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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-18
(54)【発明の名称】テラヘルツ相互相関装置
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/35 20060101AFI20240910BHJP
   G01N 21/3586 20140101ALI20240910BHJP
【FI】
G02F1/35
G01N21/3586
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024512146
(86)(22)【出願日】2022-08-22
(85)【翻訳文提出日】2024-02-22
(86)【国際出願番号】 EP2022073292
(87)【国際公開番号】W WO2023025709
(87)【国際公開日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】21192752.0
(32)【優先日】2021-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509272403
【氏名又は名称】ダンマルクス テクニスケ ウニベルシテット
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100202740
【弁理士】
【氏名又は名称】増山 樹
(72)【発明者】
【氏名】シモン レンスコウ ランゲ
(72)【発明者】
【氏名】オスカ ガーシャ ガーシャ
(72)【発明者】
【氏名】トーステン ベク
(72)【発明者】
【氏名】ピーダ ウード イェプスン
【テーマコード(参考)】
2G059
2K102
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059EE01
2G059EE02
2G059GG01
2G059GG02
2G059HH01
2G059JJ13
2G059JJ17
2G059JJ22
2K102AA36
2K102BA01
2K102BB01
2K102BB02
2K102BB03
2K102BD09
2K102DA04
2K102DA06
2K102EB20
2K102EB22
(57)【要約】
連続波(CW)光学信号を出力するための光源と、光源に光学的に結合されているテラヘルツ送信機とテラヘルツ受信機を提供するテラヘルツアンテナと、CW光学信号により、テラヘルツ受信機のテラヘルツ送信機に対する同期を調整するように構成されている光学遅延機構を備えている、サンプルの材料特性評価のためのテラヘルツ(THz)相互相関装置。光源は、少なくとも実質的に連続な広帯域スペクトルを有しているCW光学信号を提供するように構成されており、CW信号に対する光路は、光ファイバーなどのような光導波管、または統合された導波管により提供される。光学遅延機構は、サーキュレータ、ファイバーストレッチャ、およびファラデーミラーを備えているダブルパス偏光保存ファイバーストレッチャ、および/または可変ソリッドステート光学ディレイ(SSOD)を備えている。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.1THzと10THzとの間の周波数の電磁放射による、サンプルの材料特性評価のためのテラヘルツ(THz)相互相関装置であって、
-連続波(CW)光学信号を出力するための光源と、
-前記光源に光学的に結合されているテラヘルツ送信機であって、前記CW光学信号により変調されると、サンプルに向けてテラヘルツ放射を出射するように構成されているテラヘルツ送信機と、
-前記光源に光学的に結合されているテラヘルツ受信機であって、前記テラヘルツ放射と前記CW光学信号との間の干渉の結果である電気検出信号を生成することにより、テラヘルツ放射を検出するように構成されているテラヘルツ受信機と、
-ビームスプリッタであって、前記光源からの前記CW信号を受信し、前記ビームスプリッタと前記テラヘルツ送信機との間の光学結合を提供する第1アームと、前記ビームスプリッタと前記テラヘルツ受信機との間の光学結合を提供する第2アームを画定するためのビームスプリッタと、
-前記CW光学信号により、前記テラヘルツ受信機の前記テラヘルツ送信機に対する同期を調整するように構成されている光学遅延機構と、を備え、
-前記光源は、連続広帯域スペクトルを有しているCW光学信号を提供するように構成されており、
-前記光源から前記光学遅延構成要素、前記テラヘルツ送信機、および前記テラヘルツ受信機への前記CW信号に対する光路は、光導波管により提供され、
-前記光学遅延機構は、前記第1アームにおける第1ダブルパス偏光保存ファイバーストレッチャおよび前記第2アームにおける第2ダブルパス偏光保存ファイバーストレッチャを備えており、それぞれのダブルパス偏光保存ファイバーストレッチャは、サーキュレータ、ファイバーストレッチャ、および前記サーキュレータと前記ファイバーストレッチャが、ファラデーミラーにおける反射のために方向において変化する第1方向と、反対方向の第2方向に伝播する前記CW光学信号を受信するために配置されている前記ファラデーミラーを備えていることを特徴とするテラヘルツ相互相関装置。
【請求項2】
前記第1および第2ダブルパス偏光保存ファイバーストレッチャは、同一であることを特徴とする請求項1に記載のテラヘルツ相互相関装置。
【請求項3】
前記光源は、レーザダイオードを備えていることを特徴とする請求項1または2に記載のテラヘルツ相互相関装置。
【請求項4】
前記光源は、スーパールミネセントダイオード(SLED)を備えていることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載のテラヘルツ相互相関装置。
【請求項5】
前記光源は、増幅型自然放出(ASE)に基づく光源を備えていることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載のテラヘルツ相互相関装置。
【請求項6】
