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特表2024-534129急冷熱交換器を備えた酸化的脱水素化(ODH)反応器の流出物の冷却
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  • 特表-急冷熱交換器を備えた酸化的脱水素化(ODH)反応器の流出物の冷却 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-18
(54)【発明の名称】急冷熱交換器を備えた酸化的脱水素化(ODH)反応器の流出物の冷却
(51)【国際特許分類】
   C07C 5/48 20060101AFI20240910BHJP
   C07C 11/04 20060101ALI20240910BHJP
   C07C 51/215 20060101ALN20240910BHJP
   C07C 53/08 20060101ALN20240910BHJP
【FI】
C07C5/48
C07C11/04
C07C51/215
C07C53/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024512060
(86)(22)【出願日】2022-08-16
(85)【翻訳文提出日】2024-02-22
(86)【国際出願番号】 IB2022057659
(87)【国際公開番号】W WO2023026133
(87)【国際公開日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】63/237,000
(32)【優先日】2021-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ハステロイ
(71)【出願人】
【識別番号】505382548
【氏名又は名称】ノバ ケミカルズ(インターナショナル)ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オレイーウォラ、ボラジ
(72)【発明者】
【氏名】シマンゼーンコフ、ヴァシリー
(72)【発明者】
【氏名】グーダルズニア、シャーヒン
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC12
4H006AC46
4H006BA60
4H006BC10
4H006BC19
4H006BD80
4H006BD81
4H006BD84
4H006BE30
4H006BE60
(57)【要約】
酸化的脱水素化(ODH)反応器システムを含む、システム及び方法であって、エタン及び酸素をODH反応器に供給することと、ODH反応器内で酸素の存在下、ODH触媒を介してエタンをエチレンに脱水素化し、それによってODH反応器内で酢酸を生成することと、を含む。ODH反応器の流出物は、急冷熱交換器を通して排出され、それによって流出物を急冷熱交換器を介して温度閾値未満に冷却し、流出物は、エチレン、酢酸、水、二酸化炭素、一酸化炭素、及び未反応エタンを含み、ODH反応器から急冷熱交換器の流出物排出出口までの流出物の滞留時間は、特定された上限未満である。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化的脱水素化(ODH)反応器システムを操作する方法であって、
エタン、酸素、及び希釈剤を、ODH触媒を有するODH反応器に供給する工程と、
ODH反応器内で酸素の存在下、ODH触媒を介してエタンをエチレンに脱水素化し、それによってODH反応器内で酢酸を生成する工程と、
ODH反応器からの流出物を急冷熱交換器を通して排出し、それによって流出物を急冷熱交換器を介して温度閾値未満に冷却する工程であって、流出物はエチレン、酢酸、水、二酸化炭素、一酸化炭素、及び未反応エタンを含む、工程と、
を含み、
ODH反応器からの流出物を排出する急冷熱交換器の出口までの流出物の滞留時間は、特定された上限未満である、上記方法。
【請求項2】
前記特定された上限が、前記流出物中の望ましくない反応の発生を減少させるために特定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記温度閾値を275℃未満かつ前記流出物の露点より高く特定することを含み、前記特定された上限が60秒未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記温度閾値を250℃未満かつ前記流出物の露点より高く特定することを含み、前記特定された上限が20秒未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
導管を介して、ODH反応器の出口からの流出物を急冷熱交換器に搬送することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記導管が、前記導管内での前記流出物の滞留時間を短縮する内部構造を備える、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記内部構造が、前記流出物の流れに利用可能な前記導管の体積を減少させ、それによって前記導管内での前記流出物の滞留時間を短縮し、前記内部構造が静的内部構造を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記内部構造が、スタティックミキサーを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
急冷熱交換器が、ODH反応器に直接取り付けられる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
ODH反応器への急冷熱交換器の直接的な取り付けが、急冷熱交換器の入口ノズルのフランジにボルト締めされたODH反応器の出口ノズルのフランジを含むフランジ対フランジ接続を備え、出口ノズル若しくは入口ノズル、又はその両方が、内部構造を備え、それによって、出口ノズル若しくは入口ノズル、又はその両方を通る流出物の滞留時間を短縮する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記急冷熱交換器の少なくとも一部が前記ODH反応器内に配置され、前記ODH反応器の排出が前記急冷熱交換器の排出を含み、前記滞留時間がゼロであり、流出物を冷却する工程が、ODH反応器から流出物を排出する前に、急冷熱交換器を介して流出物を冷却することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記希釈剤が水を含み、前記温度閾値が200℃~300℃の範囲内であり、前記特定された上限が60秒未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
酸化的脱水素化(ODH)反応器システムを操作する方法であって、
エタン及び酸素を含む供給物をODH反応器に供給する工程と、
ODH反応器内で、ODH触媒を介してエタンをエチレンに脱水素化する工程と、
ODH反応器からの流出物を急冷熱交換器を通して排出し、それによって流出物を急冷熱交換器を介して特定された温度閾値未満に冷却する工程であって、流出物はエチレン、酢酸、水、二酸化炭素、一酸化炭素、及び未反応エタンを含む、工程と、
を含み、
流出物を排出するODH反応器の出口から、冷却された流出物を排出する急冷熱交換器の出口までの流出物の滞留時間は、流出物中の望ましくない反応の発生を減少させるために特定された上限未満である、上記方法。
【請求項14】
前記上限が40秒未満であり、前記特定された温度閾値が300℃未満であって前記流出物の露点より高い、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記急冷熱交換器を介して前記流出物を冷却するために、前記急冷熱交換器を通して冷却媒体を流す工程を含み、前記急冷熱交換器が、シェルアンドチューブ熱交換器を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記冷却媒体が水を含み、前記特定された温度閾値が250℃未満である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記冷却媒体が、脱塩水、ボイラー供給水、又は蒸気凝縮水を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記流出物からの熱を用いて前記シェルアンドチューブ熱交換器を介して前記冷却媒体から蒸気を発生させることを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記急冷熱交換器がヒートパイプ熱交換器を備え、前記温度閾値が200℃~300℃の範囲内である、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
前記流出物を用いて前記供給物を加熱するために、前記急冷熱交換器からの前記流出物を、クロス交換器を備える供給物熱交換器に通して流し、それによって前記流出物をさらに冷却することを含み、前記上限が60秒未満である、請求項13に記載の方法。
【請求項21】
酸化的脱水素化(ODH)反応器システムであって、
酸素の存在下でエタンをエチレンに脱水素化し、酢酸を生成するためのODH触媒を含むODH反応器と、
ODH反応器の流出物を閾値温度未満に冷却するための急冷熱交換器であって、流出物はエチレン、酢酸、水、二酸化炭素、一酸化炭素、及び未反応エタンを含む、急冷熱交換器と、
を備え、
ODH反応器システムが、ODH反応器の流出物出口から、急冷熱交換器の流出物出口までの流出物の滞留時間を、流出物中の望ましくない反応の発生を減少させるために特定された上限未満にするように構成される、上記ODH反応器システム。
【請求項22】
前記上限が60秒未満であり、前記温度閾値が300℃未満である、請求項21に記載のODH反応器システム。
【請求項23】
前記急冷熱交換器が、前記流出物を冷却するための冷却媒体を受け取るように構成されたシェルアンドチューブ熱交換器を備える、請求項21に記載のODH反応器システム。
【請求項24】
前記シェルアンドチューブ熱交換器が、前記冷却媒体としてボイラー供給水を受け取り、前記流出物からの熱を用いてボイラー供給水からの蒸気の発生を促進するように構成される、請求項23に記載のODH反応器システム。
【請求項25】
前記急冷熱交換器がヒートパイプ熱交換器を備える、請求項21に記載のODH反応器システム。
【請求項26】
前記ODH反応器の出口からの前記流出物を前記急冷熱交換器に搬送するための導管を備える、請求項21に記載のODH反応器システム。
【請求項27】
前記導管の流量を減少させて前記導管内の流出物の滞留時間を短縮するために、前記導管内に配置された静的内部構造を備える、請求項26に記載のODH反応器システム。
【請求項28】
前記急冷熱交換器が、前記ODH反応器に直接取り付けられている、請求項21に記載のODH反応器システム。
【請求項29】
前記急冷熱交換器が、フランジ対フランジ接続を介して前記ODH反応器に直接取り付けられており、前記ODH反応器の出口を構成する出口ノズルのフランジが、急冷熱交換器の入口ノズルのフランジにボルト締めされている、請求項21に記載のODH反応器システム。
【請求項30】
前記出口ノズル若しくは前記入口ノズル、又はその両方を通る前記流出物の滞留時間を短縮するための、前記出口ノズル若しくは前記入口ノズル、又はその両方に静的内部構造を備える、請求項29に記載のODH反応器システム。
【請求項31】
前記急冷熱交換器の少なくとも一部が、前記滞留時間をゼロにするために前記ODH反応器内に配置され、前記流出物を冷却することが、前記ODH反応器からの前記流出物の排出前に、前記流出物を冷却することを含む、請求項21に記載のODH反応器システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権の主張)
この出願は、2021年8月25日に出願された米国仮出願第63/237,000号に基づく優先権を主張し、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(技術分野)
この開示は、エチレンを製造するための酸化的脱水素化(ODH:oxidative dehydrogenation)に関する。より具体的には、本開示は、下流処理の前に、望ましくない生成物の形成を制限するために、急冷熱交換器を使用し、滞留時間を短くして、ODHプロセスからの流出物を冷却することに関する。
【背景技術】
【0003】
