITR配列が、フォールディングすることを可能とすることにより作出した。次いで、ssFVIIIXTENは、流体尾静脈注射を介して、それぞれ、400μgまたは1600μg/kgと同等である、マウス1匹当たり10μgまたは40μgで全身注射した。血漿サンプルは、注射されたマウスから、7日間隔で、5.5ヶ月間にわたり回収した。血漿FVIII活性は、製造元の指示書に従う、Chromogenix Coatest(登録商標)SP Factor VIII発色アッセイにより測定した。
【0281】
ssFVIIIXTENを注射された動物について、正常のパーセントに照らして正規化された、血漿FVIII活性を、
図14Aに示す。結果は、HemAマウスにおいて、5.5ヶ月間の経過にわたり、用量依存的応答を示し、FVIII発現は、被験用量のいずれにおいても、生理学的レベルを超えるレベル(正常レベルの>1000%)であった。しかし、56日目まで、FVIII発現の初期降下が観察され、次いで、168日目まで、レベルが安定化したことは、注射された動物の肝臓からの、HBoV1 ITRにより挟まれたssFVIIIXTENの持続的発現を示唆する。したがって、これらの結果は、長期間にわたる、FVIIIXTENの持続的発現について、HBoV1 ITRの機能性を、in vivoにおいて検証する。
【0282】
ceFVIIIXTEN HBoV1 ITR(クローズドエンドDNA)
ceDNA内における、HBoV1 ITRの機能性について検証するために、上記で記載された通りに、感染Sf9細胞ペレットから精製されたceFVIIIXTENを、流体尾静脈注射を介して、hFVIIIR593C+/+/HemAマウスにおいて、それぞれ、12μg、40μg、および80μg/kgと同等である、マウス1匹当たり0.3μg、1.0μg、または2.0μgで全身注射した。注射されたマウスからの血漿サンプルは、7日間隔で回収し、FVIII活性は、上記で記載された、発色アッセイにより測定した。
【0283】
ceFVIIIXTENを注射された動物について、正常のパーセントに照らして正規化された血漿FVIII活性を、
図14Bに示す。本研究の結果は、HemAマウスにおいて、用量依存的応答を示し、注射後56日目まで、被験最高用量において、生理学的レベルを超えるレベル(正常レベルの>500%)のFVIII発現が観察された。興味深いことに、同様の発現レベルは、マウスに、ceFVIIIXTEN(80μg/kg)の、少なくとも20倍用量である、1600μg/kgで、ssFVIIIXTENを注射した場合にも達成された(
図14A~14B)。このデータは、ceDNAが、ssDNA形態と比較して、高レベルのFVIII発現をもたらすことを示唆する。
【0284】
結論として述べると、これらのin vivo研究は、ssDNA形態またはceDNA形態における、HBoV1 ITRの機能性を検証し、HBoV1 ITRが、バキュロウイルス昆虫細胞系において、目的の導入遺伝子をコードする、機能的ceDNAを作製するのに使用されることを裏付ける。
【実施例12】
【0285】
HBoV1 NS1 BEV内における、CRISPR Casによる、VP80のノックアウトを使用する、ceDNAベクター純度の改善
AcMNPVポリヘドリンプロモーター下において発現されたHBoV1 NS1は、実際に、HBoV1 ITRに挟まれたFVIIIXTENをレスキューすることが可能であり、バキュロウイルス系における、HBoV1 ITRによるceDNA作製の概念を実証する。しかし、おそらく、高度のceDNA生産性を達成するのに要求される、AAV2 Rep-BEVと比較した、高ウイルス量のために、ceDNAプレップ中では、著明なレベルのバキュロウイルスDNA(vDNA)の夾雑が観察された。これらのceDNAプレップ中で観察された、高分子量DNA(>20kb)(
図8C、
図10C)は、低分子量ceDNA(約8kb)と共に共精製された、バキュロウイルスゲノムDNAであった可能性が高い。
【0286】