前記光源は、ファイバー増幅器を備えていることを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載のテラヘルツ相互相関装置。
【請求項7】
前記光学遅延機構は、更に、2つ以上の光学ポート、2つの光学ポートを接続するための1つ以上の光導波管セクション、および前記2つの接続された光学ポート間の光路長を変えるための作動手段を備えている可変ソリッドステート光学ディレイ(SSOD)を備えていることを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載のテラヘルツ相互相関装置。
【請求項8】
前記可変ソリッドステート光学ディレイは、前記作動手段により選択できる分離光学遅延のセットを提供し、2つの後続の光学遅延の間の最大差は、Dであり、
前記第1および第2ダブルパス偏光保存ファイバーストレッチャの少なくとも1つは、D以上の連続光学遅延調整を提供するように適合されていることを特徴とする請求項7に記載のテラヘルツ相互相関装置。
【請求項9】
前記可変ソリッドステート光学ディレイ(SSOD)は、2つの光学ポートを接続するための異なる長さの2つ以上の光導波管セクションを備えており、
前記作動手段は、前記2つ以上の光学ポートを接続するための前記2つ以上の光導波管セクションの1つまたはその組み合わせを選択するように構成されていることを特徴とする請求項1から8の何れか1項に記載のテラヘルツ相互相関装置。
【請求項10】
前記光源は、マルチモードレーザシステムでないことを特徴とする請求項1から9の何れか1項に記載のテラヘルツ相互相関装置。
【請求項11】
請求項1から10の何れか1項に記載の前記テラヘルツ相互相関装置を使用する、サンプルのテラヘルツ相互相関測定を実行する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明は、テラヘルツ放射を使用する、材料の判定および特性評価のための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
テラヘルツ(THz)タイムドメイン分光法(TDS)は確立されてはいるが、特には、分光法、および厚さ測定に関する材料の特性評価に対しては、まだ出現したばかりの新しい方法に過ぎない。テラヘルツ相互相関分光法は、タイムドメイン分光法に対する代替のアプローチであり、超高速パルスレーザ源を必要とせずに位相感知測定を可能にする(例えば、Appl.Phys.Rev.8,021311(2021);doi:10.1063/5.0037395参照)。
【0003】
テラヘルツは電磁スペクトルの一部であり、他の電磁周波数では透過できない材料を透過することを可能にする特性を備えている。従って、テラヘルツは、その広い使用範囲のために、商用材料検査に対してますます注目を集めている。テラヘルツ技術を使用する材料判定および特性評価は、利用可能なシステムが高価であり、規模が大きく、温度および湿度の変動、振動、および衝撃などのような環境ノイズの影響を受け易いために、依然として商業的な飛躍的発展を待っている状態である。
【発明の概要】
【0004】
その最も広い態様においては、本発明は、スペクトル範囲[0.1;10THz]における電磁放射により、サンプルの材料特性評価のためのテラヘルツ相互相関装置に関し、装置は、
-連続波(CW)光学信号を出力するための光源と、
-光源に光学的に結合されているテラヘルツ送信機であって、CW光学信号により変調されると、サンプルに向けてテラヘルツ放射を出射するように構成されているテラヘルツ送信機と、
-光源に光学的に結合されているテラヘルツ受信機であって、テラヘルツ放射とCW光学信号との間の干渉の結果である電気検出信号を生成することにより、テラヘルツ放射を検出するように構成されているテラヘルツ受信機と、
-CW光学信号により、テラヘルツ受信機のテラヘルツ送信機に対する同期を調整するように構成されている光学遅延機構を備えている。
光源は好ましくは、少なくとも実質的に連続広帯域スペクトルを有するCW光学信号を提供するように構成されている。光源から光学遅延構成要素、テラヘルツ送信機、およびテラヘルツ受信機までのCW信号に対する光路は、好ましくは光導波管により提供される。光学遅延機構は好ましくは、
・サーキュレータ、ファイバーストレッチャ、およびサーキュレータとファイバーストレッチャが、ファラデーミラーにおける反射のために方向において変化する第1方向と、反対方向の第2方向に伝播するCW光学信号を受信するために配置されているファラデーミラーを備えているダブルパス偏光保存ファイバーストレッチャ、および/または
・2つ以上の光学ポート、2つの光学ポートを接続するための1つ以上の光導波管セクション、および2つの接続された光学ポート間の光路長を変えるための作動手段を備えている可変ソリッドステート光学ディレイ(SSOD)を備えている。
【0005】
他の態様においては、本発明は、0.1THzと10THzとの間の周波数の電磁放射による、サンプルの材料特性評価のためのテラヘルツ(THz)相互相関装置に関し、装置は、
-連続波(CW)光学信号を出力するための光源と、
-光源に光学的に結合されているテラヘルツ送信機であって、CW光学信号により変調されると、サンプルに向けてテラヘルツ放射を出射するように構成されているテラヘルツ送信機と、
-光源に光学的に結合されているテラヘルツ受信機であって、テラヘルツ放射とCW光学信号との間の干渉の結果である電気検出信号を生成することにより、テラヘルツ放射を検出するように構成されているテラヘルツ受信機と、
-光源からのCW信号を受信し、ビームスプリッタとテラヘルツ送信機との間の光学結合を提供する第1アームと、ビームスプリッタとテラヘルツ受信機との間の光学結合を提供する第2アームを画定するためのビームスプリッタと、
-CW光学信号により、テラヘルツ受信機のテラヘルツ送信機に対する同期を調整するように構成されている光学遅延機構を備え、
-光源は、連続広帯域スペクトルを有しているCW光学信号を提供するように構成されており、
-光源から光学遅延構成要素、テラヘルツ送信機、およびテラヘルツ受信機へのCW信号に対する光路は光導波管により提供され、