対応するアルケンへのアルカンの触媒酸化的脱水素化は、スチームクラッキングの代替手段である。スチームクラッキングとは対照的に、酸化的脱水素化(ODH)は低温で操作でき、一般にコークスを生成しない。エチレン製造の場合、ODHは、スチームクラッキングよりも高いエチレン収率を提供することができる。このODHは、アルカンを対応するアルケンに転化するための触媒を有する反応器容器内で行うことができる。副生成物としての酢酸は、低級アルカン(例えばエタン)を対応するアルケン(例えばエチレン)に転化する際に生成し得る。
【0004】
生成物であるアルケンと副生成物である酢酸は、それぞれ、ODH反応器の流出物から回収することができる。ODH反応器の流出物は、冷却される前に、ODH反応器の流出物排出配管を通って流れる間に、有意な追加の反応を受けないことが前提となっている。
【発明の概要】
【0005】
一態様は、酸化的脱水素化(ODH)反応器システムを操作する方法に関し、該方法は、エタン、酸素、及び希釈剤を、ODH触媒を有するODH反応器に供給することを含む。本方法は、ODH反応器内で酸素の存在下、ODH触媒を介してエタンをエチレンに脱水素化し、それによってODH反応器内で酢酸を生成することを含む。本方法は、ODH反応器からの流出物(effluent)を、急冷(quench)熱交換器を通して排出し、それによって流出物を急冷熱交換器を介して温度閾値(temperature threshold)未満に冷却することを含む。流出物は、エチレン、酢酸、水、二酸化炭素、一酸化炭素、及び未反応エタンを含む。ODH反応器からの流出物を排出する急冷熱交換器の出口までの流出物の滞留時間は、特定された(specified)上限未満である。
【0006】
別の態様は、ODH反応器システムの方法に関し、該方法は、エタン及び酸素を含む供給物をODH反応器に供給する工程と、ODH反応器内で、ODH触媒を介してエタンをエチレンに脱水素化する工程と、を含む。本方法は、ODH反応器からの流出物を急冷熱交換器を介して排出し、それによって、流出物を、急冷熱交換器を介して特定された温度閾値未満に冷却することを含む。流出物は、エチレン、酢酸、水、二酸化炭素、一酸化炭素、及び未反応エタンを含む。流出物を排出するODH反応器の出口から、冷却された流出物を排出する急冷熱交換器の出口までの流出物の滞留時間は、流出物中の望ましくない反応の発生を減少させるために特定された上限未満である。
【0007】
さらに別の態様は、酸素の存在下でエタンをエチレンに脱水素化し、酢酸を生成するためのODH触媒を有するODH反応器を含むODH反応器システムに関する。ODH反応器システムは、ODH反応器の流出物を閾値温度未満に冷却するための急冷熱交換器を含む。流出物は、エチレン、酢酸、水、二酸化炭素、一酸化炭素、及び未反応エタンを含む。ODH反応器システムは、ODH反応器の流出物出口から、急冷熱交換器の流出物出口までの流出物の滞留時間を、流出物中の望ましくない反応の発生を減少させるために特定された上限未満にするように構成されている。
【0008】
1つ以上の実施態様の詳細は、添付の図面及び以下の明細書に記載されている。その他の特徴及び利点は、明細書及び図面、並びに特許請求の範囲から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】エチレン製造システムのブロック図である。
図2】エチレン製造システムのブロック図である。
図3】エチレン製造システムのブロック図である。
図4】ODH反応器への急冷熱交換器の直接取り付け(direct attachment)の図である。
図5】ODH反応器への急冷熱交換器の直接取り付けの図である。
図6】ODH反応器への急冷熱交換器の直接取り付けの図である。
図7】ヒートパイプ熱交換器の図である。
図8】ODH反応器システムを操作する方法のブロックフロー図である。
図9】例1~例5を実施するために利用される実験室反応器システムのブロック図である。
図10】チューブ内に汚損(fouling)物質が存在するチューブの画像である。 様々な図面における同様の参照番号や表記は、同様の要素を示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の態様は、ODH反応器内で酸素の存在下、酸化的脱水素化(ODH)触媒を介してエタンをエチレンに脱水素化することを対象とする。したがって、態様は、エチレン製造におけるODH反応器システムに関する。ODH反応器システムは、エタンをエチレンに転化するODH反応器を含む。ODH反応器では、酢酸も生成される可能性がある。本技術は、少なくともエチレン及び酢酸を含む生成物流出物をODH反応器から排出することを含むことができる。
【0011】
問題となるのは、流出物が高温である間に流出物中で望ましくない反応が起こることである。特に、望ましくない反応は、ODH反応器の操作温度又はそれに近い温度で、ODH反応器から排出される流出物配管を通って流れる流出物中で起こる可能性がある。したがって、これらの望ましくない反応の存在を減らすために、本技術は、ODH反応器から流出物を、流出物を冷却する急冷熱交換器を通して排出する解決策を提供する。特に、流出物を急冷熱交換器を通して排出することは、流出物をODH反応器容器の出口ノズルを介して排出し、流出物をODH反応器ノズルから急冷熱交換器に通すことを含むことができる。
【0012】
ODH反応器システムは、急冷熱交換器を含む。急冷熱交換器は、流出物中の成分を凝縮させることなく、ODH反応器流出物を冷却することができる。有利には、急冷熱交換器は、流出物中の望ましくない反応が顕著に起こらないように、流出物をある温度未満に冷却することができる。
【0013】
実施態様では、ODH反応器システムは、高温での流出物の滞留時間を制限するように構成される。特に、ODH反応器の出口から急冷熱交換器の(冷却された流出物を排出する)出口まで反応器温度で排出される流出物の滞留時間は、制限される可能性がある。ODH反応器システムは、この滞留時間を、秒単位で特定された上限(閾値)未満(例えば、1分未満)として与えるように構成することができる。この滞留時間の上限は、高温での流出物の滞留時間を短縮し、それによって流出物中の望ましくない反応の発生を減少させるように特定することができる。これらの望ましくない反応は、ODH反応器の典型的な操作温度(又はそれに近い温度)での流出物のように、より高温であるほど起こりやすい。したがって、これらの高温での流出物の時間が短いほど(滞留時間が短いほど)、望ましくない反応の発現が減少する可能性がある。
【0014】
以下の実施例に示す実験研究は、ODH触媒なしの場合のODH生成物ガス(ODH反応器流出物に類似)の熱反応性に焦点を当てた。この研究により、ODH反応器流出物に類似した混合物内で、かなりの反応が生じるという問題が特定された。特定の例に応じて、ODH反応器流出物を模倣した(近似した)混合物には、エチレン、酢酸、水、酸素、二酸化炭素、及びエタノールから選択される成分の様々な組合せが含まれていた。混合物中の反応には、気相反応と、混合物が流れる導管(チューブ)の金属内面によって触媒される反応が含まれていた。これらの反応により、望ましくないガス副生成物(主に一酸化炭素と二酸化炭素)と、炭素及び元素状酸素に富む固体の汚損物質が生じた。
【0015】
商業的実施では、ODH反応器の下流でこれらの望ましくない熱反応が存在すると、例えば以下の理由により、ODHプラントの経済性に悪影響を及ぼす可能性がある:(1)エチレン及び酢酸の選択率又は収率が低下する可能性;(2)一酸化炭素(CO)及び二酸化炭素(CO)の選択率又は収率が増加する可能性。さらに、酸素/炭素に富む固体汚損が存在すると、ODH反応器の下流の配管が詰まる可能性があるため、ODHプラントの操作に悪影響を及ぼす可能性がある。このような汚損(詰まり)は、ODHプラントの望ましくないコストのかかる停止につながる可能性がある。
【0016】
しかしながら、実験研究(以下の実施例など)により、生成物流(流出物)の温度が約275℃未満又は約250℃未満に低下し(ただし、操作上の理由により、炭化水素及び水の露点より高い温度には保たれている)、冷却される前の高温での生成物流(流出物)の時間が比較的短くなるにつれて、これらの望ましくない反応が減少することが確認された。実施例は、ODH反応器から排出される流出物の典型的な温度又はそれに近い温度での流出物の滞留時間を、数秒(例えば、1分未満)に制限することが有益である可能性があることを示した。
【0017】
これを考慮して、本技術の実施形態では、ODH反応器の下流に急冷熱交換器を配置して、反応器流出物を200℃、225℃、250℃、275℃、又は300℃などの上限温度閾値未満に冷却する。回避すべき下限温度閾値は、混合物の露点(例えば150℃)である。ODH反応器の出口から急冷熱交換器の出口までの流出物の滞留時間の特定された上限は、例えば、60秒、40秒、20秒、10秒、9秒、又は8秒などであってもよい。
【0018】
ODH反応器の出口から急冷熱交換器の出口までのODH反応器流出物の滞留時間を考慮する実施形態の場合、滞留時間は、ODH反応器からの排出配管を通る流出物の滞留時間と、排出配管から流出物を受け取る急冷熱交換器を通る流出物の滞留時間との組合せであってもよい。排出配管を通る流出物の滞留時間は、排出配管を通るODH反応器流出物の体積流量に対する排出配管の内容積の比であってもよい。急冷熱交換器を通る流出物の滞留時間は、急冷熱交換器を通るODH反応器流出物の体積流量に対する急冷熱交換器の内部容積の比であってもよい。これらの実施形態における急冷熱交換器は、典型的には、流出物のためのプロセス側と、冷却媒体のためのユーティリティ側とを有することができる。それゆえ、急冷熱交換器を通る流出物の滞留時間は、急冷熱交換器のプロセス側を通る流出物の体積流量に対する急冷熱交換器のプロセス側の内容積の比であってもよい。いくつかの実施態様では、プロセス側は、排出配管からODH反応器流出物を受け取る急冷熱交換器のチューブ(チューブ側)であってもよい。急冷熱交換器は、チューブを有し(例えば、急冷熱交換器がシェルアンドチューブ熱交換器の場合)、流出物がチューブを通って流れるものであってもよい。したがって、急冷熱交換器を通る流出物の滞留時間は、急冷熱交換器のチューブ側を通るODH反応器流出物の体積流量に対する、チューブの集合体(チューブ側)の内部容積の比であってもよい。ODH反応器の流出物が、シェルアンドチューブ熱交換器として急冷熱交換器のチューブを通って流れるのではなく、シェルアンドチューブ熱交換器として急冷熱交換器のシェル側(チューブの外側)を通って流れる場合、急冷熱交換器を通る流出物の滞留時間は、急冷熱交換器のシェル又はシェル側の内容積と、急冷熱交換器のシェル側を通るODH反応器流出物の体積流量との比であってもよい。
【0019】
容器又は導管を通る流体の滞留時間は、容器又は導管を通過する流体の体積流量(時間当たりの体積)に対する容器又は導管の内部容積の比として定義することができる。体積流量(ひいては滞留時間)は、一定の質量流量及び一定の組成の場合を含め、操作圧力及び操作温度の関数として変化する場合がある。滞留時間は、圧力と温度の実際の条件に基づいている。対照的に、実施例における滞留時間は、圧力及び温度の実際の条件に基づいて計算されていない。したがって、実施例における滞留時間は、おおよその滞留時間である。実施例における高温でのこのおおよその滞留時間は約9秒であり、商業的構成における反応器排出温度での流出物の実際の滞留時間の望ましい特定された上限の桁(例えば、1分未満)を示している。
【0020】
固定床、流動床、移動床、又はスイング床などのODH反応器プラットフォームの場合、急冷熱交換器は、ODH反応器の出口の下流に短い距離(例えば、20フィート未満)で配置することができる。反応器流出物を急冷熱交換器に搬送する導管(配管)は、導管の流量及び/又は流路断面積を減少させて導管を通る滞留時間を短縮するための静的内部構造(例えばパッキン)を有することができる。実施態様では、静的内部構造(static internal)は、スタティックミキサーのようなものであってもよい。さらに、いくつかの実施態様では、急冷熱交換器の入口は、高温での流出物の滞留時間を短縮するように、ODH反応器の出口に直接(例えば、フランジ対フランジ接続で)取り付けられる。急冷熱交換器は、シェルアンドチューブ熱交換器であってもよい。他の実施態様では、後述するように、急冷熱交換器はヒートパイプ設計を有してもよい。
【0021】