ceDNAプレップ中の、バキュロウイルスDNAの夾雑を低減するために、昆虫細胞(Sf9)内において、感染性ウイルス粒子を産生するために要求される、バキュロウイルスゲノムのうちの不可欠の遺伝子である、VP80をノックアウトする間接的アプローチを実施した。Alt-R CRISPR-Cas9系(米国特許出願第63/069,115号を参照されたい)を使用して、3つのNS1 BEV全て(
図9B、9C、および9D)において、VP80をノックアウトした。このアプローチは、後代ウイルス粒子の数を、潜在的に低減し、最終的に、ceDNA製剤中の、バキュロウイルスDNAの夾雑を低減する。
【0287】
CRISPR-Cas9は、AcMNPV VP80遺伝子をノックアウトする:
既に記載されている通り(例えば、国際出願第PCT/US2021/047202号を参照されたい)に、CRISPR-Cas9系により、vp80遺伝子をノックアウトするように、AcMNPVポリヘドリンプロモーター(
図9B)、またはOpMNPV OpIE2プロモーター(
図9C)下にあるHBoV1 NS1をコードする、組換えBEVを選択した。
【0288】
略述すると、コード配列をターゲティングする、2つのcrRNAをデザインし、製造元の指示書に従い、Alt-R CRISPR-Cas9系(Integrated DNA Technology(商標))を使用して、機能的sgRNAを作出するために使用した。次いで、Cellfectin(登録商標)(Invitrogen(商標))トランスフェクション試薬を使用して、Sf9細胞に、各sgRNAを、SpCas9ヌクレアーゼ、およびバクミドDNAである、AcBIVVBac.Polh.HBoV1.NS1
Tn7、またはAcBIVVBac.OpIE2.HBoV1.NS1
Tn7と共に共トランスフェクトし、T25フラスコ内の、無血清ESF-921培地中に、1mL当たり0.5×10
6個で播種した。トランスフェクションの4~5日後、細胞を、蛍光顕微鏡下において視覚化したところ、結果は、いずれのsgRNA標的についても、約10%のRFP+細胞を示した。感染細胞についての、例示的蛍光顕微鏡画像を、
図15に示す。Cas9単独において、AcBIVVBac.Polh.HBoV1.NS1
Tn7 BEVを感染させた細胞は、予測された通り、感染の進行を示した(
図15A)が、これに対し、sgRNA.VP80.T1(
図15B)、またはsgRNA.VP80.T2(
図15C)により処置された細胞は、個別の細胞に対する感染の制限を示したが、これは、VP80のノックアウトに起因する可能性が高い。
【0289】
各sgRNAにより誘導されたインデルを決定するために、後代バキュロウイルスを採取し、既に記載されている通りに、補完的Sf.39K.VP80細胞株内において、プラーク精製した。Jarvisら(2014)、Methods Enzymol.、536:149~163。感染の5~6日後、12のプラーク精製RFP+クローンを、T25フラスコ内の、ESF-921培地を補充された、10%のFBS中に、1mL当たり0.5×10
6個で播種された、Sf.39K.VP80細胞内において、P1まで増幅した。増幅されたクローンについての、蛍光顕微鏡観察が、約80%のRFP+細胞を示したことは、Sf.39K.VP80細胞株が、後代ウイルスの産生のために、トランスにおいて、VP80機能を補完することが可能であることを示唆する。各BEVクローンを、低速遠心分離により採取し、次いで、細胞ペレットを、製造元の指示書に従う、Qiagen’s DNeasy Blood and Tissue genomic DNA isolation kit(型番:69506)による、全DNAの単離のために使用した。結果として得られるDNAを、AcMNPV vp80コード配列に特異的なプライマーによる、各標的配列のPCR増幅のための鋳型として使用した。次いで、PCR増幅配列を、ゲル精製し、Genewizシーケンシング施設を介して、直接シーケンシングした。結果として得られる配列を、各sgRNAにより誘導されるインデルを決定するのに、デフォルト設定を使用する、TIDE(tracking of indels by decomposition)プログラム(tide.deskgen.com)により解析した。TIDE解析は、sgRNA.T1により処置されたAcBIVVBac.Polh.HBoV1.NS1