-光学遅延機構は、第1アームにおける第1ダブルパス偏光保存ファイバーストレッチャおよび第2アームにおける第2ダブルパス偏光保存ファイバーストレッチャを備えており、それぞれのダブルパス偏光保存ファイバーストレッチャは、サーキュレータ、ファイバーストレッチャ、およびサーキュレータとファイバーストレッチャが、ファラデーミラーにおける反射のために方向において変化する第1方向と、反対方向の第2方向に伝播するCW光学信号を受信するために配置されているファラデーミラーを備えている。
【0006】
発明はまた、上記のテラヘルツ相互相関装置を使用して、サンプルのテラヘルツ相互相関測定を実行する方法にも関する。
【0007】
下記の図と例は、本発明を例示するために下記に提供される。それらの図と例は、例示であることが意図されており、如何なる意味においても制限的であると解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示に係わる、例としてのテラヘルツ相互相関装置を示している図である。
図2】本開示に係わる、例としてのダブルパス偏光保存ファイバーストレッチャを示している。
図3】本開示に係わる、例としての可変ソリッドステート光学ディレイを示している。
図4】本開示に係わる、異なる例としてのテラヘルツ相互相関装置を示している。
図5】本開示に係わる、異なる例としてのテラヘルツ相互相関装置を示している。
図6】本開示に係わる、異なる例としてのテラヘルツ相互相関装置を示している。
図7】本開示に係わる、例としての連続広帯域スペクトルを示している。
【発明を実施するための形態】
【0009】
発明は、スペクトル範囲[0.1;10 THz]における電磁放射による、サンプルの材料特性評価のためのテラヘルツ相互相関装置を提供する。
【0010】
テラヘルツ相互相関装置は、下記に制限されないが、光学増幅器に結合されているポンプおよび/または、種光源などのような光源を備えている。例としての実施形態においては、光源(増幅器あり/なし)からの周波数スペクトルは、モードピークなどのような鋭いピークがないという意味で、少なくとも実質的に連続であるように連続である。これは、下記において分光法の適用およびタイムドメインの適用の両者を検討するときに詳述する。周波数ドメインにおいては、マルチモードスペクトルを有するCW光源(例えば、マルチモードレーザダイオード)は、これもまたマルチモード、つまり連続でないテラヘルツスペクトルを作成する。これは一般的に、ある周波数(モード)についての情報のみを含み、スペクトルの残りの部分についての情報を含まないので、分光法の適用に対する有用性を減じてしまう。層の厚さを決定するなどのような、材料特性評価のために相互相関装置を使用するときは、タイムドメインに主に関心が集まる。タイムドメインにおいては、マルチモードレーザは、テラヘルツパルスの「トレイン」を作成する。サンプルの材料層を調べるときは、各層は、他に関して時間的にシフトしたパルスとして示される反射を生成する。マルチモードスペクトルでは、パルスのトレインにおける各パルスの反射は次のパルスと重なり、反射間の違いを区別することを困難にし、厚さを取得することを困難にする。
【0011】
そのため、連続スペクトル源を使用することが好適である。マルチモードレーザダイオードを、テラヘルツに準ずるTDSシステムにおける光源として使用する先行技術の参考文献が存在するが、それは、マルチモードレーザダイオードは必要な量の光パワーを容易に提供でき、それらを操作およびそれらを特性評価するのが容易で、そしてそれらが安価であるためである。そのような参考文献は一般的には、産業適用システムに対して要求される精度を達成できない概念実証の刊行物である。従って、例としての実施形態においては、光源は、マルチモードレーザダイオードなどのようなマルチモードレーザ光源ではない。
【0012】
例としての実施形態においては、光源からのスペクトルは、少なくとも5nmなどのような、少なくとも2nmの光学帯域幅を有している広帯域スペクトルである。現在のテラヘルツアンテナでは、テラヘルツ信号の帯域幅は、CW光学信号の帯域幅に比例する。従って、他の例としての実施形態においては、光源からのスペクトルは、テラヘルツ送信機により受信されると、少なくとも0.5THzまたは少なくとも1THzなどのような、少なくとも0.1THzの帯域幅を有するテラヘルツ信号の生成という結果になる広帯域スペクトルである。補足すると、1,550nmにおいては、8nmの光学帯域幅は、約1THzのテラヘルツ帯域幅に相当する。この変換は、1,550nmに対してのみ成立し、より短い波長においては、同じテラヘルツ帯域幅を得るためには、より狭い光学帯域幅が必要となる。本明細書においては、光源の広帯域スペクトルは、cΔλ/λ>0.2THz、cΔλ/λ>0.5THzなどのような、cΔλ/λ>0.1THzである、-3dB帯域幅Δλおよび中心波長λを有しているスペクトルを意味している。光源の広帯域スペクトルは広ければ広いほど、より多くのスペクトル情報をサンプルから回収できるので、ユーザに対する装置の機能性を向上できる。
【0013】
広帯域スペクトルの中心周波数は、光源、または、テラヘルツ送信機および受信機におけるアンテナ基板のタイプに依存して選択できる。1つの実施形態においては、中心周波数は約1,550nmである。電気通信からの商用光源および光ファイバーを使用できるので利点である。他の実施形態においては、中心波長は、1,064nmまたは960nmなどのようにより短いので、これは、0.1THz必要条件を満たすためには光源のより狭い帯域幅が必要なので利点である。更なる利点は、これらの、より短い波長に対しては、アンテナのための、より安価および/または、より良好な半導体材料が利用可能であるということである。後でより詳細に記述されるように、光学CW源は、増幅型自然放出(ASE)源、スーパールミネセントダイオード(SLED、SLD)、発光ダイオード(LED)、エルビウム添加ファイバー増幅器(EDFA)、およびそれらの任意の組み合わせを備えることができる。
【0014】