さらに他の実施態様では、急冷熱交換器は、流出物を直接冷却する際に冷却流体(例えば、液体水などの冷却液)を噴霧するための内部ノズルを有する急冷容器であってもよい。この急冷容器は、急冷熱交換器容器として表示されてもよい。冷却液の噴霧は、液状での冷却液の保持を回避し、かつ流出物成分の凝縮を回避するために、冷却液が霧状(小さな液体粒子)で(急冷容器内の)気相に入り、冷却液が蒸発しやすいように行われてもよい。スプレーノズルを備えたこのような急冷容器の場合、熱交換は、直接冷却において流出物と冷却流体との間で行われる。液体としての冷却流体の場合、冷却液の蒸発熱は、潜熱を介した冷却に加えて、熱伝達に寄与する可能性がある。急冷熱交換器容器としての急冷容器は、ODH反応器容器の下流の容器であってもよい。他の実施態様では、急冷熱交換器は、流動床反応器としてのODH反応器を備えたODH反応器の上部に配置されたスプレーノズルである。したがって、それらの実施態様では、ODH反応器容器は、ODH反応器容器の上部(頂部)に非凝縮急冷セクションを有するという点で、急冷容器でもあり得る。
【0022】
ODH反応器を用いて流動床反応器として実施する場合、オプションとして、急冷熱交換器(例えば、ヒートパイプ設計又はスプレーノズル)を、ODH反応器の上部(触媒離脱セクション:catalyst disengagement section)内に配置することができる。
【0023】
説明したように、急冷熱交換器を使用し、滞留時間を短くする利点としては、(a)エチレンの選択率/収率及び酢酸の選択率/収率に悪影響を及ぼす(ODH反応器の後の)望ましくない気相反応を低減又は排除すること、並びに(b)ODH反応器の後の望ましくない酸素/炭素に富む固体汚損及び詰まりを低減又は排除することにより、ODHプラントの操作信頼性を向上させること、によるODHプラントの経済性の改善を挙げることができる。ODH反応器から急冷熱交換器を通る生成物混合ガスの滞留時間は、望ましくない気相反応及び/又は固体ベースの汚損の形成を回避するために、閾値未満に指定することができる。この滞留時間は、急冷熱交換器の設置によって制御又は変更することができ、例えば、急冷熱交換器の配置や、導管又はノズルへの配管内部構造の設置などによって制御又は変更することができる。この技術は、急冷熱交換器の操作温度を、200℃、250℃、又は275℃などの閾値未満に維持することを含むことができる。
【0024】
図1は、ODH反応器システムを有するエチレン製造システム100である。ODH反応器システムは、ODH反応器102容器と急冷熱交換器104とを含む。操作中、ODH反応器102は、ODH反応器102内の酸素の存在下で、ODH触媒106を介してエタンをエチレン(生成物)に脱水素化する。ODH反応器102では、酢酸(副生成物)も生成される可能性がある。ODH反応器102から排出される流出物108は、少なくともエチレン、酢酸、水、二酸化炭素(CO)、一酸化炭素(CO)、及び未反応エタンを含み得る。流出物108は、ODH反応器102の出口から排出することができる。出口は、ODH反応器102の流出物出口として表示されてもよい。
【0025】
ODH反応器への供給物110は、典型的には、少なくともエタンと酸素を含んでもよい。供給物110混合物を可燃性条件の範囲外(可燃性エンベロープの範囲外)に維持するために、供給物110混合物を希釈してもよい。換言すると、希釈剤は、供給物110中に含まれていてもよい。利用することができる希釈剤の例としては、水(蒸気)、窒素、CO、ヘリウム(He)、アルゴン(Ar)、メタンなど、又はそれらの混合物が挙げられる。実施形態では、水が希釈剤である。水は、供給物110中で蒸気の形態であってもよい。蒸気又は蒸発した水は、例えば、実施態様においてODH反応器生成物流(流出物108)からの水の分離が比較的簡単であることから、魅力的な希釈剤となり得る。水を希釈剤として用いる実施形態では、流出物108中の水は、未反応の希釈水とODH反応で生成した水の両方を含んでもよい。
【0026】
ODH反応器102容器は、エタンをエチレンに脱水素化するためのODH触媒106を有する。反応器102の操作温度は、例えば、300℃~450℃の範囲であってもよい。ODH反応は、典型的には発熱性である。ODH反応器102システムは、ODH反応器102の温度を制御するために熱伝達流体を利用することができる。いくつかの実施形態では、熱伝達流体は、熱伝達ジャケット(例えば、反応器102の容器ジャケット又は反応器容器102内部のジャケット)を通って流れてもよい。熱伝達流体は、ODH反応器102から熱を除去する(又はODH反応器102に熱を加える)ために使用することができる。熱伝達流体は、例えば蒸気、水(加圧水又は超臨界水を含む)、油、溶融塩などであってもよい。ODH反応器102は、例えば、固定床反応器(ODH触媒の固定床で操作)、流動床反応器(触媒の流動床で操作)、又は別の反応器タイプであってもよい。ODH反応器102における、ODH触媒106を介したエタン(C)からエチレン(C)へのODH反応は、反応式C+0.5O→C+HOを含むか、又はこの反応式であってもよい。ODH反応器102における追加の反応には、以下が含まれてもよい:
+1.5O→CHCOOH+H
+2.5O→2CO+3H
+3.5O→2CO+3H
+O→CHCOOH
+2O→2CO+2H
+3O→2CO+2H
CHCOOH+O→2CO+2H
CHCOOH+2O→2CO+2H
CO+0.5O→CO
【0027】
したがって、ODH反応器102では、生成されるエチレンに加えて、水(HO)、酢酸(CHCOOH)、一酸化炭素(CO)、及び二酸化炭素(CO)も生成される可能性がある。流出物110は、未反応の希釈剤を含むことができ、これは特定の実施形態では水であってもよい。
【0028】
固定床反応器としてのODH反応器の場合、反応物質(例えば、供給物110中のエタン及び酸素)は、反応器の一端から導入され、固定化触媒(例えば、ODH触媒106)を通過して流れることができる。生成物(例えば、エチレン、酢酸、並びにHO、CO、及びCOなどの他の反応生成物)が形成され、生成物を含む流出物(例えば、流出物110)が反応器のもう一方の端から排出され得る。固定床反応器は、それぞれが触媒106の床を有し、反応物質を流すための1つ以上のチューブ(例えば、金属チューブ、セラミックチューブなど)を有することができる。ODH反応器102の場合、流れる反応物質は少なくともエタン及び酸素であり得る。チューブは、例えばスチールメッシュを含むことができる。さらに、熱伝達チューブに隣接した熱伝達ジャケット又は外部熱交換器(例えば、供給物熱交換器又は再循環熱交換器)により、反応器102の温度制御を行うことができる。前述の熱伝達流体は、ジャケット又は外部熱交換器を通って流れてもよい。最後に、固定床反応器の変形例、例えば、移動床反応器又はスイング床反応器(回転床反応器)を使用することができる。
【0029】
流動床反応器としてのODH反応器は、(1)非循環流動床、(2)再生器付き循環流動床、又は(3)再生器なしの循環流動床とすることができる。実施態様では、流動床反応器はODH触媒のための支持体を有してもよい。支持体は、多孔質構造体又は分配器プレートであってもよく、反応器の底部に配置されてもよい。反応物質は、ODH触媒床を流動化させる速度で支持体を通って上方に流れることもある。反応物質(例えば、反応器102の場合、エタン、酸素など)は、流動触媒との接触により生成物(例えば、反応器102の場合、エチレン及び酢酸)に変換される。生成物を有する流出物(例えば、流出物110)が、反応器の上部から排出されることがある。熱伝達ジャケット(反応器容器上の冷却ジャケット)は、反応器の温度制御を容易にし得る。流動床反応器は、反応器の温度制御を容易にするために、ジャケット、熱伝達チューブ、又は外部熱交換器(例えば、供給物熱交換器又は再循環ループ熱交換器)を有することができる。前述の熱伝達流体は、反応器チューブ、ジャケット、又は外部熱交換器を通って流れることがある。
【0030】
示されているように、ODH触媒106は、固定床又は流動床などとして操作することができる。ODH触媒106としては、エタンのODH用として知られている触媒を採用することができる。実施形態では、ODH触媒106組成物は、ODH反応器流出物108中の望ましくない反応の発生にほとんど、又は全く影響を及ぼさない可能性がある。例外は、流出物が反応器102から急冷熱交換器104へ、及びそれを通って移動する間に、汚損又は望ましくない生成物の生成を増加させる副生成物を生成するODH触媒106の場合である。
【0031】
特定の実施形態では、エタンをエチレンに脱水素化し、副生成物として酢酸を生成するODH反応を生じさせることができるODH触媒106は、本技術に適用することができる。低温のODH触媒が有効である可能性がある。ODH反応器102に利用できるODH触媒106の非限定的な一例は、モリブデン(Mo)、バナジウム(V)、テルル(Te)、ニオブ(Nb)及び酸素(O)を含む低温ODH触媒であり、モリブデンとバナジウムのモル比は1:0.12から1:0.49であり、モリブデンとテルルのモル比は1:0.01から1:0.30であり、モリブデンとニオブのモル比は1:0.01から1:0.30であり、酸素は少なくとも存在する金属元素の原子価を満たす量で存在する。モリブデン、バナジウム、テルル、ニオブのモル比は、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)によって決定できる。触媒は、450℃未満、425℃未満、又は400℃未満でODH反応を提供する際に低温であってもよい。
【0032】
説明したように、エタンを脱水素化するODH反応に関連して、生成される副生成物は酢酸であり得る。さらに述べたように、ODH反応に関連して生成される副生成物には、水、CO、及びCOも含まれ得る。したがって、ODH反応器102容器から排出される流出物108は、エチレン、酢酸、水、CO、CO、未反応エタン、及び未反応希釈剤(実施形態では水であってもよい)を含み得る。排出される流出物108の温度は、例えば、反応器102容器の操作温度(例えば、300℃~450℃)に対応する300℃~450℃の範囲であってもよい。
【0033】
図1に示す実施形態では、流出物108は、ODH反応器102から急冷熱交換器104にまで導管を通って送られ(導管によって輸送され)てもよい。流出物108は、急冷熱交換器104の入口を通って急冷熱交換器104に流入することができる。入口は、急冷熱交換器104の流出物入口として表示されてもよい。特定の実施態様では、ODH反応器102から急冷熱交換器104まで流出物108を搬送する導管のサイズ(例えば、公称直径又は内径)は、導管を通る流出物108の滞留時間を短縮するために、より小さく特定されてもよい。しかしながら、機械的完全性又は他の理由から、より大きな直径を有する導管が望ましい場合がある。特定の実施態様では、静的内部構造(static internal)112(例えば、金属、セラミックなど)を導管内に(例えば、導管に沿って)配置して、導管内の流出物108の滞留時間を短縮することができる。静的内部構造112は、一般に非可動要素であってもよい。静的内部構造112は、導管内に固定された、一般に球状(例えば、金属球若しくはセラミック球)又は不規則な形状の物体などのパッキンであってもよい。静的内部構造112は、吸収塔、ストリッパー塔、又は蒸留塔で利用されるパッキンなど、導管内に固定されたパッキンであってもよい。静的内部構造112は、例えば、プレート、バッフル、又は固定された螺旋形状の物体であってもよい。特定の実施態様では、静的内部構造112は、スタティックミキサー(又は直線的に直列に配置された複数のスタティックミキサー)である。静的内部構造112は、導管内の流れに利用可能な体積を減少させて、滞留時間を短縮することができる。静的内部構造112は、流れに利用可能な導管内の断面積を減少させて、導管内の滞留時間を短縮することができる。
【0034】
いくつかの実施態様では、バルブ114は、導管に沿って配置されてもよい。操作中、バルブ114は、通常開いていてもよい。バルブ114は、例えば、手動バルブ又は自動オン/オフバルブであってもよい。バルブ114は、例えば、通常の操作以外のメンテナンスなどのために、ODH反応器から急冷熱交換器104を隔離しやすくするための隔離バルブであってもよい。
【0035】
流出物108は、急冷熱交換器104において、流出物108中の望ましくない反応を低減する特定された温度閾値未満まで冷却されてもよい。この温度閾値は、例えば、300℃、275℃、250℃、225℃、又は200℃であってもよい。この温度は、流出物108混合物の露点よりも高い温度に維持されてもよい。露点の温度値は、ユーザ(例えば、人間のオペレータ)によって制御システム116に入力されてもよい。制御システム116は、急冷熱交換器104の操作を指示することができる。実施態様では、制御システム116は、(例えば、急冷熱交換器104の入口又は入口付近での)流出物106の組成及び圧力に相関して(基づいて)、露点を決定(例えば、計算)することができる。
【0036】
