(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-18
(54)【発明の名称】蒸気抽気のためのバランスグリッドバルブ
(51)【国際特許分類】
F01D 17/10 20060101AFI20240910BHJP
F01K 7/34 20060101ALI20240910BHJP
F16K 17/02 20060101ALI20240910BHJP
F16K 3/08 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
F01D17/10 D
F01K7/34
F16K17/02 Z
F16K3/08
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024512958
(86)(22)【出願日】2022-08-23
(85)【翻訳文提出日】2024-02-22
(86)【国際出願番号】 EP2022025387
(87)【国際公開番号】W WO2023025415
(87)【国際公開日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】102021000022412
(32)【優先日】2021-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517029381
【氏名又は名称】ヌオーヴォ・ピニォーネ・テクノロジー・ソチエタ・レスポンサビリタ・リミタータ
【氏名又は名称原語表記】Nuovo Pignone Tecnologie S.R.L.
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】マリオッティ,ヴァネッサ
【テーマコード(参考)】
3G071
3H053
3H059
【Fターム(参考)】
3G071AA07
3G071AB01
3G071BA21
3H053AA22
3H053BA04
3H053DA03
3H053DA05
3H059AA09
3H059BB24
3H059CA04
(57)【要約】
【解決手段】 少なくとも1つのダクトを通して高圧の蒸気を受け入れるように構成された第1のバランシングチャンバ及び第2のバランシングチャンバを備える、多段蒸気タービンからの蒸気抽気のためのバランスグリッドバルブ。バランシングチャンバは、好ましくは、環状溝の形態であり、バルブの機械的歪みを低減するために、バルブの軸から2つの異なる半径方向距離に配置される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多段蒸気タービン(1000)からの蒸気抽気のためのバランスグリッドバルブ(100)であって、前記多段蒸気タービン(1000)は、蒸気流を処理するように構成され、前記バランスグリッドバルブ(100)は、前記多段蒸気タービン(1000)の2つの中間段の間に配置されるように構成され、前記バルブは、
-第1の側部(210)及び第2の側部(220)を有するバルブ支持体(200)であって、前記第1の側部(210)は、第1の圧力で蒸気に曝されるように構成され、前記バルブ支持体(200)は、固定され、リング形状である、バルブ支持体(200)と、
-第1の側部(310)及び第2の側部(320)を有するバルブ本体(300)であって、前記第1の側部(310)は、第2の圧力の前記蒸気に曝されるように構成され、前記バルブ本体(300)は、回転可能であり、リング形状である、バルブ本体(300)と、を備え、
前記第2の圧力は、前記第1の圧力よりも大きく、
前記バルブ支持体(200)及び前記バルブ本体(300)は、機械的に結合され、前記バルブ支持体(200)の前記第2の側部(220)は、前記バルブ本体(300)の前記第2の側部(320)に面し、
前記バルブ本体(300)は、軸(R)を中心として前記バルブ支持体(200)に対して回転可能であり、
前記バルブ支持体(200)及び前記バルブ本体(300)は、開口部(250、350)を有し、前記開口部(250、350)は、前記バルブ支持体(200)と前記バルブ本体(300)との間の相対回転角度に応じて調整可能な流路を画定するように構成され、