短レーザパルスを使用するタイムドメイン分光法(TDS)は、短および超短レーザパルスは、非線形効果を回避するために自由空間において伝播しなければならないので、自由空間光学機器の使用を典型的に要求する。そのような自由空間光学機器には、光の方向および広がりを制御するためのレンズ、プリズム、ミラーおよびアーム間の光学遅延を制御するための機械的平行移動ステージを含む。これについては、例えば、「干渉計支援テラヘルツタイムドメイン分光法」Opt.Express,25(7),7547-7558(2017);doi:10.1364/OE.25.007547.を参照のこと。これらの自由空間光学構成要素は、ミラー、レンズ、および機械的平行移動ステージはかさばり、それらの整列は環境ノイズおよび装置の如何なる動きの影響を受け易いので不利である。
【0015】
発明に従う、CW光学信号を使用するテラヘルツ相互相関装置は、自由空間必要条件を緩和することができることを意味し、それは、装置の設計において新しいアプローチを可能にする。
【0016】
本明細書においては、光導波管は、電磁波を導波管の物理境界により決定される方向に閉じ込め、その方向に向かわせるように設計されているシステムまたは材料である。典型的な導波管のタイプとしては、光ファイバー、チャネル導波管、および平面導波管がある。発明のテラヘルツ相互相関装置においては、CW信号の、光源から光遅延構成要素、テラヘルツ送信機、およびテラヘルツ受信機までの光路は、好ましくは光導波管により提供され、そのため装置に対する全光導波管経路を確実にする。それにより、装置は、光路に沿う光信号の方向および広がりを制御するためのレンズおよびミラーに頼ることがない。自由空間機構においては、レンズおよびミラーはかさばる構成要素であり、正確および安定した整列を必要とする。そのため、全光導波管経路は、湿度および温度における変動、物理的振動、および衝撃による影響をより受けにくいので利点である。加えて、光導波管の使用は、装置の全体的なサイズを削減することを可能にする。代替の構成においては、CW光学信号は、テラヘルツアンテナまでのその経路の間は、如何なる地点においても自由空間を(つまり、環境の大気を通して)伝播しないことが好適である。
【0017】
光源と光学遅延機構との間の光路は、ビームスプリッタとテラヘルツ送信機との間の光学結合を提供する第1アームと、ビームスプリッタとテラヘルツ受信機との間の光学結合を提供する第2アームに光路を分割するためのビームスプリッタを備えている。そのため、そのようなビームスプリッタはまた、光源からの光学信号を2つの別個の光学信号に分割することも行う。1つの例においては、ビームスプリッタは、類似の電力を有する2つの光学信号を提供する50/50スプリッタである。他の例においては、ビームスプリッタは、一方が他方よりも相当に大きな電力を有する2つの信号を提供し、その分割比は60/40、70/30、または80/20であり、より大きな電力を有する信号は、典型的にはテラヘルツ送信機に対するものである。ビームスプリッタは、光源と光学遅延機構との間に位置している。
【0018】
開示の光学遅延機構は、従来の自由空間平行移動ステージ遅延よりも優位な利点を提供し、それは、光学遅延機構は、他の光学構成要素に対して正確な整列を保たなければならない機械的に動く部品または別個のミラーおよびレンズを含んでいないからである。従って、光学遅延機構は、より強固で、機械的振動および衝撃による影響もより少ないために利点である。光学遅延機構は、光学信号が自由空間ではなく固体において伝播するために、圧力、温度、湿度、気体、エアゾールなどのような環境パラメータによる影響が相当に少ないので更に利点である。
光学遅延機構は好ましくは、
・サーキュレータ、ファイバーストレッチャ、およびサーキュレータとファイバーストレッチャが、ファラデーミラーにおける反射のために方向において変化する第1方向と、反対方向の第2方向に伝播するCW光学信号を受信するために配置されているファラデーミラーを備えているダブルパス偏光保存ファイバーストレッチャ、および/または
・2つ以上の光学ポート、2つの光学ポートを接続するための1つ以上の光導波管セクション、および2つの接続された光学ポート間の光路長を変えるための作動手段を備えている可変ソリッドステート光学ディレイ(SSOD)を備えている。
【0019】
高精度のテラヘルツ相互相関測定を達成するためには、両者のテラヘルツアンテナを駆動する光学信号は好ましくは同相である。他方で、広帯域スペクトル光源を使用することは、典型的には、センチメートルのオーダーのコヒーレンス長という結果になる。従って、例としての実施形態においては、第1アームの光路長L1および第2アームの光路長L2は、光学信号のコヒーレンス長に対応する範囲内において等しい。他の例としての実施形態においては、第1アームの光路長L1および第2アームの光路長L2は好ましくは、光学遅延機構のストロークの半分内において等しく、ここでストロークは、光学遅延機構により達成可能な2つのアーム間の光路長における最大の差である。更に他の例としての実施形態においては、第1アームの光路長L1および第2アームの光路長L2は好ましくは、5cmの長さ内において等しい。
【0020】
テラヘルツ相互相関装置の特定の適用に依存して、光学遅延機構の走査範囲は、ピコ秒の10分の1から1,000分の1のオーダーであってよく、タイムステップは典型的には、10~100フェムト秒のオーダーであってよい。連続時間走査を有することは必要条件ではないが、ナイキストのサンプリング定理を満足することは好ましい。例えば、3THz帯域を有するシステムに対しては、ナイキスト定理は、タイムステップは166フェムト秒であるべきと述べている。
【0021】
例としての実施形態においては、光学遅延機構は、第1および第2アームのそれぞれにおいてダブルパス偏光保存ファイバーストレッチャを備えている。これらのダブルパス偏光保存ファイバーストレッチャは好ましくは同一であり、または、ファイバーストレッチャの光路長における小さな差を除いて同一であること好ましく、この差は、所望される走査範囲のオーダーである。この機構は、第1および第2アームにおけるCW光学信号に対する光路長および任意の歪効果の両者に関して同一または、ほぼ同一の光路を提供するので利点である。これは、再び、テラヘルツアンテナに印加されたCW光学信号が光学遅延機構のストロークにわたりで同相であることを確実にする。
【0022】