いくつかの実施態様では、急冷熱交換器104は、流出物108を温度範囲内に冷却するように操作される。温度範囲の上限は、前述の指定された上限温度閾値(例えば、250℃)であってもよい。温度範囲の下限は、流出物108の露点(例えば、150℃)よりわずかに高くてもよい。対象となる温度は、急冷熱交換器104の出口から排出される冷却された流出物108Cの温度であってもよい。出口は、急冷熱交換器104の流出物出口として表示されてもよい。急冷熱交換器104の下流の流出物には、参照番号108Cが与えられる。実施態様では、温度センサ118は、急冷熱交換器104から排出される流出物108Cの温度を測定するために配置されてもよい。特に、温度センサ118は、急冷熱交換器104のプロセス(流出物)出口又はその近くで急冷熱交換器104上に配置されてもよいし、あるいは急冷熱交換器の出口からの流出物108Cの排出導管上に配置されてもよい。温度センサ118は、例えば、熱電対又は白金RTDなどの抵抗温度検出器(RTD)とすることができる。熱電対が使用される場合、熱電対は、導管に挿入されたサーモウェル内に置くことができる。急冷熱交換器104及び排出導管の外部にある温度トランスミッタ(温度センサ118に動作可能に結合された機器トランスミッタ)は、温度センサ118によって測定された温度を示す信号を制御システム116に送信することができる。実施態様では、制御システム116は、例えば、温度センサ118によって測定される流出物108Cの温度など、流出物108Cの温度を制御するために、冷却熱交換器104への冷却媒体又は冷却流体の流量又は温度を制御することができる(例えば、維持、調節、調整、変更などをすることができる)。
【0037】
制御システム116は、ODH反応器システム(又はより一般的にはエチレン製造システム100)の操作(例えば、装置、流れ(流量及び圧力を含む)、及び制御バルブの操作)を容易にし、又は指示することができる。制御システム116は、ODH反応器システム内のセンサからデータを受信することができる。制御システム116は、複数のコントローラであってもよいし、複数のコントローラを含んでもよく、計算を実行し、制御デバイスの設定値を受信又は指定することができる。制御システム116は、プロセッサと、システム100の計算を実行し、動作を指示するためにプロセッサによって実行されるコード(例えば、ロジック、命令など)を格納するメモリとを含んでもよい。プロセッサ(ハードウェアプロセッサ)は、複数のプロセッサであってもよく、マイクロプロセッサ、中央処理装置(CPU)、グラフィック処理装置(GPU)、コントローラカード、回路基板、又は他の回路を含んでもよい。メモリには、揮発性メモリ(例えば、キャッシュ及びランダムアクセスメモリ)、不揮発性メモリ(例えば、ハードドライブ、ソリッドステートドライブ、及び読み取り専用メモリ)、及びファームウェアが含まれ得る。制御システム116は、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、コンピュータサーバー、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)、分散コンピューティングシステム(DSC)、コントローラ、アクチュエータ、又は制御カードを含み得る。制御システム116は、ODH反応器102システム内の制御コンポーネントの設定値を指定するユーザー入力を受信することができる。制御システム116は、典型的には、人間が設定値及び他の目標又は制約を制御システム116に入力するためのユーザーインターフェースを含む。いくつかの実施態様では、制御システム116は、制御デバイスの設定値を計算し、又は他の方法で決定することができる。制御システム116による制御決定は、センサ及びトランスミッタなどからのフィードバック情報を含むシステム100の動作条件に少なくとも部分的に基づくことができる。
【0038】
操作中、制御システム116は、本明細書で説明するように、急冷熱交換器104の操作を指示することを含むシステム100のプロセスを容易にすることができる。制御システム116は、急冷熱交換器104の出口から排出される冷却された流出物108Cの温度(例えば、温度センサ118によって測定される)を設定値に維持することを容易にすることができる。
【0039】
さらに、制御システム116は、流出物108が流出物108の露点未満まで冷却されないという制約を実施することができる。流出物108の露点は、ユーザーによって制御システム116に入力することができる。あるいは、制御システム116は、流出物108又は108Cの組成及び圧力と相関して、流出物108又は108Cの露点を計算することができる。流出物108又は108Cの組成は、ユーザーによって制御システム116に入力することができる。あるいは、流出物108又は108Cの組成は、流出物108又は108Cの組成を測定するオンライン機器分析器(例えば、オンラインガスクロマトグラフ)から制御システム116に自動的に示されてもよい。急冷熱交換器104内の流出物108(又は急冷熱交換器から排出される流出物108C)の圧力は、圧力センサから制御システム116に示されてもよい。圧力センサは、急冷熱交換器104のプロセス(流出物)入口又はその近く、急冷熱交換器104に沿って、あるいは急冷熱交換器104のプロセス出口又はその近くに配置することができる。
【0040】
冷却媒体は、例えば、脱塩水、ボイラー供給水、又は蒸気凝縮水などの水であってもよい。急冷熱交換器104は、例えば、シェルアンドチューブ熱交換器若しくはヒートパイプ熱交換器(例えば、図7参照)、又は冷却流体(例えば、水)を流出物108に噴霧するための内部スプレーノズル(例えば、噴霧スプレーノズル)を有する急冷容器等であってもよい。シェルアンドチューブ熱交換器としての急冷熱交換器104の場合、冷却媒体は、チューブを通って流れてもよく、あるいはシェルを通って流れてもよい。実施態様では、シェルアンドチューブ熱交換器のシェルを、容器として特徴付けることができる。冷却媒体は、例えば、脱塩水、ボイラー供給水、又は蒸気凝縮水などの水であってもよい。
【0041】
ヒートパイプ熱交換器としての急冷熱交換器104(例えば、図7)の場合、急冷熱交換器104は2つの容器を含むことができる。一方の容器は、流出物108が流れるホットセクション容器である。他方の容器は、冷却媒体の液面を有するコールドセクション容器である。ヒートチューブ又はヒートパイプ(例えば、図7の参照番号10)は、ホットセクション容器の内部からコールドセクション容器の内部まで延びている。コールドセクション容器内のヒートパイプの低温端部分は、冷却媒体の液面内に浸漬されてもよい(例えば、図7の参照番号6)。熱伝達は、流出物108から、ヒートパイプに沿って冷却媒体へと起こり得る。流出物108又は108Cの温度は、例えば、冷却媒体の特定された温度を維持し、したがって、コールドセクション容器とホットセクション容器との間の特定された温度差を維持することによって制御され得る。流出物108又は108Cの温度は、ヒートパイプ設計を有する熱交換器内において、例えば、冷却媒体の温度、冷却媒体の流量、及びコールドセクション容器内の冷却媒体の蒸発(存在する場合)を制御(調整)することによって、制御することができる。コールドセクション容器内の冷却媒体は、例えば、脱塩水、ボイラー供給水、又は蒸気凝縮水などであってもよい。ヒートパイプ熱交換器は、例えば、国際特許出願である国際公開WO2017/141121A1に示されているように、当業者に公知である。
【0042】
典型的には、ヒートパイプ又はチューブには、作動流体(working fluid)を含有する密閉されたチューブ(金属製)と、凝縮した作動流体をコールドセクションのヒートパイプの端からホットセクションのヒートパイプの端まで輸送するための内部キャピラリーと、が含まれる。操作中、ヒートチューブ内の作動流体は、ホットセクションで沸騰又は蒸発し、高温流体から熱を奪う。その結果、蒸気は、ヒートチューブを上昇してコールドセクションに移動する。次いで、蒸気は、コールドセクションで凝縮し、コールドセクションを通過する媒体に熱を与える。その結果、凝縮した液体は、重力とキャピラリー力によって、チューブ内のキャピラリー又はウィック(wick)を通ってホットセクションに輸送され、そこで再び蒸発する。
【0043】
実施態様では、(例えば、シェルアンドチューブ熱交換器又はヒートパイプ設計熱交換器としての)急冷熱交換器104は、矢印120で示すように、蒸気の発生を促進することができる。シェルアンドチューブ熱交換器としての急冷熱交換器104の場合、冷却媒体としての水は、流出物108からの熱で加熱され、水をフラッシュさせて蒸気にする。蒸気発生システムは、容器(例えば、フラッシュ容器)、ポンプ(例えば、ボイラー供給水ポンプ)などの追加の機器を含むことができる。ヒートパイプ熱交換器としての急冷熱交換器104の場合、コールドセクション容器内の冷却媒体としての水が蒸発して蒸気を発生させ、その蒸気を収集してもよい。冷却媒体が蒸発すると、コールドセクション容器内の液面を維持するために、コールドセクション容器に冷却媒体を補充することができる。
【0044】
急冷熱交換器104を介して発生した蒸気は、蒸気ヘッダー(又はサブヘッダー)の導管内に排出されたり、導管を通ってユーザーに排出されたりすることがある。高圧蒸気の方が、一般に、低圧蒸気よりも価値がある場合がある。高圧蒸気(例えば、600ポンド/平方インチゲージ(psig)を超える、又は1500psigを超える)は、典型的には、低圧蒸気(例えば、600psig未満又は150psig未満)よりも価値がある場合がある。蒸気発生熱交換器106を介して発生する蒸気の圧力は、ODH反応器102の操作温度(ODH反応温度)によって決まる流出物108の温度の関数であってもよい。
【0045】
流出物108C(急冷熱交換器104によって冷却されたもの)は、急冷熱交換器104から下流処理122に排出することができる。急冷熱交換器104からの前述の排出導管は、冷却された流出物108Cを、下流処理122に輸送することができる。下流処理122は、生成物エチレン124と副生成物酢酸126を単離することができる。
【0046】
下流処理122は、例えば、流出物108Cから大部分の酢酸及び水を未精製(raw)酢酸として分離するための分離システム128を含んでもよい。分離システム128は、例えば、(1)流出物108Cを冷却して酢酸と水を凝縮させる部分凝縮器熱交換器と、(2)部分凝縮器から流出物108Cを受け取るフラッシュ容器とを含んでもよい。フラッシュ容器は、フラッシュ容器の底部から、凝縮した酢酸と凝縮した水とを組み合わせて未精製酢酸として回収することができる。流出物108Cの残りの部分は、フラッシュ容器から頭上に排出することができる。この残りの部分は、通常、気体である(液体ではないが、蒸気を含む場合がある)。部分凝縮器熱交換器及びフラッシュ容器の代わりの他の実施態様では、分離システム128は、代わりに、急冷塔であってもよく、当該急冷塔は、流出物108C中の水と酢酸を凝縮し、凝縮した水と凝縮した酢酸の組合せを未精製酢酸として塔底流に排出し、流出物108Cの残りの部分(液体ではない)を塔頂流として排出する。
【0047】
未精製酢酸は、未精製酢酸から水を除去して生成物酢酸126を回収するために、酢酸ユニット130に供給することができる。実施態様では、分離システム126は、未精製酢酸を、導管を介して酢酸ユニット130(例えば、酢酸ユニット130内の抽出塔など)に排出することができる。さらに、未精製酢酸は、未精製酢酸から水を除去して、エチレン製造の共生成物である酢酸生成物126を得るために、酢酸ユニット130において処理されてもよい。酢酸生成物126は、例えば、少なくとも99重量パーセント(wt%)の酢酸であってもよい。除去された水の少なくとも一部は、水生成物として回収することができる。特定の実施態様では、酢酸ユニット130は、酢酸を除去するために溶媒を注入するための抽出塔(容器)と、抽出塔からのラフィネートを処理して水を回収するための水ストリッパー塔(容器)と、抽出塔から排出された酢酸から溶媒を除去して酢酸生成物126を得るための溶媒回収塔(容器)と、を備えることができる。
【0048】
分離システム128から頭上に排出される流出物108Cの非液体部分は、水蒸気、残留酢酸蒸気、並びにエチレン、二酸化炭素、一酸化炭素、未反応エタン、及び他のガスなどのガスを含み得る。特定の実施態様では、この流出物108Cの非液体部分は、酢酸スクラバー132(カラム又は塔などの容器)又は同様の容器又はシステムに流れてもよい。酢酸スクラバー132は、酢酸蒸気及び水蒸気を、スクラビング液体にスクラビング(除去)し、液体底部流として排出することができる。酢酸スクラバー132は、エチレン、二酸化炭素、一酸化炭素、未反応エタンを含むプロセスガスを頭上に排出することができる。場合によっては、このプロセスガスは、プロセスガスの圧力を高めるプロセスガス圧縮機134(機械式圧縮機)に送られてもよい。圧縮プロセスガスは、一酸化炭素やメタンなどの軽質成分を除去するために処理されてもよい。下流処理は、エチレンをエタンから分離し、生成物エチレン124を排出するC2スプリッター136を含んでもよい。C2スプリッター136は、蒸留トレイを有する蒸留カラム(塔)である容器であってもよい。