前記バルブ支持体(200)及び/又は前記バルブ本体(300)は、第1の溝(360)及び第2の溝(380)を備え、前記第1の溝(360)及び前記第2の溝(380)は、前記バルブ本体(300)の前記第2の側部(320)及び/又は前記バルブ支持体(200)の前記第2の側部(220)に配置され、
前記第1の溝(360)及び前記第2の溝(380)は、前記バルブ支持体(200)と前記バルブ本体(300)との間に第1のバランシングチャンバ(460)及び第2のバランシングチャンバ(480)をそれぞれ形成するように構成され、
前記第1の溝(360)は、前記軸(R)からの第1の半径方向距離(r1)を有し、前記第2の溝(380)は、前記軸(R)からの第2の半径方向距離(r2)を有し、前記第1の半径方向距離(r1)は、前記第2の半径方向距離(r2)よりも大きく、
前記第1の溝(360)は、第3の圧力で前記蒸気を受け入れるように構成され、
前記第2の溝(380)は、第4の圧力で前記蒸気を受け入れるように構成され、
前記第3の圧力は、前記第2の圧力よりも大きく、
前記第4の圧力は、前記第2の圧力よりも大きく、
前記バルブは、少なくとも1つのダクト(500)を更に備え、前記ダクト(500)は、前記第1の溝(360)及び/又は前記第2の溝(380)に流体結合され、前記第3の圧力及び/又は前記第4の圧力で前記蒸気を供給するように構成される、バランスグリッドバルブ(100)。
【請求項2】
前記第3の圧力は、前記第4の圧力と実質的に等しい、請求項1に記載のバランスグリッドバルブ(100)。
【請求項3】
前記第1の溝(360)及び前記第2の溝(380)は、前記軸(R)を取り囲む環状溝である、請求項1に記載のバランスグリッドバルブ(100)。
【請求項4】
前記バルブ支持体(200)及び/又は前記バルブ本体(300)の前記開口部(250、350)は、前記第1の溝(360)と前記第2の溝(380)との間に配置される、請求項1~3のいずれか一項に記載のバランスグリッドバルブ(100)。
【請求項5】
前記バルブ支持体(200)及び/又は前記バルブ本体(300)は、前記第1の溝(360)を前記第2の溝(380)に流体結合する少なくとも1つの内側チャネル(370)を更に備える、請求項1に記載のバランスグリッドバルブ(100)。
【請求項6】
前記少なくとも1つの内側チャネル(370)は、前記バルブ支持体(200)及び/又は前記バルブ本体(300)の2つの隣接する開口部(250、350)の間に配置される、請求項5に記載のバランスグリッドバルブ(100)。
【請求項7】
前記ダクト(500)は、前記バランスグリッドバルブ(100)の上流に位置する前記多段蒸気タービン(1000)の段に流体結合されるように構成される、請求項1に記載のバランスグリッドバルブ(100)。
【請求項8】
前記ダクト(500)には、バルブ(510)、特に調節バルブが設けられる、請求項1に記載のバランスグリッドバルブ(100)。
【請求項9】
請求項1に記載のバランスグリッドバルブを備える多段蒸気タービン(1000)であって、前記バランスグリッドバルブは、前記多段蒸気タービン(1000)の2つの中間段の間に配置される、多段蒸気タービン(1000)。
【請求項10】
前記ダクト(500)は、第1の端部において、前記バランスグリッドバルブ(100)の上流に位置する前記多段蒸気タービン(1000)の段に流体結合され、第2の端部において、前記第1の溝(360)及び/又は前記第2の溝(380)に流体結合される、請求項9に記載の多段蒸気タービン(1000)。
【請求項11】
前記ダクト(500)には、バルブ(510)、特に調節バルブが設けられる、請求項10に記載の多段蒸気タービン(1000)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示される主題は、多段蒸気タービンからの蒸気抽気のためのバランスグリッドバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
多くの場合、蒸気タービンは、蒸気熱エネルギーを機械エネルギーに変換(タービン回転)することによって電気エネルギーを生成するために使用されている。
【0003】
