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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-18
(54)【発明の名称】融合反応のビーム触媒体積的点火
(51)【国際特許分類】
   G21B 1/03 20060101AFI20240910BHJP
   G21B 1/19 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
G21B1/03
G21B1/19
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024512980
(86)(22)【出願日】2022-08-26
(85)【翻訳文提出日】2024-04-04
(86)【国際出願番号】 US2022041732
(87)【国際公開番号】W WO2023028335
(87)【国際公開日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】63/237,260
(32)【優先日】2021-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524067392
【氏名又は名称】エイチビー11 エナジー ホールディングス ピーティーワイ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳徳
(74)【代理人】
【識別番号】100187850
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳弘
(72)【発明者】
【氏名】メーローン,トーマス,エイ.
(72)【発明者】
【氏名】マッケンジー,ワレン
(57)【要約】
燃料標的を収容するように構成された反応チャンバー;燃料標的を照射し、それにより燃料標的を圧縮するように構成された圧縮レーザーアレイ;燃料標的を照射し、燃料標的の少なくとも一部をイオン化し、イオンを生成し、燃料標的を通ってイオンを加速させ、それにより核融合反応を点火するように構成されたイオン加速レーザーアレイ;および核融合反応により放出されるエネルギーを電気に変換するように構成されたエネルギー変換モジュールを含む、核融合デバイス。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料標的を収容するように構成された反応チャンバー;
燃料標的を照射し、それにより燃料標的を圧縮するように構成された圧縮レーザーアレイ;
燃料標的を照射し、燃料標的の少なくとも一部をイオン化し、イオンを生成し、燃料標的を通ってイオンを加速させ、それにより核融合反応を点火するように構成されたイオン加速レーザーアレイ;および
核融合反応により放出されるエネルギーを電気に変換するように構成されたエネルギー変換モジュール
を含む、核融合デバイス。
【請求項2】
圧縮レーザーアレイが、少なくとも10ナノ秒のパルス持続時間にわたり少なくとも1キロジュールの集合エネルギーを有する同時レーザーパルスを放出するように構成される、請求項1記載のデバイス。
【請求項3】
加速レーザーアレイが、10ナノ秒未満のパルス持続時間にわたり少なくとも1キロジュールの集合エネルギーを有する同時レーザーパルスを放出するように構成される、請求項1または2記載のデバイス。
【請求項4】
圧縮レーザーアレイが少なくとも4つのレーザーを含む、請求項1~3いずれか記載のデバイス。
【請求項5】
イオン加速レーザーアレイが少なくとも4つのレーザーを含む、請求項1~4いずれか記載のデバイス。
【請求項6】
加速レーザーアレイが最大で1ナノ秒のパルスを放出するように構成される、請求項1~5いずれか記載のデバイス。
【請求項7】
イオン加速レーザーアレイが、190nm~550nmで少なくとも1つのビームを生成する、請求項1~6いずれか記載のデバイス。
【請求項8】
少なくとも水素およびホウ素11核融合反応体材料を含む、核融合反応燃料標的であって、
燃料標的が球状であり、
燃料標的が室温で固体である、核融合反応燃料標的。
【請求項9】
少なくともホウ素11および第2の核融合反応体材料を含むコア;ならびに
コアを封入するシェルを含む
核融合反応燃料標的であって、
燃料標的が室温で固体である、核融合反応燃料標的。