【0049】
最後に、エチレン製造システムは、ODH反応器102への供給物110を加熱する供給物熱交換器138を含んでもよい。供給物熱交換器138は、例えば、シェルアンドチューブ熱交換器又はプレートフィン熱交換器であってもよい。実施態様では、供給物熱交換器138は、流出物108Cを用いて供給物110を加熱するために、流出物108Cとのクロス交換器であってもよい。例えば、急冷熱交換器104と下流処理122との間の流出物108Cを利用して、供給物熱交換器138内で供給物110を加熱することができる。他の実施形態では、供給物熱交換器138は、加熱媒体として、流出物108Cの代わりに蒸気を利用することができる。
【0050】
図2は、エチレン製造システム200であり、当該システム200がODH反応器102に直接取り付けられている(directly attached)急冷熱交換器104を有すること除いて、図1のエチレン製造システム100と同様のシステムである。図1及び図2における同様の参照番号及び指定は、同様の要素を示す。
【0051】
ODH反応器102への急冷熱交換器104の直接取り付け202(直接接続)は、ODH反応器102の出口(流出物排出口)から急冷熱交換器104の出口(冷却された流出物排出口)までの流出物108の滞留時間の短縮を与えるために実施することができる。直接取り付け(direct attachment)202は、例えば、フランジ対フランジ接続であってもよい(例えば、図4)。換言すると、ODH反応器102上の出口ノズルのフランジは、急冷熱交換器104上の入口ノズルのフランジにボルト締めされてもよい。他の実施態様では、直接取り付け202は、ODH反応器102上の出口ノズルと急冷熱交換器104上の入口ノズルとのねじ接続(例えば、図5)(又は溶接接続)であってもよい。直接取り付け202は、例えば、ODH反応器102の出口ノズル内、若しくは急冷熱交換器104の入口ノズル内、又はその両方に、静的内部構造112(上述)を備えることができる。内部構造112の存在により、直接取り付け202を通る流出物の滞留時間が短縮される可能性がある。最後に、配置直接取り付けは、ODH反応器102容器と急冷熱交換器104との配置を考慮して、ODH反応器102出口と急冷熱交換器104入口との間に、パイプ継手(例えば、パイプエルボ)、短いスプールピース(パイプ)、バルブ等を含むことができる。配置に関する考慮事項には、例えば、装置の設置面積、それぞれのノズルの異なる高さ、ODH反応器102と急冷熱交換器102との間の物理的干渉の解消などが含まれる。
【0052】
図3は、システム300がODH反応器102内に配置された急冷熱交換器104の少なくとも一部を有すること除いて、図1のエチレン製造システム100及び図2のエチレン製造システム200と同様のエチレン製造システム300である。図1図3における同様の参照番号及び指定は、同様の要素を示す。
【0053】
図示された実施形態では、ODH反応器102は、例えば、流動床反応器であってもよく、急冷熱交換器104は、ヒートパイプ熱交換器又はスプレーノズルであってもよい。急冷熱交換器104は、ODH反応器102の上部に配置されており、流動床反応器では反応器102の離脱(disengagement)セクションであってもよい。離脱セクションは、ODH反応器102(この実施形態では流動床反応器)の上部から流出物108Cとして排出される生成物ガスから流動触媒を離脱させるためのものであってもよい。
【0054】
急冷熱交換器104をヒートパイプ熱交換器として用いる実施態様の場合、ヒートパイプ熱交換器の高温部分は、ODH反応器102内に配置され、ヒートパイプ熱交換器の低温部分は、ODH反応器102の外部に配置される。換言すると、ヒートパイプ熱交換器のホットセクション容器は、ODH反応器102の容器(又はODH反応器102の容器の内部の容器)であってもよく、ヒートパイプ熱交換器のコールドセクション容器(冷却媒体を有する)は、ODH反応器102の外部の容器であってもよい。この実施形態では、ヒートパイプ熱交換器のヒートパイプの高温端は、ODH反応器102内にあり、ヒートパイプの低温端は、ODH反応器102の外部のコールドセクション容器内にある。したがって、ヒートパイプは、ODH反応器102の内部からODH反応器102の容器壁を通って、次いでコールドセクション容器の容器壁を通ってコールドセクション容器内の冷却媒体内に延びることができる。操作中、熱伝達は、ODH反応器102内の反応混合物から、ヒートパイプを通して、ヒートパイプ熱交換器のコールドセクション容器内の冷却媒体へと起こり得る。
【0055】
図3に示す実施形態では、急冷熱交換器104をスプレーノズルとして実施する場合、スプレーノズルは、ODH反応器102(例えば、この場合は流動床反応器)の上部にある内部スプレーノズルであってもよい。操作中、急冷熱交換器104としてのスプレーノズルは、離脱(disengagement)セクションにおいて生成物ガスとして上方に流れる反応混合物に向けて冷却流体(例えば、脱塩水などの水)を噴霧することができる。熱伝達は、生成物ガス(又はより一般的には反応混合物)から、冷却媒体の噴霧された流れ又は液滴へと起こり得る。実施態様では、スプレーノズルは、噴霧ノズルであってもよい。
【0056】
図4は、フランジ対フランジ接続である図2の直接取り付け202の実施態様を示す。この図では、ODH反応器102(図2)の容器壁402にある出口ノズル400は、フランジ404を備える。急冷熱交換器104(図2)の外壁408にある入口ノズル406は、フランジ410を備える。急冷熱交換器104がシェルアンドチューブ熱交換器である場合、入口ノズル406は、流出物108(図2)を、シェル側又はチューブ側に導くことができる。フランジ404、410は、複数のボルト412を介して互いに接続(ボルト締め)されている。簡略化(明確化)のため、1つのボルト412のみが示されている。ボルト締めされたフランジ404、410の間には、ガスケットを取り付けてもよい。最後に、(上述したような)静的内部構造112を、ノズル400、406の一方又は両方に設置して、直接取り付け202を通る流出物の滞留時間を短縮してもよい。静的内部構造112は、複数の部品又は要素を含むことができる。直接取り付け202は、複数の静的内部構造112を有してもよい。
【0057】
図5は、ねじ接続である図2の直接取り付け202の実施態様を示す。この図では、ODH反応器102(図2)の容器壁402にある出口ノズル400には、フランジが付けられていない。同様に、急冷熱交換器104(図2)の容器又はシェル壁408にある入口ノズル406には、フランジが付けられていない。図4のように、急冷熱交換器104がシェルアンドチューブ熱交換器である場合、入口ノズル406は、流出物108(図2)を、シェル側又はチューブ側に導くことができる。このねじ接続の例では、各ノズル400、406のそれぞれの嵌合端はねじを有し、ねじ接続は、ねじ込みカップリングのようなパイプ継手500を介して行われる。図4のように、1つの静的内部構造112(又は複数の静的内部構造112)を、ノズル400、406の少なくとも1つに設置して、直接取り付け202を通る流出物108の滞留時間を短縮してもよい。
【0058】
図6は、ODH反応器102の急冷熱交換器104への配置直接取り付け202Aの一例を示す。配置直接取り付け202Aは、直接取り付けのための配置配管600を備えている。実施態様では、配置配管600は、直接取り付けを(例えば、配置直接取り付け202Aとして)実現可能にすることができる。配置配管600により、ODH反応器102と急冷熱交換器104との間の物理的干渉の回避を容易にすることができ、ノズル400の高さがノズル406の高さと異なることなどを考慮することができる。配置配管600は、パイプスプールピース(例えば、長さ3フィート未満)を備えてもよい。配置配管600は、パイプエルボ(例えば、90°エルボ)及び他のパイプ継手を含んでもよい。
【0059】
図7は、ヒートパイプ熱交換器700の一例である。ヒートパイプ熱交換器は、ホットセクション(冷却される高温流体の流れを通す)とコールドセクションを有することができる。ホットセクションとコールドセクションは、共通の外面又は隣接する外面を有していなくてもよく、ヒートパイプはホットセクションの内部から延在し、ホットセクションとコールドセクションとの間の開放空間を横切ってコールドセクション内に延在する。ヒートパイプは、ウィック(wick)とキャピラリーチャネルを含むことができる。ウィックは、多孔質金属基材フォーム、フェルト、メッシュ、又はスクリーンであってもよい。
【0060】
冷却される高温流体1は、ODH反応器から排出される流出物108として表すことができ(図1図2)、又は流出物108として排出される離脱セクション内の生成物ガスとして表すことができる(図3)。冷却された流体1は、冷却された流体2として、ヒートパイプ熱交換器から排出される。冷却された流体2は、これらの実施形態では、ヒートパイプ熱交換器である急冷熱交換器104によって冷却された流出物108を表すことができる。
【0061】
熱交換器700のホットセクション容器3は、ODH反応器102の下流(図1図2)にある急冷熱交換器104のホットセクション容器を表すことができる。図示されたホットセクション容器3は、ODH反応器102内に配置された急冷熱交換器104の少なくとも一部の実施(図3)のためのODH反応器102容器(又はODH反応器102容器の内部の容器)を表すことができる。
【0062】
ヒートパイプ10はそれぞれ、内部キャピラリー及び内部ウィッキングを有していてもよい。ヒートパイプ内の作動流体は、例えば、ナトリウム、カリウム、若しくはセシウム、又はそれらの任意の組合せを含むことができる。ヒートパイプ10(ヒートチューブ)は、例えば、ステンレス鋼、あるいはニッケル及び/又はクロムを含む他の金属合金であってもよい。
【0063】
ヒートパイプ10の高温端4は、ホットセクション容器3内にある。ヒートパイプの低温端5は、コールドセクション容器7内にある。ホットセクション容器3とコールドセクション容器7とは、物理的に分離している。ホットセクションとコールドセクションとの分離により、ホットセクション容器3(ホットボックス)とコールドセクション容器7(コールドボックス)との間のヒートパイプの少なくとも一部が、断熱されている可能性がある。
【0064】
操作中、ホットセクション容器3とコールドセクション容器7との間の温度差は、少なくとも200℃であってもよい。
【0065】
ヒートパイプ10の低温端5は、冷却媒体6(例えば、ボイラー供給水又は脱塩水)中に浸漬されてもよい。冷却媒体6は、容器7を完全に満たしていなくてもよい。矢印8は、コールドセクション容器7に入る冷却媒体6を示す。矢印9は、例えば水蒸気(蒸気)としてコールドセクション容器7から出る冷却媒体6を示す。
【0066】
ホットセクション容器3又はコールドセクション容器7内のヒートパイプ10の正確な配置により、多くの配置が可能になる。ホットセクション容器3内の流体の流れは、ヒートパイプ10を横切るか、又はヒートパイプ10と垂直であるか、ヒートパイプ10に沿うか、又はヒートパイプ10と平行であるか、又はそれらの組合せとすることができる。コールドセクション容器7は、多数の入口構成及び出口構成とすることができる。ヒートパイプ10の高温端部分4及び低温端部分5は、ヒートパイプへの熱伝達を改善するために、それらの外面にフィンを有することができる。ホットセクション容器3とコールドセクション容器7との間のヒートパイプのセクションは、ヒートパイプ10及び容器3、7の熱膨張を可能にするために、真っ直ぐであるか、又は曲がり若しくはねじれ(螺旋状)を有することができる。図7では、コールドセクション容器7が、ホットセクション容器3の真上に示されている。ただし、ヒートパイプは、2つの容器が互いにオフセットするように曲げることができる。さらに、容器3、7は、同じような高さで並んでいてもよい。
【0067】
ヒートパイプ10内の作動流体(working fluid)は、流入する流出物108の予想される最低温度より少なくとも50℃低い温度(又は少なくとも80℃低い温度)で蒸発すべきである。ヒートパイプ10内の作動流体は、冷却媒体6の予想される最大温度より少なくとも25℃、場合によっては少なくとも50℃高い温度で凝縮すべきである。冷却媒体6の温度は、ヒートパイプ内の作動流体の凝縮温度未満であるべきである。