多段蒸気タービンは、蒸気サイクルから所望の圧力で蒸気を抽気するために、高圧タービンセクションと低圧タービンセクションとの間に抽気バルブを備える場合がある。抽気された蒸気は、主にタービン回転以外の用途に使用される。例えば、抽気された蒸気は、製紙工場又は食品工場などにおいて商品を加工するために使用することができ、又は加熱流体として使用することができる。したがって、所望の特性を有する抽気流を確保し、タービン効率を確保するために、有利には、経時的に一定である所望の圧力で蒸気を抽気することが望まれている。
【0004】
これは、2つの中間タービンセクション又は段落の間に抽気バルブを位置決めすることによって行うことができ、抽気マニホールドは、抽気バルブの上流に配置され、蒸気抽気圧力は、抽気バルブを通して調節することができる。典型的には、抽気バルブは、固定グリッドと回転グリッドとの相互位置に応じて可変流路を画定するために協働する固定グリッドと回転グリッドとを含む、グリッド型バルブである。流路を変化させることによって、抽気バルブは、抽気バルブにおける圧力を調節することができ、その結果、バルブの上流に接続された抽気マニホールドを通して抽気される流れの圧力を調整することができる。
【0005】
抽気バルブの上流と下流とでは蒸気圧力は異なることに留意されたい。特に、抽気バルブの上流及び下流の蒸気の圧力差は、抽気される蒸気質量流量の値が増加するにつれて増加する。抽気バルブの前後の差圧により、高圧蒸気に曝されたバルブ表面に印加される軸力が生じ、この力により、回転グリッドが固定グリッドに対して押し付けられ、2つのグリッド間の接触力が増大し、その結果、2つのグリッド間の摩擦が増大する。
【0006】
このため、既知の抽気バルブでは、2つのグリッドが依然として互いに対して回転することができるように、圧力差制限が設けられている。抽気バルブの圧力差の制限を増加させるための既知の方法の1つは、2つのグリッドを局所的に分離してそれらの間の摩擦を減少させるために、高圧蒸気が供給されるバランシングチャンバをグリッド間に設けることである。
【0007】
欧州特許第1970543(B1)号は、固定グリッド及び回転グリッドを備える蒸気タービンの抽気圧力を調整するためのデバイスを開示しており、固定グリッドは、グリッドを分離してグリッドに作用する力を低減するために、蒸気抽気ノズルの上流に位置する段落から抽気された高圧蒸気が供給される際にバランシングチャンバとして作用する溝を備えている。
【0008】
かかるグリッドの局所的な分離は、バランシングチャンバにおいて局所的に生じる力に由来することに留意されたい。これにより、力がグリッド回転軸から遠く離れて印加されるため、回転グリッドに「アンブレラ効果(umbrella effect)」が生じ、例えば、グリッド回転軸に近い部分、すなわち力印加領域から遠く離れたグリッドの部分における局所的な摩耗が増加し、バランシングチャンバに近い部分、すなわち力印加領域に近い部分の漏れが増加する。更に、印加される力が大きすぎると、グリッド回転軸の近くのグリッドの部分において過度の摩擦が生じるため、グリッド同士が相対的に移動できなくなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、現在利用可能な抽気バルブには、圧力差の技術的限界があり、特に、10~15barまでの圧力差でしか作動することができない。
【0010】
本出願人は、試験及び分析を行い、蒸気タービンの主流から抽気される流れを制御することができる抽気バルブ、すなわち、例えば、抽気圧力(抽気圧力は、抽気バルブが位置する蒸気タービンのセクション内の圧力である)の必要値を増加させることができるように、より大きな圧力差、例えば、60barまでの圧力差でも作動することができるバルブを有することが望ましいことを認識した。特に、抽気バルブの一種であるバランスグリッドバルブが、増加した抽気圧力で一定量の流れを抽気できることが望ましい。
【0011】