【請求項10】
シェルが、少なくとも第3の核融合反応体材料を含む、請求項9記載の燃料標的。
【請求項11】
シェルを封入するさらなる層をさらに含む燃料標的であって、さらなる層が高原子番号(Z)材料を含む、請求項8~10いずれか記載の燃料標的。
【請求項12】
第2および第3の核融合反応体材料がそれぞれ独立して、水素含有材料、重水素含有材料、トリチウム含有材料、ホウ素11含有材料、ヘリウム3含有(contianing)材料またはリチウム6含有材料から選択される、請求項8~11いずれか記載の燃料標的。
【請求項13】
高Z材料がAl、Si、Ti、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Mo、Au、PdまたはPtである、請求項8~12いずれか記載の燃料標的。
【請求項14】
燃料標的が、約2.5マイクロメートル~約50ミリメートルの特徴的なサイズを有する、請求項8~13いずれか記載の燃料標的。
【請求項15】
請求項1~7いずれか記載の核融合デバイス;および
核融合デバイスの反応チャンバー内に配置される請求項8~14いずれか記載の核融合反応燃料標的
を含む、核融合システム。
【請求項16】
圧縮レーザーアレイのパルスおよびイオン加速レーザーアレイのパルスの組合せにより送達されるエネルギーの1キロジュール当たり少なくとも2 x 1016のα粒子を生じるように構成される、請求項1415記載のシステム。
【請求項17】
核融合反応燃料標的が非極低温である、請求項12~16いずれか記載のシステム。
【請求項18】
反応チャンバー内に収容される燃料標的に、圧縮レーザーアレイにより生成されるレーザーパルスを照射して、それにより燃料標的を圧縮する工程;
燃料標的に、イオン加速レーザーアレイにより生成されるレーザーパルスを照射して、それにより燃料標的の少なくとも一部をイオン化し、イオンを生成し、燃料標的を通ってイオンを加速させ、それにより核融合反応を点火する工程;および
核融合反応により放出されるエネルギーを電気に変換する工程
を含む、核融合反応を生じるための方法。
【請求項19】
圧縮レーザーアレイが、少なくとも10ナノ秒のパルス持続時間にわたり少なくとも1キロジュールの集合エネルギーを有する同時レーザーパルスを放出するように構成される、請求項20記載の方法。
【請求項20】
加速レーザーアレイが、10ナノ秒未満のパルス持続時間にわたり少なくとも1キロジュールの集合エネルギーを有する同時レーザーパルスを放出するように構成される、請求項18または19記載の方法。
【請求項21】
加速レーザーアレイが最大で1ナノ秒のパルスを放出するように構成される、請求項18~20いずれか記載の方法。
【請求項22】
燃料標的を、その室温での密度の少なくとも2倍まで圧縮する工程をさらに含む、請求項18~21いずれか記載の方法。
【請求項23】
イオン加速レーザーアレイが、190nm~550nmで少なくとも1つのビームを生成する、請求項18~22いずれか記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2021年8月26日に出願された米国仮特許出願第63/237260号に対する優先権の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
追及されている融合エネルギー生成についての多くのアプローチがあり、そのほとんどは、燃料を数百万度まで加熱して点火を達成する熱的手段に焦点が当てられる。正味のエネルギー利得の生成に成功しているものは何もない。これらのアプローチのいくつかは、ホットスポット点火、高速点火および衝撃点火を含む。いくつかは、燃料の高密度までの圧縮および加熱などの熱的手段を介して融合反応を達成するのに必要とされる条件を達成するために、レーザー技術(ナノ秒パルス、本明細書において長パルスレーザーと称される)も使用している。しかしながら、最も試験された燃料、重水素およびトリチウム(DT)を使用して、正味のエネルギー利得を示したものはない。
【0003】
陽子-ホウ素融合について、必要な温度が重水素-トリチウム(DT)反応よりも10~100倍高いことを考慮すれば、純粋に熱的な手段による実験室規模での非中性子陽子-ホウ素反応の点火は非現実的であるということが当該技術分野において広く受け入れられている。
【発明の概要】
【0004】
発明の概要