Tn7 BEVクローン4内のフレームシフト突然変異が、vp80コード配列内において、最高度(97.1%)(15bp)の欠失(
図16A)を伴い、AcBIVVBac.OpIE2.HBoV1.NS1
Tn7 BEVクローン4内のフレームシフト突然変異が、vp80コード配列内において、最高度(37.4%)(4bp)/(26.9%)(3bp)の欠失(
図16B)を伴い、検出可能な挿入は見られないことを示した。各クローンを、P2まで増幅して、BEV作業原液を作出するのに続き、既に記載されている通りに、Sf.39K.VP80細胞内において滴定した。Jarvisら(2014)、Methods Enzymol.、536:149~163。次いで、vp80KO BEVの滴定作業原液を、FVIIIXTEN HBoV1 ceDNAベクターの作製のための、TwoBAC系における共感染のために使用した。
【0290】
vp80KO BEVを使用する、ヒトFVIIIXTEN ceDNAの作製:
細胞約2.0×106個を、無血清ESF-921培地100mL中に播種し、MOIを、細胞1個当たり1.0、2.0、3.0、4.0、および5.0pfuとする、AcBIVVBac.FVIIIXTEN.HBoV1.ITRTn7 BEV、およびAcBIVVBac.Polh.HBoV1.NS1ΔVP80Tn7 BEV、またはAcMNPV.OpIE2.HBoV1.NS1ΔVP80Tn7 BEVの、滴定作業PP1P2原液を共感染させた。各場合に、ウイルス接種物は除去せず、細胞を、28℃のシェーキングインキュベーター内の細胞生存率が、60~70%に達するまでインキュベートした。感染の約96時間後、感染細胞を採取し、ペレットを、製造元の指示書に従う、PureLink Maxi Prep DNA単離キット(Invitrogen)による、FVIIIXTEN HBoV1 ceDNAの単離のために処理した。
【0291】
最終溶出画分を、0.8~1.2%のアガロースゲル電気泳動により解析して、ceDNAの生産性および純度を決定した。アガロースゲル解析は、AcMNPVポリヘドリンプロモーターまたはOpMNPV OpIE2プロモーターの下にあるHBoV1 NS1を発現するvp80KO BEV内において、高分子量(>20kb)バキュロウイルスDNA(vDNA)の夾雑が、極低度に検出可能~検出不可能であることを示した(
図16C)。これは、vp80KOアプローチが、細胞に、MOIを、細胞1個当たり2.0、3.0または4.0pfuとして共感染させた場合に、夾雑バキュロウイルスDNAを低減し、同時に、FVIIIXTEN HboV1 ceDNA収量を改善することが可能であることを示唆する(
図11C、
図16C)。
【実施例13】
【0292】
TwoBAC系からの、FVIIIXTEN HBoV1 ceDNAベクターの作製
遺伝子不安定性は、バキュロウイルス学の分野における、主要な懸案事項のうちの1つであり、とりわけ、Sf9細胞内における、組換えバキュロウイルスの、数代の継代にわたる。加えて、バキュロウイルスゲノムは、Sf9細胞内の継代にわたり、組み換えられる傾向があり、潜在的に、組換えBEV内の導入遺伝子を喪失しうる、いくつかの相同領域(hr)を含有する。逆位末端反復(ITR)もまた、回文リピート配列であり、バキュロウイルスDNAのサイズが大きいことを考慮すると、バキュロウイルスゲノム内の、異なる遺伝子座において、潜在的に組み換えられる。したがって、肝臓特異的mTTRプロモーター下にあるFVIIIXTEN遺伝子を、HBoV1 WT ITRと共にコードする組換えBEVの遺伝子安定性を決定するために、既に記載されている通りに、Sf9細胞に、MOIを、細胞1個当たり0.1pfuとして感染させることにより、BEVを、逐次的に増幅した。Jarvisら(2014)、Methods Enzymol.、536:149~163。TwoBAC系を使用する、FVIIIXTEN HBoV1 ceDNAの作製について、結果として得られる組換えBEVを調べた(
図17Aおよび