ダブルパス偏光保存ファイバーストレッチャは、光学サーキュレータ、ファイバーストレッチャ、および光学サーキュレータとファイバーストレッチャが、ファラデーミラーにおける反射のために方向において変化する第1方向と、反対方向の第2方向に伝播するCW光学信号を受信するために配置されているファラデーミラーを備えている光学遅延構成要素である。光学サーキュレータは、任意のポートに入射した光は次のポートから出射するように設計されている3つ以上のポートを有する光学装置である。これは、光がポート1に入射すると、その光はポート2から出射されるが、出射された光のうち何れかの光がサーキュレータにより反射されて戻されると、その光はポート1から出てこないで、ポート3から出て行くことを意味している。光学サーキュレータは典型的には、例えば、単一のファイバー上の両方向送信を達成するために、互いに反対方向に走行する光学信号を分離するために使用される。
【0023】
ダブルパス偏光保存ファイバーストレッチャはまた、45度ファラデー回転子とミラーの組み合わせであるファラデーミラーを備えている。ファラデー回転子は、両者のパス上の伝搬方向に関して、同じ方向に光の偏光を回転するので、ファラデーミラーにより反射された光学信号は、90度回転された偏光で戻る。
【0024】
ダブルパス偏光保存ファイバーストレッチャにおいては、遅延は、光路を延長するためにファイバーストレッチャの光ファイバーを物理的に伸ばすことにより引き起こされる。例としての実施形態においては、ファイバーストレッチャは、例えば、50~100メートルの光ファイバーの一セクションであり、電圧を印加することで歪ませることができるピエゾクリスタルまたは他の電歪材料の周りに密に巻かれている。ファイバーは長いほどより長く伸ばされ、結果としての光学遅延はより大きい。この機構において使用できる多数のファイバーストレッチャは市場で入手可能である。
【0025】
ファイバーストレッチャの一端は、導波管および光学サーキュレータを介して光源に光学的に結合されており、ファイバーストレッチャの他端はファラデーミラーを備えている。光学信号はサーキュレータにより受信され、ファイバーストレッチャにおいて遅延を取得し、ファラデーミラーにより反射され、追加遅延を取得するためにファイバーストレッチャをもう一度通過する。ファイバーストレッチャから光学サーキュレータに到着すると、光学信号は、テラヘルツ送信機または受信機に向けて伝播する異なる光導波管に結合される。ファラデーミラーは、光学信号の偏光を90度回転し、それにより、第1パスの間にファイバーストレッチャにおける光ファイバーの伸長により引き起こされる如何なる偏光の変化も、第2パスの間に往復運動する。90度の回転は、テラヘルツ送信機および受信機は、光学信号の偏光の影響を受け易いので利点である。ダブルパス偏光保存ファイバーストレッチャもまた、光学信号は反対方向において2回ファイバーストレッチャを通過するので(そのため、ダブルパスと呼ばれる)利点である。上記に説明したように、これは、偏光回転に繋がる効果である、ファイバーにおいて存在している複屈折を往復運動させる効果を有している。更に、ダブルパス偏光保存ファイバーストレッチャは、ファイバーを伸長することに起因する追加的な光路長が、そしてそれにより光学遅延もまた2倍になるという効果を有しており、それは、構成要素をより小さくすることができるということを意味している。加えて、ファイバーストレッチャは、光学遅延の連続調整を提供し、そのため、任意の所望される長さのタイムステップを提供するために使用できるので利点である。
【0026】
可変ソリッドステート光学ディレイ(SSOD)は、入力信号および出力信号を光導波管に結合するためのポートなどのような2つ以上の光学ポート、2つの光学ポートを接続するための1つ以上の光導波管セクション、および、2つの接続されている光学ポート間の光路長を変えるための作動手段を備えている光学遅延構成要素である。そのようなソリッドステート光学ディレイはまた、非機械的可変光学時間遅延線またはソリッドステート遅延線(SSDL)とも称される。
【0027】
例としての実施形態においては、可変ソリッドステート光学ディレイは、2つの光学ポートを接続するための異なる長さの2つ以上の光導波管セクションを備えており、作動手段は、2つ以上の光学ポートを接続するための2つ以上の光導波管セクションの1つまたはその組み合わせを選択するように構成されている。そのため、この実施形態においては、2つのポート間の光路長は、異なる長さの異なるルートの選択により変えられる。この実施形態においては、可変ソリッドステート光学ディレイにおける2つ以上の異なる光導波管セクションは、基板上に形成された、変化する長さのファイバーループまたはチャネル/平面導波管セクションであってよい。作動手段は、選択可能な分離光学遅延のセットを提供するために、光導波管セクションの1つを選択でき、または光導波管セクションの2つ以上を直列に接続できる。加えて、幾つかの可変ソリッドステート光学ディレイは、1つ以上の分離光学ディレイの周りの、またはその間の光路長のある連続調整を提供できる。作動手段は、例えば、光学機械ファイバースイッチまたはMEMS(微小電気機械システム)スイッチであってよく、それらは、巨視的な移動パーツを含んでいないので利点である。例として実施形態においては、可変ソリッドステート光学ディレイは、非機械的光学ディレイであり、作動手段は、熱光学スイッチ、電気光学スイッチ、音響光学スイッチ、磁気光学スイッチの1つ以上を備えることができる。増大された強靭さと、自由空間伝播がないことに加えて、可変ソリッドステート光学ディレイは、如何なる移動パーツ、ミラー、レンズが除去され、単一チップ上に適合するように少数化できるので利点である。例としての実施形態においては、可変ソリッドステート光学ディレイは、少なくとも10回のスイッチサイクルが可能な、耐久性および高い信頼性を有する光学スイッチを備えている。
【0028】
可変ソリッドステート光学ディレイの他の例としての実施形態においては、2つのポート間の光路長は、ポートを接続する光導波管セクションの材料特性(好ましくは伸長を除く)を調整することにより変えられる。1つの実施形態においては、これは、導波管材料の屈折率または複屈折の調整であってよい。そのような可変ソリッドステート光学ディレイの1つの例は、音響光学遅延モジュールであってよく、作動手段は音響信号を、複屈折水晶を通して送信し、それは格子位置を変えることに繋がり、それにより、光学信号の回折における変化となり、最終的に異なる光路長となる。
【0029】