一態様において、本発明は、燃料標的を収容するように構成された反応チャンバー;燃料標的を照射し、それにより燃料標的を圧縮するように構成された圧縮レーザーアレイ;燃料標的を照射し、燃料標的の少なくとも一部をイオン化し、イオンを生成し、燃料標的を通ってイオンを加速させ、それにより核融合反応を点火するように構成されたイオン加速レーザーアレイ;および核融合反応により放出されるエネルギーを電気に変換するように構成されたエネルギー変換モジュールを含む核融合デバイスである。
【0005】
別の例示態様において、本発明は、少なくとも水素およびホウ素11核融合反応体材料を含む核融合反応燃料標的であり、燃料標的は球状であり、燃料標的は室温で固体である。
【0006】
別の例示態様において、本発明は、少なくともホウ素11および第2の核融合反応体材料を含むコア;ならびにコアを封入するシェルを含む核融合反応燃料標的であり、燃料標的は、室温で固体である。
【0007】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載される核融合デバイスのいずれか;および核融合デバイスの反応チャンバー内に配置される本明細書に記載される核融合反応燃料標的のいずれかを含む核融合システムである。
【0008】
別の態様において、本発明は、反応チャンバーに収容される燃料標的に、圧縮レーザーアレイにより生成されるレーザーパルスを照射して、それにより燃料標的を圧縮する工程;燃料標的に、イオン加速レーザーアレイにより生成されるレーザーパルスを照射して、それにより燃料標的の少なくとも一部をイオン化し、イオンを生成し、燃料標的を通ってイオンを加速させ、それにより核融合反応を点火する工程;および核融合反応により放出されるエネルギーを電気に変換する工程を含む、核融合反応を生じるための方法である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図面の簡単な説明
前述のものは、添付の図面に図示されるように、以下の本発明の例示態様のより具体的な説明から明らかであり、図面において同様の参照記号は、異なる図を通じて同じ部分を言及する。図面は必ずしも一定の縮尺でなく、その代り本発明の態様を説明することが強調される。
図1図1は、Texasペタワットレーザー設備により生成される、レーザーイオンで加速された陽子のエネルギースペクトルの例を表すプロットである。
図2図2は、本明細書に記載される方法を図示する概略図である。
図3図3は、重水素-重水素(DD)、重水素-トリチウム(DT)および陽子-ホウ素11(P-B11)反応のための粒子エネルギーの関数としての融合反応断面積を示すプロットである。
図4図4は、ビーム触媒ハイブリッドpB11燃焼反応性空間を図示するプロットである。
図5図5は、非平衡融合フレームの生成を示すプロットである。
図6図6は、波長0.25μm(1)、0.50μm(2)および1μm(3)にわたるエネルギー4x1020 W/cm2のレーザーパルス後の総融合収率の、図5に使用されたものと同じコンピューターシミュレーションにより生成されるプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
発明の詳細な説明
本発明の例示態様の説明を以下にする。
【0011】
融合反応は、高ピーク動力レーザー技術の進歩により可能になった陽子ホウ素11などの非熱的手段を使用して達成された。ほとんどの証明(demonstration)は、ピコ秒(本明細書において短パルスレーザーと称される)およびそれ未満のパルス長さを有するが、10nsほどの高さのパルス長さからのかかる結果の証明が観察された。これらのレーザーパルスは、高エネルギーまでのイオンの効率的な加速を可能にする。本明細書に記載される実験において、陽子は、熱的手段を使用しては達成することが不可能なエネルギー範囲である数十メガ電子ボルト(MeV)まで加速された。1つの実験からのレーザー-イオン加速陽子エネルギースペクトルの例を図1に示す。これらの陽子は、多くのp11B反応を生じるのに成功し、80ジュール(J)レーザーパルスから生成された109よりも多くのα粒子が見られた。
【0012】
しかしながら、実験データの分析は、これらの反応がビーム融合領域(regime)において生成されることを示した。ビーム融合反応単独は、正味のエネルギー利得を達成するのに十分な反応を生じるには十分ではない。