一態様によれば、本明細書に開示される主題は、第1のバランシングチャンバ及び第2のバランシングチャンバを有するバランスグリッドバルブに関する。第1のバランシングチャンバ及び第2のバランシングチャンバの各々は、少なくとも1つのダクトを通して十分に高い圧力で流体を受け入れるように構成される。一実施形態では、流体は、蒸気であり得る。有利には、チャンバは、1つ以上のチャネル(又は溝)を介して互いに流体結合される。バランシングチャンバは、抽気圧力によるバルブへの軸力を低下させるように機能する。バランシングチャンバは、バルブの歪みを低減するために、バルブの中心水平軸から2つの異なる半径方向距離に配置される。特に、バルブの歪みは、「アンブレラ効果」として発生する場合があり、この場合、バランシングチャンバの近くのバルブ領域は、バランシングチャンバ内の高い圧力に起因してバルブ支持体から押し離される。新規なバランスグリッドバルブの実施形態は、それに結合された回転機器を含み、複数の利点を提供し、これには、本明細書で説明され、示され、かつ/又は特許請求される新規なバランスグリッドバルブの使用が、内部バルブ表面上のより低いピーク圧力を容易にし、それによって、開放位置と閉鎖位置との間のバルブの移動を容易にし、バルブ構成要素の摩耗を低減させ得ることが含まれる。
【0012】
別の態様によれば、本明細書で開示される主題は、本明細書で説明され、示され、かつ/又は特許請求される新規のバランスグリッドバルブの一実施形態を備えた蒸気タービンに関し、バランスグリッドバルブは、少なくとも2つのバランシングチャンバを有する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本発明の開示される実施形態、及びそれに付随する利点の多くについての完全な理解は、添付図面に関連して考慮される場合、以下の発明を実施するための形態を参照することによって、それらがより良好に理解される際、容易に得られるであろう。
【
図1】
図1は、バランスグリッドバルブの一実施形態が設けられた回転機器、特に多段蒸気タービンの断面図を示す。
【
図2】
図2は、
図1のタービンに含まれるバランスグリッドバルブの実施形態の部分断面図を示す。
【
図3A】
図3Aは、
図2のバランスグリッドバルブの第1の側面図、特にバルブ支持体側の図を示す。
【
図3B】
図3Bは、
図2のバランスグリッドバルブの第2の側面図、特にバルブ本体側の図を示す。
【
図4】
図4は、部分的に開放された
図2のバランスグリッドバルブの正面図、特にバルブ本体側の図を示す。
【
図5】
図5は、
図2のバランスグリッドバルブのバルブ本体の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書で開示される主題は、多段蒸気タービン用の革新的なバランスグリッドバルブに関する。バランスグリッドバルブは、蒸気タービンを通って流れる蒸気を既知の抽気バルブに対してより高い圧力で抽気して蒸気タービンから遠ざけることができるように、蒸気タービンと位置決めされ、かつ結合される。革新的なバランスグリッドバルブは、特に、バルブの水平中心軸から異なる半径方向距離にある2つのバランシングチャンバを含む。2つのバランシングチャンバの各々は、少なくとも1つのダクトを通して回転機器の高圧セクションの最終段落から抽気された流体を受け入れるように構成される。一実施形態では、回転機器は、多段蒸気タービンであり、流体は、少なくとも60barの高圧蒸気である(又は高圧蒸気を含む)。特に、2つのバランシングチャンバは、それぞれがバルブの水平中心軸から2つの異なる半径を有する2つの環状同心溝の形態をとることができる。
【0015】
ここで、本開示の実施形態を詳細に参照し、その例を図面に示す。各例は、本開示を限定するものではなく、本開示の説明として提供するものである。実際には、本開示の範囲又は趣旨から逸脱しない限り、本開示に様々な修正及び変形を加えることができるということが、当業者には明らかであろう。
【0016】
ここで図面を参照すると、
図1は、例えば、限定するものではないが、参照番号1000で示される回転機器の一部を概略的に示している。一実施形態では、回転機器1000は、多段蒸気タービンである。多段蒸気タービン1000は、流れ膨張によって流体(蒸気)の流れを処理し、流れ膨張から動力を抽気するように構成される。多段蒸気タービン1000は更に、革新的なバランスグリッドバルブ100を通ってタービン1000の高圧セクションの最終段落を出る流体(蒸気)の流れを抽気するように構成される。
【0017】
多段蒸気タービン1000には、参照番号100で全体的に示される革新的なバランスグリッドバルブの一実施形態が設けられる。バランスグリッドバルブ100は、多段蒸気タービン1000の2つの中間段落の間に配置されるように構成される。有利には、バランスグリッドバルブ100は、高圧タービンセクション800と低圧タービンセクション900との間に配置され、各タービンセクションは、少なくとも1つの段落、好ましくは直列の複数の段落を有する。