図17Bに描示された構築物を参照されたい)。
【0293】
細胞約2.0×106個を、無血清ESF-921培地100mL中に播種し、MOIを、細胞1個当たり1.0、2.0、3.0、4.0、および5.0pfuとする、AcBIVVBac.mTTR.FVIIIXTEN.HBoV1.ITRTn7 BEV、およびAcBIVVBac.Polh.HBoV1.NS1Tn7 BEVの滴定作業原液(P3またはP4)を共感染させた。各場合に、ウイルス接種物は除去せず、細胞を、28℃のシェーキングインキュベーター内の細胞生存率が、60~70%に達するまでインキュベートした。感染の約96時間後、感染細胞を採取し、ペレットを、製造元の指示書に従う、PureLink Maxi Prep DNA単離キット(Invitrogen)による、FVIIIXTEN HBoV1 ceDNAの単離のために処理した。
【0294】
最終溶出画分を、0.8~1.2%のアガロースゲル電気泳動により解析して、ceDNAの生産性を決定した。
図17Cに示されるアガロースゲル解析が、P3またはP4(およびP5;データは示さない)のBEVに関して、ほぼ同等レベルのFVIIIXTEN HBoV1 ceDNA生産性を示したことは、FVIIIXTEN HBoV1 ITRをコードする組換えBEVが、Sf9細胞内における、後続する高継代数の継代において、遺伝子的に安定であることを示唆する。
【実施例14】
【0295】
OneBAC系からの、FVIIIXTEN HBoV1 ceDNAベクターの作製
HBoV1 OneBAC系は、Sf9細胞内において、FVIIIXTEN HBoV1 ceDNAベクターを作製することが示されている(例えば、
図8Cを参照されたい)。しかし、ポリクローナル組換えBEVを使用して、概念実証を達成した。大スケールの作製を支援するために、BEVクローンを作出する必要がある。したがって、本研究では、HBoV1 OneBACポリクローナルBEVを、Sf9細胞内において、プラーク精製および増幅した(
図18Aを参照されたい)。次いで、これらのクローンOneBAC BEVを、Sf9細胞内における、FVIIIXTEN HBoV1 ceDNAベクターの作製についてスクリーニングした。
【0296】
組換えHBoV1 OneBAC BEVのプラーク精製および増幅は、既に記載されている通りに実施した。Jarvisら(2014)、Methods Enzymol.、536:149~163。10%のウシ胎仔血清を補充されたESF-921培地100mL中に、1mL当たりのSf9細胞約1.0×106個に感染させることにより、6つのプラーク精製クローンを、P2まで増幅し、4~5日間にわたり、または28℃のシェーキングインキュベーターの細胞生存率が、60~70%に達するまでインキュベートした。感染の4~5日後、無細胞上清を採取し、P2作業原液として保管し、細胞ペレットを、製造元の指示書に従う、PureLink Maxi Prep DNA単離キット(Invitrogen)による、FVIIIXTEN HBoV1 ceDNAの単離のために処理した。
【0297】
最終溶出画分を、0.8~1.2%のアガロースゲル電気泳動により解析して、FVIIIXTEN HBoV1 ceDNAベクターの生産性を決定した。
図18Cは、FVIIIXTENを、HBoV1 ITRおよびポリヘドリン駆動型HBoV1-NS1と共にコードするHBoV1 OneBAC(
図18Bに描示される構築物)についてのアガロースゲル解析を示す。結果は、異なるクローンについて、HBoV1 ceDNAの生産性の程度が変動し、クローン2およびクローン4が、他の被験クローンと比較して、HBoV1 ceDNAの高度のプロデューサーであることを示した(
図18C)。この結果は、同じ原液から得られた、異なるバキュロウイルスクローンにおけるばらつきを示し、大スケールのceDNA製造のために、クローン組換えBEVを使用することの重要性を強調する。
【0298】