【0013】
本明細書に記載されるデバイスおよび方法は、図2に概略を示されるように、短および長パルスレーザーの両方により生成される熱的および非熱的なアプローチの組合せを含む。球として形作られる燃料は、長パルスレーザー(laser/s)により照射されて、等容的に(isochorically)(すなわち均一な密度を有して)燃料を、ほぼ縮退状態の高密度まで内破する(implode)。次いで、短パルスレーザーを使用して、燃料の表面近くのコロナプラズマから高エネルギー陽子を加速して、その厚さが陽子のイオン停止範囲(ion stopping range)に対応する外部の球状シェル内でビーム融合反応(およびそれからの他の非熱的反応)を生じる。この層内の非熱ビーム融合反応により増大される電子および陽子エネルギー堆積の組合せは、熱核燃焼波を点火し、これは、低質量星の「ヘリウムフラッシュ」に類似してコアに伝播する。レーザーおよび融合反応の両方の組合せにより生じる状態は、レーザーパルスエネルギーよりも少なくとも10倍大きい反応利得を達成し得る燃料の非平衡熱核燃焼を可能にする。
【0014】
ホットスポット点火、衝撃点火および高速点火などの代替的なスキームとは異なり、本明細書に記載されるデバイスおよび方法は、排他的に熱機構を介して、融合燃焼を開始しない。開示されるデバイスおよび方法の重要な特徴は、標的に入射する短パルスレーザーを使用して、高エネルギーイオンビームから非熱ビーム融合反応により燃焼が触媒されるということである。この反応の他の特徴は、加速されたイオンが陽子である陽子-ホウ素11(p-11B)反応についておよびイオンが重水素である重水素-トリチウム反応についてのその適用である。
【0015】
この領域において、内破される燃料上の融合反応の増幅は、いくつかの重要な要因:
●長パルスレーザーにより生じる状態:
○燃焼波が伝播し得るほぼ縮退融合燃料を提供する、その固体状態密度の数倍までの圧縮を生じる燃料の内破。
●短パルスレーザーにより生じる状態:
○非熱融合反応を生じる燃料内(または燃料の周囲の層内)のイオンからの多くの陽子(プラズマブロック)の加速。生成されるイオンは、高い動力学的エネルギーを有し、そのために熱的手段により可能であるものよりも反応性で高エネルギーの断面の領域から、融合反応を生じ得る。
○高速なイオンはレーザーにより生成される。p11B反応の場合、飛行中(inflight)の融合反応は、エネルギー的な(energetic)α粒子も生じる。燃料内の高速なイオンと熱的な陽子の間の弾性の衝突は、反応のなだれ増倍 (avalanche multiplication)(「リフト(Lift)」としても公知)の確率を増加する。
○・ビーム融合反応
・レーザーから直接(熱い電子)
・加速したイオンが燃料を通過して移動する場合のそれらの停止。
・熱核燃焼波を中心の燃料に発射する外部燃料層の点火および外部層が爆発推進器として機能する場合の衝撃波
による燃料の加熱
により引き起こされる。
【0016】
図3に示されるエネルギーの関数としての融合反応の断面積を参照すると、短パルスレーザーにより生成される高エネルギーイオンは、約1MeVを超える領域でビーム融合反応を生じ、ここで全ての断面積は比較的高い。この点火の後、熱を生じる機構は、燃料の温度を熱融合が燃焼に寄与する領域、DT融合について約10keVまたはp11Bについて100keVに増加させる。
【0017】
反応速度が密度に比例する場合、圧縮の導入はさらに、燃焼に寄与する反応速度を増加させる。
【0018】
要するに、本明細書に開示されるデバイスおよび方法は以下の特徴:レーザー融合デバイス;融合標的;および融合システムを含む。レーザー融合デバイスは:
●燃料標的を収容し得るチャンバー;
●それぞれのレーザーがエネルギーを標的位置に方向づける、少なくとも2つのレーザーのアレイ(ここで「アレイ」は、少なくとも2つのレーザーを含む);
○圧縮レーザーのアレイ-燃料をほぼフェルミ縮退密度まで圧縮するために使用される長パルス(ナノ秒またはそれ未満)レーザー;
○イオン加速レーザーのアレイ-高エネルギー(>1MeV)イオンのビームを生成する短パルスレーザー。これらのイオンは、陽子、重水素、ホウ素11またはHe-3のいずれかであり得た;
●核融合の際に放出されるエネルギーを生成される核から電気に変換するためのエネルギー変換デバイス
を含む。