【0018】
バランスグリッドバルブ100は、高圧の蒸気を抽気するように構成され、好ましくは、抽気された蒸気の圧力は、経時的に実質的に一定である。多段蒸気タービン1000は、バランスグリッドバルブ100に流体結合されたフランジ400を備える。特に、フランジ400は、高圧タービンセクション800の最終段落をバランスグリッドバルブ100と結合する環状チャンバ600に流体結合される。特に、環状チャンバ600は、蒸気の流れが抽気される多段蒸気タービン1000のセクションである。フランジ400から出ている
図1の大きな矢印は、フランジ400を通して、バランスグリッドバルブ100が、例えば、マニホールドをフランジ400に接続することによって、抽気された蒸気を1つ以上の外部ユニットに供給することができることを示している。
【0019】
図2は、バランスグリッドバルブ100の革新的な実施形態が設けられた多段蒸気タービン1000の部分断面図を示している。
図2では、バルブ100の上部及び低圧タービンセクション900の一部のみが示されており、特に、バルブ支持体は、タービンセクションのステータケーシングと一体化されている。
【0020】
この実施形態によれば、バランスグリッドバルブ100は、多段蒸気タービン1000に固定されたバルブ支持体200と、軸Rを中心としてバルブ支持体200に対して回転可能なバルブ本体300と、を備える。以下で明らかになるように、バルブ本体300を回転させて、バランスグリッドバルブ100を通過する蒸気流を変化させることができる。具体的には、バルブ本体300を回転させることによって、バランスグリッドバルブ1000の蒸気流のための通路面積が減少し、通路面積を減少させることによって、バルブを通る蒸気流が積層され、多段蒸気タービン1000から抽気される蒸気流の量が増加する。
【0021】
バルブ支持体200は、第1の側部210及び第2の側部220を有する。第1の側部210は、多段蒸気タービン1000によって処理された蒸気の第1の流れに曝されるように構成され、第1の流れは第1の圧力であり、第1の側部210は第1の圧力を受ける。
【0022】
バルブ本体300は、第1の側部310及び第2の側部320を有する。第1の側部310は、多段蒸気タービン1000によって処理された蒸気の第2の流れに曝されるように構成され、第2の流れは第2の圧力であり、第1の側部310は第2の圧力を受ける。
【0023】
第2の圧力は第1の圧力よりも大きい。換言すれば、バルブ支持体200の第1の側部210は、多段蒸気タービン1000の低圧タービンセクション900と結合されるように配置され、バルブ本体300の第1の側部310は、多段蒸気タービン1000の高圧タービンセクション800と結合されるように配置される。
【0024】
したがって、バルブ支持体200の第2の側部220は、バルブ本体300の第2の側部320に面し、かつ/又はそれに近接して位置決めされる。
【0025】
図3A及び
図3Bを非限定的に参照すると、バランスグリッドバルブ100の第1の側面図、特にバルブ支持体200側の図、及びバランスグリッドバルブ100の第2の側面図、特にバルブ本体300側の図がそれぞれ示されている。バルブ支持体200は、一例として、固定されたリング形状のバルブ支持体として示されており、バルブ本体300は、一例として、回転可能なリング形状のバルブ本体として示されている。リング形状のバルブ支持体200及びリング形状のバルブ本体300は、共通の中心水平軸Rを有し、その周りにバルブ支持体200及びバルブ本体300が形成される。
【0026】
図3B、
図4、及び
図5に示すように、バルブ支持体200及びバルブ本体300は、流体流、例えば、蒸気流のための調整可能な流路を画定するように構成された開口部250、350を有する。特に、調整可能な流路は、バルブ支持体200とバルブ本体300との間の相対回転角度Xの関数であり、