クローンである、HBoV1 OneBAC BEVの最適生産性を決定するために、細胞約2.0×106個に、MOIを、細胞1個当たり0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、1.0、2.0、3.0、4.0、または5.0pfuとする、HBoV1 OneBAC BEVクローン5の滴定作業原液(P2)を感染させた。各場合に、ウイルス接種物は除去せず、細胞を、28℃のシェーキングインキュベーター内の細胞生存率が、60~70%に達するまでインキュベートした。感染の約96時間後、感染細胞を採取し、ペレットを、製造元の指示書に従う、PureLink Maxi Prep DNA単離キット(Invitrogen)による、FVIIIXTEN HBoV1 ceDNAの単離のために処理した。最終溶出画分を、0.8~1.2%のアガロースゲル電気泳動により解析して、FVIIIXTEN HBoV1 ceDNAの生産性を決定した。
【0299】
アガロースゲル解析は、全ての被験用量において、FVIIIXTEN HBoV1 ceDNAのサイズ(約8.5kb)に対応するDNAバンドを示し、MOIの増大に応じて、生産性も増大した。この結果は、生産性の低減が、ウイルス量の増大と共に、観察された、AAV2 ITR OneBACにより得られた、ceDNAの生産性と逆であった。このHBoV1 One BACアプローチは、FVIIIXTENを、HBoV1 ITRおよびNS1導入遺伝子と共にコードする、単一の組換えBEVからのceDNA作製の概念を実証する。それはまた、バキュロウイルスシャトルベクター(BIVVBac)内の、異なる遺伝子座に挿入された、複数の導入遺伝子の実現可能性および機能性も示す。
【実施例15】
【0300】
FVIIIXTEN HBoV1 ssDNAと、FVIIIXTEN HBoV1 ceDNAとの、in vivoにおける効能の対比
ssFVIIIXTEN HBoV1 ITR(一本鎖DNA)
HBoV1 ITR領域内において形成されるヘアピンは、長期間にわたる、持続的な導入遺伝子の発現を、高レベルにおいて駆動することを仮定した。HBoV1 ITRの機能性を、in vivoにおいて検証するために、コドン最適化ヒトFVIIIXTEN(ssFVIIIXTEN)を、あらかじめ形成されたHBoV1 ITRと共に含む、一本鎖DNA(ssDNA)を、hFVIIIR593C+/+/HemAマウスにおいて調べた。
【0301】
あらかじめ形成されたHBoV1 ITRを伴うssFVIIIXTENは、95℃におけるPmlI消化の二本鎖DNA(dsDNA)断片産物(FVIII発現カセットおよびプラスミド骨格)を変性させ、次いで、4℃で冷却して、回文ITR配列が、フォールディングすることを可能とすることにより作出した。結果として得られるssFVIIIXTENは、0.8~1.2%のアガロースゲル電気泳動により確認した。ゲル解析が、ssFVIIIXTENについて、dsDNAの半分のサイズを示したことは、効率的なヘアピン形成を示唆する(
図19A)。ssFVIIIXTENは、流体尾静脈注射を介して、それぞれ、400μgまたは1600μg/kgと同等である、マウス1匹当たり10μgまたは40μgで全身注射した。血漿サンプルは、注射されたマウスから、7日間隔で、5.5ヶ月間にわたり回収した。血漿FVIII活性は、製造元の指示書に従う、Chromogenix Coatest(登録商標)SP Factor VIII発色アッセイにより測定した。
【0302】
ssFVIIIXTENを注射された動物について、正常のパーセントに照らして正規化された、血漿FVIII活性を、
図19Cに示す。結果は、HemAマウスにおいて、5.5ヶ月間の経過にわたり、用量依存的応答を示し、FVIII発現は、高用量コホートにおいて、生理学的レベルを超えるレベル(正常レベルの>1000%)であった。しかし、56日目まで、FVIII発現の初期降下が観察され、次いで、140日目まで、レベルが安定化したことは、肝臓からの、HBoV1 ITRにより挟まれたssFVIIIXTENの持続的発現を示唆する。これらの結果は、長期間にわたる、FVIIIXTENの持続的発現について、HBoV1 ITRの機能性を、in vivoにおいて検証する。
【0303】
ceFVIIIXTEN HBoV1 ITR(クローズドエンドDNA)