可変ソリッドステート光学ディレイの例としての実施形態においては、可変ソリッドステート光学ディレイは、可変ソリッドステート光学ディレイの温度を安定させるための温度安定化処理を備えている。これは、温度における変化は、導波管媒体の屈折率を変え、異なる経路長という結果になり、干渉パターンに影響を与えるので利点である。他の例としての実施形態においては、可変ソリッドステート光学ディレイは、可変ソリッドステート光学ディレイにおける異なる経路を通しての伝搬が、出力における光パワーを実質的に変えないように、低損失導波管媒体を備えている。
【0030】
例としての実施形態においては、テラヘルツ相互相関装置の光学遅延機構は少なくとも、第1アームにおける第1光学遅延構成要素および第2アームにおける第2光学遅延構成要素を備えており、つまり、各アームは、少なくとも1つの光学遅延構成要素を備えている。好ましくは、第1および第2遅延構成要素はそれぞれ、
・ダブルパス偏光保存ファイバーストレッチャまたは
・可変ソリッドステート光学ディレイを備えている。
【0031】
1つの例においては、テラヘルツ相互相関装置の光学遅延機構は、ダブルパス偏光保存ファイバーストレッチャと可変ソリッドステート光学ディレイの両者を備えている。これらは並列に(異なるアームにおいて)、または直列に(同じアームにおいて)提供できる。可変ソリッドステート光学ディレイは好ましくは、作動手段により選択できる分離光学遅延のセットを提供し、2つの後続の光学遅延の間の最大差はDである。1つの例においては、ダブルパス偏光保存ファイバーストレッチャは、D以上の連続光学遅延調整を提供するように適合されている。この組み合わせは、光学遅延の広い範囲を連続して走査することを可能にするので利点である。
【0032】
発明はまた、上記のテラヘルツ相互相関装置を使用して、サンプルのテラヘルツ相互相関測定を実行するプロセスにも関する。そのようなテラヘルツ相互相関測定は、例えば、「スーパールミネセントダイオードからのインコヒーレントな光により駆動されるテラヘルツ相互相関分光法」、Opt.Express 27,12659-12665(2019);doi:10.1364/OE.27.012659において記述されているようなテラヘルツ相互相関分光法であってよい。測定は、しばしば分光法と称されるが、提供されているサンプルの反射、吸収、または送信スペクトルという結果に必ずしもならない、厚さ測定などのような材料特性評価測定であってよい。
【0033】
以降、該当するときは図を参照して、種々の例と詳細について記述する。図は一定の比率で拡大/縮小されて描かれていてもいなくてもよく、類似の構造または機能の要素は、図を通して類似の参照番号で表されているということは留意すべきである。また、図は例の記述を容易にすることのみが意図されているということにも留意すべきである。図は、開示を網羅して記述するものとしては意図されておらず、また開示の範囲に対する制限としても意図されていない。加えて、示されている例は、示されているすべての態様または利点を有している必要はない。特別な例と関連して記述されている態様または利点は、その例に必ずしも制限されず、そのように示されていない場合でも、またはそのように明示的に記述されていなくても任意の他の例において実践できる。
【0034】
図1は、開示に係わる、例としてのテラヘルツ相互相関装置1を示している図である。装置は、連続波(CW)光学信号を出力するための光源2、光源2に光学的に結合されているテラヘルツ送信機4であって、CW光学信号により変調されると、サンプル8に向けてテラヘルツ放射5を出射するように構成されているテラヘルツ送信機4、光源2に光学的に結合されているテラヘルツ受信機6であって、テラヘルツ放射5とCW光学信号との間の干渉の結果である電気検出信号を生成することにより、テラヘルツ放射5を検出するように構成されているテラヘルツ受信機6、および、CW光学信号により、テラヘルツ受信機6のテラヘルツ送信機4に対する同期を調整するように構成されている光学遅延機構16を備えている。装置1は、テラヘルツ送信機4とテラヘルツ受信機6の両者の、光源2への光学結合を容易にするビームスプリッタ15を備えることができる。
【0035】
テラヘルツ相互相関装置1は、サンプルから測定される異なる信号を有する多用な適用において使用できる。図1においては、テラヘルツ送信機4とテラヘルツ受信機6は、サンプル8から送信された放射5を測定するために設定されているが、図4と5においては、それらはサンプル8から反射された放射5bを測定するように設定されている。
【0036】
CW信号の、光源から光学遅延構成要素、テラヘルツ送信機、およびテラヘルツ受信機への光路は好ましくは、光ファイバーなどのような光導波管11、チャネル導波管、および平面導波管により提供される。例としての実施形態においては、光路は、CW光学信号の光路の何れの部分も光導波管11の外部に位置していないことを意味する、全光導波管経路である。これは、CW光学信号は、何れの点においても自由空間を伝播しない、つまり、装置1が位置している環境の大気中において伝播しないという効果を有している。
【0037】
光学遅延機構16は、図1のように、テラヘルツ送信機へのアームとテラヘルツ受信機へのアームの両者において1つ以上の光学遅延構成要素を有することができ、または、アームの1のみにおいて1つ以上の光学遅延構成要素を有することができる(例えば、図4と5参照)。光学遅延機構16の1つ以上の光学遅延構成要素の例としての実施形態は、図2と3を参照して下記に記述される。
【0038】
図2は、サーキュレータ20、ファイバーストレッチャ22、およびサーキュレータ20とファイバーストレッチャ22が、ファラデーミラー24における反射のために方向が変化する第1方向と、反対方向の第2方向に伝播するCW光学信号3を受信するために配置されているファラデーミラー24を備えているダブルパス偏光保存ファイバーストレッチャ18の例としての実施形態を示している。サーキュレータ20の入力および出力ポートは、光導波管11に結合されている。ファイバーストレッチャ22は、市場で入手できるファイバーストレッチャであってよい。
【0039】