【0068】
ヒートパイプ10はそれぞれ、外形1cm(0.5インチ)~10cm(4インチ)、長さ最大10メートル有することができる。ヒートパイプ10の端部は、フィン、リブ、突起、ピン、又はそれらの任意の組合せなどの表面改質を有していてもよい。いくつかの実施形態では、ヒートパイプの内面には、凝縮した液体を輸送してヒートパイプの高温端に戻すために、キャピラリー条痕(striations)が刻まれている。
【0069】
図8は、ODH反応器システムを操作する方法800である。ODH反応器システムは、少なくともODH反応器と急冷熱交換器とを含むことができる。
【0070】
ブロック802で、この方法は、エタン、酸素、及び希釈剤を、ODH触媒を有するODH反応器に供給することを含む。希釈剤は、例えば、蒸気の形態などの水であってもよい。
【0071】
ブロック804で、この方法は、ODH反応器内で酸素の存在下、ODH触媒を介してエタンをエチレンに脱水素化することを含む。ODH反応器では、酢酸も生成される可能性がある。
【0072】
ブロック806で、この方法は、ODH反応器からの流出物を急冷熱交換器を通して排出し、それによって流出物を急冷熱交換器を介して冷却することを含む。流出物は、エチレン、酢酸、水、二酸化炭素、一酸化炭素、及び未反応エタンを含んでもよい。ODH反応器の出口(流出物排出)から急冷熱交換器を通って急冷熱交換器の出口(流出物排出)までの流出物の滞留時間は、特定された上限未満である。上限は、流出物中の少なくとも1つの望ましくない反応の発生を減少させるために特定され得る。特定の実施態様では、特定された上限は、40秒未満、20秒未満、又は10秒未満である。いくつかの実施態様では、滞留時間の特定された上限は、9秒以下である。
【0073】
実施態様では、この方法は、導管を介して、ODH反応器の排出からの流出物を急冷熱交換器に搬送することを含んでもよい。導管は、導管内での流出物の滞留時間を短縮する内部構造(例えば、静的内部構造)を含んでもよい。内部構造は、導管の長さの一部の流路断面積を減少させ、それによって導管内での流出物の滞留時間を短縮することができ、内部構造は静的内部構造を含む。
【0074】
いくつかの実施態様では、急冷熱交換器は、ODH反応器に直接取り付けられる(attached directly)。ODH反応器への急冷熱交換器の直接的な取り付け(attachment)は、ODH反応器の出口ノズルのフランジを急冷熱交換器の入口ノズルのフランジにボルト締めすることを含む、フランジ対フランジ接続であってもよい。出口ノズル若しくは入口ノズル、又はその両方は、内部構造を有することができ、それによって、出口ノズル若しくは入口ノズル、又はその両方を通る流出物の滞留時間を短縮することができる。
【0075】
特定の実施態様では、急冷熱交換器の少なくとも一部が、ODH反応器内に配置され、ODH反応器の流出物排出出口は、急冷熱交換器の流出物排出出口として(又はそれを包含するものとして)特徴付けることができる。したがって、それらの実施態様では、急冷熱交換器を通る流出物の滞留時間は、ゼロとして特徴付けることができる。換言すると、流出物を冷却することは、ODH反応器から流出物を排出する前に、急冷熱交換器を介して流出物を冷却することを含む。
【0076】
本方法は、急冷熱交換器を介して流出物を冷却するために、急冷熱交換器を通して冷却媒体を流す工程を含むことができ、急冷熱交換器は、シェルアンドチューブ熱交換器である。冷却媒体は、脱塩水、ボイラー供給水、又は蒸気凝縮水などの水であってもよい。特定の実施態様では、本方法は、流出物からの熱を用いてシェルアンドチューブ熱交換器を介して冷却媒体から蒸気を発生させることを含む。蒸気は、急冷熱交換器をヒートパイプ熱交換器として用い、冷却媒体を水として用いて、発生させることもできる。
【0077】
ブロック808で、この方法は、急冷熱交換器からの流出物を、供給物熱交換器(クロス交換器)を通して流し、流出物を用いて供給物を加熱することを含むことができる。したがって、流出物はさらに冷却され得る。
【0078】
以下の実施例は、ODH反応器流出物108(図1図3)と同様の混合物中では、望ましくない反応が起こることを示している。このような望ましくない反応は、温度が上昇するとますます起こる。例えば、実施例において、望ましくない反応の存在又はその程度は、250℃と比較して350℃でより大であった。
【0079】
説明したように、ODH反応器102から排出される流出物108の温度は、例えば、300℃~450℃の範囲とすることができる。実施例は一般に、この温度範囲では、この温度範囲未満に冷却された場合よりも、望ましくない反応の存在又はその程度が大であることを裏付けている。さらに、実施例及び基本的な化学原理は、この混合物が300℃~450℃の温度範囲内の高温にある時間が長ければ長いほど、望ましくない反応の範囲が大きくなることを裏付けている。実施例は、混合物を高温にさらす時間を1分未満に制限することが、望ましくない反応の程度を低減するのに有益であり得ることを示している。
【0080】
対象となり得る滞留時間は、ODH反応器流出物108が、ODH反応器102の出口から急冷熱交換器104を通る流出物108の流路のある点に至るまであって、上限温度閾値(例えば、約225℃、250℃、275℃、又は300℃)を超えている時間の長さである。実施態様では、急冷熱交換器104のプロセス(流出物)出口を、流出物108が特定の上限温度閾値未満に冷却される点として保守的に特定する。以下の実施例では、実験室構成を、ヒーター及び滞留時間のための立体空間として採用した。実施例の反応器は、ODH触媒を有していなかった。したがって、実施例の反応器は、典型的なODH反応器としては利用されなかった。実施例では、典型的なODH反応器流出物に類似した混合物を、実験室予熱器及び反応器(ODH触媒なし)を通して供給した。実験室のセットアップを使用して、様々な温度及びそれらの温度での滞留時間における典型的なODH反応器流出物を評価した。実施例では一般に、商業的実施に関して特定するための滞留時間の正確な数値を示していない。その代わりに、実施例は、(1)約250℃を超える温度でのODH反応器流出物における望ましくない反応の問題の認識と、(2)約250℃を超える温度での流出物の最大滞留時間がどのくらいであるべきかのおおよその時間(例えば、1分未満)、という2つの基本的な関連する結論を提供している。さらに、実施例は、商業的実施に関して実験室で計算された滞留時間の正確な数値(秒)を必ずしも示していない。実施例における滞留時間の計算は、圧力及び温度の実際の条件に基づいていない。それでも、前述のように、実施例は、(a)望ましくない反応の問題があることを特定し、(b)重大な望ましくない反応を回避するために、ODH反応器流出物の最高温度と最大滞留時間をどうすべきかについての理解(近似又は桁)を提供している。
【0081】
一実施形態は、ODH反応器システムを操作する方法である。本方法は、エタン、酸素、及び希釈剤(例えば、蒸気としての水)を、ODH触媒を有するODH反応器に供給することを含む。本方法は、ODH反応器内で酸素の存在下、ODH触媒を介してエタンをエチレンに脱水素化し、それによってODH反応器内で酢酸を生成することを含む。本方法は、ODH反応器からの流出物を急冷熱交換器を通して排出し、それによって流出物を急冷熱交換器を介して温度閾値未満(例えば、200℃~300℃の範囲内)に冷却することを含む。本方法は、温度閾値を、275℃未満(又は250℃未満)であって流出物の露点より高い値に特定することを含んでもよい、流出物は、エチレン、酢酸、水、二酸化炭素、一酸化炭素、及び未反応エタンを含む。ODH反応器からの流出物を排出する急冷熱交換器の出口までの流出物の滞留時間は、特定された上限未満である。特定された上限は、例えば、60秒未満の値であってもよいし、20秒未満の値であってもよい。特定された上限は、流出物中の望ましくない反応の発生を減少させるために特定され得る。本方法は、導管を介して、ODH反応器の出口(流出物排出出口)からの流出物を急冷熱交換器に搬送することを含んでもよい。導管は、導管内での流出物の滞留時間を短縮する内部構造(例えば、静的内部構造)を有してもよい。内部構造(例えばスタティックミキサー)は、流出物の流れに利用可能な導管の体積を減少させ、それによって導管内での流出物の滞留時間を短縮する可能性がある。実施態様では、急冷熱交換器はODH反応器に直接取り付けられてもよい。ODH反応器への急冷熱交換器の直接的な取り付けは、ODH反応器の出口ノズルのフランジを急冷熱交換器の入口ノズルのフランジにボルト締めする、フランジ対フランジ接続を備えてもよい。出口ノズル若しくは入口ノズル、又はその両方は、内部構造を有することができ、それによって、出口ノズル若しくは入口ノズル、又はその両方を通る流出物の滞留時間を短縮することができる。実施態様では、急冷熱交換器の少なくとも一部は、ODH反応器内に配置されてもよく、ODH反応器の排出(discharge)は、急冷熱交換器の排出を含み、滞留時間はゼロである。これらの実施態様では、流出物を冷却することは、ODH反応器から流出物を排出する前に、急冷熱交換器を介して流出物を冷却することであってもよい。
【0082】
別の実施形態は、ODH反応器システムの方法であり、この方法は、エタン及び酸素を含む供給物をODH反応器に供給する工程と、ODH反応器内で、ODH触媒を介してエタンをエチレンに脱水素化する工程と、を含む。本方法は、ODH反応器からの流出物を急冷熱交換器を介して排出し、それによって、急冷熱交換器を介して、流出物を、300℃未満の値など、流出物の露点を超える特定された温度閾値未満に冷却する工程を含む。温度閾値は、例えば、200℃~300℃の範囲内であってもよい。流出物は、エチレン、酢酸、水、二酸化炭素、一酸化炭素、及び未反応エタンを含む。流出物を排出するODH反応器の出口から、冷却された流出物を排出する急冷熱交換器の出口までの流出物の滞留時間は、流出物中の望ましくない反応の発生を減少させるために特定された上限未満(例えば、40秒未満の値又は60秒未満の値)である。本方法は、急冷熱交換器を介して流出物を冷却するために、急冷熱交換器を通して冷却媒体を流す工程を含んでもよく、急冷熱交換器が、シェルアンドチューブ熱交換器である。冷却媒体には、脱塩水、ボイラー供給水、又は蒸気凝縮水などの水が含まれる場合がある。本方法は、流出物からの熱を用いてシェルアンドチューブ熱交換器を介して冷却媒体から蒸気を発生させることを含んでもよい。実施形態では、急冷熱交換器は、ヒートパイプ熱交換器であってもよい。最後に、本方法は、急冷熱交換器からの流出物を、クロス交換器である供給物熱交換器を通して流し、流出物を用いて供給物を加熱し、それによって流出物をさらに冷却することを含むことができる。
【0083】
さらに別の実施形態は、酸素の存在下でエタンをエチレンに脱水素化し、酢酸を生成するためのODH触媒を有するODH反応器を含むODH反応器システムである。ODH反応器システムは、ODH反応器の流出物を閾値温度未満(例えば、300℃未満の値)に冷却するための急冷熱交換器を含む。流出物は、エチレン、酢酸、水、二酸化炭素、一酸化炭素、及び未反応エタンを含む。ODH反応器システムは、ODH反応器の流出物出口から、急冷熱交換器の流出物出口までの流出物の滞留時間を、流出物中の望ましくない反応の発生を減少させるために特定された上限未満(例えば、60秒未満の値)にするように構成される。ODH反応器システムは、ODH反応器の出口からの流出物を急冷熱交換器に搬送するための導管を備えていてもよい。導管は、導管の流量を減少させて導管内の流出物の滞留時間を短縮するために、導管内に配置された静的内部構造を備えていてもよい。急冷熱交換器は、流出物を冷却するための冷却媒体を受け取るように構成されたシェルアンドチューブ熱交換器であってもよい。シェルアンドチューブ熱交換器は、冷却媒体としてボイラー供給水を受け取り、流出物からの熱を用いてボイラー供給水からの蒸気の発生を促進するように構成されていてもよい。実施態様では、急冷熱交換器は、ヒートパイプ熱交換器であってもよい。実施態様では、急冷熱交換器は、ODH反応器に直接取り付けられていてもよい。急冷熱交換器は、フランジ対フランジ接続を介してODH反応器に直接取り付けられていてもよく、ODH反応器の出口の出口ノズルのフランジが、急冷熱交換器の入口ノズルのフランジにボルト締めされていてもよい。静的内部構造は、出口ノズル若しくは入口ノズル、又はその両方に配置されていてもよく、出口ノズル若しくは入口ノズル、又はその両方を通る流出物の滞留時間を短縮させることができる。最後に、急冷熱交換器の少なくとも一部は、滞留時間をゼロにするためにODH反応器内に配置されていてもよく、流出物を冷却することは、ODH反応器からの流出物の排出前に、流出物を冷却することを含む。