レーザーアレイのそれぞれは、融合燃焼に達するように記載される条件を達成するために、多く(>10、>100またはさらに>1000)のダイオードポンプレーザーを含み得る。ダイオードポンプレーザーは、電気を光に効率的に変換し得る。非中性子反応の場合において、これらのシステムは、生成される高エネルギー中性子として実際的に実現可能であり、そうでなければダイオードを損傷し、それらの寿命を制限する。エキシマーレーザー(紫外線レーザーの一般的に公知の形態であるエキシプレックス(exciplex)レーザーとも称される)も十分な効率を有し得る。
【0019】
融合標的材料および構造は以下のように構想される:
●ほぼ球状の燃料標的は:
○ポリマーまたは埋め込まれた外部層などの融合イオンの源を含む外部層。p11Bについて、これは陽子を含む。p11B-D3Heハイブリッド領域について、これは重水素または3Heを含み得る。
○燃料を通るイオンの加速を促進し、燃料からの熱伝導および放射の損失を制限する高原子番号層を含む。
●放射生成を最小化し、融合反応の触媒を最大化するように選択される混合物中の融合アイソトープとの主要燃料混合物を含むコア材料は:
○pB11の場合:
・11Bおよび水素を含み;
・レーザー相互作用および核反応により生じる熱からの放射および熱伝導損失を制限するように大部分の水素(%重量で測定される)を含む
適切なアイソトープ混合物を含む。
●球の直径はほぼ、外部シェルにおいて最初にレーザーで加速されるイオンの範囲である。
【0020】
融合燃料を含むこと以外、標的は、燃料アイソトープの適切な混合物を通る燃料中の放射生成および損失ならびに高原子番号コーティング材料の使用を制限するように設計され、これは2つの特徴を有する。第1は、燃料を通って加速される高い数および/またはエネルギーの陽子を達成するようにレーザーイオン加速の機構を促進することである。第2は、レーザー相互作用および核反応により生じる熱からの放射および熱伝導の損失を制限することである。
【0021】
したがって、第1の例示態様において、本発明は、核融合デバイスである。第1の例示態様の第1の局面において、該デバイスは、燃料標的を収容するように構成された反応チャンバー;燃料標的を照射し、それにより燃料標的を圧縮するように構成された圧縮レーザーアレイ;燃料標的を照射し、燃料標的の少なくとも一部をイオン化し、イオンを生成し、燃料標的を通ってイオンを加速させ、それにより核融合反応を点火するように構成されたイオン加速レーザーアレイ;および核融合反応により放出されるエネルギーを電気に変換するように構成されたエネルギー変換モジュールを含む。
【0022】
第1の例示態様の第2の局面において、圧縮レーザーアレイは、少なくとも10ナノ秒のパルス持続時間にわたり少なくとも1キロジュールの集合エネルギーを有する同時レーザーパルスを放出するように構成される。デバイスの残りの特徴および例示的特徴は、第1の局面に関して上に記載されるとおりである。
【0023】
第1の例示態様の第3の局面において、加速レーザーアレイは、10ナノ秒未満のパルス持続時間にわたり少なくとも1キロジュールの集合エネルギーを有する同時レーザーパルスを放出するように構成される。デバイスの残りの特徴および例示的特徴は、第1~第2の局面に関して上に記載されるとおりである。
【0024】
第1の例示態様の第4の局面において、圧縮レーザーアレイは、少なくとも4つのレーザーを含む。デバイスの残りの特徴および例示的特徴は、第1~第3の局面に関して上に記載されるとおりである。
【0025】
第1の例示態様の第5の局面において、イオン加速レーザーアレイは、少なくとも4つのレーザーを含む。デバイスの残りの特徴および例示的特徴は、第1~第4の局面に関して上に記載されるとおりである。
【0026】
第1の例示態様の第6の局面において、加速レーザーアレイは、最大で1ナノ秒のパルスを放出するように構成される。デバイスの残りの特徴および例示的特徴は、第1~第5の局面に関して上に記載されるとおりである。
【0027】
第1の例示態様の第7の局面において、イオン加速レーザーアレイは、190nm~550nmで少なくとも1つのビームを生成する。例えば、加速レーザーアレイは、190~550nmの波長を生じる個々のレーザーを含み得る。最短の波長は、電子ビームまたはそれらの基本モード:193nmでArFおよび248nmでKrFで作動する放電ポンプ気体エキシマーレーザーにより生成され得る。505および353nmの波長は、市販のリン酸二水素カリウム(KH2PO4、KDP)非線形変換結晶を使用して周波数が2倍または3倍にされたダイオードポンプ固体状態レーザーにより生成され得る。デバイスの残りの特徴および例示的特徴は、第1~第6の局面に関して上に記載されるとおりである。