図4を非限定的に参照すると、相対回転角度Xは、バルブ支持体200の任意の垂直方向(例えば、矢印Xが開始する垂直の破線を参照)と、バルブ本体300をバルブ支持体200に対して角度Xだけ回転させた後に得られる新たな方向(例えば、矢印Xが終端する斜めの破線を参照)とに対して測定される。すなわち、矢印Xは、バルブ支持体200の任意の鉛直方向に対するバルブ本体300の相対的な回転角度Xである。有利には、バルブ支持体200上の開口部250は、バルブ本体300上の開口部350に対応し、その結果、開口部350が開口部250に完全に重なる回転角度が少なくとも存在する。その代わりに、特定の回転角に従って、開口部350は開口部250と部分的に重なる。最後に、少なくとも1つの回転角度に従って、開口部350は、開口部250と全く重ならない。
【0027】
バランスグリッドバルブ100を通過する蒸気流、したがってフランジ400を通って抽気される蒸気の圧力を調節するために、バルブ本体300は、バルブ支持体200に対して手動で又はアクチュエータを介して自動的に回転させることができ、相対的な回転角度X、したがって開口部250及び350によって画定される調整可能な流路を変化させる。有利には、バルブ本体300は、アクチュエータ、特に直線運動を回転運動に変換するリニアアクチュエータに機械的に結合される。
図3B及び
図4に示すように、バルブ本体300は、機械的ブラケットなどの接続デバイス330を備え、当該接続デバイス330は、リニアアクチュエータに結合され、バルブ本体300を回転させるためにリニアアクチュエータからの運動をバルブ本体300に伝達する。特に、バルブ本体300は、設置時及び/又は動作中に回転させることができる。より具体的には、動作中、バルブ本体300は、1回以上回転させてもよく、例えば、バルブ本体300は、1日に1回、相対回転角度Xの1つの完全ストロークを完了するために、連続低速回転を行ってもよく(完全ストロークは、約10°であってもよく、いずれの場合も、使用される開口部250、350の数に依存する)、又は高速回転、例えば、1時間あたり3回の小さな回転(1°未満)を行ってもよい。
【0028】
非限定的な実施形態によれば、特に
図5に示すように、回転可能なバルブ本体300は、バルブ本体300の第2の側部320に配置された第1の溝360及び第2の溝380を備える。第1の溝360は、軸Rから第1の半径方向距離「r1」に配置され、第2の溝380は、軸Rから第2の半径方向距離「r2」に配置され、第1の半径方向距離「r1」は、第2の半径方向距離「r2」よりも大きいことに留意されたい。
【0029】
有利には、第1の溝360及び第2の溝380は、中心水平軸Rの周りに配置された環状溝である。特に、第1の溝360及び第2の溝380は、軸Rを取り囲む第1の円(半径「r1」を有する)及び第2の円(半径「r2」を有する)を画定する。有利には、第1の溝360及び第2の溝380は、同じ幅(半径方向に対して画定される)及び深さ(軸線方向に対して画定される)を有する。
【0030】
より有利には、バルブ本体300の開口部350は、第1の溝360と第2の溝380との間に配置される。換言すれば、バルブ本体300の開口部350の中心は、軸Rから第3の半径方向距離に配置され、第3の半径方向距離は、第2の半径方向距離「r2」よりも大きいが、第1の半径方向距離「r1」よりも小さい。有利には、バルブ支持体200の開口部250は、バルブ本体300の開口部350の軸Rから同じ第3の半径方向距離に配置され、同じ形状を有することができる。
【0031】
図2を非限定的に参照すると、第1の溝360及び第2の溝380は、バルブ本体300がバルブ支持体200と結合されたときに第1のバランシングチャンバ460及び第2のバランシングチャンバ480を形成するように構成される。
【0032】
第1の溝360は、第1のバランシングチャンバ460が第3の圧力を受けるように、第3の圧力で蒸気を受け入れるように構成され、第3の圧力は、第2の圧力(すなわち、バルブの上流の圧力)よりも大きい。第2の溝380は、第2のバランシングチャンバ480が第4の圧力を受けるように、第4の圧力で蒸気を受け入れるように構成され、第4の圧力は、第2の圧力(すなわち、バルブの上流の圧力)よりも大きい。
【0033】
実施形態に限定されないが、