【実施例
【0084】
実施例は例としてのみ示されており、本技術を限定することを意図するものではない。例1~例5を示す。例1~例5は、パイロットスケールに近い実験室反応器システム(図9)で実施した。実施例では、ODH反応器流出物に類似した混合物を、実験室予熱器及び実験室反応器を通して実験室凝縮器に供給した。実施例の反応器は、ODH反応器に似せるために使用されたものではない(実施例の実験室反応器にはODH触媒は存在しなかった)。その代わりに、実施例の反応器は、ラインにおける単に広いスポットであり、混合物を特定された温度に維持するためのヒーターとして使用した。実施例は、典型的なODH反応器流出物中の望ましくない反応、及びそれらの望ましくない反応が起こるのに必要な温度と時間を特定することを目的とした。
【0085】
図9は、例1~例5を実施するために利用された実験室反応器システム900である。システム900は、管状予熱器901(蒸気発生器)と、管状予熱器901の下流に配置された管状反応器902とを含む。管状反応器902内にはODH触媒が配置されないように、管状反応器902からODH触媒を除去した。管状反応器902のチューブは、タイプ316Lステンレス鋼で構成した。管状予熱器901のチューブは、ハステロイC-276で構成した。管状反応器902は、反応器902内の所望の温度を維持するために、管状反応器902のチューブ内の内容物を加熱又は冷却するための、閉ループ油浴から循環油を受け取る伝熱ジャケットを有していた。予熱器901には、予熱器901のチューブ内の内容物を加熱するために、ケースのアルミニウムジャケットを介して予熱器901のチューブに接触して配置された電気マントル加熱が装備されていた。
【0086】
予熱器901のチューブは、内径0.94センチメートル(cm)、高さ381cm、内容積381立方センチメートル(cm)を有していた。管状反応器902のチューブは、内径2.12cm、高さ170cm、内容積599cmを有していた。管状反応器902の温度は、温度センサとして熱電対を用いてモニターした。さらに、管状反応器902には触媒が充填されておらず、したがって滞留時間のための立体空間として機能し、望ましくない反応が起こり得る温度を与えるヒーターとして機能する。
【0087】
混合ガス供給物904を、それぞれのガスシリンダーから予熱器901の入口に供給した。ガス供給物904中のガス成分には、エチレン、酸素ガス、又はエタンの組合せが含まれていた。ガスシリンダーは、米国コネチカット州ダンベリーに本社を置くPraxair,Inc.から入手した。ガスシリンダーの利用可能な圧力は、予熱器901への混合ガス供給物904の流れの原動力を提供した。各ガスシリンダーに関連付けられたそれぞれのマスフローコントローラー(21℃で動作)により、各ガス成分の所望の流量が得られた。液体供給物906(混合液体供給物)を、予熱器901に流れるガス供給物904に導入した。液体供給物906には、水と酢酸が含まれていた。例5では、液体供給物にエタノールを添加した。マスフローコントローラ(21℃で動作)により、液体供給物906の流量を制御した。液体供給物906は、予熱器901内で蒸発した。
【0088】
反応器902入口における入口圧力(psig)を、圧力センサを介して測定した。この反応器902の入口圧力は、反応器902、下流凝縮器910、及び関連する配管を通る供給物ガスの流れによって発生する液圧背圧、並びに凝縮器910の下流に位置する背圧調整器によって提供される液圧背圧によるものであった。
【0089】
排出流908(実施例では生成物として表示されている)は、反応器902から凝縮器910(部分凝縮器)に排出され、この凝縮器910は、反応器排出流908中の蒸発した液体供給物906の成分を凝縮させる。凝縮器910内の冷却媒体は、蒸留水であった。凝縮器910は、シェルアンドチューブ熱交換器であり、チューブ側で反応器排出流908を操作し、シェル側で蒸留水を操作した。生成物ガス912は、凝縮器910からベントシステム914に排出された。試料シリンジを利用して、凝縮器910の下流の試料ポイントで、生成物ガス912のガス試料918を収集した。液体生成物920は、凝縮器910から液体収集システム922に排出された。液体生成物920の液体試料924が得られた。ガス試料918及び液体試料924は、ガスクロマトグラフを介して組成が分析された。
【0090】
実施例において考慮された滞留時間は、予熱器901内の評価された混合物の滞留時間と反応器902内の評価された混合物の滞留時間とを合わせた滞留時間であった。予熱器901と反応器902の間の小さな管を通る混合物の滞留時間は、無視できるほどであった。反応器902と凝縮器910の間の小さな管を通る混合物の滞留時間は、無視できるほどであった。凝縮器910を通る混合物の滞留時間は、無視できるほどであった。対照的に、商業的規模の実施における長い導管の滞留時間、及びより大きなサイズ(商業的規模)の凝縮器(熱交換器)を通る滞留時間は、比較的長くなる可能性がある。
【0091】
予熱器901内の混合物の滞留時間と反応器902内の滞留時間は、絶対1気圧(atm)で特定された圧力と、ガス供給物904の温度及び液体供給物906の温度である21℃で特定された温度と、に基づいて計算した。液体供給物906は、21℃では液体であるが、予熱器901内及び反応器902内では、1モル当たり22.4リットルの蒸気として任意に特定された。反応器902の入口で測定された実際の圧力は、61psig又は62psigであった。反応器902内の実際の温度は、250℃以上であった。それゆえ、実施例における滞留時間は、圧力及び温度の実際の条件に基づいていない。したがって、実施例において計算された滞留時間は、真の滞留時間ではなく、高温でのODH反応器流出物の時間を制限する商業的実施に適用できる滞留時間の桁近似値である。最後に、以下の例1~例5に示すように、予熱器901内の評価された混合物の滞留時間(3秒)と、反応器902内の評価された混合物の滞留時間(6秒)とを合わせた滞留時間(計算値)は、9秒である。実施例で実施した計算手法のため、近似された体積流量は、すべての例1~例5で同一であった。換言すると、体積流量は、例1~例5の間の評価された混合物の組成の違いによって影響されなかった。それゆえ、計算された滞留時間は、すべての例1~例5について同じ9秒であった。
【0092】
例1~例5では、CO、CO及び酸素化固体汚損の形成は、反応器902管の内面上の気相反応と表面触媒反応との組合せによるものと考えられる。
【0093】
例1~例5が終了した後、反応器902を開けて検査した。約2グラムの汚損物質(図10を参照)が観察された。この約2グラムの汚損物質は、例1~例5でまとめて形成された。図10は、試料を収集する前の、反応器902の底部(下部)内の汚損物質の試料を示す。この材料の試料の元素炭素-水素-窒素-酸素(CHNO)分析の結果を、以下の表1に示す。このCHNO分析結果に基づいて、試料の28.4重量%が有機元素であり、残りが無機元素であると推測できる。主要な有機元素は、酸素元素と炭素であることが判明した。操作中、O乾燥モル分率の低下率が、望ましくない酸素化副生成物(CO、CO、酢酸など)の増加率(又は生成率)と一致しない場合、Oは、この収集された固体汚損物質中で元素状元素として形成されたと推測される。
【0094】
【表1】
【0095】
ICP-MS分析によって測定された試料の最も一般的な5つの無機元素は、ナトリウム(Na)(8.0重量%)、アルミニウム(Al)(5.0重量%)、Te(3.2重量%)、Mo(2.4%)、及び鉄(Fe)(2.2重量%)であった。AlとTeの供給源は、ODH触媒を使用した以前のルーチン実験から生じた、反応器902チューブの内面上のODH触媒(及び触媒担体)の微量残留物であった可能性がある。同様に、Moの供給源は、以前のルーチン実験から生じた、反応器902チューブの内面上の触媒活性相の残留物であった可能性がある。FeとMoの供給源は、それぞれステンレス鋼316とハステロイC-276で構成されているこの反応器902チューブと予熱器901チューブの腐食であった可能性がある。Naの供給源は、(1)反応器902に注入された供給水と酸素を含む液体混合物、(2)(以前の実験から生じた)アルミナ触媒担体の残留物中のNa不純物、及び(3)混合物の取り扱い及び調製中に混合物に導入された外部不純物、から集合的に得られた可能性がある。
【0096】
実施例では、エチレン乾燥ガス体積分率の増加が観察された。エチレン乾燥ガス体積分率の増加は、モル基準で、エチレンと比較してより多くのOを消費することによる影響であると想定された。これは、エチレンの乾燥ガス体積分率の増加が、生成物流中のこの化合物の体積流量の増加を反映していないことを意味する。エチレンとOの消費は、望ましくない副生成物(主にCOとCO)の形成と前述の固体汚損に起因すると考えられる。エチレンとOから前述の望ましくない副生成物への変換は、例えば、2つのバルク反応[1]C+3O→2CO+2HO、及び[2]C+2O→2CO+2HOに基づいて説明することができる。これにより、モル基準で、エチレンと比較してOの相対消費量が高いことが確認された。固体汚損に対して行われたCHNO分析でも、モル基準で、エチレンと比較してOの相対消費量が高いことが確認された。
【0097】
酸素の存在下でODH触媒を介してエタンをエチレンに脱水素化する商業的規模のODH反応器について、ODH反応器からの流出物中の反応を、実施例の実験室システムで考慮した。商業的規模のODH反応器への言及は、仮想的な商業的規模の反応器を指しており、商業的規模の反応器の実際の実施を指すものではないことに留意されたい。
【0098】
ODH反応器からの流出物中の反応の存在を調査し、模倣するために、ODH反応器流出物に類似するそれぞれの混合物を、例1~例5の実験室システムの予熱器(蒸気発生器)及び管状反応器(触媒なし)を通して供給した。混合物は供給物として表示された。さらに、予熱器901と管状反応器902を合わせたものを通る総滞留時間は、ODH反応器の出口(流出物排出用)から急冷熱交換器の出口(流出物排出用)までの現場での滞留時間と、桁の推定ベースで比較するために考慮することができる。対象となる反応には、任意の気相反応及び反応器902の容器チューブの内側金属表面によって触媒される任意の反応が含まれる。パイロット管状反応器902は、触媒を有していなかったが、内容物の温度制御を提供した。管状反応器902からの排出物は、生成物として表示され、生成物ガス912の流れと生成物液体920の流れを排出する部分凝縮器910(熱交換器)を通って流れた。
【0099】
すべての例1~例5について以下の表に示される滞留時間は、同一の基準を有する。この基準では、反応器内容積が599cm、予熱器内容積が381cm、絶対圧1atm、21℃での総供給物流量が3873cm/分であり、液体供給物は液体1モル当たり22.4リットルの蒸気とみなされる。蒸発したとみなされる液体成分は、3873cm/分に寄与する。
【0100】
[例1]
例1における予熱器901及び反応器902を通る供給物としての混合物には、水、酢酸、エチレン、及び酸素が含まれていた。エチレンと酸素は、気体であった。水と酢酸は、供給混合物中では液体であったが、予熱器内で蒸発した。供給物組成と操作条件を、表2に示す。供給物の乾燥ガス904組成と生成物ガス912(部分凝縮器からの)の乾燥ガス組成を、表3に示す。供給物の液体904組成と生成物液体(部分凝縮器からの)の液体組成を、表4に示す。例1の実験結果を考慮すると、管状反応器902を使用し、操作温度250℃、(予熱器と管状反応器の滞留時間を合わせて)総滞留時間9秒(計算値)で、以下の観察結果が得られた。
【0101】
エタン乾燥ガス体積分率は、供給物流中と比較して生成物流中で(0%から)増加した(0.04%絶対増加)。
【0102】
エチレン乾燥ガス体積分率は、供給物流中と比較して生成物流中で増加した(0.72%絶対増加)。この増加は、O/エチレンの望ましくない副生成物への変換による影響と、上記で説明したように固体汚損による影響であるため、エチレンの体積流量の実際の増加を表すものではないと想定された。
【0103】
酸素乾燥ガス体積分率は、供給物流中と比較して生成物流中で減少した(0.79%絶対減少)
【0104】
酢酸液体質量分率は、供給物流中と比較して生成物流中で減少した(1.46%絶対減少)
【0105】