図3は、2つの光学ポート28、および異なる長さの光導波管セクション30、ここでは、光学ポート28を接続するための光ファイバーセクションA~D、および光学ポート28を接続するための光導波管セクション30の1つまたはその組み合わせを選択するための作用手段26を備えている可変ソリッドステート光学ディレイ26の例としての実施形態を示している。光学ポート28は、CW光学信号3を受信および送信するための光導波管11に結合されている。
【0040】
図4から6は、開示に係わるテラヘルツ相互相関装置1の更なる例としての実施形態を示している。これらの実施形態の何れか、または図1に例示されている実施形態に関して記述される個々の特徴は、他の実施形態の特徴と組み合わせることができる。
【0041】
図4と5において例示されている装置1においては、テラヘルツアンテナ4および6は、サンプル8をテラヘルツ放射5aで照射して、サンプルから反射されるテラヘルツ放射5bを測定するように設定されている。
【0042】
図4と5において例示されている装置1においては、光導波管11は光ファイバーにより提供されている。使用される光ファイバーのタイプは、市場で入手できる単一モードまたはマルチモード光ファイバータイプから選択できる。光ファイバーは、CW光学信号の波長スペクトルおよび場の強さなどのようなパラメータ、光導波管11の長さ、装置の所望される価格/品質などに依存して選択できる。
【0043】
図6において例示されている装置1においては、光導波管11は、半導体装置の基板36上に形成、または基板36において統合されているチャネル導波管または平面導波管により提供されている。この例としての実施形態においては、すべての構成要素は、オンチップ(フォトニック回路上)で統合でき、それにより、システムは、よりコンパクト且つ小さくすることができ、製造は、半導体処理における既存の方法を使用することにより規模を拡大することができる。
【0044】
図1において例示されている装置1においては、光学遅延機構16は、装置のそれぞれのアームにおける少なくとも1つの光学遅延構成要素を備えている。図4において例示されている装置1においては、光学遅延機構16は、装置の1つのアームにおいて(ここでは、テラヘルツ受信機へのアームにおいてであるが、その代わりにテラヘルツ送信機へのアームにおいてでもよい)少なくとも2つの光学遅延構成要素を備えている。結果としての少なくとも2つの光学遅延構成要素は、
-2つのダブルパス偏光保存ファイバーストレッチャ18、
-2つの可変ソリッドステート光学ディレイ26、
-ダブルパス偏光保存ファイバーストレッチャ18および可変ソリッドステート光学ディレイ26、
-ダブルパス偏光保存ファイバーストレッチャ18および異なる光学遅延構成要素、
-可変ソリッドステート光学ディレイ26および異なる光学遅延構成要素であってよい。
【0045】
図5において例示されている装置1においては、光学遅延機構16は、装置の1つのアームのみにおいて(ここでは、テラヘルツ受信機へのアームにおいてであるが、その代わりにテラヘルツ送信機へのアームにおいてであってよい)単一の光学遅延構成要素のみを備えている。光学遅延構成要素は、ダブルパス偏光保存ファイバーストレッチャ18または可変ソリッドステート光学ディレイ26の何れかであってよい。
【0046】
上記のすべての組み合わせは適用可能であるが、アームは可能な限り対称に保つことが好ましく、それにより、環境パラメータ、特には任意の温度変化は、両者のアームに可能な限り同じ影響を与え、より高い精度という結果になる。例えば、1つのアームがダブルパス偏光保存ファイバーストレッチャを含むときは、両者のアーム上のほぼ同じ全経路長を有するために、他のアームにおいてもダブルパス偏光保存ファイバーストレッチャを有すること、または、サーキュレータおよびファラデーミラーを有する非ストレッチングファイバイーコイルを、全経路長および、ファイバーの複屈折の往復運動の両者を一致させるために有することもまた利点がある。ファイバーストレッチャ22の2倍の長さのファイバーコイルのみを含むことは、非対称複屈折効果をもたらす。
【0047】
好適な例としての実施形態においては、光学遅延機構16は、各アームにおいてダブルパス偏光保存ファイバーストレッチャ18を備え、アームの1つにおいて可変ソリッドステート光学ディレイ26を備えている。これは、図1と4のシステムの組み合わせである。ここで、ファイバーストレッチャは、小さく、可変なタイムステップを提供するが、ソリッドステートディレイは、粗いタイムステップを提供する。
【0048】
テラヘルツ送信機および受信機は、一般的にはテラヘルツアンテナである。1つの例としてのタイプは、半導体構造(これはそれ自体、半導体の多数の異なる層から構成できる)を有する「CWフォトミキサー」および金属アンテナ(典型的にはボウタイまたはダイポールアンテナ)である。ここで、光学信号は半導体を励起し、一方、電圧バイアスはアンテナ極に印加され(エミッタに対して)、またはアンテナにおいて生成された電流が測定される(受信機に対して)。他の適用可能なテラヘルツアンテナも存在し、新しいアンテナを開発でき、それも発明の工夫において等しく適用可能である。
【0049】
テラヘルツ相互相関装置1は、テラヘルツ送信機4およびテラヘルツ受信機6に関してテラヘルツ光学機器7を備えることができ、例えば、図4と5を参照されたい。そのようなテラヘルツ光学機器7としては、テラヘルツ帯域におけるEM放射に適合され、サンプル8への、またはサンプル8からのテラヘルツ信号5の方向および広がりを制御するために使用されるレンズ、ミラー、偏光子、ビームスプリッタなどを備えることができる。テラヘルツ受信機6は、テラヘルツ放射5とCW光学信号3との間の干渉の結果である電気検出信号を生成することにより、テラヘルツ放射5を検出するように構成されている。この目的のため、装置1は、図1において例示されているように、テラヘルツ受信機6から電気検出信号を受信してそれを処理するための電子プロセッサ34に接続することができる。
【0050】
光源と光学構成要素は、如何なる波長においても、典型的には、可視光または赤外線波長においても作動でき、テラヘルツ送信機および受信機は、この波長に合わせる必要がある。好適な実施形態においては、光源は、電気通信用の光学構成要素の利用可能性の恩典を受けるために、1,550nmにおいて作動する。
【0051】