図5に示すように、バルブ100、特にバルブ本体300は、第1の溝360と第2の溝380とを流体結合する内側チャネル370を更に備え、有利には、この場合、第3の圧力は、第4の圧力に等しいか又は実質的に等しい。特に、第1の溝360は、第3の圧力で蒸気を受け入れるように構成され、蒸気は、内側チャネル370を通って流れ、第2の溝380に供給される。内側チャネル370を通って流れることによって圧力損失が引き起こされない場合、第2の溝380によって(すなわち、第2のチャンバ480内に)受け入れられる蒸気は、第1の溝360によって(すなわち、第1のチャンバ460内に)受け入れられる蒸気と同じ第3の圧力にあることに留意されたい。
【0034】
上述の構成によれば、第1の溝360及び第2の溝380が蒸気を受け入れたとき、バランスグリッドバルブ100は、バルブ本体300の開口部350の上方及び下方に実質的に2つの等しい力を有する(「上方」及び「下方」は、開口部350の半径方向の展開に対して定義される)。
【0035】
一部の代替的な実施形態によれば、第1の溝及び第2の溝は、バルブ支持体並びに内側チャネル上に位置し、バルブ本体がバルブ支持体と結合されると、第1のバランシングチャンバ及び第2のバランシングチャンバを形成するように構成される。一部の他の代替的な実施形態によれば、第1の溝は、バルブ支持体又はバルブ本体上に位置し、反対に、第2の溝は、バルブ本体又はバルブ支持体上に位置する。
【0036】
図1を非限定的に参照すると、多段蒸気タービン1000は、ダクト500を更に備える。ダクト500は、バランスグリッドバルブ100の上流に位置する多段蒸気タービン1000の段落、特に高圧タービンセクション800の高圧段落に流体結合されるように配置された第1の端部を有する。
【0037】
ダクト500は、バランスグリッドバルブ100、特にフランジ520に流体結合されるように配置された第2の端部を有する。有利には、フランジ520には、蒸気漏れを防止するための適切なシールが設けられる。フランジ520は、第1の溝360に流体結合される。ダクト500は、第3の圧力で、例えば、第1の端部が結合される高圧タービンセクション800の高圧段落の圧力で、蒸気を第1の溝360に供給するように配置される。
【0038】
有利には、ダクト500は、ダクト500を通って流れ、バランスグリッドバルブ100に供給される蒸気を調節するために、バルブ510、特に調節バルブを備える。
【0039】
動作時には、
図1及び
図2を参照すると、蒸気などの流体が、多段蒸気タービンであり得る回転機器1000の入口に流入し、回転機器1000を通って、特に機器のブレードを通って膨張し、回転機器1000の出口から流出する。回転機器1000を通って流れる蒸気は、バランスグリッドバルブ100を通って機器の中間セクションから抽気される。バルブ100は、蒸気の一部が流れて蒸気膨張を継続することができる開口部250、350と、バルブ100の上流にあり、蒸気の一部が抽気される環状チャンバ600と、を有する。バランスグリッドバルブ100は、溝360、380を有し、好ましくは回転機器1000の入口又はその近傍から取り込まれたバルブ100の上流を流れる蒸気の一部が、少なくともダクト500を通って注入され得る。特に、ダクト500には、バルブ100の溝360、380に供給される蒸気を調節するバルブ510が設けられる。好ましくは、蒸気は、バルブ本体300がバルブ支持体200に対して回転されるときにのみ溝360、380に供給されて、それらの間の摩擦を低減する。より好ましくは、バルブ510は、デジタル制御信号を受信するアクチュエータによって作動されるとき、又は手動で作動されるときに、蒸気が溝360、380に供給されることを可能にする。
【0040】
一部の実施形態では、多段蒸気タービン1000は、第1の溝360及び多段蒸気タービン1000の高圧セクション800の第1の高圧段落に流体結合された第1のダクトと、第2の溝380及び多段蒸気タービン1000の高圧セクション800の第2の高圧段落に流体結合された第2のダクトと、を備えることができ、第1のダクトは、蒸気を第3の圧力で、特に第1の高圧段落の圧力で第1の溝360に供給するように配置され、第2のダクトは、蒸気を第4の圧力で、特に第2の高圧段の圧力で第2の溝380に供給するように配置されることに留意されたい。
【0041】
また、第1の高圧段及び第2の高圧段は、多段蒸気タービン1000の高圧セクション800の入口のすぐ下流に位置する第1の高圧段及び第2の高圧段に対応しなくてもよいことに留意されたい。
【国際調査報告】