クローズドエンドDNA(ceDNA)と、一本鎖DNA(ssDNA)との間には、それぞれ、前者は二本鎖であり、後者は一本鎖であることの、大きな構造的差違が存在する。この差違は、核酸分子の発現レベルならびに安定性に影響を及ぼしうる。本研究は、ceDNA形態にあるHBoV1 ITRの機能性を、in vivoにおいて示す。これについて調べるために、実施例8で記載されたTwoBacアプローチを使用して、ceFVIIIXTENを得、感染Sf9細胞ペレットから精製し、0.8~1.2%のアガロースゲル電気泳動により、品質を決定した。アガロースゲル解析は、ceFVIIIXTENについて、>90%の純度を示し、夾雑DNAは検出不可能であった(
図19B)。
【0304】
結果として得られるceFVIIIXTENは、流体尾静脈注射を介して、hFVIIIR593C
+/+/HemAマウスにおいて、それぞれ、12μg、40μg、および80μg/kgと同等である、マウス1匹当たり0.3μg、1.0μg、または2.0μgで全身注射した。注射されたマウスからの血漿サンプルは、7日間隔で回収し、FVIII活性は、上記で記載された、発色アッセイにより測定した。ceFVIIIXTENを注射された動物について、正常のパーセントに照らして正規化された、血漿FVIII活性を、
図19Cに示す。
【0305】
結果は、HemAマウスにおいて、用量依存的応答を示し、ceFVIIIXTENについての被験最高用量(80μg/kg)において、FVIII発現は、生理学的レベルを超えるレベル(正常レベルの>500%)であった。ceDNAについて、FVIII発現の最高レベルは、1600μg/kgにおけるssFVIIIXTENにより達成された最高レベルの2分の1であった。しかし、ssDNAは、これらの高レベルのFVIII発現を達成するのに、はるかに高量で投与された。ceDNAは、投与量当たり高レベルのFVIII発現をもたらすと考えられる。例えば、400μg/kgにおけるssDNAについてのFVIII発現レベルと、40μg/kgにおけるceDNAについてのFVIII発現レベルとは、同等であった(
図19C)。これらのin vivo研究は、ssDNA形態またはceDNA形態における、HBoV1 ITRの機能性を検証し、HBoV1 ITRが、バキュロウイルス昆虫細胞系において、目的の導入遺伝子をコードする、機能的ceDNAを作製するのに使用されることを示す。
【実施例16】
【0306】
FVIIIXTEN HBoV1単量体ceDNAと、FVIIIXTEN HBoV1多量体ceDNAとの、in vivoにおける効能の対比
組換えAAVゲノムは、エピソーム内に存続することが示されており、それらのエピソーム内の存在は、長期間にわたる導入遺伝子の発現と相関すると考えられる。これらのゲノムは、単量体環状化過程を介して生じ、AAV頭尾環状ゲノムをもたらすと考えられる。しかし、時間経過にわたり、高分子量環状コンカタマーが優先され、単量体環状中間体は減衰する。さらなる詳細については、Duanら(1998)、J Virol.72(11)、8568~8577において開示されている。現在のところ、エピソーム内における、クローズドエンドDNA(ceDNA)の存在、およびin vivoにおける、単量体ceDNA形態の、コンカタマーceDNA形態に対する利益については、ほとんど知られていない。
【0307】
本研究は、hFVIIIR593C+/+/HemAマウスにおいて、流体尾静脈注射を介して、FVIIIXTEN HBoV1 ceDNA(ceFVIIIXTEN)の両方の形態を調べることにより、ceDNAの単量体形態の影響を、in vivoにおいて、多量体形態と対比して決定するために実施した。
【0308】
ceFVIIIXTENの単量体形態および多量体形態は、既に記載されている通り(国際出願第PCT/US2021/047218号を参照されたい)に、PAGE精製により作出した。ceFVIIIXTENのコンカタマー形態の品質を、0.8~1.2%のアガロースゲル電気泳動により決定したところ、結果は、分子種の大部分が、ceFVIIIXTENの単量体形態または多量体形態であったことを示した(