【0028】
第2の例示態様において、本発明は、核融合反応燃料標的である。第2の例示態様の第1の局面において、燃料標的は、少なくとも水素およびホウ素11核融合反応体材料を含み、燃料標的は球状であり、燃料標的は室温で固体である。
【0029】
第3の例示態様において、本発明は、核融合反応燃料標的である。第3の例示態様の第1の局面において、燃料標的は、少なくともホウ素11および第2の核融合反応体材料を含むコア;ならびにコアを封入するシェルを含む。燃料標的は室温で固体である。第3の例示態様のある局面において、シェルは、少なくとも第3の核融合反応体材料を含み得る。
【0030】
第2の例示態様または第3の例示態様のいずれかの第2の局面において、燃料標的はさらに、シェルを封入するさらなる層を含み、さらなる層は、高原子番号(Z)材料を含む。デバイスの残りの特徴および例示的特徴は、第1の局面に関して上に記載されるとおりである。
【0031】
第2の例示態様または第3の例示態様のいずれかの第3の局面において、第2および第3の核融合反応体材料はそれぞれ独立して、水素含有材料、重水素含有材料、トリチウム含有材料、ホウ素11含有材料、ヘリウム3含有(contianing)材料またはリチウム6含有材料から選択される。デバイスの残りの特徴および例示的特徴は、第2または第3の例示態様の第1~第2の局面に関して上に記載されるとおりである。
【0032】
第2の例示態様または第3の例示態様のいずれかの第4の局面において、燃料標的は、Al、Si、Ti、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Mo、Au、PdまたはPtである高Z材料を含む。デバイスの残りの特徴および例示的特徴は、第2または第3の例示態様の第1~第3の局面に関して上に記載されるとおりである。
【0033】
第2の例示態様または第3の例示態様のいずれかの第5の局面において、燃料標的は、約2.5マイクロメートル~約50ミリメートルの特徴的なサイズを有する。例えば、燃料標的は、特徴的なサイズに等しい直径を有するほぼ球状であり得る。デバイスの残りの特徴および例示的特徴は、第2または第3の例示材料の第1~第4の局面に関して上に記載されるとおりである。
【0034】
第4の例示態様において、本発明は、核融合システムである。第4の例示態様の第1の局面において、核融合システムは、第1の例示態様の局面のいずれかに記載の核融合デバイス;ならびに第2の例示態様または第3の例示態様のいずれかの局面のいずれかに記載の核融合反応燃料標的を含む。
【0035】
第4の例示態様の第2の局面において、該システムは、圧縮レーザーアレイのパルスおよびイオン加速レーザーアレイのパルスの組合せにより送達されるエネルギーの1キロジュール当たり、少なくとも2 x 1016のα粒子を生成するように構成される。
【0036】
第4の例示態様の第3の局面において、核融合反応燃料標的は、非極低温である。本明細書で使用する場合「非極低温」は、20K以上の温度をいう。
【0037】
第5の例示態様において、本発明は、核融合反応を生じるための方法である。第4の例示態様の第1の局面において、該方法は:反応チャンバーに収容される燃料標的に、圧縮レーザーアレイにより生成されるレーザーパルスを照射して、それにより燃料標的を圧縮する工程;燃料標的に、イオン加速レーザーアレイにより生成されるレーザーパルスを照射して、それにより燃料標的の少なくとも一部をイオン化し、イオンを生成し、燃料標的を通ってイオンを加速し、それにより核融合反応を点火する工程;および核融合反応により放出されるエネルギーを電気に変換する工程を含む。
【0038】
第5の例示態様の第2の局面において、圧縮レーザーアレイは、少なくとも10ナノ秒のパルス持続時間にわたり少なくとも1キロジュールの集合エネルギーを有する同時レーザーパルスを放出するように構成される。デバイスの残りの特徴および例示的特徴は、第1の局面に関して上に記載されるとおりである。
【0039】