乾燥体積分率の減少、酢酸液体質量分率の減少、酸素化固体汚損の形成、及び微量のエタンの形成が観察されたことから、250℃の温度で検出可能な熱反応が発生したと推測できる。この熱反応には、固体汚損と微量のエタンの形成が含まれていた。このことは、この供給混合物を約250℃又は275℃未満の操作温度で急速に冷却し、高温での滞留時間を、約9秒という実験室での桁の推定に基づいて1分未満にすることが有益であることを示唆している。このようにすることで、望ましくない固体汚損によるエチレン、O、及び酢酸生成物混合物の損失と、微量のエタンへの変換を回避し得る。
【0106】
【表2】
【0107】
【表3】
【0108】
【表4】
【0109】
[例2]
例2における予熱器及び管状反応器(触媒なし)を通して供給された混合物には、水、酢酸、エチレン、及び酸素が含まれていた。例2は、250℃で評価した例1と比較して、350℃で評価した。供給物組成と操作条件を、表5に示す。乾燥供給物ガス及び乾燥生成物ガスの組成を、表6に示す。液体供給物及び液体生成物の組成を、表7に示す。実験結果を考慮すると、計算上の総滞留時間9秒、温度350℃で、以下の観察結果が得られた。
【0110】
エタン乾燥ガス体積分率は、供給物流中と比較して生成物流中で(0%から)増加した(0.05%絶対増加)。
【0111】
エチレン乾燥ガス体積分率は、供給物流中と比較して生成物流中で減少した(1.63%絶対減少)。
【0112】
酸素乾燥ガス体積分率は、供給物流中と比較して生成物流中で増加した(0.71%絶対増加)。O乾燥体積ガス分率の増加は、他の例1及び例3~例4)では観察されず、したがって、この増加は、おそらく何らかの軽微なGC分析誤差によるものと推測される。
【0113】
CO乾燥ガス体積分率は、供給物流中と比較して生成物流中で(0%から)増加した(0.47%絶対増加)。
【0114】
CO乾燥ガス体積分率は、供給物流中と比較して生成物流中で(0%から)増加した(0.41%絶対増加)。
【0115】
酢酸液体質量分率は、供給物流中と比較して生成物流中で増加した(1.18%絶対増加)。
【0116】
エチレン乾燥ガス体積分率の減少、酢酸液体質量分率の増加、酸素化固体汚損の形成、CO(CO及びCO)の形成、及び微量のエタンの形成が観察されたことから、大まかに概算した合計滞留時間時間9秒、反応器温度350℃で、検出可能な熱反応(固体汚損、酢酸、CO、CO、及び微量のエタンの生成につながる反応)が発生したと推測できる。このことは、エチレン(及びO)、酢酸、CO、CO、微量のエタンの損失、及び望ましくない固体汚損の発生を避けるためには、混合物を、操作温度350℃未満で、高温での滞留時間1分未満で急速に冷却すべきであることを示唆している可能性がある。
【0117】
例2の結果を例1と比較すると、250℃のより低い反応器温度では(350℃と比較して)、望ましくない熱反応の速度が著しく減少していた。このことは、250℃の反応器温度で行った実験の生成物流中にCOが発生せず、COも発生しなかったことによって証明されている。例1及び例2のこれら2つの比較実験では、前述の望ましくない熱反応の速度に対する反応器温度の効果を研究しやすくするために、反応器操作条件(反応器温度を除く)及び供給物組成が同じであったことに留意されたい。固体の酸素化化合物の形成に関与する反応は、触媒として機能するチューブの金属内面への供給物の吸着又は化学吸着の関数である可能性がある。一般に、吸着/化学吸着の速度は、温度が低下するにつれて増加する。温度が上昇すると、大量の固体酸素化汚損が形成される可能性がある。
【0118】
【表5】
【0119】
【表6】
【0120】
【表7】
【0121】
[例3]
例3における予熱器(蒸気発生器)及び管状反応器(触媒なし)を通して供給された混合物には、水、酢酸、及びエチレンが含まれていた。供給物組成と操作条件を、表8に示す。乾燥供給物ガス及び乾燥生成物ガスの組成を、表9に示す。液体供給物及び液体生成物の組成を、表10に示す。実験結果を考慮すると、温度350℃で、以下の観察結果が得られた。
【0122】
エタン乾燥ガス体積分率は、供給物流中と比較して生成物流中で(0%から)増加した(0.08%絶対増加)。
【0123】
エチレン乾燥ガス体積分率は、供給物流中と比較して生成物流中で減少した(0.41%絶対減少)。
【0124】
例3の供給物中にも生成物中にも、酸素は存在しなかった。
【0125】
CO乾燥ガス体積分率は、供給物流中と比較して生成物流中で(0%から)増加した(0.05%絶対増加)。
【0126】
酢酸液体質量分率は、供給物流中と比較して生成物流中で減少した(3.52%絶対減少)。
【0127】
エチレン乾燥ガス体積分率の減少、酢酸液体質量分率の減少、酸素化固体汚損の形成、COの形成、及び微量のエタンの形成が観察されたことに基づいて、350℃の温度で、検出可能な熱反応が発生したと推測できる。このことは、エチレン、O、及び酢酸が、望ましくない固体汚損、CO、及び微量のエタンに変換されるのを避けるために、この混合物を、操作温度350℃未満まで急速に冷却すべきであることを示唆している。
【0128】
例3では供給物中にOが存在しないため(例2では供給物流中にOが存在するのと比較して)、CO(CO及びCO)に向かう望ましくない熱反応の速度が減少し、酢酸に向かう望ましくない熱反応の速度が抑制された。このことは、COの発生がないこと、CO体積分率が減少していること、及び生成物中の酢酸重量分率が減少していることによって証明されている。ただし、酢酸が供給物中に存在していたため、酢酸重量分率の減少は、酢酸が酸素化汚損に変換されたことによるものである可能性がある。酢酸の消費量の減少は、酢酸からの固体酸素化汚損の形成速度の増加に対応する可能性がある。Oが存在する場合とOが存在しない場合のどちらの場合でも、望ましくない反応が存在し、望ましくない反応の異なる分布が生じることにつながり、それにより望ましくない副生成物と固体汚損が生じる。例2及び例3のこれら2つの比較実験では、上述の望ましくない熱反応の速度に対する供給物Oの存在の影響の研究しやすくするために、反応器操作条件及びHO/酢酸/エチレンの相対的な供給物組成は変更しなかった。
【0129】
【表8】
【0130】
【表9】
【0131】
【表10】
【0132】
[例4]
例4における予熱器及び管状反応器(触媒なし)を通して供給された混合物には、水、二酸化炭素、酢酸、エタン、及び酸素が含まれていた。エタンを、供給物中のエチレンの代わりに使用した。供給物組成と操作条件を、表11に示す。乾燥供給物ガス及び乾燥生成物ガスの組成を、表12に示す。液体供給物及び液体生成物の組成を、表13に示す。実験結果を考慮すると、350℃の温度で、以下の観察結果が得られた。
【0133】
エタン乾燥ガス体積分率は、供給物流中と比較して生成物流中で減少した(0.24%絶対減少)。
【0134】
酸素乾燥ガス体積分率は、供給物流中と比較して生成物流中で減少した(0.94%絶対減少)
【0135】
CO乾燥ガス体積分率は、供給物流中と比較して生成物流中で増加した(1.17%絶対増加)。
【0136】
酢酸の液体質量分率は、供給物流中と比較して生成物流中で減少した(9.93%絶対減少)。
【0137】
エタン乾燥ガス体積分率の減少、酢酸液体質量分率の減少、酸素乾燥ガス体積分率の減少、CO乾燥ガス体積分率の増加、酸素化固体汚損の形成が観察されたことに基づいて、検出可能な望ましくない熱反応が350℃で発生したと推測できる。このようなことは、この混合物を、操作温度350℃未満まで急速に冷却すべきであることを示唆している。
【0138】
【表11】
【0139】
【表12】
【0140】
【表13】
【0141】
[例5]
予熱器及び反応器(触媒なし)を通して供給された混合物には、水、酢酸、エタノール、エチレン、及び酸素が含まれていた。供給物組成と操作条件を、表14に示す。この供給物混合物中のエタノール(COH)の存在は、以下の理由の1つ又は両方により、この化合物の存在を模倣することを意味する:(1)プロセスの必要性によるODH反応器の最後のセクションへの外部エタノール注入、及び(2)ODH生成物流出物中の副生成物又は汚染物質としてのエタノールの存在。乾燥供給物ガス及び乾燥生成物ガスの組成を、表15に示す。液体供給物及び液体生成物の組成を、表16に示す。液体生成物試料は、反応器温度325℃で行った実験からのみ収集した(例5-a)。反応器温度334℃(例5-b)及び340℃(例5-c)での実験は、乾燥ガス組成に対する温度上昇の影響をスクリーニングし、325℃より高い操作温度で過剰な反応が起こり得るかどうかを理解するために、ガス分析のみを用いて行った。したがって、334℃及び340℃で行ったこれらの実験では、液体試料は収集されず又は分析されなかった。340℃の操作温度では、この反応温度に達した直後、反応器は定常状態を維持せず、最終的には反応器の出口近くで過剰反応を引き起こしたことは注目に値する。この詳細を念頭に置き、実験結果を見ると、反応温度325℃で、以下の観察結果が得られた。
【0142】
エタン乾燥ガス体積分率は、供給物流中と比較して生成物流中で(0%から)増加した(0.04%絶対増加)。
【0143】
エチレン乾燥ガス体積分率は、供給物流中と比較して生成物流中で増加した(6.20%絶対増加)。この増加は、O/エチレンの望ましくない副生成物への変換による影響と、説明したように固体汚損による影響であるため、エチレンの体積流量の実際の増加を表すものではないと想定された。
【0144】
CO乾燥ガス体積分率は、供給物流中と比較して生成物流中で(0%から)増加した(0.04%絶対増加)。
【0145】
酸素乾燥ガス体積分率は、供給物流中と比較して生成物流中で減少した(6.41%絶対減少)。
【0146】
CO乾燥ガス体積分率は、供給物流中と比較して生成物流中で増加した(0.12%絶対増加)。
【0147】
酢酸液体質量分率は、供給物流中と比較して生成物流中で減少した(1.40%絶対減少)。
【0148】
エタノール液体質量分率は、供給物流中と比較して生成物流中で減少した(0.25%絶対減少)。
【0149】
乾燥ガス体積分率の減少、CO乾燥ガス体積分率の微量増加、CO乾燥ガス体積分率の微量増加、エタン乾燥ガス体積分率の微量増加、酢酸液体質量分率の減少、エタノール液体質量分率の減少、及び酸素化固体汚損の形成が観察されたことから、325℃の温度で、検出可能な望ましくない熱反応が発生したと推測できる。このようなことは、この混合物を、操作温度325℃未満まで急速に冷却すべきであることを示唆している。
【0150】
実験結果を考慮すると、340℃の温度で、以下の観察結果が得られた。
【0151】
生成物流中のエタン乾燥ガス体積分率は、温度が上昇してもほとんど変化しなかった。すべての場合において、微量(≦0.05vol.%)が観察された。
【0152】
生成物流中のCO乾燥ガス体積分率は、温度が上昇してもほとんど変化しなかった。すべての場合において、微量(≦0.04vol.%)が観察された。生成物流中のO乾燥ガス体積分率は、温度が上昇するにつれて減少した。
【0153】
生成物流中のエチレン乾燥ガス体積分率は、温度が上昇するにつれて増加した。この増加は、O/エチレンの望ましくない副生成物への変換による影響と、固体汚損による影響であるため、エチレンの体積流量の実際の増加を表すものではないと想定された。
【0154】
乾燥ガス体積分率の減少、COの乾燥ガス体積分率の変化なし、エタンの乾燥ガス体積分率の変化なしが観察され、最高動作温度340℃での過剰反応、及び酸素化固体汚損の形成が観察されたことから、反応温度が325℃から340℃に上昇すると、汚損の形成速度が増加し、最終的に過剰な反応に至ったことが推測できる。
【0155】
【表14】
【0156】
【表15】
【0157】
【表16-1】
【0158】
<実施例データの概要>
以下の表16は、例1~例5の反応器温度及び供給物組成を示す。表16では、水(HO)、酢酸(CHCOOH)、及びエタノール(COH)の液体供給物成分は、1モル当たり22.4リットルの蒸気として考慮した。表17は、例1~例5の供給物及び生成物の乾燥ガス組成を示す。表18は、例1~例5の供給物及び生成物の液体組成を示す。表18では、液体メタノール(CHOH)は、供給物及び生成物の微量成分として記載されている。
【0159】
【表16-2】
【0160】
【表17】
【0161】
【表18】
【0162】
多くの実施態様を説明してきたが、本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な修正を行うことができることが理解されるであろう。
【産業上の利用可能性】
【0163】
本開示は、エチレンを製造するための酸化的脱水素化のプロセスに関し、反応器の下流での望ましくない副生成物の形成を制限するために、滞留時間を短くした流出物冷却ステップを含む。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】