図20A)。精製された、単量体または多量体のceFVIIIXTENは、hFVIIIR593C
+/+/HemAマウスに、流体尾静脈注射を介して、40μg/kgで、全身注射した。血漿サンプルは、注射されたマウスから、7日間隔で、約3ヶ月間にわたり回収した。血漿FVIII活性は、製造元の指示書に従う、Chromogenix Coatest(登録商標)SP Factor VIII発色アッセイにより測定した。
【0309】
ceFVIIIXTENを注射された動物について、正常のパーセントに照らして正規化された、血漿FVIII活性を、
図20Bに示す。結果は、3ヶ月間の経過にわたり、ceFVIIIXTENの単量体形態または多量体形態の間において、FVIII発現レベルの有意差を示さなかった。このデータは、ceFVIIIXTENの単量体形態および多量体形態のいずれも、in vivoにおいて、同等の効力および安定性を有することを示唆する。
【実施例17】
【0310】
FVIIIXTEN HBoV1 mTTR ssDNAと、FVIIIXTEN HBoV1 A1AT ssDNAとの、in vivoにおける効能の対比
上記で開示された実験において使用されるFVIIIXTEN発現カセットは、mTTRプロモーターおよびエンハンサーエレメントを含有する(V2.0;
図1)。このプロモーターは、マウス肝臓特異的であるが、その肝臓特異的発現は、大型動物モデルまたはヒト対象において研究されていない。したがって、本研究では、V3.0 FVIIIXTEN発現カセット(配列番号35)は、V2.0発現カセット内において、mTTRプロモーターおよびエンハンサーエレメントを、ヒト肝臓特異的アルファ1アンチトリプシン(A1AT)プロモーター(配列番号36)により置き換えることにより作出した(
図1)。
【0311】
mTTRプロモーターの機能性を、in vivoにおいて、A1ATプロモーターと対比して検証するために、コドン最適化ヒトFVIIIXTEN(ssFVIIIXTEN)を、あらかじめ形成されたHBoV1 ITRと共に含む、一本鎖DNA(ssDNA)を、hFVIIIR593C
+/+/HemAマウスにおいて調べた(
図21A)。あらかじめ形成されたHBoV1 ITRを伴うssFVIIIXTENは、95℃におけるPmlI消化の二本鎖DNA(dsDNA)断片産物(mTTR発現カセットまたはA1AT FVIII発現カセットおよびプラスミド骨格)を変性させ、次いで、4℃で冷却して、回文ITR配列が、フォールディングすることを可能とすることにより作出した。結果として得られるssFVIIIXTENは、0.8~1.2%のアガロースゲル電気泳動により照合した。ゲル解析が、ssFVIIIXTENについて、dsDNAの半分のサイズを示したことは、効率的なヘアピン形成を示唆する(
図21B)。ssFVIIIXTENは、hFVIIIR593C
+/+/HemAマウスへと、流体尾静脈注射を介して、マウス1匹当たり10μgで全身注射した。血漿サンプルは、注射されたマウスから、7日間隔で、5.5ヶ月間にわたり回収した。血漿FVIII活性は、製造元の指示書に従う、Chromogenix Coatest(登録商標)SP Factor VIII発色アッセイにより測定した。
【0312】
ssFVIIIXTENを注射された動物について、正常のパーセントに照らして正規化された、血漿FVIII活性を、
図21Cに示す。これらの結果が、注射後21日目まで、同等レベルのFVIII発現を示したことは、hFVIIIR593C
+/+/HemAマウス動物モデルにおいて、mTTRプロモーターまたはA1ATプロモーターにより発現されるFVIIIXTENレベルに、有意差が見られないことを示唆する。
【0313】
配列
【0314】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【表1-8】
【表1-9】
【表1-10】
【表1-11】
【表1-12】
【表1-13】
【表1-14】
【表1-15】
【表1-16】
【表1-17】
【表1-18】
【表1-19】
【配列表】
【国際調査報告】