第5の例示態様の第3の局面において、加速レーザーアレイは、10ナノ秒未満のパルス持続時間にわたり少なくとも1キロジュールの集合エネルギーを有する同時レーザーパルスを放出するように構成される。デバイスの残りの特徴および例示的特徴は、第1~第2の局面に関して上に記載されるとおりである。
【0040】
第5の例示態様の第4の局面において、加速レーザーアレイは、最大で1ナノ秒のパルスを放出するように構成される。デバイスの残りの特徴および例示的特徴は、第1~第3の局面に関して上に記載されるとおりである。
【0041】
第5の例示態様の第5の局面において、該方法は、燃料標的を、その室温密度の少なくとも2倍に圧縮する工程をさらに含む。デバイスの残りの特徴および例示的特徴は、第1~第4の局面に関して上に記載されるとおりである。
【0042】
第5の例示態様の第6の局面において、イオン加速レーザーアレイは、190nm~550nmで少なくとも1つのビームを生じる。デバイスの残りの特徴および例示的特徴は、第1~第5の局面に関して上に記載されるとおりである。
【実施例
【0043】
実施例
陽子-ホウ素11反応のコンピューターシミュレーションモデリングを行い、結果を図5および図6に示す。
【0044】
これらの図に示されるデータは、Voss ScientificからのChicago code (https://www.vosssci.com/products/chicago/chicago.htmlで利用可能)を使用してコンピューターシミュレーションにより作成した。これらのシミュレーションは、1-D(軸方向)幾何学構造において行い、.01cmで対称な境界条件を有した。プラズマは、1立方センチメートル当たり6.3x1022の密度でH1+およびB11 +5の50:50混合物であった。プラズマに、0.25μmの波長および1x1020 W/cm2 1psパルスの強度を有するレーザーを照射した。シミュレーションは、制動放射(Bremsstrahlung radiation)損失を含んだ。Chicagoにおけるハイブリッドアルゴリズムは、レーザーがオフになった後であるが、全ての粒子が動的なディスクリプション(description)で開始され、動的な電子が流体ディスクリプションに遷移されるように使用した。融合により生じたαを有するものを含む、粒子の間の全てのエネルギー交換相互作用が含まれた。
【0045】
図5は、1x1020 W/cm2の高強度レーザーパルスを適用した約4.5ps後に、ホウ素-水素標的へと約70um伝播した非平衡融合フレームの作成を示すChicago Codeを使用するシミュレーションにより作成されたプロットである。電子(3) 対 陽子温度(1)比は0.2であり、これは非平衡融合燃焼を示す。シミュレーションは、ホウ素(2)および電子温度(3)が平衡に達したこと、融合フレームが16keV電子と共に80keV陽子ピークを有して、融合エネルギー産生が放射損失を超えることも示す。この衝撃は、10000km/s (.03c)で伝播し、これらのパラメーターについて標的において15ps間持続する。非平衡熱核フレームは、およそX = 0.006~0.009cmの間の電子温度(赤色の線)に対する黒色の線(イオン温度)からのピークにより示される。
【0046】
図6は、波長0.25μm(1)、0.50μm(2)および1μm(3)にわたるエネルギー4x1020 W/cm2のレーザーパルス後の総融合収率の、図5について使用したものと同じコンピューターシミュレーションにより作成されたプロットである。図は、1ミクロンのレーザーが無視できる融合燃焼を生じ、0.25および0.5ミクロンのレーザーが、伝播する融合フレームからのほぼ同じレベルの融合燃焼を生じることを示す。図6のデータは、600nm以下が、融合収率が最大化される最適な波長を表すことを示す。これらの波長は、エキシマーレーザーまたは主要なレーザー波長の非線形変換を使用して達成され得、これは波長を低減するためだけに働き、十分に確立されたアプローチである。
【0047】
例示態様において、本発明は、以下の番号が付された態様に関して理解され得る:
【0048】
1. 燃料標的を収容するように構成された反応チャンバー;燃料標的を照射し、それにより燃料標的を圧縮するように構成された圧縮レーザーアレイ;燃料標的を照射し、燃料標的の少なくとも一部をイオン化し、イオンを生成し、燃料標的を通ってイオンを加速させ、それにより核融合反応を点火するように構成されたイオン加速レーザーアレイ;および核融合反応により放出されるエネルギーを電気に変換するように構成されたエネルギー変換モジュールを含む、核融合デバイス。