1つの例としての実施形態においては、光源2は、種信号を増幅する光学増幅器内に接続されている光学種信号を備えている。好適な実施形態においては、種信号は、発光ダイオード(LED)またはスーパールミネセントダイオード(SLED)により、好ましくは1,550nmにおいて、および光学増幅器、およびエルビウム添加ファイバー(EDFA)により提供される連続広帯域信号である。このタイプの光源は、典型的には、EDFA(エルビウム添加ファイバー)と称され、図5において例示されている。他の例としての実施形態(示されていない)においては、光学種信号は、LED種が半導体光学増幅器により増幅される機構などにおけるように電気的に増幅できる。
【0052】
他の例としての実施形態においては、光源2は、ポンプ信号を吸収し、それをより長い波長および大きな連続帯域幅で、増幅型自然放出(ASE)プロセスを介して再出射する媒体内に接続されているポンプ信号を備えている。好ましくは、ポンプ信号はポンプレーザにより提供され、ASE媒体は、添加ファイバーである。例としての実施形態においては、ポンプレーザは980nmレーザであってよく、ASE媒体は、980nmを吸収して、より広い帯域幅において1,550nmで再出射するエルビウム添加ファイバーである。このタイプの光源は典型的にはASEと称され、図5において例示されている。
【0053】
図7は、発明の光源の、例としての連続広帯域スペクトルを示している。スペクトルは1,550nmを中心としており、40nmの帯域幅を有し、如何なるモードピークも、他の不連続性もない。
【0054】
前述したように、テラヘルツ相互相関装置は異なる適用においても使用でき、開示は、テラヘルツ相互相関装置を使用する、サンプルのテラヘルツ相互相関測定を実行する方法を提供する。例としての実施形態においては、テラヘルツ相互相関測定は、層厚測定であり、多層構造の個々の層厚は、非接触および非破壊的に測定できる。ここで、サンプルは、図4と5において例示されているように反射機構において置かれている。装置が作動中は、テラヘルツ送信機4からのテラヘルツ放射5aは、サンプル8の表面上に当たり、反射されたテラヘルツ信号5bはテラヘルツ受信機6により検出される。テラヘルツ受信機6においては、CW光学信号3と入射テラヘルツ放射5bは重なり合い、光学フィールドとテラヘルツ波の相互相関であるフォトカレントという結果になる。フォトカレント信号は増幅および記録され、電子プロセッサ(図1における34参照)に供給され、サンプルの層の厚さ、および可能性としては光学パラメータを決定できる。他の例としての実施形態においては、テラヘルツ相互相関測定は、層の厚さおよび表面の非破壊検査または品質保証などのような非破壊検査または品質保証である。
【0055】
参照番号リスト
1.テラヘルツ相互相関装置
2.光源
3.CW光学信号
4.テラヘルツ送信機
5.テラヘルツ放射/信号
6.テラヘルツ受信機
7.テラヘルツ光学機器
8.サンプル
10.テラヘルツ相互相関装置の光路
11.光導波管
12.光源
13.光学増幅器
14.CW光学信号のスペクトル
15.ビームスプリッタ
16.光学遅延機構
18.ダブルパス偏光保存ファイバーストレッチャ
20.光学サーキュレータ
22.ファイバーストレッチャ
24.ファラデーミラー
26.可変ソリッドステート光学ディレイ
28.光学入力/出力ポート
30.光導波管セクション
32.作動手段
34.電子プロセッサ
36.基板
【0056】
「第1の」、「第2の」、「第3の」、「第4の」、「一次の」、「二次の」、「三次の」などのような用語の使用は、如何なる特別な順序を意味するものではなく、個々の要素を特定するために含まれている。更に、「第1の」、「第2の」、「第3の」、「第4の」、「一次の」、「二次の」、「三次の」などのような用語の使用は、重要性の如何なる順序を示すものではなく、「第1の」、「第2の」、「第3の」、「第4の」、「一次の」、「二次の」、「三次の」などのような用語は、1つの要素を他の要素から区別するために使用されている。「第1の」、「第2の」、「第3の」、「第4の」、「一次の」、「二次の」、「三次の」などのような用語はここにおいて、および他の箇所で使用されているが、それは標識付けの目的のみのためであり、如何なる特定の空間的または時間的順序を示すことは意図されていないということに留意されたい。更に、第1要素の標識付けは、第2要素の存在を意味しておらず、逆もまたそうである。
【0057】
別個の実現形態として上記で検討されたある特徴はまた、単一の実現形態として組み合わせて実現できる。逆に、単一の実現形態として記述されている特徴はまた、別個に複数の実現形態において実現でき、または、任意の適切な、より小さな組み合わせにおいて実現できる。更に、特徴は、ある組み合わせにおいて作用するように上述できるが、主張される組み合わせからの1つ以上の特徴は、幾つかの場合においては、組み合わせから実践でき、組み合わせは、任意のより小さな組み合わせとして、または、任意のより小さな組み合わせの変形例として主張できる。
【0058】
「備えている」という用語は、それらの一覧表示されたもの以外の他の要素またはステップの存在を必ずしも除外しないということに留意すべきである。
【0059】
要素の前の「1つの」という用語は、複数のそのような要素の存在を排除するものではないということに留意すべきである。
【0060】
如何なる参照符号も請求項の範囲を制限するものではなく、例は、ハードウェアとソフトウェアの両者により少なくとも部分的には実現でき、幾つかの「手段」、「ユニット」、または「装置」はハードウェアの同じアイテムにより表すことができるということにも更に留意すべきである。
【0061】
「ほぼ」、「約」、「一般的に」、および「実質的に」などのような、ここにおいて使用されている、程度を示す用語は、記述されている値、量、または特性に近く、そして依然として所望される機能を実行し、所望される結果を達成する値、量、または特性を表している。例えば、「ほぼ」、「約」、「一般的に」、および「実質的に」という用語は、記述されている量、品質、または特性の10%以内、5%以内、1%以内、0.1%以内、および0.01%以内の、光スペクトルの連続性などのような量または品質または特性を指すことができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】