【0049】
2. 圧縮レーザーアレイが、少なくとも10ナノ秒のパルス持続時間にわたり少なくとも1キロジュールの集合エネルギーを有する同時レーザーパルスを放出するように構成される、態様1記載のデバイス。
【0050】
3. 加速レーザーアレイが、10ナノ秒未満のパルス持続時間にわたり少なくとも1キロジュールの集合エネルギーを有する同時レーザーパルスを放出するように構成される、態様1または2記載のデバイス。
【0051】
4. 圧縮レーザーアレイが少なくとも4つのレーザーを含む、態様1~3いずれか記載のデバイス。
【0052】
5. イオン加速レーザーアレイが少なくとも4つのレーザーを含む、態様1~4いずれか記載のデバイス。
【0053】
6. 加速レーザーアレイが最大で1ナノ秒のパルスを放出するように構成される、態様1~5いずれか記載のデバイス。
【0054】
7. 少なくとも第1および第2の核融合反応体材料を含むコア;ならびにコアを封入するシェルを含む核融合反応燃料標的であって、シェルが少なくとも第3の核融合反応体材料を含む、核融合反応燃料標的。
【0055】
8. シェルを封入するさらなる層をさらに含む燃料標的であって、さらなる層が高原子番号(Z)材料を含む、態様7記載の燃料標的。
【0056】
9. 第1、第2および第3の核融合反応体材料がそれぞれ独立して、水素含有材料、重水素含有材料、トリチウム含有材料、ホウ素11含有材料、ヘリウム3含有(contianing)材料またはリチウム6含有材料から選択される、態様7または8記載の燃料標的。
【0057】
10. 高Z材料が、Al、Si、Ti、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Mo、Au、PdまたはPtである、態様8~10いずれか記載の燃料標的。
【0058】
11. 約2.5マイクロメートル~約50ミリメートルの特徴的なサイズを有する、態様7~10いずれか記載の燃料標的。
【0059】
12. 態様1~6いずれか記載の核融合デバイス;および核融合デバイスの反応チャンバー内に配置される態様7~11いずれか記載の核融合反応燃料標的を含む、核融合システム。
【0060】
13. 圧縮レーザーアレイのパルスおよびイオン加速レーザーアレイのパルスの組合せにより送達されるエネルギーの1キロジュール当たり、少なくとも2 x 1016のα粒子を生成するように構成される、態様12記載のシステム。
【0061】
14. 反応チャンバーに収容される燃料標的に、圧縮レーザーアレイにより生成されるレーザーパルスを照射して、それにより燃料標的を圧縮する工程;燃料標的に、イオン加速レーザーアレイにより生成されるレーザーパルスを照射して、それにより燃料標的の少なくとも一部をイオン化し、イオンを生成し、燃料標的を通ってイオンを加速させ、それにより核融合反応を点火する工程;および核融合反応により放出されるエネルギーを電気に変換する工程を含む、核融合反応を生じるための方法。
【0062】
15. 圧縮レーザーアレイが、少なくとも10ナノ秒のパルス持続時間にわたり少なくとも1キロジュールの集合エネルギーを有する同時レーザーパルスを放出するように構成される、態様14記載の方法。
【0063】
16. 加速レーザーアレイが、10ナノ秒未満のパルス持続時間にわたり少なくとも1キロジュールの集合エネルギーを有する同時レーザーパルスを放出するように構成される、態様14または15記載の方法。
【0064】
17. 加速レーザーアレイが最大で1ナノ秒のパルスを放出するように構成される、態様14~16いずれか記載の方法。
【0065】
18. 燃料標的を、その室温の密度の少なくとも2倍まで圧縮する工程をさらに含む、態様14~17いずれか記載の方法。
【0066】
本明細書に引用される全ての特許、公開された出願および参照文献の教示は、それらの全体において参照により援用される。
【0067】
本発明は、その例示態様に関して具体的に示され、記載されるが、添付の特許請求の範囲に包含される発明の範囲から逸脱することなく、形態および詳細における種々の変更が本発明においてなされ得ることが当業者に理解される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】